約 109,465 件
https://w.atwiki.jp/vipgijin/pages/20.html
「うぁー」 VIPは不思議な声を出しながら左肩を右手で揉む 初めて肩がつった事に驚きつつ運動不足かな?と首を傾げる 「肩凝り?」 ラウンジが横に来て不思議そうな顔をする 肩凝りってどんなもんなんだろうなと想像しながらVIPは苦笑いをする 「肩がつった」 「えー?」 それを聞いてラウンジはVIPの左肩をいきなり叩く 「うぉ!?いっ・・・てぇ・・・なラウンコ!!」 「なに?もっと叩かれたい?うぉら!」 「ぁぁぁ!!やめて下さいお願いします」 シベリアは変なものを見るような目で二人を見るとやれやれと溜め息をついた ラウンジはVIPの左肩をグイグイ揉んでる 「お前、ほんとに仲良いよな」 どこがだよ!とVIPは心の中で叫んでいた 「炭酸コーヒー?」 「うん、すげぇまずかった」 VIPはソフトドリンクにその詳細について話した あの恐怖の味を二度と忘れることは出来ない まるでコーヒーを出して残ったカスに炭酸を混ぜてガムシロップを突っ込みましたみたいな味だった 思い出すだけでも胸がムカムカする 「そんなのあるの?」 「駅に売ってた、あれは無いな」 「今度飲んでみよっと♪」 ソフトドリンクは嬉しそうにそう言って微笑む まだ口の中に味が残っていて気持ち悪い 「あれは、全部飲めたらお前すげぇよ」 「頑張る!」 いつになく真剣な顔のソフトドリンクにVIPは言わない方が良かったかもしれないと思いつつ VIPは気がついてしまった ソフトドリンクって制服じゃ胸無いと思ってたのに結構でかかったな・・・と VIPやシベリアは削除人とやり合った後から体力を付ける事や護身術の本を読み漁った シベリアは素振り500回が目標なのだが、50回でギブアップしてしまった いきなりそんなのを始めても最初から体が付いて行くわけがない 「お前ら、よく頑張るなぁ」 「お、モナーだ」 「なんだそれ、人を珍獣みたいにいうなよ」 モナーは欠伸をしながらVIPとシベリアを見る 「おいすー」 「VIPもなんか雰囲気変わったな」 モナーの言葉にVIPは照れ臭そうに苦笑いをした モナーは隣りのクラスの奴で、のんびりとした雰囲気を持った男だ 「急にどうしたんだ?」 「ダイエットだよ」 VIPは苦笑いをしてそう言っておいた その言葉にモナーはゲラゲラと笑う 「お前等これ以上痩せるのかよ」 「やっぱり腹筋は割れて無いとな」 シベリアがそういうとモナーはシベリアの腹を触る 「やわらけぇwwwww」 モナーの言葉にシベリアはムキになって腹筋に力を入れる 「ま、頑張れよ」 笑いながら歩いて行くモナーにシベリアとVIPは顔を見合わせて苦笑いを零した
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/9019.html
インターハイ、それは高校麻雀最強を決める場であり以降の栄達を約束する場であるとともに、あるジンクスがあった 久「須賀くん、私と付き合って」 咲「京ちゃん、私だよね?」 優希「京太郎、一生私のタコスを作ってくれ!」 和「須賀くん、私の胸をよく見てましたよね? 良ければ……」 京太郎「な、なにこれぇ!? なんかの罰ゲーム!?」 おろおろと周囲にドッキリのプラカードを探す男子高校生と、一人溜め息をつく眼鏡の先輩がいた まこ「インターハイの決勝にはの、活躍した選手は高校在学中に異性と結ばれんと一生干物女の法則があるんじゃ」 京太郎「なにその理不尽な呪い!?」 咲「部長には生徒会とかで他に男子いるでしょう!? 私には京ちゃんだけなの!」 優希「のどちゃんだってその胸で引く手あまた、京太郎に固執する必要はないはずだじぇ!」 久「私だって初めて付き合うなら意中の人の方がいいわよ! なんでロリコンとか相手にしなきゃいけないの!」 和「体目当ての人は嫌です! 私にとって信頼できて仲のいい人は須賀くんしかいません!」 京太郎「何だろう、嬉しいことを言われているはずなのになぜか嬉しくないぞぅ」 まこ「そりゃここまで敵意むき出しの仲違いしてたらのぉ。あと、お前さん携帯震えとるぞ」 京太郎「くっ、あえてスルーしてたのに……うわ、照さん、菫さん、大星、高鴨、新子、玄さん、あと臨海も全員から」 まこ「阿知賀は実家業やっとるし、そもそも決勝の他の高校は全部女子校じゃからな。特に三年は必死じゃろ」 久「貴方たちはまだ2年以上あるでしょ!? 私に譲ってよ!」 和「そんなこと言って卒業しても須賀くんと付き合い続けるつもりでしょう!?」 久「当たり前じゃない! こんないい子普通いないわよ!」 優希「あー、認めた! 部長ずっこいじぇ!」 咲「京ちゃんは一人ぼっちの私に手を差し伸べてくれた王子様なの! ずっと前から好きなんだもん!」 京太郎「染谷先輩、この惨状を何とかするグットアイデアとかありません?」 まこ「お前さん、分身の術とかできんか?」 京太郎「できるわけないでしょ!? 人間ですよ俺は!」 まこ「じゃあ十五、いや十六?股するゲス男になるしかわしには思いつかん。もしくは他の高校には友人を売るしかないの」 京太郎「なんて闇が深いんだ、麻雀業界……うかつに足を踏み入れるんじゃなかった」 全員「「須賀くん(京ちゃん)(京太郎)! 誰にするの!?」」 京太郎「神様助けて!」 残念ながら助けてくれそうな神様は鹿児島でのんびりと麻雀を打っていたので当然助けはなかった。 カン
https://w.atwiki.jp/2chgijin/pages/25.html
