約 596,303 件
https://w.atwiki.jp/skyfantasy-trpg/pages/191.html
確定設定 オート・コンヴァージョン 毎朝、女性 ルイ になるか男性 レイ になるかランダムで決定される。 ただし、シナリオによっては性別が固定される。 また、再びコンヴァージョンを使うことで任意に変更もできる。 ルイとレイ コンヴァージョンする事で"身体及び性格が"切り替わる。 二重人格的設定で、記憶の共有はしている。 また、お互いに勝手にコンヴァージョンを唱えて中から出てくることも。 戦闘では現レベルでやっとお互いのやりたいことが出来るように。 ルイ→魔法ぶっぱ レイ→デーモンルーラーで投影して魔力撃ぶっぱ ただ、メインでやることであって、お互いに出来ないことはない。 イザベラとのLGBT ルイレイ共々イザベラと愛し合っている(直喩)。 ルイはイザベラに『幸せ』を貰った。 レイは不明。 星の巫女 巫女枠の一人。GMから設定されている。 その設定が投げられる直前の成長でミスティックを取っている() →とりあえず星の巫女の副作用だかなんだかの所為にしておく。 スケッチ ルイの趣味の一つに、人物画・風景画がある。 最初は単に暇つぶしの一環で描いていたのだが、 いつのまにか日常と化してしまった。 ちなみに、レイは描いているのではなく描かされている。 構想設定 ルイとレイ もともと別人同士、という設定。 「サモンナイトエクステーゼ夜明けの翼」の主人公たちの持っていた設定をパロパクったもの。 一つの体に二つの魂が共存し、表に出るほうで身体も変わる。 そのため、ルイの肉体が何処かにあるとかないとか。 が、別にレイは肉体を取り戻したいとも思ってなく、ルイも貸せばいいや程度の認識。 ヴァリアン城にいた理由 最初のきっかけはおそらくイザベラの一言。 ヴァリアンがーヴァリアンがーと五月蝿かったのではなかろうか。 なんやかんやあって単身乗り込んだはいいものの、半幽閉されてしまったオチ。 プレイヤーキャラクター一覧へ Dominateメインメニューへ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8196.html
前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い 「……どうやら私を追ってきたって訳じゃなさそうだね」 「まあ別件でな」 柊達から一定の距離を保ったまま、壁に背を預けたフーケがそう言うと、柊は軽く頷いた。 柊が捕縛した後のフーケについて知っているのは、彼女を王都に連行する際に護衛の衛士隊が何者かに襲撃され、その犯人と共に逃走したという事くらいだ。 そのごたごたで上の方ではなにやら揉めたり手配書が国中に出回ったりしたらしいが、その後の音沙汰は全くないといってよかった。 まあこうしてフーケはアルビオンにいるのだからトリステインで音沙汰がないのも当然だろうが。 「……で、こっちに高飛びしてきて火事場泥棒でもやろうってのか?」 個人的に多少の縁があるとはいえ、一応彼女は逃亡中の犯罪者である。 とりあえず尋ねてみると、彼女は何故か顔を顰めて黙り込んでしまった。 柊とタバサが互いに顔を見合わせ、改めてフーケを見やると、彼女は肩を落として大きな溜息をつき、手を頬に軽く添える。 「……盗賊は廃業したよ。出頭するつもりはないけど、もうああいう仕事はやらない」 フーケは呟くようにそう漏らし、頬の手を離すと残滓を惜しむように指を擦った。 そんな彼女の様子をじっと見ていた柊が、確認するように口を開く。 「本当だな?」 「信じる信じないはそっちの勝手だよ。捕まえようってんなら抵抗するけどね」 ふんと鼻を鳴らしてフーケが返すと、柊はしばし何事かを考えるように腕を組んだ。 そして彼はフーケから踵を返し、その場から離れながら懐から何かを取り出す。 手の平大の小さな箱を指で弄くってから耳に寄せると、ややあって虚空に向かって話し始めた。 「ああ、俺だけど。今大丈夫か? ……あぁ、アルビオンには着いた。今サウスゴータってトコに来ててな、実は――」 誰を向いているでもないのにまるで会話をしているようにぼそぼそと話す柊を見て、フーケは訝しげに首を捻って脇に佇んでいたタバサに眼を向けた。 「アイツ、何をやってるんだ?」 「……知らない」 タバサにとっても柊の行動は謎だった。 柊の行動は少なくともハルケギニアの人間から見れば十中八九はちょっと残念な人に映っているだろう。 実際そのような視線を向けているフーケを他所に、柊は虚空に向かって喋り続けた。 そして彼はようやくといった感じで会話(?)を打ち切って二人を振り返ると、フーケの方へと歩み寄った。 「あんた、大丈夫? そっちのケがあったのかい?」 「そんなのねえよ。それよりな」 言いながら柊は手に持っていた何かフーケに手渡した。 意図が読めずに首を捻るばかりの彼女に、彼はそれを耳に充てるように促す。 訳のわからないまま指示通りに彼女がそれを耳にあてると――箱から聞き覚えのある声が聞こえてきた。 『――ロングビル先生?』 「っ!?」 フーケはぎょっと眼をむいて周囲を見回したが当然その声の少女――志宝エリスはこの場にいない。 声が聞こえてきた箱……0-Phoneを凝視して、次いで柊を見やると、彼はにやりとした笑みを浮かべて 「遠くの奴と話ができるマジックアイテム」 とだけ言った。 呆然とするフーケの手元で、再び呼びかけるエリスの声が小さく響く。 慌てて彼女は0-Phoneを耳に充て、にやにやとした笑みを浮かべる柊と興味深げに見やるタバサの二人から隠れるように背を向けて語りかけた。 「あ、ああ、大丈夫だよ。ちゃんと聞こえてる。……元気にしてたかい?」 『はい、私の方は。先生は大丈夫だったんですか? あれから、その……』 「こっちも問題はないよ。おかげさまで牢屋に入らずにすんだからね」 『……ごめんなさい、私……』 「なんであんたが謝るのさ。悪さをしでかしたのはこっちなんだから、あんたが謝ったり気に病んだりする必要なんてないんだよ。――うん、うん。ああ……」 それなりに付き合いがあり、捕縛以降は一切会話ができなかったこともあって話すことがあるのだろう、0-Phoneごしにエリスとフーケは語り合う。 そんな彼女の後姿を見ながら、柊はちらりとタバサに目を向けて囁いた。 「あの分だと本当に大丈夫みたいだな」 「……悪辣」 「エリスが気にかけてたのは本当なんだからいいだろ、これくらい」 ぼそりと呟いたタバサに柊は言い返してから表路地の方を指差し、頷いた彼女と共に裏路地を後にした。 ※ ※ ※ フーケが路地裏から姿を現したのはそれからしばらく経ってのことだった。 適当に露天を見物していた柊とタバサを見つけた彼女は、やや肩を怒らせて二人の下へと歩み寄った。 フーケの接近に気付いた柊は開口一番、口の端を意地悪く歪めて言う。 「生徒に心配かけちゃいけねえな、センセイ?」 「……やってくれるじゃないか」 言われた彼女は屈辱と怒りがない交ぜになった顔で柊を睨みつけた後、手にしていた0-Phoneを乱暴に彼に向かって放り投げた。 慌ててそれを取る柊にフーケは言う。 「エリスのこと、気付いたかい?」 「エリス? あいつがどうかしたのか?」 「なんだかあんたと話したい事があるようだったよ。途中でご主人のあの子が横槍入れてきたけどね」 「……あー」 察しがついて柊は0-Phoneで額をかきつつ唸った。 置いてけぼりを食わされて怒り心頭のルイズ(と多分キュルケも)が手におえないのだろう。 柊は連絡を入れてみるかどうか少し迷ったが、ここはあえて放置することにした。 ここで下手に彼女を刺激するとややこしいことになりかねない。 ……放置すれば放置したで後のややこしさが膨れ上がるだけというのもわかっているが、現行の状況を片付けるのを優先しておいた方がいい。 「喧嘩別れして傭兵にでもなったのかい?」 「いや、違う。ちょっと野暮用でな……」 尋ねてきたフーケに、柊は誤魔化すように手の中の0-Phoneを弄くりながら答える。 と、そこでフーケはようやくある事に気付いた。 柊が手に持っている奇妙な箱。 最初に渡された時はエリスの事で気が回らなかったが、改めてみればそれは彼女の知っているあるモノに似ているのだ。 大きさが全然違うのだが、作りや雰囲気などが酷似している。 「なんだよ。やらねえぞ」 フーケがまじまじと0-Phoneを見やっているのに気付いて、柊は眉を潜めて言った。 しかし彼女は顎に手を添えたままじっと柊を見つめていた。 雰囲気が違うことに気付いて柊が首を捻るのと、彼女がぽつりと声を漏らしたのはほぼ同時だった。 「……あんた、『チキュウ』って知ってる?」 「……!」 フーケから飛び出したその言葉に柊は肩を揺らし眼を見開く。 「……エリスから聞いたのか?」 「いや……って事は、知ってるんだね?」 フーケが重ねて尋ねると、柊は黙り込んで彼女を見やった。 そして少しの沈黙の後、嘆息して彼は答える。 「知ってるも何も。俺達が来たファー・ジ・アースってのがその『地球』だ。細かい説明は省くが、そういう事なんだよ」 二つの呼称の違いを説明するためには世界結界による常識・非常識の二重構造から説明しなければならないため、柊はとりあえずそう返した。 フーケはその返答を受けて眉を潜め、何事かを考え始めた。 ややあって彼女は柊に再び尋ねる。 「あんた達、時間はあいてるか?」 「悪い、纏まった時間は取れねえ。もうちょっとしたら出発するつもりだし……」 地球の事を切り出してきたのだから柊としては気になる所ではある。 ただ、今はアンリエッタから受けた依頼を片付けるのが筋というものだろう。 決行は夕刻だが、早めに出発して遠目からでも戦陣を確認しておきたいのだ。 「別件とか野暮用とか……あんた等、一体何しに来たのさ。このご時勢で観光って訳でもないんだろ?」 半ば呆れ顔でそんな事を呟いたフーケを見ながら柊は小さく苦笑を返すことしかできなかった。 確かに安穏としたトリステインから戦時下のアルビオンに飛び込んでくる理由など推測はできないだろう。 ……王女殿下から密命を帯びてきている、など柊達自身からしても想像の埒外と言っていいくらいのものだ。 と、ここで今まで黙り込んでいたタバサが唐突に口を開いた。 「ニューカッスル城に行って王党派の人間と接触する」 「タバサ!?」 いきなりの発言とその内容に柊は驚いて彼女を見やった。 フーケは一瞬台詞の内容が理解しきれずぽかんとタバサを見つめ、はっとして周囲を見回した後改めて彼女を覗き込んだ。 タバサは二人の様子を意にも介さず、どこか冷めた視線を向けて言葉を継ぐ。 「城に潜入する方法か、それができそうな王党派側の人間に心当たりがあるなら教えてほしい。……『土くれ』のフーケ」 「……」 検めるようにその名を言うと、フーケは目を細めてタバサを睨みつけ――そして薄く笑った。 「なるほど。どうやらあんたは学院の馬鹿貴族共よりは賢いようだね」 「心臓に悪いな、おい……」 タバサの意図に気付いた柊が嘆息交じりに漏らし、二人を先程出てきた路地裏に促した。 流石にこれからの話はそれなりに人通りのある表路地ですべきではない。 再び人気のない路地裏に入り込むと、柊は表通りを監視するように入り口付近に陣取った後壁に背を預けた。 「で、実際心当たりはあるのか?」 タバサがフーケにあんな事を言ったのは盗賊としての彼女の『裏の筋』を見越しての事である。 二人もこの街に入ってそれなりに情報収集はしたが、所詮それは表に出回る程度のもの。 この国に来たばかりの柊達では込み入った『裏側』にまで踏み入ることができようはずもない。 トリステインで活動していたとはいえ貴族相手に盗賊をやっていた『土くれのフーケ』ならばそれなりに顔が通ってもおかしくはないだろう。 「教えてくれるならちゃんと払うもんは払うぞ……タバサが」 幾分申し訳なさそうに柊が言った。 柊はこの任務においてルイズがアルビオンに行く必要性は皆無だと判断して置いてきた訳だが、たった一つだけルイズが一緒にいる意味がある事を思い知った。 ……柊は路銀を全く持っていなかったのである。 