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∥ソロモン72姫 ルーシー マイケルを上手い具合に言い包めて何時もカモッてる賭場の経営者。 マイケルをカモッた分の金はと言うとアラ不思議 他の客がごっそり持っていってしまうので何時も利益は雀の涙である ルーシーの物凄いプライドの高さが単純にギャンブルに向いてないだけなのだが 指摘すると余計にお金を吐き出してくれるので利用者は後を絶たない 実はなんか凄いエライ悪魔らしいのだが方々に作った借金の所為で 他の悪魔に大きい顔ができなくなってしまった 因みにマイケルにセクハラされて唯一手を出さなかった実績がある (代わりに肘と膝とドロップキックが出た) 時代が時代ならモク吹かして朝からパチ台の前に居座っているであろう事請け合いなヒトだが なんだかんだで面倒見は良く、甥のメフィ?を目に掛けてたり72姫の恋の相談なんかにも乗ったりする (070216a初出) ∥関連事項 甥⇒メフィ? ⇒マイケル ⇒ソロモン72姫
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前ページ次ページ無から来た使い魔 ルイズ達が町で買い物をしてから数週間がたった。 朝、バッツはいつもの日課として生徒達が起きてくる前にテントから出るとルイズを起こしに行く。そしてルイズをノックで起こした後、 二人で食堂に行き彼は彼女の給仕を務める。ルイズの給仕をする時に時々キュルケが彼に給仕を頼む事もあるが、 大抵はバッツは特に気にした様子を見せずにキュルケの給仕も勤めてしまう。 この時ルイズがキュルケの存在に気づかなければ、特に問題なく食事を終えるのだが、 キュルケの存在に気がついた場合は、バッツを叱りつつキュルケに食ってかかり、ちょっとした騒動になる。 その騒動は、ルイズがキュルケに言い包められ、悔しがった後バッツにもうキュルケの給仕をしないように注意して終わる。 もっとも、バッツは頼まれると断れないため、この注意にあまり意味は無い。彼女達の食事が終わると、バッツは厨房へ行きマルトー達と共に食事をする。 バッツが朝食を食べる頃には、ルイズたちの授業が始まるため、バッツは食事の後、2時間目の授業が始まるまでは薪割りやシエスタの手伝いなどをして時間を潰す。 そして2時間目の授業からルイズの隣に座り一緒に授業を聞く。時々休み時間などに、自称キュルケの恋人がバッツに襲撃をかけるが、【とんずら】【煙玉】で逃げたり、 巧みに【隠れて】やり過ごしている。 なお、このときの光景を他の生徒達はバッツが逃げ切るか、相手の生徒達が追いつくか賭けをしていたが、 毎回バッツが逃げ切るため、賭けの内容が、追いかける生徒がいつ頃教室に戻るか? に変り、さらに最近ではバッツを捕まえた人に賞金が出るようになっている。 予断だがタバサとキュルケもこの賭けに参加しており、毎回バッツが逃げ切る方に賭けているらしい。 昼食や午後の授業も午前中とほぼ変わらない。そして一日の授業が終わるとバッツはルイズを部屋まで送った後、テントへ戻る。 テントに戻ると、まず学校での逃亡劇でチキンナイフの切れ味がどれくらい上がったか確認をする。 嫉妬に狂った暴徒から逃げるのはチキンと認識されにくいのか、切れ味の上がりはあまりよくない。切れ味の確認が終わると他の道具の手入れを行う。 体に馴染んだ竜騎士の能力を駆使し、購入した槍の柄を簡単には壊れないように補強し、刃を研ぐ。吟遊詩人の知識を駆使して竪琴の調律を、 吟遊詩人と風水師の知識を使いベルや鐘の調整をする。そして錆びたインテリジェンスソードのデルフリンガーは、 買い物をしたその日の夜に、バッツはデルフリンガーで【りょうてもち】をして【まほうけん ファイア】を試してみると、 デルフリンガーが「おでれーた」と驚きながらも、自分が魔法を吸収できることと、わざと錆びた姿になっていたことを思い出している。しかし、 肝心の錆びた姿から元の姿に戻る方法は思い出せなかった。 そのため、下手に手入れをして本来の姿に戻れないと困るのでデルフリンガーの手入れはしない。 「なぁ相棒。槍や楽器だけじゃなくて俺も手入れしてくれよぉー」 「取りあえずデルフは元の姿に戻ってからな。その代わり話し相手位はするからそれで我慢してくれ」 デルフとそんな感じで話をしながら楽器の手入れをし、それが終わる頃になると彼のテントに一匹の風竜、タバサの使いまであるシルフィードがやって来る。 そしてシルフィードはバッツに期待のまなざしを送る。 期待のまなざしを向けられたバッツは、苦笑しながら調律の終わった【ゆめのたてごと】を取り出すとゆっくりと奏でる。 彼の竪琴が鳴り始めるとシルフィードは竪琴にあわせるようにきゅいきゅいと歌う。その竪琴の音と歌に釣られるかのように1匹また1匹と使い魔達が夜の音楽会に加わってゆく。 使い魔たちは毎日ではないが、このようにバッツの奏でる音楽を聴いたり歌ったりするために来る。 この小さな音楽会は何曲か歌うと使い魔達が解散するので、その後デルフと少し会話をしてから寝るの彼の日課になっていた。 一方、部屋に戻ったルイズは、買ってきた本を読み、虚無の魔法を調べる。 しかし、ブリミルが魔法を使う様子などが描写された場面はあっても呪文について書かれているものはまれであった。 彼女は最初の内はその呪文を虚無をイメージしながら部屋で唱えていた。その呪文で何も起こらないこともあったが、通常の魔法と同じく爆発を起こし、 部屋が大惨事になることのほうが多かったため、今では部屋でそれらしい呪文をいくつか憶えると、こっそり中庭に出て試すのが日課になっていた。 しかし、この日は普段と違うことが起きる。 始まりはルイズがいつものように、中庭で調べた魔法が使えるか実験をしている時である。普段は自分の付近で爆発が起こっていたが、 気分転換に遠くをイメージしたのがいけなかったのか宝物庫のある塔の壁に爆発が起こり、壁にひびが入る。 ルイズは宝物庫の壁に爆発が起こったが塔の壁と軒距離が遠いこと、【ゼロ】の自分の失敗魔法で大切な物が保管されている宝物庫を傷つけられると思っていないので、 壁にひびが入ったことには気づかない。せいぜい 「爆音で誰か来るかもしれないから遠くをイメージするのはやめましょ」 程度の認識で、彼女はそのまま魔法の練習を再開しようとする。その時、先ほど爆発した塔の近くに巨大なゴーレムが現れた。 ドカーン ドカーン 現れたゴーレムは先ほど彼女の魔法が発動した辺りの壁を殴る。 ルイズは突然現れたゴーレムに唖然としていると、やがてゴーレムは宝物庫の壁を破壊してしまう。 「え? もしかして賊!」 宝物庫の壁が壊れる音で正気に戻ったルイズはゴーレムを凝視する。 すると、先ほどは気が動転していたため、気がつかなかったがゴーレムの肩に黒いローブを着たメイジの姿を発見する。 メイジはルイズが見ていることに気づいていないのか、ゴーレムが開けた穴から宝物庫へ入って行く。 「せ、先生を呼ばないと・・・・・・ でも今から呼びに言っても間に合わないわ。 わたしがなんとかしないと!」 ルイズは杖を握りなおすと、失敗魔法の爆発でゴーレムを倒そうと詠唱の短い呪文を唱え始める。 ルイズが魔法をかけるたびゴーレムの近くで小さな爆発が起こるが、巨大なゴーレムに対して爆発の大きさはあまりにも小さい。 ルイズの努力もむなしく宝物庫から筒状の物をもった黒ローブのメイジが再びゴーレムの肩に戻ると、ルイズの失敗魔法を気にもくれずに学園の外へと移動を始める。 「止まれー! ファイアーボール! ファイアーボール! ファイアーボール!」 ボン ボン ドカーン ルイズは立ち去ろうとするゴーレムに、一生懸命魔法をかけ足止めしようとゴーレムの足元に爆発を起こす。 しかし、ゴーレムはバランスを崩さない、たとえわずかにゴーレムの足にひびがが入っても、肩にいるメイジがすぐに直してしまい足止めすら出来ない。 泣きそうになりながらも、一生懸命に失敗魔法を使うルイズを嘲笑うかのようにゴーレムは学園の塀の近くまで来た時、事態は変化する。 学園側から大量の攻撃魔法が一斉にゴーレムに叩き付けられる。 『このトリステイン魔法学院に忍び込んだのが運の尽きだ! 土くれのフーケ!』 ルイズがゴーレムに使っていた失敗魔法の爆音が、学院で酒を飲んでいた教師達が何事かと顔を出し攻撃魔法を放ったのだ。 「くっ」 思わぬ乱入者に黒ローブのメイジは小さく舌打ちをすると、自分を塀の上に立つと巨大なゴーレムを教師達の方へ向かわせる。 『うわー』 教師達は酒で気が大きくなっていただけだったため、自分達の魔法を受けてもびくともしないゴーレムに逃げ惑う。 もしもこの時、教師達が酒を飲んでいなかったら彼等の魔法で賊のゴーレムは倒れていたかもしれない。しかし、彼等は酒を飲んでおり、 自分達が精神力が普段よりも弱い状態で使っていることにも気づかず、ただフーケが自分達の魔法が効かないほどの凄腕のメイジと誤認するだけであった。 「先生! でも、今があの賊を捉えるチャンス!」 ルイズはメイジが教師達に気を取られている隙にメイジが立っている塀を失敗魔法で爆破しようとする。 しかしメイジはそれを読んでた様で、巨大なゴーレムは怯える教師達を無視し、ルイズに向け宝物庫の壁を破壊した時に出来た瓦礫を投げる。 「え? きゃあ」 ドーン 呪文を唱えていたルイズの近くに瓦礫が落ち、その衝撃でルイズは杖を落としてしまう。ゴーレムはそのままルイズに向かい歩き出す。 一方教師達は恐怖で動けない。 ルイズはなんとか杖を拾い、ゴーレムに対し呪文を唱えようとするが、先ほどの瓦礫の恐怖で杖を持つ手は震え、うまく呪文も唱えられない。 「い、いや、こ、来ないで! せ、先生、ちい姉さま、お母様誰か助けて!」 ゆっくりと近づくゴーレムに、ルイズは恐怖で助けを求める声を上げる。 ヒュン ドゴン! スチャ 空から何かがゴーレムに落ちゴーレムの動きが止まる。そしてゴーレムに落ちた何かはゴーレムから跳び、ルイズの前に着地する。 「ルイズ、大丈夫か?」 空から来た何かは、槍を持ったバッツであった。 「へ? バッツ!? って何で高所恐怖症のあんたが空から来るのよ!?」 「いや、他の使い魔達と歌ってたら、学園の方に巨大なゴーレムが現れルイズの爆発が沢山見えたから、 何か危険なことになってると思ってな。シルフィードに無理言って乗せて貰って来たんだ。それに俺は高いところは苦手なだけで、緊急事態なら高いところだってガマンできるさ」 「あ、そうなの? って暢気に話している場合じゃないわよ! ゴーレムが!!」 ルイズがあわててゴーレムのほうを見る。ゴーレムの全身に大小様々なひびが入り今にも崩れそうになっている。そしてそのままゴーレムは崩れ落ち、辺りに砂煙が舞う。 