約 454,639 件
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/211.html
司書長の年の瀬 h5FM9d3M 新年。新しい年。新たな門出。昨年が良い年であったことに感謝し、 新たな年もそうあるようにと願い、また努力しようとする者もいるだろう。 はたまた逆に、これを機にあまり良くなかった昨年を仕切り直そうという者もいるだろう。 前年のことをどう受け止め、またそこからどう動こうとするか。それは人それぞれである。 しかし。その新年を迎えるにあたって、やらなくてはいけないこと、というものが存在する。 即ち。 「司書長。年賀状の追加、百枚です」 「あーもう! 年の瀬なんてだいっきらいだー!!!」 ――次の年に向けての準備、である。 「ふふふふふ…なーんでみんな、こう駆け込み依頼をしてくるのかなあ、ヴィブラ……」 「今年の仕事は今年の内に、と彼らも考えているからでしょう。 ならば何故ここまで複数の依頼を同時にしてくるのか、と言われますと、 私としてはあちらの都合としか言えませんが」 幽鬼のような顔をしたユーノの呟きに、 ヴィブラと呼ばれた女性は手に持っていた書類の束の一枚に目を向ける。 そこには様々な内容に渡る資料探索の依頼が、 『数日中を期限とする』という但し書きと共にびっしりと羅列されていた。 言うまでもないことではあるが、 彼女の手にある書類、その全てがこの一枚同様依頼内容で満載になった代物だ。 「やってくる依頼も予想通りちまちましたモノばっかりだし…… どうせあれなんだよ、『今すぐやらなくてもいいし大したことじゃないから後回し後回し~』 って放っておいたのを慌てて持ってきたんだよ。書類の山の下の方から引っ張り出してきたんだよ。 ……そのまま気付かず大掃除のゴミと一緒に捨てられてれば良かったのに。出来れば担当者ごと」 「司書長、お怒りなのはわかりますが、不穏当な発言はお止め下さい。 副司書長など本当に依頼を持ってきた相手をゴミ箱に叩き込もうとしていらっしゃったのですから。 司書長がそんなことを仰っていたと聞けば、今度こそやりかねません。しかも嬉々として」 「あー、うん。今回ばっかりは彼女の意見にちょっと賛成かなぁ、僕としては」 「司書長……」 いつになく思考が殺伐になっているユーノに、彼女も溜息。 しかしこのような思考は何もユーノに限ったことではなかった。 何せ無限書庫の全員、本日で連続勤務の(最低)徹夜三日目に突入していたからである。 そも管理局の部署の中でも、年末における無限書庫の忙しさは管理局でも随一を誇るものだった。 何しろ前衛は戦技教導隊から後衛は管理課、 上は最高評議会から下は管理局と連結している士官学校に至るまで。 その全ての一年でやり残した業務における資料の依頼がどっと押し寄せるのである。 おかげで師走の後半はほぼ休み無し、司書長たるユーノやその秘書たるヴィブラは無論、 主だった面々は無限書庫に寝泊りというのだから、その恐ろしさがわかるだろう。 とは言え、例年はここまで酷いわけではない。 成程確かにこの時期はユーノを含め少なくない人数がここで生活する羽目に陥るが、 かと言って現状のように徹夜で仕事という異常事態にはならない。 幾らなんでも毎度毎度そんな事態が起こるわけが無いのだ。 ならば何故、今年はそんなことになっているかというと。 「そういえばJS事件の資料はどうなってる?」 「はい。問題ありません。滞りなく発掘は続いています」 「そう……もう死ねばいいのに。あのバカリエッティ」 「ですからそのような発言はお止め下さい。 彼の男が最大の要因であることについては否定しませんが」 そういうことである。 今年発生した、ジェイル・スカリエッティを主犯とする一連の事件。 それは管理局全体に大きな打撃を与え、 直接その被害を被らなかった部署でさえ、何らかの影響を受けることとなった。 無論その爪痕は大きく、 最高評議会の面々や地上本部のトップが事件に関わっていたことやその死亡などもあり、 事後処理は困難を極めた。 何しろ管理局始まって以来の大事件。 挙げたとおり管理局のあらゆる部署が影響を被り、事後処理に皆が走った。 そりゃあもう、事件解決の中心的存在だった機動六課に至っては修羅場というのもおこがましいほどの状況で、スターズ隊長高町なのは一等陸尉は「ゆりかごとガチンコ勝負やらされる方がまだマシなの……」 との遺言を残し書類の山に散っていった程である(死んでません)。 他の部署も六課程では無いが動き回り、無限書庫も事件に関係する資料を発掘するためフル機動。 かくしてこの規模の事件の後始末としては信じられない、 僅か数ヶ月にて主だった事後処理を終えるという快挙を成し遂げたわけだが…… その代償として、緊急性の低い、言ってしまえば『小さな』事件は後回しにされ、 書類の山に埋もれきってしまったわけだ。 そして年の瀬の今、無限書庫は溜まりに溜まっていたツケを、 それも全ての署からのものを全力で被っているのである。 「司書一同が奮起した甲斐もあり、何とか依頼された分量の六割が終わりました。 ここからは交代で仮眠を取らせても問題ないでしょう」 「というか、これ以上無茶するときっと死人が出るよ」 今度はユーノの溜息。この場合、寧ろ「仮眠を取らせないと拙い」というべきだろう。 何せ中には一週間近くちゃんと眠っていない司書までいるのだから。 ヴィブラから渡された一覧をさっと眺める。 依然スケジュールは厳しいが、彼女の言うとおりここからはある程度休みながら仕事をこなせそうだった。 油断は出来ないものの、取り敢えずの危機は脱したと見てもいいだろう。 ならば、とユーノは口を開く。 「ええと、うち自身の年末準備の方は?」 「そちらの方は大方終了しています。 現状はある程度予想は出来ていたので出来る作業は予めやっておきましたし、 残る作業も最悪来年に回して構わない部分ですから、万が一の際も問題ありません」 「そっか…じゃあ、残るは」 「ええ。司書長自身の年末作業です」 そう言って、ヴィブラは再び、どすん、と大量の年賀状を置いた。 机に複数の山を作るほどのその量に、さすがのユーノも辟易する。 「……こんなに?」 「いえ。まだありますが、これ以上は机の上に置けないだろうと判断いたしましたので別所に」 「…………」 無言のまま、ユーノはペンを握る。何しろ年賀状を出す期限は今日中である。 期限に対するこなさねばならない量という点で言えば、 はっきり言って現在残っている他のどの業務よりも多い。 「もっと早く終わらせることとか出来なかったの?」 「言ってしまえばこれは私用だからね。 無限書庫の業務に目途がつくまでそっちを優先させるべきだと思ったんだよ。 うん、でも少しはやっとくべきだったかなって思ってる」 「クリスマスパーティーはこなくても良かったのに。だったら少しは」 「みんなにも薦められたし、それくらいは出たかったんだ。 それにお陰でリフレッシュ出来たからあの後の仕事もはかどって――ってえ!?」 先程まで会話をしていた声とは違う声が聞こえていることにようやく気付き、 ユーノは年賀状に向けていた視線を上へとあげる。 果たしてそこにいたのは。 「……フェイト? なんでここに」 「本局にちょっと用事があってね。 それでこの際だから六課を代表して年末のご挨拶に、 って来てみたんだけど……こんなに凄いことになってたんだ」 「はい、執務官。非常事態と見て相違ないでしょう」 「あ、あはははは」 拙いところを見られた、と苦笑するユーノ。 数日前、六課で行われたクリスマスのパーティーに出席した時は「大丈夫」と言ってしまっただけに、 余計にばつが悪い。 まあ確かにあの時言ったのは「書庫の仕事なら」大丈夫と言ったので強ち間違っているわけではないが。 フェイトはユーノの机を見る。 そこには大量に置かれた白紙の葉書とその反対側に置かれた名前と住所が書かれた書類。 「それで…今やってるのは年賀状?」 「あ、うん。今日中に出さないと駄目なんだよね、確か」 「メールじゃ駄目なの? 私やなのははほとんど全部メールで新年のお祝いしてるんだけど」 基本的に機械化が進んでいるミッドチルダ。新年の挨拶も普通はそういったもので占められている。 しかし。 「僕の知り合いってアナログ派が多くてね…メールの扱い方知らない人が多いんだよ。 それにスクライアのみんなとかはメールを出しても届かないし」 「ああそっか、ユーノと付き合いがある人って」 ユーノの台詞にフェイトも納得する。 ユーノは局での無限書庫司書長の他に、考古学者としての面も持っている。 いや、むしろそちらが本業と言っていいだろう。 よって無論というかそちらの面で付き合いのある人間も多く、 恐らくフェイトの仲間内で管理局外の知り合いがもっとも多い人物である。 そして偏見かもしれないが、 考古学者の、特に重鎮とされる人物達はそういったコンピュータなどの方面には疎いと思われ。 「だからまあ、こうやって一つ一つ書いていくしかないんだよ」 言いながら一枚を書き上げる。半ば単純作業であったが、それゆえに疲労困憊の彼の体では辛いものがあった。 「……終わるの? 今日中に」 「はは、ちょっと無理っぽい」 顔を引きつらせながら呟くユーノ。書き上げるペースと残る仕事量。 それを考慮すると理想的なペースでもギリギリ、といったところか。 「いっそ当日転送魔法で届けちゃおうかな」 と若干法律違反なことをぶつぶつと呟くユーノを見ながらフェイトはしばらくなにやら考えていたが、 やおら頷くとぱん、と手を鳴らした。 「あのねユーノ、実はいいものがあるんだけど――」 約一時間後 「……こ、これは?」 「さっき言ったでしょ? いいもの。これで早く書き上げられると思うよ」 机の上に置かれたのは、何の変哲もないコンピュータである。 普通に画面が映され、キーボードが備え付けられている。いわゆるノート型と言われるものだ。 繰り返すがこのコンピュータは本当に何の変哲もないものである。 専門店でなくてもその辺りの店にいけば手に入る、ありふれた機種だ。 ただし、地球においては。 ――そう。これは地球の個人用コンピュータ。いわゆるパソコンであった。 「ね、『年賀くん』……?」 立ち上げられたソフトの名前を呟くユーノに頷くフェイト。 「そう。 ミッドと違って地球じゃまだ電信に紙媒体を使ってる割合が多いからこういうソフトが市販されてるんだよ。 中学に通ってた頃はクラスメイトとか先生に毎年年賀状を送ってたから私も使ってたんだ。 プリンタもセットで持ってきたからそのまま印刷も出来るよ。 今じゃ地球に送る分ってアリサやすずかくらいに宛てるくらいしかなくて 全部手書きにしちゃったから使ってないんだけどね」 「フェ、フェイト……」 「一応手書き風のフォントもあるし、実際にタッチペンで書ける機能もついてるから、 こういうソフトが無いミッドチルダの人とか相手ならそうそう気付かれないと思う。 最初住所録とかを入力するのはちょっと手間だけど、 それでも多分一枚一枚書いていくよりはずっと楽だろうし、なんだったら手伝って……」 「フェイトぉぉぉっ!!」 がばぁっ! 「え!? えぇぇっ!?」 いきなり抱きついてきたユーノに頭は真っ白、顔は真っ赤になるフェイト。 突然のことに彼女の思考は停止する。 「フェイト、本当に、本当に」 「ちょ、ちょっと待ってユーノ! そんないきなりだなんて、心の準備が……あ、でもそんなプレイも嫌いじゃな」 「ありがとうっ!!」 「――ふぇ?」 何が何だかわからないままきょとんとするフェイトに、少し体を離したユーノが言う。 「こんないいものがあったなんて! 今日君と会えて本当に良かったよ! 心からそう思う!」 「あ、うん、それはどうも……」 「ばんざーい!」と諸手を挙げて歓迎するユーノになんだか拍子抜け、といった顔で答えるユーノ。 そんな二人を見て、コーヒーを差し入れにきたヴィブラは 『この方は……相変わらずというか何というか』 そう、心の中で呟くのだった。 それからさらに一時間後 「ええと…じゃあこうでいいのかな?」 「そう。あとはここをクリックするだけでいいから」 パソコンを前に試行錯誤を繰り返すユーノと、その操作を教えるフェイトの姿があった。 当初ユーノは「これは自分のやるべきことだし、他人に手伝わせるわけにもいかないから」 すぐにフェイトを帰し、一人でやるつもりだったのだが、実際にパソコンをつけようとして気付いたのである。 ――自分は、パソコンの使い方など知らないことを。 無論、ミッドチルダのコンピュータの扱いは一通り、少なくとも仕事に差し支えない程度には知っている。 しかし地球のパソコンのそれとなると別だ。 確かにユーノはかつて長期海鳴に滞在していたし、今でも時折旧友に会いに行ったりしている。 だから地球の作法はおおよそ知っているし、特に不便だと思ったことは無い。 しかし、である。それとこれとは話が違ってくる。 なにせ『長期滞在していたとき』は大抵フェレットだったし、 『時折行くとき』は大概友人に会って話をしたり遊んだりするくらい。 パソコンは勿論、あちらの電化製品で使ったのはせいぜいゲーム機くらいだろう。 よって。 『――ひとりでも大丈夫って、ユーノ、そのソフトの使い方、知ってる?』 『……あ゛』 というやり取りの後、フェイトによる初めてのパソコン講座が始まったのである。 こういったことが好きななのはと違い、フェイトもさほどパソコンを扱い慣れているわけでもないが、 そこはそれ、曲がりなりにも六年間海鳴で暮らしていただけのことはあり、一通りの扱いは出来ていた。 「簡単でしょ? 基本的な操作はミッドチルダのとそう変わりないし」 「うん。大体理解できたよ」 言いながらユーノはキーボードを叩く。その手つきはかなり慣れたものになっていた。 「それにしても不思議だよね。パソコンといい、ミッドと地球ってところどころ似てるの。 手法とかは若干違うけれど。管理局の記録を見る限り、互いに文化的な干渉があったとは思えないのに」 「う~ん、そういうのはたまにあるよ。場所も時代も全然違う遺跡から発掘された技術がかなり似ていたりね。 勿論どちらかがどちらかに影響されたって痕跡は無しで。 理由は諸説挙げられているけど…僕としては『文化は多々あるが、技術は物理法則が同じ以上、 ある程度同じ形に帰結する』って意見に一票かな」 「なるほど……さすが考古学者」 「それほどでも。とよしっ。これで住所録は完成、っと」 ユーノはそう言うと、一度大きく深呼吸し、軽く目を閉じる。 フェイトの説明によれば、あとは裏側のデザインを決め、印刷するだけという。 これなら何とか終わりそうだと安堵の息をついたところで、ふと疑問が浮かんだ。 「そういえばフェイト。これを取りに行くの、結構早かったよね? 転移魔法を使ったにしても、他世界へ行く許可を取るのって結構時間がかかるはずだから、 海鳴からここを往復にはちょっと早過ぎる気がするんだけど」 「ああ、往復したのは六課とここだよ。このパソコン、六課に置いてあったから」 「……なんで六課に」 「昨日はやてが使ってたんだ。お偉いさんに書くのに。 ほら、今年はJS事件の関係でいろいろな方面に迷惑かけたでしょ? その人達に年賀状を書こうとしたら、とんでもない枚数になっちゃって。 それで幾らなんでも手間がかかりすぎるからってことで地球から持ってきたんだよ。 というか、はやてや毎年これを使ってたみたいだけど。クロノも一昨日、家でやってたみたいだし」 「へえ……成程」 『――道理で毎年気楽に構えていたわけだ』 自分とそんなに変わらないくらい年賀状を書かねばならないはずなのに 道理でそんなに辛そうではなかったはずだと納得するユーノ。 こんな簡単なものがあればそりゃあ大した苦労はしないわけである。 一度住所録を入力すれば次回からはその必要が無いと聞けばなおさら。 「フェイト、今度海鳴に行く時があったら、言って。 僕も行くから」 「へ? な、なんで」 「僕もこれ、買おうと思って。 でも地球のコンピュータのどれがいいかなんて全然わからないからさ」 「え? 別にいいけど…こういうのはなのはの方が詳しいと思うよ? 私だって最初に操作を教えてもらったの、なのはからだったから」 「いいよ。フェイトと一緒に選びたいって思ったからさ」 「う、うん!」 何故か(ユーノ視点)顔を上気させるフェイトに軽く微笑み、ユーノは作業を再開する。 様々な素材の中から色々組み合わせ、またフェイトが教えてくれた通り、ペンタブレットで文字を書き、 昨年の礼と本年もよろしくお願いしますとの意を表していく。 『それにしても……』 本当にこのソフトは便利だ、とユーノは思う。 地球は魔法文化こそゼロに等しいが、文化自体はミッドチルダに決して劣るものではないし、 このような純粋な科学技術についてはミッド基準で考えても目の見張るものがある。 特に今使っている機能など、ミッドチルダでは必要が薄いと断ぜられ、 恐らくこれからも研究されることはほとんどないだろう。 『でもまあ、そのお陰で今僕は恩恵を被っているわけなんだけどね』 しかし同時に、こんないいものがあったというのに今まで自分に言わなかった二人に対し、 彼の中で少々怒りがこみあげてくる。 これはただ睡眠不足で気が立っているからというわけではないだろう。 「全く……あれ?」 ピッ、という音と共に先程まで開いていたウィンドウが閉じ、操作が出来なくなる。 再び触ってみるも、ソフトがどこにあるか見つからない。 「フェイト、なんだか操作間違っちゃったみたいなんだけど」 「え? ええと、これは…あれ、違う?」 交代したフェイトが触ってみるも、芳しい反応が得られない。 最初は冷静に構えていたフェイトも次第に焦ってくるようになり、手当たり次第にクリックしていく。 「ええと、ここでもないし、これでもないし……ここ?」 カチリ。 クリックと共に開くファイル。果たしてそこにあったのは―― 「ちょ――!?」 「――――!?」 ディスプレイいっぱいに映される画面。そこに映されるのは男女のあられもない姿。 ……どうやら間違って隠しファイルを開いてしまったようである。 「こ、これは……」 「違うよこれ私のじゃないよはやてから借りたんだよだからこんなの知らないよそうだよこんなのしらないからけしちゃったらいいんだそうだきれいにけして――!」 「って司書長室でザンバー振り上げようとしちゃダメ――!!」 途中から半ば棒読みで叫びながら一瞬にしてバリアジャケットを纏い、 目の前のパソコンに向かってバルディッシュを振り下ろそうとするフェイトを必死に止めるユーノ。 彼と彼女の格闘(そのままの意味で)は、この後半時間にも及ぶのだった。 「ふう…何とか、終わった」 「ごめんごめんごめんっ!!」 平謝りになるフェイトに、「いいよ」とユーノは告げる。 あのあと何とかフェイトを正気に戻した後、残る気力で年賀状を書き上げた。 お陰で体力も気力も、ついでに魔力もすっからかんだ。 「ほんとにごめんなさい…」 「大丈夫だって。 お陰で今日はそれなりに寝られそうだからさ」 当初は徹夜予定でそれでも間に合うかどうかの状態だったが、 年賀状が予定を大幅に超えて早く終わったため、何とか数時間は寝られるだろう。 これはフェイトのお陰だといえる。使った魔力や体力は…まあ駄賃ということで。 「その、年賀状、出しておくよ代わりに!?」 「いや、まだちょっと書かないといけない分があるから、あとで出すことにするよ」 「そ、そっか……」 「う、うん」 そこで言葉が止まった。言うべき言葉がなく、またあっても中々口に出せないのだ。 元々静と動で言えば静、口数の少ない方の二人だ。何か理由がなければ話をすることも少ない。 だから二人で会った時はこういうことはしょっちゅうである。 なのはや、特にはやてが得意な、いわゆる「とりとめのない話」が二人は下手なのである。 「そ、それじゃあ…」 「そうだね、そろそろ…」 お互いにしまりの悪い言葉を述べる二人。 けれど、最後。 「ね、ねえユーノ!」 「う、うん」 「――年賀状、楽しみにしてるから」 「――うん」 そういって、二人は別れるのだった。 ――明けて次の年、元旦。 「ふう…一年の最初の日からお仕事とか。 幾ら機動六課が今年限定っちゅうても働きすぎやないか? 正直」 「まあまあ。明日は休めるんだから。はい、はやてちゃんに年賀状」 「ああ、ありが…すごっ!? 何この山!?」 「出す人が多いってことは出してくれる人も多いってことでしょ。それにしても凄い量」 「うわ…この人には出してへん…うう、年始から年賀状書きかいな……年賀状と言えばフェイトちゃん。 なんか年末のとき、私が年賀状に使ってたパソコンとプリンタを貸して欲しいって言ってきたけど、 あれ一体何につこてたん?」 「ああ……あれはちょっと、ね」 「?」 「あ、ユーノくんからの年賀状だ。ええと…あれ? もしかしてこれって」 「お、私のところにも。……あり? これってあれやね? 年賀ソフトの」 「うん。多分。……む? もしかしてフェイトちゃん。さっき言ってたはやてちゃんのPCの貸出先って」 「え? あ、いや、それは……」 「お。フェイトちゃんところにも来とるでー。 ユーノくんからの年賀状――む!?」 「ふぇ? は、はやて、どうしたの?」 「ちょいちょいなのはちゃん。これ」 「――!」 「え? なんか変なこと書いてある? ええと… なんだ、特に変わったこと書いてないじゃない。どうして二人とも変な反応して…あれ?」 「フェイトちゃん、どういうことかな…?」 「な、なにが?」 「よーく見てみ。フェイトちゃんのだけ、手書きやんか」 「え? あ、あれ、ホントだ……」 「貸し出された私のパソコン、年賀ソフト使ってるユーノくんの年賀状、 フェイトちゃんだけに送られた手書きの年賀状……」 「そしてあの日のフェイトちゃんの数時間の不在、 帰ってきた時のフェイトちゃんのいい笑顔……どういうことか教えてもらうの」 「え? そんな、私はただユーノに年賀状ソフトの使い方を教えてただけで… 私の年賀状が手書きなのだってきっと、たまたま私が来る前に私に送る分を書いてたと思うし……」 「取り敢えず、聞かせてもらおか。 秘匿してた私の隠しファイルが公開状態になってたことも含めて」 「お話、聞かせてもらうの」 「あ、ちょ、二人ともバリアジャケットいきなりまとうとかデバイスかざすとかやめ…… きゃー!!!」 とりとめもなくおわる 70スレ SS オリキャラ フェイト・テスタロッサ・ハラオウン ユノフェ ユーノ・スクライア
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/5681.html
