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新刊批評 左翼運動の理論的崩壊(高橋亀吉著) 『解放社』は解放講座年鑑全集の中に左右両翼の理論的根拠並に其戦術二巻を取り入れ其執筆を左巻を左翼フアンの水谷長三郎氏に右巻を右翼指導家の赤松克麿氏に依頼した、が、今本書の寄贈を受けて読んで見ると右翼の理論と戦術とは正に之れに尽き今更一巻を物するがものはない。殊に定価が恰度全集に比敵する一円と来て居る。況んや、二三十分を費して、其問題の範囲と締めくくりと其れに引用された二三の箇所を摘読玩味すれば本書全部を精読したと同一の効能がある。依て本社は右巻の発行を中止し全集予約者へは本書を赤松氏の右巻に、代用する事とした。左巻は二度も脱稿したが本書の発行で又根本より書き直すとの事であるから宜しく注目して期待されたい。 評議会運動方針と新綱領 何と云つても新聞宣伝は労働農民党に大会は評議会に取られた。本書は本年の日本労働組合評議会三日間連続第三回全国大会に於て決議された最新方向転換の新運動方針と新綱領である敵も味方も賛成も反対も知るも知らぬも何時か必らず役立つ時があるから参考の為に一冊は取つて置くべき十銭のパンフレツトである。 政治学序説紹介 政治学序説菊版百八十頁定価一円五十銭は少し高いが此紙と此の装幀では仕方あるまい。特に本書は氏の教授する大学講義のノート□用であるから割方安い方であらふ。大学講義の骨組であるからと云つて一般人士に不向である訳はない。否当世流行の故らなる難渋文句がない点と巻末に索引のある点は本書の特色であると共に又何人の読むにも適する良書であるであらう。(川原次吉郎著) 軍隊と赤化(陸軍憲兵大尉板倉孝著) 「軍隊と赤化」(四六百五十頁価三十銭)甘粕事件で免れて恥なき小泉中将論、現下軍部裏面の大勢等極力軍隊の赤化を企図したものでは決してないから成程安心して読める。 (以上山崎今朝彌評) <中略> 洛陽餓ゆ 一代の才人阪本勝代の近業、福永書店発行定価壱円六十銭。曽て氏が解放の前身社会主義研究に書いてくれた「山城国民議会」即ち足利時代に於ける空前絶後の貧農革命を、戯曲し創作したものである。前の松本君は一夜にして夜を徹して読了、感奮其極に達し必らず長編の批評を物すると約したが、今此の前月の組置校正を見ると其れがない。で僕が是を。 新らしき改宗 金星堂発行社会文芸叢書第十編、ステツプニヤツク作、山内房吉氏訳の戯曲である。定価八十五銭。前半は曽て「改宗者」として解放に載り一躍氏の文名を高からしめたものだ。氏の著解放群書第二十三編「社会主義大辞典」が非常に評判がよいので実は之れも本社より出したかつたと思ふ位だ。 朝鮮衡平運動 関東水平連盟発行定価十銭。このパンフにて水平社同人と同一の境遇にゐる白丁四十萬人の解放を目的とする朝鮮の衡平社運動を知る参考になれば我等の欣快とするところである、と著者平野小剣氏は云つて居る。水平社運動と継子苛めなら誰でも読まされる。 無産者小形パンフレツト 赤旗老人の「今の世の中」堺利彦老人の「鋳掛松」同「一休と自来也」荒畑寒村氏の「停電」が一度に無産社から発行された、と云つた処が価各十銭也の小形パンフレツトで久しく定評のあるものだ。 (以上全部山崎今朝彌) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『解放』(解放社)第6巻15号46頁(昭和2年(1927年)9月1日発行)>
