約 1,257 件
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/89.html
574. 辺境人 ◆WvgPQuc/WQ 2011/11/13(日) 22 01 34 世の中に、兵法の道をならひても、 実の時の役にはたつまじきと思ふ心あるべし 其儀に於ては、何時にても、役にたつやうに稽古し、 万事に至り、役にたつやうにおしゆる事、 是兵法の実の道也 《宮本武蔵》 <提督たちの憂鬱 支援SS「武術バカ数代」> 1941年 神奈川県丹沢山地 神奈川県の6分の1の面積を持つ広大な山地には国有地として関係者以外立ち入り禁止の場所があった。 敷地の入り口には陸軍丹沢学校という看板がかかっているがその敷地は丹沢山中にまで及ぶ広大なものであり、オリンピック選手の養成や効率的なトレーニング理論の構築や運動データの取得など運動学の研究も行っている史実の自衛隊体育学校のような一面も持つが、その広大な敷地には市外戦訓練用の建物など複数の訓練施設が建造され、多くの兵たちが日夜訓練を重ねている。熱戦教の本拠地である海南島、冬戦教の本拠地であるカムチャッカと並び本土における特殊部隊の本拠地こそがこの丹沢学校であった。 そしてその広大な訓練場の一角に墨痕も鮮やかに<練武館>と書かれた看板がかけられた古風なつくりの建物がある。 そこでは中国拳法で行われる套路(とうろ)に似た型の反復練習をひたすら続ける者もいれば重い荷物を背負ってアスレチックのような障害物の多い舗装されていない地面を走る者もいる。だがもっとも目立つのは素手での戦いをしている者たちだった。複数の男達がチームを組み戦っている。2対2、5対5といった同数の組もあれば2対1や3対1といった組もあり、服装も軍服だけや軍服に荷物を背負った状態など様々な姿をする者たちがいたため傍から見ると暴動でも起きているかのようにも見えた。 「いいか! 戦場では卑怯などという言葉はない! 勝つためならば目潰しも不意打ちもありとあらゆる手段が推奨される! 正々堂々などというのは命のかからない試合をやってる連中だけの言葉だ。古来より戦場で必要とされてきた武術の理念は単純明快で「殺せれば良い」、「生き残れば良い」、それだけだ!」 「戦場で素手で戦うような事態はほとんどない。武器がなければ石ころでも砂でも手近にあるものを武器として使うことを考えろ。剣道三倍段というのは俗説ではあるが素手よりも武器を持った方が有利なのは当然のことだ。あくまでも徒手格闘は武器を探したり手に取る余裕の無い時の技術だと理解した上で柔軟に戦い方を組み立てろ。なんであれ武器を持てば相手はその武器に注意を払うので場合によっては武器を見せ金にして素手の攻撃を本命にするやり方も有効だ」 「歩法はあらゆる動作の基本だ。瞬時に間合いをつめる、音を立てずに忍び寄る、体力を消耗しないように歩く、そういった状況に応じた最適な動き方を体得しているだけで大きな利点となる。筋肉がどんな動きをするか理解し、普段から最適な歩き方を意識して行うことで身体に覚えこませろ」 あちこちで格闘だけでなく講義も平行して行われ、野外だというのに喧騒が耐えない。それは教える方も教わる方も真剣に学ぼうとしているからだけではない。いつ戦場へと出征することになるのかわからないためこの訓練が命を救うかもしれないと文字通り命がかかっているが故の必死さもあったのである。 「戦争になってから訓練生の入れ替わりが激しくなり稽古も殺気立ってきましたなぁ……。いくら誰でも短期間で一定の習得ができるのが軍隊格闘術とはいえじっくりと教え込む余裕がないから手っ取り早く使えそうな技だけを叩き込む、それで戦場で生き残れる確率が少しでも上がれば確かに無駄ではないかもしれませんが武術家としては歪な成長の仕方をしてしまうかもしれんし師範代としては痛し痒しですわ」 「うむ、訓練生の中でももう出征してしまったが船坂君(※1)なんかは若いながら軍が直々に勧誘しただけあって武専(※2)の卒業者でも中々いない才を持っておった。基礎はできとるようだし鍛えればもっと上の段階に進めるじゃろうが惜しいことじゃの……。木村君(※3)もここに残って欲しいが彼を奪ったら講道館だけじゃなく柔道関係者全員に恨まれるかのう。木村君に眼をつけて押しかけ師匠をやっとった前田君(※4)は引退したというのに絶対逃がすなとうるさいし……わしが中村君(※5)という直弟子を持ったので嫉妬しとるんじゃきっと」 575. 辺境人 ◆WvgPQuc/WQ 2011/11/13(日) 22 05 41 その喧騒を眺める二人の男性がいた。一人は見るからに老境に入っているがその身体は針金のように引き締まっており、もう一人はそれよりは若いもののやはり40近い中年でありその発散する空気は尋常ではない。この二人こそが練武館の重鎮であり老人の名を練武館館長の本部朝基、若い方が師範の国井善弥といった。 本部朝基は史実において沖縄で琉球王家の血を引く名門の家に生まれ空手(正確にはその前身となった御殿手と呼ばれる琉球王族秘伝の武術)を習い大正時代には50歳を越えて外国人ボクサーを一撃で倒し、60歳を越えて伝説のチャンピオンとして有名な当時現役のフェザー級チャンピオンであるピストン堀口のパンチを全て捌き顔面に寸止めの拳を打ち込み降参させた実戦空手の雄である。 そして国井善弥も史実において実戦を重んじるあまり他流試合を多く行ったため異端視されたものの当代一の実戦名人として「今武蔵」と呼ばれ史実でも大正時代に陸軍戸山学校で戸山流という立った姿勢から居合いを基本とした抜刀術を軍刀で行う剣術を他の剣術家と共に制定し、戦後にGHQにおいて海兵隊の格闘技教官を相手に試合を行い圧倒的な実力差を見せつけ勝利し、他流試合においても剣でも無手でも常に相手の望む条件で戦い生涯無敗という化け物である。 この二人の化け物が日本軍の格闘技教官の事実上のトップであるが国井にせよ本部にしろ軍人に格闘技を教える軍属の立場ではあっても軍人ではない。それは軍が求めるのは軍人であって武人ではない、というスタンスを取っているからで武術はあくまでも兵に必要なスキルの一つにすぎないためそれだけに専念する国井たちのような武術家は軍人には向いていないと判断されているからであった。とはいえただでさえ才能のある人間が史実以上にひたすら武術を磨くことだけを許された環境にいるだけあってその力量は凄まじく、夢幻会のとある人物に「あそこだけ夢○獏の世界になってる」と言わしめたのは伊達ではなく練武館も夢幻会が発信源だが<虎の穴>と呼ばれていた。 ここで教えられる格闘技の源流は明治維新によって衰退した古流武術の集合でもあった。史実では武術が時代遅れとして廃れていき、柔道や剣道のようにスポーツとして順応し生き残った少数の例外を除き多数の流派が絶えていったが夢幻会はこうした武術家に対して救いの手を伸ばした。 アメリカのマーシャルアーツやロシアのシステマ、イスラエルのクラヴ・マガといった近代になって創設された軍隊格闘術は主に軍隊が戦場で使用するものだけにスポーツでは許されない、むしろ戦場以外では使えない殺人術が複数存在している(護身術として公開されたものもあるが基本は警察や軍隊以外では教えない)。その中でもロシアのシステマの原型となったのはロシア革命前に広まっていた伝統武術でありロシア革命でそうした伝統武術が禁止されたものの白兵戦においてはそれらの技術が有用であると秘密裏に保護されスペツナズなどの特殊部隊で使う武術として体系化された歴史がある。それを知っていた夢幻会メンバーは明治政府に相談して新しい総合武術を創設するという理由から柔術や骨法、空手など様々な流派、中には一般的には忍術と呼ばれる武術の達人たちを秘密裏に招聘し、武士らしい所作の美しさや宗教や特定思想といった実戦とは関係の無い部分などを容赦なく排除し、実戦のみを重視した新しい流派を創設するという仕事が課せられたのである(武術だけでなく江戸時代から続く飛脚たちが一日に百kmを走破したと言われるナンバ走りと呼ばれる現代では失われた長距離走法なども貴重な伝統的な体術の一つとして保護された)。 576. 辺境人 ◆WvgPQuc/WQ 2011/11/13(日) 22 06 30 先祖代々受け継いできた秘伝を公開して吸収された挙句にダシガラのように流派の存在自体が捨てられるような形の武術家たちも面白くはなかったろうがこのままでは流派自体が途絶えるのも分かっており、なによりもこれまで武士として得ていた禄を失い藩閥政治がまだ強大な時期だけに世渡りも下手な武術馬鹿たちも食っていくためには仕方なかった(無論のこと流派の意地を貫いた者も存在し、公式な記録には残されていないものの血が流れた例もある)。 しかも日本だけでなく外国の武術も研究し、才能のある武術家を留学と称して大陸などに派遣し、特に中国では義和団の乱以降、武術が規制されていたこともあって後継者不足に悩んでいた中国の武術家は史実で日本少林寺拳法の祖である宗道臣(当然彼も練武館の出身である)のように積極的に学びに来る者には比較的門戸が広かったこともあり(当然ながら中国人以外には教えないというスタンスを取っている門派もあったが中国人に化けたり袁世凱などツテのある中国高官に賄賂を含めてあらゆる手段が取られた)貪欲にその武術を学び、時に異郷の土となった者が出てもなお留学は続けられ、弟子入りした武術家の中には黄飛鴻や李書文といった伝説的な武術家も含まれているなどとまことしやかに言われていた(一説には伝説的な武術家のファンであった夢幻会の後押しがあったとも言われる)。それらの繋がりは今でも続いており旅順には北派の武術家が居を構え、福建共和国には元から福建省で広まっていた南派武術以外にも北派の武術一門が少数ではあるが移ってきており、後に奉天軍の没落による中国内陸部の荒廃により史実の台湾のように様々な武術家が伝手を頼って福建に流れてきたため福建共和国は中国拳法の見本市状態となるほどであった。 そうして形作られた新たな武術は特定の流派名は持たないが軍では零式格闘術と呼ばれた。格闘とは零距離、つまり至近距離での戦闘だからとか、相手を無(零)に、つまり死に至らしめる術だからとか言われているがその命名の由来は定かではない(夢幻会では「覚悟のス○メかよ……強化外骨格とか作れねーよ!」と命名した明治の先達に叫んだが)。 零式は軍隊格闘術であり戦場での使用を前提としているため習得が容易で合理的、実戦的であることを求められ一般的に定期的な訓練を続ければ2年もあれば素人でもヤクザくらいなら瞬殺できると言われた。素手での格闘術から小太刀術をベースにした短刀術(ナイフコンバット)、忍術をベースにした投擲術や隠密隠蔽術や追跡術など様々な技術が研鑽され、銃剣術といった史実にもある武術だけでなく、拳銃を持ったまま近接格闘を行う銃拳術(CQB)といった新しいカテゴリーの武術も誕生していった。細かい技を含めると膨大な数になるため全ての技をマスターするのは無理なために基本的な技をマスターした後は個々人の好みや教官の指導によって向いている技を選ぶのが普通だった。しかも陸軍管轄組織とはいえその指導は陸軍以外、海軍や海保向けの中国拳法南派や空手などをベースに足場の不安定な船上での格闘を前提とした武術や警察向けの合気道や柔道をベースにした捕縛術、情報部向けに諜報工作員が習得する暗器などを使う暗殺主体の武術(こちらはあくまでも裏の武術であり公式には存在しないことになっている)すら存在しているため師範クラスですら全容を理解しているのはほんの数人しかいないという有様である。 本部にしても国井にしても史実において晩年まで武術の研究を追及していた筋金入りの武術家であり、ここでの鍛錬や研究で習得した武術によってすでに一介の空手家や剣術家というカテゴリーに入らないオールラウンダーな総合格闘家として完成に域にあるもののそれでも習得していない技があるというのだからその数がどれだけ膨大なものかわかるであろう。しかも机上の研究ではなく、海援隊や諜報部によって実際に実戦で使用され効果を確かめることでその技術を更に磨き上げるのだから実戦的どころの話ではない(一説には本部や国井も周囲が止めるのを聞かず自ら大陸に渡り実戦を経験したとも言われる)。 577. 辺境人 ◆WvgPQuc/WQ 2011/11/13(日) 22 07 07 他にも意外なことかもしれないが零式においても精神鍛錬は重視されている。これは別に武術を極めることで人間として上等になるとかいった武道の理念とは関係なく、単に普通の精神状態で人間を撲殺できるほど人間は融通の利く生き物ではないということである。殺人へのショックは敵との距離に反比例して高まると言われ、数百kmの彼方を攻撃するミサイルも発射スイッチを押すのと眼前の敵と目を合わせてナイフで刺し殺す感触をその手に感じるのとでは受けるショックに雲泥の差がある。 いわゆるシェルショックと呼ばれる戦闘神経症の研究も日露戦争から心理学者のフロイトへ資金援助とセットで松本亦太郎などのまだまだ草創期だった日本の心理学者を弟子入りさせることで心理学の研究を進めており精神治療と平行していかに衝撃に耐える精神を養うかという研究において決定打は見つからないものの武術が伝統的に行っている瞑想などの精神鍛錬に効果があると判断され、機械のように冷静に人を殺すなど無理ではあるにしても少しでも冷静さを保って戦えるようにするための純粋な戦闘訓練の一環として導入されていた。同時にこれは人間凶器とも言える武術家が強さのみを追い求めた挙句に人を殺すのを楽しむようになってしまっても困るという切実な問題もあった(少なくともまともな軍人なら個人の強さなどプロの戦闘集団に襲われれば何の意味も無いことは理解していたが)。 「よし、今日は楽しい楽しい焼肉の日だ。選ばれた者は用意せい。間を外したら息の根を止める前に振り飛ばされるぞ。そうなった奴は豚より弱い奴と言われるからな!」 「「「押忍!」」」 佐賀藩の葉隠思想が元とも武専の挨拶がなまったものが元とも言われる掛け声で答え訓練生たちの中でも卒業の近い人間たちが前に出て柵で囲われた場所に入っていく。そしてそこに数頭の豚が入れられた。 練武館の稽古はひたすら実戦的、ということに力点を置かれている。道場での稽古などはほとんど行われず足場の悪い野外や狭い室内で複数を相手どっての稽古や月の無い深夜に行われる闇稽古、森の中で追っ手を掻い潜る忍び稽古、眠っている時を狙って襲う夜討ち稽古などスポーツ化した武道とは一線を画している。怪我人など日常茶飯事であり滅多にないことではあるが重傷者や死人が出ることもある荒行であった。 その中でも顕著なのが数ヶ月に一度(今回は短期カリキュラムのため数日に一度)行われる生きた豚を使っての稽古である。豚とはいえ生命力は強く、猪の親戚でもあるため突進をまともに受ければ怪我をしかねないため訓練生たちも油断せず間合いをつめていく。生きた豚の首をへし折る(正確には脊髄をねじ切る)ことで人間の首の折り方を練習したりナイフコンバットで生き物にナイフを突き立てる経験を積ませるというあまりにも猟奇的な訓練は世間一般には一切非公開とされていた。 殺した豚は野生動物を現地で狩った際にその場で捌くための訓練にも使用されどの部分も余すところなく調理され訓練生たちの血肉となる。豚に限らず様々な地域で生息する食用になる動物は一通り捕らえ方や捌き方が教えられ、野鳥や蛇など様々な食材が供される。サバイバル訓練も兼ねているためゲテモノを食わされることもあるためここで訓練すれば好き嫌いなど超越して何でも食べられるようになるともっぱらの噂であった。とはいえ肉などまだまだご馳走な時代だけにこの稽古のある日は訓練生たちも腹いっぱい、しかも普通の肉が食えると喜んでいた。 578. 辺境人 ◆WvgPQuc/WQ 2011/11/13(日) 22 08 00 「ははは、国井君、訓練生に沖縄の人間がおって料理が得意だというんで今日はわしの故郷の料理を作ってくれるそうだ。ヤマトンチューにはちと食べ慣れんかもしれんがわしは楽しみでなぁ」 「子供ではあるまいに好き嫌いを言うような輩は当館にはおりませんぞ。ましてや肉を食らって身体を作るのも重要ですからな」 「それを聞いたら植芝君(※6)が気を悪くするぞ。彼は肉は苦手じゃからな」 豚の首に腕をからませ一瞬で首の骨をへし折る、もしくはナイフを急所に刺して一撃で絶命させ、その場で軍用ナイフ一本で解体するという一般人が見たら気分を悪くしそうな光景を見ながら子供のように笑いながら話す二人。周囲の訓練生たちもそれを当然のように見ており、ここが一般社会とは別の世界なのだと如実に表していた。 だが同時にそれはここが一般社会とは隔絶した武術家の楽園であるとも言えた。本来ならばそれなりの資産や収益を得られる組織でもない限りは鍛錬に専念できる環境などそうそう得られるものではない。本部にしろ国井にしろ本来ならそれぞれ流派の看板を背負っていてもおかしくない身でもある。史実では本部は本部流空手の創始者であり国井は鹿島神道流の第18代宗家であったが二人ともこの練武館で武術のみをひたすら追求できる環境に満足し、流派を起こしたり継いだりする気を無くしてしまっていた。 武術の世界は基本的に排他的なものが多く、奥義や秘伝といった技術は基本的に秘匿され、時として天才が生み出した技がその排他性ゆえに伝承されることなく消えていくケースも恐らく歴史上数多あっただろう。だが、練武館では基本的には一般人への伝授は禁止されているもののその技量に応じて技を教えることをむしろ奨励しており、天才が生み出した技が他の天才たちによって練磨されるという循環が起こることで従来の閉鎖的な環境よりも数倍の早さで技が進歩するとなれば向上心のある武術家ならここを離れるというのは余程の決心が無ければ出来ないことでもある。さすがに漫画のように気を飛ばしたり秘孔を突いて破裂させたりといった非常識なことはしないものの厳しい訓練を積み実戦を重ねた特殊部隊員は無音で敵を殺せるようになり白兵戦においてもグルカ兵すら超えると言われる実力を持つようになった。 古くは明治の嘉納治五郎が柔術を元に危険な技を捨てスポーツとしての柔道を広めたことに始まり、空手でも本部と同じ沖縄出身の空手家の船越義珍のように社会に空手を広めようとスポーツ的な武道の道を歩む者もいるし一度は練武館に所属しながらもあえて武道へと回帰し合気道を立ち上げた植芝盛平のような例もあり、むしろ数的にはそういった一般人の武道家の方が圧倒的多数派である。その一方で実戦派の極地のような練武館は圧倒的少数派であるがそれだけに軍という暴力を肯定する国家組織に抱え込まれることでより先鋭化し、こうして日本の極一部では武侠小説のような光景が現出することとなったのであった。 <完> 579. 辺境人 ◆WvgPQuc/WQ 2011/11/13(日) 22 08 41 ※注1:船坂弘。言わずと知れた日本の人型決戦兵器。開戦前から軍は優秀な人間をスカウトしており、彼もまた満蒙学校在学中に予備士官制度を取得していたこともあって最優先でスカウトされた。史実より早く軍に入隊し、特殊部隊の隊員となるべく様々な訓練を受けており格闘技訓練もここで受けていた。もともと剣道などの有段者だったこともあり練武館でも極めて優秀な成績を収めたが銃や爆発物なども天賦の才を発揮したため勧誘されても格闘技教官で収まる人間ではないと思われる。 ※注2:京都にある武道の指導者を育成するための大日本武徳会武道専門学校のこと。柔道の総本山とも言える講道館と並び東の講道館・西の武専と呼ばれていた。練武館を除けば一般的に日本最高の武道専門機関であり時に死者すら出る激しい稽古で知られている。講道館と武専の卒業者が練武館に就職するケースも多く、逆に練武館から講師が派遣されることもあった(あくまでスポーツレベルの教授という制限はあったが当時は剣道や柔道でも足払いや当身などが有りの組み手が存在する比較的実戦的な武道だったため史実の現代とはレベルが違った)。史実では剣道と柔道が専門だったがこちらでは空手も(投げ技や関節技もある拳法に近い)専門コースが存在する。 ※3:木村政彦。史実では史上最強の柔道家として知られこちらでも柔道選手として当時から有名であり全日本選士権3連覇、天覧試合でも全試合一本勝ちし「鬼の木村」と呼ばれていた。投げ技だけでなく寝技や関節技も高専柔道と呼ばれた寝技などを主体としたスタイルを築くなど得意としており史実でも空手やボクシングを習得していた総合格闘技の元祖ともいえる存在だったこともあって軍隊格闘術の親和性も高く、この当時は関節技などのスペシャリストとして教官の一人になっていた。 ※4:前田光世。史実ではコンデ・コマとしてブラジルに帰化しグレイシー柔術の始祖となったがこちらでは渡米前に練武館の依頼で海外に武術研究のため旅立ったため海外修行の成果を持って帰国、練武館の師範代の一人となるがこの年にはすでに引退している。史実では41年に内臓疾患で死亡しているが熱帯のブラジルと比べ祖国の環境が良かったのかまだ存命であり木村政彦を自分の生み出した柔術の後継者にしようとしたため木村を柔道界の宝と見ていた講道館と衝突していた。 ※5:中村日出夫。武専の卒業生で京都帝大法学部出身という異色の空手家。史実では「空手に流派なし」をモットーとして特定の流派を起こさず拳道会という組織のみ設立したがこちらでは本部の直弟子として練武館で空手家のエリートコースを歩んでいる。 ※6:植芝盛平。史実における合気道の創始者だがこちらでは日露戦争時に実戦に参加、退役後に練武館にスカウトされるが後に柔術をベースとした合気道の創設を勧められ投げ技だけでなく当身もありな護身術としての武道の啓蒙を行う。菜食主義者であり甘いものが好物だったという。
https://w.atwiki.jp/kenkaku/pages/254.html
夢十夜――第二夜『喪神/金の龍』――◆F0cKheEiqE どしゃり――― と、何か重たい物が、地面に落ちる音が響き、続けて、 びしゃり――― と、水か、あるいは水を多分に含んだ何かが、地面にまき散らされる音が響いた。 まき散らされた水が、液体が、地面へと音も無く広がり、そして吸い込まれていく。 液体は、水よりも遥かに濃い粘質の物で、鉄錆びた異臭を放っていた。 それは大量の血液であった。 土がむき出しの地面に転がった物は大きく二種類。 大きな何かの塊と、それから延びたり散らばったりした、 細く長い何かや、小さな塊の数々であった。 小さかったり、長かったりするものの色は、赤であったり、 青であったり、黒であったりしたが、総じて何か粘質の液体に覆われ、生温かく、微かな湯気を放っている。 鉄錆びた異臭と、排泄物の悪臭が、混ざって立ち上った。 それは、臓物であった。 それは、下半身と泣き別れになった、誰かの上半身であった。 左肩口から一文字に、右の腰まで綺麗に通った一太刀に、その人物は肉体を両断されていた。 上半身と別れた下半身は、上半身より少し離れた所に転がっていた。 そんな誰かを、見下ろす一つの影がある。 影の右手には抜き身の段平一つ。切っ先からは滴る血の粒。 影は屈みこみ、転がった誰かの下半身の袴の裾で、 刀を濡らす血を拭い、パチリと、鞘に刀を納める。 そして影は、 ニィッ――― と、薄く笑ったのであった。 ◆ 夜空を背に、二人の剣客が対峙している。 片や、柄を長くとった細身の居合太刀を腰間に下げた、凛々しく、年若き少女である。 片や、二本の太刀を差した、総髪、茶筅髷の、雄々しい風貌の老人である。 六、七間ほど間を開けて対峙していた二人であったが、 少女、左手を腰間に、右手を柄への居合腰、 老人、大刀二本差しの上方の柄頭に左の掌に乗せながらも、右手はだらりと下がったままで、 臨戦態勢の少女と比べれば、些か、戦いへの消極性を感じさせる有り様であった。 少女が、ズズイ、と殺気立ちながら摺り足で間合いを詰める。 老人、僅かに縮んだ間合いを広げながらも、しばし逡巡していた様子であったが、 「止むを得ぬな…」 と、些か薩摩訛りを感じさせる言葉をつむぐや否や、 鯉口を切り、刀をスラリと音も無く引き抜き、 右半開、切っ先を下に向けた、“逆八双”とでも言うべき独特の構えを取る。 「タイ捨流、東郷重位」 老人の名乗りに応えて少女曰く、 「無双真伝流、高嶺響」 少女、高嶺響は、憎悪の籠った瞳で、老人、東郷重位を睨みつけながら言った。 「人斬り…あなたを、斬る…」 両者の対峙は全くの偶然から始まった。 香坂しぐれを追う響と、武田赤音を追う重位とが、 ばったりと交錯してしまった事に端を発する。 両者ともに、追うべき者の逃げ足が予想以上に素早く、 尚且つ両者ともに追跡の開始に些か出遅れた事もあって、 二人揃って標的に追いつけぬまま、互いに接触そてしまったのが不運であった。 特に、東郷重位にとっては不運であった。 響にとって、香坂しぐれの殺害は、必要事項であっても最優先事項では無い。 一方、重位に取って武田赤音の抹殺は、御留流の太刀筋を守る為にも、 何にもまして優先されねばならぬ使命であった。 当初、重位は響の隣を素通りし、赤音の追跡を続ける予定であった。 響の方も誰かを追っていたらしい事を、重位は気配で察していた。 響の方も自身の標的の追跡を優先するであろうし、 故にここでは、敢えて戦う必要は無いと、先方も判断するだろうと、重位は考えていた。 しかし、重位に取っては不運な事に、上記したが如く、 響にとって、香坂しぐれの殺害は、必要事項であっても最優先事項では無かった、と言う事である。 そして、響が、重位の体から立ち上る人斬りの気配、 瀬田宗次郎を斬った際に染みついた血臭を一見で感じ取り、 斬って捨てるべき修羅の輩と判断してしまった事は、重位にとってはさらなる不運であった。 鷹は鷹を知り、狼は狼を知り、虎は虎を知る様に、 達人は達人を知る。 響が一見にして重位の『危険性』を認識したように、 重位もまた、響が相当な『使い手』である事を喝破していた。 そして、彼女を斬らずして赤音を追う事が、余りに難しい事も、また… (女子を…ましてやこのような娘を斬る剣では無いが…黙って見逃してくれる相手ではない) (無視して撒くにしても、迂闊に背を曝せば一太刀でばっさり…娘ながら、それぐらいの腕はある相手よ) 言葉尻より察するに、勝負に乗っているとも思えぬ彼女が、 何故、重位に斯くも鋭い殺意を向けるのかは、彼には解らぬが、 剣士である以上、降りかかる火の粉は払わねばなるまい。 意を決した重位は、スルスルと間合いを詰める。 一方、響は居合腰のまま動かず、重位の一挙一動見逃すまいと鋭い双眸で睨みつけている。 (許せない…) 響は、東郷重位に激しい怒りを感じていた。 身に纏う血臭と、立ち居振る舞いに現れる強烈な殺気は、 男、東郷重位なる男が、この享楽的な催し物に参加した「人斬り」である事を如実に語っている。 これで既に二人目… この「御前試合」ほうり込まれてまださして時間が経っていないにも関わらず、 相対した人間がことごとく人斬りとは… この調子ではかの人別帖に記された剣士たちの一体どれほどが、 この茶番に付き合っているものか、先が思いやられ、陰々滅滅としてくる。 その反面、人斬り達への響の憎悪と、彼女の闘志は、弥が上にも高まりを見せる。 剣を玩具に淫する不埒者ども…残らず成敗してくれる。 そう、気炎を吐く響であったが、果たして彼女は気が付いているだろうか。 人斬りを許さぬ偏執的なまでの固陋なる精神、相手を人斬りとみるや容赦なく切り捨てる非情さ、 その有り様は、彼女が忌避する人斬り以上にあるいは人斬りのようである事に… そんな双方の思惑をよそに、 否応無く、勝負は進み、双方の間合いは狭まる。 一たび必殺の意志を込めて剣を抜き放ってしまった以上は、 どちらか一方が血の海に沈まねばなるまい。それが立ち合いの摂理と言う物である。 双方の間は、すでに四間ほどになっていた。しかし刀の間合いには少し遠い。 柳生新陰流の「水月」にある様に、刀剣の射程範囲は、 自分の足さきからおおよそ三尺ほどであると言われる。 しかしこれはその場から動かなかった場合であって、踏み込みを行う場合はその限りで無い。 と、言えども四間はまだ双方共に遠い。 間が三間に詰まる。 その時、響が動く。 全身の筋肉が膨張し、右手が柄を掴む。 ――『遠間にて斬る也』 無双真伝流の技の一つ。 俊足の、大股の踏み込みに乗せての横殴りの居合太刀。 常よりも遥かに長い射程を持つ彼女の居合太刀にとって、三間とは水月の内にも等しい。 相手の刀剣の射程外からの先制攻撃。これが響の算段。 そんな響にとっての誤算は、敵手、東郷重位もまた、同じだけの射程距離を持っていたという事。 正に一瞬。 彼女が居合を、その鞘の内から放たんとしたその瞬間、 すなわち、彼女の注意が、ほんの一刹那、重位から刀・技へと移った瞬間、 重位は『飛行』し、白刃は彼女の目前に迫っていた。 (なっ!?) 『飛行』といっても、実際に空を飛ぶのではない。 翔ぶが如く、踏み出す勢いで足を滑らすのである。 示現流と言えば、その稲妻の如き太刀先の速さと、 受け止めた相手の太刀ごと敵を両断する太刀先の力強さばかりが著名だが、 上記した二つと同様に恐ろしいのは、その踏み込みの鋭さと速さである。 示現流に熟達した剣士は、大動脈が脈を一つ打つ間という、ほんのわずかな短い時間の中で、 三間の距離を三歩の大股の『飛行』で詰める事が出来るのだと言う。 重位のそれは、正に『飛行』、『縮地』と呼ぶに相応しい、見事な寄せ足であった。 「クウッ!」 抜くには間合いも時間も足りぬ、そう判断した響は、 右逆袈裟に襲いかかる重位の太刀筋を柄頭で迎え撃つ。 ギンッ! と、鋼同士がぶつかり合う甲高い音が鳴り、火花が散って、 柄頭が東郷の太刀を弾き飛ばす。 柄は斬り柄、柄頭は頑丈に造られた居合刀であったのが幸いした。 見事、重位の鋭い太刀筋を受け止めたのだ。 そのまま、パッと後ろへと後ずさる。 (チイッ!) 初撃を外された重位は思わず心中で呻く。 一刻も早く武田赤音を追わねばならぬと言う焦りが重位にはある。 故に、一撃で仕留めるべく、示現流の太刀筋の一部とも言ってもいい、 『飛行』を用いてまで繰り出した一撃が防がれてしまったが故である。 それは、『タイ』を捨てきれぬ重位の、無意識での踏み込みの甘さ故でもあったが、 示現流の太刀筋を前提に組まれた『飛行』の歩法と、タイ捨流の太刀筋の齟齬の為でもあった。 (エエイッ!) 太刀筋を封じられ、全力を出そうにも出せぬとは言え、それでもなお、やらねばならぬが武士の道。 一たび命を受ければ、腹を斬り、友を斬り、親を斬り、仏を斬る。 寡兵で大軍相手の殿をし、寄せ手を晦ます囮となり、段平一つで敵陣に食い込む… それが、武士と言う生き物である。 毒づきながも、弾かれた太刀を右上段へと流し、二撃目を繰り出さんと足を詰める。 右上段からの袈裟掛け。今度は逃がさん! しかし、そんな重位の目前で、響が取った行動は、 敵手に背を向けると言う物であった。 (!) 逃亡!? 否、この殺気は逃げる人間の出せるモノではない。 ならば罠か? 響の不可解な行動に、重位が『驚』の色を見せる。 普段の重位ならば、策ごと斬り下げんと、構わず飛び込み所を、 『タイ』を捨てきれぬが故に生じた一瞬の『見』の隙を、響は決して見逃さない。 響は、背を向けると同時に手繰り寄せた居合刀の柄頭を両の手で叩き、 後方へ疾風の如く押し込んだ。 ――『水月を突く也』 敢えて背を見せることで相手の隙を誘い、 鞘の先で相手の水月(鳩尾)を突く技は、 響の体勢に合わせて、鳩尾では無く、重位の顎先を見事撃った。 その一撃は見事、重位の脳髄を振動せさしめ、 一瞬、ほんの一瞬、重位を『喪神』せさしめた。 これが勝負を行く末を決めた。 そして… ◆ こんな夢を見た。 ◆ 重位は不意に目を覚ました。 気が付けば、さる部屋の座布団の上で正座をしていた。 部屋、造りから察するに方丈であった。 畳張りの部屋の障子は全て開け放たれ、縁側と、一面が雪に包まれた庭が見える。 空にあるのは満月で、その月光は白雪に反射され、 外は、夜とは思えぬ、幻想的な青白い明るさに包まれていた。 しばし外を見ていた重位であったが、 正面に目を戻すと、自分の正面、少しばかり間を置いた場所に、 気配一つ無く、背を向けた坊主頭の僧形の男が座布団の上に胡坐を掻いていた。 その後姿には見覚えがあった。 部屋の間取りにも見覚えがあった。 この部屋は、京都西郊、保津川近くの万松山の天寧寺のそれに他ならない。 さすれば、自分の正面に座るこの男は… 僧形の坊主頭が振り向いた。 月明かりに曝された横顔は、年のころ三十程と見えた。 色白で鼻梁の高い、痩せ形の美僧であった。 「師匠…!」 呻く様に重位は低く叫んだ。 忘れるはずも無い、天真正自顕流が継承者、善吉書記、俗名・寺坂弥九郎政雅、 東郷重位の人生を変えた、剣の師匠その人であった。 「重位殿、久しいな」 そう言うと、善吉は微笑を浮かべながら重位の方へと向き直った。 天正十六年師走、杯を交わして別れて以来、時は流れる事既に二十年以上。 にも関わらず、善吉は容姿容貌が、別れを交わしたその時より一片たりとも変わってはいなかった。 「お久しゅうござる師匠!息災無い御様子で!」 重位は破顔した。京都と薩摩は余りに遠い。 二度と相まみえる事は出来ぬと思っていた師匠であった。 「うむ、大事無い。所で重位殿…」 相変わらず微笑みながらも、善吉の双眸に鋭い光が宿った。 「そこもと、随分と無様な有り様じゃの。故に、こうしてまかり出て来たわけじゃ」 「よもやジゲンを棄て、タイ捨の太刀を使うとは…」 その言葉を聞いた瞬間、思わず重位は平伏していた。 「師匠、これには故が御座る!断じて、ジゲンの太刀を軽んじておる訳ではござらぬ!」 何故、二十年以上手紙すら交わさなかった善吉が、 本人ですら天狗に攫われたとしか思えぬ仕業で参加した御前試合の様子を知っているのか―― その不自然さに気が付く事も無く、冷や汗を流しながら、重位は事の次第を述べた。 善吉は黙って重位の言葉を聞いていた。 そして、重位の言葉を全て聞き終えると微笑みながら言った。 「重位殿、封印を解かれい」 「さ、されど師匠、拙者には…」 「――『満』の心」 善吉の一言に、重位の動きが止まった。 「そこもとに問う。『満』の心とは如何なるものなりや」 「それば――」 重位、答えて曰く。 「『満』の心とは、当流の意地なり」 「『満』の字義、開く所、三千世界に満ち、つづむる所、方寸のうちにあることなり」 「『満』の心、それは万事を知らぬ、赤子の心に似たり」 「生まれいずるその時にあふれいずる、一代の威勢に似たり」 「貴人高家を恐れずして足蹴にする心なる」 「いかなる名剣をも、足に当たれば踏み折らんとする心なり」 「この心にあらば、如何なるモノとて、斬れぬモノは無きなり」 「生まれいずる所、はや死の始めなり」 「死すれば大界は我が心のままなり」 「これ兵法の第一の心得なり…」 「されば、再びそこもとに問わん」 「今のそこもとに、『満』の心、在りや無しや」 「・・・・・・」 この問いに、東郷重位、答うる事あたわず。 答えぬ重位に、善吉は言った。 「ジゲンを封じ、しがらみで心を封ずるそこもとには、『満』の心は決して宿らぬ」 「この心こそ、当流の意地故にじゃ」 「いや、今のそこもとには、相討ちの剣法に過ぎぬタイ捨の意地、 体を捨て、待を捨て、対を捨てる心すら宿る事はあるまい。今のそこもとに、この戦は勝てぬ」 「しかし、ジゲンの太刀筋を曝せば、この東郷重位の忠義が立ちませぬ!」 「ならば死ぬか?」 「…ッ!?」 「死んで無様を曝すか?現に今のままでは、そこもとは間違い無く死ぬ」 「それは…」 「そんなものが、東郷重位の、薩摩隼人の生き様か?」 重位は、二の句を次がず、着物の裾を握りしめた。 しばし沈黙が流れた。 沈黙を破ったのは、善吉であった。 「役目を全うするばかりが、忠義の示し方ではあるまい」 「そ、それは…?」 「それを考えるのは、そこもとであろう」 問う重位に、善吉は静かに答えた。 再びしばしの沈黙。しかし先程より、鈍く澱んだ時間が流れた。 「重位殿、立ち会えい」 善吉は、どこから取り出したモノか、ユスの木の木刀を、重位に手渡すと、 自身は立ち上がって、すたすたと庭先に向かう。 「されど師匠、外は…」 うず高く積った雪でござる…そう言おうとして、 重位は、はたと言葉を止めた。 いかなる怪異か、つい先ほどまで厚い白雪に覆われていた庭先は、 雪一つ無い地面を曝している。 それだけではない。 確かに師走の雪景色であった筈の外の様相が、 青葉も初々しい、さわやかな皐月の春景色に変貌していた。 変わらぬのは、ただ満月だけである。 その有り様は、善吉と重位が初めて会った日の景色に酷く似ていた。 両者は対峙した。 善吉は、ジゲン唯一無二の構え、トンボに構えた。 一方、重位は、木刀の鍔元を顎の前に寄せ、刀身を真っ直ぐ立てる、タイ捨流・無二剣の構えであった。 双方、スルスルと間合いを詰め、水月の間合いに達した時… 先に、太刀を繰り出したの重位であった。 そして、木刀を跳ね飛ばされ、前のめりに地に伏したのも重位であった。 ジゲン流、『満』の心より繰り出される雲耀之太刀であった。 地に伏しながら、重位は一瞬『喪神』し、 覚醒して立ち上がった時には、心は『初心』に帰っていた。 即ち、『満』の心―― 「世話を掛けました師匠。お陰で、大事な物を思い出しました」 剣客同士―― 太刀打ちを通じてしか解り得ぬ事がある。 重位は、善吉の雲耀之太刀を通じて、師匠の『思い』を受け取ったのである。 重位の言葉に、善吉は微笑みを以て返答した。 それで、心は通じた。 「来たようじゃな」 不意に、林の方へ目をやった善吉につられて、 重位もまた善吉の視線の先を見た。 そこのは一人の女武芸者が立っていた。 無双真伝流、高嶺響―― 「ゆけい、重位殿」 言葉を受けて、重位は響きと対峙した。 その構えは、タイ捨流の物では無く… 「“示現流”、東郷重位、推参―――」 そこで、東郷重位は覚醒した。 現実時間に換算して、刹那に満たぬ師との再会であった。 ◆ 響は、『水月を突く也』を受け、たたら踏む重位に、追撃の一撃を仕掛けんとした。 『発勝する神気也』―― その一撃で、重位は血の海に沈む筈であった。 奥義を仕掛けんとした、正にその時、 一瞬の『喪神』より覚醒した重位には、先ほどとは別人の様な殺気が篭もり、 『キェェェェェェェェェェェェェェッ!』 猿叫一声! 並みの人間ならば是のみにて気死しかねぬ、 常軌を逸した気合いの一声に、響の体が刹那、金縛りにされる。 その最中、重位の構えは変わっていた。 柄を握った親指と人差し指は浮かせ、 中指は締めず緩めず、薬指、小指は締めて持つ、 右手を柄にやわかくそえる、タイ捨の構えより、 右の拳を耳の辺りにまで引き上げ、左手はただやわく添えた、 八双に似た構えへと―― 金縛りの解けた響は、怯まず、再度奥義を仕掛けんとするも、 それは叶わなかった。 なぜならば、響は見たからだ。幻視したからだ。 それは―― (金の…ッ!?) それは一匹の龍であった。 黄金に輝く、雲を突き、天を翔する雷龍であった。 雷龍は顎門をカッと開いて響に喰らい付けば、忽ち、響の上半身は食いちぎらる。 幻の中、響の体に一瞬、灼金を突き入れたの様な感覚が走ったかと思えば、 響は、意識を永遠に手放した。 示現流『雲耀之太刀』―― 『満』の心より繰り出された無双奥儀太刀は見事、 高嶺響の肉体を両断していた。 ◆ 刀を鞘に戻し、高嶺響の二つに別れた死体を再度一瞥すると、 ぽつりと一つの歌を詠んだ。 『稀にあう 峯に積れる 空の雪』 『鳥鳴く懐 清き雪山』 それは、離別の際、師より賜った帰去来の辞であった。 封印を破った事に後悔は無い。 ならば己の忠義は立つのか? 立つ、立たせる。 『満』の心のままに、重位は思う。 かくなる上は、示現の太刀筋にて、残れる武芸者をことごとく斬った後、 太刀筋を見たりし柳生の者ども、その背後にいるであろう徳川の者ども、 示現を盗み見し者、一族郎党に至るまでことごとく撫で斬りにし、 その上で腹かっさばいて果てるまで。 そもそも柳生の郎党が参加せしこの御前試合、 薩摩隼人が勝ち上がれば、元よりタダでは済むまい。 されば『不忠者』は『不忠者』らしく、 殺人刀にて推し通り、最後には一人の『狂人』として果てるのみ。 「それが、拙者の忠義でござる」 東郷重位は笑った。 それは、掃天の如く清々しい笑みであった。 同時に、殺気に満ちた恐るべき笑みであった。 【高嶺響@月華の剣士第二幕 死亡】 【残り五十九名】 【へノ陸 道の合流点/一日目/早朝】 【東郷重位@史実】 【状態】:健康、『満』の心 【装備】:打刀、村雨丸@八犬伝 【所持品】:支給品一式×2 【思考】:この兵法勝負で優勝し、薩摩の武威を示す 1:次の相手を斬る。 2:薩摩の剣を盗んだ不遜極まる少年(武田赤音)を殺害する。 3:殺害前に何処の流派の何者かを是非確かめておきたい。 【備考】 ※示現流の太刀筋を解禁しました。 ※示現流の太刀筋を小袖の少年(武田赤音)に盗まれた事に対する危機感は消えましたが、 依然、優先的に狙います。 ◆ 「むっ!?」 「どう…したの…?」 「いや、しぐれ殿、なんでもありません」 ようやく出会った目明きの少女、香坂しぐれは、 右手首を斬らた重傷者であった。 故に、着物を破いて包帯と為し、介抱していた富田勢源であったが、 その最中、盲目であるが故に発達したその鋭敏な感覚で、強烈な剣気の爆発を、 その肌で感じたのである。 そして勢源は視た。 北の空で、天に昇る金の龍の幻を。 そして理解した。 恐るべき兵法者が、この御前試合に降り立った事を。 【へノ陸 南部の道の傍ら一日目/早朝】 【富田勢源@史実】 【状態】健康、驚き 【装備】蒼紫の二刀小太刀 【所持品】支給品一式 【思考】:護身剣を完成させる 一:しぐれを介抱する ※佐々木小次郎(偽)を、佐々木小次郎@史実と誤認しています。 【香坂しぐれ@史上最強の弟子ケンイチ】 【状態】疲労大、右手首切断(治療中)、両腕にかすり傷、腹部に打撲 【装備】無し 【所持品】無し 【思考】 基本 殺し合いに乗ったものを殺す 一 右手の治療をする 二 武器を探す 三 近藤勇に勝つ方法を探す 四 高嶺響はいずれ殺す 【備考】 ※登場時期は未定です。 ※所持品は全て民家に置いてきました。 ※高嶺響の死亡を知りません 時系列順で読む 前話 ただ剣の為に 次話 迷いの剣 投下順で読む 前話 ただ剣の為に 次話 迷いの剣 少女二人で夜越えて―/人斬り二人 高嶺響 【死亡】 ジゲンを穢す者 東郷重位 有り得ざる邂逅 偽りの再会 富田勢源 波紋(前編) 少女二人で夜越えて―/人斬り二人 香坂しぐれ 波紋(前編)
