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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1390033543/ ――7月中旬 教室 7月中旬に差し掛かり、夏休みを期待するあの独特のゆるい雰囲気が学校を包むようになってきた そして今は4限目の授業中 しかし先生のもその空気に当てられたのか、後半はほとんど雑談である 先生「おっ、もうこんな時間か。では授業は終わりにする」 教室を出て行く先生を見送っていると、見知った2人が廊下を歩いているのが見えた その2人はなぜか俺のクラスメイトに話しかけている、何か用だろうか? 「熊倉くーん、お客さんだよー!」 部長「悪いがちょっと来てくれ」 副部長「ごめんね貴重なお昼の時間に」 「え、あれだれ?」 「なんちゅー胸しとるんや、うちへの当てつけか」 「ちっ、女かよ……」 流石我が部の美人二人組み。教室に現れただけでこの騒ぎようだ 京太郎「どうかしたんですか?」 「もしかして、熊倉君の彼女かな?」 「なに!?うちとは遊びやったんかー!」 「俺の方が絶対気持ちよくしてやれるのになあ」 なにやら一部物騒な言葉が聞こえたが、気にしない 部長「時間がもったいないから簡単に説明するな」 部長「実はインターハイに向けて一緒に合宿を行ってくれる高校を探していたんだが…」 副部長「今朝連絡があってね、やっと見つかったのよ」 部長「場所はうちの高校の合宿所を使う予定なんだが、色々買わないといけないものもあるんだ」 あー何だか嫌な予感がするぞ、雑用的な意味で 部長「そこでだ、ここに書いてあるものを買ってきて欲しいんだ」 ほらきたやっぱり 副部長「悪いとは思うんだけど、私たち他にもやらなきゃいけないことがあって…」 部長「重いものもあるから、他の者にも頼めないんだ」 京太郎「それなら宅配便を使えばいいのでは?」 部長「残念だがうちの高校はそこまでお金を出してくれないんだ」 うーむ別に構わないが 部長「だ、ダメか?///」ウワメヅカイ 京太郎「」キュン 副部長「ね、お願い///」ムニュ おおおお、おも、おもちが、あたたたたたたたたたた 京太郎「……」 京太郎「はい!喜んで!!」イケメンスマイル 副部長「ほんとう!?ありがとう!」 京太郎「お二人のためなら何だってしちゃいますよ~」デレデレ ___________ _____________ ___ ふぅー、危うく教室で昇天するとこだったぜ しかし副部長のおもち柔らかかったなぁ、世界文化遺産に指定するべきだよあれは 「「………………」」 アレ?なんだかクラスの様子がおかしいぞ 京太郎「小鍛治ー、昼飯食べようぜ」 小鍛治「……」プイッ あ、あれ、俺なにかしましたっけ? 「熊倉くん、あれはないんじゃないのかな」 京太郎「へっ?」 「小鍛治さんかわいそう…」 「彼女を放置して他の人とイチャイチャするなんて…」 京太郎「い、いや、小鍛治と俺はそんなんじゃ――」 「この、鬼、悪魔、京太郎!」 「胸か!?やっぱり胸が大事なんか!!このケダモノ!!」 京太郎「……」 「彼女と胸、どっちが大切なの!」 「変態!変態ッ!!変態ッッ!!!」 京太郎「……」 京太郎「ちくしょー!さっきから好き勝手言いやがって!だったら俺も言わせてもらうぜ!」 京太郎「貴様ら女子連中はおもちの何たるかを理解していない」 京太郎「おもちはただの脂肪の塊にあらず!!愛なんだよ愛!!愛そのもの!!」 京太郎「それを今から貴様ら凡俗にも分かるように説明してやる!!心して聴けい!!」 京太郎「まずは――」 _________ _____ __ 20分後 京太郎「――というわけだ、分かったかっ!!」クドクド 女子「「……………」」 「小鍛治さん、こんな変態とお昼なんてやめて私たちと一緒に食べよ?」 小鍛治「え、いいの?」 「もちろんだよ、こっち来て」 「なんか近くによると妊娠しちゃいそうだしね」 小鍛治「う、うん、ありがと///」チラ 京太郎「……」 まーたこのパターンか……女子社会はきびしいや 「おー彼女取られちゃったか、ならこっちで俺達と食おうぜ!」 京太郎「だから小鍛治は彼女じゃねーって」 「まー知ってるけどね」 ちくしょう、こいつら 「…でさ、一つ聞きたいことあるんだけどいいか?」 京太郎「おう、なんだ?」 「さっきの胸の感触教えてくれ」 京太郎「しね」 久しぶりに男子と昼飯を食べた。女子からのキツイ眼差しも一緒だったけど ま、でも 小鍛治『そ、そんなんじゃないって!』キャッキャッ 小鍛治が楽しそうだから良しとするか ――7月下旬 合宿初日 夏休みに入り、インターハイに向けて最終調整に入る――合宿だ なにやら相手先は島根県の女子高らしい、遠路はるばるご苦労なこって ちなみにその高校は県の代表校ではないらしいので、練習試合はオッケーだそうだ 副部長「あら、来たわね」 校門前で待っていると、10人ほどの集団が向こうからやってきた 部長「朝酌女子高校の方々ですね、遠いところからはるばるお越しいただきありがとうございます」 「ご丁寧にどうもありがとうございます。3日間ですがどうぞよろしくお願いします」 互いに挨拶している間、他の部員を見てみた とりあえず目に付いたのは3人だ 黒髪ロングの子、金髪のセミロングの子、やや幼い顔立ちの子 特に童顔の子は実にいい…なぜって?おもちが大きいからに決まってるだろう 童顔の子「」ニコッ ゲスなことを考えてると微笑まれた、しにたい ----------------------- 合宿所などの設備の案内が終わり、さっそく合同練習となった まあ実戦形式で打つだけなんですけどね しかし全く知らない人と打つのはなかなか勉強になる そして確実に強くなってることが実感できる もう飛ぶことなんてほとんどないし、隙あらば上位にだって食い込める だけどこんなんじゃ足りない。もっと強くなりたい。誰よりも、もっと、もっと―― 童顔の子「きみけっこう強いんだね」 京太郎「!!」 童顔の子「驚かせちゃったかな?」 京太郎「い、いえ…大丈夫です」 童顔の子「敬語はいいよ、同い年なんだから。ねっ、熊倉京太郎くん」 京太郎「よく覚えてるね」 さっき全体で簡単に自己紹介したのだが…俺はほとんど聞いていませんでした 童顔の子「たった一人の男子部員だったし、なんとなくね」 京太郎「ありがとう」 童顔の子「ふふ、どういたしまして。じゃあ私の名前は?」 京太郎「……ごめん、正直言って忘れてしまいました」 童顔の子「そうだろうと思った。私は朝酌女子高校1年の―」 童顔の子「瑞原はやり、だよ☆」 京太郎「」 京太郎「ほげっ!」 京太郎「……瑞原はやり(28)…さん?」 はやり(16)「なんで敬語なのかな?」 京太郎「あ、間違えた」 京太郎「……瑞原はやり(16)…さん?」 はやり(16)「なんで二回も!?」 京太郎「い、いや…だってねえ?」 確かにそうだ、どことなく雰囲気が瑞原プロに似ている 幼い顔立ちに、その自己主張するおもち…まだ発達段階だけど、間違いない つーかこれって偶然か? どちらにしろ、ここは慎重に対応したほうが良さそうだ はやり(16)「どうしたの?」 京太郎「いや、なんでもないよ。それよりも一緒に打とうぜ」 はやり(16)「うん!」 __________ ______ __ とりあえず今日の練習が終わった。あとは飯食って寝るだけだ 慣れない環境だったせいか思ったより疲れたが、勉強にもなった 小鍛治「おつかれさま」 京太郎「おう、おつかれさま」 小鍛治「えと…さっきさ、朝酌の子としゃべってたけど」 京太郎「ああ、瑞原さん?」 小鍛治「うん…それで、何の話をしてたのかなあって思って」 京太郎「ああ、簡単に自己紹介して一緒に打っただけだよ」 小鍛治「本当に?なんかちょっと…」 京太郎「ん?どうかしたのか」 小鍛治「…いや、なんでもない」シュン 京太郎「?」 小鍛治「それより夜ご飯の準備しよ」 京太郎「お、おう」 少し小鍛治の様子がおかしかったが、その後はいつも通りだった ご飯を食べた後、皆お風呂に入ったが、お約束の覗きなんてしておりません というか俺以外女子のこの環境で覗きがばれたりしたら村八分じゃすまないからね、仕方がない で、今俺達は広間でくつろいでいるのだが、朝酌の子の何人かが俺に話しかけてきた 「ねえ、君。熊倉京太郎くんだっけ?ちょっとお話しようよ」 京太郎「はあ…いいですけど」 「ありがと。それでさ熊倉くんって彼女いるの?」 小鍛治『あわわわわ』ガクガクガク 部員2『どうしたの、すこやんの番だよ?』 京太郎「うぇっ!な、なんですかいきなり!?」 「えー?ほら私たち女子高だからさ、共学の男子ってどうなのかなーって気になって」 京太郎「はぁー、残念ながらいませんよ」 「そうなの!?熊倉くんってけっこうモテそうなのにー、もったいなーい」 京太郎「そうだったら良かったんですけどねえ…」 「じゃあさ、私と付き合ってみる?」 小鍛治『ぶほっ!』ビチャ 部員1『ちょ、きたな!』 京太郎「ほんとですか!」ガタッ 「うそでーす」テヘッ 京太郎「まあ、分かってましたけどね…」 京太郎「伊達に彼女いない歴=年齢じゃないですから」 「あっ、なんかごめん…」 「私は男子の好みとか聞いてみたいな、女子高にいるとそういうの分からないし」 京太郎「そのくらいなら構わないですけど、もうからかうのは無しですよ?」 小鍛治『うぅ…』チラチラ 部員2『すこやんも話しに加わればいいのに…』 ――7月下旬 合宿2日目 今日も昨日に引き続き、朝から麻雀、麻雀、麻雀だ ただ朝酌の子と打つたびに、小鍛治がこちらをジロジロ見てきて少々やりずらかったが… そして午後3時を過ぎ、練習も一通り終わった頃 副部長「ねえ、京太郎くん。悪いんだけどいいかしら?」 京太郎「ええ、なんでしょう?」 副部長「実はね、夜の食材なんだけど思った以上に減りが早くてね。追加の分を買ってきてもらいたいの」 京太郎「いいですよ。でも一人だと流石に持っていけないんで何人か欲しいんですが…」 副部長「そうねえ、だったら――」 小鍛治「ハイ、ハイ!なら私行きます!!」クワッ あれ小鍛治さんいましたっけ!? 副部長「あらそう?ありがとうすこやん」 「そういうことなら、うちのを一人持っていっても構いませんよ」 向こうの部長さんだ 副部長「いいんですか?ありがとうございます」 「おっ!ちょうどいい、瑞原こっちに来てくれ」 はやり「はい、どうかしましたか?」 「食材の買出しに一緒に行って来てもらいたいんだが、いいか?」 はやり「部長の頼みとあらば!」 「そうか、よろしく頼むぞ」 はやり「はい!」 小鍛治「むぅ…」 とりあえず3人で駅前のスーパーに来た というか駅前まで行かないと基本何もないからね、ここらへん はやり「茨城ってけっこう栄えてるんだねー、こんなになってるの初めて見たよ」 京太郎「え、いたって普通だと思うけど」 はやり「そうなの?私の地元だと駅に行くにもひと苦労するくらいだしね」 京太郎「へえー。えっと確か瑞原さんって島根だっけ。島根ってそんなになにも無いの?」 はやり「まあ基本的にはなにも無いかなー、でもその代わり自然はほんとにきれいだけどね」 京太郎「やっぱりそんな感じなんだ」 はやり「そんな感じとは失礼な!」 京太郎「はは、ごめんごめん」 小鍛治「……」 京太郎「……ん?どうした小鍛治さっきから」 小鍛治「なんでもない、さっさと買い物済ませちゃおう!」プイッ 京太郎「あ、ああ」 はやり「……ふーむ、なるほどね」ボソ 買い物を済ませるとかなりの量になったが3人もいれば割と余裕だ 時計を見るとまだ時間に少し余裕がある はやり「まだ時間あるから、あそこのデパート見に行きたいんだけどいいかな?」 京太郎「いいんじゃないか、なあ小鍛治?」 小鍛治「わ、私は別にどっちでも…」ゴニョゴニョ はやり「じゃあ行こう小鍛治さん、ほらっ!」グイッ 小鍛治「わわっ!引っ張らなくていいから!?」 ~服飾店 はやり「どうどう?熊倉くん似合ってるかな?」 京太郎「ああ、なかなかいいんじゃなか」 はやり「ふふ、ありがと」 京太郎「でもそんな服、買うお金なんてあるのか?」 はやり「あるわけないじゃん、いわゆるウインドウショッピングだよ」 京太郎「ウインドウショッピングねえ……楽しいものなのか?」 はやり「熊倉くんは女の子の気持ちがよく分かってないみたいだね……」チラ 小鍛治「……」ハァ 京太郎「?」 はやり「小鍛治さん、こんなのどうかな?」 小鍛治「えっ!わ、私ですか?」 はやり「ほらほら敬語はいいから。きっと似合うよ」 小鍛治「で、でも、私…こんな派手なの着ないし…」 はやり「別に買うわけじゃないんだから、それに熊倉くんも見てみたいでしょ?」 京太郎「おお、まあ見てみたいかな」 小鍛治「そ、そう?//じゃあ着てみようかな…」 しばらくすると… 小鍛治「ど、どうかな///」 京太郎「うーむ」 小鍛治「///」 京太郎「意外と似合ってるんじゃないか」 はやり「うんうん」 小鍛治「意外とは余計だよっ!?」 はやり「じゃあ次はこんなのどう?」 ~雑貨店 ひと通り服を見た後は雑貨店に来た 女の子ってこういうところ好きだよね。男の俺にはよく分からないけど はやり「ねえねえ見てこれ、かわいー」 小鍛治「え、そう。私はこっちの方が好きかな」 はやり「ええー、熊倉くんはどう思う?」 京太郎「どちらともよろしいんではないかと」 はやり「適当だね」 小鍛治「京太郎くんに気の利いたセリフを期待するほうが間違いだよ」 京太郎「ひどい言われよう」 だいたいお店を見終わり、さあ帰ろうということになった エスカレーターで1階まで降りてきたところで、突然瑞原さんが俺に荷物を預けてきた はやり「あー、ちょっと待っててね」モジモジ 京太郎「え、どこ行くんだ?」 小鍛治「ばかっ」バシッ 京太郎「いてっ!何すんだよいきなり!」 小鍛治「さ、このアホは無視して早く行ってきて」 はやり「…ありがとう、小鍛治さん」 そう言うと瑞原さんはどこか行ってしまった 小鍛治「もう!京太郎くんはデリカシーないんだから」 京太郎「デリカシー?……ああ、そういことか」 小鍛治「今度から気をつけてね、まったく」 流石にアレだけじゃわかんねえよ。女子の空気を読む能力は異常 瑞原さんが戻るまでの間、特にすることもないので、周りの店を見回してみる やはりというか…どこのデパートでも同じだと思うが、1階はやはり宝飾品など女性向けのものばかりだ なんで出入り口である1階にこの手のお店を置くのだろう? 男性客が入りづらくなるだけだと思うのは俺だけだろうか? 京太郎「あれ、小鍛治はどこ行った」 くだらないことを考えているうちに小鍛治もどこかに行ってしまった 辺りを見回すと、黒髪の女の子が宝飾品店の品物をじっくりと眺めている 何を見ているのか興味が湧いたので、後ろからこっそり覗いてみる シルバーのチェーンに薄い青と透明の宝石(アクアマリンとダイアモンドか?)があしらわれている シンプルだがなかなか綺麗なネックレスだ。ついでに値段はと…… 京太郎「5万か……ちょっと高いな」ボソ 小鍛治「わっ、いたの!?」 京太郎「いたのとは失礼なやつだな」 小鍛治「ご、ごめん」 京太郎「…小鍛治もこういうの興味あるのか?」 小鍛治「私だって一応女の子だよ!?興味ぐらいあるよ」 京太郎「じゃあ、試着してみれば?」 小鍛治「え……いや、いいや。気に入ったらほんとに欲しくなっちゃうから」 京太郎「ふーん、そんなもんか」 小鍛治「そんなもんだよ」 はやり「ごめんお待たせー」 京太郎「お、来たか。じゃあ、帰ろうぜ」 小鍛治「…うん」 ――7月下旬 合宿最終日 特に問題も無く最終日の練習を終了した 俺はインターハイに出場するわけではないけど、とても実りあるものだったと思う そういや今気付いたけど、俺合宿するの始めてだったんだよな…… 清澄での境遇に比べればここでの俺の扱いは、素晴らしいものといわざる得ない 元の時代に帰ったら部長はロッカーだな 部長「3日間練習にお付き合いいただきありがとうございました」 「いえ、こちらにしてもとてもためになりましたよ」 「インターハイぜひ頑張って下さい」 部長「ありがとうございます、気を付けて帰ってください」 「「ありがとうございましたー!!」」 一通り挨拶が済むと、瑞原さんがこっちにやってきた どうしたのだろう? はやり「熊倉くん、最後にちょっといいかな?」 京太郎「おう、なんだ」 はやり「えーとね…」 はやり「女の子の胸を見るのもいいけど、一番大事な子から目を離したらダメだぞっ☆」 はは、ばれてましたか…恐れ入りました 京太郎「ありがとう、肝に銘じておくよ」 京太郎「ついでに俺からも一ついいか」 はやり「なにかな?」 28になっても語尾に☆をつけることとか、あの年甲斐の無い衣装とか 一人称が「はやり」のこととか、うわ…このプロきついとか… 言いたいことはたくさんあったけど、ひとつだけ 京太郎「瑞原さんがたとえプロになっても、またいつか俺と麻雀打ってくれないか?」 はやり「はは、何それ。お安い御用だよ!」 京太郎「ありがとう、またな」 はやり「またね」 _________ _____ __ 小鍛治「ねえ、京太郎くん。瑞原さんと最後何の話してたの?」 京太郎「……うーん、ちょっとした約束をしたんだよ」 小鍛治「約束?どんな?」 京太郎「ひ・み・つ」 小鍛治「うわぁ…きもちわる…」ドンビキ 京太郎「ひでえ!」 京太郎「でもそういう小鍛治だって、瑞原さんとなにか話してたじゃないか」 小鍛治「私はその……お、応援されただけだから//」 京太郎「瑞原さん偉いなあ…インターハイ頑張らなくちゃな!」 小鍛治「はあ…そうだね」タメイキ 京太郎「?」 ――8月上旬 東京 部員1「とうちゃーく!」 部員2「田舎者丸出しだからやめてくれない?」 副部長「まあいいじゃない、久しぶりの都会なんだから」 ついにインターハイ出場のため東京までやってきた、実に約半年振りの東京だ あらためて辺りを見回すと、以前来た時に比べて明らかにその風景が変わっている さすが大都会東京、様変わりするのもかなりの速さだ 小鍛治「荷物持ちますよ」 トシ「ありがとう健夜ちゃん、それなら頼もうかねえ」 驚いたことに今回はトシさんが俺達と同行することになった なにやら新しい人材の発掘、またそれとは別にやることが一つあるそうだ 部長「さあ、さっさと会場に行って抽選を済ませよう。なるべく早く休みたいからな」 いくら茨城県からとはいえ、電車で2時間近くかかったからな 部長の言うことももっともだ。正直俺も疲れたので早く休みたい ----------------------- 抽選会が終わりトシさん以外皆くたくたで、予約していたホテルに入った 部屋割りは俺とトシさんが一緒の部屋で、それ以外がまた一部屋となった 夢も希望も無いね! 部屋では特にやることもなかったので、早々にベッドの中に入ってしまった 自分が出るわけでもないのに、緊張してなかなか寝付けなかったのは内緒だ ――8月上旬 インターハイ 団体戦一回戦 いよいよ、インターハイの幕開けとなる団体戦一回戦だ 各都道府県の代表がぶつかり合うのだ。県予選のときのようにすんなりいくとは思えない 実際県予選の時にみんなの間にあった、あのゆるい雰囲気は既になくなっている 小鍛治なんかはその雰囲気に当てられてか、あの時以上に緊張しているようだ 果たして大丈夫だろうか… ________ ____ __ まあいつものように結果だけいうと、今日の初戦はなんとか大丈夫だった いつも通り小鍛治に回るまでに1位になり、ある程度点差をつけたのだが、そこは全国大会 県予選のように3万点差というわけにもいかず約1万点つけるのがやっとだった そして、案の定小鍛治は最初はガチガチに緊張して、ほとんど小鍛治銀行状態だった しかし後半に入ると何とか調子を取り戻し、オーラスで2位に逆転することができた 見てるほうもラス前まで3位だったので心臓バックバクだった 頼むから劇場型クローザーみたいな真似はしないでもらいたいのだが… だが跳満以上くらわないのは流石と言うべきかな 京太郎「お疲れ様、勝ててよかったな」 小鍛治「……うん、ありがと」 京太郎「前半はともかく後半の追い上げはすごかったじゃないか」 小鍛治「…そんなことない、ごめんね」 京太郎「小鍛治…」 小鍛治が俺に謝る理由は分かっていた 県予選が終わって、小鍛治が泣いた後にした俺との約束を果たせなかったからだ もう足手まといにならない、俺にかっこいいところ見せる、って ――8月上旬 インターハイ 団体戦二回戦 今日は団体戦二回戦だ 昨年はここで敗退したとのことなので、みんないつも以上に緊張している なにせ会場に向かう途中、誰も言葉を交わさなかったくらいだ そして試合前のいつもの部長の言葉が始まる 部長「さて今日の試合だが、当然これまでより難しいものになると思う」 部長「なので全員気を引きしめて、試合に臨んで欲しい」 部長「……」 部長「というセリフを昨日言おうと考えていたのだが、今日は少し正直になろうと思う」 部長「もしかしたら私は、そこまで勝ちたいと思っていないのかもしれない」 部長「みんなと麻雀を打てればそれでいいじゃなかと最近思うようになった」 部長「でも、子供みたいだが、私はこの祭りをここで終らせたくないとも思ってる」 部長「だから特に言うこともない。みんな頑張ってくれ」 部員1「おっ!たまにはいいこと言うじゃん!」 部長「なにっ!?」 部員2「まあ、確かにいつものはありきたり過ぎてつまらないけどね」 部長「」 健夜「わ、私はいつものも良いと思いますよ?」 部長「疑問系!?」 副部長「さあ、みんな行きましょう!」 「「はい!!」」 部長「それ、わたしのセリフっ!!」 大事な試合なのに最後まで締まらない まあ、俺達らしいといえばそうなのかな? さあ、俺も頑張って応援するか 部長の演説の後、俺はトシさんに誘われて、控え室ではなく観客席から一緒に試合を見ている さすが二回戦と言うべきか、部長と副部長ですらぎりぎりプラス収支がやっとで、他の2人はマイナスとなった 結果的に大将戦までに10万点を切る格好となってしまい、順位は現在3位だ 京太郎「トシさん、正直言ってどう思う?」 トシ「かなり厳しいね、2位との差は約2万、1位とは約3万。普通に考えれば無理だろうね」 トシ「最悪、4位のトビで終了…なんてこともあるかも」 京太郎「まあそうだよな…」 トシ「ただ――」 京太郎「ただ?」 トシ「…いやなんでもないよ。健夜ちゃんの応援、ちゃんとしてあげなさい」 京太郎「うん」 いよいよ、運命の大将戦が始まった いつも通りとはいかないが今日は始めからちゃんと打ててる だからといって2位との差はなかなかつけられない 俺の見立てでは、そもそもこの4人はほとんど実力差がない よほどの強運に恵まれない限り追いつくのが難しいのは明らかだ そして、点差を埋められないまま南入 小鍛治…… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ―小鍛治健夜 この人たち強い…このままだと絶対に追いつけない いや、追いつくことはおろか、4位になることさえ考えられるよ… 負ける? ここで負けるの? 嫌だ…私だってもっとここで打ちたい まだみんなに恩返しだってしていない いままで生きてきて、ほとんどずっと一人ぼっちだった いつも自分の席で本を読んで、周りから壁を一枚隔てて過ごしてきた 本と家族だけが、私にとっての世界そのものだった 高校に入っても変わるわけないって思ってた けどそんな私みたいな人間に、興味をもって話しかけてくれる男の子がひとりいた 今までもそんな人は何人かいた。けど最後にはみんな私から離れていった それでも彼は私をあきらめないでいてくれた そして部活に誘われて、入部して…… 初めて学校に自分の居場所ができた気がする 初めて文化祭を友達と回って、初めて他人に褒められて、初めて友達とお昼ご飯を食べた いつの間にかあの分厚い壁がなくなっていた。世界がこんなにも綺麗なことを初めて知った でも私は、まだ彼らになにもしていない。なにもできていない こんなにも感謝してるのに… だからここで先輩達の夢を終らせるわけにはいかない! そして何より、京太郎くんとの約束は果たさないといけない!! 私のかっこいいところ、見せてやるんだっ!!! ゴッ! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ビキッ トシ「おや…」 京太郎「ど、どうしたの?モノクルが…急に……」 トシ「ああ、何ともないよ。久しぶりで驚いただけさ」ニヤ 京太郎「?」 トシ「ふふ、なるほどね…ここから先は1秒だって見逃したらだめだよ」 京太郎「えっ?」 小鍛治『ロン、6400』 京太郎「やった!」 トシ「いや、まだだよ」 小鍛治『ツモ、6000・3000』 京太郎「よっしゃあ!運が向いたきた、いけるぞ!」 トシ「運?それは違うよ」 京太郎「どういうことですか?」 トシ「あれが健夜ちゃんの本当の実力さ」 京太郎「ああ…」 そうか…なるほど。これが小鍛治の…いや小鍛治プロのオカルト能力 小鍛治『ツモ、4000オール』 京太郎「これで2位、後は耐えさえすれば…」 トシ「耐える…?」 小鍛治『カン』 トシ「その必要はないよ」 小鍛治『カン』 トシ「なにせ健夜ちゃんが狙っているのは」 小鍛治『カン』 トシ「1位になることだけだからね」 小鍛治『嶺上ツモ――』 京太郎「だ、大三元…役満。捲った…!」 トシ「これは本物だねえ」 京太郎「か、かっけえ…」 _________ _____ __ 部長「なんと言っていいのか…とにかくありがとう」 部員1「あの状況から勝つなんてすごすぎだろ!シビれたよ」 部員2「こんな試合初めて見たよ、感動しちゃった」 副部長「ほんとすごかったわ!」 小鍛治「い、いえ、そんな…後半なんかほとんど何も覚えてなくて」テレテレ ガチャ 京太郎「……」 小鍛治「あ、京太郎くん…」 小鍛治「どうだった、かな?」 京太郎「……」 京太郎「小鍛治ーー!!」ダキッ 小鍛治「ちょ、ちょっ…//」 京太郎「すっげーかっこよかった!!」 京太郎「最後の役満での和了りなんて、漫画の主人公みたいだったぞ!」 小鍛治「そ、そうかな///」 京太郎「あの絶望的な状況から捲くって1位とか、もう鳥肌もんだったぜ!!」 小鍛治「あ、ありがとう////」 小鍛治「……」 小鍛治「そ、それでさ…約束、守れたかな?」 京太郎「…ああ、最高にかっこよかったぞ」 小鍛治「よかったぁ…」グスッ 京太郎「お、おい!?」 小鍛治「ううん…大丈夫」ポロポロ 小鍛治「嬉しくても涙って出るものなんだね」ニコ 京太郎「小鍛治…」 小鍛治「京太郎くん…」 部員1「あーこの部屋なんか暑くない?」 副部長「あらあら」 部員2「ちょっと!今いいところなんだから邪魔しない」 京太郎「////」 健夜「/////////」カァァァ 部長「ほらっ!馬鹿やってないで帰るぞ」 部長「ただ…その、ふ、二人はまだここにいていいからな///」ドキドキ 部長「ご、ごゆっくりー!」ダッ ガチャ 京太郎「」 小鍛治「////」 小鍛治「ね、ねえ…一ついいかな」 京太郎「お、おう、なんだ」 小鍛治「私さ、京太郎くんとの約束守れたよね?」 小鍛治「だからさ、その…一つお願いしてもいいかな?」 京太郎「まあ、俺のできる範囲でなら」 小鍛治「いいかげん私のこと、名前で呼んで欲しいかなー…なんて///」 京太郎「……」 小鍛治「い、いや…やっぱり今の無しで――」アタフタ 京太郎「……健夜」 小鍛治「えっ」 京太郎「健夜。これでいいか?」 健夜「うん!」 京太郎「帰るか」ギュ 健夜「うん///!」ギュ __________ ______ __ その後の試合については、正直言ってあまり言うべきことはない 負けてしまったからだ 副部長が3位で回ったところで他家が飛んで終了 あまりにもあっけなさ過ぎて、ほとんど実感がないのが本音だ だけどみんなが意外とスッキリとした表情をしていたのが印象的だった ともかく、俺達の団体戦はこれをもって終了となった ――8月上旬 インターハイ 団体戦は終ってしまったが、まだ副部長の個人戦がある なのでまだ俺達は東京にいるのだが、何人かは観光に出かけたようだ 俺はというと今日はトシさんに誘われて、男子の試合観戦に来ていた 健夜も誘うおうかと思ったのだが、なぜかトシさんに断られてしまった なにやら、俺だけに用があるようだ 京太郎「すごい張り詰めた雰囲気だね、こっちまで緊張してきそう」 トシ「全国から本物の怪物どもが集まってくるんだ。仕方ないよ」 京太郎「"怪物" ってのは流石にいいすぎじゃない?」 トシ「?知らないのかい」 京太郎「え、何を?」 トシ「まあ…見てれば分かるよ」 京太郎「?」 トシ「まだ、少し時間があるね」 トシ「ちょっと準備してくるから、ここで少し待っててくれるかい?」 京太郎「ま、まあいいけど…何してくるの?」 トシ「ひ・み・つ」 なかなかチャーミングだ しばらくすると、試合が始まってしまった まだトシさんが来ていないが、仕方がない 試合が始まると、さらに空気が張り詰める。なんだこの異様な圧力は… あの咲も、強いオカルト能力者に近づくと気分を悪くしていたが…これはその比じゃない 『御無礼』 京太郎「っ…!」 『県予選のときのように、もう《ゴルゴダの枷》は必要ないな』 『最初から全力でいかせてもらうか』ボッ 京太郎「ぐ、はっ…!」 なんだこの試合は、常軌を逸している… ま、まずい…このままだと…意識が 『……今の私の麻雀力は?』ゴゴゴゴゴゴゴゴッ 『32768アーデルハイドです』 京太郎「ぐわあああああああ…!!」 だめだ…もう。ごめんみんな…俺…こんなところで…… ガシッ! ??「大丈夫かい?少し遅れちまったね」 京太郎「う……ぁ…」フラフラ う、美しい……可憐だ… 京太郎「っ…」パクパク ??「喋らなくていい、そこでゆくっり休んでなさい」 ??「まったく、酷い有様だねえ」 ??「仕方がない……久しぶりに私の本気、見せてあげるよ!」ゴゴゴゴゴ スゥー…… こ、この構えは……まさかッッ! 天地魔闘の構えッッッ!!!! 天は攻撃、地は防御、魔は魔力の使用を意味する これら三つの動作を一瞬にして行う、大魔王でも全盛期にしか扱えぬという まさに、最大の奥義ッッッ!! しかし、これでは駄目だ… 天地魔闘の構えはカウンター技、自分に向かってくる攻撃に対処できるのみ……ッッ! このままでは会場にいる観客は…… スゥー……バッ! !!私としたことが、ぬかった…ッッ! これは予備動作に過ぎんッッ! ここから繰り出される技は…… 超武技ッッ闇勁ッッッ!!!! この会場に充満する"気"を奪い取る気かッッ! だが奪い取ったその"気"、一体何に使うというのか小娘…ッッッ!! むッ!なんだ、この光は…会場全体に広がって… まさか、そのエネルギーを使っているとでもいうのか…… この会場にいる人々の意思の共鳴を…引き起こしているとでも言うのかッッ!! すごい……外へ漏れようとしてした"気"が押し戻されていく だが、恐怖は感じない。むしろ暖かくて、安心を感じるとは… 眠い……この安心感……だめだ…意識が―― ~~~~~~~~~~~~~~~~~ ??「ふぅー、疲れた」 ??「とりあえず、大丈夫そうかね…」 ??「しかし、全国大会の度に呼び出されるのはたまったもんじゃないねえ」 ??「まあ、これも大人の努めか」 京太郎「……」 こうやってこの子を介抱するのも、これで二度目 ??「まったく…世話のかかる子だよ」ナデナデ _________ _____ __ 京太郎「ん…あ…」 トシ「気付いたかい、どこか痛むところは?」 京太郎「い、いや…大丈夫。なんともないよ」 トシ「そう?よかった」 京太郎「記憶があやふやなんだけど…なにかあったけ?」 トシ「さあ、なにも。夢でも見ていたんじゃないのかい?」 京太郎「そう…かなあ。あ!そういえばすごく綺麗な女性がいたんだけど、知らない?」 トシ「へえ…どのぐらい綺麗だったのかな?」 京太郎「いや、もう…今まで見た中で一番だよ!」 トシ「ふふ、そう?ありがとう」 京太郎「?」 トシ「さあ、試合見ようか。これも勉強の内だよ」 京太郎「はあ…」 トシさんに言われるまま、試合を眺める 流石全国から選りすぐりの選手が集まっているだけある、レベルが高い いや高すぎるくらいだ、県予選で戦ったアカギさん達3人もすごかった しかしここに集まっている選手達はそれと同等か、あるいはそれ以上の実力を持っている… 明らかに俺のいた時代とは一線を画している まるで別の競技を眺めているような…… 京太郎「あのートシさん、明らかに俺の時代とはレベルが違うんですが…」 トシ「そうなのかい?」 トシ「……あーなるほど、これを読んでごらん」 そういうと少し厚めの紙の束を渡された トシ「こっちで少し会議に出席してね、そのときの資料の一部だよ」 京太郎「えーなになに…『男子麻雀界の二極化に伴う新たな競技の設置について』」 京太郎「そんなのあったんだ…」 京太郎「『近年、男子麻雀選手の実力が急速に二極化し――』」 京太郎「『新たな麻雀競技を設置することでその解決を図ることを――』」 京太郎「なにそれこわい」 京太郎「『テニス、バスケにおいては既に同様の試みがなされており――』」 京太郎「『特に"テニヌ"においては中学生が分身、五感の剥奪、光速移動――』」 京太郎「『最近の研究では、恐竜の絶滅の原因はある中学生にあると考えられ――』」 京太郎「なにそれもこわい」 トシ「その様子だと、どうやら知らないみたいだね」 トシ「将来的には男子麻雀は二つの競技に分かれることがほぼ決まってるんだよ」 トシ「女子は均等にバラけてるからいいんだが、男子はあまりにも差がありすぎてね」 トシ「でも、どうやら未来では"そっち側"の競技はあまり知られていないみたいだね」 なるほど。通りで俺の時代の男子のレベルが低いわけだよ… なんとか無事に試合を見終わった レベルの高いものを見ると本当に勉強になるな まあ、一部人知を超えている方々もいたので、それは参考にならなかったが… いつか俺もあの舞台で戦いたいと思うような……思わないような 京太郎「トシさんは結局、俺にこれを見せたかったの?」 トシ「まあそれもあるけどね」 京太郎「?」 トシ「……実はタイムリープについて知っている人をついに探し出してね」 京太郎「!!」 