約 67,606 件
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1837.html
433 名前:SS【一年後の誓い】:2013/12/25(水) 17 39 08.37 ID gWGD7f7YO 「うーさむさむ・・・」 深夜1時。 俺は階段を下りながら思わずぶるりと体を震わせた。 今日は・・・もう昨日か。朝からどんよりと曇った嫌な天気で、今頃から朝にかけて雪が降るかもしれないとかテレビで言っていた。 「・・・絶対二階にも便所作るべきだよな」 増した尿意を我慢しながら少し急ぎ足で便所に駆け込む。 「・・・はあ~・・・」 思わず息が漏れる。 この解放感は本当に気持ちいいよな。 絶対皆こうやって息つくんだぜ。間違いない。 かなりどうでもいいことを考えながら部屋に戻る・・・道すがら、ふとリビングの扉が少し開いてることに気付いた。 せっかく降りてきたことだし、水の一杯でもと一瞬思ったが、また深夜にこの寒い道程を辿ることを考えて素直に閉めるだけにしようと思い直す。 「・・・漏らしたりしたらそれこそ事だしな・・・」 言うまでもないことだが別に俺は下が緩いわけではない。 そこだけは勘違いするなよ?絶対に違うからな? 「・・・ん?」 ドアを閉めようとして気付いたのだが、部屋の中から空気が流れていた。 「・・・冷たい?」 そう。 締め切った家の中のものとは明らかに違う冷たい空気。 外気がドアに隙間から廊下に漏れていたのだ。 「おいおいもしかして窓開けっぱなしかぁ?不用心にも程があんだろ」 俺はやれやれとため息をつきながら、ドアノブに手をかけ大きく開け放った。 途端に冷たい空気が全身をつつむ。 うおおおさっみー! 速いとこ窓締めて暖かい布団に・・・ん? 「・・・」 視線を向けた先。 たしかにリビングの窓は開けっぱなしになってた。 だけどそこには、意外なものが一つだけあった。 「・・・ん?」 小さな縁側の椅子の上。 俺の気配に気づいたのか、それは軽くこっちを振り返ると、曇天の明るい闇の中でもわかる輝くような笑みを浮かべる。 「あ、京介」 「・・・なにやってんだ?桐乃」 俺の意識を一瞬虜にしたことも知らず、桐乃はニッコリと艶やかに笑っていた。 『一年後の誓い』 434 名前:SS【一年後の誓い】:2013/12/25(水) 17 41 25.60 ID gWGD7f7YO 「んー・・・ちょっとね」 そう言うと桐乃はまた外へと顔を向ける。 よく見ると桐乃は寝間着のままで上着すら羽織っていない。 この寒さの中なに考えてんだ。 俺は急ぎ足で桐乃に近づくと、今自分が羽織っていたカーディガンを桐乃の肩にかけてやる。 「風邪ひくぞバカ」 「へへ、ごめん。ありがと」 一瞬ビックリしたようにこっちを見た後、ニコッと笑いながらお礼を言ってくる桐乃。 ・・・深夜のテンションなんか知らんが、妙に素直でちょっとむず痒い。 決していやなわけじゃないけどな。 「んで?なにやってたんだ?」 「んー・・・空見てた」 「空?」 桐乃の隣に座りながら、俺はスッと視線を上げた。 一面に広がる雲が、地上の光を受けて仄明るく光る、なんとも言えない空模様だった。 「・・・特に見てて楽しいもんでもねえな」 「そうだね」 クスッと苦笑を漏らしながら、桐乃はなおも空を見上げていた。 その横顔を見て一瞬どきりとした。 綺麗だったことは勿論当たり前なんだが、、そこに・・・少しだけ物悲しい表情が浮かんでいたからだ。 なんというか、泣く一歩手前というか、泣き笑いというか・・・とにかく俺の心をざわつかせる雰囲気がその表情にはあった。 途端に俺は落ち着かなくなって、内心おろおろとしだす。 「お、おい桐乃?別に今のは思わず口ついただけで別に深い意味は・・・」 「雪がね」 「え?」 「・・・降ってくるかなーって見てたんだ」 言いながら桐乃はニッコリと笑顔を形作り俺をみつめる。 でもその表情はやっぱりどこか寂しげで、俺の心をきりっと締め付ける。 435 名前:SS【一年後の誓い】:2013/12/25(水) 17 42 54.84 ID gWGD7f7YO 「・・・なんで雪を待ってたんだ?」 ようやく絞り出した言葉。 そう。 俺は薄々桐乃の心情に気付いていた。 今夜この時期この季節。 俺たちにとって忘れられない『あの出来事』が俺の脳裏にも蘇っていたからだ。 それを知ってか知らずか、桐乃はまた空を見上げると、小さく消え入りそうな声で呟いた。 「・・・もう一年になるんだね・・・」 「・・・ああ、そうだな」 なにがとは言わない。 なにをとも聞かない。 この一年、そのことにはお互い極力触れないようにしてきた。 でもそこには俺たちにしか知ることのできない『大切な思い出』が確かに存在していた。 桐乃と・・・妹と結婚した、あの思い出が。 「・・・」 「・・・」 卒業と同時に恋人同士の関係は終わり、俺達はただの兄妹に戻った。 それは今までとてもうまくやってこれたと思う。 時折ふざけてじゃれ合うこともあったけど、あくまでそれは兄妹としてだ。 少なくとも俺はそう思ってやってきた。 桐乃も…そうだと信じていた。 ・・・なのに桐乃・・・お前・・・。 「・・・降らないね、雪・・・」 なんで今そんなに泣きそうな顔してんだよ! 俺は思わず右手で顔を押さえる。 クソ・・・なんでこんなことになった。 こんなはずじゃなかったのに。 ちゃんとうまくやってきたのに。 もっと・・・ 『もっとちゃんとしてからいうはずだったのに!』 でも、お前のそんな顔見たら言わずにいられねーじゃねーか!! あーもー!台無しだよ俺計画!!畜生! 告白に続いて二度目だよかっこつかねーの!! 呪われてんのか俺っ!? 内心毒づきながら、俺は小さくため息をつく。 ・・・まあ、でもなあ。 ちらりと桐乃の横顔に目を向けると、小さく笑みをこぼした。 『格好悪いのが俺だからな』 そして俺は心を決めた。 436 名前:SS【一年後の誓い】:2013/12/25(水) 17 44 14.46 ID gWGD7f7YO 「・・・なあ桐乃」 「・・・なに?」 「俺さ、お前になんでも言うことひとつ聞いてもらえるんだよな?」 俺の言葉に、桐乃は困惑の表情を浮かべる。 まあそりゃそうか。 唐突に何の脈絡もなく言われりゃ俺だってそうなる。 まあ待ってろ。 今すぐお兄ちゃんが説明してやっから。 「俺、まだその権利つかってねーんだけど」 「・・・秋葉で傍に寄ってたじゃん。それに、その・・・キスも」 「ありゃお前兄妹のスキンシップだろ?あの時も言ったよな。兄妹なんだからいいじゃんって」 「そ、そりゃそうだけど・・・」 困ったように視線を彷徨わせる桐乃。 ・・・この辺が深夜テンションだよな。 昼間ならおなじみの「バカじゃん!?」から始まる悪口雑言が並べ立てられているはずだからな。 そう考えると、今この時ってのもあながち悪くないのかもしれない。 「だろ?で、だな・・・お願い聞いて貰いたいことができたんだがいいか?」 「う・・・うん・・・」 なんでもないことのように言う俺につられて、桐乃も曖昧に頷く。 「・・・どんなこと?」 桐乃の問いかけに一瞬気持ちが怖気づく。 ・・・へ。今更なに気おくれしてんだ京介?お前はあの日認めたんじゃねーのかよ? ・・・そうだ。あの日俺は自分で決めたんだ。 そう。 『俺は近親相姦上等のシスコン兄貴だってな!!』 思わずニヤリと笑みが浮かぶ。 心で再確認したことで肝が据わる。 そうして俺は、目の前で首を傾げて俺をみつめている、世界一可愛い妹の頭に手を置いた。 「俺が大学を卒業したら・・・一緒に暮らそう」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」 たっぷり十秒ほども固まったのち、桐乃はそんなマヌケな声を発した。 437 名前:SS【一年後の誓い】:2013/12/25(水) 17 45 24.68 ID gWGD7f7YO 「ななななななんなに?なにがなに?なんなんなああ・・・?」 「落ち着け」 とりあえず意味不明の言葉を発する桐乃を落ち着かせるために頭を撫でる。 「なななあんた・・・い、今なんなんなんて?」 「卒業したら一緒に暮らそう」 「んなっ!?」 「卒業したら、一緒に暮らそう」 「き、聞こえてるっつの!!」 「大事なことだから2回言いました」 おうおう、ようやくいつものテンションに戻ってきやがった。 しおらしいのも良いけどやっぱこいつはこうでなくちゃな。 「な、なにふざけたこと言ってんのよ!?そんなことできるわけないでしょ!?」 「なんでだよ?お願いなんでも聞くっつったのお前じゃん」 「で、できることとできないことがあるんだっつの!」 「そうかあ?どっちかったらできる部類に入ると思うぞこれは」 「あ、あんた約束忘れたの!?二人が卒業するまで、こここ恋人って約束だったでしょ!?」 「だからさ」 「・・・え?」 俺はそう呟くと、おもむろに桐乃を抱き寄せた。 驚いたように体勢を崩す桐乃を優しく胸で受け止める。 久しく味わってなかった腕の中の温もりに、小さく俺は囁いた。 「卒業と同時に終わった関係なら、卒業と同時に改めて始めてもいいんじゃないか?」 「!!」 438 名前:SS【一年後の誓い】:2013/12/25(水) 17 48 53.92 ID gWGD7f7YO 桐乃は小さく身じろぎした後、そのまま俺の胸の中に大人しく収まっていた。 「・・・そんなん出来るわけないじゃん」 「なんでだ?就職したらもう一人前だ。堂々と一人暮らし始めるさ。そこで一緒にいようぜ」 「・・・お父さんとかどうすんの?」 「お前のことは俺が任されたからな。俺が面倒見るのは当然だろ?それに親元離れたらわかりゃしねーって」 「・・・ばれたりしたら・・・」 「そんときゃそん時だ。俺ももう何もできない高校生じゃねえ。お前の手を取ってどっか遠いところに駆け落ちでもするさ。そうだな。誰も知らないところに行きゃ同じ苗字の男と女だ。幸い似てない兄妹だし、夫婦ってことにして暮らそうぜ」 「・・・バカじゃん?」 「ああ知ってる」 「シスコン」 「それも今更だな」 交し合う軽口。 正直内容はものすごくヘビーだってのに、気持ちはこの上なく浮かれている。 ・・・そうだな。 もうずっと前から覚悟は決まってたんだもんな。 一年前のあの日から。 そうして桐乃は顔をあげる。 大泣きの、この上なく綺麗な笑顔で。 「幸せに・・・しなさいよね?」 「ああ。俺にまかせろ」 そうしてふと気が付くと、空から落ちてくる白い祝福の結晶。 「あ、雪」 「ほんとだ」 それを見上げながら、お互いの心に蘇る一年前の思い出。 「・・・今度はずっと一緒なんだよね?」 「ああ。お前を一生離さない」 期間の区切られた、楽しくも切ない思い出。 ・・・もうあんな思いはしない。 ずっとお前と添い遂げる。 おれは決意も新たに、桐乃の目を真っ直ぐみつめる。 「愛してる、桐乃」 「・・・愛してる・・・京介」 小さくはにかんだ桐乃の頬に手を当て、俺は約一年ぶりの誓いの証を刻む。 手のひらに桐乃の涙の感触を味わいつつふと見上げた空からは、あたかも祝福のライスシャワーのように、とめどなく雪が降り続いていた。 END ----
https://w.atwiki.jp/sharenofan/pages/12.html
夏 新たな仲間、新たな敵魚人のすむ洞窟エルミア、ターニャ初参加 ゴブリン退治2ダン、リベカ初参加 ハーフエルフ編墓守を探せクレア初参加 ゴブリン退治3クロリク、カケル、ヴェイグル、アンナ初参加 消えた詩人メインパーティとの邂逅 エルミアシナリオ(タイトル未定) 遺跡の盗掘を阻止せよザルド初参加 秋 盗賊ロンデルカリーナ初参加
https://w.atwiki.jp/atiga-9nen/pages/188.html
【高校一年 ―― 8月インターハイ】 京太郎「(それからの盛り上がりは本当に凄いものだった)」 京太郎「(何せ、阿知賀は滅多に見る事が出来ないほどの逆転劇を準決勝で決めたのだから)」 京太郎「(その上、相手が優勝候補の白糸台ともなれば、注目度も否応なく高くなる)」 京太郎「(まさに今大会のダークホースとなった阿知賀はホテルに帰る前に取材陣に囲まれたくらいである)」 京太郎「(それを何とか躱しながら、ホテルに辿り着いた頃には皆くたくただった)」 京太郎「(当然だろうな、何せ…白糸台だけじゃなく他の高校も一筋縄ではいかない相手だったんだから)」 京太郎「(あの卓で一位になれたのは皆がそれだけ力を振り絞ったからだ)」 京太郎「(それ以外の時も応援に力を込めてた皆に余力なんて殆ど残っていない)」 京太郎「(ホテルに帰って食事をした後は皆、すぐに部屋へと戻った)」 京太郎「(きっと今頃は今日の疲れを癒やす為に寝ているんだろう)」 京太郎「(しかし、だからと言って…俺の仕事がなくなる訳じゃない)」 京太郎「(寧ろ、決勝へと進んだからこそ、俺の仕事というのは一気に倍増して…)」 京太郎「あ、そうですか。はい。夜分、すみません。失礼します…」ピッ 京太郎「(あー…くそ…憩さんも長野の皆もダメかー…)」ハァ 京太郎「(明後日までにまた打てる機会を作ろうと思ったんだけどなぁ…)」 京太郎「(でも、個人戦の方もそろそろ始まるし…皆自分の事で手一杯なんだろう)」 京太郎「(何とか明日のアポを取ろうとしても、断られてしまうばかりだった)」 京太郎「(勿論…明日一日を休みにして決勝戦に備えるという方法もあるけれど…)」 京太郎「(それで…この相手に勝てるんだろうか)」チラッ 京太郎「(清澄…今大会で阿知賀と並べて語られるダークホース)」 京太郎「(初出場ながら破竹の勢いで勝ち上がってきたこのチームはかなり強い)」 京太郎「(…特に大将の宮永選手は…別格だ)」 京太郎「(あの鬼のように強かった龍門渕を破って出てきただけあって…)」 京太郎「(まさに人外染みた打ち方をしてる)」 京太郎「(相手がオカルト頼りならばしずの能力が効くけれど…)」 京太郎「(でも、序盤でリードを作られすぎると追いつけない可能性もある)」 京太郎「(一緒に上がってきた姫松だって名門と呼ばれるだけあって決して弱い訳じゃないし…)」 京太郎「(…対策だけじゃ勝てない可能性もあるから…出来るだけ時間は無駄にしたくないんだけど…)」フゥ 京太郎「(…ダメだな…気持ちばっかり焦ってきてる…)」 京太郎「(清澄の牌譜は前々から準備してるし…ちょっと散歩でもしてくるか)」スッ 京太郎「(にしても…このホテル…結構豪華だよな)」 京太郎「(食事もかなりのもんだし…実は宿泊費もかなり高いんじゃないだろうか)」 京太郎「(今の時期はオフシーズンだし…一泊で諭吉が吹き飛ぶとか…)」 京太郎「(流石にそれはないと思うけど…でも…)」 京太郎「(遠征やら何やらで後援会のお金惜しげも無く使ってるレジェンドだからなぁ)」 京太郎「(決してないとは言い切れない気が…)」 「お、須賀じゃないか」 京太郎「ん…?あ…」 「久しぶりだな」 「元気してたか?」 京太郎「つ、月島先輩…マンソン先輩…それに魚妻先輩…」 京太郎「まさか…こんなところで会えるなんて」 月島「はは。まぁ、実は俺たちの方が須賀に会いに来たんだけどな」 京太郎「えっ」 マンソン「俺達も団体戦で東京に来てたからさ。久しぶりに顔を合わせとこうかと思ってな」 魚妻「去年まではインハイとインターミドルで時期がずれてたから無理だったけど」 魚妻「今年は一緒の大会だし…一度くらいは…さ」 京太郎「…一度?」 月島「あぁ、俺達は明日、帰るんだよ」 魚妻「悔しいけど…団体戦で負けちまってな」 マンソン「最後の大会だからって何時ものリズムを忘れちまって…大敗だよ」 京太郎「そうなんですか…すみません、俺…」 月島「あぁ、気にするなよ。お前が色々大変だっていうのは知ってるからさ」 マンソン「そうそう。俺たちも明日帰るから挨拶するだけのつもりだったしな」 魚妻「それより阿知賀の方、決勝進出おめでとう。凄いじゃないか!」ポン 京太郎「…ありがとうございます。でも、俺…」 京太郎「あんなに世話になったのに…男子の方殆ど見ていなくて…」 穏乃「…あれ?京ちゃん」 京太郎「ん?しず…どうした?」 穏乃「その人たち…誰?」キョトン 京太郎「あー覚えてないか?」 京太郎「ほら、俺がすげー世話になった…」 穏乃「ぅ?……あっ」 穏乃「一年の時、京ちゃんと一緒にインターミドル優勝した…」 月島「お、覚えててくれたか」←モブ1 マンソン「ま、アレは殆ど須賀のお陰みたいなもんだからな」←モブ2 魚妻「誇れるものなんて何もないけどな」←モブ3 穏乃「え、えっと…その節は京ちゃんがとてもお世話になりました」ペコッ 月島「はは、こちらこそ」 マンソン「しかし…こんな良い子と一緒だなんてな。須賀の奴も隅におけない奴だ」 魚妻「大事にしてやれよ」 京太郎「えぇ。勿論です」ポンポン 京太郎「こいつは俺の大事な幼馴染ですよ 穏乃「えへへ…♪」 月島「それで…さっき浮かない顔をしてたのはどうしたんだ?」 京太郎「…わかりますか?」 魚妻「当然だ。一年だけだったとはいえ俺達はお前の先輩だったんだからな」 マンソン「何時ものリズムを崩しているくらいひと目で分かるさ」 京太郎「えーっと…実は…明後日、女子は決勝戦なんですが…」 京太郎「明日練習試合してくれる相手が捕まらなくって…」 月島「…ふむ…それが確実に必要なことなのか?」 京太郎「…出来れば」 京太郎「マスコミではダークホースだの何だの言われてますけれど…実際は僅差です」 京太郎「明後日は白糸台も最初から本気で来るでしょうし…同じことが出来るとは思えません」 京太郎「…何より…」 マンソン「…ん?」 京太郎「…いえ、まぁ…そんなところな訳でして…」 月島「…なるほど…魚妻」 魚妻「大丈夫だ。明日は自由時間だったからな」 マンソン「電車は?」 魚妻「多少ずらせば問題はない」 月島「じゃ、決まりだな」 京太郎「あの…何の話を…」 月島「何、簡単な話だ」 マンソン「…俺達でよければ、相手をしてやるって事だよ」 京太郎「えっ!?」 京太郎「でも…良いんですか?先輩たち明日帰るんじゃ…」 魚妻「何、帰ると言ってもその前に自由時間があるからな」 月島「その時間を使うだけならスケジュールにそれほど狂いはないさ」 京太郎「でも、東京見物とか…」 マンソン「そんなものよりも後輩の悩み事を解決してやる方が大事だよ」 月島「東京なんて何時でも来れるしな」 魚妻「それならお前たちの夏を少しでも悔いないものにしてやりたいというのが俺たちの創意だ」 京太郎「…良いんですか?」 月島「あぁ。ま、そっちが良ければ…だけどな」 マンソン「所詮、俺達は男子ベスト8敗退で格下なのは否めないし」 魚妻「ただ、まぁ俺達にだって女子の知り合いもいる」 月島「その子たちに声を掛ければ、それなりに大きな規模の交流戦が出来るはずだ」 京太郎「……しず、お前はどう思う?」 穏乃「んー…私はやってみたいかな」 穏乃「京ちゃんたち以外の男の人と打つのって今まで殆どなかったし」 穏乃「それに…今は少しでも打って力をつけたい気分だから」 穏乃「付き合ってくれるなら…是非ともお願いしたい」 京太郎「…そっか」 京太郎「じゃあ…ちょっと待って貰って良いですか?」 京太郎「他のメンバーにも確認して…それからまた返事をします」 月島「あぁ」 マンソン「まぁ、俺達はどっちになっても良いからな」 魚妻「そっちはこの前まで女子校だったんだ。男に免疫ないのもいるだろうし無理にとは言わないさ」 月島「女嫌いのお前には言われたくないと思うがな」 魚妻「うるさい…女は苦手なんだ」 マンソン「はは。ま、こうは言ってるけど、悪い奴じゃないんだ」 マンソン「あんまり警戒しないでやってくれよ」 穏乃「あ…はい」 魚妻「…寧ろ、警戒するべきはマンソンだろう」 マンソン「え?」 月島「そうだな。こいつの手の速さはかなりのもんだからな」 マンソン「馬鹿にすんなって」 マンソン「流石に後輩の女に粉かけるほど落ちぶれちゃいねーよ」 穏乃「ぅ…?女?」 