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ルイズが機嫌悪そうな顔をしながら本を読んでいる それはエドが本を渡したときからだった。 「エド、あんた何読んでいるの?」 「ん、あぁこの本か?」 エドはルイズに本を見せた、表紙には魔方陣みたいな絵と「錬金術入門」と言う文字が書いてあった 「何でそれを読んでいるの?」 「錬金術は科学技術だからな、結構これは難しいけど、俺はあきらめなかったぜ」 それを聞いたルイズがカチンと来た 「エド・・・その本私に貸しなさいよ」 「えっ?」 「いいから貸しなさい!!、使い魔が難しいもので錬金術を学ぶなんて。貴族の名が傷つくわ!!っ」 エドは訳が分からないままルイズに本を貸した、しかし錬金術はいくら学んでも大抵の人間は途中で止めてしまうと言うものだ しかしエドは両手を叩いて錬金術を発生させるのはこの本のおかげだとルイズは勘違いしていた 「(これで私もゼロじゃないって事を証明してやるわ!)」 そう思ったルイズは本を開いた、開いたら中身は凄く難しい説明分や図などがいろいろと書いてあった 「なっ・・・何よこれッ!?、あんたこんなに難しい本を読んでいたの!!?(汗)」 「えっ?まぁな、言っただろ?。結構難しいって、俺が教えてやろうか?」 「なっなななっ!、何バカ言ってんのよ!?。こんな簡単な本・・わわわ私でちょちょいのちょーいってできるわよ!」 ルイズが顔を真っ赤にして得意げに言うが、エドはポカンとなっていた やがて、ルイズがエドを睨んだ 「何ボケッとしてるのよ、さっさと洗濯に行きなさいよ!!」 「なっ!」 「洗濯が終わったら掃除しなさい、やらなかったらご飯抜きよ!!」 エドは分からないままで服とか下着とか入ってるカゴを持って洗濯に行った ルイズはペラペラと本を見ている、すると1つのページにルイズは止まった 「何よ・・・これ・・・」 ルイズが読んでいるのは、人体の構想が書いてあるページだった 「これならできるかも・・・うん!」 ルイズがそう言うと、外に出かけた そのページは・・・錬金術で禁じられている最大の禁忌「人体練成」のページだった その頃のエドは洗濯を終えて、戻ろうとした時。自分の右腕を見た それは・・・エドと弟のアルフォンスは幼い頃、母親を亡くした 『アル!、アル!、アルフォンス!』 『どうしたのさ?、兄さん』 『これだ!、この理論なら完璧だよ!』 『これって・・・まさか』 二人は・・・母を蘇らせようと錬金術を学んだ そしてその夜、彼らはやってしまった。最大の禁忌・・・人体錬成を エドとアルは、錬成陣に手を置いた、すると光が出た。その時にいきなり真っ暗になった 『兄さん・・・何か変だよ!』 アルがエドに話しかけた直後、アルの悲鳴が聞こえた エドはアルのところを見た。アルの手から黒い手がアルの手を千切っていた 『アル!!』 エドがアルのところに向かったが、エドの左足に何かが引っかかった なんと、エドの左足にも黒い手が無数にエドの左足を千切っていた 『兄さん!、兄さん!。兄さん!、兄さーーーーーーーーーん!!!』 『アルーーーーーーーーーー!!!!』 錬成は失敗した、つまり・・・リバウンドだ。エドは左足を持っていかれ アルは身体を持っていかれた、するとエドは鎧を倒した 『返せよ・・・弟なんだよ・・・足だろうが・・・両腕だろが・・・心臓だろうが・・・くれてやる・・・だから返せよ・・・たった一人の・・』 弟なんだよぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!!! 彼は自分の右腕を犠牲にしてまで、アルの魂を鎧に定着させた そして現在、エドは訳が分からないまま、ルイズに召還されてしまった 彼はあきらめなかった・・・自分の世界に戻って賢者の石を探す決心をした 「エドさん?」 「うおわっ!?」 エドはその声に驚いたようだ、振り向くとシエスタが立っていた 「シ・・・シエスタ」 「どうしたのですか?、暗い顔して」 「い・・いや別に暗い顔してねーって!、ほらこの通り元気だぜ!(苦笑)」 「でも顔から汗が出てますよ」 「うっ・・・」 気まずい風景になってしまった、エドはごまかせ切れなかった すると、シエスタが口を開いた 「エドさん」 「ん?」 「もし何か悩みがありましたら、いつでも私に相談してください」 「えっ?」 「何か悩みがあれば、私いつでも相談になります」 「ありがとな・・・シエスタ」 エドはシエスタに笑顔見せると、カゴを持ってるルイズの部屋に向かった エドが部屋に戻ってくると、ルイズが本を開いたまま居眠りしていた 「ルイズの奴・・・難しくて寝ちまったのか・・・・」 エドが自分の赤いコートをルイズに被せた そして本を持とうとしたときにエドは異変に気が付いた 「(えっ!、何故だ!?)」 エドが見たのは人体錬成のページだった、実はこのページはエドが破いたページだった それが元に戻っていた 「(バカな、このページは無くなったはずが!?)」 「どうしたんだ相棒?、怖い顔して」 エドの背中からデルフが話しかけた 「見れば分かるだろ!?・・・これは・・・人体錬成のページだ!!」 エドが怒鳴った勢いでルイズが目を覚ましてしまった 一瞬ギクッとなってしまったエド 「んぅ~・・・夢中になって寝ちゃった・・ふあ~」 「ル・・・ルイズ」 「はっ!?、ええええ・・・・エド!?。あんた何でここにいるのよ!?」 「洗濯し終わって戻ってきたんだよ!!」 またルイズがボケたので突っ込むエド やっとルイズが思い出してきた 「じゃあ次は掃除ね」 「早速それかよ!、それとルイズ・・・掃除が終わったら話がある・・・」 「なっ!?」 それ聞くとルイズがびくった、いきなり話があると聞いたら誰だって驚くよ・・・ 「わ・・分かったわよ・・・エドがどうしても話したいなら・・・かっ勘違いしないでね!、べべべべっ別に好きだからって聞きたいわけじゃないんだから!!」 「それは好きって言うんだぜ?貴族っ娘」 「う・・・うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!(真っ赤)」 ルイズが真っ赤にして怒鳴る それでもまだからかうデルフ、でもエドの表情は悲しくそんな表情だった 夜 掃除を終えたエドが椅子に座る、ルイズはベッドに腰掛けた エドの表情は笑っていなかった 「ルイズ、お前あのページを見たのか?・・・」 「えっ?・・・えぇ人の図面が書いてあったのよ・・・・それがどうしたの?」 エドの顔が暗くなる、そしてエドは言ってしまった 誰にも話したくなかったことを 「話しただろ?、禁忌を犯したって・・・・」 「じゃああのページは!?」 「あれは・・・人を錬成する禁断の錬金術・・・「人体錬成」だ」 ルイズは驚いた表情をした、あのページはエドのつらい過去だった エドがまだ話をする。それも涙を流しながら 「俺はアルの魂を鎧に定着したんだ・・・けど俺はあいつに・・・怖くていえなかった事があるんだ・・・・」 「怖くて・・・・」 「あいつは・・・アルは俺のことを恨んでるじゃないかって・・・」 ルイズは・・・黙って聞いていた、エドがまだ話す 「アルが鎧の身体になっちまったのも・・・俺のせいだ、だからあいつは俺の事をずっと恨んでるじゃないかってよ・・・」 エドの目から涙がポタポタと落ちてきた、肉体を失い、寝る事も疲れることもできなくなってしまった弟 その弟がエドを恨んでいるんではないかとエドはずっと思ってきた 「違うと思うわよ」 「えっ?」 ルイズがエドに優しく話した、ルイズの表情は優しい顔だった エドの顔は涙でくしゃくしゃだった、ルイズはエドに話しかけた 「本当に恨んでいるなら、エドとその賢者の石を探す事ないわよ・・・恨んでるはずないわ」 「なんで・・・・」 「言ったでしょ?、エドの事を信じてるって」 ルイズの優しい言葉にエドはまた涙をこぼした、その時にルイズはエドを抱きついていた 「エドだって・・・泣きたい時があるでしょ?・・・思い切り泣いていいわよ」 「っ・・・!!」 エドは声を出さないまま、ルイズに抱きついたまま泣き続けた ルイズの目にも涙がぽろぽろとこぼれた 「(おーおーおー、憎いねぇ相棒!)」 エドはデルフがいることを忘れていた そしてその翌日 「エド!!」 またもやルイズの大声がエドに響いた 「またあんた洗濯をサボってあのメイドと話してたわね!!!」 「うっせぇ!!誰だって話たっていいじゃねぇか!!!」 「良くないわよこのマイクロどチビ!!!」 「だぁれが超ミニマムミジンコドチビかぁぁぁああ!!!!!!」 相変わらずの風景だった・・・ 人体錬成のページはエドが完全に破いてしまったという 終わり
