約 27,085 件
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/88.html
廃嫡訴状 原告 [甲野太郎] 被告 [甲野一郎] 訴的及申立 被告を廃嫡す 請求の原因 被告は明治二十九年生れの被告長男にして其法定の推定家督相続人なるが被告は左の理由により其廃嫡を請求す 一 原告は家に巨萬の富を積まずと雖も人に一文の借財もなく無産階級に属する「ブリキ」職人としては毎日第一流の生活を営むものなり 二 被告は所謂大杉一派に属する危険人物にして之を以て寧ろ名誉と心得、日本特有の家族制度の如きは更に之を尊信せす、従て又其家名の重んずべく家督相続の有り難きを知らず、反て常に之を嘲笑し軽視す 三 被告は又職としてブリキ工にてあり乍ら其身分を忘れて、初めは文学今は又労働運動に熱中し之を天職と心得人職を等閑に付す 四 被告は自ら進んで其廃嫡を希望し被告を狂人視する親族一同も悉く之に賛成し所轄警察も亦之を原告に慫慂せり、加之被告の廃嫡により原告の法定推定家督相続人となるべき被告と最も親善の間柄なる原告の次男たる被告の実弟も亦之に同意したれば被告の廃嫡により損害を蒙り不平を唱ふる者恐らく天下に一人だもなし 五 被告が原告の法定の推定家督相続人たる間は直接間接に原告の得意及収入を減少し、心配及苦労を増大するが故に原告に取つては被告を此儘にして置く事は結局衛生上にも大害あり 六 被告が廃嫡となるときは直ちに分家の上自働自活すべき協議纏まり居るを以て、本訴の認容せらるる上は一朝事あるときと雖も[甲野太郎]長男[一郎]として新聞記事等に顕るる虞れなければ、被告の為め原告家は其家名を汚さるる事なく被告も亦自働自活の結果止むを得ず漸次穏健保守の徳を樹つるに至るべし 大正八年十一月二十一日 右 原告代理人 山崎今朝彌 東京地方裁判所 御中 <[ ]内仮名> <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/138.html
大正十年十一月十日印刷 大正十年十一月十八日発行 弁護士大安売 定価壱円八拾銭 著者 山崎今朝彌 東京市牛込区横寺町四十三番地 発行者 後藤誠雄 東京市本郷区湯島五丁目四番地 印刷者 佐藤三郎 東京市牛込区横寺町四十三番地 版元 聚英閣 振替東京四七八六九番 電話番町四六二番
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/273.html
巻頭言 山崎今朝彌 変転は進転である、(マルクス)。進展は発展である、(レニン)。昨年来連続的急激的尖鋭的に、発展に発展を重ね初めた本誌は、最近最後の一時的安定以来、不安定ながらも既に四ケ月の安定を保ち、今や再び又々最後の発展過程を過程すべき段階に到達した。 本誌は今後毎月二回一日発行とし、一回は菊判三百頁以上で(定価金参拾銭)一回は四六判二百五十頁以上(定価金五拾銭)で、法律上の編集兼発行人が少しも人手を借らず全く独力で、事実上編集発行原則を特色とする。前者は之れを大「解放」と称し全く雑誌的、後者は人之れを呼んで小「解放」と称し殆んど半ば書籍的である。 菊判三百頁四六判二百五十頁は原稿紙にして約千五百枚である。特に忙しい仕事のホンの片手間に毎月一人で千五百枚は聊か難事であるが、出来さうにない事を何とか工夫する事も亦楽しみである。兎に角セメテ半年なりともヤツテ見たい又ヤルであらふ。が、しかし、従つて、一部の人からは温故知新も通り越し反古紙屑も同様だとの非難を受くるものもあるであらう。 ◇ 外資輸入、御用書肆、赤化宣伝、秘密出版、禁書公刊、売国叢書等々の称ある「解放群書」(定価壱円送代拾銭)は、其の悪宣伝逆宣伝を一蹴して今後益々馬力をかける。 解放社「宣伝用書」(定価半円送代拾銭)は蓋し解放群書(禁止絶版を除く)の廉価半額版である。十二月限りの提供であつたが、本誌読者には無条件で一月二十日まで期限を延長する。 ◇ 終りに謹んで新年を賀し併せて暑中御見舞まで。 (一月一日付にて十二月一日) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『解放』(解放社)第7巻1号5頁(昭和3年(1928年)1月1日発行)>
