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前ページ次ページ悪魔の虹 ここ、トリステイン魔法学院では今年二年生となった生徒達が 春の使い魔召喚 の儀式で様々な使い魔達を呼び出し、契約していた。 ある生徒は火竜山脈に棲むとされるサラマンダーやら絶滅したとされている古代の幻種に属する風韻竜を召喚したり、またある生徒は仕草などが微妙に愛らしいジャイアントモールを召喚したりと賑やかだった。 そんな中ただ一人、どれだけ時間をかけても使い魔を召喚できない者がいる……。 「いつまで経かってるんだ、あいつは……」 「所詮はゼロのルイズだ。あいつなんかにサモン・サーヴァントが成功するもんか」 既に使い魔を召喚し終えていた生徒達からぼそぼそと、陰湿な悪口が飛ぶ。 桃色のブロンドを揺らす少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは幾度もの召喚の儀式に失敗していた。生徒達はもちろん、初めは彼女を励ましてくれていた教師コルベールも今では彼女の失敗に辟易としていた。 コルベールがまた後日に行おう、と持ちかけてもルイズは諦めずに続ける。 しかし、いくらやっても爆発が起きるだけで使い魔は召喚されない。 他の生徒達にもこれ以上、時間を割く訳にもいかない。コルベールはルイズに「次で最後ですよ」と通告する。 これで最後だと言われ、ルイズも息を飲みながら杖を構える。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!」 もう失敗は許されない。このまま、ゼロのままで終わる訳にはいかない。 「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」 この際、どんなものが呼び出されても構わない。魔物だろうが悪魔だろうが。 「私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!!」 ――お願い! 出てきて! あたしの使い魔!! ルイズは杖を振り、そしてまた爆発は起きた。 また失敗か、と誰もが思っていた。が、今度は違うようだった。 爆発の煙の中から現れたのは――人のようだった。それも、ただの平民。見た事のない変な服を着ているのだから間違いない。 「見ろよ! ルイズが召喚したのは平民だぜ!?」 「さすがはゼロのルイズだな! 平民を呼び出すとは!」 ドッ、と生徒達が爆笑していた。そして、召喚したルイズを馬鹿にしたように野次が飛ぶ。 多くの生徒達が爆笑する中、たった一人だけ笑っていない生徒がいた。 青い髪をした眼鏡をかける小柄な少女。風韻竜を召喚したタバサは興味も無さげに読書を続けていたが、野次を耳にしてちらりとそちらへ視線をやる。 青い変な服を着た平民の少年だった。召喚したルイズがコルベールにもう一度だけやらせて欲しいとかみついているが、一度呼び出したからもうやり直しは認められない、と言って彼女を諭している。 ルイズは渋々と平民にコントラクト・サーヴァントの儀式を行おうと口付けをしている。一応、儀式は成功したようだ。苦痛に喘ぐ彼の左手にもルーンが浮かんでいる。 別にどうという訳ではない。……ただ、彼の足元に転がっている小さな物体がタバサは気になっていた。 「ふむ、珍しいルーンですね……。では皆さん、教室に戻りましょう!」 コルベールはルイズが召喚した使い魔(といっても平民だが)の少年の左手のルーンを確認すると、生徒達を促す。 「わぁー、何これ?」 「きれーい」 すると、女子生徒達が見惚れたような声を上げている。 コルベールはそちらを振り向き、顔を顰めた。 「綺麗なオパールね……」 赤髪に褐色の肌をした女子生徒、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーも見惚れたようにそれを手にし、指先でなぞっていた。 「しかも、こんなに大きい……」 彼女の手にあるのは、ちょうど手の平程度の大きさをした虹色の光沢を放つ卵上の物体だった。 多くの女子生徒達がその物体に惹かれて集まり、取り合いになっている。 あれは、ただの宝石とは思えない。コルベールはそう感じた。 「君達、ちょっと待ちなさい!」 コルベールは慌てて彼女らの元へと駆け寄り、虹色の物体を取り上げる。 自分の手の中にあるその物体を近くで凝視するコルベール。 確かに、見た目は美しく大きな宝石に見えるが……。 「……これは、宝石ではないな」 「ええ? それでは、何なのですか」 取り合いに混じっていたルイズが尋ねてきた。 眼鏡を掴み、さらにじっと睨み付けるように観察するコルベールはその形状、大きさなどからこの物体が何なのかを断定する。 「……何かの、卵だね」 「卵?」 「あ、そいつは俺の傍に転がってたやつ……」 ルイズが召喚した使い魔の少年が、コルベールの手にするそれを不思議そうな目で見つめてくる。 そういえば彼がルーンを刻まれている時に苦しんでいた際、彼の傍らに虹色の光沢を放つ物体があった。それがこれだろう。 「と、いう事はこれは君と一緒に召喚された物なのかな」 「そ、それじゃあ!」 顎をつまみながら推測するコルベールだが、召喚したルイズ本人は途端に狂喜乱舞したようにはしゃぎだす。 「この中に、凄い幻獣とかが眠っているんですね!?」 コルベールの手からその物体を引ったくり、愛おしそうに間近でそれを見つめている。 「卵のままじゃ、孵化するのにどれだけ経かると思ってるの……」 「やっぱり、ゼロのルイズだな。卵のまま召喚しちまうとは……」 そんな陰口が野次馬達の中から飛ぶのが聞こえた。 「何をしているんだ、君達。教室に戻りなさいと言っただろう?」 すぐ様コルベールが野次馬の生徒達を再度、叱るように促していた。生徒達は次々と中庭を後にしていく。 そして、ルイズの手から虹色の物体を取り上げる。 「ミズ・ヴァリエール。たとえこれが君が召喚した物だとしても、君は既に使い魔と契約をしている」 「いいえ! こんな平民は、使い魔じゃありません!」 平民の少年を指差し、喚くルイズ。 「その幻獣が、あたしの本当の使い魔なんです! こいつは間違って召喚されてしまっただけです!」 「しかし、二体も使い魔を持つなんて特例は許されないし、そもそもこれがまだ幻獣の卵だと決まった訳ではないのだよ?」 と、諭されてルイズも低く唸りながら不満そうにしていた。 「とにかく……これが何なのか分からない以上、私達が預かっておくから、君も教室に戻りなさい」 渋々とした顔で頬を膨らませるルイズはようやく納得したのか、平民の使い魔を連れて中庭を後にしていた。 同じように中庭を後にしていくコルベールは、手の中に納まる物体を睨んでいた。 こんな卵は、見た事がない。動物なのか幻獣なのかは分からないが、綿密に調べてみる必要がありそうだ。 もし本当にミス・ヴァリエールの言うようにとてつもない幻獣か何かだとしたら……。 前ページ次ページ悪魔の虹
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歪魔ルイズ・プロア(Louiz) 加入条件 AP04、「歪魔を探そう」イベント終了 ステータス 種族 防御属性 武器 鎧装備 雇用費 悪魔 暗黒 杖 X -- LV HP 物攻 物防 魔攻 魔防 命中 回避 所持 待機 70 58 58 45 39 27 140 60 7 7 100 94 76 61 50 36 149 72 7 7 120 118 88 72 58 42 155 80 7 7 スキル スキル名 初期 種別 効果 備考 連撃 +5 攻撃 攻撃時に確率で同じ行動を連続で行う +9で発動率20% 魅了 +4 攻撃 攻撃時に対象の行動を遅らせる +9で9F お調子者 +6 攻撃 CHAIN発生時、1CHAIN毎に攻撃力上昇 +9で物攻+10魔攻+10 見切り +5 防御 被攻撃時に確率で間接ダメージを無効化 +9で発動率30% 反射 +5 防御 被攻撃時に確率であらゆる攻撃ダメージを跳ね返す +9で発動率20% 歪魔 +7 条件 +値に応じて行動追加 杖使い +7 条件 『杖』が装備可能 行動 条件 分類 名称 距離 種別 属性 硬直 範囲 効果 回数 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7 +8 +9 歪魔 必殺 爆裂ミョウギ 間接 攻撃 火炎 5 縦5×横5 物攻+15 命中+30 12 14 16 18 20 23 26 30 34 爆裂オウギ 8 物攻+30 命中+60 - - 8 10 12 15 18 21 24 爆裂究極オウギ 12 物攻+45 命中+90 - - - 5 7 10 13 16 22 魔法 連続闇弾 間接 攻撃 暗黒 8 縦1×横1 魔攻+12 命中-5 10 12 14 16 18 21 24 27 34 獄滅暗黒槍 12 魔攻+24 命中-5 - - 4 5 6 9 12 15 24 ティルワンの死磔 18 縦5×横5 魔攻+36 命中-5 - - - 2 4 7 10 13 18 特徴 エウ伝統の空間を歪め操る上位魔族「歪魔」 伝統芸なので、今回もやっぱり歪魔チート。 セリカと並ぶ待機7に加え、魅了+爆裂ミョウギ(火炎・5×5・硬直5)という、ゲーム仕様を全力で味方につけた胡散臭さ全開のチートキャラである。 火炎が効きづらい相手にはティルワンの死磔(暗黒・5×5・硬直18)で対応できる。5×5を2属性持つのは味方ユニットの中でもルイズだけ。 回避も異様なほど高く、初期装備を鍛えるだけで余裕で100を超える始末。 伝統的に低い設定になりがちなHPも、本作仕様だと全く弱点にならない。 唯一の弱点は武器が「杖」ということ。基礎ステータスは物攻寄りだが、杖装備のため物攻が上がりにくく、単純に火力という意味ではそこまで異常なものにはならない。 …と思いきや、実際には「お調子者」の効果でCHAIN時ダメージが跳ね上がるため、これすら弱点にならない。少しは自重しろ。 専用レア武器は杖、欲望の聖杖(SR・無属・物攻77・魔攻127・命中60・精気吸収+9)と歪姫の秘杖(UR・暗黒・物攻40・魔攻99・命中70・大物殺し+9)。 例によってSRの方が性能が高い。初期待機の速さと精気吸収+9の相性は抜群で、戦闘する度にHPがモリモリ回復していく。物攻も杖の中では一番高い。
