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浮気者のギーシュが、ケティとモンモランシーからワインとビンタを御馳走されるまで、ルイズはただそこに呆れた視線を向けていた。 冷めた目が次に捉えたのが、ギーシュから叱責される自分の使い魔だと知り、慌てて席を立った。 叱責の理由を聞けば、自分の使い魔がギーシュの落とした香水瓶を拾ったから、そのせいで浮気がバレたなどとくだらない理由で。 取りなす目的も忘れて、ギーシュに呆れて見せた。それに噛みついてくるギーシュに、自分のコンプレックスを笑われる。 激昂し、噛みつき返してしまいそうになった時…ルイズは隣に立つ、自分の使い魔である少女に制止された。 「あの…」 「なんだい、使い魔君。謝るのなら早くしてくれないか」 そこでルイズはハッとした。理不尽な理由だが平民である以上、この子は貴族には逆らえないんだ。 キュッと唇を噛んで、ルイズは一歩下がった。悔しいけれど、ここで大人にならなくちゃダメだ。 ギーシュに向き直った使い魔の背中を見て、ルイズはそう思っていた。だが。 「ギーシュさん、浮気してたんですか?」 一瞬場の空気が止まった。 「…なんだ、話をそらすつもりかい?」 額に青筋を立てて、あああれは怒っているなーと、一目で分かるギーシュを前に、ルイズの使い魔はキョトンとした様子で答えた。 今の今まで目の前で修羅場を見ていたのに、鈍すぎやしないか。 「ビンタした子とワインをかけた子、ギーシュさんは二人の方と付き合っていたんですよね?浮気はいけませんよ。ていうか、厚顔無恥?」 付け足された最後の言葉にルイズの口端が引き攣る。 彼女の言葉はここに相応しくないけれど、その様子は話をそらそうとしているようにはとても思えなかった。 むしろちょっとオドオドして、確信の持てないことを恐る恐る確認するような、そんな気配がある。だけど!ええええ!? 「き、きききき君は…!!」 「ちょちょちょちょちょっとあんた!!」 ギーシュの青筋が切れる音がして、事の成行きに狼狽したルイズが慌てて彼女の腕を掴む。 「大丈夫ですよ」 だが彼女はそのどちらにも応じず、笑顔を作り鷹揚に構え、言ってのけた。 「きっと一生懸命謝れば、許してもらえます。ていうか、誠心誠意?」 その言葉と、太陽のように燦然と輝く笑顔がギーシュを襲った。 自分の起こした行動がとても幼稚なものだと分かっていた。 分かっていても、他人に自分の罪をなすり付けて、謝らせて、それで憂さ晴らしがしたいと思っていた。 自分は決して、間違っていない。間違いは愚かな平民のせいにしたかった。 でも、ルイズの使い魔の、善良で温かで清らかな笑顔と言葉が、その思いに暗雲を呼んでくる。 「そんな目で僕を見るなぁぁ!ぼ、僕は…僕はっ!なんてちっぽけで!惨めな人間なんだああああああ!!」 彼女から放たれる清浄な光に当てられて、ギーシュは自分自身の深い闇に囚われる。 負の感情を自覚させられ、絶叫とともに膝から崩れ落ちたギーシュは、両手で髪を掻き毟った。 ギーシュを怒らせる決定的な言葉を予想していたルイズは、掴んだ腕もそのままに呆然としていた。 よく見ればまわりの複数の生徒も自分の胸を押さえて悶えている。 喧嘩ばかりのマリコルヌまで、ルイズに向かって「こんなに汚い自分でごめんなさい」と謝ってくる。 思わず自分の使い魔の顔を見上げる。彼女は 、ギーシュの様子に戸惑っているように見えた。 「えっと…無自覚なの?」 「?なにがですか?…それよりギーシュさんが…ていうか、千辛万苦?」 「……」 自分の使い魔をちょっぴり怖い、と思ったルイズだった。 昔昔、ある男が突拍子もない予言をした。 1999年7か月 空から恐怖の大王が来るだろう アンゴルモアの大王を蘇らせ マルスの前後に首尾よく支配するために それから何百年も経った世界で、予言は風のように人々の話題をさらい、瞬く間に「審判の日」は人々に訪れた。 滅びにわずかな期待を抱く者、終末を叫ぶ者、気にもかけず日常を過ごす者がいた中で、世界は何事もなかったかのようにその日を終えた。 …だが、そんな予言も存在しなかった世界ハルケギニアに、アンゴルモアの大王は舞い降りた。 「ルイズさん、こちらの月って二つあるんですねー」 不思議な杖に二人して腰掛けて夜の空を散歩中。時々吹くおだやかな風に目を細めていたルイズに、彼女の使い魔は問いかけた。 「こちらって…あんた時々変なこと言うわよね。二つあって当たり前じゃない」 「そうなんですかー…ルイズさん」 「なぁに?」 「どっちかの月、砕いてもいいですか?」 その言葉に耳を疑ったルイズが息を詰める。月を砕く?つきをくだく? 沈黙のあと、ルイズは吹き出した。 突拍子もなくスケールの大きい話に、まだ彼女の事を「マジックアイテムを使える変わった平民」としか思っていなかったルイズはそれを冗談ととったからだ。 「っ、あはははは!いっ、いいわよ、なんならこの杖で月まで行って、私の爆発魔法で割っちゃうの。…っふふ、そうね、一個あれば十分かもね」 杖の上から落ちそうになるくらい体を震わせて、ルイズは笑った。 星を落としたらすごく爽快かもしれない。それに、自分の魔法も認めてもらえるかもと、ほんの少しだけ考えながら。 「そうですね、ぜひ協力して下さい!ていうか、相互扶助?」 澄み切った瞳で答える使い魔に笑みを向けた後、ルイズは顔をあげた。二人は双子の月を見上げる。 「…元の世界に帰りたい?」 「…ルイズさん?」 「か、帰るなって言ってるわけじゃなくて、ただ、あんたの気持ちはどうなのよっ!?」 言われて答えに詰まった使い魔に、ルイズは自分の心に影が差すのを感じた。 心の震えを見せないように、目線だけは相変わらず月を見上げていたけれど。 「私は…私には、大好きな人がいます…その人の所に帰りたいなって思います…でも」 「……でも?」 「きっとこの世界に、私のやるべきことがあると思うんです。だから、それをやり終えるまでルイズさんと一緒にいます。…ていうか、今輪奈落?」 最後に付け足された言葉の意味はルイズには分からなかった。けれど、それが悪い意味な筈ないじゃない、と笑う。 使い魔も笑う。その表情に偽りなく、まっさらな気持ちを込めながら。 「ケロロ軍曹」よりアンゴル=モアを召喚
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ルイージ とは、マリオシリーズのキャラクター。 プロフィール 作品別 黎明期 アクションのマリオシリーズ マリオカートシリーズ マリオRPG系 ペーパーマリオ マリオパーティシリーズ ルイージマンションシリーズ その他のマリオシリーズ 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ その他の作品 ゲーム以外 能力・武器 武器・使用技 変身 おもなセリフ 説明文 元ネタ推測 関連キャラクター 関連マシン 外部リンク 関連商品 コメント プロフィール ルイージ 他言語 Luigi (英語) 性別 男 職業 配管工 所属 キノコ王国 声優 『ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ』 チャールズ・マーティネー『マリオカート64』(日本版)など ジュリアン・バーダコフ『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』 ケビン・アフガニ 初登場 【マリオブラザーズ】 【マリオ】の弟。「L」が描かれた緑の帽子と細長い体型が特徴。 マリオとほぼ同等の身体能力を持つが、ジャンプ力に優れている反面、足が滑りやすいという差異を持つ場合がある。 性格は臆病で意気地なしでお化けが苦手。ただし兄のためなら勇気を振り絞る事も。 配管工としての服装はマリオと同じだが、帽子やシャツの色が異なる。オーバーオールの色が異なる作品もある。 一人称はマリオと同様の「ぼく」。年齢はおよそ26歳前後。【デイジー】とは仲が良い。 作品別 初期の頃は単なる色違いでキャラクター性も持たなかったが、『スーパーマリオRPG』での扱いを皮切りに「地味な二番手」としてのキャラクターを完全に確立。 ゲーム業界どころかフィクション業界全体で見ても「二番手」の代名詞としてトップクラスの知名度を誇るようになった。 黎明期 【マリオブラザーズ】 2Pキャラクターとして初登場。今とは帽子とオーバーオールのカラーリングが異なる。 マリオとの性能差は無い。 VS.レッキングクルー 対戦相手として登場する。COMか2Pが操作する。何故か紫・ピンク系の色の服のキャラクターになっている。 【レッキングクルー】 『VS.レッキングクルー』の時の立ち位置はスパイク(旧ブラッキー)に譲っており、今回は操作キャラのみとして登場。 説明書にもしっかり2Pキャラクターとして載っており、2P開始時も「LUIGI START」表示される。しかし色は紫・ピンク系のままである。 アクションのマリオシリーズ 2Pキャラクターとして出る場合は性能差は殆どない。 【スーパーマリオブラザーズ】 2Pキャラクター。性能差は無い。 【スーパーマリオブラザーズ2】 本作は一人用なのでマリオとの選択式。マリオと比べるとジャンプ力に優れるが、滑りやすくブレーキをかけ難い。 ダッシュジャンプが苦手な人向けのキャラクターである。 ステージによってはルイージの方が有利に進める場合もあるが、足場が狭いステージではブレーキのかけ難さが足を引っ張る事も多い。 【スーパーマリオブラザーズ3】 2Pキャラクターに戻ったので性能差は無い。パッケージや説明書のイラストでは明確にマリオと異なる顔になっているが、ゲーム中のドット絵ではマリオの色違いになっている。 【スーパーマリオワールド】 2Pキャラクター。性能差は無い。イラストとドット絵の関係も前作と同様。 ストーリーではマリオや【ピーチ】と一緒に恐竜ランドにバカンスに来た事になっている。 彼も【ヨッシー】に乗れる。 説明書にはきちんと「ルイージ」と表記されているが、ゲーム中はなぜかルイジと表記されている。(*1) 【スーパーマリオUSA】 ママのポジションで登場。ジャンプ力が高い。本作のバタ足ジャンプは以降のシリーズでも採用される事も。 本作で初めてマリオとドット絵が差別化されて細長くなり、以降のシリーズでもこれを基準として細長い顔になっている。 なお、日本国外では『SUPER MARIO BROS.2』としてこちらが『スーパーマリオブラザース3』よりも先に発売しているため、日本国外では1度マリオと別の顔になったルイージがまだマリオと同じ顔に戻るという現象が起きていたと考えられる。 【スーパーマリオコレクション】 全作品でマリオとドット絵が差別化されている。 北米等で発売した『Super Mario All-Stars + Super Mario World』版の『Super Mario World』でもドット絵が変更された。 【スーパーマリオアドバンス】シリーズ 付属の『マリオブラザーズ』のタイトル画面に出ているが、実際のゲーム内では2Pが緑色のマリオになっているため出番がない。 【スーパーマリオアドバンス2】 本編ではドット絵が描き直され、変身の性能がマリオのものと少し違うようになっている。ジャンプ力がマリオより少し高い。 ヨッシーに乗っている時も、食べた敵が【ノコノコ】の甲羅と同じように一定時間口の中に含まれるようになり、敵を吐いて攻撃する事も出来る。 【スーパーマリオアドバンス4】 ドット絵が描き直されているが、普段の性能はマリオと同じ。 ただし、「コースカード」モードでは『スーパーマリオアドバンス2』と同様に性能が変化するようになっている。 また、「おたすけカード」の「ルイージPOWER UP!!」を読み込ませることで通常のコースにおいても性能変化が反映される。 【New スーパーマリオブラザーズ】 「マリオVSルイージ」モードに登場する他、ストーリーモードではL+Rを押しながら開始するとマリオがルイージに変わる。 このコマンドは、『THE END』画面に表示される。知っていれば最初から使える。 性能差は特に無いが、ボイスはルイージのものになる。 一部のミニゲームにも登場している。 【New スーパーマリオブラザーズ Wii】 いつもどおり2Pキャラクター。性能差は無い。 一人用ではおてほんプレイ要員で登場。操作する場合、おてほんプレイを中断させる事で使用できる。 【New スーパーマリオブラザーズ 2】 ゲームクリア後に、ゲームモード選択画面でL+Rを押しながら「ひとりであそぶ」を選ぶと、ルイージでプレイ可能になる。性能はマリオと同じ。 「ふたりであそぶ」モードではマリオと一緒に冒険する。 【New スーパーマリオブラザーズ U】 2P~4Pキャラとして操作可能。性能はマリオと同じ。 【New スーパールイージ U】? ルイージの年としてのフィーチャー作品のひとつ。横スクロールアクションゲームで初めての主役になった。他のプレイヤーキャラの性能が彼に合わせられる。 この作品ではマリオが帽子しか登場しない。 【New スーパーマリオブラザーズ U デラックス】? 『New スーパーマリオブラザーズ U』側でも1Pキャラとしても操作可能。 【スーパーマリオメーカー】? キャラマリオとして登場。効果音が『ルイージマンション』基準に変わる。 30周年版のマリオの【amiibo】を使用した場合、どういうわけか一部の敵(確認されているのは【ジュゲム】と【キラー】)が彼に置き換わる。 【スーパーマリオメーカー 2】? 前作のビルダーマリオのように、建築作業服を着ている。 ストーリーモードでは同じコースで2回ミスするとおたすけパーツを用意して助けてくれたり、ゲームオーバーになると勝手にクリアにしてくれるか聞いてくるお助けキャラになっている。 マルチプレイでは2Pのプレイヤーキャラとして、いつものルイージを操作することになる。『ワールド』スキンのグラフィックが、今までの物と異なっている。 【スーパーマリオ ラン】? ワールドを購入するか、みどりキノピオとむらさきキノピオをそれぞれ150体以上集めた後に彼の家を購入すれば、プレイヤーキャラとして使用可能になる。 マリオと同じく最初はチビ状態で始まる。ジャンプ力が高く、上へ進むコースでは高所に素早く行ける。 【スーパーマリオブラザーズ ワンダー】 操作キャラクターの1人。性能はマリオと同じ。 声優が「ケビン・アフガニ」氏に変更された。 + 解析情報 【スーパーマリオ64】 本作にも登場予定だったが、複雑な地形との両立が難しい為カットされた。 【スーパーマリオ64DS】 操作キャラクターの一人。マリオに比べてスピードで劣るがジャンプで勝る。また、いつもの通り滑りやすいのも特徴。更に泳ぎが速い。説明書によると「マリオに比べてジャンプで勝るがパワーで劣り重いものを運ぶのは苦手」と書かれているが、プレイしていてパワーで劣る面を実感するような場面は殆どない。 「きょうふ!キングテレサ」をクリアして鍵を手に入れれば使用可能になる。 パワーフラワーを取ると、一定時間透明ルイージに変身できる。これでないと【ワリオ】を助け出すことができない。 それ以外に特筆すべき能力はバック宙時に自動発動するクルクルジャンプ。リメイク元となった【スーパーマリオ64】に順守して作られているステージ構成の殆どを無視して強引に攻略できる凶悪性能を秘める。 その反面マリオと違ってカベキックはできないので、ジャンプ力の高さを活かして高所に上るというよりは、高い所から低い所に行く方が得意。 非常に使いやすいキャラクターなのだが、【キノピオ】達やボスキャラ等からは影が薄いだの頼りないだの好き勝手言われる。 ミニゲームモードではカードゲーム系で服装が変化する。 【スーパーマリオギャラクシー】 ファントムギャラクシーで救出すると手紙を出すようになり、三箇所のギャラクシーで迷子になっている。 パワースターを120個集めると二週目要素でパラレルワールドの操作キャラクターとして使用可能になるが、元のルイージはそのまま残っており、もう一人のルイージとして本人含め誰からも気にされずに存在している。 何故何も言われない。 マリオより高くジャンプできるが、足が滑るのが難点。水中でスピンすると酸素メーターが速く減る。 ちなみにプレイヤーキャラの方が微妙に足が短い(大きさはマリオとNPCルイージの中間)。 【スーパーマリオギャラクシー 2】 パワースターを30個以上集め、クッパの溶岩帝国をクリアしていると、一部のギャラクシーに登場するようになる。彼に話しかければマリオの代わりに彼を操作する事が出来る。 クッパの新銀河帝国をクリアすると、【星船マリオ】の後頭部にあたる扉からマリオと交代して使用できるようになる。 運動性能などは『スーパーマリオギャラクシー』と同じ。 彼を操作している間は、ヒントテレビや【おたすけウィッチ】は出ない。 彼で各シナリオをクリアすると、彼のスタッフゴーストが現れるようになる。また、彼を使わないでいると【ルーバ】から「僕も活躍したいのに」といじけてることを言われる。 【スーパーマリオ 3Dランド】 クッパ軍に捕まってしまう。S1-城をクリアすると交代できるようになる。 本作の彼の性能は、『スーパーマリオブラザーズ2』に似ている。スーパーこのはを取るとタヌキ…ではなく、キツネルイージに変わる。 【スーパーマリオ 3Dワールド】 本作でもプレイヤーキャラを務めており、『スーパーマリオUSA』寄りの性能になっている。勿論スーパーこのはを取ると、キツネルイージに変身する。 また、隠しゲーム『ルイージブラザーズ』ではマリオが登場せず、1P側・2P側両方共にルイージとなっている。 1P側は現行のモダンカラー(緑の帽子・シャツに青いつなぎ)のルイージ、2P側は旧来のクラシックカラー(白い帽子・シャツに緑のつなぎ)のルイージとなっている。 【スーパーマリオ オデッセイ】? ルイージのamiiboを使用すると衣装が手に入る。 アップデートで追加された「ルイージのバルーンファインド」で本人も登場する。 なお、バルーンファインドとはコースに隠された風船を見つけ出すミニゲームだが、ルイージの「体に風船をくくり付けて浮いている姿」は明らかにバルーンファイトを意識している。 マリオカートシリーズ マリオと同じく中量級=バランス型だが、細かい性能差が付いている作品では何故かマリオを上回っていることも。 現時点で隠しドライバーとして登場した事は無い。 【スーパーマリオカート】 マリオと同性能。最高速度と重量と旋回が2位、初期加速が軽量級寄りの3位と、基本性能を重視した標準性能タイプ。 しかし、何故か後期加速と半数以上のダート耐性が最下位のため、ちょっとしたミスでも命取りになりやすい。 CPUの時は、2周目以降にスターを使用する事がある。 【マリオカート64】 中量級キャラの一人。声が付いたが微妙に高い。 本作の中量級は、軽量級に加速と旋回と最高速度で劣り、重量級には後期加速と重量で劣る。 しかもルイージは重量もピーチやヨッシーに近く、彼らに衝突すると何故か自分もスピンしてしまう。要するに最弱キャラ。 【マリオカートアドバンス】 中量級。今回もマリオと同性能…と思いきや、何故か曲がりやすさが凄まじいことになっている。 【ウエーブレース64】の【マイルス・ジェッター】のような立ち位置だが、他の性能はマリオとほぼ同じ。つまりマリオの上位互換。 【マリオカート ダブルダッシュ!!】 中量級。ここから声が低くなる。骨格とモーションがマリオと共通のため、足が短い。 スペシャルアイテムはマリオと同じく「ファイアボール」だが、ルイージが入手した場合のみ『スマブラ』のように緑色になる。 所有カートはスピード特化型の【グリーンファイアー】。 【マリオカートDS】 中量級。カートは【スタンダードLG】、【オバキューム】、【ストリームライン】。 ドリフト以外の全性能でマリオを上回っており、特にスタンダードLGとオバキュームはかなり強い。 ただ、今回は誰でも全てのカートに乗れるため、キャラ格差的には『アドバンス』ほどの優遇では無いか。 【マリオカートWii】 中量級。キャラ性能はおもさ+2、スピード+1、ついでにすべりにくさ+1。 補正がかかる部分はマリオより少ないが、対戦ではスピード補正があるだけでもありがたい。 【マリオカート7】 中量級。マリオとは骨格と一部モーションが共通している。 性能はマリオと同じ。配分の関係で、かそくとおもさの性能が平均寄りになりやすい。 【マリオカート8】 中量級。骨格とモーションがマリオと完全に差別化され、足が長くなった。 ステータスはマリオ/【イギー】/【ルドウィッグ】/【Mii】(中型)と共有されている。 【マリオカート8 デラックス】 『マリオカート8』とほぼ同じ。ステータスはイギーや【カメック】と共有されており、マリオとは若干違う。 【マリオカート ツアー】 なんと初期実装キャラではない。 「ハロウィンツアー」から登場。レアリティとスペシャルスキルはマリオと同じだが、得意なコースは異なる。 + バリエーション ペンギンルイージ 「アイスツアー(1回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「アイスフラワー」。 ルイージ(クラシック) 「マリオブラザーズツアー」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「ラッキー7」。 ビルダールイージ 「マリオVSルイージツアー(1回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「ハンマー」。 ルイージ(レーダーホーゼン)「ベルリンツアー」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「トリプルダッシュキノコ」。 ルイージ(ペイント)「パリツアー(2回目)」から追加。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「ラッキー7」。 ルイージ(バケーション) 「シンガポールツアー」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「ブーメランフラワー」。 ルイージ(ゴルフ) 「ロサンゼルスツアー(3回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「ダブルボムへい」。 ドクタールイージ 「ドクターツアー(1回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「カプセル」。 ネコルイージ 「ネコツアー(2回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「ギガボムへい」。 ルイージ(ナイト) 「マリオVSルイージツアー(2回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「ブーメランフラワー」。 ルイージ(コック) 「バトルツアー(1回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「トリプルバナナ」。 キツネルイージ 「アニマルツアー(1回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「スーパーこのは」。 ルイージ(ゴールドナイト) 「マリオVSルイージツアー(3回目)」から登場。レアリティはウルトラレアで、スペシャルスキルは「コインボックス」。 【マリオカート ライブ ホームサーキット】 ルイージセットでは、実物のラジコンカーにルイージが乗っている。 Ver.2.0.0までは他のキャラクターを操作できなかったため、この作品の影響で『マリオカートシリーズ』の皆勤賞がマリオとルイージのみになってしまった時期があった。 【マリオカート アーケードグランプリ】? 標準性能タイプ。専用アイテムはマリオと同じ「ファイアボール」、「ハンマー」、「スター」、【ワンワン】、「ブロック」、「コイン」。 【マリオカート アーケードグランプリ2】? 標準性能タイプ。スターは全キャラ共通の無敵アイテムになった。 【マリオカート アーケードグランプリDX】? バランスタイプ。きせかえバリエーションとして「アイスルイージ」がいる。 アイスルイージ 特別なスペシャルコード(QRコード)を読み込むと使用可能になる。専用アイテムは「アイスボール」。 マリオRPG系 ペーパーマリオ 『マリオ ルイージRPGシリーズ』では主役キャラの1人であり、ボイスはあるがセリフが無い。 【スーパーマリオRPG】 説明書に登場。『スーパーマリオワールド』等と同じアートワークが使用されている。 ここでの会話内容ではマリオの事を呼び捨てにしているが、一人称が「ボク」であったり、影ながら応援していると発言したりと、ルイージらしいキャラクターのベースが見られる。 ゲーム中では本人は全く関わらないが、星のふる丘の願い星に彼の願いらしきものが存在しており、そこマリオのことを「兄さん」と呼んでいる。 EDではパレードの先頭を務める。 このように出番は全くないが、未知数だったルイージのキャラクター性は本作である程度可視化されており、「ただの色違い2Pキャラ」という扱いからの転機になったと言っても差し支えない。 発売前のスクリーンショットには彼らしき姿が数点確認されているため、開発時は何かしらの出番があったようである。 【マリオストーリー】 今回はゲーム内に登場。マリオの家で暮らしている。 何かと臆病だったり、マリオを「兄さん」と呼んで慕っていたりと、現在のルイージとほぼ同様のキャラクター性が本作で確立されており、更に本作から「オバケが苦手」という設定が追加された。 マリオの家を改造して地下室を造っており、クルリンジャンプ習得後は地下室で彼の書いている日記を閲覧出来る。 ストーリーを進めると、メタルブロックや高い位置にあるレンガブロックに乗っていたする。何処からそんなもの持ってきたんだ。 EDではパレードの先頭を担当する。今作での彼の願いは「二段ベッドの上で寝る事」らしい。 【ペーパーマリオRPG】 ワッフル王国という国でエクレア姫を助けるために独自の冒険をしており、毎ステージ毎にゴロツキタウンで仲間を連れて話をしてくれる。 ……が、ルイージいじりが盛んな時期の作品だったためか、同行している仲間の話を聞く限り、どうにも周囲の人々に迷惑をかけまくっていたり、パッとしない活躍だったりと、なんとも締まらない冒険だった様子。 これらの冒険の内容は「スーパールイージ」という本で纏められているが、一部は都合の悪い部分は改変・脚色されている。 バトルでは観客として登場する事もあり、時々アイテムを投げる。 ステージ6終了時のクッパのサイドストーリーでも登場したり、カゲの女王でも彼と思われる声援がある。 大のルイージファンを自称する【キノビア】の依頼でも登場するが、当のキノビアはエムブレームLで変装したマリオを本物のルイージと思い込み、たまたま居合わせた本物の彼は偽物扱いにされてしまい泣きながら帰っていく。 スットンとりでのクイズでは、「ここにある物はなんだ」という問題に対し、誤回答の中に「ルイージのパンツ」なるものがある。どうしてそんなものが…。 まずかったのはわからないが、国外版では「Pickle Stone(漬け物石)」に変更されている。 EDでは過去作のパレードと同様に一番最初に登場している(全てシルエットであるためわかりづらいが、マリオにしては先頭のシルエットの背が高く、そのマリオ本人は最後尾に登場する)。 【ペーパーマリオRPG(Switch)】 観客時や会話時などのそこら中でボイスを喋るようになった。 ルイージいじりが概ね落ち着いた今の時代になってもGC版とほぼ同じ立場になっており、キノビアの依頼に至ってはボイスで反応を示すためにより際立っている。 エンディングが変更された事で先頭の役目は無くなった。 【スーパーペーパーマリオ】 『ペーパーマリオシリーズ』で唯一純粋にルイージを操作できる作品。相変わらず滑りやすい。 固有アクションのスーパージャンプが非常に強力で使いやすいキャラクター。スーパージャンプは『ペーパーマリオRPG』のジャバラジャンプのように高く跳べ、敵に体当たりすれば2倍のダメージを与えられる。上へ進むタイプのショートカットにも利用できる。 オープニングデモでは【ノワール伯爵】の野望を阻止しようと「コントンのラブパワー」に攻撃を仕掛け大爆発を引き起こしてしまう。 その後はぐれた仲間を探す途中で捕まってしまい、【ナスタシア】に洗脳されて【ミスターL】として立ちはだかる。 