約 439,965 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1766.html
10話 前編 月明かりが雲に隠れたのを見計らって、 一人の男が音も無くトリステイン魔法学校の敷地に踏み入った。 いや、「踏み入った」と表現するのは正確ではない。 何故なら男は「レビテーション」でも使っているかのように、 空中を滑るように渡って学校の校舎の壁に取り付いたからだ。 その姿は、自分の糸を伝ってするすると移動する蜘蛛のようである。 彼が壁に取り付いた瞬間にも音はしなかった。 吸盤へと変形した彼の両手足の指紋が接触時の音を吸収したのだ。 そして自分の手足が壁にしっかり取り付いたことを確認すると、 その男――ラング・ラングラーは、自分が受けた依頼の内容を反芻した。 シェフィールドと名乗ったあの女がラングラーに依頼したこと。 それはこの魔法学校からある生徒を拉致することだった。 ちなみに、頭がまともな人間ならこんな依頼は普通しない。 トリステイン魔法学校などという、教師どころか拉致の対象となる生徒自身が魔法という強力な自衛手段を持つこんな場所に人攫いに入ったところで、 あっさり撃退された上に監獄送りになるのは確実だからだ。 にもかかわらず、そんな魔法学校に人攫いに入ってほしいと依頼されたのは、 やはりラングラーのメイジ殺しとしての実力が買われたためであろう。 彼が「メイジ殺し」ならぬ「魔法殺し」と呼ばれる、ラングラーの実力が。 さて、話を戻そう。 ラングラーが受けた任務は、トリステイン魔法学校の「ある生徒」の拉致。 そしてその「ある生徒」が寮のどこにいるかは、スデに確認済み。 本人の特徴もラングラーの頭にキッチリ入っている。 全てが完璧だ。 そう心の中で呟くと、ラングラーは音も無く壁を這い上がり始める。 ターゲットの生徒が眠る、女子寮の一室の窓に向かって。 そしてお目当ての窓に到着したラングラーは自分の「力」を静かに呼んだ。 「ジャンピン・ジャック・フラッシュ・・・」 その呟きとともに、ラングラーの背後に奇妙な亜人が現れる。 その姿はマントの下のラングラーの格好に酷似しており、 目には釘を打ち付けた、鉄板のようなデザインの目隠し。 腕にはいくつもの穴が等間隔で開いた腕輪。 これが「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」。 ラング・ラングラーが「魔法殺し」たりえる、その力の理由。 ラングラーの意志のままに動く、ラングラーの半身とも言うべき存在だ。 そのジャンピン・ジャック・フラッシュが、窓へと手を伸ばした。 そして、まるで幽霊のように窓ガラスをすり抜けると、窓の内側から鍵を外した。 そしてラングラーは両手の吸盤を窓ガラスにくっつけると、そっと窓を開く。 夜風が部屋の中に静かに吹き込んだ。 それに部屋の主である桃髪の少女が気づくことは無かった。 しかし少女の使い魔たる亜人――ホワイトスネイクには、それが分かった。 室内に吹き込んだかすかな風を感じ取ったホワイトスネイクは、 瞬時に戦闘態勢に移った。 今ホワイトスネイクはルイズの体内で眠っている状態だ。 まだ実体化はしていない。 しかしルイズの身体に何かが起きれば、 すぐにホワイトスネイクはそれを感じ取れる。 スタンドとして20年間プッチ神父を守護し続けてきた経験が、 それを可能にしていたのだ。 そしてホワイトスネイクは考える。 部屋のドアが開いたのなら風など吹き込まない。 ならば空いたのは窓。 しかし窓には鍵がかかっていた。 ならばこの部屋に不法侵入したのは魔法を使えない人間ではない。 メイジだ。 メイジなら鍵を外せる魔法を使える。 そしてこの学校の生徒にわざわざ窓から入ってくる理由が無い以上、 このメイジは確実に学校外の存在。 つまりほぼ確実に敵。 実体化していないためにホワイトスネイクは侵入者の姿を見ることは出来ない。 だが今までの経験がそれを十分に補い、状況を把握させてくれた。 どうするべきか。 この七日間、ホワイトスネイクを悩ませ続けた命題が、 まさしく抜き差しなら無い状況で彼に向かってきた。 自分の存在意義たる「主人の守護」を実行すべきか。 自分を憎む主人が下した、「二度と出てくるな」の命令に従い、傍観するべきか。 迷ってばかりではいられない。 悩んでいる間にも、確実に侵入者は主人であるルイズに近づいている。 侵入者の目的の詳細は不明だが、この部屋に入ってきた以上、 ルイズを殺すか拉致するかが敵の目的の要綱なのは確実だ。 迷えば迷うほど余裕は無くなっていく。 しかしどちらを選んだとしても、自分という存在は否定されることになる。 果たしてどうするべきなのか。 (ダガ・・・コレ以上決断ヲ迷エバ本当ニ取リ返シノツカナイコトニナル。 ソウナルヨリハ・・・・・・クソッ!) 半ばヤケクソになって、ホワイトスネイクは発現した。 そして流れるような動作で腕からDISCを抜き取り、 そのまま窓の傍に立つ、見知らぬ「敵」に対してそれを投擲するッ! 命令の内容は「10メートル飛んだ後に破裂しろ」ッ! まさしく一撃必殺と言える命令が、侵入者の頭部へと向かい―― 「JJF(ジャンピン・ジャック・フラッシュ)ッ!」 部屋中に響く叫びとともに、DISCは弾き飛ばされたッ! 「ナン・・・ダト?」 ホワイトスネイクは驚愕した。 さっきまでの苦悶がそれこそ月までぶっ飛び、 ホワイトスネイクの脳裏から消え去ってしまうほどに。 その原因は自身の必殺の一撃がアッサリ弾き飛ばされた事ではない。 ジャンピン・ジャック・フラッシュ。 自分自身もよく知るその単語。 そしてそれを叫んだ侵入者の、その声に驚愕したのだ。 その単語を知る者、そしてその「力」を扱える者を、 ホワイトスネイクは一人しか知らない。 「今のは・・・DISCだと?」 そして動揺したのはホワイトスネイクだけではない。 侵入者――ラング・ラングラーも、今の攻撃に驚愕していた。 DISKなどというものはこの世界――ハルケギニアには存在しない。 そして今のDISCの感触――壊れそうで決して壊れない奇妙な手応え。 そんな物を扱える存在など、ラングラーはたった一つしか知らない。 「貴様ハッ!」 「てめー、まさか・・・」 「ラング・ラングラーッ!」 「ホワイトスネイクかッ!」 二人が驚愕に声を上げたのもつかの間、互いに瞬時に間合いを取る。 ラングラーはJJF自分の正面に回りこませ、 さらにその腕を突き出すように構えさせる。 そしてホワイトスネイクは太極拳の型のような構えを取る。 (一体ドウイウ事ダ? 何故ラング・ラングラーガココニイル? イヤ・・・ソレハ本体ノ死トトモニ消滅スルハズダッタ私ニ関シテモ同ジカ。 コイツモマタ私ト同ジク、メイジニ召喚サレルコトデ、コチラ側ヘ・・・?) (クソッ・・・何故こいつがここにいる・・・・? それに今・・・こいつ・・・このガキの・・・すぐ傍から出てきやがった。 ってことは・・・このガキがホワイトスネイクの本体・・・ってことか? ・・・ありえねえ。 こいつの本体は・・・こっちの人間じゃあ・・・ねえハズだ。 このガキが・・・『水族館』にいたハズが・・・ねえ。 だったら・・・このガキは・・・ホワイトスネイクにとっての・・・何だ? 本体でも無いのに・・・傍から出てくるなんてのは・・・それこそ有り得ねえ。 じゃあやっぱり・・・このガキは・・・本体なのか? それにホワイトスネイクは・・・一体どうやって・・・こっちに来た? 俺とおんなじで・・・いきなりこっちに・・・飛ばされて来たのか?) (トニカク・・・状況ヲ整理スルベキダ。 コイツノ『JJF』ハ中距離戦闘モ可能・・・パワーハ私ヨリ上。 ・・・ドウ考エテモ不利ダ。 スキヲツイテ急所ヲ突クノガ最善カ・・・?) (クソッ・・・こいつが・・・なんでここにいるかは・・・後回しだ。 それにしても・・・こいつがいるとなると・・・話が厄介になってくる。 俺がもらった依頼は・・・『ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールを無傷で確保すること』。 このガキが・・・ホワイトスネイクの本体である以上・・・ホワイトスネイクが受けたダメージは・・・ガキに反映される。 そうなったら・・・依頼は完全成功とは言えねえ。 ホワイトスネイクを・・・ヘタに殺す事は・・・できねえ。 クソッ・・・厄介な事に・・・なってきやがった・・・・・・) 互いに状況を把握に努め、取るべき行動を策定する。 しかしこの状況はどちらにも不利であり、ありがたくない状況だ。 そして―― 「もう・・・何なのよぉ・・・誰かいるのぉ?」 どちらにとっても、目覚めてほしくない人間が、目覚めた。 (シマッタ・・・サッキ、私トラングラーガ出シタ大声デ目ヲ覚マシタカ!) (ちっ・・・寝てる状態で拉致った方が・・・楽だったろうに・・・。 もっと・・・面倒に・・・なりやがって・・・) そして双方ともに、この状況に心の中で毒を吐く。 「・・・って、ホワイトスネイク! あんた、何で出てきてるのよ!」 ホワイトスネイクの姿を見たルイズが、寝起きの頭で思わずそう言った。 そして言ってしまってから後悔した。 使い魔の主人としてやるべきことはしなくちゃあいけない。 だけど、それがどちらなのかが分からない。 決して許されない罪を犯したホワイトスネイクを完全に封印することなのか、 それとも形式上とはいえ、ホワイトスネイクの罪を許すことなのか。 許すことが大切なのだと言う人もいる。 「罪を憎んで人を憎まず」というやつだ。 でも、ホワイトスネイクの罪はそんなことで済ませていい話じゃない。 どこかで、ケジメをつけなくちゃいけないことだ。 でも・・・「ホワイトスネイクを出てこさせない」事がそれなのだろうか? それが、「ケジメをつける」ということになるのだろうか? ルイズはそこで迷っていた。 そしてホワイトスネイクの方は、この時点で一つの覚悟を決めた。 やはり主人は自分が現れることを、まだ許してはいなかった。 ならばこうして発現してしまったことに対して、 何らかの形で責任を取らねばならない。 はたしてどのように責任を取るか。 それもまた、ホワイトスネイクはスデに決めていた。 そしてそれを実行するだけの覚悟も今ここで決めた。 暫しの沈黙の後、ホワイトスネイクがルイズに話しかける。 「マスター。時間ガ無イノデ簡潔ニ説明スル。今、敵ノ襲撃ヲ受ケテイル」 「て、敵?」 「ソウダ。今、私ノ目ノ前ニイル」 ルイズはホワイトスネイクの言葉に従い、その前方の暗闇に目を向ける。 ルイズの鳶色の目に、見知らぬ男――ラング・ラングラーの姿が映った。 そしてその後ろにいるジャンピン・ジャック・フラッシュの姿も、ルイズには見えた。 「だ・・・誰かいるわよ? そそそれに、その後ろにも誰かいる・・・だ、だだ誰よ!?」 「ヤツノ名ハ『ラング・ラングラー』。『スタンド使い』ダ」 「スタンド使いって・・・あんたがわたしに召喚された日に言ってた・・・・・・」 「ソウダ。スタンド名ハ『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』。 私ガ知ル中デハ、コト戦闘ニオイテハ最も凶悪なスタンドダ」 「そ、その凶悪なヤツが、何でわたしの部屋にいるのよ! というか、なんであんたがアイツのことを知ってるのよ!?」 「ヤツノ目的ニツイテハ不明ダ。 ソシテ私ガヤツノコトヲ知ッテイルノハ、私トヤツガ同ジ世界ニイタカラダ」 「同じ世界? そういえばあんた、別の世界から来たとか何とか言ってたわね・・・」 「ツマリソウイウコトダ。 ソシテ今カラ戦闘ニナル。ツマリ私ノ領域ダ。マスターハ下ガッテイロ」 そう言って、ホワイトスネイクはルイズの前に出た。 そしてこの光景に、ルイズは一週間前のことを思い出していた。 あの時もそうだった。 こいつはいつも何が一番正しいかが分かっているかのような振る舞いをしていた。 そして自分をどこか見下ろしたような目をしていた。 自分を、未熟なものとしてみるような目をしていた。 それを思い出したら、何か頭の芯が熱くなるようなそんな思いがしてきた。 ホワイトスネイクが言うことが正しいのは分かる。 分かるけど、それに従いたくなかった。 従うのが悔しかった。 その悔しさで、さっきまでの悩みなど、どこかに吹き飛んでしまっていた。 「・・・・・・イヤよ」 自分の主人が発した言葉に、ホワイトスネイクは耳を疑った。 「・・・何ダト? 今何ト・・・・・・」 「イヤ、って言ったのよ。アイツはわたしに用があるんでしょ? だったら私が決着をつけるわ。だから下がるのはあんたの方よ」 「・・・不可能ダ。ソレニヤツノ狙イハマスターダ ソレデハヤツノ思ウ壺ニナル」 「うっさいわね。『命令』よ、これは。 そもそもあんたが出てくるのが間違いなのよ。 こんなヤツわたし一人でどうにかできるわ」 「ダカラソレハ不可能ダト言ッテイル。落チ着ケ、マスター」 「落ち着いてるわよ、ホワイトスネイク。 それにあんた、久しぶりに出てきたと思ったら随分わたしに反発するわね。 私の命令に従えないの? 私を、ご主人様だって認めてないの?」 口を開くごとに自分の体が熱くなっていくのが、ルイズ自身にも感じ取れた。 自分の口調が荒くなっていくのも分かった。 言うことを聞かないホワイトスネイクに、無性に腹が立って。 そのホワイトスネイクが自分に背を向けているのが、余計に腹立たしくて。 自分を守るために、敵と向き合うために自分に背を向けているのは分かる。 頭のどこかでそれが分かっていても、今はそれが、無性に憎らしく思えた。 「・・・始末ノ付ケ方ヲ見ツケタダケダ」 予想もしなかった返答が、ホワイトスネイクから返ってきた。 「始末の・・・付け方?」 「ソウダ。コウシテ主人ノ命令ニ反シテ実体化シタコト。 ソレニ対シテドウヤッテ始末ヲツケルカ・・・ソレヲ見ツケタダケダ。 ソシテ、覚悟シタダケダ」 「い、一体、何する気よ?」 心なしか、ルイズの声が震える。 同じ戦いでも、ギーシュと決闘したときとは全く違う、ホワイトスネイクの様子に、 そしてその身体から感じられる気迫に、ルイズは気圧されていた。 「例エ私自身ガ消滅スルコトトナッタトシテモ、マスターヲヤツカラ守リキル。 アルイハ生キ延ビタトシテモ、ソノ後ニ自分デ自分ニ決着ヲツケル」 つまりこういうことだ。 この戦闘でホワイトスネイクは捨て身でラングラーと戦い、そこで戦死する。 また仮に生き延びたとしても、自害する。 つまりどちらにしても死ぬ、と言っているのだ。 「な、何よそれ・・・それって、死ぬってことなの? あんた、自分で何言ってるか、分かってるの?」 「元々無カッタハズノ命ダ。惜シム事ナド無イ。 アワヨクバ、最後マデスタンドトシテ存在シ続ケタイ。 ソウ思ウグライノ、ソノ程度ノ命ダ」 自分の名誉のために死ぬ。 ホワイトスネイクが言っているのは、そういうことだった。 ルイズへの忠誠のためではなく、スタンドとして自分の存在を全うするため。 