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戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-5 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内-5> このたび、弊社の小型ロボット向け機器ブランド「HT-NEK」では、 「武装神姫」向け機器の展開を開始しました。 クレイドル各種に続き、いよいよ神姫本体のパーツが登場。今回は、 プロフェッショナル志向のサブパワーユニット「DMH-Style」 シリーズのご案内です。 !!!警告!!! 本製品は、神姫本体を大幅にパワーアップさせる装置です。使い方 を誤りますと、神姫ご自身の破損や、周囲へ甚大な被害をもたらす 事故につながる可能性もあります。 重量も、他のオプションユニットに比べ重いため、装備時には神姫 本体のバランスが大きく崩れます。 従いまして、オーナー様・神姫本体ともに対戦を始めとした諸活動 に十分慣れている、あるいは耐えられるだけの補強がなされている ことが使用上の条件となります(詳細はパッケージをご覧下さい)。 また、本製品を使用されて生じた故障・破損・事故等につきまして は、当社では一切の責任を負いかねますので、ご了承下さい。 なお、サブパワーユニットを対戦での使用を禁止しているリーグも ございますので、対戦での使用時には開催者等にご確認下さい。 〜武装神姫専用サブパワーユニット「DMH-Style」主な特徴〜 ■今までにはなかった、高効率燃料電池システムを駆使した強力な サブパワーユニット。弊社小型機械技術研究製作部の技術の結晶 でもあります。 ■通常電源供給のみならず、各駆動部へ直結状態としたモードでの 使用も可能。その場合、ストック状態の神姫と比べ1unitタイプ であればおよそ2〜4倍、2unitタイプならば4〜8倍、他の装備 次第では最大で約15倍の出力を発揮する事が出来ます(当社比)。 ■デザインはかつて鉄道車輌で多用されていたディーゼルエンジン の名機「DMH17」そのものを再現。精密さと力強さを両立させた スタイルとなっております。燃料タンク等も、DMH17機関と併せ て使用されていたものを基にデザインいたしました。 ■本シリーズは全部で5種類。 ・DMH17C-*1unit(DMH17C型デザイン、1ユニット) すっきりとした見た目のC型1台タイプ。出力特性もマイルド で、初めてのサブパワーユニットに最適です。 ・DMH17C-*2unit(DMH17C型デザイン、2ユニット) C型2台のタイプ。縦に二台並ぶそのデザインは、まさに剛力 そのもの。力強さをアピールするならこれが一番。 ・DMH17H-*1unit(DMH17H型デザイン、1ユニット) 最もオーソドックスなH型1台タイプ。C型に比べ若干出力が 向上しており、ステップアップにもってこいの一台です。 ・DMH17H-*1unit+G(DMH17H型デザイン・1ユニット) 上記1unitタイプに、電源安定供給システムを付随させた、 持続時間重視型。持久力の求められる対戦時にどうぞ。 ・DMH17H-*2unit(DMH17H型デザイン、2ユニット) 本シリーズで最も強力・強靱な、H型2台タイプ。何よりも パワーを!という貴方には、こちらをお奨めいたします。 ■ぷちマスィーンをユニット制御に用いることが可能です。また、 2unitタイプには2基のぷちマスィーンを接続し、より高効率の 活用をすることができます。(例:1unitを通常活動供給源に、 もう1unitは出力向上に、それぞれ別の用途に充てる、といった 使い分けができるようになります。) 但し、ぷちマスィーン の相性次第では、ユニットが暴走する恐れがありますので十分 にご注意ください。 ■燃料には当社発売予定の専用アルコールを使用いたしますが緊急 の際には市販のメタノールを使用することが出来ます。(専用の 燃料に比べ出力・持続時間とも低下いたしますが、動作保証対象 となっております。) ※なお重量の関係上、神姫のポテンシャルによっては、行動に大幅 な制約(機敏性低下)が生じる場合があります。 ※パワーアップにより生じた神姫の破損、および事故等による周辺 への損害等への保証は致しかねます。ご了承下さい。 新たな情報は随時公開いたしますので、HPにてご確認下さい。 <武装神姫専用サブパワーユニット「DMH-Style」・全5種> ・対応武装神姫 現在発売中の全武装神姫(純正拡張ハンガーが使用可能な神姫に 限ります) ・対応オプションパーツ 潜水用キット(水中対応化キット。なお本キットを用いずに水中 使用もしくは水没された場合は保証外となります。) 防寒カバーA寒地仕様(完全防寒型) 防寒カバーB寒地仕様(簡易防寒型) ・付属装置・付属品 マニュアル、専用拡張ベース、収納ケース ・発売予定価格 (未定) ・発売予定時期 (今春予定) 以上 <<トップ へ戻る<<
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ラギス・ベイルロンド R 光 コスト3 クリーチャー:バグ・ティターニア 1000 ■自分のクリーチャーを召喚するコストを、自分のシールドゾーンで表向きになっているカード1枚につき1少なくしてもよい。ただし、コストは1より少なくならない。 (F)相手の手の内を知るだけではなく、自分の手持ちを最大限に活かすことも重要である。 作者:ペケ 小型のエルレヴァイン 収録 群奏編第一楽章~臣群の戦士達(レギオン・ウォリアーズ)~ 評価 名前 コメント -
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第二十話:道行姫 「僕はイリーガルマインドに苦しむアーンヴァルの声と施設の事を聞いて迷っていたよ。施設がどうなるのか、この先の武装神姫もどうなるかと」 結に支えられながら輝は俺に自らの迷いを語り始める。その顔は施設の真実を晒される事を恐れていない覚悟の決まった顔だった。 ついさっきとはまるで違っている。 「でも、こうも考えられたんだ。もしかしたら神姫も施設も両方救えるんじゃないかって」 「何をする気だ?」 「僕は証人に加わる。その代わり、施設の何も知らない人々は無関係だって事を証明して、施設が存続できるようにする」 「……一番困難な道だぞ? しかもすぐに解決できる事じゃねぇ。施設を存続させたとしても後の偏見の目だって消さなけりゃならん」 輝の選択は最も難しいものだった。 施設からイリーガル技術流出の汚名を拭い去る、言葉にすればそれだけの意味だが、実際にやるなら様々な問題が発生する。それは俺にだって列挙し切れるものじゃない様々な難題、他者の思惑が絡んでくる。 まさに茨の道、輝も思い切ったものである。 「わかってる。これは僕の戦いだ。君の手出しは無用だよ。君はイリーガルにだけ集中していればいい」 「やれるのか? 一人で」 「一人じゃないよ。僕には結がいる。石火に早夏もいる。施設のためなら何だってやってみせるよ」 その言葉を迷いなく言ってみせる。結も、石火に早夏もそれについていこうという顔をして、輝の語る姿を見届けていた。どうやらその言葉は四人で考えた真実のようだ。 俺が止められるようなものじゃない。 「ははっ。なるほどなぁ。初代チャンピオンって名がさらにサマになってきた気がするぜ」 彼らの覚悟に負けた俺は少し笑って、それを認めた。そこまで言うなら進んでもらおう。俺はその覚悟を見届けてやる。 「わかったよ。俺はイリーガルを叩いて、目の前の小さな奴らを助ける。お前は施設って大きなものを助けてやんな。足下は俺に任せろ」 「ああ」 俺は輝に敬意を表して、彼の手を取り、握手した。輝はその感触を感じ取って握り返し、それを交わした。 「いいね。男の友情っていうのは熱い! 僕も及ばずながら力になるよ。まぁ、ただというわけにはいかないけど、代金を割引サービスしてあげちゃおう」 話のキリのいい所で日暮が拍手で話を持ちかけた。ちゃっかりしているのか、本気で感動しているからそうしているのかといえば……おそらく後者だ。 その辺はしっかり『正義の味方』といった性格をしていた。 「今の声の人は?」 「正義の味方の日暮さんだ。彼に手を借りれば結構やれると思うぞ。『ハイスピードバニー』の風俗神姫騒動も解決にも貢献したからな」 「あの大事件を!? それは凄いな……」 「どうだい? 僕に君の手伝いをさせてくれないか?」 「お願いします。対価なら払います。どんな事をしてでも施設を救いたいんです」 「わかった。代金はそうだな。尊君。君に払ってもらおう」 「え?」 話が進む中、唐突に代金の話が俺の方に向いて驚いた。何をどうすればそういう話になるというのだろうか。 「そう難しい事じゃないさ。代金は君がイリーガルマインドなどの装備を押収して、それを僕に渡す事を約束してくれ。つまり、君が今やろうとしている事さ」 「なるほど。それならいいでしょう。僕がやる事は輝と違って自己満足だ。それに価値がつくなら喜んで」 「商談成立だね。じゃあ、輝君に結ちゃんだっけ? 二人で奥まで来てくれ。これからの事を話そう」 「はい」 長期戦となるであろう施設の話について打ち合わせがかなり時間がかかるのか、日暮は輝にそう言って店の奥へといなくなる。確かに他言無用な話になるのだからそうなるのも当然と俺は納得した。 その輝は入り口から結に導かれながら歩みを進めていく。その足取りは目が見えないため、周りを探るような歩き方をしているが、進むことには一切のためらいがない。 その中で俺の近くまでたどり着くとそこで輝は足を止め、気配でそうしているのか、俺の方を向いた。 「尊。ありがとう。この一歩を踏み出せたのは君のおかげだ」 「尾上辰巳だ」 「え?」 「お前等の頑張ってんのに変なプライドで本名を名乗らないわけにはいかんなと思ったんでな。改めて自己紹介さ」 「そうか。僕は天野輝だ。改めてよろしく。辰巳」 「ああ。……一歩を踏んだ後は輝次第だ。俺は俺の道、お前はお前の道をそれぞれ行こう。目が見えなくたって、もう見えてるだろ?」 「うん。行ってくる」 「おう」 短い会話が終わると輝は再び歩き出し、店の奥へと消えていった。そして代わりの店番として神姫のコアを飾るための胸像ディスプレイにヴァッフェバニータイプのコアがくっついたもの……うさ大明神様がレジの隣に現れた。 それを見届けた俺はここでの用事が終わって彼らとの約束を果たすために蒼貴と紫貴と一緒に店を出て行った。 一週間後、日暮から視覚データによる結果と輝からの連絡が来た。 あれから日暮は輝を伴って、決定的な証拠を施設の研究者に突きつけ、彼らを一網打尽にしたのだという。 これによってリミッター解放装置の販売ラインを、根元を断ち切った事になる。リミッター解放装置はこれ以上、増えることはない。