約 454,639 件
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/2182.html
「この会場……転移魔法が使いにくいのかな? ちょっと集中してみただけなのに負担が大きいし、そんなに遠くに飛ばせないみたいだ。 この分だとトランスポーター・ハイも使えるか怪しいな。これが主催者の言ってた『能力の不調』なのか……?」 ユーノ・スクライアは突然の出来事に動揺していた。 しかし、「何とかしなきゃ」とも強く思っていた。 彼は魔法攻撃を防ぎ、敵を拘束し、対象を転移させることに長けた結界魔導師である。 何らかの魔法技術が悪用されてこの事件が起こったのならば、自分こそが解決に手を尽くさねばならない。 時空管理局の民間協力者として、一魔導師として、ユーノは即座に決意していた。 「“魔女の口づけ”なんていう魔法技術は僕も聞いたことがない……僕の知らないレアスキルなのか? でも僕らの命を握りたいだけなら、それこそ爆弾付きの首輪や、特殊なバインドを用いるだけで足りるはず ……いや、それなら、僕が人間の姿に戻った時点で首輪が破損するか爆発する危険性があるな。そういう意味じゃ“刻印”だったのは幸いだったのか」 高町家にいた時から連れて来られたために、ユーノの姿はフェレットのままだ。 ジュエルシードの回収が終わった今となってはいつでも人間の姿に戻れるけれど、変身前後で“魔女の口づけ”がどうなるのかも確認したかった。 できれば鏡のある場所か、誰かと交渉する際に変身したい。 「ひとまず、どこか鏡のある場所で、“魔女の口づけ”とやらを確認しておきたいな。もしくは、早く誰かと合流しないと……なのはかフェイトと会えるのが理想なんだけど」 フェレットの姿のまま考え込んでいた時、ユーノのヒゲがぴくりと動いた。 ぞわり 殺気のこもった寒気が、ユーノの体にのしかかった。 地面に身体を伏せ、他者からの攻撃に備える。 びきびきと何かが凍りつくような音がして、ユーノは戦慄する。 魔力反応も何も無しに、目の前から人形が出現したのだ。 氷の人形だった。大きさは人間の大人ほど。 何もない空間から生まれるように、足が生え、足から胴体が生まれ、胴体から腕が生えて、3体ほどがユーノを囲む。 (傀儡兵……? いや、傀儡兵を無から生みだすことはできないし、転移魔法で飛んできた様子でもない!) 氷人形が、ユーノを叩きつぶそうと腕を振りかざす。 「チェーンバインド!」 ユーノの足元に、魔法陣が輪を描く。 翠色の鎖が何本も、人形全てに巻き付いて固く拘束。 腕に、首に、足元に巻き付いた鎖は、人形をぎりぎりと絞め上げ、ぱきんと音を立てて破壊した。 (氷にしては強度が強い……ということは、遠隔操作の魔法? どこかに操ってる敵がいる?) しかし、周囲は深い木々で囲まれている。即座には居場所が特定できない。 ひとまず撤退しようかとも考える。 しかし、決断する間もなく人形の“再生”が始まった。 再びバインドを発動。しかし人形は拘束されながらも、今度はバインドをその手のひらでつかんだ。 「なっ……!?」 人形の腕につかまれた箇所から、バインドが凍りつき始めている。 さらに後方から、新たな氷人形が2体出現した。 退路を封鎖され、ユーノは歯噛みした。 前方からはチェーンの氷が浸食し、ユーノごと凍らせようとせまってくる。 サークルプロテクションで全面を防ぐことはできるが、ユーノ自身がその場から動けなくなる。なにより、バリアの上から氷漬けにされる危険性もあった。 攻撃用の支給品はいくつかあるが、術者の居場所が分からなければ使いようがない。 人形を破壊するだけでは、すぐ再生されてしまう。 おそらく人形と少しでも接触すれば、氷が浸食して動きを止められる。 (僕を転移させて逃げるしかないか……でも、バインドを何本も使ってる上、転移魔法の負担が大きくなってるから間に合うか分からない……) イチかバチか。 人形に潰される方が早いか。転移が完了する方が早いか。 ユーノはバインドを解除して、魔力を集中させる。 人形の剛腕が唸る音。 間に合え。 桜色の光が、人形を貫いた。 (な……) ユーノはその光を、奇跡のように見上げる。 まばゆい光の矢が、ユーノの後方にいた人形を貫き、そのまま貫通。 前方の人形も続けて破壊する。 (なのは……?) 桜色の光に、おなじ魔力光を持つ友達の姿が重なる。 しかし、弓矢が放たれた先にいたのは、白い服の少女ではなく、桃色のドレスを着た少女。 頭の左右でまとめられた、桃色の髪。 魔法のステッキを湾曲させたような、ファンシーなデザインの洋弓。 少女は人形の破壊を確認すると、少しだけ笑って、続け様に矢をつがえた。 まっすぐ、放つ。 閃光と共に放たれた矢は、空中で拡散した。 何十本もの矢に枝分かれし、桜色の軌跡を描く。 全ての矢が、人形に必中。 氷の体に何本も桜色の矢を突き立てられた矢は、再生にも時間を要する細かさでバラバラに破壊された。 (これは……魔法?) 氷の破片が舞い落ちた場所に、次の瞬間少女も降り立った。 その速さも、普通の人間のものとは思えない。 ユーノとディパックを、ふわりと抱え上げる。 「危なかったね。色々説明したいけど、今は逃げるよ」 少女は飛ぶように身軽に、その場から駈け去った。 「もう大丈夫だよ」 しばらく逃げると、寒気も感じられなくなった。 (あの襲撃者も、諦めたのかな?) ともかく、ユーノは少女に命を助けられた。 あのまま少女が来なければ人形に倒されるか、転移に成功しても、この殺し合いの会場で安全な場所にとばされていた保障はない。 そう言えば、なのはとの出会いも、こんな風に命を助けてもらったことから始まったのだ。 「ありがとう……僕はユーノ・スクライア。君は?」 少女は明るい笑顔で名乗った。 「わたし、まどか。鹿目まどかっていうの。魔法少女なんだよ」 【D-8/エリア東部/深夜】 【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]健康、変身後 [装備]弓矢(魔法少女としての武器)、ソウルジェム(魔力微消費) [道具]基本支給品、不明支給品1~2(未確認) [思考]基本:魔法少女として、殺し合いを止める。 1:ユーノ君って、しゃべるし魔法を使うし、キュウベェの仲間? 2:ユーノ君を守る。 3:マミさんと合流。さやかちゃん、ほむらちゃんを保護。 ※「まどかマギカ」10話、『一週目の世界』からの参戦です。 (ほむらと出会ってから、マミ死亡までの間) 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 [状態]健康、魔力を少し消費 [装備]なし [道具]基本支給品、不明支給品1~3(確認済み、武器として使えるものはあるらしい) [思考]基本:魔導師としてこの事件を解決する 1:君も魔導師なのか…? 2:まどかとの情報交換 3:なのは、フェイトとの合流 ※無印12話、PT事件解決後からの参戦です。 ※転移魔法の制限に気づきました。(魔力を大きく消費する上に、ある程度の時間がかかります。 また、移動範囲も半径百メートル以内。別の場所にいる複数人を移動させることはできません) 「何だ、あの弓矢と鎖は……?」 “仮面”をかぶった男は、仮面ごしの人工音声で疑問を口にした。 顔全体を覆う仮面の上からでも、微かに狼狽の色が読み取れる。 「ネズミ型のポケモンの技は見たことがない上に……あの矢はあの子ども固有の能力か? “呪い”の件といい、どうも未知のことが多いな。深追いをしなかったのは正解だったか」 放置されたディパック目当てで接近したものの、そばにいたオオタチ似のポケモンが、人の言葉を話していたことに驚かされた。しかし、ポケモンの口ぶりから、どうやら対主催側の者らしいと判断して始末を決断した。 そのマントの下に潜むのは、彼のポケモンであるウリムー。 それが初めから支給されていたのは、“仮面の男”の正体を隠す上で必要になるそのポケモンが、『仮面の男の(体の)一部』として見なされたからではないかと推測された。 (“仮面の男”としての力があれば力づくでの優勝は容易いと思っていたが……私の知らない能力者もいるようだし、ここは慎重に確実に始末していくのが得策だな。 何度も邪魔をしてきたブルーやシルバー、金色の瞳の小僧も来ているようだし) そう、彼は何の迷いもなく殺し合いに乗った。 何故なら、彼はとっくの昔から、覚悟を決めていたのだから。 愛するたった一匹のポケモンの為なら、どんな悪にでもなってみせる。どんな犠牲も払ってみせる。 他のあらゆるポケモンも、人間も、その為の道具にしてみせると。 「ヒョウガ、必ず、『願い』を叶えてお前の元に帰ろう。……そしてお前の両親を救ってみせる」 【D-8/エリア西部/深夜】 【仮面の男@ポケットモンスターSPECIAL】 [状態]健康 [装備]仮面とマント、ウリムー@ポケットモンスターSPECIAL [道具]基本支給品一式、不明支給品1~2(確認済み) [思考]基本:優勝して『願い』を叶える。 1:あの力は何だ……? 2:参加者を狩る側に回るが、危険を冒さず確実に勝利する ※参戦時期は、少なくとも“いかりの湖”事件以降。 ※ユーノ(フェレット姿)をポケモンだと思っています。 【仮面の男のウリムー@ポケットモンスターSPECIAL】 仮面の男が常にマントの下にしのばせているポケモン。 遠隔操作可能で、自動再生機能も持った氷人形を無数に生み06せる。(空気中の水分を原料にしているとのこと)。 最終戦では、氷人形を使って歴代主人公の一斉攻撃(リザードン、フシギバナ、カメックス、バクフーン、メガニウム、 オーダイル、スイクン、エンテイ、ライコウ+ピカチュウ2匹)を1匹でしのぎ、逆に圧倒した。 某掲示板の強さ議論スレで仮面の男が“チート”“神”呼ばわりされる原因をつくったポケモン。 Back 006The style of OTaku 投下順で読む Next 007魔法少女ほむら☆マギカ GAME START 鹿目まどか Next GAME START ユーノ・スクライア Next GAME START 仮面の男 Next
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3630.html
8:百合ショッカー本部殴り込み編 なのは・ユーノ・士・光太郎の四人は数多の戦いの末ついにクラナガンにやって来ていた。 「ついにここまで来たぞ。後一息だ。」 「でも私達四人だけで百合ショッカー総本部を攻撃なんて無茶な気がするんだけど…。」 最終決戦へ向けて静かにながら意気込んでいた士に対し、なのはは不安げだった。仕方が無い。 今のクラナガン、かつての時空管理局ミッド地上本部は百合ショッカーの総本部と化している。 それ故に敵の防衛網も今までとは比較にならない事は想像に難くなかった。 「いや、むしろ逆かもしれないよなのは。」 「え? ユーノ君それどういう事?」 「今まで見て来た通り、百合ショッカーは色々な世界に侵攻しているけど、それぞれの世界にも 百合ショッカーと戦う人達がいた。彼等と戦う為に百合ショッカーもさらに兵力を送り込まなければならない。 …と言う事は、逆に総本部のあるここは守りが手薄になっている可能性が高いと言う事だよ。 それに、下手に大人数で行くよりも少数で一気に奥まで忍び込んで頭を取ると言うのも立派な手。」 ユーノの言葉になのはも思わず納得していた。例え姿はフェレットであろうとも、流石はなのはのブレーンとも言えるユーノだった。 「しかし安心ばかりもしていられない。絶対数こそ少なくとも、総本部ともなれば敵も精鋭が守りに付いているはず。」 「うん…いずれにせよ激戦は避けられないんだね…。」 光太郎の言葉になのはは不安げだった表情を引き締めレイジングハートを握っていたのだが… 「その通りだ。良くぞここまで来たな。」 「ほらおいでなすったぞ!」 早速現れた百合ショッカー総本部の防衛部隊。しかし、それは仮面ライダー1号&2号と瓜二つの者達… それがのべ数十人も揃っていたのだった。 「仮面ライダー!? しかもあんなに…。」 「違う! あれはショッカーライダーだ!」 「ショッカーライダー!?」 「仮面ライダー1号及び2号は元々ショッカーが一怪人として改造した者だと言う事は以前にも話したが、 それに対抗する為にゲルショッカーが作った仮面ライダーの同型改造人間達だ!」 ショッカーライダー。元々自分達が作り上げた仮面ライダー1号及び2号に苦渋を舐めさせられたゲルショッカーが 対仮面ライダー用に仮面ライダー改造時の設計を基に、戦闘員の中でも優秀な者を改造して作り上げた存在… それがショッカーライダーであった。手袋及びブーツが黄色く、そして赤を除く色とりどりのマフラーを巻いているのが特徴である。 「その通り。確かにこの者達はショッカーライダーだ。しかし厳密には違う。百合厨の中でも特に優秀だと判断された者を 素体とし、百合ショッカーが改造した百合ショッカーライダーだ。」 「!!」 ショッカーライダー…いや百合ショッカーライダーの軍団の中心に立つ一風変わった全身を甲冑に覆われた男がいた。 「地獄大使か…。」 「地獄大使? 違うな。今の私は地獄大使改めガチ百合大使だ。」 地獄大使。『仮面ライダーの世界』においてショッカーの幹部の一人だった地獄大使。それが百合ショッカーに 参加する事によってガチ百合大使と名乗っていたのだった。そして、ショッカーライダー部隊もまた彼の言葉通りなら 百合厨の中でも特に重度の百合厨を元にした百合ショッカーライダーであると思われる。 「シャドームーンの奴は高町なのはを首領と引き合わせる事によってなのフェイの百合を復活させ それによって各世界の百合厨からの支持を得て百合ショッカーの支配体制を固める事を狙っている様だが… 我々はその様には考えていない。」 「そうだ。もう淫獣に股開いて中古になったなのはに価値は無いね。」 「まっまだそんな事してないよ////////」 ガチ百合大使と百合ショッカーライダーの言葉になのはとユーノは赤くなってしまっていたが、 彼等のその態度、それはなのはをフェイトを引き合わせようとしていたヴィータ達とは明らかに違っていた。 「故に我等は高町なのはとユーノ=スクライアを殺す事に躊躇いは無い。覚悟しろ!」 「流石は特に重度の百合厨を改造しただけの事はある…か…。」 重度の百合厨ともなればなのフェイの百合以外は考えられず、それ以外のカップリングは根絶の対象となる。 特になのは×ユーノともなれば、彼等にとってはゴミクズ以下だろう。ならば、今なのはとユーノが一緒にいる と言う状況は彼等にとって忌むべき物であり、ユーノと一緒に入る事を当たり前に受け入れているなのはもまた 彼等にとって忌むべき対象なのだろう。 「我々の愛した高町なのははもう我々の心の中にしか生きていない。今目の前にいるあの女はただのビッチ…。 淫獣に股開いたただの中古女なんだ! あんな奴に価値などありはしない!」 「だからそんな事してないよ////////」 「凄い言われ様だな…。」 百合ショッカーライダー軍団にビッチだの中古だの言われて凄いショックを受けるなのはだったが、 逆に士と光太郎は呆れるばかりだった。しかし、百合ショッカーライダー軍団が脅威である事は事実。 故にそれぞれ変身をして戦闘態勢を取る。 「変身!」 『カメンライド! ディケーイド!』 「変身!! 仮面ライダーBLACK!」 「セーットアーップ!」 なのはとその肩に乗ったフェレットユーノ・ディケイド・BLACKの四人と、百合ショッカーライダー軍団が 相対し、今戦闘が始まった。 「やれい! 百合ショッカーライダーども!」 「ユリィィィィ!!」 