そのために、自分で自分の命を捨てる、と。 傍から見ればこの時のホワイトスネイクは、 一種の悲壮さと勇敢さを持っているようにさえ見えたろう。 しかし今のルイズには、それがただの身勝手であるようにしか見えなかった。 ホワイトスネイクが、自分の名誉のためだけに戦おうとしていたからだ。 「主人のために戦う」のではないのか。 自分は主人として認められていないのか。 そう思うと、怒りよりも悔しさがこみ上げてきた。 「も、もも、もういいわ。すす好きにしなさいよ! アンタなんか、もう知らないんだからッ!」 ルイズはヤケクソになってそう言い放ち、ホワイトスネイクの背中を強く蹴っ飛ばす。 ドゴオッ! 「グッ!」 その衝撃で、ホワイトスネイクがぐらりと正面によろける。 それがまずかった。 (今・・・あのガキ・・・ホワイトスネイクの背中を・・・蹴ったよな? なのに・・・あのガキが・・・背中を痛めたようには・・・見えねえ。 そういう素振りが・・・全くねえぞ。 どうなって・・・やがる・・・・・・) ラングラーに見られたのは、まずかった。 これまでルイズとホワイトスネイクがしゃべくっているのも、 二者の間でのダメージの共有を恐れていたからこそ見逃していたラングラーである。 しかし今、そのダメージの共有が無いことが分かった。 「おい・・・ホワイトスネイク。お前・・・まさかとは思うが・・・ お前が受けたダメージ・・・そのガキには・・・伝わらんのか?」 その瞬間ホワイトスネイクはラングラーが攻撃してこなかった理由を悟った。 そして、ヤバイと思った。 しかしルイズにはそれが何を意味するのかも、 それがヤバかったってことも全く分からなかった。 「ええ、そうよ。ていうかそんなのあるわけ無いじゃない」 なので、それが言っちゃあマズイことだってのも、全く分かってなかった。 (ナンダトォーーーーーーーッ!?) 焦ったのは、ホワイトスネイクである。 まさかこんなにあっさりとカミングアウトされるとは思いもしなかったからだ。 そして―― 「そう・・・か。じゃあオレが・・・テメーを攻撃しない・・・理由はねえな。 ええ・・・? ・・・・・・ホワイトスネイク」 ラングラーの宣戦布告とともに、 JJFの腕のリングが、グルグルと高速で回転し始める。 「来ルカッ!」 ホワイトスネイクが拳を握り締め、 太極拳の構えからボクサーのようなファイティングポーズへ移行する。 そして―― 「ジャンピン・ジャック・フラッシュッ!」 ラングラーが叫ぶ。 それと同時に、JJFの腕のリングから、無数の小さい「何か」が放たれたッ! ドンドンドンドンドンッ! 放たれたそれらは空気を切り裂き銃弾に匹敵する速度で、 一直線にホワイトスネイクへと襲い掛かる。 「シャアァァーーーーーーーーーッ!!」 バギャギャギャギャッ! ホワイトスネイクは咆哮とともに拳を縦横無尽に振るい、 自分に向けて放たれた無数の「何か」を叩き落し、あるいは弾き飛ばす。 叩き落されたものはじゅうたんをぶち抜いて床にめり込み、 あるいは室内のタンスやクローゼットに突き刺さった。 「な、なに? いい今アイツ、何を飛ばしたのよ!?」 ラングラーの後ろに控えるJJFが飛ばした「何か」と、 それを明確に視認して弾き飛ばしたホワイトスネイク。 さらにホワイトスネイクが弾き飛ばしたがために、 部屋の内装がかなり傷ついたことでパニックになるルイズ。 「アレガヤツノスタンド能力ダ。 無重力ニヨッテ慣性ヲ味方ニツケ、鉄クズヲ加速シテ銃弾ノヨウニ放ツ」 「『むじゅーりょく』? 『かんせー』? 何よそれ!?」 「・・・・・・知ラナイノカ?」 「そんなの聞いた事も無いわよ!」 「そのガキが知らんのも・・・無理は無い。 この世界は・・・科学が・・・全く発展してねえからな。 無重力の概念も慣性も・・・だれも理解しようとはしない。 だからこそ・・・・・・オレはここで無敵だったのさ・・・・・・」 この世界はちっとも科学が発展していないのだな、とホワイトスネイクは思った。 「ソウカ・・・ダガ貴様ノ能力ガ誰カニ理解サレル必要ハ、今日無クナル。 無重力ヲ利用スルモノモ、慣性ヲ利用スルモノモ、 今日ココデ、ソノ最初デ最後ノ一人ガ死ヌカラナ・・・」 「出来るのか・・・ガキのお守りを・・・したままで・・・・・・?」 「スタンドトハ、元来ソウイウモノダ」 「なるほど・・・な。じゃあ・・・再開と・・・いくか! ジャンピン・ジャック・フラッシュッ!」 ドンドンドンドンッ! ラングラーの声に応じ、再び無数の鉄クズを放つJJF。 バギョギョアッ! それをホワイトスネイクは、正確に拳で弾き飛ばしていく。 弾き飛ばした鉄クズは、やはり多くが部屋の内装に突き刺さり、 そしていくつかが扉を突き破って廊下に飛び出していった。 「また防いだか・・・だが・・・どこまで続くかな・・・・・・」 ドンドンドンドンドン! そしてJJFの腕のリングから、第二波が放たれる。 今度は一点集中。 ホワイトスネイクの胸部目掛けて集中するように、角度を調整してきた。 「シャアアアアアッ!!」 バギャギャギャッ! それをホワイトスネイクは両拳の、ストレートの高速連打で弾き飛ばしていく。 そして弾いたその何発かがラングラーに襲い掛かる。 ホワイトスネイクが、狙ってそのように弾き飛ばしたのだ。 しかしラングラーはそれを予想していた。 バギギィン! ラングラーを貫くはずだった鉄クズが鈍い音とともに床に叩き落される。 JJFが拳で鉄クズを叩き落したのだ。 パワーならホワイトスネイクを上回るJJFならばこそ、 それが出来ない道理は無い。 「チッ・・・・・・」 「残念・・・だったな。その程度じゃあ・・・・・・オレは倒せねえ。 それに・・・前から・・・思ってたんだ」 そう言いつつ、JJFに鉄クズを撃ちまくらせるラングラー。 今度は先ほどのように集中するようなものではなく、 部屋全体に満遍なくばら撒くような射撃。 それをホワイトスネイクは自分の方へ飛んでくるものだけを狙って弾き飛ばす。 「オレのJJFは・・・無敵かもしれねえ・・・ってことをな・・・。 テメーなんか・・・目じゃあねえぐらいに・・・ オレのJJFが強いって・・・前からずっと思ってたんだ・・・・・・」 直後、ホワイトスネイクの右足が鉄クズに撃ち抜かれた。 さらに右腕、右肩に鉄クズが着弾し、ホワイトスネイクの身体にめり込む。 それらの衝撃にホワイトスネイクの体がぐらりと揺れる。 (跳弾・・・カ。無作為ニバラ撒イタヨウニ見セカケテ・・・ 壁ヤ天井ヲ跳ネ回リ、私ヲ襲ウ本命ヲ潜マセテイタノカ・・・・・・) してやられた、という屈辱感がホワイトスネイクの胸を満たす。 ルイズは思わず声を上げそうになる。 今ホワイトスネイクが撃たれた事が、後ろにいたルイズにも分かったからだ。 「さて・・・今度は真正面から・・・テメーを・・・穴ボコのチーズみてーに・・・してやるぜ」 JJFが両腕を真っ直ぐホワイトスネイクに向ける。 そしてッ! ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!! 今度はマシンガンのように、一呼吸も置くことなく、 大量の鉄クズをホワイトスネイクに集中して射撃したッ! それをホワイトスネイクは―― 「シャアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーー!」 バギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャッ!! 部屋中に響き渡る咆哮とともに、真正面からそれに立ち向かうッ! 自分に襲い掛かる鉄クズの全てを、拳で弾き飛ばしてゆくッ! しかし、そのためにホワイトスネイクは一気に消耗していく。 JJFから放たれる鉄クズの速度、威力は弾丸並み。 ホワイトスネイクはそれを拳で弾き飛ばし続けたのだ。 そのためにその両拳にはダメージが次々と蓄積されていき、 拳で完全に弾ききれなかった鉄クズが自分の体を掠め、あるいは突き刺さる。 ガードが間に合わなかったために胴体にめり込んだ鉄クズも2、3ある。 だがホワイトスネイクは拳を振るうことを止めない。 スタンドとしての存在を完遂するため、 拳を振るのを止める事は決して出来ない。 そして―― 「ホワイトスネイク・・・随分・・・辛そうじゃあねえか・・・ええ? ・・・・・・おい」 「・・・・・・」 嵐のような集中射撃が終わったとき、ホワイトスネイクの身体はボロボロになっていた。 とりわけ両拳は、いまにも崩れ落ちそうな程に傷つき、ひび割れていた。 JJFから弾丸並みの速度、そして威力をもって放たれる鉄クズを、もう30発以上も弾き飛ばしていたのである。 これまで拳が持った事が幸運だったと言えよう。 おそらく、次の射撃をホワイトスネイクの拳は防げない。 次の一波の2発目、あるいは3発目、いや1発目を弾き飛ばした瞬間、 ホワイトスネイクの拳は砕け散る。 「おそらくお前の拳・・・次で・・・壊れる。 そうなったら・・・どうするつもりだ? テメーの身体で・・・そのガキを庇うのか? オレはガキを・・・無傷で確保できれば・・・それでいいからな。 是非とも・・・テメーの身体でガキを庇って・・・・・・それで死んでくれ」 ラングラーはそう言いつつ、 ウエストポーチから取り出した鉄クズをJJFの腕輪に補給する。 これで、JJFが弾切れを起こすことも期待できなくなった。 だがホワイトスネイクは表情を変えない。 何故ならホワイトスネイクには、 自分が置かれている状況がこの場の誰よりも理解できているからだ。 後4回。 それだけ鉄クズを弾いたなら、自分の拳が砕ける。 それが今までの経験から割り出した、今の自分の限界だった。 その限界を迎えた後はどうするか。 そんな事は、言うまでも無いことだった。 そして、JJFが腕を構える。 ホワイトスネイクが、ファイティングポーズをとる。 勝利を確信したラングラーの顔が、笑みに歪む。 そして、叫ぶ。 「くらえッ! ジャンピン・ジャック・・・」 バゴォォオン! その瞬間、ルイズの部屋のドアが烈風の塊にぶち破られる。 風の魔法、「エア・ハンマー」だ。 ゴォオォアッ! そしてそれに続くように、真っ赤に燃え盛る火球が部屋の入り口から放たれるッ! 火の魔法「ファイア・ボール」。 それが一直線に、今まさに攻撃をしようとしていたラングラーへと突進するッ! 「うおおぉおッ!!」 驚きに声を上げながら、床から飛び上がり、壁を蹴って部屋の隅へと逃げるラングラー。 だがその動きを追うように、10本以上の氷の矢―― ――水・風・風のトライアングルスペル「ウィンディ・アイシクル」が、ラングラーへと殺到するッ! ドシュシュシュシュッ! 空気を切り裂き、自分に迫る氷の矢の群れに、ラングラーが叫ぶ。 「ジャンピン・ジャック・フラッシュッ!」 ドンドンドンドン! JJFの両腕から放たれた鉄クズが氷の矢を迎撃し、その全てを撃墜した。 「何者だ・・・テメーらは・・・・・・今の魔法・・・この威力・・・ トライアングルクラスだぞ・・・・・・」 一瞬のうちに襲い掛かった強力な魔法の連撃に、顔をしかめるラングラー。 その顔に、ルイズにとっては聞き慣れた声がかけられる。 「あ~ら、ごめんなさいねえ・・・。 でもレディの部屋にブ男が、呼ばれもしないで土足で入るもんじゃあないわ」 そしてその声は、ホワイトスネイクにも聞き覚えのある声だった。 「あ、あんた・・・キュルケ!」 驚きを隠さず声を上げるルイズ。 そしてキュルケの登場に驚いたのはホワイトスネイクも同じだったが、 ラングラーへの警戒を緩めないため、視線はラングラーに合わせている。 「どうしたのよ、ルイズ。こんなブ男が趣味だったってワケ?」 「ち、ちち違うわよ! っていうか、どこを見たらそんなこと・・・」 「はいはい、分かってるわよ。理由は知らないけど、コイツに襲われたんでしょ? それと、タバサに感謝しなさいよ。この子がいなかったら、 私も気づかなかったんだから」 そういうキュルケの横から、ひょいと青髪の女の子が顔を出した。 タバサである。 彼女の目はルイズたちにではなく、ラングラーへと向けられている。 タバサが部屋に訪れて「何か変」と言った後、寝巻きのままだったキュルケは学生服に着替え、 そしてこれからどうするか、というところだった。 タバサ自身も何か奇妙な違和感を感じたというだけで、 誰がどこにいるだとかそういう細かいことまでは分からなかったのだ。 そうしたことを相談していたところに、 ルイズの部屋のドアを突き破ってあの鉄クズが飛び出してきた。 言うまでも無くJJFが撃った鉄クズである。 その瞬間、キュルケとタバサはルイズの部屋のドアの両脇に回った。 そして互いに目で合図し、自分がすべきことを確認し、 すぐさま行動を開始した・・・というわけだ。 タバサはこの未知なる敵にこれ以上に無い警戒をしていた。 鉄クズを飛ばすという謎の能力。 そして今の奇襲に対する立ち回り。 全てが、この敵の強さを物語っていた。 「キュルケ・・・気をつけて」 「分かってるわ。あなたの『ウィンディ・アイシクル』を一つ残らず叩き落すようなヤツですもの・・・油断なんか出来ないわ」 杖と鋭い視線をラングラーへと向ける、キュルケとタバサ。 その二人を、ラングラーは怒りを込めた目で見据える。 「あのガキ以外は・・・殺しても構わねーことに・・・なっている・・・。 オレをナメた事を・・・必ず・・・後悔させてやるぜ・・・・・・」 最初に動いたのはキュルケだった。 素早くルーンを唱え、杖の先に真っ赤な火球を膨らませる。 先ほどと同じ、ファイア・ボールだ。 そして火球が50サント程までに膨らんだところで、火球が杖を離れ、 一直線にラングラーへと襲い掛かるッ! しかも、今度のファイア・ボールは相手を追跡するようにしてある。 先ほどの、まだ相手が確認できないうちに撃ったファイア・ボールとはワケが違う。 相手を執念深く追いつめ、焼き尽くす。 これが本当のファイア・ボールだ。 しかし、ラングラーは先ほどとは違い、避ける素振りすら見せない。 それどころか、どういうわけか掌に唾を吐き、 その掌を自分に向かってくるファイア・ボールに対して、 掌打でも打つかのように突き出した。 そして自分の力の名を静かに唱える。 「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」 その瞬間、ラングラーの掌を腕ごと焼き尽くすハズだった炎は、 その掌の10サントほど前で溶けるように「消滅」してしまった。 「な・・・何が起きたの?」 予想だにしなかった事態に虚を突かれ、思わずそう呟くキュルケ。 そこへ、ラングラーが容赦なく鉄クズを撃ち放つ。 ドンドンドンッ! 「しまった・・・」 鉄クズの群れがウィンディ・アイシクルのそれを遥かに上回る速度で殺到する。 必殺の魔法がウソのように無力化されたショックで、 キュルケは鉄クズを避けるタイミングもそれを防ぐタイミングも失った。 