ミスターLとしての再戦後、【ディメーン】に殺され先にアンダーランドに来ており、マリオと再会し仲間になる。なお、ミスターLとしての記憶は残っていない様子。 ステージ8-3ではディメーンに挑発され、【フェアリン】の力も借りずにディメーンとタイマン勝負をする。 ラスボス戦では、コントンのラブパワーの力でディメーンと融合して【スーパーディメーン】となってしまうので、戦いに参加できない。 【ペーパーマリオ スーパーシール】 1-6、2-5、3-12、4-5、5-5に「隠れルイージ」として登場。 ペパライズで引き剥がす事ができ、剥がした後はどこかに消えて行ってしまう。EDで見つけたルイージの数が表示される。 見つける度に新聞の記事が追加される。一体何処の誰が彼に注目しているんだ。 EDでは旧作のようにパレードの先頭を務める。 【ペーパーマリオ カラースプラッシュ】 アイキキビーチ、ダイダイ谷、マッキーコロシアム、パ・プールていえん、マッカッ火口、グリングリンパワーラボの特定の場所でキリトリを使用すると登場する他、ストーリー終盤で【スタンダードカート】に乗って登場。 クロクッパ城までマリオを運んでくれる。クロクッパ城からイロドリアイランドへ行く時も彼のカートに乗って行く。 【ペーパーマリオ オリガミキング】 今回はマリオと一緒にピーチ城に向かうものの、いつの間にか壁の中に閉じ込められてしまっている。 デクの山に放り出されたマリオがピーチ城に向かうための動機となった。 救出後はピーチ城のカギを探すという名目で別行動を取り、各紙テープのエリアで別の重要なカギを渡してくれる。 空気を読めずに人の話を聞かない傾向にあるものの、話し相手がオリビアなので微妙に噛み合ってないまま話が進んでしまう。 そして肝心のピーチ城のカギはカートのノズルに刺さりっぱなしだったというオチが付く。 カラクリやしきやピーチ城に突入する際に仲間になるが一緒に戦う事は無い。 ピーチ城ではオープニングでマリオが落とされた落下トラップに引っかかって退場。 が、ED前では【オリガミ職人キノピオ】をオリガミ城に連れて来る活躍を見せる。 【マリオ ルイージRPG】 主役の一人。最初は留守番だけするつもりだったが、【クッパ】に無理やり連行させられる形でマリオと一緒に冒険に出る。 臆病な面は目立つものの進行には必要不可欠。マリオとの多彩なブラザーアクションが存在する。また、ストーリー面でも機転を効かせた作戦を立てるなどなかなかの頭脳派。単独行動する事もある。 ストーリー面では 緑のヒゲ 呼ばわりされる事が多く、マリオよりもネタ寄りのキャラとして扱われている。泣くシーンもかなり多い。 リトルキノコにてマメ熱にかかったマリオを助けに行く際はバクショー遺跡に自ら向かおうとするものの、バクショー遺跡にいる怪物(名称不明)の話を聞いてかなり怯えてしまうが、ピーチ姫に脅され結局行く事になった。【サイコカメック】の催眠魔法でマリオと思い込み、バクショー遺跡で怪物のストレス発散に付き合ってクラピコ草の入手に成功する。 ジョークエンドにてピーチ姫を救出する為に、マリオの提案でピーチに変装する事もある。【ふっかつカメジェット】内では【ゲラゲモーナ】に変装がバレるものの、クレーンなどで足止めしつつスタービーンズを奪還して脱出に成功する。但し着地には失敗して流砂に飲み込まれている。 【マメック王子】に気に入られた後は、マメック王子が出てくる度にアピールする事が多くなる。 【マリオ ルイージRPG2】 主人公の1人。本作でも留守番をしたがっていたが【キノじい】のベッドにぶつかられた事でマリオよりも先に過去の世界へと飛び込んでしまう。また、前作以上に扱いが酷い。 【ベビィルイージ】は本作のキーキャラクターだが、彼は別にそうでもない。 スターの丘ではスターゲートに試される場面がある。しかし彼だけやたらと責められまくる。 【マリオ ルイージRPG3!!!】 「臆病に見えるが勇気があり、動く時は動く」というキャラでデザインされているとの事。 初っ端からずっこけるなどややマヌケな一面も見える。クッパに吸い込まれた。クッパの体内と外の世界を行き来しながら冒険する。単独行動する場面もある。 【マリオ ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー】 ルイージの年に発売されたソフトだけあって、過去作の扱いが嘘であるかのようにめちゃくちゃフィーチャーされている。 夢世界は彼がマクラで眠ることで出現し、そこにマリオが潜り込むことになる。そのため本作ではかなり重要なキャラクター。 夢世界においては【ユメルイージ】が代わりに同行する。 ちなみに、本作のラストシーンでようやくクッパに名前を覚えてもらえた。 本作では留守番を嫌うキャラに変わっており、夢世界の底のメッセージについて任天堂のチェックが入り、ネガティブなものは削除されたとの事。 【マリオ ルイージRPG ペーパーマリオMIX】 彼がピーチ城の倉庫に保管されていた本を落としたことでペーパーキャラが本の中から飛び出してしまったので、ある意味本作の事件の元凶とも言える。 今回は兄が2人になったので心強く感じており、臆病な面は一人になった時以外は見られない。 前作の活躍のおかげか情けない描写はほとんどなくなったが、その代わり(?)敵味方共にスルーされることが多くなり、そのたびに自身の存在をアピールしたりいじけたりする。 ちなみにルイージに出会った際のクッパ軍団の対処法は「ひとまず様子見、自爆待ち」らしい。緑のヒゲとは呼ばれなくなった。 EDでは両方のピーチからダブルキスを貰う。 ペーパー版の方はサウンドプレイヤーのみに登場。 【マリオ ルイージRPG1 DX】 「クッパ軍団RPG」には登場しない。 【マリオ ルイージRPG3 DX】 「クッパJr.RPG」ではクエスト「マリオ&ルイージ」に登場する。 マリオパーティシリーズ 【マリオパーティ】 プレイヤーキャラの1人。 【マリオパーティ2】 CPUはアカズキーちゃんを好んで使う。 【マリオパーティ3】 ストーリーモードでは彼以外を選んだ場合、選んだキャラクターが本来担当するスタンプの代替キャラとして登場。つまり担当スタンプが無い。 逆に言えばルイージを操作キャラに選んだ場合のみ他の全員が本来のスタンプを担当するため、実質デフォルトキャラクターとして見る事もできる。 CPUはキーマンを好んで使う。 【マリオパーティ4】 CPU操作時はチビキノコやデカキノコをよく使う。 【マリオパーティ5】 タッグマッチでキノピオとチームを組んだ時のチーム名は「じみキノコーズ」。 【マリオパーティ6】 タッグマッチで【キノピコ】とチームを組んだ時のチーム名は「サブキャラだよねーズ」。 【マリオパーティ7】 【マリオパーティ8】 タッグマッチでキノピオとチームを組んだ時のチーム名が「グリーンキノコーズ」に変更された。 【マリオパーティ9】 【マリオパーティ10】? 【スーパー マリオパーティ】 ルイージ以外が操作キャラクターの場合はルイージを仲間にするという事ができるが、本作ではマリオと同様の無口系キャラクターとなっており喋らない。キノピオが解説をしてくれる。 【マリオパーティアドバンス】 【マリオパーティDS】 【マリオパーティ アイランドツアー】? 【マリオパーティ スターラッシュ】? 【マリオパーティ100 ミニゲームコレクション】? Mario Party-e 本作ではプレイヤーキャラではない。ミニゲームの「Mario s Mallet」に登場。 ルイージマンションシリーズ 毎回【オヤ・マー博士】に、屋敷などの調査とオバケ集めを任されている。 【ルイージマンション】 日本国内の作品では初めての単独主人公。オバキュームなどを装備して、オバケだらけの洋館を探索する事になる。ジャンプ系アクションは出来ない。 【テレサ】や【キングテレサ】と対決し、キングテレサとの因縁が始まる。 【ルイージマンション2】 本作では暴走したオバケ達を止めるため5種類の建物を探索する。鍵を奪った【オバ犬】を追いかける事になったりと苦労している。 オバケを吸い込んでいる間なら、回避行動としてジャンプが可能。 「テラータワー」モードでは色違いのルイージたちと協力し、オバケを捕まえたり仕掛けを解いていく。 【ルイージマンション アーケード】? 色違いのルイージが2Pキャラとして登場。ノロワ~レ大樹やヒャッキ~ヤ坑道は探索しない。 【ルイージマンション(3DS)】 【グーイージ】が2Pキャラとして登場し、彼と協力して探索する事も可能。 【ルイージマンション3】? 本作ではホテルを探索する。泊まった直後にキングテレサに追われたり【オバケネコ】を追ったりと案の定苦労している。オバ犬やグーイージも彼に協力してくれる。 その他のマリオシリーズ 【レッキングクルー 98】 ストーリーモードではエンディングにのみ登場。 クッパを倒した後は対戦モードとトーナメントモードで使用可能となる。 【スーパーマリオ ヨッシーアイランド】 ベビィルイージとして登場。さらわれたまんま最後まで帰ってこない。『ヨッシーアイランドシリーズ』ではほぼこの扱いである。 【ゴルフJAPANコース】 2Pキャラクター。1P(マリオ)との性能差は無い。 なお、続編の【ゴルフUSコース】では緑色のマリオが出てくるためルイージの出番は無い。 【マリオオープンゴルフ】 2Pキャラクター。説明書及びタイトル画面のみキャディーとしてデイジーを連れている。 ただし、ゲームプレイ中にグリーンの画面で表示されるキャディは誰であっても常にピーチとなる。 デイジーとの接点は『マリオテニス64』で再登場するまで本作でしかなかった。 説明書にはきちんと「ルイージ」と表記されているが、ゲーム中1Pモードでマッチプレイの対戦相手を選択する時はなぜかルイジと表記されている。また、1Pはマリオである事は明確なのにまるで他人相手の(それこそプレイヤーに向かっての)ような口調で話す。 【マリオゴルフ64】 操作キャラクターの一人。弾道はフェード、飛距離は220Y。キャラゲットでは最初に出てくる。 本作以降は声が低くなった。 【マリオゴルフ ファミリーツアー】 【マリオゴルフ ワールドツアー】? 飛距離は前作と同じ。 【マリオゴルフ スーパーラッシュ】 アイスルイージに変身し、アイスボールを打つ事も出来る。 【マリオズテニス】 当時では珍しくマリオと性能差がある。 【マリオテニス64】 ダブルスのパートナーはデイジー。オールラウンドタイプ。身長が高いので頭上付近のボールも返しやすい。 トーナメントで優勝すると走り回った後に転倒してしまう。 【マリオテニスGB】 珍しくクッパ相手に啖呵を切って喋るシーンがある。 【マリオテニスGC】 オールラウンドタイプ。コントロールに優れる。攻撃系スペシャルショットは「ピコピコハンマーショット」、防御系スペシャルショットは「オバキュームレシーブ」。 トーナメントで優勝するとマリオに足を踏まれてしまう。【ヘイホー】が優勝した場合は、仮面が外れた後の素顔を見て驚いてしまう。 【マリオテニス オープン】 オールラウンドタイプ。 【マリオテニス ウルトラスマッシュ】? 相変わらずボレーがすごく強く、なぜかロブが出しにくい仕様であるネット対戦では強キャラと名高い。 【マリオテニス エース】? オールラウンドタイプ。 ストーリーモードでは、エスターによって操られたワリオと【ワルイージ】が持ってきたエスターを手にし、操られてしまう。その為、今回は珍しく敵サイドであり、エスターカップでマリオと対峙する。当然、彼は完全な被害者なので、元に戻ったあとはお咎めはなしである。 【スーパーマリオスタジアム ミラクルベースボール】 メインキャラクター。バランスタイプで、だげき5、とうきゅう6、しゅび6、そうるい6。とくいプレイはオールマイティ、とくしゅプレイはカベジャンプ、スーパージャンプ。 【スーパーマリオスタジアム ファミリーベースボール】 メインキャラクター。右投 6、左打 6、守 7、走 7。スペシャル技は「たつまきボール」と「たつまきショット」、特殊アクションは「スーパージャンプ」。 【スーパーマリオストライカーズ】 キャプテンの1人。 【マリオストライカーズ チャージド】 キャプテンの1人。 【マリオストライカーズ バトルリーグ】 プレイヤーキャラの1人。テクニックタイプでパスがしやすい。 【マリオバスケ 3on3】 オールラウンドタイプ。スペシャルショットは「グリーンファイアシュート」。 【マリオ ソニック AT バンクーバーオリンピック】? DS版のアドベンチャーツアーズではクロスカントリーでの勝負に勝てば仲間になる。マリオの弟だからなのか、それとも他の作品の影響なのか、彼もセリフは無し。 【ヨッシーのたまご】 2Pキャラとして登場。 【スーパープリンセスピーチ】 【ブロスたいちょう】によってマリオ共々捕まえられ、【デカメック】に囚われている。 クッパ撃退後マリオの元へ駆寄ろうとするがピーチに突き飛ばされてしまう。 【役満DS】? 【Dr.LUIGI 細菌撲滅】? 主人公。本作ではいつもの緑色の帽子を被っている。 【Dr.MARIO ギャクテン!特効薬 細菌撲滅】? 【ドクターマリオ ワールド】 ドクターとして登場。2種類実装された。 ドクタールイージスカウトで排出される。ワールド4のスペシャルステージではクリア報酬として入手可能。 ステージモード Lの形にオブジェクトを消します VSモード レベル スキル効果 1 5秒間、相手がカプセルを回転できなくなります 2 8秒間に強化スキルゲージのたまる速度が小アップ! 3 11秒間に強化速度が中アップに上昇 4 大アップに上昇 5 14秒間に強化 ドクターファイアルイージファイアルイージが白衣を纏った姿。ドクタールイージと異なり帽子を被っている。スカウトで排出される。ワールド13のスペシャルステージではクリア報酬として入手可能。 ステージモード 一番左の縦1列と一番下の横1段を消します通常一回で消せないオブジェクトも消し去ります VSモード レベル スキル効果 1 一番左の縦1列と一番下の横1段を消します通常一回で消せないオブジェクトも消し去ります 2 スキルゲージのたまる速度が大アップ! 3 大アップに上昇 4 消す箇所が縦2列・横2段に強化速度は中アップに減少 5 大アップに上昇 いっしょにフォト スーパーマリオ 第2弾にて、2,000円分のプリペイドカードで販売された。 【マリオ+ラビッツ ラビッツキングダム】? 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ 本シリーズでは、いじられキャラという印象が強い。 【ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ】 隠しキャラクターだが、1人用モードのステージ4では普通に対戦相手として出てくる。 性能は今で言うマリオのダッシュファイターといった感じだが、「ファイアボール」がバウンドせずに低めの弾道で直進する、上必殺ワザの「スーパージャンプパンチ」が単発で至近距離だと「ファイアジャンプパンチ」に化ける、ダッシュ攻撃が「ぽこぽこパンチ」である等、現在へと引き継がれた要素は多い。重量は「100」。 キャラランクとしては【ドンキーコング】と最下位争いをするレベル。 飛びぬけて大きな欠点があるわけではないのだが、マリオからアレンジされた性能が全体的にデチューンとして働いてしまっており、ふんわりしたジャンプを始めとして全体的に低い機動力、コンボ火力の低さ、使い勝手が悪い飛び道具等、あらゆる要素がマイナス方向に噛み合ってしまっており、大した火力もないのに立ち回りが弱いというやれることの少ないキャラである。 ただし小ジャンプからのドリルキックからファイアジャンプパンチに繋げる一発逆転要素も持ち合わせているため、相手に回すと油断ならないキャラでもある。 ただし「ぽこぽこパンチ」は見た目の色物っぷりを上回るとんでもない低性能技であり、威力は低い、多段ヒット技なのに殆ど最後までつながらないため反撃が容易、後隙も絶大と悪いことだらけの封印推奨技。 プレイキャラ解禁時の「永遠の二番手、ルイージが使えるようになりました」のフレーズにおける「永遠の二番手」という二つ名があまりにもハマっており、完全に彼を象徴する言葉となった。 特徴的な「片足で小石を蹴る」ようなアピールには攻撃判定があり、崖つかまりしている相手にダメージを与える事もできる。日本国内のCMでも使用された。 【大乱闘スマッシュブラザーズDX】 隠しキャラクター。 弱攻撃3が「どんけつ」、上強攻撃が「ねこパンチ」、下強攻撃が「かかとげり」、横スマッシュ攻撃が「地獄突き」、前空中攻撃が「脳天チョップ」に変更された。スーパージャンプパンチが真上に上昇するようになった。新技として「ロケットずつき」に似た「ルイージロケット」を習得。 モーション等もどんどん差別化されて行き、更に【ドクターマリオ】も登場した事によりマリオの類似キャラという認識は薄れている。 地上での滑りやすさが上がり、滑りながら攻撃を繰り出す事も可能。 所謂「絶」とルイージの滑りやすい特性が非常マッチしており、異常な距離とスピードで常に滑りながら戦うという戦闘スタイルとなっている。 ルイージロケットには低確率で暴発して溜め無しでも、通常時の最大為以上の威力とスピードで突進することがあるという、非常にギャンブル要素が強い技。威力自体は申し分ないのだがあまりにも速すぎてランダムで発生するため、熟練プレイヤーでも中々制御できないという困りもの。 CPU操作ではドリルキックを多用するため妙に強く、CPU同士の対戦では乱闘させても重量級にすら勝ることも多いが、復帰時にルイージロケットしか使わず、低所でもスーパージャンプパンチは使用せず落ちていく。 「アドベンチャー」モードではキノコ王国-1で特定条件を満たすと、キノコ王国-2でマリオの代わりに彼のムービーが挿入され登場する。 本作以降は「緑の人気もの」という肩書が使われるようになったが、永遠の二番手がハマりすぎているため知名度はあまりない。 【大乱闘スマッシュブラザーズX】 隠しキャラクター。テクニカルなマリオに変わりバランスタイプになっている。重量は「97」に減少した。 最後の切りふだは謎のフィールドを出す「ネガティブゾーン」。完全にネタ技だが範囲はかなり広く、様々な状態異常をライバルにかけ続けることで大幅に弱体化させられる強烈な技である。 それ以外の性能はと言うと常時滑りながら攻撃するという、色物極まりない戦い方をしていた前作に比べるとかなりスタンダードなものになっており、搦手ばかり目立つようになったマリオに比べるとむしろこちらの方が初心者向けと言う声も。 ただし絶がなくなったことで普通にダッシュすることが増えたため、自殺技である「ぽこぽこパンチ」が暴発しやすくなったことに関しては注意が必要。 「亜空の使者」ではあまり出番はない。最初は【ワドルディ】にビビりまくりデデデの不意打ちハンマーを受けてフィギュア化する。その後はデデデ城にて他のキャラクターと共にデデデから時限式のブローチを鼻につけられる。 【タブー】と戦えるファイターがいなくなった後に例のブローチによって【ネス】と共に復活し、デデデも復活させて「大迷宮」に挑む。デフォルトでタブーに挑めるファイターの1体。 公式サイトでは 「今回は“永遠の二番手”ではなく、あえて“緑の人気もの”と呼ばせていただきましょう!!」 とネタキャラ扱いするのを控えるような言い方をしているが、シャドーモセス島の通信ではAIなのか本人なのかわからない大佐に「永遠の二番手だな」「いわゆる日陰者」「兄に勝る弟などいない!!」と散々弄り倒されていた。 【大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U】 初期ファイター。本作から、向きによってモーションが左右反転するようになっている。一部の動作が原作に近くなった。 弱攻撃1が「ジャブ」、弱攻撃2が「フック」、下投げが「ヒップドロップ」、最後の切りふだが「オバキューム」に変更された。 また、本作からいじけるアピールにメテオ効果が付与されただのアピールが大幅に強化された。 「ぽこぽこパンチ」がようやく最後までヒットするまともなダッシュ技となった。 特設リングでの通り名は「緑の人気もの」。『DX』のフィギュア解説文やお知らせで使われている。「永遠の二番手」ではないらしい。 エンジェランドの天界漫才ではナチュレに永遠の二番手呼ばわりされるものの、「これだけのファイターがいる中で二番手なら相当の強者だろう」とフォローされていた。 【大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL】 隠しファイター。空中での下必殺ワザの「ルイージサイクロン」の上昇量が減少するなど復帰面が弱体化。 ルイージの代名詞でもあった「滑りやすい」という特性がなくなり、他のキャラと同様の慣性で止まれるようになった。 弱攻撃2が「ストレート」、上強攻撃が「ねこアッパー」、投げがオバキュームに変更。『ルイージマンション3』のモデルが先行採用された。 つかみ攻撃は「オバキュームショック」、前投げは「オバキューム投げ」、後投げは「オバキューム反転投げ」、上投げは「オバキューム釣り」、下投げは「オバキュームドロップ」。 つかみ動作では縄付きのキューバンショットを発射するが、空中で発射してもワイヤー復帰は出来ない。 オバキューム関連のモーションは左右反転せず、右利きのモーションになる。 本作の彼を象徴するのがファイアジャンプパンチで〆る即死コンボで、 なんと入力ミスさえなければ0%で掴みが成立した相手を確定で即死させられる。 アップデートで修正こそ入ったものの、即死コンボそのものがなくなったわけではなく、理論上はあらゆるファイターを掴みさえすれば即死させられる恐るべき超火力キャラと化した。 ただしこれらのコンボは難易度が高い上に0%付近限定であり、一度でも失敗すると正攻法で撃墜まで持って行く必要がある。 即死コンボ抜きにしても相当高い火力を持つが、ルイージサイクロンの移動力の低下もあって復帰面は比べて弱体化したため、 安定した高火力キャラだった前作に比べるとかなりピーキーな性能になった。 キャラランク的には中の上~上の下あたりに位置するという声が多いが、問答無用で即死まで持って行くプレッシャーが凄まじいため「ルイージだけは相手にしたくない」と語るユーザーも多い。 「灯火の星」では、「闇の世界」の「謎の空間」で解放可能。 ファイタースピリットのアートワークは『マリオパーティ8』のもの。 また、アタッカースピリットやサポータースピリットが幾つか存在する。 その他の作品 【テトリス】 対戦モードで2Pキャラとして登場。 【F1レース】 GB版にて、コース3でレースが始まる直前に登場する。 【ファミコングランプリⅡ 3Dホットラリー】 パッケージ等のイラストではマリオと彼が車に乗っている事になっているが、ゲーム中はほとんど画面に映らない。車の修理中のみ画面に登場する。(マリオも同様) ちなみにこのアートワークでは、作画ミスで右手が6本指になっている。『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』に【MONSTER】?名義で収録されたイラストでは修正済み。 【ベースボール】 GB版でUSA MODEのR-EAGLESに選手として登場。LUIGI表記。 【ゼルダの伝説 夢をみる島】 【ニワトリ小屋のおじさん】?がルイージと酷似している。本作の時点では「似ている」程度だったが……。 【ゼルダの伝説 夢をみる島DX】 上記のおじさんの服が緑色と判明し、ますますルイージに近づいていく。 【ゼルダの伝説 夢をみる島(Switch)】? 上記のおじさんが完全にルイージそのものと言えるほど近いグラフィックに作り直されている。 【ゼルダの伝説 時のオカリナ】 ハイラル城の中庭にて、出入り口から右の窓を見ると奥に絵が飾られている。アートワークは『マリオカート64』のもの。 【ゼルダの伝説 時のオカリナ3D】?には無い。 【星のカービィ スーパーデラックス】/【星のカービィ ウルトラスーパーデラックス】 【デデデ大王】戦、かちわりメガトンパンチの背景に登場。 【零 ~月蝕の仮面~】? 【麻生海咲】?のクリア特典のコスチュームの中に、ルイージの服がある。交換できるポイントは50000点で、海咲のコスチューム全5種類の中では3番目に高価。 【Girls Mode 4 スター☆スタイリスト】 FANTANIAのつけヒゲに、彼のヒゲをモチーフにしたつけひげLがある。 ゲーム以外 【スーパーマリオくん】 序盤からパートナーの一人として登場することが多い。 マリオくんの歴史の中でキャラ変遷が最も激しいレギュラーキャラクターの一人であり、最初期は輪郭までマリオと同じ外見であったが64編辺りからヒゲのデザインがわずかに変わり、マリオパーティ2編付近でようやく今の二股のヒゲデザインと輪郭になった。性格も最初期はガッツリツッコミ役でマリオとヨッシーに比べれば常識人であり気も強かったが、ペーパーマリオRPG編(実際には直前のルイージマンション編)から原作の怖がりで臆病な設定が逆輸入され、現在ではボケキャラクターに徹する事も多い。 なお、今も昔も主役になることへの夢は消えていないのでマリオがいなくなるたび主役を主張して来ることがある。ただしルイージマンション編では苦手なオバケを相手にするので主役を降りたがっている。 【スーパーマリオ(本山版)】 レギュラーキャラ。やや控えめではあるが強気に出る事も多く、お調子者的なキャラ付けもされている。一人称は「おいら」。 この手のキャラのお約束なのか、やたらと洗脳される事が多いが、メインを張る場合もありそれなりに活躍の機会もある。 女性ファンが多いと自称している。 【スーパーマリオブラザーズ Vol.2 大魔王ネオクッパの挑戦】? 500年後の未来に飛ばされるが、飛ばされた先が偶然ネオクッパ城の近くだっただめ、門番の【メカクリボー】を全滅させて城内に潜伏しマリオを待っていた。(一度だけマリオを通信で激励した) 【スーパーマリオブラザーズ Vol.3 マリオ軍団出撃】? 老に授かったアーマー・ガン・ボムでマリオ・ピーチと共に戦った…ように見えたが実は出発前夜にエイリアンとすり替わっていた。 (選択肢によってはこの偽ルイージがマリオを聖剣で刺殺したりマリオとピーチをボムで爆殺したりする) 本物はクッパ戦の最中にピーチに救助されたが、エピローグで国王との謁見中に口を滑らせピーチに足を踏まれ絶叫するのだった……。 【スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!】 マリオの弟として雑貨屋を開いている。 金にやたらとがめつく、今で言うワリオのようなキャラ付けがされていた。 【スーパーマリオ 魔界帝国の女神】 本作では子供の頃にマリオに拾われた養子という設定のため純粋な兄弟ではない。そのためマリオとは歳が大きく離れており、フルネームはルイージ・マリオである。 マリオと共に配管工「マリオブラザーズ」を営んで暮らしている。 映画内においては実質的な主人公の立ち位置となっており、デイジーを助けるために無茶をする事が多い。 【ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー】 本作ではニューヨークのブルックリンに住んでおり、マリオと共に企業した配管工事会社で働いている。 ゲーム同様臆病かつ不憫で、頼りがない。だが他者を気遣う優しさを見せたり、落ち着かない兄を嗜めたりなど人の良さが目立つ。 異世界のダークランドに飛ばされた後はクッパに捕まり、ゲーム作品のピーチのような囚われの身のポジションとなっているが、本作ではマリオブラザーズはキノコ王国やクッパの事を何も知らない状態であるため、身内が囚われているという展開はマリオがクッパ軍団と対立する動機して自然な流れとなった。 実家では父親にマリオに巻き込まれてる指摘されてるが、ルイージは「僕は兄さんに巻き込まれただなんて思ってない」とはっきり述べるなど、兄弟愛は非常に強い。 自由の身だったマリオのようにアスレチックコースで特訓などはしておらず、あくまでも一般人と大差ない程度の身体能力しかないのだが、ブルックリンの最終決戦ではクッパのブレスが当たる直前にマンホールを盾にして、あと一歩で焼き殺されかけたマリオを必死にかばう活躍を見せる。 そしてマリオと共にスターの力を取得し、クッパ軍団を瞬く間に蹴散らし、クッパを要塞ごと叩きのめして騒動を締めくくり「マリオブラザーズ」の名に恥じない健闘ぶりを見せた。 