「ごほごほごほっ え? 何でゴーレムが崩れるの?」 「ありゃ? 確かにまだ動きそうな気配があったよな?」 いきなり崩れたゴーレムに疑問を憶える二人だったが、砂煙が晴れるとルイズはゴーレムが崩れた理由に気づく。 「あ! 塀の上に居た賊がいない!」 「へ? 賊?」 「そうよ! さっきのゴーレムもその賊が作ったのよ。 バッツ、シルフィードから降りる時に何か見なかった?」 「いや、ゴーレムに向かって【ジャンプ】してたから塀の上は全く見てなかった」 その後、二人はゴーレムに襲われた恐怖と酒で混乱している教師達をなだめた後、教師達と共に学院長であるオスマンにこの事を伝えに行こうとする。 しかし、自分達の失態を隠す言い訳を考える時間が欲しい教師達は、既に夜も遅い事を理由に教師達に明日の朝一緒に報告すると言う。 そんな教師達の考えを知らないルイズ達は、言われたとおりにその日は寝ることにした。 そして次の日、生徒達が起きる時間よりも早く起きたルイズ達は、教師達と共に学院長室へ行く。 ルイズは昨晩のゴーレムが現れた時の様子と、黒いローブのメイジが筒状の道具を盗んでいた事を伝え、 教師達は自分達の失態を隠しながらも、その手口と巨大なゴーレムから犯人は土くれのフーケであると伝えた。 一応バッツもその場に居た一人として念のため、学院長室に呼ばれているが現場に到着したのが一番最後であるため、報告できる事は無かった。 一通り報告を聞いたオスマンは白いひげを撫でながら、 「ふむ、ミス・ヴァリエールの報告が確かならば土くれのフーケが盗んだのは、【破壊の杖】じゃな」 「破壊の杖?」 「うむ、このトリステイン魔法学院にたった一つしかないマジックアイテムじゃ。 これは宝物庫の中でも重要な物でのぉ。 なんとしても取り戻さなければならん!」 オスマンはいつもと違い真剣な表情でそう言った。 「しかし、これまでの報告では、手がかりが無さ過ぎるのも問題じゃのぉ。 所でミス・ロングビルは何処に行ったのかのぉ? あのお尻を撫でればわしの頭脳も活性化して良いアイデア浮かぶんじゃがのぉ~」 「オールド・オスマン幾らなんでもそれは・・・・・・」 「かーっ!! 女性のお尻に興味の無い男なんて居ないわ!」 男性教師達はオスマンの言葉にこっそり共感を覚え、女性教師達とルイズは冷たい視線をオスマンに向ける。 そんな微妙な空気の中、ロングビルがあわてて学院長室に入ってくる。 「おぉ、今日は遅刻かね、ミス・ロングビル? 遅刻の罰にその豊満な胸を・・・・・・」 バキ オスマンの行き成りのセクハラ発言にロングビルの拳がオスマンの顔面にめり込む。 「ご冗談を、実は先ほどまでフーケの調査をしておりました」 「調査を? 何時の間に?」 現場に居なかった教師の一人であるコルベールがロングビルに聞く。 「ええ、実は私もそこにいらっしゃる先生方と同じように昨日の襲撃を目撃したのです。 しかし土のラインである私が、土のトライアングルであろうフーケに対抗できません。 そこで皆様を囮にしてこっそりフーケの後を追い、見失った周辺で聞き込みをしてフーケの隠れ家を突き止めてきました」 「なんですと!? フーケの隠れ家を!!」 「ええ」 フーケの居場所がわかったことで、教師達が大きくざわめく。 「ではすぐに王室に報告を!」 「馬鹿モン! わざわざ王室に借りを作る必要があるか! ここはトリステイン魔法学院じゃ。身に掛かる火の粉くらい払えなければ何のためにここに居るのじゃ!? それに今から王室に報告したところで間に合わんわ! ・・・・・・コホン ではこれよりフーケ討伐隊を編成する。われは、と思う者は杖を掲げよ」 しかし教師陣は誰も杖を上げようとしない。それどころか昨晩実際にゴーレムに襲われた教師達は体を震わせ、 「何故我々がそんな危険な事を・・・・・・」「危険な仕事は王室に任せるべきだろ」と、怯える始末である。 「・・・誰もおらんのか? 貴族の誇りはどうした? フーケを捕まえ名が上げようという、勇敢な者はおらんのか?」 オスマンが発破をかけるが誰も杖を上げない。そんな中ルイズが杖を上げる。 「ミス・ヴァリエール! 何をしているんですか? 貴方は生徒ではありませんか! これは遊びではないのですよ! このような危険な任務、あなたが行く必要はありません!」 「誰も杖を上げないじゃないですか! 誰も行かずにみすみすフーケを見逃す事など、わたしには出来ません! わたしが心配ならシュヴルーズ先生も来て下さい」 「それは・・・」 ルイズは既に自分がフーケ討伐に行く事を決心し、教師達が止めようとしても「なら一緒に来てください」と答え、教師達は一人また一人とルイズの説得を諦めてゆく。 「あー、ちょっと聞いてもいいか?」 「ん? おぉ君は確かミス・ヴァリエールの使い魔の青年か、聞きたい事とは?」 「どうしてもフーケを捕まえないといけないといけないのか? 確かに学院から物を盗んだのだから捕まえられるなら捕まえた方がいいのだろうけど、 今の状況だとフーケを捕まえられそうにないと思うぞ?」 「貴様! 使い魔の分際で我々を愚弄する気か?」 「まぁ落ち着きなさい。では、君はフーケを見逃せというのかのぉ?」 「いや、フーケを捕まえるのは難しいから、盗まれた【破壊の杖】を取り戻すだけでもいいんじゃないか? と思うんだけどどうかな?」 「ふむ。 確かに【破壊の杖】が戻るなら無理をしてフーケを捕まえる必要は無いのぉ」 バッツの質問にオスマンは髭を撫でながら答える。 「なら、俺にも【破壊の杖】奪還の任を任せてくれないか?」 バッツはさらりと言い放つ。 「魔法をまともに使えないミス・ヴァリエールと平民だけでそんなことできるわけ無いだろ!」 「確かに俺は魔法は使えない。 けど色々な経験がある。 たとえばこの部屋そこの壁には隠「うむ! よかろう!!」とかな」 バッツが何か言いかけたが、オスマンがあわてて大きな声で許可を出す。 「オールド・オスマン? そこの壁が?」 「いや、何もない! 何もないのじゃ! わしが許可を出すのはこの青年は・・・・・・ えーと、そう! 学生とは言えトライアングルの生徒達からも逃げた実力があるからじゃ、うまくやれば【破壊の杖】の奪還のみなら可能かもしれんからのぉ。 まだ文句があるなら文句のあるものに行ってもらう」 不振がる教師達にオスマンはやや目をそらしながらそう答える。教師達はオスマンの言葉、特に後半の一言で一斉に静まる。 「では、改めてフーケの居場所を知るミス・ロングビル、ミス・ヴァリエールとその使い魔の三人に【破壊の杖】奪還の任を与える。 後、奪還に必要なものでこちらで用意できるものがあるのなら用意しよう」 『ハッ』 三人は元気よく返事をすると【破壊の杖】を奪還するため、学院から馬を三頭借り出発した。 前ページ次ページ無から来た使い魔
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学院長室では教師達が責任の所在を押し付けあっていたが その見苦しい茶番劇はオールド・オスマンの登場によりひとまずは収まった。 「誰もこの学院の宝物庫が狙われるとは考えてもいなかった」 「責任はこの場の皆にある」 「大体この場に居るものでまともに当直を勤めた者はいるのか」 と最高責任者に言われれば誰も反論など出来はしない。 だが、質問をする者なら一人いた。 「…あのぉ、ちょっといいですか?」 その声に皆が扉の方を向くと、そこに居たのはボサボサ頭に汚い帽子をかぶり 薄緑色の、トリスティンでは見ない奇妙な服に木で出来た下駄なる靴を履いている 小柄で貧相かつ奇妙な男であった。 皆が胡散臭げな目で見ている中、オスマン学院長が彼に返答しつつ自らも質問をした。 「君は確か……、ミス・ヴァリエールの使い魔じゃったな 何か気になる事でもあるのかね?」 男は照れくさそうに笑いながら頭をバリバリと掻き毟るのだが、頭からはふけがポロポロ 落ちてきて不潔極まりない。 教師達の男を見る目は胡散臭いを通り越して蔑んでいると言っていいだろう。 もっとも男はそんな事は全く気にしていないようだが。 「いえ、さっき学院長さんがおっしゃいましたよね。 宝物庫はちゃんと夜間の見張りがされていなかったと。」 「うむ、全くもって情けない話じゃがその通りじゃ。」 オスマンは苦笑いをしながら答える。 「なるほど、それで土くれのフーケがあんな無謀なことをしたのか納得がいきました。」 男は手をポンと叩いて頷く。 オスマンはこの男が何かを掴んだ事を理解して、今度はオスマンの方から質問をした。 「すまんが君の分かったことを教えてもらえんかの?」 「それなんですが学院長は最初に、誰もこの学院の宝物庫が狙われるとは考えてもいなかったと おっしゃいましたが何故ですか?」 男は逆に質問で返した。 男の質問の意図は読めなかったが、オスマンはとりあえず返答をした。 「それは、この学院には教師や生徒を含めた多数の貴族がおるのじゃから いかに土くれといえどもそんな多数のメイジとやり合っては命がいくつあっても…」 「そ、そ、そう! それなんですよ! 僕の言いたいことは!!」 男は急に興奮したのかどもりだし、頭を更に掻き毟りだした。 「普通ならば宝物庫にはたくさんの見張り、それも魔法学院の宝物庫なんですから 腕利きのメイジが見張りに就いていると考えるのが自然です。 しかし土くれのフーケは堂々とあの巨大な土人形で宝物庫の破壊という手段をとりました。 つまり! 夜になって就寝時間になれば誰にも見つかることなどないと知っていたんです!!」 その言葉にオスマンや教師達が騒然となったのも無理は無い、それが意味していることは 「…この学院にフーケの協力者が潜んでいるというのかね?」 オスマンは普段の態度とは一変した慎重な態度で男に質問をする。 「あるいは、フーケ本人が潜んでいたという可能性もあります。 ところで教師の方達で今この場にいない方はおられますか?」 教師達はお互いの顔を見合わせると、そのうちの誰かがポツリと呟いた。 「そういえばミス・ロングビルはどこに…?」 この言葉で教師達の疑いが彼女に向けられる事となった。 彼女はオールド・オスマンが秘書として雇い入れたのだが彼女の素性を知っている者は 学院内に誰もいないのだ。 分かっている事は元貴族で土系統のメイジであるという事だけ。 貴族から放逐されたメイジが盗賊や傭兵といった真っ当でない職に就くしかない事と 系統が同じであるという事が、更に教師達のロングビルに対しての疑いを深めた。 オスマンは、そんなバカなと傍にいるコルベールに意見を求めようと彼のほうを見ると、 彼の顔は血の気が引いていて今にも倒れそうに震えている。 「どうしたんじゃ、コッパゲ君? 具合が悪いんじゃったら少し休んでもよいぞ。」 