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作詞:Henry 作曲:Henry 編曲:Henry 歌:巡音ルカ 翻譯:yanao 基於相互尊重,請取用翻譯者不要改動我的翻譯,感謝 那時的氣息 在看見你的那天 世界開始發出了光輝 好棒啊,好美麗啊 夕陽看起來就像是在笑著呢 說著那些不可思議事情的你 寵溺著我 「待在我身旁吧」 在理所當然地前進的日子當中 消失了的那份心情 當再一次想起的時候 你已經不在身旁了 不安的世界 孤單的天空 雖然有些甜有些哀愁 啊啊 說不定那也不錯呢 這樣就好了 那時的氣息飄散四周 如果能在森林的小房子裡 兩個人一起生活就好了呢 和小貓說著話的你 讓時間停了下來 手牽手漫步著 悄悄的試著去想起 你是多麼的美好 溫柔與強大的魔法 在我們走上了不同的道路之後 你的側臉 那彷彿遙遠的幻影 留下光芒後便消失在天空的盡頭 在內心的 桃花源中綻放的你 一直都戴著笑容 靜靜地被風吹著 就算時間經過 就算曾一同歡笑的兩人的日子被風改變 我將向前走去 一定會在遙遠的城市中 想著那天的你的 一道光寂寥地射下 這樣就好了 那時的氣息飄散四周
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今日 - 昨日 - 総合 - 検索 メニュー トップページ メニュー 本編 本編SS目次・時系列順【オープニング】 【1日目】 【2日目】 本編SS目次・投下順【OP~000】 【001~050】 【051~100】 【101~150】 追跡表 詳細追跡表 書き手別SS一覧 情報 参加者名簿参加者一覧(画像) ルール マップ 現在位置 よくわかる相関図(未完成) 脱落者情報 資料室 登場話候補作 クラス別一覧(剣) クラス別一覧(弓) クラス別一覧(槍) クラス別一覧(騎) クラス別一覧(魔) クラス別一覧(暗) クラス別一覧(狂) クラス別一覧(異) リンク 少女性、少女製、少女聖杯戦争 二章(現行スレ) 俺ロワ・トキワ荘 2chパロロワ事典@wiki 更新履歴 取得中です。 ここを編集
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コール・マイ・ネーム.コール・ユア・ネーム -なまえをよんで- ◆EAUCq9p8Q. ☆??? 投げられた祝砲は二度目よりも更に多い。 とはいえ心を持たぬ者の投げたもの。しかも考えなしな号令でほとんど隊列を整えることもなく投げられたものだ。 いくつかは祝砲同士でぶつかり、いくつかは見当違いの方向に飛んでいき。 だが、そのうちのいくつかは確かに白坂小梅ぶつかる軌道で飛んでいった。 そしてそんな『白坂小梅にぶつかるもの』を叩き落とした者が居た。 「……アナタ、なんのつもり?」 女王の口元が歪む。狂った笑いの中で命のやり取りをくりかえし、ここにきてようやく笑顔が崩れる。 アリスと、彼女のオトモダチに真っ向から立ち向かう影が一つ。 それは紛れもなく、アリスが死霊術によって作り出したゾンビ……ゾンビーケンペイの一体であった。 「もう、勝手なことしないで!」 勝利の愉悦の中に居たはずのアリスの胸にあったのは、意外にも苛立ちだった。 思い通りにならないゾンビ相手に苛立ち、ほんの少しだけ小梅とジェノサイドから注意をそらす。 命令してもゾンビーケンペイは動かない。ただ、抜き払った軍刀を引きずるように構え、アリスに睨みを利かせるように立ったままだ。 アリスの頭ではそのイレギュラーを処理できない。アリスにとってオトモダチとは、呼び方はどうあれただの手駒だからだ。 その内側に何が詰まっているかなんて、まったく興味がない。 だからアリスは気づかない。 そのゾンビが、しきりに白坂小梅の閉じ込められた水槽に体当たりをしていた―――否、白坂小梅を救うために水槽を壊そうとしていた個体であるとは。 ジェノサイドへの祝砲の際に他のゾンビたちが『死なばもろとも』を繰り出す瞬間に命令に反するように踏みとどまっていたとは。 アリスが手を上げれば、その他大勢のオトモダチがゾンビーケンペイに向けて距離を詰め始める。 しかしゾンビーケンペイは一歩も引かない。ただ、小梅とジェノサイドを守るように、立ちはだかり続けた。 アリスが大きく手を振る。それを合図に、ゾンビーケンペイめがけてオトモダチが殺到した。 何本もの槍と、斧と、剣をその身に突き立てられ、それでもゾンビーケンペイは踏みとどまっていた。 女王様の愉快なパレードがまた止まり、空白の時間が数秒生まれる。 空白の中で、ゾンビーケンペイはゆっくりと、小梅たちの方に振り返った。 「■■■■」 識別不明の声。 腐った脳みそにちぎれかけの喉、崩れた顔ではうまく発音出来るわけがない。 それでも、その死体は、ねじ切れそうなほどに頭をまわして、遠くでサーヴァントの元で横たわる白坂小梅を見つめたまま、呻くように言葉を綴った。 死者にも分け隔てなく接してくれる優しい子。自分を傍においてくれていた優しい子。自分を友達と呼んでくれた唯一の子。 できれば、ずっとそばにいて、その幸せな姿をいつまでも見ていたかった。 それが叶わないことを理解し、最期にその姿を目に焼き付けておく。 「■りが■う」 初めて声に出して告げることの出来た言葉。聞こえてなくても、それでいい。 群がる兵たちを巻き込んで、肉体を爆薬代わりに大爆発を起こす。 『死なばもろとも』。ダメージが許容量を超えた瞬間に発動する、ゾンビーケンペイの持つ唯一のスキル。アリスも利用したスキルだ。 爆発が爆発を誘い、群がっていたゾンビたちが誘爆しつづけ、爆発に巻き込まれたオトモダチたちが消滅していく。 立ち上がった土煙が、アリスの視界を遮り、再びオトモダチの指揮を止めた。 ――― NPCに魂はあるのか。 そんなことは分からない。 だが、魂あるものがマスターたちの記憶や情報を元にNPCとして再構築され、配置されるというのはもはや説明するまでもないだろう。 そこに肉体は必要か。 答えは否である。でなければ、マスターの一人・玲がこの世界に存在することを許されるはずがない。 ならば、例えば。 肉体を持たない魂のみの存在―――俗に言う『幽霊』がNPCとして再現されていたとして。 白坂小梅の傍で、アイドルになる前から彼女を見つめてきた、彼女の親友とも呼ぶべき存在がNPCとして再現されていたとして。 それが魂の抜け落ちたNPC―――アリスの死霊術で魂を失ったゾンビと出会ったとするならば。 ここは天国に一番近い地獄。誰かの目指した楽園の欠片。 そんな世界は、ささやかな奇跡を肯定する。 世界は、無力だった小梅の友達に、小梅を守る力を与えた。 ――― これもまた、ありふれた奇跡の物語。 ジェノサイドにつきっきりの白坂小梅はその名も無きゾンビの奮闘など、気づきもしないだろう。 魂を失ったNPCの体に乗り移った魂だけのNPC。本当の姿も、本当の名も、誰も知らない。 ただ、そのNPCは、ようやく白坂小梅の友人として、少しの間だけ彼女を守ることが出来た。 そして、白坂小梅の友情は、巡り巡って『何か』をなし得る因果を得た。 生まれた時間はごくわずか。 だがその時間で確かに、白坂小梅の『声』は届いた。 一画、二画、三画、ゾンビたちの爆発音を背に、三つ分の願いが小梅とジェノサイドの間で交わされる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 六枚の■■■■を■■ニンジャ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 雨の■。 見慣れぬ■■。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ■■■コギ■■■■。 オ■■ン。 スモウ■■。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 謎の■■■。 見上げる■■の■。 引きつるような笑い声。 ■■■■■で書かれた文字。 その文字は…… その文字は…… その、文字、は――― ―――思い出せない。 大切だったのだろうか。 重要だったのだろうか。 今となっては詮無きことだ。 すべてが、抜け落ちてしまった。 焼け落ちたアルバム。 朽ち果てたフィルム。 そんな切れっ端の何もない世界に、その死体は横たわっていた。 「アバー」 ため息のように呻く。呻くようにため息をこぼす。 すっからかんの心の中に、乾いた風が吹き抜ける。 もう、何も残っていなかった。 「……なあ」 それでも、何故か、言葉にできない乾きが、心に去来した。 潤いのない体が、腐臭に塗れた肉が、満たされることを望んでいた。 その渇望は、冷え切った体の芯で、ぢりぢりと燻るように横たわり続けていた。 「アンタ……サケを、持っちゃいねえか」 ただ、乾きを満たしたくて、目の前の少女に尋ねる。 随分近い位置に居る少女は、やや驚いたような顔で死体を見つめ返している。 「何でも良いんだ。アルコールなら」 少女はあわてて前ポケットを探り、小さな酒を取り出した。 ずぶ濡れのワンカップ瓶が二つ。微々たる量だ。渇きを満たすには到底足りない。 少女を抱きかかえたまま体を起こし、ワンカップをひとつ開け、飲み干す。 何故目覚めたのか、その理由を探りながら。 確か……声だ。そうだ、声が聞こえた。 声が、千切れ飛んだはずの耳朶を打った。破れ放題のはずの鼓膜を震わせた。 二つ、三つと消えていった魔力。ちっぽけな命の力。それに合わせてかけられた願い。 「おもいだして」 「わすれないで」 「そして、いつかまた、なまえをよんで」と。 そしてその願いは、たしかに、死体の奥底の何かに触れた。そのはずだ。 その声の主は、きっとこの少女。 不思議と、自分のことすら分からないのに、彼女の願いの意味が理解できる。 名前。 知っている。 こいつの名は。 俺の名は。 思い出せない。 知っていたはず。 名前。 名前は。 彼女の望む答えらしきものが、遺伝子の内側から雄叫びを上げるように、崩れたはずの脳に信号を送る。 だが、その咆哮もまだ殻を突き破るには至らない。 もう一つのサケの蓋を開ける。涙ほどの量のアルコールを飲み下し、あばらの下から垂れ流す。 少女は再び死体の身体を抱きしめた。 腐った体液が少女の服を汚していくのが、死んでいるはずの触覚でもしっかり理解できた。 「……離れろ。臭えだろ」 死体にはもう臭いを嗅げる鼻がない。それでも、腐り落ちた肉とガスが放つ腐臭は容易に想像ができた。 少女は首を振り、呟いた。 「臭くないよ」 そんなはずがないのに、嘘の下手な奴だ。 「汚れる」 「気にしない、から……」 喉をすり抜けた酒があばらを伝って体の外にこぼれ、地面にヘドロめいた水たまりを作り、太陽に照らされて小さな鏡を生み出した。 映っていたのは、世にも恐ろしい化物の姿だ。変色した骨にまばらに腐肉が照らされた、墓場の地下で寝かせすぎた死体そっくりの醜悪な姿。陳腐なゾンビ、その成れの果て。 包帯でも、カソックコートでも、帽子でも、もう隠せない。目をそらせない現実。 「俺は……俺は、酷い姿だな」 「……そんなことないよ」 それでも、少女は否定する。 いや、否定せずに受け入れてくれる。 こんな化物を。世にも醜い化け物であるはずの死体を。まるで友人のように抱きとめてくれる。 「バーサーカーさんは……ううん、ジェノサイドさんは、ジェノサイドさんだから。 だから、大丈夫……わ、私、ジェノサイドさんのこと、ちゃんと知ってるから……」 波紋が広がるように、少女の言葉が全身に渡った。 波紋が漣に変わり、漣は勢いをつけ津波に変わり、男の中で渦巻いて、感情に波乱を巻き起こす。 「……俺は」 「うん」 「そうか、俺は」 思い出した。いや、取り戻した。 どうして忘れていた。どうして手放して横たわっていた。 ここにいる意味を、やるべきことを。その名を。自身の名を。 その魂に刻まれたその衝動を。ミンチョ体の掛け軸に書かれたその四文字を。 『ゼツメツ』 一瞬にしてすべてを取り戻す。 なくしたはずの何かが満ちていき、体に歓喜にも似た感覚が迸った。 ニューロンが火花を散らす程のパルスを伝達し、体の中心に存在している『魂』を五臓六腑の奥底まで、まばらに残った髪の先から割れっぱなしの爪の先まで浸透させた。 その魂の名は、『ゼツメツ・ニンジャ』。 「俺は……そうだ、俺は!!」 乾ききったニューロンに落とされた一滴の雫は、どんなサケよりも、彼の乾きを潤した。 戻る。戻る。いや、戻れ。戻ってこい。俺のもとへ。この俺の、ゼツメツの名を持つ者のもとへ! 渇望が胸の内で吠え、失ったピースを無理矢理に手繰り寄せる。 たった三画の魔力が、ちっぽけな少女の願いが、ニューロンとともに腐り落ちていくはずの何かをもう一度震わせる。 そしてたどり着いた。 彼の名は。 いや。 俺の名は―――! ◆◆◆◆◆◆◆ 「……なあ、おい。サケはまだあるか」 「……あの、ごめんね。もう……ないの」 「そうか。ああ、そうだったな……まあ、いい」 切れたはずの糸は繋がった。男はゆっくりと、比較的損傷の少ない右腕で少女を抱きとめたまま立ち上がった。 「帰りに買いに行けばいいだけだ。あの餓鬼を蹴り飛ばして、この世界をぶち壊したその後で……そうだろ、コウメ」 死体が……否、『ジェノサイド』が呼ぶ。 まるで何事もなかったかのように、当然のように、その名を口にする。 腐り落ち、飛び散った脳からは、きっとその記憶は零れ落ちていた。 傷つき、ぼろぼろになった霊格からも、きっとその情報は抹消されていた。 だが再びその名は呼ばれた。いや、その名は取り戻された。 それは本来ならばありえるはずのない反射的反応。 ならば令呪の見せた呪いめいた強制力のせいであろうか。ジェノサイドに対し、「名前を呼べ」という命令が無理矢理に名前を口にさせたのか。 否、そんなわけがない。彼の執念と彼女の願いが、そんな陳腐な結末にたどり着く訳がない。 ニンジャのニューロンは時折、不可思議な反応を示す。 遺伝子レベルで刻まれた『自我』や『存在』すら超越する何かが、時折、条件反射めいて飛び出させるのだ。 六枚の羽を持つニンジャ。名も知らぬはずの神父の姿。トビッコ・ギムレットの香り。 忘れても、忘れても、忘れても。忘れられぬもの。脳が散り散りになったとしても、他ならぬ魂が忘れることを拒むもの。 人はそれを、きっと『絆』と呼んだのだろう。 令呪の魔力はジェノサイドの肉体をほんの少しだけ修復し、魔力の海に消えていくはずの『絆』にそっと語りかけた。ただそれだけにすぎない。 忘れていくことしか出来ない男が居た。 忘れられていくことしか出来ない者たちを覚えていられる少女が居た。 男はずっと、自分の生きている意味を探し。 少女はずっと、彼らの生きていた証を残す。 男は名を名乗り、少女はその名を呼んだ。 少女は男に願い、男はその名を呼んだ。 これは、そこから再び始まる物語。 ◆コール・マイ・ネーム.コール・ユア・ネーム◆ ◆◆◆◆◆◆◆ 小梅とジェノサイド、二人の時間に乱入者が現れる。 それは足並みをそろえて壁のようにそびえ立つ人垣。この遊園地の主の意思に従うものたち。 その壁の向こうに、少女がいる。血煙に燻されてなお真昼のような輝きを放っていたはずの笑顔は影が差している。 ここまで散々に弄ばれ、ようやく『思い通りにならない事が起こった』らしい。 少女は不機嫌そうに手を振るい、ガチャガチャと歯を鳴らすトラバサミをジェノサイドと小梅めがけていくつも走らせた。 だが、ジェノサイドも小梅もそのトラバサミを避けることはなかった。ジェノサイドが真正面から拳ですべて掴み、そのまま握りつぶしたからだ。 「散々騒いでおいて、まだ黙って聞いてられねえか」 「つまんなーい! せっかく、オトモダチになれたと思ったのに! ズルはなしでしょ!」 「……つまらなくなんてねえさ」 帽子の鍔が目元を隠す。包帯もほとんど吹き飛んだ顔に影を落とす。 腐肉がはじけ飛び骨がまろびだし、肉の残る場所も大部分がこけおちた、世にも醜い死者の顔。 それでも、足りない肉を補うように、異界の太陽に照らされた半円のつばの影が笑みを作っていた。 「てめェのごっこ遊びのほうが、俺には、退屈すぎて反吐が出る。つくづくムカつくぜ、てめェは」 破れ放題の帽子の奥で人ならざる緑色の瞳が輝く。 生きる意味を、生きてきた理由を取り戻し、死体に再びソウルが篭る。小さいながら強い火が。 それは、ゼツメツ・ニンジャだけではない。ゼツメツ・ニンジャと、ゼツメツ・ニンジャに宿られた◆◆◆と、その混合物であるジェノサイドの魂。その輝き。 三者がそれぞれ掴み取った、白坂小梅との『絆』の輝き。 「湿っぽいのは似合わねェ。結局俺にはこれしかない」 人垣がざっと音を立てて一歩進み出る。 手に取ったバズソーの鎖は、まるで体の一部のように馴染んでいた。 「よくも好き勝手やりやがったな。死にたい奴から前に出ろ」 今のジェノサイドは傍から見てもわかるほどに活力に溢れている。この遊園地に踏み込む前よりも強く、輝くほどに力強く。 それになにを感じたのか、なにも感じていないのか、アリスは動き出す。やや不機嫌そうな顔のままそのジェノサイドを睨めつけていた。 「仕切り直しだ、死に損ない――いや、死神にまで嫌われたバケモノめ。ドーモ、アリス=サン」 アイサツを聞き届けることなくアリスが飛び上がり、トランプを空中に放つ。 その一枚一枚が魔力のこもったアリスの分身となるはずの種。 しかし、分身が生まれるよりも早く動くものがあった。 「俺は―――」 構え。 「ゾンビーで」 担ぎ。 「ニンジャで」 振り。 「そして、サーヴァントの」 放つ。 「ジェノサイドだ!!!」 吠えた名が遊園地に轟く。ニンジャ・ジェノサイドここにありと遊園地内のすべてに告げる。 一対のバズソーが鈍色の閃光となって空を駆け、そのけたたましい羽音がセンチメントなアトモスフィアを切り裂く。 そして、絶滅へと誘うニンジャの鬨の声は、トランプを全て切り払い、決死の中に活路を生み出す。 不死者たちの殺し合いの、最期の幕が切って落とされた。 ◇◇◇ アリスの群れへと変貌するはずのトランプは全て空中で真っ二つに切り裂かれた。 ついでとばかりに切り裂かれたアリスの体が爆発し、体の内側に入っていたたくさんのトランプを空中にばらまいた。 トランプのうちのいくつかがアリスに変わり、空から降りそそぐアリスがオトモダチの軍隊と合流し、取り囲む人垣を更に強固にする。 「さあ、皆! 最期のゲームをしましょう!」 「最期のゲームは、早い者勝ちよ!」 「シラサカコウメちゃんとお兄ちゃんを殺した人の勝ち! よーいドン!」 女王の大合唱に、一斉に兵隊たちが動き出す。 小梅たちを殺そうと距離を詰めるもの。迎え撃とうと陣形を組むもの。錯乱を狙いてんでばらばらに動くもの。 その中の一団は先程の焼き直しのようにゾンビーを切り捨て、次々『死なばもろとも』爆弾として放り投げていた。 「先に断っとくが」 つい先程は死亡寸前まで追い詰められたゾンビ爆弾戦法だが、ジェノサイドは既にその戦法に対応していた。 アリスの種を切り裂くために放たれたバズソーの波打つ鎖が、ゾンビ爆弾の山を見事にかき分け跳ね飛ばす。 見当違いの方向に軌道を変えたゾンビ爆弾は、明後日の方向に飛んでいき、そのうちいくつかはあろうことかオトモダチのど真ん中に落ちて周囲を巻き込んで大爆発した。 何人ものアリスの悲鳴を聞きながら、ジェノサイドは続ける。 「俺は念仏も唱えられねェし、あいつらの目を覚ます方法なんて知りもしねェ。 俺に出来るのは、せいぜいぶったぎって、さっさとあのクソッタレから解放してやることくらいだ」 「……うん。お願い」 短い間を置いて、小梅が答える。 周りにはもう、小梅が可哀想だと思い救いたいと願った『あの』ゾンビは居なかった。きっと、アリスの指示で『あの』ゾンビも自爆をしてしまったのだろう。 その事実が、小梅の中での分岐点となった。 小梅も、覚悟を決めた。ようやくながら、アリスと友達になれるという淡い期待を捨て、アリスという怪物と戦う覚悟を決めた。 アリスは絶対に自身の『オトモダチ』を手放すことはない。彼らは望む望まないにかかわらず、『怪物』として生き、『怪物』として死んでいくしかない運命だと理解した。 遅すぎる決断に、遅すぎる理解だ。だが、きっとまだ手遅れではない。 目の前に広がる壁と見まごうほどの大きな背中。数分前とは打って変わって、活力に満ちた頼もしい背中。 その背中が小梅を導いてくれる限り、手遅れなんてないのだと思えた。 「……ごめんね」 小さな謝罪があてもなく飛んでいく。それはきっと、この場にいる全員に向けた言葉。 助けたいものを助けられない悲痛、無念、少女が背負うにはあまりにも重い思いの込められた謝罪だった。 聞き届けるものはジェノサイド以外にもう誰もいない。当然だ。初めからずっと、ここに居たのは、ほぼ全員が『怪物』だったのだから。 白坂小梅は、ジェノサイドとともに『怪物』に立ち向かう。 ◆◆◆◆◆◆◆ 掻き分けたゾンビ爆弾が散り散りばらばらの位置で爆発し、オトモダチたちが少し減る。 それでも人の波は絶えない。足音を合わせながら漣めいて押し寄せてくる。 ならばどうするか。 知れたことだ。 敵の生み出せる許容量、その限界まで殺し尽くす。 ジェノサイドの前に立ち塞がる物の未来はゼツメツ以外にありはしない。 「コウメ、しっかり掴まってろよ」 「う、うん……!」 小梅がジェノサイドのズタボロのカソックに抱きつく。それが、大虐殺開始の合図だ。 「イヤ―――――――ッ!」 ぐるんと巨体が一回転した。合わせて回るバズソーで、数十体の『オトモダチ』がその身を斬られ倒れ伏す。 敵もさるもの、反応の追いついたものは跳び、しゃがみ、それぞれ避けるがそれでも遅い。 まるで紫電か、竜巻か、縦横無尽駆け回るバズソーが回避に先回りしてすべてのオトモダチを切り刻んでいく。 バズソーと鎖をかいくぐり、踏み込んで来たものが居た。トランプ兵の槍を持ったアリスだった。 ジェノサイドと小梅をあわせて貫こうとする槍を、ニンジャの超反応で察し、拳で弾き、ついでにアリスの頭を握りつぶす。 ぽふんと音を立てて消えたアリスの槍を手に、次々殺到してくるオトモダチをひとまとめに首を刎ね、様々なパーツごとに分割する。 「やっちゃえ!」「そこだー!」「いけいけー!」 「イヤ―――――――ッ!!」 「アバーッ!」「アバーッ!」「オボーッ!」 遠くで声援を送っているアリスたちめがけて持っていた槍と、先程殺した何者かの武器たちをいくつもぶん投げる。 武器がオトモダチとアリスを複数体貫き、まるで串焼きのようなオブジェとして並ぶ。その間近づく相手もネクロカラテで叩き潰す。 飛んでくる武器、拷問器具、遊具、その他すべてを叩き伏せ。群がるオトモダチどもを鎖で体を引きちぎり、バズソーで細切れにし、敵の武器を奪っては殺し、ネクロカラテで殴り殺し蹴り殺す。 有言実行だ。再起不能になったオトモダチの山が積み上がり、ばらまかれたトランプは濁った赤い池に沈んでいく。 強大で膨大なオトモダチの軍勢は、見る間に数を減らしていっていた。 途中アリスたちが放り込んでくる茶々のような拷問器具も腕で、足で、頭で叩き壊し、振り回されて吹き飛ばされそうになる小梅を抱きかかえてはまた迎え撃つ。 この凄惨なる光景なんと形容するべきか。スプラッターか、ハードゴアか、それともやはりジェノサイドか。 邪神の手足めいた動きで鎖付きバズソーが振り抜かれるたびに、次々と物言わぬ屍が積み上がり、あちらこちらで爆発が巻き起こる。 反撃に出ようと武器を手に手に偽アリスとオトモダチが攻めようと、ほとんど触れることすら叶わずにさらなる暴力でねじ伏せられる。 堅牢かと思われた人垣は、守ればその分切り崩され、攻めればその分打ち砕かれ、徐々に、徐々に、ほころびを見せ始めた。 無限と思われた軍勢は、その絶滅の権化の前に、ついに目算でも数えられるほどに数を減らした。 そんな大虐殺の坩堝の中心のニンジャ・ジェノサイドは、小梅を守り、オトモダチをぶちのめしながらも、常にある一点に注意を払っていた。 『本物はどこだ』。 今まで数々のアリスを殺したがどれも偽物。それに、今生き残っているわずかばかりのアリスもきっと偽物であるとジェノサイドの直感が語っていた。 見回す中には居ない。どこに姿を隠したのか。それを見つけてぶん殴るまではこの戦いは終わらない。 ジェノサイドの虐殺の刃を切り抜けたアリスたちがギロチンの刃を放つ。その刃の上に切り刻まれたゾンビたちを乗せて。 ギロチンを止めればゾンビ爆弾を喰らい、ゾンビ爆弾を止めればギロチンを喰らうという寸法か。 「芸がねえことを、何度も、何度も!!! ナメてんじゃねえぞ!!!」 だが、それがどうした。両手に構えたバズソーを放り投げ、射線上のオトモダチを切り捨てながら進んできた二枚のギロチンの刃を掴む。 当然、手の平はただではすまないが、それを力でねじ伏せる。傷を恐れないゾンビーの体とネクロカラテの握力が可能にする武器強奪だった。 勢いに任せてギロチンをぶん回し、爆発しようとするゾンビを吹っ飛ばす。ゾンビは空中で爆発して消えた。 更に迫ってくるギロチンをギロチンで迎撃し、上のゾンビごと弾き飛ばす。 「イヤ―――――ッ!!!」 叫びとともにギロチンがぶん投げる。またオトモダチが物言わぬ体に変わった。 随分数を減らしたオトモダチは、さすがに数で押せなくなって攻めあぐねているのか、格段に動きが鈍っている。 それこそ狙い目とばかりにバズソーを投げ、アリスやオトモダチどもを切り裂き、ゾンビどもは念入りに微塵切りにする。 ニンジャ的シックスセンスが攻撃の予兆を察知し、抱きかかえていた小梅の身体を突き放した瞬間、地面から生えてきた拷問器具がジェノサイドを拘束した。 棘だらけの人形の檻、アイアン・メイデンだ。だがそんなもの、今のジェノサイドの敵ではない。 閉じようとする拷問器具の蓋を無理やりこじ開け、蝶番ごと蓋をもぎ取る。小梅に迫る幾つかの影に向けて蓋を投げ飛ばせば、血しぶきを残してまたオトモダチが減った。 少しばかり生き残っていたオトモダチめがけてバズソーを放れば、ついにすべてのオトモダチが倒れ伏した。もう二度と動くことはない。 放ったバズソーの鎖が伸び切り、今から巻き戻ろうという瞬間。 一陣の風が吹き、ジェノサイドの目の前をいくつかのトランプが通り過ぎていった。 小梅がはっと顔を上げ、体をこわばらせる。 彼女の視線の先には、トランプから今まさに飛び出そうとしている最後のアリスの姿があった。 振り上げた拳は少女のそれだが、サーヴァントの膂力ならば小梅の頭を潰すくらいはわけないだろう。 ジェノサイドが今から走り出したのでも間に合わない。恐怖からか、小梅は崩れるようにその場にしゃがみこんだ。 「はい、私の勝―――」 しかし、勝利宣言に待ったがかかる。 しゃがんだ小梅の向こう側から飛んできた鎖が、現れたばかりのアリスの体を縛り上げたのだ。 「ようやく首を出しやがったな、アリス=サン」 小梅の令呪で取り戻した破片のような記憶の中に、散りばめられた記憶の中。 ジェノサイドの人生の大部分を占めていた知識として『ニンジャ』の知識があった。 ニンジャとは、卑劣で、傲慢で、残忍。そして時折、幼稚なほどに欲求に素直。 ジツに頼って他人を嬲ることに快楽を覚え、命を命とも思わぬクソッタレの集まり。 そんなニンジャたちの戦闘の波長と、アリスの戦闘の波長が、ジェノサイドの中で合致した。 もし、ジェノサイドと小梅が二人で居るところにニンジャが現れたなら、ニンジャはどう動く。 ニンジャならばどうするか。ジェノサイドを足止めしながらジツを使って小梅を狙い、そして小梅を殺したあとで魔力の尽きたジェノサイドを殺す。 アリスの使えるジツを考えたならば、不意打ちが最も効果的。そしてアリスの性格を考えるならば、奴は最後の最後、ジェノサイドたちが勝利を確信した瞬間にサディスティックな笑みを浮かべながら小梅に手をかけることだろう。 そう、つまり、アリスはニンジャだったのだ。ジェノサイドの『偽物のアリス』を見抜いた直感は、ニンジャとの戦闘で培われた経験則にほかならない。 このタイミングで空を舞うトランプを見て、ジェノサイドは直感的にそれこそが相手の本命だと理解した。だからこそ、先手を打つことが出来た。 『アリスが出て来る』ものとして小梅と念話で息を合わせ、小梅の体でバズソーの鎖を隠し、ぎりぎりまでひきつけて縛り上げた。 小梅は恐怖から崩れ落ちたのではなく、アリスという『怪物』と向かい合い、ジェノサイドを信頼し、『怪物』を倒すために勇気を振り絞り立ち向かい、そしてようやくアリスに打ち勝ったのだ。 「きゃあ、捕まっちゃった!」 巻きつけた鎖ごとアリスを一気に引き寄せる。命のやり取りの最中だと言うのに、脳天気な声を上げている。 その脳天気な声は、ジェノサイドの剥き出しの神経を逆なでするようだった。 オトモダチのやつらをゼツメツに追い込んだこの期に及んで、この少女は、まだ遊んでいるつもりなのだ。 「ナメやがって! ブッダのケツで念仏唱えてろ!」 怒りが、まばらにしか残っていない髪の先まで浸透する。 だが、足りない。この程度の怒りでは、アリスはゼツメツさせられない。 力が必要だ。この狂おしいほどの怒りをぶつけるための力が。 考えるよりも速く体が動いた。 アリスの体をがんじがらめにしていた鎖が解ける。逃がすためではない、鎖が巻き付いたままだと邪魔だからだ。 代わりに、ジェノサイド自身の手でアリスの体を地面に押さえ込む。がっちりと組み伏せたまま、噛みつきやすそうな左肩に照準をあわせる。 仮にもズンビー。爆発の余波で荒れ放題の口でも、少女の柔肌を食いちぎる牙は失っていない。 ◇◇◇ 「ヤメテー! ヤメテー! ……アバッ!?」 肩に食いつかれ、アリスの楽しげな悲鳴が止まり、驚愕の声が上がる。 緑色の蛍めいた命の輝きが噛まれた場所から漏れ出し、アリスの余裕の表情が一気に崩れる。 その緑色の光の正体は、アリスにも感覚で理解できた。