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「陛下、わたしはアリスと申します」とアリスはうやうやしくいいましたが、心のなかで「なによ、たかがトランプじゃないの。こわがることないわ」といいそえました。 ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』
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【平唯の人間観察 第四話「呼」】 ――――――――――ねぇ 子供の頃、要らなくなった人形とか捨てたこと無いかな? 捨てていなくても良いんだ。 子供の頃は一緒に眠って、一緒に笑って、一緒に遊んでいた人形。 いつの間にか忘れちゃって何処に行ったかも解らなくなっていないかな? 私はある。 金色の髪に青い瞳。 メリーさんって名前を付けて可愛がっていた。 携帯電話は鳴り止まない。 何処に行っていても私を追いかける。 私を愛しているからどこまでも彼女は付いてきてくれる。 「――――――私、メリーさん――――」 ほら、電話ごしに声が聞こえる。 「今、貴方の家の前に居るの。」 「冗談みたいでしょう?」 「ええ。」 こんにちわ、皆様。 私の名前は平唯。 ※ただしイケメンに(ryと呼ばれる都市伝説と契約した人間だ。 今は友人とお茶していた。 「それは怪談なの?」 「いいえ、実話よ。家の中に入れないの、って言って最後に帰るのがいつものパターンなのよ。」 私にこんな信じられない話をしている目の前の女性は久瀬由美。 至ってまともな電波系一般人。 家は大変なお嬢様な為か無意識に上品な気配を漂わせている。 気品って言うのかしらね、こういうの。 「本当なの?」 「本当よぉ。なんだったら今日、家に確かめに来る?毎晩電話は来るから。」 「別にお泊まりなら良いけど……。」 実はあまり良くない。 彼女こそ私を男装に目覚めさせた張本人なのだ。 中学生の時に学園祭で私を女装させて、 その年の学園祭の出し物のランキングで一位を取った彼女は今でも隙あらば私を男装させようとする。 「あら、嬉しい。じゃあ家の皆様に用意させるわね。」 そう言うとそそくさと携帯電話を出して電話しようとする オーモーイーガーシュンヲーカケーヌーケテー 「あらあら、着信。」 丁度良く電話がかかってきたらしい。 なんだろうと思っていると彼女の顔がどんどん青くなっていく。 真っ青な顔のままこちらをみつめて携帯電話を私に渡す。 「私、メリーさん。今、貴方のお茶している喫茶店の前に居るの。」 コトン 足下で何かが転がる音がする。 「私、メリーさん。今、貴方のお茶している席の真下にいるの。」 「私、メ…………。」 プツッ 素早く電話を切った。 新手の都市伝説か……? 由美の手を引くと振り返らずにすぐに店を出る。 彼女の家までは人気のないトンネルを通ると近いのでその方向へ真っ直ぐ向かう。 「その電話ね、電話からかけられていないのよ。 何度電話を変えても携帯電話を持っていなくても どこからともなく私に告げてくるの。 嘘だと……思う?」 「何時からなの?」 「私のこの前の誕生日からだけど……。」 「解った、ちょっと待ってて。」 歩きながら電話をかける。 勿論、黒服Fの所にだ。 プルルルルルルル プルルルルルルルルルルル 「はい、こちらFだよ、どうしたの平さん。」 プツッ 「私、メリーさん。いま、久瀬さんはどこなの? 貴方が私の大事な久瀬さんを隠したの? 返してよ、返し………」 プツッ 唯一の専門家と連絡がつかない。 不味い。 そうしている間にも私達はトンネルに辿り着いていた。 一旦、由美の家に帰ればメリーさんは入れない。 『コマッテルミタイジャネーカ、契約者。多分そいつはメリーサンダゼェ?』 急に頭の中に声が響いてきた。 ケメの声だ。 『当たり前じゃない!どうにかしてよ!』 『おやすいご用ダ!※ただしイケメンに(ryのノウリョクの正しい使い方をオシエテヤルヨー』 『どうすれば良いの?』 『マズハ………。』 『うっそ……、それはずるくない?』 『イケメンだからユルサレルンだよぉ!!』 私はケメから聞いた嘘みたいな能力の使い方を試してみることにした。 「ねぇ、由美。男装セット持っている?」 「え?貴方に使う為に持っているけど……。」 すばやくそれを奪い取るとトンネルの中で男装を始める。 ぴしっ!バシッ!ピキーン! 「ちゃんとできてるかい?」 「完璧…………///」 鏡がないので由美に尋ねると何故か顔を赤くしている。 「ねぇ唯ちゃん、押し倒して良い?」 「え、ちょ、ちょっと待って?俺、女だから?ね?」 この娘は友人に向けて何を言い出しているのだろうか? そうだ、中学生の時もこうやって暴走していて……。 彼女は男装した女性と百合百合するのが好きな方なのだ。 「ああ、もう駄目!貴方の子供ならァ!!!愛の力でえええええええええ!!」 「いいいやあぁあぁぁああああああ!!」 やばい、奪われる。 そう思った瞬間だった。 プルルルルルルルルル 二人の動きが止まる。 また電話だ。 「ねぇ、由美。これから見ることは秘密だよ?」 「え……?」 電話を取る。 「私メリーさん。今、トンネルの前に居るの。」 「へぇ……。」 「私、メリーさん。今、貴方のずっと後ろにいるの。」 「早く来なよ。」 相手を誘う。 「私、メリーさん。今、貴方の後ろに居るの。久瀬さんを返して頂戴?」 背中を氷が這うような感触。 来た。 「※ただしイケメンに限る!」 都市伝説発動、イケメンならば何でも許される! 私の“目の前”に現れたのは人形ではなく、沢山の人間の顔を一つに合わせたような化け物だった。 ガシッ! そうだ、イケメンならば…… 「その恨みも、そして貴方の能力を無視することも許せ!」 ガッシリとつかみ取る。 ※ただしイケメンに限るのもう一つの能力。 それが都市伝説の能力に対する無効化能力。 発動すれば私の半径2mでは都市伝説の能力を無視しても許される。 手に残るのは柔らかい感触。 フワフワとした物が手の中にある。 綿の入った……、ぬいぐるみ? 「「え?」」 メリーさんと私はほぼ同時に素っ頓狂な声をあげた。 「なんで私をつかまえられるの?」 「もしかして只のぬいぐるみ?」 「あ、メリー!!!」 由美の声がトンネルに響く。 私が掴んでいるのは只のぬいぐるみだ。 「くーちゃん……。」 うわっ、喋った。 只のぬいぐるみじゃない。 「えっとね、唯ちゃん。そのぬいぐるみは私の小さい頃に持っていたぬいぐるみで……。 名前はメリー。 本当はもう捨てた筈だったの。」 目の前で起きている妙な状況に怖じ気づくこともなく彼女は私に説明をする。 メリーさんの方向に向き直ると彼女は問いかけた。 「ねぇ、貴方は本当にメリーなの?」 「そうよ、私はメリー。 くーちゃんにまた会いたくって……。」 「でも、それなら何でまたわざわざこんな由美が怖がる方法で現れたの? 嫌われちゃうじゃない。」 「う………。」 「それしかなかったんだよ。」 急に背後から声が響いた。 「その人形だって元を正せば只の人形だ。 自分を捨てた主の所まで戻る力なんて有るわけがない。 だから『なった』。そういうものに。 解るかな、二年生の……平さんと久瀬さん。」 後ろを振り返ると見上げるような長身の男性が経っていた。 整った顔立ち、私達と同じ学校の制服、胸に輝くバッジに書かれているのは……。 “生徒会会計”の文字。 「こんにちわ、二人とも。 俺は生徒会会計の田居中光だ。 ちょっとした都市伝説マニア。」 謎の闖入者に私はメリーさんを持ったまま身構える。 「……俺は敵じゃないぜ?あとそのメリーさん、離してやれよ。 そいつの目的はもう達成されている。 そいつはそこの久瀬さんに会いたがっていたからなあ……。」 「まだ信用でき無いじゃない。 メリーさんってそもそも危ない都市伝説だし……。」 「メリーさんはもう正気に戻っている。 