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ルイズは城下町の通りをディアボロを従えて歩いている 目的地は武器屋、ディアボロに武器を持たせようというのだ ディアボロからすれば扱えない武器など邪魔になるだけなのだが、ルイズにはルイズの考えがあった (ディアボロの都合や意思は関係ないのだ) 決闘騒ぎでの思惑が外れたルイズはディアボロの評価について半ば諦めていた (ちなみにギーシュが人の使い魔を殺したことについては貸し一つという事で話がついた 生きているところを見られたら物凄い頑丈で実は生きてたと誤魔化す心算だ) たとえ力があろうとも振るう前に死んでしまうのでは意味がない だから見た目だけでもそれらしくする為、武器を持たせようと考えたのだ 幸いディアボロの体格は悪くはないから、物によってはそれなりに映えてくれるだろう 貴族とは縁遠そうな路地裏を進んだ所に武器屋は在った 中に入ると慌てた様子でまくしたてる店主を無視して、ディアボロに合う武器を見繕うよう言いつける 店主が店の奥から何振りかの剣を持って来てあれやこれやと口上を述べ立てる ルイズはその中から特に立派な一振りに目をやった 「これは?」 「ああ!若奥様、御目が高い。 これはかの高名なゲルマニアの錬金術師シュペー卿の鍛えた業物で、鉄さえ切り裂く代物でさぁ 御値段の方は相応に張りますが、貴族の従者に持たせるんであればこれ以上のものはございませんぜ」 振るどころか抜くのも苦労しそうな大剣だが、ルイズにしてみれば見た目重視で実用性などどうでもいいのだ 「これにするわ、おいくら?」 「エキュー金貨で2千、新金貨なら3千」 「おい親爺、ボリすぎだろソリャ」 唐突に声が響いたかと思うと抜き身で壁側に積んであった剣が一斉にディアボロ目掛けて崩れ落ちた 「………………………………………………………………………………」 「あれ?これってオレのせい?」 ■今回のボスの死因 崩れ落ちてきた剣に全身を串刺しにされて死亡
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時はギーシュを億泰がフルボッコにする数分前…… 「フン、ご飯抜きは当然の報いよ」 そう言って自分だけお昼に手をつける。 うん、今日も美味しい。 部屋で着替えた後で少~~~し昼寝をしてしまったから、他の皆より遅い昼食だった。 周りは大体デザートに入っているので少し気恥ずかしい。 「掃除はもう終わったの?ルイズ? 少しばかり遅い昼食みたいだけどねー?」 ああ、もうこのキュルケときたらからかう事ばかり。 得意げな顔をして胸を揺らしている。こんなキュルケと家がライバルの自分が憎い。 「あら?そういえば使い魔はどうしたの? まさか一人で掃除させて自分は寝てたとかじゃないわよね?」 正解にすぎる。トリステインはどうなってしまうのか。 「~~~! その通りよ!文句ある!?」 「まあいいけどね。 貴方の使い魔があそこでケーキ配ってても」 「え!?」 キュルケに言われて辺りを見てみると、確かに間抜け面が見つかった。 隣のメイドとそれなりに仲良さそうにケーキを配っている。 (な、ななななによアイツは! なんで勝手にメイドと仲良くしてんのよ! いえ、平常心、平常心よルイズ。 使い魔が言うこと聞かないでメイドに餌付けされた位でなんだっていうの。 後でご飯を抜いて……ってもう一週間抜いたんだったァー!) そんなこんなで悩んでいるルイズをキュルケが可愛い物を見る目でこっそり鑑賞しだした頃、 ふと勘違いのギーシュの辺りでモンモランシーと知らない少女の怒鳴る声、それからガラスの割れる音が聞こえた。 見ると、ツープラトンを食らっているようだ。 「あちゃー、ギーシュってば手酷くやられたわねー」 「……自業自得じゃない」 あれ?いつの間にかアホのオクヤスが厨房に戻って出てきて…… と時がすっ飛んでいることにルイズが気づくのと同時に、メイドが土下座をしていた。 ボーッとそれを見ていると、今度はオクヤスがギーシュとなにやら言い合いを始めて…… 気づいた時にはもう億泰がギーシュをフルボッコにしていた。 白目を剥いて鼻血と舌をダランと垂らしたギーシュの襟首を掴んで殴っている。 暫くすると手を離されてギーシュが床に沈みこむ。 さっき取り巻いてた友人達が引っ張ってく様子を見て、 マリコルヌと一緒におねんねするのね、とルイズは思った。 「って何をやってるのアンタはーーー!?」 メイドに手を差し出して立たせていた億泰へと詰め寄ることにした。 「お、オクヤスさん!? 逃げてください!貴族を殴っちゃうなんて! 殺されちゃいますよ!?」 「そ、そうよ! アンタ何考えてやってんのよ! 今度は魔法使ってくるわよアイツは!」 「いや、別になんも考えてなんてねーけどさ」 それを聞いてルイズとシエスタはサッと顔を青くし、周囲の生徒は皆ずっこけた。 「考えなしでギーシュをボコボコに!?平民が!?」 「いや、別にギーシュはどうでも良かったけどアホかアイツは!」 「へへ、あの平民が何日生き残れるか賭けようぜ! 俺は一日目でだ!毎食のはしばみ草のサラダを賭けるぜ!」 「Bad!もっとまともな物を賭けるんだ! 僕は三日で……この十枚を賭けよう!」 「Good!」 「ああ、どこに行ってたんだアンジェロ岩! 心配したよ急に居なくなってるもんだから!」 アギ…… 「~~~~! 出かけるわよ!用意しなさい! メイド、アンタは馬の支度!」 喧騒をよそにルイズがシエスタと億泰を食堂から引っ張り出して命令する。 「え、あの、ミス・ヴァリエール? 午後の授業は言ったいどうするんですか?」 「サボるわよ…… 町にいくの。少なくともギーシュが起きあがる前までに剣を買うわ。 丸腰よりは幾らかマシだもの」 「剣~~~? オメーが使うってのか~~?」 「アンタのよ!」 そして三時間後 「腰がいてェェ~~!」 「情けないわね、馬にも乗った事ないなんて。 それより気持ち悪いからその歩き方なんとかならないの? 相当人の目を引いてるじゃないの」 トリステインの城下町へと辿り着いた二人の様子は対照的だった。 映画のセットのような街中をひょこひょこと内股で歩く学生服の億泰。 それを気持ち悪い物を見る目で見ているルイズ。 そして億泰の(主にケツを)見ているイイ男数人。 「というか、アンタ感謝の気持ちが足りてないでしょ。 生存確率上げてあげようと思ってわざわざ町まで遠出したのに……」 「だからよォー、いらねーっつったじゃねーか」 「メイジの魔法って物を分かってないわね。 そんなんじゃ本当に死ぬわよ?さっきの逆の構図で」 馬の上でも何度も交わした問答だったが、 改めて言っても無駄だったので億泰は諦める事にした。 「それより、預けた財布は大丈夫? 大通りなんだからスリ多いのよ?」 財布は下僕が持つ物だと言われ馬から降りるなり財布を預けられたのだ。 ずっしりとした感触に顔がどうしても綻ぶ。 「大丈夫だってーの。 こんな小さな通りでよぉ~~スられっかって」 「小さいって……この町一番の大通りよ?ここ」 そう言いながらもルイズは更に狭い路地裏へと入っていく。 汚物やらゴミやらが道端に放置されていて、 入ってきた二人に気づいた猫が子犬を咥えて走り去っていった。 「うわ、見るからにヤバそーですって感じだなァー」 「だからあんま来たくないの。 ほら、さっさと用事を済ませるわよ」 そう言ってルイズは路地裏を進んでいき、やがて一軒の店へと入っていった。 億泰が看板を見ると、剣の形をした銅の看板がかかっている。 どうやら武器の店らしいな、と思いながら億泰はルイズに続いて店内へと入った。 店の中は昼間だというのに薄暗く、所狭しと並べられた武器防具がランプに照らしだされていた。 