京太郎「あー別に俺たち付き合ってる訳じゃないですよ」 月島「え…?こんな子に京ちゃんなんて言わせてるのにか?」 京太郎「まぁ、幼馴染ですし」 マンソン「…じゃあ、新子は?」 京太郎「え?憧も勿論、幼馴染ですけど…」 魚妻「…これは交流試合よりもお前のカウンセリングが必要かもな」 京太郎「えっ」 京太郎「(そんな訳で始まった交流戦は…結構な規模になった)」 京太郎「(先輩たちはあの正確で面倒見が良いから、かなり交流が広かったんだろう)」 京太郎「(当日には男子女子合わせて十人以上が集まってくれた)」 京太郎「(勿論、実力的にはバラバラで荒川さんたちに及ぶような人は滅多にいない)」 京太郎「(しかし、色々な打ち手と麻雀出来るっていうのは刺激を受けるのか)」 京太郎「(皆、嬉々として麻雀を打っていて…良い影響を受けているのが分かる)」 京太郎「(なら…後は俺が最善を尽くすだけ…だな)」 京太郎「(出来るだけ皆がこの一日で強くなれるように…牌譜は休まず取って…)」 京太郎「(合間には清澄や姫松の分析を纏めて…そして…)」 京太郎「(その都度、皆にアドバイスしたり気晴らしに付き合ったり…)」 京太郎「(やる事色々あって目が回りそうだけど…)」 京太郎「(泣いても笑っても今日が最後なんだ)」 京太郎「(気合入れろよ…須賀京太郎)」グッ +2 末尾16 憧を重点的に 末尾27 しずを重点的に 末尾38 灼を重点的に 末尾49 玄を重点的に 末尾50 宥さんを重点的に 玄を重点的に 京太郎「(昨日の準決勝を見て…思った)」 京太郎「(やはり…宮永照…チャンピオンはバケモノだ)」 京太郎「(正直、俺でも真っ向からぶつかって勝てる気がしない)」 京太郎「(その上、清澄の片岡選手や姫松の上重選手も…高い火力の持ち主だ)」 京太郎「(先鋒戦は間違いなく点棒のやりとりが激しい荒れる卓になるだろう)」 京太郎「(そんな中で玄が一段劣るとは思わない)」 京太郎「(だけど…昨日と同じ状況じゃ優勝が厳しいのは確かだ)」 京太郎「(…だからこそ、ここは…)」 京太郎「…玄」 玄「うん…あの…」シュン 京太郎「…なーに落ち込んでるんだよ」クシャ 玄「はぅ…っ」 京太郎「お前が今の時点でもよくやってるよ」 京太郎「ドラが集まらないお前以外じゃチャンピオンに飛ばされて終わってたかもしれないしな」 玄「だけど…」 京太郎「…だけどじゃねぇの」ムニー 玄「あうー…」ノビー 京太郎「俺もレジェンドも…そして皆も」 京太郎「お前じゃないとダメだと思うからお前を先鋒戦に置いてるんだよ」 京太郎「それで何かあっても俺やレジェンドのミスでお前の所為じゃない」 京太郎「…それでもお前が準決勝の戦果が気に入らないって言うのなら…」 京太郎「今からの特訓…ちゃんとついて来いよ」パッ 玄「…特訓?」 京太郎「あぁ。何も俺たちはお前の事見捨てた訳じゃないんだ」 京太郎「明日までに少しでも強くなれるように…ちゃんと見ててやるからさ」 京太郎「だから…頑張ろうぜ」 京太郎「もう二度とチャンピオンなんかに負けないように…さ」 +2 00~50 成功 51~99 大成功 ※雑用8ラキスケ3で+11 大成功 京太郎「よし…それで清澄の片岡選手だけど…」 京太郎「東場での火力が殆ど化物に近い」 京太郎「殆ど東場での和了りだけで区間一位もぎ取っていくくらいだからな」 京太郎「最初に警戒するべきは宮永選手ではなく、こっちかもしれないな」 玄「…なるほどー…」 京太郎「ま、逆に言えば、片岡選手を利用すれば」 京太郎「白糸台の宮永選手を抑える事も難しくないって事かな」 玄「…利用?」 京太郎「まぁ利用って言ったら少し聞こえは悪いけど…」 京太郎「先鋒戦で宮永選手が飛び抜けているのは確実なんだ」 京太郎「それを抑える為に必要なチームプレイって奴かな」 玄「…チームプレイ…」 玄「…ね、京太郎君」 京太郎「ん?」 玄「…なんで準決勝で…花田さんも園城寺さんも…」 玄「あんなギリギリの戦いで頑張れたのかな」 京太郎「そりゃチームを信じてたからだろ」 玄「…チームを?」 京太郎「あぁ。後で必ず取り返してくれるって」 京太郎「自分がダメでも最善を尽くせば後が何とかしてくれるって…そう分かってたんだろ」 京太郎「特に新道寺の花田選手が崩れなかったのは其のへんの意識が徹底してたからだと思う」 玄「…そっか…」 京太郎「でも、お前もそうだったんだろ?」 京太郎「最後まで頑張って…何とか花田選手と一緒にチャンピオンを流した訳だし」 玄「…違うの」 京太郎「え?」 玄「…私…一生懸命やるしか出来なくて…負けたくないって気持ちで一杯で…」 玄「おねーちゃんにはああ言ってもらえたけれど…」 玄「でも…プレイ中に後ろの皆が何とかしてくれるなんて…殆ど考えてなかった」ギュッ 京太郎「…そういうもんだよ。俺だってそれに気づけたのは三年掛けてようやくだったからな」 玄「…えへへ、フォア・ザ・チームって本当に難しいんだね」 玄「でも…お陰で…私、少しだけ分かった気がするの」 玄「私…きっとそれが足りなかったんだね」 玄「先鋒だから…エースだからって…」 玄「気負ってから回って…本当に大事な事に目がいってなかった」 玄「…私は何時だって…一人じゃなかったんだ」 玄「後ろには皆がいる。そして…京太郎君が手伝って…先生にも教えてもらえて」 玄「後援会の人に支えて貰って…今、ここにいられてる」 玄「それに…」スッ 京太郎「ん?」 玄「…おかーさんも…こうして私の心の中にいてくれる」ギュッ 玄「ドラも…力を貸してくれる」 玄「…だから、私はきっと一人じゃない」 玄「…私は…」 +2 00~30 失敗 31~60 成功 61~99 大成功 大成功 玄「私は…もう寂しくない」 玄「ドラが来てくれなくても…大丈夫」 玄「心の中にいるおかーさんだけじゃない」 玄「周りを…こんなにも素敵な人に囲まれてるんだから」 京太郎「玄?」 玄「…えへへ…そんな風に思えたのは…京太郎君のお陰だよ」 玄「…本当に…ありがとう」 京太郎「…いや、俺はなにかした訳じゃねぇよ」 京太郎「…そうやって気づけたのはお前の力だ」 玄「…ううん。私…京太郎君がいなかったらきっと…ずっと待ってただけだった」 玄「お別れが寂しいからって…追いかける事もしないままだった」 玄「…でも、京太郎くんがここまで見捨てないでいてくれたお陰で…それじゃダメって気づけたの」 玄「…だから…私がここまでこれたのは…京太郎くんのお陰」 玄「待っている私に…手を差し伸べてくれた京太郎君のお陰」 玄「…だから…」スッ 京太郎「ん?」 玄「今度は私が…京太郎君を助ける番」 玄「一杯頑張ってくれた分…優勝って形で…京太郎くんを助ける番だよ」 京太郎「玄…」 玄「…だから、見ててね、京太郎君」 玄「私…今度こそ…必ず勝って来るから!」 【System】 松美玄の雀力は2あがりました 松美玄のスキルがランクアップし【阿知賀のドラゴンプリンセス】になりました このスキルは自身の雀力分の+補正をコンマへと加え、さらに勝った場合、二倍の勝ち星を得る事が出来ます またこのスキルの保持者はあらゆる-補正と特殊能力を受け付けません 松美玄はスキルフォア・ザ・チームを手に入れました 【午後】 京太郎「(…それからの玄の打ち筋は変わった)」 京太郎「(その手にドラが入るタイミングを、あいつは今や自由自在に操っている)」 京太郎「(最初はドラなしなのに最後に連続ドラツモで和了りなんて珍しくない)」 京太郎「(強引に引き寄せるんじゃなく…来てもらう感覚だと本人は行っていたけれど…)」 京太郎「(正直、その手の感覚は俺には分からない)」 京太郎「(ただ確かな事は…さっきのアレで玄が完全に一皮むけたって事だ)」 京太郎「(当日の流れ次第ではあるけれど…)」 京太郎「(今の玄ならばそうそう当たり負けする事はないだろう)」 京太郎「(多分、今のあいつは…俺や憧でも止められないからな…)」 京太郎「(それが少し寂しいのは手がかかる奴がもう卒業してしまったからか…)」 京太郎「(…ま、感傷に浸るのはまだ早いな)」 京太郎「(まだ午後の方が残ってるし…決勝戦も終わってないんだ)」 京太郎「(そういうのは全部、後にして…今は…)」 +2 末尾16 憧を重点的に 末尾27 しずを重点的に 末尾38 灼を重点的に 末尾49 下へとズレる 末尾50 宥さんを重点的に 憧と重点的に 憧「…京太郎」 京太郎「…ん?どうかしたか?」 憧「どうかしたか…じゃないでしょ」 憧「…そっちこそ大丈夫?」 京太郎「ん?何の事だ?」 憧「…自覚ないのね…」 憧「…あんたさっきから顔色最悪よ?」 憧「昨日から…ううん、この前から寝てないんじゃない?」 京太郎「大丈夫だって。ちゃんと寝てるからさ」 憧「…そんなの信じられる顔色じゃないわよ」 憧「良いからこっち来なさい」 京太郎「いや…でも…俺は他にする事が…」 憧「…良いから、そんなのは後があたしが手伝ってあげるし」 京太郎「でも…」 憧「…もう…!つべこべ言わない…!」グイッ 京太郎「あ…っ」 憧「まったく…あたしに引っ張られただけで崩れそうになるのに何が大丈夫よ」 京太郎「…ごめん」 憧「…ホント、馬鹿なんだから…さ」ナデナデ 京太郎「一応、これでも成績は上がってるんだぞ…」 憧「…そういう意味じゃないわよ」 憧「本当は麻雀したいのに…我慢して」 憧「ずっとあたしたちのフォローし続けて…」 憧「…それで…倒れそうになるまで…さ」 京太郎「…良いんだよ。俺は」 京太郎「元々、俺はそのつもりで阿知賀に入ったんだし」 京太郎「それに…」 憧「…それに?」 京太郎「…俺、結構、こういうの好きなんだよ」 京太郎「人に尽くすって言うか…憧たちが強くなっていくのを見るのが…さ」 憧「…馬鹿」 京太郎「はは。まぁ、膝枕されながら言うセリフじゃないと俺も思うけどさ」ハハッ 京太郎「…でも、俺は…阿知賀に来て良かったって…そう思ってる」 憧「…本当に?」 京太郎「あぁ。勿論」 京太郎「気兼ねなく雑用出来るし…憧やしずとも一緒だし…」 憧「…そこでなんで…もう」 京太郎「ん?」 憧「…なんでもない。それで?」 京太郎「…まぁ…早い話…必要とされてるのが嬉しいんだよ」 京太郎「麻雀だけじゃなくインターミドルチャンプって形じゃない」 京太郎「素のままの須賀京太郎を必要としてくれてるのが…さ」 憧「でも…麻雀出来ないのよ?」 京太郎「ま…麻雀に未練がないと言えば嘘になるよ」 京太郎「でも、だからって俺は阿知賀に来た事が間違いだと思っていない」 京太郎「…お前らが勝ち上がる姿を間近に見られて、それに貢献する感覚は」 京太郎「間違いなく晩成じゃ得られなかったもんだからさ」 京太郎「…だから、俺は後悔なんてしていない」 京太郎「俺は…阿知賀で良かった」 京太郎「…ありがとうな、憧」 憧「…ホント…アンタって…」スッ 京太郎「ん…?」 憧「…根っからの…良い奴よね」 京太郎「そうか?結構、打算的だと思うけど」 憧「その打算で救われてる人だっているのよ」 憧「少なくとも…あたしはそう」 憧「あんな風に誘って後悔させてるんじゃないかって…そう思ってたから…」 京太郎「大丈夫だよ。俺は後悔なんてしてない」 京太郎「阿知賀に居て…俺は毎日が楽しいからさ」 憧「…うん」 憧「あたしも…京太郎と一緒にいれて楽しいよ」 憧「…しずも玄さんも灼さんも宥姉も…皆一緒でここまで来れるなんて夢みたい」 憧「…だから…ね。だから…あたし…」 京太郎「…ん?」 憧「…ね、もし…阿知賀が優勝出来たら…聞いて欲しい事があるの」 京太郎「聞いて欲しい事?」 憧「うん…とっても大事で…重要な事」 京太郎「それは今じゃダメなのか?」 憧「さ、流石に今はちょっと…ムードがなさすぎるかなぁって…」カァ 憧「なんだかんだで…周りは人が一杯で…さっきからジロジロ見られてるし…」 京太郎「悪い。じゃあ起き…」 憧「い、良いから…っ」グッ 京太郎「いや、でも…」 憧「い、嫌じゃないの。本当に…」 憧「…京太郎とこうしている時間…最近はなかったから」 京太郎「…そういや阿太中の時ほど二人っきりになってないよな」 憧「うん…結構、しずたちに邪魔されて…いや、そ、そうじゃなくて」 京太郎「ん?」 憧「…ともかく…このままで居て」 憧「あたしは…このままが一番、安心するから」 京太郎「でも、お前、練習は?」 憧「…あたしにとってこうしてあんたの側にいるのが一番の練習なの」 憧「…こうして一緒にいると…京太郎から力をもらえる気がするから…」 京太郎「別に俺にはそんな感覚ないんだけどなー」 憧「そっちにはなくてもあたしにはあるの」 憧「ま、あたしもこれが何なのか自分でいまいちよく分かってないけれど…」 憧「でも、今の時間は決して無駄じゃないって…そう思えるから…」 京太郎「…分かった。じゃあ…」スッ 憧「ん?」 京太郎「…一時間だけ…仮眠…するから」 憧「…分かった。じゃあ…それくらいになったらまた起こしてあげるね」 京太郎「あぁ…悪いけど…頼む…」 憧「うん…おやすみなさい、京太郎」ナデナデ 憧「(…何時もありがとう…あたしたちの為に働いてくれて…)」 憧「(こんなになるまで…頑張ってくれて)」 憧「(だから…あたし…それに報いる為にも必ず…勝って来るから…)」 憧「(あんたが晩成に行かなくて良かったって…そう思えるように)」 憧「(心から阿知賀で良かったてそう思えるように…頑張るから)」 【System】 新子憧はスキル【大蛇神の贄】を手に入れました このスキルは自身の思い出と愛情度分の+補正をコンマへと加え、一度だけ最下位を回避するスキルです また京太郎のスキル【運命の二つ名】を一度だけ自分のものとして使用する事が出来ます 【System】 新子憧の加速世界が強化されました 雀力関係なく-補正を受けた際、それを+補正へと変え、相手にその-補正を返します この効果はあらゆるスキルで無効になりません 【高校一年 ―― 8月インターハイ決勝戦】 京太郎「(憧に起こされてからも仕事は多かった)」 京太郎「(元々、やる事は山積みで俺だけの手では足りないくらいだったんだから)」 京太郎「(けれど、俺がするべき仕事を月島さんたちやαたちがこなしてくれたお陰で)」 京太郎「(全員分の牌譜を改善する時間も出来た)」 京太郎「(お陰で一日ではあったけれど、得られるものが多くて…)」 京太郎「(本当にあの場を整えてくれた先輩たちには頭が上がらない)」 京太郎「(バスに乗り遅れるギリギリまで俺たちの為に動いてくれたんだから)」 京太郎「(もう長野には帰ったけれど…でも、またこんどお礼しとかないとな)」 京太郎「(…ま…今はそれよりも目の前の事だ)」 京太郎「(優勝する事が先輩たちに対する何よりのお礼になるだろうし…何より)」 玄「…」 京太郎「…玄」 玄「…えへへ。不思議だね」 玄「私、今、ドキドキしてるの」 玄「怖くもない…緊張もない」 玄「…早く戦いたくって…うずうずしてる」 玄「こんなに麻雀したい気持ちになるなんて久しぶり」ニコッ 京太郎「そっか。でも…あんまり気負うなよ」 玄「うん。大丈夫だよ」 玄「気持ちも身体も絶好調で…楽しみで仕方ないの」 玄「…こんな気持ちで麻雀するのなんて初めて」 玄「だから…今度こそ…この松実玄にお任せあれ!」 +2 玄(雀力8+フォア10+能力89)107 +3 テルー(雀力12) 和了放棄 +4 タコス(雀力7+能力70)77 +5 漫(雀力7+能力34)41 玄 144 オシンドロームスレヒロイン 放棄 タコス 104 漫 72 照「(…阿知賀の子…表情が違う…)」 照「(この前は緊張が残ってたのに…今はまったく見えない…)」 照「(まるで仲間打ちでする麻雀のような気楽さで卓についている…)」 照「(…二回戦から準決勝の時もそうだけれど…)」 照「(…その表情や打ち方まで全然違う)」 照「(たった一日で…見間違えるほど成長してるのが分かる…)」 照「(でも…私も今日は負けられない)」 照「(今日は決勝戦…)」 照「(皆と戦える最後の団体戦…)」 照「(そこで優勝を飾る為にも…ここは…)」ゴッ 照「(全部…見通し…えっ?)」 照「(…何…あれ…阿知賀の人…ぐじゅぐじゅって蛇が絡みついて…)」 照「(本人が見えないくらい…絡まって…気持ち…悪い)」」 照「(お陰で…能力がまったく分からなくて…)」 照「(ううん…そもそも…この子…なんでこれで平気な顔をしてられるの…?)」 照「(こんなに雁字搦めになっていたら何かしら影響が出ているはずなのに…)」 照「(でも、実際は嬉々としてこの場に居て…)」 玄「…ロン」 漫「ひぎゅっ!?」ビクッ 玄「…ハネマンです」ニコッ +2 玄(雀力8+フォア10+能力89)107 +3 テルー(雀力12+60) 72 +4 タコス(雀力7)7 +5 漫(雀力7+能力17)24 玄 128 デイズスレで大勝利して欲しいヒロイン 127 タコス34 漫59 照「(おかしい…準決勝までは確かに効いていたはずなのに…)」 照「(さっきから…阿知賀の子止まらない…)」 照「(こっちの手は遅くなってない…)」 照「(…寧ろ…好調なくらい)」 照「(…だけど…それ以上に…)」 玄「…ツモ。16000オール」 照「(…早い…そして高い…)」 照「(さっきから…満貫以下なんて和了っていないのに…)」 照「(こっちの勝負手が整う前に…和了られてしまう…)」 照「(このままじゃ勝てない…けど…)」 照「(…『アレ』を今使っても意味がないし…)」 照「(…どうしたら…)」 +2 玄(雀力8+フォア10+能力89)107 +3 テルー(雀力12+能力60) 72 +4 タコス(雀力7+能力35)42 +5 漫(雀力7+能力17)24 玄125 ポンコツだけど鉄球が使えるヒロイン 168 タコス 132 漫 34 玄「(大丈夫…私…戦えている)」 玄「(あんなに恐ろしかったチャンピオンを抑えられてる…)」 玄「(収支的には一人浮き…勿論…絶対的な差じゃないけれど)」 玄「(…でも、もう十万点近く稼ぐ事が出来てる…)」 玄「(ここからは折り返しで…中々追いつく事が出来ないだろうけど…でも)」グッ 玄「(油断は禁物…相手は去年の優勝者なんだから)」 玄「(最後までこの点差をキープ…いや、さらに広げるくらいの気持ちで…)」ゾッ 玄「(今の…っ!まさか…)」 照「(…時間が掛かった)」 照「(でも…後半開始すぐに…テンパイから開始…)」 照「(親はまだ二回あるし…追いつけない訳じゃない)」ギュルッ 照「(だから…まずは…)」 漫「…」スッ 照「…それロン」 漫「うわちゃ…っ」 照「1300」 照「(…そして…!)」 ※照の【ギギギ(仮)】改め【天の岩戸】発動 このスキルの保持者が勝利した場合、次の一局だけ相手のスキル一つを無効にする事が出来る ↓ ※玄の【阿知賀のドラゴンプリンセス】により防がれました 照「(阿知賀の子を抑えられれば…)」 照「(ここから逆転だって不可能じゃない…)」 照「(そして…私には…それを抑える為の能力がある…)」 照「(今回は条件もバッチリ…時間はその分掛かったけれど…)」 照「(阿知賀の子は…ここで退場してもらう…)」ギギギ… 照「(ここからは私の…え…)」ガッ 照「(何…これ…蛇が絡みついて…っ!)」 照「(岩戸が閉じない…そんな…)」 照「(私の能力が…まったく効いて…ない?)」 照「(く…こんなの予想外…でも…)」 照「(それならそれで…やりようはある…)」ギュルッ 照「(抑えられないなら…ただひたすら和了れば良いだけ)」 照「(今までやって来た通りに…和了り続ければ…)」 照「(決して届かない点差じゃない…!)」 照「(…まだ諦めない…諦めたりなんかしない…!)」 +2 玄(雀力8+フォア10+能力89)107 +3 テルー(雀力12+能力60) 72 特殊勝利確定 +4 タコス(雀力7+能力35)42 +5 漫(雀力7+能力17)24 玄 193 prprしたいテルー 101 タコス 57(すみません。