「うぁー」 VIPは不思議な声を出しながら左肩を右手で揉む 初めて肩がつった事に驚きつつ運動不足かな?と首を傾げる 「肩凝り?」 ラウンジが横に来て不思議そうな顔をする 肩凝りってどんなもんなんだろうなと想像しながらVIPは苦笑いをする 「肩がつった」 「えー?」 それを聞いてラウンジはVIPの左肩をいきなり叩く 「うぉ!?いっ・・・てぇ・・・なラウンコ!!」 「なに?もっと叩かれたい?うぉら!」 「ぁぁぁ!!やめて下さいお願いします」 シベリアは変なものを見るような目で二人を見るとやれやれと溜め息をついた ラウンジはVIPの左肩をグイグイ揉んでる 「お前、ほんとに仲良いよな」 どこがだよ!とVIPは心の中で叫んでいた 「炭酸コーヒー?」 「うん、すげぇまずかった」 VIPはソフトドリンクにその詳細について話した あの恐怖の味を二度と忘れることは出来ない まるでコーヒーを出して残ったカスに炭酸を混ぜてガムシロップを突っ込みましたみたいな味だった 思い出すだけでも胸がムカムカする 「そんなのあるの?」 「駅に売ってた、あれは無いな」 「今度飲んでみよっと♪」 ソフトドリンクは嬉しそうにそう言って微笑む まだ口の中に味が残っていて気持ち悪い 「あれは、全部飲めたらお前すげぇよ」 「頑張る!」 いつになく真剣な顔のソフトドリンクにVIPは言わない方が良かったかもしれないと思いつつ VIPは気がついてしまった ソフトドリンクって制服じゃ胸無いと思ってたのに結構でかかったな・・・と VIPやシベリアは削除人とやり合った後から体力を付ける事や護身術の本を読み漁った シベリアは素振り500回が目標なのだが、50回でギブアップしてしまった いきなりそんなのを始めても最初から体が付いて行くわけがない 「お前ら、よく頑張るなぁ」 「お、モナーだ」 「なんだそれ、人を珍獣みたいにいうなよ」 モナーは欠伸をしながらVIPとシベリアを見る 「おいすー」 「VIPもなんか雰囲気変わったな」 モナーの言葉にVIPは照れ臭そうに苦笑いをした モナーは隣りのクラスの奴で、のんびりとした雰囲気を持った男だ 「急にどうしたんだ?」 「ダイエットだよ」 VIPは苦笑いをしてそう言っておいた その言葉にモナーはゲラゲラと笑う 「お前等これ以上痩せるのかよ」 「やっぱり腹筋は割れて無いとな」 シベリアがそういうとモナーはシベリアの腹を触る 「やわらけぇwwwww」 モナーの言葉にシベリアはムキになって腹筋に力を入れる 「ま、頑張れよ」 笑いながら歩いて行くモナーにシベリアとVIPは顔を見合わせて苦笑いを零した
https://w.atwiki.jp/aoari/pages/472.html
産物系 溜め池 (タメイケ) 【知行産物】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (溜め池.JPG) 性能 買値 売値 --文 文 知行:物資−加工−産物により生産可能 (工房Lv2) 分類 価値 重量 特殊効果 知行産物 2 25.0 なし 材料 溜め池 1 開墾鍬 2 桶 3 主な用途 知行施設改良 LV3→4 水田(3)
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/7048.html
このページはこちらに移転しました 白いため息 作詞/269スレ49 隠そうとしてた ため息が 白く染められ バレた お前の顔が赤いのは 外が寒すぎるせいだろ 俺にとっては好都合 悟られずに喋れるし お前が後ろからやってくる そんなのわかりきっていたさ そのためにゆっくり歩いて わざと追いつかれたんだ 白いため息はすぐに 見えなくなるけど お前は俺がずっと 見失わずに眺めてる しもやけみたいに むずかゆい この気持ちはなんだろう 水染みた靴より先に 爽やかにしておきたい
https://w.atwiki.jp/orimoe/pages/182.html
Top 創作物投下スレまとめ 1 1-091 「夜のひとコマ」 「夜のひとコマ」 作者:本スレ1-612様 91 :夜のひとコマ:2012/04/26(木) 04 10 28 投下します。 本スレ1-612(設定スレ1-011)の桃ノ瀬×アキトで エロ寸前gdgd短めネタ。攻め視点。 92 :夜のひとコマ:2012/04/26(木) 04 12 42 横の男が吸う煙草で、部屋が濁る。 照明を少し落とした部屋で四角いTVモニターだけが、ひとり気を吐いていた。 モニターの中では、くだらないTVショウの真っ最中で 司会ががなればそれに合わせた周りの馬鹿もゲラゲラ笑う。 ブハッと横の馬鹿も吹き出した。一段と部屋が濁った。 「全く、何が面白いんだか」 「そうっすか?」 灰皿の縁にあて灰を落とした煙草をくわえ直す。軽薄を絵に描いたような笑顔。あぁ、馬鹿がいる。 僕はもう一度指の腹で奴の手の甲を撫でた。 安物の眼鏡は振り向きもしない。…奴の象並であろう神経に恐れ入る。 こっちの気も知らずいい気なもんだ。 ベッドに腰掛けたまま、奴が悠々と吸う煙草の一本を待つのがどれほど辛いか。 ほんの数分間が嫌に長い。40手前の欲の溢れ方じゃないな。と、溜め息も出る。 されど数日間、会社に缶詰で溜まりに溜まったアレやソレが僕の下腹部でマグマの如く燃えているのだ。 覚悟しろ馬鹿。 憎き煙草が灰皿の中で小さく最後の声をあげた。 「アキ」呼ぶが早いか、相手の両肩に置いた手に力を入れ押し倒す。 「ちょっ…!もうですか?」 「何が?」 マウントポジションはとった。首筋を撫でながら、出来る限りすっとぼける。 「何って…。もっと、ムードを大事にする…とか?あるじゃないっすか」 馬鹿らしい、弱い反撃。 「いまさら?」 「ですよねー」 間の抜けたやり取りに、二人一緒に笑う。 「もういいだろ」 「そうですね」 眼鏡のフレーム同士がかちあわない様に、少しだけ注意しながらキスをした。 「ふへへっ」 奴はいつもこのタイミングで、照れたように変な声で笑う。 「…何が面白いんだか」 奴の長い髪を手遊びしながら耳元で囁いた。 すぐに「いや違うんですよー」から入り「キスが可愛い」だの「モモさんの優しさがくすぐったい」だの 聞く価値も無いような言い訳をしゃべり出す。 「ばーか」 面倒臭くなったので奴の弱点である耳たぶに歯を立て、黙らせる。 「ふあぁっ…!」 不意打ちに驚くかわいい声と、空気の読めないTVの馬鹿笑い。 自室のベッドで二人きりの時間だ。 画になる必要は無いだろう。 僕は眼鏡を外して、もう一度奴の唇に貪りついた。 【了】 ※続きは、創作物スレ 1-119へ ページ最上部へ