奥には五十絡みの親父がたるんだ顔してパイプをふかしている。 「レストラン・トラザr じゃねーや、こんな所へ何の用だい?おじょうちゃ……」 くわえたパイプを離し、ドスの利いた声で言いかけた所でルイズの服装に気づいたらしい。 胸元の五芒星に目をやると、途端に態度を変える。 「旦那。貴族の旦那! うちはまっとうな商売をしてまさあ、お上の目にさわるような事はこれっぽっちも! もう『ゼロ』でさあ!」 「客よ」 『ゼロ』に反応してムカつきながらも、ルイズはそう言って物色しだす。 やがて、自分では剣の良し悪しなんて分からない事を理解して億泰に尋ねる。 命が懸かってる分本人に尋ねた方が分がいいだろうと考えたのだ。 「ほら、どんなのが欲しいの?」 「ってもよォ~俺帰宅部だったしそんなん分からねーって」 「アンタ自分の命懸かってるのがわかんないの!?」 そう言い合う二人を見ると、店主はいそいそと奥へ引っ込んでいく。 そして、倉庫に入る前に振り向いてニヤニヤと笑いながら小声で呟いた。 「ド素人どもめ、鴨葱ってやつか。 せいぜい高く売って儲からせてもらおうかね」 やがて店主は奥から1.5メイルはあろうかという立派な剣を油布で拭きながら持ってきた。 両手で扱える程の柄の長さに、ところどころ宝石が散りばめられている。 「なるほど、確かに昨今は貴族の方々の間で下僕に流行ってますからね。 そこの兄ちゃんはガタイもいいし、コイツでもきっと扱いきれますな。 どうです?コイツはこの店一番の業物ですぜ」 その輝きにルイズも億泰も魅入られたのか、覗き込んだ。 やがて、ルイズが聞き出す。 こいつでいいやと思ったのだろう。見栄っ張りのルイズらしい所である。 「おいくら?」 「へい、何せこいつはかの高名な錬金魔術師シュペー卿が鍛えた一品でしてね、 ちょいと値が張りますぜ?」 「私は貴族よ?ほら、もったいぶらないで言いなさい」 「エキュー金貨で二千、新金貨では三千になりますな」 その値段を聞いた途端、ルイズがあんぐりと口を開く。 億泰はサッパリこちらの金銭感覚が分からないのでポケーっとしていた。 「ドンくらいの価値なわけ?これ」 「森つきの庭と立派な邸宅が買えるくらいよ」 「……ハァ?何言ってんだてめー! 俺達からボろうってでも言うのかコラー!」 「お、おい、勘弁してくださいよ兄ちゃん。 うちの品物にケチつけるってのかい? 青銅だって真っ二つだし、青銅や青銅や青銅のゴーレムが殴った程度じゃ折れない代物なんですぜ?」 弁解と追求の争いが始まろうとしたその時、乱雑に積まれた剣の山の中から声がした。 低い男の声だ。 「おいおめえ!ケチつけるんなら証明でもすりゃーいいじゃねえか! 鉄を切るだとか剣がダメになるだとかの前に腕が壊れるだろうがな! むしろ棒っきれでも振ってんのがお似合いだぜ猿野郎が!」 「ん、んだとてめー!」 いきなりの悪口にムカっ腹が立った。 しかもいつもと違うバリエーションだったためにより一層だ。 しかし、声がしても姿が見えない。 「デル公てめえ!商売の邪魔する気か! せっかく良い値でだま……っと、売れそうだってのに!」 「黙ってろいオヤジ! ほらほら、帰んな貴族の娘っ子!」 「失礼ね!」 怒鳴るルイズをよそに、億泰は声の方へと近づいていく。 そして、剣の山の中から一本の剣を引き抜く。 「まさか、おめーがしゃべってんの?」 「そうだぜこのボケナス!」 それは薄手の長剣だった。 しかし、錆がところどころに浮いてとてもじゃないが使えそうとは言えない。 「ほォー!剣がしゃべんのか!おもしれーな」 「それって、インテリジェンスソード?」 ルイズが当惑した声を出してその剣を見た。 「そうでさあ若奥様。意思を持つ魔剣インテリジェンスソードでさ。 どこの物好きが始めたのか、剣をしゃべらせるようにした奴なんですが…… いかんせんこいつは性格は悪い、口は悪い、喧嘩早いととにかく嫌な野郎でして。 おいデル公!失礼はそこまでにしときな!それ以上すると川底に沈めるからな!」 「そん時は魚に話して岸まで運んでもらうから構わねえぜクソオヤジ!」 「なんだとこの野郎!孤独だよ~!って喚いてもゆ、許さないからな!」 歩き出す主人を億泰が手で制す。 その表情は新しいおもちゃを手に入れた子供、 あるいは康一が由花子に初めて呼び出されたシーンを見た億泰のようだ。 「おもしれーじゃねーか。 俺よォ~、このデル公でいーぜ?」 「え?い、嫌よそんなの。 『ぜ~~~~ったいに負けんのだあ!』とか叫びそうじゃないの」 「俺様はデルフリンガー様だ!デル公じゃねえ! さっさと放せ三下!……?」 ルイズと一緒になって抗議しだしたデルフリンガーだったが、ふと押し黙った。 そして、暫くたってから再び話しはじめる。 「おでれーた。てめ『使い手』じゃねえか。 ああ。あんなナマクラよりは損はさせないから俺を買え」 「ん、だから買うっつんじゃねーかよォ」 そう億泰が言うとすぐにまた押し黙る。 「チッ…… まあ、ソイツなら厄介払いで百で結構でさあ。 どうしやすか?相場なら数百は頂きやすし、そいつ鞘に入れとけば黙りやすんで」 ウッとルイズは息がつまる。 財布には数百も無い。せいぜい二百が良い所だったのだ。 だから、それを気取られないように精一杯虚勢を張って言う。 「仕方ないわね……こいつでいいから買ってあげるわ」 「ヘイ、毎度あり!」 そうして、デルフリンガーを抱えて二人は出て行った。 途端に武器屋には静寂が戻ってくる。 「フン、今日はもう店じまいにするかね。 五月蝿いのがいなくなってせいせいしたしなあ」 酒瓶を取り出しながら親父は独り言を漏らす。 「ま、これで儲け話を零さないで済むんならマシってもんよ。 なあ?そう思うだろおめーら。 ……チッ、今日はやけに酒が塩辛いな」 親父の呟きは、ガランとした店の中に消えていった。
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『NINKU―忍空―』から、キャラ『風助』を召喚。 原作FIRST STAGE終了後、釈迦の証を所持している状態です。 1章 輝きは君の中に 風の使い魔-01 風の使い魔-02a/b 風の使い魔-03a/b 風の使い魔-04a/b/c/d
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炎の使い魔 Summon 1(炎) / 400f ファミリアーの召喚 Atk=0 HP=1 炎の使い魔が攻撃に参加した際、全てのクリーチャーと全てのプレイヤーに1点のダメージを与える。 -- http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/27456/1135510382/826 カテゴリ:本体火力, クリーチャー除去 参照:水の使い魔, 風の使い魔, 光の使い魔, 闇の使い魔 コメント欄 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1595.html