後は日暮が既に流通したものを回収し、俺が既に使ってしまった、或いは買わされてしまったオーナー達から押収すれば、何とかなるはずだ。 使った後でも杉原のワクチンプログラムで何とか助けられるだろう。 施設に関しては義肢を開発していた研究所の独断として施設と研究所で切り離され、研究所のみが罪に問われる形となった。しかし、そこの神姫は改造前のは何とか解放したものの、手を付けられてしまった神姫に関しては証拠品として警察に押収されてしまったらしい。 これを聞くと神姫はまだまだ物として扱われているという事の様だ。 俺達は神姫オーナーにとっては、神姫は物ではなくパートナーだが、この日本での法では神姫は個人として認めてもらえていないのだ。所詮はロボット。物であるという訳だ。 昔の本や物語で繰り広げられているロボットの存在意義の上での答えがこれだとするなら少々悲しいものを感じる。 しかし、可能性はある。そう。輝だ。 日暮経由の彼の連絡に施設の神姫が押収された現場に居合わせたらしく、何とか説得を試みて失敗に終わり、自らの力の未熟さを痛感させられた事が書かれてあった。 後悔の思いがあったが、それには続きがある。輝はその神姫達や施設を助けるためには自分自身がそれを制するだけの力が必要と考え、弁護士として猛勉強することを決心したらしい。結と彼らの神姫もまた輝の決意についていくことにしている。 神姫で何とかするというだけではなく、大人としての力を得る事で両方を救う。どうやら、これが輝なりの答えという事の様だ。 これはすぐに解決することではないし、俺が足掻いた所で変わりはしない。せいぜい輝の相談に乗ったり、宣言したとおりに、バーグラーを狩ったりするのが関の山だ。 だが、こうして未来に続いていると感じることができるのは悪い気がしない。輝を信じる。それだけで今回の自分のやったことが無駄ではないと思えた。 「解決はしたわけじゃねぇが、いい風には終われた……か」 連絡を受けた事を思い出しながら俺は神姫センターに入っていく。今回来たのは真那と会ってしまういつもの場所ではない。そこからさらに四駅ほど進んだ先にある別の神姫センターである。 今回の事件によってばら撒かれたイリーガルマインドの流通も広範囲に渡るものになってしまっており、警察や日暮も捜索しているものの、発見するのが難しい。 俺個人でどれだけ発見できるかはわからないが、様々な場所を回って多くのオーナーや神姫を見てみたいという気持ちもあったため、こうしてイリーガルマインド回収も兼ねたセンター巡りをしてみる事にしたのだ。 秋葉原を中心とするその周辺には多くの神姫センターがある。探そうと思えば、ゲームセンターや公認ショップ含めていくらでもあるため、自分の縄張りだけでは飽き足らないオーナーと神姫達は様々な場所で修行する際には秋葉原を中心とするこの激戦区を回るのが通例だという噂を聞いたことがある。 俺は……『異邦人(エトランゼ)』の真似事をするのだからその噂通りのことになるかもしれない。素性を明かす気はない点では異なるがな。 「ミコちゃん、本当にここにイリマイあるの? イリマイがある割にはここの噂が小さい気がするんだけど……」 「……日暮さんの教えてくれた噂じゃ、ここにイリーガルみたいな神姫が破竹の勢いで勝ちまくっているってことらしい。あの人の情報網は信頼できる」 神姫センターの奥へと進む俺に紫貴が話しかけてきた。今回は日暮の情報からここに来ている。俺の蒼貴を大破に追い込んだバカ者共と似たようなクチであり、イリーガルマインドの予感しかしない。が、紫貴の言う通り、噂が小さく、それが目立たない。そこがおかしな所である。 「しかし、ここはその噂の人以外の人も強いようですね。だから、大きな騒ぎになることもないという事なのでしょうか。あの試合の人達もすごいです」 蒼貴が指差す先を見ると、大きなスクリーンがあり、それに非常に高いレベルの対戦が映し出されていた。 対峙しているのは黒い外套と身の丈はあろう化け物の様な太刀を力任せに振り回し、叩き潰すような戦い方をするストラーフタイプとスカートアーマーの内側から隠している暗器を取り出して一定の距離を保ったまま、翻弄してみせるアルトアイネスタイプの二機だった。 「You re going down!(くたばれッ!)」 翻弄されていることにプライドを傷つけられているのか、少々怒り気味のストラーフが太刀を力任せに振り回してアルトアイネスに襲い掛かる。 「それは勘弁して~。噂に聞くバラバラ戦術は痛いしさ~」 彼女は軽口を叩きながらサブアームで受け流し、そのままアーマーを展開することで飛んで爆弾による爆撃を仕掛ける。 ストラーフは太刀で着弾する前に弾き飛ばして自らのダメージを減らし、大きく跳躍して、反撃に出る。 銃を連射し、それに続いて一戦しようというオーソドックスな攻め手だ。銃の弾はアルトアイネスの翼を形成するスカートアーマーを弾いて体勢を崩させ、動きを硬直させるとそのまま太刀の一閃を放つ。 「危ない危ない」 いつの間にか取り出した大剣ジークフリートでそれを防御する。ストラーフはそのまま、力を入れて叩ききろうとしたが、いかんせん空中にいるため、力を入れられず、そのまま地面に着地し、次の一手を打つために追撃を仕掛けてこようとしているアルトアイネスに向かって太刀を構えた。 「確かにレベルが高いな。これからこういう奴らと戦うのも悪くない」 拮抗状態の続く戦いに俺は感心した。ここまでのバトルが見られる上に互いに隙を見せずに攻撃を繋ぎ続けているだけ実力を持っていた。あれだけの力があれば万一、イリーガルマインド装備が出ても何とかできるかもしれない。 どういう奴らなのかと対戦の映像の隣の対戦者のデータを見てみる。ストラーフタイプはフランドールという名であり、オーナーは三白眼と長めの黒髪をサイドテール、黒いパンク調の服とシルバーアクセが特徴的なガラの悪そうな咲耶という名の少女だった。 彼女は噂を聞いたことがある。何でも相手が弱いと判断すると、弄んで潰すという戦い方から非難の声が上がるという悪評である。しかし、ランクに反して強いことから有望であるという見方をする人もおり、注目されているらしい。 一方、アルトアイネスタイプはメルという名前だった。オーナーは祥太という気さくな印象のある青年だった。特に噂を聞いていないため、未知数だが、フランドールを翻弄することができるという点では彼らもそれだけの実力をつけ始めていると見ていいだろう。 「ねぇ。ミコちゃん、あれ」 「あ?」 対戦を観戦している時に紫貴が俺に声をかけて指をさす。その先を見ると甘ロリ系な女の子が二人の青年に囲まれているのが見えた。 「おい。梨々香ちゃんよ。遠野のチームメイトだったよな?」 「な、何よ……」 「俺達は最近、三強を倒して調子に乗ってる『ハイスピードバニー』のチームを狩ってるのさ。遠野や『異邦人』を引きずり出すためにまずは弱そうなお前からやろうって話になったんだよ」 どうにも彼らは『ハイスピードバニー』……恐らくは遠野貴樹のチームを潰そうと考えているらしい。事情はよくわからんが女の子を男二人で襲おうとするその現場は見苦しいことこの上ない。 「やめてよ! 二対一なんて……」 「関係ないね。『玉虫色』を倒したのも初心者だ。ここで勝ちまくったが、油断はしねぇ」 「そうそう。やるなら全力ってな。ははは」 「そうだな。やるなら全力……二対二だな」 傍まで近づいた所で俺は男二人の話に割って入る。 「あ? 誰だてめぇは」 「俺はただのオーナーだ。……覚えておかなくていい。どうせお前らが負けるんだからな。トラウマになりそうなものがなくなっていいだろ?」 「ふざけるな! こいつは後回しだ。この野郎をやるぞ!」 「おう! そこのバーチャルバトルに来い!」 「そうこなくっちゃ……」 挑発をするとすぐに釣れた。さすがはチンピラ。単純で助かる。 そう、ほくそ笑むと俺は彼らの言うことに従ってバーチャルバトルなるものに向かう。今回のはエルゴにおいてあったシミュレーションバトルによる戦闘という事になるようだ。 自分のブースに着くと蒼貴と紫貴を二つのアクセスポッドに乗せて接続する。向こうでは俺が一人で二体操ろうとしている事をバカにしているのか、笑いながら各々の神姫をセットした。 それによってバーチャルシステムは起動し、オフィシャルバトルの準備が完了し、ディスプレイの向こう側にそれぞれの神姫が出現する。 相手はヴァローナタイプとガブリーヌタイプだ。それぞれ純正装備だ。ただし、両方が首にイリーガルマインドを装備している。何とかこれを回収しなくてはならない フィールドは草原。遮蔽物もないその場所は純粋な戦闘力が試されるだろう。 『Ready……Fight!!』 ヴァローナが先行し、ガブリーヌが援護射撃しつつ、前進する普通の戦法を取ってきた。 「蒼貴、紫貴。すぐに沈める。まずはヴァローナをやる。蒼貴は苦無で拘束、紫貴は射撃からブレードで斬り捨てろ」 対して俺は速攻の指示を出す。女の子を再び襲うのをためらわせるほど、速やかに倒す必要がある。圧倒的な力の差という恐怖。それがこの戦いのテーマだ。 蒼貴と紫貴はそれを聞き、行動に移す。蒼貴は接近してくるヴァローナの四肢に苦無を、紫貴はアサルトカービンをそれぞれ放つ。飛んでいく苦無は足を止め、弾丸がひるませ、ヴァローナを無防備状態にする。 「はっ!」 そこをすかさず紫貴がエアロヴァジュラで切り裂く。ヴァローナは何がおきたのかもわからずに声を上げることもなく地面へと倒れた。 その直前、蒼貴は首からイリーガルマインドを奪う。これでヴァローナのイリーガル化は防げる。 「この野郎!!」 早くも相方を失ったガブリーヌはイリーガルマインドの力を使った。それにより彼女の額からユニホーンが生え、紫色のオーラを放ち始める。 「これで決まりだ。紫貴、バトルモードで接近して拘束。蒼貴、紫貴に乗って塵の刃の用意」 「はい!」 「了解」 予想通りの展開からの次の指示につなげる。ヴィシュヴァルーパーに変形した紫貴に蒼貴が騎乗し、接近の間に塵の刃を鎌と苦無にまとわせる。 ガブリーヌは重装備に物を言わせて接近してくるまで拳銃を撃ち続け、接近したらいつでも殴れるようにナックルを構える。 銃撃を避けながら、紫貴が接近するとガブリーヌはナックルで紫貴本体を狙った一撃を仕掛ける。 しかしそのとき、違和感に気づいた。そう。蒼貴がいない。 攻撃を紫貴に仕掛けながらも目だけで蒼貴を探していると……上にいた。 「なっ!?」 ガブリーヌは驚きながらも紫貴に攻撃を続けようとするが、彼女は変形解除をして、サブアームで受け止め、拘束する。 「今よ! 蒼貴!」 「せいやっ!」 気づいた時には既に遅く、宙を舞う蒼貴が塵の刃をまとった苦無でユニホーンを切断し、鎌で腹を引き裂く。そしてとどめとしてイリーガルマインドを奪った。 その瞬間、それの効果が失われ、ガブリーヌは効果が切れて砕け散る塵の刃のかけらが舞う中で地面に伏す。 『You Win!!』 ディスプレイに勝利画面が表示される。