地下。 小町はベジータとの交戦をしていた。 小町が戦っているうちに、彼女の指示で負傷したなのは組は都庁方面へ退避させられた。 というより繰り広げられる戦いは光と光がぶつかり合うような激しすぎる攻防であり、全員手傷を負っている上に首輪も外れていないなのは組では足でまといになると思い、小町が逃がしたのである。 ベジータはそれだけの強敵であり、誰かを守りながら戦う余裕など無いのである。 「クソッ! 攻撃が届かない気持ちの悪い能力を使いやがって! 大人しく俺とクラウザーさんのためにSATUGAIされやがれ!」 小町は先の戦いでセルベリアに使ったように距離を操る程度の能力を使って、ベジータの拳や蹴り、エネルギー弾を自分やなのは組に届かないようにしたのだ。 いくらスピードを出して攻めても、距離を操る彼女の前で止まるか逸れてしまう。 いくら強力な技でも当たれなければどうということはないのである。 だが…… (クソッ! やっぱりここでも火力不足が目立ってやがる! あたいの銭や斬撃が当たっても全く効いてねえ!) 小町側にしてみれば、ベジータの異常に高い防御力の方が驚異であった。 セルベリアのヴァルキュリアとしての防御力も異常だったが、ベジータの場合はそれを遥かに上回っており、弾幕も斬撃もダメージゼロである。 これでは当たっても意味がない。 セルベリアの方は首輪の制限によりヴァルキュリアの力を使えば使うほど急速に疲弊していったが、ベジータの場合は首輪が外れているので戦闘による疲労はほとんどない。 (しかもこいつ、防御力だけじゃなくて、パワーとスピードもセルベリア……いや、レストすら上回ってる! 一瞬でも隙を見せたらこっちが殺されちまう!) 都庁の戦力の要であるレストは確かに理不尽級の強者だが、ちょっと本気を出せば惑星など簡単に消せるスーパーサイヤ人には流石に届かない。 更にこれ以上強くなれないレストと違い、サイヤ人は戦いがある限り際限なく成長し続けるのだ。 これまでロワを通じて幾多もの戦いを生き延びた小町にはベジータの実力が今まで戦ってきた参加者の全部を上回っていることを肌で理解していた。 それでもこれまでのベジータは金髪恐怖症が足枷となって実力を発揮できなかった。 が、クラウザーさんの歌によって狂ったことにより恐怖症を克服。 枷から解放されて実力を100%発揮できるようになってしまった。 もはやダオスやレスト、悪魔将軍すら彼の中では怖くないのだ。 そんな相手を前にして小町が臆すことなく戦えたのは幻想郷において場合によっては死人も出る弾幕ごっこで動体視力と回避能力を鍛えられていることと、影薄組や同盟軍などの仲間の存在と、いくつもの死線を突破していったために胆力がついたおかげだろう。 もし序盤のように殺し合いでサボることだけしか考えていなかったら、ベジータを前に足がすくんで戦うことはおろか逃げることもできずに塵にされていただろうと小町は考える。 そして弾幕の飛ばしあいと刀の斬撃と拳による打撃の渦の中。 一瞬でも集中力と能力を切らせば一気に攻め入られ、殺されるかもしれないギリギリの戦いの中で小町は、ベジータを倒せるか追い払えるだけの実力を持つ仲間の救援を待った。 ……しかし救援は間に合わず、代わりにピシッと音を立てて不運がやってきた。 「神鎗が!?」 これまでロワで小町の相棒として戦ってきた斬魄刀が、ベジータの鉄壁の防御力の前に耐久性に限界が来てしまい、その刀身に大きなヒビが入ったのである。 更にセルベリア戦の倍は能力を使っている小町の疲労も重なり、一瞬の動揺が付け入られる隙を与えてしまった。 その機を見逃さなかったベジータが、ニヤリと笑い、能力を張り損ねた小町に対して鉄拳を放つ。 「ッ!?」 ベジータの攻撃に対して、小町は咄嗟にディパックから小舟を出して盾代わりに防御する。 舟は大破したが小町への攻撃の直撃だけは防がせた。 「うわああああああ!!」 しかし余波までは防げず、キイーーーンというジェットのような音を立てて、彼女を大きく後ろに吹っ飛ばしたのである。 なのは組は小町の指示通りに都庁への退避をしていた。 しかし全員負傷がひどく、どうしても速度が出ないのである。 なのはに関してはベジータの攻撃による負傷で頭にダメージを受けたのか、ユーノの手の中でずっと意識混濁状態だった。 「ユー…ノ君……どこ?」 「なのは、しっかりするんだ! 僕はここにいる!」 「チッ、まずいな。この様子だと頭を打ったみてえだな」 「なのはが死んでしまったら、僕は…ボクハ……!」 「落ち着けユーノ! なのはは死に直結する怪我は負ってねえよ!」 医学生であるレオリオによりなのはの容態を知るが、それでもユーノは落ち着かずに焦燥していた。 これまでユーノをリーダーとして見てきたなのは組一行に取っては、こんなに困惑したユーノを見たのは初めてだった。 今のユーノは恋人を殺されかけていつもの冷静さを失っているのだ。 とにかくユーノは小町がベジータを引き付けている内になのはを都庁同盟軍の仲間に治療させるために都庁を目指す。 (レオリオは医大生だが短い時間で仲間を治療するスキルは持っていない) だが彼らの希望は潰えるが如く、後方から凄い勢いで吹き飛ばされてくる小町の姿があった。 「小町さん!?」 「危ねえ!」 あの勢いでそのまま壁面に激突すれば小町の肉体は粉々になってしまう。 直感で気づいた桑原が彼女を受け止めるべく飛び出し、彼女の体をキャッチする。 「うおおおおおッ!?」 「がはッ!!」 「桑原!!」 しかし勢いそのものはほとんど殺せず、小町を受け止めた桑原の体が小町ごと壁面に激突する。 桑原が緩衝材となったおかげで小町は粉々の肉塊になって死ぬ惨事は防がれたが、体中から血を流して気を失い、彼女のメインウェポンであった斬魄刀は折れてバラバラになってしまった。 彼女のクッションになった桑原はそのタフネスさ故に死ぬことはなかったが、こちらも小町同様に体中から血を流して気を失ってしまった。 頼れる仲間が一辺に二人も戦えなくなったこと……特にベジータのパワーに唯一対抗できていた小町が戦闘不能に陥ったことに残されたユーノ、ハス太、レオリオ、エリカは戦慄する。 そしてスーパーサイヤ人という名の絶望が彼らに追いついた。 「手こずらせやがって、俺様の手で直々にSATUGAIしてくれるわ!」 「そんな……」 「畜生、こんなところで!」 「まだ諦めてはなりません! 何か打つ手があるハズ……」 敵の攻撃をほぼ確実に外させる能力を持つ小町と、敵の防御力を無視する霊剣を持つ桑原は気絶した。 エリカは手元にポケモンがおらず、護身術程度ではサイヤ人には敵うまい。 ハス太とレオリオの実力でもベジータに敵わないのは先に立証済み。 せめてハス太が限定解除状態になればワンチャンスあったかもしれないが、首輪が外れていない現状ではそれもできない。 そんななのは組をまとめて花火にするべく、ベジータは気を練り始めた。 必殺技のファイナルフラッシュで一気にトドメを指すつもりなのだ。 それを感じ取ったなのは組は内心では生存を諦め自分たちの最期を確信した…… 気絶している者たちと、ユーノを除いて。 ただ一人、ユーノだけがベジータに平然と向かっていく。 「ユーノさん?」 「ユーノ?」 「ユーノ……さん?」 気を失っていたなのはをゆっくりと地面に下ろし、レオリオたちの呼びかけにも応じずにベジータに向かっていくユーノ。 その心の中では、様々な感情が渦巻いていた。 ――ドクン 一つはなのはを失うかもしれないという恐怖 ――ドクンドクンドクン 一つはなのはに怪我をさせてしまった自分の無力さへの怒り 一つはなのはを確実に守るための力への渇望 ――ドクンドクンドクンドクンドクンドクン 一つはなのはを傷つけた怨敵への殺意 一つはなのはを悲しめたあらゆる者への憎悪 仲間たちにこれまで見せたことのない瘴気のような禍々しい魔力を噴出するユーノ。 そんなユーノに気絶から覚めかけていたなのはが彼の背中を見てうわ言のように呟く。 「ユーノ君……?」 ――ド ク ン ッ 最後に感じた思いはなのはへの愛。 ユーノの中で様々な思いがかき混ぜられた時、ユーノは混沌への扉を開いてしまった。 「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!」 「なんだ!? こいつの気が膨れ上がって……」 ユーノはまるで野獣のように叫んだ。 周辺をビリビリと揺らす咆哮に、レオリオもハス太も、精神力の強いエリカでさえ思わず立ちすくんでしまい、ベジータをも驚かせた。 そして咆哮と同時に彼の体に変化が現れる。 瘴気じみた魔力を吹き出しながら金色の毛皮を全身を覆い、加えて胴が細長くなり長い尻尾が生えてきた。 シルエットだけは彼がよく変身するフェレットの姿に似ている。 しかし、全体的なサイズは大柄な桑原やレオリオの何倍もあり、牙も爪も一目で危険とわかるくらい鋭く、目は赤い複眼の恐ろしい姿だった。 ユーノは一瞬でフェレットによく似た怪物になってしまった…… テラカオス化進行による変身である。 突然、怪物に変身にこの場にいた誰もが混乱している。 「フリーザのような変身能力か! さっきの40倍か50倍は気が大きくなってやがる! だがスーパーサイヤ人にしてサイヤ人の王子である俺の足元にも及ばねえがな!」 ベジータはユーノが変身と同時に力を大幅に増したことに一時は驚くも、力の差は未だにベジータが大幅に上回っており、勝てると見込んで再びなのは組にファイナルフラッシュを放とうとしていた。 ユーノの実力の元の50倍程度では圧倒的戦闘力を誇るベジータを殺すのはまだまだ足りないのだ。 「俺のレ○プを喰らいやがれ! ファイナルフラァーーーーーッシュッ!!!」 巨大な閃光が地下の壁面や床を削りながらなのは組に襲いかかる。 このロワで上位の実力者だった神樹をも倒した一撃が、なのは組と小町に襲いかかる! しかし、その一撃に対しユーノはなのはたちの前に躍り出て、巨大な防御結界を張った。 ユーノは防御面に関してはスペシャリストだ。 だがそんな彼の結界による防壁もいとも容易く破られたことは先ほど証明されている。 その50倍硬い結界を張ってもやはり破られるだろう…… ただしそれは、単純に防御力を上げただけの場合である。 結界とファイナルフラッシュが衝突した瞬間、目のくらむような眩い閃光がなのは組を襲う。 されど閃光はなのは組や小町を蒸発させることはなく、結界から先へ進むことはないまま霧散した。 「ダニィ!?」 驚くベジータだが、これで終わりではなかった。 今度は怪物化したユーノの口に光が集まり出した。 テラカオス化進行によって得たユーノの能力……それは! (こいつ…空気中に漂っている俺の放ったファイナルフラッシュの気の残滓を吸ってやがる! それだけじゃなく、倍近くも奴の気の力が強まっているだと!?) ――結界で弾いた攻撃のエネルギーを吸収し、それを倍以上にして敵に返す。 敵の攻撃が強ければ強いほど強力になるカウンター魔法……それが、テラカオスに近づいたユーノの固有能力であった! 「グラアアアアアアアアッ!!!」 攻撃を凌いだユーノ君が反撃に出る。 口からシュートバレットによく似た光弾がベジータに向けて吐き出されようとしていた。 「あれを喰らうのは流石にまずい!避けねば……ハッ!?」 さしものスーパーサイヤ人ベジータも自分の必殺技の倍以上ある攻撃は避けねばまずいと判断する。 ところが、彼が攻撃を避けようとした瞬間、ユーノによってチェーンバインドで手足を縛られ、身動きを取れなくしていた。 このチェーンバインドも50倍以上の強度があり、常人はおろかチート級の参加者では脱出不能であるが。理不尽級に位置するベジータなら2~3秒あれば破壊して脱出できるだろう。 ……もっとも、2~3秒あれば今のユーノには十分であったが。 そしてとうとう吐き出された光弾。 ベジータの放ったファイナルフラッシュの倍以上の閃光であり、もうなのは組の面子は目を開いていられなかった。 その光弾の威力も速度も、なのはのスターライトブレイカーが花火に見えるレベルであろう。 ベジータは光弾が直撃する前にバインドを力技で破壊して脱出を試みるも、バインドの破壊と同時に閃光に包まれた。 「サイヤ人の……王子であるこの俺が……」 閃光が収まった後にはベジータの姿はなく、ユーノの攻撃でできた瓦礫と燃えかす、地下の空洞があるのみであった。 なのは組は、ユーノの手によってベジータに勝利し生存を掴んだのである。 「やりましたね、ユーノさん!」 「こいつめ、こんな隠し玉あるんなら最初から使えよ」 敵を倒したユーノをハス太とレオリオは賞賛し、彼に近づきながら褒め讃えた。 ハス太とレオリオはユーノが強力な変身能力を持っていてそれを今まで奥の手として隠し持っていたとばかり思い込んでいた。 そうでなくとも最凶の敵であったベジータを倒したことで緊張の糸が切れたのかもしてない。 「なのはさん、桑原さん、小町さん! しっかり!」 「う……うん……エリカ……さん」 エリカは気を失っている三人の介抱に向かう。 ユーノも気になるが今は倒れている味方を優先しての判断であった。 ちょうどその時に意識が混濁状態であったなのはも正気に戻りつつあった。 なのはが目覚めるのがあと10秒早かったら、この後に起こる惨劇は防げただろう。 もしくは『参加者を怪物に変える謎の瘴気』の情報を知る小町が気を失ってなかったら、エリカが三人ではなくユーノの方にもっと疑いの目を向けていたら。 情報は知らずとも鋭い勘を持つ桑原が倒れていなければ未来は変わっただろう。 だが運命は残酷だった。 なのはは覚醒した瞬間と同時に目を見開いた。 重傷を負った仲間たち。 跡形もなく消えた強敵。 巨大フェレット型の怪物と化したユーノ。 その光景全部が、千年タクウがなのはに見せた未来そのまんまであったのだ! 「ダメ!ユーノくんから離れてーーーッ!!」 なのははユーノの傍にいる二人組に声を絞り出すように警告を発した。 それは暗黒の未来を変えるための、彼女の最後の足掻きであった。 「え?」 ……しかし、全ては遅かった。 なのはの言葉に何事かと思った二人はなのはに振り返るが、それこそが致命的な隙になってしまった。 よそ見をした瞬間に、テラカオス化進行によって敵と味方の区別がつかなくなったユーノは、二人のうち一人に牙を向き、首根っこにガブリと噛み付いた。 そして一瞬のうちに鋭い牙によって体と頭を切断させた。 ここまでで0.1秒にも満たない時間であった。 体が外れてしまった頭が地面に落ちてコロコロと私の足元まで転がってきた。 ……その首の持ち主は―― 「いやあああああああああああああああああああああ!!!ハス太くーーーーーん!!」 「ハス太……!?」 「ハス太さん!」 ハス太の首に映る表情には、一瞬で味方に殺されたがために何が起きたのか理解していない呆気に取られた表情をしていた。 邪神級の力を持つ少年のあまりに呆気ない最期と、ユーノの突然の暴走にレオリオとエリカは怒りと悲しみを覚えるよりもただただ驚愕していた。 一方、この未来を知っていて皆に話さなかったなのはの表情は、とうとう惨劇の未来を変えられなかったことにより絶望に歪んでいる。 そして怪物ユーノの視線がギロリとなのはに向いた。 「グウウ……」 「ひッ!?」 おどろおどろしい怪物の複眼に、相手が恋人であるユーノであることも忘れてなのはは腰を抜かしてしまう。 そして怪物はハス太の首のない骸をその辺に放り投げ、なのはに向けて一直線に駆けた。 「ゆ、ユーノ! やめろ! ぐあ」 「ユーノさん! うッ」 ユーノの次の狙いがなのはだと気づいたレオリオとエリカが止めに入ろうとするも、傷ついた二人では止めることも叶わず、ユーノの突進によって突き飛ばされて床に転がった。 そうしてユーノはなのはの下にたどり着いてしまった。 「あ、あああ……」 「ナノハ……」 恋人の変貌に怯えるなのはを前にしたユーノはなのはに向けて牙を向けて食い殺す。 「マモル……」 「え……? わ!」 などということはなく、口でなのは首の襟をくわえ込んだと思いきや、そのまま他の獲物に目もくれずに駆け出し、ベジータが神樹及び都庁を破壊する際に開けた穴の壁面を爪を使ってスイスイとよじ登って地上へと出て行った。 残されたのは静寂とレオリオとエリカと、まだ気絶から醒めない桑原と小町、ユーノに連れていかれる際になのはが置いていったディパックにハス太の惨死体だけだった。 「畜生! いったい全体、何が起きてんだよ」 状況の読めないレオリオが吠える。 そして冷静さを取り戻そうとしていたエリカがようやく、主催がばら撒いたと思われる瘴気のことを思い出し、口にする。 「まさかユーノさんも瘴気に当てられて……!」 「瘴気!? 神樹の言ってた奴か! それとユーノが怪物になるのと関係あるのか!」 「ごめんなさい、私が仲間に気を配りきれなかったばっかりに……!」 自分たちよりも情報を知っているエリカを問いただそうとするレオリオの視線と、情報を持っていながら兆候を目撃していなかったからとはいえ仲間が瘴気に感染発症する可能性を考慮していなかった自分にエリカは強い自責の念を覚える。 だが立ち止まってばかりもいられなかった。 こんな時こそめげるのではなく、動き続けなければいけないのだ。 「今は都庁に戻りましょう」 「ユーノを追わなくて良いのか!? 今のあいつじゃなのはの身の安全も危険だぞ!」 「わかっています。私だってそうしたいです。 ですが、私たち全員がボロボロであり気絶した桑原さん小町さんを抱えてじゃ追いかけるのも止めるのもまず不可能……ここは治療も兼ねて都庁に戻るしか――」 「いいや、おまえらはもう生きて都庁に帰れねえぜ?」 「「!?」」 突如、聞き覚えのある声が聞こえたと思った瞬間……レオリオの上半身が背後から飛んできたエネルギー弾によって消し飛び、下半身だけを残してこの世を去った。 「なッ――」 「レオリオさん!」 「下半身だけあれば良いってな、まずは一匹SATUGAIしたぜ」 レオリオの命が消し飛んだあと、嘆きたい気持ちも抑えてレオリオを殺した下手人を視界に捉えると、そこはあらゆる意味でいてはならない男がいた。 「ベジータ!! あなたは死んだハズじゃ……」 「一度の戦闘で惑星破壊規模の戦闘を行うサイヤ人を舐めるな。 今までに都市が一瞬で蒸発するような攻撃くらい何度も食らっている。 本気の必殺技だったら東京など軽く消し飛ぶが、そんなことをすれば狂信者の本拠であるビックサイトも吹っ飛んじまうからな。 そうならないように今まで威力をかなり落として撃っていたんだよ。 あのガキには驚かせられたが、俺を殺すには手加減しまくったファイナルフラッシュの倍と+α程度の威力じゃ足りなかったな」 「そんな……」 ベジータは死んでいなかったのだ。 跡形もなく消し飛んだように見えて、実は少々遠くへ飛ばされただけ。 多少の手傷と出血は負わされたものの、スーパーサイヤ人を殺すには程遠い。 「どうやらあのガキは俺が見ていない間にどこかへ行ったようだな。 能力的に俺を殺せそうな奴はいなくなってちょうどいい。 次の一撃でおまえと都庁ごと吹き飛ばしてやる」 「くッ……」 ベジータの腕に再び、気の力が宿る。 今度はエリカごと都庁ごと消し飛ばすつもりなのだ。 都庁にはまだ無傷の戦力にダオスやフォレスト・セルも残っているが、バーダックよりも遥かに格上なスーパーサイヤ人を倒せる保証はない。 さらに地下にいるベジータの攻撃を察知できているかまでは不明であり、フォレスト・セル辺りは生き残れても魔物と対主催の希望である世界樹や他のメンバーはアタルやレオリオのように消滅させられる危険がある。 対してエリカは手持ちポケモンを失い、ベジータの攻撃を阻止できるだけの戦力は持っていない。 今度こそ最悪の状況、万事休す。 エリカも今度の今度こそ終わりを確信する。 「『距離を操る程度の……能力』&死価『プライス・オブ・ライフ』!!」 エリカが諦めかけたその時、一人の女傑は目覚め、立ち上がり。 ベジータに向けて不意打ちによる能力の付加によって回避絶対不可能の無数の銭弾幕を放つ。 「うおおおおお!?」 今までは届かなかった弾幕は全てベジータがユーノによって付けられた傷口に吸い込まれていき、食い込ませる。 いかなスーパーサイヤ人でも体の内部までは鍛えられないという判断だろうか? 硬すぎる肌と筋肉を避けた体内攻撃により、小町による攻撃で初めてベジータにダメージが入り込む。 「こいつ傷口に攻撃を! だがこの程度でスーパーサイヤ人が死ぬと思うな!!」 確かにダメージは入ったが、ダメージそのものは微々たるもの。 殺すには威力が足りなすぎる。 「いいや、アンタはここで死ぬんだよ。死神の剣でね」 「!?」 しかし相対する小町は冷徹な視線をベジータに向けていた。 実力差は蟻と象並の差があり、自分にボロボロにされた相手のものでありながら、恐れを抱かずに相手を殺そうとする視線。 ベジータはその視線に、金髪キャラに睨まれる以上の恐怖を一瞬でも感じ、ゾクリと脊椎を震わせた。 「――死(ころ)せ 『神鎗』」 そして死神によって刑が執行された。 次の瞬間、ベジータの全身に耐え難い激痛が走り、口や鼻や目などのという穴という穴から血を噴き出した。 「がはあああああああ!!」 「ベジータが!?」 ユーノの攻撃ですら倒せなかったベジータが、悶え苦しんでいた。 その彼の苦しみ方はポケモンバトルで、特に状態異常を得意とする植物系ポケモンを扱うエリカには見覚えがあった。 「これは毒! それもかなりの猛毒!」 「そうさね。神鎗には奥の手として内部に死に至る強力な毒が仕組まれている。 刀の一部を相手の体に植え込み、解合すれば発動するって仕組みさ」 「き、貴様、さっきの銭の中に刀の一部を……!」 「ああ、銭はただのカモフラージュ。傷口を通してアンタの体内に神鎗の破片を入れさせてもらったよ」 ユーノが開けた傷口。小町はそれを利用してベジータの体内に銭弾幕に混ぜた砕けた神鎗の破片を侵入させた。 これまではベジータの高すぎる防御力によって体内に侵入させる前に阻まれるが、ユーノが手傷を負わせたことで、破片の体内侵入が可能になったのだ。 「直接攻撃が効かないなら毒ならどうだと思って咄嗟にやったことで、毒が効かない相手ならあたいらは詰んでいたが…… どうやらサイヤ人は高い戦闘力と引き換えに毒への耐性がないみたいだね」 「お、おのれぇ~、ごふッ!」 かつて戦った仲でもあるレストには状態異常に無敵の耐性を持つ故に神鎗の猛毒を使っても効果はなかっただろう。 同様に強敵のセルベリアは抗菌作用を持つラグナイトに守られているので効果は薄かろう。 しかし毒や病気に耐性を持っていないサイヤ人のベジータにはまさにクリティカルヒットだったのである。 小町の必中を可能にさせる能力、神鎗の猛毒、ユーノがつけた傷、その三つの内のどれか一つでも欠けてたらこうはならなかった。 