約 754,383 件
https://w.atwiki.jp/infinit-fantasy/pages/118.html
ビオレ・アマレット 初遭遇 初登場 国籍 出身地 性別 ハンドアウト アッサラーム 不明 女 生年 年齢 人種 身分 所属 肩書き 姓 不明 不明 アッサラーム人 不明 マムルーク 副団長 アマレット 面識 レベル 初期戦闘データ 初期一般データ 無し、または不明 無し、または不明 マムルークの副団長。綺麗でオマーンの騎士団で一番強い 人種がアッサラーム人 初登場がハンドアウト 国籍がアッサラーム 女性 姓がアマレット 所属がマムルーク 肩書きが副団長 頭文字が「ビ」の人物
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/44594.html
忘却人形ラビオーラ VR 闇文明 (3) クリーチャー:デスパペット 3000 ■バリアブルE6 VE−このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、各プレイヤーは手札をすべて捨てる。 作者:切札初那 フレーバーテキスト み〜んな、忘れて気持ちよくなろうぜぇ〜。――忘却人形ラビオーラ 収録 NDMG-06 「新星編 第2弾 魔闘竜vs機兵団」 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1751.html
ラ・ロシェールの上空。 そこにはトリステイン艦隊旗艦の『メルカトール』号が停泊していた。 艦隊司令長官のラ・ラメー伯爵は、ちらりと時計をみやる。 神聖アルビオン政府の艦隊を、国賓として迎えるためにトリステイン艦隊が出迎えているのだが、約束の時間を過ぎてもアルビオンの艦隊は姿を顕わさなかった。 ラ・ラメー伯爵は、国賓を迎えるため正装して居住まいを正しているが、その表情はどこか厳しいように見えた。 その隣に立っていた艦長のフェヴィスが、口ひげをいじりつつ、時計を見た。 「やつらは遅いではないか」 艦隊司令官のラ・ラメーは、不機嫌そうに呟きつつ、艦長の方を振り向いた。。 フェヴィスは鼻で笑うようにフンッと息を息をして、襟を正す。 「アルビオンの犬どもは、増長しているのでしょうな。おおかたにわか貴族達が着たこともない軍服に戸惑っておるのでしょう」 艦長は空軍戦力で勝るアルビオンが嫌いだったので、言葉にも刺が含まれていた。 しばらくすると、檣楼(しょうろう)に登った見張りの水兵が、大声で艦隊の接近を告げた。 「左上方より、艦隊!」 艦長と、艦隊司令は、ようやく姿を現したアルビオンの艦隊を一目見て、その規模に驚いた。 アルビオンの旗艦、『レキシントン』はまさに雲のような巨艦と言えた。 その後ろを追従する戦列艦も決して小さくはない、だが『レキシントン』と比べると、どうしても見劣りしてしまう。 「あれが『ロイヤル・ソヴリン』か……」 艦隊司令官は、あの巨大戦艦が『レキシントン』と名を変えていることを知っている。 しかし、それを建造したかつてのアルビオン王国に敬意を払い、古き名を呼んだ。 アルビオンからの話では、あの艦隊にアンリエッタ姫の結婚式へ出席する大使を乗せているはずだ。 「いや、この距離で見るのは初めてですが、あの先頭の艦は巨大ですな」 艦長の『戦場』という単語に眉をひそめつつ、艦隊司令官が呟く。 「戦場では会いたくないものだな」 艦隊司令官ラ・ラメーの背筋に、冷たいものが走る。 身体が震えるのを『武者震いだ』として思考の外に追いやりつつ、アルビオンの艦隊に接近し併走するように指示した。 かくして、彼の不安は現実のものとなる。 トリステインの王宮に、トリステイン艦隊が全滅したのを知らせる伝令が来たのはそれから間もない頃であった。 ほぼ同時にアルビオン政府からの急使が、トリステインへの宣戦布告文を届け、王宮は騒然となった。 アルビオン側の言い分では、トリステイン側が親善艦隊へ理由無き攻撃を行ったので、自衛のために宣戦を布告するとあった。 王宮には大臣や将軍たちが集められ、緊急の会議が開かれたが、会議は紛糾するばかりだった。 宣戦布告が事実であるか、アルビオンへ使者を送り確かめるべきであるといった意見や、ゲルマニアへに急使を派遣し軍事同盟に基づく共同戦線を張るべきだと主張する物もいた。 他にも様々な意見が飛び交うが、それは互いのプライドが会議を混乱させているに過ぎなかった。 バン、と扉が開かれ、マザリーニ枢機卿が会議室に入る。 「この大事なときに遅れてこられるとは何事か!」 誰が叫んだのか解らないが、遅れて会議室に現れたマザリーニ枢機卿を誰かが批難すると、他の者達もそれにつられてマザリーニを非難し始めた。 だが、マザリーニも慣れたもので、表情一つ変えることなく自席に座ると、重々しく口を開いた。 「アルビオンは我等が艦隊が先に攻撃したと告げた。しかしながら我が方は礼砲を発射したに過ぎない。偶然の事故が誤解を生んだのでしょう」 それならば、と、一人の大臣が起立した。 「アルビオンに会議の開催を打診しましょう、今ならまだ、誤解は解けるかもしれん!」それを聞いたマザリーニは頷いて言った。 「アルビオンに特使を派遣する。この交戦は双方の誤解が生んだ遺憾なるものであるとして、全面戦争に発達する前に……」 その時、突然会議室の扉が開かれた。 書簡を手にした伝令が、息を切らせながら会議室に飛び込んできたのだ。 「急報です!アルビオン艦隊は降下して占領行動に移りました!」 すかさずマザリーニが聞く。 「場所は!」 「ラ・ロシェール近郊!タルブの森です!」 マザリーニは心の中で「やはりか」と呟いた。 その頃、シエスタの生家では、幼い兄弟たちが不安げな表情で空を見つめていた。 ラ・ロシェールの方から聞こえてきた爆発音は、タルブ村を騒然とさせ、恐怖させた。 驚いて庭に出た者達は、空を見上げ、絶句した。 何隻もの船が燃え上がり、山肌や森の中へと落下していくのだ。 更にしばらくして、空から現れた雲のような巨大船が、森の中に向かって鎖の付いた錨を降ろすのが見えた。 森林の上空に停泊した船から、何匹ものドラゴンが飛び上がる。 「おとうさん!あれ、なに?」 シエスタの弟や妹たちが、父親にしがみつきながら、訪ねた。 「ありゃあ、アルビオンの艦隊じゃないか」 「いやだ……戦争かい?」 シエスタの母もまた、不安げな表情で空を見上げる。 「アルビオンとは不可侵条約を結んでいるはずだ。この前領主様からおふれがあったろう」 「その不可侵条約をアルビオンが破ったのよ!」 シエスタの両親が驚き、声の聞こえてきた方を振り向くと、そこには大剣を背負い、フードを深く被った女戦士らしき人物が立っていた。 「な、なんだって?」 慌ててシエスタの父が聞き返す。 「アルビオンのだまし討ちよ!すぐにタルブ領主の派遣した騎士に従って退避しなさい!」 言うが早いか、タルブ村と街道を繋ぐ小さい道から、タルブ村の領主を戦闘に少数の騎士団が姿を見せた。 「『ロイズ』殿!ルートは確保しましたぞ!」 タルブの領主が、フードを被った女性に馬上から声をかける。 「村人の避難が最優先よ、頼むわね」 「はっ!」 領主が馬上から敬礼したのを見届けると、ロイズと呼ばれた女性は、一目散に北の森の中へと駆けていった。 領主は村人へ向き直り、大声を張り上げた。 「村民は家族の数を確認せよ!急いで南の森に逃げるのだ!」 それを聞いて村人達は慌てて家族の居場所や数を確認しはじめた。 瞬く間に村人達は広場に集まる。 数人の騎士が村人を先導し、南の森へと避難していくのを確認すると、騎士の一人が領主に言った。 「アストン様、さきほどの女、”ロイズ”と言いましたか……彼女は何者なのでしょう」 「わからん……だが、女王陛下より賜ったと言われる書簡は確かに本物だった」 それを聞いた騎士は、ロイズと呼ばれた女性の姿を思い出し、眉をひそめた。 「しかし、あのようなみすぼらしい姿では」 だが、領主であるアストン伯は騎士の言葉を遮るように、こう言い放った。 「それに彼女の言うとおり、アルビオンが攻めてきたのだ。少しでも早く対処できたことを感謝するしかあるまい」 領主は一呼吸置いてから、腰に下げていたレイピア状の杖を手に持ち、高く掲げた。 「相手は竜騎士だ! 皆、心せよ!」 三十人に満たない平民混じりの騎士団が、蟷螂の斧と知りつつも、杖と剣を掲げた。 一足先に森の中に駆けていった”ロイズ”は、剣を右手に持ち、空を見上げて竜騎兵を見据えた。 『それよりよー、”ロイズ”って偽名じゃバレバレでねーの?”ルイズ”と一文字しか違わねー』 カチャカチャと鍔を鳴らしつつ、どこか楽しそうに剣が喋る。 「咄嗟に思いついちゃったのよ、仕方ないじゃない」 デルフリンガーの楽しそうな声とは裏腹に、ルイズは不機嫌だった。 空に浮かぶ船…『レキシントン』から飛び立ち、タルブ村へと向かったはずの竜騎士隊はあり得ない光景に困惑していた。 本隊上陸前のつゆ払いとして、タルブ村に竜で火を放つはずであったが、村があったはずの場所には、森が広がるばかり。 「どういうことだ、これは!」 竜騎士の一人が困惑し、声を上げる。 それを合図にしたかのように、森の中から一匹の竜が飛び出した。 「な……!」 竜騎士は、飛び出してきた竜の翼に殴られ、まるで血袋が破裂するかのように乗っていた竜ごと粉々に吹き飛んだ。 「なんだ!なんだあれは!」 「翼が、四枚、新種か!ガーゴイルか!」 他の竜騎士達も驚き、竜を操って距離を取ろうとする。 だが、四枚の翼を持った竜は成体の風竜を思わせる速度で接近し、まるでヘビのように騎士ごと竜に食らいついた。 「ひいいいいいい!」 異様な光景に悲鳴を上げた騎士が、竜を上昇させながら呪文を唱え、火球を作り出した。 直径2メイルほどの火球が、異形の竜に向けて放たれたが、異形の竜は口から炎のブレスを吐き出しそれを相殺した。 「ば、化け物!」 一方、森の中では、ルイズが予想外の苦戦を強いられていた。 