能力ないです…) 漫 85 玄「(…凄い気迫…)」 玄「(絶対に勝つんだって…追いつくんだって…)」 玄「(そんな気持ちがツモの一つひとつから伝わってくるくらい…)」 玄「(チャンピオンも…ううん…宮永選手も私と同じ気持ちだったんだ…)」 玄「(絶対的…圧倒的に見えても…驕ったりしていない)」 玄「(チームの為に…ずっとずっと戦ってたんだよね…)」 玄「(…でも、それは…私も同じ)」 玄「(コレ以上…皆に負担を掛けたくなんかない)」 玄「(これまでふがいない先鋒だった分…決勝戦だけは)」 玄「(…この時だけは…負けたくない)」 玄「(…だから)」キュッ 玄「(…だから…ごめんね)」スッ 玄「(…かならず後で迎えに行くから)」 玄「(もう…待ってなんかいないから)」 玄「(だから…今は…皆の為に)」 玄「(私を支えてくれた…最高の仲間たちの為に…)」 玄「(…今はお別れ)」 照「っ…!(ドラを捨てた…っ!?)」 照「(まずい…完全にこっちの読みが外れた…っ)」 照「(まさかドラを捨ててまで手を組み替えるなんて…)」 照「(…しかも…今私が引いたのは…)」スッ 照「(…ドラ…っ)」 照「(…多分・・さっきのドラ打ちで…能力が切れたんだ…)」 照「(お陰でドラが集まる能力が解除されて…)」 照「(私の手にもドラが来るようになった…)」 照「(…だけど…)」 玄「…」ゴゴゴッ 照「(ついさっきドラを捨てたばかりの彼女の前で…)」 照「(こんな危険牌…切れるはずがない…)」 照「(今まで通りなら…もう2つくらい手の中に入っていてもおかしくはないんだから…)」 照「(…でも…もうこれが最後の親って状況で…無理なんて出来ない)」ギュッ 照「(…遠回りでも、何とか和了りにこぎつけられるようにしないと…)」スッ 玄「(…分かる)」 玄「(私にはもうドラは来ない)」 玄「(私が一番頼りにしてきたものはない)」 玄「(だけど…うん。そう…だけど…)」 玄「(私には…今まで積み重ねてきたものがある)」 玄「(最初はおかーさんから)」 玄「(次はおねーちゃんから) 玄「(そして…先生と穏乃ちゃん…灼ちゃんから…)」 玄「(そして…最後に…京太郎君から)」 玄「(教えて、託されて、頼まれて…貰ったものが…)」 玄「(私の中には…ちゃんと残ってる)」 玄「(…だから、私…怖くなんかない)」 玄「(確かに…私にもう能力はない)」 玄「(だけど、私には皆がいる)」 玄「(今この瞬間も応援してくれている人たちと重ねてきたものがある)」 玄「(だから…私は怖くない)」 玄「(だから…私は前へと進める)」 玄「(…だから…私は…!)」 ※玄の【ドラゴンキラー発動】 玄「…ツモ、2000・4000です」 照「…っ…!は…い…」グッ 穏乃「玄さあああああんっ」ダキッ 玄「わわ…っ!」ギュッ 穏乃「凄かったよ!最高だったよ!!」 玄「えへへ…ありがとう」 憧「まさかチャンピオンをここまでのしちゃうなんて…」 玄「と言っても…白糸台からはあんまり和了れなかったんだけどね」 灼「…それでも点差は数万…」 京太郎「あぁ。今まで先鋒戦で絶大なリードを作ってきた白糸台にとっては初めての展開だろうな」 玄「あ、京太郎君…」 京太郎「本当に…お疲れ様、玄」 京太郎「ここまでやってくれるなんて…思ってもみなかった」 京太郎「お前は本当に…最高のエースに成長したよ」 玄「本当?」 京太郎「あぁ。お前は白糸台の絶対的柱をへし折るくらいになったんだ」 京太郎「俺達が誇りに思うくらい…のな」 玄「…ううん」 玄「私にとって誇りは…皆の事だよ!」 玄「皆がいなかったら…私ここまで来れなかったもん」 玄「皆がいなかったら…私……私」ポロッ 玄「あ、あれ…どうしてだろう…涙が…」グスッ 京太郎「…玄」スッ 玄「ぅ…わ、私…」 玄「私…嬉しいよ…」 玄「皆の役にたてて…エースとしての勤め…果たせて…最高に嬉しいのに…」ポロポロ 京太郎「…無理すんなよ。お前にとってドラがどれだけ大事なものかってのは皆分かってるんだから」 玄「でも…」 京太郎「…良いんだよ。心から喜べないなんて…皆分かってる」 京太郎「皆の為に泣きそうな気持ちで頑張った事も…分かってるんだ」 穏乃「…うん。だから…大丈夫だよ」ナデナデ 玄「…穏乃ちゃん…」 穏乃「一杯、泣いて良いんだよ」 穏乃「だって…玄さんはそれだけ頑張ったんだから」 憧「そうそう。何も嬉しいからって喜ばないといけない訳じゃないでしょ」 灼「…複雑なのはわたしも分かる…だから…」 玄「…みんなぁ…」グスッ 憧「あーもう鼻水たらして…京太郎見ちゃダメ」 京太郎「はいはいっと…って…アレ?宥さん?」 宥「え…?あ…」 京太郎「…大丈夫か?なんかぼーっとしてたけど…」 宥「…あ…う、うん…」 京太郎「…どうかしたのか?」 京太郎「あっちは今、凄い盛り上がってるから…俺で良ければ聞くぞ」 宥「…ううん。大丈夫。ただ…」 京太郎「ただ?」 宥「…玄ちゃんはもう…一人じゃないんだなって思って」 京太郎「…宥さん?」 宥「…須賀君」 京太郎「あ…はい」 宥「…玄ちゃんの事、お願いね」 京太郎「…宥さんは?」 宥「皆、盛り上がってるから…私一人で行ってくる」 京太郎「でも…」 宥「大丈夫。私はおねーちゃんだから」ニコッ 宥「…そろそろ妹離れもしなきゃいけないし…それに…」 京太郎「それに?」 宥「…ううん。何でもない」 宥「…それじゃ後の事お願いね」 +2 宥(雀力7能力39) 46 +3 菫(雀力8+能力30) 38 +4 まこ(雀力8+能力35) 43 +5 のよー(雀力8+能力30) 38 宥 133 SS発動(-20) → 113 菫 123 まこ 106 のよー 82 ※弘世菫の特殊能力発動 SSの対象となった相手と自身が逆転した場合、相手から直撃をとる事が出来る 菫「(あれから私は幾度となく自分の動画を見返した)」 菫「(完全に狙いを見切られていたのは…何か癖ではないかと)」 菫「(照の奴がそう言ったからだ)」 菫「(お陰で…昨日は一日中延々と自分を見てて頭がおかしくなりそうだった)」 菫「(だが…松実宥)」 菫「(貴女の視線が…私の癖を教えてくれた)」 菫「(…貴女は私の手に注目し…その次に顔を見た)」 菫「(そしてそれからの狙いは確実に避けられてしまっている)」 菫「(勿論…一日でその癖を嬌声出来るものじゃない)」 菫「(今まで無意識的にやっていて私自身にも分からなかったのだから)」 菫「(しかし…なくすのならともかく…それを利用するなら…話は簡単だ)」 菫「(SSを使う前だけではなく…同じ仕草を入れる)」 宥「っ…!」 菫「(…そうすればそっちが反応し…そして…)」キリキリッ 宥「」スッ 菫「…それだ」ズバンッ 宥「え…? 菫「ロン。3900」 宥「は…い…」 +2 宥(雀力7能力39) 46 +3 菫(雀力8+能力30) 38 +4 まこ(雀力8+能力35) 43 +5 のよー(雀力8+能力30) 38 宥 95 菫 111 まこ68 のよー104 → SS発動(-20) 84 菫「(ここでするべきは阿知賀から少しでも削る事)」 菫「(故に…狙いは出来るだけ阿知賀の方へと寄せるべき…)」 菫「(とは言え…あまり狙いすぎると今度はそれを逆手に取られてしまう)」 菫「(準決勝で何度も躱されている以上…あまり執拗に狙い続けるのは危険だ)」 菫「(それに…私は決して狙いが良いだけの雀士って訳じゃない)」 菫「(普通に打っても白糸台の中でそこそこやれるんだ)」 菫「(何より…)」ピクッチラッ 宥「(~っ!)」 菫「(これだけで阿知賀の方は十分牽制出来る)」 菫「(後はその間に他の二校との和了あいを制すれば良い)」 菫「(他の二校と違い、阿知賀の方を気にしなくても良いから気も楽だからな)」 菫「(流れもこっちに来てるし…ここは…)」スッ 菫「(…よし…っ!)」 菫「ツモ。2600オール」 宥「は…い」 +2 宥(雀力7能力39) 46 +3 菫(雀力8+能力30) 38 +4 まこ(雀力8+能力35) 43 +5 のよー(雀力8+能力30) 38 宥92 菫65 まこ95 のよー112 → SS発動(-20) 92 宥「(ダメ…完全に癖の事バレちゃってる…)」 宥「(それどころか…さっきからそれをブラフに使われて…)」 宥「(お陰で…手がまったく進まなくて和了れない…)」 宥「(私…おねーちゃんなのに…)」 宥「(玄ちゃんが稼いできてくれた点棒溶かすばっかりで…)」 宥「(何にも出来てない…)」 宥「(須賀君にはあんな風に言ったのにこんなにボロボロだなんて)」 宥「(全然…あったかくないよ…ぉ)」フルフル まこ「…それツモじゃ」 菫「…はい」 菫「(…しまった。姫松の方を狙い過ぎたか)」 菫「(まぁ、姫松に和了られるよりも幾分マシか)」 菫「(それよりも…今は次の事を考えろ)」 菫「(それが…見たことがないくらい落ち込んだ照の奴を励ます為に…私が今するべき事なんだから)」 +2 宥(雀力7能力39) 46 +3 菫(雀力8+能力30) 38 +4 まこ(雀力8+能力35) 43 +5 のよー(雀力8+能力30) 38 宥127 菫88 まこ53 のよー127 菫「(ふむ…)」チラッ 菫「(阿知賀と姫松の両方がテンパイに近いか)」 菫「(速度的には阿知賀…テンパイへの近さは姫松といったところかな)」 菫「(この最終局面…狙うべきは勿論、一位の阿知賀だろう)」 菫「(けれど…そんなものは阿知賀の方も承知だ)」 菫「(必ず私の事を警戒しているだろう)」 菫「(それで…逆に直撃を喰らった苦い経験があるからな…)」 菫「(姫松は最下位ではあるが…まだトビまで余裕がある)」 菫「(とは言え最下位脱出の為にここなんとしてでも点数を取りに行くだろう)」 菫「(恐らく…取りやすいのは姫松の方…で…狙いたいのは阿知賀の方…)」 菫「(さて…私はどちらを狙うべきかな…)」 +2 末尾偶数:阿知賀の方 末尾奇数:姫松の方 姫松の方を狙う 菫「(そうだな…ここで無理をしていてもしょうがない)」 菫「(狙いのは姫松の方にしよう)」 菫「(それに…阿知賀はブラフで十分、牽制出来るんだ)」 菫「(わざわざ狙ったりしなくてもかく乱は十分に出来る…)」ピクッチラッ 宥「(…また来た…!)」 宥「(でも…さっきから私には射ってこない…)」 宥「(射ってきたのは最初の数回くらいで…)」 宥「(後は全部ブラフばっかり…)」 宥「(多分…この人は癖を矯正しきってる訳じゃない…)」 宥「(最初の数回も先にニセのサイン出されたから分からなかっただけで…)」 宥「(その後…私に向けられたサインは確かにあった)」 宥「(それでも今、狙わないのは…逃げる私を狙うのが大変だから…敬遠してるんだと思う)」 宥「(…そういう意味では…先生が集めてくれた情報はまだ活きている…)」 宥「なら…私がここでするべきは…何?)」 宥「(…失点を怯えて…ただ逃げ続ける事?)」 宥「(それとも…賭けに出て…少しでも点棒を取り返す事?)」 宥「(…そんなの決まってるよね)」 宥「(…こんな情けないままじゃ終われない)」 宥「(こんなんじゃ玄ちゃんにも皆にも顔向け出来ない)」 宥「(点差はあるんだから…それなら…)」スッ 宥「リーチ…!」 菫「っ!!」 宥「(…ここは…逃げない)」 宥「(攻める…攻めて…少しでも取り返す…!)」ゴッ まこ「(5巡目リーチとか…分かるかい…当たったら事故みたいなもん…っ)」スッ 宥「…ロンです」 まこ「は…い」シュン 宥「…ふぅ」 京太郎「宥さん、お疲れ様」 宥「あ…須賀君…その…」 京太郎「ん?」 宥「…ごめんなさい。私…マイナスで…」 京太郎「…いや、謝るべきはこっちだろ」 宥「え…?」 京太郎「まさか一日で癖をブラフに使ってくるとは思わなかった」 晴絵「うん…こっちも事前にその場合の作戦を伝えておくべきだったね…ごめん」 宥「う、ううん…見抜けないで…完全に翻弄されちゃったの私だから…」プルプル 宥「…準決勝では出来てたのに…全然ダメで…私…」 玄「…おねーちゃん」ギュッ 宥「あ…玄ちゃん…」 玄「大丈夫だよ。まだ点差はあるもん」 玄「それに…次は憧ちゃんなんだから」 憧「ってここであたしの名前出すの…?まぁ、良いけど…」 宥「…憧ちゃん…」 憧「うん。大丈夫だよ、宥姉」 憧「あたしが必ず宥姉の分、取り返してきてあげる」ギュッ 憧「大丈夫…あたし、渋谷選手とは相性が良いし」 憧「他の二人も京太郎に揃えてもらった牌譜も頭に入れた」 憧「対策もばっちりだし…相手は年上ばっかりだけど…勝算はあるから」スッ 憧「…だから、宥姉はそこで待ってて」 宥「…うん…」 宥「後…お願いね、憧ちゃん」 憧「うん。この新子憧にお任せあれってね」クスッ +2 憧(雀力10+能力59)69 +3 たかみー(雀力8) 8 +4 ロッカー (雀力8+能力20) 28 +5 愛宕家の面白い方(雀力8+能力20) 28 憧 140 たかみー 8 ロッカー 106 愛宕家の面白い方 32 憧「(…玄さんも宥姉も…皆頑張ってここまでバトンを繋いでくれた)」 憧「(特に…玄は前回ボロ負けしたチャンピオン相手に互角以上に渡り合ってたんだから)」 憧「(ここであたしがそのバトンを落としちゃう訳にはいかない…!)」ゴッ 憧「(基本は準決勝の時と同じく…)」 憧「(白糸台を気にしながら…ともかく速攻…!)」トンッ 憧「(点数はあるんだし…時にはこっちから振り込んででも…)」 憧「(親はひたすら流す…流し続ける…)」 憧「(そうすれば大きく稼ぐ事は出来ないけれど…)」 憧「(二位の白糸台に追いつかれる事は殆どない)」 憧「(対策さえしっかりしてればオーラスの白糸台も怖くないんだから…!)」 尭深「…」スッ 憧「…それロン!7700です」 尭深「…はい」 +2 憧(雀力10+能力59)69 +3 たかみー(雀力8) 8 ハーベストゲージ8 +4 ロッカー (雀力8+能力20) 28 +5 愛宕家の面白い方(雀力8+能力20) 28 憧 97 悪待ち発動(-10) → 無効+加速(+30) 127 たかみー 25 悪待ち発動(-10) → 15 ロッカー 49 悪待ち返し(-10) → 39 面白い方 114 悪待ち発動(-10) → テンションアップ発動(+20) → 反転世界発動(-98) 26 ※ロッカーの悪待ち発動 自身が三位以下の場合、全員に-10の補正を与える この効果で自身の順位が逆転する場合、逆転した相手からの和了となる(※非特殊勝利) ※愛宕家の面白い方のテンションアップ発動 自身が二位以上の場合、自身のコンマに+20を加える 尭深「(…ダメ…さっきから配牌が悪すぎる…)」 尭深「(ただでさえ親は流され…種まきが十分に出来てないのに)」 尭深「(三元牌すら…まともに来なくなっているなんて…)」 尭深「(…このままじゃ準決勝の時と同じく…阿知賀の子に一人勝ちされてしまう…)」 尭深「(…だからこそ、他の二人には何とか頑張って欲しいんだけど…)」チラッ 久「…」 洋榎「…っ」 尭深「(…彼女の加速に追いつけていない)」 尭深「(準決勝の時と同じく…ここも殆ど彼女の独壇場…)」 尭深「(まるで場を支配されているように流れだけ持って行かれて…)」 憧「…ツモ」 憧「4000オールです」 尭深「…はい」 尭深「(…このままじゃまずい…)」 尭深「(何とかしなければ…)」 +2 憧(雀力10+能力59)69 +3 たかみー(雀力8) 8 ハーベストゲージ33 +4 ロッカー (雀力8+能力20) 28 +5 愛宕家の面白い方(雀力8+能力20) 28 憧 165 悪待ち発動(-10) → 無効+加速(+30) 195 機が熟すのを待てないヒロイン 悪待ち発動(-10) 92 ロッカー 77 悪待ち返し(-10) 67 愛宕家の面白い方 54 悪待ち発動(-10) 44 久「(…まずいわね…これ完全に阿知賀の独壇場じゃないの…)」 久「(早いだけかと思ったら…手の高さもそれなりだし…)」 久「(一応、決勝戦の相手って事だから牌譜もチェックしていたけれど…)」 久「(今年ようやく団体戦入り出来て…監督もいない私達にろくな対策なんて出来る暇ないわよね…)」 久「(牌譜作るのだって自前で…掃除や洗濯だって自分たちでしなければいけないんだし…)」 久「(…せめて一人雑用が居てくれて…その子が働いてくれるなら…まだ何とかなったかもしれないけれど…)」スッ 久「(…二年のブランク…監督の不在…雑用の負担…)」 久「(全部が絶望的な差となって立ちはだかって…私…)」 洋榎「(あかん…これ…)」 洋榎「(何があかんって…全部あかんくらい…あかん)」 洋榎「(これで一年って本当なんか?)」 洋榎「(本当は高校100年生の間違いじゃうの?)」 洋榎「(…それくらい滅茶苦茶な差があるで…)」 洋榎「(名門って事でそれなりにプロと打った事もあるけれど…)」 洋榎「(下手すりゃ…そこらのプロよりも強いなんて…)」 洋榎「(牌譜見る限り中学3年までは普通やったのに…)」 洋榎「(たった一年で…この子に一体…何が…)」スッ 憧「…ロン」 憧「12000です」 洋榎「~~っ!」 洋榎「(黙っパネ…きっつぅ…)」 +2 憧(雀力10+能力59)69 +3 たかみー(雀力8+能力135) 143 +4 ロッカー (雀力8+能力20) 28 +5 愛宕家の面白い方(雀力8+能力20) 28 憧 163 悪待ち発動(-10) → 無効+加速(+30) 193 潤んだ瞳をするヒロイン 194 悪待ち発動(-10) → 反転世界発動(-50) → 134 ロッカー 125 悪待ち返し(-10) 115 洋榎 111 悪待ち(-10) 101 尭深「(…オーラスのハーベストタイム…)」 尭深「(…ようやくここまで来れた…)」 尭深「(後半戦開始すぐに多少まごついたのか…)」 尭深「(親が数回回ったから…助かった)」 尭深「(…配牌…は…)」スッ 尭深「(…うん…一向聴予想通り…)」 尭深「(いくら阿知賀のあの子が早くてもこれなら勝てる…)」 尭深「(…阿知賀の一人浮きは避けられないけど…それでも…)」 尭深「(大きく引き離されるような事はないはず…)」 尭深「(…でも…逆にここで和了れなかったら…)」 尭深「(もし…ハーベスト・タイムが二回不発したら…)」ゾクッ 尭深「(…いや…それは…今考えるべきじゃない)」 尭深「(それよりも今は…この大三元を確実に和了りへと持っていくべき…)」スッ 憧「…」 尭深「(…ふぅ…なんで序盤からこんなに緊張しなきゃいけないんだろう…)」 尭深「(こっちはもう大三元までもう一歩で…まだ数巡も経ってないのに…)」 尭深「(でも…決勝戦になってから彼女の和了りの速さは異常だし…警戒しすぎる事は…)」 憧「…」スッ 憧「…うん。ツモ」 尭深「え…?」 憧「6000・12000の…三倍満です」 尭深「……う…そ…」ブル 憧「たっだいまー」 京太郎「よ。お帰り」 憧「えへへ…どうだった?」 京太郎「最高だったよ、非の打ち所がなかった」 京太郎「(…まぁ、最高過ぎて清澄と白糸台の人泣いてたけどな…)」 京太郎「(姫松の人も泣き笑いみたいな感じだったし…)」 京太郎「(でも…牌譜見る限りあそこにいる三人は決して弱い訳じゃない)」 京太郎「(それをここまで圧倒出来たのは…憧がもうそこらの高校生相手じゃ話にならないくらい強くなっているからなんだろう)」 京太郎「もうプロでも、憧相手には苦戦するかもな」 憧「もうそこまで持ち上げろなんて言ってないでしょ」クスッ 憧「…でも、ありがとう。あたしがここまでやれたのは…京太郎のお陰よ」 京太郎「そんな事ねぇよ。そもそも…憧は俺が教えるまでもなく基礎が出来てたしな」 憧「…ううん。そうじゃなくって…」 京太郎「ん?」 憧「…絶対に勝ちたい…ううん…勝たなきゃいけないって」 憧「そう思わせてくれたのは京太郎だから」 憧「そうじゃなかったらきっとあんなに大差はつかなかったと思う」 憧「だから…」ギュッ 穏乃「あこーーーっ」 憧「…あっ」 穏乃「凄かった…凄かったよ!」ダキッ 憧「…ふふ。