ガチ百合大使の号令に合わせ、百合ショッカーライダー軍団が一斉に駆け出していく。伊達に仮面ライダー1号・2号の 設計を流用して作られただけの事はあり、物凄い脚力と速度で接近して来ていた。 「来るぞ!」 ディケイドはライドブッカー・ソードモードを握り振り上げ、BLACKはパンチで跳びかかって来た 百合ショッカーライダーを迎撃した。しかし、百合ショッカーライダーは軽やかにそれを回避し、 逆にキックを打ち込んでいた。それには思わず怯んでしまうディケイド・BLACK。 「ディケイドとBLACKは後回し。まずあのビッチと淫獣をゲゲルしろー!」 「わっくっ来る!」 百合ショッカーライダーはディケイドとBLACKの相手を後回しにし、なのは・ユーノへ向けて猛烈な速度で 駆け寄せて来る。なのははレイジングハートの先端を向け、ディバインバスターで迎撃しようとしていたが間に合わない。 「させるか!」 『カメンライド! 響鬼! アタックライド! 音撃棒・烈火!』 ディケイドは響鬼のカードをディケイドライバーに差し込む事で仮面ライダー響鬼に変身し、 さらにアタックライド・音撃棒・烈火から放たれる火炎弾を連続で発射するが、それさえ百合ショッカーライダーは 回避しつつなのはとユーノへ接近して行く。 「くっ!!」 ユーノはなのはの左肩の上に立ち、防御魔法を展開して百合ショッカーライダーを阻もうとする。 しかし…その行動はお見通しとばかりに百合ショッカーライダーは構わず突撃を続けていた。 「ライダーパーンチ!!」 百合ショッカーライダー軍団のライダーパンチがほぼ同時にユーノの防御魔法へ打ち込まれ、 直後にそれが破られ砕けていた。こと防御に関しては実質Sランク級にも匹敵し得る物を持つユーノの防御魔法を 破った百合ショッカーライダーの集団ライダーパンチ。後は彼等の拳が直接なのはとユーノを襲う…と思われたが… 「危ない!」 とっさにディケイド響鬼が跳び、なのはとユーノを突き飛ばす。そのおかげでなのはとユーノの二人は何とか助かったが、 代わりにディケイド響鬼が百合ショッカーライダーのライダーパンチを受けてしまった。忽ち響鬼への変身が解除されてしまうのは 勿論の事、超硬度・超耐衝撃性・超耐熱性を誇るディヴァインオレ鉱石製のディケイドのボディーの彼方此方から激しい火花が散り倒れ込んでしまう。 これは百合ショッカーライダーの攻撃力の凄まじさを物語っていた。 「ぐぁ!」 「士さん!」 「くっ…邪魔が入ったか。だがディケイドに大ダメージを与えられただけでも良しとしよう。」 なのはとユーノは大急ぎでディケイドへ駆け寄り起き上がらせようとしていたが、ディヴァインオレ製の スーツでも完全には耐え切れなかった程にディケイドのダメージは大きいらしく中々起き上がれなかった。 「くそ…量産型ライダーのくせに何て強さだ。」 「だから言ったでは無いか。百合ショッカーライダーは百合厨の中でも特に優秀な百合厨を改造してあると。」 確かにその通りだった。百合ショッカーライダーは量産型とは言え、百合厨の中でも特に重度の百合厨を 基にして改造された存在。それ故に戦闘力は百合戦闘員やユリトルーパーとは比較にならなかった。 「ディケイドにBLACKよ、ここで高町なのはとユーノ=スクライアを大人しく渡すのであれば お前達二人の命だけは助けても良いと思うが…どうかね?」 「断る!」 「何時までそんな強がりが言えるかな? 今このクラナガン近辺にいる反抗勢力はお前達四人だけだ。 今までの様に助けは来ないぞ。」 ガチ百合大使及び百合ショッカーライダー部隊の目的はなのはとユーノを闇に葬る事。 それ故にこの二人を消せるならディケイドとBLACKはどうでも良いと考えていた。 無論そんな事はディケイド・BLACKが許容出来るはずが無いが、今この状況で 誰かが助けに来てくれるとは到底思えなかった。 「私達が貴方達に素直に殺されれば…士さんと光太郎さんを助けてくれるんですね?」 「お…おい…。」 ここでなのはとユーノがゆっくりと百合ショッカーライダー部隊へ向けて歩み寄っていく。 「おい! やめろ!」 「士さん…光太郎さん…。私達が時間を稼いでいる内に逃げて下さい。」 「そして今一度体勢を立て直し、何時の日か百合ショッカーから…世界を守ってください…。」 なのはとユーノは自身の死を賭してでもディケイドとBLACKを助けるつもりだった。 元より誰かを守る為に時空管理局に入った身。その為に誰かを助けられるなら本望。そう考えていたのである。 「やめろ! 奴等がそんな約束を守る物か!」 「ハッハッハッハッ! 潔いとはまさにこの事だな。やはりこの世は百合こそが絶対的な正義。 なのは×ユーノを支持する奴など何処の世界にいると言うのだ。」 「ここにいるぞぉ!!」 「!?」 突如として響き渡った謎の声。まるで三国志における馬岱の名台詞を連想させる言葉を叫び放ったのは 一体何者なのかと思わずその場にいた誰もが騒然としていたのだが… 「とぉ!」 「うあっ!」 直後として何者かが乱入し、百合ショッカーライダーの手に掛かろうとしていたなのはとユーノの二人を 救出し、ディケイド・BLACKの所まで連れ帰していた。 「おっお前は…ユウスケ!」 「この二人の笑顔は…俺が守る!!」 突如として乱入し、なのはとユーノの窮地を救った者、それはディケイドの旅の仲間であった 仮面ライダークウガこと小野寺ユウスケだった。しかし、現れたのはそれだけでは無かった。 「大丈夫ですか士君!」 「夏みかん…。」 倒れていたディケイドを掴み支え上げていたのは、同じくディケイドの旅の仲間である仮面ライダーキバーラこと光夏海。 そしてクウガはなのはとユーノの二人を守る様に前に立ち、構えていた。 「俺も一緒に戦うぞ!」 「お前等今頃…来るのが遅いんだよ!!」 思わずディケイドはクウガとキバーラにそう怒鳴り付けていたのだったが、表面的には怒りつつも 何処か喜びが感じられた。 「実は僕もいるんだ。」 「海東…。」 次に現れた者…それは仮面ライダーディエンドこと海東大樹であった。士がディケイドになる以前から 数多の世界を旅し、その世界のお宝を手に入れるドロボ…ゲフンゲフン…怪盗をしており、時にはディケイドの ライバルとなる事もあったが、色々あって彼もディケイドの旅の仲間となっていた。 「西も東も百合で塗れたこのご時勢だからこそ…なのは×ユーノは逆にとても貴重なお宝になってると思うんだよね。 まぁ…僕のポケットに入る様な物じゃないし、持ち帰る事も出来ないけどね。」 「とりあえず協力してくれると言う事で良いんだな?」 クウガ・ディエンド・キバーラの増援で一気に勢い付くが、百合ショッカーライダー軍団が圧倒的なのも事実だった。 クウガ・ディエンド・キバーラの救援を受けたなのは・ユーノ・ディケイド・BLACK。 しかし百合ショッカーライダー軍団の相手はそれでも辛そうであった。 「たった三人が増えただけで何が出来る! 数で押し潰してやる!」 「さて、それはどうかな?」 ディエンドは銃として右手に持つディエンドライバーを百合ショッカーライダー部隊へ向け、何処からかカードを 取り出しディエンドライバーへ差し込んでいた。元々ディケイドと同系統の技術によって作られたディエンドもまた、 カメンライドによって様々なライダーを召喚したり、また実体のある幻影を作り出して戦わせる事が出来た。 それによって物量差を覆そうとしていたのだった。 「実はね、僕は士を探すついでに三国志の世界へ行っていたのさ。」 「三国志の世界?」 「残念ながらお宝らしいお宝は手に入らなかったけど、その代わりに三国志武将をライドする事が出来る様になったんだ。」 「わぁ! 何か戦力として頼りになりそうな予感!」 ディケイドがプリキュアの世界へ行ってプリキュアをライド出来る様になったのと同じ様に、ディエンドもまた三国志の世界へ行き 名だたる三国志武将をライドして呼び出す事が出来る様になったと言う。それにはなのはとユーノの二人も思わず期待せざる得ない。 『三国ライド! 五虎大将!』 「おお! いきなり五虎大将か!」 五虎大将とは、三国志の魏・呉・蜀の三国の内の蜀における関羽・張飛・趙雲・黄忠・馬超の五人の武将を指す。 いずれも今日においても語り継がれる程の有名武将である。あくまでもディエンドがライドして呼び出した 実体のある幻影であるとは言え、今と言う状況下においては頼りになる存在と思えたが……… 「よりによって恋姫無双版かよ!!」 何と言う事であろうか。ディエンドがライドして呼び出した五虎大将とは、恋姫無双版だったのである。 「海東! お前が行った三国志の世界って恋姫無双の世界の事かよ!」 「うん。それがどうかしたのかい?」 「てっきり横山三国志とか三国無双とか最強武将伝あたりから連れて来ると思ってたからな…。」 恋姫無双の世界は三国志の世界と似て非なる世界。何しろ三国志の名だたる武将達が女性化してる世界だからね。 美髭公と呼ばれる位に立派な髭を蓄えていた事で有名な関羽も、恋姫無双の世界では美しく長い黒髪を持った女性になってる位だ。 「あの…僕達はあれが何なのかちょっと良く分からないんですけど…本当に大丈夫なんですか?」 「安心しろ。俺も良く分からん。」 五虎大将と言うからには絶対に頼りがいのありそうな強そうな男達が現れると期待していた事もあり、 恋姫無双版の五虎大将を見て、それについて良く知らないユーノとなのはは凄い不安げな顔になっていた。勿論BLACKも。 「けどあいつ等強いぞ!」 「本当だ! ってか強っ!」 「何で!?」 皆の不安とは対照的に彼女達は強かった。黄忠のさながらマシンガンの様に高速連射される矢によって 百合ショッカーライダーは次々に射貫かれ、関羽・張飛・趙雲・馬超の四人もまた女性の細腕からは想像も出来ない力で 手に持つ大きな得物をブンブンと振り回して百合ショッカーライダーを次々に薙ぎ倒していく。 彼女達はあくまでもただの人間のはずなのにどうしてあそこまで強いのか意味が分からない程であった。 「もう全部あいつ等五人だけで良いんじゃないかな。」 「いやいや、実はもう一人必要なんだよ。」 「え?」 ディエンドはもう一人必要だと言うが、一体誰を呼び出すと言うのだろう。 『三国ライド! 孔明!』 「はわわ~、ご主人様、敵が来ちゃいました~。」 「で?」 ディエンドが三国ライドで呼び出した諸葛亮孔明…勿論恋姫無双版である事は言うまでも無い事だが 先の五人と違ってあたふたするばかりでとても戦力になるとは思えない。一体何の意味があるのだろうか? 「何か意味あんの?」 「当然あるさ。筆者が喜ぶ。」 何を隠そう筆者は朱里ちゃん好きだからこれだけは絶対にやっておきたいのであった。 とまあこんな感じで百合ショッカーライダー部隊は五虎大将に任せとけば間も無く全滅する…と思われたが… 「ええい不甲斐無い奴等め! こうなったら私が直々に相手をしてやる。」 ここでガチ百合大使が前に出て来た。無論五虎大将は一気にガチ百合大使へ向けて駆け寄せるが… 「百合ショッカー百合幹部ガチ百合大使。してその実態は…ユリユリユリユリ…ユリユリンダァ!!」 「ああ! あの人怪人に変身したよ!」 地獄大使が怪人ガラガランダに変身する事は知られている。そしてガチ百合大使もまた、ユリユリンダなる怪人へ変身し、 しかもそのまま右手のムチで五人まとめて払い倒し、一気に消滅させてしまった。あくまでもディエンドのライドによって 呼び出された複製の悲しさ。この通りある程度のダメージを受けると消滅する仕組みになっていたのだった。 「あぁ! 強い!」 「邪魔者は消えた! 一気に畳み掛けろぉ!」 「ユリー!」 ユリユリンダの号令により、百合ショッカーライダーが再び勢いを取り戻し突撃を開始した。 「くそ! こうなったら今度こそ本当にやるしか無いぞ!」 迫り来る百合ショッカーライダー部隊に対し皆は戦闘態勢を取り、再び戦いが始まった。 ディケイドはライドブッカーソードモードで百合ショッカーライダーを斬り倒し、BLACKはバトルホッパーで轢き飛ばし、 ユーノがチェーンバインドで縛り上げた隙になのはがディバインバスターで吹き飛ばすし、クウガはライダーキックから放たれる 爆発で吹き飛ばし、ディエンドはディエンドライバーから放たれるディメンションシュートを撃ち込み、キバーラは 光夏海本人が持つ人を笑わせるツボを突く事が出来る能力を利用して百合ショッカーライダーを笑わせる等、 各々の持てる能力を駆使して百合ショッカーライダー部隊と戦っていたが、やはり百合ショッカーライダーは 百合厨の中の百合厨が基になっているだけあってそれでもまだ足りない強さと勢いを持っていた。 「これはさらなる戦力の増強が必要だね。」 「また誰かを呼び出すのかい?」 ディエンドはカードを取り出し、ディエンドライバーに差し込む。またカメンライドかはたまた三国ライドで 誰かを呼び出して戦うのかと思われていたのだったが…… 『カメンライド! ダブルドライバー!』 「え!?」 ここで予想だにしない事が起こった。フェレット形態であったユーノが突如として人間の姿に戻り、 さらに彼の腰には『仮面ライダーW』の世界における仮面ライダーが巻くベルト・ダブルドライバーが巻かれていたのである。 「あの…これは一体どういう事なのかい?」 「ちょっと待って。これはもう一人いないとダメな事なんだ。」 ユーノはさっぱり意味が分からず問い掛けていたが、ディエンドはキョロキョロを辺りを見渡していた。 だが、そんな時に… 「僕はダメかな?」 「クロノ!」 「リンディさんまで。」 ここでクロノとリンディの二人が何処からか姿を現していた。 「でもどうして?」 「百合ショッカーに囚われていた所を私が救い出したんです。」 どうやらクロノも百合ショッカーに囚われていたらしく、そこを既に百合ショッカーの呪縛から解き放たれていた リンディが救い出した様子であった。 「今更出て来てこんな事を言うのも何だけど…僕にも協力させてくれ。フェレットもどきばかりに良い格好はさせられないからな。」 「よし。君なら丁度良い。ならば行くよ。」 『カメンライド! ダブルドライバー!』 クロノの腰にもダブルドライバーが巻かれ、さらにユーノの右手には緑色の、クロノの左手には黒のUSBメモリ状の物体… ガイアメモリが握られていた。 「さあ、それをダブルドライバーに差すんだ。」 「行くよ…。」 「ああ…。」 ユーノ・クロノはそれぞれの手に握るガイアメモリをダブルドライバーへと差し込んだ。 「今この瞬間だけは僕達は二人で一人の仮面ライダーだ!」 『サイクロン!』 『ジョーカー!』 次の瞬間、ユーノの姿が左半身が黒の、右半身が緑の姿へ変貌して行く。それこそ『Wの世界』におけるライダー、 仮面ライダーW・サイクロンジョーカーである。 そして、ユーノがサイクロンジョーカーへ変身するのに伴い、クロノの精神はサイクロンジョーカーの内の ジョーカーの部分へ移る形となり、魂を抜かれた様にグッタリと倒れそうになっていたクロノをリンディが受け抱き上げていた。 「ユーノ君が緑と黒のライダーになっちゃった!」 ユーノの変貌になのはは驚くばかりだったが、サイクロンジョーカーとなったユーノとクロノは 自分がライダーに変身した事によってテンションが上がったのか、百合ショッカーライダー部隊を指差しポーズを決めていた。 「さあ! お前達がヲカズにした百合カップルを数えろ!」 ユーノとクロノの声が思い切りハモり、普段はいがみ合っていても何だかんだで仲良い事を暗示させていた。 「あの…私はその仮面ライダーWと言うのが良く分からないんだけど、とりあえずクロノ君の方もそっちに入ってるって事で良いのかな?」 「うん。そう考えてもらって結構。」 