約 1,001,259 件
https://w.atwiki.jp/kagura_mutsuki/pages/16.html
必殺技龍縛旋(4タメ6+A or B) 龍刃翔(2タメ8+C) ディストーションドライブ龍覇・獄焔塵(4ため1236+C) 龍皇・斬牙殴衝(構え中28D) アストラルヒート黒龍天翔雷刃(236236+C) ドライブ技5D龍破衝(5DA) 龍戟爪(5DB) 屠龍連斬(5DC) 2D砕龍撃(2DA) 龍閃剣(2DB) 臥龍双破(2DC) 6D龍牙迅(6DA) 龍影迅(6DB) 飛龍尖撃(6DC) [部分編集] 必殺技 龍縛旋(4タメ6+A or B) 多段ヒットする小型の飛び道具を前方に発射する。ヴィーヴル! 弾はまっすぐ前方に飛び、進むごとに加速していく。カグラがダメージを受けるか規定以上のヒット数を受けると消滅する。 A版 画面半分程度しか飛ばないが、その分隙が少なめ。 B版 基本的にはA版と同じだが、発生が遅く隙も大きいものの弾の大きさとヒット数が大きい。 遠距離で差し込まれないことを確認した上での牽制、近距離における固めの継続、起き上がりへの重ね等に使う。 上手く近距離で重ねられた場合は、D派生で崩すチャンス。豊富な択からの大ダメージを狙ってやろう。 ヒット数は画面を進んだ距離に反比例する。 読みは「りゅうばくせん」。略称は縛、龍縛、弾など。 龍刃翔(2タメ8+C) 空中に飛び上がりながら剣を振り上げる無敵対空技。ファフナー! CH時や、一段目のラピッドキャンセルからコンボにいける。 範囲、発生ともにこのゲームの無敵対空技としては相当な強さを持つ。この技で安易な飛びを咎めるだけでもかなりのプレッシャーを与えられる。 読みは「りゅうじんしょう」。 [部分編集] ディストーションドライブ 龍覇・獄焔塵(4ため1236+C) 地面を削りながら切り上げ、衝撃波を放つ。リンドブルム! 無敵あり。ただ、攻撃判定発生前に消えてしまうので、コパンで潰されたり、カウンターから大ダメージをもらってしまうことも。 反撃は中々もらうことがなく、発生は2フレと脅威の速さ。判定が横に強いので、龍刃翔を恐れてダッシュしてくる敵を追い払うのにちょうどいいかもしれない。 OD中は性能が強化。衝撃波を放った後、龍縛旋のような衝撃波を2回放つ。 読みは「りゅうは・ごくえんじん」。 龍皇・斬牙殴衝(構え中28D) 大剣を地面に叩きつけ、真上に衝撃波を出し相手を吹き飛ばす。ニーズヘッグ! 地上構え中は構え派生できるタイミングになってから出せるので少し出が遅いが(D→ちょっと待って28D)、 空中構えからは即座に出せる(D28D)。コマンドは他のため技のように斜め入力で代用できる。エリアルの〆に。 読みは「りゅうおう・ざんがおうしょう」。 [部分編集] アストラルヒート 黒龍天翔雷刃(236236+C) 剣に強大なエネルギーを纏わせ、一刀両断する。 アークおなじみの一撃必殺技。 無敵が長いが発生が遅く、ガードされれば反確。 3Cなどから簡単に繋がる。バー対として使う機会も無くはない。 読みは「こくりゅうてんしょうらいじん」。 [部分編集] ドライブ技 Dボタンで構え、構え状態からA~Cボタンで派生攻撃を行う。 構えは立ち構え(5D)、しゃがみ(2D)、前(6D)の3種類存在し、それぞれ派生技が異なる。 構え派生攻撃がヒット・ガードした後、違う構えに派生できる。別の派生へのキャンセルは1コンボ中に1回限り。 派生技は必殺技でもキャンセルが可能。CT、ODキャンセルは不可 空中で構えると急停止、ゆっくりと落下する。A~C入力で派生した時、地上に高速落下しそれぞれの攻撃を行う。構え入力に6(3)、4(1)の方向にレバーが入っていると、それぞれの方向に向けて落下する。 また、前に入れた場合、落ちる方向は同じでもいれこむレバーの方向(3,6)で微妙に角度が違う。 構え状態で一定時間経過で自動解除。その他構え中に4Dで構えキャンセルが可能。(キャンセル動作は長め) 構えた後、派生ボタン(A~C)を押しっぱなしにしていれば最速で構え派生を出してくれる。構える前から押しっぱなしにしていても派生してくれる。 2Dを出した後、3Dに入れていた場合は6D、1Dの場合は5Dが発生する。これを利用すればコンボに龍刃翔を組み込みやすくなる。 5D 龍破衝(5DA) 大剣を地面に勢い良く投げつけて突き立て、盾のようにしながらタックル。ヒュドラ! 動作中に上中段スーパーアーマー。地上ヒット時、よろけ効果。 fc対応。ダッシュ バクステキャンセル可能(前ダッシュ時微不利)。端バウンド。同技補正あり。 途中からガードポイントが発生し、攻撃を取りつつfcを決められるというおいしい仕様である。ただし下段と投げには滅法弱い。 2DBガード2DB 5DAとやると2DBを直ガされるか発生の早い下段で暴れられない限り割られることはない。ちなみに直ガには5DBが有効。 龍戟爪(5DB) 相手を掴んだ後、大剣を軸に飛び蹴りを放って吹き飛ばす。ドラク! コマ投げ。リーチはそこそこ。カグラの崩しの要であり画面端付近で決まれば大きなリターンがある。 飛び蹴りを当てた瞬間に空中構えに派生できる。 屠龍連斬(5DC) 剣をぐるんぐるん大回転、相手を後方に大きく放り投げる。ラハブ! 発生が早くコンボに組み込みやすいが、相手を後ろに飛ばしてしまうのでクセがある。端位置入れ替えコンに活躍。 頭属性無敵あり。同技補正あり。 2D 主に崩しとして使える技へ派生 砕龍撃(2DA) 飛び上がって剣を叩きつける中段技。ヴリトラ! 緊急受身不能の叩きつけダウン効果。コンボパーツとしても優秀。ただし同技補正あり。 派生した瞬間から足属性無敵と投げ無敵が発生する。無敵の種類が5DAと対になっている。 龍閃剣(2DB) 大剣を地面に引きずりながら地面を滑走し、足元を二度斬り払う。シルシュ! 下段で2ヒット。2DAの対の選択肢になり発生も早めだが、緊急受身可能なのでコンボにいくにはRCが必須。 ドライブの択はこの技以外ジャンプですぐ回避されてしまうので、相対的に有用になってくる。 端ではこの技で〆、A縛を重ねていくのが基本。 臥龍双破(2DC) 大剣で斬り上げた後、地面に突き刺す。ナーガ! 2段技で、2ヒット目のみ下段。 豪快な見た目とは裏腹に発生が早く、コンボパーツの要となる。同技補正あり。 6D 龍牙迅(6DA) 前方に突進し大剣で足元を斬り払う。ダハーカ! 一定距離走るか相手に接触で攻撃に派生。 ヒット時小さく浮かせ効果。コンボパーツとしても使える。 龍影迅(6DB) 前進しつつ、地面に手をつきながら大剣で足元を斬り払う。アジュタハ! 突進中に相手を裏回れる突進技。裏に回る際、さりげなくほんの一瞬だけ無敵がつく。 画面端でも相手の裏に回る。 fc対応。 飛龍尖撃(6DC) 大剣にオーラを纏わせ、大きく前進しながら真横に突き出す。ワイバーン! かなり横への攻撃判定が長い突進技。ただし下の判定が薄すぎて低姿勢技を合わせられると非常に辛い。 弾属性スーパーアーマー付き(許容ダメージ1500)。 CH時、大きく吹き飛び壁バウンドして目の前まで跳ね返ってくる。
https://w.atwiki.jp/senrankaguraevpvp/pages/82.html
「我が名は神楽…全ての妖魔を滅せし者…」 名前 神楽 所属 無所属 血液型 不明 誕生日 9月22日 身長 173cm B/W/H 95(I) 55 87 好きな食べ物 不明 秘伝動物 無し 武器 空間断絶 段位50のステータス 体力 1520 攻撃力 300 防御力 183 キャラクター概要 +... 閃乱カグラ2-真紅-よりゲスト参戦。 『全ての妖魔を滅せし者』の二つ名の通り、妖魔を滅ぼす為に太古に産まれた存在である。 100年に1度、『転生の珠』から幼子の姿を借りて現れ、強大な妖魔の体内にある『赤珠』を摂取する事で成長し、 最終的には真神楽と言われる今の姿に覚醒する。忍とは似て非なるものであり、そもそも人間ではない。 空間、次元を自在に操る力を持っており、それを駆使してこの世界にやってきたと思われる。 EV(SV)世界線に存在する『リボンの子』とは厳密には別存在であり、あくまで紅蓮の少女達〜真紅の世界線の『神楽』なのだろう。 なお本人に事情を説明させると3日はかかる上に美味しいものを要求されるので要注意だ! 熱帯性能 +... 高い移動性能を活かして遁術を駆使して戦うパワーキャラ。攻撃力と忍耐力が高い代わりに紙装甲と清々しい火力振りなステータス持ちである。 とにかく遁術の性能が図抜けており、通常△は忍耐力無視かつ破格の射程と持続持ちの飛び道具、 溜め強は攻撃判定の塊を纏いながら自在に動ける飛翔技と、下位〜中堅キャラ相手ならこれだけで終始制圧出来る程。 また地上ショートダッシュの移動速度、距離はトップクラスに優秀であり、攻撃の遅さに対してとにかく早い。 秘伝1、秘伝2は共に素直な性能で使いやすく、絶秘伝は威力、攻撃範囲、拘束力全て優秀。 それと引き換えに弱攻撃関連は確定怯みでない飛翔技やら、硬直の長いワープ攻撃などととにかく癖が強い。 旋回性能の低さもあってついつい遁術に頼ってしまいがち。そして遁術は高性能だが後隙がでかいため、ぶっぱし続ければ死が待っている。 神楽の名に相応しい性能を引き出すには、JCD、ディレイ入力の徹底、忍耐力管理といったプレイヤーの指とスキルにかかっている。 ポテンシャルは異常なまでに高く、上手く使いこなせば上位のぶっ壊れキャラにも決して退けを取らない奥深さを持っている。 