【スーパーマリオブラザーズ しらゆきひめ編】? ほんの少しの登場であるが、ピンチのマリオの前に登場し、クッパに不意打ちを食らわせチャンスを作るかなりの活躍。 【Nintendo Switch Online】の紹介映像 セーブデータお預かりの紹介部分で登場。愛用してるSwitch本体がドッスンによってセーブデータごと破壊されてがっかりする場面がある。 息を吹きかけるような動作があったため、相当使い込んでいたものと思われる。 ただしこの壊されるシーンは、壊れてしまうことを考えていたマリオによる想像内だったため、実際には壊れていないと思われる。 能力・武器 詳細は「【マリオ】/能力・武器」のページを参照。マリオと違う部分を紹介する。 武器・使用技 ジャンプマリオ達より高いことが特徴。バタ足をして距離を稼ぐこともある。ただし、作品によっては差がないものもある。 ファイアボール『スーパーマリオアドバンス2』の「スーパーマリオワールド」ではマリオのものより少し高く跳ねる。『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』では緑色のものを出す。マリオのものと違い、跳ねずに一直線に進む。これは『マリオブラザーズ』の【ファイアボール】が元ネタと思われる。 スピンジャンプ パンチ キック スライディングキック ヒップドロップ『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』では『for』の下投げで繰り出す。『SPECIAL』では下投げ「オバキュームドロップ」の途中で繰り出す。 横宙返り バック宙 クルクルジャンプ『64DS』ではバック宙を使うと自動的に発動する。 壁キック『New スーパーマリオブラザーズ』から使用可能になった。 アイスボール スピン 前転 サンダーハンド『マリオ ルイージRPG』で使用。ハンドパワーを使って目の前に電撃を出す。『マリオ ルイージRPG1 DX』(本編)ではこれでも先制攻撃が出来るようになった。敵を「めまわし」状態にする事がある。 ブラザーアクション 『マリオ ルイージRPG』/『マリオ ルイージRPG1 DX』でのブラザーアクション ハイジャンプマリオの上に乗ってから一緒に高くジャンプする。 もぐルイージ/もぐりハンマーマリオがハンマーでルイージを叩いて柔らかい地面に埋め、一部の柵を通り抜けたり、マメなどを掘り出したり、樽の中に入る事が出来る。 感電移動/くっつきルイージがサンダーハンドでマリオを感電させ、平行移動が出来る。テレサ像を動かしてスイッチを入れる事も可能。 ブラザーアタック/スペシャルアタック 『マリオ ルイージRPG』/『マリオ ルイージRPG1 DX』でのブラザーアタック バウンドブロス彼とマリオが合体し、強力なジャンプで敵単体を攻撃する。アドバンスコマンド/DXアタックでは途中で彼とマリオが分離して2体の敵を踏める。敵が1体しかいない時は集中攻撃する。 ノックバックブロスハンマーでマリオを叩いてちびマリオ状態にし、続けてハンマーでマリオを打って敵単体を攻撃する。空中にいる敵にも当たる。アドバンスコマンド/DXアタックでは連続攻撃する事ができる。『1DX』では最大5回しか攻撃できず、攻撃対象もランダムになる。 タイフーンブロスハンマーでマリオを叩いてちびマリオ状態にし、マリオの上に乗って回転しながら敵へ突撃し、ハンマーで敵単体を攻撃する。攻撃対象を変える事も出来る。アドバンスコマンド/DXアタックでは最後に攻撃した敵を気絶させる事がある。『1DX』では最後の一撃のコマンドが入れ替わっている。 サンダーブロス敵の頭上へジャンプし、雷または電撃弾で敵全体を攻撃する。『1DX』では最後のコマンドを成功させても空中にいる敵に当たる。敵のDEFを下げられる。アドバンスコマンド/DXアタックでは電撃を纏わせたアッパーで敵単体を攻撃するが、敵のPOWも下げられる。 ブラザーアイテム トリオアタック ハンマーマリオに比べ使い慣れていないのか、すっぽ抜けてしまったり、自分を叩いてしまうこともある。 バッジ ブーツ オバキューム『ルイージマンション』等で使用。オバケやコインなどを吸い込む掃除機。『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』では『for』から最後の切りふだとして採用。『SPECIAL』では投げにも使用する。 『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』のワザ ファイアジャンプパンチ至近距離でスーパージャンプパンチを当てると発動。炎を纏ったアッパーカットで大ダメージを与える。恐らく【ケン・マスターズ】の炎の昇龍拳が元ネタか。 ぽこぽこパンチ目をつむりながらぽこぽこ叩くダッシュ攻撃。なんだかヤケクソ気味に見える。 ルイージサイクロンマリオの「マリオトルネード」に似た下必殺ワザ。くるくる回転する。『DX』までは単発ヒットしかせず、当たった時点で纏まったダメージを与えてぶっ飛ばす性能だった。『X』からはマリオの「マリオトルネード」が空中攻撃下に変更されたためなのかは不明だが、単発ヒットから連続ヒットに変更された。 アピール(下)いじけて小石を蹴るアピール。実は攻撃判定があり、それも非常に強力なメテオになっている。 ルイージロケット『DX』から使用する横必殺ワザ。【ピカチュウ】の「ロケットずつき」に類似している。1/8の確率で暴発し、凄まじい威力と推進力になる事も。 地獄突き『DX』から使用する横スマッシュ攻撃。どういう訳か手刀攻撃をする。 脳天チョップ『DX』以降の前空中攻撃。頭上から片手を素早く振り下ろす。 ネガティブゾーン『大乱闘スマッシュブラザーズX』で使用する最後の切りふだ。謎の黒いフィールドを展開し、中に入っている者達を大きく弱体化させる。ほぼネタ技のような風貌だが範囲が広く、かなり強力。 変身 スーパールイージ ファイアルイージ『スーパーマリオアドバンス2』では、投げるファイアボールの性質が異なる。 しっぽルイージ『Newスーパーマリオブラザーズ2』以降はキツネ耳とキツネの尻尾になる。 カエルルイージ タヌキルイージ『スーパーマリオブラザース3』及びそのリメイク作品のみ。 キツネルイージ『スーパーマリオ 3Dランド』以降の作品で、ルイージ専用。能力はタヌキマリオと同じ。東洋水産(マルちゃん)の「赤いきつね」と「緑のたぬき」の逆バージョンとされている。 ハンマールイージ マントルイージ『スーパーマリオアドバンス2』では、飛行時の上下移動がマリオより少し速く、より高く上昇する。 風船ルイージ/バルーンルイージ はねルイージ『スーパーマリオ64DS』のVSモード専用の変身。 透明ルイージ マメルイージ コウラルイージ 巨大ルイージ ハチルイージ オバケルイージ自身が苦手なテレサに変身するものの、怖がるなどのデメリットは無い。ただ、テレサは近寄ってくる。 バネルイージ アイスルイージ レインボールイージ フライングルイージ プロペラルイージ ペンギンルイージ 雲ルイージ ゴロ岩ルイージ シルバールイージ身体は銀色だがゴールドファイアボールを投げる。 ムササビルイージ Pムササビルイージ ネコルイージ まねきネコルイージ ビルダールイージ スーパーボールルイージ ゾウルイージ アワルイージ ドリルルイージ おもなセリフ 兄さんの やくにたちたい『スーパーマリオRPG』の星のふる丘にあるルイージの願い事と思わしきもの。ゲーム内におけるルイージの初セリフであり、今後のルイージの方向性をしっかり定めたようなものである。なお、説明書ではもっと喋っている。EDではパレードの先頭を担当する形で実際に役に立てた。 まいったか ディメーン! にいさんの手を かりなくたって オマエくらい たおせるんだからな! 『スーパーペーパーマリオ』のステージ8-3で、ディメーンを倒した後のセリフ。ちなみにフェアリンの力も借りていない。 そうさ… ボクたちの 生きる道は ボクたちが きめる! ボクたちは あきらめない!! オマエなんかの スキに させるもんか!!! 『スーパーペーパーマリオ』のステージ8-4で、ノワール伯爵との戦いの途中で彼が戻って来た時のセリフ。ピーチの「世界を守る」発言に続けて言う。 ひぃぃ~! 助けて~~!!『スーパーマリオギャラクシー』のファントムギャラクシーにて。マリオを見かけるなり滅茶苦茶怯えて助けを求める。この時は「マ~リオ~!!」とボイスを発する。たとえプレイヤーがもう一人のルイージだとしても。 オバケ! ひぃぃぃ!!同上。オバケマリオを見かけ、マリオと気付かずにビビりまくる。 兄さん、やっと来てくれたんだ!キノピオ達と はぐれて 大変だったんだから!でも、一つだけ パワースターを見つけておいたよ! ちょっと見直しただろ?!同上。見栄を張っているが散々ビビった姿をマリオとプレイヤーが忘れることはないだろう……。 あれっ、ボクが もう一人?!まあでも 世界には 自分に似てる人がいるっていうし、細かい事は いいか!そうだ パワースターを見つけたんだ!これ、持って行こう!同上。ルイージを操作している場合の台詞。細かい事なのか……? やぁ 兄さん!クリアできない時はボクのお助けパーツを使うといいよ。『スーパーマリオメーカー2』のストーリーモードにて、同じコースを3回連続でミスすると、ルイージがこのセリフと共に登場する。そのコースで固いブロックやパワーアップアイテムが配置できる「お助けパーツ」が利用できるようになるのだが、自力でクリアしたい人にはうっとおしいと話題になったことがある。 説明文 今回も いろんないみで 大かつやくの マリオの弟 ジャンプ力が あるのが ジマン ミドリ色のふくは あいかわらず このカードを もっていると ルイージのこうげき力が 2倍になるぞ!『スーパーペーパーマリオ』でのカード説明文。 元ネタ推測 NOAの社員が彼の名前を決める時に『ブルーノ』『ジーノ』『ロメオ』『マティーニ』等の候補名が挙げられていく中で、「語感が良いから」「マリオに対して一番そばにいておかしくないイタリア人の名前」という理由で『ルイージ』と決まった。そのため、多くの説として流布している『宮本茂が「マリオの“類似”だから『ルイージ』で良いのではないか」と言ったため』というのは、後付の通説。 関連キャラクター 【マリオ】 【ミスターL】 【デイジー】 【ワルイージ】 【オヤ・マー博士】 【キングテレサ】 【ディメーン】 【クッパ】 【ルイージコング】 関連マシン 【スタンダードカート】 外部リンク ルイージの年~THE YEAR OF LUIGIルイージの生誕30周年を記念にして作られた特設サイト。 関連商品 コメント テレサなどのオバケが苦手という設定は、マリオRPG系やルイマンシリーズ以外ではそんなに見られない(アクション系マリオシリーズにこの設定が反映されていたらゲームのテンポが悪くなる)。 - L-24 (2020-11-05 21 50 40) 「マリオオープンゴルフ」の項目に書いてある「本作以降は声が低くなった。 」は、別の項目の物が間違って紛れているんですかね?(「マリオオープンゴルフ」にボイスは無い。) 直そうにもどの項目が正しいのかちょっとわかりませんが・・・ - 名無しさん (2021-10-24 21 19 42) 失礼、マリオゴルフ64のところに書くべきものを作る時に間違えてたので直しました - よしこう (2021-10-24 21 25 27) 名前 全てのコメントを見る
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前ページ次ページゼロの騎士団 ゼロの騎士団 PART2 幻魔皇帝 クロムウェル 7 「旅立ちと焦り」 トリステイン魔法学院 まだ朝日も昇らない時間 世界から音を奪う闇の時間。 本来、人が居ないであろう学院の入り口には、二つの声が聞こえていた。 「……眠い」 ルイズは目をこすりながら、不機嫌な顔で呟く。 朝がそれほど強いと言う訳でも無く、任務の重要性、昨日見た夢などもあり、ルイズは充分な睡眠をとれているとは言えなかった。 だが、不機嫌の理由はそれだけでは無かった。 「しかも、何でこんな恰好なのよ」 彼女の服はいつもの制服では無く、シエスタに頼んで用意してもらった平民の服に、長旅用の使い古されたボロボロのローブであった。 シエスタの服では大きすぎるので彼女の友人のメイドの服を借りたのだが、それでもルイズには胸の部分も含め大きく感じられた。 「当たり前だろう、聞くところによるとアルビオンは数日の長旅になるのだろう。 いつもの制服と言う訳にも行かないし、町の中を貴族の学生が歩いてたら不自然だろう」 ルイズと似たような、ローブを着たニューが答える。 彼らの目的は目立つ事と逆――隠れる事である。ここハルケギニアで、貴族という存在はそれから最も遠い存在であった。 ルイズは貴族としての旅行は経験して居ても、旅人としての旅行など経験はなかった。 昨日の準備ではトランクを二つも持ち出しており、ニューに呆れられていた。 「ルイズ、我々は観光旅行に行くんじゃないんだぞ。しかも、劣勢と言われる方に接触しなくてはならないんだぞ、目立つ訳にはいかないんだ」 (こんな事で大丈夫だろうか?) ルイズの感覚に早くも黄色の信号が灯り始める。 ニューの顔を見て、ルイズが愚痴をこぼす。 「それは解るわよ、けど、さすがに早すぎない?」 目も慣れてきたが、朝と言うよりも夜と言っても過言ではないほど暗く、かろうじて数メイルが見える程度であった。 早く出ると言う事が陽が明け始めるくらいの出発を予想していたので、肌寒さすら感じる空気は自分の感覚に吹き付けるようであった。 「仕方ないだろう、朝食を食べてみんなに見送られるのとは訳が違うんだ。 マルトーさんに頼んどいて、朝食を作ってもらったから、少し走ってから休憩しよう」 そう言って、ニューは厩舎より連れて来た馬に乗る 文句の一つでも言いたかった。しかし、文句が無いくらい手際の良さを咎める事も出来なかった。 「……分かったわよ、じゃぁ行くわよ」 渋々ながらルイズも馬に乗り、二人は馬を走らせ始めた。 「行ったようですね」 学院長室 遠見の鏡から二人のやり取りを見ていたコルベールが呟く。その声には不安の混じった声があった。 「心配無いじゃろう、ニューもいる事なんじゃし。それに、姫様も自身の信頼できる人物を使わすそうじゃ」 それほど心配なさそうな口調で、オスマンは口を開く。 二人は昨夜、王室――アンリエッタより今回の任務を聞かされていたのだ。 「ただ、わしが気になるのはミス・ツェルプストーとダブルゼータがアルビオンに渡り ミス・タバサとゼータもお馴染みの欠席じゃ、偶然であると思いたいのだがのぉ」 脳内でアナウンスされる偶然とは思えないキャスティングが、オスマンの表層に不安の石を投げ込む。 (……無事に帰ってくるのじゃぞ) オスマンは、それぞれ居なくなった生徒と使い魔に、心の中で心配の言葉を投げかけた。 あと1時間もせずに、日は昇ろうとしていた。 二人は乗馬の心得があるので、速さは順調であった。 場所は解らないが、ニューは少なくともそう思っていた。 ルイズの方も意識の覚醒と趣味の乗馬という事も有り、次第に顔から不機嫌が消えて行った。 馬を走らせて数時間、馬と自分達の休憩の為に、ルイズ達は街道の無人の小屋に腰を降ろした。 「アンタって、旅慣れているのね」 意識も完全になったのか、ハムと野菜のサンドをかじりながら、ルイズはニューに話しかける。 「遠征の経験もあるし、険しい山道を越えた事もあるからな」 簡素な水筒から紅茶を出しながら、ニューはそれに応じる。 ラクロアまでの遠征は険しい山脈と凶悪なモンスターを相手にする為、旅人という人種では無謀とも言えるほどであった。 (あの時は大変だったな、私もアムロ殿の様に移動魔法が使えればな) 実際、アムロから聞いていたが予想以上に厳しく、一度遠征した後は魔法で移動する事がほとんどであった。 「私は完全には地理が解らないのだが、ペース的には悪くないだろう。ラ・ロシェールと言う所は約二日だそうだな」 自身の見た地図を頭に描きながら、ニューは確認する。 「そうよ、まぁ早ければ明日の夜には着くかもね」 そう言って、紅茶に手を伸ばそうとした時、二人は上空に強い風の流れを感じた。 上の方には、鳥と言うには大きい影が見えていた。 「何だあれは?」 自身の世界ではあのクラスの物体が空を飛ぶのは動物とは考えにくい。 (早速、敵か?) 警戒しながら、ニューがルイズに聞く。 「違うわ、あれはグリフォンよ……野生と言う訳でもなさそうだし、誰かしら?」 ルイズも不安そうに呟く。 比較的安全な街道で、グリフォンが自分達を狙って襲うとは考えにくかった。 その言葉の数秒後に、グリフォンはルイズ達の目の前に着陸した。 グリフォンに乗っていたのは帽子をかぶった長身の金髪の男であり、二人はその人物を知っていた。 誰よりも先に、ルイズが反応する。 「ワルド様、なんで此処に!?」 ルイズがその人物を見て、驚きの声をあげる。 本来会う事のない人物と思うだけに驚きは強い物があった。 ルイズの驚きに、ワルドは軽く受け流しながら、グリフォンの背中より降りる。 「私はアンリエッタ様より、君達の護衛を頼まれたのだ。ルイズ、久しぶりだね」 ワルドはルイズに近づき、ルイズの肩に手を掛ける。 肩を触れられて、ルイズは動きが硬くなる。 「そ、そうなんですか。ありがとうございます」 それだけを言いながら、ルイズは恥ずかしそうに身を震わせる。 その様子をニューは観察していた。 (姫様の言っていた護衛と言うやつか・・・) ルイズの初々しい反応などではなく、目の前の男に注視する。 アンリエッタが護衛をつけると言っていたので、多分、目の前の男がそうなのだろう。 ルイズが言うには、若くして精鋭部隊の隊長になったとの事なので腕が経つとの事。 少なくとも、あの獰猛なグリフォンを乗りこなしているのを見れば、その実力は朧ながらも分かる物であった。 ワルドはルイズとの再会をそこそこに、今度はニューに向けて視線を送る。 その視線は何処かニューの事を推し量るような物を感じる。 (私の事を知っているのか?) 少なくともこの世界には自分達を知る物はいない。 しかし、目の前の男は対して驚きもしない様子だった。 (私の方が本命か?) その視線に好意だけではない何かが、ニューを探ろうとする。 それに気づいても、ワルドは表に出す様子は無く。 「君がルイズの使い魔だね、今回はよろしく頼む。アンリエッタ王女から聞いたが、魔法が使えるようだね」 爽やかな様子で、ワルドはニューに挨拶をする。 「はい、ニューと申します。ワルド殿、主の護衛を引き受けてくれて、大変ありがたく思います。主のお相手は大変だと思いますが、よろしくお願いします」 丁寧ながらも少し慇懃な態度で応じる。 その様子に、ルイズがニューを睨みつける。 「ちょっと、もっと丁寧な態度を取りなさいよ!」 「ははっ、ルイズいいんだよ」 ワルドは気にしないといった様子で、ルイズの言葉を流した。 (人が出来ているな。ルイズの相手をするには、それぐらいでないといけないと言う事か) 子爵でルイズの相手をすると言う事はおそらく接待の様なものであろう。 ルイズの難しさを知っているだけに、若い頃からルイズの相手をしてきた目の前の男を見てそんな感想を抱いた。 「ルイズ、休憩も済んだしそろそろ出発しよう」 「そうだな、ルイズは僕のグリフォンに乗って貰うつもりだが、良いかね?」 ニューの合図に、ワルドが提案する。 それを聞いて、ルイズは頬を赤らめる。 それはルイズだけにではなく、自分にも聞いてる事がはっきりと分かった。 「分りました、今後の指揮はワルド殿がお願いします。私は外様ですので」 断る理由も無かった。むしろ。 (疲れて文句を言われてはかなわんからな) ニューはそんな事を考えながら、ワルドの案を受け入れる。 しかし、今の会話がルイズの気に障ったのか、顔を恥ずかしいから怒りに切り替える。 「馬鹿ゴーレム! アンタのその態度は何なの、さっきからアンタ失礼よ!」 ルイズが先程からのニューの態度が気に入らないのか喰ってかかる。 しかし、ワルドが居る手前、手までは出さなかった。 「私もこの任務を絶対に成功させないといけないからね、そう言ってもらえると助かる。ではルイズ、行こうか」 ルイズを連れて、自身のグリフォンに乗っける。ニューはその様子をしばし見てから、馬へと向かった。 「まったく、あの馬鹿ゴーレム! なんで、あんな態度取るのかしら」 空から大地を走る馬を睨みつけながら、ルイズが愚痴る。 本来なら、ワルドとの再会の喜びを楽しむ時間の筈であったが、自身の使い魔がその時間を略奪した。 「彼がどうかしたのかい?」 ワルドはそれに起こった様子でも無く。ルイズの顔を嬉しそうに見つめる。 「いえ、何でもないんです」 その顔が自分の今の顔に合わない事に気付いて、ルイズは下を向く。 ニューはいつも皮肉を言うが、さっきの様に毒を撒き散らすような言い方はしない。 (それに、皮肉と言うよりも、何か拗ねている様だったし) 心なしかルイズはそんな事を感じていた。 心当たりと言えば昨日のやり取りだろう。ルイズは思い返す。 (そりゃあ二人より劣るとは思っていないけど、だからって、あんな態度取る必要ないじゃない) 本心で行ったわけでは無い。 ルイズとしてみればニューを動かす為に、言っただけである。 しかし、魔法学院に帰った後も、ニューは心なしか不機嫌な様子だった。 「彼の事を考えているのかい?」 ワルドがルイズの顔を覗き込みながら、聞いてくる。 「べっ、別にそう言う訳では無いんです。ただ、アイツは口が悪いけど、今まであんな態度は取らなかった……」 彼の不機嫌な理由は自分だろう。 (やっぱり、私が悪かったのかな) ルイズには心なしか、ニューが苛立っているその理由が解らなかった。 そして、それがルイズの不機嫌の基でもあった。 「彼だって考える事はあるさ、使い魔だからって何でもわかる訳では無いよ」 「そうですよね……」 (謝らなくちゃ、駄目なのかな……けど、私はアイツの主人なのよ! いくら私が悪いからって簡単に謝ったら鼎が問われるってものよね。もう少し、時間を置きましょう。そして、さりげなく謝るのよ) 自己弁護と解決方法を考えながらルイズは大地を眺め続けていた。 3人の旅は順調であった。妨害を予想していたがこれと言った事がある訳では無く、 次の日の夕方にはラ・ロシェールに到着していた。 岩肌に丘に作られた町 ラ・ロシェール 「女神の杵」――アルビオンに向かう貴族が利用する高級旅館 疲労回復と安全面からルイズ達はそこで宿を取る事にした。 「一番早いのは明日の夕方には船に乗る事が出来るよ、それに乗って明後日にはアルビオンに行く事が出来る。」 船長と乗船の交渉をしたワルドが、二人に出向の時間を告げる。 「そうですか……しかし、船が飛ぶとは驚きです」 出発も明日と言う事もあり、三人は宿の中の食堂で夕食を取っていた。 ニューは先程まで居た桟橋の光景を思い出しながら、驚きを口にする。 船が無い訳ではないが、それでも、巨大な木にクリスマスツリーの飾りの様に停泊する空飛ぶ船は素直に感動する物であった。 「アンタの所には船は無いの?」 ルイズがメインに手をつけながら、ニューに話題を振る。 「私の知る限りでは無いな、それに、大陸が浮くなんて聞いた事がない」 最初、ここに来た時港がなくて、道を間違えたのかと危惧したが、 アルビオンの事を聞き実際に空飛ぶ船を見た後だと、この世界が異世界であると今更ながら思い知るのであった。 「……ところでで、君は異世界からか来たそうだね」 ルイズと会話を楽しんでいたワルドが話題を変えて、ニューの方に声を掛ける。 「そんな事まで知っているんですね……信じるんですか?」 突然、話題を変えて、自分に振って来たワルドに対してある事に気付き考える。 (色々調べているんだな) ワルドが自分達が異世界から来ている事に気付き、ニューも情報能力に感心する。 思えば、思うに目の前の男は、初めて会った時に自分が魔法をつく事を知っていたのだ。 「情報収集も仕事でね、アンリエッタ様から異世界から来たと聞いた時、最初は正直信じられなかったけどね」 ワルドがそう言って、ワインを口にする。 「さて、今夜泊まる部屋の事なんだが、悪いが僕はルイズと大事な話がしたいんだ、僕とルイズが一緒でいいかね?」 ニューの方を見ながら、ワルドが聞いてくる。 それを聞いたルイズは、頬を赤く染めてワルドの方を見やる。 (え! ちょっと待ってよ、いきなりそんな) ニューといつも通り同室で泊まると考えていただけに、ワルドの言葉は意外であった。 「ちょっと、ワルド様、いきなりそんな事言われた」 「いいですよ」 ルイズの言葉を遮り、ニューがあっさり同意する。 音が聞こえるように首を動かし、ニューの方を見る。 「久しぶりに会って積もる話もあるでしょう……それに、ルイズ」 ニューが真剣な目で、ルイズを見つめる。 「な、何よ!」 (私の事、信用してくれるの) その表情に、ルイズも勢いが止まる。 幾らなんでも、年頃の男と一緒の部屋で泊まる等とはルイズとしても抵抗がある。 それに、そう言った状況で流されてしまうのが良くある事はルイズの耳に入っていた。 しかし、ニューはそう言った事をしないとルイズを信用―― 「お前がワルド殿の相手になる訳ないだろう、冗談は胸だけにしろ」 ――する訳でも無かった。 握った拳に銀の感触が強くなる。 「この馬鹿ゴーレム! 絶対コロス!」 意識を失う直前、ニューが最後に見たのは、ルイズの手に持ったフォークとそれを止めるワルドであった。 ニューが次に目覚めたのは、数時間たったベットの上であった。 「ルイズの奴め、本気で刺してくるとは……」 自身の傷を魔法で回復させて、ニューはベットの上で横になっていた。 自身のいつもの環境に比べれば、ホテルのベットは極上と言っても差し支えなかったが、 ルイズに数時間の間、気絶させられた為に寝る事が出来なかった。 ニューは自分の事を考えていた。 「ルイズじゃないけど、確かにそう思うところがあったんだよな……」 (アイツ等の力は知っている。知っているだけにいつしか頼るようになってしまった) ニューはベット上で寝がえりを打ちながら、そんな事を考える。 ニューはルイズに言われて以来、ずっとその事を気にしだしていた。 仲間達は前線で戦う事が多く、そして、優れた使い手が多かった為にニューは直接手を下す必要が多い訳では無い。 自身がその立場上、援護に回る事が多い為にニューは回復などの方が多い事もあった。 いつしかそれが当たり前だと思いはじめ、知らないうちに二人に依存しだしていたのだ。 ハルケギニアに来た時は、口には出さなかったが三人しかいないと言う孤独感もあり、 それは感じなかったがこの世界に馴染むにつれて、徐々にその事を思い出しつつあった。 (いつまでも二人に頼る訳にはいかない。今回の様にいつも三人で行動する訳では無いのだから) これまでは騎士団であったために、ともに行動してきたが今は使い魔でもある為に何時また別行動をするかは解らない。 そこまで考えてから、ニューはルイズとワルドの事を考える。 「そもそも仮にも精鋭部隊の隊長が、公爵家の三女に手を出す訳ないだろう」 若くして魔法衛士隊の隊長であるワルドが、そんな事をすれば今の立場を失いかねない事はニューには解っていた。 (……おそらく、なるとしたら婿であろう) 何となく、ニューはそう考える。 ワルドは子爵の息子だ、ルイズは三女であるからもしかしたらもあるかもしれないが、家柄を考えたら彼の方が下だろう。 (ただ、ワルドからしてみれば、それでも得られる物は大きいだろう。なにより、ルイズは扱いやすいからな) 自身の口でついた傷を棚に上げて、ニューはそんな事を考える。 おそらく、ワルドはルイズとヴァリエール家の後ろ盾を得たいのだろう。 自身も、騎士団長を輩出した名家、等と呼ばれる家柄だけに、ニュー自身もそう言った思惑に晒された事が無い訳ではない。 この世界に長く居るつもりはない。 故にそう言った事には自身はなるべく関わらないようにと考えている。 (この世界で生きてくのはルイズ自身だ、私がとやかく言うべき事ではない。ルイズが自分で選ばなくてはいけないのだ) そう考えてから、夜風に当たりたいと思いニューは部屋を出た。 宿の2階にあるテラスには先客が居た。 それを見て、ニューは声を掛ける 「どうしたルイズ、ワルド殿に結婚してくれとでも言われたのか」 からかい半分に、テラスに居るルイズに近づく。 ニューを見て何か言いたそうであったが、ルイズはニューの言葉を聞いて不機嫌な顔を作る。 「なっ、何を馬鹿な事を言ってるのよ!」 怒鳴りながらも、直にその意気を落とす。 