約 4,199,167 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5186.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました―第16話― 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 ギトーと名乗った教師が呪文を唱える。 それが完成した瞬間、ギトーが二人に増えた。 生徒達からは、げえっ、と不満そうな声が上がった。 サララはそんな情景を見て驚いて声を上げそうになった。 「「さて、これが風の『遍在』だ。風の魔法が最強たる所以の一つだな」」 二人のギトーが声を重ねながら説明した。 だが次の瞬間には片方のギトーが掻き消えた。 「もっとも、最強とはいえ弱点もある。遍在は精神力の消耗が激しい。 こういった授業の時に、あまり長く出しておくわけにもいかない」 一人に戻ったギトーが淡々と説明を続ける。 「さて、この『遍在』だが意志によって存在する距離を伸ばすことができる。 当然だな。魔法の強さは精神の強さによってその威力が変わる。 遍在の場合は、その発動距離が変わるということだ」 黒板に何事かが書き込まれ、生徒達はそれを書き写す。 あれ何が書いてあるんですか、とサララは小声でルイズに尋ねる。 「『意志の強さは精神力であり、精神力と遍在を出せる距離は比例する』よ」 成程、とサララは納得した。サララの知る魔法も、行使者の賢さに比例し威力が上がる。 それと同じようなものだろう、と理解した。 「ミス・ヴァリエール! 使い魔とのお喋りは慎みたまえ!」 ルイズの私語に気づいたギトーがぎろり、と睨みを聞かせた。 「も、申し訳ありません、ミスタ・ギトー」 慌てて、席から立ち上がった。 「お喋りをしているということは、理解できているということだな。 では教えてもらおうか。風の魔法の最強たる所以の一つは先ほどあげた遍在。 もう一つは見えずとも諸君らを守る盾となりうること」 ギトーはかつかつとチョークで黒板に書き込む。 「ではもう一つが何かは……分かるかね?」 その言葉に立ち上がっていたルイズは、はた、と考え込む。 ずっと以前。その言葉を何処かで聞いた気がするのだ。 本で読んだのだっただろうか……と考える。 それに思い当たって、あ、と小さく声を上げた。 「必要とあらば敵を吹き飛ばす矛となること……ですか?」 ルイズがおそるおそる答えると、ギトーがふん、と鼻を鳴らす。 「正解だ。……それは母君の教育の賜物であろうな。座ってよろしい」 その声にいくらか満足そうなものが含まれる。 黒板にその答えを書き示していくギトー。 ペンが走る音の中で、あの地獄耳、と呟くルイズの小さな声が耳に届く。 そんな彼女の声を聞きながら、ギトーはニヤリと笑った。 風のメイジ、それもスクウェアに近いトライアングルである彼にとって、 教室にいる生徒の声を拾うことなど造作もないことだ。 授業を続けながら、彼は追憶する。 彼が風を最強だと思うようになったのにはある理由がある。 幼い頃、友人たちと遠出をし、橋のたもとで遊んでいた時のことである。 突如として爆音が鳴り響き、あちこちから馬の蹄の音が響いた。 彼は知らなかったが、近くに住む貴族が反乱を起こし、そこは戦場となったのである。 そんな彼を救ったのは、烈風をまとった一人の騎士であった。 マンティコアにまたがった騎士は、彼の見る前で敵を殲滅していった。 自分もあのように強い風のメイジになるのだ、と幼い日の彼は心に誓った。 先ほどあげた言葉は、その騎士が彼に聞かせてくれたものである。 その騎士の正体が、今のルイズのように年若くスレンダーな体つきの美少女だったのが 純朴な少年だったギトーの心を刺激しなかった、といえば嘘になろうが。 姫殿下を出迎えた時、とりたてて変わったことはなかった。 ただ、ルイズが傍に控えた騎士の顔を見て、顔面が蒼白になったくらいである。 「あのお姫様も、綺麗な人だったねえ。まるでオーロラ姫みたいだ」 チョコの言葉に、サララは何度かお目通りしたことがある城の姫を思い出す。 青とも緑ともつかぬ深く美しい波打つ髪に、透き通るような白い肌。 星の光を宿したかのようにきらめく瞳。実に美しく、可愛らしい女性だった。 そういえば、彼女の小鳥は王宮で元気にやっているだろうか。 今頃は綺麗な金色に戻っているのかな……と思いを馳せていた。 騎士を見て以降ぼけーっとしたままのルイズと、 思い出に浸りながらぼけーっとしたままのサララと 眠くなってきてぼけーっとしているチョコ。 そんな穏やかな時間を壊したのは、一つのノックの音だった。 初めに長く二回、それから短く三回……。 「誰だろ?」 眠たげに目を半開きにしてチョコが呟く。 ルイズの顔がはっとした顔になった。急いで立ち上がり、ドアを開く。 そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった少女だった。 辺りをうかがうように首を回すとそそくさと部屋に入り、後ろでに扉を閉めた。 彼女は、しっ、と言わんばかりに口元に指を立てた。 それから、頭巾と同じ漆黒のマントの隙間から、魔法の杖を取り出し、 短くルーンと唱えながら振った。光の粉が、部屋に舞う。 「……ディテクトマジック?」 ルイズが尋ねた。少女は頷く。 「昔から壁には耳があり窓にはメアリーがいると聞きますから。 聞かれたくない話をするには注意をしないと……」 「こっちの慣用句には詳しくないけどそれ違うと思うよ」 少女の言葉に対するチョコの突っ込みは流された。 部屋のどこにも聞き耳を立てる魔法の耳や覗き穴がないことを確認し、少女は頭巾をとる。 「ひ、姫殿下!」 現れたのはアンリエッタ王女その人であった。ルイズは慌てて膝をつく。 サララもそれにならって膝をついた。 アンリエッタは涼しげな、心地よい声でいった。 「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」 アンリエッタとルイズは、再会を祝して抱き合いながら昔話に花を咲かせている。 楽しそうだなあ、とサララはニコニコしながらそれを見ていた。 「……まるで劇を見てるみたいだね」 二人の大げさな動きに、チョコはちょっぴり呆れ気味だ。 「それで、姫さま、何かお話ししたいことがあるのでわ?」 ある程度はしゃいだ後で、ルイズが真剣な眼差しで彼女を見る。 その視線に少し戸惑うものの、やがてアンリエッタは彼女を見つめ返した。 「ええ。……単刀直入に言いますわ、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール。 あなたと……あなたの使い魔に、一つ命令を下したいのです」 いきなり自分が話題に出てきて、サララが目を丸くする。見えないが。 「ひ、姫さま、どうしてサララを、私の使い魔のことを?」 ルイズが驚きながら問いかける。 「土くれのフーケを追い詰めた異国の魔道具使い、という報告が 私の耳にも届いていましてよ」 王女はサララをちらりと見やった後で、再び向き直る。 「あなた方の実力を見越して頼みがあります。 非公式ですが、命令ということになりますわ」 ちょっと逡巡しながらも、アンリエッタは言葉を続ける。 「……命にかかわる任務です。断るなら今しかありませんよ。 ああ、けれど、あなたに断られたら身の破滅ですわ!」 よよよ、と目元をぬぐうアンリエッタ。 「わ、分かりましたわ! いかな困難があろうとも、このルイズ! あと使い魔のサララとチョコ! その任務を果たしてみせます!」 ルイズが薄い胸をどん、と叩いて意気込んだ。 「ああ、ありがとうルイズ……! では説明させてちょうだい」 アンリエッタは涙を拭くと、説明を始めた。 「実は王宮の中で、私とゲルマニアの皇帝の婚姻による、 対レコンキスタへの同盟の話が持ち上がっているのです」 「あの成り上がりの国とですって!」 ルイズが腹を立てて叫んだ。ゲルマニア……とサララ思い出す。 確か、隣室のキュルケの故郷ではなかっただろうか? そういえば、彼女の国では魔法が使えなくとも貴族になれる、とか聞いた気がする。 