朝もやの中、セッコとルイズとギーシュは馬に鞍をつけていた。 ルイズとギーシュが乗馬用のごつい靴を履いているのが不安で仕方ねえ。 どんだけ遠いんだ。 そういやギーシュって何ができるんだっけ。ええと・・・ 錬金。これは便利だ、うん。青銅と石以外に何を出せるか知らねえけどな。 固定化。脅迫気味にスーツにかけてもらったが、ルイズに話すと「ドットの固定化は気休め」って言われたっけ。微妙だ。 銅像。いっぱい出せるみたいだがあんまり強くないし目立つ。 やっぱし、秘密っぽい作業には向かねえよな。 こいつ自体目立ちたがり屋だし。 こっそり動くのに向かないと言えばルイズもだ。 セッコ的にルイズの爆発は凄い能力なのだが、 ルイズは爆発を「爆破攻撃」として使うことを非常に嫌がるので期待できない。しかも目立つ。 セッコが一人で悩んでいると、ギーシュが突如改まって話し始めた。 「お願いがあるんだが・・・」 「んん?」 「僕の使い魔を連れて行きたいんだ。」 「どこにいるんだあ?」 「ここ」 ギーシュは地面を指差した。 その直後、もこもこと地面が盛り上がり、熊ほどもある茶色の生き物が姿を現した。 ギーシュがそれに抱きつく。 「ヴェルダンデ!ああ!ぼくの可愛いヴェルダンデ!でも、最近ちょっと太り過ぎじゃないかな?」 「そいつヴェルダンデって名前だったのかあ。」 前言撤回、ギーシュ(の使い魔)は物凄く使える。 シルフィードに勝るとも劣らねえだろう。 パワフルだし、高速で地中を進める。 しかもオレと違って穴が残るから人の輸送も可能ときてやがる。 陣の外から穴掘ってウェールズを急襲だ、完璧、よしッ!! 「そうだよ。セッコは僕の可愛いヴェルダンデを知ってたのかい?」 「ああ、いつもそいつとシルフィードとオレで、食堂の力仕事手伝って飯もらってるぜ。」 「ヴェ、ヴェルダンデ・・・変なもの食べちゃダメだよ?」 ヴェルダンデは我関せずといった調子で鼻をならした。 ルイズが横から口を挟む。 「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」 「当然。[モグラ]だからな。けど、ヴェルダンデは馬ぐらいなら追いつけるよ。」 「そういう問題じゃないわ。わたしたちが行くのって、アルビオンでしょ」 「あ・・・」 「脳がマヌケね。」 「お別れなんてつらすぎる・・・僕はギリギリまで諦めないぞ!」 「残念ね。」 アルビオンって島なのかよ。結局ヴェルダンデも使えねえのか・・・うう・・・ とりあえずギーシュと一緒になって撫でておく。本当に残念だ。 その時、突然ヴェルダンデが鼻をひくつかせてルイズに飛びついた。 「な、なによこのモグラ」 「なーギーシュ。ヴェルダンデはなにやってんだ?」 ルイズとヴェルダンデが取っ組み合っている。 「この!無礼なモグラね!姫さまに頂いた指輪に触らないで!ああもう!」 「多分その指輪に引き寄せられたんじゃないか? ヴェルダンデは宝石とか希少鉱物が大好きだからね」 「宝石まで探せるのか、すげえなあ。ギーシュオメーにゃもったいねえぜ。」 「いつかはふさわしい主になってみせるさ」 「当分無理じゃねえかあ?」 と、一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくヴェルダンデを吹き飛ばした。 「誰だッ!!!」 ギーシュが激昂してわめいた。 朝もやの中から、一人の男が現れた。羽帽子を被っている。こいつも貴族かあ? んんー?どっかで見たことあるなあ。 「貴様、僕のヴェルダンデになにをするだぁー!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げる。 が、それよりも早く羽帽子の男が杖?を抜き、ギーシュのそれを吹き飛ばした。 「僕は敵じゃない。姫殿下より、君たちに同行することを命じられてね。君たちだけではやはり心もとないらしい。 しかし、お忍びの任務であるゆえ一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」 その男は帽子を取ると一礼した。 なんだ、でかい帽子を被ってなければかっこいいじゃねえか。 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 ワルドはしょぼくれたギーシュを見て、声をかけた。 「すまない。婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」 婚約者ねえ。貴族って大変だな。 ルイズは目を輝かせてワルドを見ている。 「ワルドさま・・・」 「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」 ワルドはルイズを抱え上げた。ルイズは頬を染めている。 「お久しぶりでございます」 「相変わらず軽いなきみは、まるで羽のようだね!」 「・・・お恥ずかしいですわ」 「彼らを、紹介してくれたまえ」 言うとワルドはルイズを下ろした。 「あ、あの・・・ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のセッコです」 「きみがルイズの使い魔かい?人・・・だよね?」 ワルドが近寄ってくる。 「僕の婚約者がお世話になっているよ」 「・・・うん。」 セッコはワルドを観察した。さっき風を起こしたということはメイジなんだろう。 だが、いい体してやがるなあ。きっと体術もそこそこいけるに違えねえ。 こんな奴をよこすなら、最初からこいつにやらせりゃいいじゃねえか。 いや、もしかするとむしろこいつの方が微妙に信用されてないのかあ? 今考えることじゃねーな。さっさと馬に乗ろう。 ワルドが口笛を吹くと、昨日見たライオンの胴体に鳥の頭がついた珍獣が現れた。 よく見ると羽が生えている。 グリフォン隊隊長つってたし、きっとこれがグリフォンなんだろ。多分。 ひらりとそれに跨ると、ルイズを手招きした。 「おいで、ルイズ」 ルイズはしばらく躊躇った後、グリフォンに乗った。 うー、くそお、やはりタバサと連絡を取っておくべきだった。 グリフォンの速さはわからねーが、2人が飛んで2人が馬とか冗談きついぜ。 ワルドが杖?を掲げ叫ぶ。 「では諸君!出撃だ!」 グリフォンが駆け出す。セッコとギーシュもそれに続いた。 空を見る。置いていかれると思ったが、意外にも馬と大差ない。 半分は鳥じゃねえから、鳥の半分の速度ってわけかあ。ふうん。 車とかあれば楽なのによお・・・ねえんだろうな、多分。 港町ラ・ロシェールは、トリステインから離れること馬で約2日、アルビオンへの玄関口である。 小さな町で、人口は300ほどでしかないが、アルビオンを行き来する人々で常に十倍以上の人間が町を闊歩している。 狭い山道を挟む崖の一枚岩を、土の魔法で住居に加工しているため、昼でも薄暗い。 更にそこから奥へと入った安居酒屋「金の酒樽亭」で、フーケと白仮面の男が話をしていた。 「連中が出発した」 「あんたに言われたとおり傭兵は雇ったよ。」 「で、こいつらは信用できるのかね?」 居酒屋の中はたった今フーケに雇われた傭兵でごった返していた。 「できるわけないじゃない、今前金を叩きつけたばかりよ。 そもそも人を選ぶ時間もなかったし。」 「まあ、そうだろうな。少し喝を入れてやるか」 「いいんじゃない?」 魔法学院を出発させて以来、ワルドはグリフォンを疾駆させっぱなしである。 セッコとギーシュは既に2匹の馬を交換しているが、グリフォンはそのまま頑張っている。 なるほどな、そう早くなくてもスタミナがあるってわけかあ。 しかし、馬って使えねえなあ、腰痛いし。 「ちょっと、ペースが速くない?」 ルイズの口調は、ワルドと雑談を続ける間に元に戻っていた。 「へばったら、置いていけばいい。見た感じラ・ロシェールまでぐらい持ちそうだがね」 「そういうわけにはいかないわ。」 「どうして?」 「だって、仲間じゃない。それに、ギーシュはともかくセッコは重要な戦力よ。」 「そうは見えないがねえ。もしかしてきみの恋人だったりするのかい?」 ワルドは笑いながら言った。 「こ、恋人なんかじゃないわ」 ルイズは顔を赤らめた。そしてちょっと考える。 セッコの能力を知らせておこうかしら? いや、やめておこう。戦闘になってからでも遅くはないわよね。 「そうか、ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、ショックで死んでしまうからね」 「お、親が決めたことじゃない」 「僕のことが嫌いかい?」 