「クッソたれ~! 死ぬ前におまえらだけでも道連れにしてやる!」 毒による死を確信したベジータは、最後の抵抗として小町とエリカだけでも殺そうとする。 毒のせいで気が上手く練れないのでギャリック砲以上の強力な技は使えない。 そのため、無数のエネルギー弾を放つ弾幕攻撃、通称グミ撃ちで二人を殺そうとする。 しかし小町はエリカを抱えた後、冷静にベジータの弾幕を躱していく。 「こちとら幻想郷の弾幕ごっこで鍛えてんだい! 満身創痍のアンタの弾幕じゃ、止まって見えるんだよ!」 「クソッ! 大人しくくたばりやが「くたばるのはテメーの方だ! ベジータァーーーッ!!」 さらにベジータは毒と攻撃を躱される苛立ちにより気の察知能力が弱まり、それによって気絶から醒めた桑原の側面からの奇襲を許してしまう。 「ぐああああああ!!」 なんでも両断できる桑原の次元刀によってベジータの両腕と両足が切断された。 今まではベジータに掠らせることもできなかったが、今度は当てられる状況下だったために次元刀が効果を発揮し、スーパーサイヤ人の高い防御力を無視して切り裂いたのである。 「ハス太、レオリオ、すまねえ……だが一矢報いたぜ……う」 桑原が目覚めた時にハス太とレオリオの死体が目に飛び込んだために二人がベジータに殺されたと思い(ハス太は違うが)怒りのままに桑原はベジータに斬りかかった。 その直後に疲労とダメージにより再び気を失って地面に倒れ伏すが、彼の一閃によってベジータは戦う手段も逃げる手段も失ってしまった。 「がふッ……俺の…何が間違っていたんだ……教えて、くれ……」 とうとうベジータにも死の瞬間がきた。 なぜ愛する妻が死なねばいけないのか、なぜ自分より格下の相手に負けて虫けらのように毒にもがき苦しんで死なねばいけないのか、なぜクラウザーさんの歌を聞く願いは届かないのか疑問を投げかける。 だが答えは返ってこない。 毒をも癒すフェイスフラッシュの持ち主で、疑問を答えてくれる冷静で的確な判断力を持った仲間はつい先ほど自分が裏切って殺してしまったのだから。 せめて金髪にビビらず、人に流されず、妻の死にもめげず、クラウザーさんの歌に逃げない強い心を持っていたら運命は変わったかもしれないが、もはや後の祭りである。 「ブル…マ……」 最期に愛する妻の名を言い残し、サイヤ人の王子にしてZ戦士、誇り高き超人血盟軍の一員……弱き心のせいでその誇りも絆も全て捨ててしまった狂信者は逝った。 【ベジータ@ドラゴンボール 死亡】 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「勝てたか……だけど」 小町たちはスーパーサイヤ人に勝利した。 だが小町が周囲を見るととても喜べる状況ではないのがわかる。 エリカと桑原は重傷、ハス太とレオリオは死亡、ユーノは怪物と化しなのはをさらってどこかへ消えた。 自分もアタルによって回復した分が帳消しになるほどの手傷と消耗を負ったのだ。 ここにいない日之影やアルルーナも負傷し、神樹は再び死地に立たされている。 狂信者軍団と貴虎・マーラによる襲撃でただでも大打撃を受けたのに、ベジータ一人のせいでさらに打撃を被ることになってしまった。 仲間を誰ひとりとして失わないつもりで戦っているが、現実はこの有様である。 「すまないね、神鎗。今までありがとな……」 これまで小町のメインウェポンだった神鎗もベジータに折られたばかりに柄しか残っておらず、斬魄刀を直す技術のない小町では修復もできなかった。 ある意味相棒であるとも言えた神鎗の喪失に小町は憂いの感情を覚える。 そんな彼女たちにカマキリに似たFOEが現れた。 地震でダンジョンの構造が変わってなかなか地上の世界樹に戻れずダンジョンを彷徨っていたアイスシザーズである。 仲間の出現に小町は喜ぶが、どうやら仲間は彼一匹しかいないようであり、状況を読めてなさそうな雰囲気からしてあかりたちがよこした救援ではなさそうだ。 『死神! 大丈夫か!』 「アイスシザーズか!」 『騒ぎを聞いて駆けつけてみれば、この惨状は一体……そこにいる和服の女ととうもろこしみたいな頭をした男は誰だ?』 「大丈夫、この二人は仲間だ。 地下にずっといたアンタは知らないだろうがレストとダオスもエリカのことは知っている」 『そうか……』 「それよりアイスシザーズ、すぐにでも地上の世界樹に戻ってエリカと桑原の治療を行いたいんだ。その大きな背中を貸しておくれ」 『人間は好きではないが、同盟の者ならいちおう信用しよう。 死神、敵がまたこないとも限らない。早く人間たちを背中に乗せるんだ』 とにかく重傷を負ったエリカと桑原を安全地帯である世界樹に運ぶ必要があった。 エリカの話によると自分が気絶している内に怪物化したユーノと拐われたなのはの行方も気がかりだが、アイスシザーズ込みでもユーノを止められる気がしないのでそちらは断念する。それよりもとにかくダオスや他の仲間にこの事を報告すべきだろう。 小町はアイスシザーズの背中に気絶した桑原を背負わせ、そのあとに続いてエリカも乗った。 それだけでなく…… 「小町さん、それは……」 「仲間をこんなところに置いていくのは寂しいだろ?」 頭と首が別れたハス太と下半身しかないレオリオの亡骸を小町は抱えていた。 死んだ彼らも弔ってやるつもりなのだ。 「アイスシザーズ、死んでる奴は背中に乗せちゃダメか? ダメならあたいが連れて行くが」 『……死者を弔いたい気持ちは俺にもわかる。良いだろう、乗せていけ』 「いいってさ、エリカ」 「本当にありがとうございます、小町さん、アイスシザーズさん……」 小町とアイスシザーズの厚意にエリカの目は涙で潤んだ。 そして二人の亡骸と、ついでになのはが置いていったディパックを回収すると、小町たちは地上の世界樹に向けて出発した。 そこには両手足をもがれたベジータの死体だけがポツンと残った。 【二日目・12時00分/東京・都庁近辺】 【小野塚小町@東方Project】 【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、首輪解除 【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH(破損して柄のみ) 【道具】基本支給品一式 【思考】基本:もう仲間を誰も失わない為にカオスロワを終わらせる 0:ひとまず桑原とエリカを連れて都庁へ 1:殺し合い打破のためにも都庁には協力する 2:もう二度と仲間を置いて行こうとしない 3:幽香及びバーダックの名が放送で呼ばれたことに疑問 4:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね 5:超人達からの情報を鵜呑みにはしないが、一応ダオス達に伝える 6:世界に二度目の大災害が起こるだって? 7:神鎗に変わる強力な武器が欲しい ※飛竜たちと情報交換して、主催達が九州ロボにいることを知りました。 ※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました) 【エリカ@ポケットモンスター】 【状態】右腕潰傷、ダメージ(大)、深い悲しみ、歪みし豊穣の神樹及びアルルーナのトレーナー 【装備】なし 【道具】基本支給品一式、モンスターボール×2(神樹とアルルーナ) 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0:ユーノさんが怪物化したなんて…… 1:世界樹に集まっている人にも世界滅亡の未来を伝える 2:ポケモンと一緒に生き残る 3:珍しい植物タイプはゲットしておく 4:世界樹の軍勢を手助けする 5:死なないで神樹……! 6:ハス太くん、レオリオさん、モジャンボ、キノガッサ……ごめんなさい 【桑原和真@幽遊白書】 【状態】気絶中、ダメージ(大)、疲労(大)、深い悲しみ 【装備】なし 【道具】支給品一式、大量の食糧 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0:(気絶中) 1:ハス太、レオリオ、すまねえ…… ※ユーノの変貌を把握していません 【アイスシザース@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】 【状態】ダメージ(小)、疲労(小) 【装備】無し 【道具】ちりとり、支給品一式、タイムふろしき@ドラえもん、ガソリンの入った一斗缶、医療道具一式、ノートパソコン、ハス太とレオリオの死体 【思考】 基本:都庁を住処にしたモンスター達と協力して生き残る 0:小町たちを守るべく護衛しながら都庁へ撤退 1:雷竜様(雷鳴と共に現る者)の意思を引き継ぎ、都庁の世界樹は死んでも守る 2:魔物を奴隷にする人間は嫌いだが、同盟の人間なら一応は信頼する 3:デスマンティス達の裏切りに未だにショックを受けてるが、戦いに私情は挟まないようにする 4:雷竜様だけでなく多くの仲間までやられるとは…… ※貴虎の持ち物であったノートパソコンにはヘルヘイムの情報が載っています 【ハス太@這いよれ!ニャル子さん 死亡】 【レオリオ・パラディナイト@HUNTER×HUNTER 死亡】 【日之影空洞@めだかボックス】 【状態】ダメージ(大)、首輪解除、神樹に挟まれて身動き取れず 【装備】己の拳 【道具】支給品一式 【思考】基本:主催者を倒す 0:こまっちゃんとエリカは無事か? 1:仲間を守る 2:混沌の騎士が遺した謎を解く 3:大災害による世界の滅亡を阻止する 4:↑の全部やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。 5:大災害と怪物作り(テラカオス)……何か因果を感じるんだが 【東横桃子@咲-Saki-】 【状態】気絶、首輪解除、深い悲しみと怒り、混乱 【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、野球のユニフォーム 【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具 【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる 0:気絶中 1:加治木先輩を殺した拳王連合は絶対に許さない 2:時間があればスマホを使ってネットで情報を探る 3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き 4:世界が滅びるなんてそんな…… 5:超人はもう殺す 【黒子テツヤ@黒子のバスケ】 【状態】健康、首輪解除、冷静 【装備】ウィンチェスターM1912 【道具】死出の羽衣@幽々白書 【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる 0:都庁から応援を呼ぶ 1:友人たちと生き残るためにも、都庁に協力する 2:空気中に漂う物質への対処法を考える(世界樹が有力?) 3:狂信者には絶対に負けません 4:世界の滅亡ですか……流石に驚きました 【赤座あかり@ゆるゆり】 【状態】健康、首輪解除、深い悲しみ 【装備】エンシェントソード@Minecraft 【道具】マムルの肉@風来のシレン 【思考】基本:仲間と一緒にカオスロワを終わらせて主人公らしく大活躍! 0:都庁から応援を呼ぶ 1:混沌の騎士、亡くなった友人達の分も頑張る 2:まどかと同じく、人間と魔物の共存に賛成 3:オオナズチ以外の都庁のモンスターの背中に乗りたい 4:みんなの力で世界の滅亡を阻止する! 【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】 【状態】ひんし、幹が半分に折れている、エリカのポケモン 【装備】なし 【道具】支給品一式 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0 (意識混濁) 【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】 【状態】ダメージ(中)、深い悲しみ、エリカのポケモン、神樹に挟まれて身動き取れず 【装備】なし 【道具】支給品一式、不明品 【思考】基本:雷竜達の遺志を継ぎ、世界樹を守る 0 お姉さまはご無事なの!? 1 お姉さまと世界の滅亡を阻止する 2 拳王連合及びその協力者は皆殺し、絶対皆殺し ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ショッピングセンター、渋谷109。 かつて二人のテラカオス候補者もとい食人鬼の男女が一時滞在していた施設である。 そこには今、テラカオス候補者の男と、彼の怪物化を防げなかった一人の女がいた。 ユーノ・スクライアと高町なのはである。 「ぐ、ぐ、グアアアアアアアア!!!」 「ユーノくん!?」 なのはを拐いつつ地下から渋谷109内まで逃げ込んだユーノだったが、そこで大きな雄叫びをあげたかと思いきや、見る見るうちに小さくなり、怪物フェレットの姿から元の人間の姿に戻った。 丸裸にハス太を殺した時に浴びたのであろう返り血で体は汚れていた。 表情もまた、自身の体の変貌や暴走していたとはいえ仲間を自分の手で殺めてしまったことに、未だに信じられない表情をしていた。 そんな彼になのはは涙を流しながら抱きついた。 とにもかくにもユーノに謝らなくてはいけない……そんな罪の意識がなのはを支配していた。 「なの、は……僕はいったい……僕の体はどうなってしまったんだ!?」 「ユーノくん、ごめんなさい……みらい、変えられなかった……」 混沌の力に翻弄されていたとはいえ、怪物となり仲間を殺めてしまったユーノ。 一つの未来は信じず、そしてもう一つの未来は恐れたばかりに最悪の未来に進んでしまったなのは。 二人は意図せず罪人になってしまった…… 【二日目・12時00分/東京・渋谷109】 【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】 【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、19歳の身体、混乱、深い悲しみ 【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王 【道具】なし 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0:ごめんなさいユーノくん…… 1:死んでしまったヴィヴィオたちのためにもこの殺し合いを終わらせる 2:ユーノ君がいれば何も怖くない……と思っているけど…… ※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています ※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました。 ※未来の自分が使っていた技の一部が使用可能です ※レオリオの死をまだ把握してません 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、全裸(血まみれ)、19歳の身体、混乱、テラカオス化進行度(大) 【装備】なし 【道具】基本支給品一式 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0:僕の体に一体何が!? 1:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい 2:大災害の情報を集める 3:野田総理の死の原因を探りたい 4:なのはを悲しませた主催者たちは絶対に許さない 5:僕の手でハス太を殺したというのかよ……! ※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました ※PSP版の技が使えます ※怪物化(テラカオス化進行)に気づきました ※首相官邸にて、いくらか主催陣営の情報を手に入れた可能性があります ※後ろの初めてを奪われる未来が存在するようです ※テラカオス化進行によって巨大フェレットに変身する能力を得ました あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます ただし現状では変身すると暴走状態に陥り、敵味方に関係なく襲い掛かります ※レオリオの死をまだ把握してません
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/165.html
フェイトの地雷を踏むエリオ 作者: ID tTVnzd4H 14-597のつづき かくしてユーノに食事まで(ワイン二瓶空っぽにして)振舞ったアルビーノ家。 ルーテシアからは『人を困らせて遊ぶのは駄目』と宥められている内に一本の電話が掛かる。 相手は、メガーヌの腐れ縁にして悪友のクイント・ナカジマであり、用件も重ねて談笑話が続いていた。 <ちょっとメガーヌ。またスクライア君の事、からかって遊んだんだって?> 「あら?私はただ事実を申しただけですわよ。もうちょっとノリがよくて誘惑の駆け引きとか憶えたら完璧なのにね……」 <やめときなさい、うちの子達泣かすような片棒になりたくないわよ。はあ、ゼスト隊長一筋だった頃の純粋な貴方は何処に言ったのかしら……ルーちゃん睨まれても知らないわよ> 「ご心配なく。アノ子も知らない内に女の戦いに身を焦がす身。私の気持ちもわかってくれるわよ」 <………そっちの方が余計に心配ね。くれぐれも火種にならないようにね。リンディさんからにらまれそうだわ> 「火種だったら、そちらのスバルちゃんやギンガちゃんが作りそうで怖いわ。確か家庭教師してもらってるんでしたっけ?」 <ギンガが大学志望ですからね。言っておきますけど、家とスクライア君は健やかなる愛と生活が溢れていますからね、おほほほ> 「はあ、ゲンヤ君には怖くて聞かせられないわね。本当に惚気られると反応に困りますけどね。とにかく用件の方は」 ……一方でこちらはハラオウン家。 暖かな食事と会話が弾むはずの家族団欒の一時の筈だが…… 「ねぇ、フェイトさん。ユーノ先生とルーのお母さんって付き合ってるんですか?」 などというエリオの爆弾発言のせいで緊迫した空気が漂う爆心地とかしていた。 (あううう、やっぱりストレートすぎましたかね……) (直球ど真ん中デッドボールさ!一体何を見たんだいエリオ、キャロ!) (で、ですからルーちゃんのお家で遊んでたら、メガーヌおば様とユーノ先生が一緒に帰ってきたんですよ。そしたら……) (何だよそれ!どうしたもこうしたもないさ!フェイトにユーノ関係の話は地雷だって何回もわかってるだろう) (落ち着きなさいアルフ、まったくフェイトも昔から感情表現が下手というか、思いっきり甘えればいいものを) (リニスさん、それは無理難題かと。アリシアさん、フェイトさんのお姉さんなら、お願いですから何とかして下さいよ!) (あのね。私がどうのこう言っても今のフェイトの耳には戦場の龍に説法で聞きはしないって。はぁ後からユーノ呼び出すしかないかな……) 以下、念話で繰り広げられる山猫の説教に耳を傾けるお子様二人。 呆れるアルフと妹を宥める手を考えるアリシアの横では、本日のオカズのチキンクリームシチュー……を食べるスプーンをからからと廻すフェイトの姿があった。 当然の如く、目の焦点はあってなく宛らフェイトの 「うふふふ……本当にユーノったら人の気もしらないで……でも人助けしないユーノなんて考えられないし、でも綺麗な女の人ばかりなんて……はぁ、私が負けちゃいそうだよ」 14スレ SS フェイト ユーノ
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/435.html
