約 439,965 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/814.html
「この世の(ry」 桃色の髪をした少女が召喚の詠唱を完了させた瞬間に派手な爆音と共に衝撃波が発生し、 召喚者である少女は大きく吹き飛ばされた。 「な……何が起こったのよ……?」 土まみれになりながらも少女が吹き飛ばされたほうに駆け寄ると、 召喚の儀式の場は、無残にも巨大なクレーターに変貌しており、 その中心には、少しかがめば人一人すっぽり包み込める程の、大きな球体がめり込んでいた。 「あれが、私の使い魔だっていうの……?」 嫌な予感がする。 召喚者だからこそわかるのかもしれない。 進級の危機もちっぽけな自尊心も残らず消し飛ぶほどの絶望的な気配。 普段ならすぐさま飛んでくるような野次やからかいの声も無い。 いつもの少女の失敗で片付けるには、あまりにも派手な現象に、 皆固唾を飲んで、クレーターに視線を向けている。 ふと、球体が動きを見せた。 球体の上部に位置する目玉のような部分を中心に、ゆっくりと外側へ開きだしたのだ。 やがて完全に開ききると、中から一人の男が姿を現した。 異様な男だった。 筋骨隆々とした肉体に、鎧のようなものを着込んだ禿頭の大男で、 片目には奇妙な緑色のレンズを装着している。 遠目からでも判るほどに圧倒的な気配を漂わせるその男は、怪訝な顔で口を開いた。 「予定よりも大分早く到着したな……。ここが地球なのか?」 やがて男はゆっくりと歩き出し、クレーターから姿を覗かせると、 すぐ傍の少女も無視してきょろきょろと周囲を見回した。 「ベジータの反応も無い……。俺だけ早く着きすぎたのか? 船の座標計算が狂っていたかな……後で点検でもしておくか」 そこでようやく我に帰った周囲の生徒達は、 心のどこかで感じる違和感に戸惑いながらも、少女に向けて揶揄の声を上げ始めた。 「見ろ、ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」 「それも変な格好したオヤジだ!」 「強そうなことは強そうじゃない、良かったわねヴァリエール!」 それらの声で、男はやっと気付いたかのように、周囲の人間に目を向けた。 「これはこれは……ヒヨコどもがそろってお出迎えといったところか?」 そして見る者を残らず縮み上がらせるような、凶悪な笑みを浮かべた。 その笑みを間近で見てしまったルイズと呼ばれた少女は、絶対的な戦慄を覚えた。 野次に対する抗議も忘れ、ルイズは周囲の人間に向け、『逃ゲロ』と魂の底から声を上げようとした。 だが、その圧倒的な危機感に対する少女の確信は、あまりにも遅すぎた。 「どれ、それじゃあピーピーうるさいヒヨコどもに、少し挨拶でもしてやるとするか」 その言葉を尻目に、傍らの男の気配が瞬間的に膨れ上がる。そして―― ――男は、少しばかり派手に、『挨拶』をした。 ゼロの挨拶……完
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1643.html
8,5話 「お前達は・・・なんだ?」 そこはトリスタニアの裏通り。 表の世界が居心地悪い、ゴロツキや傭兵たちが集まる場所だ。 そんな場所で――しかも双月が空高く昇る真夜中に、その男は10人近くの傭兵に取り囲まれていた。 その男は何とも奇妙ないでたちをしていた。 頭には緑色の目出し帽、そしてそれにはゴーグルのようなものが留められている。 その身にはマントを纏っていたが、その下の格好は、見たことも聞いたことも無いような、 実に説明しがたい服装だった。 こんな妙ちくりんな格好をしてる人間は、いかにハルケギニア広しといえどもこの男ぐらいしかいまい。 「へっ・・・スッとぼけたツラしてよく言うぜ」 そして、男を囲む傭兵たちのうち、一人が口を開いた。 「オメーが来てからだ・・・。オメーが来てから、上客の依頼は全部オメーの方に集まるようになっちまった。 メイジ殺しだかなんだか知らねーが、新参者のクセに生意気なんだよ!」 「そうだそうだ! ちょっぴり俺らより腕が立つからって出しゃばりやがってよォ~~。 テメー誰に許可もらってここで傭兵稼業やってんだァーー!?」 「新参者は俺たち先輩に気ィ使うってのが筋だろーがッ! そんなことにも頭が回らねーほど、テメーは頭脳がマヌケなのかァー!?」 つまりこの男に仕事を取られてムシャクシャしてた傭兵たちが闇討ちをかけた、という次第だ。 なんとケツの穴の小さいことだろうか。 人数で押して、この男を殺す気でいるのだ。 だがこの傭兵たち、一つだけ大きな間違いを犯していた。 「それで・・・オレを・・・どうするつもりだ?」 「へっ、決まってんだろォ~? テメーはここでブッ殺す! 今まで散々ナメてくれた分、タップリと晴らしてやるぜッ!」 「・・・そうか。そういえば・・・お前ら・・・オレが実際に・・・戦うとこ・・・見たこと・・・あるか?」 「ハッ、無ぇーよ。だからどーしたッつーんだこの田吾作がッ!」 そう。 この傭兵たちは男がどのように戦うのかを見たことがなかったのだ。 この男と戦った者がどのようにして敗れるのか、どのようにして死ぬのか、それがこの傭兵たちには全く分かっていなかったのだ。 「そうか・・・それでは・・・理解できないだろうな」 「ああん? 何がだ」 「『スタンド使い』でもないお前たちでは・・・これから何が起きるのか・・・決して理解できまい・・・」 「『スタンド使い』だぁ~? テメーいきなり何言っt」 ドシュシュシュッ! そこまで言った瞬間だった。 横柄に喋り散らしていた傭兵と、その周りにいた数名が、一瞬にして全身に風穴を開けられた。 男が「何も無いように見える空間」から放った「何か」が、彼らを貫いたのだ。 そしてネズミにかじり散らされたチーズのように、蜂の巣のようになったその傭兵たちは、 棒切れか何かのように、ばったりと頭から倒れた。 倒れたとき、彼らは彼らの血でできた水溜りで、ばしゃりと音を立てた。 「ひ、ひぃっ!」 「て、てて、テメー! い、一体、何をしやがった!」 面食らったのは死んだ傭兵たちの反対側、男の後ろ側にいた傭兵たちだ。 「こ、これでもくらいやがれッ!」 恐怖に駆られ、傭兵たちのうち一人が、男に後ろから斬りかかる。 だが男は軽くジャンプしてそれをかわす。 いや、かわすだけでない。 ジャンプしたままの勢いで、滑るように空中を移動し、蜘蛛のように壁にピタリと取り付いた。 「い、今の見たか!」 「あいつ、飛びやがった! め、メイジでもねえってのに!」 「て、て、テメーまさか、そいつは先住の・・・」 一人が発した「先住」という言葉に、その場の傭兵たち全員の血が凍る。 そして、今更になって彼らは気づいた。 自分たちが、とてつもなく恐ろしい相手に戦いを挑んでしまったことに。 「に・・・逃げろッ!」 誰かが言い出したその言葉に、その場の全員が従った。 そしてすぐさま、路地に逃げ込もうとする。 しかし―― ドシュシュシュシュッ!! 再び放たれた何かが、逃げようとした残りの傭兵全員を撃ち貫いた。 傭兵たちは全身から血を吹いて、走っていた勢いのままに地面に転がり、そのまま動かなくなった。 全てが終わったとき、あたり一面、血の海だった。 男は周囲に動くものがいなくなったことを確認すると、ペタペタと音を立てながら、蜘蛛のように壁から降りる。 そして地面に転がっている傭兵たちがそれで全部だったことを確認したところで―― 「これはこれは、さすがはメイジ殺しとして名高き者。 まったく、実に見事な手腕だこと。見ていて惚れ惚れすることこの上ない」 女の、艶のある声が響いた。 男はすぐに声のした方向を見やる。 するとそこには女が一人だけ、ぽつんと立っていた。 「今さっき殺した輩と・・・お前は・・・関わりがあるのか?」 男が女に問いかける。 「半分は、ね」 そう、女が答えた瞬間―― バギギィッ! 狭い裏通りに、悲鳴のような金属音が響いた。 「やれやれ、落ち着きなさいな。私は連中の不満を利用しただけ。それ以外は連中の意思。 別にこうするように指示したわけじゃあないのよ」 楽しそうにそう言う女の前には、どこから現れたのか、巨大な盾を構える傭兵らしき男が一人。 この盾が、さっき男が放った『何か』を防ぎ、弾き飛ばしたのだ。 しかしそれはいいとしても、これほどの重装備の男がこんな狭い路地に突然現れるようなこと。 そんなことは・・・不可能だ。 「じゃあ・・・『半分』・・・というのは?」 盾を持つ傭兵が突然現れたことと、女の目的に対する二つの警戒心を込めて、男が聞き返す。 「お前の実力を確かめたかったんだよ。噂だけではどうにも信用に欠ける。 やはり、実際に戦うところを見なくては・・・とてもとても、使う気にはならなくて」 「つまりお前は・・・オレを雇いたいのか?」 怪訝な様子で、男が言う。 「話が早くて、こちらも本当に助かる。 前金が1000エキュー。成功したらさらに1000エキュー。 これで仕事を一つ、受けてもらおうかと思ってね」 女が提示した金額のぶっ飛び具合に、男は眉をひそめた。 この男、これまでに貴族から依頼を受ける事は何度もあった。 依頼の内容は主に暗殺。 そしてその相手は腕の立つメイジである事がまた主だったが、これほどまでにはずんでくれる依頼人はいなかった。 何か、裏にある。それも、飛び切り危険な裏話が。 男はすぐさまそう思った。 しかし、男にこの話を断る気はさらさら無い。 自分の能力に自信があった事は勿論、 自分に対して随分ナメた真似をしてくれたこの女の依頼から逃げるのはいささか癪だったからだ。 「・・・受けよう」 「交渉成立ね」 そういって、女はにやりと笑った。 「ああ、そういえばお前の名前を調べていなかったのを思い出した。 また使うことになるかもしれないし、ここで聞いておいたほうが後々都合がいいだろう。 それで、お前の名前は?」 そう聞かれた男は、 「ラング・ラングラー」 そう、答えた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/778.html
