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マッドガッサー騒動後 12月 友人「もうすぐクリスマスか」 少女「そう言えばそうね・・・」 考えてみるとクリスマスを誰かと過ごすなんて初めてな気がする むしろクリスマスを祝う事事態が初めてな気がする 友人「そっちはどうするの?」 少女「さぁ?黒服やチャラ男が何かしら用意はすると思うけど・・・どんな形であれ平穏に終わる気はしないわね」 この町で都市伝説に関わる立場に居る限り、いつ何時も平穏なぞありはしないのだから・・・そう 少女「丁度今見たいにね」 立ち止まって静かに呟く 友人「・・・離れたほうが良い?」 少女「えぇ、急いで」 友人「わかった」 それだけ言うと友は走り去っていった さて 少女「出てきたら?」 電柱の影から現れたのは一人の女 歳は13から15・・・中学生くらいか もちろん、契約者 「気付かれていましたか」 少女「それはね、感知能力なら自信あるから・・・ここ最近私の事見張ってたみたいだけど、何者?」 「・・・『組織』所属の契約者です」 『組織』か・・・ 少女「久しぶりじゃない、『組織』から私に手を出すなんて」 「あの黒服が貴女を庇っていたので・・・それに『首塚』に属している者に手を出せば将門の呪いを受けかねませんから」 成る程ね・・・・・・ 少女「なら、何故?」 「『組織』の一部の強硬派が『首塚』に喧嘩を売ろうとしている、と言うのが一つ」 そう言いながら女はポケットから飴を取り出す・・・飴? 「そして、任務など関係なしに私的な理由が一つ」 少女「私的な理由?」 「復讐です」 その言葉と共に放たれる飴玉 咄嗟にその飴を避け ボンッ 飴が爆発した? 少女「爆発キャンディの契約者?!」 「半分正解、半分外れ、顎砕き飴の契約者です・・・能力は見ての通り飴の爆破」 少女「ちっ!!」 服から鎖を抜き、女に向けて振る 顎砕き「無駄です」 ボンッ 鎖に向けて放られた飴が爆発し、その衝撃が鎖を弾かれる 少女「なっ!?」 顎砕き「死んでください」 再び放たれる飴 今度は八つ!? 顎砕き「一つ一つの威力はたいした事ありませんが、これなら効くでしょう?」 余裕綽綽な態度が何か腹立つ! 少女「舐めるなぁ!!」 飛んでくる飴向けて鎖を振り叩き落す 落とした4つは地に落ちて爆発 鎖を抜けた二つは後方に跳んで回避 弾かれて女に向かった残り二つも難なく回避された 顎砕き「器用ですね・・・なら」 再び両手に飴が握られる 顎砕き「こうです」 一気に距離を詰めながら放たれる飴が四つ 横に跳んで回避 次に放たれた飴が8つを鎖で弾き落とし 更に飛んでくる飴16個を・・・多!? 少女「げ・・・」 顎砕き「終りです」 飴が眼前にまで迫り・・・後ろから首を捕まれた 少女「ぐえっ!?」 ボンッ 破裂する飴 しかし、ダメージは無い 「間に合いましたか・・・」 顎砕き「!?」 私の首を掴み担いでいるのは、長い金髪に白い肌の女 普通と違うのは右腕の肘から先が巨大な盾になっている所か・・・ 少女「あんたは・・・」 顎砕き「九尾の・・・ 「そこまで」 ッ」 顎砕き飴の首に当てられる刃 少女「かごめかごめ?!」 コン「お久~」 二頭の白面金毛九尾の狐を引きつれた青年、かごめかごめの契約者がそこに居た 顎砕き「・・・珍しいですね、組織に従順な貴方が私の邪魔をするなんて」 青年「えぇ、珍しくね」 顎砕き「何故?」 青年「特に理由は有りませんよ、ただその子を殺されるとヤバいと僕の勘が言うので」 顎砕き「勘・・・ですか?」 青年「えぇ、勘です・・・まぁ、根拠は無くも無いですよ?その子が死ぬと契約しているDさんに影響が出ます、そうなるとDさんの業務が滞ります、その場合誰があの「骨を溶かすコーラ」の契約者の手綱を握るんです?誰が「禿」に文句を言うんです?」 顎砕き「・・・・・」 青年「あの二人が野に解き放たれて見なさい、組織の終りですよ?」 淡々と言うかごめかごめ・・・ それは、つまり、黒服が居なかったら『組織』ってもしかして簡単に潰せたりする? ハク「意外と脆いですよ、組織は」 少女「そうなの?」 ハク「えぇ、内にも外にも問題一杯ですから」 青年「それでも、まだ続けますか?なら僕も本気で行きますけど?」 顎砕き「・・・・・・仕方ないですね」 女が握っていた飴をポケットに戻す 顎砕き「今回は下がります」 そう言うと女はその場を去って行った 少女「何なのよ・・・もう」 ハク「顎砕き飴の契約者・・・4年前から組織に居る強硬派の一人ですね」 少女「4年前?」 ハク「えぇ、確か父親を亡くした所を黒服にスカウトされたんでしたか・・・」 少女「・・・まさかね」 この時私は、この嫌な予感が事実だった事をまだ知らなかったのです 続く?
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214 :群青が染まる 03 ◆ci6GRnf0Mo [sage] :2010/03/27(土) 16 14 34 ID sJQd6qba まだ陽は高いのに薄暗くカビの匂いのする通りから外れた路地裏で、ついて行 きたいと言ったハルに、どこか困ったような表情を浮かばせている。 そんな二人を見ながら彼女でも悩むことがあるのかと全く違う事を考えていた。 「何故だ?」 諦めたように空を見上げてから、もう一度ハルに向き直したマリンが言った。 その一つ一つの動作に呆けたように見ていたのも束の間、背中から首筋にかけ て、脈打つ何かが駈けた。 ……やっぱり、慣れないな。 「いやー、マリンはんに惚れしてしまってな!」 それを意にも介さず芝居でもしてるかのように大げさに手を振って話し始めた 彼に、きっといつもこんな調子なんだろうなと一人で納得する。 「どうや? わいは役に立つで! それにな 「何を目論んでいる?」」 放って置いたら止め処なく喋り続けそうなハルの言葉を遮って低い声が路地裏 を大通りまで通り抜けていく。 背筋を手で抑えながら、自分の足が一歩また一歩といつの間にか下がっている 事に気付いた。 「そ、そんなわいは……!」 これから起こるだろう惨劇を目の当たりにしないように目を閉じると、通りか らはまるで別世界のように和やかな声や音が耳に届いて来る。 「……好きにしろ」 が、聞こえたのは予想外の言葉だった。 「おおきに!」 だから、足に力が入らないのか、膝をつきながら何度も礼を言う男をただ眺め ていた。 ……俺はもうヒツヨウ、ナイ? そこまで考えて、喜ぶことのはずなのに悲しんでいる自分、そして少しでも役 に立とうともがく自分がいることが嫌でもわかった。 ……違う! 独りになるのが寂しいだけ、そうに違いない。 何かを喋っている二人の話の内容は、耳を通過していくだけで一つも頭に残っ てはいなかった。 「っ?!」 事実、急に引っ張られた事で自分が考え事に陥っていたことにやっと気付く。 「ほな、行くで!」 「な、何?! ちょっと待って!」 何が起こっているのかわからずした抵抗も虚しく、強引に引っ張られていく。 通りまで引っ張られて、ようやく離してもらえた手の感覚を確かめながら服に ついた埃を叩く。 雨が降った後ではないことに感謝していた、が、何よりも抵抗等おかまいなし に引っ張って来れた力に驚いていた。 「ど、どういうことなの?!」 まだ埃を叩き続ける自分の事など気にせず歩きはじめたハルを追いかけながら、 抗議の声を上げる。 「ん? 聞いてなかったん? あかんでぇ、人の話を聞き漏らすと大変なことに なるで、そうでもなくても――」 「だから、何を?!」 「せやから、マリンはんの探し物や」 その返事を聞いて言葉に詰まった、なのに頭ではやっぱりそういうことかと納 得していた。 それは薄々気付いていて、気付きたくなかった……自分は必要ないのではとい う事を。 215 :群青が染まる 03 ◆ci6GRnf0Mo [sage] :2010/03/27(土) 16 17 13 ID sJQd6qba 知らず知らずに顔が下向いていた事を、 「お、ここやここや!」 「っ!!」 急に立ち止まった自分より一回り大きなハルの背中にぶつけた事でわかった。 「どうしたんや?」 「い、いや、なんでもないよ」 そんなぶつけて真っ赤になってるだろう鼻をさすりながら、彼の視線の先に顔 を向けた。 「情報が一番行きかう場所や!」 「ここって……」 そこには、随分歴史があるのか広めの敷地に酒場と旅館が一体となった三階建 ての建物があった。 軒先にある今にも落ちそうな看板には、汚く読みづらい字で何か書かれている。 「おいていくでー!」 建物を眺めているうちに入口をまたいだハルの後を付いて行こうと、すぐに考 えても、初めの一歩が踏み出すことが出来なかった。 数巡後、意を決して踏み出した……考えても拉致があかないと。 店内は料理の美味しそうな匂い、酒の匂い、煙管の匂いと、色んな匂いがごち ゃ混ぜになっていた。 何より、とても賑やかだった。 そんな中、カウンターテーブルの席にいた目立つ後ろ姿の男に近づいていく。 「なんで、飲んでるの?!」 隣まで来ると、既に空いた杯が……。 「そう固いこといわんといてな。それに、酒場言うたら飲まんとあかんがな! あ、もう一杯!」 鼻歌混じりの杯を差し出す彼に、酔っているということだけはわかった。 「はぁ……で、何かわかった?」 運ばれてくる今にも零れそうな程一杯に盛られた刺激臭がする杯に目を遣りな がら、尋ねた。 「んにゃ、まだ聞いてへんよ」 「じゃあ、聞こうよ」 「これを、飲んだらな!」 痛む頭と共につっぷくしそうになった体をなんとか持ちこたえた。 「ああ、飲んだ飲んだ!」 「飲みすぎだよ……」 結局、何杯も飲み続けるハルの代わりに聞くこととなったが、今晩の宿が空い ているということ以外は何もわからなかった。 「なんで、付いて行こうと?」 まだ落ちずに辺りを照らし続ける陽の下で、酔っているだろう彼に問いかける。 「それは内緒や。それより、はよせな日が暮れるで!」 答える気のないハルに、「誰のせいだよ」と聞こえるように嫌味を投げつけな がら、追いかけた。 それから、夕飯の良い匂いが辺りから香り出す頃にマリンと偶然の再会をする まで、何か変わった情報はありませんか、という問いを色んな人に聞き続けた。 216 :群青が染まる 03 ◆ci6GRnf0Mo [sage] :2010/03/27(土) 16 19 51 ID sJQd6qba 「もがが、海に面した……んぐ、街、セイクルにいるらしいで」 陽が在った時とは違い、夜の酒場にはさらに多く人が集まっていた。 旅人らしき身なりの楽器を弾きながら語る男。飲みすぎたのか、足腰がふらつ いている男。今日の稼ぎを求めて男を誘う女……そういえば、ハルは何度も誘わ れたようだが、頑なに断っていたな。 そして、些細な言い合いから殴り合いまでに発展した男達。 それは賑やかというより、うるさいぐらいだった。 「他には?」 その質問は、口に食べ物を入れながら喋るハルに向けられたものだ。 そんなハルとマリンの会話を男の視線も女の視線も集まっている事に居心地が 悪いと思いながら、少しだけ距離を置いて眺める。 注視している荒くれの男達でも、異様な雰囲気に近寄ってくることはなかった。 「ぷはっ、後は“最果ての森”とか“祭壇の遺跡”とかどうでもいい情報ばっかや」 「……そうか、ご苦労だったな」 そう言った彼女はとても綺麗で、時間が進むことを忘れたように見続けた。 「惚れた!」 部屋に入ると急に叫んだ男に視線を移す。 「わいは、惚れたで! マリンはんのためならなんでもできる!」 言葉を宙に放り投げたままハルが勢いよく寝床に飛びこむ。きっと酒のせいだ ろうと、何か言う気にはなれなかった。 「わいは、やるでぇ」 寝言がいびきと共に聞こえ出したのは、あっという間のことだった。 「……眠れない」 自分はというと、いびきのせいなのか、いつもより柔らかい布団のせいなのか、 興奮して眠れないのか、冴えていくばかりの目を擦って部屋を後にした。 暖かくなったとはいえ、肌寒い空気が辺りに満ちていた外は耳が痛いほどに静 まりかえっていた。それでも寒すぎるほどではなかった。 呼吸をする度に肺が冷え、そして、頭も冷えていく。 ついさっきまでの騒ぎが嘘のように静かな空間に澄んだ空気、そして満月には 足りず、かといって半月よりかは大きい中途半端な月がそれに溶け込む。 そんな月の光を霞ませるように、家の壁に灯りが乱立している。 夜中にまでも明りは灯っているのは、生まれてこのかた故郷だけしか知らない 自分には初めての光景だった。 ……その神秘的な光景の中、屋根の上で佇む女が。 遠くてよく見えないながらも、月明かりを弾きながら輝いて揺れる長い髪、他 者を寄せ付けない完全な後姿、それはマリン以外にはあり得なかった。 そんな絵画の一つのような彼女に話しかけようか、と迷っては話しかけようと 何度も考えながら、 ただずっと見惚れていた。 217 :群青が染まる 03 ◆ci6GRnf0Mo [sage] :2010/03/27(土) 16 22 26 ID sJQd6qba 「いい眺めだな」 不意に降って来た声に、驚きながらも“そうだね”、 「俺は、いていいのか……?」 と、返すはずだった。なのに、口からついて出た言葉は、全く別の事だった。 「我はそなたに案内を頼んだ」 星屑が落ちてきそうな夜空に顔を向けたままの彼女は、きっとこんな時にでも いつも通りなんだろうな。 「だけど……!」 「それとも、ここで終わりを迎えるか?」 ひんやりとしたそれでいて暖かい指先が首筋に触れている事でやっと気付いた ……目前に迫った彼女に。 それは触られているだけなのに、悲鳴どころか、声を上げることさえ許されな いほどの重圧だった。 視線が合った瞬間に今まで抑えてきた震えが全身へと駆け巡る。 「我が憎いか? 人間。 だが、これは約束事。呪うなら、己自身を、そして貢 物とされた役目を呪うがいい」 視線を外して、顔を上げ空を見上げる様は、まさしく異様だった。 「決めろ……死ぬか、生きるかを」 そんな彼女がもう一度こちらを向いた。 待つのは死しかない狙われる獲物のように、泣いて叫びたいほどだった。 「……? なぜ、何も言わぬ?」 答えようと動かす口が開かない。振ろうとする首が動かない。 立っているのが不思議なほど力のない足に、倒れないのは固定されているため だと気付く。 「ああ、」 祈りが届いたのか、言葉と共に触れていた指が離れた。途端に、力なく膝が折 れた。 「……ごほっ!」 緩まった圧力に、咳き込みながらも必死に息を吸い続ける。 「すまぬ。加減を間違えていたようだ……」 息を吸って吐きながら、目から出る水滴を手で拭いながら、もしかして、間違 えて殺されるところだったのか? という疑問が脳裏を過ぎる。 冷たい地面に冷えていく身体、未だ足に力が入らなかった。 「では、答えてもらおうか」 わざとらしく咳を打つ仕草だけは、ひどく人間臭い。 「行く、行くよ!」 それは、そう答えるしかない問いだった……だけど、例え本当にそうだとして も、少しでも必要とされているのではないかと思えた。 「そうか」 瞬間、わからなくなってしまった……さっきまでの自分に死の恐怖を持たせた 彼女と、薄く笑みを浮かべた彼女、どちらが本当の姿なのかが。 「なぜ、……探すんだ?」 だからなのだろう、思い切って訊いてしまったのは―― 相変わらず人形のように無表情で、肯定のような否定のように流して、そんな 姿を想像していたのに、 ――そして、後悔した。 そこにいるのは、いまにも泣いてしまいそうに眉をひそめて、口をつぐんだ女 だけだった。 「……なんとなくだ」 人である自分より弱々しく見えたのも束の間、 「我からも一つ問おう」 何かを振り切るようにそう続けた。 218 :群青が染まる 03 ◆ci6GRnf0Mo [sage] :2010/03/27(土) 16 25 07 ID sJQd6qba 蹴飛ばしていた毛布をハルに掛け直して、部屋を出る前はあれほど暖かかった のに今ではもうすっかりと冷たくなった寝床に潜り込む。 