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前ページ次ページゼロのイチコ 「うぎぎぎぎ・・・たぁ!」 気合の入った声と共に、剣先が握りこぶし一個分ぐらい浮いた。 そして重力に引っ張られて剣が落ちる、その勢いでイチコが地面に埋まった。 学院の中庭に剣を握った手が生えている。 シュールだ。 一旦剣を離すとイチコがヨロヨロと地面から浮き出てくる。 「やりました、ご主人様! ちょっとだけ浮きました」 「振れるようになるまで何年かかるのよ」 ため息が出る。剣を買ったのは無駄な出費だっただろうか? まだ買ってから一日だから分からないが、そもそも剣を振り回す筋力がない。 幽霊とは鍛えれば筋力は上がるんだろうか。 一般的に強力なゴーストやスプライトはその想いの力によって力も変わると言う。 それが憎しみでも愛情でもなんでも構わない。 彼女の場合は『お姉さま』に再び会いたいがために幽霊をやっているわけだ。 しかし、落ち着きの無い彼女を見るとそう強力な想いを募らせてそうには見えない。 思い込んだら一直線な節はあるけれど。 「もうそろそろ授業なんだけど」 「あ、すいません。もうちょっとで出来そうなので練習してても良いでしょうか?」 「いいけど、学院の外にでるんじゃないわよ」 「はい!」 本人はコツを掴んだと思っているようだが、あれはまだまだ先が長そうだ。 午後はコルベール先生の授業だった。 相変わらず話が少々脱線する事が多い、しかもその話を興味ありそうに聞いてる生徒は一人も居ない。 私もその一人で、何か必死に語りだしたコルベール先生の話を右から左に受け流していた。 ふと考えるのは使い魔のイチコの事。 お姉さまと再び会いたいというだけで幽霊になった女の子。 そんなに何度も話を聞いたわけじゃないけど、彼女がどれだけお姉さまを好きだったかはなんとなく分かる。 すぐにとは言えないが。まあそれなりに使い魔として仕事をすればお姉さまを探してやっても良いかもしれない。 ドジは多いけれど基本的に上下関係を理解して尽くそうとしてくれている。 ちゃんと働くものにはちゃんとした褒美を与えないといけない。 今のところ先日のイタズラでマイナス評価なのだけど。 探すと言えば、彼女がどこの国の出身なのか聞いたことが無かった。 顔つきが大分違うし、かなり遠い国なのかもしれない。 確か「セイオウジョ学院」と言っていただろうか。トリステインにある学院ならさほど時間は掛からないと思うのだが。 もし東方だとするならかなり無理がある、そうで無いことを祈ろう。 しかし、そのお姉さまに会ったとたんに成仏してしまわないだろうか。 イロイロと考えた。 わたし、高島一子はただいま猛特訓中です。 というのも昨日ご主人様から剣を頂いたからです。 どうも使い魔というのはイザと言う時はご主人様を守らなければならないらしいです。 確かに、フレイムさんやシルフィードさんを見ると私ってば頼りないなぁとは思います。 しかし、私には他の方々には無い二足歩行、武器を握れる手があります! いえ、歩けませんけど…… ともかく、その利点を十分に活かしていきたいと考える次第です! 「たぁ!」 掛け声一閃、剣先が地面からこぶし二つ分ぐらい浮き上がりました。 「デルフさん、今けっこう浮きませんでした?!」 「ぉお、最高記録の二倍はいったな」 「大分感覚が分かってきました」 剣を振ると言うと、腰を落として重心を低くして。とかイロイロあると思われます。 しかし私は重心がありません。いやあるにはあるのですが地面に対して踏ん張ることが出来ません。 ですから宙に浮こうとする力と剣を振り上げるタイミングでなんとか持ち上げるわけです。 そして、こう見えても幽霊ですから疲れたりはしないんです。 「はぁ、はぁ……」 「相棒、休憩にしたらどうだ?」 と思ってたんですけど結構疲労します。それに夜になると眠くなります。 私って本当に幽霊なのでしょうか? 火の玉も飛ばせませんし、ラップ音も鳴らせません。幽霊としてのアイデンティティーが揺らぎそうです。 デルフさんを芝の上に横たえると、私は手足を投げ出しました。 「デルフさん、何か良いアドバイスは無いですか?」 「ねぇなあ。なんせ俺も幽霊を相棒にするのは初めてだからよ」 「ですよねぇ」 一応上達はしてる、と思いたいです。 小休止し、再びデルフさんを持ち上げようと手を伸ばしました。 すると人影が見えたので顔を上げると、そこにメガネをかけた女性の方が立っていました。 「こんにちは」 とニッコリ微笑まれました。長い髪をした綺麗な方です。 「ごきげんよう、どうかされました?」 「あなたが噂の幽霊の使い魔さん、よね?」 「はい、高島一子……ではなく、イチコ・タカシマと言います」 「私はロングビル。ここの学院長の秘書をやらせてもらってるわ」 さすが秘書の方というか、とても上品な物腰です。笑顔もとても穏やかですし。こういうのが本当の淑女という方なのでしょう。 よく暴走してしまう私としては見習いたいと思います。 「それで、ご用件は?」 と聞くとロングビルさんは少し顔を曇らせてこう言いました。 「実は、少し頼みたいことがあってね。少し時間をいただけるかしら?」 「構いませんけど、どうしたんです?」 「ちょっと付いてきて貰えるかしら」 そう言って建物のほうへと歩いていきます。 私は慌ててデルフさんを持ち上げ、地面に突き刺しました。 「すいませんデルフさん、ちょっと待ってて貰えます?」 「ぉう、早くしてくれよ。あんまりなげぇと錆びちまう」 途中何人かの先生方とすれ違い、挨拶しつつ私たちは薄暗い塔へと入りました。 そこは入ったらいきなり右方向に折れて螺旋階段が続いています。 わたしはその後ろをふわふわと浮きながら付いていきました。 そこは窓も無く明かりもロングビルさんが出した灯りの魔法だけが頼りでした。 その灯りも蛍光灯のような明るさは無く、ふらふらと揺れるランタンのよう。怖い雰囲気が出ています。 こんな所で幽霊でも出たら思わず叫んでしまいそうです。 「付いたわ」 と階段の先にあったのは大きな鉄扉。 大きな魔方陣が描かれています。 「実はね、私はこの宝物庫の管理を任されているのだけれど……」 ロングビルさんの話によると鍵のような物を紛失してしまい、一度魔法を解いて鍵を掛けなおさないと防犯上危ない。 だけど予備の鍵も無いため困っていた。 しかし中に入って内側にどんな文字が書かれているかさえ分かれば熟練の魔法使いになら簡単に開けることができる。 それで私の壁抜けで中に入って文字を教えて欲しいという事だそうです。 「なるほど、分かりました」 「文字は分かる?」 「いえ、その……ごめんなさい」 この世界は私の住んでいた世界とはまるで違う文字が使われている。 もしかしたら何処かの国の文字かもしれないけど私には分からなかった。 「いいのよ、それじゃあ意味が分からなくても良いから丸暗記してきて」 「はい、いってきます」 もしかしたら魔法ですり抜けられないんじゃないかと思いましたが。 案外あっさりと抜けることが出来ました、ご主人様の話では私のような幽霊が他にも居るという事ですが、防犯上大丈夫なのでしょうか。 使役できる魔法使いがほとんど居ないとか? 部屋の中は薄暗い、字は読めないけど足元が分かる程度の照明で照らされていました。 宝物庫の中は金銀財宝、と思ってましたが兜や鎧や剣、杖に書物がほとんどで指輪などもありましたが宝石類が多いというわけではありませんでした。 表面に複雑な文字が書かれているものが多いので何かの魔法が掛かっているのだと思います。 魔方陣はドアの裏側に書かれており、外と同じ円陣なのですがかなりの量の文字が書き込まれていました。薄暗い部屋なので文字がよく見えません。 四苦八苦しながらギリギリの光源で文字を凝視し、覚えて、外で言葉と空書きで中に書かれている魔方陣を伝える、そしてまた中に入る。これを繰り返しました。 文字が多くて何十往復もする事になってしまいましたけど。 時間が結構たってしまいましたがデルフさんは大丈夫でしょうか? 「これで間違い無い?」 「はい、こんな感じだったと思います」 最後の確認を二回ほどして、いよいよ開錠になりました。 ロングビルさんが杖を振り私には意味がわからない呪文を唱えます。するとドアからカチリと音がして音も無くドアが開きました。 「ありがとう、助かったわ」 「いえいえ、どういたしまして」 苦労したけど無事に開くことが出来て良かった。 もし私が魔方陣の文字を間違って爆発でも起こしたらどうしようかと思ってました。 「今はちょっとお礼になるものを持ってないのだけど、また後でお礼に伺うわね」 「いえいえ、本当に気にしないで下さい。そんな大したことはしてないので」 「奥ゆかしいのね」 と微笑まれた。私もとっさに微笑み返した。ちょっと顔がぎこちなかった気もします。 淑女の道は果てしなく遠いです。 「それでは、デルフさんを待たせているので失礼します」 「ぇえ、本当にありがとう」 そう言ってロングビルさんと別れた。帰り道は建物の壁を突き抜けて一直線で戻りました。 次の日、宝物庫から破壊の杖が盗まれた事が判り。 犯人は生徒やメイドの証言により学院長の書記、ミス・ロングビルであることが判明した。 前ページ次ページゼロのイチコ
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前ページハルケギニア外伝 機忍・零 ハルケギニア外伝 機忍・零 第二話「契約」 ルイズによる白怒火とのコントラクト・サーヴァントが一旦保留となった為、使い魔召喚の儀式は終了となり、級友達は揃って学院へと帰っていった。 文字通り“飛んで”行く少年少女達に驚いた白怒火だったが、自分を除く全員が当たり前の事と受け止めている為、辛うじて自制していた。 (「飛んでいった者達は全員気合値が一~六程減っていた、何がしかの妖術の類を用いたと考えるのが妥当か……」) 白怒火はそう考えると、近くにいる二人の人物に話しかける。 「それで、これからどうするのだ?」 「これから我がトリステイン魔法学院の最高責任者オールド・オスマンに会っていただきます。」 「トリステイン?それに魔法学院とは?」 「アンタそんな事も知らないの?一体どんな田舎に住んでいたのよ。」 呆れたように言うルイズに白怒火は特に気にもせずに「二年前まで諏訪部家に仕えていた」と、ただそれだけ答えた。 「スワベ?聞いた事も無いわね」 「うむ、俺もトリステインという国は聞いた事が無い、恐らくお互いかなり離れた場所にあるのだろう。 ところで、みすた・こるべぇるだったか。」 話しかけられたコルベールは少し驚きながらも頷く。 「ああ、そういえば自己紹介がまだでしたな。 私はジャン・コルベール。あそこに見えるトリステイン魔法学院で教職に就いている者です。 そして、こちらが君を召喚したミス・ヴァリエール……さ、自己紹介を。」 コルベールに促されたルイズは渋々ながらも自己紹介をする。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。本来ならアンタみたいな平民は私とは話すら出来ないんだから感謝なさい。」 そんな、ルイズやコルベールの会話で“ミス”や“ミスタ”が性別に付けられる呼称のようなものである事、コルベールの職、ルイズの地位等を推測する事ができた。 「分かった、“ミスタ・コルベェル”に“ミス・ばりえぇる”だな?」 「違う!ヴァリエールよ!」 「“バリエェル”だろう?」 「発音が違うでしょう?ヴァ!よ、ヴァ!それからエの後は伸ばしなさい!」 ルイズの駄目出しに何度かやり直す白怒火だったが、結局小さいエを伸ばせはしたもののヴァの発音は出来なかった。終いにはルイズの方が折れてしまい、「もう!じゃあミス・ルイズで良いわよ!」ということになった。 多少のゴタゴタはあったものの、質問が出来るような状況になったので、学院に向かいながら気になっていた事をコルベールに聞き始める。 「魔法学院とか言っていたが、魔法というのはあの様に空を飛ぶ為の術の事なのか?」 「あれは“レビテーション”というコモンマジックで、術者を浮かしながら比較的遅い速度で飛ぶという術ですな。」 「というと、早く飛び為の魔法や、他の魔法もあると?」 「ええ、“フライ”という風魔法がそれに当たりますな。しかし、そういう事を聞いてくるという事は君の所には魔法は無かったのかな?」 「うむ、俺がいた諏訪部家周辺では魔法という術は無かった。俺が知っているのは妖術や法術位であろうか」 「妖術に法術……ですか、法術はともかく妖術という言葉には何やら不穏な響きがありますな。」 「然り、妖術の力の大本は異界にいる邪悪な存在であることが多い。だから妖術を操る術者は妖気を帯びているのだ。 最初、この様な場所に放り出された時は何がしかの妖術に囚われたのかと警戒していたのだが杞憂だった様だな。」 「当たり前でしょう?私達が使う魔法は始祖ブリミルから授かった物なのよ?そんな訳の分からない怪しげな術と一緒にしないでちょうだい。」 ルイズは白怒火が言う妖術の不気味さに怖気を覚えながらも、自分達が使う魔法の事を誇らし気に話す。 そんな二人を見てコルベールはもう大丈夫だろうと判断したのか、先に学院に戻っている事を告げて去ってしまった。 白怒火はレビテーションを使って急ぎ学院へ去っていくコルベールを見ながら隣にいるルイズに問いかける。 「ミス・ルイズは飛んで行かぬのか?」 「……い、いいい良いのよ。私が飛んで行っちゃったらアンタが置き去りになっちゃうでしょ。」 「ふむ、あの程度の速さであれば問題は全く無いが……丁度良い、学院とやらに到着するまで『機忍』の事について話しておこう。」 「アンタの事?それにキニンって傭兵の事なんじゃないの?」 面倒そうに返事をしてくるルイズに白怒火は「否」と答えると、学院に向かって共に歩きながら話し始めた。 戦乱続く故郷の話。 異界の邪悪な存在“黒鷺”に率いられて悪辣の限りを尽くす黒鷺軍と現世における首領たる妖術師・雷鳴法師の話。 親族の悉くを討たれながらも気丈にも黒鷺軍と戦い続けたかつての主君・サキ姫の話。 そして、黒鷺軍の主力……人を超えた身体機能をもって戦い続けるカラクリ仕掛けの存在“機忍”の話。 「そ、それじゃあ。アンタって人じゃないって言うの?」 白怒火の話を聞いたルイズは、顔を真っ青にしながら聞き返す。 しかし、それに対する白怒火の返事は何とも歯切れが悪いものだった。 「いや、そうではない、少なくとも俺は人間だ……そう思っている。」 「どういう意味よ。だって貴方は自分で機忍だって言ってたじゃない。で、その『機忍』っていうのはカラクリで動く……、ええとゴーレムみたいな存在って事でしょう?アンタはどっちかっているとガーゴイルっぽいけど。 だけど自分は人間だ……って、言っている事チグハグよ?」 「うむ、それにはとある事情があってだな……と、着いた様だ。 どうだろうミス・ルイズ、俺の事情についてはこれからこの学院の責任者にも話さなければならぬ。2度手間にならぬ為にもその責任者とやらと共に聞いてはくれないだろうか。」 ルイズは白怒火の言葉に少し考えた後、同じ話を二度聞くのも馬鹿らしいと思い、了承する事にした。 そうして二人はルイズの案内の元、学院長オールド・オスマンの執務室に到着する。 目の前にある重厚な扉をルイズがノックすると、「入りたまえ」という老人の声と共に扉が独りでに開いた。扉周辺に人の気配を感じなかった事から白怒火は“物を動かす魔法”かと推察した。 扉が開ききるのを待った後、ルイズは「失礼します」と言って入室する。 それを見た白怒火も「失礼する」と一言挨拶して入室すると、開いていた扉は再び閉じてしまう。 広々とした室内には白怒火とルイズ以外に三人の人間がいた。 一人は先に帰っていたコルベール師。もう一人は眼鏡を着けた二十代程の女性、書類仕事をしている所を見ると勘定方の様な役職にあるのだろう。そして最後の一人、この部屋にある最も大きな文机に腰を据えている老人こそ、この学院の最高責任者オールド・オスマンその人なのだろうと白怒火は確信する。 