それは間違いなく、アリスの身体を構成するMAGだ。 単なる打撃ならば問題ない、噛みつかれた程度で既に死者である『アリス』は傷つかない。そう過信していたのだろう。 だが、アリスの想像を遥かに超えて、アリスに食らいついたジェノサイドという災厄は貪欲であった。 ジェノサイドはニンジャを喰らうニンジャであり、この聖杯戦争ではサーヴァントを喰らうサーヴァントであった。 相手が不死の令嬢アリスだったとしても例外ではない。ジェノサイドはアリスの彼女の身体を構成する物質――MAGを喰らい、自身の血肉に変えることが出来るのだ。 ぶちぶちと音を立ててアリスの左肩が無残に食いちぎられ、ジェノサイドとおそろいの骨がまろび出した格好になる。吹き出す血は、意外にも赤かった。アリスの瞳の色にそっくりだった。 そして、食いちぎられた瞬間に、アリスの中から大きく『何か』が持って行かれた。MAGか、それとも別の何かか。 アリスとてサーヴァントである以上魔力が消滅すれば存在を保てず消え去るのみ。 遊びと思って侮った。このウカツは何を意味するか。 不快な脱力と、焦燥と、六腑の底から喉元までせり上がるような怖気が、アリスの体を駆け巡った。 分からない。今までに感じたことのない感触だ。だけどそれは、いつでも身近にあったもののはずだ。 遠巻きにおろおろと困惑していたアリスの分身のうちの一人が消滅する。世界から消えてなくなる。 一人が消えれば次の一人。それが終わればまた一人。また次、次、次と立て続けにアリスたちが消えていく。 居なくなる。世界から。 そこでようやく分かった。アリスに襲いかかっているこの感触が、死だということが。 『死』。 脳を埋め尽くしたのは、アリス自身には絶対に関係がないと思っていたその一文字。 アリスが今まで弄び、そしてゼツメツ・ニンジャに相対したものが等しく抱く、逃れられぬ破綻と破滅のシンボル。 むき出しの左肩から首よりに、更に歯が突き立てられ噛みちぎられる。またも大きな『何か』が持って行かれる。 声にならない悲鳴が遊園地内にこだまし、悲鳴で揺さぶられた傷口が突き刺すように痛んだ。血が地面を汚していく。 そしてまた、ありえるはずのない恐怖がアリスの心を支配した。 『死』だ。 死ぬ。 死ぬのだ。 これが、死。死なのだ。 アリスは殺される。このサーヴァントに。 全てを喰らいつくされ、一片の欠片も世界に残すことなく、消滅するのだ。 このサーヴァントは、アリスの全てを吸収し、世界にアリスであったものは無くなる。 無数に存在し、消えることのないはずの『アリス』が、この地で一つ完全に絶滅する。 認識した瞬間、アリスはおそらく生まれて初めて本気で『死』を恐れ、本気で逃れる術を探った。 だが、どれだけ考えても答えが出ない。それもそのはず相手が悪い。 精神汚染を持つバーサーカー相手に魅了(マリンカリン)は通用しない。 既に死んでいるズンビー相手に即死魔法(マハムドオン)は通用しない。 石化魔法(ペトラ)も組み伏せられたまま使えば一緒に石化してしまう。 分身アリス、トランプ兵、屍鬼、洗脳人間、あたりを見回せど影もない。 痛みで頭が冷めようやく気づいた。全てゼツメツしていた、いや、ゼツメツさせられていたのだ、このズンビーただ一人に。 バズソー、鎖、ネクロカラテ、彼の持ちうるすべてが『絶対にぶち殺してやる』という執念に従いこの場に居たアリスの軍勢をねじ伏せた。 魔力を吸い上げられた状況、しかもこの距離では再生産も不可能、既に進退は極まった。 蓋を開けてみれば、なんたることか、詰将棋のように盤面は硬直している。 「いや……」 ならば、ならば、ならば何がある! 必死に頭を働かせても、思考は分かりきった結論に向けてから回るばかりで何も妙案は浮かばない。 ジェノサイドが再び口を開く。涙目になりながらまだ動かせる右腕でジェノサイドの頭を押しのけようとしたが、抵抗むなしくまた歯が突き立てられた。 左肩を骨まで噛み砕かれる。『死』の一文字が身体の中で大きく膨らんでいく。 ゼツメツはアリスのすぐ背後まで来ていた。 「いや、いや!! 放して!! やだぁ!!!」 蹄の音が聞こえる。蒼ざめた馬の蹄の幻聴だ。 首元にヒヤリとした感覚。死神の鎌の幻覚だ。 もがいても、暴れても、狂戦士の万力めいた腕力に枝のような少女の肢体では叶わない。 締め付ける力は、吸われていくアリスの魔力に比例してどんどん強くなっていく。 まるで細胞同士が引き合うようにジェノサイドの傷ついた腐肉が逆再生めいて修復を始め、吹き飛んだ髪、砕けた歯、穴ぼこの目、ぼろぼろだった悪魔めいた男の顔貌を復元する。 髪を振り乱し抜けようともがくうちに、押さえつけている男の顔が目に入った。 完璧に蘇ったその顔貌。それは、世にも恐ろしい――― ◆◆◆◆◆◆◆ 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 余裕を失い初めてさらけ出された命懸けの絶叫。 アリスが最後に取ったのは、彼女の大好きな遊びとは程遠い、単なる物量攻撃だった。 構築した陣地を、読みかけの絵本を閉じるように無理やり『閉じ』たのだ。詰んでいた将棋の盤面をひっくり返し、無理やり勝負をなかったことにするために。 原理的には遊具操作と変わりない、ただ、遊園地全体を操作し、一気にアリスめがけて圧縮を行った。 空間が一気に収縮し、それに合わせて遊園地のすべてのアトラクションが一気にアリスとジェノサイド目掛けて飛んでくる。 そして当然、ジェノサイドによって守られていた小梅にも迫る。 「死ぬのが怖ェか、アリス=サン」 突如、さらなる痛みを伴い拘束が解けた。 アリスが見たものは、無残にも食いちぎられたか細い左腕と、それをまるでフライドチキンでも食うように頬張った世にも恐ろしい死者(オトモダチ)の顔。 煌々光る緑色の瞳が湛えるは、魂の滾りか、約束の強い意志か。それともアリスから奪い取ったMAGの血涙か。 「そのクソの詰まった脳味噌に叩き込め。 てめェが調子に乗れば、ニンジャが出て殺す! 叫ぼうが、喚こうが、泣いて許しを請おうが、必ずお前を殺す!!! 俺はジェノサイド!! ニンジャで、サーヴァントの、ジェノサイドだ!!」 言い切ったジェノサイドは、もう用はないとばかりに、食い残したアリスの土手っ腹を蹴り飛ばす。 アリスももう、冗談めかして言い返すようなことは出来ない。命からがら霊体化して逃げ出すのが精一杯だった。 碧緑の双眸はその行方を追わない。既に自身の守るべきものの方を向いている。 「コウメ!」 「ジェノサイドさん……!」 ジェノサイドの声に、小梅は駆け出し手を伸ばす。その手の甲には既に令呪は存在しない。 それでも。 いや、令呪なんてないからこそ。繋いだ手と手には一片の疑念もない。 見よ。少女を懐に抱き寄せたゾンビの立ち姿の、なんと美しいことか。 少女も、ゾンビも、確信していた。今更この陣地圧縮程度の障害で、自身達が死ぬことなどないと。 「ゼツ!!」 じゃらりと波打つ一対の鎖。火花をちらして回り出すバズソー。 命を燃やして、速く、速く。少女を取り囲む万難を切り裂くために回転する。 「メツ!!!!」 走る銀色の閃光は、遊具を、橋を、岩を、山を、雲を、大地を、太陽を、襲い来る全てを切り刻み。 そして最後に、緞帳めいた作り物の青い地平を切り裂く。 ここに、ひとつの遊園地が……女王の作り出した不思議の国が絶滅した。 そして、世界に夜が帰ってくる。 ネクロマンティック・フィードバックへ
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ああ、あの愛の喜びに満ちた ◆EAUCq9p8Q. ◆◆◆◆ Ah (ああ) bello a me ritorna (あの愛の喜びに満ちた) Del fido amor primiero; (美しいときがふたたび、帰ってくれば) E contro il mondo intiero (あなたを、どんなことをしても) Difesa a te saro. (世間から守って差し上げますのに。) Ah (ああ) bello a me ritorna (あのやさしく暖かい愛が帰ってくれば) Del raggio ョtuo sereno; (あなたの心に) E vita nel tuo seno, (生命を) Ah―― Ah―― (ああ) E patria, e cielo avro. (故郷を、そして天国を) Ah…… riedi ancora…… (ああ、見出すことが出来るのでしょうに。) ◆◆◆◆ オペラ『ノルマ』の一幕、「ああ、あの愛の喜びに満ちた」。 「清らかな女神」と併せて親しまれる曲で、稀代の歌姫マリア・カラスに『世界一難しいアリア』と言われたソプラノ・アリアの傑作の一つ。 失われた愛へと向けた歌。 壇上の歌姫がその歌を選んだのは、きっと夕方に出会った少女のため。 歌姫は、苦もなく歌い上げ、喝采の中一礼を残し、舞台の袖へとはけていく。 その途中不意に立ち止まり、客席に顔を向けた。 彼女の視線の先には金髪碧眼の男性が一人と、彼がじっと見つめている少女が一人。 観客に少々のどよめきが広がるが、歌姫――ララは気にせず舞台を降りた。 いつもとは違う喧騒が起き始めた客席をすり抜け、少女へと近づいていく。 少女の側にいつのまにか立っていた珍しい格好の(現代風ではない格好の)男性が少女を庇うように一歩前に出たが、ララは彼ともまた少し見つめ合ったあと、彼越しに少女にニ三言を伝えた。 そして、観客たちに向かって騒がせたことへの一礼を残し、立ち去っていった。 ☆中原岬 岬が昨日と同じように劇場を訪れ自身の『何か』を満たすような歌に聞き惚れていたところに、その歌姫は唐突に降り立った。 観客の間を抜けて歩み寄ってきた歌姫はなぜか岬の前で立ち止まる。 「話がしたい。午後九時、裏の公園で」 岬が混乱する中、歌姫がセイバー越しに岬に伝えてきたのは確かにそんな内容だった。 岬のなにが歌姫にその言葉を放たせたのかは分からない。 岬にとってあの歌姫は、遥か天空に居るような人間だ。 とても綺麗で、輝いていて、美しくて、尊くて、そしてきっとすべての他人に愛されている。 岬とはきっと、生まれも、育ちも、何もかもが違う。 中原岬にはぽっかりと抜け落ちているものがある。それは、岬自身も自覚している。 でも、その足りないものは岬にとって大きな傷だ。触れられたくない場所で、見せたくないものだ。 あの歌姫は存在そのものが岬の傷口に余りあるほどの刃かもしれない。 正直に言えば、近づかれただけで身が凍るようだった。 緊張で心臓は馬鹿みたいに高鳴り、足は震えることも出来ない木偶の坊みたいに固まって、嗚咽がろくに回らず答えることも出来ず。 それでもすぐ隣に頼もしい姿があったから、なんとか声を掛けられた瞬間に逃げ出したりはしなかった。 歌姫が劇場から出て行った直後に岬も劇場を飛び出したが、それでも、逃げることはなかったのだから上出来だろう。 「どうする」 道を歩きながら、珍しく実体化したままのセイバーが、岬の方を見つめて問う。 昼に見せた勇者としての顔よりも、自宅で見せた勇者ではないほうの顔に近い。 服装が鎧ではないからかもしれないが、そうしているとただの青年のようだ。 「うーん、どうしよう」 昔の岬ならなんと答えていただろうか。逃げていただろうか、それとも待ち合わせに行くだけ行って、同じように身を凍らせながらただ苦笑いで過ごしていただろうか。 でも、岬はもう昔の岬ではない。今の岬には仲間がいる。 世界で唯一なにがあっても岬を裏切らない頼もしい仲間がいる。 世界で唯一、駄目で、寂しがり屋で、人間のクズみたいな岬と同じ位置に居て、足並みを揃えてくれる仲間が。 それだけで、少しだけ、心の中に溜まっていた溶かした鉛みたいな重くて粘っこくて黒い淀みは、軽くなってくれたみたいだ。 岬の心を知ってか知らずか、セイバーはやや神妙な顔で言葉を継いだ。 「俺は、あの歌姫が聖杯戦争参加者の可能性もあると思う」 「そっか」 「君はどう思う?」 「うーん……わかんないや。でも、悪そうな人には見えなかったかなぁ」 彼女の歌は、岬の心を掴んで離さない、美しい歌だった。 誰かを害する歌だったら、岬は泣いたりなんかしない。その辺に岬は、きっと、たぶん、敏感だから。 だから、岬の中では彼女は、一応は信頼に足る人物の最低条件は満たしていると思えた。 あとはもう少し話しやすい位置だったら考える必要はなかったのだが、そればっかりはどうにもならない。 少し考えて、隣を見る。セイバーはまだ神妙な顔をしていて、ちょっぴりおかしかった。 深呼吸を一度。更にもう一度。凍っていた体は随分ほぐれた。あれだけうるさかった鼓動も今はフォービート程度だ。 推定悪人ではない人物との約束を反故にするのは忍びない。 例え一方的であったとしても、約束は守るべきなのだ。 いつか、佐藤がそうしたように。(結局佐藤は最後の約束は結んでくれなかったが) セイバーがそうしてくれたように。 あの歌姫が岬になにを求めているのかは知らないが、約束通り会いに行くくらいはしても問題ない。 問題があるとすれば、家に帰り着く時間くらいだが…… 晩御飯は小劇場に来るまでに食べてきた。あとは、日付をまたいだりしなければ厳しくは言われないだろう。 この世界での叔父・叔母(NPCというらしい)に迷惑をかけることになるかもしれないが。 そもそも、元の世界でも佐藤との待ち合わせでも少し帰りが遅くなったことはあった。少しくらいは許してもらえる、と思う。 会う方に意を決し、色々と会うまでに必要な過程を整理し、一つだけ不安を覚えたので、隣に控えるセイバーに向き直る。 向き直る時に踏みしめた砂利の音はおもったよりも大きかった。 岬の口から出たのはその音に負けるか負けないかくらいの、いつもより少しだけ小さな声だった。 「セイバーさん、ここで折り入ってお願いがあります」 もう令呪は残ってない手を掲げ、願いを一つ綴る。 どうか、あの歌姫と会っている時に、私を置いて帰ったりはしないでください。 仲間が居なければ、岬はまた一人ぼっちだ。それはきっと、死んでしまうくらいに辛い。それだけは避けておきたい。 セイバーはその願いを聞いて、少し困ったような笑みで頷いたあとで、安全を確認し終えたのか再び霊体化した。 【D-3/市民劇場付近/一日目 夕方】 【中原岬@NHKにようこそ!】 [状態]魔力消費(小) [令呪]なし [装備]なし [道具]カッターナイフ [所持金]あまり使えないんです。お世話になってるから。 [思考・状況] 基本行動方針:なにを願っていたんだろう 0.寂しい 1.21時にララに会いに行く 2.悪いカバを警戒 [備考] ※ララ、悪いカバ(まおうバラモス)を確認しました。魔術については実際に目にしましたが理解が及んでいません。 【セイバー(勇者レイ)@DRAGON QUEST IV 導かれし者たち】 [状態]魔力消費(小) 霊体化中 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:岬の傍に居る 1.魔王を倒す必要がある……か? 2.できるだけ宝具の解放や長時間の戦闘は避けたい。 [備考] ※通常実体化した場合、村人のような格好(DQ4勇者のデフォ衣装)です。 ☆ララ 「やっぱりマスターだったか」 アサシンの声にぼんやり頷く。ララもまた、準備期間の終わりごろにこの劇場で見かけた彼女のことをよく覚えている。 声を上げるものは居た。拍手をするものは居た。だが彼女のような反応を示す人物は、たった一人しか居なかった。 季節からはちょっと外れた長袖も目立つ。まるで体の下になにか(例えば令呪か)を隠しているように見えた。 「私は」 でも、マスターかどうかなんてララには関係ない。 ララはあの少女がNPCだったとしても、同じように舞台を降り、同じように声を掛けたことだろう。 「私の歌で涙を流してくれたあの子と、もう少しだけでいいから、話がしたいの。駄目?」 「駄目じゃないが、なんだってそんなことをしたがるんだ」 少しの間を置き、自身の中であの子を初めて見た時から抱いていた思いを口にする。 「似てたから」 「似てたって、誰にだ。お前の話してた『グゾル』にか」 「……うん。あの子はグゾルに似てる。顔は違うけど、でも、似てるの」 あの少女はララにとって生涯で二人目の、ララの前で泣いてくれた人間だ。 グゾルはララと出会った時、ぽろぽろ涙をこぼしながらララの歌を聞いてくれた。 ララは人形だ。涙を流すことはできない。それでも、グゾルのくしゃりと歪んだ瞳から流れた涙の中に込められていたぬくもりは分かった。 あの少女の涙は、その時のグゾルの涙と同じだった。とてもあたたかい涙だった。 周りのすべてから迫害され、『化物』『亡霊』と呼ばれた恐ろしい人形に『何か』を見つけた、ちっちゃなちっちゃな子供の泣き顔と、その頬を伝う涙にそっくりだった。 彼女がグゾルでないことなど知っている。彼女にグゾルを見出したが正しいかどうかなんてララにはわからない。 それでも、涙を流す彼女の表情は、あの日、あの時のグゾルによく似ていたから。 もしかしたら、未だ不明のまま宙を待っているララの向かうべき先を知ることが出来るかもしれない。 アサシンは「そうか」と答え、空を見上げた。 ララも一緒に空を見上げる。既に夜の帳の落ちきった空には、まばらに星が散らされている。 星は一緒だ。はるか昔、八十年前と同じように、空で輝いている。 「あいつの側に居たサーヴァントは、俺より格段に強い。襲われたらそれまでだ」 「そうなるなら、そうなったって構わないわ」 星にでも放り投げるように口ずさまれたアサシンの言葉に、ララも空を見上げたまま答える。 あの少女がララを殺そうとするなら、あの涙の答えがそこに繋がるというのなら、きっとそれも、ララの求めていた答えの一端なのだろう。 アサシンからの返事はない。星空から視線をアサシンの方へ動かしてみれば、彼もまた、ララの方を向いていた。 その表情がどんな感情を示すのかは、ララの語彙では説明がつかない。 でも、きっと、ララが見てきた中で今の彼の顔に一番近いものは、同じように星空を見上げていた時のグゾルの表情だろう。 「今日は星が綺麗?」 「そうだな……今日は」 アサシンは再び星空を見上げ、一言、夜空に飛ばす。 「きっと怪人の笑い声がよく響く。こんな夜なら、襲われる前にひとっ飛びかもしれねえな」 かつんと一度、アサシンが腰掛けていたトランクに、彼のぴかぴかの革靴の踵が打ち付けられる。 丁度、踵の打ち付けられたタイミングで劇場のNPCが一人やってきて、ララと『ウォルター』に声をかける。 再び舞台に上がる時間がやってきたようだ。またもう少しだけ、ララは誰かのために歌を歌う。 NPCに導かれながら、ララははたと一番最初に伝えるべきだった言葉を思い出し、立ち止まった。 「ウォルター叔父様」 NPCの手前クラス名を伏せてその名を呼ぶ。 「なんだ」 「ありがとう。約束を守ってくれて」 返事のもらえなかった約束。だが、彼はその約束を忘れずにちゃんと帰ってきてくれた。 だが、当のアサシンは鼻を掻きながら「……あったな、そんな約束も」なんて呟くだけだ。 「忘れていたの?」 「どうだったかな」 アサシンの答えはこの街の月みたいに、おぼろに隠れたまま。 薄らぼんやりとした光に照らされた頬は白く、伏せられた瞳はバネ足ジャックとは違い優しい光を宿し。 「今からお願いすれば、もう一度聞いてくれる?」 「……どうだろうな、忙しいのさ。俺も」 もう月の光は雲に隠れてしまった。薄暗い闇の中では、アサシンの表情はよく見えない。 それでも、きっと、朝のときと同じように、心は伝わっている。それ以上言葉を続ける必要はない。 ララは歌姫として再び、舞台の上に戻っていく。 次の歌は、いつかの星空に似合う曲にしようと決めて。 【D-3/市民劇場/一日目 夕方】 【ララ@D.Gray-man】 [状態] 健康 [令呪]残り三画(イノセンスの埋め込まれた胸元に、十字架とその中心に飾られた花の形で) [装備] なし [道具] なし [所持金] 劇場での給金(ある程度のまとまった額。ほとんど手つかず)、QUOカード5,000円分 [思考・状況] 基本行動方針:やりたいことを見つける。グゾルにまた会いたい…? 1.中原岬と話してみる。 2.フェイト・テスタロッサが気になる。 [備考] ※「フェイト・テスタロッサ」の名前および顔、捕獲ミッションを確認しました。 ※「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」の噂をアサシン経由で聴取しました。 また、「さいはて町」「実体化していたサーヴァント(木原マサキ)」「シルクちゃん主従」の情報を得ました。 【アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド)@黒博物館スプリンガルド】 [状態] 健康、スキル『阻まれた顔貌』発動中 [装備] バネ足ジャック(バラした状態でトランクに入っていますが、あくまで生前のイメージの具現であって、装着を念ずれば即座にバネ足ジャックに「戻れ」ます) [道具] なし [所持金]一般人として動き回るに不自由のない程度の金額 [思考・状況] 基本行動方針:マスター(ララ)のやりたいことに付き合う。 1.観客たちから情報収集。岬との会合に備える。 2.街で情報収集をしながら、他の組の出方を見る。 3.『町』にもう一度行く必要は…… 4.『チェーンソー男』『包帯男』『さいはて町』に興味。 [備考] ※中原岬&セイバー(勇者レイ)、シルクちゃん&ランサー(本多・忠勝)を確認しました。 ※「フェイト・テスタロッサ」「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」キャスター(木原マサキ)についてある程度知っています。 ※さいはて町の存在を認知しました。町の地理、ダンジョンの位置も把握しました。 ※さいはて町の番人、『チェーンソー殺人鬼』を確認しました。『チェーンソー男』との類似を考えていますが、違う点がある事もわかっています。 ※さいはて町の入り口(D-3付近、C-4付近)を確認しました。もう一度行くと入り口があるかもしれませんし、ないかもしれません。 ※『阻まれた顔貌』はさいはて町内、かつマスターもしくはサーヴァントの視認範囲に入ったときのみ逆効果に働きます。が、ある程度看破能力は必要かもしれません。 BACK NEXT 038 楽園の裏では少女が眠っている 投下順 040 外へ 036 ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー 時系列順 041 崩壊ウォッチ BACK 登場キャラ NEXT 015 約束/まおゆう 魔王勇者 中原岬&セイバー(レイ) 046 願い・想い 027 尊いもの ララ 031 さいはて町に鐘が鳴る アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド)
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前夜祭 ◆PatdvIjTFg ◇ "What are little girls made of?" (女の子って 何でできてるの?) "What are little girls made of?" (女の子って 何でできてるの?) "Sugar and spice" (砂糖とスパイス) "And all that s nice," (それと 素敵な何か) "That s what little girls are made of." (そういうものでできてるよ) 「素敵なものって何かしら?」 「きっと、私も貴方も持っていないものよ」 「……それを、私は欲しいわ」 ◇ やけに小学生の死亡記事が多いな――と、リビングルームで新聞を読みながら少女は考える。 それも、いやに猟奇的で、際限ないほどに絶望的だ。 未だ見つからぬ同一犯による連続殺人、小学生による猟奇的殺人、屋上からの落下事故。 なんて――絶望的なんだろうか、そう考えると少女――『江ノ島盾子』の本能が疼く。 「メ、メ、メ、メシウマァ~~~~~~wwwwwwwwwwwwwwなんつて」 「こんなことしてる場合じゃないのに…………早く……犯人に会わなきゃ…………」 ころころと自身のキャラクターを入れ替えながら、江ノ島盾子は記事を読み返す。 この事件群にはあからさまに、絶望的に隠す気が無いんじゃないかってぐらいに、黒幕がいる。 ただし、その黒幕を発見することは――私様以外には相当に難しいだろう、と江ノ島盾子は考える。 少々の差はあるが、この事件は江ノ島盾子が元の世界で起こした事件に似ている。 動機と手段、そして密閉した空間――生徒会連中が死んだ時のように、この小学生たちも、また。 なんて、絶望的なのだろうか。 「私の計算上、犯人は小学校にいることは間違いありません」 「にょわ~☆それも、聖杯戦争のためっていうよりも~~ただの趣味だにぃ☆」 「うぷぷ……それにしても酷いなぁ、そういうことならボクを誘ってくれればいいのに」 「というわけでアタシ、放課後に小学校行くけど、アンタも来るよね、ランサー」 ◇ 「放課後はごめん!今日は用事あるんだ」 小学校――三年生教室。 それぞれが仲良しのグループ同士で固まりながら、他愛のない会話を行っている普通の教室。 最近の猟奇事件は恐怖の象徴であると同時に絶好の話の種である、誰もが自分は事件に巻き込まれないと信じきっている。 いや、信じなければならないのだ。そうでなければ、この教室は毎日がしめやかな葬式会場へと変貌を遂げる。 明るさを装い、平凡を装い、そして何とかやっている教室である。 だから、日常は続く。 彼女もそんな日常を維持するグループの一人である。 茶色をした明るい髪色、その髪はツインテールにまとめられ、顔には困ったような笑顔を浮かべている。 人目を引く――明るい可愛らしさ、『高町なのは』である。 「それに、犯人がまだ見つかってないでしょ、危ないよ」 「……うん、そうだね」 陰が差す友人の表情に、高町なのはは焦燥感に駆られる。 この事件もまた聖杯戦争によって引き起こされたものならば――早く解決しなければならない。 心臓が早鐘を打つ。 この問題を解決できるのは、自分しかいない。 ◇ 自分だけであると、互いに思い込んでいる。 四年生教室――『木之本桜』と『大道寺知世』は互いに、自分だけが剣を持っていると思い込んでいる。 いや、正確に言えば違う。 自分だけが聖杯戦争の参加者であると思い込みたい。 一般的な小学生ではない別の顔、カードキャプターとしてのさくらを大道寺知世は知っている。 危険もあるが、それを受け入れて応援してくれている大切な友だちであることを木之本桜は知っている。 けれど、聖杯戦争は人が人を殺す。 易易と秘密を開示出来ない。 聖杯戦争に人を巻き込むということは地獄への道連れを作るということであるから。 それでも。 「知世ちゃん……」 「さくらちゃん……」 ごくりと唾を飲み込む。 チャイムが鳴る。 言おうとした言葉が生まれるまでもなく、チャイムによって掻き殺される。 「ううん、なんでもないよ」 「ええ、私もですわ」 お互いがお互いに、一人でそんな危険なことを行っていると知れば見過ごせないから。 例えNPCであろうとも、大切な親友であることを知っているから。 だから、二人は寄り添って何も言わない。 言えない。 ぎゅうと、さくらが知世の手を握った。 その手を知世は握り返す。 僅かに震えていた。 ◇ 『輿水幸子』というアイドルが、自分の通う中学校にいることを『山田なぎさ』は初めて知った。 ショートカットで、自分のことをボクだなんて言う奴で、自分のことをカワイイと言い張って憚らない変なアイドルで、でも彼女は『海野藻屑』じゃない。 そんなことは知っていたけれど、それでも廊下で初めて輿水幸子とすれ違った時、もしかしたら彼女は海野藻屑じゃないのかと思った。 でも、彼女の両脇には『白坂小梅』と『星輝子』というアイドルがいて、 だから、聞こえる方の耳を私に向けている藻屑は、ここにはいないんだな、と思って。 無性に悲しかった。 「ま、落ち込んでばかりもいられないけどね」 気を張り直す、持たされた実弾はあまりにも現実離れで、まるで夢に撃ちこんでいるかのようにふわふわとしているけれど、それが私の選んだ実弾。 砂糖菓子の弾丸にもう一度会うための弾丸。 山田なぎさにもう一度会うための弾丸。 返り血を浴びたアーチャーの姿を見ながら、『海野藻屑』は考える。 何人殺したんだろうか、どれほどぼくは山田なぎさに近づけているんだろうか。 安楽椅子に身を委ねながら、届きそうな程に近い空に手を伸ばしてみる。 どれだけ伸ばしても空は掴めない。 海野藻屑は、人魚姫の夢を見ていた。 魔女と契約して、山田なぎさに会うための足を手に入れたけれど、 山田なぎさは自分を助けてくれた人魚姫に会うために、魚の尾びれを手に入れる夢。 何時までも何時までも会えないまま、お互いが泡になって消えてしまう夢。 とても悲しくて、でも夢だ。 きっと、夢だ。 ◇ 夢を見ていました。 とても、とても、楽しい夢を。 賀茂さんが帰ってくる夢。 狐に生まれ変わって北海道から、自分の家まで一生懸命走って帰ってくる夢。 夢の中で私は普通の女の子で、誰も死んでいなくって、何時までも楽しく暮らす夢。 駄目ですよね、私がそんな夢を見たら。 でも、許してください。 夢を見ただけなんです、そんなとても楽しい夢を…… 『桂たま』が眠りから目を覚ますと、変わらない現実が広がっていた。 何一つして変わってはいないし、何も終わってもいないし、何も始まってはいない。 桂たまは一人のままだ。 ◇ 一人は寂しい。 そんな当たり前の事実を、『輿水幸子』も『白坂小梅』も『星輝子』も知っている。 だから、三人で集まって昼食を食べていた。 