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「おはようございます」 「おはよ、のっちv」 大きなテーブルで食事をして、学校に向かう準備をする。 「お嬢様、このブラウス少しシワが」 「あー…本当だ」 「新しいのをお持ちします」 そう言って、のっちはウォークインクローゼットの中に消えてしまった。 「のっち?良いよ、これでぇー」 クローゼットに向かって叫ぶと、中から小さくのっちの声が聞こえた。 「ダメですよ!樫野家のお嬢様が、シワの入った服なんてっ」 だって、背中だよ? ブレザー羽織ったら解んないじゃん 背中を鏡に映し見る。 と、 「どわっ!」 ゴトンッガラガラ のっちの叫び声と共に何かが落ちる音がした。 「のっち?!」 慌てて、中に入ってみると、のっちは大量の衣服に埋もれていた。 「大丈夫?」 「はい…破れてはいないと思います」 「服じゃなくて、のっちWW」 「あっ、はい私は大丈夫です」 ばつが悪そうに、頬を赤くするのっち。 「ふふっWW立てる?」 私はのっちに手を差し出す。 「すみません」 のっちは苦笑いをして、その手を握る。 起き上がらせようと力をいれると… 「キャッ」 反対に私が倒れてしまい、、、 「「!!」」 一瞬、何が起こったか理解が出来なかった。 でも、鳴りだす鼓動… 触れ合う唇からの温もりで、キスしているんだと解った。 私はのっちから素早く離れる。 「ごっごめん///」 「いえ、すみません///」 お互い顔が真っ赤。 てか、心臓が痛いくらい鼓動してる。 ヤバい、ヤバい! 「ブラウス、これで良いよ!」 「はっはい…」 「先!先、玄関行ってるね!」 恥ずかしさと気まずさで、私は部屋を飛び出した。 ヤバい!何よコレ! キス、なんてしちゃったら…/// 学校に向かう車の中、私はのっちとまともに目も合わせられなくて、ずーっと窓の外を見つめていた。 だって、のっちの顔みたら、思い出して…ヤバい、ゆか、今顔真っ赤になってる。 「お嬢様?」 「ん?」 そんな顔見られたくなくて、窓の外を見つめたまま素っ気ない返事をしてしまう。 「先程のこと、、、」 —…ドクンッ 「不愉快な思いをさせてしまって、すみませんでした」 —…なにそれ 「別に良いよ」 「しかし、、」 「良いってば!!」 怒鳴った私をのっちは大きな瞳をさらに大きくして見つめていた。 でも、すぐハの字眉の悲しそうな顔をする。 「すみません、お嬢様」 お嬢様…。 貴女に呼ばれると、こんなに苦しい。 のっちは私を名前で呼ばない。 いつも、お嬢様って。 なんでも良い… ゆかちゃんでも、 ゆか様でも、 ゆかお嬢様でも、 名前を呼んでほしい。 机に頬杖ついて、そっと唇に触れる。 のっちは嫌、、だったのかなぁ…。 「ゆかちゃん?」 名前を呼ばれて我にかえった。 「大丈夫?」 あ〜ちゃんが心配そうに顔を覗き込む。 「うん、大丈夫」 いけない、あ〜ちゃんとお昼の最中だった。 「なんかあったん?」 「別に?なんも」 「嘘じゃね」 ビシッ! 「恋煩いじゃ!」 あ〜ちゃん、お箸で人指さないの。 「誰だれ?」 「いや、違うからW」 「え〜?嘘よぉー」 「嘘じゃないよ」 「ふ〜ん」 あ〜ちゃんはまだ納得出来ないような、疑ってるような目でゆかを見る。 てか、言えないよ。 だって…あ〜ちゃんは多分のっちのこと… のっちもあ〜ちゃんだったら… —…だったら、なに? あ〜ちゃんだったら… 違うよ…そんな事じゃない… 大体、のっちがあ〜ちゃんを想っている訳じゃないし… あ〜ちゃんだって、私の勘違いかもしれんし… —…結局、私は何に悩んでるの? のっちはいつも側にいてくれてるじゃん… 誰よりも近くに… 私は何が不満なの? 「嫉妬じゃん?ただの」 「なにが?」 「あ〜ちゃん!」 放課後の教室。 辺りに生徒は既に居なくなっていて、いつの間にか流れていた時間に気づかなかった。 「なんでもない」 「そう?じゃあ良いや。あ〜ちゃん今日、先生に呼ばれとるから先帰っとって」 「あー…うん、わかった」 そっかぁ…もう放課後かぁ…。 正面玄関まで来ると、正門が騒がしいのに気が付いた。 何事かと目を凝らすと… 「のっち…」 のっちが正門まで迎えに来てくれていた。 今日は車の日じゃないのに…。 入学当初、毎日車での送り迎えだったが、やはり友達と帰れないのは辛い。 危ない、とのっちは心配したけれど、我が儘を言って週に三回は歩いて帰っている。 今日は歩いて帰る日。 なんで、居るんよ…。 のっちは数人の女子生徒に囲まれて何か喋っていた。 相変わらずモテるなぁ…。 私は、そんなのっちが嫌だった。 いつもは、自慢なのに…。 今日は、、、嫌だった。 「バカみたい」 私は呟いて、履きかけた靴を手に校舎へ戻った。 吹奏楽部の音が漏れる廊下を抜け、体育館との渡り廊下から外へ出る。 テニスコートの脇を通り過ぎ、駐輪場を縫って、裏門から校内を出た。 それから、一度も振り返らなかった。 遠くでのっちの呼ぶ声が聞こえた気がしたけど、、、私は振り返らなかった。 少し寒い風が吹く中、私はお嬢様の学校の正門にいた。 今日が歩いて帰る日だと言うことは解っていた。でも、どうしても朝の事が気になって…。 「のっち?」 「綾香様」 待ち人ではなかったけれど、助かった。 綾香様の出現に、私を取り巻いていた生徒さん達は名残惜しそうに去っていった。 「相変わらずモテるね〜」 「いえ、」 「ん?ゆかちゃん待ってるの?」 「はい」 「てか、それしか無いかW」 「はいW…あれ?一緒ではないんですか?」 いつも一緒の二人が一緒じゃないなんて珍しい。 「あ〜ちゃん、先生に呼ばれとったんよ、、、だから先帰っといてって言ったんじゃけど…」 「まだ来てませんね」 「下駄箱見てくる」 トタトタと小走りで走っていく綾香様。 数分後、同じくトタトタと戻って来られた綾香様は少し渋い顔をして 「無かった」 と言い、 「歩いて帰ったんかなぁ」と続けた。 でも、ずっと此処で待ってましたよ? ずっと此処で… お嬢様?気づいて下さらなかったのですか? お嬢様… 力無く車に乗り込み、運転手に帰るよう伝える。綾香様をお送りすると言う気遣いも出来ぬほど、私は落ち込んでいた。
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ミサコちゃん / ミサコちゃん 【ミサコちゃん】 ポップンミュージック20 fantasiaで初登場したキャラクター。 WE LOVE ポップンミュージック みんなでつくって20 ~アーティストはキミだっ!~のキャラクターデザイン部門で採用されたキャラクターの1人で、原案者はずずも氏。 ミサコちゃん / ミサコちゃん 誕生日 担当曲 ポップン20 アクション キャラクターポップ 台詞 ネット対戦 関連キャラ、用語リンク 出身地 魔界 趣味など マネキン集め。日記(見ちゃダメ!) すきなもの 真っ赤なイチゴとあの子 きらいなもの 覗き見・・・呪う・・・ このキャラクターが採用された楽曲では、当初は「Des-ROW」というアーティスト以外は全く無い形で募集がされた。 その結果、枠にとらわれない個性的なイラストのキャラクターが集まったが、その中で一見ポップンらしかぬブキミさとかわいさの同居した独特なキャラ造詣に加え、オカルトっぽさのある設定のインパクトでスタッフ、ユーザー共に強烈な印象を与え、見事採用された。 担当曲のアーティスト名にもあるように、キャラクターのイメージから楽曲を作っていることがわかるので、まさに企画から生まれたキャラクターといっても過言ではない。 誕生日 8月2日 パンツの日に由来。アクションの一部でパンツがモロ見えするので、その影響だろうか? 担当曲 呪エモ? [ミサコの告白(みーつけたっ♥)] [POP TEAM EPIC] [ド屑]#? ポップン20 スカートをぬけると そこは 魔界であった ポップン20公募企画で採用されたキャラクター。 作者の好きな少女・中二の要素を設定に取り込んでいる。 作曲者のDes-ROW的には、口の曲がり具合と左目が赤いのがポイントとのこと。 セーラー服とロングヘアーという学生ルックだが、青白い体に左右で形と色の違うオッドアイを持つ不気味な容姿の少女。 外見としては一見、「さよなら絶望先生」(久米田康治)の 木津千里 (きつちり)を髣髴させる。 しかし、その正体は魔界のプリンセス。 立派な魔界の王女になるために、勉強と偵察を兼ねて人間界へやって来たのだ。 年齢は人間界単位で17歳、魔界では秘密。 スカートの内側の空間が魔界と繋がっており、脇腹に収納された拡声器を取り出し、スカートの内側から飛び出してきた魔界の魔物たちを操る。 赤い下着が好み。 履いている靴のローファーは5mmほど浮いている。 普段は無表情だが、怒ったときは般若のような顔になり拡声器で発狂する。 こんなプリンセスでも恋する魔界乙女でもあり、下駄箱にお人形とか部屋にマネキンとかを苺を添えてそっと置く、といった愛情表現をすることも。 放課後の教室や理科室、近所の病院で魔界の住民たちと世間話をするのが日課。 標本や注射器が好きで、爆音中毒。 以下のようなこんなこともしている。 知らない人の隣で体操座り 鏡や写真にうつりこむ 屋上で日記を書く。日記は見てはいけない。 原案イラスト(pixiv) 採用者描きおろしイラスト(pixiv) ニュートラルのアクションを控えめにして、他のアクションとのギャップを出すことを意識したアニメーションである。 