https://w.atwiki.jp/rozen-yuri/pages/409.html
仁王立ちする水銀燈の前に真紅が正座している。いつもなら逆の状態なのに、今日は珍しく真紅が下手のようだ。 「真紅、私は猛烈に怒ってるのぉ」 額に浮かんだ青筋を隠そうともせず、感情を露にさた水銀燈が真紅に話す。 「はい……」 「何故か分かるぅ?」 「はい」 何故、こんなにも水銀燈が怒っているのかと言うと、水銀燈のヤクルトを片っ端からピルクルに置き換えたから。 普通ならこんなに怒るようなことではないが、水銀燈にとっては真紅の次に大事なものにイタズラされたのだ。 何故、真紅が水銀燈にそんなイタズラするはめになったかはまた別の話だが、とにかく水銀燈の怒りは頂点に達している。 「ごめんなさい」 何でこんなことで怒られるんだろう、と些か不満だったが、自分が悪いのに変わりはないから真紅は素直に頭を下げた。 「本気ですまないと思ってるぅ?」 「もちろんよ」 「本当ぅ?」 「えぇ」 「じゃあ何でも言うこと聞けるわよねぇ?」 「当たり前よ」 「そう……」 ここで真紅は慌てて水銀燈を見上げたが時既に遅し。 今までに見たことのない清々しい笑みの水銀燈。対して真っ青な真紅。 しまった。と思った時には水銀燈の言うことを聞かなければならない状況になってしまった。 ──初めてのお使い 冷や汗が背中を伝う感触が分かる。 「本当に?」 背後に立ってる水銀燈に僅かな希望をかけて振り返るが、笑顔の彼女の前にその希望は呆気なく砕かれた。 怒りの代償として、今日一日、日付が変わるまで、真紅は水銀燈の言うことを聞かなければならなくなった。 「大丈夫、大丈夫。ここの店員さんは女性しかいない女性向けのお店だからぁ」 背中を押されて自動ドアの前に立たされる。慌てて左右を見渡すが、人影はない。誰かに見つからないようにパッとドアをくぐった。 水銀燈は慣れてるのか焦る様子もなく足を踏み入れた。 まぁ、慣れていて当たり前か。こんなものを買っているわけだから。 「さて、真紅。貴女がしなきゃいけないことは?」 「適当なコスプレ服と手錠を買ってくること……」 拙い口調で何とか水銀燈に言われた買い物を口にする。それを言うと水銀燈は満足気に笑って、頷いた。 「正解。と、ご褒美ぃ」 水銀燈はそう言うのと同時にポケットに入っているスイッチを押した。 「っ……!」 ビクリと真紅の体が跳ね、途端に腰がひける。体に入っている異物が振動しているのが分かる。 「や……すいぎ、やだっ……」 もう既にうっすら瞳に涙を浮かべた真紅が水銀燈を見上げる。 幸い他の客が見当たらないので、店員にバレないように真紅の額にキスを一つ落とす。 「ちゃんとできたらもっといいご褒美あげるからぁ」 いらない、という言葉が喉まで出かけたがなんとか飲み込んだところで、スイッチがオフにされ、なんとか体勢を立て直した。 うろうろと店内を歩き回り、やっとコスプレ服のコーナーへ着いた。 そこへ着いて驚いたのが、色々な種類があること。ナース服といっても5種類ほどある。 「どれがいいの?」 「別にぃ、真紅が選んでいいわよぉ」 「そう言われても、私は別に着たいのはな……ひっ、」 「何?」 「ん、分かった……選ぶ、選ぶ……からぁっ」 スイッチが切れたと同時にペタリとその場に腰をおろしてしまう。こんなのを続けていたらなかなか終わりそうにない。 「真紅ぅ、大丈夫?」 水銀燈のせいだ、とは口が避けても言えず、差し出された手をとってフラフラと立ち上がる。 「じゃあ、これ……」 さすがにメイドやナース等のマニアックなものは選べず、無難なセーラー服を手に取った。 「後は、手錠ね……」 セーラー服を持ったまま再び店内を歩き回るが、なかなか見つからない。 何だか同じコーナーをぐるぐる回っている気がする。 「店員さんに聞いてみたらぁ?」 水銀燈がとてつもなく妖しい笑みを浮かべている。こういう時はろくなことを考えていない。 「ほら、丁度レジに来たしぃ、聞いてみた方が早いわよぉ?早く終わらせたいでしょう?」 店員に話しかけた途端、水銀燈が何をするか予測がつく。しかし、早く終わらせたいのも事実。 唇を噛んで、真紅は店員の女性に近づく。 「すいませ……っ!」 その途端、中のものが震え始める。しかし、ここで反応するわけにもいかず、レジ台に手をつき、なんとか我慢する。 「手じょ……拘束、具ってあ、りません、かっ……?」 語尾の方がかすれてしまっている。店員は気付いているのかいないのか、丁寧にその場所を説明してくれた。 店員にお礼を言って水銀燈の方へフラフラと向かう。 「止、め……てぇ……やぁ」 水銀燈の服を掴んで、崩れそうな足腰をなんとか保たせる。 「よくできましたぁ」 水銀燈は真紅の頭を撫でてスイッチを止める。 真紅は彼女の手を引いて教えてもらった方に向かう。 「あった……」 なんとか手錠を手に入れ、再びレジへ向かう──とこで気づいた。 「まさか……」 恐る恐る水銀燈の方を振り返ると、今日何度目かの妖しく、清々しい笑み。 「ん?あぁ、財布ねぇ」 はい、と気軽に渡され、自分がレジへ行かなければいけないことを確信した。 「頑張ってぇ」 ヒラヒラと手を振ってみせる水銀燈に恨みがましい視線を送るが、水銀燈は気にしてないようで平気な顔をしている。 小さくため息をついて、セーラー服と手錠、財布を握ってレジへ向かう。 一定の距離を保ったまま後ろから着いてくる水銀燈を警戒しながらも焦る気持ちから足が早まる。 なんとかレジへ到着した時だった。予測通り水銀燈がスイッチを入れたらしい。 