Reconquista(前編) ◆HlLdWe.oBM その駅には人の気配というものがなかった。 駅という建物は古今東西交通の要所であり、また移動の発着点である。 だから人が移動の手段を求めて駅に集まるのは当たり前の光景のはず。 だがデスゲームの会場内に唯一設置されたE-7の駅、そこに人の気配はまるでなかった。 人の気配がないどころか隣接している駅員の詰所は落雷に見舞われたかのように無様な半壊した姿を晒している。 しかも黒焦げになった死体が一つオプションとして置かれている始末。 見るに堪えない有様だが会場内を見渡すと、まだ他の破壊痕に比べればマシな方だ。 だがマシな方とは言うものの見る人が見れば早く立ち去りたいという考えが真っ先に浮かびそうな場所に成り果てている。 実際少し前にここを訪れた人物は駅の惨状を目の当たりにするや手早く用事を済ませて去って行った。 現在その訪問者は駅から少し離れた場所にある建物の周りを歩いていた。 その建物は一般的な大型の倉庫のような外観をしていて、灰色の金属製の壁が周囲の閑散とした雰囲気と合っていた。 またその閑散とした雰囲気は訪問者の外見と相まって一種ミステリアスな雰囲気を感じさせていた。 件の訪問者――首元の赤いリボンと左胸の校章が印象的な尊秋多学院の制服を着こなす少女――ブレンヒルト・シルトはゆっくりと歩いていた。 ホテル・アグスタを後にして参加者との接触を期待してF-7の地にブレンヒルトが着いたのは今から2時間ほど前の事だった。 到着して早々にF-7一帯の荒廃ぶりに驚きつつも誰かいないかと探してみたが、結局誰とも会う事はなかった。 そして捜索も一段落した時にブレンヒルトは北の方角から煌めく光と轟く音という二つの異変を感じ取った。 それはエネルが駅員詰所に放ったエール・トールの雷光と雷音だったが、そうとは知らずにブレンヒルトは異変の正体を探るべくそこに向かって行った。 だが駅に着いた時にはもう全てが終わった後でエネルもどこかへ移動した後であった。 唯一残っていたのはエネルに黒焦げにされた矢車の無惨な死体だけという状態だった。 ブレンヒルトの目的はここからの脱出であるから本来は矢車の死体になど用はない。 だがここを脱出するためには首輪を外すという関門を無視するわけにはいかない。 ブレンヒルト自身に首輪を解析して解除するスキルがない以上誰かに外してもらう必要があり、その助けとして首輪のサンプルは必要になってくる。 だからこそブレンヒルトは矢車の惨殺死体に吐き気を覚えつつも、それを抑えて死体から首輪を頂戴したのだった。 そして用が済んで駅から移動しようとした時にふと線路の先に何か建物がある事に気付いて今に至る。 最初に全体を眺めた後は四角い建物に沿って歩きながら、時には壁を叩いてみたり、時には距離を取って眺めてみたり、時には蹴ってみたりしていた。 軽くツインテールで結ばれた灰色に近いプラチナブロンドの髪を風で揺らしながらブレンヒルトはその作業を続けていた。 風に靡くのは紺を基調としたブレザーとそれとは逆に薄い紫色のスカートも同様である。 因みにバリアジャケットを解除しているのは魔力もとい賢石の消費を抑えるためである。 もちろん何かあれば即座に展開する気でいるが、無限ではない賢石を節約できる時にはしておくに限る。 時折壁を叩いたり蹴ったりする音以外に聞こえるのは足元の砂利を踏みしめる音だけ。 いつまでも続くと思われる程に単調なリズムで刻まれる音、音、音、音、音――そしてそれは唐突に止んだ。 音の発生源であるブレンヒルトが足を止めたからだ。 「……ねえ、バルディッシュ。一つ意見を聞きたいんだけど」 『…………』 建物の周囲を一周したブレンヒルトは足を止めると右手に乗せたバルディッシュに問いかけた。 問いかけられた三角形の宝石型をした待機状態の身であるインテリジェントデバイスは相も変わらず寡黙だった。 バルディッシュの沈黙を肯定と取ったブレンヒルトは次の言葉を発した。 「この私の目の前に建っている倉庫みたいな物体は何かしら?」 『…………車庫ですね』 幾らかの沈黙の後に得られた返答をブレンヒルトは無表情で受け取った。 その表情から感情を窺い知るのは難しく、彼女が何を思っているのかは一見して判別し難かった。 ブレンヒルトは口を閉ざして沈黙のままでいたが、しばらくすると再び手元のバルディッシュに問いかけた。 「もう一度聞くけど……この私の目の前に建っている倉庫みたいな物体は何かしら?」 『……車庫だと思われます』 「バルディッシュ、あなたがデバイスじゃなかったら今頃酷い目に遭っていたわよ」 『どういう意味でしょうか』 「もしあなたが私の使い魔である黒猫だったら即行で蹴って蹴って蹴って踏んで蹴って蹴って蹴って最期に尻を――」 『……そこまでする理由は?』 「ん、理由? なんでわざわざ言わないといけないのかしら」 ブレンヒルトはバルディッシュからの問いかけを勢いではぐらかしておいた。 だが一度目の問いかけから場所を移動していないのでは最初の答えと今の答えが変わる訳はない。 ブレンヒルトもその事は重々承知していた。 ではなぜこのような質問をした挙句にこの場にはいない黒猫へのお仕置きを画策しているのか。 それは別の返答を期待していたが当たり前の事しか答えなかったデバイスに少しイラついたというものだった。 当然そのような些細な事を敢えて公言する気などなく若干の鬱憤を溜めるだけに収めていた。 これが気兼ねなく接する事ができる黒猫ならいつものように本気でお仕置きを加えていたところだ。 「でもこれが車庫だというのは間違いなさそうだけど、何なのかしらこの注意書きは?」 目の前にある建物が電車を保管する車庫である事はブレンヒルトも一目見た時から分かっていた。 問題はその車庫の唯一の出入り口である頑丈そうな金属製の扉の傍に一つの注意書きを記した立札。 そこには『残り15人になるまでこの扉は決して開かない。もし無理に開けようとすればそれ相応の罰を与えようではないか』と書かれていた。 念のために車庫の周囲を一周してみたが、車庫の中へ入るにはその立札付近の扉しか見当たらなかった。 壁を叩いてみたり蹴ってみたりしても何も分かる事はなかった。 「普通に考えたら電車だろうけど……本当にそうなのかは分からないわね」 ブレンヒルトは眼下に伸びる線路を一目見てから視線を上に移動させて引き戸型の車庫の扉を眺めた。 目の前の車庫は近くの駅の大きさに比例してそれほど大きくないが、それでも電車の1両や2両は楽に入るぐらいのものだった。 だが車庫の中に電車があるとは限らないとブレンヒルトは思っている。 まず「15人」という指定をしている以上その時までここを封印する理由があるはずだ。 しかも「もし無理に開けようとすればそれ相応の罰を与えようではないか」とまで書かれている。 (罰というのは……最悪首輪の爆破、と考えておきましょうか。問題は車庫の中身ね。 私の予想通りなら中身は恐らく強力な兵器、それも単体で状況を変えてしまう程の代物かしら) ブレンヒルトがそう考えるのには当然理由がある。 残り15人とはつまりは全体が4分の1にまで減った状態だ。 そこまで生き残った者達はおそらく誰もが一定の強さに達している者が大半だろう。 だが中には逃げ回って生き延びている者もいるはず。 恐らくこの車庫の中身はそういう者に向けて設置された物だろう。 車庫は駅の一部とはいえ少し離れた場所に建てられているから目に付きにくい。 逃げ回っている者は自然と色々な所を巡る事になるので車庫の存在に気付く可能性は高い。 「とりあえず残り人数が15人になったらまた来る事にして、そろそろ他の参加者と会いたいところ……ん、あれって?」 次の行く先を考えていたブレンヒルトはそこでふと何かに気付いたのか車庫の影に素早く身を隠した。 自分の身が隠れた事を確認して急いでデイパックから双眼鏡を取り出し市街地の方へ向ける。 目的の方角へ双眼鏡を向けた時、彼女の目が捉えたのは青い金属製の浮遊物体だった。 ▼ ▼ ▼ その病院には人の気配というものがなかった。 病院という建物は古今東西治療の場として必要不可欠な建物である。 だから人が治療の手段を求めて病院に集まるのは当たり前の光景のはず。 だがデスゲームの会場内に唯一設置されたH-6の病院、そこには人の気配がまるでなかった。 人の気配がないどころか病院は北側を中心に爆撃を喰らったかと錯覚するほど無様な半壊した姿を晒している。 しかも内部には死体が4つもあり、生者の希望となるはずの場所は皮肉にも墓場のようになっていた。 駅よりも見るに堪えない有様であるが、会場内を見渡すと更に酷い破壊痕を見せる場所もある。 だがさすがにこのような廃墟状態の病院では正直近づきたくないというのが一般人の反応だろう。 だが今ここに到着した人物は一般人ではなく、そんな病院の惨状に恐れを抱かずに寧ろ焦りを感じていた。 「……姉は、取り返しのつかない事をしてしまったのか」 そう嘆いているのは戦闘機人ナンバーズのⅤであり右目を眼帯で覆い隠した銀髪の小柄な少女、チンクである。 明日香、ユーノ、ルーテシアと共に行動していたチンクが現在一人でいるのには訳がある。 もともとチンク達が病院を目指していたのは2つの目的があったからだ。 その目的とはレリックの捜索、それにチンクの姉妹であるクアットロとディエチとの合流である。 だがチンクが二人に病院に集まるように指示した時間帯が『朝まで』だった事が少し問題になった。 約束の時間に間に合うようにそれなりに急いで移動し続けていたが、H-7まで来たところでそれは断念せざるを得なくなった。 明日香とルーテシアの体力が限界に近づいたからであった。 さすがに戦闘機人のチンクや自ら一切歩いていないユーノは別として体力が一般人程度の明日香とルーテシアにはこれ以上の強行軍は無理があった。 そこで相談した結果、まだ余裕のあるチンクだけが病院に先行して他の3人は後から遅れて病院へ向かう事にしたのだった。 その際に各自の持っていた荷物を少し整理する事になった。 その結果、シェルコートとラオウの兜をチンクに渡す代わりに、ガジェットは三人の元へ置いていく事になった。 シェルコートはチンクの元々の持ち物だから、ラオウの兜は一応ランブルデトネイターに使用できるからという理由からだった。 ガジェットを置いておく事にしたのは万が一レリックを持った人物を発見したら確認しておくためだ。 この時点でレリックの反応は病院に戻っているとはいえチンクと行き違いになる可能性はある。 そうなった時のためにせめて残った3人で交渉、そこまでいかなくても持ち主の姿を確認しておけるようにという措置だ。 さらにルーテシアの本来の服装が近くに運良く乾いた状態で放置したままだったので、この機会に回収して余ったバニースーツはチンクが着る事になった。 もちろんこれは以前よりいつまでも下着なしで下がスースー丸見えのままは女性として不味いと思っていた明日香の進言だった。 これでチンクの心配は大分減り、しかも二人にはユーノが付いている。 時空管理局無限書庫司書長ユーノ・スクライア。 チンクがその名前を思い出したのはユーノに会ってからしばらくしての事だった。 どこかで聞いた事のある名前だと思っていたが、まさか司書長がフェレットに変身しているとは思いもしなかった。 長らく放置されていた無限書庫を使える状態にまで整備して、若くして司書長の座に収まった青年の名はそれなりに有名なものだった。 しかもユーノ本人も魔導師としての腕はそれなりに確からしい。 それだけの実力があれば自分が離れても間違いは起きにくいはずだ。 チンクはそう判断した。 そして戦闘機人ならではの運動性能で一人先行して無事に放送前に病院に着いたのがついさっきの事である。 だがチンクはそこで目の当たりにする事になった――集合場所に指定した病院のあまりに無残な姿を。 「まさか、あのメッセージをクアットロやディエチ以外の誰かに読まれた? とにかく考えるのは後だ。今は――」 半ば廃墟と化した病院に人の気配は全く無かった。 それでも僅かな希望を胸に抱いてチンクは先に到着している、もしくはこれから到着するかもしれない二人を探し始めた。 病院内に入ると視界には外観以上の惨状が否応なしに飛び込んでくる。 崩れたコンクリート製の壁、剥がれて散らばる床のタイル板、使い物にならなくなった診察台や長椅子。 それらが散乱する床に気を付けながらチンクは唯一残っている左目の解析システムをフルに稼働させて捜索を続行する。 探し始めて数分もしない内に男の死体と女の死体の計2つも見つけた事からもここが如何に危険な場所か思い知らされる。 どちらも野晒しの状態で男の方は傷痕があまりに激しすぎて生々しく、女の方は首と胴が別かれて首輪がなかった。 それはミリオンズ・ナイブズと神崎優衣の骸だったが、二人と面識のないチンクとっては名も無き死体でしかなかった。 もしかしてディエチとクアットロもこんな状態なのではという不安が溢れ、チンクの足は無意識の内にかなりの速足になっていた。 そして、とうとう見つけた。 「……ディ、エチ……ぁ……ぁあ……」 正面階段の階下、そこにチンクの妹であるナンバーズのⅩである寡黙な砲撃手ディエチはいた。 普通なら真っ先に気付けそうな場所だが、裏口から入ったチンクにはすぐ分からなかった。 だがようやく見つける事ができた妹に対してチンクに喜びなどなかった。 チンクの目の前に現れたディエチは既に物言わぬ骸と化していたからだ。 束ねられていた綺麗な茶髪はさんばらに振り乱れていて、さらに全身は鋭い刃物で切り裂かれたように幾筋もの傷が走っていた。 右手には身体同様にズタズタに引き裂かれた専用武器のイノーメンスキャノン、そしていつも髪を結ぶのに使っていた黄色いリボン。 お世辞にも死体の状態は良好とは言えないが、それなのにチンクはある一点に目を引きつけられていた。 それはディエチの死に顔。 ディエチの死に顔はこんな状態にもかかわらず、すごく満ち足りた顔をしていた。 まるで何かをやり遂げた達成感に溢れるような表情をしたままディエチは静かに眠っていた。 「……ゆっくり、眠ってくれ」 チンクはそう言い残してディエチの死体に別れを告げた。 あの満足げな顔を見たら他に言う言葉など見つけられなくなったからだ。 そしてチンクはそのまま何かを振り切るように階段を上がり始めた。 『さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ』 そしてタイミングがいいのか悪いのか最初の放送が始まった。 放送の内容は禁止エリアと死者の発表、そしてアリサ・バニングスの蘇生劇。 当然ながら「ディエチ」の名前も呼ばれた。 どこかで男の声が聞こえたような気がしたが、今のチンクにはどうでもよかった。 ふと何気なしに前を見るとドアが破壊されていた病室があったので覗いてみると、そこにも見知った死体があった。 それはこの地で出会った「もう一人の高町なのは」のものだった。 「やはりクローンでは生き延びる事は無理だったか」 これでさっきの放送で「高町なのは」の名前が呼ばれた事も納得がいった。 時空管理局でも指折りのエースとして名を馳せる「高町なのは」ならともかく、クローンの「高町なのは」なら死んでもおかしくない。 そんな事を考えながらもチンクはどこか上の空だった。 だからチンクはすぐに気付く事が出来なかった――自らの身に迫る全てを飲み込む光に。 ▼ ▼ ▼ H-8の平野を西に向かって二人と一匹が移動している。 二人というのは金髪に端正な顔立ちの天上院明日香と紫髪に幼い顔立ちのルーテシア・アルピーノ。 一匹というのは栗色の艶やかな毛並みをした可愛らしいフェレット……に変身中のユーノ・スクライア。 二人と一匹もとい三人は先行するチンクと別れてから少しの休憩を経た後に病院への移動を再開していた。 だが移動中の三人は終始無言を貫いていた。 (なんと言うか、気まずいわね) 明日香はチンクと別れてからずっとそんな事を思っていた。 ただでさえ隣にいるのが無口なルーテシアとフェレットだから会話が弾まないのは仕方ない。 記憶に残るまともな会話と言えば、ここに来てから今まで何をしていたかぐらいだ。 それでも何とか会話の機会を探っていた明日香だが、努力に反して放送後は三人の雰囲気が重くなる一方だった。 確かに死者の名前が呼ばれて気が落ち込むのは十分に分かる心情だ。 (でも……どこか現実味がないのよね) 明日香もここが殺し合いの場という事は分かっているつもりだが、放送で死者の名前を発表されてもどこか他人事のように聞いていた。 それはテレビを通して戦争の現場を見ているような、映像を見て何かしら思う事はあるが何処か遠い所での出来事だと割り切ってしまうような、そんな感じだった。 それはある意味ごく普通の平和な世界で暮らす一般人の思考そのものだった。 そして明日香がここに至っても未だに実感が持てないのもある意味仕方のない事であった。 ここまで明日香は直接殺し合いに巻き込まれる事はおろか他者の戦闘や死体さえも目にする事なく生き延びている。 唯一ボロボロになったチンクに会った事ぐらいがこの場の凄惨さを実感できる機会だった。 だがそのチンクも今では完全に回復したので今一つ殺し合いという実感が湧かなかった。 元々いた世界でも命の危険はあった事はあったが、そんな頻繁に起こる事はなく大部分は平和なアカデミア生活の日々。 寧ろ実体験だけで言うと今の状況の方が食料の心配がないだけ異世界に飛ばされた時よりもマシだとも思えてくる。 また放送で明日香の親しい知り合いが誰も呼ばれなかった事もその一因になっている。 所詮なのはやエリオやティアナといった面々は出会ってからそれほど時間も経っていない間柄である。 これが十代やレイや万丈目なら話が別だが、幸か不幸か全員放送の時点では無事だ。 これらの要因が明日香の心中に安心という惰性を生んでいるのだ。 その事に明日香自身はまだ気づいていない。 だからこそ放送の内容にそれほど衝撃を受けずにいた。 (それにあのアリサって人を生き返らせたのだって、ソリッド・ビジョンで説明が付くのよね) ソリッド・ビジョン、所謂立体映像という技術。 デュエリストにとっては常識であるその技術を使えばさっきのアリサの復活も簡単に説明が付いてしまう。 最新の技術で画面越しならあれくらいのものを見せる事も十分可能だろう。 (やっぱり気にかかるのは、ルーテシアとユーノよね) 目下明日香が気にかけている対象は二つ。 ルーテシアという少女とユーノというフェレットだ。 ルーテシアの方は相変わらず無言のままだが、放送前に比べて雰囲気が微妙に変わっているような気がしてならない。 明日香自身もそれが何なのか上手く言葉にはできないでいた。 だからこそルーテシアが少し怖かった。 特にさらさらと風に流れる髪よりも濃くて深い紫の瞳。 あの何を考えているのか見当もつかない瞳が無意識の内に明日香の中で恐怖の対象になりかけていた。 ユーノの方は一目瞭然。 放送を聞いた直後から見て分かる程に元気がなくなっていた。 こちらから話しかけても碌に反応すらしない重症ぶりだった。 (……病院で会う予定のチンクの知り合いはどうなのかしら。でも、チンクの知り合いだから油断は禁物ね。) 不審感が拭えない以上、未だにチンクへの疑念は晴れないままだ。 さらに病院で待ち合わせをしていたディエチが死んでしまうという事態まで発生している。 知人の名が呼ばれたチンクがどういう行動に出るか明日香には予想できないでいた。 考えなければいけない事は山のようにあり、明日香は歩きながら頭を悩まし続ける羽目に陥っていた。 「――え?」 だから明日香は気付けなかった――自分達に迫る光と風の暴流の存在に。 ▼ ▼ ▼ ユーノ・スクライア。 彼にとって「高町なのは」とは特別な存在だった。 9歳の時に知り合ったその少女は時が経つにつれて、いつしかユーノにとってなくてはならない存在にまでなっていた。 「高町なのは」という存在に何度もユーノは救われてきた。 そう言っても過言ではない程にユーノはなのはの事を大切に思っていた。 なのははいつも自分の身を顧みないで多くの人を救ってきた。 だから今度は自分がそんな放っておけばいつまた無茶をするか分からないなのはを支える。 それがユーノの心の内に秘めた想いだった。 もしかしたらそれは恋なのかもしれないが、ユーノはまだそうとはっきりと言えないでいた。 だからしばらくは今までの関係でいいのかなとも思っていた。 (……なのはが、死んだ……そんな――) 別れは唐突だった。 先程行われた放送で「高町なのは」の名前が死者の名前として呼ばれた。 他にも知った名は呼ばれたが「高町なのは」の名は何にも増してユーノに衝撃を与えていた。 ここに来てからユーノはなのはを支える事を改めて決意して、そう行動しようとしていた。 だが実際はフェレットに変身して不可抗力で破廉恥な事ばかりしているだけ。 このデスゲームを打開するために役立つ行動など何一つしていない。 チンクや明日香と合流した時も結局は自分の体裁を気にして何も話さないままだった。 (僕はここに来てからなのはや皆のために何かしたか? 何も、何もしていないじゃないか!) なのはのために我武者羅に行動するべきだった。 皆のために自分の体裁など気にせず正体を明かすべきだった そうするべきだったのに結局何もしないままに最悪の結末を迎えてしまった。 (いや、でもまだ僕の知っているなのはだと決まった訳じゃ……もしかしたらもう一人の方のなのはかも……) 確かに名簿には「高町なのは」という名は2つ存在していた。 そして放送で呼ばれたのは一つだけ。 もしかしたらそれはユーノの知るなのはではなく、もう一人のなのはのものかもしれない。 そんな希望をユーノは抱いていた。 (だけど、もしも僕の知っているなのはだったら……僕は、僕は……) 放送で呼ばれたなのはがユーノの知っているなのはかどうかは確率50%だ。 そしてそれを知る術は今のユーノにはない。 真実はどうなのかとユーノは放送が終わってからずっと悩んでいた。 だからすぐそこまで迫っていた危機にすぐに気付けなかった。 「――え!?」 それに一番初めに気付いて声を上げたのは明日香だった。 前方より迫りくる光と風の暴流。 三人は知る由もないがそれはプラント自立種であるヴァッシュ・ザ・スタンピードの天使の右腕――エンジェル・アーム、その余波だ。 同胞であるナイブズとの融合によって覚醒したヴァッシュのエンジェル・アームの威力は凄まじいものだった。 それは砲口が向けられた北西の方向は言うまでもなく発射地点である病院の周囲一帯に例外なく被害を及ぼした。 ヴァッシュ自身がいた病院はもちろん崩壊の憂き目に遭い、その余波は瓦礫を巻き込んだ突風となって周囲を蹂躙した。 その影響は病院の近くまで来ていた三人にも例外なく襲いかかった。 (あれは、不味い! このままじゃルーテシアと明日香が――) 正体不明のエネルギー波と瓦礫混じりの突風――間違いなく並の人間が耐えられるものではない。 今この状況を回避するにはユーノが人間の姿に戻って防御結界を張るしかない。 だが、そうなると同時に二人に今まで隠してきた自分の正体がばれる事になる。 (それがなんだ。なのはなら、きっと助けられる命は助けるはずだ!) ユーノに迷いはなかった。 今までの彼は自分のしてきた事に対する疚しさからずっと何も話さないでいた。 それは要らない誤解を避けたいというところもあったが、それでは結局何も進まない。 話し合わなければ前には進まない。 それはユーノがなのはに見せつけられた事でもあった。 「二人とも下がって!」 緑の光に包まれてフェレット形態から人間の姿に戻ったユーノは間髪入れずに三人を守れるだけの防御魔法を一瞬で構築した。 元々防御魔法などの補助魔法に長けているユーノだからこそできる事だった。 「え、ユ、ユーノ?」 「二人ともそこから動かないでね」 案の定明日香が驚きの声を上げてくるが、ユーノは目前の危機への対処で手一杯だった。 いくら防御・補助魔法に長けているとはいえ、この制限が掛けられた状況で耐えきれるかどうかユーノに自信はなかった。 だが今は全力全開で防御魔法を展開させ続けるのみ。 ユーノは全魔力を防御魔法に注ぎ込み、緑の盾はその輝きをますます増していった。 そして、ついに―― 「……はぁ、はぁ、耐えた……何とか、耐えきった」 ――ユーノは耐えきった。 魔力の大部分を消費したが、三人は無事だった。 流石にガジェットまではカバーする事ができず、少し離れた場所で壊れて転がっていた。 ユーノはルーテシアに出会った時の事を思い出していた。 あの時自分はこのどこか危なげな少女を守ろうと思ったはずだ。 自分の我儘でルーテシアを放置してなのはを探す事をなのは自身が望まないと分かっていたはずだ。 だから今自分はここにいる。 ユーノは疲れた頭でそんな事を考えていた。 (放送で呼ばれたなのはが僕の知っているなのはかどうかは分からないけど、なのはならきっと生きている。今はそう信じよう) 今自分にできる事が信じる事だけならなのはは無事であると信じ続けよう。 自分の気持ちに整理を付けてユーノが心に改めて誓いを立てると、後ろの二人の様子を見ようと振り返った。 「二人とも怪我はない、か――」 そこでユーノは自分の身体が地面に向かって倒れている事に気付いた。 身体に力が入らない事から魔力を使い過ぎた反動かと思ったが、腹の辺りに違和感がある。 地面に倒れこんだ痛みを無視して腹に手を当ててみればその手は真っ赤になっていた。 「――血?」 