脇腹には、エア・ニードルで突き刺さった杖がそのままぶら下がっている。 「はあっ、はぁ……」。 呼吸を整えようとしたとき、右手に持ったデルフリンガーが叫んだ。 『右から来る!』 「くっ」 慌ててバックステップで後ろに下がると、今まで立っていた場所を炎が襲い、地面を溶かした。 「WRYYYYYYYYYYY!!!」 ルイズは、奇声を発しながら手近な木を引き抜き、竜騎兵に投げつけた。 大きく羽ばたいて上空に避けようとした竜騎兵が、遮蔽物をなくし顕わになったルイズめがけてブレスを放とうとしたその時、異形の竜が竜騎兵ごと竜を噛み砕いた。 『間一髪だな』 「ええ…」 ルイズは力なく答えると、その場に膝を付いてしまった。 それを見た異形の竜は、自身の腹を割き、袋を作った。 まるでカンガルーの親が子供を袋に入れるのように、ルイズを腹の裂け目にしまいこむ。 地面に降り立つと、『イリュージョン』で作られたタルブ村の幻影から離れるため、アルビオン艦隊の居ない方向へと走り出す。 『嬢ちゃん、大丈夫か』 デルフリンガーがルイズを気遣って声をかける。 「つ か れた……」 『イリュージョンで、村の位置を1リーグ近くも誤魔化したんだぜ、疲れて当然だ』 「タルブ村…の人は……」 『ほとんど避難できてるはずだぜ、とにかく、時間稼ぎはできたはずだ』 「………すこし……ねむ…る…」 周囲の草を取り込み、背中を緑色の保護色で包んだ吸血竜が、ルイズを抱いたまま静かに走り去っていった。 時刻は昼に差し掛かる。 王宮の会議室には、さまざまな報告が矢次に飛び込んできていた。 「タルブ領主、アストン伯は交戦中!」 「偵察に向かった竜騎士隊、帰還せず!」 「未だアルビオンより、問い合わせの返答ありません!」 自国の土地が蹂躙されているというのに、不毛な議論を繰り返す名ばかりの会議を一瞥して、マザリーニは不快感に眉をひそめた。 「ゲルマニアに軍の派遣を要請しましょう!」 「しかし、今事を荒立てては……」 「竜騎士隊を送り、上空から攻撃させるべきです」 「残りの艦をかき集めろ!小さかろうが何だろうが、特攻には仕えるだろう!」 「アルビオンに攻撃したら、それこそ全面戦争となりまず!」 マザリーニは大臣達を黙らせたいと思っていたが、それができぬ訳があった。 マザリーニが鶴の一声を出せば、大臣や将軍達を黙らせることはできるが、今はまだその時ではないと我慢していた。 本心では、マザリーニも外交での解決を望んでいる、しかし、伝書フクロウによってもたらされた一枚の手紙を読んでから、開戦もやむを得ないだろうと考えはじめていた。 怒号飛び交う中、会議室の扉がバタンと開かれた。 また何の報告だろうかと、開け放たれた扉を見た大臣達は、扉の前に立っているのがアンリエッタだと気づき、絶句した。 そこには、白を基調とするドレスではなく、その身にフィットした鎧に身を包んだアンリエッタが立っていたのだ。 視線がアンリエッタへと集中する中、アンリエッタは、その小さい身体を震わせて言い放った。 「あなたがたは、恥ずかしくないのですか! 臣民が敵に侵されているというのに、騒ぐことしかできないのですか!」 怒号の飛び交っていた会議室が、嘘のように静まりかえる。 「よいですか! 礼砲で艦が撃沈されたなど、言いがかりも甚だしいではありませんか、もとより不可侵条約を破るつもりだったのでしょう」 「し、しかし我らは、不可侵条約を結んでおるのです、攻撃などしては……」 「その条約は紙より容易く破られました、いえ、もとより守るつもりなどなかったのでしょう。それらは虚をつくための口実に過ぎません」 「しかし……」 アンリエッタはテーブルを叩き、大声で叫ぶ。 「今、民の血が流されているのですよ! 民の血が流されるのを黙って見ているのが貴族ですか!王族ですか! 民の血税を吸うだけの吸血鬼に成り下がりましたか!」 暴言ともとれるその言葉に、不満を覚える者もあったが、誰もそれに対して異を唱えることはできなかった。 「あなたたちは敗戦を望んでいるのでしょう?敗戦後に責任を取らされぬ方法を既に模索している、命を長らえようと答えの出ぬ議論を繰り返しているという訳ですね?」 「姫殿下」 マザリーニがたしなめるフリをすると、アンリエッタは構わず言葉を続けた。 「ならばわたくしが率いましょう。あなたがたは、ここで会議を続けなさい」 アンリエッタが会議室を飛び出だそうとすると、何人もの貴族がギョッとしてアンリエッタを止めようとした。 「姫殿下! お輿入れ前の大事なお体ですぞ!」 そう言って一人の貴族がアンリエッタの前に立とうとしたが、横から差し出された剣状の杖に遮られてしまう。 見ると、廊下には既に魔放衛士隊が列を作っており、鎧を着込んだアンリエッタを護衛するかのように囲んだ。 アンリエッタは、グリフォン、マンティコア、ドラゴン等の魔法衛士隊を引き連れ、威風堂々と出陣した。 王宮の中庭に出たアンリエッタは、手はず通りに大声で叫んだ。 「わたしの馬を!」 王女の馬車に繋がれた聖獣ユニコーンが、馬車から外されて、アンリエッタの前に引かれてきた。 魔法衛士隊がアンリエッタの声に応じ、各自が自分の乗る幻獣を呼び寄せ、その上に跨った。 アンリエッタがひらりとユニコーンの上に跨ると、一人の魔法衛士がアンリエッタの脇に付き、それ以外の者達は後ろに並んだ。 「これより全軍の指揮をわたくしが執ります!!」 アンリエッタが声高らかに宣言すると、水晶のついた杖を高く掲げた。 魔法衛士隊の面々がアンリエッタに合わせ一斉に敬礼すると、アンリエッタはユニコーンの腹を叩いた。 ユニコーンが高々と前足を上げて走り出すと、グリフォンに乗った魔法衛士の一人がアンリエッタの隣に並ぶ。 その手には、アルビオンの象徴たる青い水晶の嵌められた杖を携えていた。 二人が先陣を切って走り出すと、幻獣に騎乗した魔法衛士隊が、「後れを取るな」などと口々に叫びながら続いていった。 城下に散らばったていたはずの各連隊は、まるでアンリエッタが出陣するのを知っていたかのように整列し、そして雄々しく出撃していった。 窓から中庭を見下ろし、その様子を見ていたマザリーニは、懐にしまったメモを握りしめて天を仰いだ。 メモは、トリステイン艦隊全滅の知らせよりもほんの一瞬早く、フクロウでマザリーニの元に届けられた伝書だった。 アルビオン艦隊よりも一足早く、ラ・ロシェールに到着したルイズからもたらされたそのメモには、人間を操り人形に変えてしまう『アンドバリの指輪』のことや、アルビオンが自作自演をしてでも戦争の口実を作るために策を巡らしていることが書かれていた。 もはや一刻の猶予もない、そう思ったアンリエッタとウェールズはすぐに戦いに赴く準備を始めた。 マザリーニは将軍や大臣達を集めて会議を開く前に、一足早くアニエスをタルブへと遣わせた。 アンリエッタが赴く前の下調べを頼んだのだ。 そしてマザリーニは会議に遅れて参加した。 トリステイン国内はいまだに戦争の準備を整えていない、その上ゲルマニアがこの戦争で我が身かわいさに兵力を出し惜しみすることは十二分に予測できていた。 マザリーニが外交によって戦争を回避しようとしたのは、決して命を惜しんだわけではない。 小を切って、大を生かす。 彼なりに国を憂いてのことだったが、その努力も泡沫のように消えてしまった。 ならばせめて、大臣、将軍、高級貴族達の目を覚まさせようと、わざと甲冑姿のアンリエッタが姿を現すまで時間稼ぎをしたのだ。 その甲斐あってか、会議室に残っていた貴族達も、一人、また一人と会議室を出て、従者に戦争の準備をするよう指示を下す姿が見えた。 マザリーニは一人ほくそ笑む。 お飾りとして育てられたはずのアンリエッタが、いつの間にか王族としての威厳を供えていたのだ。 ならば、これから自分が何をすべきかは決まっている。 マザリーニは会議室に入ってきた兵士に視線を向けた。 視線に気づいた兵士は、脇に抱えていたマザリーニ用の装束を見せた。 その場ですぐに戦の支度を整えると、急いで中庭へと移動し、今だまごついている大臣達に向けて叫んだ。 「おのおのがた! 馬へ! 姫殿下一人を行かせたとあっては、我ら末代までの恥ですぞ!」 その頃、秘薬を買いに城下町へと行っていた教師が戦争の話を聞きつけ、慌ててトリステイン魔法学院に報告した。 王宮からではなく、私事で城下町に出ていた教師から、戦争の開始を告げられ、オールド・オスマンはため息をついた。 「この様子では王宮は混乱の極みじゃろうなあ……」 現在、他の教師を王宮へと使わせ、戦争の開始が事実であるか確かめさせている。 オールド・オスマンは、アンリエッタの結婚式に出席するため、たまりに溜まった書類を片づけようとしている所だった。 書類が一段落したら、荷物を纏めようと思っていたのだが、アルビオンからの宣戦布告とあってはそれどころではないだろう。 魔法学院の宝物庫から、戦争に使えそうなマジックアイテムが持ち出されるのかと考えつつ、オスマンは水パイプを吹かした。 と、突然ノックもなしに学院長室の扉が開かれた。 「オールド・オスマン!大変です!」 珍しく血相を変えたロングビルを見て、オスマンはいつもの調子で答えた。 「戦争の知らせかの?それならもう届いておるよ」 「そうではありません!シエスタがタルブ村に向かいました!」 「何じゃと!?」 ロングビルの話では、魔法学院に出入りしている商人が、戦争の話を衛兵に伝えたらしい。 それを聞きつけた生徒から、シエスタの耳に届くまで時間はかからなかった。 「シエスタは馬で行ったのか!」 「はい、衛兵の使う馬を一頭奪って、一目散に」 「ミス・ロングビル、すぐにシエスタを追ってくれんか、他の生徒の使い魔の力を借りてもかまわん。他にも何人か教師を派遣する、戦場に着く前に取り押さえるんじゃ!」 「は、はい!」 オスマンの激しい剣幕に驚きつつ、ロングビルはシエスタの後を追うため、踵を返した。 「参ったことになったの…!」 オスマンは、モートソグニルを経由で、シエスタの後を追えそうな教師に連絡しつつ、遠見の鏡に向けて杖を振った。 