動きのアイデアがほぼそのままアニメーション(アクション)に生かされている。 最優秀賞として採用されたこのキャラクター以外では、アクションの一部でノミネートされたユーザーの作品の一部やキャラクターを生かしている。 特にWIN・FEVERWINではカラーによって全く異なったアクションになっているのも特徴。 2Pカラーは黄色・青のセーラー服とオレンジの髪となっている。 ポップンミュージックカードの【ミサコちゃんがいっぱい】に記載されているラッキーコードで出現するカラーは、赤をベースとした配色になっており、このカラーでしか出てこないノミネートのキャラクターが出てくるアクションがある。 やはり下着の色は3Pでも変わっていない。 アクション アクションの一部は、ノミネートされたキャラクターの原案を基にしている。 NEUTRAL 瞳を閉じて首をコキコキ。 GOOD スカートから黒い何かが出てくる。 GREAT 拡声器で魔物を呼び出す。●1P・2P:ホアード(川辺美々氏の案)とせんべい丸(ミクルク氏の案)●3P:しゃお(ねこめし氏の案) FEVER 青黒く色が反転した状態で、画面に背を向けてしばらく歩く。1Pカラーでは単独だが、2P・3Pだと連れているキャラクターも。●2P:のぞみ(くろはね氏の案)を連れている。●3P:河流(みどり氏の案)を連れている。 MISS スカートがめくれ上がって、パンツが丸見えに。さらに顔(や手)が赤くなる。そのときの顔はめくれたスカートで隠される。同時に魔界のしもべも溢れ出てくる。しもべはG.D.P(百氏の案)、なすびーむくん(ぱるぷ氏の案)、ポテマル(虹色帝国氏の案) JAM 下記と基本的に同じなので参照。 DANCE 拡声器で様々なしもべを呼び出す。ミサコちゃん自体は固定だが、しもべの現れ方が視界をさえぎるように突然現れるタイプ(しもべは半透明)。やや全体難。しもべはホアード、せんべい丸、ポテマル、喪助(むし氏の案)、カミツキオオカミ(umiu氏の案)。さらに3Pカラーではジャンシー(皿氏の案)も登場 WIN スカートの中から出てくる魔界からの宅急便(箱)で魔界のドレスを着て、プリンセスに変身。持っているものや出てくるしもべがカラーによって変わる。●1P:SPD(ユズコ症氏の案)のアイテム。●2P:BOX BOY(ほたて氏の案)という箱に加えて、持っているものがDGG(+-0氏の案)のアイテムである、先端が鎌の形をしたギター。●3P:くろはね氏の案のアイテムの箱が出てきて、エドワード(K氏の案)も現れる。 FEVERWIN 「魔界のプリンセス……?」のセリフの後に笑っている。 LOSE 雷が落ちて顔が般若化。ずずも氏の案。 キャラクターポップ 下段が黒、上段がオレンジの色違いタイプ。 お邪魔背景・ダーク背景に下段のオブジェが溶け込みやすい。 台詞 ネット対戦 攻撃 出ておいで! ダメージ の…のろい GOOD チラ… BAD パンツ!! WIN イヒウフフ… LOSE ビシャーン! 公募キャラ3人はpm20のカード第2弾でレアカード化しているが、このキャラクターはpm20のカード第3弾「【キラキラ★SUMMER★BEACH】」にもさりげなく描かれている。 関連キャラ、用語リンク 雷蔵 キャッスル WE LOVE ポップンミュージック みんなでつくって20 ~アーティストはキミだっ!~ このキャラクターが描かれているレアカード 【病み闇!?ガールのキノコなサバト★】 【ミサコちゃんがいっぱい】 【キラキラ★SUMMER★BEACH】 キャラクター一覧/ポップンミュージック20 fantasia
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天城 真琴 あまぎ まこと 天城 真琴データ システムデータ 容姿に関する設定 設定 データ 名前:天城 真琴(あまぎ まこと) 年齢:17歳 性別:女 身長:166cm 体重:55kg スリーサイズ:B86/W62/H88 髪:黒色 肌:白色 瞳:黒色 誕生日:4月19日 所属クラブ: 図書委員 クラス: 1人称:私 システムデータ スタイル:◎チャクラ・●エグゼグ・エグゼグ 一般技能:メルクーア、売買 容姿に関する設定 漆黒のストレートロングに、切れ長の目が特徴的で、ぱっと見はきつめの美人、という印象。非常に上品で落ち着いたところがあるので、大人な雰囲気がある。 お金持ちのお嬢様で美人、成績優秀で運動神経も抜群、人当たりもいいと来て、どんだけチートなんだよ!って感じの女子だったんだよねぇ。 女子の間ではやっかみもあるにはあったから敵もそれなりに多かったけど、なにしろ素直な子だったから味方もそれなりにいてトントンって感じ。 難点をいうなら、何があったのかえらい男嫌いでねー。夏休み前辺りなんて相当ひどかったんだけど、夏休みがあけた頃にはなんだかマシになってたんだよね。 噂によると超イケメンの彼氏ができたとか何とか……なんというお嬢様の大冒険によるひと夏の経験!でも、なんだか表情も柔らかくなってきたし、そんなに彼氏ができるってのはいいものなのかねぇ……く、くそう、羨ましくなんてないんだからね!(新聞部調べ 設定 天城 真琴はいわゆるお嬢様である。父親はメルクーアの重役であり、母親は早くに亡くなってしまいはしたが、何不自由なく生きてきた。 大人しそうな外見に反して、意外に活発で移り気なところがあり、習い事の類はあまり続かなかった。が、一つだけ長く続いたものがあった。 小学校の頃、同級生の家で遊んだゲームの登場人物がかっこよかったので、父親に頼んで始めたジークンドーである。父親の方も護身術になるだろうと、反対はしなかった。 アメリカから招かれた先生に習い、真琴は瞬く間に実力をつけていった。先生はしっかりとした基礎固めを終えると契約満了で去っていったが、その後も真琴はあきる事無く練習を続けていた。 やがて成長した真琴は父親の勧めに従って高天原学園へと入学した。父親としては娘にセイバーの片鱗を見ていた、というのが高天原を勧めた理由ではあるのだが、これが結果的に悪かったと後に大幅な後悔をする事になる。 中学の時もそうではあったが、高校に入ると真琴は多数の男子から告白を受ける事になった。 小説や漫画で読む分にはいいが、自分にはそういうのはむいてない、と思っていた真琴は端からその告白を断った。 その多数の中の誰かだったのか、あるいはそれ以外の誰かなのか。 真琴は地味な嫌がらせを受けるようになった。 最初はものを隠されたり、盗まれたりする程度だったが、だんだんとエスカレートし、やがて彼女しか知りえないつまらない秘密(昨日家で読んでいた本や計った体重等)を前提とした脅迫まがいの手紙が下駄箱に入れられる事態にまで至った。 いわゆるストーカー被害であったが、真琴は誰にも相談しなかった。父親に心配はかけたくなかったし、やはり相談者に塁が及ぶのを恐れた。 だが、精神的なストレスは尋常ではなく、それは理屈もない『犯人は男子の誰か』という思い込みから男子への攻撃性として現れた。 高校に入り、1年1学期の間の真琴は非常に男嫌いで有名になるに至り、学校に通うのにも支障が出始める寸前あたりで夏休みになった。 夏休み中も散発的に嫌がらせは続いていたが、図書館で偶然出会った男性がその運命をあっさりと変えてくれた。 高いところの本をとろうとして難儀していたところ助けてくれた、という実にありふれた出会いではあったが、出会った男性はありふれていなかった。 この時期になると病的なレベルに達した男性嫌いがまともな対応を許すはずもなく、真琴は非常にきつい口調と態度をその男性にぶつけてしまった。 だが、彼は「ああ、つかれてるんですね、かわいそうに」と一言だけ返すと、いきなり手をあげた。 反射的に真琴は彼の急所へと一撃を入れた。続けてきたジークンドーは間違いなく彼女の身になっていた訳だが、一撃を受けると同時に彼は真琴の首筋あたりから何かを引きずり出した。 首筋を押さえ、わが目を疑う真琴に「これは古い蟲の一種ですね。誰かにのぞかれてる様な気がしたりしてませんでしたか?」と前かがみになりながら彼は言った。 彼の中性的な顔立ちが良かったのか、得体の知れぬ蟲が思考を麻痺させたのか、あるいは人の良さそうな感じがよかったのか、ともあれ真琴は彼と話を聞く事にした。半信半疑ではあったが、一番最初に謝罪をしてからだが。 真琴は何者かが放った蟲を介してのぞき見され、それを元にストーカー行為を受けていた、という事がわかった。何をどうすればいいのかもわからなかったが、彼が対応してくれるとの事だった。 結論からいくなら真琴の身の周りにあった蟲はすべて彼の手によって排除され、真琴は数か月ぶりの平穏を得る事ができた。 犯人はわからなかったが、ともかくこれ以上ストーカー行為を受ける事がないというのが本当に嬉しかった。 どうして助けてくれたのか、もちろん真琴は尋ねたが、本当かどうかはわからないが彼はただ放っておけなかったとだけ答えるのみだった。 お礼をして、図書館で会って話して、なんて事を繰り返しているうちに、自然と真琴は彼に心を奪われていった。 それに気付いた真琴の対応は早かった。自由に会える夏休みが終わる前に真琴は告白したのだった。 そして2学期が始まり、真琴の告白断り文句には「好きな人がいますんで」という文言が追加される事になった。 なお、迷う事なく真琴は防人になる道を選び、ジークンドーをベースにした格闘戦の実力をいかんなく発揮している。 告白の結果は彼女が語らないため何とも言えないが、いずれにせよ今の彼女の原動力になっているのは間違いない。 ストーカー犯人は未だ知れず、火種はいくばくか残ってはいるのだが、少なくとも真琴は今、前を向いて歩き続けている。