「そんなわけないじゃない!」 「はは、それは良かった」 わたしが結婚、ねえ。 まだそれに現実味を感じられないルイズではあった。 「もう半日以上、走りっぱなしだ。魔法衛士隊の連中は化け物か」 ギーシュが馬に体を預けて口を開く。 「バカ、ありゃあの動物がタフなんだ、人は関係ねえ。ルイズを見てみろよお。」 それにしても馬って奴は。 「秘密任務なら、風竜の一匹ぐらい貸してくれてもよかったのに。そう思わないかい?セッコ」 テメーがいなけりゃシルフィードの力を借りる予定だったんだよお。 「来なきゃよかったんじゃねえの?」 「そういうわけにはいかないよ。姫殿下を助けるのは貴族の義務だ」 「そうか。」 馬を乗り潰すこと4匹。何とかセッコたちはその日のうちにラ・ロシェールの入り口に着いた。深夜だが。 あれえ?確かにルイズは港町、つってたよな?何だこりゃ。 街並みは峡谷に挟まれている。 「なあ、ギーシュよお」 「なんだい?」 「ラ・ロシェールって港町だよな?」 「そうだけど、どうかしたのか?」 「うう・・・」 ギーシュの答えは要領を得ない。 その時不意に崖の上から、松明が何本も投げ込まれてきた。 その拍子に馬が驚きセッコとギーシュは振り落とされてしまう。 「な、なんだ!、奇襲か!」 ギーシュが怒鳴った。 そこを狙って何本もの矢が夜風を裂いて飛んでくる。 ああ、畜生。なんかあるとは思ってたがよお。 とりあえずギーシュを馬の影に向かって蹴り飛ばし、鞘に入ったままのデルフリンガーで矢を叩き落とす。 「痛っつ、何するんだ!」 ギーシュがわめいている。 「壁でも作って待ってろお。」 潜るルートを考えつつ、再び飛んでくる矢を適当に捌こうとした所で、目の前に小型の竜巻が現れた。 慌てて後ろに跳び退る。 「大丈夫か!」 ワルドの声が聞こえる。大丈夫かじゃねえよ、邪魔するな。 「その様子だと平気そうだね、すまなかった。・・・夜盗か山賊の類か?」 降りてきたワルドが呟く。 ルイズも呟いた。 「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも・・・」 「貴族なら、弓は使わんだろう」 いや、その理屈はおかしい。つーかそう言うワルドの杖はどう見ても剣だ。 弓や槍持ったメイジも絶対どっかにいるだろ。賭けてもいいぜ。 そんなことを思っていると、聞きなれた羽音が聞こえてきた。 シルフィードかあ? 同時に、崖の上から男たちの叫び声が聞こえ、そしてばらばらと落下してくる。 「おや、風の呪文じゃないか。」 ワルドが微妙な表情になった。そしてシルフィードが地面に降りてくる。 「うおお、どうしたシルフィード」 「きゅいきゅい!」 そして、その上から何故かキュルケが飛び降りてきて、髪をかきあげた。 「お待たせ、ルイズ」 ルイズがグリフォンから飛び降りて、キュルケに怒鳴った。 「お待たせじゃないわよ!何しにきたのよ!」 「助けにきてあげたんじゃないの。朝方、窓から見てたらあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こしてあとをつけたのよ」 キュルケは風竜の上のタバサを指差した。 しかし・・・ タバサはなんとしっかりと服を着込み、荷物まで持っていた。 絶対前もって準備してた雰囲気である。 「ツェルプストー。あのねえ、これはお忍びなのよ?」 「お忍び?だったら、そう言いなさいよ。言ってくれなきゃわからないじゃない。 あなたたちを襲った相手も捕まえたんだし、感謝しなさいよね?」 そう言ってキュルケは誇らしげに笑った。落ちてきた男たちが呻いている。 いや、全部聞いてたから知ってますけどね。 ルイズが心配だから応援に来た、なんて言えないじゃないの。タバサはタバサで何か考えがありそうだし。 「助けは嬉しいが、あまり深入りはしてほしくないな」 ワルドが首をかしげる。 「加減するから、大丈夫よ」 キュルケは笑った。本当は言い寄ってやろうと思ったのだが、先手を打たれてしまった。 そこまで好みじゃないしいいけど。 「あれは、放置?」 タバサが男たちを指差して、シルフィードを撫でていたセッコに言った。 「そんなのもいたな、一応話聞いてやるかあ。」 「情報一番」 敵から話を聞くときはどうするんだったっけな。 確か、えーと、足先から、あー・・・んと・・・ 思い出した、切らなきゃなあ。デルフリンガーを引き抜く。 「よう相棒久しぶり。寂しかったぜ」 「喜べデルフリンガー。」 「どうしたよ」 「ちょっと静かにしててくれよお。」 「ああ、かまわねえぜ」 うー、36等分ってどのぐらいずつ切ればいいんだろ? 適当でいいかあ。どうせ多分死ぬし。 「なー、ちょっと話聞かせてくれるよなあ?」 「おめえらに話すことなんかこれっぽっちもねえよ!」 「そーかあ。それは残念だぜえ。」 「急いでたんだろ?さっさと行ってくれ!」 「まあ、そう言うなよお。な。」 深夜の渓谷に、偶然セッコから一番近い場所に転がっていた不幸な男と、その横にいたもう一人の絶叫と断末魔が響いた。 「あ、相棒ってわりと乱暴だな・・・」 「そうかなあ。」 ちゃんと話聞けたしルイズに報告するかあ。 「仮面の貴族と、貴族じゃない女メイジの2人に雇われた。怪しいけど給金が凄かったから受けた。 つってたぜ。」 「そ、そう。やっぱり貴族派かしら?もう危ないのね・・・」 ルイズの様子がおかしい、震えている。なんでだ? 「ふむ・・・既に情報が漏れているとは予想外だな、なるべく急ごうか。」 ワルドはそんなルイズを抱きかかえて、ひらりとグリフォンに跨った。 「今日はラ・ロシェールに一泊して、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」 ワルドは一行にそう告げた。 「それはいいんだけどよお、ギーシュはどこ行ったんだあ?」 皆が首をかしげる。 すると、矢が数本刺さった青銅のドームの影からギーシュが姿を現した。 「あれ、賊はどうなったんだい?」 「「「「「・・・」」」」」 道の向こうに、ラ・ロシェールの町の灯りが怪しく輝いていた。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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トイレから部屋に戻ったルイズは、昨日呼び出した使い魔について考えていた (朝食は抜いた、死体は芯まで凍っていた為、血こそ飛び散らなかったものの食欲が消えるには十分だった 粉々になった死体は部屋に戻ると昨日の様に消えていた、消えて無かったら今頃いい感じでスプラッタだったろう) おかしい、落ち着いて考えてみると確かにおかしい 死体が消えるのもそうだけど、死んだ筈なのに再び召喚されるっていうのは如何考えてもありえない 死んだ、自分の目の前で死んだ、なのに召喚されて動いて喋っていた 屍生人?吸血鬼?アヴドゥル?どれも違うように思える それよりも「死んでも召喚されれば生き返る」のではないか? そう思えた もう一度呼び出してみれば分かるかもしれない 疑問を確かめるべく、三回目の召喚を行う これであの男が出てくれば確定だ、自分が呼び出したのは只の平民などではない 何か力を持った存在なのだ、馬鹿にされる様な使い魔等ではないのだ そう思うと落胆していた気持ちが高揚していくのを感じた 「あらためて、アンタ誰」 「…ディアボロだ」 過去2度の召喚と同様に杖の先に現れた男は落ち着いていた 絶え間無く周囲を見回し警戒していること隠さなかったが、こちらを見て怯えるということは無かった ディアボロの落ち着きを見て取ったルイズは ディアボロを召喚したこと、ディアボロが使い魔であること、使い魔とは何であるかを説明した 「自分の置かれた立場が分かったわね」 「じゃあ私の疑問に答えて貰えるかしら 彼方は何故生き返ったの? 