ま、ざっとこんなもんよ」 憧「と言っても…収支的にはそれほど高い訳じゃないけどね」 憧「親の時には意図的に振り込んでたし」 玄「それでも一人だけ+収支で終われたのは凄いよ!」 宥「…うん。敵…取ってくれてありがとう…」 憧「ううん。こっちこそ、宥姉には何時もお世話になってるから」 憧「それに…これでも安全って訳じゃないんでしょ?」 京太郎「…まぁ、な」 京太郎「清澄の方の宮永選手はいろんな意味で得体のしれない打ち手だ」 京太郎「しずが能力発揮出来ない前半に追いつかれる事だってありえない訳じゃない」 京太郎「大星選手と潰し合ってくれればそれで良いけど…でも、一位のこっちを狙ってくる可能性は十二分にある」 灼「…じゃあそうならないように…」スッ 灼「…もっと稼いで来れば良いんだよね」 晴絵「…灼」 灼「…大丈夫だよ、ハルちゃん」 晴絵「でも…其のネクタイ…やっぱり縁起が悪いんじゃ…」 灼「ううん…」 灼「…これは何時も私に力を与えてくれるから」キュッ 灼「それに私が今ここにいれるのは…このタイのお陰でもあるんだよ」 灼「縁起が悪いなんて事はない…これは私にとって…最高のお守りだよ」ニコッ 晴絵「…灼」 灼「…それを今から…証明してくるから」 灼「このネクタイと一緒に…勝って…証明してくるから」 灼「…だから…京太郎」 京太郎「おう」 灼「…一杯…応援しててくれる?」 京太郎「任せろよ」 京太郎「モニターの向こうだけど…誰よりも応援しててやる」 灼「…ふふ。それなら…大丈夫だね」 灼「京太郎とハルちゃん…私の大好きな人が応援してくれているなら…」 灼「…私は絶対に大丈夫…だから…」 灼「…行ってきます」 晴絵「…うん。行ってらっしゃい」 +2 灼(雀力8+能力40) +3 誠子(雀力8+能力30-能力(灼)20)18 +4 和(雀力10+能力30)40 +5 絹恵(雀力8+能力30-能力(灼)20)18 灼84 → 約束のネクタイ発動(+20) 104 誠子 91 和 50 絹恵 89 誠子「(…先鋒戦で敗れただけじゃなく…こんな展開になるなんて…)」 誠子「(かろうじて二位ではあるけれど…一位との点差は約5万…)」 誠子「(まさか…この点差を追われる側じゃなくて…追う側になるなんて…な)」 誠子「(…だけど…まだ負けたつもりは…ない)」 誠子「(逆に言えば…まだたった一位との差は5万しかないって事なんだから)」 誠子「(何より…大将にいるのはそれをひっくり返せるほどの化物だ)」 誠子「(そいつにつなぐ為にも…コレ以上…阿知賀の独走だけは許せない)」 誠子「(だからこそ…ここは貪欲に点を取っていく…!)」 誠子「(幸い…準決勝ほどガチガチに対策されている訳じゃない)」 誠子「(阿知賀からはともかく…他のところからはいくらでも鳴ける)」 誠子「(…特に清澄はまったくこっちに無警戒だ)」 誠子「(なら…っ!)」 誠子「ポン!」 誠子「ポン!」 誠子「そして…ポン!」 誠子「(…よし。これで三フーロ…後は和了りを待つだけ…!)」 和「…」スッ 灼「ロンです。5200」 和「はい」 誠子「…くぅ…!」 +2 灼(雀力8+能力40)48 +3 誠子(雀力8+能力30-能力(灼)20)18 +4 和(雀力10+能力30)40 +5 絹恵(雀力8+能力30-能力(灼)20)18 灼 137 誠子 51 和 135 絹恵 104 灼「(…さっきから白糸台の人が勝負を仕掛けてきている…)」 灼「(この点差を何とか埋めて大将戦に繋げようとしてるんだ…)」 灼「(…だけど…うん…だけど)」 灼「(それは…こっちも同じ)」 灼「(この点差じゃ…まだまだ白糸台は怖い)」 灼「(三位の清澄相手にだって決して安心できる差じゃないんだから)」 灼「(無理は出来ないけど…でも…次鋒の人のように狙い撃ちに特化してる訳じゃない相手との勝負から)」 灼「(わざわざ逃げるほど…こっちも余裕ある訳じゃない)」 灼(何より…)」スッ 灼「(…今までずっと追われる立場だった所為か…)」 灼「(白糸台には明確な焦りが見える)」 灼「(そこを突くのは…決して難しい事じゃない)」 灼「…ロン。7700です」 誠子「~~っ!」 誠子「(…何を…やってるんだ…私…!)」 誠子「(この局面で…一番、振り込んじゃいけない相手に振り込むなんて…)」ジワッ +2 灼(雀力8+能力40) +3 誠子(雀力8+能力30-能力(灼)20)18 +4 和(雀力10+能力30)40 +5 絹恵(雀力8+能力30-能力(灼)20)18 灼 130 誠子 99 和 97 絹恵 35 絹恵「(お姉ちゃんの分…何とかせえへんって思うたけど…)」 絹恵「(この子…やっぱり隙がない…)」 絹恵「(若干、ピンズ寄りってだけで…何かしら能力持ってる様子もないのに…)」 絹恵「(なんでここまで圧倒的な勝負が出来るんや…!?)」 絹恵「(く…せめて相手が能力とかそういうのやったら…まだ付け入る隙はあるかもしれへんのに…)」 絹恵「(素でこんだけ強いなんて…どうすりゃええの…)」 絹恵「(こっちだって…伊達で副将やっとる訳やないのに…)」 絹恵「(レギュラーに選ばれたんかて…決して贔屓でも何でもないはずやのに…!)」 絹恵「(こんなになるまで…ボロボロにされるなんて…)」 絹恵「(お姉ちゃん…うち…どないしたら…)」 灼「ロン。6400」 絹恵「…はい…」ジワッ +2 灼(雀力8+能力40)48 +3 誠子(雀力8+能力30-能力(灼)20)18 +4 和(雀力10+能力30)40 +5 絹恵(雀力8+能力30-能力(灼)20)18 灼 86 誠子 30 和 44 絹恵 50 和「(灼さん…やっぱり強い…)」 和「(私が一緒だった頃よりも数段…いえ…もしかしたらもっと強くなっているかもしれません…)」 和「(…私がいなくなって…公式戦で阿知賀の名前を見なくなっていましたが…)」 和「(きっと…今までずっと頑張ってきたんですね)」 和「(…そう思うと…少し誇らしい気持ちです)」 和「(私にとって…灼さんたちはやっぱり友達ですから)」 和「(…だけど…それ以上に…悔しいです)」 和「(私は…全力で打っているはずなのに…)」 和「(…他の人の事も考えず…ぽてんしゃるを全て発揮出来ているはずなのに…)」 和「(…その遥か先を行かれ続けて…)」 和「(…これが…まだ個人戦であれば私も素直に祝福できたんでしょう)」 和「(だけど…仲間たちの分の点棒を背負っている今…)」 和「(心の中から喜ぶ事なんて…出来るはずもなくって…)」 灼「ツモ。1000・2000」 和「…は…い」 和「(点棒を持って帰って咲さんを少しでも楽にさせてあげるどころか…)」 和「(完全な-収支…)」 和「(こんなの個人戦ならともかく団体戦ではなかったはずなのに…)」グッ 和「(ごめんなさい咲さん…ごめんなさい…)」 灼「…ふぅ」 京太郎「…よ。灼。お疲れ様」 灼「あ、京太郎…迎えに来てくれたの?」 京太郎「あぁ。灼が自分を責めていないかって思ってさ」 灼「…どうして?」 京太郎「お前はドライそうに見えて結構…てかかなり情が深い奴だからな」 京太郎「和を敵に回しての麻雀に心痛めてるんじゃないかと思って」 灼「…別に後輩だからって…そんな風にはなったりしないよ」 京太郎「…本当に…?」 灼「……実を言うと…少しだけ」 灼「…少しだけ…胸が傷んだ」 灼「和だって…必死にこっちについてこようとしてたのが分かってるから」 灼「敵として…別々の立場ではあったけれど…」 灼「…でも、後輩が…それだけ必死になれるほど背負っているものがあるのがわかったから」 灼「これが互角であったならこんな事はなかったんだろうけど…でも…」 京太郎「…そっか」ポン 京太郎「ごめんな、お前に一番、辛いところを任せて」 灼「…ううん。大丈夫」 灼「…それより、私頑張ったよ。…褒めてくれないの?」 京太郎「ん…そうだな…じゃあ、どうして欲しい?」 灼「…ナデナデ」 京太郎「…甘えん坊め」ナデナデ 灼「…私にだって…たまにくらい甘えたい時があるの…」 灼「…そういう時くらい…甘えさせてくれるよね?」 京太郎「ま…普段、お前には世話になりっぱなしだからな」 京太郎「でかい山場がひとつ終わったんだし…いくらでも甘やかしてやるよ」 灼「…あ、じゃあ、ジュース買って…」 京太郎「おう。それくらいなら…」 灼「口移しで飲ませて…」 京太郎「調子に乗るなっての」ペシッ 灼「あぅ…」 灼「…女の子に暴力振るうなんて…失望した」 京太郎「どさくさまぎれに口移しとか言う奴は俺の中じゃ女の子じゃねーよ」 京太郎「ま、ジュースくらいなら買ってやるよ。ほら、何が良い?」 灼「…んー…それじゃあ…カフェオレが良いかな」 京太郎「了解。じゃあ、買ってくるから先に控室戻っとけよ」 灼「うん…」 灼「……」 灼「…で、穏乃は何時までそこにいるつもり?」 穏乃「はぅ!?」 灼「…ごめんね、気を遣わせちゃって」 穏乃「だ、大丈夫だよ。わ、私…い、今来たところだから」フルフル 灼「ふふ…二人っきりにさせてくれたお礼にそういう事にしといてあげる」 穏乃「ぅ…うぅー…」 灼「…でも、良いの?」 穏乃「べ、別に…京ちゃんが灼さんを撫でてるくらい…なんとも…」モゴモゴ 灼「…私が言ったのは副将戦で和と当たるのが私で良かったのかって意味なんだけど」クスッ 穏乃「あ、あぅぅ…」カァァ 灼「…でも、少しだけ安心…かな」 穏乃「え?」 灼「遊びたいって言った穏乃が当たらなかったから…」 灼「…内心、恨まれてるんじゃないかってそう思ってた」 穏乃「…そんな事ないよ」 穏乃「確かに和と直接戦う事は出来なかったけれど…」 穏乃「でも、私達が…阿知賀が戦ってるのは和のいるチームとなんだから」 穏乃「それだけで私は満足だし…何より…」 灼「何より?」 穏乃「ここはインターハイ決勝戦…だよ!」グッ 穏乃「皆と遊ぶには…最高の場所、最高のシチュエーション」 穏乃「カンカン照りの山みたいなものなんだから!!」ニコッ 灼「…ふふ。穏乃らしい喩え」 穏乃「えへへ…まぁ…だから恨んでなんかいないよ」 穏乃「寧ろ…ありがとうございます」ペコッ 灼「…ん?」 穏乃「私を…ここまで連れてきてくれて」 穏乃「最高の舞台で…戦わせてくれて」 灼「…それはこっちのセリフ」 灼「私がこうしてここにいられるのは…皆のお陰」 灼「ハルちゃんが居て、京太郎が居て、玄が居て…宥さんが居て…憧と穏乃が居て…」 灼「それでようやく…ここまで来られたんだから」 灼「きっと…誰か一人でも欠けていたら…私はこの場にいなかったと思う」 灼「こんなところまで来られなかったって…そう思うから」 穏乃「…灼さん」 灼「…でも、私、もうそれで満足出来な…」 穏乃「え?」 灼「…ここにいるだけじゃなくて…私は…優勝したい」 灼「優勝して…皆とその気持ちを分かち合いたい」 穏乃「…あ…」 灼「…だから、後はお願いね、大将」 穏乃「~~っ!」 穏乃「うん…!絶対に…絶対に勝って来るよ!」 灼「うん…期待してるね」ニコッ +2 穏乃(雀力8-能力(あわあわ)50) -42 +3 あわいい子(雀力10+能力50) 60 +4 咲さん(雀力11+能力50)61 +5 死なないでメゲ原さん!(雀力9+能力40-能力(あわあわ)25) 24 穏乃 56 淡 90 咲 96 死ななかったメゲ原さん 110 恭子「(最下位出発…しかも、相手はまた宮永さんか…)」 恭子「(その上…今回は他に白糸台とさらにそれに勝った阿知賀までおるって…)」 恭子「(なんやそれ…インフレもええ加減にして欲しいわ…)」 恭子「(けど…だからと言って…)」 恭子「(…泣きながらここまで来てくれた他の子の為にも負けられへん)」 恭子「(トップの阿知賀との点差は絶望的…せやけど・・!)」スッ 恭子「(もうメゲたりなんか…せえへん!)」 恭子「(最後まで…諦めずに…戦い抜いて…)」 穏乃「…」スッ 恭子「ロン!5200です!」 穏乃「…は…はい…」 +2 穏乃(雀力8-能力(あわあわ)50) -42 +3 あわいい子(雀力10+能力50) 60 +4 咲さん(雀力11+能力54)61 +5 死なないでメゲ原さん!(雀力9+能力40-能力(あわあわ)25) 24 穏乃 43 あわいい子 159 咲 99 さようならメゲ原さん、どうか死なないで…112 穏乃「(はぅ…まさか姫松の人から一撃貰うなんて…)」 穏乃「(う、ううん…逆に考えるんだよ、穏乃!)」 穏乃「(これが白糸台の人じゃなくて良かったって…そう思うんだ!)」 穏乃「(姫松の人から多少のダメージを貰っても…それほど影響はない)」 穏乃「(それより一局ずつ流れていった方を喜んだ方が精神的にも良いはず…!)」 穏乃「(…うん。ここで焦っても仕方ない)」 穏乃「(後輩で盛り返せるんだから…今はゆっくり…)」 淡「…カンッ」 穏乃「はぅ…!」 穏乃「(こ、ここでカン…!?)」 穏乃「(で、でも…完全な安全牌なんてないよぉ…)」 穏乃「(相変わらず白糸台の人はリーチだけだし…ダブルリーチばっかりだから全然読めない…)」 穏乃「(ぅー…ぅー…)」モンモン 穏乃「(と、とりあえず…これ…お願い…通って…!!)」スッ 淡「…」ニヤッ 穏乃「」ゾッ 淡「それローン!」 淡「点数は12000…じゃなかった。ちゃんと確認しないと」 淡「えーっと…」コロン 淡「…うん。ちゃんとドラ載ってるね」 淡「今度こそ12000…貰うよ」 穏乃「は…はい…」フルフル 穏乃「(直撃…完全に狙われたー…ぁ)」 穏乃「(あんなの分かんないとは言え…ぅぅ……)」 穏乃「(い…いや…でも、大丈夫…!)」 穏乃「(ここからなら…皆は抑えられる…!)」 穏乃「(ここから先連荘すれば…)」ゴウッ 淡「(…~っ!来た…!あのわけわかんない感覚…!)」 淡「(く…また…周りにモヤが掛かって…!!)」 淡「(でも…負けられない…)」グッ 淡「(今度こそ…今度こそこれを破って…逆転…!)」 淡「(準決勝のリベンジ…絶対果たすんだから…!)」 恭子「(…なん…や、これ)」 恭子「(さっきまでは…別になんでもなかったあの子が…)」 恭子「(急に…見上げるくらい大きく見えて…)」 恭子「(…今までやられてばっかりやった阿知賀の大将が…まるで得体のしれへん化物のように思える…)」 恭子「(…考えても見れば…化物揃いの阿知賀の中で大将だけこてんぱんにやられるってのはおかしい)」 恭子「(…それに準決勝を見る限り…ここから白糸台の大星淡が…まったく回らへんようになっとった)」 恭子「(何が起こっとるのはよくわからんけど警戒だけは必要やな…)」 恭子「(…って、うちも大概普通じゃない麻雀になれてきたなぁ…)」ハァ 咲「……」 ※咲の天峰に咲く華発動 あらゆる特殊効果を無効にする 穏乃「っ…!」 穏乃「(…ダメだ…この…清澄の人…)」 穏乃「(私の能力…まったく効いてない…)」 穏乃「(こんな事…今までなかったのに…)」 穏乃「(…ここから先は…決して独壇場じゃないんだって…注意しとかないと…)」 +2 穏乃(雀力8+能力60)68 +3 あわいい子 0 +4 咲さん(雀力11+能力55)66 +5 メゲ原さん普通の麻雀止めるってよ 0 穏乃 102 あわいい子 6 咲さん 136 メゲ原ェ 69 咲「(…ふぅ。最初は白糸台の人に抑えられてたけど…)」 咲「(でも…後半戦から…大分、楽になったみたい)」 咲「(少なくとも…五向聴からの開始なんて事はないし…)」 咲「(カン材も…手の中に揃ってる)」 咲「(理由は分からないけど…でも…責め時は…今…!)」 咲「(ここを逃したら…きっと逆転はできなくなる…)」 咲「(そしたら…和ちゃんが…また転校しちゃう…!)」 咲「(それだけは絶対に…絶対に嫌だから…!)」 淡「…くっ…!」スッ 咲「…それカン!」 淡「…あ…っ」 咲「カン…!」 咲「もう一個…カン!」 咲「そして…」ゴッ 咲「…責任払いで…12000です」パラッ 淡「…う……ぅ…」 +2 穏乃(雀力8+能力60)68 +3 あわいい子 0 +4 咲さん(雀力11+能力55)66 +5 次回!メゲ原死す!デュエルスタンバイ! 0 穏乃 163 涙目あわあわprprしたい 1 咲さん 79 メゲ原ァ!お前の前の棚のオレオ取ってオレオ!! 33 穏乃「(~~っ!)」 穏乃「(今のが…宮永さんの…)」 穏乃「(…白糸台の人のも…人間業じゃないと思うけど…)」 穏乃「(カンで有効牌引いてくるこの人も…どう考えてもおかしいよね…)」 穏乃「(それに…大星さんと違って、宮永さんには…私の能力効いてない…)」 穏乃「(私の能力は確実に発動してるはずなのに…気にせずこっちに歩み寄ってくる…)」 穏乃「(…今まで私の能力を破る人は居たけれど…)」 穏乃「(まったく効いてない人なんて…今までいなかったのに…)」ブルッ 穏乃「(世の中には…こんな人もいるんだ…)」 穏乃「(…だけど…清澄の人は未だ三位…)」 穏乃「(こっちとの点差はまだまだあって…何より…)」チラッ 淡「ぅ…ぅ…」スッ 恭子「……」トン 穏乃「(他の二人にはちゃんと効いている…)」 穏乃「(それなら…喩え本人を狙うのが難しくっても…)」 穏乃「(他の二人から和了っていけば…それだけで…!!)」 穏乃「ロン!」 穏乃「ロン!」 穏乃「ツモ!」 穏乃「ツモ!」 穏乃「ロン!」 淡「あ…ぅ…」ブルッ 穏乃「…お疲れ…様でした!」 淡「…お疲れ…様…」カタカタ 咲「は…い…」ポロッ 恭子「…はは。あー…もうお疲れ様でしたぁ…」グテー 憧「しずーっ!」ギュゥ 穏乃「えへへ…♪憧ーっ」ギュッ 玄「やった!やったよ!優勝だよ!!」ギュッ 宥「あったかぁい…」ギュゥ 灼「…良かった…」 晴絵「…ほら、灼も行って来なさいよ」 灼「…私は良い。あっちはもう一杯だし…」 灼「それに…私はハルちゃんと…一緒に喜ぶから」ニコッ 晴絵「まったく…灼ってば」 灼「…ダメ?」 晴絵「そんな訳ないでしょ。おいで、一杯ぎゅってしてあげる」 灼「はるちゃあああんっ」ギュウゥゥゥ 晴絵「よーしよしよし…灼も頑張ったね、良い子だね」ナデナデ 京太郎「…あぁ、そうだな」 京太郎「皆…本当にお疲れ様」 京太郎「まさか…白糸台三位に叩き落として優勝するなんて思ってもみなかったよ」 穏乃「えへへ…だって…皆頑張ったもん!」 憧「そうね…今までこの為に頑張って来たもんね」ナデナデ 玄「京太郎君がいてくれたから…私達…皆で…」 宥「…ここまで来れた…んだよ」 京太郎「…いや、俺がやった事なんて微々たるもんだよ」 京太郎「こうやって優勝できたのは皆が積み重ねた結果だ」 京太郎「だから…」 ドンドン 「すみませーん!優勝インタビューお願いします!!」 「阿知賀の皆さん!少しだけ!!少しだけで良いので!!」 「一言お願いします!なんでもしますから!!」 京太郎「…ったく相変わらず余韻に浸らせてくれねーな…」 晴絵「はは。そりゃ他の3校寄せ付けず一人浮きで優勝だもの」 晴絵「去年の白糸台がやった事そのままを去年以上と言われた白糸台にやったらそりゃそうなるでしょ」 穏乃「えっと…またインタビュー受けなきゃ…ダメ?」 京太郎「良いよ。お前ら皆疲れてるだろうし」 憧「あ、でも…あたしは受けてみたい…かな」 京太郎「良いのか?昨日から麻雀漬けで疲れてるんじゃ…」 憧「でも…一応、そういうの受けてれば阿知賀の知名度もあがるでしょ?」 穏乃「あー…確かに…」 玄「来年は…おねーちゃんがいなくなっちゃうから…」ギュッ 宥「…そう…だね。来年の事も考えておかない…と…」シュン 憧「うん。それに…」チラッ 京太郎「ん?」 憧「な、何でもない…」カァ 晴絵「ふふ…じゃあ…インタビュー受けてみよっか」 晴絵「ただ…今日はもう皆疲れているだろうし、今日は一人だけ」 晴絵「その他は撤収の準備って事にしましょう」 京太郎「了解。それじゃ…」 +2 末尾16 しずに任せる 末尾27 憧に任せる 末尾38 灼に任せる 末尾49 玄に任せる 末尾50 宥さんに任せる しずに任せる 京太郎「んじゃ、しずに頼むか」 穏乃「え、えぇ!?わ、私!?」 京太郎「あぁ。