「BALDR FORCE」の水坂憐 ゼロのゴースト P ゼロのゴースト 1-1 ゼロのゴースト 1-2 ゼロのゴースト 1-E
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/850.html
キュルケとタバサが急いで降りてくる。勝利を喜びあいたいところだが、今は そんな場合ではない。 「ルイズッ!!足見せなさい!!」 シルフィードから飛び降りるや否や駆け出してきたキュルケがルイズの足を とった。傷口を確認しようとして、思わず悲鳴を上げそうになる。 「――ッ!」 それはそうだ。骨が折れたとか肉がえぐれたとかいうレベルではない。 ルイズの左足首から先は、文字通りちぎれ飛んでいるのである。 よほど痛いのだろう、ルイズはギアッチョにしがみついたまま声も出さず 首を曲げることすらしない。しかし何が彼女を支えているのか、それでも ギリギリで意識は保っているらしい。 タバサがルイズの左足を持ってきた。それを元のように切断面に当て、 ギアッチョに支えるように指示し、タバサはそこからキュルケと共に水の 詠唱を始める。 「・・・治んのか?」 言ってしまってからギアッチョはルイズの前で聞くべきではなかったかと 少し後悔したが、キュルケは少し笑ってそれに答えた。 「大丈夫よ、まだ時間が経ってないからなんとかくっつくはず・・・ もっとも 私達は水のメイジじゃないから、あくまで応急手当しか出来ないけどね はやく学院に戻ってちゃんとした治療を受ける必要があるわ」 なるほどな、と呟いてギアッチョは腰を下ろす。支えてくれと言われても ルイズが未だにしがみついているのでかなり難しい。しかし今彼女が 戦っているであろう言語を絶する痛苦を考えると、少し離れろとか ましてどっちを向けだのどこに座れだの言えるはずがないので、 ギアッチョは仕方なく彼女を半ば抱き込むようにして足を支えた。 そんな自分の姿を見て、ギアッチョは自嘲気味に笑う。 ――このギアッチョがガキを抱えて何やってんだ?暗殺者から保父に転職ってか? しかし軽口を叩きながらも、自分が徐々にここに馴染みつつあることを ギアッチョは薄々自覚し始めていた。 ガサリ、という茂みを掻き分ける音が聞こえ、ギアッチョ達は一斉に振り向いた。 満身創痍でよろめきながら現れたギーシュはルイズを抱きかかえるギアッチョ という有り得ない光景に数秒言葉を失ったが、「遅かったじゃない」という キュルケの言葉に我に返ると、「ただいま」とだけ返事をして彼は糸が切れた かのようにその場に転がった。 ギーシュにこっちで起きたことをあらかた伝え終わる頃には、ルイズの 応急処置も終わっていた。 「動けるか?」 とギアッチョが聞くが、ルイズはふるふると首を横に振る。ギアッチョは やれやれと言うように息を吐き出すと、キュルケとタバサに眼を向けた。 「悪いが・・・オレ達も治療してくれねーか 力が余ってんならだがよォォ」 その言葉に頷いて、キュルケはギーシュの治療に取り掛かった。 「切り傷だらけじゃない」 彼女は驚いてギーシュを見る。そんなキュルケにギーシュは辛そうに笑い ながら答えた。 「正直泣きそうだよ 早いところなんとかしてくれたまえ」 「まだそんな軽口が叩けるなら問題ないわね」 フーケを倒し、ルイズの足もとりあえずの処置が済んだ今、キュルケは ようやく余裕を取り戻してきた。横目でギアッチョを見ると、タバサが治療を 施しているところだった。 本当に、この男は一体何者なんだろう。全身血だらけだというのに辛そうな 顔一つ見せないギアッチョを見ながらキュルケは思う。何が凄いとかどこが おかしいとか、そういう次元の問題ではない。ギアッチョの一挙手一投足、 その全てが常にキュルケの理解を超えていた。殺人に一切の躊躇を持たない こと、戦闘に慣れすぎていること、よく分からないことでキレまくること、そのくせ 普段は冷淡なまでに静かなこと、あと変な服とか変な眼鏡とか変な髪形とか、 そしてそれより何より彼の魔法――魔法としか思えない何か――・・・。 自分の火球を消し去ったと思えばギーシュの魔法を完全に跳ね返し、 あのフーケのゴーレムをも一撃で土に返す。こいつの能力は一体どこまで いけば底が見えるのだろうか。ギアッチョがその力を発揮するたびに、 彼女達は彼への評価を改めざるを得なかった。 ギアッチョはいつも同じ文句を唱えている。「ホワイト・アルバム」・・・発動に 必要な言葉はそれだけらしい。だがルイズがギアッチョを召喚した時、 あの男は一言も呪句を発さずルイズを凍らせていたはずだ。してみると あの言葉は発動の為のキーワードというよりは、己の精神を励起させる為の 合言葉と捉えたほうがいいのだろうか?そこまで考えて、キュルケはあとで 聞いてみるか、と思考に蓋をする。今はそれよりもっと気になっていることがあった。 「踏まれた時」 タバサがキュルケの疑問を代弁する。 「どうやって?」 治療を続けながら、タバサはその蒼い瞳だけをギアッチョに向けた。 要領を得ない質問だったが、ギアッチョはその意味するところを理解した。 だがこいつらにスタンドのことをバラしていいものだろうか。数秒の思案の 後、ギアッチョは当たり障りのないレベルで答えることにした。 「・・・あの木偶の足と地面との間に氷の支柱を作った 完全には間に合わ なかったんで御覧の通り地面にめり込んだ上に小石が刺さって血塗れ だが・・・薄切りハムみてーになっちまう前にギリギリ完成出来たってわけだ」 ギアッチョのタネ明かしに、その場を目撃していないギーシュまでもが眼を 丸くした。 「ギリギリって・・・飛び込んでから足が完全に地面につくまでの一瞬で そこまでやってのけたって言うの!?」 キュルケが思わず口を挟む。ギアッチョはこともなげな顔でキュルケに眼を 遣るが、内心自分でも驚いていた。 ホワイト・アルバム ジェントリー・ウィープス。膨大なスタンドパワーを消費 して、空気をも凍らせる力を引き出すホワイト・アルバム最大最強の能力。 しかしいくらなんでもあの0.5秒にも満たない時間で完全に足を固定し切れる とはギアッチョも思っていなかった。言わば捨て身の賭けだったのである。 そしてそれ以上に驚いたのがゴーレムの凍結粉砕だ。ジェントリー・ ウィープスを発動していることを計算に入れても、あれは速過ぎる氷結速度 だった。ギアッチョはデルフリンガーに眼を落とす。ビクッ、とその刀身が 震えた。相変わらず情けなく怯えているが、こいつを握った瞬間に加速した ことをギアッチョは思い返していた。思えば加速してからゴーレムをブチ砕く まで、自分はずっとこいつを握ったままだった。 ――こいつを抜くと力が強化されるってわけか・・・?身体能力だけでなく ・・・オレのスタンドまでも ギアッチョはじっとデルフリンガーを見つめると、おもむろに声をかけた。 「おいオンボロ」 「はヒィッ!!」 お・・・俺は何回殴られるんだ!?次はどこから襲ってくるんだ!?俺の そばに近寄るなァァーーー!!と叫びたかったデルフだったが、 「てめーがいなきゃあルイズは死んでた・・・助かったぜ」 「え」 ギアッチョの意外すぎる一言に、彼は口――のように見える鍔――を 開いて固まった。てっきりさっきとっさに彼に命令してしまったことを 怒られるのかと覚悟していたのに、ギアッチョの口から出てきたのは 正反対の言葉だったのである。ギアッチョはその妙な髪形の頭を掻いて 続けた。 「それとよォォ~~ その卑屈な口調はもうやめろ いい加減鬱陶しいぜ」 「・・・・・・ダンナ・・・」 敬語は使わなくていい、とギアッチョは言外に言っている。デルフリンガーは この暴君に自分が認められたことに気付き、 「・・・へへっ」 彼の口からは思わず笑みが漏れた。 ギアッチョの胸にかかっていた圧力がすっと無くなる。ルイズを見下ろすと、 彼女はギアッチョに押し付けていた顔を上げ、キュルケ達から見えないように ごしごしとこすっていた。ギアッチョはそこで初めてルイズが泣いていたことに 気付いたが、黙ってルイズが落ち着くのを待つことにする。 「・・・・・・・・・ギアッチョ・・・あの・・・・・・」 しばらくして少し気を取り戻したらしいルイズが、恐る恐るギアッチョを見る。 