https://w.atwiki.jp/dangerousew/pages/248.html
――月が墜ちてくる。 東京都、江東区、上空二万メートル。 巨大な岩の塊が空から落ちてくる。地表へ、日本、東京へ――山乃端一人を目掛けて。 ……厳密に言えば山乃端はそこにはいない。先ほど“おつきさま”との邂逅を経てこの場を離れたから。 だがそのようなことはもはや些事。あれが地表に落下すれば山乃端が逃げ込んだ先を優に巻き込んで一帯を崩壊させるだろう。 牛歩のようにゆっくりと。だが着実に。岩塊は空から地へと迫る。 迫る。 迫り――。 ジェット機が激突した。 「―――」 民間用個人飛行機、いわゆるプライベートジェットと呼ばれる物。 それが掬い上げるような軌道で地表へ迫る月へと向かい、正面から衝突した。 当然のことながらジェット機は大破。操縦席に座っていた奇妙な風体の人物――ピエロごと、木っ端微塵となり。 そして、搭載されていたトラップが起動する。 トラップの性質は単純だ。『スイッチを踏んだら、上から物が落ちて来る』。 この場合“上”とは宇宙を指し、“物”とは金属棒を意味する。 人工衛星から大質量の金属棒を地上へと射出する単純質量兵器。 ――『神の杖』という。 衝突の衝撃により“踏まれた”スイッチは自らを“踏んだ”月に目掛けて幾つもの『神の杖』を振り下ろした。 穿つ。突き刺さる。 地獄のような轟音が空に響き、岩塊はハリネズミの如く。 幾本もの金属棒によって貫かれた月は、最後の一撃を受け堪え切れないように砕け散った。 砕け散った、とは言えどもその一粒すら巨岩と呼べる大きさで、それが降り注ぐ地表に破壊の痕跡が増えていく。 かつての街並みであればそれは痛々しい傷跡となっていただろうが、“絶黒龍”ルージュナによって破壊され尽くされた現在では廃墟が廃墟になったところで今更という言葉が先に出ることだろう。 「……プライベートジェットとか、どこから手配したんだよ」 破壊の結果を見届けて、少年は半ば呆れた様子で隣の男に声をかける。 「昔、私が依頼を完遂したにも関わらず報酬を渋った挙句こちらを殺そうとした輩が居てな。代わりに貰っておいた」 「さいですか」 何でもないことのように言う月ピに鍵掛は諦めたように答えた。今の一瞬で何十億円が消し飛んだやら、考えるだけ無駄だろう。 「しかし流石はロック謹製の神の杖。ルージュナを倒しただけはある」 「やめろよ、結局あれ倒せたの俺の力じゃないだろ」 それに、と鍵掛は空を見上げ。 「今ので三つ。まだまだ先は長い」 「そうだな」 その言葉に月ピは頷く。二人の男が視線を向ける先――東京都の上空にそれはあった。 ――月が墜ちてくる。 空にはいつもの変わらぬ月の姿。上弦の月、新月から満月へと移り変わる丁度境目、半分の月。 それとは別に。 悪意のように、悪夢のように。 東京都の上空を、光を受けているわけでもないのに自ら満月のように煌々と輝く『もう一つの月』が。 それとは別に。 月と比べれば小石のような、それでも一つ一つが大地を抉り得る大きさの『小さな月』が、まるで隕石のように両手の指で数えきれないほどに降り注ぎつつある。 普段と変わらず本物の月。 着実に迫りつつあるもう一つの月。 先ほど破壊した三つを含めて十数個の小さな月。 「――ひとまず、神の杖で小さな月は何とかできるのは分かった。月ピ、次からは俺の射出(カタパルト)トラップを使えよ。生身だと死ぬけど、お前の分身ならスイッチ抱えて突っ込めるだろ」 「そうだな、流石にプライベートジェットはもう在庫が無かったところだ。……ところでロック、どうだった?」 「試したよ」 言いながら、鍵掛は先ほどの光景を思い出す。神の杖の起動スイッチを搭載したプライベートジェットを突っ込ませ、小さな月目掛けて起動する作戦、それ自体は上手く行った。 神の杖を雨のように降らせることで結果的に小さな月を三つほど撃墜することに成功した。撃墜までは至らなかったものの、神の杖が命中はしたケースを含めればもっと多い。 だが。 「――あの『もう一つの月』にも多少は命中した。だけど刺さるどころか傷ついた手応えすらなかった」 「……転校生、か」 鍵掛の答えに月ピは唸った。思い返すのは自分達に接触してきた転校生・鏡助の言葉だった。 『「自己の認識を他者へと強制する力」――それが魔人の能力の本質です』 りんごを見て赤いと認識する者がいる。同じりんごを見て濃い赤だと認識する者や赤黒いと認識する者もいるだろう。 仮にその同じりんごを青いと認識する者がいたとして、それを主張したところでただの戯言と思われるだけだ。 だが、りんごが青いという認識を以て――本当に青くしてしまう者。自己の認識を他者の認識に上書きし、世界を歪ませることができる者。 それができる者こそ魔人であり、その認識によって世界を歪める力こそ魔人能力である、と。転校生たる鏡助はそう語った。 『そんな魔人の中でごく稀に――試練を乗り越えることによって「自分は魔人を越えた特別な存在である」と、そう認識する個体がいます』 認識によって世界を歪める存在が、魔人を越えたと自己を認識した場合どうなるか。 ――本当に魔人を越えた存在となるのだ。 『それこそが転校生、魔人を越えた魔人。……私がどのような試練を乗り越えたかは、残念ながらお教えできませんが』 故に転校生に対してはただの魔人の攻撃は通用せず、そして転校生の攻撃に対してただの魔人の防御は通用しない。 文字通り、存在の階位が違うのだと。 「あのもう一つの月が転校生“おつきさま”だと言うのならロックの神の杖が通じないのは理解できる。……だが、それならば逆に小さな月が破壊できるのは何故だ? あれはもう一つの月が生み出した分身のような物だろう?」 重々しい表情で殺し屋は呟く。説明こそ聞いたものの、正直なところ月ピ自身は魔人と転校生の関係を十全に理解できたとは言い難い。 そんな彼に鍵掛は、多分だけど、と断りながら。 「延焼みたいなものじゃないか」 「……どういうことだ?」 「鏡助の話によると例えば転校生は爆弾の爆発に巻き込まれても平気なわけだよな。だけどそれって巻き込まれた本人は無事だけど服は吹き飛ばされて素っ裸、ってなったりすると思う?」 「いやそうはならないだろう。……そうか。服、つまり装備品も自分の一部だと認識している限り転校生の保護に含まれると言いたいんだな」 「そうそう。それで魔人能力や火炎放射器なんかで『自分が放った炎』を自分の一部だと認識することはできるだろうけど、『自分が放った炎によって発生した延焼』まで自分の一部って認識できるかというと」 「難しいだろうな。なるほど」 得心が行ったと月ピは頷く。 「つまりもう一つの月は“おつきさま”にとって装備品のような物として認識できるとしても、もう一つの月が生み出した小さな月までは“おつきさま”も自分の一部として認識できないってことか」 「推論だけどな。でも俺の攻撃が通ってる以上は大きく外れてはいないと思う」 「――いやはや、大した物だなロック。先生とか向いてるんじゃないか?」 「生き延びたら考えておくよ」 苦笑混じりに返しつつ、鍵掛は能力によってカタパルトとスイッチを展開する。 「つまるところ俺達は小さな月には対処できるがもう一つの月を止めるには“おつきさま”の本体(・・)をどうにかしないといけなくて、それはそれとして小さな月も放置はできないってわけだ」 「前途多難だな。ならばそちらは彼女(・・)に任せて、私達はできることからコツコツとするとしよう」 そう言って、月ピは歌い始める。能力発動、ピエロが召喚され、神の杖のスイッチをいくつも抱えながらカタパルトへと騎乗する。 ――月が墜ちてくる。 月の光に照らされながら、ピエロは一人宙に舞う。 斬撃。 徒手に見える少女から放たれたそれは、一息に四連。 その勢いのまま弧を描くように獲物――転校生たる銀髪の女性――の周囲を回る。 一拍を挟み、一息に四連。 さらに一拍を置いて、一息に四連。 あひる侍の速剣。御首級てがらの歩法。 剣の扱いにおいてただの素人だった少女が柳生注入によって無理やり戦闘力を得ただけの存在。それが卓越した剣士との幾度の修羅場を経て見違えるほどの使い手となっていた。 その剣士の名を柳煎餅と言う。 (腕、胴体、後頭部) 無刀による十二の斬撃。それらは目の前の“おつきさま”へと狙いを違えることなく全て命中した。 “おつきさま”の銀髪の一本すら切り裂くことができなかった。 (……これが、転校生!) 柳は“おつきさま”の背後で腰を落とし腕を引く姿勢を取る。そして“おつきさま”が振り返るのに合わせて全身をバネのようにして腕を伸ばす。 刺突。 敵までの最短の距離を最小の動きで攻撃する最速の一手。 狙いは顔面。“おつきさま”の目・口・喉を目掛けて三連打。常人であれば顔がグチャグチャになった上で首が飛んでいる。 だが初撃は瞼に止められ、次撃は唇に阻まれ、三撃目は無造作に振るわれた左手に容易に弾かれた。 “おつきさま”はいつの間に取り出したのか、右手に持ったナイフを振りかぶり反撃を仕掛けた。柳は三撃目を弾かれた勢いに逆らわず反転しながらのサイドステップ。 ナイフが背後を過ぎったのを感じる。何の変哲もないただのナイフの振り下ろしが、まるで重機が通り過ぎたかのような威圧感。 「ハッ!」 恐怖を振り払うように柳は叫ぶ。裂帛と共に放つは後ろ回し蹴り。 胸部へと蹴りが突き刺さった“おつきさま”は、当然のように動じない。まるで岩を蹴ったような手応えに、しかし柳はその反動を初速に距離を取った。 翻り、空中にて無刀を最上段へと構える。 「『剣禅一如』――!」 着地と共に振り下ろし、放たれるは白く輝く閃光の斬撃。剣の理の果てを以て非物理的領域に干渉する極限技。 閃光は三日月を描きながら、空を飛ぶ隼のように“おつきさま”へと肉薄する。 “おつきさま”は手に持ったナイフを構え、閃光を迎え撃つ。 一閃。 ただのナイフによる斬撃と極致へと至った剣禅一如の交差。 本来であれば前者が敵うはずも無いが、ナイフは“おつきさま”の一部として転校生の保護を受けている。 故にナイフは閃光を受け止めても傷一つ付くことすらない。 ――傷一つ付くことはなく、光に包まれてナイフは消滅した。 「!」 武器の消滅に、“おつきさま”は目を見開き驚きを隠せない。 そしてその無防備な転校生にナイフという堰(せき)を失った剣禅一如の閃光が襲い掛かる。 ――極致へと至った柳の剣禅一如はただの物理的破壊に留まらない。 非物理的領域に干渉し、論理的整合性を取り繕い、架空の因果関係を成立させる。 (『転校生は』『異世界の存在』) ならば。 「――『この世界に存在するのはおかしい』!」 物理的破壊が通じないのは織り込み済み。 本命は異世界の存在がこの世界に居るはずが無いという論理的破綻(ロジックエラー)。 実際に“おつきさま”が異世界から持ち込んだであろうナイフは因果関係の矛盾によりこの世界から排除された。それこそが転校生にも――転校生だからこそ通用するという証左。 この世界の存在には全く効果が無く、しかし異世界の存在に対して威力を発揮する柳の新たなる切り札。 閃光が収まる。 ……その中からは全くダメージを受けた様子のない“おつきさま”が姿を現した。 「……」 剣禅一如が効果を発揮しなかったことの動揺を押し殺しながら、柳は無の刀を構え直す。そんな少女を見て“おつきさま”は少しだけ感心したように口を開いた。 「哲学的エネルギーによる形而上領域への攻撃、ですか。その奥義、人の身でよくそこまで至ったものです」 綺麗な声だ、と柳は少しだけそう思った。 「……なんで効かないの? ナイフはちゃんと消えたのに」 「確かにあなたの奥義は転校生には特攻、致命傷にはならなくても多少なりの損害は与え得る……ですが」 そう言いながら“おつきさま”は場違いに――自嘲するように――微笑み。 「私は“御憑様(おつきさま)”。精神を侵し、形無きモノを支配する魔神(・)。あなたの力が転校生に対して特攻であるように、私の力もまた形而上領域への干渉に対する特攻を有しています。私の一部に対してならともかく、私本体に対して通用するとはお考えの無いように」 「ムカつくなぁ。その、自分は他と違います、みたいな言い草」 「ええ勿論。――私は転校生ですから」 「……斬る」 ――月が墜ちてくる。 無形を携える剣士は、無形を侵す神に刃を振るう。 斯くして舞台に役者は揃った。 殺し屋、月光・S・ピエロ。 仕掛け人、鍵掛錠。 護り手、柳煎餅。 彼らの願いは一つ。『山乃端一人を殺させない』ということ。 転校生、おつきさま。 彼女の願いは一つ。『山乃端一人を殺す』ということ。 そして舞台裏には。 「私が死んだら、ハルマゲドンが起こる……? 私の命を狙って、何十人何百人もの魔人が殺し合い……?」 とっくに誰も居なくなった崩れかけの洋服屋。 姿見の前で少女――山乃端一人は膝を付き絶望の表情を浮かべていた。 「なにそれ……なんなのよ、わけわかんない! ずっとずっと、私は死ねって思われてたの!? 死ぬことを望まれていたの!?」 少女の慟哭は、しかし轟音に飲み込まれる。それは魔人達の戦いによって月が破壊される音、月の欠片が地面を叩き付ける音。 「そんなの……私、何のために生きてきたの……私、何のために生まれてきたの……?」 涙を流す少女を――姿見の中に映るスーツ姿の男は、悲しそうに見つめていた。 ・ ・ ・ ――山乃端一人の意識はそこで目覚めた。 「……」 なんてことはない。自宅のベッドの上、当たり前の朝、いつも通りの光景だ。 ただ妙に寝汗をかいていて、気持ちが悪い。 「……」 ベッドの脇の時計を見る。針は既に11時過ぎを指している。 前夜は23時前にはベッドに入っていたはずなのに眠気が晴れない。 夢見が悪い。それがずっと続いている。 山乃端はいつも知らない誰かとの夢を見ている。 温泉旅行に行く夢を見た。 イタリア料理を食べに行く夢を見た。 美術館に展覧会を見に行く夢を見た。 そしていつも――魔人に命に狙われている。 学校で教師に襲われる夢を見た。 武装したアウトローの集団に襲われる夢を見た。 死体を操る少女に死体にされそうになる夢を見た。 「……眠い。けど起きなきゃ」 気怠い体を無理やりに起こす。今日は日曜日だが、だからと言って昼過ぎまで寝過ごしていたくはない。 ――それに、寝たらまた悪夢を見そうで。 冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを呷り一息を吐く。少しだけすっきりした、顔を洗えばもうちょっと良くなるだろうか。 「出かけないと……」 そうだ、今日は出かける用事がある。 ……どこに? ……だれと? 「……出かけないと」 電車に揺られる。今日は人が少なく座席にかなりの余裕があってゆったりと座ることができた。 ……眠い。揺れもあって気を抜くと意識が遠のきそうだ。 (五分だけ……寝ようかな) そう思って、山乃端一人は目を閉じた。 ――山乃端さん。 ――お嬢ちゃん。 ――一人。 ――はじこ。 ――我が花嫁。 ――ひーちゃん。 ――一人さん。 ――アインス。 ――ヒットリサン。 ――山乃端一人。 知ってる声と知らない声がする。 知ってる呼び名と知らない呼び名が混ざる。 夢と、現実が、重なる。 ・ ・ ・ 気が付けば。 山乃端はスカイツリーの前に立っていた。 スカイツリー『だったもの』の前に立っていた。 「……あ、れ?」 ぱちくり、とまばたきを繰り返す。周囲を見渡す。 誰もいない。当然だ、いるはずもない。 発破されたかのように崩れ倒れているビル、無造作にひっくり返されたかのような道路。 半ば廃墟と化したこの地域は先日の事件のせいですっかり避難地域となっている。 そしてその下手人が目の前にいた。 ――折れたスカイツリーが墓標のように突き刺さっている、巨大な怪獣。 全身のほとんどが朽ちて塵となり、上半身のみの死体となった漆黒の龍。 “絶黒龍”ルージュナ。 「……」 少女は気圧されたように数歩後退りする。 どうして自分はこんなところにいるのか。 そもそもどうやってここまで来たのか。 「時間……そうだ、今は何時だろう」 ぼんやりとした頭でそう思い至ってスマートフォンを取り出そうとする。そこで気付いた。 スマートフォンが無い。というよりも手荷物が無い。 ポーチくらい持って出ていたはずなのに。 代わりに――代わりと言えるような物ではないが。 「……懐中時計?」 いつの間にか首に提げられたシルバーチェーンの先、いかにもアンティークという様子の古めかしい銀の懐中時計があった。 思わず手に取りまじまじと見つめる。それは妙にしっくり来るように感じられた。 ――この懐中時計は山乃端家に代々受け継がれる銀時計。 ――銀時計には魔神(デミゴッド)を封印し、使役する力を持つ。 ――それを引き継いだ当代の持ち主こそ、 「ひっ!」 慌てて銀時計から手を放す。チェーンによって首に提げられている懐中時計は手の支えを失い少女の胸元へと収まった。 「なに……今の、頭の中に」 銀時計? 山乃端家? デミゴッド? 「違う、違う知らない。私の家は普通の家だし、この時計だってどこかで買ったただのアンティークだし」 まるで誰かに言い訳をするように、少女は自らを抱きしめるように蹲りながらぶつぶつと呟く。 「やっぱり帰ろう。そうだ、帰って寝よう。最近寝不足で疲れてるから、変なことばかり考えちゃうんだ」 ……だけど、眠ったらまたあの変な夢を見てしまうのではないか。 心が落ち着かない。気分が悪い。頭の中が自分のものではないみたいだ。 自分のものではない? 「……だとしたら、誰なのよ」 「――それこそ『山乃端一人』でしょう」 声が聞こえた。 頭に中に響く夢の話ではない、現実での呼びかけ。 ハッと頭を上げる。龍の死体の方向から誰かが歩いてきている。 それは女性だった。一目見て思わず美しい、と山乃端は思った。 年齢は二十代半ばだろうか。銀色のロングヘアが目を惹く。 山乃端を見つめる彼女の目をよく見れば、深い赤色の瞳をしていた。 「……あなたは、誰」 山乃端は銀髪の女性にそう問うた。初対面の相手にするにはいささか失礼ではあるが、女性はそのような細かい常識の外にあるような不思議な雰囲気を携えていた。 少女の言葉に女性は、しかしはっきりと応じないままどこか愁いを帯びた瞳で山乃端に向けて広げた右手を差し出した。 「山乃端一人」 それは少女の名。山乃端は、彼女が自分の名を呼んでいるにも関わらず、自分ではない誰かを呼んでいるかのように感じた。 「あなたを待っていた。あなたが――あなた達“山乃端一人”が重なる時を」 山乃端はふと、目の前の女性から視線を外した。何故か分からないまま空を見上げる。 ――月が墜ちてくる。 「――どうか死んでください。今のあなたが死ぬことで、これからの未来から“山乃端一人”は全て消滅する。全ての“山乃端一人”が死の運命から逃れられ、もう苦しむことは無くなる」 唖然としたまま山乃端は視線を女性へと戻した。彼女の赤い瞳に強い感情が宿っている。 ……少女はその感情が何を意味しているかを読み取ることはできなかった。 「唯一の“山乃端一人”を、私だけが手に入れる。それが私の望み」 閃光。 言葉を失った山乃端に代わり、銀髪の女性へと反応を返したのは一条のビームだった。 それは女性が山乃端に向けていた右手を振り払うかのように横殴りに叩き付けられ、その衝撃に思わず少女は両腕を自分の頭を守りながらしゃがみ込んだ。 撒き上がる砂煙に思わずせき込む。 「世界を越えて山乃端さんのストーカー? そういう手合い、うちの柳生でイヤってほど間に合ってるんだけど!」 ふと聞こえた聞き覚えのある声におそるおそる顔を上げる。砂煙の向こうに見えるその人物は。 「……柳さん!」 柳煎餅。山乃端一人にとっての恩人。 つい先日も魔人剣士に襲われた時に守ってくれた。 (そういえば、あの時もこんな風に柳さんに会ったっけ) 見知った相手と再会できた安堵感か少しだけ気が緩む。しかし柳は油断なく構え。 「ごめんね山乃端さん。――ちょっと余裕無いや」 柳の姿が消えた。 山乃端にはそう思えた。 実際には柳は常人には見えない速度で踏み込み、砂煙の中にいる女性に向けて無刀取りの刃を振るっていた。 鋭い音と共に空気に響く衝撃。その余波で砂煙が晴れる。 柳の無の刀と女性のナイフが鍔迫り合いのようにぶつかり合っていた。 「……ッ!」 切り返し、柳は女性がナイフを握っていない側から突き・払いで攻め込む。 相手の肩と脇腹を的確に穿った二撃――しかし女性は全く気にも留めずにナイフによる反撃、軽やかな斬撃は柳のそれと比べれば脅威は低く見える。 見えるだけだ。 「ぐぅ……!?」 無刀でナイフを受けた瞬間、柳は目を見開く。 牽制程度にしか見えない攻撃が――御首級てがらの首級返しを次々と撃ち落とした柳の無刀取りの刃を、容易く打ち砕いた。 止めきれない。柳は胸元へと迫るナイフが到達する直前に全身のバネで渾身のバックステップを行い、間一髪で攻撃を回避した。 無理やりな体勢での回避だったため下がった先で不格好に地面を転がる。追撃を恐れすぐさま立ち上がるが、しかし予想外に女性は追撃を行わなかった。 「……ああ、大した魔人ですね。ですがあなたの攻撃は私に通じませんし、私の攻撃はあなたには防げませんよ。何故なら」 「――転校生、でしょ。鏡の人とかに聞いたよ」 無刀取りを再発動し、砕かれた刀を生成する。 「逃げて! 山乃端さん、ここからすぐに!」 「だ、だけど柳さんは」 「いいから! 邪魔だよ!」 柳の叫びに、山乃端は一瞬視線を銀髪の女性に向け、踵を返し泣きそうな表情で駆け出した。 「……それでいい。キミは死んだらダメだ」 背中越しに走り去る気配を感じ取りながら、柳はそっと呟く。その様子を見送りながら、女性は口を開いた。 「無駄なことを。空のあれが見えませんか? ここであなたが抗ったところで、山乃端一人が逃げられるわけが……」 轟音。 思わず銀髪の女性が空を見上げる。プライベートジェットが月へと突撃し、作動した幾多の神の杖が空に降り注ぐ光景が見えた。 「悪いけど、こっちも一人じゃないんで」 「……なるほど。思っていたよりも、山乃端一人を守ろうとする魔人は多かったようですね。例の転校生の仕業でしょうか」 「さて、ねェ!」 ・ ・ ・ 走る、走る、走る。 空から地獄のような轟音が響く。背後では剣劇の音が聞こえる。 「どう、して……どうし、て……!」 何故か溢れる涙を拭って、みっともなく逃げ回る。 わからない。わからない。どうして。 周囲には誰もいない。山乃端一人は独りぼっちだ。 だけど、そういった物理的要因以外の理由で、少女は深い孤独を感じていた。 『危ない、止まって!』 突然の鋭い声。反射的に身を震わせ足を止めた。声を主を辿ろうときょろきょろと視線をさ迷わせ。 ――直後、前方で岩が落下し砕け散るのが見えた。 悲鳴と共に思わず目をつぶる。頬に熱。恐る恐る目を開きながら左手で頬を擦って、手を覗く。 左手に血が付いていた。どうやら落石の衝撃で小石が飛んで来たようだ。目に当たらなくて良かったと少し安堵して。 (……あのまま走っていたら、私潰れて死んでいた?) その事実を理解して背筋が冷える。数歩後退りして、そういえば先ほどの声はと思い出し。 『こちらです。あなたから見て右手側の洋服店』 再度、声。言われた通りに右側を向く。そこには入口のガラス扉が砕け散っている洋服店があった。当然のように誰もいない。 『外で無防備にしているよりは建物の中の方が安全です、ここはまだ崩れる様子はありません。どうか入って来てください』 ……当然のように誰もいないのに声はする。声はするのに人の気配が感じられない。 「……」 先ほどの落石を思い返す。確かにここで突っ立っているよりは中に入る方が安全かもしれない。しかし少女は店の前で躊躇する。 『……申し訳ありません。不審なのも不安なのも分かります。それでも私はあなたの味方です』 どうか信じて、と何故か声の方が懇願している。山乃端は大きく息を吸って、吐いて、洋服屋へと足を踏み入れた。 『ありがとうございます、山乃端一人さん』 「……私の名前も知っているのね。あなたは誰? どこにいるの?」 『あなたから見て左手側前方の姿見です。このような形でしか挨拶できないことをお許しください』 警戒しながら、言われた通りに姿見を探す。それはすぐに見つかった。 そして、姿見にスーツ姿の男の人影が映っているのが見えた。当然ながら、鏡の前には誰もいない。 「……」 少女の体が緊張で固くなる。鏡の中の男は安堵させるように声をかけた。 『お察しの通り、私は魔人です。能力を使ってあなたに姿を見せています。信じて貰えないかもしれませんが、私はあなたを守る勢力の人間です』 「それは……柳さん、みたいに?」 『はい。柳煎餅さんにあなたの護衛を依頼したのは私です。山乃端さんはご存じでは無いと思いますが、彼女は以前あなたを守ったことがあり、それを知って今回スカウトいたしました』 護衛。依頼。 確かに柳の登場は少しばかり都合が良いタイミングではあったと思う。だが改めて言葉にされるとなんだかモヤモヤとした気持ちが山乃端の胸中に過ぎた。 『ああ、自己紹介が遅れましたね。私は鏡助、転校生……別の世界から来た魔人です。目的は山乃端一人さんを守ることです』 「他の世界? それに、私を守るって」 鏡の中の男――鏡助は少し気まずそうな表情をして。 『……あなたは命を狙われています。そして私はこちらの世界に来ることはできますが、深く干渉することができません。そのため、協力者を募りあなたの護衛を依頼していました』 「協力者……いや、それは今はいいよ」 それよりも、と少女は姿見に食って掛かるように。 「どうして私が狙われているの? 私はただの女子高生だよ? さっきの銀髪の女の人も……よく分からないし」 『……アレは“おつきさま”と呼ばれる怪異の一種です』 聞きなれない言葉に、山乃端は出鼻を挫かれたように「かいい?」と繰り返した。 『“御憑様(おつきさま)”。その名の通り《憑りつき、支配する神》。アレは形而上領域へ干渉することで周囲の知的生命体の精神を浸蝕し自らの傀儡へと仕立て上げます』 鏡助は目の前の少女がポカンとしているのを見て、一旦言葉を止め、改めて口を開く。 『簡単に言うと周囲の生き物を洗脳して自分の一部にしてしまうという怪物です。空に浮かぶあの“もう一つの月”も“おつきさま”が自らの世界の月を浸蝕した産物です』 「……月は、知的生命体じゃないと思うんだけど」 『おっしゃる通り。厳密に言うと、あの月は“おつきさま”が操る傀儡の魔人の「無機物に自我を与える能力」と組み合わせて無理やり知性を持たせた上で洗脳されています』 「その組み合わせができるならもうなんでもありじゃん。……あれ、でも」 げんなりした様子だった山乃端は、ふと気付いたことに首を傾げた。 「その割には私はあの……“おつきさま”? と会っても平気だったけど。人を洗脳しちゃうんだよね?」 『“おつきさま”は月という強大な存在を支配するために能力のリソースをほぼ使い切ってしまい、新たに支配する対象を増やせない状態になっているのです。そこだけは明確なデメリットですね』 ――もしかしたら、それが目的なのかもしれませんが。 蛇足のように付け加えた鏡助の一言は、山乃端の耳には入らなかった。 「いやちょっと待って、話が脱線してる。そうじゃなくて、私が狙われてる理由は何?」 『……“おつきさま”があなたを狙う理由はあなたを手に入れるためです。その、転校生の事情になるのですが……転校生は他の世界の人間の遺体を持ち帰ることで、その人物のコピーを入手できます。それが目的でしょう』 鏡助の説明に、山乃端は生理的な不快感を覚えた。 人間の遺体を持ち帰る、その人物のコピーを入手する。どちらもまるで意味が分からないし、ましてや今回は自分がその対象とされているのだ。不気味だと言わざるを得ない。 「じゃあ、私の命を狙う他の人たちも同じ理由?」 『それは……』 「違うよね? だって、全員がその……転校生っていう異世界人なわけじゃないんでしょう」 鏡助が口を閉ざしたのを見て山乃端は自身の推測が合っていることを確信する。 性格か何か別の理由があるのかは不明だが、目の前の男は「嘘を吐かない」ようにしている。 「『私が狙われる理由』と『私が転校生に狙われる理由』は別。あなたは私が狙われていることは言いつつも何故狙われているのかは微妙にボカしている」 それは。 「……私が最近変な夢を見ることと関係があるの? 夢の中で知らない人たちが出て来て戦っているのは本当にただの夢の話なの? そして、これが関係しているの?」 言いながら、山乃端は首のチェーンを外し銀時計を姿見に向けて突き付ける。鏡助は言葉を選ぶように慎重に口を開いた。 『……それらは直接的に関係はありません。私も想定外の出来事ではありましたが』 「想定外?」 『私も完璧に把握できているわけではありませんが……あなたが見ているのはおそらく他の世界における山乃端一人さんです』 先を促す。 『つまり他の世界……並行世界における山乃端一人さんも同様に命を狙われており、そして私が同じようにその世界の魔人に護衛を依頼して回っています』 「じゃあ……私が魔人の殺し屋に襲われた時に柳さんが守ってくれたみたいに」 『はい。似たような戦いが起こり……その記憶が世界を越えて混線してしまいあなたに流れ込んでしまっているのだと思います』 くらくらする。 自分のことでも精一杯なのに――並行世界でも自分は同じような戦いに巻き込まれていて、そして自分自身の記憶にも巻き込まれているというのか。 「……でも、私が命を狙われているのに直接的に関係は無いって言ったよね」 『その、それが理由で命を狙われているというよりは、命を狙われた結果としてそのようなイレギュラーが起こってしまったと言いますか』 「いや、わかんないんだけど」 『……すみません、謝罪します。白状をすると、本当はあなたに声をかけた時点で全てをお話するつもりだったのですが、つい躊躇をしてしまって』 鏡の中で、男は大きく息を吐く。 『――この世界には奇妙なルール、あるいはジンクスがあります。“山乃端一人が死亡すると、ハルマゲドン――魔人による大規模な戦いが発生する”というものです』 「……は?」 思わず呆けた声が漏れた。勿論言っていることが突拍子も無さ過ぎて理解が追い付かないというのもあるが。 「なにその、風が吹いたら桶屋が儲かるみたいな……私ただの女子高生だよ?」 『そこは重要では無いのです。“山乃端一人が死亡する”という事実が起こった時点で論理的整合性が取り繕われ、ハルマゲドンという因果関係が成立してしまう。それこそがあなたが背負っている宿命なのです』 「……」 正直に言えば。 山乃端は自分の命が狙われていると聞いて、“自分はただの女子高生なのに――”と言いつつも少しだけ何かがあることを期待していた。 例えば自分が何か特別な血を引いているとか、自分が何か重大な秘密を持っているとか。 そんな、漫画みたいな話を想像していなかったと言えば嘘になる。 だって。 ――そんな理由でも無ければ、納得できないじゃないか。 「……じゃあ、みんなは。私を狙い人たちは、そのハルマゲドンを望んでいるということ?」 『そうです』 「なんで?」 『ハルマゲドンまでは共通の目的ですが、その先はそれぞれです。例えばハルマゲドンの発端に由来する何かを望むもの。ハルマゲドンによって集まる魔人能力者を望むもの。あるいは、ハルマゲドンという戦いそのものを望むもの』 ――それじゃあ、なんだ。 「ハルマゲドンの先に何か目的があって。それを手に入れるためにハルマゲドンを起こしたくって。そのためには私を死なせるのが手っ取り早いから殺そうって」 山乃端一人は能面のような表情で、鏡助の顔を見た。 「……そういうこと? 私がどうのこうのというより、便利だから、都合がいいから――とりあえず、って?」 『……』 鏡助が口を閉ざしたのを見て山乃端は自身の推測が合っていることを確信する。 性格か何か別の理由があるのかは不明だが――目の前の男は「嘘を吐かない(・・・・・・)」ようにしている。 『……私はそれを止めたかった。そのために何十人という魔人に掛け合ってあなたを守るように依頼しました』 力が抜ける。山乃端一人は洋服屋の床に膝を付いた。 『目論見としては現状成功しています。ただ、あなたを守る魔人とあなたを狙う魔人が“山乃端一人”を中心として集まったため、副産物として“山乃端一人”の記憶の混線が起こってしまったのでしょう。おそらく一時的なものですし、それ自体に直接的な害は無いはずです』 「――私が死んだら、ハルマゲドンが起こる……? 私の命を狙って、何十人何百人もの魔人が殺し合い……?」 少女は呆然と呟いた。 その表情には絶望が感じ取れた 「なにそれ……なんなのよ、わけわかんない! ずっとずっと、私は死ねって思われてたの!? 死ぬことを望まれていたの!?」 ――それは違います。 ――そんなことはありません。 鏡助はすぐにでもそう声をかけたかった。 だが、口を開いても言葉を紡ぐことはできなかった。 “転校生は嘘を吐くことができない” 故に事実を否定する慰めの言葉をかけることができない。 山乃端一人が死を望まれているのは――どうしようもなく、本当のことだから。 「そんなの……私、何のために生きてきたの……私、何のために生まれてきたの……?」 子供のように喚きながら、子供のように涙を流す少女。 鏡助はすぐにでも抱き締めてあげたかった。背中を擦ってあげたかった。 できない。この世界において、鏡助は鏡の中の住人でしかないから。 慰めの言葉をかけることも、触ることもできない。 絶対無敵の存在たる転校生は、今この場において誰よりも無力な存在でしかなかった。 『……山乃端一人さん。私は』 それでも。 それでも男は口を開く。 『私は、あなたに伝えなければいけないことがあります』 使命を果たさねばならない。 ・ ・ ・ 「――月ピ、ルージュナと戦った時に話したことを覚えてるか?」 時は少し遡る。 転校生と呼ばれる存在がこの世界に山乃端一人を狙って現れると聞いた二人は、次の戦いのため準備をしていた。 「流石にそれだけでは分からんよ。ベイクドモチョモチョの件か?」 「いやあれの呼び方について話したことじゃねーよ。……無敵のルージュナに通用するトラップについて」 手元のペンライトを点灯させる。LEDライトの光は部屋の隅、影となっていた部分を照らした。 「俺の最大火力である神の杖はルージュナには通用しなかった。……あいつに効かなかったのは、言うならばルージュナのHPと防御が高過ぎるせいで『ノーダメージでは無いが当たっても別に支障が無い』程度に抑えられていたからだ」 「――だが鏡助の説明によれば、そもそも転校生は『そもそも神の杖自体がノーダメージ』ということになるようだな。できれば一度、同じ転校生である鏡助で試してみたかったんだが」 「あいつ泣くぞ」 「ロケハンは大事だぞ?」 「ロケハンで神の杖ぶつけられるのどういう状況だよ……」 ともあれ。 「だけど、一切合切攻撃が通用しないってわけでもないらしい。なら何が通じるかって考えてたんだけど」 「――ルージュナに閃光弾を使った時の話か」 「ああ。目で見ているってことは光の反射を受け取っているってことだから、単純な光自体は無効にできない……って理屈だったよな」 明るい、暗い、を感知できる以上はその延長線上も感知するはず。 「なら同じように、音を聞けるなら音響兵器だった通じるよな。つまり、狙うは光と音だ」 「故に音響閃光弾(スタングレネード)ということか」 「そうそう。勿論これで倒せるとは思ってないけど、目と耳を封じられれば多少なりとも動きを阻害できるはず」 「そういえばロックもゲームで作ってたな。それ自体にはダメージは無いが、プレイヤーの動きを阻害することで操作ミスによる落下死を誘発させるステージ」 「ああ、自信作の一つだぜ」 「クソステージと評判の」 「やめろよ」 リスナーからの「は?」コメントで埋められたこと回を思い出し少々げんなりする鍵掛に、月ピはふむと考えこみながら。 「いいアイデアだと思う。それなら、ロックの能力でこういうことはできないだろうか」 「え? まぁ、できると思うけど……」 ・ ・ ・ いくつもの修羅場を乗り越え練り上げられた柳の斬撃は、その一つ一つが並の剣士を容易く殺傷せしめるほどの鋭さを有する。 もはや彼女は無理やり押し付けられた力をただ漠然と振るうだけの柳生もどきではない。 「う――おおぉぉぉぉ――!」 正面からの踏み込み。振り上げの姿勢に“おつきさま”は抑え込むべくナイフを振り下ろす動きを見せる。 当たらない。互いの手がすれ違うように空を切る。柳の武器は「徒手に見える無の刀」であるが今は本当に徒手を振った(・・・・・・・・・)。 想定外に生じたであろう一瞬の空白に、柳は反対の手に生成した無の刀で追撃する。 横薙ぎ。“おつきさま”の両目をなぞる。 視界を封じ逆胴、袈裟斬り、逆袈裟、唐竹割り、突きの反動でバックステップ。反撃を回避。 左右の動き――フェイントだ。歩法によって右からの動きと左からの動きを錯覚させてから右から回り込む。 歩幅と膝の伸縮をコントロールして相手にペースを悟らせない。タイミングをずらしてすれ違い様に爪痕のような三連斬。 背後に回り込む、“おつきさま”の視界から外れた刹那、如何なる技術か柳は音も無く逆上がりのように跳躍した。 振り返った“おつきさま”は柳を見失う。相手は頭上にいるというのに。 空中でVの字を描くように眼下の“おつきさま”の両肩を切り裂く。本来であれば肩ごと腕を切り飛ばしている攻撃だ。 猫のように体勢を入れ替えて足から着地、低い姿勢のまま“おつきさま”の踝、膝裏、腿をジグザグに斬撃した。 目、脇腹、上腕、下腹部、額、鳩尾、首筋、鎖骨、肘、肩、踝、膝裏、腿。 全てを攻撃した。全てが効果が無かった。 (分かっては――いたけれど――) “おつきさま”のナイフを回避する。こちらの渾身の攻撃を連続で直撃させてもかすり傷も無いのに、相手のこのふわりとした攻撃が当たれば大ダメージなのはまるでリスクとリターンが見合っていない。 (だからと言って、止まる算段も無いけども!) ナイフの振り終わりに合わせて“おつきさま”の手の甲を無刀で打撃する。 ダメージは無いとしても一切の物理的影響が無いわけではないようで、“おつきさま”は衝撃にナイフを手放した。 地面に落ちたナイフを即座に蹴り飛ばす。無意味だとしても一手一手を積み重ねるしかない。 無刀を握り直し、再び攻撃を体勢を取ったところで――“おつきさま”が無造作に手を伸ばして来た。 反応が遅れた。だって、徒手の相手が無防備を晒したまま絡んで来るなんて普通はあり得ないから。 だが。 (しまっ――) “おつきさま”の細指が、柳の左上腕をそっと握る。 そして、ぶちぶちと肉が千切れる音がした。 後退るのがあと数瞬遅かったなら左腕が引き千切られていたかもしれない。 「痛(つ)ぁ……!」 肉が抉られた左腕を庇いながら、まだなんとか動かせることを確認する。 ――まだ常識に囚われてしまっていた。 転校生にとって武器の有無に大きな差は無い。ナイフだろうが素手だろうが、容易くこちらをバラバラにできるのだから。 “おつきさま”は握り取った柳の肉片を興味なさげに放り捨てた。 「ハンカチくらい用意しておくべきでしたね」 そう言いながら、血で濡れた右手に再び取り出したナイフを握る。さらに今度は反対側の手にもナイフが握り込まれていた。 少なくともこれで四本目のナイフのはずだが、あの衣装のどこに隠したいたのだろうか。 「へへっ……なに、お嬢様気取り? ストーカーの癖に」 「――さて、どうでしょう」 「……?」 挑発にもならないただの軽口に、しかし一瞬“おつきさま”の感情が揺らいだように柳は感じた。 しかしその意味を考える間もなく。 「――ハッ」 短い呼気と共に、両手にナイフを構えた“おつきさま”が踏み込む。歩法も剣術も柳に比べれば決して優れたものではない。 だがその動作の一つ一つが致命的な威力を有しているのなら。 「ちっ、くそっ、このぉ!」 二刀による斬撃を首を逸らし、体を捻り、脚を曲げ、全身を伸ばし回避する。 (左腕――動く、けど流石にいつもと同じようには無理。それに何度もは刀を振れない――!) バックステップで距離を取り、詰められる前に右手の刀を閃かせる。ここはまだナイフの距離じゃない。 狙いは“おつきさま”の左手の甲。『せめてナイフを減らす』という意図で放たれた一閃は、しかし左手に握られたナイフを器用に返し、“おつきさま”は逆手に持ち替えたナイフの刃で無刀を迎撃した。 「流石に狙いが見え見えで」 ガン、と“おつきさま”の言葉は物理的に止められた。 『せめてナイフを減らす』という意図が見え見えなのは当然、そのための見せ札なのだから。 ――ダメージが通らないなら武器を狙う。 ――左腕は損傷があるから温存する。 それらを踏まえた上で、右手の刀を囮にした左手の本命。 強烈な突きが“おつきさま”の顔面に叩き込まれ――白く発光する。 「『剣禅―――一如』」 柳の奥義が、“おつきさま”の顔面で炸裂した。 至近距離での『剣禅一如』。