「フフ……今日もきのこ、明日もきのこ、明後日もきのこ、美味しいぞきのこ」 星輝子はきのこの炊き込みご飯をゆっくりと咀嚼し、輿水幸子は 「見てください、料理も完璧だなんて流石カワイイボクですね、食べてもいいんですよ?」 などと、自分の作ったお弁当を皆に見せびらかし、 二人のそんな様子を見ながら、白坂小梅はホットドッグを食べながら微笑んでいる。 「幸子ちゃん……輝子ちゃん……今度、映画……見に行こうよ……」 「いいね……マタンゴ2015……見に行こう」 「ホ、ホラー映画は駄目ですよ!映画館の人がボ、ボクのカワイさに夢中になって、映画どころじゃなくなっちゃいますから!」 「フフ、きのこは友だち……怖くない」 「うっ、ボクはカワイイ子ですから」 「映画じゃなくても……い、いいけど……でも……私たちで……何かしたいな」 「私たち……」 「ボク達……」 「うん……」 「いいですね!」 思い出が欲しい。 聖杯戦争はきっと辛いけれど、それでもここにいる他の二人は偽物かもしれないけれど、 それでも、友情は本物だから。 だから、辛いだけじゃなくて、楽しい思い出を残したい。 ◇ 何一つ、残されていない。 だから、取り戻しに来たのだ。 『大井』を大いに驚かせたものは、自身に支給された高校の制服ではなく、自身の学年である。 流石に、高校一年生からやり直すことになるとは予想だにしていなかった。 だが、些細なことである。 大手を振って、高校に通えるというのはありがたい。 攻勢に打って出るにあたって、欲しいものは何よりも情報である。 ならば、それを収集するに相応しいのは人の集まる場所だ。 教育機関はそれに最適だ。 元の世界の艦娘に似た自分の友人を名乗る女子高生達と会話し、つまらない授業を受け、学食で昼食を食べる。 あまりにも平穏な世界。 きっと、北上さんが死なない世界。 聖杯を手に入れた暁には、この世界で北上さんと暮らすのも悪くはないのかもしれない。 そんなことを考えていると、声を掛けられた。 「すいません、隣良いですか?」 「どうぞ」 「どうも~いいってさ絵理ちゃん」 「ありがとうございます」 女子高生の二人組、見覚えはない。 友人なのだろうか、一人はまさしく美少女といった容姿をした少女で、もう一人はボブカットの全体的にふわふわとした少女だ。 しかし、大井にはどうでもよいことである。 ◇ 『雪崎絵理』が『玲』に声を掛けられた理由は非常に些細なことであるため、どうでもよいことである。 重要なのは、そこから何となく一緒に昼食を食べようという話になったことだろう。 たまたま二人分席が空いていたテーブルに座り、絵理はラーメンを玲はドーナッツを、これが昼食なのかと疑われるほどの量を注文していた。 「そういえば絵理ちゃん?」 「なに?」 「『火吹き男』って知ってる?」 食事も一段落して、絵理はオレンジジュースを、玲は更に注文したホットスナックをぱくつきながら、昼休みが終わるまでとりとめのない雑談へと移行する。 「初めて聞いたかな」 「そーなんだ、もっと有名だと思ってたよ。 それで、火吹き男って言うのは街中をぴょんぴょん跳ねて、火を吹くおばけなんだってさ~」 「チェーンソーを持って?」 「いや、チェーンソーは持ってないけど」 「ごめん、何でもない」 どうやらチェーンソー男とはまた別に怪人が出る街らしい、あるいはその男こそが聖杯戦争に挑むサーヴァントなのだろうか。 「でもさ、スゴイことだよね。殺人が起こって、バネ足はぴょんぴょん跳ねて、それでもわたしたちはこの街で平穏無事に生きてる」 「きっと」 絵理は一気にオレンジジュースを飲み干して、言った。 「玲ちゃんが襲われると悲しい人が怪人と戦ってるんだよ」 「結構素敵な考え方だね」 ◇ 「結構、素敵なシステムだね」 江ノ島盾子は外で遊ぶ小学生から、小学校の噂話を不審者として通報されないように聞き取った。 その結果、掴んだものはあまりにも陳腐な、嫌いな人間を呪い殺す儀式――『死神様』である。 猟奇殺人が起こってこの儀式が生まれたのか、この噂が先にあって猟奇殺人が起こったのかはわからないが良い手段である。 殺されたのは死神様で呪われたからだ、それが真実であろうと嘘であろうと、人の死というセンセーショナルな事実は噂を真実として拡散させる。 そして、一度成功したと扱われた儀式は、きっと二度目、三度目を誰かが行い――そして、誰かが言えばいい、アイツが死神様を行った。 それが真実であれ、嘘であれ、発生するのは正義の私刑、他愛のない勧善懲悪。 きっと、見えないところでこの小学校は絶望的に病んでいるだろう。 「じゃあ、アタシもちょっとやってみようかな。死神様」 『江ノ島盾子』の手にかかれば、小学校への侵入など容易い。 と言っても、こっそり忍び込んだだけのことであるが。校舎の裏、動物の墓は簡単に見つかった。 しかし、教師が見張っている。 「…………やはり、上手く行きませんね。人生は何時だって絶望的です。 面白く無いです、これじゃあ小学生も呪い殺したいときに呪い殺せないじゃないですか、悲しいですね……」 身体からイメージとしてのきのこを生やしながら、小学校への侵入が無駄に終わったことを知る。 「てことはぁ~小学生は深夜に学校に侵入してまで呪ってるのかな?うわぁ、絶望的に陰鬱!」 「教師が見張りを行うことで、その噂の真実性を補強し、教師のいない深夜にしか儀式を行わせないことで、より『死神様』は神秘性を帯びる、中々やりますね」 「……アタシ、かなり犯人に興味湧いてきた」 ◇ 「やはり、あの娘に興味があって?」 「あっえっ……と……はい」 ある歌姫が切っ掛けとなって賑わっている西洋風の市民劇場。 もうとっくに時計の針は夜を指している。 チケット売り場で突然に係員に話しかけられた『中原岬』はどもりながらも何とか答えることが出来た。 別に歌に興味があったわけではない、しかし己のサーヴァントが引きこもってばかりいないで外出した方が良いと言うので、 なるべく同年代の人間が来なさそうな場所を選んだに過ぎない。 もっとも、その判断は誤りであった。 会場へと進む客の流れには少なくない数の少女の顔がある。 だが、今更引き返すこともできない。 覚悟を決めて、中原岬は観客席へと進む。 ステージ上の少女が、優雅に一礼。 そして、歌唱(クライ)歌唱(クライ)歌唱(クライ) 歌詞の意味など、一単語も理解できない。 それでも、中原岬は気がつくと涙を流していた。 自分が人生の中で取り零してきたものの一つは、この歌なのだと思った。 ◇ 市民劇場の控室。 少女のための歌姫――『ララ』は鏡を覗きこむ。 そこに映るものは己の躰ではない、自分と同じく人形でありながら祖を違える者。肉体を持たぬ人形。究極の少女の器。 ルーラー『雪華綺晶』が映っている。 ぱち。 ぱち。 ぱち。 ぱち。 「素晴らしい歌でしたわ、ララ様」 「ありがとう……ルーラー」 「まぁ、ルーラーだなんて他人行儀な言い方はおよしになって。 私も貴方もお人形、結局は歌い、踊る快楽人形。生まれも育ちも違っても、お人形仲間ではありませんか。 ねぇ、ララ様。私、貴方と一緒に歌いたいわ、いいでしょう?」 「ええ、いいわ……お人形さん、何を歌いましょう?」 「女の子のための歌がいいわ」 ◇ 「『フェイト・テスタロッサ』様……貴方が欲しいものは?」 「欲しいものは……母さんの、幸せ」 己のサーヴァントにも問われたものを、フェイト・テスタロッサは再び答える。 そう答えるたびに、胸をじくりと蝕むようなものがある。 それでも、構わない。 それこそが真実の望み。 フェイト・テスタロッサの祈り。 月明かりの下、窓ガラスに移ったルーラーはフェイトに上記の問いを投げかけた。 何故と問いかければ「マスターのメンタルチェック」と嘲笑を浮かべながら答える。 無意味と避けようとすれば、この質問に答えてくれれば、フェイト・テスタロッサにとって重要な情報を与える、と。 故に、フェイト・テスタロッサは答えた。 何故か湧いてくる悲しみに堪えながら、答えた。 「では、フェイト・テスタロッサ様……貴方に重要な報告がありますわ。 日が変わると同時に、貴方はルーラーの権限を用いて、マスター全員に狙われるように仕向けられます」 「…………え」 どういうこと、と聞き返す間もなく、ルーラは消えていた。 夜闇が、フェイトの体を侵食するかのように取り巻いていた。 ◇ 夜はニートの味方だ。 太陽は有職者を照らすためにあるが、夜の闇は無職を包むためにある。 そんな、どうでもいいことを考えながら、自室にて『双葉杏』はPCを起動する。 聖杯戦争は最悪だが、この状況自体は悪いものではない。 働けば働くほどに死に近づくのだ、むしろ働かない方が正しいと、世界がニートを肯定している。 だから、何時か来る戦いのことをなるべく考えないように器用にやるしかないのだ。 そんなことを考えていながらネット対戦ゲームを行っていたら、自キャラが完全敗北したのでふて寝を決め込むことにした。 眠れない。 『諸星きらり』は今日も眠れなかった。 早々に結果が出るだなんてことは、全く思っていなかった。 それでも、月に手を伸ばしているかのようにまるで手がかりが掴めない。 あの学校で諸星きらりに刻み込まれた呪縛は、諸星きらりの劣等感を煽り立てる。 バーサーカーのために、何も出来ていない自分が嫌になる。 それでも、自分を奮い立たせる呪文のように心のなかで唱える。 「ハピハピ……するにぃ……」 アイドルであることすらも忘れてしまえば、自分の心は死んでしまうだろう。 ◇ 初めての戦いは、もう自分の心のようなものは死んでしまったのだなぁ、と思う結果にしかならなかった。 相手は同じランサーのサーヴァントで、マスターはか弱い少女で、 マスターの方を狙わせたら、敵のランサーは防戦一方になって、あっさりと死んだ。 逃げる少女を見ても、特に何も思わなかった。 初めての戦いは、『シルクちゃん』にとって、そのような思い出す価値もないものだった。 ◇ 結局、死神様が心に引っかかったままであったので、『江ノ島盾子』は小学校に忍びこむことにした。 時計は11時を指している、守衛はいるだろうが、少なくとも死神様とやらを試すのに邪魔は入らないだろう。 校舎を囲う壁を助走をつけて跳び越え、小学校内に侵入する。 校舎の裏、動物の墓を阻むものは何も無い。 死体を13個揃えて、死神様とやらを3回ぐらい呼んで願えばいいとのことなので、虫の死体を用意する。 本当は、大切に飼っていた猫をハンマーで潰した死体を捧げるのが一番良いのかもしれないが、それは面倒臭い。 現段階ではある手札で勝負するしかないのだ。 「死神様、死神様、死神様」 「誰も殺さなくていいから、アタシとお話しない?」 夜の静寂に包まれたまま、校舎の裏には何の変化も訪れない。 ただ、無関心そうに月光が動物の墓に降り注ぐのみ。 他愛もない陳腐な終わり、ありきたりなガセ。 「こんばんは」 「絶望的に……時間の無駄…………じゃない……みたいですね」 ではなかった。 江ノ島盾子の背後から、少女が現れる。 闇の中でもはっきりとわかる、白。 まるで、天使のような少女。 「死神様にごようですか?」 「うぷぷ……違うよ、僕が話したいのは君だよ」 「あ、自己紹介してないね。アタシ、江ノ島盾子。趣味と特技は絶望。最近は生徒会を殺しあわせて、愛する人間ぶっ殺しました。よろしくね」 「ご丁寧にどうも、『蜂屋あい』です」 「この時間帯だと誰かに補導されるし、明日の放課後にでもお話でもしましょうよ。てかLINEやってるw?」 「LINEはないですけど、ケータイはもってますよ」 「じゃあ、メアド交換しよっか」 「QRよみこみますね」 「はいはい、ところで……アンタ何人殺した?」 「……わたしはだれもころしてないですよ」 「ふーん……じゃあ、アンタのお友達の死神様は何人殺したの?」 「……死神様にねがっても、人がしなない…………だから、まちきれなくなって、あせって、ころしちゃう、こまった子って、けっこう多いんですよ」 「へー、もう手を下す必要すら無くなったんだ。スゴイね」 校舎の裏、天使のような笑みを浮かべて、絶望と悪魔が言葉で踊って、前夜祭の話は終わり。 ◇ 私は運命(Fate)を否定する――と、彼女は言った。 ◇ ――愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません。 あの詩人の言葉が蘇る。 愛する娘が死んで、彼女は何度命を絶とうとしたことだろう。 それでも、保存液の中の死体はまるで眠っているかのようで、今にも目覚めそうで、だから、彼女は死ぬことが出来なかった。 娘が起きた時に、誰も待っていなければ――きっと、彼女は寂しがるだろうから。 蘇生のための研究に没頭する狂気の魔導士は、そうやって保存液の中の娘を見る時だけは母親の顔をしていた。 ――愛するものが死んだ時には、それより他に、方法がない。 あるいは、自分の行為の果てに奇跡は訪れないのかもしれない。 如何に手を尽くそうとも、結局のところ娘は蘇らないのかもしれない。 それでも、どれほどの犠牲を払っても、例え世界を滅ぼしても、一つの世界で足りないのならば、平行世界の何千何百の可能性を積もうとも、 蘇生の可能性を施行し続けなければならない、娘の母親であろうとするのならば。 ――けれどもそれでも、業〈ごう〉(?)が深くて、なほもながらふことともなつたら―― 生者を救うための方便として、娘は天国に行ったのだという優しい嘘はある。 だとすれば、死んだ私は地獄に堕ちるのだろう。 太陽に手を伸ばすかのように、地に堕ちた私は娘のいる天に向けて手を伸ばすのだろう。 だから、絶対に死ねない。 私の死によって娘の蘇生の可能性が潰えることは許せない。 だというのに、この身は病に蝕まれ、もう先は長くない。 ――奉仕の気持に、なることなんです。 本来ならば、生命蘇生の技術を研究するつもりだった。 だが、足りない。時間が圧倒的に足りていない。 だから、残された時間で、私は無垢なるものを蹂躙し、聖なるものを陵辱し、尊き物を破壊する。 聖杯とは――誰もが信じぬ幻想、だがしかし、その技術体系そのものは本物である。 だから、私はこの聖杯戦争を通し、少女聖杯と聖杯を完成させ――娘を。 『アリシア・テスタロッサ』を蘇生させる――と、『プレシア・テスタロッサ』は言った。 ◇ 少女を殺すのは、常に大人だ。 ◇ 「くすくすくすくす、ところでマスター?」 「平行世界の貴方の娘がこの会場にいると言ったらどうします?」 ◇ ルーラーからの伝達(この伝達は基本的には携帯かPCメール、両方を所持していない人間には、雪華綺晶の手によって文書の形で直接配達された。 なお、以下の文章は実際に配達された文書の大意である) 予選通過おめでとうございます、殺し合い頑張ってください。 諸事情につき、マスターの一人であるフェイト・テスタロッサを捕獲することになりました。 別紙にて情報(姓名、顔写真)を提供いたしますので、協力していただける方は、フェイト・テスタロッサを生かして図書館まで連れてきて下さい。 フェイト・テスタロッサを引き渡していただいたマスターには令呪一画が報酬として与えられます。 (フェイト・テスタロッサを殺害してもルーラーからペナルティを与えることはしません) 聖杯戦争用に掲示板を用意しました、ご自由にどうぞ【URL】 予選通過の報酬として、五千円分の電子マネーを用意しました(直接配達されたものに関しては、QUOカードが同封されていた)
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楽園の裏では少女が眠っている ◆EAUCq9p8Q. ☆キャスター 「あなたには一度、会いたかったの。聖杯戦争とはまた別に」 最初に主催者―――プレシア。テスタロッサと卓を囲んだのはキャスターだった。 出会いがしらの彼女の一言は、キャスターにとっても興味を引かれる一言だった。 『運命』。彼女は確かにそういった。 キャスターのマスターである高町なのはのことを指したような口ぶりではなかった。 「それは、俺にか? それとも俺の逸話にか」 カマをかけるように問いかければ、プレシアはさして迷った様子もなくその手の内を晒してきた。 「あなたについて、調べさせてもらっているわ。遺伝子操作による『人間の生成』や『人格の形成』を行ったことがあるそうね」 奥に控える培養液の中の彼女の娘らしきものを一瞥し。 「懐かしい話だ。娘の蘇生を行う時に俺の逸話に行き当たったか。 だが、結果は伴わなかったようだな」 「そのようね」 その一言で思考を切り替える。 受け答えがまるで他人事だ。つまり、プレシアは人体の生成を行っていない。あそこに居る娘は人体の生成とは関係がない。 ただ、傍観者として木原マサキの逸話を探っている。 そこで思い出す。彼女の口にした『巻かなかった世界』という単語について。そして、フェイト・テスタロッサについて。 キャスターはフェイトについてすべてを知っていたわけではない。 そもそも、レイジングハートに収納されていた情報から読み取れたのは『フェイト・テスタロッサについて』とそれに関するいくつかのことだ。 プレシア・テスタロッサについてはなのは同様『事故で娘を失った人物』であり『フェイトと同姓である』ということしか知らない。 プレシアとフェイトの関係についても、いくらかの予想は立っていたが確信には至っていなかった。 だが、ここに至ってすべては確信に変わった。しかも、ある程度詳細な部分まで予測も立てられた。 プレシアにとってのフェイトはマサキにとっての八卦衆と同様だ。 必要だから用意した肉人形にすぎない。 違うところがあるとすれば、そこに情だの愛だのの下らぬ感情がはさまれているかどうか、というところだろう。 キャスターが『木原マサキの当て馬』として八卦衆を用意したように、プレシアは『死んだ娘の代替品』としてフェイトを用意した。 だが、そのプレセアは『この』プレセアではないのだ。 聖杯の知識を通してキャスターも理解していた。この世界にはいくつもの並行世界が存在するということを。 彼女の言葉とその前提に基づき考察するならば、人体生成を行ったのは別世界の……彼女の言う『巻かなかった世界』に分類されるプレシア・テスタロッサであるのだろう。 そして、その『巻かなかった世界』のプレシアが人体生成に失敗した結果がフェイト・テスタロッサであり、彼女が万能の願望器をめぐる聖杯戦争に身を投げ入れた理由でもある、と考えられる。 プレシアがキャスターを調べたのはなんらかのきっかけで『別世界の自身の娘の身代わり=フェイト』の存在を知り、人造人間の逸話を探り、造物主(クリエーター)たる木原マサキに行き会ったということ。 「それで、お前は何を知りたい? ここで俺の生体工学研究について詳細を聞いて、『巻かなかった世界のお前』と同じ道を進みたいわけではなかろう。 ならば何故俺に会おうと思った」 プレシアの目が、やや大きく広げられる。 そして、「そこまで予想がついているのなら話は早い」と話を進める。 「……思い通りの人間を作り上げた稀代の科学者(マギウス)、マサキ・キハラ。ひとつ聞かせてくれないかしら」 「なんだ」 「人間を作るとき、あなたが100を目指したとして……出来上がった人間は、100にどこまで近づいていたの?」 ぼこりと音がひとつ。 音とともに培養液の少女の口元からこぼれた泡は、大きな柱型の水槽を、上へ、上へと上っていく。 言葉を反芻し、意味を探る。 彼女の100がどこを指すのかが不明瞭だ。『人間』を作り上げれば100なのか、あるいは『人物』を作り上げれば100なのか。 それとも、人間も人物も超えた『個人』を作り上げれば100なのか。 「聞き方が悪かったわね。あなたの作った人間は、どの程度あなたの理想通りになったの? 例えば……『心』は、あなたの思い通りに作れるのかしら」 「無論作れるさ。簡単なことだ。DNAをちょいといじってやれば、人間なんて、思うがままの思考回路を与えてやれる」 「それは『思考回路』でしょう」 その一言で理解できた。 面倒な女だ、と思う。 彼女の中で答えは決まっている。キャスターがなんと答えようと、意にそぐわない答えには迎合することはないだろう。 「成程、心の複製、あるいは復元が可能ということか。 あの植物状態の娘が生前と同じ『心』を持てるか、というわけだな」 「……」 プレシアの眉間に浅く皺がよる。どうやら大正解らしい。 「確かに、俺ならば0から100を作り上げることは出来る。100に限りなく近づけることも不可能ではないだろう。 だが、もともとあった100とまったく同一の100を作るのは不可能に近い」 まったくの嘘だ。 『木原マサキ』の複製を生み出すことが可能なのだから、対象者に関する詳細な知識と相応の技術があれば不可能ではない。 だが、それをプレシアに伝えたところで彼女はまた別の前提を追加してキャスターへの問いを続けるだろう。 結局、彼女が欲しいのは『肯定』と『否定』だ。 この聖杯戦争を開くに至った彼女自身の道程の肯定と、そんな彼女の目の前に現れた彼女の道程を無意味にする存在(フェイト)の『否定』を欲しているのだ。 「……そう」 納得したらしい。 これで、彼女の言う『運命』は終了だろう。 「それで、どうだ? 『巻かなかったお前』の娘は気に入ったか?」 「……どうかしら。話してみないと分からないわ」 答えはきっと決まっている。そのくせこんな態度をとるのだから、まったく、面倒だ。 まあ、娘一人のために聖杯戦争ほど大掛かりな儀式を行うのだから、面倒な性格だなんて分かりきったことなのだが。 「話はそれだけか?」 「そうね、私的な話はここまで」 大淀と呼ばれてきた少女が運んできていた紅茶を一口含み、口元を抑え咳をひとつ。 プレシアは、長い私用を追え、ようやく聖杯戦争の管理者としての対応に取り掛かった。 「令呪はあなたのマスターに渡せばいいのかしら。だとすると、あなたのマスターを……」 「いや、お前の娘……違うな、『フェイト・テスタロッサ』に渡せばいい」 マサキが笑みを交えて返せば、紅茶を置こうとしていたプレシアの手が止まった。 「……あなたも、なにかの狙いがあって私の元に来た、ということ?」 ようやく本題だ。 マサキとしても想定外のことがややあったが、マサキがここに来た狙いは変わっていない。 それどころか、相手がプレシアと分かって更に付け込みやすくなった。 「お前がどういう意図で聖杯戦争を開き、どう動きたいのかはだいたい理解できた。 そして、お前になにが足りていないのかもな」 笑いがこぼれそうになるのを堪えながら、肘掛に肘をつく。 成功は確信している。彼女には、キャスターの申し出を断れない理由がある。 「協力者なら足りているわ。ルーラーが居れば、それだけでうまく回るようにできているから」 「クッ、裁定者が聞いて呆れるな。結局はお前の思い通りにこの聖杯戦争を進めるための手駒か」 ルーラーが管理者に加担している、というのも想定内だ。 でなければ、フェイトの捕獲令など出さない。 「だが、この聖杯戦争をお前の望む形で完遂するとなれば、ルーラーだけでは足るまい」 プレシアの眉がやや持ち上がる。食いついたのは一目瞭然だった。 「これは俺の推測でしかないが、お前は娘の復活のために聖杯戦争を完遂する必要がある。聖杯の有無は関係なく、だ。 だが、聖杯戦争に抗う者は必ず存在する。 命惜しさに戦闘から逃げ続ける奴、争いをやめろと喚きちらす奴、この町から抜け出す道を探す奴も居るだろう。 「……まあ、ただ聖杯戦争を完遂するというならば、特に問題はない。今朝のようにルーラーを使ってそいつらの始末を参加者に触れ回ればいい。 せいぜい一週間か二週間、決着が延びる。たったそれだけだ」 たったそれだけ。その一言は余程プレシアに刺さったらしい。 表情の少し変わった彼女にしっかりとした手ごたえを感じながら、キャスターは交渉の札をひとつ晒す。 「しかし、お前に残された時間はどうだ? この聖杯戦争が長引いたとして、用意した結末を見届けるのに足りるか? 『たったそれだけ』を乗り越える力が、今のお前には残っているか?」 フェイトたちが入ってきたときから何度か咳をしているのは、単にのどの調子が悪いわけではないだろう。 重く沈んだ司書室の空気にはかすかにではあるが血の臭いが残っている。口を覆ったプレシアの手元には、所々に赤黒い染みが残っていた。 聖杯戦争という自爆の可能性もある強攻策に打って出たのは、『それしか方法がないから』というわけではなさそうだ。 そこを見越し、そこに付け込む。 「……逸話以上ね」 「逸話に残る俺なぞ、所詮紙の上に書ききれた部分だけだ。 実物は逸話を容易く上回る。いつの時代の誰であろうとな」 冷めた目線がキャスターの目に向けられる。ようやく、プレシアはキャスターに向き合った。 成功の証だ。あとはキャスターが迂闊に手の内を見せなければそれでいい。 「見返りは?」 「特別なことじゃない。情報をくれればいい。俺の用意する条件を満たす参加者の情報をな」 「何のために」 「俺のためにだ。俺は聖杯はいらんが、どうしてもやらなければならないことがある。 そのためにはなによりも情報が要る。俺はサーヴァント、マスター問わず情報を集めなければならない」 「英霊の枠を超えて、もう一度冥府の王になるとでも言い始めるつもり? 言っておくけれど」 「『娘に害を与える可能性があるならば相応の対処をする』、か? 下らん脅しはよせ。なにか不都合があればそれを切るだけだろう」 それ、と言われてプレシアが右手を押さえる。 プレシアはキャスターを自由に出来る権利を有している。それを切られれば、キャスターは彼女に逆らうことは出来ない。 裸で踊れと言われれば裸で踊る。宝具を破壊しろと言われれば破壊する。自殺しろと言われれば自殺する。 事の絶対的決定権はプレシアが有している。その安心感が、キャスターとの同盟への後押しになる。 キャスターの思惑通りに、同盟を結ばせるための楔となる。 「俺がこの舞台の時計を進めてやる、お前の望む結末のために。 だから俺と組め、プレシア・テスタロッサ! 生きて娘に会いたいならば、俺を利用しろ!」 プレシアを見つめ、力強く告げる。 プレシアはやはり死人のような目でキャスターを見つめ返してきた。 「利用しろ……物は言いようね。あなたも私を利用したいだけでしょう」 「ギブアンドテイクだ。もっとも、まずお前が頷かなければギブもテイクも発生しないがな」 しばらくの沈黙。キャスターの中ではすでに、答えは見えている。 プレシアもまた、答えは決まっているはずだ。 「……話は分かったわ。ただ、あなたが私の協力者として適切かどうかは、まだ分からない」 「御託はいい。結果で示せと言うなら、さっさと指示を出せ」 再び沈黙し、プレシアはついにキャスターに対して一つの依頼を口にした。 「そうね……だったらあなたには、神様を一人、殺してもらおうかしら」 ☆フェイト・テスタロッサ 簡易的な防音魔術が張られているようで、フェイトの側からプレシアとキャスターの会話の内容はまったく分からない。 ただ、この聖杯戦争の管理者相手に不遜なままのキャスターと、どこか空ろな母が、流れる水のように会話を交わしているのはなんともおかしな光景に見えた。 キャスターが席を立ち、プレシアに背を向ける。必然的にフェイトと向き合うことになる。 「フェイト・テスタロッサ」 「何」 「喜べ。報酬の令呪はお前のものだ」 喜べ、と高圧的に言われても素直に喜ぶことはできない。 フェイトとしても身を切る思いでここまで来た。それで何もなしなら、キャスターへ抱いている複雑な感情は怒りで総括されていたことだろう。 「そして、約束どおり、俺もお前に協力してやる」 キャスターが持ちかけた『協力』とはとても分かりやすい物だった。 キャスターの手に入れた他主従の情報をフェイトとも共有するというもの。 「割に合わないか。この程度の『協力』では」 沈黙で答える。 強く期待していたわけではない。指名手配に近い形を取られているフェイトにとって、情報を交換できる相手が居るというだけでもありがたい。 それでも、心のどこかでは期待していたらしい。 キャスターも察していたと言わんばかりにフェイトと、フェイトの傍にただ立っているランサーを一瞥して言葉を続けた。 「お前の英霊は使い勝手があまり良くないだろう。 だが、お前はその英霊で勝ち続ける必要がある。果たして、それは可能か?」 キャスターにランサーの戦闘を直接見られた覚えはない。 だが、あのチェーンソーのバーサーカーとの戦いでおおまかな戦闘能力について知られてしまったらしい。 ランサーが戦闘には不向きと言うこと。宝具の解放には多大な魔力が必要であり、魔力を消耗している現状では発動に令呪が必要だと言うこと。 「だからと言って、お前の魔装一つで戦い抜くわけにもいかない。いつか必ず限界は来る」 自身の装備について考える。 バルディッシュは強い。だが、あの黒衣のアーチャーのような相手と一対一で勝てるほどではない。 これからフェイトは戦いを続け、いずれはあのアーチャーに並ぶような敵と戦う時が来る。 その時にランサーとバルディッシュで勝てるのか。 おそらく不可能だ。キャスターの言うように、勝てない相手とぶつかることが絶対に起こる。 そういった敵とどう戦うか。いつかは考えなければならないことだ。 暗い未来を示されて影の射したフェイトに対して、キャスターは得意な表情でこう宣言した。 「喜べフェイト・テスタロッサ。お前の装備を俺が強化してやる」 まるで考えて居なかった協力の申し出に、一瞬反応が遅れてしまう。 息を呑んだせいで言葉がうまく紡げない。 「強化……どう、やって」 「クク、なに、俺は生前名の知れた科学者でな、そういった類の武器を扱うのも得意なんだ。 お前が望むのであれば、お前が聖杯を得られるように『協力』してやる。そう約束したはずだ」 キャスターの逸話は知らない。何が得意かも、どういう人物かもフェイトにはまったく想像がつかない。 