大将戦で見事優勝決めたのはお前だしな」 京太郎「このタイミングでここに来てるって事は殆どがお前目当てだろうし」 穏乃「で、でも、私あんまり…お喋り得意じゃないよぉ…」 京太郎「大丈夫だって。地元への感謝とか応援してくれたファンの皆への気持ちとか」 京太郎「その辺、言っとけば適当にあっちで編集してそれっぽくしてくれるからさ」 灼「…あれ?これ生放…」 晴絵「あ、灼。こっち手伝ってくれる?」 灼「あ、はーい」パタパタ 京太郎「まぁ、絶対に嫌って言うのなら他の奴に頼むけど…」 穏乃「う、ううん。大丈夫…」 穏乃「今までも何回かインタビュー受けてるし…」 穏乃「それと同じ事言えば良いんだよね?」 京太郎「ま、大体そうだな」 穏乃「わ、分かった…!そ、それじゃ行ってくるね」 ガチャ 「あ、高鴨選手だ!」 「高鴨選手ー!一言!一言お願いします」 「優勝した今のお気持ちはどうですか!?」 「本当なスパッツ履いていないって本当ですか!?」 穏乃「え、えっと…あの…」カチカチ 穏乃「ゆ、ゆうしょーはうれしいです」 穏乃「皆とがんばりました」 「圧倒的大差の勝利でしたが…他の高校はどうでした?」 穏乃「あ、あの…そんな事…なかったと思います」 穏乃「というか…ここまでこれたのが…不思議なくらいでした」 穏乃「二回戦で千里山と当たった時に勝てたのは運が良かったからで…」 穏乃「…じゅんけっしょーも…最後に捲れたのはギリギリでした」 穏乃「結果的にはゆうしょーでしたけど、何時敗退してもおかしくはなかったとおもいます」 「なるほど…では、そうやってギリギリの戦いをする度に阿知賀は強くなっていったんですね」 穏乃「え、えっと…多分…そうかな…と」 「ですが、一回戦から今とではまるで別人のように強くなっていますが…」 「この短期間で強くなれた秘訣とはなんですか!?」 穏乃「秘訣…え、えっと…えっと…」 穏乃「わ、私…達には…大事な人が居て…あの…」 穏乃「その人…凄い強くて…だけど…今は麻雀出来なくて…」 穏乃「そんな人が私達の為に牌譜揃えて…一対一で講義してくれて…」 穏乃「合間の休日も私達の為に駆けまわって練習試合申し込んでくれて…」 穏乃「私達以上に…ハードなスケジュールで…最後には…顔真っ青になって…」 穏乃「そうやって…支えてくれた人がいたからこそ…あの…強くなれたかなって…」 「それはもしかして…去年のインターミドルチャンピオンである須賀選手の事ですか?」 穏乃「は、はい。きょーちゃんです」 「…京ちゃん?」 穏乃「あ、ご、ごめんなさい。幼馴染だから…つい」 「なるほど…じゃあ、高鴨選手は須賀選手の事をどう思ってらっしゃるんですか?」 「(ばっ…せ、選手に何を聞くんだ!!?)」 「(おい何処のゴシップ記者だ!叩きだせ!)」 「(ファミチキください)」 「(こいつ直接脳内に…!!)」 穏乃「え?勿論、大好きですよ」キョトン 「…ず、随分とあっさり応えるんですね」 穏乃「え…あ、ダメ…でした?」 「いや…そ、そんな事ないですけど…でも、これ一応全国放送…ですよ」 穏乃「ぅ…?でも…誰かの事好きな事って恥ずかしい事じゃないですよね」 「そ、それはまぁ…そうですけど…」 穏乃「それに京ちゃんの事好きなの私だけじゃないですから」 「…え?」 穏乃「憧も、玄さんも、灼さんも…宥さんも」 穏乃「皆きょーちゃんの事大好きですからっ」ニコー 「…そ、そうですか。ありがとうございます。では、地元の皆さんに…何か」 「大好きって事はみなさん付き合ってられるんですか?」 「(おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?)」 「(わざわざ地雷踏みに行くなって!馬鹿かよ!!)」 「(ちくわ大明神)」 穏乃「ふぇっ!?つ、付き合っ」カァァ 「突然、公式戦に出なくなった須賀選手のこと知りたがっている人って結構いるんですよ」 「出来ればおもしげふげふ、何か話を聞かせていただけると有難いんですけど」 穏乃「…つ、付き合う…とか…えと…だって…あの…今まで皆麻雀で一生懸命でしたし…」モジモジ 穏乃「皆、そんな事…考える余裕もなかった…と…お、思い…ます」 「じゃあ、インターハイ優勝を決めた今、大手を振ってかんがえられる訳ですね!!」 穏乃「いや…そ、それは…でも…」 「どうです?須賀選手に習って…ここで一つ告白なんか!?」 穏乃「ふぇ…こ、告白!?」 「えぇ。須賀選手もやってた事ですよ」 穏乃「き、京ちゃんも…そ、それじゃ…あの…」 穏乃「私…き…き…京ちゃんの事が…!」 京太郎「はーい。そこどいてくださーい」バッ 穏乃「ふにゃん!?」バッ 京太郎「皆疲れてるんでインタビューはここまでにしてくださーい」 「あ、須賀選手、さっき高鴨選手から聞いた話を詳しく…」 「お前もういい加減にしろって!」 「すみませーん。もう撤収します!」 「貴重なお話、ありがとうございました!」 穏乃「あ、あの…京ちゃん…」 京太郎「ん?」 穏乃「私…もしかしてまずい事言っちゃった…?」 京太郎「…ま、良かったとは言えないかもな」 穏乃「あぅ…」 京太郎「大丈夫だ。悪いのは別にお前じゃねぇし」 京太郎「まだプロでもない素人のプライベート根掘り葉掘り聞いた局がおかしいんだ」 京太郎「お前はそれに一生懸命答えようとしただけで何も悪い事は言ってない」 穏乃「でも…」 京太郎「ま、俺もテンパッて変な事言う事あったからあんまり気にすんなよ」ナデナデ 京太郎「ただ…まぁ…」 穏乃「ぅ?」 京太郎「…少しの間、色々とからかわれたりするかもしれないけど…その辺は心を強く持てよ」 穏乃「…からかわれるって?」 京太郎「あー…ほら、俺と恋人とかどうのこうのってさ」 穏乃「…それなら…別に…嫌じゃないよ」 京太郎「いや、でも…」 穏乃「…京ちゃんは私と恋人って言われるの…嫌?」 京太郎「いや…それは…」 穏乃「…憧みたいに女の子らしくないから…やっぱり…嫌かな…?」 京太郎「…別にそんなの気にしねぇよ」 京太郎「しずはしずだ。憧と比べるようなもんじゃねぇし…」 京太郎「それに俺はお前にちゃんと女の子らしいところあるの知ってるからさ」 穏乃「…じゃあ…あの…」 穏乃「私…京ちゃんの恋人になっても…」 晴絵「あ、もうマスコミ行った?」 穏乃「ふぇぇぇう!?」カァァ 晴絵「あ、行ったみたいね…良かったぁ」 晴絵「…ってしず、どうしたの?」 穏乃「あ、あの…え、えぇと…」 穏乃「な、なんでも…何でもないです…!」カァァ 晴絵「そう…それなら良いけど…」 晴絵「とにかく…こっちの準備も終わったし…ホテルに戻りましょ」 晴絵「そして…その後は焼き肉よ!」 京太郎「…また焼き肉かよ」 晴絵「い、いいでしょ!祝い事と言えば焼き肉なの。阿知賀麻雀部はそうだって決まってるの!」 京太郎「はいはい。んじゃ監督命令みたいだし…行こうか」 穏乃「そ、そうだね…!や、焼き肉楽しみだなー!!」 【System】 高鴨穏乃の愛情度がLv11になりました 高鴨穏乃はその日、何時も以上に肉を食べて赤土晴絵を泣かせてしまったようです 赤土晴絵は給料日までの極貧生活が確定しました
https://w.atwiki.jp/kurogirihankoku/pages/536.html
10102102声明文 謹賀新年と一年の挨拶 新年、明けましておめでとうございます。 玄霧藩国政庁です。 私達は、この新しい年の到来を祝うとともに、国へと戻られつつある国民の皆さんを、 心より歓迎し、その帰還を喜びたいと思います。 おかえりなさい。そして、今年もよろしくお願いします。 共に新しい年の始まりを祝い、共に新しい一年を作っていけることを、心より祈ります。 玄霧藩国藩王 玄霧弦耶 同摂政 階川雅成 および 藩国政府関係者一同
https://w.atwiki.jp/zecre/pages/174.html
孤独な大学生77 http //life8.2ch.net/test/read.cgi/alone/1182582342/770 此処は太平洋の真ん中。 ヨナタンとキタテハが急ごしらえのイカダに乗って前方の空を睨みつけている。 [[スカイクロラ]]、アリスの連隊があと20分をすれば此処に来る。 「葉っぱは見られ、鳥は死なない。」 海中から蒸気が吹き上がり翼長10メートルの炎の巨大な鳥が姿を現した。 「心配するなヨナタン。俺が片つけてきてやる。」 [[カンジ]]が言った。 「カンジさん!俺も逝きますよ!ビッチェズ・ブリューが疼いてらあ。」 「駄目だ。あの連隊を相手にするにはまだ早い。 あのアリスって奴は女のくせにパワー型だ。 同じパワー型の俺の方が相性が良い。」 「夫婦の?」 カンジは無視して炎の鳥ごと飛び上がった。 「運が有ったらまた会おうぜヨナタン!それまで生きてな!!」 カンジはそう言って去って行った。 此処はイスラエル。 [[ミナセ]]は砂漠の真ん中、スカイクロラ居住区を囲むバリアーの際で 一人の美しい女性に出会った。 「君は誰?」 バリアーの向こうから女が話しかけてくる。 「俺はビョウドウイン・ミナセ。あんたは?」 「フリーダ。[[フリーダ・ベルヒトルト]]。」 「君もレッドラムかい?」 「うん。」 「何故スカイクロラ側に?」 「この辺じゃスカイクロラ側にしか戦闘集団が無いのよ。」 「ふーん。戦闘狂なんだ。」 「恥ずかしいけど・・・そうだよ。」 「今何してたの?」 「サボテン集めてたの。趣味なの。サボテン専門で。」 「俺の名前、水の無い川の瀬って意味なんだ。サボテンっぽくない?」 「サボテン好き?」 「好きだな。一回育ててて枯らした事が有る。」 「ふふっ・・・好きじゃないんじゃない。」 「そうかな。」 「あなた強いね。」 「分かる?君も強いね。」 「あなたに触れてみたい。」 「バリアーが有るから無理だな。何処かに切れ目が無いかな?」 「探してみる?歩きながら話しましょう。」 「ああ。良いね。」 ミナセとフリーダはバリアーに沿って二人で歩いていった。 その内にお互いの素性を洗いざらい吐き出してしまった。 フリーダはミナセが第二次レッドラム大戦で闘った[[イザヤ]]と友達らしかった。 ミナセは自分の母親が第一次レッドラム大戦で活躍したサエグサ・プラトである事を 話した。フリーダは驚いていた。 ミナセはバリアーにそっと手を伸ばしてみる。 フリーダの顔をミナセの手が包む格好になる。 バチッと音がして電流が走ったような衝撃を受ける。 ミナセは残念だった。 「あなたの事・・・もっと知りたい。」 フリーダは最後にそう言った。 第三次レッドラム大戦まであと一年。
https://w.atwiki.jp/atiga-9nen/pages/62.html
【中学一年 ―― 7月第一週】 京太郎「(さて…インターミドル出場も決まった)」 京太郎「(玄の奴とも仲直り出来た)」 京太郎「(俺の人生順風満帆!!!)」 京太郎「(とは言えないのは…目の前にテストが控えているからだろうな…)」 京太郎「(もう良いじゃん…俺、県大会頑張ったじゃん…)」 京太郎「(寧ろ、インターミドルに向けて合宿やら何やらですげー忙しいじゃん…)」 京太郎「(なのにテストに免除も何もないってどういう事…)」 京太郎「(ま…ここで愚痴ってても仕方ないか)」 京太郎「(【三週目のテストや8月2週のインターミドル】の為にも…今週は…)」 +2 末尾1.2 憧と勉強 末尾3.4 部活に集中 末尾5.6 雑用に集中 末尾7.8 松実館でバイト 末尾9.0 鷺森レーンでバイト 雑用に集中 京太郎「(男子の部でインターミドル決まったとは言っても、俺の立場は未だに雑用だからな)」 京太郎「(小走先輩の顔を立てる意味でもちゃんと雑用の仕事はしておかないと)」 京太郎「(ここで手を抜いたら増長してると受け取られかねないし…それは俺の本意じゃないしな)」 京太郎「(さって…それじゃ今日も元気に掃除からやっていきますか…!)」 +2 00~30 失敗 31~60 成功 61~99 大成功 ※雑用力につき+1 大成功 京太郎「(あー…インターミドルで忙しかった所為か、ちょっと汚れが目立つようになってきたな)」 京太郎「(こんなしつこい汚れが相手ならば洗剤を使わざるを得ない)」キュッキュ 京太郎「(あ、でも…よく見たらあっちにも結構残ってるな)」 京太郎「……」 京太郎「(良いぜ!お前がそんなにしつこいって言うのなら!!)」 京太郎「(まずはその汚れをぶっ壊す!!)」キュキュ +2 末尾偶数 小走先輩に声を掛けられた 末尾奇数 途中で夢中になっている自分に気づいた 小走先輩に声を掛けられた やえ「…おい、須賀」 京太郎「…」キュッキュッキュ やえ「…須賀、おい…聞いてるのか?」トン 京太郎「…え?あれ?」 京太郎「小走先輩…どうしてここに?」 やえ「どうしてじゃない…まったく…」 やえ「もう部活が終わっているぞ」 京太郎「え゛…あ…」 やえ「掃除に夢中になるのも良いが、ほどほどにしておけよ」 やえ「…と言うか、そもそも須賀は男子レギュラーなんだから、掃除なんかしなくても誰も文句は言わないぞ」 京太郎「いやぁ…まぁ、一応、俺は雑用を引き受けた訳ですし」 京太郎「任せてもらったものをちゃんと果たさないと気持ちも悪くって」 京太郎「それに頑固な汚れってこっちも結構意地になりません?」 やえ「まぁ…分からないでもないけどな」クスッ やえ「ただ…これっきりにしておけよ」 やえ「インターミドルも近いんだ。雑用よりは麻雀の方に集中してくれ」 やえ「その方が私も嬉しい」 京太郎「はい。分かりました」 【System】 須賀京太郎の雑用力が2あがりました。 小走やえの好感度が1あがりました。 小走やえは須賀京太郎の事を気にしてくれているようです。 【中学一年 ―― 7月第二週】 京太郎「(と、小走先輩には言ったものの…やっぱり雑用やんないと落ち着かないんだよなぁ)」 京太郎(…こう…俺がやらなきゃって言う意識が働くって言うか)」 京太郎「(一年で、しかも、雑用を命じられたからなんだろうか…?)」 京太郎「(でも、それにしちゃ…心の中から浮かび上がってくる感じがするんだよなぁ…)」ウーン 京太郎「(まさか本当に前世は雑用…)」 京太郎「(な訳ないかー)」ハハッ 京太郎「(それより…来週からはテストだけど…どうするか)」 京太郎「(【学力は足りてる】みたいだから、急いでやらなくても補修にはならないだろうけど…)」 +2 末尾1.2 憧と勉強 末尾3.4 部活に集中 末尾5.6 雑用に集中 末尾7.8 松実館でバイト 末尾9.0 鷺森レーンでバイト 松実館でバイト 京太郎「と言うわけで息抜きしにバイトに来た!」 宥「あれー…?い、良いの?」 京太郎「良いんだよ。別に勉強だけで人生決まる訳じゃないし」 京太郎「補修にさえならなきゃ部活にも支障はないし、なんとかなるって」 宥「うーん…それだったら良いんだけど…」 宥「あ、それと…インターミドル出場おめでとう」 宥「格好良かったよ」ニコッ 京太郎「あぁ、ありがとうな」 京太郎「ま…まだ一年だから色々とプレッシャーだけど…」 京太郎「バイトでもインターミドルでも…恥ずかしいところ見せないように頑張る」 宥「うん。楽しみにしてるね」ニコー +2 00~30 失敗 31~60 成功 61~99 大成功 成功 京太郎「ふぅ…こんなところかな」 宥「お疲れ様。はい。どうぞ」 京太郎「あ、ありがとう。…ふぅ」フキフキ 宥「少しずつ慣れてきた?」 京太郎「あぁ。何だかんだでもう三ヶ月通ってる訳だし、多少はな」 京太郎「それにまぁ、うちもカピバラ飼ってるし…暖かいのに耐性はあるんだよ」 宥「カピバラ?」 京太郎「あぁ、知らないか。えーっと…携帯携帯…あ、ほら」パカッ 宥「わぁ…♪」 京太郎「可愛いだろ?」 宥「あったかそぉ…♪」 京太郎「あぁ、うん。松実さんはそっちだよな」 宥「でも、これ須賀君の家が飼ってるの?」 京太郎「あぁ、カピーって言うんだ。結構でかいんだぜ」 宥「へぇ…そうなんだ」 京太郎「一回見に来る?人懐っこいし優しい奴だぞ」 宥「え…でも…」 京太郎「あ、ちなみにカピーは温室じゃないと生きられないから、うちに温室あるぞ」 宥「行くっ」パァァ 京太郎「よし。じゃあ、決まりな」 京太郎「何時になるか分からないけど…約束だぞ」 宥「うんっ♪えへへ…楽しみだなぁ…」 【System】 須賀京太郎のバイト力が1あがりました。 松実宥はその内、須賀家へと来るようです。 【中学一年 ―― 7月第三週】 京太郎「はぁ…」 憧「ん…どうかしたの?」 京太郎「いや、お前はすげーな、って」 憧「いきなり何を言い出すのよ…」 京太郎「いや、女子の中でも一目置かれるくらい麻雀頑張って」 京太郎「運動だって得意で」 京太郎「その上、勉強までしっかりやって、俺に教えられるくらいだし…」 京太郎「小学校の頃からさらに輪を掛けてすげー奴になったなぁ…って」 京太郎「俺も頑張ってるつもりだけど…どんどん引き離されてる気がする…」 憧「…ばーか」ピンッ 京太郎「いてぇ!」 憧「そんなのアンタだって同じでしょ」 憧「一年で男子レギュラーになって、監督や小走先輩にも信頼されて」 憧「チームに柱になって、個人と団体両方でインターミドル出場まで決めて」 憧「それなのに雑用までしっかりやって…その上、運動部に負けないくらい逞しくて…」 憧「そんなアンタも十分凄いと思うわよ」 京太郎「…そうか?」 憧「そうなの。お陰で最近、アンタの評価が高くなりすぎて…」 京太郎「なりすぎて?」 憧「う…い、いや…何でもない」カァ 京太郎「なんだよ…そんな気になるところで切るなって」 憧「し、仕方ないでしょ…あんまり言いたくない事なんだから…」 憧「そ、それより…中学に入ってそろそろ自分の新しい苦手と得意が見えてきたでしょ?」 憧「テストまでにまずはそれを克服するわよ!」 京太郎「お、おう。じゃあ…まずは…」 +2苦手 +3得意 ※数学国語理科歴史英語保健家庭科音楽の中からお選び下さい 英語が苦手 保健が得意 京太郎「英語が苦手で保健が得意かなぁ」 憧「ほ、保健!?」カァァ 京太郎「おう。…え?何か変か?」 憧「え…い、いや…別に変じゃないけど…」 憧「だ、誰に教えてもらったの?ま、まさか小走先輩に?」 京太郎「まぁ、小走先輩にも幾らか教えて貰ったけど」 憧「え…え…?!う、嘘でしょ…そ、そんな…あたしの知らない間に…」 京太郎「あれ…?そんなに変か…?」 京太郎「雑用として必要になるかもって応急処置のやり方とか教えてもらったんだけど…」 憧「ふぇ?」 京太郎「いや、だから…応急処置のやり方」 憧「…ふきゅぅ」プシュウ 京太郎「あれ…!?あ、憧!?憧ーー!?」 【System】 須賀京太郎は【家庭科が得意】を失い、【応急処置が得意】を手に入れました。 このスキルは誰かが怪我をした時の判定に+3します。 須賀京太郎は【手先が不器用?】を失い、【英語が苦手】を手に入れました。 このスキルは英語を使う判定に-3します。まぁ、そんな判定多分ねぇけどな!!! 新子憧のむっつりスケベは日増しに強くなっているようです。
https://w.atwiki.jp/atiga-9nen/pages/68.html