サウスゴータに到着していざ情報収集という段になってようやくその事実に気付き愕然としたが、それを賄ってくれたのがタバサだった。 服やデルフリンガー購入の代金に続いてタバサにまで負債を背負ってしまう羽目になった柊は、この任務が終わったら傭兵だの商隊の護衛だのをして金を稼ごうと心に決めたのだった。 それはともかく。 柊は探るようにフーケを見たが、彼女はさほど迷うでもなく軽く笑うと肩をすくめて見せた。 「確かにこっちの方にも通じちゃいるが、残念だけど心当たりはないよ。というか、今のこの情勢で王党派に付く裏の人間なんていないだろ。 むしろあんた達を貴族派に売る方が確実に稼げるよ。……あんた達みたいな半端者が一番のカモだってこと、覚えておくんだね」 「……肝に銘じます」 ぐうの音の出ない正論(?)に柊は思わず肩を落として呻いた。 切り出した当のタバサもこころなしかしゅんとしている。 どうやら彼女もこの手のやり方はさほど経験がなかったようだ。 そんな二人を見ていくらか気をよくしたのか、フーケはまるで教師が生徒を諭すように言葉を続ける。 「大体ねえ、ちゃんと下調べすればいちいち聞くまでもなく無理なのはわかりきってるだろう。 ニューカッスル城といえば岬の袋小路、平地の城と違って陸路が限定されるから貴族派も封鎖しやすいし、空からは侵入するのが丸わかりだ。強行突破ならまだしも潜入なんて――」 と、そこまで言ってフーケは不意に口を噤んだ。 まるで時間を止めたように固まってしまった彼女に、柊とタバサはお互いに顔を見合わせた。 ややあってフーケは顔を傾け、何事かを考えるかのような仕草を見せた後タバサに眼を向けた。 「……あんた、確か風竜を召喚した生徒だったね? てことは、その風竜でここに来たのかい?」 「まあ似たようなもんだけど……」 箒の事を言うまでもないと柊が先んじてそう答えると、再びフーケは今までになく思案顔で眼をそらした。 口の中で何事かを呟き、小さく頭を振って――そして眼を細めて言った。 「……あるよ。ニューカッスル城に潜入するルート。おそらく、貴族派の連中は知らない」 「本当か?」 思わず身を乗り出して尋ねる柊に、フーケははっきりと頷いた。 「ああ。その子の持ってる風竜の能力次第だがね」 「それなら問題ない」 逡巡することもなくタバサは即答した。 もしシルフィードがそれを聞いていたら狂喜乱舞していただろう。 「頼む、そのルートを教えてくれ。見返りが必要ならちゃんと用意する」 「……金は要らない。その代わり、あたしも一緒に行く。……もっとも、聞いただけじゃ行けないだろうから道案内は必要だろうがね」 「いいのかよ。戦場のど真ん中だぞ」 意外といえば意外な彼女の提案に柊は眉を潜めて尋ねる。 すると彼女は僅かに顔を傾け――薄く嗤った。 「……いいよ」 冷笑でも嘲笑でもない、どこか歪な笑み。 今まで見たことがないフーケの表情に柊は表情を険しくし……そしてタバサは息を呑んだ。 何故かはわからないが、彼女のその顔を見た瞬間に激しく心臓を突き動かされたような気がしたのだ。 「……お前」 「今出ると着くのは夜になるからまずい。だから出発は明日陽が昇ってからだ」 問い質そうとした柊を拒絶するかのようにフーケは踵を返して表路地の方へと歩き出す。 先程の表情に関して答えてくれそうな気配はなかったので、柊は軽く息を吐いて彼女に言った。 「白昼堂々忍び込むのかよ」 「あたしも知ってるだけで行ったことはないからね。聞いた通りの場所なら明るい方がいいはずだ」 行ってフーケは背中越しに柊を振り返り――顔は既に元の彼女に戻っていた――更に続ける。 「これで時間が空いたろ。ついでだからさっきの続きだよヒイラギ。 ――あんたに会わせたい奴がいる」 ※ ※ ※ ――ほんの少しだけ時間は遡る。 フーケ……ロングビルとの会話を終わらせたエリスは安堵した表情を浮かべて0-Phoneを胸に抱いた。 余韻を少しばかり堪能した後彼女は一つ深呼吸して振り返る。 その視線の先にはほんの少し表情を険しくしたルイズが待ち受けていた。 「話は終わったの?」 「……はい」 エリスが答えるとルイズはそう、とだけ言って手を差し出す。 有無を言わせぬといった彼女の態度にエリスは僅かに逡巡しながらも、持っていた0-Phoneを手渡した。 「旅が終わるまでこれは没収ね。持たせてるといつアイツと連絡を取るか知れたもんじゃないもの」 「……」 口に出して反論はしないものの不満そうな表情を垣間見せるエリスを、しかしルイズはあえて無視して踵を返した。 二人は連れ立って近くにある大振りな木へと歩を進めた。 その木陰にいるのは見るからに立派な幻獣――グリフォンと、一人の男。 ルイズ達が戻ってきたことに気付いたグリフォンが首をもたげると、男もまた二人を振り返って口を開いた。 「話は終わったかい?」 「ええ、お待たせしてごめんなさい」 「構わないよ。ラ・ローシェルまで中ごろといった所だし、休憩には丁度いいだろう」 男が闊達と笑うと、ルイズは少し気恥ずかしげに頬を染めた。 しかしエリスの表情は優れない。 何故なら彼女は、この男の事が苦手だった。 彼の名はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵。 貴族達の憧れであり戦場の華たる魔法衛士隊、その中の一つグリフォン隊の隊長を勤めており――ルイズの婚約者だという。 なるほど確かに彼は肩書きに相応しい威厳があり、その割には気さくで(ハルケギニアの見地では)平民であるエリスに対してもそこまで威圧的ではない。 要するに好人物であり、悪い印象はほとんどと言っていいほどなかった。 ……だが、それでもエリスはワルドの事は苦手だった。 そんな彼女の心境を知ってか知らずか、ワルドは興味深そうにエリス見やって口を開く。 「しかし、便利なマジックアイテムを持っているものだね。アル・ロバ・カリイエでは平民でもそのようなものを持っているのか?」 「はい……いえ、ほとんど持っていないんじゃないかと……」 少なくともアル・ロバ・カリイエにこれを持っている人間は存在しないだろう。 エリスがややぎこちなく答えるとワルドはふむ、と頷いてからエリスを観察するように眺めやると、軽く頭を振った。 「まあよいか……それで、その彼等はどこにいると?」 「アルビオンのサウスゴータっていう街だそうです」 するとワルドに僅かばかりの驚きが混ざる。 彼は顎に手を添えながら、思案顔で呟くように漏らした。 「深夜に出発してサウスゴータ? 連れ合いの風竜は随分と優秀なのだな……軍の成竜でもそこまで速くはない」 一概に比較できる訳ではないが、とワルドが言うと、ルイズがどこか焦ったように口を開いた。 「だったら急いで行かないと。下手に陣中突破なんて企まれたら捕まえられないわ」 「そうだな。では出発するとしよう」 言ってワルドが促し、ルイズは彼の手を借りて地に伏せたグリフォンの背中に跨る。 次いで彼はエリスにも手を差し出したが、彼女はその場に立ち止まったままおずおずと語りかけた。 「あの……本当にアルビオンに行くんですか?」 夜が明けて出発予定の時間になった折、学院の前で柊とタバサの二人が既にアルビオンへ向かった事を知らされたルイズとキュルケは予想通りというべきか、激しく怒り狂った。 朝もやに向けてさんざっぱら悪態をつきまくった挙句やはり予想通りに追いかけようという方向性になりかけもした。 が、相手が風竜(とキュルケは思っている)ではいくら行き先がわかっていたとしても無謀な追跡でしかない。 柊に後詰を任されたエリスは全力で二人を説得し、どうにかこうにか『帰ってきたらツケを払わせる』という形で収めたのである。 ……少なくともルイズとキュルケの二人を相手にこの形で収めたのは大成功というべきだろう。 キュルケは「まさかあの子が人の恋人を寝取るだなんて!」などとのたまいながら憤懣やる方なく学院へと戻って行ったが、ルイズはその後も学院の入口でアルビオンの方角を睨み続けていた。 そこに現れたのがグリフォンに乗ったワルドなのである。 お互いに紹介を――彼がルイズの婚約者である事も含めて――終えた後エリスが柊達の事を伝えると、ワルドは驚いた表情を浮かべながらもややあってルイズに告げた。 「王女殿下より任務を賜った以上、おめおめと帰る訳には行かない。僕は彼等を追ってアルビオンに行くが……キミはどうする?」 ルイズの返答は今更語るほどの事ではなかった。 ワルドは彼女の答えを待ち望んでいたかのように快く受け入れ、自ら手を引いてルイズをグリフォンへと乗り込ませた。 エリスは最後まで躊躇したが、二人の乗ったグリフォンが空へと飛び上がろうとした段になって半ば反射的に自分も同行すると言ったのである。 もはやルイズを止めることなどできないだろうし、一緒に行って自分が何かできると思った訳でもない。 ただ単純に、放っておけなかっただけだった。 エリスの言葉を聞いた騎上のルイズは憤懣も露にしてエリスに向かって言った。 「当たり前よ。姫様から賜った重大な密命をあいつらだけに任せておくなんてできないわ」 「で、でも、実際もうアルビオンまで行ってるんだし、ちゃんとやれてるじゃないですか」 「……それは」 ルイズは思わず口ごもってしまった。 しかしそれはエリスに説き伏せられたのではなく、自分の言いたい事が上手く伝えられないからだ。 そもそもエリスは根本的に彼女の心情を履き違えている。 ヒイラギならそれなりに上手く立ち回って任務を果たす事もできるかもしれない。 それはエリスに言われずともルイズはちゃんと理解していた。 だが彼女がアルビオンへと行きたいのはそういう事ではないのだ。 それを伝えられないまま――そしてその帰結として当然のように、エリスは意気込んでルイズに訴えた。 「それに親書も指輪も柊先輩が持ってるんだし、今更追いかけたってきっと間に合いません。ルイズさんが行く意味なんて――」 「それは違うな、ミス・シホウ」 そこで割って入ったのは今まで二人のやりとりを黙ってみていたワルドだった。 闖入に思わず身を硬くしたエリスに、彼はあえて態度は軟化させず彼女に向かって言う。 「意味、というならルイズが行く事そのものに意味があるのだよ。 なるほど確かにヒイラギとやらの採ったやり方は効率的だろう。彼はそれなりに優秀な傭兵なのかもしれん。 だが我々は傭兵ではない、『貴族』なのだ。密命とはいえ王女殿下より賜った大任、なればこそ相応しき者が果たさねばならぬ。 古来より我等貴族はそうやって国と王に報い、己が身と家名に名誉と誇りを刻み続けてきたのだよ」 「ワルド……」 彼の言葉にルイズは感じ入ると同時、胸のつかえが下りたような気がした。 彼が語ったとおり、これは単純に依頼された事を果たせばいいという類のものではないのだ。 アンリエッタより願いを託された事に意味があり、託された自分が赴くことに意味がある。 王宮にいる他の誰でもなく、自分を頼ってきてくれた事にルイズはささやかな誇りを感じていたのだ。 しかし目の前のエリスにはそれを理解されず、柊に至ってはあろうことか部外者と共に任務を掻っ攫っていった。 ルイズはそれに憤りと失望を感じると同時、やはり彼女等は自分とは違う『平民』であると再認識してしまう。 自分の気持ちを代弁してくれた同じ『貴族』であるワルドの背がどこか頼もしく見えた。 「……」 一方のエリスは、それ以上何も言い返す事ができなくなってしまった。 ただ、不満の表情は顔に出ていてしまったのだろう、それを見たワルドが小さく溜息をつくと諭すように言った。 「それが貴族というものなのだよ。平民のキミにはわからないだろうがね」 その台詞を耳にいれ、エリスの肩が僅かに揺れた。 ――エリスがワルドを苦手な理由は、まさにこの一点といってもよかった。 今の台詞にしても別に彼は平民を殊更卑下した風に言った訳ではない。 逆に貴族である事を意気高々にひけらかしている風でもなかった。 しかし彼は『平民と貴族が別種の存在である』という厳然な認識を持っていて、それを揺ぎ無いほどに体現しているのだ。 彼のような人物が貴族というものであるのなら、普段学院で見ている生徒達も長ずれば彼のようになるのだろうか――ルイズもまた。 