いつものように名前をわざと間違えて呼ぶもそれに対するリアクションも無いので まさか本当に病気なのではと心配になるオスマンだが、コルベールは震えながらも オスマンの方を見つめてゆっくりとだが何かを喋ろうとする。 「が、学院長……、も、申し訳ありません!!」 コルベールはまさに土下座せんばかりの勢いで謝罪をした。 余りにいきなりの事で皆が目を丸くしている。 オスマンが何か知っているのか問いかけると、コルベールはロングビルに宝物庫の特性 や破壊の杖の事などを喋ってしまった事を全て告白した。 これによりオスマンもロングビルを疑わざるをえなくなったのだが、そこに丁度運良くか 運悪くかロングビルが学院長室内に入ってきた。 「学院長! フーケの居場所を…、って皆さん…、どうかされましたか…?」 ロングビルが戸惑うのも無理は無い。 学院長室内に居る人間全てが彼女を見つめているのだ。 それも普段男達が彼女を見るような情熱的な目ではなく、疑念のまなざしで。 そして彼女がその視線に戸惑い後ずさりしたのを契機に教師達が全員で飛びかかった。 「我が最強の風を持ってすれば盗賊の一人や二人!」 「貴女のせいで私はクビになっちゃうとこだったのよ!!」 「よくも、私の純情を弄んでくれましたね!!」 「そんな事をしなくてもワシにいってくれればいくらでも貢いだのに!」 「な、何いってんのよぉ! はなせぇ!!」 「あの~皆さん、まだ状況証拠だけど彼女が犯人だと決まったわけでは…」 学院長室内は叫び声と悲鳴と破壊音の混沌に包まれたのだった。 そのころ例の胡散臭い男の主人である我らがヒロインのルイズは学院長室に向かっていた。 本来なら既に到着していなければならないのだが、姿が見えなくなった使い魔を探していて 遅れていたのだが。 「まったく、あいつってば使い魔だったら主人である私の傍にいつもいるのがあたりまえでしょう! 罰として当分食事抜きだわ!」 そのご機嫌斜めなルイズを呆れた目で見ているのが彼女の天敵ともいえる女性、キュルケである。 さらにその横に本を読みながら歩くという器用なことをしている、キュルケの親友タバサがいる。 そんな事をしているうちに学院長室前まで来たのだが、扉がきしんでしまっている。 何があったのかと三人が覗き込んでみると、そこには縄できつく締め上げらたうえに猿轡までかまされた ミス・ロングビルと、引っかき傷やらでボロボロになった学院長と教師達、 そして頭を掻きながらこれからどうしようと悩んでいるルイズの使い魔がいたのでした。 「ちょっとコースケ、一体何があったっていうのよ!」 自分に対して叫ぶ小さなご主人の声に気づき困ったように笑いながら、彼は答えた。 「何と言うか…、容疑者の捕縛っていうのかな、多分。」 金田一耕助召喚
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元スレURL せつ菜「>>3の能力を手に入れました!」 概要 ときめき安価シリーズ 神の啓示で与えられた安価な能力で各自のトキメキを探すメンバーだが… タグ ^優木せつ菜 ^虹ヶ咲 ^高咲侑 ^安価 ^コメディ 名前 コメント
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前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia オスマンとコルベールは学院長室から『遠見の鏡』で決闘の一部始終を見終えると、顔を見合わせた。 鏡面に映し出されたヴェストリの広場では、未だ鳴り止まぬ拍手と歓声が続いている。 2人の少し後ろの方で、『眠りの鐘』を用意して戻っていたロングビルも興味深げにその光景に見入っていた。 「オールド・オスマン、あのメイドが勝って……、 あ、いえ、勝負無しということにはなったようですが……」 「うむ……」 驚きの表情をありありと顔に浮かべたコルベールとは対照的に、オスマンにはさほど動揺した様子がない。 ロングビルはそれをじっと見て、疑問を口にした。 「あの、学院長は……、こうなることを見越しておられたのですか?」 「ん? 何故そう思うのかね、ミス・ロングビル」 「それは、あまり驚かれた様子がありませんし……、 これをすぐ使えと言われなかったのも、不思議に思っていましたから」 そういって、折角運んだというのに出番のなかった掌中の小さな鐘を示す。 まあ自分にとって本当に重要なのは宝物庫へ入る口実の方だったので、無駄足だったなどとは思っていないが。 オスマンは長い白髭を少しさすると、首を横に振った。 「まさか。こんなもん読めておったわけがなかろう。 年を取ると大概の事では動揺を見せなくなるというだけじゃよ、ちゃんと驚いておるしそれなりに感嘆もしておる。 ……ま、その鐘を使わねばならんような大事にはなるまい、とは思っておったが……」 オスマンはそう言ってロングビルとの会話を打ち切ると、鏡面を見ながら何やら物思いに沈んでいく。 ロングビルはまだ釈然としなかった。 このエロ爺がセクハラ発言のひとつも無しにさっさと会話を済ませるとは、一体何にそれほど注目しているのだろうか? ……まあ、いいだろう。 気にはなるが、今は絶好の機会。 単なる好奇心を満たすよりも先に、もっと重要な事を成すべきだ。 「それでは、私はこの鐘を宝物庫に戻してまいりますわ」 「うむ……。すまんが、そうしてくれ」 一方ヴェストリの広場の方では、盛り上がりが一段落したところでやっと教師たちが介入し、生徒らを促して授業に向かわせだす。 もう昼食時間はとっくに過ぎ、午後の授業を始めなければならない時間になっていた。 ディーキンは自室へ戻っていくシエスタの後姿をじっと見送ってから、ルイズのところへ向かった。 そして、いろいろ質問したそうなルイズを押し留めると、自分は応援した手前もうちょっとシエスタと話がしたいし、 他にも色々やりたい事があるから午後の授業への同行を免除してもらえないだろうか、と願い出た。 「はあ? ちょっと、何言ってるのよ! 勝手にまたこんな目立つことをしておいて、この上まだ何の説明もしないで、私を放って……」 ルイズはルイズで今の決闘の成り行きとかについていろいろと聞きたいことがあったし、今日は使い魔の顔見せの日でもある。 おまけに仮にも使い魔が御主人様を放って、あのメイドとこれ以上一緒にとか……、とにかく、色々と不満だ。 したがって怒鳴りつけて即座に却下しようとしたのだが、ディーキンは怯まなかった。 さりとて自分の要求は正当で認められて当然なのだというような偉ぶった態度を取るわけでもなく。 ただ普通に彼女の言い分を聞いて謝るべきところは謝りつつ、それでもあえて自分がそうしたい理由を説明して、根気よく交渉する。 シエスタには決闘に関わらせてもらった縁があるのに、何も言わずにさっさと別れるのは礼儀に反すると思う。 ルイズが聞きたいことは同じ部屋で過ごしているのだし今夜にでもちゃんと話すから、それまで待ってほしい。 教師への紹介は今これだけ目立っていたのだからどうせ顔も名前も知れ渡っただろうし、無用だろう。 むしろ今ディーキンが教室に行ったら、きっと決闘の件で注目されて生徒らに騒がれる。 そうすると授業の邪魔になって、教師からの心証が悪くなるかもしれない……。 「それに、あの人との約束通り、今の決闘の歌も考えなきゃいけないし。 もしかして考え事に夢中になって鼻歌とか口ずさんだりしたら、迷惑だろうからね。 ディーキンが教室にいないことで他の人達ががルイズを嗤うのなら、何故いないのか説明してやればいいの。 それでも分かってもらえないようなら、後でディーキンがちゃんとその人に説明して、分かってもらえるようにするから。 ……ね、どう?」 「う、うー……、」 もしディーキンが感情的に怒鳴り返したり、自分の要求は認められて当然、お前の意見は愚かだ……とでもいうような態度を取ったりしていたなら。 おそらくルイズは激怒し、正規契約をしていないとはいえ、仮にも使い魔である者の不従順に対して罰を言い渡していただろう。 しかしながらルイズは癇癪を起こしやすく独占欲が強い反面、真摯に誇りを重んじる貴族でもあるのだ。 頭を下げて許可を求めに来て、落ち着いて交渉している相手を一方的に怒鳴ったり無下にするような真似はできない。 そう言った点が以前の主人であるタイモファラールに似ていなくもないので、ディーキンにとっては懐かしいというか、対応し易かった。 もちろん邪悪で気まぐれなタイモファラールに比べれば、ルイズは遥かに話の分かる相手だが。 「……分かったわよ、あのメイドもあんたにお礼とかいいたいだろうし……」 ディーキンは相手の立場や考えを尊重して、軽々に批判したり見下したりはしない。 かといって卑屈になるわけでもなく、自分の意見はしっかりと主張してくる。 ルイズとしては内心複雑ではあったが、ともかくディーキンが自分の事を軽んじていないのは理解できたし、彼女にとってはそれが一番大切な事だった。 本当はまだ不満はあるし、メイドのところへ行く前にまずこっちに説明してからにするか自分も同行させろ、くらいは言いたいところなのだが……。 そんなことをしていたら、授業に遅れてしまう。 基本的に真面目な性格かつ実技が壊滅状態なルイズには、やむにやまれぬ事情があるわけでもないのに授業をサボる事などできない。 それゆえ、渋々ながらディーキンの言い分を認めることにしたのだった。 「ただし、夜までには絶対に戻って来なさい。約束通り説明してもらうからね!」 「もちろんなの。ディーキンはお泊りなんてしないよ?」 そんなこんなでルイズと別れると、ディーキンはさっそくシエスタの部屋に向かった。 彼女が中にいる気配があるのを確かめてから、扉をノックする。 「………?」 シエスタは部屋に戻ってしばしぼうっと物思いに耽った後、鎧を脱いで着替えをしている最中だったが、ノックの音を聞いて首を傾げた。 学院の教師がやってきたのだろうか。罰を申し渡されるのならば、受け入れなくてはなるまい。 理由はどうあれ自分は貴族に逆らい、決闘などを承諾して規律を乱す真似をしたのだから。 でなければ、使用人仲間の誰かか……。 「はい、どなたですか? 少しお待ちください。取り込み中なので、終わりましたらすぐに――――」 「ディーキンはディーキンだよ。 わかったの、ええと、3分間くらい待ってればいいかな?」 「! ……ディ、ディーキン様? す、すみません、すぐに開けます!」 シエスタはディーキンの声が聞こえるや、あたふたとドアを開けると膝をついて恭しく頭を下げた。 たとえ貴族に対してでも、ここまで畏まった態度を取ることは滅多にないだろう。 まあ、ドアの前で待たせるよりも、上着が脱げかけた姿で応対する方が礼儀にかなっていると言えるのかどうかは、また別の問題ではあるが。 