ユーノの意識があったのはそこまでだった。 大幅な魔力消費、二人を救えた事への安心感、なのはが死んでいるかもしれないという不安感。 それらが合わさってユーノの精神を疲労させて眠りに誘ったのだ。 倒れこんだユーノの前に立っていたのは血に塗れたウィルナイフを手にした紫髪紫眼の少女――ルーテシアだった。 ▼ ▼ ▼ 腹を刺されたユーノがゆっくりと地面に倒れていく様子をルーテシアは黙って見ていた。 その右手には今しがたユーノを刺した凶器――本来なら勇者が扱うはずの正義の武器ウィルナイフが握られていた。 ウィルナイフは一目で分かる程に刃を血に染めた状態にあったが、ルーテシアの表情に変化はない。 あまりにも無表情。 あまりにも静かすぎる。 そして、それがどこか不気味だった。 「ルーテシア、あなた、何をしているの?」 ルーテシアの凶行を目の当たりにした明日香は目の前の光景が信じられないような表情を浮かべていた。 それでも半ば呆然となりながら辛うじて質問を口に出すだけの思考はまだあった。 だがそれも傍から見れば脆いものに見える。 「見ての通り、殺し合い」 「――へ?」 そんな明日香を見ながら一切表情を変えずにルーテシアは答えを返した。 だがそこからはなぜ当然の事を聞くのかとでも言いたげな印象が感じられた。 明日香はルーテシアの答えに混乱するばかりだった。 「こ、殺し合いって、冗談でしょ。だって今まであなたは――」 「私には叶えたい願いがある」 「え、願い?」 「だから……皆を殺す」 ルーテシアは話し続けているが、その表情を変える事はない。 そこからルーテシアが何を考えているのか理解するのは難しい。 一方の明日香の表情は見る見るうちに歪んでいった。 その顔からははっきりと強い感情が読み取れる――恐怖という感情を。 「…………」 「ヒッ――」 そんな事は関係ないとばかりに無言でルーテシアはゆっくりと明日香の方に歩を進め始めた。 右手に握ったウィルナイフから血を滴らせながら。 ユーノを刺した時と同じ無表情のままで。 明日香はその姿を見て反射的に息を飲んでいた。 そしてルーテシアが進んだ分だけ無意識の内に後退りしている事に明日香は気付いていなかった。 「だから――」 叶えたい願いがある。だから…… 「――死んで」 この場にいる皆の死を望む。 それはあるいは狂気とも言えるかもしれないが、本質は違うだろう。 ルーテシアはただ願いを叶えたいだけ。 だが先程からルーテシアに恐怖を感じ始めていた明日香はその一言で耐えられなくなった。 「――ッ」 恐怖は冷静な判断力を失わせ、人として本能の赴くままに明日香はこの場からの逃亡を選択した。 明日香は無我夢中でその場にあった3つ全てのデイパックを持って走り出していた。 必死に走る明日香は見る間にルーテシアとの距離を離していったが、当のルーテシアは既に明日香の方には目を向けていなかった。 今ルーテシアが見ているのはコンクリートの地面に倒れこんで赤い血の華を咲かしているユーノだ。 「……まだ死んでない」 実はユーノはまだ死んではいなかった。 ウィルナイフで刺されたとはいえ刺した本人が非力なルーテシアでは致命傷まで一歩及ばなかったのだ。 だが幾つかの要因が重なってユーノが気を失っているのは事実だ。 今のユーノはルーテシアにとって俎板の上の鯛も同然である。 その好機をルーテシアは逃す気はなかった。 確実にユーノ・スクライアを殺す。 それが逃げる明日香を放置した最大の理由だった。 「……ユーノ」 未だに意識の戻らないユーノの目前まで迫ったルーテシアは一言その名前を呟いた。 だがそれでルーテシアの表情や方針が変わる事はない。 これは一種の自分へのケジメ、それを確認する儀式のようなもの。 だからルーテシアに迷いはなかった。 高々と振り上げられた両手には本来なら勇者が手にするべき刃がしっかりと握られている。 刹那、頂点で止まった刃ウィルナイフはその動きを止めて、赤く染まった刃を一瞬だけ太陽に光らせる。 そしてウィルナイフは振り下ろされる力と重力に従って一目散にユーノの喉元へと落ちていった。 二つの力が合わさったウィルナイフは落下速度を一瞬で増加させ―― ――コンクリートに激突した。 「――ッ!!」 ルーテシアはその予想外の衝撃で思わずウィルナイフから手を離してしまった。 幸いウィルナイフは傷一つ付かないままルーテシアの傍にカラコロと音を立てて転がるだけだった。 ルーテシアはそれを急いで拾い上げると視線を前方へと素早く移した。 ウィルナイフを振り下ろした瞬間、後方から不自然な突風が傍らを通り過ぎるのを感じていたからだ。 そしてその風はどことなく金色に光っていたような気さえした。 それはまるで雷光が横を走ったかのようだった。 「あなた、誰?」 視線の先には埃が舞い上がって薄く線を作っている様子が映った。 そしてさらにその先にこの現象を起こした張本人である三角帽子で顔を隠して黒装束を身に纏った女性がいた。 よく見ると傍にはいなくなったはずのユーノが寝かされていた。 それでルーテシアは何が起こったのか大体理解した――魔女が高速移動でユーノを掻っ攫ったのだと。 「誰……ん、そうね。魔女でどうかしら」 そこにいたのはまさしく魔女。 右手に漆黒のデバイスを構えた1st-Gの魔女、ブレンヒルト・シルトだった。 ▼ ▼ ▼ Back 王の財宝 ~祝福の風~ 時系列順で読む Next Reconquista(中編) Back 脅剣~キャロ・ル・ルシエ~ 投下順で読む Back 意思の証 ブレンヒルト・シルト Back ユーノ・スクライア司書長の女難 ユーノ・スクライア Back ユーノ・スクライア司書長の女難 ルーテシア・アルピーノ Back ユーノ・スクライア司書長の女難 チンク Back ユーノ・スクライア司書長の女難 天上院明日香 Back 絶望の罪人~大災害、そして終わらない宴~ キース・レッド
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3008.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 土くれのフーケにとって、その訪問者は異常だった。 長身の黒マントだから?否、そんな者はどこにでもいる。 白い仮面で顔を隠しているから?否、そんな同業者はいくらでもいる。 夜中の訪問者だから?否、夜は盗賊たるフーケの時間だ。 それは、ここがチェルノボーグの監獄だからだ。 フーケはヴァリエールの屋敷で捕らえられた後、裁判のためにここに移送された。 そして今は裁判を待つ身である。 その間、ひどく退屈で牢番以外の誰かが来ない物かと思っていたが、まさか本当に警戒が極めて厳重なこの場所に非正規の訪問者があるとは思ってもいなかった。 もっともこの訪問者、まともでない上に油断ならない相手であることは間違いない。 ──私を殺しに来た刺客?あるいは…… 身構えるフーケにその訪問者は言った。 ハルケギニアを一つとし聖地を奪還するために我ら新しいアルビオンの仲間になれ、と。 想定外の問いにフーケは質問で返す。 断れば? 訪問者は答える。 死だ。 ならばフーケは断れようはずもない。それに、はっきりした物言いは嫌いではない。 故にフーケは男の仲間となった。 すなわちレコン・キスタの一人となったのである。 ヴァリエール公爵邸の中庭には大きな池がある。 燦々と照る日を受け、きらきら輝く水面に浮かんでいるのは小さな白い小舟。 その幻想的な小舟の中で、ルイズは周りの美しい景色に目をやることなく泣いていた。 と言っても、泣いているルイズは魔法学院の学生のルイズではない。まだ小さく、それに幼い6歳のルイズだ。 なぜ、こんなに泣いているのかはよくわからない。 でも二人の姉と魔法の力を比べられて悔しくて、情けなくて、悲しくて泣いているのだけはわかる。 ここに来るのはそんなときだけだからだ。 泣いても、泣いても涙が止まらない。ずっとずっと泣いていると、ルイズの白い小舟に魔法の力で空を飛んでいた立派な貴族が降りてきた。 「泣いているのかい?ルイズ」 「子爵様、いらしてたの」 まだ16歳の若い貴族ルイズのよく知る、そして憧れの人だった。 彼は先頃、近くの領地を相続したという。その件でここに来たのかも知れない。 「また、お父上にしかられたんだね。おいで、僕がお父上に取りなしてあげよう」 「でも……」 お父様が許してくれるかどうかわからない。 でも、子爵様と一緒なら。 「大丈夫さ。僕がついている」 「でも……」 お母様が許してくれるかどうかわからない。 きっと、すごく怒っている。 それがとても不安だ。 でも、子爵様と一緒なら。 「それに、みんなお茶を用意して待っているよ。ほら、ルイズの大好きなクックベリーパイもあるんだ」 子爵がおいしそうなパイをのせた手をルイズにさしのべる。 クックベリーパイの甘酸っぱい香りがルイズの小さい鼻に流れ込み、不安を溶かしていってくれる。 しかし、ルイズは頬をちょっとふくらませた。 ふくらせた頬と一緒に体も大きくなり、魔法学院のルイズになるが、そんな不思議もルイズは気にならない。 「子爵様。私、もう子供じゃありません。そんな食べ物なんかで釣られたりしません!」 「じゃあ、いらないんだ」 ──え? ルイズの目の前には子爵はないかった。 いや、さっきまで確かにとても立派で、素敵な、憧れの子爵様がルイズの前にいた。 でも、今ルイズの前でクックベリーパイをひょい、と引っ込めるのは 「じゃ、僕が食べちゃうよ」 ぶかぶかの服を着て、大きすぎる帽子を思いきり後ろにずらしてかぶっているルイズの使い魔、ユーノ・スクライアだった。 さっきまでは大きかった手も、今は小さくなって両手でパイを持っている。 「いただきまーす」 ルイズは誰の目にも止まりそうにないスピードで手を伸ばす。高速とか神速とか言うのもまだ生ぬるい速度だ。 さっきまでユーノの手にあったクックベリーパイは消え失せて、いつの間にかルイズの手の中にあった。 「誰もいらない、なんて言ってないわよ」 「じゃあ、それを食べたらみんなのところに行ってくれるよね?」 「でも……」 「まだ、たくさんあるよ」 「う……ユーノがそこまで言うんならしょうがないわ。行ってあげる。でも、これを食べてからよ」 「うん」 ルイズがニコニコ見ているユーノの前で大きく口を開ける。 少しくらい行儀が悪いがしょうがない。 それに見てるのはユーノだけだし。 あーーーーん ぱく 「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああ」 「ほへ?」 目が覚めた。 そろそろ日が昇ってきて、起きるのにはちょうどいい時間だ。 いつも聞こえる鳥の声が今日は聞こえない。 ユーノが叫びまくっているからだ。 「ほーひたの?ふーの」 「い、いたいいたいいたいいいたいいたいいたい。ルイズしゃべらないで、噛まないでーー」 「ほへー」 ルイズは寝ぼけ眼のまま、しばらくぼーっとしていた。 キュルケが朝一番にルイズを見つけたとき、何か違和感を感じた。 正確にはルイズではなく、その肩に乗っているユーノの方に違和感があった。 と言っても、その違和感の出所は探さないといけないような微妙な物ではない。 見ればすぐにわかる。 「何があったの?」 ユーノの胴体にはいびつな包帯がぐるぐる巻かれている。 相当不器用に巻いたらしく、ユーノの胴体がかなり太くなっていた。 「何でもいいでしょ!」 あまり言いたくない事のようで、ルイズはユーノが乗っている肩とは反対の方向に顔を背けてしまう。 その隙にタバサは、ひょいとユーノを取ってしまった。 「あっ、タバサ。何するのよ!」 「包帯の巻き方が悪い」 そう言うとタバサは、ルイズがユーノ奪還に伸ばす手を避けながら包帯を外してしまう。 全部の包帯が巻き取られ、露わになったユーノの胴体を見たとき、キュルケは自分の目を疑った。 そこにはくっきりと歯形が刻み込まれていたからだ。 「えっと……ルイズ、何かあったの?」 「なんでもないわよ」 「なんでもないって、この歯形、あなたのでしょ?」 親指と人差し指で大きさを測ってルイズの口と比べる。 ぴったりだ。 「……けたのよ」 「え?」 「だから、寝ぼけてユーノを噛んじゃったの!」 とたん、キュルケは口を開けて笑い出す。 以前は少しこらえていたが、近頃はそんなことをしない。 こらえても無駄だからだ。 「あははははあははは。噛んだ、噛んだって、自分の使い魔を?」 「そ、そーよ」 「そんなことするの、あなただけよ。きっと。ミス・ヴァリエール。あははははははあははは」 「そんなに笑わないでよ」 「間違いなく史上初めてよ。あははははははははははは」 ひとしきり笑い終えたキュルケは教室に歩きながら息も絶え絶えに一言だけ言った。 「あなたって、ホント面白いわ」 その横ではタバサが慣れた手つきでユーノに包帯を巻き終え、9割も余ってしまった包帯を扱いかねていた。 教室に入ったルイズは何となくユーノを見ていた。 (ユーノ、もう痛くない?) (平気だよ) そうは言っても気になる。 肩に乗っているときも、いつもとは違うようだったし、歯もだいぶ食い込んでいたように思える。 いい味が出ていたのは気のせいだろう。たぶん。 扉ががらっと開き、この授業の教師のミスタ・ギトーが現れた。 生徒達は一斉に席に着く。 この教師、生徒達にはあまり人気がない。冷たい雰囲気と、何より漆黒のマント姿がかなり不気味だからだ。 おかげで授業はいつも妙な緊張感に満ちて生徒達の私語も極めて少なくなる。 この日もそうだった。 一見、生徒達は授業に集中しているように見えるが、実際はどうなっているかさっぱりわからない。 今のルイズもそうで、半分上の空で考え事をしていた。 「最強の系統は知っているかね?ミス・ツェルプストー」 「『虚無』じゃないんですか?」 「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いているんだ」 ルイズが考えているのは、今朝見た夢のことだ。 ──なんで、あんな夢を見たんだろう。 この数年、子爵とは会っていない。 憧れはまだ強く胸に残っているし、あの約束のこともはっきり覚えているが、今日の今日まで思い出したことはなかった。 「火に決まっていますわ。ミスタ・ギトー」 「ほほう。どうしてそう思うね?」 あの約束を聞いたときに感じたあの思い、それもまた覚えている。 それが今、子爵の夢を見る元となったのだろうか。 「全てを燃やし尽くせるのは、炎と情熱。そうじゃございませんこと?」 「残念ながらそうではない だとしたら最後に子爵がユーノになったのはどういうわけだろう。 ──まさか、あの思いをユーノに? いや、それはない。あるはずがない。 ユーノは、ずっと年下だし、子供だし、何よりフェレットだし。 それだけはあるはずがない。 別のことで子爵とユーノに共通点を感じたに決まっている。 そう子爵はメイジとしても一流だった。 ユーノも四系統ではないがすごい魔導師だ。 きっとそこからに違いない。 ルイズは安心して満足そうにうなずいた。 「試しに君の得意な火の魔法を使ってみたまえ、と言いたいところだが……ミス・ヴァリエール!」 そう言うとギトーは杖を一振り。 空気の固まりがぶわっとルイズの髪をかき上げる。 「は、はい?」 ようやく周りのことが耳に入ってきたルイズだが、今何が起こっているのかはまだ分かっていない。 確か今は風の授業のはずだ。 ──と言うことは! ルイズはあわてて杖を出して、それを持った手を振り上げる。 「はい、わかりました。すぐにやります」 「え?」 さっきまで問答をしていたキュルケが顔を引きつらせる。 「み、みんな危ない!隠れるんだ」 ギーシュが叫ぶが早いが机の下に待避する。 「ま、待ちたまえ!ミス・ヴァリエール!早まるな!」 もう遅い。 あわてるルイズは風を起こすルーンを唱え杖を振る。 そして爆発が起こった。 庭で洗濯物を干していたシエスタの後ろで爆音が聞こえた。 以前はその爆発はよくあることではあっても、縁の遠い物ではあったが今は何故か身近に感じられる。 ミス・ヴァリエールが爆発を起こすところを見る機会が増えたからかも知れない。 そういえば爆発が前より大きくなっているような気がした。 ミス・ヴァリエールの毎日の練習の成果が出ているのだろう。本人は喜ばないかも知れないけど。 音の元を見ると、教室から煙がもうもうと噴き上がっていた。 さらに窓から誰かが──今日のはよくわかる。よく飛ばされるマリコルヌと言う貴族だ──魔法も使わずに飛んでいくのが見えた。 シエスタは放物線を描いて飛んでいくマリコルヌを目で追った。 とりあえず、どうしていいか考えていたからだ。 学園の塀の手前まで飛んだところでようやく結論が出た。 「大変!!」 シエスタは塀の向こうに空を飛ぶ貴族を追っていった。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/5769.html
18時30分からおおよそ4時間の間にシャドウであった者は、大量の取り込んだ死者の魂を砕き、己のエネルギーへと変えた。 多くの者の断末魔が体内で響くが、シャドウは完全に無視する。 ※以下のキャラの魂が完全に破壊されました 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません 【デューク渡邊@新テニスの王子様】 【霧雨魔理沙@東方project】 【TDN@真夏の夜の淫夢】 【ケルベロス(小) @カードキャプターさくら】 【熊田薫@キテレツ大百科】 【矢車想@仮面ライダーカブト】 【ヘルクラウダー@ドラゴンクエスト7】 【葉隠康比呂@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】 【ドラゴニック・オーバーロード“The Яe-birth”@ヴァンガード】 【田井中律@けいおん】 【ザ・テリーマン@キン肉マン】 【ビーストマン@ロックマンエグゼ】 【カギ爪の男@ガン×ソード】 【初音ミク@VOCALOID】 『くッ……』 また多くの魂が砕かれたことに辛い思いをする、混沌の騎士。 「この世界の者の魂はいずれ、全てが蒼に還る。 魂を消された者には痛みや悲しみという感情も失うのだ。 考えようによってはこれが一番の幸福なのだ、苦い顔をするな混沌の騎士よ」 シャドウは砕いて蒼に還元した魂の力を吸い、力を蓄えていく。 「それにしてもダークディケイドたちは圧倒的な力の前に魂を消失したか……」 ダークディケイドたちはシャドウによって肉体・魂を加工された死者。 普通に殺しただけならリソースとしてシャドウに魂が戻るハズだったのだが、いかんせん相手のパワーが強すぎた。 または死や闇の力を司る邪竜が近くにいたために力場が乱れ、魂は戻ることなく砕け散ったようだ。 戻ってきたのはディケイド・ディエンド・仮面ライダーダークキバもといOTONAの力が永久に失われたことだけだ。 「クッ、せめてディーヴァの残滓が今どうなっているか、どこまで力を取り戻しているか知りたかったが、それさえできんとは」 この殺し合いはより多くの弱点を知ろうとする、情報戦が全てであると言っても過言ではない。 残滓が再戦した時に前に戦ったよりも格段にパワーアップしているケース、戦闘方法が全く違う可能性さえあるのだ。 いずれ戦うかもしれぬなら知っておいて損はない。 いちおう、諸事情で彼女の周りに大量の死者が出ているのだが、死者スレで抗うカルナたちの奮闘により、犠牲になったイチリュウチームの面子やアウラの民の魂を取り込めてないので情報が入ってこない。 「……致し方あるまい、もう一度尖兵を送り込む。 今度は戦闘力よりもスパイ活動に向いてそうな頭の良さそうな者をメインに」 今度は頭脳面に優れた者を主軸に送り込もうと、取り込んだ死者を再生する。 「あ、そうだ。(唐突) いつまでも我の名前が『シャドウであった者』だと締まりが悪い気がするからこの度、『黒き獣シャドウ』に改名したぞ」 『誰に向けて話しかけてるんだ……メタ発言か』 「しかし、改名するだけで死者の魂を百人使ったのは骨が折れたな」 『私が言うのも難だが魂の力を無駄使いすな!』 死者の魂を大量に取り込んだ影響かは不明だが、唐突に第四の壁に向かって発言をするシャドウであった者、もとい黒き獣シャドウ。 そんな一幕の直後、彼が再生しようとしていた死者の魂が、遠方からの砲撃によって弾けとんだ。 間近にいたシャドウは直前で攻撃に気づき、後方へのロングスウェイで躱す。 「ぬう!?」 「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」」 シャドウへの被害はなかったが、死者三体は再生しきる直前に蒸発した。 ※以下のキャラの魂が完全に破壊されました 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません 【夜神月@DEATH NOTE】 【クルル曹長@ケロロ軍曹】 【金田正太郎@太陽の使者 鉄人28号】 「攻撃か! だが、我に打撃を与えられるのはテラカオスだけ! いかなる攻撃でも他は蒼の力によって消滅する! ……ということは」 全てを破壊するエネルギーである蒼を纏った黒き獣に近づける存在は蒼の耐性者とテラカオスの二つだけ。 シャドウが自分に攻撃した存在を探すと。数キロ離れた位置に巨大フェレットによく似た怪物が空を飛んでいた。 怪物は遠くからでもわかるぐらい、殺意をこちらに向けていた。 シャドウは急いでを臨戦状態に移り、聖約・運命の神槍を抜く。 「フェレット型の怪物……ユーノ・スクライアか!」 シャドウが一つだけ誤解していたのは、フェレット型の怪物はユーノではなく、彼のテラカオス因子を事故で引き継いでしまった高町なのはである。 (あれを倒せば私が完成したテラカオスとなり、ユーノくんを救える……ゼッタイ二アイツヲコロサナキャ) 怪物となった高町なのは、もといテラカオス・リリカルは黒き獣に向けて咆哮をあげた。 ☆彡 ☆彡 ☆彡 沖縄県から少し離れた位置……ギリギリで蒼の影響を受けない位置ではダークザギが撮影機材らしきものを手に持って二つの獣たちの戦いを撮影している。 そのカメラの映像が送られる先は、成層圏まで浮上した九州ロボだ。 「テラカオス・リリカル、黒き獣との交戦に入りました」 九州ロボのコクピットにて、メフィラス星人がオペレーターのようになのはたちの戦いの様子をココやユーノに伝える。 「なのはは勝てるのか……?」 同室にいたユーノは、九州ロボのファクターであるココに不安そうに尋ねた。 「勝てる保証はしかねるわ……ただ物理攻撃にもエネルギー攻撃をも無効化できるほどの防御特性を持ったテラカオスでは彼女だけ。 