怒られるのを恐れているのだろうということは理解出来たが、ギアッチョは そんなルイズの心を忖度することなく、氷のような声で問いかけた。 「どうしてあんなことをした?」 その声にルイズの身体が一瞬こわばる。 「・・・それは・・・」 「オレが昨日言ったことを覚えてなかったと そういうわけか? え? おい おめーはこいつらの再三の制止を振り切って地上に残った そうだな そしてそのせいでフーケに逃亡を許しかけ・・・その上てめーの命まで 失うところだった それを踏まえてもう一度聞くぜ」 何故あんなことをした、とギアッチョは繰り返した。 ルイズは顔を俯かせ、しばらく沈黙を続けていたが、やがて絞り出すように 声を出した。 「・・・・・・だって・・・・・・ギアッチョが・・・」 「ああ?」 オレのせいかこのガキ、と怒鳴りかけたギアッチョだが、 「ギアッチョが・・・幻滅する・・・から」 その後に継がれた言葉を聞いて、彼の顔は「はぁ?」という形に固まった。 俯いていた為そんなギアッチョの顔を知らないルイズは、とうとう完全に 見放されたと思い込んだらしい。地面を見つめたまま肩を震わせている。 ギアッチョは心底困惑していた。すると何か?こいつはオレに見直して もらおうとしてこんなバカをやらかしたってわけか? ギアッチョは改めてルイズを見る。俯いていて表情は分からなかったが、 悄然と落としたその小さな肩は彼女の感情を如実に物語っていた。 ――どーしろってんだ 彼女が自分に相当な依存をしていたことに気付き、ギアッチョは心底 困惑した。生前――そして死んでからも――子供から好意を向けられた ことなど一度たりとてないギアッチョである。初めて向けられた、それも 殆どすがりつくような好意に彼が戸惑うのは当然のことだった。 ――こいつの様子がおかしいのはそういうことか・・・ およそプライドの高いルイズらしからぬ行動の理由がようやく解った ギアッチョだったが、 ――だからどーしろってんだ 結局目の前で死にそうに落ち込んでいるルイズに何と声をかければ いいのかは解らないわけで。万策尽きた彼は・・・もっとも策が一つとして 浮かばなかっただけなのだが、とりあえずこういうことに慣れていそうな ギーシュを見た。ボロボロの顔でにやにや笑いながらこっちを見ている。 よし、殺す。次にキュルケに目を向けた。実に楽しそうな眼でこっちを 見ている。てめーも覚えてろ。最後にタバサに眼を向ける。いつも通りの 読めない顔でこっちを見ていた。 ギアッチョはチッ、と大きく舌打ちをした。考えたって解らねーならとにかく いつも通りに喋るしかねーかと開き直る。失敗したらてめーをボコってやる という意思を込めてギーシュを一つ睨んでから、ギアッチョはルイズに向き 直った。 「顔を上げな 聞いてなかったみてーだからよォォー もう一度だけ言って やるぜ」 ルイズがゆっくりと上げた顔を覗き込みながら、ギアッチョは「いいか」と 前置きした。 「てめーに出来ることをしろ 勝ち目もない敵に無為無策で突っ込んで 行くのは『覚悟』でもなんでもねぇ・・・ただの自殺だ」 ギアッチョはルイズの宝石のような瞳を睨みながら続ける。 「ええ? 解るかルイズ 『覚悟』は道を作る意思だ・・・てめーの暴走は違う」 そこまで言って、ギアッチョは返事を求めるように言葉を切った。ルイズは ギアッチョの強いまなざしから逃げたい気持ちをなんとか抑えて、一言 「・・・はい」 と答えた。 ――何でオレはこんなガキに説教してんだ・・・? こういう役目はオレじゃあ ねーだろ ええ?おい ギアッチョは心の中で一人ごちると、小さく嘆息してから今一番彼女に必要な 言葉を口にする。 「・・・いいかルイズ 失敗なんてのはよォォ 誰にでもあるもんだ 重要なのは そこじゃあねー そこから成長出来るかどうかだ ええ? 違うか? てめーの失敗なんてオレは気にしちゃあいねーんだ ま・・・次同じようなことを やらかしゃあ今度はブン殴るがよォォ」 その言葉でルイズの瞳はまず驚愕に見開かれ、次に何かをこらえるように 細くなり――そして最後に、堰が決壊したように涙が溢れ出した。 ギアッチョはそんなルイズを呆れたような安心したような眼で見ると、オレの 仕事は終わりだと言わんばかりに立ち上がった。 ――我侭だったり素直だったりプライドが高いと思えばよく泣いたり・・・ 全くガキってのは解らねーな ギアッチョは新入りに兄貴と呼ばれていた仲間を思い起こし、改めてこんな キャラはオレじゃねえと強く思った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1177.html
部屋割りは、男同士でギアッチョとギーシュ、女同士でキュルケとタバサ、そして婚約者同士でワルドとルイズが同室になった。 「ダメよ!まだ結婚もしてないのに!」 とルイズが抗議するが、ワルドは「大事な話があるんだ」と言って微笑み、彼女は複雑な顔をしながらもそれを承諾。ちなみにギアッチョが「学院で俺と同室なのはいいのかよ」と突っ込むと、ワルドに物凄い眼で睨まれた。 アルビオン行きの船は明後日まで出ないらしい。ルイズは困った顔をしたが、どうにもならないと分かっているようで何も言わなかった。 「そういえば、彼はどこにいるんだい?」 姿が見えないギーシュを指してワルドが言う。ギアッチョは未だ抜け切らないはしばみ草のダメージに顔をしかめながら口を開いた。 「疲れてるらしいんでよォ~~ 一足先に適当な部屋で就寝中だ」 オレもそこを使わせてもらう、と言うギアッチョに、ワルドは特に疑問は抱かなかった。 「・・・それで、大事な話って?」 二人にあてがわれた部屋でワルドに注がれたワインに口をつけながら、ルイズは彼にそう促した。飲み干したグラスを置いて、ワルドはふっと遠くを見る眼をする。 「覚えているかい?あの日の約束・・・ ほら、君のお屋敷の中庭で・・・」 「あの、池に浮かんだ小舟?」 ワルドは優しげに頷いて続けた。 「君はいつもご両親に怒られた後、あそこでいじけていたね お姉さん達と魔法の才能を比べられて、出来が悪いなんて言われてた」 「ホントにもう・・・変なことばっかり覚えているのね」 口を少しとがらせて、ルイズは拗ねたような顔を作る。そんな彼女を見て、ワルドは「婚約者との思い出を忘れたりするものか」と楽しそうに笑った。それから彼は急に真面目な顔になると、 「・・・だけどルイズ 僕は君が才能の無いメイジだなんて思わない」 と言った。 「ガンダールヴ・・・?」 「そうさ あの使い魔君の左手に刻まれているルーン、あれは『ガンダールヴ』の印だ 始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔だよ」 「ワルド、からかうのはやめて」 ルイズは信じられないといった顔をする。確かにギアッチョはそれこそ魔人のように強い。 しかし、ギアッチョが伝説の使い魔であるなどということはにわかに信じられるものではなかった。メイジの実力を知るには使い魔を見ろと言う。 魔法の成功率が殆ど0%に近い、「ゼロ」という嘲りすら受けている自分の使い魔が、始祖ブリミルの使役していた伝説の存在?信じられない。というか、有り得ない。 もし万が一、いや億が一兆が一、そうであったとしてもだ。それはどう考えても、何かの間違いだ。己の無能さは、自分が一番よく分かっている。 そもそも伝説云々以前に、自分がギアッチョを召喚出来たこと自体が何かの間違いか、そうでなければ神か悪魔の起こした奇跡であるとしか―― 「ルイズ、またネガティブなことを考えているね?」 どんどん落ちてゆくルイズの思考は、ワルドの言葉で停止した。ワルドはルイズの鳶色の瞳を覗き込むと、屋敷の小舟の上で彼女を励ました時の優しい顔で言う。 「君は偉大なメイジになるだろう そう、始祖ブリミルのように・・・歴史に名を残すような、素晴らしいメイジになる 僕はそう信じているよ」 「・・・ワルド、私は」 「――この任務が終わったら、僕と結婚しよう ルイズ」 「・・・え・・・?」 いきなりのプロポーズに、ルイズは眼を白黒させる。そんなルイズを穏やかに見つめて、ワルドは言葉を継いだ。 「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない いずれは国を・・・いや、このハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っているんだ」 ワルドはそこで一度言葉を区切ると、ルイズの頬にすっと手を触れる。 「ずっとほったらかしだったことは謝るよ 婚約者だなんて言えた義理じゃないことも分かってる・・・だけどルイズ 僕には、君が必要なんだ」 ワルドの口調は本気だった。彼は今、本気でルイズに求婚している。 「・・・ワルド ・・・・・・で、でも」 とっさに口をついた言葉に、ルイズははっとした。 でも――なんだ? 幼い頃から憧れていたワルドからのプロポーズに、今自分は「でも」何と返そうとした? ルイズは「でも」の続きを思い浮かべようとするが、しかしいくら考えても一体自分が何を言おうとしていたのか分からない。