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/74.html
尾行事件の保釈願 傷害被告 大杉 栄 右被告は右事件にて昨日拘禁の身と相成候、然る処 (一)本件は時節柄、警視庁が無政府主義者なる被告を検挙せんと欲して苦心再三、種々の罪名を付し数回の告発に及びたるも、公明正大なる検事局の御取調にて其都度痛快に釈放せられ、警視庁が一時に天下の嗤笑を買ひ侮蔑を集めたる結果、其名誉回復に漸く探し当てたる、其昔一度千葉に於て手を着け不検挙其儘となり居たる犯罪に有之候 (二)従て被告は本件に就ては逐一終始、犯罪事実を自白致し今後も毛頭変る処無之候 (三)故に被告は警視庁の手先に非ざる裁判所が何故被告を拘禁するか其理を解し能はざる次第に有之候 (四)特に被告は今月中に明渡す約束を以て現在宅を賃借致し居り候故(此住宅こそ警視庁が曩に被告を家宅侵入なりとして検挙し直に馬脚を顕したる件のものに有之候)若し此儘拘禁を継続せらるるに於ては、被告は勿論被告の妻子は当然明渡を為し得ざるのみならず、或は家賃を支払ふ事も能はずして永く住居するに至り警視庁は又しても先例を重んじて被告に対し家賃詐欺の告発を為すやも図られず、被告や妻子は兎に角家主に対して誠に申訳なき事と相成らずやと其れのみ心配致し居候 要するに被告は之れ敷の事に逃げも匿れもせず、又虚言も申上げず且つ右借家整理の必要も有之候へば何卒至急保釈許可相成度、保証金の儀は何萬円なりとも立所に出来申さず候へ共、金百円以下の範囲に候へば必らず納入仕るべく候 大正八年八月廿七日 右被告本人 大杉 栄 右弁護人並保証人 山崎今朝彌 同上 布施辰治 東京区裁判所 御中 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
https://w.atwiki.jp/musouchronicle2_3ds/pages/173.html
山崎の戦い(羽柴軍) 出現条件 戦前好感度イベント 戦前・戦後イベント・ムービー 特殊会話イベント 勝敗条件 武将データ ミッション アイテム配置 シナリオ攻略情報金ミッション情報 出現条件 織田の章、本能寺の変(織田軍)クリア 戦前好感度イベント 戦前・戦後イベント・ムービー 前・後 イベント名 選択肢 友好度上下 武将 シナリオ分岐 戦前 信長の死 選択肢なし ── ── ── 中国大返し 選択肢なし ── 秀吉子飼いの将 選択肢なし ── 主人公 戦後 光秀の三日天下 秀吉についていく 豊臣秀吉上昇 ── 賤ヶ岳の戦い(羽柴軍)へ 秀吉についていかない 小牧長久手の戦い(徳川軍)へ 特殊会話イベント 状況 プレイヤー 相手 セリフ 敵邂逅 ― 明智秀満 光秀様の五宿老が一人、明智左馬助、ここに見参 勝敗条件 制限時間 60分 勝利条件 明智光秀の撃破 敗北条件 織田信孝と羽柴秀吉いずれかの敗走 武将データ 羽柴軍 備考 明智軍 取得品 備考 羽柴秀吉 プレイヤー・敗北条件 明智光秀 ── 勝利条件 織田信孝 敗北条件 ガラシャ 武器 「父上のために」の阻止対象 加藤清正 プレイヤー 伊勢貞興 「砦を死守せよ!」の阻止対象 石田三成 斉藤利三 武器 「伏兵発見・弐」の撃破対象 福島正則 津田信春 武器 「関を突破せよ!」