妖魔に敗北し爆発してしまうか、本当の意味で全ての妖魔を滅せし者になれるかは、あなた次第。 技解説 【共通技】 +... ・J□ 真上の空間を斬り裂く攻撃。なのだが、真上に判定が強いわけでもない。 空中の近接弱攻撃としては異端で、一切の誘導能力を持っておらず、相手とどんな位置関係であっても決して追尾しない。 なので、素で当てるのは他キャラに慣れていると難しい。しっかりショートダッシュやジャンプで近づいて狙う事。 忍耐力が切れている相手に当てると高く打ち上げるが、すぐに受け身を取られてしまう為、後述のJ溜め□にはどうしても繋がらない…甘ぁい! J溜め□ 真上にワープしてから逆立ち状態で地面方向に空間を斬り裂く。当然真下への攻撃判定が強い。 ワープ中、攻撃を出し切るまでのどこでも空中ダッシュ、ジャンプでキャンセル可能。 前述のJ□からは受け身狩りの形でしか繋がらないので実戦ではまず当たらない。素当てもまず無理。 どちらかというと攻撃技としてより移動技と割り切った方がいい。簡単に相手の上を取れるので活用法はそれなりにある。 一応忍耐力が切れた相手に当てると地面に叩き付けるようになる。…のだが、地上で受け身を取られるのでJ△に繋がらない。 ・J△ 球体を纏いながらの落下攻撃。所謂ドッスン。 威力はそれなりに高い部類に入る上、攻撃範囲が狭いといった欠陥もない。積極的に使っていって構わない。 発生がやや遅いのが難点だが、これで忍耐力を一時的に0に持ち込んでから弱攻撃で殴りにいくのが基本になるため、 特に陽状態になってからお世話になる。 ・通常△ 無数の棘を一直線に放つ飛び道具。『真紅』でいうカグツチにあたる攻撃。ガード不能攻撃。 ショートダッシュ何回分とかそういった次元を超えた長い射程を持つ。発生は充分早い上に出始めのモーションもかなりわかりにくい。 しかも確定怯みで複数ヒットかつ、強いノックバック効果を持ち、最終段の爆発で相手を吹っ飛ばす。 ジャスガされようがそのまま貫通してダメージを与える為、ガード関連は恐るるに足らず。 とにかく距離離し、攻撃が届かない距離での硬直狩り、着地狩り、リミブレ狩り、 呼び出し狩り、ショートダッシュの移動先狩り、起き上がり移動狩り、秘伝へのお仕置き…と 相手の攻撃を咎める性能に秀でている。当てた後は距離が離れるものの、ショートダッシュを駆使すればあっという間に近づけるため、 忍耐力をこれで0に持ち込むといった用法にも充分応える。何なんだこの技。 その代わり、火力はあまり高くなく、ゲージ回収量もそんなに多くない。 そして外すと長い硬直を晒すハメになるため、間違いなく痛い反撃を受ける。近距離でスカると下手すると一部の秘伝すら確定するレベル。 また、しっかり相手と一直線上で撃たないとカスヒット扱いになり、途中で受け身を取られてしまう恐れもある。 牽制として撃つのはちょっと危険なため、しっかり相手の状態を確認してから撃とう。 ちなみに対空性能は無いに等しい。地上の相手へ撃つ事。さりげなく壁を貫通するので、地形に隠れて撃つのも手。 なお秘伝やリミブレでキャンセルすると途中で消えるため、厳密には飛び道具ではなく、 あくまで仕様としては『リーチが長い近距離技』扱い。忍の常識ではとても計れない破天荒な技すぎる… ・溜め△ ・起き上がり攻撃(ダウン中に□or△) ・起き上がり回避(ダウン、地上怯み中に×) ・ダッシュ攻撃 ・飛翔乱舞 閃乱 +... □~□□□□ □□(□)△ □□□□△ □□□□□ 陽乱 +... □~□□□□ □(□)△ □□□(□)△ □□□□(□連打) □□□□□ 陰乱 +... □ □派生△ 秘伝忍法 +... **秘伝忍法 壱「」 **秘伝忍法 弐「」 **絶・秘伝忍法「」 小ネタ・テクニック集 +... 対策 +... 絶秘伝がなかなか高性能。 - 名無しさん 2016-05-23 02 32 16 基礎火力はあるが、通常攻撃の威力が微妙なのかイマイチ火力がでない気がする。 - 名無しさん 2016-05-23 02 36 03 攻撃の範囲が全体的に広いが、動作がもっさりしてる。複数での対戦なら活きるかもしれないが - 名無しさん 2016-05-23 02 38 42 通常攻撃の忍耐値の削り値が優秀。 - 名無しさん 2016-07-21 13 09 19 対戦時は遁術と転身前の□□△は優秀。転身後は攻撃する手段がほぼなくなる。攻撃の遅さと優秀な派生技がない。体力の低さも相まってガンガン押してくる相手は対処が難しい。距離を空けての遁術頼りになりがち。 - 名無しさん 2016-09-16 13 05 17 中古で買って今更感ぱないけど雑魚狩りがしやすい。 - 名無しさん 2017-01-08 17 44 25 陽□□□□△は判定がかなり強く、置いて使うと実はそれなりに有用。 - 名無しさん 2017-03-22 14 37 39 名前
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/536.html
(投稿者:怨是) Sep.15/1943 今日はシュナイダー教官の叱責を受けてしまった。 頬と額に、まだ痛みが残っている。 人とMAIDは姿形はそっくりなのに、何故こうも違ってしまうのだろうか。 私はただ、ただ、教官の片腕の代わりになりたいだけなのに…… 少しの恋心と、教官の力になりたいだけなのに。 ゼクスフォルト少佐とシュヴェルテは、あんなにも仲良しなのに。 頬が痛いし胸も痛い…… 感情の整理がまったくつかない。 (後略) 作戦が終わり、軍用車両で本部へ帰還した時の話だった。 ――アシュレイ・ゼクスフォルト。 エントリヒ皇室親衛隊所属。階級は少佐。 シュヴェルテの担当官であり、まばゆい銀の長髪と端正な顔立ちは、親衛隊一の色男とさえ云わしめた。 「私は、お役に立てましたか?」 表情を曇らせるシュヴェルテに、ゼクスフォルトが柔和な笑みでフォローを入れた。 粗雑な言葉だが、確かな包容力がある。 「当たり前だろ。俺が教えたんだ。役に立てない訳が無いさ」 「ありがとうございます、教官。 しかし、教官の援護射撃が無ければ危うかったと思います……精進しますわ」 「MAIDだって生きてるんだ。ミスはあるだろ。いいんだよそれで。また俺が守ってやる。 おっ、そうだ。明日から一週間の休暇だ。お気に入りのカフェに案内するよ」 「楽しみにしております。では早めに床に就かねばなりませんね」 恋人のようなやり取りでゆっくりと車を後ろに進める。 砂利が擦れる音に紛れず、会話は極めて和やかに行われる。 駐車しつつ談笑する二人を横目で見ていたジークフリートは、面白くなかった。 自分にはここまで親密な関係が無かったからだ。 “生まれて”この方、シュナイダーとの関係はただの上司と部下。 それも悩み事の相談なども一切存在しない、周囲から見れば非常に冷淡なものなのである。 犬と飼い主でさえ会話する。 もはや道具と持ち主か? 否、世の中には銃に話りかける兵士だって居るのだ。 ――私だって、あれくらい仲良くなりたい。 心に秘めたる嫉妬を、ジークは否定できなかった。 「ゼクスフォルト少佐ならびにシュヴェルテ。私語は慎め。 貴様らのだらしない態度にジークフリートがお怒りだぞ」 「うッ、失礼いたしました! 軽率でありました!」 そんな二人を、こちらの運転手の士官が咎めた。 ジークは急いで眼を逸らすが、その様子もまた誤解を生んでしまうのである。 彼らは焦燥と若干の苛立ちを含んだ面持ちで口をつぐむ。 「だらしのない奴だ。注意したのが私だったから良かったものの……」 別に恋路を邪魔するつもりは無かった。 無いものねだりをしていただけである。 ああ、シュナイダーもああいう風にフォローしてくれたら…… そのシュナイダー少佐は、ジークの隣に座っていた。 隻腕にして隻眼。 無表情にして無愛想。 戦闘中の事故によって欠損してしまった右目と右手はいかんともしがたく、車両の運転は代理の士官に行わせるのである。 彼は鉄仮面などと形容できたものではなかったが、この瞬間くらいしか隣に並ぶ時間は無かったのだ。 報告に行くときならまだしも(それでもゼクスフォルトとシュヴェルテは隣に並ぶのだが)、 せめてプライベートの時くらい隣にいてくれたって良いのではないだろうか。 自然と、憮然とした表情へと変えて行くジークをバックミラー越しに見た運転手が振り向く。 「お怒りはご尤もですが、何、彼らも反省しておりますよ。 どうかご容赦くださいませ」 違うと反論したいのに、いつも声が出なかった。 咄嗟に出た小声も、むしろ両目に篭った不機嫌の塊のせいで別の意味を成してしまう。 運転手にはどうやら“ああ”と聞こえたようだった。 「流石は我等が英雄。寛大な心をお持ちでらっしゃいますね」 皮肉ではないのだろうが、盛大な勘違いに胸が痛む。 そうこうしているうちにサイドブレーキを引き、ギアーをパーキングに。そしてキーを引っこ抜く音が聞こえてくる。 「お疲れ様でした。私はこれより駐車後のチェックをいたします」 「……ご苦労」 シュナイダーがやや間を空けて車のドアを開ける。それに続いてジークもドアを開けた。 空はとっくに日が落ちて、荒涼とした空気を月が照らしていた。 レンガ造りの兵舎の扉を左手のみで器用に開けたシュナイダーに、小走りで追従する。 規定時間までに、タイプライターで報告書を仕上げねばならない。 いかなる私語も許されないのはここでも同じ事であり、『カタ……カタ』と断続的な音を立てて報告書が書き上げられる。 ここは代理を用意することが出来ないため、必然的に残った左手のみで仕上げる事となる。 