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前ページ次ページゼロの軌跡 第十二話 貴族と平民 「なんですって!?レコン・キスタが?」 「なんでも、和平条約の締結のために派遣された軍使節が攻撃を仕掛けてきたらしくて、そのままこっちに向かってるそうです」 ルイズとレンもレコン・キスタの話は各地で耳にしていた。 聖地回復を目指すという、なんとも胡散臭い連中だと思ったがまさかトリステインにまで攻めて来るとは思わなかった。アルビオン王家が滅んだと聞いたときはただの内乱のようだったのだが。 「軍の到着は何時ぐらいになるの?レコン・キスタの勢力はどれくらい?攻めてくるまでの時間の余裕は?」 「え、えっと、軍は早くてもあとは半日はかかるそうです。敵の兵力は大体五千とか。もう数時間ほどでレコン・キスタはこのタルブ村までやってくるって」 どうしましょう、と震えるシエスタをなだめ、ルイズは急いで村の人間を集めるように指示する。 それを受けてシエスタが出て行ったのを確かめるとレンはルイズに問いかけた。 「どうするつもり?」 「戦えない女性と子供はすぐに村から脱出させるわ。レンと<パテル=マテル>はその人達を守るためについていって欲しいの」 「ルイズはどうするのかって聞いてるのよ!」 苛立ちを隠そうともせずに、レンは声を荒げた。彼女がここまで怒りを見せるのはサモンサーヴァント以来の事だった。 「タルブを抜かれたら王都までレコン・キスタを防ぐことは出来ないのよ。ここで少しでも時間を稼ぐわ」 「正気!?防ぐ為の兵力は?体制を整える時間は?篭って戦えるような要害は? この状況でルイズ一人で何が出来るっていうのよ」 「一人じゃないわ。タルブと近くの村から義勇兵を募る。二百くらいは集まるでしょう」 「空からの精鋭五千と地上の民兵数百。勝負になるはずがないじゃない」 レンは近くにあった机を力任せに殴りつけた。木で簡易に組まれただけのそれは容易にひしゃげて床に転がった。折れて跳ねた二本の足がルイズとレンの足にぶつかって止まる。 レンには始めから分かっていたのだ。ルイズがここに踏みとどまるであろう事が。そして、ルイズが決して意志を曲げようとしない事も。 それでも、無駄と知りながらレンは説得を放棄することが出来なかったのだ。 「少し時間を稼げばアンリエッタ様が軍を派遣してくださるわ。それまで持ちこたえればいいの」 「最低でも半日かかるのに、このままじゃ一時間耐え切れればいい方よ。それに王国軍が来たところで勝てる保証は何もないわ」 「レコン・キスタの進軍が少し遅れるかもしれないし、増援が早く来るかもしれない。その増援は空軍に対抗できるような戦力を保持しているのかも。 そうやって要素が積み重なれば、まだ賽の目はどちらに転ぶか分からない。でも私がここで退けば万に一つの勝ち目も失う。 私はトリステインの貴族なの。民と国を見捨てるような真似は絶対に出来ない。命を天秤に掛けるようなら、私は貴族としての道を永遠に失ってしまう。それは死ぬことより辛いことだわ。 私を怒ってくれてとても嬉しかった。でも…ごめんなさい。レン」 レンはそれ以上反駁できなかった。ルイズもレンもお互いにどうしようもなく正しかったからだ。 ルイズは自国とその民を守らんとした貴族であろうとしたのだし、レンもまたそれを是としていた。 自己の保身でなく、国と民の為に己を捧げる。それが真に正しい貴族の道だとルイズは信じて行動しているし、その信念を認めたからこそレンも今までルイズと行動を共にしてきた。 だがその決意は今ルイズの、文字通り必死の反抗作戦という形で顕れて、レンにはそれを認めることが出来なかった。それしか方法がないことを理解しながら、感情はそれを頑なに拒んだ。 きっとそれはレンにとってルイズの存在が欠けてはならないものになったからで、だからルイズはレンに感謝したのだ。 本来レンにとってルイズは憎んで然るべき存在のはずだった。レンを元の世界から引き剥がすように召喚し、親のように慕っている<パテル=マテル>と契約した。 ルイズが衣食住を提供しているといっても、レンほどの異能があればこの世界で不自由することはあるはずもない。ルイズが成し得て、レンに成し得ない事は何一つない。 畢竟、互いの存在を必要としていたのはルイズであって、レンではないはずだった。 それでも今こうしてレンはルイズを求めてくれている。死地に向かうルイズを引き止め、翻意させようとしてくれている。日頃は決して見せない激情を露にして。 それがルイズには堪らなく嬉しくて、そしてもうレンに応える事が出来ないのが悲しくも申し訳なかった。 ルイズが窓に視線をやると、心配そうに顔を覗かせる<パテル=マテル>がそこにいた。 私が死ねば、本当に<パテル=マテル>をレンに返すことが出来る。きっと胸のルーンも消えるだろう。 そう思うと沈みがちな気分も少しだけ楽になったように、ルイズには感じられた。 「ルイズの大馬鹿…」 長い沈黙の後、硬く握った拳を力なく下ろして、レンはただそれだけをつぶやく。 それすらも親愛の情であるようにルイズには思えた。 レンはそのまま走って部屋を出て行く。その後姿を追いかけて抱きとめたい衝動に駆られたが、それは許されることではなかった。 顔に疑問符を貼り付けたシエスタが呼びに来るまで、ルイズは杖を握り締めて立ち尽くしていた。 「本当にここに残るんですか?」 「そうよ、危ないからシエスタも早く避難しなさい」 「駄目です!敵いっこありません!」 持てるだけの金品と多少の食料を積み、ありったけの台車を数珠に繋いで<パテル=マテル>に括り付ければ女子供の避難はすぐにも始まるはずだった。 が、ルイズが残ることを聞いたシエスタが、ルイズも連れて行こうと必死にわめき散らした。 説得しても埒が開かない、今は一秒でも時間が惜しいと説得を諦めてルイズは男達に声をかける。 「ルイズ様を置いて行けな、ちょっとどこ触ってるんですか!離して、はーなーしーてー!」 「ミス・レン、おまたせしやした。出発してください。こいつらをよろしく頼んます」 シエスタを出来るだけ優しく荷台に投げ込む。なおも這い出ようとするシエスタの頭を押さえつけて、男達は発進許可を出した。 レンは一つ首肯し、<パテル=マテル>は轟音を上げて動き出した。 猛スピードで引き摺られ激しく揺れる台車。乗り心地は最悪だろうが、しばらくは我慢してもらう他ない。 多少の吐き気で命が買えるなら安いもの。あの様子なら戦闘が始まる前に十分安全な場所まで逃げることだろう。 「本当によかったんですかい?ヴァリエールさま。今ならまだ間に合いますぜ」 「…いいのよ。私が選んだ道だもの。今更違えることなんて出来ない。 さあ、忙しくなるわよ。隣の村から人が来たら、村の入り口と広場にバリを組んで。ありったけの武器と弾薬をかき集めるのも忘れないように」 最後まで、ルイズとレンは言葉を交わさなかった。 「いてて…あの親父、乙女の柔肌に傷が残ったらどうするつもりよ。次会ったらハシバミ草のサラダ山盛りにして出してやるんだから」 痛むお尻をさすってシエスタがやっと起き上がる。しかし、疾走する台車の上でバランスを失って彼女は再び倒れこんだ。心配する声が周りから上がったが、今はそんなことを気にしてはいられない。 台車から台車へ、危なっかしい足取りながらも跳んで渡り、<パテル=マテル>のすぐ後ろ、先頭の車のそのへりに片足を掛けて立ち上がった。 「ちょっと、シエスタ、何をやってるの。危ないから座ってなさい!」 「座りません!ここで私を下ろしてください!」 慌てたレンから叱責が飛ぶが、シエスタは怖じずに叫び返した。 その様子に少しだけ速度が落ちる。 「車から落ちたらどうするのよ。そのまま挽き肉になりたいの!?」 「だったら止めてください。私は戻ります。ルイズ様を残したまま逃げるなんて私には出来ません!」 「意地を張らないで、シエスタ。あなたを帰すわけにはいかないの。わかるでしょう」 「わかりません!わかりたくもありません!レンちゃん。 いえ、レン!」 出会ってから初めて、シエスタが敬語を崩した。怒りに震えて、彼女は叫ぶ。 「ルイズ様は貴族として、命を懸けて守ろうとして下さっています。タルブ村を。あの人には縁もゆかりもない、私達の故郷を。 あの状況下ではたとえ逃げ出したところで、それは罪にもならなければ恥に値することでもないはずです。なのに、国と民を守る貴族であるという、ただその一つの理由で、ルイズ様は残ったんです。 おそらく戦闘と呼べるようなものにさえならないでしょう。それでも、ルイズ様は己の使命から目をそらすようなことはしませんでした」 慟哭にも似たその言葉。いや、確かにシエスタは涙を流していた。 レンは指一本動かそうとしない。動かせないのかもしれなかった。 まばたきもせずにいるレンを睨みつけてシエスタは続けた。 「平民とは何ですか?ただ貴族に管理されるだけの存在ですか? 