それは違う、と否定するほどエリスはこの世界の貴族を理解できていない。 だから貴族とはそういうものだ、と言われればエリスは何もいう事が出来なくなってしまう。 いっそ厨房で働いているコック長のマルトーのように『いけすかない奴等だ』と嫌ってしまえれば楽だったのだろうが、彼女は簡単に割り切ることができなかった。 ……だからエリスはワルドが好きでも嫌いでもなく、単純にどうしていいかわからないぐらい『苦手』なのだ。 「そんなに行きたくないんだったら、あんただけ学院に帰ってもいいのよ。ここから歩いて帰すのは酷だからラ・ローシェルまでは一緒に行って、後は馬車でも手配してあげるわ」 渋るエリスに焦れてきたのか、グリフォンの上のルイズが肩を怒らせて声を投げかけた。 エリスは少し迷った後、顔を俯かせて返答する。 「……いえ、行きます」 「では行こうか」 恭しく差し出されたワルドの手を半瞬逡巡してから取り、それに助けを借りてグリフォンの同乗する。 最後にワルドがグリフォンに跨り、三人を乗せた幻獣は翼を翻して空へと飛び上がった。 流れていく眼下の景色を見やりながら、エリスはルイズにせめてもの提案を持ちかける。 「……せめて柊先輩に連絡をとりませんか? 目的は同じなんだから合流した方が――」 「それはダメ。あいつのことだから、きっとなんだかんだと難癖つけて反対するに決まってるもの。下手したら逃げるかもしれないわ」 「そんなこと……」 「そんなことあるわよ! アイツからすればわたしは足手まといなんだから!」 語気を荒らげてルイズがエリスを振り返ると、グリフォンがぐらりと揺れた。 箒で落ちかけたことを思い出してルイズが身を強張らせると、脇からワルドが腕を添えて彼女を支えグリフォンの体勢を整える。 「すまない。だが、三人乗った上であまり動かれると流石に危ない……速度も結構出しているしね」 「ご、ごめんなさい……」 「すみません……」 しゅんとなって謝る二人を見やるとワルドはに軽く笑った。 「この旅の主導はルイズなのだから、彼女の良いようにするといい。 確かに合流した方が安全ではあるが、何、一人二人守り抜くだけの力は持っているよ。伊達で魔法衛士隊隊長の肩書きを戴いている訳ではないからな」 柊から無碍に置き去りにされた後だけにルイズは一層頼もしそうにワルドを見やって深く頷き、そしてエリスは逆にいっそ困惑といってもいい程の表情を浮かべて顔を俯けてしまった。 とりあえず事態が収拾した事にワルドは一つ頷くと、手綱を引いてグリフォンの速度を増した。 勢いを増した風切りに彼は片手で器用に帽子を深く被る。 帽子の鍔で目元を隠すと、ワルドは小さく囁いた。 「……サウスゴータ、か」 呟きは傍にいる二人に届く事すらなく、風に掠れて消えていった。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
https://w.atwiki.jp/gvsz/pages/76.html
サイコガンダム 正式名称MRX-009 PSYCO-GUNDAM 通称サイコ コスト325 耐久力600(実質耐久力1600) 盾左1枚(∞) 変形○(特射) 地上専用 最大根性補正 攻撃力:+15% 防御力:+26% 名称 弾数 威力 備考 メイン射撃 拡散メガ粒子砲 15 83*n リロード:6秒(1発)15ヒット判定 3発消費 サブ射撃 腕部ビーム砲 50 143(51,51,51,51,51) リロード:2秒(1発)5発消費 ニュートラル格闘 前蹴り - 187 足の位置で蹴り足が変わる レバー入れ格闘 薙ぎ払い - 187 足の位置で殴る腕が変わる 後ろ向き前格闘 裏拳 - 187 足の位置で殴る腕が変わる 特殊格闘 iフィールド展開 - - 発動中ビーム無効 特殊射撃 変形 - - ma形態に変形する 空中可(2回まで) 機体解説 地上専用超巨大可変ms。 全ての制御をサイコミュで行う為、強化人間専用msとなっている。 フォウ·ムラサメ少尉が搭乗。 操作体型はms時がビグザム系、変形中は戦闘機に近いものとなっている。 iフィールドを装備しており、ms時の特格ガード中に展開する。 変形するとモビルフォートレスという独特の(ma)形態になる。 変形中はiフィールド常時展開で機動性も大幅にアップするが、攻撃手段が貧弱なメイン射撃のみになってしまう。 ms時の左腕に持った盾は巨大な判定を持っており壊れない、ガード硬直無しなので、ms時には常に左半身を向けて優秀なサブ射を狙うと良い。 特格のiフィールドは全方位に展開しており着キャン等に使えるが、実弾兵器に無力なのがネック。 移動したい時や囲まれて困ったときは迷わず高飛びして、チャンスが転がってたらサブ射を当てよう。 大型maの仕様で真下にもサーチ出来る為、起き攻めも強力。 サイコガンダムの特徴 ステップ出来ない。 盾ガード硬直無し。 非ダウン機。 よろけ無し。 真下にサーチ可能。 空中格闘無し。 武装解説 《メイン射撃》拡散メガ粒子砲 立ち 発生 41fr 腹部の3砲門からそれぞれ4-6本のbrをランダムに発射(計15本)歩き撃ち·ブーストキャンセル·砲身振りが可能。発生が遅い。 brがバラけすぎで発射位置も高すぎる為、狙って当て辛らく、上昇や砲身振りと組み合わせて引っ掛けるのが主用途となる。 着地寸前に撃つと着地時の沈み込みに合わせてbrが発射される為、発射位置が低くなり対地にも使えなくも無い。 基本サブ射の弾切れ防止用だが、br1発あたりの威力が高く密着でiフィールドを貫通するので、ビグザムやサイコⅡに接射するとダメージ勝ちできる。 《サブ射撃》腕部ビーム砲 立ち・空中 地上振り向き撃ち 発生 24fr ~69fr 指先から5本のビームを発射する。 ma形態では使えない。サイコの主力兵器。 発生が早めで弾速·威力·誘導にも優れるが射角が左右約60°しかない。上下には強め。 地上振り向きが異常に遅い為、振り向き速度の影響を受けない空中撃ちの方が使い勝手が良い。 硬直取りや迎撃不能のニシオギ起き攻めなど、非常に頼りになる武装だがリロが遅い。 サイコは射撃依存機体なので必中を心掛けよう。 《n格闘》前蹴り 状態 密着 近距離 発生速度 31fr 43fr 前蹴り。 他の格闘に比べるとダントツに隙が小さく使いやすい。 リーチもそこそこ。威力はどの格闘も同じなので、格闘はコレ一択で良い。ただし真後ろに当たらない。 必ず後ろにある方の足で蹴る。 誘導範囲に影響するが後述の離陸キャンセルで影響をほぼ打ち消す事が出来る。 離陸キャンセル格闘 n格は真後ろ-軸足の踵あたりまでが死角となっており、密着されると当たらない。 しかしブースト→格闘と遅めにずらし押しすると回頭性能が上がり、真後ろ密着以外には当たるようになる。真後ろには回頭自体しない。 密着ステップで死角に回りこまれるのはよくあるケースなので、常に仕込んでおくと良いかも。 レバー入れ格闘で使っても効果は発揮される。 《レバー入れ格闘》薙ぎ払い 状態 密着 発生速度 29fr 屈んで少し踏み込み腕で斜め下を薙ぎ払う。 隙が大きく意外とリーチが短いのでn格より使い辛い。 右足が前にある時は右手で殴り、左足が前にあると左の盾で殴る。リーチは殆ど変わらない。 レバー入れの方向を使い分ける必要がある。 といっても、左後ろに回りこまれた時は右入力、それ以外は左入力だけでok。前後入力は使わない。 使い分けがしっかり出来ていれば死角は無い。 離陸キャンセルを使えば更に確実に敵を捉える。 《後ろ向き前格闘》裏拳 状態 密着 発生速度 52fr 裏拳を振りつつ前を向く。 攻撃判定がかなり上の方に寄っており、地上にいるmsには当たらない。コレで可変機を落とすのはロマン。 《特殊格闘》iフィールド展開 立ち 発生 3fr ガードポーズをとりながらiフィールドを展開し、 ビームを無効にする。 iフィールドは見た目より遥かに早く展開するので、遠距離ビームに対しては見てから防御が間に合う。 ボタン押しっぱなしである程度延長できる。 盾を前に向けるので実弾系にも有効。 着キャン対応なので常に仕込んで置くと良い。 《特殊射撃》変形 立ち・空中 硬直 122fr ma時はビーム完全無効。ただし武装はメイン射撃のみになる。盾は左右側面に2分割される。 地上では機体が少し浮きながら変型し、モーション中ブーストが回復。空中では2回までの回数制限あり。 小回りこそ効かなくなるが移動速度が大幅に上がり、bz·ミサイル程度の誘導なら横移動で振り切れるほど。 落下速度が浮遊並に遅くなり着地硬直もゼロになる為、ブーストを少しずつ使えば空中でも自在に動ける。 攻撃手段が非常に貧弱になるので、どうしても落ちれない状況での逃げ等に使う。
https://w.atwiki.jp/poyomi/pages/26.html
名前 ルイン 性別/年齢 男/25歳 種族 ヒューマン 人称 一人称:俺/座長 二人称:男子:呼び捨て、お前 女子:呼び捨て、○○ちゃん その他あだ名 三人称:呼び捨て、あの人、あの子、あいつ 外見的特徴 髪:メカクレ青髪 目:澄んだ青(前髪で見えない) 服装:露出が少ないフォーマルっぽい服が好き。若さを感じさせる服はそろそろきつい。一番落ち着くのはクローズクォーター(デフォ服)。 身長/体重/体格 172cm。ムキムキではないややがっちり。割と柔軟性がある 視力/利き手/健康状態など 視力:それほど遠くまでは見えないが動体視力はいい。右利きから両利きに矯正。ねむみに弱い。 性格的特徴 思ったことをすぐ口走る。ツッコミたがり。へらへらふにゃふにゃしていたが最近黙り込むことが多くなった。 長所 自然体でいること。座長だからといって強く見せよう賢く見せようとは毛程も考えていない。 短所 現状維持をしすぎるところ。ふまじめ。 仕草のくせや性癖、ポリシー・思想 ダーカーと龍族、原生種などの喧嘩(殺し合い)をわーすごいと眺めるのが好き。劣勢側を応援した後ヤメルンダキミタチ(両成敗)したりする。襲ってきたら相手の事情に関わらず倒す。 趣味、特技 人気のないスポット探し、デイトレ戦士 たまにオートワードを一新しているが本人はよくわかってない。平行世界のなんかがなんからしい 好物 ダーカーの弱点(手応えが好きとか) 弱点、嫌いなもの 障壁・発掘系Eトライアル。「結果は結果だ」 知性や知識レベル 特に役に立たない無駄知識をまれにこぼすが、肝心のアークス業務に関する知識は最低限しかない。デイトレ野郎だけあって日々変動する相場には注意している。 ファイトスタイル 後方に回り込んでひたすら叩く。ガツンと効く裏拳が好きだがよく外す。ジャストガード? なんですかそれ…… ギャップなど 賑わいの中にいるのが好きな反面、時折どうしようもなく一人になりたくなることがある。 生い立ちや経歴など アークスである両親は宇宙を飛び回っていたため、幼い頃から叔母の家で暮らしていた。叔母夫婦は両親やアークスを毛嫌いしており、ルインの前であろうと両親が職務中に亡くなろうと暴言をやめなかった。毎年検査のように適性試験を受け、15歳の時に適性があると判明するや否や両親に替わる新たな金づるとしてすぐさま養成へと送り出される。以後叔母夫婦とは顔を合わせておらず、両親の息子、アークス候補生として余計な確執を生まないよう黙々と研修し20歳でようやくハンターとして正式にアークスになる。 家族構成(恋人なども含む) 両親(故人。顔も知らない)、叔母夫婦(一般人。仕送りの宛先不明通知から亡くなったと知る。市街地火災と最近判明)、叔母夫婦の息子(いとこ。叔母夫婦と同様と思われていたが……?) 人物、心証など特筆すべき点があれば ぽよみ女子芦浦ちゃん:メカクレ女子は実際珍しいので気にかけている。落ち着きがあっていいねと思っている。お元気?ナガメ:もはやナガメちゃんではなくナガメでもなくナガメさんなのではないか? と真剣に考えている。男前ぶりを分けてほしい。錆ちゃん:クールでセクシーなおしゃれ番長。ブレイバーお似合いですよと思いつつよくゴーストとして呼んでいる。ブルス子:ちっちゃくてかわいいけどあなどれない。頭の回転がいい。