あとはそこの久瀬さんに判断を任せるべきだと思うぜ?」 「え?私は………、」 由美はゆっくりと口を開く。 「私は一度この子を捨てました。 でも彼女は帰ってきて…… だから、もうしばらくは家に居させてあげたいかなあ?って思うんです。 狂ってしまうほどで、迷惑を掛けながらだったけど、私のことを思ってくれたから。 つまりその………、うーんと……。」 ………そうだな、そういうことなら仕方がないか。 ポン、と彼女にメリーさんを手渡して田井中の方向に向き直る。 「そうだね、それでメリーさんも幸せだ。 ところで契約はしないのかい?」 いきなり由美に対して問いかける田井中。 「え?」 「えっとね、都市伝説は人間と契約ができて、 契約すると人間が都市伝説の能力を使えたり、都市伝説がパワーアップするの。」 「へぇ……。 なら私は別に良いわ?」 「ほう、なんでだい?」 「え、なんで?」 「もう、この子には普通の人形として過ごして欲しいもの。 別にそう言うのも悪くないでしょう?」 久瀬由美は優しい笑顔でそう言った。 「ハッ……、敵わないね。 優しい人だよ、あんたは。 契約するっていうならまた別だったんだがそれじゃあ仕方ない。」 田井中はため息をつく。 「一体貴方は何の為に出てきたの?」 急な登場で驚いていたがこれだけは聞かねばなるまい。 「俺? いやぁ、会長のお使いでね。 平唯、あんたにメッセージだ。 【あまり組織と関わるな】 だってよ、俺としてはあいつら嫌いじゃないってか良い奴だと思うんだけどな。 あと今のあんたの能力?あれも黒服には絶対見せない方が良いぜ。 良いように使われるから。 そんじゃあ。」 田井中は面倒臭そうにあくびをしながらトンネルから出て行った。 それを確認すると私達、メリーさんと久世由美と私の三人は久瀬由美の家に向かったのであった。 【平唯の人間観察 第四話「呼」】
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正体不明 05 逃がした獲物を追う時は、つい力が入るものである 姿を忍ばせたり気配を消したり、そんな事には慣れていないせいもあるが 「あ、逃げた」 真夜中に笑顔で駆け寄ってくる少女というのは、絵面的には結構恐いので当然のリアクションかもしれない つい先週ぐらいに取り逃がしたはずの獲物、旗上詩卯の姿を見つけ嬉々として追いかけたのは良いのだが、その姿を見た途端に詩卯は駆け出していた 当の詩卯はというと、その状況よりも少女の笑顔の下に潜む得体の知れない何かを察して逃げ出したのだが 「やばいなぁ、あの子はこないだのアレと同じ気配でやんの」 前回は居合わせたZ-No.999の能力でギリギリ逃れる事が出来たが、今回彼は報告や仕事があるという事で早々に駅で別れてしまっている つまり、逃げ切るのは不可能だという事 「都合良くまた助けがくれば別だけど」 やや諦め気味に、ちらりと後ろを振り返る 立て板に水を流すような勢いで迫る『ブロブ』 そして、その向こう 遠くに立つ少女の呟きが、まるで目の前の不定形生物が囁いたように詩卯の耳に届いた 「いただきます」 喰われる そう感じた瞬間、圧倒的な恐怖と絶望が思考を塗り潰した 「諦めるな、走れ!」 いつかと同じような だが違う男の声 視線を前に戻すと、そこにはやはりZ-No.999ではない見知らぬ青年が立っていた 「鞘甲亜網!」 男が拳を地面に叩きつけると、そこから地面が白く染まる スナック菓子を磨り潰すような音と共に、白い物体が詩卯の足元を駆け抜けるように広がり、道路を塞ぐかのように白い壁となって『ブロブ』を受け止めた 「長くは持たない! 逃げるぞ!」 「え、あ、うん」 男に手を引かれて、何が起きているか判らないまま駆け出す詩卯 その背後では白い壁に食むように纏わりつく『ブロブ』が蠢く姿があった ――― 「んもー、目の前のものから食べる癖は直らないんだから」 少女は白い壁をぐずぐずと溶かし取り込もうとするブロブをぺたぺたと叩く 「ていうか、これ食べれるの? 美味しい?」 白い壁は近くで見るとごつごつとしており、小さな貝のようなものの集合体である事が判る 「なんだっけこれ……えーと、フジツボ?」 ――― 「追っては来ないようだな」 息一つ切らさずに辺りを警戒する青年 対して詩卯は、完全に息が上がってその場にへたり込んでいた 「大丈夫か?」 「あ……あんまり……」 汗だくになりぜいぜいと荒い息を吐く詩卯を、青年は軽々と抱き上げる 「人気の無いところに留まっているのはまずい。どこか落ち着ける場所まで送ろう」 「や、流石に、歩けないほどじゃ」 「歩けてないだろう? 気にするな、身体は鍛えてるから人間の一人や二人なら余裕で運べる」 「えっと、そういう意味じゃなくて」 流石に汗だくで異性に密着するのは女としては気まずいものなのだが、相手は全く気にした様子は無い 「しかし……あれはヤバいな。俺みたいなフリーランスじゃどうにもならない。『組織』の方で動いてくれると良いんだが」 「あ、それなら大丈夫だと思いますよ。その『組織』とかってのの人が報告するって言ってましたから」 「ん? 都市伝説の類については知識はあるのか」 「諸事情により一週間ばかりレクチャーされましたとも」 「そうか」 青年はやや顔を顰めて詩卯を見詰める 「人間と都市伝説の関係は、縁であり絆である。一度何かしらに遭遇すると、都市伝説を引き付けやすくなるんだ」 「うへ。危ないのにしょっちゅう遭遇するようになるのはヤダなぁ」 「多少なりとも都市伝説について知っているのなら、何かしら都市伝説との契約を考えた方がいい。身を守る手段にもなるし、強く引かれ合う都市伝説が居れば他の都市伝説をあまり引き付けなくなる場合もある」 「なるほどねぇ。ところでお兄さんは人間? 都市伝説?」 「悪いが俺は人間だ。契約できる都市伝説を探すなら、レクチャーしてくれた奴に相談したらどうだ?」 「んー、どっかなー? 一応連絡先は聞いてあるけど……あんまり深く関らない方が良いって言ってたし」 「まあ物騒な業界であるのは確かだ。強い奴は際限なく強いし、どれだけ強くても相性一つで倒される事もある」 青年は何か嫌な思い出でもあるかのように、溜息を一つ漏らす 「ともかくだ。しばらくは町を離れるか、やばい奴相手でも対応できる奴に匿ってもらうといい」 「んー、一週間ばかし学校無断で休んじゃったしなぁ」 「命とどっちが大事なんだ?」 「両方」 「おい」 「そりゃ命は大事だけどね。私が私として生きていく背骨っていうの? これが折れちゃったら、それはそれで命を失うのに等しいと思うのよ」 「とんだ我侭女だな……だったら早いところ護衛してくれる存在でも見つけろよ。また出会ったら今度は逃げきれるとは思えないぞ」 「守ってくんないの? フリーなんでしょ?」 「さっきは不意打ちで、しかも逃げに徹したからどうにかなっただけだ。アレは俺じゃどうにもならん」 「相性ってやつ?」 「ああ。俺は格闘、物理攻撃専門だがあいつにはそれが全く効かない」 「そっかー、残念」 人通りのめっきり少なくなった駅前通り お姫様抱っこという姿を衆人環視に晒さなくて済んだのは幸いかもしれない 青年は詩卯を下ろすと、そのままくるりと背を向ける 「後は好きにするといい。俺は町の見回りを続ける」 「どうにもできない相手がうろついてるのに?」 「それでも、襲われてる誰かを助けるぐらいならできるからな」 「そっか……気をつけてね。えーと、名前は」 「いいさ、契約者である俺と深く関ると都市伝説との関りも深くなる」 背を向けたまま手を振って、夜闇の中へと消えていった 「さってと、それじゃあ私はどうしようかな」 しばらく実家や友人を頼ってこの町から離れるのも良いのかもしれない だが、脳裏に浮かぶのは化物と共に現れた少女の顔 「……やっぱ、最後まで関った方がいいのかな」 そう一人呟くと、詩卯は夜を明かすべく漫画喫茶の入り口をくぐるのであった ――― 「元Z-No.1以下二名の協力を要請する」 「うるせぇ、帰れ」 音門金融の社長室で向かい合う、元Z-No.0のサロリアスと現Z-No.0の斬九郎が、びりびりと殺気じみたものを漂わせながら睨み合っていた 「俺んとこに来る前に、他の部署の連中に協力を仰げ。