約 1,950,776 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/849.html
「フゴ……」 柔らかな朝日が差し込んできて、億泰は目を覚ました。 固い床で寝てすっかり凝り固まった体をボキボキと解しながら、部屋を見渡す。 そして、まだぐっすりと眠っているルイズを見て大きくため息をつく。 「冗談じゃねーよなァー、ったくよー」 そう呟きながら億泰は窓辺へ行き、窓を開け放った。 朝の新鮮な空気と日差しを全身に浴びつつ、昨日の事を思い返す。 「それ、本当なの?」 「あたりめーだろ。 んな事冗談で言ってなんだってーんだよォ~~」 十二畳程の部屋の中で、テーブルを挟んで二人は向かい合っていた。 億泰の手にはルイズから分捕った夜食用のパンが握られている。 「だって、そんな話を信じろっていう方が無理じゃない。 メイジがいない、月が一つしかないだなんて。 ね、アレでしょ?平民のくせに意地張ってるだけなんでしょ?」 「おいおい…『平民』はねーだろう? 既に名乗ったし、初対面の人間に対して『平民』とはよう! 口のきき方知ってんのか?」 「な、何よ!アンタこそ貴族に対する口のきき方知ってるの!? そんなに言うなら証拠見せなさいよ!証拠!」 「うっ……!」 そう言われて億泰は答えに詰まった。 頭の中には証拠になる景色は山ほどある。 しかし、実物として存在している物は一つとして無い。 学ランに財布しかないのだ。 鞄は『鏡』の前に落として来たし、需要が無いので携帯電話も持っていなかった。 しかも財布は補充寸前にトニオさんの所で食ってスッカラカンだ。 簡単に言うと何も無かった。 「ほら、無いんじゃない!」 「ああ、確かにねーよ。 ともかくよー、オレを元の場所に戻してくれよ。 信じてくれなくたっていいからよー」 「うん、それ無理」 その後ルイズに言われた話しは億泰に取って頭を抱えたくなる内容だった。 第一に、異世界を繋ぐ魔法なんて無い。 『サモン・サーヴァント』はこの世界の生き物を使い魔にするために召喚する魔法。 なんで億泰を召喚したのかの原理は解明不能で、 しかも『サモン・サーヴァント』は召喚の一方通行で、 一度召喚に成功すると使い魔が死ぬまで次に使う事はできない。 ルイズ様は偉大。 ルイズ様を崇めよ。 ルイズ様は貧乳ではなく微乳で美乳。 という内容を数十分に渡って言われ、その頃にはパンはすっかり消化されていた。 「とにかく、アンタが私の使い魔をやるって事は依然変わりないわね」 「……仕方ねーな。 他に帰る方法が見つかるまでやってやるぜ、『使い魔』。 で、使い魔って何すりゃーいーんだよォ~~?」 億泰としても帰る方法を知らず、しかも無いとまで言われ、 衣食住のアテも無いとくれば拒否する選択肢は無かった。 他の頭の良い連中なら逃げても生きれるかもしれないが、 自分はそこまで要領がよくないと自覚していたからである。 「まずは使い魔には目となり耳となる能力が与えられるの。 ……けど、私達には無理みたいね。何も見えないもの。 後は、秘薬とか主人の必要とする物の探索とか、 一番重要な主人の身を守る事なんだけど…… アンタじゃ無理ね、きっと。間違いなく」 オツム足りなさそうだし、とわざわざ最後に付け足された。 流石にこの時はカチンと来たので、『ザ・ハンド』の事を隠したのだった。 「んで、床で毛布に包まって寝かされて、 キャミソールとぱ、ぱぱパンティー投げつけられて……」 そう言って毛布と一緒に床に転がっているルイズの下着に目を向ける。 思いっきり転がされてると気分が風船のように萎んでいくのがよく分かった。 「めんどくせェー」 下着を持ち上げると放り投げ、『ザ・ハンド』の右手で握りつぶす。 ガオンッという小気味の良い音と共に下着はこの世から永遠に削り取られた。 仗助や兄貴に『恐ろしい能力』とまでいわれたスタンドをこんな事に使う辺りが億泰たる所以かもしれない。 それを見て満足そうに鼻で笑うと、ルイズのベッドに近づいていった。 「オラ! さっさと起きやがれダボがッ!」 思いっきりベッドを蹴り飛ばす! 衝撃に勢いよく揺れるベッドに、ルイズは寝ぼけ眼で飛び上がった。 「ふぁや!? な、なななに!?地震!?」 「朝なんでよォー、とっとと起きやがれおじょーさま」 「はうぇ?ああ、そう、朝。 で……あんた誰?」 「忘れてんじゃねーよ。 てめーが使い魔にしたんだろォ?」 寝ぼけ眼のルイズの顔を見て、こいつこの年でボケてんのかと億泰は思った。 「あ、あー。 オクヤスねオクヤス。召喚したんだっけ」 目をこすりながら起き上がると、ルイズは億泰に命令する。 「服」 椅子に掛けてあった制服をルイズへ放り投げる。 ネグリジェを脱ごうとしているのを見てつい背を向けた。 いくらペタンのルイズとはいえ、流石に直視するには免疫が足りていないのだ。 「下着」 「んな!?」 「そこのー、クローゼットのー、一番下ー」 寝ぼけ声で言われてムショーにムカついてきたが、 我慢して下着を適当に掴んで放り投げる。 「服」 クローゼットの上の段に有った予備の制服を投げてやる。 「……これ、なんのつもり?」 「服っつったじゃあねーか」 「違うでしょ!?着せてって言ってるのよ! 平民のあんたは知らないでしょうけど、召使が居たら自分でなんて着ないの」 「おめーは自分の事くらい自分でできねーのかよ」 「文句言うなら、朝ごはん抜き。 ほら、早くしなさいよ。朝ごはんに遅れるでしょ?」 そう言われるのとほぼ同時に、億泰の腹が鳴った。 「き…きたねーぞ」 そう愚痴りながら制服を手に取るしかない億泰を見て、 ルイズはふふんと満足そうに笑う。 そして、今日一日でキッチリと上下関係を叩き込むべく、 昨晩のうちに仕込だ『アレ』に億泰が引っかかる瞬間を想像し、 更に浮かび上がってくる笑みを噛み殺していた。 「ほへ~~~ こいつが食堂~~っ……!?」 学年別に並べられた豪華な飾りつけのされた長テーブル三列に、 ローソクや花、そして果物の盛られた籠が載っている。 食事の内容も丸のままの鳥のローストに、魚の形のパイ、 そしてワインまで並べられている。 「っつーか朝飯にしちゃー豪華すぎねェ~~~? しかもトニオさんのにゃ及びそーにねーがァー、 ヨダレずびっ!は間違いなさそーだぜぇ~~!」 わかりやすい位に喜ぶ億泰を見てルイズは最高にハイになっていた。 席についたルイズの隣にウヒョルンと座ろうとするのを手で制す。 そして親指立てて億泰へ向け、クルリと下に向ける。 貴族がやるにはあまりに下品だが、他の誰にも見られなければ問題ない。 「アンタのは、これ」 その先には皿が一枚。それも床の上に。 肉のかけらが虫眼鏡で見れば分かるほどの大きさで浮いているスープ。 その端に硬そうなパンが二切れだけ。 昨晩のうちに厨房に命令しといたメニューだ。 「なんじゃあこりゃあ~~? おめーはオレに食いてーもん食わせねーっつゥのかよー!」 億泰は思わず皿を持ち上げて中身を指差しながらルイズに抗議した。 その様にルイズはザマミロ&スカッと爽やかの笑みを浮かべる。 「あのね?使い魔はほんとは外。 アンタは私の特別な計らいで、床。 それに食べたい物食べさせたりしたらクセになるじゃない」 「アホ言ってんじゃね~~! オレは外に行くゼ! 草むらにでも座りながら食った方がマシだァー! クソッ!どーせお前らが食い終わる方がず~~ッと後だから問題ねーよな!」 「え、あ、ちょ!ちょっと!?」 チクショー!と言いながらそそくさと皿を掴んで億泰は出て行ってしまう。 予想外の行動をされて、ルイズは慌てて呂律が回らなかった。 その姿が廊下に消えた辺りで、ようやく悪態をつく。 「何よ、つまんない。 思い切り見せつけながら食べてあげようと思ってたのに。 っていけないいけない……今朝もささやかな……っと」 そう呟き、周囲がお祈りを始めているのを見て慌ててルイズもお祈りに参加する。 そこに有った果物の籠の中身が大幅に減っているのにも気づかずに。 「はぁ~~ったく。 毎度毎度こんな手は使ってらんねーよなァー、流石にィ」 外に出て建物に寄りかかりながら億泰は硬いパンをスープで流し込む。 そうして手にした果物を齧りだした。 食堂から出る寸前、『ザ・ハンド』で空間を『削り』幾つかの果物を 『瞬間移動』させて持ってきたのだ。 出る辺りで食前の祈りが始まったらしく、誰も注意を払っていなかったのが幸いした。 「それに肉とかも欲しかったんだけどなァ~~ タンパクとか脂肪とかよぉ~~」 次からは一際スットロそうだったあいつからパクるかのォ~~~ と、昨日一番ハイテンションにルイズをバカにしていたメイジの顔を思い出してそう呟いた。 「ぶぇっくしょぉい!」 同時刻、マリコルヌは派手にくしゃみをしてしまい、 正面に座っていたタバサに『エア・ハンマー』で吹っ飛ばされていた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/498.html