「……ただ、ワルド様が昔約束した婚約の話を覚えていてくれてたの、けど、それは子供のころの約束だったし、なんて答えればいいのか分からなかったの」 (嬉しくないと言えば嘘になる、けど、いきなりそんなこと言われても) 久しぶりに会って自分との思いでを覚えてくれるのは嬉しかったが、それでも、ルイズには簡単に応えられる事では無かった。 (まぁ、普通はそうだよな) 「ルイズ、私はいずれアルガスに帰る身だ、いつまでもこの世界に居る訳では無い。」 ニューがルイズの隣に移動する。 「ニュー……」 「私は妻を持ったわけでもないし、恋愛に聡い訳では無い。私が責任を持って言える事ではないが言わせてもらう事がある」 「……何よ」 ルイズが身構えながら、ニューの話を待つ。 「ワルド殿はお前を愛して居るかも知れない、しかし、それは、ヴァリエール家の三女という事である事も忘れてはならない」 「え!」 「別に彼が酷いのではない。彼の様に若くしてそれ相応の地位に居れば、そう言った物を少なからず求めるだろう」 ニューは少し渋い顔でルイズを見る。その顔を見ながら、ルイズも何か言いたそうな顔をしている。 「ワルド殿が今更ながらそう言った事を述べると言う事は、そう思っているかもしれないと述べたのだ。 お前も十数年、貴族の社会で生きて来たのだ、全く分からなったり信じなかったりするわけではあるまい?」 ニューは以前の教室の様に、やさしい声で語る。 「そんな事言って、どうすればいいのよ」 (じゃぁどうしろって言うの、偉そうなことばかり言って) そう思いながら、ルイズはニューの言葉を待つ。 「ワルド殿は少なくとも立派な人物だと思う。 ただ、あせる必要はない。彼と一緒に居て彼と言う人間を知ってからでも遅くは無い。私はそれくらいの事しか言えん」 風が強くなってきているのを感じて、ニューは戻るように促す。 何となく嬉しかった。 「偉そうなこと言わないでよ、使い魔のくせに」 ルイズは頬をふくらませる。 それを見て、ニューは笑いながら自室に戻ろうとする。 「悪かったな。だが、もう少し成長しなければ相手してもらえないぞ」 (そうだな、未熟者の私が偉そうなことは言えんな) それだけを言って、ルイズの視界から消えた。 「……この馬鹿、一言多いのよ」 (心配するなら、もっと良い事言いなさいよ……けど、ありがとう) ニューの居なくなった後を睨みつけた後、ルイズは戻っていた。 その時の、ルイズの表情を確認する者はいなかった。 翌日、ニューは朝の散歩を兼ねて無人の広場に来ていた。 (闘技場か何かだろうか) 周りに散らばる剣の金属片や杖らしき木片、そして、傷だらけの地面がそれを連想させる。 それらを見渡して、近くの岩に座ろうとした時、自身とは違う足音が聞こえる。 「やぁ、おはよう」 後ろから声をかけられても、その声の主は解っていた。 「おはようございます。ワルド殿」 ニューは振り返り挨拶をする。気のせいか、昨日とは空気が少しだけ違うような気がした。 (釘を刺しに来たのかな) なんとなくそんな事を考える。 昨日ルイズに言った事はワルドにとってはマイナスであり、ワルドの評価を下げるには理由としては充分であった。 「今日の夕方頃までには時間がある。実は、君と手合わせしたいんだ」 (なんだ、釘を刺しに来たんじゃないのか) 自身の考えとは違うが、それでもワルドの言葉はニューにとって意外な物であった。 「どうしてですか?」 理由がないので、ニューはとりあえず聞いてみる。 「大した事じゃないんだよ。ただ、異世界の魔法とやらに興味があるんだ。 君の実力はフーケの件で知っているからね、初めて学院で君を見た時からずっと思っていた事だ」 (……なるほど、そう言う事か) ワルドの理由を聞いて、ニューはこの間、パレードで目が合った時の事を思い出す。 あの時、ワルドは自分達がフーケを取らえた事を知っていたのだ。 だからこそ、目が合った時、驚きもせずに自分の方を観察していたのだろう。 ニューはそこまで考えて、目の前のワルドに目を移す。メイジであると言う事は恐らく、自身と似たようなタイプであろう。 力で魔法を押しつぶすようなタイプでなければ、そう簡単には後れを取らない。 「私が相手では不満かい?」 言葉とは裏腹に、ワルドの言葉には挑発的な意味が含まれている。 (いつまでも、二人に頼る訳にはいかない。今回の様にいつも三人で行動する訳では無いのだから) 心の中で昨日の自分の言葉が反芻する。 「受けさせていただきます。勝敗の方法はどうしますか?」 (これもいい機会だ、それにこの男相手に戦えれば、私もあの二人に頼ると言う考えも少しは薄れるだろう) そう考えて、ニューは受ける事にした。 ワルドは近くにあった木の枝を取り、それをニューに渡す。 「メイジの戦いは杖を落としたら負けとなる、君は杖は要らないだろうがこう言うルールでいいかい?」 「いいですよ」 (それなら穏便に済ませそうだしな) そう考えて、ニューは木の枝を握る。お互いがある程度距離を取った時、人の気配がやってくる。 「ワルド、ニュー!二人とも何やっているの」 起きたばかりのルイズが、慌てて二人の元にやってくる。お互いに杖を持っているので不穏な空気を来たばかりのルイズも感じていた。 「これは簡単な手合わせだよ、ルイズ、君には立会人をやってもらいたいんだ」 ワルドはそう言って、ルイズを下がらせる。 「何馬鹿な事やっているのよ、ニュー、アンタもやめなさいよ」 自身の使い魔に主として命令を出すが、それは聞き入れられなかった。 「ルイズこの機会に自分の使い魔の実力を見ておくんだ、ゼータやダブルゼータが居なくても大丈夫だと言う事を」 (そう、私は大丈夫だ……二人が居なくても問題ない) そう思い聞かせて、ニューは木の棒を構える。 「アンタ、何言ってるのよ!」 (この間の事、まだ気にしてるんじゃない!それに、今のアンタ……) ルイズから見て、今のニューはどこか冷静さを欠いているような印象を受けた。 「35颯爽とグリフォンに乗ったワルドが現れた」 魔法衛士隊隊長 ワルド 風のスクウェア MP 1050 前ページ次ページゼロの騎士団
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前ページ次ページ天才と虚無 レメディウス・レヴィ・ラズエル ラズエル子爵家の嫡男であり、また、ラズエル咒式総合社の咒式技術者。 二十代という若さでありながら、宝珠や機関部などの咒式制御系において、いくつもの特許を取得している。 さらに、十二歳のときにチェルス将棋の大陸大会において、二十二歳以下の部門を制覇した、正真正銘の天才である。 そんな彼は咒式技術者として砂漠の国ウルムンを訪れた際、<曙光の戦線>という過激派集団に襲われ、誘拐される。 衣服以外の一切の所持品を奪われて、レメディウスは牢獄に幽閉されていた。 しかしそんなある日、レメディウスは牢獄の中に、光る姿見のようなものを発見した。 牢獄内の生活で暇を持て余していた彼は、好奇心に駆られてそれに触れ―――― 「――――気付いたら、あの草原にいたんだ」 そこから先は説明しなくても大丈夫だよね? と、レメディウスと名乗る青年は問う。 ルイズはそれに、大丈夫だと首肯する。 二人はテーブルをはさんだ二つの椅子に座っていた。ルイズは手に、夜食のパンを握っていた。 王立トリステイン魔法学院、女子寮、ルイズの部屋。 そこでルイズは、レメディウスから話しを聞いていた。 「それ、本当?」 ルイズはレメディウスと名乗る青年に尋ねる。 声には多量の疑いが含まれていただろう。なにせ、到底信じられる話しではなかったのだから。 「もちろん。ここで嘘をつく理由が、僕には無いからね」 レメディウスは辟易とした表情で、そう答えた。 呆れたように細められている翡翠色の瞳に、嘘をついているような色は見受けられない。 この表情が演技ならば、彼は素晴らしい舞台俳優だろう。それこそ、自分の専属として雇いたいくらいの。 「悪いけど、信じられないわね」 「そうだろうね。僕だって、未だに信じられないんだし」 「別の世界ってどういうこと?」 「文明がもっと発達してると考えてくれたらいいかな。あと、月は一つしかなかった」 レメディウスが窓の外を指さす。 夜の帳が下りた空には、赤と青、大と小の月が輝いている。 ルイズにとってはいつもと同じ夜空だが、レメディウスにとっては違うようだった。 「月が一つなんて、そんなふざけた世界が何処にあるのよ。まるで御伽噺じゃない」 「僕からしたら、この世界のほうがよっぽど御伽噺さ」 レメディウスはそういうと、ルイズへと視線を戻し、苦笑する。 与太話だ、とルイズは思った。 確かにレメディウスの言葉には真実味があるし、即席で考えた設定とも思えない 。 まるでそういう世界が本当にあるかのようだ。 だが、レメディウスの表情からは、焦りが感じられない。 ルイズがもし異世界にいきなり飛ばされたとしたら、帰りたいと喚くだろう。 レメディウスからはそういう「焦燥」や「不安」といった感情が欠落しているように感じる。 それが、レメディウスの言葉から真実味を欠けさせ、嘘臭くしていた。 「異世界から来たっていう割には、あんた帰りたいとか言わないじゃない」 ルイズは感じていた違和を正そうと、レメディウスを問い詰める。 「本当に異世界から来たっていうなら、もっと焦ったりとかするものじゃないの?」 これでまともな答えが返ってこなかったら嘘だろうと、ルイズは考える。 レメディウスはその問いを聞くと、きょとんとした表情を浮かべ、その後に皮肉気に頬を歪めた。 「それは仕方ないかな。僕は帰りたいと思ってないから」 「はあ? なによそれ」 「説明するのが難しいんだけど………とにかく、元の世界に未練が無いんだ」 会いたい人とかもいないしね、とレメディウスが肩をすくめる。 「あんたにだって、家族とかいるでしょ?」 「いるけど」 「会いたくないの?」 「あの人とは、会えないっていうなら別に会わなくてもいいかなって感じかな」 ルイズはレメディウスの顔に、一瞬だけ不快気な色が浮かんだのを捉えた。 あの人、という他人行儀な言い方から、限りなく他人に近い関係なのかも、とルイズは直感的に思う。 しかも、折り合いが良くなさそうだった。 「まあ、それは良いとして………あんた、本当に別の世界から来たって言い張るの?」 「言い張るも何も、そうとしか思えないんだ」 「じゃあ、なんか証拠ある?」 「証拠?」 「そう、証拠。わたしが納得できそうなモノ」 ルイズがそういうと、答えに窮したようにレメディウスが黙りこむ。 しばらく逡巡したのち、 「困ったな、なにももってない」 と苦笑交じりに言った。 「証拠が無いなら、信じるのは無理だわ」 ルイズがパンをちぎって口へと運び、咀嚼しながら言った。 行儀が悪いが、どうせレメディウスは使い魔なのだから関係ないだろう。 「異世界に行くなんて解ってたら、何かしら持ってきたんだけどね」 何か持っていないかとポケットを探るレメディウス。 しかし、直前まで牢獄に閉じ込められていたレメディウスは、魔杖剣どころか曲がった匙一つ持っていなかった。 「うーん………チェルスなら得意だけど、あれじゃ証拠にはならないだろうなぁ…」 どうしたものかと悩むレメディウスが、ぽつりと漏らす。 「チェルス? なにそれ?」 知らない単語に、ルイズが反応した。 「チェルスって言うのは二人でやる盤上遊戯だよ。八掛ける八の升目のある盤上に、王や騎士の駒を並べて………」 「それって、チェスのことじゃないの?」 「チェス? こっちではそういうのかな? 交互に駒を動かして、王を詰める遊戯なんだけど」 「やっぱりチェスじゃないの。あんた、得意なの?」 「僕の知っているものと同じなら、だけどね。これでも元の世界では強かったんだ」 レメディウスは自信ありげに頷く。 いままで微笑や苦笑しか浮かべていなかったレメディウスが、自慢げな表情を浮かべていた。 「じゃあ、私が相手でも勝てるかしら?」 ルイズはそんなレメディウスを見ながら、言った。 レメディウスはルイズを一瞥すると、即答する。 「勝てるだろうね」 冗談を全く含まない、分析し尽くされたような冷静な声音。 その言葉は刃となって、ルイズの貴族としての矜持を大きく抉った。 「あ、あんた、随分大口叩くじゃない! そんなに自信があるの?」 「まあね。これでも、大陸で一番強いって言われてたこともあるんだ」 ルイズの口の端がひくひくと痙攣していることに、レメディウスは気付いていない。 自慢げな表情で、言葉を紡ぐ。 「君の強さにもよるだろうけど、十中八九勝てるよ。自信がある」 レメディウスが胸を張るのと、ルイズの内側でブチッ! と何かが切れた音がするのは同時だった。 バンッ!! と、ルイズがテーブルに平手を叩きつける。 手の下でパンが潰れて、ナンのようになっていた。 「あ、ああああああんた、いい度胸じゃない! いいわ、わたしに勝ったらあんたの与太話、信じてあげるわよ!」 レメディウスはルイズのその言葉に、きょとんとした表情を浮かべた。 「いいのかい? たぶん、僕が勝ってしまうけれど」 「ええ、いいわよ」 ルイズは椅子を引くと、椅子から飛び降りる。 ベッドわきの机の引き出しを漁り、何かを小脇に抱えて戻ってくる。 「ただしッ!」 バンッ! と、ルイズがテーブルに何かを叩きつけた。 風圧で、テーブルに張り付けられたパンが吹き飛ぶ。レメディウスがそれを受け止め、テーブル上に置いた。 ルイズが持ってきたそれは、ガラスで作られた、美しいチェスの盤面だった。 「あたしにも勝てないようなら、あんた打ち首だから」 レメディウスはその時初めて、ルイズの浮かべる表情に気付いた。 それは、冗談を言っている顔には全く見えなかった。 「ど、努力するよ。打ち首はいやだし………」 レメディウスの背中に冷たいものが伝った。 ルイズの視線には、恐怖を感じさせるセロトニンやノルアドレナリンを分泌させる咒式でも展開しているのだろうか? レメディウスにそう思わせるほど、ルイズの眼光は鋭かった。 「そうね、せいぜいがんばりなさい」 不遜にそういってのけると、ルイズはガラスの盤面に駒を並べ始める。 ルイズの駒が金、レメディウスの駒が銀でできていた。 「じゃあ、規則の確認をしてもいいかな? 僕の知っているチェルスと、規則が違うかもしれない」 レメディウスが銀色の女王を手に取る。 使う駒は似通っているし、駒を並べる順も同じだが、それでも規則の細部が違っている可能性は否めない。 「良いけど。ルールがちがうから負けたなんて言い訳は無しよ?」 「これでも指し手の誇りがある。そんな真似は絶対にしないさ」 「あっそ、ならいいわ。じゃ、駒の動きから確認ね」 ルイズとレメディウスが、駒を一つ一つつまみあげて動きを確認していく。 ルールの確認が終わると、ルイズはレメディウスに先手を打つように言った。 「いいのかい?」 「いいわよ。貴族はそれくらいの余裕があってしかるべきだわ」 「では、お言葉に甘えて」 レメディウスは銀色の駒をつまみあげ、前進させた。 ○ ○ ○ 数時間後、夜も更けた時分。 レメディウスとルイズの二人が、始めた時とほぼ同じ態勢で盤面を囲んでいた。 「狭いところばかり見ていてはいけないよ。広く盤面を見て、可能性を探すことが 大切なんだ」 レメディウスが、盤面を凝視するルイズへと声をかける。 しかしルイズは黙ったまま、しかめ面で盤面を睨みつけていた。 「この部屋の外には外の世界が広がるように、たとえば、世界はこの世界だけではない」 レメディウスが言葉を続ける。 「実は、次元の壁を超える伝達手段が存在する。 これは超紐理論における紐、一次元の長さを持つ存在で、粒子は紐の振動として現れてくるという概念をさらに拡張したものなんだけれど………」 レメディウスの言葉を聞いていないように、ルイズが一手を放つ。 即座にレメディウスによって、最高の一手が返された。 ルイズの可愛らしい眉間に皺が寄る。 数十秒の間、盤面を睨みつけ、やがて一手を打つ。 より厳しい一手がレメディウスによって返され、ルイズが泣きそうな表情になった。 「理論より導かれるP世界とは、P次元として、Pが一なら紐、二なら膜というように任意のPが設定できるなら、 この世界は四次元以上の高次元空間にあるものとして現れてくると推測されている」 考えていたルイズの表情に明るさが戻る。 金色の駒をつまみあげ、自信を持って前進させる。 レメディウスの手が閃き、より厳しい一手を打った。 ルイズの眉間により深いしわが刻まれ、鳶色の瞳が細められた。 「ほとんどの物理力は世界という枠に閉じ込められて、外に出ることは出来ない」 いらいらとルイズの足が、等間隔に床を蹴る。 それを聞きながらレメディウスは、説明を続ける。 「しかし、重力だけは別の世界に影響を及ぼせる。重力の方向に別世界があれば、重力波伝達される」 レメディウスの言葉を無視してルイズは、盤面を指差して残る手を模索する。 対してレメディウスは盤面を見ることをやめ、既に自分の思考に囚われていた。 「別世界にまで影響を及ぼすならば特異点を発生させるようなブラックホール並みの重力波が必要なんだけれど」 そこまで言って、レメディウスの言葉が止まった。 盤面を見て、ルイズへ視線を向ける。 「あ、これは考えても無駄な盤面だよ。あと十三手か十五手のどちらかで、絶対に詰みになるから」 レメディウスの指摘に、ルイズの頬が風船もかくやという程に膨れた。 駒を取ろうとしていた手が止まり、そのまま盤面に乗っている駒を片端から叩き落とす。 「わわ、なんで盤面を壊すのさ!」 「あんたさあ! そんなに強いなら何で最初っから言わないのよ!」 「最初から言ってたじゃないか………」 ルイズの理不尽な物言いに、レメディウスは苦笑する。 床に散らばった駒を拾い集めると、駒を最初の状態に並べ直す。 「それに、なんかあんたブツブツ言ってたけど、あれ何よ。なんかの呪文?」 「呪文じゃないよ。咒式――――僕たちの世界での魔法みたいなものかな? それの基礎になる初歩の理論さ」 「何言ってるか、全然分かんないわ。もっと簡単に言いなさいよ!」 苛立ちと呆れを綯い交ぜにした表情でルイズが言う。 レメディウスが、苦笑の表情を深くしつつ、答えた。 「つまり、世界はここだけじゃない。たくさんあって重なり合い、そこには僕たち以外の誰かがいるかもしれないんだ」 面倒な説明を省いた、結論のみの理論。 それを聞いたルイズの瞳が、胡散臭げにレメディウスを見やった。 「ふぅん…………。じゃあ、あんたはそういう世界のどっかから来たってこと?」 ルイズの言葉に、レメディウスが目を丸くする。 「おや? 信じてくれる気になったのかい?」 「だって、チェスで負けたら信じるって約束だったでしょう? 約束を破るなんて、貴族の恥さらしだわ」 ルイズが悔しそうに、つんと顔をそむける。 可愛らしいその仕草に、レメディウスは柔和な笑いを浮かべた。 嘘が嫌いというか義理がたいというか、要はそういう少女なのだろう。 「それで、いったいどうなの? あんたはそういう世界から来たっていいたいわけ?」 「察しが良いね――――と言いたいところだけど、それは僕にもわからないんだ」 「なによ、違うの?」 自説を否定されたようで、ルイズの顔に不機嫌さが浮かんだ。 レメディウスはそれを見て笑うと、言葉を続ける。 「違うかもしれないし、違わないかもしれない。肯定も否定も、するには情報が足りないんだ」 「なにそれ、はっきりしないわね」 レメディウスの答えに、ルイズは呆れて溜息をついた。 白黒の盤面を睨みつけていたせいだろう、目がちかちかする。 「でも、元来た世界が解ったところで、帰れないわよ? あんたはわたしと契約して、わたしの使い魔になっちゃったんだもの」 そもそも、召喚したものを元に戻す呪文なんてないし、とルイズが付け足す。 レメディウスは人間で、さらに自称異世界人だが、それでも自分がやっと召喚に成功した使い魔だ。 主人である自分をおいて元の世界に帰るなど、ルイズには許せなかった。 「別に帰る気はないからね。帰れなくたっていいさ」 ルイズの言葉に、レメディウスが肩をすくめながら答える。 その顔に浮かんでいる微笑に、ルイズは少し、影があるような気がした。 先程も思ったが、レメディウスは家族と折り合いが悪いらしい。 複雑な事情があるのだろうと、そう思った。 「まあ、あんたがそういうならいいんだけどね」 ルイズは、レメディウスによって綺麗に並べ直された盤面から金の駒を拾い上げ、何気なく指先でもてあそぶ。 「あんたは人間でも使い魔なんだから、使い魔としてしっかり働きなさいよ?」 「もちろん。僕にできることなら何でもするさ」 「人間にできることって、雑用くらいしかないけどね」 「というかそもそも、使い魔というのはいったいどういうことをするんだい?」 そういえば聞いていなかったと、レメディウスが呟く。 幻想文学の類はほとんど読んだことが無かったため、知識に乏しかった。 ルイズは出来の悪い生徒に講釈するように、椅子の上で膝を組んだ。 「使い魔にはまず、主人の目となり耳となる能力が与えられるの」 「言葉から察するに、視覚や聴覚の共有かな?」 「そう。でも、あんたじゃダメみたい。あんたからは何にも見えないし」 それは逆によかったんじゃなかろうかと、青年は思った。 ルイズは不満そうだが、さすがに入浴や用便の時に視覚を共有されるのは気分が悪い。 少女はレメディウスの思考をよそに講釈を続ける。 「次に、使い魔は主人の望む物を見つけてくるの。具体的には秘薬やその材料ね」 「秘薬?」 「硫黄とか、苔とか、そういうものよ。魔法を使うときの触媒にしたりするわ」 「なるほど」 そういう科学的側面も魔法には存在するのか、とレメディウスは感心する。 「最後に、使い魔は主人を守る存在なんだけど………あんたじゃ無理そうね」 ルイズがレメディウスを、値踏みするように見やる。 背は高いが、肉付きは薄く、筋肉質には見えない。 性格も柔和といえば聞こえはいいが、悪く言えば気弱なところがある。戦闘には向かないだろう。 「護身術程度ならなんとかなるけど」 「平民の護身術なんか、メイジ相手にじゃ意味無いわよ」 ちなみにルイズは、レメディウスが子爵家の嫡男――――貴族であるということをすっかり忘れている。 ルイズの脳内では、レメディウスは自称異世界から来た、平民である。 「僕は魔法のことは解らないからなあ………」 「なんか、使えないわね。あんた」 「面目ない」 嘆息しながら、ルイズは指先で弄んでいた女王を盤面に降ろす。 床においていた木箱を開くと、その中に盤面の上の駒を片付け始めた。 駒をしまうための窪みが箱の内側に彫られている。どう見てもチェスの駒をしまう専用のものだった。 「おや、片付けるのかい? もうやらないのかな?」 「あんたねえ………いったい今何時だと思ってるの? 疲れたし、もう寝るわよ」 「それもそうだね。流石に十三回も対局すれば疲れるか」 一度目に完膚なきまでに敗北したルイズは、もう一度よ! とレメディウスに喰ってかかった。 それを繰り返し、最後の対局で十三回目。 繰り返された回数は、ルイズが敗北した回数に比例していた。 「結構、良い指し筋だったよ。十三回もやったのに、一度も同じ手を使わなかったしね」 「だって、同じ手じゃ勝てないでしょ」 「そうだね。ただ、同じ手に見せかけたり、別の手に見せかけたりというのは結構重要で――――うわぁああっ!?」 チェス盤を片付け終えたルイズがいきなり服を脱ぎ出したのを見て、レメディウスが悲鳴をあげる。 白い肌に一気に朱が差し、翡翠色の瞳が凄まじい速度で泳いだ。 「な、なななななんで服を脱いでいるんだい!?」 「なんでって、着替えないと寝れないじゃないの」 「いや、確かにそうなんだけどもね? 一応僕は、男なんだけど」 その言葉に、ルイズが蔑むような眼をレメディウスに向けた。 「使い魔の雄に見られたって、別にどうとも思わないわよ」 「ああ、そう…………」 ルイズの言葉に少し悲しくなりながら、少女の着替えを見ないよう、レメディウスはテーブルに突っ伏す。 しばらくしたのち、その金髪の上に、何かが投げつけられた。 「? なにこ――――――うわぁああっ!!?」 両手で広げたそれは、シルクの布地で造られた三角形。 純白のそれは繊細なレースで美しく装飾され、気品さまで感じられる。 それは、レメディウスの認識が間違っていなければ、ショーツと呼ばれる下着だった。 「それ、明日洗濯しておいてね」 既に寝巻に着替え終わっているルイズが、レメディウスの投げ出した下着を指差して言った。 「………………普通、こういうものの洗濯は女性にたのまないかい?」 「あんた、雑用くらいしかできないんだから雑用しなさいよ」 「了解……」 ルイズはその返事に満足そうに頷くと、自分のベッドに潜り込む。 「僕は何処で寝たら良い? やっぱり外のほうが良いかな?」 流石に女子寮で男が寝るのは良くないだろう。 砂漠のウルムンは、夜は氷点下になることもあった。それに比べればこの気候だ。 外で寝ても、凍えることはないだろう。 「そこ。そこの藁束」 ルイズが、部屋の隅を指差す。 そこには馬小屋などの飼い葉をそのまま持ってきたような藁束があった。 「まさか人が召喚されるとか思ってなかったから」 「なるほど………」 「毛布は貸してあげる」 今度は自分の足元を指差すルイズ。 「では、お言葉に甘えて」 レメディウスはそこにあった毛布を拾い上げて、藁束の上に寝転んだ。 牢獄の固い寝台より、柔らかいだけ上等というものだろう。ちくちくと肌を刺すのが難点といえば難点だが。 そんなことを考えていたら、ルイズがパチンと指を鳴らした。同時に、煌々と部屋を照らしていたランプから光が消える。 魔法とは便利なものだと、レメディウスは改めて感心した。 「明日、朝起こしてね」 「はいはい」 言いつけられる仕事が本当に雑用で、レメディウスは苦笑する。 これでは使い魔というより、従僕という気がした。 「それじゃ、おやすみ」 「おやすみ」 最後に言葉を交わして、会話が途切れた。 レメディウスは、ルイズの寝息が聞こえるのを待っていた。 そしてその寝息が聞こえ始めたところで、レメディウスも瞳を閉じた。 言葉にこそ出さなかったが、ルイズ同様に疲れていたため、眠りに落ちるのは一瞬だった。 前ページ次ページ天才と虚無