その哲学的エネルギーの奔流は流石に反動を抑え切れず、柳の体を吹き飛ばした。 「ぐ、が、ああああぁぁぁぁ!」 左腕を庇いながら地面を転がり、堪え切れずに苦悶の声を上げる。 損傷した左腕で突きを放ち、炸裂させた反動をもろに受けたのだから当然だ。むしろ腕がまだ千切れていないのが幸運とすら言える。 「本当に――大した人間ですね、あなたは。素直に賞賛に値します。」 ――閃光と砂埃が収まった中から姿を見せた“おつきさま”は当然のように無傷だった。 「本当に……相手が私ではない、ただの転校生であればもしかしたら倒せていたかもしれないのに。哲学的エネルギーによる干渉も、浸透する前に浸蝕してしまえば――このように」 銀髪の女性は肩を竦めて柳を見遣る。 「そもそも、私が持ち込んだあの月はどうするつもりですか? まだ距離があるから大丈夫だと思っているのかもしれませんが……」 空を見上げる。小さな月を迎撃すべくロックと月ピがカタパルトで分身(ピエロ)を射出し、神の杖を起動。降り注ぐ金属棒が巨大な岩塊を砕いて行く。 その奥に見えるもう一つの月は未だに傷一つ付けることができていない。 「引力の関係上、あの月はこの地球に近付けば近付くほど加速します。閾値を越えたらあっという間に終わりです。どうしても止めるのなら"最後の一線”を越えるまで留めておくしかありませんね」 「……あんた本体には通じないって言ってたけどさ」 柳は無刀を杖代わりにしてフラフラと立ち上がる。その目の闘志はまだ消えていない。 「じゃあ、剣禅一如をあの月にぶち当てたら? それなら消えるんじゃない?」 「無理ですよ」 転校生は断じた。 「まず大前提として射程が足りません。あなたのビーム、何キロ先まで届きますか?」 「……」 歯噛みする。何キロ先どころか数百メートルすら怪しいだろう。 「仮に射程の問題が解決したとしましょう。ですが、そもそも出力不足です。存在の大きさという観点では私本体よりもむしろ月の方が大きいですからね。月だけでは私のように哲学的エネルギーの干渉そのものを無力化することはできませんが……まぁクレーターを開けるくらいはできるんじゃないですか?」 見下して過小評価をしているのではない。“おつきさま”本人が互いの力量を見た上での見解がそれだった。 「繰り返しますが、あなたは大した魔人ですよ。お仲間の二人も頑張ってはいます。――でも、それだけです。実力者が最適解を選び続けても必ず勝てるわけではありません」 「……」 無言のまま、柳は無刀を上段に構えた。光が、白い閃光が刀へと収束する。 「『剣禅』――」 「だから、効かないと言っているでしょうに」 そう言いながらも“おつきさま”は柳の狙いを考える。この剣士は自棄になって奥義を振り回すような半端者ではない。 牽制であれ、目くらましであれ、この局面でそれを撃つことに何らかの意図があるはず。 「――キャンセル」 だから、その光が消えて柳がバックステップしたのを見た時、“おつきさま”は思わず呆けた反応をしてしまい。 頭上からの岩塊に圧し潰された。 「……あんな力技で岩を破壊してるのに、ここまで精密に落とすとかどんな操作技術してるのよ」 眼前で、“おつきさま”が小さな月の欠片の下敷きになるのを見届けた柳は、それをやらかした二人の手腕に呆れとも賞賛とも取れる言葉を漏らした。 つまりこういうことだ。鍵掛と月ピの二人は小さな月の迎撃作業の最中、“おつきさま”の相手をしている柳の旗色が悪いのを察し、落石によって援護攻撃を仕掛けたのだ。 ――空中で迎撃した岩塊をピンポイントに敵の上に、そして柳が巻き添えを喰らわないように落とすというのがどれほどの技術を要求されるのかは想像もできないが。 (とはいえ。これであの女が死んだとは思えない) 空を見上げる。もう一つの月が地球に迫ってきている。 ――ですが、そもそも出力不足です ――まぁクレーターを開けるくらいはできるんじゃないですか? 先ほどの会話。“おつきさま”は柳の剣禅一如でもう一つの月を消滅させることは到底不可能だと断じた。 “攻撃が通用すること自体”は否定しなかった。 (転校生に私達の攻撃が通じないのは私達が転校生じゃないから。だったら、転校生の力を有している“もう一つの月”を一部だけでも破壊して、その欠片で“おつきさま”の本体を攻撃できるかもしれない) 当然ながら、それは困難に困難を重ねた蜘蛛の糸のように細い細い仮定だ。 それでも理屈を繋ぎ合わせる限りは不可能だという証拠はない。 (やろう。ここでこいつを延々と相手しているよりも、まだ勝機が見え) そして、ぶちぶちと肉が千切れる音がした。 左足の肉が爆散する音だった。 「――は?」 体の支えを失って不格好に倒れる。 見れば、柳の左足の腿肉が飛び散り、骨が剥き出しになっていた。流血が止めどなく溢れている。 しばし、その意味が理解できず――視線を動かして前後を見遣って。 「……うわぁ、マジかぁ」 己の迂闊さを悟った。 背後の地面にナイフが突き刺さっていた。 “おつきさま”を圧し潰した岩塊に、ちょうどナイフ一本分の穴が開いていた。 「岩の中からナイフを投擲したってコト? いくらなんでも……パワープレイ過ぎるでしょ」 考えてみればナイフを主武装としておきながらナイフ投げを一切行わなかったのは布石だったのか。 岩を押し退けて脱出するのではなく、岩自体を隠れ蓑にして安全に狙撃できると気付いたのか。 「――可能性は、潰しておくべきです」 ナイフで文字通りに岩を切り開きながら“おつきさま”が現れる。彼女は足に甚大なダメージを受け横たわる柳を見て満足そうに頷いた。 「結局のところ、転校生に干渉できるのはあなただけ。先ほどは不可能だとは言いましたが、それでも月に攻撃を通す目があるのはここではあなただけ」 故に。 「あなたさえ殺せば、もう私を止める手段は無い」 ――正真正銘、柳には手詰まりだった。 この脚ではもはやまともに立ち上がることすらできるかどうか。 そしてこの出血量。 (ああ、これは死んだな) どこか冷静に、柳は自分を分析した。 仮にこの場を無事に離脱できたところで、適切な処置を行わなければもうすぐ死ぬ。 適切な処置が行える頃にはこの地球が終わっている。 そして眼前には自分にトドメを刺そうとしている転校生。 (あーあ、ごめんね山乃端さん。最期の言葉が「邪魔だよ」になっちゃった) それでも。 (あなたを守りたいという、約束は守るよ) 柳は自身が持つ全てを、ありったけを、集中させるイメージを組み上げる。 最後の最期。柳煎餅という人生を掛けた渾身の『剣禅一如』。 ――例え全てを費やしても、容易く無効にされ何の成果も遺すことができないかもしれない。 それでも。 (それが億に一つの可能性でも――それ未満だとしても構わない) 「――何かを企んでいますね」 “おつきさま”の警戒した声が聞こえる。流石に察されたようだ。 (……相手を油断させることはできない、不意打ちもできない。可能性はさらに狭まった) それでも。 千切れかけの左腕と剥き出しの左脚を奮わせて立ち上がる。 「……これが私の最期の一撃だよ、転校生」 白く輝く閃光の刃を構え、あえて堂々と宣言する。 「どうやらそのようですね。……それが分かっていて、わざわざ不用意に受けるとでも?」 「まさか。でも、これで斬るよ」 「できませんよ、そんなこと」 「斬る」 「……」 もはや互いに言葉は不要。 柳は剣禅一如の構えのまま動かない。 “おつきさま”はナイフの投擲と回避行動をいつでもできる姿勢を取る。 外せば、無駄死に。 当たっても、おそらく無駄死に。 そして。 そして。 そして――。 カタパルトで射出されたピエロが“おつきさま”へと飛び掛かった。 「――!?」 突然の闖入者に流石の“おつきさま”も動揺を隠せず、猛烈な勢いで自らへとしがみ付いて来たピエロに地面に引きずり倒された。 絶対的な隙。 剣禅一如を放つなら今しかない。 なのに。 (――まだだ(・・・)) 柳本人も理由が分からない。 なのに何故か、まだ放つべきではないと本能が叫んでいる。 故に、それに従った。 「いい加減に……!」 “おつきさま”の左手がピエロの顔を掴む。ピエロの顔はメキメキと潰れていく。 「止まりなさい!」 そのまま右手に握ったナイフをピエロの胸部へと突き刺した。 それはバターのようにまるで抵抗を感じさせずに深々と貫き。 そして、ピエロの懐に入っていた箱状の装置をも貫いた。 ――つまり、狙うは光と音だ ――それなら、ロックの能力でこういうことはできないだろうか ――落雷のトラップ バリバリバリバリ―――― 装置が作動し、天より夥しい雷が落ちた。 それは、強烈な光と音を伴った電撃。 転校生であろうとも、一時的に視覚と聴覚を奪うほどの。 (これ、は) “おつきさま”の視界が真っ白に染まっている。何も見えない。 他方で感覚以外には肉体的損傷を受けていない。そこは転校生の守りを破れなかったようだ。 だが、“おつきさま”を動揺させたのは。 (この攻撃――味方ごと(・・・・)――) そうだ。この攻撃は間違いなく同じ戦場にいた柳すらも巻き込んでいる。 既に半死半生の身。防ぐことも躱すこともできるはずがない。 (ならば、瀕死の味方を見限りましたか。――愚かな。あの剣士の奥義は、限りなくゼロであっても私に届き得る唯一の手段だったのに、それを放つ前に死なせるとは) ――放つ前? (……そもそも何故彼女は隙だらけの私を撃たなかった? 通じるかどうかはともかく、千載一遇の機会だったはずでは?) 撃てなかった? 撃つ必要がなかった? ――これから撃つつもり(・・・・・・・・・)だから? 視覚と聴覚が封じられた最中。 “おつきさま”は確かにそれを感じ取った。 かつて立花道雪は、雷と共に現れた雷神を斬り、その刀に“雷切”の名を与えたという。 ――切っ掛けは墓地で戦った隼侍の技だった。 ――為したのは駐車場で戦った御首級てがらの奥義を討った時だった。 無を刃をするのなら。 雷を手にできぬ道理はなく。 「――“無刀取り”」 柳煎餅は、己の身を焼く雷を刃として留め、その右手にしっかりと握り込んでいた。 自らの全てを、ありったけを込めた。そこにさらに雷の力を注ぎ込む。 姿勢は低く、体をやや左に捻りながら、右手に握った刀を構える。 ――柳煎餅 ――お前を ――『感電死(・・・)』で殺す (律儀というか、まどろっこしいんだよ、殺し屋!) 解放。 全身を発条にして雷刀を逆袈裟に斬り上げる。 「“剣禅一如”―――――!!」 ・ ・ ・ “おつきさま”は攻撃が放たれたのを感じ取った。 (このエネルギー……一体何の小細工を。いいえ、それでも私には通用しません) 両腕を交差させて盾にする。無防備に受けても防ぐ自身はあるが、懸念材料は一つでも潰しておくに越したことはない。 果たして。 攻撃は来なかった。 (……?) 攻撃は間違いなく放たれたはずだ。なのに“おつきさま”の身は何も受けていない。 (正真正銘、彼女の最期の、最大の攻撃だったのでは) そこまで思考が至ったところで。 (――しまった) “おつきさま”は自分の中で何かがごっそりと失われたような感覚を覚えた。 (狙いは……私じゃない) 気付いた時には既に遅かった。 剣禅一如。 柳煎餅が最期に放った白き雷光の斬撃は空を裂き、天に昇り。 “もう一つの月”へと、到達した。 ――極致へと至った柳の剣禅一如はただの物理的破壊に留まらない。 非物理的領域に干渉し、論理的整合性を取り繕い、架空の因果関係を成立させる。 (『月は』『自我を』) 「……『持たない』」 転校生の否定が通じないのは織り込み済み。 本命は月が知性を持つはずが無いという論理的破綻(ロジックエラー)。 その結果どうなるのか。 “おつきさま”による精神侵蝕を受けることでもう一つの月は彼女の一部として認識され、転校生の保護を受けている。 “おつきさま”による精神侵蝕は知性を持つものにしか通じない。 “おつきさま”の傀儡の魔人によって自我を与えられ、精神侵蝕の条件を満たしている。 それが、剣禅一如によって否定される。 もう一つの月は自我を持たない。 もう一つの月は精神侵蝕を受けない。 もう一つの月は“おつきさま”の一部と認識されない。 もう一つの月は、転校生の力を失う。 「……待ってたぜ。これでようやく、本命が行ける」 一部始終を見届けた仕掛け人――鍵掛は不敵に笑い。 「どこから手に入れたか知らないけどよ、月ピ、ありがたく使わせてもらう。――ぶちかませェ!」 ――もう一つの月に、カタパルトトラップによって射出されたスペースシャトルが衝突した。 当然のことながらシャトルは大破。 そして、内部に可能な限り詰め込まれ搭載されていたトラップが起動する。 いつもは空から地上へ向けて。今回は空から宇宙へ向けて。 「“神の杖(ロッズ・フロム・ゴォォォッド)”―――!!」 ――地球へ迫るもう一つ月へと放たれる数百を越える神の杖。 それらは次々に月の表面へと突き刺さり、宇宙へ向けて押し返していく。 (これで破壊できるとは思ってない。これで無限に押し留められるとも思ってない。――だけど、時間稼ぎはできるだろ!) 鍵掛は月を見上げながら拳を握る。彼ができることはやった。後はもう、託すしかない。 「――頼む」 ・ ・ ・ “おつきさま”は、もう一つの月が自分の支配から離れたのを理解した。 (ですが、それでも――例え転校生の力を失ったとしても、もう一つの月は単純な質量でこの世界を滅ぼし山乃端一人を殺害します) そうだ、彼女の寿命が少しばかり延びただけ。 なのに、“おつきさま”の胸中に何とも言えぬ不安感が過ぎる。 「いいえ、いいえ……いいえ! 転校生に対応し得るあの剣士はもういません。これで、今度こそ」 終わりだと、そう言葉にしようとして。 「――《Au clair de la lune,Mon ami Pierrot(月の光と、我が友ピエロ来れり) 》」 落雷の影響から回復しつつある聴覚に、そのような歌が聞こえた。 打撃。 (これは――攻撃を受けている?) 「――《Ma chandelle est morte, Je n ai plus de feu(私の灯は消えてしまった) 》」 まだ視覚が回復し切っていないためはっきりと認識できていないが、“おつきさま”の周囲を誰かがすれ違いながら攻撃を仕掛けている。 (これは……二人。主に攻撃しているのは一人ですが、他の一人も攻撃の機会を伺っている) とはいえ。先ほどの剣士とは違い、行われているのは単純な物理攻撃。これならまだ先ほどの方が危機感があった。 「――フッ!」 接敵に合わせて腕を振り回す。攻撃者と“おつきさま”、互いの攻撃が互いに命中したが結果の差は歴然。“おつきさま”はかすり傷一つなく、攻撃者は素手の一撃で引き裂かれた。 「――《Ouvre-moi ta porte, pour l amour de Dieu.(頼む友よ、扉を開けてくれ) 》」 そのはずなのに。 引き裂いたはずの攻撃者が、すぐさま復帰して再度切りかかる。 (これは……召喚能力? なるほど、分身を生み出して安全に攻撃を行っているわけですか) 先ほどと同じように、攻撃に合わせてカウンター。また現れた分身に攻撃に合わせてカウンター。 何度やってもキリが無い――それを相手も感じ取ったのか、攻撃が止んだ。 (この気配は……三人? タイミングを、合わせているようですが) 少しずつ視界も戻ってきた。ぼんやりとだが周囲が見えるようになっている。 (連携攻撃でどうにかしようと……そういうつもりですかね。努力は認めますが、無駄なことです) ――左前方、右前方、少し遅れて後方。 三方向から攻撃者達が飛び出してくる。 “おつきさま”はあえてそれを受けることにした。どうせ当たったところで被害は無いのだ、おそらく本命であろう最後の一発に合わせてカウンターを繰り出す。 左前方、ナイフ攻撃か。投擲と、すれ違いながらの斬撃。無防備のまま受ける。 右前方、鎖に繋がれた鈍器。振り回し、“おつきさま”の胸元へと振り下ろす。無防備のまま受ける。 後方、これが本 ――ドス。 攻撃が突き刺さった。 「―――え」 後方はまだ来ていない。これは二人目の攻撃。鎖に繋がれた鈍器による振り回しが“おつきさま”の胸元へと深く喰い込んでいた。 「なに――え、なにが……」 理解できない。理解できないまま数歩たたらを踏む。 視覚が回復しつつある。 視界が戻りつつある。 “おつきさま”は、顔を上げた。二人目の攻撃手の姿を見た。 泣きそうな表情をしていた。というより、実際に涙の痕があった。 震えていた。恐怖か、不安か。顔は真っ青だ。 それでも、その目には決意が秘められていた。 その手には、鎖が握られていた。 鎖の先には、銀時計が繋がれていた。 「あ……」 それが、誰か分かった。 “おつきさま”は呆然としたまま、その少女の名を呟いた。 最終話 山乃端、一人 『私は、あなたに伝えなければいけないことがあります』 洋服店の中で、姿見の中の鏡助は泣きじゃくる山乃端にそう言った。 「……聞きたくない」 蹲ったまま、少女は子供のようにイヤイヤと頭を振って拒絶する。 『いいえ、聞いてもらいます。何故ならそれが私がこの世界に来た理由だから』 「聞きたくない! それって、いい知らせなの!?」 『……』 転校生は嘘を吐くことができない。鏡助は山乃端の言葉に少しだけ逡巡して。 『……それはあなた次第です。この“伝言”自体に深い意味はありません』 「伝言……?」 『――“山乃端一人”のご両親からです』 その言葉に、少女はハッと顔を上げる。だがすぐに眉をひそめて。 「それって……“どの”山乃端一人?」 『……私の世界の山乃端一人です』 「なら、先に教えて。あなたの世界の山乃端一人と……そのお父さんとお母さんは、どうなっているの」 『――死にました』 ……半ば予想していたことではあった。そもそも並行世界の自分とその家族だなんて、下手な他人よりもよっぽど縁遠い、無関係の存在だ。 それでもその端的な言葉は少なからず山乃端にショックを与えた。 「……そっちの山乃端一人も、ハルマゲドンのせいで?」 『そうですね……ハルマゲドンを目論む勢力に狙われ、刺客を差し向けられました。両親は彼女を守るために立ち向かい……殺され、最終的に山乃端一人本人も』 「……」 『私はご両親の最期に立ち会いました。ですが、山乃端一人さん本人は守ることができず……』 「――バッカじゃないの」 吐き捨てるように、山乃端は言った。 「なによそれ。それじゃああなた、娘に伝えられなかった言葉を、赤の他人(・・・・)である私に伝えようとしているの?」 『……結果的にはそうなります』 「それじゃあ尚更嫌よ! そんなの聞かされたってあなたの自己満足じゃない!」 『――その通りです!』 突如響いた男の大声に、ヤケ気味だった少女がびくっと震える。 ――鏡助がここまで感情を露わにしたのは初めてだった。 『そうです、私は! 私は……ただの自己満足のために世界を渡り、山乃端一人を守ろうとしています。そのために、何十人もの魔人を巻き込んで!』 だから。 『私は最低の存在です。結局は、あなたを殺してハルマゲドンを起こそうとしている人達と同類かもしれない』 だけど。 『――それでも! それでも私はあなたに“違う”と言います!』 「……“違う”? 何が違うっていうの」 迫力に気圧されながらも、山乃端はそう返す。鏡助は大きく息を吸って、その言葉を紡いだ。 ――私、何のために生きてきたの ――私、何のために生まれてきたの 「それって、さっき私が……」 『そうです、あなたの絶望です。そして――』 ――私の世界の山乃端一人の絶望でもあります。 「……」 『――“違い”ます。“違う”んです。だって……生まれたことや生きていることに、あなたが思い悩む必要なんて無い!』 叫ぶ。 鏡助は、かつて勝利数0(正義)だった男は叫ぶ。 『生きてください! 理由なんていい、ただ生きていて欲しい! edel(高貴)でなくても、weiß(潔白)でなくても! 生きていることは……尊いことなんですから』 「……」 純粋なまでの想い。それを受け止め切れず、山乃端は俯いた。 「……ダメだよ。だって、"山乃端一人”は……ずっと死を望まれて、死を願われて……」 『――これでようやく、最初の話ができます』 え、と少女は顔を上げる。二人の目が会う。 『山乃端さん。私は、あなたに伝えなければいけないことがあります。“山乃端一人”のご両親からです』 『”一人”』 『“うまれてきてくれて”』 『“ありがとう”』 ・ ・ ・ 「――わあああああああああああ!」 山乃端一人は叫びながら銀時計が繋がられたチェーンを振るう。 銀時計は鈍器のように、“おつきさま”の肩に叩き付けられた。 「あああああああああああああ!」 技も術もなく、子供のようにチェーンを振り回す。 銀時計は“おつきさま”の脇腹に突き刺さった。 「うううううううううううぁぁぁぁ!」 山乃端本人も何をしているのか分かっていないかもしれない。 それでも、繋がられた銀時計は“おつきさま”の顔面に打ち付けられた。 その打撃の全てが“おつきさま”に明確なダメージを与えている。 原則として転校生に攻撃が通用するのは同じ転校生だけである。 ならば、山乃端一人は転校生になったのか? (――違う。この山乃端一人は、転校生は愚か魔人能力者ですらない) 銀時計を何度も打撃されながら“おつきさま”混乱し切った頭で思考を続ける。 (ただの一般人が、転校生を相手に攻撃を通している……!?) それはあり得ないはずのこと。 だがそもそも何故あり得ないのか? 『「自己の認識を他者へと強制する力」――それが魔人の能力の本質です』 『そんな魔人の中でごく稀に――試練を乗り越えることによって「自分は魔人を越えた特別な存在である」と、そう認識する個体がいます』 『それこそが転校生、魔人を越えた魔人』 自分は特別な存在であると自己認識することによって、認識によって世界を歪めるという魔人の在り方をさらに高い階位で為している存在。 それが転校生。それに対抗するには世界を歪めるほどの影響力と、自分は特別であるという自己認識。その双方が無ければ足りない。 だがそもそも、試練を乗り越えることでしか自分を特別だと認識できないのだろうか? 『うまれてきてくれてありがとう』 『理由なんていい、ただ生きていて欲しい』 彼らが真にその言葉を贈りたかった山乃端一人は彼女ではない。 それでも。 世界を越えて彼女にその言葉を贈ることに躊躇いも迷いも、間違いも無い。 それは"祝福”だ。 例え生まれたことの意味に苦悩し、生きることの理由に絶望したとしても。 生まれたことを、生きることを。 意味もなく、理由もなく、肯定すること。 ――それを、愛と呼ぶ。 あらゆる世界、あらゆる時空において、その死がハルマゲドンの引き金となるほどの影響力を持つ山乃端一人が。 あらゆる世界、あらゆる時空を越えて、「自分は大切な人に愛されている」のだと自己認識をしたのなら。 ――たかが神(・・・・)に認められた程度の転校生が、どうして無敵であると言えるのか。 それでも、本来は辿り着けない領域だった。 ただ山乃端一人が自己認識をしただけでは転校生に敵うまでは行かなかった。 ――ここに、さらに二つの要素が重なった。 一つ。それは山乃端が武器にしているのが銀時計であるということ。 この世界の山乃端一人にとってこの銀時計はただのアンティークだ。 だが並行世界の“山乃端一人”が混線したことにより、「山乃端一人の銀時計は、山乃端家に代々受け継がれる魔神(デミゴッド)を封印する魔器である」という“認識”が適用された。 それは魔神である“おつきさま”にとって特攻武器に他ならない。 もし山乃端が扱う武器が刀剣や銃器であったのなら、それが優れた物であっても攻撃は通らなかっただろう。 そして、二つ目の要素。それこそが、山乃端が“おつきさま”に到達する最大の理由。 「わあああああ! わあああああ! ああああああああ!」 少女は無我夢中に銀時計を振り回す。魔神(デミゴッド)封印の魔器は“おつきさま”の存在を一撃ごとに削り取っていく。 その気になれば“おつきさま”は抵抗ができた。月ピが備えて反撃を潰す構えこそ取っているものの、転校生である“おつきさま”が本気で抵抗すればただの魔人など障害にもならない。 なのに。もはや“おつきさま”は戦意をほとんど失っていた。 (……どうして。目の前に山乃端一人がいる。目標がいる。この少女を殺して持ち帰れば、私の願いが叶う。なのにどうして私の体は動こうとしない) “おつきさま”は自問を繰り返す。……答えの分かり切った問いを。 ――“おつきさま”は山乃端一人を見る。 美しいというよりは愛らしい整った顔立ち。 戦いの恐怖に震えながらも逃げずに立ち向かう勇気。 倒すべき悪であっても力を振るうことに躊躇う優しさ。 ああ。 ああ――。 空を見上げる。そこにはもう一つの月。“おつきさま”が自分の世界から持ち込んだ――かつて誰かと一緒に見上げた月が。 振り下ろされる銀時計は、“おつきさま”の心臓を目掛けている。 “おつきさま”は無防備にそれを受け入れた。 最期に。目の前の少女を見て思い出した、目の前の少女ではない誰かのことを口にしながら。 「―――お嬢様(・・・)」 「月が、綺麗ですね(I love you.)―――」 二つ目の要素。 転校生(おつきさま)自身が、山乃端一人を愛していたということ――― ・ ・ ・ ――告別式はつつがなく行われた。 故人は夫に先立たれており、自分の葬式は盛大にやる必要は無いと生前からこぼしていたようだが――縁の多い彼女らしく参列者も中々の数になってしまったようだ。 長男が喪主として立派に役目を果たし息子夫婦と娘夫婦がそれぞれ式を取りまとめていた。 テルは娘夫婦の第三子、今年で八歳になる小学生だ。 祖母のことが大好きだった兄や姉はお別れに泣きじゃくっていた。勿論テルだって祖母のことが大好きだ。 だけど、祖母の遺体の遺体と面会した時。 「――おばあちゃん、おつかれさまでした」 なんてことを言い出したものだから、周りから不思議がられていた。実はどうしてそんなことを言ったのか、テル自身もよく分かっていなかった。 ただ、祖母はずっと頑張っていたのではないかと思ったのだ。 火葬の最中はしばらく暇になってしまい、テルの兄や姉は親戚たちとお話をしているようだが、テルは手持無沙汰に斎場の入り口をうろついていた。 そうしてテルは、斎場の入り口に立っていた喪服姿にサングラスをかけた男性を見つけた。 「……?」 まだ子供のテルにもその人が不思議な恰好をしていることくらいは理解できた。 もしかして不審者だろうか? だけど、この喪服という黒い服は葬式で礼儀正しい服装であると聞いていたから。 「こんにちは、おじさん。おばあちゃんに会いにきたの?」 きっとそうなのだろうと思い、声をかけた。 男は少し驚いた様子で、しかし膝を曲げてテルと目線を合わせて口を開いた。 「そうだな。故人に……君のおばあさんに挨拶に来たんだ」 「なら、中に入らないの?」 「それが、おじさんはちゃんとしたお客さんじゃないから入ったら怒られてしまうんだ。秘密にしててくれないか」 「うん、わかった」 「ありがとう」 頷く男に、テルはこの人は悪い人ではないと思った。 「おじさんはおばあちゃんの知りあいなの?」 「昔、仕事で少し関わりがあってな。強い人だったよ」 「それじゃあ、おじさんも先生だったの?」 「先生? ……そうか、彼女は最終的に希望崎学園の教頭になったのだったか」 因果な物だ、と男は呟いたがテルにはよく分からなかった。 「私は先生ではない。実を言うと、今日は以前の仕事の完遂を見届けるために来たんだ」 「かんすい?」 「仕事がちゃんと終わったかを見に来たってことだ」 「ながいお仕ごとだったんだね」 「本当にな」 男は肩を竦めた。 ――本当に長い仕事だった。 何せ、最初に依頼を受けてから彼女の死を見届けるまで三年も(・・・)かかったのだから。 結局、あの“おつきさま”と呼ばれる転校生を撃破してから、山乃端一人が命を狙われることは無くなった。 死の運命に付き纏われた女性。果たして、「ただの一般人が転校生を撃破した」という事実が因果にどれほどの影響を与えたのか。 不思議なもので山乃端一人はあの戦いの日々をはっきりと覚えていないようだった。 かく言う月ピ自身も、気を抜くと山乃端一人に関する記憶が表向きの歴史の情報――享年八十二歳――にすり替わることがあった。 (それだけ彼女の運命は世界に影響する数奇なものであったということ。そしてその宿命を他でもない、彼女自身が自ら打ち破ったんだ) だとすれば。山乃端一人があのカードを選び取ったのも当然のことだったのかもしれない。 男は立ち上がった。 「さて、それじゃあ私はそろそろ帰る。少年、ちゃんと私のことは秘密にしておいてくれよ」 「うん。……だけど、もう帰っちゃうの?」 「仕事が立て込んでてな。それでもちゃんと来れて良かった。――君に会えてよかった」 「? そっか、よかったね」 よく分からないが、男が嬉しそうだったので多分良いことなのだろうと思った。 男は踵を返し、斎場の入り口から去っていく。 バイバイ、とテルは手を振って見送った。男も背を向けたままヒラヒラと手を振って応えた。 そろそろお母さんに呼ばれるかもしれない。 テルは足早に、家族が待つ広間へと歩いて行った。 Au clair de la lune,Mon ami Pierrot.(月の光と、我が友ピエロ来れり) Prête-moi ta plume pour écrire un mot.(言葉を記すため、ペンを貸してくれないか) Ma chandelle est morte, Je n ai plus de feu(私の灯は消えてしまった) Ouvre-moi ta porte, pour l amour de Dieu.(頼む友よ、扉を開けてくれ) Mais je sais qu la(――ああ、そうか) porte sur eux se ferma.(扉はもう、開かないのだな)
https://w.atwiki.jp/foresanc/pages/2452.html
ソーマ 1 名前 宗麻=ネニュファール(ソーマ) 2 年齢 18歳 3 性別 男性 4 種族 人間 5 外見 葡萄色の清潔に整えられたショートヘアに深い海のような藍色の瞳。 肌色は父親譲りで白い。体格は小柄かつ痩身で若さを残した幼い子供のような顔立ち。 痩身の体には柳のようにしなやかな確かに鍛えられた筋肉が備えられている。 服装 紺碧の袖を落としたインナーに黒の袴。袴の裾は動きやすいように縛っている。 その上からと白を基調にしたペレネス寺院の修道僧のローブに紺色の大きな布を袈裟のように身につけ、その上から瑠璃紺を基調にしたケープを羽織る。 靴は黒の布製ブーツでバンドで固定するタイプのもの。装飾品並びに防具は特に身に着けていない。 全体的にボディラインが隠れただぼついた民族衣装のような印象。 他にも居候生活をしだしてから買った服や借り物の服を着る事も多いが民族衣装のようなエスニックな服装を好む。 修行着もとい部屋着はインナーに袴姿。 両腕や両足にはサポーター代わりの包帯を巻きつけている。 身長/体重 【身長】164cm 【体重】51kg 6 性格 クールでドライ。謙虚で控えめ。言葉数は少なく寡黙。愛想がなく可愛くない。言葉語らずして行動で意思を示すことが多い。 基本的には自己主張をすることも少なく、他者に関心を示し関係を持とうとせど深入りすることはあまりなく壁を置いた淡白な付き合いを好む。 人嫌いするタイプかと言われるとそうではないらしいが、寺院の同僚や友人に対してもこうらしい。 しかしその胸の内は求道的で向上心の強い気骨に満ちた性格をしている。 自身を高めること、とりわけ鍛錬に対しては貪欲な姿勢を見せる努力家で、旅中で出会う様々な事柄もきっと自分の糧(バイブル)になるものであると解釈しているようだ。 清廉潔白であり禁欲的。気質的にも常識人寄りの性格をしているが、今まで寺院の中で修行ばかりしてきたのでだいぶ天然で俗世に疎い。 更に自身に不必要であると判断した事柄は斬り捨ててしまいがちで興味関心を失いやすい悪癖があるのも世間知らずぶり、天然ぶりに拍車をかける。 現状ではやや人間味の薄い珍妙な性格をしているが無愛想で寡黙、ドライと合いまって冷血な人間であると勘違いされやすい。 思考もこざっぱりした脳筋寄りであり、クールな表面に反してバリバリの体育会系。あれこれ悩んでも気合と根性で大体なんとかなる豪快な考えを持つ。 だいぶ根性論者であるが控えめな性格も合いまって他人の問題の際は黙っていることが多い。 あくまで自分の方針が根性論バリバリなだけである。 今まで修行ばかりで実戦経験に疎く、悪人や魔物に対しても度々嘆き、甘い姿勢を見せる。 本気で人怒ることはまずなく、人を憎まず罪や弱さを憎むを地で行くタイプ。 生き物には正負両方の側面があって当然のこと。罪に身を預ける弱さを戒め、そのような思考に陥り罪を繰り返す弱きものを救い正すのも勤めと思っている。 僧侶であるので当然神は信じているが、神は救いを与えるものではないとも割り切っている。 ならば救いはどこにあるのかと問われれば迷わず修行と人が行う営みの先にあると答える上述通りの脳筋ぶりを見せる。 ちなみに修行による悟りを重視するペレネス寺院自体厳格であれど他宗教に対しては非常におおらかであったことも幸いで他宗教信者を悪く思うことも殆ど無い。 「よそはよそ、うちはうち」。ソーマの性格によく反映されている考えである。 7 過去 修行の為己の身ひとつで世界を渡り歩く修行僧。 セレッサ王国出身の貿易商「ネニュファール=マーク」のひと時の気の迷いにより、東洋人の使用人「加奈葉(カナハ)」との間に生まれた国際ハーフ。 その出自故に存在を疎まれ、物心つかぬ頃に輝石大陸よりももっと北の極北の地に存在する「ペレネス寺院」なる寺院に厄介払い同然に預けられた。 ペレネス寺院は極北の聖人と呼ばれた東洋かぶれの武闘派僧侶「聖ラナド」を奉る寺院。 極めて勤勉で禁欲的な人物であったラナドを模倣するように、禁欲的な生き様と身を削る修行により悟りを開き御仏に近づき最終的に極楽に辿り着くことを教義として掲げている。 彼らの操る7つの気門を操る気孔術や拳法は人を伝って世界に響き、今ではその方面の道場としても少しばかり名の知れた場所であった。 孤児として暖かく寺院の僧侶達に迎え入れられた少年は、当初こそ両親に捨てられた悲しみや傷で塞ぎこんでいた。 しかし寺院の人々の助けによってそれさえも克服しようとただひたすらに偉大な先輩達のよう禁欲に努め修行に打ち込むようになる。 ソーマが精神的な壁にぶつかる度に取り合えず体動かしたり鍛錬に走り思考を埋めようとする癖があるのはこの経験故である。 そして十数年、寺院の規律をちゃんと守り、精悍かつ慎ましやかに成長した彼は他人にこの寺院の教えを広めることを許された一人前の僧侶となるべく最後の試練に到達する。 師から言い渡されたそれは世界を渡り歩き更なる見聞を広め、その心身を鍛え上げ、人間を越え超常の域に達するとされる7つ目の気門を開くことができるようになることであった。 そうして青年はちょっとした手荷物となけなしのお金を手に一人旅に出たものはいいものの、 今まで俗世から離れて生活してきたが故に船に乗って大きな街に到着したのはいいが最初に引き受けた商人の護衛任務で悪い大人に簡単に騙されお金と荷物を奪われてしまう。 報酬がもらえると思いきやいきなり文無しに陥り方向音痴で街にも帰れず行き倒れるという重大なハプニングに見舞われる。 行き倒れた所を傭兵任務帰りの親切な何でも屋の犬ニンジャとストーカー癖のある電波な従弟ニンジャに救出され、ご飯と一夜の宿を貰いなんとか命を繋ぐことができた。 彼ら事情を説明した彼はそれじゃあうちくるか!色んな仕事するから多分社会勉強になるよと半ば強引に何でも屋も稼業に携わることとなり居候させて貰うことに。 人の手を借りていては修行にならないのではと思っていたが、まあいいんじゃね?と丸め込まれて今に至る。 傭兵アシード=レザンは兄弟子、その姉であるリズロン=レザンは師に当たる。 8 職業 【修行僧・ペレネス寺院所属】 自らの修行や見聞を広めることを目的とする旅の僧侶。 彼らは主の教えに従い心身をより高みへ導き悟りを開くべく、旅中でも禁欲的な生活を送っている。 しかし彼はまだ寺院の教義を他者に広める資格を得ていない半人前なので布教活動はしていない。 現在では八雲の何でも屋もとい探偵業を手伝っており、店のスタッフの一員に勘定されている。 9 口調 修行僧の癖に口は悪い。淡々としたぶっきらぼうで風変わりな口調。 割と若者っぽい。 「宗麻=ネニュファール。変わった名前?よく言われる」 「何してるかって、お手伝い。これも社会勉強の一端らしい」 「……へぇ、二人とも物知りなんだな」 「強くなる為には毎日練習を繰り返し、積み重ねる。これが一番大事なんだ」 「釣りか、懐かしいな。前に川でちょっとやったことある。あっ 釣竿が川に」 「参ったな……ここがどこだかわからない………」 「きみがそうしたいなら、そうすればいい。結果は必ず後からついてくる。そう思う」 「大事なものは他の誰かがなんて思うかじゃなくて、自分がどうしたいかじゃないの?」 「気を使うのって難しい。すねてしまった……」 「夕飯?なんでもいいよ。ただあの薬みたいなものは、その」 「どうしたのいきなり胸なんて押し付けて。あ、柔らかい……」 「僕はこの前よりも強くなったぞ。師匠相手に3分も持った」 「あの人はいつも肝心なことは言ってくれない」 「門下生を卒業してすぐに島を飛び出したと思ったらこんな所で傭兵をしているとは」 「やはり師匠に良く似ている。顔も戦い方も」 「僕は、あなたの絶望を砕く。……それだけ」 「殺す?そこまでしなくてももう悪さはしないよ。きっと」 「君は君の神に従えばいい。それが信仰の報いになる。僕の報いはこの拳だ」 「いらない。それは僕にはいらない」 「僕は強くなんか無い。だって自分で強いって思ってしまったらそこで終わりだと思うから」 「落ち着かないとこうする。無心になれるんだ」 10 一人称、二人称 【一人称】 僕 【二人称】 貴方、あなた、あんた、きみ/~さん、呼び捨て 11 好きなもの 自分を鍛えること、筋肉、釣り、たくあん、無心、木登り(小さい頃からの特技) 12 嫌いなもの 問答、気遣い(苦手)、八雲の作る薬みたいな非常食、小難しいこと、地図(読んでも迷う為)、道案内(できない) 13 好きな人 いないようである 14 パートナー 仄明の影の面々 15 属性 風 16 苦手な属性 地 17 戦闘スタイル 修行により培った拳法、体術に気功術を交えた独特の戦闘スタイル。 僧侶らしく回復技にも長け、ヒーラーとしても活躍できる。 体術は拳打が中心であり、派手な動きこそないものの一撃一撃が重たく、動きの見た目や小柄な体躯に合わない火力を持つ。 槍を思わせる点に対する強力な攻撃を得意とし、見切り・受け流しといった堅実な護りを展開するパワー+テクニック系。 彼の気功術は気功エネルギーにより人間の体内に7つ存在する気門(チャクラとも呼ばれる)操作を可能にするもの。 気門を開くことで気の性質を様々なものに変質させたり、人間が普段かけているリミッターをちょっと外して気功強化し見た目に合わない力を引き出したりできる。 その結果僧侶でありながら魔法の素質を持たない彼であっても超能力・魔法に匹敵する特殊な秘術を使うことができる。 現在では過酷な修行により6つの気門操作をも可能にしており、臨機応変に切り替え戦闘を行う。 しかしながらソーマの力量を持ってしても一度に開くことが出来る気門は一つだけであるらしい。 弱点は高い戦闘能力に反した実戦経験の乏しさと魔法に対する低い防御力。 また気功という生命エネルギーを扱う術を使う関係上技の使いすぎは命にかかわる危険を伴う。 18 精神力 性格は控えめで大人しいが過酷な修行により培った精神力は頑強。 気功術の効果もあり多くの精神攻撃は跳ね飛ばしてしまう程。 総じて上の下だが本人の気力次第でその堅牢さは上昇していく。 19 戦闘熟練度 ★★★☆☆ 20 技や魔法 気功術 「紅花支根」 気門の一つを開くことにより発現する大地の力。 ソーマが生来所有している風属性と相反する力の為消耗が激しい傾向がある。 + <主な技> ┣ 「活命」 気功治療の一種。気功エネルギーにより傷を治癒する回復技。 回復量は調節できるが重傷の治療は彼自身の体力が持たず苦しい。 ┣ 「鳴動」 気門を開くことで発現する守りのエネルギー。 気功エネルギーにより自身の所有する霊子オーラ(耐性などになるもの)を強化。物魔防御を上昇させる。 ┣ 「割烈」 気門を開くことで更に火力を増した劈拳。 槍による振り下ろし攻撃の如く上段から手刀を振り下ろす。 手刀に大地の気功を纏わせ強化しており、単なる手刀であっても重たい鋼鉄の鈍器による渾身の振り下ろし攻撃に匹敵する。 ┗ 「衝地」 「無突」の応用。発剄と気功を扱った範囲攻撃。 空気を切り裂くような音と共に開拳を放ち、自身の周囲に放射状に広がる強烈な衝撃を放つ。頑張れば銃弾も相殺できる。 無突同様気の流れの見えない者には僅かな予備動作こそあれど念動力を思わせる不可視の衝撃に襲われることとなる。 「蒼葉宝焔」 気門の一つを開くことにより発現する火の力。 + <主な技> ┣ 「崩槍」 気門開くことで更に火力を増した崩拳。 槍での突きの如く相手に襲い掛かる拳は大岩さえも穿ち、鋼鉄すら抉る一撃となる。 本来ならば崩拳は別の気門との相性が良い技であるが、火の気門を用い更なる火力増強を図っている。 ┣ 「蒼衝」 気孔により自身の生命力を糧に燃える蒼炎のオーラを纏わせる。 この状態では打撃の炸裂と共に纏った蒼炎が爆発するかのように弾け、強い衝撃を生み出し相手を焼き払う。 ┣ 「炮脚」 気門を開くことで更に火力を増した足技。 槍による薙ぎ払い、鞭の如く蛇のようにしなり、襲い掛かる高速キック。 こちらも火の気門を用い更なる火力増強を図っている。 ┣ 「爆突」 気門開くことで更に火力を増した寸剄を利用した打撃。 掌まで伝達させた力を拡散させ相手を吹き飛ばすことに重点を置いた「飛突」とは異なり、伝達させた力を一転特化の破壊に集約させた技。 相手と密着するような至近距離による攻防にて踏み込みもなく放たれる音なき必殺拳。 ┗ 「紅蠍」 気門を開くことで更に火力を増した足技。 低い身長を生かし低姿勢で相手の懐に飛び込み、全身をバネに繰り出される逆さ蹴り。 打撃の作用点となる足先に全身の力を集約させ相手を貫く。 「朱禄水月」 気門の一つを開くことにより発現する水の力。 + <主な技> ┣ 「瀧泉」 気門を開くことで更に火力を増した鑚拳。 片足を前に踏み出しながら繰り出されるアッパー攻撃。 拳に水の気孔を纏わせ強化してあり、相手を間欠泉で打ち上げる如く天高く吹き飛ばす。 ┣ 「止水」 気功治療の一種。水の気功エネルギーによる回復技。 対象の気の流れを氾濫している暴れ川を治水するように鎮める。 感覚や精神の乱れなどを治療することが出来る。 ┗ 「疏水」 気功治療の一種。水の気功エネルギーによる回復技。 対象の気の流れの滞りを気孔によりほぐして活性化させ正常に戻す。 金縛り等の麻痺や石化、沈黙状態などを治療することが出来る。肩こりもすっきり解消できる。 「金華風音」 気門の一つを開くことにより発現する風の力。 + <主な技> ┣ 「縮地」 さる特殊歩法を気功により瞬間強化したもの。 ぬるっとした対象に擦り寄るような動きが特徴。 ┣ 「無突」 発剄、気功による遠当を行う。 気の流れが見えない者にはあたかも念動力のような不可視の衝撃が突然襲い掛かるように見える。 ソーマが扱える技の中では唯一の遠距離攻撃。 ┣ 「飛突」 至近距離での攻防において気門を開きながら相手を押し出すように両の手のひらを使う。 寸剄と呼ばれる技法を気功強化したもので、打撃の際に掌まで伝達させた全身の力を乗せて放ち相手に強い衝撃をかけながら吹き飛ばす。 応用して地面や壁など障害物に行うことで自分を吹き飛ばすことも出来る。 ┗ 「操力」 相手の物理攻撃を受ける際に、相手の腕や足に気を纏わせた拳や指を沿わせ力の伝達を緩めたり加速させたりする。 伝達を緩めれば急激な脱力感と共に力が抜けて攻撃の威力が激減し、加速させれば攻撃の威力が爆発的に強化され自身の拳や武器を傷つける。 自身の扱う発剄の応用であるらしく、相手が伝達させようとしている力に弁を設けたりリミッターをとっぱらって暴走させるような感じとのこと。 「紫清虚環」 気門の一つを開くことにより発現する浄化の力。 + <主な技> ┣ 「澄光」 気門を開くことにより気を浄化エネルギーに変換する。 体術に浄化攻撃を付与することが可能。 ┣ 「浄血」 気功治療の一種。浄化の気功エネルギーによる回復技。 気を浄化することで対象の肉体を浄化することができる。 ┗ 「清祓」 浄化エネルギーに変換した気を薄く放出させてアンデッドや悪霊を退散させる。 薄く放出する都合上効力は低くパワー負けすることも多い。 「白智蓮醒」 気門の一つを開くことにより発現する神秘の力。 + <主な技> ┣ 「彗覚」 気門を開くことで自身の五感をブーストする。 鋭敏となった感覚により感知能力や見切り技能にちょっとした補正がかかるが、その分受けるダメージや感覚に被害を及ぼす技や魔法の影響を強く受けてしまう。 ┣ 「明鏡」 気門を開くことで自身の集中力を気功により補正し高める技。 精神的な誘惑や妖術、迷いや恐れを断絶し目の前の事象に専念できるように意識を整える効果がある。 あくまで精神力にちょっとした補正をかけるだけというだけであり、強度は使用者のメンタルに依存するし特殊な耐性を加えるわけではない。 ┣ 「真眼」 気門を開くことで霊力や気などエネルギーの流れを視覚を通して把握できるようにする技。 幽霊や精霊の姿を捉えたり、戦場にしかけられた魔術を見抜き判別したりできる。 また対象に流れる霊力や気の流れを見るだけで対象の心身状態を把握することが可能。 この際ソーマは流れを川や海など水に例えることが多い。 ┗ 「静寂」 自身の気を鎮め、静かに呼吸。周囲の気の流れに同化するかの如く調和することで深い瞑想状態に入る。 瞑想状態になることで自身の鋭気を養うことが可能で、急速な疲労回復(心身を問わず)が可能になる。 応用することで瞑想により気の力を高め、気功エネルギーを強化することも可能。 随時追記 21 特殊能力・特殊技能 能力 「人間」 至って普通の人間。 人間に特別な効果を催す技や魔法、能力の影響を受ける。 「風属性耐性」 風属性に高い耐性を持つ。 気脈(気の流れ)という流体操作に長けるのも風属性を所有するが故にである。 「地属性弱化」 地属性に弱い。 「闘魂」 戦闘中に自己暗示で自分の士気を上げて、戦闘能力を増強する。 これにより、気力だけで想像もつかないような動きをしたり、満身創痍にあっても気力さえ途切れることが無ければ戦闘続行が可能。 それでも挫けてしまいそうな時は「白智蓮醒」、霊属性の気孔の力でブーストする。 「方向音痴」 頻繁に道に迷う。地図を持っていても迷う。迷うったら迷う。 技能 「ラナド流戦闘体術」 ペレネス寺院の修行僧や武術門下生が嗜む体術。 東洋かぶれの武人であった聖ラナドを奉り、彼のようにあれという寺院の方針により武器を持たない徒手空手の戦闘武術が発達。 先代の僧侶達が鍛錬の末にラナドが用いた武術を再現し、拳法的な流派として確立させた。 型を習得することは容易であるが、それを極めることは非常に困難であるとされ、習得した型を何度も繰り返し練習することにより磨かれていく。 日々鍛錬である。 「気功術」 人間などの生命体に流れ渦巻く生命のエネルギーを操る秘術。 ペレネス寺院流の気門操作と言われる気功術を専門的に扱う。 ちなみに気門とは気のエネルギーや生命体が生まれ持って所持している潜在的な力を引き出すための門と呼ばれる場所を指し、人体には7つの気門が存在すると言われている。 この気門を操作し気の性質や属性を変換したり、自身の感覚などを強化することで多彩な気功技を繰り出すことが出来るのだ。 「発剄」 の技術を会得している。小柄で体格に恵まれず食も細く、筋肉がつきにくい彼を見て師匠が教えてくれたらしい。 ソーマの技が見た目以上の火力を持つのは気功による強化とこの技能が原因。 重心移動や伸筋の力、張る力など物理的な力を駆使して火力を底上げしているのである。 「気功治療」 気功術に基づく治療法を会得している。 自身の生命エネルギーを相手に分け与えて傷を回復する技法と言い換えることもできる。 他にも対象の気の乱れ=心身の異常を把握しそれを鎮めたり活性化させることで各種異常を治療することも出来る。 「気装強化」 気功エネルギーによる自己強化法の技術を会得している。 「気炎暖流法」 気功エネルギーにより自身の体内の熱量を調整し暖める。 極端に寒い地域であるペレネス地方の修行僧ならではの気功活用法であり、寒い冬でも厚着をせずとも快適に過ごせる。 「見切り」 相手の攻撃を見切り、対処する技術。 「柳風」 見切り、発剄を駆使した戦闘技術。 相手の攻撃を受ける瞬間に発剄を発動させた手足や気功エネルギーを纏わせた衝撃をぶつけ、相手の攻撃の威力を減衰させながら弾き、受け流す。 極まると重機関砲の掃射攻撃でさえも無傷で受け流すことが可能であるという。 22 必殺技 「藍智霊眼」 「白智蓮醒」の一つ。気門を最大限開くことで自身の第六感を極限まで強化する。 限界まで極まった第六感は限定的な発動が可能な擬似予知能力と言えるまでの状態になる。 回避力と見切り技能、危険感知能力が超人レベルにまで昇華し、普段とも見違える動きでの戦闘ができるようになる。 「蒼火崩突」 気装強化による自己強化をフルにかけた状態でかつ「蒼衝」を使用。自己強化と発剄、爆破衝撃により更に破壊力を高めた「崩槍」。 緩やかにかつ力強く打ち出される拳は超合金の壁でさえ用意に穿ち風穴を開け、人間ならば跡形も残らぬレベルに弾け飛ばす程の超火力を誇る。 気功による肉体強化をしつつ複数の気門の切り替えを拳を打ち出し相手に命中させるという一連の動作をしながら円滑に行うという難度の高い大技である。 「白銀剛守」 気装強化による自己強化・「静寂」を使う時のような深い瞑想状態に加え、「藍智霊眼」を併用。 四方八方に青白い気のエネルギーを張り巡らせた金剛を思わせる守りの構え。 構えをしている最中に自身が受けるあらゆる攻撃のダメージを半減以下に抑えてしまう。 集中力と気を高め続けているためその場から動くことはできなくなってしまうのが弱点。 23 能力 体力 A 魔力 E(なし) 魔法攻撃力 E、気孔 B 魔法防御力 D++ 腕力 A 物理攻撃力 A~ 物理防御力 B~ 知力 C 精神力 B++ 精神防御 A 素早さ B 命中 B 24 武器やアイテム 「修行僧のローブ」 【装備効果】 防寒(寒さにちょっと強くなる) 【特殊能力】 とくになし ペレネス寺院の修行僧の制服のようなものでソーマが日頃身に着けている服装。 寺院に居た頃は複数の替えがあり、旅立った際も着替えとして何着か持ち出していたようだが前述の文無しになった際に損失。現在着ているものが一張羅。 僧侶の制服ではあるもののなんの変哲もない普通の防寒具。術式がかけられているわけではない。 「包帯」 【特殊能力】 とくになし なんてことない普通の包帯。サポーター代わりにしている。 「ネルケ市の地図」 【特殊能力】 とくになし。八雲手製 八雲に書いてもらったネルケ市内の地図。読んでも迷う辺り筋金入りである。 「通信機」 【特殊能力】 海外製の型落ち通信機。現在では生産が終了し市場にももはや出回っていない。地味にレアもの。 一昔前の海外製の輸入通信機。現在では型落ち品とされ生産が終了しており、市場にも流通していない地味にレアな品物。 どうしても帰れなくなった時用にもっとけ!と言われたため持ち歩いている。 25 その他 1 クゥ、モニールアギフ姉妹やハシム、ロッジュら拳法使いのキャラに触発されて作成。拳法家ではなくモンク(修行僧)なのは完全に趣味。 八雲やセラスくらいの年頃のキャラがいいなぁと思ったのでそれくらいの年頃に。 当初の性格だとかなり極端すぎたのでちょいマイルドに修正。方向性はそのままだけど斬り捨てる範囲がだいぶ狭くなったので修行一筋じゃなくなった。 2 私のキャラには珍しいエセでも生臭でもカルトでも狂信者でも元でもないちゃんとした修行僧。 性格こそ大人しいけどスーパー系。そして更に珍しい純人間である。 3 ソーマ⇒インド神話に登場する神々の飲み物、霊薬「ソーマ」から。同じく聖職者系キャラだったネクターがギリシャ神話におけるソーマなのでその辺も意識。 ネニュファール⇒フランス語で「睡蓮」。僧侶だけども異人っぽい見た目にする為ハーフっぽい名前に。 4 既に半人前の戦闘能力ではないけども、寺院の方針としてはこの世界を渡り歩くことで7つ目の気門(超常な悟り)の境地に至る過程を重要視している。 今までの修行生活になかった外世界からの数々の誘惑や挫折を撥ね退けてそれでも墜落することなくあり続けることを何よりも尊いものと考えているのかもしれない。 最後の試練に社会勉強を加えたのはソーマのあまりにもの世間知らずぶりと例の悪癖を憂いた師匠の計らいである。 5 技の一部のモデルは中国拳法の刑意拳とチャクラから。でも多分近いのはジークンドー。 アイギスやサイプレスとの差別化を図るべく技巧中心の堅実な格闘キャラに。サイプレスに関してはデザイン面でも差別化を狙った部分多し。 6 設定を練るうちにキャラのタイプも近いし八雲の関連者にするかと行き倒れ+居候設定を追加。 世間知らず+世間知らず=カオス。 7 寺院の場所を極寒の地にしたかったのでシャンティから名称変更。 登録タグ モンク 人間 仄明の影 修行僧 僧侶 弟子 拳法 方向音痴 格闘 気功 風
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/99.html
17話 海岸近くの崖、 隣のエリアに掘っ立て小屋があるものの、 それ以外は人工物がないように見える島。 「今更だが、ここで会うとは思わなかったぞ。気に入らない女」 「奇遇ね、わたしもそうよ。気に入らない女」 幕府に二人の鬼女あり。 偶然にも、その二人が顔を会わせていた。 「しかし、わたしが死んだ後、七花がよりにもよってきさまとくっ付いているとは…………」 おかっぱの白い髪のやや小さい女性が苦々しくそう言うのを、 「否定する—— 一応、同意の上での傷心旅行って事になってるわ」 顔の横に『不忍』と書かれた仮面を着けている外国人の様な女性が否定した。 十二単を二重に重ねた様な衣装を着たおかっぱの白髪のやや小さい女性は、奇策士とがめ。 自分を奇策しか使わないから奇策士だと言っている。 『不忍』と書かれた仮面を着けている金髪碧眼の女性は、否定姫。 如何なる物であろうと何でもかんでも否定するため、否定姫。 幕府の二人の鬼女。 ちなみに両方とも戦闘力は皆無に等しい二人は、 よりにもよって無人島、呼ぶ人は不承島と呼ぶ所に居た。 「…………で、どうする、気に入らない女」 「…………どうしようかしらね、気に入らない女」 状況は無人島で、どうやら二人しか居らず、 島から出るにも舟一つないため出る事も出来ない。 「ちっ、ここから出る手段は一つとしてなしか…………」 「否定…………しないわ」 「あら、そうですか?」 本当に困った事態である。 出る手段はないが、外の方は入る手段があるだろうから、 最悪、殺し合いに乗り気で説得が効かない相手では正しく話にもならない。 「「そうですか?」って、舟もないのだぞ?どうやって出る?筏でも作るのか?」 「筏なんか私達で作れる訳がないわ。ハッキリ言ってこの状況、打つ手無しよ」 「そうでもないですよ?」 二人で案を出しては否定して、あるいは容赦せずに没にしたり、 ハッキリ言って出る気があるのかと疑うような状況だが、 二人とも至って真面目であるのが更にややこしい。 「「そうでもないですよ?」だと?じゃあどうやって出るんだ?」 「誰かどこぞの忍者みたいに海の上でも歩ければ良いんだけど…………」 「いえ、わたしは海の上を歩いて来ましたし」 「冗談も大概に————ん?」 「冗談も大概に————え?」 二人が同時にそう言うのを二人が同時に不審に思い、 どうやらようやく二人して気が付いた様である。 何時の間にかもう一人会話に加わっていた事に、 他に誰も居ないはずのこの島に、 何時の間にかもう一人この島に居た事に。 しかもわざわざ二人の後ろから話しかけていたらしい。 遅い事この上ないが、 二人が後ろに振り向けば居たのは………… 「お久し振りですね、とがめさん。あと、はじめまして誰かさん」 邪悪そうに笑うとがめにとっては見覚えのある女性だった。 ここで簡単な説明を入れよう。 誰も居ないはずのこの島に、呼ぶ人は不承島と呼ぶこの島に、 どうやって奇策士とがめと否定姫以外の人間が一人来ていたのか? 言葉で表すにはこの上なく簡単な事である。 本人が言ったとおり、海の上を歩いた。 そう、言葉で表すにはこの上なく簡単な事を実行した。 実際にやる事は不可能に近いこの事を、 まるで簡単な事のように、アッサリとしたのである。 種を明かせば簡単な事ではないが、 彼女の持つ眼で、かつてこの島で戦った真庭蝶々から見取った、 ありとあらゆる物の重さを消す事ができる歩法の一種、 忍法足軽を使って自分と荷物の重さを消して歩いて来た。 既にあらゆる技術を自分の物にしている彼女だが、 地味に死ぬ前からよく使っている技術である。 「で、わざわざこの島まで歩いてきた事はわかったが」 「残念だけど七花くんはこの島には居ないみたいよ?」 顔見知りのとがめの方はおいておいて否定姫が自分の紹介を終えて、 とりあえず三人で話を始めた。 「早速だが一つ質問がある」 とがめは特に天才かつ天災的な彼女に物怖気する様子もなく質問する。 「向こうの、まあ、本土として置いて。 本土であった地図で言う赤神イリアの屋敷とやらであった爆音についての情報を持っていないか?」 不承島の砂浜のほぼ対岸に位置する屋敷で何度も会った爆音、 それを見る為に見晴らしの良い海岸に来た所で否定姫と出会ったと言う裏話は置いて、 素直に戦闘があったらしい場所の状況についての情報を求めた。 ちなみに気になってはいたらしい否定姫も静かに二人の話に耳を傾けている。 「え?あれですか?」 「うん、多分そのあれだな」 一応話してくれる気はあるようだ。 「三人ほど逃げらてしまいました」 どうやら戦闘を起こした本人の様である。 しかし微妙に会話がずれている。 「ほ、ほお?と言う事は何人か殺したのか?」 微妙に冷静で居られていないとがめである。 それもそうだろう。 一応、目の前の人物が殺し合いに乗り気である可能性が判明したのだから。 今後、自分達が七実に殺されない保障は何一つとしてない事をない事に。 実際に一度は殺され掛けた事があるとがめも、 一度も殺され掛けた事がないものの危険性は左右田衛門から聞いていた否定姫も、 二人の身体に若干の緊張が走っている様子である。 無論、大抵の物を見通せる七実に対して緊張を隠そうとも意味もなく、 あっさりと見破ったらしくクスクスと笑っている。 「大丈夫です。あなた達を殺すつもりは少なくとも今はありませんから」 笑いながらそう言う笑顔は、その笑顔は、 本当に悪そうで、どこまでも邪悪そうな笑顔だった。 「それでは、その館で一人殺して三人は逃げられたという事だな?」 一瞬、あまりに邪悪そうな笑顔に一瞬怯んだ物の、 その後、屋敷での戦いの様子の説明を求めた所あっさりと答えてくれた。 あまりにもあっさりと、何でもないかの様に。 しかし、その屋敷の四人の戦闘を見て来たと言う。 それぞれがそれぞれで異能を身に潜めた様な四人の戦闘を、 しっかりと、まじまじと、その四人の技術を、 七実は己の眼で、見た。 じっと。 ぎょろりと。 まじまじと—— 見る。 見切り。 見抜き。 見定め。 見通し。 見極め。 見取る。 見る——視る——観る——診る——看る。 観察するように——診察するように。 その四人の技を、技術を、経験を、見て来たと言う。 一人は全身、体のありとあらゆる部分に口を持った少女だったと言う。 幸か不幸か流石にそれは真似出来ないと言う事らしいが、 そんな化け物がこの戦いに参加している時点で笑えない。 一人は変わった服装の女性だったと言う。 幸か不幸かこれと言った珍しい技術は持って居なかったらしいが、 その胸に悪刀『鐚』が刺さってたと言う。 と言う事は四季崎記紀が作った変態刀が他の参加者の手に渡っている可能性が高い。 もしも前の持ち主の腕を超える者の手に渡っているとすると………… 一人はまにわにの忍者らしき人物だったと言う。 服装などを詳しく聞いた所どうやら真庭鳳凰で間違いが無さそうだった。 真庭鳳凰が殺し合いに参加しているのはわかってはいたが、 問題は真庭鳳凰の忍術を見て来たと言う事である。 ただでさえ恐ろしい七実が、あの真庭鳳凰の忍術を手に入れた。 ハッキリ言って恐ろしい事この上ない。 最後に唯一殺せたと言う若草色の和装の女。 この女の空蝉なる技術を見て来たと言う。 どのような技術かは身を持って場所を入れ替えさせられて教えられたが、 そのような技術を持つ者が他にも居るかも知れないと言う事。 七実よりもたらされた情報を纏めると、 どうやら主催者は殺し合いを本気でやらせたがっていると言う事、 この殺し合いの中には真庭忍軍並みかそれ以上の使い手が居るかも知れない事、 そして、このありえないはずの地図の地形はほぼ確実である事。 H-4にある赤神イリアの屋敷から海の上を歩いて、 今とがめが否定姫と共に居るH-2までまっすぐ海の上を歩いて来たと言う。 誰の屋敷かは知りはしないが、 この不承島の向かい側の陸地、深奏海岸に、 赤神イリアの屋敷と呼ばれる場所はない。 更に言えば、 不承島の近くに鎧海賊団の本拠地とも言える濁音港が、 こんなに近くにあるはずが無い。 不承島は場所で言えば丹後、濁音港は薩摩。 本来在り得る筈が無いこの地形がありえるのか? 濁音港はとがめと会う前に否定姫が港らしい場所があると言う事を視認したらしい。 ここで否定姫が嘘を言う意味は無い。それから考えればこの地図は本物である。 七実が嘘を付いていない事が前提ではあるが、 今の所、七実が妙に積極的である事を考えれば嘘を付いてはいなさそうである。 以上の事をふまえて考えた結果、 「ふん、それから考えれば願いを叶える云々はおいておいても」 「水倉神檎はとんでもない力を持っている、と言う事かしら?」 これが幕府の二人の鬼女が一緒に出した結論であった。 「ふふふ…………」 「あはは…………」 しかし、その結果が出た上でも二人は笑い出した。 「くはははははははは」 「あはははははははは」 まるで楽しそうに笑う、 「それでこそ」 無自覚に声を合わせながら、 「奇策の練りようがあるわ!」 「否定しようがあるわね!」 やはり幕府にありと言われるだけはある鬼女の二人。 二人とも水倉神檎に対する闘志が溢れていた。 目の前に居る七実を超える化け物かも知れないとわかっている上で、 天災と呼ばれた天才以上の怪物かも知れないとわかっている上でである。 その様子を七実は二人を笑いながら見ていた。 悪そうに、邪悪そうな微笑と共に、見ていた。 「さて、元日本最強の七実どのにわたしから頼みがある」 真剣な表情でとがめと七実は向かい合っていた。 とりあえず言うと七花が住んでいた小屋……ではなく、 場所は変わらず崖の近くの地面の上でである。 いくら天才七実と言えども海を歩いて渡って来て、 流石に疲れてあまり動きたくないとの事なのでである。 この殺し合いの中でも体力が無いのは相変わらずのようだ。 一応、真剣な話し合いではあるが、 場所が場所なので微妙に間が抜けた感じがしないでもない。 ちなみに否定姫は所在無さげに少し離れた位置からこちらを見ている。 とがめの交渉の行方を見守っている。 「わたし達と協力して貰いたい」 簡潔に、混じり気無く、一直線に交渉する。 目の前の天才に対しては小細工は通用しない。 文字通りそんな事をしても、見抜かれてしまうから! ちなみに「わたし達」と自分も勝手にとがめの仲間に入れられている事に、 無論、否定姫は気が付いているがあえて口を挟まない。 とがめはともかくして七実と共に行動が出来る事に損は無いと考えているためである。 「構いませんよ」 そんな周りの空気を知っていながら七実はアッサリと承諾した。 「いくつか条件がありますが」 と後に付け加えて。 流石にとがめの表情が曇る。 あの天才の七実が共に行動するに当たって付ける条件だ。 簡単な物ではないだろうと予想しながら、 それも計算通り、と密かにほくそ笑みながら、 「…………条件はなんだ?」 と、表面だけは苦々しげに聞いた。 それを恐らく見抜いているだろうが、条件を提示する。 「一つ目はお二人に関する事です」 一つ、まずは一つ目。 「お二人にはわたしにしっかりと協力して頂きます」 一つ目、いくつかある条件の内の一つ目は普通だった。 いや、あまりにも普通過ぎた。 簡単に言えば、 とがめからは思わず見惚れるような奇策を出してもらい、 否定姫はとがめの政敵だったと言うからとがめ並の頭はあるだろう。 だったら、使えるだろうから使う。 それ以上でも以下でもない。 役に立つだろうから使う、それだけである。 が、二人にとっては普通過ぎる条件に、 思わずとがめと否定姫が不審そうな表情を浮かべるのを見て、 「二つ目は支給品に関する事です」 あっさりと流した。ごくあっさりと何事も無かったように流した。 「お二人の支給品を見せて頂き、使えそうな物を頂きます」 二つ目も普通、普通にしっかりと自分の目的を出す。 あくまでも冷静に、自分の目的を表に出す事無く果たすために、 二人の支給品を見て、使えそうな物を貰う。 一見すれば当然の行為。 相手から自分にとって使える物、武器を手に入れる。 しかし、七実にとって武器など本当の意味で、 どうだっていい。 己を一本の刀に仕上げた虚刀流にとって、 銃などの遠距離武器以外は邪魔でしかない。 もっとも、今の七実は忍法撒菱指弾も見取っているから銃などもほとんど必要がない。 と言っても残念ながら今は撒菱は持っていないので使えないが、 石を撒菱の代わりくらいには出来るだろう。 今の目的は優勝する事でもなく皆殺しにする事でもなく、 あくまでも完璧な『再生力』を見取る事。 いくつもある吸血鬼の一部を集めて合わせて、 完璧な『再生力』を見取る、それだけである。 一応、七花に会って見たいと言う事もあるが、 ここに来てしまった事でこれ以上思い当たりはない。 ならば、思い当たりがありそうなこの二人と行動する事が一番良い。 「以上です」 二つ。この二つだけではあるが、この二つの条件に必要な事を全て詰め込んである。 しかも二人からしたら楽な条件であろうとちゃんと考えて。 自分にこれ以上ないぐらい良い条件を出しながら、 二人にとっても良い条件になるように考えて。 二人に断る理由が見付からないように、 「そうして頂ければお二人と共に行動しましょう。 ついでに可能な限りお守りもしましょう」 そうちゃんと付け加えて利益に目が眩むように、 自分と行動するの利益がしっかりと眼に見えるように、 頭脳労働専用と言っていた彼女達には破格の条件だろう。 言うならば、決して見逃したくないほどの条件を! とがめは苦々しげに、 「——————わかった。その条件、のもう」 しかし、心の中では踊り出しそうなほどの喜び様であった。 踊らないのは否定姫の前だからであり、 否定姫が居なかったら踊っていたかも知れない。 否定姫も否定姫で、 しばらくの間、左右田右衛門左衛門の変わりになる護衛が見つかった。 と、とがめと同じく踊り出しそうなほど内心で喜んでいた。 こちらもとがめの前だから踊らないのであり、 とがめが居なければ踊っていたかも知れない。 七実は二人とも踊り出しそうなまでに喜んでいる内心をしっかりと見破り、 一人、笑っていた。 悪そうに、邪悪そうに、笑っていた。 「それでは、交渉成立で」 ちなみに、 二人の支給品を見ても七実の目当ての物、 吸血鬼の一部は見付からなかったが、 「あら?これは…………」 一つ、変わった物に目が付いた。 「ん?これがどうしたの?」 すでに三人でとがめの支給品を見終えて、 今は三人で集まりながら否定姫の支給品を検分中である。 七実の眼に止まった『それ』、 「これによく似た服を悪刀『鐚』を刺していた人が着ていましたね」 『それ』の正体は………… エプロンドレス。 おまけなのか黒縁メガネ付きのエプロンドレス。 対ロングレンジ用の特別なエプロンドレス。 前の持ち主、千賀てる子。 七実と会っていながら逃走に成功した千賀てる子の服。 「これを着ていた方が良いですねよ」 無論、対ロングレンジ用の加工がされている事を見抜き、 否定姫に着るように勧めた。なぜかメガネも。 なぜ否定姫に着るように勧めたかと言うと、 とがめには大き過ぎて、七実には必要がないからである。 更に、ただでさえ目立つ髪と眼の色にこのエプロンドレス。 自分が狙われない可能性が上がる、とちゃんと考えての事である。 あくまでも自分が生き残るために。 最初は嫌がっていた。 いくら外国に対する理解があったもの、 防御力も全く無さそうにしか見えないこれは……と。 しかし、 対ロングレンジ用の加工がされている。と七実が言った所、 ならなぜ七実が着ないのか?と言う疑問を胸に入れたまましぶしぶ承諾した。 そして今、メイドの格好をした否定姫が誕生した。 頭に『不忍』と書かれた仮面を着けたままではあるが、 金髪に碧眼、更に黒縁メガネにメイド服。 ちなみに先ほどまで着ていた服は支給品が入っていた物に畳んで入っている。 今現在ここには居ないが某最悪と某最弱が見たら悶絶死する事請け合いであろう。 それほど妙に似合っていた。 外国の血が混じっているからだろうか? 否定姫本人に言ったらきっと瞬間的に否定する事であろう。 微妙に恥かしいのか若干であるが否定姫の頬が赤い。 「あら、お似合いですね」 「………………」 その姿を見て七実は褒めるが、とがめは後ろを向いて堪えていた。 笑いたいのを懸命に堪えていた、が、 「…………ぷ」 あえなくとがめの笑いを堪えるために出来ていた防波堤は決壊した。 それも見てからたったの十秒持たずに。 その時のとがめの笑い声は、 島の向こう岸に届いたとか届かなかったとか。 その後、 「そう言えば七実」 存分に笑い終えたとがめがふと思い出したように言った。 「なんでしょうか?」 「七実の眼でこの首輪はどう見える?」 わりと重要事項。全員に付いているこの謎の首輪の情報を聞いてみた。 ちなみに否定姫は少し離れた所で座り込んでいる。 否定しようがないほど笑われたのがショックだった様子であるが、 二人は何事もない様子で話を続けている。まさに鬼。 「………………」 「………………」 「………………」 沈黙、ただの沈黙が流れる。 七実の顔に何の色も見えないが、 それの意味を理解したとがめは黙るしかなかった。 まさか、天才七実の眼でもわからない事があるのか!? ただ単に驚く。 四季崎記紀の完成形変態刀の特性すら見抜いたその眼でも見通せない、 水倉神檎が作ったと思われる首輪に驚いた。 しかしあくまで驚いただけである。 「どう言った性質の物かはわからんか?」 諦め知らずの奇策士とがめである。 それに対して、 「わたしの眼だけでは情報が足りません」 とキッパリと言い切った。 「せめて首輪の中身が見れれば良いのですが…………」 「………………」 「………………」 「………………」 またも沈黙が流れる。 七実の眼を持ってしても首輪に対する打開策はなし、 「やはり、この殺し合いに乗るしかない。優勝するしか…………」 助かる方法はない、か。と、とがめが言い掛けた時、 「否定する」 少し離れた所に居たメイドの格好の否定姫が言った。 「否定するわ。気に入らない女」 ハッキリときっぱりと、気持ちが良いほどしっかりと否定した。 「あなたはさっき七実さんが話した話の内容を覚えていないのかしら?」 ゆっくりと近付きながらとがめを見下ろす様に歩いて来る。 ちなみに伊達メガネとメイド服を着たままである。 「さっき七実さんは言っていたわ。 本土の方の屋敷で若草色の和装の女を殺して来た、と。」 そう、しっかりと一人殺して来たと言った。 それも頭がなくなるぐらいにまで踏み潰して来たと言っていた。 「はい、ちゃんと摘んで来ましたよ?この通り支給品も全て持って来ましたし?」 それがどうしたと言わんばかりの言い方、 人を殺した事への後悔の様子はないが今は関係ない。 「その和装の女の首輪はどうしたの?」 「………………あ」 「………………あら」 二人とも忘れていたようである。 しかし否定姫からしたら、 「そんな事も忘れてたの?そんなんでよく奇策士なんて務まるわね?」 と言いたい放題言える上、先ほど笑われた恨みを晴らす機会である。 普段なら絶対に逃す訳がないのだが………… 「…………まあいいわ。 七実さんの眼があれば、その女の首輪を見れば何かわかるかも知れないから、 とりあえず、まずは本土の屋敷に向かう。それで構いませんか?」 ここまで正論を言われてはいくら奇策士と言えど反論出来なかった。 「わかりました。それでは——行きましょうか」 七実が立ち一声掛け全員が、と言っても七実の他は二人だけだが、 更に言えば座っているのはとがめだけだが立ち上がり、 幕府にありと言われた二人の鬼女と、天災級の天才は動き出した。 目的地は、H-4にある赤神イリアの屋敷。 目的物は、七実が殺した名前も知らない女の首輪。 目的は、自分達の首輪を外す。 今の所はそれだけである。 これから七実の肩に乗せて貰って海を移動しようとした時、 「そう言えば、知らない誰かに会った時はどうする?」 唐突にとがめが言ったのを、 「わたしが見て、役に立ちそうになかったらむしりましょうか?」 あっさりと答え、 「否定する——最初は殺さないで置きましょう。 役にたたなそうな人でも、情報を引き出してから殺す方がよっぽど合理的よ?」 否定した。 「それもいいですね。…………いえ、悪いのかしら?」 今の所、役に立たない人間は殺す方針に決定したようだ。 あらゆる事柄を見通す天才に、奇策と否定の二人の鬼女。 今回は刀集めではない上、手加減の欠片もないだろう三人組。 彼女達が通った後に残れる者は居るのか? 容赦なく奇策に貶められるか、 ありとあらゆる事を否定され死ぬか、 草のように摘まれて終わるか、 はたまた生き残れるか、 ある意味でもっとも凶悪な三人組が行く。 【1日目 黎明 不承島 H−2】 【鑢七実@刀語シリーズ】 [状態]健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜2)、キスショットの心臓 闇口憑依の支給品(確認済み) [思考] 基本 二人を守りつつ吸血鬼のパーツを探す。 1 七花とあってみたい 。 2 完璧な『再生力』を見取るために吸血鬼のパーツを集める。 3 『再生力』を見取り自分の本気を出してみたい。 4 とりあえずこの二人と行動を共にする。 【奇策士とがめ@刀語シリーズ】 [状態]健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3) [思考] 基本 今の所はこの二人と行動を共にする。 1 鑢七花を探し、見付けたら護衛させる。 2 基本的に鑢七実に頼る。 3 とりあえず首輪を手に入れる。 4 奇策を練る。 【否定姫@刀語シリーズ】 [状態]健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜2) 防弾エプロンドレスと黒縁メガネ(装備中)@戯言シリーズ [思考] 基本 今の所はこの二人と行動を共にする。 1 鑢七花と左右田右衛門左衛門を探し、見付けたら護衛させる。 2 基本的に鑢七実に頼る。 3 とりあえず首輪を手に入れる。 4 優勝したら願いが叶えるって、水倉神檎は何を考えているのかしら? *これから赤神イリアの屋敷に向かいます *不承島G-2にある鑢七花の住んでいた小屋には誰も入っていません 016← 017 →018 ← 追跡表 → 012 鑢七実 ― ― 奇策士とがめ ― ― 否定姫 ―
https://w.atwiki.jp/tsvip/pages/249.html
『不思議の国のアリス』が読みたい そう思ったのに特に明確な理由は無く、思いつきや衝動と言う概念が当てはまる それでも理由を知りたいと言うのなら、どこぞの話にあるらっきょやら玉葱やらと同じ結末を迎えるだろう 中身が知りたいと思って皮をはぐと、中身は何も無かった つまりそれは皮が集まった状態がらっきょであるのであって、霞のように薄い衝動が集まって初めて形作られる理由なんだ 何が言いたいのかって?さぁ ただこの例を言ってみたかっただけなんだよね 結局の所、理由は無いさ。 理由なんか無い、無意識からの衝動の為か、何を我慢すればいいのか分からない なので欲望の赴くままに、僕の足は図書館へと向いていた 学校の図書室は、昼休みにしか開いてない 今は放課後で、この衝動が沸いたのは昼休みが終わった直後だった 何処にあるか、鍵が開いてるのかも定かじゃない図書室に行くのも億劫だった訳でありまして 最近、学校からそう遠くない所に図書館が出来たらしい 県立だか国立だかは忘れたが、結構大きい事は覚えている しかし、中に入ったことは無い 普段の僕はそれほど本を読まないので、無縁の場所だ 図書館正面入り口の無駄に大きいガラス張りの観音扉、その木製の縦に長い取っ手を見つめる 因みに観音扉と言うのは正式な名称かどうかは知らない。小さい頃からそう読んでたからね 何と現すべきか………そうそう、両開きの扉って事で 何故だか威圧される 蔵書数が多いと言うことは、マイナーな本やら参考書を求めてやってくる人も多いのだろう 童話を読みに来ただけだと、何故か入る資格が無いような気がする 『私の戦闘力は53万です』と言う幻聴が聞こえた それほど抵抗も無く中に入れた あれ、この表現って結構エロくない? どうでもいいか 扉を越えた先は、別世界だった 紙とインクの匂いが充満している 木造の壁から香る木々の香りも何か良い 精神が落ち着く感じだ。森林浴と言うのもバカにできない 正面にはカウンターの様なものがあり、三人ほどの係りの人が営業スマイルを浮かべている 恐らくあそこで本を借りるのだろう 両端に幅広の階段が見えた 広大な敷地に作られて居るこの建物は、外から見ると4階建てぐらいに見えた しかし一階の天井は結構高く、もしかしたら3階建てかもしてない 左右対称を心掛けたかのように植木鉢やソファが置かれている 紙コップ式の自販機もあったが、その隣には『飲食禁止!』の張り紙 ………どっちさ? 横に幅広く作られた階段は、材質の為かそれとも無意識な用心のためか、足音を届かせない 普通反響して大きくなりそうな気もするが、其処は図書館、何か特別なんだろう 天井から鎖で吊り下げられてるプレートに、本棚の種類が書いてあった 歴史、民謡、世界史、古典、辞書……… 2階は勉強専門か。学生服を着た人たちが、ピリピリと空気を張り詰めている 机と椅子が備え付けられているが、空いている席はなさそうだ 僕の事を気にも留めず、ページをめくる音とノートに文字を書く音だけが静かに響いていた 『私はこの変身を後2回残している』 パワーアップした幻聴を聞いた気がする お受験戦争という言葉を思い出す 差し詰め、此処は兵士訓練所? なんて考えながら2階を後にし、3階へと上る シン………としていた 筆記や読書の音も無い 静寂に包まれる、という表現を使う事の出来る状況に初めて出会った 天井から釣り下がるプレートに眼を走らせる 童話、推理小説、ミステリー、SF、哲学、ポエム、黒歴史……… なんというか、多種多様だ 茶色の木製の棚の中で異色の空気を放つ、何故か黒い棚の黒歴史に非常に興味をそそられる しかし、当初の目的を忘れてはいけない 童話のプレートが下がった場所に立つ ドミノ倒しのように本棚が一定の間隔で並んでいた 本棚が3つ6セット、ざっと見通して数は18 両側に本を入れられる仕組みだとして36 目算なので恐らくそれ以上はある 其処に所狭しと並べられた古今東西の童話達 「……………しまった」 作者の名前知らないや この数の中から探す……… 気が遠くなりそうだった 「……………はぁ」 一つ溜息をついて、本棚の間の通路を歩く 無いな、うん、無い。夢の希望も無い。 開始して間もなく、諦めた 童話と言っても日本の物以外も……というか寧ろ、その方が多い 見事な書体で書かれる重苦しい“童話”を見ていると頭が痛くなる 童話の童と言う字は子供を現す筈なんだけど 何故だか眠くなってきた目を擦る 何で僕は童話なんか読もうと思ったんだろう?と言う思索にふける 絵本やらを重点的に設置した棚の横を通り抜ける 英語だかドイツ語だかの本の棚を通り抜ける 肉まんを頬張る人物の横を通り抜ける 新刊中心の棚、多くのスペースを使って見易く設置された本棚を通り抜ける …………………OK、ちょっと冷静になろうか歩いてきたそのままの格好で後ろに歩を戻す ドミノ型に並べられた本棚の合間に、人が居た 図書館の精霊だ ………OK、ちょっと冷静に……って二回目 そう幻視したのは、恐らくその人物が戦慄を覚えるまでに整った顔立ちをしていたからだろう 陽光を反射するように金色に輝くさらさら(推定)の髪 宝石のような碧眼は、ページを開けて固定した本に注がれている まるで絵画のように幻想的な雰囲気を作り出している ………手に持った肉まんさえなければ 窓の傍に設置された小さな木製の丸テーブルの上には、コンビニの袋が置かれている 飲食禁止なんじゃなかったっけ、此処 「……………」 恐らくは外国人なんだろうか それにしては顔立ちに日本風味が混ざってる気がする とりあえず外国書籍の元本を読みながら肉まんを頬張る姿は何処と無くシュールレアリズム それよりも気を引いたのは、その人物の服装だった 僕と同じ格好をしている いや、制服って意味ですよ 平々凡々な男子用のブレザーである筈なのに、何処かブランド物っぽく着こなしている 金髪碧眼の容姿も相俟って、まるで漫画か何かから飛び出してきたような感覚を受ける 校章の色は一年……一つ下だった こんなに格好いいなら校内で噂の一つでも聞きそうなのに、見覚えが無い 自分のクラスも覚えてないぐらいだから、僕の「見覚えが無い」の信用度は10%を切ると思うが 「ん?」 金髪碧眼が喋る 妙に流暢な日本語だった 口に物入れてるから、声と言うか音だったけど 「こんにちは」 「ふぉんにひは」 多分、「こんにちは」だろう 最初に感じた大人っぽい印象はどうやら間違いだったようだ どちらかと言うと子供っぽい感じらしい 「………食べる?」 中華まんを差し出してくる。下のビニールは剥がれている 中身が分からない …………僕、肉まん駄目なんだよね 駄目って言うか、あんまんの方が好きなだけなんだけど 「いただきます」 恭しく受け取り、少し齧る もちもちとした食感と共に、口に広がる甘味 あんまんだった 「………」 「………」 お互い、黙々と自分の分の中華まんを食べ続ける 何故か目線は相手を見たまま お互いがお互い変な物を見る目だった 数分間そんな状態が続いた 「新垣」 彼が自分を指差して言った 理解できない事を前面に押し出した表情をすると、補足するかのように続けた 「新垣クルス。クルスは片仮名でクルス」 日本の苗字と外国の物の様な名前 ………ハーフだろうか? それなら日本風と外国風な顔立ちが両立してる理由が分かる 「月時 計兎(ツキジ ケイト)。月の時、計るに兎」 「………トケイ兎?」 