部屋に帰ってきたメローネには、新たな試練が待ち受けていた。 それは・・・自らの主ルイズを起こすこと! 「たたき起こすのは・・・駄目だな。後でひどい目に遭いそうだ。 だがただでは起きそうにない・・・。こうするか。」 そう言うとメローネはタイツの中からイヤホンを取りだし、ルイズにつけた。 そしてパソコンに繋げるとiTunesを起動した。 「ん~~・・・悪霊退散~~zzz」 「駄目か・・・これならどうだ?」 「ん~~・・・がちゃがちゃきゅ~と・・・ふぃぎゅ@~~zzz」 「ばかな・・・!起きろよ・・・!これでッ!!」 「やっつぁっつぁっぱり りっぱりらんらん~zzz」 「こいつ・・・!化け物か・・・!仕方がない、最後の手段だ!」 「わひゃあ!あ・・・頭がぁあああ!」 「おはようお嬢様。どうしたんだ?」 「あ・・・メローネか。なんかものすごい音楽が頭の中に・・・」 (チーズのうた 作詞・作曲ジャイロ・ツェペリ・・・いつの間にかiTunesに入っていた。 とんでもない電波ソングだ・・・うかつには聞けん。) ゼロの変態第四話 余の仇名はゼロ 「着替えさせて。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 「着替えさせてって言ってんの。貴族は使用人がいるときに自分で着替えたりしないのよ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった・・・」 メローネは着替えさせている間中自分の中の獣(発情中)を押さえるのに必死だった。 着替えをすませると、2人は食堂へ向かった。 「うほっ、いい食事!」 豪華な朝食をみてのメローネの一言である。もうすこしまともな台詞を吐け。 「そういやここ最近ろくな文句って無かったもんなァ~」 なぜかって?あなた達には理解できるはずだ。 「なにいってんのよ。あんたの食事はこっち。」 ルイズの指さした先は・・・床だった。 そこには堅そうな黒パンとお茶と見間違えそうなスープ。 「感謝しなさいよ。使い魔は普通は外だけど、私のおかげであんたは中で食べられるんだから。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 さすがの彼もこのときはプッツンしかけた。 「・・・外で待っている・・・」 怒りのこもった声でそう言うと、スープを一気飲みしてパンをもって外に出た。 「さ・・・さすがにやりすぎたかしら・・・?だ・・・ダメよルイズ! ここで弱気になったら、ますますあの変態につけこまれるわ!」 一方メローネは使い魔達の中で反省中であった。 あのような仕打ちを受けると、彼らのチームがかつて『組織』から受けていた仕打ちを思い出す。 (こんなことではダメだ・・・冷静さを欠くことは死に直結する・・・。どんな世界でも・・・ この世界ではこれが普通なんだ・・・逆に考えろ・・・ 『他の使い魔達はもっとひどい食事なんだ』そう考えろ・・・) メローネは他の使い魔が肉やらなにやら食べている中で怒りを静めようとしていた。 食堂から教室へ向かう途中、メローネ達の前に1人の少女が現れた。 萌えるような赤い髪、健康そうな褐色の肌。さらに巨乳。 「あらおはよう、ルイズ。」 「あらキュルケ。おはよう。」 「聞いたわよルイズ。変態を召喚したんですってね。さすが『ゼロ』ってとこかしら? それがその使い魔?・・・ふぅん。格好以外はまともそうだけど。」 「ちょっとキュルケ!なに人の使い魔じろじろ見てんのよ!」 言い争いをしている2人を尻目にメローネは彼女とルイズが知り合い、しかも仲が悪いこと、 キュルケという少女、みくるタイプかと思ったが気が強いことなどを理解した。 彼は長門派だし、セクシーな女性よりもかわいい女の子の方が好き(無論両方とも好きだが)なので 特に必要な情報ではなかったが。 「それよりも私、昨日使い魔を召喚したのよ。ま、誰かさんと違って1発で成功したけどね。」 「へーそう。」 「お・・・お前は・・・!」 メローネはキュルケのそばに現れた火トカゲに驚愕した。なぜならそれは先刻メローネが 使い魔達の中にいたとき、親切にも自分が食べていた肉を分けてくれた張本人だったからだ! 「この子の尻尾を見て。ここまで大きくて美しい炎は間違いなく火竜山脈のサラマンダーよぉ。」 「そうかおまえは火トカゲか~。道理で燃えてたはずだ。火トカゲだもんな~」 サラマンダーと聞くと嫌な記憶が蘇るのでやたら火トカゲを連呼するメローネ。ちなみに彼はゼニガメを選んだ。 「あら、あなたもこの子の魅力がわかるのね。そういえばあなた、名前は?」 「メローネだ。・・・それよりもうすぐ授業が始まるんじゃあないのか?」 「あ、そうね。貴方気が利くわ。じゃね、ゼロ。」 そういうと彼女は赤髪をかきあげ、火トカゲと共に去っていった。 「きー!!なによあの色情魔!火竜山脈のサラマンダー召喚したからって調子に乗っちゃって!!」 「まぁ落ち着けよ。あの火トカゲに罪はない。実際アレすごいよ?」 「うるさいっ!あんたご飯全部抜きにするわよ!」 「う・・・それは困る・・・」 あんな粗食あってもあまり変わらないのだが、ご主人様の好感度を下げないためにこういっといた。 さすがは三択恋愛の王者である。 教室にはいると生徒達の視線がいっせいにルイズとメローネに集まった。 メローネは大方ルイズを馬鹿にしているのだろうと予想した。そのうち三割はメローネに向けられていたのだが。 ルイズの言動を予想し、メローネは床に座ると他の使い魔達が集まってきた。 「なんだお前ら、そんなに俺が好きか?じゃあここは一つゲームをしよう。」 メローネはイヤホンをつけるとパソコンを起動させた。授業聞く気はゼロである。 そうこうしているうちに教師が入ってきたようである。メローネはゲームをし始めていたが。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。ひとり妙な使い魔を召喚したようですが。」 教師のその一言に教室は笑いの渦に包まれる。 「おい『ゼロ』!『サモン・サーヴァント』ができなかったってそこら辺歩いてた変態つれてくるなよ!」 「違うわよ!召喚したらたまたまこの変態が出てきちゃったのよ!」 「嘘付け!」 メローネは我関せずといった態度で画面を見てにやけていた。ほかの使い魔も釘付けである。 教室が静かになった。どうやら授業が始まったようだ。 教師の名は『赤土』のシュヴルーズというらしい。 メローネはゲームをしながら、魔法には4つの属性があり、メイジにも四つのランクがあること だけは聞いていた。 だが彼も暗殺者の端くれ、教室の空気が一変したのを見逃さなかった。 「バカなっ!