約 1,257 件
https://w.atwiki.jp/star_grail/pages/200.html
空気の澄んだ夜だった。 元より多数の人が家で過ごす夜は夜気が澄んでいるが、今日はいつもより静謐で、塵芥も少なかった。 最近多発している連続殺人事件に加え、わくわくざぶーんの崩壊が止めとなって、多くの人間が夜間の外出を控えているのだろう。 「はぁ…良い夜だ」 金髪の修道女。その名は在れども実体は存在しない英霊、ジャック・ザ・リッパーは鼻を鳴らし、愉快気に周囲を見回す。 夜気に乗って漂う花の香りが心地良い。 彼女の生前の記憶にある十九世紀倫敦は “霧の都”などと呼ばれていたが、実態はそんなロマンチックなものでは無い。 工場から出る塵芥が空気中の水蒸気の核となる事によりできた代物でしか無かった。吸い込んだら肺の中まで黒く染まりそうな大気だった。 何しろ燃料といえば石炭の時代である。半端無い大気汚染が濃霧という形で常に空を覆い、死者を量産していた時代だ。 そんな倫敦の大気しか知らぬジャックにとっては、汚染されていないとは到底言えない冬木の大気も充分に澄んだものであるし、星が煌めく夜空も新鮮だった。 「こんな良い夜なのに、誰も出歩かないなんて勿体無い」 心からそう思う。こんなに良い夜なんだから、浮かれた人間の1人や2人いたって良い。 それが女性─────それも好みの女ならば理想的だ。 大気を構成する原子の一つ一つにまで血臭が染み込む程に、汚(バラ)し、穢(バラ)し、陵辱(バラ)し─────。 昼間に見た幻想種(ヤマトナデシコ)を解体し尽くす様を思い描いてジャックは鮫歯を剥き出して嗤った。 美人、と称しても良い顔が凶悪無惨な殺人鬼のそれに変わる。 それにしても─────とジャックは思う。 人を捜して殺すというのがこんなにもかったるいとは思わなかった。 基本的にジャックの殺しは行きずりのものだ。 女が一人で居るところを襲って解体(バラ)す。 理想は昼に見た幻想種(ヤマトナデシコ)の様な女だが、19世紀倫敦の下町で、夜間に外にいる女なんて場末の娼婦しか居やしない。 仕方ないから適当に解体していたが、誰も彼もこの時代で解体した女とは比べようが無い。 「やっぱ良いもん喰って、良い水飲んで、良い空気吸ってると違うワ」 シミジミと呟く。こんな事なら手当たり次第殺(バラ)さずに、もう少し吟味しても良かった。 即座に解体(バラ)さずに、もう少し愉しんでも良かった。 何しろ何奴も此奴も無防備に出歩いていたのが、ここ数日は警戒心も露わになり、今日に至っては一人もお目に掛かれない。 意中の相手との逢瀬が叶わぬ場合、適当な相手を見繕う事も出来そうに無かった。 かったりぃなあ。そう思いながらジャックは堤防の上を走る道へと出ようとして─────。 そして二人は邂逅した。 ジャック・ザ・リッパーは狂喜した。昼間見た幻想種(ヤマトナデシコ)にいきなり遭遇するという幸運に。 鮫の様な葉を剥き出し、歓喜に打ち震えながら言葉に向かって早足で歩み寄る。 早く解体(バラ)したい。早く陵辱(バラ)したい。 しかしこの逢瀬を僅かでも長く楽しみたいという思いがが、通常の速度で歩む事を許さず。駆ける事も許さなかった。 ジャックは緩やかに、確実に、幻想種(ヤマトナデシコ)との距離を詰めていく。 いきなり方向転換し、駆け足で河川敷に降りた時には、気付かれたかと思ったが、堤防の上から伺えば、目当ての幻想種(ヤマトナデシコ)は、川縁に立って闇色の川面をじっと見つめていた。 ジャックは口を嗤いの形に歪めて河川敷へと歩き出す。人気の無い処へ自ら足を運ぶとは好都合。 残り五歩、標的は動かない。 残り三歩、近づいて仔細に見れば、正しくジャックが生前に─────死んだ後も巡り逢う事が叶わなかった理想の乙女。 残り二歩、後ろに向き直った標的が、ジャックを見て瞳を見開く。 「サヨウナラ。お嬢さん」 残り一歩、両手に握るは二振りの巨大な鉈。突如として虚空に出現した鋸、手斧、メス、サーベル、肉切り包丁、ボウイナイフ、日本刀。 今回は愉しもう。直ぐには終わら(バラ)さない。 まず喉を潰し、腹を殴って、声を封じてからゆっくりと切り刻む。 悲鳴を聞けないが、苦痛に乱れ、恐怖に震える息遣いが、雄弁に獲物の心と身体の状態を告げる事だろう。 無数の刃を従えたジャックの全身が、芒と立ち尽くす幻想種(ヤマトナデシコ)を汚(バラ)し、穢(バラ)し、陵辱(バラ)し、解体(バラ)し尽くすべく動き出そうとしたその時。 「会えて嬉しいです。ジャック・ザ・リッパーさん」 獲物が、ジャックを見据えて微笑んだ。 驚愕に固まったジャックの身体が、緩やかに旋回しながら宙へと浮いた。 柳生宗矩が主君徳川家光に、能見物の際に、こう言われた事があるそうな。 「観世太夫の所作を見て、斬れると思ったなら申せ」 宗矩あ太夫の動きを仔細に観察し、太夫が隅を取ったときに笑みを浮かべた。 のちに家光に下問された時。 「流石に名人、隙が全くありませんでしたが、隅を取った時、心が緩んで隙が生じました。あの時ならば斬れるでしょう」 と、答えたという。 桂言葉はこの逸話を知らなかったが、武や闘争に纏わる逸話を全く持たぬサロメが、少なくとも言葉の眼には隙を捉えられない動きの主だと把握していた。 流石に行住座臥の全てに於いてとはいかないが、舞うサロメの動きに隙を見出す事は言葉には出来なかった。 だが、まあ、それでもサロメに正面戦闘をさせるのは、今のままでは無理だろう。 確かにサロメの舞う姿に隙は無い、そしてその舞技は、世の常の武技と異なる動きであり、初見で見切ることは難しい。 更には熟達した舞い手であるサロメの攻撃は、緩急を自在に変えながら途切れることなく連綿と続く。一度サロメに主導権を握られれば、取り返すのは難しいだろう。 だが、それだけだ。 そもそもサロメは独り(ソロ)の舞い手。それ故に守勢に脆い。 一人でも磨ける攻撃の技術と異なり、元来防御の技術とは、攻撃を繰り出す相手が居て初めて習得が可能となるもの。 一人で舞い続けたサロメは当然の様に防御に応用出来る技術を持ち合わせていない。 間合いを計る、機を掴む、動きを読む、相手を自分の思惑に沿って動かす。 これらの技術もまた、サロメは有していない。 攻めに回れば強いが、一旦主導権を渡して仕まえばどうにもならない。しかも攻撃力が低い。 一応、言葉が居合を学んで知り得た戦いの機微について教えたが、やはり心許ない。 練習する余裕などロクに無く、練習相手も居ないのだから、実戦で習得するより他にない。 だが、そんな手頃な相手は居ない─────とは思わないが、遭遇できるかはまた別だ。 深夜の街を徘徊して居た影と一度戦ってはいるが、やはり経験は不足している。 聖杯への道程は長く、そして困難に満ちていた。 だが─────それがどうした?胸に抱いた想いの前では、困難など何の意味を為さない。 二度と無いと思っていた誠との語らい、生きた誠と過ごす日々がそこにあるのだ。 存在すらしなかった理想郷への道が、突如目の前に現れたのだ。高々道程が険しいぐらいでは、足を止める理由にはならない。 聖杯への道が如何に嶮しかろうとも歩み切る。道が閉ざされれば切り開くだけの事。 【マスター……まだ……気配は掴めません………】 【そうですか】 サーヴァントの念話に、簡潔に答える言葉。 実際今やっている事は人捜しである。その目的は、至極簡単もので、言って仕舞えば経験値稼ぎだった。 あの謎の影か、若しくは言葉がこの地に居るだろうと推測している、”ある“サーヴァントを二人は捜しているのだった。 尤も、出会う可能性は低いだろうが、恐らく探す相手のクラスはアサシン。気配を断つことに長けたサーヴァントを探す技能は、サロメには備わっていない。 それでも言葉に諦めはない。 ─────出逢えれば良いけど。 そう思いながら堤防の上の道を言葉は歩いていく。 言葉が通り過ぎた後、言葉が歩いている堤防上の道に合流している路地から出て来た修道服の女は、真っ直ぐに言葉目掛けて歩き出してきた。 【サーヴァントでしょうか……?魔力を全く感じませんが………】 【河川敷に降りましょう】 この時間帯、新聞配達もジョギングに励む者も、活動し出すのはまだもう少し先になる。 それでも車が時折走る。人目につかない様にする為には河川敷に降りた方が都合が良かった。 【降りてきましたね………マスター】 川面を見つめて─────修道服の女に背を向けて立つ言葉に変わって、女を監視していたサロメが告げる。 いつもの陰鬱な口調ではあるが、その声にははっきりと嫌悪感が感じられた。 二人の間の距離は、歩数にして五 言葉は闇を湛えた川面を見つめている。 二人の間の距離は、歩数にして三歩。 美女と呼んで良い顔立ちの女は、醜悪な笑みを浮かべて緩慢な動きで近づいて来る。 二人の間は、距離にして二歩。 振り向いた言葉は女の顔をマジマジと観察した。広がった鼻の穴、荒い息、開いた瞳孔、唇の端から僅かに溢れた涎。サロメが嫌悪感を表すのも無理はない。 端整だった顔立ちの面影など、微塵も感じさせない醜悪な顔。肉欲に狂った野獣の顔だった。 その顔は言葉に否応無く文化祭の日を─────言葉の意思も想いも無視して力尽くで事に及んで、恋人同士などと言い放った男を思い出させた。 「サヨウナラ。お嬢さん」 獰悪な笑みを浮かべて女が告げる。大勢の人間が海水浴を楽しむ海水浴場に発見した人喰い鮫が、笑みを浮かべるとすればこんな顔になるだろう。 その周囲に出現する無数の物体。鋭利な切っ先を言葉に向けた刃の群れ。両手には女の細腕には到底持てぬ巨大な鉈。 【サーヴァント………ああ…やはり……あの御方が…導いて下さいました】 脳裏に響くサロメの声。その声は歓喜に満ちて─────。 修道服の女の欲情に粘ついた声に、限り無い嫌悪を抱きながら言葉は返す。 「会えて嬉しいです。ジャック・ザ・リッパーさん」 無力な獲物に真名を言い当てられ、驚愕に固まったジャックを、実体化したサロメが両腕のベールを巻きつけ、宙へと放り投げた。 「ぬあああああああ!!!」 緩やかに右方向に旋回しながら堤防の方向へとジャックの身体は飛翔し、後方宙返りをした、受身を取ろうとするまでもなく、ジャックの体勢は整い、 幻想種(ヤマトナデシコ)及びその側に立つ七つの薄いヴェールで体を覆っただけの少女と向かい合う形で足から着地した。 ─────サーヴァント⁉マスターかよこの女!!! 無力な獲物が自身を殺し得る牙を隠し持っていた事を知り、ジャックは即座に逃走を決断する。 サーヴァントとしては有り得ない選択だが、元よりジャックは只々好みの女性を汚(バラ)し、穢(バラ)し、陵辱(バラ)したいだけの殺人鬼。 闘って覇を競う等という精神など微塵も持ち合わせておらず、会敵して一合も交えず即座に逃げる事を恥とする様な価値観もまた持ち合わせていない。 「〰〰〰〰〰〰〰⁉」 駆け出そうとしたジャック驚いた。脚に生じた異常、膝から下が異様に重く痺れている。その癖痛みは全く無い。 あの緩やかで苛烈さも激しさもない投げの成果か。あまりにも奇怪な攻撃を使う少女だった。 少女の右脚が弧を描き、ジャックの頸部目掛けて脚を覆うヴェールを振るう。これをジャックは地に膝を着く事で回避。 そこへ最初から放たれていたかのように、左脚のヴェールが伸び、ジャックに顔面を強かに打ち、状態を仰け反らせた。 サロメの艶舞は止まらない。左の後ろ回し蹴りを放った勢いを殺さず、右腕のヴェールを上段から振り下ろす。 断頭の刃の如く落下する薄布を切断せんと、ジャックの両腕が茫と霞む。それと同時にサロメの右足のヴェールがジャックの下方から伸び上がり、後頭部に直撃。 後頭部を打って短く息を吐いたジャックだが、右に転がる事で顔を狙ったヴェールを回避。更に大きく後ろに後方宙返りして間合いを取る。 が、ジャックの動きを見透かしていたかの様に、サロメがジャックの後ろに跳んだ距離だけ前に出ていた為には間合いは変わらず、 着地に入ったジャックの足めがけて、サロメが左腕のヴェールを薙ぎつけてきた。 「チィィッ!」 咄嗟に宝具『真紅より来る遍く刃』を発動。日本刀を出現させて握り、薄布を切断しようとするも、振るった刃に薄布が巻きつきジャックの身体を引っ張った。 まるで熟練の舞手二人が舞っているかの様な動きだった。 「うおおおおおおお!?」 緩やかな曲線を描いてジャックは地へと叩きつけられる─────直前に刀から手を離し、激突させられる事を回避。 なんとか着地を決めると、出現させた複数のメスを投げつけながら後退する。 当たった気配が全く無いがどうでも良い。追撃を妨げられればそれで良い。 10mも間合いを離して、改めて相手の方を見る。“狩りに出たつもりが狩られる側だった”なんてシャレにもならない。 ここは逃げの一手。あの幻想種(ヤマトナデシコ)は大いに惜しいが、仕切り直してまた機会を伺おう。 ジャックはクラスこそセイバーだが、そのスキルも宝具も思考も在り方もアサシンのそれ。『正々堂々たる一騎打ち』などと聞けば、鼻で笑うのがこの女の性分だ。 逃げる隙を伺う為に、敵手の方を見たジャックは、そのままの形で硬直した。 「は─────。」 惚けた声。現にジャックは惚けていた。只人でしかない言葉でも、今のジャックに一撃を見舞う事は容易くできるだろう。 「は─────は、はは、ハハハハ、あははははははハハハハハはハハハハハ!!!!」 狂笑。心底よりの歓喜と欲情が篭った笑声。あまりにも悍ましい笑い声。 ジャックは狂喜していた。ジャックは驚喜していた。ジャックは狂気の只中にあった。 ジャックの投げたナイフ悉くを見に纏ったヴェールで撃ち落とし、ジャックと対峙するサーヴァントのその顔その身体。 僅かに吹く風に靡く、最上級の黒絹を織り合わせても猶及ばぬ艶やかな黒髪。夜の闇を溶かし込んだかの様な憂いを帯びた黒瞳。 流麗という言葉すら霞む美しい線を描く鼻梁、口づけをすればそれだけで天にも昇ると思える蠱惑に満ちた朱唇。 指で僅かに触れただけでも吸い付いて離れぬだろう柔らかな肌は“処女雪が黒ずんで見えるほどに白く”。 触れれば折れそうな程繊細で儚げな線(ライン)の身体にも関わらず、女性である事を強調してやまない胸の盛り上がりは、煩悩を捨て去った聖人ですらもが、我を忘れて揉みしだこうとするのでは無いだろうか。 一目で貴人と判る気品と、万人の脳髄を蕩けさせる淫靡さとを併せ持つ、清楚可憐な妖娼。 ─────嗚呼!殺したい!! 脳が欲情で煮え滾る。 ─────裂いて!刻んで!突いて!斬って!抉って!断って!穿って! ─────惨く、酷く、悍しく、苛んで!辱めて!殺したい! もしもジャックが男だったなら、限界以上にいきり勃たせた股間から、派手に射精していた事だろう。 それ程の情欲。それ程の歓喜。このサーヴァントを解体(バラ)せば、きっと感じたことのない絶頂が味わえる!! 何しろ此方に向けている視線を感じるだけ絶頂(イキ)そうなのだ。触れ(斬っ)て、挿れ(刺し)て、抉り廻して、血と臓物をぶちまけた時の悦楽はどれだけのものか!! 「ああ神様!!神様!!私は今!あんたの存在を信じることにしたよ!!!!」 歓喜極まるこの刹那。最早逃亡など思考のどこにも存在しない。 只々、眼前の至高の獲物を切り刻む。 見たものすべてが目を背ける凶相を浮かべて、ジャックはサロメ目掛けて走り出した。 意味を為さぬ喚き声とともにジャックは無数の刃を繰り出す。 鋸で薙ぎ、肉切り包丁で斬り、メスで突き、手斧で打ち、ボウイナイフで穿ち、鉈で断ち割る。 眩惑も陽動も無い、只々真っ直ぐに突き進み真っ直ぐに刃を振るう。その様は正しく血に狂った獣。 聖杯戦争の華とも言うべき三騎士。その中でもセイバークラスで現界しようが、ジャック・ザ・リッパーの本質は只の殺人鬼。 サロメの宝具”幻想恋愛組曲(ファンタズマゴリー・ロマンシア)“の効果を跳ね除けること も、宝具によりその効力を増した魅了と被虐体質のスキルの効果に抵抗する事も出来はしない。 殺人鬼の本質に基づいて、只ひたすらに凶刃を振るい、振るい、振るいまくる。 元来ジャックの持つ殺意の炎を、欲情が油の如くに、否、液体爆薬の如く燃え上がらせ、今のジャックの精神と理性はBランク相当の狂化スキルを発揮した状態に等しい。 只闇雲に突撃しては、サロメの繰り出すヴェール打たれ、投げられ、締められ、極められ、飛ばされ、転がされ、引き摺られ、振り回される。 少し離れた場所で見守る言葉には、二人の動きは全く見えないが、もし見えれば熟練の闘牛士が、猛り狂った牛を翻弄している様にも見えただろう。 だが、言葉に両者の動きを見ることができたならば、奇妙なことに気づいて眉を顰めただろう。 “ジャック・ザ・リッパーの動きが、明らかに速くなっている”のだった。 ジャックが狂化状態に有るのは思考と精神のみで、ステータスには何ら影響していないにも関わらず、ジャックの動きは最初よりも速い。 これは至極単純な訳で、向上したのはジャックの“身体能力”では無く“身体運用”。 要するに身体の使い方が加速度的に向上しているのだった。 サロメを切り刻みたい。際限無く増大する殺意はジャックの理性を消し飛ばしたが、元より殺人鬼という概念であると言っても良いのがジャック・ザ・リッパー。 殺意が高まれば高まる程に、その本質─────人を殺すだけのモノへと純化していく。 動きから複雑さが無くなり単純に。 描く奇跡は曲線を一切帯びず直線と化し。 結果、一合ごとにその動きが加速する。 今のジャックは、無駄というものを一切廃し“殺す”という目的のみに、身体と精神と思考とを動員する、戦闘者としての理想の境地に到達しつつあった。 ヴェールの下でサロメは笑みを浮かべていた。 言葉の発案に端を発するこの遭遇戦。サロメは最初から目当ての殺人鬼に遭遇することも、殺人鬼が逃げずに戦いになることも、己が経験を積めることも疑わなかった。 殺人鬼に遭遇しなければ、徒労に終わる行為だが、サロメには必ず遭遇すると確信していた。 己と永劫共に在る愛おしい男の齎らす幸運が、言葉と己の求める結果へと必ず導くとサロメは信仰して疑わず。そして信仰は現実に形となって報われた。 愛おしい愛おしいヨカナーンの加護か齎したこの結果。ならば己も全霊を以って応えるのみ。全てを捧げた男から格好の練習相手を用意して貰ったのだ。只実戦の経験を積みました。では意味がない。より高みをこの一戦で目指さなければならなかった。 ─────あの御方が……私の舞に…更なる技巧と変化を求めている………。 