ユーノがただライダーに変身するだけならまだしも、クロノの精神まで入り込むのはどういう理屈なのだろうと なのはは不思議に思っていたのだが、とりあえずはそういう物だと理解するしか無かった。 「淫獣がライダーになったぞー!」 「うろたえるな! ただのコケ脅しだ!」 「何か変な事をされる前に出鼻を挫いてしまえ!」 百合ショッカーライダー部隊の何人かがユノクロWへ向けて突撃を開始した。しかし、ライダーに変身した事でテンションを上げた ユーノ・クロノはそれに戸惑いを感じていなかった。 「今の僕達は一味も二味も違うよ!」 ユノクロWが右手を前に突き出す。するとどうだろうか。直後にその右手から猛烈な強風が吹き荒れ、それには思わず 百合ショッカーライダー数名も進撃速度を鈍らせてしまう。これがサイクロンジョーカーの中のサイクロンの持つ能力。 サイクロンであるが故に風を操る事が出来るのである。 「ただの風だ! 怯まず進め!」 「たかが風…されど風と言う事だよ。はっ!」 ユノクロWの右半身であるサイクロンの力によって起こした強風で百合ショッカーライダーの進撃速度が鈍った隙を突き、 さらに風の力を利用して勢いを増したユノクロWの左拳が百合ショッカーライダーを殴り飛ばしていた。 これがサイクロンジョーカーの内のジョーカーの持つ能力。特にそれと言った特殊能力は無いが、純粋に身体能力を高める 能力を持ち、そのシンプルさがかえって使い勝手の良さに繋がっていた。 「うわ! 凄ーい! ユーノ君もう別人みたい!」 クロノも半分混じってるけど、ユーノの別人みたいな活躍になのはもビックリだった。だが、少し残念な気持ちもあった。 「けど…個人的には士さんの力で大きなフェレットさんになる方が私個人としては嬉しかったかな…。」 なのは個人としてはライダーとして活躍するユーノよりも、ディケイドのファイナルフォームライドで巨大フェレットの 姿になって活躍するユーノの方が好きだった。しかし今と言う状況では個人的な好き嫌いを言っている場合では無かった。 「まあ良いや。どうせなら私も何かライダーになりたいな~。何か良いの無いの?」 「いや、君はそのままでも十分強いから必要無いでしょ?」 「ショボーン」 ユノクロWに影響されて自分もライダーになって見たいと思い始めたなのはであったが、即効でディエンドに 拒否されてガックリと肩を落としていた。 「とりあえず今は奴等を倒すのが先決だ。」 「敵の数はまだまだ多いからな。」 その通り。今目の前にはまだまだ沢山の百合ショッカーライダーの大軍とガチ百合大使ことユリユリンダがいる。 これを倒して先に進まねばならぬ…と思われていたが…その直後だった。 「とぉ! ライダー! トリプル! キィィィィック!!」 「何!?」 なのは達の背後から何者かが三人、高々とジャンプして跳び超えると共にキックで百合ショッカーライダー達を 蹴り飛ばしていた。一体誰なのか? 「ここは俺達に任せてお前達は先へ進むんだ!」 「1号! 2号! V3!」 ここでさらに現れたのは仮面ライダー1号・2号・V3だった。秋葉原の世界で、後々合流すると言っていた彼等だが、 本当にその通りにやって来ていたのである。そして三人は百合ショッカーライダーを次々に殴り倒し蹴り倒し、 投げ飛ばしながらディケイド達に先へ進む様叫んでいたのだった。 「ここはあいつ等に任せて俺達は先に進むんだ。」 「で…でも士さん…大丈夫なんですか?」 「アイツ等だって仮面ライダーだ。心配はいらない。」 「本当に倒すべき敵はこの先にいるんだしね。」 なのははたった三人に百合ショッカーライダー部隊の相手を任せる事に不安を感じていたが、 敵は目の前の百合ショッカーライダー部隊だけでは無いのである。故にここは三人に任せて先へ進むしか無かった。 「おっと夏みかん。お前はあの二人と一緒に何処か安全な所へ行くんだ。」 「え?」 ディケイドはキバーラの肩に手を置きつつ、ユノクロWに精神が移った事によって魂が抜けた様にグッタリしていた クロノを抱き支えていたリンディを指差していた。 「士君。私は戦力として当てにならないと言うんですか?」 「違う! あの二人を守ってやれと言うんだ。特にあっちの黒い服の男の方は精神がWの方に移ってるから その状態でやられたら大変な事になる。それにあっちのオバサ―――」 少々お待ちください 「あ…あっちの綺麗で美人のお姉さん一人にあの男担がせるのも大変だろう。これも重要な事だ。」 「分かりました士君。そういう事ならば私はこの二人を守ります。」 「ありがとう助かります。」 先程途中で台詞が途切れた様な気がしたが、とりあえずここでキバーラはクロノ・リンディを守ると言う名目で 二人と共に世界と世界を繋ぐ次元のオーロラを通って安全圏へと脱出した。 「よし。とにかく1号・2号・V3が奴等を引き付けている内に俺達も行くぞ。」 今も1号・2号・V3の三人が百合ショッカーライダーの軍団と激しい激闘を繰り広げている。 故に今の内に皆は先へ進むのだった。
https://w.atwiki.jp/narumiayumu/pages/100.html
朝の光を受けた草原を歩く二人。 前を行くのはシックなメイド服に身を包んだ麗しの美少年、ユーノ・スクライア。 その後ろをおずおずと歩くのは金髪の長い髪をツインテールにまとめた美少女、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。 二人は草原の向こうにある市街地を目指して歩を進めていた。 「街は遠いですね」 「まあ仕方ないよ、ゆっくりぼ……私達は進んでいるんだし」 現在の速度をあげることはできるが移動で無駄に体力を減らしたくない。特にフェイトは鍛えているとはいえまだ少女だ。 年齢詐称薬で色々とごまかしているユーノは違うのだ。 加えて、敵対する参加者と出会った時には疲れてもう動けませんでは洒落にもならない。 命を賭けているゲームであるからこそユーノは慎重な行動を心がけている。 (本当はすぐにでも飛び出したいんだけどね……) 今もこの島の何処かにいる護るべき存在である高町なのはのことを考えると気が気でならない。 魔法が封じられている現在、ただの非力な少女であるなのはは参加者の中では最弱の存在だ。 保護をしてくれる参加者、支給された物の中にデバイスが入っている。 希望を抱かざるをえない。 (僕がこうして動いているということはクロノも今頃は何か動きを見せているはずだ) クロノ・ハラオウンについては心配していない。自分達の中で一番の実力者であり経験も豊富だ。 早めの合流が望ましいがなのはと比べると優先順位が格段に下がる。 (この先の街でなのはかクロノがいればいいんだけどな。フェイトとも運良く合流できたし) 二人が向かう街には様々な施設が存在する。この島に散らばった参加者達も最寄りの街を目指して移動していることだろう。 森の中を闇雲に歩いてなのは達を捜すよりは街で効率よく探したほうが都合がいいとユーノは判断した。 それとは別に、メイド服に代わるまともな服とパンツが欲しいというのもあった。 (中はスースーするし変な感じだ。履き慣れてないからなぁ、スカートなんて。 それに、できれば戦闘は避けたいなあ。フェイトを護りながらの戦闘は僕には辛いし、こんな着慣れない服で戦いたくはないよ) ユーノ自身戦闘には不向きな為に可能な限り争わずに街へと着きたかった。 まだ数時間しか経っていないのに激しい戦闘は御免なのだ。だが、その甘い考えは次の瞬間、消えてなくなることとなる。 「っ!」 殺気。誰かの視線をユーノは直感で感じる。ユーノはその場で移動をストップし、フェイトも同じくその場で動かないようにと指示を出す。 その指示を受けてクエスチョンマークを浮かべたかの如くキョトンとしている様子を顧みる余裕は今のユーノにはない。 そして、敵は濃い血の臭いと共にすぐに姿を現すこととなる。 「下がるんだ、フェイト!」 それを受けてからのユーノの行動は迅速だった。フェイトを下がらせて護りやすい立ち位置を作る。 頭の中では魔法の構築を始め、殺気に対する警戒心を高める。 一秒、二秒経って草むらの影から駆け出してくる一つの影。 「術式解放」 その言葉と同時にユーノの足元には翡翠色の魔方陣が展開する。 そして、影は魔方陣に驚きはするがそのまま勢いを落とさずに疾走する。 「ちっ……!」 だが、影が手に持つ野太刀を振るおうとした時には既に二人の姿はそこにはない。 一瞬の思索、影は横に跳び、いつの間にかに背後にいるユーノの手から放たれた翡翠の鎖をギリギリのところで躱す。 影の正体はラキオスのエトランジェ、高嶺悠人。手には先程の戦闘で奪った支給品の中に入っていた野太刀が握られている。 「まさかいきなり斬りかかってくるなんてね」 「……」 悠人は無言で再び走りだす。敵は斬る。ただそれだけを考えて。 他人の事情など知ったことか、と言わんばかりに野太刀を大きく――。 「チェーンバインド、射て」 振るえない。瞬間、悠人が迫るのと同時にユーノは即座にバインドを放つ。 悠人はその場で立ち止まり、野太刀を一閃。迫り来る翡翠の色をした鎖を切り裂くが幾つかは刃を通り抜け体に絡みつく。 ユーノはギリギリと歯を食いしばりながら手から繋がっている鎖を握りしめて悠人の動きを封じる。 そして、一人置いてけぼりなフェイトの思考が現実に戻り、おろおろと周りを見渡しようやく言葉を発すした。 「え……? 魔法? それにその色は……ユーノ?」 目の前にいる彼女はネギ・スプリングフィールドと名乗っていたはずだ。 加えて、体格は大きくメイド服を身につけているのは何故なのだろうとあれこれと疑問が噴出する。 だが、今使われた魔法はフェイト自身何度も見ており、見間違いなどする訳がない。 ぐるぐると思考回路を回して目の前にいる人物がユーノ・スクライアであることを理解した。 「事情は後で話すよ。それよりもフェイトは早く逃げて、ここは僕が抑えているから」 「嫌だよ! ユーノを一人置いていくなんて!」 「魔法が使えないのにどう戦うのさ? 有体に言ってしまえば、足手まといだよ」 「……っ」 この会場ではデバイス、それに類するものがなければ魔法は封じられたままである。それはデバイスなしで魔法を行使可能なユーノとて例外ではない。 そのような状態の中で魔法を使える理由。それは指にはめられている指輪、魔法発動体のおかげである。 元はネギ・スプリングフィールドが持ち主であったがこの島ではユーノに支給されており、この指輪を媒介にして魔法を使用したのだ。 一方のフェイトは魔法が使えないただの幼い少女。到底戦いなど出来る訳もない。 「……わかった」 しぶしぶながらフェイトは了承の意を示す。分かっているのだ、自分が何の役にも立たないということぐらい。 それでも、感情と理論は別だ。仲間を置いて一人逃げ出すということには当然拒否感がある。 今、自分が一番ユーノの為になることを考えた結果はやはり、この戦場からの離脱だった。 「でも、私は“逃げない”から! 助けを呼びに行くから! 絶対に戻ってくる!」 「うん、待ってるよ」 フェイトが走り始めたのと同時にパキンと鎖が砕け散った。 砕け散ったが瞬間、悠人は逃げるフェイトに向けて刃を向けようとするがユーノがそれを妨げる。 幾重もの鎖を発動させ、前へと進ませない。これらを野太刀で砕き、避けている間にフェイトは森の中へと悠々と走り去っていた。 「貴方の相手は僕ですよ?」 「……お前を斬り捨ててあの女の子を追いかける。悪いけど俺には余裕が無いからな」 「まあ、それが出来るのでしたら、ね」 ユーノは不敵に笑って魔法の術式を構築し、悠人は眉をしかめて野太刀を構える。 掌から飛び出す鎖を皮切りに再び殺し合いが始まった。 ◆ ◆ ◆ そして、他の参加者に助力を求めて走りまわった末にフェイトは香介達と出会ったのだ。 慣れない森を必死にかけずり回ったので息も絶え絶えだ。 だが、一番伝えなくてはならない一言は言えた。 『ユーノを助けて』 その言葉を誰かに届ける為にここまで走り、幸良く倒れて気絶する前に参加者に出会えた。 「……はぁ……っ、ぁぁ……」 「しっかりするじぇ!」 「そうだぞ! まだ死ぬには早い! というか目の前で死なれると気分悪いんだよ!」 優希と伊万里がフェイトを抱き起こしがくがくと揺らす。 その絶妙なグラグラ感は肉体的に限界だった身体を更に疲労させる。 それに気づいたのか、二人はあわあわと慌ててフェイトを地面に下ろし横たわらせた。 (さて、どうしたもんかな。このガキの言う言葉を信じていいものか。 一応外見上は必死にここまで走りまわって私頑張りましたって感じだ。 それがふりじゃなければ迷わず信じられるが今の段階ではそれは不可能だ) 香介はその光景を冷静に観察していた。何の感情も交えずに客観的にフェイトをただ見つめている。 何かおかしな挙動はなかったか。裏切り裏切られが常だった戦いを渡り歩いてきたブレードチルドレンとして勘を最大限に働かせる。 (まっ、助けるにしても俺には武器がない。武器もないのに人助けなんて論外だ、正義狂いって訳でもねーし。 信頼に値する何かがこのガキから俺らにもたらせない限り信じるメリットはねえ) 香介は決してお人好しではない。今ある現実をしっかりと踏みしめてどの行動をとれば自分達の利益になるかを考えられる少年だ。 仲間である亮子や歩であれば無条件にフェイトの言うことを信じただろう。 だが、あいにくと浅月香介という人間は人を殺すことも裏切ることも数えきれない程に行なってきた。 今更正義の味方じみたことをやるつもりはさらさらない。 「すいません……」 「気にすることはないじぇ!」 優希がどんよりとした空気には似合わない明るい声でフェイトを励ました。その言葉を受け、フェイトも少し笑顔がほころぶ。 その空気に割り込むかのように香介が刺すような目つきでフェイトを睨む。 安易に心を許すつもりはない。例えそれが少女だとしてもだ。自分が納得するまでは香介に協力する気はさらさらない。 「ようし事情と持っている情報を聞かせてもらおうか。悪いがそれも話さないでいきなり助けてくれと言われても信じねえからな」 「おい、そんな言い方しなくてもいいだろ」 「お前が口を開くと余計に拗れるからちょっと黙ってろ。さてと、じゃあ洗いざらい話してもらうぜ」 「わかりました……私が知っていることを、全てお話しします」 そうしてフェイトの口から語られたのは三人にはとてもじゃないが信じられない御伽話のようなものだった。 魔法、次元世界、時空管理局。普通に生きていく上で一生聞くこともない言葉の数々に口をあんぐりと開ける他ない。 「さすがにスケールがでか過ぎて信じられないじぇ……」 「おい少女! その魔法の中に好きな男を振り向かせる魔法はないか!」 「すいません、そのようなものはちょっと……」 「ちっ! 沢村をメロメロにする魔法がないとは……! 使えんぞ、魔法っっっっ!」 伊万里がくけーっと奇声をあげながら頭をかきむしる様子を香介はため息混じりにスルーして再びフェイトに向き直った。 このテンションに合わせていては身がもたないと香介は雨苗雪音の事件の時に学習している。 「まあそのぶっとんだ話は一応信じるとしてだ。お前が最初に言った言葉から推測するに誰かに襲われたんだろ」 「はい……」 「で。そのユーノって奴がお前をかばって殿を務めた。それでこのままじゃやばいって思ったから助けを呼んだ、こんなものだろ?」 香介がフェイトの伝えたいことを全て纏め上げて残りの二人に説明する。 この人ならば。持ち前の冷静さでユーノを助けになるに違いない。 だがその希望は香介が次に放つ言葉に打ち砕かれた。 「さてと、まずはお前の要望に対する回答からだ。率直に言うと答えはノー。俺はお前を助けない」 「……ぅ!」 「メガネ、見損なったじぇ! それでも男か!」 「話は最後まで聞け。武器がない俺には助けるなんて無理だ。