「うん、それがあだ名」 いや、だから『不思議の国のアリス』が読みたくなったわけじゃないよ 確かに理由の一つだけど、他にもいろいろ有りますし ふと、彼の足元に目がいく 山に積まれた本 哲学論著らしい。見てるだけで頭が痛い 「本、好きなの?」 「もうすぐ、哲学の方は読み終わる」 そっけない答え。今のは、足元に詰まれた本が、という意味だろうか それとも、哲学の本棚の本は、という意味なんだろうか どっちでも良いか。どっちでも凄いし 「此処にある本、詳しいんだ」 「それなりに」 「………不思議の国のアリス、有る?」 顎に手をやってしばし考える 検索中………とでも出て来そうだ 前フリも無く立ち上がり、去っていった やせいの クルスは にげだした!▼ 「………なんでやねん」 思わず虚空に裏手チョップでツッコミを入れると、彼……クルスが戻ってきた 一冊の本を抱えて 「ほら」 妙に砕けた口調になりやがった 差し出された本を有り難く受け取る これぞ正しく探していた本だ 「おお さすがは ゆうしゃ だ!」 出来るだけ重苦しい声で 彼は怪訝な目でこちらを見ている 仲間に……もとい 「なんでもない。ありがとう」 特に捨て台詞を残す訳でもなく踵を返す 氷点下並みに冷ややかな目線を浴びてる気がする 「では、此方にお名前と住所と……」 営業スマイル全開な受付嬢 貸し出しの為のカードを作るには、色々と書類に書くことが必要らしい 消しゴムで消えるタイプのボールペンでこういう書類を書くのはどうかと思う 名前『ロビンソン・ジョニー』 すぐに消した 2週間ぐらいが経った頃だった 昼休み、昼食を食べ終えた校内には何処か気だるげな雰囲気が漂っている ふと思い出す 「パンプティ・ダンプティが落っこちた」 「………何言ってんの、お前」 突如頭に浮かんだフレーズを呟くと、変人を見る眼をされた 「てゆか、お前こそ大丈夫?」 「んー……やばいかも知んない」 目の前で机にたれパンダのようになってる友人は、顔を赤らめている 昨日の豪雨に打たれたらしい。ま、風邪だね。これは 「帰った方がいいんじゃない?」 「………そーだな。保健室行って来る」 微妙に会話が成立していない 夢遊病のようにふらふらと立ち上がると、扉を力なく開けて出て行く その背中を見送りながら、考える 鞄の中に入れっぱなしになっている、『不思議の国のアリス』 既に読み終わっているが、返すのを忘れていた 確か、今日か明日が返却日だったような気がする 「………今日、返しに行くか」 その呟きは静かに掻き消えた 「ハイ、確かに」 受付嬢が相も変わらずな営業スマイルで、本の貸出票に返却の判子を押す 貸し出しカードは個人が借りている本をパソコンに記録する為の物 貸出票というのは本の名前別に保管され、借りた日と返した日を記入をするカードらしい 違いはフィーリングで考えよう 以前と同じように足音は吸い込まれる階段 そしてまたも以前と同じように、お受験戦争兵士訓令所を通り過ぎる 3階は矢張り、シーンとしていた この紙とインクと木の匂いと、人々の黒歴史の残っている感覚は心が落ち着く 今度からは、図書館も活用することにしよう というか、本を読むことにしよう なんて活字離れが深刻な現代っ子らしからぬ思考に行き着くことが出来た とりあえず、これを返して他の本を………? 「………しまった」 同じ様なシチュエーションで、同じ言葉を発したことのあるような無いような ただ違うのは、本は僕の手の内にあるということ 「場所、分からない」 何処に返すべきだろうか 借りる時、クルス君に何処から持ってきたか聞いておけば良かった 「………あ」 今日も居るかもしれない 根拠無い自信に包まれると、歩を進めた 絵本やらを重点的に設置した棚の横を通り抜ける 英語だかドイツ語だかの本の棚を通り抜ける 肉まんを頬張る人物の横を通り抜ける 新刊中心の棚、多くのスペースを使って見易く設置された本棚を通り抜ける ………はい、デジャヴ 同じように後ろに下がると、記憶に残っていた通りだった 木製の小さな丸テーブルにコンビニの袋 ………ただ、其処に居たのはクルス君じゃなかった 金髪碧眼。それは記憶の通りだ しかし金髪は若干、いやかなり長くなっており、少しウェーブをしている 目元も若干柔らかくなったというか何と言うか 何より、服装が違う 確かにウチの高校の制服だ。それは認めよう ………女子用、の 若干薄手な為、服を着ていてもその下の胸の膨らみが分かる あまりまじまじとは見つめないけど 男子からは賛美喝采、女子からは賛否両論の、少し丈が短いスカート そしてその下に伸びる白い太腿と、スカートの端から少し間を置いた所から始まる黒いオーバーニー 所謂絶対領域も完備していた 薄い桜色の唇が、肉まんに触れる よく噛んだ後に飲み込み、至福に顔を綻ばせていた 回りくどく言っても仕方が無い (多分)クルス君が、女になっていた。 「こんにちは」 「ひょんにちは」 声も高くなっている。当たり前か コンビニの袋をガサゴソと漁り、中華まんを差し出してくる 食べてみると、あんまんだった 「………クルス君?」 少し自信なさげに聞いてみる 彼………いや、彼女は頭を振った ………じゃあ誰だ なんて考えていると、彼女は自分を指差した 「新垣アリス。アリスは片仮名でアリス」 既視感を覚えざるを得ない 相変わらず苗字と名前がミスマッチな人だ 「因みに、誕生日は5日前」 女体化した、ということでいいんだろうか それともプレゼントの催促?では無いか とりあえず『不思議の国のアリス』を渡し、お勧めの本を聞いてみた 数分後、分厚い一冊の本を抱えてやってきた 『広辞苑』と書かれているのは、眼の錯覚じゃ………ないんだろうなぁ 「三国無双、買ってみようかな………」 呟きは本に吸収されるように消えていく 彼、いや、彼女………アリスは何の反応も示さない 本を読むと自分の世界に入るタイプの人か 壁際に設置された木製の小さな丸テーブルと、二組の椅子 それに僕と彼女は座っていた 会話をする訳でもなく、ページをめくる音だけが響いている 電灯が有るわけでも無い、少し空気がひんやりとした空間 其処には部屋の番人のように本棚が並んでいる 僕達二人しかこの空間にはいない それが何だか、とても尊い事のように思えてくるのは何故だろう 「ふぁ………」 瞼が少し重くなる 雰囲気も何もあったもんじゃないね 『三国志』の文がどんどん擦れているように感じた 窓から降り注ぐ日の光が心地良い ガタッ、と体が揺れる 危ない、今50階建てのビルから堕ちてたよ 窓からの日の光は既に赤くなっている 何処かで烏が鳴いた 「トケイ兎」 「風邪、引くよ」 赤く染まった彼女はそう言った 机の上にコンビニの袋は無く、既に片付けられていた 彼女は既に貸し出しを済ませたらしい本を持って、僕を見つめていた 「そろそろ帰った方がいいんじゃない?」 「……うん、そうだね」 寝惚けている頭を強引に起こし、床に落ちた三国志を元の場所に戻しに行く 時計を確認すると、1時間以上眠っていたらしい 「何か本、借りなくて良かったの?」 図書館を出た辺りで彼女が聞いてきた 三国志を借りようと思ったけど……やめておいた 何故か、図書館に留まって本を読む理由がなくなると感じたから まぁ、寝起きの思考なんてごちゃごちゃしてる物だからね。仕方ないよね 「トケイ兎」 ………そう言えばこの娘は何故年上である僕のことを呼び捨てなんだろう 年功序列なんて古いって言う人も居るけど、ねぇ? 今更言っても仕方ない事なんだろうけど 「何?」 「…………んーん、やっぱり、なんでもない」 午前5時を過ぎた辺りの時間、空が白み始める 眼を凝らすと土に生えた雑草が見える ………そろそろ草刈り命じられる頃かなぁ ドシン、を震脚の音が響く 震脚というのは中国武術独特の歩法で、地面を強く踏みつける動作を言う 呼吸を整えて気をつけの体勢を取り、套路(空手で言う“型”)を始める 左手の肘を曲げ、右手の拳を左肘に付ける 中腰になって、半円を描くように右手を右へ 左肘を伸ばしながら左足を進める 右拳と右膝を打ち上げる。この時、右腕の関節に左腕を添える 右腕を上へと上げつつ、右足を震脚 その勢いで左足を飛び出す 「頂心肘!」 着地の時に震脚、そして左腕で頂心肘(肘打ち) ズン、と地面を踏みしめる音 土の地面だけど、毎日踏み固めたせいで結構硬くなっている これは基本的な套路で、『カク打頂肘』 毎朝これを何度もやる。気の済むまでやる 中国拳法の基本は功夫(クンフー)を鍛えること つまり訓練を積む事で、その為には同じ動作を何度もする 古人に曰く、『千招(多くの技)を知る者を恐れず、一招に熟練する者を恐れよ』 つまり、色んな技を練習するよりも一つの技を徹底的に鍛えよ、とのお言葉 首尾一貫………とは、違うよね、うん 「カク打頂肘」 太陽が顔を出し、少し明るくなった 虚空に向かって肘打ちをする 「馬歩横打」 そのまま右足を一歩踏み出して馬歩(騎馬の体勢)になり、右腕を打ち出す 一つ一つ名前を確認しながら套路をこなしていく 「おー、今日も精が出るねぇ」 バイクのエンジン音と共に声をかけられた 見ると、既に顔馴染みになってしまった牛乳屋のおじさんが、ビン牛乳を届けに着ていた あ、もうそんな時間か…… 「おはようございます」 「おぅ、おはよう」 言いつつ、牛乳を四本渡してくる 僕と父と母と弟の分だ 三つを縦に重ね、自分の分の牛乳の蓋を器用に開ける そのまま一気に飲み干した 「もう一本」 「欲しけりゃ金払え」 冷徹に言い放つと、バイクに乗って遠ざかっていく その背中を見送っていると、家族が起きて来る気配がした 「おはよ……兄さん」 「おはよう」 まだ眠そうな目を擦りながら、弟が二階の窓から顔を出した 弟は中二になる。今迄色恋に関連した話を聞いたことが無い ………僕が言えることでもないが 15,6歳までに女性経験がないと女体化してしまうというのは、最早浸透してしまっている しかしこの現象15,6歳と銘打ってはいるが、あくまで目安 実際は結構幅が広いらしい 中学二年から高校三年……範囲にするとそれぐらいだ その中でも15,6歳の例が一番多い為にこんな事を言われている しかし確立で言えば、女になるのは50%ぐらいらしい ………充分多い確立だよね (………ま、僕も危ないんだけどね) 「いただきます」 「いただきます」 「いただきましょう」 「いただきました」 「「「早っ!!?」」」 毎朝のようにコントを繰り広げるこの家族 発言は上から僕、弟、母、父、父以外 見ると、既に父の分の皿は空になっていた 僕の家族は極平凡な家庭とも言えるし、言えないとも言える 父は普通に会社勤めだし、母は専業主婦 しかし二人ともその学歴は凄まじい物で 父は東京か京都かは忘れたけど有名な大学を出ている 母は母で有名な女子大出身だ ………なのに何故こんな平凡な家庭に落ち着いているのか まぁ、普通は良い事だよね。平穏だし 「そういや、計兎。この頃成績はどうだ?」 「んー、まぁまぁ」 「そうか。お前のまぁまぁは大抵良い方だからな。安心だ」 言って、視線を新聞に戻した とまぁ、こんな会話を繰り広げるほどに平凡で、家族内でのトラブルらしいトラブルも無い 「………爺ちゃん、今は何処に居るんだろうね」 そんな平穏な家庭の育った僕が中国拳法なんてものを遣ってるのには、勿論理由がある それが今話題に上がった祖父である 僕の祖父は世界各国を旅するのが好きらしい そしてその旅の途中で立ち寄った中国、そこで中国拳法と出会った 元々武術が好きだった祖父は、どうにか入門させてもらおうとしたらしい そこら辺に色々と努力があったらしいが、それは話してくれない ………と、まぁ。そうやって習得した中国武術を、小学校に上がる前から教えてこられた訳である 自分の息子、つまり父さんは武術に興味が無かったので、孫である僕にバトンが渡ってきたわけだ いや、嫌って訳じゃないけどさ 話は飛ぶが。後、場所も 僕の通う高校は、一応進学校と呼んでもいい しかし学力だけではなく、スポーツ推薦なども盛んだ だから平均的学力が良いかと問われれば………まぁ、微妙 それでも『進学校』という肩書きは色々と問題とかも呼び寄せる訳で 主に……頭の悪いバカとかを 「何見てんだ、コラァ!?」 「ひき殺されてぇーのかこんにゃろバカヤローめ!」 ………見事な不良だ バイクに乗ったまま校庭に乗り込んでいる しかしまぁ、乗ってるのがスクーターな辺りときちんとヘルメットを被ってる辺り、不良なのかと疑問は残る 処でやっぱり進学校だから、頭の良い奴は結構多い それでなくてもガリ勉、とでも言おうか。もやしっ子みたいなのは存在する そうでなくてもあんな輩には係わり合いになりたく無いとは思うが 「…………はぁ」 校門付近に集まってる野次馬を掻き分け、前に出る 「あー、うん。君達」 三人のスクーターの動きが止まり、柄の悪そうな奴等がこちらを見てくる 学生服をきちんと着てる辺り、不良なのか真面目なのか 「邪魔だ、帰ってくれ」 簡潔に言うと、三人の額に青筋が浮かんだ きちんとスクーターを止めると、凄みを利かせながら此方に歩いてくる。君ら本当に不良? 「んだ、テメェ?」 リーダー格らしい男が聞いてくる 「見ての通り、此処の生徒ですが」 真面目に返してやったのに、何故か怒ってる おもむろに腕を掴まれる 「チョーシ乗ってんじゃねぇぞウラァ!」 凄まれてもな………爺ちゃんの方が怖かったし 軽く溜息をして、自分の腕を掴んでる手が離れないように、左手を添える 「それ」 右腕を半回転 それに伴い相手の腕と体も回転して、丁度後ろ側に捻り上げたような形になる 「イテ、イテテテテテ!!はっ、放しやがれ!」 「あ、ゴメン」 腕を放す 開放された男は少し涙目になって此方を睨んでいる その両隣の取り巻きも同様 「痛い目見たくなかったら、大人しく帰ることをお勧めするけど……」 「あぁん!?」 どうやら僕には人を怒らせる才能があるようだ やったぁ、ギネス申請でもしようか なんて考えてると、ヤンキー共が戦闘態勢 各々ナイフやら木刀やら十得ナイフを取り出した 最後の人、本当に不良ですか? 「へるぁぁぁ!!」 奇声を上げてナイフ男が突っ込んでくる 間合いを計る ある程度近付いた処で、右足を震脚 その勢いで左足を飛び出す 「カク打頂肘!」 ……あ、つい癖で叫んでしまった 套路の前半を省略してのカク打頂肘 相手の腕の内側、つまりわき腹に綺麗にヒットした ナイフ男が苦しそうに一歩後退 ここぞとばかりに追撃 (馬歩横打!) 今度は心の中で呟きながら、右足を一歩踏み出す それと同時に右腕を打ち出し、腹部への鉄拳 「ぐふっ」 無駄に格好良く倒れて行った その様子を見て、後の二人が怯む 「あのー、もう帰ってくれると嬉しいんですけど」 しかし相手も何かしらのプライドがあるらしい ティッシュに包んで捨ててくれればいいのに 先程のリーダー格らしい男が木刀を持って襲ってくる 振り上げた木刀が斜めに振り下ろされた ヒュン、と風を切る音 中腰になり、木刀を避けた 其のまま右足を低く蹴り出す(『右将テキ』) 相手の手前まで伸ばした処で、踏み込む 脚に釣られる様に上半身を動かし、右拳を上から打ち下ろす(『右シャスイ』) 「ウゲッ!」 頭から打たれて、舌を噛んだらしい しかしまだまだ余裕そうだったので攻撃を続ける 打ち下ろした右拳を引く と、同時に、腰の回転に乗せて左拳を打ち出す(『左斜打』) その勢いで、木刀男が後ろに下がる 数歩ほど開いた距離を、両足で踏み切って一気に詰める (打開!) ヒュ、と風を切り、掌で腹部を打ち抜く(『打開』) 「よし、終わった」 まだ一人残っていたけど、見たところ戦意喪失したようだ うん、それでよろしい 因みに先程使ったのは、『馬歩横打』『右将テキ』『右シャスイ』『左斜打』『打開』という、套路の一部だ 『カク打頂肘』の後に続けて行う、というか、『打開』まで続けて完璧な套路になる 基本も実戦で立派に使うことが出来るんだね ………正直、此処まで見事に決まるとは思わなかった。日々の鍛錬のお陰? 「君、この人達持って帰ってくれる?」 十得ナイフを持った男に言う。どうやらすっかり怯えている様だ 伸びている二人をたたき起こして、とっとと退散してしまった 地面に放り捨てた鞄を拾い、砂を払う 「さて、行くか」 呟いて、校舎へと歩き出す 窓からは騒ぎに興味を示した生徒達が顔を出して覗いている うーん………有名人になってしまった 出来ればこういう目立ち方はごめん蒙りたいんだけど ……………あ、これって暴力とかで問題になったりするのかな? ~つづく~
https://w.atwiki.jp/whiteraven/pages/124.html
[メイン] system [ 黒占 神籤 ] 生命力 2 → 6 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 1 → 2 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 器術 0 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍術 0 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 謀術 0 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 妖術 0 → 1 [メイン] 黒占 神籤 気づいて無いぜ [メイン] GM こちゃ [メイン] 在原 颯太 こちゃ [メイン] 黒占 神籤 https //character-sheets.appspot.com/shinobigami/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYye_4jwMM [情報] 流れ鴉 「颯太!!!!!」 [情報] 流れ鴉 斜歯車の技術と、何より鴉の人海戦術を前にして。 [情報] 流れ鴉 流れ鴉は、そして在原はついになす術が無かった。 [情報] 白鴉の主 「・・・・・・」 [情報] 白鴉の主 「コノ女ニハ、消エテ貰ウ。」 [情報] 在原 颯太 「クッ、そこをどけ!!」雑魚の数に押されてその場を動けない [情報] 白鴉の主 「オ前ハ、見逃シテヤロウ。」 [情報] 白鴉の主 「コノ女ダケデ十分ダ。」 [情報] 在原 颯太 「どういうつもりだ!」 [情報] 白鴉の主 「主サマハ、コノ女ノ血ヲオ嫌イニナル。」 [情報] 流れ鴉 「颯太!」 [情報] 流れ鴉 「この主様は、普通じゃない!」 [情報] 在原 颯太 「白鴉の主が普通じゃない……?」 [情報] 流れ鴉 「闇に、呑まれちまったんだと思う。」 [情報] 流れ鴉 「頼む。私と、主様を、助けてくれ。」 [情報] 在原 颯太 「待て!」 [情報] 白鴉の主 「無謀ナ試ミハセンコトダ。」 [情報] 在原 颯太 「無謀かどうかは──」 [情報] 在原 颯太 飛び上がって主を空中から急襲する [情報] 在原 颯太 「やってみないとわからんだろうが!」 [情報] 白鴉の主 空は鴉の群れに薄く、それは有効な試みであった。 [情報] 白鴉の主 その上で、白鴉の主は圧倒的に、在原を退けて見せた。 [情報] 白鴉の主 そうして、流れ鴉は拐われた。 [情報] 白鴉の主 ______ [メイン] 黒占 神籤 2d6 ShinobiGami (2D6) > 10[4,6] > 10 [情報] GM 10-中空庭、それは白鴉の社に繋がる唯一の道であり、そこは、何物にも守られておらず、しかし確実に守られているといわれている。 [メイン] 黒占 神籤 2D6-1 =5 (判定:掘削術) ShinobiGami (2D6-1 =5) > 11[5,6]-1 > 10 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6-1 =5 (判定:伝達術) ShinobiGami (2D6-1 =5) > 5[2,3]-1 > 4 > 失敗 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:伝達術) ] ShinobiGami (2D6 =5) > 8[3,5] > 8 > 成功 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 2 → 1 [メイン] 黒占 神籤 turn1 神籤 なんもせん 主 魔界転生(自動成功) 魔界転生シーン 御籤に情報判定→怪文(自動成功) 流行禍(自動成功)本人 教導(忍法錬成)(自動成功) turn2 神籤 なんも 主 夜駕籠(自動成功)) 神籤win 貪狼 奈落をコピー(または忍法研究)電撃作戦を消す [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 6 → 5 [秘密改めて] 白鴉の主 召喚術 追加忍法 魔界転生p106 流行禍 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 体術 1 → 0 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:絡繰術) ShinobiGami (2D6 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [秘密改めて] 白鴉の主 掘削術 追加忍法 増やし 回数制限 怪文p101 雲梯 大歯車p87 [秘密改めて] PC4秘密 逆神はあなたに二つの天啓を与えた。一つは、白鴉の主が容易に逆神の支配下における状態にあるということ。もう一つは、その力を利用して、対魔の刀及びそれが求める血を消し去るという指示。 あなたは、上忍としてキャラクターを作成する。 あなたは、斜歯忍軍の頭領であるキャラクターを別途作成する。このデータはNPC①白鴉の主に使用される。 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 5 → 4 [秘密改めて] system [ あかね ] 忍術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 戦術 1 → 0 [メイン] system [ 流れ鴉 ] 器術 1 → 0 [秘密改めて] system [ 在原 颯太 ] 生命力 7 → 6 [メイン] system [ 流れ鴉 ] 器術 0 → 1 [メイン] system [ 流れ鴉 ] 生命力 8 → 7 [秘密改めて] system [ 透石礫 ] 生命力 6 → 5 [秘密改めて] system [ 透石礫 ] 妖術 1 → 0 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:絡繰術) ShinobiGami (2D6 =5) > 11[5,6] > 11 > 成功 [メイン] system [ 流れ鴉 ] 生命力 7 → 6 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 3 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 生命力 6 → 5 [メイン] system [ あかね ] 体術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 器術 1 → 0 [メイン] system [ 透石礫 ] 生命力 5 → 4 [メイン] system [ 透石礫 ] 忍術 1 → 0 [秘密改めて] 白鴉の主 用兵術 追加忍法 巡らし 発動条件 教導p104 夜駕籠p119 [メイン] system [ あかね ] 生命力 8 → 6 [メイン] system [ あかね ] 体術 0 → 1 [メイン] system [ あかね ] 忍術 0 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 3 → 5 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍術 0 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 戦術 0 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 3 → 2 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 1 → 2 [秘密改めて] 白鴉の主 神通がん 主→神籤 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:幻術) ShinobiGami (2D6 =7) > 2[1,1] > 2 > ファンブル [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 2 → 1 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:幻術) ShinobiGami (2D6 =7) > 7[2,5] > 7 > 成功 [メイン] 在原 颯太 2d6 ShinobiGami (2D6) > 7[3,4] > 7 [雑談] 黒占 神籤 電撃作戦 turn1 神籤 なんもせん 主 魔界転生(自動成功) 魔界転生シーン 御籤に情報判定→怪文(自動成功) 流行禍(自動成功)本人 教導(忍法研究)(自動成功) turn2 神籤 なんも 主 夜駕籠(自動成功)) 神籤win 貪狼 忍法錬成をコピー 電撃作戦を消す [情報] GM 7-裏街区の最奥、そこは、ぽっかりと穴を空けた中庭が、高く高く続いている。 [メイン] 在原 颯太 2D6 =5 (判定:人脈) ShinobiGami (2D6 =5) > 7[3,4] > 7 > 成功 [情報] 在原 颯太 今まで培った人脈を用いて、主の異変についての情報を得ていた。 [情報] 在原 颯太 「……そうか」 [情報] 飛び跳ね鴉 「うむ」 [情報] 在原 颯太 「翁、無理を言ってすまなかった」 [情報] 飛び跳ね鴉 「いやいや、構わん。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「われらが主殿がおかしくなったというのは、わしとしても悲しいのでな。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「あれで、頼りがいのある主殿だったのじゃよ。」 [情報] 在原 颯太 「……僕は僕でなすべきことを果たす。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「そう言ってものう。これから実際どうするつもりなんじゃ。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「わしも協力できることは協力するが、いざ戦闘となるとここの一家を置いて危険に身をさらすわけにはいかん。」 [情報] 在原 颯太 「勿論、そこまで甘えるわけにはいかないさ」 [情報] 在原 颯太 「この情報だけで十分だとも」 [情報] 飛び跳ね鴉 「分かった。わしはお前たちを気に入っとる。死ぬんじゃないぞい。」 [情報] 在原 颯太 「そちらもな」 [情報] 飛び跳ね鴉 ______ [情報] 飛び跳ね鴉 「さて、わしも出来ることはするとしようかの。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「この長袖なら学ランに見えるかの。さすがに無理かの。」と言って第十三校舎に乗り込んでいきます。 [情報] 飛び跳ね鴉 「押忍!押忍押忍!押忍!」と言いながら廊下をずいずい歩き、天文部の前のドアを叩く。 [情報] 透石礫 「……」 [雑談] 在原 颯太 学帽も被ってるなこれ [情報] 透石礫 「不法侵入者か……」 [情報] 黒占神子 「兄ぃ、本日最初の仕事っスね。」 [情報] 黒占神子 「おっちゃん、ここは学校っスよ!」 [情報] 透石礫 「そうだぜ、ボケるにしたって他人に迷惑かけるなよ」 [情報] 九重 桜 「そんな辛辣な……」 [情報] 黒占神子 「桜さん、だってこいつ明らかに怪しいっスよ。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「おお、メッシュヘアーのの嬢ちゃんもおったか。ちょうど良いわい。」 [情報] 黒占神子 「おっちゃん、俺たちのことを知ってるんスか?」 [情報] 九重 桜 「え、この人だって……」 [情報] 飛び跳ね鴉 「おお、九重の嬢ちゃん。久しぶりじゃな。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「爺様のことはご愁傷様でござった。」 [情報] 九重 桜 (やっぱり飛び跳ねの翁さんだったか) [情報] 九重 桜 「その節は……」 [情報] 透石礫 「……」 [情報] 九重 桜 「この人、この方は大鴉の一人。飛び跳ね鴉さんですよ」 [情報] 九重 桜 「確かに学生服なのはよくわかりませんが、変な人じゃありませんよ」 [情報] 透石礫 「……マジ?」 [情報] 黒占神子 「飛び跳ねって、外郭の?」 [情報] 透石礫 上司じゃん [情報] 透石礫 「……ウス!お疲れ様ッス!」 [情報] 九重 桜 「うん。外郭の」 [情報] 飛び跳ね鴉 「うむうむ。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「坊ちゃんと嬢ちゃんの熱いラブロマンスを見せて貰ったお礼を言いに来たのじゃよ。」 [情報] 黒占神子 「うぇっ、見られてたんスか!」 [情報] 透石礫 「お、おう……」 [情報] 九重 桜 (さらっとさっきの態度なかったことにしたな、礫……) [情報] 飛び跳ね鴉 「それでじゃな。そこに名脇役がおったじゃろう。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「ほれあの、黒髪で長身の・・・」 [情報] 九重 桜 「?」 [情報] 透石礫 「臥煙さんスか」 [情報] 九重 桜 (誰!?) [情報] 黒占神子 「ああ、兄ぃの言ってた姉御っスよね。」 [情報] 九重 桜 (姉御!?) [情報] 九重 桜 (裏番なのかな……) [情報] 飛び跳ね鴉 「姉御?(!)いやいや、そうそう、その姉御じゃ」 [情報] 飛び跳ね鴉 少し笑いを堪えるも、すぐに真剣な表情に戻る [情報] 飛び跳ね鴉 「その姐さんじゃがな。どうもピンチのようなのじゃ。」 [情報] 透石礫 「……あんだって?」 [情報] 九重 桜 (グループの抗争かな) [情報] 透石礫 「爺さん、詳しく教えてくれ」 [情報] 飛び跳ね鴉 「姐さんの上役にあたる大鴉殿と、我らが鴉の主殿がな・・・」 [情報] 飛び跳ね鴉 と説明をする [情報] 九重 桜 「え、もしかしなくてもかなり大ごとじゃないのそれ」 [情報] 九重 桜 (臥煙さん、何者??) [情報] 飛び跳ね鴉 「うむ。大ごとも大ごとよ。わしは動けんが、姐さんには借りがある。せめてお前さんにとやってきたわけじゃ。押忍!」 [情報] 透石礫 「なるほどな、そいつは一大事だ。その押忍はちょっとよくわからねぇが」 [情報] 飛び跳ね鴉 「学生のカモフラージュじゃ」 [情報] 透石礫 「ありがとよ爺さん。なら、俺は助太刀に行ってくる」 [情報] 透石礫 といって、教室を出ようとします [情報] 黒占神子 「兄ぃ!天文部の出番スね!」 [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 神籤の裏面をチラ見します [情報] 九重 桜 「ちょっと、幾ら何でも規模が大きすぎない?」 [情報] 透石礫 逆神とか書いてあるからな…… [情報] 飛び跳ね鴉 「少なくとも、嬢ちゃんはやめておいた方が良いと思うぞい。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「嬢ちゃんのパパが絡んでおるようじゃからな。」 [情報] 九重 桜 「それってこないだの……」 [情報] 黒占神子 「巫女の血がどうなるかを考えると、下手に近づきたくはないっスね・・・」 [情報] 透石礫 「そうだな。ココ、お前は桜と留守番だ。実際、階段街区が襲われる可能性もある」 [情報] 飛び跳ね鴉 「うむ、わしも嬢ちゃんが一人になることは危険だと思う。」 [情報] 飛び跳ね鴉 「九重の嬢ちゃんが居って少し安心したわい。」 [情報] 透石礫 「それに、あの人には借りがある。借りを返すのに引率つけるなんざ、カッコつかねぇだろ」 [情報] 九重 桜 「……わかった」 [情報] 黒占神子 「兄ぃ、いってらっしゃいっス。」 [情報] 透石礫 「おう、任せたぜ!」 [情報] 透石礫 そのまま出てって、飛び跳ねに途中まで案内してもらおうかな [メイン] 透石礫 2d6 ShinobiGami (2D6) > 9[3,6] > 9 [情報] GM 9-中空庭に大量に植えられた柳は、風と敵意にそよぐという。 [情報] 透石礫 臥煙さんを探している [情報] 透石礫 「いねぇな……」 [情報] 在原 颯太 煙草をくゆらせて壁にもたれている [情報] 在原 颯太 「……ん?」 [情報] 透石礫 「……お。なぁあんた」 [情報] 透石礫 「こんな人を見かけなかったか」 [情報] 透石礫 つブロマイド [情報] 在原 颯太 「……………。」 [情報] 在原 颯太 顔が引きつったような気がしないでもない [雑談] 葉富 瑞穂 買っとって草 [情報] 在原 颯太 「この人を探しているのかい、少年。」 [情報] 透石礫 「前、世話ンなってな。この人が今あぶねぇと聞いて、助太刀に来た」 [情報] 在原 颯太 「助太刀?君がかい?」 [雑談] GM 葉富ブロマイドかこれw [情報] 透石礫 「俺が来ても仕方ねぇかもしれねぇが、返しきれねぇ恩なんだ。少しでも、返せるときに返しとかねぇとな」 [情報] 在原 颯太 「……そうか。」 [情報] 在原 颯太 「立ち入ったことを聞くが、彼女は君に何をしてくれたのか聞かせてもらってもいいかな」 [情報] 透石礫 「……俺の後輩を助けるとき、あの人には2度も世話になった」 [情報] 透石礫 「俺一人じゃ、無理だった。あの人が背を押してくれたから、今の俺たちがある」 [情報] 透石礫 「だから。まぁ、そんな感じだ」照れ [情報] 在原 颯太 (そんな大それたことをしたつもりもなかったけれど) [情報] 在原 颯太 (君が笑えているなら、よかった。) [メイン] 透石礫 2D6 =5 (判定:対人術) ShinobiGami (2D6 =5) > 9[3,6] > 9 > 成功 [メイン] 在原 颯太 et ShinobiGami 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス) [メイン] 透石礫 et ShinobiGami 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス) [情報] 在原 颯太 (しかし──) [情報] 在原 颯太 「どうしたものかなぁ……」 [情報] 透石礫 「で?何処か知らねぇか?」 [情報] 在原 颯太 「そうだなぁ……。」 [情報] 在原 颯太 「その時が来れば、また会えるさ。」 [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 「お、おう」 [情報] 透石礫 「……まぁ、その口ぶりからして、あんたも知り合いなんだろ?」 [情報] 透石礫 「なら、一先ず宜しく頼むぜ」 [情報] 在原 颯太 「知り合いではないけれど……」 [情報] 在原 颯太 「あぁ。よろしく頼まれたよ」 [メイン] あかね 2d6 ShinobiGami (2D6) > 6[3,3] > 6 [情報] GM 6-流れ鴉は、密かにこの中空庭を拠点としている。高きから引くきまでに至ることができるこの場所こそが、流れ鴉の神出鬼没さの理由であった。 [情報] あかね 「ここがなかそらにわ……」と下を覗き込もうとして [情報] あお 「ほらほら、危ないから覗き込まない」とあおが首ねっこつかむ [情報] あかね 「でもはくあのあるじさまについて調べないと……」 [情報] あお 「……それに関してなら、そこにいる人に聞くのがいいかもね」とちらり [情報] 在原 颯太 「今日は随分と子供がここに来るね」 [情報] 透石礫 「……(微妙な顔)」 [情報] あかね 「ど、どうも……」ぺこり [情報] 透石礫 「……分裂してやがる。どういうカラクリだ……?」 [情報] 透石礫 ジロジロ [情報] あかね 「えっえっとそれは……」おろおろ [情報] 在原 颯太 「分裂?」 [情報] 在原 颯太 「そんなプラナリアじゃあるまいし」 [情報] あお 「色々あったのさ。こっちにもね」 [情報] 在原 颯太 「えぇ……」 [情報] あお 「正確には”分裂”してはないんだけどね」 [情報] 透石礫 「……ま、なんでもいいか。前のツラよりマシになったじゃねぇか」 [情報] あお 「そりゃどうも。キミもだいぶ背負うものが増えたみたいだね」 [情報] あかね 「あ、あの……」と交わされる会話にわたわたしてる [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 「オイ、コイツはこのままなのか?」 [情報] 透石礫 「あぶねぇだろ」 [情報] あかね 「わ、わたしだってお姉ちゃんのために頑張ったんです!戦えます!」 [情報] 透石礫 「へぇ、ソイツは楽しみだ」 [情報] あお 「……だってさ。本当はボクも止めたいところなんだけど、聞かなくてね」 [情報] 透石礫 「ま、楽しみにしとくぜ」 [情報] 透石礫 あかねちゃんの頭をぽんぽんします。可愛いので [情報] あかね 「わわっ」ぽんぽんされ [情報] あお 「……あんまりボクのあかねに手を出さないでもらえるかな?」 [情報] 透石礫 「カカッ。こいつはおっかねぇな」 [メイン] あお 2D6 =5 (判定:伝達術) ShinobiGami (2D6 =5) > 5[1,4] > 5 > 成功 [情報] あかね 「そ、それで、あるじさまについて何か知らないですか?」 [情報] あお 「こっちもキミたち、特にそこの人かな?が欲しい情報を持ってるんだけど」 [情報] 在原 颯太 「わかっちゃいたがただの子供じゃないみたいだな」 [情報] 在原 颯太 「いいさ、話を聞こうじゃないか」 [情報] あお 「ああ、それじゃあ交渉成立だね」こうかんー [秘密改めて] GM 神籤奥義 伝達術 追加忍法(貪狼、影法師)めぐらし回数制限 [メイン] あかね 2d6 ShinobiGami (2D6) > 2[1,1] > 2 [情報] GM 2-中空庭が禁足地たる理由、それはひとえにこの先に白鴉の社が存在することであり、そしてこの場所はすでに白鴉の主の眼が届く範囲でもある。 [情報] あかね 「ここらへんにいるかと思ったんだけど……」 [情報] あお 「……いないね」 [情報] 在原 颯太 「相手さんもそう易々と接点はくれないってわけだね」 [情報] 透石礫 「いねぇなぁ……」 [情報] あお 「でもここは間違いなく彼の領域だ。気を抜かないようにね、あかね」 [情報] あかね 「う、うん!」ぴとー [情報] あお 「キミは確か流れ鴉の関係者だったね。さらわれた時の状況を聞いても?」あかねにひっつかれながら在原に [情報] 在原 颯太 「これと言って、何かの手がかりになるかどうか……」 [情報] 在原 颯太 とか言いつつ話す [情報] あお 「……なるほどね、流石は白鴉の主、か」 [情報] 透石礫 なにか違和感が…… [情報] 透石礫 それは臥煙さんの話では……?いやしかし…… [情報] あかね 「あ、あの~……どうかしました……?」>礫に [情報] 透石礫 「……。いや、なんでもない……」 [情報] 透石礫 「なん、でも……」 [情報] 透石礫 考えている [情報] 透石礫 ……? [メイン] 透石礫 2D6 =8 (判定:対人術) ShinobiGami (2D6 =8) > 8[4,4] > 8 > 成功 [情報] 透石礫 …… [情報] 透石礫 ! [情報] 透石礫 ばっ、とすごい勢いで振り返る [情報] あかね 突然ですごいびっくりする [情報] 透石礫 わなわな [情報] あお 「おい、あんまりあかねを驚かせ―」 [情報] 透石礫 「お、オイ。あかね、とか言ったな……」 [情報] あかね 「は、はい?」 [情報] 透石礫 「この写真を見ろ」つブロマイド [情報] あかね 「はい……」 [情報] 透石礫 「美人だろ」 [情報] あかね 「は、はい……?」 [情報] 透石礫 「在原さんを見ろ」 [情報] あかね ちらり [情報] 在原 颯太 煙草吸ってる [情報] 透石礫 「……同一人物だとしたら、どうする?」 [メイン] あかね 2D6 =6 (判定:遊芸) ShinobiGami (2D6 =6) > 6[2,4] > 6 > 成功 [情報] あかね 「え……?どう見てもおんなじ人じゃないんですか……?」 [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 「そうか……」 [情報] 透石礫 (´・ω・`) [情報] あかね 「な、なにかしらないですけど元気だしてください!」