の撃破対象 黒田官兵衛 柴田勝定 武器 ねね 阿閉貞征 武器 羽柴秀長 明智秀満 武器 「伏兵発見・壱」の撃破対象 池田恒興 明智茂朝 中川清秀 御牧兼顕 アイテム 「明智本陣を目指せ!」の撃破対象 木村重茲 小川祐忠 神子田正治 安田国継 堀秀政 妻木広忠 丹羽長秀 増援 諏訪盛直 「砦を死守せよ!」の阻止対象 高山重友 木村吉清 津田重久 アイテム 斉藤利光 「関を突破せよ!」の撃破対象 妻木範賢 肥田帯刀 明智巳蔵 「伏兵発見・弐」の撃破対象 池田輝家 武器 「伏兵発見・壱」の撃破対象 松田政近 増援「天王山の攻防」の撃破対象 並河易家 アイテム 明智光近 増援 阿閉貞大 増援「進軍路を拓け」の撃破対象 ミッション No. 名称 難易度 内容 ボーナス条件 ボーナス 備考 1 砦を死守せよ! ★★☆☆☆ 伊勢貞興と諏訪盛直の北西砦侵入を阻止せよ! 〇〇の体力が半分以上の状態で成功 金 2 援軍を待て ★★☆☆☆ 味方援軍の到着まで、敵武将の羽柴本陣侵入を阻止せよ! 1分以内に成功 巻物 3 天王山の攻防 ★★☆☆☆ 松田政近と並河易家を撃破し、天王山の羽柴秀長の敗走を阻止せよ! すべての敵を〇〇が撃破して成功 金 4 関を突破せよ! ★☆☆☆☆ 斉藤利光と津田信春を撃破し、東の関を突破せよ! 福島正則の体力が半分以上の状態で成功 金 5 伏兵発見・壱 ★★★☆☆ 明智秀満と池田輝家を撃破せよ! すべての敵を〇〇が撃破して成功 アイテム 下記攻略情報参照 6 明智本陣を目指せ! ★☆☆☆☆ 御牧兼顕を撃破し、北砦を突破せよ! すべての敵を主人公が撃破して成功 金 7 伏兵発見・弐 ★★★☆☆ 斉藤利三と明智巳蔵を撃破せよ! すべての敵を〇〇が撃破して成功 武器 下記攻略情報参照 8 父上のために ★★☆☆☆ ガラシャの羽柴本陣侵入を阻止せよ! すべての敵を紫が撃破して成功 巻物 9 進軍路を拓け ★★★☆☆ 味方の進軍路を確保するため、阿閉貞征を撃破せよ! すべての敵を〇〇が撃破して成功 アイテム 10 明智軍最後の抵抗 ★★★★★ 敵兵を撃破し、味方武将の敗走を阻止せよ! 羽柴秀吉の体力が半分以上の状態で成功 武器 200人 アイテム配置 アイテム種類 場所 シナリオ攻略情報 「伏兵発見・壱」では、敵はマップ中央下の桟橋付近(後のガラシャ出現場所)に出現。「伏兵発見・弐」では、敵は北砦左の詰所付近(マップ右上)に出現。両ミッション発生前に対象武将を撃破してしまわないよう注意すること。 ミッション9は、ミッション4の発生前に、阿閉貞征の守る砦にしのびの道を使って侵入すると発生。詳しいタイミングは不明なので、早めに送り込んでミッションが発生するまで放置しておくと確実。 金ミッション情報 条件 天王山に侵入されていない。 「伏兵発見・壱」「伏兵発見・弐」をクリアしている。 ミッションを失敗していない。 シナリオ開始から一定時間以内(10分以内?)。 味方武将が敗走していない。 以上の条件を全て満たした状態で「父上のために」発生。 詳細情報 ミッション1~3をクリアして、伏兵武将が伏兵を開始するまで他の武将撃破などを控えて待つ。これはイベントメッセージが終わらないと伏兵を開始しないため。該当武将が伏兵を開始したら、「伏兵発見・弐」と「伏兵発見・壱」を発生させて敵将を撃破する。「伏兵発見・弐」は発生に時間制限がある(シナリオ開始から5分以内)ので注意すること。このミッション2つをクリアし、北砦か東砦に侵入するとガラシャが消え、「父上のために」が発生する。ガラシャ撃破後に金ミッションが発生するので、撃破数を稼ぎながら他のミッションをクリアしていけばよい。 発生一例 合戦開始と同時に黄を天王山の右下の詰所の上に移動指定。 緑で伊勢貞興と諏訪盛直を撃破。その後、騎乗し、天王山の北側の曲がり角辺りに移動指定。 紫にチェンジして、ミッション2の対象の3武将を撃破。その後、本陣近くに待機指定。 緑と黄でミッション3成功させる。 伏兵武将が伏兵を開始したら、紫と黄または緑を指定移動させてミッションを発動させる。 ガラシャ出現。紫で撃破。 金ミッション発生。 金ミッションの制限時間は5分。時間は多少余裕があるが、深入りしすぎると、味方武将が敗走しやすくなってしまう。