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ルイージ 《出典作:ルイージマンションアーケード》 VS. 対アスタロト【魔界村シリーズ:CAPCOM】 「ま、魔界村の長がなんだ!お、お前なんかよりも、クッパの方が強いんだぞ!」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対いぶき【ストシリーズ:CAPCOM】 「まだまだお互い、精進の余地はあるようだね。これからも頑張ろう!」 ※投稿・acrysion 対エッジ【ジャスティス学園シリーズ:CAPCOM】 「あっぶないなぁもう…ナイフなんか飛ばしてくるからさぁ!あんまり調子に乗りすぎると、ファイヤーボールを飛ばすよ!」 ※投稿・acrysion 対エレナ【ストシリーズ:CAPCOM】 「まさにダンスの天才だね、君。オッケー!気に入ったよ!今から僕と友達だよ!」 ※投稿・acrysion 対軽井沢もも【燃えろ!ジャスティス学園:CAPCOM】 「すごいや、流石はテニス部の女の子だね!でも僕だってテニスは経験があるから、負けないよ!」 ※投稿・acrysion 対キム・ジェイフン【餓狼MOW:SNK】 「君も弟でがんばり屋さんなんだね。僕と同じだね。」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対豪鬼【ストシリーズ:CAPCOM】 「クッパ以上に手強い相手だったよ…。」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対殺意の波動に目覚めたリュウ【ストシリーズ:CAPCOM】 「ねぇ…本当にリュウさんなの…?一体、何があったんだ…、どうしちゃったんだよっ!?リュウさん!!」 ※投稿・acrysion 対神人・豪鬼【カプエス2:CAPCOM】 「もし、クッパもこんな風に覚醒していたらと思うと、身の毛がよだつよ…。」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対秦崇秀【餓狼伝説シリーズ:SNK】 「うんうん…兄が弟よりも優れて良いなんて方程式は、ないに等しいよ!」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対ダグ【ファイナルファイトシリーズ:CAPCOM】 「お前なんかよりも、僕の方がよっぽど女の子にモテモテだもんね!」 ※投稿・acrysion 対ディージェイ【ストシリーズ:CAPCOM】 「君の曲、結構ノリがイイね!こうやって音楽を聴きながらのバトル。すっごく楽しめたよ!」 ※投稿・acrysion 対デッドプール【マブカプ3シリーズ:CAPCOM】 「某ゲーム機の記念すべき発売日に乱入?な、なんのことかな……?」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対デビロット【サイバーボッツ:CAPCOM】 「デイジー姫も我儘な所はあるけど、君とは違って良識的な部分をちゃんと持ってるよ。」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対ババコンガ【モンハンシリーズ:CAPCOM】 「……コングファミリーの方がまだ上品だよ。」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対ババコンガ亜種【モンハンシリーズ:CAPCOM】 「僕も緑色を強調しているけど、君みたいに下品な攻撃はしないよ…断じて!」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対ボブ【ストクロ:CAPCOM】 「あ、勘違いしてごめんよ!その服装の色合いからして、なんとなくマリオ兄さんに似てたからつい…」 ※投稿・acrysion 対幽霊坊空怪【虎への道:CAPCOM】 「な、なにが『お前の精気をすいとってやる』だ!ぎゃ、逆に僕がお前をこのオバキュームですいとってやる!」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対ラッキー・グローバー【KOFシリーズ:SNK】 「…君からはなんとなく、僕と同じオーラを感じるよ…何となく…ね…。」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対リュウ【ストシリーズ:CAPCOM】 「リュウさん…大乱闘の舞台でまた会おう!」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対ルーファス【ストⅣシリーズ:CAPCOM】 「…あ、ごめんごめん!つい、君のことをワリオと勘違いしちゃったよ…」 ※投稿・acrysion 対ルガール・バーンシュタイン【KOFシリーズ:SNK】 「デイジーを剥製にしてみろ!僕がお前を徹底的に叩き潰してやる!」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対レミー【ストⅢ3rd:CAPCOM】 「男がピーピー泣くなよ!…まぁ泣きたいときってのは、誰にでもあるもんだけどさぁ…」 ※投稿・acrysion 対ロエピー大王【チキチキボーイズ:CAPCOM】 「クッパもピエロの顔した乗り物に乗っていたけど、君の場合は乗り物だけでなく、姿形もピエロなんだね。」 ※投稿・飛蝗亀軍師 対ロックマン【ロックマンシリーズ:CAPCOM】 「ロックくん…大乱闘の舞台でまた会おう!」 ※投稿・飛蝗亀軍師 &. &エレナ【ストシリーズ:CAPCOM】 「イェーイ、勝利のダァ~ンス♪…うわっと!…いててて、調子に乗りすぎてズッコケちゃった…」 『うふふっ、面白い人ね!少し、リラックスしましょう』 ※投稿・acrysion &キム・ジェイフン【餓狼MOW:SNK】 「ジェイフンくん、弟パワーで優勝を目指そう!」 『はい!ルイージさん!弟パワーで優勝を目指しましょう!』 ※投稿・飛蝗亀軍師 &ホル・ホース【JOJOシリーズ:CAPCOM】 「どうせ僕は永遠の二番手さ…。」 『何を言ってやがる。『一番よりもNo.2』がモットーの俺から見たら、アンタはかなりの一番だぜ、ルイージの旦那。』 ※投稿・飛蝗亀軍師
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前ページ次ページZERO A EVIL 無事に裏口から脱出したルイズ達は、船が停泊している桟橋に向かっていた。 貴族派の妨害があった以上、一刻も早くアルビオンに辿り着かなければならない。 長い階段を駆け上がり丘の上に出ると、四方八方に枝を伸ばした巨大な樹が現れる。枝の部分には船が木の実のようにぶら下がっていた。 後ろを振り返ってみても、追っ手が来る様子はない。どうやら、フーケはうまく敵をひきつけてくれているようだ。 「よし、こっちだ!」 ワルドに促され、ルイズ達は樹の根元にある空洞の中に入っていく。 空洞の中には各枝に通じる多くの階段がある。ルイズ達はアルビオン行きの階段を見つけると、再び長い階段を上り始めた。 階段をしばらく上り続け、踊り場付近に辿り着いた時、ルイズは背後からこちらに近づいてくる足音を耳にする。 慌てて振り向くと、白い仮面という怪しげな風貌の男がこちらに向かってくるのがわかった。 どう見ても船に乗りに来た客には見えない。貴族派の刺客とみてまず間違いないだろう。 そう考えたルイズがワルドとシエスタに知らせようとした瞬間、仮面の男は走るスピードを上げ黒塗りの杖を取り出すと魔法を詠唱し始める。 すると、仮面の男の杖の先端が白く光る。一撃で相手を刺し貫くことができる威力を持つ魔法、エア・ニードルだ。 仮面の男は最後尾のシエスタに目をつけたようで、一直線にシエスタの方に向かっている。シエスタも仮面の男に気付いたようだが、その時には男はすぐ側まで迫っていた。 それを見たルイズは、背中に背負っていたデルフリンガーを抜き、一気に仮面の男との距離を詰める。 そして、シエスタを貫こうとしたエア・ニードルをすんでのところで受け止めた。 「シエスタには指一本触れさせないわよ!」 「やっと俺の出番がきたぜ! さあ相棒、一気にやっちまえ!」 デルフリンガーは自分の出番がきたことに喜んでいるようだが、ルイズの心はそれどころではなかった。 あと一歩でも遅かったらシエスタは命を落としていたかもしれないのだ。そう考えると、この仮面の男を許すわけにはいかなかった。 憎しみと怒りの感情が溢れそうになるのを抑えつつ、ルイズはデルフリンガーを構えて仮面の男と対峙する。左手のルーンは僅かに光を放っていた。 「シエスタ、今のうちにここから離れて!」 「は、はい!」 「ワルド様、シエスタをお願いします!」 ワルドにシエスタのことを任せたルイズは、仮面の男に向かって高くジャンプするとそのまま勢いよく斬りかかる。 オルステッドが使っていた技である『ジャンプショット』。シンプルだが強力な技だ。 仮面の男はとっさに杖でガードするが、勢いを殺しきれず、鍔迫り合いでルイズにおされる形になる。 ルイズはその隙を見逃さず、渾身の力でデルフリンガーを仮面の男に叩きつける。剣をハンマーの代わりにして相手を叩く力技『ハンマーパワー』。峰打ちだが威力は申し分ない。 ルイズの攻撃をまともに喰らった仮面の男は、回転しながら後ろに吹き飛ばされる。 その時、いつの間にか側まで来ていたワルドが追い討ちをかけるようにエア・ハンマーを放つ。直撃を喰らった仮面の男は階段から落下していった。 その後しばらく待ってみても仮面の男が戻ってくる気配はない。どうやら撃退に成功したようだった。 「どうやら、もう大丈夫のようだね。さすがルイズ、見事な剣さばきだったよ」 「そんな。敵を撃退できたのはワルド様のお陰ですわ」 「謙遜することはない。君の力は僕の想像以上だよ! この力があれば貴族派の妨害など恐れることもないさ!」 「ワルド様?」 どこか興奮気味に語るワルドを不思議に思ったが、戦いに勝って気分が高揚しているのだから無理もないと気にしないことにした。 シエスタにも怪我はなさそうなので、ひとまずは安心といったところだろうか。 「あれ? ひょっとして俺の出番、もう終わり?」 そんなデルフリンガーの呟きをよそに、ルイズ達はさらに上を目指す。 階段を上りきり、桟橋に着いたルイズ達は、そこに停泊している船に乗り込む。 いきなり現れたルイズ達に船員は驚くが、ルイズとワルドが貴族だとわかるとすぐに船長を呼びに行った。 船長との交渉の末、ワルドが風の魔法で風石の代わりをすることで話はまとまり、船はアルビオンに向けて出港する。 「二人ともよくがんばったね。空に出てしまえばしばらくは安全だろうから、今のうちに休んでおくといい」 ずっと走りっぱなしで疲れていたルイズは、ワルドの言葉に甘えて客室で休むことにした。 シエスタはルイズと一緒の部屋で休むのをためらっていたが、ルイズに強引に引きずられていってしまう。 そんな二人の姿をワルドは微笑みながら見送っていたが、その目はシエスタの後姿を鋭く射抜いていた。 翌日、アルビオンが目に見える位置まで近づいた時にそれは現れた。 舷側から大砲を突き出した大きな黒い船が近づいてきたのだ。旗も掲げていないところを見ると、どうやら空賊のようだ。 その船にルイズ達の船はあっけなく停船させられてしまう。この船の武装は貧弱で、頼みのワルドも船を浮かすために精神力をほとんど使っていたのだから無理もなかった。 甲板に降り立った派手な空賊の男が船長と交渉している。どうやらこの男が空賊の頭のようだ。 そんな中、ルイズは大人しくしていた。ここで暴れればワルドやシエスタが危険な目に遭う可能性があるからだ。 もちろん二人に危害を加えるようならただでは済まさない。そんなことを考えながら、ルイズは怯えるシエスタを背中に隠し、成り行きを見守っていた。 男と船長の交渉はすぐに終わり、船長は命を助ける代わりに船と積荷を全て渡すという一方的な要求をのむことになった。 うな垂れる船長をよそに、上機嫌な男はルイズ達に目をつけると、船倉に閉じ込めるよう部下に指示を出す。後で身代金をたんまり取る腹積もりのようだ。 こうして、杖とデルフリンガーを取り上げられたルイズ達は空賊の捕虜になってしまうのだった。 「ルイズ様、これから一体どうなってしまうんでしょうか……」 「心配しなくてもいいわ。待っていれば、必ずチャンスは来るはずよ」 ルイズ達は、空賊が持ってきた水と食事のスープを飲みながら今後の事を話し合っていた。 シエスタにはああ言ったものの、ルイズも不安なのに変わりはない。だが、ワルドやシエスタの手前もあるので、冷静を装っていた。 そんな中、ワルドは一人落ち着いている。今は船倉の積荷を見て回る余裕すら見せていた。 その時、扉が開き空賊の男が入ってくる。男は三人を見渡すと、楽しそうに喋りだした。 「あんたらも運が悪かったな。まあ、大人しくしてりゃ悪いようにはしねえからよ」 「いや、そうでもないさ。目当ての人物にこうも早く会うことができるなんて思わなかったからね」 「あん? お前、一体何言ってんだ?」 「頭に伝えてくれないかな。我々はトリステインの大使で、アンリエッタ姫殿下から密書を言付かっているとね」 「……てめー、そんなことばらしちまってただで済むと思ってんのか?」 「いいから早く頭に伝えてくれないかな」 「いいだろう。ちょっと待ってな」 そう言うと空賊の男は船倉を出て行った。 二人の会話を聞いていたルイズとシエスタは唖然とした表情をしている。大事な任務をあっさり喋ってしまうワルドの真意がわからなかったからだ。 何か言いたそうな二人の表情にワルドは気付いていたが、特に気にする素振りもなく、ただ黙って男が戻ってくるのを待っていた。 しばらくして、男が船倉に戻ってくる。先程とは違い、表情は真剣そのものだった。 「来い。頭がお呼びだ」 男に連れられて、ルイズ達は船長室に通される。そこには、あの派手な空賊の男がいた。 「お前か、トリステインの大使ってのは」 空賊の頭の質問に、ワルドは優雅に一礼してから答える。 「トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵です。先程伝えましたとおり、アンリエッタ姫殿下より密書を言付かって参りました」 「そんな大事なことを空賊なんかにぺらぺら喋っていいのかい? お前らを貴族派に売り飛ばすこともできるんだぜ」 「あなたがそんなことをするはずがないでしょう。ウェールズ・テューダー皇太子殿下」 その瞬間、その場にいた空賊全員の目がワルドを睨みつけるように鋭くなったのをルイズは見逃さなかった。 派手な空賊の男をウェールズ皇太子と結論付けたワルドの真意はわからないが、この反応を見るとまったくの見当違いにも思えない。 「俺がアルビオンの皇太子だっていう確証でもあるのかい?」 「殿下が指にしているのはアルビオン王家に伝わる風のルビーではありませんか? もしそうなら、トリステイン王家に伝わる水のルビーと共鳴し、虹色の光を作り出すことができるはずです」 その言葉を聞いたルイズは、アンリエッタから渡された水のルビーをワルドに手渡す。 「ワルド様、これを」 「ありがとうルイズ。殿下、よろしいですかな?」 空賊の頭は自分のしていた指輪を外すと、ワルドの持っている水のルビーに近づける。 すると、ワルドの言ったとおり二つの宝石が共鳴し、虹の光が作り出された。 「どうです、殿下」 「まいったな。まさかこんな形で見破られるとはね。君の言うとおり、私がアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 ウェールズは苦笑いを浮かべながら変装を解く。それを見た周りの空賊達は一斉に姿勢を正した。 シエスタは突然の展開に驚いていたし、ルイズはウェールズの変装を見破ったワルドを尊敬の眼差しで見つめている。 そのため、二人はワルドの手際が良すぎることを疑問に思うこともなかった。 その後、ワルドから手渡された手紙を読み終わったウェールズは、アンリエッタから送られた手紙を返すことを了承した。 だが、手紙はニューカッスル城に置いてあるとのことなので、ルイズ達はウェールズと一緒にニューカッスル城に向かうことになる。 ワルドがウェールズから手紙を受け取れば、今度はルイズの任務が始まる番だ。 ニューカッスル城に着いたルイズ達は、ウェールズの自室に通される。 ウェールズは机の中から宝石箱を取り出すと、中に入っている手紙を読み返し始めた。すでに何度も読んでいるのか、手紙はぼろぼろであった。 手紙を読み終えたウェールズは、それを丁寧に折り畳み、封筒に入れワルドに手渡す。 「姫からの手紙は、この通り確かに返却したぞ」 「ありがとうございます」 頭を下げ、ワルドが手紙を受け取る。 ワルドの任務が終了し、いよいよルイズの出番がやってきた。 「恐れながら、殿下に申し上げたいことがございます」 「君は?」 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します。幼少の頃、アンリエッタ姫殿下の遊び相手を務めさせていただきました」 「ほう。よし、何なりと申してみよ」 「ありがとうございます」 ルイズは一つ息を吐くと、意を決したように話し始めた。 「私は姫様から重大な任務を受けてここにやってきました。殿下、姫様は殿下がトリステインに亡命することを望んでいます! 私達と一緒にトリステインにいらしてください!」 「それはできない。私はアルビオン王家の誇りをかけて、最後の最後まで戦い続けるつもりだ」 「お願いでございます! 姫様は今でも殿下のことを愛しております! 私にも愛している人がいます。ですから、姫様のお気持ちがよくわかるのです! もし、殿下が亡くなられるようなことがあれば、姫様は悲しみに打ちひしがれてしまいます! それに、このまま勝ち目のない戦いを続けるより、トリステインに亡命して再起を図る方がきっといい結果が得られるはずです! ですから、どうか、どうかお願いします!!」 ルイズの熱のこもった説得を聞いたウェールズは静かに目を閉じる。どうやら頭の中で考えをまとめているようだ。 ルイズはウェールズの返答を緊張した面持ちで待っている。やがて、ウェールズは目を開けるとルイズへ答えを出した。 「亡命はできない。例えそれが姫の望みであってもだ」 「殿下!」 「明日、ニューカッスル城への総攻撃が始まる。朝には非戦闘員を乗せた船が脱出する予定だ。君達もそれに乗って帰りなさい」 「待ってください!」 「そろそろパーティーも始まる時間だ。王国が迎える最後の客として、是非参加してほしい」 「まだ話は!」 「よせ、ルイズ!」 淡々と話すウェールズに、なおも食ってかかろうとするルイズだが、ワルドに止められてしまう。 「このまま君が取り乱してしまっては、ますますいい結果が得られなくなる。ここは僕に任せてくれないか」 「ワルド様、でも!」 「ルイズ、僕を信じてくれ」 「……わかりました」 「ありがとう。シエスタ、ルイズを連れてしばらくここから離れてくれないか」 「は、はい。ルイズ様、行きましょう」 ルイズはシエスタに連れられて部屋の外に出て行く。 ウェールズの説得に失敗した自分を情けなく思うが、まだ全てが終わったわけではない。 ワルドがきっといい方向に話をもっていってくれることを信じて、ルイズは待つことにした。 夜になり、城のホールではパーティーが始まる。 明日、貴族派の総攻撃があるというのに、パーティーに参加している者達の表情は明るかった。皆が楽しそうに食事をしたり、踊ったりしている。 一方、ルイズは用意された客室でシエスタと一緒にワルドの帰りを待っていた。 城のメイドからパーティーが始まるという知らせを受けたが、自分の代わりにウェールズを説得してくれているワルドを置いて、パーティーに参加できるわけがない。 「それにしても遅いねー。何かあったんかね?」 「ウェールズ殿下を説得するのは、いくらワルド様でも簡単にはいかないわ。あれだけ強い意志を持っていらっしゃるんだもの」 デルフリンガーの呟きに答えるルイズの声には不安の色が混じっていた。あのウェールズの強い意志をどうやって曲げさせるのか、ルイズには想像もできない。 もし、ワルドの説得が失敗すれば、明日の総攻撃でウェールズは命を落としてしまうかもしれない。そう考えると気が気でなかった。 その時、ドアをノックする音と共にワルドが部屋に入ってきた。 「遅くなってすまない」 「ワルド様! ウェールズ殿下の説得はうまくいきましたか?」 「ルイズ、落ち着いて聞いてほしい。説得はうまくいかなかったが、ウェールズ殿下の意志を変えることができるかもしれない妙案があるんだ」 「その案とは何なのです?」 ルイズは緊張した面持ちでワルドの返事を待っている。ワルドはルイズが落ち着いているのを確認した後、口を開いた。 「僕達がここで結婚式を挙げるんだ」 「け、結婚式ですか!?」 「そうだ、お互いに愛し合っている僕達の結婚式を見れば、きっとウェールズ殿下の考えも変わるはずだ」 確かに、ウェールズがアンリエッタを愛しているのなら、幸せそうな結婚式を見ることで心に迷いが生まれる可能性はある。 ワルドと結婚することで自分だけ幸せになるのはアンリエッタに申し訳ないが、これでウェールズの命を救うことができたならアンリエッタも喜んでくれるはずだ。 こんな形で結婚式を挙げるとは思わなかったが、ワルドと結婚することに不満はまったくない。 「わかりました。私、ワルド様と結婚します」 「ありがとう、ルイズ。ウェールズ殿下にはすでに明日の結婚式の媒酌を頼んである。大丈夫、きっとうまくいくさ」 「はい!」 ルイズの返事に満足そうに頷いたワルドは、続いてシエスタの方に視線を向ける。 「シエスタ、君はその剣を持って先に船で脱出しなさい。僕とルイズはウェールズ殿下を連れてグリフォンでトリステインに帰る」 「え、でも……」 「待ってください、ワルド様。シエスタには私の結婚式に出席してもらいたいんです」 「しかし、グリフォンにはそんなに大勢は乗れないんだ」 「それなら、船が出発する前に結婚式を挙げましょう。ウェールズ殿下を説得する時間も必要なのですから、早くても損はないはずですわ」 ルイズは世話になっているシエスタに自分の晴れ姿を見てもらいたかったし、自分の結婚式に親しい人間が一人も出席しないのは嫌だった。 この状況では、姉のカトレアもアンリエッタも出席することはできない。だから、せめてシエスタだけでも出席してほしいと思ったのだ。 「わかった。ウェールズ殿下には僕から連絡しておくよ」 「すみません、ワルド様」 シエスタが結婚式に出席するのを認めたワルドは、ウェールズに連絡するために部屋を出て行った。 「ありがとうございます、ルイズ様。私なんかがルイズ様の結婚式に出席できるなんて夢のようです」 「私の一生に一度の晴れ舞台なんだから、シエスタには出席してもらわないとね。デルフ、あんたも出席すんのよ」 「おう、相棒の勇姿を拝ませてもらうぜ」 その後、ルイズ達は明日に備えるため早めに寝ることにした。 今日は興奮して眠れないと思っていたルイズだが、疲れていたせいもあり、ベッドに入るとすぐに眠ることができた。 ルイズは夢を見ている。 夢の中のルイズは、日の本という国でとある城の城主をしていた。 ルイズには大きな野望があった。混乱状態にある日の本を戦乱に巻き込み、その戦乱に乗じて自分が日の本を支配しようと企んでいたのだ。 そのために人外の力を手に入れ、異形の者達を手下にするなど着々と準備を進めてきたルイズだが、それを邪魔する者が現れた。 ルイズの野望を成功させるために捕らえていた男をある忍びが救出にやってきたのだ。 忍びの力はかなりのもので、捕らえていた男を救出されただけでなく、異形の手下達も倒されてしまう。 そして、忍びと捕らえていた男がついにルイズの所までやってくる。 だがルイズには人外の力がある。負ける気は毛頭なかった。 天守閣の屋根の上で、ルイズはカエルとヘビの姿に変化する。この姿こそ、これからの日の本を治めるのに相応しい気高き姿だとルイズは思っていた。 しかし、忍びと捕らえていた男にルイズは敗れ、天守閣の屋根の上から落下する。 こうしてルイズの野望は脆くも崩れ去ったのだった。 場面が切り替わり、ルイズの姿が変わる。 次のルイズは、鳥の顔をした大仏の姿をしていた。だが、これはルイズの本当の姿ではない。 この姿は、ある寺の池に捧げられた2000人の液体人間の憎しみという感情から生まれたルイズが、池の中央に建っている大仏に宿っただけなのだから。 ルイズの目の前には、自分と同じくらいの大きさのロボットが立っている。 液体人間の強い憎しみの感情に突き動かされるように、ルイズは目の前のロボットに戦いを挑む。 だが、圧倒的な強さを持つロボットにルイズは敗れてしまう。 ルイズは敗れたが、それで液体人間の憎しみが消えるわけではない。 液体人間は自分達をこんな姿に変えた者達を飲み込み、ルイズを倒したロボットさえも飲み込もうとするのだった…… 再び場面が切り替わる。 今度のルイズは、以前見た夢と同じように山の頂上で下にいる者達を見ているだけだった。 だが、今回の夢は下にいる人物が違っている。下にいたのは背格好がまったく違う4人の人間と魔王だった。 やがてオディオと名乗った魔王と人間達との間に戦いが始まる。魔王の力は恐るべきものだったが、戦いは人間達の勝利で幕を閉じた。 戦いに敗れた魔王は真の姿を現す。そこに現れた姿を見たルイズに衝撃が走った。 魔王の正体は、ルイズもよく知っているオルステッドだったのだから…… その時急に場面が切り替わり、ふと気が付くと、ルイズは別の場所に立っていた。自分の姿を見てみると、魔法学院の制服を着たルイズ本人の姿なのがわかる。 辺りを見回してみると自分の周りに7つの石像があるのがわかった。石像を見ようと近くによるが、その姿を見たルイズは驚いてしまう。 「こ、これって!」 その7つの石像にルイズは見覚えがあった。 翼のないドラゴン、頭だけの姿をしたマザーコンピュータ、坊主頭の格闘家、ガトリング銃を持った大男、武道家、カエルとヘビの変化、鳥の顔をした大仏。 全て夢の中でルイズが体験した姿だった。 その時、奥に見える扉から一人の男が現れる。オルステッドだ。 オルステッドが現れたことでルイズは激しく動揺する。7つの石像とオルステッドは、自分もここにいる者達と同じ末路を迎えるということを示しているように感じられた。 だが、それを認めるわけにはいかない。 「私はあなた達と同じにはならないわ! 結婚式だってうまくいくし、ウェールズ殿下の命だって救ってみせるんだからッ!」 そう叫んだ瞬間、7つの石像の目が光を発し、周りの風景がぼやけていく。 ルイズが最後に目にしたのは、悲しそうな表情を浮かべるオルステッドの姿だった。 やがて、ルイズはゆっくりと目を覚ました。窓の外は薄暗く、まだ夜が明けていないのがわかる。 「大丈夫。きっとうまくいく、きっと……」 だが、いくら大丈夫と呟いてみても不安が晴れることはなかった。 前ページ次ページZERO A EVIL
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前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 先ほどの授業でシャツがボロボロになったルイズは自分の部屋を目指しとぼとぼ歩いていた。 事は数十分前…。 今回行われる「練金」の授業では霊夢が一緒にいなかったので先生にそれを聞かれ少し恥ずかしかった。 最初の時は霊夢もほかの使い魔たちとともに教室の後ろで聞いていたのだが…。 もしかするとおさらいとしてそのとき授業を担当していた教師が言っていた属性のこととかメイジにもクラスはあるとか…そんなのを知りたかっただけなのかも。 それともただ単に飽きただけとか、そんな風に考えていると当然授業が頭に入らず、ルイズは先生に注意された。 「ミス・ヴァリエール。罰としてこの石くれを真鍮に変えてください。」 そういって担当教師のミセス・シュヴルーズが教壇の上にあいてある石くれを指さすと、ほかの生徒たちがいつもの様に机の下に隠れだした。 キュルケが先生に中止を呼びかけるがシュヴルーズ先生は一年生の時のルイズを知らないためかいっこうに彼女の言葉を聞き入れなかった。 ルイズは毎度の事だと我慢し、ため息をはくと教壇へと近づき、置かれている石くれに杖を向けると呪文を唱え始めた。 彼女は今このときだけ僅かばかりの自信を持っていた。あの召喚の儀式の時にはちゃんとやれたのであるから。 出てきた奴がこっちの言うことをあまり聞いてくれなくても一応は成功したからこれから魔法がどんどん使えていくのかな…と浅はかな心で思っていたが。 現実は非情である…誰が言ったのか知らないがまさにその通りであった。 そんなこんなで巨大戦艦の主砲が放つ砲弾も裸足で逃げ出す程の爆発で教室は滅茶苦茶になり、ミセス・シュヴルーズは奇跡的に気を失うだけですんだ。 それと一部の生徒たちも巻き添えを食らって気絶してしまった事により授業は中止となった。 廊下へ出たときにルイズと同じボロボロになりながらも無事だった生徒たちの怨嗟の声を軽くスルーし、今こうして自分の部屋へと向かっているところであった。 ようやくたどり着き、小さくため息をはいてからドアを開けた先にいた人物を見てまたため息をはいた。 「おかえりなさい、その格好を見ると外で見た爆発はアンタの所ね。」 彼女がこの世界に呼び出した異邦人、博麗 霊夢がイスに座っていた。 テーブルの上には食堂で使っているティーセットが置かれており、ポットからは小さな湯気が立っている。 大方給士にでも頼んで借りたのだろう。 ルイズの部屋にもティーセットはあったのが不運にも二日前に壊してしまったのだ。 「えぇそうよ…。」 ルイズは顔に多少疲れを浮かべながらそう言った。 ドアを閉めるとクローゼットを開け中から着替えのブラウスを取り出した。 いつまでもボロボロのブラウスを着ても仕方がない。 先ほどのことで次の授業開始時間は延長されたがいつまでもこんなススだらけの服など着ていられない。 そんな時、ふと目の前に湯気を立ち上らせているティーカップが スッ と横から出てきた。 そのティーカップを持っていたのは霊夢であった。 「え、あたしに…?」 「お茶の一杯くらいは飲んで行きなさい、案外気持ちがやすらぐわよ。」 「ん、…ありがとう。」 ルイズはお礼の言葉を言ってから霊夢の持っているティーカップを受け取るとイスに座り、湯気を立たせている薄緑の液体に慎重に口を付けた。 お茶を飲んだルイズの第一感想は「渋くて素朴だわ。」第二感想は「だけど、これはこれでおいしいわね。」 「でしょ?これはこれでおいしいものよ。」 その答えを聞いて満足したのか霊夢は柔らかい笑顔でそう言うとティーカップを手に取るとゆっくりとお茶を飲んでいく。 午前の柔らかい日差しが窓から入る中、霊夢とルイズは静かにお茶を飲んでいた。 先にお茶を飲み終えたルイズが口を開いた。 「ねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」 「なに?」 「今更なうえ唐突だけどね、アンタが空を飛ぶのに杖も詠唱も無しに行うなんてどうやってするの?やっぱり先住魔法?」 「本当に今更ね…しかも唐突すぎるわ。まぁいいけど。」 霊夢は少し面倒くさそうな顔をした。 「アレは私の能力よ。空を飛ぶ程度の能力。誰にも縛られない能力でもあるけど。」 誰にも縛られない、ということはやっぱりあの使い魔のルーンもそれで消えてしまったのだろうか。 