前に呼び出した時は確かに死んでいた筈だわ 甦る力があるの?それとも死んでいなかったの?」 ディアボロは警戒を解かぬまま口を開く 「…私はある戦い以来、何処から来るか何時来るか分からない死に襲われ続けている」 「一度死んでもそれで終わりではない、場所が変わり時が変わりまた死が襲ってくる」 「…まるで死の呪いね」 「ルイズ…だったな」 「お前の話は理解できた、だがそれはお前の都合であり私には関係の無いことだ 使い魔が欲しいのなら別のを探すんだな」 この男の言葉には凄みがある、言葉を裏打ちするだけの力を持っているのだ 逃す訳には行かない ここで逃せば自分は本当に何も無い「ゼロ」になってしまう しかしこのままでは引き止められない ルイズは何かこの男を留めて置けるなにかはないかと必死に頭を働かせた 力?金?カラダ?いや違う 男の喋った言葉の中にあったそれに気付く、思いつくままに口を動かす 「死ぬ度に時間と場所が変わる、そう言ったわね」 「それならばあれほどまでに周りを恐れていたのは分かるわ」 「何も分からぬままいつまでも流され続ける、これほどの恐怖は無いものね」 「でも、今の彼方は落ち着いている、死を恐れているものの落ち着いているわ」 「それは安心したからじゃあないかしら、状況が理解できる範囲にあることに」 「私に呼ばれてから別の場所で死んだことはあった?無いんじゃないの?」 「それは契約を結んだことで呪いに変化があったと考えられるわ」 「だから私の元を離れたり、私を殺したりすればその安心は失われるかもしれないわよ」 「何処とも知れぬ場所で永遠に死に続ける、そんなのに耐えられるかしら」 一気にまくし立てたルイズは息を整え、最後の決め手と言わんばかりに言い放った 「これは機会よ!慈悲深い御主人様が与えた最後の機会! 逃したならもう二度と救われることは無いわね」 ディアボロがルイズを見る 「よく喋る口だ…つまり利害が一致した訳だな、お前は使い魔が欲しい、私は平穏を必要としている いいだろう、使い魔になってやろうじゃあないか」 ルイズは笑みを浮かべた やった、ほとんどでまかせだったがこの男は使い魔になると言った ディアボロの言葉遣いや態度は気に入らないが、とにもかくにも使い魔を得ることが出来たのだ 「じゃあ行くわよ、ついて来なさい」 「何処にだ」 「教室によ、使い魔は主と行動を共にするものよ」 教室は大学の講義室という風だった 何か異なることといえば生徒達が皆何かしら生き物を従えていることだろう 道すがら見かける様なものもいれば、動物園で目にするようなものもいる ディアボロの目を引いたのは中でも物語の中でしか存在し得ない筈の生き物達だ (ここでは幻獣と称するらしい、ルイズの話の中で出ていた) (イタリアではないことだけは確からしいな) この小娘に出会ってから2度死んだ、死んだ次の場面は2度とも小娘の前だった 今までこんなことは無かった、時間も場所繋がり無く変わり訳も分からぬまま死を繰り返した 小娘のでまかせを思い出す 確かに以前の状態に戻らないという保証は無い 認めたくは無いが自分はあの小僧に破れ絶頂から転げ落ちてしまったのだ 今は崖に生えた細い枝に服が引っ掛かった様な極めて不安定な状態だ 少しでも重心を崩せば再び奈落の底へと転落してしまうだろう しっかりと三点確保を維持しながら崖を上らねばならない 迂闊な行動は出来ない 絶頂であり続ける為には… 「コッチヲ見ロォ~~ッ」 「ん………?」 顔を起こしたディアボロに散弾の様な石の破片が突き刺さり、ついで爆風が体を粉々に吹き飛ばした ■今回のボスの死因 ルイズの失敗魔法の巻き添えで爆死
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まあ、なんだ。 結局さっきの一件はおれの『おいた』で済まされた。 おれはコレに納得がいかない。 何故ならその言い方ではおれが悪いことをしたみたいだだからだ。 まあその後ピンクの髪の女に連れられているって訳だ。 本心ではもっと胸のあるヤツがいいんだが、嫌な予感がするのでそれは黙っておく。 そしてどうやらここは異世界で魔法があるらしいところまで理解した。何故かおれの手も直っている。 「さて、とまずはアンタの名前ね」 「イギーだ。それが俺の名前」 「そう、イギー。よろしくね」 そう言われても状況がサッパリなんだが、おれがそう言うと 「状況って、アンタは私の使い魔になったのよ」 なんて返してきやがった。 使い魔ってのは何だ?と聞くと 「使い魔は使い魔よ」 あーあーこれだから人間は、説明になってないじゃねーか。 「使い魔って言うのは主人のメイジ、つまり私ね、が使役する絶対的な主従関係で成り立つ動物や幻獣のことよ」 ウィキペディアで調べた様な答えだな。 「とにかく!アンタは私に絶対服従!いいわね?」 「よくない」 誰がこんな貧乳なんかに服従するか 「………」 あれ、黙っているぞ?そんなにおれが否定したのがショックだったのか? 「だ……うよ」 ん? 「誰が貧乳よ~~~~!」 やべえ、つい言っちまってた! おれは自分の身を守るためベッドの下に飛び込む。魔法を使われたくないのでついでに杖も持っていく。 「あ!出て来なさい!このバカ犬!」 無視する 「杖を返しなさい!」 無視する 「さっさと出て来い!」 アーアー聞こえなーい 「いい加減にしなさい!」 そういってベッドの下に手を突っ込んでくる。今だ! おれはベッドの反対側から出てそのまま部屋を飛び出す。脱出成功! とはいかなかった。 「ドアが開けられねえ……」 クソッ!こんな時はあのブ男が開けてたのに! そしておれは殺気を感じた。後ろに振り向き 「いやあご主人様!今日も綺麗ですね!」 とりあえず褒めてみる。 「ありがと。出会ったのは今日だけどね」 もっともなお言葉で。 そして散々鞭で叩かれる。その最中に気絶しちまった。 「まったく…目覚めたら従順になってればいいけど」 そう言うルイズ。 絶対ならないぞ、おれは。 鞭で叩くようなやつに従うつもりは全くない。 「そろそろ寝ましょ」 そうしろそうしろ 「えーと着替えは…」 ム!覗けるのか、と思ったがあんな貧乳に興味はない。さっさと寝やがれ。 しばらくしてルイズが眠る。 それを確認しておれはベッドの下から出る。 「ザ・フールをおとりに使ってよかったぜ」 何か罰を与えないと気がすまないって感じだったからな。 おれは叩かれたくないのでザ・フールで自分の形を作ったって訳だ。(もちろんベッドから出るとき入れ替わった。) さて、おれも寝るか ベッドからルイズを下ろす。ルイズより早く起きて床にいれば寝相のせいになるだろう。 このベッド結構寝心地いいなぁ。 今日は疲れたので良く寝れそうだ。 To Be Continued…