無手で戦場に割りこむなんて御免こうむる。 そもそも武器がない俺が行ったって何の役にも立ちはしねえよ」 香介の支給品は携帯電話、スクール水着、大量の五百円玉と戦闘には不向きなものだ。 五百円玉は羅漢銭の用法で使えなくもないが専門でないために心許なく、拳銃やナイフなどの殺傷性がある武器でもない限り戦闘は行えない。 「それでしたらこれを使ってください。私には使えないのですが、貴方なら」 渡されたのは短機関銃として高性能を誇るFN P90。かつて、学校を舞台にした戦闘でカノン・ヒルベルトが使ったものである。 フェイトは両手で持ち上げるのが精一杯ではあるが香介ならば軽々と持ち運び、照準を定めて撃つこともできるだろう。 「オイオイオイちょっと待てよ。まだ俺らは出会って数分しか経ってもいないんだ。 んな訳の解らん奴にこんなの渡してもいいのかよ、俺がこれを受け取ったのと同時にてめえらを撃つかもしれないんだぜ?」 目の前の少女による短慮な行動に香介は呆れ混じらせながら言葉を紡ぐ。 余りにもお人好しが過ぎる。この年齢だからある程度は仕方が無いとはいえもっと警戒心を持てと発したくなる。 「確かにまだ私は皆さんとは会って数分、信頼関係も築いてはいません。こんな状況なのに人を簡単に信じるのも短慮だと言われるのも甘んじて受け入れます。 ですが、私は信じたいんです。人の温かさを、優しさを」 「……」 「お願いします! 私の友達を助けてください! 何でもしますから……!」 フェイトは何度も頭を下げて香介に縋りつく。ここで逃したら次の機会はいつかわからない。 こうしている間にもユーノは戦っているのだ。早く駆けつけなければ死んでしまう可能性だって孕んでいる。 最後のチャンスとおもってフェイトはしつこく願い出る。 「おいメガネ、こんなにも頼んでるのにまだ断るのかー。これで断ったら男がすたるじぇ」 「ま、助けてもいいんじゃね? 別に減るもんでもないし」 優希と伊万里は既にフェイトに協力をする構えだ。最初から断る気もなかったから疑う気もない。 伊万里はどうかは少し疑問に残るが、優希は馬鹿だと言われてもいいくらいお人好しだ。 「あーもうっ! どいつもこいつもバカみてえなお人好しだよ。付き合ってらんねーっての! …………けど、この短機関銃をもらった恩があるっ! 仕方ねえっ、武器がない俺にこんなあたりをタダでくれたんだ、やってやるよ!」 フェイトの顔がパアッと明るくなる。これでユーノを助けることが出来る、力になれる。 その歓喜の表情が思わず外に出てしまった。数瞬後、それに気づいて顔を真っ赤に染めたのはご愛嬌という所である。 「勘違いすんなよ、俺はこの武器との取引で応じただけだからな。だからそんなにニコニコすんなっ! ……さっさと行くぞ、ともかくお前がここまで走ってきた道を急いで逆走だ。道は覚えているか?」 「詳しくは覚えていません……でも方向は覚えていますっ」 「それだけわかれば何とかなる。さてと、人助けと洒落込もうじゃねえか」 四人はユーノが戦う草原に向けて進路を向ける。だがそれは遅すぎたのだ。 彼らが戦場に辿り着いた時、戦いはどうにもならない場面に進みすぎていた。 そこで見た惨劇の光景。ユーノ・スクライアはもう既に――。 ◆ ◆ ◆ 草原で繰り広げられる翡翠の守護者と血霞に染まったエトランジェの殺し合い。 戦況はどちらかに傾くという訳でもなく拮抗していた。 「はあっ!」 「シールド起動、通させないよ――――っ!」 力強く振り抜かれた野太刀がユーノの掌でギチギチと金切り声を上げる。 瞬間、突如ユーノの肉体が消え、悠人が前のめりに倒れこむ。 何が起こったと考える前にその場からなりふりを構わずに大きく跳躍した。 「くっ……」 後ろに転送したユーノは再びチェーンバインドの術式を構築し、悠人目がけて放ったのだ。 バインドに気づけたのは戦場を駆け抜けた経験からだったとしか言いようがない。一介の学生であった昔の悠人ではここまで戦うことは不可能であっただろう。 それでも、エトランジェとしての力を駆使しても。ユーノのトリッキーな戦法には考えもよらないくらいに苦戦をしていた。 (厄介な相手だな……アセリアやオルファみたいに単純ではない) 野太刀を胴へと向けて片手刺突、それをユーノはぐるりと身体を回転させてそれを躱し、流れるように掌底を放つ。 だが、悠人がそこから薙ぎへと移行するのを見て途中で掌を横にかざし斬撃を防ぐ。 (この人、強い……! 経験に裏打ちされているし、まるで疲労した様子がない。長期戦になりそうだね) そして、同時にユーノも悠人と同じような感情を抱いていた。 遠距離からバインドを放っても斬り捨てられ、接近できたとしても野太刀による鋭い斬撃が襲ってくる。 勝てない。ほんの少しでもそう考えてしまった自分自身を忘却の彼方へと置き去り、発破をかける。 数回の交錯の末にユーノは距離をとり、自分に分のある遠距離で戦うことを選択した。 相手の追撃は、ない。同じく悠人も後方に下がり小休止に入る。 「ここで退いてください、といっても貴方は退かないんでしょうね」 「当たり前だ、あの女の子はもう無理かもしれないけどアンタは違う。今ここで殺す」 互いに呼吸を落ち着かせ、次の戦闘へと準備をする。悠人は次はどのように攻めるか。ユーノは魔法を高速で構築し、どのタイミングで発動させるか。 もう中途半端では終わらない、否――終われない。 「一つ質問をさせて下さい。何故貴方は殺し合いに? この殺し合いで何を望むのですか?」 「答える義理はない。俺は何が何でも優勝しなければいけない、ただそれだけだ」 「それはもうやり直すこともできない程に深い思いなんですか?」 「そうだ、俺はもう人を殺した。今更後戻りなんてできない……! アンタに護りたいものがあるように俺にだって護りたいものがある。この議論はどこまで行っても平行線上だ」 殺し合いに乗った者と抗うと決めた者。両者の溝は大きい。増してや悠人は既にこの島で人を殺した。 何の関係もない赤の他人を自分の願いの為だけに屠った。その上での覚悟は生半可なものではない。 もう、誰にも頼らないと決めた。たった一人で修羅の旅路を往くと決めた。 「さてと、再開だ」 「…………っ」 どちらかの死を以てでしか終焉は訪れないと予知しているのか冷たい風が吹き荒び、互いの闘気が草原に充満していく。 野太刀の輝きも、翡翠の魔方陣もこの戦いの織り成す飾りとしかならない。 これは、どちらの願いが強いかという純粋な争いなのだから。 「行くぞ――覚悟して、絶望しろ」 「展開しろ、チェーンバインドっ!」 頭の中で構築したチェーンバインドを解放。その数実に四つ。 四本の鎖がうねりを上げて襲いかかる。悠人はまずは接近するべく走り始めた。 一つ目。横に軽く跳んで躱す。特に何の変哲もない。 二つ目。野太刀を袈裟に振るい鎖を断ち切る。断ち切られた鎖は音もなく消失した。 三つ目。正面からの払い。薙ぎ払われた鎖はあらぬ方向へ飛んでいく。 「これで最後だ!」 四つ目。身体を横に僅かにずらしスレスレのところで鎖との衝突を避け、そのまま強く横に薙ぎ、鎖を叩き斬る。 もうユーノの前に障害はない。後は野太刀で斬り殺して終わりだ。 そう、考えていた。 「いつから鎖が四つだけだと錯覚していたんだい?」 「があっ!」 突如腹部に迸る衝撃による痛み。何が起こったか理解ができない。 どうして地面から鎖が飛び出ているのだろう、と。 地中から飛び出した鎖が悠人の体を強かに打ち鳴らし、くの字に曲げる。 強い痛みにより野太刀が手から離れていく。ああ、まずいと思ったその時は既に手遅れだった。 「はっ!!!」 まだ終わらない。ユーノは転送魔法で悠人の懐まで移動、掌打による追撃を決行。 双掌による渾身の一撃が悠人にドスンと突き刺さる。 その一撃が強烈だったのか勢い良く吹き飛び、口からは逆流した胃液がたれ落ちる。 身体はそのまま地へと倒れ込み、起き上がることは――。 「っぅぅ、おぉおぉぉおおお!」 ふざけるな、まだ自分は倒れてはいけない。 ああ、そうだ誓ったのだ。この世界の何もかもを蹂躙し尽くし、斬り刻んで叩き潰して滅する。 全ては元の世界で囚われの身となっている妹の為に。 その行いが踊り狂うマリオネットだろうが、前座ですらない道化であろうが関係ないのだ、悠人には。 優勝して一刻も早く帰還してラキオスのエトランジェとして戦場に立たねばならない。 (佳織を救うためにっっ!) 願いは元より変わらず、定められた道を雷鳴の如く疾走する。 高嶺悠人の髪の毛一本から血の一滴に到るまで高嶺佳織に捧げようと決めたのだから。 この身が怪生の存在と成り果てても願いだけは失わない。 覚悟は完了した。後はデイバッグに入っているとある『神剣』に願いを乗っ取られないよう気を強く持つだけだ。 「出て来いッ!!!」 犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ犯せ!! 犯せ、犯セッ犯せ犯セッ、犯セ犯セッ犯せ犯セ犯せ、犯セッ犯せ犯セッ犯セッ犯せっっ!!!!!! 眼前にいる名前も知らぬ少女を淫靡なる世界へと引き込むのだ。 神剣が告げている。身体が知っている。それは至上で天壌にも登る快楽だということを。 無理やり組み伏せて自分のエネルギーを相手に対して放出する。何度も何度も嫌になるという概念が消えてなくなるまで何度でも。 ただ、したいから。屈辱に濡れるその顔はスパイス、平らな胸は歯形がつく程にしゃぶりつくしたい。金色の髪は白に染めたくなる欲求を膨らませる。 神剣が叫ぶ声には歓喜の声が。それにつられて悠人も思わず獲物を見つけた獣を想起させる獰猛ないい笑顔をしてしまう。 構わない、願い以外はどうなってしまっても構わない。 「誓ィィいいいィィイイいいいいいいい!!!!!!!」 そは誰も知らず届かぬ至高で永遠なる神剣なり。我が破壊の渇望こそが原初の荘厳。 創造しろ。永遠なる旋律を。誓え、世界を犯し尽くすと。 高嶺悠人はこれより――――悪鬼となる。 「あれ、は――――っ!」 デイバックから出されたのは赤と黒に染められた片手剣。発する妖気は先程の戦闘で血を吸ったせいか禍々しさを増している。 悠人はその剣――『誓い』と呼ばれる永遠神剣を使いたくはなかった。 これを使うと自分が自分でなくなってしまう感覚が纏わり付き、凶気に感化されて本能のままに暴れたくなってしまう。 誓いは本来悠人が持つ『求め』とは違い、何もかもをぐちゃぐちゃにする凶悪性を持っている。 それは肉体、精神、記憶。高嶺悠人たらしめるすべてを削り取っていくのだ。 「行く、ぞ……」 ゆらりと立ち上がる。手には魔剣である誓いを。心には最低限の大切な思いだけを残し他は破壊と性の欲望にあてる。 空気が、変わった。悠人の纏う空気が血と臓物の入り混じる戦場の狂戦士へと完全に成り代わる。 これこそが本物。悠人が一歩歩く毎に脳裏に迸る恐怖という圧倒的な感情。 「斬り、拓く」 悪鬼が嘲う。ニィっと口を歪ませそれはもう楽しそうに。 眼の前から発せられる絶望的なまでの人外感に嫌になるほどの非日常性。 滴り落ちる冷や汗がユーノの動きを鈍らせる。 言うまでもないがプレシア・テスタロッサの時の庭園への侵入、闇の書の残骸との最終決戦を上回る。 こいつはやはり化物だと嫌でも理解してしまった。 「っ!? シールド全開、一点集中ッ」 そうして気を取られている内に地面を踏みしめる鈍い音が鳴ったと思ったが刹那、悠人はユーノへと接近していた。 黒と翡翠が激突。ガガガガガッとドリルで地面を削るような音が掌と剣から鳴り響く。どちらも進まず、されど後退せず。 (重い斬撃……! 受けきれないよ!) ユーノは斬撃を正面から受けきれないと即座に判断、後ろに跳び衝撃を軽減させる。 悠人はそれを追うように前に跳び、逃しはしないと言わんばかりにギラギラとした目を殺気と性欲で染め上げる。 「堕ちろ」 黒の穿孔が抉るようにユーノの肩目がけて飛び込んでくるが、転送魔法で余裕とまではいかないが何とか躱し、距離をとろうとする。 接近戦主体の悠人相手には遠距離で戦う他ない。更には誓いによる恩恵を受けて全体的に動きのキレも良くなっている。 (やばいやばいやばいっ! 僕じゃとてもじゃないが勝てない……) チェーンバインドを幾つか飛ばすが、誓いにあっさりと防がれて消えてしまう。これでは放出するだけ魔力の無駄である。 加えて、バインドで拘束したとしても制限の影響か拘束時間が極めて短い。 それでもユーノ自身は切り札はある。あるのだが、それを使えば確実に人を殺してしまう。 一応の用意はしてあるが使いはしないだろう。 「だけど……」 恐怖と狂気が蔓延る戦闘の最中だというのにかつて護れなかった一人の少女が脳裏に浮かぶ。 それは今の自分をかたどる原初たるもの。白の少女が赤に染まった地獄のような一日。 血塗れで病院に搬送され、無残にもベッドでその姿を見て愕然とした。 眼の前が真っ暗になるとはこのようなものかと他人事みたくも考えた。 「僕はまだ死ねない」 家族。友達。仲間。病室に入った途端に誰もが自分を白い目で見る。 ああ、そうだ。当然の事だ、結論は分かりきっている。 ユーノ・スクライアが高町なのはの不調に気づいていれば。 ユーノ・スクライアがやり過ぎな訓練、エクシードモードを止めていれば。 ユーノ・スクライアが高町なのはにレイジングハートを渡さなければ。 ユーノ・スクライアが魔法で助けを呼ばなければ。 ユーノ・スクライアがジュエルシードを封印していれば。 ――――高町なのはは死にかけずに済んだ。 始まりは突然に。全てはユーノ・スクライアが引き起こした。 何の価値もない塵が星を堕としたという大罪、極めて悪質。 それからは感情が人間としてあり得ないくらいに平坦となり、無の境地へと至る。 涙を流し、哀しむこともできなくなった。心から笑い、喜ぶこともできなくなった。仕事を溜め込み、楽をすることをしなくなった。 喜怒哀楽の中唯一残った自分への怒り。ただそれだけを糧に生きていくことにした。 「チェーンバインドッッ! 全弾、射っ!」 傷ついた彼女達の為に身を投げ打ってフォローをした。できるだけ彼女の傍にいてリハビリなどの世話した。 病院代は全額保証、無限書庫での給料はなのはにほとんどを注ぎ込み、最低限の生活費だけを手元に残した。 無論、なのはの家族はそれを拒否した。子供にそんなことをさせる訳にはいかない。君のせいじゃない。 だが、もういいのだ。自分の何もかもがどうでも良くなってしまったのだ。 あの時の視線を彼はもう脳裏に刻み込まれてしまった。もう戻れない。自分が、わからない。 「シールドっ、前方へ全力展開」 高町なのはの笑顔が好きだった。 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンのはにかんだ顔が好きだった。 八神はやてのしたり顔が好きだった。 クロノ・ハラオウンのむっつりとした顔が好きだった。 他にも挙げられないくらいに好きなモノはたくさんある。 あのあたたかくもやさしいひだまりが――愛しかった。 だが、全部泡沫のなって消えてしまった。罪人である自分が夢を見る資格はない。 声が聞こえるのだ、罪と罰を贖えと。 「ァァァァァァアアアッ!!」 そんな時にユーノはこの殺し合いに呼ばれた。やることは最初から決まっている。 “自分を除く”誰一人を欠けさせずに脱出。仲間をあの日常へと回帰させたいが故に。 どのような手を使ってでも護ってみせると決意を固めた。 「ディレイドバインド解放! 搦めとれッッッ!」 それならば何故今相対している敵を殺さない? 何でもすると誓ったのだろう。この手を汚してでも護ると誓ったのだろう。 その疑問に対する答えは足し算よりも簡単だ。認めてしまえばいい、他者の排斥を。 戸惑うことはもう止めたはずだ。 「ガッ……ァ……!」 それらの答えが出ぬままに地に伏せた。