台にセーラー服と手錠を置いて片手で財布、片手で自分の体重を支える為に手をつく。 ピッピッと店員がバーコードを読み取る作業をボーッとした頭で見つめる。 「っ……」 時折、上がりそうな声を押さえるときに正気を取り戻す。 「6580円です」 店員が口にした数字通りにお金を出す。手が震えて硬貨が上手く掴めなかったがなんとか払う。 品物を袋に入れてもらって、水銀燈と一緒に覚束ない足取りで店を出る。 自動ドアをくぐると中のものがようやく振動を終えた。 同時にその場に腰をついてしまった。 「あらあらぁ、大丈夫ぅ?」 全く心配してなさそうな口調で問いかける水銀燈を真紅は睨み付ける。 「大丈夫って……貴女のせ、いっ……ひっ」 またスイッチが入ったらしく、振動が真紅を襲う。 「そんな事言える立場じゃないことを真紅は理解した方がいいわよぉ」 真紅を支えながら立たせてやると、スカートに着いた砂を払ってやる。 「今日はまだまだ長いんだからぁ」 至極、ご機嫌そうな水銀燈とは裏腹に真紅はこっそりと溜め息をついた。 「せっかく買ったものだし、使わなくちゃねぇ」 真紅の手から袋を奪うと水銀燈はさっさと歩き始める。 水銀燈の後ろ姿を見つめながら真紅は日付が変わるまでの時間を計算して、再び溜め息をついたのだった。 「……ひっ!」 「真紅、遅ぉい」 痺れを切らしたらしい水銀燈にスイッチを入れられ仕方なく水銀燈の元へ走り出した。 終わり 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/rozen-yuri/pages/250.html
『紅い嫉妬』 「水銀燈、ご本読んでほしいの」 水銀燈のドレスの裾を、ちょっぴり遠慮がちに引っ張って、雛苺は言った。その表情を一言で言えば無邪気、だった。 「はいはい。分かったわぁ」 水銀燈の表情は、普段と変わらずツン、としたものだが、決して雛苺を邪魔とは思っていない。そんな表情だった。 このような状態が始まったのは、今から一週間くらい前の事。巴の家に行こうとした雛苺が迷子になっていた時、水銀燈が桜田家まで無傷で運んでくれたのだ。しかも、雛苺が泣いている時にあやしてくれていたらしい。普段の彼女からは、想像も出来なかった。 それから、雛苺はすっかり水銀燈になついたのだった。 「何が良いのぉ?」 「んとねー…これが良い!」 こんな光景、誰が想像しただろうか。それほど、珍しい事だった。 最初は、水銀燈の作戦なのでは、と疑う者もいたが、今では誰一人疑う者もなく、その光景を見守っていた。 ――約一名を除いて。 「…………」 二人から、少し離れたソファに座る、紅いドレスに身を包んだ人形。手には分厚い本を持ち、その本に目を通しているのだろうと誰もが思う。だが、人形――真紅の視線は、和やかな雛苺と水銀燈に向けられていた。 「……………」 とんでもない不機嫌な表情で。 「……雛苺」 「なーに?真紅」 「紅茶を煎れて来なさい。…今すぐ」 「ふぇ?でも、今水銀燈にご本を……」 「いいから煎れて来なさいっ!!」 真紅自身さえも驚く、大きな声が響いた。 「…!!は、はいなのー!」 雛苺もかなり驚いていたようで、ビクリと体を震わせ、風の如く台所に向かった。 「……雛苺と喧嘩でもしたぁ?」 「……別に」 「……でも、貴方絶対怒ってるでしょぉ」 「……気のせいよ」 気のせい。その一言で切り捨てた。けれど、異常なのは自身も気付いていた。 何故か、雛苺が他の子と仲良くしているのが許せなかった。しかも、最近は水銀燈になついているので、怒りは増幅されていた。 「い、煎れてきたの!」 雛苺の本能が早く行かなければ、と告げているらしく、いつもより早くお茶は出された。 「……あの、真紅?」 恐る恐る、真紅の顔色を伺う雛苺。 何処か怯えている雛苺の考えとは裏腹に、真紅は優しい笑みと言葉を溢した。 「……ありがとう」 「……ふぇ?」 一瞬戸惑う雛苺だが、すぐに笑顔になり、えへへと笑った。 「水銀燈!ご本の続き読んでー!」 「え、えぇ」 水銀燈は心の中で溜め息を吐いた。この先、暫く耐えなければと思う。雛苺に嫉妬、水銀燈に敵意を向ける紅い人形の視線に。 end
https://w.atwiki.jp/orimoe801/pages/156.html
Top 創作物投下スレまとめ 1 1-091 「夜のひとコマ」 「夜のひとコマ」 作者:本スレ1-612様 91 :夜のひとコマ:2012/04/26(木) 04 10 28 投下します。 本スレ1-612(設定スレ1-011)の桃ノ瀬×アキトで エロ寸前gdgd短めネタ。攻め視点。 92 :夜のひとコマ:2012/04/26(木) 04 12 42 横の男が吸う煙草で、部屋が濁る。 照明を少し落とした部屋で四角いTVモニターだけが、ひとり気を吐いていた。 モニターの中では、くだらないTVショウの真っ最中で 司会ががなればそれに合わせた周りの馬鹿もゲラゲラ笑う。 ブハッと横の馬鹿も吹き出した。一段と部屋が濁った。 「全く、何が面白いんだか」 「そうっすか?」 灰皿の縁にあて灰を落とした煙草をくわえ直す。軽薄を絵に描いたような笑顔。あぁ、馬鹿がいる。 僕はもう一度指の腹で奴の手の甲を撫でた。 安物の眼鏡は振り向きもしない。…奴の象並であろう神経に恐れ入る。 こっちの気も知らずいい気なもんだ。 ベッドに腰掛けたまま、奴が悠々と吸う煙草の一本を待つのがどれほど辛いか。 ほんの数分間が嫌に長い。40手前の欲の溢れ方じゃないな。と、溜め息も出る。 されど数日間、会社に缶詰で溜まりに溜まったアレやソレが僕の下腹部でマグマの如く燃えているのだ。 覚悟しろ馬鹿。 憎き煙草が灰皿の中で小さく最後の声をあげた。 「アキ」呼ぶが早いか、相手の両肩に置いた手に力を入れ押し倒す。 「ちょっ…!もうですか?」 「何が?」 マウントポジションはとった。首筋を撫でながら、出来る限りすっとぼける。 「何って…。