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季節の変わり目は風邪にかかりやすいというが、本当らしい。のっちのクラスでも、ぽつぽつと空席が出るようになっていった。 クラスが違うあ〜ちゃんとの連絡は、殆どがメールである。急用の際に、たまに電話を使用する程度で、メールが多い。朝は、あ〜ちゃんはバスで、のっちは自転車で登校するから会うことはない。だから実際あ〜ちゃんとのっちが一緒に過ごす時間は、昼休みと放課後のみである。 そんなあ〜ちゃんから珍しく早朝にメールが届いていた。不思議に思いながらもメールを開くと、『ごめん、風邪引いてしもたけえ、今日学校休むわ。』と書いてあった。のっちは凹んだ。がくりと肩を落として朝ごはんもろくに食べないでいたら、母親に「遅刻するから早く学校行きなさい。」と言われてしぶしぶ家を出た。 学校に着いてからも一向にテンションは上がらなかった。捻くれ者ののっちは、あ〜ちゃんがいない学校なんて行かないほうがマシだ、と登校中何度も引き返そうとしたが、のっちが学校に行ってないことをあ〜ちゃんが知ったら、きっとのっちを叱る。叱られて「何で学校行かんかったの。」なんて聞かれたら、その理由を答えられない。だからのっちは学校に行くことにした。 4限目までの授業を全て睡眠学習し、昼休みになるとすぐさま教室を出た。何だか今日はとても居心地が悪い。行く当てもなかったので、廊下で立ち止まって携帯電話を開く。朝はバタバタしてメールの返事を返せなかった。のっちはあ〜ちゃんに返信する。 『大丈夫? 熱はないの? 今日はゆっくり休んでね。』 昼休みの隠れ家だった屋上も、あ〜ちゃんがいなければ入ることは出来ない。何だかのっちは自分の無力さ、あ〜ちゃんがいなければ何も出来ない自分に呆れた。 ふと、寂しくなった。恋しさのあまり、知り合いを探した。まだお弁当も食べていない。のっちは、とにかく人気のなさそうな場所でお昼ご飯を食べることにした。階段を降りて下駄箱に降りたら、その先の廊下の保健室からゆかが出てきた。ヒト恋しかったのっちは、何も考えることなくゆかの元へ駆けていく。 「ゆかちゃん!」 「あれ? のっちじゃん。どしたの?」 「あ〜ちゃんがね、今日休みで、のっち暇なんだ。」 「じゃあ一緒にご飯食べる?」 「うん!」 誘われて尻尾を振る犬のように大きく頷いた。ジュースを買いに行くゆかの後ろにのっちはついていく。嬉しさが滲み出る。ジュースを買いに行って、裏庭の人気のないベンチで2人は昼食をとることに決めた。すると、ゆかは突然尋ねる。 「のっちさあー、いつからあ〜ちゃんのこと好きなの?」 「えっ…と、中学2年の、冬、とか?」 突然の質問に思わず口に入れたばかりのたまご焼きが、喉に詰まりそうになった。そんなのっちの様子をかわすかのように、ゆかの質問は続く。 「どこが好きなん?」 「か、かわいいし、やさしいし。いい子だし。うーん…よくわからんけど、好きなんよねー…」 自然とのっちの表情は、変わる。目を細めて嬉しそうにゆかに話す。するとゆかは、視線をスッと落として言った。 「てゆうか、付き合ってないの?」 今度こそのっちの喉は、から揚げで封鎖された。ゲホッゲホッ、鈍い咳をしながら首を押さえるのっちを、慌ててゆかは背中を擦って心配そうに見る。やっとのことで喉を通ったまだ大きいままのから揚げが、食道を下っていくのがわかってのっちは少し気持ち悪くなった。 「んなわけ、ないっしょ!」 「なんで? めちゃくちゃ仲いーでしょ。」 「…あ〜ちゃんは、女の子を好きにならんよ、きっと。」 それらしきことは言われたことがあった。 のっちがいちばん好きだよー、とか、のっちが恋人だったらいいのになー、とか。その度にのっちの胸は、素直に弾けて飛び跳ねるのに。肝心なことは何一つないまま3年目の片想いをしている。 「ゆかはてっきり2人は付き合ってるもんだと思ってた。」 「そう見えた?」 「うん、見えた。」 食べ終わったコンビニのパンの袋を手に、ぶらぶらしているゆかの足を無駄にのっちは見ていた。ゆかの視線も同じように落とされて、ぶらぶらしているゆか自身の足を見ている。 「告白しないの?」 「しないよ。」 「何で?」 「…あ〜ちゃんに嫌われるのが、怖い。」 視線を落として、切なげに目を細めるのっちをゆかはちらりと見て、質問を止めた。そっか、と小さく呟いて沈黙だけが2人の時間を進めていった。 放課後になってのっちは、初めてあ〜ちゃん以外のヒトと帰る約束をした。ゆかだ。 自転車置場でゆかが来るのを待っていると、ゆかが短いスカートをひらひらさせながらのっちの元へやってきた。 初めて、のっちはあ〜ちゃん以外のひとを自転車のうしろに乗せた。あ〜ちゃんの専用席だったそこを簡単に誰かに譲ってしまうなんて自分でも驚いた。 あ〜ちゃんは、いつも横向きに座ってのっちの腰に腕を巻きつけて乗る。一方ゆかは、その短いスカートから今にもショーツが見えそうになるのにも関わらず、うしろに立って乗った。のっちの肩にしっかりと捕まって自転車が走り出すと、あ〜ちゃんとは違う香りが空気を舞った。レモンのような少し甘酸っぱい爽やかな香り。ゆかに香りのことを尋ねると、「グリーンティーの香水つけとるんよ。」と答えた。のっちはこの匂いをあまりにも気に入った為、銘柄とかビンの形だとかを詳しくゆかから聞き出した。 「ねえー、のっち。」 人通りの少ない路地を走っているとき、ゆかがのっちの名を呼んだ。 「なに?」 「あのね、」 「うん。」 「ゆかの好きな子も、女の子なんだ。」 いつもなら、驚いたはずだった。 この間、あ〜ちゃんから稲垣くんに告白されたと聞かされたときと同じように、振り向きたくてたまらなくて、自転車を止めてしまいたくてたまらなくなるはずなのに。のっちの気持ちは穏やかだった。ひとと同じ時間を共有して、こんなにも落ち着いたのは初めてだった。 「そうなんじゃ。」 「じゃけえ、のっちといっしょ。」 振り向きはしないけれど、のっちには容易くゆかの表情が想像出来た。のっちは勝手に切ない顔をしてるんだろうな、と考えていた。 夕日に紅く照らされた2人。その影が長く伸びていて、哀愁漂っていた。
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芽比木市(めひきし) 人口15万人ほどの中堅都市。旧城下町。 盆地にあたり、西にある「端前山(はなさきやま)」から東一帯に広がる平地120平方キロメートルを占める。 「端前山」のふもとには城跡が残り、南北に貫く国道59号線と、それに並走する鉄道で通過の際、常にその姿を目に留めることが出来る。 国道と鉄道は街の中心を南南東から北北西に貫くように直線で築かれている。鉄道が西側、国道が東側にそれぞれ配置されている。 芽比木駅はちょうど城跡の直線上に作られ、駅から東西一直線に伸びている市のメインストリートは、東西の山のふもとまで伸びている。 市内に5つの高校、7つの中学、10の小学校があり、高校はうち2校が私立校である。 芽比木市は旧比木市(ひきし)と旧芽前村(めさきむら)が合併し新設された都市である。 旧芽前村は端前山一帯に広がっていた山村だったが、1999年に大規模な山火事が発生、村民約700人のほとんどが死亡、行方不明となり、旧比木市民の一部にも被害をもたらす大惨事となった。 旧比木市、及び政府は翌2000年、合併による復興に着手、芽比木市を新設。2009年現在は惨事の碑を置くと共に、同山を桜の観光名所としてPRしている。 また同市は災害に対する意識を高めるため、児童施設、養護施設、災害体験施設の布設を行うなど、福祉関係の政策を積極的に行っていることで知られている。 星住高等学校(公立) 葉留と歩鳥が通う市内の公立高校。普通科と理数科が存在する。 フラワーショップNii 芽比木駅東口商店街から北に一本入った先にある、市内では数少ない園芸店。暮崎夕子が経営している。2005年オープン。 芽比木駅の内部にも園芸店が敷設されているため客足はあまり多くないが、地域住民や墓参に訪れる客を主なターゲットとしている。 特に盆と彼岸はかきいれ時で、普段は開店休業状態の店先もこの時ばかりは大忙しだとか。 店周辺は住宅街が並んでおり、人気も多くない。駅から墓参に向かう途中必ず通る道であるため、立地条件としては良い。 「Nii」の名は故・暮崎昭良が名づけたもので、「くれさき」に「い」と「に」を足すと「きれいにさく」になる。 営業時間 年中無休 10:00~20:00 (繁忙期) 9:00~19:00 公立災害児童福祉施設「芽ばえ」 1976年施工。最大収容人数75人(児童50人、常駐職員25人) 2000年の合併後の政策により、一部改修、増築がされた。 2009年9月現在、16名の児童と4名の常駐職員が生活し、2名の非常勤職員が勤務している。 寝室は児童用二人部屋が20室、一人部屋が10室、常駐職員用が15室、宿直室が5室、非常勤職員用仮眠室が5室。 二階建てで、児童の使用する設備は全て一階に集中しており、児童が二階にあがることは通常ない。さらに一階と二階とを繋げる階段は院長室と玄関口の間にあり、階段の手前にドアが作られ施錠されている。 施設は全て一つに繋がっており、上から見るとやや歪な「エ」の字になる。 