まあ成り上がりといえないこともないかな、と思う。 「レコンキスタって何? 怪物?」 チョコの問いかけにルイズが答える。 「細かいことは宗教とか関わるから説明しないでおくと、 王家を滅ぼそうとする集団のことよ」 「そんなのがあるんだ……」 平和ボケしたチョコの言葉にちょっと頭を抱えたくなるルイズ。 一体どれだけ平和な人生だったのよ……と遠い目をしたくなった。 「ゲルマニアでは今、たちの悪い病が流行っているとかで、 まだ本格的な話にはなっていませんわ。けれど……もし本格的に 話が進んだとしたら、一つ懸念があるのです」 アンリエッタは目を伏せた。 「それは……アルビオンの皇太子ウェールズ・テューダー様にしたためた一通の手紙です。 その中で私は、……彼への愛を始祖に誓ったのです。 ああ、この愚かな姫をブリミルよお許しください……」 あまりの後悔に目を閉じているアンリエッタを見て、ルイズは時が止まった。 「ひひひ、姫さま、何を暴露なさってるんですか!」 サララにも、何となく彼女がマズいこと言った、という雰囲気だけが伝わる。 「始祖に誓うって、それ、結婚の約束じゃないですか!」 「ええ、そうなのです。そんなものがレコンキスタの手に渡ったら、 ゲルマニアと婚姻なんて結ぶことができなくなりますわ! というわけで、ルイズ。ウェールズ様にあって、 手紙を取り戻してきてください。……あなたにもお願いできますか、サララさん」 アンリエッタに向き直られて、サララはしばし考え込んだものの、こくり、と頷いた。 「えー受けちゃうの? まったく、サララったらお人よしだなあ。 わかったよ。ボクもついていくよ。ボクはサララのパートナーだからね」 「ではその任務、この僕にもお任せください!」 バンッ! と扉を開け、少年が転がるように入り込んできた。 「え、ええっと、あなたは?」 アンリエッタは驚きのあまり目を瞬かせている。 「ギーシュ・ド・グラモン! 元帥の息子です! その任務お任せください!」 ギーシュは美しい姫を目の前にして、目をらんらんと輝かせている。 「わ、分かりましたわ、ミスタ・グラモン」 その勢いに押されながら、アンリエッタは微笑む。 「姫殿下が! 僕に! 微笑んで!」 ギーシュは感激のあまりその場に倒れこんで気絶しそうだった。 「……では殿下。明日の朝出発するといたします。 できるだけ他人に知られない方がよろしいのでしょう?」 「ええ。ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスルの辺りに 陣を構えていると聞き及びます。どうか気をつけて……」 アンリエッタは、胸元から一通の手紙を取り出した。 「これは、王子に件の手紙を返していただけるようしたためたものです。 その花押を見れば、私の手紙だ、とお分かりいただけるはずですわ」 それから、右手の薬指から指輪を引き抜くとルイズに手渡した。 「母君からいただいた、王家に伝わる『水のルビー』です。 身分を証明するよう求められたら、これをウェールズ様にお見せください。 ……旅費には、少ないですがこれを持って行ってちょうだい。 私が自由に出来るお金を集めていたものですわ」 アンリエッタはさらに貨幣がいくらか詰まった布袋を渡した。 一体どこにしまってたんだろう、とサララは思ったが、 費用があるに越したことはないので、受け取っておくことにしましょう、と ルイズに進言した。ルイズが、それを受け取る。 「この任務には、この国の未来がかかっていますわ。どうか、あなた方に 始祖のお守りがありますように……」 その言葉を受けて、ルイズとサララは深く頭を下げた。 姫は自室に帰り、ルイズも明日に備えて早く寝ようとベッドにもぐりこむ。 サララは一人、とてもワクワクしていた。 土くれのフーケ退治どころではない遠出、しかも王宮からの依頼だ。 あの可愛らしいお姫様を助けてあげられるし、成功すれば それ相応の報酬が出るに違いない、と思い胸が高鳴る。 彼女は鍋と袋の中身を整理し始めた。 戦場の真っ只中に行くというのだから、傷を治す道具は必要だろうし、 それ相応の装備を身につけねばなるまい。 いつものワンピースの下に、一枚のシャツを着よう、とそれを取り出す。 傷を治すために、魔法の音色を奏でるオルゴールを取り出す。 それから……、と彼女は一振りの剣を取り出した。 水色の刀身をした剣は、今日授業で見た魔法に対して、 効果が期待できる、とサララが予測したものだ。 しばらく鍋をごそごそと漁った後で、これでよし、と袋の口を締める。 明日からは一体、どんな冒険が待っているんだろうか。 気分を高揚させたまま、ベッドに入り目を閉じる。 ふと、瞼の裏に浮かんだアンリエッタと、金色の小鳥が重なった。 ああ、アンリエッタはあの小鳥なのだ、とぼんやり思った。 退屈なお城の生活から抜け出そうと、飛び立った小鳥。 だが世界は思ったよりも辛いものだった。 それでも、懸命に生きようとしている、小鳥なのだ、と、 まどろみの中で、サララはそんなことを考えるのだった。 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/jiisan/
赤坂じいさんの奥様がかねて療養中のところ、乳がんから肝臓転移のため 6月19日15時12分ご逝去されました。(享年48歳) 2000年の秋に発病以来4回にわたる入院、加療といつも献身的に看病されていました。 心よりご冥福をお祈り申し上げます。 経緯は 娘がガンにおかされました ガンでも元気に生きる 高校の友人を代表して、お通夜・告別式に参列してまいりました。 友人一同で生花をご霊前へお供えしましたので、ご報告申し上げます。(管理人) 娘の腕にガン(骨肉腫)が発見されたのは、2003年9月のことです。 娘は当時中学1年でした。 あの絶望の宣告から、まもなく3年を迎えようとしています。 娘は高校1年生になりました。もちろん毎日元気に、学校に通っています。 しかし入学早々、左腕に骨折があることが、判明しました。 本人には、あまり自覚症状はなく、レントゲン検査により、わかったのです。 疲労骨折と診断されました。 治療方法としては、骨折部分を中心に、上下15cmくらい骨を取り除き、その部分に新たに人工骨を、いれるといものでした。 病変部であるので、通常の治療(ギブスをして、骨の再生を待つ)は、難しいのではないかという、先生のご意見でした。 私は悩みました。 骨折の治療とはいえ、その術式は、骨肉腫の手術そのものです。 もともと肺に転移がみつかったので、手術を中止にした、いきさつもあります。 今がとても元気なのだから、ほっておいて様子を見るという、選択肢もありましたが、骨折が自然に治る見込みは、ほとんどなさそうです。 手術にふみきりました。 そして娘は、この試練も乗り越えてくれたようです。 切り取った病変部から、全くガン細胞がみつからなかったという、奇跡とともに………。 術後の肺のCT検査でも、腫瘍はさらに、縮退傾向にあるとのことでした。 もちろんまだ完全に、安心することはできません。 私にできるのは、その時々で、最善と思われる方法を、娘に選択してあげることだけです。 そのためには、もっといろいろなことを、勉強していかなければと思っています。 少しだけ、キーボードの操作もできるようになりました。 これからもまだHPは、発展する予定です。 管理人さんには、迷惑のかけどうしですが、これからもよろしくお願いします。 ご感想・ご意見がございましたら、以下のフォームよりお願いいたします。 第6章 多細胞生物の生と死4. ガ ン 9・10 追加しました。「第6章 多細胞生物の生と死」「4. ガ ン」 が完結しました。「5.常識への挑戦」 が続きます。ご期待ください。-- (管理人) 2006-11-19 11 29 09 第6章 多細胞生物の生と死5. 常識への挑戦 始まりました。-- (管理人) 2006-11-19 11 46 12 第6章 多細胞生物の生と死5. 常識への挑戦 6・7・8・9・10追加しました。-- (管理人) 2007-02-02 21 29 00 第6章 多細胞生物の生と死5. 常識への挑戦 11・12・13追加しました。