約 4,199,168 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7925.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました―第18話― 「おはよう、サララ。よく眠れた? 今日は気持ちのいい天気だよ!」 チョコに声をかけられて、サララは瞼をこすりながら起き上がった。 あまりに質のいい布団なので起き上がりたくなかったが、 ルイズを起こさないわけにはいかない。 そう思って隣のベッドに寝ているルイズに声をかけた。 「ん……今日は、もうちょっと寝てたいの。今日一日自由でいいわよ」 ぼーっとした様子で、布団を被ったままルイズは答えた。 昨日の夜何かあったのだろうか、とサララは考えたが、 あまり追求して欲しくなさそうなので、はい、と答えておいた。 着替えて階下に下りる。酒場と食堂を兼ねたそこでワルド子爵を探すが見つからない。 「あれ? 子爵様いないね。出かけたのかな。どうするサララ?」 チョコが問うた瞬間。くぅ、と小さくサララの腹の虫が鳴いた。 「……まずはゴハンだね」 顔を少し赤く染めて、照れ隠しにチョコのわき腹を軽くつま先で突っつく。 大理石から掘り出された椅子に座ると、店員を呼び、メニューを見せてもらう。 港町というから魚料理があるのかと思ったが、肉料理が大半だ。 まあ、山の中だから肉が多いんだろうなあと思う。 鶏肉のソテーを頼むと宿の中を見ながら料理を待つ。 テーブルも椅子も、大抵のものは一枚岩から掘り出された大理石で出来ているようだ。 なるほど。これなら頑丈で、壊れることも少ない。 コストは少しかかっているのかもしれないが、貴族相手の宿だというなら 高級感をかもし出すことができてむしろ好都合だろう。 数名の貴族がカウンターで飲んでいる。ワインは高級そうなものばかりだ。 どうもトリステインでは酒の類はワインが好まれているらしい。 となると、自らの売り物である小人族秘伝の酒はちょっと好まれないかもしれない。 片や魔力を回復する代わりに凄まじい二日酔いを引き起こし、 げっそりしてしまうような強い酒。片や甘くて楽に飲める果実酒である。 そんなことを考えている間に、厨房から美味しそうな鳥の焼ける匂いがしてきた。 「ねー、ボクにもちょうだいね、鶏肉」 テーブルの下でチョコが足に擦り寄ってくる。 「お待たせしましたー」 若い女店員が運んできたよく焼けた鶏肉を前に舌なめずりしたいのをこらえた。 いただきます、と言おうとした所で店員がじっと見ているのに気づいた。 首を傾げると、彼女も笑顔のまま首を傾げる。 ああ、と考えついて、財布を取り出すと金貨を一枚差し出した。 「ありがとうございまーす」 スキップしそうな勢いで彼女は厨房の奥へ消えた。 腹を満たした所で、サララはチョコを連れてラ・ロシェールの町へ出た。 その背には身の丈程もある大きな袋をかついでいる。 「うわぁ……見て、サララ。凄く大きな樹があるよ!」 チョコと一緒になって、丘の上にある巨大な樹を見て目を丸くした。 「はは、お嬢さん『世界樹』を見るのは初めてかい?」 露店にいた壮年の商人が声をかけてきた。 セカイジュ? と鸚鵡返しに問いかける。 「そうさ。別名をイグドラシル。枝を見てごらん。それぞれの先に 船がぶら下がっているだろう?」 指で示された先を見て、サララとチョコはあっと声を上げる。 「アルビオン行きの船さ。あれは巨大な桟橋なんだよ」 人のよさそうな笑顔で商人は説明してくれた。 「へぇ……空飛ぶ船かぁ、凄いねぇ……」 チョコが驚いた様子でじっと見つめていた。 「で、どうだい? うちの店の銘菓世界樹クッキー。今なら安くしておくけど?」 後ろから聞こえてきた言葉に、サララは思わずこけそうになった。 流通の中心地だけあって、商人はしたたかだ。 先程食事をしたばかりとはいえ、甘い香りは食欲を誘う。 一袋ください、と言ったサララは、ついでにこの辺りで人の集いそうな場所を尋ねた。 「人の集まりそうな場所? そうだなあ……まあ、基本は桟橋だが、 今はアルビオンで内戦をやってるだろ? そのせいか物好きくらいしかいやしねえ。 後はそうだなあ……『金の酒樽亭』って居酒屋がある。 この間まで王党派についてた傭兵どもが、今はごろごろしてるぜ。 まあ、お嬢さんみたいな人が行く場所じゃねえよ」 型に種を流し込み、手際よく焼き菓子を作りながら店主は答える。 「まあ、腕っぷしに自信があるっていうんなら別だがな……」 苦笑する店主に、満面の笑みを返す。 「ほほう、随分と自信ありげな顔だな。ほら、じゃあ一個おまけで入れておくよ。 お嬢さん方に幸運が訪れますように」 紙袋にそれをつめると、ほい、と店主はそれを差し出した。 情報量も含めて少し多目の代金を払うと、一人と一匹は金の酒樽亭へ向け歩き出した。 おまけの一個が少し生焼けだったことは、この際気にしない。 下をくぐれそうな扉を、背伸びして必死に開くとサララは金の酒樽亭に入った。 中で酒を飲んでいるのは、一目で分かる傭兵やならず者達ばかりだ。 「おいおい、ここはあんたの来るとこじゃないぜ?」 「ガキは母ちゃんの胸でおねんねしてな!」 下品な笑いが飛び交うのも気にせず、サララはカウンターに座る。 とりあえずワインを頼むと、金貨を店主に渡した。 「……なんかわけありかい?」 店主は金貨を受け取りつつ、訝しげな表情を見せる。 サララは、自分は遠くから来た商売人で、この辺りの事情にはあまり詳しくない。 そんな折、アルビオンやゲルマニアのきな臭い噂を聞いた。 それが本当かどうか、ちょっと確かめたいのだ、と言った。 「あんた、ゲルマニアには行かない方がいいぜ! 何しろ、あの国は今カエルの呪いにかかってるらしいからな!」 げらげらと笑いながらすっかり出来上がった傭兵が一人叫んだ。 「アルビオンだってひでえ! レコン・キスタには悪魔が参謀してついてるらしいぜ!」 酔っ払いというのは得てして話すのが好きなものである。 『カエルの呪い』と悪魔について詳しく聞こうと思った。 しかし、その声を遮るように扉の開く音がした。 「おー? いつからここは託児所になったんだい」 げらげらと笑い声を上げて、一人の男が入ってきた。 「そこをどきなガキんちょ。てめえの来るような店じゃねえよ」 「うわー、なんかたちのわるそうなのがきたよ」 チョコがうんざりしたような顔をする。 「おらどけよ!」 男は脅しをかけるように、サララの荷物を手に取り床に放る。 サララは慌てて床に降り、袋の中身を確認した。 「喧嘩なら表でやるか椅子を使ってくれよ?」 いざこざに慣れた様子で、店主はため息をついた。 「おわっ、何だ何だ。喧嘩かい相棒?」 荷物が床に落とされた拍子に、デルフリンガーが転がり出る。 「ほお、インテリジェンスソードとは珍しいもの持ってるじゃねえか」 デルフリンガーに伸ばした男の手を、サララが弾く。 キツく結ばれた口元と怒りをこめた眼差しで男を見上げる。 「あ? 何か文句でもあんのかよ?」 サララはデルフリンガーを片手に担ぎ、もう片手で袋を持ちながら告げる。 商売道具をないがしろにされて、怒らない商人がいると思うのか、と。 「ぎゃははは、てめえ、この『熱風』のアーカイブ様に勝てるつもりでいんのか!」 その問いにこくりと首を縦に振る。顔には怒りを露にしたままだ。 「何だと! ふざけやがって! 表出ろ!」 汚い路地裏の一角。杖を構えた男とデルフリンガーを構えたサララが対峙する。 「決闘ってわけじゃあねえが、一応名乗って置こうか。 俺の名はアーカイブ。二つ名は熱風だ。この界隈じゃあ、 多少は名の知られた傭兵部隊の隊長だよ」 脅しをかけるように笑いながら、男は杖を構える。 名乗るのが礼儀かな、と思いながらサララが名乗りを考えていた時。 「痛めつけさせてもらうぜ! ファイヤー・ボール!」 相手は既に詠唱を始めており、火の弾がサララ目掛けて飛んでくる。 一瞬慌てたサララだが、ふと思い出してデルフリンガーを盾にするように構える。 火の弾は刀身に触れた途端、すっと跡形も無く消え去った。 「はぁっ? てめえ、何しやがった!」 自分が見たものが信じられず、男は声を荒げる。 「あー……魔法吸収できるの思い出しててよかった」 デルフリンガーが思わず安堵した声を出す。 「魔法を吸収するだあ? ふざけやがって!」 激昂した男は再び呪文の詠唱を始める。それを見逃すサララではなかった。 足元には異国の神の名を冠したブーツ。鍛えた戦士以上の素早さを与えるそれの力で、 サララは一気に相手との間合いを詰める。 男が詠唱を終わらせる前に、その懐に入り込んだ。 斬撃音と打撃音がほぼ同時に路地裏に響く。 「相棒、今のは一体……?」 奇妙な感覚にデルフリンガーが疑問の声を上げるが、それには答えず鞘にしまう。 男は、上半身の服を切り裂かれ、頭に大きなコブを作って倒れていた。 「……サララを怒らせるなんて、馬鹿だねえ」 チョコが呆れたように男の顔に砂を掛ける。 「で、商品は無事だったの?」 うちの商品はこれくらいで壊れたりしない、と口元に笑みを浮かべる。 騒ぎを起こしたせいで、ここでの情報収集は無理そうだなあ、と 独りごちながら、サララは路地裏から表通りへ向けて歩いていった。 「……魔法を吸収するのか」 彼女の姿が見えなくなった後。物陰から、白い仮面を被った男が姿を現した。 マントを着けていることから、おそらく貴族、少なくともメイジであろう。 「さてと、お姫様はずいぶんと厄介な手駒を手に入れてらっしゃるようだ。 だがまあ……手の内が分かっただけ、こちらが有利、だな。 くくく、と不気味な笑い声を上げながら、男の姿は風に溶けていった。 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/imatti/pages/185.html