現状で黒き獣に勝てる存在が彼女しかいないから、本州に残った人々を守るためには彼女に戦ってもらうしかないのよ。 勝てば彼女は黒き獣の蒼の力を吸収してテラカオスとして完成、そこに救済の予言の完遂も果たされば、晴れて世界も大災害の驚異から救われるわ」 なるべく冷静を装うとしているココだが、彼女も貴重なテラカオスがやられてしまうんじゃないか、不安と焦りを押し殺していた。 伊豆諸島基地を犠牲に、なのは(テラカオス・リリカル)とユーノを拘束した主催陣営。 二人はその後、もっとも知りたかった殺し合いの真実を知ることになる。 当初の予定と違って情報を主催から奪うというより齎された形ではあったが。 主催陣営は世界を大災害から救うためにやむを得ず、殺し合いを開くしかなかったこと。 野田総理はただの傀儡。 大災害の正体や蒼、テラカオスの必要性や救済の予言の意味。 さらに都庁にいるフォレスト・セルは世界的には危険な存在であり、因子を消してしまうことで世界を滅びに導く存在と知った。 そして……大災害さえ乗り切れば、テラカオスは正気に戻り、原初のテラカオスと巫女は戦乱で命を落とすまでは生きていたことも…… これを教えられたなのはは、ユーノを救うために最大の障害である黒き獣の討伐に乗った。 また膨大な蒼の塊である黒き獣の力を吸収できれば自身がテラカオスとして完成し、大災害突破への道が開けると踏んだからだ。 なのはは危険を承知で、ユーノの反対を押し切り(逆らえばユーノが主催に殺される可能性もあったため)、九州ロボから沖縄に向けて出撃した。 ちなみに同時期にジャック・紫・メガへクス・biimもフォレスト・セル討伐のために東京へ出撃し、ココとメフィラスそしてユーノが九州ロボに残ったのだ。 (だが、きな臭い…… 古代の事件に救済の予言。 フォレスト・セルの危険性はいちおう信用するけど。 本当に大災害を止めたテラカオス……なのはは助かるのか?) 肝心のユーノは主催陣営の話を全ては鵜呑みにしていなかった。 特にテラカオスとなり大災害を止めた者が助かった件は、記録の中の存在でしかないエックスが喋っていただけであり、幸せに過ごした瞬間などの映像はない。 むしろ世界を破滅させる災害のエネルギーを吸収した存在など、力を疎まれるか狙われて命が危ないだろう。 常識で測れない怪物になるのに幸せに過ごせるなどとても思えない。 だからその一点だけは嘘ではないかとユーノは疑っていた。 (クソッ、せめてこの首輪さえなんとかなれば) だがユーノは主催への口答えもできなかった。 理由は首につけられた特別性の首輪。 これは参加者が既に見つけた方法では絶対に外せない仕組みであり、これがユーノとなのはの反抗を防いだ。 逆らえばユーノの首が主催の意志一つで飛ぶだろう。 だから核心に迫ったことを聞き出すことができなかった。 実際、主催が二人に渡した情報は古いか手を加えたもの。 原初のテラカオスは太古の大災害を止めた時に命を落としており、ナノマシンに備え付けられた自滅プログラムがある以上、なのはもまた大災害を止めたと同時に命を落とすことが決定づけられている。 テラカオス化した存在に未来はないことをココとメフィラスは伝えてない……全ての真実を明かさないことでなのはを黒き獣と戦わせて、テラカオス以外の未来を守らせるために。 そして主催陣営も知らないのがフォレスト・セルの現状。 確かにフォレスト・セルは古代グンマーが滅びを美徳とする理想を叶えるために因子を消してしまう危険な存在であったが、現代のグンマーの巫女によりその危険は回避されていたのだ。 だがユーノはなのはから教えられた千年タクウの未来で自分の尻が掘られることを教えられ、そこからフォレスト・セルは危険な存在であると認識。 実際の真実より嫁の言葉を優先したのだった。 (ココたちはなのはがピンチに陥った時に彼女を見捨てる可能性も十分にある……そうなる前にどうするユーノ、考えろ……) いちおう、主催の目的や理念は知ったが、まだユーノは主催陣営を完全に信用したわけではなかった。 (ココ嬢、ユーノさんに目論見を気づかれてませんか?) (中身九歳児のなのはちゃんはまだしも、聡明な彼の方は、おそらくね。 でも私たちにも退けない理由がある。 テラカオスや予言が完成する前に黒き獣に本州を攻められたら大災害を防げなくて世界はおしまい。 鬼だ悪魔だと罵られようとも、なのはちゃんには黒き獣を倒し、最終的に死んでもらわないといけない) ココとメフィラスもなんとなくではあるが、ユーノに疑いの目を向けられていることを察していた。 (ところで万が一、なのはさんが黒き獣に負けた場合はどうなるんです? 奴に吸収能力などがあった場合、危険だと思うんですが) (その時は殺される寸前にダークザギにサルベージしてもらうわ。 ダークザキは犠牲になるけど、あれの耐久力と瞬間移動能力ならなのはちゃんを救う数秒間はなんとかなる筈よ) 主催にとってなのははただの鉄砲玉ではなく、いちおう危険になったら助けるつもりであるということをユーノはまだ知らない。 【二日目・22時00分/沖縄県】 【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】 【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、弱体化 【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 他不明 【道具】不明、混沌の騎士の魂 【思考】基本:世界の破壊 0:ユーノ(実際はなのは)の破壊 1:終わったらあの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊を継続する 2:死者スレの掌握 3:体力と傷の回復 4:本土侵攻に備えて可能な限り参加者間の信頼を挫く 5:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔 ※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています、蒼の耐性者やテラカオス以外が踏み入ると問答無用で即死します ※ディーヴァの捕食した能力も込みで持っているようです。 ※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。 ※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。 ※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。 完全掌握に9時間30分以上の時間を要します。 ※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません ※テラカオス・リリカルがなのはであると気づいていません(その手の情報を持つ死者をまだ取り込んでないため) 【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】 【状態】19歳の身体、ケモ耳、すごい罪悪感、テラカオス完成度50% 【装備】なし 【道具】なし 【思考】基本:ユーノの安全を最優先 0:黒き獣を殺し、テラカオスとして完成する 1:ユーノくんの身が危ないので今は主催に従う 2:ユーノを傷つけたギムレーは信用しない イチリュウチームに戻りたくない ※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています ※ユーノの精液(四条化細胞+キングストーンの一部の力)を全身で受けた結果、テラカオス化汚染が譲渡されテラカオス候補者に。 さらに風鳴翼の右腕を食べたことで完全にテラカオス化しました。 特効薬でもフォレスト・セルやツバサの治療でも治せません。 ※テラカオス化したユーノから受け継いだ能力として あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます ただしほぼ暴走状態に陥っており、ユーノ以外の敵味方に関係なく襲い掛かります またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できるようになりました ※ユーノを通してツバサから奪ったキングストーンの能力として「ゲル化」ができるようになりました 「ロボ化」は不明 ※一部改竄されたロックマン・エックスのメモリーを見たことで、主催の殺し合いの目的や救済の予言の意味、蒼の知識を得ました。 テラカオスに自滅プログラムがあることは知らず、大災害突破後も助かると思い込んでいます 【二日目・22時00分/成層圏 九州ロボ】 【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】 【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン 【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃 【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×550、 主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王 【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する 0:なのはが黒き獣を殺せるよう祈る 1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ 2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる 3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる) 4:東京へ向かったジャックたちの成功を祈る 5:危なくなったらダークザギを犠牲になのはを沖縄から回収する ※スパークドールズ化した八坂真尋を元に戻すにはダークスパークもしくはギンガスパークが必要です ※千年タクウはなのはから没収しました 【メフィラス星人@ウルトラマン】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー 【思考】 基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ 0:なのはが黒き獣を殺せるよう祈る 1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている 2:なるべく暴力は使いたくない 3:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう? 4:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る ※ユーノとなのはに見せたプロジェクトテラカオスの全容とエックスの記憶は 完成したテラカオスの結末が生きている形に変わっています 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 【状態】疲労(中)、19歳の身体、特別性の首輪 【装備】ストームトルーパーの装甲服 【道具】なし 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ……? 0:なのはの身が危ないので今は主催に従うふりをする 危なくなったら主催を裏切る 1:全てにおいてなのはの安全を優先する 2:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい 3:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許したくないが……クソッ! ※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました ※PSP版の技が使えます ※特効薬を使ったことでユーノ自身のテラカオス化は完全に浄化されました。 ※一部改竄されたロックマン・エックスのメモリーを見たことで、主催の殺し合いの目的や救済の予言の意味、蒼の知識を得ました。 ただしテラカオスが大災害突破後も助かることには懐疑的です。 なお、フォレスト・セルは千年タクウが見せた未来の一見もあり普通に危険視。
https://w.atwiki.jp/trinanoss/pages/168.html
「へっくちゅ!」 小さなくしゃみが上がる。傍から見れば可愛らしいものに見えるが、くしゃみをした当人は熱と倦怠感のダブルパンチに苦しめられていた。 ピーピーと、体温計が電子音を鳴らす。モゾモゾと彼女は寝巻きの脇の部分に手を潜り込ませて、心配そうに様子を見守っていた母に手渡した。 「三八度二分。ものの見事に風邪ね」 「あう……」 病名を宣告された少女は、がっくり首をうなだれていかにも残念そう。それもそのはず、今日は学校で家庭科の授業があったのだ。友達たちとのお菓子作りは楽しみであったし、喫茶店の娘とし て自らの腕前を試せる場でもあった――と言うのは大げさだが、友達と一緒にクッキーを焼いて食べるのは本当に楽しみだった。 学校には連絡しておくから、今日はゆっくりお休みしてなさい。母親は優しくそう言って、娘をベッドに寝かせて部屋を出て行った。 扉が閉じられると、パタパタと駆け足気味な足音が聞こえる。幸いなことに、喫茶店の営業開始までまだ時間がある。娘のために母は店の切り盛りを長男か長女にでも代打を頼むだろうし、自身は これから風邪っぴきの我が子のために、おかゆやホットレモンを用意するにかかる。 風邪薬は一応常備してあったように記憶しているが、おそらく母は出さないだろう。熱で体温が上がっているのは身体の中のばい菌をやっつけるためで、薬で熱を下げたらそれが出来なくなってし まう。かかりつけの女医さんが言ったのだから、間違いはあるまい。 はぁ、と部屋に響くため息。クッキー、みんなと一緒に作りたかったな。未練の言葉を口にして、少女は布団を自分の身体に掛けなおす。 この日、高町なのはと言う小学三年生の女の子は、風邪をひいた。 ぽかぽか、ふわふわ、もふもふ 「はぁ、そうなんですか。それは大変ですねぇ」 「いやもうホント、お宅も気をつけた方がいいよ。保健所の連中、最近動きが怪しいし」 平日の昼間と言うこともあってか、人気の少ない公園の、片隅。 木と茂みの中にあるのでほとんどの人間は気付かないが、そこは彼らの集会場であった。 "彼ら"とはすなわち、動物である。この辺り一帯に住居を構える飼い猫、野良猫、飼い犬、野良犬、飼い鳥、野良鳥、飼いフェレットが週に一回集まる秘密の場所なのだ。彼らは動物全体の繁栄と 安定を願い、こうして近況報告や野良たちにとって深刻な糧食の確保手段、保健所による駆除活動の情報交換を――彼らはこれを"サーチ&デストロイ"と呼び、特に野良たちにとっては恐怖の代名 詞となっていた――行っていた。 ――と言うか、これに参加して普通に動物たちと会話してる僕って何なんだろう。 動物扱いここに極まれり。フェレットモードのユーノ・スクライアは時折、自らの行動を通して疑問に思う。まぁこれはこれで友達が増えていいのだが。 「ところでユーノさん、ちょっといい?」 「あ、はい。何ですか、ヤマトさん?」 集会では時折、飼い猫や飼い犬など人間に飼われている者たちの手でドックフードやキャットフードなどが持ち込まれる。野良たちにとってはまともな、かつ貴重な食い物が食える機会であったし 飼われている者たちにとっても、会話のツマミとなるので歓迎されるのである。 ユーノに声をかけたこの"ヤマト"と言う飼い犬も、ときどき主人の眼を盗んでは家を飛び出しドックフードを持ち込む者の一匹だった。食事をする口を止めて、彼は問いかける。 「ユーノさんの飼い主……その、なんと言ったっけ」 「なのはですか?」 「そう、なのはだ。あの子、今朝どうかしたの? いっつも学校行く時うちの前を通っていくんだけど、今日は見なかったよ」 えぇ? 思わずユーノは顔をしかめた。確かに朝、少し調子が悪そうな様子ではあったが、本人は「全然大丈夫だよ」と明るく振舞っていた。本当かな、と疑いはしたものの、彼女はあまり心配さ れるをの嫌う傾向にある。ユーノ自身も今日はこの集会があると言うことで、若干後ろ髪を引かれつつも家を出たのだが。 「あぁ、風邪ひいてたっぽいよ」 「シナノさん?」 このシナノと言う野良猫は、ちょくちょく高町家の屋根に昇っては日向ぼっこしている、いわば常連だ。街の事情を知らないユーノに気を利かせて地形や行けば餌をくれる動物に優しい人間の居場 所を教えてくれたり、何かと彼は世話になっている。もっとも餌に関しては困ってないので世間話として半ば聞き流しているが。本当は人間だし。 シナノ曰く、集会に出席するため高町家の近くを通ったそうだが、塀の上を歩いていると高町家の二階の窓から、なのはらしい女の子が体温計を母に手渡しているのを目撃したらしい。 となると、これはもう間違いない。ユーノは確信する。彼女が少し調子が悪そうだったのは、やはり無理をしていたのだ。それが学校に行く直前になって、ついに限界となったのだろう。 「戻ってやった方がいいんじゃないか?」 「ユキカゼさん――いや、でも」 ユーノにユキカゼと呼ばれた鷹は、普段あまり喋らない寡黙な雄だった。しかしただ無口なだけでなく、胸のうちには誰よりも強い正義感と誰よりも熱い仲間を思う心を持っている。人間の不良た ちにいじめれ、川に流されそうになった野良の子犬を救出し、不良たちをその鋭い爪と嘴で徹底的に痛めつけたと言うエピソードさえ存在していた。海鳴市に住む全ての動物たちの憧れの的であり ユーノも本来は人間ながら、ユキカゼに一種の憧れのような感情を抱いていた。 そのユキカゼが、普段口を開かない彼が声を掛けてきたのである。嬉しさを感じると同時に、しかし後ろめたさもあった。集会はまだ途中で、大事な会議はむしろこれからなのだ。 「今日の司会は三丁目のブッカーだろう。俺が事情を話しておいてやる。行ってこい」 「はぁ……すいません、お願いします」 「いいってことよ」 やっぱりユキカゼさんはカッコいいなぁ、僕なんかまだまだだ――ぺこりと孤高なる鷹に頭を下げて、彼はその場を駆け出した。 後に残された動物たちの間では、ちょっとした騒動になっていた。あのユキカゼが、自分から声をかけてさらに便宜を図ってやる。それも、集会所の中では新入りの部類に入るユーノに。 「ユキカゼさん、今日はどうしたんだい?」 「なぁに……ちょっと機嫌がいいだけさ」 仲間たちからの声に、鷹は翼を閉じなおして――人間で言うところの肩をすくめて、と思ってもらいたい――適当な返事で誤魔化した。 彼は知っていた。ユーノは実は人間で、なのはと言う女の子が家にいることを。それで邪険に扱う訳ではなく、逆に背中を押して応援してやりたいと言うのがこの孤高なる鷹の心境であった。 「人間だろうが動物だろうが、女の涙は最優先すべきだ――Good luck」 モゾモゾと、気だるい気分のままなのはは身を起こす。うー、といかにも辛そうな声を上げる辺り、やはり熱が辛いのだろう。 とは言え、何もしないままずっとベッドの上で横になっていると言うのも退屈だ。掛け布団を払い、引きずるようにして彼女は窓際に立つ。外は快晴、どうして今日に限って熱など出してしまった のか。少しばかり恨めしげに太陽の光を見つめながら、窓を開けた。吹き抜ける風、そういえば換気も必要だろう。 「なのはー!」 「にゃ!?」 まさしくその瞬間であった。ピョーンッと死角の方から何かが飛び込んできて、たまらず驚きの声を上げてしまう。誰かと思えば、フェレットモードのユーノであった。 「ユーノくん……あれ? 今日は朝から用事があったんじゃ」 「いや、なのはが風邪ひいたって聞いたからさ」 「誰に?」 「ヤマトさんとシナノさんとユキカゼさん――って言っても分かんないよね。向こうでの知り合いだよ」 ヤマトさんとシナノさんとユキカゼさん? ユーノに言われた通り、なのはの頭には疑問符が出てくるばかりだった。果たして、自分の知り合いにそんな名前の人たちはいただろうか。いないとす れば、どうして彼らは自分が風邪をひいていると言うことを知っているのだろうか。考えれば考えるほど疑問が飛び出し、熱を持った頭はそれだけで限界に達する。 「はにゃー……」 「わ、ちょ、なのは!」 こりゃいかん! ふらっと眼をグルグル回して倒れようとする少女の身体、咄嗟にユーノはフェレットモードから元の人間形態に戻って抱き抱える。 どうにか床に頭を打ち付けるような事態は避けられた。無論このままと言う訳にも行かず、彼はなのはを抱えてベッドの上に移し、賭け布団をかけてやった。 とりあえず意識はあるようだが、まだ「はにゃー」「にゅー」「にゃー」などとうわ言のようなことを呟いていた。これは当分、ちゃんと様子を見てやった方がよさそうだ。 治療魔法と言う手も考えたが、傷の治癒はともかく病気となると不慣れなところがある。何か出来ることはないものかと顎に手をやって思考を回転させる少年の脳裏に、一筋のひらめきが走った。 再びフェレットモードになったユーノは、ベッドの上に飛び乗った。そのまま布団の上をのそのそ歩いて、何をするかと思えばなのはの首周りに自分の身体を寄せ付け、密着させた。 「にゃ……ユーノ、くん?」 「ほら、こうすると暖かいでしょ」 人間の首と言うのは、血管が集中している部分である。血液は全身を駆け巡るものだから、首を暖めれば否応なしに全身が温もっていくと言う寸法だった。他にも腋下、内股なども血管の集中する 部分なのだが、さすがに内股になんぞ身体を突っ込んだらセクハラもいいとこだ。腋下は掛け布団の下であるから、露出した首がやはり一番いいだろう。 実際、首周りにふわふわもふもふのユーノがマフラーのように身を寄せてから、なのはは身体がぽかぽかしていくのを実感した。先ほどまでは熱で苦しんでいたのだが、この温もりはそれとはまっ たく異質なもの。むしろ、感じるのは安心感。人肌ならぬフェレット肌の温もりが心地よい。 「ん――えへへ、ユーノくーん」 風邪の辛さが和らいだのか、なのはは布団の中から手を出した。首筋に持っていって、文字通り身をもって自身を暖める大事な友達のふわふわした身体を撫でる。 「ちょっと、なのは、くすぐったいよ……」 「えー。でも気持ちいいんだもん。ほら、ふわふわー、もふもふー」 あぁ、こりゃ熱に当てられたかな。 普段の年齢不相応にしっかりした部分を見せる彼女にしては、とてつもない甘えっぷりにユーノは苦笑いするほかない。今はなのはのためにも、なすがままされるがままにしておこう。 そうして、翌日のことである。ユーノの身を挺した看病、母の桃子が仕事を休んでまで作ったおかゆにミルクセーキの――生卵と牛乳をかき混ぜた飲み物で、良質なたんぱく質とビタミンを美味し く摂取できる。これにパティシエの桃子の手が加わったことで、病人食としては最高の味――甲斐もあって、なのはの体調はすっかりよくなった。 ところが、もちろん予測できた事態ではあったのだが―― 「へっくしょい!」 今度はユーノが風邪をひいた。思い切りうつされたらしい。 心配して見に来てくれた動物集会の仲間たちに「大丈夫だから、いやホント」と心配掛けないように振舞いながらも、やっぱりきついものはきつい。普段は何しろフェレットモードゆえ、高町家の 住人に「すいません、風邪ひきました」と訴えることも出来ない。と言っていかにも調子が悪いところを見せれば、今度は動物仲間たちにいらぬ心配をかけてしまう。頼みの綱のなのはは、学校に 行ってしまった。 仕方がないので寝床のバスケットでぐったりしつつその日を過ごしていると、いつもより早い時間になのはが帰ってきた。おかしい、今日は友達と遊ぶとか言っていなかっただろうか? 「ユーノくんが風邪ひいたって聞いたから、すぐ戻ってきたんだよ」 「えぇ……? それ、誰に?」 「犬さんと猫さんと鷹さん」 ぶっ、と吹き出しそうになった。あの人(?)たちか。しかし、どうやってなのはに意思疎通を取ったのか。答えはもちろん、浮かぶべくもない。 疑問をよそに、彼女はバスケットに入っていたユーノをひょいっと抱き抱えた。 どうしたの? 怪訝な表情の元に投げかけた声に、なのはは笑って答える。 「今度は、私が暖めてあげるからね♪」 ギュッと抱きしめられる。少し苦しかったが、ユーノは素直に、彼女の温もりを味わうことにした。 きっと、その方が治りが早いだろうから。 目次