おだんごまじかわ。ちはやちゃん:一緒にふざけるのが楽しい。何気なくプレゼントなどしてしまう。援助交際じゃないです。黒澤ちゃん:眼鏡いいよね……としみじみ噛み締めている。華奢で一輪花めいた儚さがぐっとくるらしい。いがほ:そういえばまだまともにお話してないぞ! なんて座長だ! と反省している。サポ子:些細なことでもいいから嬉しいこととか悲しいこととかなんでも教えてください。りりっ。ぽよみ男子ヌン:第二章中盤。コンゴトモヨロシク……マサカドおじいちゃん:なんだかよくイメチェンしていて、老いて益々盛んとはこのことかと感心しきり。オハギ:最近イケメン度合いが増してきて置いていかれてる感がある。じっさま関係のシンボルが密かにお気に入り。バッスィ:カワイイツインタワーの一角。レイをつけてたのがくそかわで羨ましいらしい。シパチャン:カワイイツインタワーのもう一角。スパルダイオン装備が味わい深い。ヘギョミツ:人となりを把握しきれてないくやしみがあるので観察したい。ノアお兄さん:スタイリッシュダンスしているのをよく羨ましそうに見ている。いずれゴーストで呼びたい。マショワール:いい人だよなぁと思っている。お腹のぽよみが新鮮。ぽよみってほんと自由な集まりだなと思い始めたきっかけ。あかぼ:メカクレシンパシーを感じている。ふらふらと危なっかしいので逆にその後ろをつけてみたいと思っている。ミチザネじいちゃん:妙な気楽さがあってよくゴーストとして同行してもらっている。ハル:どっかいっちゃうかと思ってたけど最近大変そうで何より。でももうちょっと苦労した方がいい。シュウ:ええと。なんていうかその、ごめんなさい。よろしく。 任務に対するやる気 無駄口(オトワ)叩きたいがために出陣するみたいになってる。オトワ道楽やめられない。 +SS(ザムロード)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6935.html
前ページ次ページ”舵輪(ヘルム)”の使い魔 先日、『春の使い魔召喚』の監督役をしていたコルベールは、トリステイン魔法学院に奉職して20年になる中堅の教師である。 彼はルイズが呼び出した、少女の左手の珍しいルーンと溶けて死んでしまった韻竜の事が気に掛かっていた。 儀式の日の夜から本塔の図書館に篭って書物を調べ、一般の本棚では満足する回答が得られず、教師のみが許される『フェニアのライブラリー』の中に居た。 一心不乱に本を探り、彼は少女が気を失っている間に写したルーンのスケッチと、ある古書の一節とを見比べ、慌てて学院長室へと走り出した。 本塔最上階の学院長室には、白く長い髭と髪を生やした学院長のオスマンと、その秘書で理知的な凛々しい顔立ちのロングビルが居た。 暇そうにしているオスマンがロングビルにセクハラをして、反撃を受けて折檻されていると、大慌てでコルベールが学院長室に入って来た。 何事もなかった様にオスマンは迎い入れて用件を聞き、コルベールは『始祖ブリミルの使い魔たち』とスケッチを差し出した。 それを見て、オスマンの表情が厳しく迫力のある目付きに変わると、ロングビルに退室させて重々しく口を開き、詳しい説明を促した。 ここで、時間を遡り、ルイズとミュズに目をやると、――――― ミュズは、箒・チリ取り・雑巾・水の入ったバケツ・窓硝子・教卓を持って、目にも留まらぬ速さで学院の廊下を通り抜けて行く。 ルイズが目茶苦茶にした教室の片付けを、罰として魔法を使わずに行う様、倒れたシュヴルーズの代わりの教師によって命ぜられたのだ。 主人が受けた指示はその使い魔も同様に従うものであり、ミュズが掃除道具一式と壊れた備品の替えを運んでいるのはこのためであった。 教室に入ると、ミュズは黒板の前に立っているルイズに指示を仰ぎ、ルイズはやる気の無い声で答えた。 ルイズがしぶしぶと机を拭いている横を、ミュズはルイズに一々何をしたらいいのかを尋ねつつ、素早い動きで教室を綺麗にしていった。 結局、片付けが終わったのはお昼休みの前で、昼食を摂る為にルイズとミュズは食堂へと向かった。 道すがら、ルイズの錬金を「物質を素粒子レベルに分解した」とか、「真の真空で放射線を減退させた」とかと、ミュズは褒めちぎった。 訳の分からない話しにルイズは、口をへの字に曲げて眉をひくひくと動かし、黙々と進んで行く。 食堂に着くと、朝言われた通りミュズは椅子を引いて、ルイズに満面の笑みで言った。 「マスターの錬金は面白いです。今度は外でやって下さい――」 その言葉は過去に幾度となく、嘲笑と共に投げ付けられた暴言と似ていて、ルイズの琴線が不快な音を立てた。 ルイズは忠良だと思っていた使い魔にからかわれていた事にショックを受け、顔を赫然とさせ涙を堪えて、ミュズを怒鳴り付ける。 「もう、五月蝿いわね。あんたなんか、シエスタとか言うメイドの所に行っちゃいなさい!平民同士仲良くしてればいいのよ!」 ミュズは今にも泣きそうに顔を歪ませ、困惑した様子で怖ず怖ずと後退り、食堂を出て厨房へと走って行った。 「マスターにシエスタと仲良くしなさいって怒られてしまいました~」 ばたばたと諸手を挙げてミュズは厨房に入って来ると、そこに居たコックやメイドの間をすり抜け、シエスタに飛び付かん勢いで近寄った。 シエスタはミュズの叫び声に疑問を感じ、厨房の隅に場所を移してお昼ご飯を食べさせながら、ミュズにその意味を尋ねる。 ルイズに怒られるまでの言動や教室での出来事を事細かに説明していたが、ミュズはルイズが何故、怒ったのかが分からない様子だった。 ルイズが魔法を使えないのは、使用人の間でも有名な話で、ミュズがそのコンプレックスに触れてしまったのも理解出来た。 しかし、ルイズへの賛辞の意味はシエスタにとっても難解な物だったが、ミュズの言葉は純粋な尊敬から成り立っているのは分かる。 「ミュズさん。ミス・ヴァリエールは、食堂で大きな声を立てておしゃべりするのを止めさせる為に、怒鳴ったのですよ」 シエスタは敢えてルイズの事情を言わず、食堂でのマナーを教えた。 「なるほど」ミュズは大きく頷く。 「それに、疲れているとおしゃべりの返事をするのが煩わしいのですよ」 「そうなんですか」 「お掃除の後でお疲れになっていたミス・ヴァリエールには、ミュズさんの話が億劫だったのでしょう。こう言う場合は、一方的におしゃべりをしては駄目ですよ」 ルイズの魔法を見ても蔑視する事無く、キラキラと輝かせる瞳を曇らせない様に、シエスタは話をわざと逸らす。 「あと、『仲良くしてればいい』と言ったのは『手伝いをしなさい』と言う意味だと思いますよ。なので、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな」 「はい、手伝います!」ミュズは明るく笑みを返した。 ルイズは美味しい昼食を摂って落ち着いていると、怒鳴り付けてしまった使い魔の事が頭を過ぎった。 あの時のミュズの瞳は、魔法の失敗の度に向けられる、珍妙だが取るに足らない物を見る冷淡なものではなく、希少で重宝すべき物を見る爛々としたものであった。 そもそも、単純な性格の子供らしいミュズが失敗を回りくどい言い方でからかうだろうか? そんな事を頭に巡らせていると、こちらにちょこちょこと赤いものがメイドと一緒に来る。 デザートのケーキが乗った大きな銀のトレイをミュズが持って、シエスタがトングでケーキを摘んで一つずつ生徒達に配っていた。 ミュズとシエスタがルイズに近付く。シエスタはミュズを先に進むように促し、ルイズに話し掛ける。 「ミス・ヴァリエール。ミュズさんをお借りしております。」 「そう」 ルイズはこちらの様子を気にするミュズを横目に、素っ気なさそうに返事をする。 「ミュズさんは素直ないい子で、ミス・ヴァリエールの事を本当に尊敬していますよ。『マスターは凄い』と言っていました――」 ルイズは眉をピクリとさせて、顔をしかめる。 シエスタは真剣な目でルイズの目を見ながら言った。 「ミュズさんを信じてあげて下さい。ミュズさんのマスターはあなたなのですから」 「なによ」 ルイズがジト目で答えると、シエスタは顔を青白くさせた。 「すっ、すみません。出過ぎた事を言ってしまいました。失礼します」 そう言うと、シエスタはがばりと頭を下げて、そそくさと立ち去って行った。 ミュズとシエスタがトレイに乗ったケーキを配り終えようと、談笑している男子生徒達の横を通り掛かっていた。 その集団の中心で、金色の巻き髪で薔薇を挿したフリル付きのシャツを着た少年が、周りの友人から口々に冷やかされていた。 ギーシュと呼ばれるその少年が大袈裟に脚を組み替えると、ズボンのポケットから紫色の液体が入ったガラスの小壜が落ちた。 小壜がコロコロと転がってミュズの足元へ来たので、その様を見ていたミュズはギーシュに呼び掛けた。 「あのー。何かガラスで出来た物が落ちましたよ」 ギーシュは気が付かないのか、ミュズの方を振り向かない。 ミュズはトレイを片手でバランスを崩す事も無く易々と持ち、しゃがみこんで小壜を拾い上げた。 「はい、落とし物です」それをミュズはギーシュの目の前に差し出す。 ギーシュは苦々しげに、ミュズを見つめると、その小壜を押しやった。 「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」 その小壜の出所に気づいたギーシュの友人たちが、大声で「モンモランシー」と言う名前を出して騒ぎ始めた。 ギーシュが友人達に何かを言いかけた時、後ろのテーブルから一人の少女がギーシュに向かって歩いてきた。 栗色の髪をした、茶色いマントを羽織った少女はギーシュの名を呼ぶと、ボロボロと泣き始める。 更に遠くの席から見事な縦ロールの少女が立ち上がって、厳めしい顔付きでギーシュの前にやって来た。 ギーシュを冷やかしていた友人の一人がその少女の殺気に気付き、その顔付きを見て「ひっ、モンモランシー」と呟く。 モンモランシーはギーシュに近寄ると目を三角にして、開口一番に口を尖らせてまくし立てる。 「いいかげんにギーシュッ!いったい誰が好きなのかはっきりしてちょうだい!」 「あー、そうそう。はっきりさせた方がいいと思うぞ!」 周りの友人からも合いの手の様に賛成の言葉が飛び、ギーシュは目を泳がせ激しく動揺する。 「あんたが女の子の間をフラフラしてんのがそもそもの原因なのよ!」 モンモランシーは顔を真っ赤にして、追い討ちをかけた。 ギーシュは冷静な態度で椅子から立ち上がって二人の少女に向かい、拳を握り締め目を閉じ頬に汗を伝わせつつ語り始めた。 「ふ……みくびられたものだな!おのれの心は初めから決まっているんだ!」 「え?」 泣いている少女とモンモランシーはギーシュの言葉に驚き、胸をときめかせて目をしばたかせた。 そして、ギーシュは真剣な目付きで言い放った。 「両方だ!!」 騒ぎを聞きつけた生徒達から、すり抜ける様に突然、一人の少女が現れた。 その少女は、大人びた雰囲気でギーシュよりも背が高く紫のマントを付けて、のんびりした口調でギーシュに問い質す。 「えー。じゃ、わたしは。わたしはー?」 「んーじゃ、三人だっ!」 ギーシュはその少女に真面目な顔を向けて答えた。 「へーせいを――」 モンモランシーはギーシュの態度に呆れてうなだれた。 「装うんじゃない!!」そう叫ぶとギーシュに飛び掛かる。 紫のマントの少女から後頭部にオルテガ・ハンマーを、茶のマントの少女から水月に正拳突きを、モンモランシーから顔面に真空飛び膝蹴りを、ギーシュはくらった。 既に分厚くなった人垣を掻き分けてルイズは、目の前で行われている騒ぎを見ているミュズに近寄った。 ミュズの様子を遠目に見ていたが、あれよあれよと人集りが大きくなるので心配なった次第なのだ。 (ミュズと死んでしまったが)韻竜を召喚に成功し契約も上手くいったので、魔法がやっと使える様になったと思っていた。 その矢先の失敗を、訳の分からない話しをするミュズへの苛立ちに転化するのは、貴族のする事では無い。 臍を曲げて穿った見方をするのでは無く、シエスタの言う通り、主として下僕であるミュズの事を信じてあげるべきだった。 ルイズはそう考えながらミュズに向かっていた。 