そう思うだけで、心は昂り、思考は研ぎ澄まされ、四肢が限界を忘れて躍動し、新たな動き、新たな形を心と思考と身体が求めて動き出す。 弱年にして、サロメを比類無き舞手とした、類い稀な舞手としての資質と、修練の成果を余さず貪り尽くした集中力が遺憾無く発揮される。 内腿を薙いでくる鋸にヴェールを巻きつけ、引っ張って狙いと態を狂わせ。 頚動脈を斬りつけてくる肉切り包丁に対し、一歩を踏み込んで躱し、手首を掴んでジャックの勢いを利用して投げ飛ばし。 肝臓へのメスの突きに対し、身体を半身にして回避しながらカウンターの掌打を胸に撃ち込み。 脳天を打ってくる手斧を回転しながら後ろに下がって回避、回転の勢いを乗せたヴェールで横面を殴り飛ばし。 心臓を穿ちに来たボウイナイフを持った手に両腕のヴェールを巻きつけ、手首と肘の関節を極めて投げる。 頭蓋を断ち割る鉈の一撃を鉈を持った手首をサマーソルトキックで蹴り抜く。 一撃ごとに速さを鋭さを増し、狙いも精確になってくるジャック・ザ・リッパーの凶襲を躱し、捌き、凌ぎ、反撃する。 徐々に徐々に、加速していくジャックの動きに、サロメの舞は一層冴え渡り、変幻の妙を深めて対抗する。 しかし、である。サロメの舞は全て曲線からなるもの。その動きは武技としては変則的。言って仕舞えば無駄が多い。 二人のステータス上の敏捷は+分を別とすれば互角。にも関わらず無駄な動きをするサロメが、死の最短直線を描き続けるジャックを翻弄できるのは何故なのか。 サロメはジャックを物理的な速度で上回っている訳では無い。 ジャックの目線。呼吸。踏み込み。腕を動かす角度と方向。これらを始めとする雑多な情報を読み取りジャックの動きを予測。 予測を元に、ジャックを上回るリーチの差を活かして迎撃若しくは逆撃を見舞う。 例えジャックの速度に及ばずとも、予め解っている動きに対して此方も動くのであれば少なくとも結果は五分。 狂乱の極みに在るジャックにはフェイントを用いるという思考は無く。一合ごとにサロメがジャックとの距離を離している事にも気付けない。詰まりは‘’サロメの様な戦闘の素人でも何とか手筋を読むことが出来る”のだ 動く方向自体を完全にサロメに把握されているのでは、いかに身体運用の効率を向上させようとも、思考と時間に於いて常にサロメが上回る以上、ジャックの刃はサロメには届かない。 ─────良かった。 言葉は安堵を覚える。二人の動きは全く見えないが、サロメがジャックを圧倒している事は理解できる。 技量はそこそこ有るが、実戦の経験が皆無のサロメに経験を積ませる為に、態々殺人鬼を探した甲斐があったというものだ。 そう─────“捜していた”。言葉はこの聖杯戦争に、ジャック・ザ・リッパーが居ると確信して、夜の街を歩いていたのだった。 根拠は、己がサーヴァントのサロメである。只々己が恋心に殉じただけの少々。一人で万軍を破った訳でもなければ、一国を容易く滅ぼす龍を屠った訳でもない。 その行為自体は有名でも、闘争とは全く無縁な少女。そんな少女が英霊として召喚されたのだ。 この事から言葉は、“高名でさえあれば、どんな人間でもサーヴァントとして呼ばれるのではないか”という推論を出し、 最近噂の殺人鬼の正体を、誰かが召喚したジャック・ザ・リッパーと推測。 釣り出すべく夜の街へと出たのだった。 只の殺人鬼であるならば、サロメに実戦を経験させるのには丁度良い手合いだった。 只の殺人鬼ならば戦闘技術はおろか、殺しの際に狙いを隠す技巧も意図も無いだろうから。つまりは‘’意図を読み易い” 西園寺世界を殺した時がそうだった。ポケットの中に包丁を仕込んでいたが、あんな風に手を入れて確認していては、「何か仕込んでいる」と言っている様なもの。 包丁を取り出した右手を抑えられた時に驚いた表情を浮かべていたが、言葉からすれば当然の結果でしか無かった。 ─────後はこのまま撃ち倒す。そして聖杯へと歩を進める。 ジャック・ザ・リッパーが修道女の格好をしている事から、教会にマスターが居るのでは?等と言葉が考えたその時─────。 ユダは夜の街を一人彷徨っていた。昨夜の一戦で、マスターであるカナエが悪魔(デーモン)に魅了された挙句、総身に刺青を施したサーヴァントに蹴り飛ばされて重傷を負った為である。 複数の臓器が潰れるという、人間ならば棺桶に入る事も覚悟しなければならない傷も、喰種であるカナエの能力からすれば、時間経過で治る傷でしか無い。 しかし、元々が栄養失調気味だった時に、これだけの傷を負ったのである。早急に、栄養を─────つまりは人間を─────摂らなければならなかった。 その為にユダは一人夜の街を霊体化して探索していた。 昨日見たマスターか、新たなるマスターか、何方でも良い。巷で噂になっている殺人鬼でも良い。 邂逅すればサーヴァントを屠り、マスターを捕らえてカナエに与える。 だが、出来得る事ならば、昨日見た青年とは逢いたくはなかった。従えるサーヴァント(悪魔)は必ず滅ぼすと決めているが、善性であると一目で判るあの青年は殺す事に気が進まない。 新たなマスター、それもその性が悪である。その様な手合いに出会う事を祈りつつ、ユダは当て所なく彷徨い、そして─────獣の咆哮の如き狂声が聞こえたのだった。 「あの女は─────」 堤防の上から公園を見下ろしたユダは、砕けるのではないかと思う程に歯を噛みしめる。 視線の先にあるのは、悪夢の産物とでもいう様な凶相を浮かべて、無数の刃を繰り出す修道服の女と、七つのヴェールを纏い、優美華麗に舞う少女。 修道服の女は知らぬ。だが、もう一人は知っている。直接会った事はないが、その真名も宝具も知っている 「サロメ!!!」 知っていて当然だ。同じ時代、同じ土地に生きた者同士。 色欲を司る魔王アスモデウスと対立しするとされ、‘’あの男”に洗礼を授けた洗礼者─────ヨハネ・パプテスマの首を欲した妖女。 色に狂っ洗礼者の命を奪い‘’’あの男”に涙を流させた狂女。 愚行の報いを受けて惨めに死んだ女が、今更何を血迷って迷い出てきたのか。 あの修道服のサーヴァントの狂態も、あの愚女に惑わされてのものに違いない。 瞬時に怒髪天を衝いたユダは、路面どころか堤防の一部までもが砕けるほどの勢いで跳躍。 空中でサロメ目掛けて拳を振り上げた。 伝説の殺人鬼と妖舞の舞手の戦いは、未だ勝者が確定していなかった。 悉くを防がれ躱されているとはいえ、ジャック・ザ・リッパーの一撃は全てが必殺。決まればそこでサロメは致命の傷を負う。 対してサロメはこの戦いを即座に終わらせる意思がない。 ヨカナーンが用意した練習相手をそう直ぐに使い潰すなど許されない。 その為、もとより低い攻撃力は一撃一撃が更に軽くなり、致命には至らない。 そして、徒らに長引かせれば、狂乱により痛みと疲労を感じないジャックに利がある。 現状ではサロメが優勢に見えるが、その実ジャックの一撃で勝敗は決する。 そんな戦いが今暫く続くと思えたが─────。 「エエエエェェェェェェイィィイメエエエェェェェェンンン!!!!」 咆哮─────。丁度堤防の方を向いていたサロメは、咄嗟に言葉の側へと跳躍、ヴェールを翻し、高速で旋回し出した。 一方の狂乱状態のジャックは気づく事なくサロメのいた位置へ吶喊。 直後、サロメの立っていた位置へと派手に着弾した‘’ナニカ”により生じた爆風を至近で浴びて、遥かく後方へと吹き飛ぶ羽目となった。 飛来した瓦礫をサロメのヴェールが悉く撃ち落とし、引っくり返ったジャックを掠めて、コンクリ片が飛び去る。 直径十数mに及ぶクレーターの中心部から、肘まで埋まった右腕を引き抜いた男が立ち上がる。 「貴様……何を血迷って迷い出た」 凄まじい殺意がサロメに対し放射される。常人ならば、否、猛り狂う飢虎でさえもが怯えて平伏しそうな程の殺意。 だが、サロメは怯む様子もない。サロメの心も魂もヨカナーンの事以外は意に介さない。他者から向けられる殺意など、意識する事など全くと言って良い程にない。 「私…貴方と……逢ったことが………ありましたか…?」 「貴様の様な毒婦と縁を持つ様な生を送った覚えなど無い」 目を瞬かせて尋ねるサロメにユダが極大の蔑みと殺意を乗せた声で応じる。 サロメの声音が淡々としたものだけに、ユダの声に声の篭った感情はより際立った。 「死ね」 簡潔に殺意を言葉にすると、ユダはサロメ目掛けて地を蹴った。 体幹を揺らさず、頭部を上下動もさせず、脚を殆ど動かさず、高速で地を滑る様にサロメとの間合いを詰める歩法は、予備動作と呼べるものが無い為に、非常に見切り難い。 だが、伝説の舞手であるサロメには、この歩法は既知のもの。舞踏においてもユダの用いた技術は存在している。 驚きに目を見張ったのも束の間、サロメも同様の歩法で距離を離しつつ、前に出しているユダの右脚目掛けて左腕のヴェールを剥ぎつける。 これに対してユダは、左脚に体重を預けた上で、左脚の力を抜く。この動きにより自然と左膝は屈折し、右脚は浮く。 そして、右脚を浮かしたまま、体が沈んだ反動を利して左足で地を蹴り、一気に間合いを‘’右脚を全く動かさずに、右脚でサロメを拳打で捉え得る間合いへと踏み込んだ”。 薄いヴェールの向こうで、驚愕にサロメが眼を見開いたのがユダには見えた。 「Kyrie eleison!」 男を誑かす為にある脂の塊を四散させ、心臓を微に砕くつもりで放った拳の軌道を変え、横合いから飛んで来たクレイミアを撃砕する。 次いで、クレイミアの死角に隠れて接近、ユダ目掛けて左右の端を振るおうとしていたジャックを蹴り飛ばす。 「うぼおぉぉ!?」 咄嗟に鉈を交差させて受け止めるも、蹴撃の凄まじい勢いに鉈が砕け、衝撃でまたもジャックの身体は後方に飛んで行った。 ユダに飛ばされて、少しばかり勝機に返り、乱入したユダを、サロメを解体する障害物と判断して、排除しに行った結果がこれであった。 「今の…動き……貴方は…私を見ても…版とも思わないのですか……」 「戯言を、俺の胸中を占めるのは、‘’あの御方”への献身のみ。貴様などに向ける心の動きなど存在しない」 「まあ……………」 感極まったサロメの声。それを一切意に介さず、即座に放たれる前蹴り。洗礼詠唱の篭った蹴撃は、掠っただけでもサロメには致命の傷となるだろう。 その爪先にサロメは右掌を当てがい、時計回りに回転。回転運動に巻き込まれたユダの身体を、回転の勢いとユダの蹴撃の威力を利して放り投げる。 追撃にサマーソルトキックの動きから放たれた右脚のヴェールを、ユダは宙で身を捻り、左腕で掴み取った。 そのまま左腕の力だけでサロメを宙へと引っ張り上げ、腹部目掛けで右拳を撃ち込む。 サロメは首を振って、胴を覆うヴェールで右手首を薙ぎにいくことで、ユダに拳を止めさせ、右腕のヴェールでユダの顔面を、左腕のヴェールで腕を打って拘束を解く。 宙で分かれた二人は同時に着地。地に足が着くや距離を詰めて洗礼詠唱の籠められた拳打を見舞ってくるユダに対し、サロメは右に半歩移動しながらで逆時計回りに回転する。 サロメが右半身になった所で、ユダがサロメが先刻まで立っていた位置を通過。無防備なユダの背中に、回転運動の勢いを乗せたサロメの右掌が直撃、ユダは緩やかな弧を描いて10mも飛翔し、縦に回転して膝立ちの形で着地した。 「貴様…………!!」 憤怒そのものの声。 サロメの攻撃を受けてみて理解できた。緩慢かつ優雅そのものの動きからは想像もつかない奇怪な威力。 痛みはないが衝撃が全身に伝わり、骨という骨、筋肉という筋肉がバラバラに外れそうだった。 サロメの筋力が低い為に致命傷とはならないが、それでも尚、この結果。 だが、それがどうした?当たらなければ意味など無い。 ユダが完全に全身の力を脱力した立ち姿を取る。その体のどこを見ても、指先に至るまで力みが無い。 現代スポーツでも重要な脱力を、この男は完璧に行なっていた。 そして、前進。只の一歩、初速の段階で最高速に達したその歩法は、武に秀でたサーヴァントといえども棒立ちのまま間合いを奪われる事になるだろう。 それをサロメは、‘’予め知っていたかの様に”絶妙なタイミングで両腕と胴のヴェールを翻す。 胴のヴェールに視界を遮られ、たたらを踏んだユダの頭部を、上下から挟み打つようにヴェールが襲う。 視界を遮っておいて、何らかの攻撃をしてくると予測していたユダは、この攻撃に反応。 右半身になって攻撃を回避すると、再度地を蹴り、突進の勢いと体重を乗せた右拳をサロメの顔面に見舞おうとするが、 最初からユダがそう動くことを知っていたかの様に、ユダの顔面に右脚のヴェールが直撃。仰け反ったユダの全身に、サロメが両手足のヴェールを用いて乱撃を見舞う。 サロメが人体の急所について未知である為に、有効な攻撃を今ひとつ行えていないとはいえ、受け続ければユダの耐久力を以ってしても無視できないダメージを負うだろう。 だが、ユダは粗無傷で耐えていた。空手の三戦(サンチン)立ちに似た立ち方で、唯サロメの攻撃を、防ぐことなく受けているだけだったが、その立ち方が最上の防御方法だと、サロメは知っていた。 「……ああ…やはり…あの御方の………」 サロメの歓喜に満ちた声。己の乱打を耐えるユダの立ち方。あの立ち方は知っている。牢の中でヨカナーンが行なっていた演武を見た事が有るのだから。 そう、獄に繋がれていたヨカナーンを毎日見ていた。その挙動の全て、息遣いに至るまで、今もこの脳裏に焼き付いている。 「成程…妙に俺の先を行くと思えば、洗礼者の技を盗み見たのか……」 ならば分かる。‘’あの御方”の誕生を人々に告げた先駆者にして、‘’あの御方”に洗礼を授けた洗礼者。彼こそが‘’あの御方”にヤコブの手足を授けた者なのだから。 いわばサロメは、ユダの師の師に当たる人物の技を知っている事になる。ユダの動きを読めるのは当然だった。 謎は一つ解けたが、もう一つの謎がある。 ─────何故、俺の宝具が効果を発揮しない!? 洗礼詠唱が通じない事は予測していた。サロメがおそらく持っているであろうヨカナーンの首。 イコン画に於いて聖母マリアと同列に描かれる洗礼者の首を所有するサロメに、洗礼詠唱など通じる筈もない。 ユダがサロメに洗礼詠唱を用いたのは、いわば念押し。サロメが洗礼者の首を持っているかを確認する為だった。 だが、宝具が通じない理由にはならない。この宝具は其れこそ、三位一体を成す父と子と聖霊の三者で見ない限りは効果を発揮する。 通じない理由など存在しない─────筈だった。 「私の‘’呪い”を…受けても何も無い………。それに…貴方の用いる体技………まるで…あの…御方の様……………………」 凄艶な気配。サロメの纏う情欲の気配が、息が詰まるほど濃密になった。 それでもなお、‘’あの御方”への献身以外胸中に存在しないユダには何の効果も及ぼせない。 サロメの手が、顔を覆うヴェールに掛かる。 「情欲に…囚われる様な者には……決して見せませんが………貴方になら見せても……あの方は良しとするでしょう」 サロメの呪い。‘’人を惑わす妖美なる妖女”という衆人のイメージが、サロメに齎した宝具とスキル。 ジャック・ザ・リッパーを狂乱させたソレは、サロメにとっては只の呪いでしかないらしかった。 「これが………私の…素顔…。今の私は……呪いから解き放たれ…………祝福されている……。私の呪いにも影を受けない貴方には…………私と…あの方の繋がりを…見せ……ても良い」 膨れ上がっていた凄艶な気配が消失。変わって周囲を満たす気配。 ユダは無言のまま、緊張した身体の力を抜く。 死者であるサーヴァントならば誰もが知る死の気配。それこそがサロメの纏う気配の正体だった。 今のサロメは七つのヴェールを身に纏い、洗礼者の首を欲して舞う妖女に非ず。 銀の大皿に乗せられた、鮮血滴る洗礼者の首に口付ける狂女だった。 狂気と死の偶像(ァイドル)それが今のサロメだった。 このときユダは、宝具が通じなかった訳を理解した。 「この宝具は…私があの方の運命だったと……世の人々に認められている証………。私とあの方の繋がりが……人々に知れ渡っている証……。この宝具こそ…私とあの方の愛の証……。私とあの方を繋ぐエンゲージリング」 恍惚と呟くサロメの瞳には何も映ってはいない。否、サロメの瞳には確かに見えているのだろう。 己がヨカナーンの運命の女(ファム・ファタール)だったと世界中に人間に祝福されている姿が。 衆人がサロメに抱くイメージ。聖者に死を齎し、その首を銀の大皿に乗せた狂女。 ヴェールと共に羽織っていた妖艶な美女の相の下には、総身に死を漲らせた断頭の呪いを帯びた乙女の姿があったのだ。 この呪いが、おそらくはユダの呪いと相殺しあい、サロメに何らの効果も及びさなかったのだ。 「世迷い言を吐くな狂女」 脱力し終えたユダに対してサロメも、同じく脱力した態で立つ。 傍目には、双方ともに弛緩の極みにあると見えようが、少なくとも側で見つめる言葉には、二人が互いに相手を必殺する状態にあると理解できた サロメのヴェールが舞い。ユダの拳と接触した処に白い火花が散った。 無音のまま散った火花が、二人の帯びた巨大な呪いが激突した結果と誰が知ろう。 裏切りと断頭と─────異なる呪いを帯びた男女が対峙する。 【C-6/河川敷公園1日目 午前0時20分】 【桂言葉@School Days(アニメ版)】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [虚影の塵]一つ [星座のカード]有 [装備] [道具] [所持金]不明。境遇が元いた世界と同じなら、結構なお金持ちなので、活動資金を得られるかもしれない。 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯の獲得。 1. サロメに実戦経験を積ませたい 2.セイバー(ジャック・ザ・リッパー)を確認しました。真名をジャック・ザ・リッパーと推測しています 3.バーサーカー(イスカリオテのユダ)を確認しました 4.セイバー(ジャック・ザ・リッパー)の格好から、マスターが教会にいるのでは?と考えています [備考] ※討伐例は未確認です 【アサシン(サロメ)@新約聖書及びオスカー・ワイルドの戯曲】 [状態]実体化、健康 [装備]七つのヴェール [道具] [思考・状況] 基本行動方針:聖杯の獲得 1. 実戦経験を積む 2.この敵(ユダ)を殪す 3.セイバー(ジャック・ザ・リッパー)を確認しました 4.バーサーカー(イスカリオテのユダ)を確認しました [備考]顔を覆うヴェールを外しています。 【バーサーカー(イスカリオテのユダ)@新約聖書、及び関連書籍】 [状態]ダメージ(小) [星座のカード]有 [装備] [道具] [所持金]マスターに依存 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯の破壊 1. マスターへの栄養(人間)確保 2. サロメの殺害 [備考] サロメの真名を知っています 「どうしよっかなあ~」 少し離れた暗がりに潜み、ジャック・ザ・リッパーは思考する。 あのサーヴァントが宝具で自分を誑かしてくれた事には非常に腹が立つ。だが、報復するにも、あの幻想種(ヤマトナデシコ)を愉しむにも、あのオッサンは邪魔だ。 「まあ、機械が来るまで待つさ。この私が、殺す機を測り損ねるなんて無いんだから」 何しろ確保はジャック・ザ・リッパー。殺人鬼の代名詞でもある彼女は、『殺し』に於いては己がトップだろうと自負している。 全身が痛むがそんな事は問題にもなりはしない。 あの乱入者が隙を見せたその時は─────。 【セイバー(ジャック・ザ・リッパー)@史実(19世紀 ロンドン)】 [状態]ダメージ(中) [装備]宝具から手にした両手の鉈。修道服 [道具] [思考・状況] 基本行動方針:好みの女性を汚(バラ)し、穢(バラ)し、陵辱(バラ)し─────。 1. 幻想種(ヤマトナデシコ)の殺害 2.邪魔になるサーヴァントの排除 [備考] 河川敷公園の何処かに潜んでいます <その他> 河川敷公園に、直径十数mのクレーターができました。