何のための『組織』だ」 「そのしがらみが嫌で逃げたお前なら良く判っているだろう? 部下の立場を守るためには他所の部署になど頼ってはいられん」 「π-Noの二人には頼ってたじゃねぇか」 「あいつらは完全な独立愚連隊だった上に、必要な時には居ない事の方が多かっただろう。『組織』内の力関係に影響はしない」 「……相変わらず面倒臭ぇままか、あの『組織』は」 「自我のある者が集まれば自然とそうなる」 ぎちりと椅子を軋ませ、斬九郎はサロリアスを睨む 「『組織』の体質の話は後だ。今も『ブロブ』とその契約者による被害がこれ以上広がる前に片を付ける」 「梨々は俺んとこに居るが、あと二人はとっくに引退して地元で暮らしてる。たまに近況報告をするぐらいで大した縁も残っちゃいねぇよ」 サロリアスがそう言った途端 ばたむと社長室のドアが豪快に開け放たれる 「やっほう、さっちゃん元気してたー? 京都くんだりから久々に遊びに来てやったよー」 「忙しいとは思ったんですが、ご無沙汰していたところを誘われたのでつい……すいません」 現れたのは、どこかのんびりとした雰囲気の二人の女性 「ん、どったのさっちゃん?」 「あら、そちらは斬九郎さん……という事は『組織』のお仕事?」 その間の悪さにサロリアスは思わず頭を抱える 「直接交渉する分には構わんだろう?」 「……勝手にしろ」 この二人の人の良さはサロリアスも良く知っている そして押しの強さも 二人が斬九郎の要請を引き受ければ、梨々も引っ張り出されるのはほぼ間違い無い 「相変わらず難しい顔してるねー。八つ橋食べる? お土産だよー」 「こちらのお土産で、お煎餅もありますよ。仕事中はダメですけど日本酒も」 「暢気なもんだな、お前ら」 溜息を吐きながら、サロリアスは二人をソファへと招く 「言っておくが、巻き込む以上は危険な目には遭わせるなよ」 「危険でないはずがない。だがやらなければいけないのが、『組織』の仕事だ」 「そうやって割り切れる辺りが、お前の嫌いなところだ」 「被害が拡大して身内に迫るまで、割り切れずにぐずぐずしているのが、お前の嫌いなところだ」 睨み合うサロリアスと斬九郎 その雰囲気を察してか、それとも空気を全く読まずにか 「はいはい、恐い顔してないでちゃっちゃと仕事を終わらせよー。折角遊びに来たんだしねー」 「そういう事だ。早急に片付けるためにも、もう一人呼び出してもらおう」 「お前が指図するな……ったく」 渋々といった様子で、梨々に呼び出しの電話をかけるサロリアス かくして駒は揃ったものの、それを動かす手腕が問われる事となる 借り物の駒で指す一手は、吉と出るか凶と出るか 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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コトリバコの契約者 都市伝説『コトリバコ』 人間、都市伝説の関係なく女子供を近寄るだけで*す武器です 有効範囲は箱から半径10m 効果は対象の内臓をズタズタにして*す(中身がない場合それに等しい苦痛を与え死に至らしめる) 対象範囲は女性と15歳以下の男です(元服前という感じで) 契約コストは低いですが当然大人の男しか使えません 黒服 組織でも上層部に絡めるくらい上のやつ 刀、槍、ナイフ、等白兵戦が好きで結構できるが射撃はそうでもない 元人間にしては珍しく?組織大好き、故に首塚が大変気に入らない エロゲーが趣味 ページ最上部へ
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『もしもし!私、メリーさん!あなたの恋人になってあげるから、私と契約して、都市伝説契約者になってよ!』 「だが断る!!」 この一連の流れ、もう何度目だろうか 数えるのも馬鹿らしく、覚えてすらいない? 『どうして?こんな可愛いメリーさんが契約してあげるのに?』 「お前の姿見た事ねぇよ、声しかわかんねぇよ」 電話でしか接触してないから、姿がわからないと言うに 声的に幼女なのはわかるが……いや、声は幼女だが、実際は婆な可能性は否定できない その年齢でその声…だと、な声優さんがいらっしゃるのもまた事実 『この間、写メを送ってあげたじゃない』 「どアップすぎてどんな顔かすらわかんねぇよ」 改めて、確認してみる うん、やっぱりどアップでわからない 「っつか、メリーさんってのは、電話をかけた相手を殺すのと違うのか」 『メリーさんのお話で、メリーさんが人を殺すとは断定されてないの』 「まぁ、それはそうだが。そっからどうして俺の恋人になるとか俺が契約するとかそういう話になる」 『私は都市伝説だから、契約してくれる人が欲しいの!絆がほしいの、ぬくもりが欲しいの。存在を確立していきたいの!』 よくわからんと言うに それに、第一 「俺は女だから、幼女の恋人はいらん」 『大丈夫、メリーさんは幼女である以前に人形だから!』 「大丈夫じゃねぇよ」 『もしもし!私、メリーさん!あなたの恋人になってあげるから、私と契約して、都市伝説契約者になってよ!』 「だが断る!!」 この一連の流れ、もう何度目だろうか 数えるのも馬鹿らしく、覚えてすらいない? 『どうして?こんな可愛いメリーさんが契約してあげるのに?』 「お前の姿見た事ねぇよ、声しかわかんねぇよ」 電話でしか接触してないから、姿がわからないと言うに 声的に幼女なのはわかるが……いや、声は幼女だが、実際は婆な可能性は否定できない その年齢でその声…だと、な声優さんがいらっしゃるのもまた事実 『この間、写メを送ってあげたじゃない』 「どアップすぎてどんな顔かすらわかんねぇよ」 改めて、確認してみる うん、やっぱりどアップでわからない 「っつか、メリーさんってのは、電話をかけた相手を殺すのと違うのか」 『メリーさんのお話で、メリーさんが人を殺すとは断定されてないの』 「まぁ、それはそうだが。そっからどうして俺の恋人になるとか俺が契約するとかそういう話になる」 『私は都市伝説だから、契約してくれる人が欲しいの!絆がほしいの、ぬくもりが欲しいの。存在を確立していきたいの!』 よくわからんと言うに それに、第一 「俺は女だから、幼女の恋人はいらん」 『大丈夫、メリーさんは幼女である以前に人形だから!』 「大丈夫じゃねぇよ」 大丈夫じゃない どう考えても、大丈夫じゃない 恋人以前の問題だろうが 人形を愛する趣味はない 『えー、エロエロな事をしても問題ないのに』 「したくねぇよ。っつか、お前は女が恋人でもいいのか」 『私は男も女もどっちもいける口なの』 ぶつっ 通話を切った うん、変態だ どう考えても変態だ 都市伝説とか言っているが、もしかしたら幼女声の痴女からの電話なのかもしれない よし、非通知に……… ~♪~ 皆がいるから よっこらせっくす ~♪~ 『もしもし!私、メリーさん!突然通話を切ってくるなんて酷いわ』 どうして、勝手に通話がつながるんだよ畜生 どうなってんだ、この怪奇現象 幼女声の変態から電話がかかり始めて一週間 俺は、窓からこっちを覗いてきている人形に気付かぬふりをしながら、このやり取りを続けているのだった 終われ 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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……さて どう、答えたらいいものやら 「怪奇同盟」より、避難場所として使ってもいい、と言われていた墓場 そこに入り込み、休憩をしていたのはいいのだが… …まさか、こんな話を持ちかけられるとは 「…私と契約、ですか?」 