約 1,871,735 件
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/3816.html
386 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 16 24 ID 9C/4JDgn それは〜よく晴れた日のことじゃった〜 「・・・・っんの、バカ犬ううううううっっ」 「ちょ、待てルイズ、誤解だっ・・・ぎゃああぁぁayつえjwhぐばpがんb@」 縦に長い塔の一室から、ルイズと呼ばれた桃色がかった茶色の髪をした少女の怒号と 肉の塊を殴打する音が聞こえてきた。 「あんたはっいったいっ何回っ言えばっ分かるッワケッ!?」 「・・・かはっ・・・くはっ・・・・・・gふぇあ・・・・・・・」 がっごっ、と声の合間に、もはや痙攣を繰り返すしか出来ない人らしき物体を叩く音が断続的に響いている。 「あんたはもう今日ご飯抜き〜!!」 一瞬窓が光りガラスがたゆんだかと思うと、耳を破るような爆音と共に窓ガラスが四散し、一つの人影が吹き飛んできた。 「・・・ったく、才人のバカ・・・・・・」 肩で息をしながらルイズはドアを足で蹴り破ると、ずかずかと何処かへ消えていった。 一方、才人と呼ばれた黒髪の少年は地面で横たわっていたかと思うとゆっくりと 身体を起こし、胡坐を掻くと深くため息をついた。 「いてて・・・ったく、あそこまでやる必要ねぇじゃんか。ちょっと下級生に囲まれてただけだっつの」 やってらんねぇなぁ、と頭を振って立ち上がると才人も何処かへ消えていった。 388 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23 20 19 ID 9C/4JDgn 「・・・でね、才人ったら女の子にちやほやされてたからって鼻の下でれでれと 伸ばしちゃって。『今度遊びに行きましょうよ〜』なんて言われて、尻尾振っちゃってさ〜」 「本当、いい加減にして欲しいですよね〜やっぱり今度二人でガツンと言わなきゃだめですよね〜」 「いいね〜シエスタいい事言う〜。ガツンと、よねガツンとぉ〜!!」 「そうだ〜〜〜〜〜」 「お〜〜〜〜〜〜」 先ほどの部屋にルイズともう一人、シエスタの姿もあった。 ・・・が二人の周りには宴会でしか消費しないような量のワインの空き瓶も転がっていて 今も尚、新しい瓶に手をかけて二人は更に顔を赤くしながら愚痴談義に花を咲かせている。 「サイトさん帰ってきたら説教れすね〜」 「ほうね〜」 ・・・もはや、ろれつが回っていない。 そうして女二人、どす黒いオーラを纏いながら楽しそうにワインを空けていくのだった。 「・・・いやサイト、それはお前が悪いと思うぞ?」 「なんでだよギーシュ、普通のことじゃねぇか」 「いやだってお前、ルイズが居るのに他の女に現を抜かしてたら、 そりゃルイズだって気持ちのいいものではないだろう?」 「ん〜〜」 「・・・それよりそろそろ僕のヴェルダンテを放してくれないか?」 才人は巨大モグラをぬいぐるみのように抱きかかえながら、ギーシュという金髪の男に管を巻いていた。 「だいたい君はだね、一人に決めた人がいながらあっちにふらふらこっちに・・・」 「うっせえ、お前だって似たようなもんじゃねぇか」 「なにをいう!僕はいつだってモンモランシーひとす・・・」 「あ、姫様が空飛んでる」 「え!?どこどこ!?」 「ほれみろ、どこが一筋だこの色ボケ隊長」 ぱくぱくと何か言いたそうに口を動かすギーシュを尻目に立ち上がって歩き始めた。 「しょうがねぇなあ・・・後何発か殴られて許して貰うか・・・」 「いやだからヴェルダンテはおいていきたまえ〜!!」 脇に抱えていたヴェルダンテをおいて才人は真っ直ぐに寮のある方へと歩いていった。 441 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 23 37 34 ID K+qHS+Aa 「おーい、ルイズ?」 才人がコルベールやマルコーと少し話をしてから部屋に戻ると、何故か鍵がかかっていた。 出かけているのかと思い何回かノックをずるが返事が無い。 「なんだ、どっかでかけてやがんのか?」 才人が探しに行こうとすると、ガチャっと鍵が開いた。 「なんだよ、中に居るんじゃん。なんだって鍵なんて・・・」 はいるぞー、とドアを開けて中に入り、そしてルイズに頭を・・・・・・下げられなかった。 目の前の光景に才人は完全に固まってしまったのだ。 「あ・・・え・・・お・・・?」 「お〜さいと〜おそい〜」 「おかえりらは〜い」 部屋の中はいつもの整然としたものとは全くに別物だった。床には、もはや数えるのを 諦めざるを得ないほどの空き瓶が転がり、机の上には厨房からちょろまかしてきたのだろう。 木の実やらがたくさん入っている大皿が乗っかっていた。 そしてその傍らで顔を真っ赤にしたルイズとシエスタが酒盛りをしていた。 ・・・・・・もはやジョッキは意味を成さず二人とも瓶から酒を煽っている。 「おいさいとぉ」 「とぉ〜」 「おまえもちょっろこっちこい」 だいぶ出来上がっているらしく、二人してろれつは回っていなかった。 「ちょ・・・ちょっとお前ら飲み過ぎだって、ベロベロじゃねぇか」 「よっれません〜ちょっとふらふらするだけですぅ〜」 「それにすこしふわふわするだけれすよぉ〜〜」 ・・・世間一般ではそれを『泥酔』というのだが・・・ 「お、おいルイ・・・」 「うるせぇ、こっちこい」 「いやちょっ、酒臭せ・・・なぁシエス・・・」 「ヴァリエールさまがこいってんだろぉ〜」 たちが悪いことに絡み酒だ。 とりあえず酔っ払いには逆らわないでおこう、何されるか分かんねぇし、と 才人は二人のアルコール臭を我慢して机の隣に近づいた。 442 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/11(日) 23 38 18 ID K+qHS+Aa 「よし、ちょっろそこすわれ」 「すわれ〜」 へいへい、と才人は内心で嘆息しつつそのまま下へ、ちょうど二人の足元にくるような 位置にしゃがみこんだ。二人とも相当酒が入っているせいで、口調とテンションがおかしくなっているらしい、 顔を見合わせては、へへ〜、と笑いあっている。 「らいたいね〜あんたわたしというご主人様が居るくせに、なにをあっちにふらふらこっちにふらふらとぉ〜」 「そおですよぉ〜サイトさん、わらひたひろらにがふまんらんれすかぁ〜!?」 「そ、それは」 「「うるせぇ、だまれ」」 女二人+酔っ払い+悪いのこっち=もはや怖いものなし と才人が瞬間的に頭の中で新しい公式を組み立てている間も、ふたりして手に持った瓶で 小突きながら説教が続いていく。 「やっぱり・・・こうなったらお仕置きが必要よね。ねぇシエスタ?」 「さんせぇ〜」 才人が立ち上がろうとするとその膝を踏み付けられた。 「おいサイト・・・脱げ」 「へ・・・?」 「ぬ・げ」 ルイズとシエスタがワイン瓶を振りかぶって脅しつけているので、仕方なく才人は もそもそと脱ぎ始めた。目の前ではシュプレヒコールが沸き起こっている。 才人が完全に脱ぎ終わるとルイズが椅子から立ち上がった。 「さてと・・・どうしてあげようかしら」 577 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 03 50 50 ID nSmN4fwH 窓からはすでに夕焼けが差し込んでいる部屋が一つ。 その部屋の中には三人の若い男女の姿があった。ルイズとシエスタ、それに才人だ。 が、部屋の空気はお世辞にもほのぼのとしたものでは無かった。 少女が二人共酒の臭いを発し、才人にいたっては真っ裸に向かれているからだ。 「・・・で、ろ〜します?ミス・ヴァリエール〜」 「ん〜ほうねぇ・・・とっちゃおうか、これ」 そう言って、机の上の杖を手に取り才人の息子を先で突っつく。 ・・・とっちゃ・・・え?・・・去勢ってやつっすか!それ! 才人は思わず額から大量の汗を流す。 「え〜らめれすよぅ、そんなことしたらもう楽しめませんよ〜」 「ん〜それもそうねぇ〜」 そんなことを言いながら楽しそうに笑いあう二人、世の男性諸君にとっては死活問題だというのに・・・ 「ま、いいわ取るのは勘弁してあげましょ」 おめでとう、才人危機一髪。 ともあれ、何とか二丁目への道は閉ざされたようで、才人はほっと息をつき椅子の上であーでもないこーでもないと話し合っている二人を眺めている。 「・・・気絶するまで蹴りこんで・・・貞操帯つけて・・・」 「いえ・・・鞭で・・・中庭・・・吊るし上げて晒すとか・・・」 ・・・鬼や、あんたら鬼や・・・ 才人がそんな不穏当な会話を直接耳に流し込まれる、ある意味究極の拷問を受けていると、不意にシエスタがぱんっと手を鳴らした。 「ほうれす!他の子に反応しないよう・・・搾っちゃいましょう!!」 「あぁ〜ひえすたあったまい〜」 「じゃあ〜あばれると面倒れすねぇ・・・えい♪」 思考回路がついていかずに呆けている才人の頭にシエスタがワイン瓶を振り下ろした。 578 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 03 52 28 ID nSmN4fwH 「いてて・・・なんだって・・・ん?身体が動かねぇ・・・」 才人が目を開けると部屋に備え付きのベッドに寝かされ・・・縛られていた。 「え?ちょなんで?」 「やっと起きたわね?犬」 声のした方を向くとルイズが才人の息子を弄り回していた。 「覚悟しなさい?動かなくなるまで搾りつくしてあげるから」 そういうといきなり弄んでいた手を止め、大きくなり始めていた怒張をその小さい口の中に頬張った。 「ん・・・じゅぷ・・・らによ、もうおっひふひてるらない・・・」 「うあっ・・・だ、だってルイズきもちよす・・・」 ルイズは才人が喋るのを遮るように、上下にしごくように動かしていた口を先端付近で止めて搾り出すように吸い上げた。 「ぎっ・・・ああああつっっ!?」 「うるはいわね・・・おひおきらんらから、らまってらはい」 根元まで咥えながら、もごもごと話しかけるルイズ。 もちろんその間も刺激を加えていくのをやめようとしない。 喋るときの振動がそのまま快感となって才人を追い詰めていく。 「ちょ・・・喋るとっ・・・ごめんっルイズっ」 四肢を縛られてまともに動かせない中で、それでも才人は腰を浮かせてルイズの口腔の奥に押し付けるようにして溜まっていた白い欲望を吐き出した。 「―――――――!!」 ルイズは突然吐き出された迸りに一瞬驚いた表情を見せるが、すぐに自ら根元まで咥え込みなおして才人の吐き出すモノを残らず飲み干した。 「んっんくっ・・・くっ・・・んくんっ」 ルイズが喉を鳴らして全部飲み終えて口を離すと、先ほどまで繋がっていた所から光に反射して光る一筋の白い糸が橋を架けた。 「・・・・・・ちょっと、もう出しちゃったの?これだからサカリのついた犬は・・・」 「しょ、しょうがねえだろ!いきなりだったんだからよ!!」 「ふぅん・・・ま、それだけ元気なら・・・まだまだ出るわよね?」 ルイズは才人のお腹の辺りに座り込んでそう囁くと、右手を高々と掲げ、指を鳴らした。 579 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 03 53 11 ID nSmN4fwH 何を、と才人が言おうとすると、不意に視界が何かで塞がれた。 「―――わぷっ!?」 突然のことに才人は声を上げようとするが、顔全体を塞がれているため、もごもごとしか音が出てこない。 「やっ・・・サイトさん喋っちゃ・・・きゃっ!・・・」 視界を塞いでいたものがビクッと跳ねて、少し顔が自由になると塞いでいたものを見ることができた。 「シ、シエスタ!?」 「へっへ〜お・し・お・き・ですよ〜」 シエスタは、自分のスカートの中に潜り込んでいる声の主に向かって告げた。 「いきますよ・・・必殺っ!おしおきプレス〜!」 言葉と同時にシエスタは勢いよく才人の顔面に座りなおした。 「んふふ・・・どぉですか〜サイトさん?」 必殺、て・・・殺したらあかんよ〜 シエスタは才人の顔を押しつぶしつつ腰を動かし、とろんとした表情になっていく。 「あ、これ結構気持ちいいですね・・・」 シエスタの秘裂からねっとりとした蜜が溶け出してくる。 蜜は才人を刺激するのには十分なほど雌の臭いを放っていた。 口の中に入ってくる蜜と直接鼻をくすぐってくる臭いに、才人はすぐに元気を取り戻す。 「ふん、やっと大きくなってきたわね・・・でもアンタなんかこれで十分よ」 そういってルイズは両足でビンビンのそれをはさんでしごいていく。 「わぁ、サイトさんのぉ・・・こんなに・・・おっき・・・」 惚けた目で覗き込むと、シエスタはルイズがはさんでいるその上を咥えこむ。 580 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 03 54 18 ID nSmN4fwH すでに暗くなった部屋には布ずれの音と粘り気のある淫猥な水音、そして三つの息つく音だけが響いていた。 才人はルイズの絹の靴下ごしに伝わる体温とシエスタの上下の口の温かさと臭いが生み出す快感に必死に耐えていた。 しかし、二人の絶妙な責めにあっという間に限界は陥落する。 「ルイズっシエスタっ・・・ま、また出っ」 才人は一回大きく腰を跳ねさせると音が聞こえそうなほどの勢いで迸りをぶちまけた。 「きゃっ!っわぁ・・・すごい、サイトさんがいっぱいです・・・」 シエスタは跳ねた勢いで思わず口を離してしまい、飛んできた迸りを直接顔で受け止めた。 受け止め切れなかった迸りは重力に従って下にあるルイズの白磁の足とそれを包む靴下を汚している。 「なによ、またなの?」 「う、うるせぇな」 「しかもなんかさっきよりも量が多いじゃない、しょうがないわね・・・それにまだ元気なままだし」 ルイズは、はぁ、と聞こえよがしにため息をつくと、才人の怒張の真上辺りに膝立ちをすると、スカートをたくしあげて自分の秘所を外気に晒した。 見ると、すでにそこは蜜があふれ出して太ももの内側をなぞり、シーツにまでしみを作っていた。 「いい?まだおしおきは続くんだからね?」 そういうとルイズは自らをあてがい、一気に腰を沈めてそそり立つ塔で貫いた。 「んっ、あ・・・はぁ・・・サイト、おっき・・・」 ルイズは一息吐いた後、才人の腹筋に手を乗せてグラインドを始めた。 シエスタはいつの間にか才人の上から退き、横でじっくりと観察を始めている。 「ふっあっ・・・な、なによぉいつもより・・・固くて、おっきいじゃないっ」 ゆっくりとした動作は次第に速く大きくなっていき、今では全てを楽しむように先端から根元までを吐き出しては飲み込んでいく。 ルイズは徐々に顔を赤らめて、才人との営みに夢中になっていく。 才人は縛り付けられた手足を踏ん張り、ルイズが沈むのに合わせて高く腰を突き上げた。 「きゃあ!ちょ、ダメぇ・・・さっきより深いとこきてるうっ」 二人のグラインドが重なり、才人が腰を上げるたびにルイズの最奥をノックしていく。 「あああっいいのぉっおくっおくっコツコツって当たってるよおぉっ」 ルイズは口をだらしなく開けて喘ぎ、その小さいあごを涎がなぞる。 お互いの腰をぶつけ合うようにして、二人は共に絶頂へと昇りつめていく。 「サイトっサイトぉっも、もうらめぇあっあたしいっちゃっ・・・」 「お、おれも、もうそろそろっ・・・」 「なかっなかでいいからぁっ・・・いっしょにっおねがいっ」 言葉を交わすほどに二人はより激しく求め合い、貪りあっていく。 581 名前:ある日の出来事 ◆yJjGBLHXE6 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 03 55 14 ID nSmN4fwH 「くっ・・・だ、出すよ、ルイズっ」 「きてぇ・・・サイトのいっぱいきてぇっ!」 跳ねるように才人が腰を突き上げて、その怒張から大量の迸りをルイズの子宮へと詰め込んで行く。 「やああぁっあついのいっぱい入ってぇ・・・あ、あはああああんんっっ」 追いかけるようにしてルイズも絶頂を向かえて背を弓のように仰け反らせる。 才人が腰を打ちつけるのをやめると、脱力したルイズは才人の上に寄りかかる。 倒れることで、入りきらなかった白濁がこぼれ、ベッドにしみを作っていった。 「サイト・・・」 「ルイズ・・・」 どちらとも無く見つめあい唇を重ね合わせると、二人は力尽きて眠りに・・・ ・・・落ちなかった。 シエスタがルイズを無理やり引き剥がし、才人の上にのしかって来たのだ。 「さあ、サイトさんっ今度はわたしの番ですよっ」 シエスタが才人の上で嬉しそうに笑っている。 「あ、ちょ、ちょっとぉ!私だってまだ満足したわけじゃないんだからねっ」 ルイズが膨れっ面をしながらも観念してサイトの横に周って座り込む。 「じゃあどっちが多く出来るか勝負ですっ」 「臨むところよっ」 ルイズとシエスタは静かに火花を散らす。 「え?え?・・・も、もう勘弁してくれぇえええ!!」 日が沈みかけた部屋に、才人の悲鳴がこだました。 「・・・まったく、隣は元気ねぇ。ねぇ、ギーシュ?」 「は、ははははいっ、そうで御座いますねモンモランシーさまっ」 優雅にワインを飲むモンモランシーの下に土下座しているギーシュの姿があった。 どうやら才人との会話を聞かれていたらしい。 「さてと・・・」 「すいませんごめんなさいゆるしてください」 ・・・まぁ、こっちはこっちでひと悶着あるのだが、それはまた別のお話。 ん?次の日?次の日は・・・実は虚無の日だったりする。 <おしまい>
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6935.html