元々前線で戦うタイプではないユーノにしてはよく持った方だ。 バインドとトランスポーターを駆使して戦った結果は敗北だった。 攻撃に殺意がないという隙を見ぬかれ、最終的に強引に押し切られてしまった。 「さてと、犯させてもらうぞ。アンタの魔力を、いただく」 犯される。その言葉は不思議と実感があった。自分は男であるというのに犯すとは片腹痛し。 思わずククッと薄く笑ってしまった。何だ、まだ自分は笑える余裕があるじゃないか。 ――もう、いいよね? ■しても。 それが誰に対しての了解だったのか。ユーノはついに禁忌への断を下す。 殺意と狂気と浅ましさと痛みと腐臭と血と臓と黒と赤に塗れよう。 眼前の悪鬼を――――殺そう。 前を向く。敵は既に射程範囲内にいる。術式行使は可能。ただ、その術式を発動させたら、相手は死ぬ。 迷うものか、殺してしまえ。もう時計の針は振りきれて二度と元には戻らない。 決意は狂気へと成り代わる。 「バインド、全弾解放」 その声は自分のものとは思えないくらい冷たく感情がなかった。 これから人を殺すというのに感情は全くの動揺がない。 人として何かを思うのが当然なはずなのに。 「囚えて固めろ、封鎖の檻」 空間から幾つもの緑の鎖が突如出現し、悠人へと襲いかかる。その数は数えきれない程に膨大。 手に持った誓いを振ることで何本かの鎖は斬り捨てられるがその間にも鎖は身体へと絡みつきやがては全身を締め上げられる。 鎖は今まで繰り出したのとは違って魔力を強く練っている。そうそう簡単には外れない。 翡翠の檻へと閉じ込められた哀れなる狂戦士よ。沈め、血溜まりの底へ。 「アレスターチェーン」 パチンと指を鳴らすのを合図にバインドが締め上がり悠人の体をねじ曲げる。 ボキボキと骨が折れる音が聞こえる。 想像を絶する痛みを抑えきれないのか苦痛の呻き声が聞こえる。 ガボガボと口から血を吐き出す汚らしい音が聞こえる。 近くで聴いて分かるが――――ああ、“いい”音だ。完殺にして全殺、全殺にして絶殺だ。 何処からどう見ても致命傷でありもう助かりはしない。 「がっ…………ォ、………………ィ」 悠人が最後に思ったのは最愛の妹の無邪気に笑う姿。ここで自分が死んだら佳織はどうなってしまうのか。 そんな回想を思い浮かべる瞬間も無く、全身がねじ切られ破裂した。血と内臓がユーノの身体に降り注ぐ。 まるでシャワーを浴びているみたいだ、と他人事のように感じた。 初めての人殺しは苦い血の味だった。甘いキャンディのような癖になるものではない。 それはまだ、自分が狂気に染まりきれていないからだろうと判断。 どちらにしろ戦いは、ユーノの勝利で終わった。その結果だけで十分なのだ。 「……ぅ!」 後ろから聞こえてきた小さな声にユーノは振り返り、視線の先にいる四人の人間をぼんやりと見つめる。 その中には先ほど逃がしたフェイトも含まれていた。 この残酷な光景をフェイト達に見せてしまったことに少しだけ罪悪感が芽生える。 だがそんなことは些細だ。そう、とるに足らないことである。 ただフェイトは後ろに“逃げた”。 当然だ、今のユーノは頭から血をかぶっており、傍から見ると気が狂った殺人鬼と認識される。 フェイトがびくびくと離れていく姿を見たとき、ユーノの中で何かがポッキリと折れた気がした。自分の大切なタカラモノが粉々に砕け散る。 自分の拙い心の軋みに思わず溜息をつく。 悲しいなんて感情はとっくに忘れたはずなのに。眼球は乾いて涙も出ないはずなのに。 どうして悔いているのだろう。どうして苦しいのだろう。どうして哀しいのだろう。 ――――どうして目からは涙が零れ落ちるのだろう。 「ああ」 それは一目瞭然、誰にでもわかる簡単なこと。 「僕は、諦めきれなかったんだ」 友人達と他愛もない話をして笑いたかった。浸りたかったのだ、誰も欠けずにいるひだまりに。 だけど、その願いはもうおしまい。少女は自分を明確に拒絶した。 あの場所にユーノ・スクライアはいてはいけないのだ、と強く強く認識してしまった。 前を向き歩き出す。もう、後ろは見ない。振り返ってはならないのだ。 「待って……ユーノ……! ねえっ! お願いだからっ! きっと理由があるんだよね! そうだよね!」 「…………さようなら、“ハラオウン”さん。もう、会うことはないでしょう」 「あ、ああ……ぁぁああああぁぁぁあぁぁあああっっ!!!!」 伸ばした小さな手は、もう届かなかった。 あのやさしくてあたたかだったひだまりは二度と還って来ない。 【高嶺悠人@永遠のアセリア 死亡】 【I-6/一日目/早朝】 【浅月香介@スパイラル~推理の絆~】 【状態】健康、 【装備】月臣学園の学生服、FN P90(50/50)@スパイラル~推理の絆~ 【所持品】支給品一式 携帯電話 大量の五百円玉@魔法先生ネギま!、スクール水着@魔法先生ネギま!、予備弾倉×3 【思考】 基本:知り合いとの合流 1:どうしたものか、この状況。 2:とりあえず殺し合いには乗らない 3:時間軸の違いと怪我の治りについて困惑。 ※参戦時期は12巻終了後 【片岡優希@咲-Saki-】 【状態】健康 【装備】 【所持品】支給品一式(水を三分の一消費) 不明支給品1~3 【思考】 基本:???? 1:困惑。 【関口伊万里@スパイラルアライヴ】 【状態】健康 【装備】 【所持品】支給品一式、不明支給品1~3 【思考】 基本:???? 1:困惑。 ※参戦時期は最終話終了後 【フェイト・テスタロッサ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのは】 【状態】:疲労(大) 【装備】:なし 【道具】:支給品一式、不明支給品0~2 【思考・状況】 基本:???? 1私は―― ※二期終了後からの参戦です。 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 [状態]:疲労(極大) 、魔力消費(極大)、ノーパン、十八歳ぐらいの姿、強い自己嫌悪、血塗れ。 [装備]:殺季のメイド服@操り世界のエトランジェ、誓い@永遠のアセリア [道具]:支給品一式 魔法発動体@魔法先生ネギま!、赤いあめ玉・青いあめ玉年齢詐称薬@魔法先生ネギま! [思考・状況] 基本:???? 1:???? ※二期終了後(高町なのはが撃墜された後)からの参戦です。 ※I-6に金属バット、葛葉刀子の野太刀@魔法先生ネギま!、支給品一式×2、不明支給品0~3が放置されています。 H-6に山田妙子、笹塚隆平のデイバッグ、折れたサバイバルナイフ、拳銃(詳細不明)、 ハイスタンダードデリンジャー(0/2)、、二人の遺体は置き去りにしました。 【葛葉刀子の野太刀@魔法先生ネギま!】 麻帆良学園に勤める葛葉刀子が得物として利用する野太刀。たぶん、かなりの業物。神鳴流剣士が使うぐらいなので。 【魔法発動体@魔法先生ネギま!】 ネギがエヴァンジェリンから受け取った指輪。これをはめていれば杖やデバイスを使わなくても魔法を発動させることが出来る。 【FN P90@スパイラル~推理の絆~】 左右臨機応変に構えなおすことを可能なすごい短機関銃。それを可能にさせるのは銃下面に排莢口があるからである。よく漫画にも出てくる。 弾薬は特製で高いらしい。原作では学校の戦いでカノン・ヒルベルトが使用した。 Back Double R -real replay- 時系列順で読む Next きみとふたりで Back Double R -real replay- 投下順で読む Next きみとふたりで Back 剣と銃のセレナーデ 高嶺悠人 GAME OVER Back 浅月香介の女難 浅月香介 Next 壊れた世界たち Back 浅月香介の女難 片岡優希 Next 壊れた世界たち Back 浅月香介の女難 関口伊万里 Next 壊れた世界たち Back 浅月香介の女難 フェイト・テスタロッサ・ハラオウン Next 壊れた世界たち Back Qデイバックにメイド服があったのですがどうしたらいいでしょうか?ちなみに僕は男で今の状態が裸なんですが……A着ればいいんじゃね? ユーノ・スクライア Next [[]]
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/679.html
魔法少女リリカルなのはBR Stage01 ファイナルゲーム ◆19OIuwPQTE /01「決死の一手」 少し遠くで激しい戦闘音が聞こえる。 確認するまでもなく、なのはとキングが戦っているのだ。 それに引き摺られるように、仮初めの世界が鳴動する。 その振動でヴィヴィオの首筋に当てられた真紅のレイピアが僅かにぶれ、出来 た傷から血が一筋溢れる。 ユーノは思わず駆け寄りそうになるが、辛うじて自身を押し留める。 「どうした、応えられないのか?」 「………………ッ!」 そんなユーノの様子などお構いなしに、金居は答えを要求する。 ユーノは拳を握り、歯を食いしばる。 そして搾り出すように、ゆっくりと答えた。 「…………僕たちはこの【E-5】にあると思われる、“参加者を望んだ場所に転 移させる魔法陣”を使って脱出を考えていた」 その話し方から、ユーノが時間を稼ごうとしている事を、金居には容易に推測 できた。 だが金居は、ユーノが喋っている間は待ってやってもいいと判断した。 「もちろん、その魔法陣がまだ残っているとは限らないし、あったとしても脱 出に使えるかどうかは判断がつかない。 それにもし脱出できたとしても、僕たちは首輪から解放されてずいぶん経っ ている。 当然、危険な罠だって用意されているはずだ」 その理由は、絶対的優位から来る余裕。 もとよりヴィヴィオを捕らえている限り、脱出に関する利は金居にある。 「それでも、僕達にはこれしか方法がなかった。 たとえどんなに部の悪い賭けだろうと、どんなにリスクが大きかろうと関係 ない。 僕たちは絶対に諦めない、最後まで足掻き続ける。そう誓ったからね」 それに自分はアンデット。何が起こったところで、容易に死ぬ存在ではない。 故に金居は、僅かでも情報があればいいと、ユーノを止めることをしなかった のだ。 「だから僕たちはここに来たんだ。 このエリアの何処かにある魔法陣を見付け出して脱出をするか、それが出来 なくても何かの助けになればいい、そう願って調査・解析するためにね」 そしてそこまで聴いて金居は、少しだけ襲撃を早まったか、と思った。 金居(ついでにキング)は一度、八神はやてと共に魔法陣による転移を経験し ている。 つまりその場所も、その有用性も知っているという事だ。 だが自分たちは魔導師ではない。 つまり魔法陣を起動させることは出来ないということだ。 だがあと少し襲撃を遅らせていれば、ユーノ達を誘導し、魔法陣を起動させた ところで、シルバーケープを使って紛れ込むなり、無理矢理便乗する事も出来 たかもしれない。 そうすれば、たとえ転移に失敗しようが、転移した先に罠があろうが関係ない。 もし失敗しても、その時はその時。予定通りに行動すればいい。 それに自分たちはアンデッド。 たとえどんな罠があろうが、この会場から出てしまえば決して死なないからだ。 だが、それほど深く考えることでもない。 何故ならここには、二人も魔導師がいる。 なのはの方はキングが殺すだろうから使えないが、魔法陣を起動させるだけな ら一人だけでも十分すぎる。 従わなかった時は、殺せばいいだけだ。 金居はユーノの話を、そう結論づけた。 「それで話は終わりか?」 「残念ながらね……」 「そうか。 ならばついて来い、お前たちには魔法陣を起動してもらう。魔法陣の場所も 知っている」 「――――――ッ!」 「もっとも、何かの隙に反旗を翻されても困るのでな。可能であるのならば、 いつでも起動可能なようにしてもらう。 無論、拒否すれば殺す」 「わかった」 金居はそう言うと、ヴィヴィオに刃を当てたまま、魔法陣のある場所へと歩き 出した。 その時金居は、妙に物分かりの良いユーノに僅かな疑念を抱いたが、どうでも いいことと捨ておいた。 それが、ユーノの決死の策の、微かな失敗と気づかずに。 /02「エースオブエース その手の魔法」 地面に膝を付き、肩で大きく息をする。 対する相手は、傷一つなく、息も乱れた様子がない。 自らを最強と自負する敵――キングは、その言葉通りに圧倒的な力を持ってい た。 最強となるのに、複雑な技や入念な策などいらない。 すべてを砕く剣と、すべてを防ぐ盾があればいい。 キングの所有する最強とは、つまりそういう類のものだった。 その剣は、まともに受ければなのはのシールド魔法であっても容易に砕いた。 その盾は、なのはの砲撃魔法を防ぎきり、キングの死角からの攻撃にも対応し た。 かと言って、より強力な砲撃を行おうと足を止めれば、念動力でレイジングハ ートを奪おうとしてくる。 剣技自体はそれほどでもなく、遠距離攻撃にも乏しいのが救いといえば救いだ が、それでもその攻撃は苛烈だ。 防御し続ければ、容易に魔力を削られるので、回避するしかない。 それでも何度か攻撃は通っていた。 なのはが見つけた、キングの盾のただ一つの隙。キングが剣を振るって攻撃す る瞬間の、その剣筋のライン。 いかなる理由からか、そこにだけは、盾によるオートガードが発生していなか った。 なのははその僅かな隙に、幾度もシューターによる攻撃を行った。 だがその効果は薄く、ダメージを受けた端から再生していく。 今でこそ直接的な傷はないが、バリアジャケットはすでにボロボロだ。 このままでは、いつか決定的なダメージを受けてしまうだろう。 『大丈夫ですか、マスター』 「大丈夫、とは言いえないかな」 むしろ最悪と言ってもいい。 こちらの攻撃は殆ど効かず、あちらは一撃当てればそれだけで優位になる。 そうなる前に、どうにか効果的な一撃を当てなければならない。 「やっぱり、あれしかないかな」 『現状ではそれしかないでしょう』 「剣を交わしてその隙に砲撃を撃つか」 『盾の張れない零距離から、やはり砲撃を撃つ、ですね』 だがそれは、どちらもキングの剣を避けきることが前提となる。 なのはのバスターはその性質上、どうしても撃つ時に足を止めなければならな い。 もし砲撃を躱されたり、逃げる時間を稼げるだけの効果がなければ、その瞬間 にキングの剣がなのはを捉え、殺されるだろう。 だが、躊躇している余裕もない。 魔力には限りがあるし、倒すべき敵もまだいる。 さらには残された時間もあと僅かしかない。 なのはは少しでも可能性を上げるために、“最後の切札”の使用を決意する。 立ち上がってレイジングハートを構え、キングを睨みつける。 応じるように、キングも一歩ずつ踏み出してきた。 そしてここまで頑張ったなのはに、彼なりの賞賛を送った。 「さすが最強のエースって呼ばれるだけの事はあるね。まさかここまで粘るな んて。 けど、本当の最強は君じゃない、この僕だ。 だからさあ、早く死んじゃってよ」 その言葉になのはは、キングが優勝するために戦っているのではないことを知 った。 キングは、ただなのはが最強と呼ばれているのが気に入らないだけなのだと悟 った。 そして感じたのは落胆と、激しい怒り。 そんな事のために二人を殺したのかという、憎悪にも似た感情だった。 だからその間違いを正すように、自らの考え、あるいは感情を口にした。 「…………くだらないよ、そんな事」 「ん? なにか言った?」 「くだらないって言ったの。 誰が強いとか弱いとか、どっちが最強だとか。 私にはどうでもいい事でしかない」 「……なんだって?」 それは、キングにとっては信じられない言葉だった。 思わず自身の耳を疑い、なのはへと訊き返す。 「それは、一体どういう意味なのかな」 「言葉通りの意味だよ。 