-- (管理人) 2007-04-07 14 11 29 「娘がガンにおかされました」管理人 赤坂じいさん様はじめまして 私はガンと闘う人のコミュニティサイト「エノク」(http //www.henok.jp)管理人です。貴サイト「娘がガンにおかされました」を拝見いたしました。とても役に立つサイトですね。多くの方々にご覧いただきたいと思いました。事後報告で大変恐縮ですが、勝手ながらリンクを張らせていただきました。ご了承いただければ幸いです。(もしもご迷惑でしたら、すぐに削除等の対応をいたしますので、お手数ですがご一報いただければと思います。)自己紹介をいたします。私事ですが、母が最近直腸がんになり、インターネット等で色々と調べる中で、患者と家族を取り巻く環境の中にとても不便なことが多いのに気づきました。そして患者や家族の間の情報交換でこれを解決できるのではないか?と思い、コミュニティサイト「エノク」を作りました。ひとりひとりの個人の力はとても弱いですが、個人の声を集めれば大きなうねりになると思い、この様なサイトを構築しています。◎リンク集 小児がん(http //www.henok.jp/link12.shtml)貴サイト名 :「娘がガンにおかされました」貴サイトURL:(http //www6.atwiki.jp/jiisan)上記の登録内容に問題がありましたら、訂正いたしますのでよろしくお願い申し上げます。また大変恐縮ですが、もし相互リンクをお願いできましたら、下記の内容でお願いします。サイト名:「ガンと闘う人のコミュニティ掲示板 エノク」URL:(http //www.henok.jp)サイト紹介文:日本中の「ガン」と闘う人が安心して情報や気持ちを交流できるコミュニティサイト もしお許しいただけましたら、「娘がガンにおかされました」管理人赤坂じいさん様に今後もご指導をお願いできればと思っております。色々なご要望を取り入れて皆様に愛されるサイトにしていきたいと思っています。ご縁がありますことを切に祈っております。◎「ガンと闘う人のコミュニティ エノク」管理人 e-mail info@henok.jp-- (エノク管理人) 2007-05-26 00 53 10 第6章 多細胞生物の生と死5. 常識への挑戦 14・15・16・17を追加し「5.常識への挑戦」 が完結しました。6. 自律神経1 が続きます。ご期待ください。 -- ( (管理人) ) 2007-05-31 17 43 54 - ガンでも元気に生きる 奥様のご逝去を悼み、赤坂じいさんがYahoo!掲示板に“ブログ風”に綴った、奥さんと娘さんの記述を取り上げて、残してみました。 性格上、相手方の質問や投稿は省いてありますので、わかりにくいところもありますが、ご判断ください。 -- (管理人) 2008-06-23 19 31 40 自分のサイトにまとめておくといいのではないかな?w という方がおりましたので、すべて丸ごと掲載してもらいます。 -- (赤坂じいさん) 2008-06-28 23 49 18 娘のガンが再発しました。 甲状腺がんです -- (赤坂じいさん) 2009-09-23 18 00 24 12月6日、久しぶりに、赤坂じいさんと管理人が面会しました。 「老化」について話をしました。 -- (管理人) 2014-12-25 14 09 25 名前 コメント すべてのコメントを見る 訪問者数 - 今日 - 昨日 -
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8094.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました――第二十二話―― 「その剣は魔法を吸収するようだね、傭兵との戦いで見せてもらったよ」 杖を構えた三人のワルドが、呪文を唱える。 レイピアの形をした杖が、風の刃をまとう。ブレイドの呪文だ。 「だが、恐らくこの手の魔法は吸収できないのではないかね?」 ワルドがしたり顔でサララを見下ろす。 「……その通りだよ」 「こらー、馬鹿剣! 何バラしてるんだよ!」 思わず答えてしまったデルフリンガーに対し、チョコが憤る。 けれど、ルイズは少しほっとしていた。直接の斬り合いなら、まだまともに戦える。 サララは魔法が使えない。そのせいか、敵の魔法を上手く防ぐことができないのだ。 だから、遠距離からの攻撃魔法を使わない、という彼の宣言は正直ありがたかった。 思わず口元に笑みが浮かんでしまう。 「何を笑っているのかね!」 たん、と地面を蹴ってワルドの遍在が飛びかかってくる。 思ったよりも素早い動きだ。おそらく風の魔法を使ったのだろう。 一瞬うろたえながらも片方を避け、もう片方をデルフリンガーで受け止める。 「使い魔くん!」 「やらせはしないよ!」 彼女の劣勢を見てとったウェールズが手助けをしようとするが、 サララと戦っていないワルドが雷を発生させて、それを阻止した。 「きゃあ!」 「わわっ!」 「くっ!」 咄嗟に風の壁を作り出して直撃を防ぐ。 これが『雷の雲(ライトニング・クラウド)』であれば、 全員たちまち黒焦げになっていただろうが、奇襲が失敗した心の動揺と、 精神を遍在に裂いているせいで高ランクの呪文は使えなくなっている。 しかし、それもサララさえ倒してしまえばどうとでもなると、 ワルドはニヤリと笑った。 口が耳まで裂けているような錯覚に、ルイズは息を飲んだ。 一対多の戦いには慣れているサララだが、相手はモンスターではなく、 戦いに特化した騎士だ。やはり、商人であるサララにはいささか分が悪い。 なら、商人流の戦い方をするだけ、と猛攻を凌ぎながら袋に手を突っ込む。 その隙を見逃すワルドではない。それを阻止しようと腕を伸ばした途端だった。 勢いよく袋の中から手が引き出される。その指先には、白い布切れ。 しゅるり、と慣性のままに袋から飛び出してきたのは一巻きの包帯だ。 それが、まるで生きているかのように一体のワルドの動きを封じる。 「くそっ、何だこれはっ!」 魔法で切り裂くのが困難な程ぴっちりと体に巻き付いた包帯を解くため、 身を捩っていた彼の懐。何時の間にか、サララが入り込んでいた。 「なっ、速っ……」 ざしゅり、ざしゅり、とうろたえるワルドが三等分され、消滅していく。 本体ではなく遍在だったようだ。ふう、と一息吐く。 サララが使ったのは、『ミイラの包帯』と言われるアイテムだ。 ミイラの怨念とか色々なものが籠った包帯は、使用者の敵に絡みついて動きを留める。 魔法で出来た遍在にも効果があってよかった、とぶっつけ本番での使用が 上手くいったことに、安堵しつつ汗を拭う。 「ちっ、一体倒した程度で!」 その背後から、ワルドの遍在がもう一体、斬りかかる。 宙に跳び上がり、斬りかかりながら、ワルドの思考の片隅に疑問が湧いていた。 三等分された、遍在。素早さに自身がある彼にすら、おそらくあのようなことは出来ない。 であるにも関わらず、何故目の前の小娘にはそれが出来たのだろうか、と。 それを考えた瞬間、警鐘が鳴り響く。 ぶん、と何の小細工もなしに、振られた剣。 いかなる型もない、剣使いとしては全く素人の太刀筋だ。 リーチなら彼の方が上だ。恐るるに足りない。そのはずだった。 一度目の斬撃、ワルドの杖の先が斬り飛ばされた。 何時の間に、とうろたえても、動きは止まらない。 ワルドの体が射程距離に入った途端の、二の太刀。 「がはっ……馬鹿な、そんな……っ?!」 己の体験が信じられない、と茫然と目を見開いて、二体目の遍在も消えた。 それを見届けて、サララはほっ、と息を吐く。 緊張の余り汗が酷い。ワンピースの襟元を掴んでパタパタと動かす。 その下にちらりと、一枚のシャツが覗く。 これも、サララの持つアイテムの一つであり、特に入手場所が限られるお宝だ。 どういう理論かは全く解らないが、そのシャツは着た者にある力を与える。 どんな武具の使い手であっても、どんなど素人であっても、 達人のごとく、瞬時に敵に連撃を叩きこめる、力をだ。 このシャツに難点を挙げるならば、普通の服の下に着ることはできても、 鎧の類と共に身につけると、その効果を発揮しないことだろう。 