ヴァリエールに魔法を使わせるつもりか・・・!」 「退避ー!総員退避ー!」 「はっ!ここはどこだ・・・?次は何が起こるんだ・・・?」 ルイズが魔法を使うことになったのだろうが、生徒の脅え方が尋常ではない。ん?あのオッサンは誰だ? とりあえずメローネは生徒達に習って床に伏せることにした。その顔からは笑みが消えていた。 そのとき、大爆発が起こった。 「ちょっと失敗しちゃったわね・・・。」 そのちょっとで教室は半壊、シュヴルーズは気絶。謎のオッサンは消し飛んでいた。 「「「どこがちょっとだ!」」」 「まったく・・・今日は一段とひどいわね・・・」 そう言いつつキュルケはある疑問を感じていた。あれだけの爆発である。てっきり使い魔達が暴れて 大事になるかと思ったのだが・・・ するとキュルケの隣にいた少女が彼女の服を引っ張った。 「どうしたの、タバサ?」 「・・・あれ」 タバサと呼ばれた少女が指さした先には、使い魔達が恐怖に震えている姿があった。キュルケのフレイムは気絶している。 そして、その中心にいたのは・・・ 「は・・・はは・・・このゲーム、オレの勝ちだ・・・はは・・・」 笑いと恐怖が入り交じった顔をしている変態がいた。 ちなみに彼らがしていたゲームは「誰が『ひぐらしのなく頃に』を見て最後までリタイアしないかチキンレース」である。 「おい・・・ちょっとは手伝ってくれ。というかお前がやれよマスター。」 「ご主人様の不始末は使い魔の不始末よ。さっさと手を動かしなさい。」 ルイズ達はシュヴルーズの遺言により教室の後片付けを命じられていた。 「それにしても・・・『ゼロ』とはそういうことか」 「そうよ・・・。魔法の成功率ゼロ。だから『ゼロ』。」 メローネはルイズの態度で彼女が怒っていることを理解した。 しかもこの怒り方は戦友、ギアッチョと同じタイプだということを。 どんな言葉でも怒りを爆発させるトリガーになりかねない。彼は経験でそれを理解していた。 「・・・いけよ。」 「な、何?」 「ここは俺に任せて先に行け。昼飯を食い損ねたくはないだろう?なぁに、すぐに追いつく。」 「わ、わかったわよ・・・。」 (やっと使い魔というものがわかったのかしらこいつ・・・昼ご飯少しふやしてあげようかしら?) ルイズが去るとメローネはベイビィフェイスの手足を伸ばし掃除を始めた。 端から見るとヘンな機械がぷかぷか浮いている用にしか見えない。ルイズの前では使えないので 独りの方が作業がはかどる。 (・・・彼女は怒ると見境無いタイプだ。自分すら傷つける怒り方をするタイプだ・・・ ああゆうタイプは下手に励ますと怒り出しかねん・・・傷つけても悪いしな・・・) そしてメローネは掃除を手早く済ませると食堂へ向かった。 さらなる厄介ごとを引き起こすことも知らずに・・・
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1437.html
最近のシエスタは朝ブラック・サバスと一緒に洗濯をすることが日課となっていた。 ブラック・サバスは影の中しか移動できないため、誰かが水汲み場まで一緒に移動してやらないといけないのだ。 別にシエスタがやることではないし、誰に頼まれたわけではないのだが 決闘の日以来、ルイズとブラック・サバスには何かお礼をしなければならないと考えていたので シエスタは自分から進んでこの役目を買って出た。 それでも最初は緊張しっぱなしであったが、さすがに毎朝毎朝いっしょに肩を並べていると慣れてくる。 今では、軽い世間話などしながら作業を進めている。 と言ってもブラック・サバスは何も話さないし、相槌すら打たないのだが。 シエスタの話が一段落するまでその場を離れないところをみると、一応話は聞いてるらしかった。 そういうわけで、今日も日陰になる場所でブラック・サバスを待っていると、背後に気配を感じる。 後ろを向くと、いつも通りの格好で、いつも通り神出鬼没の使い魔がそこに立っていた。 「おはようございます。サバスさん。今日もいい天気ですね」 笑顔でまずは朝の挨拶。いつもならこのまま二人で水汲み場まで歩いていくのだが、その日は違った。 「おでれーた!相棒!おめー朝から人間の娘っ子とデートかよ!」 ……………………しゃべった!!! シエスタはまさに目が点状態でブラック・サバスを見つめる。 しゃべりましたよね!?今なにかフレンドリーに話しかけてきましたよね!? 混乱中のシエスタに助け舟を出したつもりかどうかは分からないが、ブラック・サバスは半開き気味だった口をさらに開ける。 暗闇の中から何か棒状のものが、にゅるにゅると伸びてきて、シエスタの顔の前で止まった。 「落ち着けって!しゃべったのは俺だよ!」 なるほどしゃべったのはブラック・サバスではなくて、剣だったのか。 ……………………剣がしゃべってるーー!!? さらなる混乱におちいるシエスタに、デルフが意気揚々と語りかける。 「誰だ?って聞きた……な表情してるんで自己……させてもらうがよ。俺ぁ……かい焼き……フリンガー 城下町の………からピンクの………の娘っこに買われて…………オーイ」 ブラック・サバスの口から、剣が出たり引っ込んだりしながら話しかけてくる。 剣が口の奥に行ったとき声がくぐもって聞き取りづらい。 …………シエスタはすでに逃げていたので関係なかったが。 「おかしいな相棒。掴みはばっちりだと思ってたんだが、何がいけなかったんだろうな」 デルフは相変わらずピストン運動をしながらブラック・サバスに尋ねた。 (ちくしょう!あのエロジジィ!) ミス・ロングビルはその清楚な顔を怒りで歪ませ、廊下を早歩きで歩いている。 彼女の怒りの理由はもはや常習的になっている、オールド・オスマンからのセクハラ行為に対してだ。 元々彼女がこの由緒正しい名門トリステイン魔法学院の院長秘書というポストに着けたのは、オスマンからのセクハラが原因だ。 学院の宝物庫にあるという「破壊の杖」を頂くために、まず色仕掛けを使ってでも院長に近づくことが先決と考えていが こっちが色仕掛けをする前に、向こうから尻を触ってきたのは誤算だった。 秘書になってからというもの、毎日毎日尻を触られ、胸を揉まれ、部屋を覗かれ、下着を覗かれetcetc…… さすがに我慢の限界だった。 すでに宝物庫の壁が物理的な衝撃に弱いという情報は、ハゲから得ている。 後は実行に移すだけだが、ここで焦っては元も子もない。 せっかくここまで屈辱に耐えてきたのだ、絶対に成功させなくてはならない……! そんなことを考えながら歩いていると、前方から声が聞こえてくる。 「どうした相棒?なんで止まるんだ?……あぁ影が途切れてんのか。 ……そうか、いつもはあのメイドの娘っ子に連れて行ってもらってたんだな」 最初ロングビルは前にいる存在を、黒いマントをしているので2年生のメイジかと思った。 しかし妙だ。マントの色が黒すぎる。似ているが正規のマントではないようだ。 それにさっきから誰としゃべっているのだろうか。それとも独り言か? どちらにしろロングビルは関わりにならないほうがいいと判断する。 遠回りになるが、行きたい場所へはこの道を通らなくても行ける。さっきまで歩いていた道を戻ろうときびすを返し…… 「きゃあ!!!」 悲鳴をあげ、尻餅をつく。 きびすを返した先。さっきまで誰もいなかったはずのそこには、人っぽいなにかが立っていた。 後ろを振り返ると、さっきまでいた黒マントが消えている。あの一瞬で回り込まれたとでもいうのか!? 「チャンスをやろう!」 そう言って手を伸ばしてくるこの存在を、ロングビルは変態だと認識した。 「いや!」 思わず後ずさる。それを見た変態の口が開き、中から棒状の物……正確には剣の柄の部分が出てくる。 「バカ!相棒!そんな言い方じゃあ変態と思われるだろーが!おいねーちゃん頼みがあんだけど…あれ?」 ロングビルは全てを聞く前に行動を開始していた。 