「あぁ」 「そうよ」 青年と少女が、同時に頷いてきた …確かに、自分も都市伝説である 人との契約は、可能だ だが… 「…二人とも、多重契約になるのですよ?危険すぎます」 多重契約 しかも、二人とも、属性が違いすぎる そのリスクは高い 「だから、俺たち二人が、お前と契約するんだよ。それなら、リスクを分散できるしな」 「……まさか、その前に。この馬鹿が他の都市伝説と多重契約してリスクを高めるとは思わなかったけど」 じろり 少女に睨まれて、青年はそっぽを向いている …まぁ、あの場は、そうしなければ危なかったとは言え… ……確かに、多重契約のリスクは高まっている 「…大丈夫だよ。俺は都市伝説に飲み込まれたりしない」 く、と 青年は、黒服をじっと、見つめてきた 少女もまた、黒服を見つめてくる 「……私だって、そうよ。そう簡単に、飲み込まれるもんですか」 「…ですが」 …二人が、そう言ったとしても 黒服は、契約を躊躇してしまう ……自分にとっても、それは悪い話ではない だが、しかし それによって、この二人に、都市伝説に飲み込まれるリスクを背負わせるのが、嫌だった しかし 少女も、青年も、決して引き下がろうとしてくれない 強い強い意思を持って、黒服と契約しようとしているのだ 「あなたの力になりたいのよ……あなた、今のまま「組織」にいたんじゃ危ないわ。今回の件で嫌というほどわかったでしょ?」 「俺達と契約すれば、「組織」を離れても、お前は消滅しないかもしれない。あんな「組織」とっとと見限って、俺たちと契約した方がいい」 決して引かない、強い意志 …これを前に、自分はどうすればいいのだろうか 「………」 黒服は、静かに考える …自分は、明日、Tさんの手伝いをすることになっている …「夢の国」の大元へと、殴りこむ手伝いを 二人と契約すれば、自分も何かしら、能力が付属、もしくは強化される可能性がある そうすれば…「夢の国」の大元との戦いに、自分も、少しは助力できるだろうか…? 「…わかりました」 はたして 自分などが、未来あるこの二人に、そんなリスクを背負わせてもいいものかどうか… 悩みながらも…彼は、決断した サングラスを外し…直接、二人を見つめる 「…私などと、契約して、くださいますか?」 真っ直ぐに、真っ直ぐに、青年と少女を見詰める 黒服を見つめ返したまま…青年も、少女も、同時にはっきりと頷いて その瞬間に、黒服と二人との契約は、成立した 「----っ!?」 二人に、多重契約のリスクがのしかかった事を、黒服は理解する 特に……やはり、青年の方が、その重圧に押しつぶされかけている 一つが「厨2病」と言う多重契約が成功さえすればリスクが少ない都市伝説とは言え…やはり、三つ同時は、危険すぎたか しかし、もはや契約は始まっている 止める事は、できない …契約が、終了した 少女も……青年も 人間の、ままだ …都市伝説に、呑み込まれてはいない その事実に、黒服はほっとした そして 同時に理解する 自分が、何者だったのか 同時に、青年と少女も理解する この黒服が、何者なのか 「…お前」 「…「組織」の黒服なだけじゃ、なかったのね…」 「……そのようです」 苦笑する 何故、今まで気づかなかったのか? …いや、きっと、気付くべきではなかったのだろう もし、気付いていたら、自覚していたら…自分は、「夢の国」に飲み込まれていただろうから 三人は、理解した この黒服は、「組織」の黒服であると同時に…「夢の国」の黒服であるのだと かつて、人間であった頃 彼は「夢の国の地下トンネル」と「夢の国の地下カジノ」と契約していた そんな彼の前に、正気を失った「夢の国」が現れる 彼は、「夢の国」を正気に戻そうとした 元の「夢の国」に戻そうとした 「夢の国」に飲み込まれようとしていた少女を、助けようとして …そして、失敗してしまった 二つの「夢の国」関連の都市伝説と契約していた彼 そのまま死亡しては、「夢の国」に飲み込まれる危険性があった …「夢の国の黒服」になってしまうところだった しかし、「夢の国の地下カジノ」が彼との契約を解除した事により、「夢の国」とのつながりが一つ、なくなって …彼は、「夢の国の黒服」にはならずにすんだ 代わりに、彼は「組織」の黒服へと変わり果てたのだ だが、一度は「夢の国の黒服」になりかけた そのせいで、彼は完全な「組織」の黒服ではなかった 「夢の国の黒服」が、半分混じっている だから、「組織」の端末で行方を終えない 「組織」の完全な管理下におかれていなかったのだ だからこそ…今まで、裏切り行為に近い行為を行っても、消されずにすみ続けた もし 契約前に、その事実を自覚しては…彼は、「夢の国の黒服」へと、完全に変化してしまっただろう それほどまでに、かつての彼は、「夢の国」との関わりが深かったから しかし 彼は、契約してその事実に気付いた だから、「夢の国」に飲み込まれはしない 今の彼は、二つの都市伝説が混ざり合った、非常に奇妙で、稀有な存在 「組織」の黒服であると同時に、「夢の国の黒服」と言う…非常に特殊な存在になっていた 「二人とも、大丈夫ですか?」 「問題ないわよ」 「あぁ、俺もだ」 …若干、青年の方は顔色が悪いが… どうやら、大丈夫そうである 改めて、ほっとした 「すみません…私のせいで、あなたたちに、危険なリスクを背負わせてしまって」 「謝る必要なんてないわよ。私たちがしたくて、あなたと契約したんだから」 照れ隠しするようにそっぽを向きながら、少女はそう言う あぁ、と青年も頷く 「これで、お前を少しでも危険から遠ざけられるなら、問題ねぇよ」 にんまりと 嬉しそうに、青年は笑ってきた 「これで、俺たちは運命共同体だろ?」 「…そう、言うのでしょうかね?」 苦笑する これも、契約の効果なのだろうか 幾分か残っていた疲労が、少し消えている …これならば、明日、Tさんの力になれそうだ 「…ありがとうございます」 サングラスを外した状態のまま…黒服はやんわり笑って、二人に礼を述べたのだった 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
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バールの少女・番外編 その1 「うおおおおおおおおおおおッッ、こっち来んなあああああああああああああッッ!!」 おっと、初っ端から絶叫で始めてすまねえ。 俺の名は、「行方 不明」と書き、「なめかた あけず」と呼ぶ。 こんな名を付けた俺の親はさぞッッかし根性腐ってるんだろうが、 名付け主の父親の名は、「跡絶」と書いて、読みはまんまの「とだえる」だ。 これはもう、俺への当て付けとしか思えねえ。そんなに己の名が嫌なら改名手続きすりゃ良いだろうがよ、ッたく……。 ……ああ、悪い悪い。なんで俺が絶叫を上げてるかってーと、だ。 「こっちに来ンじゃねえええええええええええええええええええええッッ!!」 早い話が、スパニッシュフライの大群に追われてるワケよ、俺。 どうして、こんな事になったのか? そこの所もひっくるめて俺の身の上話を始めたいんだが、いいか? ちっとばっか長くなるがな。 OK! じゃ、サクッと進めちまおうか。 俺の名は、行方不明。って、さっきも言ったっけ? 大学卒業して2年目に突入する、ってったら大体の歳が分かるか。 俺は所謂、「フリー」の「能力者」だ。 契約した都市伝説ってのは、業界用語で言うところの『現象型 遠隔発動/形態変化系 都市伝説』ってヤツ。 「ケムトレイル」って言った方が伝わるかな? 契約を結んだのは大学入りたての頃だ。当時は何が何だかよく分からなかったが、 「人に化ける猫」のおっちゃんと出会った事が幸いして、 都市伝説についてや契約、能力の扱い方、エトセトラ、プラスアルファを一通りレクチャーしてもらった。 そこからは、俺独自の能力研究に勤しんだんだが、まあ、時間はたっぷりあったから己のチカラを熟知するには十分だった。 その時、俺は思ったね。