だが、身のこなしや戦闘に積極的ではないことから単なる魔術師ではないのではないか、というのはフェイトの頭にもあった。 もし、科学者だというのなら、その点については納得がいく。 そして、もし本当に科学者であるならば、英霊として記録されているほどの科学者であるならば、バルディッシュの性能を向上させることも容易だろう。 「更に速く、更に鋭く。簡易の魔力路も搭載し、お前にとって、そのインテリジェンス・デバイスにとっての『最強』を作り上げる。 お前が望むのであれば人を超え、音を超え、光の速度まで対応できるよう、俺が『エンチャント』してやる」 「それって……」 圧倒されるフェイトに、キャスターの言葉が放たれる。 「―――“雷”のバルディッシュだ」 その一言は、まるで雷鳴のように、フェイトの中で木霊した。 あまりに予想からかけ離れた協力の要請に、フェイトはただただ波にもまれるような心地でキャスターを見つめるしか出来ず。 そうやって十数秒何も言えずに居ると、キャスターの方(珍しく)が気を利かせたのか、こう続け始めた。 「とはいえ、諸手放しで信用はできんだろう。 もともとは敵同士だ。俺が何かを仕込むかもしれない、という懸念も捨てきれまい」 言われるとおりだ。 魅力的な協力の提案ではあるが、キャスターの得体が知れないことに変わりはない。 フェイトに報酬の令呪の譲渡をしたとはいえ、罠にはめるつもりである、という可能性もなくはないのだ。 「お前はいずれ俺のマスターと会い、俺の手が加わった装備の力を見ることになる。 そして、俺のマスターと会えばおのずと分かるだろう。俺が真に聖杯を欲さない……いや、そもそも『欲せない』ということが。 その時に決めればいい。俺の手による改良を受けるか、否か」 またしても、真意の分からない言葉が放たれる。 フェイトが出会えば理解できるとはどういう意味なのか。 言葉の通りならば聖杯を望んでいないということだが、ならばキャスターのマスターの装備の力を見る……つまり、彼のマスターが戦闘に巻き込まれると何故分かるのか。 そして何より。 「……何故」 「なに? 「何故、私とその人が出会うと言い切れるの」 「何故……何故、か。クク……」 キャスターは口の端を歪め、そのままフェイトに背を向けて歩き出す。 そして、堂々とした背中に自信すら感じさせる声色で、こう言い残した。 「確信しているからだ。俺が、そうなると」 丁度のタイミングでエレベーターのドアが開き、キャスターを飲み込む。 まるで狙い済ましたように。よく出来た演劇のように、綺麗にこの舞台の上から退場した。 本当に、得体の知れないキャスターである。 「……彼が生前著名な科学者であったというのは本当よ」 意外な声が、意外な言葉で沈黙を破った。 振り返れば、声の主である母は、まるで『何も言っていない』とそらとぼけるように紅茶のカップを傾けていた。 「……少し、時間が経ちすぎてしまったわね。 遅くなってしまったけれど、夕飯でも食べながら、話しましょうか」 【D-2/図書館 地下司書室/一日目 夜】 【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】 [状態] 疲労(中)、困惑、ストレス、魔力消費(極大)、右肩負傷(中) [令呪]残り三画 [装備] 『バルディッシュ』 [道具] [所持金]少額と5000円分の電子マネー [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争に勝利する 1.プレシアと食事……? 2.“雷”のバルディッシュ…… [備考] ※キャスター(木原マサキ)と念話が可能になりました。 ※キャスター(木原マサキ)からバルディッシュのエンチャントを申し出られました。返答は保留中です。 【ランサー(綾波レイ)@新世紀エヴァンゲリオン(漫画)】 [状態] 健康、霊体化中 [装備] [道具] なし [所持金] なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターに従う ☆キャスター 『殺してほしい神様』。 その情報は、マサキにも心当たりのあるものだった。 曰く、町の裏にもう一つの町を作るエクストラクラスのサーヴァント。キャスターが今朝丁度行きあったシチュエーションだ。 そのサーヴァントは強い力を有していながら聖杯戦争に消極的で、マスターともども自身の『町』に引き篭もっているばかりだとか。 ルーラーが調べたと言っていたが、それが本当なら確かにプレシアにとっては目の上の瘤でしかない。 キャスターに与えられた任務はそのエクストラクラス・エンブリオと呼ばれているサーヴァントの討伐だ。 キャスターもあの町には丁度用事があった。渡りに船とはこのことだ。 「アリシア・テスタロッサ……」 さらに、キャスターがもぎ取ったのはプレシアとの協力体制だけではない。 会話を通して、会話には上がらなかった情報もいくつか入手できた。 大きな収穫はアリシア・テスタロッサの蘇生方法についてだ。 あそこまでこだわりを見せている以上奇跡を用いた単なる蘇生というわけではない。 十中八九『聖杯またはそれに近い力を在りし日の魂をトレースする』あるいは『魂を復元する』という方法が本線と考えられる。 「……クク」 妙案が浮かんだ。 聖杯を踏みにじり、奇跡を汚し、『木原マサキ』が冥府の王として君臨する意外の策が。 「あるじゃないか。とびきりの『抜け道』が!」 魂なき少女、アリシア・テスタロッサ。 この聖杯戦争の結末は、肉体のみがこの地に残された彼女の復活。 彼女の『魂』……つまり、人としての『核』が外部で作られて彼女の中に注ぎ込まれるということ。 その魂の中に……『魔力核』に対してキャスターのエンチャントを用いて『木原マサキ』を刻んだなら? 勿論、聖杯戦争中や聖杯戦争終結直後は彼女が『木原マサキ』であるそぶりは一切見せない。 だが、プレシアの死後アリシア・テスタロッサは『木原マサキ』として覚醒し、次元連結システムを用いて世界を冥府に変える。 思いつく限りでこの聖杯戦争の最悪にしてキャスターの求める最高のエンディングだ。 「クックック……ハッハッハッハッハ!!」 何も約束は違えていない。 キャスターがアリシアを害することはない。アリシアは問題なく復活し、健やかに暮らし続ける。 ただ、アリシアは目覚めるだけだ。 長い夢から覚めるように、ある日突然、木原マサキとして。 プレシアが死ぬまでは、きっと理想的なアリシアとして暮らし続ける。不可能だろうとそう仕組む。 そして約束を果たしたあとでようやく、『木原マサキ』の冥王計画は完璧な形で現世に蘇る。 無論、アリシアが生きながらえられなかった時のために幾つかの保険は必要だろうが、最も理想的な形はこれ以外にない。 「踊れ踊れ。貴様の存在もまた、冥府への道を飾る石に過ぎん」 じわじわと、キャスターのための駒が手中に集まってきている。 “天”のレイジングハートを持つなのは。彼女の目的であるフェイト。 そして二人に対して念話を送ることで、彼女らの遭遇を操ることの出来る自分。この二人を利用して、多少は思い通りに戦闘を起こすことが出来る。 プレシアとの密約。情報の譲渡を賭けた依頼。アリシアを除く『木原マサキ』の予備を効率よく探すことが出来る。 そして、楽園の裏で眠り続ける少女、アリシア・テスタロッサ。彼女の存在という大きな情報は、きっと『木原マサキの予備』以上の意味を持つ。 時計を進めよう。冥王計画の時計を。 少女たちの地獄を抜け、醜い大人は仮初の天国に到達し……そして、その後に世界は冥府に変わる。 カウントダウンは始まった。刻まれていく足音は、まず楽園を目指す。 【D-2/図書館前/一日目 夜】 【キャスター(木原マサキ)@冥王計画ゼオライマー(OVA版)】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:冥王計画の遂行。その過程で聖杯の奪取。 1.可能な限りさいはて町を偵察。 2.予備の『木原マサキ』を制作。そのためにも特殊な参加者の選別が必要。アリシア・テスタロッサを奪うのも一興。 3.特殊な参加者が居なかった・見つからないまま状況が動いた場合、天のレイジングハートを再エンチャント。『木原マサキ』の触媒とする。 4.ゼオライマー降臨のための準備を整える。 5.フェイトから要請があればバルディッシュをエンチャント。 6.なのはの前では最低限取り繕う。 [備考] ※プレシアの願いが『アリシアの蘇生』であり、方法を聖杯に似た力を用いた『魂の復元』であると考察しています。 同じく、その聖杯に似た力に干渉すれば復活するアリシアを『木原マサキ』に変えることが可能であると仮定しています。 ※フェイトとの念話が可能になりました。これにより、好きなタイミングでなのはとフェイトをぶつけることが可能です。 また、情報交換を約束しました。ただし、キャスターが事実を話すとは一切約束していません。 ※プレシアから個人的な依頼を受けました。 内容:さいはて町の破壊およびさいはてのサーヴァント『エンブリオ』の抹殺。 達成条件:エンブリオの魔力が座に戻ったことをルーラーが確認する。 期限:依頼達成は二日目16時まで。報酬受け取りは図書館司書室にて二日目20時まで。 報酬:マサキの望む条件のマスター、あるいはサーヴァントの情報。 二日目終了時点でエンブリオが生存していた場合、キャスターとプレシアの司書室での一切はなかったこととなる。 また、どのタイミングにおいても、キャスターがアリシア復活を妨げる可能性があると判断した場合、プレシアは令呪をもって彼を自害させる。 BACK NEXT 037 思い出が窮屈になりだしたこの頃の僕らは 投下順 039 ああ、あの愛の喜びに満ちた 時系列順 040 外へ BACK 登場キャラ NEXT 034 もう一度、星にひかれ フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ) 049 重なる二つの願いなの キャスター(木原マサキ) 044 アリス・イン・ザ・アビインフェルノ・ジゴク -不死戯の国のアリス- プレシア・テスタロッサ 049 重なる二つの願いなの
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ネクロマンティック・フィードバック ◆EAUCq9p8Q. ◇◇◇ 数秒のうちに、すべての喧騒は消え去った。 ころころという虫の声が聞こえてくる。吹き抜ける風は冷たく、空は墨を落としたように真っ黒で。 すべてが小梅たちがようやくあの凄惨たる遊園地からの脱出に成功したことを教えてくれた。 「終わ……った?」 ほっと胸をなでおろし、そしてようやく、小梅の体が死の恐怖を思い出したように震えだした。 水に濡れた寒さもそうだが、ジェノサイドの超軌道戦闘にしがみつき続けていた疲れも酷い。 正直、限界もいいところだった。あと数分も戦闘が続いていれば、小梅は嵐に巻き上げられるように吹き飛ばされてオトモダチ同様微塵切りになっていたことだろう。 「良かった、バーサーカーさん……!」 だが、安息もつかの間のものとばかりに、実体化したままのジェノサイドが小梅に向き合い、切り出した。 「……コウメ、聞け」 ジェノサイドは、既に感覚的に理解していた。 『どうしようもないもの』が傷ついた。それは、きっとどうしようもないことだ。 たとえ令呪が残っていたとしても、こればかりは修復も効かない。 理解し、納得した。だからジェノサイドは受け入れ、こう告げた。 「もうじき消えるんだろうな、俺は」 アリスとの戦闘の傷は浅くない。特にあの、『死なばもろとも』による包囲爆撃は堪えた。 令呪三画の補助でほんの少し体を修復しエンジンを掛け直し、捕食で見た目は綺麗になったとは言え、付け焼き刃もいいところだ。 霊格の修復までは届かず、ジェノサイドのタイムリミットは少し伸びただけ。 本来ならばあの場でアリスを殺しきっておきたかったが、結果として逃してしまったのも『決定的な部分』の傷の深さ故だ。。 あとほんのすこし、余力が足りなかった。忌々しいことに。 「手を見せてみろ」 「う、うん……」 差し出された手に、隻眼のドクロとそれを取り巻く鎖めいたエンブレムはもう無い。 虎の子の令呪もすべて失い、一般人の小梅の魔力ではこの先いくらも現界は出来ないだろう。 物語の終わりは、既に手の届くところまで来ていた。 「終わりだな」 「……」 「分かるか? もうお前はマスターじゃねェ。だから……アァ……下らねえことやらずに、とっとと帰れ」 言葉はうまく紡げない。 少女を優しく諭すための言葉なんて、死んでも……いや、死んでからだって持ち合わせていない。 それでも、自身の名を呼び、自身の存在を思い出させてくれた少女のために、慣れない言葉を選んで告げる。 「分かったろ。サーヴァントなんて、碌な奴がいねえンだ。これ以上深入りすれば、死ぬのは嬢、お前の方だ」 「でも、それじゃあ、ジェノサイドさんは……」 「いいさ。俺は……せめて、俺がジェノサイドってことを覚えていけるなら。だから……」 本心だった。失って死んでいくのではなく、思い出し、忘れず、その名を呼びながら消えていける。 失うことしか出来ない死体にしては、十分すぎる結末だ。 だからもう、聖杯戦争やクソッタレなサーヴァントに関わるな。そう口にしようとして、小梅の言葉に遮られる。 「わ、私は」 ジェノサイドが別れを切り出すより速く、小梅が語りだす。 それは、『聖杯戦争』からは随分ズレた、それでも白坂小梅という少女にとっては重要な言葉。 「私は、聖杯戦争なんていいから……ジェノサイドさんと、もっと、一緒にいたい…… もっと、色んな所に出かけたり、お話したり……出来るなら、また二人で、映画を見たり…… サーヴァントじゃなくても、戦ったりはしなくても……それだけで、いいから……」 願いと呼ぶにはあまりにもささやかで。 それでも、白坂小梅という少女にとってはきっと世界で一番大きな夢。 『理解』と『共有』。 幼い日に、親から押し付けられた『異常』という枷。 白坂小梅はずっと自分が異常ではないと肯定してくれる誰かの存在を願っていた。 生者にも、死者にも出来ないその肯定をくれたのが他ならぬジェノサイドであった。 見えないものの存在を肯定してくれ。見えないものが見えていることを肯定してくれ。そしてそれを世界に対して共有してくれた。 白坂小梅という少女の存在を、友人たちとはまた別の形で肯定してくれた。 こんな限られた舞台の上ではあるが『異常ではない』と証明して見せてくれた。 ジェノサイドが居てくれる、ただそれだけで小梅はずっと救われた気持ちだった。 だから、もう少しだけ。 我儘かもしれないけれど、もう少しだけ。 終わるとしてももう少しだけ、息継ぎをすれば消えてしまいそうなこの瞬間を、二人で過ごしていたかった。 マスターとサーヴァントじゃなくたってかまわない。 一人の友人として、一人の友人の隣で、彼が消える時まで一緒にいたい。 小梅の願いは、もう、それだけだった。 「だから、終わりなんて言わないで……一緒に、帰ろう?」 「……」 少女とズンビーの間に、聖杯戦争は必要ない。 二人が出会った時点で既に二人の願いは叶っていたようなものだから。 それを確かめあうように、小梅はそっと、手を差し伸ばした。 日常を捨てざるを得なかったズンビーと、再び日常に帰るために。 「……コウメ、俺は―――」 ジェノサイドが思いを口にするのを遮るように、突然響いた足音。コンクリートに響くヒールの音。 小梅の言葉もジェノサイドの言葉も続かず。少女の夢は脆くも、夢として消え失せる。 「ああ、良かった」 小梅でも、ジェノサイドでも、当然アリスでもない声。しかし聞き覚えのある声。 この戦争は物語ではない。 この戦争は映画ではない。 悪を挫き、消滅の淵からの再起と再会に涙しようとエンドロールは流れない。 激戦を生き抜き、泣きながら生還しようとも、エンドマークは刻まれない。 激戦が終わったならば、始まるのだ。 「また取りこぼしてしまったのかと思いました」 激戦が。 更なる激戦が。 絶滅まで続く。 絶滅を告げる角笛が高らかに吹き上げられる。 満を持して現れた演者は一人、戦いの熱冷め遣らぬ舞台に上がり、拳を握り音を奏でる。 風に吹かれ翻る若草のマント、月に照らされ怪しく光る飴色のブローチ、ふわりと波打つ金の髪。そして血を吸ったように赤い薔薇。 「―――行け、コウメ」 演者の名は、森の音楽家クラムベリー。 小梅もジェノサイドもよく知る、『怪物』だ。 森の音楽家クラムベリー相手では、ジェノサイドは一方的に嬲られるだけだということを小梅も理解している。 これから先の結末を知り、襲い来るであろう理不尽な未来を知り。 それでも少女の背を押す力は、ニンジャという超越的存在の拳から放たれたにしてはあまりにも弱く、どこまでも優しかった。 「……でも、でも……」 「でもじゃねェ」 一言で切り捨てる。のっぴきならない状況、言葉を探している猶予もない。 なおも縋ろうとする小梅に手を突きつけ、ジェノサイドは振り向かぬままに言葉を捧げる。 「コウメ」 「……」 「これで終わりじゃない。いつかまた、俺はお前の名を呼びに帰ってくる。 だから、いつかまた会うために、振り向かずに走れ」 小梅の言わんとしたことを理解してか、無意識か。ジェノサイドはそう口にする。 色気のない言葉だ。だが、二人にとっては有り余るほどの思いが込められた言葉だ。 小梅は涙を拭き、突き出された手を握って「……約束、だよ」と小さく言う。ジェノサイドはただ、口元を歪めて笑うだけだった。 そして、別れは済んだとばかりに、クラムベリーに向かいなおす。 「随分準備がいいじゃねえか。俺達のケツを追っかけてやがったか」 「いえ、人と会って話をした帰りに偶然貴方の姿が目に入ったので」 「そうかよ」 息抜きがてら程度で殺しに来る目の前の存在に、つくづく呆れ、そして反吐が出る。 そうだ、こいつもだ。ジェノサイドのニューロンに鮮烈に刻まれている記憶が、アリスと同じ結論を下す。 戦闘狂いの快楽主義者。強いジツを持ちながらも暴力で相手を屈服させることと自身の優位を拳で示すことに固執する精神異常者。 チェーンソーの男もそう、アリスもそう、クラムベリーもそう。サーヴァントってのはどいつもこいつも、ニンジャめいた異常者ばかり。 迎え撃つのは本家本元正真正銘のニンジャ・ジェノサイド。 ニンジャがニンジャと出会った時、何が始まるのか。 「さあ、まだ戦えますよね。不死のゾンビと名乗っていたのですから」 「……勿論だ。てめェだけは見つけ出してサシミにすると決めていた。俺が消える、その前に」 「おや、随分嫌われたものですね」 「テメエは殺す! 俺の名を呼んだアイツを殺す!!! コウメをだ!! コウメを殺す!! 戦えねえ奴を戦いに巻き込んで、勝手に殺して、そうやって生きてきた!! 自分の欲望を満たすためだけにだ!!!」 手に持ったバズソーがギャリギャリ音を立てて回転を始める。 闘争の火蓋を切り落とす刃が小学校の舗装道路を、レンガの花壇を、校舎の壁を削りながら走り出す。 「ドーモ、クラムベリー=サン!! 俺はジェノサイド!!! てめェだけはブッ殺してやる、他の誰でもねェ、俺が!!!」 「どうも、ジェノサイドさん。私は森の音楽家クラムベリー。 さあ、共に奏でましょう、絶滅に至る狂想曲を」 わかりやすいじゃないか。ニンジャは戦うのだ。 善いニンジャも悪いニンジャも区別なく。偽りだらけのその生命が燃え尽きる、その瞬間まで。 「イヤァァァァ―――――――――ッ!!!!」 闇夜に響く絶叫は一人分。それ以外の音はもう必要ない。 その声を背に、小さな少女は走り出した。振り向かず、まっすぐ、ただまっすぐに。未来に向かって。 ◆◆◆◆◆◆◆ 蹴りを放てば飛び避けられ。 拳を放てば回って避けられ。 まるで踊るように、軽やかに立ち回るクラムベリーは、実際ジェノサイドの天敵といえた。 更に霊格への損傷もじわじわと傷口を広げていく。 バズソーをぶん回すカラテは、幾ばくかを残すばかりの寿命を無慈悲にすり減らし、物語は最悪の結末へとひた走っていた。 時間稼ぎにもならないこの状況に、怒りを通り越して笑いすら出る。 だが、まだ終わらない。まだ終われない。 まだ早すぎる。もっと、もっと、戦い続け。可能ならばこの場で殺す。木っ端微塵に切り刻む。 だが、思いだけではどうにもならない壁は、たしかに存在する。 「……やはり、貴方に期待する部分は、もう何もありません。 せめて最期は楽しく行きましょう」 無数に奏でられる音の中で、たしかに聞こえた声。 アリスから奪い取った魔力を絞り尽くす勢いで挑むジェノサイドも、クラムベリーにとっては鼻先を掠めるハエ程度の存在らしい。 「イヤァァァァ――――――ッ!!!!」得意のバズソーは空を切る。 「イヤァァァァ――――――ッ!!!!」波打つ鎖を足場に舞い上がり。 「イヤァァァァ――――――ッ!!!!」空振ったネクロカラテは地を砕く。 「イヤァァァァ――――――ッ!!!!」夕方のような遊びも見られず、指先ひとつも傷を付けられない。 「イヤァァァァ――――――ッ!!!!」それでも、攻めて、攻めて、攻め続ける。 「イヤァァァァ――――――ッ!!!!」ただ、逃げる少女を守るためだけに。ゼツメツしか出来ないニンジャが、生前から幾度か、守るためにまた刃を振るう。 音の鉄槌がジェノサイドの横腹を殴り、合わせるように繰り返される音、音、音の嵐。 まだ早い。まだ、まだ。 崩れ落ちそうな体を引きずり、クラムベリーに引き込まれるように、まるでステップを踏むように戦う。 月下で踊るように、二体の怪物が斬り合い、殴り合う。 ようやくポップス一曲分ほどの時間が経った頃、英霊の舞闘もついに終わりを迎えた。 「『内部破壊音(スフォルツァンド)』」 優しく触れる女の手。流し込まれる美しいメロディ。 絶滅を告げる喇叭の音。 世界が、揺れた。 まるで、皮膚の下をミキサーでかき混ぜられるかのような痛み。 腐乱した身体の奥、不死の核たるゼツメツ・ニンジャのニンジャソウルが直接傷つけられ、ずたずたに引き裂かれる。 不死の存在に、ついに決壊が訪れる。 消滅。 サーヴァントにとってあまりにも絶大にして絶対であるその二文字が脳裏を掠めた。 遅れて背中の腐肉が爆裂し、すぐに訪れるであろう終末の時を決定づけた。 少女と過ごしていたかもしれない余命は、ここに無残に散った。 だが、ニンジャソウルの決定的損壊を受けてもなおジェノサイドは倒れない。 食いしばった歯は既に全て砕け散った。足の先は既に敗北を認め魔力粒子へと変化を開始しているが、それでも、不死のズンビーはまだ戦うことを辞めない。 なぜなら、笑っていやがるからだ。 憎たらしい稀代の悪女が、俺を殺した愉悦とさらなる闘争への期待で笑っていやがるからだ。 まだだ、これでもまだ死ぬには早すぎる。自身に残された、ズンビーとして生きた時間の数百・数千分・数万分の一の時間に賭け、ジェノサイドはその手を伸ばす。 クラムベリーの顔色が変わる。 勝利の余韻に酔いしれる顔ではない。 不思議な顔だった。 何故、そのまま消滅するはずの木偶が、赤子のような力で自身の手を握りしめるのか、理解が出来ない、そういう顔だった。 (*1) 殺すこと叶わず。 だが、ただでは死なない。 奪っていく。森の音楽家の持つ優位を。一つの『戦争』の証を絶滅させる。 小梅の未来を苛むであろう脅威を、その手で殺す。この俺が。 「何を……」 ジェノサイドが残すのは敗北を知らせる言葉。 英霊という存在には程遠い、あまりにもありきたりな、ニンジャの辞世の句。 それでも、きっとその声が。 別れの言葉が、遠く、遠く、無事であることを願う彼女に届くように。 すべての魔力を込めて叫ぶ。 おのがうちのニンジャソウルすらガソリンとして燃やし、口の先から衝撃を放つ。 「サヨナラアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ――――――――――ッッッ!!!!!」 常人ならば肺が潰れ、臓腑を吐き散らしてもなお出せぬ程の咆哮。 内蔵を絞り尽くすようなズンビーのネクロシャウトに、『壊れた幻想』にも近い、宝具すら糧にした魔力爆発を乗せて放った大音声。 空気を震わせ建物を揺らし、ガラスや街灯を割り地を裂くほどの、最早兵器と呼ぶに近い別れの言葉。 哀れニンジャは爆発四散。 あとに残るは、霊格を失い宙に漂う魔力の粒子と、耳から血を流し蹲る勝者のみ。 【バーサーカー(ジェノサイド) 消滅】 ☆ 「……あー、キーンときた」 想像を絶するほどの咆哮に、直線距離で100mは離れていたにも関わらずその余波を受け、江ノ島盾子はそうつぶやいた。 イタチの最後っ屁と言うべきか。 少なくとも、普通の人間が間近で聞けば死ぬ程の声。放屁にしては臭すぎるか。 「いやあ、泣かせるねえ! 他人の自己犠牲ってどうしてこんなに見てて涙がでるんざんしょ!」 少女はハンカチを取り出し、わざとらしく泣いてみせ、鼻をかんでハンカチを丸めて捨てる。 関わったものたちの真剣さを考えれば、あまりにもふざけた振る舞いだったが、少女はそんなこと気にしては居ない。 バーサーカーの決死線は無駄ではなかった。 アリスという脅威を切り捨て、クラムベリーの凶手を退け、無事小梅を守りきった。 そして、アリスもクラムベリーも、おいそれと小梅を襲えぬように傷跡を残した。 ただ、彼が予見できなかったのは絶望的なまでの不条理。 彼が決死の思いで撃退したそのサーヴァントたち以外にも『無力な者』を狙う者たちがその場に居た、ということだ。 そして、いつの時代だって、死んでいる人間よりも生きている人間のほうが恐ろしい。そんな単純なことを見落としてしまったのだ。 森の音楽家クラムベリーとの会談を終えた化物は、監視カメラでその一部始終を見ていた。 自身の描いた未来予想図の、その全貌を。特等席で。 「そう。逃げられたなら、素敵な話。希望いっぱいの物語」 幕は下ろされない。 下ろすわけがない。 今回のグランギニョルの裏ですべての糸を引いた彼女が、それを望むはずがない。 少女は。 江ノ島盾子は。 超高校級の絶望は。 小梅に対して気まぐれに、アリスと、森の音楽家クラムベリーと、その他大勢の『敵』を差し向けた最大の巨悪は。 今なお愉悦で頬を歪めている。 「でも、本当にそれでよかったの?」 「お友達だなんて言いながら、自分の理想に合わない相手は切り捨てて。 自分は友達を利用して、捨て駒にして。のうのうと生き延びて。 小梅ちゃんの言う『友情』ってのは随分自分本意なんだねえ。 私様が思うに小梅ちゃん。自分のために友情を振りかざした人間は、友情に呪われるべきだよ」 きっかけなんてどうでもいい。絶望とはそういうものなのだから。 余韻も、空気も、友情も、愛も、残された意志も、繋いだ思いも、そんなものすべて関係ない。 「―――だから今回は」 だから江ノ島盾子は。 超高校級の絶望は。 「そんな白坂小梅さんのために」 甘く。 「スペシャルな!」 甘く。 「オシオキを!!」 甘く。 「用意しました!!!」 スイッチを押した。 『 G A M E O V E R 』 『 シラサカさんのだつらくがきまりました 』 『 おしおきをかいしします 』 『 超少女級のオカルトマニア・白坂小梅のおしおき 』 『 ◆ネクロマンティック・フィードバック◆ 』 ☆白坂小梅 ジェノサイドの声が聞こえた気がした。 その瞬間に、つながっていたはずの『なにか』が消えるのを確かに感じた。 それでも、振り向かずに走り続ける。ただ、ジェノサイドとの最後の約束を守るために。 友を見捨ててしまった罪悪感に心をへし折られそうになりながら、それでも駆けたのは、ジェノサイドの優しさを無駄にしないためだ。 小梅が居座っていたとして、そこに死体が横たわっていただけだ。 今から小梅が帰ったとして、何も出来ずに蹂躙されるだけだ。 だから小梅は、ジェノサイドに背を向けて、涙を流しながらもひたすらに走った。 『白坂小梅が逃げたぞ!!!!』 突如空気を揺らしたのは、機械で増幅された女性の声だった。 丁度小梅が逃げてきた小学校の方から突然名前が呼ばれ、ぎょっと見上げる。 声の主に覚えはない。だが、小学校に誰かが居たのは確実だった。 何故ならアリスが教えてくれたからだ。『エノシマジュンコ』という諸星きらりの所在をしっているらしい少女が居るのだと。 『回り込め、商店街の方に向かうはずだ!!!!』 自身の向かう先を言い当てられ、再び心臓が握りつぶされるような感覚に陥った。 ひとまず商店街近くの自身の住居に戻って朝を待とうと思っていたのだが、それは既に見透かされていたらしい。 追っ手が来る。アリスや、オトモダチや、クラムベリーのような『怪物』たちが追ってくる。 姿の見えぬ追跡者の足音が聞こえた気がして、跳ねるように走り出す。今までよりもずっと速く。少しでも声の主から離れられるように。 生まれてから今日まで、『見える』というのは白坂小梅にとって普通であった。 それが普通だったからこそ、白坂小梅は非凡であり、ほんとうの意味で打ち解けられる人物との出会いは希少であった。 いつだって『見えて』しまっていた。 白坂小梅はアリスの『オトモダチ』が最初から見えていた。 白坂小梅は突然現れたジェノサイドに対してなんら疑問を抱かなかった。 白坂小梅は『あの子』とともに、アイドルになるまでも楽しく過ごしていた。 そう、日常的に見えてしまっていた。だから、分からない。見えてしまうから分からないのだ。 「お嬢ちゃん、どうしたの? ずぶ濡れじゃないか」 声を掛けられて跳ね上がり、呼びかける声を背に受けながら別の進路に切り替える。 他のマスターが一目見れば「警官のNPC」だと理解できるそのNPCから少しでも距離を取ろうとして、あがった息と早鐘を打つ心臓に更に鞭を打って走り出す。 すれ違うすべてのNPCから距離を取りながら、少しでも人気のない道を通り、希望を目指して逃げ続ける。 白坂小梅には分からない。 