そのオスマン翁が口火を切って二人に話しかけてきた。 「始めましてじゃな、遠き地からのお客人。ワシはこの学院を取り仕切っておるオールド・オスマンという老いぼれじゃ。 そちらにいる女性は、ワシの秘書でミス・ロングビルという。」 表面上はにこやかに、しかし全く笑っていない目で白怒火を観察しながらオールド・オスマンは挨拶する。 対する白怒火も、オスマン翁の佇まいに軽い警戒を抱きながらも言葉を返す。 「丁寧な挨拶痛み入る。俺は白怒火という……今はしがない浪々の身だ。」 白怒火の挨拶を聞いたオスマン翁はミス・ロングビルに退室を促す。彼女が退室したのを確認した後、コルベールが此処に至るまでの経緯をオスマン老に説明する。 オスマン翁の方も先に聞いていたのか、特に聞き返す事もせずにコルベールの説明は終わった。 「ふむ、ミスタ・コルベールから聞く所によるとお主は数年前までスワベなる貴族に仕えていたというが、その家はどうなったのかね?」 顎鬚を扱きながら質問してくるオスマン翁に白怒火はごく端的に「かなり力は落としはしたであろうが、付近の最大勢力たる黒鷺が壊滅した事でもあるし、今の所は安泰だろう」と答えを返す。 白怒火が返事を返した時を見計らったのか、ルイズが声を上げる。 「あ、あのっ!オールド・オスマン、少々よろしいでしょうか。」 「む、どうしたのかねミス・ヴァリエール」 「あのですね、この白怒火が言うには『自分は機忍だが人間でもある』と言っているのですが。」 その聞き慣れない『機忍』という言葉に反応したのは、当然というべきかコルベールだった。 「キニン?」 「はい、白怒火が言っていた事からするとゴーレムや、ガーゴイルの兵士の事だと思われるのですが……」 「ゴーレムやガーゴイルが自分の事を人間だと言うのはありえませんぞ、ミス・ヴァリエール」 「ええ、それは私も十分承知しています、ですが」 ルイズがそう言った時、白怒火が口を挟んできた。 「ミス・ルイズ、良ければ俺から話そうか?」 「……そうね、私じゃあ説明しきれないだろうし。」 「承知した、では学園長もミスタ・コルベールもよろしいか?」 両者が頷いた事を確認した白怒火は、さっきまでルイズにしていた話を再び始めた。 「事の始まりは妖術師・雷鳴法師率いる黒鷺軍の来襲だった、俺が仕えていた諏訪部家と周辺の家は同盟を組み何とか抵抗していた。 しかし、時と共に我々は次第に追い詰められていった……。 我等とて決して弱かった訳ではない、しかし、黒鷺には『機忍』と呼ばれる機械…カラクリの身体を持つ忍者--隠密--がいたのだ、『機忍』は人以上の働きをした、機械の身体は疲れず・弱い攻撃は容易く無効化する。その上、戦力として見れば『機忍』一人に対して我等は数人を持って当たっていた。」 白怒火の話を聞きながら、ルイズ達はその内容をハルケギニアに置き換えていった。 即ち『機忍』を“メイジ”に、諏訪部の兵達を“平民”に。 「そして、俺にとって忘れられないあの合戦の日。 時は慶雲元年、黒鷺の機甲軍団の前に諏訪部家は辛うじて戦線を維持していた。 我等を率いるは諏訪部の数少ない生き残りであるサキ姫。 諏訪部の若き兵達は姫を統領と仰ぎ、戦場に立った。 合戦が始まった当初は拮抗していた戦力も、黒鷺の無尽蔵ともいえる物量の前に少しずつ押されていった。 その頃の俺は飛勇鶴という名前の剣士だった、俺は弟と共に戦場を駆けていたが状況はあまり芳しくなかった。周囲では味方が一人、また一人と倒されていく中、俺も致命傷を負い意識を失ってしまったのだ。 それから幾年経ったのか……、気が付いたら俺は白怒火という機忍となって黒鷺に仕えていた。 だが、ある時気付いたのだ。己が元は飛勇鶴という名前の人間だったという事実と、失われた肉体が何処かにあるという事に。 俺は戸惑ってはいられなかった、すぐに黒鷺を抜け出して何処かにあるという己を探し始めた。 しかし、時を同じくして黒鷺がかつての主家・諏訪部家からサキ姫をかどわかした。諏訪部家は精鋭をもって姫を取り戻さんとした……その中には何の因果か俺の弟・次郎丸もいた。 俺は成り行きから彼等と同道した、多数の犠牲を払いながらも我々は奇械ヶ城の天守閣にまで到達して、黒鷺の首領・雷鳴法師を倒し、サキ姫を救出する事ができた。」 「君の身体は見つかったのかね?」 「ああ、見つけた。」 「ならば、何故その『キニン』の身体のままなんじゃ?」 オスマン翁の疑問に白怒火は幾分躊躇した後、見出した己の身体について語った。 「俺の身体は……雷鳴法師の手により、黒鷺を現世に呼び出す為の贄として生命力の悉くを吸い尽くされていた。 ようやく見出した己の…飛勇鶴の身体は……木乃伊に成り果てていたのだ。」 「……え?」 「何と……、それは……」 気が付いた時に人でなくなっていた恐怖や悲しみ。自らの身体を取り戻すという旅路の果てに待っていた、己の死と己の屍骸との対面という常識では考えられない絶望は、その場にいる三人の言葉を失わせるのには十分なものだった。 飛勇鶴……いや、白怒火の言葉が偽りだと断ずる事は誰にも出来なかった、己の屍骸を見出したと語る白怒火の姿や雰囲気は偽りを口にする者には到底出せないモノだったからだ。 「なるほどの、確かにそういう経緯であるならば、その身がキニンであろうとも人だと認識するのであろうな。」 沈黙が支配した室内にオスマン翁の声が響き渡った。 その言葉に納得できないのか、ルイズがよく分からないという顔をする。 少女のそんな顔を見たオルマン翁は孫娘を見る様な温かい目をして、彼女に語り始めた。 「のう、ミス・ヴァリエール。お主は朝起きて鏡を見た時に、己が全く別の人間になっていたとしたらどう思うね。 その人物が己だと自然に受け入れるかね?」 オスマン翁の問い掛けにルイズは、なるほどと納得した。自らの意思とは無関係に、別の身体に己の意思が移された処で自分が己である事に違いは無いのだ。 そうすると白怒火の不可解な言動にも頷ける。 「では、オールド・オスマン。ミス・ヴァリエールのコントラクト・サーヴァントはいかがしましょう?」 「ふむ、神聖な儀式とはいえ流石に人に対して問答無用という訳にもいくまい、事前に説明をするべきであろう。」 「分かりました。ミスタ・白怒火、少々よろしいですかな?」 コルベールの言葉に白怒火は首肯する事で応える。 そんな白怒火にコルベールがルイズの事情を説明しはじめる。彼を召喚したのがルイズである事・学院における神聖な儀式である事・契約が出来ない場合、最悪退学処分になる事。等々。 そして、それを踏まえて彼女の使い魔になって欲しいという自分の希望を告げる。 コルベールの説明が終わった後、白怒火はカメラアイ周辺の装甲を眇めて幾らか考え込む。 変わってしまった己の身体。最早、人であった自分を取り戻すのは不可能であることは明白だった。しかも、機忍である以上、故郷に帰ったとしても碌な事にならないだろう事は想像に難くない。 カメラアイを通常状態に戻してこの部屋にいる人々を見る。興味深そうにこちらを見るコルベールとオスマン翁、そして自分を除いた他の人々よりも圧倒的な気合値を誇る少女の必死な表情を見た時、白怒火の気持は決まった。 「この身では故郷に帰参したとて最早立場も無い、それにこれも何かの縁であろう。 ルイズ殿の使い魔なるその役職、賜ろうではないか。」 「おお!そうですか。それは助かりましたぞミスタ・白怒火。さ、ミス・ヴァリエール。コントラクト・サーヴァントを…」 「は、はい!」 コルベールに言われたルイズは、座っていたソファーから、ぴょこんという感じで立ち上がって白怒火の傍に立った。 立ち上がろうとする白怒火を「いいからそのままで」と留めると、コントラクト・サーヴァントの呪文を唱える。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 そうして仕上げの軽い接吻を口に当たるだろう場所に施す。 コントラクト・サーヴァントを受けた白怒火は軽いパニックに陥っていた。彼の常識では恋仲にもなっていない、ましてや娼婦でもない女性と接吻を交わすなどありえない話だったからだ。 しかし、次の瞬間。白怒火の全身に比喩でもなんでもなく青白い稲光が走った。 白怒火は言葉も出せない程の痛みに苛まれているのか、何も言わずにただ身体をガクガクとのた打ち回っていた。 稲光は白怒火だけではなく、学院長室の中を蹂躙する。ルイズは悲鳴を上げながらしゃがみこみ、一瞬でも早く稲光が収まる様に心の中でひたすら始祖の名を唱え続けた。 室内を走り回った稲光は次第に白怒火の左手に収束していき、やがて静かになる。 伏せていた面を恐る恐る上げたルイズの目には、惨憺たる状況に成り果てた院長室の光景が入ってきた。 同じ様に非難していたオスマン翁やコルベールも、この状況には言葉も出ない様だった。 「やれやれ、えらい目におうてしもうた。」 「ええ、ですが生徒達がいる前でなくて助かりましたな。」 確かにコルベールの言う通り、召喚した直後に契約をしていたら級友達に被害が出た事だろう。下手をすると召喚云々ではなく、そちらの方で退学になる可能性があったのだ。 ルイズはその事に安堵したが、直後にちゃんとコントラクト・サーヴァントに成功したのかと不安に襲われて白怒火の傍に歩み寄る。 身体が動く様になったのか、白怒火は立ち上がって左手を眺めたり擦ったりしていた。 その左手の甲を見たルイズは、其処に見慣れないルーンが刻まれている事を確認して、今度こそ安堵の吐息を吐いた。 「ミスタ・コルベール!契約に成功しました!」 その端正な面に喜びの表情を浮かべて、ルイズはコルベールに報告する。 何といっても東方から来た、人の魂を宿すガーゴイルである。希少価値としてはこれ以上無い存在だろう、しかも今まで見たどのゴーレムやガーゴイルよりも滑らかに動いている。ゴーレムやガーゴイルの製作で名を馳せているガリアであっても、これ程の物は作れない筈だ。まぁ、メイジには敵わないだろうが、護衛とする分には十分過ぎる力量があるだろうとルイズは見ていた。 そんな嬉しそうなルイズを見たコルベールも祝福を述べると、使い魔のルーンを確認するべく白怒火の傍に近付く。 「ミスタ・白怒火、少々左手を見せて頂けますかな?」 コルベールの言葉に白怒火は躊躇い無く左手を翻して、刻まれたルーンを露にする。 そのルーンを見たコルベールは、見慣れない“それ”に眉を顰めると、ルイズの許可を得るとそのルーンを記録した。 「おめでとう、ミス・ヴァリエール。色々あったが契約は確かに成功している、彼の事は色々と言われるかもしれないが、彼 は間違い無く君の使い魔だ。 一応は東方で作られた、自立稼動型のガーゴイルという事にしておいた方が良いだろう。」 「え?ああ、そうですね。分かりました。」 コルベールに返事を返しながらも、そわそわしているルイズに微笑ましいものを感じながらもオスマン翁は釘を刺す。 「少々良いかね?ミス・ヴァリエール。」 いきなり話しかけて来た学院長に、ルイズは緊張しながらも「はい」と返事を返す。 「確かに彼の身体はゴーレムやガーゴイルと同様、人の物では無いじゃろう。しかしじゃ、その魂は人である事を忘れてはならんぞ。 我々は確かにメイジであり貴族でもある。しかし、それ以前に一人の人間であるという事も忘れてはいかん。 平民と我々が呼ぶ彼等と我々が同じ人間である事を忘れた時。貴族の誇りは傲慢に、平民を導く我等の精神たる魔法の力は唯の暴力に成り下がる事じゃろう。 “メイジを見るにはその使い魔を見よ”という、その言葉を心するのじゃぞ、ミス・ヴァリエール」 影で“セクハラ爺”と揶揄されている学院長の二つ名、“オールド(偉大なる)”という二つ名が伊達ではないと思い知らされたルイズは、緊張して上ずった声で「はい」と返事を返すと、白怒火と共に院長室を退室した。 ルイズと白怒火の二人が退室した後、学院長室で二人きりになったオスマン翁とコルベールは、ルイズが呼び出した白怒火という存在について語り合っていた。 「それで、ぶっちゃけどうかね、ミスタ・コルベール。あの白怒火と名乗るキニンは?」 「はぁ、召喚した当初に見た感じでは鋼鉄を素材としたガーゴイルだと思っていたのですが……、まさかあの様な経歴を経ていたとは。」 「うむ、確かにあの話は衝撃じゃったな、己の屍骸を見せられるというのは想像もしたくないわい。 しかし、ヴァリエールの娘も妙な事になったのう。普通に考えれば土と言えるじゃろうが、契約の時の稲光から考えると風かもしれん。」 「ですが、ミスタ・白怒火の事を考えると何とも言えません……。そういえばオールド・オスマン、彼に刻まれていた使い魔のルーンですが、見覚えはありませんか?」 そう言うと、コルベールは白怒火のルーンを記録したメモをオスマン翁に確認してもらう。 メモを渡されたオスマン翁は、受け取ったメモを横にしたり逆さにしたり様々な角度から見てみたが、己の記憶には無いとコルベールに返す事になった。 「使い魔のみならず、ルーンも未見ときたか。ミスタ・コルベール、彼女の成績はどうなのかね?」 「座学は間違い無くトップクラスです、もしかすると学院内にいる生徒で、彼女に知識量で上回る生徒は片手で事足りるのではないでしょうか」 「座学は……ときたか、では実技の方ではどうなのかね? ヴァリエールの所の娘じゃ、かなりやるんじゃろう?」 コルベールは、期待を込めて尋ねてくるオスマン翁から目を逸らすと言い難そうに返す。 「それが、どういう訳か呪文を唱える度に爆発を起こすのです。その為に級友達から付けられた二つ名が“ゼロ”というものでして……。」 「馬鹿かね?その生徒は、仮にも公爵家の娘じゃぞ?」 「はぁ……」 「教育方針間違ったんじゃろうか?まぁ良い、失敗の鍵はそのルーンを調べれば分かるかもしれん。 ミスタ・コルベール、フィニアのライブラリでそのルーンの事を調べておいてもらえんか?」 「承知致しました。それでは…」 「まぁっ!何事ですのこの惨状は!」 オスマン翁の命に従って学院長室を辞しようと思っていたコルベールと、デスクに肘をついて渋く決めていたオスマン翁の耳に、学院長室の惨状を見て怒り狂ったミス・ロングビルの声が叩きつけられた。 結局その日、コルベールはフィニアのライブラリーに行く事は無かった。 オスマン翁は翌日から数日間、腰痛に悩まされたという。 前ページハルケギニア外伝 機忍・零