私は別に、自分が最強だなんて思ってないし、最強になりたい訳でもない。 私はただ、誰にも悲しい思いをしてほしくなかった。 私の知りうる限りの世界では、みんなに笑顔でいて欲しかった。 だからせめて、自分の手の届くところに居る人たちだけは助けようって、一 生懸命に頑張っていたの。 そうしたらいつの間にか、最強のエースオブエースだなんて呼ばれてただけ」 もともと「高町なのは」という少女は、どこにでもいるような、人より少し優 しいだけの女の子でしかなかった。 彼女が魔法を手にした理由ですら、偶然彼女に魔法の素質があり、偶然ユーノと出会い、そして必然的に彼女は、自分に出来ることをしようとしたに過ぎな い。 「私はね、みんなが笑顔でいてくれるのなら、強くなんかなくていい。 みんなが幸せでいられるのなら、世界で一番弱くたってかまわない」 「……………………」 それはつまるところ、この戦いにおけるキングの理由の全否定。 もしキングが「僕が最強でいいよね」と言えば、なのはは「うん、いいよ」と 返すだけの、無意味な独り相撲でしかなかった。 だが、なのはにとって、この戦いの理由は違った。 「この手の魔法は、悲しみと涙を撃ち抜く力。 泣いている人たちが、笑顔になれる場所まで導く翼。 だから、笑いながら平気で人を傷付けるあなたなんかには、 絶対に負けないッ!!」 なのははただ、キングが許せないだけ。 キングかこれまでにしてきた非道に怒り、 これからもするであろう凶行を阻止しようとしているだけだった。 「…………もういい。君、つまらない」 「ッ…………!」 キングはその事実を理解すると同時、心の内に在った熱が冷めていくのを感じ た。 後に残ったのは、怒りにも似た嫌悪感。 どうしてこんなヤツが、最強の称号を持っているのかという、拒絶にも似た感 情だった。 キングが気だるげに足を踏み出す。 そこには先ほどまでの、“遊び”に対する気の緩みはない。 普段キングは、その圧倒的優位な状況から、相手をなぶる様に戦う。 そのキングが、今度は自分から動く。そこに如何なる差異が生じるのか。 それを見極めるため、なのはは限界まで集中力を高めていく。 「こんなつまらない戦いなんか、早く終わらせよう」 「レイジングハート! ブラスターシステム、リミット1、リリース!!」 『Blaster set.』 “最後の切り札”の一枚目を切り、不屈のエースオブエースは、最後の死闘へ と赴いた。 /03「反撃の時」 「ここだ」 周囲には粉砕されたコンクリや亀裂の走ったアスファルト。目の前には『魔力 を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』と書かれた看板。 金居が案内したそこに、目標とした転送用の魔法陣があった。 「さあ、とっとと起動可能にしろ」 「……わかりました」 だが、その感慨にふける間もなく、金居が魔法陣の起動を急かす。 ユーノは言われたとおりに魔法陣に魔力を流し込み、同時に“解析”を掛ける。 そして魔法陣の緑色の光がある程度強まった頃、ユーノが口を開いた。 「駄目ですね、この魔法陣はある程度魔力を注ぎ込めば自動で起動するタイプ で、待機状態にする事は出来ません」 「そうか」 その事に金居は僅かに落胆するが、もともと魔法陣を待機状態にするのは保険 であり、出来なかったところで、さしたる問題は無かった。 「なら―――」 「ああそうだ、一つ言い忘れてた事がありました」 ないと思うが、そのまま魔法陣を使われて逃げられても面倒だと、ユーノに魔 法陣から離れるように言おうとして、その直前でユーノに口を挟まれる。 その事に僅かに苛つきながらも、その言い忘れた事とやらを聞く事にする。 その理由は先ほどと変わらない。 つまりは“余裕”からだ。 「何だ、言ってみろ」 「はい、わかりました。 これは直接的には、脱出とあまり関係がありませんけど、それでも言ってお きます」 だがその口ぶりから、金居はユーノへの警戒を僅かに強める。 ユーノは魔法陣へ手を当て、金居に背を向けたままだ。 「このデスゲームにおいて僕たちは、首輪と言う制限か掛けられていました。 と言うより、首輪があったからこそ、このデスゲームが成立したと言っても 過言ではありません。 ですがこの首輪は、ある時期を境に、容易に外せるようになってしまいまし た」 それは今この会場に生き残っている人間なら、誰でも知っている事だ。 それをなぜ今さら語るのか。 「その時期とはおそらく、第四回放送。 向こうに何か事情があったのなら、前回と同様代理に任せればよかったはず です。 それなのに、何故か十分遅れでプレシアが放送したあの時からでしょう。 僕たちは、あの時点でプレシアがこのデスゲームから去った可能性があると 考えました」 「そんな事は俺も気付いている。それがどうしたと言うんだ」 「それは即ち、このデスゲームの破綻を意味しています。 その理由は、一度放送の代理を行った人物です。 彼女たちはナンバーズと呼ばれ、様々な能力を有しています。 おそらく十分遅れの放送を行ったのも、変身能力を持つ彼女の姉妹でしょう」 「だからそれが何だと言うんだ。 無駄口を叩くだけならば今すぐにでも殺すぞ!」 ユーノの回りくどい言葉に、金居は段々と苛立ちを募らせていった。 だがそれさえも、ユーノの決死の策の一つだった。 「問題は彼女たちの背後、創造主とも言える人物です。 名前はジェイル・スカリエッティ。 研究者でもある彼の目的はおそらく、このデスゲームに使われた技術でしょ う。 そしてプレシアを退場させた時点でスカリエッティの目的の前提条件はク リア。 後は早々に離脱するだけ、長居をする必要なんて何処にもない。 証拠となるモノを処分して、さっさと退散すれば良いだけです」 そこまで聞いて、金居にもユーノの言いたいことが予想できるようになった。 そしてそれと同時に、内心に僅かな疑念と不安、強い焦燥が湧きあがり始める。 「目的を達成した時点で、彼にとって僕たちの結末はどうでもいいでしょう。 そして、ここが人工的に作られた世界であるのなら、その破棄は容易です。 この世界を構成するにあたって核となるモノを、停止か破壊すればいい。 そうすればこの世界は自動的に崩壊し、後には何も残らない」 世界全体が鳴動している。 心なしかそれは、先ほどよりも大きく聞こえた。 「……お前は、何が言いたい」 「タイムリミットですよ、このデスゲームの。 僕たちが考えたゲーム終了のリミットは約一時間。 次の放送までです。そして―――」 否。それは気のせいではない。 確実に、そして着実に大きくなっていく。 そしてユーノは、己が策の成就を宣言した。 「そのリミットは、もうすぐだ」 瞬間。 一際大きな振動が、仮初の世界を揺らした。 その振動によって金居は、僅かに体勢を崩す。 それと同時、ユーノが光と共に消えた。 「転移か!」 そう判断した金居は、ようやくユーノの策に気付いた。 彼はずっとこの機会を待っていたのだ。 そして自分は、ユーノの策にまんまと乗せられたのだと気付いた。 次にどこに逃げたのか、何故ヴィヴィオを平気で見捨てたのか。 そう考え、再び訪れた振動に足を取られる。 その直後だった。 「ケリュケイオン!」 『Set up.』 背後から逃げたはずのユーノの声がした。 思わず振り返り、同時に抱え込んだヴィヴィオの体が光る。 その光に一瞬眼が眩んだ。 瞬間、警戒の薄かった真正面から身体を断ち切られた。 「グウッ!?」 『Plasma Smasher.』 「――――――ッ!!」 痛みに耐えながら、即座にその方向へとレイピアを振るうが、ゼロ距離から放 たれた砲撃魔法によって吹き飛ばされる。 大したダメージはない。即座に体勢を立て直し、襲撃者を睨みつける。 そこには黒い戦斧を構え、自分のデイバックとシルバーケープを抱えたユーノ。 隣には何故か服装の変わったヴィヴィオがいた。 「ッ!! 逃がすか!!」 金居は即座に赤いレイピアで斬りかかる。 だがアンデッドに変身していない金居では、その行動は僅かに遅かった。 ユーノはシルバーケープを着こみ、ヴィヴィオを抱えると、 『Sonic Move.』 その音だけを残して消え去った。 遅れてレイピアが空を切る。 金居は振り抜いた姿勢のまま動かない。 この結末の理由。 それはこの事態を予想していた者と、そうでない者の、心構えの差だった。 「くそぉ!!! 次は殺すッ!!」 近くの瓦礫へと、力の限りレイピアを叩きつける。 行き先は簡単に予想が付く。 金居はアンデッドへと変身し、彼らが向かうであろう場所まで駆けだした。 「ここまでくれば、とりあえずは大丈夫か」 バルディッシュによる高速移動を解除し、岩陰に隠れる。 その際、シルバーケープによる光学迷彩も一緒に解除する。 「ヴィヴィオ、怪我は大丈夫?」 「大丈夫。でも私よりユーノさんの方が」 「僕だって大丈夫だよ。こんな傷、スバルや天道さんの受けた痛みに比べれば、 どうって事ない」 そう言うユーノの肩口は、明らかに血で滲んでいた。 これは不意打ちを行った際に受けた傷だった。 先の不意打ちにおいて、重要な役割を担ったモノが三つあった。 それは「念話」と「バリアジャケット」、そして「会場の崩壊」だ。 本来リンカーコアを持たない者に、念話もバリアジャケットの装着は行えない。 だが、ヴィヴィオには疑似リンカーコアが残っていたおかげで、一応だがそれ らの行使が可能だった。 更にユーノは、魔法陣を調べた際にそれを通じて会場の状態を“解析”し、崩 壊が起こり始めるおおよその残り時間を割り出したのだ。 結界魔導師であり、スクライアの一族として幾つもの遺跡を発掘した事のある 彼にとって、それは容易な事だった。 そして念話によって彼らは、金居に知られる事なく奇襲を計画する事に成功し たのだ。 後は会話によって金居の注意をヴィヴィオから外し、 転移によってユーノが逃げたと金居が誤解したところを不意打ちし、 バリアジャケットを装着する際の一瞬の光を目くらましに利用したのだ。 「ヴィヴィオ。僕はソニックムーブでの移動に専念するから、君は金居のデイ バックから使える物がないが探してくれ。 可能な限り揺らさないようにするけど、一応ヴィヴィオも気をつけて」 「うん、わかった。ヴィヴィオ、頑張る」 「ありがとう、ヴィヴィオ。 バルディッシュ、頼んだ」 『Yes, sir. Sonic Move.』 目的地はなのはの元だ。 キングと金居が組んでた以上、なのはを一人にしておくのは危険だと判断した からだ。 もし金居がなのはの元へ向かった場合、あの強敵相手に二対一となってしまう。 それでは流石のなのはでも勝ち目が薄い。 だから、たとえ戦力にはならなくても、足止めくらいにはなってみせる。 心の内で、ユーノはそう決意した。 ヴィヴィオを所謂お姫様抱っこで抱え、再びバルディッシュによる高速移動を 再開する。 その直前、ユーノは抑えきれない感情を呟いた。 「なのは、無事でいてくれ」 Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 時系列順で読む Next 魔法少女リリカルなのはBR Stage02 心の力を極めし者 Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 投下順で読む Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 高町なのは(StS) Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) ユーノ・スクライア Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) ヴィヴィオ Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) キング Back Round ZERO~AMBITION SECRET(後編) 金居
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/149.html
ケモミミパニック 作者:ID oncuKCtn ユーノ・スクライアは自身がこれほどまでに疲れているというのを改めて認識していた。 いくらなんでも幻覚が見えるようではダメだ。今日は定時に上がって睡眠をとった方が良いかもしれない。 そうだとも、家に帰って風呂に入って眠って、明日の朝になればこんなモノ見えなくなって…… 「どうした? スクライア」 ……そんなユーノの陽炎ような希望を烈火の将の頭にくっついてる獣耳があっさりと斬り捨ててくやがりましたよコンチクショウ。 「シグナムさん」 「ん?」 「どうしたんですか、その……ネコミミ?」 「いや、ライオンの耳だ。ネコミミではリーゼやロッテと被るからな」 そんな事を大まじめに言われても。その、なんだ、困る。 どこぞの少佐のような台詞を飲み込んで、ユーノは盛大にため息を吐く。 「この前、ヴィータに下手に変身しちゃダメだって言ったばかりなのに」 「む、これは下手な変身ではないぞ。これが正しい形の術なのだ」 「……そんな変身魔法、聞いたこともありません」 「当たり前だ。リインのオリジナルだからな」 「なんでしょうか。僕は今、はやてととっくりじっくりみっちりと話し合う必要がある気がしてきましたよ。っていうか、何時の間にそんな新魔法を」 「うむ、じつはな」 先日、ユーノがヴィータの失敗変身を解除した時、はやてとリインの力を借りた。 簡単に言ってしまえば、夜天の書ホストシステムを用いてそこから変身魔法の影響を削除したのだが、そのデータをリインが記録していたらしい。 ウサミミヴィータの可愛さに憧れたリインが、自分も変身してみたいとそのデータを用いて新しい魔法を構築したのだ。 「……経緯は分かりましたが、なんでそれをシグナムさんが」 「いや、なんだ、その……似合わないか?」 「いえ、まぁ似合いますけど」 ふと、ユーノは何か外が騒がしいのに気がつく。 何だろう? とその正体を確かめるよりも早く、ソレは扉を打ち破りかねないほどの勢いでやってきた。 ……その頭に、大きなキツネミミを揺らして。 「なのはー? それは一体ナンデスカー?」 息を切らせている幼馴染みに、すっげぇ投げ槍に問う。 「ユーノ君は獣耳好きって聞いたの! だからキツネミミを生やしてみたの!」 「実にわかりやすい説明有難う、でもそれ誤解だから。ものっそい誤解だから」 この人達は、変身魔法の危険性を認識していないのだろうか? どんな術であれ中途半端な術が一番危ないというのは、常識のはずなのに。 「どう? 可愛いでしょ?」 「あーうん、可愛いよ。ヨクト可愛いよ」 「ホント? えへへへ……」 ちなみに、ヨタとは一□の事でギガの百億倍。ヨクトとはその逆で一涅槃寂静分の一の事である。 「まったく、二人とも。そんな軽い気持ちで中途半端な変身魔法を使っちゃだめじゃないか。基に戻れなくなったらどうするつもりなのさ?」 「うん、その事なんだけど」 「……どうしたの?」 「この魔法、ヴォルケンリッター専用みたいで、私が使ったら元に戻らなく成っちゃった」 「……さ、仕事に戻ろう」 「酷い! 冷たい! ウサギって寂しいと死んじゃうんだから!」 何も聞かなかった事にして、書庫に戻ろうとするユーノになのははしがみつく。 「絶滅しちゃいなよそんな軟弱な生き物。っていうか君のそれはウサギじゃなくてキツネじゃないか」 そう言えば、さっきからシグナムはどうしたのだろう? 随分と静かだが。 そんな風に思い、振り返ってみると。 なんというか、笑うという行為は本来攻撃的なモノでありな感じのシグナムさんが居た。 顔が緩みっぱなしで、目は爛々と輝いている。 嗚呼、ヴィータはあんなのに追いかけ回されたんだな。と、友人の身に起きた惨劇を今更ながらに知る。 「高町、安心しろ。私が寂しい想いなどさせん。させるものか、決してさせんぞおぉぉぉ!」 「へ? あの、シグナムさん? ちょっ、ちがうの、そういう意味じゃなくて……ア、アーーーッ!?」 ユーノは弐匹のケダモノの猛る咆吼と悲鳴を扉の向こうにやり、ぽつりと呟く。 「今日は、早引けしちゃおう」 こうして、無限書庫のメタメタな一日は過ぎて行くのであった。 15スレ SS なのは シグナム ユーノ