利き腕を失った今では、精一杯のリハビリを以ってしても両腕があった頃の倍の時間まで縮めるのが精一杯なのだ。 手書きなら、私が文鎮代わりになる事もできるのに…… 「代筆だって教えていただければ私が、」 「――貴様」 思わず口をついて出てしまった言葉に、咄嗟に次の言葉を両手で覆う。 完全に、やってしまった。 タイプする音が止まり、若干の沈黙が背筋を乱雑に掴む。 唾液の分泌が止まり、耳鳴りの群れが遠くから行軍を始めた。 鳥肌は寒さだけのせいではない。 「……私語は厳禁だと以前教えたはずだが」 もう駄目だった。 胸倉を沈黙に捕まれるような感覚に襲われ、硬直列車が心理駅に到着し、緊張乗客がホームへと雪崩れ込む。 身の毛がよだって凍りつく。 「それに、代筆の手順を学んだ上での発言か?」 まだ機械の熱が残る報告書をブリーフケースに丁寧に仕舞いこみながら、シュナイダーはこちらを振り向かずに咎める。 席を立ち、片手で椅子を動かす。 以前、椅子を戻すのを手伝ったことがあったが、無言で振り払われただけだった。 「……で、でも、しかし教官。私は……」 椅子を戻し終えたシュナイダーがこちらに振り向く。 眉間に寄せた皺からはその感情を俄かには察し難かったが、それが決してポジティヴなものでないことは察知できた。 上の歯と下の歯の震度が4を超えた所である。 ブーツの音がこちらへ近づく。 眼はしっかりとジークの顔を見つめ続けていた。 表情は、より険しさを増して行く。 「……己の慢心が口を緩めたか」 「ぃ、ぃゃ、そういうわけじゃ……」 沈黙がエターナルコアを鷲掴みにする。 「余計な手出しが大きなリスクが伴うことも教えた筈だ」 蛍光灯が、両者の表情をより青白く照らす。 暖色のレンガの壁さえ灰色に見えた。 「ですが、ですが、いつも、不便ではありませんか……? 私は、戦いだけでなく、他のところでも、お力になりたくて……」 「馴れ合いなら――」 「――私だって、パートナーでありたいのです。きょ、教官の心の支えになりたくて、だって、わっ、私、私は……」 ……途切れ途切れに、言葉が紡ぎ出される。 「私は教官をもっと知りたい。もっと好きになりたいのに……」 ……。 張り詰めた空気は、シュナイダーの左拳の一撃となって爆発した。 右頬に突然の衝撃を受けたジークは床に倒れこみ、暫く手で押さえるしかない。 鈍痛が頬骨に響く。 「MAIDが恋愛感情を持つなどと……そんな軟弱な考えを何処で知った」 「ぅ……」 「……立て」 顔を上げたジークの眼に、眼を見開いたシュナイダーの顔が映りこむ。 無言のまま、胸倉を掴もうとするシュナイダーはそのまま右肩を引いたが、 直後に右肩を見、見開いた眼に苛立ちが篭る。 「立てと云っている! ッ――?」 右手で殴ろうとしたのだろう。 しかし、そこにあるべき右肩から先が無かったのである。 次に後ろ髪に剣山のような痛みが走り、上に引かれる心地がした。 直後に視界が上から下へと急降下する。 あとは床と額が衝突するのを痛みと共に実感するだけであった。 霞む視界を上に移せば、シュナイダーの見開いた左目と、震える左手。 そして息を荒くして上下する肩が見えたのだった。 「反省の意思があるなら立て。私は報告へ向かう」 ブーツの音が無機質に響き、苛立たしげにドアが閉じられる。 冷え込んだ空気は、ジークフリートの涙で視界と共に淀み始めていた。 ――およそ一ヵ月後の1943年10月28日。 シュナイダー教官は、ジークフリートがスパイを13名討伐した日に担当官の任を解かれる。 MAID育成や指揮における優秀な手腕を買われ、国際対G連合統合司令部からスカウトがかかった為である。 上官らの計らいにってエントリヒ皇帝による勲章授与式の日程とは重複を避けるも、体調不良を理由に欠席したという。 ジークに授与された勲章は、実際には柏葉・剣付騎士鉄十字勲章である。 帝都栄光新聞で発表された金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字勲章はこの時点では存在しておらず、新聞記事の内容を知った政府幹部が急ぎこれをギーレン・ジ・エントリヒ宰相に報告。 後に予想されるジークフリートの数々の武功に備えて製造することとなったという。 新聞は幹部から秘密警察を通して、これらを踏まえた修正案を伝達され、公には“後の武功に備えて前以て授与されたものである”と説明。 なお、翌日の記事では授与式にてGに見立てた赤い柱を一刀両断するジークフリートの写真が掲載され、 その鋭い太刀筋は映像メディアによっても発表されることとなる。 BACK ◆ NEXT
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/47249.html
登録日:2021/02/08 Mon 18 20 33 更新日:2024/07/11 Thu 23 32 06 所要時間:約 5 分で読めるニャ ▽タグ一覧 ※ご覧の番組はキラメイジャーです。 ありのままでいたい キラメイにゃ〜 クランチュラ スーパー戦隊シリーズ ネコカンリガニー マネキネコ邪面 ヨドンヘイム 怪人 戦隊怪人 戦隊悪役 招き猫 最高傑作 最高傑作(笑) 最高傑作の邪面師 本編最後の戦隊怪人 楠大典 猫 猫化 猫起こし 神前元 草野伸介 邪面師 邪面獣 闇の帝国ヨドンヘイム 魔進戦隊キラメイジャー ニャ〜ハッハッハ〜! 吾輩はマネキネコ邪面であるニャ〜! マネキネコ邪面とは、『魔進戦隊キラメイジャー』のエピソード41「ありのままでいたい」に登場する怪人。 この項目では彼が召喚を担当した邪面獣ネコカンリガニー についても紹介する。 ●目次 【データ】 【概要】 【能力】 【劇中での活躍】 【邪面獣ネコカンリガニー】 【余談】 【データ】 身長/186cm 体重/169kg 邪面/招き猫→様々な幸運を招くといわれる地球の置物 ハッシュタグ/#招き猫#最高傑作#作り手同士#猫だまし#猫起こし#キラメイにゃ〜#クランチュラ CV:楠大典 SA:神前元 【概要】 招き猫の邪面を被った邪面師。 邪面のモデルは首輪から「千万両」と書かれた大判と鈴をぶら下げ、左手がくっついた招き猫の首。 前回のハリガネ邪面の敗北もあってクランチュラはスランプになり、以前からそりの合わなかったヨドンナとの関係は更に悪化してしまう。 ひたすら強い兵隊を求めるヨドンナを見返すべく、自身の美学に則り誕生させた「最高傑作の邪面師」がこのマネキネコ邪面である。 【能力】 猫はワガママ。猫は気まぐれ。猫はよ〜く眠る。 人間をみ〜んな猫にして、気力を根こそぎ奪うクランチュラ様の最高最邪悪作戦ニャ〜! 猫だけに……ネコそぎ!! 首の鈴から放つ「招き猫ビーム」という紫色の光線を浴びせ、猫になった人間から気力をネコそぎ奪う「地獄ネコミミ作戦」を実行する。 猫人間の頭には猫耳が生え、人格も猫そのものになるのでロクに戦う事もできなくなってしまう。 …以上のように書いたが、地球の汚染や直接的な破壊には結びつかないので、「最高傑作」を名乗るには何とも微妙な能力の持ち主である。 猫人間もその場でゴロ寝したり、動くものにじゃれたりとほぼ人畜無害の存在になっており、社会の混乱を除いて大した成果は見込めなかった模様。 本人の性格も気まぐれかつマイペースであり、クランチュラの命令を無視して勝手に走り去ったりと大いに問題がある。 また水に濡れるのを大の苦手としたりと、弱点まで猫らしい。 【劇中での活躍】 N-22地区で大勢の人間を猫人間にした後、駆け付けたキラメイジャーにもオヤジギャグを言いながら襲い掛かる。 「何か緊張感のない邪面師だな」「クランチュラもスランプってかネタ切れかな?」とダメ出しされる中、背後から現れたクランチュラに激励される。 このマネキネコ邪面をナメてかかると、後悔するぞ! キラメイジャーをネコませてやれ!ヒヒ〜!! その直後にベチャットを召喚し、変身した6人と戦闘開始。 ベチャット達が劣勢になるとマネキネコ邪面は招き猫ビームを発射、レッド・グリーン・ピンクがその餌食になってしまう。 変身解除された3人の頭には猫耳が生えており、残ったキラメイジャーはその動きに翻弄されて戦闘どころではなくなってしまった。 マネキネコ邪面はパニックになるキラメイジャーを尻目に眠気を覚え、咎めるクランチュラに屁を浴びせると走り去った。 猫は気まぐれ!猫はよく寝る!猫はオナラもするよ〜! くぅ〜…とんだ最高傑作!何という期待外れ! 対策を講じねば……! その後、どこかの屋上でゴロ寝していたところをヨドンナに蹴り起こされ、悪漢鞭でしばかれてパワーアップ。 燃えてきたニャ〜!! さぁ、我がしもべ達よ! ひっかけ!引き裂け!引きずり回せ! ニャ〜!! 瞳が真っ赤に染まり、口調も尊大になったマネキネコ邪面の命令で猫人間達は一斉に凶暴化。 その影響で闇エナジーが規定量に達し、ヨドンナは邪面獣ネコカンリガニーを召喚する。 マネキネコ邪面はベチャットを引き連れ、B-25地区でキラメイジャーと再び交戦。 凶暴化した瀬奈 小夜に手こずるイエローとブルーを変身解除に追い込むが、そこにクランチュラの猫だましならぬ「猫起こし」で意識を取り戻った充瑠が現れる。 充瑠の猫起こしで瀬奈 小夜の意識も戻り、若干猫の仕草を残しながらも変身すると「キラメイにゃ〜」として名乗りを上げた。 マネキネコ邪面は猫モードに入った5人の動きに翻弄され、更にギガントドリラーが地下から掘り出した温泉が頭上から降り注いでパニックになってしまう。 お湯か!?