しかしそれよりもルイズはあの先住魔法と見間違えるような行為が能力だと言うことにまず驚いた。 「の、能力…?魔法で飛んでるんじゃなくて?」 「えぇ、…まぁ魔法使って空を飛んでる奴もいるけどね。」 そう言った彼女の目は一瞬だけ何処か懐かしむような目をしていた。 きっと元いた世界にメイジかなんかの親戚がいたのだろうか。 霊夢は手に持っていたカップをテーブルに置くとイスから立ち上がり、座り心地のいいベッドに腰を下ろした。 一方のルイズは少し落胆したような顔を浮かべた。 「そう…別にそれは魔法とかじゃなくて最初から備わっていたものなのね……。」 つまりは生まれたときからそのような力を持っていたのだ。 ルイズは思った…まるで私と正反対だなぁ。 と。 そんなことを思い、ちいさな憂鬱の波がやってくる。 どこか妙な寂しい雰囲気を醸し出しながらルイズは力なく項垂れた。 「どうしたの?」 それに気づいたのか霊夢はルイズに声をかける。 「…あのね、ちょっと話聞いてくれる。」 「え?…まぁちょっとだけなら。」 そう言ってルイズは語り始めた。 自分がさる公爵家の末女として生まれたのだが物心付いたときからまともな魔法が行えず、常に失敗し続けてきたこと。 父はその事についてあまり触れなかったが母と姉がそれをもの凄く気にしていること。 いつまでたっても魔法は使えず、無駄に失敗したときの爆発が強くなるだけ。 「それがほかの生徒達に『ゼロ』って呼ばれている理由よ。」 一通り語り終えたルイズは一度間をおいて言った。その鳶色の瞳は何処か悲しみを湛えていた。 霊夢はお茶すすりながら黙って話を聞いていたがそんなルイズに気にする風もなくこう言った。 「つまり何?アンタより強い私が羨ましいって事なのね。人に長ったらしい愚痴を聞かせておいて。」 少々呆れた言い方と突き刺すような視線で霊夢はそう言った。 ルイズは霊夢の視線に少々たじろぐが力弱く首を振った。 いつにもまして珍しく今のルイズは少し弱気であった。 そりゃいつもは気の強い女子生徒だが霊夢の方が気の強さは勝っている。 「べ、別にそんなんじゃ…。」 「それにたぶん、そんなのは失敗の内に入らないわよ。」 その言葉にハッとした顔になった。 「え?それって、どういう意味なの?」 「例えどんな形式でも杖から出ているんでしょう?ならそれはアンタたちが言う魔法なんじゃないの。」 少々無理がありそうな解釈である。 「幻想郷にもアンタみたいに馬鹿みたいに威力を持った魔法を使う奴だっていたわよ。それと同じなんじゃない?」 そう言うと残っていたお茶をクイっと飲み干すと続けた。 「それに魔法なんて勝手に新しいのホイホイと作れるような物なんだしこの際それを新しい魔法だと思えばいいのよ。」 言いたいことを言い終えて満足したのだろうか霊夢はカップをテーブルに置くと最後にこう言った。 「それに、アンタはちゃんと召喚に成功したんだから。」 そう言って霊夢はゴロンとルイズのベッドに寝転がった。 一方のルイズは先ほどの言葉に少ない希望を見いだしていた。 同級生達には茶化され、家族に冷たくあしらわれてきた彼女にはとても影響力のある言葉だった。 そして、霊夢の言うとおり、結果はどうアレ形式的にはちゃんと召喚の儀式は成功しているのだ。 授業時の爆発も、きっと未知の魔法に違いない。 (それに…よくよく思い出せば…。) 今まで、ルイズの失敗魔法を至近距離で受けて無事だったものはいなかった。 絶対割れないと言われていた家の壺を爆砕させたり。 家で練習していたときにたまたま母が魔法を喰らってしまい、髪がアフロになってしまったり。 学院では授業の時に実践をしろといわれた時には必ず何かが彼女の魔法で壊れる。 一年生の冬に部屋で『ロック』の呪文をドアに向けて唱え、結果丸一日雪風に震えながら一夜を過ごした。 今まではそれを全て『失敗魔法』と一括りしてきたがどれにも共通点はある。 そう、『いかなる物でも爆発』するということだ。 それを全く未知の新しい魔法と考えればかなり強い魔法ではないのだろうか。しかし… 「どんな呪文を唱えても爆発しか起こらないって…やっぱりそれってどうなのかしら。」 ルイズはそんなことを考えながら空になった自分のカップに新しいお茶を入れた。 「と、いうよりアンタはいつから私のベッドを好き勝手に使ってるのよ?」 「いいじゃない減るもんじゃないんだから。」 場所変わって学院長の部屋。 普段はここの最高責任者のオスマンと秘書が常に待機している部屋だが今日に限って秘書はお暇を頂きこの場におらず。 部屋にはオスマンと教師の二人だけであった。 「ミスタ・コルベール。今日は何の話かね?」 「実は、見ていただきたい物があるのです。」 コルベールと呼ばれた教師はそう言うと手に持っていた細長い包みを机の上に置いた。 そして包みを結んでいる黒い紐をとくと鹿の皮で包まれていた太刀が姿を見せる。 「太刀…じゃのぉ。ミスタ、これは一体?」 コルベールが答える前に突如太刀がブルブルと震えだしたかと思うと… 『おいおい、やっと暑苦しい動物の皮から出してくれたと思ったら何処だよここは!?』 金具部分をカチカチ動かし荒っぽい口調でしゃべった。 それを見たオスマンは目を細め、それがただの剣ではないということを悟った。 「ふぅむ、インテリジェンスソード…か。」 「インテリジェンス」。要は意志を持つ武器のことである。 価値はそれほどでもないが歴史は古く、中には作られてから数千年の時が経つ物も存在する。 「えぇ、ブルドンネ街で購入いたしました。それと、この本の六十ページを…。」 叫び続けているインテリジェンスソードを無視し、コルベールは一冊の古い本を剣の横に置いた。 「ん?『始祖の使い魔達』か。随分とまた古い物を…。」 そう言いオスマンは六十ページまで一気にめくるとそこに描かれていた『ガンダールヴ』の押し絵を見て体が硬直した。 白銀の鎧をまとった騎士が両の手に持っている二つの武器の内一つは太刀であった。 しかしその太刀と今机の上に置かれているインテリジェンスソードと余りにも似ている。 一度交互に目を配らせ見比べてみるがやっぱり似ているのだ。 「もしもこのインテリジェンスソードがガンダールヴが使用していた物ならば…。」 コルベールは喋り続けていたインテリジェンスソードを鞘に戻した。 「あの少女に持たせ、どうなるかを見てみたいと思いまして。」 その言葉にオスマンは顎髭をいじり神妙な面持ちになった。 「だがのぉ、あの娘は聞いてくれるだろうか。個人的には少々我を通しすぎだと思うのだが。」 「でも我が儘という程強くはありません。この程度の願いなら聞いてくれるかと。」 二人の間に少し静寂が訪れるがオスマンが口を開いた。 「しかし彼女がガンダールヴというのを知ってるのは君とわしぐらいじゃ。召喚した本人も承諾を取らねばいかん。 まぁ近日中にでもここへミス・ヴァリエールとあの娘を呼んで話を聞かせよう。あ、あぁ後そのインテリジェンスソードはここに置いていってくれんか?」 それで話し合いが終わり、コルベールは頭を下げインテリジェンスソードを机に置いたまま部屋を出た。 オスマンは引き出しからパイプを取ると口にくわえ一服をした。 時間は進み昼食の時間、食堂前は生徒達によりごった返していた。 一度に大量の生徒達がここへ来るのだからそれはまぁ仕方のないことだが。 そんな人混みの外にルイズはいた。 「これじゃあしばらくは入れそうにないわね…。アイツは先に入って行っちゃったし。」 ルイズはそう言い頭を掻いた。 先ほどまで霊夢もいたが目を離してる隙に一人で勝手に空へと飛び上がり開けっ放しにされていた窓から食堂の中へ入っていった。 主人と共に人生を生きてゆく事を義務づけられた使い魔がとるとは思えない行動である。 しかし実際には彼女の左手にはルーンが無いため、使い魔ではないと思うのだが。 ルイズは軽いため息を吐くと後ろから誰かに肩をたたかれた。 後ろを振り返ると、この前霊夢に叩きのめされたというギーシュが手に花束を持って突っ立ていた。 「なによ。」 突き放すようにルイズは言うと彼は少し躊躇いながらも口を開いた。 「い、いや実は…あの使い魔君に、これを渡してくれないか?」 そういってギーシュはルイズに花束を突きつけた。 赤と白のバラが一緒くたになって入っている。 「どうして私なのよ?アンタの手で直接渡せばいいじゃない。」 こういうのは本当に自分の手で渡した方が良いのである。 「い、いやぁ…もしも君の使い魔が男だったのなら直接僕の手で渡していたけど女の子だと…ね?」 そう言ってギーシュは目だけを右方向に動かした。そこにいたのはほかの女子達と談笑しながら食堂中へと入っていくモンモランシーがいた。 この前彼は浮気がばれてしまい、その後に霊夢と決闘をして負けたらしい。 女の子達の間では当時少し低めであった彼の評価は見も知らずの少女に負けてしまったせいで地に落ちた。 しかしモンモランシーただ一人だけが今も彼とつきあっているのだ。 なんと健気なことだろうか。まぁでも皆はこの二人のことを「バカップル」とか呼んでいるらしい。 特にキュルケあたりが。 「うーん…、でもレイムだと薔薇の花束なんて貰っても喜びそうにないわよ。」 今までの彼女を見てきたルイズはキッパリとそう言った。 それに霊夢はギーシュのことを毛嫌いしていたし初めてあったときにも「女の敵」とか言っていたのをよく覚えている。 しかしそんなギーシュは尚もこちらに花束を突きつけてくる。 「でもねぇ、このままじゃなんというか…レディに優しい僕としては申し訳が立たなくて。頼むよ。」 そう言うとギーシュは一方的にルイズの手に花束を預けるとそのままそさくさと食堂の中へと入っていった。 取り残されたルイズはギーシュ本人の性格を丸写しにしたようなこの薔薇の花束をどうしようかと悩むだけであった。 前ページ次ページルイズと無重力巫女さん
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前ページ次ページゼロの魔王伝 ゼロの魔王伝――8 夢の世界に沈んだルイズは、これが夢の中だと分かる不思議を感じながら、懐かしくさえ思える夢を見ていた。それは春の使い魔召喚の折の事。唱えても唱えても爆発ばかりが起き、一向に使い魔を召喚できずにいたルイズに周囲の生徒から罵倒が飛ぶ。 “ああ、これは、Dを召喚した日の事ね” この日の事は今も鮮明に思い出せる。その時の情景も、周囲から向けられる感情の種類も、虚しく空を切る杖の感触も、なにも呼ぶ事無く虚ろに響く呪文も……もっとも、Dの美貌ばかりは夢の中でも思い出せないけれど。 魔法学院の外に広がる薄緑が連なる草原の真ん中で、同級生達に軽蔑の視線でもって見守られながら、ルイズは何度も杖を振り、呪文を唱え続ける。だがそれは実を結ぶ事無く草原に土煙を幾筋もたなびかせていた。 引率として同伴していた頭頂の毛が薄い、温和そうな中年男性のミスタ・コルベールが、最後の機会と夢の中のルイズに告げる。ルイズは上空からその様子を俯瞰する高さで見つめていた。これが最後と覚悟を決め、詠唱を始める夢の中のルイズ。 それまでと変わらぬ爆発が起きた時、夢の中のルイズは目の前が真っ暗になったようだった。いや、実際そうだった。必死に歯を食い縛って流すまいと堪えていた涙の粒が眼尻に大きく盛り上がり、ついには理性の堤防を破って滴り落ちそうになる。 その涙を許さない貴族としての矜持、もうどうでもいいと投げやりになる素の感情。せめぎ合うそれらがルイズの心を掻き乱していた。 周囲の生徒達の野次が一層ひどく、そしてコルベールの姿にも傍から見てもあからさまに失望の色が伺えた。無理もない、また自分は落ちこぼれのルイズである事を証明したのだから。 一人進級する事も出来ず、また同じ一年を過ごし、周囲からの嘲りと憐れみとを満身に浴びて、いずれは耐えきれずに屈辱に胸を掻き毟り自ら命を断つか、あるいは心に癒えぬ傷を抱えたままラ・ヴァリエールの領地に戻っていただろう。 “でも、違った” 慈悲深き始祖ブリミルはルイズを見放しはしなかった。やがて土煙に薄く人影が映し出された時、すべての音は絶え、唯一その場に居た人間のみならず使い魔たちの息を呑む音だけが響いた。 そう、風さえも音を絶やしていた。風は怯え、土は慄き、火は熱を失い、水は流れる事を止めた。 ルイズが召んだ者――いやモノとはそれほどまでに美しく、それほどまでに恐ろしいものだと、人間よりも世界が悟ったのだ。 見よ、立ち込める土煙は決して触れてはならぬ者の出現を悟り自ら左右に分かれ、踏みしめられる大地は喜びと共に甘受し、頬に触れた風は恍惚と蕩け、泥の如く蟠って大地に堕ちた。 ルイズの瞳にそれが映し出された。コルベールの脳がそれを認めた。周囲の生徒達が考える事を止めた。使い魔達は来てはならぬ者が来た事を悟った。 かつて、森の彼方の国から、一人の美女を追って全てを白く染めるほどに濃い霧と共に、死者のみを乗せた船の主となって倫敦を訪れたバンパイアの様に、ソレは姿を見せた。 太陽の光がそのまま闇の暗黒に変じてしまうかの如き黒の服装。胸元で時折揺れる深海の青を凝縮したようなペンダント。それらが彩る、広く伸びた鍔の旅人帽の下にある美貌よ。美しさとは、これほどまでに極まるものなのか。 それは、美しいという事さえ認識できぬ美しさであった。目の前のそれを表す言葉を探り、しかし美しいと言う他ないと認め、それよりも相応しい言葉を見つけられないと絶望するのに刹那の時を必要とした。 若い、まだ二十歳になる前の青年であった。銀の滑車がついたブーツは音一つ立てずに歩み、かろうじて息を吹き返した風の妖精たちによって靡く波打った黒髪も、漆黒のコートもその全てに美しいという形容の言葉を幾度も着けねばならぬ。 右肩に柄尻を向けて斜めに背負った一振りの長剣は180サントを悠々と越える青年の身の丈にも届くほどに長く、尋常な腕では満足に鞘から抜き放つ事も出来ないだろう。 一歩、二歩と歩む青年の姿はルイズの魂を根幹から揺さぶるほどに美しく、この瞬間、ルイズはこれまで影のように傍らに在り続けた“ゼロ”というコンプレックスを忘れた。 一人の少女の輝かしい生涯を、その終りまで暗黒に変えるだろう劣等心を忘却させた青年は、しかし、三歩目を刻む事はなかった。土煙とは異なる白煙を全身から立ち上らせた青年は、ゆっくりと、その様さえも美しくうつ伏せに倒れたのだ。 ど、と重い音が響く。ルイズが目の前の光景を理解するのに数秒を要した。 『目の前に倒れているのは、誰? 私が召喚した、使い魔? いや、こんな美しい御方が? いえ、それよりも、倒れている? どうして? 違う、そんな事よりも!!』 意味のある言葉にならぬルイズの思考を突き動かしたのは、自分が呼び出したかもしれない使い魔を保護しようという意識ではなかった。 それは奉仕の心であった。この方の為に何かしなければならない。何か自分に出来る事があるのなら、それに全力を尽くさねばならない。期待の結婚詐欺師にかどわかされ、夫を殺した婦人方の万倍も強く、ルイズは眼前の青年の奉仕者となっていた。 トリステイン王国でも五指に数えられる名家中の名家ラ・ヴァリエール家の令嬢として、多くの召使たちに傅かれ日常の雑事の全てを他者に委ね、頭を下げられる事を当たり前の事として育った少女が、この時世界の誰よりも強い奉仕の心を持っていた。 誰よりも早く倒れ伏した青年――Dに駆け寄り、膝をついて白煙をたなびかせる剣士へと手を伸ばして声をかけた。 「大丈夫ですか、ミスタ! どこかにお怪我でも? 熱っ!?」 その背に恐る恐る伸ばした右手が、途方もない熱を感じ、思わずルイズは手をひっこめた。この場に居る誰もが知り得る筈もないが、Dはほんの数秒前まで燃えたぎるマグマに飲み込まれんとしていたのだ。 その余熱がこの青年の体を焼き、今も体内に残留していたのである。Dの意識が絶えている事を、自分の呼び掛けに無反応である事から確認し、ルイズは大きく声を張り上げた。これほど乱暴に声を荒げたのは初めての事だったろう。 「誰か、水魔法使える子は早く来て! 治癒をかけるのよ、怪我をされているわ! のろくさとしないで、さっさとしなさい!!」 雷に打たれたように、ルイズの怒声を耳にした生徒達の中の、全水系統の者達が全力疾走でDの元へと駆け寄った。彼らもまた美の奉仕者へと変わったのだ。 押しあいへしあい、我先にこの美しい方の傷を癒さんと杖を伸ばす生徒達のど真ん中で、ルイズは憎悪の視線さえ向けられながらぐいぐいと遠慮なく体を押されていたが、それに負ける事無く、ひたむきな視線を倒れ伏したDへと向けていた。 敬虔な信徒、忠義に熱い騎士、一途な恋に身を焦がす少女、その全てに似て非なる視線であった。だが、Dの身を案ずるという一点においてその全てと共通していた。 ルイズにとって二番目の姉の体を案ずるのと同じくらいに、今、Dの怪我の治癒に対して心を砕いていたのだ。 流石に教師としての面目を思い出したのか、コルベールが最も早く正気に戻り、Dの傷が癒えた頃を見計らって、生徒達に戻るよう声をかける。途端にこれまでの人生で浴びせられた事の無い程の、怒涛の殺気がコルベールの全身を呑みこんだ。 途方もなく巨大な蛇に飲み込まれてしまったように、コルベールは恐怖に身を竦ませた。美への奉仕を邪魔する者に制裁を、この一念で水系統の魔法学院生徒達はコルベールを睨みつけたのだ。 とても実戦経験の無い生徒達が放つとは思えぬ殺気を浴びてコルベールの毛根は死んでゆく。はらはらと抜け落ちる自身の毛髪には気付かず、なんとか心胆に力を込めて生徒達に声をかけ直す。 「こ、これで使い魔召喚の儀は終わりですぞ! 急いで学院に戻りなさい!」 ゆらゆらと立ち上がる生徒達は、まるで冥界から生ある者を恨みながら黄泉返った死者の様に恐ろしくコルベールの眼に映る。チビりかけるが、かろうじてこらえる。教師としての威厳や年長者としての自尊心を動員し、なんとか成功した。 傍らを過ぎる度に水系統生徒達に血走った眼を向けられて、コルベールは保健室で胃薬を貰おうと決心した。その他の系統の生徒達も、頬を薔薇色に染めながら、失神したクラスメート達を抱えて、学院へと戻り始めた。 美の衝撃は抜けず、人間に空を飛ぶ事を約束するフライの魔法を唱える事の出来た者は一人もおらず、全員が自分の足で使い魔を連れて戻っていった。他の生徒達がいなくなった草原に、倒れたままのDと共に残っていたルイズに、コルベールが声をかけた。 「さ、ミス・ヴァリエール、保健室にその方を運びますぞ。契約はそちらが目を覚まされてから事情を説明した上で、でよろしいですかな? 古今人間を使い魔にした例はありませんが、神聖な使い魔召喚の儀式においてやり直しは認められませんからな」 「あの、でも、ミスタ・コルベール」 雨に打たれる子犬の様に弱々しく、ルイズはそのまま泣き出しそうな顔で、上目使いにコルベールを見た。赤く染まった頬に潤んだ瞳は、誰もがこの小さな少女を守ってあげなければならないと思わせるほど儚く、可憐だった。 「なんですかな?」 「わたしなんかが、この人を使い魔にするなんて事があって良いのでしょうか?」 「うむ、それは、まあその青年が目を覚まされてからの話と言う事で」 と、コルベールは逃げた。彼自身、このような使い魔が召喚されるなど想像だにしていなかったのだ。メイジに相応しいと思える使い魔が召喚される場面は何度も見てきたが、使い魔に相応しいかどうかと、メイジの方を疑ったのは初めての経験だった。 その後、コルベールが対象物を浮かび上がらせるレビテーションの魔法を掛けてDを保健室まで運んだ。 旅人帽と長剣、ロングコートを脱がし、腰に巻かれた戦闘用ベルトを括りつけられたパウチごと外して清潔なベッドに寝かせたDを、傍らでぽけっとルイズは見つめていた。完全無欠に心ここに在らずである。 気を絶やして眠りの世界に陥った青年の横顔を、宝物を眺めて一日を過ごす子供の様にして見ているのだ。 この時、ルイズは生涯でもっとも幸福であった。この時を一分一秒でも長く過ごす為にか、ルイズの体は身体機能を調節する術を覚え、保健室に運びこんでからの数時間、手洗いに一度とて行く事もなく、また睡魔に襲われる事もなかった。 自分の膝に肘を着けて、細い顎にほっそりとした指を添えて、うっとりと、うっとりと見つめていた。このまま食を断ち、眠りを忘れて命を失い、骸骨に変わろうとも何の後悔もなくルイズは見続けるだろう。 ルイズとD。ただ二人だけの世界は、この上なく美しく輝いていた。ちなみに保険医の水メイジの先生は、Dの美貌を目の当たりにして瞬時に気を失い、Dの隣のベッドで笑みを浮かべながら眠っている。 固く瞼を閉ざし、浅い呼吸は時に目の前の青年が既に息をしていないのではないかとルイズの胸に不安の種を植え付け、それが芽吹くたびにルイズは、震える指を青年の花の前にかざし、本当にかすかな吐息を確認する。 Dの吐息を浴びた指が、そのまま宝石に変わってしまいそうでルイズは頬をだらしなく緩めた。 一見すれば気が触れたとしか思えないうっとり具合であったが、その原因が桁はずれの説得力を有する外見の為、今のルイズをからかう資格のある者はこのトリステイン魔法学院には誰一人としていなかった。 はあ、とルイズは切ない溜息をついた。もう切なすぎてそのまま死んでしまうんじゃないかしら、私? と本人が思うほど切ないのである。憂いも愁い患いもルイズの心の杯をいっぱいに満たし、溢れんとしている。 それは、ルイズがこれから行うかもしれない使い魔との契約の儀が理由だった。召喚した使い魔との契約――それは粘膜の接触、すなわち口と口での接吻であった。 通常動物や幻獣の類が召喚される為、この接吻は誰とてキスの一つには数えぬものだが、ルイズの場合は相手が相手であった。 『ここここここの、くく、唇に、キキキキキィイイイイイッススススススゥをしなけれなならないのかしら? わわわわたしししし!? ふぁ、ファーストキッスにかかか、カウントすべきよね! ね!!』 とまあ、こんな具合に愁いを帯びた深窓の令嬢の雰囲気とは裏腹に、ルイズの内心はいい感じに茹だっていた。タコを放り込めばコンマ一秒で真っ赤っかになるだろう。実にホット。地獄で罪人を煮込む釜並みにぼこぼこと沸騰しているに違いない。 はあ、とそのまま雪の結晶になって落ちて砕けてしまいそうな溜息が、ルイズの唇から零れる。これまでルイズに目向きもしなかった同級生達も、はっと息を飲みそうなほどに麗しい。 可憐、と言う言葉を物質にできたならまさに今のルイズほど似合う少女は居なかったろう。 つい見惚れて、ふらふら~っと誘蛾灯に誘われる蛾よろしく――蛾、というのはいささかルイズに失礼かもしれないが――、ルイズは思わず目を細めて唇を突き出し、Dの唇へと引き寄せられる。 二人の唇の間に引力が存在するかのように、夢見る顔でルイズの頭が眠りの世界の魔王子となっているDの頭に重なる。 『横にズレなし、後は縦に落ちるだけよ、ルイズ!』 さあ、さあ、ぶちゅっと一発! とルイズは平民の様な伝法な声で自分を励ます自分の声を聞いていた。心の中の鼓膜が盛大に揺れる。それを、絞り粕の様に残っていたルイズの理性が留めた。 いくらなんでも眠っている殿方の唇を奪うなど、婦人に夜這いを掛ける殿方よりも、よほど卑しくはしたないではないか、と誇り高いトリステイン貴族でもとりわけ格式も誇りも高いヴァリエール家に生まれたルイズの気高さが、反攻の狼煙を上げたのだ。 『でもこの唇に、キ、キスできるのよ?』 はう、と声を上げてルイズは自分の小ぶりな胸を押さえて背を逸らした。残り数センチで重なった唇は、遠く離れる。反攻の狼煙は一瞬で踏み潰された。 重なる唇。触れ合う唇。融け合う唇。 私と、この青年の、唇が、こう、ちゅう、とくくく、くっつく!? かは、と息を吐いてルイズは自分の体を抱きしめた。やばい、非常にやばい。このまま心臓の鼓動が激しくなりすぎて破裂しそうだ。 ルイズはそのまま燃え上がりそうなほど過熱してゆく体温を感じていた。年相応に豊かなルイズの想像力が、重なり合う二つの唇を思い描いて脳の許容量を突破し、ルイズの理性を粉微塵にした。 『もう、悩んでないでぶちゅっといっちゃえば? べ、別に私だって好きでこんなはしたない真似するんじゃないわ。だ、だって使い魔を呼び出せなきゃ進級できないし、そしたらお父様やお母さまに恥をかかせることにもなるし。 ……ね、だからキスするのは仕方のないことなのよ。し、し、仕方なくああ、貴方とキスするんだから、そこの所を誤解しないでよね! 仕方なくよ、仕方なく何だから!』 と、この上ない至福の笑みを浮かべて契約の呪文を唱える。一秒が数十年にも感じられる中、呪文を唱え終えたルイズはすう、と息を吸った。なだらかな丘のラインを描く胸がかすかに膨らむ。 お父様、お母様、ルイズは女になります―― 「いざあああああああああ!!!!!!」 と、豪胆な戦国武将さながらに反らしていた背を勢いよく振りかぶった。割とアレな子らしい。アレとはなんぞや? と言われた、まあ、頭のネジの締め方が緩いとか、数本外れているとか、そーいう意味でだ。 そんな時、気迫が何らかの獣の形を取って咆哮を挙げている姿を幻視するほどのルイズが、どん、と背中を押された。 へ? とルイズがぽかん、とする間もなかった。コルベールに頼まれてDの世話をしにきたメイドがルイズの背を押した張本人だった。 怪我人でも摂れるようにと軽めの食事を乗せた銀盆を手にやって来たのだが、ベッドの中の眠り姫ならぬ眠り吸血鬼ハンターに心奪われ、夢遊病者の様に歩み、ルイズと激突したらしかった。 そして自分のタイミングを逸したルイズは、え、まだ心の準備が、と今さらな事を呟きながらD目掛けて落下し、やがて ぶちゅうううう という音がした。 Dが目を覚ましたのは、そのぶちゅう、という乙女のロマンもへったくれもないキスをルイズがかました直後である。 左手に刻まれる使い魔のルーンの熱と、痛みが、暗黒の淵に落ちていたDの意識を浮上させたのだ。 とうのルイズはもっと、もっとこうロマンと言うかムードのあるキスがああああああ、となまじキスが成功した所為で、現実のキスとの落差にショックを隠しきれず頭を抱えていた。 一方で、ルイズに望まぬ形でのキスを行わせた張本人たるメイドは、目の前で行われた美青年とルイズのキスの光景に、気を失って保健室の床に伸びていた。 ま、無理もない。この世ならぬ美とこの世の範疇に収まる美の接触を目の当たりにした事は、メイドの少女にとって直視に耐えうるレベルを超えた現象だったのである。 もはや兵器と呼んでも差し支えないのではないかと言う、冗談じみたDの美貌であった。頭を抱えてうんうん唸るルイズは、やがてDの視線に気づきはっと顔をあげ、Dの視線とルイズの瞳が交差した。 ひゃん、とルイズの喉の奥から仔猫の様な泣き声が一つ漏れて、腰砕けになる。かろうじて椅子から落ちなかったのは幸運といえただろう。 開かれたDの瞳に宿る感情を読み取る事は、どれだけ人生経験の豊かなものでも不可能だろう。およそ人間とは様々な意味で縁の遠い青年なのだ。その時の流れを忘れた堅牢な肉体も、その氷と鋼鉄でできた精神も。 Dはルイズの様子に注意を払うでもなく無造作に上半身を起こし、枕元に置かれていた旅人帽とロングコート、長剣を身につける。それから、至福の笑みを浮かべたまま器用に気絶しているルイズを見た。 床で伸びている黒髪のメイドにはそれこそ一瞥をくれる事もなく、ルイズの額へとDは左手を伸ばした。その左掌の表面がもごもごと波打つや、小さな老人の顔が浮かび上がったではないか。 皺と見間違えてしまうような、糸のように細い眼。米粒を植えた様に小さな歯。こんもりと盛り上がった鉤鼻。驚くほど年を取った老人の人面疽であった。この青年は自らの左手に独立した意思を持った老人を宿しているのだ。 表に出た老人の顔が口を開いた。 「やれやれ、九死に一生かと思えばとんでもない所に来てしまったのう。お前も気付いとるだろうが、ここは“辺境”区ではないかもしれんぞ」 答える声はなく、Dの左手はルイズの額に触れて、老人の唇から目に見えぬ何かがルイズの体内へと流れ込んだ。まるで氷水を直接頭蓋骨に流し込まれたような冷たい感触に、ルイズの意識が急速に覚醒した。 はっと眼を開き、自分の額から離れて行くDの左手に、皺の集合体の様な老人の顔が浮かんでいるように見え、驚きに目を見張った。老人の顔は、ひどく意地悪げに笑っていたのだ。 「あ、あの」 「ここはどこだ?」 こちらの問いの答えしか聞かぬと冷たく告げるDの声に、ルイズの蕩けていた心が強張った。目の前の青年が、美しいだけの人間ではないと悟ったからだ。不用意な言葉の一つが、自分の首を刎ねる理由になる。 それほどの、抜き身の刃と例えるも生温い心根の主なのだと悟った。美貌に囚われた心は、今や眼前の青年が死の塊なのだと知り恐怖に怯えた。 「ここは、トリステイン魔法学院よ」 これほど落ち着いた声を出せた事が、ルイズには不思議だった。心当たりがなかったのか、二秒ほど間をおいてDが質問を重ねた。 「ほかの地名は?」 「……ハルケギニア大陸、トリステイン、ゲルマニア、ガリア、アルビオン、ロマリア。