トシ「で、その人はこのインターハイである高校に同行してるんだ」 トシ「まあ、私が呼んだんだけど…」 トシ「その高校は永水女子高校」 トシ「そこの神代さんという人が、明後日京太郎と会ってくれるそうだ」 京太郎「そう…」 トシ「今まで黙っててごめんね。できるだけ普通に過ごしてもらいたかったんだ」 京太郎「そんなことないよ。ありがとう、トシさん」 京太郎「それで、どこに行けばいいのかな?」 トシ「それならここに地図があるから。ほら」 京太郎「…明後日ここに行けばいいんだね」 トシ「そうだね…ただ一つ忠告することが」 京太郎「?」 トシ「たとえどんなことを聞かされようと、最後は自分の心に素直にね」 京太郎「……うん」 いよいよらしい、ついに帰れるのだ だが嬉しいと言う気持ちには到底なれなかった ――8月上旬 インターハイ おそらくもう長い時間、ここにはいられないと分かると、いてもたってもいられなくなった 俺はこの短い時間をどう使うべきなのだろうか? トシさんに話を聞かされてから、何度も何度も考えた だが決まって俺の頭の中には、いつもあいつの顔が片隅あった そうか。やはり、俺は…… 京太郎「よしっ!」 京太郎「トシさんごめん。少し出かけてくるよ」 トシ「まあ部屋の中にいてもしょうがないしね。二人とも気をつけていってらっしゃい」 京太郎「!!ありがとう、行ってきます」 コンコン 京太郎「すいませーん!」 ガチャ 部長「おう、どうした?」 京太郎「すいません部長、健夜を呼んでもらっていいですか?」 部長「ん?あ、ああ、分かった。少し待っててくれ」 しばらくすると、いかにもらしい格好で現れた 京太郎「ちょ、おま…花の女子高生が学校のジャージはないだろう…」 健夜「ほ、ほっといてよ!」 京太郎「出鼻くじかれたが、まあいいや。健夜、今日は暇あるか?」 健夜「うん、まあ…でも、どうして?」 京太郎「ええと、その……だな」 健夜「どうしたの?京太郎くんらしくない。もっとはっきり言ってよ」 京太郎「あー、一緒に出掛けないか?」 健夜「え、まだ先輩の個人戦残ってるから、副部長は行けないよ?部長だって――」 京太郎「いや、違う違う。俺は健夜と二人で行きたいんだ」 健夜「えと、それって……ももも、もしかして///」 京太郎「どうだ?」 健夜「ええええとね///!?もももちろん嬉しいんだけど……こっこ、こころの準備というものがありまして」アタフタ 副部長「もちろんオッケーよ」 健夜「え!?」 部員2「京太郎くんは10時に駅に待ち合わせね」 京太郎「別にホテルの前でもよくないですか?」 部員1「よくないよ!」 部長「初デートなんだから、待ち合わせからちゃんとしないとダメだろうが」 健夜「ででででデートって!?///」 部員1「すこやんはおめかしに時間がかかるから、そのうちに京太郎はデートプランでも練っておきな」 京太郎「そうですね、皆さんありがとうございます。じゃあまた後でな健夜」 健夜「え!?ちょとみんな勝手に――」 ガチャ 先輩達のおかげで健夜を誘うことができた 本当に感謝してもしきれないな ―駅前 現在9時45分、ホテルから程近い有楽町駅前に俺はいる 流石コンクリートジャングル東京、この時間からもうかなり暑い まあ元の時代の頃よりは幾分マシかもしれないが ??「お待たせ」 いきなり、かわいらしい女性に声を掛けられた 京太郎「えーと…どなたですか?」 ??「私だよ!?」 帽子を取って、よく見てみると… 京太郎「…ああ、健夜か。ごめん気がつかなかった」 気付かないのも無理は無い。朝のあのジャージ姿とのギャップがあまりにあったからだ 京太郎「いいじゃん……」ボソ 健夜「ん、どうしたの?」 京太郎「いや、なんでもない。その服似合ってるなって思って」 健夜「そ、そう//?実は先輩達から少し貸してもらったんだ」 健夜「さすがにそんなに荷物持ってきてないからね。助かったー」 先輩グッジョブ!! 京太郎「さ、時間がもったいない。行こうか」 健夜「どこ行くの?」 京太郎「まずは日比谷に映画を見に行こうぜ」 健夜「うん!」 今日は世間では平日ということになっている なのでそこまで混んでいなく、10分もすると映画館に着くことができた 健夜「何見よっか?」 京太郎「そうだなー」 えーと…この時間やっているのは 『千と千○の神隠し』『ダンサー・イ○・ザ・ダーク』『ファ○ナルファンタジー』 なんか偏ってるなーこの映画館… 健夜「この『ダンサー・○ン・ザ・ダーク』っていいんじゃなかな?」 健夜「『弱視の女性と息子との日常を描いたほのぼの感動作!!』らしいよ」 京太郎「それだけはいけない」 健夜「え?」 京太郎「それだけはいけない」 健夜「う、うん。分かった…」 健夜「じゃあこれは、『ファイ○ルファンタジー』」 健夜「『制作費1億3,700万ドルの超大作!世界初のフルCG映画をご覧あれ!!』だってさ、どう?」 京太郎「だめだだったんだ…」 健夜「なにが!?」 京太郎「回収できなかったんだよ…」 健夜「そ、そう…」 京太郎「健夜『千と○尋』にしよう、これはもう運命なんだ」 健夜「ま、まあ、京太郎くんがそこまでいうなら…」 _________ _____ __ いやー、やっぱりいい映画は何度見ても楽しめる 今見ても最新の映画と遜色ないどころか、むしろ新しい発見があるくらいだ 京太郎「どうだった?」 健夜「うーん、すごい良かったよ」 健夜「主人公の成長が軸になってるけど、脇役の活躍も欠かせない」 健夜「ジブリ独特の煌びやかな装飾とか、素朴でいて安心できる自然の風景も素晴らしかったし」 健夜「そして最後は千尋の成長からカタルシスを感じることができる」 健夜「とてもいい映画だったんじゃないかな」 京太郎「実に女子高生らしくないレビューをありがとう」 健夜「ふんっ!どーせ私は女の子らしくないですよ!」プイッ 京太郎「怒るなって」 健夜「…でも」 京太郎「ん?」 健夜「あの後、千尋とハクはまた会えたのかな?京太郎くんはどう思う?」 京太郎「そうだな……」 健夜「?」 京太郎「俺はまた会えると思う」 健夜「どうして?」 京太郎「俺だったらまた会いたいと思うから」 健夜「京太郎くん、意外とロマンチストなんだね」 京太郎「男の子はいつでもロマンを求めている生き物なのさ」キリッ 健夜「うわっ……」 京太郎「うわっ、とはなんだ。うわっ、とは…」 京太郎「そういう健夜だって、最後の方ちょっと泣いてたじゃねえか」 健夜「き、気のせいだから!」 京太郎「はいはい、そうですね」 健夜「バカにしてるっ!?」 京太郎「いいえ、滅相もございません。健夜お嬢様」 健夜「……今度は何?」ジー 京太郎「なんでもございません。さ、時間も時間ですしお昼にいたしましょうか」 健夜「それ続けるんだ!?」 お昼は近くで済ませてしまった 少し歩けばほとんど何でも揃ってしまう。東京とは恐ろしい街だぜ、まったく そして俺達が次に来たところは… 健夜「見て見て!この通りにあるのほとんど本屋さんなんだって!!」 そう本好きは避けては通れない町、神保町だ だが本だけではない。御茶ノ水の方に行けば楽器屋、スポーツ用品店が立ち並び さらに少し歩いて秋葉原まで行けば電子部品から同人誌までそろってしまう いわば、ここら一帯はマニア・オタクの聖地と言えるかもしれない 健夜「すごい!ネットでしか見たことがないような本がこんなにいっぱい!!」 健夜「うわー、ここに住みたいくらいだよ~」 健夜「ねえねえ、京太郎くん。もしかしてあれが噂の書泉グランデかな?」 京太郎「あ、ああ。そうなんじゃないかな…」 健夜「行ってみようよ!ほらっ!!」 京太郎「はいはい」 健夜「このエレベーターはね、R.○.Dっていうアニメにも出てくる場所なんだ」 健夜「それだと地下に行けるようになってるんだけど、流石に無理みたいだね」 京太郎「確かに、エレベーターの底が見えちゃってるもんな」 健夜「あの読子・リードマンもこのエレベーターに乗ったのかと思うと…」 健夜「うぅ~、感動だよ!」 健夜「あ、書泉の本棚って大型店にしては珍しく、いまだに木製の本棚なんだ」 健夜「なんだかレトロでかっこいいね」 健夜「さ、次は神保町のランドマーク、三省堂に行くよ!」 京太郎「りょーかい」 健夜「こ、これはすごいね…驚いたよ」 健夜「このビル全部に本が詰まってるんだよ?まさに本の山だよ!!」 健夜「雑誌、新刊、小説、漫画、理系専門書からさらに洋書まで扱ってるなんて…」 健夜「すごすぎるよ、感動だよ!」 健夜「聞くところによると、池袋にはジュンク堂というラストダンジョンまであるんだから……」 健夜「東京は本当に恐ろしい所だよ…」 京太郎「さいですか」 神保町に着いてから、実に一時間以上はしゃぎっぱなしだった まあ楽しんで貰えたようでなによりだ 流石に真夏の移動で疲れたので、近くの喫茶店で少し休むことにした 健夜「ご、ごめんね…ちょっと買いすぎちゃった」 京太郎「気にすんな、荷物持ちなら慣れてるから」 健夜「それってどうなの…」 京太郎「それに、デート中女の子に荷物持たせるわけにはいかないだろ?」 健夜「そ、そうかもね///」 健夜「でも、なんでこういう場所をを選んだの?」 健夜「京太郎くんなら、ディ○ニーランドとか行くのかなー、とか勝手に思ってたんだけど…」 京太郎「おいおい健夜…ディ○ニーランドに行きたかったのか?」 健夜「ムリムリ!絶対無理!!あんなキャピキャピした空間なんて絶えられないよ!」 健夜「最悪、穴という穴から砂糖吐いて気絶するよ!!」 京太郎「何その気持ち悪い妄想……」 京太郎「まあ、でもそうだろ?だから敢えて落ち着いた場所を選んだんだよ」 京太郎「それに本好きなのは前から分かってたしな」 健夜「私のことちゃんと考えてくれてたんだ……ありがとう」 京太郎「どういたしまして」 京太郎「さ、十分休んだし、最後にもう一つだけ行こうぜ」 健夜「ここは?」 京太郎「上野恩賜公園――いわゆる上野公園だな」 健夜「へえー…あ、見て、かえるの噴水がある。かわい~」 まずは基本に沿って、交番横の入り口から入る そのまま左側を真っ直ぐ進んでいく 人がまばらなので非常に快適だ 健夜「うわー、大都会のど真ん中にこんなに緑がたくさんあるなんて…すごい不思議」 京太郎「たしかにそう考えるとすごいよな」 ちなみにここは、1873年に日本初の公園に指定された歴史的な公園だ ボードウィン博士という人がこの場所を公園として残すように働きかけたのがきっかけだそうだ 実際にボードウィン博士の銅像は噴水池の横にある 俺達がここでデートをすることができるのもこの人のおかげなのだ。感謝しないとな 健夜「すごい数の桜の木だね、春に来れたらもっと綺麗だったかも」 うーむ、確かにその通りかもしれないが、決しておすすめはできないだろう 何しろあの時期のここら辺はまさに人、人、人のどんちゃん騒ぎ 酒飲みの人間や至るところに散ったごみ等見るに耐えない 健夜「ふうー、やっと桜並木を抜けたね。ん、あれは何の建物かな?」 京太郎「正面にあるのは東京国立博物館だな」 健夜「へえー、ここから見ると左右対称になってて綺麗だね」 健夜「それに荘厳というか、趣を感じるよ」 東京国立博物館もまた日本最古の博物館である 健夜の言っていた建物は本館で、和洋折衷の様式となっている 主に日本及び東洋の文化財を取り扱っているのが特徴だ 歴史好きにはたまらないかもしれないが、そうでない人にとってその展示は退屈なものかもしれない しかし本館については均整の取れた非常に美しい構造をしていて、思わずため息がこぼれる これだけでも見る価値があるかもしれない また、アニメ映画『時をかける少女』ではここが舞台の一つとなっている 魔女おばさんこと芳山和子はここに勤めていることになっているのだ そして間宮千昭が見に来たと言う「白梅ニ椿菊図(はくばいにつばききくず)」はここのものだった もちろんこの絵は実在しないものだが 健夜「あ!あれが上野動物園なんだ」 京太郎「そうらしいな、行きたいか?」 健夜「うーん、動物園なら茨城にもあるし、せっかくだから別のがいいな」 京太郎「そうか。なら博物館と美術館だったらどっちがいい?」 健夜「それだったら美術館かな、博物館の展示ってなんだか苦手なんだよね」 京太郎「それは分かる、歴史とか好きならまた変わってくるのかもしれないけどなー」 健夜「で、どこにあるのかな?」 京太郎「あっちだな」 健夜「ああ、あの四角い建物だね。変わった形してるんだ」 健夜「あ!あれってもしかして有名な『考える人』かな」 京太郎「そうだな、オーギュスト・ロダンの彫刻だな」 健夜「あれ?でも前にテレビで見たのは別の場所だったような…」 京太郎「ああ、ロダンの『考える人』は世界中にたくさんあってその一つがこれなんだよ」 健夜「へえー、一つじゃなかったんだ」 京太郎「そゆこと。しかし暑いな、さっさと中入ろうぜ」 健夜「そうだね」 建物の中に入ると、その無機質な外観と相まってかとても涼しい さっそく受付で常設展のチケットを購入し、展示を見ていく 健夜「すごい繊細…布と肌の質感が本物かそれより綺麗に見えるよ」 京太郎「ドルチの『悲しみの聖母』だな」 京太郎「この美術館の絵画の中でも特に人気の高い作品だ」 京太郎「実際一目でその美しさは分かるし、何度でも見たくなるよ」 健夜「ふーん、そうなんだ」 健夜「私さ、こういう分かりやすいというか、一目で綺麗ってわかる絵のよさは理解できるんだけどさ」 健夜「宗教画の楽しみ方がよく分からないんだけど…」 京太郎「宗教画かー……うーん」 京太郎「俺もよく分からないだよな、宗教画」 健夜「そうなの?」 京太郎「ぶっちゃけて言えばさ、宗教画って聖書の二次創作だろう?」 京太郎「分からなくても無理ないと思う」 健夜「あはは、ひどい言い様」 京太郎「それだったら、俺はこっちのルノワールとかモネの作品が好きだな」 健夜「この女の人の絵は見たことあるよ、名前は知らないけど」 京太郎「『帽子の女』だな。光の描き方がすごいよな」 京太郎「ルノワールはかなり親しみやすい画風なんで、世界的に人気の画家だ」 京太郎「んでこっちのがモネの作品だ」 京太郎「モネもルノワールも同じ印象派だけど、それぞれ個性があっておもしろいよな」 健夜「そうだね、でもどちらかというと私は――」 そんな他愛の無い会話をしていると、あっという間に時間が経っていった 展示物も大体見終わったので外に出ると、もう日が落ちてかなり暗くなっていた 京太郎「そろそろ帰るか」 健夜「うん、そうだね」 健夜「あ、見て!噴水がライトアップされてるよ、綺麗…」 京太郎「…せっかくだから見ていこうぜ」 健夜「いいの?ありがとう」 噴水の近くにベンチが備え付けてあったので、二人でそこに腰掛ける 健夜「今日はありがとう、とても楽しかったよ」 京太郎「どういたしまして。でもこういうの実は初めてだったからさ、正直緊張したよ」 健夜「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあ初めて同士だね///」 京太郎「そういうことになるのかな//」 健夜「///」 京太郎「はは…」ポリポリ 健夜「私…」 京太郎「ん?」 健夜「私、京太郎くんには本当に感謝してるんだ」 京太郎「どうした、いきなり」 健夜「いきなりじゃないよ、いつもそう思ってるんだ」 健夜「入学式の日、京太郎くん、私に話しかけてくれたでしょ?」 健夜「正直あの時は、「金髪不良少年が私になんの用!?」って思ったよ」 京太郎「金髪…はその通りだけど、不良少年っておい!」 健夜「はは、ごめんごめん」 健夜「でも誰も私に話しかけない中、京太郎くんは何度も私にかまってくれたよね」 健夜「少しずつだけど、京太郎くんとも普通に話せるようになって…」 健夜「家族以外でそんな仲になったのは初めてだったんだよ?」 京太郎「……」 健夜「そんな時、麻雀部に誘われて、先輩達もいい人ばかりで…」 健夜「学校の中に居場所があると、登校するのがとても楽しくなるんだね。初めて知ったよ」 京太郎「……」 健夜「文化祭なんて、今までの私にとってはただの苦痛な行事の一つだったんだ」 健夜「でも真面目に参加して、皆と一緒に準備すると、楽しいものになるんだって気付いたよ」 健夜「京太郎くんのおかげで、クラスの女の子達とも仲良くなれたしね」 京太郎「…俺は何もしてないよ。健夜には魅力があって、誰かがその事に気付いただけさ」 健夜「ううん、そんなことない」 健夜「その後は大会に出たり、海に遊びに行ったり、合宿したり、色んなことがあったね」 健夜「そして今は、京太郎くんとここにいる」 健夜「なんだか、この何ヶ月かは私にとってはずっとジェットコースターに乗ってる気分だったよ」 健夜「京太郎くんがいなかったら、絶対こんなことになってなかったと思う」 健夜「だから、本当に心から感謝してるんだ。ありがとう」 健夜「えへへ……なんだかこういうのって恥ずかしいね///」 京太郎「そうだな」 健夜「京太郎くん…」 京太郎「健夜…」 健夜の手に、自分の手を重ねる。暖かい だんだんと二人の距離が近づいてゆく、そして――― 「あれは何をやっているのでしょう、マム」 「ノーウェイノーウェイ、あなたにはまだ早いわ」 「それにしても最近の高校生は進んでるのね~、ママとパパなんか――」 京太郎・健夜「!!」バッ 京太郎「……」 健夜「……」 京太郎「か、帰るか//」 健夜「そ、そそそそうだね//////」 京太郎・健夜「はぁー…」 健夜「ね、ねえ、京太郎くん」 京太郎「なんだ?」 健夜「来年もまた、一緒にここに来ようね」 京太郎「……そうだな」 健夜「?」 上野駅から電車に乗り、宿泊先のホテル近くの駅まで戻ってきた 京太郎「ふうー、結構疲れたな」 健夜「一日中動き回ってたからねー」 京太郎「この荷物のせいじゃないんですかねえ…」 健夜「そ、それは悪いと思ってるよ!」 京太郎「はいはい」 健夜「もうっ!」 健夜「あ、そうだ。ちょっと買わなきゃいけないものがあるんだった」 京太郎「そうなのか?だったら付き合うよ」 健夜「いいよ、もうホテルまですぐそこだし。一人で大丈夫」 京太郎「そうか?」 健夜「うん、今日はありがとうね、とても楽しかった。またね明日ね」 京太郎「おう、また明日」 そう言って、健夜は向かいの交差点を歩いて渡って行く 信号は青、人はまばら、夏の日差しが道路を照らしている えっ?夏の日差し? 今は夜だったよな? あれっ? なんだこの映像 いや、この光景……前にも…どこかで そうだ……この後……確か…車が来て…それで… 「あぶなーいっ!!!!」 京太郎「ッ!!」 荷物を捨てる、全力で走る 健夜を抱き寄せ――歩道に倒れこんだ 京太郎「大丈夫か!!」 健夜「ッ!?え?え!?」 混乱しているようだが、見たところ目立った外傷は無いようだ よかった、本当によかった… _______________________ _____________ ____ 京太郎「落ち着いたか?」 健夜「うん、なんとか……」 結局、信号無視した車は俺達のとなりを通り過ぎ、ガードレールにぶつかって停止した その後、救急車とパトカーが来て一時辺りは騒然となった 俺達は警察の人に事情を説明し、救急隊員の人にも簡単に診てもらった 京太郎「ごめんな、健夜の本ばら撒いちまって」 健夜「ううん、そんなのいいよ。それに本はきれいにすればまた読めるしね」 京太郎「そうだな…」 京太郎「歩けそうか?」 健夜「うん、余裕だよ!!」ガクガクガク 京太郎「いや、だめだろ!?生まれたての小鹿みたいになってるぞ」 京太郎「ほら」 健夜「なに、その格好は?」 京太郎「ホテルまでおんぶしてやるから、乗れ」 健夜「い、いや、いいって。恥ずかしいし…」 京太郎「それで転んで怪我したら大変だろ?な、頼む」 健夜「う、うん…そうだね。じゃあお願いしようかな」 京太郎「よっこいしょ、っと」 健夜「ど、どうかな」 京太郎「どう、って?」 健夜「その……重くないかな?」 京太郎「いや、全く。むしろ軽すぎるくらいだな」 京太郎「それに幸いなことに、背中にあたるものがないから気を遣わなくていいしな」 健夜「」グイッ 京太郎「ちょ、やめ!しまってる、しまってるからっ!!」 健夜「まったく、京太郎くんはいちいち他人をからかわないと死んじゃう人なのかな!?」 京太郎「まあな、でも健夜限定だぞ?」 健夜「余計性質が悪いよね!?」 京太郎「冗談だよ」 健夜「もうっ!」 健夜「でも……」 健夜「さっきはありがとう。とってもかっこよかったよ」 京太郎「う、なんだか照れるな//」 健夜「でも、あんな危険な真似もうしないでね?」 健夜「京太郎くんがいなくなったら、私……」 京太郎「……安心しろ、俺はちょっとやそっとじゃ死なないから」 京太郎「それに、そんな約束はできないな」 健夜「え」 京太郎「健夜のピンチは、俺が必ず助けるから」 京太郎「だからどんな時間にどんな場所にいようと、跳んで助けにいくよ。必ず」 健夜「よ、よく、そんな恥ずかしいセリフを……///」カァァ 健夜「で、でも…ありがとう。覚えておくよ…///」ボソボソ 京太郎「ああ、そうしてくれ」 ________ _____ __ 京太郎「……」 京太郎「……」 健夜「…zzz」スースー 京太郎「寝たか…」 まあ、無理もない。ただでさえ疲れていたのに、あんなことがあったのだ 京太郎「……」 京太郎「なあ、健夜。俺思い出したよ」 京太郎「あの日、あの時、何があったのか」 ――8月上旬 インターハイ 神代さんとの面会日 京太郎「ここか…」 トシさんに渡された地図を頼りに、神代さんが待つ旅館に到着した 東京のど真ん中にもこんな立派なものがあるんだなあ 受付の人に名前を告げると、すぐに部屋まで案内された。話は通っていたのだろう 京太郎「失礼します」 中に入ると、40代くらいの男性が座っていた もっと厳しい雰囲気の人を想像していたが、この人からそういうのは感じられない 京太郎「こんにちは、神代さんですね。今日はよろしくお願いします」 神代「こんにちは、よく来てくれたね。ささ、座りなさい」 _________ ______ __ 神代「うーむ、何から話そうかねえ」 神代「まあ、まずはタイムリープとはどういうものなのか話そうかな」 神代「熊倉さんから聞いてるかもしれないけど、これは自体は別に珍しくはないよ」 神代「私の経験から言うと、若い人に多いと言えるかな」 神代「ほら、君も若いでしょ。ま、理由はよく分からないけど」 神代「で、タイムリープの現象はね、トンネルを考えると分かりやすいかなあ」 京太郎「トンネルですか?」 神代「そそ。でも普通のトンネルじゃないよ、ある時空を別の時空を結ぶトンネル」 神代「君はそのトンネルを通ってきたってわけ」 京太郎「そのトンネルはどうやってできるんですか?」 神代「うーむ、実はトンネルには2種類あってね」 神代「一つは元々そこにあるもの、けどこれは普通の場所にはないんだ」 神代「少なくとも、君みたいな高校生が行くようなところには無いと考えていい」 神代「もう一つは、突発的に新しくトンネルができるタイプのものだね」 神代「原因は様々で、人によるもの、自然現象によるもの、あとはオカルトとかかな」 京太郎「……人によるもの、って例えばどんなのですか?」 神代「そうだねえ、突発的に感情が大きく変化するのが原因であることが多いかな」 神代「例えば、生命の危機に直面するような事故に遭遇したときとかね」 神代「ほら、映画とか小説でよくあるような」 神代「さらに言うと、オカルト持ちの人がそういう目に会うとなりやすいと思うよ」 京太郎「逆に言えば、オカルト持ちでなければタイムリープはしにくいと?」 神代「あくまでそういう傾向にあるだけだけどね」 神代「でも君は今のところは、オカルト能力を持っていないだろう?」 神代「だから君の場合は、他の人間のオカルト能力が関係している可能性は高いね」 なるほど 神代「まあ君の場合、12年も跳躍したんだ。相当強力なオカルト能力者が関係しているのかも」 京太郎「あの、それで…肝心の帰り方なんですけど」 神代「そうだったね、それが一番重要だよね」 神代「でも、その答えはすごく簡単だよ。あるものを持っているだけでいいんだ」 京太郎「あるもの?」 神代「"心の底から帰りたいたいという気持ち"。要は気分しだい…」 神代「逆に言うとね、京太郎くん、君は心の底では帰りたくないと思っている」 神代「そうなんじゃないかな?」 京太郎「そう……かもしれません」 神代「まあ、君にも事情があるのだろう。詳しくは聞かないよ」 神代「ただね、だからといって未来を変えようとはしてはいけないよ」 京太郎「なぜです?」 神代「これも熊倉さんから聞いてるかもしれないけどね、歴史を変えるのにはリスクが伴う」 神代「そして、たとえ改変がうまくいったとしてもその埋め合わせはいつか必ず来るよ」 神代「どういう形で、とまでは分からないけどね」 やはり、未来を変えるのはだめみたいだな ならば、自分の力でなんとかするしかない 神代「あと、なるべく早いうちに帰ったほうがいいね」 神代「この時代にいればいるほど、君のこの時代での存在が大きくなる」 神代「そうすれば、未来での不確定性もどんどん増していくだろう」 京太郎「どういう意味ですか?」 神代「うーん、例えば熊倉さんは、未来では君のことを知らなかったのだろう?」 神代「だが、この時代では既に君のことを知ってしまっている」 神代「つまり、君の知っている未来とこの時代が辿る未来には明らかに矛盾が生じてしまっている」 神代「このくらいのごくごく小さな矛盾ならまだいいんだけどね」 神代「だけど、君がここで過ごば過ごすほど、その矛盾は看過できなほど大きくになってくる」 京太郎「そうなるとどうなるんですか?」 神代「分からない…だけどそれが善いものであるとはとても思えないね」 京太郎「……」 神代「もしかしたら、ドクの言ってたみたいに銀河が消滅しちゃうかも。なーんて」 京太郎「??」 神代「あ、ごめん。分からないよね」 神代「これがジェネレーションギャップかあ、歳はとりたくないものだねまったく」 京太郎「はあ…」 神代「聞きたいことはもうないかな?」 京太郎「そうですね……何か、向こうに持っていけるものはないんですか?」 神代「それは無理だね。来たときの格好でしか帰れないから」 京太郎「そうですか…なら、帰る時間と場所は選択できるんでしょうか?」 神代「それも無理。SFみたいにそんなに便利なものでもないんだよね」 神代「だから、タイムリープした瞬間にしか戻れないよ」 京太郎「そう…ですか。ありがとうございました」 神代「……じゃあ最後におじさんから一つアドバイス」 神代「君みたいな悩み多き青少年には、時としてどうしていいか分からないときがあると思う」 神代「そういう時、自分の頭で考えることは何よりも重要だろう」 神代「だが、考えすぎて、理屈を優先して、自分の気持ちを忘れてはいけない」 神代「だから、最後の最後は自分の気持ちに素直になってみるといい」 トシさんも、同じこと言ってたな 京太郎「そうですね、ありがとうございます」 神代「さ、若者はとっとと帰った帰った!」 神代「年寄りの説教ほど、聞くに堪えないものはないから」 ――8月上旬 インターハイ 女子の個人戦が終了した 結果は副部長が三回戦敗退、本人は楽しかったと喜んでいた ついに俺達の夏が終ったのだ 祭りの後はいつも寂しい、でもこの祭りはとても楽しかった またいつか今度こそ、俺も参加してやろう そうすれば、咲や部長も喜ぶだろう そのときは健夜も喜んでくれるだろうか? ――8月中旬 部活 インターハイが終ったとはいえ、部活動自体は続いている 先輩達は事実上引退なのだが、それでも部活には顔出してくれる まあ、先輩達がいなくなると俺と健夜だけになるから助かるんだけどね 部員1「ふぃー、終った終わった。このままどこか遊びにいかねー」 部長「アホ、受験に備えて勉強するべきだろうが」 部員2「といいながら、未だに部活に来ている部長であった」 部長「うっ!それは、その…たまには息抜きも必要であってだな…」オロオロ 部員1「おしっ!なら遊びに行こう、そうしよう」 部員1「すこやんも行くよな!?」 健夜「はい、せっかくだから」 副部長「京太郎くんはどうかしら?」 京太郎「えーと、実はちょっと用事がありまして……」 健夜「えっ!?」 副部長「あら、そうなの?」 部員2「この前もそんなこと言ってたよね」 部員1「私たちに隠して何を企んでいるのやら…」 京太郎「そ、そんなんじゃありませんよ」 部員1「ほんとかな~」 京太郎「あっ!もうこんな時間だー(棒)お先に失礼します!」ダッ 健夜「……」 ガラガラガラ ふうー、危ない危ない。あんまり追求されるとボロが出かねないな さて、家に帰って着替えて、さっさと行かないとな ―次の部活の日 健夜「一緒にかえ――」 京太郎「銀河の歴史がまた1ページ」ダッ ―次の次の部活の日 健夜「今日は大丈――」 京太郎「それでは次週をご期待ください。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ…」ダッ ―次の次の次の部活の日 健夜「……」 京太郎「次回も健夜といっしょにレリーズ!」ダッ ガシッ 健夜「ちょっと待とうか」ニコ 京太郎「ナ、ナニカナ、スコヤサン…」 健夜「最近何かコソコソしてるみたいだけど、どこで何をしてるのかな」ニコニコ 京太郎「エ、イヤ、ソノデスネ…」 健夜「もしかして私に言えない様な事なのかな」ニコニコ 京太郎「ソウイウワケデハ…」 健夜「別にね、京太郎くんのこと信用してないわけじゃないんだよ?」ニコニコ 健夜「でもね、もうすこし私のこと信用してほしいかなー、なんて」ニコニコ 京太郎「オッシャルトオリデ…」 健夜「だいだいね――」クドクド 部長「あ、あれがいわゆる修羅場ってやつなのか?」ドキドキ 部員2「ちょっと一方的だけどね」 部員1「すこやんは意外と尻に敷くタイプだね、ありゃあ」 副部長「愛が深いのも考え物ねえ」 京太郎「」 健夜「」 健夜「んん…//で、結局何をしてるの?」 京太郎「すまん、今はちょっと言えないんだ。でもじきにに分かると思う」 京太郎「それまで待ってもらえるか?」 健夜「うん…」 京太郎「お詫びじゃないけどさ、今度また二人で遊びに行かないか?」 健夜「え、いいの?最近忙しいんじゃない?」 京太郎「大丈夫大丈夫!俺も健夜と一緒に出掛けたかったからな」 健夜「そ、そうなんだ…だったらいいよ///」 京太郎「じゃあ、来週の水曜日はどうだ?」 健夜「うん、その日なら大丈夫」 京太郎「よかった。詳しいことはまた後でな。もう行かなきゃ」 健夜「うん、分かった。いってらっしゃい」 京太郎「ああ、行ってきます」 部長「まるで夫婦だな」クス ――8月下旬 デート前日 京太郎「うーん、どうするか…」 デート前日だというのに、未だに俺はどこに行くのか迷っていた 京太郎「だいたい茨城県民って、どこにデートに行くんだよ…」 京太郎「何も無いじゃん、何も無いじゃん!」 ついには考えあぐねて、机の整理をし始めてしまった これはあれだ、テスト前に部屋の掃除をしたくなってしまう例の… パラ… 京太郎「ん?何だ、これ」 『アクアワールド 前売り券』 京太郎「これは、確か…」 以前、健夜のお母さんから頂いたものだ 京太郎「はは、なるほどね…」 もし…仮に、運命と云うものがあるとしたら、こういうことをいうのかもしれない 京太郎「決まりだな」 ――8月下旬 デート当日 さて、服装オッケー、財布オッケー、ハンカチとティッシュは持った えーと後は…… あっ!危ない危ない、大事なものを忘れるところだった これを忘れると、この2週間の努力が水の泡になってしまうからな 京太郎「じゃあ、行ってくるよ」 トシ「ああ、気をつけてね」 京太郎「あー……トシさん」 トシ「ん?」 京太郎「いつも、ありがとう」 トシ「ふふ、こちらこそ」 トシ「さあ、行ってらっしゃい」 待ち合わせ場所の駅前に向かう そこには既に、かわいらしい姿をした女の子がベンチに座っていた 京太郎「おはよう」 健夜「あ、おはよう!」 京太郎「すまん、待たせちまったみたいだな」 健夜「ううん、私も今来たところだから…………ハッ!!」 京太郎「……」 健夜「……」 健夜「普通逆だよね」 京太郎「だな」 京太郎「でも、俺の『人生で一度は体験したみたい事』第6位を経験できたからいいや」 健夜「なにそれっ!?ていうか1位から5位はどうなってるのそれ!?」 京太郎「さ、早く行こうぜ。電車に乗り遅れちまう」 健夜「え、ちょっと待ってよ。すごく気になるんだけど!?」 ___________________ ___________ ____ 電車で水族館近くの駅まで来て、今はバスに乗っている 天気は見事な晴れ。海の景色も素晴らしい 健夜「ここの水族館来るの久しぶりだよ。小学生のとき以来かなー」 京太郎「俺も水族館なんて、学校の遠足で行ったきりだと思う」 健夜「へえ、確か京太郎くんて長野出身なんだよね?」 健夜「長野県に水族館なんてあるの?」 京太郎「失礼な、一応あるぞ。そんなに大きくなかったけどな」 京太郎「それより、冬になると遠足でよくスキーをしに行ったりしたなあ」 健夜「いいなあ、私の所なんか普通に近くの公園に行ったりしただけだったもん」 京太郎「まあそれは雪国の特権ということで…」 京太郎「でも、雪ってそんなにいいものでもないぞ?」 京太郎「道路だけじゃなく、屋根に上って雪を落とさなきゃならんし」 京太郎「子供のころは雪のせいでよく転んだし」 京太郎「近くに買い物に行くにも一苦労だし…」 京太郎「でも、小さい頃は雪が降るとそれだけではしゃいだりしてたっけか…」 京太郎「今では、雪が降ると『めんどくせー』としか思わないのにな」 健夜「あはは、そうかもね」 健夜「でもそのおかげで、スキーとか滑れるようになったんでしょ?」 京太郎「まあな」 健夜「じゃあ、いつか私に教えてよ。実はまだしたことないんだ」 京太郎「……」 健夜「京太郎くん?」 京太郎「…そうだな、いつか必ず」 健夜「?」 京太郎「おっ、見えてきたな。あれがそうなんじゃないか」 健夜「あの大きい建物?前に来たときと違う気がするんだけど…」 京太郎「ああ、なんだか今年リニューアルオープンしたらしいぞ」 健夜「そうなんだ、楽しみだね!」 _________ _____ __ 京太郎「どうする健夜、微妙な時間だし先にお昼ごはん食べないか?」 健夜「う、うん。