猫符「猫は蟲されました この蟲野郎!」 ここまでのあらすじ 常闇に包まれたという霊園 闇といえばあの妖怪しかいない 強力な催眠攻撃も巫女の前では無力 とりあえず霊夢達は捕獲したルーミアと共に街に戻るのであった 魔「本当に荒過ぎてよくわからないぜ」 霊「つまりは勝ったのよ」 妖「微妙に消化不良気味でしたがね…」 霊「誰の所為だ」 妖「私の所為です、はい」 魔「流れぶった斬ってすまないが、ルーミアのお目覚めっぽいぜ」 来た!幼女起床来た!これで勝つる! 魔「はいはい、歩く危険物は黙ってような」 そんな、ダイナマイトとかじゃないですよ? 霊「さて、それじゃ事情聴取と行きましょうか」 ル「そーなのかー」 霊「単刀直入に聞くと、なんであんな所に居たの?」 魔「いかにも私達を誘き寄せるみたいな感じだったが」 ル「チルノに言われたの。私はあそこを暗くして待っておけば良いって」 妖「待つって誰をですか?」 ル「霊夢達」 霊「…つまり、あんたは一応チルノの放った刺客…みたいな?」 魔「こっちから行ってるんだから、ちょっと違う気もするがな」 ル「まあ、そんな感じかなー。それじゃ、私はこれぐらいでー」 霊「ちょいと待て」 ル「へ?」 魔「歯医者は、瀟洒の言う事を聞かないといけないんだぜ?」 妖「魔理沙さん誤字!」 魔「ああ、そうか。敗者は勝者の言う事を聞かないといけないんだぜ?」 霊「あんたも一緒に戦いなさい。味方が絶対的に不足してるのよ」 ル「えー。面倒」 魔「いや、面倒って言われてもな」 霊「一応、こっちの人に迷惑掛けたんだしその迷惑料として働いてもらうわよ。強制的に」 ル「ううー、仕方無いのかー」 魔「仕方無いぜ」 妖「…ちょっと可哀想な気もしますが」 ですよねー 日本は自由の国、押さえ付けは良くないです 霊「何か文句あんの?」 いえ、特には 妖「意思弱っ!」 霊「そういうあんたは?」 妖「な、無いです」 魔「妖夢も同じぐらいヘタレだぜ」 ル「ねーねー。次は紅魔館行こうよー」 霊「え?なんで紅魔館?」 ル「今頃は何か掴んでると思うのかー」 妖「確かにそうですね。今は咲夜が出て行ってしまっているので、あちら側としても何とか連れ戻そうと尽力しているでしょうし」 魔「協力者も得られたら尚美味しいしな」 ところ変わって同時刻、紅魔館 小悪魔「結論から言いますと、⑨が攻めて来ました」 レミリア「な、なんだってー!?知っているのか!?パチェ!?」 パチュリー「知らん!」 小「えーと、どうします?全力で排除の方向性で良いですか?」 レ「意義なし!」 パ「レミィの意見に概ね賛成」 小「了解です、んじゃ行って来ます」 小「っと、しかしまた、なんでチルノが…あの娘、そんな強かったっけ…」 チルノ「パーフェクトフリーズ!」 妖精達「ひぎぃ!」 小「うおっ、全面的に妖精メイド達がピンチだ」 チ「うおぅ!誰かと思えばリトル!」 小「お久しぶり、絶好調みたいね」 チ「そうそう、特にこっちの世界からは魔力が上がりまくりでねー。怖いもの知らずって訳だい☆」 小「でも、人の働いている屋敷でそういう事されるのは困るんだけど?」 チ「良いじゃん良いじゃん、こんな屋敷早く見限っちゃいなって、あたいの一緒に主役の座を狙おうよ」 小「まあ、確かに滅茶苦茶なトコだけどね、正直見限りたくもなる」 チ「だったらあたいのトコの方がずっと良いって、こっちの連中が文句言って来てもあたいが守ってあげるし」 小「でもチルノ、あんたは一つ大きな見落としをしている」 チ「何?」 小「私はパチュリー様の使い魔であり、パチュリー様は私が命に代えてでも守るべき存在だ」 チ「じゃあ残念だなぁ。そのパチュリー様とやらの為に死んでもらわないと」 小「馬鹿、スペルカードルールで死人は出せないわよ?」 チ「誰がスペルカードルールを適用すると?今のあたいの魔力にあんたは到底敵わない!弾幕ごっこなんてくだらない事をしなければあたいが負ける事は無いのよ!」 小「そう、それじゃあスペルカードルールは適用しないのね?だったら話が早い、さようなら過去の友人」 チ「せめて、痛みも知らず砕いてあげるわ。フリーズアクトレス!」 小「幻世『ザ・ワールド』 あなたは知らないでしょうね。紅魔館のメイド長、それは紅魔館全体の時の番人を意味する。咲夜さんだけの能力じゃないのよね。時間を操る程度の能力って。あなたの時間も私のもの…古臭い氷精に勝ち目は、ない さあ、そろそろ時間ね。今この空間には大量の火球が展開されている。氷の妖精に炎の魔法、正にメタゲームって所かしら?…そして時は動き出す」 チ「ひぎぃ!」 小「美しく残酷にこの館から往になさい」 小「とまあ、軽くのして来ました」 パ「殺したの?」 小「向こうはスペルカードルールを適用しないって言ってましたが、こっちは手加減したので恐らくは大丈夫と思います。ただこっちのメイドに被害が出ていますね。しばらくすれば治ると思いますが、時間加速しておきましょうか?」 パ「それは良いわ。今は余計な労力は使わない方が良い」 小「そうですね。では、何かあったらまた連絡させてもらいます」 パ「そう言えば、中国はどうしたの?」 小「ああ、美鈴さんは…寝てました」 パ「永遠に?」 小「その寸前だと思います。居眠りしてる所を凍らされたみたいで」 パ「自業自得ね」 小「ええ、溶かしてません」 パ「まあ、直に五月蝿い連中が来るだろうから、勝手に溶かされるでしょうけどね」 小「へ?それって巫女達って意味ですか?」 パ「そう、ちなみにレミィは今寝てるから大丈夫よ」 小「その大丈夫の意味がわかりかねますが」 パ「連中が来ればわかるわ」 小「はぁ」 さて、霊夢達一向は 霊「本当にこっちで道会ってるの?いまいち不安だけど」 ル「安心するのだー。私は馬鹿じゃないのかー」 魔「実に不安だぜ」 幼女は良い、心が洗われる様だ 魔「こっちも不安だぜ」 妖「重症ですね」 ル「はい、到着ー」 霊「あ、本当に着いた」 魔「言うほど遠くはなかったな」 妖「大体一刻ぐらいでしょうか?」 電気街の時点でおよそ正午、そこから南西に行き始め、日差しが強くなって来たので今は一時か二時と推測するのが正しいでしょうね ル「そんな事考えなくても紅魔館には時計塔があるのかー」 霊「うわっ、本当だ」 魔「何回ここ来てるんだよ、私達」 妖「私はほとんど来てませんね」 霊「私と魔理沙はすっかり常連ね」 お前は今まで盗んだ本の数を覚えているのか!? 魔「八千九百一冊、私は和食派ですわ」 霊「八九〇一で博麗…誰が上手いこと言えと」 魔「天狗だ!天狗の仕業だぜ!」 文「安心しろ、天狗なんていない」 射命丸ー! 霊「ん?今鴉天狗が居たような…」 妖「臨死体験が見せる幻ですよ」 霊「死に掛けてないわ!」 ル「そろそろ入るのかー」 魔「だぜ」 ですね 霊「そして、何故か中国が門の前で冷凍保存されてるわ」 ル「保存食なのかー」 魔「おい、美鈴、お前は食べてもいい妖怪か?」 ル「台詞を盗られたのかー」 妖「本当、盗みの天才ですね」 良い意味でも、悪い意味でも アリス「人の心まで簡単に盗まないでー!」 魔「ん?アリスか?」 掻き消えましたね、恐らくは具象気体です 霊「何故にあんな一言の為に微妙に高等魔法を…」 妖「演出家ですね」 ル「なのかー?」 魔「とりあえず、ファイヤボルト!溶かしてやるぜ」 美鈴「熱っ!」 霊「お約束ね」 妖「お約束ですね」 ル「お約束なのかー」 お約束です 魔「態とだぜっ☆」 美「うぅー、酷いですよ魔理沙さーん」 霊「しかし、なんで門番がこんな所で非常食になってるの?」 美「いやいや、居眠りしていたら急に…」 妖「急にですか?」 美「急や」 ル「それで門番が務まるのかー?」 霊「正論だ…」 魔「正論だぜ」 妖「正論です」 正論だと言わざるを得ない! 美「とりあえずサーセン」 霊「じゃあ、レミリアのところに案内してくれる?」 美「はいはいさー」 美「っと、レミリア様は今眠られていますね。パチュリー様にお願いしましょう」 魔「正直な話、レミリアよりパチュリーの方が良い話を出来そうだぜ」 妖「ぶっちゃけますね」 小「おっと、ようこそ紅魔館へ」 魔「小悪魔、久しぶりだぜ」 小「パチュリー様がお待ちです。美鈴さん、通して差し上げてください」 美「はいはいー、っと、あなたはどうするの?」 小「少し、こちらのお嬢さんに用事が」 ル「私なのかー?」 魔「さてはルーミア、図書館の本を盗んだりしたんじゃないか?」 霊「あんたが言うな」 ル「ううー、私は何も知らないのだー」 小「まあまあ、霊夢様達はどうぞお先に」 妖「はい、お邪魔します」 …俺空気過ぎないか!? 魔「仕方無いぜ、お前誰とも面識無いし」 まあ、これから親睦を深めて行けばOKですよ、はい、うんうん ル「とりあえず連れて来たけど、余計なお世話だったかしら?」 小「まさか、それよりこちらとしても彼女達の安否は気になっていた所よ」 ル「殺して死ぬタマでは無いと思うけど?」 小「正にその通りで」 ル「しかしまあ、あなたがメイド長、か。メイド服は着ないの?」 小「私にああいうのは似合わないよ。このままの司書服がよっぽど良い」 ル「立場的にここから連れ出す事は出来ないわね。少し残念」 小「うーん、まあそうね。レミリア様はこれからに備えて眠られてばかりだし、パチュリー様は図書館に篭って読書。まあ、これは情報を集めてくださっているんだけど。美鈴さんは結構ユルイしなぁ、私が上手くこの館を纏め上げないと」 ル「大変ね。心労を察するわ」 小「うー、ルーミアだけだよ。私を労ってくれるのは」 ル「まあ、私の方でも出来るだけの事はするわ。流石にこれは解けないけどね」 小「不慮の事故で燃えたりしてくれない?そしたら一気に異変も解決出来る気がするけど」 ル「私が何の為にこんな封印の符を付けたのか、忘れたのかしら?」 小「冗談よ。この世界に壊滅されても困るし」 ル「流石にそこまではならないでしょうけどね」 小「あんたならしかねない」 ル「何故に」 小「犯人を見つけ出したりするより、全部壊せばOKって考えるでしょ?」 ル「何処の悪魔の妹よ」 小「過去にこの館を半壊させておいて何を言うか」 ル「あれは、まあ、黒歴史よ」 小「紅魔館の歴史にはしっかり刻まれてるけどね」 ル「ところで、何か私にだけ話しておくような事は無いの?」 小「特には」 ル「あんまりもったいぶっていたら、巫女達が戻って来るわよ?」 小「はいはい。それじゃああんたにだけ伝えておくわ。チルノとレティが居るのは北東の氷結湖、折を見てあんたが先導してあげて。後は新情報が入り次第、伝えるわ」 ル「巫女では無く私に伝える理由は?」 小「あの巫女だったら今からでも殴り込みに行きかねない。でもあいつ等は簡単に倒せないわ」 ル「それは、あなたが倒しそびれたから?」 小「私は倒せなかったのでは無く、倒さなかったのよ。それはこの世界のルールに反している気がしたし…って、なんであんたがその事を!?」 ル「壁に耳あり、障子に目あり、ついでに空には鳥が居るわ」 小「羽を凍らされて墜落しない様にね」 ル「そんな馬鹿な」 小「まあ、頑張ってきなさい。それとなく応援してあげるわ」 ル「どっちの台詞なんでしょうね」 小「お互いに、って事で良いわ」 パ「来たわね。紅白の蝶、黒いゴキブリ、その他」 魔「突然だが、マスタースパークを撃って良いか?」 パ「本が燃えるから嫌」 魔「よし、行くぜ。全力―全壊―マスター…」 パ「プリンセスウンディネ」 魔「へぐはっ!」 何、この、何? パ「例の五馬鹿の事だけど、他にも色々な妖怪を味方にして各地にのさばっているわ」 霊「いきなりね」 パ「簡潔に終わらせた方が良いでしょう」 妖「五人って事は…あのチートさんも頭数に入れているんですか?」 パ「そうよ。その男の力は思った以上に強い」 妖夢さんを瞬殺ですからね 妖「ぐへぇ!」 霊「事実よ。受け入れなさい」 妖「この魂魄妖夢、一生の恥だー」 パ「結論から言えば、次は南東にある森を目指しなさい、そこに毒人形が放った化け猫がいるわ」 霊「メディスンが橙を?飼い主が別にいるのに」 魔「最近あいつ、空気気味だからな。そろそろ必死になり出したんだろう」 妖「魔理沙さん、お帰りなさい」 魔「まだ全身が痛むぜ」 パ「それから、美鈴を連れて行くと良いわ。一応壁ぐらいにはなるでしょう」 美「私ってその程度の扱いですか!?」 パ「そうよ」 美「ピチューン」 霊「ありがとう、それじゃもう行くわ」 パ「引き続き、妖精達を使って調査を続けるわ。暇が出来たらまた来たら良い」 魔「おう、その時は本を頂くぜ」 パ「次はシルフィホルンが良いかしら?」 魔「ヒールウォーターを頼むぜ」 Σ俺が空気ってレベルじゃない! さて、次は森を目指してる感じです 霊「しかしまあ、橙が居るって事は藍や紫も居るのかしら」 魔「あいつ等が敵に回るとは思わないがなぁ」 妖「ですね、紫様は寧ろ解決に乗り出してくれそうです」 ル「なのかー」 魔「だぜ」 ナノーネ 霊「あんたは誰だ」 善良な人間です 妖「善…良…?」 