前ページ次ページ”舵輪(ヘルム)”の使い魔 先日、『春の使い魔召喚』の監督役をしていたコルベールは、トリステイン魔法学院に奉職して20年になる中堅の教師である。 彼はルイズが呼び出した、少女の左手の珍しいルーンと溶けて死んでしまった韻竜の事が気に掛かっていた。 儀式の日の夜から本塔の図書館に篭って書物を調べ、一般の本棚では満足する回答が得られず、教師のみが許される『フェニアのライブラリー』の中に居た。 一心不乱に本を探り、彼は少女が気を失っている間に写したルーンのスケッチと、ある古書の一節とを見比べ、慌てて学院長室へと走り出した。 本塔最上階の学院長室には、白く長い髭と髪を生やした学院長のオスマンと、その秘書で理知的な凛々しい顔立ちのロングビルが居た。 暇そうにしているオスマンがロングビルにセクハラをして、反撃を受けて折檻されていると、大慌てでコルベールが学院長室に入って来た。 何事もなかった様にオスマンは迎い入れて用件を聞き、コルベールは『始祖ブリミルの使い魔たち』とスケッチを差し出した。 それを見て、オスマンの表情が厳しく迫力のある目付きに変わると、ロングビルに退室させて重々しく口を開き、詳しい説明を促した。 ここで、時間を遡り、ルイズとミュズに目をやると、――――― ミュズは、箒・チリ取り・雑巾・水の入ったバケツ・窓硝子・教卓を持って、目にも留まらぬ速さで学院の廊下を通り抜けて行く。 ルイズが目茶苦茶にした教室の片付けを、罰として魔法を使わずに行う様、倒れたシュヴルーズの代わりの教師によって命ぜられたのだ。 主人が受けた指示はその使い魔も同様に従うものであり、ミュズが掃除道具一式と壊れた備品の替えを運んでいるのはこのためであった。 教室に入ると、ミュズは黒板の前に立っているルイズに指示を仰ぎ、ルイズはやる気の無い声で答えた。 ルイズがしぶしぶと机を拭いている横を、ミュズはルイズに一々何をしたらいいのかを尋ねつつ、素早い動きで教室を綺麗にしていった。 結局、片付けが終わったのはお昼休みの前で、昼食を摂る為にルイズとミュズは食堂へと向かった。 道すがら、ルイズの錬金を「物質を素粒子レベルに分解した」とか、「真の真空で放射線を減退させた」とかと、ミュズは褒めちぎった。 訳の分からない話しにルイズは、口をへの字に曲げて眉をひくひくと動かし、黙々と進んで行く。 食堂に着くと、朝言われた通りミュズは椅子を引いて、ルイズに満面の笑みで言った。 「マスターの錬金は面白いです。今度は外でやって下さい――」 その言葉は過去に幾度となく、嘲笑と共に投げ付けられた暴言と似ていて、ルイズの琴線が不快な音を立てた。 ルイズは忠良だと思っていた使い魔にからかわれていた事にショックを受け、顔を赫然とさせ涙を堪えて、ミュズを怒鳴り付ける。 「もう、五月蝿いわね。あんたなんか、シエスタとか言うメイドの所に行っちゃいなさい!平民同士仲良くしてればいいのよ!」 ミュズは今にも泣きそうに顔を歪ませ、困惑した様子で怖ず怖ずと後退り、食堂を出て厨房へと走って行った。 「マスターにシエスタと仲良くしなさいって怒られてしまいました~」 ばたばたと諸手を挙げてミュズは厨房に入って来ると、そこに居たコックやメイドの間をすり抜け、シエスタに飛び付かん勢いで近寄った。 シエスタはミュズの叫び声に疑問を感じ、厨房の隅に場所を移してお昼ご飯を食べさせながら、ミュズにその意味を尋ねる。 ルイズに怒られるまでの言動や教室での出来事を事細かに説明していたが、ミュズはルイズが何故、怒ったのかが分からない様子だった。 ルイズが魔法を使えないのは、使用人の間でも有名な話で、ミュズがそのコンプレックスに触れてしまったのも理解出来た。 しかし、ルイズへの賛辞の意味はシエスタにとっても難解な物だったが、ミュズの言葉は純粋な尊敬から成り立っているのは分かる。 「ミュズさん。ミス・ヴァリエールは、食堂で大きな声を立てておしゃべりするのを止めさせる為に、怒鳴ったのですよ」 シエスタは敢えてルイズの事情を言わず、食堂でのマナーを教えた。 「なるほど」ミュズは大きく頷く。 「それに、疲れているとおしゃべりの返事をするのが煩わしいのですよ」 「そうなんですか」 「お掃除の後でお疲れになっていたミス・ヴァリエールには、ミュズさんの話が億劫だったのでしょう。こう言う場合は、一方的におしゃべりをしては駄目ですよ」 ルイズの魔法を見ても蔑視する事無く、キラキラと輝かせる瞳を曇らせない様に、シエスタは話をわざと逸らす。 「あと、『仲良くしてればいい』と言ったのは『手伝いをしなさい』と言う意味だと思いますよ。なので、デザートを運ぶのを手伝ってくださいな」 「はい、手伝います!」ミュズは明るく笑みを返した。 ルイズは美味しい昼食を摂って落ち着いていると、怒鳴り付けてしまった使い魔の事が頭を過ぎった。 あの時のミュズの瞳は、魔法の失敗の度に向けられる、珍妙だが取るに足らない物を見る冷淡なものではなく、希少で重宝すべき物を見る爛々としたものであった。 そもそも、単純な性格の子供らしいミュズが失敗を回りくどい言い方でからかうだろうか? そんな事を頭に巡らせていると、こちらにちょこちょこと赤いものがメイドと一緒に来る。 デザートのケーキが乗った大きな銀のトレイをミュズが持って、シエスタがトングでケーキを摘んで一つずつ生徒達に配っていた。 ミュズとシエスタがルイズに近付く。シエスタはミュズを先に進むように促し、ルイズに話し掛ける。 「ミス・ヴァリエール。ミュズさんをお借りしております。」 「そう」 ルイズはこちらの様子を気にするミュズを横目に、素っ気なさそうに返事をする。 「ミュズさんは素直ないい子で、ミス・ヴァリエールの事を本当に尊敬していますよ。『マスターは凄い』と言っていました――」 ルイズは眉をピクリとさせて、顔をしかめる。 シエスタは真剣な目でルイズの目を見ながら言った。 「ミュズさんを信じてあげて下さい。ミュズさんのマスターはあなたなのですから」 「なによ」 ルイズがジト目で答えると、シエスタは顔を青白くさせた。 「すっ、すみません。出過ぎた事を言ってしまいました。失礼します」 そう言うと、シエスタはがばりと頭を下げて、そそくさと立ち去って行った。 ミュズとシエスタがトレイに乗ったケーキを配り終えようと、談笑している男子生徒達の横を通り掛かっていた。 その集団の中心で、金色の巻き髪で薔薇を挿したフリル付きのシャツを着た少年が、周りの友人から口々に冷やかされていた。 ギーシュと呼ばれるその少年が大袈裟に脚を組み替えると、ズボンのポケットから紫色の液体が入ったガラスの小壜が落ちた。 小壜がコロコロと転がってミュズの足元へ来たので、その様を見ていたミュズはギーシュに呼び掛けた。 「あのー。何かガラスで出来た物が落ちましたよ」 ギーシュは気が付かないのか、ミュズの方を振り向かない。 ミュズはトレイを片手でバランスを崩す事も無く易々と持ち、しゃがみこんで小壜を拾い上げた。 「はい、落とし物です」それをミュズはギーシュの目の前に差し出す。 ギーシュは苦々しげに、ミュズを見つめると、その小壜を押しやった。 「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」 その小壜の出所に気づいたギーシュの友人たちが、大声で「モンモランシー」と言う名前を出して騒ぎ始めた。 ギーシュが友人達に何かを言いかけた時、後ろのテーブルから一人の少女がギーシュに向かって歩いてきた。 栗色の髪をした、茶色いマントを羽織った少女はギーシュの名を呼ぶと、ボロボロと泣き始める。 更に遠くの席から見事な縦ロールの少女が立ち上がって、厳めしい顔付きでギーシュの前にやって来た。 ギーシュを冷やかしていた友人の一人がその少女の殺気に気付き、その顔付きを見て「ひっ、モンモランシー」と呟く。 モンモランシーはギーシュに近寄ると目を三角にして、開口一番に口を尖らせてまくし立てる。 「いいかげんにギーシュッ!いったい誰が好きなのかはっきりしてちょうだい!」 「あー、そうそう。はっきりさせた方がいいと思うぞ!」 周りの友人からも合いの手の様に賛成の言葉が飛び、ギーシュは目を泳がせ激しく動揺する。 「あんたが女の子の間をフラフラしてんのがそもそもの原因なのよ!」 モンモランシーは顔を真っ赤にして、追い討ちをかけた。 ギーシュは冷静な態度で椅子から立ち上がって二人の少女に向かい、拳を握り締め目を閉じ頬に汗を伝わせつつ語り始めた。 「ふ……みくびられたものだな!おのれの心は初めから決まっているんだ!」 「え?」 泣いている少女とモンモランシーはギーシュの言葉に驚き、胸をときめかせて目をしばたかせた。 そして、ギーシュは真剣な目付きで言い放った。 「両方だ!!」 騒ぎを聞きつけた生徒達から、すり抜ける様に突然、一人の少女が現れた。 その少女は、大人びた雰囲気でギーシュよりも背が高く紫のマントを付けて、のんびりした口調でギーシュに問い質す。 「えー。じゃ、わたしは。わたしはー?」 「んーじゃ、三人だっ!」 ギーシュはその少女に真面目な顔を向けて答えた。 「へーせいを――」 モンモランシーはギーシュの態度に呆れてうなだれた。 「装うんじゃない!!」そう叫ぶとギーシュに飛び掛かる。 紫のマントの少女から後頭部にオルテガ・ハンマーを、茶のマントの少女から水月に正拳突きを、モンモランシーから顔面に真空飛び膝蹴りを、ギーシュはくらった。 既に分厚くなった人垣を掻き分けてルイズは、目の前で行われている騒ぎを見ているミュズに近寄った。 ミュズの様子を遠目に見ていたが、あれよあれよと人集りが大きくなるので心配なった次第なのだ。 (ミュズと死んでしまったが)韻竜を召喚に成功し契約も上手くいったので、魔法がやっと使える様になったと思っていた。 その矢先の失敗を、訳の分からない話しをするミュズへの苛立ちに転化するのは、貴族のする事では無い。 臍を曲げて穿った見方をするのでは無く、シエスタの言う通り、主として下僕であるミュズの事を信じてあげるべきだった。 ルイズはそう考えながらミュズに向かっていた。 渦中にいたミュズの元に来た時にはモンモランシー達の姿は無く、屍の様に倒れたギーシュと立ち止まる大勢の野次馬だけだった。 「全く、構ってられないわ。浮気がいけないのよ」 ルイズはそう言いながらミュズの肩を掴み、回れ右をしてこの場を離れようとした。 「マスター、浮気って何ですか?」 「え?いやっ、それは――」 「わるいこと?」 「そうね。悪い事ね」 ミュズが急にしてきた質問に答えていると、ボロボロになりながら起き上がったギーシュが『薔薇』が何たらと演説を始めていた。 そこに、ミュズの一言が通る。「あのー。ギーシュ、浮気はだめですよ」 周囲に沈黙が流れた。 ギーシュの友人達が、どっと笑った。「その通りだギーシュ!お前が悪い!」 ギーシュの顔にさっと赤みが差すと、目を尖らせて吊り上げた。 「平民の分際で貴族である僕を呼び捨てするなんて。なんて礼儀知らずなんだね、君は!?」 ギーシュはミュズに向かって怒鳴り付けると、ルイズはミュズを庇う様に間に割って入った。 「やめて。この娘には私から言い聞かせておくから――」 「ふん……。ああ、そいつが……、ゼロのルイズが呼び出した平民か?」 ギーシュは、馬鹿にした様に鼻を鳴らして言った。 「魔法に失敗なんかしてるから、平民に侮られるんじゃないのかい?」 ルイズはここでギーシュの嘲りを我慢すれば、これ以上の大事にならないと思い、口を真一文字に閉じてグッと堪えた。 「違います。マスターの魔法は素晴らしいです」 ミュズはギーシュが言った事を正す様に口を出した。 「あれが素晴らしいだって?よかろう。ならば、真の魔法を見せてやろう」 そう言うと、ギーシュは胸の薔薇を取り出してミュズにレビテーションをかけ、ルイズには手の届かない空中に浮かび上がらせた。 「ルイズ!悪いな。君の使い魔をちょっとお借りするよ!」 ギーシュはミュズの手を掴み、空中を引きずる様に持ち去って行った。 ギーシュの友人達が、わくわくした顔で立ち上がり、ギーシュの後を追った。周りの野次馬も面白い見世物が見れると、それに倣って着いて行った。 ギーシュは、貴族に無礼な態度を取った平民に魔法を以って、その優位性を教えてやるのだと、息巻いていた。 道すがら、ギーシュはミュズが銀のトレイを持ったままの事に気が付き、近くに居た黒髪のメイドに言った。 「おい、そこのメイド!トレイのケーキはお前が配っておけ」 ミュズが心配だったシエスタは恐る恐る追いかけていたのだ。 ぶるぶる震えながら近寄って、トレイを受け取りミュズに小声で話しかけた。 「あ、あなた、殺されちゃう……」 「え?」 「貴族を本気で怒らせたら……」 「大丈夫です。魔法を見せて貰うだけですから」 ミュズがそう言い返していると、シエスタはギーシュの友人の睨む様な視線に気付き、だーっと走って逃げてしまった。 今さっきまで人集りが出来ていた所にぽつりと、ルイズは取り残された。 「ああ、もう。ほんとに、なんでこんな事になっちゃうのよ!」 ルイズはミュズの後を追い駆けた。 ―――――そして、舞台はヴェストリの広場へと移る。 前ページ次ページ”舵輪(ヘルム)”の使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2424.html
前ページ次ページDISCはゼロを駆り立てる たとえ重要な内容でも授業という物は基本的に退屈であり、優秀だが真面目とは言いがたいキュルケも暇をもてあましていた。 第一、キュルケは自他共に認める火のメイジなのだ。火とは破壊を司る物で、創造をメインとする土とは相性があまりよろしくない。 それでもそれ相応の努力によってトライアングルメイジになったのだから、勉学の方も決して悪いわけではなかった。現にこの授業の内容も、とくに聞かずとも容易く把握できている。 1年の頃のおさらいだからというのもあるが、トリスティン魔法学院に留学してからはライバルであるヴァリエールの秀才さに目をむき、負けまいと一層の努力を重ねたお陰もあった。 まあ勉学に熱心に励むのは自分らしくないと理由をつけて、すぐに飽きたので止めてしまったが……。一応はキュルケの糧になっている。 それにあのルイズとて、火の系統だけは発火の呪文と小さな火球を作るぐらいしか使えないらしい。 またプロポーションだけではなく、態度とかそういった女らしさという点でもキュルケの圧勝だ。 例えば今チラリとこちらを見た男子生徒にキュルケがちょっとばかし微笑かければ、彼はすぐさま赤面して前へ向き直った。あのルイズではこうは行かない。 代々やっているように、婚約者を寝取るのもいいだろう。わざわざ相手の土俵で張り合わなくとも、得意な事で勝負すればよいのだ。 けれどもルイズは親友だし、そこまで勝負勝負と言う必要は無なかった。 面倒な宿題が出された時など、あの少女の知識は非常に有用だ。タバサのように細かいことを言わないし。 その代わりに火についてあれこれと質問を飛ばされたり、ゴーレムの耐火実験などにつき合わされたりもするが、机に向かってカリカリとやるよりも余程良かった。 教師の説明を聞き流しながらルイズへと視線を送ると、どうやら向こうも暇なようで羽ペンをクルクルと回している。 あのギトーの授業だって、表面上だけは真面目に聞くルイズからすれば珍しい事だった。朝もぼんやりしていたし、使い魔とでも何かあったのだろうか。 自分はフレイムに不満など抱きようも無い。ルイズがサラマンダーより貴重な使い魔に満足できないのなら、それは贅沢が過ぎるというものだ。 しかし、もしかしたらそれもあり得るのかも知れない。遠目で見ているだけならば可愛いあの小さいのは、どうにも底知れない部分がある、とキュルケは評価していた。 例えば面倒な事この上ない杖との契約の手間も惜しまず、戦場にでも行くみたいに色々やっているようだ。もし戦場でルイズが敵側に居たら、とりあえず逃げた方が懸命だと思えるぐらいの徹底振りで。 キュルケも領地の中に入り込んだ盗賊の討伐ぐらいはやったことがあったが、それにしてもあそこまでの準備はしなかった。 備えあれば憂いなしという諺は知っているものの、いつ天変地異が起きても良いようにテントを背中にくくりつけて歩いているようではないか。ちょっとばかしやりすぎだと思えた。 その他にもコルベールが作っている意味不明なガラクタにも興味を示したり、あのメイドの故郷から、かなりの大枚をはたいて壊れたマジックアイテムを回収した、というのも聞いた事がある。 色恋沙汰に関しては微熱の名のままに暴走しがちなキュルケでも、やはりルイズの突っ走り方は貴族として異様に思えた。 まあ自分も目を見張るようないい男が居て、熱心なアプローチをしても惚れさせる事が出来なければ、もしかしたらああいう風になるかもしれないが。 「ルイズも恋の一つや二つ、しておけばいいのに……」 なんとなくそう呟いたキュルケは、恋する乙女になったルイズを想像してみた。 まずは相手だが、相手は……。 相手は……。 浮かばなかった。 というかあのルイズの場合、色恋沙汰より殴り合った後の友情の方が似合いそうだ。 あまり考えたくは無いが、変に懐いている(懐かせたのかもしれないが)シエスタの事を考えれば、もしかしたらルイズはそういう趣味なのかもしれない。 訓練の相手として何かと一緒に出かけているという情報も、広い友好範囲をもつキュルケの耳には無数に入っていた。 1週間ぐらい前に部屋にベッドを入れるとか言ってたような気がするし、これはひょっとすると、ひょっとする。 『……あぁっ! ル、ルイズ様っ!』 『ふふ、シエスタ……可愛いわ……』 完全に授業そっちのけモードに入ったキュルケの脳裏に、バタフライ伯爵夫人のなんたらという小説で見たワンシーンがそのまま再現された。 たしかにルイズが男の子に興味を全く示さないのは、こういう理由があるためと考えた方が自然だろう。うむ、そうに違いない。 だが人は見かけによらないと言うし、普段は強気で帝王みたいなルイズでも、ベッドの上ではまた違った一面があるのではないだろうか。 『シエスタ様ぁ……。わ、わたし、もう我慢できませんっ!』 『イケナイ子ねぇ、ルイズは。ここが、こんなになっているわよ?』 『い、言わないで下さいっ! は、恥ずかしいです……』 画面が不自然な髪の毛や湯気で隠されるようなシーンを想像してしまい、キュルケは思わず頬を染めた。 自分の方がそういう方面では上手だと思っていたけれども、なかなかどうして、ルイズも結構やるじゃないか。さすが私のライバルだ。 まさかルイズにレズッ気があったとはしらなかったが、それもまあ愛の一つの形だろう。情熱の燃やし方について、他人に口出しするほどキュルケは野暮ではなかった。 しかし、もし自分を誘ってきたら、その時は全力を持って断らねばなるまい。 「……、……ツェルプストー?」 大きく頷いてから視線を戻すと、もう一人の親友であるタバサがルイズの方を覗き込んでいた。キュルケの聡明な頭脳が更なる回転を始める。 タバサも殿方には興味を示さないようだし、もしかして、彼女もそういう道に入ってしまったのだろうか。 心を閉ざした少女を助けようとした女の子同士の友情が、やがて恋愛感情へと変化し……。十分にありえることだ。無論自分にその気は無いが。 合意の上でならいいけれども、まさか無理やりとか……。 「もしもし、聞いていますか? ミス・ツェルプストー!」 脳内ビジョンにルイズとシエスタだけではなく、生まれたままの格好で頬を染めるタバサが追加された頃、突然の隕石によって世界はぶっ壊れた。 キュルケは盛大に椅子を倒して後ろに転がり、口に突っ込まれた粘土によってもがもがと呻く。 混乱の収まらぬままに机から顔を出してみれば、明らかに怒りの表情を浮かべているミセス・シュヴルーズが杖を向けているのが見えた。 