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/5323.html
仮面ライダーディエンドとの戦いを制したユーノ。 大切な人を守るためとはいえ、他人の命を奪ってしまった彼の心中は穏やかではなかった。 しばらくその場に立ち尽くしていたユーノだったが、やがて自分に向けられた視線に気づく。 「君は……」 「はうっ!」 ユーノに声をかけられて体を震わせたのは、彼と同じく鮮やかな金色の髪を持った少年だ。 その表情からは強いおびえが見て取れる。明らかにユーノに危害を加えようとしている風には見えない。 だが、ユーノは警戒を緩めていなかった。彼の高い魔力が、少年から発せられる得体の知れない力を感じ取っていたのだ。 「君は、この男の仲間かい?」 「ち、違いますっ! ぼく、無理やり……」 ユーノに問い詰められ、少年……すなわちハス太は、弁解の言葉を口にしようとする。 だが、その言葉は途中で止まってしまう。 「え? こ、これって……」 「……どうしたんだ?」 「結界が……破られた?」 ◆ ◆ ◆ その頃ホテルの入り口には、リーゼントとサングラスという強面の二人組が立っていた。 リーゼントの方は霊能力者・桑原和真。 サングラスの方はハンター・レオリオである。 「ずいぶんと厳重に封印されてたが……。俺の次元刀にかかればこの通りよ!」 「すげえもんだなあ、あんたの念能力は」 「だから、念能力じゃねえって言ってるだろ! 俺のは霊能力だ!」 「ええー? 呼び方が違うだけじゃねえの?」 他愛のない言い合いを続けていた二人だったが、やがてそれどころでないことに気づく。 「とにかく、こんな封印をされてたってことは、このホテルには何かあるってことだ。 気をつけて調べていくぞ!」 「ああ、なんかやべえ妖気も感じるしな。ふんどし締め直していくぜ!」 こうして、二人はホテルの奥へと足を踏み入れていった。 【一日目・11時30分/日本・千葉県 ホテル】 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 【状態】魔力消耗(小)、19歳の身体 【装備】なし 【道具】基本支給品一式 【思考】 1:なのはを護る。 2:少年(ハス太)から話を聞く。 ※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました。 ※PSP版の技が使えます。 【ハス太@這いよれ!ニャル子さん】 【状態】健康、びびる 【装備】なし 【道具】支給品一式、ガソリンの入った一斗缶 【思考】 1:ニャル子ちゃんたちは大丈夫かな 2:いったい何が…… 【桑原和真@幽遊白書】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、不明支給品 【思考】 1:ホテルを調べる 【レオリオ・パラディナイト@HUNTER×HUNTER】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、不明支給品 【思考】 1:ホテルを調べる
https://w.atwiki.jp/mugenshoko/pages/147.html
ウソのない世界・ユーノの大告白 作者:ID 3xiQIIcZ 「そうだ!どうせ聞かれるなら、聞かせてやるよ! なのは!好きだァー!なのは!愛しているんだ!なのは! 海鳴で初めて出合った時から好きだったんだ! 好きなんてもんじゃない! なのはの事はもっと知りたいんだ!なのはの事はみんな、ぜーんぶ知っておきたい! なのはを抱き締めたいんだァ!潰しちゃうくらい抱き締めたーい!」 僕のこの心のうちの叫びを きいてくれー!なのはぁぁーー! 一緒にジュエルシード集めを始めた時から、君が大空を舞う姿を見てから、不屈の心の下の君の素顔を知ってから、 僕は君の虜になってしまったんだ!」 突然、戦場に響き渡る超弩級の大告白。 口と念話、さらには敵の能力によって思念となり、その場にいる全員が耳にすることになっている。 「な、何をとち狂ってるんですか、ユーノ先生―――!!」 「ううっ、耳を閉じても念話で強制的に入りこんできますよ、これ……ああそうかもしかして!」 「相手の精神感応のセンサーが敏感すぎるなら、より大きな雑音を与えて壊す……でも、何で内容がこれなのか疑問すぎるわよ」 「でもいいと思いますよ。先生の深い思いがああさせたんだと思いますよ。ちょっとなのはさんが羨ましいです」 「―――――――キャロ、やっぱりちょっとずれてるよ」 研究者達を警護するフォワード陣が呆れを他所にユーノの言葉は続いていく。 「愛してるってこと!好きだってこと!僕に振り向いて! なのはが僕の気持ちに答えてくれなくてもいい。でも僕に振り向いてくれれば、僕はこんなに苦しまなくってすむんだ。 優しい君が僕の本当の心の内を知って軽蔑したり、怖がるのかもしれない…… それでも!僕はなのはを愛して守りたいんだ!その美しい心と美しいすべてを! 誰が邪魔をしようとも引いてたまるか!!フェイトが恋敵でも士郎さんや恭也さんが娘や妹を奪う泥棒だと襲い掛 かっても、全員まとめて相手にして勝利してみせる! どんなに邪魔をしても僕はなのはをを抱きしめるだけです! 君の心の奥底にまでキスをします! 力一杯抱いて、全次元世界一幸せにしてやる!!」 「……ユーノおにいちゃん、やっと告白してる」 「ヴィヴィオ、冷静すぎやな。にしてもユーノ君、よっぽど気持ちが積もり積もって溜まってたんやな……つーか、やりすぎや 「あはははは、何か凄いことになってるね……というか、私がライバルって何気にひどいよ、ユーノ……」 「まあまあ、落ち着いて……んで、なのはちゃんは……」 手違いで戦場のど真ん中にいるヴィヴィオの突っ込みに前線で指揮をするフェイトとはやては不安を覚えたくなる。 一方で視線は、この世界中に響き渡る一世一代のプロポーズと取れる台詞のキーパーソンの姿。 当の本人はと言うと、さながら林檎の上にずきゅ~んと赤ずきん、……だけではすまなく白亜のバリアジャケットすらも真っ赤かになりそうなくらいに赤面しているなのはの姿。 そして…… 「ゆ、ユーノ君の馬鹿―――!!!そんな大事な言葉は、二人っきりの時に言ってよね、もう……あうううう……」 15スレ SS なのは ユノなの ユーノ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1157.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 自分の部屋である学院長室でオールドオスマンはミスタ・コルベールの書いたルーンのスケッチを見ていた。 両の眉をよせ、髭をしごきながら唸っている。 「うーーーーむ」 大変真剣だ。 さっきまでミス・ロングビルに破廉恥な行いをした報復として激しい折檻を受けていた人物とは思えない。 そのミス・ロングビルは席を外してもらっているのでこの部屋にはいない。 この件は秘書に聞かせるには少し重大だ。 「ふむ、それでミスタ・コルベール。君はこのルーンからミス・ヴァリエールの使い魔を伝説の使い魔・ガンダールヴだというのかね?」 「はい、これに記された物と全く同じルーンです。間違いありません」 「ふーーーむ」 オールドオスマンは再び唸り声を上げる。 伝説の使い魔・ガンダールヴに付いての記述がある書物は極めて少ない。 コルベールの出した「始祖ブリミルの使い魔たち」も古くさいものではあるがもその一つである。 しかし、少ないながらもそれらを総合すると分かる事がある。 曰く、始祖ブリミルの用いた使い魔である。 曰く、主人が長い呪文を詠唱している間その身を守ることに特化した存在である。 曰く、千人の軍隊を1人で壊滅させた。 曰く、並のメイジでは歯が立たない。 後一つの項目を思い出しオールドオスマンはさらに唸った。 「それでじゃ。ミスヴァリエールの使い魔はどんな物なんじゃね?」 ガンダールヴの姿形については全く伝えられていない。 だが、最後の項目はガンダールヴの姿形をある程度予想させる物でもある。 「たしか……こういう感じでしたな」 コルベールはノートにペンを走らせ、簡単なスケッチを描く。 「ふーーーーーむ」 スケッチを見たオールドオスマンはさらにさらに唸る。 「大きさはどのくらいなのかね?」 「だいたい、そのスケッチと同じくらいですね。ミス・ヴァリエールは肩に乗せていました」 「ふーーーーーーーーーーーーーむ」 フェレットのスケッチを凝視し、さらに唸る。 「のう、ミスタ・コルベール」 「はい」 オールドオスマンは顔を上げ、コルベールに目を向けた。 「メイジとしての君の能力には満足しておる」 「ありがとうございます」 「教育者としての君もなかなかだと思うておる」 「ありがとうございます」 「研究者としては……まだ芽は出ておらんようじゃが、わしは見込みがあると思うておる」 「ありがとうございます」 「じゃがのう……」 オールドオスマンはスケッチを立てて机に上がってきた自分の使い魔のネズミ、モートソグニルと大きさを比べた。 「のう、ミスタ・コルベール。伝説のガンダールヴはあらゆる武器を使いこなしたと言うぞ」 「はい、私もそう聞いています」 ミスタ・コルベールに見えるように立てたスケッチを半回転させた。 「この大きさと手……いや、前足では、あらゆる武器を使うのは無理じゃろう」 「…………」 学院長室は沈黙に支配された。 「なんでよー」 ルイズは濡れた布巾で机を拭いている。 教室で爆発を起こした罰で片付けをしているのだ。 「なんでよー」 壁が拭き終わったので次はドアに取りかかる。 いつもの失敗ならこんな所まで煤がつくことはないが、今回はいつもより爆発が大きかった。 ドアそのものは壊れていないが煤で黒くなっている。 「ねー、何でなの?ユーノ」 「え?」 新しい窓枠をはめていたユーノが人間の姿で振り返る。 「だから、なんで魔法に失敗したかって聞いてるの!!」 布巾の水が辺りに飛ぶも気にせずにルイズはぶんぶん腕を振る。 「レイジングハートって私の魔法を手伝ってくれるんでしょ?それに、昨日は魔法使えてたのに何でまた使えなくなってるのよ!」 「えーと、たぶんそれはね……」 最後の窓枠をはめ終えたユーノが黒板の前に歩いていった。 チョークを一本持ち、黒板に文字を書きながら話す。 「昨日からルイズが成功した魔法は3つあるんだ。ジュエルシードの攻撃を防いだシールド、封印、それから念話の3つ」 黒板にシールド、封印、念話と書いていく。 「これらは僕らが使う魔法で発祥の世界の名前を取ってミッドチルダ式って呼ばれている」 3つを丸で囲んでその上にミッドチルダ式と書く。 「で、ルイズが失敗した魔法は2つ。コントラクト・サーヴァントと、さっきの錬金」 こんどはコントラクト・サーヴァント、錬金と書く。 「コントラクト・サーヴァントは成功したじゃない。ユーノにルーンだって刻まれてるし」 「でも、感覚の共有はできなかった。だから、不完全な成功なんだ」 「う……」 コントラクト・サーヴァント、錬金を丸で囲む。 「こっちの魔法は……なんて呼ぼうか」 「じゃあ、さっきと同じように世界の名前でハルケギニア式って呼ぶ?」 「うん、それにしよう」 それも黒板に書いていく。 「つまり、ルイズはミッドチルダ式の魔法には成功しているけど、ハルケギニア式の魔法は失敗か不完全な成功なんだ」 ユーノは黒板を叩きながら説明する。 「なんでよ?」 「レイジングハートには魔法をプログラムという形で組み込んであるんだ」 「ぷろぐらむ???」 ルイズの顔が?マークで埋まっていく。 「そうか、この世界にはプログラムという概念はないんだ。えーと……そう、レイジングハートは魔法の使い方を覚えてるんだ」 「それで?」 「使い方を知っている魔法だったらルイズのちょっとした呪文で発動させたり、ルイズが魔法を使うときに手伝ってくれるんだ」 「ふんふん」 「よく知らない魔法でも知っている魔法との共通点を見つけ出してそこからなんとか魔法を成功させようとするんだ。ミッドチルダ式にも使い魔と契約する魔法があるから……」 「そうか、だからコントラクト・サーヴァントは中途半端に成功したのね」 「うん。でも錬金はレンジングハートの知っている魔法との共通点が無かった。だから失敗したんだ」 「じゃ、じゃあ、レイジングハートに手伝ってもらってもハルケギニア式の魔法は使えないの?」 「そんなことはないよ。レイジングハートにプログラムって形でハルケギニア式の魔法を教えたら使えるようになると思うよ」 「じゃあ、ユーノ」 ルイズはユーノを指さす。 「レイジングハートに魔法を教えなさい」 「無理だよ」 「どうして!ユーノは、私の使い魔でしょ?これは命令よ」 「えーと……アクセス権限ってわかる?」 ルイズが首を振る。 ぶんぶん音がしそうだ。 「えーと……レイジングハートは僕の言うことはあんまり聞いてくれないんだ。でも、ルイズの言うことなら全力で果たそうとするんだ。魔法を教えるのも同じで、僕が言っても覚えてくれないけどルイズが言ったら覚えてくれるんだ。もちろん、さっき言ったプログラムって形で」 「だったら、私がそのプログラムっていうのが解ればいいのね?」 「そうだよ」 「教えて、そのプログラムって言うのを」 「いいけど……大変だよ。プログラムだけでなく他のいろんな事も知らないといけないし。ルイズが今まで勉強してたことと同じくらい大変な勉強になると思うよ」 それでも── 「やるわ。せっかく魔法が使えるようになったんのよ。絶対にやる」 ポケットに入れているレイジングハートをしっかり握りしめる。 「わかった。僕が知っていることを全部ルイズに教えるよ」 ユーノがルイズの目を見る。 そうやって真剣に見つめられて恥ずかしくなって来たルイズは、視線を逸らせた。 「と、当然よ。ユーノは私の使い魔なんだから」 心臓が少し高鳴っている。 なんとかごまかさないと。 「それからユーノは字を覚えて。その黒板に書いてあるの、私読めないわよ」 「あ……そうだね」 あわてるユーノを見てルイズは少し安心した。 突如ドアが開かれた。 「ルイズ、掃除終わっ……」 扉を開けたキュルケがユーノを見つける。 「あーーーーー」 ユーノを指さすキュルケが叫び終わる前にルイズは片足のスナップを聞かせてドアを蹴蹴飛ばす。 キュルケの指先ギリギリで大きな音を響かせ、ドアが閉まった。 「ユーノ、フェレットに戻って。早く早く」 「うん、わかった」 黒板の前でユーノは人間からフェレットへ。 ちょうど変身が終わった時に、キュルケがドアを開けて入って来た。 「ちょっと、ルイズ!」 怒っている。 「危ないでしょ、指はさんじゃったらどうするのよ!」 「ご、ごめんなさい。キュルケ。悪気はなかったの。偶然よ」 「それより」 キュルケが教室を見回す。 「やっぱり、あんた男がいるじゃない。掃除手伝わせてたの?」 目つきがやたら鋭い。 「そそそ、そんなはずないでしょ。男なんていないわよ」 「おっかしいわねえ」 キュルケは黒板の前に歩く。 「ここ。今、ユーノがいるところ。確かに茶色いマント着けた男の子がいたのよ」 「気のせいでしょ。気のせい」 ばれてない。ばれているはずがない……たぶん。 「まあ、いいわ」 教室を三度見回したキュルケは、やっと満足したのか出口に足を向けた。 「早く掃除、終わらせてしまいなさい」 キュルケは教室を出て行く。 フレイムがしばらくルイズ達を見ていたが、すぐにキュルケを追って行った。 「ふー」「ふー」 ルイズとユーノは揃って息をついた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/aren1202/pages/240.html