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/58.html
外物語 ◆mtws1YvfHQ 踊山頂上。壊れ、廃れて、朽ち果てた家々が建ち並ぶ荒廃としたその場所に、一つのかまくらが作られていた。 かまくらっぽい半円形で、出入り口の部分は朽ち果てた家の中でもまだマシだった様子の戸を立て掛けてある上、中央に囲炉裏まである六畳はあろうかと言う本当にかまくらかと疑いたくなるほど大きな物。 その中で、一人の女がいた。 その女の名前は匂宮出夢。殺戮中毒の、元殺し屋。 そんな彼女は現在、囲炉裏の傍で食事をしていた。 囲炉裏にある鍋の中身は、その辺の壊れた家にあった、雪に埋もれていた物の無事だった樽などの中にあった、味噌などの調味料を勝手に使って作った味噌汁だがその量は一人分ではなく二人分はあるかのように見える。 それをまたしてもその辺にあって無事だった底の深めの器に盛って食べていた。 「…………ふぅ」 かまくらの外は一面雪景色の中で、廃村探しを終えての休憩と言った所だ。 と言っても使えそうなものなんて錆びていなかった包丁と引き摺るぐらい事しか運ぶ事もできない、だがかまくらを作るのに丁度好さそうな場所にあったので中に置いてある、石の刀があるぐらいで収穫はなし。 そしてその包丁も、出夢の両腕に比べればあってないような物に過ぎないので味噌汁の材料を刻んだだけで圧し折ってから元の場所に戻してある。 「うまうま」 現在は何かしらの事が起きるまで今は休憩している真っ最中だった。 良く言えば体力温存、悪く言えば動くのも面倒臭いと言った所だが、膝近くまである雪の中を歩き回ったのだから仕方のない事とも言える。 そうして食事を進めている中、一戸建ての戸が軽く叩かれるような音がした。出夢は箸を止め、じっと耳を欹てる。 が、どっかの屋根の雪が落ちただけだろうと気を取り直して器に口を付けた。 ところで強く戸が叩かれ、思わずむせる。 「誰だよ……こんな時間によぉ……」 外は一面雪景色なのになんで足音一つしなかったのか考えながら、戸を開けた。 「 ッ」 出夢自身が気が付いた時には、戸の前からかまくらの端まで飛びずさっていた。 外には、死人のように青白い肌の色をし触れれば壊れそうな脆さを感じさせる女がただ自然に立っているだけで、それ以上でも以下でもなかった。 しかし、匂宮出夢の殺戮者としての経験が、その女に大して、警戒を警告を警鐘を、ひたすら鳴らしていた。今にも死にそうなその女に、だ。 「失礼しても構いませんか?」 「あ、あ。いいよ」 女のその問い掛けになんとかそう返し、出夢は戸を閉めた女の一挙一動を注視する。 自然体としか感じられない動き。同時に、自然体過ぎる動き。 それだけで、警戒するにあたる。そう思った。 思いながら女の反対の位置に座って、味噌汁を入れた器と箸を渡す。 疑問気な表情を見せた女に、 「間違えて二人分作っちゃって、捨てるのも難だしどーぞ」 「そうですか。では折角ですし」 そう言うと、受け取って食べ始めた。 毒なんかも気にせずに食べ始めた事に気付く。既にあの老人がバトルロワイヤル開催を宣言したにも関わらずあまりにも不用心過ぎやしないか。 考えている内に、器の中身を半分ほど残して女は言った。 「そう言えば、あなたは何か予定はありますか?」 「ん? いや、特にないなぁー……なんで?」 「多分居ると思って、弟を探しているの」 「弟? 名前は?」 間髪いれずに、自分でも気付かない間に出夢は聞き返していた。 そんな出夢は自分に当惑する前に、答えが返ってきていた。 「鑢七花。虚刀流の七代目当主をしている……わたしの弟」 「弟、か――」 「ええ」 出夢は囲炉裏を回って女性の横に座り、それこそ、顔を顔と顔がぶつかりそうなほど近くに寄せた。 「その弟ってのは、あんたにとって大事な存在かい?」 「ええ」 「本当に?」 「ええ」 「本当に本当に本当に本当に本っっっ当に『弟』が大事かぃ?」 「ええ」 女は問いに短く答えた上で頷いただけだった。 しかし出夢は見逃さない。弟、と言う言葉で、ほんの僅かに女の表情が揺らいだのを。 それを見て、気付かぬ内にとびっきり狂暴な笑顔に変わっていた。 「いいねいいねいいねいいねいいねぇえぇええ、最っ高に来るよ! 出夢くんの身体の中身が溶けて蕩けて火照って飛び出て弾けちゃうぅぅぅぅぅぃイヤァッホォウ! あ、ちょっと死ぬ前の事思い出しちゃった! 恥ずかしーぃいぃいい、震えるぞハート、燃え尽きてもっとヒート、俺の心が真っ赤に燃えるってねぇ!? 足音もなく現れてどこのどなたか何者かって思ってたけど――いい、お姉ちゃんじゃないか……――――うん。手伝ったげるよあんたの『弟』探し」 にんまりと口を広げ、ぎゃはは、と笑い声を上げながらそう言っていた。 その笑顔を見て一瞬呆然とした女だったが、 「これは幸先がいいわ…………いえ、もしかしたら」 ただ、 「悪いのかしら?」 悪そうな笑みを浮かべていた。 「えー、もう出る? まだ残ってるし全然食べてないだろ、あんた?」 「大丈夫です。わたしにはむしろあれぐらいが丁度いいくらいですから」 「そう? ならいいんだけど」 そう会話を交わしながら、出夢は面倒臭そうに立ち上がって首を回し始めた。 鑢七実は眼の端に付いていた、かまくらの隅にあった一本の石の刀を持ち上げ、軽く振ってみる。足軽の効果もあって重さも威力は感じない。 気付くと、はぁ、と溜息が一つ出ていた。 出夢の方に目を向けると、目を細めてじっと見返してきていた。 「……あんた、何者だよ?」 「さあ?」 そう答えて、笑った見せる。 一瞬なぜかたじろいだ風に見えた出夢だったが、首を何度か振ると諦めたように、 「今更断れねーな」 狂暴な笑顔を浮かべながらそう呟き、両腕を広げて見せ、ぎゃはは、と笑った。 出夢の腕は異様に長く、なおかつ恐るべき威力を内包している事も、見て取れていた。 が、同時に、その強さとは不釣り合いの妙な弱さも見て取れていた。 余っていたからと言って鍋の味噌汁をわざわざ取り分けて渡して来たのも、期待はしていなかったが《弟》探しに付き合うなどと言ったくれたのも、その弱さが起因しているのかも知れない。 「あ、そう言えばさ」 「なんですか?」 「ここまで足跡もなくよーく来れたねーって思ってさ。って訳でなんで?」 「……口での説明はなにかと面倒なので…………しゃがんで下さい」 大人しくしゃがんだ出夢にその質問の答えとして、頭の上に乗る。身構え身体を固くした出夢だったが、すぐ何の重みも掛かっていない事に気付き目を瞬かせて、 「…………なるほどねー……重さをなくせる訳、か」 「まあ大体その通りですね。名前は足軽って言う歩法よ」 そう言った。 理解が早くて助かる。と思いながら降りる。 出夢は立ち上がって伸びをし、 「んじゃ行きましょー!」 「そんなに急がなくても大丈夫だと思うんだけど……」 先へ先へと急ぐようにかまくらの外へ出て行った。 後をゆっくり追い掛ける。 味方であれば多少なりとも楽は出来る。七実の出夢に対する認識はその程度に留まっていた。 七実にとって一番大事な事は、もう一度弟と戦って殺し直して貰う。それだけでしかなかった。 生は難しく、死は容易い。それでもせめて、死に方くらいは選びたい。七花が居なければ、あるいは死んでしまっていればそう言う訳にも行かないけれど。 雪の中を進む出夢を追い掛けながら、七実はそっと溜息を付いた。 弱さと強さを分けられできた純然たる強さの塊とも結晶とも言える《匂宮雑技団》最大の失敗作にして功罪の仔、匂宮出夢。 例外的に強過ぎるが故に神からも罰を与えられ虚刀流の跡取りから外された天災としか言い表しようのない天才、鑢七実。 《匂宮雑技団》と虚刀流、どちらとも外れた強過ぎる二人が出会い、その結果何が起こるのか。 あるいは強さの果てに何があるのか。 それとも強さの後に何が残るのか。 ■ ■ ――と、まあ、こんな感じの出だしで。 殺人殺害殺戮奇術! 刀剣鉄拳殺戮劇! まさに物語の外側で。 功罪の仔と天災の虐殺劇……じゃなくて物語の、はじまりはじまり♪ 【1日目/深夜/A-8】 【匂宮出夢@戯言シリーズ】 [状態]健康 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:七実の『弟』探しを手伝う。 1:途中で向かって来る奴が居たら適当に薙ぎ払う。 2:殺戮の時間は残り一時間。 [備考] ※ネコソギラジカルで死んだ後からの参戦です。 【鑢七実@刀語シリーズ】 [状態]健康 [装備]双刀・鎚 [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:七花を探す。 1:七花ととがめさん以外を見付けたら殺しておく。 2:最後の最後の言い間違いを直してから七花ともう一度戦う。 [備考] ※ 刀語第七話で死んだ後からの参戦です。 ※ 双刀・鎚は足軽で持っています。 ※A-8にでっかいかまくらがあります。 クラッシュクラシックの赤い魔法 時系列順 真庭狂犬の災難 クラッシュクラシックの赤い魔法 投下順 真庭狂犬の災難 START 匂宮出夢 雑草とついでに花も摘む START 鑢七実 雑草とついでに花も摘む
https://w.atwiki.jp/god14/pages/1087.html
うん 神咒神威神楽では単純な身体能力強化や現象発生術とは別に、因果に干渉する能力等が存在する。 このページの目的は作中の運に関することをまとめ、 物語の裏でどのような力が働いていたのかを推察するプレイヤーの助けとなることである。 作中の例 禹歩法:極めれば高次元の霊的防御を得られるという技法。 宿星:登場人物の持つ世界に対する役割。 禁縛:歪みを封じる術、禍憑きを抑えこむ。 凶月咲耶の陰気汚染:身体能力強化ではなく、因果操作に基づく存在維持という別次元の強化が起きている。 禍憑き:危機に陥ったとき、その不運を別の者に押し付ける運気操作。 天魔・血染花:相手の力を吸収する、その際に運気も吸収している。 先見、未来視:無限に枝分かれした未来の中から特定の一つの未来を無理矢理決定して引きずり出す運命改変。 ■■■■■■■:思えば叶う力。幸福に必要なモノを周囲から掻き集める、無ければ作る。 桃花・黄泉返り:歪みを跳ね返す、運気操作の禍憑きも歪みであるため跳ね返す。 陀羅尼摩利支天:自身の可能性を拡大する能力、戦闘において別の行動をした自分を呼び出せる。 紅楼蜃夢・摩利支天:陀羅尼摩利支天の上位互換。 壬生宗次郎の歪み:試合だろうが木刀だろうが、宗次郎と戦った者は後に死ぬ。 経津主神・布都御魂剣:あらゆるものを斬る、その中には運気も含まれる。 無間身洋受苦処地獄:異能を無効化する。 観測者:2014年7月13日の正田卿のツイッター曰く、インポの系譜は運操作できるとのこと。 自滅因子:確実に死ぬような目に遭ってもありえないほどの幸運などが起き消滅することが許されない。 畸形曼荼羅・生玉・黄泉・劔・蜃・顕:自滅因子によって感染した力。 太陽:大筋において意味を持たず、別に存在しなくても話は変わらないという者。故に物語の外側へ渦中の者らを引っ張れる。 太極:相手が有する常識を、己が世界の常識で破る異能。 ゴグマゴグ:数理の神の常識にかもしれないは存在せず、相手の可能性を減じさせる。 大欲界天狗道:第六代目の脚本。 運に関する文章 + 座にて龍水 際限なく膨張していく自らを厭うように、削り続けることで均衡を保っているモノ…… 龍水には、それがそのように見えていた。 そして、それ以上この存在を推し量ろうとはしなかった。 ぼんやりと、漠然と、主観が曖昧なまま在り続ける。 彼と我の間に明確な線引きを施さないこと。 それは偶然であり、才能であり、そして最大の幸運だった。 これを前にして、無事を保つための唯一絶対と言える手を、龍水は無意識にだが選択していたのである。 + 不二にて常世 先の不和之関。 東征軍たる名目で攻めてきた者らに対し、彼女は躊躇なく信頼する同胞二柱を送り出した。 アレに通じる汚濁万象、それら悉く滅殺せんとした自分の采配に間違いはなく、 また人選としてもこの上なく的確だったと今も変わらず信じている。 だが、だからこそ浮き彫りになるのはこの現状。 「……なぜ、どうして死んでいないの?」 滅尽滅相――だったはずだ。 彼らが手を抜いたことなどあり得ないし、見逃す慈悲などそれこそ皆無。 力の差とて歴然だった。 しかし、それでも敵は全滅していない。 事実上の戦線崩壊? 馬鹿を言え、零でないのならそれは討ち損じたことの証明だろう。 重要なのは、圧倒的に格上の自分たちが紛れもない全霊で臨みながら、 彼らの中になぜか生き残った者がいるということ。 それが運であれ偶然であれ、あってはならないことだろう。 異常事態。考えるたびに彼女の心胆に恐れが走る。 + 穢土諏訪原にして宿儺 「もう一つ、主役の条件ってやつを教えてやるよ――神の玩具だ」 「だから、もし本当におまえがそんな馬鹿げた存在だったなら、おまえに自由は何一つない」 「玩具だから、役割は決められてる。永遠に終わることのない既知感だ。 死なないから、負けるはずがないから、おまえは世界に必要な役割を演じなければならない」 + 奥羽にて太陽 それは大筋において特に意味のないもので、だからこそ無視することが出来ないもの。 隙無く構成された物事には遊びがなく、ゆえに始まりから結末までの流れが変わらない。 分岐、寄り道、無駄話……それはすなわち可能性だ。 本来やるべきではないことをやらなければ、本来辿り着く終わりにしか向かわない。 その完成図が死と嘆きに満ちているなら、無駄なことをしてでも台本を変えなければならないだろう。 そしてそれが出来る者は、登場人物という創造主の玩具ではない。 少なくともきっかけは。 最終的に道を決めるのは彼ら登場人物であったとしても、 彼らに己が玩具であると知らせるきっかけは外側から持ち込まねばならない。 喩えるなら蚊帳の外。 大筋において意味を持たず、別に存在しなくても話は変わらないという者だけが、 物語の外側へ渦中の者らを引っ張れる。 積もりに積もった時間の中で、皆が与えられた法則(キセキ)に抗えなかった。 たとえ手を振り払っても、知らない間に組み込まれている。 神様はそれほど強引でお節介だから、舞台に上がった誰も皆、自分の非業(やくわり)に逆らえない。 力強い姿形を嫌々ながらも演じてしまう。だから、主役はいつも神様のおもちゃ。 でもね、それは同時に宇宙(かみさま)にとって勝手に動く配役(いぶつ)こそ、何より致命的だっていうことの証なの。 …遠い昔、旧い神様が自分の筋書きを壊すため、極力主役を放し飼いにしたように。 + 無間蝦夷にて夜刀 「苦しいか。ああ、だが運がいい」 「直撃すれば原子の域まで分解されていたものを。喜劇のような生き汚さだ」 ゆえに直撃することなどありはしない。 神に連なる玩具の未来は、その役を終えるまで敗北の二文字が存在せぬのだ。 致死は十分に放ったぞ。さあ、このからくりに気づいてみろ。 疑念を感じて亀裂と化せ。 天体を打ち砕くほどの破壊光。それを一身に受けながら、 生き延びる人間などが当然ありえるはずはない。 己の背を押すモノがあると、そろそろ分かってきているはずだ。 + 大欲界天狗道にて龍水 大欲界天狗道、ここに完成。 歴代の座における最悪最強の理が、ついに真の姿を見せた瞬間だった。 「――――っ、は」 ……その我欲渦巻く光景を、御門龍水の霊視は捉えていた。 今の冷泉に見つからなかったことは、おそらく彼女にとって奇跡に近い。 息を潜め、逸る心臓を押さえたのが功を奏した。 もしくは見つかっていながら取るに足らぬと見逃されたか、どちらにしても生きている。 紛れもない幸運だが、それを喜ぶだけの余裕はない。 + 座にて夜行 「渇望(ゆがみ)――龍水の有した陰気が、私とあれを引き合わせた」 「いや。摩多羅夜行そのものを…」 形作ったと、唇がわななきながら声無き声にて搾り出した。 恐らくそれは、渇望と呼ばれるものの根源にして、最も純粋な姿だろう。 思い願った未来が訪れるという、非常に分かりやすい、想い遂げるという力。 己が描いた道筋こそが訪れるという、因果の補正。 特殊な形態を持たない、稚児の妄想そのものといえる歪みだった。 運命や不幸すら無意識の内に幸福な姿へ捻じ曲げる。 水面下で密かに行われていた改変作業。 それが御門龍水の有していた陰気の本質だったのか。 彼は他者の事象においてはいち早く看破しておきながら、己自身の事柄にだけはあまりに頓着しなかったのだ。 これが我、これが自分。自負と呼べば聞こえはいいが、それは最初から仕組まれている精神構造と言っていい。 疑問を抱かぬよう、常に何者かの干渉下にあっただけのこと。 備考 正田卿のTwitterでは下記が運操作出来そうな連中として挙げている 咲耶・刑士郎・メル・ラインハルト・インポの系譜。 要するに、神座シリーズの「運気」って神の干渉をどれだけ受けてるかの指標って事だよね? -- 名無しさん (2016-09-09 18 14 17) 龍水みたいに干渉してる側の場合もあるから、一概には言えない -- 名無しさん (2016-09-09 18 52 58) うーん、運か… -- 名無しさん (2016-09-10 23 52 01) 推察するプレイヤーの助けとなるって書いてあるけど、これ全部正田作品の常識の範疇よね -- 名無しさん (2016-09-12 08 25 40) ↑これらを抑えてるのは常連爪牙ぐらいでご新規さんにはキツいと思う -- 名無しさん (2016-09-12 09 37 55) 改めて太陽のシーンを読み直してみたが、この子、何気に超重要なことしているんじゃ。 -- 名無しさん (2016-09-12 22 17 50) 確かにご新規さんには助かると思うけど、あんまり運関係ないような気もするわ -- 名無しさん (2016-09-13 00 50 28) (∴)運こ -- 名無しさん (2016-09-13 13 58 13) メタ的に言えば偶然という名の物語補正。でも神座万象シリーズに置いては偶然に見せかけた何らかの理屈や絡繰がある必然でもある。 -- 名無しさん (2017-02-12 14 21 58) アヴェスターを見返すと偶然やら戒律の効果やらにつけ込んでミトラが運気干渉してるのがよくわかる -- 名無しさん (2022-06-11 23 05 01) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/vipdetyuuni/pages/3699.html