門をくぐり玄関を開けると、4畳半程度の横に広い下駄箱の配置された玄関口が広がっており、児童職員はそこで履物を換える。 玄関口を中心に十字路になり、正面は通路と大広間、大食堂が通路の左右に配置されている。右側は児童用寝室(6歳~12歳)、左側は職員室、院長室、医療室、ボイラー室、大浴室、職員用宿直室がある。 正面の通路を突き当たりまで行くと再び左右に通路。「エ」の上部横線にあたる。右は6~12歳、左は12~18歳用二人部屋寝室と、15~18歳用一人部屋寝室がある。 各通路ごとに男女トイレ、小談話室が用意されている。 二階には常駐職員用の寝室、給湯室、談話スペース、非常勤職員用仮眠室がある。 現在は、16名の児童の内6歳~12歳の12名で3グループ、13歳~18歳の4名の1グループと、部屋割りごとに4グループに振り分けられている。 施設全体でのイベントや催事の際は施設中央の大広間で、グループごとに行われるイベントは通路ごとに用意された談話室にて行われることになっている。 (例.クリスマス会、誕生会、歓送迎会など→大広間/映画や紙芝居などの鑑賞会など→談話室) * 児童用寝室 児童用は二人部屋、一人部屋共に10畳ワンルームの洋室、フローリング敷。二人部屋の角部屋が8室、一人部屋が4室あり、角部屋は共通のベランダ窓の他に出窓がある。ドアは内開き。 二人部屋には二段ベッド、勉強机が二つと、衣類収納用のタンスが2セットあるのみで、テレビやゲームなどは談話室で行う決まりになっている。 なお携帯ゲームも自室ですることは禁止されていて、しばしば自室に持ち込んで遊んでいるところを職員に見つかり没収、ということがあるとか。 それ以外の私物の持込は、日用品や消耗品を除いて、購入する場合職員の許可を得る必要がある。 (家具、1万円以上のもの、ペット、大きな音を発するもの、電子機器など) 15歳以上で、尚且つ学校での素行に問題がない児童に限り、一人部屋の利用とある程度の自由が認められている。 一人部屋はベッドにナイトランプがつき、少々タンスのサイズが大きくなるだけで、他は二人部屋とは差がない。 起床時刻は全員一律6時半。職員は5時半。消灯時刻は年齢、学年によって変動する。 6-8歳(小1-小3):20時半 9-12歳(小4-小6):21時 13-15歳(中1-中3):22時 16-18歳(高1-高3):24時 また、20時半以降は原則として児童は談話室と自室、大浴室以外の出入りが禁止されている。 * 大広間 大居間とも。児童の間では「おいま」と呼ばれている。24畳。 平日の夕方から夕食前まで、休日の日中から夕食前まで開放されていて、主に小学生の児童が走り回れる空間としてあてがわれている。 * 大食堂 大広間と対になる部屋。24畳あるが、人数が少ない為現在は半分をスライド式の壁で遮り、物置になっている。 12畳のうち4畳が台所、残る8畳に16人がひしめくせいで、時折物置を片付けてくれと要望が来るとか。
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side nocchi 学園祭10日前。 「のっち、おはよっ。」 下駄箱で朝からゆかちゃんに遭遇。ラッキー。いつもながら髪の毛サラサラでいいねぇ。 「おはよー!あれ?あ~ちゃんは?」 「うん、それなんだけど。」 そう言うとゆかちゃんは素早くあたしの制服のリボンを引っ張って体を寄せた。 いい匂いだぁ... うっとりしちゃうよ。 「のっち、あんたあ~ちゃんに何したん?不機嫌っぽいよ。」 耳元で囁くゆかちゃんの声は、いつもの甘さの中に刺を含んでいた。なんか怖いんですけども。 ...って あたし何もしとらんよねぇ?昨日も上機嫌で別れたし。 「何もしとらんよ? あたしの所為っぽかったん?」 「いや、分かんないけど。あれはのっちの事考えてるときの顔じゃった。」 えぇっ!?こういうときのゆかちゃんのカンはまず外れてない。何したんよ、あたし! ゆかちゃんはあたしを離すと、さっきまでのふわふわな声に戻っていた。 「じゃあ、後で教室でねぇ。」 「あぁ、うん...」 思い当たるところが無い。何だ? その時ケータイがポケットの中で震えた。一件のメール。 「なんだ、クーポンか。レンタル新作半額じゃ!ラッキー!」 ん?メール? 昨日あ~ちゃんとメールしてたよね。昨日のメールの内容確認。 8時半頃からやりとりが始まって...11時であたしが寝て... ヤバい。最後返信してない。最後の内容なんだっけ?急いで最後のメールを開く。 「のっちアタシの事嫌いになったん?」 はぃ!? 寝ぼけてたからその前後の内容が思い出せない。 しかもなぜかそれの前のメールがすべて消去されていた。 これに返信しないってヤバすぎる。 あたしは教室に駆け込んで、ダッシュでゆかちゃんのところに行った。 「のっち、心当たり見つけた?」 既に笑顔がコワい。悪魔の微笑になってる。 あたしは事の一部始終を説明した。 「はぁ... 本物のアホじゃね。どーやったらそんな深刻な話忘れるん?」 ゆかちゃんは本気であきれてるみたい。そりゃそうか。 「後であ~ちゃんに謝りんさい。許してくれると思うけど... 前後の話が分からんからねぇ。」 そして噂をすればなんとやら。あ~ちゃん登場。あたしを睨みつけるようにして横を通過。 最高の笑顔で振り返ってくれた、と思ったら、 「ゆかちゃんおはよっ!」 無視ですか。 「あ~ちゃんおはよ~。」 ゆかちゃんもまたフツーに笑顔で返しちゃう。 「ゆかちゃん、ヒドい。のっちの味方してよ。」 「悪いのはアンタじゃろ。後でなんとかあ~ちゃんに言ってみるけぇ我慢しなさい。」 流石! 「ありがと!やっぱゆかちゃんはいい人だねぇ。」 あたしがゆかちゃんの所を離れて自分の席に着くと、早速ゆかちゃんはあ~ちゃんの所に行った。 なにか話してる。どんどんゆかちゃんの表情が曇っていく。何だ!? 二人の会話は終わったみたいだけど、こっちを見るゆかちゃんの笑顔がコワい。 とりあえずホームルームが終わって、あたしはゆかちゃんのところへ。 ゆかちゃんの冷たい目があたしを見据える。 「のっち、あんた昨日のメールの内容ホントに覚えてないん?」 「うん、ホントに覚えてない。」 ゆかちゃんからここでトドメの一撃。 「あんた、サイテーじゃ。」 なっ... 本気で凹んだ。でもこのまま引き下がるワケにも行かない。 「あたしが何したのか教えてください。お願いします。」 本気でビックリしてる。あたしは知らずにあ~ちゃんを傷つけたかもしれない。 答えを待っていると、ゆかちゃんはゆっくりと話し始めてくれた。 「のっちは昨日あ~ちゃんとダンスの話しとったんよ。学園祭の。 そこからあたしの話になったって。忙しそうだとか、保健室通ってるとか。 それで、あ~ちゃんがふざけて、あ~ちゃんとあたしが同時に具合悪くなったらどっちを 先に保健室に運ぶかってメールしたら、即答であたしって送ったって。 んで、のっちが最後に見たメールに続いたみたい。 のっちが寝ちゃったこととかは一応説明しといたけぇ、あとは自分で何とかしんさい。」 あたし、なんて事を。バカだ。ある意味本音だけど、絶対に二人とも一緒に助けるのに。 「ゆかちゃん、ありがと。」 あたしは走り出していた。移動教室で、体育館から教室に向かおうとするあ~ちゃん。 廊下を人目を気にせずに走り抜けた。後ろから腕を掴んで強引に引き寄せる。 「ちょっ、 何すんのよ!?」 じたばた暴れるあ~ちゃんを思い切り引っ張って、トイレに連れ込んだ。 少し息を整えて、あ~ちゃんの目をきちんと見る。 あ~ちゃんの視線は揺れている。絶対にあたしの目を見ないようにしてるのがわかった。 「で、何よ?」 あたしは勢い良く頭を下げた。出来る限り深く、少しでも届くように。 「ごめん!あ~ちゃんの事すごい傷つけた。無責任にメール返してゴメン。 もし二人が一緒に倒れたらいっぺんに二人とも担いで助ける。二人とも同じぐらい大切じゃ。 嫌いになんてなるワケないじゃん。大好きだから。許して...」 しばらくしてあ~ちゃんはやっとあたしを見た。穏やかな、菩薩みたいな目で。 その瞬間あたしは下げた頭に優しい温もりを感じた。あ~ちゃんの手の温度。 「許す。」 そっと上を見ると、半分泣き笑い状態のあ~ちゃんの顔。 「ありがと。」 あたしとあ~ちゃんは顔を見合わせて笑った。最高にキラキラした笑顔で。 「しっかし、まぁ、ホントに手のかかるコ達じゃね。」 樫野有香にしてみれば、自分がネタになっていたのは気になるが、子供のケンカみたいな物。 二人ともまだまだじゃね。 制服を綺麗に畳むと、二人のところへ向かった。 帰りのホームルーム。 「さっ!終わったら水野先生にしごかれに行くよ!」 元気のいい、いつものあ~ちゃん。 「その前にちゃんと提出するものしなきゃ。」 ゆかちゃんはやっぱりしっかりしてる。 二人の後についていくのがやっぱり一番しっくりくる。あたしのポジションはここ。 いい位置にいるとつくづく思います。幸せモンだなぁ、あたし。 って... ん?プリントって... 「あぁ!プリントが!弁当のドレッシングでメチャメチャになっとる!」 あ~ちゃん爆笑、ゆかちゃん苦笑。 「やっぱりのっちはオチ担当じゃ。」 「そうそう、もーちょっとしっかりしてもらわにゃ。」 「先生に謝ってくる!」 あたしは猛ダッシュで中田先生に謝りに行った。 冷めた中田先生の反応。沸く教室。やっぱりあたしはオチ担当なのか。 大本彩乃。まだまだ成長が必要そうです。学園祭までにもーちょっとレベル上げ頑張ります!