濡れるのは嫌いニャ!! そのスキにゴーキラメイジャーになった5人の力を溜めてゴーキラメイレッドが放った「スパークニャングフェニックス」を食らい爆散した。 スピンオフ『ヨドンナ』では魂管理局を訪れており「悪行はヨドン皇帝の命令で行ったもの」と情状酌量が認められヨドンヘブンへ旅立っていった。 【邪面獣ネコカンリガニー】 来い、邪面獣!街中ズタズタに引き裂いてやりな! 身長/50.2m 体重/1990.8t 闇獣/リガニー 邪面/猫缶→猫用のウェットフードが詰められた地球の缶詰 ハッシュタグ/#マネキネコ邪面#猫缶#キラメイドリラー#ワンダー温泉#同時フィニッシュ SA:草野伸介 クランチュラが闇獣リガニーに地球の缶詰「猫缶」を模した邪面を被らせた邪面獣。 邪面のモデルは唸る2匹の猫の口元にプリントされた目と、魚の尻尾が舌のようにはみ出した缶詰。 猫のように身軽な動きで戦い、両腕の爪による鋭いひっかきや伸びる舌による中距離戦を得意とする。 ギガントドリラーの攻撃も食らった瞬間にバク宙し、威力を殺すなどテクニックにも優れている。 召喚後はギガントドリラーと交戦し、素早い動きで優位に立つが、ギガントドリラーはドリジャンに変形すると、地下深くに潜って温泉を掘り当てる。 案の定水が苦手なネコカンリガニーはパニックを起こし、最期はマネキネコ邪面が倒されるのと同時に、「ワンダードリルブレイク」で貫かれ爆散した。 【余談】 担当声優の楠大典氏は『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の忍者ムジナ以来に戦隊シリーズに参加を果たした。 ネコを始めとしたネコ科がモチーフの特撮怪人は多くいるが、招き猫や猫缶の怪人は間違いなく史上初。 翌年の『機界戦隊ゼンカイジャー』にも似たような能力を持つ怪人が出てくる。 ただし、マネキネコ邪面が猫耳が生えるだけだったのに対し、あちらは某有名擬人化猫ミュージカルおよび映画よろしくネコ人間そのものに変わるため軽くホラーなものになっている。 猫は気まぐれ!猫はよく寝る!猫は追記・修正もするよ〜! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 好き勝手やりなさる……!!! -- 名無しさん (2021-02-08 18 32 39) マネキネコ邪面の声を関 智一さんが演じると言うイメージがあった...だって、妖怪 ネコマタっぽかったから....。 -- 名無しさん (2021-02-08 20 17 44) クランチュラさえその気になってたらレッドはやられてたので最高傑作と言うのもあながち間違いではないと思うが -- 名無しさん (2021-02-08 21 21 00) キラメイジャーの半分を実質戦闘不可能にしたしな。 -- 名無しさん (2021-02-08 22 31 18) 充瑠は置いといて、キラメイ女子に猫耳を付加させたコイツの偉業さに感服だ···!!(感涙) -- 名無しさん (2021-02-10 00 25 55) ↑充瑠も可愛かったから許す! -- 名無しさん (2021-02-10 12 01 08) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/eva-ss/pages/104.html
353 名前:1[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 16 10 36 ID ??? 天狗道。地元でそう呼ばれる山道を登ること、およそニ、三十分といったところだろうか。 滴る汗や、飛び交う羽虫、けたたましい蝉の鳴き声に私は気が変になりそうだった。 事の発端は、休暇で訪れた旅館での私の発見。 ミサトが夕食も待たずに酔い潰れ、 シンジはイヤホンで両の耳を塞ぎ、座布団を枕に横になっていた。 そんな部屋の中にあって、私は退屈で仕方がなかった。 ふと、この土地の評判を思い出した私はベランダへと向かった。 ベランダに出ようとガラス戸を開くと、真夏の外気が私の体を室内へ押し戻そうとしたが、 絶景と評されるこの土地の景色を望見しようという私の意思がそれを打ち破った。 ベランダの縁に手をかける。辺りが一望出来た。 陽が傾き始め、にわかに赤味を帯びた景色は私を圧倒するのに充分な美しさだった。 この国に育ったわけではない私だったが、ノスタルジーを感じずにはいられなかった。 目の前に広がる絶景を前に、この時ばかりは日々の疲れとかそういったものも消し飛んだ。 遠方に連なる山々。手前に目をやれば理路整然とした田畑が一面に広がる。 旅館のすぐ近くを流れる川は舗装されておらず、父子が釣りを楽しんでいた。 こうした風景に感動を覚える自分に少し驚きもし、また同時に何故か安心もしていた。 辺りを見渡すうちに、蝉の鳴き声が一段とうるさい、他に比べればちっぽけな山が目に入った。 それは旅館からすぐの所にあって、山というより小山と言った方が適切に思えた。 私は夕陽に照らされるその小山の中程に、何か異質な物を見た。 目を凝らすとそれが人工物であり、所謂神社であろう事がわかった。 緑一色の中にそびえるそれは、この時の私にはひどく神秘的に見えた。 行ってみたい。幸い山はちっぽけに見えた。何より、私は退屈だった。 私は部屋に戻ってシンジを叩き起こし、ミサトに出掛ける旨を伝えた。 ミサトは唸り声のような音だけを返した。私はそれを返事と取った。 私達は部屋を飛び出した。 その後山の麓に着いて、偶然出会ったおばあさんに神社までの経路を聞き、そして今に至る。 354 名前:2[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 16 12 35 ID ??? 最初の十分こそ自然を満喫するだとか、そんな気分でいた私だったが、 今となってはその自然が鬱陶しくてたまらなかった。 「アスカ。もう下りようよ」 後ろでへばりながらもついて来ていたシンジが言った。 もっとも、これでもう四回目にもなるが。 「うるさいわね。ここまで来たら最後まで行くわよ」 私は意地になっていた。後ろでシンジの三度目の溜め息を聞いた。 辺りは陽も落ちかけ、少しずつ夜の空気へと移り変わっていた。 それから少し道なりに進むと、地面剥き出しの山道は石段へと変わり、 程なくして私達は目的地へと辿り着いた。 小さな鳥居があり、古びた賽銭箱があり、そしてちっちゃな社がある。 ちっぽけな山の、ちっぽけな神社だった。 旅館のベランダから眺めた私はよくここが神社だとわかったものだ、と不思議に思った。 それ程にちっぽけなものだった。 私達は社の周りを回り、いつ書かれたかもわからない絵馬を見て、それから境内を見渡して、 それでも神秘的なものなんて何もない事に落胆し、石段に腰を降ろした。 ひんやりとした石の感触は心地よかった。 木々の間から射す陽は濃い橙色となって、今が黄昏時である事を知らせた。 「なんにもないじゃない。つまんないわね」 「アスカが来ようって言ったんじゃないか」 「うっさいわね。男のくせに」 反論を飲み込む音だけ残してシンジは黙り込んだ。 蝉は幾分静まり、暑さも和らいで過ごしやすくなってきた。 私達は並んで座り、手に寄り付いてきた蟻を払ったり、 手元にあった小石を石段の下に向かって投げたりなんかして過ごした。 「アスカ。見てよ」 登山からの体の火照りも冷めたところでシンジが言った。 「なによ」 そう言ってシンジが指差す先を見ると、 数匹の猫が社の屋根の上に集まっているのが目に入った。 355 名前:3[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 16 15 59 ID ??? よく見ると親子のようで、母猫と思しき猫は私達を警戒しているようだった。 私達は寸刻、その猫と見つめ合った。 気付けば黄昏時もとうに過ぎていよいよ夜が迫っていた。 「……帰ろっか」 折れた様にシンジが言った。 「そうね」 私達は疲れから重くなった足を上げて石段を下り始めた。 帰りの道は暗かったが、澄んだ空気は涼しく、 蝉の鳴き声はいつしか心地好い程度になっていた。 月明かりが木々の間から漏れ射し、幻想的な雰囲気を醸し出していた。 「いたっ!」 突然、斜面を滑る音と共に、私の後ろを歩いていたシンジが尻もちをついた。 「何してんのよ!鈍臭いわね」 「ご、ごめん」 私が咎めるとシンジはすぐに立ち上がり、ズボンの砂を払った。 それから手首を数回振る仕草を見せると、私に先を促した。 私達は再び山道を下り始める。全行程の三分の二程は既に下っただろう。 それからは黙々と道なりに下り、あっという間に旅館の前まで辿り着いた。 シンジは疲労困憊といった様子で私の後に付いて来ていた。 旅館を前にして短い橋に差し掛かる。下を流れる川に夕方見た父子の姿は無かった。 この橋を渡り切ればすぐに旅館の玄関口だったが、私はその前に足を止めた。 「悪かったわね」 「え?」 私の言葉でシンジも足を止めた。 「手首。痛いんでしょ?連れ出して悪かったわね」 「あ、いや、平気だよ」 文句の一つでも言われた方が楽なのだろうか。だが、こいつは言わない。 356 名前:4[sage] 投稿日:2009/07/25(土) 16 18 41 ID ??? 「嫌な事は嫌って言ったら?」 「嫌じゃないよ。楽しかったよ」 「本気で言ってんの?」 「うん」 特に何をしたわけでもなく、壮麗な名所へ行ったわけでもなく、 ただ汗を流して名も無い山を登って、ちっぽけな神社を見て、 そして下る時には怪我までして、それでも楽しかったとコイツは言った。 