「理由なんて、お金になるからでいいじゃないですか?」 名前 雛月 紫苑 性別 女 年齢 17歳 能力分類 【特殊系】 身長/体重 163cm/46kg 趣味 貯金、節約 好き 自分、ビジネスライクな関係 嫌い 無償の善意、善人 大切 金 『概要』 聖剣と魔剣、相反する二つの聖遺物に選ばれた少女。けれども悲劇的で喜劇的な英雄譚を経て、色々と諦めた彼女は今日ものらりくらりと自由気ままに生きている。人間不信の拝金主義者。何故ならお金は人と違って裏切らないと知っているから。現在は依頼等でそれなりに稼ぎながら、特に目的もない放浪生活を続けている。利己的な生き方を好しとし、正義や善行なんて知ったことか。このように打算で動く冷ややかな人間である。けれども根底は悪人に為り切れないのか、時折お人好しな一面も覗かせる、不器用で煮え切らない只の少女。 『容姿/性格』 銀髪紅眼ポニーテール、スリーサイズは公開されていないが胸は崖のように平坦。ショートパンツにシャツ、その上からパーカーというラフでスポーティな服装 。 腰にはベルトに下げた二本の剣が、鞘の中で眠っている。利己的かつ人間不信、信じられるのは自分と現金だけ。 報酬があればどのような依頼であっても動く、そういうタイプの人間。 けれども、血も涙もない冷血人間とも言い難く。寧ろ本質的に覆せない部分でどうしようもなく善人であり。 自分は悪人で充分だと思いながらも、最後の最後で優しさを捨てきれない、そんな半端な人である 『昔話』 かのアーサー王物語を始めとして、数多の英雄譚にて存在が語られる、”選定の剣”という伝説。そして後に雛月紫苑と名乗ることになる少女は偶然にも異なる二種の”選定の剣”に選ばれ、その両方を自らのものとした、非常に稀有な存在だった。方や聖剣、方や魔剣、想像を絶する力を手にいれた少女は、数多の英雄譚がそうであったように、自らも英雄となることを誓った。少女の国は戦火に喘いでいた。戦争を終わらせる為に少女は兵士として最前線に立ち、どの兵士よりも多くの敵を斬り続けた。けれども、戦争はすぐには終わらない。仲間が死にゆく度に少女は泣いて、そして更に多くの敵を斬り続けた。多くの血と涙を流して、戦争が終わったのは一年後のことだった。そして故郷に帰った少女を待っていたのは、壊された街と家族の墓だった。守りたかったものをなくした少女に、もう戦う気力など残っていなかった。けれども軍は自分にこれからも戦うことを強要しようとした。軍はまた戦争を繰り返そうとしていた。その為の武力として少女が軍を辞めることを許さなかった。家族や友人を、故郷を守りたい一心で戦い続けた結果がこれかと、英雄に憧れた少女の心は最後に味方によって手折られた。その日の夜、軍は少女一人の手によって壊滅させられ、そして少女もまたどこかへと姿を晦ました。 『ステータス』 筋力-B++ 耐久-C 敏捷-A+ 魔力-B 幸運-D 宝具-A 【双刻天剣】 聖剣と魔剣、相反する二つの剣を所有する剣士。聖剣の力は魔力を光のエネルギーへと変換し、収束、解放するもの。 要約すれば剣からビームを放つ能力であり、その威力は注ぎ込んだ魔力に比例する。 僅かな魔力であれば目晦ましにもならないが、全ての魔力を注げばその威力は地形すら変えるだろう。魔剣の力は闇を所有者の身に浸透させ、苦痛と引き換えにその力を増幅させる。 要約すれば身体能力を上昇させる能力であり、その効果は代償の痛みに比例する。 代償が少しの痛みであれば多少の強化となるが、激痛であれば劇的な強化となるだろう。聖剣に宿りし力は光、魔剣に宿りし力は闇、二つの剣は対極の存在であるが故、その力を同時に発動することは本来は叶わない。 しかし一度の戦闘で三レスの間だけ、強引に二つの剣の力を同時に行使することができる。 その時、聖剣と魔剣はお互いがお互いのデメリットを食い潰し合い、魔力の消耗も代償の苦痛も半減される。 また、二つの剣はそれぞれ「不壊」の性質を有しており、同時に他の人間が扱うことはできない。身体能力:剣術、二刀流の達人 初期装備:聖剣と魔剣 『天剣――英雄未満の剣士』 それは天賦の才が齎したものか、或いは血反吐を吐く努力の末に編み出したものか。 既存のどの流派にも属さない我流剣術、聖剣と魔剣の力を前提とした彼女だけの戦い方。一刀、二刀流どちらにも対応し、実践を重ねる中で構築された彼女にとっての最適なパターン群。 どういう状況で、どう剣を使えばいいのかを経験則として記憶し続け、それらが集積した結果、一つの体系として成立したものである。 その性質上、一応は確立されたスタイルを有しながらも知識よりも直感に依る部分が大きく、実践においてはアドリブ性の高い戦い方にて変則的に立ち回る。そしてその戦法に関しても聖剣の力を主軸とした型、魔剣の力を主軸とした型、そしてその二つを統合した型の三つが存在する。 その強大な力を合理的に運用する為に、この剣術体系における奥義という位置付けの業を幾つか設けている。 『輝かしき聖剣――Ars-Aula』 刀身は一点の曇りなき純白であり、観るものを虜にする芸術品が如き聖剣。聖剣に分類されるこの剣は同時に選定の剣としての性質も宿し、この剣が選んだ使い手にのみその力を行使する資格が与えられる。魔力を糧に光を生み出す力に、どれだけの年月を経ようが朽ちることのない不壊の存在。創り出したのは神であるとも、古の大魔術師であるとも。伝承は既に風化し、その力の価値のみが今に伝わる。現在、売り捌いたので喪失中。 『疎ましき魔剣――Ars-Nox』 漆黒の刀身は一切の光を反射せず、さながら深淵が如く禍々しい闇を宿す魔剣。魔剣に分類されるこの剣は同時に選定の剣としての性質も宿し、この剣が選んだ使い手にのみその力を行使する資格が与えられる。苦痛を代償に力を与える力に、どれだけの年月を経ようが朽ちることのない不壊の存在。創り出したのは悪魔であるとも、古の錬金術士であるとも。伝承は既に風化し、その力の価値のみが今に伝わる。現在、売り捌いたので喪失中。 『代用品』 成り行きで貰った得物二本。お陰でとりあえず戦うことはできる。だからなんだという話だが。以下詳細。『元鋼』鋼のみで作られたロングソード2本。読みは『ゲンコウ』能力を極限にまで引き出されているが異能は一切持っていない。だが特徴として『不壊』の性質に近い耐久度と、不壊でなければ大抵の物質は斬れる『断絶』に近い斬れ味を持つ。剣士の腕が高ければ高いほど、その切れ味を引き出せるだろう。ただし、どちらの性能も近いというだけで何があっても壊れない、どんなものでも斬れるというわけではないため、注意するべし。また、『不変』の性質を付与されており、高い炎属性(融解点)を突破されない限り、『不壊』と同性能であるほか、どのような能力であっても能力付与や造形の変化はされない絶対不変のルールを持つ。つまりステータスの加減が一切されず、見た目や斬れ味も増減・変化しない。 『奥義』 雷霆 最大量の魔力を注ぎ込んで放つ聖剣の最大火力。文字通り地形すら書き換えるほどの熱量を誇る閃光を剣軸線状に沿って発生させ、その光と熱の奔流によって対象を周囲に存在するものごと纏めて薙ぎ払う。一撃にて絶大な破壊を広域にもたらすが、前提として全ての魔力を消費する為に一戦闘で一度きり、かつ使ってしまえば後がない対軍奥義。当然ながら余波による二次被害も凄まじいものであり、そもそも破壊の規模が一個人相手に向けるものではない為に通常はまず使われない。もし使用される機会があるとすれば、よほど敵が強大であるか、あるいは特殊な状況下であるか、その何方かに限られる。 漏光 聖剣に魔力を溜めた状態で斬撃を行い、刃が対象に接触した瞬間にビームを解き放つ技。高熱量のエネルギーをそのまま撃つのではなく、零距離から炸裂させることによる火力の一点集中を目的とした対人奥義。その内容は閃光による強引な溶断のみに留まらず、ビームを絶えず切断面に流し込むことによって対象を内側から焼き尽くそうとする。斬り結び続ける限り、相手には高熱のビームが押し寄せる。原理は単純であるが故に強力で、奥の手の一つとして数えられる。 吼燕 魔剣の力を脚部に集中させ、脚力を限界まで上昇させた状態で行う高速歩法。代償の激痛によって精密な動作こそ不可能とするものの、その上で彼女が成し得る最速の移動を行う。直線移動に限ったならばその瞬間的な加速も劇的なものとなり、その速度に乗せて放たれる斬撃も同様に強力な一撃となる。 相克 聖剣と魔剣、二つの力を短時間かつ限定的ながら同時に行使する。本来なら決して相容れぬ存在である二つの剣、それらの性質を自らを器として強引に同調させ、一つに束ね上げる。 「ぶっちゃけ、今の私って最高に弱いですよ?」 質疑応答 +... 三レスというのは、自分のレスで数えてでしょうか →その通りですね 身体能力の強化を、腕や足などピンポイントに発動することは可能でしょうか →可能ですね、その場合は強化した場所にのみ痛みが生じます この能力者の痛みに対する耐性はどれくらいのものでしょうか →激痛の中でも少しの間なら問題なく動ける位とします ただし全ての痛みに耐え抜くような無茶はできないので、その点を留意しつつ適当に空気を読んでください 備考録 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/isekaikouryu/pages/188.html
スラヴィアには奇妙な貴族が多くいる。 パパハイドン邸に、そういった奇妙な貴族が住んでいた。 「エヌよ。やはりここは素材を生かして、そのままというのが素敵だとは思わないかね?」 ダークエルフの青年は提案した。 「ふふふ、エスはやっぱり単純ね。それもいいけどやっぱり骨よ。素材というなら全てを削ぎ落とした方がいいと思わない? 分かりやすくていいわ。ダブルもそう思うでしょ?」 エヌと呼ばれたエルフの女性は楽しそうに上を向き奨めた。 「それのほうがよほど単純じゃぁねぇのぉ? やっぱ、ここは多少の不便さがあっても武器だよ、武器の追加だよ。今度ばかりはイーには文句は言わせねぇぞ」 ダブルという壮健な狗人が力強く断言した。 「あらら。別段、わたくしは文句なんてなくてよ。まあ、欲を言わせて貰えば遊び心が欲しいですわね。そう、今回のテーマは背面海老反り。常にブリッジした状態での歩法などいかが? それから首は常に廻り続けるのがよいわね。そうそう。首を六つばかり集めて順番に正面を向くなんでいかが?」 狐人のイーは文句を言わない代わりに無理な申し出を上げた。 鏡に囲まれた部屋で、一つの椅子に4人が背中合わせに座って相談をしていた。 いや、彼らは背中合わせで繋がっていた。 北向きに座るエルフのエヌは、長い金髪を手前にまとめ縛りながら柔和な笑みを浮かべている。 南向きに座るダークエルフのエスは、いつもしたり顔で不敵な笑みを絶やさない。 東向きに座る狗人のダブルは、いつも不機嫌そうに荒い息で周囲を窺っている。 西向きに座るイーは、扇で口元を隠しながら細い目で鋭く正面を見据えている。 ニュース・パパハイドン子爵。別名、全方位子爵。 彼らは四体で一人。四人で一体というスラヴィアでも特に風変わりな風貌を持っていた。 さほど仲がよさそうでもないのに、ああでもないこうでもないと四人で言い合いながら身体の方は見事に連携した動きを見せるため、その見た目に反してアクロバット的な行動ができる。 全方位子爵の名に恥じず……と、いうか説明するまでもなく背後という死角がない。どこの馬鹿が思いついたのか分からないが、四身一体は多対一では無類の強さを発揮する。 どっちが一なのか多なのか分からないという意見がでても、彼らは黙殺する。 そんな容貌魁偉なパパハイドン子爵は、新しく手にいれた女奴隷の処遇で喧々諤々と言い合っていた。 やれこういう屍人にしろとか、こう改造しろとか、アレをつけろコレを外せと、その外見に沿うほどおぞましい提案を繰り返していた。 哀れな女奴隷は鏡の部屋片隅で、裸のまま放置されていた。 彼女は何も知らない。異世界の知識も持たず、スラヴィアの貴族がどんなものかも分からない。 辛うじて言葉を解する恩恵を受けているが、これは彼女を不幸にしかさせない。なまじパパハイドン子爵の言う狂気の沙汰を、まじまじと思い知らされるだけなのだから。 彼女の名はジェシカ・クリスタルレイン。 カナダのハイスクールに通う普通の少女だ。 自由に跳ねる金髪を短く切り、やや幼い顔付きだが整った明るい表情でクラスメイトたちのマスコットとして可愛がられていた。 しかし、それもいまとなっては昔。たった一週間前までの生活が遠く、夢のように思える。 ジェシカは親しい友人とそのボーイフレンドたちに誘われキャンプへと行った。なんてことのない湖畔で、ありきたりな歌で焦げたようなバーベキューで夜を楽しんでいた。 そこへ不自然にも現れた怪物たち。 異世界があることを知ってはいたが、なんの知識もないジェシカはそれがなんであったかを覚えていない。形容のしようがない大きな人間としか思えなかった。 抵抗した男子生徒もいたし、22口径だが銃を持った男の子もいた。 だが、無力だった。 辛うじて抵抗を続けた男子生徒は、親しい女子生徒と共に逃げた。 銃を持った男の子は一番奮戦したが、やはり無理だった。今頃は湖で冷たくなっているだろう。 ジェシカは運悪く。本当に運悪く、一人だけ捕まった。 連れ去られた先に、誰もいなかった事がそれを証明している。 なんの抵抗もしなかったため酷い目にはあっていないが、たった一人であることが彼女を弱くさせた。もはや、言葉すら発しない。 両親を想うとき、時より思い出す近所の幼馴染……。 線が細く色白で、無口で非社会的で、にごった目の少年。 キャンプに誘っても何の興味も示さない、誰にも嫌われている変わり者。 でも、彼はヒーローだった。 どこにそんな勇気と力が宿っているのか分からないが、どんなときもジェシカを助けてくれた。 大きな犬にぬいぐるみが取られた時も、何も言わないで取り返してきた。 ロースクールで女子グループと揉めた時も、無言でずっと隣にいてくれた。 ハイスクールに入ってから、ジェシカは何もかも上手く行っていた。だから、その少年は何の手助けもしてくれない。もちろん、ジェシカも彼に迷惑をかけてはいけないからと思い、自分ひとりでなんでも解決しようと努力した。 それが二人を疎遠にさせる、つまらない原因になってしまった。 どうしてこうなったんだろう。と、ジェシカは冷えた身体を抱いた。 異世界がどういう風になっているか分からないし、ゲートがどこにあるかも知らないが、確実に言えるのは助けはこないということ。 想像すると恐ろしい。 だから考えない。 二日でこの環境には慣れた。だが、明日はどうなるだろう。 あの四面の化け物は今も不穏な相談事を繰り返している。 いったい、私は明日どんな姿に変わっているのかな? 身震いは心と寒さがもたらす。 ヒーローや王子様がフィクションだということは、ジェシカも良く知っている。もうそんな夢想をするような子供じゃない。だが、無力で泣くことも出来ない子供だ。 あの厚く大きな樫の扉を誰かが蹴り開け、助けに来てくれると願いをかけてもいいのに、浮かぶたびにそんな妄想を打ち消すように首を振る。 ジェシカは「どうやって諦めるか?」 そればかりを考えるようになり始めていた。 どこかパパハイドン子爵たちの声が遠くに聞こえる。 そろそろ周りが白く霞んで来た。もうすぐ諦められるような気がしてきた。 ジェシカは、少しだけ助かるのかな? と遠のく意識に感謝し始めた。 「首が廻るのはいいな。我ら全方位子爵の眷属に相応しい。そうは思わんかね? エヌよ」 「あらあら、なんでエスはいつも私に尋ねるのかしら」 「目かなんか武器だ! 武器!」 「ブリッジしたら全方位は無理ねぇ」 なんとも楽しそうな全方位子爵の会話を、雷のような轟音が打ち消した。 「なんの音だ?」 ダブルは耳を動かしながら、聞きなれぬ轟音の位置を探った。 パパハイドン子爵は貴族らしく落ち着いて座っているが、流石にこの音は五月蝿いと不機嫌そうだ。 ジェシカはこの音を聞いた事がある。 轟音に弱った心を叩き起こされ、ジェシカは跳ねるように起き上がった。 「廊下からのようだが、なにか壊れたのか……」 イーが視線を扉に向けたとき、轟音にガリガリと削るような音が混じり始めた。 ガリガリバリバリという音が途切れた瞬間、樫の扉から激しく刃を回転させる鉄の板が飛び出した。 これには流石の貴族といえども驚き、腰を浮かせて手近の武器を取った。 鉄の板は激しい擦過音と破壊音を立てながら、大きな樫の扉に穴を穿ち、やがてドアノブ部分を半円状に切り抜いた。 ついで何者かが扉を蹴り開ける。 闖入者は穴が無数に開いた白いマスクを被っていた。 ホッケーマスクだ。ジェシカはそれを知っている。 その乱入者は、轟音とどろかす箱に回転する鎖を取り付けた道具を持っている。 チェーンソーだ。ジェシカはそれを知っている。 腰には剥き身のマチェット(山刀)を下げ、ボロボロのジーンズはここへ辿りつく困難さを物語っていた。 「おのれ、なにやつだ!」 パパハイドン子爵の誰かが叫んだ。 乱入はすっとホッケーマスクを上げた。 果たしてそこにあった顔は、ジェシカのよく知る少年だった。 よかった、無事だったか……。 濁った目だが、口元には柔らかい安堵の笑みが見えた。 無事を確認し、名乗りを上げる代わりにジェシカへ正体を明かした少年は、再びホッケーマスクを被りなおした。 「ミック! ああ、ミック! 来てくれたの!」 返事代わりに、少年はチェーンソーの回転を上げた。 どこまでも無口な少年ミックは、ゆらりとパパハイドン子爵へチェーンソーを向けた。 挑発するように、チェーンソーの速度を上げ下げする。 その音に気圧され、子爵の身が退く。 その時、ババンとチェーンソーが不機嫌そうな音を立てた。次にはちゅーんと情け無い音を立てながら、チェーンソーはその回転を止めた。 「は……。ははっ! とんだ馬鹿が舞い込んだもんだ」 狂喜してパパハイドン子爵は四身を回転させ、ミックへと踊りかかった。 チェーンソーが放り捨てられる。 パパハイドンの持った四つの槍が襲い掛かる。いったい、誰の槍がミックを狙っているのか分からない。ジェシカは目を多い、ミックが槍に刺し抜かれる姿から顔を背けた。 ブツンと、嫌な音。 追いかけてドスっと荷物の詰ったダンボール箱を落としたような音。 「きききききききさまあぁぁ!」 うろたえる子爵の声にハッとして、ジェシカはミックの様子を見た。 ミックは腰のマチェットを抜き払って、パパハイドン子爵の一つの首……。エヌの首を見事に跳ね上げていた。 「俺はチェーンソーで殺した事……無い」 実に半年ぶりくらいに聞いたミックの言葉はそれだった。 ジェシカは泣きながら……笑った。 題名が特徴的なので思わず読んだ。とってもホラー。 地球(キャンプ)から異世界(邸)という移動経緯でいいんだろうか -- (名無しさん) 2012-08-31 21 10 36 ジェシカの目にはどんな生物がいるのか想像しましたがどんどんおぞましい造形を浮かべてしまいますね。まさかのチェーンソー登場でホラーが一転してアクションに? -- (名無しさん) 2013-03-31 18 46 34 名前 コメント すべてのコメントを見る -