そうだね…」 京太郎「中にフードコートあるし、行こうぜ」 健夜「……」 京太郎「どうかしたか?さっきから口数少ないけど」 健夜「え、えーとね……その…」 京太郎「?」 健夜「こ、これっ!!」ズイッ 京太郎「ん?見ていいのか……お弁当じゃん!」 健夜「……」コクコク 京太郎「これ、健夜が自分で作ったのか?」 健夜「うん。いちおう…」 京太郎「俺の分もあるのか?」 健夜「も、もちろんだよ//」 健夜「というより、京太郎くんのために作ったというか……」ボソボソ 京太郎「?」 健夜「さ、向こうに机と椅子あるし行こっ!」グイッ 京太郎「お、おう」 早速健夜の作ったお昼ごはんを机の上に広げる 主食とおかずがバランス良く敷き詰められている さらにフルーツまで用意してあり、盛り付けもなかなか綺麗だ 京太郎「おお、意外とうまそうじゃん!!」 健夜「意外とは余計だよ!?」 健夜「でも京太郎くんの舌には合わないかも…」 京太郎「え、なんでだ?」 健夜「ほら、京太郎くんってお料理得意でしょ?それに比べて私はヘタクソだし……」 京太郎「あはは、それはそうかもな」 健夜「ひどいっ!」 京太郎「でもいいんだ、健夜の作ったご飯を食べられるだけで」 健夜「そ、そう///」 京太郎「さ、食べようぜ」 健夜「うん」 モグモグ 健夜「どうかな…」ジー 京太郎「うん、10段階評価でいうと4ってところだな」 健夜「それは喜んでいいのかな…」 京太郎「なに、これからどんどん上手くなっていけばいいさ」 京太郎「それより俺は、健夜の作ったものを食べられるだけで嬉しいから」 健夜「うっ…あ、ありがと//」 京太郎「うーん、でもこの味付けどこかで……健夜、これお母さんに手伝ってもらったろ?」 健夜「な、なぜそれを…」 京太郎「この煮物の味付けなんて健夜のお母さんのにそっくりだし、こっちの照り焼きだって――」 健夜「え、え、なんでそんなこと知ってるの?」 京太郎「ああ、言ってなかったけ?」 京太郎「実はな…文化祭の後意気投合しちゃってさ、何度かおじゃまして料理について教えあったり」 京太郎「今どこのスーパーでどの品物が安いのか、とか話しながらお茶したり――とかしてたしな」 健夜「主婦の会話!?お母さんと仲良すぎない!?それに私そんなこと知らないんだけど!?」 京太郎「えー、だって健夜って土日はお昼過ぎまで寝てるじゃん?」 京太郎「俺その時間にしかいなかったからなあ」 健夜「」 京太郎「ん?どうした」 健夜「乙女の秘密を暴いてそんなに平然としてるなんて……」 京太郎「乙女て……」 健夜「もう、知らない!勝手に食べれば!!」ガツガツ 京太郎「はいはい、すいませんでした」 昼食を食べ終わり、少し休憩をとると、いよいよ水族館に入場した さすがリニューアルしたばかりなので、清潔感があっていい感じだ 健夜「見て見て、すごい大きな水槽…」 京太郎「ほんとにな。イワシの大群がすごいキラキラしてるな」 健夜「あはは、あそこで泳いでる亀見て!」 京太郎「魚に纏わりつかれてる、何してるんだろう?」 健夜「さあ、分からないけど、なんだかかわいいね…」 京太郎「すごいな、サメも一緒に泳いでるんだな……他の魚食べないのかな?」 健夜「水族館の魚は餌は足りてるから、基本的に襲ったりしないらしいよ」 京太郎「基本的には?」 健夜「うん、だからたまに襲ったりすることもあるんだって」 京太郎「へえー、他の魚からしたらたまったもんじゃないなそれ…」 健夜「ふふ、そうだね」 京太郎「しかし、水族館に来ると腹が減ってこないか?」 健夜「えー、ならないよ。なんで?」 京太郎「俺よく料理はするからさ、食材を見ると完成品が思い浮かんじゃって…」 健夜「食材って…」 京太郎「ほら、あそこのイワシなんてうまそうだろ?たたきにすると最高なんじゃないか」 健夜「うっ……確かに」 京太郎「あのブリなんかいいじゃないか、脂身が多そうだから照り焼きにするか鍋にするか…」 健夜「うぅ…」ゴクリ 京太郎「向こうの水槽の大きなエビはシンプルに刺身にしようかな。頭は鍋のダシにしよう」 健夜「……もうやめて!お腹空いてきちゃうよ!?」 京太郎「やっぱりなったじゃないか」 健夜「京太郎くんのせいだからね!?」 健夜「うー、もうまともな目で展示見れないよ…」 京太郎「はは、わるいわるい!」 京太郎「じゃあ、あまり食材っぽくないあっちの展示を見ようぜ」 健夜「えー、なになに……サメと…マンボウだね!」 健夜「確かに、これならお料理は想像しにくいもんね」 京太郎「ちなみにサメの肉は鶏肉に似ていて、マンボウも意外と全国各地で食べられ――」 健夜「もうやめてっ!?」 _________ ______ __ 健夜「すごいサメの数だね…それに何種類もいるみたい」 京太郎「なんでも、この水族館の一押しがサメとマンボウらしいぞ」 健夜「へえー、言うだけあって確かにすごい数…」 健夜「あ!あのサメかっこよくない?」 京太郎「どれどれ……ふーむ、メジロザメっていうのか。確かにかっこいいな」 健夜「でしょ!」 京太郎「なんというか、ロシアの諜報機関に所属していて暗殺とかやってそうな顔をしてるな」 健夜「やけに具体的だね…」 京太郎「そうだな、例えるならサメ界のプ○チンといったところか…」 健夜「それはいけない」 京太郎「おっと、そうだったな」 健夜・京太郎「……」 健夜「あ、あれなんかどうかな」 京太郎「えーと、レモンザメか。名前はかわいらしいが……目がイッちゃってるな」 健夜「…うん、そうだね。あんなの海で見かけたら間違いなくパニックになる自信があるよ」 京太郎「こっちはあれだな、シリアルキラータイプだな」 京太郎「さっきのは計画的に殺人を犯すのに対して、こっちは特に理由も無く犯行に及ぶに違いない」 健夜「ひどい言い様だね…まあ、分からなくもないけど」 京太郎「おい、またすごいのを発見したぞ、あれ!」 健夜「うわっ!すごい強面…歯がむき出しになっててこわっ!」 京太郎「あれは…シロワニっていうのか。サメなのにワニって…ひょっとしてギャグで言っているのか!?」 健夜「へえ、見た目はあんなのなのに、おとなしい性格で人もめったに襲わないんだって…」 京太郎「嘘付け!あの顔は絶対中南米のマフィアのボスをやってて、麻薬取引で金稼いでる顔だよ!!」 健夜「ああ…確かにそんな感じ」 _________ _____ __ 健夜「想像してたのと違う…」 京太郎「え、何が?」 健夜「なんていうか、もっとこう『かわい~!』とか『すご~い!』とか」 健夜「水族館てそういう楽しみ方をするものだと思ってたよ…」 京太郎「そうか?楽しいならいいじゃん」 健夜「私たち水族館に来て、料理の話とサメの犯罪者顔の話しかしてないよ!?」 京太郎「わがままだなー。じゃああっち行こうぜ」 健夜「えーと『愛くるしい海獣たちが待ってます』…か。よさそうじゃん!」 京太郎「おお、いたいた。アザラシにラッコかあ」 健夜「……」 京太郎「ん、どうした?」 健夜「かわい~!これだよ、これ!!私が求めてたのは!!」 京太郎「そうですか」 健夜「あのラッコかわい~!」 京太郎「二匹が手を繋いでるな。かわいいけど、なんでだ?」 健夜「ラッコはね、海面に浮いたまま寝るんだ」 健夜「で、そのとき離れ離れにならなないように手を繋いで寝るんだよ」 京太郎「なんだよそれ、可愛すぎるだろ…反則じゃねえか」 健夜「でしょ~」 京太郎「あっちにいるアザラシもかわいいな」 健夜「正確にはゴマフアザラシだね。少年アシベの『ゴマちゃん』と同じアザラシ」 京太郎「ゴマ、ちゃん…?」 健夜「少年アシベのゴマちゃんだよ、さすがに知ってるでしょ?」 京太郎「アア、アレネ。イマオモイダシタヨ…」 知らないとは言えない…これがジェネレーションギャップというものか…… 健夜「すごいムニュムニュしてそう、家に持ち帰って抱き枕にしたいくらいだよ」 京太郎「それは、あのアザラシがかわいそうだから止めた方が…」 健夜「ちょっとそれ、どういう意味っ!?」 健夜「向こうにいる鳥?なんだろう」 京太郎「えーと、なになに……エトピリカ、だと…」 健夜「知ってるの?」 京太郎「ん、まあな。エトペンのモデルになった鳥だろ?」 健夜「京太郎くん、エトペンなんか知ってるんだ…以外」 京太郎「ふふ、まあな…なにせ、世界一幸せなペンギンだからな」 健夜「どういう意味?」 京太郎「俺と代われっ!!と毎日思っていたってことさ…」トオイメ 健夜「?」 _________ ______ __ 京太郎「そろそろ時間だし、帰るか」 健夜「うん、そうだね」 京太郎「…なあ、今日は楽しかったか?」 健夜「うん、もちろん!」 京太郎「そうか、よかった。本当に…」 健夜「?」 京太郎「なあ、その……帰る前に少し話したいことがあるんだが」 健夜「帰り道の途中じゃだめなの?」 京太郎「ああ、大事な話なんだ」 健夜「!!」 健夜「そ、それって、ももももしかして…///」 京太郎「……あそこならゆっくり話せそうだな」 健夜「う、うん…//」ドキドキ 健夜「で、なにかな//」 京太郎「……」 京太郎「この4ヶ月いろいろあったよな」 健夜「なに、突然?まあ、そうだけど…」 京太郎「最初健夜と会ったときなんか、すげえビクビクしててさ」 京太郎「俺、こいつと付き合っていけるのか?って思ったもんだよ」 健夜「ひどい!そんなこと考えてたんだ」 京太郎「はは、すまんすまん」 京太郎「そういや、出会ってすぐの頃はよく本の話をしたっけか」 京太郎「健夜、普通に話すときはビクビクしてるくせに、本の事となると途端に饒舌になってたよな」 健夜「や、やめてよ…なんだか恥ずかしいから///」 京太郎「いろいろ健夜から本を借りて…結構読んだなあ。楽しかったよ、すごく」 健夜「そ、そう?ありがとう//」 京太郎「その後は、半ば無理やり麻雀部に誘ったけ」 京太郎「正直あのときのことは反省している、後悔はしていない」 健夜「後悔もしてよ、もう!」 健夜「ま、でも、そのおかげで色々な事が経験できたんだけどね…」 京太郎「そうだな、短い間だったけどすごい密度だったような気がするよ」 健夜「そうだね」 京太郎「他にもたくさんあったなあ」 京太郎「トシさんに弟子入りしたり、文化祭で馬鹿やったり」 京太郎「初めて大会で勝ち進んで、合宿で思いっきり練習もして」 京太郎「みんなで海水浴に行ったのも楽しかったなあ」 京太郎「あの時の健夜の水着姿、ほんとに可愛かったぞ」 健夜「あぅ…///」 京太郎「東京に行って、インターハイで応援して」 京太郎「健夜、ぜんぜん実力を出せなくて、めちゃくちゃ落ち込んでたよな」 京太郎「でも、最後の対局はほんとかっこよかったよ。びっくりするくらい」 京太郎「また、ああいうのを見てみたかったんだけどな……」 健夜「……え、それってどういう――」 京太郎「健夜、よく聞いてくれ」 京太郎「俺、転校しなきゃいけないんだ」 健夜「え?」 健夜「い、いきなり何言ってるの?」 健夜「あ!そうだ、またいつものくだらない冗談だね!」 京太郎「健夜……」 健夜「もう、京太郎くんは…さあ、帰るんでしょ?行こうよ」 京太郎「健夜…すまない。本当は最初から分かっていたことなんだ。いつかは帰らないといけないって」 健夜「もう、いいよ。そういう冗談は……だからやめて」 京太郎「でも、気付いたらあまりにもみんなと仲良くなっちまって、言い出せなかったんだ」 健夜「お願いだから…」 京太郎「すまない」 健夜「……なんでなの」 京太郎「すまん、それだけは言えない」 健夜「私にも?」 京太郎「健夜だからこそ、だ」 健夜「意味わかんないよ」 京太郎「だろうな」 健夜「……でも、転校しても、またすぐ会えるんだよね?」 京太郎「いや、もう会えないかもしれない」 健夜「~~ッ!!なにそれっ!意味わかんないよ、さっきからっ!!!」 京太郎「……」 健夜「……」 健夜「ねえ、今日さ…いつかスキーを教えてくれるって約束してくれたよね?」 京太郎「そうだな」 健夜「東京で、あの公園で…」 健夜「来年もまた、一緒にここに来ようって約束してくれたよね?」 京太郎「ああ」 健夜「あの事故の後……私がピンチのときは必ず助けてくれるって言ってくれたよね!?」 京太郎「……」 健夜「あれも全部嘘だったの!?」 京太郎「そうだ」 健夜「っ…!!」 健夜「馬鹿っ!!」ダッ 京太郎「……」 泣いてたな……大事な人を泣かせるなんて、我ながら最低だ 京太郎「いや、これで良かったのかもな」 ……ああ、結局渡せなかった、これ _________ _____ __ 京太郎「ただいま」 トシ「おや、おかえり。案外早かったんだね」 京太郎「…うん」 トシ「……」 トシ「どうしたんだい?」 京太郎「単刀直入に言うよ、トシさん。俺帰ることにしたんだ」 トシ「……そうかい。だから今日健夜ちゃんと…」 トシ「きちんとお別れはできたのかい?」 京太郎「どうだろう、正直よく分からないや」 トシ「京太郎のことだ、自分に対して未練が残らないように、冷たくあしらったんだろう?」 トシ「違うかい?」 京太郎「はは、トシさんには適わないな……ほんとに」 トシ「京太郎こっちにおいで」 京太郎「どうしたの、急に」 トシ「いいから、ほらっ」ギュ トシ「半年も一緒にいるのに、こうするのはこれが初めてだね」 京太郎「うん、そうだね」 トシ「京太郎、この半年間本当にありがとう」 京太郎「お礼を言うのは俺の方だよ」 トシ「そんなことないよ。あんたからは色んなもの貰ったんだから」 京太郎「それを言うなら、俺だってトシさんから色んなもの貰ったよ」 トシ「お互い様だね」 京太郎「そうだね」 京太郎「…いろいろ言うべきことがあった気がするんだけど、出てこないや」 トシ「ふふ、私もだよ」 京太郎「しばらく、このままでいい?」 トシ「うん」 その後、自分の部屋に戻り、荷物の整理をした だけど、それもあっけなく終ってしまった まあ、半年程度ならこんなものなんだろう 結局、麻雀部の先輩やクラスメイトにはお別れを言わなかった たとえ言ったとしても、理由を聞かれて、返答に窮するだけだ 寂しいが、仕方がないのかもしれない 半年振りに清澄の制服に袖を通し、玄関に向かう トシ「なかなかきまっているじゃないか、似合ってるよ」 京太郎「ありがとう、なんだか照れるね」 京太郎「あー、あと悪いんだけど、これを健夜に渡しておいてくれないかな」 京太郎「本当は最後に渡すつもりだったんだけど」 トシ「これは……分かったよ、必ず」 京太郎「学校のこととか、色々と後始末をしてもらうのは申し訳ないんだけど…」 トシ「何言ってるのさ、大人に迷惑をかけるのも子供の仕事の内だよ」 京太郎「そう言ってもらえると助かるよ、ありがとう」 京太郎「あと、これ。トシさんにも」 トシ「なんだい?やけに大きいね……あらっ?」 京太郎「料理の練習でだいぶ磨耗しちゃったから、新しい調理器具を買ったんだ」 京太郎「どうかな…なるべく良さそうなのを選んだんだけど」 トシ「うれいしいよ、ありがとう京太郎。でも高かったろうに…」 京太郎「今月短期のバイトで稼いだからね、どうってことないよ」 京太郎「それより、俺がいなくなってからもカップラーメンは控えてほしいかな」 トシ「ふふ、善処するよ」 京太郎「もうっ」 トシ「……」 京太郎「……」 トシ「行くのかい?」 京太郎「うん」 トシ「帰りは?」 京太郎「少し遅くなるよ」 トシ「そうかい、いってらっしゃい京太郎」 京太郎「いってきます」 京太郎「ばあちゃん」 この半年間、色んなことがあった。本当に楽しかった だからできれば、ずっとここで過ごしたいくらいだ だが、そういうわけにもいかない ついに帰るときが来たのだ トシさん、麻雀部の先輩方、クラスメイト、そして健夜… みんなと別れるのは寂しいが、彼らのおかげでとても楽しい日々を過ごすことができた 伝えることはできないが、本当にありがとう 京太郎「さて…」 おあつらえ向きの下り坂が見えてきた だから、助走を付ける タンッ! みんなの顔がフラッシュバックする タンッ!! この半年の出来事が一挙に頭の中を駆け巡る…健夜 タンッ!!! 健夜……本当はあの時俺は… 京太郎「いっけええええええええええ!!!」 ――8月下旬 健夜「やっぱり、このままじゃダメだよね……」 あれから、2日たったけど私はいまだに行動できずにいた でも、このまま分かれの挨拶すらもできないのは、もっとダメだ よしっ! 健夜「おかーさん、ちょっと出掛けてくる」 _________ _____ __ 健夜「つ、着いてしまった…」 あー、勢いで来たものの、なんて言えばいいんだろう? あんな別れ方したし、会うのは気まずいよ… 健夜「はぁー…」 トシ「おや、健夜ちゃんじゃないか。どうしたんだい?」 健夜「あ、熊倉さん。えと、その…京太郎くんいますか?」 トシ「……まあ、上がりなさい」 健夜「?はあ…」 玄関に上がると、以前とは異なる違和感を感じる、なんだろう? それになんだか、物が減ってるような もしかして… トシ「さて、今日はどうしたんだい?」 健夜「えと、熊倉さんも知ってますよね?京太郎くんが転校すること…」 健夜「だから、その…最後の挨拶に……」 トシ「そうかい、ありがとう健夜ちゃん」 トシ「でも、残念だけど、京太郎はもう行ってしまってね。ここにはいないんだ」 健夜「そう…ですか……」 やっぱり、感じた違和感はそういうことだったのだ トシ「健夜ちゃん……」 健夜「はは、少し遅かったみたいですね……」 トシ「京太郎のこと、恨まないであげて。あの子にも事情があって――」 健夜「分かってます!!分かってますけど…」 トシ「……」 トシ「これ、京太郎から健夜ちゃんにって」 _________ _____ __ 健夜「ただいま」 健夜母「あら、おかえり。早かったわね」 健夜「うん……ごめん部屋行くね」 健夜母「ちょっと、健夜!?」 バタン はは…バカみたい。別れの挨拶すらできないなんて あの時…きちんと話を聞いてあげればよかった 熊倉さんから渡された、箱を見る 開ける気にはどうしてもなれなかったけど、それでもなんとか包装を解いていく 現れたのは、シルバーのチェーンに薄い青と透明の宝石があしらわれている―― 健夜「これは、あの時の…」 間違いない。合宿のとき、京太郎くんと瑞原さんと行ったデパートで見つけた、あの時のネックレスだ そういえば最近、京太郎くん忙しそうにしてた。きっとこのためにアルバイトしてたんだ 健夜「覚えててくれたんだ……」 健夜「馬鹿……」 こんな物より、私は京太郎くんがいてくれさえすれば、それで…… ――9月上旬 二学期始め 二学期が始まった 朝のホームルームで先生が京太郎くんの転校のことを伝えると、クラスがざわめいた その後なぜか、何人ものクラスメイトが私を慰めてくれた 中学生の頃の私だったら考えられないことだったので、素直に嬉しかった でも正直、何を言われても心に響いてくることはなかった 今日は特に授業などもなかったので、早めに終ってしまった なので、荷物を持って早々部室に向かう ガラガラガラ 健夜「失礼します」 シーン… 健夜「…まあ、誰もいないんだけどね」 さすがに2学期ともなると、先輩達もほとんど顔を出せなくなる だから、今日からは本当にひとりぼっち 健夜「……一人で麻雀なんかできるわけないじゃん」 健夜「馬鹿……京太郎くんの馬鹿」 することもないので、仕方なく持ってきていた文庫本を読む 健夜「……」ペラペラペラ 健夜「……」ペラペラ 健夜「……」ペラ… 健夜「はぁ……」 だめだ、なんだか集中できない 以前なら2時間でも3時間でも、いや1日中、本の世界に没頭することができたのに いつからだろう?どうして変わってしまったんだろう? そんなのは分かりきっている、京太郎くんと出会ったからだ 京太郎くんが私の世界を広げてくれたから、私の興味を外に向けてくれたから… 本当はもっと京太郎くんと過ごしたかった 他愛のない、いつものバカ話をずっとしていたかった 二人で大会に出て、また全国に行きたかった 2年生になったら、新しい部員が来てもっと部活が盛り上がるはずだった 3年生になったら、部活も引退して進路について二人で真剣に語り合うはすだった どうして、転校なんかしたの?どうして、最後の挨拶もさせてくれなかったの? どうして、急にいなくなっちゃうの?どうして、ちゃんと理由を教えてくれなかったの? どうして?ねえ、どうしてなの、京太郎くん。お願いだから答えてよ…… 分かれることを知っていたなら、どうしてあの時私に話しかけてきたの? 私が一人だったから、同情して付き合ってくれていたの? 私のこと、本当はどうでもいいって思ってたの? こんなに辛い気持ちになるくらいなら、ずっとひとりぼっちの方がマシだったよ 健夜「馬鹿……」ポロポロ 馬鹿……馬鹿!……馬鹿!! 麻雀なんて…もう辞め―― コンコン 健夜「!!」ゴシゴシ コンコン! 健夜「は、はい。どうぞ」 ガラガラガラ 「失礼しまーす」 健夜「は、はい」 「ここ、麻雀部であってますよね?」 健夜「はい、そうですけど…えーと何か用ですか」 「えーと、実は…」 コンコン 健夜「!!」 「失礼します」 健夜「え、また!?」 コンコン 「しつれいしまーす」 健夜「」 _________ ______ __ 結局、その後来たのは計4人。いずれも1年生の女の子だ 健夜「えーと、皆さんどういったご用件で…」 「あはは、敬語はいいよ。同い年なんだし」 健夜「う、うん…」 健夜「で、なんの用なのかな?」 「はい、これ」 健夜「えーとなになに……入部届かあ。なるほどなるほど」 健夜「……」 健夜「うえ゛!?」 健夜「入部届っ!?入部届って、あの入部届っ!?」 「それ以外になにかあったけ?」 「ないと思うけど」 健夜「ということはつまり…四人とも麻雀部の入部希望者ってことっ?」 「「うん!」」 健夜「そう、なんだ」 健夜「でも、どうして急に…?」 「熊倉君が誘ってくれたんだよねー」 健夜「えっ」 「8月の中頃くらいかなー。いきなり電話してきてさ」 ちょうどインターハイが終って、先輩達が引退した頃だ 「そうなの?私なんかいきなり家まで来たからびっくりしちゃったよ」 健夜「……」 「でも、すごい熱心ていうかさ…鬼気迫るかんじだったよね」 健夜「……」 「何度もお願いされたからね、最後にはオーケーしちゃったもん」 「私の時なんか――」 健夜「……」 健夜「……」 健夜「……」 健夜「……」ポロポロ 馬鹿は…馬鹿は私だ。私、自分のことしか考えてなかった 京太郎くんはこんなにも私のこと考えていてくれたのに 「えっ、え、えちちtちょっといきなりどうしたの?だだだ大丈夫?」 「落ち着け!どこか痛いところでもあるの?」 健夜「ううん…違うの……ただ、自分が…情けなくて、それで…」ポロポロ 「うん、大丈夫。大丈夫だから」ポンポン 健夜「ありがとう……来てくれて…ありがとう…」ポロポロ 「うん、うん…」 生まれたての赤ちゃんのように、その後もずっと泣き続けた _________ _____ __ ピンポーン トシ「おや、健夜ちゃん」 健夜「熊倉さん、お願いがあります!」 トシ「どうしたんだい、急に」 健夜「私に麻雀を教えてください!!」 トシ「…今も教えてると思うけど」 健夜「違うんです!もっと全国で……いや世界で戦えるくらい強くなりたいんです!」 トシ「……世界とは大きく出たね。どういう心境の変化だい」 健夜「京太郎くんがどこに行ったのかは知りません」 健夜「けど、私がもっと麻雀で強くなって、もっと有名になれば」 健夜「きっと、京太郎くんも見ていてくれるから……」 健夜「だから、強くならなくちゃいけないんです!」 トシ「それは自分のためかい?」 健夜「正直分かりません」 健夜「でも、私の麻雀をまた見たいって言ってくれたんです」 トシ「……」 健夜「京太郎くんからは、とても多くのものを貰いました」 健夜「信じられないほど、たくさん」 健夜「だから、ほんの少しでも、私からあげられるものがあるなら」 健夜「自分のためと言われても、構いません!」 トシ「ふふ…」 トシ「まったく、二人ともそっくりなんだから……」 健夜「?」 トシ「いいよ、明日から毎日おいで。みっちりしごいてあげるから」 健夜「あっ、ありがとうございます!!」 トシ「さあ!さっさと、京太郎に追いつかなきゃね。時間がなくなっちゃうよ」 --------------------------- その後は早かった 1年生が終るまで、私は熊倉さんの指導を徹底的に受けた 団体戦では残念ながら、全国に行くことはできなかった しかし、最後の大会では県で2位に食い込むことができた 私たちの最初の実力からすれば、相当成長できたのは確かだろう 私はこのままこのメンバーで、2年生になってもやっていくんだとばかり思っていた だけど、1年生での終わりに突然お父さんの転勤が決まり、転校することになった 同じ茨城県だったが、新しい家から通うには少し遠すぎたのだ 新しい高校の名前は『土浦女子高校』 制服はブレザーではなく、丸襟にグレーのリボンのものに変わった 初めてできた友達や部活の仲間、熊倉さんと分かれるのは辛かった きっと京太郎くんもあの時、こんな気持ちになったのだろう 引越しの後気付いたけど、京太郎くんから預かっていた文化祭の衣装がいつの間にかなくなっていた 京太郎くんとの数少ない思い出だったから、必死になって探したけど見つからなかった もし誰かの手に渡っているなら、せめて大事に扱っていてほしい 熊倉さんも程なくして、福岡の麻雀の実業団で監督をするため引越しをしたそうだ 転校してからも麻雀はずっと続けた、何ものにも優先して そのせいか、3年生の全国大会では団体戦優勝を果たすことができた 京太郎くんは見ていてくれたのだろうか?そうだと嬉しい 高校を卒業してからは、ありがたいことにプロのオファーがあった 私は飛びついた それからも、私はひたすら麻雀をし続けた まるで、最初の目的を忘れてしまったかのように そして…… ――12年後 東京 インターハイ会場 恒子「すこやん、お疲れー!」 健夜「お疲れ様、こーこちゃん」 恒子「いやー今日もアラサーらしく、年季の入った名解説でしたな」 健夜「アラフォーだよ!!」 恒子「……」 健夜「間違えちゃったじゃん!何言わせるの!!」 恒子「いや~、今のはさすがにすこやんが悪いと思うんだけど」 健夜「もうっ、まったく!こーこちゃんは!」 恒子「はいはい、悪うございました…」 恒子「ん、あれっ?すこやんにしては珍しく、ネックレスなんて着けてるんだね」 恒子「どうしたの、若作り?」 健夜「私まだ20代だからね!?そのくらいのファッションはするよ!」 恒子「へぇー、アクアマリンとダイアモンドかあ。デザインは若い人向けみたいだけど、大丈夫?」 健夜「大丈夫ってなに!?」 恒子「でも、すこやんにしてはいいセンスしてるじゃん。なんでいつもは着けないの?」 健夜「うーん…なんでだろ?」 健夜「なんだか今まで、どうしてもそういう気分になれなかったんだよね……」 恒子「ふーん……さては男ですな?」 健夜「ななな、なんで分かるの!?」 恒子「ふふふ、女がアンニュイな表情をしたら、それ即ち男が関係していると相場が決まっているのだよ」 健夜「へえ、こーこちゃんすごいんだね」 恒子「それほどでもあるよ!」フフン 恒子「……もしかして彼氏からのプレゼントとか?」 健夜「彼氏か…そうだったら良かったんだけどね…」 恒子「"だった"ってことは、昔の?」 健夜「うん、学生時代にちょっとね」 恒子「へえ、行かず後家四天王の一角と呼ばれたすこやんにも、そんな時代があったんだねえ」 健夜「行かず後家なんてよく知ってるね!?ていうか、そんなの初めて聞いたよっ!?」 恒子「初めて言ったからね」 健夜「……ちなみに他の三人は?」 恒子「えーと、野依プロと瑞原プロと、あと一人誰にしようか?」 健夜「こーこちゃん、そのネタその二人には絶対に言わないほうがいいよ。命に関わるから」 恒子「命って、そんなー」 健夜「……」 恒子「……肝に銘じます」 恒子「しかし、すこやんにもそんなことがあったんだねー。その子とは結局?」 健夜「うん、転校しちゃってそれっきり」 恒子「ははー、まるで一昔前の少女漫画みたいな展開だね」 恒子「でも、その子はすこやんのことをとても大切に思ってたみたいだね」 健夜「……どうして?」 恒子「だって、このネックレス高校生が買うにしてはかなり高いもん」 恒子「5万か6万くらいはしたんじゃないのかな?」 恒子「好きな娘以外にそんなプレゼント、普通はしないよ」 健夜「……」 恒子「すこやんは、その男の子のことどう思ってたの?」 健夜「……分かんない、忘れちゃった」 恒子「そう」 恒子「……」 恒子「さあ!明日で仕事が一区切りするから、その後飲みに行くぜー!!ね、すこやん」 健夜「うん、そうだね。ありがとう、こーこちゃん」 さて、今日は解説の仕事は終ったからホテルに帰ろう なんだか疲れちゃった。きっと昔の話をしたからだ あれから12年が経った 私は強くなり続けた…と思う 体も成長した。む、胸だってほらっ!? ……ごめんなさい、嘘つきました。ほとんど変わってません プロになって、色んな大会に出た。そして勝ち続けた 気付いたら、いつの間にか世界ランキングが2位になっていたこともある ねえ、京太郎くん。見てよこれ、私のカード 『国内では無敗』『永世称号七冠』『恵比寿時代は毎年リーグMVP』 だってさ。この『Grandmaster』なんて仰々しいの、私には似合ってないよね 私強くなったんだよ?銀メダルだってとったことあるんだから その時の私、見ていてくれた?その時の私、かっこよかった? 京太郎くんがあの時言ってくれたみたいに 少しでも恩返しできたのかな、私… ねえ、京太郎くん。私、疲れちゃったよ。少し頑張りすぎたからかな こーこちゃんにはああ言ったけど、私はあの時から……いや今でもあなたのことを… 健夜「会いたい……」 もし、もう一度出会えたら…あの時言えなかったことを――― 「あぶなーいっ!!!」 健夜「へ?」 横を見る。横断歩道に猛スピード迫ってくるワゴン車。距離は20メートルくらい 健夜「あ」 これは助からないな。こうどうしようもないと、案外冷静になるものなんだ ここで、私死んじゃうんだ。あっけない ああ、私の人生ってなんだったんだろう? でも、今にして思えば案外幸せだった言えるのかもしれない 仲の良い友達も何人かいるし、他人から見れば麻雀選手として大成功を収めたといえる あれ?あと、何かあったけ? まあ、いっか。どうせここで終ってしまうんだから でも…前にもこんなことが ドンッ 健夜「え」 すごい衝撃が伝わる でもこれは、車というより、人の 振り向くと、そこには金髪の男の子が 健夜「あ、きょうた――」 グシャ 肉の潰れる嫌な音がした 今度こそ、私は気を失った ________ _____ __ ―病院 「ハイ、いいですよ。お疲れ様」 健夜「ありがとうございました」 「特に異常は見当たりませんね。気になるところがあれば、またいらして下さい」 健夜「はい。あの…あの男の子は今」 「まだ、手術中ですね」 健夜「そう、ですか」 「……私の見たところ、頭からの出血は多いようでしたが、それほど深いものではないようです」 「肋骨にひびが入っていますが、中に以上はないようでした」 「左足は骨折していますが、それほど酷いものではないので、将来障害が残る心配はありません」 「追突する直前、車が横にそれたので、正面衝突を避けられたのが良かったのかもしれませんね」 健夜「そう…ですね」 「自分の命を顧みず、他人を助けることのできる素晴らしい青年です」 「うちのスタッフが全力で取り組んでいるので、安心してください」 「じきに手術も終るでしょう……彼のこと、待ちますか?」 健夜「はい」 事故のとき、私はもう助からないと思った しかし、周りにいた人達の証言によると、男の子が飛び出してきて私を突き飛ばしてくれたらしい 私は歩道に逃れたが、その子は…… 警察の人によると、車は70~80キロ近くスピードを出していたらしい それで、あの怪我で済んだのは奇跡的とのことだ それでも、あのような酷い怪我を負ってしまった 私はすぐに気を失ってしまったので、その後の出来事は詳しくは知らない 気付いたら病院にいて、よく分からない検査を受けていた そして今、彼の眠るベッドの横で、私は座っている 健夜「……」 健夜「ありがとう。あなたのおかげで、私助かったよ」 健夜「ねえ、あなたは誰なの?金髪のそっくりさん」 健夜「ん?なんだろこれ……学生証?」 健夜「……」 健夜「名前だけ、名前だけならセーフだよねっ?」 健夜「苗字は『須賀』、名前は……」 健夜「『京太郎』……かあ」 健夜「……」 健夜「……」 健夜「えっ?え、ええええっ…え?!??」 ここここれは、どういうこと?もしかして本当に、京太郎くん本人? いや、この子も京太郎くんなんだけどね!? でででも、顔とか体つきとかはほとんど同じに見えるし いや、でもあれから12年経ってるし、同じってありえないよね!? はっ!もしかして、この子京太郎くんの息子さんとか…… ということは、もう他の誰かと結婚してて…… 健夜「うぅ……」キリキリ やめよう、秒速5センチメートルみたいな妄想は。私の胃に優しくない 第一、自分の息子に同じ名前をつける親がどこにいる! 健夜「はあー……」 傍からみたら、私ただの変質者だね、これ 健夜「ねえ、早く目を覚ましてよ『京太郎』くん……」 恒子「すすすこやーん!!」バーン 健夜「あ、こーこちゃん」 恒子「事故にあったって聞いて、だだだ大丈夫!?」 健夜「落ち着いて、こーこちゃん。私は何ともないから」 恒子「そ、そうなの!?よ…よかったあ」ヘナヘナ 健夜「心配してくれたんだね。ありがとう」 恒子「あれ?……この子はどうしたの?」 健夜「この子が私を助けてくれたの。でも代わりに…」 恒子「そう、なんだ」 健夜「幸いそこまで酷い怪我じゃないらしいけど、まだ意識が戻らないんだ」 恒子「そう……すこやんのことありがとね、少年」 ~~~~~~~~~~~~~~~~ 良子「少々遅れましたが、どうやら無事なようですね」 えり「そうですね」 はやり「まったく、心配したんだから…」 咏「まったくだねぃ」 野依「よかったっ!!」 靖子「まあ、無事でよかったよ。ほんと」 はやり「……」 良子「どうかしました?」 はやり「うーん、あの子…」 良子「あの金髪の子ですね?どうやら、彼が小鍛治さんを助けてくれたようですが」 はやり「うん、そうなんだけど。