盗賊『土くれ』のフーケの最後の切り札。それは『逃げる』!! ロングビルは窓を突き破り、外へと飛び出した。この廊下は2階だったのだが、メイジにとってそれは関係ない。 「レビテーション」を唱え安全に地面に着地するやいなや、一目散に走りだす。 どこでもいい、もうここにはいたくない。こんな学院からさっさと離れてやる! 『土くれ』は今日中にでも破壊の杖を盗み出すことを決意した。 ルイズは中庭で一人作業に没頭していた。 木の棒を十字に組んで、地面に刺す。 横棒の端にシエスタから借りたボロボロの作業用の手袋をはめ 縦棒の先には、布袋に藁を詰めて丸めた物を紐で縛って取り付ける。 そして布袋に簡単な似顔絵を描く。いわゆるカカシという奴だ。 少しマヌケ面になってしまったが、良しとしよう。初めて作った割にはなかなかいい出来だと自画自賛する。 後は使い魔とうるさい剣が来るのを待つだけだ。 ルイズは胸元にある『再点火装置』を握った。 紐を通す穴を錬金で作ってもらい、ネックレスのようにしたのだ。 ついでに固定化もしてもらったので強度も少しあがっている(ギーシュにやらせた)。 「まったく……主人を手伝わないで、またどこかほっつき歩いてんのかしら」 ブツブツと文句を呟く。 最近は言うこと聞くようになったと思ったら、このザマだ。最もあれらがいたとしても、この作業を手伝えると思えないが。 「いたいた。ルイズ!」 聞き覚えのある声。ルイズが後ろを振り向くとキュルケとタバサがこちらに近づいてくる。 「キュルケ……とタバサ……あんたたちなんでここにいるのよ」 心底嫌そうな顔で二人を見る。 この二人とは決闘以来よく会うようになっていた。といってもキュルケとはいつも口喧嘩だし、タバサは何もしゃべらずそこにいるだけだったが。 しかし今は会いたくなかった。というか見られたくなかった。 使い魔と一緒に秘密特訓をする所を見られるなんて誰だって嫌だろう。私だって嫌だ。 というわけでルイズはこの二人になんとか帰ってもらおうと考えていたのだが。 「秘密特訓するんだって?精が出るわね~」 「努力するのはいいこと」 「な!なんであんたたちがそのこと知ってんのよ!!」 思わず声が大きくなる。 キュルケは何でもないような顔をして答えた。 「聞いたの。あんたの使い魔の剣から」 それを聞いたルイズはしばらく固まった後、嘆息をひとつしてうめいた。 「サバス、デルフ……いるんでしょ……出てきなさい」 その言葉に従いキュルケの影からニュッとブラック・サバスが現れる。 「…………まずはあんたたちの言い分を聞きましょうか」 「ここまで来るのに手間取ってたらよー。このねーちゃんが影貸してくれるっていうからホイホイ付いてきてもらったんだわ」 デルフが口の中からカタカタと答える。 「なんでキュルケが特訓のこと知ってんの?」 「それは相棒が」 「サバスがしゃべるわけないでしょ!この馬鹿剣!やっぱあんたなんか買わなかったらよかった!」 剣に怒鳴りつけるルイズに、ブラック・サバスが手を上げる。 まるで、まぁまぁ落ち着いてというジェスチャーのように見えた。偶然だろうが。 「あんたもなんでよりによってキュルケの影に入るのよ!」 使い魔&魔剣のコンビをしかり付ける親友を見ながら、キュルケは苦笑する。 「言ったら手伝ってあげたのに。こんな不細工なカカシまで作っちゃって」 「不細工とはなによ!」 今度はキュルケと始める。タバサはまた長くなりそうだと空を見上げた。二つの月が綺麗に輝いている。 「!!」 経験が生きたのかどうかは分からないが、その気配に最初に気づいたのはタバサだった。 慌てて後ろを振り向く。 それに釣られた残りのメンバーも振り向き……巨大なゴーレムの姿を確認した。 唖然とするこちらの存在に気づかないゴーレムは、塔の壁を派手な音を出しながら殴り始めた。 「な、なにしてんの」 声の震えるルイズに対して、冷静にタバサが答える。 「宝物庫。あれだけ巨大なゴーレムを操れるのはトライアングルクラス」 「泥棒…………で巨大ゴーレムってもしかして………『土くれ』のフーケ!?」 「サバス!」 ルイズはブラック・サバスの口に手を突っ込み、デルフを引き抜いた。 そして鞘から抜き出し、また突っ込む。ただし今度は刃の方が口から飛び出すような向きで。 「特訓の成果を見せる時ね」 「まだなんにもやってねーと思うんだけど」 デルフのつっこみは口の中で空しく響いただけだった。 To Be Continued 。。。。?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/807.html
食堂にルイズが着いたのを1人の生徒が気がついた 「あ、『平民』を召喚したゼロのルイズじゃないか」 すると・・・ 「本当だ、平民を召喚するなんて流石だな!」 「そこに痺れないし憧れないぃ!」 次々とルイズを侮辱する言葉が飛んできた 「な・・・・な、こ、こいつはただの召使いよ!」 「へー 召使いって名前の平民なのか」 「なな・・・なんで知ってるの!?」 散々侮辱され流石に酷いんじゃ・・・と思ったが 昨日の自分の受けた扱いを思い出しその考えを取り消した また、今回の原因は今朝赤髪に話したせいだと思ったが嫌な予感がしたので黙っている事にした そんな事を考えながらルイズの席を引いて座らせ、自分も座ろうとすると ルイズは無言で床を指差した。そこに皿が一枚と焦げたパンが置いてある 「これは何ですか?」 「あのね、ホントは使い魔は、外。あんたはわたしの特別な計らいで、床」 エンポリオはその一言で全てを理解し・・・・今度こそ心が折れそうになった そして、そのルイズ様から頂いた素晴らしい食事を食べ終え外へ行こうとすると 香水が転がってきた けれど無視して行こうとした・・・・が (な、なんだ? ここで香水を拾わなければいけない気がする・・・・) そして香水を拾い転がってきた方向を見ると 「なあ、ギーシュ! お前、今は誰と付き合ってるんだよ!」 金色の巻き髪にフリルのついたシャツを着た、キザで見るからにマンモーニなメイジがいた。 薔薇をシャツのポケットに挿している。どうやら友人らしき人物と話をしているようだった。 「誰が恋人なんだ? ギーシュ!」 「つきあう? 僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」 「会話中にすみませんがこれ、落としましたよ」 すると周囲に居た友人らしき人の1人が 「おや? それはもしや、モンモランシーの作っている香水じゃないか?」 「ああ、この特徴的な色合いは間違いないな。彼女が調合している香水だ」 「つまりギーシュは、今モンモランシーと付き合っているのか」 そのマンモーニが何か言いかけたとき、近くの席から茶色のマントをつけた少女がギーシュの席にやってきた 「け、ケティ……。違うんだ、これは…」 ケティと呼ばれた少女は弁解をしようとしたギーシュの頬を思いっきりひっぱたいた そして涙を零しながら去っていった するともう一人少女が近づいてきた こちらがモンモランシーだろうか? その少女はマンモーニの前に立つと・・・・スープを顔面に叩き込んだ 「嘘つき! 二度と顔を見せないで!」 そう言うと その少女もまた、去っていった 呆然とその光景を見ていると 「どうしてくれるんだ? 君のせいで二人のレディの名誉に傷がついたんだぞ!」 そのマンモーニが言いがかりとしか思えない発言をしてきた 「え?ぼ、僕が悪いんですか?」 「当たり前だろう! 君が香水を拾うからこんな事になったんだ!」 流石マンモーニ その考え方には尊敬してしまう 「でもマンモーニさn・・あ、えっとギーシュさんが二股をしていたのが行けないんじゃ・・・」 その言葉に周囲から「子供に言われてるよ・・」などと失笑が漏れる プライドが高いのだろうか?怒りで表情を歪めている 「確か君はミス・ヴァリエールの使い魔だったな・・・・ いい機会だ 彼女の変わりに僕が躾けてやる!」 その言葉には流石にカチンと来る そしてエンポリオは・・・・・ モンモランシーと同じように、スープを、叩き込んだ! 少しの静寂の後周囲に爆笑の渦が広がる 「き・・・き、き 貴様 許さん!決闘だ!!! 死ぬまで痛めつけてやる!!」 周りが 子供相手に何を言ってるんだこのマンモーニ っていうかマンモーニって何? という視線にも全く気がつかずギーシュは目を純血させながら激怒していた ~~~~~~~~~~ その頃のルイズ・・・・校舎裏で今日も真面目に魔法の勉強中(マンモーニ事件は知りません