「授業中ですよ? 目新しい内容ではないかも知れませんが、ちゃんと聞くように」 口の中の異物を取り出しながら、キュルケは仕方なく下らない妄想を意識の隅に追いやる事にした。 キュルケの顔に粘土の塊が直撃した頃、中央塔にある学院長室の真下、重厚な鉄製の扉の前で歯噛みしている人物がいた。 しばらく前にオスマンが直々にスカウトしたミス・ロングビルだ。平民のメイジという少々特殊な存在ではあるが、仕事っぷりはかなりの腕前であるし、その容姿とも相成って男性教師側からの評判はかなり高い。 通常はマイナスに働きがちな婚期を逃しているというポイントも、成熟した女の魅力のお陰で相殺されるどころかプラスになっていた。 もっとも、今の彼女は普段の冷静かつ瀟洒な秘書というイメージとはかけ離れていたが。 「チッ! なんて固定化だよ……」 胸まである緑色の髪をかき上げながら、彼女は一向に効果のない自らの錬金に悪態をついた。 苛立たしげに扉に蹴りを入れると、爪先が痛んだほかに鈍い音が小さく響いた。当然ながらそんな事で扉がどうにかなる訳も無く、更にストレスが積もる。 このトリスティンでも有数の堅牢さを誇る事だけはあり、彼女が今まで破ってきた金庫などとは規模も固定化のレベルも比べ物にならなかった。 金庫や扉を土くれに錬金するのがフーケの特技の一つでもあるのだが、今回はゴーレムを使ってもどうにかなるか分かりかねる。フーケは忌々しげに唇を噛んだ。 ここの固定化の凄さは土のエキスパートである彼女の錬金でもびくともしない事からも明らかだったし、冷たい表面に触れて素手で触診した限り、スクェア数人がかりの仕事だと看破できた。 根気よく錬金をかけ続けていれば、いつかは篭絡するだろうが、そんな時間は彼女には無い。 「あのジジイのセクハラに耐えた結果がこれじゃ、土くれの名が廃るってもんさ……」 今日もあの忌々しいネズミとの連携で下着の色を見られたことを思い出し、フーケの顔が真っ赤になった。 流石というべきなのか、オスマンはロングビがの爪先を何度もめり込ませているというのに、倒れたふりをしてスカートの中を見るほどの猛者だ。 一見するとおちゃらけた老人に見えても、その裏では何を考えているのか分かった物ではない。さっさと仕事を済ませ、アルビオンで待つ家族の元へと帰りたかった。 だが事を焦って計画もなしに行動を起こすほど、彼女は無茶でも無謀でもない。感情を自制して演技をするのはお手の物だし、必要ならなんだってやった。 これまでにも差し向けられて来た追跡部隊の数々を振り切ったのは、単に運が良かっただけではないのだ。名実共にトリスティン1の盗賊がフーケなのである。 「おや、いかがしましたかな? ミス・ロングビル」 背後から聞こえた声に振り向いたとき、先ほどまでの荒々しい表情は完璧に消え去っていた。フーケの纏っていたオーラまでもが一変している。 変わりに慎ましやかな微笑と困ったような表情を浮かべ、ミス・ロングビルはひっそりと咲く花のように苦笑した。 「これは、ミスタ・コルベール。……実は、宝物庫の目録を作らなければならないのですが……。 あの色ボケジ……失礼、オールド・オスマンはお休みでして。鍵がないのですよ」 「な、なるほど、目録ですか……。しかし宝物庫は玉石混合、秘宝からガラクタまでありますからなあ。 中でも、破壊の杖などは凄まじく……。おっと、失礼。お忙しいのにこんな話を……」 心なしか赤面したコルベールは、即頭部に残った髪の毛をポリポリと掻きながら言った。 根っからの研究者であり変人として知られるコルベールに、女性との出会いや付き合いは皆無である。せっかく美女と話せるのだから楽しみたい。 本来は機密に当たる事ではあるが、少しでも話を長引かせようとコルベールがつい漏らしてしまった言葉に、ロングビルの表情が一瞬だけ盗賊の顔へと変わった。 「そんなに凄いマジックアイテムがあるのですか? とても興味があります……。 よろしければ、昼食でもご一緒にいかがです? もっとお話を聞かせてもらえませんか?」 「お、おお! そ、それは素晴らしい。是非とも、お供させていただきます!」 彼女の微笑みに当てられたのか、額まで赤くしたコルベールは何度もうなずく。 こうしてトリスティン魔法学院の鉄壁の防御は、いとも容易く錆果てていくのだった。 どっしりと大地に根を張る太い喬木に、大きさにして大人の腹ほどの的が描かれている。 的の中央にはやや上を向いて突き出ている金属の棒があり、表皮を伝ってきた一匹の天道虫が、その先端から飛び立とうと甲殻を広げた。 かすかな羽音を響かせながら天道虫が金属棒から宙へと舞った瞬間、やや下方に突き立った二本目の矢が彼を粉々にする。 「次は、もう少し上を狙って」 的になっている木から50メイル近くも離れた場所で、ルイズは片手で扱えるサイズのクロスボウに次弾を装填しているシエスタに声を掛けた。 流石のガンダールヴとてクロスボウを素手で引く事は出来ず、ギリギリと音を立てながらルイズお手製の金具を使用している。 常人ならば装弾には1分近く悪戦苦闘する必要があるものだが、刻印を刻まれたシエスタの手は淀みなく動いていた。さっきまで金属だった翼が、気変わりを起こしてゴムに変わったのかと思えるほどだ。 メリケンサックを握りこんだだけでオーク鬼の頭蓋を粉々に殴り壊せるほどのパワーを発揮するのだから、ルイズから直々に与えられた武器を扱った場合、彼女が発揮する力は常識を容易く打ち破る。 「はい、ルイズ様」 弦を完全に引ききったシエスタは、メイド服のポケットから、食卓で使うナイフの半分ほどの大きさがある鉄製の矢を取り出した。 鏃は鋭く尖っており、全体的に鈍い光を放っている。これには返しがついていないが、生物相手に使用する物には、的になったものの肉を引き裂いて苦しめるための凶悪な仕掛けがいくつか施されていた。 クロスボウ本体にも様々な工夫があり、例えば先端には傾けても矢が落ちないように突起がついている。これによって射出された矢は、金属の鎧さえも容易く貫通することが出来た。 ただの平民とて、これを使用すればその日のうちにメイジ殺しになれるだろう。このサイズでは不可能だが、大型化された物から発射される矢の飛距離は、悠々とリーグの単位にも届く。 シエスタの指が動いて引き金が引かれると同時に、クロスボウは破裂音に近い音を立てて矢を吐き出した。 「よし……上手いわね、シエスタ。上出来よ」 直線に極めて近い緩やかなカーブを描きながら飛び、最終的に矢は木の幹へと吸い込まれた。遠見の魔法によって大きく映し出されている的には、綺麗に矢尻が3つ並んでいる。 基本的に扱いやすい武器だが、狙いがここまで精確なのはガンダールヴの力だろう。矢の大半が木の中にめり込んでしまっており、たとえオーガ鬼だろうと引き抜くのは不可能だった。頭部にさえ当てれば、存在する幻獣の8割近くを殺しえる。 ルイズがこういった、ホワイトスネイクの知識を生かした武器を作れるようになったのは最近の事だ。家に居た頃では何かと詮索されそうだし、貴族らしくというのもあって動きにくい。第一、こんなものを他人に渡したくない。 授業が面倒な上に時間をとられるのは大きなマイナスだが、自由時間ならば基本的には誰からも干渉されないというのは大きな利点だった。 今だって教員が腹痛を起こして授業が休みになったので、のびのびと新兵器の威力が試せる。肉体的にはメイジも平民でも変わらないため、矢が頭に当たれば卵みたいに砕けるだろう。 ルイズは1週間ほどかけてこつこつと自作したクロスボウの破壊力に大きく頷くと、再び装填の終わったシエスタに指示を飛ばした。次は右側だ。 発射とほぼ同時に、的には4本目になる杭が生える。人間の顔より小さい範囲に集弾しているため、木の表面にはクレバスのような裂け目が出来ていた。 すぐにでも実践で使用可能な物に思えるが、実のところはそうではない。ギリギリライン程度しかないルイズが錬金で作ったため、連続使用するには耐久性に難がある。 例えば要である翼の部分などがもっとも顕著で、使用している強靭で柔軟な材質を作るだけでもかなり大変だったために、全体的に無視できないレベルでムラが目立った。 固定化のほうも万全とはとても言いがたく、そのうちどこかから折れて弾け飛ぶだろう。構えている人間の顔がどうなるかは明白だが、ルイズは他人ならばどうでもいいと切って捨てる。 「ホワイトスネイク……。どう思う?」 円を描くように狙えと伝えた後で、ルイズは傍らに呼び出した自らのスタンドに意見を求めた。 幼い頃からホワイトスネイクのことを個人として見ていたためか、視界の同調などはかなり苦手な部類に入っている。呼び出さずとも記憶などは共有しているようだが、会話は出来なかった。 もっとも、コントロールが難しいというデメリットは、コンビネーションの訓練でどうにかなった。力を求めているルイズの影響なのか、スタンドの強さが増したというメリットもあるから、一概に悪い訳でもない。 ハルキゲニアにおいてかなり異様格好をしているホワイトスネイクだが、シエスタは全く気にすることなく矢を射る。 その狙いは正確無比であり、打ち込まれた矢尻はダイスのように整列していた。もう少し距離があっても、止まっている人間を仕留める程度なら容易なはずだ。 「悪ク無イ。ダガ次ニ作ル時ハ、分解シテ持チ運ビ出来ルヨウニスルト、便利ダト思ウゾ」 ルイズは土メイジとして何度かその言葉を咀嚼し、それを可能にする機構と構造、素材を頭の中でめぐらせる。 たしかに弓の部分だけを分解できれば、使用するスペースは大幅に軽減されるだろう。難しいのならば二つを分けて作っておいて、使用する時だけ錬金でくっつけるというのもいい。 シエスタ以外にはまともに扱えないだろうし、使わせる気も無い。矢の一本に至るまで鋳造を応用して作ったルイズのお手製だから、秘密が洩れる可能性もごく僅かだ。 キュルケは技術欲しさに何か言うかもしれないが、こんな物の普及は貴族が認めないだろう。気軽に平民が貴族を殺せるようになってはたまらない。 基本的にメイジの魔法には防御手段があまり多くなく、クロスボウから発射された矢は、最も防御に優れている土メイジの障壁以外の大半を貫通する事ができる。 そもそも火のメイジは防御手段に乏しいし、距離が近ければ中途半端な風や水の防御など意味が無い。小さくて風などの抵抗を受けにくい上に、質量のある鉄製の矢なのだから当然だ。 改良型のマスケット銃でも似たような事は出来るが、硫黄の調達が面倒だし高価すぎるので、現状ではこちらの方に力を入れていた。 「ルイズ様。15発全弾、撃ち終わりました」 「了解よ、シエスタ。よく出来たわね」 「はい! ありがとうございます!」 4かける4マイナス1の本数だけあって、左下に1本分の欠けがあると認識できるほどの精度だった。下手をすると魔法より精密かも知れない。 シエスタは射撃の感覚を必死で説明しようとしたが、意識の方で狙うと体が勝手に修正すべく動いてしまうらしく、どうにも言葉にするのが難しいらしかった。 身振り手振りを交えながら悶えているシエスタを何度も宥めながら、ルイズはご褒美だと抱きしめてあげる。感極まった彼女は、今にも泣き出しそうなほど陶酔していた。 何度も記憶を覗いたルイズは知っている。出会った頃のシエスタは、タルブという田舎が出身な事もあって、使用人たちから爪弾きにされていた。 一人で泣いた事も何度もあり、仕事をまともにこなせずお叱りを受けた事も多数あった。村に帰りたいと願った回数については、数え切れない。 トリスティン魔法学院という十分に労働条件のいい場所にありつくには、かなりの運と、それに見合った器量を必要とする。これは至極当然の事だ。 貴族と日常的に接するのだから、万が一にも無礼に当たらないよう、平民とは縁の無いような細かい礼儀作法を覚えなければならない。使用人の質は施設の質、ひいてはそこを統べる者の質となる。 当然の事ながら彼らはプロフェッショナルであり、勤めているメイドたちのプライドもそれなりに高く、仲間として受け入れられるにはしばらくの時間を必要としていた。 たった一人で見知らぬ土地に出てきた、不安に押しつぶされそうな少女。寄り添う者も無く怯えていた、哀れな女の子。 そこをルイズが手篭めにしてやったのだ。無論肉体的な意味ではなく、精神的な意味で。 ルイズはホワイトスネイクの力を使いながらシエスタの心へ押し入り、望むがままに改変していった。 優しさという名前の弱さで、恐れるものに立ち向かう事さえ出来なかった少女の心に、毒を注ぎカリスマを植えつけた。 最初は少しずつ、やがて大胆に。今となってはシエスタの神は始祖ブリミルでも両親でもなく、ただルイズ一人のみである。それ以外には何も無い。 人間らしい嗜好は残っているが、ルイズが命令こそが全てに優先する。例えば敵の群れに突撃しろと言われれば、矢が刺さろうが腕をもがれようが目玉を抉られようが皮膚が焼けようが気にも留めない。命令されたからだ。 命令を実行し、達成する事こそがシエスタの人生の全てであり、唯一成すべき事だった。シエスタの言葉で代弁するならば「私は毛の一筋から肉の一片に至るまで、すべてルイズ様の所有物であります」となる。 だが彼女は決して自分が不幸だとは思って居なかった。シエスタは今の自分がルイズに作られたものである事を知っているし、直々に聞かされたので理解もしているが、だからどうしたというのだ? 甘いものが好きだというのが植えつけられたものでも、ケーキを食べれば幸せである。今のシエスタにはルイズに仕える事こそが至福であり、最高の愉悦なのだった。 「じゃあ、帰りましょうか、シエスタ」 「はい、ルイズ様」 シエスタは笑顔のまま、最高のご主人様の後に続いた。その表情には不平や不満は一片も無く、成熟したワインのように滑らかな面持ちである。 上手くこなして褒められれるのは、身を焼くような快楽をシエスタに与えた。そしてシエスタはルイズが大好きだし、ご主人様のためならば命を投げ出す事さえ躊躇わない。 十分なお給料によって、村に居る家族はこの上なく安泰だった。大家族なので裕福な暮らしができるほどではないが、飢えて雑草を食むような事はもう無かった。 文字を学ぶための書物に固定化をかけてもらって送った事もあるので、これから生まれる子供たちは自分のように文字の読み書きが出来るようになる。計算だって出来る。村は発展するだろう。 クロスボウを小脇に抱えなおし、春の暖かな陽気に照らされながらシエスタは思った。後で洗濯物を取り込まねばと。 前ページ次ページDISCはゼロを駆り立てる
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4731.html
前ページ次ページルイズの魔龍伝 5.ルイズとクックベリーパイ 「さて、ここへ呼んだ理由は分かるかの?ミス・ヴァリエール」 「…私の代わりに使い魔が戦ったとはいえ決闘に応じてしまった事と、それで壊した中庭の事でしょうか」 本塔の最上階に位置する学院長室、ルイズとゼロの目の前には杖を手にしたオスマンと その横にコルベールが真剣な眼差しで立っていた。 決闘後、直ちに使い魔ともども学院長室に呼び出されたルイズは一体どんな処分が下されるのか不安になっていた。 修理費用の請求に関しては次の仕送りまで多少、金額的余裕があるので大丈夫だ。 しかし「あのゼロのルイズがとうとう決闘問題を起こした」となれば実家の方にも話が伝わって あとはもう実家の両親とアカデミー勤めの長姉による不祥事説教祭りが始まるに違いない。 「あー…決闘に関しては事情を聞けばグラモンの馬鹿息子が原因のようじゃからお主は不問じゃ。 中庭も教師達が完全に修復したわい、かかる費用も請求せん。」 と、不安で青い顔をしているルイズに言い切ったオスマンが手にした杖をゼロに向けた。 「この使い魔殿について知っておる事を正直に話せば、の話じゃが」 「俺だと?」 「私達も騒ぎの一部始終を見…他の者から聞いたのだがゼロ…ガンダム殿で良かったかな? 君が放ったあの雷、あれはトライアングル…いや、純粋に威力だけで見るならスクウェアクラスに匹敵する」 「トライアングル…スクウェア…?」 「何?ミス・ヴァリエールからは何も聞いてないのか?」 「もっ、申し訳ありませんミスタ・コルベール!あのね、“トライアングル”“スクウェア”っていうのは 一回の詠唱でメイジが組み合わせられる属性の数を表すの、これはそのままメイジとしての技量を表すわ。 一つでドット、二つでライン、三つでトライアングル、四つでスクウェア、スクウェアは最高位のランクよ。」 「模範的な回答で何より。その最高位のレベルと同じ威力の雷が出せる使い魔で、しかもこの世界には 存在しない種族ときている。我々としてもミス・ヴァリエールを信じたい所だが……」 「俺の存在がこの世界の脅威になるのではないか、この娘が俺を上手く扱えるか、という事か」 「すまないがそう受け取ってもらって構わない」 「ミスタ・コルベール!私が召喚した使い魔なんですから私がしっかりとこの使い魔の手綱をとってみせます!」 コルベールの言葉に自信満々と答えたルイズだが、あの雷がルイズに不安を与えていた。 どんな使い魔にも負けない威力のあの雷を持つ使い魔を…私は扱えるのだろうか? 「…この娘の手足となって色々とこき使われる気はないが、別にこの世界にとって 脅威になるような事はしない。俺の剣は悪に轟く雷鳴だ」 そう言ってゼロは、昨夜にルイズと話したのと同じ事をオスマンとコルベールに話した。 「成る程、スダ・ドアカというこことは別の世界で騎士をしていたと…」 「あぁ」 「にわかには信じがたいが異世界という存在とユニオン族…君のような姿をした種族がいるとはまた興味深いね。 その世界の騎士はみんな君のような事が出来るのかい?」 「いや、そういうのは俺の剣の流派だけだ。騎士は剣で戦ったり機兵という巨大な機械の操手を勤めるのが一般的だな」 「剣術!雷を繰り出す剣術とは実に興味深い!しかも今の“キヘイ”とは何かね!? ゴーレムの類?うぅむこれは興味深い、後で私の研究室に来てみないかね!悪いようにはしない!」 「なっ!?」 「ミスタ・コルベール、そこまでにしときなさい」 「あ、えぇ申し訳ありませんオールド・オスマン」 ゼロに迫るコルベールをオスマンが制し、その様子を見てルイズは唖然としていた。 「ミスタ・コルベールって前々から変わってるって言われてたけど…これは…」 「ともかく、話を聞いた限りではこの世界の脅威となり得る存在ではない事は分かった。 今までの非礼、どうか許してはくれまいか」 「いいさ、しかし事情は分かったからといって俺も死ぬまでこの世界にいるつもりはない。 元の世界に返れる手段ぐらいあるだろう?」 「それがじゃのぅ…本来はこの地におる幻獣を召喚する魔法ゆえに送り返すという方法は 今まで取られた事もなく、そういった手段も存在しないんじゃ」 「存在しないだと?