アンリエッタ達がラ・ロシェールに到着した頃、アルビオンの船『レキシントン』はタルブ村にほど近い草原へと移動していた。 当初の予定では、タルブ村ごと森を焼き払い、前線基地をここに構築するはずだったのだ。 しかし、幾人もの竜騎兵が、奇妙な証言をしはじめたのだ。 『村があると思ったらそこは森だった』 『羽が六つ、首が二つある竜に仲間が食われた』 アルビオン艦隊総司令官のジョンストンは、それらの報告を一笑に伏していた。 しかし、降下したはずの竜騎兵が、異形の竜によって何人も落とされたと聞いて、ジョンストンの顔色は悪くなっていった。 慎重だと言えば聞こえは良いが、平たく言ってジョンストンは、臆病風に吹かれてしまったのだ。 結局、『レキシントン』に搭載された大砲が、かろうじてラ・ロシェールに届く距離に停泊することとなった。 ラ・ロシェールの街では、トリステイン軍がアルビオンの迎え撃つために陣形を整えていた。 タルブの草原に見える敵の軍勢は、『レコン・キスタ』の旗を掲げている。 それを見て、ユニコーンに跨ったアンリエッタは震えた。 戦場に立つのは生まれて初めてなのだ、仕方がないと言えば仕方がない。 だが、王族として威風堂々としていなければならぬと自分に言い聞かせ、眼を閉じて軽く祈りを捧げた。 アンリエッタが目を開くと、敵軍の上空に停泊する大艦隊が視界に入る。 アルビオン艦隊、その舷側に光る大砲、アンリエッタの恐怖はピークに達していた。 だが、アンリエッタの手に、一人の魔法衛士の手が重ねられた。 衛士は自分の杖をアンリエッタに見せる。 アンリエッタは、静かに頷いた。 「失礼致します。お二人の友人から、手紙が届いております」 そんな二人に声をかける男がいた。 振り向くと、枢機卿のマザリーニが立っており、ボロボロの羊皮紙を二人に差し出していた。 アンリエッタがその羊皮紙を手に取ると、ごくりと喉を鳴らした。 一瞬、ほんの一瞬だけ、アンリエッタの表情は泣き出しそうになった。 だが、アンリエッタは魔法衛士隊の姿をして自分と行動を共にしてくれるウェールズと、影ながらこの戦争を手伝ってくれるルイズの姿を思い出したのだ。 アンリエッタは、戦争の恐怖を見せぬ凛々しい表情で、マザリーニに言った。 「枢機卿、ルイズが活路を開いてくれます。私たちは『ヘクサゴン・スペル』の機会を待ちつつ前進します。指揮は貴方にお任せします」 マザリーニは、杖を掲げた。 「不肖、マザリーニ……承りましてございます」 「早く!もっと早く!」 トリステイン魔法学院から、ラ・ロシェールへ続く街道を、一頭の馬が疾走していた。 馬に乗っている少女の身体は、ぼんやりと輝いている。 シエスタは全身から波紋を流し、馬へと供給していた。 「もっと早く!」 馬は、限界を超えた力で走る。 波紋により限界を超えて走らされた馬は、汗と涙と涎と鼻水と糞便を垂れ流しながら、走る。 吸血鬼が、食屍鬼を使役するかのように、彼女は馬を走らせていた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/joboneyard/pages/23.html
ミクロビオテリウム科
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2413.html
アルビオンの端、ニューカッスル城の上空に浮かぶ貴族派の船がゆっくりと落下していく。 その中で一際目立つ巨大な戦艦…レキシントン号から巨大な樹が一本生えていた。 生命エネルギーを与えられ成長した巨木がレキシントン号を縦に貫きて葉を生い茂らせていた。 その幹には急激な成長を遂げる途中に巻き込まれたメイジや、竜やレキシントン号のメインマスト。 ジョルノの生み出した虫達までが巻き込まれていた。 AK小銃を一端肩に背負い、クイックローダーを使って拳銃の弾を入れ直しているジョルノの前にも一つの銃弾を元にして生み出された樹に飲み込まれた貴族派のメイジ達がいた。 だがその半分以上は既にジョルノの手によって殺害されている。 全員額に銃弾を一発ずつ撃ちこまれ、息絶えていた。 まだ生き残ってるのは裏切り者のワルド。 幹に取り込まれ、身動きできない状態にありながら戦意の衰えを見せないワルドの杖に向けて、ジョルノはリロードが完了した拳銃の引き金を引いた。 樹の破片に混じってワルドの指が宙を舞う。だがそれでもワルドは痛みに声を上げることもなく、憤怒だけを見せてジョルノに唾を吐いた。 「ジョナサン…ッ! 殺してやるッ貴様だけは、」 ジョルノは表情を変えずに生き残ってる残り二人を見た。 貴族派の総司令官クロムウェルとぴったりとした黒いコートを身にまとっている女性。 プッチ枢機卿の言葉を思い出し、恐らくはこの女性があらゆる魔道具を扱える虚無の使い魔・ミョズニトニルンなのだろう。 恐らくはプッチ枢機卿の手によって変貌した主人の仇を討つ為にクロムウェル達を利用しているのだろう、ということだったが…ジョルノはフードを捲った。 若干けばけばしい化粧をした女性の顔が現れ、その額にはジョルノの左手で光っているのとはまた別の使い魔のルーンが刻まれている。 「き、君! わ、私を助けてくれ! わ、私はシェフィールドに唆されただけなんだ…! 助けてくれれば褒美はなんでも取らせようッ、私の虚無を使えば死者を蘇らせることも…」 「ワルド。裏切ったとはいえ、トリスティンの魔法衛士隊の隊長が殺すなんて言葉は使うんじゃあない」 埋まったクロムウェルの体があるであろう辺りの幹に、ジョルノは銃弾を込めなおした拳銃を押し当てて引き金を引いた。 樹皮を打ち抜いて銃弾はクロムウェルの心臓を打ち抜いた。 シェフィールドが驚いて目を見開く。 「『心の中でそう思った時には既に行動は終わっている』、お互いそうありたいものだと思いませんか?」 紐で縛り、腰に下げた亀の中には、ポルナレフもテファもいる。 だがジョルノは構うことなく冷静な態度で言うと、ワルドにも銃口を向け引き金を引いた。 薬莢が吐き出され、床に落ちる。 「シェフィールド。僕の部下にならないか?」 「断れば…聞くまでもないか」 撃鉄が起こされるのを見て、シェフィールド…ガリア王ジョゼフ一世の使い魔は観念したような顔で息をついた。 そうして、王党派のアルビオン国王ジェームズ一世と貴族派の総司令官クロムウェルの戦死を持ってアルビオンの内乱は終結した。 ニューカッスルに突如出現したという夥しい虫の群れは何処かへ姿を消し、貴族派の死体でニューカッスル城へと続く道が埋まっていることだけが『始祖の奇跡』として記録に残った。 ニューカッスル以外の貴族派達も今まで一人の援軍も送らなかったガリア・ゲルマニア・ロマリア連合軍により悉く壊滅させられたという報が届くのは、ジョルノ達がクロムウェルの首級を挙げてから数日後のことであった。 亡命貴族達の要請に応えたと主張する彼らがアルビオンに居座ることは火を見るより明らかであったが、生き残ったアルビオン王国の皇太子ウェールズ・テューダーにはそれを跳ね除ける力はない。 貴族派の死体を片付け、彼らをニューカッスル城跡を会場にした宴に招待し、内乱の終結と即位を告げるウェールズの表情には時折曇るのはその為だった。 隠そうとしているのだが、報を聞き駆けつけたトリスティン王女アンリエッタを会場に見つけ、喜色満面の笑みを浮かべる最中にさえウェールズの表情には時折暗い陰が差す。 目聡い者は気付いていたが、皆父王の死によるものだと勘違いして皆気付かぬふりを決め込むのだった。 それはアンリエッタと共に招待された『マザリーニ枢機卿』とその護衛につく魔法衛士隊の一つマンティコア隊隊長に復帰した『烈風カリン』も同じであった。 トリスティンでマザリーニが推し進めていたアンリエッタの婚儀は、レコンキスタに対抗する為にこそ、彼らにとっては野蛮なゲルマニアへ王女を嫁がせようと言う話も出たのだ。 ゲルマニアはそれをトリスティン以外の国と電撃的にアルビオンに攻め込むことで解決した。 ないがしろにされた彼らの心中は穏やかなはずがなかったが、それらを軽く眺めて…ウェールズは壇上に奇妙な人物を呼んだ。 彼らの感性で言うと少し年かさの美女を伴い、金糸銀糸で細かな刺繍が施された清楚なドレスに身を包んだ少女がウェールズの隣に立った。 元王家御用達であったネアポリス伯爵家のお抱えの仕立て屋の手によるドレスに淑女達の間からため息が零れる。 少女が完全に壇上に上がった時、彼らはざわめき呟いた。 『胸が、革命を起こしている…ッ!?』 そのざわめきが覚めやらぬ内に、彼らは少女が気品のある美しい顔立ちをしていることと「エルフの耳」を持っていることに気付き更にどよめいた。 杖を抜こうとする者を慌てて同席していた者達が押し留め、国王となったウェールズは少女を…テファを彼らに紹介する。 「ゴホンッ、来賓の皆様にご紹介します。彼女は私の叔父今は亡きモード大公のご息女ティファニアです」 「は、初めまして…」 気後れしそうになりながらも、テファは傍で控えるマチルダに習った通りの作法で各国の要人へと挨拶をする。 胸が揺れてゴクリッと生唾を飲み込む音と女性に足が踏まれた男達の叫び声が響いてから、ようやくアルビオン貴族の誰かから、声が上がった。 「陛下! その娘の耳は…!」 「その通り、彼女の母はエルフだ」 エルフ…ッ! 聖地を占拠する亜人、始祖の宿敵を母とする始祖の血統を受け継ぐ娘…一瞬の空白が会場を支配し、その後糾弾する声が上がった。 非難する者。杖を抜き、魔法を唱える者。 だがそれらを…今にも一人の悪魔を殺そうとする貴族達の頭上に澄んだ少女の声と閃光が降ってきた。 「やめなさい貴方達! 始祖はそんなことは望んではおられないわ!」 貴族達は呆然と、特にその閃光に飲まれて消えたアルビオン貴族派の姿を見たアルビオン貴族達は頭上を見上げた。 片手に亀を持った尼僧姿の少女が空から降ってくる…隙間から覗く桃色がかった髪を見たカリンの、魔法衛士隊の制服が、表情を隠す仮面が微かに動揺で震えた。 