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前ページ次ページ蒼い使い魔 「ふぅっ」 ルイズが室内に新鮮な空気を取り込むべく自室の窓を開け放つ、涼やかな風が頬をなでた。 ルイズはくるりと振り向くと、使い魔をみて言った。 「さて、明日から夏季休暇なんだけど」 「そのようだな」 脚を組みながらソファに座っている使い魔……バージルは本から視線を外さずに相槌を打った。 「せっかくだから領地に帰ろうと思うの」 「好きにしろ」 相変わらず淡白な反応しか返さない使い魔をじろりと睨みつける 「あんたも行くのよ」 「……」 気乗りしない、といった表情のバージルにルイズが再び口を開こうとしたその時、窓に大きな影が差す…… 「おにいさまぁ~~~!!」 その声と共に、窓から突然、長い青い髪をした素っ裸の女性が勢いよく飛び込んできた。 「なっなっ、何ごとっ!?」 突然の闖入者にルイズが目を丸くする。 変化を使ったシルフィードが窓から乱入してきたのだ。誰かに見られていたらどうするつもりなのだろうか? だがシルフィードはそんなことはおかまいなく部屋の中へ降り立つや否や、 固まっているルイズを尻目にバージルの元へ駆け寄ると、そのまま勢いよく抱きついた。 「きゅいきゅい! おにいさま! 明日から夏季休暇なのね!」 「知っている」 顔に胸が押し当てられているにもかかわらず顔色一つ変えずににべもなく言うと、ページをめくる、 シルフィードはソファから立ち上がると、そんなバージルから本を取り上げる、 睨むように視線を上げるとそこには当然のようだが……素っ裸のシルフィードが立っていた。 「そこでシルフィは提案します、おにいさまをシルフィのおうちへご招待するのね! 二人の愛の巣なのね! すてき! きゅいきゅい!」 「こぉの雌竜! 何勝手に入ってきてんのよ!」 ようやく我に返ったルイズがシルフィードに詰め寄った、 だがシルフィードはルイズに向きなおると、ふふんと鼻で笑う 「ふっふっふ、話は聞かせてもらいました! 桃髪! さっさと実家に帰れなのね! おにいさまはシルフィと一緒にアッツイ夏を満喫するのね!」 「なにがアッツイ夏よ! あんたの頭ん中はいっつも春じゃないの! 大体人の使い魔に手を出さないで! ぜったいそんなことはさせないわよ! させるもんですか!!」 目の前できゃんきゃんきゅいきゅい喚く二人にバージルは眉間に皺をよせ片耳を押さえた。 すると、今度はドアがバターンと勢いよく開け放たれる、 ルイズとシルフィードが驚いてそちらへ視線をやると、そこに立っていたのはシルフィードの主人であるタバサだった。 唖然とするルイズ達をよそに、タバサは有無を言わさず きりり、と杖を取り回して脇に引き付け、渾身のスティンガーをシルフィードに叩き込む。 「ぎゃうん!」 その華奢な体のどこにそんな力があるのかと疑いたくなるほどの強烈な一撃がシルフィードを壁まで吹っ飛ばす。 バージルから取り上げた本が空中へ投げ出される、 重力に従い落ちてきたそれをバージルは難なくキャッチすると、何事もなかったかのように再び本を開き、静かに読み始めた。 もんどりうって吹っ飛び、気を失ってしまったシルフィードにタバサはつかつかと歩み寄ると、布でその体をくるくると包み込み、 持っていたロープで手際よく簀巻きにするとずるずると外へと引っ張って行った。 「お騒がせしました」 「まったくだ」 タバサはドアの前でぺこりと頭を下げると簀巻きになったシルフィードを引きずり、ルイズの部屋から退出していった。 嵐のように現れ嵐のように去っていったシルフィードにルイズは大きくため息を吐く、そのとき……。 ばっさばっさと一羽のフクロウが窓から入ってきた。 「ん?」 そのフクロウはルイズの肩にとまると、羽でぺしぺしと頭を叩いた。 「なによこのフクロウ」 フクロウは書簡を咥えている。 ルイズはそれを取り上げた。 そこに押された花印に気づき、真顔に戻る。 中を改め、一枚目の紙にルイズは目を通した。 それからルイズは呟く。 「帰郷は中止よ」 「好きにしろ」 「……」 帰郷のために一度まとめた荷物を、ルイズは再び改めると、 先ほどフクロウが届けてきた手紙をバージルに渡した。 「これ、一応あんたも読んでおきなさい」 「なんだこれは」 「姫さまからの手紙よ」 ルイズのその言葉を聞くや否やバージルが手紙を持つ手に力を込める 「ちょっと! なに破こうとしてんのよ!」 「気に食わん」 「中身も見ずにいきなり破こうとするやつがどこにいるのよ! とにかく読みなさいよ!」 ルイズの必死の説得に渋々とバージルが手紙に目を通し始めた。 内容をかいつまむとこうだ、アルビオンは艦隊が再建されるまでまともな侵攻をあきらめ、 不正規な戦闘を仕掛けてくる可能性が非常に高い――マザリーニを筆頭に、大臣達はそう予想したらしい。 街中の暴動や反乱を扇動するような卑怯なやり口でトリステインを中から攻める……。 そんなことをされてはたまらない、そのような敵の陰謀がある可能性を危惧したアンリエッタは 治安の維持を強化する判断を下したということだ。 「あの女にしては妥当な判断だな」 バージルはそこまで読むと、もう読む気が失せたのか、ぱらりと床に手紙を投げ捨てた。 「それで? 俺になんの関係がある」 「だから! ちゃんとこの先に書いてあるでしょ!」 ルイズがあわててその手紙を拾いながらバージルを叱りつける。 「わたしは身分を隠して情報収集をしなくちゃいけないの! なにか不穏な活動が行われていないかとか、平民達の間で流れてる噂とか調べるのよ! わたしがやるんだからあんたも手伝うのは当然でしょ!」 ルイズが手紙の中の文字を指でなぞる、なるほど、確かにそこには トリスタニアで宿を見つけ下宿し、身分を隠して花売りなどをしながら 平民達の間に流れる噂など、ありとあらゆる情報を集め、報告するように指示してあった。 任務に必要な経費を払い戻すための手形も同封されている。 「要は間諜か、俺がいなくても問題のない仕事のようだが」 バージルがそう言うと、ルイズは胸をツンと張る。 「と、当然じゃない! この位の仕事、わたし一人でも余裕よ!」 「そうか、では精々あの女の期待に応えられるよう任務とやらに励むんだな、俺はここで無事を祈っていてやる」 その言葉を待っていたのか、バージルはこの話はこれで終わりだ、と言わんばかりに再び本に目を通し始めた。 言葉ではああ言っているが、彼の態度を見てわかるとおり、祈る気などゼロだ。 「だぁ~~かぁ~~らぁ~~……! あんたも行くって言ってんでしょこの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!!」 ルイズはわなわなと怒りで肩を震わせ……、いつもより派手な音を立て、部屋が爆発した。 「暑いわね……」 ルイズが額の汗をぬぐいながら呟く。 じりじりと太陽が照りつける街道を、バージルとルイズはトリスタニア目指して歩いていた、 最初は渋っていたバージルも、結局ルイズに同行することにしたのだった、 アルビオンの背後には魔界の姿が見え隠れしている、悪魔を差し向けてくる可能性も捨てきれない。 先日あったラグドリアン湖に悪魔が発生した時のような事態が起きないとも限らない、 また、そう言った場所にはかならず魔界への手がかりがある 実際のところ、この任務はバージルにとっても有用な情報が手に入る可能性があったのだ。 「聞きたかったんだが、何故馬車を使わん」 そんなルイズとは対照的にバージルは涼しい顔をしながらルイズに尋ねる。 「だって……身分隠さなきゃいけないんだからしょうがないじゃない、今のわたし達は"一応"平民なんだから……」 「……一応聞くが、街についたらまずどうするつもりだ」 バージルがルイズを横目で見ながらなにやら含みのある声で聞く。 「まずは財務庁ね、そこで手形を金貨に換えなきゃ」 「平民はよく財務庁を利用するのか? それと……」 バージルは一旦そこで区切ると、改めてルイズをまじまじと見つめる。 「な……なによ……」 「平民が五芒星とマントの着用を許されているとは初耳だな」 「うっ!!!」 どうやらバージルの言いたいことは大体伝わったらしい、 行きは馬車で特に問題はない、トリスタニアに到着し、手形を金貨に換えてから 仕立て屋で平民に変装するなりしてから紛れ込めばいい。そう言っているのだ。 かといって今から学院に戻るには遠すぎる……。 「う! うるさいうるさい!」 痛いところを突かれたルイズは目くじらを立てながら怒鳴り散らす。 「喚くな、暑苦しい」 「誰のせいよこのばかぁぁーー!!」 街についた二人は、まず財務省を訪ね、手形を金貨に換えた。 新金貨六百枚、約四百エキューである。 その次に、仕立て屋に入り、ルイズが変装に使う地味な服を購入する。 ルイズは最初嫌がっていたが……五芒星とマントをつけたままでは平民の中に紛れるなど不可能だ。 地味な服を着せられたルイズは不満そうに口を開いた。 「足りないわ」 「何がだ」 「この頂いた活動費よ、四百エキューじゃ、馬を買ったらなくなっちゃうじゃないの」 「馬など不要だ、そもそも今のお前は平民だ、自分で歩け」 「平民のフリをしようがしまいが、馬がなくっちゃ満足なご奉公はできないわ」 「……」 「それにちゃんとした馬じゃないとダメね、安い馬じゃいざって言う時に役に立たないじゃないの! 馬具だって必要だわ、それに……宿だってヘンな所に泊まれないわ、 このお金じゃ二ヶ月半泊まっただけでなくなっちゃうじゃない!」 金貨六百枚が消し飛ぶ宿とは、どれだけのものなのだろうか。 「安宿でかまわん、少しは妥協しろ」 「ダメよ! 安物の部屋じゃよく眠れないわ!」 流石は大貴族のお嬢様、平民に混じっての情報収集なのにやたらと注文が多い。 「ご奉公にはお金がかかるの! 妥協なんてできないわ! あぁ、他にも……」 やいのやいのと注文をつけるルイズをバージルが睨みつける。 「お前はそんな風にして俺の金を使ったのか……」 あきらかに怒気を含んだ声にルイズが震えあがる。 「わっ……悪かったって言ってるでしょ! そ、それはあの時、あ、謝ったじゃない!」 ルイズは請求書が届いたあの日のことを思い出す。 あの時は本当にヤバかった、逃げたルイズを追ってきたバージルの背後には視界を覆い尽くさんばかりの幻影剣が浮き 目が合うや否やルイズに向かい一斉に射出してきたのだ。何の比喩もない、まさに剣の暴風雨だった。 幻影剣が容赦なく空から降り注ぐ、回避したと思ったら、今度はぐるりとルイズの周囲を取り囲み、一拍置いた後に一斉に射出される、 必死に地面を転がり回り、虚無を放ち打ち砕く、人間必死になればなんでもできる、そう実感した。 最終的には途中から加わったキュルケ、タバサ、シエスタを含む四人でバージルに謝り倒してようやく刀を納めてくれたのだった。 「お前に金を渡すとどうなるか、よくわかった」 バージルはそう言うと、ルイズが手に持っていた金貨の入った袋を取り上げた。 「なっ! なにすんのよ! 返しなさい!」 「俺も手伝わされるんだろう? 半分は俺の金だ、文句はあるまい?」 バージルがルイズを鋭く睨みつける。 「うっ……」 反論しようにも材料がない、そもそもバージルには金銭面で負い目を作ってしまっている。 バージルそう言うとはおよそ半分ほど、二百エキューほど袋から取り出すと、 残りの金貨が入った袋をルイズにぽいと投げ渡した。 「残りはお前のものだ、好きに使え、ただし、俺はお前には一切金をやらん、その金で自分の面倒は見ろ」 なんともまぁ、ケチくさい発言である。無断で私財を使われた身としては当然だが……。 「これっぽっちでどうしろっていうのよ……」 「この機会に金の使い方でも学ぶんだな」 切なそうに呟くルイズにバージルはしれと言った。 今も昔も、情報を仕入れるなら酒場と相場が決まっている。 珍しいバージルの助言に従い、二人は居酒屋へと足を踏み入れた。 するとルイズはその一角に設えられた賭博場を見つけた。 そこでは酔っぱらった男や、いかがわしいなりの女たちがチップをとったり取られたりの戦いを繰り広げていた。 「何を考えている」 入るなり見入っているルイズにバージルがジト目で睨みつける 「え? あ、えっと、これで増やせるかな……って、そ、そりゃ私も博打はあまり好きじゃないわよ!? で、でもご奉公のためにお金は必要だし! ちょっとだけなら姫さまも許してくれるわ……きっと!」 呆れ果てているバージルをよそに、ルイズはおよそ五十エキュー分をチップへ換えると くるくる回る円盤がついたテーブルへと向かう。 円盤の円周には赤と黒に色分けされた三十七個のポケットに分かれ、それぞれに数字が振られている。 その円盤の中を小さな鉄球が回る。そして円盤の周りには目の色を変えた男女がそれを食い入るように見つめていた。 ルーレットである。 