それが表示されるまでのタイムは一分とかかっていない。一蹴とも言うべき戦果だ。向こう側にいる男二人はイリーガルマインドを使っているのにこうなってしまった事に動揺していた。 それもそうだ。神姫のせいとかそういうレベルではない。実力を発揮する前に終わってしまったのだから。 「ど、どうなってんだよ!? てめぇ! チートでも使ってんじゃねぇのか!?」 「そりゃお前らだろ。そのイリーガルマインド、俺が追っている違法パーツなんだよ。わかってて使ってるのか?」 「なんだと!?」 「すぐにそれを外せ。お前たちの神姫が苦しんでいるぞ」 チートと騒ぐ男二人にイリーガルマインドの副作用について指摘すると彼らは自分たちの神姫を見た。神姫達は例によって副作用で苦しんでいる。バーチャルバトルではどうなるのかと思ったが、どうにも架空も現実も同じであるらしい。 「な……」 「どうなってんだよ!?」 やはりというべきか彼らは知らず、副作用に驚いていた。この装置の副作用は全くと言っていいほど、説明されないケースが多い。このパターンはよく見る。 「それが原因だ。そのまま捨ててしまえ。でもってホビーショップエルゴにいきな。有料で直してもらえるからよ」 「お、覚えてろ!!」 「由愛~~!?」 自分の神姫を持って逃げるように去っていった男二人を見送ると置かれた二つのイリーガルマインドを拾う。見ると本当に本物のイリーガルマインドに見える。これがただの演出で済めばどんなに良いことか。 「こんな下らねぇもん使ったって、強くなんてなれねぇのに何やってんだか……」 ため息を付きながらそう呟く。 こんな調子でイリーガルマインドを狩っているが、それを持っているやつは大抵がその性能に魅入られている馬鹿か、知らないアホ、あるいはその両方の三択だ。 二番目なら救いようがあるが、それ以外なら話にもならない。痛い目を見るまで使い続けてくれるから困る。少しはうまい話なんてないことぐらい考えてほしいし、それで神姫が犠牲になったらどうするのかを考えていただきたいものだ。 これ、あるいはこれに類する違法パーツが横行したらどうなるかを考えると今の武装神姫は危ういラインにいるのだろうか。 「あの……助けてくれてありがとうございます」 「気にすんな。こっちもこいつを回収するのが仕事なんでね」 考え事をしていると瞬く間に倒した俺達に助けた梨々香という甘ロリ系の女の子が話しかけてきた。肩にはポモックタイプの神姫が乗っている。見た感じは特に目立った改造もない純正装備だった。このまま、絡まれていたらまず間違いなく、手痛い目にあわされていただろう。 「あの……オーナー名の尊ってもしかして双姫主の尊さん?」 「いや、俺は……」 「その通りです」 何とか名乗ることを避けようとしたが、蒼貴に肯定されてしまった。 墓穴を掘らされていつものこのザマだ。困っている奴らをほっとけないだけにこのパターンは引っかかりすぎる。 「そうよ。ミコちゃんはね。双姫主として雑誌にも載っちゃった超かっこいいオーナーなのよ? すごいでしょ?」 「やっぱりそうなんですか! あの戦いがデュアルオーダーの……遠野さんのやってた通りなんだなぁ……」 紫貴が無茶苦茶脚色を付けた事を言うと梨々香は感激したらしく、紫貴の言葉に頷く。 「おい。こら。何、勝手に晒してんだ。しかも尾ひれを付けすぎだろ」 「雑誌に載った時点でアウトでしょ?」 「うるせぇ! 素性が載ってねぇからまだ何とかなるはずなんだよ!」 「いいじゃない! 減るもんじゃないし!!」 「あんだと!?」 「あの……!」 すっかり正体をバラされて怒る俺とかっこつける紫貴が口喧嘩を始めようとするとなにやら勇気を振り絞ってる様子の梨々香が口を挟んできた。 「どうした?」 「私に戦い方を教えてください! さっきみたいなことになって、チームの皆の足手まといになりたくないんです!」 「遠野さんってのに教えてもらえばいいんじゃねぇか?」 「遠野さんにはもう弟子がいるし……。勝ち負け関係なく楽しんでるけど、こんな事、情けなくって周りに言えないよ……」 話から察するに梨々香は遠野のチームに所属はしているものの、勝ち負け関係なくバトルロンドを純粋に楽しんでいる奴であるらしい。しかし、この一件で自分でも戦えるようになりたいと思ったらしいが、周りにはそういう奴だと思われていて言いにくい。だから、見ず知らずの俺にまずは教えてもらおうと考えているらしい。 ぶっちゃけ、恥をかなぐり捨てて知り合いに教わった方が進歩が早いと思うのだが、どうしたものか……。 「……オーナー、教えてあげてはいかがでしょう?」 「ミコちゃん、そうしようよ。真那にだっていつも教えてるんだし、慣れっこでしょ?」 「……仕方ねぇなぁ。わかった。その代わりといっては何だが、『ハイスピードバニー』の事を知っている範囲でいいから聞かせてくれ。興味があるんでな」 「ありがとうございます!」 「梨々香ってんだったか? 俺は厳しいぞ?」 「はい!」 梨々香の真剣な態度に感心する蒼貴と紫貴にも逃げ場を塞がれた俺は逃げることを諦め、梨々香に俺のバトルの経験を教えることに決めた。デュアルオーダーは無理でも普通の戦い方ぐらいは教えられるだろう。……真剣な気持ちを無碍にできんしな。 まぁ、こうやって動き回れば梨々香のような良い奴にも会える。こういう奴らがいるからこそ、武装神姫という舞台がマシな方向にも向かうことができる。 その可能性を1%でも高めてやるのが俺らにできることなのかもしれない。 それで武装神姫が良くなるなら俺の行動も無駄じゃないし、輝や別の場所で戦っている誰かもまた頑張っていられるだろう。 この手ほどきも何かの役に立つことを願って、やってみるか……。 第三章『深み填りと盲導姫』-終- 戻る トップへ
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wiki版キャラクター相関図最新投稿対応状況 2007年4月5日時点で、以下の話までは確認しています。 主に相関図の進度確認用のメモ。 もどる Mighty Magic インターバル6 神姫たちの舞う空 コンタクトイエロー CROSS LO[A=R]D 14話 神姫狩人 第五話 武装神姫のリン 3章第20話 凪さん家シリーズ 凪さん家の十兵衛さん第十二話 真・凪さん家の弁慶ちゃん 第一話 凪さん家の弁慶ちゃん/0 TR-2 凪さん家の弁慶ちゃん 3話 ねここの飼い方 そのじゅうよん 劇場版~十一章・終焉~ ねここの飼い方・光と影 ~十章~ 岡島士郎と愉快な神姫達 第十三話 外伝第一話 『不良品』 師匠と弟子 明日の為に、其の11! 閑話休題:其の8、後日譚 マリナニタSOS!(仮) 第6話「初陣」 SOS番外編その2 せつなの武装神姫 僕とティキ そのじゅうろく Y.E.N.N 第5幕 魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン ドキドキ☆エピローグ 外伝☆エピローグ コードネーム『G』 コラム1 HOBBYLIFE,HOBBYSHOP 第8話 SUB STANCE その6 いつか光り輝く 4.0 幸せな神姫を戦場に立たせる会 アルファ 春夏秋冬 三日目午前 休日 一日目 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 日記その十四 おまけ 出会いは雨の日 鳳凰カップ 2日目 アールとエルと 12話 TwinSword s クラウ・ソナス(第2話) BattleAnima Show No Mercy - なさけ むよう - 後編 おまかせ♪ホーリーベル 妖精コンビあらわる 外伝 その名はシュートレイ エピローグ 戦う神姫は好きですか 九話 戦うことを忘れた武装神姫 第4部第28話 番外-10 エルガのにっき 0403 シンメイのにっき 0310 徒然続く、そんな話。 第七節。 番外編 そのに 俺とティアナの場合 プロローグ 第2日目 ツガル戦術論-副題 シルヴィア奮闘記 鏡の試練 7 妄想神姫 本編 第二十三章 外伝 その十六 2036の風 第七間幕 短章2「野生の力」 幻の物語 幻・其の三 弾丸神姫 4 きしぶし! 第4話 流れ星シィル-銀河流星伝説- 2話 神姫ちゃんは何歳ですか? 第二十一話 過去編 1日だけの恋人 番外編 デモンストレーション 神姫ガーダーシリーズ エピソード1 二アー・トゥ・ユー Phase01-7 ユメノカガヤキ 剣は紅い花の誇り 第拾陸幕 幕間三 鳳凰杯編V sister G princess 9話 番外―sweet sweet chocolate ― EXECUTION Phase-4 鳳凰カップ編04 Phase-X01-Second Volumes Column02 武装神姫~ストライカーズ・ソウル~ 第1話 Gene Less Gene8おまけ Les lunes 第1話後半 Second Place -Howling- 第四話2 単発作品用トップページ 音声ファイル2036 三十路の独身男性、自営業の場合 第五弾発表 ある天使型の場合 弾丸神姫 騎士子のヴァレンタイン大作戦 目覚めればそこは 花は咲き乱れて※注意!18禁です 花種きてから数日後・・・ R18指定
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vol1「風見記の場合」 某所、喫茶店「File」 「よう相棒、来週分の原作出来たか?」 髪を後ろで縛った男が、前に座った男に話し掛ける。 「明日あたりには脱稿する筈だ、…注文、ウーロン茶で」 ウエイトレスに注文を頼む男 「ん?風見記、あいつらはどうした?」 「家でお留守番だ」 「ひでぇな~、ここが神姫も飲み食いできるところだと知ってた筈だろ」 「ひとり、持ち金を考えないで注文する奴がいるからな、帰り道にケーキかなんか買ってくさ」 「んぅ?あ~、あの忠犬ケルスか!」 「忠犬は余計だ巻馬、あいつが聞いたら泣くぞ」 「はは~事実なんだけどね」 おさげ男、巻馬鉄次(まきばそうじ)のすぐ手前でパフェをつっついていた神姫が答える。 傍からみて、その姿は忍者であったが、中身は忍者型MMS「フブキ」ではなく、猫型MMS「マオチャオ」であった。 「…とゆうか巻馬、ここにも所持金を考えない奴が一人いるぞ」 「ロンドか?、大丈夫さ!ちゃんと計算して注文させてるしさ」 「でもそのパフェ、一番高い奴だぞ」「なにっ!?」 慌ててメニューを見て、自分のサイフの中も確認する巻馬。 「……150円足りない…、風見記、150円貸してくれ」 「あほめ、ほれ。返すときは200円だぞ」 「すまん!」 「ありゃ…マスターのサイフの中を過大評価してたみたいだ…」 「それじゃ、明日監修に来てくれ」 「お前の事だから大丈夫だとは思うが…」 「いつも言ってるだろ、『念には念を』ってな。それじゃ!」 「マスター、お金下ろすの忘れずに」「わーっとるわい!」 