常日頃は貴族にその実りを貢ぎ、危機が迫れば目を閉じて耳を塞いで貴族の保護を待つ、飼い犬のようにあればいいのですか? そうやって思考を放棄して、精神を依存し、肉体だけをいうままに行使していれば、平民は幸せになれるのですか? 違います!それは絶対に違います! この国にあって貴族と平民は不可分の存在のはずです。平民は大地を閨としてその恵みを国中に分け与え、貴族は法と権を持って内憂と外患から国と民を守る。それがあるべき姿なのではないですか? 私達がタルブ村とルイズ様を見捨てて逃げ出すということがどういうことか。 このまま逃げ出せば、私達は一生、国にも、貴族にも、他の民にも顔向けが出来ません。 二度とこのトリステインを母国と呼ぶことは出来ません。タルブ村を故郷だと想うことも出来ず、私達の心は彷徨うだけです。 罪を犯しても真に私たちが罰されることはなく、災厄にあって手を差し出されても決して救われることはありません。 私達はトリステインの民です。それは誰にも捻じ曲げることの出来ない絶対の条理です。たとえ、女王であっても、始祖ブリミルであっても。 だから、私を下ろしなさい。レン」 その言葉に、座って聞いていた他の女性達も一斉に立ち上がった。 目にシエスタと同じ決意をたたえていない者は一人としていなかった。 「…どうしてシエスタもルイズと同じ事を言うのよ」 「そんなの決まってます。ルイズ様はトリステインの貴族で、私はトリステインの民だからです。 それ以外に一体どんな理由がありますか」 泣きはらした、それでも満面の笑みでシエスタは言った。 しばしの沈黙。たっぷり三百メイルは走った後にレンはようやく口を開いた。 「ここで止めることはできないわ。速度を上げるわよ」 「レン!」 「そうでもしないと、この後村に戻れないでしょう」 前を向き、表情を隠してレンは言った。 「台車一台に乗る人数だけよ。それ以上はなんと言われてもお断りだから」 その頃トリステイン魔法学院では、コルベールが雑談を交えてオスマンに研究の報告を終え、部屋に戻ろうとしていた。 研究費の増額がうやむやにされ、生活費を切り詰める算段をしながらも、先ほどのオスマンとの会話を反芻していた。 「…らしく、ミス・ヴァリエールとミス・レンは上手くやっているようです」 「ふむ、とりあえずは一安心といったところじゃな。あれがガリアなんぞの手に渡ったらどうなることかと肝を冷やしておったが」 「ミス・レンは正義の徒ではありませんが、醜い振る舞いを、特に貴族のそれを嫌っているようです。ミス・ヴァリエールの人となりであれば問題はないかと」 「ミス・ヴァリエールか…。魔法など、貴族として生きるには必要がないということかの」 ついたため息は安堵かそれとも別の何かか、オスマンは話を変える。 「ところでコルベール君、これは座興なのじゃが、もし彼女らと敵対したら、君ならどうやってあの<パテル=マテル>を打倒するかね?」 「いきなり何をおっしゃるのですか、オールド・オスマン」 そう笑おうとしたコルベールだったが、口調とは正反対にオスマンの目は笑ってはいなかった。 それを受けてコルベールは差し込む光にその頭を輝かせて考え込む。 「…これは非常に不愉快な答えではありますが。ミス・レンを人質にとるというのは」 「大鎌を自在に操り、見知らぬ魔法を行使する彼女をかね?ほんの少しでも手間取れば<パテル=マテル>が文字通り飛んでくるのじゃぞ。 しかも、もしミス・レンが死んだとしてもあれが行動不能になる保証はどこにもない」 「では手詰まりです。正直に言って、あれに対抗できるような手段が思いつきません」 「わしも同感じゃ。それはつまり裏を返せば」 オスマンは手元の砂時計をひっくり返す。砂代わりの秘薬がさらさらと下に零れていく。 時計の中には大粒のガラス球が上下に一つずつ入っている。やがて数分が経ち、ガラス球は完全に白い顆粒に覆われて見えなくなった。 「ミス・レンと<パテル=マテル>を打倒するものがあるとするならば、それはただ一つ。圧倒的な物量しかあるまい」 気分を変えようと、コルベールは部屋に戻る前にヴェストリの広場へと足を向けた。 ここで決闘があったのも随分と前のことであったから、広場は既に美しい景観を取り戻していた。和みながらも一抹の寂しさを覚える彼の視界に、ロングビルと三人の生徒が話しているのが見える。 そのうちにコルベールの姿を認めたのか、彼らはコルベールの元に駆け寄ってきた。 あの夜、ルイズとレンを見送ったキュルケ、タバサ、ギーシュの三人だった。 前ページ次ページゼロの軌跡
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前ページ次ページアオイツカイマ 第2話 「ねえルイズ、ちょっと聞きたいんだけど」 ルイズの魔法でめちゃくちゃになった教室を片付けながらの問いにルイズはビクリと肩を震わせる。おそらく、さっきの失敗魔法の事で何か言われると思ったのだろうが、その辺りは興味がない。 このタイミングで話しかけては誤解させてしまうのも無理はないが、ちょうどいい機会なのだから許して欲しい。 「さっきの授業で言ってた『スクウェア』とか『トライアングル』ってなんなの?」 「そんな事が聞きたいの?」 気が抜けたように問い返してきた。私としてもちょっと好奇心に駆られただけで特別知りたいわけでもないのだけれど、本命の質問はおそらく彼女を不機嫌にさせる種類のものであり今聞くのは不味い気がしたのだ。 拍子抜けしたらしいルイズが「いいけどね」と説明したところによると魔法使いというかメイジのレベルの高さのことらしい。 「例えばね? 『土』系統の魔法はそれ単体でも使えるけど、『火』の系統を足せば、さらに強力な呪文になるの」 「へー」 「『火』『土』のように、二系統を足せるのが、『ライン』メイジ。シュヴルーズ先生みたいに、『土』『土』『火』、三つ足せるのが『トライアングル』メイジ」 「同じのを足して意味があるわけ?」 「その系統がより強力になるわ」 なるほど、ということはシュヴルーズ先生は簡単に言ってレベル3というわけだ。 あれ? ずいぶんと低くないかしら。もしかしたら足せる系統が一つ違うだけで使える魔法に大きな差が出て、最高レベルが『スクウェア』だったりするのかもしれないけど。 そう思って聞いてみたところ、実際失われた虚無などの例外を除けば『スクウェア』が最高とされているらしい。ということは、ここの生徒は大抵が一つの系統だけが使えて、たまに二系統を足せる者がいるというところだろう。 とりあえず好奇心は満たせたし、ルイズの気もまぎれたようなので本命の質問をしよう。 「話は変わるけど、学院長って簡単に会えるものなのかしら?」 「え? なんで学院長に会わなきゃいけないの?」 何故も何も、もちろん私が元の世界に帰る方法を知っているか聞くためである。 そう言うと嫌な顔をされた。 「まだ、そんなことを言ってるの!?」 いつまでだって言うわよ。そもそも使い魔の召喚は進級に必要なだけだという話なんだし、進級してしまえばいなくなっても困らないはずだ。 それに人間の使い魔に不満があるのだから私が帰ったら新しい使い魔を召喚するという手もあるだろう。 だけど私の考えは甘かったようだ。なんでも先に呼び出した使い魔が死なない限り新しく召喚はできない。そして、使い魔に逃げられたメイジだなんて恥ずかしい呼び名を受けたくはないとのこと。 納得のいく意見である。同意する気はにはなれないけれど。 教室の片付けが終わると昼休み前になっていたので、私は食堂に向かうルイズとすぐに別れて食堂裏の厨房に向かった。 同じ方向なのだから途中まで一緒に行ってもよかったのだが、教室での平行線の会話のおかげで、それができる精神状態ではなくなっていたのだ。主にルイズが。 厨房では何人ものコックさんやメイドさんが忙しげに働いており、悪いなと思いつつも朝に知り合ったシエスタというメイドさんに声をかけて賄い食を分けてもらい。給仕の手伝いをすることにした。 「シエスタ」 「はい? どうしました?」 どうしたも、こうしたもない。食事のお礼に給仕の手伝いをするというのは朝の食事のときに約束をしていた。だから文句はない。しかし……。 「なんでメイド服?」 そう、今私はシエスタの用意したメイド服に着替えさせられているのだ。 「だって、食堂にあんな汚れた服で入っていくのはよくないでしょう?」 正論だ。言いたくないし言う気もないが私は三日ほどお風呂に入ってないし着替えてもいない。そんな格好で貴族の子弟のいる食堂にで給仕をするのは問題があるだろう。 しかし、シエスタの私を見る楽しげな表情には別の意図がある気がしてならないのは何故だろう。着ていた服も「洗濯して後で返します」などと言われて没収されたし。 まあいいか。さっさと終わらせてから服を返してもらおう。 