そんなルイズの胸中を知って知らずか、ワルドは困ったような顔をして口を開いた。 「僕のルイズ、まさか君には好きな人でも出来たのかい?」 「好きな人」と言われた瞬間、ルイズの脳裏に何故かギアッチョの姿が浮かび、 「ちっ、違うのワルド!そうじゃないわ!」 そうじゃないと連呼しながらも、彼女の頭の中はギアッチョで一杯になってしまった。 予想だにしない事態に、ルイズの頭は今必死に心を整理しようとしている。どういう ことかと言えば、要するに彼女はギアッチョを恋愛の対象としてはっきり意識したことなど一度もなかったわけで、ギーシュだのマリコルヌだの・・・まあ前者はともかく後者は論外だが、ともかくそういう順当に思い浮かべるべき男達をあっさりスルーしていの一番にギアッチョを思い浮かべてしまったことについてルイズの脳が納得のいく説明を求めているわけである。 ――ど、どどどうしてあいつの姿なんかが浮かぶのよ! ルイズは耳まで真っ赤にして俯いた。よりによって、よりによってどうしてギアッチョが浮かんだのだろうか。 ルイズは俯いたまま考える。「好き」という言葉で一瞬、本当にほんの一瞬だが、ギアッチョを思い浮かべてしまったということは・・・つまり多少は、いやきっと塵ほどに少しだが・・・・・・・・・その、気になっていたということなのだろうか。 ――そ・・・そんなはずあるわけないわ だってギアッチョよ、とルイズは思う。すぐにキレるし物は壊すし周りは気にしないし礼儀もなってないし常識的に考えて最悪ではないか。穏やかで優しいワルドとは全く正反対だ。 それにワルドは礼儀正しいし気配りも出来る。強さは・・・どっちが上か分からないが、なんたってワルドはスクウェアだ。 それにワルドは頭もいいし・・・いや、ギアッチョも多分頭はいいか。「ま、まぁそこはいいわ」とルイズは次を考える。第一ギアッチョは使い魔ではないか。 使い魔に恋するメイジなんて聞いたことがない。それにあいつは異世界の人間だし・・・それにワルドのほうが格好いいし、それに変な髪形だし変な眼鏡だし変な服だし変な名前だし――・・・。等々、後半はもう殆ど言いがかりなのだが、どうにかして否定しようと躍起になっているルイズにはもはや関係なかった。 あらかたギアッチョの悪口を並べ立てた後、彼女は「と、とにかくありえないわ!」と強引に結論を下した。 「普通に考えたらあんなのもう公害とか災害レベルに迷惑じゃない!誰がそんな奴をす、好きになるのよ!そうよ、何かの間違いだわ!はい決定!終了っ!」 どうしてこんなにうろたえるのかも分からないまま、ルイズは己の思考に強引な結論で無理やりに蓋をする。 ――・・・でも・・・ しかし閉じたはずのその蓋から、かすかに言葉が漏れ出す。 ――でも・・・あいつはいつもわたしを助けてくれる・・・ わたしの・・・かけがえのない・・・ 心ここにあらずといった感じで悶々としているルイズを眺めて、ワルドは苦笑まじりに 溜息をつく。 「君の心の中には、誰かが住み始めたみたいだね」 それを耳にして、ルイズはハッと顔を上げた。 「ち、ちち違うわワルド!そうじゃないの!」 「いいさ、僕には解る 取り消すよ・・・今返事をくれとは言わない でもこの旅が終わったら、君の気持ちはきっと僕に傾くはずさ」 ワルドは気にしないという風に笑うと、「さ、それじゃあもう寝よう」と言いながらベッドに潜り込んだ。 ワルドを見てルイズもベッドに入るが、その胸中はさっき以上に混乱していた。どうして、ずっと憧れていたワルドにはいと言えないのだろう。 どうして、こんなに優しくて凛々しいワルドを拒んでしまったのだろう。ワルドとギアッチョに対する疑問が、ルイズの頭を埋め尽くしていた。 ギーシュのベッドにデルフリンガーを放り投げると、ギアッチョは自分のベッドにぼすんと転がった。 ――ゆっくり考えてる時間がなかったからな・・・ 頭の後ろで手を組んで、ギアッチョは眼を閉じて夢のことを考える。 あの時は何の疑いも持たずに信じてしまったが、リゾットは本当に死んだのだろうか。 ――いや・・・ きっとあれは本当の光景だ、とギアッチョは思う。ただの夢にしては何もかもが精密すぎる。全てがただの夢ならば、どこかで必ず光景のブレや矛盾が出てくるはずだ。 あの夢にはそれがない。最初から最後まで、全てがまるで一本の映画のように精密無比に展開されていた。 しかしあの光景が現実だというのなら、リゾットの死をも受け入れなければならない。 ギアッチョはほんの一瞬苦しげに眉根にしわを寄せたが、すぐになんでもない顔に戻ると、口元に小さく笑みを浮かべた。 「全くよォォー 何うじうじやってんだァオレは?そんなキャラじゃねーだろーがよォォ あのバカ共はきっと地獄で笑ってやがるぜギアッチョさんよ 誇ると言ったからにゃあせいぜい胸張るしかねーだろーが ええ?オイ」 あいつらがどう思うかを考えると、不思議と力が沸いてくる。一人呟いて跳ね起きたギアッチョの眼鏡の奥の双眸は、もういつもの覇気を取り戻していた。 それから彼はしばらくデルフリンガーと話をしていたが、部屋に入ってからずっと「助けてくれ」だの「僕が悪かった」だのという声が煩いので仕方なく立ち上がって開けっ放しの窓からベランダを覗く。 見事に冷凍されたギーシュがギャーギャーとひっきりなしにわめいているので、ギアッチョはギロリと彼を睨んで「仕方ねぇな」と言うが早いかバタンと一片の慈悲も無い音を立てて窓を閉めた。 幸いなことにギアッチョが眠りについたと同時にホワイト・アルバムが解除され、ギーシュはガチガチと歯を鳴らして震えながらも何とか毛布に包まることが出来た。 ベッドと毛布の存在に無上の感謝を捧げながら、彼は眠りに落ちてゆき―― コンコンというノックの音で、ギーシュは眼を覚ました。窓からは燦々と陽光が差し込んでいる。 条件反射で「ふぁい!」と情けない返事をしてから、ギーシュは疲労が回復し切っていない身体を引きずるようにして扉へ向かう。 「おはようギーシュ君」 扉の向こうにいたのはワルドだった。憧れの隊長に名前を呼ばれて、ギーシュは思わず姿勢を正す。ワルドは部屋の中を見回してから、ギーシュに目線を戻して尋ねた。 「使い魔君はいないようだね」 「そ、そのようでありますね きっと一階の酒場とかその辺にいると思われるであります」 ワルドと話をしている緊張と寝起きで働かない頭の為に、ギーシュは口調がおかしくなっている。そんなギーシュに爽やかに笑いかけると、ワルドは礼を言って出て行った。 「珍しいな てめーが起きてるとはよ」 ワルドと殆ど入れ違いのような形で階下に下りたギアッチョは、既に酒場のテーブルに座っていたルイズを見てそう言った。ルイズは明らかに寝不足と解る顔でギアッチョを睨む。 「誰のせいだと思ってるのよ!」 「ああ?」 何を理不尽に怒ってやがるんだ、とギアッチョは自分を軽く棚に上げて思う。 何のことだと言い返そうとしたが、後ろからかかった声にそれは中断された。 「ここにいたとはね おはよう使い魔君」 使い魔君などと呼ばれてあっさり怒りゲージが針を振り切りかけるのを珍しく作用した理性で抑え、ギアッチョは後ろに眼を向ける。人好きのする笑みを浮かべたワルドがそこに立っていた。 優しげな微笑の裏側で、ワルドは激しく思考を巡らせていた。ルイズの気持ちを自分に傾ける為に、そして彼の力を知る為に、なんとかこの男、ギアッチョと「決闘」をしたい!しかし何故だか分からないが、かなりの確率で断られる予感がするッ!ならばどうするか?言い方を工夫するしかないッ! 「決闘したまえ」と命令してみるか?いや、この男は勝手に逆ギレする可能性がある。 この場で暴れられてはいくらなんでも話にならない。やんわりと雑談から入ってみるか? いや、それも却下だ。散々盛り上げておいて断られましたではみじめにも程がある。「頼む、決闘してくれないか」ではどうだ?勿論ダメだ。 貴族が平民にものを頼む時点でルイズは幻滅するだろう。ならば最善手は やはり、「決闘してくれ」だろう。これなら断られても僕の矜持は傷つかないし逆にルイズの使い魔に対する好感度を下げることにもなる・・・よしこれだッ! 奴の能力が見られないのは残念だが、3度ほど頼んでみてダメならさっさと諦めればいい。やはりシンプルだ・・・シンプルがいいッ! 「君に頼みがあるんだが」 平静を装って、しかし真面目な顔でワルドはギアッチョを見る。ギアッチョは一瞬怪訝な顔をしたが、すぐにワルドに向き直った。 「言ってみな」 その尊大な態度にワルドはピクリと眉を動かしかけたが、なんとかそれをこらえて今考えた必殺のセリフを放つ。 「僕と・・・決闘してくれ!」 「いいぜ」 「早ッ!」 予想外の展開に思わず叫んでしまい、ワルドは慌てて咳をした。聞き間違いかと思ったが、ギアッチョは面白い暇潰しを見つけたという顔をしている。 とりあえず今の情けない返事を誤魔化す為にも、貴族らしい返事をしなければならないと考えたのだが――色々と慌てていた為になかなか言葉が浮かばず、焦りに任せて「グッド!」などと更によく分からない返答をしてしまったワルドだった。 渡りに舟だとギアッチョは思った。