「アンタ、ほんとバカね」 私はシンジの返事も待たずにさっさと玄関口をくぐり、ミサトの待つ部屋へと向かった。 アイツが腹立たしいやら、よくわからなくて、とにかく一緒には居られなかった。 その後部屋に戻ると、すっかり酔いも覚めて、 私の言った事もすっかり忘れたミサトが居た。 シンジも揃ったところで説教が始まる。 自分はビールを飲んで眠りこけていたにもかかわらず、だ。 私は反論する元気も無かったので、黙してミサトの言葉を右から左へ流した。 説教が終わると私は浴場へ向かい、それから遅目の夕食をシンジと摂った。 私はひどく疲れていて、布団に入るとすぐに眠りに落ちた様に思う。 翌日、帰り支度も済んだ私とシンジはフロントでミサトを待っていた。 あの山からは蝉の鳴き声がやかましく響いていた。 釣りをしていた父子は母親を加えて今日はどこかに出掛けるらしかった。 虫採り籠を携え、家族は旅館を後にした。 「散々だったわね」 私はシンジの右手首に貼られた湿布を一瞥して言う。 「そうかな?」 「そうよ」 しばらくして化粧を済ませたミサトが現れた。 チェックアウトをミサトに任せる間、私は玄関口からすぐの短い橋へと出ていた。 雲一つない空から注ぐ陽光は肌に刺す程に感じられ、 風はなく、川のせせらぎとあの小山からの喧騒だけが耳に残った。 休暇としてはそんなに悪くなかったのかもしれない。そんな風に感じられた。
https://w.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/139.html
act.11 「……あれも破壊すべきだな」 エレが卵に視線をやる。 イザークはハッとした。あれは龍の卵だ。殻を破り、生れ落ちたならばシアナを狙いにやってくるだろう。 でも、まだあれは生まれてもいない命だ。それを奪うのは、イザークの中の良心が咎める。 だが。 刻印を持たず、シアナの苦悩を知らない自分に止める権利があるのか。 「隊長……」 善悪など分からない。シアナの行為が正しいとか正しくないとか、そういうことは分からない。 それでも、それでも、まだ生まれてすらない者の命を剥奪してしまうのは、断じて正しいことではないはずだ。 縋るような目でシアナを見るイザーク。シアナはハア、と息を吐いた。 「そうね。あれは卵だわ。でもあれが……龍の卵かはわからない」 「え……」 「気でも狂ったか? ここは龍巣。産み落とされたものは龍卵以外ありえないだろうに」 そんなことはシアナも分かっているだろう。龍に噛まれた部位から血がしたたる。傷ついた腕を押さえ、止血を行うシアナ。 「それは生まれてくるまで分からないわ。もしかしたら蜥蜴かもしれないし鳥の卵かもしれない」 「……貴様……」 「隊長……!!」 「そういうことよ。もうここにいる理由はないわ。帰りましょう」 それは、単なる気まぐれだったのか。 それとも部下の懸命な姿を見て故の慈愛だったのか。シアナは卵を見逃すことにした。 自分を庇った者の願いだ。……これくらしいしか聞き届けられないが、せめてもの行い。 三人は、そのまま山をくだりフレンズベルに帰還することにした。 なだらかな道を黙々と進む。イザークは二人の後ろから着いてきていたが、先程から口数が少なく、しきりに俯いてばかりだった。 重苦しい気配が、三人の上にのしかかる。 「あれでよかったのか。あの卵が孵れば、お前を狙いに必ず現れるぞ。……なんせ母龍を殺した憎い仇だろうからな」 「……そうね」 石粒を蹴って、シアナは俯く。 「もしあの時の龍がお前を殺しにきたらどうするつもりだ」 今更聞かれるまでもない。決まりきったことだ。 龍は、命を背負う覚悟があるかと問うた。 ああ、出来ている。この刻印を手にした瞬間から、私は、そう生きると決めた。 今までもこれからも。……自分は背負い続ける。十字架を背負い、戦い続ける。いつか自らが滅びるまで。 「その時は勿論――殺すわ」 自分の行く先は地獄だろう。 いや、もしかしたら既にこの世界が地獄なのかもしれなかった。 呪われた刻印を刻まれ、殺しを行い続ける自分は咎人であり、 その咎人に罪を与えるこの世界は、流刑地である。 咎人は赦されることなく、狩り手から死さえ与えられない。 永劫流転する責め苦は、耐え難き孤独である。それが罰なのだと、どこかで声がした―― 城に到着し、シアナはすぐさま報告をしにズイマの元へ向かった。 エレもしぶしぶ動向する。 シアナの傷を見て、顔を曇らすズイマ。 「怪我をしているな、シアナ。……事の次第はよく分かった。今は傷を癒すといいだろう」 「……はい。申し訳ありません」 「謝ることはない。お前はよくやった。 ……しかし、たった一人の為に隊長二名が救援に向かうのは決して隊の為にはならない。 二人とも殺される可能性もあった。それを考慮せず龍巣へ向かったのは正しい判断とは言えない。 総長の立場から、それについてはきつく言及せねばなるまい」 「はい。今回の事は全て私の責任です。罰を与えるのならどうか私にお与え下さい」 「ふん。お前の責任? 笑わせるな。あの間抜けがそもそも龍にさらわれなければこんなことにはならなかったのだ」 「む……っ」 「二人共、やめるがいい。今は仲違いをしている場合ではないだろう」 ズイマに諌められ口を噤む二人。 手を組んで、ズイマは何かを考えているようだった。口を開く。 「……そうだな。シアナ、お前には一ヶ月間の任務停止を命じる。第三騎士隊も同処分とする」 任務停止。隊を伴っての、このような措置は異例だ。……シアナはそれを重く受け止めて、返事をした。 「はい、承知致しました」 「シアナ、お前のやったことは自らを危険にさらす、隊長としては遺憾な行為だ。……しかし、私個人としては、 たった一人の為に救援に向かったお前を誇らしく思う。龍を打ち倒し、……よく戻ってきてくれたな。 一ヶ月間、ゆっくり身体を休めて静養に努めるといい」 ズイマの真意が伝わる。それは決して罰ではなく気遣いだった。ズイマの言葉が疲労した体に暖かく染み込む。シアナは頷いた。 敬礼して部屋を出る。エレもそれに続いた。 部屋を出ると、多数の騎士達がシアナ達を出迎えた。 「隊長、よくご無事で戻られました……!!」 「私共全員、信じておりました、お二方が必ず戻られると」 「私は祈りを捧げておりました。……お二方、そしてイザークの生還を願って。それが神に聞き届けられたようで、 感動で震えております……お帰りなさいませ隊長」 全員がお帰りなさい、と唱和した。 第三騎士隊だけでなく第二騎士隊の者もちらほら見える。 「みんな……」 「エレ隊長もお帰りなさいませ!! お怪我はございませんか?」 エレはそっけなく「ない」と一言告げると、マントを翻し踵を返す。騎士達の前を通過し、その場を立ち去った。 「……まったく愛想も何もない男ね」 「シアナ隊長、腕が……」 ああ、とシアナは自分の腕に目をやる。酷い怪我をしていた。……肩も痛む。今まで気を張っていたので あまり痛みを感じなかったらしい。ここにきて急に痛みを取り戻した。 「救護室へ行かれて下さい。リジュ隊長がおります」 「分かった」 救護室に入ると、本を読んでいたリジュが顔をあげた。 いつもと変わらない柔和な顔で、にっこりと微笑む。 本を机に置いて、シアナに向き直る。 「お帰りなさいシアナさん」 「……ただいま」 椅子の上に腰を下ろす。 リジュはシアナの腕を見やって、僅かに顔をしかめた。 「酷い怪我ですね。……すぐ治療します、腕を貸してください」 リジュはシアナの腕に触れる。リジュは魔術を使える。その中に治療魔術も含まれていた。 呪文を詠唱すると、暖かな光がリジュの手先に生まれる。 それはシアナの腕を包み込み、怪我を癒していく。 元々リジュは魔術を専攻していた学士だったらしい。フレンズベルの大学を主席で卒業し、将来は医者か優秀な研究者か との呼び声が高かったが、本人はあっさりと騎士隊へ入隊した。 シアナはそれを不思議に思い、以前リジュに志願の理由を聞いたことがある。 騎士隊なら、傷ついた人を沢山癒せるし、それに戦闘で攻撃魔術も使い放題でしょう?とにっこり笑われて言われた時には、 もしかしてこの人物はとんでもない食わせ物なのではないかと思ったものだが……。 「はい、終わりましたよ。包帯を巻いておきます。一応消毒と治療はしておきましたけど、しばらくは安静にしててくださいね」 「ありがとう。……そうね。しばらくは休むことにするわ。謹慎処分も出たことだし」 「それがいいと思います」 「あ……そういえば」 急に気になった。イザークはどうしただろうか? 怪我はしていない様子だったが、今までにないくらい意気消沈していた。 明るいだけが取柄のような男だ。しばらくすれば元気になるだろうが―― (何であいつが悲しむのよ……) 刻印の事を口にしてから、その後ずっとイザークは暗い顔をしていた気がする。 「どうかされましたか?」 「ううん、なんでもない。その、助けた部下の様子が気になって」 「……そうですか。さきほどイザーク君なら中庭で見かけましたよ」 「中庭で?」 「ええ。剣を持って……一人で訓練しているようでした」 「――」 リジュはふふっと笑って、まだ続いていると思います、と告げた。 シアナはもう一度礼を言うと、急いで駆け出した。 暗くなった中庭。夜の帳が下り、空には満天の星が煌々と輝きを灯す。 その下で、風を切る音。素振りの音が響いていた。 イザークは一心不乱に剣を振っている。 シアナはその姿を見つけると、すぐさま近寄った。 「……イザーク。もう夜も遅いわ。今日は休みなさい」 .