渦中にいたミュズの元に来た時にはモンモランシー達の姿は無く、屍の様に倒れたギーシュと立ち止まる大勢の野次馬だけだった。 「全く、構ってられないわ。浮気がいけないのよ」 ルイズはそう言いながらミュズの肩を掴み、回れ右をしてこの場を離れようとした。 「マスター、浮気って何ですか?」 「え?いやっ、それは――」 「わるいこと?」 「そうね。悪い事ね」 ミュズが急にしてきた質問に答えていると、ボロボロになりながら起き上がったギーシュが『薔薇』が何たらと演説を始めていた。 そこに、ミュズの一言が通る。「あのー。ギーシュ、浮気はだめですよ」 周囲に沈黙が流れた。 ギーシュの友人達が、どっと笑った。「その通りだギーシュ!お前が悪い!」 ギーシュの顔にさっと赤みが差すと、目を尖らせて吊り上げた。 「平民の分際で貴族である僕を呼び捨てするなんて。なんて礼儀知らずなんだね、君は!?」 ギーシュはミュズに向かって怒鳴り付けると、ルイズはミュズを庇う様に間に割って入った。 「やめて。この娘には私から言い聞かせておくから――」 「ふん……。ああ、そいつが……、ゼロのルイズが呼び出した平民か?」 ギーシュは、馬鹿にした様に鼻を鳴らして言った。 「魔法に失敗なんかしてるから、平民に侮られるんじゃないのかい?」 ルイズはここでギーシュの嘲りを我慢すれば、これ以上の大事にならないと思い、口を真一文字に閉じてグッと堪えた。 「違います。マスターの魔法は素晴らしいです」 ミュズはギーシュが言った事を正す様に口を出した。 「あれが素晴らしいだって?よかろう。ならば、真の魔法を見せてやろう」 そう言うと、ギーシュは胸の薔薇を取り出してミュズにレビテーションをかけ、ルイズには手の届かない空中に浮かび上がらせた。 「ルイズ!悪いな。君の使い魔をちょっとお借りするよ!」 ギーシュはミュズの手を掴み、空中を引きずる様に持ち去って行った。 ギーシュの友人達が、わくわくした顔で立ち上がり、ギーシュの後を追った。周りの野次馬も面白い見世物が見れると、それに倣って着いて行った。 ギーシュは、貴族に無礼な態度を取った平民に魔法を以って、その優位性を教えてやるのだと、息巻いていた。 道すがら、ギーシュはミュズが銀のトレイを持ったままの事に気が付き、近くに居た黒髪のメイドに言った。 「おい、そこのメイド!トレイのケーキはお前が配っておけ」 ミュズが心配だったシエスタは恐る恐る追いかけていたのだ。 ぶるぶる震えながら近寄って、トレイを受け取りミュズに小声で話しかけた。 「あ、あなた、殺されちゃう……」 「え?」 「貴族を本気で怒らせたら……」 「大丈夫です。魔法を見せて貰うだけですから」 ミュズがそう言い返していると、シエスタはギーシュの友人の睨む様な視線に気付き、だーっと走って逃げてしまった。 今さっきまで人集りが出来ていた所にぽつりと、ルイズは取り残された。 「ああ、もう。ほんとに、なんでこんな事になっちゃうのよ!」 ルイズはミュズの後を追い駆けた。 ―――――そして、舞台はヴェストリの広場へと移る。 前ページ次ページ”舵輪(ヘルム)”の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4844.html
高い知性を持った存在を使い魔にするのは結構大変だ。 通常の使い魔に提供する以上の待遇を求められたり、それ以外の条件を求められたりするからだ。 例えば韻竜を使い魔にしたタバサの場合……。 「きゅい!きゅい!ただの人間の小娘がこのわたし、○×△□wsx(日本語では正確に発音できないため当て字になっています)を使い魔にしようなんて生意気なのね!きゅい!きゅい!」 「学院が使い魔の餌として準備している食べ物の他に、任務が終わった後には高級な牛肉を1キロつける。これで、どう?」 「きゅい!……ちょっとだけ心が動いたけど、そんなことじゃ騙されないのね。きゅい!きゅい!あなたの方がわたしより優れてることを証明して見せない限り、使い魔になんかなってあげないのね。きゅい!きゅい!」 「分かった。何をすればいい?それをすれば使い魔になってくれるのね?」 「きゅい!きゅい!とっても難しい試練を与えるのね!きゅい!きゅい!誇り高き竜族の一員、○×△□wsxの何かけて、その試練を乗り越えられたらわたしはあなたの使い魔になってあげるのね!きゅい!きゅい!」 「教えて、わたしは何をすればいい?」 「きゅい!わたしの名前をあててみせるのね!きゅい!きゅい!」 「名前?」 「きゅい!きゅい!そうなのね。わたし、○×△□wsxの名前を当ててみせるのね。きゅい!きゅい!」 「○×△□wsx?」 「きゅい~~~~!凄いのね!なんで分かったのね!?」 「………」 「お姉さま凄いのね!わたし、お姉さまの使い魔になってあげるのね!きゅい!きゅい!」 とまぁ、こんな感じだったりする。 それでも、思考形態が人間に近く、また、同じ言語で会話が出来る相手ならまだいい。 問題は、ルイズが召喚してしまった者達のような場合だ。 「うー!」 「やー!」 「たー!」 その日、使い魔召喚の儀式でルイズが呼び出したのは、一言で言えば3個の巨大な喋る玉子だった。 これが、ただの玉子なら問題は無かった。 いや、ルイズ的には大問題なのだが、とりあえず親鳥がそうするように玉子を暖め、孵化した何かと改めて使 い魔の契約を結べばいいのだから、問題が無いと言っていい。。 しかし。 ルイズが召喚したのはただの玉子ではなかった。 まず第1に、顔があった。 玉子達の大きさはルイズの腰くらいまでだろうか。全体のフォルムは鶏卵の尖った方を下にして立てた感じだ が、上から6分の1くらいのところに一つだけ目があった。そのすぐ下には鼻に見えないことも無いちょっとし たでっぱりがあり、上から3分の1くらいのところには口があった。 幸いなことに、それらの目や口や鼻は子供が玉子にペンでいたずら書きをしたような感じなので気持ちが悪い ということは無かった。見ようによってはむしろ可愛いと感じられさえする。 そして第2に、その玉子には手足が生えていた。もちろん、顔がそうであるように、手足も子供の落書きのよ うなもので、人間で言えば肩に当たりそうな部分と股に当たりそうな部分から、それぞれ2本針金のようなもの が伸びていて、肩から伸びた針金の先には5本指の手袋のようなものが、股から伸びた針金の先にはブーツのよ うなものが付いている。 第3には、その玉子達は服を着ていた。 一つ目の玉子は、金色にピカピカ光る鎧を着ていた。 二つ目の玉子は、濃い紫色のローブを着て先端の尖った三角帽子を被っている。 三つ目の玉子は、王様が着るような豪華な衣装を身に纏っていて、一目で良いものと分る冠……恐らくは王冠 を被っている。 第4には、玉子達の持ち物。 鎧を着た玉子は、右手にはやはり金色にピカピカ光る剣を、左手には同じく金色にピカピカ光る盾を持ってい た。 ローブを着た玉子は、長い、先端に宝石を嵌めた杖を持っていた。 豪華な衣装を着た玉子は、大きな宝石をいくつも嵌めた豪奢な杓を持っていた。 つまり、ルイズが召喚したのは、収穫祭のときに平民の子供が玉子で作る、王様とメイジと戦士の人形だった。 ただし、その人形は自分の“足”で立って、「うー!」「やー!」「たー!」とルイズに向かって何か訴えて いる。 「コルベール先生、やり直しを要求します!」 ルイズがやり直しを要求するのはある意味当然だったが、コルベールがそれを認めるわけがないのも当然なの で、二人のやり取りは割愛。 「分りました!」 ルイズはコルベールを睨みつけた。 「契約します!契約すればいいんでしょう!ええ、契約しますとも!」 コルベールを怒鳴りつけたルイズが、玉子達に向き直る。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。」 そして、一番近くにいた戦士玉子にコントラクト・サーヴァントの魔法をかけようとした時だった。 「五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔とな」 「うー!」 戦士玉子は不意に後ろに飛んで、ルイズから逃げ出した。 「な、な、な。」 突然の、そしてあまりに予想外な出来事にルイズが絶句すると、戦士玉子は再びぴょんと飛び跳ねてルイズの 前に寄って来て「うー!」と何かを訴える。 「落ち着いて。落ち着くのよ。ルイズ。」 ルイズは大きく深呼吸して、自分に話しかける。 「逃げられたわけじゃない。逃げられたんじゃないんだから。」 そんなやりとり……コントラクト・サーヴァントの呪文を唱えようとしては逃げられ、再び寄って来た玉子達 が「うー!」「やー!」「たー!」と何かを訴える……が、5回か6回続いた後、ルイズが手負いの熊のような 叫び声をあげた。 「うが~~~!あんたらいいかげんにしなさ~~~~~~いっ!」 ルイズは少し危ない目をしていたのか、ルイズに睨まれた玉子達は一歩後ずさった。 あとずさりながらも、「うー!」「やー!」「たー!」と何かを訴えるのは止めていないあたり、玉子達には 玉子達なりに、何かルイズに伝えたいことがあるのだということはルイズにも分かった。 しかし、「うー!」「やー!」「たー!」だけでは、何が言いたいのか分らない。 「あ、あ、あ、あ、あんたらね!言いたいことがあるなら、ちゃんと、はっきり言いなさいよ~~~~~!」 ルイズは切れた。 「ライト!」 ルイズは、呪文の詠唱時間が一番短く、当然のことだが爆発の威力も一番小さい、けれども、いくら大きいと はいえ玉子を破壊するには十分な威力を持った失敗魔法を玉子達にぶち込んだ。 「ライト!ライト!」 最初は戦士玉子に、二発目はメイジ玉子に、三発目は王様玉子に。 ぱん、ぱん、ぱん。乾いた爆発音が3回響く。 玉子達が爆煙に包まれた。 「みっ、ミス・ヴァリエール!?」 コルベールは慌ててルイズを止めようとした。が。 「ロック!」 ルイズの失敗魔法に弾き飛ばされた。 「邪魔しないで下さい。コルベール先生!」 地面に叩きつけられ呆然と見上げるコルベールに、ルイズは言った。 「これは、あいつらとわたしの勝負なんです!」 「勝負?」 「ええ。分らないんですか?あいつらは生意気にもこう言ってるですよ。『おれ達を使い魔にしたかったら、お れ達に勝ってみろ』って。」 「えええ?」 コルベールが驚くのも無理は無い。ルイズ自身、確証があるわけではないのだから。 しかし、絶対にあいつらはそう言ってるという確信はあった。 だから、試すのだ。 爆煙が消えた後に。 あいつらが倒れていたら、この勝負わたしの勝ち。契約してしまおう。 割れた玉子が落ちていたら、わたしの負け。 ルイズは、フライの呪文を唱えながら煙が晴れるのを待つ。 そして。 「うー!」「やー!」「たー!」 煙が晴れた瞬間、王様玉子、メイジ玉子、戦士玉子の3人は嬉しそうに叫びながらルイズに襲い掛かってきた。 「きゃ~~~~~~!」 王様の飛び蹴り、メイジの良く分らない魔法、戦士の剣戟を受けて、ルイズが吹き飛ばされる。 吹き飛ばされたルイズに、追い討ちをかけようと迫る3個の玉子。 しかし、ルイズも悲鳴をなんとか飲み込んで、フライの呪文を完成させていた。 正面からぶつかり合う、ルイズの爆発と3個の玉子。 一人のメイジと3個の玉子が、楽しそうに笑っていた。 その後のことは書くのもあほらしいのだがその後も、ルイズが系統魔法に目覚めることは無かった。 何故なら、ルイズの失敗魔法はどんな系統魔法よりも強力だったからだ。 風のスクエアスペルであるカッタートルネードを失敗したときなど、卑劣にも不可侵条約を破ってタブルに攻めてきたアルビオンの艦隊をことごとく爆破、破壊しつくしてしまったくらいだったのだから、こと戦闘に関す る限り、系統魔法も虚無も、ルイズには必要なかったのだ。 そして、3個の玉子を従えたトリステインの聖女の名は、末永く語り継がれたという。 あの作品のキャラがルイズに召喚されました part153 766-770
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6830.html