「な、なんだ貴様はッ「せめて貴方様とお呼びしろゲルマニアの糞野郎!」 真っ先に正気に帰った誰かを隣に立っていたアルビオン貴族が殴り倒した。 「あの方こそ…「皆様。彼女こそ復活した虚無! 王党派を、アルビオン王家を…始祖の虚無で救った『ニューカッスルの聖女』ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール様です!」」 興奮した声で、壇上から誰かが説明した。 卑屈なほど丁寧にお辞儀をする彼は、鳥の骨とあだ名されるマザリーニとは反対に肥え太り、額に光る汗を拭きながら言ったのは、ロマリアの枢機卿の一人グロスター枢機卿だった。 アルビオン王党派を消し飛ばした閃光を見て聖女の誕生を確信したと言う彼はこの3カ国による共同戦線を提案した人物として顔も知られていたが、『虚無』の一語に気を取られ動けずにいる貴族達は誰も彼を見ようとはしなかった。 輝く太陽を背に降りてくる純白の尼僧服に身を包んだ聖女を見上げる彼らの中から、拍手が徐々に上がる。 背後の澄み切った空に、右手を輝かせた竜騎士が何十という竜を引きつれ飛んでいく。アルビオンの貴族達から喝采が上がった。ルイズの名が連呼される。 聖女は奇妙な杖を持っていた。 箱の付いた短い棒…ジョルノが用意した拡声器で増幅した声でルイズは言う。 「皆様、私は始祖の声を聞きました…! 始祖はこのハルケギニアでの繁栄こそ願っておられます。聖地の奪還など…まして武力で持って行うなど始祖ブリミルは望んでおられません…!」 虚無の光に敵意を消し飛ばされたように、彼らはルイズの言葉を大人しく聴き…種族間の壁を超えた恋愛の末に生まれたテファを祝福するという彼女の慈悲の心に感化されようとしている。 「聖女様が言うんなら…」 聖女の言葉を聴きいれ、テファの存在を認めようとする声が貴族達の中から上がり始めた。 彼らの中にいるプッチ枢機卿とパッショーネが手回ししたサクラ達が、機能し始めたのだ。 会場の端。 ジョルノが生物にし、能力解除によってただの物質へと戻った建材が詰みあがった瓦礫の中に光り輝くコロネがあった。 亀、ポルナレフはルイズに貸し出した為子の場にはいない。 サイトも竜を操ってルイズに箔を付けにいったし、ミキタカもそれについていってしまった。 人を殺したレンガが詰みあがった壁に隠れるようにして、ジョルノは一人。 テファが認められるまでの一連のパフォーマンスを厳しい目で見つめていた。 いつかはこうするつもりだった。 テファを、彼女を隠してきたマチルダ達の地位を回復させる。 ハーフエルフであることも含めて、世間に認めさせいつかは堂々と母の故郷にも行けるようにする。 内乱から逃れる為にアルビオンを脱出する時に、決めていたことがようやく第一歩を踏み出した。 その為に、彼らの信仰、彼らの受けた教育により彼らの奥底にこびり付いた反応を押さえ込む為にパッショーネを強大にもした。 何年かけても…その過程でどれだけのプロテスタントを生み出すことになろうとも。 だが、それはもっと緩やかに行われるはずのことだった。 こんなに急激な動き、ましてやルイズを聖女に仕立て上げ、テファを王女にしようなどという予定ではなかった。 自由を奪われ、利用し利用される世界へと足を踏み入れてしまった。 これで二人は軽はずみな行動など取れなくなっていってしまう。 今目の前の光景は、ジョルノの隣でワインを傾ける黒衣の枢機卿の手に拠るものに過ぎない。 ロマリアの思惑とトリスティンの思惑とアルビオンの、ウェールズの思惑が重なった結果に過ぎない。 テファを王女として世間に認めさせたのは、ゲルマニアとガリアにそれぞれ領地の三分の一に両国の軍隊を駐留させられた為だ。 トリスティンの大貴族ヴァリエール公爵家の次女カトレアの養女となる話は、マザリーニの手によって処理されていた。 トリスティン王家の血も流れている大貴族の養女が女性の身でモード大公となり、王女として王位継承権を持つことが両国の関係を深くする。 加えて結果的にジョルノがアルビオンの国益に叶うよう動く割合が多少なりとも多くなるであろうと考えられている… そして『アルビオンの聖女』となってしまったルイズによって二国の関係は更に深まり、ロマリアとの、何よりブリミル教の信者達の支持を得る。 全てはガリアとゲルマニアの干渉に対抗してのことだ。 皆に会わせる顔などない…ジョルノの表情は険しかった。 いつのまにかその隣に黒い肌をした、枢機卿の礼服に身を包んだ男が現れていた。 今回の侵攻とそれに伴うこの不本意な流れを作ったプッチ枢機卿は乾杯、とアルビオン産のワインを注いだグラスを掲げ、一口に飲み干した。 次を注ぎながら彼は言う。 「ジョジョ。君の目的は一先ず達成と言った所かな」 「いいえ、」 「それに…」とジョルノは瓦礫に持たれかかり空を見上げた。 「それに?」 ジョルノは首を振って、爽やかな笑みを浮かべた。 その足元で正座をする牛男を見下ろし、「パッショーネの引き締めも行わないとならない。やることは山済みです」 プッチ枢機卿の前だったが、パッショーネのことはラルカスからばれてしまっていた。 それもジョルノがラルカスに反省を促す理由の一つだったが、だが牛男、ラルカスは反省のポーズをとりながらも目を目を逸らさなかった。 「だがジョナサン。これでパッショーネはより全ての国家に食い込むことが出来た…!?」 ラルカスは弁解しようとして顔を上げたまま動きを止めた。 トリスティンに残っている遍在に、何かあったのかもしれない。 ジョルノとプッチ。二人はラルカスの報告を待った。 「ボス…カトレア嬢が倒れた。病が、再発したかもしれん」 真剣な表情で告げられたジョルノは瓦礫から背中を離す。 会場に背を向けるジョルノに、ワインを堪能していたプッチ枢機卿が声をかける。 「行くのかね。そのカトレアとかいう女が心配か?」 「パッショーネの引き締めも行わなければと言いました。テファともう一度話をしてからと思っていましたが…ここに来る時に彼女には無理をさせました。借りは返さなければ」 「なるほど。それなら、ロマリアの竜騎士に送らせよう。何せ君もクロムウェルを倒した勝利の立役者、危険があるかもしれない」 逡巡するような素振りを見せて、ジョルノは頷く。 「ラルカス。その遍在はこのままアルビオンに残れ。テファについていろ」 「わかったぜ」 そう言って、ジョルノは走り出す。 ジョルノが去ったことに壇上のテファが気付き、目に見えてオロオロし始めるのがプッチ枢機卿にはよく見えた。 見世物でも見ているように笑みを浮かべて見物する。 カトレアが体調を崩すよう仕向けた甲斐があったというものだ。 (今回の動きで、彼らの間には亀裂が入った。次はテファとの距離を置かせてみるとしよう…領地運営の為に若く魅力的なアルビオン紳士も補佐につけてやれば案外面白くなるかもしれない) 「ああそうだ。ラルカス」 プッチ枢機卿は思い出したようにラルカスに尋ねる。 ラルカスはまだ正座をしたまま瓦礫に腰掛ける顔所か心まで真っ黒な枢機卿を嫌そうに見上げた。 「名前を聞いて思い出したんだが、カトレア嬢もあの年だ。結婚相手を探そうっていう話が出ているそうだが…ジョジョが邪魔ということになってしまったりはしないだろうね?」 「それは…あるかもしれんな」 「そうか…残念だな」 全く残念そうではない口調で言うプッチ枢機卿をラルカスは睨みつけた。 今後アルビオンにはパッショーネの息がかかった店が増えることになるだろう。 その為に行ったのだが、この枢機卿がジョルノを追い込んでゆくのではないかと言う予感が頭の片隅に浮かんでいた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/poppomemo/pages/165.html
開催期間 2024/1/1~ 2024年はパリオリンピック開催の年(多分これは偶然) あらすじ 「いずれ異世界より侵略者が来たときの為に、アスリート達のスポーツ能力を鍛え上げる」 サッカーは現在進行形で宇宙からの侵略者と戦うシナリオ。 元ネタは『イナズマイレブン』。 宇宙からの侵略者はスペースシップワールドから来た?→ティグレが『第三銀河を統一した』と言っているので、他の星にもスポーツがある? マップ ウィンタートライアスロン山 白銀飛翔→『スキージャンプ・ペア』? 実際にそういうシナリオが出ている。 ローグライク・サーキット ゲームのジャンル『ローグライク』と『ウィリアム・ローグ』の名前をかけた? レースの度にコースが変形する「不思議のサーキット機構」を搭載した、アスリートアース最新技術の粋が凝らされた「F1レースサーキット」です。 音速大乱闘→『F-ZERO』? 『F-ZERO』のキャラクター、キャプテン・ファルコンは『大乱闘!スマッシュブラザーズ』シリーズにも登場している。 スーパーショートカット→『マリオカート』? 古代デュエルバトル遺跡 古代バトリンピアよりも古い、人類黎明期の遺跡→カードデュエル・フォーミュラがいるとしたら朱鷺子よりも古い時代の人間? 敵キャラ ガチデビル&勇者リリリリ ガチデビルはデビルキングワールドの戦争『7th KING WAR』のラスボスにしてデビルキングワールドの1stキング。 勇者リリリリはデビルキングワールドの5thキング。『7th KING WAR』では立ち絵なし。 『7th KING WAR』における『KINGの宝珠』より『勇者リリリリ』の解説 5thKING『勇者リリリリ』の宝珠:宝珠自身が盾のオーラを放出しながら飛び回り、所有者を護る。 猟兵で再現するなら「堕天使+勇者+魔王」? 新生フィールド・オブ・ナイン 全員フォーミュラ・オブリビオンでありながら猟兵と敵対する気がない。 Mr.ホームラン→ガチデビルの力をバトル・オブ・オリンピア開催に使用。 デスリング総統→負けたら猟兵の支配下入りを明言。 キャンピーくん→キャンプしたいだけで戦闘の意志は全くない。 ウィリアム・ローグ→『アルカディア・エフェクトの後継者』を探している。 