今更ファイア・ボールを唱えたところで間に合わない。 「キュルケッ!」 それを後ろから見ていたルイズが悲鳴を上げる。 だが―― ドヒュゥゥン! それらがキュルケの身体を貫く直前、巻き起こった一陣の烈風が鉄クズの軌道をそらしたッ! キュルケを襲うはずだった鉄クズの群れは、それを僅かに外れて壁に突き刺さる。 風の魔法、「ウィンド・ブレイク」だ。 「あ・・・ありがと、タバサ」 「気をつけて」 キュルケの感謝の言葉に、タバサは言葉少なく答える。 「ホワイトスネイク。あいつが何したか、分かる?」 「アレモ『無重力』ノ産物ダ。触レルモノ全テ・・・空気デアロウト何デアロウト、全テ無重力ニスル。 無重力ニナッタ空気ハ本来アルベキ場所カラ無クナリ、 空気ガ全ク存在シナイ空間デアル『真空』ガ生マレル。 炎ガ燃エルタメノ酸素モ風ヲ操ルタメノ空気ソノモノモ、ソコニハ一切ナイ。 言イ換エルナラ『死の空間』トモ言ウベキモノダ」 「死の、空間・・・」 噛み締めるように、ルイズが言う。 「アノ二人・・・ラングラートハ、アマリニモ相性ガ悪イ。 コノママデハヤラレルゾ」 「やられないわよ」 「・・・ナニ?」 「キュルケはやられないわ。 あんまり認めたくないけど、キュルケは炎を使わせたらこの学院で一番よ。 それにあのタバサって子も強いわ。 ウィンディ・アイシクルなんてすごい魔法をあんなに簡単に使えるんだから。 ・・・だから、あの二人はアイツなんかに負けない」 そんなルイズの言葉を聞きながら、 ホワイトスネイクはある疑問を脳裏に浮かべていた。 (シカシ・・・妙ダ。 アイツガ真空ヲ利用シタニシテモ唾液ヲツケテカラ真空ノ攻撃ガ始マルマデ、 モット時間ガカカルハズ。 ヤツノ能力ニ、変化ガ起キテイルトデモ言ウノカ・・・・・・?) 一方ラングラーと対峙するタバサは、 隣で自分と同じくラングラーに杖を向けているキュルケにあることを告げた。 「あいつの周り、空気がおかしい」 「おかしいって・・・どういうこと?」 「キュルケのファイア・ボールを消したとき、 あいつの掌の周りから一瞬だけ空気が無くなった」 「空気を無くす・・・? そんなことって、できるの?」 「系統魔法じゃ無理。多分・・・・・・先住の力か何か」 「先住の、力・・・・・・ね」 噛み締めるようにキュルケが呟く。 先住の力。 即ち、エルフの魔法。 系統魔法の限界を超えた、圧倒的で、そして強力な魔法だ。 それにさっき自分の攻撃を避けたとき、 人間とは思えないぐらい高く飛んだ気がする。 であれば、そういったものをあの男が使役しているのは、ほぼ確実・・・。 そのことが、キュルケの背筋を冷やした。 「あいつが飛ばすものは、わたしじゃなきゃ防御できない。 わたしはだから防御に集中する。 キュルケは攻撃をお願い」 「・・・でも、あたしの攻撃はアイツには効かないわよ?」 「工夫して」 「・・・・・・工夫、ねえ・・・」 「私が攻撃に加わった瞬間、あいつは遠距離攻撃をしてくる。 あの攻撃は銃弾ぐらいの威力は十分ある。 当たったらただじゃ済まない」 「そう・・・ね。分かったわ。こっちはこっちで何とかする。 あなたはあなたの言ったとおり、防御をお願い」 「分かった」 その言葉と同時に、タバサが前に出て、キュルケがその後ろに回る。 JJFの動きによる風の細かな乱れから攻撃の瞬間を捉え、 発射された鉄クズが自分に着弾する直前にウィンド・ブレイクで射線をそらす。 そのためには、タバサが前衛で防御を担当するのが得策。 そしてキュルケは、タバサが作る即席の防御陣から、ファイア・ボールで攻撃する。 その場で作り上げただけの連携作戦だが、現状に対応するのにこれ以上のものは無い。 「さあて、リベンジといくわよ!」 場所は変わってトリステイン魔法学院の校庭。 そこにその女は潜んでいた。 女の名前はフーケ。ちなみに偽名である。 そして職業は泥棒。それも、世間ではかなり名の知れた方だ。 なので「大泥棒」と称してもいいかもしれない。 また「彼女」・・・とは言っても、世間では性別不詳ということになっている。 「仕事中」の彼女の顔を見たものは一人もいないからだ。 フーケはこの学院の宝物庫に納められた「あるもの」を狙っていた。 通称「破壊の杖」。 噂にはどんな炎の魔法よりも強力な威力を持つとも言われ、 先住の産物ではないかとさえ揶揄されるほどだ。 そして調べてみれば、それほどのものが王室の宝物庫でなく、 この魔法学校の宝物庫に収められているというではないか。 これは買い・・・もとい、貰いだな、とフーケは考えた。 そして学院に潜入し、現在に至るというわけだ。 しかし今まさに盗みを決行しようとしていた彼女は、 避けて通れない「ある問題」にぶち当たっていた。 宝物庫が思いの外頑丈なのだ。 事前の下調べで得た情報に拠れば物理的な威力には弱いとのことだったが、 それでも自分が作るゴーレムの一撃でもどうにもならないぐらいに壁が硬い。 フーケはこれまで色んな盗みをしてきた。 そしてその盗みの中で、ゴーレムを使って壁を破壊する、という手段もよく使ってきた。 つまり物理的なパワーで頑丈なものを壊すことに慣れているのである。 そんなフーケだからこそ分かる。 この壁は、自分のゴーレムでは破壊できない。 打撃の瞬間に拳を鉄に錬金したとしても、結果は同じだろう。 さて、どうしたものか。 フーケは空高く上った二つの月を仰いで、そんなことを考えた。 一人の女子生徒の部屋が、生死をかけた戦いの戦場になっていることなど、彼女には気づく由も無かった。 二人の男女が校庭のどこかを歩いていることにも、当然気づいてなどいない。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/matomehameln/pages/31.html
ゼロの使い魔 【作品名】虚無と竜の契約者 【作者名】綾小路 【URL】 http //novel.syosetu.org/11746/ 【原作】ゼロの使い魔 【長さ】現状 5話 15,546文字 【状態】連載中 【地雷条件又は注意事項】 多重クロス(ゼロ魔xDRAG-ON DRAGOON)。 【紹介理由・感想】 珍しいDOD。期待はしたが、期待通りに読めた。三人称視点。 ルイズに召喚されるまではテンプレだが、即「留年なぞ知るか」とカイムと空中デートに飛び立つアンヘルさんマジアンヘルさん。 どのエンドだったか忘れたが、アンヘルさん女神化エンド後らしい。 なんかその後サイトらしき少年も召喚されてるので、ゼロ魔組の不遇を嘆く必要も無さそう。 描写が少しばかり薄いのが唯一難点かと思ったが、ぽんぽんとオリジナル展開が続くので飽きなかった。これから期待。 【作品名】ゼロと底辺を結ぶ銀弦 【作者名】ゆにお 【URL】https //novel.syosetu.org/9366/ 【原作】ゼロの使い魔 【地雷条件又は注意事項】 【あらすじ・概要・感想】 円環少女とのクロスオーバー、円環少女のやられ役筆頭ケイツが召喚される。 ゼロ魔の世界でやはり情けない様を晒しながら、平和な世界(元の環境に比べれば)に来れてどこか幸せそう。 円環少女を読んでないと判らないネタは多数、魔法認識の勘違いっぷりについ笑いを誘われる。 書き口は三人称で文章はひっそりとしながら押さえるところは押さえてゆく形、心情描写は少ない方。こなれていて安定している。 ゼロ魔の空気と円環少女の変態性が馴染んでおり、今後が楽しみな一品。 円環の空気に染められてルイズが変態になってしまわないか非常に心配であり楽しみでもある。 【作品名】ルイズちゃん奮闘記 【作者名】水泡 【URL】https //novel.syosetu.org/6239/ ①【あらすじ・概要】 息抜きにはまさにこの作品と呼べるようなライトな読み応えに 笑いどころ満載の短編集 ギャグ物だけど、こういうはっちゃけた作品も悪くない ②【あらすじ・概要】 原作後のルイズとサイトが、世界扉を使いサイトの世界にきたという短編コメディ サイトの実家で世話になりながら、ルイズにとっては現実世界の異文化に触れる過程が面白い 発想がピンクになりがちなルイズなので下ネタも多い 短編で1話が短いのと、外伝の1話が東方世界とクロスしているのでそれがマイナス、地雷要素になるかも オリキャラはサイトの友人で視点的な関係のため、気にはならないかも 【地雷要素又は注意事項】クロス、オリキャラ 【作品名】ゼロの使い魔~ダンブルドア異世界記~ 【作者名】ロベル・アクベル 【URL】https //novel.syosetu.org/91726/ 【あらすじ・概要】 ハリーポッター世界で死んだダンブルドアがサイトの代わりに召喚される話。 文章は三人称でしっかりと描写されている。 ダンブルドアらしさが十分に出ていてダンブルドア好きなら楽しめるだろう。 しかしよくあるテンプレオリ主をダンブルドアに置き換え上手く再構成したようなダンブルドア最強万能な描き方であるためにダンブルドアが嫌いな人は余り合わないかもしれない。 とはいえ、展開こそオリ主テンプレをなぞってはいるもののダンブルドアの考察なども取り込み、上手くテンプレ展開を料理している。 原作キャラを貶めることもなく、ダンブルドアとの絡みが楽しめる。 ああでも学園の教師は少し貶めぎみかも、そこは注意。 ダンブルドアとゼロ魔好きなら見といて損はないのではなかろうか。 【作品名】マッスルと使い魔 【作者名】今夜の山田 【URL】https //novel.syosetu.org/3000/ 【原作】ゼロの使い魔 【あらすじ・概要】 インパクトがすげぇ(色々な意味で) 読んでると脳裏に北斗の拳が浮かぶのは仕方ないと思う。ただ設定的に一発屋な感じがして、エタりそうで怖い。 まだ一ヶ月も経ってないからこれは自分の予想だけど。 【作品名】それなりに楽しい脇役としての人生 【作者名】yuki01 【URL】https //novel.syosetu.org/1512/ 【あらすじ・概要】 ゼロ魔転生オリ主モノ。主人公は水系統のメイジ、学園に通う貴族。 文章はそれなりにしっかりしていてsideも使いでもない。 しかし転生してから成長していく描写から、 学園に通っている主人公へ移るのが唐突過ぎる。 そのせいでルイズ、タバサと親しげに話し始めた主人公が 悪い意味でテンプレオリ主になってしまっている。 タグに批評募集をつけるなど、向上心は伺えるので今後に期待 【作品名】ゼロと黄金の使い魔 【作者名】マッキ 【URL】https //novel.syosetu.org/4696/ 【あらすじ・概要】 Diesとのクロスでトゥルーエンド後の獣殿がルイズに召喚されるという内容。 幻想を否定したあのEND後ということでDiesファンにとっては賛否あるだろうけど自分は好き。 文章は読める、そこは問題ない。 話数はまだ3話だけど期待してる、超期待してる。 ただ、ゼロ魔の二次である以上仕方ないけど 獣殿が誰かの下につく……というのもファンにとっては好き嫌い別れるかも。 まあ、トゥルーEND後は普通に国に尽して職務を果たし 死んだらしいし気にならないと言えば気にならないかもしれない。 自分は特に気にならなかったし。 何にしてもこれからのストーリーに期待ということで一つ。 【作品名】混沌の使い魔 【作者名】Freccia 【URL】https //novel.syosetu.org/3592/ 【原作】ゼロの使い魔×真女神転生3 【あらすじ・概要】 オリ主最強系ハーレムではあったが召喚された使い魔がとんでもないものと学園や国にちゃんと認識されていたり ルイズの虚無疑惑が早期に出てきてエレ姉が早い段階で合流する独自展開入りの早さ、 エレ姉とマチルダという強気なお姉さんキャラの出番がとても多い俺得仕様 だんだん閑話が増えてきて本筋停滞気味なのが残念 【作品名】ZERO-OUT 【作者名】Yーミタカ 【URL】https //novel.syosetu.org/110061/ 【原作】 ゼロの使い魔 【長さ】長編 話数 4 連載中 【概要】 召喚に失敗したルイズがfallout世界に転移 ヒャッハー世界で弱ったりするも、サイト(転移者ではなくfallout世界線で生まれて育ったサイト)と出逢い、この世界では失われがちな人間として芯を表したりする 平均文字数が1万超えと文章量が多く、クロスのさせ方や話も良い感じで好き ルイズ転移物って少ないので期待。続きはよな 【地雷要素又は注意事項】 他作品クロス 【作品名】ゼロのヒカセン 【作者名】MKeepr 【URL】https //novel.syosetu.org/93582/ 【原作】ゼロの使い魔 【長さ】長編 【状態】連載中 【概要・感想】 常FF14の光の戦士がガンダールヴとして召喚される系 既に英雄として名を馳せた存在なため素で強いが、加護がかち合いルーンの効果は完全には得られていない 単純な最強系ではないが、それ系には変わりないので読む際は注意 なおアルビオンの呪いにかかっているもよう 【地雷要素又は注意事項】クロス、濃密な原作展開、最強系? 【作品名】ルイズがチ◯コを召喚しました 【作者名】ななななな 【URL】http //novel.syosetu.org/55397/ 【原作】ゼロの使い魔 ①【地雷要素又は注意事項】下ネタ キャラ崩壊 【概要・感想】 既に話題に上がっているだろうが、ルイズが男性器を召喚してしまい止む無く契約をした結果… 全編コメディタッチで地の文でキャラ崩壊しまくっているためルイズはこうでなきゃ嫌だ!という方はブラバしてどうぞ ②【地雷要素又は注意事項】地の文が下品?うるせえ殺すぞ 【概要・感想】 タイトル通り、ルイズが自分の体に召喚してしまったお話 だいたいルイズのフランソワーズがヴァリエールする展開 基本ルイズ視点で描写されているが、召喚したモノのせいで若干壊れているのか口というか考えてる事が汚い、というか下品 地味に鬱展開ど真ん中であるが、時々挟む下ネタがそれらを緩和してくれている 地の文で突っ込むタイプの作品が苦手でなければ楽しめるかと 【作品名】衛士アニエスの平穏な休日 【作者名】琥珀堂 【URL】https //novel.syosetu.org/16131/ 【原作】ゼロの使い魔 【地雷要素又は注意事項】 あらすじ詐欺 オリキャラ ①【あらすじ・概要・感想】 コンキリエ枢機卿の作者が書いた、あまり見ないアニエス主人公のSS。 あらすじでエロいのかと思わせておいて、冒頭で実は日常系ほのぼのと思わせておいて 最終的には密室殺人事件の解決をメインにすえた本格推理物。 サスペンスや冒険ミステリではなく、トリックをしっかり組み込んだパズラー寄り。 原作開始よりかなり前のようで、アニエスはトリスタニアで衛士(警察官?)の仕事を している。衛士隊でのアニエスの様子だとか、トリスタニアに暮らす人々の風俗などが ちらほら描写されていて面白い。 