前ページ次ページルイズとヤンの人情紙吹雪 「ヒューーーッ なんだここ? スゲー広(ひれ)ーー 宮殿かよ? バカみてーだな まさにブルジョワジィってか?」 ヤンはルイズに連れられて女子寮に来ていた。 ヤンは感心を通り越して呆れていた。 「バカってどういゆことよ! あんたの方がよっぽどバカっぽいわよ! さっきからちょっとは静かにできないの!? 恥ずかしいじゃない田舎モン!」 ヤンは先程からこの調子で、ちんたら歩きながら感嘆の声をあげていた。 しかもその声がやたらデカくてオーバーリアクションなのだ。 ヤンの服装も手伝って、悪い意味で目立ちまくっていた。 すれ違う生徒達がくすくす笑っている様な気がした。 「もーっ なんなのよ、さっきから! 全然人の言うこと聞かないし! 私まで恥かくのにぃーーッ! ほら、はやくきなさいよ 馬鹿犬!」 ルイズはヤンの左手を掴むと、顔を赤くしながら引っ張った。 ヤンは「へいへい」と呟きながらルイズに引っ張られるままになっていた。 「ここがオマエの部屋ァッ!? オメェ一人でこの部屋!? マージーでッ!? 許しがてぇぇぇ!」 こんなガキのうちから贅沢したらろくな人間にならネェ! ヤンは憤慨した。 人が空を飛ぶほうがまだ許せる気がした。 もっとも、ヤンみたいな人間(吸血鬼だが)もいるので贅沢は関係無いかもしれない。 「ふふん そうよ。 驚いた? 私がどれだけ高貴な人間か理解できたみたいね?」 ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりーーー。ヤンの歯軋りが聞こえる。理不尽だー理不尽だーと小声で呪詛の言葉を吐いている。 「ちょっと落ち着きなさいよ あんた私の使い魔なんだからね! さっきみたいなのもヤメテ! 使い魔の恥は私の恥なのよ!!」 その言葉にヤンは、あーそーだったと冷静になる。 「………その『使い魔』ってのは何なんだ? さっきも契約とか儀式とか言ってたよなー?」 ルイズはまるでカワイそうなモノを見るような目をしてヤンを見やった。 「あんたそんなことも知らないの? ……うぅ~~~~まさかこんなド田舎の平民を呼んじゃうなんて……はぁ。 まぁいいわ! 説明してあげるから、キタナイ耳の穴キレイにしてよーく聞きなさい!!」 サラっとさっき言われたことを言い返してやった。ふんッ。 「あんたは私に召喚されて契約したの。 晴れて使い魔になれたのよ。 ヴァリエール公爵家三女たるこの私の使い魔になれるなんてとっっっっっても名誉なことなのよ!」 ありがたく思いなさい!というのが言外にありありだった。 「契約ってのはイツしたんだよ。 俺した覚えねーぞーーー?」 そう言われてルイズは廊下の時よりも顔を赤くしてしどろもどろになった。 「そ、それは…………その…えと…………………キ、キスよ……。」 ルイズは小声で(特にキスの部分)答える。 「エッ? なになに? よく聞こえねーーーもー1回言って。」 「…ッ! だ、だから………うぅ~……………キ、キキキキキキキキキスしたでしょって言ってるのよ!!」 『キス』というと、召喚した時のことが思い出される。脳ミソが沸騰しそうだった。 「へぇーー キスで契約ゥーーーー? メルヘンだなァー まぁそんなことでゴダゴダ言わねーよ俺ァ別に。 次行こう、次! ココはどこだァ? 召喚ってどーゆーこった?」 ルイズはキスなんてありました?って顔をしているヤンに無性に腹が立った。 「う~~~~~~ッなによ! ちょっとはアンタも恥ずかしがったりしなさいよ! 悪いとは思わないの!? あ、ああああんなししししし舌まで入れておいてナンでそんな冷静なのよッ!!」 「あーーにぎやかな女だなー んなことよりサッサと説明しろって。 ほれ次次次 話進めろ。」 ヤンは既に完全にその話題への興味を失っているようだ。 「く~~~~~~~~~~ッ ぬ、ぬ、ぬ、ぬぅ~~! ………ま、まぁいいわ! アンタなんて所詮使い魔だし、犬に噛まれたのと同じなんだからッ!」 捨て台詞じみた言葉しかルイズからは出てこなかった。 ルイズの説明を一通り聞いたヤンだったが、天を見上げて嘆息した。 「マジかよ… まじでファンタジーなのかよ… 信じられねェーー三文小説みてーな話だな 笑えるぜェ~~~ヒャハハハハハッ」 ヤンの笑いを見てルイズはムッとする。 「人が丁寧に説明してやったのに何よ! ちっとも笑える話じゃないでしょ!?」 「いやいや笑えるぜ? コレはよォーー だってココ俺の世界と違うもン。」 「へ?」 ルイズはヤンの突然の発言に目を丸くする。 「僕様チャンの世界には魔法なんてありはしまチェェェン。 まぁ似たようなモンを使えるヤツは少しいるみてぇだが、一般的じゃねーから。 ……しかも『あれ』だ。」 ヤンはそういって窓の向こう、薄暗くなった空を指す。 指が示した先には『月』が『二つ』浮かんでいた。 「月がどーしたのよ?」 双月。ルイズにとっては当たり前の風景だった。 「僕チンのワールドではお月様は一つなのですよ これマジホント。 つまりここは異世界ってわけだ オーマイガッ。 じゃなきゃよっぽどラッピーなドラッグキメてタリラリホーってとこだな。」 ヤンの発言にルイズはポカーンとしている。 冗談にしても質が悪い。全然おもしろくもない。 「……あんたねぇ もうちょっとマシな嘘言いなさいよ。 田舎者って思われるのがそんなに嫌なの? 本当にそう思ってるなら最初から言いなさい 二度と言わないわ。」 誰だって言われたくないコトはある。ルイズはそれを誰よりも知っているからヤンに対しても少しは気を使ってやろうか、という気持ちになる。 「チゲーよ マジだ、マジ。 ハルケギニアもトリステインも聞ーたことねーよ。 まぁ俺にとっちゃぁ異世界だろーがナンだろーがどうでもいいことでよォ。 どうやらオメェのおかげで生き返ったみたいだからさァ 使い魔ってヤツ? ヤってやってもいいぜ なにすりゃいいんだ?」 ヤンは深く考えない性格。そして今、ヤンは気分が良かった。 死んだと思ったが召喚とやらのお陰で自分は間違いなく生きている。 異世界にいるという衝撃など二の次だった。 学校などというヌルま湯に浸かった世界は、ヤンにとっては刺激が足りないように見える。 しかしこの学院の女共は大分レベルが高い(召喚時と廊下で騒いだ時、チェック済み)。ルイズも胸と性格以外はかなりイケてる。 行く当ても無いしここで女をクッて過ごすのも悪くは無い。 その為にも『ルイズの使い魔』というポジションは有効だ。そのついでにチョットだけ借りを返してやるか。 ヤンはそう考えていた。 「や、やってやってもいいって違うでしょ!? やらないといけないの! 義務なのよ、ギ・ム!」 やっぱりこの男に気を使う必要は無い! 「はーいはいはいはい……わかったわかった… ヤラセていただきます、ヤラセていただきますヨ『ル・イ・ズ・さ・ま』。 コレでよーございマスかァ?」 絶対バカにしている。ルイズは思ったがグッとこらえた。 いちいちヤンにつっかかったら話がまったく進まぬうちに一日が終わってしまう。ルイズは少し大人になった。 「……使い魔の仕事は主に3つよ。 1つ目は主と感覚を共有しその手足となること。」 「感覚のキョウユウぅ? なんだそりゃ つまり俺がナニすりゃオメェも感じチャうノぉ~んってこと? ヒャハハハハハ!」 よくは分からないが、ヨロシクないことを言っているのであろうことはルイズにも想像できた。華麗にスルー。 「……アンタが見たものや聞こえたものが私にも見えたりするってことよ。 でも何も見えないし聞こえない……。」 「まぁ俺みたいのって初なんダロ? だからかは知んねーけどさー デキねェもんはしょーがねーなー アキらめろ。」 そう、そうだ。コイツだから駄目なんだ。メイジを見るには使い魔から、とか言うけど忘れることにした。全部ヤンのせい。うん、私ダメじゃない。 「2つ目は秘薬とか鉱石とか…主人が望むものを探すことよ。」 「無理 パス。」 ソッコーで断られた。 「はやッ! な、なんでよ!?」 「できるわけねぇだろー 召喚されたてだぜ俺 ここの知識ゼロkgだかンな。」 ルイズは『ゼロ』のところで一瞬ピクッとなり不満そうな顔をする。 「………3つ目…これが一番重要なんだけど…主の身を一生守り続けること。 ……まさかコレも無理なんて言わないわよね?」 なかなか鋭い目でヤンを睨みつけている。 「オーイエーー! それそれ そーゆーの待ってたんすよォ ようは敵を全員ぶっ殺してやりャあイイわけだ 楽勝楽勝♪ んで敵はどこにいんだぁ? 数は?」 ヤンはオモチャを見つけた子どものように目を輝かす。 すぐに部屋を飛び出したい、そう思っているんだなと一目でわかるぐらいソワソワし始める。 「ちょ、ちょっと物騒なこと言わないでよ! 敵なんていないわよ!! もしも敵とか危険なことがあったら、その時私を守ればいいの!」 「えーーーーーーーなんだそりゃーーつまんねーーー やっぱバトルは攻めだぜ? わかってねーーなーーー。」 肩をガックシ落としてあからさまに悲しむ。 「……とにかく、それだけ戦いたがるってことはヤンは強いってことでいいのよね?」 「まーかせとけって そこらの雑魚には負けねーよ? 俺様無敵だからネ。」 訝しげな目をヤンに向ける。……うそ臭い……と、ルイズは思った。 「はぁ…もういい… 今日は疲れたから寝る…」 本当に疲れた顔をしながら深いため息をつく。 「そーか じゃあ俺はちょっとぶらついて来るからよ じゃーーーな。」 ヤンはそう言いながら扉に向かって行く。 それを見たルイズは慌てて止める。 「だ、だめよ! アンタも今日は寝なさい! もう外も暗いんだし夜出歩くとアンタなんて完全に不審者なんだから! ここは貴族の子弟の学校だから警備も厳しいのよ!!」 出会ったばかりだがヤンの言動を見ていると、目を離すとトンデモナイことになりそうな気がした。 「オメェーの使い魔だから平気だろ? 俺は。」 「ダメッたらダメ! アンタが問題起こしたら私の恥になるって言ってるでしょ!」 またソレか。ため息をついて呆れるヤン。 「チッ わーったよ 寝ますよ寝ますー。 で? 俺はどこに寝んだ? ベッドは一つみてーだけどソコで寝ていいわけ?」 「ここは私のベッドなの! アンタが寝ていいわけないでしょ! アンタはそこ!!」 ズビシッ!と指をさす。 「? どーみても床だぜ?」 「藁もあるじゃない。」 「………」 やった!動揺してるわ!今こそ使い魔の立場を理解させるチャンスよ! 「そうね…それだけじゃかわいそうだからコレ、使ってもいいわよ。」 勝ち誇った顔をしながらルイズは薄っぺらい毛布を差し出す。 藁も毛布も、人間ではない普通の使い魔のために用意しておいたものだ。 人間に対してはちょっと気の毒かもしれないが、コイツにはこれでお灸を据えることができるかもしれない。 「あ あと明日から洗濯とか水汲みとか、私の身の回りのこと全部やらすから。 それじゃオヤスミ。」 言うやいなや暖かそうな毛布に顔をうずめる。 「………」 ヤンは黙っている。 「……マジかよ……兄ちゃ~ん、どうにかしてくれよ……」 ヤンはボソリと、今は亡き兄に助けを求めた。 ワンちゃん……。 犬を抱きしめ呟く兄が見えた気がしたが、気のせいだと思うことにした。 しばらくは大人しくしてやる。 そう思っていたヤンであったが、早くも挫けそうだった。 つづく…と、思う 前ページ次ページルイズとヤンの人情紙吹雪
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8071.html