ぽん [情報] 透石礫 「ああ……」 [情報] 透石礫 「お前、いいやつだな……」 [情報] 透石礫 (´・ω ;. ... [情報] あお 「、とまああそこの茶番は置いておくとして、だ」 [情報] 在原 颯太 「うん?」 [情報] あお 「ボクとあかねは白鴉の主を、キミたちは流れ鴉を追っている。その二つの道が交わるとするならボクたちの利害は一致していると思わないかい?」 [情報] 在原 颯太 「異論は、ないな」 [メイン] あお 2D6 =5 (判定:遊芸) ShinobiGami (2D6 =5) > 6[2,4] > 6 > 成功 [メイン] あお et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] 在原 颯太 et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [情報] あお 「ああ、ボクたちも”仲良く”やっていこうか?」と向こうでわちゃわちゃやってる二人を見ながら [情報] 透石礫 …… [情報] 在原 颯太 「………人を食ったような振る舞いはあまり関心しないがな」 [情報] 透石礫 わちゃわちゃから出てきた [情報] 透石礫 「……在原さん。いや、臥煙さん」 [情報] 在原 颯太 「──。」 [情報] 透石礫 「なんであんたがああなってたのかは、知らねぇ。だが、あんたがしてくれたことは変わんねぇ」 [情報] 透石礫 「今度は、俺が手伝う番だぜ」 [情報] 在原 颯太 「……すまない。少年」 [情報] 透石礫 「頑張ります!」 [メイン] GM RTT ShinobiGami ランダム指定特技表(1,8) > 『器術』縄術 [メイン] 黒占 神籤 2D6-1 =9 (判定:刀術) ShinobiGami (2D6-1 =9) > 11[5,6]-1 > 10 > 成功 [メイン] 在原 颯太 2D6 =5 (判定:歩法) ShinobiGami (2D6 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] system [ あお ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを公開。出目は 4 です。 [メイン] system [ 透石礫 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:登術) ShinobiGami (2D6 =7) > 2[1,1] > 2 > ファンブル [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 2 → 1 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:登術) ShinobiGami (2D6 =7) > 6[1,5] > 6 > 失敗 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 生命力 6 → 3 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 体術 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 戦術 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 妖術 1 → 1 [秘密改めて] あお 奥義:ふたつうち(範囲攻撃/骨法術/撃ち/回数制限) [メイン] 在原 颯太 2D6 =7 (判定:骨法術) ShinobiGami (2D6 =7) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:登術) ShinobiGami (2D6 =7) > 6[1,5] > 6 > 失敗 [メイン] 透石礫 2D6 =5 (判定:暗号術) 接近戦攻撃 ShinobiGami (2D6 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =7 (判定:人脈) ShinobiGami (2D6 =7) > 7[2,5] > 7 > 成功 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 5 → 4 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 5 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 0 → 1 [メイン] 黒占 神籤 1d6 ShinobiGami (1D6) > 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 器術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 5 → 4 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 戦術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 妖術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 1 [情報] 在原 颯太 「返してもらうぞ。」 [情報] 流れ鴉 「颯太・・・」 [情報] 在原 颯太 「大事は、ありませんか」 [情報] 流れ鴉 「おかげさまで、まだ無事さね。」 [情報] 在原 颯太 「何より」 [情報] 流れ鴉 「ただ主様も、黒幕の男もまだ諦めたわけではなさそうだ。」 [情報] 流れ鴉 「急ぎ離脱しよう」 [情報] 在原 颯太 「了承した」 [情報] 在原 颯太 「皆、一度引こう」 [情報] 透石礫 「オス!」 [情報] あお 「ああ」 [情報] あかね 「は、はい!」 [情報] 流れ鴉 ______ [情報] 流れ鴉 中空庭に引いて。 [情報] 流れ鴉 「あんたらは、階段街区の鴉と、黒夜教の者だね。」 [情報] 流れ鴉 「故は知らないが、助けに来てくれて感謝するよ。」 [情報] 透石礫 「なぁに、恩を返しにきただけですよ」 [情報] あお 「もう黒夜教は関係ないんだけどね……まあいいや。感謝は受け取っておこうかな」 [情報] あかね 「ありはらさん、よかったですね!」 [情報] 在原 颯太 「皆。」 [情報] 在原 颯太 「本当にありがとう」深々と頭を下げる [情報] 透石礫 「まだ、終わりって訳じゃないでしょう」 [情報] あかね 「です!またあるじさまがとり返しにくるでしょうし……」 [情報] 在原 颯太 「……あぁ。そうだったな」 [情報] 流れ鴉 「ああ、助けてもらっておいて忍びないけれど、主様も助けたい。」 [情報] 流れ鴉 「結局寄り添っていられなかったけど、主様はあたしを助けてくれた大切な人なんだ。」 [メイン] 透石礫 2d6 ShinobiGami (2D6) > 11[5,6] > 11 [情報] GM 11-ぽっかりと空いた穴を地下へ地下へと降りていくと、旧街区を越えて実験区画へと繋がる。 [情報] 透石礫 「……なぁ、あかねよぉ」 [情報] 透石礫 「俺は、あれで良かったのかな……」 [情報] 透石礫 ぼんやり [情報] あお 「さあ?青少年の淡い憧れなんてボクの知ったことじゃないし」 [情報] あかね 「ちょっとお姉ちゃん!」 [情報] 透石礫 「……いや、いいんだ。うん」 [情報] あかね 「……えっと……」しばし悩んでる [雑談] 東雲 ズズ…… [雑談] 東雲 (中空庭を這い上がる音) [雑談] 黒占 神籤 ズズ... [情報] あお 「ほら、あかねも返事に悩んでるじゃないか。変な質問で困らせるのはやめてくれないかな?」なんか妹のまわりにうろつく虫なのでトゲトゲ [雑談] 東雲 こわい [情報] あかね 「えぇ……えっと……」 [雑談] 黒占 神籤 ズズ...(威圧) [雑談] 東雲 ズズ…… [雑談] 東雲 (引き下がる音) [雑談] "白兎" 主様…… [情報] あかね 「……元気だしてください!はい!」 [情報] 透石礫 「お前、いいやつだな……」 [情報] 透石礫 なでなで [情報] あかね /// [雑談] 東雲 ま、アイツラはそのうち下層で会うだロ…… [情報] あお 一層冷えた目で見てる [メイン] 透石礫 2D6 =5 (判定:遁走術) ShinobiGami (2D6 =5) > 7[3,4] > 7 > 成功 [メイン] 透石礫 et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] あかね et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] あお et ShinobiGami 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] 透石礫 やったー! [メイン] あお あおは!妬み!です!!!!! [メイン] あお ボクのあかねのまわりにうろつきやがって!!!! [情報] 透石礫 「……うし、もういっちょ気合い入れるか!」 [情報] あお 「ほう、気合を入れる必要があるのかい……?」ビンタの構え [情報] 透石礫 遁走術 [情報] あかね 「……あっ……行っちゃった……」 [雑談] 黒占 神籤 turn1 神籤 なんも 主 夜駕籠 turn2 主 魔界転生(自動成功)神籤 なんも 魔界転生シーン(主) 夜駕籠(自動成功) 雲梯(自動成功)流行禍(自動成功)本人(流行禍) 神籤win 一見をコピー 陽炎を消す [雑談] system [ 白鴉の主 ] 生命力 1 → 3 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 生命力 3 → 2 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 器術 0 → 1 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 生命力 2 → 4 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 謀術 0 → 1 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 戦術 0 → 1 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 3 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 謀術 1 → 0 [情報] system [ 透石礫 ] 生命力 4 → 3 [情報] system [ 透石礫 ] 謀術 1 → 0 [雑談] system [ 在原 颯太 ] 忍術 1 → 0 [雑談] system [ 在原 颯太 ] 生命力 5 → 4 [メイン] system [ あかね ] 生命力 6 → 5 [メイン] system [ あかね ] 忍術 1 → 0 [雑談] system [ 白鴉の主 ] 忍具 1 → 2 [雑談] system [ 流れ鴉 ] 忍具 6 → 5 [情報] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:絡繰術) ShinobiGami (2D6 =5) > 3[1,2] > 3 > 失敗 [情報] system [ 流れ鴉 ] 生命力 6 → 5 [情報] system [ 流れ鴉 ] 器術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 3 → 4 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 4 → 5 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 0 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 妖術 0 → 1 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =6 (判定:用兵術) ShinobiGami (2D6 =6) > 5[1,4] > 5 > 失敗 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 2 → 1 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 1 → 2 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =6 (判定:用兵術) ShinobiGami (2D6 =6) > 8[3,5] > 8 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:絡繰術) ShinobiGami (2D6 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 5 → 6 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 体術 0 → 1 [メイン] 在原 颯太 2D6 =5 (判定:人脈) ShinobiGami (2D6 =5) > 6[1,5] > 6 > 成功 [メイン] 在原 颯太 2D6 =5 (判定:歩法) ShinobiGami (2D6 =5) > 10[4,6] > 10 > 成功 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =5 (判定:伝達術) ShinobiGami (2D6 =5) > 2[1,1] > 2 > ファンブル [メイン] 黒占 神籤 ft ShinobiGami ファンブル表(2) > しまった! 好きな忍具を1つ失ってしまう。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを 6 に変更しました。 [メイン] system [ GM ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] system [ 透石礫 ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] がダイスシンボルを公開。出目は 6 です。 [メイン] system [ あお ] がダイスシンボルを公開。出目は 3 です。 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 2 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 0 → 1 [メイン] あかね 2D6 =6 (判定:死霊術) ShinobiGami (2D6 =6) > 8[3,5] > 8 > 成功 [メイン] 透石礫 2D6 =7 (判定:野戦術) ShinobiGami (2D6 =7) > 3[1,2] > 3 > 失敗 [秘密改めて] GM 幻術 範囲攻撃 [情報] system [ 流れ鴉 ] 忍術 1 → 0 [情報] system [ 流れ鴉 ] 謀術 1 → 0 [情報] system [ 流れ鴉 ] 生命力 5 → 3 [秘密改めて] system [ あかね ] 体術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 妖術 1 → 0 [メイン] system [ 在原 颯太 ] 生命力 4 → 2 [メイン] system [ 透石礫 ] 生命力 3 → 1 [メイン] system [ 透石礫 ] 器術 1 → 0 [メイン] system [ 透石礫 ] 体術 1 → 0 [秘密改めて] system [ あかね ] 器術 1 → 0 [秘密改めて] system [ あかね ] 生命力 5 → 3 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍具 1 → 0 [メイン] 黒占 神籤 2d6 ShinobiGami (2D6) > 6[2,4] > 6 [メイン] 在原 颯太 2D6 =8 (判定:死霊術) ShinobiGami (2D6 =8) > 7[3,4] > 7 > 失敗 [メイン] あかね 2D6+2 =8 (判定:罠術) ShinobiGami (2D6+2 =8) > 11[5,6]+2 > 13 > 成功 [秘密改めて] 流れ鴉秘密 このキャラクターは、プライズとしても扱われ、最初の所持者は白鴉の主である。 これの所持者が認めない限り、このキャラクターはシーンに登場できない。 [情報] 流れ鴉 ______ [情報] 流れ鴉 刻封獄、あたしが時間の流れから取り残されたそこは、そう呼ばれることになったらしい。 [情報] 流れ鴉 退魔の血故か、あたしは闇の力に耐性があり、刻封獄の解放から生き残ることが出来たらしい。 [情報] 流れ鴉 そして主様は、あたしを救い出してくれた。 [情報] 流れ鴉 在原の末裔だと聞いた時は驚いたけれど、そうでなくても、主様はあたしの命の恩人で。 [情報] 流れ鴉 あたしが誰よりも強く、一人でも強くと鍛錬してきたのは、いつか主様が闇に呑まれたときに戦ってやれるのは、自分しかいないと思ってのことだった。 [情報] 流れ鴉 結局あたしは何も出来なくて、代わりに、颯太がいてくれた。 [情報] 流れ鴉 一人じゃないってのも、悪くはない。 [情報] 流れ鴉 考えてみれば、風波と在原の退魔の血も、そういうことさね。 [情報] 流れ鴉 ______ [メイン] 流れ鴉 2D6+3 =7 (判定:封術) ShinobiGami (2D6+3 =7) > 8[2,6]+3 > 11 > 成功 [メイン] 在原 颯太 ■奥義 《九字切り/臨命終時》 指定特技 :人脈 エフェクト:クリティカルヒット/断ち/射程低下 効果・演出:九字切り実光、極意の壱。 壱にして致命の一撃。 然れども是差しむけるは尽く人ならざるもの。 一度で死ねばそれでよし。それで死なぬが常であるのは、在原の家の定めとなれば。 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 0 → 1 [メイン] 黒占 神籤 2D6 =6 (判定:伝達術) ShinobiGami (2D6 =6) > 5[1,4] > 5 > 失敗 [メイン] 黒占 神籤 5d6 ShinobiGami (5D6) > 13[2,2,2,3,4] > 13 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 体術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 謀術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 戦術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 妖術 1 → 0 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 生命力 6 → 1 [情報] 白鴉の主 在原の刀が、主を斬りつける。 [情報] 白鴉の主 そして、その手傷から、星雲が溢れ出し、天へと昇っていく。 [情報] 白鴉の主 主の眼から黄金の輝きは消え、主はその場へと倒れ込んだ。 [情報] 在原 颯太 「先ずは一つ」 [情報] 在原 颯太 「次は貴方だ。」神籤に実光──否。 九字切り真光の鋒を向ける [情報] 黒占 神籤 「・・・」 [情報] 黒占 神籤 「あるいは、僕にとってはそれは喜ばしいことなのかもしれないが。」 [情報] 黒占 神籤 『足掻ける内は足掻かせてもらうぞ?在原のガキ...』 [情報] 在原 颯太 「事情に興味はない。魔を断ち、祓うのが僕の務めだ」 [メイン] あかね 2D6 =5 (判定:罠術) ShinobiGami (2D6 =5) > 6[2,4] > 6 > 成功 [メイン] あかね 2D6 =5 (判定:遊芸) ShinobiGami (2D6 =5) > 5[1,4] > 5 > 成功 [秘密改めて] 白鴉の主秘密 逆神の支配を断ち切るためには、対魔の力を秘める九字切り真光の力が必要となる。 クライマックス戦闘の終了時、プライズ「九字切り真光」の所持者によって生命力を失わされていたキャラクターは、逆神の支配から断ち切られる。 白鴉の主から逆神の支配を断つためには、最低3点の生命力を失わせる必要がある。 [メイン] 黒占 神籤 2D6+3 =11 (判定:登術) ShinobiGami (2D6+3 =11) > 7[1,6]+3 > 10 > 失敗 [メイン] system [ 白鴉の主 ] 忍具 1 → 0 [メイン] 流れ鴉 2D6 =5 (判定:手裏剣術) ShinobiGami (2D6 =5) > 5[2,3] > 5 > 成功 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 生命力 3 → 1 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 忍術 1 → 0 [メイン] system [ 黒占 神籤 ] 妖術 1 → 0 [情報] 黒占 神籤 [ [情報] 黒占 神籤 舌打ちして窓から身を投げます [情報] 流れ鴉 「逃がしたか」 [情報] 透石礫 「……くそっ」 [情報] あお 「あと少しだったんだけどね」 [情報] あかね 「だ、大丈夫ですか!?」(多分)倒れてる白鴉の主の方に駆け寄る [情報] 在原 颯太 「あれだけの手練れだ。下手に深追いするのは得策じゃない」 [情報] 白鴉の主 「う。ここは。」 [情報] 在原 颯太 真光を鞘へ収める [情報] あかね 「……!よかった……」 [情報] 白鴉の主 「君は、『泊り木』の。」 [情報] 白鴉の主 「これは、どういった状況だい。」 [情報] 流れ鴉 「主様は、闇に呑まれっちまってたのさ・・・」 [情報] あかね 「あるじさまは闇?にあやつられてたみたいで……?」 [情報] 流れ鴉 「彼女らが、助けてくれたんだ。」 [情報] 白鴉の主 「そうか・・・」 [情報] あかね 「あるじさまが闇からもどってきて、よかったです……」 [情報] あかね 「もうそんな人は、ふやしたくないですから」ちらりとお姉ちゃんの方を見る [情報] あお ちょっと気まずそうに目をそらす [雑談] 在原 颯太 進行形で気まずいなぁ………中の人の話やけど [雑談] 東雲 三々華さん…… [雑談] 東雲 わくわく [雑談] あかね さざんかさん…… [情報] 白鴉の主 「話には聞いていたよ。無事解決したようですね。」 [情報] あかね 「は、はい!」 [情報] 白鴉の主 「残滓は、一部残った状態ですか。」 [情報] あお 「だね。その残滓とやらの存在はまだ感じるよ」と自らの胸に手をあてて [情報] 白鴉の主 「残滓の件は分かりました。引き続き大司教月夜には十分注意した方が良いでしょう。」 [情報] あお 「ところで闇背負いを放逐すべく動く鴉たちのトップたる白鴉の主様が、そんな不穏分子の戦力の一角であるボクたちを目の前にして何もしないでいいのかな?」 [情報] あかね 「ちょっとお姉ちゃん……」 [情報] 白鴉の主 「そうですね。こうまでして頂いては、仕方がないでしょう。」 [情報] 白鴉の主 「『泊り木』の件は不問とします。」 [情報] 白鴉の主 「最下層方面での闇狩りも最早下火です。あなたたちと衝突することも少ないでしょう。」 [情報] 白鴉の主 「この度は、本当にお世話になりました。」 [情報] あお 「あの白鴉の主がボクたちに礼を、ね……」 [情報] あかね 「わわっ、こちらこそありがとうございます!」 [情報] あかね 「ほら、お姉ちゃんも!」 [情報] あお 「……」 [情報] あかね 「ほら!お礼!言わなきゃ!」 [情報] あお 「……感謝しておくよ。あそこにはボクも返しきれない恩がある」 [情報] 流れ鴉 「・・・よし。あたしも決めたよ、主様。」 [情報] 白鴉の主 「流れか。お前にも世話にな」 [情報] 流れ鴉 「主様が闇に近づこうとするなら、見守って、いざというときに止めてやるんだって思ってたけどね。」 [情報] 流れ鴉 「こんな事件になるくらいなら、最初っから力づくだ。」 [情報] 流れ鴉 「主様に疎ましがられようと、あたしは主様を止めることに決めた。」 [情報] 流れ鴉 「もうマトモに闇の研究なんかさせやしないから、覚悟しておくんだね。」 [情報] 白鴉の主 「・・・善処しよう。」 [情報] 白鴉の主 「君たちも、本当に世話になった。」在原と礫へ [情報] 透石礫 「俺は、恩を返しにきただけっす」 [情報] 透石礫 「礼なら、在原さんに」 [情報] 在原 颯太 吸っていた煙草を右手に持ち替えて [情報] 在原 颯太 「家の務めを全うしたまで、ですよ。」 [情報] 白鴉の主 「在原の血、か。」 [情報] 在原 颯太 「それも勿論ありますが、うちの………」 [情報] 在原 颯太 一瞬何をいうべきかを迷ったようにして [情報] 在原 颯太 「ひい婆様を取り返したついでですよ。貴方が気負うことは、何も。」 [情報] 白鴉の主 「そうか。」 [情報] 白鴉の主 「私には、未だに実感の持てない力だったよ。その刀と、在原の力は君に任せよう。」 [情報] 白鴉の主 「もしまた私や他の誰かが闇に囚われることがあったら、よろしく頼む。」 [情報] 在原 颯太 「承知しました」 [情報] 流れ鴉 「主様!研究はさせないって言ったろ!」 [情報] 白鴉の主 「まあ、私についてはしばらくは大丈夫そうだな。」 [情報] あお 「それじゃあボクたちは『泊り木』の方に今回のことを報告してくるよ。後はそこのお二人でごゆっくり、ね」 [情報] あかね 「しつれいします……!」ぺこり [情報] あかね 去ったよ! [情報] 透石礫 「……」 [情報] 透石礫 ぼんやりと神籤の去っていった方を見ている [情報] 透石礫 「在原さん。よかったっす」 [情報] 在原 颯太 「アレをどうするつもりだい」 [情報] 透石礫 [情報] 透石礫 [情報] 透石礫 「……できることなら、なんとかしたい。ですかね」 [情報] 透石礫 「逆神は許せねぇが、あの人は……、夜陰さんは後輩の親父さんですから」 [情報] 在原 颯太 「命をかけるのには、些か遠い所縁に見えるがね」 [情報] 透石礫 「……そう、ですかね」 [情報] 在原 颯太 「ここまで無事で済んでいるのはかなりの幸運に恵まれた結果だと僕は思うよ」 [情報] 透石礫 ふぅー、と長い息を吐く [情報] 透石礫 「……ですよね。俺も、そう思います」 [情報] 透石礫 後頭部を掻きむしる [情報] 透石礫 「……」 [情報] 在原 颯太 「でも、君は止まる気は無いんだろう?少年」 [情報] 透石礫 「まぁ……はい」 [情報] 透石礫 「俺の手が届く範囲なら、伸ばしたいんですよね」 [情報] 透石礫 虚空に手を伸ばして見せる。星を掴もうとするかのように [情報] 在原 颯太 「なら、その信念に励みたまえよ。」 [情報] 在原 颯太 「僕程度でよければ、いつでも声をかけなさい。できる範囲で力になろう」 [情報] 透石礫 「有難う御座います、在原さん」 [情報] 透石礫 「情けねっすけど、頼らせてもらいます」 [情報] 在原 颯太 「情けないものかよ」 [情報] 在原 颯太 (僕の果たせなかった夢を、君は現にしているのだから) [秘密改めて] PC1秘密 臥城、そして臥煙。幾つもの名と姿を遠回りして、あなたは再び在原颯太として立ち上がることが出来た。囚われた風波夕暮は、臥城としてのあなたの面倒を見、臥煙としてのあなたを生み出し、在原颯太としてのあなたを救ってくれた。 あなたの真の使命は【風波夕暮をいち早く救い出す】ことである。 流れ鴉は、プライズ扱いとして白鴉の主が所持している。キャラクター作成時、これを他のPLに伝えることは出来ない。 [秘密改めて] PC2秘密 三々華、真菰、アリス、アキ、そして他ならぬ白鴉の主。多くの人の尽力により、あおは闇の侵蝕から救われた。 あなたの真の使命は【今度はあなたが誰かの助けとなる】ことである。 [秘密改めて] PC3秘密 あなたは追加で奥義「尽力 ○○」(効果 範囲攻撃/くらまし/回数制限/生存術)を持つ。ハンドアウト配布時に○○に人名を入れる。これはセッション中一度更新しても良い。この奥義は、メインフェイズの間、○○のためであるとGMが認める場合にのみ使用できる。 [秘密改めて] プライズ「九字切り真光」秘密 これは情報ではない。 在原颯太か、在原颯太と互いにプラスの感情を持つキャラクターが流れ鴉を所持している場合のみ、これは以下の奥義を持つ。(所持者の奥義として扱う。) 奥義「退魔転生」/指定 封術/効果 在原颯太か、在原颯太と互いにプラスの感情を持つキャラクターが攻撃する代わりに使用できる。間合2以内の任意のキャラクターを目標とし、2点分を割り振って生命点を回復するか失わせるかする。(回復するか失うかする特技分野はそれぞれ目標が選ぶ。) [メイン] GM あかねあお [メイン] あかね つぶてさん! [メイン] 黒占 神籤 あかね [メイン] 透石礫 あかね! [メイン] 在原 颯太 あかね/あお [メイン] system [ 九重 桜 ] 忍具 1 → 2
https://w.atwiki.jp/outerzone/pages/204.html
「ここは……、私天国にいるの……?」 見渡す限りに満点の星で埋め尽くされた宇宙のような空間の中で銀色の瞳に毛先が紅い黒髪のショートヘア、そして真紅のマントが特徴的な少女、ルビー・ローズは自らの現状に戸惑いの声をあげていた。 彼女はアトラスとマントルの市民をヴァキュオに逃がすために仲間たちと共に避難中継地にて市民の避難誘導を行っていたところ、突如として強襲してきたシンダー・フォール及びニオポリタンと交戦し、シンダーの手によって奈落の底に落とされたはずなのだ。 避難中継地に向かう前、中継地を創造した創造の杖の精、アンブロシウスはルビーにこう警告した。 『決して落ちてはならない』 あの警告は『落ちたら死ぬ』という意味だと思っていた。実際通路の下は底の見えない深い闇しかなかった。普通に考えれば人間は一定以上の高さから転落すれば地面に激突した瞬間にその衝撃で死ぬ。ましてやルビーは直前の戦いで自分の身を守るオーラを失っている状態なのだ。だからシンダーによって奈落の底に落とされた時、彼女は自身が死んだと思ったのだ。 「安心したまえ、ここは天国ではない。これから行われるのは万能の願望器『聖杯』を求めて戦いあう『聖杯戦争』、その予選が行われる空間だ」 「!?っだ、誰っ!?」 その時ルビーの耳に見知らぬ男性の声が聞こえてきた。ルビーは驚いて辺りを見回すが声の主の姿を見ることは出来ない。 「自己紹介は後でいいだろう。君がこの聖杯戦争に呼ばれた理由は一つ、君が自らの意思で『星晶石』を受け取ったからだ。」 「『星晶石』?一体どういう……?っあ!?それってもしかして!?」 彼女は避難中継地において市民の避難誘導を行っていた際、ある一人の女性と出会っていたことを思い出した。 その女性は緑色のウェーブがかかった髪に左目を隠している前髪のひと房が紫色をしていた印象的な姿をしていた。 ルビーは彼女から「持っていればいいことがある」と言われ虹色に輝く金平糖のような形状の石を3つ差し出されたのだ。ルビーも最初受け取るかどうか悩んだのだが「お礼はいいから」と言われたので好意に甘えてその石を受け取ったのだ。その直後のシンダーの襲撃による混乱でルビーは女性のことをすっかり忘れてしまっていたのだが今にして思えばあの時受け取った石が男の言う『星晶石』なのであろうことを察する。 「……とりあえず一つ聞きたいんだけど『聖杯』って何?」 ルビーは警戒心を抱きつつも姿の見えぬ男に対して質問を投げかける。 「先ほど言った通り、あらゆる者のあらゆる願いを叶えることができる代物だ。君の手に舞い戻った腰の武器も聖杯の力の一端の一つだよ。」 「『舞い戻った』ってどういう……っあ!?」 ルビーは自身の腰に目をやると信じられない光景が目に入った。 何故なら彼女の腰には奈落の底に落とされる直前、ニオポリタンとの戦闘で奈落の底に落とされて失ったはずの愛用武器、『クレセント・ローズ』が装着されていたのだ。 最初は男の話に対してルビーは半信半疑であったのだが失われたはずの愛武器が自分の手に舞い戻った事実を見て、男の話が虚偽ではなく真実なのではと感じ始める。 「……それで、私はどうすればいいの?」 だがルビーは男のことを完全に信用したわけでは無い。ルビーは未だ警戒心を抱きつつも男に次の説明を求める。 「先ほども言った通り君にはこれから予選を受けてもらう。君の両手にはそれぞれ端末と君の代闘士となる古今東西の英雄の写し身『サーヴァント』を召喚するために必要なカード『セイントグラフ』があるだろう?端末で使える地図機能で、表示された場所まで進んでくれたまえ」 ◇ ◇ ◇ ルビーは最初、男の言っていることは何かの罠だと思ったのだが取り敢えず他に何をしたらいいのか分からない以上、従うしかないという結論に達し、地図アプリを頼りに指示された場所へ向かう。 やがて目的地にたどり着くとルビーの目の前に円形の魔法陣が描き出され、そこから黒い人型の影のようなものが現れる。 「!?……まさかこいつ、グリム!?」 ルビーは目の前の人型の影を見て、その影が彼女とその仲間たちが元の世界で戦っている敵、破壊の獣『グリム』だと考えた。だがその考えはまたしても聞こえてきた男の声によって即座に否定される。 「違うな、そいつはグリムではない。そいつは『シャドウ』というサーヴァントのなり損ないだ。彼を倒せば、君は晴れて予選突破となる。」 「グリムじゃないって……それってどういうこと!?」 ルビーは声の主に問いただすが声の主はそれを意に介さず言葉を続ける。 「もっとも君に敵意を持って襲いかかって来るという点においてはそいつも君が元の世界で戦った『グリム』と同じと言えるが。ああ、そうそう、一つ忠告しておくが自分一人でそいつを倒そうと思わないほうがいい。シャドウは生身の人間では絶対に倒せない。だが打ち倒すための鍵は既に君の中にある。私から君に与えられるヒントは以上だ。」 「ちょっと!まだあなたには聞きたいことが!!」 ルビーは叫ぶが男の声が再び聞こえることはなかった。 「ああ、もう!!」 ルビーは憤るが兎に角今は目の前の危機を乗り越えなければ話は始まらない。ルビーは腰に装着したクレセント・ローズを手に取ると収納形態から小銃形態へと変形させ、そのまま銃口を目の前の影の頭部と思われる部位に向けて引き金を引く。 発射された銃弾はシャドウの頭部を吹き飛ばすがシャドウは吹き飛ばされた頭部を再構成すると何事もなかったかのように向かってくる。 「銃弾は効かない……なら、これならどう!」 銃弾は効かないと判断するや否や、ルビーはクレセント・ローズを小銃形態から大鎌形態へと変形させ、自らのセンブランス―――『ペダル・バースト』を発動してシャドウに急接近しクレセント・ローズを振りかぶると大鎌の刃をシャドウの首めがけて振り抜き、その首を一太刀で跳ね飛ばす。だが結果は先ほどと同じであった。 分断されたシャドウの首が元の体に戻ると元の形に戻るように組み合わさり、そのまま何事もなかったかのように手に持った剣を振るう。 「そんな、銃撃も斬撃も効かないなんて……きゃあ!?」 自らの攻撃が効かなかったことによる動揺で反応が遅れたルビーはシャドウが振るった剣によって自らの手にある武器、クレセント・ローズを弾き飛ばされる。 「くっ……」 自らの武器を失ったルビーはセンブランスを発動して後ろに後退しようとするがシャドウは先ほど以上のスピードでルビーに追いすがると剣を振るいながらルビーを仕留めようとする。 (銃撃も斬撃も効かない……一体どうしたら……) ルビーは敵の攻撃を躱しながら目の前の敵をどうすれば倒せるのか思案していた。 先ほどの男の声は「自分一人の力ではそいつを倒せない」と言っていた。 それは実力的な問題ではなく自分自身の力だけでは『物理的に』倒すこと自体が出来ないという意味だったのではとルビーは考えていた。 それなら先ほどの再生能力にも説明がつくとルビーは考えていた。 だがそれが分かったところでどうすればいいかルビーの中では答えを見いだせずにいた。 ルビーは武器も無い丸腰の状態ではただの非力な少女だ。素手による攻撃を仕掛けた所で相手にダメージを与えるどころか足止めすることすら出来ないであろうということはルビーは過去の経験から痛いほど理解していた。 先ほどの男の声は「打ち倒すための鍵は既に君の中にある」と言っていたが目の前の敵がグリムではない以上、『銀の眼』の力で目の前の敵を倒せるとは思えなかった。 敵の攻撃を回避しながらこの状況を打破する手段を必死に考えていたルビーであったがやがてそれにも限界が訪れる。 「!?しまっ……」 攻撃を回避した際、ルビーは体のバランスを崩してしまい、尻餅をつく形で転倒してしまう。そしてシャドウはルビーに立ち上がらせる猶予を与えることもなく、そのままルビーの頭上に剣を振り下ろそうとする。 (ああ……私、ここで死んじゃうんだ……死んだら、大好きなママの所に行くのかなあ……) ルビーは自身に迫りくる剣を見ながら、不思議と遅く感じられる時間の中で、今は亡き母、サマー・ローズのことを思い起こしながら自らの死を受け入れようとしていた。だが、 『しっかりしなさい!ルビー!!』 ……え?ワイス? 『こんなところで諦めてどうするんです!?あなたはいつだってどんな時でも諦めずに前に進み続けてきたでしょう!?それなのに今更諦めて全てを投げ出すなんてこの私が許しませんわよ!?』 ……ああ、そうだ。危うく諦めるところだった。ワイスは今でも避難中継地でペニーと一緒にシンダーと戦っている。ブレイクとヤンだって自分がこうして生きているんだからきっと今でも何処かで生きているはずだ。それなのに自分がここで諦めてどうするのか。ここで諦めたらチームRWBYの皆にも天国の母親にも申し訳が立たないだろう。だから今ここにいないワイスが私の目を覚まさせてくれたのだ。それに…… 「……私はまだ、ここで諦めたくない!!」 ルビーが心の中の感情を爆発させた瞬間、握っていたカード「セイントグラフ」が宙を舞うと光を発し、無地の面に絵が浮かび上がった。 その光にシャドウは攻撃を中断して後方へ下がる。 光が消え去った後、そこには人型の姿をした存在がそこにはいた。 いや、体形こそ人間に酷似していたもののその存在は誰が見ても人ならざる人外の存在だと分かる姿をしていた。 体は青緑色の体色をしており頭部には鹿の角のようなものが生え、吊り上がった眼は複雑な配色をしており手足はすらりと細長く、翼のような形状の巨大な耳を持ちキツネのような尻尾を持っていた。体の大きさこそ人間とほとんど変わりがなかったものの、ルビーはその存在からただならぬ力を感じ取っていた。 だが、サーヴァントのなり損ないであり、本能や理性を持たないシャドウはそれに構うことなく呼び出されたその存在に襲いかかった。 が_____ 『雑魚が』 一瞬だった。 その存在は手に持った槍で襲いかかってきたシャドウを切り払うとシャドウの上半身と下半身は両断され、シャドウは断末魔を上げる事すら叶わず塵に帰る。 ルビーは尻餅を着きながらその光景をただ見ていることしか出来なかった。 (すごい……今の攻撃、私には見えなかった。一体こいつ、何者なの……?) ルビーが思案しているとその存在はルビーの方に振り向き、ルビーを観察するかのようにじっと見下ろす。 (でも私を助けてくれたんだし、取り敢えず私の味方ってことでいいんだよね?挨拶しないと……) そう思いながらルビーが立ち上がろうとした瞬間、急にルビーの頭の中に思念が流れ込んでくる。 『我の名はフェクト・エフィリス。ランサーのサーヴァントだ。問おう。小娘よ、貴様が我のマスターか?』 ◇ ◇ ◇ ルビー・ローズとフェクト・エフィリスはいつの間にか教会の礼拝堂らしき場所へ転送されていた。因みにルビーは転送される前にクレセント・ローズをしっかり回収していた。 「ようこそ、見事試練を乗り越えた聖杯戦争のマスターよ。私は言峰綺礼。この聖杯戦争の監督役を務めている」 突如としてルビーの耳に『予選』の空間に呼ばれた時に聞こえてきた声と同じ声が聞こえてくる。ルビーが驚いて声が聞こえてきた方向を向くとそこには背の高い神父のような服装をした男がいた。 「……あなたが私に最初に話しかけてきた声の主?」 ルビーは警戒しながらも言峰と名乗った男に対し問いかける。 「まあ、そう警戒しなくてもいい。私はあくまで中立の立場だ。そちらから危害を加えてこない限り、こちらも危害を加えるつもりはない。」 