眼の前に居る人物が生きている人間か、NPCか、それとも放送の主が送り込んだ『怪物』なのかが分からない。 今までの彼女ならばそれでもいいとマイペースに歩いていただろうが、スイッチは押されてしまった。 狙われているという事実。アリスとの交戦。ジェノサイドの消滅。すべてが彼女の思考から余裕を根こそぎ奪い去った。 すべての死者との思い出の反動が、白坂小梅を逆に縛り上げ、その自由を奪っていく。 見回せば、生き物全てが敵に見える。周囲にはもう絶望しか無い。 信じられるもののない絶対的な孤立だけが、白坂小梅の現在だった。 白坂小梅は存在するかも分からない敵に怯えながら、ただひたすらに、まだ見えない希望に向けて走り続けた。 人気のない道を走りながら電話を鳴らす。防水加工の携帯端末はちゃんと動作してくれていたが、それでも相手は出てくれない。 高町なのはも。雪崎絵理も。聖杯戦争のマスターである二人には結局繋がらなかった。 それでも足を止めず、ただひたすら、走って、走って、走り続けた。 信じられる場所を探し、信じられる人に会うために。 いつかまた、ジェノサイドと再会し、名を呼んでもらうために。 小梅にとっての希望。 ジェノサイドの消えた今、頼れるものは少ない。 そんな小梅にも、この怪物ばかりの舞台の上で、絶対に敵ではないと言える心当たりが……いや、心の支えがあった。 彼女たちが味方であるということは、きっと事実だとわかっているから。 聖杯戦争が始まるずっと前、NPCとしてのんびり過ごしていた頃から一緒に居た記憶がある。 毎日学校で会っていたし、毎日他愛もないおしゃべりをした。 二人との生活を思い返せば、濡れ鼠な体にも熱が湧いてきた。 吹けば消えてしまいそうな小さな火は、それでもまだ、小梅を照らし返してくれている。 小梅はただひたすらに、その小さな火に向かって走り続けた。 人目につかぬよう小道を走り、見覚えのある道をどんどん進む。 息はとっくにあがっていたけど、それでもなんとか、立ち止まらず、振り返らずに走り続ける。 彼女たちに会えれば、きっとまだ走り続けられる。 ずっと一緒に培ってきた信頼が、小梅にまた走る力をくれる。 そうして、商店街に向かっているだろう敵の手をすり抜けて。 二人に少しの間だけのお別れを言って。 そして小梅はまた走る。走っていく。ジェノサイドと出会ういつかに向かって。 階段を登り、部屋番号を確認して、ドアを開け――― ◆◆◆ 「これは悪い夢だ」 小さな声で誰かが呟いた。誰だったかは分からない。 でも、その一言で世界は崩れてしまった。 ◆◆◆ 「間違っていたんだ!」 叫び声で目を覚ます。 いつかの日、いつかの朝。歯車の狂い始めた時。 見覚えのある男性が、見覚えのある女性につばを飛ばしながら叫んでいる。 「最初から狂っていたんだ!世界が歪んでしまっていた!僕達の価値観が底の底からおかしかった! 見てみろ!この世界は僕らを笑っている!ずっと、ずっとだ!出口のない迷路で迷う様子を見ながら笑っていたんだ! やり直すんだ!もう僕達には未来を選ぶ道は残っていない!」 酒に溺れた男はわけの分からないことをまくし立てながら酒の入ったコップを投げつけた。 身をすくめた少女の随分向こうの壁にコップがぶつかり、音を立てて割れてしまった。 少女の体にこびりついたアルコールの匂いが、鼻の奥で思い出された。 その間も、男は意味の通っていない言葉を口にし続けている。あの頃のように。 単純な罵り合いもあの頃の少女にとっては難しい言葉の羅列で、言葉の意味はわからないけどその奥に潜んでいた感情は理解できた。ぼんやりとそう記憶していた。 「やり直せるのかなんて分からない。それでもやり直すしかない。それがどれだけ私を傷つけるのだとしても! さようなら、さようなら、さようなら。体を縛り付ける重力から切り離されて、一人ぼっちの旅に出る。皆前に進むから振り返った先には誰もいない! いつか出会える過去をやり直すために、後ろ向きにエンジンを吹きながら私の人生は深く深く沈んでいく!」 女が頭をおさえてうずくまり、ヒステリックに叫ぶ。耳に刺さるような叫び声だった。 酔っ払った男が更にまくし立てながら女に近づき、女も掴みかかるような勢いで男に迫って叫ぶ。 「やり直すんだ!」「やり直すんだ!」「やり直すんだ!」「やり直すんだ!」 「やり直すんだ!」「やり直すんだ!」「やり直すんだ!」「やり直すんだ!」 堂々巡りの言い合い。何度も、何度も、繰り返された光景。その一つ。 「やり直すんだ!世界を!」 「やり直すんだ!現在を!」 酔った男は、小梅の父で。 叫ぶ女は、小梅の母で。 うずくまる少女は、白坂小梅で。 いつからだっただろうか。 白坂小梅は、現実を否定されていた。 その光景は、そんな否定の始まりの一ページ。 古い記憶が、まるで暗い色を伴ってせり上がってくるように、小梅の内側から不快感を伴って湧き上がってくる。 否定され続けていたころの自分を無理やり引きずり出されたような感覚だ。 未熟だった頃には目を背けられていたその感覚は、幸せになってしまった小梅の精神には、とても強く、とても重い 帰りたい。真っ先に思い浮かんだ感情が、それだった。 帰りたい。ここは白坂小梅の居る場所ではない。ここは既に通り過ぎた場所だ。 立ち止まらずに駆け抜ける。救われるはずの未来に向けて。 「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」 「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」 だが、白坂小梅を否定する過去が、まるでスプラッタ映画の怪物のように白坂小梅を追いかける。 刃物よりも鋭い凶器を振りかざしながら、白坂小梅の背中を追ってくる。 父母が否定した。医者が否定した。友人が否定した。親族が否定した。 否定されたすべての過去が、形を持って小梅を飲み込もうとする。 小梅はただ、願いながら走り続けるしかなかった。 帰りたい。帰りたい。 願いが通じたのか、白坂小梅の目の前が突然一気に開けた。 そこは、小梅の務めるアイドル事務所の、仕事の前に皆が集まってのんびり過ごす一室だ。 ずっと走っていたはずなのに、実際の小梅はお気に入りのソファーの上で横になっていた。 見回しても、あの怪物は居ない。 あるのは色々なアイドルの笑顔で埋め尽くされた写真とか、これからの未来を書き記したスケジュールボードとか、そういうものだけ。 涙が流れていた。体はびしょ濡れのままだった。 白坂小梅はきっと、ここに居ていいのだと、ほんわかとした空気が教えてくれているようだった。 扉を開けて、二人の少女が入ってくる。 見間違えるはずがない。輿水幸子と星輝子だった。 悪い夢だったんだろうか。 わからないけれど、それでも、二人を見るだけで心は温まった。 二人と一緒ならどこまでだって走っていける。 「幸子ちゃん、輝子ちゃん!」 でも。 「やり直しましょう。結局最初から何一つ上手くいったことなんてない。 こんなことなら最初からなにもなかったことにしたほうが良かった。 世界はきっと生まれることを望んでいなかった。だからもう一度帰るんです。あの日見た黄昏の向こうに。ボクたちの居るべき場所に」 それでも。 「やり直そう。こんな世界はやり直そう。私達の世界に光り輝くものなんてなかった。 それはきっと私達が生まれるずっと昔に誰かが奪いあげて隠してしまった。蠍の火はもう輝いていない。 歩き続けるのに疲れてしまうなら、いっそこんなもの、すべてやり直してしまうしかない」 世界は牙を剥いてきた。 一瞬で、優しい空気に包まれていた世界が塗り替えられていく。 壁中に広がるのは無数の目と口。恨むように小梅を見つめ、呪うように否定の言葉を口にする。 世界で一番大事な二人も、合わせるように口にする。 「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」 「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」 涙が溢れた。二人の顔でそんなことを言わないでと叫びたかった。 でも、心の叫びを形にする余裕なんかなくて、小梅は必死に二人を振り払って走り出した。いつかあると夢見た、幸せな未来へ。 帰りたい。帰りたい。帰りたい。 どこへ? 分からない。昨日までそこにあったはずの、いつかそこにあるはずの場所へ。 受け入れてくれた人たちのもとへ。でも、それがどこにある? ひょっとしてそれは。 小梅がただそこにあると思っていただけで。 最初から存在していなかったのでは。 考えた瞬間、最後の力が抜け、小梅はもうその場にへたり込むことしかできなかった。 「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」 「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」「やり直すんだ」 否定。否定。否定。 取り囲むすべてが、今まで小梅を肯定してくれていたものたちが、これから小梅を肯定してくれるはずのものたちが、白坂小梅を否定する。 カツンと音が一つ。否定を打ち破るような赤い閃光。 舞い散る火花を思い出し、ぎゃんぎゃん回る鉄の刃と小梅の背を押してくれた力強い肯定が蘇る。 そう、きっと彼なら、こんな状況でもぶち壊してくれる。 止まらないと決めた歩みを止め、振り向かないと決めた心を曲げて振り返ってしまう。 きっとそこに居てくれるはずの、彼の名を呼んで。 「ジェノサイドさん!」 ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ 「あなたの悪い夢も、きっと覚めるよ」 はっきり聞こえた彼とは別の声。ちょっとだけ現実に戻れそうになる心。 「『死者行軍八房』」 でも、小梅の心が現実に戻ることはなかった。気がつけば、小梅の胸からは赤く染まった何かが突き出ていた。 それが日本刀のようだと気づいたときには、白坂小梅の現実はもうすべて終わっていたからだ。 【白坂小梅 躯人形化(実質的敗退)】 ◆◆◆ ☆アサシン NPCの少年の首にぶら下がっていた伝言は、参加者の情報だった。 諸星きらり、双葉杏、白坂小梅、蜂屋あい、木之本桜。短期間によく集めたものだと思う。 一部の参加者についてはサーヴァントの情報、拠点、今後の行動方針の予想についても書いてあった。 何を意図したものかは分かる。暇なら殺せと言っているのだろう。 どれほど信じたものかは分からないが、少なくとも「蜂屋あい」「木之本桜」についてはアサシンの知っているとおりだったし、双葉杏なる少女も索敵の際に見かけたとおりの見た目だった。 山田なぎさよりも随分そりの合いそうな奴が居たものだと思いながら、貰えるものは貰っておけと情報に目を通す。 一人だけ、随分わかりやすい標的が居た。 サーヴァント・バーサーカー、脱落済み。今後の方針、拠点へ帰還。拠点の場所、判明済み。 特殊技能、心霊関係への知識のみ。身体的に優れた特性なし。 顔写真付きで誤殺の心配もない。そして、アサシンの知っている情報との食い違いもない。 「白坂小梅」 その名を口にする。随分可愛らしい名前だな、と思いながら思考を巡らせる。 どうやら彼女の友人二人も聖杯戦争の参加者の可能性があるらしい。 襲いやすさと同じくらいその点も魅力的だった。 白坂小梅を利用すれば、生存中のマスターを躯人形にできる可能性がある。 そうすればサーヴァントを芋づる式に引っ張れるかもしれない。悪くない相手だと思えた。 時間を確認する。山田なぎさと別れてから随分と経つが、もう少しくらい遅れたところでなんら問題ないだろう。 ◇◇◇ 教えられた拠点に来てみたが、どうにも様子がおかしい。 アサシンの鈍い感覚でも分かるくらい、その拠点には魔力が溢れていた。 部屋全体を包み込むような感じから察するに、キャスターのクラスの陣地が張られていると見てまず間違いないだろう。 白坂小梅の情報とは随分食い違う。ひょっとして担がれたか。表札に世帯主の名前は入っていない。 考えられるのは、情報提供元の人物のサーヴァントの陣地である可能性。餌をぶら下げてアサシンをおびき寄せ、自分の陣地に引き込もうという魂胆か。 どうしたものかとしばし考え、八房を抜き払う。まるでランプの魔人のように、傍に躯人形が現れた。夕方手に入れた壮年の男性、アーチャーだ。 あまり危険を犯すつもりはないが、来たついでなので躯アーチャーを利用して陣地の効果を探っておく。 読み通りサーヴァントを囚えるたぐいの陣地ならば、ただの人間と変わらないスペックしか出せないアーチャーでも反応するはず、という見込みだ。 躯アーチャーが奪われてしまうのは痛手と言えば痛手だが、貰った情報でトントン程度の痛手だ。 アサシン自身はいつでも離脱できるように、八房の射程内でできるだけ遠く、それも扉の見えない位置に陣取る。 戦闘に備えてお菓子をひとつまみ。薬が巡って感覚が冴える。 さあ、鬼が出るか蛇が出るか。 「アーチャー、お願い」 声に従い、躯アーチャーが扉を開いた。一秒、二秒、三秒。躯アーチャーの姿に変化はない。 陣地の効果どころか風すら吹いていないという風の立ち姿だ。 八房で指示を出し、一度陣地に入らせる。離脱防止の魔術はかけられていないようで、出入りは自由だった。 調度品を持って出ることも可能。家の主は不在で間違いないらしい。 逆に不気味に感じながらも、屋根を伝って少しずつ陣地の入り口を視界に入れていく。 瞬間。躯アーチャーの持ち出した調度品に手が置かれた。 動きを止めて身を隠し、様子を見守る。気配遮断が働いている限り、一方的に見つかることはまずないはずだ。 手を置いたのは女性だ。それも随分若い。次に見えたのは、肉を持った逆の手。そして流れるような黒髪。その後でようやく顔。 「……え」 困るから持っていくな、と言っているんだろう。 なんと伝えるべきか迷うように、難しい顔をして何も言わないアーチャーと見つめ合う女性。 服装は随分今風だが見間違えるはずがない。彼女はアサシンの姉、アカメだった。 一瞬だった。 薬物によってもたらされた超人的な身体能力でまさに瞬き一つの間に距離を詰め、アカメが身構えるよりも速く彼女の利き腕を切り捨てる。 それから、様々な考察が頭を巡った。アカメが居る理由、陣地と彼女の関係、アカメの立ち位置、他にも幾つか。 だが、『殺せる瞬間を見逃さない』という暗殺者として培われた技術と、『アカメの隙』という天から降って湧いた好機でそれらは思考の端に追いやられていた。 アサシンの胸で早鐘を打つ鼓動の理由は、歓喜と興奮、今はもうそれ以外にない。 完全に虚を突かれたらしいアカメは、目を丸く見開き、大好きな食事も手放して切り落とされた利き腕の肩を抱いていた。 「クロメ……? なんで、ここに……」 「当然居るよ。妹だもん」 アカメが飛び退り、部屋の奥に置いてあった『一撃必殺村雨』を取ろうとする。 だが、遅い。 「良かった」 アカメが刀身を見せるより速く、抜きっぱなしの八房がアカメの白い喉に突き刺さる。 耳障りな音がアカメの口から漏れ、同時に突き破った喉の裏側と口から血が溢れだす。 空いている手で村雨に伸ばそうとされている手を捕らえ、勢いに任せてアカメを押し倒す。 抵抗する力は強いが、薬物で向上したアサシンを押し返すほどではない。 「ずっとこうして、あげたかった!」 刺した八房を抜き、念入りにアカメの首を刎ね飛ばす。たかだかと舞い上がる血しぶきが空間を汚していく。 二度、三度と地面を跳ねて転がったアカメの首は、壁にぶつかってすぐに止まった。 体の方はそれでも抗うかのようにしばらく暴れていたが、十秒もしないうちにおとなしくなった。 「おかえり、お姉ちゃん」 死体の修復は得意だ。首が落ちたくらい、なんてことない。きっと綺麗に縫合できる。 そうすれば、姉妹ずっと一緒に居られる。いつまでも、いつまでも。もう離れることはない。 「おいアカメ、今の音―――」 やけにだだっ広くなった空間の向こう側、扉が開かれて数人の影が現れる。 その光景は、もう、奇跡と呼ぶしか無かった。 扉を開けたのはウェイブで、その奥に居るのもどれも見知った顔ばかり。 口からは自然と笑い声が溢れ、体は放たれた矢よりも速く動いた。 まずウェイブの心臓に深々と八房を突き立てる。奥に居たエスデスの腹を裂く。 流れるようにセリューを、ボルスを、Dr.スタイリッシュを、ランを殺し、ついでにタツミを殺しておく。 「よかった、丁度足りるね」 アサシンにとって大切な人と、大切な人にとって大切な人。ちょうど八人。 八房はきっと、そのために、八つのストックを有していた。血塗れの刀身を抱きしめ、夢のような世界に浸る。 周囲に転がる死体の数々、もう二度と離れることのない大切な人たち。 転がっていたアカメの首を抱きかかえる。血を吸った長い髪がべちゃりとスカートに張り付く。 アカメの長くて綺麗な髪は好きだった。だから血で傷んでしまう前に、髪をちゃんと洗ってあげなければ。 他の皆も、八房に収納するのは当然として、傷口が目立たないようにちゃんと整えてあげたい。そうだ、生前そのままのボルスを家に返してあげれば彼の妻子も喜ぶだろう。 素敵な世界が幕を開ける。アサシン―――いや、少女・クロメの人生は、ここからようやく始まる。 「これで皆、ずっと一緒だよ」 冷たい刃の突き刺さるような感触。体の内側から広がる痛み。 薬物の中毒症状。この夢をかなえるために払った代償。その痛みすらも誇らしい。 壁に背を預け、大きく息を吐く。生前から背負い続けた夢という名の重石が、ようやく外れた。 抱きしめたアカメの頭の感触が、とても心地良い。このまま、ずっと眠っていられるくらいに。 …… 一つ。もう一つ。また一つ。 聞き慣れた足音が幸福の扉を叩くように一定間隔で近づいてくる。 眠ってしまいそうな中で目を開けば、傍に立っていたのはクロメの大事な人の中の誰でもない。躯アーチャーだった。 躯アーチャーの目が赤く光る。 クロメの頭の中を支配していた多幸感が消え、痛みだけが残った。 周囲には誰もいない。大事に抱きかかえたはずのアカメの首もない。 走り回って刀を振り回して、死体をいくつも積み上げたにしては綺麗過ぎる部屋の真ん中にアサシンは居た。 どこかの少女が暮らしていたのだろうか。可愛らしい小物が幾つか置いてある。 飾られた写真立てには三人の少女が笑顔の花を咲かせていた。 突然の状況の変化に困惑しながらも、状況を推察する。 躯アーチャーの今の動き。あれは、アサシンがNPCの少年相手に試した躯アーチャーのスキルだろう。 催眠状態の相手に何も効果のない催眠術を重ねがけして上書きし、そして何も効果のない催眠術を解除して元の催眠術ごと解く。 死体が口をきけたならば催眠術も有効利用できたのだろうが、結局できるのはこんな何の役にも立たないと思っていた技だけだとがっかりしたものだ。 「そっか」 推測が結論を導く。クロメの現実。それは躯アーチャーだ。 せこせこ走り回って、情報を嗅ぎ回って、ようやく一人を殺せて。でも、得られた死体はほとんどただの人間で。 今もまた、別の参加者に顎で使われて、一人を殺すために走り回って。 デコイ程度の扱いで出していた躯アーチャーが居なければここで死ぬまで幸せな夢を見続けることしか出来ない、弱い、弱い、サーヴァント。 「ごめん、ありがとう。このまま催眠をかけておいて」 躯アーチャーは何も答えない。死人特有の淀んだ瞳で星空の向こう側になにかを探すように虚空を見つめている。 呆然と立ち尽くし、力を奪われ、夢見るようなその姿。先程までのクロメをそのまま見せられているような、そんな姿。 ようやく、頭が回りはじめて、冷静さを取り戻した。携帯している袋からお菓子を一掴み取り出し、口にぶち込んで噛み砕き飲み込む。 幸せの証と思い込もうとした鬱陶しい痛みは消えた。 残ったのは、苦い、苦い、死よりも苦い、精神を陵辱された不快感。 「そんなに都合よくいかないって……十分分かってたつもりだけどなあ」 アカメが偶然NPCとして存在していて。 イェーガーズが奇跡的に全員NPCとして存在していて。 全員が同じマンションの一室に詰まっていて。 そしてクロメが彼女たちを殺せて。八房に彼ら彼女らをストックして大団円。いつまでも、いつまでも幸せに暮らせる。 そんな素敵な物語が、アサシンの人生に一度でもあったか。 そんな夢物語が、この世界にあると信じていたのか。 なぜそんな奇跡を信じた。殺すことで生きてきた、世界の過酷さを理解している、アサシンが。 「これは悪い夢だ」 噛みしめるように、一言呟く。こんな甘美な夢に騙されないように。 もう二度と、奇跡の幻想に支配されないように。醜悪な姿を晒して死ぬことなど無いように。 抜き払ったままだった八房を構え直し、躯アーチャーの持ち出した調度品――鏡に映ったクロメ自身を斬る。 幸せに酔った少女・クロメの幻影は消えた。ここに居るのは影から影へと消えていく暗殺者・アサシンただ一人。 聞きなれない足音が聞こえてきた。誰かがまた、この世界に惑わされているらしい。 抜き払ったままの八房を携え歩を進める。 振り向いた少女は見知った顔。白坂小梅に違いない。 ◇◇◇ 『誰かの家に構築された陣地』を後にし、夜の街を駆ける。 やるべきことは幾つか増えた。 小学校でアサシンに情報を与えてきた人物の殺害は急務。 アサシンの姿を見られているのだ。言いふらされる前に始末しておきたい。 一日でマスター五人の素性を洗い出した情報収集能力を買い手を組むにしても、いつでも殺せるように正体を特定しておく必要はある。 マンションに陣地を構築している主従の殺害。 拠点がわかっているならば、ある程度の絞込はできるはずだ。 陣地が広がるようならばさっさと殺しておきたいものだ。 幸いにして、拠点の主の特定に使えそうな物も入手できた。置いてあった三人の少女の写真だ。 白坂小梅を除く二人のうちのどちらかが主なのだとすれば、白坂小梅の躯人形を利用して二人とも殺害すれば話は早い。 逆に、マンションの陣地を利用するという手もある。 躯アーチャーにはあの陣地は効果を発揮しない。ならば、あの陣地内で待ちに徹していれば無防備な参加者を強襲しやすくなるだろう。 とはいえ、マンションの一室のみという狭さとマンションの主と鉢合わせてしまう危険性を考えるとおいそれと使える手ではないが。 音を操るアーチャーへの対処。 殺すと見栄を切ったのだ。殺せる準備は必要だろう。 白坂小梅殺害の罪をアーチャーにかぶせ、マンションの主従をぶつけるというのも手の一つか。 そしてアサシンのもう一人の目撃者……権田原ジェノサイド太郎の家族の抹殺。 本人は斬り殺したが、本人の縁者が彼の死を警察に届け出て、アサシンが指名手配を受けるような事態は避けたい。 ならば一族郎党皆殺しに限る。口封じは得意だし、気配遮断で見つかりにくい。権田原という名字と家族構成を聞いているので目星も付けやすい。 と言っても、これはもうついでのついでくらいでいいだろう。 保留にしてきた大道寺知世のこともある。 放っておいた甘ちゃんマスターのことも気にかかる。 やるべきことはどんどん増えていく。だが、その分自分の手で掴む勝利も近づいてくる。 今度はあんな誰かの夢ではなく、自身の手で、自身の夢を掴み取る。 「帰ろっか」 返事はない。でも、たしかにそこに二人居る。 夜を駆けるには少々の大所帯。月光を受けて八房が煌めけば、そこにはまた、孤独な少女が一人きり。 辛くも幻影を斬った少女は、戦果を手に主のもとに帰還する。 【C-3/輿水幸子のマンション付近/一日目 夜】 【アサシン(クロメ)@アカメが斬る!】 [状態]実体化(気配遮断)中、精神不安定、強い不快感 [装備]『死者行軍八房』 [道具]142 sの写真 [所持金] [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を取る。 0.幸せな夢に自己嫌悪。 1.戦闘の発生に注意しながら撤退。 2.マスターのもとに帰る。その時のマスターの様子次第で知世を躯人形に。 3.アサシンらしく暗殺といった搦手で攻める。その為にも、骸人形が欲しい。 4.とりあえずおとなしく索敵。使えそうな主従を探す。白坂小梅を利用して……? 5.アーチャー(クラムベリー)は殺したいけど、なにか方法は…… 6.小学校の情報提供者の正体を探り、利用するか、始末するか。 [備考] ※木之本桜&セイバー(沖田総司)、アーチャー(クラムベリー)、江ノ島盾子&ランサー(姫河小雪)、双葉杏&ランサー(ジバニャン)、高町なのは、蜂屋あい&キャスター(アリス)、大道寺知世、諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈)、輿水幸子を確認しました。 小学校に居た何者か彼女に姿を見られたことを知りました。142 sの写真で白坂小梅の友人二人の姿を知りました。 ※八房の骸人形のストックは弐(我望光明、白坂小梅)です。 我望光明の『赤い目の男』スキルの応用により精神支配や幻覚を一時的に無効化できます。 ※B-3(廃工場地帯)でアーチャー(森の音楽家クラムベリー)の襲撃を受けたという情報を流すと宣言しました。 どの程度流すかはその時のアサシンのテンションです。もしかしたらその場しのぎのはったりかもしれません。 ※アーチャー(クラムベリー)と情報交換しました。どの程度聞いたのかは後続の書き手の方にお任せします。 ※アーチャー(クラムベリー)と敵対しました。彼女が『油断や慢心から一撃を受ける可能性』と『一撃必殺の宝具ならば簡単に殺せる可能性』を推測しました。 ※C-3マンションの一室(幸子の部屋)に特殊な陣地(?)が展開されていることを知りました。 【地域備考】 輿水幸子の部屋はクリエーター(クリシュナ)の手によってほとんどが幻想世界に作り変えられました。 系統としては『認知の浅瀬』に最も近く、侵入者の『認知』によってその性質が確定します。 わかりやすく言えば、ニュートラルな状態から陣地を認識した人物の認識を反映し相手の過去の「一番弱い部分」を陣地に投影し、精神を折りにかかってきます。 それはとても幸せな夢かもしれませんし、とても辛い現実かもしれません。無意識の恐怖かもしれませんし、なんてことのない日常かもしれません。 対魔力あるいは精神耐性で精神ダメージ緩和可能です。サーヴァントでも長時間影響を受ければ再起不能になる反面、人間でも突破可能です。 精神にひとかけらも弱い部分がない人物が踏み込んだ場合、クリシュナの用意した『よくわからない世界』に叩き落されてなんか認識をジャックされます。 精神が存在しないものが踏み込んだ場合、そこはただのカワイイ幸子のマンションの部屋でしかありません。これが先述の『ニュートラルな状態』です。 幸子の部屋の改造完了に伴い陣地は徐々に拡大し、いずれマンションを飲み込み、エリアを飲み込み、舞台すべてを精神世界に塗り替えます。 なお、不用意に踏み込めば当然幸子もこの精神攻撃の対象となります。 ☆森の音楽家クラムベリー 真名を晒すということは、逸話を晒すということだ。 逸話を晒すということは、すべての過去を曝け出すということだ。 ジェノサイドは『森の音楽家クラムベリー』という名を聞き、その逸話をおぼろげながらに思い出していた。 小梅の三つの魔力とアリスのMAGはサーヴァント・ニューロンの奥底から、真っ先にその逸話を掘り起こし、備えさせた。大切な者の身に差し迫る危険を切り抜けるために。 そして、最期の瞬間に、その逸話に目掛けて『絶滅』を挑んだ。 アーチャー・森の音楽家クラムベリーの逸話、『森の影に隠れている人物の鼓動すら聞き分ける超聴覚』。 その超聴覚によって相手の機微を読み取り、相手の居場所を察知。アーチャーの立ち回りの基本とも呼べる武器の一つだった。 今までもその長所を逆手に取られそうになったことはあっただろう。 魔王塾主催の催事となれば、森の音楽家クラムベリーの名を聞いて対策を打つ魔法少女も少なくなかったはずだ。 そんな相手ならばアーチャーも油断はしなかった。 超聴覚で接近を察知、何か不穏な動きがあると察すれば衝撃音波を壁のように展開して耳を襲う音撃を緩和。 また、相手がまるで知らぬ相手ならば彼女だって警戒はしただろう。 決して油断せず、完全勝利を目指して音楽を奏で続けただろう。 だが、今回は勝手が違った。 アーチャーは『ジェノサイド』という真名を聞いた。彼の立ち姿を見、拳を交えた。 そして彼女もまたジェノサイドと同じように、英霊として、相手の真名から逸話のあらましについて当たりをつけていた。 不用意に近づけば食われるという危険は理解していたし、武器が回って切り裂くだけの単純なバズソーだということも知っていた。 そして、危険がただそれだけのサーヴァントだと認識していた。ニンジャの見せるカジバヂカラを甘く見た。 相手のことをよく知っていたからこそ油断し、慢心し、最後の一撃を許した。 死んだ、殺したと思った敵が、サーヴァントとしての核を打ち砕いたはずの相手が。 まるで蘇ったように――いや、彼の宣言通り死すら乗り越えた『不死のズンビー』であるように立ちはだかり。 勝利の余韻に酔う彼女に向けて、当たり前のようにオタッシャシャウトした。 アーチャーの両耳は、人間の数十倍数百倍の聴覚を持って、地をえぐりガラスを割るほどの魔力の篭った爆音を聞き届けた。 超聴覚は蹂躙され、脳は魔法少女の顔面パンチの比ではないほどに揺さぶられた。 あまりの声の大きさに聴覚器官がほどなくして破壊されてしまったのはせめてもの救いだったのか、それとも地獄の幕開けか。 彼女は、生まれて初めて無音の世界に蹲る。 吐けるものなどないはずなのに吐瀉を続け、両目からは涙、両耳からは血がとめどなく流れ続ける。 身体は小刻みに痙攣し、脳は未だに揺れ、意識は混濁したままだ。 勝者は彼女だ。それは依然変わりない。 だがその姿は紛れもなく敗者のそれであり、そして同時に、少女のために戦ったズンビーの残した勝利と、『絶滅』の意思を表していた。 