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/163.html
直球ど真ん中デッドボール 作者: ID tTVnzd4H 15-597のつづき かくしてユーノに食事まで(ワイン二瓶空っぽにして)振舞ったアルビーノ家。 ルーテシアからは『人を困らせて遊ぶのは駄目』と宥められている内に一本の電話が掛かる。 相手は、メガーヌの腐れ縁にして悪友のクイント・ナカジマであり、用件も重ねて談笑話が続いていた。 <ちょっとメガーヌ。またスクライア君の事、からかって遊んだんだって?> 「あら?私はただ事実を申しただけですわよ。もうちょっとノリがよくて誘惑の駆け引きとか憶えたら完璧なのにね……」 <やめときなさい、うちの子達泣かすような片棒になりたくないわよ。はあ、ゼスト隊長一筋だった頃の純粋な貴方は何処に言ったのかしら……ルーちゃん睨まれても知らないわよ> 「ご心配なく。アノ子も知らない内に女の戦いに身を焦がす身。私の気持ちもわかってくれるわよ」 <………そっちの方が余計に心配ね。くれぐれも火種にならないようにね。リンディさんからにらまれそうだわ> 「火種だったら、そちらのスバルちゃんやギンガちゃんが作りそうで怖いわ。確か家庭教師してもらってるんでしたっけ?」 <ギンガが大学志望ですからね。言っておきますけど、家とスクライア君は健やかなる愛と生活が溢れていますからね、おほほほ> 「はあ、ゲンヤ君には怖くて聞かせられないわね。本当に惚気られると反応に困りますけどね。とにかく用件の方は」 ……一方でこちらはハラオウン家。 暖かな食事と会話が弾むはずの家族団欒の一時の筈だが…… 「ねぇ、フェイトさん。ユーノ先生とルーのお母さんって付き合ってるんですか?」 などというエリオの爆弾発言のせいで緊迫した空気が漂う爆心地とかしていた。 (あううう、やっぱりストレートすぎましたかね……) (直球ど真ん中デッドボールさ!一体何を見たんだいエリオ、キャロ!) (で、ですからルーちゃんのお家で遊んでたら、メガーヌおば様とユーノ先生が一緒に帰ってきたんですよ。そしたら……) (何だよそれ!どうしたもこうしたもないさ!フェイトにユーノ関係の話は地雷だって何回もわかってるだろう) (落ち着きなさいアルフ、まったくフェイトも昔から感情表現が下手というか、思いっきり甘えればいいものを) (リニスさん、それは無理難題かと。アリシアさん、フェイトさんのお姉さんなら、お願いですから何とかして下さいよ!) (あのね。私がどうのこう言っても今のフェイトの耳には戦場の龍に説法で聞きはしないって。はぁ後からユーノ呼び出すしかないかな……) 以下、念話で繰り広げられる山猫の説教に耳を傾けるお子様二人。 呆れるアルフと妹を宥める手を考えるアリシアの横では、本日のオカズのチキンクリームシチュー……を食べるスプーンをからからと廻すフェイトの姿があった。 当然の如く、目の焦点はあってなく宛らフェイトの 「うふふふ……本当にユーノったら人の気もしらないで……でも人助けしないユーノなんて考えられないし、でも綺麗な女の人ばかりなんて……はぁ、私が負けちゃいそうだよ」 15スレ SS フェイト ユーノ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3624.html
3:コミケの世界死闘編 次元のオーロラを越えてナフコの世界を後にしたなのは達が次に辿り着いた場所…それは丁度コミケが行われている会場前の道路だった。 「ここがコミケの世界か…。」 「いや…世界とかそんなんじゃないと思うんだけど…。」 士が『コミケの世界』と形容しただけあって、そこではコミケが開催され大勢の人達によって賑わっていた。 数々のサークルが参加し、各々が作った同人誌を販売し、それを多くの人々が購入して行く。 しかし、賑やかではあるが平和だったコミケの世界にも百合ショッカーの魔の手が伸びていたのだった。 「百合ショッカーだー! 百合ショッカーが出たぞー!」 「ユリー! ユリー!」 コミケに参加していた人々がざわめき始め、コミケ会場に百合ショッカーの戦闘員が大勢雪崩れ込んで来た。 「百合以外のジャンルの同人誌を作っているサークルを叩き壊せ!」 「ユリー! ユリー!」 コミケに乱入した百合ショッカーがやる事はまず百合以外のジャンルの同人誌を出しているサークルの排除だった。 コミケ会場中に百合戦闘員達が展開し、非百合系同人誌を出しているサークルを襲撃し、同人誌を没収、焼き捨てて行く。 特にリリカルなのは系で非常に少数派ながらもなのは×ユーノ等の純愛等の非百合系を出している者達が真っ先に狙われ、 そういう者達はグロンギから百合ショッカーに参加している怪人のゲゲルの標的とされ、コミケ会場は早くも 阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。 それだけでは無い。非百合サークルを排除して空いたスペースで百合ショッカーが自作・持参した百合同人誌を売り出していたのだった。 「百合ショッカー製作のなのは×フェイトの百合同人誌だ! 蜂女×タックルもあるよ!」 「おおー! 買う買う! なのフェイ最高!」 既に多くの人々が百合ショッカーによって殺されてしまったと言うのに、百合ショッカーがなのは×フェイトの 同人誌を出した途端に彼らは目の色を変え、我先にと百合ショッカーのサークルスペースへ向けて殺到していた。 このままコミケの世界は百合ショッカーによって制圧されてしまうのか…そう思われた時だった。 そこへやっとなのは・ユーノ・士・光太郎が到着していたのだった。 「こっ…これは!!」 「なんて酷い…。」 コミケ会場中ひ転がる非百合系同人誌を出していた者達の死骸…そして焼き捨てられた非百合系同人誌を見て なのは達は愕然としていた。しかし、ここでユーノはある事に気付いていた。 「待って! 一人まだ息がある人がいる!」 ユーノは自身となのはとを繋いでいるハーネスを外し、その息のある人の所へ駆けた。そこでさらなる事実に気付く。 「きっ君はユーノスレの世界の住人じゃないか!」 「あ……その声は…。」 『ユーノスレの世界』 ただでさえ百合の力が強いリリカルなのはにおいてユーノに対する風当たりは強い。それでも極少数派ではあるが ユーノにもファンが付いていたのだが、そんな彼らが百合厨の弾圧・迫害から逃れ独自のコミュニティーを作り上げたのが ユーノスレの世界であった。彼はその世界からコミケの世界にやって来た人間だと言うのであった。 しかしそれも百合ショッカーに参加していたグロンギのゲゲルの標的にされて…今や彼の命も風前の灯だった。 「うれしいな…念願のユーノ君に会えたんだ…。」 「そういう事言ってる場合じゃない! 今治療してあげるから…。」 ユーノはただでさえフェレット形態のままでい続けなければならない程にまで魔力を消耗していると言うのに 治療魔法を使って彼の傷を癒そうとする……しかし彼の傷は深すぎて…それでも間に合いそうに無かった。 その事は彼自身が良く知っていたのか、最後の力を振り絞ってユーノにある物を渡していたのだった。 「これは?」 「ぼ…自分が…作った同人誌…。他のは…皆…燃やされちゃったけど…これだけは…守って…。」 それは彼が作ったユーノ同人誌。その最後の一冊を彼は命を賭してでも守り通し、ユーノに託していたのだった。 「分かった。これは僕が受け取る事にする。」 「うれしいな…最後にユーノ君にそれを渡せて…………………。」 言葉はそれまでだった。彼はユーノに看取られながら安らかな表情でこの世を去って行った。しかし… 「ゲゲル! ゲゲル!」 「おいユーノ気を付けろ! グロンギが来たぞ!」 ユーノへ向けてグロンギが突撃して来ており、士達はとっさに戦闘態勢を取っていたのだったが…その直後だった。 グロンギの突撃が突如として現れた翠色に光る壁によって阻まれていたのである。だがそれだけでは無かった。 さらに現れた翠色に光る鎖がグロンギの全身に巻き付き、そのまま猛烈な勢いで降り飛ばされると共に地面に 強く叩き付けられていた。一体何が起こったのかと困惑するなのは達だったが…… 「百合ショッカー……許さない! 僕はもう怒ったぞ!!」 「ユーノ…君…?」 そこにいたのはフェレットでは無く…人間としてのユーノ。それも全身から翠色の輝きを発していた。 つい先程までフェレットの姿にならねばならない程にまで疲弊していたと言うのにこの変わり様… ユーノスレの世界の住人の死による悲しみと百合ショッカーへの怒りがそうさせていたと言うのか? あえて言うならば、ユーノ=スクライア激情態と呼んでも過言では無かろう。 「ユリー! ユリー!」 ここで百合ショッカー戦闘員達が次々になのは達の前に殺到して来ていた。これはもう戦闘は避けられないと なのははレイジングハートを起動させバリアジャケットを装着し、士はディケイドへ、光太郎はBLACKへ 変身し戦闘態勢を取っていた。 「来たな仮面ラーイダどもめ! このコミケの世界を貴様らの墓場にしてやる!」 百合戦闘員達が道を開け、まるで古代ローマか古代ギリシャ時代の戦士の様な格好をしたヒゲの男が現れていた。 どうやら彼が百合戦闘員達を指揮している者だと思われる。 「お前はデストロンのドクトルG(ゲー)だな?」 「勘違いしてもらっては困るな仮面ラーイダディケイドめ。私は百合ショッカー幹部の一人、ドクトルY(ユリー)だ。」 V3の世界で仮面ライダーV3と激闘を繰り広げたデストロン幹部にドクトルG(ゲー)と言う男がいた。 彼は仮面ライダーの事を『仮面ラーイダ』と呼ぶ事で有名だったのだが、彼は百合ショッカーに参加する事によって ドクトルY(ユリー)と改名していたのだった。 「貴様ら仮面ラーイダどもが我ら百合ショッカーの百合世界征服を邪魔する事は既に想定済みだ。 ここで貴様らを叩き潰してやる。怪人どもやれい!!」 ドクトルYが率いていたのは百合戦闘員だけでは無かった。先程のグロンギを初めとして様々な勢力から 百合ショッカーに参加していた怪人達が現れていたのだった。しかもやたらと数が多い。 「これは数が多いな…。」 「数が多くてもやるしか無いよ…士さん…。」 なのははレイジングハートを強く握り締め、その先端を百合ショッカー怪人軍団へ向けていたのだったが、 そこでディケイドはふとユーノの背後に回り込んでいた。 「ん? 何をするの?」 「お前に戦う力を与えてやろうと思ってな。」 ユーノの背後に立ったディケイドは何かカードを取り出し、ディケイドライバーに差し込んでいた。 『ファイナルフォームライド! ユユユユーノォ!』 「ちょっとくすぐったいぞ。」 「え? ああっ!」 ディケイドがユーノの背中に触れた直後だった。突如としてユーノの体が変形し、フェレットの姿になっていたのだった。 と…言っても、通常ユーノが見せる『変身魔法による変身』では無かった。まるでトランスフォーマー・ビースト戦士の トランスフォームの様にユーノの体が変形して行き、まるで大人のライオン以上の大きさはありそうな巨大フェレットに 姿を変えていたのだった。 「ええー!?」 「うわー!! 巨大淫獣だー!!」 ディケイドが他の仮面ライダーをファイナルフォームライドさせ、武器やら何やらに変形させる事は 知られているが、ユーノが巨大フェレットに変形した事実はなのはのみならず、離れた場所で様子を見守っていた 野次馬達をも大いに驚かせていたのだった。 「うろたえるな! やれー!」 「ユリー! ユリー!」 ドクトルYが右手に持つ斧を正面へ振りかざすと共に一斉に百合戦闘員や百合怪人達が突撃し襲い掛かった。 こうして戦いが始まった。大都市のど真ん中にあるコミケ会場で戦いが始まったはずなのに、何時の間にかに 戦場が特撮における戦場として昔から良く使われていた採石場へと移り、そこでなのは・ユーノ・ディケイド・BLACKと 百合ショッカー軍団との激闘が勃発したのであった。 「とぉ! たぁ!」 BLACKが一跳び30mの脚力で戦場を跳びまわり、必殺パンチを百合怪人目掛け決めて行く。 そしてさらには… 「バトルホッパー!」 BLACKの呼び声に応え何処からとも無く走り寄せて来たバトルホッパーに乗り、必殺のバイク轢き潰しアタックで 幾多の百合戦闘員や百合怪人達を蹴散らして行く。 ディケイドもまた近付く敵はライドブッカー・ソードモードで激しく斬り倒し、離れた敵に対してはライドブッカー・ガンモードで 撃ち倒して行く。さらには……… 「一人一人相手するのが面倒くさくなった。これで一気に蹴散らすか。」 『カメンライド! カブトォ!』 カブトのカードをディケイドライバーに差し込み、カメンライドで仮面ライダーカブトへ変身し、さらにもう一枚カードを… 『アタックライド! クロックアップ!』 カブトの世界におけるライダー持つ能力の一つ、『クロックアップ』をカメンライドで発動させた。 直後にディケイドカブトが目にも留まらぬ速度で百合怪人と百合戦闘員を蹴散らして行く。 クロックアップは単純な高速移動能力では無く、時間の流れる速度自体を変え、その鈍った時間流の中で 行動する事によって通常の時間流の中にいる者から見ればあたかも超高速で動いている様に見えると言う物である。 しかもこれは必殺技でも何でも無く、『カブトの世界』におけるライダー及び怪人に当たるワームが当たり前に持つ 能力だと言うのだから恐ろしい。 「僕が援護するからなのはは攻撃に専念して!」 「うん!」 ディケイドのファイナルフォームライドによって巨大フェレットに変形したユーノがその背になのはを背負って 採石場を駆け回り、行く手の百合怪人及び百合戦闘員を蹴散らしていた。なのはの方まだまだ変身魔法で子供の姿を 取って消耗を抑えねばならない位に回復が完全とは言えず、まともに接近されては百合戦闘員にも後れを取りかねない。 そこをカバーするのが巨大フェレット形態のユーノであった。 「うわー! 巨大淫獣強ええー!」 「巨大淫獣だー! 母ちゃん怖いよー!」 フェレットは小さく可愛いペットと言うイメージが強いが、これは実は近年になってやっと作られた価値観。 歴史的に考えれば元々フェレットはウサギ狩り等に使用する狩猟用動物として飼われていた期間の方が遥かに長い。 そう、フェレットは立派な猛獣…ハンターだったのである。 そしてそれを証明するかの様に巨大フェレット形態のユーノの鋭い爪が百合戦闘員や百合怪人を次々に切り倒し、 口の鋭い牙で噛み砕いて行くと言う仮面ライダーアマゾンばりの大暴れを見せていた。 「ユーノ君一度距離を取って!」 「うん! わかった!」 なのはを背に乗せたユーノは一度敵から駆け離れた。そうすれば当然百合怪人及び百合戦闘員が後を追って なのはとユーノの所へ一塊になって殺到するのだが…そこでなのははレイジングハートの先端を彼らへ向けていた。 「ユリー! ユリー!」 「行くよ! 全力全開! ディバイィィィンバスタァァァァァ!!」 出た。なのはの18番とも言える超高出力砲撃魔法ディバインバスター。レイジングハート先端から放たれた 極太かつ桃色の魔力光は射線上に存在する百合怪人及び百合戦闘員を次々に吹き飛ばして行くのだった。 「ユリィィィィィィ!!」 忽ちの内に上がる百合戦闘員・百合怪人の断末魔。巨大フェレット形態のユーノとその背に乗ったなのは… その姿はまさに動く要塞であった! こうしてディケイド・BLACK・なのは・ユーノは次々に迫り来る百合戦闘員・百合怪人を蹴散らしていたのだが その光景を黙って見ている程ドクトルYも馬鹿では無かった。 「あの高町なーのはもユーノ=スークライアも仮面ラーイダに負けず劣らず中々やる…。しかしお前達の勢いもこれまでだ。 やれ! 大砲バッファロー!」 後方から戦闘の様子を見守っていたドクトルYの隣には、両肩に大砲を背負ったバッファロー型怪人の姿があった。 その名も大砲バッファロー。激しくそのまんまですね。そしてドクトルYは今なのは達が目の前の百合戦闘員・百合怪人の 相手に神経を集中させている隙にこの大砲バッファローの砲撃で一網打尽にしようとしていたのである。 「しかし、味方にも当たってしまいます。」 「構わん! 仮面ラーイダどもを倒せればそれで良いのだ! やれー!!」 味方の犠牲も構わない非情なドクトルYの命令により、大砲バッファローの背負う二門の大砲が火を吹いた。 激しい戦闘が繰り広げられる採石場の彼方此方で激しい爆発が巻き起こり、その爆風がなのは達、そして百合怪人・ 百合戦闘員を無差別に飲み込んで行く。 「これで終わったな。」 爆煙に包まれる採石場を見下ろし、ドクトルYは勝利を確信した…が…… 「何!?」 何と言う事であろうか。大砲バッファローの砲撃によって吹き飛ばされたと思われていたなのは達が 爆煙の中から何事も無かったかの様に現れていたのである。他の百合戦闘員や百合怪人は砲撃に巻き込まれ 吹き飛んでいたと言うのに…これは異常事態である。 「何故だ!? 何故あれだけの砲撃で平然としていられるのだ!? ええい! もう一度やれい!」 ドクトルYの命令により大砲バッファローの大砲が再び火を噴いた。しかしその直後だった。 『プリキュアラーイド! ミントー! アタックラーイド! エメラルドソーサー!』 ディケイドがプリキュアライドでキュアミントに変身し、さらにキュアミントの得意技である エメラルドソーサーで砲撃を防いでいたであった。エメラルドソーサーは敵の攻撃を防ぐ強力な盾であると同時に それを横向きにして投げ付ける事で敵を斬り裂く攻防一体の技であった。でもディケイドミントはそこまでする事無く 大砲バッファローの砲撃を防御したら防御したでさっさと変身を解除して元のディケイドに戻っていたのだった。 「くそー! こうなったらお前達もろとも自爆してやるー!」 自慢の砲撃を防がれ頭に血が上ったのか大砲バッファローが猛進を開始した。大砲を背負っていても 伊達にバッファロー型の怪人では無いと言わんばかりの勢いで猛烈な砂埃を巻き上げながら突進して行く。が… 「ライダーパーンチ!」 「ぐえぇ!」 出鼻を挫かれるも同然の形でBLACKのキングストーンエネルギーを拳に集中させて放つ技、ライダーパンチの 直撃を顔面に受けて大きく仰け反ってしまい…さらには… 「ライダーキィィック!」 「うああああ!」 同じくBLACKのキングストーンエネルギーを足先に集中させて放つ技、ライダーキックによって 大砲バッファローは大きく吹っ飛んで行き、そのまま大爆発を起こしてしまうのであった。 「ええいどいつもこいつも情けない奴らめ…。こうなったら私自らが仮面ラーイダどもを地獄に叩き落としてやる!」 ついにドクトルY自らが手に持つ斧を振り上げ直々に出陣した。その佇まいと内から放たれる気迫は 今までの百合怪人や百合戦闘員とは比べ物にならない強敵である事を予感させていた。 「とぉぉぉ!」 まずBLACKが跳びかかり拳をお見舞いしようとした。しかし… 「甘いわ!」 「うぉ!」 逆に右手に携える斧で斬り返されてしまった。BLACKの強化皮膚リプラスフォームに強烈な火花が散り倒れてしまう。 「光太郎さん! ならばアクセルシューター!」 『アタックライド! ブラスト!』 続いてなのはのアクセルシューターとディケイドのライドブッカー・ガンモードから放たれるディケイドブラストが ドクトルYへ襲い掛かるが、今度は左手に携える盾でそれを防いでしまった。 「な!?」 「この程度の攻撃で倒せると思うな! 仮面ラーイダどもめ!」 やはりドクトルYは伊達に百合ショッカーの幹部をやってはいない。なのは達もまた多数の百合怪人・百合戦闘員を 相手にして疲労していると言う事を踏まえても、ドクトルYの力は桁が外れていた。 「個別に攻撃しては奴を倒せない。全員で力を合わせるんだ。」 「力を合わせると言っても…並の攻撃では奴の盾で防がれてしまうぞ。」 全員で力を合わせて戦う事を提案するユーノにディケイドが反論する。ドクトルYの盾はそう簡単に 突破出来る物では無い事は確実であり、如何にして力を合わせると言うのだろうか? 「だから盾で防ぎたくても防げない様に仕向けるんだよ。」 「一体どうやって?」 「こうするんだよ。で、その後は…。」 「ふむふむ。」 なのは・ディケイド・BLACKがそれぞれにユーノに顔を近付け、話を聞きつつ頷いて行く。 その間もユーノは巨大フェレット形態のままなのだから、ぱっと見はシュールである。 しかし一見ふざけている様に見えても彼等は真剣だった。 「何ごちゃごちゃ言っているんだ! 何か小細工を弄しようとしても無駄だぞ仮面ラーイダどもめ!」 