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訴状 芝区新桜田町十九番地 原告 弁護士 山崎今朝彌 下谷区坂本警察署官舎 被告 官吏 山川秀好 名誉回復請求訴訟 目的及申立(註一) 被告は左記形式の謝罪文を奉書紙に自筆調印の上日付を付して之を原告に差入るべし(註二) 謝罪状 大正八年八月十五日貴平民大学夏期講習会に於て拙者が貴殿に対し『何ツ此野郎』と無体の言を吐き候は昻奮の余り思はず識らず出で候失言に有之別段悪意ありたる次第に無之候へば何卒御勘弁相成度茲に謝罪状差入謝罪仕候(註三) 山崎今朝彌 殿 山川秀好 請求の原因 (一)原告は明治三十四年試験に合格し明治四十年登録して今日に及びたる弁護士にして傍ら独立(註四)の平民大学を経営し平民法律、破毀判例、社会主義研究等の月刊学術雑誌を発行し未だ曽て刑辟に触れ若くは説諭を受けたる事無きのみならず却て其筋より親孝行及び人命救助の故を以て表彰せられたる事ある者なり(註五) (二)原告は大正八年八月八日より十五日迄平民大学の夏期講演会を芝区三田の統一教会内に開き当時三田警察署長たりし被告は職権を以て之に臨監せり(註六) (三)被告が最後の十五日に至り講師室伏高信氏の講演中止を命ずるや(註七)聴衆は被告の不当処置を非難絶叫して止まず、原告は依て聴衆に対し左の挨拶をなしたり (四)諸君、今晩は之にて閉会し私方にて茶話会を開く故私と一所に同行されたし、署長今晩の中止は私も不当と思ふ、特に署長と私との間には特別契約あり私は総て其条項を履行したるに署長は之が履行を為さず不当なる中止をなしたり、併し職権行為故諸君が如何に騒ぎたればとて法律上致し方なし故に今晩は私に免じて騒がず柔順しく私方に引揚げられたし、其代り私は法律上可能の範囲に於て有らゆる手段を採り、署長今晩の処置の当否を争ひ、私が社会的に死すか署長が責任を負ふて転任するか迄戦ひ、誓て諸君の面目を立つべし (五)言未だ終らざるに被告は之を歯牙に懸け奇声を発して原告に飛び掛り「何ツ此野郎」と大声に叫びながら猿臂を延して原告の腕を掴みたり (六)此時早く彼の時遅く、之を聞きたる聴衆は鯨波を揚げ被告目懸けて押寄せ来り将に之を捕へんとするや、被告は断然狼狽忽ち身を躍らし獅子奮迅の勢を以て脱兎の如く原告を捨てて場外に逃走し為めに原告は幸ひ事なきを得たるも被告の野郎呼はりには流石に聊か侮辱を感じたり (七)要するに被告は聴衆の面前に於て(公然)原告に対して野郎扱を為し(侮辱)(註八)以て聴衆が原告に対して有する尊敬の念慮感情を減殺(名誉毀損)せしめたるものなり(註九) 大正八年十月一日 右 山崎今朝彌 東京地方裁判所 御中(註十) 註 (一)訴状には民事訴訟法第百九十条の規定に従ひ、起したる訴訟の目的と其を受けんとする裁判の申立とを(訴訟を起す理由の外)記載すべきものとす、併し目的と申立とは要するに同一なれば両者の中一つを書けばよい道理なり (二)尻拭紙に鉛筆で他人に書かせ而かも宛名を下げて書いた謝罪状の如きは謝罪の誠意なきものなれば本項も必要なり (三)裁判の訴訟費用は敗けた者の負担にして特に其請求なしと雖も判決書に其旨を書いて呉れる (四)平民大学は官立なりや公立なりや将た又私立なりやの問合せがよくある故、官立にも公立にも私立にもあらず全然独立なる旨を茲に明にしたる訳なり、尤も平民大学が独立を以て創立せられたる後、法律は改正せられて凡ての学校大学等に官公私立等の文字を冠するに及ばずと云ふ事になりたり、尚昇格も平民大学を以て嚆矢とす (五)本件は名誉恢復事件故原告の身分地位を証明する事が必要なり (六)治安警察法第十一条第二項には、政治に関せざる集会と雖も安寧秩序を妨害する虞ありと認むるときは警察官署は制服を著したる警察官を派遣し臨監せしむる事を得、此場合には発起人に於て警察官の求むる席を供すべし、とあり (七)同法第十条には、集会に於ける講談論議にして安寧秩序を紊すの虞ありと認むる場合に於ては警察官は其の人の講談論議を中止することを得とあり (八)刑法第二百三十一条に曰く、公然人を侮辱したる者は拘留又は科料に処す、同二百三十二条本章の罪は告訴を待て之を論ず。