氷将との熱き契約者 本名:フィンブル=ヴァイン(渾名:氷徒士(ひとし)) 性別:男 身長:175cm前後 所属学部学科:??? 所属委員会:風紀委員会所属 役職:風紀委員会副委員長 ただの一徒士に過ぎなかったが持ち前の負けず嫌いをバネに 高位の精霊氷将と契約するに至り内外から注目される人物になる そして、精霊の因縁に導かれて、ユーノと当初は対立関係になるが、 温泉での一件以来急接近、本人たちは素で否定するが、最早恋人というより夫婦並の関係を築いている なので、他の徒士達からのやっかみが最も激しい 氷将からユーノと炎の公爵の関係を教えられ 来るべき日に彼女を守れるだけの存在になるため修行に明け暮れている 真っ直ぐに突き進むその姿は大勢の徒士から応援され、人脈も広い、男女の区別なく愛されている人物 ロボ好き、メカ好きらしく、ユーノが駆る炎帝に何度も乗せてくれと頼み込んだ事がある またかなり惚れっぽい性格で、様々な女性に対して頬を染めている ちなみに巨乳好き ユーノと対極の甘党で、中辛カレーですらむせる程辛味が苦手である 最近突撃組のタケマルから。魔動バイク「ブリザード」を受け渡された 定期的にリロゥとゴーレムについて語る姿が目撃されている 関連項目 ユーノ 氷将 ブリザード
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/5655.html
「どおりゃあっ!」 「ぶぺぇ!?」 桑原の放った拳が、狂った男の顔面をとらえて粉砕する。 「くそ、なんなんだよこいつら、次から次へと湧いてきやがって……」 「狂信者と言われるだけはあるね。僕らだから狙ったんじゃなくて、生きてれば誰が相手でもいいみたいだ」 「めんどくせぇ連中だよ本当に……ま、なのはが見たっていうやばい連中よりは数段マシだが」 「う、うん」 彼らは首相官邸を拠点としていた対主催グループであったが、突如謎の全裸のオカマに襲撃され窮地を迎えていた。 しかしメンバーの一人、なのはが所持していた千年タウクの力と、彼女自身が目にしたオカマ達の強さの情報が鍵となった。 原理は不明だが、魔力の収束を妨害する濃霧。おそらくこれが原因であの歪みし豊穣の神樹すら敗れてしまったのだろうと、 慌てて駆け込んできたなのはに対してユーノは冷静にその結論に達することができた。 何がなんでも彼女を守る、ただそれだけの信念で、怒りの感情以上に彼はまだ冷静であることができたのだろう。 しかしながら、冷静であるが故に彼は自身の無力さに怒り震えた。 神樹の戦闘能力は自分達グループの中でどころか、おそらく参加者全体から見ても最上位であろうことは想像に容易い。 その神樹が敗れ、さらに魔力を使った攻撃を封じられた状態で、未知の襲撃者に正面から挑んで勝てるのか? 答えは否。 力が欲しい。心の底からユーノは思った。 しかし無いもの強請りをしている余裕などあるはずもなく、彼は一つの決断を下した。 それすなわち敵前逃亡、戦略的撤退。 なのはからの報告で既に瀕死の状態であった神樹とエリカを見捨てるような決断であるが、ここでただ何もできず全滅するわけにもいかない。 幸いにして、次元刀と持つ桑原と強力な風で障害物を力づくで壊して進めるハス太がいるのだ。 敵がいるであろう正規の階段からは逃げず、新たに作り上げた道から地上に脱出、一縷の望みで、生きていればエリカ達を助けてそのまま逃走。 これがユーノが立てた作戦であり、それは迅速に決行された。 「やたらこっち方面から狂信者が向かってくるが、どうなってるんだ?」 「多分だが、さっきからドンパチやってた都庁で敗けて撤退でもしてんじゃないか? なにしろなんでか知らないが、都庁のバケモンに神樹がくっついて共闘してたんだ。あんなん勝てる奴いねえだろ……」 ただ彼らにとって嬉しい誤算だったのは、神樹が死亡せずに離れた地で健在であったことだ。 彼が都庁の怪物と共闘し、都庁を破壊しようとする連中を巧みに薙ぎ払っていたのは遠目でも十分に確認することができた。 これらから判断できるのは、おそらく都庁の魔物が瀕死の神樹を救い、おそらくエリカも無事であろうこと。 神樹が都庁の怪物と共に戦っている点からして、少なくともネット上の情報のように、出会った瞬間戦闘になるようなこともないだろう。 神樹の仲間であることを告げれば、対話の余地は十分にある。うまくいけば、オカマ達を倒す力にもなってくれるかもしれない。 二人と合流する目的もあり、ユーノ達は追っ手に警戒しつつ、都庁を目指している最中なのだ。 「もうちょいで都庁だが……ハス太、例の連中につけられたりはしてないか?」 「う、うんだいじょうぶ。邪悪な気配はかんじないよ。でもそのオカマさんからしてもきっと神樹さんがいきてたのは想定外だと思うんだ。 ぼくたちと同じように、都庁をめざす可能性はやっぱりあるよ……」 「敵の目的が首相官邸そのものだった場合とかは追ってくる可能性は低いけど、残虐かつ極めて高い戦闘力を持っているのは間違いない。 仮に追ってきていたとしても、戦力や情報の共有のためにもやはり神樹との合流は欠かせない。ここはとにかく都庁を目指すしかないよ」 「SATSUGAIせよ! SATSUGAIsぐわああぁぁぁ!?」 「だあああぁぁぁ! ほんっとに邪魔だなこいつら!」 どこからでも湧いてでる狂信者を蹴り倒し、一同は都庁へと近づいていく。 もう間もなくで大激戦区都庁、そして放送の時間だ。 果たしてそこで彼らを待ち受ける運命とは? 「ふふっ……」 誰もが少なからず不安の感情を抱くなか、なのははただ一人小さく笑っていた。 無論彼女とて不安がないわけではない。ただそれでも、最悪の未来……千年タウクが見せた悪夢が回避できたことが嬉しくて仕方がなかった。 これまでも千年タウクはなのはに恐ろしい未来を見せてきたが、その未来はことごとく外れている。 正確には、未来を知ったなのは達がタウクの未来を変えているのだが。 もし、首相官邸で真っ向からオカマ達に挑んでいれば、勝ちこそすれユーノは謎の怪物となり犠牲者が出ていたかもしれない。 だがこうして自分たちは戦うことを避け、都庁へ向かっている。これにより、また千年タウクの見せた未来は変わったのだ。 もっともこの未来改変に関しては、神樹が死亡しなかったという点が大きいのだろう。 恐ろしい外見の神樹を治療したと思われる、都庁の心優しき誰かにも、なのはは感謝していた。 もはやネットを確認するまでもなく、DMC狂信者と戦争を繰り広げている都庁は確かに危険地帯ではあるが、 その神樹を癒してくれた者や神樹本人がいれば、オカマ達への対抗手段ともなりうる。 目の前の脅威さえどうにかすれば、改めて世界滅亡の危機を回避する方法を探すことができる。 「……」 ここでなのはは、大丈夫と思いつつも千年タウクに触れた。 もはやタウクの見せる未来に恐怖しすぎることはない。これまで変えてきたのだから、きっとこれからも変えられる。 むしろ先を知ることで、より慎重な行動を心がけることができる。 そんな思いから、以前よりも軽い気持ちで、この後に役立てるつもりで、そっと、触れた。 未来がいつでもいいものだなんて、変えられるものだなんて、誰が言った? □ □ □ 都庁に辿りついたなのは達を待っていたのは、あまりにも予想外の展開であった。 「君はすぐに治療する必要がある」 都庁の地下へと連れ去られるユーノ。 「さあ、尻を出せ」 「ひいぃぃ!?」 多くの者が見る中、ズボンを引きずり降ろされる彼の表情は怯えきっていた。 当然晒されるのは尻だけではない。なのは専用の、ショタテングダケ改めマンモスもだ。 「や、やめてくれ! どうしてこんなことを!? う、うわあああぁぁぁぁ!?」 「暴れんな、暴れんなよ……安心しろ、私のテクニックはマーラを超えているからな」 おぞましい触手の化け物が、ユーノの身体を拘束する。 それを見つめる都庁の人間達は、止めようともしない。むしろ真顔で見つめている。 「ふ、やはり巨根ランキング一位は俺で不動のようだな」 赤いドラゴンだけは何故か勝ち誇った笑みを浮かべていた。 「た、助けて……」 「……これは、君と、君の仲間を助けるために必要な行為なんだ」 助けを求めるユーノに対して、金髪の青年は諭すようにユーノの肩に手を置く。 しかし軽く置かれたように見えて、怪力でユーノの一切の身動きを封じている。 「あの子は、君の大切な人なんだろう? それなら今すぐ治療を受けるんだ。 治療が遅れて、肝心な時に大切な人のそばにいられないで……守れないなんて、喪うなんて、嫌だろう!?」 「そ、それは……」 なのはを引き合いにだされ、拒絶反応を示していたユーノの動きが一気に鈍る。 妙に実感のこもっていた声色に、たまらずユーノは青年に向き直って質問を試みる。 ぶしゃっ! 力説しすぎた青年の肛門から、大量の血液が吹き出した。 そのまま青年は崩れ落ち、尻を押さえながら悶えている。 「え……治療って、こうなるの……!?」 倒れ伏した青年が、これは別件のせいだからと言うがもはや信用ならない。 ガチガチと歯を鳴らしながら、ユーノは青ざめた表情で反対側にいた少女に助けを求める。 桃色の長髪が愛らしい、優しそうな少女だ。 「大丈夫だよ。きっと貴方も、お尻で気持ち良くなれるから。初めてでも、きっと大丈夫!」 そんな少女から告げられたのは、無慈悲な言葉。 加えてやはりがっちりと肩を押さえつけられている。逃げ場が、ない。 「それでは、治療を開始します。特急コースで、私の超絶技巧の舌テクをご堪能ください」 「や、やめ――あ、あっ、アァァァァ―――――――――ッ!!?」 絡め取られたユーノの肛門に、化け物の舌が捩じりこまれていく。 そしてやがてユーノの表情は恍惚としたものへと変化し、マンモスまでもがノーズ・フェンシング状態となり―― □ □ □ 「い、いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 「どうしたのなのは!?」 千年タウクが見せた近い未来の光景に、たまらずなのはは叫んだ。 なんということだろうか、このまま都庁に向かえば何故だかわからないが、ユーノの後ろの初めてが化け物に奪われるというのだ。 よくもそんな酷い真似を、などとはユーノの前の初めてを奪ったなのはからすれば強くは言えないのだが…… 今の自分とユーノは恋人同士、ユーノ自身もまんざらではなかったと言ってくれたのだから、あの事件はノーカンだ。 このままでは、恋人がレイ○されてしまう。なんとしてでもこの未来の回避方法を探さなくては。 「ま、また未来が見えたの……! このまま都庁に行ったら、ユーノ君のお尻が裂けちゃうの!」 「はぁっ!?」 「だ、大丈夫だよなのは。今更怪我なんて恐れていないよ。それに仮にそうだとしても……」 「駄目なの! なんだか知らないけど、ユーノ君の顔が蕩けてたの! 前に野外プレイとか言ったけど、そんなの比じゃないよ! ユーノ君のマンモスもすごく荒ぶってたの! 堕ちちゃうかもしれないんだよ!? 私以外の人にお尻穿られてよがるなんて、そんなの絶対だめだよ!?」 「ちょ、なのは! 声が大きいよ……!」 取り乱し叫ぶなのはと、それを宥めるユーノ。 そしてちょっと刺激的な言葉に若干引き気味な桑原、レオリオ、ハス太の三名。 あまりにも意味不明な未来は、かつてユーノが化け物になる未来以上になのはを混乱させる。 だが彼女は知らない。恋人が化け物になる悲劇を現状もっとも早く回避できる可能性こそ、恋人の後ろを捧げることだということを。 未来は変えるべきか、否か。新たな未来の分岐点は、すぐそこだ。 【二日目・11時00分/東京・都庁近辺】 【なのは組】 【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】 【状態】健康、19歳の身体、混乱 【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王 【道具】基本支給品一式、タイムふろしき@ドラえもん 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0:新しい未来も変えたいけど、どうすれば? 1:死んでしまったヴィヴィオたちのためにもこの殺し合いを終わらせる 2:ユーノ君がいれば何も怖くない! ※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています。 ※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました。 ※未来の自分が使っていた技の一部が使用可能です。 【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】 【状態】健康、19歳の身体、テラカオス化進行中(低速) 【装備】なし 【道具】基本支給品一式 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0:なのはを落ち着かせて都庁に向かいたいけど…… 1:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい 2:大災害の情報を集める 3:野田総理の死の原因を探りたい 4:なのはを悲しませた主催者たちは絶対に許さない ※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました。 ※PSP版の技が使えます。 ※本人の知らない内にテラカオス化が進行しています。 ※首相官邸にて、いくらか主催陣営の情報を手に入れた可能性があります ※後ろの初めてを奪われる未来が存在するようです 【ハス太@這いよれ!ニャル子さん】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、ガソリンの入った一斗缶 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0 都庁へ向かい、神樹とエリカと合流したい 1:ニャル子ちゃんたちは大丈夫かな 2:オカマさん(天魔王軍)たちを警戒 【桑原和真@幽遊白書】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、大量の食糧 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0 都庁へ向かい、神樹とエリカと合流したい 1:怒鳴りつけた借りを返す為にも、ハス太を護る 2:あまりにも邪魔なのでDMC狂信者もどうにかしたい 【レオリオ・パラディナイト@HUNTER×HUNTER】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、医療道具一式 【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ 0 都庁へ向かい、神樹とエリカと合流したい 1:主催と大災害に関係があるのだろうか? 2 東京都のカオス具合に少し恐怖 ※ゴンの死に気づいていません ※首相官邸より、医療道具一式を拝借してきました