楽しそうな二人を、見送る男。 彼の名は風見記真木(かざみき まき) ファンタジー・SF作家である。 巻馬は連載中の漫画の作画を担当する人物であり、小説の挿絵も彼の筆による物である。 現在売れ行き好調の、若手作家でもある。 某所、風見記のマンション「第一ヤマモトハイツ」四階 「ただいま」 ドアを開け、室内に呼びかける。 「おかえり、マキ」「お帰りなさいませ、マキさま」「おかえりなさい、御主人」 三つの声が重なった。 そして歩いてくる小さい影。 「シュークリームを買ってきたぞ、三人とも」 「シュークリームですか、もしかして「とても美味しいケーキ屋さん」のですか?」 「ん、そうだ」 第一声を放ったのは、傍から見てそうには見えない砲台型MMS「フォートブラッグ」…なのだが メイドさんにしか見えない「ナゴ」。 「シュークリームとは和製仏語であり、正しくは「choux a` la cre`me(シュー・ア・ラ・クレーム)」と言って シューとはキャベツの意味だそうです」 「…食べるよな?」 「食べます!食べます!」 シッポを振り、ヨダレをだだ漏れしながら薀蓄を言うのは犬型MMS「ハウリン」の「ケルス」。 「ふふ、それは楽しみですね。でも食べるのは食後ですよ、ケルスさん」 「うう…」 ケルスに「お預け」をかけたのは、銀色の羽付きカチューシャを付けた騎士型MMS「サイフォス」…だが 通常よりも幼い姿をしている「フェリア」。 彼女ら三人は武装神姫。 人間の友達であり、戦友でもある。 …微妙に戦いを忘れてる気がするが…気にしないに越したことはない。 風見記は、心の中でそう付け足した。 ToBeContined… 武装神姫でいこう!?に戻る トップページ
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伝説の騎士エルロンド 機種:FC 作曲者:David Wise 開発元:Rare 発売元:アクイレム,ジャレコ(日本) 発売年:1987,1988(日本) 概要 レア社開発の横スクロールアクションゲーム。原題は『Wizards Warriors』。 日本版ではNMKが移植を担当。海外では続編が発売されている。 音楽はデビッド・ワイス氏によるもの。タイトル画面の曲は短いが美しく耳に残る。 収録曲(仮曲名) 曲名 補足 順位 Title タイトル画面/エンディング Forest of Elrond Level 1 Inside Tree Theme 木の中のエリア Boss ボス戦 Ice Caves Level 2 Fire Caverns Level 3/Level 4 Inside the Big Tree Level 5 Outside the Castle Level 6(城壁) Castle Ironspire Level 6(城内)/Level 7 Low Health 体力減少時 Invincibility Potion 無敵(赤い水薬使用)時 Level Clear ステージクリア時 Register Your Initials ネームエントリー
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武装神姫…今現在爆発的なブームを誇り、その老若男女を問わない人気は旧世紀の ヒット商品、ポケモンや遊戯王カードもかくや。いや、それ以上であろう。 かく言うオレ──日暮 夏彦も、もはや社会現象とさえ言えるそのヒット商品の恩恵に 与ってる一人だ。 「おし、掃き掃除終了…っとぉ」 ゆっくりと伸びをして、目の前の看板を見上げる。 「ホビーショップ エルゴ」三年前に親父の模型屋を改装して始めたオレの城だ。 玩具オタが高じて工学部に通った身の上としては、そのスキルを存分に活用出来る天職。 特に神姫関係には力を入れてて、販売、登録、修理、カスタマイズやオリジナルパーツ の製作まで何でも御座れだ。 そんなに大きな設備じゃないがバトルサービス用の筐体も借金して導入済み、 公式ショップにも登録してある。 そんな努力の甲斐もあってか商売としてはそこそこ快調。 近所の神姫ユーザーには結構支持されてるし、健全経営とは言えないが俺一人 生きていくには問題ない収入がある。 それに…ウチには他の店には無いウリがもう一つあるのだ。 「みなさん、家に帰るまでが学校とはよく言った物。無事にお家に帰る事は当たり前に 見えて大切な事です」 「特に、小さなマスターを持つ神姫はまだまだ充分な注意力を持たないマスターに 代わり、その安全を守る事も大切なお仕事です」 「ですから、マスターと逸れない様にして、しっかりお家に帰りましょうね」 『はーい!うさ大明神様ー!!』 自動ドアを開けて店内に戻る俺の耳に、凛とした女性の声と大勢の少女の声が響いた。 そして、大小さまざまなご主人様に連れられて神姫達が帰っていく。 「毎度ありがとう御座いましたー!」 愛想よくすれ違いに店外へ出て行く客に声を掛け、店内へ戻る。 「よ、御疲れ。大明神様」 声を掛けるのは店内に設えた1/12の教室、その教壇に設えられたハコ馬にのる胸像へ 向けてだ。 「マスター…貴方までその名で呼ぶのは止めて下さい」 非難がましく返事を返すその胸像こそがオレの神姫ジェニー。 所謂ヴァッフェバニータイプってヤツだ。 元々強化パーツとして販売されたこのタイプには素体が付いていない。 その代わりにディスプレイ目的の胸像パーツが付いてたのだが、 ある理由から素体の都合がつかなかったオレが間に合わせにその胸像パーツを チョチョイと改造してボディ代わりに使ってるのがコイツってワケだ。 その姿は旧世紀のバラエティで定番だった銅像コントのあのお方の如し。 その威容をして生徒達からは「ウサ大明神様」の名で親しまれている。 いや、子供の発想力ってのは素晴らしい。ソレが人間でも神姫でも。 っと、説明が前後した。ウチの他に無いウリってのはつまり…この神姫の学校だ。 事の起こりはオレがまだ学生の頃、バイトで塾講師をしていた頃に遡る。 当時塾では生徒の神姫持ち込みを禁止してたのだが、子供がそんな事守るワケもなく それなりに問題になっていた。 で、何をトチ狂ったか塾の方針として勉強中は神姫を預かり、 神姫にも人間社会について勉強を教える。なんて事になってしまったのだ。 そんでもって、白羽の矢が立ったのが既に塾講師内にも玩具オタが知れ渡っていた俺。 …ヨド○シに開店ダッシュは未だに若気の至りだったと思う。 あれさえ目撃されなければ。 とりあえず俺を呼び出した時の塾長の台詞「どうせ持ってるんでしょ?神姫」はかなり トサカに来た事を覚えている。 しかも確かあの時、あの親父は半笑いだった。畜生。 って、それは置いといて。 結局、俺と俺の神姫…ヴァッフェバニーのジェニーは神姫担当教師としてバイトを 辞めるまでの間、しこたま働かされたワケだ。 店を継いだ頃、まだ客足の少ない店への呼び水としてジェニーがもう一度教室を やったらどうかと提案して来た時は少し渋ったが、やってみれば事のほか評判も良く、 実際ウチの店を知って貰ういい切っ掛けになった。 多分オレ一人ではこうはいかなかったろう。 いや、実際腕さえ良ければなんとかなると思ってた俺としては、ジェニーへの感謝は してもしきれない。 「なら、新しい素体買って下さいよ」 「いや、大明神様が居なくなったら純真な子供達の夢が壊れるだろ?」 心を読んだかのようなジェニーの呟きに、即座に返す。なんかブツブツ言ってるけど メンドいので脳内スルー。 「さ、仕事仕事ー」 今日中にカスタマイズせにゃならん神姫が3体。いつまでも遊んでは居られんワケで。 大人は大変なのよ。 「今日も一日、良く働いたねー」 大きく伸びをして時計を見れば時間は午後8:56分。そろそろ閉店時間だ。 そんな平穏を破り、ドタバタと足音を響かせて客が店に転がり込んで来た。 文字通り、転がるように慌てて。 「すいません、まだやってますかっ!?」 …うん、もうしばらくは閉められそうにねぇや。 やって来た客は高校生ぐらいか? 話を聞けば彼のストラーフ「コラン」があるバトルを境にまったく動かなく なったという。 どのショップ、果てはメーカーに問い合わせてもどこにもハードの故障は無く、 プログラムだけがごっそりと無くなっているのだそうだ。 故障として新しいプログラムのインストールを推奨されたが、それはもはや彼の神姫 とは別の物になるという事。 彼はなんとか自分の神姫を救うべく、藁にもすがる思いでウチの評判を頼みに 尋ねて来たのだそうだ。 「少年、キミが最後にやったバトルってのはどんなバトルだったんだ?多分、原因は ソレだぜ」 さっきから、何度もした問い掛けを繰り返す。 この話になると歯切れが悪くなるのは…何だかな、察しは着くが。 「別にオレはメーカーの人間でも警察でもない。例えば…キミが非合法のバトルを やっててもソレで修理を断ったりはしない」 カマを掛けてみる。見る見る青ざめていく少年の顔が、複雑に表情を変えた。 「…ごめんなさいっ!」 開口一番大声で謝り、俯く少年。その肩を叩いて宥める。 ま、バトル派の神姫ユーザーにゃ意外とあるケースだ。 「僕…結構リーグでいいとこまで行ってて…自分の実力を確かめたくて… アンダーグラウンドのバトルに参加したんです」 「…その、最近パーツとかの遣り繰りに困ってて、賞金が欲しかったていうのは あるんですけど…」 申し訳無さそうに少しづつ言葉を絞る少年。頷き、黙って話しを聞く。 「…でも、こんな事を望んでたワケじゃない…バトルは勝ちました、賞金も出ました。 でも、僕のストラーフ…コランが帰って来ない…それじゃ意味が無いんです! 彼女が居ないと…何で…どうしてこんな事に…」 少年の肩が小刻みに震えている。…経緯はどうあれ、自分の神姫の為に泣ける…か。 「少年、そのバトルの参加方法とか解るか?」 「ネットワークのバーチャルバトルです。不具合を調べる時に、関係有るかと思って ログはとってます…」 「でも、そのサイト何時の間にか消えてて…裏バトルだから当たり前なんですけど…」 ログがあるなら話は早い。 「…そのログ貸してくれ。オレが必ず君のストラーフ──コランを直してやるから」 少年が目を見開いてこちらを見る。慌てて鞄からメモリーカードを取り出し。 「このカードに入ってます。あの…お願いしますっ!」 土下座せんばかりの勢いで頭を下げる少年に頷き、もう遅いからという理由で 今日のところは帰した。さて… PCのモニター上をとんでもない速さで流れていく文字の羅列を見ながら、嘆息する。 オレもそこそこやれるつもりなんだが…やっぱコンピュータ自身にゃ勝てんな。 …オレはオレの仕事しよう。携帯電話を取り出し、コールする。 「はい。KMEE神姫バトルサービスサポートセンターで御座います」 受付嬢の柔らかくも清潔感溢れる声が電話の向こうから響く。 いや、何を緊張してるのかオレ。 「あ、私日暮と申しますが。今米主幹いらっしゃいますか?」 