リグル「えーと、突然だけど良い?」 魔「ゴキブリはお呼びじゃないぜ」 妖「斬り潰しますよ?」 霊「さて、蚊取り線香は…」 ル「蟲は食べても美味しくないから撃ち落とすのかー」 リ「死亡フラグが立った気がするけど…とりあえずあんた達の大切な物は預かったわ!返して欲しければここから北西の公園まで来なさい!」 魔「大切な物ってなんだ?」 ア「私の心です!」 …また具象気体か!? リ「これよ!」 ズバーンっと 霊「なっ…あれは…」 妖「そんな…まさか…」 魔「ざわ…ざわ…」 ル「…!」 リ「そう!あんた達の命の次か、それぐらいに大事な物!賽銭箱よ!」 霊「おのれ邪蟲王!」 魔「私に特に損害は無いぜ」 妖「ですね」 ル「なのかー」 うーん、失敗な空気が漂って来てます リ「と、とりあえずこれを返して欲しくば公園に来なさい」 霊「待ってなさい!必ずぶっ倒して奪い返すわ!」 魔「霊夢、必死だぜ」 妖「こ、これは…鬼巫女フラグ!?」 アレは賽銭箱を持ってましたからね、また違うかと さて、霊夢さんは爆進しました それこそ、射命丸の三倍の速度で 霊「来てあげたわよ!」 リ「うぉっ、早過ぎる気が…」 魔「今日の霊夢はトランザムフォームだぜ」 妖「大量生産より三倍の速度なんですね」 ル「それはシャア専用なのかー」 詳しいですね、皆さん リ「とまあ、正直言わせてもらうと、私はあんた達に勝てる自信が無いのよ」 魔「いきなり弱気だぜ」 リ「どうせ、魔理沙のマスパでぶっ飛ばされちゃうんでしょ?なら、ちょっとそのスペルカード見せてよ」 魔「まあ、手の内なんてわかってるよなぁ。ほらよ、ちなみにお前には使えないからな?」 リ「そんな高等魔法使えるとは思わないわよ。ふーん、これがマスタースパークかぁ…」 魔「ふふっ、凄いだろ。魅魔様にもらった自慢のスペルだぜ?」 リ「私さぁ、ずっとこのマスパへの対抗手段を考えていたんだ」 魔「そんなの考えても、マスパを防ぐ手立てなんて無いぜ?」 リ「そうそう、だから良い方法が無いなぁ~と思っていたら、一つ気付いたんだよ」 魔「何だ?」 リ「このカードを、捨ててしまったら良いんじゃないかなーって」 魔「な、何だと!?」 リ「ほら、ぽいーっと」 ポチャッ 魔「!?…魅魔様にもらったカードが!…この蟲野郎!!」 リ「あはははは!これで魔理沙はマスタースパークを使えない!マスパの無い魔理沙なんてビームサーベルの無いガンダムみたいなもの!後は蟲を召喚して召喚して召喚しまくれば…そうすりゃ私の勝ちだーっ!」 魔「…何勘違いしてるんだ?」 リ「ひょ?」 魔「まだ私のスペルカードは終了してないぜ!」 リ「な、何馬鹿な事言ってるのよ」 魔「即効スペル発動!『狂戦士の魂』!手札を全て捨て、効果発動!このカードはスペル以外のカードが出るまで何枚でもカードをドローし、墓地に捨てるカードだ。そしてその枚数だけ、攻撃力千五百以下のスペルは追加攻撃出来る!」 リ「…!魔理沙のヤツ…そこまで考えて!」 魔「まず一枚目!ドロー!スペルカード、ファイアボルトを捨て…スターダストレヴァリエ、追加攻撃!」 リ「きゃー!」 魔「二枚目ドロー!スペルカード!スターダストレヴァリエ、追加攻撃!」 リ「ひゃあ!」 魔「三枚目ドロー!スペルカード!」 リ「うぴょー!」 魔「四枚目!スペルカード!」 リ「ぴぎゃー!」 魔「五枚目!スペルカードぉ!」 霊「もうやめて魔理沙!リグルのライフはとっくにゼロよ!もう勝負は付いたのよ!」 魔「離せ!」 なんだろう、これ 妖「スーパーフルボッコタイムですね」 ル「どっちが悪役かわからないのかー」 魔「くっ…こいつを倒した所で…カードは帰って来ない…私の肉しみは消えないんだ!」 霊「肉しみって何?脂汗?」 リ「彼女が出来ました~☆」 魔「イリュージョンレーザー!!」 リ「はべしっ!」 アフロ斉藤@超肉体(笑)「ほらよ、マスタースパークだ」 魔「!?お前はアフロ斉藤@超肉体(笑)!?」 斉「俺が負けたってのに、ここでマスパを失ってお前に負けられたら困るからな、べ、別にお前を気遣ってるとか…そんなんじゃないからな!」 霊「ツンデレね」 妖「ツンデレです」 ル「ツンデレなのかー」 お前はトマトか?…否、お前はツンデレか? 魔「あ、ありがとよ」 斉「べ、別に感謝される事をしたつもりはねーよ」 霊「…魔理沙に新カップリング発生!?」 妖「サイマリ…許せ…ないですよ!普通に!」 ル「そもそも、東方キャラに男性カップリング付けたら駄目なのかー」 ですよ!東方は百合の楽園です! 霊「それも歪んだ見方ね」 てへ 霊「褒めてない褒めてない」 魔「と、とりあえずなんでお前が生きてるんだ?」 斉「俺は滅びんっ!何度だって蘇るさ!」 霊「何処の大佐よ」 ル「マスタングなのかー?」 妖「それは焔の錬金術師ですね」 魔「ま、お前が無事でそれとなく安心したぜ。仮にも少しの間は一緒に居たからな」 斉「お前こそくたばってなくてちょっと安心したぜ。んじゃあばヨ」 魔「あっ、ちょっと待っ…」 行ってしまいました 霊「…正に恋色マスタースパークね」 誰 上 続く あとがき的地上の流星 最近、オリジナル展開と本編を一ページに纏めようとするので、すごく長くなってしまってます 今回の見所はずばり、ルーこあ! 小悪魔、勝手に霊夢達に同行させたら不味いかなぁ、後で本当に仲間になったりしたらシナリオが追えないだろうし まあ、結構今の時点でシナリオレイムしてますがね 誰が 上手いことを言えと 魔理沙に男性との恋愛もさせたいと思ったのです でも、やはり魔理沙の真骨頂はアリス、パチュリー、にとりとの絡みですね にとまりSSも書きたい フラマリも大好きだ でも俺の書くフランは本当にHANZAI臭がするからなぁ、あんまり書けない、書きたくない だって通報されそうですもの カリスマ溢れるフランも実は私の中に存在しているんですが、そっちは滅多に顔を出しません そして登場時は何故か月時計をバックに流してます 自分の中での月時計は「紅魔館~シリアスのテーマ」みたいな感じになってるので、すっかり咲夜さんのテーマでなくなってる気がします 咲夜さんはやはり、メイドと血の懐中時計 バックに流れる率が高いのはお嬢様と妹様、後たまにパッチェさんのバックにも うーむ、次回もかなりの長さになりそうな、そうでもなさそうな… まあ、乞うご期待?って事で Before 闇符「聖者は十字架に磔にされました」 Next 猫符「迷いの森でなくても、迷うのが森」 Top 東方冥異伝日記 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8084.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました――第二十一話―― キラキラした宝石が散りばめられた小箱。 開いた内側には、アンリエッタの肖像画が貼られている。 「宝箱でね……」 はにかんで笑う青年は、アルビオン王国の皇太子ウェールズだ。 その中から取り出した手紙を、じっと見つめた後で、 未練を振り切るように、ルイズにそれを手渡した。 「では、これをアンリエッタにお返ししよう」 「ありがとうございます」 それを神妙な面持ちでルイズは受け取った。 今、彼女達が居るのはアルビオンにあるニューカッスル城である。 正体を明かしたウェールズに連れられ、秘密の通路を抜けてここを訪れたのだ。 手紙を懐にしまいこみ、しばらく視線を彷徨わせた後、ルイズは問うた。 「殿下。王軍に勝ち目はないのですか?」 「無い、だろうね。何しろ向こうには悪魔がついている」 その言葉に、ルイズがぎょっと目を剥いたのを見て、 ウェールズは苦々しげに答える。 「一度、クロムウェルを戦場で見たことがある。奴の傍らには、 明らかに、人ならざる姿をしたものが立っていたよ」 「その、オークや何か、あるいはガーゴイルではないのですか?」 首を横に振る。 「違った。一目見て分かったよ、あれは悪魔だ、と」 ルイズは慄いた。まさか、始祖ブリミルに祝福されたこのハルケギニアに、 悪魔が存在するなど、おぞましい、と。 「……こっちじゃ、魔族って珍しいのかな?」 その反応を見て、チョコが小さくサララに問いかける。 そうみたい、とサララも小声で答えた。 だんじょんの町では、魔族は珍しくない。それどころかお得意様だ。 一緒にダンジョンにも潜るし、敵として相対しもする、そういうお得意様。 サララは勘違いしている。珍しい、ではなく存在しないのだ、このハルケギニアには。 「奴らは、この国を征服し、ひいては世界さえ制すると嘯いているよ」 「まあ、何て恐ろしい……」 ルイズは、一瞬言葉を詰まらせた。そして、深く一礼する。 「殿下、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」 「なんなりと、申してみよ」 「殿下、トリステインに亡命なされませ!」 「ルイズ?!」 その発言に、傍らに控えていたワルドがぎょっとする。 その隣で、サララとチョコは『ぼうめいってなんだろう?』と首を傾げていた。 「それは出来ぬよ。私はこの国の王族だ。王族が、守るべき国を捨てて逃げて良いものか」 「ですが……!」 未だ納得できないルイズが声を荒げるのを、ウェールズは無理やり遮る。 「今から、城で最後のパーティーが開かれる。よかったら、参加してくれたまえ」 ウェールズは微笑んだ。白い歯が魅力的だった。 「……ルイズ、殿下の言う通りだ。さ、行きたまえ」 「よくわかんないけど、多分、このままここに居ても無駄だと思うよ」 チョコがワルドに賛同する。サララが、ルイズの手をとって部屋を出た。 後には、子爵と皇太子だけが残る。 「恐れながら、殿下に一つお願いがございます」 ワルドがウェールズに語った願いを、人間よりも優れた聴覚を持つチョコだけが、聴いていた。 そうして、その中身を、サララにだけ告げた。 ルイズには黙っておいた方がよさそうだ、と判断して。 それを聞いて、思うところがあったが、今はまだ、行動に移す時ではない、と、 ルイズを連れて、パーティー会場へ向かうことに専念した。 城のホールで行われたパーティーは華やかな、しかし悲壮なものだった。 皇太子に聞いた話では、ここの城が最後の砦であり、 明日の正午には、総攻撃が仕掛けられるというのだ。 数の差は圧倒的。参加している貴族たちは、明日の今頃、どれだけ生き残っているだろうか。 そう考えると憂鬱で、ルイズはため息を溢す。 「ボク達、ここに来るまで、戦争について、あんまり考えてなかった」 ハチミツが塗られた鳥を齧っていたチョコが、呟いたので、ルイズは彼を見下ろした。 サララ達の居た世界は、武器が流通し、戦闘を生業とする者達が居ながらも、平和であった。 少なくとも、サララとチョコはそう思っている。 「理解、できない。人間同士が、こんなにたくさん、殺し合うのが」 「……私だって、これだけの人が、死ぬ、なんて、想像もつかないわ」 ルイズとて、話や歴史としては知っていても、直接戦争に参加したわけではない。 殺し合いが行われているような、血生臭い現実は、遠いものだと思っていた。 でも、今は。こんなに身近に死がある。