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1026.html
「五つの力を司るペンタゴン 我の運命(さだめ)に従いし――」 「使い魔を召喚せよ━━」 その言葉を紡いだと同時に メメタァ!! よく解らない音と共に――━━ 爆発が起こった。 第1話●ロの使い魔 (狭い…暗い…ここ…どこ?) 必死に記憶を反芻するも思い当たる節もない (確か…病院に…居たはず…) 息がし辛い口をガムテープで塞がれて居る、体もロープで拘束されてるみたいだ ━理解不能理解不能理解不能理解不能━ などとちょっとした電波を受信していると浮遊感が体を包み込み―― 彼はこの世界から別れを告げた (お願い、皆が私のことゼロなんて言えなくなるようなすっっっごい使い魔よ来なさい!むしろ来て下さい!) 爆発を起こした張本人であるルイryは自らが起こした爆発に内心ビビりながら祈っていた そして土煙が晴れてくると次第に長方形の何かが姿を現し始めた (やったわ!とりあえず召喚には成功したんだわ!第三部完っ!ってとこかしら) しかしその喜びは束の間であった、何故なら姿を現したのは ━━箱? いや取っ手もついてるしカバンかしら、ああ、ちょうど良かった新しいカバンが欲しかったのよ、ウケウコケウケコウケッ ル(ryは現実から逃げ出した、しかし回りこまれた 周囲の生徒からは 「流石ゼロっ!俺達に(ry」 「そこにしびれ(ry」 とはやし立てられている、(ryは屈辱に肩を震わせて今にも泣きそうな表情へと変化している その様子を伺っていた褐色の胸がグンバツな女キュルケは (泣きそうな顔もそそるわねぇ、ルイズカワイイよルイズ――ってアレ??) (あの箱微かに動いてる?それに呻き声みたいなのも聞こえるわ) 「ねぇルイズ」 「なによ!!あんたも私を馬鹿にするんでしょ?笑いたければ笑いなさいよ!!」 キュルケは苦笑しながら答える 「アナタが召喚した箱なんだけど…中に生物が入ってるみたいよ?」 その言葉にルイズは箱を見やる、確かに呻き声や動きが見られる。 それを見てルイズの表情が緩みかけるが思いとどまった (駄目よ過度の期待をしては駄目、どうせ裏切られるんだから) などとネガティヴまっしぐらになってると乳女が 「早く中を開けて御覧なさいよ、ま、どうせ死の呪文を唱える舌の長いモンスターが出てくるだけでしょうけどw」 キュルケのその言葉にルイズは顔を真っ赤にしながら反論しつつも箱に近づく (ほほほ、本当に皿木を唱えるああああ、あいつがでたらどどどうしよう) 真っ赤にしていた顔を真っ青にしながらもルイズは意を決し箱を開ける―― 「――え?」 間抜けな声が出てしまった それもその筈モンスターが出てくるとばっかり思っていたのに箱の中には奇妙な恰好をした平民の少年がおり、しかも口を塞がれロープで体の自由を奪われてたのだ、少年の傍らに本があったがこれまた見た事の無い字であった。 ルryは混乱している (どういう事よ、くそっくそっ、舐めやがって!!) 周囲の奴らは 「ゼロが平民をしやがった!」 「しかも縛ってやがる」 「俺も縛られてルイズに詰られたい」 などとルイズを馬鹿に?しだしたのだ 「ちちち、違うわよ!ちょっと失敗しちゃってこの子が召喚されちゃっただけよ、ミスタ・コルベール!再召喚を要求します!」 「だが断る!再召喚など許可しなぃぃぃぃぃ!!」 「ですが平民を使い魔になんて聞いた事ありません!!」 だがルイズも食い下がる、平民を使い魔にするなんて良い笑いものだ、それだけは避けたい。 ルイズの必死の講義にコルベールは 「では留年という事で良いかな?」 と頭を輝かせながら言う、ルイズは留年という単語を聞き (留年なんて事になったらヴァリエール家の恥!それこそ家を追い出されてしまうわ、それだけはイヤ!) ルイズは観念し、少年に近づき━━ 思いっきり嫌そうな顔をした (なんなのよ!?平民でもせめて強そうな平民ならまだしもこんな子供なんて、しかもなによその前髪?ワカメなの?) (しかも私みたいな絶世の美少女が近づいっていってあげてるのになんで脅えてるのよ!) 見ると平民の少年は体をぶるぶると震わせながら泣いている (ああ!!もう!さっさと終わらせてしまおう、後の事は今考えない!) ルイズは自棄になりコントラクト・サーヴァントを行う 「感謝しなさいよ、平民のあんたが貴族で美人で素晴らしい私にこんなことしてもらえるなんて、二度とないんだからねっ!!」 少年は一層脅えだした、(俺のそばに近寄るなぁぁぁぁ)と聞こえた気がしたが無視する事にした。 「五つの力を司るペンタゴン、此の者に祝福を与え━━我の使い魔となせ━━」 ズキュゥゥゥゥン 「……あれ?なんで?失敗…したの?」 (そ、そんな、失敗したっていうの?人生オワタ\(^o^)/) ルイズが失望感に苛まれていると、禿ベールが近づいて来る 「あー、ミスヴァリエール?彼の猿ぐつわをとらないと、直接唇が触れないと契約は行えないよ?」 その言葉にルイズは希望を得るが同時にファーストキスを平民にあげる事に失望を感じた (ああっ!!もう!“覚悟”を決めるのよ私!) そして平民の子に対し出来るだけ威厳を損ねないような口調で話しかける、今更威厳もへったくれもないようなものだが、彼女のプライドがそうさせるようだ。 「今からこの猿ぐつわをとるけども泣き叫んだりしないって誓えるかしら?」 平民の少年は首を激しく縦に振る、どうやら苦しいようで顔色も心なしか悪く見える 「よぉーし良い子ね、安心しなさいリラックスよリラックス」 平民に言い聞かせながら猿ぐつわを取る その時衝撃の出来事が!! 「オゴェェェェェーーッ、ゲロゲロ」 平民が勢いよくゲ●を吐き出したのである、その勢いたるや圧倒的破壊力の小宇宙と言わんばかりであった 「何をするだァァァ!!許さんっ!!」 メメタァ! その後無事(?)にコントラクト・サーヴァントを終えルイズが少年に問う 「そういえば名前を聞いてなかったわね、私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエールよ!あんた名前は?」 使い魔のルーンを刻まれる際の痛みで泣き転んでいた少年は少し落ち着きをルイズの問いに答える 「ぼ…僕…僕の名前……ボインゴです…はい」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/37.html