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681 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 18 48 22 O セクハラ糞ウト(同居)にDQ返ししたよ。 汚話注意。 乳や尻や太ももを触られるたび、鼻をほじって収穫したブツをウトの肩に なすりつける事数回。 最初は汚ねえだろうが!と怒鳴られましたが、 「セクハラ一回につき、もれなく鼻クソ一粒プレゼント!」 と笑顔で返した所、変な顔して去っていきました。 これを3、4回ほど繰り返した所でセクハラはなくなった。 682 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 19 08 17 0 681 そんな糞ウトには鼻クソがお似合いだ。グッジョブ! 683 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 19 10 05 0 ____ / \ / ⌒ ⌒ \ / (●) (●) \ _|__ (__人__) | / \ `ー ´ / /⌒⌒⌒/ .. .. ヽ ピトッ | | | { . ● } | | | \ / ヽ ヽ ヽ `ー一 ´ 684 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 19 10 12 O 681 GJ! 『鼻くそ一粒プレゼント』で食べてたトンカツ噴出したwwwwwwwwwwww その笑顔が見てみたいwwww 687 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 19 47 41 0 乳や尻や太ももを触られるたび 旦那やトメはなんて? 688 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 19 48 57 0 常に鼻くそがあるってのもすごいな。 アテクシはそんなタイミング良く鼻くそなんてないのは、きれい好きだからかしら 690 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 19 57 51 0 688きっと無意識のうちにホジって喰っちまってるからいざって時にないんじゃね? 691 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 20 06 00 0 あら私もたまにしかとれないわよw 692 :681:2009/06/01(月) 20 16 40 O 夕食中なのにGJ有難う。 下品嫁でごめん。 ホコリまみれな工場勤めしてるもんで、普通の人よりは取れる。<鼻クソ それでも収穫不可能な場合は、鼻ほじるだけほじってエアー鼻クソをつけてやってた。 693 :681:2009/06/01(月) 20 21 56 O あ、あと旦那とトメさんもセクハラのたびに〆てくれてたけど、糞ウトはちっとも反省して くれなかったから、鼻クソをプレゼントすることにした。 694 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 20 22 37 0 乙です。 セクハラについて旦那やトメはなんて? 695 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 20 23 48 0 〆てもだめってことはよその人にもやるのかもしれないね。 旦那さんどんなふうに〆てたの? 696 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 20 35 48 0 自分の嫁の胸や尻触られて、それをやめさせることができない男ってどうなの? それでも、ウトと嫁を会わせ続けるって、普通なの? 697 :名無しさん@HOME:2009/06/01(月) 20 57 06 0 エアー鼻クソwwww 次のお話→698
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前ページ次ページ虚無を担う女、文珠を使う男 第6珠 ~使い魔、その能力を現す・前編~ (ほんっとにあのバカ犬は、なんでこうもトラブルばっかり起こすのよ?) ルイズは、医務室へ向けて走っていた。 ロングビルが、横島とギーシュの決闘騒ぎの件と、横島が気付き次第、その件で学院長室へ行くように、という話を伝えてきたのだ。 医務室へ辿り付き、中の様子を伺う。すでに治療は済んでいたようで、そこには静かにベッドで眠っている横島がいるだけだった。 「こんのバカ犬、火傷はとっくに治してもらったんでしょ!? 起きなさい!!」 「えっ な、何だ何だっ? って、ルイズちゃんじゃないか。 そんな大きな声出さなくたって起きるって」 ルイズの怒声で気づいた横島は、ゆっくり身体を起こした。 貴族とひと悶着起こしたというのに、あんまりにものんびりしているその態度にこめかみをぴくつかせるルイズ。 「あ、あんたはねぇ。私を呼ぶときは『ご主人様』って… はぁ。それどころじゃ無かったんだわ。 ギーシュと決闘騒ぎを起こしたって聞いたわよ。その件で学院長から呼び出しをもらったし。 これから一緒に行く事になるけど… その前に何があったか私に正直に話しなさい」 横島の、貴族に対する平民の口調とは思えない言動も、今のルイズにとっては気にする余裕は無かった。学院長に呼び出される事など、滅多にある事ではないし… 今回はどう考えたって叱られるに決まってる。 メイジの基礎中の基礎、使い魔の制御すら出来ないと言われたりすれば、落ちこぼれのレッテルとともに、留年か停学になってしまうかもしれない。 「よ、呼び出し!? 言っとくけど、そんな事されるほどの事はやってねーぞ! 決闘だって言い出したのはあっちだし、怪我だってさせてねーし」 「どっちが言い出したとか、その結果だとかはどうでもいいの。 平民のあんたが貴族と諍いを起こしたって事が問題なんだから。 それにね、学院内での決闘は禁じられてるの。 おまけに、あんたは私の使い魔なのに、全然言う事聞かないし…」 「ここで決闘が禁止なんて、言われなきゃ分からんわ。というか、あっちはその事知ってるはずだろ!? だったらなおさらあっちが悪いじゃねーか。 それに、聞いてると昨日からずっと平民・貴族とか言ってるけどさ、貴族ってそんな偉いんか? 俺が前居た所にも貴族って名乗ってる奴がいたんだけど… 警察官のくせに俺の事切り殺そうとするわ、会う度に違う女を連れてたって話はあるわ、あげくの果てに俺の女取ろうとするわで、気に食わない奴だったぞ?」 「自分は何も悪くない」と言うばかりか、あろうことか貴族なんて別に偉くない、と言い始めた横島。 その言葉を聞いて、ルイズは大きくため息をついた。 「あんた、本気でそんな事言ってるの? それって半分はあんたが悪くて、もう半分はただの八つ当たりじゃない? あんたが前にどこに住んでたかは知らないけど、トリステインじゃ、いつ打ち首にされたっておかしくはない事やってるわよ、あんたは。 会う度に違う女性をって言うのはちょっと私もどうかと思うけど、その人がそれだけ魅力的だって証拠だし… 最後なんか、取られるあんたが悪いだけじゃない。むしろ、あんたにそんな人がいたって事の方が不思議ね」 「そ、そこまで言わんかっていいやないか!! そりゃあ確かに何度声かけても上手く行かないんだけどな、俺にだってご飯作ってくれたり部屋の掃除してくれたりする子がいるんだぞ」 「ふーん。そうなんだ。それは残念だったわね。当分その子とは会えないわよ。 将来私が無事卒業して、立派な貴族になれた時に… もしあんたも立派な使い魔になってたら、その子も使用人か何かで雇ってあげても良いけどね」 「さすがにそれは無理じゃねーかな… こことあっちと、どうやって行き来したらいいのかさっぱり分からねーし。まぁそもそも、そんなに長くこっちにいる気もねーけど」 「何、まだ帰る気でいたの? しかも帰り道すら分からないのに? 言っておくけど、帰り道を探す暇なんかあげないわよ? それに、どこの馬の骨とも分からない平民なんか、私のところから出て行ったら、良くて物貰い、悪ければ野垂れ死にね。 悪い事は言わないわ、いい加減諦めて私の使い魔として一生仕えなさい」 その話を聞いて、う~ん… と唸っている横島。 指を折ったりルーンを眺めたりしながら、5分も過ぎた頃。 「はぁ… 一人で攻略すんのは、やっぱ無茶だよなぁ。 普通に腹も減るし、そもそも何がどうなってるのかさっぱり分からんし… しばらくの間は、使い魔でも何でもやって食っていくしかねーか」 その結論に、一瞬頬を緩めるも、すぐに気を締めなおすルイズ。 「ようやく分かったみたいね。 私も鬼じゃないわ。あんたがちゃんと立派な使い魔に育ったら、ちょっとくらいはあんたの住んでた場所を探してあげたって良いんだから、しっかり頑張りなさい」 「まぁ使い魔頑張るのは、この際もうしょうがねーけどさ。感覚の共有だけは基本無しにしてくんねーか? 山奥だろうが海の底だろうが行けと言われれば行くし、何か困った事があれば出来る限りで手伝うからさ」 (あ… そういえば、まだ感覚の共有が出来ないって事、言って無かったんだわ… でも、ある意味ちょうど良かったかしら) 「うーん… 分かったわ。本当は、使い魔が主人に交換条件を持ち出すなんてありえない事なんだけど、特別に感覚の共有はしない方向にしておいてあげるわ。 感謝しなさい。 でも、あんたがさっき言った事はごく当たり前の事なの。だから、感覚の共有をしないでおいてあげる代わりに、もっと礼儀良くして頂戴。 あんたが無礼な事をすると、困るのは私なんだから」 そうして、改めて横島に昨日の説明の続きをさせる事にする。 「ギーシュとの決闘で多少疲れたから、実演は無し」などとふざけた事を言ったので、少しお仕置きをしてあげようと思ったルイズだったが… その理由としてあげられた横島第三の霊能、文珠の話を聞いたら、色んな事がどうでも良くなった。 ①見た目は、緑色っぽい小さな珠らしい。 ②漢字(ルーンの事かしら?)1文字を入れる事が出来、その文字に応じた効果が霊力に見合った分だけ発揮される。 ③2個以上同時に使うと、より強力になったり複雑な事が出来るようになったりする。 ④文字が込められた状態の文珠は、基本的に誰でも使う事が出来る。 ⑤ある程度の霊能があれば、文字を込める事も出来るらしい。 ⑥文字の書き換えは、横島以外が出来ると聞いた事はない。 ⑦横島の霊力3日分ほどが必要らしい。当然他に霊力を使う事があれば、もっと時間がかかってしまう。 ⑧今は1個もなくて、次の文珠は明日にならないと出来ない。 (落ち着くのよ、落ち着くのよルイズ。 とても信じられない話だけれど、別に今はわざわざこんな嘘を付く必要はないわよね? 大体、明日になったらすぐバレるような嘘ついても仕方ないわけだし… 武具の瞬間精製だけでも、今まで聞いた事がないレアな能力なんだから、この際何が出てきてもおかしくは… いくら何でも秘薬も無しに瀕死の重傷が治ったりだなんて、誇張のしすぎでしょうけど、全くの嘘って事もないはずよね。 もしかして、すっごいレア物なんじゃないの、こいつって?) 使い魔として何とか手懐ける事に成功し、どうやらその使い魔はレアな能力持ちらしいと分かってそれなりに気分の良くなるルイズ。 とりあえず、明日になったら今の話が本当かどうか確かめるという約束をする。 その時、横島がロングビルにもそれを見せる約束をしていた、というので、次回からは無闇にばらさないように、と釘をさして、そしてそろそろ学院長室へ行く事にした。 そして学院長室の前までやってきた二人。 「ヴァリエールです。私の使い魔の意識が戻りましたので、連れて参りました」 ルイズがそう言いながらドアをノックするのを、横島は多少緊張しながら見守っていた。 何だかんだ言って横島も学生の身。自分はそんなに悪くないと思っている以上、やっぱり怒られるのは嫌だった。 そんな事を思いながら部屋に通されると、そこには3人の大人が待っていた。 大きな机に着いている、どこに出しても立派な魔法使いとして紹介できる老人。 (うわ、こりゃいかにもって感じだよな) 一番最初に出会った教師のコルベール。 (誰かに似ていると思ったら、唐巣神父に似てるんだ。きっとこの人も凄い苦労を重ねてるんやなぁ) そして今朝出会った素敵なお姉さんのロングビル。 (そういえば秘書をしてるって言ってたっけ。セクハラも凄いとか… って事はそこにいるじじいか!? くぅ、じじいの癖に何てうらやましい!) 横島のそんな思いは関係なく、ロングビルがドアを閉めると話が始まった。 基本的にはルイズが話をして、横島は補足をしたり聞かれたら答えたりするだけ、余計な事は言わない、と決めていたので、横島は暇だった。 ぶっちゃけ、彼の目線と思考はロングビルに九割方向いている。 動くたびに揺れる乳。服の上からでも主張が激しい尻。ロングスカートを履いていて、太ももが見れないのは残念だが、想像する余地があるのは、それはそれで素晴らしい。 いつまで見ていても飽きないかもしれない。 そんな事を考えていると、いきなり頭を引っ叩かれた。 「ちょっと、いい加減話を聞きなさい、この馬鹿犬!!」 「い、いってーな! ちょっと余所見してたくらいで叩かなくてもいいだろ!」 「何がちょっとよ、さっきから全然聞いてる雰囲気ないじゃない。違うって言うなら、今何を話してたか言ってみなさいよ」 「え、えーと… そ、その… あれだ、あれあれ。あれの話だよ」 「…素直に聞いてなかったって謝りなさい。今から再確認するから、今度はちゃんと聞いてなさいよ?」 そう言ってルイズが話してくれたことによると… ①霊能という力は、トリステインはおろかハルケギニア中どこを探しても聞いた事がない。 こういう特殊な能力の存在を知れば、何をしでかすか分からない組織もいくらか心当たりがある。よって、基本的に秘密にしておくこと。 ある程度見られてしまった剣・盾については、使い魔の特殊能力という事で何とかごまかす。 その際も、あまり言いふらしたりはしないように留意する。 ちなみに、ロングビルさんもあれから誰かに話す暇なんて無かったとの事なので、文珠の事を知っているのは、学院長のじいさん・コルベール先生・ロングビルさんの3人だけだ。 ②必要がある場合は、誰かに明かす事も仕方ないが、通常はルイズの判断を仰ぐ事。 緊急時には横島自身の判断で使うのも仕方なし。 (この部分を説明するときには、すごく不機嫌そうだったけど… 判断を待っている余裕が無いから緊急時なわけで、仕方が無いのは本当だよな) ③文珠能力の確認については、明日放課後に学院長室で行う。 (ま、数に限りがあるからな。何度も何度も実験とか確認とかで消費させられるよりはよっぽどいいや) ④また、横島が自身で持っていた能力の他に、使い魔契約をした事によって特殊な能力が付与されているかもしれないらしい。 曰く、「武器を自在に操る能力」だとの事。これからその確認をしてみるが、もし万が一そうであっても、「能力」自体はやっぱり隠しておく事。 と言う事で、ロングビルが『錬金』したナイフを横島が触って見る事になったが… 彼が触ると、ほのかに彼の左手のルーンが光を発した。 「おお。これはやはりガンダールヴの可能性が高いですぞ! それでヨコシマ君、どんな気分ですかな!?」 「ちょっと待って下さい」 (ナイフの使い方なんて勉強した事ないんだけどなー それが分かるってのは不思議な気分だけど… それはあんまり問題じゃないよな。一番は…) 頭に思い浮かんだ、一番使いやすい持ち方でナイフを持ち直して、しっかり握る。 わずかだがルーンの発光が強くなった気がした。 少し皆と離れてみて、振り回してみる。 一通り試してみた後、最後にハンズ・オブ・グローリーを出してみる。 上手く集中できず、出すのに10秒ほどかかってしまい… そして最後に、霊波刀状態のハンズ・オブ・グローリーでナイフを両断すると、ルーンの発光も止んでしまった。 「えーと… なんていうか、確かにナイフの効果的な使い方とか、知らないはずの知識が思い浮かんだり… 体が多少軽くなったりとか、そういった効果が出てます。ただ…」 「他に何かあるのですか、ヨコシマ君?」 「いつもなら瞬時に使えるはずなんすよね、ハンズ・オブ・グローリーって。 でも、さっきは作り出すのにかなり集中力が必要になって… まぁ代わりに威力がすごい事になってるんすけど」 「では最初から作り出しておいたらどうなるのでしょう?」 そう言って再びナイフを錬金するロングビルと、霊波刀を改めて作りなおす横島。そしてナイフを触ると… 「な、何だこれ!? くっ …ダメや」 徐々に霊波刀の光が薄くなり、10秒ほど後には解除されてしまった。 再度、10秒ほどかけて発動した後… しばらくうんうん唸っていたが、最後にナイフを両断してルーンの発光が解除される。 その後、霊波刀状態から篭手状態に変えてみたり、また戻してみたりして、そして能力解除をする。 「ダメっすね。最初に作り出していても、それを維持出来なかったす。 後、一旦作り出したらどうも形の変更とかも出来ないみたいでしたし。 それと思い出したんすけど、これと少しだけ似たような現象起こす物知ってます。 俺が前いたところにあった霊刀・妖刀といった類の武器の中には、霊力を吸い取ったりする物があるんすけど… そういった物に霊力を吸われた感触が、このナイフからも少しですけどしました。 やっぱりこれもそのガンダールヴって物の影響なんすかね?」 いくら魔法で作られたナイフだとは言え、そんな能力が付いているわけでもなく。 良く分からないが、そういう物なんだろう、と言う事になった。 結局、横島は凄腕の傭兵、という形で対外的には説明する事となる。 横島自身は 「俺はGSっす。