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「ハッ?!」 目が覚めるとそこは見慣れないところでした 「・・・あれ、なにしてたんだっけ?こんな傷までして・・・」 この青年、ドッピオは腹部に包帯を巻かれてベッドの上で寝ていました 「・・・あ」 そして自分がなぜこんな傷を負ったのか思い出しました 「あ・・・気がつきましたか?」 「シエスタさん・・・そうだ!シエスタさん、僕が決闘しているのを見ていましたよね」 「あ、はい」 ドッピオは決闘のとき湧き上がったドッピオコールの最初、自分の名前を言ってくれたのがシエスタだと覚えていました 「あの後、どうなったんですか?」 「どうってドッピオさんがギーシュさまをやっつけたんですよ?覚えていないんですか」 それもそのはず、倒したのはドッピオではなく主人格であるディアボロなのですから ドッピオは自分のボスが倒したのだと思いひとまず落ち着きました 「目が覚めたようですのでヴァリエール様に報告しますね」 「ヴァリエール?」 「・・ルイズ様のことですよ」 ドッピオは最初に説明されたフルネームを忘れていました 「ドッピオ!!」 「ルイズさん・・・そんなに声を立てなくても」 「このバカ!!なんであんなことをしたの!!」 「いきなり罵倒しますか・・・」 しばらくベッドの上で貴族に決闘をさせるようなことをするなだとか あんなことではちっとも自分のためにならないだとか 傷を負ってるのに無茶をするなだとか ドッピオはいろんな罵倒を半分聞き流しながらルイズにあわせていました しばらくして怒鳴りつかれたのか一呼吸して 「今は傷を治すことだけ考えなさい。無茶したらそれこそ許さないんだから」 といって部屋から出て行こうとします 「ありがとうございます。ルイズさん」 ドッピオが礼を言うと 「か、勘違いしないでよね! 別にアンタのためじゃなくって早く傷を治してもらわないと家事をするのは誰がいるのよ」 照れ隠しだと思いながらドッピオはその言葉を受け取りました 「・・ここだけの話ですけどね」 シエスタが言います 「決闘の後ルイズさんとても心配なされていたのですよ? 傷を治すのにも高級な薬草を取り入れたりしていたそうですし」 「そうですか・・・それだとなおのこと傷を治すことを考えないといけませんね」 そして二日ほどたちました ルイズの取り入れた薬草のおかげか傷のほうも早く完治し、十分に動けるようになりました 決闘のこともあってかドッピオのことを「平民が…」等と言って直接絡んでくる人は特にいなくなりました ですが中途半端に腕に自信がある人たちが絡んできたりします あの後、ドッピオは貴族との戦いを学習し、絡まれたら逃げるといった行動に移るようになりました それでもそういった行動をとると相手は挑発をします。それに耐えられなくなるのはドッピオではなく主人のほうでした 「ちゃちゃっとあいつをやっつけちゃって!」 などの無茶な命令を聞くのも使い魔の仕事です。エピタフの未来予知を駆使し魔法を発動させる前に近づいて杖を折る ギーシュとの戦いで学んだことです。貴族の人たちは例外なく杖を折ると魔法が使えないようです ですがドッピオはこういった人たちよりももっと苦手な部類の人種がいるのです 先程絡んでくる人がいなくなったと言いましたが例外はいるんです 無性に絡んでくるのが1人います 「ドッピオー♪」 「・・・キュルケさん・・・」 キュルケと呼ばれた女生徒はドッピオの腕に胸を押しつけるように抱きついてきます 肩までかかる燃えるような赤い髪を持ちスラッと長身で豊満なバストを見せつけるような格好をしているキュルケ ドッピオに対しここ数日求愛行動を示していました 「ねぇ、今夜私の部屋にこ・な・い?」 「遠慮します・・・」 「あぁ~ん。即答しないでよー」 「じゃあ来年まで考えときます」 「もぉー、つれないわねぇ・・・」 彼女は二つ名が示す「微熱のキュルケ」の通り恋多き女なのです 理由は以下の通り 「数日であの「青銅のギーシュ」を初めとする学院の貴族を50あまり倒した平民・・・燃えるわー」 噂は肥大化するものなんです 「ちょっと・・・使い魔に用があるなら主人を通すのが礼儀じゃなくて?ミス・ツェペェルトー?」 「あーらミス・ヴァリエール。いたの?色々小さくて見えなかったわ」 「な、なんですってぇー!!!」 ちなみにルイズとは家柄的な問題で犬猿の中らしい 「・・・タバサさん。長くなりそうだから先に夕飯食いに行きませんか?」 「・・・・・・(コク」 タバサと呼ばれた少女はチラッとドッピオを見て頷くと視線を読んでいた本に戻しドッピオに続き歩き出しました 眼鏡をかけショートカットで青髪。ルイズよりも一回り小さい少女はいつも本を読んでいます ここの世界の文字が読めないドッピオには何の本だかはわかりませんが・・・ タバサはキュルケの親友でだいたいセットでいます 口数も少なく表情の変化もないので何考えてるがわかりにくい謎多き少女なのですがドッピオからして見ると一番疲れない相手でもあります 何だかんだここ最近4人組でいることが多いんです 「お腹すきましたね」 とお腹を押さえて歩いていると後ろから声が聞こえる 「あぁ~ん、待ってー!!」 「こらぁ!!ご主人様置いてどこ行くの!!」 と言った具合で夕食を取り部屋に戻るのです そしてルイズを寝かしつけると服を丁寧にハンガーにかけ下着姿になり毛布を被り眠ります 住めば都と言うべきなのでしょうか、我が侭なご主人はさて置きドッピオはここの生活に慣れていました ですがそんな休息も長くは続かないのでした 「フフフ、ここね…」 皆が寝静まった深夜のトリステイン魔法学院宝物庫 その扉の前に黒いフードを頭から被り明らかに不審者である人物がブツブツと独り言を言っているのでした 8へ
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早朝、ルイズ達はアルビオンに向かう準備をしています するとギーシュが提案しました 「僕の使い魔を連れて行きたいんだ」 地面から大きなモグラ、ジャイアントモールが出てきます ギーシュは「僕の可愛いヴェルダンデ!」と抱きつきます 可愛いかどうかは見る人が見れば可愛いのでしょう ですが地中をかなりの速度で掘り進めるヴェルダンデとはいえ行き先は空中に浮かぶアルビオン 即座にルイズから却下されます 却下したときヴェルダンデは少し鼻を嗅いですぐにルイズを押し倒しました 「ちょ、ちょっと! 何なのよこのモグラ!?」 ルイズは身体をモグラの鼻で突き回され、地面をのたうちスカートが乱れたりします 「いやぁ、巨大モグラと戯れる美少女ってのは、ある意味官能的だな」 「・・・なにをやってるんですか」 途中まで見ていたドッピオがヴェルダンデを止めにかかります ですがジャイアントモールの力は強くキングクリムゾンのパワーでないと止めれませんでした ヴェルダンデの目線はルイズの一部分に釘付けでその目先を見たギーシュがこう言いました 「なるほど指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね。 よく貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけてきてくれるんだ」 「なるほど『土』系統のメイジには役立つ使い魔ってことですか・・・あ!」 押して勝てないと悟ったヴェルダンデはすぐさま地中をもぐってルイズの前に現れます また押し倒そうとしたその時、一陣の風が舞い上がりヴェルダンデを吹き飛ばしました 「なっ、何をするだァ――――ッ! 許さん!」 ギーシュが杖を抜いてわめきます。怒りのあまり言語が田舎臭くなっています ドッピオは瞬時にエピタフを発動し『敵』ではないことを判断しました 羽根帽子の男は一礼をして名乗ります 「僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行する事を命じられた者だ 君達だけではやはり心許ないらしい。しかしお忍びの任務であるゆえ、一部隊をつける訳にもいかぬ。 そこで僕が指名されたって訳だ」 帽子を取ったその男は自分達より十歳は年上と思われるダンディな髭の男でした 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。 すまない・・・婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬフリはできなくてね」 「・・・婚約者?」 ドッピオは疑いの眼差しでワルドと、ルイズを見くらべます ルイズは確か十六歳のはずだ。