一方突然そんな態度を取られたディーキンはきょとんとして、自分の目線と同じくらいの高さにきたシエスタの頭を見つめながら首を傾げた。 「……アー、ええと……、シエスタ、もしかしてさっきの決闘で耳がおかしくなったの? ディーキンはディーキンだよっていったの。別にディーキンは王様だからぺこぺこしろとか、言ったわけじゃないよ?」 そういってもシエスタは顔を伏せたまま、畏まった態度で返答を返す。 「それは……、だって、あなたは私を救ってくださった方です。 それに、天使様ですから――――」 「……うん? ええと、もしかして、おかしいのはディーキンの耳の方だったのかな。 シエスタは今、『天使』って言ったの?」 「はい、そうです。ディーキン様は、天使様なのでしょう?」 シエスタはそう答えると、ますます恭しく、深く頭を垂れた。 その態度には、決してお世辞や冗談などではない本当の崇敬の念が感じられる。 どうやら本気でそう信じ込んでいるらしい。 一方、ディーキンは目をぱちくりさせた。 天使とはフェイルーンでは主にエンジェルを、広義ではそれも含めて善の来訪者であるセレスチャル全般を指す言葉だが……。 言うまでもなく、コボルドはその中に含まれない。 ディーキンは少し考えるとおもむろに屈み込み、シエスタの顔を下からじーっと覗き込んだ。 シエスタは突然の事に驚いてどぎまぎした様子でさっと目を逸らす。 ディーキンは横を向いたシエスタの顔の前にささっと回り込むと、今度は爪の生えた指でシエスタの目蓋を広げて目の奥まで覗き込む。 更に額と額を当ててみたり、頬を撫でてみたり――――。 「……ななな……!? あああの、何をされてるんですか??」 シエスタはディーキンの行動にどぎまぎして、顔を赤くしたり、目を白黒させたりしている。 「ンー、見た感じ目は普通だし、熱とかもなさそうだけど……。 ディーキンが天使に見えるってことは、目がおかしいか、頭がぼーっとしてるかじゃないかと思ったの」 「……え、あの?」 「アア、それとももしかして、シエスタは天使の血を引いてるけど、天使の出てくる物語は聞いたことないとか? 天使っていうのは綺麗で、きらきらして、ふわふわして……、言うことがいつも、真面目で完璧な感じなんだよ」 ディーキンはそこでエヘンと胸を張る。 「ディーキンはそりゃ美男子だけど、光ってないし、ごつごつしてるし、ジョークだって言えるからね。 天使じゃなくてコボルドの詩人なのは、確定的に明らかだよ。 すごい英雄と悪いドラゴンとじゃ、同じ格好いいのでも感じが全然違うでしょ?」 シエスタはそれを聞いて当惑したように視線を泳がせ、そわそわと身じろぎした。 「そんな、でも。それは、その……、」 嘘です、と言いかけたが。 天使を嘘吐き呼ばわりするなど非礼の極みだと慌てて口を噤み、顔を伏せて、正しい言葉を探す。 「………本当の事ではない、と思います。 きっと深い考えがあって隠されるのでしょうけど、私には、わかりますから――――」 ディーキンの方は、それを聞いて困ったように肩を竦めた。 どうも何か大きな誤解をされているようだが、原因はなんなのだろう? 「ええと……、ディーキンはシエスタに、隠し事なんかしてないの。 それじゃシエスタは、なんでディーキンを天使だと思うの?」 そう尋ねると、シエスタはよく聞いてくれたと言わんばかりにばっと顔を上げて、熱弁を始めた。 「だって、天使様の言葉を使っておられて、それで私を助けてくださったじゃないですか! おばあちゃんが少しだけ習っていて、聞かせてもらったことがあります。 一度聞いたら絶対忘れられない響きです。 何よりグラモン様が心を改めてくださったのも、あなたがおられたお陰です。 私を助けてくださるため、正義を護るために神様が遣わしてくださったのでなければ、なんなのですか? いえ、それ以外ありえません!」 素晴らしい美少女が頬を上気させ、上着が少し肌蹴た状態で、自分に向けてあからさまに憧れとか畏敬とかの念が篭った笑顔を浮かべている。 人間の男だったら誤解を正すのなんかやめて手を出してしまいそうな状態だが、幸か不幸かディーキンはコボルドである。 「……あー、なるほど。 シエスタが信じてることは、分かったよ」 どうやら、ワルキューレとの戦いの際に呪歌と共に用いた《創造の言葉》が、誤解を招いた主たる要因であるようだ。 それは世界創造の時に用いられたという失われた言葉であり、現在のセレスチャルが話す天上語の前身であるとも言われている。 その断片だけでも知っている者は既にセレスチャルの中にも少ないそうだが、シエスタの祖母はたまたま学んだことがあったのだろう。 そんなものを用いて自分を手助けしてくれたとなれば、誤解されるのもやむなしか。 それにしたってコボルドを天使だの神の使いだのと考えるのは極端だとは思うが……、まあ、善良で信心深い人なら、そんなものなのかもしれない。 ディーキンはとりあえずシエスタを促して室内へ入り、向かい合うように椅子に腰かけて説明を始めた。 「じゃあ、ひとつずつ説明させてもらってもいいかな? まず、シエスタがなんて言ってもディーキンはやっぱり天使じゃないし、別に神さまのお使いとかでもないの」 「で、ですが、それなら………、」 「さっき歌う時に使った言葉は、シエスタのおばあちゃんと同じで、天使から習ったんだよ。 ディーキンは天使じゃないけど、天使の知り合いはいるからね」 それから、どういう経緯でそうなったのかを、リュートを爪弾きながら語り聞かせる。 アンダーダークで大悪魔メフィストフェレスの罠にかかり、ボスと一緒に一度は死んで、地獄へと送られた事。 そこで、遥か昔から想い人を待って眠り続けていた、『眠れる者』と呼ばれる偉大な天使、プラネターに出会った事。 ボスの尽力あってついに目覚めて想い人に巡り合うことができ、深く感謝してくれた彼とは地獄を逃れた後にも交友が続いた事。 そして年古く強力な天使ゆえに太古の言葉にも通じていた彼が、ディーキンが詩人であることを知って《創造の言葉》の秘密を教えてくれた事――――。 シエスタはそれらの話に、熱心に聞き入った。 地獄に送られてなお、悪魔を討って生還してくる英雄たち。 想い人を求めて天上の楽園を去り、寒く昏い地獄の果てで待ち続けた天使。 そんな人たちと一緒に旅をすのは、どんなに素晴らしい事だろう。 一体、どこまでが本当の話なのか……、嘘をついているとかではなくて、きっと物語だから脚色もあるのだろうけど……。 「―――――とまあ、そういう感じなの。 だから頭とか下げられてもディーキンは困るの、わかった?」 「えっ、あ……、は、はい!」 物語の世界にすっかり入り込んで夢想に浸っていたシエスタは、慌てて返事をする。 それから、そっと頭を下げて、言葉を選びながら訥々と続ける。 「その、お話、ありがとうございます。 ……ディーキン様が天使でないことは、分かりました」 どこまでが本当の話なのかはわからないが、天使に出会って学んだというのはきっと本当なのだろう。 目の前の人物が、種族としては天使ではないのは納得できた。 しかし………。 「ですが、私とグラモン様を救ってくださった方であることは変わりません」 シエスタにとっては、最善のタイミングで手を差し伸べて、すべてを上手く行かせてくれたのがディーキンだ。 天使であろうがなかろうが、彼の介入は、シエスタにとっては偉大で慈悲深い神や運命の導き以外の何物でもなかった。 「……それに……、いえ、 つまり、ですからやはり、あなたは私にとっては恩人で、神様の御遣いなんです!」 あくまで敬いの態度を変えないシエスタに、ディーキンはちょっと顔を顰める。 「ンー……、それはシエスタの考え違いじゃないかな。 お礼を言ってくれるのは嬉しいけど、いくつか間違ってると思うの」 「えっ?」 ディーキンはシエスタの肩をつついて顔を上げさせると、ちっちっと勿体ぶった態度で指を振って見せた。 ちょっと気取って講釈を始めようとする教師のように。 「まず、シエスタは仮に、ディーキンが神さまのお使いだったとして。 もしかして神さまの手助けがなかったら、さっき自分は上手くやれなかったって思ってるの? ディーキンはただ、英雄の活躍を見逃したくなかったから出しゃばっただけなの。 お手伝いなんてしなくても、結局は同じことだったはずだよ?」 それを聞いたシエスタは、ぶんぶんと首を横に振る。 「そ、そんなわけないじゃないですか! 私があの方と……、貴族様と戦えたのは、みんなあなたのお力で―――」 「ふうん? じゃあ、シエスタは……、仮に、ディーキンが応援しなかったとして。 あのワルキューレとかいうのにボコボコにやられたら、降参して謝っていたの?」 「え…? い、いえ! 間違った事に頭を下げるなんて!」 「なら、シエスタは。 あのギーシュっていう人のことを、もし相手が降参しなかったら死ぬまで殴っておいて、絶対謝らない人だったと思ってるの?」 「そんな! あの方は過ちを犯されましたけれど、そんな非情な方では……」 それを聞いて、ディーキンは得意げに胸を張る。 「でしょ? シエスタはどんなにやられても諦めたりしなかったし、相手は死ぬまで殴るような人じゃなかった。 なら、ディーキンがいなくたって、シエスタは上手くいってたってことなの。 ちょっと余計に怪我はしたかも知れないけど、結局最後には分かってもらえたはずでしょ?」 「そ、それは……、」 返事に困って視線を泳がせるシエスタに、ディーキンは誇らしげに胸を張った。 「たとえ力がなくても正しい事ができるのが、本当の英雄ってもんなの。 絶対にそういうものなんだから!」 先程までのシエスタにも劣らず熱っぽい様子で瞳をきらめかせながら、ディーキンは熱弁した。 シエスタと同様に頬が上気しているかどうかは、ウロコに覆われていて分からない。 「そ、そんな…………」 自分が敬う相手から逆にそんな目で見られたシエスタは、頬を染めて口篭もる。 「……その。あるいは、そうかもしれません。 でも、私が戦う勇気を出すことができたのはあなたが居てくださったおかげです、ですから……」 なおも食い下がるシエスタに、ディーキンは腕組みして(コボルドにしては)重々しく、威厳ありそうな感じの声を作る。 「オホン……、 『ならば、それは私の力ではない。私を見て何かを学んだというなら、それは君自身の才能と情熱のおかげだ。 友よ、手柄はあるべき所に帰すべきだ』」 「……は? あ、あの、」 いきなり感じが変わったのにきょとんとしているシエスタを見て、ディーキンは得意げに胸を反らせた。 「―――イヒヒ。 今の、『眠れる者』の真似なの。似てた?」 「は、はあ……? いえ、私、その天使様の事を知りませんから………」 何とも微妙な顔をしているシエスタに対して、ディーキンは少し真面目な顔に戻って更に言葉を続ける。 「それに、ディーキンが本当に天使とか神さまのお使いだったとしても、天使はそんな風に拝んでもらいたいとは思わないよ。 