事件の捜査に行き詰まったアニエスに助言をするのが、オリキャラの按摩師の爺さん。 盲目でしわくちゃの枯れたジジイで、その性格は非常に穏やかなようだ。アニエスの 愚痴を聞いたりして、カラダだけでなく彼女の心のストレスも揉みほぐしてしまう。 見た目と年齢が非常に特殊なので、今後続編が書かれるとしても、テンプレオリ主の ようにチートパワーで無双したり、原作の女キャラとくっついたり、ましてハーレムを 作ったりするなんてことはないだろう。 一話しか書かれておらず、投稿からすでに半年が経過しているので、エタッた可能性が 高いが、同じ作者のコンキリエが二年近く間をあけて復活したので、油断できない。 アニエスのフトモモ揉みたい。 ②【地雷条件又は注意事項】オリキャラあり 【あらすじ・概要】 あらすじが、「衛士としてばりばり働くアニエスさんが、ふとしたことで知り合ったテクニシャンな男性に体を触られて、気持ち良くなっちゃうお話」 と一見コメディかと思うが、実際はあらすじ詐欺な作品 アニエスと按摩師の会話が中心で、アニエスが事件の概要を話して、按摩師が事件の謎を解く とある殺人事件の真相に迫る推理小説 ファンタジーでの殺人事件やハメではまずお目に掛かれない異色作で実に面白いと思う 作者がコンキリエや魔☆おぜうさんを書いた人 1話で完結してるので読みやすい 【作者名】だじる 【URL】http //novel.syosetu.org/4472/ 【原作】ゼロの使い魔 【長さ】6話 38,190文字 【状態】連載中 【地雷条件又は注意事項】 アンチ・ヘイトタグ有り。俺SUGEEE TUEEEかもしれない。 【紹介理由・感想】 1話がけっこう好みだったんでお気に入りに入れようかと思ったのに、2話で読む気がなくなった作品。 1話の印象は「SUGEE・TUEE臭が漂ってくるけど、それが主人公への期待に繋がる」という感覚だった。 ロマリアトップの二人と仲が良い、暗部かつ親友扱い。暗部の仕事の結果、国内外を誤魔化さなきゃいけなくなって国外(=学院)へ。 1話は三人称だったんだけど、2話から一人称が混ざる。 それでも2話序盤の語りまでは、雰囲気もあって悪くなかった。 ……なんでこの人、一人称になったらこんなに雰囲気崩れるんだろう…… と言っても、よくある最低系レベルまで崩れるわけじゃないから、読もうと思えば読めるんだろうけど、元の期待がちょっと高かったんでギブアップ。 多分合う人には普通に読めるんじゃないだろうか。 自分なりに判断してみる事をお勧めする。 【作品名】ただの使い魔には興味ありません!【習作】 【作者名】コタツムリ 【URL】https //novel.syosetu.org/10747/ 【原作】ゼロの使い魔 【あらすじ・概要】 あんまり多くの人から読まれてないけどオススメしたい良作。 ゼロ魔なのにまさかの推理もの。展開が納得できるものだっただけに意外性で度肝を抜かれた。 原作時間軸のかなり序盤、というかフーケ編で終わる。 【作品名】ご主人様は思春期(氏家ト全風ゼロの使い魔) 【作者名】あぶさん 【URL】http //novel.syosetu.org/10391/ 【原作】ゼロの使い魔 タイトルそのまんま。ゼロ魔の登場人物が氏家風に改変されてる。 具体的に言うと下ネタ大好きっ子。ゼロ魔風ではないが氏家の作風は再現されてる。 個人的には大好きです。 【作品名】魔法少女ユエ~異世界探険記~ 【作者名】遁甲法 【URL】http //novel.syosetu.org/13153/ 【原作】ゼロの使い魔×ネギま 【長さ】長編 【状態】連載中(現在7話) ①【あらすじ・概要・感想】 ネギまの魔法使い綾瀬夕映(麻帆良卒業後)がゼロの使い魔の世界に来てしまって、魔法学院で学ぶという話。 ちなみに誰かの使い魔として召喚されたわけではない。風竜を追っかけてたら、その風竜ごとタバサの召喚魔法に巻き込まれたという設定。 ゼロ魔への来訪型クロスでは来訪者が不遇な扱いを受けていないSSが個人的に好みなのだけれど、 このSSも夕映(ユエ・ファランドール)がちゃんと魔法使いとしての待遇を受けているので、自分としては安心して読める。 それぞれのキャラの言動も無理がないので期待している。 今のところ会話場面が多く、バトル要素はあんまりない。ユエはゼロ魔世界の魔法を習っているが使えていない状態。 ユエがネギま世界の解析魔法を行使するときに出した可愛らしい物体にゼロ魔側の少女が抱き着くシーンが年相応でほっこりしたよ。仲良きことは善きこと哉。 【地雷条件又は注意事項】 ユエが魔法学院で学びたがるのはそんなに不自然じゃないが、オスマンが許可する場面が若干強引なノリに見えなくもない。 彼女の介入によるルイズの成長フラグ、カトレアの治療フラグ、タバサ母の治癒フラグがたっている(あくまでフラグなので今後どうなるか分からないが)。 自分はこういった介入者の活躍は(極端なご都合主義でなければ)好きなのだが、そういう流れ自体ありがちで飽きたって人や気になる人がいたら注意。 あと感想で視点について指摘を受けて、なんか試行錯誤中っぽい? ②【地雷条件又は注意事項】side表記はないが別キャラ視点あり 【あらすじ・概要・感想】 魔法先生ネギま!の綾瀬夕映がゼロ魔の世界に召喚される 10話時点で15万文字使ってるにも関わらず殆ど進んでない。無駄描写多すぎ。 キャラの漫才がクドすぎる。 展開を進める為に必要な会話を一々他キャラが遮って延々漫才を繰り返す。 一回ならまだしも漫才が終わって改めて話を仕切り直す際にも同じ様に漫才で遮って それが何回も続きまともに会話が発展しない。これは読んでて思わず顔を顰めた。 夕映の性格が鼻に付く。 ある種クロスの醍醐味でもある片方の作品のキャラや文明SUGEEEが漏れなく入るが 互いの世界の技術形態の違いや客観的に見て自らの魔法技能が発達してるのを自覚しつつ 周りに褒められると「私は普通に出来ますが何が凄いんでしょう?」とか一々言う。最新話でも言ってる。 総合的に見れば評価されるだけあって文章も破綻なく読めるし 作者が極端な地雷要素を避けて書いてる節があるからスコップへのダメージは少なかった。 無駄に長いと評した文量も人によっては読み応えがあると思えるんじゃないかな。 【作品名】ルイズの聖剣伝説 【作者名】駄文書きの道化 【URL】https //novel.syosetu.org/10430/ 【原作】ゼロの使い魔 【地雷条件又は注意事項】 聖剣伝説LOMとのクロス、ルイズチート化、絶賛エタリ中 【あらすじ・概要・感想】 かつて理想郷の方で連載されていたゼロ魔と聖剣伝説LOMのクロス作品。 ルイズが召喚の儀の際に誤ってファ・ディール世界へと飛んでしまい、 本来の主人公の代わりに冒険をこなして一回り成長した上で、 物凄いおまけと共にハルケギニアへと帰還したところから話が始まるといった感じ。 俗に言う綺麗なルイズというやつで、自身の冒険の経験から来るハルケギニアとの認識の違いに悩みながらも 貴族としての自分の芯をしっかり持ちながら、あらゆる人たちを惹きつけていく。 綺麗になったギーシュやら吸血鬼すら救い上げる度量やら、マチルダと行動を共にするもう一人の泥棒なども見所か。 気になる点としては注意事項にもあるようにルイズが単純にチート能力持ちになっていること。 率直に言うとこれはタグによくある「○○とのクロス(能力だけ)」に近いものがあるので そういうのを苦手としている人にはキツいかもしれない。 そしてそれ以上に残念なのは、5月下旬を境に完全にエタってしまっているということか。 言っては悪いけど理想郷時代にも一度エタって作品削除した過去があるので 途中でも構わないから読んでみたいと思った人は早めに見に行っておいた方がいいかもしれない。 【作品名】【ネタ】アホの子ルイズちゃん 【作者名】花極四季 【URL】https //novel.syosetu.org/6144/ 【原作】ゼロの使い魔 【地雷条件又は注意事項】性格改変、エタリ中、申し訳程度の転移&憑依要素 【あらすじ・概要・感想】 所謂ゼロ魔のルイズ性格改変二次の一種なのだがこれまたとんでもねー方向に突き抜けている。 タイトル通りのアホの子天然ちょっと原黒でヴァリエール式体術と爆発魔法の合わせ技で只管に我が道を突き進むそんなルイズちゃん。 原作のツンケンよりも遥かに発想が柔軟で周囲には呆れられながらも一定の支持も得ている。 やりたい放題なルイズのストッパーとしてツッコミ兼オカン役なキュルケや色んな意味で空気のタバサ。 ある意味原作通りな扱いのギーシュや、良い意味悪い意味双方でアホの子ルイズに影響受けまくりなアンリエッタとかも面白い。 そして肝心のサイトがまさかの本人ではなく現実世界からの憑依者ということになっているのだが 前述したようにルイズの性格がアレすぎて大困惑なのでその手のマイナス要素はあまり感じられなくなっていたり。 寧ろ原作知識から来るメタネタというスパイスがより話を面白くしていると……言えなくもないか? 注意点としてはやはりサイトが憑依者であるということだろうか。 そういうのが根本からダメだという人もいるだろうし、あまり作中に影響していないのも確かだが じゃあ逆にその設定いらなかったんじゃとか気になってしまう人にも少々抵抗があるかもしれない。 面白いのは確かだが一話辺りの文字数が短く、原作を知っていること前提で話が進むので淡々としている感もある。 そして何よりこの手の作品にお約束のように、エタってしまっているということか。 【作品名】とある竜騎士のお話し 【作者名】魚の目 【URL】https //novel.syosetu.org/15982/ ①【あらすじ・概要】 ……主人公はテンプレ転生主人公で、近接戦闘全般と魔法、竜の扱いに長けるという香ばしい設定だが、そういったテンプレを長々説明せずダイジェストでさらっと流すのでそこまで気にならない。 物語はレコンキスタに操られた主人公がタルブでサイトのゼロ戦と激闘する所から始まる。 洗脳が解けてからはルイズとサイトの護衛として、ヤンデレッタに魔法で枷を嵌められながらも生徒として生活することに。 ゼロ魔オリ主でよくある美男子、説教、傲慢さなどはこの主人公からは感じられず、主人公もゼロの使い魔の原作知識は殆ど忘れてるため、よくある原作介入はせずに、あくまで転生した主人公がゼロの使い魔の世界で過ごす一人のメイジとして書かれているのが好印象。 惜しむらくは続きが気になるところで現在主人公の過去という外伝に走っているところ。 ②【地雷要素又は注意事項】オリ主 オリジナルスペル 転生 【あらすじ・概要・感想】 ゼロの使い魔の世界で平民の母と貴族の父の間の子に生まれ、母が死んで父方に引き取られる その後修業を重ね、異名をもつスクウェアメイジとなり、火竜を召喚して竜騎士になる オリジナルスペルに無双可能な戦闘能力、正にオリ主 ただし、アンドバリの指輪で操られてたり誓約で行動縛られたりと 精神的な攻撃を喰らうことが多い彼の未来はどっちだ 【作品名】ゼロの使い魔ちゃん 【作者名】402 【URL】https //novel.syosetu.org/958/ 【原作】ゼロの使い魔 【地雷要素又は注意事項】 エタってる、原作キャラTS、百合 【あらすじ・概要・感想】 以前の記憶は以前の記憶と割り切ったはっちゃけ二週目ルイズが 女の子のサイトを召喚した事から始まるギャグストーリー、にじふぁんからの移転作らしい 百合要素はあくまでネタであり、別に属性が無い人でも気軽に読める娯楽作品 軽妙な言い回しや会話のテンポが良く読んでいて楽しめた 【作品名】ルイズと幻想郷 【作者名】ふぉふぉ殿 【URL】https //novel.syosetu.org/17055/ 【原作】ゼロの使い魔 【あらすじ・概要・感想】 ルイズ→幻想郷。逆ウルルン滞在記の雰囲気に近い。東方知ってる人はあわあわするルイズにニヨニヨできる 知らない人でも東方がたぶん和風な世界観なのでそれなりに楽しめそう 文章力、文字数ともに平均より下とは感じなかった。宗教上の理由により「「」」が許容できない人も少し我慢してみよう、ちょっとしか出てこないので。 初めてのことばかりで驚き、てんやわんやするルイズは不憫のようでしかし、 呼んでもねーのにやってくる数々のオリ主や他原作キャラのTUEEEEに驚かされててんやわんやされることに比べてほほえましいのだ。 チャレンジする価値はあると思われる。 不安なのはハルケゲニアに帰還した後のことも書く予定らしいのだが、それが蛇足になることだ。 このSSに限ったことではないが、「「…こんな!表現」」はエンタメとは直接関係ないと思うけど ちょっといいなと思っても玉に瑕で、あまり胸を張って誰かにおすすめできんのが残念。個人的なことだけど。 【作品名】雪風は赤い砂と共に 【作者名】火の丘 【URL】https //novel.syosetu.org/18249/ 【原作】ゼロの使い魔 【地雷要素又は注意事項】クロスオーバー、性格改変 【あらすじ・概要・感想】 最近ランキングから発見したもの。 ゼロ使のタバサがシルフィードでは無くNARUTOのサソリを召喚したら、という割りとありきたりなクロスオーバー。 まだ全三話と始まったばかりだが、情景や心理の描写が地の文ではっきりと表現されていて読むのにそう苦労しなかった。 ただ作者自身これが初投稿という事なので、これから先エタったり迷走したりするかもという不安はある。 良くも悪くもこれからに期待な作品。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/950.html