https://w.atwiki.jp/3edk07nt/pages/158.html
ベッドに入ってから一睡もできなかったというのに、頭は妙にスッキリしていた。 気怠さや、疲れも感じない。肌だって瑞々しくて、パッと見、荒れた様子はなかった。 これが若さなのかな? と蒼星石は洗面所の前で、小首を傾げてみた。 鏡の中の彼女は、不思議そうに、自分を見つめ返している。 そこに、昨夜の雰囲気――柏葉巴の影は、全く見受けられない。 今日、学校に行ったら……話しかけてみよう。 夕暮れの体育館で見た凛々しい姿を思い出しながら、もう一度、昨夜の決心を繰り返す。 おとなしそうな彼女だけど、果たして、呼びかけに応えてくれるだろうか。 人付き合いは、やはり、第一印象が大事。変な人と思われないように、気を付けないと。 蒼星石は、鏡の中の自分に、ニッコリと笑いかけてみた。 大きな期待の中に、ちょっとの不安を内包した、ぎこちない微笑み。 少しばかり表情が硬いな、と思っていると―― 「朝っぱらから、鏡の前で何ニヤついてるです?」 「わぁっ! 驚かさないでよ、もぉ……」 いつから見ていたのだろう。 蒼星石は耳まで朱に染めて、ニタリと笑っている姉の脇をすり抜けた。 第三話 『運命のルーレット廻して』 揃って朝食を済ませ、支度を終えた姉妹は、一緒に玄関を出た。 秋も深まり、日一日と風が冷たくなる時候ながら、今日は普段より暖かい。 小春日和の日射しに包まれていると、なんだか…… 何年もそうしていなかったような、とても懐かしい気がする。 (姉さんも、ボクと同じ気持ちなのかな?) ちらりと盗み見ると、翠星石は口に手を宛い、大きな欠伸をしていた。 しばしばと瞬いて、滲み出した涙を堪えている様子が微笑ましい。 「随分と、眠そうだね」 言ったそばから、姉の欠伸が移ったのか、蒼星石も大きな欠伸を放つ。 それを見て、翠星石は愉しげに目を細めた。 「蒼星石だって、他人のこと言えねぇです」 「……らしいね。シャワー浴びたせいか、あれから目が冴えちゃってさ」 「実は、私も――――ずっと眠れなかったですよ」 そう呟いて、隣を歩く妹に、咎めるような眼差しを向ける翠星石。 「蒼星石が、あんなコトするから……」 「はは……ごめん。そう言えば、姉さんってスキンシップに弱かったっけ」 「知ってるクセに抱きつくなんて……とんだ悪党ですぅ」 赤らめた頬を、可愛らしく膨らます姉の仕種は、しかし、長く続かなかった。 やおら真顔に戻ったかと思うが早いか、蒼星石の背中をバシンと引っ叩く。 照れ隠しのためとは言え、あまりの手加減のなさに、蒼星石は息を詰まらせた。 「い、痛いよ姉さん! 何するのさ」 「それでチャラにしてやるですぅ。さっ、気を取り直して、学校に行くですよ」 「……はいはい。とにかく、授業中に居眠りしないように、気をつけなくっちゃね」 「今日は土曜日ですから、午前中さえ凌げば大丈夫ですぅ」 答えた途端に、またぞろ大欠伸をする姉を見て、蒼星石は、ふっ……と口元を綻ばせた。 そして、こんな二人だけの時間が、もっと欲しいと思って―― 「今日の午後、たまには二人で、パフェとか食べに行かない?」 翠星石を、遊びに誘った。彼女から誘うなんて、真夏に雪が降るくらいに、珍しいことだ。 だからこそ、彼女は翠星石が「はい」と頷いてくれるものと信じていた。 しかし、蒼星石の期待は、呆気なく拒否される。 「とっても嬉しいですけど……今日は都合が悪いですよ」 「そう……なんだ。残念だなぁ」 「ゴメンナサイです、蒼星石。この埋め合わせは、近い内に、きっとするです」 「別に、いいよ。気にしないで」 心底、申し訳なさそうに項垂れる彼女を、蒼星石は笑って宥めた。 けれど、二人の間に漂うギクシャクした空気は、学校に着いても薄れることがなかった。 学校に到着して、カバンを机に置くなり、蒼星石は隣のクラスに向かった。 昨日から頭を離れない彼女――柏葉巴と、一言でも話をするために。 HRが始まるまで、まだ十分ほど余裕がある。 (もう来てる頃だよね) 学級委員を務めるほどだ、遅刻するような問題児ではあるまい。 そう思って、教室の後ろの扉から、そぉっと様子を窺うと…………居た。 なんの偶然か、彼女が丁度、教室から出てくるところに鉢合わせたのだ。 巴は、蒼星石の姿を認めると、控えめに微笑んだ。 「おはよう。誰かに用事? 呼んできてあげようか」 「あ……おはよう、柏葉さん。ボクは……キミに会いに来たんだ」 「わたしに?」 「ちょっと、話がしてみたくてさ。今、少しだけ時間つくれる?」 問いかける言葉に、不思議そうな表情を浮かべる巴。その反応は、蒼星石の想定内だった。 体育の授業は隣のクラスと合同で行うから、二人は一応、顔見知り。 だけれども、今日に至るまで、交流を図る機会には恵まれていなかった。 「……ダメかな?」 蒼星石が不安げに訊ねると、巴はシンプルな造りのアナログ腕時計にチラと目を遣り、 「いいわよ」と、にこやかに応じた。 巴にしてみれば、なぜ今になって蒼星石が近付いてきたのか、その理由に興味があったのだろう。 クラスメートの視線を気にしてか、廊下に出た彼女は、後ろ手で教室の扉を閉ざした。 室内の喧噪は遮られ、話をする環境が整えられる。 巴は、背格好の似通った娘の双眸を、その鳶色の瞳で、ひた……と見据えた。 「それで、お話ってなぁに? 蒼星石さん」 「ボクの名前……知ってたの?」 「ええ。自覚してないみたいだけど、貴女は割と有名だもの」 「正しくは、ボクの姉さんが有名……でしょ」 姉と自分は、二人でひとつ。生まれながらにして、二人はいつも一緒だった。 別個の存在でありながら、一心同体。 蒼星石の半分は翠星石であり、姉の半分は妹で占められている。 そう。本来ならば、彼女たちは対等の関係である筈だった。 しかし、等しく浴びる筈だった陽光は、いつだって姉にのみ注がれてきた。 蒼星石の存在は、煌びやかに光り輝く姉の足元に落ちた影と同じ。 言わば、彼女の『おまけ』でしかない。名前を間違えられることも、しばしばだった。 (でも、ボクは――それがイヤじゃない) 寧ろ、姉の名で呼ばれると嬉しくなったし、彼女とひとつになることは密かな望みだった。 触れ合い、癒着し、どろどろに溶けて、混ざり合ってしまいたい。 そして、コールタールの様な混沌から、たった一人―― 至高の美しさを持った少女として生まれ変われたのならば、どんなに素晴らしいだろう。 ――が、所詮は、実現不可能な世迷い言。正気と妄想の狭間に産まれた悪夢。 我ながら、馬鹿げた願望だ……と、蒼星石は自嘲した。 「ごめんなさい。何か、気に障ること言ったみたい」 間近で紡がれた声で、蒼星石は我に返った。 声の主は、困惑の表情を浮かべて、自分を見つめている。 「ご、ごめん。ちょっとボーっとしちゃってた。怒ってたワケじゃないよ」 「……よかった。急に黙っちゃうから、心配したわ」 その言葉どおり、巴は安心したように小さく笑って、付け加えた。 「でも、貴女が有名っていうのは本当のことよ。魅力的な人だなって、わたしも思うもの」 「ボクが? ははっ……まさかぁ。ボクなんかよりも、キミの方がずっと素敵だよ」 「え?」 「昨日の放課後、体育館で剣道の練習してるキミを見たんだ。 すごくカッコよくて…………思わず見惚れるくらいに綺麗だった」 「汗まみれな姿を見られてたなんて、恥ずかしいわ。それに、お世辞でも誉めすぎよ」 両手で頬を包み、はにかむ巴の仕種は、蒼星石の眼に、とても初々しく映った。 やがて、HRの始まりを告げる予鈴が鳴り、廊下にまで溢れていた喧噪が静まる。 もう、それぞれの教室に戻らねばならない。だけど、もう少し話していたい気分だった。 だから彼女たちは、ごく自然に、同じ言葉を口にしていた。 「また、後でね」 第三話 おわり 三行で【次回予定】 相まみえて、たちまち意気投合する乙女たち。 縁と浮世は末を待て。彼女たちは時を積み、言を重ね、情を育む。 その間も、運命のルーレットは休みなく廻る、回る―― 次回 第四話 『今日はゆっくり話そう』
https://w.atwiki.jp/loveuntouchable/pages/45.html
「見知らぬ人でなく」by148さん 投稿日2010/07/28 洸至にとって、7日ぶりの我が家の風呂、7日ぶりの布団。 内偵捜査がようやくヤマを越え、監視体制の縮小が決定し家に帰ることができた。 明日からは記録の作成という心踊らない仕事が待っているが、足を伸ばして風呂に入り 布団に寝られることの解放感に浸っていた。 風呂上がりに、布団の上で少し休むつもりで横になったはずが、疲れからかそのまま熟睡 してしまった。 子供のころからの癖で、熟睡していてもわずかな物音で目が覚めるようになっていたが、 仕事からの解放感と自宅にいる安心感に浸りきっていたせいで、自分の上に誰かが 乗っている重みを感じるまで、洸至は深い眠りの中にいた。 「だ、誰だ…」 首に腕が巻かれている。 絞められるのか。 状況を判断するより先に、排除するため反射的に肘を相手の脇腹に叩きこもうとした その時。 「しろうちゃ~ん」 妹の妙にうわついた声が部屋に響いた。 「遼子…?」 やっぱり疲れていたのだろう。自宅に居て、いきなり暴漢に襲われることより、 同居の妹が酔っぱらって部屋に来ることの方がはるかに起こりやすいことなのに、 それをすっかり忘れていた。 「しろうちゃーん、なんでさっきは冷たいこといったのよぉ。いま部屋で私のこと 待っててくれるのにぃ」 部屋中がアルコールくさくなったと錯覚する程、妹は酒臭かった。 そして、どちらかというと酒癖が悪いくせに、量をわきまえずに飲むところがあったが、 今日は格別だった。 「ど、どうした遼子?ここはお前の部屋じゃなく、俺の部屋だぞ。お前、飲みすぎだって」 「名前で呼んでくれるの?うれしいなあ、しろうちゃん。 いっつも他人行儀な態度ばっかりとって、鳴海君って呼んでたのにぃ。 やっと素直になってくれたんだあ~」 洸至の方を見ているようで、遼子の眼の焦点は合っていない。 瞳の奥で結ばれた像が、洸至を映していないことだけは確かなようだった。 酒のせいか、目じりがほんのりと赤くなり、蕩け切ったような視線には、 いつもの妹にはない色気が含まれていて、洸至は戸惑った。 その遼子が洸至の首に抱きつき、兄の顔に頬ずりをしている。 「お、おい」 「しろうちゃんのおひげ気持ちいい。うれしいな、私のこと待っててくれて」 「だから違うって、遼子…。いい加減に」 妹を押しのけようとしたその時、洸至のジャージに灰色の染みが、ぽつぽつとついた。 