加えて、その絵柄が人を選ぶ。何しろ、にっこりと笑った蛙の顔だ。 ルイズのように蛙が苦手な者なら、まず絵柄を見た途端悲鳴を上げるだろう。 「きゃああああああ!! 蛙ぅううううううう!!」 そう、丁度このように。 突如聞こえてきた悲鳴に、サララは慌ててルイズを見やった。 二体倒して油断していた自分に舌打ちする。 ルイズが襲われたのか、と振り向いたサララが見たものは、予想だにしないものだった。 「サササ、サララ、サララ、たたた、大変、大変なのっ!!」 涙目になったルイズと、ぽかん、とした表情の皇太子と驚いた顔のチョコ。 どうしたんですか、と聞くとルイズは涙ながらにびしり、と地面を指差した。 「わ、ワルドがっ、蛙になっちゃったのよぉおおおおお!!」 は? と首を傾げて、指差した先を見る。 「……げこ!?」 成程、確かに蛙が居た。蛙本人――いや、この場合は本蛙と呼ぶべきだろうか。 本蛙も、うろたえているようだ。 「さ、サララが遍在をやっつけたと思った途端、急に、急に、蛙に。 うーん、蛙……ワルド様が、蛙……」 倒れそうになったルイズを皇太子が慌てて支える。 「使い魔君、一体どうしたことだか、分かるかい?」 解りません、とサララも眉を潜める。 「そうか……君にも解らないのか……」 眉の動きは見えていなかったようだが、サララが困惑しているのは判ったらしい。 「……!? サララ、何か来るよ!」 ぴん、とチョコの髭が張る。その言葉に呼応したかのように、 教会の中に突如緑色の光が溢れた。 「く、何だこの光は!」 「きゃあ!」 「げこ?!」 目を焼かれないように顔を手で覆う。光が収まってから、数度瞬きをする。 人影が増えている、とルイズは察して、うっすらと目を開ける。 「んー、実験は成功のようでーす」 そうして、自分が見ているものが幻だと信じたかった。 青黒い肌。尖った口元。黄色い目。紫の服をまとったその小柄な人影は、 どう見ても人間の姿ではなかったからだ。 「おお、流石はエンペル様! 魔法陣による任意の空間への移動とは!」 その男に比べれば、その傍らに立つ姿には何処か安堵すら覚える。 何処にでも居そうな、極々平凡な司教の姿にしか見えない。 しかし、その姿を見たウェールズが、怒号を上げた。 「貴様、クロムウェル! 悪魔に魂を売ったとは真であったか!」 「クロムウェルですって!」 ルイズがその名にハッとして男を睨む。 クロムウェル。ウェールズ達王軍と敵対する貴族派、レコンキスタの首魁であった。 「や、ややや?! 何故ウェールズが生きているのだ! ええい、ワルドめ失敗したか!」 「げこ、げこげこ、げこっ!」 クロムウェルの足元で蛙が鳴く。 「む。おおう、どうやら人間共を蛙にする術に、こいつもかかってしまっていたようでーす」 エンペル、と呼ばれた悪魔は肩をすくめながらも、その表情は余裕綽々だ。 ニヤニヤと笑いながら、指先に光る青い指輪を見つめる。 「ふっふっふ。自分の才能が恐ろしいでーす! ダンジョンの中にあった古いテレポーターで、 異なる世界との扉を開き、さらにそこでこんな素晴らしいものを手に入れるなんて」 愉悦を堪え切れず、自分の世界に入ってしまったらしい。悪魔はケタケタ声を上げる。 「水の精霊から奪った、この指輪のおかげで、人間共をテキトーに操って、 テキトーに戦争させて、そうしてこの世界を手に入れるメドが付きました! ここの人間共の力を使えば、きっとあちらを魔族が征服する手助けになるでーす!」 「……つまり、その指輪を奪えば、この戦争は終わるってこと?」 チョコが尋ねると、エンペルが頷く。 魔族であるため、チョコの言葉を理解しているのだ。 「む、まあ、その通りでーす。でもー、あっちに住む、あの鬱陶しい ピンクの魔女さえいなければ、こっちではやりたい放題でー……」 そこまでペラペラと喋っていた悪魔は、その視界にサララを捉える。 ひゅう、と開いたままになった礼拝堂の扉から、生温い風が吹いた。 「げ、げげーっ! よくもこのエンペル様の秘密作戦を聞きましたね! というか、何故ここに居るのですかピンクの魔女!」 答える義理はありませんよ、と地面を蹴り、一気に懐へ飛び込む。 倒すつもりはあっても、殺すつもりはない。 デルフリンガーの刃で斬るのではなく、その重さでもって殴りかかる。 ごづん、と鈍い音を立てて、その横面を張り飛ばした。 「ぎゃあああああ!」 勢い良く吹き飛ばされ礼拝堂の壁にぶつかる。 小走りにサララはそこへ駆け寄る。 目を回している悪魔の指から、その指輪を抜き取った。 手にすると、ぽぅ、と額のルーンが強い光を発する。 自然と、サララの脳裏にそれの使い方が浮かんでくる。 それは、人間の体内の水を操る力が秘められた指輪だった。 怪我や病、それに呪いの類を浄化することが出来ると共に、 人の心を操ることも出来る、凄まじい力を持っているようだ。 これはその内、持ち主だという水の精霊に返しに行かねばならないだろう。 もっとも、幾度か使用してから、になるが。 サララは指輪を己の指にはめ、糸の切れた人形のように茫然としているクロムウェルと、 同じくぴくぴくと動いている蛙、ワルドに指輪の魔力を向けた。 今のサララの眼にははっきりと、二人が悪魔に魅了された状態である、と示す、 小さな雲のようなものが映っていたからだ。 ぽふん、と軽い発破音がし、煙が立ち上がる。 煙の中からは、ワルドが元の姿を現していた。 「はっ、僕は一体」 「わ、私はここで、一体、何を」 その隣で、クロムウェルもきょろきょろと辺りを見回している。 そして、二人はウェールズとルイズを見つけた。 さぁっと顔が青ざめ、がくがくと震え始めた。 「すいませんでしたぁああああ!」 次の瞬間には、ずざり、と並んで地面に頭を擦りつけていた。 「あ、悪魔に魅入られていたとはいえ、何と恐ろしいことをっ!」 「すまないルイズ、僕はどうにかしていたんだ! 君を殺そうとするなんて!」 口々に詫びの言葉を述べる二人。 どうやら操られていた間の記憶が残っているようだった。 「えーあー」 「えーっと」 突然の展開に、ウェールズとルイズは頭が付いていかない。 「うーん……は! 指輪を奪われてるでーす!」 その後ろで、頭を押さえながらふらふらとエンペルが身を起こし、 目の前に立つサララが指輪を手にしていることに気づいて、金切り声を上げた。 「ええい、魔女娘が居るなんて、この世界はとんでもないでーす! 指輪が奪われたから、洗脳も解けてしまってるでーす!」 むきぃ、とじだんだを踏みながら奇声を上げる。 「骨折り損のくたびれ儲けでーす! ええい、こうなれば戦略的撤退をして、 次回の対策を練るに限るでーす! 覚えてなさい魔女娘ーっ!」 ひゅいん、と奇妙な音を残して、悪魔の姿はかき消えた。 「……ウェールズ様」 「何かね」 「目の前で謝ってるのが、レコンキスタのトップですよね」 「そうだね」 「この蛙みたいに這い蹲ってるのが、レコンキスタのトップですよね」 「そうだね」 「洗脳解ける、ってあの悪魔言ってましたね」 「そうだね」 「……戦争、終わるんですかね」 「……戦争、終わるんだろうなあ」 呆けているルイズとウェールズを見ながら、サララとチョコは首を傾げる。 何でこの二人は、ぼんやりしているんだろう。 悪い奴をやっつけて、戦争が終わるんなら、喜ばしいことじゃないか、と トンデモ展開に慣れきった二人は、彼らの困惑が理解できないままだった。 礼拝堂の外から、バタバタと慌ただしい人の声が聞こえてくる。 恐らく、洗脳が溶けたレコンキスタが白旗を上げたのだろう。 「僕の今までの苦労とか、悲壮な覚悟とか、なんだったんだろうね」 ウェールズが、ぽつり、と呟いた。その口元は、ひくひくと歪んでいる。 「し、心中お察しします」 どうにかルイズが言葉をかける。 「……相棒達って、ホントーに平和な所から来たんだな」 首を傾げたままのサララとチョコに、デルフリンガーが呆れて声をかける。 「こんな方法で戦争を終わらせた奴なんざ、間違いなく前代未聞だぜ」 そう言われても、とサララは困る。 とりあえず、次に会った時にはエンペルに対してそれなりの対応をせねばなあと、 どうでもいいことを考えて、サララは意識をそらした。 具体的に言うと、今度お店に来た時は、少しオマケしてあげよう、と。 斬った張ったでどんぱちするけれど、常連客であるのは、間違いないのだから。 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/shosensyojodokusen/pages/343.html