「「・・・」」 (平賀 才人…名前的に日本人っぽいが…俺が死んだ所じゃなくて日本にあの鏡出やがったのか…?) 何だかえらい気まずい沈黙が空間を満たした…がまぁ…気を取り直してっと… 「才人か…悪いが俺の質問に答えてくれないか?」 「はい・・・俺もまだ質問したいけど…先どうぞ」 「お前…どこの国にいた?」 「?俺は日本にいたけど、ここはトリスティンって言ってたけどヨーロッパのどの辺に? ってか何で俺こんな所にいるんだ?あんたが俺をここに連れてきたのか?ってかあの鏡なんだよ!?」 「あ~落ち着け落ち着け、一辺に質問すんな…俺も行き成りでまだわけわからねぇんだよ・・・」 …つってもこの状況じゃ落ち着け言ってもムリだな… と思ったら何かまだまだ言いたそうな顔していたが黙って深呼吸をし周りを見渡し状況を確認していた。 こいつ見た目よりも大物か…?いや…ただ抜けてるだけか…? 「あんた達…私を無視するんじゃなぁああああいぃいいいいい!!」 行き成りの怒声は、俺の真後ろにまで来てたさっきのピンク色の髪のガキ(面倒だから以後ピンク)だった。 …忘れてた…かなり本気で怒っている。まぁ行き成り自分が増えたと思ったらまた爆発するわ、召喚されるのは あいつ等から言えば平民だわ、挙句の果てには自分を無視して平民同士で話あっている…そりゃ怒るか… このピンクどうするか・・・と才人の方を見ると、才人が?って顔で惚けている。 それを見た時俺はすっくと立ち上がり茶を振舞う時の笑顔で才人に近づき…肩を掴み立ち上がらせた。 「?あの何するんすか?」 「ん?それはな…こうするんだよ!!」 ・・・才人の頭を掴み、俺の真後ろにいるピンクに向かって…キスをさせた・・・ 「『ザ・ワールド!!』そして時は止まる…」ん?何か幻聴が・・・ 「「・・・」」 「そして時は動き出す…」・・・お前だれだ? 「な・・・なにするだぁあああああ!!!」 「ヤッダバァアアアアア」 ほぅ…ミゾオチに幻の左で宙を舞うか・・・中々の威力だな…ってこっちにも殴りかかってきた! とりあえずガキの腕力だから掴んでおけばいいか… 「は…離しなさいよ!貴族にそんな無礼するなんてどんだけ田舎者よ!!」 「いててて…何をするんだってのはこっちのセリフだ!! ってかあんた!何で俺に行き成りこいつとキスさせるんだよ!」 「ん?それか、その理由わ…」 「ぐあ!ぐぁあああああ!あっちぃぃいいい!!」 行き成り左腕を押さえて叫び出したがまぁ、いいか 「あぁ、そうなるのか何でもあいつ等が言うには契約?かなそれだと思うが、どうなんだ?」 くるぅ~りと目の前で悶絶してる才人を無視してピンクに向かって言った。 「あ・・・あんたの思っている通り『使い魔のルーン』を刻んでいるだけよ」 「刻むな!俺の体に何しやがった!」 む?思ったよりも早く復活したなこいつと関心していると、ハゲた中年のおっさんがこっちきやがった。 「ふむ…まさか『サモン・サーヴァント』で平民をなおかつ二人も呼ぶとは異例だが… それよりもミス・ヴァリエールが二人に見えた気するが…風のスクウェアクラスの魔法かな? 杖が無いのに発動とはおかしいが…先住魔法…君はエルフ…か…? …説明する気ないか…それならばこちらで勝手に調べさせてもらう。そしてミス・ヴァリエール 一応契約した少年の方を使い魔としなさい。そして彼のルーンも見せてもらうよ」 才人の左腕の甲には何だか分からない文字が書かれてあったが、なるほどあれがルーンって奴か 「珍しいルーンだな」 おい・・・それだけかよ 「いったい…なんなんだあんたら!」 それには俺も同感だなって…何で俺の方を向く。まぁ、他の奴等の視線が俺に集中してるから無理も無いか。 「…俺はただの通りすがりだ。行き成りここに連れてかれて俺も困っているんだ。」 連れて来られる前は死人だった事は理解させるまで話すのが面倒だから簡単に説明した。 「とりあえずお前が使い魔になったって事で俺は帰らせてもらう」 「え?俺も一緒に帰してくれよ!」 「契約したんだから諦めろと言いたい所だが…仕方ないな…ついてこい、遅れても俺は待たんぞ それじゃもう一度ムーディブルース!」 その声を合図にまた出現したコピールイズが出るやいなや…周りの生徒達は 「またあれが来るぞぉおおおおお」「作者面倒だからってコピールイズ何度もするなぁぁああ!」 「ずっとルイズのターンかよぉおお!」「マルコリシールドォオ!!貴方の尊い犠牲は忘れないわ…5分ぐらい」 と非難轟々で即座に地面に穴開ける者も居れば、自分の使い魔に乗りダッシュで逃げ惑う者もいた… かなり阿鼻叫喚な図でそんな中気の毒にもさっきの爆発を見ていない才人には???と思うしか出来なかった… 「おい、ぼけっと突っ立てるとあぶねぇぞ」 「?何で?ってか何で皆あんな必死に逃げてるんだ?」 「これ」と俺はコピールイズを指差して地面に伏せた。 「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ドッゴォオォォォン 「ヤッダバァアアアアア」 さっきと同じセリフかよ…才人…芸が無い哀れな奴…だが俺は待たないと言った… 今度こそあの鏡に飛び込み場所が違うとは言え、元の世界に戻りそしてブチャラティを助けねば… …他の場所に出現し、手がかりも無しにあいつ等に追いつける可能性は0に近いが… それでも可能性があるならば、俺は戻らねばならない! そう決意し、爆風がまだ吹き荒れている中アバッキオは中心にある銀鏡目掛けて飛び込んだ…が… そこには…何も…無かった・・・ 「な…何故だ!何故銀鏡が無いんだ!俺は確かにリプレイしたはずだぞ!!」 「契約」 横から感情が篭らないまるで人形のように平坦な声がした。 「契約?」 契約はさっき才人がしたはず…それと何の関係があるんだ?と声の方向に振り向くと12歳ぐらい? の青髪のガキがいた。その横の赤髪の女は人盾をポイッと捨てている。 「あなたはさっきそこの彼とルイズを契約させた。召喚儀式は使い魔が居ると発動しない。」 「…つまり才人が死なないと…召喚は出来ないって事…か・・・?」 「そう」 …俺の後ろにのびているこいつが死ぬ事…か…今こいつを殺してしまえば、 すぐ戻れプチャラティに追いつく事が出来るかもしれない…俺は以前警官だった時に 正当防衛で殺人犯を射殺した事はある…しかしこいつは何の罪も無いただのガキだ… しかも俺が道連れにしてしまった…ブチャラティそしてこの罪の無い才人…どちらを優先させるべきかと 心が揺れ動き葛藤していると後ろからの爆発により…俺の意識は飛んだ…。 「あ・・・あたしを無視するんじゃなぁああああぃいいいい!」 「ちょ…ちょっとルイズ!やりすぎよ!気絶してるじゃないの!!」 「あたしが召喚した使い魔なのよ!あたしのやり方で罰を与えるわ!!」 「…罰与えるのはイイけど…ルイズ…あなたどうやって学院まで戻る気?」 「・・・あ・・・」 爆風でのびている少年と…ルイズがたった今爆発を直接ぶつけた大人…ロクに魔法が使えないルイズには 運ぶ手段が無かった…さすがに哀れと思ったのかタバサがシルフィードに試し乗りさせてみたいと言い のびている二人とルイズ キュルケ フレイムを載せて学院に運んでくれた… …帰っている途中でフレイムが火山に住んでるクセに高所恐怖症らしく恐慌状態に陥り シルフィードに危うく火を吹きかけそうになり周りが慌てて止めたが、才人の髪が一部アフロになったらしい… マリコルヌ またもや爆風避けの盾に…うわ言で「マッ…マルコリシールドって…僕の名前は マ…リコ…ル・・・ヌ・・・」と言っていたらしい。 重傷 再起可能 To Be Continued →...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1516.html
漆黒のキャンバスに、赤の月が満ち、もう一方の月の色を侵食する夜。 闇色と朱色に彩られた庭園を、一人の幼い少女が駆けていた。 ―――はぁ……はぁ……はぁ…… 少女は、逃げていた。 嘲笑、蔑み、劣等感。 ありとあらゆる不の感情から逃げていた少女は、やがて一艘の船に辿り着いた。 ―――はぁ……はぁ、はあ…… 短く呼吸を正し、船に乗り予め用意されていた毛布に包まった少女は、みっともなく泣き腫らしている。 「―――無様ね」 少女しか居ないはずの船の上に声が響く。 苛立ったようなその声は、思い出したくも無い過去の失敗を穿り返された人間のそれに似ている。 誰にも見つからぬよう、声を押し殺し泣く少女だったが、不意にその顔が笑顔へと変化した。 頬を紅く染め上げ、はにかみながら笑う少女の視線の先には羽根つき帽子を目深に被った一人の男性が立っていた。 「子爵……様」 少女がその男性を知っているように、声の主もその男性を知っていた。 幼き恋心の対象。 そして、父と男性によって交わされている約束。 男性に手を引かれ、恥ずかしそうに船から降りた少女は庭園を後にする。 自分達を見つめている者の視線にまったく気がつかずに…… それもそのはず。 今、此処に展開されているのは、一人の少女の『記憶』 普段は日常に埋もれ、決して掘り起こされない、過去の事象。 それが、夢と言う幻燈機械に掛けられ、ただ一人の為に上映されているのだ。 観客はただ一人。 主役であり、脇役であり、脚本家であり、監督でもある存在。 その存在は、自らの過去である少女に侮蔑と決別の溜め息を吐きだして、幻燈機械を停止した。 「夢……か」 まどろみと陽射しに包まれ、何処と無く朦朧とした視線を漂わせる。 視界にあるのは、木々が生え、涼しげな池が存在する庭園では無く、一年間住み続けている自分の部屋であった。 「ホゥ、今日ハ、ヤケニ早イ目覚メダナ」 「存外に失礼ね、あんた」 椅子に座って、一枚のDISCを手で弄んでいるホワイトスネイクの軽口を適当に返事を返しながら、着替えをするルイズ。 性別不詳のホワイトスネイクを前にして裸になる事に、微塵の羞恥心すら無い事が、そこから窺い知れる。 手早く着替えを終えたルイズは、飽きずDISCを弄りとおしているホワイトスネイクに声を掛けて、さっさと食堂へと出かけていった。 食堂で、やたらと豪勢な朝食を食べたルイズは、その足で今日の授業が行われる教室へと向かう。 確か、今日の授業は、ミスタ・ギトーが講師を務めるはずだと思い出すと、朝からあまり良くは無かった機嫌が、一段と悪くなるのが分かった。 ミスタ・ギトーは『風』が最強と言う持論を生徒達にも強要する先生であり、その冷たい論調と傲慢な態度に嫌っている生徒も少なくない。 と言うより、ギトーを好きな奴を探すとなるとこの学院を、それこそ掘り返しても探さないと発見できないぐらいに嫌われている。 ルイズも、その例に漏れず、ギトーの事を嫌っている生徒の一人だ。 別に、何が最強と思うのは個人の勝手だ。 しかし、その考えを無理矢理他人に強要するところが、ルイズは好きにはなれなかったのである。 「あら、今日は早いのね。ルイズ」 「ちょっとね……そういう貴方も早いのね」 挨拶をしながら欠伸をするキュルケに、ルイズはそう聞き返すと、女の嗜みよ、となんだか良く分からない返答が帰ってきた。 ともあれ、教室の隣同士の席に座って話をしていると、暫くしてタバサも教室に現れ、キュルケに誘われ、同じ机に席を置いた。 女三人寄れば姦しいとは言ったもので、普段お喋りなキュルケはともかくとして、人並みに話すルイズと、普段まったく会話をしないタバサも、ぺちゃくちゃとお喋りに花を咲かせていた。 そうこうしている内に、授業の始業時間となり、ミスタ・ギトーが髪色と同じ真っ黒なローブを揺らしながら教室の扉を開け、教壇に立った。 「では授業を始める」 何の面白みも無く、淡々とした言葉遣いで始まりの挨拶をしたギトーに、生徒の大半は心の中で溜め息を吐いた。 学生と言う身分は勉強しなければならないと言う事は分かっているが、どうしてもそこに娯楽性を求めてしまうものである。 他の授業―――例えば、火の魔法の授業であるコルベールなどは、時々変な発明を授業で発表したりするが、 あれはあれで、そこそこ受けが良い。無論、外す時もあるが。 ともあれ、この授業は、娯楽性と言う点で言えば最低ランクのさらに下のランク外であり、生徒達はこの苦痛な時間が早く過ぎる事を祈っていた。 この時までは――― 「骨が燃え残るか心配なんですけど、私」 「何、心配には及ばない。君の炎は私のマントの切れ端すら燃やせないだろうからな」 睨みあうキュルケとギトー。 お互いに杖を引き抜き、すでに臨戦態勢だ。 こうなった理由は簡単である。 炎が最強であると言ったキュルケに、ギトーが、ならば君の力で証明してみせろとキュルケを挑発したのだ。 始めは乗り気で無かったが、家の事を引き合いに出されると彼女としても本気を出すしかない。 魔力で編まれた焔を、さらに巨大にさせた直径1メイルもの炎の弾は、喰らえば大火傷、下手をすれば命まで燃やし尽くされる程の火力を有している。 勝利を確信して焔を放つキュルケだったが、満を持して放った炎が掻き消され、自身もまた疾風によって吹き飛ばされた。 その光景に誰もが息を呑む。 普段、おちゃらけた態度で居る事の多いキュルケであるが、その実力は折り紙つきで、誰もが認める程であったからだ。 だと言うのに、ギトーは、キュルケに勝った事が規定事実のように、 少しの高揚も感じさせない声で『風』が最強であると言う、偉ぶった演説を始めた。 ルイズは、そんな演説などクソ喰らえだった。 吹き飛ばされるキュルケの身体を受け止めるように出現させたホワイトスネイクに彼女の身体を受け止めさせると、愛用の杖を握り締めて、こつこつと甲高い足音を響かせギトーへと向かっていった。 ギトーは突然立ち上がった生徒に眉を顰めたが、今、自分が吹き飛ばした生徒と同じくフーケ討伐で名を上げた生徒だと知ると、特に注意もせず、教壇と同じ高さに降りてくるまで待ってから、先程と同じように挑発から会話を始める。 「ほぅ、どうやら、君も『風』が最強と言う事に異論があるらしいな、ミス・ヴァリエール。 異論があるなら、先程の彼女のように私に魔法をぶつけてくると良い。 何、君に使える魔法があればの話だがね」 ギトーは、ホワイトスネイクの能力を知らない。 基本的に生徒に関して無関心である為に、生徒よりもさらに重要度の低い使い魔の事など、どうでも良いからだ。 その為、ギトーの中では、ルイズは魔法の使えない無能な生徒のままで時が止まっている。 ルイズは、とりあえずギトーの挑発を無視してキュルケの傍へと歩み寄る。 ギトーを如何こうするより、キュルケの体調の方が、重要度が高い為に。 「大丈夫、キュルケ?」 「平気よ。それにしても、ほんと、貴方の使い魔って有能ね。 あんなちょっとの時間で、私を受け止めてくれるなんて」 キュルケの言葉にルイズは、ちょっとだけムッとした。 確かに助けたのはホワイトスネイクだが、そうなるように位置やタイミングを合わせたのは、自分だからだ。 自分が行った行為に対する正当な賛美が無いと機嫌が悪くなる所は、まだ子供なルイズであるが、物事の切り替えの早さは、すでに他の人間と比べて特出するにまで至っている。 「それじゃ、ちょっと、あいつをとっちめて来るわね」 杖の矛先をギトーへと向けるルイズに、キュルケは、にんまりと笑った。 「手加減ぐらいしてあげなさいよ」 「あら、目上の人に手心を加えるなんて失礼じゃない?」 ルイズも釣られてニヤリと口元を吊り上げると、制服のポケットから一枚のDISCを取り出し、自分の頭へと差し込む。 巻き添えを食らわないように自分の席へと戻ったキュルケは、タバサに耳打ちをして、学生席を全て風の防護膜で覆う。 万が一の事態に備えた上の行動である。 ギトーは、風の防護膜に素晴らしいと言葉を漏らして、興味深げにタバサの魔法を観察していた。 彼にとって、ルイズなど眼中にすら入っていない。 典型的なメイジの思想を持っている彼にしてみれば、メイジ以外など下等も下等。 魔法を使えないルイズも、ご多分に漏れず下等に分類されている。 そんな事を知ってか知らずか、ルイズは詠唱を完了させると足元の地面を変換させる。 ルイズの魔法に、誰もが、『風』以外の属性を見下しているギトーですら唖然としてしまった。 