驚いて顔を上げた洸至の顔を、しなやかにだが、しっかりと遼子の手が包む。 洸至の顔の真正面に、大きな瞳から涙をこぼす妹の顔があった。 とめどなく溢れる涙にくれる妹の瞳と、何かを堪えるように震える唇を間近に見て、 慰めなければと思うより先に、見惚れていた。 「さっきどうしてあんなに冷たいこと言ったの…?」 「遼子、一体何を…」 「私が史郎ちゃんのこと好きだって知ってて、ずっとつれない態度ばっかり…。 私、こんなに史郎ちゃんのこと好きなのに」 洸至の唇に柔らかい感触が訪れた。 アルコール臭など気にならなかった。ただ、甘く感じていた。 少し力を入れれば押しのけるのは簡単だ。 妹の力に負けてその腕から抜けられなかった訳ではない。 ただ、そこから抜けたくなかった。 押しつけるだけでは飽き足らなくなったのか、もどかしそうに、遼子が洸至の唇を ついばむ。 妹を引き離すために出された洸至の腕は空中で止まったままだ。 頭の片隅でこのままではいけないと思いながらも、残りの大部分は、この感触を 手放すべきではないと叫んでいた。 しかし、微かに残っていた理性が勝利した。 遼子の肩を掴み、唇の感触に名残惜しさを覚えながらも己から引き離した。 「りょ、遼子落ち着け。良く見ろ。俺だって、お前の兄貴の」 「ここまで来て、そんな言い訳しないで」 「言い訳も何も、俺はお前の兄貴だっ」 最後まで言い終わらないうちに、またも遼子に押し倒された。 遼子が、洸至を押さえつけ、上から覗き込む。 朝露が花を彩る様に、まつげについた涙が瞳を縁取り輝いている。 「三十近いから、きれいじゃないから…?」 「大丈夫。充分きれいだよ…」 本心だった。 いつしか、遼子のペースに巻き込まれている。 「でも、私のこと好きになってくれないのね」 遼子の声に滲む哀しみを感じて、洸至は妹の顔を見つめた。 吸い寄せられるように手を伸ばすと、妹の頬にこぼれ落ちる涙をぬぐう。 妹が酔い潰れて帰ってきたことは幾度となくあったが、酔ってここまでおかしく はなったことはなかった。 つまりはいつも以上に飲んだということだ。 遼子の場合、ひどく酔うと記憶をすっかり失うことが多かった。 もし、このことを遼子が忘れてしまうのなら。 それならば、少しだけなら。 せめてお前の夢の中だけでも、恋人のふりをするだけだ。 現実で叶わなかった思いを、ここでだけ叶えてやるだけだ。 ―――それだけのことだ。 やましさを打ち消すように、言い訳ばかりが駈け廻る。 遠くにおきざりにしたはずの良心が痛みだすより先に、本能で動いていた。 妹の背中に手を廻すと、抱き寄せた。 「俺も好きだよ…。だから、もう泣くな」 妹に囁くと、唇を重ねた。 最初は重ねるだけだが、それがそのうち、お互いについばむような動きへと変わる。 唇全体を幾度となくついばんだ後、唇の端、そして頬へとキスの雨を降らせた。 遼子の唇を再びとらえると、洸至の唇の不在を咎めるように先ほどよりも強く己の 唇を合わせてきた。 待ちかねたように、遼子の唇が開く。洸至は、その中へ舌を潜り込ませた。 最初は歯の表面を撫で、それから、半開きの歯と歯の間へ、送りこむ。 舌を見つけると、それと洸至のものをゆっくりと絡み合わせた。 絹のような感触の舌。 妹の悲しみにつけ込んで、ひどい兄貴だと思いながらも、妹と舌を絡ませ合うことを 中断できそうになかった。そうするには遼子の舌はあまりに柔らかすぎたし、 解放されたことで溢れ出た妹への想いは奔流となって洸至の理性を押し流していた。 舌だけでは飽き足らずに、歯の裏や奥歯の方まで舌で撫でまわす。 それからまた舌を絡める。 自分の唾液と遼子の唾液が混ざり合うように口と口とを深く合わせて舌を送り続けた。 もっと遼子に触れたい、もっとこの柔らかな身体を知りたいという己の気持ちを抑える ために、洸至は遼子の体をきつく抱きしめていた。 そうしていないと、不埒な自分の手が何をするかわからなかった。 どれだけそうしていただろう。 洸至は、時間の感覚を失う程没頭していた。 気が済むまで唇を貪ると、ようやく妹の唇を解放した。 うっすらと開いた遼子の眼と洸至の眼が合う。 遼子は満たされきった子供のような顔をして、洸至に微笑んだ。 洸至の首に廻していた遼子の腕から、次第に力が抜けて行く。 そしてそのまま目を閉じると、遼子は静かな寝息を立て始めた。 「これで満足なのか…」 少しの間ののち、洸至は静かに笑い始めた。 「そうか、お前、これから先を知らないんだもんな」 洸至はすぐに遼子をベッドに横たえずに、しばらく腕の中のその寝顔を見つめていた。 「ここで寝られてもな…。俺が寝られないじゃないか」 澱のようにからだに絡みつく疲労が眠りをもたらすまで、中途半端に昂ぶった心を持て 余すしかなかった。 151 GJ! 兄よ、そのまま遼子に「その先」も教えてやれ! 152 ヒャッホイGJ!! 優しいんだけど、自制出来なくなっちゃうお兄ちゃんイイ! 153 ありがとう! 夢中で読みました。 お兄ちゃん惚れ直してしまった。 いいわぁ洸至さん。 154 GJ!!!! 最高!!!
https://w.atwiki.jp/buttobasour/pages/99.html
チェイス【CV:上遠野太洸】(仮面ライダーチェイサー/魔進チェイサー/仮面ライダープロトドライブ/狩野洸一) (※同一のセリフを各項目で聞く場合、耳にする頻度の高い項目にそのセリフを置き、同一のセリフを同ページ内に重複して書くことがないようにして下さい) 長くなってしまった項目は、場合によって折りたたむなどの措置をお願い致します。 タイトル画面 ブットバソウルの世界へようこそ! 説明 スキャン バトル チャンスタイム プレイ終了後 特定のキャラに対する反応 汎用セリフ シチュエーション不明 その他 別ページにあるクロスオーバー コメント欄 [部分編集] タイトル画面 タイトルコール「仮面ライダーブットバソウル。激レアメダル、とは、そんなに人の心を乱すものなのか?」 「仮面ライダーブットバソウル。それでも、俺は今、激レアメダルが欲しいんだ」 プレイ開始「胸が……キュン?」 「俺は、人間を、守る!」 [部分編集] ブットバソウルの世界へようこそ! 自分について「ブットバソウルの世界……俺も入れてもらおう」 「俺の名は……チェイス。仮面ライダーチェイサーだ」 「俺はチェイス。仮面ライダーチェイサーだ」 「仮面ライダーである者同士、共に戦おう。よろしく頼む」 ブットバソウルについて「ブットバソウルの世界……。この世界は、一体なんなんだ? ブッ飛ばす……という行為は、そんなに人の心を乱すものなのか?」 「俺にもよくわからん。ブットバソウルの世界では『よくあること』……なのかもしれない」 「教えてくれ。激レアメダル……とは、そんなに人の心を乱すものなのか? 皆、メダルが絡むと平常心を失う」 「ブットバソウル……。まったく理解できない世界だが、進ノ介や剛に勝るとも劣らない人間たちが集まっている。ここなら俺も、さらに人間に近付けるのかもしれない」 このシーンのみのセリフ「なるほど。これがお前の、『つい、乱れちゃう……』か」 「これも、『つい乱れちゃう』……というヤツなのか。難しいものだな、人間というのは」 「……なぜだ。皆、何故か楽しそうだ。ブットバす……という行為は、そんなに人の心を乱すものなのか。これも、『つい乱れちゃう……』というものなのか。難しいものだな、人間とは」 説明 ゲームシステムの説明 エナジーアイテムの効果チェ「……剛、エナジーアイテム、とは、なんだ?」 剛「チェイスお前、そんなことも知らねえのかよ! エナジーアイテムっていうのはな、あ。つか俺も知らねえわ。ま、なんとかなるっしょ」 チェ「何? そんな得体の知れないものをスキャンしていいのか?」 剛「うっせえ! 邪魔すんな! はい、スキャンスキャン!」 チェ「む。待て剛。安全確認が先だ。待て。待てと言っている!」 ライドウォッチの効果チェ「剛、ライドウォッチ、とはなんだ」 剛「お前またかよ! いーんだよ! スキャンすると、とにかくライダーパワーが上がるんだよ!」 チェ「また正体不明の物体と言うことか」 剛「いーから! さっさとスキャンしとけ!」 マッハで! ほら、マッハで!」 チェ「待て剛。剛! 待てと言っている!」 各キャンペーンの説明キャンペーン名「キャン、ペーン? なんだ、それは……」 ゲーム開始「プレイ開始だ」 「ブットバソウル、始めるぞ!」 説明を飛ばした際のコメント「もう一度……やり直せ。俺はかつて死神と呼ばれていたが、説明は飛ばさない。ロイミュードにも、やり直すチャンスを与えていた。だがお前は、説明を飛ばし、プレイ時間を減らす! ……真の死神は、お前だ!」 [部分編集] スキャン スキャン全般「スキャン成功」 「このメダルでよければ、ボタンを押せ」 エントリーメダル「ライダーパワーゲージが、大きくなったようだな」 メダル「次だ、二枚目のメダルをスキャンしろ」 エナジーアイテム「次は、エナジーアイテムスキャンだ」 フルボトル「最後だ、フルボトルをスキャンしろ」 バトル 敵の登場「仕方ない。実力行使だ」 各ボスへの名指しのセリフはこちらへ移動しています。 ルーレット「マークボーナスルーレット」 「ドリームベガスと違って、ハズレなしか。高性能だな」 バトル開始「バトル開始だ」 「正々堂々と勝負だ」 「仮面ライダーたちの登場だ」 カットイン「よし、これで終わりだ」 「人間を救うのは……俺の本能なのかもしれない」 「ライダァー……キーーック!」 HIT数「なんというHIT数だ。人間に、このようなことが可能なのか?」 「ライダーキック! ボタンを……押せェ!」 エナジーアイテム発動「エナジーアイテムの力、見せてもらうぞ」 決着勝ち「ボスの撲滅、完了だ」 負け [部分編集] チャンスタイム 戦闘員準備中「……ロード時間が長すぎる……ダメだ、意識が……、遠のく……あぁ、そうだ……大当たりする時、俺もあんなに幸福に感じたじゃないか……戦闘員も、みんなも、同じ気持ちなんだ……だったら……。俺は、大当たりして、激レアメダルをゲットしたいと願った……。そのために今、一番必要な力は……。ありがとう戦闘員、お前は俺に、つかの間のロード時間をくれた……。でも……もう……! いらない!」 チャンスタイム専用セリフ特殊演出のあるセリフはこちらへ移動しています。ゴルドドライブチャンスは上記へ移動しています。 通常時「 」 ピンチ時「つい……らく……だと?!」」 