ルイズは、まずは運だめしと、勝っている客と同じように赤に十エキューほどのチップを慎重に張ってみた。 玉は赤のポケットに見事入り込んだ。 「ほら見なさい! 勝ったわ!」 「偶然だ」 気を大きくしたルイズは賭ける額を少しずつ大きくしていく。 どういうわけかそのいずれもが的中しあっという間に八十エキューほど所持金を増やしていた。 「任務遂行のお金が増えたわ! さっすがわたしね! どっかのケチな使い魔とは違うのよ!」 「勝手にしろ、どうなっても知らん」 調子に乗り始めたルイズにバージルは吐き捨てるように呟くと踵を返した。 「どこに行くのよ?」 「外だ、酒臭くてかなわん」 そう言って退出していったバージルの後ろ姿を見てルイズがほくそ笑む。 「ぷぷっ、あの悔しそうな顔! みてなさい、何倍にもしてやるわ!」 三十分後……。 ルイズはがっくりと肩を落とし、恨めしげに盤面を見つめた。 彼女がさっきおいたチップが、バンカーの手でごっそりと消えていった。 ブロンドの美少女はしばらくしっとりと肩を落としていたが、やおら昂然と顔をあげる。 「次は勝つ……絶対勝てるわ!」 バージルと一緒に運が去って行ってしまったのか。 さっきまでの勝ちが嘘のように負け続けているのだ。 今までの勝ち分どころか、チップにしていなかった残りの軍資金まですっていたのだった。 「おかしいわよええ絶対おかしいわ、赤黒二分の一なのに十五回も連続で負けたわ、 というわけで次は勝てる、じゃないとおかしいわ」 鳶色の目をギラギラと輝かせルイズが呟く、もはや止める者は誰もいない。 「赤黒で当てても所詮は二倍……だったら一発数字を当てればいいのよ! 配当は三十五倍、 今までの負けを取り返すどころかおつりがくるじゃない、なぁんだ、最初からこうすればよかった!」 一人狂ったようにまくし立てていたルイズが大きく頷く。 「次こそ必ずJACKPOT(大当たり)よ!」 シューターがホイールに球を放り込もうとしている。 ルイズは一度深呼吸をすると目を閉じる。 その時、ルイズの脳裏にいつかの夢で見た、赤いコートを羽織った銀髪の男の姿がよぎった。 「あいつの弟……! 見えた! 赤の3!」 ルイズがなぜか頭に浮かんだ数字に残りのチップをあまさずベットする。 そして回転するホイールと球を、これ以上ない真剣な目で睨みつける。 赤に入り、跳ねて、今度は黒、また跳ねる……。 そしてカラコロと音をたて運命の球はポケットに入った。 入ったのは……黒(ネロ)の4……。 その結果を見届けたルイズはわなわなと体を震わせると、勢いよく立ち上がり酒場の外へと飛び出していった。 「バージル!」 「終わったか、結果は聞かん、行くぞ」 酒場から飛び出してきたルイズに冷たい視線を送りながらバージルが背を向ける。 だがギャンブルの魔力に取りつかれたルイズはバージルの前に回り込み立ちはだかる。 「あに言ってるの、まだ終わってないわよ、あんたのお金が手つかずじゃない、次はかならず勝てるわ」 「……言ったはずだ、これは俺の金だ、お前にくれてやる金などない」 こうなることを予期していたのか、ルイズを要求を無視し冷たく言い放つ 「あのね? 使い魔のものは主人のもの、決まってるの、いいから渡しなさいッ!」 ルイズはそう言うと電光石火の早業でバージルの股間を蹴りあげようとした、 だが、バージルの股間目がけ放たれたルイズの蹴りは、彼の左手に握られた閻魔刀の鞘に打ち払われる。 向う脛をおもいっきり打ち抜かれたルイズはあまりの激痛に、目に涙を浮かべながら蹲り、向う脛をさすった。 「いったぁぁぁぁ~~~~~……!! んぎゃっ!!」 トドメの一撃、こめかみに返す鞘の一撃を叩き込まれたルイズはそのまま昏倒してしまう。 「Foolish girl...」 呆れた表情で見下しながらバージルが短く呟くと、 倒れ伏したルイズの襟首を掴み、その場から引きずりながら移動した。 ルイズは暮れゆく街の中央広場の片隅にぼんやりと未だ痛む頭をさすりながら座り込んでいた。 ごぉんごぉん、とサン・レミの聖堂が夕方六時の鐘をうつ。 お腹がすいて疲れていたが、どこにも行けない。 ルイズは先ほど仕立て屋で購入した地味な作りのワンピースを身につけていた。 足には粗末な木の靴、マントと杖は鞄の中だ。 恰好だけみるとどこかの田舎娘のようだったが、やたらと高貴な顔のつくりと桃色かかったブロンドのおかげで、 お芝居の中の貧乏っ子のようにちぐはぐな感じがした。 バージルはいつもの恰好だったが……季節が季節だ、ロングコートを肩にかけており、ノースリーブ姿である。 左手にはいつものように閻魔刀が握られており、背中にはちゃんとデルフリンガーも背負っていた。 ぼそりと、ルイズがやっとことの重大さに気づいたような口調で呟いた。 「ど、どうしよう」 「知らん」 「う~~……」 バージルの冷徹な一言にルイズが膝を抱えてうなる。 するとルイズはなにやら言いにくそうにバージルを上目遣いで見つめながら口を開いた。 「ね、ねぇ……バージル? あの――」 「断る」 本題切り出す前にバッサリ断られルイズがずるっと肩を落とした。 「ま、まだ何も言ってないじゃない!」 「他に何がある」 バージルはこれ以上ないほど冷たい目でルイズを見る。 「呆れはてて何も言えん」 バージルもまさか自分が去って三十分もしないうちにルイズが全財産を失うとは思っていなかったようだ。 「だ、だったらあの時なんで止めなかったのよ!」 「あの時俺が止めろと言ったとしてだ……お前はやめたか?」 「うっ……」 ルイズが言葉につまる、ルイズはあの時勝ち続けていたのだ。 それ故調子にも乗っていた、仮にバージルが何か言っても聞く耳さえ持たなかっただろう。 「それで? どうするつもりだ?」 「い、今考えてるの! だまってて!」 ルイズはそれだけ怒鳴るとむっとした表情で膝を抱え、その上に顎を乗せた。 今のルイズの所持金はゼロ、これではどうすることもできない、宿どころか、食事だってとることが出来ない。 姫さまに頭を下げてまたお金をもらうべきか……否、自分だけの裁量で秘密の任務をお授けになっているのだ、 公的資金は、大臣たちを通さないと使う事が出来ない、つまりあのお金は姫さまのポケットマネーだ。 そもそもそのお金を三十分ですってしまったなんてどの顔を下げて言えばいいのだろうか? いや、まだ半分残ってはいるが、それを持っているのは誰よりも恐ろしいこの悪魔だ……。 ルイズはそう考えながら再びバージルへと視線を向ける、 その視線に気が付いているのかいないのか、バージルはいつものように腕を組み目をつむっていた。 ルイズは意を決したように立ち上がる。 「バージル! あの……宿に泊まるつもりならその……、こ、このさい安宿でもいいわ! だからわたしも一緒に――」 「却下だ」 ルイズの必死の懇願も空しく、またもや言いきる前にバッサリ却下される。 「俺はお前に一切資金の援助はしない、貸すつもりもなければ借りるつもりもない……返済はしてもらうがな。 その金で自分の面倒は見ろ、最初にそう言ったはずだ」 「わ、わたしに野宿させる気なの!?」 「それしか手段がないのであれば、そうするしかあるまい」 絶望に打ちひしがれるルイズとは裏腹に、淡々とバージルが答える。 「信じられない! 貴族であるこのわたしに!? 野宿をしろですってぇ!?」 「この状況を招いたのはどこのどいつだ」 髪を振り乱し飛びかかるルイズをバージルは適当にいなす。 次第に体力が尽きたのかぐったりとルイズが地面に横たわった。 「おなかすいた……バージルぅ……せめてパンだけでも……」 消え入りそうな声でルイズが呟いた時、ちゃりーんと誰かが銅貨を投げた。 ルイズが憤った声で立ちあがる。 「だれ! 出てきなさいよ!」 すると人込みのなかから奇妙ななりの男が現れた。 「あら……物乞いかと思ったんだけれど……」 妙な女言葉だった。 「はぁ? あんたそこになおりなさい! わたしはねぇ! 恐れ多くも公爵家――むぎゃっ!?」 そこまで言おうとした時、バージルの掌がバチーンとルイズの口元に叩き込まれた。 「こーしゃくけ?」 「聞き違いだ」 口元を押さえながらジタバタと悶絶するルイズを尻目にバージルはしれといった。 身分を隠しての任務なのにいきなり正体をバラしかけた、これ以上目立ったらお話にならない。 男は興味深そうにルイズとバージルを見ている。 随分と派手な格好だ、黒髪をオイルでなでつけ、ぴかぴかに輝かせている、 大きく胸元の開いた紫のサテン地のシャツからもじゃもじゃとした胸毛をのぞかせている。 鼻の下と見事に割れた顎に、小粋な髭を生やしていた。 「なんかものすごく痛そうにしてるけど大丈夫なのその子? それはおいといて……、それじゃなんで地面に寝ていたの?」 「お金がなくなっちゃって……で、でも物乞いじゃないわ!」 男の問いにルイズがふらふらと立ち上がり、バージルを睨みつけながらきっぱりと答えた。 男が興味深そうにルイズの顔を見つめる。 「そう、ならうちにいらっしゃい。わたくしの名はスカロン。宿を営んでいるの、お部屋を提供するわ」 にこっと頬笑み男が言う、最高に気色悪い笑顔だったが、悪い人間ではないようだった。 「だそうだ、決めるのはお前だ」 バージルがルイズに視線を送る、するとスカロンは人差し指を立てると、再び口を開いた。 「でも条件が一つだけ、一階でお店を経営しているの、そのお店を、そこの娘さんが手伝う、これが条件。よろしくて?」 その条件にルイズは渋った顔をしたが、ここで断れば野宿決定、バージルは絶対に助けてくれないため、おとなしく頷いた。 「トレビアン」 スカロンは両手を組んで頬によせ、唇を細めてにんまりと笑った。 ――チャキリ……っと鯉口を切る音が聞こえたので、ルイズが即座に閻魔刀の柄頭を押え抜刀を防ぐ。 「じゃ、決まりね、ついていらっしゃい」 ルイズとバージルの水面下のせめぎ合いを知ってか知らずか、リズムをとるようにくいっくいっと腰を動かしながら男は歩きだした。 非常に乗り気がしないが……背に腹は代えられないとルイズは尚も抜刀しようとするバージルを必死に押さえながら男の後をついて行った。 「ルイズちゃん、じゃ、お仲間になる妖精さんたちにご挨拶して」 「ルルルル、ルイズです、よよ……よろしく、よろしくお願いしますです」 羞恥と怒りで顔を真っ赤にさせたルイズが、それでもひきつった笑顔を必死で浮かべながら一礼する。 ルイズたちがやってきたここ、『魅惑の妖精』亭は、一見ただの居酒屋だが、 かわいい女の子達がきわどい恰好で飲み物を運んでくるれるので、人気のお店であった。 スカロンはルイズの美貌と可憐に目をつけ、給士として連れてきたのである。 そんなわけで、ルイズもそのお店の売りであるきわどい格好をせねばならず……こうしている有様であった。 ただでさえプライドの高い貴族のルイズが、こんな格好をさせられ、 平民に頭を下げている時点でいつ暴れだしてもおかしくない状況なのだが……、 任務を果たさねばならないという強い責任感が、ルイズの怒りを抑えた。 先ほどのバージルの言葉のとおり、酒場は情報が集まる場所である、情報収集としてはうってつけだ。 これも任務、姫さまのため! と必死にルイズは自分に言い聞かせていた。 「さあ! 開店よ!」 店の隅の魔法人形たちの奏でる行進曲にスカロンは興奮した声でまくしたてる。 ばたん! と羽扉が開き、待ちかねた客たちがどっと店内になだれ込んできた。 開店と同時に給士の女の子達が忙しそうに走り回る、 そんな中、バージルは静かに店の一番奥にあるテーブルにつくと 必死に働こうとするルイズを見守るわけでもなく、腕と脚を組むとそれっきり目をつむってしまった。 