色々と忙しくて試せていなかったが、あのオールド・オスマンに聞いた力・・・「ガンダールヴ」の効果を確かめるいい機会だ。 それにワルドの実力を知るチャンスでもある。ギアッチョの尋問のせいで誰も聞いていなかったが、彼らを襲った傭兵達を雇ったのは貴族だった。 この任務はアンリエッタの密命で、ワルドも彼女から直々に拝命したと言っていた。 手続きも通さずこっそりルイズの部屋に忍んできたほどなのだから――勿論これは推測に過ぎないが、ワルドにも内密のうちに直接依頼した可能性が高い。 自分はあれからずっとルイズのそばにいた、ならばあの王女様がヘマをしていない限りは、この任務が漏れることはワルド自身からしか有り得ないのだ。もっとも、事実は小説より奇なりなどという言葉を借りるまでもなく、こういった推理は思わぬところで穴が空いたりするものである。ギアッチョはあくまで可能性の一つとして、ワルドを警戒していた。 決闘の介添え人を任されたルイズは「バカなことはやめて」と怒鳴ったが、ギアッチョもワルドも聞く耳持たないことを理解して諦めた。 「なんなのよ、もう!」 「殺しゃしねーから安心しな」 臆面も無くそう言ってのけるギアッチョにワルドがブチ切れそうになったが、一つ深呼吸をしてなんとか気持ちを落ち着ける。腰の杖を引き抜いてビッと前に突き出すと、 「どこからでもいい 全力で来たまえ」 と言い放った。ギアッチョはフンと鼻を鳴らすと、剣を乱暴に抜いて腰を落とす。 それを見届けたルイズの怒りと心配の色を含んだ開始の合図で、決闘の幕は上がった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2196.html
注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 「HELLSING」のアーカードを召喚 ゼロのロリカード-01 ゼロのロリカード-02 ゼロのロリカード-03 ゼロのロリカード-04 ゼロのロリカード-05 ゼロのロリカード-06 ゼロのロリカード-07 ゼロのロリカード-08 ゼロのロリカード-09 タバサとゼロの吸血鬼 ゼロのロリカード-10 ゼロのロリカード-11 ゼロのロリカード-12 ゼロのロリカード-13 ゼロのロリカード-14 ゼロのロリカード-15 ゼロのロリカード-16 ゼロのロリカード-17 ゼロのロリカード-18 ゼロのロリカード-19 ロリカードとギャンブラー-1 ロリカードとギャンブラー-2 ゼロのロリカード-20 ゼロのロリカード-21 ゼロのロリカード-22 ゼロのロリカード-23 ゼロのロリカード-24 ゼロのロリカード-25 ゼロのロリカード-26 ゼロのロリカード-27 ゼロのロリカード-28 ゼロのロリカード-29 ゼロのロリカード-30 ゼロのロリカード-31 ゼロのロリカード-32 ゼロのロリカード-33 ゼロのロリカード-34 ゼロのロリカード-35 ゼロのロリカード-36 ゼロのロリカード-37 ゼロのロリカード-38 ゼロのロリカード-39 ゼロのロリカード-40 ゼロのロリカード-41 ゼロのロリカード-42 ゼロのロリカード-43 ゼロのロリカード-44 ゼロのロリカード-45 ゼロのロリカード-46 ゼロのロリカード-47 ゼロのロリカード-48 ゼロのロリカード-49 ゼロのロリカード-50 ゼロのロリカード-51 ゼロのロリカード-52 ゼロのロリカード-53 ゼロのロリカード-54 ゼロのロリカード-55 ゼロのロリカード-56 ゼロのロリカード-57 ゼロのロリカード-58 ゼロのロリカード-59 ゼロのロリカード-60 ゼロのロリカード-61 ゼロのロリカード-62 ゼロのロリカード-63 ゼロのロリカード-64
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/694.html
ここは地球とは異なる世界。その名もハルキゲニア。 その世界の、トリステイン魔法学校と呼ばれる場所で一人の少女が奮闘していた。 進級試験として使い魔を召還する儀式を行っているのだ。 「所詮ゼロのルイズには無理なんだよ!」 「もう諦めろよw」 「先生、やらせるだけ無駄ですよ!」 幾度の失敗により、少女を囲む子供たちからも不満の声が上がる。 それも当然だろう。失敗による爆発で大なり小なり皆煤を被ってしまっているからだ。 それでも教師らしき禿頭の男は優しく、真剣な目で少女を見守っていた。 「~~~~~~っ!!!」 少女は成功の兆しすら見えないことに怒り悲しんでいた。 周りから馬鹿にされる事には馴れていたが、今は進級が掛かった大事な試験だ。 これに失敗してしまえば魔法学校初の留年という不名誉を負うことになる。 何よりも家名を大事にするトリステインの貴族としては、そんな事になるわけにはいかなかった。 優秀な父母と姉妹に囲まれて育ってきた中、ただ一人の落ちこぼれ。 それが世に広まらないように、薄暗い地方の屋敷辺りにでも閉じ込められてしまうかもしれない。 そういった恐怖に追われながらも弛まぬ努力をしてきたというのに、一向に魔法が使えない。 奇跡でもいい、平民が出てきても構わない。今はただ進級だけがしたかった。 「ミス・ヴァリエール……残念ですが次に失敗してしまえば留年という事にせざるを得ません」 禿頭の教師は沈痛な面持ちで少女―――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールに告げる。 その言葉にルイズはギリッと歯を食いしばった。 次で終わり。奇跡などそんな易々と起きない事など分かっていた。 今までずーっとゼロと呼ばれ、辛酸を舐め続けたのだから。 だけど最後のチャンスを不意にする事もない。 ルイズは顔に疲労の色を浮かべつつも、目を閉じて呪文を唱える。 「五つの力を司るペンタゴン、我の定めに従いし、使い魔を召喚せよ!」 それを見守る生徒たち。 だが、無常にも結果は変わらなかった。 ただいつにも増して大きい爆発が起こったというだけ。 僅かなりとも期待をしていたルイズは、流石に絶望を隠しきれなかった。 「やっぱり失敗だな、ゼロのル・イ・ズwww」 「ハハハハハ、これでルイズのやつ留年だぜ!」 「まぁ最初から分かってた事だよなー!」 次々と子供たちが悪口と笑い声を発していく。 それは徐々に大きくなり、輪を作る者の殆どがルイズを嘲笑していた。 だけどルイズはそれに何も反論できなかった。 そう、最初から分かりきった結果だったのだ。 失敗しかしない成功率ゼロの少女が、進級試験でサモン・サーヴァントでの召還を成功できる訳がない。 進級など、夢のまた夢だと。 悔しさに涙が流れてくる。 その雰囲気を察して、禿頭の教師・コルベールはかける言葉も見つからなかった。 彼はルイズが普段どれほどの努力をしているのかを知っていた。 魔法が使えずに実技が駄目なため、一生懸命に歴史などといった筆記の方にも力をいれている事を。 なんとか進級をさせてあげたい、と心の底から思うほどに。 だがこの春の使い魔召還の儀式は、とても神聖なもの。 一教師であるコルベールの一存でそんな事は決められないし、上に掛け合っても無駄だろう。 それに生徒に対して平等であるべきの教師がこんな事ではいけない。 コルベールは涙を呑んでルイズに留年の意を伝えようとする。 その時、爆発により近くすら見えなくなるほど上がっていた粉塵が収まり始め、何かが見えてきたのに気付いた。 未だ粉塵に隠れている現状では何なのかは分からないが、それはとても大きかった。 「ミス・ヴァリエール! 成功ですよ!」 コルベールは喜びの余りそう叫んでから、恥ずかしさからゴホンと咳をした。 そしてあの大きさで暴れられたら危険な事を思い返し、気を引き締める。 あれが召還の異に応じなかった時に命を懸けてでも教え子を守るために。 そして煙は晴れる。 そこには誰にも想像だにしなかったものがいた。 いや、あったというべきか。 何しろそれは生物ですらないからだ。 巨大な一軒の建物がどっしりと佇んでいた。 「ちょwww」 「おまwww」 「うはwww」 「ワロスwww」 生徒達は口々に大爆笑を始める。 笑われているルイズは未だに現状が把握できずにポカーンと建物を見上げて呆けていた。 コルベールも同様である。 長年生きてきて、こんなモノが召還されるなどと言う事は、見たことも聞いた事すらない。 「ルイズ!家なんか召還してどうすんだ!?」 その言葉にルイズは我に返り、咄嗟に言い返す。 「うっ、うるさいわね! 風除けのマリコルヌのくせに! もしかしたら中に誰かいるかもしれないでしょ!」 「風邪っ引きのマリコルヌだ! 違う、風上のマリコルヌだ それに俺は風除けになるほど太っていない!」 コルベールはこの言い合いに、じゃあ太ってる事は認めるんだなぁと現実逃避をしながら、どうするべきか考えていた。 まぁとりあえずルイズの言い分も尤もな事なので、とりあえず中に人がいるか探ろうと思った。 「ではミス・ヴァリエール。中に人がいたら儀式を済ませてきなさい ミスタ・マリコルヌも悪口は見苦しいですよ」 このまま放っておくといつまでも続くと思ったコルベールは、ルイズに指示する事で言い争いを止めた。 そして生徒たちとともに、ルイズが建物の中に入っていくのを再三見守っていた。 ルイズの成功を祈りながら。 ボンッ! ドサッ コロコロ…… 突然の事だった。 生徒達もコルベールも何が起こったのか分からなかった。 ルイズが建物に足を踏み入れた直後、ルイズの首が爆発して飛んだのだ。 地面に転がっているルイズの頭が、死んだ事も分からないように普段と同じ表情をしているのが、やけに滑稽だった。 以後、その建物は入った者の首を飛ばしていく事から悪魔の館と呼ばれ、ハルキゲニアの歴史に名を残す事になる。 【一日目 午後七時/トリステイン魔法学校】 【ジャン・コルベール@ゼロの使い魔】 [状態]:禿げ [装備]:不明 [所持品]:不明 [思考] :ツンデレコンビを掴まえる 1:唖然 【マリコルヌ・ド・グランドプレ@ゼロの使い魔】 [状態]:かぜっぴき、風除け [装備]:不明 [所持品]:不明 [思考] :ツンデレコンビを掴まえる 1:呆然 【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 死亡確認】 [死因]:禁止エリアのニビジムに足を踏み入れたため爆死