もう、超能力者かと。正義のヒーローかと。 ぶっちゃけこの能力使えば、可愛い女の子とチョメチョメしたり極悪漢を一撃でブッ倒したり夜な夜な悪の組織と死闘を演じたり出来るワケだろ? 俺はもう、燃えに燃えたね。その時は。 大学に居た間は、実家のある辺湖市で活動していた。 「猫」のおっちゃんや地元の都市伝説や俺みたいな「契約者」のたむろしてるグループに飛び込んでみたり、 自発的に夜間パトロールとかやってみたり。 ところがさ、事件らしい事件が起きないワケよ。全くと言っていいほど。 しかも、俺の入ったグループの連中ってのが、争いは御免とばかりの超穏健集団でドンパチは他所でやれと言いやがる。 もうね、馬鹿かと。阿呆かと。 都市伝説と契約した以上、能力をフルに使わねえと意味が無いだろがって話よ。 んで「猫」のおっちゃん曰く「隣町には血の気の多い都市伝説どもが跋扈してるから其処へ行ったらどうだ」との事なので 大学卒業を機に実家を飛び出し、隣町、つまり「学校町」に移り住んだ。今から一年半程前の話だ。 「学校町」に来てからはバイト掛け持ちしつつ、一年くらいは情報収集に徹したね。 この間は暴れまわったりはしていない。いや、情報収集はマジで重要。 色々分かって来た事だが、まず「学校町」は都市伝説の個体数が辺湖の比じゃない。 さらには、色々な勢力がひしめき合って、かなり混沌とした状態になっている。無秩序ってヤツだろうか。 しかも、半端無く強い「契約者」どもが幅を利かせてるようで、こんな状況の中にノコノコ踊り出たなら即刻消されちまう。 だが、俺は思ったね。影でコソコソしてんのも中々悪くない、と。 これだけ強い連中がワンサカ居る中で、気付かれない様に過ごすスリル。 都市伝説が蔓延る夜の闇に紛れて、探究心をくすぐるソウル。 まさにゾクゾク来るじゃねえかと。 俺が具体的に動き出したのは、今年の五月辺りからだ。その頃から《夢の国》とかいう都市伝説が俺の耳にも入り始めていた。 そして、話は飛んで秋祭りの前。 近々、《夢の国》が派手に暴れるという情報を掴み、強大な都市伝説相手に闘うか逃げるか考えあぐねていた時だ。 念願の、「スパニッシュフライ」が、しかも、大群で出現した。 「スパニッシュフライ」は前々から狙っていた都市伝説だ。 コイツは使い道によっちゃ、女の子とチョメチョメどころか大金にも化けるシロモノだ。 みすみす見逃す手は無い。 粘り強い探索の末、遂に、西区の廃工場地帯で、スパニッシュフライの大群と相見えた俺は、 早速生け捕りにするべく、ケムトレイルを吹き飛ばしたワケだ。スパニッシュフライの大群に向かって。 ところが、だ。 スパニッシュフライは、当初俺が予想していたように、昏睡状態に陥って地面に落ちる【のではなく】、 何というか、【興奮した】というべきか、【凶暴化した】というべきか……。 兎に角、【活性化して襲いかかって来た】ってワケだ。そして、話は先の絶叫に繋がるってこった。 「クソッ、何だか色々マズい気がするぜ!」 全力疾走する俺の後ろからは、沢山の不気味な羽音が迫って来る。 やろうと思えば全身を「雲化」した状態になれば、追いつかれても無問題なのだが、 ケムトレイルの影響で更に活性化しそうだし、何よりあの大群に突っ込まれるのはたとえ「雲化」した状態でも御免だ。 追いつかれたら、ヤバい。俺の本能が、そう警告を発している。 廃工場が立ち並ぶ中を右に折れ、建物の中に入り、階を上がっては、外へ飛び下り、左に折れて。 ――何て奴らだ! まだ追ってきやがる!! 次の曲がり角を折れた所で、絶句した。マズい、行き止まりだ! 「どうする、どうする俺!!」 羽音はこちらの状況にお構いなく迫って来る。逃げ道は、何処かに逃げ道は――あ。 俺の今まさに踏んでいるのは、下水渠への格子蓋じゃないか。 こ れ だ。 顔を上げれば、曲がり角から姿を現したスパニッシュフライの大群がこっちに突っ込んで来る。 俺は、「全身を雲化」して、一気に【沈み込んだ】!! 「……間に、会ったか!?」 どうやら、セーフらしい。下水渠の下部へ侵入した俺は、数メートル上にある格子蓋を挟んで唸りを上げている羽虫の大群を睨みつけた。 いや待て。奴ら、格子蓋の間から入り込んで来やがった!? 「うおッ、マズッ!!」 俺は「雲化」した状態のまま、下水の流れる方向へと疾走を再開した。 * 「グブッ、ゴホッゴホ」 スパニッシュフライから逃れるために疾走していたが、何時の間にか下水の激流に身体毎持っていかれていた。 下水に流され、どの位の時間が経過しただろうか。唐突に、暗闇から光溢れる世界へと投げ出される。 大きな音と共に、着水。 「ゴホッ、んだよ、此処は。川か何かか?」 両側がコンクリートの壁で、その間を俺は流されてゆく。見上げれば、眩しいまでの青が拡がっている。 出し抜けに視界が暗くなった。橋が架かっている所まで流され、その影に入ったのだ。 「ハア、災難だったな」 壁へと捕まって、排水用だか知らんが小さな塩ビ製のパイプの覗いている穴に器用に手足を突っ込み、壁を登る。 ッたく、スパニッシュフライを生け捕る筈が、その大群に追いかけられるは、ズブ濡れになるは、何やら妙な臭いはするはで、今日は厄日か? 辺りを見回せば、どうやら「学校町」の端、南区と隣町の境目まで流されたようだ。 「うええ、西区から南区まで流されて来たのかよ……」 一旦アパートに戻って、風呂に入ろう。いや、スーパー銭湯に行こう。このまま戻りたくない。 「ちっきしょお、覚えてろ淫乱黒焦げスパニッシュめ……」 えっぎし、とクシャミを一つ。このままじゃ風邪ひいちまうな、と俺はその場を立ち去ろうとして――。 車のハザードをすぐ背後で聞いた。 え、と振り返ってみれば、眼前に青いトラックが迫っている。 何、ひょっとして俺、マズくない? 直後、物凄い衝撃が俺を襲う。そして、俺の意識は闇の中へ、や、闇の、な、か……へ……。 * 「うあっちゃあ、アレ大丈夫かなあ?」 駄菓子屋の前に突っ立っている黒服Iは、車道の向こうにある橋を眺めている。 救急車とパトカーが数台、橋の上に止まっている。 見ている内に車中へ担架が収納され、間もなくサイレンを響かせながら走りだした。 後に残ったのは、青いトラックとその運転手らしき男性、その男性に事情聴取をおこなっている警察官数名だ。 バイクや自転車が転がっていないのを見るに、歩行者を轢いてしまったらしい。 「うーん、無事でありますよーに」 走り去る救急車に向かって、咄嗟に合掌のポーズを取る。 南区の"巡廻"を終えた黒服Iは、遅い昼食兼お八つを買うべく、行きつけの駄菓子屋へと向かっていたのだが 交通事故の現場に遭遇したために、心持ち複雑な気分だ。 駄菓子屋に入ると、早速店主のお婆さんが話しかけてくる。何処か興奮しているようだ。 「アンタ、今しがた其処で交通事故があったんだよ」 「ええ、救急車が走り去るトコ見ましたよ。無事だといいですね」 「ああ、あれはアタシが呼んだのさ。ヒヒ」 この駄菓子屋は狭い。六畳程度の店内に駄菓子やら雑貨やらが所狭しと並んでいる。 黒服は棚からクリームパンを一つ取り、出入り口側の壁に備え付けられた冷蔵庫から冷えた瓶入りコーヒー牛乳を取りだす。 クリームパンとコーヒー牛乳は、この駄菓子屋で彼がよく買う組み合わせだ。 「死んだんならニュースでやるだろ、ニュースで」 「……縁起でも無い事、言わないで下さいよ」 興奮した店主にげんなりしながらも、代金を渡し駄菓子屋を後にする。 「死んだら化けて出るだろおおおおなああ、『姉っ子橋の幽霊』ってなあああ」 追ってくる婆さんの声は凄く楽しそうだ。 ますますげんなりしながらも、出入り口脇のゴミ箱に剥いだ瓶の蓋を捨てる。 あの橋――正式名称『祈りの橋』、通称『姉っ子橋』の向こう側は、辺湖市「新町」である。 言わばこの橋は、「学校町」と「新町」を結ぶ点の一つだ。 黒服のルーチンは、午前は「学校町」南区の"巡廻"を、 そしてそれが終われば辺湖市「新町」の"巡廻"及び辺湖市在住の『担当者』に会う、という事になっている。 