故に原告が告訴するときは被告は拘留又は科料に処せらるべきものとす、此場合原告は刑事訴訟法第二条に従ひ本訴を私訴として公訴に付帯して提起する事も得 (九)民法第七百十条に曰く、他人の名誉を害したる者は財産以外の損害に対しても其賠償を為すことを要す同七百二十三条は曰く、他人の名誉を毀損したる者に対しては裁判所は原告の請求に因り損害賠償に代へ又は損害賠償と共に名誉を回復するに適当なる処分を命ずることを得 (十)本件訴訟には百円だけの印紙三円五十銭を貼用するものなるも五百円以上の訴訟と同じく地方裁判所にて審理するものなり <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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最近最も癪に障つた事 は某事件で某判事が自分の残忍性から被告や縁者の苦悶するのを頻りに喜んで調べた形跡があつた事と、堺君の明白なる殺人未遂事件を何故か官憲が之れを傷害事件と極力弁護した事とである。前者に対しては面白い事を考へ今に目に物見せて呉れんと独り楽しんでる処は、僕も亦残忍性があるかと思はれる。後者に対しては新年イの一番に普通裁判所殺人未遂に基く二十円の損害請求民事訴訟を起し、軍人裁判所から記録の取寄をしたり、打合前上官の心も知らず其晩功名顔に逐一事実を語つた刑事を証人に呼んだり、軍人裁判所が態と調べない証人を残らず調べたりしたいと折角堺君を煽動して居る。其他無政府主義者が、俺は社会主義者なんかとは訳が違ふと云つたやうなことを言ふこと、社会主義者が、国家社会主義者なんかは仲間でないと云つたやうな顔をすること。国家社会主義者が俺達はもう足を洗つた局外者であるといふやうな態度に出ること、労働組合の所謂「お出入り者」が元方では漸く昨今考へた事だに、一年も前から一人で覚えたやうな口調で、戦闘力の集中だの新社会の芽生へだのと議論めいたことを言ふこと、僕の「堅公」が習ひ初めた英語を無暗矢鱈に使ひたがることも聊か小癪に障る。 最近最も痛快だつた事 は二十六年間小指一本も指す事の出来なかつた元老大家で堅めた日本弁護士協会が、十二月九日の総会で、一致団結せる無名無力の青年弁護士に跡形もなく乗つ取られた事。特に双方の間を泳ぎ廻つて甘い汁を吸ひ、又は吸はんとした打算家を一掃し得たこと(「進め」創刊二月号より転載、十一年十二月二十五日山崎今朝彌寄) <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。> <底本は『復刻版労働週報』(不二出版、1998年)165頁。底本の親本は『労働週報』(労働週報社)第31号3頁(大正12年(1923年)1月16日号)。>
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知人名簿 山崎今朝彌 △私の知人には可なり沢山の神様がある。静座の岡田虎二郎君、健全哲学の鈴木清次郎君、催眠術の古屋景晴君、宗教骨相の坂本茂演君等で、真人道の井伏太郎君も勿論神様の部類に属する。何時か好機を見て、私と神様の交通を書いて見度いと思ふ。 △私が明治四十年に『法律文学』を発行した時元祖第一の祝詞を呉れた人は岩井探偵元祖であつた。大正三年の『東京法律』に第一の祝詞を寄せた人も同氏であつた。私の頭に見た事も会ふた事もない岩井三郎と云ふ名が書付られて居るは此故である。海軍事件の時等は其探偵かアーあの人だナと直ぐ思ひ出した。中平文子の書いた中にある某探偵とは誰だろう等と今でも考へて居る。 △私も一時神様になりかけて、三四年間絶対の菜食主義で通した事がある。私が医学博士としての粗食養生論は此間に出来たのだ。食物の六ケ敷のは少しも困らぬ私も、奥山医師の注射には弱つた。病気の工合と人々の身体に依り注射の方法も皆異ふとの事だが、私のは塩気と砂糖気と動物性とを絶対に禁じられた。学術圧迫事件、北里犯罪事件の主人公の医師と云ふが即ち此人である。 △小松医師は久しく実費診療所の産科婦人科長として患者より沃度先生の名を頂戴して居つた。自費で患者に沃度を試用し研究を積んで、私の耳も必らず聞える様にすると云ふ意気込、君の耳が治つたら俺も行くから知らせと云ふ弁護士が三四人ある。聞へる様になれば拾ひ物として御礼広告をする積りだ。 △萬世橋医院の西片院長は米国以来の友達、堺井差配所の堺井金次郎君、増澤商会の増澤正留君は信州以来の友達で面白い話が沢山あるが領分が無くなつたから次号に譲る。 △私はこれから毎月順々に知人の事を何か書かうと思ふ。 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、旧漢字は適宜新漢字に修正した。> <底本は、『平民法律』第6年5号5頁。大正6年(1917年)6月。>