エル・ティグレ→負けたら猟兵の支配下に置かれる。 通常の場合、アスリートアースに現れるのがオブリビオンではなくダークリーガー(改心させることができる)であることと関係がある? Mr.ホームラン 『野球』のフォーミュラ・オブリビオン。 アポカリプス・ランページのフィールド・オブ・ナイン第3席でもある。 兄はフィールド・オブ・ナイン第1席『プレジデント』。 なお、兄の方は戦争の中で猟兵をオーバーロードに到達させようとしていた。この兄弟はさぁ・・・。 野球は1チームが9人→彼がフォーミュラ化できるのは最大8人? もし彼がアポヘル北米出身なら、どうやって世界移動した?→そこでキャンピーくんの出番? 『マザー・コンピュータ』の予兆より フィールド・オブ・ナインはあと3体眠っている。 「あと3体」のうち1体が彼であることは間違いないが、どのタイミングでアスリートアースに転移したのかが不明。 猟兵で再現するなら「人間(アポヘル)+野球選手+ストームブレイド」? デスリング総統 『プロレス』のフォーミュラ・オブリビオン。 四本の腕→第4席? UCがほぼ猟兵を『骸の海』送りにするもの。 キャンピーくん 『キャンプ』のフューミュラ・オブリビオン。 古代アスリートアースに存在した種族『マスコット』らしい。→現在のアスリートアースは種族が『人間』のみ。 立ち絵には星が5つ→第5席? 『獣人戦線』の『F.O.N.』と『アスリートアース』の『新生フィールド・オブ・ナイン』は別物? PBWアライアンスや出版部の世界にも行ける→36世界の外を知っている? 時宮朱鷺子 『トライアスロン』のフォーミュラ・オブリビオン。 『古代バトリンピア』時代の人間。 現代アスリートアースに『人間』しかいない理由、『マスコット』が消えた理由を知っている? オッドアイ。 輝きっぽい髪飾りが2個→第2席? 一番星→第1席? ウィリアム・ローグ 『モータースポーツ』のフォーミュラ・オブリビオン。 速さを追い求めた末に『アルカディア・エフェクト』を会得した。 本人が「死者には無用の長物」と言っている。 『虚神アルカディア』の予兆 そうだ。生命ある者の苦悩、欲望、憎悪を、吾にも見せてくれ。 『アルカディア・エフェクト』の日本語表記は『拒絶の雲海』。 帝竜『大空を覆うもの』予兆より わたしは ブルーアルカディアの雲海 大気の集合体 わたしこそが『拒絶の雲海』 この世界の空そのもの ウィリアムは猟兵でもオブリビオンでもない、ただの人間の身でブルーアルカディアに到達した? ミニゲーム『爆走!オリンピアロード』クリア時のパスワードが彼の名前。 彼に勝つと『アルカディア・エフェクトの後継者』なる称号を得られる。 猟兵で再現するなら「人間(アスリートアース)+グランプリレーサー+悪霊」? エル・ティグレ 『サッカー』のフォーミュラ・オブリビオン。 宇宙史上初めて第三銀河を統一した存在。→朱鷺子より古い時代を生きた? 彼女によると『アスリートアースはちんまい星』。 髪の毛の暗黒星雲に出てくる動物はジャガー、イルカ、オオハシ、ヘビ、アリクイ→すべて南米大陸に生息する動物。 『サッカー座』って何だよ(困惑) 猟兵で再現するなら「宇宙人+サッカー選手+シャーマン」? 宮本武蔵 『テニス』のフォーミュラ・オブリビオン。 サムライエンパイアで伝説の剣豪として伝えられている人物。 二刀流→第2席? 上様曰く「アスリートアース実装時から設定はあった」(オンライン新年会2024より) 猟兵で再現するなら「人間(サムエン)+テニスプレイヤー+剣豪」? 戦後 ジョブ『その他スポーツ』から通常ジョブに格上げされるものがあるらしい?(2024年1月東京オフ質疑応答より) マップに採用された『ウィンタースポーツ』、地味に人気の『ぐるぐるバット』『プラクト』あたりが有力?→『ぐるぐるバット』『プラクト』はMr.ホームラン戦で選手起用されている。 種族『マスコット』実装? 戦争後に種族が追加されたのは『魂人』(ダークセイヴァー)、『ガムゴム人』(キマイラフューチャー)。 『古代デュエル神族』の力をユーベルコード化できないか(グリモア持ち頼むこれで【Q】出して) 『アルカディア・エフェクトの後継者』についてのシナリオが出る? アスリートアースがある『第三銀河』以外にも宇宙がある?→キャンピーくんの力で他の銀河に行けないか?
https://w.atwiki.jp/otakuhoumon/pages/387.html
トビオの部屋データ みんなのお部屋はこちら 初期部屋 初期家具(赤字は固定家具、青字は入れ替えのみ可能、緑字は撤去可能) がっこうのスピーカー グランドピアノ こくばん しかけえほん(机上) そうじようぐ プロしようコンポ みぎききデスク(左) みぎききデスク(右) りょうめんのほんだな ロッカー 壁紙 きょうしつのかべ 絨毯 きょうしつのゆか ♫初期BGM かんがえちゅう 固定家具等の情報提供をお願いします! 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/tes5/pages/61.html
世界 ムンダスバトルスパイア オブリビオンデッドランド シヴァリング・アイルズ アッシュピット コールドハーバー ムーンシャドー クアグマイアー アポクリファ エバーグローム ソウル・ケルン エセリウスソブンガルデ アービス ムンダス 人間、エルフなどが暮らす定命の者の星であるニルンが属する場。タムリエルはこのニルンの一大陸である。 バトルスパイア ムンダスとオブリビオンの次元の境目に存在する帝国の戦闘魔術師養成施設。 デイゴンの侵攻を受けたが名も無き英雄によって退かれた。 その後ジャガル・サルンの時代に入口の転移門が破壊されてしまい、現在中に入る事はできない。 オブリビオン ムンダスの隣にあるデイドラが存在する世界。 デイドラロードはオブリビオンの次元に自身が支配する固有の領域を持っている。 支配するデイドラロードによってそれぞれの領域は全く様相が異なるほか、支配者がいない領域も存在する。 少数ではあるがタムリエルの中に通行路が存在している。 デッドランド メエルーンズ・デイゴンの支配する領域。TES4のメインクエストで登場するのがこの領域。 地獄や魔界と形容できる世界で住んでいるデイドラと合わせて非常に危険。 シヴァリング・アイルズ シェオゴラスの支配する領域。TES4の拡張パック、シヴァリング・アイルズで登場する。 住んでいる住民がもれなく狂人という素敵な世界。 マニアとディメンシャという躁と鬱が極端に分かれる2つの地域に分かれている。 アッシュピット マラキャスの支配する領域。地面から建物まで全てが灰で構成されている為、 浮遊魔法を覚えていないと移動もままならない。 コールドハーバー モラグ・バルの支配する領域。シロディールとほとんど同じ様に見えるが非常に荒廃している。 ムーンシャドー アズラの支配する領域。あまりにも美しいせいで目が霞んでしまう。雨が降ると花の香りが漂うという。 クアグマイアー ヴァーミルナの支配する領域。分刻みで形状が悪夢らしく変わる非常にやっかいな世界。 アポクリファ ハルメナス・モラの支配する領域。果てが見えない程大きな図書館で、棚の本を読むと二度と抜け出せなくなる。 エバーグローム ノクターナルの支配する領域。エボンメアからタムリエルと繋がっている。 ノクターナルと契約を交わした歴代のナイチンゲール達が守護している。 ソウル・ケルン アイディールマスターが支配する魂石と深く関わっている領域。 魂石に縛られた魂はこの地にその力が送られる。 魂の力が集う場所なので死霊術士にとって非常に魅力的な世界だが、 支配者のアイディールマスターはずる賢く、死霊術士がどの様な契約を結ぼうとも悲惨な末路が待っている。 エセリウス エイドラが存在する世界。オブリビオンの向こう側にあるためこの世界に渡るのはオブリビオンに行くよりも難しい。 マジカの源とも言われ、太陽や星はエセリウスに繋がっており、ニルンにマジカを降り注がせているとも言われる ソブンガルデ ノルドの英雄が集うショール(ロルカーン)の世界。エセリウスの次元に存在する領域の一つ。 豪華絢爛なショールの間へ通じる鯨骨の橋にはツンという名の大きな門番がおり、彼と戦って認められないと中に入れない。 500の同胞団が存在していた頃はタムリエルのどこかに存在すると考えられており、 多くのノルドが無謀な探索に赴き帰らぬ人になるか、無残な思いで帰路についた。 証言者がショールから預かった言葉の解釈の広まりによって、 ソブンガルデは華々しく戦死した者だけが送られる世界だと思われていたが、 実際は生前にノルドらしい生き様を示してさえいれば問題なく行ける場所のようだ。 アービス アヌとパドメイの間のグレーゾーン。ニーアとも呼ばれる。 原初の神々が生まれた場所。ムンダス、オブリビオン、エセリウスなどの世界を内包している。
https://w.atwiki.jp/illuminate/pages/96.html