それじゃあ俺は一生をこの世界で終えろというのか!?」 「我々の方でもその手段は極力探してはみるが…どうか、それまではどうか ミス・ヴァリエールの使い魔を勤めてはくれないか、ゼロガンダム殿」 「…それならば止むを得まい」 「そう言ってくれると、助かるのう」 オスマンとの話が終わり学院長室から退室しようとするゼロに、オスマンが何か思い出した様子で ゼロに一言問いかけた。 「時にゼロ殿、「ムーア界」という名前に聞き覚えは?」 「…すまないが無い」 ムーア界という言葉は何となく聞いた覚えはあるが、明確には覚えておらずこう返すしかなった。 「近い内にゼロ殿だけご足労願えるかの?そのゼロ殿が来た世界の事で話がしたいんじゃ。 ヴァリエールのお嬢ちゃんには悪いが二人きりで、の」 「情報になりそうな事ならいつでもいい、どうせここの生徒でもないし時間はある」 そうして部屋を退室したゼロとルイズ。 二人の間のちょっと微妙な空気の中、ルイズがゼロに話しかけた。 「ねぇ、ガンダム」 「何だ?」 「…やっぱり元の場所に帰りたい?使い魔って、そんなに嫌なの?」 いつも高飛車な調子ではなく相手の様子を伺うように話しかけるルイズ。 「見知らぬ世界に来ていきなり下着を洗えと言われたらそりゃあ嫌だろう」 「まだ昨日の事根に持ってるの?まったく…」 「だが、元の世界に帰りたいといえば…どうだろうな」 「え?」 「…あの世界での俺の戦いは終わった。それからは、後に続く者達のやる事さ」 ゼロは考えていた。雷龍剣と自分の宿命が終わった今、あの世界に自分は不要だと。 そんなゼロをよそに何とも要領を得ないルイズだった。 ごぎゅうぅ その時、どこからか気の抜けた音が聞こえてきた。 「何?今の音…」 「あぁ、そういえば昼食を食べ損ねていたな…」 この音はゼロの腹の音だった、クスリとしながらルイズが話す。 「じゃあガンダムは私の授業に付き合わなくていいわ、厨房に行って来て何かもらってきなさい」 「いいのか?」 「派手に勝った使い魔が腹の音をさせてたら主人の私が恥ずかしいわ」 という事で、空腹のゼロはルイズと別れ厨房の方へと向かった。 「あ、ゴーレムさん」 「おぉっ、こいつが“ヴァリエールの小さなゴーレム”か!確かに変わった形してんなぁ! こいつがあの貴族の坊っちゃんをひーこら言わせてたとはねぇ」 厨房に入ったゼロを出迎えたのはシエスタと、コック服を身に纏った太っちょながら精悍な顔つきの顔の男だった。 「こちらはコック長のマルトーさん、厨房で一番偉い人ですよ」 「おぅ!俺がこの魔法学院の味の番人、マルトーだ!」 ぐっと付き立てた親指を自分にびしっと向けながらノリ良く答える。 「俺はゼロガンダムだ、ゼロでいい。そういえばメイドの君にも名乗ってなかったな」 「そういえば私も名乗ってませんでしたね、私はシエスタと申します」 シエスタがゼロに向かって丁寧にお辞儀をする。 「本当に喋ってらぁ、お前さんゴーレムにしちゃあ変わってるねぇ」 その先入観を打ち破るように再びゼロの腹の音が鳴った。 「今の音…なんでしょうか?」 「…実はな」 「はぁっはっはっは!おめぇさんゴーレムじゃなかったのか!」 「ゼロさん…そういう種族だったんですか?」 「ここじゃそうらしいな、まったくこの世界のゴーレムというのを一度お目にかかりたいもんだ」 コック達の賄いシチューを食べながらマルトーやシエスタと談笑するゼロ。 物珍しさに他のメイド達やコックも集まっていた。 「あの決闘見てたぜ!すげぇ雷だったな!」 「アンタのおかげでシエスタが無事だったようなもんさね!」 どうやらあの決闘を見ていた者がこの中にも何人かいたようでゼロに話しかけてきた者もいた。 「おい昼間の忙しいって時におめーら何やってんだ!」 「す、すいやせんマルトーさん!」 厨房が笑いに包まれる中、空になった皿を見たシエスタがゼロにお代わりを持ちかける。 朝食を抜かれ決闘で技まで使ってしまったゼロにとって二皿目のシチューもあっという間に 腹の足しになってしまった。 「すまなかったな、皆の大切な賄いを2杯も馳走になって。 後で俺にも何か手伝わせてくれ。施しを受けた以上恩は返さねばならん」 「いいって事よ、貴族の野郎どもあれこれ文句つけて残すからな。 それにあんた貴族の使い魔だけど貴族よかよっぽど良い奴だ! これから飯はしみったれたパンとスープじゃなくて賄いのシチューにするよ! まったくあの量のパンとスープってご主人様って奴は使い魔を何だと思ってるのかねぇ」 マルトーに背中を叩かれているゼロにシエスタが話しかけた 「あの…実はあの後、あの貴族様がちゃんと謝りに来て下さって…。それで…私からもゼロさんに何かお礼を…」 「いや、礼なら俺よりルイズにしてくれ」 「え?でも決闘で勝ったのは…」 「そうだぜ、何も主人の肩持つこたぁねぇよ」 厨房でのやりとりや決闘騒ぎでで分かった事だが、ここではメイドやコックといった 魔法を使わない者は貴族に対してあまりいい印象を持っていないようだとゼロは感じた。 ギーシュのあの態度やルイズの無駄に高いプライドを思い返せば即座に納得する話ではあるのだが。 とはいえゼロも食堂でのルイズのやり取りにちょっと感心しており、。 「だが、俺はあくまでルイズが決闘を受けると言ったから受けて勝ったまでだ。 シエスタに対する横暴だって一番最初に止めたのはルイズであって俺は途中から割り入っただけだしな」 「そういえば…そう…でしたね」 「そんなもんかねぇ全く、貴族様ってのは分からんよ」 「あのギーシュという小僧よりは多少貴族らしいさ。ま、それを差し引いても色々と子供だが」 「お礼…どうしましょう…私に出来る事なんて炊事洗濯家事お菓子ぐらいしか……」 「ふむ」 その時、ゼロの脳裏に一つの単語が浮かび上がった。 夕食も終わりいわゆる自由時間である寮内、机に向かっているルイズの横では ゼロが自身の剣を抜いて眺めていた。 「勉強か?」 「魔法が出来ても出来なくても、勉強ってのは大事よ」 本を読んでいたルイズが顔をゼロの方に向ける。 「うわぁ、その剣ボロボロじゃない」 ゼロが手にしていた鉄剣は刃の部分が所々こぼれ落ちており、刀身も高熱に晒されたかのように あちこち変色していた。 「…あの技を使うのは久しぶりだったからな、つい力の加減を間違えた」 「それ、魔法なの?」 「魔法じゃない、俺の一族…“雷の一族”だけが使える雷龍剣の技だ。」 「でも魔法みたいじゃないのよ」 本を閉じたルイズが顔をゼロの方に向けたまま顔を机に伏せる。 昼間のあの技は確かに凄かったものの、魔法の使えない自分より遥かに凄いとなんだか自分が情けない。 そんなルイズの気持ちがちょっとふて腐れた声になっていた。 「使い魔が魔法を使えて……主人は魔法を使えない……おかしな話ね」 その時、部屋のドアを誰かがノックした。 「? 誰よこんな時間に」 ルイズがドアを開けるとそこには籠と下着を持ったシエスタが立っていた。 「あの…ゼロさんに頼まれていた洗濯物を…」 その瞬間、いつものルイズの顔に戻り剣を鞘に戻していたゼロをキッと睨む。 「ガ~ン~ダ~ムゥ~!!自分の仕事をメイドに押しつけてぇ~!!」 「す、すみませんすみません!洗い場を探しているのを見つけて私から引き受けたんです!」 「……まぁそうならいいけど、アンタ昼から謝りすぎよ」 「はいすみま…いえ何でもありません!大丈夫です!」 この娘、何だか放っておけない気がする。 まるで犬か猫でも見るような、そんな感情を抱きつつルイズは温かい目でシエスタを見ていた。 「フフッ、まぁいいわ。用はこれだけ?」 「あのですね、これを…」 シエスタの洗濯物をルイズが受け取りながらシエスタが手にした籠から何かを取り出す。 「これって…クックベリーパイ?」 「はい、お昼の時のお礼です。お口に合うかどうか…」 そこにはルイズの好物であるクックベリーパイがまるまる一ホール乗ったお皿が合った。 焼きたてのようでベリーの甘酸っぱい匂いとパイ生地の香ばしい香りがふんわりと鼻をくすぐる。 「あら、中々おいしそうじゃない。お茶淹れてくれる?」 「はい!只今」 シエスタが部屋を出た後、ルイズがテーブルにクックベリーパイを置いた。 このクックベリーパイ、自身の大好物であるためちょっと顔がにやついている。 「好きなのか?それ」 「あげないわよ~ガンダム」 「…俺は別に食べたいとは言ってないぞ」 ルイズのほくほくした顔を見てとりあえず自分の提案が正しかったと感じるゼロ。 しばらくするとカップとティーポット、皿にフォークやナイフなどが乗った盆を持ったシエスタがやって来た。 手早くパイを切り分けルイズにパイの乗った皿を置く。 「あの…ゼロさんもいかがですか?」 「いいのよ食べたくないって言ってたし~」 ルイズが嬉しそうな顔でパイを口に運ぶ。 「マルトーさんが忙しかったので、私が代わりに作ったのですが…お味のほうは…」 神妙な顔で味わっているルイズにシエスタは恐る恐る味を聞いてみた。 「……」 「…おいしい、おいしいわシエスタ!」 「あぁ…っ、ありがとうございます!」 シエスタの顔が瞬間的にパァッと明るくなった。 にやけた顔でパイを口に運ぶルイズと幸せそうな顔でルイズを見つめるシエスタ。 「クックベリーパイ、お好きなんですよね。ゼロさんから聞きました」 「あれ?そんな事は別に言ってないような……」 「何、今朝方お前が寝言で言っていたのを聞いただけだ」 「……こンの使い魔ぁ~!」 「黙って食え、折角シエスタがお前の為に焼いたんだ」 「し、仕方ないわねぇ。今回はこれで勘弁してやるんだから」 パイの美味しさに頬を緩めたりゼロの言葉に怒ったりころころと表情を変えるルイズと ルイズから美味しいという言葉を貰い微笑みながらやれお茶のおかわりだの彼女に世話を焼くシエスタ。 授業の爆発騒ぎにギーシュとの決闘と、今日は騒ぎが多かったなと思い返しながら二人を見守っているゼロ。 その時、また部屋のドアをノックする音が聞こえた。 「今度は誰?」 ルイズがドアを開けるとギーシュが立っていた、流石にいつもの調子ではなくちょっとバツが悪そうだ。 よく見ると頬が掌の形に赤くなっている 「や、やぁ…ルイズ…」 ルイズの幸せそうな顔が一気に「何しに来たのよ」というしかめっ面になる。 シエスタはやっぱりオロオロしており、ゼロは二人を一瞥して視線を窓の外に向けた。 「決闘に負けたから約束は果たすよ…その、君が最後になってしまったけど……」 「昼間のやり取りは僕が間違っていた、心から謝ろう。あの時はつい調子に乗ってしまったり 正論にカッとして禁止されている決闘を申し込んだり男として情けなかったよ。 決闘に負けた今じゃ……痛いほどよく分かる。」 「ま、反省してるようだし許してやろうかしら。 どうせそのほっぺ、モンモランシーか二股かけた一年の子に引っ叩かれたんでしょ」 「勘がいいね…モンモランシーに昼間の事を全部話した上で謝ったらまた一撃もらったよ… でも“これに懲りたら他の娘に手を出すのはやめてね”って許してくれたんだよ!? モンモランシーは僕を見捨てていなかったんだ!死中に活を見出したよ僕ァ!!」 「うっさいバカップルの片割れ」 「おごっ!!」 「さっきから一体なにやってるのルイ…あらいい匂いね」 「あ、もし良かったらいただきますか?」 「クックベリーパイね、じゃあちょっと頂こうかしら」 「キュ、キュルケェ!あんた私ののクックベリーパイを勝手に食べるんじゃないわよ!」 「あーら、このベリーの赤色はまさに私の髪のような灼熱のような赤だと思わなくて?」 「ギーシュ…遅いと思ったら今度はゼロのルイズに…っ!」 「どう見ても違うよモンモランシー!!僕は謝りに行って…」 「そうよこんなヘタレのキザ、あんたからあげるって言われてもそのままゴミに出す位いらないわ!」 「ギーシュがヘタレのキザだからいらないってぇ!?確かにヘタレでキザだけど聞き捨てならないわ!」 「かばってるようで抉ってるよモンモランシー……」 ルイズがギーシュをローキックでダウンさせている時に、騒ぎを聞きつけたキュルケがやって来て さっきまでルイズが座っていた席でクックベリーパイを味わっている。 そしてギーシュの様子を見に来たモンモランシーが勘違いをしてルイズと口論しており、 蹴飛ばされたギーシュがなだめているが時折二人からどつかれていた。 「やかましいな……だがルイズがいつもの調子に戻ったようだし、良しとするか」 飽きれながらゼロが眺めていたルイズの部屋の様子は、昨夜より少し騒がしく賑やかだった。 前ページ次ページルイズの魔龍伝
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5336.html
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 教室を出てからもジャンガは暫くルイズを解放せずに歩き続けた。 広場に面した通路に来て、漸く胸倉を掴み上げる爪を離した。 首が絞まっていたルイズは、床に落下した途端、大きく咳き込んだ。 「ごほっ、げほっ」 「テメェに聞きたい事があるゼ?」 そんなジャンガの言葉にルイズは恨めしげに見上げる。 「な、何よ…授業中にいきなり」 「授業中も何も関係無ェだろうが?テメェがいた所で爆発起こして邪魔するか、 邪魔にならないように隅で本を読むしかネェじゃねェか?…そんな奴が一人居なくなったところで、 大して支障は無ェだろうが。違うか?」 「…っ」 痛い所を突かれ、ルイズは悔しげに歯噛みする。 それをつまらない物でも見るように、見下ろすジャンガ。 「フンッ…、まァ、そいつは置いといてだ……テメェ、モット伯って知ってるか?」 ルイズは驚き、顔を上げる。 「モット伯!?あ、あんた…そんな事聞いて、どうする気なのよ…?」 「別に…ただ、気になっただけだ」 「気になるって……何でモット伯を気にするのよ?」 「モット伯の所に、あのシエスタ嬢ちゃんが仕える事になったゼ」 「…え?」 ジャンガの言葉に驚き、目を見開くルイズ。 「シエスタが…本当?」 「ああ…、今朝迎えの馬車に乗り込む所に出くわしたゼ。実に寂しげな顔をしていたっけな~?」 それを聞いたルイズの顔はどんどん曇っていく。 「そんな、急に…」 「モット伯の事、教えろ」 「…モット伯は王宮の勅使よ。学院にも偶に来るわ。…いつも偉ぶってて、私は好きじゃないけど」 「勅使ィ?」 「簡単に言えば、王宮の重要な命令なんかを伝える役目を担ってる官吏の事よ。ようは王宮の御偉い様ね」 「…んだ?命令伝えるなんざ、手紙でも送りゃ済む事じゃねェか…。わざわざ”そんな事”にまで役目与えるなんてな…」 ”そんな事”の部分を強調するジャンガにルイズはムッとした。 「勅使が伝える事は外部に洩れてはいけない、洩らしてはいけない本当に重要な事なの。 伝書フクロウなんかで運んだら、万が一他人に盗み見られるかもしれないじゃないの。 だからこそ、王宮では信頼に値する実力の伴った貴族を勅使に任命するのよ。解った!?」 「あ~はいはい…、実に良く解る説明だったゼ」 爪で器用に耳の穴を穿りながら、ジャンガは生返事を返す。 「でだ…、そんな御偉い勅使の”貴族様”がなんだって、こんな所で働いてる小娘一人をわざわざ引き抜いたりするんだ? 御偉い様なんだからよ…召使なんかには事欠いていないんじゃないか?」 その質問にルイズは難しい顔をする。 「…多分、自分の妾にするのだと思うわ…」 「はァ?」 間の抜けた声が口から漏れた。 妾……つまりは、最初から”女”として扱う為に雇ったと言うのだ。 「貴族にも色々いるし、噂でしか聞いてないけど…。そう言う話もあるって事…」 「ハンッ、想像していたよりも、貴族ってのは性質が悪いみたいだな。…獣以下だゼ」 ジャンガの最後の言葉にルイズはキレた。 「あ、あんた、今のは貴族全員に対する最大の侮辱よ!?」 「事実を口にしただけだぜ…?この間のキザ野郎もそうだが、平民に対して人としての接し方をしてるとは思え無ェよな? まるで牛馬に対するような、家畜同然の扱いだ」 「そ、それは…」 「テメェだってそうだろう…、俺様を使い魔だと言って、こっちの言い分なんか聞きもせずにこき使ってくれたくせによ? …もうそんな命令は受けたりしネェけどなァ~。キキキ、お前もモットって奴と同じだゼ」 「違う、私は違う!私は…」 「どう違うってんだ?違う所を探す方が難しいぜ…。――ああ、”魔法が使えない”って所は違うかもな…キキキキキ!」 「くく~~っ!!」 悔しがるルイズ。と、唐突にジャンガは笑いを引っ込める。 「な、何よ?」 「まァ……貴族はクソだが、平民もクソが多いよな…」 「え?」 「例えば…こんな奴等さァァァーー!!」 叫びながら、ジャンガは後ろへと振り向きざまにカッターを放つ。 唸りを上げて飛ぶカッターは少し離れた所の壁を大きく抉る。 煙が立ち込め、壁の欠片がパラパラと降り注ぐ。その光景にルイズは呆然とするしかなかった。 「あ、あんた…いきなり何を――」 「おい…そこに居るんだろう?」 ルイズの言葉を遮って、ジャンガは崩れた壁を見ながら声を掛ける。何だろうと思い、崩れた壁を見る。 煙が晴れ、そこに数人の給仕の男女の姿が見えた。突然の事で皆一様に震えている。 その給仕達に向かってジャンガは歩み寄るや、男の一人の胸倉を掴み、高々と持ち上げた。 首が絞まり、息苦しさに苦悶の表情を浮かべる。 ジャンガはそんな事は気にも留めずに給仕の男を睨み付ける。 「おい…さっきからウルせェんだよ…。陰で隠れてこそこそしやがって、正直ウゼェぜ」 「ちょっ、ジャンガ!いきなり何を!?」 怒鳴るルイズにジャンガは不思議そうな表情を向ける。 「お…こいつらの事を庇うのか?…こいつらが今何を言っていたか知りたいか?」 「え?」 「こいつら、さっきからここに隠れてテメェの悪口を言ってたんだよ。無能なのに貴族で生意気だとか…、 とんでもない奴を召喚しやがってとか…、使い魔の主人のくせに管理できてないとか…、 そりゃもう色々とな…。正直、あまりのバリエーションの多さに俺でも脱帽しちまったぜ…キキキ」 「……」 「ま、無力な雑魚共が出来る事といやぁ…これ位だろうけどな。――俺としてはウゼェ事極まりねェ…」 そこまで言ってジャンガは給仕の男を自分の眼前に引き寄せた。 息が掛かるほどの距離で睨み付けられ、給仕の男は震えるばかりだ。 震える男にジャンガは威圧感タップリに言った。 「お前等が別に貴族の奴等をどう思おうと、どう悪く言おうと関係無ェさ…。だがよ、そういうのは俺のいない所で言いやがれ。 ウゼェんだよ…、今度俺の近くで同じ事をしたら……」 そこで一旦言葉を切ると、一層濃い殺気を含んだ視線をぶつける。 「殺すぞ?」 ――たったの一言だった。しかし、その一言に掴まれた男だけでなく、他の給仕も全員、一様に激しく何度も首を縦に振った。 