さすがのバージルも"無償で"宿を提供されるとなると働かなくてはならない、 かと言って、彼が新入りの仕事の一つである皿洗いに素直に応じるかといったら……NOである。 バージルはスカロンに一泊分の代金を支払うと、客としてここに堂々と居座ったのだった。 特に注文をするわけでもなく……しばらくそうしていると、バージルの元に派手な恰好の女の子が現れた。 長い、ストレートの黒髪の持ち主の可愛らしい子である。 「ご注文をお伺いしま~す!」 「いらん」 居酒屋に来たらなにか頼むのが道理というものであろうに、 バージルは心底鬱陶しそうな表情を浮かべると、女の子に視線すら合わせず吐き捨てる。 「そんなこといわずにさぁ、なにか頼んじゃってよ、エール? それともワイン?」 だが女の子は両手を腰に当て、にっこりとほほ笑むと、バージルの座る向かいの席に腰かけた。 「あったしー、ジェシカ。あんた、新入りの子のお兄さんなんでしょ? 名前は確か……バージルだっけ?」 「……」 ジェシカと名乗った女の子は、両肘をテーブルにつき、人懐っこい笑顔を浮かべながらバージルの顔を覗き込む。 そしてきょろきょろとあたりを見回すと、小さな声でバージルに呟いた。 「ねえねえ、ルイズと兄妹ってウソでしょ?」 「当然だ」 バージルがあっさりと否定する。 店に向かう道すがら、スカロンに二人の関係を尋ねられた時、 ルイズは身分を隠すために、とっさにバージルを自分の兄と説明したのだ、 どうみても兄妹には見えない二人の容姿だったが、 スカロンはその辺のことにはあまりこだわらず、追及もしてこなかった。 ジェシカはあまりにあっさりとバージルが否定したので、少々拍子抜けしたような様子だったが、 すぐに気を取り直すと、あははと笑った。 「そりゃそうよね、髪の色、目の色、顔の形、ぜんっぜん違うわ」 ジェシカはそこで一旦言葉を切ると、再びバージルの目を覗き込む。 「そして纏う雰囲気も」 「……」 「あんた、血と硝煙の中をたった一人で生きてきた、そんな感じがする、あの子とはまるで正反対ね」 ずけずけと鋭く切り込んでくるジェシカをバージルが睨みつける。 「貴様はここの従業員だろう? 俺のことはいい、さっさと失せろ」 「いいじゃない、本当つれないわねぇ、これもお仕事のひとつよ、それにあたしは特別だからいいのよ」 ジェシカはそう言うと、いたずらっぽい笑みを浮かべる。 「スカロンの娘だもん」 その言葉には流石のバージルも少々驚いたのか、少しだけ目を見開くと、ジェシカとスカロンを交互に見比べた。 「ま、それは置いといてね、別にいいんだよ、ここにいる子はみんなワケありなんだから、 他人の過去を詮索する奴なんかいないから、安心して」 そこまで言うと、ジェシカはバージルから視線を外さずに、ずいっと体を近づけた。 「ねえねえ、でもあたしだけにこっそり教えて? 本当はどういう関係? 何を企んでるの?」 どうやらジェシカは好奇心の塊のようだ、わくわくとした表情でバージルを見つめている。 「一つ教えておいてやる、詮索屋は早死にする、好奇心の代償を命で払いたくあるまい」 うんざりした表情でバージルはジェシカの詮索を打ち切ると、席を立ち、二階の客室へと戻って行った。 「えーでは、お疲れ様!」 店が終わったのは空が白み始めた朝方であった。 ルイズはふらふらの姿で立っていた、眠くて疲れて死にそうだ、 慣れない仕事でグッダグダになっていた。 「みんな、一生懸命働いてくれたわね、今月は色をつけておいてあげたわ!」 歓声があがり、店で働く女の子やコック達にスカロンは給金を配り始めた。 どうやら今日は給金日のようだった。 「はい、ルイズちゃん」 わたしにももらえるの! とルイズの顔が一瞬輝いた。 しかし、そこに入っていたのは一枚の紙きれだった。 「なにこれ?」 ルイズが首をかしげて呟く、スカロンの顔から笑みが消えた。 「請求書よ、ルイズちゃん、何人のお客さんを怒らせたの?」 スカロンの言葉のとおり、ルイズの給士としてのの仕事っぷりはそれは目も当てられないほどひどかった。 お客にワインをぶっかけるわ、平手を浴びせるわでクレームの嵐だったのだ。 ルイズは大きくため息をはき、肩をがっくりと落とした。 「いいのよ! 初めは誰もが失敗するの! これからがんばって働いて返してね!」 終礼も終わりルイズが与えられた部屋に案内してもらうために、 スカロンの後をついてゆく、二階へと上がり、客室のドアが並んだ廊下を歩いていると、 その中のひとつのドアが開き、中からバージルが姿を現した。 「バージ……っ! ぐっ……お、お、おお兄……さま? いままでなにをしていたの?」 怒りを抑えながら思わず出しそうになった彼の名前を必死に呑み込み、絞り出すようにルイズがお兄さま、とバージルに尋ねる。 スカロンには一応ルイズの兄だと伝えているため、お兄さまと呼ぶことにしたのだった。 どこぞの雌竜の顔が浮かんでくるが、この際そんなことは言っていられない。 バージルはそんな『お兄さま』と呼んできたルイズを気味の悪いものを見るような目で一瞥すると、スカロンに話しかけた。 「スカロン」 「何かしら?」 「部屋は自由に使っていいんだったな?」 「えぇ、もちろん宿代は払ってもらうことになるけどね」 「そうか」 バージルは短く頷くと、何かを考える様に目をつむる、 今は手持ちがあるとはいえ、誰かのせいで全財産を失ってしまった今、もう一度金を稼ぐ必要がある。 立ち去る間際、働くルイズのことを見たが、あのザマだ、返済は一切期待はできないと考えていいだろう。 どうせ一ヶ月以上ここで足止めされてしまうのだ、今のうちに自力で稼げるだけ稼いでおくべきだ。 そう考えていたバージルは、スカロンと何やら交渉を始めた、 それを聞いていたスカロンは少々驚いた顔をしたが……やがて了承したのか「おもしろそうね」と快く頷いた。 「礼を言う、ではこの部屋を使わせてもらうとしよう」 話し終えたバージルは、小さく頷くと踵を返し、部屋の中へ戻って行く。 「ちょ、ちょっとまってよ! わたしもこの部屋じゃないの!? あんた……いえ、お兄さまがここならわたしも――」 蚊帳の外に置かれたルイズがバージルの後に続き、部屋の中に入ろうとした。 だがバージルはそこで止まると、廊下の奥の突きあたりを指差した。 「何を言っている、お前に与えられる部屋は向こうだ」 ルイズに与えられた部屋は、二階の廊下の突き当たりの梯子を使って上がる、屋根裏部屋であった。 埃っぽく薄暗い、どうみても人が暮らすための部屋ではなく、物置として使われているようだった。 壊れたタンスに椅子、酒瓶の入った木のケース、樽……雑多に物が積み上げられている。 粗末な木のベッドが一つ、置いてあった、ルイズが座ると、足が折れてズドンと傾いた。 「なによこれ!」 「随分快適そうなベッドだな」 一緒に入ってきたバージルが皮肉っぽく言いながら、蜘蛛の巣を払う。 「貴族のわたしをこんなとこに寝させる気!?」 「雨風をしのげるだけマシと思え」 怒鳴るルイズとは裏腹にバージルはそれだけ言うと、出入口である梯子に向かい歩きだした。 「ちょちょちょちょちょっと! まちなさいよ! なんで主人のわたしがこんな場所で! あんたがあんなにいい部屋なのよ!」 「無一文のお前とは違って俺は金を払っている、文句を言われる筋合いはない」 ルイズが必死になってバージルを引きとめる、こんなところで一人で寝なくちゃならないなんて冗談じゃない! 「あんたの部屋にわたしを泊めなさいよ! さっき中を少し見たけど、ベッド二つあったじゃない!」 「ベッドは二つとも片づける、あの部屋には必要ない、スペースがなくなる」 バージルのその言葉にルイズが首をかしげた。 「どういうこと? 片付けるって」 「改装だ、あのままではまともに使うことはできん」 「部屋を改装って……そう言えばさっき何か交渉していたみたいだけど、一体なにをしようとしているの?」 「この状況、俺にとっては少々不本意だが……、仕方あるまい、ここで通用するかはわからんが、 昔、少しの間だがやっていた稼業を再び始める、さっきの通り、スカロンの許可は取った」 「昔やっていた稼業? そういえばあんた、昔はなにをやっていたの?」 バージルが振り向き、ルイズの問いに短く答える。 「便利屋だ」 前ページ次ページ蒼い使い魔
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前ページ次ページ虚無と金の卵 「ではまず君達の無事と、そして成果について祝おう。 おめでとう、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ。 君らの勇気と深い洞察力によって、ここに土くれのフーケを捕らえることができた。 いや、実に素晴らしいことだと思わんかね」 「ええ。まさに叙勲ものの快挙と言えましょう」 オスマンの喜びの放電。 そしてコルベールの追従――満面の笑みで三人を誉めそやす。 キュルケ、タバサがスキルニルに騙されていたことに気付いて戻った頃には、本物のフーケが捕らえられていた。 フーケを捕らえるはずだった立場が逆だったことにキュルケは悔しがり、栄誉を受けることを固辞したが、結局は3人の手柄となった。 『予定は狂ったが、結局皆で行動したことには違いない。それに、一番の功労者はウフコック』 そうタバサが宥め、 『俺はあくまで君らに追従しただけで、杖を掲げた君らが栄誉を固辞するのはとても忍びない』 とウフコックが答えていた。 そして彼女らは三人で学院長室へ赴き、オスマン、コルベールに報告を済ませたところであった。 「うむ、その通りじゃ。ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストーにはシュバリエの申請をしておいた。 ミス・タバサは既に持っておるから、精霊勲章を申請しておいた」 三人の顔が輝く。 「本当ですか!?」 キュルケの喜びの声。 「いいのじゃ。君らはそれに値するだけのことをしたのじゃ」 「……あの、ウフコックには何も無いんでしょうか?」 遠慮がちなルイズの発言。弱ったようにオスマンは首を横に振って、すまんのう、と呟く。 「ルイズ、気にしないでくれ。こうして役立つことができただけで、十分に俺は嬉しい」 「すまないね……ただ、ウフコック君も含め、君らの名誉ある行動は誰もが覚えている。 それを忘れないでいてほしい」 コルベールが申し訳なさそうに言って、オールド・オスマンに向き直った。 「さて、次に被害について報告しようじゃありませんか」 「そ、そうじゃの……」 コルベールの表情は一転して仏頂面に。眼鏡と頭部が冷たく輝き、オスマンはつい目を逸らす。 「まず宝物庫からはスキルニルと眠りの鐘。 眠りの鐘は回収しました。ですがスキルニルは2体盗んでいたようで、1体はフーケが何処かへ隠したようです」 「ううむ、巧妙な盗人じゃの……」 「もちろん、これで終わりではありません。盗品の補填とは別に、破られた壁を修復し、さらなる固定化を図らねばなりません。 ……そして私の研究室が、フーケに荒らされたおかげで滅茶苦茶です。 『破壊の杖』こそ無事でしたが、幾つか貴重な研究資料や実験器具がフーケの錬金で土となって消えてしまいましたな」 「と、とても残念なことじゃったな……」 「ところでオールド・オスマン、差し支えなければ私だけではなく彼女らにも教えて頂きたいのですがね。 なぜロングビルを秘書にしたのでしょう?」 コルベールの舌鋒――オスマンに防ぐ術も無く。 「その……飲み屋で優しくしてくれたし……お尻触っても怒らんかったしのう……」 「で、その素性もろくに調べもしなかったと?」 「そうじゃ」 「魔法学院の長が?」 