もっと、ムードを大事にする…とか?あるじゃないっすか」 馬鹿らしい、弱い反撃。 「いまさら?」 「ですよねー」 間の抜けたやり取りに、二人一緒に笑う。 「もういいだろ」 「そうですね」 眼鏡のフレーム同士がかちあわない様に、少しだけ注意しながらキスをした。 「ふへへっ」 奴はいつもこのタイミングで、照れたように変な声で笑う。 「…何が面白いんだか」 奴の長い髪を手遊びしながら耳元で囁いた。 すぐに「いや違うんですよー」から入り「キスが可愛い」だの「モモさんの優しさがくすぐったい」だの 聞く価値も無いような言い訳をしゃべり出す。 「ばーか」 面倒臭くなったので奴の弱点である耳たぶに歯を立て、黙らせる。 「ふあぁっ…!」 不意打ちに驚くかわいい声と、空気の読めないTVの馬鹿笑い。 自室のベッドで二人きりの時間だ。 画になる必要は無いだろう。 僕は眼鏡を外して、もう一度奴の唇に貪りついた。 【了】 ※続きは、創作物スレ 1-119へ ページ最上部へ
https://w.atwiki.jp/vice2rain/pages/228.html
仮想シンデレラ 1 「――シンデレラ、これも洗っておいてちょうだい」 「はぁい」 「このドレスの綻びを直しておいて。それから、ブルーのドレス。あれ、もう着ないから処分して。流行遅れだもの」 「はぁい」 「今日は熱いシチューが食べたいわ」 「はぁい」 洗濯かごを、左右の手にひとつずつ。シンデレラと呼ばれた少女は、洗い物が増えた事、姉のドレスがほつれている事と拝借できるドレスがひとつある事、それから夕飯にシチューを作る事を間延びした返事で記憶した。 少女はこの家の娘であるにもかかわらず、父の再婚者とその連れ子の二人の姉によって、家政婦のような生活を余議なくされていた。シンデレラ(はいかぶり)と呼ばれ、アレをしろ、コレをしろとありとあらゆる事を要求される。しかし、そんな事はどうでもいい。 少女は料理が好きだった。掃除も洗濯も裁縫も、少女は楽しんでやっていた。埃ひとつない綺麗な部屋に満足し、笑みを浮かべるのは、父が再婚する前から少女の日課だったのだから。母と二人の姉たちの横柄な物言いさえ割り切ることが出来れば、そこそこに充実した日々なのだ。 しかし、ひとつだけ。『シンデレラ』という呼ばれ方だけはどうにも、好きにはなれなかった。確かに、毎日掃除をしているからエプロンは汚れている。洗ってはいるが、もう落ちなくなっている汚れも少なくない。暖炉掃除をした時などは、その文字通りに灰をかぶる。しかし、何の捻りもないその呼び名はどうにも、好きになれなかった。 “薄墨”とか、“ネズミ”とか、“雨雲”とか、“灰”から連想できる名前は他にはなかったのかしら、と少女は三人の語彙の少なさに、はぁ、とひとつ溜め息を吐いた。 灰色は綺麗な色だし、ネズミも良く見れば可愛い顔をしている。雨雲は重苦しいが、雨が降った後の空気は清々しい。自分を貶めるための呼び名だということは分かっているが、しかしそんな直球では嘆けるものも嘆けない。いやな思いをさせるという目的だけは果たされているが。 毎日は穏やかだ。 良く分からないイベントさえなければ、とても穏やか。 その日の午後、お城からの使いだというひとりの男性が家を訪れた。招待状を、携えて。 何でも王子様の姫君を決めるパーティーを行うのだとか。ああ面倒くさい、と少女はそれを見て思った。 姫君なんて、近隣の国のお姫様の中から選べばいいのに。隣国なんて、確か女ばかりの5人姉妹だったはずだ。なのにどうして、王族でもない家の娘に招待状等持ってくるのか。 自分はともかく、母と姉たちがパーティーに行くという事は、毎日行っている家事に加えて母や姉たちを着飾らせるという大仕事をしなければいけないということだ。仕事増やしやがって、と少女は心中で毒づく。 「貴方も是非、パーティーにいらしてください」 穏やかな笑みを浮かべたお城からの使いは、そんなことを言い出した。なんということだ。 なんて、面倒な! 少女は口には出さず心の中でそう叫んだ。手のかかる子供がもうすでに三人も居るのだ。三人でもう手一杯なのだ。 なのに、その上自分の事までやれというのか! それに、もし過労で倒れでもしたら、一体誰が家事をするのだ。きっと誰もやらない。そうなれば家がすたれるだけだ。 少女は取り敢えず、その場で辞退を申し上げたのだった。 * 「出ればいいじゃないの」 断ったにも関わらず、まぁ考えてみてくださいなどと言われ、その事を姉に話してみたところ、何も問題はないでしょう、とさらりとした一言が返ってきた。 「お城からの招待を無碍にするなんて失礼だもの」 そう言って、にっこりとほほ笑んだ。きっと希望通りの美味しいシチューに満足しているのだろう。銀のスプーンを口に運びながら上機嫌でそう言った。少女の前に、皿はない。味見という名のつまみ食いで十分な量を食べているため、いつも夕飯のときにはものを食べないのだ。 姉の言葉に、少女は確かにそうかもしれないとふぅむと唸る。面倒だという理由だけでお城からの招待を無碍にするのは、確かに、少しばかり失礼にあたるかもしれない。 「でもまぁ、着ていけるドレスがあるなら、の話だけど」 もう一人の姉が、そう言ってくすくすと笑った。 ドレスはあるのだ。 処分しろと言われたドレスは、実は全部取ってあるのだから。それに、少女は裁縫が大の得意だった。流行遅れのドレスを丁寧に分解し、自分の体と流行にぴったりと合うように作り変えたドレスが、何着か手元にある。けれどそれはひとりの時にこっそりと楽しむためだけに作ったものだし、そもそも物を作りかえるという発想を持たない姉たちに見せたところで、作った事など信じては貰えないだろうと思い、誰にも見せてはいなかった。どこから盗んできたのかなどと言われたら、弁解が酷く億劫だ。 「そう、ですよねぇ」 着ていけるドレスがあるのなら、行くべきである。 少女は渋々ながら、パーティーに参加する事に決めた。