それを見ると、ジャンガは男の胸倉を掴み上げる爪を離した。 地面に落下した男は、その場で息を整えるもせずに咳き込みながら、ほうほうの態で逃げ出す。 他の給仕達も男が逃げ出すと同時に蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。 その様子を見て、ジャンガは笑った。 「キキキ…全くよォ、互いに憎み合っている様は見ていて楽しいぜ。 貴族も平民もやってる事は同じだってのによ…それにすら気付いてねェかな?キキキ…馬鹿ばかりだな」 「な、何よ…煩いんじゃなかったの?」 「あン?…別に見ている分には楽しいさ、当然の事だろう?ただよ…、俺が話をしている時に横槍を入れるのが気にくわねェんだよ」 「そう…」 「フンッ……もうテメェに聞く事も無ェ…、教室に戻るなり部屋に戻るなり好きにしやがれ」 「その積りよ!」 ルイズはスカートに付いた埃を払い、踵を返すと教室へと戻っていった。 ジャンガはもう一度つまらなそうに鼻を鳴らすと、その場から立ち去った。 夕方… オレンジ色に染め上げる夕日、輝きを増してきた二つの月が空に浮かんでいる。 それらを本塔の屋根の上で見上げながら、ジャンガはポツリと呟いた。 「…不味かったな、昼食…」 あの後、適当に時間を潰し、昼食をいつもの通り厨房で食べた。 マルトーとか言うオッサンは嫌な顔をしていたが、相手の機嫌を損ねるとどうなるかは解っているので、 嫌な顔をしながらも最高の料理とワインを出したから別にいい。――しかし、何か物足りなかった。 今までと同じような食事だ。実際、味は悪くない。違いは無いはずである。 …あるとすれば、いつも怯えながらも厨房の連中でただ一人、笑顔で居続けた例の小娘が居なかった事位か。 小娘一人居なくなっただけで、なんでこんなに飯が不味く感じるのだろうか? 不思議……と言うよりは不愉快だった。 「チッ…」 ジャンガは舌打し、目を閉じた。少し…と言うよりはかなり早いが、眠ってしまえば嫌な事も忘れられる。 そう考え、ジャンガは夢の世界に意識を委ね様とした。…が、その考えは直ぐに打ち砕かれた。 目を閉じた瞬間、例の小娘の顔が浮かんだのだ。それも最後に別れた時の寂しげな表情をして…。 (ああ……全く、ウザってェ…) イライラを募らせながら、何とか視線を小娘から逸らそうとするが、それも叶わなかった。 やがて、小娘は会釈をし、馬車へと走っていく。 (クソが……いつまで続くんだよ――って、ん?) イライラが頂点に達しようとした時、ジャンガはある事に気が付いた。 馬車の扉が開け放たれた時に、中に赤く丸いずんぐりとした生き物が見えたのだ。――その生き物にジャンガは見覚えがあった。 生き物が何であるのか理解した瞬間、ジャンガは両目を見開いていた。 跳ね起き、ポツリと呟く。 「何で…ここにいるんだ?」 解らない。ここが自分の居た世界とは違うのは既に承知の事実。…では、何故”あれ”がここに居るのだ? 自分の様に召喚されたのか?ルーンは見当たらなかったが、逃げ出したりしたのだろうか? …いや、もっと単純な理由がある。そう”あいつ”だ。 「…確かめるか」 ジャンガは立ち上がると本塔の上から消えた。 寮塔の玄関ホールにある噴水。 その縁に腰掛け、二人の生徒が話をしている。ギーシュとモンモランシーだ。 モンモランシーはギーシュから手渡されたのであろう、ブローチを嬉しそうな笑顔で見ている。 「素敵、ミスリル銀のブローチね」 「君にお似合いだろう、モンモランシー?」 その言葉にモンモランシーは怪訝な表情を浮かべると、ギーシュを見た。 「これでこの間の事を帳消しにしようっての?」 モンモランシーの言葉にギーシュはふと笑みを浮かべる。 その笑顔にモンモランシーはドキッとしたが、辛うじて顔には出さずにすんだ。 「な、何よ…そんな顔しちゃって?」 「モンモランシー……僕は間違っていたよ」 「え?」 ポカーンとするモンモランシーだが、ギーシュはそのまま言葉を続ける。 「僕は多くの女性に対して同じように接するのが正しい事であるとして信じてきた。 だが、それは間違いだった。この間の事で理解したよ…真に愛する者はただ一人しかいないのだと。 君はあの時、あの凶悪な亜人を目の前にしながら、僕を庇ってくれた。 …嬉しかったよ、本当に。そして、同時にこんなに優しい君をちゃんと見つめていなかった自分を恥じたよ。 これからは君を見続けるよ。無論、必要な時には一人の男として他の女性に接したりするだろう。 だが、愛するのは君だけだ…モンモランシー。約束する、もう君を悲しませたりはしないよ、僕のモンモランシー」 モンモランシーは別人を見るような目で目の前の男を見た。 あの決闘騒ぎ以前の彼ならば、こんな台詞を吐く事は……あったかもしれない。 (それはどうでもいいわ!) 心の中で叫ぶ。…とにかく、今のギーシュは以前とは違う。 軽い軟派な男ではなく、文字通りの”漢”だ。 モンモランシーは確信していた、今の彼ならば全てを信じて上げられる…と。 「…いいわ、信じてあげる。――絶対に、私を泣かせないでよね?」 「ああ、約束するとも」 そう言うと、ギーシュはモンモランシーの顎に手を添え、目を閉じる。 モンモランシーもウットリとして目を閉じる。 目を閉じた二人の距離は徐々に近づき、そして―― 「おー、おー、熱いねェ~?」 ――唐突に聞こえてきた声に、二人は目を開き、声の方に顔を向ける。 ニヤニヤしながら長身の亜人が自分達を見下ろしていた。 「ジャ、ジャンガ!?」 ギーシュは反射的に立ち上がり、モンモランシーを背に庇う。 モンモランシーは心配そうにギーシュを見つめる。 「き、君は…ま、また、人の恋路を邪魔しに来たのか…?」 「キキキ…、そりゃお前…こ~んな楽しい事をやっている所へ首を出さない訳が無いだろうがよ?」 「傍迷惑よ!」 叫ぶモンモランシーだが、 「――嘘だがよ」 直後のジャンガの言葉に脱力し、一瞬こけそうになった。 しかし、ギーシュは変わらずジャンガを睨み付けた。 「一体、僕達に何の用が有るんだ!?」 そう叫ぶギーシュにジャンガは目を向ける。ギーシュはその目に一瞬、決闘の時の恐怖を思い出し震え上がったが、 直ぐに立ち直ると杖である造花のバラを構えた。それを見てもジャンガは笑うだけだ。 「キキキ、そんなにカリカリすんじゃねェよ。――テメェに聞きたい事が有るのさ」 「へ?」 唐突なその言葉にギーシュはポカンと口を開けた。 その夜… 夕食を取っていたルイズの下に珍しく、料理長のマルトーがやって来た。 「あの、貴族様…お食事中に申し訳ないんですが…」 「何?」 ルイズはスプーンやフォークを動かしていた手を止め、取り出したハンカチで口元を拭う。 「その、貴方様の使い魔の事なのですが…」 「……ジャンガがどうかしたの?」 また何かしでかしたか…、ルイズは頭痛がする頭を抱え込む。――しかし、返ってきた答えは予想外の物だった。 「いえ…いつもならば既に姿を見せているはずの時間なのですが…、一向に厨房に現れないので…。 折角の料理も冷めてしまうので…それで、主人である貴方様にお尋ねしたのですが……ご存知ではないですか?」 ルイズは驚いた表情でマルトーを見る。 「あいつが…いないの?」 「へ、へぇ…」 どうしたのだろうか?まさか、何処かで遊び呆けているのか? 悩んでいるとテーブルを挟んだ向かいで、モンモランシーと食事をしながら談笑していたギーシュが口を挟んできた。 「あの亜人がいないのか、ルイズ?」 「ええ…そうみたい。何か知ってるの?」 「いや、実はさっきの事なのだが、あの亜人がモット伯の屋敷の場所を尋ねてきてね」 「モット伯ですって!?」 驚き、声を上げるルイズ。昼間の件もある、一体あの亜人はモット伯の屋敷に行って何をするつもりなのだ? ルイズは唐突に席を立つと、そのまま食堂を出て行こうとする。マルトーはルイズの背に声を掛ける。 「あの、貴族様…どちらへ?」 「…貴方には関係ないわ」 「食事は?」 「片付けておいて。もういらないから」 そう言うとルイズは食堂から出て行った。 ――ここで少し時間を遡る… ――ルイズが食堂を出る約二時間前―― ギーシュから場所を聞いたジャンガは、今モット伯の屋敷の前へと来ていた。 「来たはいいが…さて、どうするかねェ~?」 と、門前で腕組みをし、悩んでいるとジャンガの存在に気付いた一人の衛兵が駆けて来た。 「誰だ!?」 「お~お~…こりゃ好都合だ」 「何者だ貴様!?亜人がここへ何のようだ!?」 「ムゥッ!」 衛兵の声の後に聞きなれた可愛らしい叫び声が聞こえ、ジャンガは目を向ける。 そこには予想通りの物が居た。 ジャンガは口の端を持ち上げ、ニヤリと笑った。 一方、屋敷内では… モット伯が雇ったばかりのシエスタを自室へと呼び寄せていた。 シエスタは学院のとは違う給仕の服を身に着けている。 黒ではなく赤が強調されているのもそうだが、スカートは格段に違う。 学院の物と比べても短すぎ、太股までが見えてしまっている。無論、モット伯の趣味だ。 モット伯はそんなシエスタを頭の上から爪先まで舐めるように見つめる。 「どうだ、仕事には慣れたか?」 「はい、大体は…」 「そうか…まぁ、余り無理はせぬようにな」 そう言ってモット伯はイスから立ち上がり、シエスタの後ろへと回ると肩に手を置くと、そのままシエスタに顔を近づけた。 突然の事にシエスタは驚き身を竦ませる。モット伯は彼女の耳の傍で囁くように言った。 「私はお前をただの雑用の為に雇った訳ではないのだからな…、シエスタ…」 「あ、あの…」 どうしたらいいのか解らず、シエスタはただうろたえるのみだった。 その時、扉が叩かれた。モット伯はシエスタから離れ、扉に向かって声を掛ける。 「何だ?」 「ジャンガと名乗る亜人が伯爵に面会したいと言っております」 「ジャンガ?知らぬ名だな…。しかも亜人だと?」 怪訝な顔をするモット伯の横でシエスタは動揺を隠せなかった。 (まさか…どうして?) 何故彼が、ここに来たのか…シエスタには理由が解らない。 そして、彼女はモット伯に言われ、疑問を残しながら部屋を退室した。 モット伯の部屋へと通されたジャンガは屋敷の豪華さに忌々しげに鼻を鳴らした。 「ハンッ…成金趣味丸出しだな…」 「君かね、私に面会したいとか言う亜人は?」 聞こえてきた声にジャンガは視線を前に向ける。 豪華な屋敷に負けないくらい立派な服に身を包み、赤いこれまた立派なマントを羽織った男が居た。 どうやら彼がモット伯らしい。ジャンガはこれと言った感情も表さずにモット伯を見据える。 「モット伯ってのはアンタの事か?」 「下賎な亜人風情が、貴族に馴れ馴れしい口を聞くな!」 ジャンガの言葉にモット伯は怒鳴った。 しかし、ジャンガがその程度の怒鳴り声で怯えるはずも無く、爪で頬を軽く掻く。 「まァそんなにカッカするんじゃねェよ…、血圧が上がるゼェ?」 「ふんッ!…それで、亜人風情が貴族の屋敷に何の用だ?」 「そりゃ、用があって来たのさ…。大体、用も無けりゃ、こんな所に来やしねェよ。 ――テメェみたいな…女抱く為に立場を利用する阿呆の所なんかにはな…キキキ」 「貴様!亜人の分際で貴族を侮辱するか!?」 痛い所を突かれ、逆上したモットはイスから立ち上がり、壁に立て掛けてあった自らの杖を取る。 「そこへなおれ!」 「待ってください、伯爵!」 扉が開き、シエスタが部屋に入ってきた。ジャンガはシエスタに目を向ける。 「何だ、嬢ちゃんか?」 シエスタはモット伯の前に跪く。 「伯爵、この者の無礼をお許しください」 「ならぬ!かような亜人風情の無礼を許していてはジュール・ド・モットの名が廃る。そこを退かぬか、シエスタ!?」 「出来ません!」 「何!?」 「モット伯、私はどのような罰でもお受けいたします。ですから、ジャンガさんの事を許してください」 驚くモット伯に顔を上げたシエスタは懇願した。 幾分か気持ちが落ち着いたのか、モット伯はシエスタに尋ねた。 「お前はその亜人とどのような関係なのだ…シエスタ?」 「…私が向こうで給仕をしていた時の知り合いです。ジャンガさんは、私に良くしてくれたとある貴族の方の使い魔でして…」 「フン、なるほどな」 つまらなさそうに鼻を鳴らすモット伯に、シエスタは懇願を続ける。 「お願いですモット伯、ジャンガさんがここに来たのは私の責任なのです。ですから、罰を与えるなら私に――」 「テメェ……本当のバカだな?」 シエスタの声を遮って、ジャンガの声が部屋に響いた。 その声にシエスタは思わず振り返ると、下らない物を見るかのようなジャンガの顔が目に入った。 「ジャンガさん?」 「俺がいつ…”テメェの事で来た”なんて言った?勝手に勘違いしてんじゃネェよ、ウザってェ…」 「そ、そんな…」 「ま、そんな事よりもだ…」 悲しそうな表情を浮かべるシエスタを気にも留めず、ジャンガはモット伯を見据える。 「テメェによ…聞きたい事があるんだがな~?」 「貴様、何処までも無礼な態度を――」 「ああ、もう最後まで話しは聞きやがれ。ッたく…貴族ってのは本当に要領が悪すぎる奴ばかりだゼ」 悪態を吐きながら、ジャンガは顎をしゃくる。 モット伯が目を向けると、そこには自分が…否、正確には自分が雇っている幻獣が使役する幻獣がいた。 「ムゥ?」 頭と身体の区別が無い、いわゆる”一頭身”の幻獣は、ほぼ身体全体を傾ける。 その仕草は見る物が見れば間違いなく可愛らしいと言うだろう。 モット伯はジャンガに視線を戻す。 「その幻獣が何だと言うのかね?」 「キキキ、いやなに……こいつらは俺の知っている幻獣だ…。『ムゥ』って名なんだがよ…、こいつはお前が使役してるのか?」 モット伯は、何だそんな事か…、とでも言うかのように鼻を鳴らす。 「違うな。それは私が雇っている、とある幻獣が使役しているのだ」 その言葉にジャンガは目を光らせ、口の端を吊り上げる。 「ほゥ?そうかい…」 「聞きたい事はそれだけかね?では、貴族を愚弄した罰を受けてもらおうか」 杖を構えるモット伯にシエスタは慌てて懇願する。 「待ってください、モット伯!お願いです、ジャンガさんへの罰は私が受けますから、どうか!?」 「ええい、お前は下がっておれ、シエスタ!」 そんな二人の会話も何処吹く風…、ジャンガは自分の予感が当たった事に笑いを隠せずにいた。 (キキキキキ…、なるほどねェ~…”あいつ”も来ていたとはなァ…。キキキキキ…) 「キキキキキ…、キーーーッ!キキキキキキーーーッ!!」 突然、大声で笑い出したジャンガに、シエスタもモット伯も呆然と見つめる。 ジャンガは一頻り笑うと静かに呟いた。 「随分とまた……回りくどい真似をしやがるぜ…」 そして目を見開き、高らかに叫んだ。 「居るんだろ!?出て来いよ、ジョーカーーーー!!!」 「のほほほほ、いつお呼びしてくれるか…ドキドキしながら待っていましたよ、ジャンガちゃん♪」 何処からともなく、場の雰囲気にそぐわない陽気な声が聞こえ、唐突に一体の幻獣がその姿を現した。 その姿は一目見ると、誰もが道化師=ピエロを思い浮かべるだろう。 ムゥと呼ばれた幻獣と同じ頭と身体の区別が無い一頭身…大きさは一メイルほどだろうか? 白い顔には黒い十字マークのような目とギザギザの歯が描かれたような笑みを浮かべた赤い口、 オレンジと赤の縞模様をした身体、その身体(頭部?)の一部が背後に向かって突き出し、下巻きに緩やかなカーブを描いている。 白い手袋をしたような手や先の曲がった紫色の靴を履いた足は腕や腿で繋がっておらず、両手や身体はフワフワと宙に浮いているような感じだ。 何とも珍妙な…ハルケギニアでは見ない種類の幻獣である。 ジャンガは笑いながらピエロの幻獣を見つめる。 「よう、久しぶりだなァ…ジョーカー?」 ジャンガにジョーカーと呼ばれた幻獣は左手を口元に当てて笑う。 「のほほほほ、それは此方もですよ…お久しぶりですネェ~ジャンガちゃん」 「相変わらずのようだなァ?…率直に聞くが、あの馬車にムゥを乗っけたのはお前か?」 「その通りですよ。いやァ~ジャンガちゃん早く来ないかなァ~と、ワタクシ胸をトキメかせて待っていましたよ」 二人はそれまでの場の雰囲気などそっちのけで談笑する。まるで、仲の良い旧友に出会ったかのような…そんな感じだった。 たまらず、モット伯が怒鳴った。 「ジョーカー!貴様、その亜人と知り合いなのか?」 「あ、はい、そうですよ~♪ワタクシの無二の親友です、のほほほほ」 「親友ねェ~、あのガキ共が使うような歯の浮く台詞を、よくもまァ平気で言えるもんだなァ?」 「のほほほほ、他意は有りませんよ?」 そうやって再び楽しい会話を始めようとする二人にモット伯は再び怒鳴った。 「え~い、黙れ!ジョーカー!貴様の親友であろうと関係無い、その亜人はこのジュール・ド・モットを侮辱したのだ。 貴様の幻獣共を呼び出し、即刻そやつを捕らえよ!」 しかし、ジョーカーはモット伯を見つめ、動こうとしない。モット伯は苦虫を噛み潰したような顔をする。 「どうした、ジョーカー!?」 「あ、いえ……どうして貴方の命令を聞かなければならないのかと、そう疑問に思っただけですよ?」 「何!?」 ジャンガはその時、ジョーカーの身体の右側面に刻まれたルーンに気が付いた。 「おい、ジョーカー…お前、まさかそのオッサンに召喚されたのか?」 「まさか?こんな人に仕えても面白くなさそうですからネェ~…小悪党のいい例ですし」 「貴様…、ジョーカー!?主であるメイジから逃げ出し、行く当ての無かった貴様を拾ってやった恩を忘れたか!?」 叫ぶモット伯にジョーカーは怪訝な表情を浮かべる(と言っても、実際殆ど変わらないのだが)。 「はて?ワタクシ…いつそのような事をおっしゃいましたか?ワタクシは『ここで働かせてもらえませんかネェ?』と言っただけですが?」 「ぬっ!?」 ジョーカーは再び手を口元に当て、片方の目の形を変え、如何にも可笑しいと言う表情を見せる。 「まァ…出会いのイベントとしては上々な出来でしたかね?役者が大根でシナリオの半分もこなせてませんでしたが…」 「キキキ…なるほどねェ。俺と会う為だけにこいつを利用したのか……いいねェ、そういう所…変わってなくて嬉しいぜ。キキキキキ」 「お褒めに預かって光栄ですネェ~、のほほほほほほ♪」 二人の笑い声が部屋に響き渡る。 一頻り笑うとジャンガはジョーカーに言った。 「さてと…それじゃ仕上げと行くか?」 「はいな~、ジャンガちゃん♪」 ジャンガの言葉に嬉しそうに返事をするジョーカー。 「おっと、その前に…ジョーカー?」 「はい?」 「仕上げの前にそこにいる…シエスタ嬢ちゃん、眠らせてくれねェか?」 ジャンガに顎で示された所には跪いたままのシエスタがいた。 ジョーカーは納得するとシエスタに向かって右手を飛ばす。彼女の頭の上に掌を翳す形で停止した右手の掌から、紫色の輝きが放たれる。 途端、シエスタは目を閉じ、繰り糸を手放された人形のようにその場に倒れ込む。 