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Can you believe you? 朝起きると俺は見慣れない天井を見た。白だ。真っ白。そうだな、病院みたいに真っ白だ。また七恵がなにかやったのか? 俺は微妙にけだるい体を起こす。辺りの光景は俺の部屋ではなかった。病院だろうか。まわりに誰もいないことから個室であることがわかる。それにしても、なぜ俺は病院の個室に一人で寝ているんだ?俺の体についているチューブやら何やらで俺がやばかったのはわかるが、俺は昨日も確かに自分のアパートの自分の部屋で寝たはずだ。何がどうなってやがる。 俺が何事かと思考しているとドアが開く。横開きのようだ。そこに現れたのはマイマザー。母だ。俺を見た途端、血相を変えて近寄って来た。そんなにやばかったのか? 「睦月!?やっと起きてくれたの!?いつおきたの!?」 おいおいちょっと待ってくれ。やっと起きた?俺は昨日から今日にかけて寝てただけじゃないのか? 「覚えてないの?あんたは通学途中に車に轢かれたのよ?それで意識を失ってからだいたい…3ヶ月経ったのよ?」 3ヶ月…ってことは2年の6月なのか? 「なに言ってるの?あんたまだ1年生でしょ?」 は?俺は2年生じゃ…まさか気を失ってたうちに留年?まさか…。 「なに言ってるの?あんたは4月の入学式の次の日に轢かれたのよ?」 入学式?その日は…俺が確かSNNについて知らされた日だったな…。その次の日って土曜日じゃなかったか? 「なに言ってるの?金曜日だったからあんたは学校に行ったんでしょ?」 …マジ…なのか?いや、これはもしかしたら7月の時と同じやつが仕掛けたのかもな…。 次の日、俺は病院を抜け出して学校へと向かった。俺は、最後の希望を確認しに行った。 昨日母に明日の曜日を聞いてそれが平日だったため、俺は先のような行動に出た。下校時間までまだ間があるので、俺は近くの公園で時間をつぶすことにした。Kill timeって言うんだぜ? 俺は居心地のよさそうなベンチに座る。ふう。さて、俺はどうしたものか…。SNNは使えるな。あと十字架も。でもヒントがな…。どんなに頭がよくても手がかり無しの殺人事件は解けっこねえよ…手がかりは探すものだったな…。 ふと気づくと、俺の前に小さな、でも子供とは思えないような少女がいた。いささか身長が低いが、高校生だな。いや、違うか。高校生はこんな時間にはいない。今日は平日だ。 「大丈夫?」 少女が突然話しかけてくる。見た目と同じように平坦な声だった。聞いた感じでは変声期を過ぎた…と思うような声だ。いったい何歳なんだ? 「私は、この地球上で計算をするなら、年齢は14歳に当たる。」 地球上?まるで地球外生命体みたいじゃねえか。 「私は、地球の存在ではない。私はこの世界とは別の平面上における5次元上の世界より体外的活力体を使ってやってきた先兵。いうなれば、偵察体。」 ……どう反応したらいいのかな。とりあえず、精神病院につれて…下校にまにあわねえか。 「とりあえず、それは本気か?」 「信じなくてもいい。でも、あなたにはヒントが必要なはず。」 …確かにそうなんだがな?突然現れた美少女(俺主観)がいきなり電波な事を口走って、それをいきなり信じられるか? 「常人なら難しい。でも、あなたは常人じゃない。だから大丈夫。」 ……睦月の心に29%のダメージ! 「大丈夫。思考状況は常識人。その中でも優良なレベル。」 フォローするぐらいなら言うなよ…。 「…次からはそうする。」 …次があるのか? 「あなたの脳に映像を送る。」 名も知らぬ少女が電波な事を口走りながら俺の頭に手をかざす。口を開いてなにかを言うと同時にその手が淡く光る。DQあたりにありそうな呪文だな。3秒ほどすると俺の頭に映像が流れ込んでくる。ちょうど、目を瞑ってなにかをイメージしてるような感じだ。…43回か。 俺がその回数に異議を唱えるか否か考えていると、 「私のいた世界ではこれくらいビフォアブレックファスト。」 と誇らしげに少女が言った。…それは朝飯前って言うんじゃないのか? 「ぬかった…。」 …可愛い。お持ち帰りしたいほどに…。まあ…しないけどな。 「けだもの…。」 ぬかった…。 「落ち着いた?」 ああ。ありがとう。お前のおかげだ。 「どういたしまして。私はしばらくあなたと一緒にいたい。許可を。」 こんな可愛いやつの誘いを断れるやつはいないだろうな…。 「しばらくっていつまでだ?」 「私に指令が送られるまで。」 じゃあ、なんで俺に? 「……あなたは他の有機生命体よりも興味深いとの評価が出たから。」 その間の意味は知らんが、まあ、いいだろう。 「………ありがとう。」 俺は公園の時計を見る。なんだまだ10時かよ。じゃあもうちょっとここで待ってるか。と考えていると、 「あの時計は動いていない。実時間は12時。」 と少女が教えてくれた。少女って言い方はおかしいかもな。14だろ?…なんていえばいいんだ?彼女か? 俺の腹が空腹を訴える音が鳴る。おっと、忘れてくれ。 「…私も空腹。なるべく早く体外的エネルギーを補給したい。」 わかった。なあ、遅れてすまんが名前は? 「………私のいた世界では個々という価値観が無いため、名前は無い。」 じゃあ、どう呼んだ― 「強いていえば…エミリー。」 マジか? 「嘘。私としてはあなたに決めてもらいたい。」 …これ、なんてギャルゲ? 「ギャルゲなどではない。立派な一つの現実。」 とりあえず、心を読むのはやめてくれ。気味が悪い。 「わかった。」 じゃあ……ベジータとか? 「わかったそれn「スマンスマン!ちゃんと考える!」 さて…じゃあ………ほよ、ってのはどうだ?(三点リーダ一個につき5分弱かかった) 「苗字は?」 苗字?…朝倉でいいんじゃないのか?この苗字はけっこうメジャーだしな。 「字…教えて。」 …どうやら気に入ってくれたようだ。 俺はルーズリーフを探す。ポケットの中には十字架があるだけだった。あれ?なんで十字架が?それを悟ったのか、少女は俺に名前らんが空白の名刺とペンを渡してくれた。用意がいいというかなんというか…。ありがとう。 俺は『朝倉 穂与』と名刺の空欄に書いた。…この年で名付け親になるとはな…。人生色々あるとはこのことだ。 「あさくら…ほよ…。了解。これより私は朝倉穂与と名乗る。」 なあ朝倉。お前は何が目的で来たんだ? 「偵察。」 いや、お前の本体だ。 「…人間で言う所の知的好奇心。」 …地球制服とか考えていた俺はなんなんだよ…。 「それはできない。なぜなら、この世界にはSNNと呼ばれる力が存在し、我々の総力より強い。」 今この世界には無いぞ? 「この世界には征服する価値が無い。だから私はあなたとコンタクトをとり、この世界をあるべき姿に戻す。」 あるべき姿?…ってことはこの世界はなんなんだ? 「この世界は元の世界をベースに作られた擬似空間。端的に言うとパラレルワールド。そして今はそのパラレルワールドがベースを上書きした状態。」 なあ、なんでそんなこと知ってるんだ? 「私に許可された能力を行使した。その能力については人間には理解できない。」 むかつく言い方だな。俺にだったらわかるかもしれんぞ? 「無理。人間には3次元的にしか物事を捉えられない。この能力を理解するには5次元的に解釈する能力が必要。」 ……わかったよ。諦めればいいんだろ。 「諦めるのはよくない。でも、それが賢明。」 どっちなんだよ。 「この世界を元に戻すには二つの方法がある。」 無視か。無視するんだな? 「そのうち一つはこれを画策した首謀者を見つけて交渉をすること。因みに、交渉にならない確立が高い。」 二つ目はなんだ? 「この首謀者の思い描く行動を取ること。これはあまり推奨できない。恐らくこの首謀者はあなたが何もしないことを望むはず。しかしそれでは元の世界には戻せない。」 二つじゃねえじゃねえか。 「無視できる範囲での誤差。気にしないで。」 わかったよ。で、お前は首謀者が誰だかわかるのか? 「わからない。でも、あなたにヒントがあるため私はあなたといる。」 さっきも言わなかったか? 「無視できる範囲での誤差。気にしないで。」 そうかい。ところで、金もってないか?財布持って無いんだ。 「いらない。私が作る。」 俺は先ほど命名した少女朝倉に腕をつかまれ引きずられていく。いったいどこに行くつもりだ? 「私の家。」 お前、家必要なのか? 「先ほど作った。それぐらいなら私にも可能。」 …段ボール? 「紙で作った。」 なあ、俺の家に来ないか? 「大丈夫。安心して。」 俺は言われるがままに引きずられていった。手を繋いだ方が俺としては嬉しいんだがな…。 「ここ。ついてきて。」 俺が着いたのは立派な一軒家だった。紙で作った…作ったとは違うんじゃないか? 「無視できる範囲での誤差。気にしないで。」 わかったよ。俺は朝倉の後ろについていく。やはりというかなんというか、家には家具が必要最低限しかなかった。まったく、寂しい部屋だ。…俺の家も七恵がいなかったらこんな感じだろうな。 リビングと思わしき場所に着くと、 「待ってて。」 と言われた。俺はむき出しのフローリングに腰を落とす。そういえば俺って怪我人だったな。もう外傷は無いみたいだが。あの時はって言い方もおかしいが、轢かれた時はどんな状況だったんだろうな。 ジューと何かが焼かれる音が聞こえる。香ばしい匂いも漂ってきた。ああ、腹減ったな。 「できた。取りに来て。」 俺はキッチンに行く。中には、綺麗に盛り付けされたおでんが鎮座していた。 「おでん?」 「おでん。持って行って。」 「その前にだな、なぜ焼いたらおでんが出来る?」 「焼いていない。」 「じゃあさっきの音と匂いはなんだ?」 「無視できる範囲の誤差。気にしないで。」 俺はこじんまりとしたテーブルにおでんを二つもっていき、席に着く。 「いただきます。」 俺が言うと、 「いただきます?」 朝倉はいただきますを知らなかったようだ。 