前ページ次ページ天才と虚無 鉄格子の合間から乾いた風と細かい砂塵が舞い込む。 石壁に三方を囲まれた部屋。 廊下に面した壁の代わりに、一面の鉄格子が嵌っていた。 そこは、牢獄だった。 青年は粗末な寝台の上に腰掛け、牢獄の壁に背中を預けていた。 青年が牢獄に閉じ込められて、いったいどれほどの時間が経過しただろうか。 窓から差し込む朝日と夜の訪れから日数を数えていたのだが、途中でやめてしまっていた。 それから既に幾度もの朝と夜が過ぎ去っていった。 青年が粗末な寝台の固さに身をよじると、青年の視界を何かが掠めた。 目を向けると、牢獄の壁に寄りかかるような形で、姿見程度の大きさの鏡があった。 それを見た青年は、頭の中に疑問符を浮かべる。五秒前まで、そんな鏡はそこには無かった。 何らかの咒式だろうか、と青年は思考する。 電磁光学系第二階位<光幻軆>の咒式による立体映像化と思い、即座にそれを否定する。 鏡には影があった。立体映像ならば影は出来ない。 青年はその鏡に、無性に触れてみたくなる。 生来の好奇心と牢獄に閉じ込められてからの退屈に突き動かされるようにして、青年はその鏡へと手を伸ばした。 白く長い繊細な指が、微かに発光している鏡の表面に触れる。 青年は鏡ごと、この世界という枠の内側から消滅した。 亜麻色の髪と深緑の瞳を持つ少女が青年に食事を届けに来て、青年の姿が無くなっていることに悲鳴を上げたのは、青年が消えてから正確に十秒後だった。 ○ ○ ○ 轟音! 少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの振り下ろした杖の先の空間が爆発! 白光の後に爆音が轟き、衝撃波が地面を抉る。 抉られた地面が土煙となって周囲へと降り注いだ。 「いい加減にしろ、ゼロのルイズ!」 その爆発を遠巻きに見ていた一人の少年が、爆発を引き起こした少女へと怒鳴る。 「使い魔の召喚にいつまでかかってるんだよ!」 「他はみんな終わってるんだ、お前もさっさと終わらせろよ!」 最初の声を皮切りに、その周囲にいた生徒たちも、ルイズへと罵声を投げかける。 トリステイン王国、王立トリステイン魔法学院では、二年生への進級試験を兼ねた、使い魔召喚の儀式の最中だった。 「……………くっ」 ルイズは投げかけられる嘲笑と罵倒に、葉を食いしばって耐える。 自分が使い魔を召喚しようとして失敗をしたのは、今ので五回目。 失敗するたびに大爆発を引き起こす少女の魔法。 その直撃を受けた平原は見るも無残に抉られて、ところどころ草の合間から地肌が見えていた。 「ミス・ヴァリエール…………残念だが、時間も迫っている。残りは放課後にしないか?」 「っ!?」 ローブを羽織った禿頭の教師――――コルベールが、召喚に失敗した少女へ、声をかける。 ルイズが最後とはいえ、五回もの失敗。 予定していた時間は既に過ぎ去り、次の授業の刻限も迫りつつあった。 「放課後ならば、私も時間が取れます。その時は召喚できるまで――――」 「待って、待ってください!」 コルベールの言葉を遮るようにして、ルイズが叫んだ。 「ミスタ・コルベール! お願いです、もう一度だけ! もう一度だけ召喚させてください!」 「しかし、時間が………」 「お願いします、もう一度だけでいいんです!」 ルイズの懇願に、コルベールは思案する。 一人の生徒に、これ以上に時間をかけることは出来ない。しかし、一人だけ召喚をすませずに、というのはあまりに不憫だ。 「…………しかたありません、ミス・ヴァリエール。もう一度だけ召喚を許可します」 数秒の沈黙の後に出された結論は、微量にだけ情が多く含まれていた。 「ありがとうございます!」 その答えに、ルイズの表情が一気に明るいものになる。 「ただし、これで最後ですよ? これで失敗してしまったら、次は放課後です」 「は、はい! 解りました」 真面目な口調で発せられたコルベールの言葉に、明るくなったルイズの表情が引き締まる。 そのまま五つの穴が開けられた草原へ向きなおり、深呼吸を繰り返す。 唱えるべき呪文を脳内で何度も復唱し間違いが無いことを確認。 すう、と息を吸い込み、呪文を唱え始める。 「宇宙の果ての何処かにいる私の下僕よ!」 ルイズの紡ぐ言葉が、ルイズ自身の深層意識より、魔力と名をつけられた、認識力を引きだし始める。 「神聖で美しく、強力な使い魔よ!」 荒れ狂うそれは、ルイズの吐き出す言葉によって徐々に統制・制御され、魔法としての形を成していく。 「我は心より求め、訴える!」 ルイズの魔力は物理法則を歪め、計算するのも億劫なほどのエネルギーを作り出し、集約する。 空間に微細な虫食い穴が発現し、負の質量を持つ物質がそれを支える。 その穴が繋がる先は、運命にゆだねられる。確率とも何某かの意思ともつかぬそれが、座標を決定する。 そして―――― 「我が導きに、答えなさいっ!!」 っどごぉおおぉおん!!! ――――大爆発を引き起こした。 「う、そ…………」 自分の引き起こした特大の爆発を見て、ルイズの膝が折れた。 絶望に目眩がし、立っていることすら出来なくなる。 心が折れるというのはこういう気分なのだろうと、ルイズは頭の片隅で考える。 ぱらぱらと、舞い上がった砂や石が、ルイズへ降り注いだ。 「うぅ…………」 「!?」 それは、呻き声。 土煙に遮られて見えない爆心地より感じた、生き物の気配。 成功した、成功した! 成功した!!! 絶望は希望へ、失意は歓喜へ塗りかえられる。 しかし、一陣の風が土煙を吹き飛ばした時、その感情は再び絶望へ、失意へと叩き落とされた。 「あんた、だれ…………?」 そこにいたのは、人間。 美しい金髪をした青年が、抉られた地面に尻餅をついて座っていた。 「えっと、あ、あれ?」 きょとん、としか表現のしようのない表情で、青年が周囲を見渡す。 数回、往復した視線はやがてルイズのそれと交錯する。 青年の瞳は、まるで翡翠のような緑だった。 ゼロと呼ばれた少女と、天才と呼ばれた青年が出会った瞬間であった。 前ページ次ページ天才と虚無
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/919.html
back / next 七話 『間違えたんだからスルー進行で』 新たに実がなった。実っているのは五つの“バクバクの実” シエスタにそれらを採取させながら、ルイズは小屋へ戻る。机の上には分解されたショットシェル。 「バクバクの実ですか~どういうものなんですか?」 「錬金よ。ただし金属どころか生物無生物に関わらず、食べて作り変える能力」 「……土のメイジの方々が昏倒しそうな能力ですね」 「ギーシュ当たりが欲しがりそうな能力ではあるわね」 「何よりおなかがすかなくなるのがいいですねぇ」 土でも石でも何でも食べてその腹を満たすことができる、それは確かに飢えから逃れるには最良の能力といえた。 「でもダイアルを見ても条件はわからないですねぇ」 「まあ五つも手に入ったしいいんだけどね」 ルイズはじっとその実を見つめた。 じっと見つめる。 錬金の魔法を力技で実行するこの身の能力は、魔法を常に失敗するルイズには魅力的に映った。 だがしかしここに不文律がある。 『悪魔の実は二つは食べられない。食べれば体が破裂する』 実に手をかざしそのうちを覗き見る。 流れるのはかつて二つ以上を喰らったものの末路。 血しぶきを撒き散らしながら体の前面が裂け、胃が、腸が、肺が、心臓が、肝臓が、裂け目から外に飛び出している。 悪魔の実という名の寄生生物が同種に感じる免疫拒絶反応。 実から手を離し、ルイズはナイフを手に取った。 昼食の場、ルイズはそれを己の食事に放り込む。 ミョズニトニルンの能力を徹底活用して作り上げた希釈した悪魔の実のペースト。 己の未来を覚悟しつつも、ルイズはそれを混ぜ込んだスープをあおった。 いつもどおりうまい。 「ああああああがああああああ!」 直後、ルイズは大量の血を吐き出す。 ふくらみ血管の浮き出る腹部。 「ガボッ」 腹が裂け、臓腑が飛び出した。 結果から言えばルイズは助かった。一から十まで計画通りに。 食堂はまさに大惨事だった。 倒れる死に体の少女と腹から飛び出た臓物。 実のかけらを悪魔の木の樹液から作った溶液で希釈し効果を軽減し持続時間を延長。 あえて食堂で行うことで治療の水の魔法を得意とするメイジたちの前で爆散、治療への近道を用意する。 加えて魔法の拘束具を使って胴体を固定、飛び散りを軽減する。 初めからゼロだった少女にとって、すべてを失うことへの恐怖はなかった。 誤算は唯一つ、信じがたい痛みにショック死しかけたこと。 予想をはるかに上回る痛みは彼女にトラウマを刻み込む。“痛いのは怖い” この日からしばらくの間、恐怖で眠れなくなりシエスタかキュルケに添い寝を頼むようになるのだが、それはまた別の話。 某CMのチワワっぽくてたまらないと二人がとろけた笑顔を浮かべていたが、怖いから視界から外そう。 「それで原因はわかるかね?」 「魔法の失敗だと思います」 オールド・オスマンに取り調べられるも知らぬぞんぜぬを貫き通す。自分の爆発魔法が暴走したのだろう、と。 魔法により修復された腹部を撫でながら、ルイズは結果に満足していた。 実同士が起こす拒絶反応、免疫機能が起こすショックが水の魔法により整合させられている。 魔法という現象が起こす“こじ付けのつじつま合わせ” それが彼女を救うだろうという、ミョズニトニルンの知識から組み立てた“絶対当たる未来予想図” ベッドの中で付き添いのキュルケの胸に顔をうずめながら、ルイズは一人笑みを浮かべた。 ああ、やはりコレはいいものだ。なんて弾力があってやわらかいのか。 研究観察用の小屋の中、ルイズはシエスタにもたれながら古びたさび釘をかじっている。 鉄でできたそれがまるでクッキーのようにコリコリ音を立てる。 うまい、体に毒でしかないはずの酸化鉄まみれのさび釘が無性にうまい。 コレがバクバクの実の恩恵か、と驚きながらルイズはギーシュから決闘後に巻き上げた青銅製のバラの造花をかじりだした。 「本当に何でもだべれるんですねぇ」 「しかもおいしいのよこれが。とんでもないわ」 バラの造花をムシャムシャ平らげた後、傍らに積み上げられた鉄くずと残骸の山に目をやる。 その中から衛士のものだろうか、ポッキリへし折れた剣をかじりだす。 鞘ごとごりごり食べながら、ルイズは紅茶に手を伸ばした。 デルフリンガーは御満悦だった。 さびだらけの己をいきなり飲み込みだしたルイズに慌てふためきはしたが、なにやら暗いところでごちゃごちゃした後出て着てみれば自分は新品のようにピカピカになっていた。 研いでも落ちなかったさびや汚れは完全にきれいに落とされ、布を巻かれた古い柄はヴァリエール家の紋章が入った金銀の装飾つきのものに作り変えられている。 鞘にいたっては花をイメージしたらしい華美さにあふれるデザイン、中央のヴァリエール家の紋章がアクセントだ。 デルフリンガーは武器として使われなかった己のこれまでをきれいさっぱり忘れることにした。 主の新しい能力の何とすばらしいことか! デルフの目の前でルイズは剣を一本かじり終わった。 しばらくもごもごと口を動かした後、流し込むように紅茶を空ける。 近くの薬ビンのふたを開けてそこに何かを吐き出した。それはどろどろに溶けた赤錆。 赤錆をすべて吐き出した後、右手を口の中に突っ込んだ。 シエスタとデルフが驚く中、ルイズは口から一本の剣を鞘ごと抜き出していく。 明らかに鋼を後付された、青銅のバラをあしらった青い鞘のレイピア。 ギーシュのバラを使ったためか、デルフには魔法の力を感じ取れた。 「これギーシュは何と交換って言うかしらね?」 「杖にもなるんですよね? だとしたらかなりじゃないですか」 「……おでれーた。娘っこは世を席巻する彫金師になれるぜ」 錬金の授業の前、いつの間にか召喚した木の実から出てきた変なブタ、ということになっていたカツ丼をフレイムの上に乗せ、ルイズは着席する。場所はギーシュの隣。 「ギーシュ、いいものがあるんだけど」 「ルイズ、藪から棒になんだい?」 「いいからみなさいって」 布に包まれていたそれは、少なくともギーシュの人生において一二を争う美しさのレイピアであった。 その青銅のバラをあしらったレイピアに回りは一斉に息を呑む。 ギーシュは恐る恐るといった様子でそれを手に取った。 ―精神力が通る!― それはつまりコレの材料が数日前に巻き上げられた自分の杖であるということ。 そして何より杖の代わりになるということ。 「ルルルルルルルイズ! こここここれは一体!?」 「森の前に私の観察小屋があるでしょ? そこであんたのバラを使って作ってみたの。どう?」 「すすすすすばらしいよ! こんなに美しい剣を僕は見たことがない!」 「それは良かった。で、ギーシュ」 ずいっと前に出てレイピアを取り返す。 