ETPC(S2) 勢力解説 アルビオンの遠征艦隊は瞬く間に東部タメルラーノを占領、ベンガル地方に確固たる足場を築き、絶対的な権威を手にしたETPCは議会を完全に占拠した。この事態に対して保守派の軍部は農村部を中心に決起、首都ロンドン以外のアルビオンの大部分を瞬く間に制圧。しかし予てよりこれを予測していたETPCは、首都を軍事制圧して国家機能を掌中にし、これを要塞化して東方植民地から徴発した兵士を配備し、軍部との大規模決戦に備えた。 初期メンバー 名前 クラス 身分 Lv 備考 エリザベス コールドストリーム連隊 マスター 20 コーンウォリス コールドストリーム連隊 宿将 20 グロスター コールドストリーム連隊 宿将 20 リデル メイガス 宿将 20 プリムラ ハレーディー 宿将 20 イスファハーン アジェミー・オウラン 一般 15 モノリスに洗脳されたリアムスを救うため、ETPCに亡命 初期情勢 難易度:低 領地:ロンドン ウルヘル ネルソン海 マリアナ海 ゼーランディア ファルモサ シンガポール ベンガル 総収入:69650(ノーマル) 軍資金:120000 ユニット数:360 同盟:聖性エーラーン善教国(4ターン) 宿敵:アルビオン王国 タメルラーノ帝国 聖性エーラーン善教国 オプティマトン魔王統治領(東部軍) 一般雇用可能な兵科 コロニアルガード系 胸甲騎兵系 竜騎兵系 マイソール式初期型ロケット砲系 重装象兵系 悪魔崇拝者系 シナリオ1からの変更点 シナリオ1のアルビオン・ツンフトソビエトが名前を変えた勢力。アルビオン王国の分離独立により、人材3人と本国東部を失っている。 東方世界南東部に拠点を築き、象兵と悪魔崇拝者の雇用が可能になったため、部隊編成にさらに隙が無くなっている。 考察 コメント欄 百合百合しい -- 名無しさん (2012-12-18 22 28 57) 回復役がいない雇用ラインナップで隙がないとか言われても・・・押し切れるだけの力があるという意味なら、赤服と胸甲・ロケットですでにお腹いっぱい -- 名無しさん (2013-10-19 09 18 26) まあプリムラ隊で回復できるし -- 名無しさん (2014-01-30 17 25 37) COMが象さん持ち出した日には劣化してるんだよな・・・普通の騎兵も今まで通り雇えるし -- 名無しさん (2014-07-21 23 22 21) エーラーンとの4ターン同盟が東方世界進出の妨げになっている。特にこだわりなければ内政の秘密交渉で上書きしてしまうのもあり。 -- 名無しさん (2015-08-16 12 23 46) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6948.html
前ページ次ページゼロの花嫁 ゼロの花嫁19話「アルビオンへ」 マザリーニ枢機卿は、鳥の骨と呼ばれる程の骨ばった指を額に当て、深く嘆息する。 ため息の理由は近衛兵の報告。 女王として即位してから随分自覚が出てきたと喜んでいたアンリエッタ女王が、夜更けに城を抜け出したとの報告を受けたせいだ。 君主が、夜中に、ロクな護衛も付けず、近侍の者すら騙して、城を抜け出すなどと余りの情けなさに腰が砕けそうになる。 当然のごとく護衛を付けるが、女王には気付かれぬよう気をつける。 何のつもりかはわからぬが、どうせ公表出来ぬようなロクでもない事だろう。 近衛の優秀なメイジならば、アンリエッタが何をどうしようと完璧なまでに任務を遂行出来よう。 ワルドが引き抜こうとした者も何人か居たが、断固として拒否した連中だ。こういう時にこそ役立ってもらわねば。 数刻後、後を付けた者から報告を受けたマザリーニは、 部下の前だというのに執務机に突っ伏してしまいそうになるほどの絶望を味わう事になる。 オールドオスマンは大公夫人誘拐以来、常に臨戦態勢を解いていなかった。 出来れば教師達にもそうさせたかったのだが、いらぬ疑いを招く事にも繋がるので、 周囲への警戒には宝物庫のマジックアイテム等を用いていた。 そんなオールドオスマンの警戒網に、一台の馬車が引っかかる。 夜半過ぎにわざわざ学院に来る馬車、それも偽装しようとしてはあるが、城で使っているような高価な馬車である。 非公式の使者とも思ったが、馬車から出て来たのは小柄な者が一人のみ。 向かう先は学院生徒達の眠る宿舎となれば逢引か何かとも思えたが、あの高価すぎる馬車でというのは少々不自然だ。 顔が見えぬようフードを目深に被っているが、こちらはマジックアイテムだ。 遠見の魔法が使えるマジックアイテムで侵入者の顔を確認する。 「…………は?」 いやいやいやいや、無い。あれは無い。 マジックアイテムが壊れた。そうに違いない。 試しにと密かに目を付けていた新入生女子の部屋を映し出す。 寝室であどけない寝顔を晒していると思われた、清楚な雰囲気が愛くるしいその少女は、机に向かって一心不乱に筆を走らせていた。 鬼気迫るその表情からは、とても授業時の可憐さは想像出来ない。 机の前の壁に貼り付けられた「締め切り厳守」の張り紙が、何かなんていうか、もういいやって気にさせてくれた。 どちらも見なかった事にしたい映像だったが、いつまでも現実逃避してる余裕も無いので、再度映像を侵入者に向ける。 侵入者は、事もあろうに問題児筆頭、またお前かなルイズ・フランソワーズの部屋に入って行った。 そんな彼女が部屋に入るなり唱え始めた呪文。 「いかんっ!」 大慌てでマジックアイテムの効果を切る。ギリギリ間に合ったと思われる。 侵入者はディテクトマジックで周囲を探る魔法を感知しようとしていたのだが、 そんな用心深さも、覗きの達人オールドオスマンを捉える事は出来なかった。 仕方無くモートソグニルを派遣し、状況を把握させる。 あの馬鹿娘を放っておいたら、何されるかわかったものではないのだから。 考えうる最悪の組み合わせ。 オールドオスマンならばそう評したであろう、アンリエッタ女王とルイズの邂逅。 突然の訪問に驚くルイズを、アンリエッタは嬉しそうに抱き締める。 「お久しぶりルイズ。元気だった」 「じょ、女王陛下。一体どうして……」 「ふふ、城を抜け出して来ちゃった」 「そ、そのような事をしては……」 流石のルイズも動転してしまう。 アンリエッタはすっとルイズから体を離すと、ルイズの手を握ったままにこやかに笑う。 「堅苦しい口調は出来れば無しにして欲しいですわ。昔一緒に遊びまわったように、もっと楽にしてくれると私も嬉しいです」 畏れ多さもあったが、女王が望んでいた形を瞬時に察したルイズは、堅苦しさを少しだけ抜いた、親しげな口調で答える。 そうなれば年頃の女の子が二人である。 バックに花びらが飛び交うような微笑ましい会話が始まる。 思い出話に一しきり花を咲かせた後、ルイズは思い出したようにサンを紹介する。 「こちらが私の使い魔サンです。サン、こちらはトリステインを統べし女王、アンリエッタ様よ。ご挨拶なさい」 旧友が訪ねて来た程度にしか思っていなかった燦は、一瞬だけ小首をかしげる。 「女王? ……それって王様って事ちゃうん? つまりトリステインで一番えらい人って事で……」 「こ、こらっ、女王陛下の御前よ。きちっと挨拶なさいっ!」 慌てるルイズの様が燦に事の重要性を教えてくれた。 突如、燦は腰を曲げ、掌を上に向け、片手を前へと突き出す。 「おひけえなすって!」 余りの大声に、ルイズもアンリエッタも思わず硬直してしまう。 その隙間を縫うように燦の言葉が響く。 「さっそくのおひかえありがとうございます。手前の庭先で恐縮ですが仁義切らせてもらいます。 てめえ生国と発しますは瀬戸内です。海ばかりのつまらない土地ですが、 そんな土地でチンケなヤクザの子として生まれやした。実の親もヤクザ者、 筋金入りのバカヤロウですが渡世の皆様に助けられ、こうしてこの年まで生きながらえてこれました……」 延々語られる燦の流れるような口上に、二人は口をぽかーんと開いたままただただ聞き入っている。 「……どうぞ行末永く御別懇に願います!」 全部が終わった後、数秒の間をおいてアンリエッタは、こくんと頷いた。 「よ、よろしくお願いします」 思わずそんな返事をしてしまったアンリエッタと、もの凄い勢いで燦に掴みかかるルイズ。 「さささささささサン! い、いきなり女王様になんて真似すんのよ!?」 「え? だってルイズちゃんきちっと挨拶しろて……」 「今の挨拶!? 脅し文句じゃなくて!?」 妙に男前な顔になる燦。 「これがヤクザもんの仁義じゃき……見逃したってくれやルイズちゃん」 「いやもう見逃すも何も何処からつっこめばいいのよそれ!?」 喚くルイズだったが、アンリエッタはちょっと顔を引きつらせつつも、燦の挨拶を受け入れた。 「か、構いませんよ。その、ちょっとびっくりしましたけど……えっと色々と変わった使い魔なのですね」 こうしてしょっぱなからばっちり存在をアピールしきった燦は、以後ルイズの命令で黙っている事になるわけだが。 一しきり話した後、アンリエッタは口調をがらっと変え、この部屋に来た理由をルイズに語った。 アルビオン皇太子ウェールズの持つ手紙を回収して来て欲しいと、ルイズに頼みに来たのだ。 「王命として正式に命じる事も出来ぬ、そんな任務です。失敗は許されませんが、成功したとて何も報いる事は出来ません」 「わかりました。任務、必ずや果たして御覧に入れましょう」 即答である。 アンリエッタは、喉元まで出かかった言葉を堪える。 「ウェールズ様への身の証しとして、この水のルビーを持って行きなさい。その上でこの手紙を渡せば話は通じるはずです」 「はっ」 「ウェールズ様以外、トリステインはもちろん、アルビオン側でもこの件を知る者は居ません。それを忘れないように」 「了解しました」 「回収すべき手紙は決して明るみに出してはなりません。 もしトリステインへの帰還が困難となったならば、貴女の責任において手紙を処分しなさい」 注意事項をすべて聞き届けると、一つ気になった点をルイズは問う。 「アンリエッタ様、こちらにいらっしゃるのに護衛をお付けになりましたか?」 「いえ、秘事を知る者は少ないに越した事はありません」 それを聞くと、すっとルイズは立ち上がる。 「では出立の前に、アンリエッタ様を王城へとお送りしたいのですが、お許しいただけるでしょうか」 「必要ありません。貴女は任務の事だけ考えればよろしいのです」 「はっ、出過ぎた真似を致しました」 そうやっている二人は、とてもついさっきまで歓談に興じていたとは思えぬ緊張感に包まれている。 伝えるべき事を伝えると、アンリエッタは部屋を後にする。 ルイズは燦に命じ、キュルケとタバサを呼び、城まで女王に気付かれぬよう護衛を頼みに行かせる。 一人部屋に残ったルイズは、ベッドに腰掛けて任務の背景を想像する。 「わざわざ学院に出向くような真似までして私に、という事は……城に頼れる人物が居ないという事かしら」 思考にふけるルイズであったが、部屋のドアを叩く音で我に返る。 