悪霊退治はした事があっても、人間相手となんか数えるほどしかやった事ないっすよ?」 と言っていたが、悪霊なんていうオカルト話は、どうせ誰も信じないから言うのは構わないが意味は無い、と言われてしまった。 「さて、これで話は終わりじゃ。 ミス・ヴァリエール、繰り返しになるが… 彼は自分の能力がいかに特異な物であるかという事がさっぱり分かっておらんかったようじゃ。 一応釘をさしたとは言え、お主の方からもしっかり気を配っておくように」 本人の前で言うにはいかにもはっきりしすぎだろー!? と横島は思ったが、まさか色気に負けて調子に乗ってたと言うわけにもいかなかったので、黙っているしかなかった。 学院長室からルイズの部屋へ戻った二人。 授業に関しては次の時間から出席する事にしたらしく、横島に平民の貴族への態度を教え込もうとするルイズだったが… 「分かった分かったって。他の貴族を呼ぶときは、『ミスタ・ミス・ミセス』のどれかをつけて、ルイズちゃんを呼ぶときは『ルイズ様』。 それで、出来るだけ丁寧に話すって事だろ」 …いまいち効果のほどが実感できなかったので、そうそうに切り上げる事にした。 その代わりに、「霊能」というものについて聞いてみる事にする。 血筋が全く関係ないわけではないけれども、多かれ少なかれ万人が持っている力という話に少し興味を惹かれた。 (でも、はっきり目に見える形に出来る人はやっぱり少ないって言う事で残念な気になった) いい血筋に生まれ、力も大きいのにいつもうまく力を扱えなくて暴走ばかりさせてる人の話を聞いたときは、不覚にも涙が出てきてしまった。 バンパイア・ハーフの友達が居る、なんて事を言った時には、「何でもかんでも信じると思ったら大間違いよ」と言ってやった。 信じてくれたっていいだろ、と喚いていたけど、信じろっていう方が無理よ。やっぱりこいつはバカね。 人への変身能力を持っている狼や狐がいるって言われたときは、思わずそっちが召喚されれば良かったのに、と愚痴ってみたりもしたけど、 「毎日毎日朝早くに起こされて、50kmも散歩に付き合わされたり、金欠で明日の食事もままならない時に、遠慮のひとかけらもなく油揚げをたかって来るんだぞ。やめておけ」 って言われた。 でも、そう言いながらもどこか楽しそうな口調だったから、きっと仲は良かったんだろうな、と思う。 それと同時に… 私にはそう言った人がほとんどいない事に気付く。全くってわけじゃないけれど、少なくともここにはいない。 そう思ったら、ちょっと悲しくなってきて… これ以上話を聞くのが辛くなったので、少し早いけれども夕食へ行かせる。 本来の夕食時は、厨房だってかなり忙しくなるから、あんまり迷惑にならない今のうちに行ってきなさい、と。 そうして一人になって… 私は少しだけ泣いて、それから顔を洗って、食堂へ向う。 途中でキュルケに会って、心配してるんだかバカにしているんだか良く分からない絡み方をされたけれども、それでも嬉しくなって、気付いたら涙ぐんでいた。 それを見たキュルケは何故か慌ててて(慌てるくらいなら、バカにしたような事言わなければいいのに)、ちょっとおかしくなって笑ってしまった。 そんな事があって、(今日の夕食は、きっといつもよりおいしい気がする)と思いながら、始祖ブリミルに食事前の祈りをささげたのだった。 前ページ次ページ虚無を担う女、文珠を使う男
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前ページ次ページネコミミの使い魔 わたしがこのハルケギニアにやってきてから一週間が経ちました。 最初のギーシュさんとの一件以来、わたしの生活はほぼ平穏といっていいと思います。 ルイズお姉ちゃんは教えるのがとても上手で、最近は授業も少しだけ分かるようになって来ました。 それと同時に、お姉ちゃんがちょっと不思議なメイジであることもわかっています。 他の人達は爆発魔法をゼロだゼロだというけれど、わたしはそうは思いません。 きっとお姉ちゃんもそう思っているはずです。だからどんなにバカにされても平気なんだと思います。 何時の日か隠れた才能が目覚めてあっと言わせる日を私は夢見ています。 わたしの一日はルイズお姉ちゃんの下着や制服を用意することから始まります。 使い魔というのはもっと別の仕事があるそうですが、私は戦闘がほぼ専門だと思われてしまっているので、 お姉ちゃんは採掘などの仕事をわたしには頼みません。キョーコに教わった食べられる野草の知識なら十分持っているんだけども。 ルイズお姉ちゃんは貴族なので、食べられる野草やきのこの類にはあまり興味がないようです。 朝ごはんを一緒に食べたら授業に参加します。 さっきも言ったとおり、授業にもちょっとだけついていけるようになったのでとても楽しいです。 実技では、ルイズお姉ちゃんのサポートはできないけれど、ガンバレーといつも応援しています。 お昼ごはんが終わったらたまにシエスタさんと給仕のお手伝いをします。 何故か貴族の人を倒したおかげでわたしは奇跡のヒロイン扱いで、食堂の人たちからよくほめられます。 ただ世の中にはもっともっと強いメイジがいるので油断は禁物だと注意されてしまいました、わたしもそう思います。 授業が終わって夕食を食べたらルイズお姉ちゃんと一緒に勉強をします。 この世界のことを教わったり、授業でのことを教わったり。 ここだけの話ですが、魔法をちょっと教わったら、ついできてしまったのは秘密です。アンロックとサイレンスという魔法だそうです。 お姉ちゃんのベッドはとても大きいので、二人で寝ても十二分に大きさがあります。 昔はルイズお姉ちゃんがその上のカトレアお姉ちゃんという人と一緒に寝てたとお話をしてくれたことがあります。 よもや自分が年下の女の子と一緒に寝る事になるとは夢にも思わなかったと笑っていました。 わたしやルイズお姉ちゃんの洗濯物はシエスタさんに頼んでお洗濯をしてもらっています。 なんだか悪いような気もしますが、それもお仕事なのだそうです。 朝から晩までよく働くね、とルイズお姉ちゃんに言ったら、あなたも使い魔として四六時中働いているわと言われました。 そう言われてみればそんな気もします。 ちなみに私の服は、謎の人に用意をしてもらっています。 朝起きると、毎日毎日違う服がたたんで用意してあるのです。 下着からサイズまでなにもかもぴったりなのが不思議で仕方がありません。 ルイズお姉ちゃんが言うには、かなりのハイセンスで流行に相当敏感な人なのではないかということでした。 それがこのトリステインでの流行なのか、ハルケギニアの流行なのかまではわかりませんが、 とりあえず服を沢山持っている人の犯行だというのはよくわかっています。 お昼ごはんはだいたいルイズのお姉ちゃんと一緒に食べるのですが、たまに食堂のシェフの人に誘われて食事をします。 食事の相手はシエスタさんだったり、他の給仕さんだったりしますが、 とにかくわたしが褒められるのは変わりません。 あんまりほめられた経験がないので恥ずかしい気分になります。 また、ルイズお姉ちゃんも授業の予習や復習があるようなので、その時にはシエスタさんと活動します。 わたしが参加できないような授業もたまにあるみたいです、先生にもいろんな人がいるみたいです。 その時は平民の間で流行っている歌や遊びで時間を潰します。 お姉ちゃんと一緒じゃないのは寂しいですが、それも使い魔の努めだと我慢します。 お昼ごはんの後でのルイズのお姉ちゃんとの授業は眠気との戦いでもあります。 今の季節は春なので、ついついうとうとと船を漕いでしまいます。 その時、キュルケお姉ちゃんのフレイムと目が合いました。 彼(?)が授業に参加するのは珍しいですが、目があうのは更に珍しいです。 授業が終わりました。 「ゆま、先に帰って寝たら?」 ルイズお姉ちゃんにそう言われてしまいました。 確かにこのまま授業を続けて受けていても、どうしようもなさそうです。 わたしは頷いてフラフラと教室を後にして、石造りの廊下へと出ました。 やっと部屋にたどり着いたと思ったら、木の扉の前にはフレイムがいました。 まるで通せんぼをしているかのようです。 わたしは首をかしげながらどうしたのと聞きます。 すると彼はついて来いとばかりに私に尻尾を向けて、歩き始めました。 眠いのは眠いですが誘われたら言ってみたく鳴るのが人の性です。 案内をされたのはキュルケお姉ちゃんの部屋でした。 中にはその部屋の主であるキュルケお姉ちゃんと、青い髪の赤いメガネをした小柄のメイジさんです。 大きな杖を持ってベッドに腰掛けて本を熱心に読んでいます。 「ゆま、この子はタバサ」 と、キュルケお姉ちゃんが言いました。 タバサお姉ちゃんお姉ちゃんと繰り返して名前を覚えます。 「この子がね、あなたに用があるって言うから来てもらったの」 そうなんだ……。 初めてあった人なのに、なぜだか不思議と既視感がある人です。 「はじめましてゆま、私は雪風のタバサ」 「はじめまして、千歳ゆまだよ」 「そして、謎の人です」 謎の人の正体が発覚した瞬間です。 「えと、どうして私に服を?」 「毎日同じ服じゃかわいそうだから」 「それは……親切にありがとうございます」 「いいの、他に聞きたいこともあったから」 と、タバサお姉ちゃんは一呼吸をおいて。 「ゆま、あなたの強さの秘密は何?」 と聞かれます。 強さの秘密、魔法少女としての能力の事かな。 秘密といっても、キュゥべえと契約して、他の魔法少女の人から教えられたことをやってるだけなんだけど。 「うーん……わたしは、ここにくるまで魔法少女として魔女っていうのと戦ってたんだ」 「なるほど、だから戦闘慣れはしていると」 「うん、人と戦ったのは初めてだけど」 「魔女は異型のバケモノなの?」 「うん、すっごい、とりあえず、化物ーって感じだよ」 あの魔女の形状はうまく説明できない。 絵の具をキャンパスに投げつけたような形の魔女や、巨大なハサミで攻撃してくる魔女や、お人形さんみたいな魔女とか。 「おそらく、魔法少女はメイジとは違う存在」 「そうなの?」 「私達が使ってる魔法とは明らかに違う魔法を使っていることからの推測」 「詠唱もしないで魔法を発動する、それってエルフみたいじゃない?」 キュルケお姉ちゃんがそういうと、タバサお姉ちゃんは首を振りました。 「ディレクトマジックを使ってみたけど、そのような素質は感じられない」 「ということはただの平民ってことね」 「そういうことになる」 と、ひと通りお話ししてわたしが眠そうにしているのを見計らって、部屋に帰ってもいいわよと言われました。 お部屋に戻ると、私はルイズお姉ちゃんと一緒に寝ているベッドに入って、その瞬間にぐっすりと眠りました。 前ページ次ページネコミミの使い魔
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まともに召喚させてもらえないルイズ 「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!」 少女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールはトリステイン魔法学園の生徒。今日は進級試験の日、ルイズはその試験の課題である使い魔召喚の儀式の真っ最中です。 「私は求め訴えるわ!我が導きに答えなさい!」 ルイズは魔法が得意ではありません。今日もどうせ爆発で終わるんだろうなとルイズを含めたその場全員が思っていたのですが… 「あれ?何かいるわ…?まさか成功した?」 なんと召喚魔法は一発で成功。鏡からゆっくりと現れる緑色のフォルム。二本足で立ち、背中には黒い羽のような物がついている。 召喚されたのはどうやら亜人…?何はともあれルイズは喜び召喚したそれに話しかけます。 「アンタ亜人ね?この私に召喚されたんだから光栄に…」 「ここは…何処だ?…まぁそんな事はどうでも良い…まさか孫悟空が私と一緒に自爆するとは…な?」 緑の亜人はブツブツと何かを呟いています。ルイズは自分が無視されている事に気付き緑の亜人の側でぎゃーぎゃー喚きますが、亜人の耳には全く届いていない様子。 「ククク…だがおかけで新たな力が手に入った…待っていろ孫悟飯…このセルが…パーフェクトに貴様を消してやろうー…!」 亜人は人差し指と中指を額に押し付けます。次の瞬間、緑の亜人は姿形もすっかり無くなっていました。 「はぇ?あれ?」 辺りがシーンと静まります。召喚した本人はというと、一体何が起きたのかといった様子で事態が飲み込めていない様子。 数分後、事態を理解したルイズが儀式のやりなおしを教師のコルベールに申し出、再びルイズの使い魔召喚が行われました。 再召喚で現れたのは黄土色の鎧と鉄仮面を被った男だった。今度は成功したとルイズが鉄仮面に近づこうしたその時… 「ここは…神崎士郎の望む世界ではない。…修正が必要だ」 鉄仮面は腰の黒い箱から一枚の札を取りだし…! 『TIME VENT』 「え?」 チクタクチクタクチクタクチクタク… 「はっ!あれ?あいつは!?」 一瞬、何かが起きた後、黄土色の鎧の男はどこかへと消えていました。ルイズがコルベールに「アイツはどこへ行ったの!?」と問いかけましたが、コルベールは何の事やらさっぱりといった態度で接します。 いまいち納得のいかないルイズは再び召喚魔法「サモン・サーヴァント」を行います。今度は爆発が起こりました。召喚成功の手応えを感じたルイズでしたが、周りを見渡しても使い魔が見当たりません。 ふと足元に目をやると何かが浮かんでいました。文字です。ハルケギニアの言葉で「ここにいた」と書かれています。 おまけに矢印まであるではありませんか!ルイズが足を上げるとそこには体の潰れた自分の使い魔がいました。 やっぱり諦められないルイズはまたまたコルベールにやり直しを申し出、コルベールはこれを承認。四回目の召喚。 「やった!今度こそ成功よ!」 今回召喚されたのは、青い帽子を被った平民のようでした。しかし、それと一緒に見たこともない『魔物』が居ます。 これは当たりだとルイズが喜んでいるとどこからともなく青い毛に包まれた魔物が現れました。 「わたっ!わたっ!テリー、ここは異世界の扉で飛ばされた世界じゃないわた!ひとまず城に帰ろう!」 「そうなのか?じゃあ帰るかな!」 と平民の少年が言いました。ルイズの脳裏に嫌な予感が過ります。 「ちょ…ま…」 「わたわたわた~!」 取りつく島もなく少年は遥か空へと飛んでいってしまいました。 流石にストレスが溜まってきたルイズはコルベールに許可を取ることも忘れ召喚魔法を唱えます。 五回目に現れたのはおかしな帽子を被った少女、しかし背中には大きな羽が… 「よくも私を召喚してくれたな…人間。このレミリ…」 あるのを確認するところで日に当てられた少女は灰になった。 再再再再再再度召喚に挑むルイズ。現れたのは紅蓮の巨人! 「なめんじゃねぇ…異次元だろうが…多元宇宙だろうが…ハルケギニアだろうが関係ねぇ…俺を誰だと思っていやがる…穴堀りシモンだあぁ!」 紅蓮の巨人は気合い(螺旋力)で空間をねじ曲げ元の世界へ帰っていった。 それでもめげないルイズは渾身の力を込め召喚を行います。 「ドカ「ウボァァァ!」ァァン!」 断末魔の叫びと共に爆発が起こります。土煙が引くと底には黒こげになった鉄のゴーレムがいました。 ルイズが召喚した残骸が増える中、ルイズは藁にすがる思いで使い魔を召喚します。 召喚されたのは平民の少年とどう見ても人間には見えない異形の者。両者共に腕に何かを着けています。良く見ると少年の方は何かを手にしています。しらない文字書かれた緑色の札です。どうやら少年はその札で何かをするようです。 「俺のターン!魔法カード『超融合』を発動!…来い、ユベル!」 「十代…!」 すると二人は一つに重なり、眩い光となって空へと消えていった。 その後もルイズは召喚を続けました。 「あぅあぅ~…ここはカケラの世界じゃないのですよ…オヤシロワープ!」 …しかしいずれも 「はかせー、ここにはサルいないよー」 「ははは、悪かったなカケル君、今転送するぞい」 皆帰るなり死ぬなりして、 「エトナの奴こんなボトルの中に閉じ込めおって…おい、時空の渡し人!さっさと俺様をエトナのところへ飛ばせ!」 とうとう100回を超えたところでルイズの意識が 「キテレツー、ここどこナリ?」 途切れた。 次の日の朝、ルイズが起きると平民の少年が彼女の部屋にいました。何でも気を失う前にルイズが召喚したそうです。 その平民は「早く元の世界に帰せよ」等と馬鹿らしい事をほざいている。早く自分の力で帰れば良いのにと思いながら再びルイズは眠りについたそうな。 お し ま い 以上小ネタ ドラゴンボールよりセル 仮面ライダー龍騎より仮面ライダーオーディーン ぷよぷよよりのみ DQモンスターズ1よりテリー 東方プロジェクトよりレミリア・スカーレット 天元突破グレンラガンよりグレンラガン(シモン入) ボンバーマンよりボンバーマン 遊戯王GXより十代とユベル その他もろもろ… でした