主だった国や地方の名前だけど……」 「おれがここにいる理由は?」 来た、とルイズは思った。自分が目の前の青年に殺されるとしたら、コレだろうと覚悟していた。 ルイズは何が嬉しくて使い魔の契約で命の覚悟をしなければならないのかと、自らの不運を呪ったが、うまく行けばこの超絶美青年が使い魔である。 着替えさせて、と命じるルイズ。返事はないがもくもくとルイズの服を脱がして新しい服を身につけさせるD。 食事よ、と食堂に来たルイズの為に椅子を引き、腰かけたルイズにうやうやしく給仕をするD。 寝るわ、とととと、特別に私のベッドで寝てもいいわ。勘違いしないでね、藁を敷いた床で眠らせるのがちょっと可哀想だから、特別なんだからね! 普通の貴族だったら、こ、こんなこと許してくれないのよ。 私の優しさに感謝してよね、だだ、だから、ほら、早く入んなさいってば! いいこと、同じベッドで寝てもいいけど、指一本でも、私に触ったらダメなんだから! そういうのは結婚してから、結婚しても、三ヶ月はダメなんだから! ……で、でもどうしてもって言うんなら、ちょっとだけ許してあげない事もない事もないのよ? ど、どうしてもって言うならよ! ちょ、さ触ったらダメって、始祖ブリミルも、お父様もお母様もお許しに、や、ご、強引なんだから……あ、あぁ…………。 でへへ、とルイズはにやけた唇の端から涎を垂らしていた。何が引き金になって首をはねられるか分からないこの状況で、かような妄想に浸れる辺り、やはりルイズはかなりアレな子であった。可哀想な意味で。 そのルイズの様子を九割呆れ、一割感心した様子で眺めていた左手が感想を零した。 「お前を前にして、なんというか、度胸のあるガキじゃな」 「…………」 ルイズのようなタイプは珍しいのか、Dは沈黙していた。毒気を抜かれたか、肌の内側に滞留していた鬼気を小さなものに変えていた。それでもルイズか周囲に敵意を感じ取れば、レーザーよりも早いと謳われた抜き打ちが放たれるのは間違いない。 二人(?)の痛いモノを見る視線に気づいたのか、ルイズは頬を恥ずかしさで赤く染めて、もじもじと床の一点を見つめた。そうしているだけなら神がかった可愛らしさなのだが、常軌を逸した妄想に浸った直後の姿なので魅力も万分の一であった。 それから、流石に下手をしたら自分が殺されかねない状況を思い出したのか、若干手遅れな気もするシリアスな顔をした。 「少し長い話になるけど、いいかしら?」 Dは黙って頷き、先を促した。意を決したルイズの唇が開く。淡い桜色に染めた珊瑚細工の様な唇は、死を覚悟する事で一層美しさを増していた。 「私、貴方使イ魔呼ンダ。私、貴方ノ主人」 びびって片言だった。しかも省きも省いたりな内容だ。ルイズ、ここ一番で空気の読めない子であった。 だってホントの事言ったらどうなるか分からないんだもん、怖いんだもん、女の子だもん、とルイズは心の中でマジ泣きしていた。 「短いわい」 「なに、その声?」 自分の口調は棚に上げて、ルイズは聞こえてきた老人の声に眉を寄せる。若者の張りの中に鋼の響きと錆を孕んでいたDの声とは、聞き間違えようの無い声である。これは無論Dの左手に宿る老人だ。 ルイズの疑惑に答えはせず、今度は影を帯びた青年の風貌に相応しい声がルイズの心臓を射抜いた。 「きちんと答えろ」 「ひう、は、はい。実は……」 ルイズは一言ごとに自分が死刑台への階段を踏んでいるようで、まるで生きた心地がしなかった。かといって下手に誤魔化しを口にしようものなら、その場で体を真っ二つにされかねないのだから、選択肢など元からない。 ルイズは、はやくもこの使い魔を召喚した事を後悔しつつあった。 ――あ、なんか胃に穴が開きそう。 なんとか、ルイズがDを召喚した事実を伝え終えたとき、 ルイズは自分の髪が全部白髪になっているではないかと疑ったほどだ。 Dは開口一番、 「戻る方法は?」 「わ、わからないわ。普通、人間が呼び出されることなんてないから、そのまま使い魔として扱うし、使い魔の契約は使い魔が死なない限りは解除されないのよ」 「では、契約者が死んだ時は?」 「そ、それは」 見る見るうちにルイズの血色のよい顔から抜けて行く血の気。瞬く間に顔色を死人の色へと変えたルイズは、目の前の青年が必要とあれば殺す事も厭わないのだと、悟った。 ――あ、私死んだ。これは殺されるわ。 死への恐怖に涙をぽろぽろ流し始めてしゃくりあげるルイズを見てから、Dは無言で立ち上がった。びくり、とルイズの小柄な体が跳ねた。えう、と嗚咽を漏らし、せめて痛くないと良いな、優しくしてくれるかしら? と思いながら眼を閉じた。 何にも出来ずに終わる。ずっと馬鹿にされて、ずっと憐れまれて、ずっと悲しませて、ずっと失望させ続けてきた人生が、今、自分が呼び出した使い魔によって幕を引く。それはそれで、ゼロの自分には相応しいと思えた。 ぎゅ~と眉を寄せて瞼を閉じていたルイズに、Dの声が届く。 「この学院の責任者の所へ案内してもらおう」 「……え? あ、あの私を殺……」 「早くしろ」 「はは、はい!」 背に鉄筋でも通したみたいにあわあわと立ち上がり、ルイズはDを魔法学院の最高責任者オールド・オスマンの所へ案内すべく動き始めた。生命が助かった安堵も、新たな緊張に即刻引き締められ、ちっとも気が楽にならない。 ルイズがきびきびとドアを開けて歩きはじめてからその後を追うDに、左手からこんな声が聞こえてきた。 「お前にしてはずいぶん優しい反応じゃな。左手の甲に浮かんでいるルーンから精神干渉がさっきから来とるが、この程度で靡くようなやわな心でもあるまいに」 寝ている間にルイズによって交わされた契約によって刻まれた左手のルーン。一般に人間との意思疎通が難しい幻獣や動物の類を、主人に従順に従う存在に変える為に、使い魔のルーンには使い魔の知能向上のほかに親しみや忠誠心を抱かせる効能もある。 最終的には思考が主人と同一化するという、ある種と残酷極まりない洗脳効果もあるのだが、Dも過去に都市の住人全員を千分の一秒で発狂死させる精神攻撃を破った男、そう簡単に心は操れぬようだ。 「ずいぶん遠くに招かれたようなのでな」 「衣食住と情報源の確保か。しかし、青色と紅色の親子月か。貴族の手が伸びた外宇宙にもこんな衛星の記録はなかったわい。となるとさらに外側の宇宙か、別次元か。やれやれ、厄介なのは毎度の事じゃが、今回はいつにもまして面倒じゃわい」 Dの視線は、廊下の窓から覗く蒼と紅の二つの月を見つめていた。 そして学院長室にルイズとDは到着し、まだ執務中だったオールド・オスマンに会う事が出来た。 オールド・オスマンは齢三百歳を超えるトリステイン最強のメイジ、と謳われる事もある大御所なのだが、入学式の時にフライを唱え損ねて死に掛けたのを目の当たりにした事があるから、ルイズはさほど尊敬できずにいる。 ノックの音から間もなくオスマンから入室の許可がお降りた。夜中にアポイントを取らずの急な訪問であったが、オスマンの返答は穏やかな声だったので、ルイズは少し安堵した。 扉を開いた向こうには、白く変わった髪とひげを長く伸ばし、ゆったりとしたローブに身を包んだオールド・オスマンが椅子に腰かけて待っていた。動かしていた羽根ペンを止めて、入室者を見つめる。 「このような時間になんの様じゃね? ミス・ヴァリエールと…………」 ルイズの傍らに立つDを見て、机の上でクッキーをかじっていたネズミの使い魔ソートモグニル共々ぽかん、と口を開けて固まる。 自分の使い魔に対する反応に、ルイズは奇妙な優越感を感じてかすかに口元を緩めた。自分も同じ目に遭っていたのだが、それが他人も同様と知って嬉しいらしい。 たっぷりと一分かけてオスマンが現実世界に復帰してから、Dが一歩前に出て口を開いた。オスマンも、Dの体からかすかに立ち上る尋常ならざる気配を前に、二度と我を失う様子はなく、生ける伝説に相応しい威厳でDと対峙した。 そうそうに用件を口にし、使い魔の契約の解除とも元いた場所への返還手段を訪ねた。オスマンは長いひげをしごきながら黙ってDの話を聞いていた。使い魔の契約を解除してくれ、などと使い魔の側から言われたのは初めての事だろう。 「おれはある男を捜さねばならん」 「ふう、む。しかし君には悪いが使い魔を帰す魔法はわしの知る限り存在せんのじゃよ。君の事情とやらもなにかただ事ではないと分かるが、帰してやろうにも帰し方が分からぬのじゃ。 どうじゃね? ミス・ヴァリエールの使い魔が不満と言うなら、護衛の傭兵と言う触れ込みでしばらく暮らしてみては? 住めば都と言うてなあ、君ほど美しければ嫁さんもいくらでも……」 と、そこまで諭すように口を開いていたオスマンの口を止めたのは、Dの気配に死神の携える鎌を思わせる冷酷なモノが混じっていたからだ。これまでの人生で多くの大剣をしてきたオスマンからしても、一瞬死を覚悟せざるをえぬ鬼気。 それを止めたのは二人のやり取りを見守っていたルイズだった。 「やめて! 貴方を呼んだのは私よ。私が召喚した所為で貴方に迷惑をかけたというのなら、私が償うわ。ここには大陸中の魔法関係の書物を集めた図書室もあるから、情報もたくさんあるわ。 貴方の食事とかの世話も私の責任で見ます。貴方を元の場所に帰す方法も探します。怒りが収まらないというのなら私を斬っても構わない。だから!」 一人の少女の懇願をどう受け取ったか、Dはしばし自分をまっすぐ見つめるルイズを見返していた。左手のルーンがかすかに輝いていたが、それはDの心に影響を及ぼす事がないのは、すでに明かされている。 「口にしたからには守ってもらうぞ」 「はい。貴族の誇りに掛けて」 ルイズの口にした貴族と言う言葉に、Dはかすかに苦笑めいた影を這わせたが、それをルイズやオスマンに悟らせる間もなく消し去り、踵を返した。 どうやら矛を収めてくれたらしい、とルイズとオスマンが気づいたのは、Dが院長室の扉に手を駆けた時だった。 「ま、待って。ええっと……」 「Dだ」 「あ、ディ、D? Dが貴方の名前なの?」 「そうなるな」 ようやく使い魔都の名前を知る事が出来た事の喜びに弾むルイズの声が、二人の主従共々消えてから、オスマンは深く長い溜息をそろそろと吐き出した。一気に何十歳分も年を取ったような気分であった。 「なんとまあ、ミス・ヴァリエールはとんでもないものを召喚したものじゃ。まだこちらの言い分を聞いてくれるから救いが無いわけではないが。こりゃ『転校生』を呼ぶ事も視野に入れた方がいいかの?」 オールド・オスマンの呟きは知らず、Dとルイズは再びルイズの部屋に戻り、緊張に満たされた世界で対峙していた。 ルイズはベッドの上に、Dは窓際に背を預けて腕を組み、黙って目を閉ざしている。部屋に戻って以来言葉の一つもない。シーツをぎゅっと握り締めてもじもじしていたルイズが、何度目になるか分からない覚悟を決めて口を開いた。 「あ、あの」 「……」 「えっと、D? あのね、一応使い魔の役割を説明しようとおもんだけど」 「……」 「い、いい? まず主人の目となり耳となって、視覚や聴覚を共有するのだけど」 Dの首がほんとうにかすかに横に振られた。まあ、確かに同じものは見えていないので、ルイズも同意する。今の所Dの導火線に着火するような真似はしないで済んでいるようだ。早く終わらせないと私の神経が持たない、と判断したルイズは一気にまくし立てた。 「あとは秘薬なんかを探してきたりするの。ポーションやマジックアイテムの作成の時に必要だから。それと特にこれが重要なんだけど主人の身を守る事、これ、これ大切よ」 「世話になる間は君の身は守ろう」 「ほ、ほんと?」 「嘘を言っても仕方あるまい。だが、おれを帰す魔法の調査は約束通り行ってもらおう」 「は、はい!」 「もう眠れ。明日は授業なのだろう?」 「そう、だけど」 「なんだ?」 そんなまともな事を言われるとは思わなかった、と口にする勇気はルイズにはなかった。ぶんぶんと壊れた人形みたいに何度も首を縦に振る。 雰囲気はやたらと怖いけど、わりとまとも? とルイズは一縷の希望に縋る様な感想を抱いた。そうだったらいいなーというかそうであって欲しいなー、と痛切に願う。 ルイズはもう色々と疲れすぎて着替えるのが面倒になってしまい、そのままベッドに倒れて眠ってしまった。 Dは、その様子を黙って見守っていた。 前ページ次ページゼロの魔王伝
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前ページ次ページとある魔術の使い魔と主 ルイズが始祖の祈祷書に浮かび上がった内容を読んでいる間、当麻は残りの竜騎兵を倒していた。 二十いるアルビオンの竜騎士隊も、シルフィードと当麻の連携により無惨にも全滅と化した。 天下無双と謳われたアルビオンの竜騎士でも、韻竜と竜王の前には歯が立たない。 残るは本家、絶対に忘れることのない、アルビオンへと上陸するさいに見かけたあの巨大戦艦。その船の下では、港町ラ・ロシェールが攻撃を受けている。 「あれを倒さなきゃ、どうやら終わらないようだな」 しかし、どうすればあれを倒せるのだろうか? こちらの武器は竜王の顎一つのみ。今までは同じ大きさでの戦いであったが、今回のはスケールが違う。 そんな状況での当麻の策は、敵艦に乗り込んで内部から破壊するという、シンプルな案であった。いや、それ以外にいい方法が浮かばなかった。 当麻達が潜り込もうと、近付いたその時、 敵の艦隊の右舷側がフラッシュのように光った。 瞬間、シルフィードが再び直角に移動方向を変えた。 当麻達がいた場所に無数の鉛の弾が通過する。シルフィードの咄嗟の判断がなければ、今頃死んでいたに違いない。 心臓の鼓動が大きくなる。ここにきて、生死の境にいるのだと実感した。 ちっ、と当麻は舌打ちをする。どうやら敵はこちらの存在をちゃんと認識しているようだ。 一拍置いて、再び鉛の弾が当麻達目がけて発射される。 しかし、シルフィードの持つ速さを利用し、避ける事だけに集中すれば、なんとかやり過ごせる。 やり過ごせるのだが、それだけだ。目標である敵艦に乗り込む行為をする為の手札が圧倒的に不足していた。 (何か……) 歯を食いしばり、シルフィードが懸命に自分達の寿命を伸ばしている間にも、必死に考えを巡らす。 (何か、こっちの手数を増やす、何かがあれば!!) ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ 以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。 初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』 ドクン! とルイズの鼓動が一段と大きくなった。そしてエクスプロージョンの呪文が浮かび上がる。 あまりの急展開にルイズは思わず笑いそうになる。 ここまで読めるなら、読み手として文字が読めるのなら、きっとこの呪文の効力が発揮されるのではないか? だって、今まで失敗だと思われた魔法は毎回爆発していたのだ。では、なんで毎回爆発していたのか? 失敗して爆発した例が他にあったのだろうか? それが四系統に属さない『虚無』の力であったら? 当麻が以前いった通り、本当に自分には隠された力があったのならば? これほど笑ってしまう話、ルイズには体験した事がなかった。 「ねえ、この指輪を使って初めて読めるなんてどこのパズルよ。あんたもヌケてるのね」 自分にもあったのだ。この戦況を変える事のできる切り札が。 熱していた頭の中が、ゆっくりと、ゆっくりと冷めていく。心拍数、血液循環、筋肉、骨、体のありとあらゆる組織が落ち着きを取り戻す。 エクスプロージョンという名の呪文のルーンが、すらすらと頭の中に入ってくる。 まるで、それを望んでいたかのように、それを待ち侘びていたかのように、理解していく。 ここまできたら、やろう。いや、やらなければならない。 今もどこかでこの戦争の行方を心配している姫様の為に。 こんな自分を守ってくれる、大切な大切な使い魔の為に。 そして、今まで秘められた力に気がつかなかった自分の為に。 さぁ、始めよう。 この日、この時、この場所で、新たに生まれた物語を。 ―――ゼロのルイズの物語を!! 上下左右と激しく動くシルフィードの体の上で、ルイズは腰をあげた。 「ととっ」 「なっ……おい、ルイズ?」 両手を広げて、バランスを取りながら、当麻の横を通り過ぎる。 そして当麻の開いた足の間にある小さな空間にちょこっと座り込んだ。 驚く当麻に対して、ルイズは半信半疑のような口調で応えた。 「あのね……もしかしたらわたし、選ばれちゃったかもしれない。多分、だけど」 「はい?」 「いいから、あの巨大戦艦に近づけて。このまま何もしないよりは試した方がマシだし、ほかにあの戦艦をやっつける方法はなさそうだし……。 ま、やるしかないのよね。わかった。とりあえずやってみるわ。やってみましょう」 ルイズの独り言のような口調に、当麻は唖然とした。しかし、わかった事はある。 ルイズにはこの戦いを終わらせる方法を持っているのだと。 「なんつーかよくわからんけど、とりあえず近づければいいんだな!?」 「そうよ! 早くやる!」 当麻は竜王の顎を封印した。こいつの能力が幻想殺しも受け継いでいる為、いざ呪文を発動した時打ち消してしまったら元も子もない。 といっても…… 砲撃。砲撃の嵐であった。 ある一定の距離以上に近づいたら、鉛の弾が襲いかかってくる。 左舷ではラ・ロシェールへと砲撃が行われている。よって左から攻めても無理。 そして当麻の視界には、艦の真下にすら大砲が装備されていた。つまり下からも無理である。 「そう言われても……穴がないぞ!?」 「それをなんとかするのがあんたの仕事!」 んな無茶な!? と泣きたくなるが、なんとかしなきゃ始まらないのだ。 (左、下、右がダメなら……ッ!) 残すは上しかない。当麻はシルフィードに命じて、高度をさらに上げた。 『レキシントン』号の甲板が見える。そしてそこには先程散々苦しめられた大砲が一つもなかった。 おそらく、ここならば安全に事を運べる場所であろう。 ルイズは立ち上がる。主役の登場と言わんばかりのように。 「わたしが合図するまで、ここを回ってて」 ルイズは目を閉じ、最後の祈りを込めた。大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出す。 再び目を開き、始祖の祈祷書にかかれた文字を詠み始める。 ゆっくりだが、確実に間違いのないように紡がれる。 これでなんとかなるか? と当麻が安心したその時、 ゾクリ、と背中を悪寒が駆け抜ける。 バッ、と振り返る。そこには、烈風のように迫り来るワルドの姿があった。 完璧に虚を突かれた。 「くっそ……!?」 回避すべきか? 否、ルイズが呪文に集中しているのだ。邪魔するわけにもいかない。 そもそも向こうは最高速度、逃げ切れるわけがないので却下。 ならば、迎撃するしかない。幸いな事にブレスを吐いてくる様子はなく、ワルドが風の槍を片手に持っているだけである。 あれで、自分達を串刺しにするのであろう。 敵の攻撃を防ぎ、尚且つ相手を一撃で倒す。どこかミスったら全てが水の泡となる。一度っきりのチャンスである。 残り数百メートル。人間の脚力でさえ数十秒足らずでたどり着く距離。 「これで終わりだ!!」 「う……ォぉぉぉおおおおお!!」 これしかなかった。限りなく成功率の低い奥の手。 当麻は立ち上がり、恐怖に怯える事なく、平常心を保ちながら、 文字通り飛んだ。 右手を前に突き出し、ワルドの風の槍を大気へと還元する。そして、そのままワルドの乗る風竜へとダイビングした。 誰もがやろうとは思わない。上空三千メイルで、迫り来る竜に飛び乗るなど不可能に等しい。 それでも、少年はやり遂げた。奇跡でも偶然でもなんであろうと、少年の命は、まだ続いている。 常識はずれともいえる当麻の行動にワルドは驚愕を覚えた。 その驚愕が、当麻に時間を与える。 「とりあえずあんたは『フライ』があるよな?」 ワルドははっとなり、杖を振ろうとしたが、 「空の旅を満喫してくれ」 当麻の拳の方が先に振り抜かれた。 呪文を詠唱する度、言葉を紡ぐ度、リズムがルイズの中を循環する。どこか懐かしく感じてしまうリズムだ。 それが長ければ長くなる程、強くうねっていく。自分の世界に閉じこもり、辺りの雑音は耳に入らない。 体の中で、何かが精製され、それが場所を求めて回転していく感じ。 誰かがそんな事を言っていた。 そうだ。自分の系統を唱える時に感じるであろうこれ。 だとしたら、この感覚がそうなのだろうか? 裏側の自分が表に出たような気分をルイズは覚えた。 体の中のに、波がどんどん大きくなってきて、外求めて暴れだす。 当麻がルーンの力によって従えた風竜から再びシルフィードへと乗り移る。 ルイズが足でトン、とシルフィードを叩いた。それが合図となり、『レキシントン』号目がけて急降下を始める。 目をさらに大きく開いて、タイミングを間違えぬよう細心の注意を払う。 『虚無』と呼ばれる伝説の系統。 あの破壊の本から放たれたような威力をもっているのだろうか? それは誰も知らないし、自分も知らない。 伝説の彼方にある魔法を現代へと持ち込んだのだから。 長い長い詠唱を終え、呪文が完成した。 その瞬間、全てを理解した。 このまま放てば、全ての人を巻き込む。間違いなくほとんどの人間が死ぬに違いない。 一瞬だけ悩んだ。殺すべきか否か。 しかし、答えは決まっていた。自分の視界一面に広がっている戦艦『レキシントン』号。 この戦いを終わらせる為、杖を振り下ろした。 同時、光の球があらわれた。太陽のような眩しさをもつ球は、膨れ上がる。 そして……、包んだ。 上空にある、全ての艦隊を包み込む。 それだけでは終わらない。さらに膨れ上がって、見るもの全ての視界を覆い尽くした。 誰もが目を焼いてしまうと思い、つむってしまう程光り輝くそれ。 そして……、光が晴れた後、上空の艦隊全てが炎によって包まれていた。 ルイズは力尽きたのか、体を当麻に預けた。当麻も全てが終わったのだと思い、力が抜けた。 下では、トリステイン軍がアルビオン軍に突撃をかましていた。上空からの支援を失ったアルビオン軍は、勢いにのったトリステイン軍には立ち向かえない様子であった。 もう、ルイズ達のやるべき仕事は終わったんだ。 「今日は……疲れたわ」 なにかをやり遂げたような、満足感が伴った感じだった。 「ああ……そうだな」 当麻もまた同じである。 「早く降りましょ」 ルイズの提案に、当麻は無言で返す。シルフィードがゆっくりと高度を下げていった。 シエスタは、弟たちを連れておそるおそる森からでた。トリステイン軍が、アルビオン軍を撃退したという噂が森に避難していた村人の間に伝わったのだ。 確かに草原にはアルビオン兵の姿はない。あったとしても、それは投降してきた兵である。 先程まで続いていた轟音が嘘であるかのように静かだ。 上からばっさばっさと羽を羽ばたかせる音が聞こえてきた。 思わず見上げる。 願っていた少年がそこにはいた。 ヒーローのような少年がそこにはいた。 約束を守ってくれた少年がそこにはいた。 シエスタは嬉しさのあまり涙を零し、駆け寄った。 ようやく太陽が、オレンジ色へと変わっていった。 前ページ次ページとある魔術の使い魔と主
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前ページ次ページゼロの登竜門 ズドン、と何度目かわからない爆発音に、砂埃が巻き起こる。 日は既に落ち、二つの月は穏やかな光で草原を照らしている。 「もうそろそろ休んだらどうかね? ミス・ヴァリエール。使い魔召喚は明日にでもやり直したらいい」 「まだですっ、まだやれます! お願いしますミスタ・コルベール、納得がいくまでやらせてください!」 そう言って、月に照らされた人影はその手に持った杖を振り下ろした。 そして再度。何もない空間が爆発、轟音と爆煙を巻き上げる。 「また失敗……」 咳き込む少女、目尻に涙を浮かべながら、また杖を振り上げて呪文を唱える。 そして振り下ろす。 すると今度は爆発しなかった。 数え切れないほど呪文を唱え、数え切れないほど杖を振り上げ、杖を振り下ろし。 ただ一つだけ、使い魔を呼び出すことだけを考えて、一心不乱に。 そしていま、やっと『失敗』しなかったのだ。 視界を邪魔する土煙がうっとおしい、早く、早く己の使い魔の姿を見たかった。 どんな姿をしているのだろうか、美しいのだろうか、強いのだろうか、賢いのだろうか。 コレで、コレでやっと、誰にもゼロなんて言わせない! 煙を散らすと、そこには………… 高さ一メートルほどの大きなタマゴが存在した。 自室のベッドの上にタマゴを載せ、ルイズはそれを指先でつん、とつついた。 すると、タマゴはプルプルと震える、もうすぐ生まれそうだ。 そんなタマゴに、ルイズは自分の頬が弛みまくるのを自覚していた。 こんなに大きなタマゴなのだ、一体どんなのが生まれてくるのだろう。 ドラゴンだろうか、グリフォン、いやいやヒポグリフと言うのもある。 きっと強くて格好良くて優雅な幻獣が生まれてくるだろう。それを考えると心臓が早鐘のように波打つ。 いや、そんなに贅沢は言わない、呼び出せただけでもこんなに嬉しいのだから。 早く生まれてこないだろうか………。 召喚が長引いたせいか、何度も失敗して精神力を使った所為か、次第にまぶたが重くなる。 着替えるのすら億劫になったルイズは、そのままベッドに上がって丸くなった。 とくん、とタマゴの鼓動が心を揺さぶる。 きっと、明日には生まれてくれるだろう。 とても、楽しみ。 朝、窓から差し込む陽光によって目を覚ました。 すぐさまタマゴを見やるが、プルプルと動いているがまだ生まれていない。 仕方なしにルイズはベッドから降りて新しい制服へと着替える。 ブラウス、スカートを履いてマントを着けてブローチを止める。 そして杖を持って部屋を出ようとノブに手をかけたとき。 背後から「ピキッ」という音を捉えた。 その時の首を動かすルイズの動きは、一瞬だが180度回転しているように見えた。 その手の杖を放り捨ててルイズはタマゴへと駆け寄る。 頭頂部からヒビが走る。 ピシッ……ピキッ………パリンッ 「きゃっ」 眩い光にとっさにルイズは顔を覆ってしまう。 けれど、生まれた、自分の使い魔を早く見ようと眼を細めて真っ直ぐとそれを……… 「え………」 ベッドの上で、ぴち、ぴちとはねているのは、一匹の魚……だろうか。 赤い鱗にマヌケそうなつぶらな瞳、背びれは金色で、なんだかデフォルメされた王冠を彷彿させる。 長いヒゲが二本、にょろーんと伸びて、魚が、ぴたん、びたんはねるたびに揺れる。 「………み………水ーーーーー!」 まさか魚が生まれるとは思わなかった。 大急ぎで水場に連れていき、タライに水を張って放り込んだ。 そこまでやり遂げた時点で、ルイズはゼーハーと荒い息をはいて両手両膝を地面に付いた。 魚がやけに重かったのだ。しかもやたら跳ねまくってここまで連れてくるだけ一苦労。 窓から放り投げた方がどれだけ楽だっただろうかと思う。 抱き上げるのが難しいと判断し、最終的にはしっぽを掴んで引きずったほどだ。 水を得た魚は、小さなタライの中で気持ちよさそうにすいすいと泳いでいる。 魚の額にルーンが刻まれている。タマゴの時にはなかったが、ちゃんと契約できていたみたいだ。 「コッ、ココココイッココッコココイッコココイッコココッ」 魚が何かを言うが、何を言おうとしているのかはさっぱりわからない。 そうだ、名前を付けてあげよう。 名前………ジョセフィーヌ……フランシーヌ………シャルロット……クリストフ。 どれもぱっとしない。 ふと、背びれに目が行く、王冠のようなその背びれ。 「キング」 「コッ」 「キング」 「コココッ」 呼んだらはねながら返事をした、どうやら気に入ったようだ、いやきっとそうだ、そうに違いない。 「コレからよろしくね。キング」 最後のルイズの言葉にはキングは応えず、狭いタライの中をすーいと泳ぎ回る。 キングの様子を、丁度そこにやってきたメイドに言いつける。 よくはねるから、タライから外に出てたら戻しなさい、と。 なお「蹴っ飛ばしても良い」と付け加えると、メイドは慌てて首を振った。 貴族様の使い魔を蹴るなんてとんでもない、と。 従順なその態度に好感を覚えつつ、食堂へ。 いつものようにキュルケと口論しながら食事を取る。 そういえば、いつもゼロと言ってバカにするのに、今日に限っては「よかったじゃない」と言ってくれた。 すこし嬉しかった。けれどいつものように悪態をつく。 食事を摂ったら土の授業、今日の授業はそれだけでそれ以後は使い魔とコミュニケーションの時間。 でも、ミセス・シュヴルーズが錬金をして見ろと言ったからやった、でも爆発した。 召喚は出来たんだから出来るようになってると思ったのに、魔法は相変わらずみたいだ。 そう言えば、自分の系統はなんなんだろう。 キングは魚だから、水………なのだろうか? しかし得意系統以外の魔法が使えるのは珍しくない。 例えば、土系統のギーシュは風系統のフライを使える。 