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法治国秩序紊乱事件弁論要旨 本件記事は第一項乃至第七項に至る迄何れも秩序を紊乱する虞れある記事にあらざる事一点の疑なし従て被告は全部無罪ならざるべからず。 本件にして萬一有罪の判決を受けんか、弁護人は堅く信ずる所に従ひ本書末尾に参考として添付せる告発をなさんと欲す、希くは熟読玩味せられん事を。 大正八年一月卅一日 被告 長野国助、小松利兵衛、荒畑勝三 右三名弁護人弁護士 山崎今朝彌 東京区裁判所判事 石川音次 殿 告発状 東京市芝区新桜田町十九番地 平民法律所長弁護士 告発人 山崎今朝彌 雑誌太陽方 被告人 内田魯庵 被告人 与謝野晶子 雑誌中央公論方 法学博士兼被告人 福田徳三 新聞紙法違反の告発 告発の事実 大正七年の米騒動に関し大正七年中、 (一)被告内田は「太陽」第二十四巻第十一号(九月号)四十二頁以下の「パンを与へよ!」中及び同十二号(十月号)六十一頁以下の「覚めよ中等階級」中に (二)被告晶子は「太陽」第廿四巻第十一号(九月号)五十九頁以下の「粘土自像」中に (三)被告福田博士は「中央公論」第三十三年第十号(九月号)九十二頁以下の「暴動に対する当局の態度」中。 各々冒頭の米騒動を是認同情する趣旨の記事即ち「公共の平和を害し社会の組織を擾乱するの虞れある」(大審院大正四年(れ)第一九一三号事件判例参照)記事を執筆したるものなり。 法律の適用 右事実は新聞紙法第九条第二号に拠り同法第四十一条に該当する犯罪なりと思料す 告発の理由 告発人は所謂「大正聖代の御一揆」以来東京区裁判所に公訴されたる「労働新聞」「青服」「民集の芸術」及び「法治国」の新聞紙法違反被告事件に付き其弁護人となりたる関係上 一、東京区裁判所に於て起訴となる新聞紙法違反事件は悉皆警視庁より起訴すべく送付されたるものなる事 二、警視庁が起訴の意見を付して検事局に送付する事件は悉皆微力、貧弱、到底論ずに足らざる雑誌若しくは無名無力殆んど一顧の価値なき人士の執筆に係るものなること を発見仕り候。 告発人は又「法治国」の弁護に於て、社会の秩序を紊乱する虞れあるものとして起訴せられたる当該記事よりも、一層激烈過激なるものと、少くとも三十有余名の弁護士が全会一致を以て鑑定したる記事評論が、輿論の権化一世の師表にして当代の尊信を専らにする高明有力なる人士に依つて執筆せられ、当局と雖も一目を置かざるを得ざる程、地位と勢力とを有する雑誌に掲載せられたる場合、何等の問題を惹起せざる幾多の事実を発見仕り候、故に告発人は当時他の弁護人の驥尾に付し該発見の記事三十二種を公判廷に提出し、之れに拠つて被告等の無罪を証明し能はずんば寧ろ判事は右諸雑誌の編集発行人及び署名者を告発するの義務を履行すべく(刑事訴訟法第二十五条)検事は直ちに捜査に着手すべき職責あるものなり(同法第四十六条)と論じ幸ひ審理は公開され判決は言渡され、晴天は白日となりたれども被告は無罪とならず、而かも華族にも、大官にもあらざる本件被告等は未だ縛に就かず。 抑も告発人が熱狂の資を以て此腐敗溷濁の世に処し未だ曽て発狂の域に達せざるを得たる所以のものは、惟ふに身を厳正独立公平無私の法律界に投じ職を清廉潔白、情実纏綿の反対たる司法界に求め、時に公平の決を得て、屢々痛快の楽を享けたるの賜ならずんばあるべからず、然るに今度此始末、恐懼以て法律の一画をも損反せざらん事を努め大に馬鹿を見たる告発人たる者、豈憤然として立ち慨然として泣かざるを得んや。 