「いただきますってのはな、なにかを食べる時に言うんだ。食べ物への感謝の気持ちを込めてな。」 俺が教えると朝倉は不思議そうな顔をした後、 「いただきます。」 と言っておでんを食べ始めた。俺も腹が減ったのでおでんを口に入れる。……うまい。うますぎるぞ…。 おでんを食べて一段落した俺達はさっきの公園に戻ることにした。俺の目的は一目でもあいつらを見ることだからな。 「あなたは、不安?」 なにがだ? 「あなたの記憶とのラグが生じることは不安?」 …今の俺には不安しかないな。120%あいつらも俺を知らないはずだしな。 「あなたの言っていることは概ね正解。でも、」と言いかけて朝倉は一度話すことをやめる。 俺がどうした?と声をかけようとした瞬間、なにかを思い出したように続きを始めた。 「諦めるのは早計。諦めたら人間はそこで進化の可能性を失う。」 …宇宙人に人間を語られるとは思ってなかったぜ。 「今の私は人間。ただ特殊なプロフィールがあるだけ。」 …俺は? 「あなたはSNNを行使して地球外的脅威と戦う超能力者。」 人間だよな? 「概ねそう。」 概ね? 「それは問題ではない。それよりあなたはこれからどうする?」 もちろん学校に行くぜ? 「…そう。困った時はいつでも言って。なるべくアクションを起こす。」 …早速ですまないんだが、 「なに?」 「この高校の制服を用意できないか?」 俺がそういうと、朝倉は少し考えた風を見せ、 「手縫い、ミシン縫い、エマージェンシーモード。どれ?」 最後のはなんだ? 「私の能力。今のあなたの服を変質させる。」 と朝倉が言った時にはもう遅く、俺のフェイバリットスタイルは通学スタイルとなっていた。…代えは…ないな……。 かくして、多大な犠牲を払った俺は誰にも怪しまれることなく下校中の生徒を眺めることができるようになったのである。別に趣味ではない。歴史的使命感が働いただけだ。………嘘だ。 「そろそろ。最初からここにいては怪しまれる。校門の中に。」 俺は朝倉に言われるがままに校門の内側に入る。言われなかったら気づかなかったな。ありがとよ。 「礼には及ばない。来た。」 朝倉が指を指す方向には一人の女子生徒がいた。その女子生徒は女性らしからぬ勢いで下駄箱から校門へ走っている。そうだ。七恵だ。 「あれが対象?」 俺は頭を上下に動かすだけでその旨を伝える。ジェスチャーは便利とは今まで実感できなかったな。 俺達は今、下駄箱から校門までにある僅かな草むらに隠れている。あれ?制服に着替えた意味は? 「行ってらっしゃい。」 それと同時に俺の体が重心を崩して前のめりになる。あ、倒れるな。 そう考えていた俺はまだまだ甘かった。白桃並みにな。下駄箱から猛スピードで迫りくる物体が存在していたことをすっかり忘れていたのだ。よって俺は、猛スピードで迫りくる乙女とはおよそ呼べない女子生徒。七恵と衝突する運びとなった。 「いった~!なんでこんな所から人が飛び出てくるの!?」 それは朝倉に言ってくれ。俺に言われても鬱憤を晴らすぐらいの効果しかない。…充分か。 「あれ?…君。私を助けてくれた人?」 は?俺の記憶じゃ何度も助けてやった覚えはあるが、この世界で? 「トラックから轢かれそうになったところを助けてくれたんじゃなかったの?」 …この世界の俺は大層なお人よしだったみたいだな。まさか会って二日の女子生徒を助けて意識不明になっただなんて…。この世界の俺にはノーベル…自賛賞を授与してやりたいぜ。 「そうだ。そのとおり俺はお前を助けた。」 こういうとき、普通は謝るとか感謝の言葉を送ったりとかするんだが…七恵は普通じゃないようだ。 「今からちょっと部室に来てくれない?」 部室?部室って、俺が見つけたからそこになったんじゃないのか? 「概ね正しい。この世界の歴史では織口七恵が見つけた模様。」なぜ名前を―能力か。 おい朝倉。その格好じゃ怪しまれ…いつの間に服変えた? 「その場合着替えたという方が適切。そして私はあなたが織口七恵と衝突した際に着替えた。」 流石、とでも言うべきかね? 「ありがとう。」 さて、七恵にこいつを紹介…いねえし。もし俺が部室の場所を知らなかったらどうすんだよ…。 「私が教える。」 そうかい。 俺は部室棟1階の角部屋に向かう。別に久しぶりってわけじゃないが、そんな感覚があるな。だが、同時に新鮮さも感じている。だってそうだろう?この高校の制服を着た女子生徒。朝倉が俺の後ろをとてとて着いてくるんだぜ?元の歴史が続いていれば1ヵ月後には同じ光景が見れるかもしれんな。 俺はいつものように部室のドアを紳士的に3回ノックする。 「どうぞ。」 中から音咲の声がする。そこは雰囲気を読んで楓さんが言うべきだろう。とは思っただけで口にしない。その昔、日本人の美徳に本音を最後まで言わないってのがあったらしいからな。 俺はいつものように静かにドアを開ける。このまま世界がいつもどおりに戻ってしまえばいいのにな。 「ようこそ!私達の部室に!」 部室の中には、少し動揺が見える微笑をしている楓さん。警戒心が見える微笑の音咲。そして― 部室の長机に仁王立ちをしている、恒星のような笑顔の女子生徒。 織口七恵がいた。 俺は積年の疑問をぶつけてみる。 「部室って…なんの部活だ?」 「え?……音咲くん!教えてあげて!」 最初にここを部室と呼び始めたのは俺だ。俺以外に知ってるやつがいるはずも無い。哀れ音咲。 「僕ですか?…そうですね…考えるに、ここにいる人が思い描くことを部活の行動の範囲内で行ってもいい。そんな場所です。」 完璧。音咲よ。なぜ知っている?吐け。吐くんだ。 「さて、なぜでしょうね?僕としてはそれを最初から知っているあなたに疑問を覚えるのですが。」 そうだろうよ。俺だってそう思うさ。 「ところで、そこの女生徒は誰でしょうか?見たところ1年生のようですが、僕は見かけたことが無いのですが、転入生ですか?」 「私は地球の存在ではない。私はこの世界とは別の平面上における5次元上の世界より体外的活力体を使ってやってきた先兵。いうなれば、偵察体。」 言いやがった。それだけ言っても俺以外に信じるやつはそういないだろうに。 「それは面白いですね。もしよければそこのことを教えていただけませんか?」 楓さん?信じちゃいませんよね? 「冗談ですよ。証拠でもあれば信じられるのですが…証拠として何を出していただいたら信じられるのか、私もわからないんですよ。ところで、あなたのお名前は?あなたは私達の名前を知っているようですが、私達は知らないので。」 「俺は堀崎睦月っていうんですよ。字の説明は後でいいですよね?それよりも大事な説明があるんですよ。」 「大事な説明とは?」 俺は今までのことを手短に、要点を回収しながら伝えた。 「…ここに半径3センチの氷の塊を出してもらえますか?」 俺はSNNを使って言われた情報に基づいた氷塊を音咲の手の上に作り出した。 「……本当、のようですね。皆さんも触ってみますか?」 音咲は押しかけセールスマンのように氷塊を手の上で躍らせる。3軒に1軒は売れそうだな。忌々しい。 「ところで、この世界は本当に上書きされたのですか?世界が二つ存在する。それは無いのでしょうか?」 「無い。私のいた世界が出した最終的な結論は上書きされた事。したがって、二つは存在しない。」 朝倉の発言の後、音咲は少し考えた素振りを見せながら、 「あなた達は、世界を元に戻したいのですか?」 何があっても戻してやりたいね。じゃなけりゃ、俺が7月に覚悟を決めた意味はない。 「私も戻したい。現状世界において、地球という存在は観測するに値しない存在。元の世界の場合はその意義が非常に大きい。無視できないレベル。よって私は元に戻すことを推進する。」 「僕は反対ですね。今まで生きてきた世界が否定されているのと同義ですからね。仮にこの世界が昨日できたとしても、この世界にいる僕達にはそこに至るまでの記憶がある。いくら世界が上書きされていたとしても、この世界を消す理由にはならないと思いますよ?」 確かにそうなんだがな…でもまあ、俺が言っていることは、『あなたの存在をなかったことにします』って言ってるようなもんだしな。俺だって拒否するさ。 「なあ朝倉。この世界と元の世界を独立させることはできるか?」 俺が考えていることは、『元の世界と上書きされた世界を二つの銀河に分けて分布させよう』ということだ。 「不可能ではない。その場合、あなたの力が2人分必要。しかしこの世界には1人分しかない。また、あなたの異時間同位体を呼び出すことも不可能。あなたの提案が実現されることは限りなく難しい。でも、可能な領域。」 …他の方法は? 「ない。」 …マジ? 「マジ。」 …俺が頑張ったら成功する確率は? 「一応はある。その場合、あなたが元の世界に戻る確立は限りなく低下する。」 やってみていいか? 「…推奨はしない。その場合も私は全面的にバックアップするつもり。」 だってさ。音咲、どうする? 「また僕ですか?この意見には僕も同意できますが、その場合あなたがそうするかですね。もっとも、あなたがこの世界に居続けることも選択肢にはありますが。」 俺はやるぜ?俺としては今までを否定されているんだ。だから俺は今までという過去を証明してやるんだよ。 「誰にですか?」 うるさい。黙ってろ。 「どの場合もあなたはあることをしなければいけない。」 朝倉がなにかを言いだした。 「この改竄の首謀者を探すべき。」 ……完璧に忘れてた。 「ばか。」 …それで頬を膨らませてたらさぞ可愛かっただろうな。 「けだもの。」 …ぬかった。 俺と朝倉と音咲が話している間、残った二人は何をしていたかというと、楓さんはにこにこ微笑んでいた。非常に癒されるね。ベホイミ並だ。七恵はというと、顎に手をあてて俺が言ったことを真剣に考えているのだが、どうやらまだ理解出来ていないようだ。うむ、こいつを見ていて癒されたのは初めてだ。最初で最後だろうがな。 「なあ朝倉。この改竄の首謀者ってのは、俺の記憶にヒントがあるのか?」 「概ねそう。そこはあなたが考えるしかない。」 俺の記憶の中で…こんなことしようと企むやつ… 「そうじゃない。それが実現できる者を探すべき。」 わかったよ。実現できるやつ…待て、俺もできたのか? 「その力はあった。でもあなたはそれを望むことは無い。あなたは選考の対象外。」 それだと、七恵しかいないぞ? 「違う。彼女もそれを望まない。」 じゃあ誰だよ。と言いかけた俺の言葉をさえぎって朝倉は続ける。 「あなたの異時間同位体。」 は? 「あなたの情報からすると、今のあなたはモンスター退治を苦にしていない。そして自立的に時間遡航が出来るのはあなただけ。そして過去のあなたはそれをやっていない。それが出す結果は、」俺の混乱をよそに朝倉は続ける。 「未来のあなた。」