◆世界でただ一人の魔物使い ~転職したら魔王に間違われました~ 漫画版13話、ぽっと出のサブ男がヒロイン二人の腰(尻)に抱き着いて頬ずりセクハラ。 その男はスカートめくってドロワーズに色気が無いと言ったり、軽口でデートを迫ったりもする。
https://w.atwiki.jp/llnj_ss/pages/628.html
元スレURL せつ菜「またかすみさんにイタズラされました!!」果林「好きな子ほどイタズラしたくなるって言うわよね」 概要 無邪気せつ菜 困惑かすみ 見守る果林 タグ ^[[電撃組]] ^短編 ^ほのぼの ^せつかす 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5075.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました―第15話― ルイズは、自分のベッドの上で夢を見ていた。 生まれ故郷のラ・ヴァリエールの屋敷が舞台だ。 その夢の中で、ルイズは今よりもずっと幼い姿をしている。 「ルイズ、ルイズ、どこへ行ったの? まだお説教は終わっていませんよ!」 母が騒ぐのが聞こえる。魔法の成績のいい姉達と比べられ、 物覚えが悪い、と叱られている途中に逃げてきたのだ。 召使達が姉と自分を比べ、哀れむ発言をするのが聞こえた。 たまらずに、ルイズは『秘密の場所』へと逃げ出した。 ルイズ以外には、誰からも忘れられた中庭の池。 そこに浮かぶ小船に乗ると、あらかじめ用意していた毛布にもぐりこむ。 こうやって、ほとぼりが冷めるまで隠れているのだ。 そんな風にしていると、誰かが近づいてくるのが分かった。 大きな羽帽子を被った、十ばかり年上の貴族だ。 彼女は彼を知っている。最近、近くの領地を相続した子爵様だ。 憧れの子爵様。彼女の父と彼との間で交わされた約束を思うと、 ルイズの胸は高鳴り、頬が火照る。 「泣いているのかい、小さなルイズ?」 「し、子爵さま……」 憧れの人にみっともない顔を見られたくなくて、ルイズは俯く。 だが、彼はおどけたように笑うと、彼女に手を差し伸べた。 「ミ・レイディ、お手を。早くしないと晩餐会が始まってしまうよ。 お父様に怒られたのなら、ぼくがとりなしてあげるから」 ルイズはその言葉にますます顔を火照らせながら、手を伸ばす。 瞬間、強い風が吹いて、彼の帽子が吹き飛ばされた。 「ひ!」 ルイズは現れた顔を見て、恐怖で言葉を失った。 夢の中のルイズは、いつの間にか十六歳に戻っている。 「ゲコゲコ? どうしたんだい、ルイズ? ゲコゲコ」 彼の顔は、緑色の巨大な蛙になっていた。 「いやあああああああああああああああ!」 「わー! な、なんだなんだ?」 ルイズの悲鳴に、サララとチョコが驚いて目を覚ます。 「ルイズ、ど、どうしたんだよ?」 彼女も、自身の悲鳴で目を覚ましたらしく、上半身を起こした。 「……悪夢を見たわ。眠れなくなりそう……」 ルイズは夢の内容を思い出してげんなりとする。 憧れの子爵様が蛙になってしまうなど、悪夢以外の何物でもない。 じゃあいいものがありますよ、とサララはベッドから起き上がった。 鍋まで行くと、ごそごそと、中から古ぼけた糸車を取り出す。 「なあにそれ、何に使うの?」 頭の上に疑問符を浮かべたルイズに向けて、からからと糸を繰る。 「はれ? 何だか、眠、く……」 その音を聞いたルイズは、そのままぱったりとベッドに倒れこんだ。 同じく音を聞いていたチョコと共に、すやすやと眠り出した。 副作用なく眠れる、という触れ込みは本当みたいだなーと、 サララは考えながら、効果をなくして壊れた糸車ををゴミ箱に捨てる。 さてもう一度寝なおすか、と思ったところで、 ふと、机の上に置いた魔女の占いカードが目に留まった。 ごくたまに、このように、カードに呼ばれる瞬間というのがある。 それは、カードがサララのような魔女に未来を提示する、 あるいは、カードによって未来が定められようとしている時だとされている。 サララは机に向かうと、そのカードを手に取った。 十三枚のカードをシャッフルし、三つの束にする。 その山の中から一つを選び、その一番上のカードを表にした。 手に取ったカードは『ⅩⅠ:ほうき』のカードだ。 『自由、束縛、飛翔』の三つの意味を持つ。 果たして、このカードは自分たちにどんな物語を見せてくれるんだろう。 サララはワクワクしながら、カードを戻すとベッドに潜り込んだ。 「……ゲルマニアへの訪問が中止?」 翌朝、トリスタニアの王宮で、一人の少女が驚きの声をあげた。 すらりとした気品ある顔立ちに、薄いブルーの瞳と高い鼻が目をひく美少女だ。 彼女こそ、トリステインの王女アンリエッタその人である。 「説明を求めますわ、マザリーニ枢機卿」 僧侶がかぶるような丸い帽子を被ったやせぎすの男性は、 口ひげのある顔を上げ、後ろに控えた男性に声をかけた。 「それは、こちらのワルド子爵にお願いしましょう。 彼は、魔法衛士隊のグリフォン隊の隊長です」 王族の御前であるため、羽帽子を胸元に抱えた若い貴族の男だった。 黒いマントの胸には、グリフォンの刺繍がされている。 「私からご報告させていただきます。実は先日から、 ゲルマニア国内でたちの悪い病が流行っている、との噂がありました。 私が出向いて調査したところ、それはまことであり、 ゲルマニアの王宮でもすでに感染者が出ているとのこと」 「まあ……」 アンリエッタはその報告に言葉を失う。 伝染病とは、それはそれは凄惨なものだと聞いている。 「それで、被害のほどは?」 「……今のところ、死人は出ておりません。というよりは、 あれで死ぬものが出るとは到底……。いえ、こちらの話。 とにかく、あの病の治療法などが見つかるまでは、 こちらとの交渉も到底できまい、と判断いたしました」 「……と、いうことです」 「そうですか……」 その言葉に、アンリエッタは少しほっとした。 今進んでいる同盟の話は、アンリエッタにとってあまり好ましいものではない。 それが先延ばしになるのは、喜ばしかった。 もっとも、病にかかった民には申し訳ないことではあるが。 「分かりました。下がりなさい、ワルド子爵」 「はっ。失礼いたします」 王女に告げられ、ワルドは謁見の間を出て行く。 その口元が、ほんのわずかに歪んでいた。 「それにしても……一体、どんな病なのでしょうか……」 首を傾げるアンリエッタを見て、マザリーニは思う。 まさか、『人間が蛙になる』病だなんて言えないな、と。 アンリエッタは、今日から数日の間、暇になったことを考える。 王宮の外へ出る機会が失われてしまって、ちょっとつまらない。 そういえば、とアンリエッタは考える。 アルビオンに存在する例の手紙。あれをどうにかせねばなるまい、と。 アルビオンの王家は、聖地回復を謳う愚かな軍勢に襲われ、今にも滅んでしまいそうなのだ。 もし、愚かな軍勢――レコン・キスタ――に、あの手紙が渡れば、 進められようとしている同盟も破棄されてしまうだろう。 どうにかしてとりかえさなければならない。 そんな時、アンリエッタの脳にある考えが浮かんだ。 それは、退屈な王宮から抜け出し、なおかつ手紙も回収できる、 とびっきりのアイデアのように思えた。 「マザリーニ。今すぐ伝達を出してください」 「は?」 アンリエッタの笑顔に、マザリーニは嫌な予感がした。 「どうせ暇なのですから、出かけましょう」 「で、出かけるとは、いずこへ……でございましょうか?」 「トリステイン魔法学院へ。視察とでもいばいいでしょう?」 若いものであればたちまち虜になってしまいそうな笑顔を見せるアンリエッタ。 マザリーニは、ただでさえ老けて見えると言われて気にしているのに、 また老け込んでしまいそうだ、とため息をつきたくなった。 それにしても、とマザリーニは思う。 ゲルマニアから帰って以降、ワルドの様子がいささかおかしい。 