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/154.html
我輩の懲戒問題 山崎今朝彌 一、『小僧判事』の蔭口 で忽ち天下の同情を十身に蒐めた弁護士高木益太郎氏の法律新聞第千九百五十五号(三月十八日発行)に「山崎弁護士の奇異な上告趣意」と云ふ題で、又仲間が一人増へたそうな。 米国伯爵、法学博士、医学博士、哲学博士、平民大学総長、其他色々の肩書を有する奇人弁護士山崎今朝彌氏は今回「民権新聞」に対する新聞紙法違反事件に付きて刑事上告趣意書を大審院刑事第一部横田裁判長に差出し、藤波判事主任となり、目下取調中なるが其趣意書中の一節に曰く 若し之をして強いて安寧秩序を破壊するものなりとせば日毎日常の新聞雑誌は悉く秩序紊乱となり之を不問に付する全国の司法官は原審判事山浦武四郎殿、江木清平殿、西豊芳二郎殿三名を除く外皆偉大なる低能児の化石なりと云はざるを得ず、天下断じて豈に斯くの如き理あらんや云云、原裁判は真に呆きれて物が云へずと云はざるを得ず云云。 猶同氏は曩に麹町警察の巡査某及び警部遠藤某とを傷害被告人として、東京区裁判所へ告発したるが萬一検事が右暴行巡査の氏名をさへ遠慮するが如きことありては由々しき一大事なりとて左の如き文面を葉書に印刷し塩野検事を始め諸方へ配布しつつありと。 終りに、私は一月末日、陛下の赤子を態と公然傷害した麹町警察の巡査某(人物は判明し居るも署員の同盟罷口により氏名は不詳)と警部遠藤某とを告発仕り候(東京区裁判所塩野上席検事係)マサカとは存候も、その一検事が右暴行巡査の氏名さへも遠慮するなら、誓て遂には由々敷不祥事を続発せん、斯くては真に邦家の一大事、平素愛国の貴下は是非此点に特別の御留意と御監視とを賜り度此段得貴意候也・・・・・・山崎今朝彌 と云ふ記事が出ると、間もなく都下十数の新聞に、僕が其の為め又懲戒裁判に付せられたとかの記事が大々的に報道された。二三日我慢したが僕が遂々敗けて各社に。 二、左記取消文を送つた 四五日前の貴紙上に、私の出した上告趣意書が過激だつたとの理由で、私が懲戒裁判に付せられた旨の記事が出ましたが、あれは途方もないウソ間違ひですから宜敷御取消を願ひます。元来私は懲戒されない事を左程名誉とも思つていませんから、懲戒された処が決して不名誉とも思ひませんから、此点では取消して貰ふ必要もありません、がアノ記事の為めに当然無罪になるものが有罪になつたり又は常に事を好み上を憚らざる不届者奴がなどと其筋からニラマレたりしては困ります、既に懲戒裁判があつたものと早呑込して四方八方から悔みや見舞を受けてるにも弱つています。元来アンナ無茶の判決を攻撃叱咤するにアノ位の文句を使用する事は吾々の権利であらねばなりません。思想問題に関しては大審院は下級裁判所より厳刑主義を採り、原判決を取消すなどの事はソレが仮令従来にない例であらうとも、コレに限つては必らず原判決が破毀され被告は無罪とならねばなりません。カヨウな確信の下に書いた私の上告趣意書少しは過激に渉つた点ありとするも一字一句、一句一節のみ読まず文章全体を読んで貰へば、ソウ大した問題になる程の不穏文書でない事は、私が誓て全国の司法官も保証する処であります。右全文御掲載の上全部御取消相成度し。 然るに飽く迄非を遂げ我を通す新聞社は期せずして一致して此取消を出して呉れなかつた、依て私は貴誌を借り問題の論文と問題の上告趣意書とを発表して総てを解決する。 