味わったのは死の恐怖、だというのに頭にあるのは何も言わずそれでも何かを 聞きたがっていた彼女の事だった。 なんでも知っていそうな彼女に何の疑問があったのだろうと考えて、いつもあ れは何かと、これは何かと問う姿が思い浮かぶ。 そんな考えも、次第に鈍くなった頭に消え、やがて眠りに落ちた。 その日の夢には笑顔の彼女がいた。きっとこんな顔を見たら見惚れるどころで はないんだろうな、と自然と自分まで笑顔になった。 「――はん! トモヤはん! 起きてぇな!」 「……ハル?」 勢いよく揺すられる肩に、二日酔いのように重たい頭。 「ハル……? じゃ、あらへん! もう昼やで?!」 ああ、そうか、もうそんな時間か。 「……え?」 「マリンはんが待ってるで!」 「わ、ちょ、ちょっと待ってよ!」 すぐに静かに怒る顔が思い浮かぶ。 鈍痛がする頭もそのままに、いつもの倍の速度で用意を済ませ酒場兼食事場へと 降りた。 なのにそこには誰もおらず、置いていかれてかもしれないという焦りの下、外へ と急いだ。 「こっちやでー!」 扉が外れそうに跳ね返るほどの勢いで飛び出すと同時に聞こえてきて来た声の方 を見る。 そこには、ここに来るまでに乗っていたのより僅かに広く相変わらず屋根がない 荷馬車があった。 その隣でハルが何が嬉しいのか笑顔で大袈裟に手を振っている。 どっからどう見てもあれで移動するんだろうと、安堵の息を吐いて胸を撫でた。 「さ、出発するで!」 そんな彼に近寄ると、すぐに馬に飛び乗った。その姿は自分よりよほど様になっ ていた。 ……だが、そんなことよりも重大が疑問が俺にはあった。 「ここに乗るの……?」 荷車を、膝を手で抱えて座るマリンが乗っている隣を、恐る恐る指差す。 「当たり前やないか」 何を言っているのか理解できないとでもいいたげな顔で、既に手綱を握って出発 を今か今かと待つハルにどうしても変わると言い出せず、出来るだけ彼女を視界に 入れないように荷車へと足をかけた。 乗り込むと同時にハルが馬の手綱を引いた。すると、待ってましたとばかりに馬 が勢いよく蹄を唸らせた。 その歩みに連なって車輪が小気味良い音を立てて回り始める。 そんな中、肩が触れ合うぐらいの距離に彼女がいることにどうしても落ち着かな かった。 こんなことだったら手綱を握ると言おうとして、マリンの隣で仲良く話すハルを 思い浮かべ、喉まで出かかった言葉を止める。 そんな二人に嫉妬した自分に嫌悪感を抱いて気付いた……自分は彼女に惹かれて いるんだと。 219 :群青が染まる 03 ◆ci6GRnf0Mo [sage] :2010/03/27(土) 16 28 31 ID sJQd6qba 「いやー、無事抜けれてよかったわ!」 街の西門を潜り抜けた事への安堵の声にも、落ち着かないのは彼女が近くにいる からだというのを無理やり押し込めて平静を保つので精一杯だった。 「そういえば、トモヤはん」 「な、何?!」 「昨日、何かあったん?」 「き、昨日?!」 何かあったと言えばあったのだろうが、まさか死に掛けたと言う訳にもいかず、 次の言葉を待った。 「マリンはんが今日はゆっくり寝かせてやれっていうもんやから、てっきり何かあ ったと思ったんやが、」 「……は?」 思わず盗み見た彼女の表情はいつもと変わらなかったけれど、いつもより悲しそ うに見えたのは……きっと俺の気のせいなんだろうな。 「……すまなかった」 そんな小さすぎて聞こえるはずのない言葉が、風に流されて耳へと確かに届いた。 その言葉に自分でも気付かぬうちに跡が残っているだろう首筋に触れていた。 ……この旅の終わりは港街セイクルなのだろうか? 少しでも長く続いて欲しいと思ったのは、我侭な願いなのかもしれない。
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トップページ 宝具 手帳編では各ルートのサポートや妨害をするべく様々な「噂の現出品」こと宝具が登場します。ここではその宝具とその効果を紹介する。 大川慶次郎の手帳 競馬評論家、大川慶次郎が常日頃持っていたとされる手帳。 特殊効果:トリガミ(馬券は当たったが収支では損する事)ポイントを的中ポイントに変える。 約束された勝利の剣 セイバーが持つ聖剣エクスカリバー。 特殊効果:馬券ボーナスが、さらに+1 騎英の手綱 ライダーが持つ、あらゆる獣を御することが出来る手綱。 特殊効果:逃げ馬勝利を的中させた場合、ボーナス+1 レイジングハート 高町なのはが所持するデバイス。なのはが魔王、冥王と呼ばれる原因の一つ。 特殊効果:同点の場合、トリガミポイントを無視して勝利にすることができる グランゾン 対異星人用に開発されたアーマードモジュール。開発責任者の一人、エリック・ワンによると「搭乗者が人知を超えた能力の持ち主ならば、1日で世界を壊滅に追い込むこともできる」という。 特殊効果:万馬券を一つでも的中させれば、無条件で勝利 弓塚さつき 月姫に登場する「サブ」ヒロイン。通称「さっちん」。本来なら彼女にも専用ルートが用意されるはずだったが、諸事情でカットとなった。 特殊効果:トリガミポイントが発生しなくなる 徳川埋蔵金(ワンコイン招き猫) 江戸幕府が密かに地中に埋蔵したと伝えられている金塊またはそれに準じる金属貨幣のこと。埋蔵時期とされる幕末以来、多くの発掘プロジェクトが各地で行なわれ、そのほとんどが全く成果のないままに終わっている。 国守山に出現したがその後「常に500円玉をもっていないとちょっぴり不安になる」効果を持つ招き猫だと判明した。 特殊効果:1レースの投入資金+500円 大下弘の青バット 終戦直後の日本プロ野球におけるスター選手大下弘の代名詞。「青バット」の大下弘として、「赤バット」の川上哲治、「物干し竿」の藤村富美男と共に活躍した。 特殊効果:1試合に7安打打つことができる。(野球選手のみ) ジャイアンのマイク 「ドラえもん」に登場するガキ大将、ジャイアンの愛用品。彼の歌声は騒音を通り越して、凶器と言っても過言ではない。 特殊効果:アイドル、ボーカロイドの歌唱力が大幅に下がる。 福助 江戸時代に流行した福の神の人形叶福助の事。願いを叶えるとして茶屋や遊女屋などで祀られた。現在も某有名ローカル番組のOPに登場するなど、人々に親しまれている。 特殊効果:飛行機の墜落、車の事故、船の沈没等、ありとあらゆる災難から守ってくれる。しかし目的地に近付こうとすると強制力が働き、目的地から遠ざかってしまう。なお、自身が犯したミス(インキー等)には効力を発揮しない。 白熊のぬいぐるみ 白熊を模したぬいぐるみ。 特殊効果:人間が持つと、鹿児島名物、氷菓『白くま』の早食い対決で必ず勝てるようになる。調理機能付きのメイドロボが持つと、『白くま』を製造できる。 なまはげの面 秋田の伝統的民俗行事。鬼の面、ケラミノ、ハバキを身に付け、大きな出刃包丁(或いは鉈)を持ったなまはげが家々を訪れ、「泣ぐコはいねがー」という荒々しい声を発しながら怠け者、子供や初嫁を探して暴れる。『水曜どうでしょう・原付西日本の旅』において、なまはげの面をつけた大泉洋が鬼の洗濯岩で『洗い物はねぇか』の台詞と共に、藤村Dの靴下を洗う一幕が見られます(笑) 特殊効果:洗濯上手になる。 リヤカー 金属製のパイプで形成された2輪の荷物運搬用具。『水曜どうでしょう・喜界島一周』では、荷物や出演陣を乗せて喜界島を一周するのに一役をかっている。ちなみに、名称は『山田くん』(笑) 9か月ぶりのロケで、久々に集う面々が互いの結束力、団結を強めるべく、喜界島一周が企画された。 特殊効果:初対面の人、久々に集う仲間等を問わず、一致団結できる。 白羽扇 かつて存在したジュリ○ナ東京のお立ち台ででも使用された扇。『みえみえのトラップにもうっかりひっかかってしまい、周りは「待て、それは孔明の罠だ!」って言って止める』程度の効果を持つ。 特殊効果:所持者が予想者となった時の支援ポイント発生時、ポイントが奇数の場合は対戦相手のポイントに加算される。 落書き皇国 詠美が持つ噂の具現物。描いたものを現実化することが出来る。基本的に何でも現実化でき、現実化したものを他の人の使い魔として設定できるが、一度書いたものを取り消すことはできず、使い魔の思考は主と設定した人の能力によって左右される。 特殊効果:なし 漢字ドリル 小学校低学年向けの学習補助教材。『総画数10画以内の漢字の完全習得できる』程度の効果を持つ。 特殊効果:対戦相手の名前の漢字が全て10画以内の場合、無条件でプラス1ポイント。ただし、相手の名前に漢字が全く入っていない場合は無条件でマイナス1ポイント。 ブラコンフィールド 女児向けの玩具「リカちゃんハウス」から発する怪しげな雰囲気。『ちょっとだけお兄さまに甘えられる空間が発生する』程度の効果がある。 特殊効果:対戦相手に兄弟姉妹(義理でも可)がいる場合、支援ポイントを無効にする。ただし、対戦相手が一人っ子の場合、自分の支援ポイントが相手に加算される。 破壊すべき全ての符(ルールブレイカー) 原作では魔術師(キャスター)が所有する宝具。刺した相手が持つ契約を無効化することができる。 特殊効果:J2所属サッカークラブ『サガン鳥栖』の成績によって効果が変化する。 『サガン鳥栖』が首位となった場合→全能力解除:葉っぱ大隊のLVNS(雫・痕・ToHeart・ToHeart2・Routes)キャラを無条件で味方にできる 『サガン鳥栖』の順位が上がった場合→所有者が勝負に敗北した場合、一度だけその勝負を無効とする。 『サガン鳥栖』の順位が上がった場合→無条件で所有者が目的地以外のどこかに飛ばされる。仲間がいる場合は全員が散り散りになる。 百年魔女の連鎖:オヤシロバリア 「ひぐらし」ネタってよくわからないんです…加筆求む 特殊効果:古河渚の身に危険が迫ると、オヤシロバリアが発生。鉈での攻撃力上昇、瞬速の正拳突き、クロスミラージュなどさまざまな自己防衛機能が発揮される。 百年魔女の連鎖 特殊効果:海鳴市内に古手梨花が存在する時にのみ発生する能力。CV 田村ゆかりキャラが他にも海鳴市内に存在するとその能力を共有することが出来る。 ※古手梨花が海鳴市を離れたため、現在この能力は無効となっています。 レプレキア(REPLEKIA) 別世界にある詩魔法サーバ『インフェル・ピラ』にアクセスすることで使えるヒュムノス(詩魔法)。複数の歌い手が同時に詠唱する事で対象の魔力を増幅させる事ができる。 特殊効果:その場にいるメイドロボの数だけポイント加算。ただし、万馬券ボーナスは発生しなくなり、支援ポイントの半数(小数点切り捨て)を相手に譲渡する。 使用条件:予想前に使用を宣言する。(任意に使用、不使用を選択可能) ソル・フェージ(SOL=FAGE) 別世界にある詩魔法サーバ『アルトネリコ』にアクセスすることで使えるヒュムノス。いわゆる「神おろし」の歌で神様を自らの体に下ろし、強大な詩魔法を扱う事ができる。またそれ以外にも他のヒュムノスとリンクする事ができる。 特殊効果:相手の宝具一つを奪う事ができる。ただし、万馬券ボーナスが発生しなくなる。なお、ミクが『アルトネリコ』管理者シュレリア様と接触し、神おろしの使用許可が出た場合、宝具が持つデメリットを打ち消し、かつ効果を倍増させる事ができる。 使用方法:予想前に使用を宣言する。(任意に使用、不使用を選択可能) 魔法をかけて 秋月律子が得意とする歌 特殊効果:判定に成功すれば、相手の宝具(結界系)を一つ、無効に出来る。失敗しても、次の使用を禁止できるという特級の能力を持つ。だが、所持している限り、対象がいなくても毎回必ず判定を行わなければいけない。対象が存在しない場合に判定に失敗すると、次回この宝具は使用できなくなる。また、この歌を使用し、達磨一家及び無印以外のどうでしょう関連宝具の効力を停止することができる。停止する場合は、停止したい宝具を指定して判定を行う。 鰯の群れ シルファ(パチモン)が操る、シルファの群れ(謎) 特殊効果:対軍、攻城以上の範囲攻撃でなければ、所有者を倒すことは出来ない。小範囲の攻撃で勝った場合は、引き分けまで勝利のランクを落とされる(万馬券ボーナスが発生した場合はこの効果を無視できる)。ただし、数が多すぎて小回りが利かないので、常に相手に1Pを与えてしまう。 約束の鐘 美汐所有宝具。 特殊効果:真琴の特殊能力:「ものみの丘」を発動させる。 使用条件:鐘の音が聞こえる範囲内に真琴がいる事。 ものみの丘 真琴特殊能力。 特殊効果:定対象レース名が動植物名を関する場合、トリガミを除く的中・支援ポイントが3倍される(ただし、真琴が予想した場合にのみ有効) 使用条件:美汐が「約束の鐘」を鳴らし、真琴がその鐘の音に気付いた場合 達磨 縁起物。カブの荷台に乗せるとしょぼい画も多少華やかになる(笑) 特殊効果:宝具所持者同士の対決時、戦闘が終了するまで、敵味方が所持する全ての宝具の効力を停止する。使用前に、使用・不使用を宣言する。対戦相手が宝具を所持していない場合は使用できない。 姫達磨 縁起物。達磨の嫁さん。大分県生まれの九州美人(笑) 子達磨(ヒゲ達磨を含む)四兄妹の母。 入手条件:達磨を既に入手していること。 特殊効果:相手が獲得したトリガミポイントを横取りし、自身のトリガミポイントに加算できる。また、他宝具による攻撃(機能停止や略奪等)を一切受け付けない。ただし、対戦相手が(支援は含まず)万馬券を出した場合は効力が停止する。『R』及び『C』の姫達磨は、万馬券を2回食らうと壊れる。無印の姫達磨は万馬券を2回喰らうと2R使用不能に。2R後、復活する。 ヒゲ達磨 縁起物。達磨さん夫婦の子供で、四兄妹の長男。顔はまんま藤村Dの似顔絵(爆) キャラも藤村D(爆) 入手条件:達磨さん夫婦を入手していること。 特殊効果:相手から奪ったトリガミポイントを自身の通常ポイントとして加算できる。また、他宝具による攻撃(機能停止や略奪等)を一切受け付けない。ただし、対戦相手が(支援は含まず)万馬券を出した場合、『R』及び『C』のヒゲ達磨はその場で爆死する(爆) 無印のヒゲ達磨は万馬券を喰らうと2R使用不能に(その間はただの口煩いうざキャラになる(爆))。2R経過後、復活する。 1/6の夢旅人 『水曜どうでしょう』のEDテーマ。秋月律子がカバーしている。2002バージョンの冠のついたオリジナル(笑) 特殊効果:宝具『福助』3種(無印・R・C)の所持者を強制的に呼び寄せる。ただし、誰も所持していない場合は誰も来ない。敵が来るか味方が来るか、また、戦力になるか、ならない人が来るのかが全くわからない為、『ぱるぷんてのカード』の異名を持つ(爆)