「何?」 「がっ!?」 「ぐっ!?」 モット伯が驚くや、衛兵の呻き声が聞こえた。 見れば、ジャンガが後ろに居た衛兵二人の胸を両手の爪で貫いている。 爪を引き抜くと同時に倒れる衛兵。 ジャンガは爪から血を滴らせながら、モット伯へと向き直る。 「キキキ…次は、テメェだな?」 「き、貴様……私の二つ名は『波濤』のモット!トライアングルの――」 「メイジだって言うんだろ?…聞き飽きたゼ、その手の台詞はよ」 耳を穿りながらそう言い捨てるジャンガ。その相手の態度にモット伯は激怒した。 「お、おのれ、その余裕も今のうちだ!」 「どうでもいいがよ……テメェらメイジは杖は大事なんだろ?」 唐突なその言葉にモットは怪訝な顔をする。 「それがなんだ!?」 「手放していいのかと思ってな…?ああ、いや違ったな。手放しちゃいねェな…。 にしても、繋がってなくても放さないってのは…凄ェもんだゼ、キキキ」 何の事だ?目の前の亜人は何を言っている? 唐突にジョーカーが笑った。 「のほほほほ、いやいや…相変わらず凄いですネェ~。やられたご本人、全く気が付いていないのですから」 「な、何の事だ!?」 「貴方の足元を見れば解ると思いますがネェ~?」 「ん?」 言われるがまま足元を見る。そこには人の腕が落ちていた。 誰の腕だ、と思う前にその腕の握っている杖や服の袖に見覚えがあった。いや、見覚えがありすぎる。…だってそれは、自分の物だから。 恐る恐る自分の右腕を見ると…無かった。…肘から先が綺麗さっぱり。 一瞬、思考が停止した。 「な、な、何だとーーー!!?」 その絶叫と共に、止まっていた時間が動きだしたかのように、モット伯の腕の断面だから激しい血飛沫が迸る。 瞬間、音も無く駆け寄ったジャンガによってモット伯はその胸を貫かれた。 モット伯はパクパクと陸に上げられた魚のように口を動かし、やがて事切れた。 死んだモット伯を見下ろし、ジャンガは心底楽しそうに笑う。 「キーーーッ!キキキキキーーーッ!!!感謝しなオッサンよォ~…秒殺してやったんだからなァ。何処かの気障ガキと比べたら幸せなもんだぜ…」 「のほほほほ、お休みなさ~い、モット伯さん。のほほほほ♪」 ジャンガに同調するようにジョーカーも実に楽しげに笑う。 と、扉が叩かれ、衛兵の声が聞こえてきた。どうやら、騒ぎを聞きつけてきたようだ。 ジャンガは笑いを止め、ジョーカーに向き直る。 「よう、ジョーカー…シエスタ嬢ちゃんを見ていてくれるか?」 「あ、はい、いいですよ。ジャンガちゃんは”お掃除”に行くんですか?」 「いや、夜も遅いからよ…”寝かし付けてくる”」 ニヤリと笑うジャンガ。それにジョーカーも笑みで答え、手を振って見送った。 扉を開けると、向こうに衛兵が屯していた。 ジャンガとその姿に怯む衛兵達の姿が扉の向こうに消える。 ――約十分間ほど、モット伯邸に大勢の悲鳴と断末魔、狂ったような笑い声が響き渡った―― 静寂が支配したモット伯邸… モット伯の部屋ではジョーカーが未だジャンガを待っていた。 ジョーカーが座った椅子の足元にはシエスタが寝息を立てて眠っており、離れた所には二人の衛兵と右腕を切り落とされたモット伯の死体がある。 そんな中、ジョーカーは椅子に座ったまま両足をパタパタと動かし、鼻歌を歌いながらジャンガを待っている。 その光景は実にシュールだった。 と、扉が開いた。入ってきたのはジャンガだった。 「あ、ジャンガちゃん、お疲れですネ。終わったんですか?」 「ああ、もう全員眠ったぜ?キキキ…寝付きのいい奴らばかりで、助かったゼ」 「のほほ、それはそれは。では、後はワタクシが後始末をしておきますので」 「キキキ…、それでだ」 「はい?なんですか?」 ジャンガは爪でシエスタを指し示す。 「そいつの頭の中を弄ってくれるか?とりあえず、メイジ崩れの盗賊連中が大挙して襲ってきて、そいつは慌てて逃げ出した。 そんで、俺とは森の中であって、気絶した…そんな感じにやってくれや」 「のほほほほ、お安い御用です。では、シエスタさん…少~し頭の中に失礼させてもらいますよ?」 そう言ってジョーカーは先程と同じようにシエスタの頭の上に右手を翳した。 ――モット伯邸の門の所までジョーカーはジャンガを見送る事にした。 「それでは、ワタクシはこれから後片付けに戻りますね?」 「ああ、頼んだゼ…」 シエスタを横抱きに抱きかかえながら、ジャンガはジョーカーを見つめる。 ジョーカーはそこでふと思い出したようにジャンガに尋ねる。 「そう言えばジャンガちゃん?」 「ん?」 「何でその方だけは助けたんです?」 「…別に深い意味は無ェ。…ただ、こう言うお人好しなバカは使いようだからな。助けておけば、後々役に立つだろうって事さ…キキキ」 「なるほど…それもそうですね。では、ワタクシはこれで、またお会いしましょうジャンガちゃん♪」 「ああ、俺は暫くは魔法学院に居座ってる積りだ。ま、暫くはお互い好きにやろうや…」 「そうですね~、のほほほほほ♪」 「キキキキキ」 二人の笑い声は闇夜に木霊した。 ジョーカーと別れ、ジャンガは森をシエスタを抱きかかえながら、一路魔法学院へと向かった。 途中の森の中でジャンガはふと、腕の中のシエスタを見た。 ジョーカーの眠りの幻術が掛かっているとはいえ、実に気持ち良さそうに眠っている。…本当に気持ち良さそうだ。 ――もう~歩けな~~い~~、だっこして~~―― ――テメェは飲みすぎなんだよ…、ッたく…―― また、昔の光景が脳裏を過ぎる。頭痛がし、左手にも痛みが走った。 「チッ…」 舌打ちをし、ジャンガは頭を振った。 徐に月を見上げる。…実に綺麗な月だった。 「いい月夜だな…」 そうジャンガが口にした直後、遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。 目を凝らすと遠くから桃色の髪を揺らしながら、一人の少女が馬に乗って此方に向かって来てる。 「チッ…無粋な野郎が来やがったゼ…」 ジャンガの横を通り過ぎ、少女=ルイズは馬を止める。 「ジャンガ!あんた、何やってるのよ!?」 「んだよ、テメェには関係無ェだろうがよ?」 「関係無いって……」 そこでルイズはジャンガの腕の中で眠るシエスタに気が付いた。 「シエスタ!?ジャンガ…どう言う事!?」 「どうもこうも…この森を歩いていたら嬢ちゃんが歩いてきてよ、随分と疲れた様子だったぜ? 話を聞く限りじゃ、モット伯の屋敷にメイジ崩れの盗賊が入ってきたらしいゼ?嬢ちゃんは必死で逃げてきたんだとさ。 んで、一通り話したら気絶しちまった…ってことさ」 一応筋は通っているようだ。…が、ルイズは一つ気になった事があった。 「あんた…随分前に出たんじゃない?何でこんな所を歩いていたのよ?」 「…別に。ただ道に迷っただけだ」 「…凄く見通しのいい道ばかりなんですけど?」 「……」 二人の間に沈黙が広がった。 「あんた…何をやっていたのよ?」 「…別に?」 ルイズは反射的に道の先に目を向ける。遠くにモット伯の屋敷の明かりが見えた。 そんなルイズにジャンガは声を掛けた。 「止めときなァ、屋敷には近づかない方がいいゼ~?…死にたくなけりゃよ」 「ジャンガ……あ、あんた…」 声を振るわせるルイズを笑みを浮かべながら見つめるジャンガ。 「いいじゃねェかよ…俺達には関係無ェんだからよ。所詮はお偉いさん達の間の問題だ…。キキキ、気にする事は無ェゼ」 そう言ってジャンガは歩き出した。 色々と言いたかったが相手は聞きもしなさそうなので、ルイズは諦めるとジャンガの後を追って馬を歩かせる。 ルイズはもう一度、モット伯邸を見た。闇夜に薄っすらと浮かぶ屋敷の明かりは不気味な感じがした。 その頃、モット伯邸では… 「いや~申し訳ありませんね、ガーゴイルを送ってもらって助かりましたよ…。流石にムゥちゃん達だけでは細かい作業は無理な物ですからネェ~」 ジョーカーは人形を手にしている。何処にでもありそうな普通の人形だった。 その人形へとジョーカーは語り掛けていた。…誰かと話をするかのように。 「あ、それよりも、タバ…シャルロットさん、もう完全に完治したみたいなので、”仕事”には戻れると団長さんに伝えといてください。 いえいえ…、今はあの方も私の取ってきた例の”オルゴール”に夢中でしょうしね……他の準備など諸々は遅れても仕方ないでしょう。 あのお方はマイペースですからね…のほほほほ。あ、いえいえ…バカにした訳ではないですよ?本当ですよ。 ワタクシですか?もう少し、あの学院を見ていようと思いますね。…いえ、何か物凄く楽しい事が見つかりそうなんですよ。 こういう時のワタクシの感は当たるんですよ…いえ本当ですよ? まァ、暇は貰っていますし……もう暫くは此方に居ます、はい…そう言う事で。 …では、またお会いしましょう。あのお方にもよろしく伝えて置いてくださいネェ~、のほほほほ♪」 話し終えたらしく、ジョーカーは人形をポイと宙に放る。瞬間、人形は消しゴムで擦るように消えた。 「…始祖の残せし秘宝ですか…。ただのオルゴールでは無いと思ってましたけど…とんでもない代物だったんですネェ~? それにしても、あのオルゴールの本来の持ち主の方々…既に偽者に摩り替っているなんて夢にも思わないでしょうね」 ジョーカーはそう言うと、一人楽しげに笑うのだった。 ――翌日、 モット伯邸が何者かに襲われ、モット伯以下…使用人、衛兵の区別無く全員が皆殺しになると言う大惨事に、 学院は愚か…トリステイン中がひっくり返るような大騒ぎとなった。 モット伯邸へと向かった使い魔ジャンガと主人のルイズ、唯一の生き残りであるシエスタは重要参考人として王宮からの使いに事情を聞かれたが、 有用な情報は得られず、シエスタの記憶も曖昧な所が多かった為、状況証拠から事件はメイジ崩れによる強盗だと言う事で決着が付いた。 シエスタは再び学院で雇われる事となり、全ては元の鞘に収まった……かに見えた。 実際は、ルイズがジャンガへの嫌悪感をますます募らせたり、記憶を改変されたシエスタがジャンガを恩人と慕ってより一層懐いた…などの変わった所もあったのだった。 前ページ次ページ毒の爪の使い魔
https://w.atwiki.jp/moejinro/pages/1858.html
5日目 あらぐむ 夜が明け、朝となりました。痛ましくも しょにちくんさん の無残な死体が見つかったようです 1 (もぐら村) あらぐむ -----------スタート-------------- あらぐむ chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください あらぐむ 5日目の朝です 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ------会話STOP------- 1 (もぐら村) Jareky 【占いCO】グレイの中からの選択です。「人柱信じるのは怖い」という発言をしていたレリックさん、狼でした。●ですよみなさん。 1 (もぐら村) あまる 霊媒:バーバラさんは○でした。 3 (天界部屋) デジュー a, 1 (もぐら村) ラスフィーノ 占い理由:霊COを促した中の一人から。狂の可能性もあるっていう発言が内訳がすけてるようにみえた 1 (もぐら村) ラスフィーノ ☆占い師CO☆ レリックさんは○村人でした! 3 (天界部屋) BBL 噛まれた 3 (天界部屋) デジュー あ、噛まれた 3 (天界部屋) うんちや ラスさん初日の占い先変わってたからな(ボソ 1 (もぐら村) レリック おっと 1 (もぐら村) あまる ゼブラきた 3 (天界部屋) みむっちゃ ラスさんは占い先が寡黙でのちのちのSG候補を量産してるから偽くさい 1 (もぐら村) ケラヴノス おはようございます 1 (もぐら村) リゾルート 割れましたね・・・ 3 (天界部屋) BBL やっぱりJareさん真かなあ 1 (もぐら村) おおかみん ゼブラですね 1 (もぐら村) シエスタSS ゼブラでた 1 (もぐら村) あかみさと そこ噛まれてさらにゼブラか 1 (もぐら村) あまる 吊って霊媒みますかね? 3 (天界部屋) BBL しょにちさんの結果を迷わず張ったのが好印象 1 (もぐら村) レリック じゃらまあウチ吊って霊媒結果やね 1 (もぐら村) ケラヴノス 吊り指定が妥当かと 1 (もぐら村) あかみさと まぁ吊って霊媒しかないかねぇ 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ んーゼブラつるのはやめようよ 3 (天界部屋) しょにちくん おつですー 1 (もぐら村) ラスフィーノ んーゼブラつるのはやめようよ 3 (天界部屋) BBL お疲れ様でした 3 (天界部屋) みむっちゃ おおっ、狼がJareさん真なのを認めたね 1 (もぐら村) Jareky これで狼には完全に占いの真贋ばれましたね 3 (天界部屋) デジュー おつかれさまー 1 (もぐら村) おおかみん 理由は? 3 (天界部屋) うんちや おつかれさまどす! 3 (天界部屋) みむっちゃ おつ 1 (もぐら村) ラスフィーノ ゼブラつったら、事実上決めうちになるよ 1 (もぐら村) あかみさと い、まぁラスフィーノさんの○だけど 真偽わかりますよ結果出れば 3 (天界部屋) xバーバラx おつかれさまでした 1 (もぐら村) ラスフィーノ まーいいけどw 1 (もぐら村) シエスタSS 今10人 1 (もぐら村) シエスタSS もし 1 (もぐら村) あかみさと なんか軽いね 1 (もぐら村) Jareky ラスフィーノさんのいう意味がわかりません 1 (もぐら村) ラスフィーノ 結果みれるからね 1 (もぐら村) あまる 個人的にはラスさんのほうを信じてますので、レリックさんは村よりで考えていますが 1 (もぐら村) シエスタSS レリックさん白だと 1 (もぐら村) あまる それでも吊って結果をみたい 3 (天界部屋) しょにちくん 投票が開示されないから、グレランないのが痛いですね 1 (もぐら村) シエスタSS 占いはロラギリギリ間に合わない 1 (もぐら村) リゾルート ラスさんが言いたいのは、もう残り日数的に吊って確認という余裕がないということですか? 1 (もぐら村) トガリ あら、指定? 1 (もぐら村) シエスタSS いちおう連絡 1 (もぐら村) あまる ああ、なるほど 1 (もぐら村) ラスフィーノ んーとさ、ここで偽だったばあいね 3 (天界部屋) しょにちくん 基本、指定進行になっちゃうから、指定する人が大変そう。 1 (もぐら村) ラスフィーノ 私視点は、苦しいんだよね。○けされちゃうわけで、グレーが残る 1 (もぐら村) あかみさと んー、しょにちさんが噛まれたのはJareさんが真だからじゃないかなーって思うんだけどどうだろう 3 (天界部屋) BBL 序盤は特にそうですね 3 (天界部屋) デジュー 初日役職もないし、本当に発言から●探すしかない 3 (天界部屋) うんちや 霊か共有軸で指定が多いですね 3 (天界部屋) デジュー シンプルがゆえに難しいよね 1 (もぐら村) あかみさと 狐ないのも分かってこりゃ狩だと思って噛んだとか 1 (もぐら村) Jareky 残ってる○はラスさんの方が多いですよ? 1 (もぐら村) ラスフィーノ 噛み合わせ狙われたんじゃないかな。。。と思ってますけど 3 (天界部屋) しょにちくん 霊軸で進めるんなら、占いは伏せてもいいんじゃないの?って思ったりもしました。 1 (もぐら村) ラスフィーノ でもじゃれさん吊りにも手を使いますからね 3 (天界部屋) BBL ふむふむ 1 (もぐら村) リゾルート むしろ、この黒って狐の可能性はありませんか・・・? 1 (もぐら村) Jareky 死体なしの日があったので狐知っているかもしれません。狩人のGJかも知れませんが・・・ 1 (もぐら村) ケラヴノス 狐だったら白判でて銃殺されてます 1 (もぐら村) Jareky 二人が占ってるから狐はないでしょう 3 (天界部屋) デジュー 狐いないならまだしも占い伏せは・・・どうだろう? 3 (天界部屋) しょにちくん 死体無しが狐噛みなら、○の中に狐がいるんでしょうね 1 (もぐら村) ラスフィーノ 狐は別にっていみでしょ・ 1 (もぐら村) おおかみん 狐知ってればそれとなく告発あるけど 1 (もぐら村) リゾルート あ、そういえばそうでした・・・;スミマセン忘れてください; 1 (もぐら村) ラスフィーノ 僕が○だしてるので 1 (もぐら村) あかみさと 思ったんだけどしょにちさんが本当に役持ちなら確定で狩だよね BBL おはよう PEPPERMINT 1 (もぐら村) あまる 本当なら、ね。 1 (もぐら村) ラスフィーノ 狩農耕ですよね 3 (天界部屋) しょにちくん 霊噛みでのGJなら、占いは真狼での信頼勝負が濃厚っぽい 1 (もぐら村) あかみさと 色見れなくなる可能性高いなー もしくは真噛み 1 (もぐら村) あまる ということは、今日レリックさん吊っても、私がかまれて結果がみれないか あらぐむ 残り時間2分です 1 (もぐら村) あかみさと まぁどこ噛むかも情報か 1 (もぐら村) レリック も、あるのか 1 (もぐら村) シエスタSS 霊はもうきびしいかもね 1 (もぐら村) Jareky レリックさん以外に有力の候補ないのであれば、是非レリックさんを 3 (天界部屋) しょにちくん 占い噛みでのGJなら、狼視点真偽付いたんじゃねーですかね 3 (天界部屋) BBL なるほど 1 (もぐら村) あかみさと レリックさんでいいと思うよ 噛みとかからも情報出るだろうし 1 (もぐら村) あまる 今日はレリックさんでいいと思います あらぐむ 残り時間あと1分です 1 (もぐら村) Jareky ちなみに残りのグレイ おおかみん、トガリ、リゾルート(柱宣言なり) 1 (もぐら村) あまる しかしトガリさんしゃべらないなぁ 1 (もぐら村) ラスフィーノ つれんばいいんじゃ 3 (天界部屋) しょにちくん 真偽付いたなら、あかみorシエスタのどっちかが狼とかね! 1 (もぐら村) シエスタSS オレもレリックさんかな 3 (天界部屋) しょにちくん 素直に考えて 1 (もぐら村) おおかみん レリックさんに 1 (もぐら村) あかみさと ステに縄はもったいないから頑張ってしゃべってね! あらぐむ 残り時間あと30秒です 1 (もぐら村) リゾルート グレー残り3ですか・・・ 1 (もぐら村) トガリ つってもらってもかまわないといいたいけど・・・ 1 (もぐら村) Jareky あと怪しいと思っているのは、さんざんな吊逃れしていたデジューくんを怪しまない人を疑いました。