由来告発人は告発を以て鳴ると雖も、従来は区裁判所の判決に対して云為するを屑しとせず大審院の判決を待つて事を挙ぐるを例とせり、然れども翻て之れを考ふるに区裁判所と雖も亦天皇の名に於て司法権を行ふものなることは炳乎として憲法条章(第五十七条)の明示する処、其判決を軽蔑するは誠に臣子の本分にあらずと信じ、今回は特に其判決を楯に本告発に及びたる次第に候。 偖証第一号の記事は全部何れも、萬人の読んで見て以て、証第二号外前記三雑誌の問題記事より、より以上秩序を紊乱する記事なりとする処なれば、其全部に対して告発すべきを正当とするが如きも告発人は又当局と一風異り、只有力なる人士が勢力ある雑誌に署名したる実害多き記事のみに着目し、微力貧弱の雑誌や無名無害の士には目も呉れざるを事とするが故に、茲には代表的に本件被告等のみに対して告発を為し以て国恩の萬分の一に酬ひたる次第に有之候。 右の次第に付き仰ぎ願くば、本件に対し直ちに捜査を開始し(一)検事局は裁判所の一部にして警視庁に対しては全く独立するものなる事(二)「裁判所とはあんなもの」にあらずして地位ある者も地位なき者も、勢力ある者も勢力なき者も一視同仁、厳正中立に取扱ふものなる事(三)「法律とはこんなもの」にあらずして飽く迄公平無私、或る例外の場合を除くの外は苟く馬触るれば馬を斬り人触るれば人を斬るものなる事を。普く国民に広告し、併せて愚民が既に警察に対して有する悪感を将に裁判所に対して懐かんとする危険に対して之を未発に妨害せられんことを。 告発の申立 右告発候也 大正八年二月 日 山崎今朝彌 東京地方裁判所検事局 御中 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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為解誤解・弁護士の天職 為解誤解 山崎今朝彌 ■大正三年頃、変ンナ男ガ私ヲ東京法律所ニ訪問シタ。弁護士総評ヲスルニ付テ意見ヲ伺ヒ度イト云フノデアツタ。色々ノ事ヲ聞キ集メテ知ツテハ居、小生意気ノ事ハ云フタガ、事務所ノ当擦リヤ意見ガマシイ事ヲ云フタカラ、ヨイ加減ニ追ヒ返シタ。其後或弁護士番附ニ、雨降リニ洋服ヲ着タリ、傘ヲ差シタリ下駄ヲ穿ク奇人、ト私ヲ悪口シテアルト聞イタ、アアアノ男ダナト私ハ思フタ。 ■今年三月頃、永田素水ト云フ人ガ私ヲ平民法律所ニ訪ネ、数百名ノ弁護士ニ元帥ヨリ少尉ノ階級ト短評トヲ付シタ表ノ原稿ヲ示シ意見ヲ求メタ。アノ男ハ此男ダツタナト思フテ聞イタラ、ソーダツタ。 ■其時、永田君ニ従ヘバ、東京法律事務所ハ非常ニ評判ガ悪カツタ。其原因ハ、東京監獄ニ出張所ヲ出シタ事、事務員ヤ勧誘状ヲ以テ事件ヲ渉猟ル事、均一販売即チ安売ヲスル事等デアツタ。私ハ今ハ既ニ東京法律ノ為メニ敢テ弁解ノ義務ヲ感ジナイガ、若シ識者ノ一人ダモ斯カル誤解ヲナスモノアラバ、何時カ一言弁解シテ見タイト私カニ思フタ。 ■其後永田君カラ、デアロウ、東都著名弁護士一覧表ガ届イタ、閑ニ任カセテ読メバ見ル程、真面目ニ出来タモノデ、驚キ入ツテ敬服シタ、真ニ表紙書通、一見直チニ斯界ノ面目躍如タリ、凝視自カラ諸士ノ性状瞭然タリ矣。思フニ永田君ハ確乎タル一見識ヲ有スル達士デアル。ト同時ニ私ハ弁護士ノ天職、ニ付テ一言ヲ禁ジ得ナクナツテ来タ。(一頁ヘ続ク) 弁護士の天職(五頁依続) 山崎今朝彌 東京法律事務所が東京監獄に出張所を出したり、新聞記事や興信所内報を見て手紙や人を出したり均一制度を設けて安売を初めたりしたのは皆私の仕事である。之れが為めに非難を受くべき筈のものなら其非難は私一人で受くべきものである。併し私は決して悪い事をしたとは思はぬ。従つて私は東京法律事務所に対して、気の毒だとも済まぬとも思はぬ。昔者、葬儀屋が死亡広告を見て御用聞きに来れば、寄つて集かつて打つたものだ。今者、相当の家で不幸のあつた時、広告取や葬儀屋が来なければ非常の侮辱を感ずる。今に事件当事者より弁護士に呼出が懸る陽気にならないものでもない。 私の一番嫌いは喧嘩である。