「そ、そうじゃ」 「……そうですか」 「……き、君だってミス・ロングビルに粉かけとったじゃないか!」 オスマンの反論――だがそもそも責任論になった時点で、総責任者たる学院長の分は悪い。 「生徒の前であまりすべき話ではありませんなぁ。雇ったのはオールド・オスマンご自身ですな?」 「そ、そうじゃとも……」 「さて、研究室ではかなりの備品・機材が使用不可能になりました……というより、研究室自体を新築せねばなりません。 補償して貰えるものと考えて宜しいですかな?」 「仕方あるまいて……はぁ」 結局のところ保障・補填はオスマンの懐へと傾く。がくりと肩を落とすオスマン。しかし、かぶりを振って皆に話しかけた。 「まあ面倒な話はここらで止めにしておこうかの……。 さて、今日はフリッグの舞踏会じゃ。この通り眠りの鐘も戻ってきたことじゃし、平常通り、執り行おう」 「忘れてた、そうでしたわ!」 キュルケの顔がぱっと明るくなる。 「君らこそ今宵の主役じゃ。存分に楽しんでくれたまえ。せいぜい着飾るのじゃぞ」 オスマンの笑みに頷き、キュルケ、タバサは退室しようとする。 だがルイズとウフコックはその場を動かなかった。 「ルイズ? どうしたの?」 「ちょっと先生に相談したいことがあるの。気にしないで先に行ってて」 と、ルイズはキュルケの問いに返す。 「あらそう。でも身支度する時間も考えなさいよー」 手をひらひらさせて、キュルケはタバサを伴って出て行った。 「何か儂に聞きたいことがあるのじゃな? コルベール君、すまんが席を外してくれんか?」 「私もですか? ……ええ、承知しました」 やや名残惜しそうに、コルベールも退室した。 扉が閉まるのを確認し、ウフコックは口を開く。 「相談したいこととは、この眠りの鐘についてだ。俺はこれを使い、フーケを眠らせることが出来た。 ……マジックアイテムとは、メイジでない限り使えないはずだと聞いている。 俺がこの道具を使える理由について、何かご存知ないだろうか?」 オスマンは話を聞きつつ、ぷかり、とパイプから煙をくゆらせる。 しばらく考え込んだ後、重々しい口を開く。 「……まず、君の額のルーンについて、説明する必要があるのう」 「この額の文字が?」 「それは、ミョズニトニルンの印。始祖ブリミルに仕えたとされる、伝説の使い魔の印じゃよ」 「伝説の使い魔……!?」 ルイズが驚きの声を上げる。 「ミョズニトニルンは、あらゆるマジックアイテムを操ったそうじゃ。眠りの鐘を使えたのも、そのためじゃろう」 「……この、眠りの鐘や、あるいはその人形など、魔法を動力にしている道具を俺にも使えるということか」 「そうじゃ」 「……全く実感がわかない。伝説と言われてもな……。そもそも、なぜ俺にミョズニトニルンの印が刻まれたのだろう?」 「それは儂にもわからん。じゃが、古い文献に載っているミョズニトニルンと君は、同じ能力を持っていることは確かじゃ。 逆にこちらから聞かせて貰いたいのだが……君の変身は、一体どういう能力なんじゃね? それもミョズニトニルンの能力なのかもしれんが、儂には見たことも聞いたこともない」 「オールド・オスマン。それを答えるのは義務でしょうか……?」 遠慮がちにルイズは問いかける。引け目を感じているために、ルイズらしからぬか細い声だった。 「いいや。あくまで君らにお願いしているだけじゃ。ただ……儂にはこの学院を守るという使命がある。 そのためには、ウフコック君のような強い力を持っている者のことは知っておかねばならん。それを理解して貰えんだろうか」 心配げにルイズはウフコックを見た。ウフコックは、こくり、と頷く。 「今、君らが見ている俺の姿、それは俺の一部分にしか過ぎない。 理解し難いと思うんだが……俺の体は、ここではない別の空間と繋がっている」 「……ほう」 「俺の反転変身、ターンとは、その別の空間に溜め込んだ物質を元に、道具を作り出す行為だ。 そして、あらゆる道具を作り出す、万能道具存在として開発されたのがこの俺だ」 信じがたいものを見るかのように、オスマンは驚愕の目でウフコックを見つめる。 だが、ウフコックの言葉に嘘の色は全く無い。そしてそれを裏付ける変身能力――オスマンは溜息をつく。 「……まさに想像を絶するのう……。一体、君は何処から召喚されたんじゃ?」 「マルドゥック市、という場所を聞いたことは?」 「全く無い」 「俺も、実を言えばトリステインもハルケギニアも、聞いたことが無かった。恐らく、全く別の世界なのだろう」 「君の世界では、君のような存在がありふれておるのか?」 「いいや、そんなことはない。俺を作り出すためには、数多くの研究者と国家規模の予算が必要だった。 それでも、本当に俺が生まれるかどうか怪しかったらしい」 「ふむ、オンリーワンというわけか」 「こう見えても、<金の卵>などと呼ばれていた」 あまりの話の内容に、驚きの感情を隠さぬオスマン。ふう、と溜息をつき、背もたれに体重をかける。 「道具として作り出された……ということは、自分の意思ではなく、他人の望むものを作り出させる、ということはできるのかね?」 「可能だ。……まあしかし、この国、この世界にそれを実行できる人間など居ないだろう。 俺への変身命令を伝達する特殊な皮膚を移植した人間か、あるいは俺を作り出した研究室に匹敵する施設が無ければ不可能だ」 「特殊な皮膚を移植するなど聞いたことも無いし、君を作り出せる研究室など見たことも無い。 というより……魔法を伴わない研究室など存在しないから、まずもって有り得んじゃろうな」 ぷかり、とオスマンは自分を落ち着かせるようにパイプを吹かせ、また口から外す。 姿勢を直し、ルイズとウフコックを真剣な目で見つめた。 「で、その上で君に頼みたい。反転変身はできるだけ使わぬよう頼みたい」 「……まあ、もっともな話だろう」 ウフコックは、反論もせずに頷く。 オスマンは、ややほっとしたように話を続けた。 「顔や姿を変えるだけならば、ハルケギニアに存在する者にも可能じゃ。 だが、あらゆる機能を持った道具に――というのならば別じゃ。変化の魔法とは、所詮見かけを変えるだけに過ぎん。 その中身、構造や機能を再現するなど、想像の埒外じゃ」 わかるじゃろう? とオスマンは視線を投げる。ルイズもウフコックも、頷く。 「しかもその道具が、この国のメイジがどれだけ力を合わせたところで勝てぬほど精巧なのじゃ。 もし欲深い人間が君に目を付けたならば……これは恐ろしいことになりかねぬ」 「一つ、質問があります」 「なんじゃね? ミス・ヴァリエール」 「オールド・オスマンは、ウフコックのことを、王室に報告なさいますか?」 「……信じてもらう他はないが、儂は胸の内に秘めておくつもりじゃよ。もしこれを知った教師がいたら、その者にも厳重に口止めするつもりじゃ。 それに、その眼で見ないことには、ウフコック君の存在を信じる者など居らんよ」 ルイズの緊張が弛緩する――もし報告するとなれば、ウフコックの身柄が危うくなるなど簡単に過ぎる想像だった。 そしてそうでなくとも、学院長に対して挑戦的な物言いをしていたのだ。 「……ルイズ、ありがとう」 「ば、馬鹿ね、何行ってるのよこんなときに……!」 ルイズは咳払いし、オスマンに向き直った。 「お話は十分に理解しました」 「うむ」 「ですが、もしウフコックに危機が迫るようであれば、どうしても変身に頼らざるをえないときはあると思います……」 「まあ命には代えられん。死んでもその命令を守れ、とまでも言わんよ。 それと、服や飾り、日用品など無難なものに変身する分には良かろう。 むしろ、そうしてただの変化の魔法だと周囲に思わせた方が良いだろう。 ……対外的には『エコー』と名乗ったほうが良いかもしれんな。ああ、変化が可能な幻獣のことじゃ。 稀有ではあるが居ても不思議ではない」 「エコー、そういうものがあるのか」 「……ただ、我々の世界にはありえぬような道具に変身し、それを利用するのは、できるだけ避けてほしい。 それと……君がミョズニトニルンだということも、重ねて秘密にしておこう」 真剣に悩むオスマンに、ウフコックは慎重に頷く。 「了解した。俺も、俺の世界の武器や道具などには変身しないよう気をつけよう。ミョズニトニルンというのも、黙っていよう。 ルイズは構わないか?」 「ええ。……話が大きすぎて、正直怖くて他言なんてできないわ」 と、溜息まじりにルイズは言葉を漏らす。 「それさえ守ってくれれば、今まで通り、ウフコック君はミス・ヴァリエールの使い魔として居てほしい。 正直、君らにとって秘密が重荷であることは承知しているのじゃ。すまないのう……。 何か困ったことがあれば何でも申し出なさい」 オスマンは、労わるように言葉をかけ、ルイズ達は頷いた。 「さて、堅い話はここまでとしよう。舞踏会に遅れぬようにな。楽しんできたまえ」 「はい!」 ルイズはオスマンとの話を終えて寮の自室に戻った途端、疲れた溜息を付く。 「あー、もう緊張したわ」 「……そうだな」 ウフコックは物憂げに反応し、のそのそと自分のベッド代わりの箱に寝そべった。 「なによウフコック。そんなにミョズニトニルンっていうのが驚いたの? それとも、ターンを控えろって話?」 「いや……。俺がミョズニトニルンというのはそれほど衝撃というわけでも無いんだ。もともと大概の道具には化けられるのだから、 マジックアイテムを操れるようになったとしても、まあ機能が一つ加わったくらいの気持ちなんだ。 それに、俺が反転変身する道具には元々法律などで制限がかけられていたし、オスマンの申し出も大体予想がついていた」 「貴方、よくわからないところで呆れるほど自信家よね……。私がミョズニトニルンを召喚しただなんてバレたら、 学院の皆が上へ下への大騒ぎよ。本当、悩みどころなんだから」 呆れるようにルイズは言った。 「そ、そうだろうか」 「まあ、貴方が凄いなんて初めからわかってたことだけどね」 言い捨てるように相手を褒める。ルイズなりの照れ方。 「君に認めて貰えるならば何より光栄だとも。だが……」 ウフコックは言葉を切る。やや躊躇うような口ぶりだった。 「今日は、あれだけ大口を叩いておいて君を危機に陥れてしまった……。正直肝を冷やした。 メイジといえど同じ人間と、俺は油断してしまっていたんだ。一歩間違えれば、俺達はお終いだった。そうだろう?」 「なによ今更。そりゃ確かに危険だったし、私だって……怖かったわ」 ルイズの声に怯えが混じる。綱渡りもいいところだったと、今更ながらルイズは恐怖を感じていた。 だが己の怯えを抑え、決然と話す。 「でも! それでも、誰かがやらなきゃいけないことをやった。そのために冒した危険だって、私たちがやらなきゃ誰かが肩代わりしてたのよ」 「だが、君である必要性は無い。そうだとしても?」 「……そうかもしれない。でも、あの場は私達しかいなかったわ。私は、自分にしかできない、って思ったら、居ても立ってもいられないの。 負けず嫌いとか、馬鹿にされるのが嫌いとか、確かに、そういうところもあるわ。 でもそれ以上に、何もしない、何も出来ないまま貴族として腐っていくのは……たまらなく嫌なの」 「そうか……」 しばらく、迷うようにウフコックは中を見つめる。 「だが、ルイズ、そのために犠牲になるものもある」 ウフコックは話しながら、自分のベッドから身を起こして腰掛ける。 「確かに、君の今日の行いは、誰もが認める正当なものだ。しかし行動には常に対価が求められる。 例えば、君自身の安全、俺やキュルケ達の安全なんかがそうだ。 あるいは、もしかしたらフーケが居るために、助かっていた人が居たかもしれない。 きっと今の時点で何かを犠牲にしているし、一歩間違えていれば、すべてが犠牲となっている」 やや一言置いて、ウフコックはルイズを見つめる。 