「今米で御座いますね?少々お待ち下さい」 おお、良かった。不審がられたらどうしようかと思ったよ。 「もしもし?今米だ。お前か日暮?」 受話器から聞こえるゴツくてかつ加齢臭溢れる声に現実の無常さを感じる。 「うす、今米さん。今なんかトラブってる?神姫強奪事件とか」 「神姫狩りの事か?そりゃ困ってるが…今に始まった事じゃないだろ。 こっち側が噛んでるケースもあるしなぁ」 「いやいや、そういう必要悪じゃなくて。もっとどうしようもねーの」 歯切れの悪い答えを返す今米さんにさらに突っ込む。本気だかはぐらかしてんのか 読みにくいんだよなぁ、この人。 「まぁ、神姫絡みの犯罪やトラブルってのは悲しいかな右肩上がりだからな。しぼれんよ」 「ええと、一見故障じゃないんだけどデータだけごっそり無くなるってヤツなんだけど?」 受話器の向こうからキーボードを叩く音がする。 調べ始めて十数秒ほどか、返事が返って来た。 「ちょっと待て…それならカスタマーやウチを含めて18件来てる。何か掴んだのか?」 お、ビンゴ。 「ああ。ウチの客が被害にあった。今夜辺りなんとかするつもり」 「そうかそうか。そりゃいい、宜しく」 「で、いくら出す?」 「おい待て!?どうせウチとは関係なくやるんだろ?何で身銭切らなきゃならんのだ」 ちぃ、やっぱそう来るか。進歩ねぇな、オレも今米さんも。 「データ、そっちでサルベージした事にしたら評判上がるんじゃねーの? 企業イメージって大事よ、このご時勢」 「む…そりゃそうだが…しかしなぁ」 「どうせこれからたっちゃんに頼むし。嫌なら別にいいけど」 たっちゃんてのは古馴染みの警部さんだ。神姫関連犯罪の担当で色々と世話したり されたりのまぁ、腐れ縁である。 「あー、わかったわかった!そのかわりデータは大丈夫だろうな?」 「任せとけよ。んじゃ、報酬ヨロ」 電話を切る。おっしゃ。これで年末商戦向けの仕入れ費用は何とかなりそうだ。 「ジェニー、どうだ?」 アクセスログから例の違法バトルのサーバを探しているジェニーに声を掛ける。 「見つけてます。ウラも取れそうですよ」 「さっすが。しかし、人の神姫…しかもパーツじゃなくてデータだけなんてな」 「強力なランカー神姫だけ狙うってんならともかく、ランダムだろ?どうすんだか」 溜息混じりにジェニーが答える。 「他人の持ち物を所有したいなんて有り触れた願望だと思いますよ? 肥大した支配欲…とでも言えば的確ですかね」 「そういう向きに高額で販売する…愛玩用のボディにでも入れて。そんなトコでしょう」 冷静に説明してみせるその姿は一見クールだが…解る。 怒ってる、怒ってるよジェニーさん。 「ヘドが出るな」 ま…気分悪いのはオレも同じなんだが。 「準備、出来ているならそろそろ行きませんか?」 「まー待て、連中の潜伏先をたっちゃんに流す」 「猶予は…今23時か。2時間でいいな?」 「充分です」 力強く頷くジェニーに頷き返し、準備を始める。さぁ、久しぶりの副業だ。 >頭部パーツを複合レーダーユニットに換装。マルチバイザー装着。 >コアユニットパージ。メインボディに接続... >ヴァッフェバニーtypeE.S 「Genesis」起動..._ モニターに映し出される文字が彼女の目覚めを告げる。 オレの武装神姫。 Encount Strikerの名を持つカスタムヴァッフェバニー、ジェネシスが。 E.S…遭遇戦域対応を目的とした銀の可変アーマー「シャドウムーン」と背中の複合兵装 「ブラックサン」大型装備は背部ブースターから伸びるフレキシブルアームで全て接続。 移動は全てフライトユニットで行い、状況によって装備位置の変更、可変によりあらゆる 戦況に対応する特別仕様機。 全身フルカスタマイズ、武装も全てオレが玩具コレクションから厳選して改造した ワンオフ品。 本来のレギュレーションを逸脱したその姿はもはや公式戦に参加する事も適わない、 戦う為の神姫。 だが、俺達には必要な力だ。 そうオレとコイツ…「正義の味方」には。 ジェネシスをPCと接続し、ネットワークにダイブ。彼女の眼を介して広がる電脳世界を 駆け抜けていく。 意識を集中し、一心不乱にキーボードを叩くこと数分。例のサーバーに到着した。 情報を偽装しセキュリティホールを開けて侵入を開始。違法バトルのシステムに侵入。 公開ユーザー名には「G」とだけ入れる。コイツがオレの通り名だ。 「ジェニー…いや、ジェネシス。もうすぐ入り口が開く。今回のミッションはサーバーに 侵入後、軟禁状態の神姫を解放。オレの開けたセキュリティホールを経由して転送される 彼女達の護衛だ。行けるな?」 「了解」 「よし。ミッションカウントスタート!状況開始だぜ、相棒」 電脳世界とはいえ…その住人から見れば、往往にして実体を備える世界を形成して 見える。 サーバー内に広がる風景は鬱蒼と茂る森と光を遮る曇天。そして、その中心に聳える 重苦しい、監獄の様な屋敷のみ。 「雰囲気出してんなぁー…」 感心半分呆れ半分、呟く俺。 「マスター、索敵範囲に神姫一体。斥候でしょうか?」 「ちっ…調べられるか?」 「向こうにも気付かれました。近い…マシーンズ反応有り。波形からマオチャオタイプと 推察します。迎撃許可を」 「許可。マシーンズ撃退後本体は捕縛だ」「了解」 ブラックサンに積んだストフリ流用のドラグーンシステムが分離し、マシーンズを正確に 捉える。 相手の反応はまだ無い。レーダー反応精度はこちらが上か。 一度きりの発射音の後、ばたばたと倒れて目を回す、ぷちマスィーンズ。 「にゃにゃっ!?」 茂みから聞こえるその声に、指示を出すより早くジェネシスが反応した。 「其処ですか!」 腕部に装備したアムドラネオダークさん流用のワイヤークローデバイスがマオチャオを 掴み上げ、天高く引き上げる。 おー…猫の一本釣り。 「ひぃやぁーっ!?た、助けて欲しいのにゃー!リィリィお家に帰りたいのにゃー!」 ん?コイツ攫われた神姫か? ワイヤーを巻き取ったジェネシスが衝撃で跳ね上がるマオチャオ…リィリィだっけか。 …を抱き止めた。 「大丈夫。恐くないから…良く頑張ったわね?」 一瞬で柔らかい雰囲気を作り、リィリィの頭を撫でて優しく接する。慣れてるな大明神。 「ふえ?おねーさん…ダレにゃ?」 きょとんとした顔のまま尋ねるリィリィに、オレとジェネシスはここぞとばかりに 不敵に答えた。 『正義の味方…って事で』 「では、あの屋敷に皆捕らわれて居るんですね?」 「そうにゃ、バトル終わったのにリィリィ達ばとるふぃーるどから出られないのにゃ。 そしたらカタクてゴツイのがいっぱい出てきてみんなを捕まえて連れてったにゃ」 リィリィが俺達を案内しながら経緯を説明する。思い出してしまったのか元気がなく、 その声も悲しげだ。 「大丈夫…絶対に助けます」 決意のこもったジェネシスの声。固いヤツだと普段は思うが、こういう実直さは 誇らしくもある。 「はいにゃ…」 嬉しそうに微笑むリィリィの声が、オレの決意も新たにする。 その時だった。前方の地面が唐突に盛り上がる。いや、捕縛者…そいつらが現れたのだ。 「で、出たにゃ!アイツらにゃ!」 慌てふためくリィリィ。とりあえす置いといてそのプログラムを解析する。 神姫と思しき特長は無い。 「捕縛プログラムだな…改造してあるみたいだが、ベースはブロックウェアだ。 多分、特徴も見た目通り」 「つまり…硬い代わりに動きは遅いと」 ブラックサンを前方に構え、トリガーロックを解放する。 前方が展開しメガキャノンモードへ。 「シュート!」 ジェネシスの掛け声と共に放たれたビームの一撃が、一挙に二体を薙ぎ払う。 しかし、安心した瞬間今度はサイドから捕縛者が現れた。 潜行して距離を詰めたか、近い。 「おねーさん、遠距離攻撃型にゃ!?早く逃げるにゃ!」 リィリィが逃げる隙を作ろうとその爪を構える。 「心配後無用」 手品師の様な口調で呟くと、ジェネシスがモードを切り替える。 ブラックサンのサイドのビーム発振機から伸びるビームが重なり、繋がり… 巨大なビーム刃を形成する。 機構はフルスクラッチだが原理はムラマサブラスターと同じだ。 読んでて良かった、クロボン。 体ごと振り回すその巨大な刃に切り裂かれ、さらに周囲を囲んだ4体が破壊される。 「す…すごいにゃぁ…」 リィリィも呆気に取られるばかりだ。いや、ムリもないけど。厨装備でゴメン。 その後も散発的に敵は現れたが、特に問題になる様な事も無く屋敷まであと一歩と いうところまで辿り着いた。 ふと、暫く黙り込んでいたリィリィが口を開く。 「おねーさんのその装備は、どこで買ったのにゃ?」 「いえ、これは全てマスターのお手製なんですよ」 一瞬きょとんとした表情を浮かべるも、微笑みながら答える。 「そうなのにゃ…残念にゃ。リィリィも強力な装備さえあれば皆を助けて… あんなヤツらに負けないにゃ…」 「あ、そうだ!マスターさん、リィリィにも装備を作って下さいにゃ! 装備があれば負けないのにゃ!」 一瞬しょんぼりしつつも、すぐに持ち直したリィリィがなんとこちらに話しを 振ってくる。 ううむ…なんと答えたモンか。 「リィリィさん…それは違います」 オレが悩んで居るうちに、ジェネシスが会話に割って入る。 「装備は、神姫を助けてくれます。でも、神姫を強くしてはくれません。決して」 「そんな事ないにゃ!強いパーツを持ってる神姫は強いにゃ!」 「おねーさんは強いパーツを持ってるから解らないんだにゃ!」 「リィリィさん…」 諭すようなジェネシスの言葉に強く反論するリィリィ。 ジェネシスは悲しそうな瞳でリィリィを見詰めるのみ。 …やれやれ。 「リィリィちゃん、例えばマシーンズが今の3倍の数使えるとしたらどうかな? それは強い?」 「3倍!?それはきっと強いにゃ!でもひぃ、ふぅ、みぃ、はにゃ…混乱するにゃ~」 マシーンズの様な、遠隔操作を要する自律兵器を統率する事は簡単そうに見えて 実は非常に複雑なのだ。 一説にはその制御にリソースを食われてマオチャオシリーズはAI的に幼いなんて説も… いや、それは置いといて。 「ジェネシスはドラグーン6基、クローデバイス2基、フレキシブルアームが5本… コレらすべてを常時コントロールしなきゃいけない。腕が15本あるようなモンかな」 「じっ…じゅうごほん~…こんがらがるにゃあ~」 目を回すリィリィに多少は場の空気が和んだのを感じ、続ける。 「ジェネシスだって最初からこの装備を扱えたワケじゃない」 「というか、この装備自体が改良に改良を重ねて作り上げていった物だから、その過程 で身につけていったって所かな」 一拍置いて言葉を続ける。 「いいかい、リィリィちゃん。強力な武器を持つ神姫が強いんじゃない。 武器を使いこなしその性能を引き出せる神姫が強いんだ」 「今までだって、そんな神姫をリィリィちゃんも見てきた筈だ」 しばらく考えたリィリィが、おずおずと口を開く。 「じゃあ…リィリィも強くなれるかにゃ?おねーさんみたいに…」 「なれるさ。先ずは、一つの武器を極める。