あの男の子、どこかで会ったことがあるような……」 野依「……」 野依「痴呆っ!!」 はやり「あ゛、今なんつった」 ビクッ!! 野依「難聴っ!!」 咏「これは、やばいねぃ…」ヒソヒソ 良子「Oh……」 はやり「久しぶりに切れちゃった☆……雀荘行こうか☆」 野依「望むところっ!!」 はやり「でも、二人じゃ麻雀できないからなあ…☆」チラ 咏・良子「」ビクッ!! 咏「あー!私このあと雑誌の取材があって――」 良子「実は解説の仕事が残っていまして――」 はやり・野依「ん?」ニコニコ 咏・良子「……お供させていただきます」 みさき「あれ?そういえば藤田プロがいませんね、さっきまでここにいたのに」 咏・良子(あのカツ丼、逃げやがったな…) はやり「じゃあ行こうか☆二度と麻雀のできない身体にしてあげるよ☆」 野依「こっちの台詞っ!!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~ 健夜「なんだか、外が騒がしいね。何かあったのかな?」 恒子「さあ?お年寄りが世間話でもしてるんじゃない?」 健夜「病院なんだから静かにして欲しいよね、まったく」 健夜「……京太郎くん」ギュ 恒子「すこやん…」 恒子「すこやん、もしかしてその子のこと知ってるの?」 健夜「分かんない…」 恒子「え、それってどういう」 コンコン 健夜「は、はい、どうぞ」 ??「失礼します、こちらに須賀くんがいると聞いて」 健夜「は、はい。こちらです」 健夜「えと、あなた達は?」 ??「申し遅れました、私は清澄高校麻雀部の部長の竹井と申します」 久「それとこちらが、部員の染谷、宮永、片岡、原村です」 久「私たち、須賀くんと同じ部員なんです」 健夜「そう、だったんだ」 咲「京ちゃん!!京ちゃん!!」 優希「イヌ…なにやってんだじぇ」 和「須賀くん…」 まこ「それで、容態のほうは?」 健夜「手術は成功したんだけど、まだ意識の方が…」 まこ「そう、なんか…」 久「…私のせいだわ、あの時買出しなんか行かせなければ……」 まこ「あほ、単なる偶然じゃ。自分のせいにしたって何にもならんぞ」 久「……そうね、その通りだわ。ありがとう、まこ」 久「それで、その…事故の詳しいこと聞いてもいいですか?」 健夜「はい」 __________ ______ __ 久「そうですか、ありがとうございました」 健夜「い、いや、お礼を言うのはこっちの方だから」 咲「でも、京ちゃんらしいね」 優希「いつも、他人ことばっかり。少しは自分のことも考えろ…ばか」 健夜「……あの、良かったらこの子のこともっと教えてくれませんか?」 久「敬語はいいですよ、小鍛治プロ」 健夜「え、ばれてたの!?」 和「麻雀やってる人で、小鍛治プロのことを知らない人なんていませんよ」 まこ「それに、福与アナもおるしな」 恒子「あれっ、分かっちゃた?私も有名になったもんだね~」 久「小鍛治プロからの頼みとあらば仕方ないですね。悪いけど、咲お願いね」 咲「え、私ですか?」ビクッ 久「この中なら、あなたが一番須賀くんと付き合いが長いわ。よろしくね」 咲「は、はあ」 久「私達は先に帰るわね。たくさんいても邪魔になるし」 恒子「なら、私も帰るよ。咲ちゃん、すこやんのことお願いね」 健夜「普通逆じゃない!?」 その後、咲ちゃんから色々な話を聞いた 中学時代どんなことがあったのか、どんな会話をして、どう思ったのか 高校に入ってからこと、大会のこと、そして今日のこと 咲「いつも、自分のことは後回し。他の人のことを第一に考えてるんです」 咲「まったく…バカなんだから」 健夜「…そうだね、昔からそうだったんだよね」 咲「?」 健夜「ありがとう、咲ちゃん。私の頼みなんか聞いてくれて」 健夜「明日も試合でしょう?早く帰って休んだほうがいいよ」 咲「…そうですね、そうします」 咲「小鍛治さんはこの後…」 健夜「もう少しだけ、ここにいるよ。一人じゃ寂しいもんね」 ――??? ~~~~~~~~~~~~~ 「う……ぁ…」 何をしてるんだい? 「いえ…何もできないんです」 本当かい? 「ほら、見てください。包帯でグルグル巻きでしょう?」 「これじゃあ、動けませんよ」 なんで包帯なんかしてるんだい? 「えーと…なんででしょう?怪我でもしたかなあ…」 いいや、怪我なんかしてないはずだよ。ほらっ! 「ちょっと、止めてくださいよ。痛いじゃないですか!」 本当に? 「あれっ?痛くない…?なんで…」 怪我してるわけでもないのに、そんな包帯を巻いているから身動きが取れなくなるのさ さ、起きなさい。私と彼が言った、同じ言葉があるだろう? それを思い出すんだ 「え、もしかして…あなたは――」 ~~~~~~~~~~~~~~~ ――事故から三日後 京太郎「うぅ……」 うあ、体がだるい。つか左足全く動かねえ…どうなってんだ なんか後頭部もジンジンするし、最悪だな あれ?俺何してたんだっけ? たしかこっち戻ってきてそれで…… 京太郎「た、助かったのか…俺!?」 まじかよ…絶対ダメかと思ってたのに 京太郎「よっしゃーーーーーっっ!!!!」 京太郎「って、痛っ…!声出しただけで、ハンパなくいてぇ…」 はあ、てことはここ病院か そういえば、肝心の健夜は無事だったのだろうか? 歩道に押したまでは確認したんだが、それ以上覚えてねえ コンコン 「失礼します」 ん、誰だ?とういかこの声、最近まで聞いてような――やべっ! ガチャ 健夜「『京太郎』くん、起きてる?わけないよね…」 無事だったかあ、よかった……本当によかった 健夜「今日もお見舞いの品、持ってきたんだけど。既にいっぱいだね」 健夜「ねえ、今日の試合、咲ちゃんたち勝ったみたいだよ。よかったね」 健夜「解説のとき、こーこちゃんたら酷いんだよ。全国放送でアラサーネタ連発するし」 健夜「自分だって、もうすぐアラサーなのにね」 健夜「……」 健夜「ねえ、『京太郎』くん。早く目を覚まして。本当のこと教えて」 健夜「あなたは、あの京太郎くんなんでしょう?」 健夜「咲ちゃんから聞いたよ、いろんなこと」 健夜「昔から、変わってないんだね。私、びっくりしちゃった」 京太郎「……」 健夜「私あれから、すごく強くなったんだよ?」 健夜「なにせ、元世界ランク2位なんだからね。すごいでしょ?」 健夜「銀メダルだって取ったんだから…」 京太郎「……」 健夜「……」 健夜「私…あなたに、頑張った、って。それだけでいいの……だから…」ポロポロ 健夜「京太郎くん……」ポロポロ 言うべきなのだろうか? 正直言うと、助かったときのことは全く考えていなかった だが、俺のことをいまさら言ったところでどうなるというのか もしかしたら、既に健夜には付き合っている男性がいるかもしれない そんなところに、12年前の俺が現れたらどうだろう? そんなことしたって、健夜を困らせるだけだ いや、たとえ彼氏がいなくたって同じようなものか… それに、そもそもタイムリープなんて荒唐無稽なこと信じてもらえるはずがない なら言わないほうがいい それが健夜のため だけど…… 『自分の気持ちに素直にね』 ……ありがとう、トシさん 健夜「……じゃあ、もう行くね」ゴシゴシ 京太郎「……待った」 健夜「え」 京太郎「久しぶり、健夜」 健夜「えっ!あ…え、え?」パクパク 健夜「きょ、京太郎くんなの?あの…」 京太郎「そう、あの京太郎だ」 健夜「…なんとも、ないの?」 京太郎「言ったろ、ちょっとやそっとじゃ死なないって」 健夜「で、でも、まだ高校生なんでしょ!?」 京太郎「まあ…その……いろいろあったんだ」 京太郎「詳しいことはまた後で話すよ。それでも信じてくれるか?」 健夜「……私、ひと目見て分かったもん…京太郎くんだって」 健夜「違うかもしれないって思ったよ?けど、苗字は違ったけど名前も顔も一緒で…」 健夜「変だって思った。そんなのありえないって…」 健夜「でも、咲ちゃんからあなたの話を聞いて分かったの」 健夜「この人は間違いなく京太郎くんなんだって」 健夜「昔から全然変わってなくて、びっくりしたんだから…」 京太郎「そういう健夜だって、あの頃と全然変わってないじゃないか」 健夜「そ、そんなことない!あの後、いろんなこと…いっぱいあって……それで…」ジワァ 京太郎「……」 健夜「ばか~~っ!!勝手にいなくなって…」 健夜「急に現れたと思ったら…今度は事故で!」 健夜「すごく、すっごく!心配したんだからっ!!」 京太郎「す、すまん」 健夜「もう起きないかもって何度も何度も思って……それで…」 健夜「バカ、アホ、トンチンカン!!」 健夜「ヘンタイ!ドスケベ!他の人の胸ばっかり見てっ!!」 健夜「バカバカバカバカバカバカバカばかばかばかばかーーーーー!!!」 京太郎「そこまで言わなくても…」 京太郎「どうしたら許してくれる?」 健夜「許さないもん!」 京太郎「もん、って……じゃあ、どうしたいい?」 健夜「えと…その、あのー……」 健夜「………!!」 健夜「ききききキス、してくれたら許してあげないこともない…かも/////」モジモジ 乙女か!いや、もう乙女じゃないのか? 京太郎「えっ!?そのー、聞きにくいことなんだが……彼氏とかいないのか?」 健夜「」 健夜「……」 健夜「いたことないもん…」ボソ 京太郎「え?」 健夜「今まで、一人もいたことないって言ったの!わるいっ!!」 京太郎「い、いや悪くないです。むしろ嬉しい…かな」 健夜「そ、そう、なんだ…///」 京太郎「ああ」 健夜「じゃあ、その……する?」 京太郎「いやその前に、ちょっと待ってくれ」 京太郎「最後分かれたとき、本当に言いたかったこと、言わせてくれ」 健夜「うん」 京太郎「好きだ」 健夜「私も。あの頃からずっと」 京太郎「健夜…」 健夜「京太郎くん…」 健夜の手に、自分の手を重ねる。暖かい だんだんと二人の距離が近づいてゆく、そして――― ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ トシ「どうやら、うまくいったみたいだね」 トシ「……あらあら、年寄りはとっとと退散しようか」 トシ「確かこういう時は、こう言うんだったかな」 トシ「二人は幸せなキスをして終了」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ――5年後 京太郎「うー、緊張してきた…」 健夜「大丈夫だよ、なんたって私が教えてきたんだから」 京太郎「そうだな、いつもありがとう」 チュ 健夜「…えへへ」 恒子「おー、暑い暑い!暖房効きすぎかなあ、この部屋は」 健夜「こーこちゃん!?」 健夜「…もしかして、見てた!?」 恒子「いんやあ、見てないよ」 健夜「よかったあ」 恒子「二人が熱ぅ~いキスをしてることろなんてね」 健夜「も、もうっ!見てたんじゃん!?早く実況に戻りなよ!」 恒子「はいはい……あと京太郎くん、タイトル戦頑張んなさい」 京太郎「はい!」 健夜「もうっ、こーこちゃんは…」 京太郎「…福与さん、いい人だなあ」 健夜「えっ!うわ、浮気!?」 京太郎「そんなことしないよ…」 京太郎「福与さん、俺が初のタイトル戦で緊張してるから、わざとああ言ってくれたんだよ」 健夜「そ、そうだったんだ。後で感謝しなくちゃだね」 はやり(3×)「おーい、京太郎くん!」 京太郎「あ!お久しぶりです、瑞原プロ」 はやり(3×)「久しぶり。今日はよろしくね」 健夜「ちょっ…!すごい格好してるね、それ」 健夜「痴女…というより、もはや露出狂だよその服!?」 はやり(3×)「えー、最近流行ってるんだよこの服、ほらこれ見てよ」 健夜「なにスマホまで出して…なになに」 『茨城在住のあるデザイナーは、スランプに陥っていた』 『あるとき、茨城で開かれていたフリーマーケットを覗くと、そこにはとんでもない服が』 『これにインスピレーションを受けた彼は、次々と新作を発表してゆく』 『最初は麻雀界隈の一部のみで流行っていたものの、今ではその茨城スタイルは世界的なものになりつつある』 『そのブランドの名前は、彼がフリーマーケットで発見した服に付いていた文字からとった』 『K.K、と』 はやり「ねっ!」 京太郎・健夜「Oh…」 K.K=Kumakura Kyoutaro です…本当にありがとうございました トシ「ほら、試合はじまるよ。早く行きな、二人とも」 京太郎「監督!」 京太郎「そうですね、行ってきます」 トシ「ああ、いってらっしゃい」 ________ _____ __ 京太郎「今日は負けませんよ、嫁と娘が見てるんです」 はやり「まだまだ、新人君には負けないよ」 アカギ「久しぶりだな、京ちゃん……だが、勝つのは俺だぜ……!」 野依「負けないっ!!」 京太郎「あー、そういえば…」 はやり「ん?」 京太郎「……約束、守ってくれましたね」 はやり「なんのこと?」 京太郎「いえ、何でもありません。さあ、いきますよ!!」 京太郎「カンッ!!」
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須賀母「でね、その再婚相手がこちらの岩館さん」 岩館父「どうも、よろしくな京太郎くん」 京太郎「はい、よろしくお願いします」 岩館父「ほら揺杏、お前も挨拶しなさい」 揺杏「う、うん」 揺杏(なんだよ) 揺杏(再婚相手に息子が居るとか言うからどんな奴かと思ったら) 揺杏(イケメンだし性格も良さそうだし、なんかイイカンジじゃん……?) 揺杏(いやいや、何ドキドキしてんだ私。相手はこれから弟になる奴だぞ) 揺杏(でも、これからコイツと三日間二人っきりとか……ちょっと、期待しちゃうじゃん) 岩館父「それじゃあ後はよろしく頼むぞ京太郎くん」 須賀母「二人で仲良くするのよ~」 そう言い残すと二人は俺たちを置いて去っていった。 さて、新しい姉とどう接すればいいか……。 揺杏「京太郎くん、だっけ?」 京太郎「はい。あ、呼び捨てで大丈夫ですよ」 揺杏「じゃあ京太郎ね、私のことは……」 揺杏「まあ姉さんとでも呼び給え」 京太郎「わかりました」 揺杏「あはは、そんなに堅苦しくしないでタメ口で良いよ、姉弟になんだからさ」 京太郎「そうです……そうだな、わかったよ姉さん」 揺杏「うんうん」 京太郎「それじゃ取り敢えず中に」 揺杏「おうよ」 なかなか気さくそうな人で良かったな、これならすぐ馴染めそうだ。 それに、結構可愛い。コレ重要。 揺杏「んー、まだ昼までは時間があるか」 京太郎「何かする?」 揺杏「そうだねー、どうするかは京太郎に任せるよ」 京太郎「姉さんがそう言うなら……」 【午前】 京太郎「取り敢えずお互いのことを話す、とか?」 揺杏「何かお見合いみたいだねー、良いけど!」 京太郎「お見合いって」 揺杏「そんじゃまずは私から行こうか」 揺杏「私は岩館揺杏、春から高2だよ。他は……そうだな、手先が器用で裁縫とか得意かな」 京太郎「ほお」 揺杏「ほら、次は京太郎の番だよ」 京太郎「ああうん、えっと、俺は須賀京太郎。そんで春から高1」 揺杏「他は何かないの?」 京太郎「そうだなー、あ、髪は染めてるわけじゃなくて地毛。あと中学の頃はハンドボールやってたかな」 揺杏「ハンドボールかぁ、珍しいね」 京太郎「そう?」 揺杏「いやわかんないけどさ、高校でも続けんの?」 京太郎「どうだろ、特に考えて無かったかな」 揺杏「ふーん」 京太郎「~で、その同級生が迷子になって」 揺杏「なにそれ、その子面白いね」 京太郎「今度会う?ってもうこんな時間か」 揺杏「そんじゃ昼飯にするかー」 姉さんとの会話は弾みなかなか楽しい一時を過ごせた。 この人となら上手くやって行けそうだな。 やばい。 ちょーやばい。 何がやばいって胸がドキドキすんの。 いやこんなん柄じゃないはずなんだけど、おかしいな。 一目惚れとかありえねーって。 なのに、何でだろ。 ドキドキが止まんなくて。 「ああ、恋しちゃってるなー」って感じ。 まさか自分がこんなに乙女だったとは、爽が聞いたら絶対笑うよなぁ。 でも……この気持も悪くは無い、かな。 京太郎「姉さん?」 揺杏「へっ?どうかした?」 京太郎「いや、ぼーっとしてるから」 揺杏「ああ、悪い悪い」 京太郎「それで、午後はどうする?」 揺杏「そうだねー」 【午後】 揺杏「じゃあ家事でもしよっか」 京太郎「わかった、それなら今日は……」 京太郎「色々買いたい物もあるんで買い物に行きましょう」 揺杏「了解」 京太郎「ええと、あと必要なのは」 揺杏(何か、二人でこうして並んで買い物してると夫婦みたいだなー……って何考えてんだ私はっ!?) 揺杏(あー顔あっつ、こりゃ真っ赤になってるわ、あそこのトマトみたいに) 京太郎「姉さん他に要るものある?」 揺杏「ん?あ、あー無い……んじゃないかな」 京太郎「わかった」 揺杏「そんじゃ私はこれを持って」 揺杏「って、重たっ」 京太郎「ああ、俺が持つよ。姉さんはこっちね」 揺杏「へ?あ、ありがと」 京太郎「大丈夫?」 揺杏「ああ、これくらいなら」 京太郎「それじゃ行こうか」 京太郎(姉さん、何か上の空だけど大丈夫かな……?) 揺杏(やべー、二人で買い物とかやべー) 揺杏(重い袋持ってくれるのとかもうね) 揺杏(あー、これがデートだったらなぁ……) 京太郎「ただいまー」 揺杏「ただいまっ」 京太郎「結構たくさん買い物したし疲れたな」 揺杏「それじゃあアナタ、ごはんにする?お風呂にする?それともわ・た・し?なんて言ってみたり……」 京太郎「じゃあ姉さんで」 揺杏「へっ!?」 京太郎「自分で言ったんだからそんな驚かなくても……」 【夜】 揺杏「疲れただろうしお風呂入ってきなよ、私が夕飯の用意しとくからさ」 京太郎「いやでも」 揺杏「いーのいーの、あの袋結構重かったでしょ?このくらいはお姉ちゃんに任せときなって」 京太郎「じゃあ風呂入ってくるよ、ありがと姉さん」 京太郎「上がったよ―」 揺杏「お、丁度よかった。今できた所だよ」 京太郎「おお、美味そう!」 揺杏「でしょー?さあ冷めないうちに召し上がれ」 京太郎「そんじゃあ、いただきます!」 京太郎「あー美味しかった、姉さん料理上手いんだね」 揺杏「そうかな?」 京太郎「うん、美味しくってつい食い過ぎちゃったよ」 揺杏「そっかそっか」 揺杏(まあ、最高の隠し味が入ってるからねー……なんて) 京太郎「布団の準備しないとな」 京太郎「姉さんの部屋は空き部屋で良いよな?」 揺杏「あ……」 京太郎「ん、どうかした?」 揺杏「いや……えっと」 京太郎「へ?でも俺の部屋だと布団二組は入らないけど」 揺杏「い、一緒でいいからっ」 京太郎「姉さん?」 揺杏「あぁ、いや京太郎が嫌なら良いんだ、ゴメン」 京太郎「……わかった、それじゃあ一緒に寝よう」 揺杏「う、うんっ」 俺の部屋に布団を敷いて二人で寝る。 女の子と同じ布団で寝るなんて否が応でも意識させられる。 横をチラリと見ると姉さんと目が合った。 揺杏「あ……」 何故か頬を染めてそっぽを向く姉さん。 うーん、どうしたもんかなぁ。 京太郎「あのさ」 揺杏「何?」 京太郎「なんで一緒に寝ようなんて?」 揺杏「……」 沈黙。 これからどうするべきかと困っていると姉さんの顔がくるりとこちらを向き、急接近した。 揺杏「ん……」 姉さんの桜色の唇が俺に触れる。 突然のことに思わず戸惑い、姉さんの顔に視線を向けるとそこには頬を紅潮させ潤んだ瞳を此方に向ける少女がいた。 京太郎「姉さん……?」 揺杏「……好きだ、京太郎」 京太郎「好きって、え?」 揺杏「今日会ったばっかなのに何言ってんだこいつって感じかもだけど、好きなんだ」 揺杏「ゴメン、気持ち悪いよな、私やっぱり隣の部屋で」 そう言って起き上がる姉さんの腕を咄嗟に掴む。 揺杏「京太郎?」 京太郎「変じゃないよ。俺も姉さんのこと、好きだから」 京太郎「だから、一緒に寝よう」 揺杏「……うん」 腕の中でモゾモゾと何かが蠢く感覚で目が覚める。 そう言えば昨夜は姉さんを抱きしめたまま寝ちゃったんだっけ。 もう朝だけど、このままもう一眠りしたい気分だなぁ。 どうしようかな? 【朝】 うん、このまま寝よう。 それにしても姉さんの抱き心地、最高だ。 揺杏「うぅん……」 揺杏(朝?) 揺杏(なんか、抱きしめられてて気持ちいな) 揺杏(このままもう一眠り……って、目の前に京太郎の顔がっ!?) ガスッ 京太郎「げふっ!?」 京太郎「寝起きでぼーっとしてたのはわかるけど何も膝蹴りを入れんでも」 揺杏「ゴメンナサイ」 京太郎「いってえ……」 揺杏「マジゴメンって」 京太郎「痛みも引いたしそろそろ何かしよう」 揺杏「ごめんね、ほんとに」 京太郎「いやもういいからさ、んで何する?」 揺杏「京太郎に任せるよ」 【午前】 京太郎「じゃあ何かして遊ぼうか」 揺杏「それならトランプとかあるけど」 京太郎「二人で?」 揺杏「おう、二人で遊べるゲームも結構あるよ」 京太郎「じゃあトランプにしようか」 揺杏「よーし、爽達と散々やったからな、私の腕を見せてやるよ」 京太郎「俺だって簡単には負けないからな?」 揺杏「いやあ、また私の勝ちかぁ」 京太郎「全然勝てねえ」 揺杏「ん?簡単には負けないんじゃなかった?」 京太郎「こんなに強いなんて考慮しとらんよ……」 揺杏「まあ、あいつらとやってたら嫌でも上手くなるからねー」 京太郎「すっげえ悔しい」 揺杏「お姉さんはいつでもリベンジを待っているぞ?」 京太郎「くっそぉ」 揺杏「午後はどうしようか?」 京太郎「んー、そうだなあ」 【午後】 京太郎「どっか出かけようか」 揺杏「デート?」 京太郎「デート」 揺杏「よっしゃあ!大好き京太郎っ」 京太郎「おわっ!?くっつくなっ」 姉さん手を繋いで街を歩く。 普通のつなぎ方では無く指を噛みあわせた俗にいう恋人繋ぎ。 鼻歌交じりに隣を歩く姉さんの嬉しそうな笑顔に思わず顔を綻ばせていると姉さんが問いかけてきた。 揺杏「そう言えばどこ行くの?」 京太郎「どこだと思う?」 揺杏「いやわかんないから」 京太郎「っと、わざわざ教えるまでもなく着いた」 揺杏「ここ、手芸屋?」 京太郎「正解、姉さん裁縫とか得意って言ってたから喜ぶかなって」 揺杏「あーもう、可愛いなあこいつぅ」 京太郎「ちょっ、こんなとこで抱きついてくんなっ」 京太郎「で、品揃えはどう?」 揺杏「なかなか良いねー……おっ、これはユキの衣装に使えそうだ」 京太郎「姉さんが楽しそうで良かった」 揺杏「ああ、連れてきてくれてありがとな京太郎」 揺杏「いやぁ、帰るのすっかり遅くなっちゃってゴメンね」 京太郎「気にしなくていいよ」 揺杏「そう?」 京太郎「ああ、それでこれからどうしようか?」 【夜】 京太郎「よし、出来上がりー」 揺杏「おお」 京太郎「昨日は姉さんが作ってくれたからな、今日は俺がご馳走する番」 揺杏「なかなか美味しそうじゃん?」 京太郎「自信作なんだ、さあ食べて」 揺杏「わかったよ。あむっ……うん、美味しい!」 京太郎「それは良かった」 揺杏「あー、美味しかった」 京太郎「姉さん、口元に付いてる」 揺杏「へ?」 布巾で姉さんの口元を拭ってやる。 うん、綺麗になった。 京太郎「はい、取れたよ」 揺杏「ぁ、ありがと」 そう俺に礼を言う姉さんの顔は真っ赤だ。 可愛いなぁ。 京太郎「今晩はどうする?」 揺杏「え?」 京太郎「布団」 揺杏「あー」 揺杏「その、今夜も……」 京太郎「今夜も?」 揺杏「一緒が、いいな……だめ?」 答える姉さんは恥ずかしいのか顔が真っ赤だ。 そんな姉さんを見てついついからかいたくなってしった。 京太郎「そうかー、今日は一人で寝たかったんだけど」 揺杏「あ……それなら今日は別でも……」 姉さんの表情が寂しげな表情に変わる。 いちいち反応が可愛い。 京太郎「なんて、嘘だよ。駄目なわけないだろ」 揺杏「嘘?」 京太郎「だから今日も一緒に寝よう」 揺杏「ばかっ」 ボコッ 京太郎「いたっ!?ごめんって」 殴られた。 ちょっと調子に乗りすぎたかなぁ。 鳥のさえずりで目を覚ます。 春だなぁ。 それじゃあ起きて……。 っと、姉さんが抱きついてて起きれねえな。 いや姉さんを起こしちゃえばいいんだけどさ。 【朝】 まあ、起きますかね。 早く起きないと母さん達帰ってきちゃうし。 ということで。 京太郎「姉さーん、朝だぞー」 揺杏「んぅ……朝?」 目を覚ました姉さんはとろんとした瞳で俺を見つめてくる。 京太郎「ほら、さっさと起きて」 揺杏「えぇ、まだ眠いんだけど」 京太郎「良いからはよ起きろ、それか俺が起きれるように手を離せ」 揺杏「えー、やだぁ」 そう言って二度寝に入ろうとする姉さんを何とか起こそうとする。 揺杏「むー、それじゃあチュー」 京太郎「はい?」 揺杏「おはようのチュー」 何言ってるんだこの姉、寝ぼけてるのか。 揺杏「しないなら寝るもん」 完全に寝ぼけてるなこれ。 こうなったら仕方がないか。 まあ、嫌じゃないしな。 京太郎「わかったよ……んっ」 揺杏「んぅ……ふぇ?」 ぼーっと俺を見つめていた姉さんは突然目を見開くと顔を真っ赤にして飛び出していった。 まあ起きてくれたようで何より……かな? 俺たちが起きてしばらくしてから母さん達が帰ってきた。 二人は俺達が馴染んだ様子を見て満足したらしい。 まあ二人が思ってる姉弟よりも深い仲になっちゃったけど、気付いてないみたいだし良いか。 そして別れ際。 揺杏「三日間、楽しかったよ」 京太郎「俺も」 揺杏「一緒に暮らすの、その……楽しみに、してるから」 京太郎「うん」 そうして姉さん達は一足先に北海道へと発って行った。 姉さんとの北海道での生活、楽しみだなあ。 《岩館揺杏編 カンッ!》
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桃子(どうも、東横桃子っす……突然の告白ってどう思うっすか?私は……) 桃子「ウチの高校は駅から遠くて嫌になるっすねー」 桃子(バスは混んでるからむぎゅ……押し潰されるし、こんなときも影の薄さが嫌に、むぐっ) 京太郎「あの、よかったら座りますか?」 桃子(?……ご老人も妊婦さんもいないみたいですけど) 桃子「……もももも、もしかして私に言ってるっすか!?」 京太郎「?ああ、女子でこの混雑は大変でしょ?」 桃子「あ、ありがとうっす!」 桃子(この人、清澄の人っすよね!?私が普通に見えるっすか!?) 桃子「……清澄の麻雀部員さんっすよね?」 京太郎「そうですよ、鶴賀の東横桃子さんでしすよね。須賀京太郎です」 桃子(普通に会話できる!?しかも覚えられてるなんて……) 桃子「た、タメ口でいいっすよ!どうしてこっちに?」 京太郎「実は買い出しで……」 桃子(普通に会話……それに男子となんて、もしかして久しぶりどころか初めてじゃないっすか?) 桃子「あはは、面白いっすね……あ、着いたみたいっす」 京太郎「いつの間にか、なんだか時間が経つのが早く感じるな」 桃子「なんっすかそれ、おじいちゃんの台詞っすよ。本当に京太郎は面白いっすね、それじゃあ」 桃子(本当……こんなに楽しい『普通』、時間が経つの早すぎるっすよ。あーあ、メアドとか聞ければよかったっすねー……もう会えないかも、とか、思っちゃ……) 京太郎「桃子!」 桃子「え、京太郎!?ど、どうしたっすかバス降りるのここじゃ」 桃子(も、もしかして同じようにまた、話したいから連絡先とか思ってくれたり) 京太郎「好きだ!一目惚れした!俺と」 京太郎「付き合ってくれ!」 桃子「え」 桃子「……ええええええええっ!?」 桃子「……ッハ!?いつの間にか自分の部屋に」 桃子(そ、そうだ少し考えさせて欲しいっすって言って連絡先だけ、交換して……) 桃子「突然の告白なんてどうしたらいいか分からないっすよー!もー!」 桃子「こういう時、どうすればいいっすか?……そもそも京太郎とは会ったばかりで」 京太郎(美化30パーセント増)『あっはっはっは、おもちおもち』 桃子「そりゃかっこいいし、話してて楽しいし……あれ?断る理由ないっすね?」 桃子「……いやいやいや!そもそも一目惚れって、私のどこが……そうだ!こんな時は友達に相談っす!」 桃子「友達いなかったっす……いや!麻雀部のみんなが私にはいるっす!」 桃子「えーと、ケータイ取りだしポパピプペっと、『私のいいところってどこっすか?』」 桃子「三通しか返ってこなかったっす……」 桃子「妹尾先輩は多分メールに気づいてないっすね……」 睦月『悩みがあるなら相談してほしい』 桃子「違うっすよ津山先輩……そうじゃな、いや、でも悩みではあるっすね」 智美『モモは麻雀が強いなー』 桃子「智美先輩、そうじゃなくてこう外見とか特徴とか……」 加治木『モモは特徴がなくとも、それを逆手にとり武器にする……言うなれば特徴のないことこそが特徴に……』 桃子「それはその通りですけど!うう、どうすれば……余計こんがらがっただけっす、いや、これは悩むだけ無駄ってこと。そもそもそんなこと京太郎にしか分からない、なら私は当たって砕けていくだけっす!いや、砕けたくはないっすね」 桃子「兎に角京太郎にメール、そうだ!デートに誘ってそこで答えを出すっす!ポパピプペっと」 桃子『今度の土曜日、駅前で待ち合わせっす!』 桃子「……よし、送ったっす。あれ?妹尾先輩から返信が」 妹尾『桃子ちゃんはふくよかで可愛いよ』 桃子「……」ふにっ 桃子「ど、土曜日まで後三日!とりあえずダイエットっす!」 桃子「グロスを塗って……アヒル口ってどうやるんっすかね?い、いや別にキスを期待してるわけじゃないっすけどね……一応!一応!あ、いいものが 」 アヒルちゃんプロペラ「」 桃子「……むー?こ、こうひゅかね?」 智美「なんでモモはアヒルとにらめっこしてるんだー?」 桃子「わっひょい!?」 桃子「ね、ネイルって……今時の女子高生ってそんなことまでやるっすか?」 ゆみ「むしろ私は今までやってなかったことに驚きだよ」 佳織「駄目だよーちゃんとしないと」 桃子「うひっ、くすぐったいっすよ!」 睦月「カラコンとマスカラ、とりあえず色々揃えてみたけど……」 桃子「ありがとうございます!」 睦月「こういうのはやり過ぎても……って行っちゃった」 桃子「よし!装備は完璧っす!あとら明日に備えて寝るだけっす」 桃子「ぜ、全然眠れない」ドキドキ 桃子(だ、大丈夫っす目覚ましも三個セットしてあるし安心して寝れる……会うだけ、会うだけでそんな緊張する意味なんて) 桃子(……可愛いって言ってくれるっすかね、みんなと相談して、多分人生で一番のオシャレっす) 桃子(だ、か、ら!寝ないといけないっす!クマだらけの顔で京太郎に会うわけには……) 桃子(もしかしたら、明日から彼氏が……できるかもしれない、本当に今までだったら考えられないこと……) 桃子(あ、あはは……もう外が明るいっす……こうなったらこのまま起きてハイテンションのまま乗りきるしか……よく、考えればその方がいいっす、素面のままあったら恥ずかしくて顔みれな) 桃子「ぐう」 桃子「……んが」 桃子「……」 桃子「……」 桃子「……」 時計『待ち合わせ十分前やな』 桃子「ね」 桃子「寝坊したぁあああああああ!?」 桃子「あ、ど、どうしよう、と、とりえず顔洗って、着替え、着替え、あ、化粧……諦めるしかないっすね……と、にかく早くしなきゃ、京太郎が……」 桃子「はぁ、はぁ……急げばバスに間に合うっすね、ちょっとマナー悪いっすけど、バスの中で髪は整えるしか……」 桃子「痛っ……あ、ああ……ヒール折れたっす……これじゃあ間に合わない……こうなったらもう片方も折るっす!えい!」 桃子「ああ、もう時間が……とりあえずバスに乗って、って、なんでこんなに混んで、むぎゅ……押さないで欲しいっす、服が、今日のために用意した綺麗な服……」 京太郎「……どうしたんだろ、桃子。電話も出ねーし、なんかあったのか?」 京太郎「振られた?……いやいや!探そう、行き違いになってるかもしれないし」 京太郎「……ああ、いたいた。どうしたんだ桃子?」 京太郎(街路樹の下で、隠れるようにうずくまる桃子がそこにいた) 桃子「……今日ほど、消えたいと願った日はないっす」 京太郎「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」 桃子「なんで怒らないっすか?遅刻したっすよ、私……遅刻して、髪もぐしゃぐしゃで、化粧もしてないし、部活のみんなで選んだ服もぐちゃぐちゃになって、背伸びして履いたヒールも折れて……」 桃子「こんな、こんなんじゃ、京太郎に会わせる顔なんて、ないっす」 桃子「私が、目立とうとしたのが間違いだったんっす、恋人なんて、誰かに、好かれるなんて、夢みたのが……」 京太郎「えーと、さ、それってつまり、いつもの桃子ってことだろ?」 桃子「……そうっすよ、いつもの、地味で、影の薄い」 京太郎「そんなことねえよ」 桃子(頭、撫でて……) 京太郎「俺は、その、なんだ、いつもの、普段の、バスで隣通し喋った桃子がとっても魅力的で、ぴかぴかして惚れたんだ。地味でもないし、影なんて薄くない、めちゃくちゃかわいい女の子だよ」 桃子(涙を流す私の顔を見て、京太郎はそう言ってくれたっす……そのとき、私が京太郎を気になっていたのは顔でも性格でもなくて……その) 京太郎「あ、また告白しちまったな……これで恥ずかしさおあいこってことでさ」 桃子(その、まっすぐに私を見てくれる眼が……) 桃子「京太郎」 京太郎「元気でたか?それじゃむぐっ!!???」 桃子「……っぷは、あ、アヒル口忘れてたっす」 京太郎「も、桃子今の……」 桃子「モモって呼ぶっすよ、だって」 桃子「恋人っすから」 京太郎「……へーへー、じゃあ買い物にでもいくか、モモ」 桃子「ってうわぁ!?お姫様だっこって……恥ずかしいっすよ……」 京太郎「お返しだ」 桃子「買い物って、どこに……」 京太郎「そうだな、服屋に化粧品……とりあえずは」 京太郎「靴屋だな」 桃子(その日、私は彼氏に買ってもらった靴を履いて帰ったっす) 桃子「と、言うわけでこれが私の告白作戦っす!同じようにすればきっとその好きな人と恋人になれるっすよ!」 咲「あーうん、もういいや、っていうか目的がなくなったというか、試合になってなかったっていうか……うぅ」 桃子「どうしたっすか?加治木先輩から恋愛相談されたときはビックリしたっすけど、大丈夫っす!他にも色々話すことはあるっすよ!」 咲「うう、部長に相談したら恋愛経験ある人紹介してくれるって言ったけどこれじゃああんまりだよ……」 桃子「代わりにと言ってはあれっすけど、ちょっと京太郎のことで聞きたいことがあって……宮永さんは幼馴染みっすから色々……」 咲「うわぁあああああん!」 カンッ!