彼もそういってたし、ディーキンが知ってる他の天使もみんなそうだったからね」 パラディンであるボスは最初、今のシエスタのように『眠れる者』に対して敬意を表していた。 だが、彼はそのような扱いに当惑し、自分は身に覚えのない崇拝を望まないと言った。 彼らは真の善の化身であり、その目的は善を奨励する事であり、自分達が崇められるよりその崇拝をより偉大なものに向けさせることを願うのだ。 「『私はより偉大な栄光に仕える天使だ。私に価値を見出すならば、私よりも高貴な愛や美があることも知るといい』 ……彼は、そういってたの。ディーキンも、それに賛成なの。 ボスやシエスタは大した英雄だからね、天使とかディーキンとか拝んでないで、もっと大きな目標を持って、とんでもなーく凄い人になるの。 そうすればディーキンももっともっといい物語が書けてカッコいい詩が歌えるし、他のみんなも喜ぶでしょ? もしディーキンが神さまだったら、シエスタにはきっとそうしろっていうね」 ディーキンはそういうとちょっと首を傾げて、シエスタの頭を撫でた。 「アー、だから……、つまり。 まとめると、ディーキンはディーキン様とか呼ばれるのには反対だってことだよ。 ディーキンはディーキンであってディーキン様じゃないからね、余計なものはくっつけない方がいいの。 俺様とかって、何か悪役っぽくてよくないでしょ? 様をつけていいのは怖いご主人様とか威張った王様とかだよ、素敵なコボルドの詩人にはつかないよ!」 シエスタは英雄なんだから英雄には自分より立派な存在でいてほしい、敬われても嬉しくない……、 というのはまあ、本当だが。 実のところ敬称を遠慮したい理由は、それだけでもなかった。 ボスはもちろん、自分を純粋に対等の仲間として扱ってくれる。 だが、今まで自分は、上位者として扱われた経験はない。 コボルドをそんなふうに扱う奴は普通同族しかいないし、それにしたところで地位の高いコボルドに対してに限られる。 礼儀作法上とかではなく本心から敬われる、などというのは初めてであって、照れ半分、困惑半分、どう対応していいのかわからないのだ。 シエスタは頭を撫でられて少し頬を染めつつも神妙な、若干不満げな面持ちで話を聞いていたが……。 やがて、微笑みを浮かべて頷いた。 「……わかりました、ディーキンさ……んがそういわれるのなら、きっとその通りなんだと思います。 私、もっと善い事ができるように、頑張りますね」 「オオ……、よかったの。 ありがとう、それならディーキンは、これからもシエスタの事を応援するよ」 ほっとした感じでうんうんと頷き返したディーキンに、 シエスタはしかし、意味ありげに目を細めると、また頭を深々と下げた。 「―――――はい。 つきましては、そのためにも是非、あなたにお願いしたいことがあります!」 「……ウン?」 「私の先生に、なってくれませんか?」 ディーキンは目をしばたたかせると、困ったように頬を掻いた。 「ええと、その………。 どういうことなのか、ディーキンにはちょっとよくわからないけど。 ディーキンと契約して魔法少女になりたいとか、そういうことじゃないよね?」 シエスタは顔を上げると、にこにこ微笑みながら質問に答える。 「私……、先程の戦いのとき、『声』を聞いたんです。 グラモン様が考えを改められて、私に剣を差し出してくださった時に――――」 「?? 声……、」 ディーキンは唐突な話にきょとんとして、少し考え込む。 が、ふと思い当って首を傾げた。 「ええと、それって……、もしかして『召命』の声のこと?」 じゃあ、シエスタは、パラディンになれって言われたの?」 「はい!」 その時の事を思い返して興奮と喜びに目をきらめかせているシエスタを見て、ディーキンはようやく得心がいった。 いくら天使の言葉を話したにしても、恩人であるにしても、ちょっと態度が極端で大げさすぎやしないかと思っていたが。 なるほど、この状況に加えて更にこれまでの人生一変させるような出来事まで重なったとなれば……。 それに大きく関わったディーキンの事を、自分に遣わされた天使かなにかだと思い込むのは無理もない話だ。 実際、これはシエスタにとっては確かに運命的なものなのかもしれない。 多元宇宙に働く何らかの意志が、しばしばそのような導きをもたらすことは、ディーキンも知っていた。 とはいえ………、 「ウーン、つまり、シエスタはディーキンにパラディンになるための勉強を教えてほしいってこと?」 「そうです、私はまだぜんぜん力もありませんし……、パラディンの事も、おばあちゃんを見て教わった事以上には知りません。 あなたの望まれるような英雄になるためにも、せひ私の先生になってください!」 「いや、ええと……、ディーキンはバードなの。パラディンじゃないよ。 バードとパラディンっていうのは、プレインズウォーカーと頑固爺さんくらいに違うの」 ディーキンはよく分からない例え話をして、シエスタの願いを断ろうとした。 バードには、パラディンのような生き方はできない。 パラディンの生き方が善き規律に支えられたものであるのに対し、魂に訴えかけるバードの旋律は自由な魂から生まれるものだからだ。 少なくともフェイルーンで、パラディンになるための訓練でバードに師事する、などという話は聞いた事もない。 「ディーキンは、たまにボスみたいになるか試すの。 立派なことだけ考えて、それから、神聖でいようと頑張ってみて……、 でもすぐおかしなことを考えて大笑いしちゃうの、それがけっこうつらいんだよね。 だからディーキンは、シエスタの考えてるみたいな立派なパラディンのための先生にはなれないと思うの」 「いいえ、おばあちゃんだってよく笑ってましたし、その『ボス』という方も、あなたのお話からすると朗らかな方なんでしょう? 真面目に生きるということは、決して朗らかさをなくすことと同じではないと思います。 それに、あなたは素晴らしい英雄の方と旅をされていたし、天使様ともお知り合いなのですから。 その方々の生き方を、もっと歌や話にして聞かせてください。私にとってはそれが、素敵な勉強になると思います。 剣とか、その他の訓練は……、もし教えてくださることができないのでしたら、自分で頑張りますから!」 それでもなお熱心に頼んでくるシエスタを見て、ディーキンは困ったように首をひねる。 「ン、ンー……、それは、ぜひ聞いてほしいけど……。 別に先生とかでなくてもディーキンはいつだって喜んで聞かせるし、パラディンの訓練なら他に、いい人がいるんじゃないかな?」 大体、バードとパラディンは進む道も違えば、能力的にもほとんど似つかない。 どちらも魅力に優れ、交渉などの才を持ち合わせてはいるが、共通点と言ったらせいぜいその程度だろう。 パラディンは若干の信仰魔法を用いる戦士、バードは秘術魔法を使う何でも屋だ。 普通に考えれば同じパラディンに師事するのが最善だろう。 そうでなければ、剣の訓練をするならファイターとか、信仰を鍛えるならクレリックとかが、おそらく適任のはず。 渋るディーキンに対して、シエスタはぶんぶんと首を横に振った。 「いいえ! ……いいえ、そんなことはないです。 何と言われようとあなたは私の恩人で、私に可能性を掴ませてくれた憧れなんです。 私はあなたよりも自分の先生に相応しい方なんて知りません!」 「う! うーん?? そ、その、そんなことはないと思うけど、ありがとう。 ディーキンはなんだか、すごく照れるよ……」 詰め寄らんばかりの勢いで熱弁してくるシエスタに、ディーキンもたじろいでいる。 「この学院におられるのはメイジの方ばかりです。 みんな貴族としての誇りを重んじられる立派な方々です、けれど、パラディンの教師に向いておられるとは思いません。 学院の外でも、強い方と言ったら大体メイジの方ばかりで……、 剣を使うのは傭兵とかだけですし、そんなすごい達人とかは、私は知りません。 それに私は、おばあちゃんの他にはパラディンは一人も知りません。 おばあちゃんはきっと、この世界には『声』が届かないんだろう、っていってました」 「アー…、そうなの?」 初耳だが、よく考えればこの世界にはバードもクレリックもいないのだった。 メイジの力が支配的で、かつ系統魔法と先住魔法しか知られていないというのだから冷静に判断すればパラディンだっているはずがない。 シエスタにだけは召命の声が聞こえたというのは、彼女がアアシマールであることを考えればそれほど不思議な話でもあるまい。 パラディンたり得るものはフェイルーンでも希少だが、天上の血を引くアアシマールにはすべからくその適性が備わっていると言われている。 剣の力についても、確かに昨夜読んだ本ではほとんど触れられていなかった。 おそらくフェイルーンの古の魔法帝国アイマスカーなどがそうだったように、この世界では剣の技は廃れてしまっているのだろう。 強いファイターは滅多におらず、概ね低レベルのウォリアーくらいしかいないのだとすれば、シエスタが長期的に師事するのには些か不足だ。 そうなると、ディーキンに教えを乞うというのもまんざら悪い選択ではなく、むしろ良い選択なのかもしれない。 「ウ~……、でも、先生なんてディーキンはやったことないの。 ディーキンが教わった先生は気が向いた時にだけ教えてくれて、そうでないときには寝ぼけて体の上にのしかかったり……、 機嫌が悪い時にはディーキンの体を麻痺させて歯を抜いたりもする、ドラゴンのご主人様だけなの」 「誰だって最初はやったことがないはずです。 それにディーキンさんは、そんなひどい教え方はなさらないです、信じてます。 ……さっき、私の事を応援してくださるって言われましたよね? でしたら、さあ、私が立派なパラディンになるために力を貸してください。応援するって、そういうことでしょう?」 シエスタは、ここぞとばかりに先程のディーキンの発言を持ち出して畳み掛ける。 このためにいったん譲歩してみせて、言質を引き出したらしい。案外したたかな面もあるようだ。 パラディンは邪悪な行為をしてはいけないが、最終的に善を推進するためのちょっとした計略くらいは問題ないのである。 ディーキンは困った顔をして、しばし考え込んだ。 別に秩序な性格ではないので口約束なんて場合によっては無視してしまうのだが、それでシエスタに嫌われたりするのは嫌である。 かといって大したことが教えられるとも思わないし、それはそれでシエスタを失望させることになってしまわないか不安だ。 が……、まあ、彼女に教えるのもそれはそれで確かに新しい楽しい経験になるかも知れない。 何より彼女はボスの話を聞きたいと言ってくれたし、それはこちらとしても存分に語りたいことだ。 返事は決まった。 「……うーん、わかったの。 ディーキンは今ルイズの使い魔をしてるから、お願いしてみないといけないけど。 