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前ページ次ページIDOLA have the immortal servant 「ルイズ」 「え……あ、あんた誰よ!」 目を開くと、そこに見知らぬ老人がいた。元来ルイズは朝が弱いのだが、すぐに眠気が吹き飛ぶ。 「ヒースクリフ・フロウウェンだ」 「あ、ああ。そ、そう。使い魔ね。昨日召喚したんだっけ」 「周囲が賑やかになってきたようなのでな。そろそろ起きる時間なのだろう?」 言って、椅子にかかっていた制服を取ると、ルイズに手渡す。 ルイズは下着も取ってもらおうとして、それを口にする事を止めた。昨晩の話が頭に引っかかっていたからだ。 自分は、コーラルの連中なんかとは違う。 平民などを召喚してしまった自分も大概運がなかったが、それはフロウウェンも同じだ。彼には非がないし、使い魔で構わないと言っている。ある程度は誠意を持って接するべきだ。そう考えを改めたのだ。 身支度を整えたルイズがフロウウェンを従えて部屋を出ると、隣の部屋からキュルケが出てくる。 「おはよう、ルイズ」 ルイズはあからさまに嫌そうな表情を浮かべるが、キュルケは楽しそうに笑みを浮かべていた。 何となく、犬猿の仲という単語がフロウウェンの脳裏をよぎった。その直感は間違ってはいない。 「おはよう、キュルケ」 「あなたの使い魔ってこのおじいさん? ほんとうに人間なのねえ。さすがゼロのルイズだわ」 「うるさいわね」 「ヒースクリフ・フロウウェンだ。以後、よろしく頼む」 「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。んー、あと二十年若ければねえ。残念」 そのキュルケの態度に何か思う所があったのか、ルイズは二人の間に割って入って怒鳴る。 「何考えてるのよ! あんたも! キュルケなんかに挨拶する事ないわ!」 「あら、随分ねえ。そうそう、あたしの使い魔も紹介しておくわ。おいで、フレイムー」 のっそりとした動作で、キュルケの腰ほどもある巨大な赤色のトカゲが姿を現す。熱気を全身から発していた。 「ほう」 フロウウェンが感心したように声を漏らした。ハルケギニアの原住生物には多少興味があったのだ。 「これって、サラマンダー?」 「そうよー。これだけ鮮やかで大きな尻尾は、きっと火竜山脈のサラマンダーね。好事家に見せたら値段なんかつかないわ。火属性のわたしにぴったり。『微熱』の二つ名にも相応しいと思わなくて?」 「ふん」 世辞を言う気も起きないのか、顔を背けるルイズ。 「じゃあ、お先に失礼」 赤い髪をかき上げ、キュルケは颯爽とした足取りで立ち去っていった。 「くやしー! なんなのよあの女! 自分がちょっと火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!!」 嫉妬丸出しで癇癪を起こすルイズにフロウウェンは苦笑した。 「まあ、いいではないか。召喚されるものは運次第なのだろう?」 「そうだけど! メイジの実力をはかるには使い魔を見ろって言われてるぐらい重要なものなのよ!」 「人間は万物の霊長、という者もいるが。他に人間を召喚した者がいないのなら、レア度だけは高いぞ」 「そんなの何の慰めにならないわよっ」 やれやれ。この娘を宥めるのは骨が折れそうだ。 「ふむ。ところで、あの娘はゼロと言っていたが、それは二つ名であろう? あの娘の微熱というのは解りやすかったが、ゼロの由来はなんだ?」 「知らなくてもいいことよ」 ルイズはますます柳眉を逆立てる。 フロウウェンは話題を変えようとして地雷を踏んだ事を悟った。昨日も今日も、他の生徒達はゼロのルイズ、という言葉を嘲笑と共に使っていたのだ。意味は分からないが彼女にとって不名誉な事なのだろう。 「……オレは、白髭公と言われていたな」 「学院長の白髭の方が立派だわ」 「ほう、そうかね」 学院長ならばいずれ目にする事もあるだろう、とフロウウェンは思った。 「なるほど。有名な学院だと言うだけのことはあるな」 食堂の装飾と、テーブルに並べられた食材の豪華さに、フロウウェンは舌を巻いた。 コーラルは食料の安定供給に難儀していたし、パイオニア1は移民船。ラグオルは開拓地だ。どこでも節制を強いられ、贅沢を言っていられる状況になかった。きっと、この国は平和なのだろう。 「トリステイン魔法学院は魔法だけを教える場じゃないわ。メイジはほぼ全員が貴族だから、それに相応しい教育を受けるの。 この食堂もそれを体言したものよ」 ルイズが得意げに言う。 テーブルに近付くも中々座ろうとせずに視線を送ってくるルイズに、フロウウェンは一瞬怪訝そうな顔をするが、 (ああ、そういう事か) 貴族が出てくる映画などでは、従者が主人の椅子を引いていた。人前であれば、主人に恥をかかせない為にもそうすべきなのだろう。 フロウウェンが椅子を引いてやると、やっとルイズが腰掛けた。 「で、オレはこの後ルイズの食事が終わるまで後ろに控えていればいいのか? 軍の作法ならともかく、貴族のマナーなど何も知らんのだ」 「別にそこまでしなくてもいいわ。食事を取ってもいいわよ。でも、このテーブルは貴族の席だから座っちゃ駄目。使い魔は本当はこの食堂に入れないの」 「では床に座って食べればいいわけか」 「そ、そんなわけないじゃないのっ! ちょっと、そこのあなた。こっちへ来なさい」 いくらなんでもそんな事するものか、とルイズは憤慨した。 もう少しフロウェンが若くて、反抗的ならそうしたかもしれない。と、少しだけ思って……いやいや、そんな訳が無いと心の中で即座に否定するルイズ。 「何でしょうか、ミス・ヴァリエール」 呼び止められた黒髪のメイドが、こちらに向かってくる。 「彼に何か食べさせてやって」 「はい。ではこちらへいらしてください」 「食べ終わったら戻ってきなさい」 「了解した」 「あ、間違っていたら済みません。もしかしておじいさんはミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」 「ああ。もう広まっているのか?」 「ええ。なんでも召喚の魔法で平民を喚び出してしまったって、噂になっていますわ」 メイドはにっこりと笑う。 人間を召喚する、というのはそれだけ特異な事例なのか、とフロウウェンは理解した。正確には、あのゼロのルイズが召喚したのがこれまた平民だった、と言うのが面白おかしく伝えられているだけなのだが。 「オレはヒースクリフ・フロウウェンだ」 「私はシエスタっていいます」 シエスタに連れられて向かった先は、食堂の裏にある厨房だった。コックやメイドが忙しそうに料理を作っている。 「ちょっと待っていてくださいね」 厨房の中へ消えていくシエスタ。次に戻ってきた時にはスープの入った皿を抱えていた。 「賄いですけど、良かったら食べてください」 「感謝する」 スプーンですくって口に運ぶ。 「美味いな、これは」 フロウウェンは正直な感想を口にした。天然の素材はコーラルやラグオルではそれだけで高級食材なのだ。 従って、彼の目から見て賄いのスープはかなりのご馳走だった。 「よかった。おかわりもありますから言ってくださいね」 シエスタはニコニコしながら言った。 見た目は厳しそうだが、話してみれば穏やかそうな人だ。話に聞く曽祖父が生きていれば、こんな感じだったのろうか。 「シエスタは平民、なのか?」 「はい。貴族の方々をお世話する為にここでご奉公させていただいてるんです」 「そうか」 貴族の世話、か。自分と同じだな、とフロウウェンは苦笑する。 「そうだ。シエスタに頼みがあるのだが、聞いてもらえるだろうか?」 「私に? なんでしょうか」 「オレはこの国に来るのは初めてで、勝手が分からなくてな。色々教えてもらえると有り難い。その、基本的な常識や貴族と接する時に気を付ける事なんかからな。 大した礼は出来ないが、君らの仕事を手伝うぐらいはしよう。こうやって、働きもせずに飯にありつくのは心苦しいしな」 「それぐらいでしたらお安い御用ですよ。でも、ミス・ヴァリエールに呼ばれてましたよね」 異国の話に、シエスタも興味が無いわけではなかったし、彼女にしてみれば、世間話の相手が増える程度の認識だった。 「そうだったな。では昼過ぎにまたここでと言う事で良いだろうか」 「はい。じゃあ、お待ちしていますね」 主人に続いて教室に入ると、生徒達の視線が集まる。好奇の視線で見てくる者、クスクスと囁きあって笑う者。 (やれやれ。貴族と言っても子供は子供だな) こうした陰湿な空気はどこにでもある。軍ですら爪弾きにされる者はいたし、未熟な子供達の集団なら尚更だ。 横目でルイズを見やるが、彼女は慣れているのか、彼らを歯牙にもかけずに教室の中を進んで自分の席につく。フロウウェンは椅子にも床にも座らず、彼女の少し後方に立って控える。この辺りは軍人らしい律儀さ、というべきか。 それに気付いたルイズが言う。 「座っていても良いわよ。でも机はメイジの席だから、床にね」 「了解した」 言うなり、フロウウェンの腰の辺りから風船を膨らますように白いソファが出現した。 「ちょ、ちょっと! 何よそれ!?」 ルイズの言葉に、注目が集まる。教室がざわついて「何だあれは」「先住魔法か」などと囁き合う声が聞こえた。 「フォトンチェアーだが。オレの国ではこういう道具が実用化されている。この国の魔法ではこういう事は出来ないのか?」 フロウウェンには決して注目を集める気はなかった。魔法が使えるのだから、フォトンチェアーぐらいどうという事は無いに違いないという意識だっただけだ。ただ、ルイズや他の生徒の反応を見る限り、これは失敗だったらしい。 「出来ないわよ! い、いえ。『錬金』なら出来ない事もないと思うけど……こ、こんな見た事もないような材質の……な、何なのこれ?」 物珍しげに、しかし恐る恐るフォトンチェアーに触れるルイズ。柔らかい。しかも肌触りがいい。 「フォトンだ」 フロウウェン達の文明ではフォトンは大気中に存在する、万物の元となるものと定義されている。 加工が可能で、椅子や机などの家具にまで利用される程普及している。 ソファーのように柔らかくする事も可能だが、刃状にも出来るし弾丸にもなる。生体フォトンのある者、つまりアンドロイド以外ならば、テクニックとして火炎を放ったり人の傷を癒すという使い方も可能だ。 「す、座り心地は良さそうね。後で私にも座らせなさい」 「それは無理だ。ジャケットの腰部辺りに発生用の装置が組み込まれているからな」 「そ、そう……残念だわ」 聞き耳を立てていた他の生徒達も、魔法ではないらしいと判明すると落ち着きを取り戻していく。基本的に彼ら貴族、特にトリステインの貴族は魔法技術以外には興味を示さない傾向にある。 それゆえ、コルベールは正当な評価をされず、変人扱いされているのであるが、その話は今は割愛する。 「さすが、ゼロのルイズの使い魔は変わってるわね」 とキュルケが言うと笑いが巻き起こる。ルイズはすぐさま噛み付いた。 「うるさいっ!」 舌戦が始まるのかと思われたその時だ。扉が開いて、紫のローブを纏った中年の女が入ってくる。 教員なのだろう。賑わっていた教室が静けさを取り戻していった。 「ふむ」 落ち着いた所で、フロウウェンは他の使い魔達の観察を始めた。フロウウェンの常識の範囲内のフォルムの動物もいたが、宙に浮かぶ一つ目のような、訳の解らないものもいる。なるほど、確かに人間を召喚したのはルイズだけのようだ。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔を見るのがとても楽しみなのですよ」 にこやかな顔で教室を見回していたシュヴルーズの視線が、ルイズとフロウウェンのところで止まる。 「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね、ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズに悪気は無かったのだろうが、その言葉に教室は笑いに包まれた。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからってその辺のじいさんを連れてくるなよ!」 「違うわ! きちんと召喚したもの!」 「嘘付くな! 『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう?」 (やれやれ) フロウウェンからすると低レベルな口ゲンカにしか見えなかった。自分が召喚された事は疑いようもないし、ルイズもそれが分かっているのだから、それでいいではないか、と。 だが、ルイズにとっては沽券に関わる事だ。 「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! かぜっぴきのマリコルヌがわたしを侮辱したわ!」 「かぜっぴきだと!? 俺は風上のマリコルヌだ! かぜっぴきじゃない!」 尚もぎゃあぎゃあと口喧嘩を続けようとする二人をシュヴルーズが嗜める。杖を一振りすると、二人がすとん、と着席させられた。 「二人ともみっともない口論はおよしなさい。お友達を侮辱するのは貴族のする事ではありませんよ」 「ミセス・シュヴルーズ。僕のかぜっぴきは中傷ですが、ゼロのルイズは事実です」 マリコルヌの反論に、教室のあちこちからクスクスと笑いが漏れる。 シュヴルーズが厳しい顔で杖を振るうと、今度は笑っていた生徒達の口に赤土が張り付いていた。 それを見ていたフロウウェンが感心する。 (口の周囲にあったフォトンを遠隔操作で粘土に変えたのか? 装置も無しに面白いことができるものだ) どうやら魔法という一点でのみ言うなら、フロウウェン達の文明よりも遥かに多彩な事が出来るらしい。大気中のフォトン濃度の高さが、魔法の発達に一役買っているのだろうか。 その分、科学技術はかなり遅れているようだが。 「私の二つ名は『赤土』。『赤土』のシュヴルーズです」 授業が進む。四大系統と虚無、土属性の有用性などをシュヴルーズは語っていた。 フロウウェンにしてみても興味深い話だ。彼女の講義が事実ならば科学技術も魔法で補っている、と言う事になる。メイジが支配階級であるのは、この社会では当然の事なのだろう。 教官の話の腰を折る事は失礼にあたるから黙っていたが、ルイズに後で色々聞いて見ようとフロウウェンは考えていた。 「それでは、『錬金』のおさらいをしましょう。基本は大事ですからね」 シュヴルーズが杖を振るうと、教卓の上にあった小石が金色に光る金属に変わっていた。 「……ほう」 ハルケギニアに来てからというもの、驚かされる事が多い。これはフォトンに様々な性質を持たせて加工する技術そのものだ。これだけ便利であれば、確かに科学を必要とはしないだろう。 「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」 身を乗り出すキュルケに、シュヴルーズは首を振った。 「真鍮です。ミス・ツェルプストー。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの『トライアングル』ですから」 また知らない単語が出た。