大きな銀のトレイに乗った食事をテーブルに並べていき、それが終わるとやはり銀のトレイに乗ったデザートの配膳をしていく。その途中誰かがガラスの小瓶が落とすのが視界に入った。 誰が落としたのかと目を向けるが何人かの少年が談笑していて落とし主の特定は難しい。しかたないなと思いつつ声をかけることにする。 「あなたたち、落し物よ」 呼びかけると何人かがこちらを見て、その中の1人が小瓶を拾い上げた。 「おお? この香水は、もしや、モンモラシーの香水じゃないのか?」 「そうだ! その鮮やかな紫色は、モンモラシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」 「でも、なんでこんな所に落ちてるんだ?」 「あなたたちが落としたんでしょ。あなたたちの誰が落としたかまでは見てないけど」 そう言って私は配膳に戻る。これ以上は私には関わりのないないことだ。 その後、少年達の1人がモンモラシーという少女ともう1人別の少女を二股かけていたことがばれて両方にふられる等の小さな事件があったらしいが、私には関係のない話だった。 食堂の昼食とデザートの配膳が終わり、ルイズの所に行って授業に付き合う気にもなれなかった私は、昨夜言いつけられた洗濯をすることにした。 多分そうだろうとは思ったが洗濯板という初めて使う道具をシエスタに借りることになり、ついでに取り返した自分の物とルイズの服を洗濯しながら考える。 私は、元の世界に帰ることをあきらめるつもりなどなく、そのための方法を探さなくてはいけない。 ルイズは、知らないと言っていたが教師や学院長ならどうだろう。聞いてみる価値はあるだろうが、貴族の子弟を教育する学院の教師たちがどこの馬の骨とも知れない平民の、しかも使い魔という身分の私の言うことをまともに聞いてくれるのだろうか。 一番いいのは、ルイズの伝手で学院長の協力を取り付けて教師たちの話を聞く事だったのだけど、お昼前の様子から考えてルイズの協力は期待できそうにない。 私が帰る方法を探す手伝いをしてくれる約束で使い魔になることを引き受けたはずなのだが、そんな約束は忘れてしまったのか最初から守る気はなかったのか、できれば前者であることを願いたいが、どちらにせよ彼女の協力は期待できない。 では、どうすればいいのか。この学院を出て行って、1人で探すのも選択肢としてはあるが、右も左も分からない異世界で闇雲に行動する方が、この学院でどうにかして教師に聞いて回るより効率がいいかというと首を傾げるしかない。 「まったく、どうしたらいいのかしらね」 ぼやきながらも洗濯を終わらせ、次はルイズの部屋の掃除でもしようかと考えていたところで、見覚えのある頭。もとい顔の男性を見かけた。 「確かコルベール先生だったかしら」 呟いたその声が聞こえたのか、男性はこちらに気づいたらしく私に話しかけてきた。 「やあ使い魔くん。何をしているのかね?」 「雑用です。あと、できれば名前で呼んでください」 「わかった。それで君の名前は、えーと……」 「小山内梢子。梢子でいいです」 「わかった。ショウコくんだね。私はジャン・コルベールだ」 知ってます。とは言わず、少し話をした。 昨日の印象としては、教師という職業をただの仕事だと割り切ったあまり褒められない人格の持ち主だったけど、面と向かって話してみると気さくないい人だったらしい。人とは分からないものだ。 最初はやたらと、私の左手のルーンを気にしていたようだけど、つい私が異世界の人間だと口を滑らしてしまい、元の世界の事を話すと非常に興味をもったらしく色々と突っ込んで聞かれてしまった。 もちろん、一言も嘘は吐かなかったのだけど、こんな荒唐無稽な話を簡単に信じられると少し心配になる。 一通り質問が終わった後、満足したらしいコルベール先生に帰る方法がないか尋ねてみたところ、自分は知らないし他の教師も知らないだろう。知っているとしたら学院長のオールド・オスマンくらいのものだろう。とのこと。 ご機嫌なコルベール先生は、今度このことを学院長に尋ねておくと約束して、去っていった。本当にいい人だ。 さて、ルイズの部屋の掃除に行くか。 使い魔の朝は早い。のかどうかは知らないけど、私の朝は学院の使用人と同じくらいには早いようだ。 着替えて部屋を出ると隣室のシエスタも同じタイミングで部屋を出てきたので朝の挨拶をすると、やっぱりメイド服がよく似合うと褒められた。喜ぶべきなのだろうか? そして、私はルイズの部屋に向かう。 何故ルイズの部屋で寝泊りしていないのかというと、一昨日ルイズを怒らせ夜は床で寝るように言われた私は、一日や二日ならともかく毎日床で寝ていては体調を崩すと考え、翌日である昨日、食堂での配膳の手伝いの時にシエスタに相談した結果こうなったのだ。 ちなみに許可はコルベール先生が取ってくれた。本当にいい人だ。 寝起きのよろしくないらしいルイズを起こし、着替えさせたら食堂の配膳の手伝いに行く。その際、「私の使い魔のクセに勝手な事ばかりしないでよ」と文句を言われたりもするが気にしない。 配膳が終わると賄い食を貰い朝食を摂る。食事が終わったら食器の片づけなのだが食べ残しが多く配膳よりも疲れる。毎朝これだというのだから、貴族というものはよほど裕福なのだろう。 食器洗い、清掃、テーブルの布巾がけが終わるとルイズの部屋に行き彼女の脱ぎ散らかした服を集め、他の学院生徒の服を洗濯しているメイドたちに合流。自分が昨日着ていた服の洗濯も終わったらメイドたちの手伝い。 それが終わると部屋の掃除。終わったらまた食堂に行き昼食の準備。完全に使用人である。使い魔は主と行動を共にするものらしいが、私の知ったことではない。 お昼過ぎになると時間ができるので壊れた掃除用具で作った棒で素振り打ち込みを始める。本当はランニングもしておきたいのだが、授業の邪魔になりそうだしルイズが五月蝿いのでやめておく。 学院生徒たちの午後の授業が終わる時間に間に合うように、汗をかいた服を着替え図書館に行くと青みがかかった髪の眼鏡をかけた少女が黙々と本を読んでいる。 私は、このタバサという名のルイズのクラスメイトにこの世界の文字を教わっている。 出会ったきっかけは、食堂ではしばみ草という野菜をもきゅもきゅ食べているのが面白くて多めに配膳したところ私の顔を覚えてくれたらしく、 その後元の世界に帰る手がかりはないかと図書館に行ったものの文字が読めなくて困っていたところに本を借りに来た彼女がやってきて教えてくれる約束をしたわけなのだ。 話は通じるのに文字は読めないなんておかしな話だ。 ちなみに学院長にはまだまだ会えそうにない。コルベール先生に頼んで二日しか経ってないのだから当然なのだけど。 時間を忘れて読み書きに没頭していると誰かが図書館に入ってくる気配を感じた。 「あら。タバサったらヴァリエールの使い魔なんかと何してるの?」 覚えのある声に振り向くと覚えのある顔がある。ルイズの喧嘩友達(?)のキュルケだ。ルイズとは違った意味で、キュルケと正反対のタバサとは仲がいいらしい。 タバサに事情を聞くとキュルケは呆れた顔で「そんなのルイズに教えてもらえばいいじゃない」と言ってきた。 もっともな話ね。ルイズが平民で勝手な事ばかりする使い魔を面白く思っていないという事実がなければ私もそうしている。 そのことを伝えたら、キュルケは「大変ね」と苦笑交じりに言ってきた。はて、大変なのは私なのかルイズなのか。 「なんなら、ルイズの使い魔なんて辞めてあたしの所で働かない?」 「気持ちだけ頂いておくわ」 本気かどうか分からない申し出に断りを入れる。別にルイズの使い魔でいたいわけではないが、帰れる方法が分かったらすぐにでも元の世界に帰ろうと思っている私としては、正式に雇ってもらうというのは躊躇われる。 「残念」 残念そうでもなく笑う。キュルケには人をからかって楽しむ悪癖があるようだが悪い人間ではないようだ。 タバサともキュルケとも友好的な関係を築けそうだと思ったのだが。 「キュルケなんかと何やってるのよ!」 非友好的なルイズの怒声が本人とともに図書館に飛び込んできた。 「何をやってようと、あたしたちの自由でしょう」 たち、を強調するキュルケに沸点の低いルイズは即座に顔を真っ赤にする。 「そんなわけないでしょ! ショウコは、わたしの使い魔なのよ」 どうしてそうなるんだろう。と思うより先に、ルイズが私の名前を覚えていたことに驚いてしまった。出会って四日目だけど、ルイズが私の名を呼ぶのはこれが始めてだ。 「わたしの使い魔ねぇ」 バカにするように笑うキュルケ。 「あなたは食事も寝床も与えていないそうじゃない。それでショウコは、自分で働いてるとか。それでよくわたしの使い魔なんて言えるわね」 なんで、そんなこと知ってるのかしら。私が話したんじゃないんだからルイズもコッチを睨まないで欲しい。 「う、うるさいわね。これは、しつけなんだから口出ししないでちょうだい」 「しつけとか以前の問題でしょ。大体そんな事をしないということを聞かせられないなんて、きちんと契約できてないってことじゃないの? ゼロのルイズ」 痛いところでも突かれたのだろうか、ルイズは一度黙り込み俯いて、顔を上げると私の腕を掴んで強引に私を図書館から引っ張り出した。 何がしたいのだろう。そう思っていると。 「あんた、よく棒っきれ振り回してるけど剣が欲しいの!?」 素振りをしてることを知られていたらしい。別に隠してなかったけど。 「買ってあげるから感謝しなさい。明日は虚無の曜日だから、町に連れて行ってあげる」 それだけを言うと、1人でさっさと行ってしまった。 つまり、キュルケに言われたことが気になって主人の義務を果たそうと考えたというところだろうか。首を傾げながら、私は図書館に戻ることにした。何も言わずに部屋に戻ったらタバサに悪いしね。 前ページ次ページアオイツカイマ