それが、恐ろしかった。 「ね、サララ。貴族は、逃げちゃいけない、って私言ったわよね」 ワインを飲んでいたサララに、ルイズは声をかける。 「でも……時には、敵に背を向けることも、必要なのかしら」 わかりません、と常にないような声で、サララが答える。 そして、昔、ある本で読んだ話なのですが、と語り出す。 人間が大好きな魔女が居て、でも、魔族に恋をした。 その魔族が人間を殺すのを、止めたかった、でも、止められなかった、そうです、と。 止められるものと、止められないものとがあって、この戦争も、 きっと、止められないものなんです、と。 ルイズは、サララを見下ろした。前髪に隠された表情は、読めない。 ただ、寂しそうだな、というのだけは、何となく分かった。 「止められない、のね」 ルイズも、寂しげに呟いて、目の前の人々を見据えた。 サララは思いを馳せる。人間が大好きなのに、魔族に、魔王に恋をした魔女。 遠い遠い昔の、自分の先祖、同じ『サララ』という名前の魔女は、 一体、どんな想いをしていたのだろうか、と。 彼女の読んだ本、魔女の日記の中からは、その『サララ』の想いは、読み取り切れなかった。 そう、戦争は止められない。でも、止められるものは、ある。 少し失礼します、とルイズに告げて、サララはその場を離れる。 傍にチョコを残しているから、何かあれば連絡が入るだろう。 サララが向かった先は、先に自室に戻った皇太子の下であった。 こんこん、と控え目なノックの音。 「誰だ?」 ウェールズの問いに、サララです、と答えが返る。 「やあ、使い魔君か。入りたまえ」 薄暗い部屋の中、ウェールズはアンリエッタの肖像を眺めていた。 恐らく、恋人に最後の別れを心の中で告げていたのだろう。 「遠い場所からメイジの商人、という話だったね、君は」 サララは頷く。 「……この戦争に、勝つ手段は売っていないものかね」 おちゃらけた様子で、問う。それは袋には入らないですね、と彼女も笑みを返す。 「そうか……、そうだな。いや、すまない。猫の手も借りたい有様でね」 ウェールズが話をしたそうだったので、サララはそれを聞くことにした。 「勝ちたいさ、本当は。ここは僕の国だし、アンリエッタにも、また会いたい」 怒りと、悲しみを浮かべた目を細めて、吐き出す。 「でも、それが出来ない。だから、潔く、死ぬしかないんだ」 ウェールズの、貴族のその考え方を、サララは理解できない。 それは多分、一度死んでも所持金さえ払えば甦らせてもらえる世界の在り方や、 それでもなお、自らの誇りより命を大事にする彼女自身の考え方によるものだろう。 敵の数は、数万。そんな人数を見たことがないサララには、見当もつかない。 そして、きっと自分が手を貸した所で、無意味だ、と分かってしまっている。 「それで、何か用事があってきたのだろう?」 問われて、サララは首を縦に振る。 せめてもの、餞にと彼女は袋の中からあるアイテムを取り出した。 そう、彼が最後まで敵に立ち向かって、死ねるようなあるアイテムを。 ルイズには教えていない。自分が残酷なことをやっている自覚はあるからだ。 渡したアイテムについて説明する。ウェールズは微笑んだ。 「贈り物に、感謝しよう。生憎、僕がお礼に渡せるものはないが……」 辺りを見回して、苦笑する。金に換えられるものは、戦争の資金に換えた後なのだろう。 差し上げたものですから、とサララは首を横に振った。 「そういえば、聞いているかね。ワルド子爵は、君の主と明日結婚式を挙げるそうだ」 はい、とサララは答える。だからこそ、それを贈ったのだ、という言葉は内に秘めて、 彼女はただ、いつも通りの笑顔を浮かべた。 そして、翌朝。 始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、ウェールズは新郎新婦の登場を待っていた。 礼拝堂に居るのは、彼の他にはサララとチョコだけだ。皆、戦争の準備で忙しいのである。 ウェールズも、式を終わらせればすぐ戦争の準備に駆けつけるつもりであった。 暗い紫のマントを身に着け、帽子にはアルビオン王家の象徴たる七色の羽がついている。 扉が開いて現れたのは、誰だろう、ワルドとルイズである。 ルイズは、ワルドになすがまま、と言った態でぼんやりとしている。 借り入れた新婦の冠と、純白のマントの清楚さが良く似合う。 サララは、膝の上にチョコを乗せ、傍らに袋を置いている。 式さえ終われば、彼女達はグリフォンによってトリステインへ戻る予定である。 予定は未定、という言葉は昔から存在するわけだが。 「では、式を始める」 ウェールズが詔を告げる。ワルドはルイズを新婦とすることに同意した。 次は、ルイズの番である。ここに至ってようやく、彼女は自分が 結婚式の真っただ中であることに気が付いた。 隣に立つのは、憧れの子爵様。自分の恋を叶えることが出来なくなった王子様を、証人に。 なんともロマンチックであったが、ルイズの心は動かない。 気分は沈んだまま。とてもではないが、結婚出来ない。 「ルイズ……、緊張しているのかい?」 ワルドに声をかけられて、そちらに向き直る。 だが、どうしても彼の顔が見られない。戸惑いにそらした視線の先に、サララが居た。 ああ、そうだ、と思う。自分はまだ、結婚なんか出来やしない、と。 「ごめんなさい、ワルド様。私、まだ結婚できないわ」 「何……?」 スッ、とワルドの声の調子が変わった。びくり、とルイズは身を振るわせる。 「新婦は、この結婚を望まぬのか?」 驚いたウェールズの言葉に、それでもルイズははっきりと答える。 「はい。私はこの結婚を望みません」 自分が結婚するのは、あのサララに負けていない、と 胸を張って言えるようになってからだ。今の自分は、未熟過ぎる。 「そうかい……いやあ、残念だったね、ワルド子爵」 心底残念そうに、ウェールズはワルドへ向き直った。 「……僕のものになってはくれないのかい?」 ワルドの声が、怖い。ぬめり、と湿度を持って体中を這い回るような感覚。 ああ、そういえば前に見た、彼が蛙になってしまう夢は、 ひょっとしたら、これの予知だったのかもしれない。 「だったら、諦めよう。僕の目的は、二つあったんだ」 「ワルド様、何を……」 「一つは、君を手に入れること。そして、もう一つは」 瞬間。ワルドは二つ名に相応しい、閃光の速度で杖を抜き、呪文を詠唱を完了。 「貴方の命だ、ウェールズ殿下」 風の刃を纏った杖が、ウェールズへ向かって突き出される。 瞬間、己を襲った錯覚にワルドはうろたえた。 ウェールズの姿が、始祖像の影に紛れて、消えたように見えたのだ。 杖は、空しく彼の隣の空間を通過する。 しかし、その戸惑いも一瞬のこと。かわされる可能性も視野に入れていた。 こちらを振り向き、杖を構えたウェールズの背後。 そこに、仮面を着けた男が杖を振りかぶっている。 「ウェールズ様!」 ルイズの悲鳴は、遅い。仮面の男は、彼が仕込んでいた風の遍在だ。 咄嗟に振りかえったウェールズの胸が切り裂かれる。 今度こそ殺った、と口元に笑みを浮かべた。 次の瞬間に、突如としてその場に崩れ落ちる。 「ぐっ?!」 ワルドの体を、一本の剣が貫いていた。 水色の刀身を持つそれを握りしめていたのは。 「サララ!!」 ルイズの、困惑と喜びに満ち溢れた声が礼拝堂に響く。 「貴様……、読んでいたのか……ッ?!」 相手の顔色を読むのは、商人の十八番ですよ、と不敵に笑った。 「成程、そういうことかね!」 そう愉快そうな声を上げたのは、先程切られたはずのウェールズだった。 油断しきっていた仮面の男を一閃する。 「君のくれたお守りのお陰で助かったよ」 首から下げ、服の中にしまっていたお守り。 それが、風の刃が致命的な怪我を与えるのを防いだのだった。 サララは、ワルドのことを、商人の勘から訝しんでいた。 もし彼が敵の内通者なら、望むことは何か。 目的の一つが恐らくルイズだというのは、やたら構いたがっていたので分かった。 そして、もう一つは、と考えていた彼女は、ワルドが この式を挙げる立会人に、ウェールズを指名したことで気が付いたのだ。 彼の目的が、ウェールズの命を奪うことにある、と。 それを阻止するために、サララは彼にあるアイテムを渡した。 一つは、彼が身につけている暗い紫のマント。闇に紛れる力を持ち、 敵からの不意打ちを防ぐ、『闇のまとい』 もう一つは、彼が首から下げていたお守り。致命的な怪我を防ぐ、『厄除けのお守り』 それらが、ものの見事に効力を発揮して、ウェールズを卑劣な不意打ちから守ったのである。 ワルドの体を刺し貫いたまま、サララは告げる。 早く、本体も姿を見せたらどうですか、と。 「……くくく、そこまで読まれていたか」 笑い声。すぅ、と貫かれたワルドの体が風にかき消えた。 ばん、と開いた礼拝堂の扉。そこに、ワルドが立っている。 「いやはや、恐れ入ったよ。どうやら、本気でかからねばならぬらしい」 ニヤニヤと笑みを浮かべながら、ワルドが呪文を唱える。 「ユビキタス・デル・ウィンデ」 一つ、二つ、三つ、本体を含めて、三人のワルドが姿を見せた。 チョコは全身の毛を逆立て、袋を咥えてサララの後ろへ、 ルイズとウェールズを守るような位置に陣取った。 やっぱり、とサララは呟く。 彼女が握っていたのは、幻に対して威力の上がる、その名も『まぼろしの剣』 「多少、アイテムの使い方は上手いようだが、ガンダールヴでもあるまいに! 僕に、僕達に勝てるものか!!」 「ガンダールヴ……あーそうだ、相棒のお仲間だな」 袋から顔を出したデルフリンガーが、かちゃかちゃと鍔を鳴らす。 「俺っちも、昔はそいつに握られてたもんさ」 「こんな時に思い出話なんかしてる場合じゃないだろ!」 チョコがデルフリンガーを窘める。 「まずは、その厄介な剣から処分させてもらおうか!」 唱えられたのはウインド・ブレイク。サララの手から、まぼろしの剣が吹き飛ばされる。 始祖像の手前まで飛ばされた剣を拾いに行く余裕はない。 デルフリンガーを手にし、袋の口から出た紐を腰に巻きつける。 不格好だが、正面突破で勝てる相手ではない。 あらゆる搦め手を使わなければ、自分達にきっと先は無い。 いつにない緊張感を抱いたまま、サララはキッ、とワルドを見据えた。 前髪が邪魔をして、その険しい視線は誰にも気づかれなかったが。 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/1548908-tf2/pages/757.html
セイコ デュエルなれました 効果モンスターカード 18枚 イナゴの軍勢 ×2 スカラベの大群 ×2 ステルスバード ×3 魂を削る死霊 デス・コアラ ×2 プロミネンス・ドラゴン ×3 マシュマロン UFOタートル ×2 溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム ×2 魔法カード 9枚 サイクロン ハーピィの羽根帚(禁) 波動キャノン ×2 早すぎた埋葬 平和の使者 ×3 レベル制限B地区(D) 罠カード 13枚 神の宣告 ×3 グラヴィティ・バインド-超重力の網-(D) 拷問車輪 ×2 停戦協定 天罰 ×2 破壊輪 光の護封壁 ×2 リビングデッドの呼び声 計40枚