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ML 13 カースナイト 分類:アンデッド 知能:高い 知覚:魔法 反応:敵対的 言語:交易共通語、その他個体により差異あり 生息地:戦場 知名度/弱点値:17/23 弱点:回復魔法ダメージ+3 先制値:18 移動速度:20(本体のみ)/40(騎乗時) 生命抵抗力:15(23) 精神抵抗力:16(23) 攻撃方法(部位) 命中力 打撃点 回避力 防護点 HP MP 呪われた槍(本体) 17(24) 2d6+22 15(22) 18 96 70 体当たり(前半身) 16(23) 2d6+14 15(22) 14 110 34 呪われた蹄(後半身) 15(22) 2d6+13 15(22) 25 88 34 部位 部位数:3(本体、前半身、後半身) コア部位:本体 特殊能力 ●全身 常動:通常武器無効 常動:炎無効 常動:呪い属性無効 常動:精神属性無効 常動:呪いの霧 全身を強力な呪いを受けた霧が取り巻いています。 この魔物に近接攻撃を行った場合、攻撃の成否に関わらず、「2d6」点の呪い属性の魔法ダメージを受けます。 また、この霧は飛来する矢や弾丸を逸らします。妖精魔法【ミサイルプロテクション】と同等の効果を持ちます。 ●本体 主動作:操霊魔法10レベル/魔力14(21) 10レベルまでの操霊魔法を行使出来ます。効果や結果は個々の魔法を参照してください。 常動、宣言:魔法適正 戦闘特技の《魔法誘導》《魔法拡大/数・距離》《マルチアクション》《ワードブレイク》を習得しています。 常動:戦闘指揮 この魔物の半径10m以内にいる指揮下の魔物は、命中と回避に+2のボーナスを得ます。 常動、宣言:騎芸 騎芸【騎獣の献身】【チャージ】【トランブル】【振り下ろし】【振り下ろしⅡ】【縦横無尽】を習得しています。 条件:降りた騎手 騎獣から降りた状態でも戦闘できます。騎獣から降りたり、部位:前半身のHPが0以下になった場合 特殊能力「騎芸」を失い、打撃点が4点減少します。 条件:呪われた槍 攻撃が自動命中、あるいは対象が回避に自動失敗をした場合に発動します。 対象は続く1Rの間、移動、主動作、補助動作のいかなる行動も行えなくなります。 宣言:全力攻撃Ⅱ 打撃点を12点上昇させます。この能力を使用すると次の手番まで回避力判定に-2のペナルティを受けます。 常動:切り返し 素早い切り返しで二回攻撃を行えます。 対象は2回とも同じでも、違っても構いません。 ●前半身 常動:攻撃障害=+2・なし 巨大な馬の上にいるため、部位:本体は近接攻撃の回避力判定に+2のボーナスを得ます。 この能力は、部位:前半身のHPが0以下になると失われます。 主動作:灼熱の瞳/15(22)/生命抵抗/消滅 燃える赤い瞳で対象を燃やします。「射程/範囲:30m/半径4m」の範囲全ての対象に「2d6+14」点の炎属性の魔法ダメージを与えます。 この能力は連続した手番には使用できません。 ●後半身 条件:呪われた蹄/14(21)/精神抵抗/消滅 攻撃が命中した場合、対象は抵抗を行います。 抵抗に失敗した場合、追加で「2d6+4」点の呪い属性魔法ダメージを与えます。 主動作:蹴り飛ばす/16(23)/回避力/消滅 後ろ足で対象を蹴り飛ばします。 乱戦エリア内の一体を対象とします。対象は任意の方向へ20m移動させられ、「20」点の物理ダメージを受けます。受身を取ることでダメージを軽減可能です。乱戦エリアからは強制的に離脱させられ、さらにその場で転倒します。 この能力は「呪われた蹄」の能力も誘発します。 この能力は移動したラウンドには使用できません。 戦利品 自動 呪われた槍 3000ガメル 自動 亡者の手綱 900ガメル 2~6 赤い魔眼 400ガメル 7~12 炎の魔眼 900ガメル 13~ 怨念の塊 4500ガメル 解説 呪われた漆黒の鎧と槍で武装した、亡者の騎士です。 自分が死んだことにも気づかず、新たな戦場を求めてさ迷っています。 大抵の場合、多数のスケルトン系の魔物を部下として引き連れています。 この騎士が出現する際、濃霧が戦場を包み、どこからともなく現れるため 騎士や傭兵の間では死の象徴として恐れられています。 製作者葉月
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第弐話を通してラノで読む 鋭い日光がコンクリートを容赦なく照りつける。 汗を流しながらも、それに打ち水をする婦人。街道に据え付けられた街路樹に止まり、 俺は此処にいるぞと言わんばかりに騒ぎ立てる蝉の鳴き声。 国守鉄蔵《くにもりてつぞう》が花壇にしゃがみ込み、小円匙《シャベル》を片手にせっせと土いじりをしている。 蝉の鳴き声に混じりながら上空からジェット機の排気音が響き、それに気をとられ手を休めた。 小円匙を持っている手とは逆の手で、目深に被った麦藁帽子の鍔《つば》を持ち上げ、視界を邪魔する日光を手のひらで遮り遥か上空で燦然と輝く太陽を見上げる。 空は真っ青で、それを邪魔しない程度に、程よい青を滲ませた積雲がまばらに散っていた。 「そろそろお昼時になるかの」 国守鉄蔵は首に巻きつけていたタオルで額《ひたい》の汗を拭き取り、よっこらせと立ち上がった。 肩から掛けていた雑嚢《ざつのう》に手早く園芸用品を収納し、外した軍手をジャージのポケットに押し込み、 からころと下駄の音を響かせながら路傍に止めてある轟天号《じてんしゃ》に歩み寄る。 愛機の横には相棒の柴犬《ケンゾー》が行儀良く座っていた。暑さのせいか舌を出しながら、しきりに浅い呼吸を繰り返しており、常よりも幾分か鼻先が湿っている。 サドルの首の部分に撒きつけていた手綱を解く。解いた手綱はケンゾーの首輪に繋がっており、 それを両手で巻き取る。手綱の長さに若干の余裕を持たせ、輪のようにまとめた後、自転車のハンドルと一緒に握る。 「今気付いたんじゃが、持ち物整理しとったらな、なんじゃ、弁当持ってくるの忘れとったみたいじゃ」 「くぅーん」 若干呆れた様にケンゾーはうな垂れたが、何かに気付いたのか首を上げ何度も鼻を鳴らす。 「んむ? なんぞ美味そうな臭いでもするんかの?」 ケンゾーがすっくと立ち上がると同時に鉄蔵も愛機の轟天号《じてんしゃ》に跨り、ペダルを踏み込む。 がたんと小気味良いスタンドの揺れる音が辺りに響き、目的の場所も解らぬまま相棒に促がされ自転車を漕ぎ始めた。 緩やかにペダルを漕ぎ続けるうち、鼻腔を擽《くすぐ》る何かの料理の匂いが漂ってくる事に気付く。芳ばしさの中に際立つ老酒の燃え上がる、芳香。 「うむむ、こりゃ確かに美味そうな匂いじゃ。流石にお前さん鼻が利くの」 ケンゾーの歩みが速くなり、辺りに立ち込める香りも一層濃くなる。 「あ、あれじゃろ。あの屋台じゃろ?」 「ばう!!」 自転車を漕ぎ始めて間も無く、一つの屋台が路上に店を構えていた。屋台の脇に自転車を止め、暖簾《のれん》をくぐり、長椅子を跨いで一番端の席に腰を降ろす。 「っしゃーせ!!」 応対に出たのは威勢の良い青年だ。全体的には細身ではあるが肩幅もあり腕の筋肉も確りとしたもので、何かしらの武術を嗜んでいるように感じられる。 片手に持っている中華用の鉄鍋を軽々と振るう様は、これから出てくるであろう料理の出来を期待させるには十分過ぎた。 屋台の中を軽く見回すが、注文札はチャーハンと杏仁豆腐の二品しかなかった。 ただ、チャーハンの注文札の横には品物の量を表していると思しき”満貫盛り・ハネ満盛り・倍満盛り”の注文札が掛かっていた。 「当店はチャーハン専門店になってまして、普通のチャーハン、量を多めにした満──」 「チャーハン倍満でお願いできるかの?」 言葉を遮るように注文が入った。 「いやー、あのお客さん? まだ説明の途中ではあったんですが、倍満て凄い量多いんですよ? ちょっとお客さんには辛い量だとは思うんですけど」 店員は苦笑いを浮かべながら鉄蔵を窘《たしな》める。 「いや、流石に一人じゃ食いきれんで、幾分かは相棒に分けようと思うとるんじゃが」 自転車の横で丸くなっているケンゾーを顎で示す。 「お客さん。こちらとしても人間相手に商売やってるんですよねー。 頼んだ物はしっかりと一人で食いきるっつーのがお百姓さんに笑顔で顔向けできるんじゃないかなとゆースタンスでやってるんすよ」 料理人として譲れない芯の部分を感じさせる一言。 青年は営業スマイルを崩す事は無かったし、確固とした信念がその言葉に重みを与えている事を感じない鉄蔵でもなかった。 「んむむ。そう言われるとぐうの音もでんわィ……。それじゃあ満貫盛りと並盛りを一人前づつならどうじゃろうか? うちの相棒も食べ物は残さず食べるように躾けておるし、あいつもお前さんとこのチャーハンに魅かれてここにワシを連れてきたみたいなんじゃ。 なにより、相棒も腹の虫が鳴きっぱなしのようでの」 青年は瞳を閉じ、腕を組みしばらく考えるように唸る。 「うーん。そこまで言われちゃこちらとしても断りようがないですね。よっしゃ、それじゃあチャーハン二名様分すぐに取り掛かるとしますか!!」 言うが早いか青年はチャーハンを手際よく作り始めた。 一定の間隔でかつかつと鉄鍋とお玉がぶつかる音が反響する。さほど時間はかからず、目の前に料理が差し出された。 「チャーハン一人前、満貫盛りお待ち!! もう一人前はあちらさんに持ってけばいいんですかね?」 「ああ、そうしてくれるとありがたいの。入れ物はあいつが食うのに困らなけりゃ何でもいいわィ」 「はいよっ」 差し出されたチャーハンを黙々と口に運ぶ。じんわりと体全体に熱が伝わり汗がこみ上げてくるが、それがまた心地よかった。 首に掛けているタオルで額を拭い、再びレンゲを手にとる。 頬の端が自然と緩んでいる事に気付き口元を引き締めるのだが、どうしても綻んでしまう。 それ程に差し出された料理は美味かったのだ。豪華すぎず、美味すぎず、慣れ親しんだ味よりも一つ二つ上の、安っぽい美味さが鉄蔵を上機嫌にさせた。 その様子に気づいたのか青年は鉄鍋を屋台の脇に置き、誇らしげに語りかけてきた。 「ふふふ、どうですかね? こればっかりは自信があるんですよ。そんじょそこらのチャーハンなら一捻りですよ」 「んむ。大したモンじゃ。こりゃ何度も食べたくなる味じゃよ」 手を休め、コップに入った水を呷る。 「大将はいつもここらへんに店構えとるんかの?」 「いや、今日はたまたま南区まで出張してきたんですよ。けどまぁ、やっぱここらへんだと学生が少なくてお昼時でも客入りは悪いすねー」 「そのたまたまのお陰でわしと相棒も美味いメシにありつけた事は神さんに感謝じゃのう」 呵々大笑し、また一掬いのチャーハンを口に放り込む。 「ちなみに、本店は学園の商店街にある雑居ビルの一階にある”大車輪”て中華料理屋なんで、どぞ、ご贔屓に」 「あぁ、知っとるぞィ。なんじゃそんな身近にある店が美味い事知っておったら、足繁く通ったんじゃがな」 そんな風に会話を弾ませていると、新たな来客が暖簾を潜り長椅子に腰を下ろした。 「たいしょー。いつものっす。あと食後に杏仁豆腐ひとつ」 がこんと盛大な音を上げ、屋台の柱に青年は頭をぶつけた。その音に驚いたのかチャーハンを一心不乱に貪っていたケンゾーは体を浮かせ顔を上げる。 「お前、なんでここにいんだよ!!」 青年は一転してカウンター越しに来客へ詰め寄った。 「やや、たまたま南区の巡回に来てただけっす。巡回してる最中になんか見知った屋台があったからわざわざ来てやったっす。 店の売り上げに貢献してあげようとしてるんだから崇め奉ってもいいっすよ」 「悪ぃけど悪魔崇拝はガラじゃねぇよ。っていうか巡回って今日は休みじゃねーのか? こんな所まで見回りにこなきゃいけないってのも面倒臭ぇもんだな、風紀委員見習いってのも」 盛大なため息をつきながらも青年は着々と料理を作り始める。しばらくやり取りを見ていた鉄蔵が会話に割って入った。 「お嬢ちゃん学園の風紀委員さんかい」 少女は突然会話に入ってきた老人を見つめた後、店主に耳打ちする。 「誰このおっさんっす」 「いや、おっさんじゃねーよ。じーさんだよってそんな事はどうでもよくて、お客さんだお客さん」 小声でやりとりをしている意味を感じられない程に声は駄々漏れだった。鉄蔵は苦笑混じりに言葉を続ける。 「なんじゃ、ワシも長いこと学園で働いておるんじゃがあっちゃこっちゃに出回ってるせいで、学生さんにあんま顔は覚えてもらっとらんようじゃな」 「そう言われるとどっかで見たことあるような無いような感じがするっすね……」 少女は黙考した後、目を見開いて声をあげた。 「あー、思い出したっす。用務員のお爺さんっすよね。 醒徒会の人といるの何回か見たことあるっすよ」 「覚えていてもろうてなによりじゃ。双葉学園用務員の国守鉄蔵じゃよ。お嬢ちゃんは見回りのお仕事かィ、ご苦労さんじゃな」 鉄蔵が名乗ると、レンゲを片手で弄びながら少女も名乗る。 「あ、失礼しました。神楽二礼っす。ちなみにそっちで、もそもそチャーハン作ってるにーちゃんも学園生っす」 「へー、お客さん双葉学園の用務員さんだったのか。俺は拍手敬って言います。お勤めですよね? こんな辺鄙な所までご苦労さんです」 軽く会釈をする。 互いに自己紹介を済ませた後、取り留めもなく話をしながら食事を楽しんだ。 学園で最近起きた事件の事や、今の醒徒会役員の事、学園の近くで昨今噂されている都市伝説の事など、話題が弾むにつれ形式的な敬語も崩れる程には 鉄蔵と屋台大車輪の店主の敬(今は屋台を預かっているという意味での店主だが)は打ち解けてきていた。 「──まぁ、そんなワケで俺の活躍でドカッとその小憎らしいラルヴァを自慢の発頸で一撃ズドンってなワケで!!」 「よく言うっす。結界張って待ち伏せしてた所に来たのは、 散々逃げ回って挙げ句の果てにズタボロのボロ雑巾みたいな状態で満身創痍だったのはどっかの誰かさんだったじゃないっすか。言う事は大概オーバーっすよね」 「お前そんな元も子もない事言うんじゃねーよ!!」 そんな二人の掛け合いを見ていた鉄蔵は、ぽつりと疑問を投げかけてみたのだが 「お前さんがた随分と仲が良いみたいじゃが、恋仲か何かなんかいの?」 「「それはない」っす」 ──返答とは異なるが、随分と息が会っていたのは言うまでもないようではあったのだが。 会話をまだ続けていたかったが、相棒のケンゾーが何やら喚き散らしていたので、 そろそろ仕事に戻らないと後が大変だなと思いながら立ち上がる。いそいそと財布から代金丁度の小銭を取り出し番台に乗せた。 「それじゃ、ここいらでお暇《いとま》させて頂くわィ」 「お代の方は丁度っすね、まいど。今後ともご贔屓に願います!!」 「また学園でっすー」 暖簾を潜り屋台に背を向けひらひらと両手を振る。屋台の脇に止めてあった、 自転車に目をやると自転車の置いてあった場所にはサドルの皮とハンドルのグリップやタイヤのチューブ、その他プラスチックで出来た部分等だけが転がっていた。 無い。 愛車が無い。 「ん? ドウイウコトナノ?」 何が一体どうなっているのか理解できず、手の甲で軽く目を擦ってはみたものの目の前に転がっているのは愛車の部品と思わしき無惨な残骸だけであった。 その横ではケンゾーが一層大きな声で吠えたてている。 「お、お前さん。わわわわひの轟天はどどどどこいぅあ」 気が動転している鉄蔵はケンゾーの頬を両手で掴みぐいぐいと引っ張る。 ケンゾーの頬は安物のエキスパンダーの様に伸び縮みするが、わふわふと唾液をこぼしながら「だから、そっちを見ろ」と言わんばかりに屋台の方に必死に首を向けた。 「うぉおお!!きしゃん!!おれの大事なジャンに何するとぉおおおお!!」 先ほどまで楽しげに会話をしていた拍手敬のエセ九州弁での絶叫が上がった。 そちらを見やると屋台のすぐ傍に、自転車程の大きさであろう鉄の塊が蠢いている。 鉄の塊からバールの様な鉄の触手が伸び、屋台の調理具を絡めとる。塊はそれらを取り込み徐々にその暈を大きくしていく。 「俺のジャンを返せぇぇえッツ!!」 目を血走らせながら敬は鉄の塊に大の字になって飛び乗り、半分程目減りした鉄鍋を引き剥がすと盛大に尻餅をつく。 涙目になりながら無惨な姿の鉄鍋をしっかりと抱きしめた。 「おぉぅ!! こんな姿になってしまうとは……。前のラルヴァの時といい今日といい……なんだお前等!! 俺のジャンに恨みでもあるんかコナーロー!!」 怒髪天を突いた敬の横にからころと乾いた下駄の音を鳴らしながら鉄蔵も並んだ。 「ぬぐぐぐぐ。わしゃ怪異如きに、馳走を振る舞った覚えは無いわィ。 お前さんの魂源力の全てを轟天の供物にしてやろう……ケンじょぉォオッツ!! 弔い合戦じゃあああッツ!!」 鉄蔵が怒号を飛ばすと同時にケンゾーは咆哮しその嘶《いなな》きは天高くまで轟く。 しなやかに伸びる両足を以て大地を蹴り上げ跳躍。空中で一振りの刀へと変化する。鉄蔵は中空に突き出した右手でその刀を掴み取り、切っ先を怪異へと向ける。 敬は鉄蔵が手にした刀《ケンゾー》を見て一瞬あっけにとられたが、その所作から鉄蔵が武の道を歩むものである事に気付く。 己の人生の中で、艱難辛苦を分かち戦い抜いた相棒を失った男達は、共通の仇を討つ為、視線を交わし頷きあった。 「ぶっ「倒す」!!」 奇声というか金切り声というか、翻訳不可能な日本語を喚き散らしながら、 ラルヴァへと突撃する料理人とジャージ姿の老人を屋台から眺めていた神楽二礼は頬杖をつき口元を緩めながら呟いた。 「いやー、お二人さん随分仲良いっすねー。もしかして恋仲か何かなんすか?」 