燦が居ないので仕方なく自分で扉を開くと、そこにオールドオスマンが居た。 「スマン。全部聞いた」 ルイズはわざとらしく肩をすくめて見せる。 「……だろうと思いました。オールドオスマンがアンリエッタ様の来訪を見落とすとは思えませんでしたし」 「なんじゃ怒らんのか」 「愛人の件以来、オールドオスマンとは一蓮托生と考えておりますので」 苦虫を噛み潰したような顔になるオールドオスマン。 「じゃったら、ほいほいとそんな任務受けるでない。ワシが見た所、それ相当ヤバイ件じゃぞ」 ルイズは素直に自分ではこの件の裏まで読めないと、オールドオスマンの知恵を頼る。 アルビオンが既に危機的状況に陥っている事、アンリエッタのゲルマニア皇帝との婚約、 ウェールズ皇太子のみしか知らぬ秘事、近しい者にすら明かせぬ事。 ここ最近の女王を取り巻く状況を並べ、オールドオスマンは手紙の中身はアンリエッタがウェールズへと送った恋文ではないかと推察する。 アルビオンの近況とアンリエッタの婚約はルイズも知らぬ事であった。 最近は宝物庫のマジックアイテムをこれでもかと濫用してるらしいオールドオスマンの耳の早さは、 最早大陸一と言っても過言では無いかもしれない。 「トリステイン貴族に断れる訳がありませんわ」 「そりゃまそーじゃがの。条件ぐらい付けぬか」 「……怒りますよ」 「言ってみただけじゃ。さて、どうしたものか……」 「どうもこうも無いでしょう。アルビオンに行って、手紙を受け取って戻って来る。それだけです」 試すようにオールドオスマンは問う。 「反乱軍と出くわしたら?」 「邪魔をするというのであれば、どいつもこいつも叩っ斬るまでですわ」 返答は予期していたのか、諦めたように大きく息を吐く。 「せめてキュルケとタバサは連れて行け。お主とサンのみではキツかろう」 ルイズは心外そうな顔をする。 「私とサンだけでも出来ないとは思いませんが、キュルケとタバサを置いて行った日には、私が二人に恨まれてしまいます」 失敗できぬ任務に赴く、そんな表情ではなく、売られたケンカでも買いに行くかのように、ルイズは不敵に笑って見せた。 タバサとキュルケが戻ると、王女の護衛には別の者が付いて居た事がわかる。 王女に見つからぬよう動いていた護衛は三人程であったが、いずれも腕利きのメイジであったと語る二人に、ルイズはアホな事を問う。 「で、張り倒して来たの?」 タバサは頭を垂れてキュルケの背中をぽんと叩く。キュルケが言えという意味だ。 「そうやって何でもかんでも力づくって癖直した方がいいわよ。トリステイン王宮近衛の連中張り倒してどうすんのよ」 ルイズはとても意外そうな顔をする。 「あら、案外王宮もしっかりしてるのね」 「当たり前よ。アンタ軍馬鹿にしてるでしょ」 「ちょっとだけね。じゃ、私達はアルビオンに行ってウェールズ皇太子に会うわよ」 「どういう話よ」 「ごめん、それ言えないの」 何よそれ、とぼやくキュルケを他所に、タバサは二つ返事で了承し、旅支度を整えるべく部屋に戻る。 「ふん、そういう秘密なお話だったらルイズだけで行けばいいのに」 「それでも良かったんだけどね。そういう訳にもいかないでしょ」 くすくすと笑いながら部屋を後にするキュルケ。 「そうすれば私も貴女に文句言えたのに」 「そうそう隙なんて見せてあげないわよ。ルートは考えておくわ」 ルイズは残るオールドオスマンに後事を頼む。 前後の正確な情報さえあれば、オールドオスマンならば随時適切な判断を下してくれよう。 オールドオスマンの、くれぐれも無茶は避けるようにとの言葉に、ルイズは大きく頭を下げた。 「すみません、多分無理です」 「素直な所以外評価出来んわ! タバサの言う事良く聞くんじゃぞ!」 こう言って悪ガキ四人衆、唯一の良心に縋る他無いオールドオスマンであった。 ワルドがマザリーニに呼び出されたのは夜も遅くの事であった。 緊急事態との事で取る物もとりあえず駆けつけたワルドは、これは戦況が悪化したアルビオンの件だと考えていた。 しかし、確かにアルビオンの件ではあったのだが、マザリーニが明かした話は、幾らなんでも予想の斜め下過ぎた。 開いた口が塞がらなくなるといったリアクションは、ワルドもマザリーニと同様であった。 「……今のアルビオンの状況を、知ってるからこそ回収すべき、と判断したんでしょうが……いやはや……」 ワルドの耳に入っている限りでは、一両日中にもロンディニウムの包囲は完了するらしい。 そこに今から飛び込めなどと、戦を知る者ならば決して出来ぬ命令である。 幾分か立ち直ったマザリーニは、ワルドを呼び出した本題に入る。 「女王陛下とて状況は理解出来ているはず。ならば、やらねばならぬ事でもあるのだろうが…… それをヴァリエール家の娘に頼む神経がわからん」 「他に頼れる者も居なかったのでしょう。王室の恥に類するような、そんな内容であると推測しますが」 嫌過ぎる予感に苛まれつつ、マザリーニはワルドに先を促す。 「おそらく、ゲルマニア皇帝との婚儀が絡んでおります。となれば、 対象がアルビオン国王ではなくウェールズ皇太子である事を考えますに……二人の間に何か個人的な密約があった、そう考えますが」 「歯に衣着せんでいい。あんの尻軽娘、よりにもよってウェールズ皇太子にちょっかい出しておったか」 老獪な男の思わぬ毒舌に、ワルドは苦笑する他無い。 「手紙との事ですが、恋文の類でしょうか。確かにそんなものが明るみに出た日には、婚約の話は立ち消えとなりますな」 「ふん、それでも誤魔化す手はある。それに私の知るウェールズ皇太子ならば、責任を持って処分してくださると思うのだが、 女王陛下に手を出していたという話を聞いた後では些か自信が持てぬ」 「まったくです。で、どうされますか」 「ワルドの所でこの任務に耐えうる者はおるか?」 「前線を突破してロンディニウム、ハヴィランド宮殿に潜入、手紙入手後包囲を抜けて帰還し、卿と女王陛下の前で処分。 ……私ぐらいですな、それが確実に為せると言い張れるのは」 マザリーニは苦虫を噛み潰したような顔だ。 「お主を行かせる訳にも行くまい。そもそもお主は当分ここから動けぬだろう」 「いえ、動くつもりです」 「何?」 実は、とワルドが語り出したのはアルビオン内乱への武力介入であった。 血を分けた兄弟国、救援に向かうに何ら不自然は無く、また敵は寄せ集めであるが故、頭を失えば脆い集団。 「足の速い連中を集めて奇襲を仕掛け、反乱軍首魁クロムウェルを討ちます。間を計らねばなりませんが」 マザリーニはふむ、と頷く。 「戦勝に沸き、油断しきった時……か」 「左様で。アルビオンの王族が絶えるやもしれませぬが、いずれ始祖の血を引く方が治める形にしなければなりませぬから……」 「トリステイン・アルビオン王国か。何処が文句を言う間も無く反乱軍を討ち滅ぼしてしまえば、確かにありえぬ話ではないが」 ワルドの考える最終形をマザリーニは読むが、手放しで賛成はしてないようで、渋面を崩さない。 幾らなんでも都合が良すぎる話だ。 「どの道、アルビオン反乱軍とは事を構える事になりましょう。 奇襲が失敗したのなら、そこで改めてゲルマニア、ガリアとの調整を行えばよろしいかと」 「二国に難癖付けられて国境の都市の一つや二つ持っていかれても、アルビオン丸々一国が手に入るのなら釣りがくるか……」 ガリア、ゲルマニアと比べ、トリステインはお家騒動が大人しい分身動きが軽いという利点を活かさねば、この局面は潜り抜けられぬ。 そう語るワルドの言葉に、マザリーニは異論を唱える。 「だとしても勝たねば意味が無い。アルビオンとトリステインではそれ程軍備に差があるとも思わんが」 「懐柔による内部からの混乱が、此度のアルビオン敗戦の主な原因と思われます。 公爵クラスがぼろぼろ裏切るような状況は、流石に我がトリステインでは考えられぬ話です」 「戦況は私の方でも調べさせていた。確かに、あの戦力差で破れるなど想像も付かなんだが…… にしてもアルビオンにそれ程隙があったとも思えぬ」 「理不尽を可能にする道具、ないし強力無比な魔法を用いている可能性もあります。 その場合武力ではなく搦め手に類する能力を持つと思われますので、となればやはり奇襲こそが最善と私は考えます」 マザリーニは考える。 もし反乱軍が勝利し、こちらに牙を剥いたとしても、他国と連携してアルビオンを包囲するやり方ならば被害は少ないはず。 しかし、その場合アルビオンからの攻撃はおそらく近場のトリステインに集中する。 それに対応するようにガリア、ゲルマニアも主力はトリステインに置く事になろう。 そうなれば、後々が面倒な事になる。 そも手紙の回収が出来なければ、ゲルマニアとの連携も厳しいという最悪の状況もありうる。 王都占領の混乱に合わせて奇襲し、ハヴィランド宮殿を灰にしてしまえば、手紙も何も無いだろう。 アルビオン侵攻の一番の難所、上陸作戦も今の状況ならばさして難しくもあるまい。 王軍、空海軍、近衛ならばすぐに動かせる。 諸侯軍には後々から参戦する形を取らせても、アルビオンの港を一つでも押さえていればどうとでも出来る。 しかし、卑怯との謗りは免れ得まい。 王家が滅びる直前まで手を貸さず、滅びきった後に漁夫の利とばかりに襲い掛かるなぞ、見栄えが悪い事甚だしい。 アルビオン王と皇太子が死んでいてくれれば、決戦に破れ包囲に至るまでが極端に短かった事を考えるに、 救援要請を受けたが間に合わなかったでも通るだろうが。 マザリーニは、そこではたと気付いて手を叩く。 「なるほど、奇襲は王と皇太子をお救いする手段、そう言い張るのも手か」 救い出せたのなら後は簡単だ。両者、ないしどちらかを立てていれば侵攻の口実にはなる。 いずれにしてもタイミングが重要だ。 トリステインの最精鋭を揃え、微妙な間合いを図る繊細な軍事行動。 「今すぐ動かせる部隊はどれだけいる?」 「千ですな。数だけならば二千は揃いますが、それはアルビオンの港を抑えるのに回すべきでしょう」 「諸侯に一言も無しで軍を動かす事になる」 「文句があるのならば諸侯軍抜きでアルビオンを倒す。