特殊演出専用セリフ 当選結果 プレイ終了後 「何?! 忘れているかもしれないだと?! 耳の裏を見せろ!」 「ブットバソウルをプレイするのは、俺の本能なのかもしれない……。俺は、もう一度、やり直す! お前も、もう一度、プレイしてくれ」 [部分編集] 特定のキャラに対する反応 +仮面ライダードライブ 仮面ライダードライブ 泊進ノ介/仮面ライダードライブ チェイス/仮面ライダーチェイサー「人間を救うのは……俺の本能なのかもしれない」 +仮面ライダー作品名 仮面ライダー(作品名) [部分編集] 汎用セリフ 喜び ツッコミ 驚き 悲しみや哀れみ 怒りや咎める口調 戸惑い・疑問「む……そういうものなのか?」 励まし 威勢がいい・挑発的「よし、ここはまかせろ!」 不特定多数に向けて 作中内での台詞や口癖「頼む。教えてくれ」 「人間を救うのが……俺の本能なのかもしれない……」 「なるほど。これがお前の、『つい、乱れちゃう……』か」 「……誰も、聞かなかったからだ。」 その他「よろしく頼む」 [部分編集] シチュエーション不明 [部分編集] その他 [部分編集] 別ページにあるクロスオーバー ブットバソウルの世界へようこそ! 個性的な仲間に囲まれ、「皆、何故か楽しそうだ」と言うチェイスが見られる。 「俺の身体はボロボロだ!」と困っている橘朔也。それを聞いて、進ノ介から借りてきたマッドドクターで治療にあたるチェイス。マッドドクターによる治療は死ぬほど痛いのだが……。 チェイスと桜井侑斗を「友達」にしようとするデネブ。 左翔太郎の探偵事務所に疑問を聞きに行くチェイス。 「門矢士、お前は一体何なんだ?!」「通りすがりの仮面ライダーだ!」 自分を追ってきた詩島剛と再び出会う。再会と、宝物の返還。 ※本編ネタバレ ボス登場 例の敵と遭遇するマッハとチェイサー。※本編ネタバレ 特殊チャンス演出 戦闘員が例の敵の襲撃に遭ってしまう。剛と進ノ介と共に阻止を試みている。 ※本編ネタバレ ソウルチャンス チェイスと魔進チェイサーとプロドドライブに囲まれ混乱する剛。「免許の更新に行く」と言って聞かないチェイスを剛が必死に止めようとしている。 ホットけない!チャンスタイム 何故かアタッシュケースから出てきた『ひとやすミルク』と、それを見つけたソウゴ・戦兎・万丈に、詩島剛と一緒にツッコミを入れている。 コメント欄 情報や誤載の指摘等、何かありましたらお気軽にどうぞ。 名前
https://w.atwiki.jp/hazamarowa/pages/23.html
まどかを救う。それが彼女の最初の気持ち。 今となっては、たったひとつだけ最後に残った道しるべ。 ただそれだけの為に、何度も何度も、同じ時間を繰り返してきた。 何度も何度も、絶望を乗り越えてやり直してきた。 誰と敵対しようとも、誰と死別しようとも、誰に信じてもらえなくとも。 何度も何度も。 何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度もーー。 いつも結末は変わらなかった。 まどかが死んでしまうという最悪の袋小路。 そこから引き返して違う道に進んでも、必ず袋小路は現れる。 どこで曲がっても、どこで真っ直ぐ進んでも、それが当たり前だとでも言うように。 抜け出せない、永遠の迷路。 袋小路はいつも絶望だけを叩き付けてくる。 それでも、彼女が大切だから。大切な友達だから、何度でも立ち上がる。 どんなに足が疲れようとも、どんなに心が折れかけようとも。 「ほむらちゃん、過去に戻れるって言ってたよね」 「だからね……お願いがあるの」 数えるのも気が遠くなるほどに同じ時間を繰り返しても、決して薄れることのない記憶があるから。 ーーキュウべえに騙される前の馬鹿な私を、助けてあげて……くれないかな。 だから、歩き続ける。 未だ果たせてない約束の為に。 「なん、で……?」 何度もやり直してきた時間の中で、ほむらは少しずつ立ち回りを変えてきた。 同じことをしてもまどかを救えないのだから、当然のことだ。 けれど、結末の他にも変わらないことはあった。 例えば佐倉杏子との対立であったり、美樹さやかの魔女化であったり。 必ずそれらが起こるわけではないが、何度も起きたことでもある。 いつしか驚くこともなく、淡々とそれらの事象に対応できるようになった程には、大同小異の時間を駆け抜けてきた。 けれど、けれど。 こんなことは知らない。 あまりにもイレギュラーな事態。 殺し合い? 首輪? パレス? そんなの知らない。今まで一度だって、こんなことは起きなかったのに。 「まどかと殺し合え? 冗談じゃないわ……!」 まどかもあの空間にいたのを見た。 ほむらの大切な友達。ほむらが戦い続ける、唯一にして最大の理由。 そんなまどかと殺し合うなど、これまでの時間を全て無に帰すも同然のこと。 言われるままに殺しに走るわけがーー (……いえ、待って) 自分自身はまどかを殺さなければならない道など選びとる気はない。 けれど、もし願いを叶えるという姫神の甘言に惑わされた者がいれば、もし殺戮を望む根っからの狂人がいれば。 そして、そんな者たちの凶刃が、魔法少女の契約をしていない、いたって普通の女子中学生の今のまどかに向かってしまえば。 どうなるかなど、分かりきっている。 (まどかを探して、なんとしてでも守らなきゃ……) 他の誰がどうなろうとも、まどかだけは守らなければならない。 これまでだって、何度も通り過ぎていった命があった。助けられなかった命があった。 それでも止まらずに駆け抜けてきたのだ。ただひとり、まどかの為に。 殺し合いだろうとなんだろうと、やることは変わらない。 決意と共に混乱が収まりつつある頭で、もうひとつ考えることがあった。 姫神葵というあの男。 性別からしても、魔法少女や魔女のような力など持っているはずがない存在。 にも関わらず、あれだけ多くの人数に干渉し、あまつさえ時間を操る力を持つほむらすらも気付かない内に連れてきてしまった。 そんなことができるということは、ほむらの聞いたことがない、未知の力でも持っているのではないか? 繰り返してきた時間の中で触れることがなかったその力を知ることができたら、近付くことができたら。 まどかを救う足掛かりにできるかもしれない。 例えこの殺し合いを生き抜いて見滝原に帰れたとしても、待ち受けるものは何ひとつ変わらないのだ。 まどかの強い力に目を付けているキュウべえと、最強の魔女ワルプルギスの夜。 これらに同時に抗える可能性やヒントがあるのなら、その道を模索しなければならない。 (この殺し合いを開く為に使われた力を紐解いて、魔法少女と魔女のサイクルよりもエネルギーを効率よく集められるようにできるなら) (その力が、ワルプルギスの夜をも倒せるほどのものだったなら) (まどかを救うことができるはず) 殺し合いを開く為に使われた力が目的に沿ったものである保証はない。 けれど、これまでの道になかった新たなしるべに、どうして手を伸ばさずにいられよう。 たったの1%に満たなくても、例えそれが自分の身を滅ぼす選択肢だとしても。 まどかの為なら、迷わず掴み取る。 優勝者の願いを叶えるという言葉は当てにしない。 報酬をちらつかせることで殺し合いに乗る者を増やすという、詭弁でしかない可能性も十分にあるのだ。 そもそもまどかを殺すわけにはいかないし、話が本当だとしてもほむらの途方もない歩みを知らないまどかを優勝させたところで、その先の結末はきっと変わらない。 ならどうするか。 「まどかを保護できたら……その後は、あの主催気取りとコンタクトを取る方法を考えなきゃ」 直接、姫神葵との接触を図る。 そして、魔法少女とは異なる力についての情報を引き出す。 この殺し合いには、恐らく別の目的があるだろう。 ただ人々の殺し合う姿を見て愉悦に浸りたいだけならば、まどかのように心優しい者や、姫神に反抗の声を上げた坂本という少年のように正義感の強い者などは呼ばず、血の気の多い人間ばかりを集めればいい。 何より、一度参加者を全員集めたにも関わらず、こうしてバラけさせる必要がない。 あくまで仮定ではあるが、当たっているならば、目的への協力と引き換えに彼の力の情報の引渡しを求める、などの取引を持ちかけることも可能のはず。 (待ってて、まどか。今度こそ、新しい道を拓けるかもしれない。あなたを救う道に辿り着けるかもしれない) ふと、潮の香りに気が付く。 目的がはっきりしたことで、ようやく周囲を見る余裕を取り戻せたようだ。今自分が立っているのは港らしい。 眼前に広がるのは、ただひたすらに伸びていく真っ暗な水平線。 か細い月明かりしか映さない。道しるべもない。縋れる藁すら浮かんでいない。 「……上等だわ」 出口の見えない迷路よりも抜け出すのが困難であろう、暗闇だけを湛えた海を見て呟いた。 ザックを開いて、地図を取り出す。 四方を全て海に囲まれているが、港があるのは1ヶ所のみ。現在地は西の端で間違いないだろう。 次に手に触れた銃を取り出し、角度を変えながら数度構えてみる。 何度か使ったことがあるものであるため、それなりに手に馴染む。これならまどかを守ることもできるだろう。 潮風がひとつ吹き、濡羽色を揺らす。 少し肌寒かったけれど、銃を握る手が震えることはなかった。 ねえ、まどか。 多くの人が巻き込まれてるのにあなた以外の命を見ていない私を、あなたはどう思うかな。 優しいあなたのことだもの、きっと咎めるでしょうね。 でもね、私はあなたを救う為だけにここまで来たの。 たったひとつのその想いが潰えた時、私はきっと私でいられなくなっちゃうから。 あなたを理由に魔女になるなんて、嫌だから。 そうなったら、あなたもきっと絶望するから。 だから。 私にあなたを守らせて。 【C-1/港/一日目 深夜】 【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:健康 [装備]:89式小銃@現実 [道具]:基本支給品 不明支給品(0~2) [思考・状況] 基本行動方針:まどかを保護し、主催側と接触する方法を探す 一.まずはまどかの安全を確保しないと。 【支給品紹介】 【89式小銃@現実】 アニメ本編でも暁美ほむらが使用したことのある銃。自衛隊などで制式採用されているものと言えば分かりやすいのではないだろうか。 Back← 004 →Next 003 永遠はここに 時系列順 005 異種間コミュニケーション(みんな人間ですけどね) 投下順 暁美ほむら 036 Nocte of desperatio