「「それはない」」 急ブレーキをかけ、互いに首だけを二礼に向け片手で否定を示す。 ラルヴァを前に暢気にそんな漫才をしているうちに、目の前にいたはずのラルヴァはいつの間にか無数の脚を生やし、 その脚を不気味に蠢かしながらその場からもの凄い速度で駆け出した。 「大将!! やっこさんが逃げるぞィ!!」 「くそ、逃すかっての!!」 遠ざかるラルヴァを逃すまいと二人は屋台を後に駆けだす。後に残ったのは無惨に転がった鉄蔵の愛車の部品とと、 木造が故に難を逃れた”大車輪”の屋台。そして、事の成り行きを静観していた神楽二礼だけだった。 遠ざかるラルヴァと敬と鉄蔵の背中を眺めながら手もとにあった杏仁豆腐をスプーンで崩し、これを口いっぱいに頬張る。 「──ほむほむ、これってもしかしなくても店主不在でタダって事でいいっすよね。儲け儲け」 以前とは逆の立場の鬼ごっこを終えた二人は、ラルヴァを袋小路まで追いつめていた。 「へっへっへっ。前門の区画整備不全の壁、後門の老若コンビとはこの事だなぁ」 「な、なんじゃィそりゃ」 「いや、ほらそこはなんか上手いこと言ってフォローしてくれないと……」 ラルヴァを前に未だ余裕を崩さない二人は余程肝が座っているのか、あまり頭が働かないのかの何れかであろう。 そんな二人を前にラルヴァはバールの様な触手を交差させ震えだした。 「な、何してんだ?」 震えだしたラルヴァから甲高い金属音が鳴り響き辺りにある幾つかの建物や、電線は彼らが気づかない程、僅かに震えだす。 「くっ!! この音は!?」 両耳を押さえ拍手敬は両膝を地面に下ろし身悶える。 「何じゃ、どうしたんじゃ大将!?」 傍で苦しむ敬の様子に鉄蔵は狼狽するが、何が起こっているのかは鉄蔵は理解に苦しんだ。 「お……音が!!」 「音!? わしには何も聞こえなんだが……っうお!!」 轟音と共に袋小路で立ち止まるラルヴァの足下に亀裂が入り、それは凄まじい速度で枝を分かつ。 「大将!! すぐにこの場を離れぬぉおおッッツ!!」 鼓膜が破れんばかりの甲高く強烈な金属音。音叉を打ち鳴らした時の音に近いそれは共鳴し、 地面は僅かに震え、微細にひび割れ、ついには地割れを引き起こした。 辺り一面のコンクリートに広がった地割れという名の蜘蛛の巣は、 鉄蔵にも聞こえる程の音量の金属音を最後に打ち鳴らしたラルヴァの一押しによって地面は陥没し、大きな穴がそこに穿たれる。 突如として口を開いた漆黒に敬と鉄蔵とラルヴァは吸い込まれ落下した。 後編へ
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前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十八話 ワルドはゆっくりと空を旋回しながら、眼下のウルフウッドとコルベールをにらみつけ、右手の杖を大きく掲げた。 「貴様らが二人になったところで、だからそれがどうしたというのだ!」 確実にウルフウッドを殺せたはずの戦況で、彼を助けるためにこの戦いに乱有してきた闖入者。 苛立ちを隠しきれない声でワルドは叫んだ。 再び風の魔法を放つ。竜巻が再び沈没しようとしているレキシントン号の窓ガラスを破った。 「確かに、君はなかなかに優秀な炎のメイジのようだ。それは認めよう。だが――」 ワルドがゆっくりと右腕を下ろした。船内に消えた竜巻が再びその姿を現す。 「矢は燃やせても、果たしてこれは燃やせるかな?」 コルベールはゆっくりと体を沈めるようにして、身構えた。目の前の竜巻の中で舞っているもの――それは剣。 「この戦いにしゃしゃり出てきたことを、後悔するがいい!」 ワルドが杖を振るうと、まっすぐに竜巻はコルベールへと向かう。 コルベールは冷静に戦局を分析した。確かにワルドの言うとおりだった。剣の一本程度なら溶かしてしまえないこともないが、数が多すぎる。 コルベールはゆっくりと身構えていた杖を下ろし、その場に立ち尽くした。 「ふっ、あきらめたか。ならば、大人しく串刺しになるがいい」 得意げなワルドの声。しかし、それに答えるコルベールの声は冷静そのものだった。 「確かに、あなたの言うとおりです。私の力ではそれは防げません。えぇ、私の力ではね」 そして、コルベールはちらりと横を見て、小さく笑った。 「というわけで、お願いしますね。ウルフウッド君」 その言葉にウルフウッドは腰をかがめると、一足飛びにコルベールへと向かったパニッシャーを大きく掲げ竜巻に立ちはだかる。 「先ほど殺されかけていた使い魔ごときがしゃしゃり出てきたところで、何になる! そんなに死にたければ、貴様から先に逝くがいい!」 ワルドが叫んだ。その様子を見て、ウルフウッドは鼻で小さく笑う。 パニッシャーが風を切る轟音を立てながら振り回される。その間隙を縫うように、デルフリンガーが縦横無尽に駆け巡る。 デルフリンガーに魔法力を吸い取られ、パニッシャーに叩きつけられたワルドの剣は乾いた音を立てて、宙を舞うと力ない金属音と共に地面に落ちた。残らず一本とも。 「なっ……」 目の前の状況にワルドは言葉を失くした。ワルドの杖を持つ手が震えている。 「阿呆が。剣なんて重たいもんを振り回そうとするから、さっきよりも数は減っているわ、攻撃のスピードは遅いわ、精度は落ちているわ。こんなんやったら、簡単に全部叩き落とせるで?」 「くっ」 ウルフウッドの冷め切った態度に、ワルドは自分が冷静さを失っていたことを思い知らされた。 確かにその通りだ。剣は矢のように『風』と相性のいい武器ではない。 「矢の次は剣。オンドレの手は、これで尽きたな」 冷たい目でウルフウッドはワルドを見据える。勝ち誇るわけでもない。ただ、冷たく、当然の事実のように言い放つ。 「ミスタ・ワルド。これでわかったでしょう。あなたにもう勝ち目はありません。私としては、これ以上無益な戦いは望みません。ここから、去ってください。そして、二度とトリステインの地を踏まないでください」 コルベールが慇懃にワルドに通告した。言葉遣いは丁寧だが、コルベールの目には不退転の覚悟が燃え上がっている。 「それで、いいですね? ウルフウッド君」 「まぁ、しゃあないな。今回ばっかはセンセのおかげやし」 ウルフウッドは苦笑いをしながら両手を挙げた。 「ふざけるなよ、貴様ら……」 完全に自分を見下したウルフウッドとコルベールの態度にワルドは怒りを露にする。そのワルドの姿を見て、コルベールは小さくため息を付いた。 「ミスタ・ワルド。あなたは何のために戦うのです? 何を求めて、この国を裏切ったのですか? 地位のためですか? それとも名誉のためですか?」 「……誰が、そんなくだらないものを求めるか」 「ならば、何を?」 「……私が求めたのは、世界だ。はるか当方の地に眠る、聖地。それを今エルフどもから一度人の手に取り戻す。それこそが、レコン・キスタの存在意義であり、そのために私は国を裏切ったのだ」 淡々とワルドは語った。聖地という言葉にコルベールのこめかみが小さく反応する。 「あなたたちは、聖戦を引き起こすつもりなのですか?」 「トリステイン、アルビオン、ゲルマニア、ガリア――どいつもこいつもどうしようもない腑抜けどもだ。存在価値のない国などどうでもいい。私たちが聖地を取り戻すために戦うことを聖戦と呼ぶならば、そうなるだろう」 コルベールはワルドに向かって杖を構える。 「あなたたちの行いで、多くの人々の命が奪われ、生活が壊されるとしても?」 「その犠牲を恐れる臆病さが、エルフ共を付け上がらせるのだ。貴様もブリミル教徒ならば、わからないわけはあるまい?」 「アホぬかせや」 「何?」 ウルフウッドがコルベールとワルドの間に割って入った。憮然とした様子でウルフウッドはワルドをにらむ。 「聖地かなんか知らんけど、そこを取り戻したいんやったら、お前ら取り戻したい奴らだけで勝手に行け。関係のない人間の生活を巻き込むなっちゅうんじゃ、アホンダラ」 「……そもそも、会話するだけ無駄だったか」 ワルドはゆっくりと目を閉じる。 「君たちにはどうしてもここで死んでもらう。君たちが我々に敵対する意思があることがはっきりした以上、今ここで」 「敵対する意思なんざ、最初っからはっきりしとったことやろが、ボケ!」 ウルフウッドがパニッシャーを構え、ワルドに向かって銃弾を放つ。ワルドはウルフウッドに真正面から突っ込んでいき、銃弾を魔法で受け流す。 「ウィンドブレイク!」 ワルドはウルフウッドの足元に魔法を放った。魔法でえぐられた地面の土が舞い上がり、ウルフウッドの視界を塞ぐ。 「ぐっ」 「悪いが、こちらもそれなりに場数は踏んでいる! あの程度でチェックメイトだとは思わないで頂きたいものだね!」 視界を奪われたウルフウッドにワルドが杖を向けた瞬間、コルベールがワルドの懐に飛び込んで蹴りを放つ。 「ちっ。随分と貴族らしからぬ戦い方をする男だな!」 ワルドは風竜の手綱を引き、バランスを崩しながらも蹴りをかわす。この状況下でワルドが優位を保てるのは、ひとえに彼が風竜にまたがっているからであり、地面に叩き落されればその瞬間に勝ち目はなくなる。 コルベールの攻撃はそれを冷静に見越したものだった。 蹴りを避けたワルドは、杖をコルベールに向けた。この戦いに勝つには、コルベールかウルフウッドどちらかをまずは確実に仕留めなくてはならない。そうして、一対一に持ち込めば、確実に勝てるのだ。 「食らえ!」 「甘いわ!」 ウルフウッドはパニッシャーのストラップを掴み、パニッシャーを投げ縄の用に振り回した。 ワルドはとっさに上半身を折り曲げ、パニッシャーをかわす。ゴウンと風を切る音を立てながら、パニッシャーがワルドの頭上を駆け抜ける。 「くそっ」 ワルドは手綱を引くと、再び上空へと避難した。ワルドの予想以上に、ウルフウッドとコルベールのコンビネーションは完成されている。この二人を同時に出し抜くのは至難の業だ。 「センセ、すまんな」 ウルフウッドがぼそりとコルベールに声を掛けた。 「何がですか? ウルフウッド君」 「戦いとうないのに、こんな戦いに巻き込んでもうて」 「……確かに、こうして再び誰かを傷つけるために杖を振るうというのは、あまり気分のいいものではありませんね」 「センセ。アンタは魔法を人に向けんでもええ。攻撃やったら、ワイがやったる」 「ウルフウッド君?」 コルベールがウルフウッドの目を不思議そうに見ると、ウルフウッドは大丈夫とでも言うように無言で頷いた。 そのウルフウッドの仕草を見たコルベールはワルドへ向けて杖を構え、呪文の詠唱を始めた。その動きに気が付いたワルドは、炎の魔法を跳ね返すべく身構える。 コルベールが杖を振るった。杖から強烈な炎がほとばしる。 「馬鹿め! 自らの魔法で自分が焼かれるが――何?」 ワルドに向かってまっすぐに飛んでくると思われた炎は、大きく弧を描きワルドの目の前に壁のように広がった。 「炎の壁、だと?」 本来は冷気系の魔法や弓矢を防ぐための防御呪文だ。それをなぜ? 予想外のコルベールの行動にワルドが戸惑った一瞬の隙、その隙を突いて、まるで雲を一点で引き裂くように、目の前の炎の壁に穴が空いた。 「デルフリンガー!」 大声で叫んだワルドの目の前に抜き身のデルフリンガーが迫る。 ――炎の壁は目隠しか! 魔法を吸収する事の出来るデルフリンガーなら、ワルドの風の防御壁を破って突き刺さることが出来る。コルベールの行動は隙を作るための囮で、本当の狙いはウルフウッドの投げるデルフリンガーだったのだ。 「甘いわ!」 ワルドはデルフリンガーの柄めがけて風の魔法を放つ。刀身に晒されれば魔法は吸収されるが、柄ならば―― ワルドは片方の唇の端を上げて、笑った。予想通りだった。柄ならば魔法は吸収されない。先ほど剣を魔法で操った要領で、デルフリンガーを手元に巻き取る。 「残念だったな。貴様らの捨て身の攻撃も通じなかったわけだ!」 勝った、とワルドは思った。デルフリンガーさえ奪えば、彼の魔法を遮るものは何もない。魔法攻撃の勝負ならば、負けるはずがない。 勝ち誇ったワルドが下を見下ろす。 「――?」 ウルフウッドがいない。先ほどまでウルフウッドがいた場所に、彼がいない。 ――まさか。 ワルドは血の気が抜ける感覚を感じながら、自分の真下に視線を移した。そこではウルフウッドがパニッシャーの銃口を自分に向けている。 ――あれは、まずい! ウルフウッドが向けていた銃口は、パニッシャーの短い側。レキシントン号を沈めた、あの弾丸。 「くそっ!」 ワルドは思い切り舌を打ち鳴らした。デルフリンガーを魔法で掴んでいる体勢のため、ウルフウッドのランチャー弾を魔法で弾き返すことが出来ない。 デルフリンガーすらも囮だった。これも隙を作るためのものだったのだ。本当の狙いは―― 「がぁああああ!」 ワルドは全力で手綱を引く。もはや物理的に逃れるしか術はない。 脂汗をかきながら、歯を食いしばって手綱を握り締める。 そして、両目をつぶったワルドの隣を何かが通り抜ける感触がした。ワルドが恐る恐る目を開けると、空に向かってまっすぐにあの弾丸が飛んでいく。 「は、ははは……はははは!」 思わずワルドの口から笑い声が漏れた。勝った、ウルフウッドとコルベールが仕掛けてきた捨て身の攻撃をしのぎきった。 賭けに勝利したのだ。ウルフウッドとコルベールの切り札はこの手にある。魔法を防ぐ手段を失った奴らを蹂躙することなど、たやすい。 「ファイヤーボール!」 ワルドの一瞬の気の緩みを逃さず、コルベールが炎の弾を放った。狙いは、デルフリンガーを掴んでいる風―― 「ちっ! しまった!」 炎の熱によって膨張した空気は精密なワルドの風の動きを乱す。ワルドの手元から滑り落ちるようにデルフリンガーが落下していく。 「エアニードル!」 とっさにワルドは落ちて行くデルフリンガーに魔法を放った。これを再びウルフウッドの手に渡すわけには、いかない。ウルフウッドとは反対の方向へ、デルフリンガーを飛ばす。 コルベールは体勢を低くして走りこむと、落ちて来たデルフリンガーを両手で抱え込むように受け止めた。 「おう! ありがとよ、頭の禿げた先生!」 「……もっと、ましな呼び方を考えてください」 デルフリンガーを抱いたまま、苦笑いを浮かべるコルベール。 「ちっ!」 ワルドは舌打ちをした。しかし、まだ天は彼を見放していない。 「よくやった、と言いたい所だが、その剣はガンダールヴでもない君が扱っても、魔法を吸収することは出来ない。徒労に終わったな!」 ワルドはコルベールとウルフウッドの間に挟まるようにして、コルベールに向かって杖を向ける。コルベールがウルフウッドにデルフリンガーを渡すのさえ、防げればいい。 コルベールはデルフリンガーを抱えたまま、ウルフウッドとは反対の方向へ走り出した。 「逃げても無駄だ!」 ワルドは余裕の笑みを浮かべて、コルベールを追う。コルベールはじっと空を見上げながら、必死の様相で逃げる。 そうやって走っていたコルベールだが、唐突にぴたりと足を止めた。そして、無言で空を見上げる。 「観念したのか? なら、今楽にしてやる!」 ワルドがまさに魔法を放たんとした、そのとき不意にコルベールが口を開いた。 「この位置、でいいですかね?」 「そやな」 コルベールの言葉にウルフウッドは短く応え、パニッシャーをワルドに向けた。 「何をやっている? 悪いが、風の防御壁は常に張られている。君の銃は効かない」 ワルドはウルフウッドを振り返って、憐れむようなあきれ返るような声を出した。コルベールに魔法を放つ瞬間に防御壁がなくなるなど、そんなことはない。 「そこで、なすすべもなく君の友人が殺される様でも見ていたまえ」 ウルフウッドを見たまま、ワルドはライトニングクラウドの詠唱を始める。 「センセ、ちいとばかし派手になるで? 巻き添え食わんようにな?」 「まがいなりにも私は火のメイジです。大丈夫ですよ」 コルベールが柔らかく笑って返す。 「貴様ら、何の話をして――」 「小さな攻撃を加えて、本チャンの攻撃から相手の気を逸らす。それはオンドレがラ・ロシェールで朝の決闘を仕掛けてきたときに、言うた言葉やで」 「なにを――」 そこで、ワルドは何かが自分の顔の横にあることに気が付いた。