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2390.html
16話 明くる日の朝。 教師から今日何度目かになる報告を受けて、オールド・オスマンは深いため息をついた。 一つ目の報告は、昨晩、何者かが女子寮の一室に侵入したこと。 オスマンはそれに飛びあがって仰天し、すぐに誰が被害を受けたのかを調べさせた。 そして、主な被害者がルイズ・ド・ラ・ヴァリエールであることが分かったのが二つ目の報告。 幸い彼女自身に大きなケガはないが部屋が丸焦げのボロボロになっていて、 また襲われた彼女に助太刀したキュルケ・フォン・ツェルプストーが軽傷を負ったことも報告された。 それを聞いたオスマンは、すぐに侵入者をひっ捕らえてここまで連れて来い、とその教師に指示した。 3つ目の報告――妙な男が女子寮の外壁に吊るされている――が入ったのは、その直後だった。 その吊られた男をモートソグニルに見に行かせ、 彼(モートソグニル)の眼越しにその男がどういう状態かを確認したのがついさっきだ。 男は全く口が聞けない状態になっていた。 とはいっても死んだわけではなく、かといって生きているとは到底言い難い状態だった。 つまり廃人になっていたのである。 「はてさて……こいつは果たして本当に侵入者なのか、というところが問題じゃな」 「何故ですか? 侵入者は一人、吊られた男は一人で、この男が犯人なのは間違いないでしょう?」 そう聞くのは秘書のミス・ロングビルだ。 「モートソグニルもそう言うとったよ。 じゃがの、口が聞けん以上あれが侵入者だと確認する術がないんじゃよ」 「全く関係ない人間を廃人にして、オトリとして置いて行ったと?」 「それも考えられる、ということじゃ。 ま、選択肢の中の一つでしかないから重きを置く必要はないんじゃが……確認だけはしておきたくての」 そう言ってオスマンはまたため息をつき、 「……ところで、まだミス・ヴァリエールは見つからんのかの?」 「その報告は受けておりません。 ですが、何者かに連れ去られたセンは薄いでしょう」 「と言うと?」 オスマンが眉根をあげて尋ねる。 「仮に侵入者が二人以上いたとするならば、一人だけに戦闘を任せておくような真似はしないでしょう。 おまけに侵入者は予想外の援軍――ミス・ツェルプストーからも攻撃を受けていた。 二人いたなら、ここでもう一人でてきてもおかしくありません。 ですが、結局侵入者は倒されるまで一人で戦い続けた、とのことです」 「なるほど、筋は通っとるのう」 「教師の皆さんがその辺りを探していらっしゃいますから、そのうち見つかるのではと」 ロングビルがそう言った途端、 「み、ミス・ヴァリエールが見つかりました!」 教師が駆けこんできて報告を伝えた。 実に本日五度目である。 オスマンは教師の顔をちらと見て、 「御苦労さん。ついでにもひとつ頼むが、ミス・ヴァリエールをここまで連れてきてもらえるかね?」 そう指示して、またため息をついた。 「今日はため息が多いですね」 「まったくじゃよ。 今日はフリッグの舞踏会じゃというのに、まったく朝からこんな大事が起きるとはのう……。 おお、そうじゃミス・ロングビル」 「何ですか?」 「君は舞踏会には出んのかね?」 「いえ、事務が残っておりますので」 「そうか……どうりで下着が白い」 ボゴァッ! 「ぶげぇッ!」 オスマンの右頬にロングビルの全体重を乗せた、ジェロム・レ・バンナばりの左ストレートが突き刺さるッ! 椅子から飛ばされたオスマンは頭から壁に激突し、そのままズルズルと崩れ落ちる。 そこにッ! ボゴッボゴッドガッガッガキッバギッ! 鉄鎚、パウンド、ヒザ蹴りの猛追撃! 五味隆典のそれを彷彿とさせる鬼の追撃は、 カメになって耐えるオスマンのガードもなんのその、一心不乱に打ち続け―― 「ミス・ヴァリエールを連れてきました!」 ノック一つせず教師は入ってきたが、その時すでに二人は1分前の状態に戻っていた。 オスマンは学院長の机に肘をついて頭をかき、ロングビルは何か物書きをしている。 まさに職人芸である。 「よろしい、君は戻ってもいいよ」 そう言って教師を帰すと、入れ替わりにルイズが学院長室に入った。 だが何か様子がおかしい。 「……あ~、ミス・ヴァリエール……君が手に持っとるのは……」 「鞭です」 しかも乗馬用の鞭である。 それを片手に、ルイズは鋭い目つきで周囲を見回していた。 まるでモグラ叩きを始める直前のように、その眼はせわしなく動き回る。 「なるほど……鞭かね。 まあとりあえず鞭はおいといて、昨日の晩に何があったかを話してくれるかね?」 「不届き者が侵入して、家財道具が全部黒コゲになりました」 そう言いながらもルイズは周りへの警戒を怠らない。 いつ「何か」が出てきてもいいように、鞭も両手でしっかり握っている。 「あ~……それは災難じゃったの。 じゃが……ミス・ロングビル」 「はい」 ロングビルが杖を取り出して、それを軽く振った。 すると、ルイズの手から独りでに鞭が離れ、空中を飛んでロングビルの手に収まった。 「あっ! ちょ、ちょっと、何するんですか!」 「鞭はお預けじゃ。それよりも重要なことがあるからの。 あ、ミス・ロングビルは席をはずしてくれたまえ」 「かしこまりました」 そう言ってロングビルは部屋を出る。 鞭は手に持ったままである。 その後ろ姿に、何だか妙に鞭が似合っていたな、と若干背筋に寒いものを感じたオスマンだった。 「じゅ、重要なこと、ですか?」 「ああ、そうじゃ……ホワイトスネイク君、出てきてもらえるかね?」 オスマンがそう言うと、 「オ呼ビカナ?」 不敵な笑みを湛えて、ホワイトスネイクが現れ―― ドグシャアッ! た瞬間だったッ! 丈夫な高級皮靴を纏ったルイズの踵が、ホワイトスネイクの足の小指に叩きこまれるッ! 「グオォッ……」 「ふふん、鞭さえなければ大丈夫だと思ったの? 油断したわね、ホワイトスネイク! 鞭が無いなら無いで、ちゃんとどうするかは決めてあったのよ!」 びしっと指を突きつけて勝ち誇るルイズ。 ホワイトスネイクはそれを、若干殺気のこもった眼で睨み返す。 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……と、空気が威圧的に振動し始める。 「オ前……私ト知恵比ベヲシタイラシイナ……」 「へ?」 「私ヲ嵌メルッテ事ハ、ツマリソーイウコトダ。楽シクナッテキタナ……スゴク楽シクナッテキタ」 「いや、えっと、その……」 何だかヤバい感じになってきたことを理解するルイズ。 自分が小指だけでなく地雷まで踏んづけてしまったことを悟ったのだ。 「そこまでじゃ」 不意にオスマンの声がかかる。 「主人と使い魔同士で仲良くするのは構わんが、そいつは後にしてくれ。 わしは君らの話が聞きたかったんでのう、ミス・ヴァリエール。そしてホワイトスネイク君よ」 「……ソレデ、話トハ?」 ホワイトスネイクが訝しげに尋ねる。 「君なら分かっとるハズじゃろう?」 「……確カニ、人間ヲアンナザマニ出来ルノハ、ソンナニ多クハイナイナ」 「ちょ、ちょっと待ってください、オールド・オスマン! わたし、二人が何を言ってるのかが……」 話を読めないルイズが、間に割って入る。 「まあ、ミス・ヴァリエールはそうじゃろうな。 順を追って説明しようかの」 オスマンはそう言って、ゆっくりと立ち上がった。 「一週間前じゃ。 君のホワイトスネイク君とギーシュ・ド・グラモンが決闘した。 勝ったのはホワイトスネイク君、負けたミスタ・グラモンは意識不明の重体になった。覚えておるかの?」 「……はい」 覚えているに決まっている。 あの日が今の自分のきっかけなんだから。 あれだけ誰かを許せないと思ったのも、あれだけ誰かに勝ちたいと思ったのも、あの日が初めてだったのだから。 「結局ミスタ・グラモンは君がくれた光る円盤……『でぃすく』じゃったか? それを額に差し込むことで、完全に回復した。 