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前ページ次ページゼロのアトリエ 「あさー、あさだよー。」 誰かの声がする。誰だっけ? まあいいや、もう少し寝ていよう…そう思って体を丸めようとした瞬間、毛布が剥ぎ取られる。 「お目覚めですね? ご主人様!」 そう言ったヴィオラートの笑顔には、ルイズ自身の言った事は絶対に守らせる!という 凄みがあった。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師4~ 「ああ、ヴィオラート…そうね。昨日、召喚したんだっけ…」 ルイズはのそのそと起き出して、ヴィオラートに命じる。 「服。」 ヴィオラートは一瞬怪訝な顔をするが、すぐに納得したのかルイズの服一式を用意する。 「着せて。」 今度はあっさりと、ルイズの着替えを手伝うヴィオラート。 しかし、ルイズはなんとなく居心地悪さを感じ始めていた。 (何なの、この…私をイツクシムような、ヤサシサあふれる視線は…) なんで着替えぐらいでこんな気持ちにならなければならないのか。 (ひょっとして、私をかわいそうな子扱いしてるんじゃないでしょうね!) 苛立ちをおぼえて振り向いたその先には、しかし、 「ん?」 ヴィオラートの、人懐っこい微笑があるだけで。 「な、何よ。さあ、着替え終わったらさっさと行くわ。朝食よ。」 ばつが悪くなったルイズは、正体不明の何かから逃げるように扉を開けた。 「あら。おはよう、ルイズ。」 嫌なやつに会った。ルイズが扉を開けたちょうどその時、同じように扉を開けて燃えるような赤い髪の女の子が姿をあらわしたのだ。 「…おはよう。キュルケ」 義務的に挨拶を返す。 魔法が使えて、あらゆる意味の色気にあふれ、そして何より、おちちが…おちちが大きい。 その存在全てがルイズの感情を逆撫でする、まさに不倶戴天の仇敵であった。 「あなたの使い魔って、それ?」 彼女は小馬鹿にした口調で、ヴィオラートを指差す。 「そうよ。」 「あっはっは! ホントに人間なのね! すごいじゃない! 流石はゼロのルイズ!」 「うるさいわね」 「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って一発でね?」 「あっそ」 「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよね~。フレイム!」 キュルケがそう呼びかけると、キュルケの部屋からのっそりと、オレンジ色の大きなトカゲが現れた。 「ああっ、サラマンダー! 大丈夫なの?」 ヴィオラートは驚いて、距離をとりつつ秘密バッグの口に手をかける。 「平気よ。あたしが命令しない限り、襲ったりしないから。それより見て、この尻尾。素晴らしいと思わない?」 たしかにすごい。ルイズから見ても素晴らしいと思う。正直羨ましかった。 しかし、まさにそこがルイズの癇に障る。自分が不甲斐ないからキュルケなんかを調子に乗らせる。 「へえ~、こんなのも使い魔になるんだー。触ってもいいかな?」 ヴィオラートがしきりに関心を示しているのも気に入らない。何だというのだ。 キュルケなんか…ツェルプストーなんかに愛想をふりまかなくてもいいのに! 「あなた、お名前は何とおっしゃるの?」 「あたしはヴィオラート。」 「ヴィオラート。いい名前ね。あたしはキュルケ。微熱のキュルケ。」 キュルケはそこで一旦区切ると、ルイズにあてつけるように胸を張り、ルイズに向かって艶かしい視線を送る。 「ささやかに燃える情熱は微熱。でも、世の男性はそれでいちころなのですわ。あなたと違ってね?」 キュルケは視線をヴィオラートの胸に移動させ、その後視線をルイズの胸に固定し、嘲るような笑みを浮かべる。 「じゃ、失礼?」 そのまま、キュルケはさっそうと歩いていく。歩く姿でさえ何だか様になっていた。 「くやしー! 何なのあの女! 自分がサラマンダーを召喚できたからって! ああもう!」 やり場のない憤りを抱えたまま、ルイズはちらりとヴィオラートの胸をチェックする。 (使い魔のくせに、つつつ使い魔のくせに! この学院じゃキュ、キュルケの次に大きいんじゃないの? 腹立つわ!) キュルケが胸山脈なら、ヴィオラートは胸連峰。私はせいぜい河岸段丘、河岸段丘のルイズ。はは。 「ルイズちゃん?」 様子のおかしいルイズを心配したのか、ヴィオラートがひざを屈めてルイズを覗き込む。 ヴィオラートの顔と一緒に胸部もルイズの視界に入ってくることになり、ルイズは理不尽な怒りを覚えることとなる。 「だ、だいたいあんたが!」 「え? あたしが?」 言葉に詰まる。ヴィオラートは何も悪くないのだ。それどころか、今の今まで胸を意識せずにいられたのは、ヴィオラートの気遣いによるところ大であろう。何を責めるというのだ。 自分にとって最高の使い魔であるとルイズ自身がそう思っているのに、何が悪いと言えばいいのだろう。 「…河岸段丘…」 「え?」 思わず口をついて出た言葉は、ヴィオラートに悩みを打ち明けたいという依頼心のあらわれであろうか。 「な、何でもないわ! さっさと行くわよ!」 照れ隠しなのか、廊下をまさにのし歩くルイズの後姿を見つつ、ヴィオラートはルイズの発した言葉の意味を勘案しつづけるのだった。 「…河岸段丘?」 前ページ次ページゼロのアトリエ
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前ページ次ページ鷲と虚無 才人が朝食の残りを口に入れている間に、最初はウォレヌスが、次はプッロがトイレに行った。 昨夜から用を足していないのは彼らも同じだ。その間に才人は朝食を食べ終える。 量こそはそれ程多いわけではなかったが、何はともあれ空腹は十分に満たされた。 そしてプッロが戻ると、ウォレヌスが見計らった様に口を開いた。 「そろそろ教室とやらに行った方がいいと思う。授業が始まった後に行けばあの娘が色々とうるさそうだ」 「ええ、俺もそう思いますね。今はこれ以上ここにいてもする事はないし」 才人も特に反対する理由は無い。どっち道、昼食時にはここには戻ってくる。 そして三人は改めてマルトーに礼を言い、教室への道を聞くと厨房を後にした。 教室は広々とした石造りの部屋で、大学の講義室のように下から上に階段のように席が続いている。 中に入ってまず目に入ったのが生徒達の使い魔だ。 その多くは生徒達と同じ席にたたずんでおり、猫やカラスなどの普通の動物もいたが才人のとってはファンタジーにしか出てこない“架空”の動物――すなわちキュルケも連れていたサラマンダーなど――も数多い。 既にキュルケのフレイムを見て多少の免疫が出来ていたとは言え、才人は驚嘆した。二人もかなり面食らったようだ。 「あの神話に出てきそうなバケモノたちが、使い魔とやらなんですよねえ」 プッロがポツリと呟く。 「だろうな……人間が召還されると言うのは確かに相当珍しいようだ」 その通り、人間どころか人間に近い姿を持つ使い魔さえ、自分達以外には誰もいない。 これはつまり、オスマンの「使い魔に人間はいない」やシエスタらの自分達への反応に嘘は無かったと言う事だ。 人間が召還されると言うだけでも有り得ない上に、それがまったく別の異世界からの召還。なぜこんな事が起こったのだろう? (そもそも一体なんで俺が……世界には他にも60億人もいるってのに。ったく、運が悪いってレベルじゃねえだろこれ) 才人は再び自分の境遇を呪う。だがそうしても自分がこのファンタジー世界に古代人のオッサン二人と一緒に取り残されたと言う事実は何も変わらない。 教室の中には既に数十人の生徒と思われる少年少女が着席していた。あのキュルケの姿も、特徴的な赤髪と褐色の肌のおかげですぐに確認できた。 キュルケは数人の男子生徒に囲まれており、彼女の人気振りがうかがえた。