石造りの床を錬金よって、質量保存の法則とかを強引に無視させ、天井までの大きさを持つ岩にルイズは創り変えたのだ 「先に行っておきますけど、死なないでくださいね?」 気持ち悪いぐらいに優しげな響きを持ったルイズの言葉と共に、その岩がギトーの方へと倒れていく。 もはや、魔法だとかそういう次元の話では無い。 相手は、火の玉でも無ければ氷の矢でも無く、土のゴーレですら無い、ただの岩の塊。 圧倒的な質量で自分に倒れてくる、その塊に必死で魔法をぶつけるギトーであったが、吹き飛ばそうにも、あんな質量の物体を弾き飛ばす事など彼には出来ない。 出来るのは、風によって、倒れてくる時間を引き延ばす事だけである。 「ぐっ、ぐぐ!!」 魔法の連続使用による負荷によって、ギトーは精神が飛びそうになったが、必死に意識を繋ぎとめる。 今、ここで意識を失えば自分の身体は………… その先は、考えたくも無い事柄だった。 「助け―――」 「命乞いなんてみっともないですよ、先生」 醜く、命乞いをしようと声を上げようとしたが、岩の向こう側に居たルイズが、何時の間にかギトーの隣で、チェシャ猫のように耳元まで裂けた笑みを浮かべて立っている。 ギトーは悟った。 こんな笑みを浮かべる者に、命乞いなど意味が無い事を。 そして、後悔した。 自分は、こんな化け物みたいな哂いを浮かべる者に、戦いを挑んでしまったと言う事を。 「うっ、うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 すでに限界は来ていた。その限界を死にたくない一心で騙し続けていたギトーであったが、とうとう魔法の発動が止まり、岩の動きを遅くしていた風が無くなる。すると、岩は凄まじい速度でギトーに倒れこんだ。 ルイズは、その叫び声を、まるでフルオーケストラを聴いているように、うっとりとした顔で耳に刻みながら、タクトの如く杖を振る。 「ぉぉぉぉぉおおおお…………お?」 こつんと、ギトーの頭に石が当たった。 岩がギトーを押しつぶす寸前、ルイズが錬金を解除した為に、元の質量に戻ったのだ。 ルイズは、ギトーの先程までの醜態に満足したのか、何も言わずにキュルケとタバサが座っている席へと戻っていく。 「ちょっとやり過ぎだったんじゃない?」 「あれぐらいなら良い薬よ」 「良薬口に苦し」 席へと戻ったルイズに少し困ったような調子で注意するキュルケと、ルイズの行動を肯定しているのか良く分からない言葉を呟くタバサ。 そんな三人の様子を見ながら、ギトーはふらふらと教室を出て行く。 「やや! どうされました、ミスタ・ギトー、まだ授業中ですぞ!?」 廊下に出ると妙に着飾ったコルベールと鉢合わせたので、授業の代役を頼むと、返事も聞かずにギトーは自室へと戻っていく。 今日は、もう、誰とも話す気にはならなかった。 ケツの穴に氷柱を突っ込まれかのように、おとなくしなってしまったギトーの態度は、『風』を最強と自負していた頃と比べると、見る影も無い程に衰えてしまっていた。 同じ頃、燦々と太陽の光が降り注ぐ中、ご主人様から預かった洗濯物を干している才人は、同じく、洗濯物を干そうとしているシエスタと話し込んでいた。 本来なら生真面目な性格であり、仕事中の雑談などしないシエスタであったが、 才人と一緒の時だけは、どうしても仕事が疎かになり、会話を楽しんでしまう。 それが駄目な事だと理解はしているが、どうしてもそれに『幸福』を感じてしまうシエスタは、それを直そうとは思わなかった。 「へぇ、シエスタの故郷って、そんなに良いところなんだ」 「はい。片田舎ですけど、村の人は優しくて、山には色々な果実が実ってて、ほんと、平穏なところですよ」 二人の会話は、何時の間にか故郷に関する話となっていた。 自分の故郷、タルブ村を事細やかに説明するシエスタに、才人は楽しそうに笑っていたが、不意にシエスタの表情が曇る。 「あれ……どうかした?」 「あっ、いえ……あの、すいません、無神経な事を話して」 申し訳そうに謝るシエスタに、はてと才人は首を傾げた。 一体、今の何処に無神経な事があったと言うのか。 「えっと……なんで、シエスタは俺に謝ってるの?」 疑問をそのまま口にすると、シエスタは益々、身を縮めて悲しそうな顔をする。 正直、グッときた。 「だって……サイトさん……自分の故郷に帰れないのに、私、故郷の話をして……」 シエスタの言葉に、才人は、手をぽんと叩いた。 そうか、確かに帰れない人に、帰れる人間が自慢するのは失礼にあたる行為かもしれないが、特に自分はその事に対して何も感じていない。 「いや、俺、そういうのあんまり気にならないからさ。 むしろ、シエスタが故郷の話を聞かせてくれるのは、凄く楽しいから、もっと聞きたいなぁ、とか思ってるけど」 才人の返答に、シエスタは良かったぁと安堵の溜め息を吐き、豊満な胸をほっと撫で下ろした。 「でも――――――とか思わないんですか?」 「え?」 聞こえなかった訳では無い。 ただ、どうしてかその単語が脳内で理解できなかったので、才人はもう一度聞き返す。 シエスタは、不思議そうに先程と同じ内容を繰り返した。 「ですから、故郷に帰りたいとか思わないんですか?」 「――――――――――――あっ」 帰りたい――――――才人は、自分の中に在り得なかった、その発想に愕然とした。 思えば、異世界である此処に迷い込み、シエスタの曽祖父が自分と同じ世界の人間かも知れないと聞かされた時でも、 自分の頭に『帰る』と言う考えは浮かばなかった。 何故ならその考えは………………無駄だから? 「サイトさん?」 「あっ……れ?……」 シエスタの怪訝そうな声に、今まで考えていた事柄が思い出せなくなる。 「えっと……何の話だっけ……あぁ、そうだ、シエスタの故郷の話だったっけ?」 何処と無く不自然な顔をした才人に、シエスタは何も言わず、心配そうな視線を向けてくる。 才人は、自分の中に何か釈然としないものがあるのを感じながら、それについて考える事を放棄した。 放棄せざるをえなかった 「そういえば、前、聞かせてくれたけど、シエスタの故郷に秘宝みたいなのがあるとか言ってたよね? それって、どんなものなの?」 才人の何事も無かったかのような態度に、シエスタは何かを言おうとしたが、軽く頭を振ってから質問に答える。 「うちの曾御爺ちゃんが残したモノなんですけど……その『悪魔の牙』って―――」 「あっ、シエシエ、見つけた~!」 シエスタの口から、なんだか物騒な単語が出るのと同時に、シエスタと同じメイド服に身を包んだ少女が、才人とシエスタの近くまで走ってきた。 「どうしたんですか、そんなに急いで?」 同僚の慌しい雰囲気に、シエスタが尋ねると帰ってきた答えは意外なモノであった。 「王女様! アンリエッタ王女様が此処に来るんだって!!」 メイドが息を切らしながら伝えた内容に、才人とシエスタはお互いの顔を見合わせた。 四頭のユニコーンに引かれた特別製の馬車が、魔法学院の正門を通過し、姿を現すと、王女の到着を今か今かと待ち侘びていた生徒達は、一斉に杖を掲げた。 件の三人組も、他の生徒達と同じように杖を掲げていたが、心情は他の生徒とは若干違いがあった。 キュルケは、清楚で穏やかな王女よりも自分の方が綺麗じゃないかと詰まらなそうな顔をしていた。 タバサは、トリステインの王女自体にそこまで興味が無かったので、杖を掲げているだけで何も考えていない。 強いて言うならば、今日の晩餐は、王女が来たお陰で豪勢になると考えていた。 ルイズは、何か……遠い何かを見るような目でアンリエッタを見つめていた。 「思ウ所ガアルト言ッタ顔ダナ」 「別に……時間の流れって、無情って思っただけよ」 隣に立つホワイトスネイクの声に、返答したルイズは、馬車が見えなくなると同時に部屋へと戻る為に、踵を返した。 今のアンリエッタに、昔のような、見ると安心するような笑みは無かった。 彼女の顔にあったのは、張り付いたかのような作り笑いのみ。 幼少のみぎりに共に遊んだ少女は、あそこには居なかった。 あそこには、ただの王女が居るだけ。 「ほんと……無情ね」 ぽつりと、誰に言うでもなく呟いた言葉にホワイトスネイクは何も言わずに、ルイズの後に続くのだった。 その夜、夢と同じような赤色の月が光を提供する部屋の中で、ルイズは熱心にホワイトスネイクと会話するタバサを見ていた。 夜分遅いと言うのに、部屋に留まる蒼髪の少女にルイズは、頑張るものねぇ、と呟く。 「挑戦」 一通りホワイトスネイクとの会話を終え、手に持っていた一枚のDISCをタバサは、何の躊躇いもなくDISCを挿し込み―――案の定苦しみ始めた。 「はぁ……ホワイトスネイク」 落胆したかのようなルイズの声は、もう三度目だ。 ホワイトスネイクは、その声に反応し、これもまた三度目となるDISCの強制排除を実行する。 「……失敗」 自分の頭から抜き取られたDISCを渡されながら、苦々しげに呟くタバサだったが、何処と無く声に覇気が感じられない。 「今日ハココマデダ。ソロソロ、精神力ガ限界ダロウ」 ホワイトスネイクの言葉に頷くタバサは、ルイズに一礼をしてから、よろよろとおぼつかない足取りで部屋から出て行こうと扉に手を掛け、掴まれた。 「そんな危なっかしい歩き方しか出来ないのに、部屋を追い出したんじゃ、私がキュルケに叱られるわ。 少し、休んでいきなさいよ」 語尾を強めるルイズに、タバサは思わず頷いてしまう。 そのまま勧められるままに、テーブルの椅子に座るタバサだが、この申し出はありがたい。 正直、眩暈と吐き気によって気分が最悪で、部屋まで歩けるか分からなかったからだ。 「でも、あんたも頑張るわよね……初日から、こんなに気合入れるなんて」 「…………」 「まぁ、『力』を使いこなせるようになれば、便利だから頑張るのは分かるけどね」 あふ、と欠伸をして、眠たげにベッドに横になるルイズを見るタバサの瞳は、何時も通りの無感動を映している。 「相変わらず、人間味の無い眼をしているわね、あんた」 「自覚は無い」 「でしょうね。そんな眼、自覚してやってるとしたら、相当、性質が悪い奴だから」 タバサの体調が回復するまで、取り留めの無い話を振っていたルイズであったが、扉のノック音が部屋に響くと同時に、半分閉じかけていた目を強制的に開かせ、扉の方へと視線を向けた。 始めに長く二回、その後、短く三回ノックされたのを確認してから、ルイズは立ち上がり、扉を開けた。 扉を開けると、そこには黒頭巾を被った少女が、頭巾と同じ色のマントを羽織って立っていた。 「まさか……」 頭巾越しに分かる少女の顔立ちに、ルイズは驚きからか、言葉を漏らす。 少女は、ルイズの言葉に反応するように部屋へと入り、扉を閉めてから杖を振るった。 ホワイトスネイクが警戒の色を濃くし、何時でも少女の頭蓋を砕ける位置に立っている事に気がついたタバサは、声を掛ける。 「魔法での仕掛けが無いか確認しただけ」 その説明に、頭巾の少女は頷きながら頭に被った布を取り去る。 「驚いた」 本当に驚いているのか、激しく疑う程に単調に呟かれたタバサの言葉は、頭巾を取り去った少女―――アンリエッタ王女へと向けられたものだった。 「姫殿下」 アンリエッタ王女の眼前に居たルイズ、恭しく膝をついた。 そこに、タバサは違和感を感じた。 貴族たる事を、絶対として扱っているルイズにしては珍しく、その仕草に何処と無く不自然さが付き纏っていたからだ。 「あっ、ほら、あんたもさっさと―――」 「良いのよ、ルイズ。貴方のお友達なら、私にとってもお友達だもの。 ルイズも、ほら、立ち上がって。友達に対して膝をつく人なんて居ないでしょう?」 優しげであり、母親に抱かれるような抱擁感を覚えさせる声に、タバサは思わず息を呑む。 なるほど、確かに王女と言うだけはある。 風格と仕草、それに何者をも癒すかのような声には、カリスマに満ち溢れていた。 普段から、トリステインの王族は執政者としては他の王族に格段に劣っていると聞き及んでいたタバサは、よくそれで国が動いていると思っていたが、なるほど、このカリスマは、王族としては一流だ。 そこまで考えて、不意にタバサの顔に影が落ちた。 それは如何なる思考の果てなのか、無感動を歌うはずの彼女の瞳は、その時ばかりは揺れに揺れていた。 幸い、昔話に花を咲かせている、ルイズとアンリエッタは気付かなく、気付いたホワイトスネイクも別に声を掛ける義理も無いので放っておいた為に、彼女の思いが外に出る事は無かった。 「あの頃は……本当に楽しかったわね、ルイズ」 昔話が一頻り済んだ時に、アンリエッタはぽつりと懐かしむように呟いた。 「えぇ、本当に……」 それに対して相槌を打つルイズは、今朝見たアンリエッタと、今のアンリエッタの違いに内心、物凄く驚いていた。 あの時は、作り笑いを浮かべ、民に対して手を振るうだけの人間になってしまったと思っていたが、今、こうして目の前で話すと、昔のままのアンリエッタが存在している。 (人間って、凄く便利な生き物なのね) (何ヲ今更。人ハ、誰彼モ欺イテ生キテイケル、唯一ノ生キ物ダゾ?) 呆れたようなニュアンスを含んだホワイトスネイクからの返答に、そうなのかしら、と思いながら、ルイズはアンリエッタの言葉に返答していく。 だが、話の合間に溜め息を吐き続けるアンリエッタに、ルイズは眉を顰めた。 タバサに顔を向けると、彼女もまたルイズと同じ結論なのか首を縦に振る。 「あの……姫様、どうかなさったんですか?」 「えっ?」 「先程から溜め息ばかりを……何か、悩み事があるのでは?」 疑問系で聞いたルイズだったが、アンリエッタに何か悩み事が存在する事は確信していた。 思えば、もう何年も会っていない友人に会いに来て昔の話をしたのも、恐らくはその悩みで磨耗した気を紛らわす為だったのだろう。 「あぁ、ルイズ……やはり、貴方には分かってしまうのね。昔から友達である貴方には……」 誰でもあんなに溜め息を吐けば分かると言うものだが、それに突っ込むものは居ない。 ともあれ、アンリエッタは、眼を真っ直ぐルイズへと向けようとしたが、その前に、椅子に座っているタバサへと視線が逸れた。 「すいません。この話は国の重要事項であり、信頼の置ける人物にしか……」 「分かった」 申し訳無さそうに述べるアンリエッタに、タバサは立ち上がり、一礼してから部屋の扉に手を掛ける。 調子の悪さも、きちんと歩けるぐらいには回復していた。 「じゃあね、また明日……かしら」 後ろから掛けられたルイズの言葉に、振り返らずに頷いたタバサは、服のポケットに入っているDISCの重さを確かめながら、部屋を後にした。 「これで、今、この部屋に居るのは、私と私の使い魔のみ……話していただけますか、姫様」 タバサが完全に遠のいたのを確認してから、ルイズがそう言うと、アンリエッタは重々しく頷き口を開いた。 「そうですね…………では、話しましょう。私が、夜も眠れぬ程に悩む事柄を―――」 憂いを張り付かせ、笑みが掻き消えたアンリエッタの表情に、今更ながら、厄介事に巻き込まれる事になると気が付いたルイズであった。 第十話 後編 戻る 第11.4話