誰にも負けないぞってぐらい、その武器の 使い方を身につけるんだ」 リィリィが頷くのをモニタ越しに確認して、続ける。 「そしたら、次はその武器を生かせるような他の武器を選ぶんだ。組み合わせは いっぱいある。そうやって、武器を、戦い方をどんどん身につければ、どんどん 出来る事が増えていく。昨日は出来なかった事が出来るようになる」 「昨日より今日より明日。装備なんか無くたって、そんなリィリィちゃんはずっと 強いんじゃないかな?」 「昨日より…強いアタシ…」 ぱぁ、とリィリィに明るい笑顔が広がる。 「頑張るのにゃ!リィリィ頑張るのにゃ!」 「強い武器がなくたってリィリィは強くなれるのにゃ、皆を守れるにゃー!」 元気に飛び跳ねるリィリィ。自分の可能性に気付いたその表情は明るい。やれやれ。 「マスター…良い話しますね、偶に」 黙って聞いていたジェネシスが、誇らしげに微笑んでいる。 うわ。またやっちまった。オレ、凄い恥ずかしい事言ったよな今? 「いや、アレだ!好きなヒーロー物の受け売りだよ!? ほらヒーロー物はやっぱ人生のバイブルだろ!?」 やけっぱちで弁解する。あー、すっげぇ恥ずかしくなってきた。 「はいはい…」 ジェネシスのこちらを見て笑うその瞳が優しい。やめろ、オレをそんな暖かい目で見るな。 誰かオレを埋めろ。 「では…明日へ希望を繋ぐ為に、行きましょう!」 ジェネシスの呼びかけに屋敷の方を見る。屋敷は既にその威容を目の前に現していた。 薄暗い雑居ビルの一室、サーバー一台とPCが三台並ぶだけの殺風景な室内。 PCにはそれぞれ男達が張り付いてなにやら作業を行なっている。 その表情を一言で言えば…焦燥感。 「どうだ、神姫共は全員捕まえたか?」 ドアを開け、やさぐれた風貌の男が入ってくる。作業していた一人が慌てて腰を上げ。 「ア、アニキッ!それどころじゃねぇんですよ。見覚えの無い神姫が何時の間にか居て、 捕縛プログラムをどんどんブッ壊してるんですよ!」 「ああ?そういうのは登録の時に入れない設定になってるって、ブローカーが言ってた だろうが!テメェ、掴まされやがったな!?」 「ひっ!?いや、そんな事ねぇですよ!コイツ、昨日はいませんでしたって!」 「外から入ったってのか!?アレか、ハッカーってヤツか?どんなヤロウだ」 画面内を駆け回るのは銀色の神姫。アニキと呼ばれる男はユーザー情報を閲覧する。 >Type:WAFFEBUNNY >Name:Genesis >User:G 「…Gだと!?こいつ…あのGか!?って事はコレがウワサのE.Sか!?畜生!!」 「アニキ、コイツ何なんです?」 モニターとアニキと呼ばれるおそらく主犯の男とを交互に見詰める男。 「神姫犯罪が流行りだした頃、どっからともかく現れた自警団気取りのイカレ野郎だよ。 ブローカーから聞いた事がある」 唸るように低く呟く男は、続ける。 「コイツに目をつけられたヤツは必ずヒドイ目に合ったそうだ。神姫にしても コンピュータにしても、とんでもねぇ腕をしてていくつもの連中が被害にあってるって 話でな。神姫犯罪を嗅ぎ付けちゃ、幽霊みたいに現れるって話だ」 男達が話している間にも、銀のヴァッフェバニーは次々とプログラムを破壊していく。 「場合によっちゃタイプ名の後にE.Sって名前がついててな。なんちゃらストライクだか そんな名前だとよ」 「どういう意味か聞いたらよ、その中国人ブローカー漢字で見敵必殺と書きやがった。 笑えねぇ」 舌打ちし、憎々しげにモニターを見詰めて叫ぶ。 「おい、サーバー操作してとっととコイツを弾き出せ!」 「それが、さっきからやってんですけどサーバーをコントロール出来ねぇんですよ!」 「ああっ、畜生!」 部下の男の悲鳴に近い報告を聞き、主犯の男は近くの椅子を力任せに蹴り飛ばす。 追い出せないなら…後は潰すしかない。このままじゃ折角の儲け話がパーだ。 「くそ、こうなったらオレがあのGをブッ殺してやらぁ!例の神姫、使えるな!?」 「あ、へい!言われたとおりにやっときました!」 「よっしゃ…裏稼業でも音に聞こえた神姫のデータだ。強い神姫に目が無い金持ち連中に なら100万…いや、1000万単位でも売れるかもしれねぇ」 男が思考を切り替える。そう、こいつはチャンスだ。こないだも鶴畑とかいう金持ちが 大金積んだとかを自慢してるヤロウを苦々しく見てたが、今度は俺の番ってワケだ。 大金に目を輝かせる男達は、反撃の準備を始める。 「さぁ、儲けさせてくれよ…見敵必殺の武装神姫さんよぉ…」 下卑た男の笑いが、埃っぽいワンルームに低く響いていた。 屋敷内に無数に仕込まれたファイヤーウォールを破壊しつつ、先を急ぐ。 「皆の気配を感じるにゃ!こっちにゃっ!」 興奮気味にしっぽを揺らしながら走り抜けるリィリィに誘導される形で、 ジェネシスが続く。 「ここにゃ!」 叫ぶリィリィが大きな扉を開け放つ。中には不安そうな顔の武装神姫… おいおい、30ぐらいいないかコレ。 「皆、助けに来たにゃ!早く逃げるにゃ!」 わっと歓声を上げる神姫達。リィリィに先導される様に駆け出して行くその殿を ジェネシスが務める。 「マスター…抵抗が少な過ぎませんか?敵方の神姫が一体も出てこないというのは このテの犯罪としてはどうも…」 周囲を警戒しつつ、不安を煽らないように小声で問うジェネシス。 確かに、色々嫌な予感はしていた。 予想は色々出来るが…出来れば外れて欲しい。杞憂であって欲しい。 そういうのに限って当たるんだが。 「リィリィの方を警戒だ。門を開けたら、なんて事にならないように」 「了解」 大きな正門はもうそこまでという所まで来ている。ジェネシスがトリガーロックを外し、 そちらを注視した。 こちらの不安を知ってか知らずか、大きな声でリィリィが叫ぶ。 「開けるにゃ!」 ゆっくりと音を立てて開くその扉の向こうには…曇天が広がるばかりだった。 取り越し苦労か?いや…突如始まる地鳴りが不安を肯定する。地を割って現れたのは 今までとは明らかに異質な敵…神姫だった。 ストラーフの腕を無数に繋げていったようなその姿は、龍のようでもあり、 百足の様でもある。尾部には巨大なブレード、頭部は…その巨大さから良く見えないが 大きな目と爬虫類のような顎から覗く牙が伺える。 「私がやります!リィリィさんは皆を守って!」 ジェネシスが前に出る。確かに、とても普通の武装神姫が戦える相手じゃない。 「解ったにゃ!」 ジェネシスと入れ違いに下がるリィリィが、神姫達とジェネシスの間に入り、 神姫達を守るように立つ。 どうにも嫌な予感がして一声掛けようとしたその時。一瞬、ジェネシスの視界から見た リィリィの背後の神姫達。 ─その表情が消えていた。 「リィリィ!危ない!」 反射的に叫ぶ。だが…オレの叫びと、リィリィが背後のハウリンタイプにその身体を 貫かれるのはほぼ同時だった。 「リィリィさん!」 ジェネシスがハウリンにぶちかましをかけ、リィリィを抱いて上昇する。 地上には操られた神姫達、そして空にはこちらを睨みつける巨大な異形の神姫の頭。 それらと距離を取り、リィリィを安全な場所へ降ろすべく飛ぶ。 「にゃ…どうしたにゃ…痛いにゃ…体が、動かない…にゃぁ…」 「喋らないで…!」 苦痛に歪むリィリィの声を、心配そうなジェネシスの声が遮る。 「みんなは…どうしたのにゃ…?」 「操られています…おそらくウイルスによって」 逃走中の様子に不自然な点は無かった… とすれば、任意で起動する洗脳プログラムだろう。 …その可能性は充分考えられたのだ、罠を感じた時から。 過去にそんな経験が無かったわけでもない。 だが、リィリィにそれを告げる事がどうしても出来ずに、頭のどこかで可能性を 否定していた。 彼女が必死に守る、そんな仲間に気をつけろとは言えなかった。 「すまん、リィリィちゃん…オレが気をつけていれば」 「マスターさんの…せいじゃないにゃ…」 リィリィの微笑みに首を振り、言葉を続ける。 「いや、こんな事もあるかもってさ…心のどこかじゃ考えてたんだ」 「…言えなかったけどな」 不甲斐なさを噛み締め、彼女に謝罪する。 「解ってるにゃ…リィリィが、悲しい思いをしないようにって…言えなかったにゃ…? ありがとにゃ。悪くなんて…無いにゃ…」 何もいえない…言葉に詰まるオレを、ジェネシスが叱責する。 「マスター、私達は何ですか?ここで折れてはならない、負けてはならない。 正義は勝たなければならない」 「勝利する者が正義じゃない。だが、正義を語る者に負けは許されない。 諦めないから、正義は死なない。でしょう?」 …ジェネシスの言葉が、胸の奥を燃やす。そうだ、オレは…やらなきゃならない。 凹むのは、店長稼業だけで充分だ。 「…助けるぞ、全員だ」 「勿論です」 「にゃ。ファイトにゃ…おねーさんはつっよいにゃ…信じてるのにゃあ…」 力なく微笑むリィリィに頷き返す。 「しばらく眠っていて。目覚めた時には貴女は…貴女のマスターのお家に帰ってる。 約束します」 「うん、楽しみ…にゃ」 データ破損状態のまま活動するのは危険な事だ。セーフティが働きスリープモードに 移行したリィリィを丘に降ろし、こちらへ迫る神姫達を見る。 「ここが正念場だな」「はい」 気合を入れたジェネシスが、曇天の空へ飛翔した。 NEXT メニューへ
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14人のバトルロワイアルー因縁の再会ー 本編 登場人物 ネタバレ 死亡者リスト ルール