【D-2/小学校/1日目 夜】 【アーチャー(森の音楽家クラムベリー)@魔法少女育成計画】 [状態] 魔力消費(小)、意識混濁、両聴覚器官破壊(極大・魔力で治癒中)、聴覚異常(極大) [装備] なし [道具] なし [思考・状況] 基本行動方針: 強者との闘争を求める 0.――― [備考] ※木之本桜&セイバー(沖田総司)、江ノ島盾子、蜂屋あい&キャスター(アリス)、高町なのは、アサシン(クロメ)を確認しました。 ※フェイト・テスタロッサを見つけてもなのはに連絡するつもりはありません。 ※小学校屋上の光の槍(フェイト)を確認しました。 ※江ノ島盾子・アサシン(クロメ)とそれぞれ情報交換しました。どの程度聞いたのかは後続の書き手の方にお任せします。 ※アサシン(クロメ)から暗殺を宣言されました。ちょっとワクワクしています。 ※バーサーカー(ジェノサイド)のオタッシャシャウトによって両聴覚器官を破壊されました。 魔法少女の特性上魔力によって復元可能ですが、ある程度復元するまでほとんどの音を聞き取ることが出来ません。 また、復元後も昔と同じように音が聞こえるとは限りません。 ☆アリス 頭がずっとぐるぐる回っているみたいだし、胸がずきずきと痛む。 顔はずっとひきつってるみたいだし、涙まで流れている。 それはたぶん、生まれて初めてのこと。そんな気がする。 ほうほうの体で逃げ帰る。 オトモダチはほぼ全員居なくなり、遊園地は大部分が壊されてしまい、アリス自身も左肩から先が無くなってしまった。 痛いし、辛いし、悲しいなあ、と思う。 「エノシマジュンコチャン?」 沈んだ気持ちのまま江ノ島盾子と別れた警備室に帰ってみたが、彼女の姿はなかった。 代わりに、彼女の身辺警護として置いていった屍鬼が手紙を預かっていた。。 広げて読んでみる。短く「新しいお友達を連れてきてあげる」と書いてあった。 なんと江ノ島盾子は少なくなったアリスのオトモダチを増やしてくれるらしい。 その優しさがとっても嬉しくて、江ノ島盾子のことがまた少しだけ好きになった。 そう言えば、あの二人と戦う前もそうだった。遊びに行く前に江ノ島盾子が教えてくれたのだ。 全員連れていかずに、何人かはオトモダチが増えたときのために隠しておくといいよ、と。 そうした方が、何かあった時に都合がいいから、だって。 何かあった時というのがわからなかったけど、ひょっとしたらこういう風にアリスのオトモダチの数が減ってしまった時のことだったのかもしれない。 ずいぶん少なくなってしまったアリスのオトモダチ。でも、ゼロになったわけじゃない。 江ノ島盾子はアリスの知らないことを知っていたし、彼女が言うことにはなんだか信憑性がある気がしたので、ちょっとだけ、オトモダチを隠しておいた。 おかげで今、随分と救われている。隠していたオトモダチをMAGとして吸収することで、急場は凌げたし、アリスを増やして遊園地の再構築にも取り掛かれた。 そして江ノ島盾子は、約束の前払いというみたいに、死体を一つ置いていってくれていた。 魅了魔法(マリンカリン)をかけていたオトモダチの一人を貸していたが、それを殺してくれたのだろう。 刀で斬り殺された死体をゾンビとして蘇らせて、夜の学校を歩き回る。 アリスにとっていつもどおりの日常が帰ってくる。 音が沢山近づいてくる。江ノ島盾子が呼んだ新しいオトモダチに違いない。 アリスの心にはもう激戦の名残もなく、目の前に広がる楽しいことしか映っていなかった。 ◇◇◇ ふしぎの国の女王様は、傷ついたけどまだまだ健在。 だが、しっかりと傷跡は残されている。目を背けているだけで、狂った精神のその奥に、宝物のように仕舞われている。 絶滅の恐怖。緑色の眼光。恐ろしい顔。殺害予告。 それは時折顔を出し、吹きすさぶように彼女の精神を支配するだろう。 そして彼を思い出すようなものに出会ったならば、確実に想起し、その行動に支障をきたすだろう。 平常時には行動に支障はない、遺伝子に組み込まれたトラウマ。対ニンジャ時に暴発する爆弾。 そういった『ニンジャに起因する突発的な精神錯乱』を、とある世界ではこう呼んだ。 『ニンジャリアリティ・ショック』と。 【キャスター(アリス)@デビルサマナー葛葉ライドウ対コドクノマレビト(及び、アバドン王の一部)】 [状態] 霊体化中、魔力消費(大)、憔悴、陣地によるMAG回復(小)、左肩から先欠損(治癒中)、腹部にダメージ(大)(治癒中)、疑似ニンジャ・リアリティ・ショック(大・軽減中) [装備] なし [道具] なし [思考・状況] 基本行動方針: オトモダチを探す 0.MAGが足りない、遊園地も寂しくなった。辛い。 1.あいが来るまで少しお休み。エノシマジュンコチャンの連れてくるオトモダチでもう一度遊園地を建て直す。 [備考] ※陣地『不思議の国のアリス』の大部分が破壊されました。MAG回収の効率や道具作成の補助効果はかなり低下しています。 ※オトモダチのストックが激減しました。 ※エノシマジュンコチャンとは魔力パスがつながっていないため念話は使用できません。 ※欠損した左肩から先は魔力によって再生が可能です。ただし補佐がない場合相応の魔力と時間が必要です。 ※ニンジャに対して強いトラウマを抱えました。精神汚染スキルによって時間経過で軽減されていきますが、時折ニンジャへの本能的恐怖に苛まれます。 ニンジャを想起させるものと出会った場合、この本能的恐怖の発生率が上がります。 また、ニューロンにニンジャへの恐怖が染み付いたため、精神汚染のランクがE→E+に変化しました。 [地域備考] ※D-2一帯に「白坂小梅は商店街の方へ逃げるぞ!」の放送が流れました。 この放送を聞き、商店街や小学校に人が集まる可能性があります。 また、声の主を探りに小学校に来た場合、はらぺこアリスによってあい以外は問答無用でオトモダチにされます。 ☆高町なのは 『俺の方で掴めた情報はその程度だ』 (うん、ありがとう。キャスター) 結局、フェイトの情報は見つからず仕舞い。 でも夕方までは元気(と言っていいものか)だとわかったのが、せめてもの救い。 NPCとは言え両親を困らせるのは忍びないと家に帰ってみればキャスターが居ない。 不思議に思って念話を飛ばしてみると、キャスターもまた、独自にこの街の調査を行っていたのだという。 あちらもフェイトには会えなかったらしいが、それでも、不思議なものを幾つか目撃したらしい。 空飛ぶ円盤だとか。恐ろしい化物だとか。チェーンソーの殺人鬼だとか。 その中でもひときわ異彩を放っていたのが、『街の裏側にある街』だった。 街のどこかにある入口から入ることが出来るその街は、おそらく何者かの固有結界なのだという。 『俺は、そこに何か脱出の手がかりがあるかもしれないと睨んでいる』 (どうしてですか?) 『無理やり参加者を呼んでまで聖杯戦争をさせるような奴が居るんだ。この街にもなにか、脱出を阻害する魔術がかけられている物と見ていいだろう。 だが、固有結界は基本的に英霊の持つ心象風景の投影。その中まで現実世界の理が及ぶとは思えん。 もし、あの広大な固有結界が結界の外まで続いていて、結界の外部分で固有結界から脱出できれば、それがそのままこの聖杯戦争からの離脱になる、そう推測しただけだ』 自信家なキャスターにしては珍しく推論だった。科学者なので魔術に対する知識がない、と言っていたのが関係しているのだと思う。 にしても、受動的とはいえ魔術師になったなのはよりは余程魔術に対して考えを巡らせていてすごいなと思う。 阻害する魔術の確認は行っておいたほうがいいだろう。フェイトを探す片手間でもできるし、なにか特別なことがわかればキャスターの脱出計画の手助けになるかもしれない。 (あの、キャスターさん。それなら明日も固有結界の方をお願いできますか?) 『お前はフェイト・テスタロッサ探しか』 (それもあるけど、私みたいに戦いたくない人が居るなら、その人達にも教えたいな、って) 森の音楽家クラムベリー。白坂小梅。どちらも戦いは望んでいなかった。 もし、聖杯戦争から脱出できると分かれば力を貸してくれるだろう。 クラムベリーは念話が通じるし、小梅は丁度電話番号も分かっているので電話で情報共有ができる。 暗いばかりだった世界に一筋の光明が見えた、そんな気がした。 きっと大丈夫。 レイジングハートと、キャスターと、皆でならきっと大丈夫。 魔法の呪文のように唱えながら、部屋に戻ると、携帯端末が着信を知らせていた。 相手は誰あろう、白坂小梅。 あちらにも何かあったのかと不思議に思って掛け直してみるが、留守電に繋がった。 胸騒ぎがして、クラムベリーに念話で呼びかけてみるも返事はない。意識があれば声は届くはずなのに。 どうしてか、光明が見えたはずなのに、嫌な予感が頭をかすめた。 間が悪かっただけと信じたいが、この広い街のどこにいるかも分からない相手の無事を確かめる術は、今のなのはにはない。 【C-3/高町家/一日目 夜】 【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】 [状態]決意、不安 [令呪]残り三画 [装備]“天”のレイジングハート [道具]通学セット、小梅の連絡先 [所持金]不明 [思考・状況] 基本行動方針:元の世界に戻る。 1.一休み。 2.フェイトを探し、話をする。 3.フェイトを見つけたらアーチャー(森の音楽家クラムベリー)に連絡する……? 4.もし、フェイトが聖杯を望んでいたら……? 5.キャスターの聖杯戦争解明の手助け。あるかもしれない『結界』の調査。『さいはて町』についてはキャスターに任せる? 6.『死神様』事件の解決。小学校へ向かう。 [備考] ※アーチャー(森の音楽家クラムベリー)を確認しました。 ※天のレイジングハートの人工知能は大半が抹消されており、自発的になのはに働きかけることはほぼ不可能な状態です。 ただし、簡素な返答やモードの読み上げのような『最低限必要な会話機能』、不意打ちに対する魔力障壁を用いた自衛機能などは残されています。 ※天のレイジングハートに対するなのはの現在の違和感は(無 #65374;;微)です。これが中 #65374;大になれば『冥王計画』以外のエンチャントに気づきます。 強い違和感を持たずに天のレイジングハートを使った場合、周囲一帯を壊滅させる危険があります。 ※木原マサキの思考をこれっぽっちも理解してません。アーチャーに対しては少々不安を覚えている程度です。 ※通達を確認しました。フェイトが巻き込まれていることも知りました。フェイト発見を急務と捉えています。 ※キャスターから『さいはて町』のざっくりとした説明を受けました。そこから脱出できるかもしれないという説明も受けました。 ※『脱出を阻害する魔術』についてキャスターから推論を聞きました。時間があれば調べます。 ☆キャスター 固有結界を用いた脱出計画。なのはの未熟と無知を突いた詭弁だ。 そもそも固有結界は『距離』という概念すら捻じ曲げる『心象風景の投影』なのだから、どれだけ広大だろうと実寸通りな訳がない。 なまじ魔術に対する知識と先入観があるので騙される。 偉大で万能と思われる魔術も実際は見てくれだけのハリボテだ。それはプレシア・テスタロッサがよく知っている。無理なものは無理なのだ。 なのはにとって魔術は未だ超越的存在であるため、サーヴァントなんていう劣化存在が使う小手先遊び程度で生者が命を削って張った『絶対』を覆せると信じている。これがなのはの未熟。 聖杯戦争に呼び出されて以来脱出だなんだといい他のサーヴァントへの見識を広めようとしなかった。これがなのはの無知。 扱いやすいマスターを嗤う。そのままわけも分からず踊っていればいい。 念話を切り上げ、歩を進める。 ひとまずなのはは何の疑いもなくマサキを放っておいてくれる。ならば他にも考えるべきことはいくつもある。 プレシアから依頼のあった『神様』へと至る道。自身の至るべき『冥王計画』のさらなる詳細な概要。 先程聞こえた『白坂小梅を捕まえろ』というアナウンスも気になる。 あれほど騒ぎ立てれば小学校に誰かが居ると教えているようなものだ。 余程の馬鹿か、それとも馬鹿を装った道化か。あるいは…… 「へーい、お兄さん」 あるいは、馬鹿でも、道化でもなく、戦争の何かに酔った狂人か。 今の段階でキャスターに、その放送主がどれだったと言い切ることはできない。 だが、目の前に突然現れた少女が件の放送主である、ということは間違いなかった。 単純な話だ。声が同じだ。それにご丁寧に、自分がマスターであることを証明するように、令呪の刻まれた手の甲をぷらぷらと振って見せてくれていた。 その手に握られているのは、一枚の紙切れ。 「暇な時に電話ちょうだいよ。お互いのためになる話がしたいからさ」 女は特に警戒もせず近寄り、紙切れを渡してくる。 そしてそのまままたぷらぷらと手を振って、来た道を帰り始めた。 「待て」 キャスターの声に少女が振り向く。 ふわりと揺れた桃色の髪は、月の明かりだけでも輝くようだった。 整った顔立ち、モデル並の容姿、一度見れば忘れないだろうその姿。だが、不審人物。 受け取った紙には本当に電話番号が書かれている。ますます意味が分からない。 「電話だと? 俺がお前と何を話すと言うんだ」 「何を……うーん……そうだね」 少女は少しだけ考えた後、花が咲くみたいにぱっと笑顔を浮かべてこう堪えた。 「この戦争を終わらせるための話、とか?」 少女の笑みに屈託はない。心からの言葉、といった雰囲気だ。 「……『戦争を終わらせる』? どうやって?」 「それを話し合おうってんじゃない。電話でさ」 「ふん」 『戦争を終わらせる』、よく言葉を選んだものだ。 聖杯戦争を望まぬマスター・サーヴァントは『聖杯戦争からの脱出』だと取る。 聖杯戦争に希望を賭けるマスター・サーヴァントは『聖杯戦争の加速』だと取る。 そして、他ならぬ木原マサキは、そのどちらとも違い、そしてきっと、彼女の本質に一番近いニュアンスを汲み取った。 言葉通り『この戦争』を『終わらせる』。聖杯戦争をぶち壊し、好き勝手に暴れる。 世界を冥府に変える。この少女のドブ川を覗くような瞳は、きっとその未来を望んでいる。 玉虫色の返答に鼻を鳴らして答えれば、少女はまたからからと笑った。 「気に入らないならそれ破っちゃっていいよ。今回はご縁が無かったってことでさ」 「何が目的だ」 「目的? 目的ねぇ……私の願いを叶えるには仲間が居ると思った。それじゃ駄目?」 考え込むふりにまた続けられるおべんちゃら。どこまでもこちらの出方を見ている。 この場で行動を起こすつもりはないと察し、最後に一つだけ尋ねる。 「お前、名前は?」 「江ノ島盾子。後出しジャンケンの女王江ノ島盾子ちゃんとは私のことよ。 今日はもう遅いから、明日にでもラブコールよろしくお願いしますね。待ってまーす!」 手を振りながら去っていく江ノ島盾子と名乗った少女。 キャスターと同じく、誰かを手の平の上で踊らさんとする者。 さてこいつは。 自身が価値のあるものだと思い上がった石ころか。 それとも冥王の指を彩るにふさわしい宝石か。 【D-2/図書館付近/一日目 夜】 【キャスター(木原マサキ)@冥王計画ゼオライマー(OVA版)】 [状態]健康 [装備]なし [道具]諸星きらりの電話番号の書かれたメモ [思考・状況] 基本行動方針:冥王計画の遂行。その過程で聖杯の奪取。 1.可能な限りさいはて町を偵察。 2.予備の『木原マサキ』を制作。そのためにも特殊な参加者の選別が必要。アリシア・テスタロッサを奪うのも一興。 3.特殊な参加者が居なかった・見つからないまま状況が動いた場合、天のレイジングハートを再エンチャント。『木原マサキ』の触媒とする。 4.ゼオライマー降臨のための準備を整える。 5.フェイトから要請があればバルディッシュをエンチャント。 6.江ノ島盾子に電話……? 7..なのはの前では最低限取り繕う。 [備考] ※フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ)、江ノ島盾子、輿水幸子を確認しました。 ※なのはからアーチャー(森の音楽家クラムベリー)について聞きました。 ※プレシアの願いが『アリシアの蘇生』であり、方法を聖杯に似た力を用いた『魂の復元』であると考察しています。 同じく、その聖杯に似た力に干渉すれば復活するアリシアを『木原マサキ』に変えることが可能であると仮定しています。 ※フェイトとの念話が可能になりました。これにより、好きなタイミングでなのはとフェイトをぶつけることが可能です。 また、情報交換を約束しました。ただし、キャスターが事実を話すとは一切約束していません。 ※プレシアから個人的な依頼を受けました。 内容:さいはて町の破壊およびさいはてのサーヴァント『エンブリオ』の抹殺。 達成条件:エンブリオの魔力が座に戻ったことをルーラーが確認する。 期限:依頼達成は二日目16時まで。報酬受け取りは図書館司書室にて二日目20時まで。 報酬:マサキの望む条件のマスター、あるいはサーヴァントの情報。 二日目終了時点でエンブリオが生存していた場合、キャスターとプレシアの司書室での一切はなかったこととなる。 また、どのタイミングにおいても、キャスターがアリシア復活を妨げる可能性があると判断した場合、プレシアは令呪をもって彼を自害させる。 ☆ 江ノ島盾子の立てたオシオキの筋書きは、即興ながらによく出来たものだった。 生きている人間にも死んでいる人間にも優しかった白坂小梅。 霊能力者だと嘯き、ゾンビを従え聖杯戦争に挑んだ白坂小梅。 そんな彼女にお似合いの末路は、やはり自身の常識に押しつぶされながらもがき、ついには自身が生きても死んでも居ない人間になることだろう。 だから彼女はチョチョイと筋書きを立てた。 『不死の軍勢』を操るアリスとぶつけ、不死の軍勢に蹂躙され死ぬならそれでよし。 サーヴァントを無残に倒され、生き残った所をアリスに弄び殺されるならそれもよし。 サーヴァントとともに生き残ったのなら…… そこで立てておいた第三の策が、『アーチャー』と『アサシン』だ。 アーチャー曰く、アサシンは死体を操る術を持っているのではないかという。 だからもしも運良く白坂小梅とジェノサイドが生き残ったのであれば、こうしよう。 生き残ったジェノサイドをアーチャーが無残に殺し。 死んだ人間に追い立てられる幻影に翻弄され、生きている人間に怯えて逃げ惑い。 最後はアサシンの手で自身がゾンビになる。 だから江ノ島盾子は、アリスが小梅と遊んでいる間にアーチャーから聞いたアサシンに接触した。 一方的に情報を渡すことで、彼女が動きやすくなるように手助けをしてあげた。小梅を狙いやすいように若干の色もつけて。 もしもアサシンが乗らなければ、その時はその時だ。 杏の携帯を使ってきらりを誘導してきらりのバーサーカーにぶち殺させればいい。 すべての結末を白坂小梅の死に収束させる。 彼女が死のハードルを飛び越えるたびに、何度でも、何度でも、理不尽をやり直して甘ったれな幻想をぶち殺す。 さて、行き当たりばったりながら幾重にも組み上げられた『超高校級の絶望』による脱落の花道を飾るパレード。 そこに、面白い偶然が混じった。江ノ島盾子も知る由のない、絶対的で絶望的で超絶悪趣味な偶然が。 その結末を江ノ島盾子が知ったならば、彼女はきっと腹を抱えて大笑いすることだろう。 江ノ島盾子の天運か、それともこの聖杯に満たされつつある穢れた奇跡の前触れか。 その偶然は、即興のオシオキに絶望的なオマケを叩きつけた。輿水幸子の家に展開されたサーヴァント・クリエーターの幻想世界。 白坂小梅の培ってきたすべてを否定し、絶望の渦中で生きる屍になった。 江ノ島盾子は言った。友情に呪われるべきだ、と。それ自体は江ノ島盾子の勝手な言い分に過ぎない。 だが、結果を見れば。 星輝子の愛と勇気に導かれ戦火に誘われ、輿水幸子の希望によってその命を落とした白坂小梅の顛末は。 絶望的なまでに友情に呪われていた。そう言えるのかもしれない。 奇跡とは、なにも善き人にのみ訪れるものではない。 善悪区別なく、等しく平等に訪れるからこそ、奇跡には価値があるのだ。 江ノ島盾子は無意識ながら、奇跡に愛され、奇跡すらその手で弄ぶ。 ☆ 声が聞こえた。 小学校の放送室から行われた放送だとわかったのは、少年が小学校に通っているからだ。 もうとっぷり夜も更けた。 なのになんで少年が学校に向かったかと言えば、夜に出歩いてでもなさねばならない使命があるからだ。 「へーい、坊っちゃん。こんな夜更けにどうしたの?」 突然声をかけられて跳ね上がる。 振り返れば、とても綺麗な女の人の顔が目の前にあった。 あまりに近くて、そして綺麗で、胸が高鳴ってしまう。きっと夜の暗闇の中で見ても、少年の顔は真っ赤だったはずだ。 「あ、ぼ、僕、兄ちゃんを探してて」 「お兄ちゃん? 坊っちゃん兄弟居んの?」 「えっ、は、はい……」 「兄弟、ふーむ、兄弟ねえ」 女の人は両手の人差し指を両のこめかみにあててふむふむ唸ったあと、驚くべきことを口にした。 「あー、もしかして、ジェノ太郎の弟さん?」 「えっ、に、兄ちゃん……ジェノサイド太郎兄ちゃんを知ってるんですか! 僕、弟のパトリオット次郎って言って……」 「知ってるも何も、なんか忘れ物したってんで泣きつかれてさ、今の今まで学校で探しものしてたのよ」 なんだよ、と一気に肩の力が抜ける。 いつもはいの一番に帰ってきてゲームをしてるジェノサイド太郎が居なくて、夜になっても居ないから心配になって探しに出てきたというのに。 ジェノサイド太郎ときたら、こんなお姉さんとずっと一緒に居たらしい。 兄の性格からして、探しものが見つかってたのに見つからないふりをしてる可能性もあるな、なんて思えてきて、急に怖がってるのが馬鹿らしくなった。 それでなくとも父母が裏山の突然の異変で帰りが遅くなるって言ってるんだから、もう少し長男としてしっかりしてほしい。 「ジェノ太郎なら小学校で待ってるし、一緒に行こっか」 「はい!」 いつもと同じはずの通学路も、夜の暗闇の中輝くみたいな美人のお姉さんと一緒だと全く違って見えた。 兄に会ったらなんて言おう。とりあえず父がするように叱って、さっさと帰るのが一番か。 家族に心配されるような真似、今後はしないでほしい。 はじめてのデート(デート、ということにする)も百メートルくらいで終わり、もう小学校は目と鼻の先。 曲がり角の向こう、見慣れているはずの小学校の校門がまるで人間を飲み込む怪物のように見えて、それだけは怖かった。 ◇◇◇ 江ノ島盾子の恐ろしい部分は分析力とその分析を利用できるポテンシャルの高さ。 更に恐ろしい部分があるとすれば、絶望的な平等性だ。 彼女にとっては姉である戦刃むくろすらも戯れに殺す相手の一人でしかない。 実際、戦刃むくろが超高校級の軍人でなければじゃれあい程度の勢いで殺してしまっていたことだろう。 全人類、親兄弟の境無く、全てを絶望に叩き落とすのが彼女のささやかな夢だ。 そんな全人類への無償の絶望が、どうして他人相手にとどまる所を知るだろうか。 蜂屋あいに興味があるし、手を組む準備もある。 アリスはあいの大切なサーヴァントだし、あいと手を組めばアリスの陣地は江ノ島盾子にとってもいい方向に働くだろう。 森の音楽家クラムベリーは自身のサーヴァント・ランサーのウィークポイント。上手く使えば彼女を絶望に引きずり込めるさ。 だが、それはそれ、これはこれ。彼女たちにだって存分に絶望してほしい。 未来にくるはずの絶望が今目の前に現れるか、今くるはずが未来に延びるか。その程度の違いだ。 「精一杯、輝く」 「輝く、星になれ」 NPCの頃に聞いた歌を口ずさむ。遠くから聞こえるサイレンの音に消されてしまうほど小さな声で。 まるで蟻地獄だ。白坂小梅を引き金として、無辜のNPCたちが次々に死んでいく。 地獄が地獄を引き起こし、さらなる地獄が展開される。 小学校という誘蛾灯。どれだけの死体がここで再び積み上がるか。 (……んー、でも、普通の精神してたら罠だって分かるだろうし、マスターは寄ってこないよね。 可愛い可愛いアリスちゃんとあいちゃんのためにNPCの死体を積めればよしかな) 江ノ島盾子は、この聖杯戦争で一人だけ、自身が最も輝く方法を知っている。 夜空に輝く一等星は、すべて江ノ島盾子を照らしていた。 【D-2/小学校付近/一日目 夜】 【江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ】 [状態]健康、耳鳴り、絶望的にハイテンション [令呪]残り三画 [装備]諸星きらりの携帯端末 [道具]なし [所持金]大金+5000円分の電子マネー(電子マネーは自分の携帯を取り戻すまで使用できません) [思考・状況] 基本行動方針:絶望を振りまく 0.ちーっす。 1.小学校に帰る。そろそろきらりんについても考えるかなぁ……あいちゃんが来たら別だけど! 2.んでもさ、小梅ちゃんの最期の絶望フェイス見れなかったのは心残りだよね。 3.次はもう少し見やすい場所で絶望を与えてあげたいなあ。近くにいい相手は居ないかな? やっぱきらりん? それともあいちゃん? 4.ん? 思考欄で情報整理をするなって? えっ、ここって作中で人物が思考したことを書く場なんです? 5.やれやれ、そんな常識が私様に通用するとでも思っているのか。ミス・混沌、ミス・予定不調和と呼ばれたこの私様に! 6.まあ実際いらないから次回以降2. #65374;6.は消していいよ。私の胸のうちに秘めときましょう。 7.キャスター(木原マサキ)からの電話を待つ。 [備考] ※木之本桜&セイバー(沖田総司)、アーチャー(森の音楽家クラムベリー)、フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ)、双葉杏、蜂屋あい&キャスター(アリス)、 キャスター(木原マサキ)、アサシン(クロメ)、諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈)、輿水幸子を確認しました。 アーチャーと情報交換を行いました。アサシンについて、宝具の一つが『死体を操る能力を持つ』ということをアーチャーから聞いています。 ※バーサーカー(悠久山安慈)の敵対のきっかけが『諸星きらりの精神・身体に一定以上の負荷をかけた相手(≒諸星きらりを絶望させた相手)』と見抜きました。 そのラインを超高校級の絶望故に正確に把握しています。彼女自身が地雷を踏むことは(踏もうと思わない限り)ありません。 BACK NEXT 043 帰宅 投下順 045 第一回定時通達 043 帰宅 時系列順 046 願い・想い BACK 登場キャラ NEXT 042遊園地で私と握手 アーチャー(森の音楽家クラムベリー) 050 にんぎょ注意報! 江ノ島盾子 051 暗いところで待ち合わせ キャスター(アリス) アサシン(クロメ) 048 ―――を斬る 白坂小梅&バーサーカー(ジェノサイド) GAME OVER 040 外へ 高町なのは 057 演者は集う 038 楽園の裏では少女が眠っている キャスター(木原マサキ) 055 新しい朝が来た、絶望の朝だ