https://w.atwiki.jp/phlogiston/pages/575.html
ラピリス・アリアンロッド 種族:死神 性別:女 年齢:21 身長:171cm 体重:55kg クラス:LLLメンバー、 属性:風、土、時 属性均衡:『悠』タイプ 戦闘スタイル:格闘、剣術による近接戦。怪人としての時空切断能力、その他変身形態 イメージCV: 装備:アクセサリー【霊王の魔葬器】 「私が己に課した役目は、守りたい者を守る為の剣であり、盾であり、鎧。ならば、私が為すべき事は一つだけ」 設定 LLL所属の暗殺者。とある研究所にて造られた不完全な改造人間にして、ヴェルト・ハーティアの弟子の一人。 ストレートロングの黒髪に黒い瞳の女性で、黒いシャツに黒いジーンズ姿でである事が多い。 性格はあまり感情を示さないが、割と動物的で甘えたがり。可愛いものが大好き。 特撮に出てくるようなヒーローに内心憧れているが、自分がそうなるというのは諦めている面もある。 趣味は食べる事、後はクレーンゲーム等。暇さえあれば穴場の飲食店を探して街を彷徨い、または駄菓子屋を巡り、暇潰しにクレーンゲームで大量に景品をゲットしてくる。 生まれつき時に干渉する力を持ち、成長と共にその存在そのものが死神となる魔女を生み出す一族の家系に生まれた末娘。 かつて、その特異性故に10年程前に双子の姉のエルリス・アリアンロッド共々最強生命体創造計画関連の研究所に捕らえられ、怪人として改造されていたが、改造が終わり切る前にその研究所が一人の男によって襲撃され、ヴェルトに連れ出されたという経緯を持つ。その為、元々は怪人に変身できる設計だったのが、両腕のみしか変身させる事しか出来ない。尚、その改造の影響で、記憶の大半を喪失していた。 元々身寄りが無かった為に彼女はそのままヴェルトに引き取られ、ヴェルトの元で様々な武術、戦闘術を学んでいた。 その後、ラピリス自身の『周囲との繋がり』を考慮したヴェルトによって、彼女は16の時にLLLに所属させられる事となる。 「仲間や友人を作って来い」そういうヴェルトによって、彼女は一件無感情に見えるなりにも積極的に彼らと組み、様々な仕事をこなしてきた。また、彼女の持つスキルが汎用の効くものばかりであった為、LLLで仕事上組む事が無かった相手の方が少なかったりする。 また、仕事以外でも何だかんだで仲間と積極的に関わってきた為、LLLメンバーの大半とは結構繋がりがあったりする。 尚、最近はエイディーズやヴァーミン、ティルと関わる事が多く、特にエイディーズとは現在、恋人としての関係となっている。 最近はその記憶を取り戻してきていたが、自分が死神の家系として生まれた事、自身のその身が近い内に死神となり、それと共に発生する世界の修正によって、自分に関わったほぼ全ての者から自身の記憶が消滅する事を思い出してしまい、周囲を心配させまいとその事実を周囲の者達に隠し続けていた。尚、一時期はナヴァールの協力で自身の死神としての側面を切り離す事で、気休めレベルで自身の死神化を遅らせていた。 だがミィの救出の際にティルの為に時間能力を行使した事で急速に死神化が進行。人間としての寿命を迎えてしまい、完全に死神として変化してしまう。結果、LLLの者達の殆どからラピリスに関する記憶が消失していた。 ラピリス側はその記憶を覚えているが、LLLの者達はその記憶を覚えていない……というか、そもそも世界から『無かった事にされている』為、ラピリスに関する事象は殆ど残っていない……筈だったが、世界の修正で完全に消え去るほどラピリスとLLLの面々の絆は浅いものではなかったらしく、最初の仕事の際にエイディーズ達と再会し、その場にいた面々全員がラピリスを思い出す。(本来、これは奇跡のレベルの事象であり、世界の修正で消えた記憶というのは本来戻るものではない。) 実母のフィアッカ・アリアンロッドとその上司たるグレイヴォルト・フェザーフォウルの賭け……『もし一週間以内にLLLの者達で誰か一人でもラピリスを思い出す事があれば、ラピリスを死神の任から解く』という契約があった為、ラピリスはLLLに戻れるようになった。尚、LLLのメンバーはラピリスの帰還の時点で皆ラピリスを思い出している為、現時点ではLLLとは以前と変わらない関係となっている。 ラピリスがヴェルトの技を会得するには、肉体強度面でスペックが足りなかった為、学んだ技の大半は扱いこなせない。 ただ、それでも人間が扱う分には強力過ぎるほどのスキルを得ている為、LLLでは上位の戦闘力を持つ。死神と化した事で更に扱える技は増えている。 また、時流エネルギーを扱った攻撃能力を得ることが可能。 その他にも、まだ隠された能力があるらしいが……? 保有能力、スキル 【活招】 『気』を利用し己の力を瞬間的に強化する技術。以下のような種類が存在する。 速招来:瞬間的に反応速度を上昇させる技法。全体的な行動速度が上がる他、副次的効果として周囲の行動が極めてスローに見える。 剛招来:瞬間的に自身の肉体強度、硬度を上昇させ、敵から受けるダメージを低下させる。撤鋼弾クラスまでなら耐えられる程の肉体強度を得るが、速度が約7割まで低下するという弱点を持つ。 力招来:瞬間的に怪力を得、全体的な物理攻撃力を上昇させる技。1トンクラス程度の重量ならばその肉体だけで持ち上げられるほどの力を得るが、精神的に高揚しやすくなる為に隙も多くなる。 【幻燈華】 気と肉体動作の組み合わせで実体ある幻影…分身を作り出す技。一度に最高15体までの生成が可能。 分身の性能は本体の約8割程度でしかないが、分身の一体一体がそれぞれ特殊能力を使えるという点では強力。 ただし、分身の能力使用時のエネルギーは本体が持たなければならない為、消耗も激しい。 【次元斬】 腕部を巨大なクワガタの鋏へと変化させ、両腕を振るった際に時空断層を作り出し、対象物をほぼ確実に切断する。 間合いが狭いという弱点を持つ為、ほぼ近接戦専用の技となる。 対象物に時流エネルギーを残し、時間差で切断するというトリッキーな扱い方も可能。(例えば敵が投げてきたブーメランに時流エネルギーを叩き込み、敵に戻った時点で敵ごと切断する、等) 尚、自分の『気』や『魔力』とはまた別にプールされた時流エネルギーを使用する為、そのエネルギーが無いと使用が出来ない。ただ、次元斬の行使そのものは消耗が極めて少ない。 【十六夜憐華】 次元斬を応用した必殺技。 速招来と神速歩法、幻燈華、乱舞斬りを複合し、対象を幻惑しつつ全方位より切り刻む。 【空滅昇華】 次元斬の最大出力を以って巨大な時空の穴を作り出し、広範囲を異界へ飲み込むという荒技。 多数の敵を纏めて現在の世界より叩き出せるが、発動時には自身が飲み込まれないように高い位置をキープせねばならない為、天井の低い建物内では使えないという弱点を持つ。 また、ラピリスの時流エネルギーを殆ど消耗しつくす為、発動後約一週間は次撃が撃てない。 【変身】 白戦輝グランヴァイスへと変身する。詳細は以下にて。 白戦輝グランヴァイス 身長:185cm 体重:69kg クラス:LLLメンバー…? 属性:風、土、時 属性均衡:『刹』タイプ 戦闘スタイル:格闘、剣術による近接戦。時空断層による防御力を駆使した突撃戦法。 イメージCV: 装備:大剣【バスターエッジ】、小剣【ビームカッター】 「……いざ、尋常に…勝負ッ!!」 説明 ラピリスのもう一つの姿。時流エネルギーを全部防御に回す事で変身が可能となる。 怪人とは全くかけ離れた変身形態であり、設計段階に於いて元から無かった仕様であるらしく、この変身形態が存在する理由は不明。 この形態では攻撃力と速度が若干、そして防御力が異常に上昇している。ただし、時流エネルギーをほぼ防御に回している為に、次元斬を始めとした空間干渉攻撃は使用できない。ただし、この形態でのみ使用可能な武装、技も存在するため、実際は遜色無く戦える。 時流エネルギーを絶えず消費する為、変身維持時間に制限が存在する。万全の状態でも100分が限度。 ヴェルトは『恐らく不完全な変身形態と、ラピリス自身が持っていた特異な力との相互干渉がこの変身形態を生み出したのだろう』と踏んでおり、完全な副産物である可能性は高い。 尚、LLL内部でラピリスのこの変身形態を知っているのは、現時点では社長であるデイビス小金沢と、同僚のティルのみである。 保有能力、スキル 使用可能技 【活招】【幻燈華】の二種 使用不能技 【次元斬】【十六夜憐華】【空滅昇華】の三種 追加技 【魔剣・狂葉落とし】 全力の唐竹割り…を超速度を以って連続で叩き込む、豪雨の如き乱撃を思わせる一撃。 一撃一撃が極めて重く、真っ向から受ければ余程の肉体強度を持たない限り、並みの剣は愚か剣を持つ腕の骨さえ粉々に粉砕されてそのまま切り刻まれるという、粉砕、突破力特化の一撃となっている。 【皇塵】 時流エネルギーを剣に収束し、振るった軌跡の周囲に膨大な破壊を引き起こす一閃を放つ。グランヴァイス最強の攻撃。 防御に回している時流エネルギーを若干使う為、使用する瞬間は若干防御力が落ちる。 また、残存時流エネルギーが極端に少ない場合、破壊出来るほどの威力は発生させられない…が、周囲に凄まじい音と光を撒き散らす為に、スタングレネードとしての扱い方も出来る。 【クロノスドライブ】 未覚醒能力。 詳細不明。
https://w.atwiki.jp/karakuri_ss/pages/378.html
Elegant Sword.4 パン・アルバード 2 ニューヨーク市民のダニエル(42歳)は、事件が起きた時の状況をこう語った。 「人はすごく多かったですね。野次馬と取材の記者たちが。なんたってニューヨーク市警が治安強化の切り札として導入したロボット『ED-2009』のお披露目でしたから、はい。私も家が近かったから見物に来てたんです」 その日はニューヨーク市民にとって特別な日だった。アムステラ帝国が地球に襲来してすでに長い月日が経ち、一方ではその異星人たちに迎合する『ブラック・クロス』ら凶悪なテロ組織の脅威に晒され続けるアメリカ。各地の治安は悪化の一途を辿り、早急な対策が求められていた。 事態に着目したコングロマリット企業のO社は、多額の研究費を投じて警備ロボット『ED-2009』を完成させた。コンピューターが犯人を自動で認識し、独力で排除・無力化する最先端技術の結晶である。嘘のように聞こえるが実用化にこぎつけたのだ。 「お披露目が架橋に入った時、そのEDがみんなの前に運び込まれました。すごいなって思いましたね。それから、女優の誰でしたっけ、とにかく女性が警察署長と一緒に起動ボタンを押したんです」 悲劇は突然だった。動き出したED-2009は合成音声で語りだす。 『犯人を発見。制圧します』 署長が顔にしわを寄せながら、「早速仕事を始めた」と喜んでいた。 『銃を捨てて投降しなさい。さもなくば発砲します。繰り返す……』 ED-2009の両手に備え付けられた大口径機関銃が署長に向けられた。 「その頃にはみんな、何か変だって思い始めましたね。それからすぐ、署長が撃たれたんです、こうババババババババって」 鉛の洗礼を浴びた警察署長は細切れの肉塊と化した。一瞬の静寂を挟み、辺りは悲鳴に包まれた。 『犯人が抵抗を続ける模様。制圧の許可を。せいせ、セイセイセイシけhがぢ』 暴走した。 ED-2009の機関銃が観衆に向け乱射され、ダニエルはその中を必死になって逃げた。だが周りの人々も我先にと逃げ出し混乱が極まる。 「もう前も後ろも分からなくって、僕も死ぬかと思いました。そしたら一人男がEDに近づいていって……」 ダニエルはその光景を説明するために記憶を租借し始めた。 「……まだ信じられないんです。あの時に起きたことが」 男は、群集を掻き分けてED-2009に近づいた。その歩行はゆらゆらとしたもので、とても危機感など無い。 EDが気づいた。最早、音声は声の形を成さず、雑音と機械音を唸らせながら銃を向けた。ふと、男の姿が消える。ダニエルの目にもそう見えた。 一足飛びで側面に回った男がそこにいた。次の瞬間、蹴りを見舞う。すると1tは超えようかというEDの体がひっくり返ったのだ。EDも、観衆も、何が起きたのか分からない。 EDは必死になって相手を探していた。ギシギシと音を鳴らしながら起き上がると、男に再び銃を向ける。発砲。もうそこにはいない。男は10mほど飛びのいていた。 そこで気づく。背後に人がいた。EDがやたらと撃てば流れ弾で怪我人が出る。だが男は慌てた様子も無く、傍にあった道路標識を引き抜いた。3mはあるその標識をぐるぐると振り回して、EDの銃撃を軽々と叩き落し始めた……! 「そこからは私が話そう」 ED-2009の開発に関わった科学者グーテ氏が引き取って説明を始めた。 「ED-2009の機関銃は分厚い鉄板を軽く撃ち抜けるほどの威力があります。それに対して道路標識ですが、まずあれは棒じゃありません。金属の板をつないだ筒状の物でした。普通に弾が当たれば標識はバラバラになるところですが、そうはならなかった。これが意味するのは、あの男が標識を使って、当てるのではなく掠らせた、軌道を逸らしたんですよ。高速で移動する弾丸に僅かな力を加えるだけで、的確に、安全な方角へ流す。弾丸を視認するだけでも異常なことなのに、神業です」 人間の力に科学力が敗れたという事実にグーテ氏は悔しそうだった。 EDは銃弾を撃ちつくし、わずかな間、再装填のために動きが止まった。それを見て取ると、男はEDの懐に駆け込み、次いで飛び上がった。標識を高々と掲げて、EDの体に突き刺す。EDはその場に崩れ落ちた。 わずかな間に行われた攻防を、人々は見守っていた。そして、それが終わると、打たれたように歓声を挙げた。 ダニエルもこの幻のような劇的事件に、何が現実か判断がつかないほど躍り上がった。謎の男に駆け寄るとその手を取り、単純な疑問をぶつけた。 「あんたは一体何者なんだ!?」 「アムステラの焔伯と申す者だ」 「は? あー、あむ?」 「遠き異星のアムステラから来た焔伯だ、と言った」 パン・アルバードは奔走していた。 地球の特機との戦いを控え、その準備に追われる中、突然ブラック・クロスから抗議を受けたのだ。「あなたの師匠が、ブラック・クロスの細工したロボットを破壊したのだ」と言われた時、パンは天地がひっくり返るかというほどの衝撃を受け、しばらく言葉も出なかった。 その場は謝るだけ謝って、事態が明確になってくると再び謝罪。今は、軍が焔伯と接触し、パンの元まで連れてくることになっていた。 アムステラに12人しかいない武の化身『快王』。焔伯もその一人だが、『焔伯』とは本名ではない。パンの師匠である焔伯は、名をホウシュンと言い、『アムステラ鍔家流』の師範として、アムステラの数百万人の門下を束ねる立場にある。鍔家流とは『アムステラ静心流』の分派の一つで、一個の勢力を成しており、歴代の師範は称号を名乗ることが慣例となっている。 フランダル家はこの鍔家流と長年関係を持っており、パンもその縁で修行に赴いたのだ。 その師範が、輸送ヘリに乗せられて現れた。 「ようようパン、元気にしてたか?」 「師匠……」 開口一番、パンは上段回し蹴りを見舞った。焔伯は、笑みを浮かべたまま簡単にそれを避ける。 「こんな所で何をしているのですかあなたは!?」 「訛ってはいないな。だが上達してもいない」 「師匠!」 「お元気でしたか!」 パンと同じく門下生である八旗兵たちが恩師との再会に沸き立った。 焔伯は奇妙なヘルメット軍団に面食らっていた。 「何だその格好は?」 「これですか」 談話室で焔伯が尋ねた。八旗兵は、フランダルに仕えてから、顔を覆うヘルメットに揃いの胴着で身を固めている。傍目には異様な集団だ。 「よくぞ聞いてくださいました。SPというものが居りますが、彼らはみな、似たような角刈りにし、黒のスーツで服装を統一することで、それぞれの差を無くし、個人を特定しにくくすることでSP自身の危険を避けているのです。