察するにメイジの実力を示すランク分けなのだろうが、何を以って判断材料とするのかが分からない。いずれにせよ後でルイズにするべき質問が増えた。 「さて、誰かにやってもらいましょう。そうですね……ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズの目がルイズに留まる。 「え? わ、わたしですか?」 「ええ。そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」 促されるも、ルイズは立ち上がらなかった。明らかに狼狽している。 「ミス・ヴァリエール?」 「先生」 訝しむシュヴルーズに、キュルケが言った。 「やめておいた方がいいと思います」 「どうしてですか?」 「危険です。先生はルイズに教えるのは初めてなんですよね?」 生徒達が頷きあう。 何か問題でもあるというのだろうか。当然、フロウウェンにも解らない。 「『錬金』に危険もなにもないでしょう。さあミス・ヴァリエール、気にしないでやってごらんなさい」 シュヴルーズは笑う。 「やります」 「ルイズ、やめて」 ルイズが立ち上がり、キュルケの顔が青褪める。 ややぎこちない動作で、強張った表情のルイズが前に出て行った。 前の席に座っていた生徒達が机の下に避難を始める。 何だというのだ。あれではまるで、爆風から身を守るような―――まさか!? 迷わずフロウウェンは床を蹴って飛び出していた。 そしてルイズがルーンを唱えて杖を振り下ろした瞬間、光に包まれた石ころが机ごと大爆発した。 驚いた使い魔達が暴れ周り、生徒達が悲鳴を上げる。教室の中は蜂の巣を突いたような大騒ぎになっていた。 「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」 「ヴァリエールは退学にしてくれよ! 命が幾つあっても足りやしない!」 「ラッキーが! 俺のラッキーが食われた!」 シュヴルーズとルイズは……少し衣服が破けていたが無傷だった。 「二人とも怪我は無いな?」 気がつけば、フロウウェンに抱えられていた。俗に言うお姫様抱っこと言う奴だ。 「え? え? あら?」 シュヴルーズが呆気に取られた顔で、ルイズとフロウウェンを交互に見やる。 「あ、あんた、大丈夫、なの?」 ルイズは爆風と自分の間にフロウウェンが割って入ったのだと気付く。 とすると、背中であの爆発を受けた、という事になるが…… 「ああ。怪我はないようだ」 フロウウェンはそう答えた。石ころと机は原形も留めず爆発したはずなのだが、破片が少なかったので殺傷力も大した事は無かったのだ。 爆発……というより、対象物そのものが爆発のエネルギーになって消滅した、と言った方が良いのかもしれない、とフロウウェンは分析した。 「そ、そう。なら、離して」 フロウウェンがルイズを下ろす。そして、ルイズはマントの埃を払って、教室をゆっくりと見回してから一言。 「ちょっと失敗したみたいね」 「ちょっとじゃないだろう! ゼロのルイズ!」 「いつだって魔法成功の確率ほとんどゼロじゃないか!」 なるほど。それでゼロか。と納得する。 だがフロウウェンはそんな事よりも、これだけの騒ぎを起こしながら泰然自若としたルイズの大物然とした態度に、感心していた。胆力がある。実力が伴ってくれば、きっと彼女は名をあげるだろう。 「おおおおうおおう。ミス・ロングビ、ロロロロングビル、やめてとめてやめてとめて。なんかはみ出しそう、はみ出しそう」 さて、我に返って教室の惨状に激怒したシュヴルーズに、ルイズが教室の片づけを命じられているその頃、学院長であるオールド・オスマンは日課となっているセクハラ行為―――秘書の尻を五回撫で回し、おまけに胸まで三回揉んだ―――に及んでいた。 その報復として秘書のミス・ロングビルにジャイアントスイングでぶん回されているのだが、まあこれは自業自得であろう。 「オールド・オスマン」 そこにコルベールが入ってきた。 「あっ!?」 急な闖入者に驚いたミス・ロングビルが、うっかり手を離してしまう。放物線を描いて飛んだオスマンは、『フライ』も『レビテーション』も間に合わずに頭からコルベールに突っ込んだ。 「ぬおおっ!?」 「ぐはっ!?」 老人と中年は一つの塊になって廊下に転がる。 「ぐ……おお。な、何してるんですかオールド・オスマン」 「な、なに。あ、新しい魔法の実験をちょっと、な」 と言いながらも立ち上がってくるが、振り回されていたオールド・オスマンの足下はおぼつかない。 どうやらコルベールは飛んできたオスマンに気を取られてロングビルの蛮行には気付かなかったらしい。彼女は机で書き物をしている振りをしながら胸をなでおろした。 「そ、そうですか。まあそれはそれとして、少しオールド・オスマンのお知恵を拝借したい事がありまして」 コルベールは書物を手渡す。 「ふむふむ。『始祖ブリミルの使い魔たち』? なんじゃこんな黴臭い本を持ち出して。えーっとミスタ……なんじゃっけ?」 「コルベールですっ! オールド・オスマンは今年の使い魔召喚の儀式で人間が召喚されたことはご存知ですか?」 「ふむ。そうなのか」 悠長な事を言っているオスマンに、コルベールはフロウウェンの胸に浮かんだルーンのスケッチを渡し、言った。 「これを見てください。私は、これを始祖ブリミルの使い魔ではないか、と思ったのですが」 そういわれて、オスマンの表情が険しくなる。 「……ミス・ロングビル。ちょっと席を外してくれんかの」 それにしても、とフロウウェンは思う。 先程の爆発はなんだったのか。発生のプロセスとしてはラフォイエの爆発に似ているが、どうも違和感があった。 あの爆発に一番近い物を探すなら―――パイオニア1のクルーが取り込まれたときのあれ……か? 対象は石ころと机ではなく、パイオニア1のクルー。『アレ』は彼らを何らかの方法でエネルギー化して、それを吸収したのだ。 ルイズは言った。使い魔を見ればメイジの実力がわかる、と。サラマンダーを召喚したキュルケは火属性だという。ならば、この自分を召喚したルイズの属性は? 「―――まさか、な」 考えすぎだ、と思う事にした。 ラグオルでの大爆発とルイズの爆発では規模も違うし、あの力を、人間が使えるとは思えない。 何より、あの力は相当に忌まわしいものだ。それと似ていると言っても、きっとルイズは喜ばないだろう。 机を拭いているルイズの姿を伺う。 表情は暗い。かなり落ち込んでいるようだ。 それも詮方無い事だろう。ゼロのルイズと揶揄されるのも、魔法が爆発してしまう事が原因なのだから。 彼女が必要以上に周囲に気を張っているのも、それが原因に違いない。 「そういえば、本当に大丈夫なの? あの爆発、背中で受けたんでしょう?」 視線が合うと、そんな事を言ってきた。 「背中は煤だらけにはなったが、先程も言った通りだ。怪我はしておらんよ」 ルイズの纏っている服よりは遥かに頑丈な作りをしている。表面が煤で汚れたぐらいで済んだ。 「……その、さっきは助かったわ。でも、わたしの魔法が爆発するって知ってたの?」 あのタイミングで助けに入れるというのは、爆発する前からその事を知っていた、としか思えない。 「いや。他の生徒達の様子がおかしかったから、爆発でもするのではないか、と思っただけの話だ」 「そう」 実はこの平民、かなり強いのではないだろうか。状況判断が的確で早いというのは軍人として優秀である証拠だ。 「ルイズに言っておきたい事がある」 「慰めもお説教もいらないわ」 「そうではない。まあ……見せる方が早いか」 フロウウェンは右手を片付けたゴミの山に向けると、意識を集中させた。途端、氷の礫がフロウウェンの掌から放出され、ゴミの山を氷漬けにしてしまった。 「せ、先住魔法―――!?」 流石に度肝を抜かれたらしく、ルイズが飛び退る。その目には怯えの色が含まれていた。 魔法使いの前で魔法モドキを使っただけで、幾らなんでも過剰反応しすぎだと思う。フロウウェンは笑った。 「違う違う。魔法ではない。テクニック、と言われるオレの国の技術だ」 「だだだだだってだって! 杖も詠唱も無しに魔法を使うなんて!?」 この国ではそれほどまでに恐れられる事なのか。まあ、見せたのがルイズだけで良かったとすべきだろう。 「それはそうだ。これはやり方さえ知っていれば誰にでも使える」 「だ、誰にでも?」 そう聞いてルイズから怯えが少しだけ消える。代わりに、好奇心を刺激されたらしい。 「ああ。オレの国では魔法は廃れてしまったが、その原理を解析し、科学で再現したんだ。だから正しい知識と生体フォトンさえあれば誰でも使う事が出来る。つまり、これは魔法ではなく科学だ」 フロウウェンは言う。全く同じ条件下なら誰が何度やっても同じ結論に達する。それが科学だと。 火打ち石を叩き付ければ火花が出るのと同じように。水が低い方に流れるのと同じように。テクニックは、そうなって当たり前の事が幾つも組み合わさっただけなのだ、と。 「カガク……は分かったけど、その、フォトンっていうのは?」 「大気中にある万物の元となるものだ。火や雷といったエネルギーだけではなく、圧縮する事で家具や武器の刃、弾丸にも加工できる。先程ルイズが見た通りだ」 「……滅茶苦茶だわ」 と思わず零すルイズに、フロウウェンは首を横に振った。 「先程『錬金』ならばフォトンチェアーが作れると言ったのはルイズだろう。その直感は当たっている。恐らくこの世界の剣や銃も『錬金』で作ったものではないのか?」 「あ」 ルイズは目と口を丸くした。それから真剣な顔に戻る。 「空気と同じで見えないけれど、そこら中に何かがある、という事ね?」 風と同じだ。無色透明で目には映らないが、そこに空気は存在する。 「ああ。その事から、ルイズ達の使う魔法もオレ達の言う所のフォトンを操作することで色々な現象を起こしていると仮説を立てる事が出来る。専門家ではないから詳しく講義出来ないが…… フォトンの話はともかく、科学的に考えるなら、爆発の原因を特定しそれを条件下から除外してやれば、ルイズの魔法も失敗しない、という事だ」 「だ、だけど、呪文も手順も間違っていないのよ!? それに誰もわたしの爆発の原因は分からなかったわ!」 「そうだろうな。オレがこの場で考え付いた対策ぐらい、とっくに自分で考え抜いていただろう。オレが言いたいのは、諦めなければいつか道も拓ける、という事だ。魔法が使えなくて肩身が狭い思いをするわけだろう? 魔法を成功させるまでの気休めが必要なら、オレの技術を教えてやってもいい。ルイズにも使えると思う」 「ほ、本当?」 きっと自分にも使える。簡単だ。出来て当たり前。 そんな言葉に何度も裏切られている為に、ルイズはまだ懐疑的だったが、異なる世界の技術には興味が湧いた。 「その気があるのならな。魔法ではないから根本的な解決にはならないだろうし、この世界の魔法ほど多彩な芸があるわけではないが」 「充分よ。もし習得できなかったとしても、爆発の原因を特定するヒントがそこから見つかるかも知れないわ。ゼロの名前も返上してやるわ」 その姿勢は見上げたものだ。 「オレがいる事が、ゼロでない事の証明だろう」 そう言うと、ルイズは照れくさそうに笑ったのだった。先程までの落ち込みは、もう既にどこかに消え去っていた。 ―――初めて、この少女の笑顔を見た。 フロウウェンは自分の娘を見るような穏やかな目で、ルイズを見やるのだった。 前ページ次ページIDOLA have the immortal servant
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前ページ次ページ無から来た使い魔 ルイズ達が町で買い物をしてから数週間がたった。 朝、バッツはいつもの日課として生徒達が起きてくる前にテントから出るとルイズを起こしに行く。そしてルイズをノックで起こした後、 二人で食堂に行き彼は彼女の給仕を務める。ルイズの給仕をする時に時々キュルケが彼に給仕を頼む事もあるが、 大抵はバッツは特に気にした様子を見せずにキュルケの給仕も勤めてしまう。 この時ルイズがキュルケの存在に気づかなければ、特に問題なく食事を終えるのだが、 キュルケの存在に気がついた場合は、バッツを叱りつつキュルケに食ってかかり、ちょっとした騒動になる。 その騒動は、ルイズがキュルケに言い包められ、悔しがった後バッツにもうキュルケの給仕をしないように注意して終わる。 もっとも、バッツは頼まれると断れないため、この注意にあまり意味は無い。彼女達の食事が終わると、バッツは厨房へ行きマルトー達と共に食事をする。 バッツが朝食を食べる頃には、ルイズたちの授業が始まるため、バッツは食事の後、2時間目の授業が始まるまでは薪割りやシエスタの手伝いなどをして時間を潰す。 そして2時間目の授業からルイズの隣に座り一緒に授業を聞く。時々休み時間などに、自称キュルケの恋人がバッツに襲撃をかけるが、【とんずら】【煙玉】で逃げたり、 巧みに【隠れて】やり過ごしている。 なお、このときの光景を他の生徒達はバッツが逃げ切るか、相手の生徒達が追いつくか賭けをしていたが、 毎回バッツが逃げ切るため、賭けの内容が、追いかける生徒がいつ頃教室に戻るか? に変り、さらに最近ではバッツを捕まえた人に賞金が出るようになっている。 予断だがタバサとキュルケもこの賭けに参加しており、毎回バッツが逃げ切る方に賭けているらしい。 昼食や午後の授業も午前中とほぼ変わらない。そして一日の授業が終わるとバッツはルイズを部屋まで送った後、テントへ戻る。 テントに戻ると、まず学校での逃亡劇でチキンナイフの切れ味がどれくらい上がったか確認をする。 嫉妬に狂った暴徒から逃げるのはチキンと認識されにくいのか、切れ味の上がりはあまりよくない。切れ味の確認が終わると他の道具の手入れを行う。 体に馴染んだ竜騎士の能力を駆使し、購入した槍の柄を簡単には壊れないように補強し、刃を研ぐ。吟遊詩人の知識を駆使して竪琴の調律を、 吟遊詩人と風水師の知識を使いベルや鐘の調整をする。そして錆びたインテリジェンスソードのデルフリンガーは、 買い物をしたその日の夜に、バッツはデルフリンガーで【りょうてもち】をして【まほうけん ファイア】を試してみると、 デルフリンガーが「おでれーた」と驚きながらも、自分が魔法を吸収できることと、わざと錆びた姿になっていたことを思い出している。しかし、 肝心の錆びた姿から元の姿に戻る方法は思い出せなかった。 そのため、下手に手入れをして本来の姿に戻れないと困るのでデルフリンガーの手入れはしない。 「なぁ相棒。槍や楽器だけじゃなくて俺も手入れしてくれよぉー」 「取りあえずデルフは元の姿に戻ってからな。その代わり話し相手位はするからそれで我慢してくれ」 デルフとそんな感じで話をしながら楽器の手入れをし、それが終わる頃になると彼のテントに一匹の風竜、タバサの使いまであるシルフィードがやって来る。 そしてシルフィードはバッツに期待のまなざしを送る。 期待のまなざしを向けられたバッツは、苦笑しながら調律の終わった【ゆめのたてごと】を取り出すとゆっくりと奏でる。 彼の竪琴が鳴り始めるとシルフィードは竪琴にあわせるようにきゅいきゅいと歌う。その竪琴の音と歌に釣られるかのように1匹また1匹と使い魔達が夜の音楽会に加わってゆく。 使い魔たちは毎日ではないが、このようにバッツの奏でる音楽を聴いたり歌ったりするために来る。 この小さな音楽会は何曲か歌うと使い魔達が解散するので、その後デルフと少し会話をしてから寝るの彼の日課になっていた。 一方、部屋に戻ったルイズは、買ってきた本を読み、虚無の魔法を調べる。 しかし、ブリミルが魔法を使う様子などが描写された場面はあっても呪文について書かれているものはまれであった。 彼女は最初の内はその呪文を虚無をイメージしながら部屋で唱えていた。その呪文で何も起こらないこともあったが、通常の魔法と同じく爆発を起こし、 部屋が大惨事になることのほうが多かったため、今では部屋でそれらしい呪文をいくつか憶えると、こっそり中庭に出て試すのが日課になっていた。 しかし、この日は普段と違うことが起きる。 始まりはルイズがいつものように、中庭で調べた魔法が使えるか実験をしている時である。