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涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡 翌日の朝。俺は懐かしい早朝ハイキングコースを歩いて学校へと向かっていた。 とは言っても、向こうの世界じゃ毎日のように往復していたけどな。 北高に入り、下駄箱で靴を履き替えていると、 「おっ。キョンくん。おはようっさ。今日もめがっさ元気かい?」 「キョンくん、おはようございます」 鶴屋さんの元気な声と朝からエンジェル降臨・朝比奈さんの可憐なボイスが俺を出迎えてくれた。 何か向こうの世界じゃ何度も聞いていたのに、帰ってきたという実感があるだけで凄く懐かしい気分になるのはなぜだろう? 靴を履き替え終わった頃、長門が昇降口に入ってきた。 「よう、今日も元気か?」 「問題ない」 声をかけてやったが、やっぱり帰ってきたのは最低限の言葉だけだ。ただし、全身から発しているオーラを見る限り 今日の朝は気分はそこそこみたいだな。 階段を上がっている途中で、なぜか生徒会長と共にいる古泉に遭遇する。 「やあ、これはおはようございます――どうしました? 何かいつもと雰囲気がちょっと違うように見えますが」 「朝からお前と遭遇して、せっかくの良い気分がぶちこわしになっただけだ」 「これは手厳しい」 ふと、俺はあることを思い出し、古泉と生徒会長を交互に見渡して、 「とりあえずご苦労さんとだけ言っておく」 「はい?」 俺の台詞の意味がわからず、呆然とする古泉と生徒会長を尻目に俺は自分の教室へと向かった。 そして、教室に入ってみれば、ハルヒのしかめっ面が俺をお出迎えだ。 少しはこっちの気分を読んで欲しいぞ、全く。 「遅い! せっかく良いもの見つけたから、朝ご飯食べながら学校に走ってきたのに!」 「お前の都合でどうこう言われても困るぞ」 団長様のありがたい怒声を聞きつつ、俺は自分の席に座る。 見ればハルヒは机の上にチラシを沢山並べていた。どうやら何かの催しの案内らしいな。今度は何だ。 全米川下り選手権にでも丸太に乗って参加するつもりか? 「ほら見てよ、これって凄くおもしろそうじゃない? ついでにSOS団のアピールもバッチリだわ! これは――」 意気揚々と語り始めるハルヒ。俺はそれを耳から垂れ流しつつ、ちょっとした考え事に入る。 最初に言っておくが、これは昨日の夜家に帰って風呂に入りながら考えた俺の妄想だ。 俺はずっと向こう側の世界に行って、SOS団を作り上げるまで試行錯誤しまくってきたわけだが、 実際のところ不可解な点もたくさんあるのが実情だ。 特に情報統合思念体については明らかに矛盾している点がある。連中は長門によるハルヒの力の使用は二度あって、 一度はハルヒのリセットで隠蔽、もう一つは直前で阻止したようだったが、今俺が帰ってきた世界の長門の世界改変分が カウントされていないのはなぜだ? 最初に聞かされた話じゃ、ここの連中とあっちの連中も結局は同じもののはずだからな。 そう考えれば、俺の知る限り長門による力の行使は三回あったはず。これはあきらかに矛盾している。 じゃあ、実はハルヒの勘違いで、こことあっちの連中は実は別物と言う可能性はどうだろうか? 一応パラレルワールドみたいなものだし、 その分だけ情報統合思念体が存在していてもおかしくはない。が、それはそれで矛盾がある。見たところ同じような考えを持った 存在だったことを考えれば、この世界で長門が世界改変を実施したら、同じように長門の初期化、さらにハルヒの排除という 流れになるんじゃないだろうか。向こうの連中は過剰反応しただけで済ませるにはどうにも腑に落ちない。 まあ、なんだ。前置きが長くなったが言いたいことはこういうことだ。 俺が去った後にリセットされてやり直されている世界――それが今俺のいる世界なんじゃないかってね。 つまり俺はずっとここに至るまでの軌跡をずっと描き続けてきたってことだ。 情報統合思念体にも実は俺たちとは違うが時間の流れみたいなものがあって、あの交渉の結果、 この世界では長門の世界改変がスルーされた。約束通りに。 それだといろいろつじつまの合うことも多い。 ハルヒがどうして宇宙人(長門)・未来人(朝比奈さん)・超能力者(古泉)・異世界人(俺)がいることを望んでいたのか。 それは最初からSOS団を作るために、探していたんじゃないだろうか。だからこそ、不思議なことを探してはいるものの、 全員そろっている現状に密かに満足しているのではないのか。それだと唯一いないと言われている異世界人は、俺だし。 それに…… ―――― ―――― ―――― なーんてな。考えすぎにもほどがある。本当にそうなら、今目の前にいるハルヒは自分が神的変態パワーを持っていることを 自覚していることになっちまうが、それなら最初に世界を作り替えようとしてしまったこととか、元祖エンドレスサマーとかの 説明が全くつかなくなってしまう。自覚してあんなデリケートな性格になっているんだから、あえてやるわけがない。 普段の素振りを見ても、そんな風にはとても見えないしな。自覚しているハルヒを知っている身としては。 ……ただし。 ――あんたの世界のあたしがうらやましい。何も知らずにただみんなと一緒に遊んでいられるんだから―― この言葉が少々引っかかるが。 まあ、どっちにしろ凡人たる俺にそんなことがわかるわけもない。一々確認するのも億劫だし、面倒だ。 現状のSOS団に満足しているのに、わざわざヤブを突っつく必要なんてあるまい。 俺の妄想が本当かどうかはその内わかるさ――その内な。この世界も別の神とか宇宙的勢力とか出てきて、 まだまだ騒がしい非日常が続いて行きそうな臭いがプンプンしているし。 「ちょっとキョン! ちゃんと聞いているの!?」 突然ハルヒが俺のネクタイを引っ張ってきた。やれやれ、妄想もここまでにしておくか。 俺はハルヒの手をふりほどきつつ、 「で、次はどこに連れて行ってくれるんだ?」 その問いかけにハルヒはふふんと腕を組み、実に楽しそうな100W笑顔を浮かべて、 「聞いて驚きなさい。次はね――」 ~完~ 涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 涼宮ハルヒの軌跡
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登録日:2012/06/07(木) 05 10 07 更新日:2022/09/07 Wed 15 07 15NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 たくましすぎるストーカー エルドランシリーズ ストーカー スーパーロボット大戦NEO ハジケリスト ヤミノさんの嫁 伊藤美紀 元気爆発ガンバルガー 性善説 恋する乙女 教師 熱血最強亜衣子先生 種族を越えた愛 立花亜衣子 青空町民 私は正義のジャーナリスト・闇野さんを愛しています! 『エルドランシリーズ』第二作『元気爆発ガンバルガー』の登場人物。 CV 伊藤美紀 誕生日 12月18日 血液型 A型 年齢 24歳 身長 160.3cm 体重 50.3kg 『この世に生まれながらの悪人はいない』を信条とする青空小学校4年1組の担任教師。 クラスの問題児・霧隠虎太郎には頭を悩ませている。 特技は合気道。好みのタイプは「正義を守る強い心と、弱い人達を助ける優しさを持つジャーナリスト」。 少年野球チーム・青空ゲンキーズの荒木純監督から惚れられている。 「ホワイトガンバー」に変装した彼にヤミノリウスⅢ世と魔界獣から救われた事があり、亜衣子先生も満更でもない様子を見せていた。 ヤミノリウスと魔界獣が起こす騒動によく巻き込まれており、 時には魔界獣を素手で投げ飛ばした事もあるが、 亜衣子先生自身はいたって普通の青空町民でそこまで目立つような人物ではなかった…… しかし、ある日記憶喪失の男・闇野響史と運命の出会いを果たす。 彼は名前以外何も覚えておらず、(後に教え子で闇野と面識があった結城千夏に彼が正義のジャーナリストである事を明かされる) 自分に不思議な力がある事を亜衣子先生に隠していた。 だがその力で魔界獣イシガンダーから助けられた事から亜衣子先生は彼に惹かれ、彼もまた亜衣子先生の優しさに惹かれていた…… しかし、彼の正体はいつも青空町を混乱に陥れている大魔界の魔導師ヤミノリウスⅢ世で、記憶が戻り今までの事を忘れた彼は亜衣子先生の前からさっさと走り去ってしまう。 この時人間の姿で去って行ったので、亜衣子先生は闇野さん=ヤミノリウスという事実を知らないままである。 ちなみに、闇野さんと出会う直前には純監督を何とも思わなくなってしまっていた。 (EDとアイキャッチでは純監督とセットで扱われていたりしたのだが、大人の事情でへし折られた。) 