三、問題の上告趣意書 一部大正十年(れ)九九号 丹悦太、小川孫六上告趣意書 第一点 原判決が安寧秩序紊乱として判示したる被告署名の本件の記事は判示の如く自由?死?と題し、第一段に現代社会の幸福は所謂「ブルジヨアジー」のみの享くる所にして無産者は毫も顧られざる事を論し、其例として言論の自由は憲法に於ては保証さるる処なるも事実に於ては保証金なき「プロレタリア」は一新聞だに発行するを得ざる事を挙げ第二段に社会運動者が常に不法の圧迫手段干渉を受くる事、総ての法律規則が特権階級に有利にして無産者の保護に欠くる所ある事、罰則の適用も亦「ブルジヨアジー」には比較的寛大なる事を説き、末段に於て現在の特権階級は跌扈跳梁専恣横暴を極むるが故我等は全力を尽して無産者の為め暁鐘を撞かんとするものなりとの趣旨を述べたるに過ぎずして、事実全く其通り、少しの誇張も虚飾もなく、文詞用語も亦頗る冷静平凡、奇矯に失せず激越に渉らず、十数年来萬人均しく文章に演説に都鄙到る処に言ひ古され語り尽されたる有触れたる論議なるは、毫末も社会の平静を紊り共同の生活を乱すものにあらず、若し之れをして強ひて安寧の秩序を破壊するものなりとせば日毎日常の新聞雑誌は悉く秩序紊乱となり、之れを不問に付する全国の司法官は原審判事山浦武四郎殿、江木清平殿、西豊芳二郎殿三名を除くの外、皆偉大なる低能児の化石なりと謂はざるを得ず、天下断じて豈此の如き理あらんや。然らば原審が奮然と意を決して之れを安寧秩序紊乱と目し、新聞紙法第四十一条に問擬したるは不法も亦甚だしきもの、真に呆きれて物が言へすと云はざるを得ず、原判決は畢竟破毀を免れず被告等の無罪を信じて疑はず。 第二点 原判決は理由に於て「被告孫六は呉市に於て発行する民権新聞の発行人なる処・・・・・・同新聞第一号に自由?死?と題し云々の記事を掲載し被告人悦太は右記事・・・・・・に署名したるものなり」とのみ事実を認定し之れに新聞紙法を適用せり。 然れども右事実の認定のみにては右民権新聞が果して出版法により発行する新聞にあらずして新聞紙法により発行する新聞なる事実明かならず、然らば原判決は犯罪構成の要件たる事実を完全充分に判決に掲げざる不法あり。 仮りに判決に謂ふ新聞とは、当然一定の題号を用ひ定期に発行する出版物のことなりとせば、原判決には証拠に依らず事実を認定したる不法あり。蓋し原判決掲記三個の証拠には如何なる部分(証第一号は記事のみを採用したる点に注意)にも本件民権新聞が一定の題号を用ひて定期に発行する出版物なることを推知するに足る記載なければなり。 第三点 原審は法廷に於て検事の論告に対して起立せざる被告を退廷せしめ被告最終の供述を聴かずして裁判せり然れども公開を禁じたる法廷に於て聊か被告が我意を通し検事の論告の際起立せざればとて裁判の威厳を損するものにあらず、否却て斯る事にて判事が我意を通し意地を張り、悉く所謂児戯的形式的官僚的に出て、其特色を発揮して啀み合う方が却て裁判の威厳を損するものなれば、強制して迄も起立させべきものにあらず、従つて起立せざることは勿論起立せよとの説諭に従はざる行為と雖も之れを不当の行状なりと云ふを得ず。 然らば之れを不当の行状なりして被告に退廷を命じ被告最終の供述を聴くことなく、こつそり審理を続け弁論を閉ぢたるは公判手続上重大なる違法あるものにして、原判決は此点に於ても到底破毀を免れず。 大正十一年二月廿日 弁護人 山崎今朝彌 大審院第一刑事部 御中 四、総て無罪の判決 右事件の大審院判決言渡は、延期に延期を重ねていたが、本日四日午後一時刑事第一部横田裁判長係りにて、『原判決を破毀す被告を無罪とす』との言渡があつた。之れで私の杞憂も、杞憂に過ぎなかつた事となり、全国の司法官にも愈々尊信が加つた訳である。マアよかつた。(校正の際追記) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正した。旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、社会問題資料研究会編『中央法律新報第二巻上』(東洋文化社)1054頁、底本の親本は、『中央法律新報』(中央法律新報社)第2年(大正11年、1922年)第8号12頁>