横目で見たその物体は、先ほど自分が避けたはずの…… 「すまんな。ホンマの狙いは、これや」 「キサマァー!」 ワルドの奇声のような悲鳴が発せられるのとほぼ同時に、ウルフウッドは引き金を引いた。紅蓮の炎が空に舞い上がる。 自らの真横でランチャー弾を炸裂させられたワルドは、なすすべもなく炎に飲み込まれた。 $ ワルドは小さくうめき声を上げた。全身が何かに刺されたかのように痛む。 「……満身創痍やな」 中に浮かぶワルドの姿を見て、ウルフウッドがぼそりと呟いた。 「く、くそ……」 先ほどの爆発の勢いで風竜は飛ばされてしまった。全身に火傷を負ったワルドは、それでもなんとかフライの呪文で空中に浮いている。 風の防御壁を張っていたおかげで直撃は免れたが、それでもダメージはあまりにも大きすぎた。彼の服は黒く焦げ、もとの色の判別すら難しいほどになっている。 「あきらめて投降してください。その傷では、もう戦闘は無理でしょう」 コルベールがワルドを諭す。しかし、ワルドは焼けた唇を思い切り歪ませた。 「くくく。万全を、期したつもりなのに、ここまでひどくやられるとは。甘かったよ。貴様ら一人一人なら葬り去れたものを」 話しながらワルドはゆっくりと空へと上がり始めた。 「逃げるつもりか、オンドレ!」 「逃げるつもり? 馬鹿を言うな。貴様らごときを相手に、この私が逃げるものか。君に切り札があったように、私にも、切り札が、あるのだよ」 ワルドは杖を振りかざした。そして、意識を集中する。すさまじい魔法力がワルドの体からほとばしる。 「あのドアホ、まだあんな力を残しとったんか……。センセ、デルフリンガーをワイに!」 ウルフウッドが右腕をコルベールに向けた。間髪いれずにコルベールもウルフウッドへデルフリンガーを投げてよこす。 「さすがはスクエアクラスのメイジですね……。あんな強力な魔法力を見たのは、初めてです」 コルベールが慎重に呟く。辺りの風がワルドに向かって集中していく。 「最後の悪あがき、いうヤツか。ただ、なんにせよ、それが魔法である限り、こいつで防いだるまでや」 ウルフウッドがデルフリンガーを構えた。左手のルーンが光り始める。 「……勘違いするな。確かに、今から私がやろうとしていることは、大きな魔法力を必要とするが、絶対に君では防ぎきれない」 乾いた声でワルドは言った。 「まさか、オンドレ……」 ウルフウッドの言葉にワルドはにやりと笑う。 「終わりだ。いくら不死身の貴様でも、これだけの質量に押しつぶされれば、元も子もあるまい!」 ワルドが杖を振るった。それと同時に、空に浮かぶレキシントン号がゆっくりとウルフウッドたちへ向かって、降下をし始めた。 「な、なんということを!」 コルベールが冷や汗と共に叫んだ。 「レキシントン号を落とさせたのは、君の手の内を見るためだけじゃない。こうして、君を確実に、殺す切り札にするためだ!」 「くそったれが!」 ワルドを撃ち落すべくウルフウッドはパニッシャーの弾丸をワルドへ向けて放つ。しかし、ワルドはすばやくレキシントン号の影に隠れてしまった。 「ちっ」 ウルフウッドは舌打ちをした。他のものならともかく、墜ちてくる戦艦を撃ち落すことは出来ない。確実なのは魔法を放っている人物を倒すことだが、こうして戦艦の陰に隠れられると、攻撃することすら出来ない。 「センセ! 逃げるんや! あの、ドアホ、ワイらを道連れにするつもりや!」 コルベールは皮肉な笑いを浮かべる。 「無理ですよ、ウルフウッド君。あれだけの質量を持ったものが墜ちたら、どれだけの破壊力になると思っているんですか? 今更、走って逃げたところで逃げ切れしません」 「なんやと……」 「まだ風石が残っている以上、今すぐ墜ちてくることはありませんが、あのワルドが風で操っている。逃げたところで私たちを追撃してくるでしょう。終わりです。……我々は、彼の執念に負けてしまいました」 冷めた表情でコルベールは空を見上げた。大きな影が彼を包んでいる。死を目の前にして、彼は思いのほか冷静だった。 煙を上げながら迫ってくる巨大な影を、ぼんやりと見つめていた。 $ 最初から勝ち目などなかった。まさにその通りだった。ワルドがあまりにも簡単にレキシントン号を撃墜させたことに、もっと疑問を感じるべきだった。 「すまんな。センセ。こんなことになってもうて」 「仕方がないですよ。むしろ、我々のような人間が誰かのために何かをしようとした、そのことを誇りましょう」 「お前も、すまんな」 「いいさ、相棒。どうせ今まで退屈してたんだからよー。最後の最後になかなか面白い目に会えたぜ」 ウルフウッドは静かに後悔する。コルベールは笑いながら空を見上げていた。それは満足しているようにも、あきらめているようにも見えた。 「どでかい戦艦の下敷きか。ろくでもない死に方やで、ほんま」 ウルフウッドはパニッシャーを墓標のように地面に突き刺した。あとは静かに神に祈るだけ―― 「ウルフウッド!」 聞き慣れた声がウルフウッドの耳に届いた。 それはこの世から消える前に、もう一度聞きたかった声であると同時に、絶対にこの場に巻き込むわけにはいかない人物が近くにいることを示していた。 「な、なにそんなところであきらめてるのよ! この馬鹿!」 「なっ……」 ウルフウッドが振り返ると、その胸にルイズが飛び込んできた。 「ルイズ!」 「ミス・ヴァリエール! あなた、なぜわざわざここへ来たのですか! あなたの隠れいていた森から走り去れば、あなただけでも逃げ切れたものを!」 「なぜ、ここへ出てきた!」 「見えたのよ! あんたが、こうなっているのが、わたしの目に!」 「見えた、て、このドアホ! 見るんやったら、この状況を見さらさんかい! お前まで――」 「うるさい!」 ウルフウッドの胸に顔をうずめたまま、ルイズは力強く叫んだ。 「知ってる? 使い魔の契約を切る方法。使い魔の契約、ってね。使い魔が死ぬか、メイジが死ぬかしないと、消えることはないの」 「それとお前がここにいることと何の関係があんねん!」 「使い魔の契約っていうのは、それほど強いものなの! 死が二人を分かつまで、離れることはないの!」 ルイズはウルフウッドのジャケットを強く強く握り締める。 「だから、だから、あんたを置いて、わたしだけ生きていくなんてことは出来ないの」 ウルフウッドは唇を噛み締めた。血が、彼の口を伝う。 「センセ。頼む。後生や。魔法でも何でもええ。なんとかして、じょうちゃんを安全なところへ。ところへやってくれ」 ウルフウッドはルイズの両肩を掴んで、ゆっくりと引き離す。 「ウルフウッド君……」 コルベールはウルフウッドの瞳を見つめる。 「いや!」 「アホ抜かすな!」 「だから、いや!」 「お前が、お前みたいなヤツが、なんでオレみたいな人間と一緒に死ななあかんのや! お前とオレは住んでいる世界が違う。全然違うんや」 「なにも違わなくなんかないわよ! あんたはあたしの使い魔で、それでわたしは――あんたの傍にいたいのよ。自分の意思で、ここで。 あんたにとっちゃ、わたしなんか何も出来ない足手まといのお荷物かもしれないけど、けど、それでも、ただ何も出来ないまま見ているだけなのはいやなの!」 ルイズは両手を握り締めて、涙を目にためながら叫んだ。 「阿呆が……」 ウルフウッドは力なく呟くと、ゆっくりと天を仰いだ。もう、レキシントン号は彼らのすぐ傍にまで迫っている。 「結局、一番守らなあかんもんが、守れへんかったか」 ここまで戦艦が迫れば、もうどうあがいてもルイズが逃げ出す術はない。ウルフウッドはあきらめたように、ふっと笑った。 「じょうちゃん、最期やから、アホなオンドレに、これだけは、はっきりと言うといたるわ」 「な、なによ」 ルイズは不機嫌さで不安を押し殺したような声を出した。 ウルフウッドはそんなルイズから目を逸らしたままで、素っ気無い仕草のまま口を開いた。 「……ありがとな」 ウルフウッドはルイズの頭をゆっくりと優しく撫でた。 ルイズは口を開けて何かを言おうとした。しかし、言葉にならない。心の中に、今まで感じた事のない、どこか暖かいものが湧き上がってくる。 「光っ……てる?」 ルイズの気持ちとまるで呼応するように、彼女が胸に抱いていた始祖の祈祷書と左手にはめた水のルビーが輝き始めた。 手に持った本のページがひとりでに開いた。 「なに、これ……」 何もないはずの白紙のページに、文字が見えた。いや、正確には違った。ルイズの意識に流れ込むようにして、そこに書かれている内容が入り込んできた。不思議な感覚だった。恐怖も何も、もう感じなかった。ただ、自分のやるべきことだけが、はっきりと分かった。 ルイズは杖を上へ向けて、目を閉じた。墜ちてくるレキシントン号はもう目と鼻の先に迫っていた。 「ルイズ……?」 ウルフウッドの声も届かないように、ルイズは一心に何かを唱えている。ウルフウッドはその声に不思議な安らぎと、安心感を感じた。 「呪文の詠唱? しかし、そんな詠唱は聞いたことがない……」 その様子をコルベールも呆然と眺める。 「なつかしーねえ。一体何年ぶりだろうな。これを聞くのは」 デルフリンガーがただ一人、感慨深げな声を上げる。 ルイズはすっと扉を開くように、その目を開いた。そして、ただ一言、呟く。 「エクスプロージョン」 その直後、白い強烈な光が辺りを包んだ。 前ページ次ページ虚無と狼の牙
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力在る者すべて(前編) ◆j893VYBPfU 緋と闇は交差する。 死の刃は交差する。 戦鬼達は交差する。 暗黒皇帝と呼ばれた赤い悪魔と、 漆黒の騎士と呼ばれた黒い死神。 ともに住まう大陸全土に巨大な厄災を撒き散らし、 屍山血河を築き上げた事で歴史に名を残した希代の梟雄達は、 何度となく擦れ違い様にその槍と斧を交えた。 両者の一撃が共に必殺の一撃。 一度その刃が身体を捉えれば魂まで吹き飛ばされる、 生命を根こそぎ刈り取る必滅の刃。 その処刑の刃を両者はすんでの所で躱し、 あるいは手にする得物で華麗に受け流す。 幾度もその斧が馬首を掠め、あるいはその豪奢な衣装に裂け目を入れる。 幾度もその槍が漆黒の装甲を掠め、いたる所が切り裂かれ、めくれ上がる。 その鋼と鋼が衝突する事で周囲に響き渡らせる耳障りな騒音は、 互いの得物が限界を訴える生命無き者達の苦痛の訴えのようにも、 眼前の獲物の血を吸える歓喜の咆哮にも聞こえた。 その異常極まる擦過音を聞くだけで、常人なら魂を砕かれてしまう事であろう。 だがしかし、その騒乱の中心人物達はその騒乱の中で心萎えるどころか、 その背に冷汗一つかくことさえなかった。 恐怖を抱かぬ理由には、己の技量における全幅の信頼も確かに存在する。 だが、それ以上に。 両者はともに、戦いに狂う悪鬼であり修羅なのだ。 常人ならぬ、人ならぬ戦鬼が、己が死など恐れようはずがない。 だが、その二人の心を占めるものは大きく違っていた。 心より歓喜し、この相剋を愉しみ抜くは黒い死神。 心より憎悪し、憤怒の形相を浮かべるは赤い悪魔。 互いに心身を極限にまで削り合いながら、 その両者の心の距離は決して縮まることはなく、 むしろ地平線の彼方にまで遠く掛け離れていた。 ◇ ◇ ――この男、一体何者なのだ? ハーディンは一命を賭して愛する者を愚弄された憤怒に身を灼きながらも、 目の前の不遜も極まる黒騎士に対して、沸きあがる疑念を抑え切れずにいた。 あの黒騎士は竿の長さを持つ諸刃の大斧を身体の後ろに構える。 マントを翻して背を前に向け、体幹でその得物を隠し歩幅を大きくとる。 そう、この構えなら良く知っている。 正確には、これは斧でなく剣で用いる構えなのだが。 それを無理やり斧でなぞっている感がある。 目の前の黒騎士の得物は剣を超える長さの戦斧だが、 その巨躯とマントは得物を覆い隠すには十分であった。 これはいわゆる“脇構え”に近く、極めて攻撃的かつ防御を考慮に入れぬ構え。 ――脇構え。 この構えには大きな利点と欠点がある。 まず利点としては、得物が完全に身体の幹に隠れてしまう為、 「その攻撃が敵手から見て得物の長さが分からなくなり、間合いを読み辛い」 「その攻撃が繰り出す直前まで、いつどこを狙ってやってくるか分かり辛い」 この二点に集約している。 そう。言わば抜刀術と同じなのである。 ただし、抜刀術はその構造上片手で剣を抜き打たねばならないため、 どうしても両手で剣を振るう事と比較すれば威力は目減りしてしまう。 そして片手で扱う以上、厚い装甲に覆われた部分や身体の硬い部位を両断する事は難しい。 さらに一度防がれてしまえば、片手で扱うが故に力負けしてしまう可能性も高い。 対して、脇構えはその身体で得物の長さを隠している点こそ同じだが、 最初から鞘から引き抜かれている分ロスタイムがさらに少なく、 両手で振るえる以上、その威力においても抜刀術を凌駕する。 たとえ防がれようとも、膂力に差があれば逆にそのまま押し切ることも可能。 それを完璧に防ごうとなれば、使い手に拮抗するだけの技量を持ち合わせた上で 最初から防御に身を固め、意識を集中する位しかないのだ。 だが、この構えには大きな欠点も存在する。 まずその構えの性質上、守勢に回れないという点にある。 己の後ろに得物が来る以上、相手と自分の間に遮るものが一切なく、 敵の攻撃をその得物で防ぐ事が困難となるのである。 相手の攻撃をどうしても躱そうとなれば、身を捻って避けるしかない。 先程の漆黒の騎士が回避をし損ねて不様に転がり回ったように、 敵に先手を許せば大きく隙を与え続ける事にもなりかねない。 まず、それが一点目の欠点。 その上、その構えからなる攻撃が全て弧を描かざるをえない以上、 直線的な刺突と比べればどうしても出遅れてしまうという点にある。 これは、構えの構造上避けられようがない。 これが二点目の欠点である。 それらの欠点を克服したいのであれば、相手のいかなる攻撃よりも速く、 己の攻撃をその身体に打ちこめるだけの技量がなければならない。 この構え、元より防御など考慮にないのだから。 つまり、己の攻撃に絶対の自信がある猛者か、自らの破滅さえ顧みぬ 命知らずの愚者でもなければ、この構えは決して取れないのだ。 果たして、漆黒の騎士はその両方の条件を兼ね備えていた。 そしてこの黒騎士は、かつて“草原の狼”とさえ呼ばれた比類なき騎手を 相手に巨大な戦斧を用い、攻撃偏重のこの構えで拮抗しているのである。 その実力は、もはや並大抵のものではない。 しかもこの構え、この局面においてはさらに優位となる点が一つある。 この黒騎士の戦斧による斬撃は必ずハーディンから見て“左側”からやってくるのだ。 右利きの騎兵にとって、“左側”とはすなわち“死角”である。 しかもこの黒騎士、必ず攻撃は“左側”に回り込んでくるのだ。 全ては騎兵の弱点を知った上での行動としか思えない。 大抵の場合、騎兵は右利きなら右で得物を握り、左で手綱か馬首を握る事になる。 その為、その足下から迫り来る攻撃を手に持つ得物にて防ごうとする場合、 前に来る馬首が邪魔となるためさらに見え辛くなる。 また、馬首から回り込んで左側に得物を繰り出すことなど出来ぬため、 どうしても攻撃や防御手段の限定を余儀なくされてしまう。 故に本来は左腕に騎士用の盾を固定して手綱を握り、その死角を補うのだが、 残念ながら今のハーディンはその盾を持ち合わせてはいない。 ならば必要に応じて左腕で得物を持ち変えれば良い、というわけでもない。 逆腕一本で敵の全力にて打ち込まれる高速の斬撃を凌ぎ切れる筈がないのだから。 攻撃を防ぐ盾がない以上、こちらも敵に合わせて両手で得物を持ち凌ぐしかない。 だが、そうなると当然手綱をまともに握れなくなり、落馬の危険性も増す。 無論、騎馬を普通に操るだけならハーディンの技量なら両足だけでも事足りる。 だが、これでは騎兵が持つ最大の強みである突撃蹂躙(ランスチャージ)が行い辛い。 突撃による剛槍を逃れれば蹄鉄でその背を蹂躙する、二段構えからなる騎兵最大の戦法が。 満足に手綱も握れぬ状態で最大速度で疾駆して歩兵相手に突撃しようものなら、 相手を轢き潰したはいいが自分までもがその馬背から投げ飛ばされる恐れが充分にある。 