いいって言ってもらえたら、シエスタのためにできるだけの事はするよ」 シエスタはそれを聞くとぱあっと顔を輝かせて、ディーキンを思いきり抱き締めた。 「ありがとうございます、先生! それじゃあ、これからよろしくお願いしますわ!」 「オオォ……!? ちょっとシエスタ、痛くないの?」 シエスタは今、上着がちょっと肌蹴た状態でディーキンを強く抱き締め、喜びのあまり頬ずりとかまでしている。 人間の男なら嬉しくてそれどころじゃないかもしれないが、ディーキンは彼女の柔らかい肌が自分の硬いウロコに擦れて、傷つかないか心配だった。 「………!? あ、わああ! すす、すみません!」 そういわれて漸くシエスタは今の自分の格好に気付くと、途端に顔を真っ赤にしてぱっと離れ、大慌てで胸元をさっと覆った。 慌てたり緊張したり、必死に熱弁したりで、今の今まですっかり失念していたらしい。 「? 別に、シエスタが謝るところじゃないとおもうけど……、 それよりディーキンはその、先生っていうのは――――」 「……だって先生は先生じゃないですか。 これは誤解とかそんなことは関係なく、先生ですから問題ないです。 学院の生徒の方々だって、みんな教師の方の事はそう呼んでいらっしゃいますわ。 私だってそうお呼びしないと失礼です、ええ、絶対そうしますから」 シエスタは上着をしっかりと着直すと、まだ少し頬を赤くしながらも澄ました顔で得意げにそう答える。 結局、彼女は最終的には、ディーキンをある種の敬称で呼ぶ許可をちゃんと取り付けたのだった。 「ニヒヒヒ……、ウーン、なんか、先生になったの」 仕事に戻らないといけないからというシエスタと別れたディーキンは、少しにやけながらぶらぶらと人気のない廊下を歩いていた。 先程は突然の申し込みに困惑していたが、自分が先生などと呼ばれて敬意を払われる立場になったのかと思うと、徐々に嬉しさが湧き上がってきたのだ。 様づけで呼ばれるのはどうにもむずむずするし、ご主人様みたいで遠慮したいところだが。 先生というのは、それとはまた違う感じがする。 どう違うのか、上手く説明はできないが……、なんにせよ、何の悪意も含みもない態度で褒められたり認められたりするのは嬉しい事だった。 まあ正確にはルイズの許可を得られたらということだが、それについては後ほどシエスタと一緒に頼もう、ということに決めておいた。 たぶん渋られるだろうが、ちゃんとお願いすれば説き伏せられる自信はある。 ……そういえば、元々シエスタの部屋を訪れたのは、挨拶がてら約束の歌の件について相談しようと思っていたのだが……。 予想外の話の展開に、すっかり元の用件を忘れてしまっていた。 だがまあ別に急ぐ用事でもないし、彼女が生徒になりたいというのなら今後も話す機会はいくらでもあるだろうから、今はいいか。 「ええと……、これから、どうしようかな?」 まだ大分時間はあるが、ルイズの授業には今日は出ないと言ってしまったし、図書館へでも行くか。 この世界の事はまだまだよく分かっていない、調べたいことならいくらでもある。 あるいはシエスタにどんな指導をするか考えて、その準備をしておくか。 引き受けた以上は、しっかりとやりたいところだし。 「ウーン………、ん?」 いろいろと考えながらふと窓の外に目をやると、妙な人物が目に留まった。 タバサだ。 今は授業中のはずだが、何故か空を飛んで、学院の外の方へ向かっている。 他に生徒はいないようだし、課外学習という風にも見えない。 遠目ではっきりとはわからないが、何だか急いでいる様子だ。 ……何かあったのだろうか? こういう事があるとすぐに首を突っ込みたくなるのが冒険者の、そしてバードの、何よりディーキンという人物の性分である。 好奇心の命じるままにぴょんと跳び上がって手近の窓を開け、外へ飛び出すと、そちらの方に向かって翼を羽ばたかせ始めた。 前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia
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前ページ次ページ虚無を担う女、文珠を使う男 第6珠 ~使い魔、その能力を現す・前編~ (ほんっとにあのバカ犬は、なんでこうもトラブルばっかり起こすのよ?) ルイズは、医務室へ向けて走っていた。 ロングビルが、横島とギーシュの決闘騒ぎの件と、横島が気付き次第、その件で学院長室へ行くように、という話を伝えてきたのだ。 医務室へ辿り付き、中の様子を伺う。すでに治療は済んでいたようで、そこには静かにベッドで眠っている横島がいるだけだった。 「こんのバカ犬、火傷はとっくに治してもらったんでしょ!? 起きなさい!!」 「えっ な、何だ何だっ? って、ルイズちゃんじゃないか。 そんな大きな声出さなくたって起きるって」 ルイズの怒声で気づいた横島は、ゆっくり身体を起こした。 貴族とひと悶着起こしたというのに、あんまりにものんびりしているその態度にこめかみをぴくつかせるルイズ。 「あ、あんたはねぇ。私を呼ぶときは『ご主人様』って… はぁ。それどころじゃ無かったんだわ。 ギーシュと決闘騒ぎを起こしたって聞いたわよ。その件で学院長から呼び出しをもらったし。 これから一緒に行く事になるけど… その前に何があったか私に正直に話しなさい」 横島の、貴族に対する平民の口調とは思えない言動も、今のルイズにとっては気にする余裕は無かった。学院長に呼び出される事など、滅多にある事ではないし… 今回はどう考えたって叱られるに決まってる。 メイジの基礎中の基礎、使い魔の制御すら出来ないと言われたりすれば、落ちこぼれのレッテルとともに、留年か停学になってしまうかもしれない。 「よ、呼び出し!? 言っとくけど、そんな事されるほどの事はやってねーぞ! 決闘だって言い出したのはあっちだし、怪我だってさせてねーし」 「どっちが言い出したとか、その結果だとかはどうでもいいの。 平民のあんたが貴族と諍いを起こしたって事が問題なんだから。 それにね、学院内での決闘は禁じられてるの。 おまけに、あんたは私の使い魔なのに、全然言う事聞かないし…」 「ここで決闘が禁止なんて、言われなきゃ分からんわ。というか、あっちはその事知ってるはずだろ!? だったらなおさらあっちが悪いじゃねーか。 それに、聞いてると昨日からずっと平民・貴族とか言ってるけどさ、貴族ってそんな偉いんか? 俺が前居た所にも貴族って名乗ってる奴がいたんだけど… 警察官のくせに俺の事切り殺そうとするわ、会う度に違う女を連れてたって話はあるわ、あげくの果てに俺の女取ろうとするわで、気に食わない奴だったぞ?」 「自分は何も悪くない」と言うばかりか、あろうことか貴族なんて別に偉くない、と言い始めた横島。 その言葉を聞いて、ルイズは大きくため息をついた。 「あんた、本気でそんな事言ってるの? それって半分はあんたが悪くて、もう半分はただの八つ当たりじゃない? あんたが前にどこに住んでたかは知らないけど、トリステインじゃ、いつ打ち首にされたっておかしくはない事やってるわよ、あんたは。 会う度に違う女性をって言うのはちょっと私もどうかと思うけど、その人がそれだけ魅力的だって証拠だし… 最後なんか、取られるあんたが悪いだけじゃない。むしろ、あんたにそんな人がいたって事の方が不思議ね」 「そ、そこまで言わんかっていいやないか!! そりゃあ確かに何度声かけても上手く行かないんだけどな、俺にだってご飯作ってくれたり部屋の掃除してくれたりする子がいるんだぞ」 「ふーん。そうなんだ。それは残念だったわね。当分その子とは会えないわよ。 将来私が無事卒業して、立派な貴族になれた時に… もしあんたも立派な使い魔になってたら、その子も使用人か何かで雇ってあげても良いけどね」 「さすがにそれは無理じゃねーかな… こことあっちと、どうやって行き来したらいいのかさっぱり分からねーし。まぁそもそも、そんなに長くこっちにいる気もねーけど」 「何、まだ帰る気でいたの? しかも帰り道すら分からないのに? 言っておくけど、帰り道を探す暇なんかあげないわよ? それに、どこの馬の骨とも分からない平民なんか、私のところから出て行ったら、良くて物貰い、悪ければ野垂れ死にね。 悪い事は言わないわ、いい加減諦めて私の使い魔として一生仕えなさい」 その話を聞いて、う~ん… と唸っている横島。 指を折ったりルーンを眺めたりしながら、5分も過ぎた頃。 「はぁ… 一人で攻略すんのは、やっぱ無茶だよなぁ。 普通に腹も減るし、そもそも何がどうなってるのかさっぱり分からんし… しばらくの間は、使い魔でも何でもやって食っていくしかねーか」 その結論に、一瞬頬を緩めるも、すぐに気を締めなおすルイズ。 「ようやく分かったみたいね。 私も鬼じゃないわ。あんたがちゃんと立派な使い魔に育ったら、ちょっとくらいはあんたの住んでた場所を探してあげたって良いんだから、しっかり頑張りなさい」 「まぁ使い魔頑張るのは、この際もうしょうがねーけどさ。感覚の共有だけは基本無しにしてくんねーか? 山奥だろうが海の底だろうが行けと言われれば行くし、何か困った事があれば出来る限りで手伝うからさ」 (あ… そういえば、まだ感覚の共有が出来ないって事、言って無かったんだわ… でも、ある意味ちょうど良かったかしら) 「うーん… 分かったわ。本当は、使い魔が主人に交換条件を持ち出すなんてありえない事なんだけど、特別に感覚の共有はしない方向にしておいてあげるわ。 感謝しなさい。 でも、あんたがさっき言った事はごく当たり前の事なの。だから、感覚の共有をしないでおいてあげる代わりに、もっと礼儀良くして頂戴。 あんたが無礼な事をすると、困るのは私なんだから」 そうして、改めて横島に昨日の説明の続きをさせる事にする。 「ギーシュとの決闘で多少疲れたから、実演は無し」などとふざけた事を言ったので、少しお仕置きをしてあげようと思ったルイズだったが… その理由としてあげられた横島第三の霊能、文珠の話を聞いたら、色んな事がどうでも良くなった。 ①見た目は、緑色っぽい小さな珠らしい。 ②漢字(ルーンの事かしら?)1文字を入れる事が出来、その文字に応じた効果が霊力に見合った分だけ発揮される。 ③2個以上同時に使うと、より強力になったり複雑な事が出来るようになったりする。 ④文字が込められた状態の文珠は、基本的に誰でも使う事が出来る。 ⑤ある程度の霊能があれば、文字を込める事も出来るらしい。 ⑥文字の書き換えは、横島以外が出来ると聞いた事はない。 ⑦横島の霊力3日分ほどが必要らしい。当然他に霊力を使う事があれば、もっと時間がかかってしまう。 ⑧今は1個もなくて、次の文珠は明日にならないと出来ない。 (落ち着くのよ、落ち着くのよルイズ。 