ああ全く面倒くさいと呟き、溜め息を吐きながら。 2 パーティー当日。 少女は姉に呼ばれ、母に呼ばれ、もうひとりの姉に呼ばれ、また母に呼ばれ、家中を駆け回っていた。 新しいドレスがきついとか、ルビーのブローチは何処にあるのとか、もっと大きな羽飾りはないのとか、レースの手袋を持ってきてとか、このドレスにはどの靴が合うかしらとか、なんでパーティーなんてあるのかしらと思いながらも、少女は要望のひとつひとつに律儀に応えていった。 きついドレスは直し、ジュエリーボックスからルビーのブローチを探し出し、大きな羽飾りを在り合わせのもので作り、レースの手袋を引き出しの奥から引っ張り出し、ローズピンクのドレスには白地に薔薇の刺繍が施されたハイヒールを用意した。 「行ってきまぁーす」 「行ってらっしゃいませー……」 もうすでに疲労困憊である。しかし、これから自分の用意をしなければならないのだ。がんばれ自分、と少女は重い腰を上げた。 まずはシャワーを浴び、汗と埃を落とした。そして、手作りのドレスを着る。淡いブルーとオフホワイトで、レースとフリルをたっぷりと使った品の良い一着である。姉の化粧品を少しばかり拝借して化粧をし、長い金髪はくるりとひとつにまとめて櫛で固定した。この櫛も、処分してと言われたものだ。靴も、姉たちの履き古したものの中から選んだ。 きらきらと硝子のように光る美しい靴。ヒールにも小さな宝石が幾つか散りばめられており、細やかな細工が施された見事な靴だ。確かこれは、サイズが合わなくなって処分となったものだった。姉のお気に入りだったはずだが、何度も履かないうちに小さくなってしまったのだ。残念ですねとその時は言ったけれど、内心、儲け物だと思ったのは少女一人の秘密である。 さて、と少女は思案した。これで身繕いは完璧なのだが、馬車がない事に今更になって気がついた。 ……馬で良いか。 少女の思考は単純明快だ。 歩いて行くには、お城は遠い。馬は居る。それも、良く懐いた大人しい子。馬に付ける車はない。ないものは出せない。乗馬は出来る。幼い頃から動物との戯れが好きだったから。 そうなれば、選択肢などありはしない。 自ら馬に乗るだけである。幸い、少女は馬の世話も毎日欠かさずにやっている。馬だって身綺麗なのだ。どこかに引っ掛けたりさえしなければ、ドレスで乗っても問題はないだろう。 そうして、少女は物語の中の勇者よろしく、馬に乗って城へと向かったのだった。 * 「どうだ、素敵な娘は居るか?」 王子は父親――つまり国王の一言に対し酷く迷惑そうな表情を浮かべた。国中の娘を集めてのパーティーを行うなんて、この男は一体何をトチ狂っているのか。確かに、言った。早く結婚しろという父親に辟易し、この国で最も美しい娘ならば結婚しましょうと戯れ半分、断り半分でそう言った。しかしだからと言ってこの暴挙は何事だ。 「コンテストを開くのも案として出ていたのだが、やはり何を美しいとするかは個人によって異なるからな。しっかりと、自分の目で見極めると良い」 上機嫌でいう父親に、そういえばこの人は国王だったんだよなぁ、と諦め混じりの溜め息を吐く。正直、女は面倒くさいのだ。姉も妹もきゃあきゃあ煩いし、近隣諸国の姫君たちなど、化粧臭いわ香水臭いわ煩いわ。しかも自分の事すら自分で出来ないときている。そんな相手など求めてはいないのだ。どこかで張り合いの持てる相手でなければ詰らないではないか。それに、事あるごとに使用人を呼び付けるその姿はいっそ滑稽だ。雇用対策にはなるかもしれないが、決して、嫁に貰おうなどとは思えない。 しかし、これだけの盛大なパーティーを開いておきながら、やっぱり決められませんでしたゴメンナサイでは済まされないだろうということも分かっている王子は、もうひとつ、先程よりも長く深い溜め息を吐いた。 ならば、出来るだけ男友達のようにさっぱりと付き合える女性を探すまでである。さばさばとしていて、自分の事は自分で出来て、きゃあきゃあ甲高い声で騒がなくて、共に乗馬や狩りを楽しめる女性。いっそ、このパーティー自体を面倒だと思っているくらいの人だと理想的だ。 いないだろうなぁ、と呟いた。せめて最初の二つくらいはクリアしている人が良いなぁ、と王子は数段高くなっている自分の席から、集まった女性たちを眺めていた。 「……ん?」 「どうした?」 「……あの子」 指差したその先に居る、ひとりの少女。輝くばかりの美しい娘なのだが、先程から踊るでもなく、誰かと談笑するでもなく、壁際の椅子に座ってひたすらに御馳走を食べている。しかも、酷く退屈そうにして、早く終わればいいのにとでもいうような表情をしている。 澄まして立っていれば、どこの貴族かと噂にもなりそうなのに。 誰もが目を奪われるような可憐な美貌を持っているのに。 しかし良く見れば化粧も薄く、髪型も少々おざなりだ。羽や宝石の飾りでごてごての他の娘たちとは全然違う。 「ああ、あの娘か」 「はい。他の娘たちとはどうにも違うように見えたものですから」 その言葉に、父親はそうだなぁ、と答えた。 「あの娘、自分で馬に乗ってきたからなぁ、従者も何も付けずに。だから腹も減っているのだろう。 なかなか勇ましい娘だそうだぞ。門番が言っていたのだが、馬に乗り、乗馬鞭を振って『パーティーの会場はここですか』と、怖気づくこともなく聞いてきたらしい」 勇ましく乗馬のできる女の子! なかなかに興味深いぞ、と王子は使用人にオペラグラスを持ってこさせた。そして、その乗馬少女を観察する。 食事を終えたのか、少女は近くを通った使用人を呼びとめ、空になった皿を渡していた。そして、満腹だとでも言うように腹を撫で、椅子の背もたれにくたりと凭れる。しばらくぼぅっとしていたかと思えば、今度は欠伸。 明らかに、少女は異質だった。 「……彼女、面白いな」 「呼ぼうか? ここに」 「いえ、こちらから行きます」 立ち上がった王子の後ろ姿に、変わった娘が好みだったのか、と国王は少しばかりずれた感想を漏らしたのだった。 