「それでも、名誉を求める? 今日のように、君が危機にさらされたり、あるいは誰かを傷付けたりすることがあっても?」 偽りのできない問いかけ。ルイズは、悲しげに頷く。 「……うん。私は、名誉がほしい」 名誉――常にその一言で済ませてきたものであり、それこそが今の自分を模る欲望。 自分のあり方と表裏一体の、もはや人生と柱と言うべき何か。 薄々気付いていたその存在を、ルイズは直視した。 その正体は、言葉の響きとは裏腹に、決して清らかなものではない。 それは、ルイズにとって血肉であり、痛みを伴うほどに実体を持つものであった。 「両親から、姉から、常に貴族たるべし、って教えられて今までずっと生きてきたわ。 魔法が使えない私には貴族たる能力が欠けてる。それでも……いえ、だからこそ、公爵家に生まれた私は、 ただ安穏と生きるなんて許されないと思ってる。だから、名誉を取らずに生きる私は、きっと私じゃなくなるの。 それこそが私の欲で、目標で……それ以外の生き方は、少なくとも今は考えられない。 だから、何か犠牲や危険を冒すことが必要なら、きっと躊躇しない」 己の偽らない答えを思い、ルイズは瞳を伏せた。 「……でも、こうして名誉にこだわることが、私の卑しさや残酷さなんだわ。 貴方が居なかったら、きっと、もっとたくさんのものを犠牲にしているだろうし、周りの犠牲の存在すら気付かなかったと思う」 「誰しも、そうしたものを心の中に持っている。恥じることではない。……だが、君はそれが人一倍強い。 俺は……君の気高さが、君の大切な何かや、君自身を供物としてしまわないか、心配なんだ」 ウフコックはベッドから降り、ルイズの手の元へ赴く。 慰めるように、ルイズの細い指をそっと握った。 小さすぎるウフコックの手――大切なものが何かを気付かせてくれる微かな温かみを、ルイズは感じている。 「……うん、そうね。確かに、大事なことを犠牲にするのもイヤよ。覚悟しないといけないときは、今後あるかもしれない。 それでも、貴方も私も傷付いたり傷付けさせたり、死なせたりしない。救えるなら何だって救ってみせるわ」 「ルイズ……。君は我侭だな」 「実はそうだったのよ」 くすり、と一人と一匹は笑った。 「それとね」 ルイズは次の言葉を出すのに、苦労していた。口に出すことが少し怖い、と思っていた。 だが、ウフコックが優しく促す。 「ルイズ、遠慮することはない。君の思っていることは出来る限り受け止めたいんだ」 「うん……オールド・オスマンに言われたってのもあるけど、貴方の力に頼り過ぎるのは、止めておきたいの」 「ふむ……理由を聞こうか」 「その、貴方を武器として使って……凄く驚いたわ。今でも、あの土の腕を砕いた感触が手に残ってる。 貴方が居れば、きっと何だってできるんだ、って思った」 ルイズは、自分の手を見つめながら言った。ウフコックは黙って耳を傾ける。 「でもだからこそ怖いわ。自分で成し遂げたことなんだ、って錯覚しそうで。……貴方の力に頼るのは、慎重にならなきゃ駄目だって思ったの」 「……それに、気付けてくれたか」 感嘆したようにウフコックの呟く。 「それに、オールド・オスマンが言ったみたいに、欲に目が眩んで貴方を奪おうとする人だって出てくるかもしれないわ。 そんな人に貴方が狙われるなんてゴメンよ。貴方もそうでしょう?」 「そうだな。ぞっとする話だ」 「だから、私が何かしなければならないとき、貴方抜きで私がどこまで出来るか見守ってほしいの」 ルイズにしては珍しく、弱気な口調でウフコックに願い出た。凛とした口調で、ウフコックは応える。 「わかった。君の言う通り、俺は見守らせてもらう。危なければ口は出す。手出しは控えるが、ここぞというときは遠慮などしない。 それでも……君の可能性を見届けよう」 「ふふ、じゃあ改めて宜しくね。私の使い魔」 「マイ・プレジャー(御意に)」 執事のように大仰に頭を下げるウフコック。 その姿を見て、<金の卵>というあだ名の由来にルイズは思いを馳せた。 きっと、ウフコックの世界の人間は、このウフコックこそがあらゆる可能性を秘めているから、そう呼ぶのだろう。 だが、違う、とルイズは思う。この小さな鼠は、自分自身ではなく、自分を使う人間の可能性を見つめている。 この鼠のすべてを曝け出す嗅覚の前に、自分の魂を自覚しないものは居ない。 虚飾を剥ぎ取った先に残る可能性、それこそがきっと<金の卵>なのだ。 自分の場合、それが一体何であるのか、ルイズはその欠片を見出しつつあった。 そして、隣の小さな使い魔と共に、その欠片から確固たるものを形作っていきたい。ルイズはそう願った。 ウフコックは、優しい眼差しでルイズを見つめてる。 口に出さずとも、思いは伝わっているはずであった。 「でさ、ウフコック。……普通にこの世界にあるものに変身する分には構わない、ってオールド・オスマンは言ってたわよね?」 「ん? そうだが……」 「変身してもらいたいものがあるのよ」 舞踏会場に改装されたアルヴィーズ食堂の上階。 その壮麗な扉が開かれ、ルイズは大仰な呼び出しに答えて中へと足を踏み入れる。 小ぶりで整った顔立ち。宝石をあしらったバレッタに纏められた、桃色の流れるような髪。 高貴さを決して損なわない、意外とスタイリッシュな体。それを包む純白のパーティドレス。 男性陣は意外な人間の艶姿に、息を呑んで見つめている。 「あら、ルイズ。……凄く良いドレス着てるじゃないの」 先に会場に入っていたキュルケとタバサが近づいてきた。 三人の活躍はすでに多くの人間に知れ渡っており、自然と会場の中央に輪ができ始めていた。 「あら、これがトリステインのモードよ。知らなかった?」 と、自慢げにルイズは話す。男性陣の賛辞がこれ見よがしに聞こえてくる――絶好調。 だがキュルケとタバサが訝しむように見つめる。 「……っていうか、何か朝と明らかにスタイルが……。あっ」 「なるほど……」 キュルケの微笑み/タバサの鋭い視線/間違いなく気付かれている。 「ウフコック、ピスタチオでも食べる?」 「なななな、何言ってるのかしら!?」 「……間違いなく、サイズが大きくなってる」 「考えたものねぇ。……あとで、そのドレスの作り、教えてもらえるかしら?」 よせて/よせて/上げて。 タバサの視線から逃げるように、ルイズは手で胸を隠した。 このメイド・バイ・ウフコックのドレス。胸の部分だけでなく縫製も実に丁寧な仕上がりで、女性陣すら溜息のでる出来栄え。 「な、何よ、悪いっ!? だいたい、使い魔を締め出して楽しむケチな舞踏会が悪いのよ!」 「悪いなんて言ってないわよー?」 「いいえ……とてもズルい」 ギラついた視線でタバサは睨んでいる。 「……いや、まあ、気付かれるだろうとは思っていたが」 渋みのある男の囁きが聞こえる/声の発生源――ルイズの着ているドレスの胸部。 「あはははっ。ま、ウフコック共々、楽しみなさいな。貴方達が主役なんだからね」 キュルケが楽しげに呟き、男達ととっかえひっかえ、躍りに興じる。 タバサは時折ルイズの方に鋭い視線を投げつつ、食事と格闘していた。 ルイズ達は夜が更けても、歓楽に身を委ね、躍り、遊び倒した。 とても長い一日――ルイズが使い魔と共に困難に立ち向かった日が、終わり行く。 やがてやってくる明日を、黄金の可能性に満ちた明日を迎える。 今日と同じように、小さな使い魔の手を取りながら。 第一章 使い魔は金の卵――了 前ページ次ページ虚無と金の卵
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前ページ次ページゼロのチェリーな使い魔 その日の夜、ルイズの部屋にて ルイズによってトリステインへ召還されたフリオニールはとりあえずトリステインから フィンへの道順を把握しておこうと地図を借りて調べていた。 しかし その地図は普段フリオニールが見慣れているものと全く違うばかりか、記載されている 文字も見たことがないものだった。 (そ、そんなバカな。ひょっとして俺は異世界へ来てしまったのか?) そんなことは認めたくないとばかりにかぶりを振り、視線をゆっくりとルイズへ向けて 「ねぇ。この国では独自の文字を使ってるんだね」 「は?文字なんてハルケギニア共通でしょ。…っていうかあんた、ご主人様には ちゃんと敬語を使いなさい」 「はぁ」 フリオニールは得心がいかないように生返事をした。人を勝手に召還して召使いに するなんてこの国の貴族は何を考えているのか?パラメキア皇帝顔負けだ。 しかし、そのことよりも仲間のもとへ戻ることが予想以上に困難になっていることに フリオニールは焦り始めていた。 どうしたものかと思案にくれて、ふと窓に目線をやると外には人知を超えた風景があった。 「つ、つつつ月がふたつ!?…ありえん」 夜空に浮かぶ二つの月がフリオニールを異世界へ飛ばしたことを雄弁に証明した。 (俺はいろんなことを知りすぎた…もう昔には帰れない) 落胆の表情がありありと浮かぶフリオニール。それでも諦めずに 「ルイズ!…さん。召還された使い魔って元の世界に戻れるの?…ですか?」 「元の世界?元もなにも普通はハルケギニアに生息するモンスターを召還するものだけど、 …あんた確かフィン王国出身って言ってたわね」 「そうですけど…」 「そんな国聞いたことないし、東方にでもあるんじゃない?知らないけど」 「いや、そうじゃなくて、たぶん俺は異世界から…」 「もういいでしょ。とりあえず、明日からあんたには掃除洗濯とか雑用をやってもらうわ。 平民じゃ秘薬探しなんてできないでしょうし」 ルイズは一方的にフリオニールに告げると、目の前で着替え始め着衣を乱暴な手つきで渡した。 「明日ちゃんと洗濯しておきなさいよ。わたしはもう寝るわ。今日はいろいろあったから疲れちゃった」 「いろいろあったのは俺も同じなんですけど…ところで、俺の寝床は?」 フリオニールは部屋を見渡しながらルイズに質問した。 すると、ルイズは無言で床に敷かれている粗末な毛布を指差した。 (お、王女。そ、そんな…) フリオニールは半ばパニックに陥ったが、なんとか平静を保つと渋々寝床につくのであった。 翌朝 フリオニールは目を覚ますと身支度を整え、主人(?)であるルイズを起こそうと ベッドに近づき声をかけた。 「ルイズさん。朝ですよ」 ルイズは寝起きが悪いのか中々起きようとしない。 (ああ、『バスナ』の魔法憶えておけばよかった) フリオニールは後悔したが、気を取り直してルイズの肩を軽くゆすりながら再度声をかけた。 「う~ん…」 ようやく目を覚ましたルイズはフリオニールに制服を持ってくるように命じた。 フリオニールはあたふたと部屋の中を駆け回りやっと制服を見つけるとルイズの元へ持ってきた。 「着替えを手伝いなさい」 「へ?」 「聞こえなかったの?着替えを手伝いなさいって言ったの!」 「…まさか、ラミアクィーン!?」 「???寝ぼけてるの?まったく、愚図なんだから」 ああ何という果報者であろうか。昨日のキスから今度は一気に着替えの手伝いだ。 ひょっとして自分に気があるのではないか?と、桃色の綺麗な髪を携えネグリジェ姿で 立っているルイズをチラ見して思うフリオニール。 「ゴクッ」 フルオニールは股間が元気になりそうなのを懸命に抑えると、生唾を飲み込みルイズの 着替えに取り掛かる。 「いいんですか?男子の俺が女子の着替えを…」 「あんたはわたしの使い魔なんだからそんなの関係ないの!ほら、さっさとしなさい」 「そういうことか」 フリオニールの男子としての自信は音をたてて崩れるのであった。 前ページ次ページゼロのチェリーな使い魔