今日も今日とて、彼はあの橋を通って「新町」へと行くのである。しかし。 「……ご飯食べてからでもいいですよね」 橋の上は警察による事情聴取のために通行止めとなっている。取り調べはそう簡単には終わらないだろう。 もしかすると、遠回りをして辺湖市に行かなければならないかもしれない。 普段は歩きながら食べる黒服だが、今日は橋の方を眺めながら食事を取る事にした。 駄菓子屋の前で、コーヒー牛乳をちびちび飲みながらクリームパンにパクついていると、携帯の着信音が鳴った。 黒服の持つこの携帯。普段は電話が掛って来る事など殆ど無い。むしろ、黒服から方々に掛ける事が多い。 尤も、重要な時に限って通話中や電波の不調等で相手に繋がらない事が多いのだが。 スーツから引っ張り出し、通話相手を確認する。――上司からだ。 「あい、もしもし。"I"です」 「インソ君、今何処に居る?」 「がっこーちょーみなみくの駄菓子屋前で、ご飯食べてます」 「てコトは、今から「新町」の"巡廻"か?」 「ええ、これから廻るんですけど。……何かありました?」 何処か含みのある上司の声色に、彼はこちらから直接問うた。 「察しがいいな。つい先程"X"から連絡があってね。 どうやら《夢の国》絡みで《イルミナティ》が上層部に挑発を仕掛けてきたらしいんだ。 今は、上層部の重役が向こう側の相手をしているらしいんだが……」 「……何でまた」 《イルミナティ》とは、辺湖に「特務分室」を置いているという『結社』の一つ、らしい。 彼らと《組織》の上層部とは何らかの不和があるらしく、 《組織》の黒服が辺湖内で全くと言っていい程に活動していないのは、こういった事情に由来する、らしい。 ――こうも歯切れ悪いのは、実の所、黒服Iとその上司、 「辺境」のスタッフがこういった事実を知らされたのがつい先日の事だったからだ。 「んな事あたしが知るかい。兎に角、インソ君はこの件のほとぼりが冷めるまで辺湖には入らない方がいいって話だ。 こっちに戻っといで」 「事情がよく分かりませんが、分かりました」 「《夢の国》戦の前に、こんな厄介事ふっ掛けてくる辺り、奴さんらも《組織》に圧力かけて楽しんでるんだろうさ。 さて、その《夢の国》の件で結構な数の書類仕事が舞い込んできてるよ。早いトコ片づけちまお」 「りょーかいです」 んじゃそゆことで、と通話が切られた。 「……《夢の国》かあ」 携帯をしまいながら独りごちる。 過去に一度、『担当者』やその仲間達と一緒に《夢の国》を目撃した事がある。 当時は幸いにして、《夢の国》はただ歩いているだけで犠牲者を出していた訳では無かったために 直接対峙するという事態に至らずに済んだ。 しかし、今回は違う。 近い内《夢の国》と全面的に激突する事になる。 前回のようには、いかないのだ。 「……何としてでも次郎さん達とコンタクト取らなきゃなりませんね」 《夢の国》が暴れ出した時、「学校町」のみならず辺湖も無傷で済むはずが無い。 しかし、最悪の事態を招くような事は、絶対にあってはならないのだ。 「でも今はしっかり腹ごしらえ、と」 黒服は決意新たに、気合いを入れてクリームパンにがぶりついた。 おわる 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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アンケートまとめ ID GyVCWoZpO さんの場合 Q00. あなたは都市伝説を信じますか? 火の無い所に煙は立たない。そういうこった。 Q01. あなたはどんな都市伝説が好きですか? 妄想して萌えれるヤツと、戒めや風刺的なやつ。 Q02. あなたがこのスレで好きな物語はなんですか? 花子さんと契約した男・巨乳なテケ子・うさぎちゃん 闇子さん etc Q03. Q02.のどこが好きですか? 内臓ボンバー!!は爆笑したwww花子さんと契約した男のやり取りに萌える。乙女な骨ってのが良い。テケ子と先生の新妻ライフとか好き。名前通り小動物系うさぎちゃんと強気なようで脆い闇ちゃん萌え etc Q04. あなたがこのスレで好きなキャラクターは誰ですか? 赤い靴を初めとする変態ども。隙間男とか。 手前味噌ながら花子様。 上の質問で萌えた方々。 Q05. Q04.のどこが好きですか? 突き抜けた変態はむしろ気持ち良い・清々しい。 Q06. あなたの契約したい都市伝説はなんですか? メリーさん。ローゼン的に考えて。 Q07. あなたのフェティズムを教えてください。 黒髪 うなじ わき 脚 鎖骨 メガネ 夏服 浴衣(祭のか温泉のかで小一時間語れる) まだまだあるよ Q08. あなたの好きな曲を教えてください(ジャンルは自由です)。 Star Dust(サンホラ) 聖少女領域(アリプロ全般好き) JAP・キミノウタ(西川全般好き) レッツ ゴー関連の曲けいおん!全般 etc Q09. 御感想、御意見など、御自由にどうぞ!! コラボ良いよね。もっとコラボられてみたいわ。 声劇化羨ましいわ。 うるせぇ!ポロリ温泉初の(ryぶつけるぞ!! Q10. さっきからあなたの後ろにいる方はどなたですか? 後ろ?ああ、今は俺の横で寝てるぜ。 Q11. あなたは赤/好きですか? 嫌いじゃないぜ
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ある噂があった。それはとてもありえないような噂。 例えば、某大型服屋の女経営者は、子供を誘拐しているとか。 例えば、某モデルは、カラスを操る音波を出しているとか。 例えば、某やくざの跡取り息子は、実は女の子だとか。 そんな馬鹿馬鹿しい噂の一つ。 誰かが語る。友達の友達が……。 誰かが聞く。ルーモアという店には……。 誰かが見る。有名な雪男が……。 誰かが体験する。気がつくと覚えのない場所に……。 誰かが吸う。そしたら女に……。 誰かが知る。 「学校町には都市伝説が実在する」 という都市伝説があることを。 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
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これは、黄昏正義が小学2年生の頃の話。この話は夕暮れ頃から始まる。 正義「大王、そろそろ行くよ。」 大王「いつでも良い。だが、なんでわざわざこんな時間に戦わねばならんのだ?」 正義「だって夕方にしか出ないやつらもいるんだろ?」 大王「ったく、分かった。行くか。」 正義は彼の契約した都市伝説、【恐怖の大王】に抱えられて窓から飛んでいった。 正義は子どもでありながら都市伝説と戦っているのだ。 だが、世界征服を企む【恐怖の大王】にとって、この行為は無駄でしかない。 大王はすぐにも征服活動がしたいのだ。 しかし、正義少年といる事で自分の能力はどんどんパワーアップする。それに彼を放っておくと契約による死の危険もある。 結局のところ、大王は正義から離れる事はできないのだ。 大王「ところで少年、何故背中に乗らないんだ?そっちの方が楽だろ?」 正義「ん?だって、この方が飛んでるみたいで気持ち良いじゃん。」 大王が「そうか」と返した頃にはもう小学校が見えていた。 飛んでいけばあっという間なんだ、と正義は思った。 門を飛び越え、何故か鍵が開いていた扉から校内に潜入した。 正義「いい?懐中電灯持った?ボクはあっちを見に行くから大王はそっちを見に行って。」 大王「分かった。気をつけろよ。」 そう言って二人は分かれた。大王は数分ほど歩き回ったが、それといった気配は無い。 とりあえず現状報告ぐらいしておくか。スパイごっこのように・・・。 大王「ん?通信機なんて受け取ったか?懐中電灯に・・・も無いな。」 しまった、あまりに自然に言われたから受け取ったものと勘違いしていた。 