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4412.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました―第六話― 教室で爆発の起きた2時間後、目を覚ましたシュヴルーズは、 魔法を使わずに教室を片付けるよう命じた 「まったくもう、ゼロのルイズと来たら!」 「いい加減にしてほしいものだ!」 同級生達はざわざわと騒ぎながら、教室を出ていく 後に残ったのは、ルイズとサララ、そしてチョコだけである 「……はぁ……」 机を拭いているルイズがすっかり落ち込んでいる様子なのを、 サララはちらちらと横目に見ていた 「……分かったでしょ、私が『ゼロ』って呼ばれるわけ……」 どうやら自身が魔法を使えないことがバレたのにショックを受けたようだ 「私、魔法が使えないの。何をやっても、爆発しちゃうのよ……」 そうしてまたがっくりと肩を落としている 「ねえ、サララ。あなたも、魔法使えないのよね?」 サララに向き直ったルイズは、哀しげだった その言葉に、サララは頷く 自分も、何度も魔法を使いたいと思ったことがある だから、ルイズが苦しいのも哀しいのも、よく分かる、と返答する 「……そう、よね。……こんなこと言っちゃ駄目かもしれないけど、 あなたがいてくれてよかった。……あなたは、分かってくれるものね」 今まで、自分と同じ苦しみを共有してくれる人は居なかった 厳しく接する母と姉、優しくしてくれる下の姉 けれど、彼女達は決して自分の苦しみを共有してはくれなかった 自分と同じ、魔法の使えない魔法使いであるサララが、 この苦しみを分かってくれる、馬鹿にしないでくれる それが嬉しくて、ルイズはほんの少しだけ微笑んだ ルイズは笑っている方が可愛いな、とサララも釣られて微笑んだ しかし、それにしたってルイズは随分とひどい格好だ 爆発のせいで、全身煤だらけだし、服も何箇所か破れている ここは自分が片付けておくので、チョコと一緒に部屋に戻り、着替えて、 ついでにそろそろ昼食の時間なので食堂に行った方がよくないか、と告げる 「そう? ……じゃあ、お願いするわね。おいで、チョコ」 サララに謝ると、ルイズはチョコを連れて教室を出て行く この時、ルイズもサララもは気がつかなかった 普段ならうるさいくらいのチョコが黙りこくっていることに 着替え終わったルイズは、チョコを連れて食堂へ向かう だが、着替える間も教室から食堂へ向かう今も、 黙ったままで、トボトボと歩いているチョコが気にかかる 「ねえ」 「……」 呼びかけてみるが、俯いたまま、返事をしない 「ねえってば」 「……」 やはり、返事がない 思わずイライラしたルイズが、チョコの首根っこを掴み上げ抱きかかえる 「ちょっと、返事くらいしなさいよ!」 「わわ!」 いきなり抱きかかえられ、チョコは驚いたような声を上げる 「どうしたのよ、あんた。いつもならギャアギャアうるさいのに、 さっきから、すっかり黙りこくっちゃって」 ルイズのその言葉に、青い瞳を伏せたまま、チョコが言葉を紡いだ 「……やっぱり、辛い?」 「え?」 チョコの言葉にルイズは何のことだ、と首を傾げる 「……魔法が、使えないの。他の人みたいに、魔法が使えないの」 「え、ええ……。……どうしたの、チョコ?」 控えめに返事をしたルイズに、チョコは告げる 「ボクの、せいなんだ」 チョコの声が、わずかに震えていた 「サララが、魔法使えないのは、ボクの、せいなんだ」 「あんたの、せい?」 「……ケガして、弱って、捨てられてたボクを、サララが助けてくれたんだ。 ボクが可哀想だから、サララはボクをパートナーに選んでくれた。 ボクには、魔法媒体としての才能がない。だから、魔法が使えない。 ボクは、足のケガのせいでホウキに乗ることができないから、 空を飛ぶことを助けても、あげられない。だから、空も飛べない。 ……けど、今までは、ちっとも、そんなことが辛いって、 サララが、言わないから、平気なんだって、思ってたんだ」 チョコがポロポロと涙をこぼし始める 「でも、さっきサララは、自分も魔法を使いたかったって、言った。 魔法が使えないルイズの苦しみや哀しみが分かるって、言った。 それは、サララが苦しかった、哀しかった、ってことなんでしょ?」 涙ながらのチョコの叫びに、ルイズは脳天に雷が落ちたかのような衝撃を受けた サララは、魔法が使えなくても不平不満を言わなかった 魔法が使えなくても、自分なりに懸命に生きてきたのだ そんなに強い心を持った彼女を、自分は使い魔にした 彼女に相応しい主に、パートナーなれるだろうか 召喚したことに、ちゃんと責任を持てるだろうか 小さな命を救うために、どんなに辛くても苦しくても、 魔法を使えない道を選んだ彼女のようになれるだろうか ここは任せてくれ、と言った小さなサララの姿が、 母や姉達のようにずっと大きな姿に見えてくる 「……大丈夫よ、チョコ」 腕の中のチョコを強く抱きしめる 「魔法が使えなくても、サララは、笑っていられるんだもの。 あなたのパートナーは、それだけ強いってことじゃない? だからきっと、めそめそしてたら笑われちゃうわ」 「……うん、そうだよね」 その言葉に、チョコも少し生来の元気を取り戻したらしい 「さ、ご飯にしましょ? きっと、お腹が空いてるから、 後ろ向きなことばっかり考えちゃうんだわ!」 ルイズは、思い切り微笑むとチョコを抱えて走り出した 魔法が使えなくても笑っていられる、サララのように、 笑うことから始めよう、と決意して、ルイズは食堂へと向かった 一方のサララは、教室の片付けをある程度終えて一息ついたところだった しかし、困ったことに新しい机や椅子を運びこむことはできても、 天井に刺さった破片を片付けたり、新しいガラスをはめ込んだりするには いかんせん、サララの身長が足りない こんなことなら、せめてそれだけでもルイズにやってもらうべきだったかなぁ、 と、思いながらサララはガラスと天井を交互に見つめていた 「あら、どうかなさいました?」 教室の扉を開けて入ってきた一人の女性がそんなサララに声をかけた ここの教師の一人だろうか?と首を傾げる そんなサララの表情を読み取ったらしい女性が自己紹介を始める 「はじめまして。ロングビルと申します。 学院長であるオールドオスマンの秘書をやっておりますの」 にっこりと微笑んだ彼女に、サララも微笑を返す ただ、彼女は油断ならないな、と商人としての直感が告げていた 「ミス・ヴァリエールが片付けをしているので、様子を見てくるように、 と言われたのですが……ミス・ヴァリエールは?」 ルイズはサララの助言に従って、着替えるために部屋へ戻り、 おそらく既に食堂へ向かっただろうことをロングビルに説明する その説明の後、教室をぐるりと見回し、天井の破片と はまっていないガラスに目をやった彼女は笑った 「……どうやら、あなた一人ではどうにもならないようですわね?」 う、とサララは言葉に詰まる そんなサララを見て、どこか茶目っけを含んだ顔でロングビルは笑う 「では、お手を貸しますわ」 ロングビルが杖を振り、何やら呪文を呟く 天井の破片はまるで吸収されてしまったかのようになくなり、 ガラスは一人でに浮き上がって窓にハマる その様子を、サララは目を輝かせながら見ていた やはり、魔法は凄い、と 「さて……では、私は教室が午後からは使えそうだと報告してきますわ。 あなたも、そろそろ昼食へ向かった方がよろしいのでは?」 ロングビルのその言葉に、サララはシエスタとの約束があったことを思い出す 丁重にロングビルにお礼を述べた後、とてとてと走り出した そんなサララの後姿をロングビルは怪しげな目つきで見やる 「フフ……恩を売っておくにこしたことはないからねえ。 見たこともないマジックアイテムを持った魔法の使えないメイジ……。 あいつの持ち物に、『魔王の宝玉』以上のお宝があればいいけど」 そんなロングビルの呟きを聞いたものは、誰も居なかった 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8463.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました――第二十四話―― 「ここまでは順調だったのに!」 アカデミーの一室で、エレオノールが悔しげにるつぼの中の液体を見つめていた。 ゲルマニアに蔓延する『カエルの呪い』の特効薬――になる予定のものである。 「まさか、『水の精霊の涙』の在庫が切れてるなんて……」 ヴァレリーもまた、困り切った様子で液体を見つめている。 この世界には『水の秘薬』という水の魔法の効能を高める薬が存在する。 『水の精霊の涙』の涙はその秘薬の中でもとてつもなく希少なもの。 水の精霊との交渉役を務める家から、極々稀に市場に出回るだけであった。 「あんまり出回ってないとは聞いたけど、ここまでとはね」 「あなたの荷物の中に代用が出来そうなものはないの?」 エレオノールに問われ、サララは考える。 考えたが、それに該当するものは今は手元にはなかった。 もし向こうの世界に戻れたら早急に『賢者の石』を入手しておこう、と決める。 「参ったわね……ゲルマニアは既に話を通してあるらしいし、あんまり先延ばしに出来ないわ」 ゲルマニアは非公式ながら、『カエルの呪い』が悪魔の手によるものであったと認めている。 風の噂では、実は皇帝自らも悪魔(エンペル)の姿を見かけていたらしい。 それを公に口にしなかったのは、悪魔を見たなどと言えば頭の病気を疑われ、 即刻帝位を奪われて幽閉されかねなかったからだ、とかなんとか。 その皇帝からは、国民の支持を取り戻すためにも早急に解呪薬を、という意見書が来ており 一刻も早く薬を完成させねばならないのであった。 「『別の』市場も覗いてみたんだけど、あっちにも全然無いみたい」 ヴァレリーが声をひそめる。別の、とはサララの世界で言うところの盗賊ギルドであろう。 ――目的を達するために必要な品がない。その状況でサララのとる行動は至って単純だ。 「え? 水の精霊が何処にいるか、ですって? あなたそれを聞いてどうするの?」 疑問符を浮かべるエレオノールに向かって、サララは微笑んだ。 ちょっと、取りに行ってきます、と。 欲しいものがあるなら危険を冒してでも手に入れろ。 それがだんじょんの町で生きてきたサララの信条だった。 面倒だからって夜中だけ開いてる店で買って済ますようなことは、性に合わない。 「それで、一度こっちに戻ってきたわけ?」 問いかけるルイズの膝には、一冊の古びた本が載せられている。 始祖の祈祷書、と呼ばれるその本は王族の婚姻で祝詞を読み上げる巫女が 大事に持っていなければならないとされるものだ。 ゲルマニアの件が片付けばウェールズと結婚する予定のアンリエッタが、 その巫女役をルイズに頼んだため、今はその場にある。 「ラグドリアン湖かぁ、何度か行ったけど綺麗な所なのよねぇ」 袋にせっせと荷物を詰め込むサララの背中に向かって呟く。 「いいところなのよねぇ、ラグドリアン湖」 それは楽しみですね、早く行きましょう、とサララが笑って答える。 「へ? え、ええ、勿論よ! ついていくに決まってるじゃない!」 本を小脇に抱えて立ちあがると、クローゼットへ歩みを進める。 「サララは私のパートナーなんだからねっ、私が一緒に居て当たり前じゃない!」 