それに習って」 「ふーん、そうなのか……」 「それで師匠」 イライラしながらパンが会話を断ち切る。 「何故師匠がこの星にいるのですか!?」 「暇だから」 「……」 思わずうな垂れる。 「お前たちが勝手に出て行ってから、残ったのは青二才ばかり。指導してもつまらんから、師範代たちに任せてきた」 「フフッ、師匠も寂しがり屋ですなあ」 「まったくまったく」 「サボっていないか見に来ただけだ、バカモノども」 「それはいいですから……師匠。どうして連絡の一つもくれなかったのですか?」 「うむ、バレたらお前たちが手回しして出国停止されるから」 困ったものだ、と言いたげに手をヒラヒラとさせる焔伯。予想していた答えとは言え、パンは呆れざるを得ない。 「当たり前です。誰かが側にいないと薬も飲まないお人ですから。腰の具合はあれからどうなのですか?」 「ああ、うむ。このとおりホラ」 言いながら焔伯は視線を逸らした。 「目を見て話してください師匠。肩、膝、腰に爆弾抱えているのに無理しないでください」 「人を老人扱いしおって……」 「何か?」 「何でもない……」 焔伯は40半ばにして、すでに体の内外至る所を病んでいた。若いころの激しい修行が、彼の衰えを他人より早いものとしている。 そのいくつかはアムステラの高度な医療技術を用いれば改善可能だが、焔伯は体にメスを入れることを拒んだ。 「まあいいです、来てしまったものは仕方がありません。それで今回の騒ぎは何なのですか? ブラック・クロスの工作を妨害したそうですが」 「内緒で来たはいいが、お前たちの居場所が分からなくてなあ。何か騒ぎを起こせば、そっちから接触してくると思って。しかしそういう裏事情があったとはな、すまんすまん。 まあ気にするな。地球人でありながら、他国の侵略に手を貸す連中のやることなんか、気にかけてやることもあるまい」 「そういう問題では……はぁ、いいです」 こんな男だが、若いころは生死をさ迷うほどの難行苦行を自らに課し、多くの激闘を経てきた彼を『燃える男』とか、『炎の快王』と称する人々もいるのだ。 今では病院通いの快王だが。骨や靭帯を断つ大怪我を何度も経験し、内臓にも持病を抱えていて朝昼晩の薬を医者に渡されている。それでいて日々の鍛錬をやめないので慢性的な痛みが消えることは無い。 「まあいいです。実を言うと相談したいことがあったので手間が省けました」 急に深長な面持ちになると、パンは焔伯の前に膝を揃えて座りなおした。 「師匠、私は今一度、自分を鍛えなおしたいのです」 「何だと?」 パンはエドと共に戦う内に、自分の力量が足りないのではないかと考え始めていた。先日の勝利も、参謀に加わったネスターの知恵によるところが大きい。 「地球で戦うために修行をほっぽり出しておいて、今度は修行させてくれ、と来たか。勝手なことだな」 「それは分かっています。ですが、私はもっと力をつけなければいけないのです」 「ランカスターとかいう男爵殿のことはいいのか?」 「……」 このことはまだエドに了解を取っていない。順序が逆なことも分かっていたが、エドには話せないでいた。 「しかしなあ。今以上に強くなろうとすれば相応の訓練が要るぞ。俺は女のお前にそこまでやらせたくは無い、正直言って」 「女であろうと武に生きる者です」 「ダメなこともある。体が大きくないお前は他人より無理をしないとならぬ。それが後々になって人生を蝕むこととなる。俺がいい例だ。……例外もいるが」 最後の言葉だけ、苦虫を噛み潰したような顔で言った。それを見てパンは、その原因となっているであろう人物を何人か思い出した。 アムステラで武を志す者の中には、多くの女傑たちがいる。その一人としてまず挙げるならば、帝国の第一皇女ヒルデガード・アムステラだろう。彼女は若干12歳で快王の位を持つほどで、多少なりと形式的意味もあろうが、すでに大人顔負けの実力を持っている。 次に、ギャラン・ハイドラゴンの娘、ルルミー。徒手空拳による操兵戦闘術の先駆けとも言えるギャランをして、『自分を超える逸材』と言わしめたほどの才女だ。多少(?)荒削りなところもあるが、地球の戦場においても勇名を轟かせている。 そしてもう一人。12人の快王に名を連ねるヴァーリス・ミナ・アージェントという女がいた。エリュシオンという星に伝わる『彩刃流気功術』を操る彼女は、今や生きているのかすら分からないベールに包まれた女性だ。ただでさえ他星出身の彼女は、10年ほど前に行方不明となっており、その人物像と流派は 伝 説 の 域 に達するのではなかろうか。 このヴァーリスと焔伯は面識がある。パンは体格の近い彼女をひそかに目標の一人としていたため、焔伯の知る彼女のことを聞きたがった。だが焔伯は忌々しそうに、口をへの字に曲げるだけだった。 どうも過去に負けたことがあるらしい。才能のある人間に嫉妬するのが彼の悪癖だった。 ふと、ドアが開き、エドが現れた。 「パンこのメイド服着てみてくれ。……ん」 エドの視界に見慣れない中年男が、顔を顰めて佇んでいる。それでエドは、パンたちの師匠が地球に来ているという話を思い出した。 「あんたが鍔家流の快王か。俺様がエドウィン・ランカスターだ、よろしくな」 「うむ……」 エドの差し出した手を握りながら、目で測るように焔伯はエドを見る。 「はるばるこんな星に用でも? 八旗兵たちに会いに来たのか?」 「会いに来た、というかなあ……。そうだな、連れ戻しに来たってところか」 「連れ戻す……?」 エドの表情が曇る。 「八旗兵たちは大事な部下なんだが」 「主の部下である前に俺の弟子だ。今の中途半端な腕で人前に晒すのは気が進まん」 「おいおい勝手言ってくれるなよ。パン、どうなってんだ?」 エドがパンに説明を求めたが、パンは俯いて何も言わない。そのことがエドを焦らせた。 「待て、待てよパン……。お前がいてくれないと、ちょっと困るんだ。何とか言えよ」 「私は……お役に立てているでしょうか?」 「役に立つも何も、いてくれないとあれだ、う~んとだな」 「やめておけパン。聞けば、この男はボンクラ男爵として有名だそうじゃないか。そんな奴に忠を尽くしたところで何になる?」 「あぁん?」 エドが怒る。パンもこの焔伯の言い方にはムッと来た。 「お互い武門に生きる男だ、話して解決することもない」 「……」 「どうだ男爵、俺と戦ってみるか?」 「……何!?」 「俺に勝つことができたら、パンたちをこれからも地球で戦わせてやる」 焔伯の意図にパンは気づいた。敢えてエドを挑発しているのだ。そしてこれを受けたエドがどういう反応を示すかも何となく分かり、止めるべきかと思ったが。 「言ったなオッサン。その言葉忘れるなよ、勝負だ!」 「いいぜ小僧。お前ら、椅子とか片付けろ。ここでやる」 「ほ、本当にやるのですか!?」 驚いた八旗兵はパンの顔色を伺った。止めるべきだ。しかし、パンは動かなかった。彼が、エドが戦う。それも自分のために。見たい。見ていたい。 軽く準備運動をした後、戦いは始まった。両者とも上着を脱ぎ捨て、正面から 相 対 す 。 軽快に左右へステップを踏んだ後、エドは身構えた。 勝てるわけが無い。エドの身体能力は中々のものだが、相手は武の最高峰が一人・快王焔伯である。 それでもエドは戦おうとしていた。 「パン様、よろしいのですか?」 「……いいんだ。何より師匠自身がエド様を知りたがっている」 そして自分も戦いの行方を見守りたい。 先に動いたのはエドだった。両腕をするりと下げ、直立したまま堂々と間合いを詰める。 (エド様、それは無謀な……!?) 「ほほう……」 焔伯は、軽薄そうな青年の第一印象を若干改めた。一見ただ歩いているだけに見えるエドだが、これぞアムステラ貴族に伝わる『執事流歩法術』だった! 執事流歩法術とは、正中線を崩さず体の安定を保ち、いかなる方角の変化にも即対応できるようにする執事必修の歩行術である。この場合、注意しなければならないのは、堂々と音を立てながら歩くことで、主人に自分の居る位置をアピールし、決して驚かすようなことがあってはならないということだ。実用的でありながら執事の分を忘れない、なんともエレガントな歩行術である。 本来これは貴族の学ぶ物ではない。だがエドにとっての戦いの師は物静かな執事であり、彼を追ううちに自然と身についたのだった。 (単なるボンボンでは無いようだな。だがしかし) この歩行術は守りに適したもので、こちらから攻めなければ脅威ではない。間合いが詰まっても焔伯は動かず、ひたすらエドが仕掛けてくるのを待った。 瞬間、エドの両腕が唸りを上げる。攻撃はボクシングスタイル、素早いジャブの連打。それを焔伯は両腕で正確にブロックした。逆に打ったエドが手を痛めるほど、それは素早い動作だった。 それでもエドはラッシュを続けると、焔伯は掌で、甲で、軽く受け流した。 「出た、焔伯様の“流水把”!!」 鍔家流が得意とする防御の型、“流水把”。両手を前に軽く構えた体勢から繰り出される、わずかな攻防の間に敵の呼吸、力の流れ、打ち込みの角度や癖を読み取り、最低限の力でも攻撃を受け流せるようになる防御法のことだ。 熟達したものならば矢玉であろうと受け流せると言う。焔伯にしてみればこの程度の打撃は止まって見える。 正面突破は叶わないと悟ったエドは、素早くバックステップして距離を取ろうとしたが、その動きは読まれていた。コンマ単位の誤差で焔伯も前進し、肉迫すると、エドの腹に深々と肘を打ち込む。 「 げ ぼ ぉ っ !! 」 エドにとってこれほど強く殴られるのはめったに無いこと。思い切り嘔吐しながら、それでもダウンはしなかった。 回復も待たずにエドは進む。正面がダメならばと、左右にステップを踏みながら勝機を伺う。焔伯は直立不動。またもエドの攻撃を待ち構えていた。 堪え性も無くエドはストレートを放つ。これを焔伯は、肘で跳ね返し、その反動でエドは体勢を崩された。 倒れまい。エドが足を踏み締める。とっ、焔伯が軸足を払った。咄嗟に手を付いたエドだが、その手を焔伯は容赦無く踏みつけた。 そして蹴る。180cmあるエドの体が宙に浮き、壁に叩き付けられた。 「子供扱いだ……」 八旗兵は焔伯が軽くあしらう程度と思っていたが、ここまで力を出すとは考えていなかった。敵が動かざるを得ない状況を作り、行動を、判断を束縛する。ああすれば、こうする。武術とは兵法であり、兵法とは他者に勝って生き残る術だ。敵の動きに合わせどう対応するか、数え切れないシミュレートを彼ら武術家は実践してきた。数多くの戦いを経てきた焔伯に至っては100手先まで予測が行き渡る。 (まるで水を相手にしてるように、力が通じないじゃねえか……!) やられながらもエドは状況を把握しようとしていた。 鍔家流はアムステラ静心流の分派の一つ。人の持つ力より、相手の力、武器の力、地勢、心理を突き詰めて勝利を掴む、弱者の兵法。 その総帥の地位にある焔伯は、テッシンや快王ハックルなどの剛拳使いとは対極に位置する、技巧派、柔拳の快王なのだ。戦法は受けを基本とし、いかなる力も受け流す。エド程度の膂力では肩慣らしにしかなるまい。 その上、彼は他の快王の流派を研究することも欠かさない。快王の地位にある武術家には、謎の気功術や岩石の如き鋼体を創る者、果ては毒使いや、武術家ですらない者もいる。それに比べて拳闘のなんと分かりやすいことか。 エドの蹴り。これもブロッキングで相手の体勢を崩し、返す刃、砕こうかというほどの威力を込めたミドルキックで、エドの左腕を破壊しかけた。 だがそれでも エドの戦意は衰えていなかった。 「パンは連れて行かせねえぞ……!」 眼光鋭く焔伯を睨む。その面構えは歴戦のつわものたちと遜色無い、『男』のものだった。 (……そんな眼で見られちまったら) 全力で打ち込むしかない。今まで確固たる意志を持ち立ちはだかった者たちは、例え弱くても、格下でも、けして手を抜くことは無かった。 「ぐおおおおおおっ!」 がむしゃらに突き出されたエドの拳。 今度は防がない。焔伯はエドの懐に一瞬で飛び込み顎へかちあげ式の掌打。 エドの加速を逆用してのカウンターは脳を揺さぶるだけに終わらず、顔を掴み、床に叩きつける! 意識を朦朧とさせたエドは、後頭部に柔らかい感触を受け、そのまま眠りに落ち込んだ。 「男同士の勝負に割り込むとは何を考えている」 「申し訳ありません……」 眼に涙を浮かべつつ謝るパンは、自分の胸を枕にエドを抱え込んでいる。最後の叩きつけは彼女の介入によって不発に終わった。 あの気分屋が自分のために強大な相手と戦った、それが嬉しくて、それだけで充分だった。 「半端者が。まずは戦うということがどういうことか、その男の下でしばらく学ぶがいい」 「……そうしようと思います師匠」 「まあ人生長いんだ。答えを出すことに焦る必要は無い」 エドウィン・ランカスター、肋骨、左腕、亀裂骨折。打撲10箇所以上。歯を3本欠損。入院。 焔伯はその後、ランカスター隊に居付いてしまった。 戻る <続く>
https://w.atwiki.jp/sega-chainchronicle/pages/384.html
コスト 異名 名前 タイプ 職業 武器 成長 所属 初期ATK 初期HP 限界ATK 限界HP MAXATK MAXHP スキル(消費マナ) アビリティ1 アビリティ2 絆アビリティ 22 剣戟の魔神 アグダラ 戦士 Demon 斬 普通 魔神 2300 2300 5400 5550 9000 9150 フォルテスパーダ(2) 剣聖の素養 刹那の一閃 黒の剣聖 20 不沈給仕 モアネット 戦士 Servant 拳 普通 副都 2100 1800 5700 5000 8900 7600 オーダーアッパー(2) 働き者の二代目 無敵の看板娘 二日酔いの秘薬 20 第九領主 ツル 戦士 Princess 斬 普通 九領 1000 1000 2800 4000 4800 7000 姫の一喝(1) 座禅の成果 ツルの一声 ツルの二声 20 掟の格闘少女 リンリー 戦士 Grappler 拳 普通 大海 3200 2600 7600 6750 9600 8750 六陽大招拳(3) 疾風怒濤 秘めた想い 花嫁武者修行 20 忠義一徹 シェギギム 戦士 Fighter 打 ケ者 2860 2900 7160 7500 9160 9500 ローリングフェイス(3) 命令を主殿! 忠義の連携 忠犬の援護 20 雄叫ぶ者 ユギギ 戦士 Grappler 拳 ケ者 3250 2500 7650 6600 9650 8600 クロキハカイノツメ(2) 黒の衝動 漆黒の刃爪 クロノインシ 20 本能の闘士 グララオ 戦士 Grappler 拳 ケ者 7750 6900 9750 8900 タイガーアッパー(2) 虎牙の共闘 虎空乾坤の型 虎武激励 20 喝采を求める者 テリリア 戦士 Grappler 拳 ケ者 3150 2550 7350 6700 9350 8700 コマンドフェッチ(1) 褒めて褒めて! もっと褒めて! いつも褒めて! 19 七彩の豹紋蛸 ルーラ 戦士 Fighter 斬 普通 海風の港 2600 2300 7350 6650 9350 8650 オリジナルエイト(3) 不意のオシオキ 異彩の美意識 美の伝道 19 孤高の波 ライア 戦士 Fighter 突 普通 海風の港 2450 2500 7300 7100 9300 9100 ラ・リュミエール(2) 独りの遊撃隊 ふたりでひとつ レイの刺毒 19 学園長 モノクマ 戦士 Demon 斬 旅人 1950 1950 4600 4600 8600 8600 モノクロノブレード(2) 投票タイム 絶望の象徴 絶望の運び手 18 第二領主 ヨシツグ 戦士 MasterFencer 斬 普通 九領 3500 2450 7400 6900 9400 8900 散華繚乱(2) 修羅の躍動 散り際の刀閃 修羅道の導 18 鬼神剣士 オリョウ 戦士 Samurai 斬 普通 九領 2000 2000 7050 6120 9050 8120 呪詛の鬼魂(2) 巫女の秘術書 魂纏 伝聞 鬼道剣術 18 剣豪太夫 カミナヅキ 戦士 MasterFencer 斬 普通 九領 4200 3500 7240 6240 9240 8240 鈴音天昇(3) 神無の瞳 吸精剣 神無の瞳 18 狂戦士 ルーク 戦士 Berserker 打 普通 副都 2780 2540 6580 6940 8580 8940 殲滅槌(3) 黒ノ狂撃 人間として link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 18 文化の伝道師 ギン 戦士 Meister 斬 九領 4300 3250 7010 6150 9010 8150 連舞・姫檜扇(2) チャノユの達人 チャノユの伝道師 戦闘舞踊 17 壱領忍衆頭目 チヨメ 戦士 Shinobi 斬 普通 九領 2700 2200 6960 5940 8960 7940 忍法カゲキリ(2) 忍びの技 隠形の術 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 17 火焔の剣士 ソーニャ 戦士 RuneFencer 斬 普通 九領 2650 2400 6800 6300 8800 8300 プロミネンスドライブ(2) 炎刀使いの用心棒 真実の炎 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 17 姫剣豪 ヨシノ 戦士 MasterFencer 斬 普通 九領 2500 2400 6850 6200 8850 8200 桜花爛漫(2) 鬼の剣術 マナの天分 桜花散華 17 老剣豪 ボクデン 戦士 MasterFencer 斬 普通 九領 4400 4000 6700 6100 8700 8100 剣嵐武闘(3) 達人の歩法 鬼の剣術 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 17 防衛委員長 ミーム 戦士 Smith 打 普通 副都 2300 2500 6370 6750 8370 8750 突貫工事(2) 守備意識 バリケード作成 建築士の意地 17 殺戮の剣聖 テレサ 戦士 SwordMaster 斬 普通 副都 4500 2900 7100 6480 9100 8480 殺戮剣術(2) 殺人衝動 加速する殺意 殺意剣技 17 滋養の魔人 サプラス 戦士 Demon 斬 普通 魔神 2000 2400 4800 5000 8600 9000 デモンズフルコース(2) 魔神の刃 デモンズスライサー 滋養の武器 17 火焔の浴衣 ソーニャ(浴衣Ver.) 