これでは見つけた時報告が・・・いや、先に少年が見つけてしまっていたら? く、どうやって少年を探したら・・・。 ???「ぎぃゃあぁあぁ!!」 確実に、正義少年の声。 大王「・・・。通信機、いらないな。」ヒゥューッ ―――一方、正義は、 正義「ぅわあぁぁー!気持ち悪いよぉぉー!」 想像通り、都市伝説に追われていた。 正義「(大王から武器、貰っておけばよかった。しかもあいつ早い!) 誰かぁー!大王ぉー!助けてぇぇー!」 不意に、正義は何かにぶつかる。 ???「いてて・・・。大丈夫か?」 正義「え?あ、う、うん。そ、それより速く逃げないと・・・。」 “ピタピタピタ”という音が聞こえる。あの都市伝説がこちらに近づいてくる。 ???「“チッ”【テケテケ】のやつ、もう追ってきたのか。」 謎の少年はあの都市伝説の方に手を伸ばす。瞬間、彼の手から0と1のような何かが波紋のように広がる。 ???「よし、逃げるぞ!」 正義「えっ、で、でも」 ???「いいから!」 謎の少年に引かれて正義は走っていった。 すぐにあの都市伝説も追いかけ走る走る―――ぶつかる。 何にぶつかる?壁?とにかくここは通れない。 その都市伝説は別の道を“ピタピタ”と探しにいった。 その少し後、入れ違いになるように大王がやって来た。 大王「確かこっちだったな。おそらくここを“ガン”、た、くぅー。なんだ?透明な・・・壁?」 大王も見えない何かにぶつかる。触ってみるとガラスのような、しかし何か違う感覚がする壁が広がっていた。 辺りを見回すと、天井と床と壁に奇妙なマークが刻まれていた。 大王「(ちょうどここから壁になっているな。やはり都市伝説か? だとしたら追い込まれたら閉じ込められる、ってところか。とにかく少年を探さないと。ここを壊すか?)」 さらに辺りを見回すと、近くに階段があった。少年が行くとしたらこっちか?大王は2階へと飛んでいった。 その頃、1階にいる正義は、謎の少年に引かれながら窓際を走っていた。窓からの光が少年の顔を照らす。 正義「もしかして、勇弥くん?」 勇弥「お、やっぱり正義だったのか。」 謎の少年の正体は[日向 勇弥]だった。 彼は正義の幼稚園の頃からの1番仲の良い友人で、俗にいう親友だ。 勇弥「変な悲鳴上げてたぞ。そんなに怖かったのか?って、それより!なんでここにいるんだ!?」 正義「ん!あぁ、えっと・・・。筆箱忘れて・・・。」 勇弥「・・・そうか。」 『嘘は何とかの始まり』とは言うが、大王の言いつけで都市伝説の事は黙っておこう、と正義は考えた。 しかしそう言った後、ふと気付く。あの都市伝説を知っていた事、そして・・・。 正義「さっき、いったい何したの?」 勇弥「あ、あぁ。後で説明する。」 勇弥が困ったような顔をしているように見えたが、それを気にしている暇は無かった。 正義が何かの気配を感じる。 正義「また、なにか来る!」 勇弥「なに?!もう【テケテケ】が追いついてきたのか!?」 正義の言う通り、向こうから“ペタペタ”と音がする。勇弥はとっさに逃げる方法を考える。 勇弥「く、こうなったら・・・。正義!しっかり摑まってろよ!」 正義「うん!」 正義が勇弥につかまると、勇弥の周りにまた0と1のようなものがベールのように2人を包み込む。 例の都市伝説が“ペタペタペタ”正義たちのところへ向かう。そして―――2人がどこかへ消える。 後に残ったのは、0と1のようなものが、はじけた後、すうっと消えていくだけであった。 ―――正義が目を開けると、そこはどうやら学校の屋上のようだ。 つまり一瞬で1階から3階のさらに上まで瞬間移動したのだ。 これが人間のできる事か?いや、そんな訳が・・・。 突然、月が長い影を映す。その方向を見ると人が浮いている。 勇弥「ま、また都市伝説か!?」 勇弥は身構えるが、正義は逆に落ち着いていた。正義には何が来たかすぐに分かったようだ。 正義「勇弥くん、大丈夫だよ。ねぇ、大王!」 その影はだんだんと正義達に近づく。そして、光がゆっくりと大王の顔を照らす。 大王「都市伝説の気配を探って来てみたら・・・。 少年、大丈夫だったか。そして、少年の友達か。礼を言おう。」 表情が硬いままそう言ったあと、大王は勇弥に疑問を投げかける。 大王「だが、1つ質問をさせてもらおう。どうやってここ瞬間移動した?ただの人間にはできないはずだ。 もっとも、俺が見えている時点で、お前が契約者なのは確定だがな。」 正義「えっ、あ、そうか。じゃあ、あの時も能力を使ってたの?」 勇弥「・・・ん。バレたら仕方ないな。では、説明させてもらおうか。 オレが契約したのは【電脳世界=自然界論】だ。」 正義&大王「【電脳世界=自然界論】?」 コンピューターの基本は1と0で構成されている。これは陽と陰の二極理論と一致する。 また、陰陽を組み合わせて生じる八卦は、コンピュータの基本単位である8ビットに相当し、 16、32、64、128、256、・・・という数字にもそれぞれ意味がある。 ゆえに『コンピューターというのは、小さな箱の中で世界を再現しようとする試み』だというもの。 従って、『現実社会で起こることは基本的に電脳空間の中でも再現できる』ことになる。 それが【電脳世界=自然界論】である。 勇弥は軽やかで簡潔にこれを説明した。 大王「・・・。それでは説明になっていないはずだぞ。 今回は現実世界に影響を与えている。お前の能力は電脳世界に関する事だろ?」 勇弥「ん?あぁ、オレの能力ね。オレの能力は『現実世界のコントロール』さ。 あの時は『空気のせん断応力(?)』を高めて壁にしたんだよ。」 正義「『せんだんおうりょく』って何?」 勇弥「んー、分からん!なんかその辺りの数値をいじったら壁になった。 この能力自体は強いし便利なんだけど、頭使うから痛くなるんだ。」 正義「大変だね。」 勇弥「慣れればどうって事無いさ。ただ、1度覚えた物体のコントロールとかは簡単なんだけど、 もっと複雑な『生物』はやろうと思ったら死ぬね。たぶん。都市伝説なんかも調べるのは一苦労さ。」 大王「だから、現実世界に影響を与えられるのは何故だ?」 正義「調べてどうするの?」 勇弥「待った。んー、両方いっぺんに説明できるな。」 勇弥は手を合わせ、ゆっくりと離していく。両手の間から0と1のようなものが現れる。 勇弥「つまりオレはこの世界の管理人になったのさ。 オレは現実世界をコンピューターの設定を変えるような感覚で、 この数値を組み替えて性質を変える事ができる。 そして、そのデータを消す事もできる。ウイルスを消すワクチンプログラムのようにね。」 この事を聞いた時、正義よりも大王の方がが唖然としていた。いつ消されるか分からない不安に陥ったのだろうか。 しかし、その不安もすぐに消し飛ぶ事になった。 勇弥「ただ、さっきも言ったように1度覚えないと消す事もできない。 前に大変な事になったからもう2度とやらないだろうな。」 大王「(宝の持ち腐れ、か。心配して損したな。)さて、あの都市伝説を片付けに行くか。」 勇弥「おっと、【テケテケ】の事忘れてた。」 正義「そういえば、【テケテケ】って?」 【テケテケ】とは、下半身の無い女性の霊で、 『冬の北海道の踏み切りで女性が列車に撥ねられ、上半身と下半身が切断されたが、 あまりの寒さに血管が収縮したために出血が止まり、即死できずに数分間もがき苦しんで死んでいった』という話を聞いたものの所に3日以内に現れる、とされる。 逃げても『時速100~150キロの高速で追いかけてくる』といわれ、その異様なスピードと動きとは裏腹に 童顔でかわいらしい笑顔を浮かべながら追いかけてくるため、その恐ろしさをさらに助長するという。 勇弥「まぁ、これが大本だが、今回は違う。 『真っ二つに切られた女子高生の上半身が、犯人が持っていった下半身を捜している』 って話だったかな。これを聞いてオレはここに来たんだ。」 大王「それなら、速さに気をつければ問題ないな。」 壁を作るなどして隙を見つけ、攻撃。2人が作戦を考案中、正義はただ、腑に落ちない顔をしていた。 