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289 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 13 12 09.59 ID 1pgCD7RWo [15/38] [オープニング] アカン、死んでまいそう。 ふらり、ふらり。 足元が覚束ない。 まるで熱に犯されたように体が重い。 微熱があったのは知ってた。 だけど、そんなにひどくない。 そう思う自分がいたもの事実で。 でも、実際は今倒れそうになっている自分がいるのも事実なのだ。 こんなに自分は貧弱だったかな、と問いかけてみる。 怜「あ、せやった……ウチ、病弱やった……」 ふふふ、と。 一人でツッコミを入れて薄く笑う。 本来ならここで竜華やセーラがツッコミの一つや二つ、入れてくれるもんやのに。 なんでいないんだろう。 そこまで考えて、自分が今向かおうとしている場所にいるからだ。 そう理解する。 新学期。 3年生になった、春。 千里山高校には新入生が入ってくる日。 入学式の前に部の方で勧誘の準備をする。 そう、妙に張り切ってた監督が言ってたっけ。 でも、それには間に合いそうにない。 なんだか、体がふわふわ。 ふわふわと、してきたからだ。 ぐらりと、揺れる。 倒れるくらいなら、家で休んでればよかった。 硬いアスファルトに身を叩きつける直前。 ふと、そんなことを思った。 その時だ。 手を握られ、倒れるのを遅らせられる。 その一瞬。 その一瞬に手を肩に添えて、ひょいっと。 軽々と、私を支える男の子が見えた。 京太郎「大丈夫ですか!?」 それが、ウチと京太郎との出会い。 296 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 13 28 43.39 ID 1pgCD7RWo [16/38] 京太郎「千里山……俺と同じ高校の制服……大丈夫ですか、名前言えますか?」 怜「あ、うん……ウチは園城寺怜や」 京太郎「園城寺さんですね、俺は須賀京太郎って言います……意識はハッキリしてる、呼吸も異常なし、負傷も無し……救急車は必要ですか?」 怜「そ、そこまでせぇへんでええよ!ウチ、病弱なだけやから休んでれば……」 京太郎「そうですか……じゃあ、学校の保健室に行きましょう。立てます?」 近くのバス停のベンチ。 そこにウチを支えていった後、色々と尋ねてくる。 手馴れてるな、と思う。 さっき倒れそうになったとき、体を支えるのと一緒に頭と首をカバー。 そして今は意識の確認と体の診断をしている。 まるでお医者さんみたいやな。 緊急事態に対応するために勉強していたみたいだ。 そこまで考えて、男の子。 須賀京太郎君。 千里山が共学になったのは知っていたけど、こうしてその一人と会うことになるとは思わなかった。 彼の言葉、学校の保健室に行こうというもの。 それに思った以上に素直に「うん」と。 そんな言葉が出る。 四肢に力を込めて、立ち上がろう。 ぐっと。 ……ぐっと。 怜「…………」 京太郎「……園城寺さん?」 怜「……あ、足…」 京太郎「足?」 怜「……足に力、入らへん……」プルプル 京太郎「」 アカン、須賀君絶句しとる。 がんばれ怜ちゃんフッド、命を燃やすんや。 やれば出来るって炎の妖精さんも言っとるやんか。 怜「ふっ……く……」 京太郎「………失礼しますね」 その時、須賀君が動く。 学ランの上を私に被せ、布団のようにする。 そのまま、横抱きに。 ………横抱き? 300 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 13 48 28.97 ID 1pgCD7RWo [17/38] 怜「ちょ、ちょ、何しとん自分!?」ペチッ 京太郎「あいた」 怜「こ、ここここれってお姫ひめひめ……!」 京太郎「いや、握力無いからおんぶは無理っぽいなと思ったので」 怜「いや、せやけど」 京太郎「不快かもしれませんけど、まぁ保健室に行くまで我慢してくださいなお姫様」 さっくりと、そう言って歩き出す。 ……手馴れてるなぁ、やっぱり。 なんともいえない、初めて感じる感覚。 男の人に抱っこされるのは、覚えてる限りではお父さん以外ない。 新品の学ランの匂い。 ちょっと前まで、中学生だった男の子。 そんな妙な感覚を誤魔化すように、ウチは問いかける。 怜「……須賀君、“たらし”なん?」 京太郎「これ以上なく激しい中傷を浴びた気分なんですけど」 怜「普通の子は初対面でお姫様抱っこなんかせえへんよ」 あと、お姫様発言もせんな。 そう言うと頭を抱える……は出来へんな。 非常にバツが悪い。 そんな顔を須賀君はする。 それにくすりと。 小さく笑う。 一個お返しや。 そう思って、「あっ」と呟く。 そうだ、竜華たちに連絡入れとかな。 『今、保健室におる』。 目の前に見えた校舎を見ながら、ウチはそんなメールを送る。 保健室は開いていたけど、先生がいない。 何か用事かな、と思いつつ。 ウチは椅子に座り、肩に学ランをポンチョみたいにかけて。 ごそごそと、体温計を取り出す須賀君を見ていた。 京太郎「じゃ、俺は職員室にでも行って保健室の先生探してきますから、ここで体温でも測って大人しくしててくださいね」 怜「すまんなぁ京太郎や、ウチの体が弱いばかりに……こほっ、こほっ…」 京太郎「おかあ、そりゃあ言わねぇ約束だろ……って何でやねん」 怜「おお、ノリツッコミやな」 京太郎「はっはっは……いや、大事なさそうで何よりですよ」 306 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 14 05 07.03 ID 1pgCD7RWo [18/38] 怜「………」 京太郎「………」 怜「……あはは」 京太郎「ははは」 二人揃って、笑う。 なんか、笑ってしまうのだ。 怜「おもろいなぁ、須賀君」 京太郎「関西で暮らすことになりますからね、褒め言葉として受けときます」 ィ... 怜「そっかー」 ...キィ 京太郎「じゃ、俺はちょっと行って……何か聞こえません?」 トキィィ 怜「へ?」 トキィィィィ! 竜華「怜ぃ!!」 セーラ「トキ!!」 京太郎・怜「!?」ビクリッ 怜「……って、りゅーかとセーラ?」 その瞬間、バンッと。 ドアが叩きつけられるように開く。 反射的に、ウチと須賀君が手を握ってしまう。 それくらいのびっくり具合。 息荒い竜華と目を丸くしているセーラ。 竜華が息を整え、周りを見回す。 ウチと須賀君を見て、そして状況を確認。 すぅっと。 竜華が息を吸った。 竜華「怜が保健室に男連れ込んどるー!?」 京太郎・怜「「なんでやねん」」 アカンわ、もう疲れたで……。 [プロローグ:終了] 313 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/02/10(日) 14 17 12.38 ID 1pgCD7RWo [19/38] 夢を見た。 ニュースを見る夢。 環状線で人身事故があった。 それだけの話。 ベッドで身を起こし、ニュースを見る照さん。 俺もぱちりと。 目を開く。 照さんが、俺が目覚めたのを見て笑う。 ゆっくりと。 ゆっくりと近づき、手の平に手を重ねて、キスをしてくる。 薄いシーツ越しに触れ合う素肌と素肌。 俺と照さんの唇と唇。 その間に伝う銀糸。 愛おしそうに。 俺の頬を撫でる照さん。 蛇が獲物を飲み込むように。 俺が埋れていく。 その感覚が、俺にはあった。 拒絶できない。 拒絶は許されない。 そう、言うように。 照さんの寵愛を、俺は受ける。 一方通行の愛を。 愛でられる人形の愛を。 縛られた心で、俺は受ける。 照さんが、笑った。 小さく。 大きく。 唇に弧を描いて。 笑う。 ニュースキャスター『……被害者は学生、遺留品から長野県在住の宮永―――』 笑う。 330 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 14 28 35.45 ID 1pgCD7RWo [20/38] 【8月14日:朝】 目が覚めた瞬間、トイレへと駆け込む。 胃液を吐き出す。 それだけの行為。 喉をひりひりと。 焼く感覚に涙が零れる。 なんだよ、あの夢。 なんなんだよ、これ!! ふざけんな、あんな夢ふざけるんじゃねぇ。 俺はあんなの望んでない。 望みたくもない。 俺は何も。 小さい、普通の幸せさえあればそれでいいのに。 何で。 何であんな夢ばかり……。 しかも、何で体験した事実みたいに。 なんで、感じるんだ……。 朝 京太郎「……」 浩子「なんや須賀、えろう顔色悪いやないか」 京太郎「船久保先輩、おはようございます……」 浩子「おはよーさん……って、ホンマに大丈夫か?」 よほど顔色が悪いのだろうか。 朝食の席に向かった俺は、先に食事をしていた船久保先輩に声をかけられる。 まぁ座れ、と席を空けられて俺は座る。 何処までも冷酷に見えて、でも何かと世話焼きの苦労性。 船久保先輩はそんな人だ。 浩子「何か食べれるか?」 京太郎「はい、なんとか……」 浩子「よっしゃ、ちょお待っとき」 そう言って、席を立つ船久保先輩。 朝のバイキング。 そこをぐるりと巡り、戻ってくる。 浩子「ほら、白かゆや。熱いからゆっくり食べ」 京太郎「ありがとうございます……」 レンゲを渡される。 白粥に、4種類くらいの漬物、それとキンピラ。 我の強い、油っけの無いメニューは無い。 それに感謝しつつ、俺は息を吹きかけ、一口。 京太郎「熱っ……」 浩子「そういうもんや、ええからゆっくり食べ」 京太郎「はい……なんか、船久保先輩妙に優しくないですか?」 浩子「おう、喧嘩売っとるんか」 京太郎「すいません!すいません!!」 浩子「はぁ……病人くらいには優しくするで」 京太郎「すいません……」 浩子「ええよ、こんくらい……ほら、ちゃっちゃと食べる。お仕事お仕事」 京太郎「了解っす」 359 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 14 49 59.83 ID 1pgCD7RWo [23/38] 【8月14日:昼】 船久保先輩に気遣われて朝を過ごした。 そんな今、俺は園城寺先輩と並んでソファーに座っている。 小さき咳の声。 あの春の出会いから四ヶ月が過ぎた。 この人が先輩だったということも、麻雀部の新エースだということも。 色々と知ってきた毎日だ。 細い背中。 その背中に皆の期待を背負っている。 その重圧は、どんなものなんだろうか。 この人の弱い体で。 どれだけの重荷を担ぐつもりなんだろうか。 ふと、そう思うことがある。 ただ、言えること。 一つだけ、言えること。 園城寺先輩は一人じゃない。 その事実だ。 清水谷部長も、セーラさんも、船久保先輩も、泉も、愛宕監督も。 そして他の部員に、俺も。 皆の思いを園城寺先輩は抱え、そして皆がその重みを支えている。 だから、この人は強いんだろう。 強くなれるんだろう。 竜華「怜、おるかー?」 怜「ここにおるでー」 竜華「お、ここに居ったかー病人コンビ」 京太郎「俺も病人扱いですか部長……」 竜華「当然や、船Qがウチに声かけてくるくらいなんやで?」 そう思っていると、部長がドアを開けてくる。 そうか、そろそろ開会式か。 俺は時計を見て、そう思う。 ゆっくりと立ち上がる園城寺先輩。 部長が片目を閉じ、「こっちは任せて」と合図する。 それに俺は頷いて、見送る。 レギュラーの。 思いを背負った、背中を。 今、全国大会が、幕を開く。 393 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 15 12 19.86 ID 1pgCD7RWo [28/38] 【8月14日:夜】 竜華「須賀君、こういう場合はどないするんやろ?」 京太郎「園城寺先輩の場合だと、基礎体力の時点で問題ありますからね……」 夜、俺は清水谷先輩と向かいあってノートを手に、話し合い。 書かれた内容。 それは合宿での園城寺先輩の身の回りに関することが記入されている。 栄養面、肉体面、精神面。 そういった情報がある、ある意味では女の子のプライベートなんて無いと言わんばかりの本。 たまに園城寺先輩が半目で見ていたのが気になるけど、まぁいいだろう。 いや、よくないんだけどね。 竜華「んー……怜の体力を考えると一荘が限界やね、やっぱり」 京太郎「セーブして戦える相手じゃありませんしね、全国区は」 大阪府大会。 そこではある程度セーブしての試合だった。 倒れるほどじゃないにせよ、それでも消耗は激しい。 ちらりと。 俺は視線を向ける。 ノートを見て真剣に考える清水谷部長。 そこでふと、俺は気づく。 部長の後ろ。 つまりは俺の真正面から。 ゆっくりこっそりと、園城寺先輩が近づいているのを。 怜「………」シッー 京太郎「リョウカイッス」 竜華「ん?須賀君なにか言うた?」 京太郎「イエナニモ」 竜華「そか?」 怜「……」(氷を取り出す) 竜華「んー……船Q呼んだ方がええかなー?」 怜「とりゃ」 竜華「ひっ……冷たぁぁぁ―――んぁ!?」 びくりと、部長が立ち上がる。 振り向けば、悪戯成功という顔をした園城寺先輩の姿。 部長が、ぽろりと出てきた氷を掴んだ。 「怜ぃぃい!」 「え、ちょ、ウチお医者さんに冷物はアカンって…」 「お返しや!」 怜「ひゃああああ!?って、冷たいわ!!」 436 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 16 25 18.89 ID 1pgCD7RWo [33/38] 【8月15日:朝】 雅枝「須藤ー、須藤おるかー?」 京太郎「監督、須賀です」 雅枝「おお、おるやん須藤!ちょ、こっち来い」 京太郎「須賀ですってば」 愛宕監督に呼び出される。 それはレギュラーじゃない俺を呼ぶ、という物珍しいことだと思う。 ぶっちゃけると、名前を本当なのかワザとなのか分からないくらいに間違えるからだ。 つか、須藤って誰だよ須藤って。 俺の苗字より一文字多いじゃねーか。 そんなことは、まぁおいて置いて。 監督が「入るでー」と軽く声をかけて部屋に入る。 あれ、ここって園城寺先輩と部長の部屋じゃ? そんな記憶の掘り返し。 それが完了する前に、ドアが開く。 中には、膝枕をする部長とされる園城寺先輩の姿。 ……うん、なんか白い花が咲いてそうだ、背景に。 雅枝「ほんなら須藤、二人は任せたで」 京太郎「はい?」 雅枝「ほな、よろしゅう」 京太郎「いや説明くらいしてください監督ぅぅぅぅ!?」 ツカツカと、足早に去っていく監督。 いやいやいや、待ってくれ。 何で女の子の部屋に置いてけぼりにされなきゃいけないんだ。 そう思っていると、ぱちり、と。 園城寺先輩が目を開く。 もぞりと、身を震わせて。 俺を見た。 怜「………なんで須賀君おるん?」 京太郎「分かりません」 まぁ、その後で今日の試合を撮りにいくから部長に細かい指示を受けることになったんだけどね。 そういうのって船久保先輩か監督の仕事なんじゃ…。 499 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 22 42 03.04 ID rJ3/o4NGo [2/9] 【8月15日:昼】 浩子「よっしゃ、準備ええな?」 京太郎「うっす!」 全国大会一回戦。 その試合を撮影するために俺は船久保先輩と会場へと向かう。 今日撮影するチーム。 そこには、以前PAで昼休憩の時に出会った阿知賀の皆さんも居る。 一回戦。 勝ち上がるのは一位通過のみ。 千里山は共学だからその心配は2回戦からになる。 となると、何所が勝つのだろうか。 俺としては、やっぱり阿知賀に買ってほしい。 そんな気持ちがあった。 そうこうしている内に会場につく。 席を探して、一角を確保。 カメラを準備する俺は準備を最低限終えると、ちらりと時計を見る。 あと20分で試合開始、というとこだろう。 俺は財布を掴み、先輩に顔を向けた。 京太郎「先輩、何か欲しいものありますか?」 浩子「買いにいくん?ほな、適当に飲み物と軽食頼むわ」 長丁場になりそうやし。 そう言って目線をタブレットに戻す先輩。 俺はオーダー通り、適当に飲み物とパンを買う。 うん、これだけあればいいだろう。 意外とこの人、食べるしなぁ。 セーラさん>船久保先輩=泉>清水谷部長>園城寺先輩。 食事量はこんなものだろう。 俺は早速パンを一つ齧る。 量は、ちょっと足りないかもしれない。 京太郎「先輩、試合終わったら情報整理と小腹満たしでお茶でもどうです?」 浩子「ええなそれ、そうしよか。店んことは任せるわ」 うーん、店か。 コーヒーお代わりできるし、ドーナッツとかいいかも知れないな。 会場近くにも店があるの知ってるし。 ……あれ、何で俺知ってるんだ?そんなこと。 523 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 23 13 19.81 ID rJ3/o4NGo [5/9] 【8月15日:夜】 セーラ「おーおかえりー」 京太郎「セーラさん、今戻りました」 セーラ「あれ、船Qは?」 京太郎「先輩は疲れたから部屋で少し寝るみたいです」アトコレオミヤゲデス セーラ「お、ドーナツやん!おおきに!」 ホテルに戻る。 俺は小分けにされた箱の一つをセーラさんに渡し、肩を並べて歩く。 江口セーラ。 昨年の千里山のエースで、今大会でも中堅エースとして園城寺先輩との2段階での火力運用としている。 その性格は、一言で言えば豪快。 3900三回より12000一回、そういう火力ある打ち筋を好んでいる。 それでいて、性格も非常にサバサバとしている。 話している間に誰かの気分を軽くする。 そんな人だ。 そんな先輩の格好。 半ズボンに半そでTシャツ、上に学ランという姿。 格好のせいか可愛らしい男の子にも見えなくもない、そんな姿だ。 この人の欠点?と言えばいいんだろうか。 あまりに豪快すぎて、女の子らしくない、ということだ。 船久保先輩もそれでたまに雷飛ばしてるしな。 セーラ「ん?どないしたん?」 京太郎「いえ…セーラさんは元気だなぁ、と思いまして」 セーラ「そか?せやけど、暗い気分にワザワザなる必要もあらへんやろ?」 さっぱり。 そう言われると何も言えない。 そんなこの人だからこそ、こうして俺の顔に笑みは浮かぶんだろうけれど。 セーラ「なんや京太郎、なしてそない景気悪そうな顔してん?」 京太郎「あはは……いえ、セーラさんはそんままで居てください」 セーラ「ん?」 京太郎「何でもありません、お茶飲みます?」 セーラ「オレは紅茶な!」 京太郎「うっす、了解っす」 552 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 00 01 14.52 ID SjuryLolo [1/14] 【8月16日:朝】 世話係。 そう銘打たれた俺の肩書きはなんてことはない。 体の弱い園城寺先輩をサポートする皆のサポート役、ということだ。 その係を指名したのは監督だが、推薦したのはレギュラーの皆だ。 曰く、力があり、細かに気が利いて、信頼できる。 他にも女子部員が多くいる中、そうまで推薦してくれた。 その事実に何とも言えない恥ずかしさを感じつつも、俺は今日の仕事を準備する。 今日は何をしようか。 昨日の一回戦の試合のデータ処理をするために船久保先輩の所に行こうか。 ああ、そういやセーラさんの学ランのボタンが取れたって言ってたし後で直しにいかなきゃいけない。 泉は何も無い日は試合の映像を見てるし、後で昨日の分を渡しておくのもいいかも知れないな。 思えば、仕事ってのは結構あるもんだ。 そんなことを思いつつ、俺はレクリエーションルームに入る。 雀卓が一台、大型のモニターが一つと、試合映像や練習を行える他、お茶なんかも飲める場所。 俺が主に常駐するこの部屋に入って見れば、そこにはソファーに横になる園城寺先輩の姿と、先輩を膝枕する清水谷部長の姿があった。 京太郎「おはようございます、部長、先輩」 竜華「おはよう須賀君」 怜「おー、おはようさん京太郎ー」 片手をひょいっと。 上げて挨拶する園城寺先輩。 この人、早速膝枕してるよ…。 京太郎「今日は早速ですか、先輩……」 怜「ふふふ、怜ちゃんパワーを竜華に充填中やで」 京太郎「意味分かりませんから」 怜ちゃんパワーってなんだ、怜ちゃんパワーって。 しかも部長は部長で満更でもなさそうだし…。 竜華「もう、怜ったら……」 怜「ええやん、もうちょいだけ……」 京太郎「もしもーし、まだ朝ですよー?」 怜「せや、京太郎もどや?ええで、竜華の太腿は病み付きになるで…!(ゲス顔)」 アンタおっさんかなんかか。 670 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 20 09 08.75 ID JVGYGWJ7o [3/44] 【8月16日:昼】 接触対象指定↓3 気配が薄い。 元々の呼吸も浅く、体温も低く、線も細い。 生きている人間が出す気配。 それが薄い園城寺先輩の接近には気づかないことが多い。 俺は誰もいないはずのレクリエーションルームで一人、ソファーに寝転がっていた。 このソファー、元々はベッドになるようなもので、非常に大きい。 また、ふっくらとしていて体を包む柔らかさがある。 きっちりと座るにはきついが、だらけるのには向いている。 そんなソファだ。 俺は午前中の仕事、主に船久保さんやセーラさんの一件を終え、昼食を済ませる。 そうして出来た休憩時間に、まどろんでいる。 テーブルの上には新聞。 さっきまで時間つぶしに読んでたのだが、文字を読むとどうにも眠気が来る。 気づけば、寝ていた。 それが今だ。 左手に着けられた腕時計を見よう。 そう思って、腕に力を込めると感じる重み。 なんだ?と、視線を腕に向ける。 見えたのは、俺の腕を枕に眠る園城寺先輩の姿。 フリーズ。 ………え?どういうことなの? 怜「ん……」ゴソリ 京太郎「ちょ!?」 寝返りを打ち、すっぽりと。 俺の懐に丸まる先輩。 ウチのカピバラが俺の布団に潜り込むような感じだな。 思わずそうのほほんとしたが、直ぐに再起動する。 いや待て、待ってほしい。 何で園城寺先輩が俺の腕枕で寝てるんだ!? 教えてくれ怜ちゃん、俺は今どうすればいい。 俺は何故か、SD化してふよふよと浮いている怜ちゃんを幻視して問いかける。 怜ちゃんが、にっこりと笑う。 俺もにこりと、引きつって笑う。 答えは一つらしい。 怜ちゃん『これは責任やね』ニッコリ 京太郎「言われなき罪をつけないでください!!」 【8月16日:夜】 一年生。 千里山という名門高でレギュラーを掴む。 それは並大抵のことじゃあない。 それを一年生で成し遂げた数少ない人物。 それが泉という女の子だった。 性格は一言で言えば、不敵。 誰にも負けない、劣っていない。 それを自負して、糧にする。 対抗心と向上心の塊みたいな奴が、二条泉という女の子だ。 ただ、あまりに上手く行き過ぎると舐めてかかり、手痛い反撃を受けてリズムを崩される。 そんな面があるんだけれども。 まぁ、言うならば小生意気。 真面目だけど、小生意気が正しい評価かも知れない。 泉「あーうー……」 京太郎「その…あれだ……お疲れ?」 泉「そないな慰めせんといてぇ……」 俺は雀卓に撃沈する泉にどう声をかけるか考える。 14時くらいから始まった部内での練習試合。 それは泉が大きくマイナスをつけられた結果になった。 まぁ、セーラさんに妙に調子よかった園城寺先輩、そして部長。 我が部のトップ3と真正面からやりあえば読めた結果な気もするけど。 さめざめと、涙を流す泉。 俺はそれに苦笑しつつ、茶を淹れる。 こういう時はあれだ、気分を落ち着かせるのも一番なんじゃないか。 置かれたカップに気づいた泉が顔を上げて、俺を見る。 その顔は……複雑? うん、そんな色がある。 泉「そない優しくせんとってぇ……」 京太郎(駄目だこら) 優しくしないでいいんだったらデコピンしてやろうか。 思わず、そんなことを考えた俺は悪くないだろう。 だってめんどくさいんだもん。 733 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 21 03 41.31 ID JVGYGWJ7o [12/44] 【8月17日:朝】 泉「はぁー……なんやごっつい人おんなぁ……」 京太郎「まぁ、白糸台高校の初試合だからなぁ」 2回戦初日。 俺は泉と共に大会会場へと来ていた。 目的はただ一つ。 白糸台高校の試合を見る。 それに尽きる。 準決勝。 そこで千里山は白糸台とぶち当たることになる。 少なくとも、千里山も白糸台もそこまで勝ち残る前提だ。 負けることを考えて試合に出る選手はいない、ということだ。 見回せば、やはり人は多い。 誰もが白糸台の力を見に来ている、そういう顔だ。 まぁ、俺たちもそうなのだけれど。 しかし、だ。 取材陣は妙に騒がしい気がする。 耳を澄ませば、「宮永照選手がいないぞ」やら「何所に行ったんだ…?」やら。 そんな声が聞こえる。 泉「チャンピオンおらんって、言うてる?」 京太郎「何かあったんか?」 うーむ。 俺と泉は顔を見合わせ、首を捻る。 その時だ。 声がかかる。 何所か鋭い、そんな声が俺に。 菫「すまない、ちょっと聞きたいんだが……」 京太郎「え、へ?俺ですか?」 菫「他に誰がいるんだ?」 泉(あれ、ウチもおるよね?) 菫「聞きたいことがある、宮永照を見なかったか?」 京太郎「いえ、知りませんけど……」 照さんって、あの照さんだよな? 俺は首を捻る。 ふと泉にも聞こうと顔を向ければ、そこにあるのは少し気圧された。 そんな表情の泉がいる。 ……ああ、この人は何所かで見たと思えば、白糸台の次峰の弘世さんか。 772 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 21 33 25.93 ID JVGYGWJ7o [16/44] 菫「チッ、アイツめ……いや済まない、ありがとう」 小さく舌打ち。 苛立ちというよりは焦りに対してのものだろうか。 こうして知らず知らずの人である俺に聞く。 それくらい焦ってるんだろうか。 京太郎「照さんは、甘い物好きですから近くのそういう店を探せばいるかも知れませんよ」 菫「何?おい君、今何を―――」 京太郎「それじゃ、ほれ泉いくぞー」 泉「えちょ、ま、待ってぇな!」 俺は泉の手を引いて、そそくさと離れる。 試合まであと20分。 ……不戦勝だけは、やめてほしいなぁなんか。 菫「あの男……ん?淡から電話か……もしもし?」 淡『あ、すみれー?テルー見つけたよー!』 菫「何、何所にだ?あと変わってくれるか」 淡『ドーナツ屋さんー。テルー、電話だよー』 照『あと一個だk』 菫「よし待ってろ、今そっちに行って引きずってきてやる」 774 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 21 36 50.36 ID JVGYGWJ7o [17/44] 【8月17日:昼】 試合が終わる。 いや、正確には強制的に終わった、だ。 先鋒宮永照。 その大立ち回りによって削られ、弘世選手によって集中的に抉られ。 そうして中堅では役満が炸裂。 何をどうすればここまで火力を運用できるのか。 そう思ってしまうほどに凄まじい、白糸台における蹂躙だった。 最後の大将戦なんか、悲惨だ。 配牌に嫌われたように他高校は攻撃の基点を失い、その中でも相応に動いた新道寺を除いた2校は敗退した。 あれがチャンピオン。 あれが白糸台。 まさにそれを証明する。 そんな結果だ。 泉は船久保先輩と合流してトンボ返り。 きっと、今日は明日に備えて特訓だろう。 そう思いつつ、俺は一番遅くに会場を出る。 日差しはまだ強い。 園城寺先輩なら倒れてしまいそうだな。 そう思いつつ、俺は横目を引かれる。 そこには、うなされるように倒れてる園城寺先輩の―――。 怜「今、いくで…」 京太郎「いっちゃ駄目ー!?」 アカン。 この人、毎回こういう登場の仕方してないか!? 俺が駆け寄る。 脈拍とか、その他もろもろの確認。 ………あれ? 京太郎「……先輩?」 怜「んー?」 京太郎「貴女、普通に平気ですよね?」 怜「そんなことあらへんよ、眩暈が止まらんねん」 京太郎「目線逸らさないでください」 怜「~♪」 京太郎「吹けない口笛もいいですから」 この人はまったく。 808 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 22 02 04.91 ID JVGYGWJ7o [21/44] 怜「……いや、あんな?」 京太郎「どうせ、俺の姿が見えたからどっきりでも仕掛けよう、ですか?」 怜「よう知っとるやん」 京太郎「はぁ……」 くすくす。 そう笑う先輩に俺はため息をつく。 なんか、気を抜かれる。 そんな気分だ。 怜「よっと……」 小さく掛け声をかけ、体を起こす先輩。 その足取りはしっかりしている。 健康状態に異常はない。 その見解は正しいようだ。 ふふん、と。 妙に澄まし顔をする先輩を見下ろす。 ……はぁ。 怜「ほな帰ろか、京太郎」 京太郎「はいはい、了解しましたよお姫様……はぁ……」 怜「―――――お姫様、な……」 812 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 22 04 43.77 ID JVGYGWJ7o [22/44] 【8月17日:夜】 泉「大丈夫…大丈夫や……」 京太郎「………」 泉「ウチは高校一年最強のつもりや……いける…いけるんや……!」 京太郎「………泉?」 泉「千里山優勝待ったなし!……せや、いけるやん―――」 京太郎「………泉ぃ!!」 泉「ひぃ!?」 びくり、と声をかけても反応しなかった泉が反応。 それに少し声を大きく、監督みたいな感じで声をかけるとびくりと震えていた。 あ、なんか涙目になってる。 そんな泉は俺を視界に納めると、ゆっくりと引いた構えを解く。 そこに出てきたのは、笑顔。 なんというか、何時もどおりの不敵な顔だ。 泉「な、なんや京太郎か……え、用事あるん?」 京太郎「そろそろ飯だから呼びに来たんだよ…」 ほれ、いくぞー。あ、ちょお待ってー。 そんな軽いやり取りをして、俺と泉は並んで歩く。 レストランはホテルの地下。 エレベーターに乗り込み、俺は地下行きのボタンを押す。 妙な空白がある。 無言の空間というか、何か話そうにも話せない……そんな空気だろう。 俺はちらりと、泉を見る。 さっきの姿は無い。 あの姿……自己暗示するような光景。 泉は明日が、最初の公式戦になる。 当然、緊張するだろうし、俺には分からないプレッシャーを感じているのかも知れない。 気づけば、ポンッ、と……俺は泉の頭に手を置いていた。 泉「え、ちょ、何!?」 京太郎「いやさ、泉……今はとりあえず、飯食って寝るのがいいと思うぜ?」 悩まなくてもいいじゃねーか。 高1最強、だろ? そんな軽い言葉に泉が小さく、俺を見上げる。 京太郎「ま、頑張れよ、泉」 俺にはこれくらいしか、できねーけどな。 844 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 22 29 12.51 ID JVGYGWJ7o [27/44] 【8月18日:朝】2回戦当日 セーラ「よっしゃー!今日勝って準決勝や!」 浩子「そないなこと言って制服忘れんでくださいよ」 セーラ「……アカン?」 泉「アカンです」 京太郎「船久保先輩、ベッドの下に隠してあったの確保しました」 浩子「ほぉーう?」 セーラ「ひ、ひぃ……」 朝。 出陣前の準備中。 そんな中で俺は悲鳴をあげるセーラさんを泉と一緒い生暖かい目で見ていた。 2回戦。 シード故にここからが試合となることもあり、気合の入れようも一層違う。 俺は涙目になって船久保先輩の魔の手(間違ってない雰囲気ではある)から逃げるセーラさんを見る。 公式戦。 そこではセーラさんも、普段の男装から制服へと着替える。 本人はあのセーラー服がどうにも恥ずかしいのか、顔を赤くしているのが愉しいのか。 通称・乙女モードなるそれは船久保先輩のタブレットPC内に多く画像が納められている。 つまり、いじられるのだ。 セーラさんは船久保先輩にしょっちゅう。 それがこの乙女モードへの苦手意識を生み出しているのかも知れない……多分。 セーラ「きょ、京太郎!た、助けて……」 京太郎「え、ちょ、ちょちょちょ!?」 セーラ先輩が俺の背中に隠れる。 いや、何かすごい違和感を感じる。 普段のセーラさんは、言うなら兄貴肌。 そういった雰囲気を持つ人だ。 それが今はあれだ、こうして縮こまって俺の背中に隠れている。 しかもちょっと涙目で、だ。 背中に感覚を感じる。 きっと、背中のシャツを掴んでいるんだろうか。 あのセーラさんが。 涙目で。 ………。 京太郎「どうぞ、船久保先輩(ゲス顔)」 浩子「おおきに、須賀(ゲス顔)」 セーラ「んなぁぁぁ!?」 915 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 22 58 49.32 ID JVGYGWJ7o [36/44] 俺はセーラさんを確保する。 そして、船久保先輩の前へ。 きっと、良い笑顔が浮かんでるだろう。 多分、船久保先輩が今浮かべたような笑顔が。 セーラさんは目を見開いて俺を見ている。 捨てられた子犬みたいな目だな、と漠然と感じる。 きっと俺は売られていく子牛を見送る目をしているだろう。 どなどなどーなー、である。 泉「……」 京太郎「……ん?泉、どうした?」 そこでふと、俺は視線を泉に。 なんというか、判断に困る。 そんな顔をしている。 あれか? セーラさん弄りに参加したかったんだろうか? 俺は目の前に手をやって、振ってみる。 反応が無い。 ……うーむ? 京太郎「……てぃ」ペシッ 泉「あんっ…!」 ぺしりと。 軽く俺はツッコミを入れる。 これくらいは普段もやってるから問題ない。 それでやっと気づいたのか、頭を抑えてキョロキョロと周りを見回す泉。 それに俺は声をかけて、ゆっくりと部屋を出ていった。 京太郎「……にしても、泉変な声出してたな……」 920 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 23 01 13.68 ID JVGYGWJ7o [37/44] 【8月18日:昼】2回戦当日 試合自体は、そう語ることは無い。 阿知賀。 PAで出会ったその高校との対戦があった。 それくらいだ。 園城寺先輩も、泉も、セーラさんも、船久保先輩も、清水谷部長も。 それぞれの仕事を全うした。 その結果が、1位通過だ。 俺は帰宅の準備を始める皆と共に準備する。 視線をチラリと。 園城寺先輩へ。 体力はだいぶ、回復したとは思うんだけど。 京太郎「園城寺先輩、大丈夫そうですか?」 怜「うん……なんとかな」 竜華「怜、頑張ったからなぁ」 怜「せやね……ちょお疲れたわ」 ぐでん、と。 部長の膝枕に体を崩す園城寺先輩。 いや、それはいい。 それはいいんだが、今は撤収の時間だ。 俺がそう言うと、不満顔の両者。 ……俺が何をしたっていうんだ。 怜「知らんよ、そんなん」 竜華「せやなー」 京太郎「理不尽ですよね!?」 ぷくーっ。 そう頬を膨らませる園城寺先輩に部長。 ああもう、この人たちはどうしてこう…。 俺が小さく頭を抱える。 そして見れば、くすくすと。 顔を見合わせて笑う二人。 ……セーラさんに続いて、俺も弄られ枠なんだな。 それを妙に実感する、瞬間だった。 953 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 23 18 56.73 ID JVGYGWJ7o [41/44] 【8月18日:夜】2回戦当日 セーラ「う、うぅ……」 ―――例え話をしよう。 もし、男まさりな女の子が居たとして。 その子が普段しないような女の子らしい格好で顔を真っ赤にして隅っこに隠れるように座っている。 そんな光景がある。 それは実にありえない光景だろう。 かくいう俺も、直面していると硬直して動けなかったくらいだ。 いや、誰だってそうだろう。 俺は悪くないぞ、これは。 ………おほん。 そして、だ。 セーラ「きょ、きょう、たろぅ……?」 俺が居ることに気づいたんだろう。 蹲った状態から顔を上げ、俺を見上げる。 そして、妙に舌足らずな声で。 俺の名前を呼ぶ。 ……うむ。 なんだろうか、こう、笑顔になるな! 妙な心の爽快感すらある気がするぞ! 悪くない、悪くないぞ。 こういうのもいいじゃないか。 普段頼りがいがある子が妙に弱々しい姿とか。 実に庇護欲を刺激する状態じゃないか? セーラさんを見る。 所謂、ふわふわ、という感じの服だろうか。 ワンピースが妙に映える気がする。 元々可愛らしい顔をしているセーラさんに良く合う格好だろう。 そして、これを仕組んだ人物は一人しかいない。 俺はこちらに近づいてくる足音に首を向ける。 現れたのは、カメラを持つ船久保先輩。 そして泉だ。 ………セーラさん、俺の後ろに隠れないでください。 24 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 23 46 41.32 ID JVGYGWJ7o [3/9] 京太郎「船久保先輩はまだしも、泉……お前もか……」 泉「ち、違っ!これは船久保先輩の命令で……!」 浩子「泉もノリ気やったやん」 泉「先輩命令やったやないですかー!?」 悲鳴を上げる泉。 まぁ、後でしっかりと泉にはお話してやろう。 俺はそう思いつつ、船久保先輩を見る。 うーん。 この人、本気で嫌がってるとそこまでしないんだけどなぁ。 そう思いつつ、俺は腕を組む。 ここから先へは通しません。 そんな意思の表れだ。 それが通じたのか、船久保先輩は妙に面白そうに部屋から出ていった。 泉「ほ、ほなウチも……」 京太郎「おっと、泉は別だ」 泉「な、何でぇ!?」 京太郎「俺が先輩を説教できないが、同学年は出来るんだよ!」 泉「ひぃ!?」 逃げようとする泉の襟首を掴む。 そこに正座し、俺は泉の前に立つ。 さぁて、とりあえずは足が痺れるまでしっかりと反省して貰おうではないか。 35 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 23 53 54.22 ID JVGYGWJ7o [5/9] 【8月19日:朝】 なんてことは無い。 園城寺先輩が散歩に出たい。 そう言ったから、お供しますと告げただけ。 ふらふら。 そんな足取りで前を行く園城寺先輩を俺は追う。 なんというか、気づいたら倒れてそうで妙に気が気でない。 そんな気分だ。 俺は目を細め、空を見上げる。 天気はいい。 それに今日は風もある。 夏とはいえ、日陰はかなり涼しい日だ。 そうそう、本なんかを読むには一番良い日かも知れない。 そう、俺は木影の下に座って本を読む女性を片目に写して思う。 その時だ。 俺に、戸惑いが混じった声が聞こえた。 照「もしかして……京ちゃん?」 京太郎「え?」 声。 懐かしい声だ。 思わず立ち止まって、視線を向ける。 影の下。 そこに小説片手に座り込んだ人。 小さく。 本当に小さく。 照さんが笑っていた。 照「久しぶりだね、京ちゃん」 京太郎「お久しぶりです、照さん」 怜「……チャンピオンと知り合いなん、京太郎?」 京太郎「どわあああ!?何時の間にそこに!?」 怜「二人して見つめあっとる時やで」 見れば、園城寺先輩はジト目で俺を見ている。 ぱちりと。 照さんが、園城寺先輩を見た。 照「千里山の……園城寺さん?」 怜「どうもー、宮永さん。ウチの京太郎がお世話になっとるみたいやな」 134 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 00 34 03.99 ID cIlx3zjQo [5/28] キョトンと。 そんな顔をする照さん。 ああ、そういや俺が千里山高校に入学してるの知らなかったっけ。 それを今伝えると、「驚いた」と一言。 やっぱりこの人はサバサバしている。 そう思っていると、怜さんが俺の手を引く。 行こう、ということだろうか。 京太郎「じゃ、じゃあまた、照さん!」 照「うん、またね」 怜「京太郎、時間は有限やからはよ行こか」 京太郎「ちょ、ちょちょ!引っ張らないでください園城寺先輩!!」 つかつかと。 普段からは考えれない力で俺の手を引く園城寺先輩。 暫くそれが続いて、急に。 