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/115.html
人間社会に対する詐欺及び偽作罪の告訴に就て 告訴人 堀 保子 代理人 山崎今朝彌 被告 [甲野太郎] [乙川一郎] [丙山二郎] 告訴状 告訴の事実 被告[太郎]は告訴人の知人堺利彦氏を介して本年五月頃、『人間社会』の創刊号に告訴人及び伊藤野技神近市子二氏の著作を掲載し雑誌の呼物となし其売行を図り度、原稿料は最高の額を支払ふ故是非寄稿を願ふ旨再三再四の懇請ありたるも、告訴人は他二氏と其性格経歴思想を異にし、彼等と共に喧伝せられ彼等と共に類別せられ常に世の評に上る事に少なからず無上の苦痛不快を感する折柄なれば、右懇請を其都度堅く拒絶したり。 六月上旬頃[一郎]は『女の世界』記者と称して告訴人を訪問し、右雑誌に掲載すべき、近時の感想に就き告訴人の演述を求めたり、告訴人は主筆青柳有美氏編集長安成二郎氏とは年来懇親の間柄にして大概の無理は通さざるべからざる関係にあり且つ雑誌に掲載前には必らず校正を示さるるを例とせる故安んじて自己の感想を談話したるも、尚其後聊か慮る所ありたるを以て、間もなく安成氏を訪問し右演述掲載の見合を申込たるに意外にも同氏は、[一郎]は『女の世界』記者にあらず『世の中』の記者なるに社名を詐称して告訴人を訪問したるは不都合なりと語りたれば、告訴人は一層掲載拒絶の必要を認め堅く安成氏に依頼し同氏の快諾を得安堵して帰宅したり。 八月十五日頃告訴人は堺利彦氏の注意により初めて、[太郎]の主宰する『人間社会』の八月一日号に、告訴人が嘗て[一郎]に為したる談話が多少の改悪を加へて、自由恋愛の犠牲者--伊藤野枝氏神近市子氏及び堀保子氏の現在の生活--なる題下に、或る日或時伊藤野枝、勝利の恋愛神近市子と名を列し。芝居を見に行く堀保子と署名掲載され、尚右標題及び際物ありとの注意を以て全国の新聞紙に広告されたる事を知り、絶大の苦痛と侮辱とを感じ、深く所謂被告等程度の文士なる者に一片の徳義も糸瓜もなきを嘆き直ちに安成氏を訪問して満腔の不平を訴へたり。 安成氏の証言する処に依り告訴人は此時初めて、[一郎]は『世の中』記者として告訴人を訪問したるにあらず実は『世の中』記者被告[二郎]に代り『女の世界』記者と詐称して告訴人を訪問演述せしめたるものにして[二郎]は[太郎]より直接前述の方法を以て、告訴人の著作物を『人間社会』の創刊号に掲載方法を依頼されたるもの、而して安成氏が告訴人の依頼を受け[一郎]を詰責したる際は既に原稿は大阪に送付済なりしを以て安成氏は[二郎]に命じ[太郎]に其掲載方法差止を打電せしめたるに、被告等は之を無視し掲載を敢てしたるものなる事を知りたり。 告訴の趣旨 右の次第にて被告等の所為は明に刑法第二百四十六条及び著作権法第一条第卅七条に該当するものと信じ、又告訴人としては充分蹂躙せられたる権利を伸張し将来同一類似の事件の発生を予防する為め此際断乎たる処置に出ずるを尤も適当と信じ利害得失研究の上茲に本告訴提起仕候条至急相当の御処分相成度候也(六、八、二二) <[ ]内仮名> 不起訴処分に対する抗告 抗告人 堀保子 代理人 山崎今朝彌 (一)抗告人は大正六年八月廿二日[乙川一郎][丙山二郎][甲野太郎]に対して詐欺及び偽作の告訴を東京地方裁判所検事局に提起したる処、同局は同年九月十二日不起訴の処分をなしたり。 (二)係検事(秋山高三郎殿)が右処分をなしたる理由の要旨は本件は(イ)被害者より騙取したる財物なるものなければ詐欺罪は到底成立するに由なし(ロ)新規難解の問題にして談話は著作と云ふを得るや否未研なれば偽作となるものにあらず、と云ふに在り。 (三)然れども本件は(イ)被告等が告訴人を欺罔して原稿又は談話を騙取したりとの告訴にあらず、被告等が共謀して告訴人を欺罔し依て以て権利なき他人の著作を雑誌に掲載し財産上不法の利益を得たりとの告訴なれば所謂第二項詐欺に該当すること法文上絶対明白なり(ロ)何れも最初は新規にして著作権法第一条によれば、文書演述文学の範囲に属する著作物の著作者は其著作物を複製するの権利を専有するが故に、告訴人の談話が其の何れの範囲に属するかを問はず其談話は(告訴事実に於ては)既に所謂成形的談話として客観存在を保ちたる所謂発明(創作)なれば、之れを複製したる被告等の所為が偽作の犯罪を構成すること抑々一点の疑なし。 (四)抗告代理人は其提供する実際の法律問題に付、数年後に於て必らず一般に公認せらるる以前、屢々突飛珍奇の排斥を受くる常習を有す、本件も亦碁年ならずして、猥りに人の談話演説を公布刊行する不徳者に対し、囂々非難の声を絶たざる文士輩出するに至らば、復た豎子をして其名を成さむしるに至るべしと信じ為後日以抗告如件 抗告趣旨 前記処分を為したる下級検事に対し事件を起訴すべしとの御命令相成度候 大正六年九月十七日 山崎今朝彌 東京控訴院検事局 御中 <[ ]内仮名> <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/60.html
川手君の発憤 川手君は武田信玄公様発祥の地たる甲州の産で、明治三十二年頃中央大学へ入つて法律学を修め第二年生になつた三十三年だかの夏帰省した。其時汽車の向側に同年輩の風彩の揚らない書生風の男が居た。暫くはお互に口も利かなんだが遂話し合ふ様になつたら其男は矢張り法律書生であつた。段々話して居る中に其男はツクヅク川手君の顔を見て『君の話では君は法律家にならなければ食ふ事が出来ないと云ふ訳ではなし、見た処君には到底判事にも高等文官にも弁護士にもなれる様子もない、悪い事は勧めぬから今の内に思ひ切つて国へ帰つた儘百姓でもし給へ』と真面目に忠告した。川手君憤るまい事か見ず知らずの初対面の人にソンナ事を云ふ馬鹿が何処にある、撲つて仕舞ふぞと云ふ処を耐へて、よい加減に応対して別れた。が、あの位図々しい無遠慮の男には其前後出会はした事がないとは今でも川手君の一つ話である。而も其男は真面目顔で初から問もせぬにベラベラと饒舌り、自分は明治大学の三年生で信州へ帰省する処で山崎今朝彌と云ふ者であると名乗つたと云ふ事だ。僕は実際覚へがないが川手君と会へば必らず君から此話が出るから萬更虚言でもあるまい。 或は恁んな事があつたかとも思ふのは、其頃は僕も中々の元気で、忘れもせぬが今の大審院の棚橋裁判長や横田博士や故今村信行さん達が出て来た信濃法政会で三人を前に並べて判事特に大審院判事の攻撃をして、あの謹厳な今村さんを憤らせ、中途退席する等云ふ騒ぎをやつた事があつた。今から考へるとあの時分はどうかして居たのかも知れぬと思ふ位だつた。 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
https://w.atwiki.jp/yamazakimayumi/pages/14.html
インスタグラムプラグイン 人気の画像共有サービス、Instagram(インスタグラム)の画像をアットウィキに貼れるプラグインです。 #ig_user(ユーザー名) と記載することで、特定ユーザーのInstagramのフィードを表示することができます。 例)@dogoftheday #ig_user #ig_tags(タグ名) と記載することで、特定タグのInstagramのフィードを表示することができます。 #dogofthedayjp タグ #ig_tag #ig_popular と記載することで、Instagramのpopularフィードを表示することができます。 詳しい使い方は以下のページを参考にしてください! =>http //www1.atwiki.jp/guide/pages/935.html