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ウサギのナミダ・番外編 黒兎と塔の騎士 後編 ◆ 鳴滝修平の夢は、格闘技を極めることだった。 世界最強なんて見果てぬ夢だが、そう自負できるほどに強くなりたかった。 志したのは小学校に入学する時分のことだから、随分前の話だ。 鳴滝少年は、数ある格闘技の中から、中国拳法を選択した。 近所に道場があったからだ。 鳴滝少年は熱心な入門生だった。 拳法を身につけるのも面白かったし、強くなることが実感できた。 それは中学生、高校生になっても変わらなかった。 実際、強くなったと感じられたのは、喧嘩の時だった。 格闘技をやってるだけで、何かとやっかいごとに巻き込まれる。 殴り合いの喧嘩をしたが、拳法の技は使わなかった。 師匠から私闘での使用を禁じられていたからだ。 だが、使わなくても負けることはなかった。 いつか、思うさま技を使うことがあるだろうか。 そう思いながら、日々練習に励んでいた。 その生活が一変したのは高校三年生の時。 交通事故にあった。 自転車に乗っていたところで、車にはねられた。 命に別状はなかったが、自転車と左の膝が壊れた。 入院生活の後の、長いリハビリのおかげで、なんとか日常生活は不自由なくできるようになった。 でも、激しい運動はできなくなった。 格闘技なんてもってのほか。左膝は弱点ですらある。 今も道場には行っているが、それは自分を守ることに備えるためであり、以前のような前向きな気持ちではなかった。 だから、リハビリ明けの直後は、荒れた。 つっかかってくる不良やヤンキーを、片っ端から倒して回った。 自分の強さを確認するための幼稚な手段、だった。 そんな意味のない喧嘩に飽きた頃。 鳴滝は武装神姫に出会った。 はじめはくだらない人形遊びだと思った。 だが、ある戦いを見て考えが変わる。 それは、銀髪の神姫と、青色の鎧騎士の対決だった。 剣による近接格闘戦。 その動きは人間を超越し、神業の域に達している。 鳴滝はふと思う。 このなんでもありの戦闘領域で、格闘技はどれほどの力を持ちうるのだろうか。 格闘技だけでどこまで上が目指せるのか。 そんな思いつきが、鳴滝の次なる夢になった。 騎士型サイフォス・タイプを購入し、ランティスと名付けた。 そして、格闘技の修練をさせた。 実際のところ、徒手空拳で戦場に立つのは、非常に厳しかった。 はじめはろくに勝てなかった。 だが、鳴滝はあきらめることを知らず、ランティスは鳴滝の夢を愚直に追い続けた。 やがて、自分たち流の戦い方を見い出す。 そしていまや、『塔』でランティスにかなう神姫はいない。 鳴滝はランティスに感謝している。 鳴滝の夢はかないつつあるのだから。 ◆ 手甲から飛び散る紫電の向こう。 正面に立つ神姫の姿を認めて、ランティスは愕然とした。 「貴様……どうして……」 ティアは雷迅弾を放ったときそのままの姿で立っている。 ありえない。 超速の弾丸は、間違いなくティアが立つ場所を通過している。 なぜあの黒い神姫は五体満足で立っていられるのか。 「どうして、どうしてそこに立っていられるっ!?」 ランティスの叫びに、ティアは困ったような視線を向けるばかりだった。 ◆ ランティスと鳴滝の様子に、観客たちもどよめき出す。 シスターズの四人と安藤も、首を傾げていた。 彼らは皆、ティアが何をしたのか、全く見えていなかった。 安藤は、シャツの胸ポケットにいる、彼の神姫オルフェに尋ねた。 「オルフェ……ティアが何したか、見えたか?」 「見えました……けど……」 人間では追いきれなかった動きも、神姫の目では捉えられたらしい。 だが、オルフェは釈然としない表情で首を傾げていた。 「ティアは何をした?」 「何をしたというか……特別なことは何も」 「え?」 「ただ普通に……いつものようにステップでかわしただけです」 「は?」 安藤はオルフェの言っていることがすぐには理解できなかった。 そこへ銀髪の神姫が口を挟む。 「マスター安藤。確かに今のティアの動きは、半円を描く普通のステップでした。 ……ですが、ティアは、出来うる限り最速かつ最小半径でのステップで、雷迅弾を回避したのです」 「最小半径って……」 安藤には想像もつかない。 つまり、超音速で飛来する球体を、紙一重で見切ってかわした、ということでいいのだろうか。 「……っていうか、雪華は何で俺のこと知ってるんだ?」 「ティアと同じチームの神姫とマスターの情報は調べ上げてあります」 さも当然といわんばかりの雪華であった。 □ ギャラリーがどよめく中、俺はむしろ不思議な気持ちでいた。 別に何も特別な技を使ったわけじゃない。 その証拠に、俺からティアへの指示はたった一言、 「ステップでかわせ」 だった。 ティアはそれを忠実に実行しただけだ。 確かに最近、ティアには近接戦用にステップを練習させていたが……。 「遠野……今のはなんて技だ……?」 大城も呆けたように俺に聞く。 まわりを見ると、みんな俺に注目していた。 俺は小さくため息をつく。 「名前を付けるほどのことじゃないんだが……そうだな、『ファントム・ステップ』とでも名付けようか」 「ファントム・ステップ……」 うめくように鳴滝が言う。 俺は頷いた。 「そう。だが、ファントム・ステップは単発の技じゃない。連続でやると……こうなる」 バトルロンド筐体の画面の中。 ランティスがティアに向かって突進していくところだった。 ■ 「たった一発かわせたからって……いい気になるな!!」 ランティスさんが叫びながらわたしに向かって突っ込んでくる。 どうすればいい? 間合いを取ってかわすのは簡単だけれど。 そう思ったとき、マスターから指示が来た。 『ティア、練習してたあのステップですべてかわせ』 「はい」 『隙あらば反撃だ。練習の成果、見せてやれ』 「はいっ!」 やっぱり、あのステップ……ファントム・ステップと名付けられたのは後で知った……を試すために、この試合は銃器がセッティングされなかったんだ。 ファントム・ステップは、わたしが最近集中的に練習していた技。 わたしが近接格闘戦をするようになってから、マスターが必要だと言って、練習するようになった。 できるだけ素早く、できるだけ相手から離れずに、ステップでかわす。 それが基本。 ランティスさんが両手を顎につけた体勢で踏み込んでくる。 間合い。 左右のパンチから左脚のハイキック。 流れるように淀みのないコンビネーション。 わたしは後ろに下がるステップで、左右のパンチをかわし、半円のターンでキックをはずす。 ステップは全部、攻撃に対して一定の距離。 空を切るハイキックが風を巻き、わたしの前髪を揺らす。 わたしはランティスさんを見た。 大きな動作の後なのに、もう隙をつぶして構え、攻撃態勢に入っている。 反撃の暇はない。 ランティスさんは躊躇なく踏み込んできた。 今度はさらに深く。 腰だめの右拳を斜め上に突き上げるようなアッパーカット。 それも半円のターンでかわす。 すると今度は、踏み込みながら、左腕で細かいパンチを三発放ってきた。 だけどそれは、三発とも同じ距離。 それをかわすと、また踏み込んで、右のパンチを二、三発。 わたしは右左と順番に放たれるパンチを、ジグザグのステップでかわしていく。 かわすたびに、ランティスさんの表情が険しくなっていく。 ◆ ランティスはティアに向かって膝蹴りを繰り出した。 これもかわされる。 だが、これは誘い。 上げた右膝を降ろさず、空手の側方蹴りに移行する。 突然間合いは伸びる。どうだ。 だがそれも、半円のターンでかわされる。 「くっ……!」 ばかな。 こんなことはありえない。 ランティスはこれでも考えながら攻撃をしている。 技のスピード、キレ、間合いの変化、技の変化。 もちろんフェイントも交えている。 だが、そのことごとくをかわされる。 しかも一定の間合いで。 ティアは必ず踏み込みが届く間合いで、自分の正面にいるのだ。 当たるはずの攻撃が当たらない。 あるはずの手応えがない。 まるで亡霊を相手にしているようだ。 「お、おおおおおぉっ!!」 ランティスは吠えた。 左右のハイキックを順に放ち、さらに振り上げた左脚を上から落とす、かかと落とし。 それも、なめらかなS字のターンが命中を許さない。 だがランティスは止まらない。止められない。 今度は降ろした左脚を支点に、旋風のようなミドルキックを放つ。 攻撃範囲の広さは、ランティスの持つ蹴り技でも随一だ。 しかし、それもかわされる。なんと、ランティスが振るうつま先を、ターンで回り込むようにして回避した。 ランティスはさらに蹴る。同じ方向から、跳ねるように、リズミカルに、旋風のような蹴りを。 しかし、当たらない。 黒兎の神姫は、目の前を、亡霊のように舞い続けている。 「く、くそおおおぉぉっ!!」 自分の身につけた技のすべてが、たった一つの技に否定される! 技を一つかわされるたび、心が絶望に浸食されていく。 ランティスは心を削るような思いで攻撃を続ける。 ◆ 「すごい……」 安藤は思わずつぶやいていた。 ランティスの息もつかせぬ連続技。 そこにはあらゆる格闘技の技が詰め込まれていた。 キックボクシングのコンビネーション、ボクシングのパンチに、ムエタイ、空手の蹴り技。 かかと落としはテコンドーの動きだったし、今見えるダンスのような回し蹴りは、たぶんカポエラだ。 格闘技をちょっと知る程度の安藤にさえ、ランティスの技の多彩さがわかる。 だが、それ以上にティアがすごい。 ランティスのあらゆる技は、タイミングもスピードもリーチもすべて違っている。 だが、ティアはそのことごとくを紙一重でかわし続けているのだ。 しかも、ただ一つの技……ステップで。 その様は、まるでパートナーとダンスをしているかのようだった。 「ちょっと、涼子? 大丈夫?」 美緒が小さな声を上げた。 見れば、涼子が頭を押さえながら、大型ディスプレイに見入っていた。 顔色は真っ青だ。 「すごい、なんてもんじゃ……」 涼子は、震える声で、言った。 「ティア……かわしながら、誘導して……塔の外周を回ってる……」 「な……」 安藤はすばやく大型ディスプレイを見る。 ランティスの右上段蹴りが途中で変化し、下段蹴りになって、ティアのレッグパーツを狙う。空手の蹴り技。 しかし、つま先は、ティアのランドスピナーをかすめたのみだ。 そう、二人の攻防はずっと続いていて、途切れることがない。 周囲を壁に囲まれた塔の中で、移動しながらの攻防を続けるには、塔の外周を回るように移動するしかない。 そして、二人の神姫はそれを忠実に実行している。 移動の舵取りは、ランティスの前方にいて、かわし続けるティアがしているはずだった。 涼子は戦慄する。 神業なんてレベルじゃない。 ランティスの打撃は、どれ一つとっても、達人の域を越えている。 それを正面でかわしながら、行き先を誘導さえできるなんて。 武道をたしなむ涼子だからこそ、目の前のバトルが驚愕のレベルにあることを見抜いていた。 「でも、ティアはなんだってそんなことを……?」 「おそらくは、ランティスの技を引き出すためです」 素朴な疑問に答えたのは、全国チャンピオンのマスターだったので、安藤は少なからず驚いた。 だが、当の高村はそんなことを気にもかけず、気さくな様子だった。 「武装神姫にとって、技とは、マスターとの絆が生み出す力です。 マスターの想いをバトルで具現化するための技術……それが武装神姫の『技』なのです。 装備に頼らず、技を駆使して戦うという点において、あの二人はとてもよく似ています。 だからなのでしょう。ティアはランティスのすべての技を……つまり、マスターの想いと二人の絆のすべてを引きだし、受け止めようとしているんですよ」 安藤は高村の言葉に途方に暮れながら、また大型ディスプレイに目を移す。 ランティスが攻め、ティアがかわす。 その姿はダンスパーティーで踊るパートナー同士のようにも見える。 それほどに華麗で美しい動き。 「ランティスだけではありません。ティアもまた、技のすべてを出し尽くそうとしている……」 ◆ 気付いているだろうか? 雪華は、画面上のランティスを見つめ、思う。 ティアのファントム・ステップは、ただ一つの技、ではない。 ステップやターンを駆使して、近接距離を一定に保つ。それがファントム・ステップだ。 ティアはあらゆるステップ、あらゆるターンを駆使して、ファントム・ステップを成立させている。 ランティスが「格闘」を極めた神姫だとすれば、ティアは「滑走」に特化した神姫だ。 