何か事件が起こらなければいいが……、と心配性な彼は思うのだった。 「分かりました。それで、日付はいつにしましょう」 「あら、決まっているじゃありませんか」 アンリエッタはにっこりと微笑んだ。 「今日です。思い立ったが吉日、というでしょう?」 「……承知しました。では、目処が付きましたら連絡いたします」 マザリーニは立ち上がると、謁見の間を出て行く。 その右手は胃の辺りにあてられている。 連絡をする前に、胃薬を飲むのを先にした方がよさそうだ。 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4088.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました―第五話― トリステイン魔法学院の食堂に辿り着いたサララとチョコは言葉を失っていた 長いテーブルが三つ並んでおり、百人は優に座れそうだ それぞれのテーブルに幾つも蝋燭が立てられ、花が飾られ、 フルーツの乗った籠が並んでいる 幾度か訪れたことのある王城の中と並ぶくらい、あるいは それ以上に豪華な施設に、ただただ目を丸くする一人と一匹 その様子を見たルイズが、鳶色の目を輝かせながら自慢げに語りだす 「魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃあないのよ。 貴族たるべく教育を存分に受けるのよ。 だから食堂も、貴族の食卓に相応しいものでなければならないの」 「ふーん……ねえじゃあさあ」 この食堂は貴族のもの、という趣旨の言葉を聞いたチョコが疑問を口にする 「ぼくたちのご飯はどーするのさ?」 「あ」 ルイズは食堂の入り口で頭を抱えた 一応魔法使い崩れとはいえ、彼女は平民であり、ましてや使い魔である 本来なら、使い魔は外の宿舎か床で食事を取らせるのだが、 そもそもサララの食事の手配すら忘れていた 忘れていた、というよりは出来なかった、というほうが正しいのだが 「……どうしよう」 「えー!お腹空いたよー!ご飯ご飯ー!」 にゃあにゃあと騒ぎ立てるチョコと、いざとなったら 『あの鍋』に石ころでも投げ込もうと考えているサララ そして頭を抱えたままのルイズの下に一人のメイドが駆け寄ってきた 「あの……どうかなさいましたか?」 「あ、え、ええと、あなた!」 閃いた!というような顔をしてルイズは、びしっと音がせんばかりに そこにやってきたメイド―シエスタ―を指さした 「ちょっとした手違いで、私の使い魔の食事の用意が出来てないの! し、仕方ないから、何か適当に食べさせてやってちょうだい!」 「は、はい、分かりました」 いきなりそう言われてびっくりしたものの、食事が出来ずに困っているのが 今朝会ったサララだと分かると、シエスタは一人と一匹を厨房へ案内した 「マルトーさん」 「おう、シエスタじゃねえか。……何だ、そのちっこいのは」 丸々と太った男性にじろり、と睨まれてサララとチョコは思わず身震いする 「こちらはサララさんと、それから飼い猫のチョコさんです。 ほら、使い魔召喚の儀式で召喚されてしまったって言う……」 「おお、デカい鍋と一緒に召喚されたって噂のあいつらか。 で、その貴族様の使い魔が何の用だ?」 何処か不機嫌そうに問いかけるマルトー どうやら、彼はあまり貴族が好きではないようだ、とサララは考える 「実は、ミス・ヴァリエール……彼女を召喚した貴族の方が、 彼女に食事を用意するように、とおっしゃられて……」 「何ぃ?」 再びじろり、と睨みつけてくるマルトーだったが、やがてくるり、と背を向けた 「仕方ねえな。賄いのシチューがあっただろ。あれでも食べさせてやれ」 「ぼくにはお肉だけちょうだいね。熱いの嫌いだから」 ワガママを言う飼い猫を目線で嗜めた後、サララはほっと一息つく そして、今はまだあまり好かれてないらしいマルトーとも いつかは仲良くなりたいな、と思うのだった 無論、人に嫌われるのがあまり好きではないというサララ自身の性分ゆえに、だが、 こんな所で料理長をやっているし、服装も綺麗だし、 きっと結構な収入があるから、あわよくば常連さんに……という 商売人ならではの打算も、ほんの少しだけ入っている おいしいシチューを存分に味わった後で、 サララは何か手伝うことはないか、とシエスタに問いかけた 世の中はギブアンドテイクである 「今は特にありませんが……では、昼食の後で、 デザートを配るのを手伝ってくださいませんか?」 その言葉に了解の意を示し、マルトーにも丁重に礼を言うと厨房を出た 「ちゃんと食事はとれた?」 幸いにも厨房から出てすぐ、ルイズと合流できた 「これから何処行くの?」 「勿論授業よ。といっても、今日のは復習程度の簡単なものだけどね」 チョコの問いにルイズが答えた通り、次に辿り着いた場所は広々とした部屋だった 「うわぁーひろーい。ここで勉強するんだ?」 「ええ、そうよ」 階段状に机と椅子が並んでおり、一番下の段には黒板と変わった机がある 多分、あそこで教師が授業をするのだろう、とサララは予想した 学校というものには馴染みがないが、何かの書物でこういう風な教室を見た気がする 二人と一匹が入っていくと、教室の生徒達が一斉に振り向き、 くすくすと小さな笑い声を立て始めた 「何なんだよもう、感じ悪いなあ……」 チョコが不満を漏らす中で、サララは辺りを見回した 皆、様々な使い魔を連れていた キュルケのサラマンダーは椅子の下で眠り込んでいる 少しぽっちゃりした生徒の肩にはフクロウが乗っていた 窓からは巨大な蛇が頭を覗かせていたし、カラスも、 チョコと同じような猫もいた 六本足のトカゲもいたし、目玉のオバケに蛸の人魚もいた 見慣れない生物達にサララは目をぱちくりさせる もし、あれらと戦うことになったとして勝てるだろうか、 元居た場所と違って彼らは喋ってくれなさそうであるから、 交渉をするのも難しいだろうなあ、とため息をつく 戦って勝てそうなら戦う、駄目なら逃げるか、交渉 ダンジョンで鍛えた戦略も通じなさそうで肩を落とす 「ほら、椅子を引きなさいよ、気がきかないわねえ」 ルイズにそう言われて、慌てて椅子をひいた そして、自分もその隣の椅子に座ろうとする 「おい、ゼロのルイズ!使い魔を椅子に座らせるのかよ!」 フクロウを肩に止めた少年が、ニヤニヤと笑いながら声をかけてきた 「うるさいわね!でもあんたのフクロウはそこでいいんじゃない? やわらかくて、さぞ居心地がいいでしょうよ、風邪っぴきのマリコルヌ!」 ちょっと気が大きくなっているルイズが少年に言い返した 「風邪っぴきじゃない!僕は『風上』だ!」 ぎゃあぎゃあと言い合いを始めた二人をサララはおろおろとしながら見る 扉の開く音がして見やれば、紫のローブに身を包んだふくよかな女性が入ってきた ローブと揃いの色の帽子を被り、手には小ぶりな杖を持っている 彼女は言い争いをしている二人を見るとため息をつき、呪文を唱えた 立ち上がり言い争っていた二人は、糸が切れた操り人形のようにすとん、と席につく 「ケンカはおよしなさいな。さて、皆さん。春の使い魔召喚の儀式は 成功したようですわね。こうやって様々な使い魔を見るのが、このシュヴルーズの 楽しみですのよ。……中には、少し多めに召喚なさった方もいるようですが」 サララとチョコを見たシュヴルーズのとぼけた声に、クラス中が笑う 「ゼロのルイズ!召喚できなかったからって、その辺の子供と猫を連れてくるなよ!」 「違うわ!ちゃんと召喚したもの!」 「そうだそうだ!」 ルイズに同調してチョコも抗議する 「嘘つ……むぐ」 さらにからかおうとした生徒の口に、赤土の粘土が貼り付く 「およしなさい、と言っているでしょう。さあ、授業を始めますよ」 シュヴルーズが杖を振ると机の上に石ころが幾つか現れる サララは始められた授業を興味深く聞いていた ダンジョンにおける『熱』『冷』『雷』の法則はこちらに存在しないようだが、 魔法の四大元素が『火』『水』『土』『風』であることは変わらなさそうだ さらにこの世界には、失われた系統である『虚無』が存在するそうである シュヴルーズの言葉によれば、『土』は建物を建てるのにも、 金属を加工するのにもかかせない系統であるらしい 自分の知る限りでは、魔法は攻撃や治癒、身体能力の一時的向上などに使われるが この世界では生活自体に密接に関わっているんだな、と感心しきりである 「今から皆さんには、『土』系統の魔法の基本である『錬金』の魔法を 覚えてもらいます。