最大加速がそのままに、地面に叩きつけられるのだ。 そうなれば、打ち所と地面の硬度次第では生命にも関わるだろう。 その危険性を承知の上で、あえて距離を開け突撃を試みようと欲すれば、 件の黒騎士は「それを待ちわびていた」と言わんばかりに、 更に重心を低く持ち構え直えてくるのである。 己の死の恐怖も悲壮感も、微塵も感じさせず。 むしろ、そこには必勝の気迫さえ感じられる。 しかも、その殺気は常に軍馬と騎手の“両方”に向けられてくるのだ。 その滲み出る殺気に、怯えこそせぬものの軍馬までもが警戒の念を抱く。 不可解である。実に不可解である。 これは本来、虚勢と見なすべき所である。 だが、決してそうとは言い切れぬ形容し難い禍々しい何かを、 この黒騎士は感じさせるのだ。 軍馬の突撃にひるまず、その両者を斬るほどの刃など通常は存在しえない。 馬を斬るための武器は、首や胴を両断し、即死させるだけの膂力など只人には持ち合わせぬのだ。 そして、馬の突撃時に刃を出せば、手を出した腕が衝撃に耐えきれずへし折れてしまう。 さらにその一撃で息の根を止めなければ、斬られたままに突撃をする軍馬に蹂躙される恐れもある。 だからこそ、騎兵相手には機動力を奪い、混戦時に馬の脚を斬る事が上策とされるのだ。 一般に斬馬刀と呼ばれる大剣も、馬の脚狙いを前提に作られているがゆえに。 だが、万一。 だが、万一それだけの事が出来る刃を、 あの黒騎士がまだ隠し持っているならば? 動きは明らかにこちらに比肩し、騎兵の弱点を知り抜いた上での行動を取る。 そのような計算高い存在が、ここに来て“露見すればそれで最期”の無意味な虚勢など張るものだろうか? それもまた考えにくい。何か特別な仕込みがある可能性を警戒した方がいいだろう。 その形容し難い不気味さが、「長柄武器による騎馬突撃」への二の足を踏ませた。 そして、こちらが今出せる半端な速度の疾駆では、容易く躱されてしまうのだ。 あたかも暴走する猛牛(ロデオ)をいなす、闘技場の闘牛士(マタドール)のように。 こちらの強みを、騎兵の強みをほぼ封じられた形となっているのだ。 ここから連想される単語はただ一つ。 ――生粋の重装歩兵。 しかも、こちらと実力を等価、あるいはそれ以上とする程の。 だが、そこにまたもう一つの疑念が生じる。 黒騎士カミュはこの私と同じく騎兵だったはず? それが得意の得物ではなく、なおかつ彼の軍馬がこちらの手の中にある以上、 その真価は発揮しづらく倒すのは実に容易い。そのはずが。 あの小癪な黒騎士は己と相手の装備との差や構えの得失を最大限に活かし、 あるいは殺す最上の手段を取ってこちらに迫り来るのだ。 それは戦術眼とそれを行使し得る実力の二つがあって、初めて為せる技。 生粋の騎兵では不可能とまでは言わぬものの、 極めて厳しいものと言わざるを得ないだろう。 ――カミュではない? 疑念は膨れ上がるばかりである。 そう、確かにその実力だけならあの黒騎士カミュと等価…、 あるいはそれ以上の存在かもしれぬだろう。 だが、それ以上に不可解な点がある。 あの黒騎士の振るう刃には、英雄なら必ず持ち得る、 人々を魅せてやまない気品とも華ともいうべき “雅”というものが皆無なのである。 闇の波動とも、瘴気ともいえぬ全身を覆う 殺気を隠すことなくぶつける黒騎士のそれは、 人を斬ることを最大の目的としながらもその美しさで魅せる 名匠による“騎士剣(ナイトソード)”ではなく、 人をただ殺すことだけを追求し、忌まわしき結果のみを残す “断頭斧(ギロチンアクス)”を連想させた。 ありていに言えば、それは吟遊詩人が謳いたくなるような“絵にならぬ”のである。 それにはハーディンが激しく嫉妬し、追い求め、そして最後まで得られなかった優雅さは微塵もない。 むしろ、“暗黒皇帝”と呼ばれるこちらが戦慄の感情を抱くほどの禍々しさに満ち溢れていた。 ハーディンは闇のオーブによって増幅された負の感情により正常な思考を失いながらも、 その増幅された嫉妬のために現状を再認識しつつあった。 ――確かに、あの男はカミュではないかもしれぬ。 ――だが、それが何だと言うのだ? あの男はニーナを愚弄した。 あの男はニーナをその暴言にて辱めた。 あの男はニーナを得体の知れぬ赤毛の女にも劣ると、 傲然と言い放った。 それは許せぬ。 それは赦せぬ。 それは断じて看過出来ぬ。 あの男がカミュであろうとも、そうでなかろうとも。 たとえ神と世界が許そうとも、この私が許さぬ。 ニーナこそは、我が身命を賭して守り抜いた一輪の華であり、 我がその名の下で戦った主であり、半生の全てでもあったのだから。 その度し難い黒騎士の非礼と不敬に対し、このアカネイア皇帝が自ら処を下す。 判決、串刺しの刑――。 連座するは、赤毛の女。 ニーナがたとえこの私に心を向けなくとも、 ニーナがたとえカミュに心を奪われようとも、 ニーナがたとえ目の前の黒騎士を恋い焦がれていようとも、 それはすべからく極刑に処すべき大罪である。 騎士の風上にも置けぬ下郎を、生かす道理なし。 ハーディンは再び、人ならざる憤怒の咆哮を上げると、 漆黒の騎士に向けて突撃を再開した。 ◇ ◇ ――かなり、やる。 漆黒の騎士の思考は常軌を逸するものではあれど、 ハーディンとは対極に静謐であった。 初撃で馬の脚狙いと見せかけて 防ぎに来る武器落としを狙っていたが、 それはしかと両腕で支えた得物で防御された。 両腕で得物を持つ以上足場が不安定となるはずが、 得物を弾き飛ばされることも落馬することもなく、 目の前の騎手は見事に受け切ってみせる。 静止していれば斬撃の威力では得物の差でこちらが上である以上 こちらの弱点となる刺突を用いるのは当然の成り行き。 現に何度も行く手を阻まれ、回避にその身体を横に逸らせて躱せれば、 その回避に崩れた体勢を狙いさらに怒涛の追撃が迫る。 最後までこちらにその手を出させぬが上策とばかりに、 頭上から降り注ぐ槍による刺突と軍馬による踏み付けの嵐は執拗を極めた。 そしてどうにか槍と蹄鉄の豪雨を掻い潜り、隙を見て軍馬を狙えば、 騎手が命じるでもなく危機を察知して前脚で地を蹴り斬撃を躱し、 騎手に意識が集中して不用意に近づけば、 その蹄鉄で蹴り砕かんと前脚を叩きつけに来る。 まさに人馬一体。予想以上の手錬である。 こちら側に少しでも不利な介入があれば、即座に敗れ去るだろう。 それだけの、言わば極上の獲物。 先程の横槍を入れた存在が、極めつけの愚者であった事に心より感謝する。 己の装備の得失さえ弁えず、所構わず殺気をまき散らした存在でなければ、 あるいはその妨害に影響され、既に命を散らしていたのかもしれない。 相手は騎乗。男にダメージを与えるには、 まず馬から引き摺り落とす必要がある。 そして、それ以上に注意すべき点がある。 相手は“二人”、そしてこちらは“一人”なのである。 軍馬と騎兵の連携がうまくいかなければ付け入る隙はあったのだが、 目の前の敵手はまさに人馬一体。 軍馬はただ命令を待つだけの存在ではなかった。 主が獲物を狩るにあたり、絶好の環境を用意する難敵。 長引けば長引くほど、それは体力の差にも繋がるだろう。 たとえこちらが人間とはかけ離れた身体能力を持とうとも。 二対一である以上、最初からこちらが不利なのだ。 このままでは少しずつ嬲られ、いずれは打ち倒されるだろう。 膂力はこちらがやや上、速度は騎兵の向こうが大きく優る。 技量はほぼ等価。機動性は歩兵故こちらが上。 そして体力に付いては、向こうがはるかに凌駕する。 向こうの総合力を数字化すれば11から12、こちらは10。 漆黒の騎士は敵手と相手との実力差を、至極冷静に評価していた。 ――このままでは、確かに敗北する。 ――だが、勝機はある。苦しい相手ではあるが、戦術次第でこの状況は覆えせる。 そう。その前に戦場の常識すら覆す剣、いわば奥義とも言える術技――。 それさえ使う機会さえあれば、状況を覆し、まとめて一刀のもとに斬り捨てる事は可能だ。 使い方はすでにその心身が覚えており、斧においても試し斬りを済ませてある。 その奥義を振るうにあたり、何の支障もありはしない。 何時如何なる状況においても、腕一本あれば窮する事無く繰り出す事は可能であろう。 ただ、それはこちらが力を溜めるだけの、僅かな時間を手に入れる必要がある。 そして、その機は訪れる事を首長く待つものではなく、上手く引き摺り出す必要がある。 だが、こちらの奥の手は使う前から警戒されている。 それは、戦士としての本能が為せる業だろうか? 素晴らしいまでの勘の良さだといえる。 あの奥義が使えぬとならば、もし警戒されているのならば、 あるいは――。 漆黒の騎士は、もう一つの戦略を練り上げる。 いずれにせよ、相手をこちらが望む環境を作り出す必要がある。 幸いにも、目の前の騎手もまたこちらを攻めあぐね、 眼に見えて苛立ちを充満させている。 相手が完全に平静を失えばこちらの勝利。 相手が完全に平静を取り戻せばこちらの敗北。 布石は最初に打ってある。あとは完全に理性を奪えばいい。 相手の思考を奪い、あるいは誘導させ、 相手にこちらの欲する行動を取らせる必要がある。 こちらが万全の力を発揮できる環境を、 己一つで作り上げねばならない。 ――ならば。 勝機を奪い取るは、今ここを置いて他になし。 漆黒の騎士は迎え撃つ。己が勝利する為に。 ◇ ◇ さらに数合を交え、ハーディンは再び距離を取る。 静止したままで戦い続けては、小回りの利く重装歩兵のほうが有利であるが故に。 その隙に漆黒の騎士は甲冑を着ているとは思えぬほどの軽やかな身のこなしで 後方に跳躍し、大通りの中央を位置取る。 逃げ場はない。遮る存在もない。 民家の陰の路地裏に逃げる事も、一切の遮蔽物を使う事も出来ない。 漆黒の騎士はそこで再び脇構えの姿勢に戻り、目先で挑発する。 さあ、その軍馬による突撃蹂躙(ランスチャージ)を行えとばかりに。 ハーディンは警戒する。 確かに厄介な相手ではあるが、ここままでもこちらの優位は揺るぎ無い。 そして今の局面。相手にはやはり何かがある。 だが、わざわざ相手の手に乗る必要性はない。 あくまでもこの戦闘…。いや、この処刑の主導権はこのハーディンにあり、 あの黒騎士にはないのだ。それを知らしめる必要性がある。 ハーディンは無視を決め込み、これまで通りにもう一度刃を交わさんとする。 だが――。 『――諸君、これから第一回目の放送を始める』 ――だが、第三者の、決して無視できぬ存在の割り入る声により、 攻撃の手を一時休めざるをえなくなる。 時刻は、今が逢魔が刻。 神殿騎士ヴォルマルフによる、件の放送の声であるが故に。 こちらがどれほどの力を誇ろうとも、あの声だけは聞き逃してはならない。 件の首輪なる、忌々しい枷がこちに架せられたが故に。 対面する黒騎士も、この時ばかりは静止してただ声を待つ。 無論、戦闘態勢は解かぬままであったが。 そして、放送が始まる。 あくまでも事務的で淡々としたヴォルマルフの口調。 その内容からは、いかなる意志も読み取ることはできない。 だが、次の通達については、抑えきれぬ歓喜の感情が その声に明らかに含まれていた。 『続いて、ゲーム開始からこれまでの死者の発表をする。 ――アメル、オイゲン、シーダ、シノン、ティーエ、ナバール、ビジュ、ベルフラウ、マルス………』 漆黒の騎士はベルフラウの名に「ほぅ。」と短い関心の声を上げ、 ハーディンはその後に続く名に驚愕の声を張り上げる。 「……なん、だと?マルスが、あの小僧が既に殺されたとでも、そう言うのかッ!!」 ハーディンは天を睨み、咆哮する。 ―――マルス。マルス、マルス、マルス…。 マルスマルスマルスマルスマルスマルスマルス マルスマルスマルスマルスマルスマルスマルス マルスマルスマルスマルスマルスマルスマルス マルスマルスマルスマルスマルスマルス!!! たった一つの耳朶を打つその名前が、何度ともなくハーディンの脳裡を反芻する。 後の内容は聞こえなかった。いや、聞く意味さえもそこにはなかった。 ハーディンが嫉妬して、羨望してやまなかった相手が。 その手で直々に、最大の苦痛と絶望を与え処刑する前に…、 早々とどこの馬の骨ともしれぬ輩の手にかかり、 とうの昔に息絶えていたというのだ。 これほどの愚弄が、挫折感があろうものか? 「何故だッ!何故貴様はそんなつまらん所で命を落とすッ! 誰だ!一体誰がマルスを殺したというのだッ!!」 許せん…、断じて許せん! 我が最大の恐怖と苦痛を以て殺す前に、その生命を捨て逃げ去ったマルスが許せん! 我が無力と絶望を思い知らせる前に、そのマルスの生命を奪った何者かが許せん!! 「――殺すッ!全て殺すッ!!このハーディンが殺し尽くしてくれるわッ!」 全てを殺し尽くせば、いずれはマルスを殺した相手にも辿り着く。 ハーディンは怨敵を殺めた何者かを思い、怨嗟の声を張り上げる。 まだ見ぬ相手への憎悪を、闇のオーブにてさらに増幅された “それ”はもはや悪鬼と呼ぶに相応しい程の形相を浮かべていた。 だが、それには目の前の敵が邪魔だ。 あの黒騎士を手早く排除しなければならない。 あの黒騎士を――。 もはや常軌を逸したとしか思えない、どす黒い感情を所構わずまき散らすハーディンと、 静謐にある漆黒の騎士の視線が交差する。やがて、漆黒の騎士が口を開く。 「――ほう。貴殿はマルス殿を倒した相手を早急に探し出し、その手に掛けたいというのか?」 漆黒の騎士は、どこかしら愉しむような、嘲笑うような声色で問いかける。 「ならば、この村に長居は無用。今は早々に退くべきではないのか?」 撤退を提案する黒騎士。態度はあくまでもその不敵さを崩さない。 だが、そこにはこころなしか弱腰さが感じられた。 ――臆したか?それとも今までの態度もやはり虚勢によるか? ハーディンはここに来て消極的な言葉を発する漆黒の騎士に、侮蔑を露骨にする。 「アカネイアの“暗黒皇帝”が、罪人を眼前に退くなど有り得ると思うか?」 ――それに貴様は一つ忘れていることがある。 ニーナをその舌で愚弄した貴様ごときに。 ニーナをその口で辱めた貴様ごときに。 「なにより、貴様ごとき卑劣な間男の意見に、 このハーディンが耳を貸すことがあり得ると思うか? むしろ、ますますその逆がしたくなるというものだ。 貴様は逃さん。今、ここで死ね。 獲物の追跡は、その後にでも行う事にしよう。だが、案ずるな。 貴様と共にいた赤毛の女も、すぐ貴様の元に送ってやる!」 「……フッ。どうやら覚悟は出来ているようだな。 貴殿のこれまでの振る舞いから臆病を心配したが、 その手持ちの槍の使い方程度は弁えていたらしい。」 漆黒の騎士はさらに腰を深く落とす。 これまでのように、擦れ違いざまに左側に回り込り、 斬撃を加えるといった積もりは毛頭にないらしい。 ――この一合にて、決着を付けよう。それがこの幕だ。 口には出さずとも、その黒騎士の態度が雄弁に決着を促していた。 「いいだろう。貴様の挑発には乗ってやる。 今となっては、貴様ごときにくれてやる時間さえも惜しい!」 ハーディンはさらに距離を開け、体勢を整える。 左手で手綱を、そして右腕にグラディウスを支え構える。 騎兵が持つ最大の強みである突撃蹂躙の姿勢を取る。 裂帛の気合いを乗馬に乗せて、今ここに怒涛の突撃蹂躙を開始する。 黒騎士カミュの愛馬は、目の前の黒騎士を蹴散らさんがために駆ける。 迫り来る風を掻き分け、あるいは薙ぎ倒し、それは一つの暴走車と化す。 騎兵の突撃による槍の威力は、そのまま乗馬の加速度に比例する。 騎兵自身の力に加えて、乗馬の力がそのまま加算された魔槍。 その速度、その剛力はいかなる反撃を試みようが、押し返すことは不可能であろう。 目の前の存在は、何の脅威にもなりはしない。 そして万一その槍を受け流し、あるいは回避した所で。 そこには軍馬の蹄鉄による蹂躙が待ち受ける。 防御は不可能。そして回避も不可能。 残るは死、あるのみ。 標的まであと30歩、26歩、22歩――。 騎兵は駆ける。歩兵は迎え撃つ。 ハーディンは不意に唇を歪める。 そう、このままでも十分に眼前の黒騎士を蹴散らす事は可能だ。 だが、先程の事もある。念には念を入れさせて貰おう。 