急に、先輩が止まった。 京太郎「お、園城寺先輩……?」 怜「……怜」 京太郎「へ?」 怜「怜って、呼んで」 え、いや、あの。 俺は思わず困惑する。 いきなりだな、とか。 嫌じゃないんですけど、とか。 口を開けば言葉は出る。 ただ。 園城寺先輩の顔を見ると。 それを口にすることが出来なくなっていた。 思いつめた顔。 それを、されたから。 怜「お願いや、京太郎……怜って、呼んで欲しいねん」 怜「お願いや……」 怜「お願い……」 怜「―――ウチを一人にせんとって……」 148 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 00 42 11.02 ID cIlx3zjQo [6/28] フルフルと。 寒さに身を抱くように、園城寺先輩が……怜さんが言う。 それに答える術が、俺には無い。 いや、答えれない。 そう言うべきだろうか。 ただ言えること。 それは、何所までも。 ……怜さんの体が何所までも。 弱々しく、小さく。 儚いものに見えた。 それが、俺が見た怜さんの姿だった。 京太郎「あの……怜、さん」 怜「うん」 京太郎「……なんか妙に恥ずかしいっす」 怜「そか……」 ふらり。 怜さんが体をふらつかせる。 疲れてるみたいだ。 俺は慌てて支えて、怜さんを見る。 怜さんは。 何所までも弱々しく笑う怜さんは。 今も、同じように小さく、笑っていた。 怜ちゃんレベル4だし! 157 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 00 46 49.47 ID cIlx3zjQo [7/28] 【8月19日:昼】 ……怜さんとの衝撃的な散歩から少し時間が過ぎた。 今、ベッドで眠る怜さんを見送り、俺は部屋を後にする。 疲れたらしく、帰ると怜さんは寝てしまったのだ。 それを報告するために俺は清水谷部長を探す。 多分、レクレーションルームだろうか。 探せばいるだろうと俺は脚を向け、入る。 中にはセーラさんも居るのが見えた。 セーラ「お、京太郎やん。怜は?」 京太郎「そのことで部長に報告です」 竜華「うん、どないしたん?」 京太郎「怜さん、疲れたから部屋で寝るそうです」 そう告げる。 ほー、とセーラさん。 仕方ないなぁ、と部長。 一様に違った反応を見せて、ぴしり、と。 お互いが固まった。 ぎしり、と。 俺に視線が向く。 セーラ・竜華「「怜……さん……?」」 京太郎「あ」 俺がそう呼んだ。 その事実に二人が反応する。 あ、良い顔してるよセーラさん。 昨日のあれ、まだ恨んでるんですか? それに部長。 世界が終わったみたいな顔しないでください。 何もありませんから。 セーラ「よっしゃ京太郎、ちょう座り!」 竜華「尋問やな、これは」 京太郎「勘弁してくださいよ……」 189 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 01 06 37.46 ID cIlx3zjQo [10/28] 【8月19日:夜】 セーラ「ツモ!2000・ザンキュー!」 京太郎「と、飛んだ……」 泉「京太郎……駄目駄目やないか」 竜華「せやなー。もうちょい頑張らなきゃアカンなー」 夜。 部長とセーラさんによる尋問は泉が来訪したことで終わりを告げた。 そうして今は数合わせを含めての麻雀に参加した俺はその圧倒的戦力差になす術なく殲滅されたところである。 おかしい。 そんなに悪い打ち筋じゃないと思うんだけど勝てる気がしない。 これがレギュラーの実力、という奴だろうか。 当ててもダマの安手が限界だったのも虚しい。 くそう、悔しいぞ。 なんか知らんけどすげぇ悔しいぞこれ。 泉「まー京太郎はまだ駄目駄目ですからねー」 京太郎「宣戦布告と受け取るぞ、泉」 泉「げっ!?」 ははははは!何処に行こうというのかね? 泉を捕獲し、俺はその頬を抓りながら笑う。 セーラさんも部長も笑う。 半泣きで悲痛な声を漏らす泉の声。 それがここに響いていた。 セーラ「あっはっはっはっは!あー、笑ったわ!……京太郎、そろそろやめてやり」 竜華「せやせや、泉も反省しとるやろうし」 京太郎「二人がそういうんでしたら……」 ぽいん、と。 引っ張っていた頬を勢いよく離す。 うむ、良い弾力であった。 俺は頬を押さえて俺に背中を向ける泉を見る。 ……ちと、やりすぎたか? 妙に息が荒く、頬を摩っているのが見える。 ……痛かったのか? なら、悪いことをしたなぁ……。 241 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 01 36 23.55 ID cIlx3zjQo [14/28] 【8月20日:朝】 はて、俺は何をしてるんだろうか? 今の現状を説明する言葉を捜してみる。 しかし、どれも今の状況を示すにはどうにも足りない気がする。 俺の表現的な問題ならいい。 いいんだけど、これは絶対に違うからそう言えないだろう。 泉「あ、そこ……っ」 京太郎「ここか」 泉「う、うん……ええ感じや」 ぎしり。 ベッドが軋む。 ベッドに寝転んだ泉と、ベッドに膝立ちで体重をかける自分。 その振動と共にスプリングが悲鳴を上げる。 ぎしりと。 その音と共に、泉が声を漏らした。 泉「も、もうちょっと、強…くぅ!?」 京太郎「す、すまん!痛かったか!?」 動きを止めて、俺は泉の顔を見る。 目尻に涙。 拙い。 初めてだから失敗したのかも知れない。 そう思い、これ以上はやめる。 そう口にしようとすると、泉は俺の服を掴む。 無言だ。 無言で、俺を見た。 続けてほしい。 そんな色合いで。 俺を見る。 京太郎「……いいのか?」 泉「うん、大丈夫やから……」 京太郎「ったく、どうなってもしらねーぞ?」 京太郎「マッサージとか初めてなんだからな」ギュッ 泉「ひぃん!?」 あ、すまん。 272 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 01 58 56.66 ID cIlx3zjQo [18/28] 【8月20日:昼】 寝違えて体が痛い。 そう言っていた泉をマッサージして、そのままベッドに放置した俺はレクリエーションルームに居た。 泉は動けない。 その旨を部長に伝えて、俺はお茶を用意する。 今ここにいるのはセーラさんと部長だけ。 となると、お茶はそんなに時間をかけて飲むものじゃない方がいいだろう。 セーラ「今日もええ色やな」 京太郎「まぁ、修行してますから」 俺はセーラさんの言葉にそう答える。 無意識。 無意識に俺はそういうスキルを学んでいることが多い。 お茶入れも、清掃も。 何かと万遍なくだ。 まぁ、それがここで役立っている。 そう思えば、悪いものじゃないだろう。 竜華「せやなー、昔から助かっとるしなぁ」 セーラ「確かに、京太郎の淹れるお茶は美味いからなぁ」 京太郎「褒めても何も出ませんよ」 にやりと笑うセーラさん。 にこりと笑う清水谷部長。 それに俺は小さく息を吐いて苦笑する。 全く、調子がいい人だ。 そう思いつつ、俺は冷蔵庫から紙箱を取り出す。 中身はシュークリーム。 それを皿に載せて、俺はお茶を淹れた。 全く、しょうがないなぁ。 290 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 02 18 04.94 ID cIlx3zjQo [22/28] 【8月20日:夜】 明日が三回戦。 Aブロック準決勝その日。 ふと思えば、まだ試合自体には1回しか出ていないんだよな、と。 俺は少し不思議に思っていた。 この数日。 それはとても長いと俺は感じた。 思い返せば全部が勝負。 勝ち負け、勝者と敗者を生み出し続けた毎日だった。 そう思う。 一回負ければ終わり。 明日、終わるかも知れない。 そのプレッシャーは、どんなものなんだろうか。 先輩たち。 セーラさん、清水谷部長、怜さん。 3年生の皆はこれが最後になるのだ。 怖い。 俺はそう思う。 負ければ、そこで終わってしまう。 そう思うと、怖い。 怖くて怖くて。 俺は、今ここに居るセーラさんと部長に聞いていた。 だけど、帰ってくるのは笑い声。 部長も、セーラさんも。 二人が顔を見合わせ、そして大笑いする。 にやりと、セーラさんが笑った。 不敵な笑みだと、俺は思った。 セーラ「負けたら終わり……なら、勝てばええんやろ?」 竜華「そういうことやで」 気持ちの問題。 最初から負けることを考える必要は無い。 負けてから、負けたことを考えればいい。 これは麻雀。 将棋やチェスのように、手詰まり、ということは無い。 全てが運に、己によって左右される競技だ。 諦める。 その必要は無いのだと、二人は笑っていた。 380 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 19 29 22.22 ID je3npvgDo [8/13] 【8月21日:朝】準決勝当日 ━━━━━ ━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━ 【Aブロック準決勝:先鋒戦】 ――――牌が重い。 意識が薄れていく。 こんなに、辛かったかな。 麻雀って、こんなに苦しかったのかな。 そう自分に聞いてみる。 答えてはくれない。 今は、自分の体力が敵になっているから。 自分の体すら、味方じゃなかった。 せめて足を踏ん張って、腕を張ろう。 そう心では思っても、膝が笑う。 声が聞こえた。 『もう、諦めよう』 『私は頑張った』 『無理して苦しむ必要なんか無い』 『ほら、倒れちゃえば楽になる』 ふらりと。 体が震えた。 その甘美な誘惑に誘われてしまった。 でも。 でも……。 あと、少しだけ。 もうすぐ、試合が終わるから。 照「リーチ」 リーチ、したな……? ウチのお仕事は、これでおしまい、や。 ……。 ……ちょっと。 疲れた、なぁ……。 401 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 19 37 21.69 ID je3npvgDo [12/13] 怜「おつかれ、さん………」 短く挨拶をして、立ち上がろうと力を入れる。 ただ、自分は想像を超えて消耗しているらしい。 ぐらりと。 椅子という支えを失った体が崩れる。 スローになる視界。 驚きに目を小さく見開いた宮永照に、新道寺と松実さんが咄嗟に手を伸ばすのが見えた。 間に合わない。 きっと、会場の床は冷たいやろうなぁ。 そんな考えが浮かぶ。 だけどそれは、叶わない。 手を握られた。 二人にだ。 視線を向けなくても、分かる。 あの手を知っている。 その温もりを知っている。 竜華。 京太郎。 二人が必死に、声をかけているのが見えた。 声が聞こえない。 意識が沈んでいく。 でも。 こうして眠ってしまうのは。 寂しくない。 京太郎が一緒だから。 ちっとも寂しくなんかない。 そう思える、意識の喪失。 ぴとりと。 震えるウチの手が、京太郎の頬を撫でていた。 406 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 19 49 38.94 ID je3npvgDo [13/13] 嫌な予感がした。 消耗するのは理解していた。 だから、俺たちは全員で駆けつけている。 怜さんの居る試合会場に。 中継の映像。 それでも見て取れるほど憔悴したその姿に。 俺は気づけば、部長と一緒に駆け出していた。 係員の制止の声。 それを振り払い、ドアを開く。 歓声が聞こえ、アナウンスは終了を知らせる。 入り口のドアを開いた。 視線は、椅子に座る怜さんに固定される。 だけど、分かる。 椅子に座っているだけで、肩で息をしていた。 立ち上がり、軸がぶれる。 拙いと。 俺はそう考える前に駆け出していた。 倒れる怜さんの背に手を入れ、崩れ落ちるのを防ぐ。 乱入してきたに近い俺に他高校の生徒がざわめき、驚きを露にするが、それでもって今の事態を把握した人間も多かった。 選手が、倒れた。 その事実と同時に、実況席は実況から観客などに対する説明を開始する。 同時に、スタッフも動く。 救急車の手配や、一時試合中断など。 全国大会がこの一瞬で全て、冷たいものへと変化していた。 京太郎「怜さん!返事できますか!怜さん!!」 竜華「怜!いやや、目ぇ開けて怜ぃ!!」 怜「あ、はは……心配しすぎや、二人、とも……」 泉「担架きました!!」 京太郎「分かった!!」 俺は園城寺先輩を抱き上げ、通路へと向かう。 見れば、救急隊がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。 担架に乗せ、即座に運搬開始。 そのまま会場裏口へと運ばれる怜さんを俺は最後まで見送っていた。 407 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 20 04 40.14 ID Ca8CHG5So [1/33] 京太郎「監督には連絡しておきました!……部長、怜さんをお願いします」 竜華「う、うん!そっち、任せるわ…!」 救急車に同乗し、去っていく部長。 近くの病院へと入るのだろう。 場に残った俺は船久保先輩と顔を合わせる。 船久保先輩は、いかにも苛立っている。 そういう顔で、舌打ちを一つ鳴らしていた。 浩子「……チャンピオン、あそこまで圧倒的なんは想定外やった」 ドラ集めに怜さんの未来視。 その火力の基点、流れを抑えられてなお圧倒。 それに想定外だと、船久保先輩は言う。 俺も、あそこまでとは思ってもいなかった。 あの人は、あそこまで強かったのか。 あそこまで、高みに居るのか。 恨む理由はない。 誰もが全力で戦った結果だ。 ただ一つ、言えることがあるとすれば。 まだ試合は始まったばかり。 そんなことは、後で考えれば、それでいいのだ。 浩子「……さて、と」 京太郎「戻りますか?」 浩子「誰もおらんのに、ここに居てもしゃあないやろ……せや、お昼の出前表貰ってから帰るわー」 ほなな、と。 手をひらひら振って去っていく船久保先輩。 それに俺は頭を一つ下げると、足を部屋の方角に向ける。 そういえば、泉はどうしたんだろうか。 怜さんに言われた後、セーラ先輩が付き添って先に試合会場の方に向かったはずだ。 そう思っていると、視線の先。 そこにぽつんと。 壁に背を預け、顔に手をやっている泉の姿が見えた。 408 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 20 20 57.70 ID Ca8CHG5So [2/33] 京太郎「泉…?」 泉「あ、京太郎……」 京太郎「……どうしたんだよ、そんな顔して」 軽く挨拶。 それをして相対した泉の目尻には涙があった。 見れば、震えている。 そう分かるくらいに、泉は怯えていた。 俺には分からない、泉の恐怖。 ―――彼女……二条泉にある思いは複雑だった。 己が負けるのは、良い。 いや、良いという訳じゃない。 元より自己の尊重など深く考えていない。 自分の負けで、どれだけさげずまれようと……それは自分だけの責任でいい。 だが、それでも。 この全国、団体、チーム。 それにおいて、そこにあるのは、自分だけの責任じゃない。 自分が負ければ、仲間が苦しむのだ。 その事実、その重圧が、泉を震わせていた――――。 京太郎「泉……?」 俺が声色を変え、泉に問いかける。 びくりと震え、泉がそのまま、笑みを浮かべた。 まるで強がるような、そんな笑み。 泉「きょ、京太郎……ウチ、負けんで」 京太郎「……あぁ」 泉「……せや、勝負するで。ウチは勝つ、勝ったら京太郎に命令させて貰おかな」 京太郎「おう、上等だ。負けたら罰ゲームだぜ」 泉が小さく、笑う。 俺も笑う。 片手を泉が上げ、俺も上げる。 力強い、ハイタッチ。 お互いが、交差した。 京太郎「勝ってこい、泉」 泉「当然や…!」
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京太郎→理沙 京太郎「野依さん?」 京太郎「あの人、可哀想になるぐらい口下手だよな」 京太郎「話してたら怒ってるように見えるってのもな」 京太郎「その顔がかわいいってのは置いておくとして」 京太郎「でも、きちんとこっちに気を使ってくれるし良い人だよ」 京太郎「正直、からかったら面白そうだよな」
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京太郎「あ゛ー……」 京太郎「(…昨日の俺は間違いなく頑張った)」 京太郎「(あの誘惑を良く断ち切れたもんだと褒めてやりたいところだ)」 京太郎「(…でも、一晩立っていくらか冷静になるとさ)」 京太郎「(やっぱり惜しかったってそう思うんだよなー…)」 京太郎「(あそこで流れに身を任せておけば、脱童貞出来てもおかしくなかったのに!のに!!)」 京太郎「(しかも、相手はあの和…!!)」 京太郎「(何度も脱童貞した相手とのセックスを逃したかもしれないとなれば…!!)」 京太郎「(正直…失敗したかもしれないってそんな言葉が浮かんできたりもする)」 京太郎「(あー…今からでもあの時に時間戻ったりしないかなー…)」 京太郎「(するはずないよなー…)」 京太郎「(…つーか、戻っても多分、俺は同じ選択肢を取りそうだし…)」スタスタ フニョン 京太郎「わぷっ」 「きゃんっ!?」 京太郎「(…あれ?なんだこの柔らかさは)」 京太郎「(顔全体に広がるこの甘い感触は…)」 京太郎「(ま、まさか…!!)」 京太郎「(O PPA I !!!!)」 はやり「あ、あの…」 京太郎「(うぉお!!おっぱいだ!!)」 京太郎「(しかも、この柔らかさ…そして質量…!!)」 京太郎「(これは和クラス…いや、下手をすればそれ以上かもしれない…!)」 京太郎「(まさか階段を登っているだけでこれほどのおっぱいに遭遇出来るとは…!)」 京太郎「(…やはり昨日、頑張った俺の事を神様は見ててくれたんだな)」 京太郎「(ありがとう、おっぱいの神様…)」 京太郎「(俺は今、最高に幸せです…)」ウットリ はやり「…あのー…大丈夫?」 京太郎「…ハッ!」 京太郎「(し、しまった、あまりの心地良さにトリップしてしまったぜ…)」 京太郎「(この俺とした事が…これほどのおっぱいさんに気遣われてしまうとは…)」 京太郎「(一人のおっぱい紳士としてはあまりにも失格…!)」 京太郎「(だから、ここは…早くこのおっぱいから離れて…離れて…)」 京太郎「…らいじょうぶです」モニュモニュ はやり「…そ、そう?」 はやり「それなら良いんだけど…」 はやり「(…なんでこの子私から離れようとしないんだろう?)」 はやり「(いや…まぁ、別に嫌って訳じゃないけれどね)」 はやり「(アイドルになってファンも増えたけど…この胸の所為か、全然、モテないままだったし…)」 はやり「(男の人とこんなに触れ合った機会なんてもう一年…いや、下手をすれば数年単位でないし…)」 京太郎「(ってちげええええええ!!)」 京太郎「(何をやってるんだ、俺は!!)」 京太郎「(幾らこのおっぱいさんがおっぱいに負けない心の広さだと言っても!!)」 京太郎「(貧乳には絶対に真似出来ない淑女っぷりだったとしても!!!)」 京太郎「(それに甘えておっぱいに溺れるなど言語道断!)」 京太郎「(ここはこれ以上、迷惑を掛けない為に離れなければ…!)」スッ はやり「(…あ、離れちゃうんだ…)」 はやり「(ちょっと勿体無かったかな……って言うのは、あんまりにもがっつき過ぎかなぁ…)」 はやり「(でも、この子、結構、身体大きいし…いい匂いもしてるんだよね)」 はやり「(何処かの香水って感じじゃないし…多分、体臭だと思うんだけど…)」 はやり「(正直、香水だって思えるレベルでいい匂いがする子に抱きつかれて悪い気はしないよね)」 はやり「(うん、別にこの年になっても結婚相手どころか恋人がいなくて焦ってる訳じゃないから)」 はやり「(これくらい女の子としては普通だし)」 京太郎「って…は、はやりん!?」 はやり「あ、私の事、知ってるんだ」 京太郎「俺らくらいの雀士で、はやりんの事知らない奴なんてモグリですよ!!」 京太郎「つーか、俺が麻雀を始めたキッカケははやりんですし!!」 はやり「そうなの?」 京太郎「はい!俺が何か新しい事始めようと思ってた時に、牌のお姉さんの麻雀教室を見て!」 京太郎「(そのおっぱいに惹かれて)麻雀をやり始めようと思ったんです!!」 はやり「そ、そうなんだ…なんだかちょっと恥ずかしいな」テレテレ はやり「でも、嬉しい、ありがとね」ニコ 京太郎「いえいえ、こっちの方こそありがとうございます」 京太郎「はやりんのお陰で、俺は沢山、素敵な事に出会えました!」 京太郎「友達も沢山出来て…麻雀も楽しくて…」 京太郎「本当にはやりんには感謝しています!!」グッ 京太郎「(…って待てよ?)」 京太郎「(と言う事は俺がさっき包まれてたのははやりんのおっぱい…!?)」 京太郎「(あのあこがれのはやりんの胸の中でハスハスしてたって事なのか…!?)」タラァ はやり「…え?」 京太郎「あ、す、すみません…鼻血が…」 はやり「だ、大丈夫?」 京太郎「大丈夫っす。こ、これくらいすぐに治ります」ハナツマミ はやり「ダメだよ、鼻血って甘く見ると大変な事になるから」 はやり「えーっと…そうだ。こっちに来て」ギュッ 京太郎「ふぁ、ふぁ…っ」 京太郎「(は、はやりんの手が!手が!!)」 京太郎「(俺の事を掴んで、先に進んで…!!)」 京太郎「(憧れのはやりんのおっぱいにダイブしただけじゃなくてこんな役得があるなんて…)」 京太郎「(お、俺は今日、死んでしまうかもしれない…)」 はやり「(あ…この子の手、おっきくて硬い…)」 はやり「(ってそりゃそうだよね)」 はやり「(この会場にいるって事は、この子も高校生って事なんだし)」 はやり「(私から見たら一回り近く下だけど…でも、もう立派な男なんだ)」 はやり「(…ってそんな子の手を繋いじゃうとか…よくよく考えてみると危ない?)」 はやり「(もしかしなくても…即座に通報案件かも…?)」 はやり「(で、でも…鼻血流してる子の事を放っておく訳にはいかないし…)」 はやり「(仕方ない…うん、これは仕方ない事だよね)」 はやり「(…でも、スキャンダルになったりしない事を一応、祈っておこう)」 はやり「よし。到着」 京太郎「あ、あの…」 はやり「はい。君はそこに座って」 はやり「後、ティッシュここにあるから鼻に詰めておいてね」 はやり「顔を上に向けるのは血が逆流して大変な事になるからダメだよ」 はやり「少しうつむき加減になって待っておいてね」 京太郎「ふぁ、ふぁい…」 はやり「うんうん。良い子」 はやり「じゃあ、そのまま待機しててね」 はやり「私、そこの自販機で冷たいものを買ってくるから」 京太郎「(…なんつーか、すげぇよな)」 京太郎「(勿論、俺もはやりんがずっとテレビの中のキャラだって思ってた訳じゃないけどさ)」 京太郎「(でも、こんな風にキビキビ鼻血の処置をする姿と…)」 京太郎「(テレビの中のキャピキャピしたはやりんの姿は重ならない)」 京太郎「(もう十年近く牌のお姉さんやってるって話だけど…)」 京太郎「(それでもやっぱりはやりんも大人なんだなぁ)」 京太郎「(ただ、それで幻滅したりはしない)」 京太郎「(そもそもアレがテレビ向けのキャラだって言うのは最初からわかってるし)」 京太郎「(寧ろ、こうやってしっかりしてるはやりんも魅力的で良いって言うか)」 京太郎「(大人のお姉さんって感じで結構、ドキドキする)」 ガチャガチャゴトン はやり「おまたせ」 はやり「で、このお茶をちょっと鼻のところに当てておいてくれる?」 はやり「冷やすと血管が収縮して早めに血が止まりやすくなるから」 京太郎「ふぁい」ソッ はやり「後は多分、数分もすれば血が止まるはずだけど…」 はやり「あんまり長い間、止まらなかったら病院行く事も考えた方が良いかも」 はやり「鼻血だけならばまだしも何かの初期症状である可能性も考えられるし」 京太郎「ふぁりがとうごじゃいます」 はやり「ううん。気にしないで」 はやり「って言うか、多分、私の所為だと思うから」 はやり「その…不注意でぶつかっちゃってごめんね」 京太郎「ひあ、アレは踊り場れの事故みたいにゃもんれすし」 京太郎「しょの上、考え事してらんれ俺が悪いっしゅ」 はやり「考え事?」 京太郎「あ、いや…しょの…」 京太郎「(…流石に据え膳食い損ねて後悔してたなんて言えないよな)」 京太郎「(普通の女の子ならまだしも、相手は憧れのはやりんなんだし)」 京太郎「(こうやって知り合いになれたのに幻滅されたくはない)」 京太郎「しょ、しょれよりあの…」 はやり「ん?」 京太郎「牌のお姉しゃん辞めりゅってほんろなんでしゅか?」 はやり「…………それ何処で聞いたの?」 京太郎「ネットでうわしゃになってまひた」 京太郎「でも…俺は信じてないっしゅ」 京太郎「辞めるなんて…勿論、うしょれすよね?」 はやり「………ごめんね、本当なの」 京太郎「しょんな…」 はやり「ほら、私…胸、大きいじゃない?」 はやり「やっぱり『お姉さん』は、あんまりおっぱい大きくない方が良いらしくて」 はやり「それでも、牌のお姉さんでいれるように色々と頑張ってきたけれど…」 はやり「やっぱり年齢的にもそろそろ厳しいから降板してくれないかって言われちゃってる…」 京太郎「れ、でも…!」 京太郎「はやりんはじゅっと立派に牌のお姉しゃんやってきたじゃないれすか」 京太郎「人気らってあるのに、それを降ろすにゃんて…」 はやり「…芸能界ってそういう世界なんだよ」 はやり「ずっと同じところにいられるのは本当に大御所さんだけ」 はやり「私みたいななんちゃってアイドルが、ここまで牌のお姉さんでいられ続けた事の方が奇跡なんだよ」 はやり「寧ろ、私をここまで起用し続けてくれた番組プロデューサーさんには感謝してる」 はやり「だから、最後の日まで牌のお姉さんである私を応援…」 京太郎「嫌れす」 はやり「え?」 京太郎「俺ふぁ…あぁ、くそ!」ズボッ はやり「あ、て、ティッシュ抜いちゃダメだよ!」 京太郎「大丈夫です。もう血も止まりました!」 京太郎「それに真面目な話するのにティッシュ詰めてられないっすよ!」 はやり「ま、真面目な話って…」 京太郎「だって、そうじゃないっすか!」 京太郎「俺は牌のお姉さんが、はやりんだったからこそ麻雀を始めたんです!」 京太郎「はやりんみたいがおっぱいが大きいからこそ!」 京太郎「そんな人達と仲良くなれるかもって麻雀を始めたんですよ!!」 はやり「え、えぇぇぇぇ!?」マッカ 京太郎「えぇ。勿論、不純です!最低だって分かってます!」 京太郎「でも、俺は今、すっげー麻雀が好きで…楽しめていて…!」 京太郎「牌のお姉さんであったはやりんに本当に感謝しているんですよ」 京太郎「それが辞めさせられるって言うのに…黙って見てられません」 京太郎「それに…何より」グッ 京太郎「はやりんだって…本当は辞めるの嫌なんじゃないですか?」 はやり「…え?」 京太郎「俺、雑誌で読みましたけど…はやりんは牌のお姉さんになりたくて芸能界に入ったんですよね?」 京太郎「勿論、麻雀プロとの二足草鞋も大変だろうに、それらを立派にこなしていて…」 京太郎「それなのに降ろされるなんて納得出来るはずと思います」 京太郎「だからこそ、さっきも…一瞬、寂しそうな顔をしたんじゃないですか?」 京太郎「本当は辞めたくないのを堪えて…ファンの前で空元気見せてただけじゃないんですか?」 はやり「…それは…」 京太郎「…だから、俺は嫌です」 京太郎「俺の為だけじゃなくって…はやりんの為にも…」 京太郎「最後の日まで応援なんて…出来ません」 京太郎「何とか…はやりんが牌のお姉さんでい続けられるよう…何かしたいです」 京太郎「だから…何かありませんか?」 京太郎「はやりんが牌のお姉さんでい続けられる方法」 京太郎「俺…何でもします」 京太郎「はやりんの為ならなんだって出来ます!」 はやり「な、何でも…!?」 はやり「(な、何でも…なんて…そんな事…い、いきなりいわれても…)」 はやり「(も、勿論、嫌じゃないどころか…とっても、嬉しいよ)」 はやり「(…勢い任せだとしても…普通はそんな事言わないだろうし)」 はやり「(…この子がどれだけ本気なのかが伝わってきてる)」 はやり「(おっぱい大きいのに…アイドルなんか似合わないって)」 はやり「(プロもアイドルもどっちも中途半端で終わるだけだって)」 はやり「(そんなふうに陰口叩かれて…それを否定出来なかった私なのに…)」 はやり「(こんなにも…本気に…真剣になってくれてる…)」 はやり「(…ど、どうして…)」ドキドキ はやり「(今までファンの人達ともお話した事なんていくらでもあったのに…)」 はやり「(でも…私、今、すごく…ドキドキしちゃってる)」 はやり「(もしかしたら…私の一回りは下かもしれない男の子に…)」 はやり「(フライデーされたら…即座に手が後ろに回っちゃいそうな相手なのに…)」 はやり「(…そんなの関係ないって言うみたいに…身体が、心が…変わっていって…)」 はやり「(私…アイドルじゃ…なくなっちゃう)」 はやり「(この子が求めてくれているのは…アイドルの『はやりん』なのに…)」 はやり「(こんなに真剣に気持ちぶつけられたら私…)」 はやり「(一人の女に…『瑞原はやり』になっちゃうよ…)」キュゥン 京太郎「だから…!」タラァ はやり「え?」 京太郎「…あ」 京太郎「(うあああああ、い、今、シリアスだったのに!)」 京太郎「(メッチャクチャ真剣だったのにいいい!!)」 京太郎「(なのに、俺、ここで力みすぎて鼻血出してしまうなんて…お、俺って奴は…!)」 京太郎「(俺って奴はあああああああああ!!!)」 はやり「…くす」 京太郎「え?」 はやり「…ほら、こっち向いて」 はやり「もっかい、ハンカチ詰め直さないとね」キュッキュ 京太郎「…ごめんなしゃい」 はやり「ううん。謝る事じゃないよ」 はやり「寧ろ、それだけ私の為に必死になってくれてるんだって分かって嬉しかったし」 はやり「アイドルとして…牌のお姉さんとして…」 はやり「こんなに嬉しい事なんてきっと今までになかったと思う」 京太郎「はやりん…」 はやり「…だから、私、もうちょっとだけ頑張ってみるね」 京太郎「え?」 はやり「考えても見れば…私はこれまでおっぱい大きいお姉さんは不適切って道理を蹴っ飛ばして来たんだし」 はやり「辞めさせますって言われて、はいそうですかなんて私らしくなかったよ」 はやり「…だから、最後までプロデューサーさんの迷惑にならない程度に足掻いてみる」 はやり「それでダメなら…今度は私、主役の麻雀番組でも作らせるよ」 京太郎「はは。それも良いれすね」 京太郎「牌のお姉さんにょ麻雀教室以上に視聴率取っちゃへば、戻ってきへくれって言われりゅかもしへましぇん」 はやり「うん。それくらいのつもりで…私、頑張ってみるから」 京太郎「じゃあ…俺に出来りゅ事ありましゅか?」 はやり「ううん。君はもう十分過ぎるほどやってくれてるよ」 はやり「…正直ね、私もちょっと行き詰まりを感じてたところだからさ」 はやり「牌のお姉さんの降板を勧められて、思い悩んでて…」 はやり「アイドルを辞めて麻雀一本に絞るか…」 はやり「それとも全てすっぱり止めて…実家の手伝いをするか…」 はやり「そう思ってた私に…第三の選択肢をくれたんだから」 はやり「…まぁ、それでも、何かしたいってそう言ってくれるのなら…」 はやり「えっとね…その…無理に…とは言わないけど…」 はやり「……れ、連絡先、教えてくれない…?」 京太郎「ふぇ?」 はやり「あ、あの…わ、私、これからすっごく大変だと思うの」 はやり「番組の決定を覆す事もそうだし…新しい番組を立てる事もそう」 はやり「でも……き、君がいてくれたら…」 はやり「こんなに熱心なファンの子が何時も背中を押してくれたら…きっと頑張れると思うから…」 はやり「だから…あの…これからもファンとして…あ、或いはその…こ、個人として…ね」 はやり「私の事を応援してくれたら嬉しいなって…」 京太郎「もちろんれす!!」 京太郎「はやりんの為にゃら俺はいちゅだって応援しましゅし!」 京太郎「夜中らってLINE返しましゅよ!!」 はやり「も、もう…そんなふうに力んだらまた鼻血でちゃうよ?」 はやり「…でも、ありがとうね」クス 京太郎「(……)」ポチポチ 京太郎「(……ある)」 京太郎「(何度確認しても…ある)」 京太郎「(はやりんの連絡先が俺の携帯の中にある!!!)」 京太郎「(うぉおお!夢じゃない…!)」 京太郎「(さっきの出会いは…決して夢じゃなかったんだ!!)」 京太郎「(正直、あんまりにも都合良すぎて夢じゃないかと思うんだけどさ!!)」 京太郎「(はやりんが仕事があるからっていなくなってから何度も確認したけど…)」 京太郎「(…でも、その度に分かるのはさっきのが現実だったって事)」 京太郎「(憧れのはやりんとお知り合いになれただけじゃなく…)」 京太郎「(そのおっぱいにもダイブしちゃった事が現実だったって事で…)」グヘヘヘヘ ネリー「…キョータロー」ツンツン 京太郎「うぉ…ってなんだ、ネリーか」 ネリー「なんだとは失礼だよね」 ネリー「こっちは男がしちゃいけない顔してるキョータローを見つけて注意してあげようと思ったのに」 京太郎「…そんなにやばかったのか?」 ネリー「んー…私は正直、男に興味ないけどさ」 ネリー「でも、幾らキョータローの事が好きな人でも一発で恋から覚めちゃいそうなレベルでやばかったよ」 京太郎「マジかー…」 ネリー「まぁ、私も自分の預金口座見てる時に似たような顔をしてるから分かるけどさ」 ネリー「あんまり人前でそういう顔してると引かれちゃうよ?」 京太郎「おう。ありがとう」 京太郎「(…預金口座云々に関しては突っ込まないでおこう)」 ネリー「お礼の言葉だけー?」 京太郎「…なんだよ、何か欲しいものでもあるのか?」 ネリー「私、喉が乾いちゃったなー?」チラッ 京太郎「…ったく。仕方ないな」 ネリー「わーい」 京太郎「…ホント、こういう時だけ素直な顔するんだから」 ネリー「折角、ちんまい身体に生まれたんだから、その長所は活かさないとダメでしょ」 京太郎「全部、計算の内かよ」 ネリー「とーぜん」 ネリー「こっちはもうティーンズも折り返しに来てるんだよ」 ネリー「そんな子どもっぽく喜怒哀楽表現するはずないじゃん」 京太郎「(…いや、ネリーよりも年上で子どもっぽい人はいるけどな)」 京太郎「(照さんとか照さんとか照さんとか)」 京太郎「で、それはともかく…何が良いんだ?」 ネリー「一番、高い奴!」 京太郎「ほんっと遠慮しねぇよな、お前」 ネリー「しってる? キョータロー」 ネリー「遠慮ってし過ぎると相手に失礼になるんだってさ」 京太郎「お前は遠慮しなさすぎだって」 京太郎「…つか、一番、高いって言っても複数種類あるぞ」 京太郎「どれが良いんだ?」 ネリー「んー…それじゃあ、あの炭酸の奴」 京太郎「オッケ」ポチ ガチャガチャゴトン ネリー「よいしょっと」ゴソゴソ カチッ プシュ ネリー「ごく…ごく…」 ネリー「んー…♪人のおごりで飲むジュースって最高だよね!」ニッコリ 京太郎「いや、んな輝かんばかりの笑みで最低な事言われても」 ネリー「そんな事言うけどさ、キョータローだって良く奢られてるでしょ?」 京太郎「いや、まったく」 ネリー「…はい?」 京太郎「だから、まったく奢られた記憶なんかないぞ」 京太郎「つーか、寧ろ基本的にこっちの方が奢る側だわ」 ネリー「…あれー?」 ネリー「(…キョータローって所謂、イケメンって奴だよね?)」 ネリー「(私はまったく興味ないけど…並のアイドルとか凌駕してるし)」 ネリー「(それなのに奢られてないなんて…彼の周りにいる女が美的感覚狂ってるか…)」 ネリー「(或いは人気がありすぎて周りが牽制しあってるかのどっちかしかないと思うんだけど…)」 京太郎「…どうした?」 ネリー「んーん。何でもない」 ネリー「(…ま、あんまりその辺深く突っ込むとやけどしちゃいそうだしやめとこう)」 ネリー「(どっちであっても大変なのはキョータローだしね)」 ネリー「それよりさ、キョータローって今日も偵察?」 京太郎「あぁ、その予定だけど」 ネリー「じゃあ、今日も私と一緒に回らない?」 ネリー「ジュース一本分くらいは働いてあげるよ」 京太郎「俺としては有り難いけど…良いのか?」 ネリー「うん。一人で麻雀見てても退屈なだけだしね」 ネリー「興味引かれるような打ち手なんて100人に一人いるかいないかくらいだし」 ネリー「偵察なんてしなくても臨海の優勝は決まってるけど…」 ネリー「監督や周りがうるさいから仕方なくやってるだけだしさ」 京太郎「…大した自信じゃないか」 ネリー「当然でしょ」 ネリー「こっちはその為に海超えてわざわざこんな島国にまでやってきてるんだから」 ネリー「生ぬるい環境で適当にやってるような連中に負ける気はしないよ」 京太郎「(…すげぇよな)」 京太郎「(コレつよがりとかじゃなくて完全に本気で言ってるんだから)」 京太郎「(しかも、そう言っても馬鹿にされないだけの実力をネリーは持ってる)」 京太郎「(この先、世界で戦っていくだけの覚悟と実力を俺と同い年で備えてるんだ)」 京太郎「(ハンドボールでも、そんな覚悟なんて芽生えなかった俺にとってはちょっとうらやましくもある)」 京太郎「(でも…)」 京太郎「…言っとくけど、ウチは強いぜ」 ネリー「あー…清澄…だったっけ?」 ネリー「確かに悪くはないと思うけど…臨海に勝つのは無理だよ」 ネリー「私ほどじゃなくても、他の皆も世界で戦っていける実力者だから」 ネリー「世界を知らないただのダークホース程度に負けたりしないよ」 京太郎「…じゃあ、賭けるか?」 ネリー「いーよ。とりあえず100万で良い?」 京太郎「いや、100万はでかすぎるだろ…」 京太郎「外食一回くらいで勘弁してくれ」 ネリー「えー…中金持ちの癖にケチなんだから」 京太郎「ジュース奢られた奴が言うセリフじゃねぇよ、それ」 京太郎「つーか、中金持ち呼ばわりするけどさ」 京太郎「俺はそんな小遣い貰ってねぇから」 ネリー「えー…嘘でしょ?」 ネリー「キョータローレベルなら次に百万単位で貰えるものじゃないの?」 京太郎「そんなに貰ったら性格歪むわ」 京太郎「諭吉さん一人前も貰ってねぇっての」 ネリー「えー…じゃあ、ファミレスくらいしかいけないじゃん」 京太郎「あ、一応、その辺は考慮してくれるんだな」 ネリー「そりゃね。それで借金とかされても後味悪いし」 ネリー「お金は好きだけど、別にそれだけで生きていけるってほど達観してる訳じゃないから」 ネリー「人間関係の大事さっていうのは分かってるつもりだよ」 ネリー「まぁ、それ以上にお金が大事だけれど」 京太郎「へー…」 ネリー「…何?」 京太郎「いや、ちょっと意外だった」 京太郎「ぶっちゃけ、ネリーってお金以外には興味ないのかと」 ネリー「流石にそれは失礼だと思うなー」 ネリー「一応、これでも麻雀とかは好きでやってるし」 ネリー「それに私にだって家族や友人くらいいるんだからね」 京太郎「流石に金から生まれたとは言わないかー」 ネリー「……」 京太郎「…いや、冗談だからな?」 京太郎「それはそれで惹かれるとか言わないでくれよ」 ネリー「…うん。大丈夫分かってる分かってる」カクカク 京太郎「(…本当に分かってるんだろうか)」 京太郎「…まぁ、何はともあれ、誤解してすまなかった」 ネリー「良いよ。そう思われるのも仕方ないって思うし」 ネリー「それに例えそうでもキョータローは私の事嫌ってないでしょ?」 京太郎「…まぁ、な」 ネリー「だったら良いよ。許してあげる」ニコ 京太郎「…ネリーってさ」 ネリー「ん?」 京太郎「結構、寂しがり屋なのか?」 ネリー「……は?」 京太郎「いや、だって、今の流れで許すとかないだろ」 京太郎「何時もだったら…って言うほど俺はネリーの事知らないけど…」 京太郎「でも、賠償の一つでも要求してもおかしくはない話の流れなのに…」 ネリー「……つまりキョータローは私に償いをしたいって事?」 京太郎「い、いや、そういう意味じゃなくてさ」 京太郎「ただ、ここであっさり許すって事は…」 京太郎「案外、ネリーって友達とかそういうのに飢えてるのかなって思ったんだよ」 ネリー「……飢えてる…かぁ」 ネリー「(…まぁ、友達って呼べる相手が少ないのは事実だよね)」 ネリー「(故郷ならともかく、日本に来てからはほとんどそんな相手出来なかったし)」 ネリー「(臨海のメンバーは仲間や友人って言うよりも…ライバルって感じが強いもん)」 ネリー「(決して険悪な訳じゃないけど、最後の一線でどうしても心を許せない自分っていうのはいる)」 ネリー「(そういう意味では飢えてるとか…寂しいって言うのは否定しきれないけど…)」 ネリー「…………んー」 京太郎「あー…ごめん。