一年生の時点でできるようになった方もいるでしょうが、 何事も基本は大事です。では、手本を見せますね」 シュヴルーズは石ころに向かって小ぶりな杖を振り上げた そして短くルーンを呟くと石ころが光りだした その光がおさまったあと、石ころはピカピカひかる金属に変わっていた 「ゴゴ、ゴールドですか、ミセス・シュヴルーズ!」 キュルケが興奮した様子で身を乗り出した 「違います。ただの真鍮ですわ。ゴールドを錬金できるのは 『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの……」 もったいぶった咳をして、シュヴルーズは続けた 「『トライアングル』ですから」 「ね、ルイズ」 チョコが、ちょいちょい、とルイズの腕をつついた 「なによ。授業中よ」 「スクウェアとかトライアングルって、どういうこと?」 「系統を足せる数のことよ。それでメイジのレベルが決まるの」 「え?どういうこと?」 ルイズは小さい声でチョコに説明し出す サララもそれに耳を傾けた 「『火』『土』のように二つの系統を足せるのがラインメイジ、 『土』『土』『火』のように三つの系統を足せるのが、 シュヴルーズ先生みたいなトライアングルメイジ」 「同じ系統を足してどうすんのさ?」 「その系統がより強力になるのよ」 異世界だと、やはり魔法も随分と違うらしい、とサララは説明を聞きながら頷く 「で、ルイズは幾つ足せるの?」 チョコの問いに、ルイズは押し黙ってしまった そんな風に喋っているのを見咎められ、錬金の実践を求められた 途端、教室の中がにわかに騒がしくなる 「先生!危険ですのでやめてください!」 キュルケが立ち上がり進言するが、シュヴルーズはそれを却下する ルイズは緊張した面持ちで机の前へと向かった 生徒達は、慌てて椅子の下に隠れ出している 「え?何?何なの?」 事情が分からずサララとチョコはうろたえながら辺りを見回すばかりである ルイズはルーンを唱え終わり、杖を振りおろす その瞬間、石ころは机ごと爆発を起こした 爆風をモロに受け、ルイズとシュヴルーズが黒板に叩きつけられる 爆発に驚いた使い魔達が暴れ出し教室の中は阿鼻叫喚の地獄絵図である 「だから彼女にやらせるな、と言ったじゃない!」 キュルケがフレイムを落ち着かせようと必死になりながら叫ぶ 「あー!俺のラッキーが蛇に食われたー!!」 使い魔のカラスを飲み込まれた様子の生徒が慌てている カラスって不幸を呼びそうな生き物なのに、ラッキーってつけるのは 随分無茶なネーミングだな、などと爆音にふらつき まともな思考のできていないサララはその叫びを聞きながら考える 煤で真っ黒になり、ボロボロになったルイズは 大騒ぎになっている教室を意に介した風もない 取り出したハンカチで顔を拭きながら、淡々とした声で言った 「ちょっと失敗みたいね」 その言葉に生徒達が猛然と反撃した 「何処がちょっとだ!!」 「ちょっとじゃないだろ、ゼロのルイズ!」 「いつだって、成功の確率ゼロじゃないかよ!」 サララはやっと、どうしてルイズが『ゼロのルイズ』と呼ばれているか理解した 自分と同じ『魔法の使えない』魔女だからなのだ、と 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/235.html
(投稿者:トーリス・ガリ) パーソナリティ マイナ トリア ライラ リリー はい、始まりました。「トリアの援護に来ました・サンプル」です。 ぱちぱちぱちぱち ありがとーw えっと、まずはお便り、早速紹介しますね。P.N.「Gardenの匿名希望」さんからです P.N.Gardenの匿名希望:学生やってるんですけど、友人のセクハラに悩まされてます。親友なので嫌われたくはないんですけど、コレだけは耐えられません。どうしたらいいですか? そっかぁ、けっこう切実みたいですねこの人 わーいえっちだえっちだー! そういうこと言うんじゃありません!;; 一応聞くけど、女友達だよね? 男の人にセクハラなんてされたらラジオ番組に投稿する前に先生に言いますよ;; だよねw ……うーん、その友人さんは誰にでも……その、セクハラするのかな? もしそうなら、ちゃんとはっきり言った方がいいかもしれない ……だれにでもじゃなかったら? その時は……もしかしたらゆっくり話し合うことになるかもしれないです ゆっくり話しあってね!! ……なんでゆっくり話し合わなきゃいけないの? それだけ大事な話になるかもしれないっていうこと ……確かに切実ですわねぇ 私が言えるのはここまでかな? ホントに援護する程度のアドバイスになっちゃって申し訳ないですけど;; うーん……なるほど…… それじゃあ、私のコーナーはこれで終了ということで、とにかく勇気を出して言ってみてくださいね、Gardenの匿名希望さん!
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8654.html
前ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました――第二十五話―― 「ゲコゲコ」 「……ヴァレリー、これ、カエルよね?」 「ええ、カエルよ」 今は、ルイズとサララが湖から学院に帰りついたその翌日の朝である。 むぅ、と口を尖らせてエレオノールは水槽に入ったカエルを見つめるていた 「いくらなんでもカエルを鍋で煮込んで、なんてやらないわよねアカデミーでは?」 ひょい、と取り出してバンザイさせてみる。 「しないわね」 掌に乗せて引っ繰り返し、腹をぐりぐりと撫で回す。 「ゲッ、ゲコッ、ゲコゲコッ」 焦ったようにカエルがとんちんかんな声をあげる。 「じゃあ、なんでここにカエルがいるのかしら?」 元の体勢に戻すと、よしよし、と頭を指先で撫でる。 「……エレオノール、私、あなたがカエルが好きだなんて知らなかったわ」 「このぬるっとぬめっとしてるのが可愛いんじゃない」 エレオノールの口元は若干緩んでいる。 「はーい、そんな私の同僚に残念なお知らせです」 「何よ?」 「私達が今取り組んでいる研究はなんだったでしょーか?」 「何って、『カエルの呪い』の解除薬で……」 沈黙。 「とある筋から『多少の副作用は構いませんから、早く戻してください』と送られてきたのよね」 「……そう。そうだったの」 カエルを水槽に戻す。 傍らの杖を手にとり、構えた。 「いいいいいいいいいい今すぐ忘れるほどの衝撃を与えてあげるわ」 「きゃ、きゃあああ! 落ち着いて! 落ち着いてエレオノール!!」 「失礼します、姉さま、水精霊の涙を手に入れ……姉さま!?」 扉を開いたルイズとサララが目にしたのは、杖を持って暴れ回る姉と、 彼女を必死に止めようと羽交い締めにしているその同僚の姿であった。 「こんなに大量の水精霊の涙を、よく手に入れられたわね」 瓶に半分程溜まっているのを見て、ヴァレリーは感嘆の声を上げた。 こっちの市場で売りに出せば幾らになりますか、と聞きたいのをサララはジッとこらえた。 必要なアイテムであっても、高価だと解ると店頭に並べたくなる癖は未だ治らない。 それどころか、元からの能力とミョズニトニルンの力のおかげで、 異世界のものであっても値段が解ってしまうので、実は以前より悪化している。 瓶半分の量であっても『定価 4000G』とか言われたらほんの少しだけ手放すのが惜しい。 依頼されて入手した『惚れ薬(定価 3000G)』が返却された後行方知れずになった時よりなお悔しい。 一番悔しい思い出はまだダンジョンに慣れていないころ、カエルやカラスと戦いを経て、 文字通り必死になって手に入れた『きれいな石(定価 300G)』の代金を踏み倒された時だが。 「サララ、難しい顔してどうしたのよ」 苦悶が顔に出ていたらしい。慌てて、なんでもありませんよ、と取り繕う。 「これだけの量で足りるか心配なのかしら? 大丈夫、十分よ」 座っていた椅子から立ち上がり、ヴァレリーはるつぼの蓋を開けた。 