【中学一年 ―― 8月第三週】 京太郎「(はは…なんか…すげー展開だよな…)」 京太郎「(インターハイで勝ったと思ったら…決勝戦よりさらに強い奴が出てきて…)」 京太郎「(来年からはそいつと戦わなきゃいけない…なんてさ)」 京太郎「(正直…あんまり現実味が分からないくらいだ)」ハハッ 京太郎「(でも…あの不動峰のエースが頭まで下げて頼んできてくれたんだ)」 京太郎「(その託された意思を…無駄にはしたくない)」 京太郎「(ま…幸いにも来年のインターミドルまでまだ一年あるんだ)」 京太郎「(その間に自分を鍛えなおせば、不可能じゃないはずだ)」 京太郎「(さて…その為にも今週は…何を優先的にやっていこうか)」 +2 末尾偶数:部活 末尾奇数:バイト 部活 京太郎「ん~っ」ノビー やえ「ん…須賀、どうした?」 やえ「インターミドルが終わったのに随分と精が出るじゃないか」 京太郎「はは。少し目標が出来まして」 やえ「目標?」 京太郎「えぇ。あ、それよりそっちの話は…」 やえ「あぁ。晩成へのスカウトだった」 京太郎「あの強豪晩成にですか!?」 やえ「うん。どうやら団体戦での活躍を高く評価してくれたらしい」 京太郎「おめでとうございます!!」 やえ「ありがとう。まぁ…私だけの実力で出来たものじゃないけれどな」 京太郎「そんな事ないですよ。小走先輩がいなかったらきっと女子の方もそこまでいけなかったです」 やえ「はは。男子優勝の立役者にそう言われると悪い気はしないな」 やえ「まぁ…お陰で受験からも解放されて時間も出来た」 やえ「…これからもちゃんと見てあげるから安心してね」ニコッ 京太郎「はいっ!」 +2 00~50 成功 51~99 大成功 ※雀力の補正により+5されます 大成功 京太郎「いやぁ…相変わらず先輩の教え方は上手で有難いです」 やえ「ホント?」 京太郎「えぇ。本当ですって」 やえ「…そっか。そう言ってくれると嬉しいな」ニコッ 京太郎「でも…周りに人がいるのに素に戻って大丈夫なんですか?」 やえ「まぁ…私はもう引退して部長じゃないし…格好つけなくても良いかなって」クスッ やえ「それに須賀君に触発されて周りの子も真剣に打ってるでしょ?」 やえ「私達の事に気にする子なんて殆どいないから」 憧「…」ジィ やえ「…うん。一人を除いて…だけど」 京太郎「はぁ…」 やえ「まぁ…須賀君は気にしなくて良いって事」クスッ やえ「それより時間余っちゃったし…ちょっとおしゃべりしようか?」 京太郎「良いんですか?」 やえ「息抜きも効率の為には軽視出来ないファクターだから」 やえ「まぁ…それに色々と教えてあげたんだし、少しくらいご褒美に付き合ってくれても良いでしょ?」 京太郎「えぇ。俺で良ければ喜んで」 【System】 雀力が+2されました 小走やえの好感度が1あがりました 【中学一年 ―― 8月第四週】 京太郎「(その後は小走先輩と適当に話してたんだけど…)」 京太郎「(その日は何故か一日中、憧の奴の機嫌が悪かった)」 京太郎「(昔みたいにお菓子で機嫌直してくれなくなったし…中々、居心地が悪い)」 京太郎「(まぁ…送って行って少しした後、お詫びのメールが来たんだけどさ)」 京太郎「(でも、あいつ何に対して怒ってたんだろ…?)」 京太郎「(女子の中じゃ実力グングン上げて来年にはレギュラー確定って言われてるくらいなのに)」 京太郎「(もしかして俺の知らない悩みでもあるのかな?)」 京太郎「(今度、聞いてみるか…)」 京太郎「(ま…それより今週は…)」 +2 末尾偶数:部活 末尾奇数:バイト 部長「あれ?須賀君」 京太郎「あ、部長!」 部長「はは。部長はやめてくれよ。僕はもう引退してるんだからさ」 京太郎「すみません…でも、俺にとって部長と言えば…やっぱり部長なんで…」 部長「はは。そう言ってくれると嬉しいけどね」 部長「ただ、もう強豪校では次世代の育成やチーム作りが始まっているんだ」 部長「君もそれに乗り遅れない方が良い」 京太郎「…はい!」 部長「はは。説教臭くなって申し訳ない」 部長「お詫びに…一局打とうか」 京太郎「良いんですか!?」 部長「あぁ。僕も受験勉強の気晴らしに着ている訳だしね」 部長「出来れば付き合ってくれると嬉しい」 京太郎「はい!是非とも!!」 +2 00~50 成功 51~99 大成功 ※雀力により+5されます 成功 部長「っと…こんな感じかな」 京太郎「はぁ…なるほど…」 京太郎「やっぱり俺はこういう基礎的な部分がまだまだ弱いですねー…」 部長「ま、仕方ないさ。君はまだ一年だしね」 部長「それにその部分の補強が出来れば来年も無理なく活躍出来るよ」 京太郎「そう…ですかね…?」 部長「あぁ。だから、そんな風に焦ったりしなくて良いんだよ」 京太郎「~っ…!…わかりますか」 部長「そりゃ勿論。伊達に君の部長をやってないからね」 部長「ま、何があったのかは聞かないけれど…」 部長「君はまだまだ長いんだ」 部長「焦らずにゆっくり腰を据えてやりたまえ」 京太郎「…はい」 【System】 須賀京太郎の雀力が1あがりました
https://w.atwiki.jp/25438/pages/4144.html
——桜高、正門前—— 梓「あ、憂!」 憂「梓ちゃん!」 梓「久しぶり、憂。ここで会うのはほぼ一年ぶりだね」 憂「ここでは、ね。何かと理由をつけてみんなで遊んでるから、あまり久しぶりって感じはしないけど」 梓「そうだねぇ。別々の大学に行っても、普通にしょっちゅう遊んでるよね、私達」 憂「でもこの格好はほぼ一年ぶりだよ」 梓「そ、そうだね、制服はね、卒業したら着ないよね・・・」 憂「梓ちゃんはお姉ちゃん達と一緒に制服着てバンドしてるんだよね」 梓「・・・うん」 憂「楽しい?」 梓「・・・うん」 憂「なら良かった」 純「おーい、二人ともー」 憂「あ、純ちゃん」 梓「純おそーい」 純「時間ちょうどじゃん!」 梓「まあ確かに、遅刻しなかっただけマシか」 純「でしょでしょ」 梓「忘れ物は?」 純「大丈夫。誕プレもちゃんと持ってきてるからね、憂」 憂「ありがと、楽しみにしてるね。梓ちゃんも」 梓「う、うん」 純「しかし梓は変わらないなぁ。制服も違和感ないし」 梓「二人だってそんなに変わってないでしょ」 純「私は身長伸びたみたいで、ちょっと袖の所が短く感じたよ」 憂「私も・・・なんというか、ブレザーがちょっと・・・」 純「胸か」 憂「・・・たぶん///」 梓「」 純「さて、そろそろ・・・」 さわ子「ごめんねー、待った?」 梓「先生!」 憂「お久しぶりです」 さわ子「三人とも久しぶり。元気そうね」 純「ご無沙汰してます」 憂「急に連絡貰った時はびっくりしました。私のお誕生日会を部室で開いてくれるだなんて」 さわ子「ふふ、菫ちゃんと直ちゃんが祝いたがってたし、私も会いたかったしね」 梓「でも大丈夫なんですか? 今となっては私達部外者ですし」 純「だーいじょーぶだって、許可取ってるって話だし。ですよね?」 さわ子「・・・」 憂「・・・?」 梓「・・・あの」 純「もしかして」 さわ子「一階のトイレの窓から進入する手筈になってるわ。ついてきなさい。静かにね」 憂「えっ」 梓「・・・その為の制服だったのか」 純「なんかテンションあがってきたよ私」 梓「下げてなさい」 純「まぁOGなのは事実だし、さわ子先生も一緒にいるしそこまで大事にはならないと思うけど・・・」 梓「もし見つかった時は先生を盾にしつつ私も謝って時間稼ぐから、純は憂を連れて逃げてね」 純「合点承知」 菫「先輩!先生!こっちです!」 憂「スミーレちゃん!直ちゃん!」 直「お久しぶりです、平沢先輩。さあ手を」 憂「う、うん」 さわ子「ほら、みんな早く入って!」 梓「ちゃんと踏み台まで準備してある・・・」 純「よいしょ、っと」 さわ子「・・・よし、全員いるわね。誰にも見られてないわね」 菫「た、たぶん大丈夫です」 純「二人とも久しぶりー。軽音部はどう?」 菫「えっと・・・」 梓「あ、うん、私が聞いてる範囲は教えてあるから。新入部員として一年の子が二人入ってくれて、片方は経験者なんだよね?」 菫「はい。ギターの子が経験者で、もう一人の子はベースを始めてくれて。いっぱいいっぱいですけど楽しいです」 憂「よかったねぇ」 直「はい。今年の学園祭の映像もありますよ、見ますか?」 憂「もちろん!」 直「では後で部室で。私のパソコンに入ってますので」 憂「やった、楽しみ~」 純「ふむ。まあ何か困った事があったらいつでも先輩に相談してくれていいからね!」 梓「急に先輩風吹かせてる」 菫「あっ、そうだ、そういう事なら・・・純先輩に一つ相談があるんですが」 純「えっ、いきなり?何?」 菫「えっとですね、あの・・・純先輩って、前の軽音部に憧れの先輩がいたんですよね?」 純「うん、澪先輩だね。その影響でベース始めたようなもんだし」 菫「そのですね・・・新しく入ってくれたベースの子なんですけど、どうも、その・・・」 純「その?」 菫「・・・わ、私に憧れて?入部してくれた?らしくて?」 直「菫、クエスチョンマークが多いよ」 梓「まぁ菫は綺麗な子だからね、憧れる子が居てもおかしくはないね」 憂「かわいいしね」 菫「わ、私どうすればいいんでしょう・・・?」 純「ど、どうすればって・・・今は上手くやってるんでしょ?」 菫「で、でもでもですね・・・」 直「菫は頑張ってますよ。部長や先輩としては。ただ、憧れられる人としてどうすればいいのか悩んでるんです。そういうのは私もわからなくて・・・先輩方、教えてくれませんか」 純「あー、なるほど・・・でも私は遠くから眺めて憧れるタイプだからアドバイス出来そうにないなぁ」 菫「そ、そうですか・・・」 純「でも多分、梓や憂なら答えられると思うよ」 梓「・・・そうだね。えっと、部の仲間として近くにいる以上、イメージとは違う面っていうのは自然と見えてきちゃうんだよ、菫。先輩も、もしかしたら先輩から見た後輩も」 菫「は、はぁ・・・」 憂「・・・でも、近くにいる人を嫌いになることなんてないよ。なにがあっても、絶対に」 梓「だから変に意識して空回りしちゃうほうがもったいないよ。一緒にお菓子食べてお茶しておしゃべりしてれば案外なんとかなるものだよ」 さわ子「・・・」 菫「・・・そう、ですね。そういうものなのかもしれませんね。ありがとうございます、少し気が楽になりました」 憂「いえいえ」 梓「がんばって、菫」 菫「はい!」 純「・・・ところでさ」 直「・・・そうですね」 さわ子「そろそろ移動しましょうか。ガールズトークにはもっと相応しい場所があるはずよ」 ——校舎内、階段—— さわ子「ストップ!教頭先生がいるわ。少し様子を見ましょう」 梓「・・・ああ、なんでこんなコソコソする羽目に・・・」 憂「放課後でよかったねぇ」 直「っていうか私達は堂々としてていいのでは」 菫「まあまあ・・・」 純「私は楽しいけどなあ」 堀込(・・・何やっとるんだあいつらは) さわ子「背を向けた瞬間に行くわよ・・・今だ!」 全員「わ、わあ~~」コソコソ さわ子「さあ上の階へ!目的地はすぐそこよ!」 教頭「おや?今のは・・・」 堀込「教頭先生、どうかされましたか?」 教頭「ああ堀込先生。今、山中先生とその教え子達が通りませんでしたか?」 堀込「通りましたね。コソコソしてましたな」 教頭「何をコソコソする必要があるのか・・・先週の時点で許可は出したはずですが」 堀込「山中先生なりに、皆を楽しませたいと思っとるんじゃないでしょうか」 教頭「大人ならもう少し良いやり方があるでしょうに・・・」 堀込「ははは、違いない。あいつはいつまで経ってもどこか子供だ」 教頭「・・・それが良い所なのかもしれませんがね」 堀込「かもしれませんな」 ——軽音部部室—— 梓「よ、ようやく辿り着いた・・・」 純「なかなかスリル満点だったね」 菫「それはそうですけど・・・」 直「腰が・・・」 憂「あはは・・・でも、うん、ドキドキして面白かったかも?」 梓「憂まで・・・」 さわ子「ふふふ、これからが本番よ。はいでは皆さん、ご一緒に・・・」 「「「「お誕生日おめでとう!」」」」 憂「えへへ・・・うん、ありがと、みんな」 梓「はい憂、これ」 純「私達からの」 直「プレゼント」 さわ子「です!」 菫「ケーキもありますよー。夜はお嬢様達と約束があると聞きましたのであまり大きくない物にしました」 憂「ありがと・・・幸せ者だなぁ、私。じゃあ、ケーキはさっそくみんなで食べよ?」 菫「はい、では切り分けますね。少々お待ちを」 憂「・・・あれ?みんなといえば、新入部員の子達はいないの?」 直「今日は休みって伝えてあります」 純「まあ確かに、初対面が誕生日ってのは難易度高そうだしね。憂は会ってみたかったんだろうけど」 菫「それに・・・憂先輩は『私達の』先輩ですから」 純「まあっ」 憂「そ、そう言われるとなんか照れちゃうね。ね、梓ちゃん?」 梓「なんで私に振るの!?」 純「どうなんですか梓部長!」 憂「部長!」 梓「もう部長じゃないし!」 直「」カタカタ 菫「待って直ちゃん!多分それ私にもダメージ大きいやつだから記録しないで!」 さわ子「・・・青春ねぇ」 ワイワイ ガヤガヤ さわ子「・・・軽音部との付き合いは長いけど、どの代もちゃんと楽しんでるのは良い事よね」 おしまい 憂ちゃん誕生日おめでとう 戻る
https://w.atwiki.jp/atiga-9nen/pages/80.html
【中学一年 ―― 11月第三週】 京太郎「(…俺は…どうすれば良いんだろう…)」 京太郎「(あんなバラバラな状態じゃ…俺達はきっと…来年のインターミドルに出られない)」 京太郎「(出られたとしても…きっと不動峰や上原には勝てないまま敗退するだろうな…)」 京太郎「(勿論、俺も頑張るつもりだけど…団体戦は一人でやるんじゃないんだ)」 京太郎「(でも…俺はどうしたら良いんだ?)」 京太郎「(インターミドルでは…モブ1先輩たちが…そういうのをカバーしてくれてた)」 京太郎「(俺はただ戦ってただけで…チーム作りの事なんてまったく考えてなくて…)」 京太郎「(それに…俺が何か言ったところであの人たちが聴くはずがないし…)」 京太郎「(…はぁ…とりあえず…今週の予定を立てていくか…)」 +2 末尾159 憧と勉強+リハビリ 末尾260 部活 末尾37 バイト 末尾48 鷺森レーンで気晴らし 部活 部長「や。久しぶり」 京太郎「あっ部長!」 部長「どうしたんだ?大分、暗い顔をしてるじゃないか」 部長「僕で良ければ聞いてあげるけれど…」 京太郎「実は…その今のチームがあまり上手くいっていなくて…」 部長「ふむ…」 京太郎「モブA先輩たちが威張り散らして皆萎縮してるし…どうしたら良いものかと…」 部長「…なるほど。大体、分かった」 部長「…では、君はどうしたい?」 京太郎「え…それは勿論…部を纏めてまた今年のインターミドルのように皆で優勝を目指したいです」 部長「じゃあ、その為にモブAたちを退部に追い込めるかな?」 京太郎「え…?」 京太郎「そ、そんな!俺はただ改心して欲しいだけで…」 部長「勿論、それがベストだ。けれど、今からそれを待っている余裕はない」 部長「チーム作りは一年掛けてじっくりやるものなんだ」 部長「今の段階でただ先輩というもので威張っているようでは…部内の空気も悪くなる」 部長「それよりも有望な一年を起用して再来年を見据えた方が良い」 京太郎「それは…そうかもしれないですけど…でも…」 京太郎「そもそも…そんな方法あるんですか?」 部長「あるとも。何せ、君はエースだからね」 部長「一年でエースになり、チームを全国に導いた」 部長「だが、態度は謙虚で、一年や二年の覚えも良い」 部長「君がはっきりと彼らのNOを突きつければ皆がそれに従うだろう」 京太郎「でも…」 部長「ま、これはあくまでも一案だ。君がそれに従うかは別だよ」 部長「だが、優勝を目指すのであれば話し合いで解決などという生易しいものを待っている余裕はない」 部長「もし、僕が君の立場であるならば…今すぐにでも監督に掛け合うだろうね」 京太郎「でも…」 部長「ま…その辺りの事はとりあえず置いておこう」 部長「それより…一局どうかな?」 京太郎「……はい。よろしくおねがいします」 +2 00~50 成功 51~99 大成功 ※雀力により+6 大成功 京太郎「…ありがとうございます」 京太郎「お陰で…少し気持ちが楽になりました」 部長「はは。礼は良いよ」 部長「そもそも僕は小走君に頼まれただけだからね」 京太郎「やえ先輩…じゃなかった小走先輩に?」 部長「あぁ、男子部の事は門外漢だから何とか僕に相談に乗ってやってくれないかとね」 京太郎「やえ先輩が…」 部長「だから、お礼ならば彼女にしてあげてくれ」 京太郎「…はい!分かりました!!」 部長「じゃあ、またね。あんまり気負い過ぎないように…」 京太郎「ありがとうございます、部長!!」 【System】 須賀京太郎の雀力が2あがりました 小走やえは後日お礼をされた結果、好感度が1あがりました 【中学一年 ―― 11月第四週】 京太郎「(部長の言葉を聞いても…俺は迷ってる)」 京太郎「(確かに…来年の事を考えるなら…今がギリギリの時期だ)」 京太郎「(今ならまだ…他の二年生や一年生で欠員を埋められる)」 京太郎「(勿論、チームの総合力は下がるだろうけれど…)」 京太郎「(だが、結束や成長性という意味ではそっちの方が良い)」 京太郎「(それなら負けても…まだ来年を見据える事ができる)」 京太郎「(だが、今の状態じゃ…負けたらそれで終わりだ)」 京太郎「(モブβも萎縮してるし…下手をしたらさらに悪くなるかもしれない)」 京太郎「(それなら追い出すべきだっていう…部長の言葉も分かる)」 京太郎「(でも…俺は一応…彼らに恩義があるんだ)」 京太郎「(俺が今…普通に麻雀部の中で過ごせているのは…彼らのお陰でもあるんだ)」 京太郎「(…そんな人たちを追い出して…本当に良いのか?)」 京太郎「(あー…ダメだ。堂々巡りだな…)」 京太郎「(とりあえず…今は動こう!!)」 +2 末尾159 憧と勉強+リハビリ 末尾260 部活 末尾37 バイト 末尾48 鷺森レーンで気晴らし 京太郎「…よっ。また来たぞ」 灼「あぁ、京太郎…って大丈夫?」 京太郎「あぁ大丈夫」 灼「大丈夫って顔じゃない。…表情暗いよ」 京太郎「あー…そっか…ごめんな、心配掛けて」 灼「別に謝らなくて良いけど…それより何かあったの?」 京太郎「いや…これは俺の問題だし…」 灼「気づかれた時点で、それは京太郎の問題じゃない」 灼「そんな暗い顔されてたら私だって気になるし…私の問題でもあるの」 京太郎「う…いや…」 灼「それとも私には話せないようなエッチな話題?」 京太郎「そ、そんな訳ないだろ!!」カァァ 灼「じゃ…話せるよね?」 京太郎「あぁ…悪いけど…聞いてくれるか?」 灼「なるほど…そんな事が…」 京太郎「あぁ…俺はどうすれば良いんだと思う?」 灼「…とりあえず監督に相談しなさい」 京太郎「え…でも…監督もきっと分かって…」 灼「うん。だけど…でも、監督としては訴えがないと動けないの」 灼「勿論、注意くらいは出来るだろうけど…そういうのも聞いている様子はないんだよね?」 京太郎「まぁ…な」 灼「だったら…より強いレベルでの警告が必要になる」 灼「その場合、監督としては誰かの訴えがあったという形にしないと退部させる事も出来ないから…」 京太郎「実効性を持たせる為にも訴えはあった方が良いって事か」 灼「うん。それにそういう事考えるのは京太郎じゃなくて監督の仕事だから」 灼「勿論、監督が退部させやすいように声をあげるのは京太郎が意見を纏めてしなきゃいけない事だと思うけれどね」 京太郎「…そっか…」 灼「…少しは参考になった?」 京太郎「あぁ…気は楽にはなったよ」 京太郎「馬鹿みたいな話だけど…俺が全部やんないといけないんだって思い込んでた」 京太郎「最終決定権は監督にあるんだし…まずはそっちに相談すればよかったんだな…」 京太郎「エースだなんだと言われて…いつの間にか増長してたんだな、格好悪い」 灼「…そんな事ないよ」 京太郎「そうかな…?」 灼「そんな風に悩んでたのは京太郎が優しいから」 灼「虐げられる誰かを見て…何とかしてあげなきゃって思ってたからだよね?」 京太郎「…あぁ」 灼「だったら、格好悪いなんて事はない」 灼「寧ろ…すっごく格好良いよ」ニコッ 京太郎「ぅ…」カァァ 京太郎「そ、それより…こんなに話し込んでて良いのかよ…」 灼「あぁ、今、休憩時間だから」 京太郎「…休憩時間なのになんでカウンターに座ってるんだよ」 灼「だってここが一番、落ち着くし…」 京太郎「…知ってるか?お前みたいな奴をワーカーホリックって言うらしいぞ」 灼「そこまで仕事好きって訳でもないんだけど…」 京太郎「うっせ。…だから…気晴らしに付き合ってくれよ」 灼「ふふ…ちゃんと誘えば何時だって付き合ってあげるのに」 京太郎「し、仕方ないだろ…なんか…そういうの擽ったいし…」 灼「やっぱりまだまだ子どもだね」クスッ 京太郎「う、うっせーよ!ほら…やるぞ!今日こそ勝ってやるからな!!」 【System】 鷺森灼の好感度が1あがりました 次週の判定が自動的に大成功になります