「……」 ルビーは未だ言峰に対する警戒を解く気はなかったが、彼がこちらに危害を加える気がないということが分かったのと取り敢えず彼の話を聞かなければ話が進まないと感じ、彼の話を聞くことにする。 ルビーは言峰から聖杯戦争のルールについて一通り教わった。 聖杯によって選ばれた(今回の場合は星晶石が招待状)参加者であるマスターとそのサーヴァントが生き残りをかけて戦うということ。 聖杯はどんな願いでも叶える願望機であり、手に入れられればありとあらゆる願いを叶えることが可能だということ。 そして聖杯にアクセスするためには令呪の存在が必要不可欠であり、3画全て失えば失格となるということ。 「……つまりどんな願いでも叶える物体のようなものがあってそれを巡って最後の一組になるまで殺しあえと。」 「ほう、随分と物分かりがいいな。大抵のマスターは荒唐無稽と一笑に付すか、何かの冗談か詐欺だと言い出すものなのだが。」 ルビーは半信半疑ながらも、聖杯の話を「有り得ない」と一笑に付さなかったのには理由があった。 ルビーの故郷であるレムナントにはそれぞれ「知識のランプ」「創造の杖」「破壊の剣」「選択の王冠」と呼ばれる4つの聖遺物が存在していた。 「破壊の剣」と「選択の王冠」についてはどのような効果を発揮するのか分からないものの、「知識のランプ」の力で常人には決して知りえることの出来ないオズピンとセイラムの大昔の過去を知ることが出来、「創造の杖」の力でアトラスとマントルの市民を避難させるための異次元空間を創造することが出来、ルビー自身もそれらのレリックの凄まじい性能を直に目にしてきた。 更に4つのレリックをすべて集めるとレムナントを創造した光の神と闇の神を召喚することが出来、セイラム達闇の勢力はそれを狙って活動しているということをルビーはオズピンから聞かされていた。 レリックは活用するためには条件や制約も多く、一つ一つは言峰の語る聖杯には及ばない力しかないものの、レリックの存在や力を知っているルビーにとって聖杯の話を「有り得ない」の一言で片づけることは出来なかったのだ。 だがその上でルビーはある一つの結論に達する。 「……申し訳ありませんが私は聖杯戦争は辞退します。」 「……ほう、それは何故だね?」 言峰は不思議そうにルビーに問いかける。 ルビーは今回の聖杯戦争に呼ばれる直前、セイラムの脅威から人々を救うという名目で手段を選ばなくなっていったアイアンウッドの暴走を思い出していた。 彼は元々自分の考えが絶対という一面もあったのだがセイラムの脅威を目の当たりにしてからは手段すら選ばなくなっていき、セイラムから逃げるためマントルの人々を見捨てて創造の杖の力でアトラスをセイラムの手の届かない大気圏上空まで飛ばそうとする、創造の杖を手に入れるために女神ウィンターに選ばれたペニーにウイルスを仕込んで無理やり封印を解放させようとする、失敗したと分かればペニーが戻らなければマントルに爆弾を落として人々を虐殺すると脅すなど自分が守ろうとする人々のためにそれ以外を切り捨てようとし、それを実現するためには非人道的な策すら躊躇せず実行する彼の暴走のことを思い出していた。 仮にセイラムを倒すために自身とそのパートナーであるサーヴァント以外の全てのマスターとサーヴァントの血で自らの手を汚し、手に入れた聖杯の力でセイラムを倒したとしてもそれでワイスもブレイクもヤンもそれを喜ぶのであろうか? そんなことに手を汚したが最後、自分たちが散々否定したアイアンウッドと何も変わらなくなってしまうことにルビーは気づいていた。 「私は自身の目的のために手段を選ばず、他者を平気で切り捨てる人を見てきました。聖杯で願いを叶えるなんてその人のやったことと何も変わらないし私はそんなことをしたくありません。私を元の世界に帰してくれればそれで十分です。」 ルビーは銀の瞳で言峰を真っ直ぐ見つめ、はっきりと答える。 「では、君はこの聖杯戦争から離脱するということで構わないか?」 綺礼は目を細め、心なしかつまらなさそうな口調で決定を促す。 ルビーが口を開こうとしたその時だった。 『待て』 突如、二人の会話に割って入る者がいた。 それはこれまでルビーと言峰のやり取りに対し、沈黙を守っていたランサーのサーヴァント、フェクト・エフィリスであった。 「何かね?ランサー。」 会話に割って入ってきたエフィリスに対し、言峰は要件を聞く。 『我はそこの小娘に用がある。貴様は口を挟むな。』 「……いいだろう。」 エフィリスの言葉に言峰は後ろに下がり、エフィリスはルビーの正面に立つ。 『おい、小娘。』 「小娘じゃないよ。私には『ルビー・ローズ』っていう名前があるの。」 エフィリスの威圧的な思念にルビーは動じることもなく、しっかりと目を見据えながら言う。 『聖杯戦争への辞退は我が許さぬ。貴様には何が何でも我のマスターとして参加してもらう。』 「どうして?決めるのは貴方じゃなくて私のはずだけど?」 ルビーの問いに対してエフィリスは自らの目的を語る。 『我には聖杯に叶えてもらう願いがあるのだ……』 エフィリスは拳を握りしめながら言う。 『我の願いは受肉……、それもただの受肉ではない。我から分かれた『片割れ』無しでも維持できる全盛期の完全な体による受肉、それこそが我が聖杯にかける願いだ……』 「……」 ルビーはエフィリスの話を聞きながら、言峰から聞かされたサーヴァントについての話を思い出していた。 サーヴァントは生きている存在ではなく、死んだ存在が『座』と呼ばれる場所から現世に召喚された言わば幽霊みたいな存在であるということ。 そして聖杯戦争で召喚されるサーヴァントには聖杯に自らの願いを叶えてもらうためにマスターに協力する者も多く、そのサーヴァントの中には「自らの受肉」を目的とした者も多くいると言峰は言っていた。 だがそれでもルビーは納得できたわけでは無かった。エフィリスが何が目的で『受肉』を望むのかが分からないからだ。それにエフィリスが言っていた『片割れ』が何なのかについてもルビーは気になっていた。 「……だったら聞かせて。あなたは受肉して一体何がしたいの?それに『片割れ』って?」 『……』 エフィリスは暫し考えたがやがて意を決したかのように語りだす。 『……我には復讐したい相手がいるのだ。』 「……あなたに一体何があったの?」 ルビーはエフィリスの怒りと憎しみに満ちた表情からその相手に相当な強い怨みを持っていることを察する。そしてエフィリスはルビーに自身の過去を語り始めた。 かつてとある一つの星に降り立った際にその星の原住民が組織した研究対策チームに捕えられ、研究材料とされたこと。それから30年後に実験中の事故により自身の片割れである『ID-F87』フェクト・エフィリンが自身から分離し、施設から脱走したこと。それにより活動停止に追い込まれ、研究材料としての価値もないと判断された原住民により観光客相手の見世物とされたこと。やがて原住民たちが研究成果から手に入れた惑星間ワープ技術を使って、自身を置き去りにして遠い星に旅立っていったこと。 その後長い年月をかけ、ようやく片割れであるフェクト・エフィリンを取り戻したものの、ピンクの邪魔者『星のカービィ』によってフェクト・エフィリンを奪い返され、戦いの末に『星のカービィ』によって倒されたこと。 それら全てを、エフィリスはルビーに語って見せた。 『我は復讐をしたいのだ。我を捕え、見世物にし、あまつさえ置き去りにした憎き原住民どもと我の計画を台無しにした憎き『星のカービィ』にな。あの時は片割れの抵抗と奪取が原因で敗北したが今度はそうはいかぬ。聖杯によって片割れなど必要ない完全な体を手に入れ、奴らがどこにいようと必ず見つけ出し、今度こそ復讐を遂げて見せよう……』 「……」 ルビーはエフィリスの話を聞き、彼からアダムやシンダー、ニオと同じ匂いを感じていた。 シンダーはビーコン陥落の際に自身の銀の眼の暴走により重傷を負ってから、ニオは同じくビーコン陥落の際、彼女のパートナーであるローマン・トーチウィックを殺したと思いこまされてから、復讐のために二人から命を狙われていた。 この聖杯戦争に呼ばれる直前にも避難中継地にて二人から襲撃を受け、危うく殺されそうになったりもした。 アダムに関しては彼に直接会ったことはなく、チームメンバーで彼と深い因縁があったブレイク・ベラドンナから話を聞いただけだが、彼はブレイクに強い執着心を見せ、自らの元から離れたブレイクに対する強い逆恨みから自身の姉でブレイクのパートナーであったヤン・シャオロンの腕を切り落とし、ホワイトファングの指導者の地位を失った後、はるばる遠くのアーガスまでブレイクを追跡してブレイクに襲いかかってきたことをルビーはブレイクとヤンに聞かされていた。 ルビーはエフィリスを捕え、研究材料にし、見世物にした原住民とエフィリスと戦った『星のカービィ』の人となりがどのようなものなのかを知っているわけでは無い(人ではないかもしれないが)。 しかし彼の語る『復讐』がアダムやシンダーやニオと同じ『逆恨み』からくるものではないかとルビーは感じ取っていた。 そう思ったルビーは一つの結論を導き出す。 「……悪いけど私はあなたとは組めない。」 『……何だと?』 ルビーはエフィリスの目を見据え、はっきりと言い放つ。 「私は原住民の人たちやカービィがどんな人だったのかは知らない。でも私は逆恨みで復讐をしようとしている人を知っているしあなたからは彼らと同じ匂いがする。私は逆恨みの復讐に加担することは出来ない。」 『そうか……』 エフィリスは目を閉じると 『自らの意思で我に協力する気がないのなら……力づくで従わせるまで!!』 エフィリスは目をカッと見開いた。 「え?それはどういう……う、あああああああああああああ!?」 その瞬間、ルビーの頭の中にエフィリスの強い思念が流れ込んできた。ルビーは頭を押さえてうずくまる。 『ピンクの邪魔者と仮面の騎士は洗脳できなかったが……貴様はかつてのレオンガルフ同様、洗脳して我が傀儡として働いてもらおう。』 「うわあああああああああああああ!!」 そう言いながらもエフィリスはルビーに思念を送り続け、ルビーは必死に抵抗する。 だがルビーはエフィリスの思念を受け続けながらも、エフィリスに対し問いを投げかける。 「ね……ねえ……あなたは……復讐を遂げた後に……どうする……つもりなの……?」 『ほう、まだ喋れるだけの元気が残っていたか。いいだろう、どうせ貴様が知ったところで我が傀儡となれば関係のない話だ。特別に教えてやろう。』 そう言うとエフィリスはルビーに対し、はっきりと言い放つ。 『我が最終目標はあらゆる生物を吸収し、究極の生命体となることだ。』 ルビーはエフィリスの思念に耐えながらも今の発言を聞いて自分の考えが間違っていないということを確信する。 恐らくエフィリスは降り立った星の生物をすべて吸収しようとし、原住民たちはそれを止めようと戦ったのであろう。カービィも復活したエフィリスが侵略活動を再開したからそれを止めるために戦い、そしてエフィリスを倒したのだろう。 そしてその思いがルビーの口から自然とあふれ出していた。 「はは……やっぱりただの逆恨みじゃない……やっぱり私はあなたに協力出来ないよ……」 『貴様……』 エフィリスの表情は僅かに苛立ちを募らせていた。 「それに……あなたはとても可哀そう……侵略しなければ生きていけないだなんて……」 『黙れ……』 「そんなんだから……あなたは誰からも受け入れてもらえないんだよ……自分の半身からすらも……」 『黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!!』 エフィリスは怒りのままに叫ぶとルビーに送り込む思念を更に強くする。 「うわあああああああああああああああああああああ!!」 だがその思念の洪水からもルビーは必死に耐え続けた。やがてエフィリスから送り込まれる思念は徐々に弱くなり、ルビーに送り込まれる思念は完全にストップする。 『フン、あの仮面の騎士の時と同じように耐えられるとはな。この手段はとりたくはなかったが仕方がない。』 そう言うとエフィリスは床に手をつき、息も絶え絶えなルビーに近づくと手に持った槍を逆手に持ち、槍の穂先をルビーに向ける。 『貴様が我が意に添わぬのであれば貴様を殺し、別のマスターと契約して洗脳するのみ。』 そう言うとエフィリスは手に持った槍の穂先をルビーに向けたまま上に振り上げ、 『死ね。』 槍をルビーに振り下ろし、そのまま貫こうとする。 だがその二人の間に割って入る者がいた。 「待て、ランサー。」 その言葉にエフィリスは振り下ろそうとした槍をピタリと止める。 『……口を挟むなと言ったはずだが?』 そういうと槍の穂先をルビーに向けたままエフィリスは顔だけを声の主に向ける。 その正体は今まで事態を静観していた言峰綺礼であった。 「なに、私は聖杯戦争のルールに反するようなことをしなければ君たちの行動や方針に口を挟むつもりはない。ただ一つだけ君に忠告しておきたいことがあってね。」 『……何だ?』 エフィリスは言峰に問いかける。 「君は何故、『ID-F87』フェクト・エフィリン無しでその体を維持できているか疑問に思ったことは無いかね?」 『どういうことだ?』 エフィリスの疑問に答えるように言峰は言葉を続ける。 「それはそこにいるマスター、ルビー・ローズ君が君が現世に留まるための要石となっているからだ。」 言峰はルビーを指さす。 「つまり君がルビー君を殺せば君は自らの体を維持することが出来なくなり、ドロドロに溶けてまともに行動することも出来なくなるだろう。」 言峰は更に言葉を続ける。 「そして魔力が切れれば君は消えてしまう……つまり君は戦うこともなく、この聖杯戦争から脱落するということだ。それでも良ければ君の自由にしたまえ。私は止めはしない。」 『……チッ』 エフィリスは舌打ちすると手に持った槍を降ろす。 それを確認した言峰は次にルビーに語り掛けていた。 「ああ、そうそう。ルビー君にも言っておきたいことがあるのでね。」 「……何ですか?」 ようやく消耗から回復しつつあったルビーはおぼつかない足取りながらも立ち上がる。 「勘違いしているようだが君が仮にこの聖杯戦争に参加しなかったとしても聖杯戦争は予定通りに行われる。そして参加したマスターとサーヴァント同士で聖杯を巡って殺し合いが発生するだろう。要は君たちが手を下すかそれとも他の誰かが手を下すかそれが変わるだけの話だ。」 それに、と言峰は更に言葉を続ける。 「聖杯の力は数多の平行世界・多元宇宙へと及ぶ。手にした者の願いによっては君の世界にも影響が及ぶかもしれん。そのうえでよく考えたまえ。聖杯戦争を辞退し元の世界に帰るか、聖杯戦争に参加しマスターとしてサーヴァントと共に戦い抜き、聖杯を目指すか。」 「……」 ルビーは考えていた。レムナントは現在、セイラムによる侵攻が続いており状況ははっきり言っていいとはいえない。だがルビーにとって大切な仲間────ワイス・シュニー、ブレイク・ベラドンナ、ヤン・シャオロンらチームメンバーにチームJNPRとの出会いはかけがいの無いものであり、世界を変えられることによって大切な仲間たちとの出会いを無かったことにされるのは耐え難いことであった。 ルビーは何かを決意したかのような表情で言峰を見据え、言葉を発する。 「私……聖杯戦争に参加します!」 『!?』 「ほう……それはどういった風の吹きまわしかな?」 言峰の疑問に対し、ルビーは理由を話す。 「何も聖杯を求めることだけが闘いじゃないと思うんです。私が参加しなくてもこの聖杯戦争で誰かが犠牲になるのならそれを見て見ぬふりをすることは出来ないし、聖杯に邪悪な願いを叶えてもらおうとか聖杯を手に入れるために手段を選ばずに誰かを殺すことも厭わないマスターとサーヴァントも参加しているかもしれない。私はそんなマスターやサーヴァントと戦って誰も犠牲者が出ないようにしたい。それが私の闘いです。」 「そうか、それが君の『闘い』か……だが。」 言峰はエフィリスの方を見ると、 「果たして『彼』は君の方針に納得するかな?」 『……』 再びルビーの方を見て、言峰はある提案をする。 「説得が無理だと思うならここで令呪を使うのも一つの手だ。令呪は期間が長期的であればあるほど効果が薄くなるが使わないよりはよっぽど効果があるだろう。どうするかね?」 「いいえ、使いません。」 だがルビーは言峰の提案をきっぱりと断った。 「令呪で無理やり従わせたって信頼関係は生まれません。そんなことをしたら『彼』が私にやったことと同じことをしたことになります。私一人で話をつけるのであなたは口出ししないでください。」 「……分かった。」 ルビーの言葉に言峰は再び後ろに下がり、ルビーはエフィリスの正面に立つ。 『驚いたな。まさか自分の意思で聖杯戦争に参加するとは。』 まず最初に口を開いたのはエフィリスの方であった。だがその声は喜びよりもむしろ驚きの感情の方が大きかった。 「勘違いしないで。私はあなたの目的に賛同したわけじゃないから。逆恨みで復讐することも全ての生物を吸収して究極の生命体になることも。」 『では令呪も使わずにどうするつもりだ?まさか我と戦うつもりか?』 そういうとエフィリスは手に持った槍の矛先をルビーに向ける。 だがルビーの口から出たのはエフィリスにとっては予想外の言葉であった。 「……でもあなたの境遇には同情できる。」 『!?』 そういうルビーの目は真摯そのもので、エフィリスはその目を見て彼女の言葉には嘘や偽りが無いと感じることが出来た。 「だってあなたは原住民の人たちに捕えられて狭いカプセルの中に閉じ込められて研究材料にされて、その価値が無くなったら見世物にされて、それも飽きられたらあなたを置き去りにして遠い星に旅立っていったんでしょ?勿論侵略してきたあなたにも非はあるけど私にはあなたを閉じ込めて研究材料にした研究所の人たちとあなたを見世物にして飽きたら置き去りにした原住民の人たちの方がよっぽど酷い連中だと思うし、あなたが怒りと憎しみを抱くのも当然だと思うよ。」 『……では何故、我の目的に賛同できぬ?』 エフィリスの疑問に対し、ルビーは答えを出す。 「それはあなたの目的によってみんなが……そして何より、あなた自身が悲しい思いをするから……」 『!!?』 ルビーの目に湛えられた涙を見て、エフィリスは激しく動揺していた。その涙が安い哀れみや同情などではなく、本気の悲しみで流れたものであると察したからだ。 「私はね……昔は友人とか仲間とかいらないと思ってた……でもワイスとブレイクに出会ってチームを組んで……ジョーンとピュラとノーラとレンとも仲良くなって……これからもその絆がずっと続くと思ってたのに……目の前でピュラが死んで……私はそれを助けることも出来なくて……その時にすごく悲しい気持ちになったんだ……。」 『……』 エフィリスにはワイスにブレイク、ジョーン、ピュラ、ノーラ、レンがどのような人物なのかは分からなかった。 だが彼女の様子から、彼女にとって彼らがとても大切な仲間であろうことが何となく察することが出来た。 「ねえ……全ての生命を吸収して究極の生命体になったら……その後あなたはどうするの?」 『!?……そ、それは……』 考えたこともなかった。エフィリスにとっては究極の生命体になることが最終目標であり、その後のことは全く考えていなかったのだ。 「全ての生命を吸収しちゃったら周りに誰もいなくなってあなた一人になっちゃうんだよ?仲間や友達もいない世界でたった一人で生きていけるの?」 『……』 「私は嫌だな……だってワイスもブレイクもヤンも、ジョーンもノーラもレンも、みんないなくなっちゃったら私にとっては何よりも辛いことだもん……」 『……我は……』 エフィリスは迷っていた。星を侵略し、生物を吸収し、究極の生命体を目指すことは自分にとっては生き甲斐であり、それ以外の生き方など全く考えたこともなかったのだ。 悩むエフィリスにルビーは次の言葉をかける。 「私はあなたを閉じ込めて見世物にした人達みたいなことはしない。何をどうしたいかはあなたの自由にしていいし、どうしても受肉の願いを叶えたいなら私が誰の犠牲も出さずに聖杯を手に入れる方法を探してあげる。」 でも、とルビーは言葉を付け加える。 「だけどこれだけは約束して。私が許さない限り誰かの命を奪うようなことはしないって。それが守れないなら私は今度こそこの聖杯戦争を降りるし、そのためにあなたに命を奪われる覚悟はある。その上でどうしたいか、あなた自身で考えて決めて。」 『……』 エフィリスは暫し沈黙する。そして…… 『いいだろう。』 「え?」 エフィリスは結論を出す。 『貴様は我を見世物にした原住民どもとは違うようだ。我は貴様が気に入った。貴様の意思を尊重してそのうえで共に聖杯を目指して戦おうではないか。』 「話はついたようだな。」 話し合いに決着がついたと判断したのか、言峰は再び前へ歩み出る。 「ルビー・ローズ。君の参戦を聞き入れた。聖杯は君を歓迎するだろう。細かいルールは端末のヘルプで参照できるが他に質問はあるかね?」 言峰の最後の問いかけにルビーは決意を込めた表情で答える。 その表情は先ほどまでの涙を流して泣いていた少女のそれではなく、これから戦地に赴くことを覚悟した戦士のものであった。 「ありません。もう話が無いならこれで失礼します。さっ、行こうランサー。」 ルビーは言峰に背を向けるとそのまま振り返ることもなく、エフィリスを連れて教会の出口である扉に向かって歩く。 「喜べ銀の眼の戦士。君の願いはようやく叶う」 綺礼は立ち去ろうとするルビーの背中へそう言葉を投げかける――― ―――ルビー・ローズとフェクト・エフィリスは教会を後にした。 ◇ ◇ ◇ 「やああああああああああ!!」 A地区の山脈を背にした草原地帯にてルビーは自身の体よりも大きい魔獣の首を自らの愛用武器、クレセント・ローズの大鎌の刃で刈り取っていた。 「ふ~、今日のお仕事はこれでお終い!」 ルビー・ローズに与えられたロールは『ハンター』。 ハンターとは野草や果物を採取したり、野に住む獣や、凶暴な魔獣を狩猟し、それらを売却して金銭を得る職業であり、元の世界でハンター養成学校に通って訓練をし、人々の平和を脅かすグリムと戦い、アトラスにて念願のプロのハンター・ライセンスを獲得したルビーにとって、この与えられた職業はまさに天職といえるものであった。 因みにエフィリスはルビーとの約束通り久しぶりの自由を満喫していた。 今はルビーの上空を自由に飛び回っている。 やがてエフィリスはルビーの仕事が終わったことに気づいたのか、上空からルビーの元に降りてくる。 『終わったようだな。』 「う~ん、でもこんな大きな魔獣どうやって運ぼう?」 『我が抱えて飛んで運ぼうか?』 「ダメダメダメダメ!市街地だと目立っちゃうよ!」 『なら我がこの魔獣を吸収』 「わーっ!!それはもっとダメ!!ちゃんと引き渡して売却しないとQPを貰えなくなっちゃうから!!」 エフィリスのボケに対しルビーはツッコミを入れる。ルビーの表情は教会の時とは違って明るい笑顔に包まれていた。 ルビーは本来は明るく表情豊かで子供っぽい性格であり、今までそれを押し殺していたのだがその必要が無い今だけは本来の性格で振る舞うことが出来た。 『冗談だ。この魔獣は我が抱えて地上を歩いて運ぼう。』 「うん、でもまずは一旦支給された生活拠点に運んで整理して、一旦休憩してから引き渡しに行こう。」 そう言うとエフィリスは魔獣の死骸を抱え、ルビーと一緒に生活拠点に向かって歩き出していた。 『……初めて会った時と比べて随分明るくなったな。』 「普段の私はいつもこんな感じだよ?あなたこそ、最初に会ったころと比べて随分丸くなったんじゃない?」 『我は貴様との契約と約束を守っているだけだ。我は何も変わってはおらぬ。』 「もう、素直じゃないんだから~!」 お互い、軽口を叩きながら二人は帰り道を歩いていくのであった。 【サーヴァント】 【CLASS】 ランサー 【真名】 フェクト・エフィリス 【出典】 星のカービィ ディスカバリー 【性別】 不明 【ステータス】 筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力B 幸運E 宝具A++ 【属性】 混沌・悪 【クラス別能力】 対魔力 B 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。 復讐者:B 自らを捕え、研究材料とし、挙句の果てに見学ツアーの見世物として晒し者にした原住民への怒りと復讐心がスキルとなったもの。エフィリスはランサーのクラスとして現界したがアヴェンジャーとしての側面も持つためこのスキルを有する。効果としては周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情を自らの力に変換するもの。 【保有スキル】 空間転移能力:A++ 異空間を意のままに操る能力。星型の入り口をした異空間ゲートを作り出し、そこを通ることによって異なる場所、異なる世界へ容易に移動したり、異なる世界の住民を呼び寄せたり、自らの思念で異空間を一つ作り上げることが出来る。戦闘にも応用が可能で後述の宝具の行使にもこのスキルを用いる他、異空間ロードから槍を召喚して攻撃することも可能。 飛行:A 空中を飛ぶ能力。重力に囚われることなく空中を自在に飛行し、音速を遥かに凌駕する速度で高速戦闘を行うことが可能。 テレパシー:B 自らの思念を相手に送り込む能力。自らの言葉を思念として相手に送ることで言葉を発することなく相手に直接自身の言葉や意思を伝えることが可能なほか、強い思念を送り込むことで対象を洗脳し、操ることが可能。ただし、強い精神力を持つものを操ることは出来ない。 縮地:A 瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。エフィリスの場合は最上級であるAランクに達しているため、上記の空間転移能力に頼らずに次元跳躍ばりの速度で瞬時に相手との間合いを詰めることが可能。 【宝具】 『地球外文明の存在確率の高さとそれらが確認されない矛盾に対する答え(フェルミパラドックス・アンサー)』 ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人 真名解放によって周囲の空間を塗り替え、空中に作られた巨大な異空間ロードから崩壊した建物の残骸を固めて作られた無数の隕石を降り注がせ、最後に異空間ロードと同じ大きさの巨大な隕石を落下させ敵を粉砕し、更に追い打ちをかけるようにエフィリス自身が隕石に紛れて敵に突進し、そのまま槍で敵を貫いてトドメをさす。 『遺伝子の修復(ゲノム・リペアーズ)』 ランク:C+ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大補足:1人 3体に分身してその場から動かなくなり、一定時間経過後に自らが負った傷を修復する宝具。この宝具を発動している間本体は無防備となり攻撃を受ければ消える2体の分身を一度だけ呼び出すしか出来ず、一定時間経過前に本体が一定以上の攻撃を受けると回復は中断され、逆に本体が受けた攻撃分のダメージを負ってしまうため、時間が経過するまでマスターか同盟相手のサーヴァントに守ってもらう必要がある。 【weapon】 「アンタレス」 槍の芯と槍先が水色になっており、クリーム色とマゼンタの二重螺旋が巻き付いている禍々しい形状の槍。武器として相手を刺し貫いたり切り払ったり出来るほか、槍のような形状をした光弾「軌道性パルサー」を生成し、敵に射出することで遠距離攻撃をすることも可能。 【人物背景】 本編(星のカービィ ディスカバリー)の時代より遥か昔、まだ先住民が生息していた時代の「新世界」を単身で侵略しに降り立った宇宙生物。襲来してからは多くの原生種に対し侵略活動を続けていたが、多大な力と凶暴性を危険視したその世界の原住民たちによって組織された研究対策チームによって無力化・捕獲される。その後、捕獲した研究対策チームから『ID-F86』のコードネームを付けられ、空間転移能力の研究材料として保管されていたが、研究開発から30年後に起きたワープ実験事故により別個体ID-F87が分離し逃走するトラブルが発生、それが原因で活動停止に追い込まれてしまう。その後ラボ・ディスカバールのエターナルカプセルに保存され、「ドキドキ発見ドリームツアー」の目玉として見世物にされていた。 そして先住民は研究によって得た技術で手狭となった母星を捨てて宇宙に旅立っていき、その後長い間放置されていたが近年になって漸くある程度力が使えるまでに回復して目覚め、同様に残された動物の子孫のリーダーであるレオンガルフをテレパシーによって洗脳し、ビースト軍団を結成させ自身の復活のために暗躍していた。 ビースト軍団に自身から分離した片割れ、『ID-F87』フェクト・エフィリンを捜索させつつ、自らの空間転移能力で呼び寄せたワドルディ達をビースト軍団に捕えさせ、奴隷同然の扱いで働かせてラボの電力を供給させたり同じく空間転移能力で呼び寄せたデデデ大王を洗脳し自らの手駒としていたが同じく偶然呼び寄せてしまったカービィによってビースト軍団は次々に倒され、リーダーのレオンガルフまで倒されてしまう。業を煮やしてレオンガルフを始めとしたビースト軍団を取り込み、巨大なスライムのような形態となってカービィに挑み敗北するが、隙をついて『ID-F87』フェクト・エフィリンを取り込み全盛期の力を取り戻した完全体として復活。カービィと死闘を繰り広げるが最終的にフェクト・エフィリンを引き剝がされてしまい、最後のあがきとして空間転移能力の最大出力でカービィの故郷であるポップスターそのものを新世界にぶつけようとするがモンスタートレーラーと一体化したカービィの突撃を喰らい消滅する。 侵略活動への野心は捨ててはおらず、復活後も次の星への侵略を企んでいた。 【サーヴァントとしての願い】 片割れを必要としない全盛期の完全な肉体での受肉。願いが叶った後どうするかはこれから考える。 【方針】 聖杯を求める。ただしマスターであるルビー・ローズの意思は尊重する。 【把握媒体】 ゲーム「星のカービィ ディスカバリー」をご参照ください。プレイ動画及びムービーがYoutubeなどの動画サイトにUPされています。 より詳しい設定や性格、口調を把握したい場合は角川つばさ文庫の小説版「星のカービィ ディスカバリー 新世界へ走り出せ!編」及び「星のカービィ ディスカバリー 絶島の夢をうちくだけ!編」をご参照ください。 【マスター】 ルビー・ローズ 【出典】 RWBY 【性別】 女性 【能力・技能】 『ペダル・バースト』 「高速移動」とも呼ばれているルビーの固有能力。この能力を用いると瞬間移動のように目にもとまらぬ速度で移動することが出来る。この能力を使用すると彼女の通り道に赤い薔薇の花弁が舞う。この能力の実態はルビー自身を分子レベルに分解し、質量を無視してある地点から別の地点まで超高速で移動して再構成するものであり、この能力を応用することで味方に対しても能力を使用して一緒に移動することが出来る。 『オーラ』 レムナントの世界において生命を持つものが十分な訓練を積むことで使えるようになる能力。使用することで全身をバリアのようなもので包み、敵の攻撃によるダメージを軽減し、致命傷から保護してくれる。ただし戦闘中にダメージを受け続けたり絶えず使用し続けると劣化していき、最終的には枯渇して使用不能になってしまう。 【weapon】 「クレセント・ローズ」 ルビー自身が自作した大鎌と狙撃銃の機能を併せ持つ大口径狙撃鎌。 「収納形態」「小銃形態」「大鎌形態」の三つの形態に変形させることが出来、通常は運搬に適した「収納形態」でルビーの腰に装着されているが、戦闘の際は取り回しのいいボルトアクションライフルとして運用可能な「小銃形態」と、大鎌としての近接戦闘能力と長距離狙撃銃としての遠距離攻撃能力を併せ持った「大鎌形態」の2つの形態を使い分けることが出来る複合変形武器。ルビーは射撃の反動を利用して跳躍や空中ジャンプ、高速移動中の加速に利用したり、鎌での斬撃をより強力なものにするなどといった使い方もしている。また大鎌形態での射撃時に鎌の刃を地面に突き刺してモノポッド代わりにして射撃することもできる。 【人物背景】 ハンター養成学校のビーコンアカデミーで結成されたチームRWBYのリーダーで当代における“銀の瞳の戦士”の一人。 幼少期からおとぎ話に出てくる偉大なハンターに憧れており、偶然居合わせたダストショップにてローマン・トーチウィック率いる強盗の集団を撃退、その活躍をビーコンアカデミーの校長のオズピンに見初められ、15歳でありながらビーコンアカデミーへの飛び級入学を認められた。 基本的に明るく前向きな性格で、どんな逆境でも諦めずに進んでいく強い心を持っている。 一方で親しくない相手とは積極的なコミュニケーションを避けようとする消極的な一面もあり、入学当初は新しい友人関係を築くことに消極的だった。 しかしビーコンでの生活を経てその傾向は改善されていき、チームRWBYやチームJNPRのメンバーを始め、様々な人物と交流するようになっていった。 優れたリーダーシップ及び高い作戦立案能力や発想能力を持っており、始め、リーダーとして抜擢された時には、リーダーになったという意味をあまり理解していないようだったが、その後のオズピンとの会話でリーダーとしての役目に真剣に向き合うようになり、有能かつ頼れるリーダーになるため遅くまで勉強する姿勢を見せ、危機的状況を打破するために的確な作戦を立ててそれを実行したり強力な敵を撃破するための連携攻撃を素早く発想したりするなどリーダーとしての才能を開花させていき、叔父のクロウ・ブランウェンやかつての名ハンター、マリーアからも彼女の明るさと強い心は一目置かれている。 ビーコン陥落事件の際にチームJNPRのメンバーであったピュラ・ニコスがシンダー・フォールに殺害される瞬間に居合わせてしまい、その悲しみとショックで『銀の眼』の力を暴走させてシンダーに重傷を負わせた。その後チームメイトのヤン・シャオロンからアカデミー陥落と、同じくチームメイトであるワイス・シュニー及びブレイク・ベラドンナと離れ離れになってしまった事を知り、さらにクロウから母・サマーの事と「銀の眼の戦士」の伝承と、シンダー達がヘイヴンへ向かった事を聞き、シンダーを追いにヘイヴンへ旅立つ事を決意、チームJNPRのメンバーであったジョーン・アーク、ノーラ・ヴァルキリー、ライ・レンの賛同を得てその3名と共にチーム「RNJR」を結成する。その後ヘイヴンで自身以外のチームRWBYのメンバー3名と合流に成功し、ヘイブンにおける戦いで知識のレリックの回収に成功し、レリックの安全の確保のためにアトラスに旅立つことになるがたどり着いたアトラスでセイラムの軍勢の襲撃とそれによるアイアンウッドの暴走に巻き込まれ、アトラスとマントルの市民を避難させるために創造のレリックの力で避難中継地を創造してもらったが、市民の避難誘導中にシンダー・フォール及びその仲間のニオポリタンの襲撃を受け、その戦闘の中でシンダーとニオによって次元の狭間に落とされてしまい生死不明となる。 【マスターとしての願い】 誰かを苦しめたり不幸にしたりするような願いを持つマスターや、聖杯を手に入れるためには手段を選ばず誰かを殺すことも厭わないマスターとサーヴァントには聖杯を渡さないし、必要なら戦って止めることも辞さない。誰も傷つけずに聖杯を手に入れられるならサーヴァントの願いを叶えてあげたい。 【方針】 聖杯戦争を止めようとするマスター、誰も傷つけずに聖杯を手に入れて願いを叶えたいマスターがいたら交渉して協力を取り付ける。やむを得ない場合を除き、可能な限り人は殺さない。 【ロール】 魔獣狩りで生計をたてているハンター 【令呪の形・位置】 左手甲の位置。薔薇の紋章の形をしている。 【把握媒体】 アニメ「RWBY」Volume1、2、3、4、5、6、7、8の日本語吹き替え版及びアニメ「RWBY 氷雪帝国」、漫画版「RWBY 氷雪帝国」などをご参照ください。 原作アニメの日本語吹き替え版及び氷雪帝国はAmazon Prime Video、Abemaプレミアム、dアニメストアその他配信サイトで全編配信中です。 漫画版「RWBY 氷雪帝国」は電撃大王で連載中で単行本も発売されています。
https://w.atwiki.jp/tisnrail/pages/92.html