「これにほんの一滴垂らせば、それで十分だもの」 スポイトを用いて、瓶から水精霊の涙をるつぼの中へ垂らす。 ぽぉ、と光輝いたかと思うとそこに並々と薬が溢れていた。 「確認してもらえるかしら?」 手渡されたそれに意識を向ける。 熱を持った額のルーンが、サララにその薬の効能を知らせてくる。 どうやら、無事に解呪薬として完成したようだ。 「出来あがったのね。それじゃあ、早速実験しましょう」 腰に下げていた杖を一振り。レビテーションによって水槽の中のカエルがふわふわと浮かぶ。 ソファの上に下ろされたカエルの体に、解呪薬を垂らした。 ぽふん、と軽い発破音がし煙が立ち昇る。 煙の中から現れたのは、一人の青年だった。 「かかかっ、カエルが人間に!」 そういう薬なのだが、ルイズは忘れていたらしい。 青年は己の姿が元に戻ったことに頓着もせず、ジッ、とソファに座っている。 冷や汗で濡れた顔を動かさぬまま、チラリ、と視線を隣に送っていた。 彼の隣には、顔を真っ赤に染め上げたエレオノールが居た。 何かを言おうとして口を開き、顔を赤くし、また閉じる、を繰り返しているエレオノールが居た。 「お……お久しぶりです、ミス・アルベルティーヌ……」 「は……はい……」 青年に呼ばれ、エレオノールはどうにか返事をする。 「あの……失礼ですが、どなたでしょうか」 ルイズが不審げな眼差しを向ける。ヴァレリーは物凄く良い笑顔をしている。 「……あ、ああ、失礼しました。まずはお礼を言わねばなりませんね」 一旦声を出したことで、やや正気に戻ったらしい青年は、ルイズに向き直った。 「元の姿に戻していただき感謝します」 ぺこり、とルイズだけでなくサララにも頭を下げる。 貴族なのに頭が低い珍しい人だな、とサララは思った。 「ゲルマニアへ旅行中にカエルになった時は焦りましたが、 ……今の状況よりマシかもしれません」 そう告げて、はぁと大きなため息を一つこぼした。 隣のエレオノールは何故かやや涙目になっていて、 ルイズは滅多に見ない姉の姿に目を見張った。 ヴァレリーは凄まじく良い笑顔をしている。 「改めまして……、コホン。 私はロジェ・エカルラート・ド・バーガンディと申しまして、その……です」 「え? あの、今なんと」 小声になった部分が聞き取れず、聞き返す。 「……ミス・アルベルティーヌの、婚約者、です」 「あら、そうでしたの? ちっとも知りませんでしたわ」 ヴァレリーがとてつもなく良い笑顔でわざとらしく驚いた声を上げた。 「さる伯爵家の方から持ち込まれたサンプルが、 まさかエレオノールの婚約者だったなんて!」 あ、この人全部理解してたな、とサララは察したがそれを追求することはしなかった。 色々な事情を持つお客様に接してきた経験から、沈黙すべき瞬間は理解しているのだ。 「まあまあ、やらかしちゃったわねえエレオノールあなた!」 「……うぅ……」 「婚約者の体を? それとは知らず? 好き勝手に弄り回してデレデレしてたわね!」 「……ヴァレリー」 ゆらり、とエレオノールが立ちあがる。 「ねえどんな気持ち? 今どんな気持ち?」 エレオノールの堪忍袋の緒が、ぶちぶちと音を立てて千切れた。 「フンッ!」 渾身のボディブローがヴァレリーの鳩尾に吸い込まれる。 ドサリ、と彼女が倒れ伏すのを確認し、エレオノールが振り向く。 「何か、おっしゃりたいことはございますかしら、ミスタ・バーガンディ」 釣り上がった瞳の端に、涙が浮かんでいた。 「……あれだけ好き勝手にされたら……」 ぼそり、と彼は答える。 「もう、あなた以外のところへお婿に行けない……」 「……へっ」 部屋の中にたちまち茹でダコが二匹出来あがった。 「カエルのもんだいもこれでかたがついたし、あとはまかせてかえりましょう」 はいそうですね、と下手な人形劇の人形のように言葉を発して、 二人は出来るだけ背後を振り返らないようにして部屋を出た。 正気に戻ったエレオノールが、先程までの恥ずかしい光景を見られたことに気付き、 口封じに来ない内に学院に帰らねばならない。 「……なんか、昨日と今日で凄く疲れたわ……」 ベッドに寝転がり、始祖の祈祷書を開いたままため息をこぼした。 「ボクどっちにもついてかないでよかったよ」 くぁ、とベッドサイドでチョコが欠伸をした。 サララは、と言えば日記に書くネタが増えて楽しいなどと暢気なことを考えながら、 カリカリと日記にペンを走らせている。 『コンコン』 が、何かを叩く音が聞えて顔を上げた。 『コンコン』 音の出所を探し、きょろきょろと辺りを見回す。 「ほっといていいわよ。キュルケのとこに来たオトコが部屋間違えてるんでしょ」 『コンコン』 ノックの音が止まる気配はない。それどころか、段々強くなってるようだ。 「……ああもうっ!」 苛立ちを覚え、ルイズはベッドから起き上がる。 カーテンを開き、思い切り窓を開けた。 「部屋間違ってるわよ! キュルケなら」 隣よ、と告げようとした口から、声が引っ込んだ。 そこに立っていたものが、人に見えなかったからだ。 月目に青白い肌。背中に生えた翼。黒衣をまとったその少年は、明らかに人ではない。 「……サララ」 少年は視線の先にサララを見つけ、どこか安堵したように声を上げた。 「こんなところで何をしているんだ?」 首を傾げる少年に、しばし呆気に取られていたサララだったが、 ハッと正気に戻ると窓へと駆け寄った。 「どうしてここに、だと? それはこちらの台詞だ」 ルイズを押しのけるようにして部屋の中に入り、アイオンはジッとサララを見つめた。 「三十日以上も店を空けないなど、お前らしくもない。こんなところに何の用がある」 「こ、こんなところって何よ! 失礼ね! だ、大体あんた誰よ!」 「こいつの店の客だ」 事もなげに答える。 「はぁ!? サララの店って異世界じゃない! どうやって来たのよ!」 「ダンジョンの中にある古いテレポーターを使っただけだ」 「何よそれ! その、テレポーターとやらがあればサララは帰れるとでもいうの!?」 「……そうだが?」 「えーっ!?」 チョコが素っ頓狂な声を上げた。サララは驚きの余り声が出ない。 「……うそ……」 ルイズは呆然と呟いた。 こんなにあっさりとサララが帰る手段が見つかるなど、考えもしていなかったのだから。 前ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/business-ethics/pages/204.html
職場でお笑い芸人のギャグ「コマネチ」のポーズを強要されたり、事実無根の性的なうわさを流布されるなど、上司のセクハラ行為で精神的な苦痛を受けたとして、石川県内の20代女性が28日までに、金沢市内の元勤務先の会社に対し、慰謝料など約360万円の損害賠償を求め、金沢地裁に提訴した。同日までに第1回口頭弁論が開かれ、会社側は請求棄却を求め争う姿勢を示した。 訴状によると、女性は昨年2月、勤務中に同社の営業部長から「恥やプライドを捨て職務に当たるために机に上がれ」と命令された。1980年代に流行したビートたけしさんのギャグ「コマネチ」を強要され、男性社員3人とともに30回以上、大声で「コマネチ」のポーズをとらされた。さらに、スカート姿で足を広げて机上に立たされ、男性社員の前で、10回にわたって大きなポーズで「コマネチ」と絶叫させられた、としている。 原告側によると、昨年4月以降も、営業部長から性行為を求めるような卑猥(ひわい)な言葉を掛けられるなどセクハラ行為を受けたという。さらに、男性関係の事実無根のうわさを社内で広められ、女性は今年3月、耐えきれず退社した、としている。原告側は、女性は営業部長から命令された際、威圧的な態度に恐怖を感じて抵抗できず、「屈辱感と悔しさから涙にくれるばかりだった」と指摘。その上で「営業部長は上司の立場を乱用し、会社はセクハラ行為の事実確認を怠り、再発防止を行わなかった」と主張している。 提訴に対し、会社側は「裁判中のため詳細は話せない。事実に反するので争う」と反論している。 ソース:富山新聞 http //www.toyama.hokkoku.co.jp/subpage/H20091029102.htm 【コメント欄】 名前 コメント