普段は自分の付近で爆発が起こっていたが、 気分転換に遠くをイメージしたのがいけなかったのか宝物庫のある塔の壁に爆発が起こり、壁にひびが入る。 ルイズは宝物庫の壁に爆発が起こったが塔の壁と軒距離が遠いこと、【ゼロ】の自分の失敗魔法で大切な物が保管されている宝物庫を傷つけられると思っていないので、 壁にひびが入ったことには気づかない。せいぜい 「爆音で誰か来るかもしれないから遠くをイメージするのはやめましょ」 程度の認識で、彼女はそのまま魔法の練習を再開しようとする。その時、先ほど爆発した塔の近くに巨大なゴーレムが現れた。 ドカーン ドカーン 現れたゴーレムは先ほど彼女の魔法が発動した辺りの壁を殴る。 ルイズは突然現れたゴーレムに唖然としていると、やがてゴーレムは宝物庫の壁を破壊してしまう。 「え? もしかして賊!」 宝物庫の壁が壊れる音で正気に戻ったルイズはゴーレムを凝視する。 すると、先ほどは気が動転していたため、気がつかなかったがゴーレムの肩に黒いローブを着たメイジの姿を発見する。 メイジはルイズが見ていることに気づいていないのか、ゴーレムが開けた穴から宝物庫へ入って行く。 「せ、先生を呼ばないと・・・・・・ でも今から呼びに言っても間に合わないわ。 わたしがなんとかしないと!」 ルイズは杖を握りなおすと、失敗魔法の爆発でゴーレムを倒そうと詠唱の短い呪文を唱え始める。 ルイズが魔法をかけるたびゴーレムの近くで小さな爆発が起こるが、巨大なゴーレムに対して爆発の大きさはあまりにも小さい。 ルイズの努力もむなしく宝物庫から筒状の物をもった黒ローブのメイジが再びゴーレムの肩に戻ると、ルイズの失敗魔法を気にもくれずに学園の外へと移動を始める。 「止まれー! ファイアーボール! ファイアーボール! ファイアーボール!」 ボン ボン ドカーン ルイズは立ち去ろうとするゴーレムに、一生懸命魔法をかけ足止めしようとゴーレムの足元に爆発を起こす。 しかし、ゴーレムはバランスを崩さない、たとえわずかにゴーレムの足にひびがが入っても、肩にいるメイジがすぐに直してしまい足止めすら出来ない。 泣きそうになりながらも、一生懸命に失敗魔法を使うルイズを嘲笑うかのようにゴーレムは学園の塀の近くまで来た時、事態は変化する。 学園側から大量の攻撃魔法が一斉にゴーレムに叩き付けられる。 『このトリステイン魔法学院に忍び込んだのが運の尽きだ! 土くれのフーケ!』 ルイズがゴーレムに使っていた失敗魔法の爆音が、学院で酒を飲んでいた教師達が何事かと顔を出し攻撃魔法を放ったのだ。 「くっ」 思わぬ乱入者に黒ローブのメイジは小さく舌打ちをすると、自分を塀の上に立つと巨大なゴーレムを教師達の方へ向かわせる。 『うわー』 教師達は酒で気が大きくなっていただけだったため、自分達の魔法を受けてもびくともしないゴーレムに逃げ惑う。 もしもこの時、教師達が酒を飲んでいなかったら彼等の魔法で賊のゴーレムは倒れていたかもしれない。しかし、彼等は酒を飲んでおり、 自分達が精神力が普段よりも弱い状態で使っていることにも気づかず、ただフーケが自分達の魔法が効かないほどの凄腕のメイジと誤認するだけであった。 「先生! でも、今があの賊を捉えるチャンス!」 ルイズはメイジが教師達に気を取られている隙にメイジが立っている塀を失敗魔法で爆破しようとする。 しかしメイジはそれを読んでた様で、巨大なゴーレムは怯える教師達を無視し、ルイズに向け宝物庫の壁を破壊した時に出来た瓦礫を投げる。 「え? きゃあ」 ドーン 呪文を唱えていたルイズの近くに瓦礫が落ち、その衝撃でルイズは杖を落としてしまう。ゴーレムはそのままルイズに向かい歩き出す。 一方教師達は恐怖で動けない。 ルイズはなんとか杖を拾い、ゴーレムに対し呪文を唱えようとするが、先ほどの瓦礫の恐怖で杖を持つ手は震え、うまく呪文も唱えられない。 「い、いや、こ、来ないで! せ、先生、ちい姉さま、お母様誰か助けて!」 ゆっくりと近づくゴーレムに、ルイズは恐怖で助けを求める声を上げる。 ヒュン ドゴン! スチャ 空から何かがゴーレムに落ちゴーレムの動きが止まる。そしてゴーレムに落ちた何かはゴーレムから跳び、ルイズの前に着地する。 「ルイズ、大丈夫か?」 空から来た何かは、槍を持ったバッツであった。 「へ? バッツ!? って何で高所恐怖症のあんたが空から来るのよ!?」 「いや、他の使い魔達と歌ってたら、学園の方に巨大なゴーレムが現れルイズの爆発が沢山見えたから、 何か危険なことになってると思ってな。シルフィードに無理言って乗せて貰って来たんだ。それに俺は高いところは苦手なだけで、緊急事態なら高いところだってガマンできるさ」 「あ、そうなの? って暢気に話している場合じゃないわよ! ゴーレムが!!」 ルイズがあわててゴーレムのほうを見る。ゴーレムの全身に大小様々なひびが入り今にも崩れそうになっている。そしてそのままゴーレムは崩れ落ち、辺りに砂煙が舞う。 「ごほごほごほっ え? 何でゴーレムが崩れるの?」 「ありゃ? 確かにまだ動きそうな気配があったよな?」 いきなり崩れたゴーレムに疑問を憶える二人だったが、砂煙が晴れるとルイズはゴーレムが崩れた理由に気づく。 「あ! 塀の上に居た賊がいない!」 「へ? 賊?」 「そうよ! さっきのゴーレムもその賊が作ったのよ。 バッツ、シルフィードから降りる時に何か見なかった?」 「いや、ゴーレムに向かって【ジャンプ】してたから塀の上は全く見てなかった」 その後、二人はゴーレムに襲われた恐怖と酒で混乱している教師達をなだめた後、教師達と共に学院長であるオスマンにこの事を伝えに行こうとする。 しかし、自分達の失態を隠す言い訳を考える時間が欲しい教師達は、既に夜も遅い事を理由に教師達に明日の朝一緒に報告すると言う。 そんな教師達の考えを知らないルイズ達は、言われたとおりにその日は寝ることにした。 そして次の日、生徒達が起きる時間よりも早く起きたルイズ達は、教師達と共に学院長室へ行く。 ルイズは昨晩のゴーレムが現れた時の様子と、黒いローブのメイジが筒状の道具を盗んでいた事を伝え、 教師達は自分達の失態を隠しながらも、その手口と巨大なゴーレムから犯人は土くれのフーケであると伝えた。 一応バッツもその場に居た一人として念のため、学院長室に呼ばれているが現場に到着したのが一番最後であるため、報告できる事は無かった。 一通り報告を聞いたオスマンは白いひげを撫でながら、 「ふむ、ミス・ヴァリエールの報告が確かならば土くれのフーケが盗んだのは、【破壊の杖】じゃな」 「破壊の杖?」 「うむ、このトリステイン魔法学院にたった一つしかないマジックアイテムじゃ。 これは宝物庫の中でも重要な物でのぉ。 なんとしても取り戻さなければならん!」 オスマンはいつもと違い真剣な表情でそう言った。 「しかし、これまでの報告では、手がかりが無さ過ぎるのも問題じゃのぉ。 所でミス・ロングビルは何処に行ったのかのぉ? あのお尻を撫でればわしの頭脳も活性化して良いアイデア浮かぶんじゃがのぉ~」 「オールド・オスマン幾らなんでもそれは・・・・・・」 「かーっ!! 女性のお尻に興味の無い男なんて居ないわ!」 男性教師達はオスマンの言葉にこっそり共感を覚え、女性教師達とルイズは冷たい視線をオスマンに向ける。 そんな微妙な空気の中、ロングビルがあわてて学院長室に入ってくる。 「おぉ、今日は遅刻かね、ミス・ロングビル? 遅刻の罰にその豊満な胸を・・・・・・」 バキ オスマンの行き成りのセクハラ発言にロングビルの拳がオスマンの顔面にめり込む。 「ご冗談を、実は先ほどまでフーケの調査をしておりました」 「調査を? 何時の間に?」 現場に居なかった教師の一人であるコルベールがロングビルに聞く。 「ええ、実は私もそこにいらっしゃる先生方と同じように昨日の襲撃を目撃したのです。 しかし土のラインである私が、土のトライアングルであろうフーケに対抗できません。 そこで皆様を囮にしてこっそりフーケの後を追い、見失った周辺で聞き込みをしてフーケの隠れ家を突き止めてきました」 「なんですと!? フーケの隠れ家を!!」 「ええ」 フーケの居場所がわかったことで、教師達が大きくざわめく。 「ではすぐに王室に報告を!」 「馬鹿モン! わざわざ王室に借りを作る必要があるか! ここはトリステイン魔法学院じゃ。身に掛かる火の粉くらい払えなければ何のためにここに居るのじゃ!? それに今から王室に報告したところで間に合わんわ! ・・・・・・コホン ではこれよりフーケ討伐隊を編成する。われは、と思う者は杖を掲げよ」 しかし教師陣は誰も杖を上げようとしない。それどころか昨晩実際にゴーレムに襲われた教師達は体を震わせ、 「何故我々がそんな危険な事を・・・・・・」「危険な仕事は王室に任せるべきだろ」と、怯える始末である。 「・・・誰もおらんのか? 貴族の誇りはどうした? フーケを捕まえ名が上げようという、勇敢な者はおらんのか?」 オスマンが発破をかけるが誰も杖を上げない。そんな中ルイズが杖を上げる。 「ミス・ヴァリエール! 何をしているんですか? 貴方は生徒ではありませんか! これは遊びではないのですよ! このような危険な任務、あなたが行く必要はありません!」 「誰も杖を上げないじゃないですか! 誰も行かずにみすみすフーケを見逃す事など、わたしには出来ません! わたしが心配ならシュヴルーズ先生も来て下さい」 「それは・・・」 ルイズは既に自分がフーケ討伐に行く事を決心し、教師達が止めようとしても「なら一緒に来てください」と答え、教師達は一人また一人とルイズの説得を諦めてゆく。 「あー、ちょっと聞いてもいいか?」 「ん? おぉ君は確かミス・ヴァリエールの使い魔の青年か、聞きたい事とは?」 「どうしてもフーケを捕まえないといけないといけないのか? 確かに学院から物を盗んだのだから捕まえられるなら捕まえた方がいいのだろうけど、 今の状況だとフーケを捕まえられそうにないと思うぞ?」 「貴様! 使い魔の分際で我々を愚弄する気か?」 「まぁ落ち着きなさい。では、君はフーケを見逃せというのかのぉ?」 「いや、フーケを捕まえるのは難しいから、盗まれた【破壊の杖】を取り戻すだけでもいいんじゃないか? と思うんだけどどうかな?」 「ふむ。 確かに【破壊の杖】が戻るなら無理をしてフーケを捕まえる必要は無いのぉ」 バッツの質問にオスマンは髭を撫でながら答える。 「なら、俺にも【破壊の杖】奪還の任を任せてくれないか?」 バッツはさらりと言い放つ。 「魔法をまともに使えないミス・ヴァリエールと平民だけでそんなことできるわけ無いだろ!」 「確かに俺は魔法は使えない。 けど色々な経験がある。 たとえばこの部屋そこの壁には隠「うむ! よかろう!!」とかな」 バッツが何か言いかけたが、オスマンがあわてて大きな声で許可を出す。 「オールド・オスマン? そこの壁が?」 「いや、何もない! 何もないのじゃ! わしが許可を出すのはこの青年は・・・・・・ えーと、そう! 学生とは言えトライアングルの生徒達からも逃げた実力があるからじゃ、うまくやれば【破壊の杖】の奪還のみなら可能かもしれんからのぉ。 まだ文句があるなら文句のあるものに行ってもらう」 不振がる教師達にオスマンはやや目をそらしながらそう答える。教師達はオスマンの言葉、特に後半の一言で一斉に静まる。 「では、改めてフーケの居場所を知るミス・ロングビル、ミス・ヴァリエールとその使い魔の三人に【破壊の杖】奪還の任を与える。 後、奪還に必要なものでこちらで用意できるものがあるのなら用意しよう」 『ハッ』 三人は元気よく返事をすると【破壊の杖】を奪還するため、学院から馬を三頭借り出発した。 前ページ次ページ無から来た使い魔
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もし全世界からお菓子が消えてしまった場合、僕達はどうなってしまうのか。 そんなことを考えるのは象がタマゴから生まれた場合の殻の厚さを考察する行為に似て無意味なもので、僕達はもっと他の、先に繋がっていくようなことに頭を使っていくべきなのです。 しかし、それが実際に起きてしまえばそうも言ってられません。 つまり現在、僕達の大切なお菓子がその姿をくらましてしまっているのです。もっともこれは世界規模の話ではなく、極小規模な僕の周囲でのみ発生しているだけなのですが。 話を戻すと、僕個人としては通常お菓子が消え去ろうとも特に支障はありません。元々甘いものに頓着はありませんし、それが誰かに食べられてしまったからといって声を荒げたりなんかも僕はしない。 ですが、今だけは非常に困るんです。 何故ならば、今日はハロウィンなのですから。 そして僕は現在、お菓子を何処かへ持ち去ってしまった犯人を一人で追い詰めているという実にカッコイイ場面を迎えています。そして、その犯人とは…………。 「どうやら……もう嘘は通りそうにないみたいだな。どこから俺があやしいと睨んでいたんだ?」 「簡単ですよ。お菓子がなくなってしまっては、僕達のハロウィンは成立しません。なのにあなた一人だけはずっと、早くパーティを始めようと訴えていました。みんながお菓子を探しているのはそのためだというのにね。いえ……むしろあなたは、お菓子がない状態でパーティを始めようとしているかのようだった。目的はわかりませんが、そもそもこの状況を作ったのはあなた自身なのではないかと僕は思ったのですよ」 「さすがだな古泉。そう、俺がお菓子を隠した犯人だ!」 「……あなただけは暴走などしないと思っていましたよ。なぜ、こんなことをしたんです?」 「ふ。決まってるだろ? 今日は待ちに待った楽しいハロウィンじゃないか」 「その答えは理解しかねますが。そう、今日は楽しいハロウィンになるはずだった。なぜ、あなたはお菓子を奪うようなことをしたのかと聞いているんです」 「馬鹿だな古泉。少し考えればわかるじゃないか」 「お菓子がなかったら、おっぱいが揉めるじゃねえか!」 古泉「……って、なんというバタフライ理論を持ち出すんですか! 雰囲気台無しですよ!」 キョン「ヒャッハハー! お前は実に馬鹿だな古泉!」 キョン「これはミステリーでもサスペンスでもない! 元々俺がおっぱいを揉むためのSSなんだよ!」 古泉「だから意味が分かりませんって! なんであなたがおっぱいを揉むんですか!」 キョン「簡単なことさ。トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃいたずらされる日に、いたずらの免罪符となるお菓子がなかったらどうだ? いたずらし放題だろうが!」 キョン「俺にとってのトリックとはたわわに実った乳を揉むこと! もみもみだ! そしてトリックアンドトリック! それすなわちもみもみもみもみだ!」 古泉「ば、馬鹿な! あなたがお菓子を隠してしまったことによってこっちがどれほどの被害を受けるとおもっているんですか!?」 古泉「子供達はお菓子がもらえずに、別にやりたくもないイタズラを不満顔でやらなければならない! そしてイタズラされる側は只でさえ理不尽な要求を受けているのにも関わらず、対して面白くなさそうに部屋を散らかす子供の姿を見ていなければならないのです! 誰も幸せになんかなりませんよ!」 キョン「うるさい! やっぱりお前はわかってないな! 今はこの周囲だけしかお菓子は消えちゃいないが、全世界のお菓子が消失するのも時間の問題だ!」 古泉「なんてことだ……」 国木田「どうしたのキョン! 古泉くんも!?」 長門「…………」 古泉「ああ! 国木田くんと長門さんじゃないですか! いいところに来てくれました!」 古泉「お菓子を隠した犯人が分かりましたよ! それは、なんだか良い感じにトリップしてしまっているあの彼がやったことのようです!」 国木田「なんだって!? どうしてそんなことをしたのさキョン!」 キョン「国木田。お前、おっぱい揉みたいと思わないか?」 国木田「な……なにを言ってるんだい!? そんな……キョンが、キョンが! なんだか面白い状態になってるよ!?」 