そこに夢は無く理想は果て、道は既に断ち切られた。 残されしものはその骸。 ニトロプラス『刃鳴散らす』 ◆ 無数の人間(ヒト)を斬ってきた。 銃が暴力とl武力の覇権を握る、熱砂の惑星に産まれ落ち。 独学で剣を修め、我流の流派を興し。一刀を以って、銃の優位など知らぬとばかりに敵対する人間(ヒト)を斬断し、身体を機械に変えたものも、特異な技巧を駆使するものも等しく刃の錆として、屍山血河を数多築き。人間(ヒト)を斬ることに飽きたと嘯くほどに斬り殺した。 その果てに、人間(ヒト)ならざるモノを斬りたいと欲して、人間(ヒト)ならざるモノに挑み、そして、敗れた。 己が必殺を期して繰り出した斬撃を躱し、己に悟らせることなく戦う要を破壊された。 己に対する配慮。己を殺さぬ様に無力化するという情け。 グズる幼児をあやしてl大人しくさせるような、優しい決着。 互いの命を懸けた、生死を争うと思っていた戰が、彼奴には只の児戯だったという事実。 己が剣は、己の一生を捧げた。文字通り心血振り絞り、魂すらも捧げた剣が、人間(ヒト)ならざるモノにはその程度だったという現実。 誇りを自負を打ち砕かれ、生涯を虚仮にされた事に狂乱し、背後からの一撃を加えようとして、そこで意識が闇に沈んだ。 ◆ 無数の人間(ヒト)を斬ってきた。 幕末の動乱期に、習い覚えた剣技を存分に振るえるという、凡そ剣者としては望むべくもない好機を得。 身に修めた剣技を振るうこともできず、只々後世に伝えるだけしか出来ずに果てていった先達達の無念を晴らすかのように、血風剣嵐吹き荒れる京都で剣を振るい、各地より集った剣客を斬って斬って斬り殺し。 果ては最新の銃器で武装した兵すら血祭りに上げ、動乱が治り、晴れて明治────泰平の世となると、海を渡り、米利堅の地で、ギャング達相手に剣を振るい。裏社会に悪名を轟かせ、極限まで強くなり、更なる強さを求めて人間(ヒト)である事を辞めて、魔人となった。 魔人となって得たのは更なる強さ。そして、渇き。 愉悦を感じる事が無くなり、つまらぬ弱卒を相手に剣を振るう日々。 癒し難い渇きは日を追うごとに強くなり。 その惰性の日々は、唐突に終わりを迎える。 剣術(ブレイドアーツ)を駆使する魔戦士(ブラッド・スター)に非ず。拳術(フィストアーツ)を用いる執事(バトラー)であったが、その強さは生涯で出逢った者達の中で最上。 剣と拳。振るう得物に違いはあれど、只々単に敵を打ち倒す為の術を極限にまで磨き上げた。その一点に変わりは無し。 血笑を浮かべて相戦い。そして、負けた。 人を捨て、異形の身体と成り果てて、そうして得た強さを以って戦い。完膚無きまでに撃ち倒された。 なんたる間抜けか。あくまで『人間』として闘う執事(バトラー)に……『人間』で在る事に堪え切れなかった己が、敵う道理は無く。 人で在るままに、人を捨てて得た強さを超えていかれたことで、癒し難い、決して癒えぬとすら思えていた渇きは癒され、安らかに眠りについた。 ◆ 俺の剣を見切ったと云うか。化物が。人間の殻を脱ぎ捨てて、人の限界を容易く超え得る力を持った化物風情が。 俺の剣を見切っただと?不可能だ。人間を超えてしまった貴様には、もう不可能なのだ。 人の剣術(ブレイドアーツ)を理解することは! ニトロプラス『戒厳聖都』 ◆ 夜の冬木中央公園で対峙する二つの人影。 一人は左右の手に肩の一振りずつ持ち、黒いスーツの上に、黒い外套を羽織った男。キャスターのクラスを得て現界したサーヴァント。ティトゥス。 もう一人は、腰に差した刀の柄に手を掛けた、ハリウッドの映画から抜け出してきたかの様な、勘違いサムライ・スタイル。聖杯大戦のマスターとしての資格を得た剣鬼。雷泥・ザ・ブレード。 二人は周囲の空間を凍てつかせ、煮えたぎらせながら、向かい合う。 空間を凍てつかせるのは二人の殺気だ。互いに眼前の敵を此処で必殺せんという意志が、空間を冷たく、昏く、凍えさせる。 空間を煮え滾らせるのは2人の闘志だ。互いに相手を超克し、捩じ伏せんとする意志が、空間を熱く、激しく、煮え立たせる。 当千の武威を誇る英霊ですらもが動けなくなりそうな“圧”を放ち続けるこの二人が、聖杯大戦に参じたサーヴァント同士でなく。サーヴァントとそれを召喚したマスターだと誰が知ろう。 事の起こりは丁度10分前。 この二人が会敵したのは、光り輝く鎧兜に身を包んだセイバーのサーヴァントと、それを従える魔術師の主従。 前に出ようとしたティトゥスを制し、マスターである雷泥が前へと出、格好に相応しく腰に帯びた刀の柄に手を掛けた。剣の英霊で無くても判別できるその構え。居合の構え。 マスターがサーヴァントを下げて、自分で戦うという事態を訝しんだセイバーは、秒にも満たぬ内にその解を得た。 彼我の距離凡そ10m。其れをセイバーのクラスを得て現界した英霊ですらが、辛うじて認識できる速度で詰め。ままに、抜刀。 居合使いの抜刀は即ち斬撃であり。 全ては一つの動作のもとに行われ、完了した。 人の域を超えた英霊すら認識できぬ抜き打ちは、棒立ちのままのセイバーの首を刈り飛ばした。セイバーが驚愕の表情を浮かべたのは、胴と首が分たれて後だった、 魔技。そうとしか言えぬ踏み込みと抜き打ち。このマスターは、人の身でありながらサーヴァントを斬り殺す。正に魔人と呼ぶべき存在なのだった。 579:FUJIYAMA HITOKIRI PARADISE ◆/dxfYHmcSQ:2023/10/23(月) 18 45 36 ID GFVC4gNg0 「詰まらぬ」 セイバーを斬り殺した雷泥の感想は、実に短く、素っ気がなかった。 傍目から見ればそう言いたくなるのは分からなくも無い。 踏み込んで、抜刀。これだけで『最優』と謳われるクラスのサーヴァントを斬り伏せたのだ。あまりにも呆気なく、あまりにも圧倒的な決着でしか無い。この様な結果を齎した弱敵に対する言葉としては、妥当とすら言える。 「致し方あるまい。マスターが前に出るのは聖杯戦争の常道に反している。策を疑い、お主に意識を向けられなかったのだろう」 敵を譲って、控えていたティトゥスがマスターを宥める。 だが、ティトゥスにしても、明らかにセイバーに対する落胆の色がハッキリと伺える。 「それでもあの脆さは有り得ぬ。人を超えた英霊とは言えども、やはり所詮は人という事か、某を破ったヴァッシュ・ザ・スタンピードには到底及ばぬ。この様な相手など、どれ程斬っても何の感慨も湧かぬ」 「あのセイバーが未熟だったゆえよ。人の身でありながら人を捨てた者を凌駕した戦士ウィンフィールドに比すれば、到底お主の敵足りぬ弱者よ。 お主の剣。人外のものには通じなかったと言っていたが、それはお主が未熟な所以。真に極まった拳技は、人の身でありながら、魔人となった拙者を打ち倒したぞ」 「人でありながら、人を棄て魔人となったお主が及ばなかったという男か。人が人以上のものに勝てるとは、到底信じられぬ」 僅かに、ティトゥスの目元が険しくなる。 言外に、『お主が弱いだけなのでは?』と滲ませた疑念に気づかぬティトゥスでは無く。 「ならば試してみるか。主人に疑われたままというのも、気分の良いものではない」 「応じよう」 そういうことになった。 両者ともに剣狂者であるが故に、剣の陶酔に酔い痴れた者達であるが故に。互いに機を窺っていたのかも知れなかった。 ◆ かくして両者は対峙する。雷泥は神秘や魔術とは無縁の人間であるが、ティトゥスの生成した刀を腰に手挟んでいる。その刀を振るえばサーヴァントといえども斬り伏せることが能うのは、先刻のセイバーが証明している。 剣の英霊すら正面から容易く斬り殺した、魔業と呼ぶべき雷泥の剣技を、キャスタークラスのティトゥスが受けることは能うのか? 常識的に考えれば不可能だが、雷泥が帯びるのと同じ刀を両手に提げたティトゥスの表情には、一片の翳りも、一雫の汗も無い。 あるかなきかの風が二人の髪を揺らめかせ、風が止むと同時。 「参る」 静かに宣告した雷泥が、10mも有った距離を刹那の間よりも短くゼロにする。 セイバーを斬った時よりも更に速い、鬼神ですら棒立ちのまま斬り殺されるほどの踏み込み。そして、抜刀。 サーヴァントを失えば六時間後に死に至る。そんな事など微塵も脳裏に存在しないと、見るもの全てに悟らせる抜き打ちで、ティトゥスの首を狩にいく。 この一斬を平然と見切り、右の刀で防ぐのと、左の刀で雷泥の喉首を突き裂きにいくティトゥスは、鬼神すら超越する魔人であった。 こちらも又、マスターを失えば、現世に留まる要石を失い、消滅する。その様な事実など意識の端にも存在していないと、見る者全てに悟らせる。 ティトゥスの反撃に対し、左に────ティトゥスから見て右へと回り込んで回避。逆袈裟に刀を振り下ろし、ティトゥスの背面を狙うも、雷泥が刀を振るい出すよりも早く、ティトゥスは大きく前へと跳躍して雷泥に空を斬らせる。 着地と同時に、素早く右旋回、回転の勢いのままに、隙を晒した雷泥の首を狙い右の一刀を振るうも、雷泥の刀身に阻まれる。 鋼の激突する音が天地を震わせる。ティトゥスがクラススキルにより得た結界作成能力が無ければ、周辺の住宅地に響き渡ったであろう、壮絶な刃と刃のぶつかり合う音が消えぬ内に、雷泥は後ろに飛んで距離を取り、腰を薙ぎに来たティトゥスの左の斬撃を回避する。 「クク…よもや死して後に、これ程の剣士と出逢えようとは!刃をこうして交えることが、これ程に愉悦とは!」 血笑を浮かべて独白する雷泥の顔は、熱砂の惑星で終ぞ出逢えなかった『剣士』との邂逅に、打ち震える剣鬼のそれ。 銃を使う者(ガンスリンガー)ばかりのノーマンズランドでは生涯経験する事が能わなかった『斬り合い』の愉悦に、雷泥の全身は歓喜に震え、心は闘志と悦びに猛り狂う。 この電脳空間に現出した時の、豪雨の中彷徨う野良犬の様な、悄然とした風情は何処にも見えない。 「拙者が生前に出逢った如何なる剣士も、お主は斬れるだろう。感謝するぞマスター。剣者として、剣を交える悦びを思い出させてくれた事を」 悪鬼の如き笑みを浮かべて語るティトゥスも又、歓喜に震えて闘志を燃やす。 刀を振るい。刃鳴を散らし、生命を散らす刃の陶酔に酔い痴れた剣狂者。 「次の一太刀で、雌雄これ決せようぞ」 刀を鞘に収め、居合の構えを取った雷泥の総身から噴き上がる“気”が、より一層密度をす。分厚い鋼の板でさえも、貫くであろう殺気。 対してティトゥスはより一層口元を歪めて全身から力を抜く。完全なる脱力。雷泥の如何なる動きにも即応し、刃を叩き込む後の先の構え。 雷泥の口元が、獲物を前に牙を剥く肉食獣のそれを思わせる程に吊り上がる。 「参る!!」 地を蹴立てて雷泥が奔り出す。 ◆ ────これは見切れぬ。 雷泥が奔り出した直後に、ティトゥスはそう結論づけた。 ティトゥスを中心として、螺旋を描いて奔る雷泥に最初はめんくらったものの、闘争に於いて銃がものをいう世界で、雷泥が『剣士』として屍山血河を築いたことを思い出し、得心する。 およそ銃というものは、射手から見て横────左右に動く相手には兎角当て難くくなるもの。 あの渦を描く奔りは、射手に狙いを付けさせない事と、接近とを兼ねた動きなのだろう。 ああして近付き、充分に距離を詰めてから、最後はすれ違いざまに斬る。 これがこの技の要諦なのだろう。だが、その程度ではティトゥスが見切れぬ筈は無く、そもそもが熱砂の惑星で撃ち殺されていてもおかしくは無い。螺旋を描いて近付き斬る、ただそれだけならば。 同じ速度で周り、同じ拍子で走るのならば、軌道とタイミングを読んで雷泥が未来に於いて居る場所に銃弾を送り込めば良い。それだけで、雷泥は死ぬ。雷泥と相対した者達が、よもやそれすら成し得ぬ愚鈍ばかりだったという訳でも無い限り。 ティトゥスが見切れぬと断じたのは、雷泥の歩法だ。 一定して疾走。しかして歩幅と速度は一歩踏み出すごとに変化する。 統一性の存在しない疾走は、酔っ払いの千鳥足の方がまだ捕捉しやすいとさえ思える。 此れではタイミングなど測れない。雷泥の未来位置を予測し、銃弾を送り込むなど到底叶わない。 ティトゥスはこの疾走と同質のモノを識っている。 精妙狂乱の疾走で幻惑し、距離を掴み損なわせる。 焦りから速すぎる攻撃を行う。惑乱のままに機を失い、反撃が遅れる。 そうして隙を晒した相手を斬り殺す。 確と間合いを図り、惑わされる事なく必殺の機を窺う相手には、最後の最後で大きく跳躍し、一気に間合いと“機”を奪い尽くして、ままに、斬る。 ────示現流の“懸り打ち”と発想と動きを同じくする剣技。我流でここまでよく練り上げた。幕末の京都で死合った薩摩の剣士達よりも遥かに上だ。 此れでは確かに読めぬ。更に悪い事に、雷泥はティトゥスを中心に螺旋を描いている。 ティトゥスの前後左右何処から最後の跳躍を行うのかは完全に雷泥次第だ。正面から走り寄って斬りつけてくるだけの“懸り打ち”よりも対処は遥かに難しい。 ────正しく魔剣よ。だが、それを破る技は、お主が斬り飽きたと語る“人”の中に在る。 ティトゥスは雷泥の動きを追うことを止めた。捉えるべきは、雷泥の奔りでは無く、生死を分ける、その刹那。 ────刹那の時間を見極める動体視力と速度を以ってして初めて神域のクロスカウンターを可能とする ティトゥスの脳裏に浮かぶウィンフィールドの声。雷泥を破るは魔人の剣術(ブレイドアーツ)に非ず、かの執事(バトラー)の拳技(フィストアーツ)。 人の産み出した鬼子の剣たる魔剣を破るのは、人が永き刻の中で練り上げた思考の芸術(アーツ)。 60…54…50…47…42…39…32…26………。 狂乱にして精妙なる疾走は、ティトゥスをして動きを捉えることを許さぬまま、着実に距離を狭めて来る。 20…16…11…8……。 死生を分つ決着の時は────。今。 「御首頂戴!!」 必殺の意志を声とした雷泥が、5mの距離を声の響きが消えるよりも早くゼロにして、抜刀。ティトゥスの首へと必殺の抜き打ちを放ち────。 全休付・無音。 雷泥の一刀は虚空を断ち。ティトゥスの持つ刀の柄頭が、雷泥の鳩尾を深々と抉り抜いた。 ◆ 地面に仰向けに倒れた雷泥の表情は、無惨というより他に無い。 生前にも、そして死後にも、“人を超えた者”を前に、己が剣は破れたのだ。 己の剣は結局のところ、その程度でしかないと識らされたのだ。 「某の剣はこの程度であったか、所詮は人ならざる者前では、子供の戯れに過ぎぬ剣でしか無かったという訳か」 己が剣を再度“人を超えた者”に凌駕された悔しさが、雷泥の嗚咽となって空気を震わせる。 所詮、この程度。 人が神の寵愛を一身に受けた才に恵まれようと、血反吐を吐き身を削り命を削り魂を削る程の鍛錬を経ても尚、“人を超えた者”はただそれだけで上を行く。 その事実が、酷く虚しかった。 「やはり、人の身を捨てるより他無し」 人間であることが弱さの理由ならば、人間を捨てて更なる高みへと至ろう。雷泥は聖杯大戦に挑む理由を再度決意した。 「いや、主人の剣は、拙者には見切れなかった」 その決意を揺らがすかの如く、頭上からティトゥスの声が降って来る。 「何と……!」 「主人殿の剣は、正しく魔剣と呼ぶに相応しいもの。生前の拙者であれば、ウィンフィールドと死合う前の拙者には、到底見切れなかった」 「………………………」 「主人殿の剣を破ったのは、拙者の剣では無い。ウィンフィールドの拳技よ」 「……人が、人以上のものを、破ったというのか」 「口惜しくはあるが、人でなくなった身には、人のままに人を超えた、あの戦士の拳は越えられぬよ」 「ならば、某にも、同じ事が」 「出来るかどうかはお主次第よ。だが、人を捨ててしまっては、到底届かぬ境地であろうな。幸い、此処には斬りでのある敵が犇めいている事だろう。聖杯を手にする迄に、何かしら掴めるかも知れんぞ」 ティトゥスは清々しささえ感じさせる風情で語る。だが、その内容はあまりにも血生臭い。 所詮は魔人。人である事をやめた者。悟りの境地へと至る道など当の昔に見失っている。 最早その道は、屍で舗装されるより他に無い。その在り方は、鮮血で彩られるより他に無い。 「聖杯に願う前に、“人”を極め尽くすも又一興か。ならばキャスター。この聖杯大戦を制した時には、もう一度某と立ち合え。人の身で、人を超える事ができるかどうか、試させて貰う」 ティトゥスの口元に笑みが浮かぶ。悪鬼羅刹も泣いて許しを乞う様な、そんな笑み。 「承知した」 雷泥の顔にもまた。同じ笑みが浮かんでいた。 ◆ 人骨踏みしめ怨念喰らい 這いずり進み血を啜る 悩ましきかな我が武道。 ニトロプラス『刃鳴散らす』 【名前】 ティトゥス@デモンベインシリーズ 【CLASS】 キャスター 【属性】混沌・悪 【ステータス】筋力;C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A+ 幸運:D 宝具;A++ 【クラス別スキル】 陣地作成:D 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 ”結界”の形成が可能。 人払いの術と変わらぬ程度だが、当人の魔術師としての位階の高さも有って、かなりの広範囲を覆う。効果も高い。 道具作成:D 魔術的な道具を作成する技能。 手のひらが裂けて日本刀が生えてくる。生成速度はかなり速く、魔力消費も殆ど無い。 【固有スキル】 魔人:A 高位の魔導書と契約し、人を棄て、人を超え、常理の外に在る存在。外道の知識により、その身も心も人のそれでは無くなっている ランク相応の堕天の魔、精神異常、魔術、魔力放出、自己改造の効果を発揮する。 戦闘続行:A 往生際が悪い。 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。 心眼(偽):B 直感・第六感による危険回避。 無窮の武練:C 重傷を負っていてもその剣技が鈍る事はない。 【宝具】 屍食教典儀(カルツ・ディ・グール) ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:自分自身 ダレット伯爵の著した魔導書。 フランス国内の人肉食や屍姦を行う邪教集団について記されている。 高位の魔導書であり鬼戒神(デウス・マキナ)を召喚出来る。 この書物自体が魔術の駆動式である為に、高ランクの高速詠唱の効果を所有者に齎すが、精神耐性スキルを高いランクで持っていなければ、精神を外道の知識に蝕まれて発狂する。 キャスターはこの書物により高い身体能力と回復能力を得ている。 普段は位相の異なる空間に収納されている。 鬼戒神・皇餓(デウスマキナ・オウガ) ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1OO人 屍食教典儀(カルツ・ディ・グール)により召喚される鬼戒神(デウス・マキナ) 鬼戒神(デウス・マキナ)とは魔導書に記された『機神召喚』の術式を駆動する事により召喚される神の模造品である。 膨大かつ高密度の異界情報を、巨大な魔力と複雑な魔術式で編み上げ、魔導書に記された巨神のイメージを物質化させる事で顕現させる。 超高密度情報体であり、通常の攻撃では情報密度を破壊できず、魔術理論を応用した攻撃か、同じ鬼戒神(デウス・マキナ)でなければ有効打を与えにくいという性質を持つ。 宝具とし扱われるにあたって、Bランク以上の神性や魔性に属する事を表すスキルを所有しているか、Bランク以上の神造宝具を用いぬ限り、一切の攻撃を無効化する。 速度に優れ、二振りの刀を振るう近接戦闘を得意とする。 奥の手として、召喚者であるティトゥスと同じく、一対二腕の隠し腕を用いた『四連斬』を用いる。 本来は50mの巨体と2616tの重量を有するが、宝具となるに際して、3m・1tにまでサイズが小さくなっている。 【Weapon】 日本刀: 掌が裂けて生えて来る。何本でも出せる。ティトゥスの技量と合わさって、分厚い鋼の扉も薄紙の様に切断する 隠し腕: 一対二腕の隠し腕。この腕も日本刀を生やせる。この腕を用いての四連撃『四(死)連斬』がティトゥスの奥義。 なお初見殺しの不意打ち技であり、一度見られると通用しない。作中ではウィンフィールドをこの技で破るも再戦時にはあっさり見切られて敗死。続編の機神飛翔デモンベインに於いても、無限螺旋の記憶を僅かに取り戻したウィンフィールドに回避されている。 ウィンフィールドから伝え聞いただけの大十時九郎にも躱されている辺り、秘匿性が大事な技であると言える。 【解説】 魔術結社『ブラックロッジ』の七人居る大幹部『アンチクロス』の一人。 幕末の日本に生まれ、戊辰戦争終結後にアメリカに渡り、ギャングを斬りまくって悪名を轟かせ、更なる強さを求めて魔導書と契約して魔人へと堕ちた男。 宿敵と定めたウィンフィールドと戦い、人のまま人を超えたその強さの前に完敗。己の間抜けさを嘲笑いつつ死亡する。 余談ではあるが、人間辞めなかった場合。悟りの境地に至って人間辞めるよりも強くなったとの事。お前の人生なんだったの?とか言ってはいけない。 無限螺旋に於いては、鬼戒神・皇餓を駆ってデモンベインと戦い、敗れる事もある。 このティトゥスは、時間軸が意味を為さない無限螺旋から英霊の座に至った存在である為に、デモンベインに破れて死んだ記憶も持ち合わせているが、彼が『敗北した相手』と訪ねられて名を挙げるのは、ウィンフィールドである。 【聖杯への願い】 無いといえば無い。強いて言えば人間辞めなかった場合、何処まで強くなれたのかを識りたい。 その上でウィンフィールドと再戦したい。 【マスター】 雷泥・ザ・ブレード@TRIGUN 『能力・技能】 遺棄された宇宙船の記録から、地球の剣術について学び、『次元斬一刀流』を創始する。 サイボーグが徘徊し、銃がものいうノーマンズランドで、刀一本で屍山血河を築ける剣の技量。 斬る相手を中心に銃撃回避と接近を兼ねる螺旋を描きながら接近。すれ違いざまに斬る『二重星雲(ふたえネビュラ)』が奥義。 【解説】 ミリオンズ・ナイブズが集めた殺人集団GUNG-HO-GUNSの No.9。 銃やサイボーグすら相手にならない剣腕を持ち、人を斬るのに飽きて、人以外のものを斬ってみたいと思うようになる。 その思いを抱いて、人では無い存在であるヴァッシュ・ザ・スタンピードと戦うも、二重星雲を破られ、気付かぬうちにローラーを破壊されて、戦う術を奪われる。 この事に己が生涯を捧げた剣が人を超えたものには終ぞ届かぬと知り、狂乱。 後ろからヴァッシュを撃とうとするも後ろからウルフウッドに頭を撃たれて死亡。 人を斬るのに飽きたと言う前に、レガートかミッドバレイを斬ったら?とか言ってはいけない。多分仲間は大切にするタイプなんだろう。きっと。 【聖杯への願い】 聖杯大戦中に人のまま人を超えられるか試す。丁度良い砥石(サーヴァント)は幾らでも居るし。 人を超えられない時は聖杯に願って人間辞める。 【参戦時期】 死亡後
https://w.atwiki.jp/syuria00/pages/26.html
一覧です。 気まぐれで追加される場合があるので今あるのが完全版ではありません。 またTOMのシステムにより特技、秘技、奥義の概念はありません。 アルフレッド 名前 属性 分類 説明/備考 麒麟刃[キリンジン] 物理 双極 回転する真空波を放つ。射程は中距離まで。 散華麒麟刃[サンカキリンジン] 物理 双極 麒麟刃中に再度入力で発動。双極を回転させながら振るい、4方向に真空波を飛ばす。 散星麒麟刃[サンセイキリンジン] 物理 双極 散華麒麟刃中に再度入力で発動。双極を高速回転させながら振るい、全方向に真空波を飛ばす。 天翔陣[テンショウジン] 風 双極 気を巻き上げながら飛び上がり、周囲を攻撃する。 緑龍天翔陣[リョクリュウテンショウジン] 風 双極 飛び上がらず双極を高速回転させて竜巻を起こす。天翔陣より広範囲。 流麗牙[リュウレイガ] 武器 双極 小さく飛び上がりながらの、流れるような連続斬り。 陽眼[ヨウガン] - 特殊技 ダメージ補正を一定時間抑える(ステージによって補正抑制率変動) 天想来[テンソウライ] 光 特殊技 一定時間、攻撃と防御を25%上昇させる。発動時に光属性の雷が周囲に落下。 円閃牙[エンセンガ] 武器依存 双極 双極を回転させる連続斬り。敵を浮かせる。 円閃襲落[エンセンシュウラク] 武器依存 双極 円閃牙の追加技。素早く飛び上がり上空から一撃を与える。ガード不能。 翔転牙[ショウテンガ] 武器依存 双極 敵を打ち上げ空中で双極を回転させて最後になぎ払う。 麒麟月臥斬[キリンゲツガザン] 武器 双極 巨大な竜巻のような回転する真空波で敵を打ち上げながら飛んだ後、月型の巨大真空波で追撃する。 流麗天翔[リュウレイテンショウ] 武器 双極 飛び上がりながらの連続攻撃の後、天翔陣に連携する技。 連転旋風斬[レンテンセンプウザン] 武器 双極 円閃牙→翔転牙と連携する技。 虎煌刃[ココウジン] 物理 双剣 煌く刃で2連撃を行う。真空波を纏うのでリーチはそれなりに長い。 煌刃断衝[コウジンダンショウ] 物理 双剣 虎煌刃の追加技。強力な一撃で敵を吹き飛ばす。 飛翔閃[ヒショウセン] 物理 双剣 飛び上がりつつ斜め上に一閃する。敵の背後の空中に回れるのが特徴。 飛天双翼閃[ヒテンソウヨクセン] 物理 双剣 飛翔閃の追加技。そのまま急降下し敵を一閃、元の位置に戻る。 飛翔鳳翼閃[ヒショウホウヨクセン] 物理 双剣 飛翔閃の追加技で属性変化技。その場から鳳凰天駆を発動。 襲爪風刃[シュウソウフウジン] 物理 双剣 軽く跳躍しつつ間合いを詰め、舞うように双剣を振り、周囲に発生させた風の刃で攻撃する。 翔舞月華[ショウブゲッカ] 物理 双剣 飛びながら敵を切り上げで打ち上げた後、斜め下に向けて月型真空波を飛ばす。 屠龍連翔舞[トリュウレンショウブ] 物理 双剣 斬り上げ>飛び上がり斬り上げ>空中水平斬り>斬り落ろし>閃光とともに斬り上げ。 離脱竜風[リダツリュウフウ] 武器 共通 ガードした瞬間に双極の状態で回転させ、竜巻を放ちつつ後退するカウンター技。 竜風追閃[リュウフウツイセン] 武器 共通 離脱竜風後に、突風を纏いつつ敵を一閃するEXカウンター技。 緑龍旋風刃[リョクリュウセンプウジン] 風 双極 龍のような貫通する竜巻を前方に放つ秘奥義。 煌天千衝斬[コウテンセンショウザン] 光 双極 空中から回転する真空波を乱発する2次秘奥義。 麒麟刃・天牙[キリンジン・テンガ] 光 双極 双極の二つの刃が光の刃で巨大化し、回転してエリア全体をなぎ払う3次秘奥義。 界皇滅星刃[カイオウメッセイジン] 物理 双極 星命武器の力を解放し、全てを滅する刃で粉砕する最終奥義。ラスボス戦の最後に自動発動。 ライル 名前 属性 分類 説明/備考 爆砕斬[バクサイザン] 地 斧 斧を叩きつけ石つぶてで攻撃。 爆壊連舞[バクカイレンブ] 地 斧 爆砕斬の追加技。振り上げて更に多くの石つぶてを飛ばす。 翔牙爆連舞[ショウガバクレンブ] 地 斧 爆壊連舞の追加技。衝撃波を纏った飛び上がりながらの切り上げ。 裂旋斧[レッセンブ] 武器 斧 斧を大きく回転させて攻撃。範囲が広い。 追烈連斧[ツイレツレンブ] 武器 斧 裂旋斧の追加技。ガード不可能の裂旋斧を見舞う。 連牙絶衝斬[レンガゼッショウザン] 武器 斧 追烈連斧の追加技。2回連続で裂旋斧を見舞った後、反対方向に斧を振るうと同時に衝撃波。 獅子戦吼[シシセンコウ] 物理 斧 獅子の闘気で敵を吹き飛ばす。高威力。 獅吼翔破陣[シコウショウハジン] 物理 斧 獅子戦吼の追加技。吹き飛ばした相手を飛び上がりながら追尾し、斧を叩きつけた衝撃で浮かせる。 雷神招[ライジンショウ] 雷 斧 斧を振り上げ落雷を落とす。 雷神光燐[ライジンコウリン] 光 斧 雷神招の追加技。光を纏った斧でなぎ払う。多段ヒット。 放追衝[ホウツイショウ] 物理 斧 斧を突き出し、敵を捉えた後、振り上げて斜め上に吹き飛ばす。ガード不能。 翔凰墜砲[ショウオウツイホウ] 物理 斧 放追衝の追加技。レーザー状の衝撃破で追撃する。 弧月旋[コゲツセン] 物理 斧 月を描く切り上げ。 翔月双旋[ショウゲツソウセン] 物理 斧 弧月旋の追加技。空中で再度弧月旋を出す使いやすい技。 華天月砕[カテンゲッサイ] 光 斧 振り下ろし→振り上げで敵を打ち上げた後、空中で月を描く斬りを描き叩きつける。かなり高威力。 絶空天牙[ゼックウテンガ] 物理 斧 空中専用。カマイタチを纏った斧を連続で振るう。 無影閃[ムエイセン] 物理 斧 後退後、ガード不能のなぎ払いを行うカウンター技。 無影幻魔[ムエイゲンマ] 闇 斧 後退後、ガード不能のなぎ払い→闇属性の衝撃波と連携するEXカウンター技。 剛招来[ゴウショウライ] 炎 全共通 一定時間攻撃力を50%上昇させる。発動時に炎属性の衝撃波。 灰燼爆炎打[カイジンバクエンダ] 炎 秘奥義 渾身の力を込めて炎属性の大爆発を起こす秘奥義。 光雨鳴衝閃[コウウメイショウセン] 光 秘奥義 槍で残像をも残す光属性の連続突きを行い最後に吹き飛ばす2次秘奥義。 四聖連撃[シセイレンゲキ] 氷雷風炎 秘奥義 一定範囲の敵を氷漬け→周囲に雷→竜巻→拳を振り上げ爆発 と連携する3次秘奥義。 無間滅界[ムゲンメッカイ] 物理 最終奥義 衝撃波を出しながら力を溜めた後、フィールドを崩壊させるような全体攻撃を行う最終奥義。 ミンティア 名前 属性 分類 説明/備考 ソニックエッジ 風 詠唱無し簡易術 凄まじい速度の風の刃を一発放つ。微妙に敵を追尾。 デュアルソニック 風 詠唱無し簡易術 凄まじい速度の風の刃を2発放つ。敵を挟み撃ちするように追尾。 アクアブラスター 水 詠唱無し簡易術 圧縮された水の弾を前方に無数に放つ。 スプレッド 水 詠唱無し簡易術 圧縮された水流を敵の足元から立ち昇らせる。 サマーアミュレット 炎 詠唱無し簡易術 敵を追尾する炎の弾を6発発生させる。個々の威力は低いが追尾性能が優秀。 ダイヤモンドレイン 地 詠唱無し簡易術 堅く綺麗な鉱石を上空から5発落とす。 シューティングレヴァリエ 光 詠唱無し簡易術 対象に向かって線を発した後、強力な光線が敵を貫く。 ブロークンハート 闇 詠唱無し簡易術 敵を吹き飛ばし貫通する紅き槍を、前方に一直線に投げる。 ファーストエイド - 回復術 対象のHPを30%回復。 ハートレスサークル - 回復術 徐々にHPが回復する陣を一定時間作り出す。 リキュペレート - 回復術 範囲状態異常回復。 レイズデット - 回復術 単体の戦闘不能を回復。 リザレクション - 回復術 広範囲において大幅にHPを回復する。 ブルーアース - 秘奥義 味方全員のHP、状態異常、戦闘不能を全回復する一次秘奥義。 メイルシュトローム 水属性 攻撃術 巨大な水柱を中心に激しい水流が展開し、広範囲を巻き込む術。 テトラプリズン 光 攻撃術 プリズムソード→ホーリーランス→グランドクラス と連続で術を発動する。 スーパーノヴァ 物理 秘奥義 超新生爆発を起こし全体を攻撃する二次秘奥義。 プラネット・スペル ※変動 秘奥義 元素の精霊の恩恵による超強力魔術を連発する最終奥義。 ラルフ・キャバリエーレ 名前 属性 分類 説明/備考 旋風斬[センプウザン] 武器 剣 小さく飛び上がりながら素早く斬る。 旋風連斬[センプウレンザン] 武器 剣 旋風斬の途中で再度旋風斬のコマンドを入力することで発動。逆の方向に斬る。 旋風連翔刃[センプウレンショウジン] 武器 剣 旋風連斬の途中で旋風斬のコマンド入力で発動。強力な旋風斬の後、飛び上がりながら斬り上げる。 閃空裂破[センクウレツハ] 武器 剣 回転斬り>突き。 閃空翔裂破[センクウショウレツハ] 武器 剣 閃空裂破の途中で旋風斬のコマンドを入力することで発動。突きを出さず空中で吹き飛ばす。 天塵閃空破[テンジンセンクウハ] 武器+光 剣 閃空裂破で飛び上がった後、浮いた敵の足元から光り輝く竜巻型真空波を発生。ヒット数が多く追撃しやすい。 烈炎剣[レツエンケン] 火 剣 ガードしたときに剣を引き、その摩擦熱により炎属性を付加。そのまま切りつけるカウンター技。 紅龍剣[コウリュウケン] 火 剣 素早く剣を引き、更に魔術で炎を強化。回転切りで飛び上がり龍の形をした炎を敵にぶつけるEXカウンター技。 集気法[シュウキホウ] - 剣 体力15%回復。 双牙斬[ソウガザン] 武器 剣 斬り下ろし>ジャンプしながらの斬り上げの2段攻撃。 雷斬襲撃[ライザンシュウゲキ] 武器+雷 剣 双牙斬後にコマンド入力で発動。雷を5発落とした後、急降下しつつ斬る。 飛月斬[ヒゲツザン] 物理 剣 月型の真空波を飛ばす。 飛月双牙[ヒゲツソウガ] 物理 剣 飛月斬後に同じコマンド入力で発動。 斬魔月衝刃[ザンマゲッショウジン] 武器 剣 飛月双牙後に入力で発動。ガード不可能かつ確実に気絶状態にさせる巨大な月型真空波を飛ばす。溜め時間があるのでコンボにはならない。 守護方陣[シュゴホウジン] 物理 剣 地面に剣を突き刺し、立ち上る光で攻撃する。陣内に味方がいると回復させることもできる。 虚空蒼破斬[コクウソウハザン] 光 剣 力を溜めた後、飛び上がりながら剣を振り上げ衝撃波で攻撃する。 幻魔衝[ゲンマショウ] 武器 剣 残像を残すように背後に移動。そのまま貫く。残像が出ている間は敵の攻撃を残像に集中させることができる。 空破絶風撃[クウハゼップウゲキ] 風 剣 幻魔衝後に同じコマンド入力で発動。一瞬後退した後、突風をまとった突きを繰り出す。 光龍滅破衝[コウリュウメッパショウ] 光 剣 空破絶風撃後に同じコマンド入力で発動。敵の前に戻り光属性の強力な突きを放つ(吹き飛ばし) 次元光翔[ジゲンコウショウ] 物理 剣 巨大な元素の剣を生成し、飛び上がりつつ斬り上げ攻撃を行う。リーチが長い。 時空斬光破[ジクウザンコウハ] 物理 剣 次元光翔に再度入力で発動。巨大な剣で切り下ろし>切り上げ>一閃と行う。 爪龍斬牙[ソウリュウザンガ] 物理 格闘装備 腕に装着した刃で素早く接近し、切りつける。 幻穿衝破[ゲンセンショウハ] 物理 格闘装備 幻魔衝中に爪龍斬牙を入力すると発動。アッパーカットで敵を浮かせる。 デルタレイエッジ 物理 剣 3角形を描くように強力な3連切りを行った後、一閃して光の爆発を起こす秘奥義。 エカトルブレイド 風 剣 全方向から風の刃で斬り刻んだ後、剣を叩きつけ嵐を巻き起こす二次秘奥義。 レッドキャバリア 闇+光 剣 横方向へ分身し単体へ向けて突きで貫き紅き剣を模す3次秘奥義。使用後は覚醒状態に。 ディリジャン 光 秘奥義 力を解放した後10秒間自由行動が取れ全ての通常攻撃、技に追加で強力な衝撃波が付加され、10秒後敵を打ち上げて上空にレーザーを放ちフィニッシュする最終奥義。使用後はディリジャンの力で戦える。 ディバインフィールド 雷 特殊技 ディリジャン時に守護方陣使用で発動。周囲に無数の雷を落とす。 ウィンドエッジ 風 攻撃術 敵のいる地点に風の刃を発生させる。 タービュランス 風 攻撃術 突風を巻き起こす。 サンダーブレード 雷 攻撃術 雷の剣を落とす。 ディバインセイバー 雷 攻撃術 外から内へ次々と雷を落とす。 爆雷爪翔剣 雷 RIMIXスキル独立技・剣 高く飛び上がり、雷の力を宿した剣を叩きつけて周囲に放電及び落雷攻撃。威力は高い。 風雅断空剣 風 RIMIXスキル独立技・剣 周囲に気を発した後、凄まじい質量の風とともに舞い上がる。敵を高く浮かせる。 ゼーレ=ミストラル 名前 属性 分類 説明/備考 ドリーミング・コリド - ミストラル 幻想空間を経由し敵の背後に移動。 コルダランス 氷 ミストラル 氷の槍を生成して敵を貫く。 スノウ・スパイカー 氷 ミストラル 斜め上に素早く飛び攻撃。 クリスタル・ルナ 氷 ミストラル スノウスパイク後追加入力で発動。月を描く蹴り。 フリジットサン 氷 ミストラル 自分を中心に氷の槍を全方位に展開。 レイク・ロンド 物理 ミストラル 踊るように回りながら敵に接近>開脚して敵の足元に攻撃。 レイク・ロンド・ノヴァ 光 ミストラル レイク・ロンド回転中に追加入力。回転回数が増え、光の球で攻撃する。 ノヴァ・スワン・ロンド 物理>氷 ミストラル 踊るように回りながら上昇>叩き落し。 アボマファンタジー 闇 ミストラル この世の様々な禍々しき幻想が収縮された弾を放つ闇属性攻撃(多段ヒット) アクアスパイク 水 ゼーレ術 圧縮した水の弾を放つ。 フリーズランサー 氷 ゼーレ、ミストラル術 無数の氷の槍を前方に飛ばす術。 ブラッディファンダズム 闇 ミストラル術 あらゆる負の感情を具現化する全体攻撃術。 ファーストエイド - ゼーレ回復術 対象のHPを30%回復。 メディテーション - ゼーレ回復術 対象のHPを60%回復。状態異常回復。 リフサル・トランス - 回復術 事象の拒絶により対象一人を全回復。(ゼーレがミストラルと融合後使用可能) 黒陽刀〔コクヨウトウ〕 - ゼーレ、ミストラル 黒陽刀装備。通常攻撃変更及び技の使用が不可能になるが攻撃力アップ。 インブレイスエンド 氷 ゼーレ 氷の棺に敵を閉じ込めて終焉を与える秘奥義。 ブラッドフォートレス 闇 ミストラル 空想の中の惨殺空間を展開する2次秘奥義。 ナット・ナウ・ユートピア 物理 秘奥義 空間そのものを破壊して敵全体に大ダメージを与える最終奥義。また、事象の消滅を行うためパーティメンバーの全てが全回復。(ゼーレがミストラルと融合後使用可能) アクィラ・ベイオネット 名前 属性 分類 説明/備考 リロード - 共通 アタックチェーンを回復させる。自動回復と違い瞬時に回復するのが特徴。 サーチショット 物理 ライフル 高威力かつ命中率の高い銃撃を行う。 Lブラスター 物理 ライフル 貫通するレーザーを放つ。チャージすることで射出時間と威力が増加。 ラピッドライフル 物理 ライフル その場で連射する。ヒット数が非常に多いが、1発あたりの威力は低い。 ポイズンブレッド 物理 ライフル 一定確率で毒効果にする銃弾を放つ。 バニッシュレイン 光 ライフル 上空に無数の光弾を発射した後地上に降り注ぐ時間差攻撃。光属性。 Lブレード 物理 ライフル 銃口からレーザーを発し、刀身を生成する、強力な通常攻撃が可能になるが、別の技を出すと消滅。 ブレッドファン 物理 ライフル 扇状に弾をばら撒く。至近距離で当てるとヒット数増加。 ソニックショット 物理 二丁拳銃 衝撃波を2つ放つ。射程は中距離までだが攻撃範囲は広め。 フレアバニシング 炎 二丁拳銃 二丁拳銃の魔力を集中し、巨大な火炎弾を放つ。当たると広範囲の爆発。 デルタヴォルト 雷 二丁拳銃 雷が落下する銃弾を目標の周囲に3発同時に放つ。 スパイラルフレア 炎 二丁拳銃 フレアバニシングをチャージして放つと発動。ライフルで放つので技後は強制的にライフルにチェンジ。 エアブレイド 風 二丁拳銃 ソニックショットをチャージして放つと発動。巨大な圧縮した風の刃を2発放つ。 ヴォルトアロー 雷 二丁拳銃 デルタヴォルトをチャージして放つと発動。3つの雷球の中心に連続で雷を落とす。 ジャッジメント 光 ライフル バニッシュレインをチャージして放つと発動。強力な光が画面全体に降り注ぐ。 スナイプ・ヴェルデ 物理 ライフル 敵一体の急所を撃ち抜き大ダメージを与える秘奥義。他のキャラの一次秘奥義より威力が高い。 FSタイム 物理 ライフル 神域の早さで銃を連射する2次秘奥義。技中は時間の流れがスローになる。 アルカディア・ドライヴ 光 ライフル 敵を掴み、銃で打ち上げた後、真上の敵に零距離で聖なる光を連続で放つ最終奥義。ヒット時に爆風により周囲にもダメージ。また、零距離射撃の対象は即死。 リン・フルール・アルファネス 名前 属性 分類 説明/備考 レイトラスト 物理 チャクラム 貫通するチャクラムを投げる。 グランシャリオ 雷 チャクラム 2つのチャクラムを投げ、交差地点に雷を落とす。 ソルフェージュ 物理 チャクラム チャクラムで連続で切りつけた後、回転攻撃で吹き飛ばす。 ブランティス 物理 チャクラム 両手にチャクラムを持ち回転攻撃。 ウィンドスラッシュ 風 ロッド 目の前に風の刃を発生させる。 スパイク 物理 ロッド 敵を追尾する光の弾を放つ。 バニシングトロイ 物理 ロッド 敵にロッドを突き当てた後、ロッドの先端に溜めた魔力を炸裂させる。ガード不能。 フォトン 光 術 光を収束>拡散させ敵にダメージを与える。 フォトンブラスト 光 チャクラム フォトン詠唱中にソルフェージュを入力すると次にソルフェージュを出した時に発動する技。 リミテッド 光 術 光の柱を落とす。 ファイアボール 炎 術 炎の球を飛ばす。レベルアップで弾数増加。 バーンストライク 炎 術 強力な火炎弾を3発落下させる。 シャープネス - 術 単体の攻撃力を一定時間増加させる。 ピコハン 物理 - 攻撃を受けた瞬間バックステップして、敵の頭上にピコハンを落下させるカウンター技。たまに当たらないことも。 パラライボール 雷 - ピコハンでは無く当たると雷が落ちるボールを落下させるEXカウンター技。命中率は高い。 天装の解放 光 秘奥義 使用武器が変更される秘奥義。発動時に光の波動で周囲にダメージ。 飛刃・翔舞[ヒジン・ショウブ] 物理 ブーメラン 斜め上にブーメランを飛ばす。近距離では敵を高く浮かせることが可能。 飛刃・旋風[ヒジン・センプウ] 物理 ブーメラン 回転するブーメランを留まらせる。遠距離の敵の足止めに有効。 飛刃・砕地[ヒジン・サイチ] 物理 ブーメラン 飛び上がり、ブーメランを地上に投げつけて地面を割る。 舞刃・風月[ブジン・フウゲツ] 風 ブーメラン ブーメランを勢いよく2回転させる。動作が非常に早く、攻撃範囲も優秀。 舞刃・裂空[ブジン・レックウ] 物理 ブーメラン 両手にブーメランを持ち、身体を捻らせながらの空中縦回転斬りで敵を叩きつける。 魔刃・月光[マジン・ゲッコウ] 光 ブーメラン 月を模した魔力の塊で敵を固定した後、斬り下ろしで一刀両断する。 魔刃・旋影[マジン・センエイ] 風 ブーメラン その場でブーメランによる竜巻を発生させ、自身は素早く後ろに飛びずさる。 爆炎旋刃[バクエンセンジン] 炎 ブーメラン 敵の攻撃を回転斬りで弾き、摩擦熱により炎属性による攻撃を行うカウンター技。 爆炎旋月衝[バクエンセンゲツショウ] 炎 ブーメラン 基本的には爆炎旋刃と同じだが、回転回数が増している上、1回転ごとにランダム方向に炎属性の月型真空波を飛ばす。動作が高速化している。EXカウンター技。 亜空槍[アクウソウ] 物理 槍 気を纏いながら敵に突進する。技中無敵で飛び道具も弾き返す。 天衝[テンショウ] 物理 槍 敵の頭上に移動し、一撃を与える。ガード不能。 飛翔旋[ヒショウセン] 物理 槍 逆立ちしつつ槍を回転させ、旋風を巻き起こし周囲の敵を打ち上げる。 光翼の解放 物理 秘奥義 移動手段に「飛行」が追加され、使用技が増加する2次秘奥義。天装の解放を使用している必要あり。発動時に光属性の波動で周囲にダメージ。 ロンギヌス 物理 槍 上空から光を纏った厄災の槍を投げつける。術並みの威力を誇る。 レインドセイグリット 光 槍 力を溜めた後、上空から魔力で作られた聖なる槍の雨により制裁を与える。 ドラゴンランス 光 槍 光の龍を模した閃光で敵を貫く。 炎の守り手の解放 物理 秘奥義 上空で一部通常攻撃を行うと3つの強力な術が無詠唱で発動できるようになる3次秘奥義。光翼の解放を使用している必要あり。発動時に炎の渦で周囲にダメージ。 エンシェントノヴァ 炎 術 飛行中に↑○で発動。浄化の炎を発生させる。 フレアトーネード 炎 術 飛行中に↓○で発動。自身を囲むように炎の渦が立ち上る。 フレイムドラゴン 炎 術 飛行中に←or→○で発動。前方に炎の龍を飛ばす。 プロミネンス・ルイン 物理 秘奥義 自身を媒体として太陽そのものと化し、エリア全体を焼き払う最終奥義。全ての「解放」を行っている必要あり。 ディア・キャバリエーレ 名前 属性 分類 説明/備考 幻影刃[ゲンエイジン] 物理 短刀 後ろに回りこみながら斬る技。 幻影回帰[ゲンエイカイキ] 物理 短刀 幻影刃の追加技。 瞬風閃[シュンプウセン] 物理 短刀 ナイフで動きが見えないほどの連続斬撃。 幻凰閃[ゲンオウセン] 物理 短刀 飛び上がった後、敵の背後に瞬間移動するように一閃する。 水月閃斬[ミツキセンザン] 物理 短刀 敵に突進するような構えを見せた後、敵の頭上にワープして、素早く切りつける。 極死[キョクシ] 物理 短刀 敵の攻撃をかわし、心臓付近に一撃を与えるカウンター技。クリティカル率高し。 確死[カクシ] 闇 短刀 極死より強力。確実にクリティカルヒットし、確実に気絶するEXカウンター技。 月穿[ゲッセン] 物理 格闘 上空に向けて飛び蹴りを放つ。敵を高く浮かせる。 穿月墜[センゲツツイ] 物理 格闘 月穿の追加技。かかと落としで叩き落す。 疾風脚[シップウキャク] 物理 格闘 素早く間合いを詰めて回し蹴り。 三華疾風脚[サンカシップウキャク] 物理 格闘 疾風脚追加技。続けて3連続の蹴りを見舞う。 飛燕連脚[ヒエンレンキャク] 物理 格闘 空中へ飛びつつ3連続の蹴り。 飛燕連天脚[ヒエンレンテンキャク] 物理+風 格闘 飛燕連脚の追加技。サマーソルトキックを見舞う。 青破掌[ソウハショウ] 物理 格闘 敵に掌底を叩きつけ、気を炸裂させて吹き飛ばさずにダウンを奪う。 瞬転裁[シュンテンサイ] 物理 格闘 敵を掴む。追加入力で離す。ガード不可能。派生技参照。 瞬転青破掌[シュンテンソウハショウ] 物理 格闘 瞬転裁中に←or→×。敵を吹き飛ばしてダウンを奪う。 裁転投打殺[サイテントウダサツ] 物理 格闘 瞬転裁中に↓×。地面に叩きつける。 飛裁天月脚[ヒサイテンゲツキャク] 物理 格闘 瞬転裁中に↑×。サマーソルトキックで上空に吹き飛ばす。ジャンプキャンセル可。 影月[エイゲツ] - 格闘・短刀 一定距離を瞬間移動。技中無敵だが派生技があるため発動前に若干の溜めがある。 瞬月影裁[シュンゲツエイサイ] 物理 格闘・短刀 影月の溜め中に←or→×。敵の目の前に瞬間移動し、瞬転裁を発動。派生技への移行可。 月影翔閃[ゲツエイショウセン] 武器 格闘・短刀 影月の溜め中に↑×。敵の頭上に瞬間移動し小型の真空波を飛ばす。確実に仰け反る。 幻月歩法[ゲンゲツホホウ] - 格闘・短刀 影月の溜め中に↓×。敵の背後に回った後、幻影を残しつつ元の位置に戻る。敵の攻撃が幻影に向けられるので崩しに使える。 獅想身[シソウシン] - 格闘・短刀 クリティカル率を2.5倍に。一定時間アタックチェーンを消費しなくなる。 瞬天狼閃[シュンテンロウセン] 物理 短刀 一直線上の敵の背後に瞬間移動して振り向いて斜め上に気を纏った短刀を投げつける秘奥義。 滅鬼炎焼[メッキエンショウ] 炎 短刀 敵の頭上に瞬間移動し敵に向かってあたると強力な火柱を発生させる短刀を投げる2次秘奥義。 風刃乱殺[フウジンランサツ] 風 短刀 瞬風閃で風の刃を無数に飛ばし、球体を生成。風の乱れを切ることで球体を爆発させる3次秘奥義 陰陽[インヨウ] 闇 短刀 ディリジャンと使い魔の力を解放。空間の血で武器を生成し対象を殲滅する最終奥義。使用後はディリジャンの能力で戦える。