「――今晩は、レディ。パーティーは楽しんでいますか?」 唐突に、ひとりの男性から話しかけられた少女は、一瞬驚いたように目を見開き、二、三度ぱちぱちと瞬きをした。そして、困ったように少しだけ眉を寄せた。 「……今晩は。……あの、どこかでお会いしましたかしら? 申し訳ないのですが、ちょっと覚えがなくて……」 「……今日のパーティーの主旨は、ご存知ですか?」 少女はわずかに首を傾げ、「王子様のお嫁様探し」と答えた。それに、男性はにこりと笑って頷いた。 「よかった。食事会、とか言われたらどうしようかと思っていたんだ」 その言葉に、少女は再び首を傾げた。 「君の事気に入ったから、声を掛けに来たんだ。向こうで少し、お話しないかい?」 「……はぁ」 事態を上手く把握できていないまま、少女は男性に手を引かれ、別室へと連れて行かれた。 『どこかでお会いしましたかしら? 申し訳ないのですが、ちょっと覚えがなくて……』 少女の台詞に、王子は感動すら覚えていた。 パーティーの主旨は辛うじて理解していたようだが、その主役の顔すら知らずに来ていたとは! 何とも面白い娘だ! 緩みそうになる頬を何とか抑えつつ、王子は少女の手を引いて別室へと移動した。気に入った娘が居た時、ゆっくりと話が出来るように、と国王が気を利かせて造らせた個室である。ブラウンとオフホワイトを基調に、ワインレッドやゴールドの小物を配した豪奢な、けれど落ち着いた部屋である。 「……ここは?」 「王子と姫君候補の面談室」 「王子様は、どちらに居らっしゃるのですか?」 「ここに」 「……貴方が?」 嘘でしょとでも言うように、少女は眉間に皺を寄せ、王子を凝視した。そして、にっこりと笑む王子に対しまた、嘘でしょとでも言うように首を振った。 「信じられないわ。だって、王子様が私を選ぶはずなんてないもの。選ばれるような事してないもの。それに、美しい人はいくらでも居たでしょう?」 それに、ここにだって正直来たくなかったのに。面倒だったから。 「僕は美しい人なんて求めてないんだよね。僕はね、さばさばとしていて、自分の事は自分で出来て、きゃあきゃあ甲高い声で騒がなくて、共に乗馬や狩りを楽しめる女性が良いなって思っていたんだから。君、結構それに当てはまりそうな感じだったからさ」 「あら、まぁ」 なんて面白い人なのかしら、と少女は呟いた。 「君さ、乗馬とか好き?」 「それはもう。あ、でも血は見たくないから狩りはしないわ」 「出来れば自分の事は自分で出来る子がいいなと思っているんだけど。どう?」 「まぁ、出来る方ではないかしら。家事とか、結構好きよ」 「そう、良かった。あと、きゃあきゃあ騒がしい女は好きではないんだけど、君はそうでもなさそうだよね」 「そうね。あまり騒いだら疲れてしまうじゃない」 「……疲れる、ねぇ」 「だってやる事がたくさんあるんだもの。お掃除にお料理、お洋服がほつれたら繕うのも私。母さまや姉さまはアレもコレもと煩いし。いちいち騒いでいたら何も終わらないし、疲れるだけだし。何の意味もないわ」 「嫌ではないの? その生活」 「嫌ではないわ。基本的に家事は好きなのよ。小煩い人たちがいなければ楽にはなるだろうなとは思うけれど」 くすくすと楽しげな声を漏らしながら受けこたえるそのさまはとても可憐で、とても優雅だった。乗馬してパーティーに来るような突拍子もない事をする娘だが、きっと育ちは良いのだろう。もしかしたら、もとは貴族の出なのかもしれない。家では使用人のような生活をしているようだが、ドレスを綺麗に着こなす事も、軽やかに乗馬をする事も、そうでなければなかなかできない事だろう。それに、所作のひとつひとつに品を感じる。にじみ出るような品の良さは、付け焼刃では身に付かない。身に染みついたものだから自然に出すことが出来るのだ。 この人なら、愛することが出来るかもしれない。もちろん、今はまだ愛してなどいない。出会ったばかりなのだから当然だ。しかし、この少女は理想としていた条件にぴったりと当てはまる。しかも美しく、品の良い女性だ。求めていた以上に素晴らしい女性。きっと、彼女以上の人とはもう出会う事は出来ないだろう。 「決めた」 王子はとても楽しそうに、嬉しそうにぱん、と手を叩いて少女に向き直った。 「君さえよければ、僕と結婚してくれないかい?」 「お断りするわ」 にっこりと、少女は辞退した。 「私は別に貴方の事を愛している訳じゃないもの。それに、貴方と結婚なんかしたら母や姉の面倒は一体誰が見ると言うの? 他に使用人を雇ったとしても、あの我儘娘たちを御す事は難しいわよ? それにね、私はもともとこのパーティー自体を面倒だと思っていたの。参加するつもりなんて、さらさらなかったの。これっぽっちもなかったの。姉さまに言われて仕方なく、ここに来ているのだもの。きっと私以外の子の方が貴方のことを想っているだろうし、貴方も自分を想ってくれる人が相手の方が幸せなんじゃないかしら」 「それは困った。僕は別に愛してくれる人とか想ってくれる人を求めている訳じゃないんだよね。それに、他の人は大体が玉の輿狙いの守銭奴たちさ。金と名誉しか求めてないんだから。家族が心配ならうちの優秀な使用人をやるから、その辺は安心してよ。確かにこのパーティーは一応嫁探しなんて名目で開かれているし僕以外はそういう心積もりなんだろうけど、僕としては友達探しっていう感覚の方が強いんだよね。さっぱりすっきり付き合える、一緒に居て楽しいと思えるような友人。化粧と香水の悪臭を撒き散らしながら何も出来ないくせに威張って使用人にアレもコレもと要求しているような女を友人になんてしたくはないんだ。見ていてイライラするような奴なんて、傍に居て欲しくないだろ? その点、君は僕の理想とする友人像にぴったりと当てはまる。君以外の女性なんて考えられないんだけどね」 「――分かった」 少女は意外と押しの強い王子の言葉にこくりと頷く。そして、前向きに検討してみるわ、とほほ笑んだ。 