だがあの美貌なら当然だろう。 ルイズの方も、彼女の桃色がかった金髪はひと際目立ったのですぐに見つける事が出来た。 だが何かが変だ。他の生徒達は皆隣同士で座ってるのに、ルイズだけは隣に誰もおわず、一人だけで座っている。 (俺達の分のスペースを取っておいたのかな?) そう思った時、才人は生徒達が自分たちを見てなにやら騒ぎ始めたのに気づいた。 「おい、なんで平民が教室に入ってきてるんだ?」 「誰かあいつらをつまみ出せよ」 どうも自分たちが教室の中に入るというのが問題らしい。何か変な事になる前に早くルイズの所に行った方がいい。 才人はそう思い、ルイズの元へと急いだ。 ルイズは才人達を目に留めると、「来たわね。さ、座りなさい」と言った。 プッロとウォレヌスは何も答えずにそのまま椅子に座った。 才人も同じくそうしようとしたが、ルイズに制止された。 「何やってんのよ、そこはメイジの席……あんたらが座るのは床。プッロ、ウォレヌス。立ちなさい」 ルイズの語調は早朝と比べて、幾分疲れたかの様に聞こえる。勢いが無い。 プッロさんに手玉に取られたのが答えたのかな、と才人は推測した。 そしてプッロもウォレヌスも椅子から立ち上がる気配はない。 「ちょっとあんた達、聞こえなかったの?」 「椅子が空いてるのにわざわざ床に座れるかよ。何回言えば解る?おれはお前の下になったつもりなんてないんだよ」 少しためらったが、結局才人も二人に習い椅子に座った。 ルイズは苦虫を噛み潰したような表情になり、ぐぬぬぬと唸ったが、何も言わなかった。 しかし、自分達の分の席を取っておいた、と言うわけでないのなら何であいつの周りには誰もいないんだろう、と才人は不思議に思った。 そして他の生徒達は何故かは解らないが、自分たちが教室にいるの事を不思議に、そして不快に思ってるようだ。 それがなぜかを知る為、才人は彼らの言葉に聞き耳をたててみた。 「あいつら、ゼロのルイズの隣に座ったぞ」 「一体誰なんだあいつら?ゼロのルイズと何か話してたぞ」 「ただの平民が貴族と同じ席に座るなんて、気でも狂ってるのか?」 どうやら彼らは、平民とやらが自分たちと同じ席に座るのを不快に思っているらしい。 オスマンはここは貴族に魔法を教える学校だと言ってたし、ルイズも、プッロもウォレヌスも殆ど相手にしていないとはいえ自分が貴族である事を盛んに主張していた。 ならば彼らも全員貴族なのだろう。貴族と平民。才人にはフィクション以外では殆ど馴染みの無い言葉だ。 その理解も“貴族は金持ちでなんとなく偉い”と言った程度だ。今までの例に漏れず、学校で習ったフランス革命などについての歴史は綺麗に頭の中から溶けて無くなっていた。 当然、単に平民とやらであるという理由だけで見下されるのはいい気分ではない。 それは他の二人とも同じなのだろうか、才人はウォレヌスが小さく「小うるさい蛮人のガキどもが」と呟くのを耳にした。 バンジン、と言うのはどう言う事なのか才人は不思議に思った。 野蛮人と言う意味だろうか。だがここの人間は才人のイメージするような野蛮人、つまり毛皮を着た原始人という風な連中ではない。 だが今はその事について聞く様な状況ではない。今のところは黙っておこうと才人は判断した。 そして驚く事に、なぜかルイズまでもが歯軋りをしている。 だがどう考えても自分達の事を思ってそうしているわけだとは思えない。 おそらくは他の生徒達が自分までもを馬鹿にしてるのが悔しいのだろう、と才人は見当をつけた。それがなぜかは解らないが。 やがて教室に教師と思われる、小太りの中年女性が入ってきた。 紫色のローブと、三角帽子をつけた優しそうな人だ。 彼女が教室の一番下にある机に座ると同時に、それまでガヤガヤと騒がしかった生徒達は彼女に抗議の声を上げ始めた。 「ミセス・シュブルーズ、なんで平民が教室にいるんですか!どう言う事なのか教えて下さい!」 「すぐにあいつらを追い出して下さい!」 「ゼロのルイズがあの平民達と話をしていました!」 そのシュブルーズと呼ばれた先生は、生徒達の詰問に落ち着いた様子で答えた。 「その事については学院長から説明を受けました。彼らは昨日ミス・ヴァリエールに召還され、使い魔となった平民達です。気にしない様にしなさい」 先ほどまで騒いでいた生徒達は突如シン、と静かになったかと思うと、次はどっと笑い始めた。 忙しい連中だな、と才人は思った。 「おいおい、てっきり失敗したのかと思ったら平民を、しかも三人召還してたのかよ!さすがゼロのルイズだ!」 「成功してもやっぱりはゼロはゼロだな!」 彼らは思い思いにルイズをからかい、笑う。 才人はルイズが顔を赤くし、悔しそうに拳を握り締めたのに気づいた。 これはちょっと酷い。これでは殆どいじめだ。 ルイズの後ろに座っていた、太っちょの男子などはルイズに直接声をかけた。 「ゼロのルイズ、召喚に失敗したからってそこら辺を歩いてた平民を連れてくるんじゃない!見っともないぞ!」 これにはルイズも立ち上がり、声を張り上げて言い返した。 「違うわ!本当に召喚できたのよ!こいつらが勝手にきちゃったのよ!それに私はもうゼロじゃないの!」 だが今度は意外な事にプッロが席から立ち上がり、ルイズに口を出した。 「おい、勝手にきたってのは聞き捨てならねえな!俺がいつこんな場所に来たいって言ったんだ?お前が“勝手に”つれて来たんだろうが!」 「あ~もう!頼むからあんたは黙ってて!」 ウォレヌスの方は手を頭に当ててうなだれた。こんな下らん言い争いはゴメンだと言わんばかりに。 「おいおい、平民を連れてくるにしたってもうちょっと品の良い奴をつれて来いよ。これじゃちょっと程度が低すぎるぜ?」 「だから違うって言ってるでしょ!なんならミスタ・コルベールに聞いて見なさい!」 ここに至って、シュブルーズが懐から小さな杖を取り出し、何かを呟いた。 するとルイズもプッロも太っちょも、見えない手に押さえつけられたかの様にストンと椅子に座り込まされた。 「いい加減にしなさい!教室で下らない口論をする事は許しません!他の皆さんも、お友達の悪口を言うような程度の低い事は止めなさい!さあ、早く授業を始めますよ」 シュルブルーズがそう叱責を飛ばすと、プッロはブツブツと何か呟き、ルイズはしょんぼりとうなだれた。 最初にゴタゴタはあった物の、授業はおおむね滞りなく進んだ。 授業の最初は都合の良い事に、今までの復習のようでシュブルーズは基本から説明してくれ、そのおかげで才人たちにも魔法の仕組みと言う物が良く解った。 例えば、魔法には大昔に失われた虚無の系統を除いて四つの系統、すなわち火、土、水そして風が存在し、魔法使い(メイジと言うらしい)にはそれぞれ得意とする系統が存在する事、そして“足せる”系統の数でメイジのランクが決まる事などだ。 無論、才人にとってもこれは非常に興味深い物だったが、一番関心を奪われたのはウォレヌスとプッロの二人らしく非常に熱心に耳をかたむけている。 だが心なしか、ウォレヌスの表情の方が暗い。その理由は才人にはわからない。 そして彼女は最後にこう付け加えた。 「そしてこれらの魔法の為に、我々は社会を維持する事が出来るのです。例えば、もし魔法が無ければ重要な金属を作る事も出来ませんし、石を切り出す事も出来ません。作物の生産も今よりずっと手間取るでしょう。我々がいなければ平民達はたちどころに生きる術を失うのです」 これを聞いたプッロは不思議そうな顔をし、ルイズに「おい」と声をかけた。 「……なによ」 「平民が生きる術を失う、ってどう言う意味だ?なんでそうなるのか解らねえんだが」 ルイズは棘を含めた言い方で返した。 「……あんたらしい馬鹿な質問ね。魔法が使えない平民が生きられるわけないじゃない」 「馬鹿だとぉ?まあいい、って事はなんだ魔法ってのは貴族しか使えないってのか?」 「当たり前でしょ!魔法が使えるからこそ貴族なのよ!あんた達が来た場所ってのは一体――」 その瞬間、シュブルーズのカミナリが飛んだ。 「ミス・ヴァリエール!授業中に無駄なおしゃべりをするのは許しません!」 「で、でも!こいつが勝手に話しかけただけで……」 「使い魔の不始末は主人の不始末です。それと、あなたも……」 そう言ってシュブルーズはプッロを睨んだ。 「授業中は静かに!」 プッロは「へえへえ、すみませんね」と小さく言い、肩をすくめて見せる。 ルイズは、プッロの方も叱責を受けたせいか素直にすみませんと言った。 これで才人はなんでルイズや他の生徒達があんなに偉そうだったのか少し理解出来た。 貴族しか魔法を使えず、シュブルーズの言うように魔法のおかげで社会が成り立ってるのなら確かにそれはすごい。 少し位威張るのも当然かもしれない。だからと言って良い気分はまったくしないが。 これらの基本をおさらいした後に、シュブルーズは本題に入った。 「では、今日は皆さんに“錬金”の魔法を覚えてもらいます。