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autolink ZM/W03-101 ZM/W03-101P カード名:鳶色の瞳のルイズ カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:3000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 「感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生無いんだから」 レアリティ:PR Illus.:J.C.STAFF 2008年4月5日開催東京トレカショーにてブシロード物販ブースで2000円以上購入時に配布 2008年3月30~31日「東京国際アニメフェア2008」配布 全国決勝大会参加者に配布されたPRカード10枚セットのうちの一枚 「ルイズ」?かつ黄色のバニラ。 《魔法》?に加えて《虚無》?を持つため一部サポートを受けたり虚無の力等の発動条件を満たすことができる。 ・関連ページ 「ルイズ」? ・類似カード カード名 レベル/コスト パワー/ソウル 色 はりまお 0/0 3000/1 黄 ディーラーの音姫 0/0 3000/1 黄 ソフト部三人組 0/0 3000/1 黄 黄昏の街を見下ろす鈴と小毬 0/0 3000/1 黄 無口なタバサ 0/0 3000/1 黄 フェイト&アルフ 0/0 3000/1 黄 幼少時のみゆき 0/0 3000/1 黄 にゃもー 0/0 3000/1 黄 “ねがいぼし”小毬 0/0 3000/1 黄 玲二の妹 江漣 0/0 3000/1 黄 日差しの中の渚 0/0 3000/1 黄 花畑の少女たち 0/0 3000/1 黄 アリッサ&深優 0/0 3000/1 黄 ベベ 0/0 3000/1 黄 マオ&ラズベリル 0/0 3000/1 黄 湯上りセイバー 0/0 3000/1 黄 トウマ&シリル 0/0 3000/1 黄 そっけないシリル 0/0 3000/1 黄 八神 庵 0/0 3000/1 黄 “破邪清真”森 蘭丸 0/0 3000/1 黄 双子の猛獣 亜美&真美 0/0 3000/1 黄 共感覚者カナン 0/0 3000/1 黄
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鋼の使い魔支援!第二部も楽しみにしてます。あとジェシカは俺の嫁 -- 歓楽街のていおー (2009-06-14 17 54 47) うめえ -- 名無しさん (2009-06-14 17 55 17) うめええええええ!!!こういうの大好きだ!…シエスタ? -- 名無しさん (2009-06-14 17 55 43) GJ! -- 名無しさん (2009-06-14 17 57 26) 賑やかで、楽しそう! -- 名無しさん (2009-06-14 18 00 40) すごくいい絵だわ -- 名無しさん (2009-06-14 18 20 59) 楽しそうな雰囲気がとてもよく出ていて素敵な一枚 ジェシカとキュルケが特に良い!! -- 名無しさん (2009-06-14 18 48 24) シエスタさんにはナイツの血が・・・・後はわかるな?>シエスタ? -- 名無しさん (2009-06-14 19 05 54) これはお美事!素晴らしい支援絵に心が震えました! -- アーシア (2009-06-14 19 33 25) こういう絵、良いな。何か見ている方も嬉しくなっちまうわい。 -- 名無しさん (2009-06-14 20 05 33) すげぇ、すげぇよあんた! -- 名無しさん (2009-06-14 20 38 17) こういうのいいなぁ -- 名無しさん (2009-06-14 21 10 40) ゴージャスな絵だね、力作だー -- 名無しさん (2009-06-14 21 49 48) キュルケがいいなあ、このキュルケは個人的に最高だ -- 名無しさん (2009-06-14 22 21 03) うまい!…が……10周年か。そりゃ歳喰うワケだ…… -- 名無しさん (2009-06-15 01 03 30) でけえ!うめえ!GJ! -- 名無しさん (2009-06-15 02 00 24) イラスト的にいい感じが出ている気がします。……ところで、シエスタと思われる金髪の女性は誰ですか? -- 騎士S・F (2009-06-15 13 26 10) なんだろ、ルイズとギュスターヴが親子に見える・・・ -- 名無しさん (2009-06-15 18 45 36) ルイズがさりげなく腕を組んでるんだな -- 名無しさん (2009-06-16 12 21 37) 携帯だからか見れない。話にまったくついてけねぇ。 -- 名無しさん (2009-06-16 19 58 03) これは素晴らしい…… -- 名無しさん (2009-06-16 22 47 12) すごく生き生きしていて素敵だ。第二部のルイズ本格始動が今から楽しみです。 -- 名無しさん (2009-06-16 23 54 18) すばらしい!そして10年も前になるのか……サガフロ2が発売されて。歳をとるわけだ。 -- 名無しさん (2009-06-18 00 05 06) 出来ればギュスにホの字のエレオノールも入れて欲しかった!!w -- 名無しさん (2009-06-19 12 34 19) キュルケがなんかお母さんぽいw -- 名無しさん (2009-07-06 22 23 39) 油彩画を見てるようだな。おれは百年かかってもこんなすごいのは描けん。 -- 名無しさん (2010-10-13 17 34 45) 暖かくていいなぁ -- 名無しさん (2010-11-07 10 47 52) 今更、サントラ買った… -- 名無しさん (2011-10-28 00 04 16) 名前 コメント
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「げっ!!マジでか」 ルイズの部屋から空に浮かぶ2つの月を見て銀時は自分が異世界に来た事を自覚した。 ―なんちゃって幕末SFものから今度は異世界ファンタジーものですか。 ―どういうてこ入れですかこれは。 銀時は混乱お余り余計なことを考えていた。 ―そういや昔ジャンプで似たような展開の話があったな、結局打ち切られたけど。 ―もしかしてこれって打ち切りの前フリか。 タ○ヤのことはもうそっとしといてやれよ。 銀時は混乱のあまり変な電波を受信した。 「つまりあんたは異世界のエドって所から来たって言うのね」 「ああ、そういうことだ」 「信じられないわ」 「俺だって信じられねえよ、俺がいたところは月は1つしかなかったの。 こっちには2つありやがる、金玉ですか、このやろー」 「なっ、あんたなんて下品なの!!」 ルイズは顔を真っ赤して叫ぶ。 基本的にウブなルイズには銀時の下ネタは刺激が強すぎた。 ただ銀時の周りにはほとんどそういうのを気にしない女性に囲まれていたため 基本的に銀時にデリカシーと言う言葉は存在しない。 女性の中には変態そのものもいるのだからいたし方あるまい。 銀時が聞いた話ではここはハルケギニアのトリステイン魔法学院と言う全寮制の魔法を 教える学校だと言う。 この世界の王侯貴族はメイジとよばれ、魔法が使える、使えない者は平民と呼ばれている。 そして自分はその使い魔召喚の魔法で呼び出されたと言う。 いくら天人達によってオーバーテクノロジーがもたらされたとはいえ、銀時にとって 魔法などアニメや映画の世界の話でしかない。 「まじでハ○ーポッターなのかよ」 銀時はうんざりした。 今まで厄介なことにはたびたび巻き込まれていたが、今回は最大級である。 「何だってこんなピンクのガキに・・」 「ガキって、私は16歳なのよ」 「マジでか!?新八と同い年かよ、下手したら神楽より年下かと思ったわ」 「何だかわかないけど、むかつくわね、それにガキじゃないわよ 私にはルイズって名前があるんだからね」 「ああ、世界的有名な配管工の目立たねえ緑の弟のほうか」 「誰がルイー○よ!!」 なぜルイズがルイー○を知ってるのかは突っ込んでほしくない コンプレックスの塊と言う点ではあってるかもしれない。 「はあ、あんたとしゃべってると疲れるわね」 ルイズはぐったりしている。 「それより俺を元に戻す方法はねえのか」 「無いわね」 「即答かよ」 銀時は頭を抱えたがこの状況を打破する方法が思いつかない。 「わかったよ、お前の使い魔とやらになってやるよ」 「口の利き方がなっていないわね、使い魔になるんだから 私のことはご主人様って言いなさい」 「いや、俺そういうプレイには興味ないから」 「プレイって何よぁぁ!!」 「そんなにご主人様って言われたければメイド喫茶にでもいけよ」 「何言ってんのよ、あんたはぁぁ!!」 突っ込み疲れてルイズは息を切らす。 「おいおいこれぐらいの突っ込みで息切れか、新八だったらもっといけるぜ」 「とにかく私の使い魔になったんだからそれなりには役に立ってもらうわよ」 「つーか使い魔って何すんの?」 銀時は当然の疑問を呈する。 「まずは使い魔は主人の目となり耳となる能力が与えられるの」 「どういうことですか?」 「使い魔が見たものは主人が見ることができるのよ」 「へ~」 銀時は興味なさげに相槌を打つ。 「でもあんたには無理みたいね、私何にも見えないもん!」 「そうみてえだな」 銀時は耳をほじりながら聞いていた。 その態度にルイズはどうにか怒りをこらえながら説明を続ける。 「それから、使い魔は主人の望む物を持ってくるのよ、たとえば秘薬とか」 「秘薬?」 「特定の魔法に使う触媒よ、硫黄とか、コケとか・・・」 「ああ、無理無理無理、俺そういうのわかんないから」 手を横にブンブン振りながら答える銀時。 そのやる気の無い態度にルイズのイライラが募る。 銀時は常時こんな感じではあるのだがそんなことはルイズは知らない。 ―なんでこんなのが私の使い魔なのよ。 「そして、これが一番なんだけど・・、使い魔は主人を守る存在であるのよ。 その力で主人を敵から守る、でもあんたじゃ無理っぽそうね」 「んなこたぁねえよ・・」 このとき初めて銀時からしゃべり始めた。 「目の前にいるお前ぐらいなら俺が守ってやらぁ、こいつでよ」 腰にぶら下げていた『洞爺湖』と彫られた木刀を掲げる。 心なしか目にも生気が戻っている。 普段とのギャップにルイズは少しドキッとするが。 「とっ、とにかくあんたにはできそうなことやってもうらから、洗濯、掃除、その他雑用」 「ちっ、しょうがねえな」 銀時は頭の掻きながらいつもの調子に戻る。 ―ん、ちょっと待て、使い魔になったてことは俺定春やエリザベスと同じポジション。 ―おいおいまじかよ、勘弁してくれよ。 人間としてぎりぎり底辺にいた銀時だったがついに獣以下まで堕ちたのである。 「うぉぉぉい!!お前後で体育館裏に来いやぁぁ!!」 地の文に突っ込むな、痛い奴だと思われるだろうがぁぁぁ!! 「ああ大丈夫だよ、クロスオーバーの二次創作なんて書いてる時点で十分痛いから」 フォローになってねえぇんだよ!!って言うかここのスレの全住民を敵に回すようなことを言うじゃねぇぇ!! 皆さん嘘ですからね、なんて言うかすいません。 「あんたさっきから誰に向って言ってるの・・」 「あ、そういうかわいそうなものを見る目で俺を見るのやめてくれる。 銀さん結構繊細だよ、ガラスのハートだよ、壊れかけのレディオだよ」 「あんたとしゃべると疲れるから、もう寝るわ」 ルイズは心底疲れたようにベッドのほうに向う。 「俺の寝る場所は?」 「あんたは床よ」 そう言ってルイズは床を指差した。 「お前はあれか、どっかのアニメの契約したら王の力を与えてくれる女みたいに 『童貞男は床で寝ろ』っていうタイプか、俺は童貞じゃねえぞ!!」 「何に対して切れてんのよ!!わけわかんない」 ルイズはうんざりしながら服を脱ぎ始める。 「うぉおおい!!お前!!」 ルイズが服を脱いで下着姿になるのを見て銀時はあからさまに動揺する。 「何よ・・」 ルイズはもしこの使い魔が自分の裸を見て動揺してるのならいい気味だと思った。 自分が使い魔であることを自覚させて主導権を握ろうとした。 「いや、分かるよ、銀さん良い男だから惚れちゃうのも分かる」 「はっ?」 銀時がわけわかんないことを言い出したのにルイズは声を上げる。 「だけどそういう関係になるのは早すぎると思うし、ガキに手を出す趣味はないし、 俺的にはもうちょっとそのまな板みたいな胸が膨らんでから、それに女は慎ましいほうが・・」 ようやく銀時の言わんととしていることが分かったルイズは顔を真っ赤にする。 「何勘違いしてるのよ、この馬鹿!!!」 ルイズはベッドの横に置いてある置時計を銀時に投げつけた。 それはそのまま銀時の頭をクリーンヒットする。 「グハッ!!」 銀時はそのまま意識を手放し気絶する。 薄れ行く意識の中で銀時は『それ洗っときなさいよ』と下着を投げつけられた気がした。