大王「少年、どうかしたか?」 正義「うーん・・・、とにかく行ってみよう。そうしたら分かるから。」 正義の言葉の意味も分からず、勇弥は0と1のベールを生成し、1階へと瞬間移動した。 ―――とたんに正義が何かを察知する。 正義「来るよ!」 勇弥「来たか。どっちからだ?」 正義「あっちとこっち!」 大王「2方向だと!?まさか・・・。」 正義の指した方向から“ペタペタ”“ピタピタ”と何かが来る。 片方は、勇弥の言っていた【テケテケ】。しかしもう片方は―――下半身だけの、スカートをはいた何か。 正義「あのスカートの方がボクを追いかけてたんなんだよ!」 なるほど、気持ち悪い。これがただ走っていたら【テケテケ】よりも気持ち悪い。 勇弥「く、【トコトコ】か。都市伝説2体を相手なんて・・・。」 【テケテケ】と【トコトコ】が跳びかかる。―――しかしそれらの軌道は正義達を離れ、2体がぶつかる。 よく見ると、どうやら【テケテケ】は【トコトコ】を抱擁しているようだ。これはいったい? 勇弥「どうゆう事だ?」 正義「やっぱり。ボクが聞いた話は勇弥くんとは違ったんだよ。」 (奈海「ねぇ知ってる?この辺りで殺人事件があったんだって。) ( その犯人は下半身を持って逃げたんだけど、その下半身が妖怪になって) ( 置き去りにされた上半身を捜してさまよっているんだって。」) その後は例によって3日以内に食べられる、と続いたらしい。 正義「つい『口が無いのにどうやって食べるんだよ!』って言っちゃったよ。」 勇弥「あいつ好きだなー、お前を怖がらせるの。」 大王「つまり、とうとうお互いを見つけてしまった、という事か。」 そう、【トコトコ】とは【テケテケ】の下半身版のことである。そして今回の場合、お互いに探しあっていた関係だったのだ。 【テケテケ】が【トコトコ】の体の上に乗っかる。つまり、いつかの女子高生の姿に戻ったのだ。 正義「【テケトコ】になったー!?」 勇弥&大王「「【テケトコ】?!」」 【テケトコ(正義命名)】が正義達をにらむ。嫌な予感がする。 勇弥「このままハッピーエンドだったら幸せなんだが・・・。」 勇弥の願いは彼女に届かず、【テケトコ】は攻撃を仕掛ける。 3人は何とかよけたが、彼女のパンチが廊下を破壊する。 勇弥「ふざけるなよ!なんであんな威力が出るんだよ!」 正義「たぶん、今まで走るために使ってたから腕力が上がったんだよ!」 大王「おまけに体も安定する。これであのスピードにパワーが加わった、か。」 【テケトコ】が跳び上がる。次はキックと来るのだろう。 勇弥はとっさに手を【テケトコ】に向け、空気を壁に変換する。 空気の壁に【テケトコ】の蹴りが炸裂する。想像に反し、壁が壊れそうになる。 勇弥「これも持たないな。正義!お前の都市伝説、【大王】だったか?何ができる?」 正義「色々降らせる事ができるよ。武器とか雷とか。」 勇弥「雷ィ!?すげぇじゃねぇか!」 大王「ただし、命中率が低い。ここはやつの弱点を」 勇弥「あるぜ。雷の命中率を上げる方法。あっちに行くぞ!」 正義と大王は勇弥に指示された方へ走り、勇弥もその後を走る。途中、足止めのためか壁を2枚ほど作る。 曲がり角を曲がったところで、頭に手を当てながら勇弥が言う。 勇弥「よし、ここでいい。いいか、正義、大王さん。空気ってのは普通は絶縁体なんだ。つまり電気を通さない。 だから雷は空に大量に溜まった電気を無理に地面に流そうとしているんだ。」 勇弥がそう説明した後、来た方向を指差す。すると指した場所に0と1が線のように並ぶ。 ゆっくりと線は伸びていき、最後には正六面体を作っていた。 それに勇弥が触れると、線の数値が変わりだし、囲んでいた空間にも0と1が波のように広がっていった。 何をしているかは正確には分からない。だが、だいたい想像はつく。 正義「大王、『雷』の準備!」 大王「わ、分かった。」 大王は驚いているのか、信じられないのか、少しつまりながら返事をする。 紫がかった黒い雲があの空間の上方に広がる。雷の準備は万端だ。 ―――その頃、向こう側では、【テケトコ】が空気の壁を百烈拳で破壊していた。 勇弥によって彼の知る最大値となった耐久も、この力の前では無力。 とうとう3つ目の壁も破壊され、次は襲うのみとなった。【テケトコ】がゆっくりと角を曲がると正義達がいた。 百烈拳、跳び蹴り、あるいは―――などと考えながら正義達に歩み寄る。 勇弥「今だ!」 正義「大王!」 大王「分かっている!」 【テケトコ】の頭上の黒雲にスパークが走る。まずい!そう思った頃には手遅れだった。 ―――所詮100km/h以上の速さで走れても、彼に敵う訳がなかった――― 勇弥「人々は考えた。もし空気の一部を導体にする事ができたら雷を操れるのでは、と。 それが半導体研究の始まりと言われている。そして、オレにはそれができる!」ドゴォォォ・・・ン テケトコ「あぁああぁあぁー!」ビリビリビリ 勇弥が作った正六面体の空間の中に電撃が走る。 分かった方もおられるだろうが、勇弥はあの空間の空気の電気伝導率を上げたのである。 そうする事によって大王の雷があの空間全体に広がるようになったのだ。 勇弥「へへん、名付けて『雷撃棺(ライトニング・コフィン)』!決まったね。」 正義「かっこいい・・・。勇弥くん、すごい!と、大王、そろそろ止めて。」 大王「(またあれか・・・。)分かった。」ピタッ シュゥゥ・・・ 雷が止まると、分裂した【テケテケ】と【トコトコ】が倒れていた。おそらくまだ生きているのだろう。 勇弥「おい、正義。いったい何を・・・?」 正義「いい?いくら殺されて辛かったからとはいえ八つ当たりするのは(中略)だいたい捜していたものが見つかったんだから(後略)」 やはりいつものお説教が始まった。【テケテケ】と【トコトコ】は早々に正座のような体勢をとっている。 何度も聞いている大王にとってはもう慣れた事だが、どうやら勇弥は初めてのようだ。 勇弥「まさか、いつもやっているのか?」 大王「あぁ。お人好しにもほどがある。」 勇弥「ま、それが正義らしいところなんだけどな。」 勇弥は自然と笑みを浮かべる。数分後、説教も終盤を迎えたようだ。 正義「―――だから、これからは良い都市伝説として人を助けたりする事。分かった?」 【テケテケ】と【トコトコ】は、どうやら頷いているようである。 正義「よし、じゃあもう行ってもいいよ。」 【テケテケ】は【トコトコ】の上に乗って【テケトコ】になり、廊下の向こうへ駆けていく。 途中、彼女は振り返って手を振った。かわいらしい笑顔で。 改めて考えてみれば、元はただの女子高生で、犠牲者の1人でしかなかったのかもしれない。 そして彼女の姿も、ゆっくりと、夜の闇に消えていった。 勇弥「一件落着、だな。」 正義「さてと・・・、もう晩御飯の時間だ!早く帰らないと。」 勇弥「俺ん家まで送ってやるよ。そこにならブックマーク置いてあるからワープできる。」 大王「屋上に瞬間移動した時の能力か。ネットのリンクの要領か・・・。 ん?という事はその能力でここに来たのか?」 勇弥「そうだけど、なんか問題でもあった?」 大王「では、誰がここの鍵を開けたんだ?お前の能力で開けたんじゃないのか?」 正義「そういえば開いてたっけ・・・。まさか、他に契約者が?」 勇弥「・・・ただの閉め忘れかもな。」 正義「それだったらがっかりだなぁ。いい友達になれると思ったのに。」 不意に出たプラス思考な発言に勇弥は笑い、3人は自宅へと帰るのであった。 ―――数日後、ある男が誘拐未遂で逮捕された。その時、その男がこんな事を言ったらしい。 “犯人「女子高生ぐらいの女が俺を投げ飛ばしたんだ!それから、逃げていたら、 前からその女の上半身が、鬼のような形相でやって来て、振り向いたら、女の下半身が、ぅわあぁぁー!」” ―――世界征服への道は遠い。 第4話「雷撃棺」―完― 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王