とても信じられない話だけれど、別に今はわざわざこんな嘘を付く必要はないわよね? 大体、明日になったらすぐバレるような嘘ついても仕方ないわけだし… 武具の瞬間精製だけでも、今まで聞いた事がないレアな能力なんだから、この際何が出てきてもおかしくは… いくら何でも秘薬も無しに瀕死の重傷が治ったりだなんて、誇張のしすぎでしょうけど、全くの嘘って事もないはずよね。 もしかして、すっごいレア物なんじゃないの、こいつって?) 使い魔として何とか手懐ける事に成功し、どうやらその使い魔はレアな能力持ちらしいと分かってそれなりに気分の良くなるルイズ。 とりあえず、明日になったら今の話が本当かどうか確かめるという約束をする。 その時、横島がロングビルにもそれを見せる約束をしていた、というので、次回からは無闇にばらさないように、と釘をさして、そしてそろそろ学院長室へ行く事にした。 そして学院長室の前までやってきた二人。 「ヴァリエールです。私の使い魔の意識が戻りましたので、連れて参りました」 ルイズがそう言いながらドアをノックするのを、横島は多少緊張しながら見守っていた。 何だかんだ言って横島も学生の身。自分はそんなに悪くないと思っている以上、やっぱり怒られるのは嫌だった。 そんな事を思いながら部屋に通されると、そこには3人の大人が待っていた。 大きな机に着いている、どこに出しても立派な魔法使いとして紹介できる老人。 (うわ、こりゃいかにもって感じだよな) 一番最初に出会った教師のコルベール。 (誰かに似ていると思ったら、唐巣神父に似てるんだ。きっとこの人も凄い苦労を重ねてるんやなぁ) そして今朝出会った素敵なお姉さんのロングビル。 (そういえば秘書をしてるって言ってたっけ。セクハラも凄いとか… って事はそこにいるじじいか!? くぅ、じじいの癖に何てうらやましい!) 横島のそんな思いは関係なく、ロングビルがドアを閉めると話が始まった。 基本的にはルイズが話をして、横島は補足をしたり聞かれたら答えたりするだけ、余計な事は言わない、と決めていたので、横島は暇だった。 ぶっちゃけ、彼の目線と思考はロングビルに九割方向いている。 動くたびに揺れる乳。服の上からでも主張が激しい尻。ロングスカートを履いていて、太ももが見れないのは残念だが、想像する余地があるのは、それはそれで素晴らしい。 いつまで見ていても飽きないかもしれない。 そんな事を考えていると、いきなり頭を引っ叩かれた。 「ちょっと、いい加減話を聞きなさい、この馬鹿犬!!」 「い、いってーな! ちょっと余所見してたくらいで叩かなくてもいいだろ!」 「何がちょっとよ、さっきから全然聞いてる雰囲気ないじゃない。違うって言うなら、今何を話してたか言ってみなさいよ」 「え、えーと… そ、その… あれだ、あれあれ。あれの話だよ」 「…素直に聞いてなかったって謝りなさい。今から再確認するから、今度はちゃんと聞いてなさいよ?」 そう言ってルイズが話してくれたことによると… ①霊能という力は、トリステインはおろかハルケギニア中どこを探しても聞いた事がない。 こういう特殊な能力の存在を知れば、何をしでかすか分からない組織もいくらか心当たりがある。よって、基本的に秘密にしておくこと。 ある程度見られてしまった剣・盾については、使い魔の特殊能力という事で何とかごまかす。 その際も、あまり言いふらしたりはしないように留意する。 ちなみに、ロングビルさんもあれから誰かに話す暇なんて無かったとの事なので、文珠の事を知っているのは、学院長のじいさん・コルベール先生・ロングビルさんの3人だけだ。 ②必要がある場合は、誰かに明かす事も仕方ないが、通常はルイズの判断を仰ぐ事。 緊急時には横島自身の判断で使うのも仕方なし。 (この部分を説明するときには、すごく不機嫌そうだったけど… 判断を待っている余裕が無いから緊急時なわけで、仕方が無いのは本当だよな) ③文珠能力の確認については、明日放課後に学院長室で行う。 (ま、数に限りがあるからな。何度も何度も実験とか確認とかで消費させられるよりはよっぽどいいや) ④また、横島が自身で持っていた能力の他に、使い魔契約をした事によって特殊な能力が付与されているかもしれないらしい。 曰く、「武器を自在に操る能力」だとの事。これからその確認をしてみるが、もし万が一そうであっても、「能力」自体はやっぱり隠しておく事。 と言う事で、ロングビルが『錬金』したナイフを横島が触って見る事になったが… 彼が触ると、ほのかに彼の左手のルーンが光を発した。 「おお。これはやはりガンダールヴの可能性が高いですぞ! それでヨコシマ君、どんな気分ですかな!?」 「ちょっと待って下さい」 (ナイフの使い方なんて勉強した事ないんだけどなー それが分かるってのは不思議な気分だけど… それはあんまり問題じゃないよな。一番は…) 頭に思い浮かんだ、一番使いやすい持ち方でナイフを持ち直して、しっかり握る。 わずかだがルーンの発光が強くなった気がした。 少し皆と離れてみて、振り回してみる。 一通り試してみた後、最後にハンズ・オブ・グローリーを出してみる。 上手く集中できず、出すのに10秒ほどかかってしまい… そして最後に、霊波刀状態のハンズ・オブ・グローリーでナイフを両断すると、ルーンの発光も止んでしまった。 「えーと… なんていうか、確かにナイフの効果的な使い方とか、知らないはずの知識が思い浮かんだり… 体が多少軽くなったりとか、そういった効果が出てます。ただ…」 「他に何かあるのですか、ヨコシマ君?」 「いつもなら瞬時に使えるはずなんすよね、ハンズ・オブ・グローリーって。 でも、さっきは作り出すのにかなり集中力が必要になって… まぁ代わりに威力がすごい事になってるんすけど」 「では最初から作り出しておいたらどうなるのでしょう?」 そう言って再びナイフを錬金するロングビルと、霊波刀を改めて作りなおす横島。そしてナイフを触ると… 「な、何だこれ!? くっ …ダメや」 徐々に霊波刀の光が薄くなり、10秒ほど後には解除されてしまった。 再度、10秒ほどかけて発動した後… しばらくうんうん唸っていたが、最後にナイフを両断してルーンの発光が解除される。 その後、霊波刀状態から篭手状態に変えてみたり、また戻してみたりして、そして能力解除をする。 「ダメっすね。最初に作り出していても、それを維持出来なかったす。 後、一旦作り出したらどうも形の変更とかも出来ないみたいでしたし。 それと思い出したんすけど、これと少しだけ似たような現象起こす物知ってます。 俺が前いたところにあった霊刀・妖刀といった類の武器の中には、霊力を吸い取ったりする物があるんすけど… そういった物に霊力を吸われた感触が、このナイフからも少しですけどしました。 やっぱりこれもそのガンダールヴって物の影響なんすかね?」 いくら魔法で作られたナイフだとは言え、そんな能力が付いているわけでもなく。 良く分からないが、そういう物なんだろう、と言う事になった。 結局、横島は凄腕の傭兵、という形で対外的には説明する事となる。 横島自身は 「俺はGSっす。悪霊退治はした事があっても、人間相手となんか数えるほどしかやった事ないっすよ?」 と言っていたが、悪霊なんていうオカルト話は、どうせ誰も信じないから言うのは構わないが意味は無い、と言われてしまった。 「さて、これで話は終わりじゃ。 ミス・ヴァリエール、繰り返しになるが… 彼は自分の能力がいかに特異な物であるかという事がさっぱり分かっておらんかったようじゃ。 一応釘をさしたとは言え、お主の方からもしっかり気を配っておくように」 本人の前で言うにはいかにもはっきりしすぎだろー!? と横島は思ったが、まさか色気に負けて調子に乗ってたと言うわけにもいかなかったので、黙っているしかなかった。 学院長室からルイズの部屋へ戻った二人。 授業に関しては次の時間から出席する事にしたらしく、横島に平民の貴族への態度を教え込もうとするルイズだったが… 「分かった分かったって。他の貴族を呼ぶときは、『ミスタ・ミス・ミセス』のどれかをつけて、ルイズちゃんを呼ぶときは『ルイズ様』。 それで、出来るだけ丁寧に話すって事だろ」 …いまいち効果のほどが実感できなかったので、そうそうに切り上げる事にした。 その代わりに、「霊能」というものについて聞いてみる事にする。 血筋が全く関係ないわけではないけれども、多かれ少なかれ万人が持っている力という話に少し興味を惹かれた。 (でも、はっきり目に見える形に出来る人はやっぱり少ないって言う事で残念な気になった) いい血筋に生まれ、力も大きいのにいつもうまく力を扱えなくて暴走ばかりさせてる人の話を聞いたときは、不覚にも涙が出てきてしまった。 バンパイア・ハーフの友達が居る、なんて事を言った時には、「何でもかんでも信じると思ったら大間違いよ」と言ってやった。 信じてくれたっていいだろ、と喚いていたけど、信じろっていう方が無理よ。やっぱりこいつはバカね。 人への変身能力を持っている狼や狐がいるって言われたときは、思わずそっちが召喚されれば良かったのに、と愚痴ってみたりもしたけど、 「毎日毎日朝早くに起こされて、50kmも散歩に付き合わされたり、金欠で明日の食事もままならない時に、遠慮のひとかけらもなく油揚げをたかって来るんだぞ。やめておけ」 って言われた。 でも、そう言いながらもどこか楽しそうな口調だったから、きっと仲は良かったんだろうな、と思う。 それと同時に… 私にはそう言った人がほとんどいない事に気付く。全くってわけじゃないけれど、少なくともここにはいない。 そう思ったら、ちょっと悲しくなってきて… これ以上話を聞くのが辛くなったので、少し早いけれども夕食へ行かせる。 本来の夕食時は、厨房だってかなり忙しくなるから、あんまり迷惑にならない今のうちに行ってきなさい、と。 そうして一人になって… 私は少しだけ泣いて、それから顔を洗って、食堂へ向う。 途中でキュルケに会って、心配してるんだかバカにしているんだか良く分からない絡み方をされたけれども、それでも嬉しくなって、気付いたら涙ぐんでいた。 それを見たキュルケは何故か慌ててて(慌てるくらいなら、バカにしたような事言わなければいいのに)、ちょっとおかしくなって笑ってしまった。 そんな事があって、(今日の夕食は、きっといつもよりおいしい気がする)と思いながら、始祖ブリミルに食事前の祈りをささげたのだった。 前ページ次ページ虚無を担う女、文珠を使う男