変な事言ったか」 ネリー「うん。本当にね」 京太郎「それは『ううん、大丈夫』とか言うところじゃねぇのかよ」 ネリー「そんな気遣いして一銭の得にもならない相手だしね」 ネリー「それに…キョータローもそういうのを望んでるんでしょ?」 京太郎「あー……そうかもな」 ネリー「じゃあさ、それで良いじゃん」 ネリー「こういって憎まれ口叩く系の…そういうのでさ」 京太郎「…そういうのって?」 ネリー「…馬鹿、分かってるでしょ?」 京太郎「分かってるけど、ネリーの口から聞きたいんだよ」 ネリー「…だ、だから…その…と、友達…とか」ポソ 京太郎「そっかー。ネリーは俺の友達になりたいのかー!」 ネリー「あーもう…!そんなに大声で言わないでよぉっ!!」 ネリー「まったく…恥掻いちゃったじゃん」 ネリー「これは賠償が必要だよね」 京太郎「はいはい。んじゃ、会場まで背負えば良いか?」 ネリー「…幾ら私がちっちゃいって言っても男に背負われるとか恥ずかしいから却下」 ネリー「だから、さっきの分と合わせてお昼ごはん奢って」 京太郎「マ○ドで良いか?」 ネリー「そこはせめてモ○って言って欲しかったなー…」 京太郎「学生にゃ○スは辛ぇよ」 ネリー「ま、その辺は後で協議を重ねるとして」チラッ 京太郎「…ん?」 ネリー「キョータローの方は…どうなの?」 京太郎「あー…そうだなー」ンー ネリー「…ちなみにここでダメとか言ったら、お昼ごはんが高級レストランになるから」 京太郎「はい!喜んでネリーさんのお友達になりたいと思います!」 ネリー「宜しい」クス 京太郎「ま、アレだ」 京太郎「なんかちょっと情けない流れになっちゃったけどさ」 京太郎「今後共宜しくって事で」 ネリー「ん。これからも私に奢る為にお金を集めてきてね」 京太郎「お前ってホントブレないなぁ…」 ネリー「キョータローがそういう私が好きだって言ってくれたからね」 京太郎「好きだとは言ってねぇよ」 京太郎「まぁ…そういうほうがネリーらしいと思うけどさ」 ネリー「ふふ。まぁ…そういう意味じゃキョータローは私と相性が良いのかもね」 京太郎「相性?」 ネリー「奢りたいキョータローと奢られたい私で受容と供給がぴったり一致してるじゃん」 京太郎「俺は別に奢りたい訳じゃないんだけどなぁ…」 ネリー「でも、結構、簡単に奢ってくれるし、嫌じゃないんでしょ?」 京太郎「まぁ…そりゃ女の子相手に奢るのは悪い気分じゃねぇよ」 京太郎「ましてや、ネリーも可愛いからさ」 ネリー「…可愛い?」 京太郎「おう。まぁ、俺は貧乳には興味ないけどさ」 京太郎「客観的に見れば十分、可愛いだろ」 ネリー「…うーん…」 京太郎「なんだ、その微妙そうな反応」 ネリー「…いや、可愛いとか言われた事ないし」 京太郎「冗談だろ?」 ネリー「いや、ホントホント」 ネリー「小憎たらしいとか悪魔とか鬼とかは言われた事あるけれど…」 ネリー「可愛いなんてほとんど言われた記憶ないなぁ…」 京太郎「…普段、どういう事をしてるのか若干、気になるけど…」 京太郎「でも、女の子なら親に言われた事くらいあるだろ」 ネリー「あ、私、親いないし」 京太郎「え?」 ネリー「私、孤児院で生まれ育ったから」 ネリー「親の顔も知らないし、そもそも生きているのかさえ分かんない」 ネリー「ある日、孤児院の前に捨てられてたんだって」 京太郎「…いや、お前、あっけらかんと…」 ネリー「だって、別に何とも思ってないもん」 ネリー「親の顔なんて知らなくても生きていけるっていうのは私自身が証明してるし」 ネリー「寧ろ、こんなにお金を稼げる私を捨てた親が哀れで仕方がないくらいだよ」 ネリー「ちゃんと手元で育てれば、掛かった元手以上にかえしてあげられたのにね」 京太郎「……ネリー」 ネリー「まぁ、その分、私は孤児院に返してるんだけどね」 ネリー「今時、孤児院の経営なんて何処も一杯一杯だし」 ネリー「私が仕送りしないとチビどもにちゃんとした服も着せてやれないくらいだから」 ネリー「こっちでもバリバリ活躍して世界戦でも優勝しまくって」 ネリー「お金稼いで仕送りしてやらなきゃいけないんだ」 京太郎「…………そっか」 京太郎「お前って良い奴なんだな」 ネリー「そうだよ」 ネリー「あ、でも、やめてよね、同情とかそういうの」 ネリー「これでも私、それなりに幸せに生きてきたと想ってるし」 ネリー「同情とか腹が立つだけだから」 京太郎「…おう。分かってる」 京太郎「ただ…まぁ、アレだ」 ネリー「ん?」 京太郎「同情はしてないし、お前の今までの人生を否定するつもりはないけれど」 京太郎「…ただ、お前はすっげぇ頑張ってるんだなってそう思うから」 京太郎「だから、俺にはちょっとくらい甘えてくれても良いんだぞ」ナデナデ ネリー「…………ぁ」 ネリー「(……何、それ)」 ネリー「(甘えてくれても良いとか…そんな事言って…)」 ネリー「(人の頭撫でるとか…ちょっと間違ってない…?)」 ネリー「(…………でも)」 ネリー「(どうして…かな)」 ネリー「(……明らかに間違っていると思うのに…嫌じゃない)」 ネリー「(キョータローの手…大きくて優しいから…)」 ネリー「(私の頭を覆い尽くす…まるでお父さんみたいな手だから…)」 ネリー「(…おかしいはずなのに、私、安心しちゃう…)」 ネリー「(優しくて暖かい手に…顔が勝手に緩んで…)」 ネリー「(悔しいのに…こんなの…負けたくないのに…)」 ネリー「(でも…私、嬉しいって…そう思っちゃう…)」 ネリー「(キョータローに撫でられるのが…幸せなんだって…)」 ネリー「(この人は私の事捨てないんだって…そう…思っちゃう…………)」 京太郎「確かネリーの誕生日って俺の後だよな」 京太郎「だから、俺の事をお兄ちゃんってそう呼んでくれも良いんだぞ」 ネリー「……お兄…ちゃん?」 京太郎「おう。お兄ちゃんだ」 京太郎「多分、ネリーよりお金持ってないけど、それでも俺はお兄ちゃんだからな」 京太郎「存分に甘えて良いんだぞ」 ネリー「…何、それ」 ネリー「いきなりお兄ちゃんって呼べとか…変なの」 ネリー「幾らキョータローが男でも…私みたいな見た目の女の子にそんな事言ったら通報されちゃうよ」 京太郎「ですよねー」 ネリー「…………でも」ダキ 京太郎「うぉ…」 ネリー「…………割りとその響きは嫌いじゃないかも」ギュゥ 京太郎「ね、ネリー?」 ネリー「…………お兄ちゃん、もっと撫でて」 京太郎「お、おう。分かった」 京太郎「(…おかしい)」 京太郎「(どうして俺は同い年の女の子にお兄ちゃんと呼ばれているんだろうか)」 京太郎「(いや、まぁ…俺がそう呼んでくれと言った事ではあるんだけどさ)」 京太郎「(でも、それは冗談のつもりって言うか、ツッコミ待ちだったんだけど…)」 京太郎「(なのに、ネリーは完全に本気にして…俺の事を完全にお兄ちゃんと呼ぶようになった)」 京太郎「(…正直、戸惑いはあるけれど…でも、それはネリーが今まで中々、人に甘えられてこなかった証なんだ)」 京太郎「(原因となったのは俺な訳だし…ちゃんと受け止めてあげないと)」 京太郎「(それに…まぁ、俺自身、あんまり嫌じゃないからな)」 京太郎「(何だかんだ言って、俺は人に甘えられるのとか結構、好きなタイプだし)」 京太郎「(しっかりし過ぎてるほどしっかりしてるネリーが俺にあぁも甘えてくれているんだから…)」 京太郎「(嫌がるどころか光栄だって言っても良いくらいだよな)」 京太郎「(…ただ、まぁ、そうこうしている間に試合が終わって)」 京太郎「(またネリーとも別れる事になったんだけど…)」 淡「…」ジィィィィィ 京太郎「(…日頃からモモにストーカーされてる俺には分かる)」 京太郎「(さっきから女の子に監視されているんだって事が)」 京太郎「(…でも、一体、どうしてなのかが全然、分からん)」 京太郎「(正直、俺はストーキングされるほど器量良しじゃないし…)」 京太郎「(何より、俺の後をついてきているのは…)」クルッ 淡「あわわっ」カクレ 京太郎「(…どう見てもアレ、白糸台の大星さんだよなぁ)」 京太郎「(確か照さんの後継者とか言われてる…)」 京太郎「(…あ、やべ。なんかそう言うとすっげぇ嫌な予感がしてきた…)」 京太郎「(勿論、あの二人が別人なんだとは分かってるんだけど…)」 京太郎「(…それだけ俺の中での照さんショックはでかかったって事なんだろうな)」トオイメ 淡「…」チラッ 京太郎「(…しかし、これは一体、どうすりゃ良いんだろうな)」 京太郎「(正直、モモとはストーキングに対する技術から情熱までかけ離れ過ぎてて…)」 京太郎「(監視してるのが丸わかりと言うか…俺の後をついてまわる姿を周りの人に見られまくってるし)」 京太郎「(これが普通の世界ならともかく…今のこの世界はほぼ男女が逆転してるようなものなわけで)」 京太郎「(俺の常識で考えれば…男子の有名人が女の子を隠れながら追い回してるって事だよな)」 京太郎「(…………うん、完全に犯罪だな)」 京太郎「(正直、俺が通行人だったらすぐさま警備員のところに行くレベルだわ)」 京太郎「(…まぁ、そんな不審な行動をいつまでも取らせる訳にはいかないし…)」 京太郎「(そろそろ、こっちから話しかけるかな)」スタスタ 淡「っ!?」ビクッ カクレ 京太郎「いや、今更、隠れても遅いですから」 淡「…遅くないもん」 京太郎「いや、返事してる時点でもう言い訳しようもないだろ」 淡「あわ…っ」ビックリ 淡「ひ、ひきょーだよ!」 淡「これってゆーどーじんもん?って奴でしょ!」 京太郎「誘導する暇すらないレベルで尻尾出しただろ」 淡「尻尾…?私、猫じゃないよ?」 京太郎「…あぁ、うん。大体、分かった」 京太郎「(…この子、アホの子だ)」 京太郎「(思わず敬語ぶっ飛んじゃうくらいにアホい子だ…)」 京太郎「(…正直、なんでこんな子が頭使う麻雀なんて競技で活躍出来ているのか分からないくらいアホの子だ…!!)」 淡「な、何がわかったって?」 京太郎「君の名前と生年月日と住所と電話番号」 淡「う、嘘だ」 淡「そんなのそう簡単に分かるはずないもん」 京太郎「じゃあ、まず名前から当てていこうか?」 京太郎「君、白糸台の大星淡だろ」 淡「っ!?」ビックゥ 京太郎「誕生日は12/15」 京太郎「後は…もう言う必要ないよな?」 淡「うぐ…」 京太郎「(…まぁ、ぶっちゃけこれくらいは麻雀ウィークリー読んでたら分かるんだけどさ)」 京太郎「(白糸台のレギュラー…しかも、大将ともなれば、何処も注目してる訳だし)」 京太郎「(住所や電話番号はともかく、誕生日くらいの個人情報は載ってる)」 淡「そ、それで…一体、何のつもり?」 淡「名前とかがバレちゃったからって勝った気にならないでよね!」 淡「私はそれよりもずっとずっと凄い事知ってるんだから!!」 京太郎「凄い事って?」 淡「…えっと、実は小学校三年生までお父さんと一緒にお風呂入ってたとか…」 淡「ってだ、だからゆーどーじんもんはダメだって言ってるじゃん!!」マッカ 京太郎「いや、だから、誘導尋問も何も、そっちが自爆してるだけだろ」 淡「うー…うー…」スネー 京太郎「(あー…この子、可愛いな)」 京太郎「(顔立ちもそうだけど…良い感じにアホくて凄いいじりがいがある)」 京太郎「(正直、このままずっといじり続けてやりたいけど…それじゃ間違いなく話が進まないからな)」 京太郎「(とりあえず話を本題に戻そう)」 京太郎「…まぁ、小学校三年までお父さんと一緒にお風呂入ってた大星さんの事はさておいてな」 淡「い、いちいち、口に出さなくて良いってば!」 淡「と言うか、忘れてよ!!」マッカ 京太郎「忘れるのは良いけど、条件がある」 淡「じ、条件って…」 京太郎「なんで俺の事さっきからつけ回してたんだ?」 淡「そ、そんな事してないもん」 淡「そっちがじいしきかじょーなだけなんじゃない?」 京太郎「…まぁ、しらばっくれるのも別に構わないけどさ」 京太郎「でも…良いのかな?」 淡「え…?」 京太郎「さっき大星さんから聞いたあの恥ずかしい秘密…」 京太郎「もしかしたらそれを俺が誰かに漏らしちゃうかもしれないぞ」 淡「な…っ!?」 京太郎「…それが嫌なら誠意を見せて欲しいもんだなぁ」ゲスカオ 淡「く…ぅ…!」 淡「こ、この…卑怯者!鬼!悪魔っ!金髪!!」 京太郎「金髪はそっちもだろ」 淡「わ、私のは良い金髪だから良いの!」 淡「そっちは悪い金髪だからダメ!!」 京太郎「はいはい。…で、返答は?」 淡「ぬぐぐぐぐ…」 京太郎「…おぉっと、何故か無性にLINEで誰かの秘密を流したくなったぞー」 淡「わーわーわっ!」 淡「分かった!いうから!いうからそれは秘密にしておいてえええ!!!」 京太郎「…で、どうしてなんだ?」 淡「…私、悪くないもん」ムスー 淡「ただ…テルーが昨日、金髪に会ったって言ってて…」 淡「凄い嬉しそうだったから…どんな奴なのかなって思っただけで…」ポツ 京太郎「だからって人のことを付け回さなくても良いだろ」 淡「だ、だって…」 淡「い、いきなり知らない男の人に話しかけるとか恥ずかしいし…」 京太郎「いや、人のことを付け回す方がよっぽど恥ずかしいだろ」 淡「うー…!良いでしょ!」 淡「女の子には色々あるの!!」 京太郎「はいはい。それで?」 淡「それでって?」 京太郎「これまで俺の事見てきた感想は?」 淡「…すっごい嫌な奴」 淡「テルーが褒めてるのが嘘なくらいにひきょーで酷い奴だったよ」ツーン 京太郎「ストーカーに嫌なやつ呼ばわりされるとはなぁ…」 淡「それだけ酷い事やったじゃん」 京太郎「正直、自業自得だと思うぞ」 京太郎「…ま、何はともあれだ」 京太郎「これに懲りたら、もう人の事を付け回したりしない事だな」 淡「ふーんだ」ツーン 京太郎「(…反省してるのかなー)」 京太郎「(って、ヤバイ。そろそろ次の会場に向かわないと)」 京太郎「(折角の偵察だっていうのに対局見逃した…とかなると笑えないからな」 京太郎「じゃあ、俺はそろそろ行くけど…」 京太郎「大星さんもそろそろ帰った方が良いぞ」 淡「つーん」ツーン 京太郎「(自分で言うのか…)」 京太郎「(…ま、忠告はしたんだ)」 京太郎「(後はもう知らぬ存ぜぬで構わないだろう)」 京太郎「…」スタスタスタ 淡「…」スタスタスタ 京太郎「…」スタスタスタ 淡「…」スタスタスタ 京太郎「…あのさぁ」クル 淡「あわっ!?」スタ ビックゥ 京太郎「…俺、もう帰れって言ったよな?」 淡「わ、私もこっちに用があるだけだもん」 淡「べ、別にこのまま追い回して金髪の弱みを握ってやろうとか考えてないから!!」 京太郎「…なるほどな」 淡「あわわわっ」 淡「い、いまのなし!なし!!」 京太郎「いやぁ…なしには出来そうにないかなぁ」ニッコリ 淡「あうぅぅ…」フルフル 京太郎「…まぁ、アレだ」 京太郎「ぶっちゃけさ、俺の事、付け回すのは構わないんだよ」 淡「じゃ、じゃあ、別に私の事放っておいてよ」 淡「金髪の弱みを握ったら私も満足して帰るから!」 京太郎「…いや、それはそれで困るんだけどさ」 京太郎「ただ、その前に冷静になって欲しいんだけど」 淡「私は冷静だもんっ」スネ 京太郎「じゃあ、今の自分がどう見られるか説明出来るか?」 淡「え?超すっごい白糸台の大将でしょ?」 京太郎「あー…うん。それもあるけど」 京太郎「それ以上にさ、今の大星さん、俺の事を追い回してる訳じゃん」 淡「うん」 京太郎「…女がな、男を影からストーカーしてる訳だよ」 淡「それがどうし…あっ」 京太郎「…まぁ、これがほかの人ならば良いんだけどさ」 京太郎「さっき大星さんが言った通り、君はすっごく目立ってる訳で」 京太郎「そんな君が、ストーキングしてたらどうなる?」 淡「…警察に捕まっちゃう」 京太郎「そうだな。で、そうなったら白糸台はどうなるんだ?」 淡「…………すっごく困る」 京太郎「困るどころか、下手すりゃ数年公式戦出場停止食らうぞ」 淡「…そ、そんな…っ」 京太郎「…まぁ、幸いさ、今のところ騒ぎになってない訳だけど…」 京太郎「でも、今のままずっとそうだとは限らないだろ?」 京太郎「だから、俺の事追い回すのなんてやめた方が良いって」 京太郎「…一応、これ大星さんの為に言ってるんだからな」 淡「…………うん」 京太郎「まぁ…その、なんだ」 京太郎「俺も調子に乗って色々とやりすぎたよ、ごめんな」ペコリ 淡「う、ううん。私の方こそ…ごめん」 淡「周りの事、ちゃんと見えてなくて…金髪に教えて貰うまで事態の深刻さを分かってなかった…」シュン 京太郎「(…なんだ。この子)」 京太郎「(ただ、面白いアホの子ってだけじゃなくて…ちゃんと謝れるし反省も出来るんじゃないか)」 京太郎「(ちょっと跳ねっ返り気質なだけで根が素直なんだろうな)」 京太郎「いや、こうしてちゃんと向き合って話せば分かってくれた訳だしさ」 京太郎「大星さんは十分、偉いと思うよ」 淡「そ、そう…?」エヘヘ 京太郎「(やだ、この子、アホいだけじゃなくてチョロい…)」 京太郎「…まぁ、さっきの秘密は誰にも話さないからさ」 京太郎「信じられないなら、俺の恥ずかしいネタを教えてあげても良いし」 淡「…んーん。いいや」 淡「今ので金髪が嫌な奴じゃないって言うのは分かったし」 淡「ちゃんと秘密は護ってくれると思うから」 淡「それに…」 京太郎「それに?」 淡「テルーは言ってたよ」 淡「京ちゃんはたまに意地悪で、ツンデレ?とか言う性格だけど…」 淡「でも、人の約束は絶対に護る一本芯が通った男だって」 京太郎「そ、そうか…」テレ 京太郎「(…照さん俺の知らないところでそんな事言ってたのか)」 京太郎「(正直、恥ずかしいけど…でも、そんなふうに評価してもらえると嬉しいな)」 淡「だから、私は金髪の事を…ううん」 淡「キョータローの事を信じる」 京太郎「…ってキョータロー?」 淡「……あ、図々しかった?」 京太郎「いや、俺は構わないよ」 京太郎「(…ちょっと話の展開が早すぎて驚いたけど…)」 京太郎「(まぁ、多分、そうやって信じて貰えるだけ色々な事を照さんから聞いてたんだろうし)」 京太郎「(ちょっとどころじゃなくアホいけど可愛くておっぱい大きい美少女とお近づきになれたのを喜んでおこう)」 淡「良かった」ニコ 京太郎「…じゃあ、俺もそっちの事を淡って呼んで良いか?」 淡「えー…どうしよっかなー?」 京太郎「…いや、お前、そこでそれはないだろ」 淡「だって、キョータローってば一杯意地悪してたし?」 淡「私だってキョータローに意地悪しないとふこーへーじゃん?」ニッコリ 京太郎「へー?」 淡「…………何?」 京太郎「いや、別に何でもないんだけどさ」 京太郎「ただ…随分と生意気な態度をとるんだなーと思っただけで」ニッコリ 淡「う……」 京太郎「…じゃあ、仕方ないよな」 京太郎「うん。大星さんが下の名前で呼ぶのを許してくれないんだったら仕方ない」 淡「な、何をするつもり…?」 京太郎「いや、大した事じゃないよ」 京太郎「ただ、小学3年生までお父さんと」 淡「わーわーわーわーっ!!!」 淡「秘密って言ったじゃん!!!言わないって言ったじゃん!!」 京太郎「言ってないだろ、最後までは」 淡「屁理屈っ!!」 京太郎「先に弱み握られたそっちが悪い」キッパリ 京太郎「…で、俺はどう呼べば良いんだ?」 淡「…淡って呼んでも良いよ」 京太郎「呼んでも良い?」 淡「うーっ!」 淡「淡って呼んでくださいっ!」 京太郎「よし、これでお揃いだな、淡」 淡「何時か絶対ふくしゅーしてやる…」 京太郎「別に構わないけど、もうストーカーは辞めろよ」 淡「流石にそれはしないよ」 淡「でも…」スタスタ 京太郎「ん?」 淡「…こうして隣にいるのはストーカーじゃないし良いよね」 京太郎「あー…そう来たか」 淡「ふふーん。そう来ました」ニコ 京太郎「…つってもさ、俺、今から偵察だぞ」 淡「じゃあ、私はキョータローの事、偵察してるね」 淡「それで弱み見つけたら、今までの分、全部ふくしゅーしてやるんだから」 京太郎「…ま、淡がそれで良いなら俺は何も言わないけどさ」 京太郎「ただ、横にいてもあんまりおもしろくはないと思うぞ」 淡「大丈夫だよ」 京太郎「…なんか不安だなぁ」 淡「大丈夫だって言ってるでしょ」 淡「それより…ほら、早く行かないと試合始まっちゃうよ」 淡「偵察するんでしょ?」グイグイ 京太郎「わ、ちょ…いきなり引っ張るなって!」 淡「えへへ、さっきの仕返しだよーっ」 京太郎「(それから淡は俺の事を見てたんだが…)」 京太郎「(すぐさま飽きて麻雀の方を見始めてた)」 京太郎「(まぁ…分かってたと言うか、約束された勝利と言うか)」 京太郎「(俺はまだ淡の事良く知らないけど、あいつが落ち着くあるタイプとは思えないからなぁ)」 京太郎「(ただ、麻雀の方見ながら色々解説してくれるのは正直、有り難かった)」 京太郎「(淡にとっては暇つぶしだったんだろうけれど、初心者の俺にも分かりやすかったし)」 京太郎「(…ただ、途中で淡の方のスマホが鳴ってからはそうもいかなかった)」 京太郎「(どうやら淡は大事なミーティングの事を完全に忘れてたらしく、迎えに来た白糸台の部員に連行されていって)」 京太郎「(俺の周りには再び平穏が戻ってきた訳だけれど…)」 京太郎「んー……」 京太郎「(…流石に朝から偵察しっぱなしの牌譜作りっぱなしは辛いなぁ)」 京太郎「(丁度、休憩時間になったし…一回、一息入れるとするか)」ヨイショ 京太郎「(…って身体も結構、バキバキになってるわ)」 京太郎「(これはちょっと動いて身体からこわばりを抜いた方が良いかなぁ…)」 京太郎「(…ま、どうせだし、ちょっと階段あがって飲み物でも買って来るかな)」 京太郎「(丁度、飲み物も切れたところだし)」 京太郎「(もうちょっとで今日の試合も終わるけど、残りは帰り道にでも飲めば良いもんな)」 京太郎「(じゃあ、そうと決まれば即刻っと)」スタスタ 玄「…」スタスタ 京太郎「(ってアレは…確か阿知賀の松実玄さんか)」 京太郎「(姉妹共にとっても素晴らしいおっぱいをおもちなので良く覚えてたんだが…)」 京太郎「(それ以上に彼女には凄いシンパシーを感じるんだよなぁ)」 京太郎「(…こう同志と言うか仲間と言うか…)」 京太郎「(いっそ電波にも思えるような言葉が彼女に対しては浮かんでくる)」 京太郎「(…まぁ、一応、前世の仲間とかそういうんじゃない分、マシだと思おう)」 玄「……」クラッ 京太郎「って…!?」 玄「(ううぅ…なんだか体調が悪い…のかなぁ)」 玄「(普段ならおもちを見てるだけでも元気になれるのに…)」 玄「(今日はお姉ちゃんのおっぱいを見ても、朝からダルイままで…)」 玄「(どうしよう…こんな大事な時期に風邪なんてひいたりしたら…)」 玄「(皆にとんでもなく迷惑をかけちゃうよ…)」 玄「(……まだ見るべき試合は残ってるけど、風邪薬でも飲んで早めに休もう)」 玄「(それで次の試合前に何とか体調を元に戻して…)」クラァ 玄「(って…ここで立ちくらみ…!?)」 玄「(ダメ…足滑らせて…!)」 玄「(堕ち……っ!?」 京太郎「よいしょぉ!」ダキッ 玄「ふぇええxt!?」ビックリ 京太郎「(…ふぅ。何とか間に合ったか)」 京太郎「(何とか間一髪階段を降りてくる松実さんを抱きとめる事に成功した)」 京太郎「(…まぁ、勢いはどうしても殺しきれず、俺の胸に松実さんがダイブしてる形になるけれど)」 京太郎「(それでも階段から堕ちるよりはずっとマシだろうし)」 玄「(はわ…はわわわわっ!?)」 玄「(こ、この硬いの…も、ももももももしかしなくても男の人の胸…!?)」 玄「(か、階段から落ちそうになったら、よもや男の人に抱きしめられるなんて…!!)」 玄「(って…そ、そうじゃない…!)」 玄「(は、早く離れなきゃ…)」 玄「(このままずっと抱きついてたら…それこそ痴漢か何かだって思われちゃう…!)」ワタワタ 玄「あ、あああああああのあのっ」ジタバタ 京太郎「いや、ちょ…!?」 京太郎「(待って!だ、抱きとめられたって言っても…バランス不安定だから!)」 京太郎「(階段っていう狭いところで踏ん張ってるだけだから!)」 京太郎「(それなのにそんなふうに暴れたら、俺まで堕ち……っ)」グラ 玄「きゃああっ」 京太郎「ぬああっ!!」 京太郎「い…てて…」 京太郎「(…やっぱ身体なまってるなぁ…)」 京太郎「(まさかちょっと暴れられただけでバランス崩して階段から堕ちるなんて)」 京太郎「(まぁ、幸い、俺が堕ちたのは数段だったから怪我がある訳じゃなかったけど…)」 京太郎「(って松実さんの方は…)」チラッ 京太郎「…ってえ?」 玄「(…な、何…コレ)」 玄「(…なんで階段から堕ちちゃった私の前にズボンがあるの?)」 玄「(これ…もしかして…)」 玄「(ううん…もしかしなくても…)」 玄「(私、さっきの人の股間に顔を埋めてる!?)」 玄「(胸だけじゃなくて…オチンチンのところまで触っちゃってるの!!?)」 玄「(す…凄い…)」 玄「(も、もう…何から言えば良いのかわからないくらい凄いよ…)」 玄「(だって…まるでフェロモンみたいなオスの匂いがたまってて…)」 玄「(嗅いでいるだけで…頭の奥から…ジィンってしびれちゃいそうになっちゃう…)」 玄「(その上…私に触れてるコレ…)」 玄「(夏服だからか…とっても布地が薄くて…)」 玄「(私…わか…分かっちゃう…)」 玄「(この奥にあるもの…)」 玄「(エッチで…とっても気持ち良いもの…)」 玄「(オチンチンがある事が…肌で感じ取っちゃう…)」 玄「(こ、こんなの…無理だよ)」 玄「(処女の私には…刺激が強すぎる…)」 玄「(まるでエッチな漫画みたいに都合の良い展開に…私の頭、クラクラして…)」 玄「(もう…目の前にあるモノしか…考えられなく…なっちゃう…)」ゴクッ 玄「(…コレ反則…反則だよ)」 玄「(私…これまで男の人にあまり興味なかったのに…)」 玄「(おもちさえあれば…それで良いって思ってたのに…)」 玄「(でも…これは…これは無理…ぃ)」ゾク 玄「(この匂いと感触には…絶対に勝てない…)」 玄「(興味ないとかそんなの…関係なしに…)」 玄「(女の子の…ううん、メスの本能に訴えてくるんだから…)」 玄「(どれだけ…男の人に興味が無い子でも…目覚めちゃう…)」 玄「(この匂いの源が欲しいって…)」 玄「(この感触を生で感じたいって…そう思わされちゃう…)」 玄「(魔性の…魔性のオチンチン…だよぉ…♪)」ハァ 玄「(おしゃぶり…したい…♪)」 玄「(それがダメなら…直接頬ずりさせて…欲しい…っ♪)」 玄「(そんな気持ちを…私もう抑えられなくて…ぇ♪)」 玄「(だから…ぁ♪)」スッ 京太郎「あ、あの…大丈夫ですか?」 玄「ひゃうっ」ビクッ 京太郎「さっきから動かないけど…もしかして怪我したんですか?」 京太郎「もしそうなら俺、ここから救護室に…」 玄「(…この人、私の事を心配してくれてる)」 玄「(もうオチンチンの事しか考えられなくて…今にも無理やり襲いそうだった私の事を…)」 玄「ご、ごごごごごごごごごごごめんなさい」パッ 玄「(は…恥ずかしい…っ)」 玄「(私、最初から最後まで自分の事ばっかりで…)」 玄「(申し訳なさすぎて…顔も見れないよぉっ)」マッカ 玄「わ、わわわわわ私は大丈夫ですから!」 玄「ほ、本当にありがとうございました!」 玄「では!!」ダッ 京太郎「あ…」 京太郎「(…逃げられてしまった)」 京太郎「(まぁ、事故とは言え、男の股間に顔を突っ込んだんだから当然だよな)」 京太郎「(しかし…惜しいなぁ)」 京太郎「(松実さんはおっぱい大きい美少女だっていうのもあるけれど…)」 京太郎「(なんとなくシンパシーを感じて仲良くなれそうな相手に避けられるとは…)」 京太郎「(…最初にはやりんのおっぱいに顔を突っ込んだり)」 京太郎「(連絡先聞けた反動が今に来てるのかなぁ…)」フゥ はやり「ふー…」 はやり「(インハイの解説も楽じゃないよね)」 はやり「(勿論、普段からお仕事でテレビの前で喋ってるし…)」 はやり「(ほかの人より慣れてると言えば慣れてるんだけれど)」 はやり「(でも、私の解説一つ一つで選手に対する印象ががらりと変わっちゃう訳で…)」 はやり「(ある程度、台本があるテレビよりもよっぽど緊張する)」 はやり「(まぁ…それでもお仕事と大会に挟まれるよりはマシだけどね)」 はやり「(台本覚えながら、相手のデータも読み込まなきゃいけないってホント辛いし)」 はやり「(学生時代にちゃんと勉強して暗記方法も覚えてなかったら今の仕事なんて絶対無理だったと思う…)」 はやり「(まぁ…それだけやり応えのある仕事ではあるし)」 はやり「(『彼』のお陰でまだまだ辞めるつもりはないけどね)」 はやり「……えへへ」 はやり「(今、すんなり『彼』とか言っちゃった…)」 はやり「(まだ知り合ったばかりなのに、ちょっと大胆かな?)」 はやり「(で、でも、心の中でくらいは良いよね)」 はやり「(『彼』…京太郎君は私のファンだって言ってくれてる訳だし…)」 はやり「(心の中でくらい『彼』呼びしても許してくれるはず)」 はやり「(まぁ、私はまだ知り合って少ししか経ってないけれど…)」 はやり「(でも、あの子がとても優しい子って言うのはわかってるし)」 はやり「(その上…ちょっぴりエッチ…だよね)」カァ はやり「(あんなに露出の激しい格好してるのもそうだけど…)」 はやり「(私の胸もチラチラ見てるし…好きだって言ってくれてたし…)」テレ はやり「(実際、私が横に立っても嫌な顔ひとつしないどころかデレデレしちゃって…)」 はやり「(ちょっと触っても、嫌な顔せずに受け入れてくれる)」 はやり「(だからってビッチって感じじゃなくって…おっぱいに挟まれて鼻血出しちゃうくらい純情で)」 はやり「(真っ直ぐに私に気持ちぶつけてくれるくらい熱くて…真面目な子)」 はやり「(正直、狙いすぎてるんじゃないかなって思ったりもするけれど…)」 はやり「(でも、アレきっと演技じゃないんだよね)」 はやり「(私もそれなりに芸能界長いから分かるけど…)」 はやり「(そういうのを演じてる時の雰囲気を感じない)」 はやり「(きっと彼は本気であぁいう性格をしてるんだと思う)」 はやり「(…でも、ちょっとエッチでビッチっぽいのに純情とかさ)」 はやり「(どう考えても…危険だよね)」 はやり「(そんなの女の子が大好きなエッチな本にしか生息しない生き物だって)」 はやり「(女の子の妄想の中にしかいない都合の良い『男』なんだって)」 はやり「(そう思うような子が…現実に存在してたんだから)」 はやり「(…正直、私もちょっとヤバイ)」 はやり「(話してた時はまだしも…今は色々と落ち着いてきてるし)」 はやり「(何より疲れも溜まって…ちょっぴりムラムラしてるから…)」 はやり「(…彼でオナニーしたくなってる)」 はやり「(彼の手で、おっぱいで挟んだ時の感触で…)」 はやり「(思いっきりあそこをクチュクチュしたくて…堪らない…)」モジ はやり「(…ま、その為にも早く帰ろっと)」 はやり「(牌のお姉さんを降ろされた後の為に企画書も作らないとダメだしね)」 はやり「(牌のお姉さんをやってて感じた事をぶつけた番組に出来るよう頑張らないと)」グッ 京太郎「…」スタスタ はやり「(…ってあれは…)」 はやり「(もしかしなくても…京太郎君?)」 はやり「(…やった、すっごくラッキーっ)」ニコ はやり「(インハイ会場の中とは言え、偶然会えるなんて思ってなかった)」 はやり「(これはもう…運命だよね)」 はやり「(話しかけないと…)」 はやり「京…」 咏「おーっす。そこいく男の子ー」 京太郎「ん?」 はやり「え…?」 咏「どうしたんだぃ、なんだか浮かない顔をして」 京太郎「あ、三尋木プロ…お疲れ様です」 京太郎「今日はもうあがりですか?」 咏「うん。バッチリ解説してやったぜぃ」 はやり「(…あれは、咏ちゃん?)」カクレ はやり「(どうして京太郎君とあんなに仲良く話してるの?)」 はやり「(…もしかして咏ちゃんも知り合い?)」 はやり「(私みたいに…京太郎君にファンだって言われて仲良くなった…とかなの?)」ズキ 咏「そっちはどう?」 京太郎「俺も今日は合宿場に戻るだけです」 咏「へぇ…そうなんだ」ニヤリ はやり「っ」ゾクッ はやり「(…あ、これ違う)」 はやり「(咏ちゃん…京太郎君と仲が良いんじゃないんだ)」 はやり「(完全にこれ食べ物としか見ていない)」 はやり「(京太郎君の心とか人権とか…そんなの無視して…)」 はやり「(ただ、自分の性欲を発散する相手としか思ってないんだ…)」 咏「…じゃあ、一緒に晩飯でもどうだい?」 京太郎「え、良いんっすか?」 咏「勿論。学生に奢ってやれる程度には貰ってるしねぃ」 咏「で、それが終わったら、私の部屋でマンツーマンレッスン…なんてどうだ?」 京太郎「ま、マジっすか」 京太郎「三尋木プロとマンツーマンレッスンなんて光栄です!」キラキラ はやり「(って…京太郎君、気づいてない?)」 はやり「(咏ちゃんの目がもう欲情でギラギラしてるのに…)」 はやり「(部屋に連れ帰ってレイプする事しか考えてない目なのに…)」 はやり「(一緒になんていったら…穢されちゃうよ…っ)」 はやり「ま、待って!」 咏「…ん?」 京太郎「え?」 はやり「(って飛び出したけど、ど、どどどどどどどうしよう…!?)」 はやり「(ここから先の事なんてまったく考えてないよ…!)」 はやり「(でも…それでも…)」 はやり「(京太郎君をレイプするなんて…そんなの絶対に許せるはずない)」 はやり「(京太郎君は…私の大事なファンで…)」 はやり「(ちょっとだけ…他よりも特別な人なんだから)」 はやり「(幾ら咏ちゃんでも…穢させない)」 はやり「(京太郎君の事を食べ物としか見てない咏ちゃんになんか…)」 はやり「(絶対に…絶対に渡さないんだから…っ)」グッ はやり「き、今日は私が先約だから…」 咏「…先約」 はやり「そ、そう。先にご飯食べにいったり麻雀を教える約束してたんだよ」 咏「…………そうなのかぃ?」 京太郎「え、えっと…」 はやり「(…お願い、気づいて、京太郎君)」 はやり「(咏ちゃんの意図に気づかなくても…)」 はやり「(私の意図にだけは…気づいて欲しい…)」ジィィ 京太郎「…………すみません」 はやり「っ」ビク 京太郎「はい。確かにそうでしたね」 京太郎「今日ははやりんと先に約束してたのすっかり忘れてました」 はやり「き、京太郎君…」パァァ 咏「…そっか」 咏「それならしょうがないねぃ」 京太郎「折角、誘ってもらったのにすみません」ペコ 咏「んーん。私は気にしてないから大丈夫」 咏「ま、この埋め合わせは何時かしてもらうけどねぃ」チラッ はやり「……っ」グッ 京太郎「勿論ですよ」 京太郎「今度は俺の方が晩飯おごります」 咏「はは。学生にたかるほど耄碌してないって」 咏「そういうのは私以上に稼いでから言うんだねぃ」 咏「ま、それじゃ、今日のところは退散するけど…」スタスタ 咏「……どういうつもりかわっかんねーけど、次は容赦しないよ」ポソ はやり「…それはこっちのセリフだよ」ポソ はやり「…ふぅ」 はやり「(…あー、怖かったぁ)」 はやり「(まさか咏ちゃんからあんな声が出てくるなんて…)」 はやり「(よっぽど咏ちゃんは京太郎くんに御執心なんだ…)」 はやり「(まぁ…正直、分かるけどね)」 はやり「(麻雀プロなんてやってて、こんなに格好良い男の子と知り合える機会なんてないし)」 はやり「(でも…」 京太郎「…大丈夫ですか?」 はやり「…ん。大丈夫」 はやり「これでもはやりんは芸能界の荒波に揉まれて生きてきてるからね☆」 はやり「アレくらい慣れっこだから心配しないで」ニコ 京太郎「それなら良いんですけれど…」 京太郎「でも、どうしていきなりあんな事を…?」 京太郎「わざわざ間に入り込んでくるなんてよっぽどだと思って話にノリましたけど…」 はやり「あー…」 はやり「(…やっぱり分かってないんだ、京太郎君)」 はやり「(あれ完全にお持ち帰りの手口だって言うのに…)」 はやり「(芸能界だけじゃなく高校とかでもあんなのザラにあると思うんだけどなぁ…)」 はやり「(やっぱりただ純真なだけじゃなくて警戒心たりなさすぎるよね)」 はやり「(そこのところは大人としてしっかり言っておかないと)」 はやり「…京太郎君はもうちょっと女の子の事警戒した方が良いと思うな」 京太郎「え?勿論、警戒してますよ」 京太郎「美人局とか怖いですもんね」 はやり「…え?美人局って男の人がやるもんじゃないの?」 京太郎「あー…うん。ごめんなさい」 京太郎「そうでしたね、いやぁ…うっかりうっかり」 はやり「???」 はやり「…まぁ、何はともあれだよ」 はやり「咏ちゃんにはもうちょっと警戒した方が良いと思うな」 京太郎「そんなに評判悪いんですか?」 はやり「ううん。そんな事ないよ」 はやり「寧ろ、とっても良い子…だったはずなんだけど…」 はやり「(…そう考えるとさっきの様子、変だよね)」 はやり「(私の知ってる咏ちゃんはもっと飄々として何かに執着する事なんて滅多になかったのに)」 はやり「(でも…そんな咏ちゃんが京太郎君にだけはあんなにも関心を持っていた)」 はやり「(勿論、京太郎君はそれだけ魅力的な子ではあるけれど…)」 はやり「(でも、それだけで説明をつけるには…ちょっと尋常じゃない様子だった気がするし…)」 京太郎「…はやりん?」 はやり「う、ううん。何でもない」 はやり「それより…えっと…さ」 はやり「…良ければ今から…家来る?」 京太郎「え?」 はやり「い、いや、変な意味はないんだよ!?」 はやり「で、でも…ほら、さっき咏ちゃんの誘いを断らせちゃったからさ」 はやり「だから、その分の埋め直しを私がしなきゃダメだと思って…」 はやり「そ、それに…えっと、私、それなりに御飯作るのも得意だから…あの…っ」 はやり「(…って、私、何を言ってるんだろ)」 はやり「(これじゃさっきの咏ちゃんと同じじゃない…)」 はやり「(京太郎君を部屋に連れ込んで…エッチな事するつもりなんだって…)」 はやり「(そう言われてもまったく反論出来ない事を…)」 はやり「(あぁぁ!もう!私の馬鹿ぁあっ!)」 はやり「(もうちょっと考えてから発言すれば…)」 京太郎「え、良いんですか?」 はやり「(……あれ?)」 はやり「…………良いの?」 京太郎「いや、それは俺のセリフなんですけど」 京太郎「はやりんのお部屋にお邪魔出来るだけじゃなくて」 京太郎「手料理まで作ってもらえるなんて…幸せ過ぎてどうにかなっちゃいそうですよ」 京太郎「しかも、麻雀の練習まで付き合ってもらえるとかお金払らわなきゃダメなレベルじゃないですかね」 はやり「お、お金なんて受け取れないよ」 はやり「(と言うか…高校生の男の子を部屋に呼ぶって私の方がお金出さなきゃいけないし)」 はやり「(いや、援交じゃないけど…援交じゃないけれどね!)」 京太郎「いや、でも、晩飯代くらいは…」 はやり「ダメです」 はやり「京太郎君は学生なんだから、素直にお姉さんに甘えなさい」 はやり「アイドルとしての命令です」 京太郎「…はーい」 はやり「~っ」キュン はやり「(あぁ…もう…可愛いなぁ)」 はやり「(本当に…可愛すぎるよ…)」 はやり「(…さっきは咄嗟にお姉さんぶったけれど…)」 はやり「(こんな子とずっと一緒にいたら…絶対に血迷っちゃう)」 はやり「(……でも、絶対に我慢しなきゃ)」 はやり「(京太郎君だって…私の事好きって言ってくれてるけど…)」 はやり「(でも、一回り以上離れてる相手を好きになってくれるはずないし)」 はやり「(あくまでも淑女的…)」 はやり「(そう。まるで中世の淑女のようにしっかりと彼の事をもてなさなきゃ…!)」 ~はやりんハウス~ 京太郎「…」スヤァ はやり「(うわあああ!もう!もぉおおお!!)」 はやり「(なんで寝ちゃうの!?)」 はやり「(いや…それだけ色々と疲れてたって事だってわかってるよ!?)」 