そう言ってやればよろしい。 既に王軍、空海軍首脳には話を通してあります。トリステインの置かれた状況を説明しましたならば、 快く納得して下さいました。出来ればもう少し根回しの時間が欲しかったのですが、 こうなってしまった以上、致し方ありますまい」 人の悪そうな笑みでワルドを睨むマザリーニ。 「この悪党めが、トリステインの守りを奴等に押し付ける気か」 「戦場での遅参は冷や飯食いと相場が決まっております」 二人の話が早いのには訳がある。 二人共が共通の認識として、アルビオン反乱軍は遠からず敵となると見なしていた。 アルビオンの王家と繋がりの深いトリステインは、対外的にも反乱軍に対し良い顔をする事が難しい。 そもそも貴族の共和制などを掲げられては、王家を擁する国とどう仲良くやれというのか。 自国の諸侯が増長する前例となりかねぬこのような国を、トリステインもガリアもゲルマニアも結局は許す事が出来ぬであろう。 お互いそれが解っているのだから、後は武力を用いるか否かだけで、安定した交流など望むべくもないだろう。 位置的にも攻められにくく、強力な空軍を擁するアルビオンは、散発的な攻撃を得意とする。 嫌がらせのようなこんな攻撃を数多受ける事になるのは、おそらくトリステインであろう。 仮にロマリアを加えた四国で同盟を締結したとしても、これではトリステインのみ大きな被害を被る結果となろう。 そうさせぬ為に、トリステインはすぐにでも動く必要があったのだ。 幸い、と言っていいか、女王は年若く重要な判断が下せぬ為、言い方は悪いがコントロールする事も容易だ。 後でまた何やかやと言われるだろうが、今動かねばトリステインの利益を守る事が出来ぬ。 恐らく王軍、空海軍首脳がワルドの話に乗ったのも、そんな危機感あっての事だろう。 現状認識も出来ぬ愚か者は、蚊帳の外に居てもらうとしよう。 それを見定めるに、これは良い機会でもあるのだから。 ワルドの持ってきた話が大きすぎた為、ルイズの件は忘れさられそうになったが、そこはマザリーニとワルドだ。 護衛を選びルイズ達の後を追わせるという事で同意する。 手紙に関しては回収せねば後々厄介になる可能性は確かにある。 ルイズ達のルートでも試しておくに越した事は無かろう。ただ、秘密が漏れぬよう、最悪の場合に備えなければならない。 マザリーニがそんな作戦を遂行出来る人物は居るか、と問うと、ワルドは頷いた。 「一人、連中と繋がりのある人物に心当たりがあります。そちらは私にお任せ下さい」 シルフィードに跨り、ルイズ、キュルケ、タバサ、燦の四人は明け方の内に学院を出る。 ラ・ロシェールの街に着いたのは翌々日の昼過ぎの事である。 世界樹の枯れ木を用いた桟橋が特徴的な、空飛ぶ船の港町であるラ・ローシェルは、 アルビオンとトリステインを結ぶ重要な交通拠点である。 魔法を使い巨大な岩を切り出して作られた街並みといい、 見上げるでは済まぬ大きさを誇る世界樹に果実のごとく連なる多数の空飛ぶ船といい、燦には驚きの連続であった。 すぐにアルビオン行きの船を手配しようとするのだが、そこで一行は足止めを余儀なくされる。 何時もならすぐに見つかるはずのアルビオン行きの船であるが、わざわざ戦乱渦巻くアルビオンに向かおうという船がどれ程居るというのか。 定期便すら滞る始末では、ルイズ達に都合の良い船など見つかるはずもない。 この際輸送船でも何でもいいから、そう言っても出ないものは出ないのである。 まずキレたのはキュルケだ。 ガラの悪い船員達が積荷を船へと運んでいる所に赴き、いきなり魔法を唱えようとした所をタバサに止められた。 「キュルケ」 「何よ、積荷が燃えて無くなれば私達乗せる余裕ぐらい出来るでしょうに」 「積荷無しじゃそもそもアルビオンに行く理由が無くなる」 「むむ、確かに」 アホかと。 次に、といってもほぼ同時だが、キレたのはルイズである。 船長と思しき人物にすたすたと歩み寄る所を燦に止められる。 「ルイズちゃんイカンて!」 「何よ、船長なら船ぐらい飛ばせるでしょ。あいつ脅せば一発じゃない」 「あんな大きい船、人質の一人や二人じゃどうしようも無いて!」 「むう、それもそうだけど……」 バカかと。 チンピラ以外の何者でもない。 タバサは燦に言って、ルイズとキュルケの二人を宿に連れて行かせる。 強行軍で来ているのだ、ここで一休みするのも良い選択であるし、交渉はタバサに一任して三人は先に宿を取っておく事にした。 ここで一泊するつもりなど無かったのだが、シルフィードが疲れたときゅいきゅい騒ぐので、まあ一休み程度ならと宿の一角に陣取る三人。 今シルフィードに乗って出たとしても、アルビオンに辿り着く前に夜になってしまう。 夜間の飛行で空飛ぶアルビオンに辿り着くのは難しく、シルフィードの疲労もあり、 それ故船の手配を考えたのだが、その船が無いのは計算外であった。 不愉快そうなルイズとキュルケだったが、燦がアルビオンは戦争中なんだし、 少しみんなに話を聞いてから行くのはどうかと提案すると、あっさりと納得する。 確かにその通りであるが、機嫌まで一瞬で直ってしまったのは、二人共が燦にだだ甘なせいであろう。 宿を取るかどうかはタバサが来てから決めるとして、とりあえず宿の一階にある飲み屋兼食堂で遅めの昼食を取る。 ついでとばかりに、ウェイトレスをしている子にアルビオンの近況を聞いてみた。 王党派と称されるアルビオン王家の軍は、最後の決戦にも破れ、王都ロンディニウムに追い詰められているという話だ。 それを聞いた三人の反応は、 「それなら王都に行けばいいのね」 「良かった~、戦場出てたら何処行けばいいか、わからんかったかもしらんし」 「……目的地ぐらいはっきりさせてから出なさいよアンタ等」 ルイズとキュルケがアルビオンの不甲斐なさを口にすると、ウェイトレスも同感だったのか話に乗って来た。 「そうなんですよ。ボロ負けもいい所ですし……ウェールズ様もっとかっこいいと思ってたんだけどなぁ。ちょっと幻滅かも」 平民の感覚などこの程度である。 ちなみにルイズ達の服装は、学院の制服の上にフードを羽織った形だ。 頭まですっぽり隠せるようなものにしてあるのは、身を隠す必要が出るかもしれぬからである。今は食事中でもあり、素直に頭は出しているが。 不意に奥のテーブルから下卑た笑い声が響いてくる。 むさ苦しいとしか形容しようのない男達が数人、テーブルを囲みながら昼間っから酒を飲んでいるのだ。 それだけならば問題無かったのだろうが、ルイズ達の所にかかりっきりのウェイトレスに文句を言う段になり、ルイズが動いた。 フードを目深に被り直したのは外見でぐだぐだ言われぬように、そして中身が女の子とバレる前にさっさと開戦するつもりであると思われる。 キュルケはどうでもよさ気にワインを傾けている。 「サン、貴女も参加してさっさとカタ付けてきたら?」 「うーん、見た感じそんなでも無さそうだし、私混ざるとルイズちゃん嫌がるきに」 「そうなの?」 「口では言わんけど、基本的には自分でやりたいんだと思う。でも人数増えるようじゃったら私も行く。というかあいつら私も気に食わん」 「はいはい」 どんがらがっしゃーん。 開戦の合図。 殴り合いが始ってしまえば男も女も無い。 それ以前に大の大男を肩に担ぎ上げてぶん投げるなんて真似をしてるのだ。 これで女扱いしろって方が無茶だ。 外に駆け出して行った男が増援を呼ぶ段になると、燦も「何しとんじゃあああああ!!」などと怒鳴りながら参戦する。 店内はあっと言う間に阿鼻叫喚の坩堝と化し、店主がウェイトレスに警備を呼ぶよう指示する。 キュルケは、二人にだけ見えるように懐から杖を見せる。 「たかがケンカでしょ、放っときなさいって。大丈夫、これ以上騒ぎが大きくなるようだったら、私が出るから」 店のぶっ壊れた物は負けた方にでも私が払わせてやると言うと、二人はとりあえず納得する。 「それでも文句言うようなら、一切合財燃やし尽くして何もかも灰にしてやるわ」 即座に回れ右したウェイトレスは、後ろも見ずに警備詰め所へと走り去った。 「いい加減にしろ貴様等!」 腹の底から響くような迫力のある怒声に、店内は音を失う。 六人の男が伸びて地面に寝転がり、残る十人近くの男達も皆ヒドイ顔をしている。 「公共の場で昼間っから何を馬鹿な真似をしているか!」 服装から軍関係者と思われる者の出現に、男達は腐った顔をしながら引き上げだす。 捨て台詞をルイズ達と軍人らしき者に吐いて店を出ていく男達。 ルイズと燦は硬直したまま軍人を指差している。 キュルケは思わぬ乱入者に、グラスを掲げて挨拶した。 「あら、アニエスじゃない。久しぶりね、元気だった」 アニエスは余り表情を表に出さぬ、周囲にはそう思われているが、実はそうでもない。 直接の上司になったワルドは、アニエスの中々にバリエーションに富んだ表情を幾つか知っている。 今日はそれが一つ増えた日だった。 困りながら嫌がりつつ、それを表に出さぬよう表情を硬くしようとして失敗したので、笑顔を見せて誤魔化そうとした顔。 「は、はぁ、ヴァリエールの護衛……ですか」 明らかに乗り気ではないとわかる反応だ。 ワルドはその辺の機微に長けているので良くわかるが、他の連中には微細な変化としか取れぬだろうなと、頭の中で考える。 しかし、任務の内容を説明するにつれ、アニエスの困惑も消し飛んで行く。 王室の恥、それをアニエスのような成り立てシュバリエごときに話すなど、考えられぬ。 「死ぬ必要は無い。その前に引き返して来て欲しい。任務の重要性は先に言った通りだが、 それでも、帰ってきなさい。これが私からの命令だ」 「ここは死ねとお命じになる場面かと。これを見過ごしてはトリステインに大きな損失が出ます」 ワルドは真剣な表情のままだ。 「繰り返す。決して死んではならない。これ以上は危険と判断したのならルイズを斬れ。君の死に場所はこんな所ではない」 その判断を下せると見込んだからこその人選だ、そう言われてはアニエスにも返す言葉がない。 前ページ次ページゼロの花嫁