ぷりぷりと口を尖らせながらも、その表情には喜びが隠し切れていない。 正直少しルイズは寂しかったのだ。何しろ二週間もの間サララはアカデミーに籠り切りで、 自分のパートナーであるサララが自分の傍に居ないことが、不満だった。 だから、危急の事態とはいえサララと一緒に居られるのが嬉しいのだった。 こういう時にワクワクしてしまう辺り、ルイズも少々サララに感化されているようである。 「でもさぁ、どうやってその水の精霊に涙を分けてもらうわけ?」 ウキウキしていた主従の動きが、チョコの一言で止まった。 「……考えてなかったの?」 サララの視線が明後日の方を向いている。前髪で見えないが。 「はぁ……。ま、ちょっとボクにツテがあるから聞いてみるよ」 「ツテ、ってどこにあんのよ?」 ルイズが首を傾げる。チョコは得意そうに告げた。 「ふふん。ボクだって何も昼寝ばっかりしてたわけじゃないんだよ」 自慢の尻尾を揺らし、胸を張るチョコを二人は不思議そうに眺めて顔を見合わせた。 チョコに言われるままやってきたのは学園の一角にある広場だ。 ここでは使い魔達が好き勝手にくつろいでいる。 元は野生の動物とはいえ、メイジと契約を結んだからには人を襲うことはないし、 種族間での闘争もほとんど行っていない。なんとも暢気な光景がそこには広がっている。 あちらでカラスがオウムと共に歌っているかと思えば、 こちらの足元を狼とウサギが駆け比べをしている。 かと思えば、少し離れた噴水ではスキュラがまどろんでいる、といった様子だ。 チョコはその噴水へとてとて歩み寄ると、縁に手をかけて何やらにゃごにゃご言っている。 動物同士で話す際には人間相手に使うのとは異なった言語を使用するらしい。 そのにゃごにゃごが止まったかと思うと、噴水からぴょん、と一匹のカエルが跳び上がった。 ぬめぬめとした黄色い肌に黒い点が幾つも散った、いかにも毒がありそうなカエルだ。 「きゃっ、かっ、カエルっ」 ルイズが可愛らしい悲鳴を上げてサララの後ろに隠れる。 子供の頃、一番上の姉にカエル関係でからかわれて以来のカエル嫌いは未だ治らない。 「この子はロビン。この子のご主人さまが水の精霊との交渉役の家系なんだってさ」 チョコが彼女(ロビンはメスである)に聞いた話によると、 水の精霊との交渉は指定された一族の血を継ぐ者にしか行えないらしい。 幸い、ロビンの主がその一族の末席に名を連ねているため頼んではどうか、とのことだった。 「ボクたちも知ってる人だしね」 「あ、そっか」 その言葉を聞いて何やら思い出したのか、ルイズがぱん、と手を叩く。 「確か、水の精霊との交渉役って、モンモランシ家の仕事だったわね」 「ええ、その通りよ」 タイミングを計ったかのごとく、声がかけられる。 「厳密には元、だけど」 金の巻髪を揺らしながら現れたのは、モンモランシーであった。 「それで、どうして水の精霊と交渉しなきゃいけないのよ」 「それは、アン……むぐっ」 アンリエッタの命によるものだ、と答えかけたルイズの口をサララが慌てて塞ぐ。 どうして命を受けたのか、という話になればアンリエッタの密命をバラさねばならなくなる。 いくらなんでもそれはまずいだろう。 「……まぁ、あなたにはお世話になってるし、ちょっと分けてもらえるんなら私も問題はないわ」 と言っても、とモンモランシーはため息をこぼした。 「何年か前にお父様が水の精霊の機嫌を損ねたせいで、一度お役御免になってるのよね。 だから、何か交渉材料があればいいんだけど……」 「水の精霊が欲しがってるものがあればいいってこと?」 「そうね……そんなものがあればだけど」 あ! とサララが一声上げて袋の中から一つの指輪を取り出した。 先日エンペルの手から奪ってきた『アンドバリの指輪』だ。 確か本来ならば、水の精霊の持ち物であったはずである。 「……綺麗な指輪ね。でも指輪なんかで喜ぶかしら」 強い水の力はあるみたいだけど、と不思議そうに見つめながらも、モンモランシーは納得したらしい。 「それじゃあ、行きましょうか。ラグドリアン湖へ」 モンモランシーの言葉を受け、二人は馬小屋へと進んだ。 なおその馬小屋で後輩の少女と遠乗りをしようとしていたギーシュと遭遇し、 しばらくもめることになったのだが特に詳しくは書かない。 置いて行くと浮気しそうだから、というモンモランシーの一言でギーシュも連れ、 一行がラグドリアン湖に到着したのは昼を少し回った辺りだった。 湖畔近くの木陰に座ると、一行は昼食をとった。 「いやしかしこのスキヤキという料理は実に美味いね」 一人に一個宛がわれた鍋を空にして、ギーシュは満足げに呟いた。 「この甘辛いタレがおいしいのよね、今度レシピ教えてちょうだい」 モンモランシーの問いに、サララは笑みを返すばかりだ。 これの出所が知られたら、多分彼女は商売が出来なくなる。 ルイズは、サララのこの笑みが何かをごまかす時のものだと気付いているが、 それを突っ込んでこの美味しい料理が食べられなくなるのは嫌なので黙っていた。 「そういえばモンモランシー、交渉というのはどうやるんだい?」 「一族のものの血を使い魔に水の精霊まで届けてもらって、話をさせてもらうのよ」 モンモランシーは立ちあがると、腰の袋からロビンを取り出す。 ポケットからは針を取り出し、それで指先を突いて傷を付けた。 そこからこぼれた血を一滴、ロビンの背に垂らす。 「あなたの旧いお友達に、旧き偉大な水の精霊に伝えてちょうだい。 盟約の持ち主の一人が話をしたいって言ってる、って」 任せておけ、とばかりにゲコ、とロビンは鳴いて湖に潜っていった。 「そういえば、水の精霊ってどんな姿をしているの?」 ルイズが問いかける。 「どんな、と言われても困るわね。その時々で姿を変化させるから」 「とてつもなく美しい、と前に話してくれたっけ」 「ええ。陽光にキラキラと輝いて、とても美しいのよ」 ダンジョンでよく見かけるウンディーネと似た姿だろうか、とサララは一人考えている。 意思を持つ水が魔物と化したものだが、見た目と中身は愛らしい少女のそれだ。 しかし、見た目は美しくとも魔物は魔物。 その生きた水の中に冒険者の死体を貯め込んでいる恐ろしい一面もある。 冒険者の命を呼び戻すためサララは幾度となく彼女達に立ち向かい、 その死体を取り戻すために尽力した。その回数は数えきれない。 そう、彼女達に立ち向かったのは命を救うためである。 断じて、断じて、その冒険者が持っている金品の半分を、彼らを蘇生させる教会と 山分けにするためではない。彼らを救うためだ。救うためなのだ。 などと誰へとでもなく言い訳をしているサララは、ふと気配を感じて湖面を見つめた。 湖面は光り輝き、そこに水の精霊が現れたのである。 まるでそれ自体が意思を持つかのようにうねうねとうごめく。 盛り上がった水面は見えない手でこねられるかのようにして様々に形を変える。 戻ってきたロビンを迎えいれ、頭を撫でてやった後、モンモランシーは水の精霊に向き直る。 「私はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。 旧い盟約の一員よ。カエルにつけた血に覚えがおありなら、私達にわかる やり方と言葉で返事をちょうだい」 水面がぐねぐねと形を変えていく。サララは驚いた。 その姿が、モンモランシーのそっくりのものになって微笑んだからだ。 ただし、実際の彼女よりは一回り大きく、服も身につけていない。 透明な裸のモンモランシーだった。氷の彫像を思ってもらえばいいかもしれない。 ギーシュがくるりと後ろを向いた。ポケットからハンカチを出して鼻を拭っているようだ。 存外、彼はウブである。 「覚えている、単なるものよ。貴様に最後にあってから月が五十二回交差した」 「よかったわ。お願いがあるの。あつかましいと思うけど、あなたの体の一部を 私達に分けてもらえないかしら」 そこまで言うと、モンモランシーがちらり、とサララを見やる。 アイコンタクトを受け、サララが水の精霊の方へ近づいた。 これをお返ししますから、どうかわけてください、と指輪を差し出す。 「おぉ……、これは悪魔によって奪われた、アンドバリの指輪……」 精霊は水の一部を触手のように伸ばすと、サララの手から受け取ろうとして触れる。 触れた途端、水の精霊の姿が大きく揺れ動いた。 「おぉ! おぉ!」 「え、ちょっと、ど、どうしたのよ」 こんな水の精霊を見るのは初めてらしいモンモランシーがうろたえる。 「単なるもの。貴様は『全ての始まり』の血族。我が遠き同胞を知るもの」 水の精霊は感極まった、とでも言うようにゆらゆらと揺れる。 「貴様が交渉をし、我は物品を受け取った。ならば、支払いをせねばなるまい」 アンドバリの指輪を受け取ったのとは、別の触手がサララの掌に伸びる。 その先端がぶつり、と切れたかと思うとそこに一掬いの水が残った。 「こっ、こんなに!」 モンモランシーが慌てて瓶を差し出し、サララは一滴もこぼさぬようにその中に収めた。 「指輪を取り戻したことを、感謝しよう。全ての始まりの血族よ」 再びただの湖面へと戻っていく水の精霊。 だが、そこへ向かってルイズが叫んだ。 「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! 『全ての始まりの血族』ってなんなの!?」 また小さく湖面が揺らぐ。水滴の王冠を被った透明の少女、とでも 表せるような姿で水の精霊が姿を見せた。 「この世界はね、人の想いから生まれたの。魔女さんの一族が、その想いを集めた。 世界が出来て、私達が生まれた。だから、魔女さんは『全ての始まりの血族』」 先程まで感情がなかったのが嘘のように、水の精霊は笑った。 「嬉しいなぁ。はじめて、魔女さんからお買いものしちゃった。ずっと、憧れてたんだ」 その笑みを残して、ぱしゃん、と今度こそ水の精霊は消えた。 世界の成り立ちについて、ルイズ達は、否、ハルケギニアに住む人々の大半は 詳しいことを知らない。そもそもブリミル教徒はブリミル降臨以前のことを 深く考えることを異端と考えているのだ。 であるからして、この小さな魔女の血族が世界を作るのに関わっていた、などと 言われても理解が及ぶものではない。 「と、とにかくこれだけあれば十分なんじゃないかしら」 モンモランシーの言葉に、誰ともなく頷く。 「そうね。早く帰りましょう、サララ」 ルイズが声をかける。サララは押し黙っている。 「……サララ? ねぇ、どうしたのよ、サララ!」 肩をつかんでゆすぶられて、ようやく呼ばれているのに気付いたらしい。 なんでもありません、と笑う顔は、やはり何かをごまかしている顔だ。 ルイズの胸が不安で軋んだ。 サララが何処か遠くへ行ってしまいそうで寂しい、と心中をよぎり そもそも彼女は遠くからこちらへ来ているだけで、いつか帰ってしまうのだ、と 今まで忘れていたその事実がルイズの胸をさらに軋ませた。 顔を曇らせた彼女に、サララは気付かない。未だに考え事をしていたから。 彼女が思い出していたのは、おとぎ話だった。 一人の魔女が鍋いっぱいに集めたアイテム。 それにこめられた人々の想いの力で、世界が出来たのだという魔女に伝わるおとぎ話。 今まで考えて見たこともなかったが、この世界もサララの故郷と同じように 『魔女』が作り上げた近くて遠い世界なのかもしれない。 だったら、帰るための手段はきっと見つかるはずだ。 