若し好きな様に見える事があれば、其れは嫌いの故である。私は遠慮が過ぎる位気が弱い。私は陰でも未だ曽て友人を呼捨てにした事がない。口は勿論筆に於ても先輩には、さん、と云ふ字を用ひ、君、と呼んだ事はない。今より十年も前既に秋山弁護士が、故鳩山博士を捉へて、オイ鳩山君サー出廷ろふよ、と云ふて背を叩いたのを見て、其の偉ひに驚嘆した事が、私の一つ話になつてる、位の男ではあるが、此問題に関しては、私は先輩と友人を一束にして来ても喧嘩をして見度いと思ふ。 火事があるポンプが来る。人が死ぬ棺桶が来る。喧嘩がある弁護士が来る。世も斯様に進歩したら、人間も嘸便利であろうと思ふ。私は努めて刑事弁護を断わるが、ストライキ及び爆発物に関する無料弁護は営業科目に加へて居る。従つて此等の記事が新聞に出ると必らず、忘れざる限り、葉書を出す。私に時と金とが充分にあつたなら、数種の新聞を購り揃へ、毎朝欠かさず之れを読んで、同情すべき事件者に一々権利伸張の勧誘葉書を奮発し、気強く感じて喜ぶ顔を想像して見度い。我々弁護士の正に為すべき天職は外には無い。 ■ ■ ■ ■ ■人はいざ知らず、自分では此雑誌も段々整ふて来る様な気がする。雑誌はいざ知らず、自分の心は段々落付いて来る。本号は殆んど本号以後の編輯振りの其前例を示すもので、先づ大体八頁を原則とし、初頁上二段は私が刃渡りや梯子乗りを試み、下段は斯んな類を集め、次頁三頁六頁は私の好いた寄書投書のない時に、手製の判決批評で埋める。四頁五頁は法曹界たると人間界たるとを問はず人物事業の批評、知人の紹介、逸話奇談等で持切り度いと思ふ。七八頁は内外の広告を満載し度く、若し夫れ欄外文学に至つては、正に是れ本誌の誇る独特にして、二七のノドは売文社の堺君が、三六のノドは平民医学の高木君が、其他は山崎が受持つ事とし、満艦飾、錦上、花、有誌以来のレコードを破り、ウンザリする程各自の広告や気焔を載せんとぞ思ふ。 ■私の知人に、一生本を読みに生れて来た山田嘉吉先生がある。大学教授の一大敵国能く豈弁を好む若宮卯之助君がある。経済学者の魔屈淵叢たる売文社の一連がある。併し交友十年二十年の今日では、其云ふ所説く所書く処大概は推測も出来決論も解り、敢て驚異の目を見張つて耳を傾ける様な事が無くなつた。総て其人本位の雑誌が、二三号にして直ぐに厭になるは全く此理に外ならぬ。十年此方人の説を聞いた事のない私、神武以来本を買つた事の無い私には、偏に読者諸君の寄稿を歓迎するの智慧がある。斯くして初めより品切れであるべき筈の此雑誌が永遠に種の尽きざるは蓋し偶然ではない。 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に修正した。> <底本は、『平民法律』第6年5号1、5頁。大正6年(1917年)6月。>
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官庁注文書人民命令書 官庁注文書 二経丙第四一八号 貴大学発行の社会主義研究購読致度に付七月一日分より当所宛発送相成度 大正八年六月廿八日 第二師団経理部 印 平民大学 御中 人民命令書(右返事) 甲第一号 社会主義研究七月一日分より販売致度に付代金前払相成度 大正八年六月卅日 平民大学 印 第二師団経理部 御中 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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平澤均治君と磯部尚君と ▽平澤君と磯部君とは似而非なるものなり、両者共に弁護士中有数の美男子にして一見直ちに妻君の容貌を想像せしむるも、一は即ちボツチヤンに類し他は即ちヤンチヤに属す、平澤君の生命は敢て道徳を月並せず頻りにアーメン臭からざるに在り、磯部君の本領は其才の寧ろ軽薄ならざると其気の恰もヅボラざるに存するが如し。 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>