貴様の挑発には乗ったが、貴様の撃ち合いに応じた覚えなどない。 この処刑、主導権は貴様になどない。このハーディンにあるのだ! 標的まであと18歩、14歩、10歩――。 軍馬は疾走を続ける。ハーディンはグラディウスを持ち替え、頭上に構える。 そう。その槍で突くのではなく、投擲するつもりなのだ。その頭蓋に向けて。 グラディウスは、元より投擲にも適した万能の槍。 その威力は岩をも砕く。それがさらに軍馬による加速の力が上乗せされるのだ。 『その手持ちの槍の使い方程度は弁えていたらしい。』か――。 意図せずとはいえ、敵に塩を送るとはな。愚か者めッ!! 万一、眼前の黒騎士にこちらを斬るほどの“切り札”があった所で。 それを迫り来る槍を防ぐ為にまず使わねばならない。 あえて槍を受け、肉を切らせて骨を断つなど不可能。 この槍は防がねばその肉体を砕き、捻り潰すだけの破壊力を持つのだから。 そして投擲をその“切り札”で防いだ所で、軍馬の蹄鉄による蹂躙の嵐が待ち受ける。 槍を防ぎ体勢が崩れ無防備となった中で、もはや突撃を躱すことなど不可能。 いかなる切り札を持ち得ようとも、攻撃と防御はどちらか一度しか行えない。 そして、攻撃はこちらが先なのである。相討つことも有り得ない。 二段構えの、言わば必勝の戦法。 もし、あの漆黒の甲冑がまだ鎧としての防御力があるなら、 たとえ蹄鉄の蹂躙を受けようとも生き残る可能性だけはある。 だが、先ほどの立ち合いで知ったが、あの鎧は一切の防御力を持ち合わせてはいない。 ならば最大加速の付いた軍馬の蹂躙に生き残る術なし。 なぜそのような張りぼてを身に纏っているのか、 理解には苦しむがこちらには関係はない。 こちらはただ投げ穿ち、あるいは踏み拉けばよい。 それでこの黒騎士は処刑される。そこで終わりだ。 こちらが構えを変えた意図を察し、黒騎士に焦りが出たのか。 それともその怒涛の突撃の前に判断を誤ったのか? その斧を振るうにはあまりにも早すぎる機で攻撃動作が開始される。 だがその一撃は、軍馬を掠めることはおろか、 これから投擲される槍を撃ち落とすにした所で早すぎる。 それはただの空振りに終わり、全ては無為と帰すだろう。 …フン、つまらぬ。 先程までの態度は、やはり虚勢ではあったか。 それとも、突撃に肝を潰し目測を誤ったか? いずれにせよ、取るに足らぬ小物だという事か。 ――貴様はここで、死ね。貴様が何者であろうとも、ニーナを愚弄した報いを受けるのだ。 腰を浮かせ、投擲動作を開始する。 その槍は空気を切り裂く異常な唸り声を挙げ眼前の黒騎士は反応すらも許されず 兜を割り頭蓋から派手に脳漿と鮮血を撒き散らしつつも構わずさらに軍馬による 追い討ちを仕掛けその死体はボロ雑巾のように原型を留めず辺りにかつて黒騎士 だったものの装甲の破片と肉片を血臭を盛大に周囲に撒き散らしその死体から 首を切り離して勝鬨の声を上げることには……、決してならなかった。 おそらくそれはハーディンが想像した未来予想図ではあったが、現実は大きく違っていた。 ――暗転、飛翔、驚愕。 だしぬけに視界が回る。身体が浮く。 軍馬から勢い良く、重量あるものが射出される。 ただし、その軍馬から投げ出されたものは、グラディウスだけではなく、 それを握ったままのハーディン本人をも含まれていた。 まるでそれは投石機から打ち出されたかのような見事な放物線を描き―。 高速で空中に投げ出されたハーディンの視界の片隅に映ったものは、 得物を持たぬ漆黒の騎士と、その目の前で倒れ伏す軍馬。 ――激突、擦過、悶絶。 受け身すら取る事が出来ず、勢いが付いたまま顔面から地面に衝突する。 顔が砂利によって大きく擦り剥かれ、顔面の皮が削り取られる。 全ての衝撃が顔面から首、そして右肩に与えられ、 周囲に生物の本能に訴えかける、実に不快な死の音色を響かせる。 闇のオーブによって高められた精神力によってすら抑えきれない、 悶え苦しまんばかりの激痛。手負いの獣は、おぞましい苦痛の咆哮を上げる。 首から痛覚が、右肩からの違和感が、その肉体的損傷が深刻なものであると訴える。 常人であれば、頚骨が折れ既に死亡していたのは間違いない。 だが、これまでに鍛え抜いた全身の筋肉があればこそ、 落馬の衝撃を致死に至らぬ程度に和らげていた。 顔の皮の右半分が捲れ鮮血を流し、首が曲がりかけ、右肩は下がり、その有様はさながらに敗残兵。 ただし、闘争心は未だ萎えることなく、殺意を更に燃え上がらせたその形相はまごう事無く悪鬼。 赤い悪魔は不屈の闘志と、傷つけられた憎悪に背中を押され、今再び立ち上がる。 091 星に願いを 投下順 092 力在る者すべて(後編) 091 星に願いを 時系列順 092 力在る者すべて(後編) 057 死闘 漆黒の騎士 092 力在る者すべて(後編) 057 死闘 ハーディン 092 力在る者すべて(後編)
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+ksk 【緑黒ロック】 ksk 【緑黒ロック】 メインボード クリーチャー23枚 1 《巣の侵略者/Nest Invader》 4 《森のレインジャー/Sylvan Ranger》 2 《死者のインプ/Cadaver Imp》 4 《リリアナの死霊/Liliana s Specter》 3 《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》 2 《吸血鬼の夜鷲/Vampire Nighthawk》 3 《裏切り者グリッサ/Glissa, the Traitor》 4 《酸のスライム/Acidic Slime》 スペル13枚 4 《強迫/Duress》 2 《起源の波/Genesis Wave》 3 《迫撃鞘/Mortarpod》 4 《ミミックの大桶/Mimic Vat》 土地24枚 11 《森/Forest》 13 《沼/Swamp》 サイドボード 2 《ヴィリジアンの堕落者/Viridian Corrupter》 2 《シルヴォクの模造品/Sylvok Replica》 1 《皮裂き/Skinrender》 2 《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》 4 《記憶殺し/Memoricide》 4 《凶運の彫像/Jinxed Idol》 +jhovall 【白単トークン】 jhovall 【白単トークン】 メインボード クリーチャー11枚 4 《エメリアの天使/Emeria Angel》 4 《先駆のゴーレム/Precursor Golem》 3 《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》 スペル25枚 4 《白の太陽の頂点/White Sun s Zenith》 4 《生き残りの隠し場所/Survival Cache》 4 《ファイレクシアの再誕/Phyrexian Rebirth》 3 《未達への旅/Journey to Nowhere》 2 《司令官の頌歌/Marshal s Anthem》 4 《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》 4 《太陽の宝球/Sphere of the Suns》 土地24枚 14 《平地/Plains》 2 《惑いの迷路/Mystifying Maze》 4 《カビーラの交差路/Kabira Crossroads》 4 《微光地/Glimmerpost》 サイドボード 3 《沈黙/Silence》 3 《神への捧げ物/Divine Offering》 4 《光輝王の昇天/Luminarch Ascension》 2 《神聖の力線/Leyline of Sanctity》 3 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 +夜狐の子 【チャンドラデックウィンなう】 夜狐の子 【チャンドラデックウィンなう】 メインボード クリーチャー7枚 3 《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper》 3 《ニューロックの猛士/Neurok Commando》 1 《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》 スペル27枚 4 《稲妻/Lightning Bolt》 1 《剥奪/Deprive》 2 《乱動への突入/Into the Roil》 4 《マナ漏出/Mana Leak》 1 《青の太陽の頂点/Blue Sun s Zenith》 1 《取り消し/Cancel》 1 《冷静な反論/Stoic Rebuttal》 4 《定業/Preordain》 4 《電弧の痕跡/Arc Trail》 1 《決断の手綱/Volition Reins》 4 《チャンドラ・ナラー/Chandra Nalaar》 土地26枚 11 《島/Island》 7 《山/Mountain》 2 《進化する未開地/Evolving Wilds》 2 《地盤の際/Tectonic Edge》 4 《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》 サイドボード 2 《躁の蛮人/Manic Vandal》 1 《オキシダの屑鉄溶かし/Oxidda Scrapmelter》 1 《粉砕/Shatter》 2 《否認/Negate》 2 《紅蓮地獄/Pyroclasm》 1 《精神の制御/Mind Control》 3 《脆い彫像/Brittle Effigy》 3 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 +素湯 【青白コントロール】 素湯 【青白コントロール】 メインボード クリーチャー11枚 3 《コーの奉納者/Kor Sanctifiers》 4 《エメリアの天使/Emeria Angel》 2 《失われた真実のスフィンクス/Sphinx of Lost Truths》 2 《太陽破の天使/Sunblast Angel》 スペル23枚 4 《マナ漏出/Mana Leak》 2 《乱動への突入/Into the Roil》 2 《青の太陽の頂点/Blue Sun s Zenith》 2 《白の太陽の頂点/White Sun s Zenith》 2 《ファイレクシアの再誕/Phyrexian Rebirth》 4 《未達への旅/Journey to Nowhere》 4 《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》 3 《伝染病の留め金/Contagion Clasp》 土地26枚 4 《平地/Plains》 3 《島/Island》 4 《地盤の際/Tectonic Edge》 3 《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》 4 《氷河の城砦/Glacial Fortress》 4 《金属海の沿岸/Seachrome Coast》 4 《セジーリの隠れ家/Sejiri Refuge》 サイドボード 2 《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》 3 《天界の粛清/Celestial Purge》 3 《瞬間凍結/Flashfreeze》 3 《存在の破棄/Revoke Existence》 4 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 +あきつ 【白緑ライフゲイン】 あきつ 【白緑ライフゲイン】 メインボード クリーチャー22枚 4 《セラの高位僧/Serra Ascendant》 4 《魂の従者/Soul s Attendant》 4 《アジャニの群れ仲間/Ajani s Pridemate》 4 《戦隊の鷹/Squadron Hawk》 2 《孤独な宣教師/Lone Missionary》 4 《巣の侵略者/Nest Invader》 スペル16枚 4 《精霊への挑戦/Brave the Elements》 3 《神への捧げ物/Divine Offering》 4 《生き残りの隠し場所/Survival Cache》 3 《活力の力線/Leyline of Vitality》 2 《迫撃鞘/Mortarpod》 土地22枚 3 《森/Forest》 7 《平地/Plains》 4 《カビーラの交差路/Kabira Crossroads》 4 《灰色革の隠れ家/Graypelt Refuge》 4 《剃刀境の茂み/Razorverge Thicket》 サイドボード 3 《秋の帳/Autumn s Veil》 2 《真面目な捧げ物/Solemn Offering》 4 《未達への旅/Journey to Nowhere》 2 《神聖の力線/Leyline of Sanctity》 1 《迫撃鞘/Mortarpod》 3 《ミミックの大桶/Mimic Vat》 +平成の森田 【バッタをゴキブリにする物語】 平成の森田 【バッタをゴキブリにする物語】 メインボード クリーチャー4枚 4 《ダークスティールの歩哨/Darksteel Sentinel》 スペル32枚 4 《乱動への突入/Into the Roil》 4 《マナ漏出/Mana Leak》 4 《取り消し/Cancel》 4 《冷静な反論/Stoic Rebuttal》 2 《青の太陽の頂点/Blue Sun s Zenith》 4 《ジェイスの創意/Jace s Ingenuity》 4 《定業/Preordain》 2 《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》 4 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 土地24枚 23 《島/Island》 1 《惑いの迷路/Mystifying Maze》 サイドボード 2 《クラーケンの幼子/Kraken Hatchling》 4 《否認/Negate》 2 《移し変え/Redirect》 2 《睡眠発作/Narcolepsy》 3 《堕落した良心/Corrupted Conscience》 2 《決断の手綱/Volition Reins》 +灰汁 【ヤッテランデス】 灰汁 【ヤッテランデス】 メインボード クリーチャー17枚 3 《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》 2 《躁の蛮人/Manic Vandal》 4 《ヴィリジアンの堕落者/Viridian Corrupter》 2 《シルヴォクの模造品/Sylvok Replica》 4 《酸のスライム/Acidic Slime》 2 《蔵製錬のドラゴン/Hoard-Smelter Dragon》 スペル20枚 4 《圧壊/Crush》 1 《自然の要求/Nature s Claim》 1 《火の玉/Fireball》 4 《古きものの活性/Ancient Stirrings》 2 《地割れの孔/Fissure Vent》 4 《液鋼の塗膜/Liquimetal Coating》 2 《ミミックの大桶/Mimic Vat》 2 《水晶球/Crystal Ball》 土地23枚 8 《森/Forest》 11 《山/Mountain》 4 《銅線の地溝/Copperline Gorge》 サイドボード 2 《躁の蛮人/Manic Vandal》 2 《シルヴォクの模造品/Sylvok Replica》 3 《稲妻/Lightning Bolt》 2 《電弧の痕跡/Arc Trail》 4 《紅蓮地獄/Pyroclasm》 