ファントム・ステップは、ティアがこれまで身につけてきた、膨大な「滑走」の技の上に成り立っている。 ランティスはそれに気付いているだろうか。 画面上の彼女の表情からは、苦悩と焦燥が見て取れる。 雪華はランティスが嫌いなのではない。愚直なまでにマスターの夢を追い求める姿は、好ましいとさえ思う。 だからこそ、彼女には気付いてほしい。 技同士のバトルに、神姫の出自など、関係がないことを。 「それにしても……」 雪華はつぶやき、ティアの姿を見つめる。 表情がほころぶのと同時、身震いする。 雪華と戦ったときよりもなお、彼女の技は冴えていた。 あのとき、雪華の『レクイエム』をかわしたあとの神懸かり的な機動が、すでにティアのベースラインの動きになっている。 ティアは確実に進化している。 それが嬉しい。 そして彼女に心からの尊敬を抱き、そしてまた戦ってみたいと、雪華に思わせるのだった。 ◆ 鳴滝は喜びに震えていた。 高村について、こんなゲームセンターまでやってきて正解だった。 秋葉原での戦いにうんざりしていたのは、ランティスだけではない。 マスターである鳴滝もまた、火力と物量でばかり挑んでくる対戦者たちに飽き飽きしていた。 だが、ティアは違った。 どんな神姫とも違う機動力で、彼女だけが持つ技を駆使してランティスと戦っている。 ランティスの技に、技で挑んでくる神姫がついに現れた。 そう、待っていた。ずっとこんな相手が現れるのを待ち望んでいた。 ランティス、今お前はどんな気持ちだ? どんな気持ちで戦っている? ……なんでそんなにつらそうな顔をしている。 こんな好敵手と出会えることは、俺たちのような輩にとっては最高のことじゃないか。 もっと喜べ。 そしてもっとバトルを楽しめ。 このバトルの先に、俺たちの見たかった地平が、きっと見えるだろう。 ◆ そんなマスターの想いとは裏腹に、絶望と焦りを顔に浮かべながら、ランティスはティアに打ち込み続けた。 しかし、どんな打撃も、どんなコンビネーションも、ことごとく回避されている。 『ランティス』 「師匠!」 彼女は鳴滝をマスターと呼ぶよりも、師匠と呼んだ方がしっくりくる、と思っている。 『なぜあれを出さない』 「……ですが、この娼婦の神姫に、あの技を出すほどでは……!」 『出すほどだ。現にお前の打撃は、一発もティアに当たってないぞ?』 「……っ!」 『もう認めろ。ティアは同じステージに立つ資格のある好敵手だと。出し惜しみはするな。むしろ、すべてを見せつけてやれ』 「……」 ランティスは迷う。 師匠の言葉は理解できるが、「心」が納得しないのだ。 あの下賤な神姫に、師匠から直に教わった技を使うことにためらいがあった。 しかし、もはやランティスは覚悟を決めるしかなかった。 奥の手を出す覚悟を。 この試合、敗北は決して許されないのだから。 「ハアアアアアァァッ!!」 迷いを振り払うように、気合いを入れる。 そして、ティアに向けた一撃の踏み込み。 瞬間、何かが爆発したような音と共に、地が揺れた。 ■ ランティスさんが深く踏み込んでくる。 その脚が着地した瞬間、地響きが来た。 「わっ」 一瞬、地面が揺れる。 ランドスピナーが傾く。 横構えになっていたランティスさんが腰を落とし、両手の掌を彼女の両側に突き出した。 不安定な姿勢ではあったけど、わたしは間合いを大きめに取るようにランドスピナーを走らせ、からくもランティスさんの一撃をかわした。 彼女と対峙する。 そして、ぞっとした。 ランティスさんの立っている、その足元。 踏み込んだ場所がランティスさんの足形に窪み、地面に放射状のひびが入っている! いやな感じがする。 いまの掌打はからくもかわせたけれど、受けていたら、どんなことになっていただろう。 わたしに想像する間も与えず、ランティスさんがまた来た。 またしても低く、深い踏み込み。 今度はもっと深い。まるで、身体全体でぶつかってくるような……。 わたしの位置は壁際で、もうぎりぎりでかわす余裕はなかった。 ランティスさんを大きく回り込むように回避する。 正解だった。 小手先の技じゃなかった。 ランティスさんは踏み込んで背中を打ち付けようとしてきた! 背中で攻撃、なんて、聞いたこともない。 わたしが今いた場所を、ランティスさんの背中が通過して、そのまま塔の壁に激突する。 見間違いだと思う、でも。 ランティスさんの背中が当たった瞬間。 高い高い塔の壁が、一瞬、たわんだように見えた。 □ まるでミサイルが直撃したかのような爆発音。 ランティスを震源地に、短い地震が起きて、ディスプレイの映像を揺らす。 バーチャルで構成されたステージのカメラの位置は動かないはずだから、塔全体が揺れたのだ。 ランティスが姿勢を戻して、ティアと対峙する。 その背後。 いましがた、ランティスが背中を打ち付けた壁が、彼女の背中の形でクレーターになっている。 クレーターのすそ野から、大小のひび割れが大きく広がっていた。 そして。 その壁が粉々に砕け、大きく崩れ落ちた。 「八極拳か……これほどの破壊力とはな」 あの特徴的な、背中からの打撃に見覚えがある。確か『鉄山靠』とか言う技だ。 八極拳は中国拳法の一流派だ。 俺も詳しくは知らないが、震脚と呼ばれる強烈な踏み込みから生み出される破壊力が特徴だと聞いたことがある。 鳴滝が感心したように、俺に言う。 「よく知っているな。ランティスの八極拳は俺の直伝だ」 「君も拳法をやってるのか。なるほど、だから師匠、と呼ばれてるんだな」 「そうさ。……どうする、遠野。踏み込むたびに地面を揺らされて、ファントム・ステップを続けられるか?」 鳴滝は不敵に笑って、俺を挑発する。 だが、不愉快ではない。 鳴滝もこのバトルの駆け引きを楽しむために、俺を挑発している。それがわかる。 ならば一つ、俺も楽しんでみようか。 「試してみるがいい」 「ふふ……八極拳の技が単発だと思うなよ。連続でやると、こうなる」 鳴滝の言葉と同時、ランティスが再び前に出た。 完結編へ> Topに戻る>
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私と彼女、小さな小さな“幸せ”を 対戦相手に名刺を渡して意気揚々と帰る、私・槇野晶と神姫・ロッテ。 とは言えそろそろ、夕食の時間であるな……。買い物を手早く済ませ、 外食へ赴く事にしようか。たった2人のささやかな祝宴だが、十分だ。 「マイスターっ、わたしチキンのサンドが食べたいですの♪ねっ?」 「む?遠出になるが……よし、今日は頑張ったからな!いいだろう」 「やった!マイスター、マイスター、大好きですの。えへへ~……」 「わぷ、こらっ。すりすりするなっ!?うぅ、しょうがない娘だッ」 我々が帰りの足で向かったのは、神田神保町にあるサブウェイである。 少し秋葉原からは離れているが、ロッテの好物なのだ。仕方あるまい? 何、「神姫の食事って電気じゃないか」だと?……その筈、なのだが。 「いっただ~きま~すの~、マイスターっ!!チキン、チキンっ」 「冷めはしても逃げはせん、落ち着いて食べろ……って、もうッ」 「はむ、はむ、はむっ……もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ……♪」 「相変わらずおいしそうに食べるなぁ、ロッテ。可愛い“妹”だ」 「はみゅう?ふぁいすふぁ~、んぎゅっ……どうかしましたの?」 「う゛ぁ……そ、そのな。ほら、ドレッシングを零すんじゃない」 この通り、ロッテは平然と“人間用の”チキンサンドを食べている。 飲んですぐに「嫌いですの」と言い放った、炭酸飲料や辛い物以外は 食料ならなんでも食べてしまう。無論、15cmの体格に見合った量しか 食べられぬ故、自然と私と半分ずつシェアする事になるのだが……。 「そう言えば、ロッテや。お前がその様に食事するようになったのは」 「えっと……確か、以前定期メンテナンスにお出かけしてからですの」 「む、そうか……あの時頼んだ先は、確か“ちっちゃい物研”だな?」 「はい♪あれからなんだか、とても快調ですの。お腹は空きますけど」 東杜田技研。そう大きな会社ではないが、マイクロマシン分野に強い。 そこの一部署が“ちっちゃい物研”と自らを名乗っている。そして以前 メンテを依頼する際、知人を頼って同部署を指名した覚えがあるのだ。 あれは研究員……“Dr.CTa”の技術論文を読み、感銘を受けたからか? 実際同社の手際は見事な物だ、私に解決できない不調は全て解消した。 特に補助バッテリーの持続性が、30%程伸びているのは驚きだった。 「だが、ううむ……その時の事は、まだ思い出せないのかロッテ?」 「えと、あ。そう言えば……白衣のお姉さんが嬉しそうに手を……」 「ふむなるほど、そういう事か。感謝せねばならんな、ある意味で」 なんとなく掴めた。が、追求はするだけ無意味であるとも理解が及ぶ。 “Dr.CTa”か仲間の誰かが、実験の為ロッテに改造を施したのだろう。 となればロッテからそれを取り外すのは、かなりの大手術になる筈だ。 そもそも、だな?こんな可愛く物を食べるのに……外すなどとはな?! せっかくの“妹”から、食を取り上げるという冷酷な行為はなッ!?! 「……マイスター?なんだか顔が紅いですの、どうしました~?」 「な、なんでもないっ!……そう言えば、こんなビラがあるぞッ」 「武装神姫・第五弾?セイレーンにマーメイドに、イルカ……?」 「うむ。今度は海シリーズらしい……水着も開発せねばならんか」 と私が水着のデザインを思案し始めた横で、何やらロッテが唸り出す。 あからさまに縦線が入る程の、負のオーラさえ背負っている様だった。 何事?と顔を近づけ、ロッテの様子を伺ってみる。そして出た言葉は。 「……マイスター。なんだかこの妹達、胸がおっきいですの」 ホットティーを噴いた。見ればなるほど、確かにキャンペーンガール…… 正確にはキャンペーン神姫か。彼女らの胸部は、至上類を見ない豊かさ。 成長期なのに躯が小さい私も、アーンヴァルタイプのロッテも心は同じ。 どちらから切り出そうかと悩んでいたが、先行したのはやはりロッテだ。 「マイスターも、わたしの胸大きい方がやっぱり……いいですの?」 「ぐ!?……いいんだ。ロッテは今のロッテが一番可愛いからな!」 「てへ……マイスターも、今のマイスターが一番大好きですの~♪」 そう言って肩に飛び乗ったロッテに、私は頬を寄せ頭を預けさせてやる。 嫉妬心が無いわけではないし、今後は豊満な躯用の服も作らねばならん。 我々としてもいろいろネガティブな物は感じるが、それはそれであるッ! 別に胸の善し悪しで全ての価値が決まるわけではない、気楽に構えよう。 彼女は大切なパートナーであり、彼女にとって私もそうであるのだから。 「あ。マイスター、紅茶が付いてますの。んっ……♪」 「わ゛!?こ、こらっ、頬にとはいえキスするなっ!」 「えへへ~、大好きって言ってくれたご褒美ですのッ」 ──────この笑顔があればね、別にいいじゃないの。 次に進む/メインメニューへ戻る