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1204.html
この宿、「女神の杵」亭が砦であった頃の栄華を偲ぶ中庭の練兵場。 そこがギアッチョとワルド、二人の決闘の舞台だった。 腰を落として我流というよりは全く適当に剣を構えたまま、ギアッチョは心中で舌打ちする。 ――怒らせて手の内を曝け出させるつもりだったが・・・やっぱりそう上手くはいかねーらしい 敵もさる者、この程度の挑発で逆上するような器量ではないようだ。「流石は女王の護衛隊長ってわけか」とギアッチョは一人呟く。 しかしそれならそれで別にいい。少なくとも戦い方の一端は把握出来るはずだ。 ギアッチョは己の左手に眼を落とす。その甲に刻まれたルーンは、手袋の下からでもよく分かる光を放っていた。 「どうしたね使い魔君 来ないのならばこちらから行くよ」 一向に動こうとしないギアッチョを挑発すると、ワルドは地を蹴って駆け出す。 戦い慣れた者の素早さで一瞬にしてギアッチョに肉薄すると、レイピアのように作られた杖で無数の刺突を繰り出した。 風を切り裂いて繰り出されるそれをギアッチョはデルフリンガーで次々と捌く。 ――こいつはすげぇな・・・正に「身体が羽のように軽い」ってやつだ。 己の剣捌きに一番瞠目していたのは、他ならぬギアッチョ自身であった。 素の状態でもワルドの突きをかわす自信はあるが、今のギアッチョは例え千回突かれようがその全てをかわし切れる程に楽々とそれを捌いていた。 が、予想以上の「ガンダールヴ」の能力に意識が完全にワルドから逸れていた為、突きと同時に行われていた詠唱にギアッチョは気付けなかった。 詠唱が完了したと同時に目の前の空気が弾け、 「うぉおッ!?」 空気の槌をモロに受けてギアッチョは吹っ飛んだ。 ごほッと肺から空気を吐き出しながらもギアッチョはとっさに空中で体勢を整え、デルフリンガーを地面に突き刺して転倒を回避する。 「おいおい、ガードぐらいしたらどうだい? 手加減はしてあるが下手をすれば肋骨が折れるぞ」 羽根帽子のつばを杖の先端で持ち上げて、ワルドはニヤリと笑った。 ルイズが心配げに見守る中、ギアッチョはチッと一つ舌打ちをしてから剣を抜く。 「大丈夫かいダンナ」 「ああ?この程度じゃノミも殺せねーぜ」 若干ふらつきながらも、デルフリンガーにギアッチョは何でもないといった顔でそう返す。 ギアッチョは無傷で勝つことも少なくはなかったが、スタンド使い同士の戦いでは瀕死の怪我を負ったり手足が切り飛ばされたりなどということは珍しい話ではない。 それに比べれば今のダメージなど正に蚊に刺されたようなものであった。 余裕の笑みを浮かべるワルドにガンを飛ばして、今度はこっちの番だと言わんばかりに走り出す。 ワルドは杖を突き出して既に詠唱を終えていたエア・ハンマーで迎撃するが、歪んだ空気の塊が衝突する寸前ギアッチョは「ガンダールヴ」の脚力で右へ飛び避けた。 規格外のその脚力をフルに利用して、ギアッチョは一瞬でワルドの背後を取る。 そのまま身体をねじらせてデルフリンガーを一閃するが、ワルドは一瞬の判断でギアッチョに体当たりし、身体でその腕を止めた。 「・・・君、今首を狙ったな」 身体を衝突させ合った格好のまま、ワルドが鋭い眼で睨む。 「わりーな いつものクセでよォォー、次からは気をつけるとするぜ それよりてめー・・・なかなか素早い判断が出来るじゃあねーか」 「当然だ 女王の護衛を任される者の実力を舐めないことだな」 言うが早いかワルドはぐるりと回転してギアッチョに向き直り、そのまま流れるような動作で三発目のエア・ハンマーを放った。 下からアッパーの要領で撃ち出された風の槌はギアッチョを空高く打ち上げる――はずだったが、 「何・・・?」 ボドンッ!!といういつもの景気のいい打撃音は全く聞こえず、上空高く吹っ飛んでいるはずのギアッチョは数十サント浮き上がっただけで大したダメージもなく着地して いた。 デルフの口からは「おでれーた」という言葉が漏れていた。どうやったのかは分からないが、今自分は魔法を吸収した気がする。 しかし彼が己のしたことを完全に理解するより先に、ギアッチョは次の行動に移っていた。 メイジではないギアッチョは、今の現象をただの不発か角度その他の問題―― 要するに偶然だと考えた。 喋る魔剣を乱雑に構え直すと、色を失くした双眸でワルドを射抜く。 ――同じ魔法を三連発・・・工夫も何もありゃしねえ 手の内見せる気は更々ねえってわけか まあそれもいいだろう。剣のいい練習台にはなる。ギアッチョは足に力を込めると、地面を変形するほどの勢いで蹴って走り出した。 一方ワルドは、エア・ハンマーを打ち破ったものの正体に早くも勘付いていた。 ――あの剣に我が風が吸い込まれるのを感じた・・・どういう原理かは知らないが、どうやら魔法を吸収するマジックアイテムのようだな・・・ 杖をヒュンヒュンと振り回してから構え、ワルドは呟いた。 「それならそれでやりようはある」 「彼はどうして魔法を使わないんだろう?」 決闘を見物に来ていたギーシュが、ロダンの彫刻のようなポーズで言う。 同じく本を閉じて二人を見ていたタバサは、それを聞いてぽつりと口を開いた。 「力を隠してる」 「まあ、確かに王宮の関係者にアレがバレたら一悶着ありそうだものねぇ」 うんうんと頷いてキュルケが同意する。その横ではルイズがずっとブツブツ文句を言っていた。 「何よあのバカ・・・いつもいつも勝手なことばかりするんだから・・・!そりゃ使い魔だって物じゃないけど、たまには言うこと聞いてくれたっていいじゃない! ワルドもワルドよ いつもはこんなことする人じゃないのに・・・」 怒りと不安がないまぜになった顔で呟くルイズの肩にポンポンと手を置いて、ギーシュは遠い眼をする。 「分かってやりたまえルイズ 男にはやらねばならない時というものがあるのさ」 分かったようなことを言うギーシュにジト眼を送ってから、ルイズは複雑な顔でギアッチョ達に視線を戻した。 「全然分からないわよ バカ・・・」 決闘直後とは正反対に、今度はギアッチョが怒涛の勢いでワルドを攻め立てていた。 袈裟斬りから斬り返し、そのまま薙ぎ払いから突きを繰り出し、全く型というものを感じさせない動きで息つく暇なく攻め続ける。 言ってしまえば完全にでたらめな剣捌きなのだが、「ガンダールヴ」の力で繰り出される剣撃は力といい速度といいそれだけで大変な脅威であった。 しかしワルドは風を裂いて繰り出されるそれをひらりとかわしするりと受け流し、涼しい顔で避け続ける。 そしてギアッチョがデルフリンガーを大きく振り下ろした瞬間、ワルドは攻勢に転じた。 地面まで振り下ろされた魔剣を完璧なタイミングで踏みつけ、同時に手刀で喉を突きにかかる。ギアッチョは即座に左手でそれを払いのけたが、その瞬間胸に押し当てられた杖までは手が回らなかった。 ドフッ!! 空気が炸裂する音が響き、 「ぐッ!!」 人をあっさり数メイルも吹き飛ばす衝撃を再び真正面から喰らって、ギアッチョは豪快に吹っ飛んだ。ギアッチョはなんとかバランスを保って着地したが、 「剣を手放したな、使い魔君 勝負ありだ」 主人の手から離れた剣を踏みつけたまま、ワルドが勝利を宣言する。てめー足をどけやがれとデルフリンガーがわめいているが、彼はそれを軽く無視して続けた。 「やはり『ガンダールヴ』、とてつもない膂力だが・・・君の太刀筋はまるで素人だ」 自分を睨むギアッチョから眼を外して、ワルドはルイズへと歩いて行く。 「分かったろうルイズ 彼では君を守れない」 そう言ってルイズの肩を抱くと、後ろ髪を引かれるルイズを伴ってワルドはギアッチョに振り返ることもせず宿へと戻っていった。 そりゃあ剣なんざ今日初めて使ったからな、と彼が心の中で笑っていたことも知らずに。 恐る恐るギアッチョの様子を見ていたギーシュ達は、どうやら彼が怒っていないと知ってバタバタと駆け寄った。 「怒らないのね?ギアッチョ」 「意外」 キュルケとタバサが珍しいといった顔でギアッチョを見る。そんな彼女達に眼を向けて、ギアッチョはフンと鼻を鳴らして笑った。 「初めて剣を使った人間を本気で攻撃する野郎に怒りが沸くか?笑いをこらえるのに必死だったぜ」 初めてという言葉に、三人の顔はますます驚きの色を濃くする。 「ええ!?だ、だってあんな凄い動きしてたじゃない!」 その場の疑問を代表して口にするキュルケに、 「ルーンが光ってた」 フーケ戦の時と同じ、とタバサが鋭く指摘した。ギアッチョは数秒の黙考の後、 「・・・全くよく観察してるじゃあねーか ええ?タバサ」 諦めたように溜息をつくと、手袋をずらして左手をかざした。 「『ガンダールヴ』のルーンらしい 伝説の使い魔の印だとよ」 「が、がん・・・?何・・・?」 何それと言わんばかりのギーシュとキュルケにタバサが説明する。 「あらゆる武器を使いこなしたと言われる、始祖ブリミルの使い魔」 「嘘っ!?」「凄っ!」とそれぞれの反応を返す彼らの前で、ギアッチョは既に鞘に収めていたデルフリンガーを抜き放った。途端、左手のルーンが光り出す。 ギーシュ達がおおーだのうわーだのと感嘆の声を上げるのを確認してから、ギアッチョはデルフを収め直した。 「伝説だなんだと言われてもよく分からんが、あらゆる武器を操れるってなマジらしい 武器に触れるとそいつの情報が勝手に流れ込んで来る上に体重が無くなったみてーに身体が軽くなりやがる 大した能力だぜ」 練兵場跡でガンダールヴについてひとしきり歓談したところで、ギーシュがうーんと唸る。 「しかしやっぱり悔しいなぁ」 「ああ?」 「君の魔法は隠さなきゃならないってことは分かるんだが、君はワルド子爵にきっとある日突然伝説の力を得ただけのただの平民だと思われているだろう? それがどうにも悔しいというか歯がゆいというか」 ギーシュの言うことがよく分からず、ギアッチョは怪訝な顔で聞く。 「何でてめーが悔しいんだ」 「いや、だって僕達友達じゃないか」 「・・・友達ィ?」 ギアッチョが素っ頓狂な声を上げるが、ギーシュは全く真面目な顔で先を続ける。 「ルイズもギアッチョも僕の友達だよ 友達が軽く見られるのを何とも思わない奴はいないさ そうだろう?キュルケ、タバサ」 常人ならば赤面するような台詞をこともなげに言ってのけて、ギーシュは実に爽やかな笑顔で二人を見る。タバサは数秒ギアッチョを見つめると、小さくこくりと頷いた。 キュルケはそんなクサいセリフを振るなと言わんばかりにギーシュを睨むが、睨んだこっちが申し訳なくなるほどいい笑顔のギーシュについに負けて、はぁっと大きく溜息をついて口を開く。 「・・・ま、ヴァリエール家に対する累代の宿怨はとりあえず忘れておいてあげなくもないわ」 あくまで余裕の態度を通すキュルケだったが、タバサにぽつりと「素直じゃない」と言われて、 「ち、ちち違うわよっ!」 と途端に顔を真っ赤に染めて否定した。そんなキュルケをタバサは無表情の まま「素直じゃない」とからかい、「違う!」「素直じゃない」「違うっ!」「素直じゃない」の言い争いをギーシュは笑いながら見物していた。 ギアッチョは「友達」というものが嫌いだった。プロシュートではないが、そんなものは幸せな環境というぬるま湯に浸かっている甘ったれたガキ共のごっこ遊びだと思っていた。 普段友達だ何だと声高に叫んでいる奴等ほど急場でそのオトモダチをあっさり見捨てて逃げるものだ。 暗殺の過程や結果でそんな人間を何人も見てきたギアッチョには、「友達」などという言葉は唾棄すべき虚言以外の何物でもなかった。 見ようによっては淡白な関係だったが、彼はリゾットチームの仲間達とは常に鋼鉄よりも固い信頼で結ばれていた。 だからこそ、ギアッチョには「友達」などというものは上辺だけの信頼で寄り集まる愚者を指す言葉にしか思えない。 しかし。しかしギーシュ達はどうだ?ギーシュはルイズをバカにしていたが、家名を賭けてまで彼女に謝罪をした。フーケ戦では身体を張ってフーケの小ゴーレムを 受け止めた。 キュルケはルイズと宿敵であるような素振りを見せているが、ギアッチョがルイズを殺しかけた時真っ先にそれを止めた。ギアッチョがルイズに危害を加えないかを心配してフレイムに監視をさせていたし、フーケ戦ではルイズが心配で彼女に続いて討伐を名乗り出た。 タバサはシルフィードを駆ってギアッチョを止めた。宝物庫の件では文字通り命を捨てる覚悟でルイズ達を救い、その後も怒ることなく討伐を助けた。 そして何より、見なかったことにして逃げ帰ることも出来たというのに、彼女達は己の危険を顧みず傭兵達と剣を交えてまでルイズを助けに来たではないか。 バカバカしい、と言おうとしてギアッチョは口を開く。しかし楽しげに笑いあうギーシュ達にそう言い捨てることは、どうしても出来なかった。 ――甘ったれ共が・・・ 心中そう呟くが、ギアッチョにはもう解っていた。それはカタギには戻れない自分への、ただの言い訳だ。 人殺しだったイタリアの自分と、全てがリセットされたこの世界の自分。彼らの友情を受け入れることは、この世界での生を受け入れること。 ギアッチョは何一つ言葉を発せずに立ちすくんだ。 決断の時は、近い。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3232.html
「ガンパレードマーチ」の岩田裕が召喚される話 ゼロのワタマン-01 ゼロのワタマン-02 ゼロのワタマン-03 ゼロのワタマン-04
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/436.html