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ルイズ フルネームはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 異世界ハルケギニアの国の一つ、トリスティンの名門貴族の三女であり、同国魔法学院の2年生。16歳。 ウェーブのかかったピンクの髪に鳶色の瞳を持つ。 身長やスタイルは年に比べていまいちであり、それがコンプレックスになっている模様。あと蛙が嫌い。 努力家で、貴族としての知識や教養は名門貴族の名に恥じないものであった。 だが、魔法が使えないという、トリスティンの貴族にとっては致命的な欠点があり、かなり肩身の狭い思いをしていたようだ。 魔法学院の使い魔召喚の儀式で、地球から平凡な少年、平賀才人を呼び出し、契約したことにより、彼女の運命は大きく変わっていく事になる。 気位とプライドが非常に高く、出来の良い姉の存在、魔法を使えないなどの理由より両親から全く期待されていなかったことにも強いコンプレックスを抱いている為、他人に認められたいとムキになり易く、無茶をすることが多い。 特技は「爆発」。 魔法を失敗すれば本来は何も起こらないはずだが、ルイズが魔法を使おうとすると、なぜか全て爆発してしまう。 その威力は凄まじく、下手な攻撃魔法を軽く上回るほどであるが、所詮失敗魔法と蔑まれ彼女自身もそう思っていたようで、それをコントロールしようとは考えていなかったらしい。 後にそれが、伝説の魔法系統「虚無」の使い手である証と判明する。 しかし、このバトルロワイアルに参戦した時点では、まだ本人はそれに気が付いていない。 アニメ版の中の人は 釘宮理恵。 戻る
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前ページ次ページZero May Cry Zero May Cry - 03 「ん………」 僅かに開いた瞼から差し込むのは朝日の光。ネロは未だにハッキリとはしない意識の中で、朝を迎えたと言う事実を認識した。 そのままゆっくりと体を起こし、周りを見渡す。 「こう都合よく夢でした……みたいなオチじゃねぇよな……」 そこにあるのは見知らぬ部屋の中に散らかった女性用の洋服。そして視線を窓の方へ投げるとベッドの上で寝息を立てる少女の姿。 それらが何を意味するのか、ネロはもう一度頭の中で整理をした。 自分はこの少女に使い魔として「召喚」された事。 この少女のために、自分は使い魔になることを受け入れた事。 「召喚」されたこの場所は自分にとって異世界である事。 元の世界に帰る方法が、果たしてあるのか。 それは、今のネロには分からない。 「さて……怖い怖いご主人様が目ぇ覚ます前に一仕事済ませるか」 そう言ってネロは散らかっている洋服をまとめて手近にあったかごへと放り込む。それを左腕で抱えてネロはルイズの部屋の窓から飛び降りた。 洗濯と言うからにはおそらく水汲み場のような場所があるのだろうが……。 庭へ着地したネロは辺りを見回す。一見するとそのような場所は見受けられない。 「チッ……面倒くせぇな……」 取り合えず適当にうろつこう。誰かに出会えばそいつに聞けばいい。 何ともいい加減な考えだが、結果だけを見ればその考えは間違っていなかった事になる。 ネロは庭を歩く一人の少女を見つけたのだ。よく見ればメイド服を着ている。こういった雑用には慣れていそうだ。 「おい、そこのあんた」 「え、私でしょうか?」 「ああ」 ネロの方へ振り向いた少女へ歩み寄ると、彼は抱えていたかごを見せて言った。 「洗濯できる場所を探してるんだ。教えてくれねぇか?」 「洗濯ですか? 分かりました。直ぐにご案内しますね」 その道中、少女はネロへ尋ねた。 「あの、もしかしてミス・ヴェリエールの使い魔になった方ですか?」 「ミス・ヴェリエールってのは……あのチビっこ嬢ちゃんのことか?」 「ええと……多分その通りかと。髪が桃色の可愛らしい方ですよね?」 「ああ。……で、何であんたは俺のこと知ってるんだ?」 ネロのその問いに少女は笑って答える。 「平民が使い魔として召喚されたって、噂になっているんですよ」 「へっ。ドイツもコイツも平民平民って……そんなに貴族は偉いもんなのか?」 皮肉なネロの一言を受け、少女は慌ててネロへ頭を下げた。 「すっ、すいません! 私、そんなつもりじゃ……」 「おいおい、あんたが謝るなよ。俺だって、別にあんたに言ったわけじゃないさ」 そして、ネロは直ぐにこう付け足す。 「それに平民だろうが貴族だろうが、俺にはあんまり関係ねぇしな」 「そうなんですか? 不思議な人ですね」 少女はくすりと笑ってネロを見つめた。 そんな少女の態度に何を思うのか、今度はネロが少女へ質問した。 「そういうあんたは貴族じゃないのか? 魔法とかは使わねぇのか?」 「とんでもないです! 私は魔法が使えない平民ですので、ここでこうして皆様にご奉仕させていただいて貰ってるんですよ」 「へぇ……。まだ若いのに随分と見上げた心がけだな」 「いえ……そんな……」 ネロの言葉に照れたのか、少女は僅かに頬を赤らめた。 「あっ、まだ名前を言ってませんでしたね。私、シエスタという者です」 「俺はネロだ」 「ネロさんですか? いい名前ですね」 「……そりゃどうも」 いつの日だったか、己が口にした言葉と同じ事を出会ったばかりの少女に言われ、思わずネロは唇を笑みに歪めた。 と、そんなやり取りをする内に二人は水場へ辿り着く。 「ここか」 「はい」 ネロはそのまま一着ずつ洗濯をしようとするのだが……。 何分、彼の右腕をギプスで覆われたままだ。その状態では普通の家事にも不自由を感じざるを得ないだろう。 (チッ、左腕だけじゃ面倒くせぇな……) 片腕の洗濯に悪戦苦闘するネロを見て、シエスタは彼に声をかける。 「あの、手伝いましょうか?」 「いいのか?」 「ええ。これぐらいなら大した量ではないですし、お気になさらないでください」 「そうか。悪ぃな。頼むぜ」 「はい!」 流石にシエスタの手際は良く、ネロが一着洗濯し終える頃にはあらかた済んでいた。 「助かったぜ。ありがとな」 「いえ。他にも困った事があったなら言って下さいね。ネロさん」 「へっ……。ああ」 シエスタのその一言にネロは薄く笑い、背を向けると軽く手を振りながら歩き去って行った。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 洗濯を終えたとはいえ、ネロにとっての面倒ごとはまだ残っていた。 そう、寝ているルイズを起こす事である。 「おい。起きろよ」 「う~ん………」 「おいコラ。起きねぇと引っ叩くぞ」 その言葉が引き金になったわけではあるまいが、とにかくルイズはまだ眠たそうな様子を見せながらも身体を起こしてネロを見やった。 「……誰? あんた」 「あぁ? お前何言ってんだ? 急にボケちまったのかよ?」 「ああ……使い魔か……ネロ……よね?」 「ああ。洗濯物はここに置いとくぜ」 「うん……。あと、これ」 そう言ってルイズは手にバケツを持ってネロへ差し出した。 ルイズの言いたい事が理解できずにネロは首を傾げる。 「水を汲んできてちょうだい……」 やれやれと言いつつネロはそのバケツを受け取ると同時に窓から飛び出した。 その様に思わず目を見開くルイズ。寝起きにも関わらず窓から身を乗り出して叫んだ。 「ちょっと何考えてんのよ!? ネロ!!?」 「何だよ朝から叫ぶなよ。周りの皆さんにご迷惑だろ?」 三階にあるはずの部屋から飛び降りたというのに、庭から何事も無かったかのように返事をするネロをみて、ルイズは思わず足下をふらつかせた。 何なのだあの男は。三階から飛び降りて無事な人間など聞いたことがない。しかもネロは右腕を骨折しているのだ。怪我人が骨折必死のダイブを敢行するとはどういう事か。 そんなことを考えている内に、ネロは戻ってきた。 「は、早かったわね」 「そうか? 普通だろ」 さらりと答えたネロに対しルイズはさらに驚くが、ここはあえてスルー。平静を保つのよルイズ。 意味の分からない暗示をしつつ、ルイズはネロが汲んできた水で顔を洗った。 「じゃあ洗濯物干してよ。まだ濡れてるわ」 「まだこき使う気かよ……」 小さく舌打ちをしつつも、ネロは言われた通りにかごに入ったままだった服を干してゆく。 すると背後から響くルイズの声。 「それ終わったら着替えさせてちょうだい」 その一言についにネロも我慢の限界を超えたのか、彼にしては珍しく冷たく言い放った。 「それぐらい自分でしろ。それともお前は着替えも自分で出来ねぇのか?」 「貴族は下僕がいる時には、自分で服なんて着ないの!」 「メンドくせぇ。自分でしろ」 使い魔にあるまじきネロの態度に、とうとうルイズの方も堪忍袋の緒が切れたようだ。 「何よ!! そんな事言ってるとご飯食べさせてあげないわよ!?」 「ハッ。俺が飯で釣られると思ってんのか? めでたい嬢ちゃんだな」 「~~~~~っ!!! もう知らないっ!! 朝御飯も抜きだからね!!」 それで気が済んだ訳ではないだろうに、しかしそれでもルイズは自分で着替えを始めた。 ネロの方はそれを見向きもせずに無言で洗濯物を干すのを続けている。片腕だけに手間取っているようだ。 やがて着替えを終えたルイズは怒りが納まらぬ様子でネロに言った。 「私はこれから朝食を食べに行くけど、あんたはここで大人しくしてなさい!」 それだけ言い終えるとルイズは勢い良く扉を閉めて行ってしまった。 一人残されるネロ。 「…………マジで困ったもんだぜ。ありゃ」 しかし彼は気にした様子もなく寧ろ呆れたように一人呟いた。 別にネロはルイズの態度に腹を立てている訳ではない。ただ慣れない雑用が純粋に面倒くさいと思っただけだ。 「こいつも隠さなきゃなんねぇし……ホントにメンドくせぇぜ」 そう語る彼の視線は、左腕でさすられるギプスに包まれた右腕に注がれていた。 この右腕はもう忌むべきものではない―――そう分かってはいるものの、初対面の人間の前でいきなり見せる気には流石にまだならない。 いずれ時がきたら、この右腕もルイズに教えるべきだろうか―――ネロはそんな事を思った。 ―――to be continued……. 前ページ次ページZero May Cry