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/335.html
げんしけんの一年前 【投稿日 2006/06/09】 カテゴリー-現視研の日常 2001年、春。 彼、斑目晴信は意気込んでいた。 今までどおり、ある種のサークルに入ると決意していたからである。 (漫研、漫研♪ アニ研、アニ研♪ オタサークルが俺を呼んでいるっ!!) 浮かれ気分で新歓の雰囲気全開の廊下を歩き回る。 高校の頃は伸び放題になっていた髪を切りそろえ、藪にらみの三白眼でニヤニヤしながら歩いている。 ひょろりと長い体、面長の輪郭にこけた頬。三日月の形に開いた口から八重歯が出ている。 猫背でいつも顔が突き出気味に前に出ている。 彼は中学の頃から同人誌を買いあさり、ゲームは格闘モノからRPG、果てはエロゲーまで幅広くカバー、アニメは毎シーズン最低でも10本は欠かさないという、典型的なオタクであった。 (ん?ありゃーE・E・さくらのポスター…。漫研か!) 意気込んで漫研の机へと突進していった。 さて。意気込んで来たものの、初対面の相手である。最初は丁寧に話しかけたほうがいいよなーと思い、まずは会長らしき人に声をかける。 斑「あの~。会長さんですか?ここのサークルに興味があるんですけど、見学とかもできるんですかネ?」 「ん?君、新入生?」 妙に貫禄のあるその先輩は、斑目を見てこう言った。 斑「はい、新入生ですけど?」 「フ、だからか。俺は会長じゃないよ。まだ2年だし」 斑「あ、そ、そうなんすか」 (さっきから見てると、妙に偉そうにしてっからてっきり会長かと思ったぜ…。ていうか2年!?) 斑「えーと…」 「会長はアッチ。俺は掛け持ちで会員やってるだけだから。」 その先輩はくいっと親指で後ろの人を指した。 斑「あ、ども…」 「じゃ。俺はもー話終わったからごゆっくり~」 そう言って、大きい体躯を揺らしながら歩いていった。 漫・会「見学?」 さっき『会長』だと紹介された人に話しかけられた。 斑「あ、そーです。」 漫・会「ウチは放課後いつでも活動してっから、今日は午後になったらまた来ると良いよ。サークル棟の2階に部室があるから。」 斑「あーそうですか。2階っすね。」 漫・会「…さっきのヤツ、あんま関わんないほうがいいよ」 斑「え?あの2年の人っすか?」 漫・会「原口っつーんだけど、何考えてるか分かんないヤツでね。1年のときから、絵描けるヤツ集めて同人誌作って、利益吸い上げたりとかね。ろくな噂聞かないから」 斑「はあ…いるんすね、そーゆー人」 漫・会「ま、いつも来るワケじゃねーし、アニ研とか他にも出入りしてっから。あんま気にしないほうがいーよ」 斑「はああ…。」 …さて、午後になり、サークル棟の漫研の部室まで行く。 (ふむ。さっきの「原口」って人、もういないよな?あんな話聞いちまったら、次に会った時話しづらいだろーなー。 ま、大丈夫か?漫研の人も「ほっとけ」って言ってたし。) 部室前で考え込んでいると、後ろから急に肩を叩かれた。 びっくりして振り向くと、少し背の低い小太りの男がこっちを見ていた。 斑「!?」 「君もここに見学?」 斑「あ、あーそうだけど。…君も?」 そいつもどうやら新入生らしい。雰囲気でわかる。 「そう。実はさっき、君を新歓のトコで見かけたからさ。漫研の机で会長と話してたろ? ちょうど俺も見学に来たいと思ってたからさ」 斑「おお、そうなのか。あ、俺は斑目ってゆーんだけど」 「ま…?ん?ワタナベ?」 斑「ワタナベじゃねーよ。マダラメ!」 「へー、変わった名前だな。俺は高柳って言うんだけど」 斑「高柳か。言いにくいからヤナでいい?」 「言いにくいってお前…(笑)」 こいつとは気が合いそうだと思いながら、漫研の部室のドアを叩く。 漫・会「…で、夏コミと冬コミには毎年出てるから。君らにも数ページずつ漫画描いてもらうし、よろしくな」 斑「え、それ全員なんすか…?」 漫・会「今までそうやってきてっから。漫研なワケだし。ウチは積極的に活動してるから、それだけ評価もあるし。」 斑「はあ………。」 漫研会長が淡々と説明している間、斑目は心の中でこう思っていた。 (…描けないんスけど…ていうか絵とか漫画っていう以前に俺、美術が全然駄目なんすけど…) 高校の頃までずっと、美術の授業なんかなくなればいいのにって思っていた。 小学生の頃だったか、自分の描いた絵を友人に馬鹿にされて以来、できる限り絵を描く機会を回避してきた。 もちろん、人の描いたものを見るのは大好きである。でもそれとこれは全然別だ。 中学、高校と漫研には入ってたが、活動内容がいつもゲームや雑談ばっかで、漫画や同人誌の批評をしたりが中心だったので問題なかった。本を作るときも文章で参加したり。文化祭とか小規模だったし。 だから、いきなりコミフェス参加とか、漫画描けとか、評価に関わるとか言われても困るのだ。 (ええ~~?どーしようかなー。ていうか無理!) そう思いながら、隣のヤナを見る。 斑「…なぁ。君、漫画描いたことある…?」 柳「ん?俺はあるけど」 斑「………は~、そうか…」 柳「君は?」 斑「いやー描いたことない。ていうか俺、絵描くの苦手だからさー」 柳「ありゃ、そーなんだ?」 斑「んん~~~…」 大学からの帰り道、考えながら歩いていた。 (ん~~とりあえず他のサークルもあたってみるか。アニ研とか…) 次の日。斑目はアニ研の部室の扉を叩いた。 ア・会「…と、いうわけで。去年作った自主制作アニメはわりと高い評価を受けてね。去年や一昨年、制作に関わった先輩なんかは、それで就職決めたり飯食ったりしてる人も中にはいるくらいなんで。 もちろんそんなすごいヤツばっかじゃないから、硬く考えなくていいよ。そーゆー人は2、3年に1人出ればいいほうだから。 最初はまー雰囲気に慣れてもらって、そのうち簡単なアニメ制作から作ってもらうことになるけど。GIFアニメとか。 ここまでで何か質問はある?」 斑「………………いや、ないです…。」 (…うわーこりゃ漫研より………。ていうか、こんな活発なサークルばっかなのか?(汗)) そのとき自分の横で「あの~」という声がした。自分と同じ1年だ。 ア・会「ん、君は近藤君だったっけ。質問?」 近藤と呼ばれた1年の男が、「はい!」と大声で返事してから話しはじめた。 近「アニメの作画なんですけど…アナログってゆーか手塗りのセル画とかまだ使ったりしてるんですか?」 ア・会「いやー、最近はデジタルだね。セル画だと時間かかりすぎるっしょ。金もかかるし。」 近「しかしですね、セル画はセル画の良いところがあると思うんですよ!手作業の温かみというかですね。僕、高校の部活ではずっとセル画描いてアニメ作ってたもんで」 ア・会「ふうん?まあ個人でやる分にはかまわないけど。機材もひととおりそろってるし。昔の先輩が描いたセル画とかも保管してるし、あとで見る?」 近「はい、是非!!」 斑「………………………………」 次元の違う会話を聞きながら、斑目はどっ引きしていた。 その日、大学から家に戻ってきて、斑目は考え込んでいた。 (う~~~…何かなぁ…。もっと普通にオタク話ができるようなサークルはないもんかね………? ていうか創作オタだけがオタクってか?創作ってのはたくさんの消費系オタが支えてるんだぞ!いわば需要と供給。 …とは言っても、確かに難しいかもな。作りだすのが目的じゃないとなると、そのサークルは何の活動するんだってことになるし。) ふうむ、と考え込む。 (………ん?そういや、何か…) サークル入会の手引きを引っ張りだし、パラパラとめくる。 (確か………。お、これだ。) とあるサークルの紹介欄に目を落とす。 『現代視覚文化研究会』 ………名前の欄にそう書いてあるのだが、紹介が書いてある四角の中には、びっしりと小さい文字で説明書きが書かれていた。 『このサークルは近代における日本の視覚文化をあらゆる角度から考察、研究することを目的としたサークルであります。特に近代の著しく発達した日本人の粋ともいえる映像文化には………』 最初はここまで読んで興味が尽きたのだった。映画研究会かと思ったのだ。 ただ、もう一度良く読んでみると、ところどころに『アニメブーム』とか『ゲーム世代』とかいう文字がちらほら読める。 『…結論として、日本の視覚文化をクロスオーバー的に研究するサークルが必要だという持論に達し、現代視覚文化研究会はそうした趣旨のもと立ち上がったサークルなのです。』 ………正直、何部なのかさっぱり分からない。ただ、アニメやゲームも研究してるのかも、というのだけはわかった。 斑「………………………………。」 斑目はサークル棟の3階に来ていた。 304号室。「現代視覚文化研究会」と大仰な名前の札のついた扉には、今週少年マガヅンで始まったばかりの「くじびきアンバランス」のポスターが貼られていた。新連載記念で特別付録でついていたポスターだ。 斑「…映画研究会、じゃないのか?」 ポスターを貼っているところを見る限り、オタクっぽさがにじみ出ているが、斑目はなかなか扉をノックすることができないでいた。 「…君、見学の人ですか?」 急に後ろから声がした。 斑「うわ!!」 驚いて振り向くと、そこには色白の少し背の低いひょろっとしたメガネの男が立っていた。さっきまで気配がしなかったので驚いたのだ。 斑「…え、えーと…。そうです、ちょっと見学に………」 会「そう。じゃあどうぞ入って」 斑「はぁ………。」 恐々部室の中に入ると、そこは立派な「オタク部屋」だった。 壁を埋めるように並んだ本棚に、大量の漫画やゲーム雑誌、美少女フィギュア、隅にはいくつも並んだゲーム機、壁のあいたところにエロゲーのポスター。 (おおお………。何か落ち着くな、ここ。何でだろ。 …あーそうか、俺の部屋もこんな感じだからかな………。もっと散らかってっけど) 会「ま、そのへんに座って。」 言われて、とりあえず長机の左側の椅子に座る。 会「さて。僕はここ、『現代視覚文化研究会』、略して『現視研』の会長をしています。よろしく」 斑「あ、ども。斑目といいます。」 会「さて、君はアニメは好きかな?」 斑「え?はあ、好きですけど」 会「漫画は?最近注目してるのは?」 斑「そーですね…。今週連載始まった『くじびきアンバランス』ですかねー。ヒロインの登場の仕方がちょっと面白かったんで。あと、『なんでもくじ引きで決める学校』って設定も斬新で。」 会「そうだね。あの新連載は今後大きくヒットすると思うんだ。アニメ化にもなりやすそうな絵柄だしね。」 斑「ええ?まだ連載始まったばっかで、そこまで言い切っちゃうんですか?」 会「単なる予想だよ。希望的観測。…でもいちおう、そう言うだけの根拠はあるんだけどね。」 斑「へえ、どんな根拠っすか?」 会「それはね…」 斑目は知らないうちに会長の話に引き込まれていった。 斑「…というワケで、富野作品はスバラシイのですよ!!」 会「そうだね。僕はやっぱりファーストかな。」 斑「ファースト!ジークジオン!っすね。」 会「連邦も捨てがたいよ?ホワイトベースの乗組員って、戦闘員が未成年じゃない。アニメではよくある設定だけど、ガンダムでは特に戦争に巻き込まれてゆく少年の心理がリアルに描かれてて、僕は好きだな。アムロが悩みながら闘う姿とか。」 斑「アムロねぇ…でもヘタレですよねぇ。主人公にしては気が小さすぎるってゆーか」 ………いつの間にか話し込んでいた。 会「…こんな感じで、いつものんびりやってるから。活動方針はその都度決めていくけど、強制しないし。自分の好きなことをやってくれたらいいんだよ。」 斑「はー、そうなんスか。漫研とかアニ研は活動内容が『強制』っぽい感じして、入りづらい感じがしたんですよ。」 会「すぐに決めなくてもいいんだよ。掛け持ちも自由だしね。今は僕と、君の一つ上に掛け持ちで入ってる人がいるけど、他の人は卒業しちゃってね。少人数でゆっくりとやってくつもりなんだよ。」 斑「でもいいすね、ゆっくりできる方が。ていうかこの部屋、自分家を思い出して落ち着くんですが(笑)この大量の漫画とかフィギュアとか」 会「落ち着く、ってことは君も立派に同類だね」 斑「ハハ、そうすね」 帰り道、部室を出てから大学の門をくぐる頃には、もう自分の中で結論が出ていた。 そう、俺はこういうサークルを求めていたのだ! 次の日。斑目が再び現視研の部室に行こうとすると、アニ研の会長に呼び止められた。 ア・会「よう、君、斑目君だったっけ?」 斑「ああ、どうも。」 ア・会「この前見学来てくれた時の説明なんだけど、ちょっと堅苦しかったかと思ってさ。普段はゲームしたりしてのんびりもやってっから、良かったらまた見学来いな。」 斑「ん~…それなんすけど、もう決めたところがあるんスよ。」 ア・会「あ、そうなんだ。どこ入るの?」 斑「現視研なんですけど」 ア・会「…ああ~!あそこかぁ…。」 アニ研の会長は何か言いたげな様子で苦笑いする。 斑「? 何スか?」 ア・会「あそこねぇ、確か原口が在籍してたんだよ。最初現視研に入ってたハズだ。」 斑「え、原口っていうとあの…」 ア・会「そうそう。俺らは『ハラグーロ』って呼んでんだけど。」 斑「うわー…(汗)」 ア・会「あ、でもめったに顔出さないらしいよ、たまーに漫研とかうちにも出没するくらいで。」 斑「はあ…。そうなんすか」 (どんな人なんだ、あの人。ろくな噂ねーな) 漫研の会長と間違えて声をかけたときのことを思い出した。 (でも妙に貫禄あったよなあ。敵に回したら危険なタイプかも…) ア・会「しかし、現視研ねぇ…。あそこって、大した活動やってないからつまんないと思うよ。廃部にならないのが不思議なくらいだ。なんで無くなんねーんだろ?そしたらもっとウチに予算…」 斑「………はあ。」 ア・会「…あ、ごめんね。ま、でも退屈になったらまたウチに来るといいよ。じゃね。」 そう言ってアニ研会長は歩いていった。 斑「………………。」 (う~ん、あの会長もちょっとなあ………。) やっぱり現視研の方が自分には合っている、と思った。 ただ、一つ気になることがある。『ハラグーロ』のことだ。 再び現視研の部室にやって来た。 扉をノックすると「どうぞー」という声が聞こえる。 開けると、現視研の会長ともう一人、眼鏡をかけて髪を無造作に後ろで束ねた女の人が座っていた。 (…?誰だろ。現視研の先輩?) 斑「あ、ども…」 会「やあ。」 「へえ、ここにも新会員、入ったのねえ。」 その女の人はおっとりした声でそう言った。 会「いや、まだ入ったわけじゃないんだ。仮入部だよ。」 斑「あのー?」 会「ああ、この人は児文研の会長さん。」 児・会「どうも~。」 斑「どーも。あの、ちょっと聞きたいことがあるんスけど。」 会「何かな?」 斑「ええと、ここのサークルの先輩で、原口って人のことで」 会「ああ、原口君か。最近部室に来ないなぁ。」 斑「…どーゆー人なんですか?漫研でも、アニ研でも、ちょっと何か…」 会「あまり怖がることないと思うよ。」 斑「え、はあ…。」 会「めったに部室に来ないというのもあるけど、彼はそこまで脅威ではないよ。周りからは「ちょっとやっかいな人」という認識をもたれているようだけれど。 …少なくとも。彼のためにウチが潰れるようなことはないよ。」 会長は穏やかな表情でそう言った。 妙に説得力がある言葉だった。このひょろりとしていて頼りなさそうな色白の会長から、何故こんなに説得力を感じるのか分からなかった。 会「…さて。僕はちょっと児文研の部室に用があるから、行ってくるよ。少しの間待っててくれるかな?15分くらいで戻ってくるから。適当に部室の漫画でも読んでて」 斑「え?はい」 会「じゃ児文研の会長、行こうか」 児・会「ええ、アレですね。」 児文研の会長は、そう言って少し笑った。 部室に一人取り残された斑目。 (…15分、って言ってたな。) 実は昨日から気になっていたのだ。この部屋、あらゆる漫画やゲーム雑誌、フィギュア、エロゲーのポスターがある。 …ということは、必ず同人誌もどこかにあるだろう。それも男性向けなのが。 (さーて…きっとどっかにしまってあるハズだ。どこかな?) ワクワクしながら、まずは本棚の下の棚を開けてみる。 (んー、あったけどエロじゃないのか。あとは………。) ロッカーに目をやる。 (あれかな…?あれはアヤシイな!!) ロッカーまで歩いていき、扉を開く。 (お?おおおおーーー???) 戸を開けると、そこには大量の男性向け同人誌が。 (スゲーなこの量!ほほう、けっこう古いのもあるんだな…。 お、これは某大手の!!持ってないのがあるぞ、売り切れで手に入らなかったんだよなー。ここで出会えるとは!! ほほー。ほーほーほー…) 夢中で読んでいると、後ろでガチャリ!と扉の開く音がした。 斑「!!!!!!」 思わずビクッとなり、持っていた同人誌をバサリと落とす。 振り向くと、会長がこっちを見ていた。 斑「あ、いや、これはその!!」 とっさに何か言いかけたが、頭が真っ白になって言葉が続かない。 会「やあ、ばっちり罠にハマってくれたね。」 会長がどこか嬉しそうにそう言った。 斑「…え?は?………罠???」 会「窓から外を見てごらん。四階の窓があるだろう。」 おそるおそる窓から上を見てみると、さっきの児文研の会長が手を振っていた。 会「あそこは児文研の部室なんだ。毎年罠をしかける手伝いをしてもらってる。」 斑「…あの~~~、罠ってなんのために…。」 会「面白いモンで、罠をしかけるとたいがい君と同じような行動をとってくれるんだ。オタク度が濃ければ濃いほどね。」 斑「………………………(汗)」 456 :げんしけんの一年前14 :2006/06/09(金) 22 34 19 ID ??? 会「という訳で、君も十分濃いオタクだ。入会してみたらどうかな?」 斑「…てゆーかもー、会長!人が悪いっすよ!!」 会「そう?」 斑「あービックリした…。わざわざこんなことしなくても入会する気だったんですから!」 会「そりゃあ良かった。…ちなみに、その同人誌」 斑「へ?な、何すか??」 会「貸し出し自由です。どうぞ」 斑「………………」 斑目は拳を握り、笑顔でこう言った。 斑「借りていきますとも、遠慮なく!!」 …彼は筋金入りのオタクであった。 ……………………… 2001年、春。 彼、田中総市郎は考えこんでいた。 入ったばかりのサークルで、目論見が外れたからである。 高校の頃は五分刈りだったが、今は伸ばした髪を後ろでひとつにまとめ、顔には無精ひげを生やしている。 少し低めの背だが、がっしりした体つきなので実際より大きく見える。 毛深いので手の指まで毛が生えている。 (うーん…やっぱ無理か…。) 彼はオタクサークルの中でも特に大規模な活動をしているアニ研に入ったばかりだった。 アニメ作りに興味がないわけではない。ただ、今の彼の興味は『コスプレ』一色に傾いていたのだ。 手先の器用な彼は、高校の頃はずっとプラモ作りに情熱を燃やしてきたが、最近コスプレにハマってから、自分で着るコスを自分でも作り始め、最近では仲良くなったレイヤーの女の子にもたまに作るようにまでなっていたのだ。 そのために服の勉強まで独学で始めて、大したハマりようだった。 作るようになってからは、自分で着るよりも誰かに着てもらうことに、より喜びを感じるようになっていた。 …だから、制作費がかかる。 アニ研は規模が大きいサークルなので、制作費を振り分けてもらえないかと思っていたのだ。 相談してみたのだが、アニ研会長は了承してくれなかった。 田「アニメのコスプレなんかどうでしょう?アニ研の宣伝にも使えますよ」 ア・会「そおね~…コスプレね~…。ていうか、アニメの制作で予算ぎりぎりなんだよねー」 田「そうなんですか?」 ア・会「どっかから予算回して欲しいくらい…ろくに活動してないトコとかさ。無駄なサークルがいっぱいありすぎんだよね。 …だからね、悪いけど予算は割けないよ。個人でやる分にはかまわないけどさ。」 田「…そうですか。」 アニ研の部室でそんな話をしていると、コンコンと扉をたたく音が聞こえた。 ア・会「はい」 ガチャリと扉が開いて、入ってきたのは、痩せた色白の存在感の薄い男だった。 会「やあ、久しぶり」 ア・会「ああ、どうも久しぶりです。珍しいですね、現視研の会長がここに来るなんて」 会「うん、ちょっとね。ここの部室は広くていいねえ」 ア・会「まーそんだけ部員がいますからねー」 田中は横で聞いていた。 (…何かウチの会長、現視研の会長に対して妙な言い方するな。嫌味みたいな…) 会「そういえば原口君、最近こっちに来てる?」 ア・会「そういや昨日は来てましたけど。原口君、現視研の部員でしょ?ヒマだからってあんまり来られても困るんですよね。そっちで活動するよう言って下さいよ」 会「でもねぇ、原口君が来ないから言いようがないんだよ。」 ア・会「はー、そーですか。」 会「…それに、原口君はアニ研で『活動』するほうが好きなんじゃないかな。」 ア・会「…え?」 会「アニ研で、『君のもとで積極的に活動』するのは、原口君の自由だからね。 ウチも、それで『困るようなこと』はないし。」 ア・会「………………」 アニ研会長は急に黙ってしまった。 会「…ホラ、掛け持ちするのは本人の自由だからね。」 ア・会「え、ええ!そうっすね!」 アニ研の会長は妙に焦り始めた。 会「ただ、原口君は自分の思ったままに動く人だから、『君にはちょっと扱いにくい』…と、思うかもしれないけど。 まあアニ研も大きいサークルだから、それほど『急に困るようなこと』にもならないよね。」 ア・会「え!?あ、そ、そうですね!」 現視研の会長はそこまで言ってから、「では僕はこれで」と扉を開けて出て行こうとした。 そのときぽつりとつぶやく。 会「…共存、という言葉っていいよね。僕は好きだな。」 そうして部室を出て行った。 田中は横で会話を聞いていた。 (…? 何だったんだ?よく分からん話だったな…。特に、最後の「共存」って何だ?) ふと見ると、アニ研の会長は冷や汗を流して固まっていた。 田「会長?どうしたんですか?」 ア・会「いや…何でもない…」 (現視研か…大きいサークルで予算がまわしてもらえないとなったら、むしろ小規模の、あまり活動してないトコの方が…) 数日後、田中は現視研の部室の前まで来ていた。 (ここか…。さて) 部屋の中から話し声が聞こえる。オタク話が白熱しているようだ。 扉をノックすると、ぴたりと声がやむ。「どうぞ」とさっきの会長の声が聞こえた。 部屋には現視研の会長と、痩せた眼鏡の目つきの悪い男がいた。 田「あの、見学させてもらってもいいでしょうか?」 会「君は確かアニ研の…」 田「ええ、そうなんですが、このサークルにも興味を持ったので。掛け持ちさせてもらえたらと思って。 あ、俺は田中といいます。」 会「そう、掛け持ちも歓迎だよ、田中君。どうぞそこに座って」 田「ども」 田中は薦められるままに入り口付近の椅子に座った。 斑「アニ研?」 目つきの悪いほうが声をかけてきた。じいーっとこちらを見てくる。 田「あ、そうだけど?」 斑「同じ1年で近藤っているだろ」 田「…ああ!いるなぁ。知り合い?」 斑「いやそーじゃねーけど、俺アニ研に一度見学行ったことあってさあ。近藤ってヤツがすごい積極的に質問してたのを覚えてたからさ」 田「確かにあいつはすごいやる気マンマンだったな、始めから」 斑「アニ研の人ってみんな近藤みたいなん?」 田「いや?そんなことねーけど。俺もあそこまでできんし。」 斑「フーン…」 そいつは考えこんだ。 会「アニ研に入りたくなった?」 会長がそいつに聞いた。 斑「いやいや、そんなことないスよ。俺はここの方があってます」 田「………」 斑「あ、自己紹介すんの忘れてた。俺ぁ斑目ってゆーんだけど」 田「まだ…??どんな字書くんだ?」 斑「『まだらのひも』の斑に、あとはこの目」 そいつは自分の目を指して言った。 田「まだら…『まだらの蛇』の斑か」 斑「そーそー。…俺の前世はヘビだからな!」 イタいことを言い出した。 (変なヤツだな。…部員こんだけ?あとはあの原口かー。ふうん…アニ研の会長の言うとおり、潰れないのが不思議だなあ。) そんな風に思った。 田「あの、活動ってどんなことを?」 会「そうだねぇ、去年までは会誌を作ってたから、今年もやる?」 斑「へえ、そんなの作ってたんスか?」 会「うん、こういうのなんだ」 そう言って会長は棚から薄いコピー本を取り出した。 会「メバエタメという名前で、内輪の中で配るような本なんだ。内容はそのときサークルの人がハマっていた漫画やアニメ、ゲームなどを一人ずつが分析して、『どこに萌えるか』を文章化する。人によっては漫画やイラストなども描いていたよ。それぞれの自由でいいんだ。」 斑「『どこに萌えるか』…。あーそれで『メバエタメ』なんすね。」 田「…あの~~。コスプレ、なんかでもいいんですか?」 田中がおそるおそる聞くと、会長と斑目は「?」という顔でこっちを見た。 田「いや実は俺、コスプレをするんですけど。自分で衣装作ったりとかも。」 会「へえ、それは本格的だね。」 田「…話聞いてると、『萌え』であればどんな活動でもいいのかと思って」 会「うん、かまわないよ。コスプレも現代文化のうちの一つだしね。」 田「ああ、そうっすか。それ聞いて安心しました。」 斑「へえ、君コスプレすんの?」 田「ああ、俺もするけど、最近は知り合いのレイヤーに頼まれて作ることのが多いかな。」 斑「どんなん作るの?」 田「そのときによって色々だなぁ。メイドさんのコスがいいって言われたら作るし、あとはゲームキャラとかも最近多いかな」 斑「ほお…本格的なんだなー。メイド服まで作れんのかー」 斑目はひたすら感心していた。 その日、帰ろうとして部室から出た田中は、廊下で現視研の会長に呼び止められた。 会「田中君、うちでコスプレ作る活動したいんだよね」 田「…ええ、まあそうです。」 会「この前、アニ研の会長と君が相談しているのが聞こえたから。制作費のことで話し合ってたね?」 田「え?ええ、そうですが…」 (活動費目当てって思われたかな…?実際その通りだし…) 内心焦る田中とは逆に、現視研の会長は飄々とした態度で言った。 会「制作費のこと、ウチなら何とかできるよ。現視研内の活動の一環として使ってもらってもいい。 その代わりできるだけウチの部室で活動してもらえればね。」 田「ああ!そうですか。助かります!」 会「もちろん掛け持ちでもかまわないよ。その辺は君の判断に任せるよ。」 田「わかりました、ちょっと考えてから…」 会「うん、ゆっくり考えてね。」 現視研会長はそう言って、ゆっくりと廊下を歩いていった。 (…現視研だったらコスプレの活動だけにしぼれるな。スゲー理想的な話だ………。 ………………それにしても。) (何かうまく話が進みすぎな気も…。あの会長、ちょっと何者か分からないとこがあるし。 …でも大丈夫か。敵に回さなかったらきっと…。) 帰り道、部室を出てから大学の門をくぐる頃には、もう自分の中で結論が出ていた。 そう、俺はこういうサークルを求めていたのだ。 次の日、田中は再び現視研の部室の前にやってきていた。 アニ研の会長とはさっき話をつけてきた。 現視研の会長に誘われた、と説明したら、アニ研の会長はひきつり笑いを浮かべてこう言った。 ア・会「そ、そうか。うん、君が思うようにしてくれていいよ。向こうに移籍するんだね?現視研の会長によろしく!」 …こんな感じだった。何かビビってるように見えたのだが、何故かはわからない。 斑「へえ、ウチに入ることにしたのか。」 田「うん、さっきアニ研にも抜けるって言ってきたから。これからよろしく」 斑「おう、よろしく~。」 現視研の部室でそんな話をしていたとき、斑目の携帯が鳴った。『機動戦士Tガンガル』のオープニング曲だった。 斑目はすぐに携帯を開いて通話ボタンを押す。 斑「はい、あ…はい、わかりました。」 ニヤリと笑い、立ち上がる。 斑「ごめ、急に友達から呼び出されてさ。そのうち会長も来ると思うし、待っててくれるか?」 田「ああ、そう」 斑「じゃーな」 そう言って部屋から出て行った。 (ふー…。と言ってもヒマだな………。とりあえずこの辺の漫画でも…。) 本棚に手を伸ばす。ふと、棚の一つ下の段に並べてあるフィギュアに目がいく。 (………………………………。) 手にとって眺めてみる。 元々プラモやフィギュアを作るのが好きな田中、つい細部までチェックしてしまう。 (このフィギュア、悪くねーんだけど…胸のラインがイマイチなんだよな。横から見たらちょっとたれ気味なのが………。 お、太洋堂のだ。ここのはいつも作りがキレーなんだよなあ。色のつけ方もいい。このつなぎ目なんかの処理も…。 …懐かしー、美少女剣士ブレザームーンだ。ほほー…。いい出来だなあ。) つい逆さにしてスカートの奥を眺めてみる。 (ここの細かいしわの表現が………………) 夢中で眺めていると、後ろでガチャリ!と扉の開く音がした。 田「!!!!!!」 思わずビクッとなり、持っていたフィギュアを落としそうになった。 斑目が携帯を持ったまま、部室に入ってきていた。 田「あ、あービックリした!早かったな」 慌てて取り繕うが、斑目はニヤリと笑う。 斑「逆さにしたら何が見えた~~~?女体の神秘でも見えたかな~?」 田「!!!え、いや、な、何が??」 斑目はくいっと窓のほうを指差す。 斑「窓から外見てみ、正面の上」 慌てて言われたほうに目をやると、向こうのサークル棟の、一つ上の窓から現視研の会長が手を振っていた。 斑「あそこは児文研の部室で、会長同士が知り合いなんだ。いやー、見事に罠にハマってくれたな!」 田「わ、罠??何のために…」 斑「会長曰く!!罠をしかけるとたいがい君と同じような行動をとってくれるんだそうだ!オタク度が濃ければ濃いほどな。」 田「はあ…」 斑目はやたら嬉しそうにしながら言った。 会「という訳で、君も十分濃いオタクだ。入会してみちゃどうかな?」 田「だから入会するって…」 田中は恥ずかしさにがっくりと肩を落とした。 斑「あ、ちなみに、このロッカーには男性向けの同人誌がいっぱいです。」 斑目はロッカーをガチャリと開けた。 斑「貸し出し自由です!どーぞ」 田「…うん、また今度…。」 斑「オススメはここのサークル」 田「おお、これ持ってないやつだ。お!?これってプレミアついてるやつじゃないか?」 斑「そーそー、何気にいいのそろってるだろ?」 田「…じゃ、コレ借りてくわ」 …田中も十分濃いオタクであった。 ……………………… 2001年、春。 彼、久我山光紀は悩んでいた。 サークル見学に行く勇気が、なかなか出なかったからである。 (…う~~~ん………。見たトコ、漫研もアニ研も部員が多そうだったなあ………。 ちょっと入りづらいなぁ…。俺、大勢人がいるところだとあんまり喋れないし………。 少人数でまったり活動しているトコってないもんかなぁ…?) そうこう考えているうちに4月の半ばになってしまった。 少し焦り始めた久我山は、ようやく重い腰を上げたのだった。 見た目はかなりでかい。背が大きくて、横幅もでかい。(自分でもちょっと気にしている。「ブーちゃん」と言われたときは半ば本気でダイエットを考えた。実行はしなかったけど。) よく「山が歩いてるみたいだな」と言われる。(そのくらいなら許す。) 巨体のわりに気が小さく、自分でもおとなしい性格だという自覚がある。人ごみだと声が通らないのであまり喋らないようにしている。 …とりあえずサークルの見学に行ってみよう、行かなきゃ始まらない、とようやく決意して漫研とアニ研へ行ってみた。 ………………そして思ったとおりの人の多さと活発な活動風景に、すっかり入る気を無くしてしまったのだった。 (……だいたいなんで全員漫画描かなきゃいけないんだよ。描けない人は入っちゃいけないのかよ。) 久我山は心の中でキレていた。 漫研の会長と話をして、強制的な感じがしたので正直引いたのだった。 (…そりゃあ、イラストとか描くのは好きだけど………。人に見せられるほど上手くないしなぁ………。 自信ないしなぁ………。漫画ってちゃんと描いたことないしなぁ…………。) アニ研も似たような感じだった。 はあぁ…とため息をついた。 ふと、漫研で「現視研っていうサークルがあるんだけど、知ってる?」と聞かれたのを思い出した。 同じ一年で、確か高柳っていう奴だった。 知らない、と言うと高柳はこう言った。 柳「俺の知り合いが入ったんだけど、そこなら少人数で、とくに活動も強制されないから楽っつってたよ。そいつも元々漫研の見学来てたんだけど、絵が描けないからってウチに入るのはやめたから。」 久「へ、へー…。しょ、少人数かー…」 少人数であること、そして何より『漫画描け』と強制されないところに魅力を感じたのだった。 次の日、久我山は現視研の部室の前にいた。 初めてサークル見学に来たときはどこでも緊張する。 おそるおそる扉をノックした。 「どうぞ」と声がしたので、恐々ドアを開ける。 そこにはメガネの色白の男と、同じくメガネの妙に細長い男と、がっしりした体つきの毛深い男が座っていた。 久「ど、ども。あ、あのう、け、見学…してもいいですか…?」 どもりながら小声でようやく言った。 会「見学?いいよ、どうぞ座って」 斑「ほい」 メガネの細長いほうがたたんであった椅子を広げて薦めた。 久「あ、ど、ども」 久我山はよっこいせ、という感じで巨体を椅子に沈めた。 田「この時期に見学?他に何かサークル入ってるの?」 がっしりした男が聞いてきた。 久「い、いや。まだ。け、見学なら昨日行ったけど。漫研とアニ研」 斑「ほほう、漫研とアニ研はどーだった?」 久「う、うーん…ちょっと人が多すぎて、なじみにくい感じだったな…」 斑「そーだろそーだろ!人が多けりゃいいってモンじゃねーよなー!」 その細長いメガネはやたら元気良く喋った。 会「それでここに来たんだね?ウチは少人数だから」 久「え、ええ。ま、漫研の人が、現視研を薦めてくれたんです」 斑「へー!誰に?」 久「えーと…た、高柳っていう1年」 斑「ああ、ヤナかー。あいつが薦めてくれたのかー。へー」 久「し、知り合い?」 斑「ああ、ちょっとな。最近良く喋るからさ、あいつと」 会「さて、自己紹介しようか。僕はこの現視研の会長をしています」 田「俺は田中。」 斑「田中はすぐ覚えてもらえていいよな。俺ぁ斑目ってゆーんだけど」 久「ま………?」 斑「ほらやっぱコレだよー。えーとな、『まだらの蛇』の斑に、目ん玉の目で、マダラメ!!」 久「あ、ああ、斑目っていうのか。」 自己紹介が終わったあと、斑目たちは雑談を始めた。 会「さて、今日の会議の議題は何にする?」 斑「昨日はくじアンでしたね。だがあえて言おう、今日もくじアンでいくと!!」 田「またくじアンの話か(笑)まーそれもアリだな。」 少年マガヅンで連載されている「くじびきアンバランス」の話を始めた。 斑「連載3回目にして、早くも人気出てきたみたいっすね。」 田「あの会長と副会長の関係がいいよな。」 斑「お、田中は会長萌えか~~?」 田「いやーどっちかというと副会長かな。」 斑「ほほう、副会長もツルペタぶりがなかなか。…しかし、やっぱりあの『忍先生』なくしてツルペタは語れんだろう!!」 田「いつの間に乳の話になったんだ(笑)」 会「忍先生はメガネをかけたら別人のように性格が変わる、というのが面白いね。」 斑「そう、あれは外界への抵抗と自己抑圧の象徴なのであります!理性と本能のせめぎ合いとゆーか…」 久我山はずっと聞いていて、妙に居心地の良さを感じた。こんな話でマッタリ過ごすのが理想だったのだ。 会「…さて、斑目君、ちょっといいかな」 会長がそう言って立ち上がる。 斑「はい?…ああ!そーですね、行きましょうか。じゃーちょっと出てくるわ。しばらくしたら戻ってくっから」 田「あいよ」 そう言って会長と斑目は出て行ってしまう。 田「フー…」 久「な、なんかいつもこんな感じでやってんの?」 田「ああ、いつもこんなんだ。基本的に自由」 久「サ、サークルとしての活動は?」 田「特に決まってないなー。自分の好きなことやってたらいいって感じで」 久「は、ハハ。そうなんだ。て、適当だな」 田「…適当だとやりにくい?」 久「い、いや、むしろ歓迎」 そんな話をしていると、田中の携帯が鳴り出した。 昔のFFの戦闘曲だった。 田「はい。…ああ、わかった、うん、すぐ行くから。 すまん、俺もちょっと友達に呼び出された。会長達がそのうち帰ってくるから、その辺の漫画でも読んどいて」 久「え?あ、ああ。分かった」 部室に取り残される久我山。 (………うーん…。みんなどっか行っちゃったなぁ………。漫画…漫画かぁ。) 最新号のマガヅンがあったので、くじびきアンバランスのページを開く。 (………………………。) 机に置いてあった落書き長に手を伸ばし、山田の絵を描き始める。 …最初は普通に模写をしていたのだが、そのうち好きなように描き始めた。 服を描かなかったり。体をしならせてみたり。 だんだん興が乗ってきて、ちょっとエロい感じの絵になってきた。 落書き帳の紙をやぶり、どんどん描いていく。 夢中で描いていると、後ろでガチャリ!と扉の開く音がした。 久「!!!!!!」 慌てて机の絵を隠そうとして手を伸ばすが、反動で机が揺れ、何枚か床に落ちてしまった。 斑目が携帯を持ったまま、部室に入ってきた。 久「………………!!!」 驚くやら恥ずかしいやらで声が出ない。斑目が床に落ちた絵を拾い上げ、ニヤリと笑う。 斑「ほっほ~~~?………エロいな!!」 田「………………!!!」 真っ赤になって何も言えない久我山。 田「へえ、結構上手いなあ」 斑「なぁ!こりゃあ戦力になるぜ!」 田「何の戦力だっての」 斑「向こうから見てたときは何の絵かわからんかったけど…」 久「む、向こう??」 久我山がようやくそれだけ言うと、斑目はくいっと窓のほうを指差す。 斑「窓から外見てみ、正面の上」 慌てて言われたほうに目をやると、向こうのサークル棟の、一つ上の窓から現視研の会長が手を振っていた。 斑「あそこは児文研の部室で知り合いが多いんだ。君もまんまと罠にハマってくれたな!」 久「え?は?わ、罠………?」 斑「会長曰く!!罠をしかけるとたいがい君と同じような行動をとってくれるんだそうだ!オタク度が濃ければ濃いほどな。」 久「こ、濃いオタク………??」 斑目はやたら嬉しそうにしながら言った。 会「という訳で、君も十分濃いオタクだ。入会してみちゃどうかな?」 久「………はぁ…。」 久我山は椅子に座り込んだ。 斑「いやーそれにしても、このリサのエロ絵はいいな、マニアックなとこが(笑)」 田「こっちの絵、山田と蓮子をからませるとは…。蓮子×山田じゃなくて山田×蓮子かぁ(笑)」 久「…い、いいからもう返してくれよ」 斑「おお、スマン。でもけっこう上手いな君」 田「おお、絵もなかなかかわいい感じの絵だし。」 久「え、そ、そうかな…?」 誉められるとまんざらでもない久我山であった。 ……………………… 会「風が吹くな………。」 その日、会長は一人で部室にいた。 あの新会員の三人は秋葉原の0時売りへ行ったのだった。 会「三人か………今年はよく入ったほうだな。これでしばらくは安心だ…。」 会長は独り言をつぶやいた。 ここ数年、ずっと廃部の危機に晒され続けていたのだ。 あの三人なら、現視研を潰さずうまくやっていってくれるだろう。 斑目君は意外と顔が広いので、他の部との情報交換や付き合いをしてくれるだろうし。 田中君は積極的に活動して、コスプレで現視研の特異性を出してくれるだろうし。 久我山君は得意の絵を描くことで、現視研の活動としていつか大きい仕事をすることになるだろう。 きっと現視研にとって無くてはならない三人になる。 そして、現視研の基礎を一から作っていってくれれば………。 そうすれば、さらに来年、新入生が入ったときにもきっと………。 『初代』会長は一つ大きく息をついた。 END