「これの代わりに何をくれる?」 「僕のヴェルダンデに宝石や鉱石を探させよう! 好きなだけもっていってくれるといい!」 「成立ね。じゃあ上げる」 ギーシュはレイピアをもらって、ルイズはさまざまな原石を大量にもらって御満悦だった。 その光景に目が行き過ぎたのか、ルイズが錬金の魔法はできないのだということは忘れ去られていた。 カツ丼はシエスタに餌をもらっていた。 学園内でイノシシになったりブタに戻ったりしていたせいか、いつの間にかカツ丼は『ルイズの召喚した実から生まれた』だの『ルイズの召喚した実を食った』だの言われるようになり、気がつけばルイズの使い魔扱いになっていた。 まあ一部当たっていないでもない。 木の実よりは体面も良かろうということで木の実の変わりに使い魔登録されたカツ丼は、ブタブタと餌をほおばっていた。 キュルケは自分の感情をもてあましていた。 妙に可愛らしい様子を見せたかと思えばいきなり黒くなるルイズ、その寝姿は顔の形が崩れるほど愛らしい。 そんな感想を同性に抱く自分に驚きつつ、キュルケはルイズを探す。 この感情をどうすればいいのか、考えながらたどり着き、ひとまず思考を変更する。 目の前でルイズが材木をかじるのを止めるべきかどうか。 変則的な錬金魔法、そんな明らかに間違った説明をしながら、ルイズはギーシュから受け取った宝石の原石をかじる。 少しの間もぐもぐ咀嚼したあと脇に吐き出すのは不純物のみ、直後卵形の純鉱石を吐き出す。 「ルイズ、これももしかしてサファイア?」 「サファイアの単結晶。土のメイジには金やプラチナにも勝る価値があるでしょうね」 「……反則じゃない?」 授業の合間にもルイズは何かをかじっている。 今かじっているのは貝殻。 壊れたダイアルを食べ、修復して吐き出す。 それを延々と繰り返していた。 「うあ、これ排撃(リジェクト)ダイアルのかけら? かけらだけ? ちえ~」 周りの生徒たちには偏食にしか見えなかったという。 悪魔の木の裏手、暗い森の中、手書きの的を設置したそれにルイズは相対している。 手の中には単発式拳銃。バクバクの実の能力で作り上げたオーバーテクノロジーの塊。 横のテーブルにシエスタが荷物を置いていく。内容は鉛、真鍮のインゴット、硫黄などの火薬の原料。 それらをすべて口の中に放り込み、しばし後に吐き出す。 吐き出されたそれは最も初期の金属薬莢弾。 各種鋳型や機材を用いなければならないそれらの製造過程を無理やりスキップして結果だけを導き出す、悪魔の実の能力。 「黒色火薬は弱いからいやなんだけどね~」 「無煙火薬、でしたっけ? そっちは駄目なんですか?」 「材料がわからないのよ」 「材料ですか?」 「あの獣の大筒のおまけで弾丸の情報も拾えたけど、“りゅうさん”とか“しょうさん”とか名前しかわからないの」 作り出した弾丸を銃に込め的に向かって構える。シエスタが後ろについて固定。 パァン、と軽いほおを張るような音、的の少し上側が粉々に吹き飛ぶ。 「思ったより反動がないわね」 「火薬が弱いって本当なんですね」 ふうむと銃を見薬莢を口に放り込む。ゴリゴリと咀嚼し再度銃弾を生成、装てんする。 もう一度構えて発射、今度は的の下方が破裂した。 「微妙な出来ね。やっぱりあれをやってみるか。実は十二番のやつね」 「用意しときます」 かさかさと小屋へ向かうシエスタを見やり、ルイズは銃をくわえて噛み砕いていく。 小屋の中でシエスタが実と鋼を用意していた。 机にはルイズの手記、『無機物への悪魔の実の適応方法』 「ところでルイズ、使い魔の品評会はどうするの?」 「カツ丼を出すわ」 「……あれはペットでしょ?」 「黙ってればわからないもの」 back / next
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1350.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ その日の午後の授業は使い魔とのコミュニケーションのために休講となっている。 学園の庭では二年生達は使い魔と思い思いに過ごしている。 その中でギーシュは自分の使い魔のジャイアントモールのヴェルダンデがいかに素晴らしいかをテーブルの向かいに座っているモンモランシーに熱く、そして暑苦しく語っていた。 知的な瞳だとか、官能的なさわり心地といったギーシュにしか解らないようなモグラの魅力を聞かされたモンモランシーはうんざりしていたが、 「君の使い魔もキュートなところが君にそっくりだよ」 などと言われると悪い気は全くしなかった。 「相変わらずお上手ね」 と、全部わかっているように言うのもギーシュの次のお世辞を引き出すためだ。 「僕は君の瞳には嘘はつけないよ」 定番の麗句を聞いたモンモランシーは気になることを思い出す。 本当だろうか、と思って問いただすことにした。 「でも、最近一年生ともつきあってるって噂を聞いたんだけど」 ぎく。 あからさまにギーシュの体と声が硬くなる。 「バカなことを、君への思いに裏表なんて……」 モンモランシーの脳細胞がその言葉の裏にあるものを察知し目がつり上がる直前、ギーシュとモンモランシーの間にある机が轟音を立て、破片と土煙を周囲にぶちまけた。 ついでにモンモランシーの頭からは自分がなにを察知したかが吹っ飛んでしまった。 ギーシュとモンモランシーの間にあった机だったものは周囲の生徒と使い魔の注目を集めることとなった。 土煙が立ちこめる中、皆が無責任にそこでなにが起こったか想像を始める。 隕石が落ちたのか? いや、地下から怪物出現か? いやいや、ギーシュに怒ったモンモランシーが香水で破壊したのか? どんな香水かは不明だが。 だが煙が晴れるとその場にいた全員が納得することとなった。 「いったーい」 そこにはルイズがいたからだ。 ルイズと言えば爆発。爆発と言えばルイズ。 なので、ここで爆発が起こったのは何ら不思議ではないと言うわけだ。 ユーノを肩に乗せながらテーブルの残骸を杖に腰をさすって立ち上がったルイズは、近くの見知ったメイドであるところのシエスタを見つけた。 「そこのあなた」 「は、はい」 「湿布持ってきて。腰、打っちゃたのよ。いたた」 あわてて走っていくシエスタを見送ったルイズはやっとテーブルだった残骸を手放し、自分の足で立ち上がった。 そこでやっとその場にいる全員がルイズを注目しているのに気づく。 周りを見回したルイズは手を組んで少し考え、一言言った。 「ちょっと失敗しちゃった」 周りの生徒達は一斉に叫んだ。 「どういう失敗だ!!」 ほとんどのものはそれですませたが、ギーシュはそれでは収まらない。 驚いてそばに来ているモンモランシーの肩を抱いて、かっこいいと思っている角度でルイズに顔を向ける。 「だいたい、そこで君はなにをしていたんだね」 「ちょっと魔法の練習をしていたのよ」 モンモランシーが不安げに自分の方を見ている……と思い込んだギーシュはルイズに次の言葉をぶつける。 「君が魔法の練習を?よしたまえ。爆発を起こすだけじゃないか。見たまえ。モンモランシーもおびえている」 今のセリフはかっこいい……と思ったギーシュが後を続けようとしたができなかった。 ルイズをはさんだ向かい側にバスケットを持ったケティがいたからだ。 「ギーシュ様……その方……一体……せっかく」 「こ、これは……いや、その」 あわてるギーシュにモンモランシーが追い打ちをかける。 「ギーシュ……さっきの噂、やっぱり」 モンモランシーは頭から吹っ飛んだはずのことを思い出していた。 「ギーシュ様酷い……そんな方がおられたなんて……私だけって言ったのに」 それを聞いたモンモランシーはギーシュを睨みつけた。逃げたくなるような目つきで。 「あなた、さっき、私に同じようなこと言ってたわね」 「そんな、この方にも?嘘ですよね?ギーシュ様」 ルイズのことなど、すでにもうどうでもよくなった二人がギーシュをさらに追い詰める。 「落ち着いてくれたまえ。二人とも。これにはわけが……」 あるはずがない。 「うそつきっ」「うそつきっ」 二人は同時にギーシュの頬に手のひらを見舞った。 モンモランシーは右に。 ケティは左に。 ギーシュの両頬に微妙に形の違う赤い手形が2つできた。 「ふんっ」「ふんっ」 呆然とするギーシュを置いて、二人は近づきたくない雰囲気を纏いどこかに行ってしまう。 「ま、待ってくれたまえっ」 ようやく気づいたギーシュは青い石を中心に置いた薔薇を着けた杖を振り回しながら二人を追いかけていった。 状況において行かれたルイズは走っていくギーシュを見ていた。 次第に視線が一点に集まっていく。 ギーシュの振り回している杖の先についた薔薇。 その中心にある青い石に。 「あーーーーーっ」「あーーーーーっ」 ユーノは思わず声を出す。 あわててルイズがユーノの口を押さえて周りの生徒を見る。 どうやら誰も気づいていないようだ。 (ルイズ、今の) 気づかれないように今度は念話を使う。 (わかってるわ。あれって、ジュエルシードよね) (うん、間違いない) ルイズは走り出す。 「ちょっと、ギーシュ!待ちなさいよ!!」 ルイズもいなくなってしまった。 そこにいる生徒達は状況が読めていなかった。 そして、その中にはキュルケもいた。 「なによ、あの四人」 とりあえず状況を整理するが何が何だかよくわからない。 悩むキュルケに話しかける者がいた。 「あの、ミス・ヴァリエールがどこに行かれたか、ご存じありませんか?」 キュルケは名前は知らないがシエスタだ。 「あー、あの娘ならさっきあっちに走っていったわよ」 「ありがとうございます」 シエスタは一礼してルイズを追っていった。 「ふーん」 キュルケは考える。 恋のもつれでどこかに行ったモンモランシーとケティ。 それを追って行ったギーシュ。 さらに、そのギーシュを追って行ったルイズ。 さらにさらに、ルイズを追いかけていったメイド。 なにが起こっているのかさっぱり解らなかったが1つ解ることがあった。 「なにか面白そうじゃない」 キュルケは一言つぶやいて口の両端をあげると、メイドを追っていった。 他の生徒達も考える。 そしてキュルケと同じように笑うと、キュルケを追って走って行った。 「ギーシュ!ちょっと待ちなさい!」 ギーシュは自分を呼び止めるルイズの声を無視した。 「待ちなさいよ!」 待っていられるはずがない。 角をいくつか曲がっているうちにケティを見失ってしまった。 今、ギーシュが追いかけているのはモンモランシーだ。 走って追いかけてヴェストリの広場まで来てしまった。 「待ってって言ってるでしょ!聞こえないの?」 ヴェストリの広場は昼間でも人が少なく、今は誰もない。 おかげでルイズの声がよく響く。 「いいかげん止まりなさいよ!ギーシュ・ド・グラモン !!!」 あまりにうるさいのでとうとう振り向くことにした。 「ええい、いったい何のようなんだね。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」 立ち止まったギーシュにルイズが走って追いつく。 「貴族たるもの、マントを振り乱して大声を出すものじゃない。それに僕は今忙しいんだ。後にしてくれたまえ」 だがルイズはそんなことは聞かない。 「あなたの杖の先についているそれ!」 呼吸を落ち着かせてすかさず話し始める。 「この薔薇かい?」 「ちがうわ。その薔薇の中に入れている青い石。それ返して!」 「この石を?」 「そうよ!早く返して」 「ふむ」 公爵家の娘の持ち物にしてはみすぼらしい気もするが、そんなものをここまで追いかけてくると言うことはルイズの持ち物なのかも知れない。 それに、どうせ拾ったものだ。 気に入ってはいるが無理に自分のものにするほどの物でもない。 「いいだろう。ただし……」 授業では爆発に見舞われた。 さっきはルイズにモンモランシーとの会話をぶちこわされた。 少しくらい意地の悪いことをしてもいいだろう。 そう考えたギーシュは杖を振る。 「僕のワルキューレと話し合ってからにするといい」 一枚の花びらと青い石が宙を舞った。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