古泉「そうですよ! それに一つだけ言わせてください……」 古泉「そんなにおっぱいが好きなら、一人でピンクな店に行けばいいじゃない!」 キョン「……古泉。お前は子供だな。まるでわかっちゃいない」 キョン「ハロウィンこそ、えっちぃことをするのに適した日なんだよ!」 古泉「また出た! トンデモ理論! さっきから全然意味分かりませんって!」 キョン「ほう。意味がわからないと。全然? まるっきり? じゃあそんなおバカボンなお前に教えてやろう」 キョン「大人のお店でそういった行為をするのは、お化け屋敷にお化けが出るくらい当たり前なことだ! そんなのはつまらないんだよ!」 キョン「考えてもみるんだ。お前がお化け屋敷に入ったとき、そこにお化けがいてもなんのことはないだろう?」 キョン「だが、そこに現れる血まみれのナース役のお姉さんのおっぱいを揉んでいる人がいたらどうだ? お前は沸き出る興奮を禁じえないだろう? もし、大人のお店にお化けが出たりなんかしてみろ! めちゃめちゃ怖いじゃねえか!」 キョン「つまりだ! お乳様というものは、ハロウィンの無礼講でいたずらっぽく拝ませてもらったほうが絶対に良いものなんだよ!」 キョン「そして男はみんな変態だ。いずれ世界中のお菓子がなくなり俺の思想が世界に広まったとき、そこにはパラダイスがまっているに違いないだろう! ふはは! これぞまさに桃源郷! これを楽園といわずしてなんと言う!?」 古泉「狂ってる……」 古泉「いい加減にしてください! そんなものは狂ってる! あなたは、ただのセクハラを妙な理屈で正当化したいだけじゃないですか!」 国木田「そうだよキョン! キミは間違ってる! 男がみんな変態なんて偏見だ!」 古泉「そうです国木田くん! もっとあのチチグルイに罵声を浴びせるんです! 旧友のあなたの言葉なら僕よりも効果があるはずだ! ほら、早く早く!」 国木田「キョン。男はみんな変態じゃない。それは分かって欲しい。でもね……」 国木田「少なくとも僕は変☆態だよ! だからキミには大いに同調するよ! キミの理論は正しい!」 国木田「キョン万歳! キョン万歳!」 古泉「ぎゃふん!? なにを喜んでるんですか!? 信じていたのに!」 国木田「この世におっぱいに勝るものなし!」 古泉「それがあんたらの組合の標語だというんですか!?」 キョン「ふふふ」 キョン「んん? どうした古泉? もう他に何もいうことはないのか?」 国木田「ほらキョン! あのイケメンに、社会では多数派が正義なんだってことを教えてあげてよ!」 キョン「くっ国木田!?」 古泉「ええい、しかしまだこちらにだって仲間はいます!」 キョン「ほう。一応聞くが、それは誰なんだ?」 古泉「決まっています! 長門さん! いまこそ彼を…………鹿に! 鹿に変えるときです!」 古泉「そして国木田くんを馬に変えて、二人の生涯をしょーもないダジャレコンビとして終えさせるときなのです! ささ、遠慮せずに! ひと思いにちょろろーんとやっちゃってください!」 長門「……それは出来ない」 古泉「な……ナンダッテ-!!」 キョン「はっははー! 当たり前だ古泉!」 キョン「なんせお菓子を消している実行犯は、この長門なんだからな!」 古泉「な……まさかっ! 長門さん……何故っ! なぜなんです!?」 長門「……あたしは楽園で、彼としあわせになるから」 古泉「100パーセント騙されきってるじゃないですか!?」 古泉「正気に戻って下さい! それはマジなほうの天国にいたる道ですよ!」 古泉「しかし……これはまずいことになりました」 古泉「このままでは、みんなのハロウィンが台無しになってしまいます」 古泉「どうすれば……?」 国木田「古泉くん……」 国木田「いっそのこと快楽に飲まれちゃいなよ」 古泉「あんたが一番危ないんじゃないか!?」 古泉「だがしかし……おかげで閃きましたよ。あなたたちに勝つ方法が!」 キョン「ふん、強がりもたいがいにしろ古泉。お前はガチホモだから俺達に逆らうのかも知れんが……」 キョン「って、まさか!? お前世界中のガチホモを一挙に集めて俺達を粉砕するつもりか!? ……やめろ! それだけはやめてくれ!」 古泉「ふふ。あなたのアナルが悲鳴をあげるのもそろそろです……」 古泉「って、だいたい僕はガチホモじゃありませんよ! そんなけったいなネットワークもありません!」 古泉「……あなたはパンドラを招き入れた。それによって、あなたは自ら崩壊を迎えるのです」 キョン「……なんのことだ?」 古泉「災厄の詰まった箱を持たされたゼウスの使者パンドラを招き入れたのは、エピメウスという人物なのです。エピローグという言葉があるように、彼は、物事を後で考える人でした」 古泉「彼は兄であるプロメテウスからゼウスの贈り物には手を出すなといわれていたのですが、始めて見る女性という存在、パンドラの誘惑に勝てずに彼女を家へと招き入れてしまいました」 古泉「そう! エピメテウスは『おっぱいスゲェ』と思ってしまったがゆえにパンドラを迎え入れ、それゆえに世界には災いが舞い降りてしまったのです! あなたがおっぱいを好きだと言うことは、男の罪の象徴だ! それの魅力に取り付かれてしまったあなたを待っているのは、女性による制裁です!」 キョン「……なにを言い出すのかと思ったら、なんの具体性もない詭弁じゃねえか。ところで、俺に制裁を下す女性とやらは何処にいるってんだ?」 古泉「それは長門さんです」 キョン「…………」 キョン「長門が? 俺に? 制裁?」 キョン「はっ! 何を言い出すかと思ったらこの反乳野郎! それこそありえないだろうが!!」 キョン「俺は長門と楽園で暮らすんだ! そうだよな長門!?」 長門「……悪いこととは知っている。でも、彼がそう言ってくれるのなら……」 古泉「長門さん! 今こそ目を覚ますときなのです! あなたは……彼の楽園には居られないんだ!」 長門「……!? 何故!?」 古泉「だって長門さんには……揉むものがないのだから!」 長門「!!!!?????」 古泉「パンドラは確かにこの世に災いをもたらした」 古泉「だけど僕らは、その災いを乗り越えることで世界の表と裏を知り、普通でいることの幸せに気づいたのです」 古泉「だから決しておっぱい自体に罪はない。長門さんのように笑うほど小さくても、あの未来人のようにひくほど大きくても良いんです。僕は好きです」 古泉「だがあなたは長門さんを利用し、『あんたのやっていることはセクハラだ』という僕の正論にまったく耳を貸さなかった。 ……乳に溺れてしまったあなたは、乳の中で静かに眠っているべきなのですよ」 キョン「お……俺はなんてことを……」 キョン「しちまったんだ……ガクッ」 国木田「……ああ! キョンの体が消えていく!? キョンは一体どこにいくの!?」 長門「……彼は、自分のいるべき場所気づいただけ」 古泉「ええ。彼はプリンスレに還っていったのです。本来、アナルでの彼は僕に掘られるだけの存在。ですが、ハロウィンという日が彼を変えてしまった。そう。軽犯罪者という悪魔にね」 古泉「…………」 長門「…………」 国木田「…………」 古泉「……テンションだけで動いていたら、とんでもない結果になってしまいましたね」 国木田「なんだか、僕はハロウィンの恐ろしさを垣間見た気がするよ」 長門「……これはgdgdになる前に終わらせるべき」 古泉「みんなも、ハロウィンだからっていたずらは程々にしようね!」 ちゃんちゃん☆
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前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~ 初日 さて、私は遂に念願の使い魔を召喚したわけですが、 「こんな小さいゴーレムなんてハズレよね~~」 私が召喚したゴーレムは丸いボディに4本の折りたたみ収納式の足。 見た目はちょっとカワイイが、役に立つかどうかは疑問なゴーレムだった。 しかもコイツときたら立派なヒゲ、の落書きまでしてあったりする。あきらかに誰かの所有物だ。 なんでもここに来る前は保育園の子供たちの世話をしていたらしい。名前はグランパ。 見た目はカワイイので適役だろう。 とりあえず洗濯を命じて、床で寝させた。 次の日 授業に出て部屋に帰ってきたらベッドが2つになっていた。 なんでもゴーレムが一晩で作ったそうだ。器用な奴だ。 よっぽど床で寝ろといったのが気に入らなかったらしい。 ゴーレムなのに飲み食いもするし眠気も覚えるし、トイレにも行く。 コイツは一体なんなんだろう? ちなみにベッドは私のベッドよりもふかふかで寝心地が良かった。なんかムカツク。 でも、なんだかスイッチとかボタンとかいうでっぱりが多く、不審な感じだった。 押し込んだら光ながらぐるぐる回った。ナニコレ。 次の日 部屋に戻ると壊れていた椅子が新品に直っていた。 ただ、座るとなぜか90度回転して机に向かわせる機能は必要ないと思う。この辺無駄に器用だ。 でもまあ、なかなかやるじゃないと褒めたらなぜか『おちゃ』というのをくれた。 東方の茶葉で貴重品のはずだが、どうやってもってきたんだろう? 次の日 私の窓の所にひさし状の屋根がついた。 しかもただの屋根じゃなく、金属製で鏡張りのぎらぎらしたヤツだ。 作って取り付けたのはもちろん丸いアイツ。 なんでもこれでグランパの稼動に必要なエネルギーが得られるらしい。 太陽光発電というらしい。よくわからない。 次の日 水汲み場付近に変なオブジェクトが建設された。 なんでも『こいんらんどり~』というものらしい。かなり器用な奴だ。 金貨を入れてスイッチを押して蓋を閉めると勝手に洗濯し、乾燥までしてくれるらしい。 しかし、カゴ一つの洗濯物を洗うのに、風呂ぐらいの水を使うのは経済的じゃないと思う。 洗濯に金貨一枚というのも暴利だと思う。 やはり私のゴーレムはどこか抜けている。 ありがたがって使ってたのは男やもめ40歳のコルベール先生だけだった。 ありゃ勝手に洗濯してくれる箱が珍しいだけだよね。 洗濯物をかき集めては入れるを繰り返してる。 ナニがそんなに楽しいのか。 おや? ポ~~~ン コルベールが水汲み場で倒れました。 次の日 私の部屋にまた変な箱ができていた。 スイッチを押すと勝手に『こーひー』というものが出てくるらしい。 まためずらしいものだ。これもまたお茶と同じく遠い土地でしか取れないものではなかったか? 早速飲んでみる。入れたては熱い。これも驚きだ。いただきます。 うげっ 苦い。ダメです。超甘党ではしばみ嫌いの私には飲めません。 普通は砂糖とミルクで味付けするらしい。貴重品なので手に入らなかったそうだ。 グランパはなぜかうれしそうにして真っ黒なこーひーを飲んでいた。 これって私のためじゃなくて、アンタが飲みたくて作ったんじゃないの? ある日 ふと気づくとゴーレムが2体に増えていた。 どうやって増えたのかを問い詰める。 平民の職人みたいに材料を加工して、切ったり繋げたり縫ったりして作り上げたそうだ。 メイジが杖を振ってちょいちょいで5秒で出来ることに1日かけたそうだ。無駄なことをしている。 こいんらんどり~の金額が金貨じゃなく銅貨1枚になっていた。 1週間後 ゴーレムの数はネズミ算式に増えてもう100体を越えていた。 え~~~~?ナニよソレは? 倍々ゲームで増えて言ってるわけ? 1日で倍に増えるとして、2の7乗だから128…………… この調子で増えると1月後には億とか兆の数になってる? まさかね。 次の日 皆さんお待ちかねぇ~~~ 今日の対戦相手はギーシュ・ド・グラモン。 拾われた香水の件で決闘を開いてくれました。 「僕はメイジなので魔法でお相手しよう」 「我々はBALLSなので物量でお相手しよう」 7対200というイジメみたいな状況が始まった。 この時点で物量差がおかしすぎるとか言わない時点で、ギーシュは軍人として大成できないだろうなと『こーらー』を飲みながら思った。 いくらメイジでも200のゴーレムは相手にしたらダメだった。なんせギーシュもゴーレム使いだったしね。戦争は数だよ兄貴。 女性型ゴーレムのワルキューレに30近いゴーレムがまとわりついて、浴びせ倒しを見舞うのは凌辱的光景だった。 ギーシュは50近いゴーレムにぐるりと囲まれて生きた心地がしないようだった。 決闘後、なぜかグランパがメイドと仲良くなっていた。一緒に部屋に行ってナニをしていたんだろう? 次の日 ゴーレムがハズレじゃなかったので調子に乗ってたら、錬金の失敗で教室を大破させてしまった。 ポ~~~ン シュヴルーズが教室で倒れました。 それはもういいって 罰として、ゴーレムと総出で直した。 が、 「ミスヴァリエール、私は片付けろとは言いましたが、リフォームしろとまでは言わなかったはずです」 ゴミ捨てに目を放していた隙に、なんだか教室がビバ!近未来な感じにリフォームされてました。 なんか金属質な床、勝手に開いたり閉まったりするドア、 ランプもないのに光ってる照明、色んな風景を映し出してるガラス板。 机は木からなにかの樹脂を固めたものになり、机の下の引き出しを引き出すと文字盤が並んでいる。 「すごいよこの教室!机に教科書乗せると、内容がガラス板に映し出されるYO!!」 コルベール先生は今にも脱糞しそうなぐらいのはしゃぎっぷりだ。自重しろ40歳。 机の上の文字盤を押すと色々なものが表示されるようだ。 あ、この机でババ抜きと七並べができるのか。 他にはせーれーきどーだんとかおれのしかばねをこえていけとかわけのわからない遊び道具が入っているらしい。 今頃気づいたんだけど、器用の域を超えてるよね。 ただ、私が実技をしようとすると自動で出てくる防火シャッターと金属防御壁、緊急サイレンはムカついた。 対火対爆使用なんだそうだ。 もろともに吹っ飛ばされたのがそんなにイヤだったか。 ポ~~ン コルベールが教室で倒れました。 1月後 ゴーレムはとりあえず100万までで自重したらしい。 学園内にきっちり101体置き、残りはどこかに旅立っていった。どこいったんだろ。 なお、他のメイジがゴーレムに頼みごとをすると、たいていは聞いてくれているらしい。 ただ、ふつうに使用人に頼んだ方が効率も確実性も高いのが玉に瑕だそうだ。 料理はこげてたり半生だったりしてかろうじて食べられるレベルだった。 あと話しかけるとやっぱりたまにお茶をくれる。なんで? ある日 破壊の杖が盗まれた! とりあえず教師たちが見回りのサボりの件で責任を押し付けあってると、ゴーレムたちが盗まれたはずの破壊の杖を持ってきた。 「これは……いや、形は似ているが、新しすぎる。ニセモノじゃな」 カチ ど~~ん ゴーレムは学園長室の窓から破壊の杖を作動させた。庭にどでかいクレーターができた。 みんな唖然。私も唖然。学園長入れ歯吹き唖然。 私の失敗魔法の数十倍の規模の爆発は、破壊の杖が本物だということを証明した。 なんでもこのゴーレムたちは盗まれてから4時間で破壊の杖そのものを作ってしまったらしい。 作り直せば事態は解決するもんでもないと思うがそこはそれ、メンツは守れるか? どうも破壊の杖がなくなって困った困ったと言ってるのが、ゴーレムたちの奉仕精神を刺激したらしい。 元々短い時間で安く大量生産できるように簡単なつくりをしていた武器だそうなので、ゴーレムたちには楽に作れたらしい。 楽に伝説の杖を作ってしまう辺り、おかしいぐらい器用だと思う。 その後、馬で片道4時間かかる距離を4時間で往復して、ついでに聞き込みまでしてきたと言ったミス・ロングビルがお縄になっていた。 みんな落ち着いて考えたらおかしいな~~と思うよね~~。 まあ実はゴーレムがフーケが盗むところを見ていて、その記憶を『てれびじょん』に映してたら、ゴーレム動かしてたのがロングビルだとばれた訳ですが。 そんなタイミングでフーケを見つけたと駆け込んできたロングビルは間が悪い。 ゴーレムは学園内だけで百いるからどこかに必ず1体はいるもんね。教師の見回りはやっぱり必要ないみたいだ ポ~~ン ロングビルが学園からいなくなりました。 前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~