「やめて!!」 ギーシュとドッピオの決闘の間に誰かが割って入りました 「ミス・フランソワーズ、そこをどいてくれないかな?」 ギーシュは一度、ピッと杖を突きつけ言います 「もう勝負は決まったようなものじゃない!続ける必要なんて・・・」 「僕はその平民に誇りを汚されたんだ。だったらそっちが負けを認めるまでこれは続けるさ」 ルイズは一度ドピッオに振り返り 「・・・ドッピオ、負けを認めなさい。これ以上続けたらアンタ死ぬわよ!」 ルイズはそう言いました 「・・ルイズさん?いつから来てたんですか?」 ドッピオは見当違いのことを言います。ドッピオ自身気になっていたからです 「そんなのどうでもいいから!何が目的でやったか知らないけどこんな傷まで負って・・・」 「ルイズさん」 言いくるめようとしたルイズを一言で止めました 「使い魔って言うものがどういう者か最初に説明してくれましたよね」 「確かに説明したけどそれとこれとは・・・」 「使い魔はつねに主を守り、敬愛する者・・・だったら」 ドッピオはギーシュの方を向き 「あだ名だかよく分かりませんけど、ゼロのルイズとか言ってバカにしているような人には・・ッ」 力が入らない足に渇を入れて立ち上がり 「絶対に・・ッ謝らないッ!!!」 その意気に呑まれたのかそれとも感動したのか 「・・・平民の方、頑張れ!」 「ルイズの使い魔!頑張れよ!!」 「ドッピオさん!負けないでください!!」 「ドッピオ?・・ドッピオ!ギーシュなんかに負けるな!」 「「「ドッピオ!ドッピオ!ドッピオ!」」」 周囲から湧き上がるドッピオコール 「え?え?なに?」 ルイズ自身は戸惑っています 「・・よし」 その声援に少々力づけられたドッピオはギーシュを倒そうと歩こうとしますが (駄目だ、力が・・・) たとえ気力が充実したとしても肉体が拒否する。痛みにドッピオは耐えられないのです (ドッピオ) 不意に聞こえる声 (よくここまでやった。可愛い部下がここまでやっているというのに私がやらないわけにはいかん) この声は・・まさか (後は私に任せろ。あの男が気に入らぬのは私も同じなのだ) ドッピオの意識はそこで途切れました 「ドッピオ・・・?」 一番最初に異変に気づいたのはルイズでした 「・・・・・・」 目の前でだんまりしている自分の使い魔が別の何かに・・・最初のときのような人になっていることを 「・・・どうかしたのかな、ドッピオ君。そうまでして立ち上がったのだから僕と戦うのだろう?」 ギーシュはまだ気づいてません。目の前の男がドッピオではなく 「戦いなんかにならないだろうけどね!」 ドッピオにボスと呼ばれた絶頂の能力を持っている人だということを 「キング・クリムゾン」 そう男が呟きました 「ハッ?!」 ギーシュは気がつきました 「あ、あれ?」 さっき確かに召喚したはずのワルキューレがいません 「そ、そんなバカな!」 もう一度召喚しようとしますが 「キング・クリムゾン」 どの呟きに邪魔されてしまうのです 今、ドッピオと呼ばれた人はその人にボスと呼ばれた人に入れ替わっています 名をディアボロ。エピタフとキング・クリムゾンという絶頂の能力を持っている人です 肉体が痛みで動くのを拒否するのをそれを超える精神で肉体を支えています (この程度の痛みッGERで与えられた痛みに比べればまだましだ!) GER、その効果の所為でディアボロは地獄を味わい続けていました 終わりが無いのが終わり、それを救ってくれた少女。それをバカにする周り (我が救いを侮辱するなど許さん!) そう思い、目の前を男に歩みを進めるのでした ギーシュはいくら召喚しようとも召喚できていないことに不安を覚えました 自分が魔法を使えなくなってしまったのではないかと思ってしまうのです 「くっくそ、くそくそくそ!!」 目の前の男がなにをしているのかさえ分かりません ただ自分の魔法をなにかで消している。そう思わないと不安につぶされてしまうのです 「ひっ・・!」 とうとうその男が目の前までに来てしまいました エピタフで未来を予知し、それをキング・クリムゾンで消し飛ばす それが絶頂の能力の正体、最強の守りのことです 攻撃はキング・クリムゾン自体の攻撃です。こういうと些細なものと思われてしまいますがその力も尋常ではありません ディアボロは今、目の前の男が未来になにするか予知してその時を消し飛ばしながら進んでいるのです そして、その男の目の前まで来ました (・・・殺すか?) ディアボロは殺すかどうか考えていました (・・とりあえずこうしとくか) 殺すかどうか以前に目の前の男の杖をへし折りました 「あ・・・僕の杖が!」 「・・・・・・」 決闘はこれで終わりです。その後は、キング・クリムゾンで目の前の男を・・・ 「ストップ!」 殺そうとして止められました。止めたのはルイズです 「・・・なぜだ?」 「え?」 「この男は君をバカにしていただろう。他にも大勢の者が・・・だ」 「・・・そんなの一々気にしてたら仕方無いし魔法をちゃんと使えない私が悪いのよ!」 「・・・そうか」 キング・クリムゾンをしまい・・・目の前の男に近づきます そして一発殴ります 「ギャッ!」 男は変な声を出して地に伏しました 「・・・ぐっ」 男を殴ってから少し経つとディアボロも倒れました 精神が支えていたのですから倒したことで安直するとこちらだって倒れてしまいます 「あ・・・いけない!誰か救護・・・」 ルイズの心配する声も聞こえなくなってきました 「ぐ・・・はあ」 一度、呼吸をしてディアボロは妙な達成感を覚えながら意識を遮断しました 7へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/886.html
爆発の罰として教室を一人で片付けたルイズは昼食を取る為、食堂に居た (最初は全部ディアボロにやらせようとしたが、探しても見つからないので断念した 爆発で吹っ飛んだと気付いたのは掃除が終わった後だ) 隣にはディアボロが居る ある事の為に食堂に来る前に召喚しておいたのだ 「小娘、何だこれは」 「アンタの食事よ」 ディアボロの目の前にはパンにシチューが並んでいる まあ、人並みな食事といってよいだろう、周りに目を向けなければの話だが 周りには比べるのが愚かしくなる程、豪華な料理が所狭しと配されている この差にはあからさまな区別の意図が見て取れた そう、ルイズは食事に託けて、教室を一人で片付けさせられた憂さ晴らしを兼ねて上下関係を教育しようとしているのだ 「このアルヴィーズ食堂で食事出来るだけでも結構大変なことなのよ、他の使い魔たちは全部外で食べてるんだから 感謝しなさいよね、もしどうしてももう少しいいものが食べたいって言うんなら食べさせたあげないことも無いわよ 貴族の使い魔にふさわしい態度を取るって言うんならね、まず呼び方ね、小娘じゃなくって御主人様………」 ルイズの使い魔の在るべき態度についての演説が続く 一方、ディアボロはルイズの話を無視して食べ始めている (もちろん周りの料理にも手を出している) 唐突に隣から聞こえた何かがぶつかる様な音にルイズは振り向いた ディアボロが白目を剥いて泡を吹きながらテーブルに突っ伏している はて、何が起きたのだろうか? ルイズが疑問に思っていると厨房の方から一人のメイドが小走りに此方にやって来た 表情から察するにかなり焦っている様だ 「失礼致します、ミス・ヴァリエール」 「どうしたの?」 「ミス・ヴァリエールが此方に運ぶように仰られましたシチューなのですが、 あれは鼠退治用の毒餌でございまして…」 ああ、そういうことだったのかと納得の表情を浮かべる そして、笑みを浮かべながらメイドに皿を下げる様に告げ、こうも言う 「大丈夫よ、何も問題はないわ」 ■今回のボスの死因 殺鼠剤の入ったシチューを口にして中毒死
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1340.html