「でも少し、考える時間が欲しいわ。だから、そうね……」 呟いて、少女は美しい靴を脱ぎ、その片方を王子に渡した。 「私を探し出して見せて。片方ずつの靴を持って、これを合わせる事が出来たら、そしたら、ちゃんと返事をするわ」 「分かった」 王子は硝子のように輝く靴を、片方だけ受けとった。そして、君は何を穿いて家に帰るの? と少女に声を掛けた。 「馬小屋に乗馬用のブーツを置いてあるの」 じゃあね、明日の料理の準備をしなくちゃならないから、と少女は笑ってお城を後にした。 時刻はちょうど十二時。 どこかで、鐘の音が高らかに響いていた。 3 あの王子と結婚をしたら。そしたら、私はどうなるのかしら。 少女はキャベツを刻みながら様々な事を考えていた。結婚をしたら、きっと料理も裁縫も私以外の誰かがやるのよね。させてはもらえないのかしら。ああ、でも王子は友人を探していると言っていたし、いくらかは自由にさせてもらえるかしら。お掃除とかもやらせてもらえると嬉しいのだけど。 切った野菜たちを鍋に入れ、煮立たせる。 「……もう少しお塩を入れた方がいいかしら」 味見をし、呟いた。今日の夕食はポトフとチキンのソテー、それからサラダにクロワッサン。バターをたっぷり使って焼き上げたクロワッサンはさくさくふわふわで、味見をしているうちに三つも消費してしまった。もうお腹はいっぱいだ。 少女は何が最善の選択かしら、と小さく唸る。正直なところ、結婚をしたとしても彼を愛することが出来るのかどうかはまだ分からなかった。しかし、良い友人にはなれそうだと、共に乗馬を楽しめる友人が出来るのはとても良いかもしれないと、なんとなく気持ちは揺れ動く。 「……取り敢えず、ご飯だわ」 ポトフもチキンのソテーもサラダもクロワッサンも、どれもとても良い出来だ。今日の料理もしっかりと楽しみ、少女はそれぞれの料理を美しく皿に盛り付けた。 * 「こちらに、この靴の片方を持った方はいらっしゃいませんか?」 王子は各国を回り、靴の持ち主を探していた。しかし、なかなか見つからない。あれから、もう一カ月が経過している。 何かヒントはないかと考えつつ、彼女の言葉に訛りはなかったため、地方は除外し、捜索範囲を狭める。取り敢えず、名前を聞いて置くべきだった、と初歩的なミスに溜め息を吐く。 「……思いの他近場だったりして」 地面に座り込み、呟いた。そしてもう一度溜め息を吐く。 「あら王子様、いらっしゃい」 「……え?」 顔を上げると、そこには探し求めていた一人の少女。 「思ったより、遅かったわねぇ」 「えぇー……」 両手に洗濯かごを持ち、三角巾にエプロン。零れた一房の髪が、太陽に照らされて金色に輝いている。汚れたエプロン姿も麗しい。ああ、一ケ月にも及ぶ苦労の為か、初めて出会った時より何倍も美しく思えるよ。 「洗濯中?」 「ええ。今日は天気が良いから」 絶好のお洗濯日和よ、と少女は満面の笑みを浮かべた。どうやらここは彼女の家の土地らしい。知らないうちに入り込んでしまっていたのか。 「ねぇ、今さら何だけどさあ」 「どうかしました?」 王子は眉を寄せ、少し困ったように笑って見せた。 「名前、教えてよ」 * 「靴は持って来てくれた?」 「もちろん」 少女はくすくすと楽しげに笑いながら、貸して、と手を伸ばした。手渡された靴は相変わらず硝子のような輝きを放っていて、少女は、やっぱりいつ見ても美しいわ、と呟いた。 「私ね、ここではもうずぅーっと、『シンデレラ』って呼ばれているの。本当の名前は、忘れちゃったわ」 片方ずつの靴を揃えると、少女は汚れたエプロンと三角巾を外し、小さな足をそっと靴の中に収める。品良く散りばめられた幾つかの宝石が、きらきらと瞬いた。 「とても美しい名前だったような気もするのだけど、どうしてかしら、思い出せないのよね」 だから名前を教えてほしいと言われても教える事が出来ないのよね、と少女は笑った。 「名前を貰えるなら、貴方と結婚しても良いかなって、思ってる」 どうかしら? と少女は王子を見て笑った。王子は、静かに頷き、ほほ笑んだ。 「今まで、人にも物にも名前なんかつけた事はないから、僕のネーミングセンスには期待しないで欲しいのだけど」 呟き、王子は続けた。 「それでもいいなら、僕と結婚してほしいな」 「『シンデレラ』以外なら何でもいいわ」 互いに顔を見合わせ、にやりと口角を上げる。そして、二人は強く、握手した。 4 その一・炊事、洗濯など家事をさせてくれる事。 その二・共に乗馬などを楽しむ事。 その三・馬の世話をさせてくれる事。 その四・母、姉たちの面倒を見れる使用人を用意する事。 その五・新しい名前を付けてくれる事。 少女が結婚の条件として提示したものは、なんとも、一般家庭の男性が喜びそうな内容だった。王子もすんなりと承諾、問題と思われた母親と二人の姉も、どうにかこうにか宥めすかしてあやして結婚を承諾させた。 「べ、別に寂しくなんかないんだからねっ!」 「あんたを選ぶなんて絶対どこか可笑しいわ。なんなら結婚止めて家に居たっていいのよ?」 「シンデレラが居なくなるのは清々するけど、王子と結婚っていうのは気に食わない! いつでも離婚して戻ってくると良いわ」 揃いも揃ってハンカチで目元を押さえ、子供のように頬を膨らまし、王子を睨みつけるその様は実に微笑ましい。少女が『三人娘』と称するそれは、実に言いえて妙というか、絶妙だった。 斯くして、少女は王子と結婚しお姫様になり、王子は良い友人と良い妻を手に入れた。母親と二人の姉はしばらくの間ぐずぐずといじけていたが、それは三人だけの秘密である。 * 「ねえ、いつになったら名前くれるのよ! ねえ!」 「ちょっと待って、今考えてるから」 何かぶつぶつと呟きながら、王子は手元の本にかじりついていた。王子の手元と周囲には、名付けの為の沢山の本。少女も、遅い、早くしてと急かしながらも、とても楽しそうに微笑んでいた。 少女と王子は、いつもでも、幸せに暮らしましたとさ。 おしまい