今は元気に二股、三股かけとるらしいぞ」 そう言ってオスマンはにやっと笑った。 つられてルイズもくすっと笑う。 ホワイトスネイクだけは笑わずに無表情で立っていた。 「まあかくしてミスタ・グラモンは回復したわけだが……もう一人、回復しとらん男がいる。 そいつは今朝、女子寮の壁につるされ取るのを見つけられての……誰だか分かるかね?」 「もう一人って……まさか、あんた!」 察しの悪いルイズも流石に気付いた。 昨日部屋の中からいなくなっていた不届き者――ラング・ラングラーの姿が見えないと思ったら、 意識不明――つまりホワイトスネイクに記憶を取られ、おまけに女子寮に吊るされていたとは! 「……今更気付イタノカ」 「当たり前じゃないの! わたしはてっきりあんたがあいつをぶん殴ってやっつけたのかと思ってたのに……、 ああもう、いくら相手が悪党だからってやっていいことと悪いことがあるわよ! あれ返してあげないと死んじゃうんでしょ? すぐ返してきなさいよ!」 事情をようやく理解したルイズがぎゃあぎゃあと喚き立てる。 (これで、確認は取れたの。 あれは間違いなく、ラング・ラングラーじゃというわけか。 ……『魔法殺しのラングラー』をあんなザマにするほど、こやつは強いのかね……) 騒がしい空気の中、オスマンは一人冷徹な思考で考える。 「ソウハ言ウガナ、ルイズ。人間喋リタクナイ事ハ中々喋ラナイモノダ」 「答えになってないわよ!」 「オ前ノタメニ分カリヤスク言ッテヤルト、尋問ナンテDISCサエ調ベレバ事足リルンダ」 「だからどういう……」 「一つ確認したいのじゃが、いいかね?」 オスマンがルイズの言葉を遮って言う。 「何ダ?」 「君が今言った『でぃすく』とやら……その中に入っているのは何じゃ?」 「記憶ダ。ソイツガ今マデニドウ生キテ、何ヲ思ッタノカ、ソノ全テノ記憶ガ記録トシテ詰マッテイル」 「なるほどな……だから尋問せずともそれを覗けば、そいつの知っとること、思っとることが全部分かるわけか。 それを奪われたら、廃人同然になってしまうのも、それがそいつにとっての全てじゃから……か」 そこで言葉を切ってオスマンは考え込む。 そしてしばらくした後、 「もう帰ってええよ」 「え? い、いいんですか?」 「もうワシの聞きたいことは聞けたからの」 「で、でも、記憶は返さないと……」 「そこんところはホワイトスネイク君と相談して決めるんじゃな。 ワシとしては、あのまま廃人になってたんじゃ後から来る王宮の使いがうるさいから、 どちらかといえば返してやってほしいと考え取るがね」 「は、はあ……」 「まあ君らの好きになさい。ワシはそれでいいと思っておるよ」 そう言って笑うオスマンに、ルイズは困惑しながら学院長室を後にした。 それと入れ替わりに、廊下で待っていたロングビルが中に入る。 「ホワイトスネイク、聞いたでしょ? すぐにアイツに記憶を返してきなさい」 「マア待テ。セッカク奪ッタンダカラ、中身グライハ拝見サセテモラウサ」 「……見たら返しに行くわよ」 「是非トモソウシヨウ」 ホワイトスネイクはそう言うと姿を消した。 ルイズはそれを見届けると、ため息一つついて歩き出した。 「どうかなさいましたか?」 渋い顔をして椅子にもたれかかるオスマンを見て、ロングビルが声をかけた。 彼女は容赦がないときは容赦がないが、そうじゃない時は細かいところにも気の回る人なのだ。 「ワシは王宮に仕る身じゃが、それ以前に教師じゃ。 だから、たとえそれが間違っとっても、役所仕事はできんわい」 「……オールド、オスマン?」 「ん? ああ、ミス・ロングビルかね」 「オールド・オスマン、どうかなさいましたか?」 「いや、何ともないよ。だたの独り言じゃ」 そう言って椅子を回し、オスマンは窓の外に目をやった。 (果たしてホワイトスネイクを生かしておくのは正しかったのか、正しくなかったのか。 いずれにしても、今始末しておけばよかったと思う時がいつか来る……。 それでも……) また椅子を回して、抽斗からパイプを取り出す。 (それでもわしは、今あの子からホワイトスネイクを奪うことの損失の方が、大きいように思うのじゃよ) パイプに火をつけ、いざ吸おうとしたその時、ひょいとパイプが宙に浮いた。 浮いたパイプは空中を飛んで、ロングビルの手に収まる。 さっきの鞭と同じ要領だ。 ちなみにその鞭はまだ彼女の手にある。 「……年寄りの数少ない楽しみを奪わんでくれるかね」 じろりと横目でロングビルを見るオスマン。 「オールド・オスマンの健康管理をすることも、私の仕事の一つです」 その目線を一切気にすることなく、ロングビルはぴしゃりと言った。 「まったく……そういうことをされると、ワシの楽しみはこれしか」 ピシャァン! 「っつぅッ!!」 オスマンが伸ばした手に、間髪入れずに鞭が叩き込まれた。 手を伸ばしたのは言うまでもなくスケベな目的のためである。 ロングビルもそれを重々承知しているから鞭で叩いたのだが、 「い……今のは、今のは痛かった……」 痛みで思わず椅子から転げ落ちるオスマン。 何せ乗馬用の鞭である。 SM用ではない。乗馬用だ。 皮が裂け、肉が破れるその痛みは想像を絶する。 ロングビルはしばらくそれを眺めた後、 ピシャッ! パシィン! パァン、スパァァンッ! オスマンの体をしこたま鞭で引っ叩いた。 「ちょ、ミスロングビル! 痛っ、やめ、痛いから! ぎゃあッ!!」 いつもとは明らかに異なる悲鳴を上げるオスマンを見て、さすがにロングビルも手を止めた。 「……かぁ~……き、効いた…………」 「……乗馬用の鞭ですからね。 これでは加減も効きませんし、あとでミス・ヴァリエールに返してきましょう」 「是非とも……そうしてくれたまえ。あ~、しかし痛い……」 「自業自得です」 「そうは言うがのう……」 ロングビルの冷たい視線を避けるように、オスマンは床に突っ伏して手をさすっていた。 今誰かが入ってきたら、流石のオスマンも椅子までは戻れないだろう。 ヴァイオレンスな日常を維持するためには、それなりに節制を加えることも必要なのだ。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/hmnsxx/pages/14.html
「ゼロの使い魔」はこちら
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2262.html
2話 「……ナルホド。ツマリ私ハモウオ前ノ使イ魔ニナッテシマッタノカ」 「そうよ」 「……ソシテコノ左手ノ甲ノ文字ハソノ印カ」 「そうよ」 「仮ニ私ガコノ左手首ヲ切リ落トシタナラ、ドウナル?」 「どうもならないわよ。あんたが痛いだけ」 「デハ、私ガオ前ノ使イ魔ヲ辞メル方法ハ無イノカ?」 「無いわ。主人と使い魔との契約は使い魔が死ぬまで解除されないもの」 「…………」 ホワイトスネイクは静かに絶望した。 何の因果か知らないが、主人と切り離された上にこんな小娘に使われてしまうことが確定したのだ。 こんなことになるなら主人の死と同時に消滅していたほうがいくらかマシだった。 しかも今いる場所は、地球とは全く別の場所らしい。 その証拠に、窓から見える月は赤と青の二つ。 まるでおとぎ話の世界だ。 「……モウ一度確認シタイ。ココハドコダ?」 「あんたもしつこいわね。別の世界から来たとか変なことも言うし……。まあいいわ。 ここはハルゲキニアのトリステイン王国にある、トリステイン魔法学院よ」 「ソシテ使イ魔トハ何ダ?」 「主人を守るのは勿論、主人の目や耳になったり、主人のために秘薬の材料を探したりもするわ。 最後の一つを除けば、スタンドと同じである。 「でもあんたに見えてるものは私に見えないし、おまけに秘薬の材料なんか探せないみたいだし……」 「ソレハイイ。ソシテ私ガ使イ魔ヲ辞メルニハ……死ヌシカナイ。ソウダナ?」 「ええ、そうよ」 実にスガスガしいルイズの解答に、ホワイトスネイクは再び絶望した。 「何よ、その顔! わたしがご主人様だってことに文句でもあるの?」 「アル」 ぴきっ、とルイズのこめかみに筋が走る。 じょ、上等だわ、この使い魔。 この私が、このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがご主人様だってことに文句があるっていうの? お、面白いじゃないの。 「じゃ、じゃあ聞いてあげるわ。わわ、わたしのどこが、不満なのよ?」 まさしく「マジでキレる5秒前」のルイズ。 だがそれを知ってか知らずか、ホワイトスネイクは常識を語るかのように言った。 「適材適所、トイウ言葉ガアル。 優レタモノハ優レタ所ニ、劣ッタモノハ劣ッタ所ニ、トイウコトダ。 ソシテ……私ガ充テラレテモイイ場所ハタダ一ツ。ツマリ私ヲ使ッテイイ人間ハコノ宇宙デタッタ一人。 ダカラオ前ノヨーナ年端モ行イカナイ小娘ニ使ワレルコトガ一番ノ不満ダ」 「だ、誰よ、その『あんたを使っていい人間』ってのは?」 わなわなと震えながらルイズが言う。 「エンリコ・プッチ。 カツテ……ト言ウカ、ホンノ少シ前マデ私ヲ使ッテイタ人間ダ」 「エンリコ・プッチ? 