一年生の時にやり方を覚えた方もいるでしょうが、基本は大事ですから手を抜かずにしっかりとやりなさい。まずは私が手本を見せましょう」 そう言って彼女は懐から小石を取り出すと、それを机に置く。 そして杖を持つと、何かを呟いた。その途端、信じられない事にただの石ころが何かの光り輝く金属に変化した。 「そ、それってもしかして……金ですか?」 キュルケが恐る恐ると言った様子でシュブルーズに聞いた。 「いいえ、残念ながらただの真鍮です。ゴールドはスクエアでないと錬金できません。私はトライアングルなので……」 彼女はもったいぶった様に言ったが、トライアングルと言うだけでも上にはスクエアしかいないのだから中々の実力者なのだろう。 そして彼女は錬金を行う魔法の使い方を教え始めたが、魔法に縁など無い才人には何を話しているのかは全く理解出来ない。 才人もこの錬金と言う物には驚いたがウォレヌスとプッロの反応はまさに驚愕としか形容出来ない物だ。 最初はポカンと口を開けていた二人だったが、やがて二人は小声で話し始めた。 「今……確かにただの石ころが真鍮に変わったんですよね。何かの手品とかじゃなく」 「ああ……間違いない」 そう言ってウォレヌスは首を振った。 「冗談じゃない、あんな事が死すべき定めの人間に出来て良い筈が無い」 その時、ルイズが苛立った様に声を張り上げた。 「あんた達、さっきの先生の言葉を聞いて無かったの?授業中は黙ってなさい!」 だがこれは逆効果だったようだ。シュブルーズは話を中断し、ルイズを睨んだ。 「ミス・ヴァリエール。私の言った事を理解しましたか?私は授業中は静かに、と言ったのです」 「で、ですが私はこいつらが話し始めたので注意を……」 「前にも言いましたが、使い魔の不始末は主人の不始末です。彼らを黙らせないのならあなたの責任です。よろしい、あなたがきちんと授業を聞いていたかどうか試して見ましょう。あなたが錬金の実演をしてみなさい」 突然の指名に、ルイズは思わず聞き返した。 「え?わ、私ですか?」 「そうです。ちゃんと私の話を聞いていたのなら出来るはずです。さあ、やってみなさい」 彼女のその言葉と同時に、生徒達がザワザワと騒ぎ出した。 「あ、あのミセス・シュブルーズ。絶対に止めさせた方がいいと思いますけど……」 キュルケが困ったようなような顔をして言う。 「何故です?」 「危険だからです。凄く」 教室にいた人間の殆どがうなずいた。 「確かにミス・ヴァリエールの実技の成績はあまり良くないのは知っていますが、それ以外の部分では彼女はとても優秀です。彼女なら出来る筈です」 と言った後に、シュブルーズは忘れずに一つ付け加えた。 「もし授業をちゃんと聞いていたのなら、ですが」 才人も他の二人も、なぜ生徒達がこうも騒ぎ始めたのかが理解出来なかった。 一体何が“危険”なのだろう。ルイズ自身までが青ざめた表情になっている。 そして才人はルイズが何かをブツブツと呟くのを耳にした。 「……大丈夫、大丈夫よ。学院長も召喚は成功だって言ってくれた。私はもう魔法が出来るようになったの。私はもうゼロじゃない。これを成功させればあいつらも私を見直す筈……」 そしてルイズは立ち上がり、表情は蒼白ながらキッパリと言った。 「私、やります!」 シュブルーズは満足げにうなずいたが、他の生徒達はますます騒ぎ出し、キュルケに至っては殆ど哀願するようにルイズに言った。 「お願いだからやめて、ルイズ。どうなるかはあなたにも解ってるでしょう!?」 「いいことツェルプストー、私はもうゼロじゃないの!使い魔を召還出来たのがその証拠!そこで見てなさい」 そう高らかに宣言し、ルイズは席を立ちシュブルーズの所に進み出た。 ルイズがシュブルーズの机の前に立つとほぼ同時に、ウォレヌスが口を開いた。 「プッロ、才人君。机の下に隠れた方がいい」 「え?なんでです?」 プッロは意味が解らないと言う様に聞いた。 「この騒ぎ具合は普通じゃないのは解るだろう。何かが危険だ。それに他の生徒の殆どはそうしてる」 才人は周りを見回した。なるほど、確かに生徒達の殆どは既に机の下に隠れている。 別に隠れても失う物は何も無い。三人は机の下にもぐりこんだ。 机の下からは何も見えないが、声を聞く事は出来る。 才人はルイズの隣に立ったシュブルーズが、錬金を始める様に命ずるのを聞いた。 「さあ、始めなさい。やり方は解りますね?」 「はい」 そしてルイズが何かの呪文らしき物を力強く口に出すのを聞くのと同時に、才人の耳にとてつもない轟音が響いた。 爆弾のような(と言っても才人は本物の爆弾を聞いた事があるわけではないが)としか形容がしない音だ。 それがクラス中を揺さぶり、最初に驚いた使い魔達が暴れだす音が聞こえてきた。 その次は生徒達の罵声だ。 「クソッ!誰かさっさとあいつを退学にさせろよ!」 「やっぱりゼロのルイズはゼロのまんまね!冗談じゃないわ!」 「ラッキーが!俺のラッキーがヘビに食われちまった!」 才人は恐る恐る机から身を出し、周りを見渡した。プッロとウォレヌスも続いて起き上がった。 「……雷でも落ちたのか、これは?」 ウォレヌスが唖然とした様子で呟いた。 教室の中央は黒こげになっている。ミセス・シュブルーズは倒れているが、ピクピクと痙攣しているので生きているようだ。 机はめちゃくちゃに壊されており、錬金された筈の石ころは影も形も見えない。当のルイズは服がボロボロになってはいるが、シュブルーズとは違いちゃんと立っている。 彼女はうつむいたまま悔しそうにギリギリと歯を食いしばり、手は血が滲む程強く握り締めていたが、才人達にはそれが見えなかった。 結局、その日の錬金の授業はそのまま中止になった。 ミセス・シュブルーズは命に別状は無かったとはいえ、とても授業に参加出来る状態ではなかったからだ。 彼女は爆音を聞きつけたやってきた他の教師達にそのまま医務室に連れて行かれた。 この惨状を招いたルイズはと言うと、滅茶苦茶になった教室(爆発だけでなく、暴れた使い魔達が壊した備品も含めて)の掃除を命じられた。 そして教室にはルイズと三人だけが残された。だが誰も掃除を始めようとはしない。 ルイズはうつむいたまま動こうとしないし、ウォレヌスは腕を組んだまま壁の背にもたれ、プッロは椅子に座ったまま足を机の上に投げ出していた。 しばらくの間気まずい空気が流れたが、その内プッロが口を開いた。 「おい、さっきのあれ、ありゃなんだったんだ」 「そうだ。あれはどう考えても錬金と言う奴ではないだろう。まるで落雷のようだった。一体何をしたんだ?」 最初、ルイズは黙ったままだったが、ポツリポツリと答え始めた。 「……見て解らない?失敗よ。完全な」 それを聞いて才人はやっとゼロのルイズと言う言葉の意味を理解出来た。 ゼロと言うのは成功率ゼロと言う意味だったのだ。そして同時になぜ彼女がクラスメートから笑われていたのかも解った。 「なあルイズ」 「……なによ」 「お前のあだ名のゼロのルイズって奴。あれってもしかして……魔法を必ず失敗する、って意味か?」 ルイズは答えなかったが、プッロはどうやらそれを肯定と受け取ったらしい。 「おいおいお嬢ちゃん、それ本当か?まさか魔法が使えないのにさっきまで貴族だのなんだのと威張り腐ってたのか?お前、魔法が使えるから貴族だって言ってたよな。じゃあお前はただのガキなのか?今朝杖を突きつけたのもただのコケおどしか?え?」 確かにそれが本当なら噴飯物だ。 ご主人様だの貴族だのと散々威張っていたのに、肝心の本人が魔法を使えないなどと、冗談にすらならない。 単に魔法が使えない鬱憤を自分達にぶつけていた様にしか見えない。才人は憤慨し、ウォレヌスまでもが嘲りの声を出した。 「なるほど、あの爆発は魔法が失敗したのか。確かにどう見ても錬金とやらではなかったからな……まったくお笑いだな、おい」 ルイズは相変わらずうつむいたまま、答える。 「……そうよ。魔法が必ず失敗して爆発を起こすからゼロのルイズ。簡単でしょ?……さあ、掃除を始めましょう。手伝って。ウォレヌス、あんたは机の残骸を片付けて」 だがウォレヌスは鼻で笑った。 「ハッ!なぜそんな事を?これはお前がやらかした事だろう。お前が起こした不始末をなぜ私達が片付ける必要がある」 これには才人も同意した。 「俺も同感だ。自分の不始末は自分で始末しろよ」 なるほど、確かに彼女はどうやら魔法が使えないと言う理由でクラスメートに馬鹿にされているようだ。 だがだからと言って自分が彼女の尻拭いをする必要は無い。 そして最後にプッロが一言付け加えた。 「それが嫌だってんなら、暇な奉公人にでも手伝って貰っとけ。どっちにしろ、俺たちの誰もお前を手伝う気なんて無いってことだ」 ルイズは少しずつ顔をあげる。その顔は悔しさと不甲斐なさに歪んでおり、目には涙すら浮かんでいる。 