シエスタSSさんを疑ってはいますが、 1 (もぐら村) Jareky 対抗○なので村人が対抗占いに納得できそうなタイミングを待ってます。 あらぐむ 日は落ちて、村人たちは今日の処刑者を決めなくてはいけません。 あらぐむ 各人は処刑する人の名をTELLでお願いします 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 1 (もぐら村) あらぐむ ------STOP----------STOP------ 2 (狼がぶがぶ) あらぐむ ----会話可能時間です---- 2 (狼がぶがぶ) レリック すまん 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ うーごめん 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ ちょっと準備ができんかった 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ パンダいけないなぁ (T) あかみさと > レリックさんで (T) あまる > レリックさんをつりつり 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 明日どっちかんだらいいかな? (T) ケラヴノス > レリックさんへ (T) Jareky > レリックさんに投票 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ Jareさんも噛むならいまだ 2 (狼がぶがぶ) レリック とりあえず、あまるんなんとかしないと詰むのかなあ 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 積むかな (T) シエスタSS > なんかヤバイような気がする・・・おおかみんさんで! 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 狂人まだいきてるかなぁ。。。。 (T) リゾルート > これはちょっときになる・・・トガリさんで 2 (狼がぶがぶ) レリック 狂どこにいったんだろうね 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ ちょっと悲しいっす。。。 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 俺はね、レリックさんに●だされて (T) おおかみん > レリックさんで 2 (狼がぶがぶ) レリック とりあえず次点で票がだれに集まるかな 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ JaREさんかんで 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 俺つられそうになったらLWCOして 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 狐いるからっていう感じで粘る予定 3 (天界部屋) みむっちゃ あかみさんは村に貢献する発言が今生きてる人間のなかで一番多かったから、村よりに見てるなぁ 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ しょにちくんは狩人か狂人だとおもうんだよね 2 (狼がぶがぶ) レリック あい、頑張っておくれ (T) トガリ > レリックさんで 2 (狼がぶがぶ) レリック 約持ちなのであればそこらへんかね 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 今日はだれでもいいよ、あまるさんにするかw 3 (天界部屋) みむっちゃ ラスさんの占い先が寡黙よりばかりで、自分(狂人)が死んだあとのためにSG大量生産っぽくて胡散臭い 3 (天界部屋) BBL 私もJareさん真で見てるのであかみさんは村で見ています あらぐむ 残り時間あと1分です (T) ラスフィーノ > あまるさんです (T) レリック > あまるんに一票 レリック6 おおかみん1 トガリ1 あまる2 あらぐむ 残り時間あと30秒です 3 (天界部屋) しょにちくん Jare真じゃないかなってボクも思います 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 狂人どこいったんだーw 2 (狼がぶがぶ) レリック 後は任せた> 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ うんがんばるよ、きついけどかなりw あらぐむ 村人たちの話し合いにより レリックさん は処刑されてしまいました あらぐむ /chjoin 天界部屋 へどうぞお入りください あらぐむ ---------夜のターンSTART------- あらぐむ 役職の方はTELLをお願いします あらぐむ まもなく夜となり狼たちの時間です。各々狼に怯えつつも推理し、明日の昼へと備えましょう レリック スベテハイニナレ・・・ 3 (天界部屋) みむっちゃ なんにしても議論が煮詰まってくる後半は釣り先をあやしい奴にせざるを得ないんだから、序盤は有無を言わさず寡黙つってよと思う あらぐむ パンダはそんなこといわない! あらぐむ (飛影) あらぐむ 良い子はぐぐらないように 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ シエスタさんは○だしたけど、俺まもってないから 3 (天界部屋) レリック めいどいーーーn 3 (天界部屋) うんちや 終盤静かな村コワイ 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 狩人ではないとみた 3 (天界部屋) BBL お疲れ様でした 3 (天界部屋) うんちや おつかれさまです 3 (天界部屋) xバーバラx おつかれさまです 3 (天界部屋) みむっちゃ おつかれん 3 (天界部屋) しょにちくん おつです 3 (天界部屋) デジュー オツカレサマー 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 狂人かなぁ、、、どうだろう 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 狐もあるな (T) あまる > レリックさんの結果を発表できたらいいなぁ (T) > あまる 能力の結果、レリックさんは狼と判明しました! 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ あまるさん噛んだらもうJAREさんは噛めないな逆に。ってか俺つられるか。。。 2 (狼がぶがぶ) ラスフィーノ 今日の夜に銃殺出されるのが一番まいるな。。。はずせよ0 (T) Jareky > トガリさんを占います。生き残れるかな (T) > Jareky 能力の結果、トガリさんは村人だったようです 3 (天界部屋) みむっちゃ Jareさん噛まれるかなぁ 3 (天界部屋) BBL 狩人いなければ噛まれるかと 3 (天界部屋) レリック あまるんじゃないのかな?噛まれるの あらぐむ 残り時間2分です (T) シエスタSS > 吊られやすいようにステ気味だけどなんか生き残ってもうたなぁ (T) Jareky > あいあい。狐なら勝つる。気がする 3 (天界部屋) しょにちくん あまるさんより、先にJareじゃないかな 3 (天界部屋) BBL Jareさん真なら霊媒噛んでいる余裕はないような気も 3 (天界部屋) うんちや 霊守り鉄板じゃないかなー 3 (天界部屋) みむっちゃ あまるん噛まれれば、霊媒結果だしたくなかった=黒だっただからJare真になるんじゃねたぶん 3 (天界部屋) レリック 真狂の可能性ってなくなったん? (T) シエスタSS > 占いに狂人いるようにするにはどうしたもんか 3 (天界部屋) BBL まだありますよ (T) > シエスタSS マメタァ あらぐむ 残り時間あと1分です (T) シエスタSS > たすけてもぐえも~ん 3 (天界部屋) みむっちゃ まぁしょにちさんが狩人の可能性いま一番高いからGJはでないでしょう (T) > シエスタSS コグねえ一生分で助けてやろう あらぐむ 残り時間あと30秒です 3 (天界部屋) みむっちゃ あるある あらぐむ 役職の方はTELLおねがいしますね (T) ラスフィーノ > Jarekoさんかむよ!狐はずせよ! 3 (天界部屋) しょにちくん ボクは狐かもしれない! (T) > ラスフィーノ がぶりといきましょう (T) ラスフィーノ > がぶがぶ 3 (天界部屋) BBL それはないですよw (T) シエスタSS > 一日の摂取量がわかんねーしw 3 (天界部屋) みむっちゃ あなた噛まれてここきてるでしょうw 3 (天界部屋) xバーバラx かまれてるw 4日目へ 6日目へ
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4115.html
267 :名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 01 23 15 ID +HyjIYoe 初めまして。 初めてのSS投稿なので間違いなどあるかもしれませんが、 どうぞよろしくおねがいします。 題名は「ウサギ林檎」です。 268 :ウサギ林檎:2007/11/07(水) 01 29 46 ID +HyjIYoe ルイズとシエスタが風邪を引いた。原因は昨日の風呂だと思う。 昨晩、才人がいつものように自作の風呂に入ろうと部屋を出たところを、 使用人ですからとシエスタが一緒に入ろうとし、それを見たルイズもご主人様だからという理由で強引について来た。 大きい釜といってもさすがに3人はきつく、好機とばかりにシエスタが才人に密着し、 それを見たルイズが大暴れ。そのせいで風呂釜が倒れて湯冷めしたのだろう。 「ヘクシュッ!!…ったく、なんであんたは風邪引かないのよぉ……」 布団の中から赤い顔だけ出してルイズが睨んでくる。 「そんなこと言ってもなぁ〜、男だからか?」 実際才人一人が風邪を引かなかったのは不自然であるが、掛からなかったのは事実である。 案外馬鹿は風邪引かないと言うのが当たっていたのかもしれないが…。それに、 「でも俺まで風邪引いたら大変だろ。誰が看病するんだよ」 確かに、この部屋には才人とルイズとシエスタの3人しかいないのだから、才人まで風邪を引いたら大変である。 するとルイズは顔をさらに赤くしながら、 「まぁそれは仕方がないとして、なんで私がシエスタと一緒のベッドなのよ!」 隣で恍惚とした目で才人を見つめていたシエスタを見ながら怒鳴った。 「いいじゃないですか。ベッドは一つしかないんですしぃ〜」 この部屋にベッドは一つしかなく、元々3人で寝ていたので1人減る分には問題ない。 口ではああ言っているが、流石に病人であるシエスタを床で寝かせることは出来ず、ルイズはダダを捏ねるばかりである。 「そうだよ。それに元々一緒に寝てたじゃないか。今更いいじゃん」 「そうですよ。それにこうしてサイトさん看病が受けられるわけですし」 「ちょっとシエスタ、何言ってるのかしら。サイトは私の使い魔なんだから私を看病するの!!」 「別にいいじゃないですか!サイトさんはミス・ヴァリエールだけのものではありません!!」 269 :ウサギ林檎:2007/11/07(水) 01 31 19 ID +HyjIYoe ベッドの中で喧嘩し始めた2人を見ながら、 『そういや風邪引てダダ捏ねてた時、よく母さんが林檎剥いてくれたっけ』 などと思った才人は、棚にあった2つの林檎と小振りのナイフを持ってベッドの脇に腰掛けた。 「あら、あんた林檎剥くの?まぁご主人様の為に働くなんて使い魔として当然よね。 さっさと剥きなさい。一応食べてあげるから」 「なんだよ、文句を言うなら喰うなよ」 「…っな!?」 「そうですよミス・ヴァリエール。いやなら食べなきゃいいじゃないですか。 サイトさんの剥いて下さった物でしたら、私何でも食べますわ」 「ちょっと何言ってんのよ、この色ボケメイド!」 いい加減五月蠅くなってきたので、林檎の皮剥きを始めようと才人がナイフを持ったとき、 微かにガンダールヴのルーンが光った。すると林檎の皮の剥き方が自然と頭に浮かんでくる。 『やっぱすげえなぁ、ガンダールヴは。これなら失敗することはなさそうだ。…そうだ、ちょっと工夫して……』 「…ん?ちょっとサイト、なんで皮剥かないで林檎を切ってるのよ」 「そうですよサイトさん。何故皮を剥かないんですか?」 2人が言うように、才人は林檎の皮を剥かず直接実を食べやすい大きさに切り、種を取ってゆく。 「いいから見てろって。…こうして…ああしてっと……」 才人は切った林檎の皮にVの字に切り込みを入れ半分ほど皮を剥き、余分な皮を取り除いていく。 最後に残った皮を少し切り取り、完成した林檎を皿に盛り付けて… 「おもしろい切り方ね…」 「確かに変わった切り方ですね…」 「そうか?こっちの世界ではあまり知られてないんだな。俺の世界じゃ結構有名で「うさぎ切り」とか言ったかな」 そう、才人は子供の頃よく母親がお弁当に入れてくれた兎型に林檎を切っていた。 「へぇ〜。確かにうさぎに見えるわね」 「ほんとだぁ〜、かわいいですね」 そう言いながら、2人は兎型林檎をパクパク食べていく。 「こうして動物の形に切れば楽しく食べられるだろ」 「確かにこうすると、何でか食べやすくなりますね」 「本当、あんたの世界って変わってるわね。…そうだ、他にはないの?」 「他にか…」 才人は地球にいた頃にしてもらった切り方や調理法を思い出した。 タコさんウィンナーやサッカーボールおにぎりなど、子供の頃にお弁当によく入っていた品目を話した。 「へぇ〜、あんたの世界の親って結構子供のこと考えてんのねぇ〜。 ……そうだ!今度その『たこさんうぃんなー』とやらを私に食べさせなさい!」 「えっ!?…なっ、なんだってぇ!?」 「そうですねぇ、そうしましょう。私にも『さっかーぼうるおにぎり』ってのを作ってくださいね、サイトさん!」 「いい、これは命令なの!ご主人様の命令は絶対なんだからね!!!」 そう言いながらはしゃぐご主人様とメイドを見て才人は、 食材とかどうすんだろうとかぁ…と考えるのであった。 270 :名無しさん@ピンキー:2007/11/07(水) 01 36 36 ID +HyjIYoe 終了です。 初登場で初投稿なので、いろいろ変なところもありますが、 これからよろしくお願いします。 そんなに才能ないので、今後書くか分かりませんが、 気が向いたら投稿しようかなと思います。 今名前とか考えてます。 書き出しが苦手なのでおかしいかもいしませんが、 ご了承ください。 題名もセンス無くてすみません。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3856.html
前ページ次ページ悪魔も泣き出す使い魔 ~主人と番犬~ 囚われたメイドを救え 屋敷の扉が開かれる。招かれざる客は赤色のコートを羽織り剣を背負った銀髪の男。 屋敷の執事は男に近づき、死人の様な顔で淡々とこう告げる 「ジェール・ド・モット様はお休みになられています。お引取りを・・・」 そう淡々と受け答えをする執事の腹に、ダンテはデルフリンガーを深く突き刺した。 「マリオネットか」 ダンテはそう呟くと、微動だにしない執事の腹からデルフリンガーを引き抜き、 その勢いで執事の左肩からから右脇腹にかけて大きく振り下ろした。 頭から右半身が泣き分かれになった執事の下半身が膝をつく。吹き飛ばされた胴体の切り口は金属の様な鈍い輝きを発していた。 「派手なパーティーにしようぜ!」 館内で響き亘る声の中心に、メイド達の注目が集まる。 それを合図に、人形のメイドや使用人たちを操る悪霊の数々が姿を露わにし、 操られるメイド達は、鎌、ナイフ、包丁と其々手に取り、ダンテに襲い掛かった。 先手必勝とばかりに、ゴーレム達へスティンガーを叩き込むダンテ。 相手に剣先を突き出し高速で突進しする彼の得意技は、風のメイジが放つエアハンマーに匹敵するその衝撃で、 目の前の人形達を木っ端微塵に吹き飛ばした。 続けざまにハイタイムを繰り出すダンテ。足元から天井へ向けて斬り上がるその剣圧は、人間の重量を上回る人形をも軽々と持ち上げた。 宙に舞う人形は成す術も無くエボニー&アイボリーから放たれる銃弾の餌食となる。 人形の一匹がダンテの背後を取った。 放たれた刃はダンテを斬り付けたかに見えたが、彼は一瞬でその場から消え、 その人形の頭上、しかも背面から飛び降り剣を振り下ろしたのだった。 壁を走り、華麗なステップで屋敷内を駆け巡るダンテ。 翻弄される人形達は入り口中央へと束ねられ、頭上から降り注ぐレインストームによって破壊された。 それから残りの人形を一掃一掃するのにうつ伏せに倒れている執事をスケボーの様に乗り回し、 滑るようにホールを移動しながら2丁の銃を乱射した。 デルフリンガーは思う。 とんでもねえ・・・とんでもねえよ・・。 ルーンも発動してねえってのに何て怪力だ。怪力だけじゃねえ・・・。 身のこなし、剣さばき。どれを取っても今度の相棒は凄え。 へへ・・まるで悪魔に握られている様な気分だぜ・・・おっと、悪魔は相手の方だったか? しかしこんな相棒を相手にする連中は、悪魔といえど堪ったモンじゃねえな。 デルフリンガーが思いに耽っている内に、とうとう最後の人形が倒れる。 美しい外観を誇っていた屋敷のホールは、一転して瓦礫の山と化していた。 「ハッ、つまんねえな。もう終りか?」 ダンテはそう吐き捨てるとシエスタを探しにその場を後にした。 静寂が支配するモット伯の屋敷内。何処を探してもシエスタの姿は見えない。 「ここが最後か」 ダンテは目の前にあるモット伯自室入り口のドアを勢いよく蹴破った。 ビンゴ。部屋のベットには上着のはだけたシエスタが、そしてその上には屋敷の主人ジェール・ド・モット伯爵が多い被さっていた。 どうやら事に及ぶ直前だったらしい。 「何だ貴様は!!?」 「ミスタ・ダンテ!?」 同時に発せられる男女の声 男からは驚きと恐怖、女からは安堵と歓喜が込められていた。 「下のメイドは皆俺の相手に疲れてネンネしちまってね。ついでにソイツも寄越してくれないかい?」 突然押しかけて来たダンテに動揺を隠せないモット伯。