頑張って探してみよう、サララは決意を新たにした。 こちらでの生活も楽しいけれど、自分はだんじょんの町の商人なのだ。 あんまり長く、店を空けておくわけにはいかない。 そう決意したサララは、ルイズの顔が不安げなのに気付かなかった。 所変わって、アルビオンのとある場所。 数百年は経たであろう廃墟の片隅に奇妙な紋様があった。 円陣の中に六角星が描かれたその紋様が突如として光る。 光が消えると同時に、そこに人影が現れた。人影、と言ったがその姿は人間とは程遠かった。 青白い肌、銀の髪。ハルケギニアでは月目と呼ばれる左右で色の違う瞳。 だが何よりもその人影を異形たらしめているものは、背に生えた闇色の翼だ。 「なるほど……エンペルが言っていた『ハルケギニア』とやらはここか」 空を見上げる。二つの月が照らす世界は人影には少々眩しいようだった。 「だが、これくらい明るい方がアイツを見つけやすいな」 人影は独りごちて地面を蹴る。片方しか翼がないにも関わらず、 並み大抵の鳥よりも早く人影が夜空を翔けていく。 「魔力こそ多いが、アイツの魔力は独特だ。すぐに見つかるだろう」 空を翔けながら、人影はここへ来るまでのことを考える。 魔族である自分を、他の人間と分け隔てなく接する変わった魔女。 その魔女が行方不明になってから三十回以上月が巡った。 ダンジョンの中で倒れたとは聞かないが、黙って居なくなるような魔女ではない。 あちらこちらで魔女の安否を問う声がささやかれ始め、 彼自身も物足りなさを感じていた時に、部下の一人から彼女の匂いがして問い詰めた。 問い詰められた部下の言葉で、この世界に魔女が居ることが判明した。 それを知って、何故だか居ても立ってもいられずに迎えに来たのである。 魔族の少年は名をアイオンといい、時期魔王候補であり、サララの店の常連客であった。 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/poke_ss/pages/1324.html
レッド「安価でナツメさんにセクハラする」 ページ一覧 1ページ目 2ページ目 3ページ目 4ページ目 5ページ目 6ページ目 7ページ目 8ページ目 9ページ目 10ページ目 11ページ目 12ページ目 13ページ目 14ページ目 15ページ目 16ページ目 17ページ目 18ページ目 19ページ目 20ページ目 21ページ目 22ページ目 23ページ目 24ページ目 25ページ目 26ページ目 27ページ目 28ページ目 29ページ目 30ページ目 31ページ目 32ページ目 33ページ目 34ページ目 35ページ目 36ページ目 37ページ目 38ページ目 39ページ目 40ページ目 41ページ目 42ページ目 43ページ目 トップへ
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/478.html
① ② ③ ④
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4973.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました―第13話― 「はっ! そんな斧一本でどうこうできるもんか!」 そんなフーケの嘲りの言葉も聞かず、サララは斧を構える。 狙うのは本体ではなく足元。 巨大な分、足が崩れればたちまち倒れるだろう、そう読んでの行動だ。 走った勢いをぶつけるように、斧を横に構え、薙ぐ。 ざしゅり、と鋭いような鈍いような音がして、ゴーレムの足を抉る。 その拍子にバランスを崩し、ゴーレムがぐらりと揺れた。 「……へえ、結構威力はあるようだね。それもマジックアイテムの類かい?」 落ちないように足をふんばりながら、フーケが笑った。 必死に斧を振るうサララには、その声が聞こえていない。 サララの構えた斧は、土や霧、あるいは溶岩などで体を構成する『巨人』と呼ばれる モンスターを攻撃する際に威力を発揮する『巨人のすね打ち』である。 二足歩行型の生物というのは、元来足元が弱いものだ。 遥かな異国に生息するという成人男性に似た足を持つ巨大な蛇すら、 そのすねを打たれた際には悶え苦しむといわれるほどである。 「けど、甘い! 土のある場所でゴーレムが倒せると思うな!」 フーケが錬金の呪文を唱える。 たちまち、ゴーレムの壊れた足が再生していく。 これではいつまで経っても倒せはしないだろう。 「ど、どうしよう、サララが……!」 「このままじゃやられちゃうよ! な、なんとかしなくっちゃ!」 ルイズとチョコはその光景を見ながらおろおろしていた。 「きゃっ! いたた、何よ、もー」 足をとられたルイズがぶつくさと足元を見る。 「あ……!」 それは、サララが持参したアイテムの詰まった袋だった。 「そうだわ、この中のどれかがあれば、きっとサララは勝てるはず!」 ルイズは袋をひっつかむと、サララとゴーレムの元へ駆け出した。 「サララ!」 ルイズの声に先に気がついたのはフーケだった。 その姿を見れば、袋を抱えている。あれにはマジックアイテムが入っているはずだ。 形勢を逆転されてはたまらない、とばかりにゴーレムの攻撃対象を ルイズへと変更させた。その拳を錬金で鋼鉄に変える。 「きゃああああ!」 迫ってくる拳に対してあげた悲鳴により、サララはルイズの存在に気づいた。 手にした斧を手放すと、ルイズの元へ急行する。 サララは未だ預かり知らぬことであるが、彼女の額に刻まれているのは 神の頭脳、あるいは神の本と呼ばれる『ミョズニトニルン』のルーンだ。 『あらゆる魔道具の能力を最大限にまで引き出し、使用することが可能』 という能力を使い魔に与える額のルーンが光り、ブーツの性能を大幅に上昇させる。 彼女が身につけているブーツは、装備したものの素早さを上げ、 攻撃の命中精度をあげ、敵の攻撃をかわしやすくするものだ。 その能力が最大限にまで引き出された結果、今のサララは ブーツの名に冠された異国の神と見まごうほどに俊足であった。 ルイズを抱えたまま、鋼鉄の拳を間一髪で避ける。 「あ、ありがとう、サララ……それより、これ……」 あまりの素早さに目を回しながらも、ルイズは袋を渡す。 「これがあれば、あんたは、フーケをやっつけられるんでしょ?」 そのルイズの言葉にサララはにっこりと微笑みながら眉をしかめた。 助かりましたけど、こんな無茶はしないでくださいね、とため息をつく。 「つ、使い魔の危機を黙って見てちゃ、ご主人様失格だもの」 頬を膨らませて、すねるようにルイズが言い返した。 そんなルイズをかばうように背を向けると、ゴーレムと、 その肩に乗ったフーケを睨みつける。 「茶番は終わりかい? なら、こちらから行かせてもらうよ!」 再び、ゴーレムがその拳をサララに向けた。 サララはその拳から目をそらさず、目的のアイテムを探して、袋を漁った。 手に触れるたびに、アイテムの名前が流れ込んでくる。 ……そして、予想だにしなかったものを見つけて、森に響くほどの驚きの声をあげた。 「な、何だい?」 サララの声にうろたえたフーケが、思わず拳を止めた。 わたわたしながら、サララは袋から一つの箱を取り出した。 そんな、なんで? と首を傾げながら、サララはその箱を開ける。 薄紫色に妖しげな光を放つ宝玉と、その台座。 ……フーケが手にしているはずの、『魔王の宝珠』だった。 「「「えええええー! なんでえええ?」」」 ルイズとフーケとチョコの声が重なった。 「そ、そっか! さっきロングビルに渡すときに、間違えたんだ! 『アレ』も、箱に入ってるから!」 サララは、どんなに大事なアイテムでもとりあえず無造作に箱に放り込む。 そのせいで、ルイズが取り出した際に間違えてしまったらしい。 フーケは顔を真赤にして、口をパクパクとさせている。 「そ、そんな馬鹿な! じゃあ、こっちのアイテムは一体?」 自分が持っているはずの宝が、敵の手にあるのを見て、 フーケは冷静さを失ってしまったらしい。 不用意にも、自分が抱えていた箱を開いて中身を確認しようとした。 そして、その中に入っていた『モノ』と目が合って、石になった。 それは比喩ではない。本当に一瞬にして、彼女の体は石像と化したのだ。 魔力の供給が途絶え、ゴーレムがただの土くれに戻る。 土の小山の上には、ぼふり、とその石像が落下する。 土がクッションになったらしく、幸いにして何処も欠けていない。 「……えー……」 怒涛の展開に、誰もが声を失う中、チョコだけが呆れたような声を上げた。 ハッ、と正気に戻ったサララは、石になったフーケの元へ近づく。 石像になったままの彼女を、袋から出したロープで縛り上げた。 それから、その足元に落ちていた木箱の破片を拾いあげる。 この中に入っていたのは、蛇の髪に猪の牙を持つ魔物の生首である。 その邪悪な瞳に見つめられたものは、たちまち石と化してしまうのである。 そんなアイテムだから、普段は箱に入れて保存していた。 まさかそれが、こんな風に役に立つとは思わなかったけど、と苦笑した。 どうやら戦闘が終わったらしいことを確認して タバサ達を乗せたシルフィードが降りてくる。 彼女達に手を振りながら、サララはちらり、とフーケの顔を見た。 悲鳴をあげたまま、口を大きく開けた顔だ。 この顔なら治すのにアレを使えるな、と安堵のため息をつく。 馬車を置いて帰るわけにも行かないので、四人と一匹と石像一体は 再びがたごとと馬車に揺られていた。 その手綱を取っているのはタバサである。 「それで、どーすんのよ、コレ」 コンコン、と石像になったフーケをルイズが軽く叩く。 「このままじゃあ、衛兵にも引き渡せないものねえ……」 キュルケも興味深そうにそれを見ながら嘆息する。 「あ、うん、大丈夫。元に戻す方法はあるよ。ね、サララ? ……サララ、どうしたの?」 チョコに呼びかけられてなお、サララは深い思索の海に沈んでいた。 サララの直感は、フーケがそこまで悪い人物だとは思えない、と告げている。 宝を盗むのは、いつも悪徳貴族からだけだ、と噂で聞いた。 それに、何となく彼女は雰囲気が似ているのだ。 だんじょんの町のお得意さんであった女盗賊サファイアに。 守るべきものがあるがゆえに、非道になっているような、そんな人だ、と思えた。 「サララ、ねえ、サララってば!」 ペチペチと膝に猫パンチを数度食らって、ようやくサララは呼ばれているのに気づいた。 「とりあえず、フーケを戻さないと」 ああ、そうだった、とサララは袋の中から目的のアイテムを取り出す。 「うわぁ、なにそれ? きれいね……リンゴ?」 ルイズの言葉に頷くと、黄金色に輝くリンゴを石像のフーケの口に放り込んだ。 「う、ううん……」 たちまちの内に、フーケの体が石像から元に戻る。 「はっ!」 目を覚ましたフーケは逃げようとしたが、体を縛られているのを見て、 観念したかのように吐き捨てた。 「情けないねえ。この土くれのフーケ様が、お宝を間違えて、 そのせいでとっつかまっちまうなんて……」 「間違えたのはルイズだけどね」 「あんたは黙ってなさい」 茶々を入れたチョコを、ルイズがギロリと睨む。 「……もう抵抗はしないさ。煮るなり焼くなり、好きにしな」 サララは、じっとフーケの瞳を見つめた。 それから、意を決したようにフーケに告げる。 こちらの条件を飲んでくれれば、逃がしてさしあげますよ、と。 その言葉に場の一同が唖然とする中、サララはただニコニコと笑っていた。 前ページ次ページ使い魔はじめました