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ルイズ「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 ドカーン! ルイズ「やった、成功したわ!」 抜作「いきなり尻見せ!」 ルイズ「みせるなぁ!」ドカーン! 抜作はルイズに吹っ飛ばされました。 翌日・・・ 抜作「それでは授業を始めまーす」 ルイズ「なんでアンタが先生をやってんのよ!」 抜作「うるさい、文庫小説で深夜アニメのくせに。こっちは週刊誌連載でフジの土曜ゴールデンタイム放送だぞ!」 ルイズ「ワケ分かんない事言ってんじゃ無いわよ!」 抜作「では授業を続けます」 ルイズ「聞きなさいよ!」 抜作「練金のお手本をみせるので後でみなさんにもやって貰います」 むむむむむむ・・・・パァーン! 抜作の頭が爆発しました。 抜作「では、ルイズさん、やってみて下さい」 ルイズ「出来るかぁ!」 予告状 魔法学院様へ 今夜、宝物庫にある不老長寿の巻物を 盗みに参上します。 怪盗とんちんかん オスマン「おのれ、怪盗とんちんかんめ!」 コルベール「ノリノリですな」 オスマン「そうでも無いわい。えらく久々なセリフでけっこうドキドキだったんじゃぞ」 『あーはっはっはっは!』 オスマン「何者じゃ!」 『微熱のレッド!』 『風雪のシロン…』 『青銅のグリーン!』 『『『怪盗・とんちんかん、参上!』』』 抜作「そして私がリーダーです」 ルイズ「あっ、怪しい・・・」 オスマン「ええい、衛兵ども、とんちんかんを捕まえるのだ」 衛兵「「「わーっ」」」 ドカ、バキ、グシャ、 オスマン「ええい役立たずの衛兵どもめ、予定通りにやられおって!こうなればワシ自ら・・・はっ、アナタは!」 抜作「キミは!」 オスマン「先生!」 抜作「オスマン君!」 オスマン「いやぁ、懐かしいですねぇ先生、300年ぶりでしょうか・・・」 抜作「ところでオスマン君」 オスマン「はい、何でしょう先生。」 抜作「不老長寿の巻物を下さい」 オスマン「はい、どうぞ」 レッド「ね、リーダー、巻物にはなんて書いてあるの?」 シロン「・・・。」 『長生きの方法 死ななければよい』 グリーン「は?」 シロン「・・・。」 抜作「はっ、しまった。これは私が昔書いたものだった!」
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前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~ 初日 さて、私は遂に念願の使い魔を召喚したわけですが、 「こんな小さいゴーレムなんてハズレよね~~」 私が召喚したゴーレムは丸いボディに4本の折りたたみ収納式の足。 見た目はちょっとカワイイが、役に立つかどうかは疑問なゴーレムだった。 しかもコイツときたら立派なヒゲ、の落書きまでしてあったりする。あきらかに誰かの所有物だ。 なんでもここに来る前は保育園の子供たちの世話をしていたらしい。名前はグランパ。 見た目はカワイイので適役だろう。 とりあえず洗濯を命じて、床で寝させた。 次の日 授業に出て部屋に帰ってきたらベッドが2つになっていた。 なんでもゴーレムが一晩で作ったそうだ。器用な奴だ。 よっぽど床で寝ろといったのが気に入らなかったらしい。 ゴーレムなのに飲み食いもするし眠気も覚えるし、トイレにも行く。 コイツは一体なんなんだろう? ちなみにベッドは私のベッドよりもふかふかで寝心地が良かった。なんかムカツク。 でも、なんだかスイッチとかボタンとかいうでっぱりが多く、不審な感じだった。 押し込んだら光ながらぐるぐる回った。ナニコレ。 次の日 部屋に戻ると壊れていた椅子が新品に直っていた。 ただ、座るとなぜか90度回転して机に向かわせる機能は必要ないと思う。この辺無駄に器用だ。 でもまあ、なかなかやるじゃないと褒めたらなぜか『おちゃ』というのをくれた。 東方の茶葉で貴重品のはずだが、どうやってもってきたんだろう? 次の日 私の窓の所にひさし状の屋根がついた。 しかもただの屋根じゃなく、金属製で鏡張りのぎらぎらしたヤツだ。 作って取り付けたのはもちろん丸いアイツ。 なんでもこれでグランパの稼動に必要なエネルギーが得られるらしい。 太陽光発電というらしい。よくわからない。 次の日 水汲み場付近に変なオブジェクトが建設された。 なんでも『こいんらんどり~』というものらしい。かなり器用な奴だ。 金貨を入れてスイッチを押して蓋を閉めると勝手に洗濯し、乾燥までしてくれるらしい。 しかし、カゴ一つの洗濯物を洗うのに、風呂ぐらいの水を使うのは経済的じゃないと思う。 洗濯に金貨一枚というのも暴利だと思う。 やはり私のゴーレムはどこか抜けている。 ありがたがって使ってたのは男やもめ40歳のコルベール先生だけだった。 ありゃ勝手に洗濯してくれる箱が珍しいだけだよね。 洗濯物をかき集めては入れるを繰り返してる。 ナニがそんなに楽しいのか。 おや? ポ~~~ン コルベールが水汲み場で倒れました。 次の日 私の部屋にまた変な箱ができていた。 スイッチを押すと勝手に『こーひー』というものが出てくるらしい。 まためずらしいものだ。これもまたお茶と同じく遠い土地でしか取れないものではなかったか? 早速飲んでみる。入れたては熱い。これも驚きだ。いただきます。 うげっ 苦い。ダメです。超甘党ではしばみ嫌いの私には飲めません。 普通は砂糖とミルクで味付けするらしい。貴重品なので手に入らなかったそうだ。 グランパはなぜかうれしそうにして真っ黒なこーひーを飲んでいた。 これって私のためじゃなくて、アンタが飲みたくて作ったんじゃないの? ある日 ふと気づくとゴーレムが2体に増えていた。 どうやって増えたのかを問い詰める。 平民の職人みたいに材料を加工して、切ったり繋げたり縫ったりして作り上げたそうだ。 メイジが杖を振ってちょいちょいで5秒で出来ることに1日かけたそうだ。無駄なことをしている。 こいんらんどり~の金額が金貨じゃなく銅貨1枚になっていた。 1週間後 ゴーレムの数はネズミ算式に増えてもう100体を越えていた。 え~~~~?ナニよソレは? 倍々ゲームで増えて言ってるわけ? 1日で倍に増えるとして、2の7乗だから128…………… この調子で増えると1月後には億とか兆の数になってる? まさかね。 次の日 皆さんお待ちかねぇ~~~ 今日の対戦相手はギーシュ・ド・グラモン。 拾われた香水の件で決闘を開いてくれました。 「僕はメイジなので魔法でお相手しよう」 「我々はBALLSなので物量でお相手しよう」 7対200というイジメみたいな状況が始まった。 この時点で物量差がおかしすぎるとか言わない時点で、ギーシュは軍人として大成できないだろうなと『こーらー』を飲みながら思った。 いくらメイジでも200のゴーレムは相手にしたらダメだった。なんせギーシュもゴーレム使いだったしね。戦争は数だよ兄貴。 女性型ゴーレムのワルキューレに30近いゴーレムがまとわりついて、浴びせ倒しを見舞うのは凌辱的光景だった。 ギーシュは50近いゴーレムにぐるりと囲まれて生きた心地がしないようだった。 決闘後、なぜかグランパがメイドと仲良くなっていた。一緒に部屋に行ってナニをしていたんだろう? 次の日 ゴーレムがハズレじゃなかったので調子に乗ってたら、錬金の失敗で教室を大破させてしまった。 ポ~~~ン シュヴルーズが教室で倒れました。 それはもういいって 罰として、ゴーレムと総出で直した。 が、 「ミスヴァリエール、私は片付けろとは言いましたが、リフォームしろとまでは言わなかったはずです」 ゴミ捨てに目を放していた隙に、なんだか教室がビバ!近未来な感じにリフォームされてました。 なんか金属質な床、勝手に開いたり閉まったりするドア、 ランプもないのに光ってる照明、色んな風景を映し出してるガラス板。 机は木からなにかの樹脂を固めたものになり、机の下の引き出しを引き出すと文字盤が並んでいる。 「すごいよこの教室!机に教科書乗せると、内容がガラス板に映し出されるYO!!」 コルベール先生は今にも脱糞しそうなぐらいのはしゃぎっぷりだ。自重しろ40歳。 机の上の文字盤を押すと色々なものが表示されるようだ。 あ、この机でババ抜きと七並べができるのか。 他にはせーれーきどーだんとかおれのしかばねをこえていけとかわけのわからない遊び道具が入っているらしい。 今頃気づいたんだけど、器用の域を超えてるよね。 ただ、私が実技をしようとすると自動で出てくる防火シャッターと金属防御壁、緊急サイレンはムカついた。 対火対爆使用なんだそうだ。 もろともに吹っ飛ばされたのがそんなにイヤだったか。 ポ~~ン コルベールが教室で倒れました。 1月後 ゴーレムはとりあえず100万までで自重したらしい。 学園内にきっちり101体置き、残りはどこかに旅立っていった。どこいったんだろ。 なお、他のメイジがゴーレムに頼みごとをすると、たいていは聞いてくれているらしい。 ただ、ふつうに使用人に頼んだ方が効率も確実性も高いのが玉に瑕だそうだ。 料理はこげてたり半生だったりしてかろうじて食べられるレベルだった。 あと話しかけるとやっぱりたまにお茶をくれる。なんで? ある日 破壊の杖が盗まれた! とりあえず教師たちが見回りのサボりの件で責任を押し付けあってると、ゴーレムたちが盗まれたはずの破壊の杖を持ってきた。 「これは……いや、形は似ているが、新しすぎる。ニセモノじゃな」 カチ ど~~ん ゴーレムは学園長室の窓から破壊の杖を作動させた。庭にどでかいクレーターができた。 みんな唖然。私も唖然。学園長入れ歯吹き唖然。 私の失敗魔法の数十倍の規模の爆発は、破壊の杖が本物だということを証明した。 なんでもこのゴーレムたちは盗まれてから4時間で破壊の杖そのものを作ってしまったらしい。 作り直せば事態は解決するもんでもないと思うがそこはそれ、メンツは守れるか? どうも破壊の杖がなくなって困った困ったと言ってるのが、ゴーレムたちの奉仕精神を刺激したらしい。 元々短い時間で安く大量生産できるように簡単なつくりをしていた武器だそうなので、ゴーレムたちには楽に作れたらしい。 楽に伝説の杖を作ってしまう辺り、おかしいぐらい器用だと思う。 その後、馬で片道4時間かかる距離を4時間で往復して、ついでに聞き込みまでしてきたと言ったミス・ロングビルがお縄になっていた。 みんな落ち着いて考えたらおかしいな~~と思うよね~~。 まあ実はゴーレムがフーケが盗むところを見ていて、その記憶を『てれびじょん』に映してたら、ゴーレム動かしてたのがロングビルだとばれた訳ですが。 そんなタイミングでフーケを見つけたと駆け込んできたロングビルは間が悪い。 ゴーレムは学園内だけで百いるからどこかに必ず1体はいるもんね。教師の見回りはやっぱり必要ないみたいだ ポ~~ン ロングビルが学園からいなくなりました。 前ページ次ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~