変わったな、とギアッチョは思った。何が?他でもない自分自身がである。以前の自分ならルイズの甘言になど耳も貸さなかっただろう。躊躇無く中庭を凍結し、学院中を凍結しただろう。己のスタンドの最強を信じて疑わなかったし、実際無敵であった「例え時を止めるスタンドがいよーと、オレの敵じゃあねーッ」ギアッチョはそう確信していた。10人にも満たないチームで組織に反逆するなどという無謀に乗ったのも、自分の能力ならばボスですら倒せると思っていたからだ。しかし現実はどうだ?グイード・ミスタと新入り、ジョルノ・ジョバァーナ。ホワイト・アルバムが奴らの能力に劣るところは一つとしてなかったはずだ。しかしギアッチョは敗北した。何故か。 「答えは簡単だ・・・」 あなどっていたからだ。奴らを・・・そして世界そのものを。同じ「覚悟」をしているように見えても、結局ギアッチョは心のどこかで己の勝利を確信していたのだ。 「もう二度と・・・ブザマな思い上がりはしねェェーーッ」 皮肉にも―彼は死んでから成長した。 ギアッチョの話にルイズは聞き入っているようだった。自室に戻るなりルイズはギアッチョにあれやこれやと質問を投げかけたのだ。ギアッチョは「色々と聞きてーのはこっちのほうだっつーんだよォォーッ」と言いたかったが、こんなガキにいちいち目くじら立てることもないと思いなおし、とりあえずは質問に答えることにした。キレてさえいなければ常識的な判断も出来る男である。 「・・・それで、あなたは情報を奪おうとして・・・逆に殺されたのね」 自分が殺されたシーンをわざわざ反芻されるのは勿論気分のいいものではなかったが、 自分への戒めだと思い文句を言うのはやめた。それにいろんなことに意識が行っていて 気付かなかったが、よく考えればこいつは自分の命の恩人なのだ。少しぐらい不快に なったからといってすぐにキレるのは礼節に欠ける行為だとギアッチョは思った。無論 我慢の限界が来れば1・2発ブン殴るのに躊躇はないが。 「はぁ・・・まさか別の世界から・・・しかも殺し屋を召喚しちゃうなんてね・・・」 最初は別の世界の存在を疑っていたルイズだが、話を聞き終わる頃にはもう すっかり信じていた。何故って自動車だとかDISCだとか常人の頭で創作出来る話じゃ ないと思ったからだ。実際原理を聞いた今でもさっぱり理解が出来ない。 「気に食わない奴がいりゃあいつでも暗殺してやるぜ。「依頼」とあらばな・・・」 と、そこでハッとルイズは気付いた。 「ちょ、ちょっと待ちなさい いくら使い魔だからって人を殺せば罰されるのよ!」 「問題ねーだろォ~?この世界のことは全然しらねーが、例えば・・・『決闘』なんかで 死ぬならよォォ」 何故だか一瞬キザったらしいクラスメイトの顔が浮かんだが、ルイズはブンブンと 顔を振ってそれを打ち消した。 「そ、そうじゃなくて・・・ ああもう、言い方が悪かったわ 人なんか殺す必要はないし 殺しちゃダメだって言ってるのよ!」 「それは命令か?主としてのよォ」 「りっ・・・理解出来ないのなら命令するわ 殺人は許可しない!」 「なるほどな ここはオレのいたような世界とは違うってことか」 「・・・解ればいいのよ」 「だが断る」 「何ッ!?」 「極力ご期待に沿えるよう努力はするがよォォ~ 絶対殺さないなんて約束は出来ねーぜ 特に相手が下衆野郎の場合はな・・・」 殺し屋に下衆野郎と言われる人間ってどんなのよ、とルイズはツッこみたかったが、 こいつはどんなタイミングでブチ切れるか解らないので「お願いだから殺さないでよ・・・」 と音量3割減で言うにとどまった。 その後あらかたギアッチョにこの世界の事を伝え終わったので、ルイズはさっさと 寝ることにした。―なんだか今日はどっと疲れたわ・・・― しかしルイズがベッドに潜り込んだ時、「待ちな」というギアッチョの声が響いた。 「なっ、何よ」 もはや話しかけられただけで怯えるルイズである。 「肝心なことを訊くのを忘れてたぜ」 ギアッチョはそこで一呼吸置いてから、最後の質問をした。 「オレの世界によォォ・・・戻れる方法は―あるのか?」 暗がりでギアッチョの顔は分からなかったが、今までとはうってかわって沈んだ声 だったので―ルイズは事実を伝えるのをためらった。考えてみれば、人を殺すなどと いう己の人生が賭かった仕事をバカみたいに安い報酬でやらされていたのだ。 殺人などしたくなかった者も中にはいただろう―果たしてギアッチョがどうだったのか ・・・それは分からなかったが―なのに反逆という命がけの訴えに対してボスから もたらされたものは「死」だった。仲間が次々と死んでゆき、ギアッチョまで死んで しまった今、生き残っているのはリーダーのみ・・・或いは彼ももう死んでいるかも 知れない。ギアッチョからすれば自分が死んでしまったからといって諦めのつく 事であるはずがないだろう。今すぐにでもリーダーの元へ駆けつけたいはずだ。 「・・・・・・私は知らないわ だけどこの学院の図書室なら使い魔を送り返す方法が あるかも ・・・今度探してみるわ」 「・・・・・・そうか よろしく頼むぜ」 勘違いのようなものだとは言え自分を殺そうとした男だというのに、その言葉に ルイズの胸は奇妙に締め付けられた。 「・・・あなたのリーダー ボスを倒せてるといいわね・・・」 「・・・ああ」 そう呟くと、ルイズは罪悪感を振り払うかのように眼を閉じた。 前へ 戻る 次へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6505.html
藤崎竜版「封神演技」より作品終了後の「太公望(=伏義=王奕)」 ゼロの最初の人-01 ゼロの最初の人-02 ゼロの最初の人-03 ゼロの最初の人-04 ゼロの最初の人-05
https://w.atwiki.jp/animeoped/pages/50.html
ゼロの使い魔 ぜろのつかいま 監督:岩崎良明 シリーズ構成・脚本:吉岡たかを キャラクター原案:兎塚エイジ キャラクターデザイン・総作画監督:藤井昌宏 音楽:光宗信吉 アニメーション制作:J.C.STAFF オープニング テーマ曲:「First kiss」作詞:ICHIKO 作曲・編曲:新井理生 歌:ICHIKO エンディング テーマ曲:「ホントノキモチ」作詞:森由里子 作曲・編曲:新井理生 歌:ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール(声:釘宮理恵) ゼロの使い魔 サウンドトラック 「First kiss」 [Maxi] 「ホントノキモチ」 [Maxi] 2006年 作品名:せ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1093.html
幕間 ルイズの部屋に戻ったホワイトスネイクが最初に見たのは、ドアのすぐ前に脱ぎ捨てられた下着だった。 どう考えてもルイズのものである。 そしてその上には何か書き置きのようなものがぽんと置いてあった。 だが―― 「…読メナイ」 ホワイトスネイクにはそれが読めなかった。 (妙ナ話ダ…言葉ガ通ジテ文字ガ通ジナイ、ダト? 一体ドウイウワケデソンナコトニナッテシマッテイルンダローナ…マア、今ハ置イテオクカ) 状況から考えるに、多分「洗濯しておけ」とか書いてあるのだろうが……年頃の小娘がそんな事を書くだろうか? ホワイトスネイクはルイズの方を見るが、既に寝てしまっているので内容を聞くことは出来ない。 ホワイトスネイクは少し考えた後、 「記憶ヲ見レバ済ム話ダナ」 ルイズの記憶を見ることにした。 そう決めたホワイトスネイクはふわり、と宙に浮き上がると、 ルイズのベッドの上の空中で音も無く静止する。 そして慣れた手つきでルイズの額に指先を当てて―― ズギュン! 奇妙な音とともに、ホワイトスネイクの指がルイズの額に突き刺さったッ! だが不思議なことに流血は一切無い。 まるで水面に指を突っ込んだかのように、ごく自然にホワイトスネイクの指はルイズの額にめり込んでいる。 そして数秒後、ホワイトスネイクは、円盤状のものをズルリとルイズの額から抜き出した。 これが「DISC」である。 ルイズの記憶がホワイトスネイクの能力によって、形となって取り出されたのだ。 そしてこれまた慣れた手つきで、ホワイトスネイクはそのDISCを自分の額に突き刺した。 直後、DISCに映像が映り始める。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「まったく、あの使い魔ときたら! ご主人様のパンツ覗くなんて信じられないわ! 召喚できたときは「やったッ!」って思ったのに…付き合ってみないと分かんないものね」 DISCにはルイズの部屋が映りこみ、そしてプンスカ怒っているルイズの声が流れてきた。 「とにかく! これからはあたしが使い魔としての何たるかをビシッ! と教え込まなきゃいけないわ! まずその第一歩は…洗濯ね!」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 本当に洗濯させるつもりだったのか、とホワイトスネイクは呆れた。 しかし自分で締め出した相手に書き置きを残すとは一体どういうことだろう。 自分でそう決めたことを忘れないためか? などと考えたホワイトスネイクだが、とにかくこれであの書き置きの内容は大方確認できた。 ならばもうこのDISCに用はない、ということでさっさと自分の頭からDISCを抜き取ってルイズに戻す。 戻したのは、そうしないと大変なことになるからだ。 場面はちょうどルイズが服を脱ぎ始めるところだったが、 真性ホモ(ホワイトスネイク談)だったプッチ神父の影響のため、 性欲を持たないホワイトスネイクには別に興味の無い映像である。 さて、ルイズに記憶のDISCを戻したホワイトスネイク。 はっきり言って洗濯なんかのためにコキ使われるのは不本意だったが、本体――厳密には本体ではないが、その命令とあっては仕方がない。 渋々ながら下着を引っ掴み、鍵を開けてドアを開く。 さっきみたいにすり抜けなかったのは、言うまでも無く下着がドアをすり抜けられないからだ。 そしてルイズの部屋を出たホワイトスネイクは考える。 この建物の内装やルイズの部屋を見る限り、この世界の科学技術は相当に遅れている。 早い話、洗濯機なんて文明的なものがあることは期待できない。 水道さえも無いだろう。 多分「魔法」とやらで色々解決してしまえるからそうなっていったんだろうが…と思ったところでふとある疑問が生まれた。 洗濯機が無い、ということは、それを何かで補っているということ。 地球の中世ヨーロッパならメイドあたりにやらせていたんだろうが、この世界には魔法がある。 魔法でどれだけのことが可能かは明確には分からないが、 文明の発達さえ遅らせてしまうのだから相当に幅広い応用が利くのだろう。 つまり魔法で洗濯をやるぐらいはできるハズである。 なのに―― 「何故アノ小娘ハ私ニ洗濯ヲヤラセルンダ?」 魔法が使えるなら自分で洗濯ぐらいやるはずである。 それに自分がここに来たばかりのとき、他の生徒が魔法で空中を飛んでいたのに対してルイズは自分の足で歩いていた。 ということは… 「アノ小娘ハ魔法ガ使エナイノカ」 という結論に至ったホワイトスネイク。 周りは皆使えるのに不憫な話だな、と少しばかりルイズに同情した。 魔法が使える使えないはスタンドであるホワイトスネイクには、 スタンド本体がプラスαの何かを持っているかどうかという程度の話なので別にルイズに幻滅したりすることは無い。 とここまで考えたところで大分発想が脱線していたことにホワイトスネイクは気づいた。 自分は洗濯をしなければならないのである。 どういうわけか魔法を使えない、あの小娘の代わりに。 まずこの世界に洗濯機は無い。 そして水道も無い。 要するに「井戸を探してそこで水を汲んで洗濯」しなきゃあならないってことなのだ。 改めて、こんな使われ方は不本意だとホワイトスネイクは思った。 とにかく井戸を探さなくてはならない。 こんな夜中には誰も起きていないだろうから探すのは自分だ。 となると、そこで問題が起きる。 「私ノ射程ハ20メートルシカ無イカラナ…」 井戸がルイズより20メートル以上離れた場所にあれば、ホワイトスネイクは井戸までたどり着くことが出来ない。 つまり洗濯が出来ないのだ。 いや、この部屋に来るまでの道筋から推測する限り、確実にルイズから20メートル以内に井戸は無い。 ホワイトスネイクにとっては別に進んでやりたい仕事でもないが、 かと言って「出来ませんでした」で終わらせるようでは、 プッチ神父のスタンドとして完璧に近い仕事をし続けたホワイトスネイクのコケンに関わる。 そこで数秒考えてホワイトスネイクが出した結論は―― 「誰カ他ノヤツニヤラセルカ」 思いっきり他力本願であった。 だがホワイトスネイクとしては「結果的に下着の洗濯が出来ればそれでいい」ので、そこには大してこだわらない。 しかし…だ。 ついさっきこの世界に現れた身長2メートルの亜人に 「洗濯してくれない?」と頼まれて快諾する者など間違いなく一人もいないのは分かりきった事。 無論、ホワイトスネイクだって真正面から頼むわけじゃあない。 では、どうするのか? その答えが、ホワイトスネイクの以後の行動にある。 ホワイトスネイクはまずルイズの下着を彼女の部屋の前の廊下にぽんと置くと、 その隣の部屋のドアをすりぬけ、堂々とそこに侵入した。 果たしてそこには、赤毛の女がぐっすりと眠りこけていた。 薄い下着を押し上げる豊かな胸や肉付きの良い肢体が実にセクシーだが、 性欲を持たないホワイトスネイクにとってはやはりどうでもいいことだった。 そして部屋を見渡すと、暖炉の下にはなにやら真っ赤で馬鹿でかいトカゲ……とでも形容すべき生物がすやすや眠っている。 (何ダコイツハ…? スタンドノヴィジョンカ? ヨク分カランガ、起キラレルト厄介ニナリソーダナ) そんな事を考えながらホワイトスネイクはトカゲに近づき―― ドシュン! 「『コレカラ一時間、グッスリ眠リコケロ』。オ前ニ命令スル」 体から抜き取ったDISCをトカゲの頭に突き刺し、ホワイトスネイクはそう言った。 これもまたホワイトスネイクの能力の一つ。 命令を受けた生物は、例えその内容が 「人が来たら頭を撃ち抜いて射殺した後にDISCを回収しろ」という複雑なものであっても、 「破裂しろ」などという理不尽極まりない命令でも必ず遂行するのだ。 さて、これであと1時間きっかりはこのトカゲの五感は無効化している。 たとえ自分の主人が突然起き上がって部屋を出て行ったとしても、それに気づくことは無いだろう。 そして下準備を終えたホワイトスネイクは赤毛の女に近づき―― ドシュン! 「『部屋ヲ出テ廊下ニ転ガッテイル下着ヲ洗濯シロ』。オ前ニ命令スル」 トカゲにやったのと同様に、ホワイトスネイクは赤毛の女にそう命じた。 すると女は唐突にむくりと起き上がると、着の身着のままの格好でふらふらと部屋から出て行った。 ふわりと空中に浮かびながら、その後を追うホワイトスネイク。 そして女は廊下に転がっているルイズの下着を見つけると、 胸の谷間から棒切れのようなものを抜き出して何かをごにょごにょと唱えた。 するとルイズの下着がふわりと浮かび上がり、さらに女の杖の先から水流が飛び出した。 杖から放たれた水は空中で下着を丁寧に揉み洗いしている。 便利なものだな、とホワイトスネイクはその光景を眺めながら思った。 そして数分間揉み洗いが続いた後、女は再び何かごにょごにょ唱え始める。 すると今度は杖の先から小さな火の玉のようなものが現れた。 その火の玉は先ほど放たれた水に包まれた下着の周りをぐるぐると回り始める。 火の玉の熱は下着を包む水を徐々に蒸発させていき、やがて下着を完全に乾燥させた。 便利なものだな、とホワイトスネイクは(以下略。 そして洗濯の終わった下着はぽとりと廊下に落ち、 女は手に杖を持ったまま、またふらふらと自分の部屋に戻っていく。 「ゴ苦労ダッタ」 ホワイトスネイクはその背中にそう言うと、下着を拾い上げてルイズの部屋に続くドアを開けた。 部屋に入ったホワイトスネイクは、窓から外を見る。 空は暗く、月の位置もまだ高い。 夜明けまではまだ時間がありそうだ。 そんな事を考えながら、ホワイトスネイクは自分自身を解除した。 To Be Continued...