2 《ヴィリジアンのお祭り騒ぎ/Viridian Revel》 +浅田 【夢いっぱいつまってる】 浅田 【夢いっぱいつまってる】 メインボード クリーチャー16枚 4 《大建築家/Grand Architect》 3 《宝物の魔道士/Treasure Mage》 2 《粗石の魔道士/Trinket Mage》 4 《先駆のゴーレム/Precursor Golem》 1 《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》 2 《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》 スペル20枚 3 《よじれた映像/Twisted Image》 4 《マナ漏出/Mana Leak》 2 《複製の儀式/Rite of Replication》 3 《定業/Preordain》 2 《決断の手綱/Volition Reins》 4 《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》 2 《脆い彫像/Brittle Effigy》 土地24枚 19 《島/Island》 1 《惑いの迷路/Mystifying Maze》 4 《地盤の際/Tectonic Edge》 サイドボード 1 《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》 4 《否認/Negate》 2 《乱動への突入/Into the Roil》 2 《青の太陽の頂点/Blue Sun s Zenith》 4 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 2 《伝染病エンジン/Contagion Engine》 +瀬戸 【青白ブリンクコントロール】 瀬戸 【青白ブリンクコントロール】 メインボード クリーチャー17枚 4 《前兆の壁/Wall of Omens》 4 《海門の神官/Sea Gate Oracle》 3 《微光角の鹿/Glimmerpoint Stag》 3 《失われた真実のスフィンクス/Sphinx of Lost Truths》 3 《太陽破の天使/Sunblast Angel》 スペル17枚 2 《乱動への突入/Into the Roil》 4 《マナ漏出/Mana Leak》 2 《冷静な反論/Stoic Rebuttal》 4 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 2 《ミミックの大桶/Mimic Vat》 3 《転倒の磁石/Tumble Magnet》 土地26枚 8 《島/Island》 6 《平地/Plains》 2 《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》 4 《氷河の城砦/Glacial Fortress》 4 《セジーリの隠れ家/Sejiri Refuge》 2 《惑いの迷路/Mystifying Maze》 サイドボード 3 《糾弾/Condemn》 3 《払拭/Dispel》 3 《神への捧げ物/Divine Offering》 3 《未達への旅/Journey to Nowhere》 3 《神聖の力線/Leyline of Sanctity》 +うぴー 【Seven Mage】 うぴー 【Seven Mage】 メインボード クリーチャー22枚 2 《謎鍛冶/Riddlesmith》 4 《鋼の監視者/Steel Overseer》 4 《大建築家/Grand Architect》 4 《宝物の魔道士/Treasure Mage》 3 《粗石の魔道士/Trinket Mage》 1 《飛行機械の組立工/Thopter Assembly》 3 《トリスケリオン/Triskelion》 1 《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》 スペル15枚 2 《鋼の妨害/Steel Sabotage》 2 《乱動への突入/Into the Roil》 1 《キマイラ的大群/Chimeric Mass》 4 《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》 1 《脆い彫像/Brittle Effigy》 1 《通電式キー/Voltaic Key》 2 《伝染病の留め金/Contagion Clasp》 2 《伝染病エンジン/Contagion Engine》 土地23枚 20 《島/Island》 3 《地盤の際/Tectonic Edge》 サイドボード 2 《鋼の妨害/Steel Sabotage》 3 《瞬間凍結/Flashfreeze》 2 《乱動への突入/Into the Roil》 1 《脆い彫像/Brittle Effigy》 1 《猛火の松明/Blazing Torch》 1 《不死の霊薬/Elixir of Immortality》 4 《危険なマイア/Perilous Myr》 1 《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》 +ドロスバッタ【青赤ヴァラクートコントロール】 ドロスバッタ【青赤ヴァラクートコントロール】 メインボード クリーチャー5枚 3 《粗石の魔道士/Trinket Mage》 2 《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》 スペル28枚 4 《稲妻/Lightning Bolt》 4 《マナ漏出/Mana Leak》 4 《否認/Negate》 1 《冷静な反論/Stoic Rebuttal》 2 《ジェイスの創意/Jace s Ingenuity》 4 《連鎖反応/Chain Reaction》 2 《予感/Foresee》 1 《キマイラ的大群/Chimeric Mass》 2 《脆い彫像/Brittle Effigy》 1 《不死の霊薬/Elixir of Immortality》 1 《探検の地図/Expedition Map》 2 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 土地27枚 4 《島/Island》 12 《山/Mountain》 4 《進化する未開地/Evolving Wilds》 4 《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》 3 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle》 サイドボード 4 《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》 3 《髑髏砕き峡の王/Lord of Shatterskull Pass》 2 《剥奪/Deprive》 2 《核への投入/Into the Core》 3 《紅蓮地獄/Pyroclasm》 1 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 +忠吉 【落とし子48】 忠吉 【落とし子48】 メインボード クリーチャー20枚 4 《巣の侵略者/Nest Invader》 4 《海門の神官/Sea Gate Oracle》 4 《コジレックの捕食者/Kozilek s Predator》 3 《先駆のゴーレム/Precursor Golem》 3 《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》 2 《テラストドン/Terastodon》 スペル14枚 2 《よじれた映像/Twisted Image》 3 《成長の発作/Growth Spasm》 4 《集団変身/Mass Polymorph》 1 《獣使いの昇天/Beastmaster Ascension》 4 《迫撃鞘/Mortarpod》 土地26枚 10 《島/Island》 8 《森/Forest》 4 《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》 4 《カルニの庭/Khalni Garden》 サイドボード 3 《強情なベイロス/Obstinate Baloth》 3 《酸のスライム/Acidic Slime》 3 《ガイアの復讐者/Gaea s Revenge》 4 《マナ漏出/Mana Leak》 2 《堕落した良心/Corrupted Conscience》 +おまけ 総採用数(サイド含む) 基本地形 カード名 総数 採用人数 《島/Island》 98 8 《平地/Plains》 31 4 《森/Forest》 30 4 《山/Mountain》 30 3 《沼/Swamp》 13 1 特殊地形 カード名 総数 採用人数 《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》 17 5 《地盤の際/Tectonic Edge》 13 4 《カビーラの交差路/Kabira Crossroads》 8 4 《セジーリの隠れ家/Sejiri Refuge》 8 2 《氷河の城砦/Glacial Fortress》 8 2 《惑いの迷路/Mystifying Maze》 6 3 《進化する未開地/Evolving Wilds》 6 2 《カルニの庭/Khalni Garden》 4 1 《灰色革の隠れ家/Graypelt Refuge》 4 1 《金属海の沿岸/Seachrome Coast》 4 1 《剃刀境の茂み/Razorverge Thicket》 4 1 《銅線の地溝/Copperline Gorge》 4 1 《微光地/Glimmerpost》 4 1 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle》 3 1 クリーチャー カード名 総数 採用人数 《酸のスライム/Acidic Slime》 11 3 《先駆のゴーレム/Precursor Golem》 11 3 《マイアの戦闘球/Myr Battlesphere》 9 4 《巣の侵略者/Nest Invader》 9 3 《エメリアの天使/Emeria Angel》 8 2 《海門の神官/Sea Gate Oracle》 8 2 《大建築家/Grand Architect》 8 2 《粗石の魔道士/Trinket Mage》 8 3 《宝物の魔道士/Treasure Mage》 7 2 《躁の蛮人/Manic Vandal》 6 3 《シルヴォクの模造品/Sylvok Replica》 6 2 スペル カード名 総数 採用人数 《マナ漏出/Mana Leak》 28 7 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》 25 8 《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》 18 5 《乱動への突入/Into the Roil》 16 6 《否認/Negate》 14 4 《未達への旅/Journey to Nowhere》 14 4 《ミミックの大桶/Mimic Vat》 11 4 《稲妻/Lightning Bolt》 11 3 《定業/Preordain》 11 3 《迫撃鞘/Mortarpod》 10 4
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それで話が済めばよかったのだ。 だが、毛利にも南蛮宗教にも近寄らずに生きたい元親の願いは、 たった十日ほどで破れた。 最初は毎日毎日届く、ザビー教勧誘の文や入信の手引き書だった。 当然読みもせずにぽいぽい棄てた。 効果がないことが解ったのか、ザビー教は強硬手段に出始めた。 「アニキ!食料庫の中身が腐ったイカにすり替えられました!」 「焼き払え!」 「アニキィッ!ザビー教の宣教師が乗った小舟が四国の周りを埋め尽くしてますぜ!」 「薙ぎ払えっ!」 「アニキィー!木騎にザビー教の印が付けられちまったぁ!」 「何ぃぃぃぃっ!やって良いことと悪いことがあんだろが! ……もう俺は我慢できねえ。野郎ども!」 元親は碇槍を手に立ち上がった。 大体ザビー教団が煩くするせいで、辟易したオウムの鳥親が遊びに出てしまった。 鳥親が一月や二月の間外泊することなど珍しくもないが、 今回は南蛮宗教のせいだと思えば、いい加減腹に据えかねる。 「出航だ!」 「アニキ――――ッ!」 四国の海と空に、野郎どもの歓呼が響く。 そこまで話すと喉が渇いた。しゃべり通しだ。 ちなみに目が覚めたヤツを引っ張ってやる義理はねえ、こいつは農耕馬じゃないんだぜと 素直じゃない言葉を投げられ、元親は戒めを解かれた上馬を与えられた。 どういう扱いか普通なら困るところだが、元親はありがとな、の一言で済ませていた。 そして独眼竜がha、と呆れたように笑った。 「で、アンタ負けたのか」 「何でだよ」 「ケリつけに出たんだろ?」 独眼竜が不可解そうに眉根を寄せ、ひょいと竹筒を放った。 青い香りの移った清水を一口のみ、元親はああん、と肩をそびやかせた。 「あんなおっかねぇのが居る城、二度と行くか!俺は新天地を探しに来たんだ! 昔ッから逃亡者が向かうのは北、恋に破れたヤツが行くのも北、って決まってんだよ」 威張って胸を張ると、自分よりも頭半分ほど小さい独断竜は もの凄く何かを言いたそうにした。 何だよ、と聞けば首を振る。 「いや、いい。ここで帰らすわけにいかねぇだろ」 もう、城は目前、今は城下の街並みのなか。 「おうよ。こっちもどっかで食料仕入れなくちゃならねえんだ。 聞けよ独眼竜!船出したと思ったらなあ、船の食料が全部オクラにすり替えられてたんだぜ!?」 独眼竜は明らかに聞く気がなかった。 「いいじゃねぇか、船の中じゃ青物は不足しがちだろ? あんなもん下ゆでしなくても食えることは食えるんだ、元親に似合いの楽な食材だ」 「おいおい、俺が釣った魚とオクラだけで航海するほうの身にもなりやがれってんだ。 第一あのオクラ怪し過ぎんだよ、何日航海してもくさらねえわ、 食っても食ってもへらねえわ…… 最後の方じゃ子分達が食料庫に近づくのも嫌がったんだぜ? 肌は綺麗になったけどよう」 気色の悪い体験を愚痴ったが、適当な返事すら返らなかった。 政宗の注意が、別の場所に向いている。 視線の先を追う。誰もいない……いや、遠く声が聞こえる。 やがて馬蹄の響きが声に重なる。 独眼竜が笑う。 それは戦場で浮かべる凶悪な笑みではなく、元親は口をひん曲げた。 こちらに向かう馬の鞍に……またがるのではなく乗った、赤い姿。 「おいおい……」 呆れかえるが、同時に軽い既視感も覚える。 「政宗殿ぉぉぉっ!家臣一同、帰還をお待ち申し上げておりましたぞ!」 赤い侍は鞍の上にすっくと立ち上がる。 疾走する馬の勢いは変わらない。珍妙ながら、かなり馬の扱いに長けている。 「オイ政宗!ぶつか……」 自分の馬の手綱を引いて馬足を緩めたが、政宗は逆に速度を上げる。 城下の住民は慣れた様子で遠巻きにしている。 「待たせたな!」 独眼竜は鐙に力をこめ、腰を浮かせた。 「いざいざいざああぁぁぁっ」 「Ya――Ha――――ッ!」 青と赤の騎馬が交錯する。 うわっちゃあ、と元親は顔を覆った。 政宗の腕がどれだけ立つかはよく知っている。 一撃だな、一撃。 溜息をついたが、絶叫も断末魔も聞こえなければ血の匂いもしなかった。 顔を覆った手を退け、顔を上げる。 「あぁん?……何やってんだお前ら」 元親の少し先には、主の居ない馬一頭。疾走に疲れた様子で緩く歩み、ぶるる、と鳴いた。 うる☆オクラ10