ドクトルYは再び斧を振り上げ襲い掛かった。しかし、それと共にディケイド達もまた一斉に分散し、 それぞれがドクトルYに対し戦闘体勢を取った。 「何が力を合わせるだ。結局分かれて戦っているでは無いか!」 「果たしてそれはどうかな? キングストーンフラッシュ!!」 「うっまぶしっ!」 BLACKのキングストーンフラッシュがドクトルYの顔面目掛け放たれた。猛烈な輝きの前に 流石のドクトルYも盾で顔面を覆いながら顔を背けてしまう。 「よし今だ! チェーンバインド!!」 『プリキュアラーイド! レモネード! アタックライド! プリズムチェーン!』 ドクトルYがキングストーンフラッシュの輝きに怯んだ隙を突き、今度はユーノのチェーンバインド、 そしてプリキュアライドでキュアレモネードの姿になったディケイドのプリズムチェーンが 同時にドクトルYを雁字搦めにしてしまうのだった。 「ぬお! なめるなぁ!」 翠と黄、二色の鎖によってドクトルYを縛り上げ動きを止めようとするユーノとディケイドレモネード。 しかし、ドクトルYは物凄い怪力でそれを強引に引きちぎろうとし、ユーノとディケイドレモネードさえ 逆に引っ張ろうとする程の凄まじい勢いだった。 「おいなのはぁ! そっちはまだなのかぁ!?」 ディケイドレモネードが天へ向けて叫ぶ。姿はキュアレモネードでも声色は門矢士のままなのだから やはり凄まじい違和感である。そしてその叫ぶ先にはなのはの姿があるわけだが、彼女の持つレイジングハートを 中心として猛烈な桃色の光が輝いていた。 「チャージ完了! 行くよ! これが私の全力全開! スターライト! ブレイカァァァァァァァ!!」 なのはがレイジングハートの先端をドクトルYに向けると共にディバインバスター以上に極太かつ 眩い桃色の魔力砲が放たれた。これもまた高町なのはを象徴する技の一つ、スターライトブレイカー。 周囲の魔力をかき集める事によってその威力は通常の魔力砲とは比べ物にならない。 「ぬおぉぉぉぉぉ!!」 巨大な魔力光の塊にドクトルYの目は大きく見開かれていた。そして忽ちの内に彼を飲み込んで行く。 しかもユーノのチェーンバインドとディケイドレモネードのプリズムチェーンで身動きの取れず盾で防御出来ない状況 だったのである。いや、ここまで来てしまったらもはや盾で防いでも無駄なのかもしれなかった。 「うおわぁぁぁぁぁ!!」 スターライトブレイカーの魔力光がドクトルYを飲み込むと同時に彼を縛っていたチェーンバインド・プリズムチェーンをも 消し飛ばし、彼を中心にして起こった大爆発と大爆風はディケイドレモネード・ユーノ・BLACKも吹き飛ばしてしまう程だった。 「あらら…やりすぎちゃった?」 「馬鹿野郎! こっちまで殺す気か!」 自分でもまさかここまでの爆発になるとは思っても見なかった様子で、困惑しながらなのはは降りて来ていたのだったが、 当然のごとくそこを咎められディケイドに怒られていた。だが、もう一つ確認しなければならない事があった。 「そんな事よりも、ドクトルG…いやドクトルYは倒せたのか?」 「……………。」 皆は未だ爆煙が立ち上り続けている爆心地を見つめていた。あれだけの爆発であるからドクトルYと言えども 一溜まりも無いはずであるが、もしかしたらと言う事もある。爆煙が晴れるまで四人は注意深く爆心地を直視していた。 すると、その爆煙を掻き分けてドクトルYがゆっくりと歩み出てきたでは無いか。 「何!? あれだけの攻撃で倒れないのか!?」 驚愕する四人であったが、ドクトルYのダメージも大きく全身が真っ黒焦げとなっていた。 「ふ…ふふ…。この戦いはお前達の勝ちと言う事にしておいてやろう…。しかし、この私に手こずっている様では 到底百合ショッカーには敵わんぞ…。私は先に地獄でお前達を待っているぞ…仮面ラーイダどもめ…。 はっはっはっはっはっはっはっはっはっ…………………。」 ドクトルYはそう言い残し、倒れると共に大爆発を起こすのだった。今度こそドクトルYの最期である。 「ふう…やっと終わったな。」 ディケイドはライドブッカー・ソードモードを地面に突き刺し、杖代わりにして疲れた身体を支えていたのだったが、 戦いはまだ完全に終わってはいなかった。 「本当、奴の言った通りだ。ドクトルY位で手こずってる様じゃ百合ショッカーには到底勝てないな。」 「え!?」 まだ誰かいるのか? 突然聞こえた謎の声の聞こえた方向へ一斉に皆が視線を向けた。 すると……そこには何とヴィータとシグナムの姿があったのだ。 「ヴィータちゃん!」 「シグナムさんまで! 無事だったんですか!?」 なのはは思わずヴィータとシグナムへ向け駆け出そうとしていたが、そこをBLACKに止められていた。 「待て! あの二人も百合ショッカーの洗脳を受けているかもしれないんだぞ!」 「安心しろ。洗脳なんてされてねーよ。もっとも、百合ショッカーに協力してはいるけどな。」 「え!?」 ヴィータの爆弾発言になのはとユーノは思わず絶句していた。そしてヴィータは続ける。 「あたし達は自分から百合ショッカーへの協力を申し出た。だが勘違いするな。あたし達は百合ショッカーの 世界征服とやらに協力してるわけじゃない。全ては『リリカルなのはシリーズ』を守る為なんだ。」 「え!? どういう事なの!?」 百合ショッカーに協力する事がリリカルなのはシリーズを守る結果になるとヴィータは言う。 これは一体どういう事なのか… 「考えても見ろ。アニメ放送が終わってリリカルなのはシリーズの人気にも陰りが見え始めて来ている。 このままじゃリリカルなのはシリーズ全体が近い内に破滅しちまう。だから百合ショッカーの力が必要なんだ。 逆に百合ショッカーを利用してやるんだよ。リリカルなのはシリーズの未来の為に…。」 「だからと言って別に百合が好きでなのはファンやってるわけじゃない奴を迫害するのは筋違いだと思うがな。」 「何!?」 ヴィータとシグナムの視線が口を挟んで来たディケイドへ向けられた。 「何が言いてぇんだ!」 「いくら百合が受けたからって言ってもなぁ…お前ら百合に頼りすぎなんだよ。それに百合以外の 要素が好きでファンになってる奴だって大勢いるのに…そいつ等を迫害して良いはずが無い。」 ヴィータの言う事は正論と思える部分もあるが、ディケイドの言う事も正論だった。 確かにリリカルなのはと言う作品はなのはとフェイトの百合が受けた事によって人気を博した。 しかし、その為に公式自らが百合厨に媚びる様になり、ユーノ等のなのはと親しい位置にいる男性キャラを 迫害し、百合以外を好む人々を弾圧して来た。これは立派な問題だと言いたいのである。 「百合のみに頼り続けなければリリカルなのはシリーズの人気が維持出来ないと言うのなら… どの道長くは持たん。いっそ一思いに俺が破壊してやる!」 「私も士さんの意見に賛成だよ。ユーノ君を嫌われ役、憎まれ役にしてまで人気を取ろうなんて思わない!」 「お前等……。」 ディケイドのみならずなのはからも真っ向から否定され、ヴィータの表情は豹変し四人を睨み付けていた。 それに対しディケイドもファイティングポーズを取る。 「来るなら来い! 俺がお前等を破壊してやる!」 「いや、今はまだその時では無い。今回は我々の意志を示しに来ただけだ。決着は次の機会に付ける。 だがその時には容赦はせん!」 シグナムもまた静かな怒りを灯らせた瞳で睨み、そう宣言すると共に二人は去って行った。 「何だ…やらないのか…。とは言え、少し安心したな。流石に連戦はキツイからな。」 「だが我々が戦わねばならない敵はまだまだいくらでもいる事は事実。安心は出来んぞ。」 とりあえずこの戦いはなのは達の勝利に終わった。しかし勝利の喜びに浸る事は出来なかった。 百合ショッカーの底知れぬ恐ろしさ…そして洗脳では無く本心から敵に回ったヴィータ・シグナムの 脅威に四人は戦慄していたのだから… 「そんな…ヴィータちゃんとシグナムさんが自分から百合ショッカーに協力してるなんて…。」 「本人に洗脳されている自覚が無いだけかもしれないよ。」 「だと良いがな…。」 やはり問題はヴィータ・シグナムが洗脳されているのでは無く、正気で百合ショッカーに協力している 可能性が出て来ている事である。ユーノの考える通り、本人に洗脳されている自覚が無いだけとも思われるが もしもそうでなかったら大変な事である。リンディ・リイン・アギトの様に洗脳を解けば良いと言うわけでは無いし 何よりも二人とも味方に付けると頼りないのに敵に回すと恐ろしいのだから。 とは言えここでグダグダと考えていても仕方が無い。四人はコミケの世界を後にし、再び百合ショッカー打倒の為の 旅を再開するのだった。
https://w.atwiki.jp/hogwartslife/pages/279.html
目次 Ctrl+F、ページ内検索でスキル名や人名(アークライト先輩以外は基本的にファーストネーム)を検索するのがいいかもしれません。 称号系最高位魔法使い <マツミ、パチュリー、サヤカ> オールラウンダー最高位魔法使い <パリストン> 修羅忍魔 <タツヤ> 涓滴岩を穿つ <ユーノ> イケメン(極) <タクト> 魔法生物:レジェンド <ソーセキ> 至高の最高位魔法使い <ヤモト・カオス> 創設者特権 <ヤモト・カオス> 龍の支配者(ドラゴンロード) <マツミ> 技術系武術の達人 <マツミ> 殺気(物理) <マツミ> 美学なき減点 <タクト> マルチタスク <ユーノ> 怯え隠れ潜んでるんじゃねえの!!! <ナノハ> 雑魚が群れるな!!鬱陶しいの!!! <ナノハ> 呪文なんか使ってるんじゃないの!!! <ナノハ> 逃げるくらいなら地獄に落ちろ!!! <ナノハ> 魔法道具なんぞ使ってんじゃねえの!!! <ナノハ> まだ呪文に頼るかっ!!! <ナノハ> 魔法使いが呪文以外を使ってんじゃねえのォーーーッッッ!!!! <ナノハ> ??? <ハルカ> ファントム・バレット <シノン> ??? <インデックス> ??? <ヴィヴィオ> 魔法技術系四重奏詠唱(無言) <ユーノ> 失敗呪文100選 <ユーノ> ??? <ナノハ> 精神系サバイバー(汚辱) <タクト> 星の想い出 <ユーノ> 双子の想い出 <ユーノ> 星光の想い出 <ユーノ> 呪文系愛を有効利用する魔法 <サヤカ> ジェミニオ・カイ <タツヤ> エクスペクト・パトローナム・バイスベルサ <マドカ> ルーモス・マキシマ・マキシマ・マキシマ <タクト> 変身術(究極) <ユーノ> 空想具現化 <ユーノ> 動物もどき・神 <ユーノ> 広範囲最大拘束封印 <ユーノ> レダクト(論理化) <ユーノ> プロテゴ・エヴァーテ・スタティム <ユーノ> 悪霊の火・コンプレックス <灰色のレディ> 疱瘡の呪い <太った修道士> ウェニー・スピーリトゥス <パチュリー> 連携系顕現・プルガトリオ <シノン+アークライト+クリス> スキルについての意見 Ctrl+F、ページ内検索でスキル名や人名(アークライト先輩以外は基本的にファーストネーム)を検索するのがいいかもしれません。 称号系 最高位魔法使い <マツミ、パチュリー、サヤカ> 最高位の魔法使い。国内でも数名しか存在しない。 相手が最低でも高位魔法使い級の魔法使いでなければ戦闘に確定勝利する。 サヤカによると、最高位魔法使いは悪霊の火によって失った腕ですら、魔法により一瞬で生やすことも容易らしい。(ハナハッカエキスでは悪霊の火は無理) (9-1476、11-2042) オールラウンダー最高位魔法使い <パリストン> (35-2047) 修羅忍魔 <タツヤ> 相手が魔法使い以外の称号系スキルを持っていない場合、確定勝利する。 (ただし最高位魔法使い級の魔法使い系称号は別。) (59-119) 涓滴岩を穿つ <ユーノ> 長く苦しい研鑽の果てに手に入る称号系スキル。 決して最高位魔法使いにはなれないが、そんなものは強さとは関係ない。 確定勝利スキル3個分。 ちなみに「涓滴」の読みは「ケンテキ」。 (69-5684) イケメン(極) <タクト> イケメンが強いのは当たり前。 確定勝利2つ分の効果。 (69-8425) 魔法生物:レジェンド <ソーセキ> 詳細不明 (83-2752) 至高の最高位魔法使い <ヤモト・カオス> 確定勝利スキルに分類してよいかは不明だが、一先ずここに。 (44-4062) 創設者特権 <ヤモト・カオス> ホグワーツでは無敵。 確定勝利スキルに分類してよいかは不明だが、一先ずここに。 (44-3844) 龍の支配者(ドラゴンロード) <マツミ> 確定勝利スキルであるか不明だが、一応こちらに。 (9-1459) 技術系 武術の達人 <マツミ> 武術を極限まで習得した証のスキル。 3段階目までレベルアップした戦闘スキルを3つ以上持ってる相手以外には戦闘で確定勝利する。 (9-1476) 殺気(物理) <マツミ> 物理的な圧力を持った殺気。 所持スキルレベルの合計が30以上、もしくはレベル5以上のスキルを1つ持っている、精神攻撃無効化系スキルを持っている、の いずれかの条件を果たしていない限り、この殺気1つで敗北、さらには長期間の精神的疲労状態に陥る(使用者の任意で発動) (9-1476) 美学なき減点 <タクト> 相手に、存在しないはずの弱点を無理やり造り出す。確定勝利スキル。 (69-8425) マルチタスク <ユーノ> 詳細不明。 (69-8615) 怯え隠れ潜んでるんじゃねえの!!! <ナノハ> 確定勝利スキル。自分の領域に陣取っている相手に確定勝利する。 (78-9664) 雑魚が群れるな!!鬱陶しいの!!! <ナノハ> 確定勝利スキル。2人以上の敵に確定勝利する。 (78-9676) 呪文なんか使ってるんじゃないの!!! <ナノハ> 呪文を使った相手に確定勝利する。 (78-9690) 逃げるくらいなら地獄に落ちろ!!! <ナノハ> 逃走した相手に確定勝利する。 (78-9690) 魔法道具なんぞ使ってんじゃねえの!!! <ナノハ> アイテムを使った相手に確定勝利する。 (78-9690) まだ呪文に頼るかっ!!! <ナノハ> 確定勝利呪文(または呪文スキル)を使った相手に確定勝利する。 (78-9690) 魔法使いが呪文以外を使ってんじゃねえのォーーーッッッ!!!! <ナノハ> 魔法に関係ないスキルを使用した相手を殴り飛ばして確定勝利する。 (78-9690) ??? <ハルカ> 相手の確定勝利スキルを1つ無効化。 詳細不明。 (69-6368、80-1469) ファントム・バレット <シノン> 確定勝利スキル。早撃ち、狙い撃ち等の修練が必要な呪文撃ち出し系スキルの極地。 相手は呪文が撃ち出された瞬間も、自分が撃たれた瞬間も認識できない。 確定勝利するための条件は特にない。 相手のカウンター系確定勝利スキルに対して、このスキルは相殺ではなく無効化する。 この確定勝利が相殺された場合、相手のカウンター系スキルを封殺する。 (80-1430) ??? <インデックス> タツヤ・シバの修羅忍魔を奪い取って自分が使用した。 (81-4817) ??? <ヴィヴィオ> 変身術系スキルを確定勝利スキルであっても全て無効化。 ユーノが無効化されていたことから、逃れる術はほぼないと思われる。 (69-5351) 魔法技術系 四重奏詠唱(無言) <ユーノ> 無言呪文4つを超高速で発動し、同時発動、または混成発動させたかのような効果を発揮させるスキル。 確定勝利スキル。 さらに、確定勝利どうしで打ち消しあっても、スキル効果が発動する。 確定先制、かつ、確定命中。呪文の組み合わせにより、相手をほぼ確定失神・拘束・死亡させる。 (69-5738) 失敗呪文100選 <ユーノ> 詳細不明。 (69-8615) ??? <ナノハ> ナノハの収束魔法。 ユーノ戦の万全でないナノハによるものでユーノの無効化を受けながらそれでも確定勝利1個相当。 (69-8772) 精神系 サバイバー(汚辱) <タクト> 殺意塗れの数十人の女から長年逃げ続け生き延びた彼のバイタリティはある意味ホグワーツの誰よりも優れている。 戦闘で死ぬことがほぼ考えられない、という状態故の確定勝利スキル。 (69-8425) 星の想い出 <ユーノ> ノロケスキル。詳細不明。 (69-8615) 双子の想い出 <ユーノ> 詳細不明。 (69-8615) 星光の想い出 <ユーノ> 詳細不明。 (69-8615) 呪文系 愛を有効利用する魔法 <サヤカ> キルキトゥスによって自分に向けられた愛を実際に力として運用する魔法。 調整不足のため、サヤカはこれを長時間使えず、心にも大きな負荷が掛かっていた。 原作のハリーが母親にかけられた愛の魔法と似た性質を持っているが……。 詳細は不明だが、これにより、確定勝利スキルを1つも持っていなかったサヤカが、教師相手でもマツミとパチュリー以外には負けないとされるほどにまで大幅に成長した。 (11-6205) ジェミニオ・カイ <タツヤ> 相手が単体であれば、条件付き最高位魔法使いクラス相手までならば確定勝利する。 相手が集団の場合でも、集団のスキルレベル合計が500までであるならば確定勝利する(相手に確定勝利スキルがある場合は別) (59-119) エクスペクト・パトローナム・バイスベルサ <マドカ> この呪文を唱えた時、『敵に最高位魔法使い』がいる場合を除き、戦闘に勝利する。 または、相手が確定勝利スキルを3つ以上持っていない限り、この効果は無効化されない。 そして、敗北した相手はこの呪文を唱えた魔法使いに魂の全てを陵辱される。 (35-8470) ルーモス・マキシマ・マキシマ・マキシマ <タクト> 超凄いレーザー。確定勝利呪文。 (69-8425) 変身術(究極) <ユーノ> 変身術系確定勝利スキル。詳細は不明。 (69-5597) 空想具現化 <ユーノ> 変身術系確定勝利スキル。詳細は不明。 (69-5597) 動物もどき・神 <ユーノ> 変身術系確定勝利スキル。詳細は不明。 (69-5597) 広範囲最大拘束封印 <ユーノ> 変身術系確定勝利スキル。詳細は不明。 (69-5597) レダクト(論理化) <ユーノ> 詳細不明。 (69-8615) プロテゴ・エヴァーテ・スタティム <ユーノ> 詳細不明。 (69-8615) 悪霊の火・コンプレックス <灰色のレディ> ロウェナ・レイブンクローの教育による基礎スペック。 ロウェナレイブンクローの教育による蓄積された生半可ではないコンプレックス。 悪霊の火の出力も攻撃範囲も並大抵ではない。 放ちさえすれば確定勝利2つ分。ただし、放つには条件を満たすことが必要。 (76-1602) 疱瘡の呪い <太った修道士> その亡者は生前、棒を突きつけるだけで農夫の疱瘡を癒やす能力を持っていた。 しかし、その能力は今、反転し、更に強化されている。 存在しているだけでシーン全体に疱瘡の呪いを確定命中させる。 疱瘡の呪いが命中したキャラは確定敗北する。 (76-1530) ウェニー・スピーリトゥス <パチュリー> 確定勝利呪文 (85-8021) 連携系 顕現・プルガトリオ <シノン+アークライト+クリス> Ⅲ、Ⅳ、Ⅴが完全に連携を取っている時に発動可能。 戦闘に確定勝利する(×3)。 この確定勝利(×3)は相手の確定勝利スキルとの相殺以外では無効化されない。 (69-4384) スキルについての意見 多くの有志が力を合わせてまとめてくれているものですが、誤解により誤った情報が載せられている場合もあります。 誤りや怪しい箇所を見つけたときはこちらまでおねがいします。 あー、てすてす -- (名無しさん) 2017-08-22 22 38 47 ステッラエル・マレンターレの一日一回は超攻性化した場合だけですよ ソースはまとめの二年次◆ハロウィンまでの出来事◆のコミュ⑤+イベント② -- (名無しさん) 2017-08-23 16 41 32 たしかに、超攻性化していない場合でも使用制限があるようにとらえられる誤解を招き得る文章ですね ご指摘ありがとうございます -- (名無しさん) 2017-08-24 04 12 17 無意識速攻Lv3の効果はは62スレの 6093に載ってるしその通り書いてあると思うんだけどなんか未確定な部分あったっけ? -- (名無しさん) 2017-08-25 21 43 38 編集した際に、誤ってLv2の効果と区別できない形式で記載された結果、Lv3の効果が未確定と誤解される記述になっていたようです。 確認して修正しておきました。ありがとうございました。 -- (名無しさん) 2017-08-25 22 07 01 回避が最適行動とシナジーあるって何処で言われてたっけ -- (名無しさん) 2018-06-14 16 10 09 最適行動、根性とのシナジーがある。(53-4044、53-4175) と書いてある通り、53スレ目の4044です。 【回避と最適行動でシナジー! 狩人で消滅! 命中率30%アップ!】 の部分ですね。 -- (名無しさん) 2018-06-14 21 48 26 確認してきました、ありがとうございます -- (名無しさん) 2018-06-15 09 05 07 エンタメで上がるレベル効果はレベル上昇分のパーセンテージのみで、文章での追加効果には意味がないんじゃなかったっけ? -- (名無しさん) 2018-06-15 13 23 04 例えば、詠唱術はエンタメの上昇で文章での威力補正【強】が反映されてたり、同じく無意識速攻は確定先制スキル扱いされてたり、誘導呪文は相手回避スキルのレベルを4つ下げてたりしてます。 ですので、パーセンテージに限定せず、1Lv上昇で統一しようと考えられているように見受けられます。 もしなにか情報があればエンタメに限らず教えていただけると嬉しいです。 -- (名無しさん) 2018-06-15 19 23 44 探してみましたが、 「数値の補正値のレベルが上がるだけで、効果の部分までレベルアップした文章のものに変わるわけではありません。」(44-4188) 以後にエンタメの効果を変更したという作者の発言は見つけられませんでした。 しかし、一方で、数値の補正以外の効果が発揮されてるのはこの発言より後のことでもありました。 したがって、現状の単純なLv上昇とは分けて表記する形で一旦維持し、作者からの明言があればそれに合わせて修正しようと思います。 -- (名無しさん) 2018-08-20 19 14 41 1年時スキルと2年時スキルの基準時がそれぞれ夏休み後、夏休み前でズレていたので夏休み後で統一。混乱した方申し訳ない。 -- (名無しさん) 2019-01-11 19 10 41 名前 コメント すべてのコメントを見る