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幻の少女の島にて 1 幻の少女の島にて 2 ■セッション第三回目 GM 現在の戦闘状況。 ネツァクHP82 MP20 ギゴHP55 MP4 ←今ココ トモヤHP42 MP14 源泉+1 ライナスHP70 MP20 耐性-1 ラウHP45 MP36 陰陽+1 アズミHP30 MP37 クラーケン腕BHP50 MP20 クラーケン腕CHP50 MP20 クラーケン腕DHP50 MP20 クラーケンHP140 MP0 ~あらすじ~ 依頼をそつなくこなし、昼間から酒盛りをしていた一行。 と、そこに赤い服の冒険者・ライナスが現れる。 彼は「国からの依頼」と言って、一度は確かに沈んだ人工島「亡霊の島」の探索の話を持ちかける。 そこで一行は依頼を受けるも、移動途中にクラーケンに襲われて…? どきどきハートフルセッション、始動開始☆ ラウ ギゴいなくね? オンセではよくあること ネツァク ただいまー アズミ 復帰しました 今までの流れは大体把握 ラウ クラーケンてっきり属性つきかと思ったら、無属性なんだな 連牙に切り替えたほうがいいか GMGM、次はどうすればいいの? GM 現在は戦闘状態になっていますので、まずはクラーケンの撃退を。 ラウ 把握した。 GM それではセッションを開始します。 ==== トモヤは何にもなっていない。 行動をどうぞ。 魔法陣LV1を選択。 「さて、もう少しで……」 魔法陣がもう一つ。指先で描き出される。 GM トモヤの魔法陣が濃くなったような気がする。 トモヤ源泉1→2 ライナスは源泉分だけMP回復。 MP20→30 ライナスはスパークリングドームを発動。 クラーケンBに40のダメージ。 クラーケンBHP50→10 ラウは源泉分だけMPを回復。 MP36→40 行動どうぞ。 ラウ 「んー、効いていないようですね」 呪符を切り替えて、連牙で攻撃だ 以後、ずっと同じ行動で処理してくださいな。 トモヤ あー、MPって最大MP以上に回復しないのか。やべぇ、回復使えねぇwww GM ラウは連牙Ⅱでクラーケンの腕Bに攻撃。 MP40→30 クラーケンの腕Bに16のダメージ。 クラーケンの腕Bは動かなくなって海に沈む。 アズミは源泉分だけMP回復。 MP37→39 行動どうぞ。 ラウ GMー、確かウィッチは 戦闘時に上限を超えてHPやMPが回復する仕様だったと思うんですが 回復しない処理ということで進めるのかな? アズミ やることは変わらずメガミの灯! 「神敵必罰! 裁きの光よ、我が指の差し示す者の元へ!」 ばしーん ネツァク えーと、何回か言われてる 「所持しているスキル、武器のレベルアップはSP20で可能」ってのは適用してもいいんだろうか? SPが30あるから剣強化したかったんだが ウィキ管理人 参加してないけどちょっと失礼。 ええとね。 Witchにステータス「上限」はありません。 Witchで最初に指定したステータスは「初期の値」であって、「上限」ではないです。 だからやろうと思えばHP99999とか出来る仕様になってます。 GM wikiに何回か検索かけましたが、そのような仕様は見当たりませんでした。 未実装として処理します。 アズミはメガミの灯Ⅱを詠唱しようとした。 ターゲットを選択してください。 アズミ ターゲットは壁、一番ダメ食ってるやつ SPの20使用で技能ランクアップは俺が言い出した設定なんだ でないと、なかなか成長出来ないなーと思って 避難所本スレで言い出してみたけれど、誰も反応してくれないので俺だけ実装してみたwwwwwww 出来れば、話題になった所で公式に認めるか否か意見が欲しいな キャンペーン方式(同じキャラで何度もプレイすること)でセッションする場合、以上のようにキャラを成長させるのもいいかもしれない ネツァク だよな。lllにするのにSP60も使っちゃ成長できない その事をこの前言おうと思ったんだが寝落ちとかしちゃって…… この戦い終わったら処理しとくわ 汚しスマソ GM クラーケンは自分の腕Cを壁にしたようだ。 指先は壁になっているクラーケンの腕Cに向いた。 MP39→31 クラーケンの腕Cに10のダメージ。 クラーケンの腕CHP80→70 クラーケンはライナスに向かって腕2本で攻撃。 10のダメージを与えた。 ライナスHP70→60 クラーケンは墨を吐いた。 ライナス耐性9→8 ネツァクは何にもなっていない。 行動どうぞ。 ネツァク 「せいッ!」 壁になってる足にロングllで攻撃。 HP82→78 GM ネツァクはクラーケンの腕CにロングソードⅡで切り付けた。 魔剣士の心が剣攻撃力を[2]倍にしてくれる。 そしてクラーケンの腕Cに10のダメージ。 クラーケン腕CHP70→60 トモヤは何にもなっていない。 行動をどうぞ。 トモヤ 奈落の沼Ⅱを選択。 「そろそろ堕ちろ」 最前列の足に向けて緩く手を翳す。 GM トモヤは奈落の沼Ⅱで攻撃。 MP14→10 クラーケンの腕Cに8のダメージを与えた。 クラーケン腕CHP60→52 ライナスは源泉分だけMP回復。 MP10→20 ライナスはスパークリングドームでクラーケンの腕Cに攻撃。 MP20→0 そして、クラーケンの腕Cに40のダメージ。 HP52→12 ラウは源泉分だけMP回復。 MP30→35 ラウは連牙Ⅱでクラーケンの腕Cを攻撃。追加効果で20のダメージ。 HP12→20 クラーケンの腕Cは傷つき、倒れた。 アズミは源泉分MP回復。 MP31→33 行動どうぞ。 アズミ では、壁に向かってメガミの灯 「危ないのは、あの足だけのようね…。ライナス!もう少し耐えてなさいよー!」 GM アズミはメガミの灯Ⅱを詠唱。 MP33→25 クラーケン腕Dに10のダメージ。 HP80→70 クラーケンは腕でライナスに攻撃。 HP60→55 クラーケンは墨を吐いてライナスに攻撃。 耐性8→7 ネツァクは何にもなっていない。 行動どうぞ。 ネツァク ロング剣で壁をズンバラリン …やっぱllじゃ打撃力低すぎだな 役にたたん アズミ 剣だけじゃない… 俺の魔法も大して効いてない… ネツァク ネツァクはロングソードⅡでクラーケンの腕Dに10のダメージを与えた。 ネツァクHP78→74 クラーケンの腕DHP70→60 トモヤは源泉分MP回復。 MP10→12 行動どうぞ。 トモヤ 俺なんてもっと酷い有様だぜw キャラメイクがダメ過ぎるw 奈落の沼Ⅱを選択。 「まだだ。まだ堕ちてろ」 足に掌を翳したまま。 ラウ 各自役割があるんだぜ? 前衛で味方を守ったり、回復で味方を癒したり。 まぁ、ライナスがオールマイティにバランスブレイカー気味なので PLって戦闘じゃあんまり目立てないんだけど アズミ 逆に、逆に考えるんだ! あのイカ野郎がタフすぎるんだと ネツァク 俺…これでも威力二倍なんだ…本当ならダメージ5なんだ… 次の戦闘に期待www GM トモヤは奈落の沼Ⅱでクラーケンの腕Dを攻撃。8のダメージを与えた。 トモヤMP12→8 クラーケン腕DHP60→52 ライナスは源泉分MP回復。 MP0→10 ライナスはツーハンドソードⅡでクラーケンの腕Dに攻撃。10のダメージを与えた。 ライナスHP55→51 クラーケン腕DHP52→42 ラウは源泉分MP回復。 MP25→30 ラウは連牙Ⅱでクラーケンの腕Dを攻撃、追加効果で24のダメージ。 ラウMP30→20 クラーケンの腕DHP42→18 アズミは源泉分だけMP回復。 MP25→27 行動どうぞ。 でも次から仕様変更に合わせるから弱くなる事間違いなし。 アズミ メガミメガミメガミ 壁狙いで 「回復? ライナス頑張れ☆」 まさに外道 GM アズミはメガミの灯Ⅱでクラーケンの腕Dに攻撃。10のダメージ アズミMP27→19 クラーケン腕DHP18→8 クラーケンは怯えている。 どうしますか?[A-C] A 脅す B 懐柔 C 止め トモヤ 「よし、イカゲソ。お前に選択権を与えてやろう。俺達をこのまま「亡霊の島」まで運んで行け、さもなくばお前の腕が――」 と脅した所で後ろからアズミの声。 アズミ 「…!! 逃がすなー! 追えー! 今夜はゲソ天でビールだー!」 当然トドメ狙いですが何か ラウ D息の根を止める ネツァク ……ん? 「ちょ、ちょっと待って、相手にもう戦意は無いですよ」 キャラ優先… ああ、やっぱあくどいキャラにするべきだったか…? 中のひとたちの正確がにじみでる一幕である GM クラーケンは実に怯えている。 命を助けてくれるならなんだってする、といいたげだ。 すがるような目で見ている。 さあ、決断は? アズミ 「ネツァク、悲しいけどこれ戦争なのよね…。弱肉強食という名の戦争なのよっ! さぁ弱きは肉となって強者の腹に収まりなさい!」 まさに外道 トモヤ 「ああ、別にお前が嫌だと言うなら俺は強制しない。あいつらもああ言っている事だしな。従わなければお前の残り少ない足が素敵な方法で海の藻屑と消えるだけ……って、コイツそもそも人語解するのか?」 利用価値はありそうだが?と周囲に意見を問う。 ラウ 護符をふわわふ飛ばしつつ 「あぁ、楽しくなってきましたね。肉が裂ける感触がたまりません。 今夜のおかずもたのしみです」 ネツァク 「落ち着いてくださいってば。気持ちはわかりますがホラ、私たちを目的地まではこんでくれるそうです。 少しここは任せて下さいませんか?ね?」 子供をあやすような口調でwww ていうかアズミ、ノリノリやんwwww GM ……君達は、クラーケンを助ける事にした。 クラーケンはお礼に、目的の地点まで護衛してくれるようだ… エリアDを通過して、今度はクラーケンが先頭にたっている。 君達は、目的の地点にたどり着いた。 が、何ということだ、島どころか岩すら無い! ラウ 「ライナス?」 トモヤ 「島が沈んでる、なんて事ないよな?」 腕組みをして横目でクラーケンを見て ネツァク 「ええと……海ですね。ここは」 GM ライナスはしきりに海図を見ている。 そして、信じられないといったように言う。 「…ポイントはここで合っている。国からの正式な書類にもここだって書いてあるんだ。 しかも、俺は望遠鏡で島を確認しているんだ、それも三回も!」 「本当に、亡霊の島なのか…?」 沈んでいる島はいずれも浮かび上がった形跡は無い。 海である。 なにかの動きが出始めている… アズミ 「なんだろう、凄いイヤな予感するわー。 …デカイ亀の背中を島と勘違いしたって童話、あったわよね」 ラウ 実は巨大なカメでした。というオチ 「騙されたんじゃないですか?」 ネツァク 「………? 何か変ですね…?確認してきます。海上の監視、よろしくお願いします」 ぱっと服脱いで飛び込む。一応剣は掴んでるけど アズミ 「ちょ!? ネツなにやってんのぉー!?」 GM 「いや、あの人工島そのままの姿だった。陸地だけじゃなく、建造物も確認できたんだ…うわあああああッ!!!」 海の動きが変わり、渦潮が君達を飲み込みだした!! 「みんな…何かにつかまれッ!!」 ラウ これはネツが触手でにゃんにゃんフラグ 触手エローイ GM 何ということだ、そのまま渦潮に巻き込まれてしまった! ネツァク ちょwwwwなにそのタイミングwwww ネツァク行方不明wwww トモヤ 「気を付けろよ。本当に島が亀だったら洒落にならん。人工の島なんだから何があっても不思議じゃない」 す、と腕組を解きながら潜っていくネツァクを眺め……あ、渦潮だ。 「言わん事じゃない!ラウ!呪符で何とか出来ないかっ!?」 ラウ 「あらら」 船底にしがみつきつつ、ネツァクを眺める。 水の護符でドカーンと救い出す、とかできたらいいのに。 ネツァク 「ネツァク、ネツァクー!」 だが ざんねんながら ねつぁくのすがたは みえない! まさに外道 ネツァク ド真ん中に死亡フラグ えっと、これはどうしましょうか。 ラウ 「下手に干渉したら、ネツァクの胴体がねじきれちゃう気がしますね 渦の流れでも緩めてみます?」 懐から水色の札を取り出して、海面に落すぜ。 アズミ これがWitchの恐ろしいところだ… プレイヤーが自由過ぎる アズミも一応魔女の血を引いてるので、何かしら魔法が使えるかなぁ GMがんばれマジがんばれ ネツァク こういうロールで起こる事故は大好きですといったら怒る?怒る? GM泣かせである ラウ なんでもありっちゃ、なんでもありだもんなwwwww GM ラウの呪符はその効力を発したが、何故か逆に力が働いてしまった! 全員が流れに飲まれてゆく… トモヤ 「ええい!クラーケン!クラーケンはまだ居るか!残った二本の腕を落とされたくなかったら早くあいつを助け―――」 うーわー。うーずーしーおーだー。 ラウ 「いやー、大自然は偉大ですね」 GM クラーケンは、既に渦潮に巻き込まれて残念ながら死去したものと思われます。 … 暖かい光が君達に差し込む… どうやら、陸地に流されたらしい。 …でも、どうやって渦潮から陸地にたどり着けるというのだろうか? 辺りを見回すと、人工的な建造物が立ち並んでいるのが見える。 隣には、クラーケンの残骸が転がっている。 ライナスの姿は見えない。 ネツァク 「貴女はちょっと無謀」という母の言葉を思い出しながら、ネツァクの意識は砕け散った。 ネツァク、あっけなく気絶。 ラウ 「うー…お、生きてる」 気絶してる仲間を起こしつつ 辺りを見回す。 ネツァク 「……あ…れ?」 起きあがって辺りを見回してみる。 で、みんなを起こそうとして、 「(あ…服が無い)」 トモヤ 周囲を見回した後、眼鏡を掛け直す動作と共に起き上がる。 「おい、喜べ。今ならイカが食べ放題だぞ」 トモヤの眼鏡は無事なのだろうか? アズミ さて、何処かに辿りついたようだけど… アズミは基本的に虚弱体質なので気絶して起きれないだろうな 誰かから起こされるまで寝てるってことで と、早速起こされたけど、ダメージは常人の二倍だからぐったりだ 「イカくさい…」 エロ(ry GM 烏賊の扱いが酷すぎるwwww 君達は暫くして、この島が人工島であることに気がついた。 海の方を見ても、全く他の島は見えない。 と、そこに少女が駆け寄る。 どうやら君達が珍しいようだ。 君達が話しかけようとすると、逃げていってしまう。 追いかける?[YNQ] ラウ YES ネツァクテラセクシー路線wwwwwwwwww 「異国の衣装ですが、よかったらどうぞ」 と、どっから取り出したのか和風な衣装をネツァクに アズミのほうはぐったりしてて全身濡れてる姉御肌のダークエルフか。イイな エ(ry アズミ 「…ラウ、その服は何? 何でそんなもの持ってるのよ…」 和風の服→巫女装束だーっ! な、なんだってー!! ネツァク 「どうも、すみません」 おかしいな、ちょっと皆が笑えればいいと思って飛び込ませた結果がキャラの半裸か? おかしいなぁ トモヤ 「酷い目に逢ったな……まさかこんな形でスペアの眼鏡を使う事になるとはな」 懐から出した眼鏡ケースを出して掛けながら呟く。すると、逃げていく少女の背中 「……ライナスの姿も無い。行くか?罠の可能性もあるが」 ラウ 「一部の層から高い需要がありまして」 ネツァクなら、服の一着や二着なんとでもなりそうだけどw 死ななくてよかったじゃない。 GM 君達は、少女を追いかけた。 町並みはふつうの町のそれと大差はないが、人の気配は全く感じられない。 さて、どこを探そうか? 【個人行動】 A 港 B 中心街 C 居住区 ネツァク 髪白いからまぁ大丈夫さ! なんか大人姿になるって設定がこんな形で活きるとは(ry 「……目的地にはたどり着いたようですが」 アズミ 「そうね。ここでうだうだしてても始まらないし、手掛かりがあるならまずは動きましょう」 濡れた髪をぞんざいにまとめながら、少女が去ったほうを見つめます 女の子追っかけようかー アズミ 携帯反応遅くなっていやん 個人行動で戦闘なったらどうしようか ネツァク にア D.空から探す まさに恒例 ラウ 飛ぶなwwwww まさに自由 GM 人工島上空。 雲は全く見つかっていない。 人の生活反応はここからは確認できなかった。 少女の姿も無い。 それに、一瞬地面がぼやけたような気がした。 中心街編 ラウ 個人行動はGMの負荷高いけど大丈夫かい? ラウはBで GM 中心街。 活気は全く見当たらない。が、店の品物はそのままになっている。 まるで、人だけが消えてしまったような、そんな印象を受ける。 結構色々な店があるみたいだ。探す? ラウ 探す探す GM 水晶で出来た鎧とルーン文字がびっしり刻まれた剣、それに透き通った指輪を見つけた。 いずれもアーティファクトだと思われる。君はそれら全てを手に入れた。 ラウ うめぇ。 「魔力が篭ってるみたいですね」 指輪をつけてみる。他のアイテムも調べる GM 指輪は『エントロピーの指輪』だった。 MPの2割を消費することにより、ダメージを無効化するという優れものだ。 剣はルーン文字の部分だけ輝いている。 水晶の鎧は光が駆け巡っているように見える。 ラウ 「こんな品物が普通に並んでるなんて、ただの浮島じゃないみたいですね …剣と鎧は私には使えませんけど」 調べるところがなければ、別の場所に向かうぜ GM 他に調べる所はなさそうだ。 どこに行こうか? A 港 C 居住区 ラウ では、居住区に。 なんか、みんなそこに集合する気がするしね 港編 アズミ 皆なんの躊躇もねーのかよwwwwwww じゃあアズミは残った港に行きます 「……まさか、このあたしが慎重になれ、なんて言うことになるとは」 GM 港。漁船が沢山あるが、いずれにも誰も乗っていない。 何かの看板が君の足元に転がっている。 所々かすれているが、読めそうだ。読む? ネツァク 「人が居ない……全滅?しかし、さっきの少女は? …なんだ?ぼやける…本調子ではないからか」 えーとりあえずアズミたんのところへ。 アズミ 読む読む 読んだ途端発動するトラップだったら笑う笑う 「あら、ネツァク。上からみた感じどうだったかしら」 ネツァク 「ここはマズいです。明らかに普通ではない。 みんなと合流しましょう。危険です」 GM 看板には以下の様に書いてあった。 【本日が…難……終日に…りま…。市…の……んは地区ご…に船へ…】 この先は読めなかった。 居住区編 トモヤ 「まず、この島の人間に言葉が通じるかどうかだな」 C、居住区を選択。 「最悪の場合、島の人間全てが敵という事もありえるが」 空から行けるなら手分けしてが妥当か。 GM 君は居住区にいる。 居住区にも人はいないらしい。 が、一つドアの開いた家がある。探す? トモヤ 探す。一応背後には気を付ける。 「さて、誰も居ないならせめて金目のものでも」 まさに外道。 GM 家に入るとさっきの少女がいた。 「ふふっ、ここに何の用があるのかな?」 トモヤ 「意外だな。共通語が通じるのか」 両手を緩く広げると、敵意が無い事をアピール。 「海の中で探し物をしていたんだが、どうやら渦潮に巻き込まれたらしい。まず此処が何処だかも解らない状況でな」 しまったな。狼煙でも持ってくるべきだった。どうせ湿ってて使えないだろうけど。 GM 「…そう。私を迎えに来てくれたんじゃないのね。」 少女は暗くなる。 「折角人に会えたのに… 何年も何年も待っているのに誰も迎えに来ない…疲れちゃった。」 ラウは居住区に行き、家の中に入った。 「あら、さっきの人ね?」 「貴方は、私を迎えに来てくれたの?」 期待するように見る。 ネツァク なんかテラ緊張感 アズミと居住区にGo。 アズミ では、ネツァクと共に居住区へ トモヤ 「何年も……?」 周囲に気を配りながら話をするのは疲れる。そもそもこの少女自体危険な感じがする。 「いいだろう。なら俺達と一緒にこの島を出て行けばいい。君はこの島を案内する。俺達は探索の序に君を連れて帰る。悪い条件ではないと思うが?」 一歩、少女に足を進める。 ラウにむかって小声で 「そういう事にしておけ。何かその方がいいような気がする」 ラウ 「えぇ、お待たせしました」 とりあえず、話をあわせてみる GM 「分かった、そうする。 …一緒に、連れて行ってくれるんだね?」 嬉しそうだ。 アズミとネツァク達は居住区に来て、家に入った。 少女はこんなにも人が居ることに慣れていないようで、少しはしゃいでいる。 「それじゃ、早速いこっ☆」 こうなると元気なもので、彼女は必要なもの(と言っても詩集やノートだが)をまとめた。 アズミ よし、ここで黒巫女の職業特性を発動! 魔力感知! これは怪しい魔力を感じたり、魔物から発せられるオーラを感じたり出来るのだ! ということで、その娘の様子を調べたいな なるべく自然なふうを装おって 言ったモン勝ちルールの発動である GM 人とは違うエネルギーを感じる。 そういえば彼女は透き通っているようだが… ネツァク 「話はどうなってるんですか?あの子は?」 トモヤにヒソヒソ声で聞く。 ギゴの中の人 うわ、申し訳ない。今日のセッション18時からだと勘違いしてたわ・・・。 今さら参加も厳しいだろうから、とりあえず今回は中途退場ってことにしといてくり。ゴメン オンセではよくあること それだけオンセするときは、日時の情報に気を付けなければならない 参加者全員が見る掲示板などがあるといい トモヤ 仲間が集まると、ようやく仲間の方へ向き直る。 「簡単に状況を説明するぞ。この子はどうやら置いてけぼりにされたか最初から一人だったらしい。もう何年も此処に居る。 今、俺達がこの子を島の外に連れて行く代わりに島の案内を頼んだ所だ」 ネツァクの声に口早に答えながら、そっちは?と視線を送る。 ラウ 「そういや、こんなものがありましたよ」 指輪をアズミに剣をネツァクに鎧をトモヤに渡す ネツァク 「何か変です。誤魔化されているような、というか……空から見ても不自然で」 少女の方に向きなおって、 「こんにちわ。名前は何というんですか?」 GM 「あたしの名前? アナスタシアっていうのよ」 笑顔で答える。 ネツァク (ラウから剣を受け取って) 「これは…」 何?この剣何?超wktk トモヤ 「関係無いだろう。彼女が敵であろうと無かろうと、案内してくれると言うのだからその言葉に甘えよう。その代わり俺達は彼女を連れてこの島を出る。それだけだ」 ラウからよろいを受け取りながら、「鎧か?動きが鈍るから余り好みではないのだが…」と呟きつつも着てみる。 「例えこの島が実態のない島だったとしてもな」 アズミ ふむ、ではアナスタシアから怪しげなオーラを感じたことを全員に伝えておくわ 「…みんな、油断しないように。あのこ、大分普通じゃないわよ。最悪、レイスやゴーストの類いかもね」 ラウから指輪を貰って 「やだ、何のつもりよ! ふ、ふん、勿体無いから受けとってあげるわ! 別に嬉しくなんかないんだからねっ!」 ネツァク 「…わかっています。人も居ない、物流も途絶えた島で少女一人が生きていられる筈はありませんからね。 今の所悪意があるようには見えませんが……」 トモヤ 「……へぇ……半分以上当てずっぽうだったんだが、ビンゴか……いやなぜそこで照れる。俺達全員貰ってるじゃないか、装備なら」 ラウ 「アズミ、顔が赤いようですが。大丈夫ですか?」 これがベストかなアイテム配分かなーと思うんですが、どうだろ トモヤ 「ネツァク、この鎧、お前が着ていた方がいいとも思うのだが、どうする?」 と、試しに着てみた鎧を一度外しながら。 鎧は前衛が持ってた方がいいかも知れない。 アズミ 配分はいいと思うが、残念ながらスロットが一杯だ… このセッション終わったら拡張して指輪しようかな 左手の薬指に! GM と、そこで君達は声を聞いた。 「……ろ、…きろ…皆、起き…」 ライナスの声だ! と、瞬間的に上に引っ張り上げられる気がする! 少女は、不思議そうな目でこちらを見ている。 ラウ 指輪と剣と鎧がラウの周りに集まってきた。引っ張り上げられる前に掴まないと! 何を掴む? 1 指輪 2 剣 3 鎧 アズミ 誰が帰還の巻物を読んだwwwwwww ワーオ、なにもかもがローグライクに見える! ラウ 俺、このセッションが終わったら結婚するんだ・・・ 剣はつかみ所によっては指が切断されちゃいそうなので 指輪で。 トモヤ と、そこで不意に引っ張り上げられるような感覚。 「おい!まさかコレ……!」 多分、少女に手を伸ばそうとしてもすぐに…… ネツァク 結局剣貰えないオチとかwwwww GM ラウは指輪を掴んだが、他の武具は落ちてしまった。 トモヤは少女を掴もうとしたが、触れられなくなっている事に気がついた。 消え行く意識の中で、君達は声を聞いたような気がした。 「また…ひとりぼっちになっちゃうのかな…」 とおくで、こえがきこえ――― 気がつくと、君達はいつもの宿屋にいた。 ラウ 「夢・・・?にしては、随分リアルでしたが」 トモヤ 「……ああ、やっぱりそういう事か」 自分の掌を見つめ、開いたり閉じたりしている。 アズミ 「はっ、ここは!?」 って、宿屋だ。 「……、そ、そうよね。あんなの夢よねっ! ラウが指輪くれるなんて…」 無駄にフラグを立ててみた ネツァク 「………」 窓から海を見つめる。 GM ライナスとギゴが隣に居る。 ライナス 「おお、気がついたか。全く、海面に漂っていて、息をしていなかった時はどうなるかと思ったぜ。 何、報告書の事は心配するな。俺が責任を持って提出してやった。 『見えるとも存在せず、供養の必要あり』ってな。」 「ところで、夢で何かあったのか?」 ネツァク 「……いえ。 ところでライナスさん…供養は、私にやらせては頂けませんか?」 ラウ アズミとはダークエルフ同士だしバッチリだよな おそらく、手の中にあると思われる指輪を日光にかざしてみる。 トモヤ 「……『覚えてる』よな?」 ライナスの問いには答えず、自分の掌を見つめたまま、残りの3人へ。 アズミ 「あたしが見たのは、可哀想な女の子だけよ。丁重に供養して貰えるようにお願いするわ ほ、ほかには何も覚えてないわよっ!?」 トモヤ ああ、そっちの事はどうでもいい。好きにしてくれ」 さっきまで見ていた手をひらひらと手を振りながら。 GM 「ん?ああ、いいよ。頼んでみるよ」 ネツァクの申し出にライナスは承諾した。 「ところで、あの島にまつわる話を聞いたよ。 あの島にはある幸福な家族が住んでいたが、島の避難時に次女だけがかくれんぼしてて間に合わなかったんだ。 …だれにも見つけられなくてな。そして、隣国とわが国共同の人工島爆破作戦が開始、そのまま沈んでしまったって噂だ。 次女の名はアナスタシア。彼女の亡霊は、今もあの海域に眠っているって話だ。 もしかしたら、彼女が見せた故郷を思う幻だったのか、それとも…」 トモヤ 「……」 掌をもう一度握って、開く。そこには儚げなリボンがあった。 「……ネツァク、その時は俺も行こう」 腕に、そのリボンを結びながら。 ~クエスト終了~ ~後日談~ 「(裏切ってしまった……)」 ネツァクはあの海域の上で、空中から下を見おろす。 トモヤは少し離れた所に留まった船にいる。 「ご免なさい。貴女は、ずっと独りだったのに……」 ばっ、と翼を広げると、翼から散った光の粒子が海に降り注ぐ。 「貴女はもうひとりじゃない。 『向こう』には、貴女が待っていた人が居る。だから…」 最後に一つ、一粒の涙を海に落とし、ネツァクは手を合わせた。 「おやすみなさい……よい、夢を」 トモヤは、暫く黙っていたが、不意に誰にともなく 「……案内もしてもらってないし、連れてってもやってもいないじゃないか」 腕を組みながら呟いた。不機嫌な顔で空を眺めて。 そこには自分のリボンを大切に扱ってもらって嬉しそうに 天に昇る少女の姿が見えたような気がした。 その少女は照れくさそうに君にキス(当然感触は無いが)をすると、そのまま上ってしまった。 「祈ってくれてありがとう。私の事、忘れないでね」 そんな声が、潮騒に紛れて消えた。 夏はまだ、始まったばかりだ。 ~~セッション『幻の少女の島にて』終了。~~ ~クエスト終了後の一幕~ GM さて、ここでラウ以外はアイテムを手に入れられます。 書き込みをしてください。コンマ秒でランク判定します。 アズミ中身 ステータス強化系が欲しいなぁ! トモヤ中身 何が出るかな ネツァク中身 剣、くれよ…マジで… アズミ中身 各キャラ、及び中の人の欲望渦巻く素敵タイムですね GM アズミ 「クレイジングオイル」と銘の入ったビンがアズミの手の中にあった。 これは呪いを洗い流すことの出来る油だ。三回分入っている。 イベントで解呪する場合はGMに相談する事。 一回分につき10SPで売れる。 トモヤ 少女の持っていたリボンが手の中に在った。 これは儚い感じがする。これを腕に巻きつければ、亡霊による加護により 毎ターン3点HPを回復できる。 大切なものなので売ったりしないように! 編集でログをそれっぽくしてみました ネツァク ホパリングキャロットと銘の入ったロングソードⅢ(材質はにんじん)が握られていた。 材質が材質なため通常よりも1点与えるダメージが低いが、 ショート・テレポートの魔力により戦闘中、他のモンスターと入れ替わることが出来る。 5回使うと砕ける。 これは20SPで売れる。 ホパリングキャロット追記。 この効果は自分が壁の時にのみ使える。 ネツァク中身 よっしゃ、売却 アズミ中身 よし、売却 トモヤ中身 こまった、レアアイテムチックじゃないか。 ラウ中身 速攻で売却されちゃうオイルとニンジンかわいそす まさに外道 「おや、アズミ、珍しいもの持ってますね? この指輪と交換しません?」 アズミ 「ラウ、あんたこんな油欲しいの? 変な服持ってたり実はオカマなんじゃ… って、ええぇ! その指輪…!」 驚きが顔一杯に広がったあと、アズミはぷいっと横を向いて 「ほ、欲しいなら、いいわよ。仕方ないわね、感謝しなさい!交換ね!」 ラウの手から指輪を奪いとります ラウ これはいいツンデレ。 「呪術の研究に・・・って聞いてない」 アズミ とりあえず、クレンジングオイルはラウに渡したってことで、売るかどうかはラウに任せるよ アズミは指輪を貰った嬉しさから、少女のことなんて忘れて、薬指にはめた指輪をみつめてにやにやしています 勿論、そんなことをしているのは一人きりのときだけです 誰かと一緒にいるときは、別な指にはめています こうして、無駄な設定がまた一つ増えたのでした ちゃんちゃん とりあえずお疲れ様でしたー GM 皆さん、お疲れさまでした。 そして、レスポンスがわるかった事をお詫び申し上げます。 セッションに付き合っていただき、本当にありがとうございました。 【終】 リプレイ トップページ