そして彼女は三人を睨み付けながら、感情を爆発させた。 「……あああ、あんた達はなんでいちいちあーだこーだと口答えするの!?き、昨日もそう、今日もそう!おまけにつ、杖まで奪う!ああ、あんたらは私の使い魔なのよ!しゅ、主人の私には絶対服従の筈なのに一体なんで! な、なんでたかが平民がこんなに私に逆らうの!?いや、そもそもなんで貴族への敬意なんてカカ、カケラも持たない平民三人が私のつ、使い魔になったのよ?しかも三人!あ、悪夢だわ! おまけに魔法がやっとの事でせせ、成功してやっとゼロの名前が無くなるかと思ったらあいも変わらずば、爆発!昨日の召喚の成功はい、一体なんだったのよ!?それともやっぱりし、失敗?失敗だったの? ええ、そうにちち、違いないわ、私は召喚に失敗したからこそあんた達みたいなややや、野蛮人がやってきたのよ!そうに違いないわ!私はゼロのルイズ! これからも一生魔法を使えずに終わるのよ!これでま、満足?笑いなさい、笑いなさいよ!どうせ心の中じゃもうわわわ、私の事を嘲笑ってるんでしょ?さあ、笑いなさい!」 あらん限りの声を喉から絞り出し、殆ど絶叫といって言い様子でどもりながらまくしたてるルイズ。 肩で息をしながら、ルイズは三人をにらんでいたがやがて自分の杖を床に叩きつけると、彼女は涙をこぼしながら教室から駆け出していった。 才人達は彼女の突然の剣幕に圧倒され、何も出来なかった。 前ページ次ページ鷲と虚無
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これ購入したひといる? -- 名無しさん (2011-07-27 21 34 55) 勿論即買いです。ココア可愛すぎ -- 名無しさん (2011-07-28 00 15 43) ここにもいるぞノ 咲音ちゃん可愛いよ咲音ちゃん(´∀`) -- 名無しさん (2011-07-28 00 46 03) おお!なんかニコ動に動画見つからないから不安だった! -- VP貯まりしだい購入 (2011-07-28 07 07 35) とにかく背中がエロい -- 名無しさん (2011-07-28 13 30 07) メイコより乳ちっせーな -- 名無しさん (2011-07-29 23 17 54) ちっさい -- 名無しさん (2011-07-30 01 29 08) ↑1 2咲音さん16歳と比べられんでしょ、メイコさんじゅ(ry -- 名無しさん (2011-07-30 01 39 20) メイコは生まれた時からでかかった・・・乳ぃぃぃ -- 名無しさん (2011-07-30 01 41 48) この程好いボリュームが良いんじゃないか! -- 名無しさん (2011-07-30 12 21 41) めーちゃんの爆乳もいいけど咲音ちゃんの程よい谷間も堪らない。水着は幼いのに…! -- 名無しさん (2011-07-30 16 01 26) 爆乳の未来の咲音に期待 -- 名無しさん (2011-07-30 21 55 28) よくよく考えたら手袋してない咲音ちゃんはこれだけだね -- 名無しさん (2011-07-31 11 12 26) そだね -- 名無しさん (2011-07-31 11 16 31) ようやく買えたぁぁぁあ! ココアとMSSに設定してきた -- 名無しさん (2011-10-19 17 41 52)
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ゾフィーシャルロッテエルネスティーネ(ゾフィー・シャルロッテ・エルネスティーネ) 神聖ローマ帝国のアンハルト=ベルンブルク=シャウムブルク=ホイム侯の系譜に登場する人物。 関連: ヴィクトルイッセイアマデウスアドルフ (ヴィクトル1世・アマデウス・アドルフ、父) ヘートヴィヒゾフィーヘンケルフォンドナースマルク (ヘートヴィヒ・ゾフィー・ヘンケル・フォン・ドナースマルク、母) ヴォルフガングエルンストニセイツーイーゼンブルクウントビューディンゲン (ヴォルフガング・エルンスト2世・ツー・イーゼンブルク・ウント・ビューディンゲン、夫)
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──教室吹っ飛ばして掃除中 「──だから『ゼロ』のルイズなのか…」 「フンッ! あんたまで『ゼロ』『ゼロ』ってわたしのことバカにするのね」 「聞いてたのか。怒るなよ、ルイズ。 君はオレの命の恩人で、頼りになる主人だと思っている。友人ともな。 それじゃ、いけないか?」 「…生まれてこの方、わたしの人生狂いっぱなしよ。 『フライ』はおろか、『レビテーション』ですら失敗ばかりだし、 それが、『あの』由緒あるヴァリエール公爵家の三女ってことで、他の連中にはバカにされるし…、 べ、べべ別にわたしはやっかみなんて気にしてないわよ!? わたしは、少し他と違うだけで、原因を突き止めたら、 きっと、魔法が使えるようになるんだから! …でも、その足がかりになるはずだった使い魔召喚でも、 あんたみたいな平民が召喚されちゃうし、もう、めちゃくちゃよ」 「焦ってんだ」 「…なんですって?」 「オレと同じさ。 どうしたらいいか、何をしたらいいか、わからなくて、焦ってる。 状況の変化に対応できてない」 「なっ、なによ! わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、 由緒あるヴァリエール公爵家の三女よ!!」 「名門貴族の子も人ってことだろ?」 「……ふ、ふんだ、なによ! わかったような口きいちゃって! …あぁもう! さっさと片付けてご飯食べに行くわよ!! わたしも手伝うから! か、勘違いしないでよね! さっきからお腹ペコペコで、一刻も早く食べに行きたいだけなんだから!!」 「わかったよ。 早く一緒に食べに行こう、ご主人様」 「…フン」 スーパーロボット大戦Dの男主人公 ジョシュア=ラドクリフを召喚
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このページはこちらに移転しました マジカルドリーマー 作詞/俺 TA・RA・CHAN!TA・RA・CHAN! 薬を決めリャ 眼前trip! お前の尻にも 断然フリスク! ワカメはレイプ! カツオは万引き! マスオはリストラ! サザエは不倫! TA・RA・CHAN!TA・RA・CHAN! ハーイ!バブー!チャああああああああン!!!!! TA・RA・CHAN!TA・RA・CHAN! 何時でもLocck in 俺は借金! YOUの名前も 既に保証人! 船は痴呆! 波平育毛! ノリスケリストラ! タイコは入信! TA・RA・CHAN!TA・RA・CHAN! ハーイ!バブー!チャああああああああン!!!!! TA・RA・CHAN!TA・RA・CHAN! TA・RA・CHAN!TA・RA・CHAN! (このページは旧wikiから転載されました)
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グラビティ名 ステ 射程 ダメージ エフェクト 所持 グラビティブレイク 頑健 近単 破壊 ブレイク 地球人 達人の一撃 敏捷 近単 斬撃 【氷】 地球人 サイコフォース 理力 遠単 魔法 【武器封じ】 地球人 シャドウリッパー 敏捷 近単 斬撃 ジグザグ シャドウエルフ 黒影弾 理力 遠単 魔法 【毒】 シャドウエルフ ステルスリーフ 敏捷 遠単 ヒール 【妨アップ】 シャドウエルフ ドラゴンブレス 頑健 遠列 破壊 【炎】 ドラゴニアン 竜爪撃 敏捷 近単 破壊 ブレイク ドラゴニアン テイルスイング 頑健 近列 斬撃 【足止め】 ドラゴニアン シャイニングレイ 理力 遠列 魔法 ジグザグ オラトリオ 時空凍結弾 敏捷 遠単 破壊 【石化】 オラトリオ オラトリオヴェール 理力 遠列 ヒール キュア オラトリオ コアブラスター 頑健 遠単 破壊 追撃 レプリカント スパイラルアーム 頑健 近単 斬撃 【服破り】 レプリカント マルチプルミサイル 理力 遠列 破壊 【パラライズ】 レプリカント 獣撃拳 敏捷 近単 斬撃 【プレッシャー】 ウェアライダー ハウリング 頑健 遠列 魔法 【足止め】 ウェアライダー ルナティックヒール 敏捷 遠単 ヒール 【壊アップ】 ウェアライダー トラウマボール 理力 遠単 斬撃 【トラウマ】 サキュバス 催眠魔眼 理力 遠列 魔法 【催眠】 サキュバス サキュバスミスト 頑健 遠列 ヒール 【妨アップ】 サキュバス 地烈撃 頑健 近単 破壊 【足止め】 ドワーフ スピニングドワーフ 敏捷 近単 破壊 【服破り】 ドワーフ 戦言葉 頑健 自単 ヒール 【盾アップ】 ドワーフ