純監督は犠牲になったのだ…… それから亜衣子先生は千夏に貰った闇野さんとの2ショット写真を大切にしているのだが、 彼の事を考えて上の空になるどころか下駄箱は間違えるわ、 間違えて男子トイレに入るわ、階段から落っこちるわ、 大量の花を買い込んで花占いに恋の運命を賭けたりと、完全に恋する乙女と化していた。 しかし、人々から大切な物を奪う掃除機魔界獣・スイトッターに大切な写真が取られ嘆き悲しむ…… と思いきや、怒りに燃える亜衣子先生は柔道着&鉢巻きの姿でヤミノリウスの元へ赴き、状況が理解出来ていない彼を数メートル先まで投げ飛ばした。 ところが、亜衣子先生を嘲笑うヤミノリウスは彼女の目の前で闇野響史に変身。写真を破り捨てて彼女の恋心を弄んだ。 想いを寄せていた相手の正体にショックを受けて号泣する亜衣子先生だが、ガンバーチームが必死に戦っている姿を見て「自分にも何かできるのでは」と立ち直る。 「闇野さん!私は決心しました!今日から私、あなたを説得します!」 どこから出したのか、メガホンを構えて宣戦布告しヤミノさんをビビらせる。某童謡のミミズとオケラとアメンボを例に、性善説を唱えて彼を追いかけ回すが逃げられてしまう。 その後、取り戻した写真はセロテープで修復した。 なお、亜衣子先生に惚れていた純監督はそんな事も知らぬ間に失恋してしまった。 それからは、魔界獣が現れると聞きつける度に24時間体制(不眠不休)で柔道着とメガホンを持ってヤミノさんの元へ突撃。 「今日こそは私の話を聞いてもらいます!あなたは本当は良い人です!」 「またお前か!だから私は悪い人だって言っておるだろうが!」 「そんな事はありません!ですから(ry」 「こいつと話していると調子が狂う…!」 「待ちなさい闇野さーん!!…だけど私、絶対に諦めませんからね!」 という様なやりとりが定番となっていた。 ヤミノさんに疎まれて逃げられようが、亜衣子先生はくじけない諦めない。 三大魔王(ゴクアーク、レツアーク、サイアーク)復活後も、 ガンバーチームを応援しながら魔王に見限られたヤミノさんを説得しようとしていた。 そしてガンバーチームが三大魔王に勝利した後、ヤミノさんを糾弾する青空町の人々を説得するが、プライドを傷つけられたヤミノさんには逃げられてしまった。 ゴクアークがキレて地球を破壊した時は、 「地球の大魔界化が目的のはず」とゴクアークに反逆して吹き飛ばされたヤミノさんを制止し、地球の最期を覚悟したのか涙を流して感謝を告げた。 ゴクアークが倒された後、ヤミノさんは、ガンバーチームらに別れを告げてどこかへ飛び去ってしまう。 引き止めようとする亜衣子先生だったが、遠ざかる彼を見送る事しかできず泣き崩れるのだった。 月日は流れ、ショーウインドーのウエディング人形の前で写真を寂しそうに見つめる亜衣子先生。 ガラスに映った見覚えのある姿に驚愕した彼女が振り向くと、ヤミノリウスの人間体である闇野響史が照れくさそうに立っていた。 そして、亜衣子先生は嬉しそうに彼の元へ駆け寄っていく…… なお、次回作『熱血最強ゴウザウラー』にザウラーズの一員で名字が同じ立花浩美と彼の母・小夜子が登場するのだが、特に血縁関係はない。 さあ…こんな薄暗い所なんかにいないで、一緒に外で追記・修正しましょう! 抜けるような青空があなたを、待っているわー!! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 亜衣子先生の前向きぶりは ダイの大冒険のエイミ FF4のローザ に匹敵する -- 名無しさん (2013-12-29 11 07 17) ヤミノの嫁さんwww -- 名無しさん (2014-12-19 00 49 52) 闇野とともに中の人、放映時期がほぼ同時の別作品で、お互い共演はないけど同じ組織のカテゴリーに所属していた。 -- 名無しさん (2022-09-07 15 07 15) 名前 コメント
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日常・文芸部・七夕・太陽の続編です 7月7日、七夕。 帰宅の途につこうと、下駄箱に上履きを放り込み、靴を履いて外に出た矢先、どんよりとした雨雲からポツポツと雨粒が落ちてきた。そしてそれは数分も経たないうちに本降りの雨へと変わった。 朝は雲ひとつない晴天だったため、傘など持っているはずもなく、仕方がないので、俺達は通学路の途中にある民家の軒先で雨宿りをすることにした。 「あ~あ、降ってきちゃったね」 「俺、傘持ってねぇぞ」 国木田と谷口が雨雲を見上げながらつぶやく。 「どうするキョン、止みそうにないけど」 「鬱陶しいな、なんで雨なんて降るんだよ!」 「まあ、たまに雨もいいさ。暑さが和らぐからな」 ふと、数日前の文芸部室の光景が頭に思い浮かんだ。なぜ、この状況でそんなことを思い出したのだろう。理由はわからない。 「キョン?」 国木田に呼びかけられて、ハッと我に返る。 「どうしたんだい? 何かボーっとしてたようだけど」 「いや、ちょっとな」 「なんだなんだ、俺達に隠し事か。水臭いぞ、キョン!」 「いや、本当になんでもないんだ。ちょっとこの間の文芸部室のことを思い出しただけだ」 「…………」 ふたりの表情から、少しだけ心配しているような感情が読み取れた。 なんとなく気まずいような感じがして、視線を雨粒が落ちてくる雨雲へと向ける。 だんだんと雨足は強くなり、やがてテレビ番組などでしか見たことのないような、東南アジアあたりで見られるスコールのような豪雨になった。 「おいおい、やばいぞこれ」 「何か変だよ。天気予報では雨が降るなんていってなかったし……」 目の前の集中豪雨を見て、ふたりが慌て始めた。それもそのはずだ。とても日本で振るような雨とは思えない。 不意に奇妙な違和感を感じた。 あの日、朝起きたときに自分の部屋で感じた、入った記憶のない文芸部室で感じた、日常から何かが欠けてしまったような奇妙な違和感。 「何か来る」 自分の意思とは無関係に、俺はそうつぶやいた。 三メートル先すら見えない豪雨の中、それはまるで目の前の景色から黒いインクが染み出してくるかのように現れた。 真っ黒な光陽園女子学院の制服に身を包み、真っ黒な髪をなびかせながら、真っ黒な傘を差している。これだけの豪雨の中、髪も服もまったく濡れていない。 その姿を一目見るや否や、やかましくアスファルトを叩いていた雨の音が止み、物音一つしない静寂があたりを包み込むような錯覚に陥った。 その存在感は圧倒的で、俺は一瞬たりとも目を離すことができなかった。仮にいま、背後で核爆発が起こったとしても、俺は彼女から目を離すことはできなかっただろう。 彼女は、歩くというより空間を移動すると形容したほうがいいような感じで、スーっと目の前までやってくると、俺の目をじっと見つめて言った。 「あなたと共に在った者も、わたしと共に在った者も、皆その記憶を忘却の彼方へと失くしてしまった。 あなたへの干渉を最小限にし、観測のみを行っていたわたしだけが、あなたのもとまで辿り着くことができた。 あなたはもう一度選択することができる。すべてを知り、彼女を失うか。それとも、彼女のためにすべてを忘れるか」 目の前にいる女の子が普通の人間でないことは一目でわかった。 彼女に会うこの瞬間まで、常識を覆すような超常現象など存在しないと思っていた俺の考えを、一瞬で打ち砕き、世界観を変えてしまうほどの説得力を彼女は持っていた。 どんな石頭の学者であっても、彼女を見れば、人智を越える超常現象が存在することを認めざるを得ないだろう。 「もし、あなたがすべてを知りたいのであれば、わたしと共に来ればよい」 そう言って、彼女は傘を差し出す。 彼女の言っていることのすべてを理解できたわけではなかった。しかし、俺の心はどちらを選ぶべきかを既に理解していた。 一瞬だけ視線を下に落とした後、顔を上げ、彼女の瞳をまっすぐに見つめて、静かな声で、しかし力強くはっきりと答える。 「俺には……あいつのいない世界で暮らす意味はない。だから、このままでいい」 こんな状況にもかかわらず、なぜか心はそれほど動揺していなかった。 「そう」 答えを聞いて、彼女は少しだけ微笑んだような気がした。 その微笑を見て、黄昏を背にして文芸部室の部長席に座る女の子と、部屋の片隅で本を読む一人の少女が思い浮かんだ。微かにお茶の匂いがする。俺は右手に将棋の駒を持っている。 「ならば……わたしは――観測しよう――この世界で。あなたの――行く末を。彼女の――行く末を。あなたと……共に在った者――わたしと共に在った者……すべての者の行く末を」 そういい残して、踵を返すと、彼女はそのまま豪雨の中へと消えていった。俺たち三人は、その後姿をただ呆然と見ていることしかできなかった。 彼女が去った後、雨足は急速に弱まり、いままでの豪雨がウソのようにピタリと雨が止んだ。 「知り合い?」 「いや」 国木田のほうを見ずに首を横に振る。 「奇妙な女もいたもんだな。流石の俺でもああいう女はナンパの対象外だぜ。そういや中学のときも変わった女がいたなぁ。 いまの女ほどじゃなかったがな。頭だけは良かったから、いまはどっかの進学校に通ってるって話だが…… 確か名前は涼……なんっだったっけ。忘れちまったよ。当時は一生忘れることはないと思ってたんだがな……」 谷口が勝手にひとりで中学時代を振り返り、独り言をぶつぶつとつぶやいている。 「キョン、雨も止んだようだよ。行こう」 「ん、ああ、そうだな」 ふと、空を見上げると、どんよりとした雲の切れ間から陽光が差し込んでいた。まるでいまの俺の心を投影しているかのように。 結局、胸の奥にあるこの奇妙な違和感の正体はわからずじまいだ。きっと一生知ることはないのだろう。 だが、たった一つだけ確信を持って言えることがある。 それは、今後どのような平凡な人生を歩んだとしても、かつて自分と共に在った仲間に、胸を張って答えることができるということだ。 「俺の下した決断に、そしてその後に歩んだ人生に、一片の悔いも無かった」と。 ~終わり~