(何だ、この状況は?) 本塔の壁に背中を預けたヴァニラは呆れたように目の前の光景を眺めている 真剣な面持ちのルイズとキュルケが杖を構え、屋上には水色の頭髪を持つ眼鏡の少女 、タバサというらしい――がその使い魔の竜に跨っているのが見える そして屋上から吊り下げられたロープには 「おーい、下ろしやがれ娘ッ子!」 デルフリンガーがぶら下がっていた 亜空の使い魔――デルフの受難・フォーエバー 場面を数分前にバイツァーダストッ! 街から帰ったヴァニラがルイズの部屋でデルフに尋問もとい質問をしているとキュル ケが小さな少女を伴い部屋に飛び込んできた 「ハーイ、ダーリン!プレゼントよ」 そういって罵声を並び立てるルイズを無視して差し出したのはルイズの買えなかった シュペー卿とやらの剣、話によると二人が店から出た後で入れ違いに買っていったらしい (ストーカーというやつか?) 当然ルイズは烈火の如く怒りキュルケはそれに飄々と返す、ついでにキュルケについてきた少女はヴァニラが踏みつけているデルフをじっと眺めている (何だ、この状況は?) 数分後軽いデジャヴを感じるであろう状況に平和的な質問を諦め事の成り行きを見守る ヴァニラが考えるのを止めかけたところでどうやら御互い決闘してどちらの剣を使ってもらうか決めるということで落ち着いたようだ 「それでなんでオレが吊られてるんだよォ!?」 「決闘、危険」 竜に跨ったタバサがぽつりとデルフの疑問に答えるが当然ながら納得できないらしくまだ喚き散らす しかし無常にも二人の準備は整ったらしくキュルケがタバサへ合図を送る 「いいわねヴァリエール、魔法であの剣を落とした方が勝ち。ハンデとして先行は譲ってあげるわ」 「ふ、ふん!後で後悔させてやるんだから・・・」 精一杯の虚勢を張るルイズを尻目にキュルケの合図を受けたタバサはデルフを思いっきり揺らす 「ゆーらーすーなーッ!吐く!絶対吐く!」 哀れ左右に振り子運動を始めたデルフが盛大に抗議するが誰も取り合わない そもそも剣が何を吐くというのだろう、錆? 「煩いわね、集中できないから黙りなさいッ!」 そういうとルイズはゆっくりと杖を掲げ振り子運動を続けるデルフへと狙いを定める 色んな意味でルイズの魔法に生死がかかっているデルフはごくりと息を飲み柄にも無く神に祈りを捧げる その神の御名はイタリア語で御衣には所々ハートマークがあしらってあるのだがあまり関係ない 「・・・・ファイアーボール!」 「ひッ!?」 裂帛の気合と共にルイズが叫び、放たれた魔法、もちろんファイアーボールではなく失敗魔法――はデルフの脇を掠め本塔の壁にぶち当たると爆発を起こし、塔の壁面に亀裂が走った 「てめ娘ッ子!オレを殺す気か!?」 爆風で勢いを増して揺れるデルフが抗議するが誰も聞いちゃいない 「あらヴァリエール、ロープじゃなくて壁を壊してどうする気?どうせならあのオンボロに当てて壊しちゃえばよかったのに」 悔しそうに拳を握り、自分を睨むルイズを一頻りからかうとキュルケは狩人の如くデルフを吊るしたロープを見据える 「見てなさいヴァリエール」 ロープはルイズの挑戦した時より激しく揺れていたがキュルケはゆっくりと狙いを定めると余裕の表情で短いルーンを唱え、手馴れた仕草で杖を突き出す 「ファイアーボール!」 杖の先から出たメロンほどの大きさの火球は狙いを違わずロープを焼き切り、当然ながらデルフは自由落下を満喫する羽目となる 「ちょっと待てーーーー!この高さは無理無理無理無理無理無理ィッ!!」 ラッシュの速さ比べでもするような奇声を上げて落ちるデルフを地面スレスレでヴァニラが受け止める 「た、助かったぜ相棒・・・・」 「誰が相棒だ、話を聞く前に壊れられても困る」 「それでも許す、相棒だからな」 微妙に噛み合っていない遣り取りをする一人と一本だが 「ねぇダーリン、私が買ったんだからそのオンボロは捨ててこっちを使って頂戴な」 しなをつくったキュルケがヴァニラの手からデルフを奪うとがっくりと膝をつき、項垂れているルイズの方へと放り投げてしまった 「ちょ、ちょっとキュルケ!危ないじゃないの!?」 目の前にザックリと突き刺さったデルフに思わず小用を滲ませそうになったルイズはキュルケに詰め寄る。と、不意に月が翳る 「へ?」 「な!?」 「ふぇ?」 キュルケ、ヴァニラ、ルイズの順番に上を見上げると、そこには30メイル程の巨大なゴーレムが聳え立ち、その拳を振り上げていた To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1967.html
「魔法…って!ジョ、ジョルノさん、いえジョルノ様って貴族の方だったんですか!? そうとは知らず無礼な真似をして申し訳ございませんっ。」 「いや、貴族であるかないかと聞かれたら僕は貴族ではありません。 説明しにくいのですがこれは魔法ではなく……」 どう理解できるように説明すればいいか考えているとさらなる訪問者が。 「朝から騒がしいわよ、あなた達。」 部屋を覗き込んだトカゲの風貌をしたモンスターを従えるその女はキュルケという名。どうやら彼女にも僕のG・Eは見えていないようだ。 ではこの生物はどう説明できる?スタンドでは無いとすると…しかし大柄なトカゲと言い切るには尻尾の先に灯る炎が余計だ。 絵本や漫画で見るようなファンタジックなモンスターが目の前にいる。 G・Eで確認すると確かに生物としての器官や骨格を持っていることが分かる。 どうにもスタンド能力としては説明できない結果。 「へぇ、改めて見るけどなかなか整った顔をしてるわねぇ、貴方。」 なんだこの女。僕の嫌いなタイプだ。 「で・も。やっぱりアタシのフレイムの方がよっぽど使い魔として使えそうよね。 平民の使い魔なんかで役に立つことなんてあるのかしら?身の回りのお世話 意・外・に。 まぁルイズにはお似合いだけど。」 やはりこのトカゲは彼女達に“見えて”いる。 「何よ、ジョルノには物を生きも…もがもが」 ふぅ、あぶない。すんでのところで口を塞ぐことが出来た。 スタンド能力を不特定多数に知られるということは弱点を作ることに繋がる。 「ご主人様に向かって何をしてるのよ、この、馬鹿犬!」 「痛ッ!」 容赦なく向う脛を蹴り飛ばされる。酷い女だ。 「へぇ、ジョルノって言うんだ。またね、ジョルノ。」 「は、はぁ…」 キュルケという女はそのまま階段の方へと向かっていったようだ。 朝食、の時間か。そういえば昨日から何も食べていないな。 故郷ネアポリスに帰ってピッツァが食べたいな……シンプルなマルガリータを… 「あ、仕事に遅れちゃいますのでこれで失礼します、では。」 シエスタも続けて去っていった。 「ッ!何をしているんだ君はッ!?」 「何って着替えよ、着替え。あなたが着替えさせてくれないから仕方なく自分で着替えてるんでしょう。」 問題はそこじゃない、僕は一応男なんだ。その目の前でいきなり裸になる女性がいるかッ? 「別に使い魔に見られたって何も恥ずかしくは無いわ。」 ああもうッ!こいつと話していると神経が磨り減る。 バタンッと扉を閉めて廊下に出て待ってみたが、別に待つ必要も無いことに気づいたので勝手にあちこちを見て回ることにした。 G・Eを出現させたまま廊下で人とすれ違ってみるがやはり何の反応も無い。 拳を顔の前で寸止めさせても不自然な瞬きさえしない。 やはり…スタンド能力として片付けられないものなのだろうか。 ふと上着の中に何か物体の感触があることに気づく。 そうだ、携帯電話を持っていたんだった。 その方面に仕事を持つファミリー員から送られた、試作機ではあるがGPSによる位置情報確認も出来る代物だ。 最近公的利用に向けた衛星を使ったサービスの実用化が進められているという話。 そのテスターとして作られたこの携帯ならば、今いる場所がどこなのか容易に分かるはずだ。 「…おかしいな、地図のどこにも表示されないぞ…?」 ひょっとしたら電波が不安定なのかもしれない。 中庭に出てみれば少しはマシになるか? ここに来て幾度と聞いた使い魔、魔法、貴族といったふざけた単語。 そのせいでスタンドとスタンド使いの概念を他所へ一時保管して置かざるを得なかった僕の頭。 多数生まれたあらゆる疑問は中庭に出て一瞬で吹き飛んだ。 ようやく上り始めた太陽と空に淡く残る月。 この目は異常を来たしていない筈だが月は確かに二つに見える。 携帯の画面にはやはり自分の現在地は表示されていない。 ともすれば。 僕は、紛れもなく異世界に迷い込んだ訳だ。 