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/270.html
新刊批評 左翼運動の理論的崩壊(高橋亀吉著) 『解放社』は解放講座年鑑全集の中に左右両翼の理論的根拠並に其戦術二巻を取り入れ其執筆を左巻を左翼フアンの水谷長三郎氏に右巻を右翼指導家の赤松克麿氏に依頼した、が、今本書の寄贈を受けて読んで見ると右翼の理論と戦術とは正に之れに尽き今更一巻を物するがものはない。殊に定価が恰度全集に比敵する一円と来て居る。況んや、二三十分を費して、其問題の範囲と締めくくりと其れに引用された二三の箇所を摘読玩味すれば本書全部を精読したと同一の効能がある。依て本社は右巻の発行を中止し全集予約者へは本書を赤松氏の右巻に、代用する事とした。左巻は二度も脱稿したが本書の発行で又根本より書き直すとの事であるから宜しく注目して期待されたい。 評議会運動方針と新綱領 何と云つても新聞宣伝は労働農民党に大会は評議会に取られた。本書は本年の日本労働組合評議会三日間連続第三回全国大会に於て決議された最新方向転換の新運動方針と新綱領である敵も味方も賛成も反対も知るも知らぬも何時か必らず役立つ時があるから参考の為に一冊は取つて置くべき十銭のパンフレツトである。 政治学序説紹介 政治学序説菊版百八十頁定価一円五十銭は少し高いが此紙と此の装幀では仕方あるまい。特に本書は氏の教授する大学講義のノート□用であるから割方安い方であらふ。大学講義の骨組であるからと云つて一般人士に不向である訳はない。否当世流行の故らなる難渋文句がない点と巻末に索引のある点は本書の特色であると共に又何人の読むにも適する良書であるであらう。(川原次吉郎著) 軍隊と赤化(陸軍憲兵大尉板倉孝著) 「軍隊と赤化」(四六百五十頁価三十銭)甘粕事件で免れて恥なき小泉中将論、現下軍部裏面の大勢等極力軍隊の赤化を企図したものでは決してないから成程安心して読める。 (以上山崎今朝彌評) <中略> 洛陽餓ゆ 一代の才人阪本勝代の近業、福永書店発行定価壱円六十銭。曽て氏が解放の前身社会主義研究に書いてくれた「山城国民議会」即ち足利時代に於ける空前絶後の貧農革命を、戯曲し創作したものである。前の松本君は一夜にして夜を徹して読了、感奮其極に達し必らず長編の批評を物すると約したが、今此の前月の組置校正を見ると其れがない。で僕が是を。 新らしき改宗 金星堂発行社会文芸叢書第十編、ステツプニヤツク作、山内房吉氏訳の戯曲である。定価八十五銭。前半は曽て「改宗者」として解放に載り一躍氏の文名を高からしめたものだ。氏の著解放群書第二十三編「社会主義大辞典」が非常に評判がよいので実は之れも本社より出したかつたと思ふ位だ。 朝鮮衡平運動 関東水平連盟発行定価十銭。このパンフにて水平社同人と同一の境遇にゐる白丁四十萬人の解放を目的とする朝鮮の衡平社運動を知る参考になれば我等の欣快とするところである、と著者平野小剣氏は云つて居る。水平社運動と継子苛めなら誰でも読まされる。 無産者小形パンフレツト 赤旗老人の「今の世の中」堺利彦老人の「鋳掛松」同「一休と自来也」荒畑寒村氏の「停電」が一度に無産社から発行された、と云つた処が価各十銭也の小形パンフレツトで久しく定評のあるものだ。 (以上全部山崎今朝彌) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『解放』(解放社)第6巻15号46頁(昭和2年(1927年)9月1日発行)>