はやり「(今日の彼が作った牌譜とか…とっても書き込まれてて…)」 はやり「(どの試合も真剣に見てたんだって事が伝わってきたんだから)」 はやり「(でも、女の部屋にあがって寝ちゃうのはダメだよ…)」 はやり「(そんなの…レイプしてくださいって言ってるようなものなんだから)」 はやり「(…そんな気がなくても…その気にさせられちゃう…)」 はやり「(こんなに無防備な寝顔を見せられたら…)」 はやり「(ちょっとくらい…悪戯しても良いんだって…)」 はやり「(それを…君も望んでいるんだって…)」 はやり「(そんな…都合の良い事…考えちゃうんだから…ね)」スッ はやり「(………だけど、本当に綺麗な寝顔…)」 はやり「(まるで…漫画やアニメに出てくる王子様みたい)」 はやり「(…正直…宝物にして一生、手元においておきたいくらいだよ)」 はやり「(でも…そんな事しちゃダメだよね)」 はやり「(京太郎君はモノじゃなくて一人の人間なんだから)」 はやり「(…………だから、とりあえず写真を取って)」パシャ はやり「(…うん。それでちゃんとロックかけて…バックアップもとって…)」 はやり「(それで…その…えっと…)」 はやり「(…こういう時はね、やっぱり…お姫様のキスが一番だと思うし…)」 はやり「(ソファで寝てる京太郎君に悪戯…うん)」 はやり「(あくまでもただの悪戯をする為に…)」 はやり「(ちょっとだけ…ちょっとだけ…キス……して…)」スッ 京太郎「…………さ、き」 はやり「っ!?」ビクッ はやり「(…咲って…)」 はやり「(確か…清澄の大将で京太郎君の幼馴染…だったよね)」 はやり「(…確かに、結構、仲よさそうに話していたし…)」 はやり「(寝言で名前が出てくるのは普通かもしれないけど…)」 京太郎「…和…も…もう勘弁…してやってくれよ…」 京太郎「タコスにだって悪気があった訳…じゃ…」 京太郎「…あ、部長、それ俺やります…から…」 京太郎「染谷先輩も…置いといてくださ……」 はやり「…………」ズキ はやり「(…………京太郎君は)」 はやり「(京太郎君は、きっと皆に愛されてるんだね)」 はやり「(こんなにも寝言で…仲間の事が出てくるくらいに…)」 はやり「(皆の事を思って…思われてる)」 はやり「(…でもね、わかってる?)」 はやり「(さっき、君が見せてくれた写メ…)」 はやり「(咲ちゃんって言う君の幼馴染は…完全に咏ちゃんと同じだったんだよ)」 はやり「(君の事をオナペットとしか思ってない…発情したメスの目)」 はやり「(きっと毎日、京太郎君の事を頭の中で犯して…滅茶苦茶にしてる)」 はやり「(…ううん。きっと咲って子だけじゃない)」 はやり「(そんな咲って子を仲間に思うって事は…他の子も全部、同じ)」 はやり「(京太郎君の事を…レイプする事しか考えてない連中に決まってるよ)」 はやり「(そんな子達の事をそこまで思う必要なんてない)」 はやり「(…ううん。そんな風に思っちゃダメ)」 はやり「(相手は…ケダモノなんだから)」 はやり「(心を許したら…食い物にされるだけだよ)」 はやり「(こんなに…こんなに可愛い寝顔とか…)」 はやり「(絶対に…私以外に…見せちゃいけないんだからね)」グッ はやり「(…わかってる)」 はやり「(私、今、すっごい最低な事を考えてる)」 はやり「(京太郎君は私の事をこんなに信頼してくれてるのに)」 はやり「(私の前で寝顔を晒すくらい信じてくれているのに)」 はやり「(私は…それを裏切ろうとしているんだから)」 はやり「(…でもね。でも…)」 はやり「(…………それが京太郎君にとっての一番なんだよ)」 はやり「(京太郎君は優しくて純真で暖かくて…)」 はやり「(そんな君の周りには穢そうとするメスしかいないんだから)」 はやり「(…京太郎君が京太郎君のままでいる為には…)」 はやり「(例え、君の心を裏切っても…私が護ってあげなきゃいけない)」 はやり「(君の尊さを知って…それを尊重してあげられる私しか…)」 はやり「(京太郎君は…守れない)」 はやり「(咲って子にも…清澄にも…)」 はやり「(それは…絶対に出来ない事だから)」 はやり「(……だからね)」 はやり「(だから、ごめんなさい)」 はやり「(私は京太郎君の為におかしくなります)」 はやり「(京太郎君の事を思って…君の事を踏みにじります)」 はやり「(でも……でも、私の気持ちは変わらないから)」 はやり「(他の何を犠牲にしても守りたいって思うくらいに…)」 はやり「(私は君の事を…大事に思ってるから)」 はやり「(だから…お願いです)」 はやり「(私の事を…許してくれなんて言いません)」 はやり「(でも、せめて…嫌わないでください)」 はやり「(…君の為におかしくなってしまった私の事を)」 はやり「(君の為に犯罪に手を染めてしまう私の事を)」 はやり「(受け入れて…側においてください…)」スッ 京太郎「ん…」カチャン 京太郎「ん……んぅ…」 京太郎「(…あれ、俺、眠っちゃったのか)」パチ 京太郎「(ってあれ、ここ…何処だ…って)」ギシ 京太郎「(な、なんだこれ!?)」 京太郎「(両手が縛られて動けないんだけど…)」 京太郎「(こ、これってもしかして誘拐とかそういうの!?)」 京太郎「(だったら一緒にいたはやりんも危ないんじゃ…!)」 はやり「…あ、京太郎君、起きたんだ」ニコ 京太郎「……あれ?」 はやり「もう。君って思った以上に寝坊助さんなんだね」 はやり「思ったよりもぐっすりだったからちょっと心配になっちゃった」クス 京太郎「あ、あの…はやりん?」 はやり「ん?どうかした?」 京太郎「あの…どうして俺の横に寝て…」 はやり「だって、ここ私のベッドだもん」 京太郎「あ、そうだったんですか」 京太郎「って俺なんかをベッドに運んでよかったんですか?」 京太郎「そのままソファで放っておいて貰っても良かったんですけど…」 はやり「折角のお客様なのにソファでずっと寝かせておく事なんて出来ないよ」 はやり「それに…ソファの周りでずっと暮らすのは京太郎君も辛いでしょ?」 京太郎「…え?ずっと暮らすって…」 はやり「そのままの通りだよ」 はやり「…京太郎君はね、今日からここでずぅぅぅぅっと過ごすの」 はやり「君の周りに…君を穢そうとするメスがいなくなるまで…」 はやり「ずっと私が…護ってあげるんだよ」ニコ 京太郎「っ」ゾクッ 京太郎「(…なんだ、この濁った目)」 京太郎「(いや…濁ってるけど、一部分だけはとても綺麗で…)」 京太郎「(そこが…俺の事しか映してない)」 京太郎「(まるで俺以外の全てがどうでも良くなってしまったかのように…)」 京太郎「(その綺麗で恐ろしい目は…じっと俺だけを見つめていて…)」 京太郎「い、いや、あの…冗談ですよね?」 はやり「…冗談でこんな事するほど子どもじゃないよ」 はやり「私はコレでもアイドルで麻雀プロでもあるんだから」 はやり「こんな事やっちゃったら即座にスキャンダルになって…何処にも居場所がなくなっちゃう」 京太郎「だ、だったら…」 はやり「…でも、仕方ないじゃない」 京太郎「え…?」 はやり「…アイドルである事よりも、麻雀プロである事よりも…」 はやり「私はね、君の事の方がずっとずっと大事なの」 京太郎「そ、そんなの…」 はやり「…おかしいと思う?」 はやり「うん。私も自覚してる」 はやり「でもね。どうしても止まらないの」スッ 京太郎「…っ」ゾクッ はやり「…君を穢されたくない」 はやり「私の事を立ち直らせてくれた君の事を…」 はやり「私を好きだって言ってくれた京太郎君を…清澄になんて返したくない」ナデナデ 京太郎「で、でも、俺が帰らなかったら…」 はやり「…大丈夫だよ。その辺りは私が何とかするから」 はやり「京太郎君はそんな事きにせず…くつろいでいてくれればそれで良いの」 はやり「君が皆に忘れさられるまで…君のお世話は私が誠心誠意…してあげるからね」ニッコリ 京太郎「(…正直、それからはかなり辛かった)」 京太郎「(なにせ、あのはやりんが本当に俺の事を誠心誠意尽くしてくれたんだから)」 京太郎「(食事と良い下の世話と言い、縛った俺の為に色々としてくれて)」 京太郎「(しかも、それら全部が嫌そうなどころか嬉しそうなんだから)」 京太郎「(おかしくなったとは言え…心から充実しているようなはやりんは魅力的だったし…)」 京太郎「(何より、俺にそっと寄りかかって眠るはやりんの身体が色んな意味でやばかった)」 京太郎「(正直、合宿場に来てから自家発電もしてなかったから結構、たまってたし…)」 京太郎「(安らかに眠ってるはやりんとは裏腹に、一睡も出来なかった…)」 京太郎「(…まぁ…そのお陰で…)」ブラン 京太郎「(……手錠壊して脱出出来たんだけどな)」 京太郎「(最初はこれガチな奴かと思ったらドン○とかで売ってるプラスチックの安物だったし)」 京太郎「(思いっきり力を入れたらベッドの支柱につながってる方が壊れて脱出出来た)」 京太郎「(…ホント、ギリギリって感じだったけどな)」 京太郎「(これがもし本物の手錠だったら…なんて想像もしたくない…)」 京太郎「(…しかし…まさかはやりんが俺の事を監禁するなんて…)」 京太郎「(いや…まぁ、正直、嬉しくない訳じゃないんだ)」 京太郎「(ハッキリ言われた訳じゃないけれど…でも、それはきっとはやりんなりの愛なんだろうし)」 京太郎「(俺に向ける言葉の一つ一つにも嫉妬や独占欲が滲み出ていた)」 京太郎「(男としてそんなに誰かに…)」 京太郎「(しかも、はやりんほどの美少女……うん、美少女に想われるのは光栄だ)」 京太郎「(…でもさ、それは決して彼女の望んでいた事じゃないんだ)」 京太郎「(俺が石版にあんな事を書いてしまったから…)」 京太郎「(だから…はやりんもおかしくなってしまった)」 京太郎「(……今はまだ無理だけど、また何時か…)」 京太郎「(何時か全てを元に戻す方法が見つかったら…またちゃんとはやりんと向き直ろう)」 京太郎「(このまま逃げ出して終わりじゃ…幾らなんでも不誠実過ぎる)」 京太郎「(俺が全部悪いんだから…責任を撮らないと…な)」 京太郎「(…しっかし…これどうしようかなぁ…)」 京太郎「(…今の時刻はもう深夜)」 京太郎「(店なんて何処も開いてないし…勿論、列車もない)」 京太郎「(はやりんのマンションから合宿場までは遠いし…歩いて帰るのは厳しいな)」 京太郎「(だから、一番はこの辺のネットカフェで一晩明かす事なんだけれど…)」 京太郎「(…………スマホの電源が切れた)」 京太郎「(もおお!こんな時に!こんな時にいいいいいいい!!)」 京太郎「(ちゃんと昨日の夜充電してたのに、なんで一日で切れるんだよおおおお!)」 京太郎「(まぁ、確かに合間に色々LINEやったりしてたけどさああ!!)」 京太郎「(でも、ここまであっさりきれる事ないじゃん!!)」 京太郎「(ないじゃん!!!!!)」 京太郎「(はぁぁ…マジどうしよう)」 京太郎「(流石に地図もないのにネカフェ探すのは至難の業だぞ)」 京太郎「(つーか、コンビニさえどっちに行けばいいのか分かんないレベルだし)」 京太郎「(東京って都会じゃねぇのかよ…)」 京太郎「(なんでこんなに住宅地が密集してるんだよ…)」 京太郎「(……まぁ、何はともあれ、動かないとな)」 京太郎「(幸いにして、ここは東京なんだし)」 京太郎「(適当に動いていれば、コンビニかなんかが見えるだろ)」 京太郎「(で、コンビニでネカフェの場所を聞けば、とりあえず一晩はしのげるはず)」 京太郎「(だから、ネカフェにさえ行けば…)」 「申し訳ありませんが深夜の18歳未満のご利用はお断りしております」 京太郎「…マジですか」 「申し訳ありません…」 京太郎「(あばばばばばばばばば)」 京太郎「(ま、まさか頼みの綱のネカフェにまで断れるなんて…!?)」 京太郎「(これ、もうどうすりゃ良いんだよ…)」 京太郎「(まだ始発まで数時間あるぞ…)」 京太郎「(コンビニで充電器買ったからスマホも復活したけど…)」 京太郎「(でも、流石にこの時期に外で時間潰すのは結構きつい)」 京太郎「(でも、コンビニで数時間居座るのも申し訳ない話だし…)」 京太郎「(本気で打開策が思いつかなくなってきたぞ…)」 京太郎「うーん…」スタスタ 「お、そこのかれー」 京太郎「え?」 「この時間に制服で出歩いてるとか超悪い子じゃん」 「もしかしてウリとかやってんの?」 京太郎「え?う、ウリ…?」 「なーに、もうしらばくれちゃって」 「ウリって言ったら援交でしょ、えんこー」 京太郎「え、援交!?」カァァ 「やっだ。これくらいで顔を赤くするとかマジかわいー」 「ねーねー。お姉さん達とちょっと遊ばない?」 「私達、最近、彼氏に振られて欲求不満でさ」 「一時間に一万…ううん。君が相手なら一万五千は出すよ」 「どう。悪い話じゃないでしょ?」 京太郎「い、いいいいいや、俺、童貞なので!」 「え?」 京太郎「し、ししししし失礼しまーす!」ダッ 京太郎「(…東京怖い)」 京太郎「(まさか外歩いてるだけでも、女の人に声掛けられるなんて)」 京太郎「(しかも、全部、援交目当てのものばっかりだし…)」 京太郎「(…まぁ、性別逆にして考えれば当然なのかもしれないけど…)」 京太郎「(でも、怖かった…本気で怖かった…!)」 京太郎「(夜道を一人で歩く女性の怖さを思い知ったわ…!)」 京太郎「(でも…そうやって怖い思いをしたお陰で何とか始発の時間になったし…)」 京太郎「(……とりあえず電車乗って…)」フゥ 京太郎「(……あぁ、ヤバイ)」 京太郎「(安心したら一気に眠気が…)」 京太郎「(ここで寝たら大変な事になるかもしれない…のに…)」 京太郎「(堪えられな……)」グゥ 「…おきゃくさーん、終点ですよー」 京太郎「…ハッ」 京太郎「(やべ、今の時間…)」 京太郎「(つーか、携帯とか財布は!?)」ババ 京太郎「(…良かった、ちゃんとあった)」フゥ 京太郎「あ、すみません。今、降りま…」 ネリー「ん?」 京太郎「…………何やってんだ、ネリー」 ネリー「いや、ちょっとインハイ会場に行こうかと思ったら見慣れた顔が座席でぐうぐう眠ってるし」 ネリー「ちょっと膝枕でもしてあげようと思って」ニコ 京太郎「……」 ネリー「…ってお兄ちゃん?」キョトン 京太郎「ネリー!!」ダキッ ネリー「うひゃあ!?」ビックリ ネリー「な、ななななな何々、何なの!?」 ネリー「そんないきなり抱きつかれたら、私、ドキドキしちゃうでしょ!!」 ネリー「っていうか、人前!他に人いるからっ!!」 京太郎「ネリー…ネリー…っ」ギュゥゥ ネリー「……あー…」 ネリー「…分かった。分かったから」 ネリー「何か怖い事あったんでしょ?」 ネリー「私は別に逃げないし…とりあえず落ち着いて」 ネリー「ちゃんと後で話も聞いてあげるし…」 ネリー「落ち着けるようコーヒーでも奢ってあげるから」ナデナデ 京太郎「…………お前、本物のネリーか?」 ネリー「……やっぱお兄ちゃんは奢ってあげるのやーめた」ムスー 京太郎「わ、悪い」 ネリー「はぁ…」 ネリー「まったく、自分でお兄ちゃんって言ってくれても良いんだぞ、とか言ってた癖にさ」 ネリー「ちょっと優しくしようと思ったら、これだもん」 ネリー「私が優しくしようと思ったら悪いって言うの?」 京太郎「いや、本気で悪かったよ…」 京太郎「まさかネリーがそんな事言ってくれるとは思わなかったし…」 京太郎「それに昨日から色々あって…頭働いてなくてさ」 ネリー「…まぁ、こんなに朝早い電車で爆睡してたら何かあったのはなんとなく予想つくけど」 京太郎「あ、いや…その…」 ネリー「…私にも言えない?」 京太郎「……ごめん」 ネリー「…まったく、お兄ちゃんって言っておいて」 ネリー「情けないだけじゃなくて、私に秘密をつくるとか酷いと思わないの?」ツーン 京太郎「…返す言葉もないです…」シュン ネリー「…だから、せめてちゃんと甘えてよね」 京太郎「……え?」 ネリー「だ、だから…言わないなら言わないで良いけど…甘えて欲しいって言ってるの」 ネリー「私に言えないけど…でも、怖い事あったんでしょ?」 ネリー「私は…その、大丈夫だから」 ネリー「お兄ちゃんの事絶対に傷つけたりしないし…」 ネリー「本気で嫌な事だってしないから」 京太郎「…ネリー」 ネリー「…だから、一杯、甘えて…元通りになってよね」 ネリー「そうじゃないと…私が甘えられないでしょ」 京太郎「…あぁ、ありがとうな、ネリー」ナデナデ ネリー「も、もぉ…またそうやって気易く頭を撫でる…」 ネリー「……別に良いけどね、こっちも撫で返すし」ナデナデ 京太郎「はは。なんかくすぐったいな」 ネリー「ふーんだ。なんて言っても止めてなんてやらないんだから」ナデナデナデナデ ネリー「(…本当はもっと突っ込んだ事言ってあげたいけれど)」 ネリー「(でも…それはきっとお兄ちゃんの事傷つけるだけにしかならないよね)」 ネリー「(だって、さっきの反応を見るに…お兄ちゃんは高確率でレイプされちゃったんだから)」 ネリー「(ここでしつこく聞こうとしたら…それこそセカンドレイプになっちゃう)」 ネリー「(だから、ここは何も気にしないで…お兄ちゃんの事を癒やしてあげる事を優先しないと)」 ネリー「(レイプされるっていうのはそれだけ辛くて苦しい事なんだから)」 ネリー「(…………でも)」 ネリー「(きっと夜通し…このエッチな身体を知らない女に好き放題にされちゃったんだ…)」 ネリー「(私の事、今も抱きしめてくれてる…この大きくて暖かい身体を穢されて…)」 ネリー「(……………そんなの許せるはずない) ネリー「(キョータローは…私のお兄ちゃんなのに…)」 ネリー「(私だけの…お兄ちゃんなのに…)」 ネリー「(…勝手に手を出した奴には…必ず報いをくれてやる)」 ネリー「(……お兄ちゃんを傷つけた以上に…ボロボロにしてやるんだから…)」ゴッ
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第20回週間ギャルゲロワ(11/23) 先週の主な出来事 私にだって……わからないことぐらい……ある ;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;; ヽ ;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;; , ´/ `´ ヽ ;;;;;;;;;; ;;;;;;;;; l !ノノリ))ソ ;;;;;;;;; ;;;;;;; |!(l|TヮTノl| ;;;;;;; ;;;;; ノ, /i _i ノ_i リ .;;;; ;; ( とんU )U ノ ;; なんとMADが投下されました。 総員gu氏に敬礼!! とうとう第六回放送。 鈴凛頑張る。 さすがにここまで来ると書けるパートも少ないか…… お姉さまチームと梨花が合流! これは希望が見えてきた! ……遊んでる様にしか見えないとか言わない事。 カニ、立ち直る! 第二ボタンは何を齎すのか! しかしうがーも丸くなったな…。 Ucお姉さまの成長速度は異常。 無論いい意味で。 ONi氏の負傷、一人の書き手の負傷、それはただそれだけの物、ギャルゲ・ロワイアル、終焉への序曲(ォィ とりあえず氏が積尸気から帰って来るまで頑張りましょう。 先週(11/16-11/22)の投下数:3+1(MAD)作 死者:1名(蟹座氏) 現時点での予約:2件(◆gu氏、◆/Vb氏 ) 第21回週間ギャルゲロワ(11/30) 先週の主な出来事 l ヽ ,.ィ / / l /l l , , . キ 、 イ // l/,.,l ト、 // , . .キ\ // ./ l____l , /. // ゙、. . キ \. l . / / l ___L__. ,/. . .// ゙、 . .\ \// /´=、Li l. , / / \ . .\ / // ト, ll l. l , / ゙丶、l / // リ.l l i | ll l l l /===‐ァ .l.l l l l ついに出番が来たよ、マ・マー!!!! / l ll. l l l /\ニ.__,、/ リ / l l / l l l. l l , `ー‐ //./ l/ / /l l.l , トハ i、 -‐ / / / / . / / l l ヽ , .l___ , l ゙丶 __/ィ / / / / / l l l iヽ ヽ ̄L¨゙,トi. l// ./l / ̄¨゙゙ ー 、 l. l. l T l /j/l l l / ; ` ー ´ ー- ;;_ l l / l l / ;  ̄フ `-‐‐-‐ ¨゙ヽ 200話突破! 完結まであと少しか!? ギャルゲーを攻略し、首輪解除に成功。なんかスパゲッティが好きそうな人や桑古木が出撃してきました。 次は電波塔攻略合戦!? 熱すぎるぜ。 チャット開催。雑談が本編だったなんて言わせない。 最終話分担制……なんて素晴らしい響き。これは間違いなくキャラが被る。 しかし、うちの書き手のチャット出席率の良さは異常。 先週(11/23-11/30)の投下数:2作 死者:なし 現時点での予約:1件(◆tu4氏 ) 第22回週間ギャルゲロワ(12/8) 先週の主な出来事 | \ | | / / .\\ | | / / \\ _____ / / / ヽ _ヾ} / ___|o ヽ| ←カニ i∧ (o/~~) )x____ ヾ | >ゝ-へニ/##iト---、 _______ ∠` x  ̄ ̄`x#i/ ̄ ̄ / ∠ 彡j |\\ < お持ち帰りぃ~♪ ─── ∠____\ ̄ \ ──── |ニニニニ| }/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |______| / i i i ヽ `¨|¨||¨|¨´ \\ . / ~~| .| \\ // |_| \ .// ~~~~~ レナ「はうぅ~、死者スレにお持ち帰りぃ~!」 カニ「ま、待ちやがれえええええええ!! ボクまだ死んでねえぞ!!」 死亡フラグを統べし皇、ハクオロ。数多の死を乗り越えた彼も、美凪と共にとうとう力尽きた……合掌 次は電波塔攻略戦と、ウグ・カムゥvs武チームか。誤解フラグもあるし、惨劇の悪寒 ギャルゲロワ作品投票のレベルの高さは異常。激戦ってレベルじゃねえぞ! ギャルゲロワ男キャラの女装率の高さは異常。変態ってレベルじゃねえぞ! 先週(12/1-12/7)の投下数:1作 死者:遠野美凪、ハクオロ 現時点での予約:2件(◆/Vb氏、◆4Jr氏 ) 第23回週間ギャルゲロワ(12/14) 先週の主な出来事 / / {/ 丶 \ `ヽ\_\ / / ./ / / / ヽ ヽ \ \ヾ /\ / | / / / / / / } │ | l ヽ ヽ ヽ \ // i// / | | j| / l ハ | | | l ! ハ > l /! レ,′ |_l, 斗匕/ / / !`ト/、_ | | l | l | / j / | i| | ハ {仏ト // ノ仏<| / │! l ∨ ゝ、 / / / | ハ l Ⅳf伏_,イ! 代_ノj/} 〃 / いやだなぁ、まさかこんなか弱い子が l{// ___ 人r小 |ヽ{ {r j| {r i| / // /`ヽ トップマーダーな訳ないじゃないですか……うぐぅ。 |l / ̄ ミヘi| ヽ{ 从 ゞ ,,ン ヾ,_リイ//∠-=ミ小、 \ } /  ̄了二ニ=― -、 cァ, -=<  ̄ ̄`ヽ ヽ __(\{ /. . .├‐-/ . . . . . .\ \ l_______ \| / }} . {{ . . . . . . . . ヘ l | |l l } . { . . . . . . . . i| | / ヾ | i . . {i . . . . . . . . }j /=‐ \ \ j . . \ _____,∠>‐ ´  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ー── ‐一 ´  ̄ ̄ UGu、七人殺しで大活躍の末、死亡! 後半の輝きっぷりは前半からは考えられないほど。 アブ・カムゥと智代&武の戦闘コンビの大迫力バトルはまさに佳境。 アセリア、エターナル化。しかしお姉さまとスパゲッティはどうなる? 速報を待て! さぁついにギャルゲロワも大詰め、しかしもう放送がないのは寂しいやね。 先週(12/8-12/13)の投下数:2作 死者:月宮あゆ、坂上智代 現時点での予約:1件(◆Uc氏 ) 第24、5回週間ギャルゲロワ(12/28) 先週の主な出来事 年末特大合併号! いえ、……ただ先週忘れていただけですorz やはり誤殺フラグと数多の死亡フラグは覆せず、ことみ涙の死亡。 桑古木にボコボコにされた舞、ついに本拠地に乗り込むことが濃厚に。 メカ鈴凛=ターミネーター。リアルに血の雨が降ります。 最終チャット開催。最終話の分担も決まり、書き手さん達は勢作作業に入っている模様。 年末チャット大会開催? 書き手も読み手もワイワイやろうぜ! 先週(12/14-12/27)の投下数:4作 死者:一ノ瀬ことみ 現時点での予約:1件(◆ONi氏 )
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京太郎「こんなにたくさん女の子がいるんだ、俺にも彼女くらい出来るはず…」 京太郎「よし!じゃあハギヨシさんに告白しよう!」 京太郎「って男じゃねえか!ダメだろ!」 京太郎「まあ安価は絶対だしな…どうせ告白しても成功しないだろ…」 京太郎「それじゃあ行ってくるか…」 ハギヨシ「それで話というのは?」 京太郎「いや実はですね…」 京太郎「前からあなたの事が好きでした。付き合ってください。」 ハギヨシ「!?」 京太郎(やべー…言っちまったよ…) ハギヨシ「それは…本気で言ってるのですか…?」 京太郎「はい?」 ハギヨシ「本気で言っているのかと聞いているんです。」 京太郎「え、ええ…もちろんです。」 ハギヨシ「そうですか…分かりました…」 京太郎(怒らせちゃったかな…) ハギヨシ「実は私も貴方の事が好きでした。喜んでお付き合いさせて頂きます。」 京太郎「えっ」 ハギヨシ「それでは服をお脱ぎ下さいませ…」 京太郎「えっ?いやっ、ちょっ…やめ…」 大沼「何をしとるんじゃ!お前ら!」 京太郎「あなたは確か…大沼プロ!」 ハギヨシ「ちっ…邪魔が入ったか…」 大沼「まったく…近頃の若い奴は…ワシも一緒にやらせんか!」ポロンッ 京太郎「」 大沼「ほれ、さっさと尻を出さんか。」 京太郎「ちょっ…やめっ…」 ハギヨシ「お待ち下さい。私の方が先です。」 大沼「なんじゃと!老人に先に譲らんか!」 ハギヨシ「いいえ。こればかりは譲る訳にはいきません。」 京太郎(何なんだこいつら…) 大沼「さっさと譲らんか!この若造が!」 ハギヨシ「いいえ。こればかりは絶対に譲れません。」 京太郎「二人とも落ち着いて…」 大沼 ハギヨシ「うるせえ!黙ってろ!」 京太郎「(´・ω・ `) 」 ハギヨシ「分かりました。ならばどちらが京太郎様を満足させられるか勝負しましょう。」 大沼「ふん…小癪な…まあ良いだろう…」 大沼「それでルールは?」 ハギヨシ「お互いに挿れ合って先にイった方が負けという事でどうでしょうか。」 大沼「良いだろう…ワシに勝負を挑んだ事を後悔させてくれるわ!」 京太郎(今のうちに逃げよう…) 京太郎「やっと逃げてきた…まさか裸のまま追ってくるとは…」 京太郎「偶然警察の人にすれ違わなかったらヤバかったな…」 照「君は確か咲の高校の…」 京太郎「そういうあなたはチャンピオンの宮永照じゃないですか。こんなところで何を?」 照「それはこちらのセリフ。きみこそ何をしているの。」 京太郎「えーとですね…ちょっと危ない奴らから逃げて来たというか…そういうあなたは何を?」 照「「すがきょうたろう」とかいう咲にくっつく虫がいるそうなので始末しにきた。」 京太郎「えっ」 照「ところでまだ君の名前を聞いていなかったけど…」 照「君…名前は?」 京太郎「え…えーと赤木しげるです!」 照「アカギ…?どこかで聞いた事がある名前…」 京太郎「いやちょっと色々とやってるんですよ…はは…」 照「まあすがきょうたろうじゃないならいいよ。」 ハギヨシ「京太郎様…私達から逃げてこんなところで何を…?」 京太郎「お前…どうしてここに…」 照「おい…京太郎とはどういう事…?」 ハギヨシ「フフフ…今度は逃がしませんよ…」 京太郎(色々やべえ!こうなったら狂言を吐いて場を混乱させるしかない!) 京太郎「こいつが須賀京太郎です!錯乱して俺と中身が入れ替わったと思い込んでいるんです!」 ハギヨシ「なっ…」 照「そうなの?」 ハギヨシ「いやそんな訳無いでしょ!」 京太郎「やっぱコイツ錯乱してますよ!咲さんに手を出す前にやっちゃって下さい!」 照「よし…君たちホモセックスしよう…」 京太郎「うんうん!…って何だってええええええ!?」 京太郎「何でそんな事しなきゃいけないんですか!普通に始末すれば良いでしょ!」 照「いやだってコイツをホモにすれば咲に手を出さなくなるし….それに咲も京太郎にホモになって欲しいって言ってたからな。」 京太郎(咲…お前…) 照「さあ始めよう…逃げようとしたら…わかるよね…?」ギュルルルルル 京太郎「うう…」 ハギヨシ「( ´ ▽ ` )」 照「さあ早く」 ハギヨシ「wktk」 京太郎(もう終わりか…さようなら俺の童貞と処女…) 大沼「やめんかお前ら!」 京ハギ照「!?」. 京太郎(げええええ!よりによって今一番来て欲しくない奴が!) 京太郎(ん?待てよ…これを利用して…!) 京太郎「あのチャンピオン…ちょっといいですか?」 照「何…?」 京太郎「実は大沼プロはホモなんです。なので大沼プロとヤらせた方が色々と良いかと。」 照「そうなの…?ならそうしようかな…」 京太郎(よっしゃああああああ!) 照「さあ…早く始めて…」 ハギ 大沼「いやいやいや!」 照「…」ギュルルルルルル ハギ 大沼「はいいいい!」 京太郎(今のうちに逃げる!) 京太郎「やっと家に着いた…もう疲れた…」 京太郎(よく考えたら彼女を作ろうとしたらこうなったんだよな…もう彼女なんかこりごりだ…) 咲「あ!京ちゃんどこいってたの!」 京太郎「おう咲…ちょっと色々とな…」 咲「もう!心配させないでよ!すごく心配してたんだからね!」 京太郎「ごめん…」 咲「本当に悪いと思ってる…?」 京太郎「ああ…当然だろ。」 咲「ならキスして。」 京太郎「えええ?ドユコト?」 咲「本気で悪いと思ってるんでしょ?なら謝るかわりにキスして。ね…?」 京太郎(えーとつまりこれは告白ですか!?咲が!?俺に!?) 咲「早くしてよ…誰か来ちゃう…」 京太郎(こいつこんなに可愛かったっけ…?くそっ咲の癖に!もうやっちまえ!) チュッ 咲「んっ……はあっ」 京太郎(やっちまった…) 京太郎「…咲…何でこんな事を…」 咲「何でって?決まってるでしょ…京ちゃんが好きだからだよ。」 京太郎「そうか…………咲」 咲「何?京ちゃん?」 京太郎「好きだ。付き合ってくれ。」 カン
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. 竜華「ご、ごめん、待った?」 京太郎「全然ですよ、今来たとこです」 竜華「そうなんか、良かったぁ。ほな行こか」 京太郎「おっとまずはその前に……」 竜華「?」 チュッ 京太郎「さ、行きましょうか」 竜華「///」 竜華「なあなあ、今日はどこ行くん?」 京太郎「えっと……まずは映画ですね」 竜華「ええやん、はよ行こ!」グイッ ギュッ 京太郎「うわっ、いきなり掴まないでくださいよ!」 竜華「こうせえへんと迷子になるやろ?」 京太郎「なりませんよ!子どもじゃないんだから」 京太郎「……あ」 竜華「?どうかしたん?」 京太郎「ちょっと……トイレに」 竜華「……」カァァ 竜華「ほなウチ、待ってるから」カァァ 京太郎(かわいい) 京太郎「未だに子どもが何人欲しいかーって聞いても顔真っ赤にするんだよな」 京太郎「清純なのか、むっつりなのか……」 京太郎「まあかわいいからいいけど」 「ギョギョギョギョギョ!」ササッ 京太郎「ん?」 「ギョギョ!」 「科学ノ進歩、発展ニ犠牲ハツキモノデース」 ビビビビビビビビビビッ! 「ギョギョギョギョ!」ササッ 京太郎(竜華)「あれ、今ウチ……」チラッ ポロン 京太郎(竜華)「……え」 竜華(京太郎)「ふぅ……」 竜華(京太郎)「ん?なんか全然出ないような……」チラッ ポヨン 竜華(京太郎)「……は?」 ドタドタドタ 京太郎「え!?」 竜華「なっ!?」 京太郎「ウチ!?」 竜華「俺!?」 京太郎「ウ、ウチがおる……」ワナワナ 竜華「えっと、目の前に俺がいて、竜華さんの関西弁を喋ってるってことは……」 竜華「俺と竜華さんが、入れ替わった?」 京太郎「い、いや、そんなんありえへんやろ」 竜華「でもこの状況はどう考えても……あ、トイレ行きたくなってきたんで行ってきます」 京太郎「やめてぇぇぇえぇぇえええ!」ガシッ 竜華「ぐえっ、力強っ!」 竜華「早くしないと漏れちゃいますよ!」 京太郎「そ、それは……嫌や」 竜華「じゃあ行ってきますね」 京太郎「いやぁあぁああああ!」 竜華「ぅぐっ!」 竜華「わかりました!わかりましたから!こうしましょう!」 【トイレ】 京太郎「は、早くしてーな」 竜華「わかってますよ」ヌギヌギ 京太郎「やっぱりウチが脱がす!」 竜華「えっ!?」 京太郎「京くんは目ぇ瞑っとって!」 竜華「は、はい」 竜華(なんだろうこの状況) 竜華(俺と竜華さんが入れ替わって、俺の身体の竜華さんが竜華さんを脱がそうとしてる、しかもトイレの中で……) 竜華(おかしいだろ) 京太郎「お、終わったで」 竜華「じゃあ出しますね」 竜華(ここは男と同じ感じでいいのかな?)シャァァァ 京太郎(何やろこれ……何か変な感じする……)モゾモゾ 竜華「よし、次は竜華さんですね」 京太郎「へっ?」 竜華「入れ替わったの出す前でしたからね、我慢してたんでしょう?」 京太郎「ぅ……せやけど」 竜華「自分が漏らすとこなんて見たくないんで、早くやっちゃってください」 京太郎「でもぉ……」ジワッ 竜華「」ゾクッ 竜華「失礼しますね」 竜華(つっても俺の身体なんだけど) 京太郎「京くん!?」 ポロン 京太郎「きゃあっ!」 竜華(なんで勃ってんだよ……) 竜華「竜華さん、なんか興奮してました?」 京太郎「興奮……?」 竜華「興奮するとここ大きくなるんですよ」 京太郎「そうなん?お父さんそんなことなっとらんかったけど……あっ、小っちゃい頃に一緒にお風呂入っとったときの話やで!」アセアセ 竜華「まあそれはこの際置いておきます」 京太郎「こ、これどうやって出せばええの?」 竜華「押し出す感じで、ちゃんと便器の中を狙ってくださいよ」 京太郎「う、うん……」ジョロロロ 竜華(映画見て今年用の水着とか買いに行くつもりだったんだけど、これじゃあ無理だな) 京太郎「さっ、はよ映画館行こっ!」 竜華「あーもう待ってくださいよ!」 怜「竜華、何しとるん?」 京太郎「と、怜!?」 セーラ「オレもおるで!」 竜華「セーラさんまで!」 怜「ああ、そういえば今日が初デートやったっけ」 竜華(これはめんどくさいことになる予感……!) 竜華「せ、せやで、ほな京くんはよ行こ!」グイッ 京太郎「またなー怜ーセーラー」フリフリ 竜華「はぁ……はぁ……なんでいるんだあの二人……」 京太郎「もっと話したかったなぁ」 竜華「バレたらどうするんですか!完全にオカシイ人になりますよ!」 京太郎「うっ、それは嫌やな……」 竜華「まあ多分もう誰にも会わないと思うんで、さっさと行きましょう」 咏「お、京太郎じゃーん」 照「竜華もいる」 京竜((言ったそばから!?)) 京太郎「はぁ……ぜぇ……」 竜華「はぁ……はぁ……」 竜華「なんでどこにでもいんだよあいつら……」 竜華「道にも映画館にも店にも、レストランにも……」 京太郎「なんか……疲れた」 竜華「じゃあ膝枕でもしましょうか」 京太郎「ふふっ、いつもとは逆なんやな」 竜華「はい、どうぞ」ポンポン 京太郎「おおきに」ポスン 竜華「気持ちいですよね、竜華さんの太もも」ナデナデ 京太郎「せやな、こんなん初めてや」 竜華「……俺たち、いつ元に戻るんでしょうね」 京太郎「……わからん」 竜華「……あ」 京太郎「どうしたん?」 竜華「竜華さん、俺にキズしてください」 京太郎「へっ?」 竜華「ほらあれですよ、おとぎ話の法則、王子様がキスすると魔法が解けるっていう」 京太郎「ほんまに……?」 竜華「ほら早くしてください王子様」 京太郎「ふふっ、自分のこと王子様って言うんやな」スクッ 竜華「竜華さんにとってはそうなんでしょう?」 京太郎「……せやで」 京太郎「ウチを、ウチが抱えとった重みをわかってくれて、救ってくれたんやから」 京太郎「京くんは、ウチの王子様や」 竜華「その言葉、竜華さんの口から聞きたかったです」 京太郎「何回も言うたるわ、いつでも、どこでも」 チュッ 竜華「ずっと、一緒やで」 京太郎「あ」 竜華「あ」 京太郎「戻り……ました、ね」 竜華「せ、せやな……」カァァ 竜華「……はずい、はずいわ……」 京太郎「そんなこと、ないですよ」 京太郎「ずっと、一緒です」ギュッ 竜華「……うん」カァァ 京太郎(かわいい) .
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注意 安価、コンマスレのまとめなので話が途中でわからなくなることがあります 詳しくは下記の元スレを参照 本まとめはセリフのあるレスのみを抜粋しました(だいたい) 変なところで区切れていますがご了承ください(時間があれば、また修正します) この物語はループものです | | は 安価です、修正がめんどくさいので…時間があれば修正します だいたい1時間で適当にまとめました、ミス多々あります 始めに 京太郎「ヤンデレ……?」0 本編 京太郎「ヤンデレ……?」1 京太郎「ヤンデレ……?」2 京太郎「ヤンデレ……?」3 京太郎「ヤンデレ……?」4 京太郎「ヤンデレ……?」5 京太郎「ヤンデレ……?」6 京太郎「ヤンデレ……?」7 京太郎「ヤンデレ……?」8 京太郎「ヤンデレ……?」9 京太郎「ヤンデレ……?」10 京太郎「ヤンデレ……?」11 京太郎「ヤンデレ……?」12 京太郎「ヤンデレ……?」13 京太郎「ヤンデレ……?」14 京太郎「ヤンデレ……?」15 京太郎「ヤンデレ……?」16 京太郎「ヤンデレ……?」17 京太郎「ヤンデレ……?」18 京太郎「ヤンデレ……?」19 京太郎「ヤンデレ……?」20 京太郎「ヤンデレ……?」21 京太郎「ヤンデレ……?」22 京太郎「ヤンデレ……?」23 京太郎「ヤンデレ……?」24(終) 京太郎「ヤンデレ……?」座談会 元スレ -京太郎「ヤンデレ……?」【安価】 京太郎「ヤンデレ……?」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398960866/ 京太郎「ヤンデレ……?」照「その2……」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399179751/ 京太郎「ヤンデレ……?」霞「その3ね」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399656717/ 京太郎「ヤンデレ……?」白望「その4……だるっ」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400606625/ 京太郎「ヤンデレ……?」ゆみ「その5だな」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401001615/ 京太郎「ヤンデレ……?」洋榎「その6やでー」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401377079/ 京太郎「ヤンデレ……?」煌「その7……すばらな数字です」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402751995/ 京太郎「ヤンデレ……?」怜「その8や」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403445335/ 京太郎「ヤンデレ……?」衣「その9だ!」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404540082/ 京太郎「ヤンデレ……?」小蒔「その11……復讐……ですか?」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406217308/(10スレ目) 京太郎「ヤンデレ……?」淡「その130……なんてねっ」【安価】 http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407660402/(11スレ目)