もしわたしが水系統だったとしても、なんで爆発するんだろう……。 教室の片付けを適当にさらっとこなして使い魔の元へ行く。 寂しがっているだろうから。 別に、わたしが寂しい訳じゃない、あくまで使い魔が寂しがっているといけないから、行くだけだ キングのところへ行くと、案の定タライの外でぴち、ぴち。 ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち。 ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち、ぴち。 あのメイドは……戻しておけと言ったのにほっぽいてどこへ行ったんだ…… と思ったが、その行方はすぐしれた。 広場の真ん中で土下座している、相手は……グラモンのバカか。 「こらはねないの」 キングをタライの中に戻して、メイドのところへ行く。 「ちょっと」 仁王立ちでメイドを見下ろす。 「あ……み、ミス・ヴァリエール……」 「キング見ててって言ったのになにやってんのよ、タライの外に出てたじゃない」 「も、申し訳ありませんっ。ミス・ヴァリエール」 「なるほど。あの赤いマヌケそうな魚は君の使い魔か」 マヌケそうな、と言ったギーシュの言葉にルイズの眉がつり上がる。 「あんたほどじゃないわよ。おおかた二股がばれてそれをメイドに言いがかり付けてるだけでしょ。いい加減そう言うのやめなさいよ、バカに見えるわよ」 「なななななな何をいってるんだっ! 彼女が軽率に香水を拾ってしまったから。その事で罰を与えているだけなんだ。ゼロのルイズは引っ込んでいたまえ!」 「あいにくこっちが先約なのよ、使い魔見ておくように言っておいたのは朝のうちだからね」 ふん、と胸を張ってギーシュを睨み付ける。 「二股してたのは事実でしょ! だったらメイドに言いがかり付けてないで相手の女の子にとっとと謝ってきなさい!」 「ぜ……ゼロのルイズがぼくに意見する気か!」 「もうゼロなんて言わせないわ! わたしは、ちゃんとキングを召喚したもの!」 ギーシュの言葉に、ルイズはキングのいるタライを杖で指した。 「………なにもいないが」 「えっ?」 ギーシュの言葉にルイズは慌てて振り返って確認、そこにはタライしかなかった。 「ウソッ! さっきまでいたのよ、一体何処に」 「はははははは。さすがゼロのルイズ、使い魔にまで逃げらぶべっ!?」 ギーシュの言葉は途中で途切れ、直度ズドンと衝撃音が広場を襲う。 「キング!?」 ルイズがギーシュを見やると、その腹の上でびたんびたんとはねているキングの姿があった。 どうやら、ルイズがいじめられているとでも判断したのだろうか。 タライのところからはねて、頭上からギーシュに突撃したようだ。 キングの体長は1mもないが、重さは10㎏ある。そんな物が激突してはただではすまない。 あっけなくギーシュは意識を手放し、口から泡を吐いてピクピクと痙攣していた。 「……あんた結構凄いのね」 はねるだけで人垣を飛び越え、ピンポイントでギーシュをスナイプしたその底力が、である。 泡を吹いて倒れたギーシュは医務室に運ばれ、目覚めたときには何があったの記憶が曖昧になっていたらしい。 タライを部屋まで運ぶわけにはいかないから、キングは水場で毎日過ごすことになる。 泳ぐのは結構早い、だが魚だから普通の使い魔みたいにあちこち連れ回すわけにはいかないだろう。 「………わたしがいじめられてるって思ったのかしら。使い魔としての心構えはあるみたいね」 主を守る、という使い魔にとっては最重要とされるポイント。 キングはギーシュを倒すことでそれを証明して見せたのだ。 「ご褒美上げる。東方から仕入れたあめ玉なんだけど、成分解析してもよく判らない貴重品なのよ。でもとても美味しいんだって」 そう言ってルイズは大きなあめ玉をキングに食べさせる。 するとキングは嬉しそうにぴちぴちとはねる。 「きゃっ。もうそんなに美味しかったの? じゃぁもう一個あげる」 二個目、包装をほどいてキングの口の中に放り込む。 大喜びするキングに、ルイズは頬を弛ませる。 役立たずでも良い。ただキングがずっと使い魔でいてくれたら。 もっとがんばれる気がした。 気付いたら、あめ玉を軽く10個も上げてしまっていた。 使い魔の触れ合いはとても重要だ。 わたしも、時間があればすぐ水場へと向かってキングと触れ合っている。 その度にあめ玉をせがむキングだが、あんまり上げすぎるのも良くないと思って最近は自制している。 合計で14個目を上げた途端。キングのおねだりが激しくなった。 はねるだけだったキングが、わたしにすり寄ってくるのだ。 最初こそマヌケそうに思えたその表情だったが、こうも懐かれると非常に愛着がわいてくるモノだ。 すり寄ってくることによってわたしの服が濡れるが、それは仕方がないから叱ることはしない。 そもそもキングは魚だ、言って聞くとも思えない。 今日は2個あめ玉を上げた。 月がキレイ。 ところがその時、轟音とともにゴーレムが現れたのだ。 本塔の壁を殴っている。あそこは………宝物庫? そう思い至ったところで、土くれの話を思い出す。 貴族の館に忍び込んで宝を盗み出す薄汚い盗賊。まさかメイジが沢山居る学園を襲うだなんて! 貴族の誇りとして看過は出来ない。即座に杖を振って攻撃する。 けれど外してしまう。それどころか宝物庫の壁が爆発してしまう始末。 あれ、ちょっと……まずい、かな? ゴーレムの肩に立っているローブの人影、きっとアイツが土くれだ。 そいつがゴーレムの腕を伝って宝物庫の中にとびこんだ。 まずい、非常にまずい、目の前で盗賊を逃がしてしまう。 そう思って何度も魔法を放つが、爆発は狙いが定められない。 ゴーレムの表面を襲い、爆発させるが破壊するには至らない。 そもそもゴーレムは土で出来ている、いくら破壊してもすぐに修復してしまう。 「ありがとよ!あんたの爆発でやっとこさ穴が開いたよ」 宝物庫から出てきた土くれがそう叫んできた。女の声、土くれは女だったのか。 「こいつはお礼だよ! 受け取りな!」 そう言って土くれはゴーレムを操作、その脚を持ち上げて……… 眼前に広がるゴーレムの足の裏。右へ逃げるか左へ逃げるか。このままでは潰されてしまう。 ほんの一瞬の逡巡、しかしその一瞬は生死を分ける。 どん、と横からの衝撃にわたしはふっとばされ、ゴーレムの脚がほんの少しマントを掠った。 キングだ。キングがぶつかってわたしを飛ばしてくれたのだ。 そのキングはわたしの隣で今もはねている。 フーケのゴーレムは私達に見向きもせず学院の外へ出ていった。 途中でぐしゃりと崩れ、その後は夜の静寂が広がるだけ。 ミス・ロングビルが手綱を引く馬車に揺られ、フーケが潜むという小屋へと向かう一行。 馬車に乗るのは、ルイズと、キュルケと、タバサ。そして御者を務めるロングビル。四人だけ。 翌朝、宝物庫が破れた事で、その場に居合わせたと言うことでルイズが呼ばれた。 盗まれたのは破壊の小箱と言うらしいが、使い道はよく判っていないらしい。 使い道がわからない秘宝だが、それをおめおめと盗まれてそのままにしておく訳にはいかないらしい。 丁度ロングビルがフーケの居場所を突き止め帰ってきたことで、討伐隊を組むことになった。 しかし教師の誰も杖を揚げない、仕方なくルイズが志願したのだ。 出発するときになってキュルケに見つかり、お節介にも付いていくと言いだした。 すると隣にいたタバサも心配と言いだし、同行することになる。 ロングビルが言うには戦力は多い方が良いでしょう、とのこと。 悔しいけれど言い返せない、キュルケは炎のトライアングル。学園内ではトップクラスの実力者だろう。 タバサは……よく判らない。キュルケと一緒にいることが多いけどその実力は未知数。 でもキュルケが保証するというならば確かな実力だろう。 ロングビルが貴族の身分を追われた事を、キュルケが好奇心で聞こうとするのをルイズが窘めながら、馬車は行く。 おいてきたキングのことがちょっと気がかりだった。 あのメイド、シエスタに任せてきた。 欲しがればあめ玉をあげても良いと言い付けてきた。大人しくしてくれたらいいのだけど………。 ルイズに命じられた使い魔の世話を、シエスタは行う。 とは言っても。タライからでないように注意する程度だが、はねるのに慣れたキングはタライから出ても自分で戻るようになったからそれほど手がかからない。 ただ気になったのが預けられたあめ玉の瓶。 欲しがったらあげても良いと言われたがどれほど上げたらいいのだろう。 キングは瓶のあめ玉を見て催促するようにぱくぱくと口を開閉している。 あまり上げすぎても叱られるかもしれないと、シエスタの心の中は葛藤している。 「一つくらいなら………」 言い聞かせるように呟きながらシエスタは中からあめ玉を取りだし、包装紙を取り除いてキングに食べさせる。 ぱちゃぱちゃとはねながら喜ぶキングに、シエスタも笑みを浮かべた。 「おいしいですか?」 シエスタの言葉に、キングはぱくぱくとしながら次を催促する。 すこし悩んだが、シエスタはもう一つあけて、食べさせる。 再び嬉しそうに飛び跳ねるキング。 余りの喜びように、シエスタの方も嬉しくなってしまうほど。 「それじゃぁ、後一つ……」 同じように包装紙を取り除いて、シエスタはキングにあげた。 すると、さっきまで元気に動き回っていたキングの動きが、止まった。 そう、ピタリと、身動きもせず。身じろぎもせず。 キングの急変にシエスタは恐怖におののいた。 まさか、食べ過ぎて体に異変が!? まさか……死……そんな、使い魔を死なせてしまったとなったら打ち首どころか家族さえも………。 シエスタの目の前が真っ白になる。 パリッ。 「え………」 異音は、目の前のキングから。 シエスタが目を見張ると、キングの体が眩い光に包まれた。 小屋の中から破壊の小箱を奪還し、いざ帰ると言うときになってフーケのゴーレムが襲撃した。 ルイズも、タバサもキュルケも応戦するが、圧倒的な質量を持って襲うゴーレムには有効打を与えられない。 「撤退」 タバサが短くそう言うが、ルイズが反論する。 「待って、ミスロングビルがまだ」 「いいえ、今回の任務は秘宝の奪還が最優先よ。ミス・ロングビルもメイジなんだから無事よ!」 キュルケがそう言ってルイズを諭す。 「イヤよ! ここでロングビルを見捨てるわけにはいかないわ! わたしはフーケを捕まえるの。もう誰にもゼロなんて言わせない。言わせないんだから!」 キュルケの説得は無意味、シルフィードの背中から飛び降りる。 慌ててキュルケがルイズにレビテーションを駆ける。 「全くいじっぱりなんだから……仕方ないわね、付き合ってあげるわよ。タバサ、ゴーレムの周囲を飛んで。牽制するわよ」 「了解」 ルイズがふわりと着地するのを確認して、タバサをシルフィードを駆ける。 タバサの使い魔は風龍、名は風の精霊を戴くシルフィード。 その機動力は他の追従を許さない。 ゴーレムの周囲をくるくると飛び回りながら、二人は魔法を浴びせる。 しかし、その質量の前ではどれほどの効果があるだろうか。 見た限りではさほど有効打を与えてるには見えない。 「ルイズから注意をそらすのよ。こっちはなんとか避けられるけどあの子は無理だから」 「了解」 キュルケの指示にタバサは短く応える。 しかし、ゴーレムは飛び回って撃墜が難しいシルフィードを無視し、ルイズの方へゆっくりと歩み出した。 視界が真っ白になったのは、キングからの光だという事はシエスタは今になって気付く。 そしてその光はキングの体を包み、その輪郭を別な物へと変えていく。 「な、なに……いったい何が………」 「コッココッコッ………ギッ…ギョォ……………」 キングの啼き声が光の中でゆっくりと別のモノへと変わる。 キングの体の光が、ゆっくりと大きく。その輪郭も重厚で無骨な魚の鱗から、柔らかく柔軟性に富んだモノへと変わる。 そして大きくなった光はゆったりとした動作で宙へ。 変わる。 それは新たな存在の証明。青く輝くその鱗は東方に伝わる竜の証。 だれも見たことない、サファイアの如く美しき鱗をもつ凶竜。 その赤く輝く瞳はルビーのような鮮やかさ。 目の前で起こったキングの豹変にシエスタは腰を抜かしてへたり込みながら、その優美さに目を奪われている。 (なんて………綺麗) 「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOONNNNNNN」 キングだったモノの咆吼に、シエスタは思わず身をすくませて耳を塞ぐ。 誰が想像できるだろうか。 かの世界において。その存在が暴れたとき、巨大な都市を壊滅に追いやることすらあると言うことなど。 キングはきょろきょろと首を動かし、何かを探すような仕草をする。 翼は持たぬが、それは紛れもない竜。 ある方角へ、ピタリと視線を向けたかと思うと、キングはその巨体を波打たせ高速で飛び去った。 「えいっ、えいっ、えいっ」 破壊の小箱を掲げたり振ったりするが、何も起こらない。 「何よコレ! どうやって使うのよ!」 「ルイズ! 使い方がわからないって学園長も言っていたじゃない! 振ったり掲げたりするだけで使えるわけないでしょ! 良いから逃げるわよ!」 「イヤッ!わたしは逃げないわ! 貴族とは魔法を使うモノの事じゃないわ! 敵に背を向けないモノのことを言うのよ!」 「あぁもうっ、意地を張るのも大概にしなさい! 死んじゃったら意味無いでしょうがっ!」 シルフィードが低空飛行で、キュルケがルイズの腕を掴んで引っ張り上げる。 「勝てないと悟ったら撤退するのも作戦のうちなのよ! うだうだ意地張ってんじゃないわよ。あんたに死なれたって目覚めが悪いのよこっちも」 ルイズを引っ張り上げて、シルフィードはゴーレムの腕の届かない高度に達する。 「帰るわよ! 名のある貴族だって捕らえられなかったフーケをあたし達で捕らえられるわけないじゃない。生きて戻るだけでも御の字よ」 「でも………」 ルイズが反論しようとした途端。衝撃が襲う。 「きゃぁっ」 一瞬ふわりと浮遊感がしたと思ったら、体が重力にひっぱられて落ちていくのがわかった。 「くっ、なっ……!?」 とっさにキュルケとタバサがレビテーションを唱える。 ゆっくりと地面に降り立ったとき、何が起こったのか全てを把握した。 シルフィードの体に石の礫が多数突き刺さっていたからだ。 「大丈夫?」 「大丈夫、でも飛ぶのは無理」 キュルケの言葉にタバサが応えた。 そしてゆっくりと近づいてくるゴーレム。 ゴーレムが腕から石の礫を飛ばしたのだろう。 これほど巨大なゴーレムを作れるとなると、おそらくトライアングルクラス。 石の弾丸を放つ事など簡単にやってのけるだろう。 相手がゴーレムだからと言って油断した、腕の届かない高所にいれば大丈夫だと見誤ってっていた。 操っているのはメイジなのだ。 「やるしか………無いって訳ね」 覚悟を決めたのだろう。三者三様に杖を掲げ、ゴーレムを向かい打つ。 そして呪文を唱えようとした、その時だ。青い影が頭上を飛び越え、ゴーレムに突撃したのは。 その衝撃音はルイズの爆発を遥かに凌ぐ。 青い鱗が太陽の光を反射させて宝石のような美しさを魅せる。 その巨体をゴーレムに巻き付けて動きを封じている。 「なに………あれ」 キュルケのその言葉は三人の意見を統一して代弁するモノだった。 「GYAOOOOOOOOOnN」 見たこともない生物、ハルケギニアにあんな生き物がいたなんて、ルイズも知らない。 魔法が使えない故、せめて勉強だけは人一倍にしてきたルイズですら、だ。 その姿を表現するならば、青き空を飛ぶ大蛇。 ゴーレムが巻きつきを解こうと暴れるが、関節を極めるように巻き付かれていて上手くいかない。 しかし、所詮はゴーレム、土によって作られたモノでしかない。 フーケが何処からか見ているのだろう。いったんゴーレムが崩れ落ちてまた新たなゴーレムが現れる。 しかし、ゴーレムはそれを警戒するようにして動かない。 「助けてくれた………みたいね……でもなんで」 キュルケが、ルイズとタバサに視線を向けるが、二人ともふるふると首を振った。 「知らない」 「わたしも知らない。あんなの……見たこともない」 いや、とある文献で読んだことはあった。 体長10mほど、翼が無くとも空を飛ぶ。雨を呼び嵐を呼び雷を起こす伝説の存在、竜。 ルイズが思い出しながらそう言うとキュルケが驚きながら言う 「翼がないのに空をぉ!? そんなわけ………」 そこまで言ったところでキュルケは口を噤んだ。今目の当たりにしている現実を否定するほどバカじゃない。 確かに目の前の大蛇に翼がない、翼に相当するだろう場所が見あたらないのだ。 「ドラゴンとは違うの?」 「違うみたい。詳しくはわからないけど……」 その時、ルイズは大蛇と目があったのがわかった。 大きく開かれた口からはするどい牙が輝くのが見えた。 しかしそんな凶悪な顔をしているにも関わらず、その瞳はとても穏やかでルビーのような煌めきを湛えている。 なぜか、脳裏にキングの顔が浮かんだ。 「まさか………」 キングのあののんびりとした顔とは似ても似付かないはずのその表情だったが、ルイズは自分を見るその暖かな視線にキングを思い浮かべずにいられなかった。 「キング………キングなの…………? まさか………嘘でしょ」 否定か肯定か、青い竜は天に向かって高らかに吠えた。 「キングぅっ!? キングってあんたの……うっそ、赤い魚だったじゃない!」 「わかんないっ、わかんないわよぉ、わたしだって何が何だか………でも何となくだけどキングと同じような気がしたんだもん」 「あれ」 キュルケの大声にルイズが狼狽する。 しかし冷静に観察していたタバサが、竜の額を指差した。 燦然と煌めく額のルーン。 それは紛れもなく、ルイズの呼び出した赤き魚に刻まれていたルーン。 「ホント……に。キングなんだ……」 「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNNN」 突然現れた竜にとてつもなく驚いたが、それがキングであるとわかっているのなら怖がる理由など有るはずがない。 そう、キングは、自分の使い魔なのだから。 「キングッ!」 止めようとするキュルケを振り切ってルイズがキングに駆け寄る。 するとキングはゴーレムと相対するのをやめてルイズにすり寄った。 ただ、6mを超える巨体が近づいてくるという、圧迫感は消しようがなかった。 ルイズの目の前で止まり、キングはその紅い瞳を細めた。 心なしか、ルイズにはキングが笑っているように見えた。 「キング………貴方ずいぶん大きくなって………」 額の三つに分かれた冠に刻まれたルーンを、ルイズが優しく撫でる。 その時だった。 未だにその手に持っていた破壊の小箱を、キングがじいっと見つめているのに気付いた。 「これ? 使い方がわからなくて……」 ぐるん、と胴体をねじらせて、尾びれの先で小箱の横に着いている凹みをキングはつつく。 突然ピンポンと、小箱から音がしてぱかっと開く。ルイズは驚いて目を丸くした。 「キング使い方わかるの?」 ルイズの言葉にキングは行動で示す。 キングの背びれに小箱を置くと、キングは体をねじってそのするどい牙で銜える。 間違って噛み砕いたりしないように、細心の注意を払っているのがわかった。 「わざマシンを起動します………中には『はかいこうせん』が記録されています。『はかいこうせん』をポケモンに覚えさせます。よろしければもう一度ボタンを押してください。キャンセルする場合はリセットボタンを押してください」 キングは、その牙を軽く押し込んだ。 土くれのフーケは、その光景をしっかりと見ていた。 「なるほどねぇ……ああして使うのかい。他の物も同じかねぇ」 そう呟きながら、傍らにあった小箱のボタンを押す。 すると、同じようにピンポンと音がしてメッセージが流れた。 予想通りな小箱の反応にフーケはニヤリとほくそ笑んだ。 「コレで奴らは用済みっと。あの大蛇が使えたって言うのは驚きだったけど。どうでも良いか、始末させてもらうよ」 杖を振ってゴーレムを動かし、キングとルイズへと襲いかかる。 ゆっくりとキングが振り返る。 そして巨大な牙が光る口を、これでもかと開いた。 そこへ光が集まり、巨大な球状を形成する。 その場にいる誰もが目を見張った。 キングはいったい何をしようとしているのか。 あの光の玉はいったい何なのか。 それが何なのかと言うことは。その三秒後。 人間で言えば腹部に位置する部分が吹き飛ばされた事実がまざまざと教えてくれた。 キングの口から放たれた光線。それはゴーレムの胴を吹き飛ばしながらもなお留まらず。森の木々と地面を削り飛ばした。 後には、轍のような一本線が森林のど真ん中に残るだけ。 胴が無くなったゴーレムは、上半身を支えきれずにぐしゃりと崩れ落ち、土と混ざって跡形もなくなった。 へなへなとへたり込んだルイズに、キュルケが歓びのあまり抱きついた。 キングの顔が怖かったからである。 「やったじゃないルイズッ、ゴーレムをやっつけたのよ! どうしたのよあんたの使い魔がやっつけたのよ? もっと喜びなさいよ」 「あ……はは……ちょっと気が抜けちゃって……」 ゴーレムの胴を吹き飛ばし、更に森林破壊まで簡単にやってのけたキングの「はかいこうせん」の威力に力が抜けてしまったのだ。 「もうなにやってんのよ、ほら」 キュルケがルイズに手を伸ばすと、ルイズはその手取ろうか取るまいかすこし悩んだが、結局掴んで立ち上がった。 攻撃を済ませたキングが戻ってきて、ルイズに頬ずりする。 顔は厳つくなったが、それでもキングはルイズをしたっている。 ルイズはそれがとても嬉しくて、とても愛おしくなった。 「それにしても。その………キング。一体何者なの? ゴーレムを吹き飛ばす魔法なんて…… キュルケのその言葉に、ルイズはたぶん違うと思っていた。 破壊の小箱からアナウンスされた意味のわからない単語。ただ『ポケモン』と言う単語だけ聞き取ることが出来た。 きっとあの小箱は特定の生き物に有効なアイテムなのだろう。 そしてそれを使えたキングは、『ポケモン』に分類される生き物。 おそらく、このハルケギニアとは違う文化圏に存在する生き物なのだろうと、何となく思っていた。 ただ、あんな小さな小箱を使うだけで、あれ程の力を発揮できるようになるなんて……… まさしく「はかいこうせん」だ。 「タバサ、シルフィードは」 「休ませてる」 「そう……」 キュルケの問いにタバサは短く答える。 「ロングビルは無事だと良いけど……」 その時だ、草木の影がガサリと音を立て、ロングビルが姿を見せたのは。 「ミス・ロングビル! 無事だったのね。フーケは何処からゴーレムを操って………」 ルイズがそこまで言ったところでその手に破壊の小箱が握られているのを気付いた。 「ミス・ロングビル……それ」 「ご苦労様」 「え………どういう」 「さっきのゴーレムを操っていたのはわたし」 ロングビルからの告白に場が凍り付く。 ロングビルが眼鏡を外すと、柔和だった目がつり上がって猛禽類のような目つきに変化する。 「そう、わたしが『土くれ』のフーケさ。しかしとんでもない威力ね。破壊の小箱。わたしのゴーレムが一撃じゃない……動くんじゃないよ!」 杖を構える三人を、フーケはその手の小箱を見せつけて制する。 「破壊の小箱は複数あったのさ。わかったなら全員杖を遠くへ投げなさい」 三人は言われるがままに杖を放り投げる、コレで三人とも魔法を唱えることが出来ない。 「実はね、盗み出したは良いけれど使い方がわからなかったのよ。討伐に来る奴に使わせて、知ろうと思ったのよ」 「わたし達の誰も知らなかったらどうするつもりだったの?」 「その時はゴーレムで全員踏みつぶして新しい人が来るのを待つだけよ。まぁその手間は省けたわね。こうして使い方もわかったんだし」 そう言ってフーケは小箱を起動する。 しかしフーケは気付いていなかった。 その小箱は人間に使えないことを。 その手に持っている小箱にヒビが入っていることを。 ヒビが入っている故、不良品故に人間に使えてしまうと言うことを。 そして、形は同じでもそれは破壊の小箱とは全く違う事を。 アナウンスの言葉の意味をわからなかった、それがフーケの敗因だった。 「わざマシンを起動します……ザザッは『ねザザザッ』が記録ザザッています。『ザッむる』をザザッモンに覚えさせザザッ。よろし……」 メッセージを最後まで聞かないでフーケはボタンを押した。 その直後フーケは糸が切れたように崩れ落ちた。 突然眠ってしまったフーケを縄でぐるぐる巻きにして、今三人はキングの背に乗っている。 全身に傷を負ったシルフィードはキングが口にくわえて輸送している。 相当嫌そうだったが、タバサが説得して渋々と納得した様子だった。 未だにシルフィードはきゅいきゅいと鳴いている、どうやらキングに必死で何かを伝えているようだ。 おおかた「食べないで」とか「噛まないで」と言った類だろう。 たまにキングがべろんと舐めているようだ。「きゅいいいいいーーー」と悲鳴が上がる。 「ねぇ、ルイズ。あんたどう思う?」 「どうって、なにが?」 「このキングと……後あの破壊の小箱の事もよ。なんでロングビル……フーケは急に眠ったのかしら」 キングは強力な光線魔法を放ったのに、とキュルケは続ける。 そんな事言われてもルイズに詳しいことは判らないのだから答えようがない。 「フーケを引き渡すときにオールド・オスマンに聞いてみるわよ。何か判るかもしれないし」 「私も気になる」 タバサが会話に乱入してきた。 タバサが言うには、あれだけの破壊力を持つ魔法は四大系統にも存在しないとのこと。 その事はルイズの方が良く知っていた。 風、水、火、土の四つの系統。 その中で最も破壊力のあるとされる火のスクウェアクラスでも30mもあるゴーレムの吹き飛ばすことは出来ないだろう。 「竜………か。これって、大当たりなのかしらね」 ルイズのそんな言葉にキュルケがツバを飛ばしながら、 「大当たりに決まってるでしょ! あんな魔法、使い魔どころか、どんなメイジだって出せないわよ」 と言った。 フリッグの舞踏会は通常通り執り行う事になった。 着飾ったルイズが会場に入った途端、ざわめきが覆い尽くす。 しかし、ルイズは男性からのダンスの誘いを全て断り、一直線にベランダへと向かった。 「キング」 そう短く呼ぶと、頭上から凶悪な顔が姿を見せた。 「あ……あの、ミス・ヴァリエール………」 「ん?」 突然後ろから声をかけられてルイズは振り返る。 「あの、その……あめ玉をあげて良いと言われたので、三つほど挙げたのですが、そしたら……」 シエスタはぽつりぽつりと告白する。 「あぁ、その事。いいのよ。キングには助けてもらったし、あげても良いって言ったのは私だし、律儀ねあなた」 恐縮するシエスタの仕草に、ルイズは思わず笑みを浮かべた。 ベランダから顔を覗かせるキングを、ルイズは撫でる。 「確かに驚いたけど………この子はキングよ、他のなんでもないわ……私を助けてくれた。私の可愛い使い魔」 そこで、ルイズは悪魔的な笑みを浮かべてシエスタをみやる 「ただ………そうね、可愛かったキングをこんなに怖い顔にした罰は与えようかしら」 「な、何なりと。申しつけ下さい。如何なる罰でも」 「本当に?」 ルイズのその言葉にシエスタは思いっ切り頭を垂れてふるふると震える。 そんなシエスタに背を向けて、ルイズはドレスのままベランダの手すらに手をかけて上る。 ルイズの意図をいち早く察したキングは、そのしっぽをルイズの前に差し出した。 ドレスのため動きにくそうにするが、なんとかしっぽに飛び移ると。それを補うようにキングはしっぽを頭の位置へと運ぶ。 ルイズは、キングの頭に飛び移り、額の冠にしがみついた。 「ほら、シエスタ。貴方も来なさい」 「え……」 ルイズの意図を把握したキングは、もう一度手すりにしっぽを向ける。 「着飾った途端にしっぽを振ってくるような安い人には興味は無いわ。一緒に月夜の浪漫飛行と行きましょう。命令よ」 命令、と言う言葉にシエスタはビクリと肩をすくませたが、やがておずおずと手すりに手をかけて昇り、そのしっぽへと飛び移る。 キングは同じように頭の上へと移す。 ルイズがシエスタへと手を差しのばす。 汚れのない真っ白なグローブがシエスタの目に映った。 おずおずと伸ばされたシエスタの手を、ルイズの方からも手を伸ばしがっしりと掴んだ。 そして、シエスタもキングの頭へと飛び移る。 「さ、キング、高く高く飛びなさい! 息苦しい地表から離れた、空と月しかない場所へ!」 ルイズの命令に、キングは嬉しそうに叫んだ。 その咆吼で会場の窓硝子に一斉にヒビが入る。 しかし後に残ったモノは、ドップラー効果で遠ざかる、対照的な少女の悲鳴と歓喜の声だった。 コレは、とある少女と、蒼き竜の物語。 役立たずと蔑まれ、誰からもバカにされた、少女と竜の物語。 雨を呼び。津波を起こし。雷を呼び。吹雪を起こし。大地を揺らし。炎を吐いた破壊の竜の物語。 誰が想像しうるだろうか。役立たずと言われた彼女らが、一万年の後にすら伝説として語り継がれることになるなど。 前ページ次ページゼロの登竜門