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4837.html
前ページ次ページ使い魔はじめました 使い魔はじめました―第11話― 「随分と買い込んだわねー」 帰路の空の上、パンパンになった袋を見ながら、キュルケが笑った。 武器屋に行った後、サララたちは市場に寄って様々なものを買っていた。 薬草や瑞々しい真赤なリンゴ、不思議な音色を鳴らすオルゴール。 サララは、売り手と交渉して、それらを提示された値より安く買っていた。 この指輪のおかげだろうな、と指先にはめた指輪を撫でる。 家具や建材にも使われる、弾力のある木材を加工したものだ。 幸運を呼ぶといわれて、着けているモノの交渉を有利にする力がある。 「スゴいわよね、その指輪。えーっと……トルネコの指輪だっけ?」 「トネリコでしょ。なにその東方の計算機で敵をぶん殴りそうな名前は」 ボケたキュルケに対して、呆れたようにルイズが訂正する。 「いやァー、凄いのは相棒だぜ! こんなちっこい体なのに、 俺を振れちまうんだから! おでれーた!」 鞘から出されたデルフリンガーが、かちゃかちゃと鍔を鳴らす。 「ちょっと、相棒って言わないでよ。サララはボクのパートナーだよ」 デルフの言葉を聞いて、スネたようにチョコが声を上げる。 「大体、君が言った『神の頭脳』って何なのさ」 『神の頭脳』、デルフリンガーが、サララに握られた時に言われた言葉だ。 「えー……っと、忘れた」 「何それ、あっきれたぁ!」 ニャアニャアカチャカチャとケンカする一匹と一振り。 ルイズとサララは顔を見合わせて、苦笑いした。 「あはは、二人?とももっとやっちゃいなさいよー」 キュルケはそれを見ながら、からからと笑っていた。 「……着いた」 学院の門の前に降り立って、タバサが呟く。 「んー! やっぱ空の上は気持ちよかったわねー、ありがとタバサ!」 キュルケが、ぎゅっとタバサを抱きしめて頭を撫でる。 あ、ちょっと気持ちよさそうだ、サララとルイズが一瞬だけ思った。 「それじゃ、今日はこれで解散ね……え?」 解散しようとしたキュルケに、サララが頼みがあると告げる。 実は、このデルフリンガーには魔法を吸収する能力があるようなのだ、と 「へえ? 君、そんな能力があったんだ」 チョコが感心しながらデルフを見る。 「えー……、ああ。そういや、そんなもんもあったな」 本人(本剣)は忘れていたので、一同盛大に呆れた。 とにかく、と気分を持ち直してサララは続ける。 どれくらい魔法を吸収できるか確認したいので、 夕食が終わった後くらいに、どこかに集まって欲しい、と言う。 「そうねえ……じゃあ、宝物庫の辺りでどうかしら。 あんまり人もいないし、うっかり建物に当たったとしても、 宝物庫なら頑丈だから、きっと大丈夫よ」 ルイズの言葉に、分かりました、では夕食後に、とサララは言った。 夕食後、人気のない広場にサララ達は集まった。 では、よろしくお願いしますね、と言いながら、 ざすり、と地面にデルフリンガーを突き刺す。 「え? 待って。いきなり? え?」 刃の部分を狙ってください、と戸惑う彼を軽く無視する。 「……エア・ハンマー」 早速、タバサが呪文を唱えて杖を振るう。 巨大な風の槌が現れて、彼へと一直線に打ち込まれる。 「ぬわーっ! ……って、あれ?」 吹き飛ばされると思ってデルフが悲鳴をあげた。 だが、風はシュルリ、と刃に触れた瞬間掻き消える。 「うそ、すごい! 本当に消えちゃったよ!」 四人と一匹は驚いて、口をポカン、と開けた。 「あー……そういやあ、こんな能力あったなァー。 分かったならいいだろ? もう抜いて……」 「さて、私の番ね……、ファイヤーボール!」 笑みを浮かべながら、手慣れた仕草でキュルケが杖を突き出した。 杖の先から、メロンほどの大きさの火球が現れ、デルフめがけて飛んだ。 「へぼぁ! 吸い込めるけど熱いんだから勘弁してくれよ!」 その火球を吸い込みながら彼が情けない声をあげる。 「おほほ、ごめんあそばせ」 じゃ、次はルイズさんお願いしますね、とサララがルイズを振り向く。 「へ、わ、私? でも、私の魔法、失敗だし……」 そんなルイズの言葉に、サララは首を傾げる。 爆発するのも、魔法でしょう? と理由を答えた。 「……はぁ。商人ってのは、ポジティブでこそ、だからなのかしら」 どこか嬉しそうに、ルイズが杖を構える。 「え? 嬢ちゃん、何を張り切って……」 「ロック!」 知る限り、最も短いコモンマジックを唱えた。 爆発しかしないのなら、短いほうがいい。 そう、それがいい。それがグッド。 「ぬわーっっ!!」 やる気を込めすぎたせいか、狙いが反れた。 デルフリンガーの刺さった地面が、轟音を立てて爆発する。 その衝撃で、デルフリンガーが宙を舞った。 ごすっ、という鈍い音がして、彼は塔の上層部に突き刺さった。 「あ……マズい」 「あそこって、ちょうど、宝物庫、よね?」 さぁーっとルイズとキュルケとサララの顔が青ざめた。 タバサも、若干顔が白くなっている。 「ぬ、抜かないと! レビテーション!」 「ちょ、ちょっとヴァリエール!」 焦ってレビテーションを唱えようとしたルイズを、 キュルケが止めようとしたが、時すでに遅し。 爆発がものの見事に宝物庫に命中した。 ビキビキと亀裂が入り、デルフの刺さった部分にまで到達する。 「あーんまーりーだー!」 どこぞの炎の流法使いの戦士のような声を上げながら、デルフが落下した。 「げふぅ!」 そして、地面さんと熱烈なキスをするハメになった。 「……状況悪化……」 珍しく冷や汗を垂らしながら、タバサが呟く。 「どどど、どーすんのよ!」 「私だって、どどど、どーすれば!」 どどどどどどど…… 「どどどどうるさいよ! 素直に謝るかごまかすか選びなよ」 チョコが慌てる二人に対して意見する。 「……って、あれ? 何か急に暗くなって……うわぁー! ご、ゴーレムだあああああ!」 影が差してきたのを不思議がって上を見たチョコが、 そこに巨大なゴーレムの姿を見て悲鳴をあげた。 30メイルはあろうか、とにかく巨大だった。 ゴーレムは、彼女らの目の前で宝物庫の壁を殴った。 先程、ルイズが魔法で亀裂を作った辺りだ。 殴られた壁には、人一人通るくらいの穴が開いた。 ゴーレムの肩から、影が一つ、ひらり、と宝物庫に侵入した。 「も、もしかして、『土くれのフーケ』!」 昼間に買い物の途中で聞いた怪盗の名を思い出して、ルイズが叫んだ。 彼らが呆然としている間にも、フーケは宝物庫から 何か箱に入ったものを抱えて出てきた。 それから、ゴーレムの肩に乗ると、物凄い勢いで逃亡した。 あんなにデカいのに早いなぁとか、うっかり考えてしまう面々だった。 一番最初に正気に戻ったのはルイズだった。 「お、追わないと! 盗賊を逃がすなんてトリステイン貴族の名折れよ!」 「馬鹿ね! 命あっての物種に決まってるじゃない!」 ケンカをする二人を横目に見ながら、心配なら心配だと言えばいいのに、と 思いながら、サララはガレキの下敷きだけは免れていたデルフリンガーを拾う。 「ヒデーよ相棒……」 デルフの泣きそうな声を聞き流しながら、 さて、大変なことになったなぁ、と頭を抱えるサララだった。 翌朝……。トリステイン魔法学院は、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。 宝物庫の壁が破壊され、学院の宝物が奪われたのだ。 『魔王の宝珠、確かに領収しました。 土くれのフーケ』 宝物庫の中に、フーケの犯行声明が刻まれていた。 教師達が口々に好き勝手なことをわめいているのを、 ルイズ達四人はドキドキしながら見ていた。 衛兵を責めたり、当直のミセス・シュヴルーズを責めたり、 オスマンがとりなして、場をなごませようと彼女の尻を撫でたら スベっちゃって気まずい空気になったりしていた。 サララは、いつ呼び出されるかと緊張していたのに、 気がついたのが翌朝とは、どれだけ快眠なんだろうこの学院の教師は、とか そんなことを寝ぼけた頭で考えていた。 足元では、チョコがあくびをしている。かみ殺す気すらないらしい。 教師には、魔法の練習をしていたら、いきなりゴーレムが現れたのだ、と説明した。 ルイズが努力家であることを知っていたので、教師達は納得してくれた。 その直後、ロングビルがフーケの隠れ家を見つけて戻ったので、捜索隊が募られた。 「……何じゃ、誰も志願せんのかね」 オスマン氏が呆れたように呟いた。 この学院は大丈夫なんだろうか……とサララが頭を抱えたくなった瞬間。 すっ、と隣に立っていたルイズが杖を掲げた。 それを見て、キュルケ、タバサも杖を掲げる。 「き、君達は生徒じゃないかね!」 コルベールが驚いて声を上げた。 「誰も掲げないじゃないですか! それに、逃がしてしまったのは私ですもの!」 どうやら、取り逃がしたことを悔しく思っていたらしい。 「……ヴァリエールに負けるわけには行きませんから」 「心配」 キュルケ、タバサもそれに続く。 そんな三人の様子を見て、オスマンは笑った。 「そうか、では頼むとしようか。ミス・タバサはシュヴァリエを持つ騎士。 ミス・ツェルプストーは優秀な炎の使い手。 ミス・ヴァリエールは……えー、と、その……」 褒めるところが思い当たらないのか、オスマンがしばし考えこむ。 「ヴァリエール公爵家の、カリーヌ殿の、あ、いやいや、 とにかくご息女であり、将来有望なメイジだと聞いておる」 カリーヌ、という名にギトーという教師がぴくり、と眉を動かした。 それからオスマンはサララを見つめた。 「その使い魔であるサララちゃん、じゃったかな? は、 何でも珍しいマジックアイテムを多数所持しておると聞いておる」 コルベールが興奮した調子で後を引き取った。 「そうですぞ! 何せ彼女は、ミョズ……いえ、何でもありません」 あやうく伝説の使い魔の名を出そうとして、コルベールは慌てて口を閉じた。 「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務とメイジの誇りに期待する!」 オスマンは四人と一匹に向き直ってそう言った。 「杖にかけて!」 と同時に唱和して、うやうやしくスカートの裾をつまんで礼をした。 サララも慌ててそれに倣う。 「では、馬車を用意しよう。ミス・ロングビル。彼女らを案内してくれ」 「はい、もとよりそのつもりですわ」 ミス・ロングビルは頭を下げた。 早速出発しようと、女五人とネコ一匹は学院長室を出た。 が、サララは足を止めて、準備があるから、とルイズの部屋へ駆け出した。 盗賊相手、一体何が必要だろうか、と頭を回転させる。 足止めをするためのアイテムはアレ、ケガをしたときにアレ、 そうだ、あの武器も用意して、デルフリンガーも連れて行こう。 不謹慎だが、ワクワクしている自分を、サララは感じていた。 「サララ、久しぶりの冒険でちょっと楽しんでるでしょ?」 チョコに言い当てられて、恥ずかしそうに笑いながら、サララは部屋へ入った。 そうして、鍋に手を入れて、目的のアイテムを取り出すのだった。 前ページ次ページ使い魔はじめました