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幸せな子ども◆PatdvIjTFg 聖杯戦争のために用意された名前の無い街、南西部に位置するその中学校は、 画一的な、極一般的に想像するコンクリート製の学校のそれとは違い、西洋館を思わせる体裁を持った建造物であった。 さて、校門から続く煉瓦の道を通り校舎内に入ろう。 外面だけの話である、中に入ってみれば何の事はない普通の校舎である。 デザインに凝ったところで、所詮中身は他と違うところは無い。 いや、内装まで追求しようと思えば出来るのだろうが、所詮は中学校、通うは少年少女。 彼女たちは校舎にそこまでは求めないし、校舎もまた彼女たちにそこまでを求めない。 故に、この中学校は内面と外面が不一致を起こして、どこか――歪んでいる。 最も、その奇妙さも些細なもの、誰も特に気にすることはない。 二階へと上がろう、そこにはずらりと二年生教室が並んでいる。 その教室の内の一つ。 授業合間の休憩時間、生徒たちがそれぞれ友人同士集まって群れを形成している。 小集団の集合から少し外れて、ただ一人で少女がノートと向き合っている。 足先から頭の天辺まで可愛らしい容貌をした彼女の名は輿水幸子、アイドルである。 当然、学校のだとか、町内のだとか、そういった小規模なものでなく、百人中百人がアイドルと聞いて想像する職業のそれである。 そんな彼女は年頃の少年達が視線をやるのも気にせずに、趣味である勉強ノートの清書を行っている。 「あっ、ごめんなさい輿水さん」 今まさに清書を行っていたノートが、彼女の制服が、花瓶から放たれた水によって、濡れる。 「手が滑っちゃった」 偶然にも、彼女の目の前で、ノートを台無しに出来るように、持っていた花瓶を滑らせる。 ある特定の少女という人種はそのような器用で陰湿な芸当をいともたやすく行ってみせる。 「いえ、ボクは全然気にしてませんよ」 くす。と誰かが幸子の発したボクに笑う。 敵を排除しようとする動きは人間社会の常である、そして少女達の中では敵と判定されるハードルは限りなく低い。 舌打ち。 彼女はアイドルだから。 舌打ち。 彼女は誰よりも可愛いから。 舌打ち。 彼女は自分の可愛さを知っているから。 呪詛。 何がボクだ、オタクに媚びているのか。 呪詛。 何が幸子だ、何時の時代の名前だ。 呪詛。 何だそのじとついた目は、男を誘っているのか。 悲鳴。 ああ、なんで私が好きなあの人は、あの女を見る。 少女の理論で彼女への攻撃は正当化される。 殴ることもせず、蹴ることもせず、ただひたすら陰湿に。 彼女が作り上げた物を壊し、 彼女が必要とする物を隠し、 彼女が発する特異を嗤い、 彼女の活動について語る。 「いえ、ボクは大丈夫ですよ、プロデューサーさん」 放課後、隠し切れない摩耗を、それでもアイドルの演技力で見せないように、幸子はプロデューサーに電話をかける。 輿水幸子は、万人のためのアイドルではない。 何万人、何億人が彼女を愛そうとも、彼女の根本にあるのはただ一人。 己のプロデューサーに愛されること。 それは恋愛感情なのかもしれないし、そうではないのかもしれない。 ただ、輿水幸子は彼といると安らげる、それは確かな事実だった。 だから、彼女はあの少女達のアイドルにはなれなかった。 「プロデューサーさんには見えないのが残念なぐらいに、ボクは変わらずカワイイですよ!」 ここしばらくは何らかの事情とやらで、仕事も、それどころかレッスンすらなかった。 声だけの関係性、直接会う必要は無いのだから当然と言えるが、それでも苦しい。 直接会って、何時もの調子でプロデューサーと接すれば、学校生活で蓄積するものは綺麗さっぱり消えるはずだった。 会いたい、と思う。 「まぁ、そろそろ、プロデューサーさんは僕に会いたくて会いたくてしょうがないと思いますから、別に会いに来てもいいんですよ!」 「……そうですか、まぁ全然気にしてないですけどね!」 すいません、という謝罪は理性では受け入れられる。 向こうが社会人である以上、どうしようもない面はある、それを受け入れられない程に幸子は子どもではない。 ただ、感情が――輿水幸子という少女が受け入れられないだけだ。 「じゃあ、そろそろ切りますよ……あっ、切っていいんですか?プロデューサーさん、もっとカワイイボクとお話したくないですか?僕に切らないでくださいってお願いするなら……」 電話が切れる。 一人の世界が戻ってくる。 「輿水さん」 「えっと、ボクに何か用ですか?」 背後からの声に振り返ると、クラスメイトの小柄な少女が立っている。 「ずいぶん、楽しそうに電話してましたね」 「いやぁ、どうでしょうか」 「隠さなくてもいいですよ」 少女は幸子を攻撃しない、いやそれどころかクラスの女子で唯一、表立ってではないが、友好的な立場だった。 少女は幸子のファンだった。 「すいません、輿水さん……えっと、あの、その…………遊びに来ませんか?」 「えっ」 「いや、もし良かったらでいいんですけど、最近輿水さんが暇してるって言うから」 「あっ……と、カ、カワイイボクでよかったらお邪魔させていただきますよ!」 「本当?良かったぁ……」 校門を出て、更に歩いて数分、赤い屋根の、まるでドールハウスのような屋敷が、彼女の家だった。 「お邪魔します」 「どうぞ、と言っても今日は誰も居ないんですけどね」 中二階に少女の部屋があった、ぬいぐるみが多くて、どこか甘い匂いのする部屋だった。 「で、えっとなんでボクを呼んだんですか?」 「えっと、ですね……」 少女が部屋の内側から鍵を掛ける、何故鍵を――幸子の疑問の答えはすぐに明らかになった。 「脱いで、輿水さん」 「え?」 振り返った少女の目を幸子は知っている。 クラスメートと同じ、その目を幸子は知っている。 「撮影会をしたいの、服はいらないけどね」 「え?え?」 だが、あまりにも理解に苦しむ。 「好きな男の子が輿水さんのファンでね、あっ……もちろん、彼は輿水さんに告白しようだなんてこと考えてないよ、ただ、アイドルとして好きなだけ。 だから、私の告白にもオッケーしてくれた、人生で一番うれしい日だったなぁ……」 「そ、そうですか」 「でも、彼は私と付き合っても未だ、輿水さんのポスターは張ってあった。当然よね、憚る必要はないもの、私だって輿水さんのファンなんだから。 でも、恐ろしい。もしかしたらって思うと、彼は私よりも輿水さんの方が好きなんじゃないかって。 彼のことを信じたい、でも愛は目に見えない。可愛さは……輿水さんが可愛いってことはよぉく、この目に映っているのにね。」 「…………」 今、はっきりとこの少女が幸子にとっては恐ろしい。 いや、悍ましい。 「私はアイドルにはなれない、私は輿水さんより可愛くなれない、私は輿水さんには勝てない。 だから、幸子ちゃんを壊す。まどろっこしいいじめなんかしない。 貴方がアイドルでいられなくなるような写真を撮って、ネットで流す。 私は輿水さんに勝てないから、輿水さんが勝手に負けてもらうしか無いの わかったら脱いで、邪魔は絶対に入らないし……素直に従わないなら、私が勝手に輿水さんの服を切って、捨てる。 手元が狂って、身体まで傷つけちゃうかもしれないし、裸で家に帰ることになるからおすすめはしない、 それに私は興奮して幸子ちゃんの事を何発も何発も殴ると思うわ、どうする?」 「お断りです」 「そう」 「ボクはアイドルですから」 「じゃあ、幸子ちゃんは野外露出が好きなマゾヒストってことになるわね。おめでとう、多分今までやってきた活動以上に有名になれると思うわ」 少女は既にカッターナイフを構えていた。 震えが止まらない。 幸子がここまで悍ましい悪意と狂気を向けられるのは、人生で初めてだった。 泣きたくなる。 それでも、アイドル輿水幸子を守護らなければならなかった。 自分からアイドルを捨てる真似はしない。 アイドルを捧げてやることもしない。 部屋から脱出し、クラスメイトが一人とても遠いところに引っ越すことになる、それで終わりだ。 「じゃあね、アイドルの輿水幸子さん」 幸子は負けた。 人生というものは覚悟だけではどうにもならないことを知った。 「!?」 携帯電話の着信音が鳴り響く。 「出ていいよ、輿水さん」 発信者名はプロデューサー。 「誰か知らないけど、今から何されるかをたっぷりと教えてあげたら良いわ」 手を伸ばす。 「絶対に撮影会を止めるには間に合わないけどね」 ピ。 『輿水さんですか』 「プロデューサーさん」 『なァんて』 『わたしの人形はよい人形。目はぱっちりといろじろで、小さい口もと愛らしい。わたしの人形はよい人形』 「あぁ、やっぱり、そうでしたか」 「やっぱり、僕が今まで電話してきた相手は偽物のプロデューサーさんだったんですね」 『うふふ……申し訳なく思いますわ、でも、いない人と電話は出来ませんもの。 わたしの人形はよい人形、腹話術師の代わりにお話する人形はお気に召して?』 「ボクは……怒っています」 『うふふ……』 『でしたら、また何時かお会いしましょう。貴方のサーヴァントと共に』 輿水幸子は信じていた、こういう時にはあまりにも陳腐な展開が待っていると。 プロデューサーが自分を助けにやって来ると。 来なかった。 だから、彼女は今この状況を夢だと思った。 夢だと思い込んだ。 夢だと思いこむしか無かった。 だから、彼女は真実を認識した。 聖杯戦争、彼女が巻き込まれているものを。 「創造主【クリエーター】!」 己がサーヴァントのクラス名を叫ぶ。 それが始まり。 クリエーターが幸子の手を握る、幸子がクリエーターの手を握る。 「カワイイボクに呼ばれるだなんて、クリエーターは幸運ですね」 「僕としてはもうちょっと魔力の多いマスターに呼ばれたかったんだけど……でも、いいや」 「あの娘は殺す?」 「殺さないで下さい」 「そう」 「鍵を開けて下さい、家に帰ったらたっぷり寝ます、起きたらボクは少し泣くと思います。 少しだけ泣いたら、カワイイボクに戻ります」 「うん」 「どうするかは、それから考えます」 「そう」 「まぁ、一つ忠告しておくけどさ。 多分、この世界で、きっと君は誰からも愛されないよ。僕みたいに」 「ボクはカワイイから大丈夫です、あぁ、クリエーターがカワイクないわけじゃないから勘違いしないでくださいね!」 「そりゃどうも」 【マスター】 輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ 【マスターとしての願い】 ??? 【weapon】 カワイイヤッター! 【能力・技能】 カワイイヤッター! 【人物背景】 中学二年生の十四歳。 「ボクが一番カワイイに決まってますよ」と事あるごとに自分を「カワイイ」と発言するなど自意識過剰な性格の髪の右側に緑と赤のヘアピンをした薄紫のショートヘアの少女。 髪の両端の一部が少しハネている(持ち歌の歌詞では寝癖)。一人称は「ボク」。口癖は「ふふーん!」。どこか慇懃無礼な口調だが、 分が悪くなると強がりつつも弱腰になる。元の世界ではエスカレーター式の私立に通っている。 現在の所CDデビューを除いたすべてのレア名には「自称・」が付く。自称・マーメイドでカナヅチであることが判明。 【方針】 後で考える 【クラス】 クリエーター 【真名】 クリシュナ@夜明けの口笛吹き 【パラメーター】 筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A+++ 幸運E 宝具EX 【属性】 中立・悪 【クラススキル】 創造:C+ 世界の理を知ることで、世界の創造を可能とするスキル。 上位ランクともなれば、週休一日制での天地創造が可能になる。 このランクならば、同ランク程度の陣地作成とモンスターの創造を可能とする。 また、このスキルのためにクリシュナは異常なほどに高い魔力を有している。 【保有スキル】 神性:C- 元の世界においての偽りの神性、世界の理を知ることで擬似的に神と化した。 魔術:C 元の世界における魔術体系、マギをある程度修めている。 反骨の相:D 権威に囚われない、その始まりが奴隷であったことに起因する。 同ランクの「カリスマ」を無効化する。 【宝具】 『救われよ、己(ハレ・クリシュナ)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1 世界を滅ぼさんとする少女の意思、史上最悪の八つ当たり。 己の姿を天使、異形の怪物、千手観音と、段階的に変化し、その度にパラメーターを上昇させていく宝具。 変身中に超火力を撃たれると台詞が最後まで言えないまま死ぬ。 【人物背景】 「どうしてこんなことが出来るか不思議だって? 実は、キミがモタモタしている間に、 僕は現実世界に辿り着いたんだ。 そしてもう一度この世界に帰ってきた。 世界の両方を行き来したお陰で、 僕は現実と虚構の関連性について学んだんだよ。 この虚構の世界が人の記憶や情報の世界なら…… どういった形の記憶が 全ての人に共通する虚構を生み出すか。 それを理解できたからこうして世界を創造できるし、 他人にとっての脅威を生み出せる。 言っちゃあ、僕はもう神様なんだよね…… 【サーヴァントとしての願い】 ??? BACK NEXT -003 泣いた赤鬼 投下順 -001 玲&エンブリオ -003 泣いた赤鬼 時系列順 -001 玲&エンブリオ BACK 登場キャラ NEXT Happy Birthday! 輿水幸子&クリエーター(クリシュナ) 000 前夜祭 003 目覚め/wake up girls!
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竹田千愛&アサシン ◆U93zqK5Y1U 私たちみんなの苦しみを、ほんとに誰も知らないのだもの。 いまに大人になってしまえば、私たちの苦しさ侘びしさは、可笑しなものだった、となんでもなく追憶できるようになるかも知れないのだけれど、けれども、その大人になりきるまでの、この長い厭な期間を、どうして暮していったらいいのだろう。 誰も教えて呉れないのだ。 太宰治『女生徒』 本。本。本。 本の香りで満ちていた学校図書室の地下に。 もっと古い本の香りで満ちている学校図書室の書庫があった。 左右にはホコリをかぶった本棚があって、天井には蜘蛛の巣があって、床にはゴソゴソとしたゴキブリがいて。 中央の少し開けた空間には、二人くらいなら座れそうな古い学習机と椅子がある。 そんな空間に好んで寄り着く者がいるとしたら、それはよっぽどの“文学少女”だろう。 あるいは、どうしても一人きりになりたかった、孤独な生徒か。 もしくは、こっそりと作戦会議をしたがる二人組とか。 「フーンフフ、フーンフフ、フフフンフーン♪」 椅子に座っているのは二人。 少女の方が、鼻歌をうたう。 歌いながら、テーブルに置かれていた水筒の蓋をくるくると開け、二つあるマグカップへとお茶を注ぎ始めた。 歌のリズムは日本人ならよく知っている童謡で、「こうこは、どうこの、細道じゃ~♪」という歌詞にあたる。 よく知っていても、普通の女子高生なら鼻歌にチョイスしたりはしないが。 「アサシンさんも、どうですか? ほうじ茶ですよ」 「ありがとうお嬢さん。でも、まずは私に喋らせてほしい。 とても重要なことに気が付いてしまったのだよ」 郷土資料の本棚から持ってこられた地図を広げていたのは、どこにでもいそうな二十代の青年。 否、二十一世紀へと突入した現代のこの町で、くたびれた砂色の外套に洋風の開襟シャツという正装はだいぶ懐古趣味が過ぎるかもしれないが。 それでも、町中をすたすたと歩けるぐらいにはどこにでもいる。 むしろ目立つのは、首と手首にぐるぐる巻かれた白い包帯と、そして首から上だけは浮浪者を名乗っても通用しそうな黒い蓬髪にどんより濁った瞳だろう。 地図のあちこちに鉛筆で色々とメモがあるのは、さきほど少女が手ずから町を案内した時に書き込んだものだ。 「何か発見したんですかぁ? アサシンさんっ」 少女はキラキラとした声で、小柄な体を傾けて身を乗り出した。 『散歩につれていってあげるよ』と言い出すのを期待する子犬のように、無邪気な顔。 だって、彼は自らを『アサシン』だと名乗ったのだから。 プロの暗殺者が、戦いの舞台を俯瞰しているのだから、きっと頼もしい。 そして、男は言った。 真顔で、真面目な顔だった。 「この町には、自殺に適した場所(スポット)が無い」 「…………」 「町を流れている川はダメだ。水の透度が少ないから川面から見ただけでは浅いところと深いところが判断できやしない。 浅瀬でも入水自殺はできなくはないが、他人に見られて妨害される可能性が相当にある。 ああ、それに投身自殺もダメだね。この町で簡単に侵入できて高さのある建物となると限られる。 マスターは知らないかもしれないが、学校や病院の屋上というのは意外と投身自殺に向かないのだよ。人間は四階や五階から飛び降りたぐらいでは、意外と死ねないからね。 足から地面に落ちて両脚の複雑骨折でのたうち回るなんて私はごめんだ。そう言えばマスターの好みを聞いていなかったね? マスターは自殺するなら身投げがいいかい? それとも薬物? 心中するなら定番は練炭かな。あれってすごく頭痛がするとも言うけど、実際はフワフワして気持ちいいらし」それ以上は喋らせなかった。 少女はキラキラと無邪気な笑顔をばっちりと保持したまま、言った。 「わぁ、そんなことまで分かっちゃうなんてすっごぉーい。 さっさと自害してくださいダメサーヴァント」 「どうしてマスターは令呪を見ているのかな? しかもすごく使いたそうに」 男はにっこりとしていた。 直後、少女はどんよりと顔をくもらせて、ばったりと学習机に突っ伏す。 みるみるうちに、子犬のような目には涙がたまっていく。 感情を爆発させる幼な子のように、足をバタバタと揺らす。 「きっ、聞いてませんよぉ~。殺し合いをやるなんて、怖いことを思い出して。 ぐすっ、でも、サーヴァントさんが来てくれたから『守ってもらえるんだ』って安心したらっ。 サーヴァントから最初に『お嬢さん、死にたいから首絞めて』って言われるなんて……あんまりですよぉ~」 「そう言われてもねぇ……私の叶えたい願いといったら、『清く正しく明るい自殺』くらいしか無いんだけど。心中ならもっと良い」 少女はさらにくるりと表情を変えた。 むっとして顔をあげ、ぷんすかと反論。 「『英霊』の時点で、とぉーっくに、死んでるじゃないですかぁ~! だいいち、この『戦争』が終わったら、アサシンさんだってお空に帰っちゃうんですよ!? 自然消滅ですよ? 自殺する意味ありませんよぅ!」 少女を知る者がその光景を見れば、 ――少なくとも、彼女の『本性』を知る者ではなく『うわべ』を知る者が見れば、 「あの竹田がツッコミに回っている……だと?」と驚いたことだろう。 「やや、これは然り! たとえ死にきれなかったとしても、戦争が終わればひと思いにやすらかに、しかも死体が残らないから迷惑をかけることなくクリーンな強制送還! なんて理想的な死に様だろう。つまり『英霊の座』は自殺嗜癖(マニア)の聖地だったのか! いや、だが待てよ。帰るということは、次の聖杯戦争があればまた呼び出されるということではないか? だとすればサーヴァントとは生きる苦しみと死ぬ苦しみの無限連鎖(ループ)地獄!? なんということだ、かつては『名探偵』として民草の崇敬を一身に良くしたこの『太宰治』が、戦争だかなんかのためにボロ雑巾のごとく擦り減らされてしまうなんて……」 『太宰治』という名前が出るや、少女――竹田千愛はいぶかしげな顔をする。 「千愛の知ってる『太宰治』は探偵でもアサシンでもなくて作家さんです。 しかも、薬物中毒になったり、実家の脛をかじってるのに大学に行かずに遊びほうけて怒られたり、 奥さんに『誰より愛していました』とか遺書を書いたのに別の美人な愛人さんと心中しちゃうようなダメダメ人間です」 「美人さんと心中か。その同姓同名作家とやらはずいぶんと羨ましいなぁ。 うん、代わって欲しい。そこ代われ」 「うわぁ。うっとりとした目で、女の敵なこと言ってますよ。こわーい」 「何を言うんだい。私は女性にはみんな優しいよ。あらゆる女性は生命の母であり神秘の源だもの」 「女性に優しい人は、女性に『死んでくれ』とか言いませんよぅ!」 千愛は確信する。 この人はやっぱり、太宰治なんだ。 出自も、職業も、能力とかも違うけれど、きっと似たような魂の下に生まれてきたんだ。 『色々なこと』があって、すっかり太宰治に詳しくなってしまった千愛が確信するのだから間違いない。 ウソつきで、調子のいいことばっかり言って、悪い大人の見本みたいにダメダメなところとか、間違いなく太宰治だ。 「どうやら、我が主は勘違いをしているようだね」 「どこがですか?」 あの『人間失格』の、太宰治だ。 「君を心中に誘ったのは、てっきり君も『同じ趣味の仲間』だと思ったからなのだ」 にっこりとした笑みで、何気無さそうに放たれた言葉。 視線の先にあるのは、竹田千愛の左手首にある、『令呪ではない傷跡』だった。 「……やっぱり、分かるものなんですね」 竹田千愛の顔から、ありとあらゆる、表情と呼べるものが消える。 右の手のひらで逆の手にあるリストカットの痕を隠し、空っぽの瞳でサーヴァントを見つめる。 ここからの竹田千愛は、『本当の竹田千愛』だ。 「あたしは、自殺が好きじゃないですよ。ただ、死にたくなる時があるだけです」 こんな風に、私は異常者なのですと自白する真似なんて、いつもならできないけれど。 「マスターは、聖杯戦争をするまでもなく、死にたいのかな?」 相手が、『太宰治』なら。 騙したって傷つけたってお互い様の人間失格が相手だから、こんなことだって言える。 「あたしのような……人が死んだってなんとも思わない人でなしが殺し合いをしたら、 どうなると思いますか?」 竹田千愛。 幾『千』もの『愛』。 それに恵まれることを願って命名された名前だとしたら、なんて皮肉。 そう名付けられて生まれた女の子は、愛だとか、思いやりだとか、恋心だとか、人間らしさといったものが欠落していた。 だけど、欠落していることが恥ずかしかったから、ずっと演技をして隠してきた。 『フツウのかわいい女の子』の振りをしてきた。 「適材適所だとでも、言いたいのかな?」 尋ね返すアサシンの目にも、感情の揺らぎはない。 まるで、竹田千愛は本当はこういう顔をする子なのだと、最初から見抜いていたかのように。 「色々、考えました。今でも考えてます。 何でも願いが叶えられるなら、『フツウの女の子』にもなれるのかな、とか。 それはとっても、なってみたいな、とか。 でも、『また』人を殺したりしたら、今度こそ『人間失格』になるかもしれない、とか。 『フツウの女の子』なら、こんな風に悩んだりしないで、『生きて帰りたい』とか怖がったりするのかな、とか。 それはなんだか、ちょっとずるいな、とか。 それとも、とっても立派でゆずれない願いがあって、戦おうとしてるのかな、とか。 だとしたら――」 もしかすると、独りよがりな子どもの馬鹿げた発想かもしれないけれど。 「――この町では、ただ生きているだけで、他の人達を損なうんですよね」 少女はそれを、悲しいことだとは分からないけれど、 そうなりたくないとは、思っているから。 「そうまでして生きてるより、誰かのために殺されて死んだ方がいいのかな。とか」 そう言った瞬間に、太宰治がその黒くて暗かった瞳で、まじまじと竹田千愛を見た。 まるで、初めて心動かされるものを見たかのように。 千愛はその沈黙に戸惑ってしまって、マグカップのほうじ茶を一口のむと、「てへっ」とおどけてみせた。 「……なーんて。ちょっと、思ってみただけですよぉ。死にませんって」 道化の仮面は再着されて、いつもの竹田千愛になる。 このお話は、ひとまずお仕舞い。そのつもりだった。 「だから、アサシンさんの趣味には付き合えないと思います。 お願いを叶えてあげられなくて、残念でした」 「竹田千愛君」 男が、初めて少女の名前を呼んだ。 「確かに私と君とでは、似ていても違うようだね。 最初は似た者同士だから呼ばれたのかと思ったけれど、それでも違う」 千愛は、顔をぎくりとこわばらせた。 なぜなら、『太宰治』は似ていたから。 かつて、『この人なら私の気持ちを分かってくれる』と惹かれて焦がれた人に、似ていたから。 だから、否定されるのは怖い。 「さっきの君は、むしろ私の部下に似ていたよ」 「部下、ですか?」 「そう、『武装探偵社』の部下」 「ああ、そう言えば自称探偵さんでしたっけ」 「『自称』を強調されると傷つくんだけど」 しかし、否定はされなかった。 言われてみれば、作家の太宰ではなく自称『探偵』だった。 死んだ魚のように濁った眼をしてる自殺嗜癖の探偵なんて、未だに信じきれないけれど。 「確かに私には『自殺』くらいしか願いが無い。けれど、これでも私は探偵をしている。 そして、依頼人を助けるのが探偵だよ」 詐欺師のように、何を考えているのか分からない飄々とした笑みだった。 にも関わらず、千愛には男が嘘をついてはいないと思ってしまった。 それは、千愛が男のことを理解できるからなのか。 それとも、男のことを理解できないから騙されているのか。 「つまり、君が助けを求めるならば、私は君を助けよう」 似ていないとしたら、千愛は『人間失格』なんかじゃない、別のところに辿り着くのだろうか。 ――君は、■■先輩と別のところへ、辿り着かなきゃいけないんだ! そう言ってくれた、かつての救い主の言葉を思い出す。 「アサシンさんは、あたしが好きだった人に似てますね」 「へぇ。マスターは私みたいな男に恋をしていたのか」 どこが同じなのか。 どこが反対なのか。 『女』の対義語(アント)が『男』であり。 『子ども』の対義語(アント)が『大人』であり。 『逸脱』の対義語(アント)が『普通』であるなら。 「恋じゃありませんよ、きっと」 『人間(Man)失格』の対(アント)は、『普通の女の子(girl)』なのか。 「でも、好きでした」 ただひとつ、言えることは。 『人間失格』から見た竹田千愛という少女は、理解できない異常者ではないということ。 ――少女もまた、迷える子犬(ストレイドッグ)の、一匹だということ。 【クラス】 アサシン 【真名】 太宰治@文豪ストレイドッグス 【属性】 混沌・善 【パラメーター】 筋力:E 耐久:D 敏捷:C 魔力:E 幸運:D 宝具:EX 【クラススキル】 気配遮断 C 自身の存在を他者に察知されないスキル。 職業柄(前職でも今の仕事でも)、潜入捜査の心得があるので、まあそこそこ。 【保有スキル】 対魔力 A+ 事実上、あらゆる魔術(令呪の命令を除く)ではアサシンに傷をつけられない。 後述の宝具のせいなので、クラススキルではなく保有スキルにあたる。 死にたがり:A+ 趣味:自殺。モットーは『清く正しく明るい自殺』。 ただし、『趣味』が自殺だと言っているように、誰かに助けられるか、太宰自身のドジによって失敗するかのパターンがお約束となっているために、『死にたくても死ねない死にスキル』となっている。 そのためにアサシンは(前述の対魔力もあって)令呪によって自害を命じられても、二画までは抵抗できてしまう体になっている。 策謀看破:B 直接的な戦闘ではなく、戦術・戦略レベルにおける作戦行動を見抜く洞察力。 後述の職業柄、また生まれつき『その仕事』の才能があったために身に着いたもの。 情報末梢 C 対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から、一部の情報が消失する。 消失する情報は、クラス名、宝具、スキル。 後述する宝具(二つ目)のせい。 【宝具】 『人間失格(ニンゲンシッカク)』 ランク:EX 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:- 触れた能力(魔術、異能)を無効化する宝具。 常時発動型宝具であり、『能力で造り出した拳銃』を使って太宰を射殺しようとしても銃弾の方が消滅してしまう。 この宝具があるために、魔力が無いにも関わらず対魔力EX。 太宰自身の奇矯かつ人畜有害かつ駄目人間の見本のような性格まで「生前に築き上げた伝説がカタチになったもの」補正としてしっかり反映されているので、『魔力を打ち消す』というよりも『敵の思惑をぶち壊しにする』という概念武装みたいなもの。 つまりメタに説明するなら『上条さんが右手で鯖に触ったら鯖は消えるのか問題』については考えなくていいですよ、ということ。 『黒の時代(ポートマフィア)』 ランク:C 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:- 常時発動型宝具。 そして、太宰治が『アサシン』として召喚された理由。 太宰の経歴は政府の特務機関が2年を費やして念入りかつ念入りな情報の末梢を行っており、探偵になる前は何をしていたのか遡ることは不可能となっている。 太宰自身は『前職を当ててみなよ』と日ごろから賭けのネタにしているものの一度も正解者が現れたことはなく、懸賞金は膨れ上がる一方。 本来は宝具扱いされるほどでもない逸話なのだが、『太宰治という人物』が一般からは『文豪』として認知され、『人間失格』も能力などではなく『文学作品』として知られていることによる知名度補正からの逆補正を受け、宝具の域にまで昇華されてしまった。 常にCランク程度の情報末梢スキルが働いている状態となる。 「太宰治が『元マフィア』だということは知られていない」 【weapon】 完全自殺読本。 古今東西のありとあらゆる自害の方法を網羅した愛読書。 ただの稀覯本。 【人物背景】 文豪、太宰治……ではない。 異能力集団『武装探偵社』の調査員にして荒事担当の一人。22歳。 前職は横浜で最も巨大なマフィア組織の幹部。マフィア時代は笑顔で人を拷問する(精鋭の拷問班が取り組んでも自白しなかった鉄腸漢でも、太宰が訊ねれば口を開いたらしい)ような冷血漢であり、太宰にとっては『正義も悪も同じ』で、『孤独を埋めるものがあらわれない』世界に失望しての自殺未遂を繰り返していた。 マフィアになった理由は『血と暴力と人間の本質が見える世界にいれば、何かあると期待したから』。 しかし、唯一の理解者となった人物が組織の首領に切り捨てられて、目の前で死亡。 最期にその人物から『人を救う側になれ』と道を示されたことで、『人助けができる仕事』――探偵社の社員へと転身した。 【サーヴァントとしての願い】 趣味の自殺も難しそうだし、マスターを助ける。 【マスター】 竹田千愛@“文学少女”シリーズ 【マスターとしての願い】 『フツウの女の子』になりたい。 【能力】 強いて言えば、周囲を完璧に欺きとおせる演技力と、いざとなれば犯罪に分類される行為をも躊躇なくやってのける行動力。 周囲からは『純粋無垢で健気でやさしく明るい子犬のようなドジっ子。かわいい』だと思われている。 【weapon】 カッターナイフ。 リストカットの常習犯。 【人物背景】 聖条高校一年生。外見年齢は制服を着ていなければ中学生と間違われる程度。 生まれつき共感する能力や他人の痛みを感じ取る能力が欠落していたため、『親しい人物が死んでも悲しいと思えない』『他人を傷つけても痛いと感じない』『赤ちゃんや可愛い動物を見ても可愛いと思えない』『みんなが可笑しくて笑っていることや、悲しくて泣いていることの、何が可笑しくて何が悲しいのか分からない』といったことに多大なコンプレックスを抱いていた。 (決して感情がないわけではなく、特に『みんなが当たり前にできることができない』とについては深く思い悩んでいる) “文学少女”1巻での一連の事件がきっかけで太宰治の作品を読むようになり、特に『人間失格』は五回も読み返して泣いてしまうほどに傾倒している。 【方針】 生きていく理由、生きていてもいい理由を見つけたい。