戦士 RuneFencer 斬 普通 九領 2650 2400 7200 5800 8800 7800 プロミネンスドライブ(2) 炎刀使いの用心棒 人を助ける炎 火焔の浴衣 17 超高校級の殺人鬼 ジェノサイダー翔 戦士 Serial Killer 斬 旅人 2240 1800 6740 5900 8740 7900 チョッキンフィーバー(2) 切り替わる人格 超高校級の殺人鬼 超高校級の殺人鬼 17 八葉一刀流中伝 リィン 戦士 Samurai 斬 旅人 2000 2100 6700 6270 8700 8270 蒼焔ノ太刀(2) Mクオーツフォース 激励 フォース 17 闇はらう剣士 ハンフ 戦士 Warrior 斬 副都 2450 1850 6900 6180 8900 8180 フォル・モーント(2) 鍛錬の成果 美しき勇気 強敵戦闘指南 16 破壊魔人 ロレッタ 戦士 Merhant 打 普通 副都 2000 2000 6400 6400 8400 8400 デストロイスマッシュ(3) 商才 破壊魔神の本性 破壊魔人の商才 16 強運の戦士 ニンファ 戦士 Warrior 斬 普通 副都 1770 1770 6170 6170 8170 8170 ハッピーストライク(3) 天運 ハッピートレジャー 強運のおすそわけ 16 刀匠 ヨルデ 戦士 Smith 斬 普通 迷宮山脈 2300 2300 6500 6100 8500 8100 一之太刀(2) 土妖精の肉体 吸魂刀 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 16 ぬるい炎 キキ 戦士 Fighter 斬 普通 迷宮山脈 2260 2350 6450 6250 8450 8250 フレアスプラッシュ(2) 炎の武器 荒ぶる炎 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 16 山猫の使い リンセ 戦士 Fighter 斬 普通 精霊島 2220 2220 5620 5620 7620 7620 ニャインライブス(1) リンクス 再生 山猫の如き 16 牢獄の魔神 コロパティロン 戦士 Demon 打 普通 魔神 1640 1740 5540 5840 8540 8840 ビッグチョッパー(2) 魔神の再生力 魔神の切断欲求 再生力 16 七色の霊刃使い サクヤ 戦士 RuneFencer 斬 普通 旅人 2000 2000 6500 6000 8500 8000 陰陽一刀流 影道閃(2) マナの天分 師の導き link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 16 勇者 戦士 SwordsMan 斬 普通 旅人 2000 2000 6300 6200 8300 8200 広域殲滅光炎陣(3) 治療魔法 勇者の使命 勇者の支援 16 ギルドのまとめ役 カノ 戦士 Fighter 斬 晩成 副都 1600 1600 4520 4460 7120 7060 四つ葉の祝福 <歌>(1) マナの素養 リーダーシップ link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 16 ちびっこ忍者 フーコ 戦士 Shinobi 斬 普通 九領 2300 1600 5700 4910 7700 6910 かすみくない(2) すごうでのくのいち おいろけのじゅつ しのびのしごと 16 ギルド同盟副議長 セリーヌ 戦士 SwordMaster 突 普通 副都 2000 2000 4600 4900 10200 8300 クリスタルクオーツ(3) マナの素養 衛生兵! 行け!衛生兵! 16 自暴の暗殺者 スルスタン 戦士 Assassin 斬 普通 副都 2400 1900 5600 5100 7600 7100 ストラトブレード(2) 暗殺者の突撃 闇の刃 闇の短刀 16 “ご隠居コック” にゃん太 戦士 Swashbuckler 突 普通 旅人 2000 2000 6350 6100 8350 8100 ブラッディピアッシング(2) ライトニングステップ ピンポイント 猫人の導き 16 “美少女暗殺者” アカツキ 戦士 Assassin 斬 普通 旅人 2100 1900 5400 5400 8800 8000 アサシネイト(3) ヴェノムストライク アクセルファング ヴェノムサポート 16 砂漠の宝石 シェラザード 戦士 SwordMaster 斬 普通 湖都 2200 2300 5200 5440 7200 7440 舞うエーデルローゼ(3) 砂漠に舞う薔薇 磨かれる宝石 デザートジュエル 16 豪腕の女傑 マリーダ 戦士 Warrior 打 普通 迷宮山脈 2400 2100 7650 7500 グランドクラッシュ(3) 土妖精の肉体 豪腕 パンプアップ 16 浴衣魔人 ロレッタ(浴衣Ver.) 戦士 Merhant 打 普通 副都 2000 2000 6800 5900 8400 7900 デストロイスマッシュ(3) 商魂たくましく 破壊魔神の本性 浴衣商法 16 地下闘技場最年少王者 範馬刃牙 戦士 Grappler 拳 普通 旅人 2000 2200 5000 4500 7600 6900 エンドルフィン(2) 剛体術 範馬の血 強者の呼び声 16 中央の錬金術士 ロジ― 戦士 Alchemist 斬 普通 旅人 2500 2500 6400 6400 8400 8400 デュアルブラスト(1) スタンブロウ 最新鋭錬金術 スタンヒット 16 刀狩盗賊 リネイア 戦士 Thief 斬 普通 副都 2200 1800 7900 7300 昇天斬(1) 名刀収集癖 刀との対話 収集癖 16 熱血用心棒 バリキ 戦士 Samurai 斬 九領 2160 2000 7280 7000 剛爆熱波紅蓮斬(3) 正しい力 バリキの根性論 不屈の闘気 16 縁繋ぐ山猫 リンセ(アニメVer.) 戦士 Fighter 斬 精霊島 7620 7620 ニャインライブス(1) リンクス 調和の絆 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。 16 鬼の吟遊詩人 ツガル 戦士 Minstrel 斬 九領 2300 1100 7300 7100 雷光手奏法(1) 鬼の剣術 鳴り響くハーモニクス 鬼風車奏法 0 主人公(Ver.2) 戦士 Warrior 斬 普通 義勇軍 3700 3700 6000 6000 -- -- クロノブレード(3) 絆が見せる光 義勇軍の絆 隊長の声
https://w.atwiki.jp/tokyograil/pages/28.html
織作茜・セイバー ◆Ee.E0P6Y2U ……開け行く東雲しらみ渡れば、壁にあらはな貫を踏み、桁など伝ひ、 天井を見るに、爪先長き事、二尺ばかりの上臈蛛(じやうらふくも)頭より背中まで切りつけられて、死したり。 人の死骸有りて、天井も狭し。ああ誰が形見ぞや…… (宿直草巻の二より抜粋) ……一面の桜である。 満開の桜の只中である。 春の海原を渡る綿津見の猛き息吹が断崖を駆け上り、儚き現世の栄華を一瞬にして薙散らす。 生みも空も大地も渾然一体となって、ただただ世界を桜色の一色に染め上げんとしているかのようである。 その桜の霞の中にひと際黒き影がある。 朽ちかけた墓石。そして――黒衣の男。 対峙するのは桜色に染まった女である…… (この物語が始まる少し前のこと) ◇ 裸の女がいた。 綺麗な顔をしていた。半月型の大きな瞳。端麗に伸びた鼻筋。形の善い富士額。 長い髪が濡れている。流れ落ちる雫が幕を張り艶艶とした黒を湛えていた。 一方で肌は陶器のように白く、それだけに唇の朱が善く映えている。 すらりと伸びた手足は指先まで肌理細かな美があった。 端正で麗しい。 しかしそれだけではなかった。 太っている訳ではないが、痩せてもいない。 ――肉だ。 その女には肉がついていた。若く瑞瑞しい肉は湯を浴びて俄かに火照っている。 張りのある乳房もまた濡れていて、臍にかけてつう、と雫が垂れていた。 湯気たちのぼる肉体は月に照らされ、妖しげな白を浮かび上がらせていた。 もしそこに完成された美というものを求めたのならば、肉は邪魔だった。 余分なものである。定められた黄金比から、その肉があるせいで僅かにずれてしまっている。 ――しかしそのずれが。 淫靡なのだ。 完成された美をただ描いただけではそれは人形だ。人ではない。女でもない。 女には肉がついている。肉が彼女を女にしている。描き出された絵でもなく、造り込まれた蝋人形でもなく、一人の女にしている。 だからそこにいるのは――女なのだった。 ――なんていやらしい躰だろう。 茜はその女を注視(みつ)めながら思った。 鏡には裸の女が映っている。それをじっと眺めていると、その女もまた茜をじっと見返してきた。 ――妹とは、真逆の躰だ。 顔立ちも身体つきも似ていた。しかし何もかもが真逆だった。 何時だって毅然と前を向いていた妹とは違い、目の前の女には背を丸めていて、どこか後ろめたいものを臭わせている。 その後ろめたさを糊塗して隠している。そうして取繕った結果がこのふしだらな肉だ。 どろどろと長く伸びた髪は婦(おんな)であることを否応なしに主張していて、これも短く切り揃えていた妹とは真逆だった。 何より違うのはその瞳だ。妹の瞳には何時だって迷いがなく、鋭いまなざしをもってして理路整然とした主張を掲げていた。 だがこの女の目は違う。黒く揺れるその瞳はあやふやだ。何を云いたいのか、何を思っているのか、何もかもが漠然としている。 ――何だこれは。 周りに対して、曖昧にそう問いかけているのだ。 目に付く物全てが分からないとでもいうように、疑問に揺れている。 どこに行けばいいのか。どうしてここにいるのか。どうすればいいのか。 問い掛けすら判然としない。 一つに絞れば、あるいはまだ善かったかもしれないのに。 ――分からないのだ。 自分が何であるかさえ、目の前の女は分かっていない。 分かっていないのに、それを問いかけることもしない。 分からないという思いを抱えたまま、女という器に依って生きている。 何もかも分かっていた妹がすぐそこに居たにも関わらず、問いかけることもしなかった。 否、妹だけではない。ただ一人の例外を除いて、この女は今まで誰とも言葉を闘わせたことがない―― あの男は、ただ一人この女と相対した彼は、そんな在り様を突き付けてきた。 何も分かっていない。分かっていないのに、超越者であるかのように振る舞う、そんなおかしさを突いた。 そして言ったのだ――貴方は悲しいのだと。 自分が悲しんでいることすら分からないような、そんな女であると、あの男は言ったのだ。 散り行く桜の下で―― だから女は、織作茜は生きている。生きることになったのだ。 そのままじっと鏡を見つめ――そこに映る女が目を放すと、茜もまたその場を後にしていた。 月明かりに照らされた、一人では大きすぎる風呂場を出た。 誰も居ない脱衣所はおかしなくらい明るかった。 備えられた電灯は茜の知るものよりずっと進んだ造りのもので、月よりもずっと明るく、はっきりと躰を照らしていた。 ――茜の、女の躰を。 その躰は、また別の意味合いも持っていた。妹よりも大きな乳房の隅、脇にかかるように走る痕が在る。 ――令呪だ。 ここがどこか、どうしてこんな場所にいるのか、その理由が刻まれている。 「セイバーさん」 肌についた雫を拭きながら、茜は誰も居ない屋敷で、声を上げていた。 「……何かありましたか?」 すると声があった。 りん、と流れるような音がして、姿を現したのだ。 白い髪がはらりと揺れた。 その白は茜の陶器のような代物ではない。あんな塗り固められた白よりもずっと淡い、どこまでも透明に近い白だった。 肌も、そして眼も、同じように白い。躰を描き出す色素が限りなく薄い。 ともすれば倒れしまいそうな儚さを纏った彼女は、しかし凛としていた。 その腰に刀差し馳せ参じる佇まいは、儚くも決して手折れぬであろう強い芯を感じさせた。 ――例えるなら、桜か。 最後には儚く散ることが定められている。 終わりは決して遠くない。もしかすればそれは明日かもしれない。 しかし――強いのだ。 はなと散る桜を嘲笑する者はいない。何故ならばその瞬間こそ桜が最も美しく、そして凛々しい瞬間だからだ。 それに彼女在り様は似ている。 桜に似た彼女こそ、茜に与えられた従者である。 名は沖田総司。 幕末最後の剣客集団、新撰組一番隊組長。 芹沢鴨暗殺、池田屋事件など重要な任務をこなし、一番隊の中でも最強の剣士と知られる剣豪。 それが――彼女であるという。 そう、彼女だ。 音に聞く沖田総司は女であった。 伝承によれば沖田は美しい顔立ちをしていて、天才的な美青年だったらしい。 しかし――女だとは。 「明日の予定について話しておこうかと思いまして」 云いながら、茜は彼女の装いを窺った。 空のような色をした羽織は、上質な生地のものであったがところどころ汚れている。 首に巻かれたマフラーに飾りの類は一切見えず、その端麗な顔を覆ってしまっていた。 そして何よりその手に握られた刀は使い込まれている。その鞘には傷があり、柄に掛けられた指先には痕があった。 彼女を包んでいるのは紛れもない戦いの衣装だった。 それを窺いながら、茜は自分の服を着る。 襟刳の開いた黒い襯衣(しゃつ)に黒い服筒(すらっくす)を穿く。 以前は着ることのなかった洋装だった。 ――妹が着ていたから。 茜は着ることができなかったのだ。 装いは文化だという。何かを殊更強調したり差別したりして、漸く人は社会的属性を獲得する。 そこまでして漢(おとこ)か、それか婦(おんな)かの区別が付く。 だから、今まで洋装を着ることができなかった。妹は決して何の婦(おんな)としての装いをしなかったから。 茜はきっと同じ理由で――髪も切れなかった。 今更洋装を着てみたからといって別段何の意味がある訳でもない。 ただ時の流れを元に戻した気にはなれた。妹を、母を、家族をみな喪った以来、自分はどこか時間から切り離されていたように思う。 遅くも早くもない。ただ隔絶した時の流れに、取り残されていた。 それが妹のような洋装に身を包むことで――元に戻れた。 そんな気がした。 しかし、いざ洋装を着てみるといささか慣れないものがあった。 この屋敷にあった服は採寸が違ったようだった。 胸が、腰が、肉が――躰の線が浮き出てしまっている。 何も飾る気はなかったのに、これでは婦(おんな)のままだった。 「明日、服を買いに行きましょう」 そう云うとセイバーは「服ですか?」と聞き返した。 突然の申し出に、困惑しているようだった。 当然だろう、彼女はただ戦うだけにやってきた。 この東京に――聖杯戦争という舞台に。 それ以外の飾りなど、彼女は求めていないのだ。 「はい。服です」 セイバーの困惑を無視して、茜は云った。 やはりセイバーと自分は――違う。 セイバーは女だ。しかし婦(おんな)ではない。 彼女は、沖田総司はやはり漢(おとこ)なのだ。 似ている、と思った。 セイバーは似ているのだ。 女でありながら、婦(おんな)であることを選ばなかった、彼女に。 茜が喪った――殺した妹に。 あの桜の木の下で、黒衣の男に言われるまで、茜は自分が悲しんでいることにすら気が付いていなかった。 だからだろうか。もう叶わないと思いつつも、また妹と話してみたいと思うのは―― 「服を買う。まずはそれから始めます。そして――」 ――戦うのか。 茜がこの地にやってきたのは、偶然だった。 紅い月の風聞などを聞きつけ、気付けばこんな場所に来ていた。 ――それで、戦うのか。 闘うことをどこまでも避けてきたというのに。 「――それからのことは、そのあとに考えます」 平坦な口調で、茜は云った。 聖杯というものを、茜はよく知らない。 基督(キリスト)教由来のものである。先代や碧ならばいざ知らず、自分はそちらには造詣は深くない。 そういった事柄にとても詳しい人物ならば知っているが、知っているだけで今はどうしようもない。 否、軽い程度の知識なら、彼を頼らずとも分かるし、この場合深い知識など要らぬようにも思える。 それに出自など――分からずともいいのかもれない。 見るべきはその褒章だ。 聖杯戦争――それを知り、識った今、自分はどうするのか。 ――分からない。 分かろう筈もない。自分の個すら分からぬというのに、その願いなど掴める筈もない。 後悔はしない。そういう生き方をする。 そう決めた――決めはした。 だが、それでどうするのだ。 婦(おんな)としてではなく、織作茜という個は何を求めている―― 「あの――」 不意にセイバーが口を開いた。 嫋やかな眼差しが茜を射抜いた。 「――私も、いいでしょうか?」 おずおず、といった風に彼女は茜に問いかけていた。 何を――と思わず茜は聞き返していた。 「服です」 「服――」 「服を明日マスターが買いに行かれるのでしたら……できれば、私の分もお願いしたいんです。 袴とブーツ……桃色のものがあれば、是非。サーヴァントとしてはおかしな話ですが――」 ――それが着たいらしい。 袴と、ブーツが欲しいとセイバーは云っていた。 茜は思わず彼女にじっと注視してしまった。 云った彼女の目にはそれまでには見せなかった色が浮かんでいた。 何か、あったのだ。 詳しくは分からない。しかし、彼女もまた、そういう装いをしたいという、個を持っていた。 桃色――桜の色か。 「――分かりました」 「では……」 「そうですね。明日はセイバーさんの分も買うことにします」 「それは――」 ――ありがとうございます。 そう云って、セイバーは笑った。 その笑みは儚くも可憐な――少女の笑みだった。 それを見たとき、茜は自分が何をしたいのかに気付いた。 何の為にここに来たのか――それは分からないけれど。 