使い魔、魔法、貴族。 その言葉は新興宗教故に拾ってきた言葉ではない。 この“世界”に在るべくしてある言葉だったのだ。 「何を空なんて見上げているのよ。珍しいものでも無いでしょうに。」 いつのまにか傍にルイズが到着していた。 ───── ────────── ──────────────────── 「ふ~ん。月が一つで、貴族と平民という概念が無ければ魔法さえ存在しない世界、ね… 面白い作り話ね。小説にすればどこかの偏屈な人間なら買っていってくれるんじゃない?」 まぁ想像通りの返答か。いや仕方ないさ、逆に彼女が一人で僕の世界に迷い込んでしまったとしたら、 誰も彼女の言う話など本気にする訳が無い。 「大体ね。あなた、あんな凄い魔法が使えるじゃない。何故隠そうとするのか理解できないけど。 でもあなたの世界には魔法なんて存在しないなんて言っておきながらいきなり矛盾してるじゃない。」 ここでルイズにスタンドの詳細を教えた方がいいのだろうか。 いや、ここが異世界であるとしても敵がいないという訳ではない。 スタンド使いだけが脅威ではない。使い魔と呼ばれるモンスター達を見れば分かる。 そしてスタンド能力を魔法と呼ばれた、ということはスタンド能力に近い何か、がこの世界にはある。 そう考えればここは黙っていた方がいいだろう。 「それにしてもさっきの魔法、一体どの系統に属するのかしら。 召喚……とはまた違った感じよね。物質自体が変化してたんだから。それにしても謎よね…」 「そんなことよりも。何故僕は床の上で食事しなければならないのです?」 「あなたは貴族じゃないから。 魔法が使える=貴族って訳じゃないし、それに自分でもそう言っていたでしょう? 平民が貴族と一緒に椅子に座って食事するなんてあり得ないことよ。 あなたは私の使い魔だから特別に床の上で食べさせてあげてるの。それが嫌なら──」 指差す方向は中庭。見れば使い魔達が揃って餌を食べている。 僕はアレと同類、ッて訳ね…… 「はぁ…大体、使い魔の能力の凄さは主人の能力の凄さってことの証明になるのに…… なんで隠したがるのかしら…ブツブツ…… むしろ無理やりにでもさっさと披露しちゃうのがいいわね…ブツブツ……」 となんだか厄介な事を言い出したが、ここは無視しておこう。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1084.html
夕食の時間、シエスタはデザートを配膳していた。 今日は色々あった。ほとんど謎の使い魔がらみだったけど。とにかく疲れた。 あの使い魔は結局気づいたら消えていた。本当に何がしたかったんだろう?嫌がらせ? でもエプロンは返しにきてくれたわけだし、悪い人(?)でもないのだろう。 とにかく今日は早く仕事を済ませて、さっさと寝てしまおう。今日は厄日だ。 そんなことを考えていたら、手前に座る金髪の少年のポケットから何か小瓶のようなものが落ちるのを見た。 すぐにそれを拾い、落とし主であるギーシュ・ド・グラモンに声を掛ける。 こうしてシエスタのその日最大の災難が始まった。 「疲れた…」 ルイズは紅茶を飲みながらぼやく。 半壊の教室の掃除は一人でやるには相当の時間と労力を必要とした。 こんなことならキュルケの手伝いの申し出を受ければよかったかもしれない。 そう思って、部屋を見渡しキュルケの姿を探す。 青い髪の少女と一緒におしゃべりをしているのを発見する。 だがいつもよりその顔色が悪いような気がした。 (もしかしてまだ気にしてるのかな……) 少し罪悪感が心に産まれる。もう使い魔のことを言ってもいいかもしれない。 ただ逃げられたことをどう説明するか……。 「その香水は、もしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」 「そうだ! その鮮やかな紫色はモンモランシーが調合している香水だぞ!」 急にガヤガヤと騒がしくなる。見ると、数人の生徒が集まっていた。その中心にはギーシュとメイド。 ギーシュがなにやら否定の言葉を並べ、その隣にいるメイドはさっきからどうしていいか分からずオロオロしている。 いつものギーシュの恋愛話か。どうでもいいや。 ルイズはさっさと自室に戻ろうと、残りの紅茶をいっきに飲むため、カップを口に持っていった。 「チャンスをやろう!」 「ぶッ!」 リアルに紅茶噴いた。 ギーシュは混乱していた。 メイドに「落としましたよ」と言われ、見るとそれはたしかにモンモランシーから貰った香水。 なんとか誤魔化そうとするも、回りの連中にはやしたてられてしまい、騒ぎが大きくなる。 このままではモンモランシーにもケティにもばれてしまう! 3択-一つだけ選びなさい 答え①ハンサムのギーシュは突如誤魔化すアイデアがひらめく 答え②仲間がきて助けてくれる 答え③誤魔化せない。 現実は非情である 答え-③ 答え③ 答え③…………しかし答えは違っていた!意外!その答えは④! 答え④変な奴がきて誤魔化せない。現実は非常識である 「チャンスをやろう!」 突如聞こえた、異質な声。見るといつのまにかメイドの背後に黒づくめの奇妙な亜人が立っている。 はやしたてていた連中も、メイドも声を失いこの奇妙な闖入者を見ている。 ザ・ワールド!時は止まる! ……………………その世界で最初に動いたのは、亜人と二人の少女だった。 「お前には向かうべき二つの道がある!ひとつは……「ギーシュ様、やはり、ミス・モンモランシーと…」」 亜人のセリフをかき消すようにギーシュに話しかけてきたのはケティである。 「え?ケティ!ち、違うんだ!」 急に話しかけられ反応できない。ギーシュはろくな弁解もできずに、ケティから頬をはたかれるしかなかった。 「もうひとつは!!さもなくば『死への…………「やっぱりあの一年生に手を出していたのね?嘘つき!!」」 また何か亜人が話そうとするが今度はモンモランシーに邪魔される。 モンモランシーはギーシュが何か言う前に、ワインをかけて行ってしまった。 呆然。何が起きた?なんなんだこいつは? ギーシュは亜人を睨みつける。すると、自分が睨まれていると勘違いしたのかメイドがビクっと震えた。 そういえばこのメイドが事の発端じゃないか。 くそうこの平民が!でもけっこうかわいいな。 だがそれはそれ、これはこれ。 「君のせいで二人のレディの名誉に傷がついたんだぞ!どうしてくれるんだ?」 ギーシュがメイドに詰め寄る。 メイドは泣きそうな顔になって、ひたすら謝罪の言葉を並べた。 その平謝りする姿がいくぶん滑稽で、少し優越感を覚えたギーシュはさらに続けた。 「君たちのその黒づくめの格好を見てるとこっちの気分まで暗くなってくる。 平民とはいえ貴族の前に出る時くらいは、もう少しまともな格好をしたらどうだい? …………と言ってもメイドの君の黒いのは、生まれつきだろうから変えることはできないか」 そういって笑うギーシュに、同調して回りの数人の生徒からも笑い声があがった。 「黒いの」 その言葉はシエスタの心を締め付けた。 それは後ろの使い魔の格好と、自分の髪と瞳の色のことを言っているのだろう。 大好きだった祖父から受け継いでいるこの黒い髪と瞳は、珍しい色だった。 それを馬鹿にされるのは、自分だけでなく祖父まで馬鹿にされているようで悔しかった。 シエスタの瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれ始めた…… その時 「それ以上の侮辱は許さないわよ」 シエスタは背後から声を聞いた。 その声の主は使い魔ではなかった。その主人であるミス・ヴァリーエル。『ゼロ』のルイズ。 ピンクの長い髪と、鳶色の瞳。今、その瞳からははっきりと怒りの感情を読み取ることができた。 「ルイズ」 主人を見つけた、使い魔の場違いな声が部屋に響いた。 To Be Continued 。。。。?