まあこの世界なら婚約者というものがあってもいいかもしれません だがワルドはどう見ても十歳くらい年上です。ロリコンか、ヴァリエール公爵家の家名目当てか ドッピオはなんとなく後者・・・何らかのモノがほしいために婚約しているように思えました 何せそのワルドの顔がかつてのボスのように仮面を被った様な顔なのですから ルイズは感動の再会を楽しんだ後、ドッピオとギーシュを紹介しました ワルドは最初、使い魔が人間ということに少々驚いていたようですがそのようなことなど気にしないようでした (・・・この程度なら化けの皮は剥がれない・・・か) ドッピオのみがワルドに対し疑念を抱く中、彼らはアルビオンへと旅立つ事になりました ちなみにヴェルダンデは「行き先はアルビオンだから」という理由で結局置いてく事に ギーシュは本当に別れを惜しんでいましたがその後 「・・・地中を掘ってるなら途中までばれない・・・」 と呟き、出発しました。いたはずのヴェルダンデはどこかに消えていました さて、一行は各自の移動手段を持って急いでいます ルイズとワルドは一つのグリフォンに乗っています。ギーシュとドッピオは学院の馬に 道中、ワルドはルイズに甘いささやきを繰り返します ギーシュは確実に数日かかるということに「ああ、モンモランシー。君に数日も会えないなんて・・・」などと言っています ルイズはワルドの甘いささやきを聞きながら、チラリ、チラリと後ろを見ています 見ているのは大げさな演技をして笑いを取ろうとしているギーシュ・・・ではなくドッピオのほうです ドッピオは無言で馬に乗っています どうやら慣れていないようで自分の能力を使っているようですがルイズには分かりません 自分に対して反応の無さが、ちょっと癪に障る。理由は解りませんが 「やけに後ろを気にするね。まさか、どちらかが君の恋人かい?」 ワルドは笑いながら、しかし真剣な眼差しで言っているようです 「こ、恋人なんかじゃないわ」 「そうか、ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたらショックで死んでしまう」 「で、でも・・・親が決めた事だし」 「おや? 僕の小さなルイズ、僕の事が嫌いになったのかい?」 「・・・嫌いな訳ないじゃない」 ワルドは憧れの人 幼い日、婚約の正しい意味を知らなくとも、彼がずっと一緒にいてくれると思って、嬉しく思っていました 今ならその意味が解り、結婚という意味も解っています アンリエッタの政略結婚とは違う自分達の結婚を ですがルイズは何だかとっても複雑な気持ちになりました いざ結婚となるとどうしても気持ちが違うような気がしてならなかったのです (私は・・・ワルドのことが・・・) 好きか嫌いか、どちらと言われると好きなのでしょう 結婚するのかしないのか、好きなのに結婚が純粋に望めない (・・・今は姫の任務の遂行。ワルドのことは後回しよ!) 自分自身に対する疑念を考えるうちに港町ラ・ローシェルに到着しました ラ・ローシェルは峡谷に挟まれるようにあり岸壁を彫刻のように彫った建物が多数見受けられます おそらく土のメイジが作ったのでしょう。しかし港町なのになぜこんな山地にあるのでしょう 疑惑を持ったドッピオは空を見上げます 「・・・なるほど、空の港と言うわけですか」 それは船でした。空中に浮かぶその船はまさに圧巻 (ヴェルダンデがいけないと言う事はアルビオンは空にあるわけですか) 一行はラ・ローシェルで一番上等な『女神の杵』という宿に入った瞬間 「ハァ~イ、遅かったじゃない」 「きゅ、キュルケ!? 何であんたがここにいるのよ!」 と、いきなりの歓迎を受けました 一階は食堂になっていて、タバサもキュルケと同じテーブルで本を読んでいます キュルケはいきなりワルドににじり寄り 「お髭が素敵よ。あなた、情熱はご存知?」 当のワルドはキュルケを拒絶するように左手で押しやりました 「婚約者が誤解するといけないので、これ以上近づかないでくれたまえ」 そう言ってルイズを見るワルド。視線に気づきつまらなそうな顔をするキュルケ 「婚約者?あんたが?・・・ドッピオー!あなたを追いかけてきたのよ!」 「見事な対応変換だね」 「うるさいわよ。ギーシュ」 即座に矛先を変えてキュルケはドッピオの腕にしがみついてきます いくら追い払ってもやめないことは分かっていますがそれでも一応の望みをかけて追い払います 「ひとまず離れてください・・・大体何で貴女がここに・・・」 キュルケは簡潔に答えてくれました どうやら自分達が出かけるのが見つけたためタバサに頼んでシルフィードで送ってきてもらったようで その本人、タバサもこちらの行動に興味があったようで不満の色は見せていません 船について出来ることがないので宿屋の食堂でドッピオ達がくつろいでいると桟橋へ乗船交渉へ行ったワルドとルイズが帰ってきました 「アルビオン行きの船は明後日にならないと出ないらしい」 仕方ないからそれまでの間この街で時間を潰す事となり、早速ではあるが宿の部屋割りがワルドによって決定され鍵を渡されました キュルケとタバサが同室。ドッピオとギーシュも同室。ルイズとワルドは同室 婚約者だから当然ではあるがルイズはかなり動揺の様子 そしてその夜、ルイズとワルドは同じ部屋へと消えていきました 食堂ではギーシュが自棄酒を飲んでいました 「モンモランシー・・・ケティのことは誤解だって言ってるのに聞いてくれないんだよ?」 「はあ・・・」 ドッピオはその自棄酒に付き合っています。ちなみに肉体年齢ならもうとっくに三十路を過ぎているので酒は飲んでも大丈夫 キュルケはどうしたものかしらと思いつつワインを飲み、タバサは見かけによらず大食いなのか食事を続けています 「しかし、まさかルイズに婚約者がいたとはなぁ……」 「あら、ルイズにも手を出そうとしてるのかしら?」 ギーシュの呟きに乗ってきたのはキュルケ一人でした 「やれやれ、何でそういう勘違いをするかな。単純に驚いただけだよ。 それにしてもルイズにはできすぎた婚約者だな。 女王陛下の魔法衛士隊でグリフォン隊隊長……憧れるよ」 「でもあんな髭ヅラのおじさん、私ならお断りよ」 ここまでルイズ達を追いかけてきた最初の行動はすっかり忘却の彼方らしい。 「まっ、確かに年上すぎるかな。何歳なんだろうね? 三十には届いてないようだが」 「殿方っていうのはね、ドッピオくらいの年齢が丁度いいのよ 青春の真っ盛り、尤も自分が輝くときが一番良いに決まってるじゃない」 「まあ確かに。でもルイズは年齢より幼く見えるからなぁ」 「・・・・・・」 「あら?ドッピオ、もしかして寝てる?」 「酔いが回ったようだね。まったくこのくらいの酒で目を回すなんて情けない」 ちなみに飲んだ量はワイン一本程度です 結局、自棄酒はギーシュがドッピオを部屋に運ぶということで終了し キュルケと食事を終えたタバサも眠りに付くことで任務一日目を終えるのでした