誰よ、それ? それに『使っていた』ってどういうこと?」 「エンリコ・プッチハ聖職者デ優レタスタンド使イ。 『使ッテイタ』トイウノハ、単純ニ私ノ本体ダッタッテコトダ」 「『スタンド使い』? 『本体』? ……あんた、何言ってるの?」 「……ソウカ、マダマトモニ説明シテイナカッタナ」 そう言うと、ホワイトスネイクはふわりと空中に浮き上がった。 「私ガ『スタンド』ト呼バレル存在ダトイウコトハ話シタナ? 『スタンド』トハ精神ガ具現化サレタモノ。 ツマリ私ハエンリコ・プッチノ精神ガ具現化サレタモノダトイウコトダ。 『種族』トイウ括リハ私ニハアマリ合ッテイナイ訳ダナ ソレトコノ具現化ノ元ニナッテイル人間ヲ『スタンド本体』ト呼ブ。 サッキ言イッタ『スタンド使イ』トハスタンドヲ持ッテイル人間ノ総称ダ」 ホワイトスネイクはペラペラと説明する中、ルイズはぽかんとしてホワイトスネイクを見上げていた。 「スタンドニハ『ルール』ガアル。 能力、性能、性質、スタンド本体カラ離レラレル距離……スタンドハ様々ナ『ルール』ニ縛ラレテイル。 故ニ……オイ、聞イテルノカ?」 「……あんた、空飛べたの?」 「正確ニハ『浮ク』ダ。 コノ程度ノコトナラ大概ノスタンドハデキル。 ソレハイイトシテ、私ノ話ハ聞イテイタンダローナ?」 「き、聞いてたわよ! 要するに……っていうか、あんたの話を信じろっていう方が無理よ。 あんたの言ってることが本当なら、あんたは生き物ですらないことになるじゃない」 「ソノ解釈デ合ッテイル」 「それが信じられないってことよ。第一あんた、私と話せてるじゃない。 それにちゃんと痛がったりもするみたいだし……やっぱり『生き物じゃない』ってのは信じられないわ」 「今ハ分カラナクテモイイ。ソノウチ信ジルヨウニナル」 そう言ってホワイトスネイクはふわりと椅子に降りた。 「まあ……今はそういうことにしておいてあげるわ。 他のみんなには『エルフの眷属』だって言っておくから」 「『エルフ』?」 「亜人の一種よ。すごく強力な先住の魔法が使えるの。 それも優秀なメイジ何十人分にも匹敵するぐらいのね」 そこでルイズはいったん言葉を切る。 「それで、結局あんたが言いたいのは『私が優秀な主人じゃないから認めない』ってことでしょ!? 何で私の実力を見もしないうちからそんなこと言うのよ!」 「私ハコレデモ20年人間ヲ見テキテイル。 誰ガ優秀デ、誰ガ無能カハ、見レバ大体分カル。 ダカラオ前ガエンリコ・プッチニ及ブヨウナ器デハナイコトモ分カル」 ぶちん。 本日二度目、ルイズの中の決定的な何かが音を立てて切れた。 「なっ、何よさっきからプッチ、プッチ、って! そんなにそいつがよければそいつのところに行っちゃえばいいじゃない! 何で私のところに召喚されてきたのよ!」 「ソレハ無理ダ」 「何でよ!」 「エンリコ・プッチハ既ニ死ンダ」 「……えっ?」 「私ガコノ目デ確認シテイル」 予想もしなかった答えに、言葉を失うルイズ。 だがそんなルイズに構うこともなくホワイトスネイクは続ける。 「正直、何故自分ガ生キテイルノカ……ソレスラ私ニハ見当モ付カナイ。 ソシテ此処ハ分カラナイコトバカリダ。 何故スタンド本体ト切リ離サレテイル私ガ存在デキルノカ? 何故生キル目的モナイノニ私ハ生キテイルノカ?」 そこでホワイトスネイクはいったん言葉を切る。 「オ前、サッキ私ノ足ヲ踏ンヅケタヨナ?」 「え、ええ……」 「本来ナラ私ハスタンド攻撃デシカダメージヲ受ケルコトナド無インダ。 コレハ私ダケデハナイ。スタンド全テニ共通スルコトダ。 ツマリ……ヒョットシタラ私ハ、モハヤスタンドデスラナイノカモ知レン」 そう言ったきり、ホワイトスネイクは何か考え込むかのように押し黙ってしまった。 ルイズも言葉が見つからず、何も言えない。 ただはっきり分かったのは……ホワイトスネイクが「生き甲斐」をなくしているということ。 その生き甲斐だった人はもうすでに、しかも目の前で死んでしまっていて……。 ルイズにはもちろんそんな経験はない。 それどころか、自分の生きがいとなるようなことさえ見つけていない。 やっぱりこいつの言う通りで、自分はまだ小娘なのかもしれない。 でも―― 「それで……あんたはこれからどうするのよ?」 「自決デモシヨウカト考エテイル」 「ふーん……って、ええええええええええええ!?!?」 「無論本気ダ」 「ちょ、ちょっと! い、いくら生き甲斐がないからって、そんな、何も死ぬなんて!」 「オ前ハ知ラナイカラソンナコトガ言エルノダ。 生キ甲斐ヲ失ウコト、生キル目的ヲ失ウコトガ意味スル本当ノトコロヲナ」 「何よそれ! 全然納得できないわよ!」 「納得スル必要ハナイ。 オ前ノヨーナ小娘ニハ説明シタトコロデ分カラン事ダカラナ」 そう言って、ホワイトスネイクは退屈そうに天井に目を向けた。 ……ななな、なんなのよ、こいつは。 さっきからわたしのことを小娘、小娘って。 しかもなんなのこの態度? まるで私のことをご主人様だなんて思っちゃいないわ。 スタンドだか何だか知らないけど、たかが亜人の分際でいい気になってくれるじゃないの。 今に見てなさい。このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールがあんた如きを使い魔にするぐらい当然のメイジだってことを……。 そこまで考えて、ルイズの思考が止まる。 じゃあ、それをどうやって証明するの? こいつに自分を、どうやって認めさせるの? その手段が今の自分には……あるの? ……「今の」? その単語に、ぐるぐると回り続けるだけだった思考が一気に一つにまとまった。そして定まった。 今後の自分の目標、そして目指すところ。 「ねえ、あんた。……賭けをしない?」 「賭ケ、ダト?」 「そう、賭けよ」 「内容ハ?」 ホワイトスネイクが乗ってきた。 その様子にルイズは内心でほくそ笑み、そして少し間をおいてからこう言った。 「1年でわたしが、あんたがご主人様と認められるだけのメイジになれるかどうか、よ」 ふふん、と胸を張るルイズ。 だが。 「真面目ニ聞コウトシタ私ガ馬鹿ダッタ」 そう言ってまたホワイトスネイクは天井に目をやった。 「ちょ、ちょっと! わたしは真面目に言ったのよ? わたしが立派なメイジになれればあんただって私の使い魔になるっていう立派な生き甲斐が出来るじゃないの! そ、それを、『真面目に聞こうとしたのが馬鹿だった』ですって!?」 「仮ニ1年間デ何モ進歩ガナカッタトシテモ……1年間ハ私ヲ使イ魔トシテソバニ置イテオケル。 ソレガオ前ノコノ賭ケニオケルメリットデアリ……強イテ言エバ勝ッテモ負ケテモオ前ハ得ヲスルヨーニナッテイル」 「なっ……」 あっさりと自分の考えを看破され、唖然とするルイズ。 「ソレニ何カ勘違イシテルナラ言ッテヤル。私ハオ前ノヨーナ小娘ニハ何モ期待シテイナイ。 ダカラオ前モ私ニ何カ期待ナンカシナイデサッサト新シイ使イ魔トヤラデモ呼ベバイイ」 「な、ななな、なんですってええええええ!!!」 度重なるホワイトスネイクの高慢な物言いに、ルイズの堪忍袋の緒が三度切れた。 「あ、あんたは! さっきから小娘小娘ってわたしをバカにして! せいぜいあの世でみてなさいよ! あんたがわたしの使い魔にならなかったことを後悔するぐらいのすごいメイジになってやるんだから!!」 「後悔ナドスルモノカ」 「ふん、そんなこと言ってられるのもせいぜい今のうちよ! 偉大なメイジになったわたしを見たあんたはあの世から飛んで戻ってきて、 泣きながら『わたしを使い魔にしてください』ってお願いするんだわ!」 「勝手ニ言ッテロ。私ハ好キニスル」 「逃げる気!?」 「……何ダト?」 「そうよ! あんたは怖いんだわ! わたしが立派なメイジになって、その私に見返されるのが怖いんだわ! この臆病者! 卑怯者! でも逃げるんだったら今のうちに尻尾巻いて逃げるがいいわ! わたしは一人前になった後、その後ろ姿を大声で笑ってやるんだから!」 プッツ~~~ン! 決定的な何かが、また切れた。 だがルイズのではない。 「……言ッテクレルナ、小娘」 ホワイトスネイクのだ。 ホワイトスネイクはそう呟くと、椅子から跳ね上がるようにして空中に上がり、 ルイズの目の前に見せつけるように急降下した。 ドヒュゥンッ! 「きゃあっ!」 「コノ私ガ、コノホワイトスネイクガ、オ前如キ小娘ニ泣キナガラ懇願スルダト? 逃ゲルダト? 面白イナ……コノ20年、私ニ向カッテココマデ言ウ奴ハソウハイナカッタゾ……」 「な、なななな何よ! 何する気よ!」 「オ前ノ賭ケニ乗ッテヤルンダ」 「……え?」 「期限ハ半年。 ソノ間私ハ、オ前ノ言ウ『使い魔』トシテオ前ヲ見極メテヤル。 ソシテオ前ガソノ半年ノ間ニ私ニ認メサセルダケノ者ニナッタナラ、オ前ノ勝チダ。 ダガナレナカッタナラ……」 「オ前ノ『記憶』ヲ貰ッテイクゾ」 地獄の底のような声でそう言うと、ホワイトスネイクは煙のように消えてしまった。 後に残されたのは、ぽかんとした顔のルイズだけ。 「……ひょっとして……うまくいったの?」 「記憶を貰っていく」ということの意味どころか、期限が半年に縮んだことも、まだ分かっていないルイズだった。 To Be Continued...