しかし、今何を求めているのかは分かった。 ――話をしたい。 妹に似ている、この桜のようなセイバーと話してみたいのだ。 とにかく服を買おう。セイバーと共に、新たな装いを用意するのだ。 それに何か象徴的な意味を求めている訳ではないけれど―― ――一つの仕切りにはなる。 それはきっと大切なことのような気がした。 彼女の――織作茜の願いは、そんなことから先ず始まった―― 【クラス】 セイバー 【真名】 沖田総司 【パラメーター】 筋力C 耐久E 敏捷A+ 魔力E 幸運D 宝具C 【属性】 中立・中庸 【クラススキル】 対魔力E 幕末に魔力とかそういうのねぇから! 神秘の薄い時代の英霊のため対魔力がほとんど期待できない。 申し訳程度のクラス別補正である。 騎乗E 新選組が騎馬を駆って活躍、という話は寡聞にして聞かぬ。申し訳程度のクラス別補正である 【保有スキル】 心眼(偽)A 直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。 病弱A 天性の打たれ弱さ、虚弱体質。桜セイバーの場合、生前の病に加えて後世の民衆が抱いた心象を塗り込まれたことで、「無辜の怪物」に近い呪いを受けている。 保有者は、あらゆる行動時に急激なステータス低下のリスクを伴うようになる、デメリットスキル。 発生確率はそれほど高くないが、戦闘時に発動した場合のリスクは計り知れない。 縮地B 瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。 単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。 最上級であるAランクともなると、もはや次元跳躍であり、技術を超え仙術の範疇となる 無明参段突き 対人魔剣。最大捕捉・1人 稀代の天才剣士、沖田総司が誇る必殺の魔剣。「壱の突き」に「弐の突き」「参の突き」を内包する。 平晴眼の構えから“ほぼ同時”ではなく、“全く同時”に放たれる平突き。超絶的な技巧と速さが生み出す、防御不能の秘剣。 【宝具】 誓いの羽織 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 幕末に京を震撼させた人斬り集団「新撰組」の隊服として有名な、袖口にダンダラ模様を白く染め抜いた浅葱色の羽織。 サーヴァントとして行動する際の戦闘服と呼べるもので、装備する事によりパラメータを向上させる。 また通常時のセイバーの武装は『乞食清光』だが、この宝具を装備している間、後年に「沖田総司の愛刀」とされた『菊一文字則宗』へと位階を上げる。 一目で素性がバレかねないあまりにも目立つ装束のため、普段はマスターが用意した袴を着用している。 誠の旗 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~200人 桜セイバーの最終宝具。 新撰組隊士の生きた証であり、彼らが心に刻み込んだ『誠』の字を表す一振りの旗。 使用者本人も魔人アーチャーとの最後の戦いまで気付いていなかったが、一度発動すると、かつてこの旗の元に集い共に時代を駆け抜けた近藤勇を始めとする新撰組隊士達が一定範囲内の空間に召喚される。各隊士は全員が独立したサーヴァントで、宝具は持たないが全員がE-相当の「単独行動」スキルを有しており、短時間であればマスター不在でも活動が可能。 ちなみにこの宝具は新撰組の隊長格は全員保有しており、効果は変わらないが発動者の心象によって召喚される隊士の面子や性格が多少変化するという非常に特殊な性質を持つ。 例として挙げると、土方歳三が使用すると拷問などの汚れ仕事を行ってきた悪い新撰組、近藤勇が使用すると規律に五月蝿いお堅い新撰組として召喚される。また召喚者との仲が悪いとそもそも召喚に応じない者もいる。桜セイバーが召喚するのは、世間的に良く知られたメンバーで構成されたポピュラーな新撰組である。 【weapon】 『乞食清光』 日本刀『加州清光』の愛称。諸説あるが、史実通り沖田総司の愛刀。 【人物背景】 和服を着こなし、物腰柔らか、かつ謙虚という絵に書いたような大和撫子。いつも冷静だが意外と陽気な所もあり、サーヴァントとしての扱いやすさもセイバークラスに相応しい。 だが、ひとたび斬り合いとなれば冷徹な人斬りへと変貌。得物を抜いた相手に対しては隙を見つければ即座に斬り捨て、背後を見せた者にも一切容赦せず、殺し合いや死生観に関して極めてシビアな感性を持っている。 生前は凄腕の剣士として知られているが、自分では「剣豪である」というつもりはないらしい。 史実通りちょっと体が弱く、ショックな事があると血を吐く。また局長や副長など新撰組の仲間達と最後まで戦えなかったことを気に病んでおり、昔の事を考えると申し訳ない気持ちと自分の不甲斐なさから落ち込んでしまい、情が深いだけにメンタル弱い所がある。 物凄く似合ってる袴とブーツはマスターから貰ったもので、サーヴァントとして活動する際は、宝具である羽織とマフラーを着用している。 生前、病によって新選組の同胞達と共に戦場で最後を迎えられなかったことから聖杯に託す願いは、『最後まで戦い抜くこと』。 ……という設定で『Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚』で活躍するらしいサーヴァント。 元は『コハエース』にて琥珀さんが適当に考えた新サーヴァントである。 キャラデザを社長に投げてみたところ、何故か社長が本気を出してしまい公式化。 お祭り漫画に出演の他フィギュアも出て、これには琥珀さんも困惑なのだった。 (ちなみに最初は琥珀さんがサーヴァントが力を手に入れた『コハセイバー』だったのだが、そんな適当な設定は社長の手により無視された) 『コハエース』誌上で読者参加型真名当てクイズを行い、正解者には作者の経験値氏よりメガドラソフトが送られたとか。 【マスター】 織作茜 【マスターとしての願い】 ??? 【能力・技能】 一見して楚楚とした女性だが、その実彼女は非常に機知の効く才媛である。 薬物や嗅覚に関する知識を持つ。 【人物背景】 出典は『絡新婦の理』及び『塗仏の宴』 時期は『塗仏の宴』開始前。 刑事、木場修太郎は、近頃世間を騒がせている「目潰し魔」の捜査に奔走するうち、 榎木津との共通の友人で映画会社を経営する川島新造が何らかの手がかりを持っているのではないかと踏む。 しかし彼は「蜘蛛に訊け」との謎の言葉を残して行方をくらませる。 聖ベルナール女学院の生徒、呉美由紀と渡辺小夜子は、学院内に飛び交う噂話を追ううちに、望めば人殺しさえ行う悪魔「蜘蛛」と、それを崇拝する「蜘蛛の僕」の存在を知る。 教師、本田幸三から酷い仕打ちを受けていた小夜子は半ば勢いに任せ、「本田を殺してくれ」と「蜘蛛」へ叫ぶ。 そんな時、美由紀らはかつて「蜘蛛の僕」の一員であったらしい麻田夕子と接触するが、三人ともに窮地に陥っていく。 伊佐間一成は、釣りに訪れた房総半島の興津町で呉仁吉という老人と意気投合する。 漁師であった彼の「収集物」の価値を精算すべく伊佐間は、旧知の間柄である今川雅澄を招請する。 折りしも近在の旧家、織作家の大黒柱、雄之助の葬儀の最中であり、織作家の使用人である出門耕作から「ついでに、残った骨董品の精算もしてもらいたい」と請われ、 今川と伊佐間は連れ立って「蜘蛛の巣屋敷」と渾名される織作の屋敷へと赴く。そこで彼らは織作家の事件に巻き込まれることになってしまう。 (絡新婦の理・あらすじ) 織作家の次女として生まれる。28歳。不明の男と織作真佐子の子。 織作是亮と結婚するが、母織作真佐子に性交渉は禁じられていた。 上記事件で夫、母、姉、二人の妹を全て喪った。 ……連続目潰し魔、絞殺魔、ベルナール女学院、織作家、多くのものを巻き込んだ惨劇の黒幕。 学生、刑事、殺人鬼、家族……全てを直接・間接的に操り、邪魔な人間をすべて排除することに成功する。 そうして全く自分の手を汚すことなく目標を達成するが、中禅寺秋彦との対話を通して己の理に気づく。 その後、羽田隆三に家族と共に過ごした屋敷を売却し、新たな生活を模索するこになる。 妹たちを弔う為にも韮山の土地の調査に赴くが、そこで…… 【方針】 セイバーと話す。
https://w.atwiki.jp/kof2002um/pages/400.html
通常技 ふっとばし攻撃 通常投げ 特殊技 必殺技 超必殺技 MAX超必殺技 MAX2 通常技 近距離技 近A顔面付近への掌底。キャンセル可。攻撃位置は高め。攻撃発生は遅めで、リーチは短め。しゃがみ時座高がチョイクラスの相手にはヒットしない。密着では当たらないキャラがいる。 近B膝蹴り。キャンセル可。攻撃位置は低め。攻撃発生は早めで、リーチは短く認識距離も狭い、全キャラの立ちしゃがみにヒットする。 近C裏拳。キャンセル可。攻撃位置は高め。攻撃発生は遅く、リーチは短めで認識距離は狭め。全キャラの立ちしゃがみにヒットする。 近D体をそらせた膝蹴り。キャンセル可。攻撃位置は高め。攻撃発生は遅めでリーチは短め、認識距離が狭い。全キャラの立ちしゃがみにヒットする。 ▲目次へ戻る 遠距離技 遠A近Aと同じ攻撃。 遠Bハイキック。キャンセル不可。攻撃位置は高い。攻撃発生は遅めで、リーチが長い。しゃがみ時座高が庵クラス以下のキャラにはヒットしない。牽制にばらまける。 遠C腕を振り回す。2段技で、2段目のみキャンセル可。攻撃位置は高め。攻撃発生は遅く、リーチは短め。全キャラの立ちしゃがみにヒットする。 遠D頭部付近への回し蹴り。キャンセル不可。攻撃位置は高い。攻撃発生は遅く、リーチは長い。しゃがみ時座高がチョイクラスのキャラにはヒットしない。牽制にばらまける。 ▲目次へ戻る しゃがみ技 屈A前方への貫手。キャンセル可(連打含む)。攻撃位置は低め。攻撃発生は早めで、リーチは短め。全キャラの立ちしゃがみにヒットする。 屈B足元への蹴り。下段。連打キャンセルのみ可能。攻撃位置は低い。攻撃発生は遅く、リーチは短め。全キャラの立ちしゃがみにヒットする。 屈C前方を殴りつける。キャンセル可。攻撃位置は低め。攻撃発生は遅く、リーチは短め。全キャラの立ちしゃがみにヒットする。 屈D体を大きく伸ばして蹴る。キャンセル可。攻撃位置は低い。攻撃発生は遅く、リーチは長い。全キャラのしゃがみにヒットする。多用できる。 ▲目次へ戻る 低ジャンプ技 低JA前方下へのパンチ。キャンセル可。攻撃位置は前方下。リーチは短め。全キャラのしゃがみにヒットする。しゃがみ時座高が大門クラス以上の相手に昇り中段になる。しゃがみ時座高が大門クラス以上の相手をめくることができる。 低JB横方向への水平蹴り。キャンセル可。攻撃方向は横と下。リーチは長い。全キャラのしゃがみにヒットする。しゃがみ時座高が京クラス以上の相手に昇り中段になる。しゃがみ時座高が庵クラス以上の相手をめくることができる。 低JC体重を乗せた肘打ち。キャンセル不可。攻撃方向は前方下。リーチは短め。全キャラのしゃがみにヒットする。しゃがみ時座高が大門クラス以上の相手に昇り中段になる。しゃがみ時座高が京クラス以上の相手をめくることができる。 低JD空中回し蹴り。キャンセル不可。攻撃方向は前方下。リーチは長い。全キャラのしゃがみにヒットする。しゃがみ時座高が京クラス以上の相手に昇り中段になる。しゃがみ時座高が庵クラス以上の相手をめくることができる。 ▲目次へ戻る 斜めジャンプ技 斜めJA低J版と同じ攻撃。性質が若干違い、しゃがみ状態のチャンには昇り中段になる。 斜めJB低J版と同じ攻撃。性質が若干違い、性質が若干違い、しゃがみ状態のチャンには昇り中段になる。小中Jを仕込んだ場合、しゃがみ時座高が大門クラス以上の相手に昇り中段になる。またしゃがみ時座高が京クラス以上の相手をめくることができる。 斜めJC低J版と同じ攻撃。性質が若干違い、しゃがみ状態のチャンには昇り中段になる。 斜めJD低J版と同じ攻撃。性質が若干違い、しゃがみ時座高が大門クラス以上の相手に昇り中段になる。 ▲目次へ戻る 垂直ジャンプ技 垂直JA斜めJ版と同じ攻撃。 垂直JB足を真上に振り上げた攻撃。キャンセル不可。攻撃方向は前方上。リーチは短い。全キャラのしゃがみにヒットする。 垂直JC斜めJ版と同じ攻撃。 垂直JD斜めJ版と同じ攻撃。 ▲目次へ戻る ふっとばし攻撃 地上ふっとばし両手を大きく左右に開いた掌底突き。キャンセル可。攻撃位置は高め。攻撃発生は遅く、リーチは短め。全キャラの立ちしゃがみにヒットする。 空中ふっとばし下半身をひねった蹴り。キャンセル可。攻撃位置は前方下。リーチは長め。全キャラのしゃがみにヒットする。しゃがみ時座高が庵クラス以上の相手をめくることができる。 ▲目次へ戻る 通常投げ 寸打(C投げ)密着から弾き飛ばす。強制ダウン。技後位置は入れ替わらない。 巴投げ(D投げ)そのまま巴投げをする。非強制ダウン。技後位置が入れ替わる。大きく間合いが離れる。 ▲目次へ戻る 特殊技 虎撲手リーチのある中段技。強攻撃から連続ヒットする。キャンセル版は上段技になるが、キャンセルが利くようになる。表ケンスウのものより発生が早い。ディレイキャンセルで揺さぶったり、MAX発動絡みの連続技などに。 後旋腿跳ねて高位置を蹴る。中段ではない。単発で出してもキャンセルがかかる。ガードさせれば隙は小さく、先端当てだと有利だが、打点が高すぎてしゃがまれるとほぼ空振り。ジャンプ防止効果がある。 ▲目次へ戻る 必殺技 箭疾歩発生の早い突進技。2段技で1段目はリーチがまったく無いが、近距離でなら弱攻撃から繋がる。弱で出した場合、先を当てるようにして使えば隙はない。強で出した場合は基本的にガードされたら反撃確定で連続技にも使いにくいが、どこキャンコンボで使ったり、弱穿弓腿の追い打ちに使うと裏に回れるネタもある。 龍連打連続で相手を叩く。弱攻撃から繋がる。間合いが近ければ強攻撃からも繋がる。弱強の性能差はないが、強で出すとボタン連打でヒット数を増やせる。ガードされた場合は隙は小さいが発生とリーチに優れる技には反撃される。画面端なら追い打ち可能。天龍か強龍顎砕が無難。ゲージを2本使うなら、龍連打の最後を神龍天舞脚でスーパーキャンセル。画面端であれば龍連打の後、弱龍顎砕を当てて、それをスーパーキャンセル神龍天舞脚。近Dからならこれで5割減る。 龍鱗靠新技。裏拳を見舞う技。強弱どちらも強攻撃からでも連続ヒットしない。裏拳を繰り出す前に、強力なガードポイントがある。下段はガードできないが、中段上段に対してはすこぶる強力なガードポイント。下段技でも、テリーやアンディの足払いのように、かすかに足が浮いている足払いならガードできる足払いもある。弱強ともに、裏拳はガードされても隙がない(強はわずかに不利)。反撃を受けない。弱で出せば前へ一歩踏み込んで裏拳。見た目よりもリーチは長く、牽制技として使えるぐらいにリーチはある。裏拳が出てしまえばそこそこ当たりに強い。上半身が無敵なのか、繰り出している裏拳が無敵なのか、いまいちよく分からないが。互いの基本技が届く間合いで使う。ガードポイントの発生もそこそこに早く、GCC+Dの無効化にも活用できる。強で出せば、ガードポイントの後、画面半分ぐらい前へダッシュして裏拳。ダッシュ中は無敵はなく相手の近くに行ってから裏拳を出すので当たりに弱い。少し離れた間合いから相手の飛び道具や突進技をガードして反撃、といった具合で使う。ただしガードポイントの発生が弱より遅い。 龍連牙 地龍地上を飛び跳ねての3段蹴り。出始めにガードポイントが有る。近距離なら弱攻撃から繋がる。強攻撃から繋がる技としては箭疾歩や龍連打より連続技にできる間合いが広い。ガードされると危険。 龍連牙 天龍空中での3段蹴り。弱攻撃から連続ヒットする。地龍より発生が早く、上に強い攻撃判定とガードポイントがある対空っぽい技。龍顎砕よりとっさに出しやすいが無敵があるわけではないので龍顎砕を使うに越したことはない。 龍爪撃空中で出す突進技。ジャンプ攻撃や6+Bからキャンセルで出しても連続ヒットしない。反撃しにくい技ではあるが高い打点でガードされると危険。表ケンスウのものとは性能が違い、当たったら相手を浮かせて追い打ちができる。壁際なら穿弓腿 龍爪撃 龍顎砕 スーパーキャンセル神龍天舞脚などもいける。MAX2で拾うことも可。 龍顎砕逆立ちして蹴り上げる。強弱ともに弱攻撃から連続ヒットする。弱は発生直前まで、強は発生後までの無敵がある。強で対空し、スーパーキャンセル神龍天舞脚も可。 穿弓腿上方向を2回蹴り上げる。強弱ともに強攻撃から連続ヒットする。浮かせ技で、ガードポイントがある。弱の方が動作が早く追撃しやすい。追撃は中央ではダッシュから天龍が比較的容易。画面端では龍爪撃が入るので、そこからさらに追撃可。 ▲目次へ戻る 超必殺技 神龍凄煌裂脚龍連牙 地龍から強化版龍顎砕へのコンビネーション。強攻撃から連続ヒットする。表ケンスウと違い、途中で中段にはならない。発生後まで無敵があるので割り込みに使える。 神龍天舞脚龍連牙 天龍から強化版龍顎砕へのコンビネーション。強攻撃から連続ヒットする。発生よりかなり前に無敵が切れるので、対空で引き付けて強龍顎砕→スーパーキャンセルで追撃、といった使い道が主。ただし、龍顎砕の当たり方によってはカス当たり(ダメージは全段ヒットとあまり変わらないが)したり、下手すると途中から空振りする場合も稀にある。 超龍連拳弱攻撃から入る超必殺技。ダメージも他二つの1ゲージ超必よりわずかに高い。初段がヒットしないと必ず3発で終了する。強は弱より1フレームだけ発生が遅く、無敵もその分だけ長い。しかし弱強ともに無敵は発生前に切れてしまう。裏ケンスウには波動拳コマンドの必殺技が無いので、簡単に先行入力でキャンセルできる。 ▲目次へ戻る MAX超必殺技 神龍天舞脚龍連牙 天龍から強化版龍顎砕2発へのコンビネーション。強攻撃から連続ヒットする。強龍顎砕スーパーキャンセルでは当たらなかったりするが、発生後まで無敵があるので割り込みや、地上での連続技向き。 ▲目次へ戻る MAX2 絶招歩法 臥龍砕発生の早い突進技。無敵などはなく連続技専用。ゲージがもったいなくて博打で出せるものではない。弱からも強からも連続技で入る。弱から連続技で入れる時は、こちらも先行入力で。中段技の6AからもQM発動から安定して連続技になる。 ▲目次へ戻る 戻る