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ポルナレフがルイズを助ける少し前のこと。 「いいか、よく聞け。フーケが出て来たのはチャンスだ。今なら奴を倒せるかもしれん。」 ポルナレフはシルフィードの上で二人に話し出した。「確かに出て来たのはいいけど、あたし達の魔法じゃきっと効かないわよ?」 「お前達の魔法じゃあ無い。あくまで可能性の話だが…」 タバサが持っていた破壊の杖を指差した。 「その破壊の杖ならあのゴーレムを一発で破壊できるかもしれない。そして俺はその使い方を知っている。」 二人は驚いて、顔を見合わせた。破壊の杖を初めて見たばかりのそれもメイジではないはずのポルナレフが「使える」と言い出したのだ。 「だが、使うにはあそこにルイズがいると危険だし、距離と時間が必要だ。」 だからフーケの動きをしばらく止めてくれ、とポルナレフは頼んだ。 「ダーリンの頼みなら断る理由は無くてよ!それにルイズばかりかっこよくさせとくのも釈だし。」 「…(コクリ)」 キュルケとタバサは快く承知した。 ポルナレフはそれじゃあ頼んだ、とだけ言うと亀と破壊の杖を持って飛び降りた。 「はん!何わざわざ『土』は切れないなんて教えてんだい!これであんたの勝ち目は無くなったよ!」 フーケはゴーレムの腕を鉄に変えずにポルナレフに向かって撃った。 ポルナレフはルイズを抱えて急いで避けると、そのまま背中を向けて逃げ出した。 「逃がさないよ!」 フーケはゴーレムで後ろから追おうとしたが、 「ファイア・ボール!」 キュルケ達に邪魔された。「うざったい虫だね!」 空から来る二人の魔法に足止めを喰らうフーケ。ちらりとポルナレフの方を見ると、いつの間にか大分距離が開いていた。 ヤバイと思ったが、はたと気付いた。何故ポルナレフは破壊の杖を持って来たのだ?ルイズを助けるだけならば邪魔以外のなんでも… そしてフーケはニィっと口を歪めた。 (こいつは『当たり』だったようだね…。まあ、ゴーレムは犠牲になるかもしれないけど…) フーケはそう考えると今度は『わざと』じりじり後退していくような振りをした。 ポルナレフはフーケのゴーレムからある程度距離を取るとルイズを亀の中に入れ、破壊の杖を構えた。 「こんなものには頼りたくないんだがな…生憎チャリオッツじゃああいつには分が悪すぎる。」 ポルナレフはそうぶつぶつ言いながら慣れた手つきで破壊の杖の安全ピンを抜きとり(めんどくさいので省略)安全装置を外した。弾数は一発。失敗は許されない。 「タバサ!準備は出来た!すぐにゴーレムから離れろッ!」 ポルナレフがそう叫ぶとタバサは急いでシルフィードを上昇させた。 それを確認すると、ゴーレムに狙いを定めポルナレフはトリガーを引いた。 しゅっぽっと栓抜きのような音がして羽がついた大きな弾が白煙を引きながら飛び出した。 その弾がゴーレムの身体にのめり込んだ瞬間、その衝撃で信管が作動、弾頭は爆発し、ゴーレムを吹っ飛ばした。 だがその爆風の中、三人共気付かなかった。フーケが砕け散っていくゴーレムの残骸と共に落ちていく最中、笑っていたことに。 「後はこの土の中からフーケを探し出したらようやく終わりね。」 「…」 ポルナレフ、キュルケ、タバサの三人はゴーレムの残骸もとい土の山の前で立ちすくんでいた。ちなみに破壊の杖はすぐ近くの地面に置いてある。(ルイズはまだ亀の中で気絶している。) 正直言ってこの中から探し出すなんて面倒である。 「それにしてもダーリン。何で破壊の杖の使い方を知ってたの?」 「ノーコメントだ。」 「…ずるい」 三人がそんなやり取りを交わしている所に 「皆さんすいません。遅くなってしまって…てこの土の山は!?まさかフーケが…」 ロングビルが森の中から現れた。 「ああ、フーケが襲って来た。罠だったみたいだが俺がその破壊の杖で奴を倒し…「そこまでだよ。全員動くな。」!?」 ロングビルがポルナレフの言葉を遮った。その手には破壊の杖。 「ミ、ミス・ロングビル?」 キュルケがまさか、という顔をした。 「その通り。あたしが『土くれ』のフーケさ。 すまなかったねミスタ・ポルナレフ。あんたのお陰で全ては上手くいったよ。本当に感謝しているよ。」 フーケが嫌味ったらしく言った。 「成る程、やはりあれは嘘だったか。しかし、感謝しているならその破壊の杖を下ろしてもらいたいものだな…」 ポルナレフは静かに言った。 「駄目駄目。だってあたしの正体ばれてるのにここで逃がしたらあたしが大変な目に会うからね。 あんた達には残念だけど、これで死んでもらうよ。」 フーケがそう言って、破壊の杖の照準をポルナレフに合わせようとした時、ポルナレフはクククと笑い出した。 「?何笑ってんだい?」 「さっさと魔法で俺達を始末すればいいのに、貴様が無駄口叩いているのが面白くてな…しかもそれはな、」 ドサッ ポルナレフがそこまで言った時、いきなりフーケが倒れた。首の付け根に丸い凹みが出来ている。 「単発式…てもう聞いてないか。」 ポルナレフはロングビルが自分がフーケと明かした時、既にチャリオッツの剣針を飛ばしていた。 直接やらなかったのはフーケの位置までチャリオッツが届かなかったからだ。そして剣針は森の木々に反射し、見事フーケの首に命中したのだ。 「まさかミス・ロングビルがフーケだったとはのう…」 四人の報告を受けたオスマンは多少残念そうに言った。オスマンいわく、酒場で給仕をしていた彼女の尻を故意に触ったのだが怒らなかった、という理由だけでスカウトしたらしい。 その場にいたコルベール含む五人全員「死ねばいいのに」と思ったのは言うまでもないが、コルベールとポルナレフの親父二人はまあ、色々あったので少し同情した。 とりあえず体裁だけ整えてからオスマンはルイズとキュルケにシュヴァリエ、タバサには精霊勲章を申請しておくと言った。 その言葉に三人は誇らしげに礼をしたが、ルイズはあることに気付いた。 「オールド・オスマン。ポルナレフには何も無いのですか?」 「残念じゃが、彼は貴族では無いのでな…」 「そんな…」 1番手柄を立てたと言えるポルナレフには貴族では無いというだけで何も無いのか、ルイズはその理不尽に憤慨したが、ポルナレフはその肩を叩いて、 「俺は別に何もいらない。色々訳ありでな…」 と言った。 その言葉にルイズは渋々頷いた。 「それはそうと今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。この通り『破壊の杖』は戻ってきたし、予定通り執り行う。 今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意してきたまえ。せいぜい着飾ってくるのじゃぞ。」 三人が礼をしドアに向かったがポルナレフは行こうとしなかった。 「ポルナレフ?」 「先に行ってろ。こいつらと話がある。」 ルイズは納得いかなかったが、渋々出て行った。 「何か、私に聞きたいことがお有りの様じゃな…言ってごらんなさい。 出来るだけ力になろう。君に爵位は…ああ、要らないんじゃったな。まあ、せめてもの御礼じゃ。」 「聞きたいことは二つある。一つはこのルーンだ。薄々気付いていたが、このルーンは剣やナイフを持つと何故か反応する…これは何だ?」 「うむ…それは伝説の使い魔の印じゃ。」 「伝説の使い魔?」 「さよう。始祖ブリミルの使い魔でガンダールヴと言う。彼の者はありとあらゆる武器を使いこなした、と言い伝えられておる。 コルベールの仮説じゃったがどうやら本物らしいな。」 「なるほど…だから破壊の杖も扱えたのか。しかし何故あの小娘が俺達をそのような使い魔として召喚したのだ?」 「すまんが、そればかりは分からん。」 「…まあ、いい。それよりだ。あの破壊の杖はどうやって手に入れた?あれは俺がいた世界の武器だ。この世界の技術で作れるはずがない。」 「君がいた世界…ああ、君が言ってた召喚される前の魔法が無い世界か…まあ、話すと長いのじゃが…」 オスマンが言うにはその昔ワイバーンに襲われ危機に陥った所を破壊の杖の持ち主に助けられたらしい。 「その男は?」 「死んだよ。酷い怪我を負っていてな…『元の世界に帰りたい』とベッドで言っていたよ。 彼は破壊の杖を二本持っていてな、それで彼の墓に彼が使った方を埋め、もう一本は宝物庫にしまったのじゃ。」 「そいつが来た方法なんかは聞いてないのか?」 「聞いたのじゃが、本人も分からんと言っておった。すまんな、力になれなくて。」 オスマンがすまなさそうに頭を下げた。 「別に構わない。ただ、俺や亀の様に来た奴がいる…それさえ分かればな…」 ポルナレフは立ち上がると一礼してから退室していった。 To Be Continued...