その隙をついたシエスタはベッドから飛び退きダンテに駆け寄った。 「ミスタ!・・・ミスタ・ダンテ! ・・・わたし・・本当にっ・・・!」 「いい子にして待ってな。すぐに帰れるからよ」 胸に飛び込んできたシエスタをなだめながら後ろへ下がらせる。 「さて、伯爵様? ・・・。」 決まり文句の一つでも言ってやろうとしたダンテだったが、モット伯が腰に差したあるモノが目に留まり、言葉を詰らせた。 中央のリングに鎖で繋がれた三又のメイスの様なもの・・・見覚えがあった。 「・・・こりゃ驚いた。お喋りワンちゃんが今度は人間のおままごとかよ。」 ダンテがそう言った瞬間、人が変わった様にモット伯の目つきと口調が荒々しくなった。 かつてテメンニグルの番犬だった魔獣ケルベロスが、彼の身体を支配したのである。 「小僧、何故貴様がここにいる」 「悪いが交尾ごっこは他所の犬でやってくれ。コイツはお前等には勿体無いんでね。」 「その娘はこやつが望んだものだ。我はこやつの魔力を得る代わりに、こやつの望みと役割をはたしておるのだ」 「ほーう。それで、週に2回コックを呼んで、ここが悪霊だらけなのは?」 「死なない程度に望みのものを供給させれば、後は我のやり方で、こやつ役目を果たすまでだ」 悪魔が奉仕するその様子に、半ば呆れ気味な顔をするダンテ。 「涙ぐましいね。ワンちゃんコンクールなら努力賞って所だぜ」 それからダンテはデルフリンガーの剣先をモット伯に突きつけ、声を荒げた。 「いいから、ソイツからさっさと出てやれよ。休養は十分取ったろうが」 「ならぬ。我が命じられたのはこの屋敷の番。その娘も返してもらうぞ」 自分を求める悪魔の声を聞き、シエスタの体が強張る。 「誰の言いつけだか知らねえが、オイタが過ぎるとタダじゃおかねえぞ。来いよ、お仕置きの時間だ」 「よかろう。我を再び従えたくば、今一度その力を示すがいい」 頑として引き下がらないケルベロス。 モット伯の体が宙に浮き、腰へ差していたメイスの様なものが三つの犬の頭へと変貌した。 「ミスタ・ダンテ!」 「さがってなシエスタ。ショウタイムってヤツだ」 氷を自在に操り我が力とする魔獣ケルベロス。 モット伯の前に氷の壁面が広がった。これを破壊しない限り、本体にダメージは与えられない。 エボニー&アイボリーで攻撃を加えるもの、撃たれた端からみるみる壁が復元される。 氷の再生スピードが前回ケルベロスとやり合った時とは比べ物にならない。 モット伯は水のメイジ。彼が生み出す水から無尽蔵に氷が作られていたのだった。 氷弾、氷柱、冷気と休む間も無く三頭の首から放たれる攻撃。 一方、シエスタを庇いながら防戦に徹するダンテは、反撃の糸口を見出せないまま除々に体力を消耗していた。 この場に留まれば氷攻め、近づけばシエスタが危ない・・・チッ めんどくせえな。 そう思っていた矢先、天井から降り注ぐ無数の氷柱がシエスタに襲い掛かった。 迫る脅威に対して身体は動かず、その場でただ目を瞑る事しかできないシエスタ。ああ自分はここで死ぬのだと覚悟する。 氷柱は降りてこない、温かいものが頬を伝う。 目を開くと血まみれのダンテが自分に覆い被さり、降り掛かってきたであろう氷柱を全身で受け止めていた。 「あ・・・ああ・・」 「体だけなら、ちょっとばかり頑丈でね。・・・この位じゃ死にやしねえよ」 顔を真っ青にしながら震えるシエスタに、余裕の顔でそう答えるダンテ。 しかし、振り返った時に見せた、無数の氷柱が突き刺さったその背中は見るのも痛々しい。 シエスタは己の無力さをただ呪った。 ダンテがケルベロスに向かって低く唸る。 それにしてもあのクソ犬。コッチがどうなろうがお構いなしかよ。 「舐めやがって・・・」 そう言いながらモット伯に取り憑いたケルベロスに怒りを露わにした時、ダンテの左手に刻まれたルーンが輝き出した。 魔力が開放された訳ではない、今まで感じたことの無い力。 今の氷柱で受けた傷がみるみる回復する自身の体に困惑するダンテ。 その隙を逃さずケルベロスが氷弾を3発連続で二人目掛けて撃ち込が、 全身を輝かせるダンテはデルフリンガーを高速で振るい、3発の氷弾をいとも容易く打ち落とした。 「何だそれは!?」 「さあ?自分でもよくわからなくてね」 驚きを隠せず目を大きく見開くケルベロス。ここぞとばかりにダンテは反撃に乗り出した。 そうだ相棒!心を震わせるんだ!! 怒り、悲しみ、喜び、色んな感情を高ぶらせる事でお前は誰よりも強くなれる!! いわゆるスペシャルエディションのターボモードってヤツだ!! 何を言ってるのか俺自身もよくわからねーが、とにかく心を振るわせるんだ俺のガンダールヴ! て言いたい! 言ってやりたいのに!!ああもうもどかしい! 「聞こえてんだよ阿呆」 「え・・・?」 気づかぬ内に魂の叫びが声に出ていたらしい。 そして自らの刀身が、知らず知らずの内に美しい波紋を煌かせながら元の姿に戻っていたのである。 「ようデル公、コイツがお前の本当の姿なのか?」 「えっ? ええ?? おうっ!ハイッ!その通りです!」 「イカすじゃねえか。気に入ったぜ!」 ダンテは煌く刃に姿を変えたデルフリンガーを肩に担いで、ケルベロス目掛けて特攻した。 「Are you rady?」 ダンテから繰り出される高速の剣舞が、モット伯を隔てた氷の壁面を物凄いスピードで削っていった。 破壊と再生、拮抗するかにみえたが、氷の再生が僅かに追い着かない。 モット伯の魔力が底を尽きようとしていたのだ。 止まない剣舞に抗えず、更なる高速で繰り出される連続突き、ミリオンスタッブをとどめに、氷の壁面はとうとう破壊された。 「グオオ・・・!!」 魔力を使い果たしたモット伯が地上へと落下した。 身に纏う氷を跡形も無く破壊され、呻きを漏らしながら堪らず実体化するケルベロス。 「まだだッ!!」 ケルベロスの一頭が口からブレスを放った。この距離では避け切れない。 「相棒!俺をかざせ!」 そう叫ぶデルフリンガーを吹き荒れる冷気に突き出す。 その身に襲い掛かる絶対零度のブレスは、デルフリンガーの刀身が全て吸収してしまった。 渾身を込めた最後の一撃をも受け流され、満身創痍のケルベロス。 「さあ、お仕置きだ。誰が主人だったか思い出させてやる」 頭を垂れるケルベロスにゆっくりと歩み寄り、悪魔の様な笑みで宣告するダンテ。 雄叫びを上げる魔獣は頭一つを残し、二つの頭と四つの足を全て切り刻まれていった。 シエスタはその惨劇を見終わる事無く、卒倒して意識を失ってしまった。 満身創痍のケルベロスが、息を切らしながらダンテに詰め寄った。 「ハアッ・・・ハッ・・!・・・流石だな。この男の力を持ってすれば、或いはと思っていたが・・・。」 「フンッ 下手な小細工が俺に通用すると思ったか?」 「甘くは無かったという事だな・・・・。いいだろう、・・・今一度お前に従おう、そして我が牙の加護を受けるがいい。」 そう言いうやケルベロスの姿は三又のヌンチャクに変化し、光に包まれながらダンテの下へ戻った。 「やれやれ、とんだお騒がせだったな」 「しつけがなってなかったんじゃねえか相棒?」 「あン?誰が喋っていいって言った?」 「う・・・」 「ああ、そうだな。このお喋りが直らない剣を改めて躾けてやらないとな」 「ちょっ!?(ヤブヘビッッ!?)」 「・・・まあいいや。デル公、さっきのもお前の力なのか?」 「え?・・・えええ!まあ・・その、何ていうか。俺っち、 魔法とか4大元素のエネルギーとか吸収できるんみたいなんです。はい」 「ふーん・・・そんなモンあるなら、最初っからそう言っとけよ。使えねえ野郎だ」 「だってアンタ喋んなって・・・ああ!いや、何でもないです・・・(トホホ・・・)」 デルフリンガーをいじってる間にモット伯の意識が戻る。 魔力も体力も根こそぎ奪われたらしく、何とも言えない疲労感が全身を巡り、息切れが絶えない様子だ。 「無駄話は止めだ。面倒になる前にとっとと帰るぜ」 ダンテはシエスタを抱きかかえ、屋敷を後にした。 その道のりで、何かを思い出したダンテは背中に担いだデルフリンガーに話しかける。 「デル公、お前がさっき言ってた、ガンダールヴって何だ?」 「ああ、その・・・すみません、忘れました」 「ホントに使えねえ野郎だな。もういい、喋んな」 「(ひでえや・・・)」 外は夜明け前。光が薄く差し掛かり、日の出が上ろうとしていた。 「今夜中か・・・」 主人の言いつけを何とかして間に合わせるため、足早に学院を目指すダンテ。 その腕の中にはシエスタが心安らかに寝息を立てていた。 前ページ次ページ悪魔も泣き出す使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1440.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ 「ん………ふわぁぁ」 朝が来た。 記憶を失った大十字九朔、初めての異世界での朝である。 「てけり・り」 「ん? ああ、良い朝だなランドルフ」 「てけり・り!」 枕部分から伸びる目玉も、朝の日差しの明るさに嬉しそうにそのスライムっぽい赤色を 小刻みに震えさせている。 はてさて、昨日あったばかりだというのにこうも親愛の情を深めることができる自分は 一体何者なのか? 「考えたところで何も分からぬのでは、どうしようもないわな?」 「てけり・り」 うんうんとうなずく触手。気が合う、無駄に気が合う。腕と触手を組み、ガッツポーズ。 「ま、冗談はさておき」 ランドルフの変形したベッドから下りると九朔は己を召喚した張本人かつ、記憶喪失の鍵を 握るであろう少女のベッドに向かう。 「すぅ………」 未だ眠るルイズ、その寝顔は昨日の口調から想像できぬほど愛くるしい。 正直なところ、こんな娘が自分たちを召喚したとは思えない。 それなのに『招喚』の事実を受け入れてしまっているのは記憶から抜け落ちた『招喚』の 記述が彼に影響を及ぼしているからか。 「てけり・り」 「ん? ああ、そういえば洗濯物を持っていけとか言われてたな」 「てけり・り」 既にベッドから変形済みのランドルフ、丸のような四角のようなそれとも球のような…… とにかくよく分からない不定形に戻った彼は頭の上と思われる部分に洗濯籠を乗っけて ぷにぷにと跳ねていた。 「世話になる身だ、一緒に行くとしよう」 ルイズを起こさぬように部屋を退出する一人と一匹(?)、そのまま洗濯場であるという 場所へ直行しようとしたのだが、 「ふむ」 「てけり・り」 「ううむ……」 「てけり・り………」 「ん………」 「てけぇりぃ~……」 迷った。 なにぶん初めての場所である、ルイズからの口伝えだけで洗濯場が分かる訳がなかったのだ。 部屋に帰ろうにもさてどっちから来たか思い出せず右往左往、分からないならば進むのみと 闇雲に行けば右往左往、気づけば中庭らしき場所で立ち尽くすことになる二名であった。 「困ったな」 「てけり・り」 天を仰ぎ唸る一人と一匹。 さて、どうしたものか。 悩む二名はどかりと地面に座り、顔と目玉をつき合わせて腕と触手をああだこうだと 手振り身振り交えて相談する。 はたから見れば実に背徳的な光景、メイジではないっぽい平民の少年と使い魔というには なんかスライムっぽい何かが触手をうねうねと蠕動させて話し(?)合っているのである。 なんか、こう官能的。 ついでに背徳的で冷蔵庫に網掛けが必要な感じ。 燃えるというよりひんやりする。 普通なら話しかけない。 できれば、避ける。 お付き合いはお断りしたい。 が、そんなのは誰かが見ていたらという前提あってのこと。 こんな朝早く、日の昇ったばかりでは人も居ない。 ついでにそんな眼で見るような人間も居ない。 つまり、彼等を最初に見る人間には偏見の持ちようがない というわけで、 「あのぉ……どうかなされましたか?」 彼女、シエスタは声をかけたのであった。 「うむ?」 「てけり・り?」 同時振向く一人と不定形。 そこには彼等の知識にあるメイドというにはやたら露出のないメイド服を着込んだ黒髪の少女。 ここに来て九朔とランドルフが見た二人目の人間であった。 「ああ、実は洗濯場がどこか分からぬのでな。話し合っていた」 「てけり・り」 「は、話し合って………ですか?」 初めて見る少年と触手をうねらせて何か意味不明の言葉で会話を試みている不定形。 恐らく使い魔だと思うので多分それと会話をする彼はメイジかと思ったら マントは羽織っているが杖は持っていない。 ということは、である。 「も、もしかして……あなたが噂のミス・ヴァリエールが召喚した使い魔さんですか?」 「使い魔かどうかと言われたら断固否定したいところだが……まあ、そうだ」 「てけり・り」 肩をすくめる九朔、それにならうように頭と思われる部分を波打たせるランドルフ。 「ふふ。そんなこと言ったらミス・ヴァリエールに怒られちゃいますよ? あ、そちらのぷにぷにした方も使い魔さんなんですか?」 「いや、彼も我と一緒に来たようだが違うみたいだ」 「そうなんですか。でも、可愛いですね」 くすりと微笑むシエスタ、ショゴス相手でもまったく動じないあたり、この世界の人間は どうやらなかなかに良い胆力をお持ちのようである。 「えっと、ではご挨拶ですね。私、ここでメイドとして奉公させて頂いていますシエスタと もうします。どうぞ、よろしくお願いしますね」 恭しくお辞儀するシエスタ。 「我は大十字九朔、そして彼はランドルフだ」 それに倣い九朔も深々と頭を垂れ、ランドルフも目玉がある触手をほぼ180度縦に曲げる。 一応お辞儀のつもりのようだった。 「はい、よろしくお願いします。えっと、洗濯場をお探しとの事でしたよね? 私もこれから行くところでしたのでどうぞご一緒に」 手招きするシエスタに連れられ洗濯場へ向かう二人。 案内されたのは旧い造りの洗濯場、手洗いとは実に古風である。 「では、ミス・ヴァリエールのお洗濯物はこちらでお預かりしますので終わったら また取りに来てくださいね」 ランドルフから洗濯籠を受け取り、そのまま洗濯場へと引っ込もうとするシエスタの後姿を 見つめる九朔。あのような少女に洗濯やら何やらを押し付けるのは何だか心苦しい。 「シエスタ」 「はい?」 そんな彼女に九朔は声をかけてしまう。 振向いたシエスタの表情には辛そうなものなどこれっぽちもありはしないのだが、何だか このままでは宜しくないのだ。 そういうわけで、結局というか父親譲りのお人よしの血というか、 「我も手伝おう。男手があった方が早く終わるであろう?」 こんな申し出をしてしまう九朔。 「そそそ、そんな! ミス・ヴァリエールの使い魔さんにそんな事していただくなんて!」 わたわたと驚いて首をブンブン振るシエスタ。 「いや、構わぬさ。我は記憶を失っておるのでな、こうやって体を動かすなり何なりして おれば何か思い出すかも知れぬ」 「てけり・り!」 向かい合う九朔とシエスタの間に入り込む目玉。 「ランドルフ、汝も手伝うのか?」 「てけ~り。てけり・り、てけり・り!」 「ほう。汝、そのようなマネも出来るのか?」 「てけり・り!」 「え? え?」 自分を無視して訳の分からぬ会話を始める一人と一不定形に戸惑うシエスタ。 「てけり・り。てけーり・り! てけ~り!」 「あはは! それはすごい!」 「あ、あのクザクさん?一体何を……」 「ん? ああ、なに。ランドルフが中々におもしろい特技を持っていたのでな。 それについて話しておったのだ」 「おもしろい特技?」 「ああ、これだ」 指差す先で変形するランドルフ、スライムっぽいそれが固形状に変化して四角い箱になる。 「箱……ですか?」 「ただの箱ではない。……よし、我も手伝うぞランドルフ」 そう言うと、近くの水場から組み上げた水をどんどんランドルフの中に流し込んでいく九朔。 皆目検討つかないその行動に疑問符をどんどん浮かべていくシエスタ。 「あ、あの……クザクさん?」 「済まぬな、もう少し待っていてくれ」 「あ……はい」 目の前で行なわれる奇妙な儀式を見守るしかないシエスタ。いつしか集まっていたほかの メイド達もそれに注目する。 そうしているうちになみなみと満たされた箱型ランドルフの中、九朔は近くにあった洗濯を どばどば放り込んでいった。 そして、 「では、ランドルフ……仕れ!」 パチンと指が鳴らされた次の瞬間、 「てぇぇぇぇけぇぇぇぇりぃぃぃぃぃぃぃりいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 なんとランドルフが激しく蠕動し始めた。 蠕動は中に溜められた水にまで伝わり、ぐるぐると回転を始める。洗濯物はグルグル回転し、 ついでにランドルフも激しく蠕動。 逆回転も加わり螺旋の動きもばっちり、揉み洗いでもなんでもござれである。 蠕動と回転が組み合わさればこれすなわち汚れ落としもばっちりである。 「おおおおお!!!」 見る間に洗濯物の汚れが落ちていくさまに寄ってきたメイド達からも歓声があがる。 これぞいわゆるショゴス製洗濯機、いろんなものに奉仕している種族なのである、これくらい できて当たり前だろう……多分。 「す、すごいですランドルフさん! こんな洗濯法初めてです!」 「てけり・り」 なぁにこれくらい朝飯前よ、と身体を蠕動させつつ自慢するように触手を振るわせる ランドルフとがっちり握手するシエスタ。 不定形スライムと少女の親交、実に微笑ましい光景である。 他意などありやしない。 洗濯物はその間にも放り込まれてはピッカピカされ、放り込まれては漂白され、放り込まれて は染みも落とされ、そんなそんなの繰り返し。 九朔もそのできあがった厖大な量の洗濯物を両腕に抱えて干していく。 気づけば本日分の洗濯は完全無敵に完成、終了。素晴らしい。 「ふむ、思った以上だな?」 「てけり・り!」 洗濯場の前にずらりと並んだ厖大な量の洗濯物を見て感慨深く呟く一人と一不定形。 メイド達からいたく感謝されたのもあって実に爽快な気分である。 「洗濯の手伝いもやってみるものだな」 「てけり・り」 お互いに得心してうなずく。だがしかし、何か忘れているような気がする。 大事だったような、そうでもなかったような。 「何だと思う?」 「てけり・り?」 さあ?と触手をうねらせる不定形。 もう少し頭をひねってみる。 と、目の前を通り過ぎていくルイズと同じ格好の少年少女たち。 「ああ」 思い出してパンと手を打つ。 ルイズを起こすのを忘れていた。 が、 「まあ、一人で起きることくらいできよう。何も問題あるまい」 「てけり・り」 うんうんとうなずく九朔とランドルフ。結構冷たい奴等であった。 そのままのほほんと朝の陽の光を浴び続ける一名と一不定形。シエスタを始めとした メイド達は朝食の用意があるといって既になく、朝食の香りが何処からか漂ってきている だけである。 「そういえば、昨日から何も食べておらぬな」 「てけり・り」 すきっ腹がきゅんと鳴る。 はぁ、と溜息をつく九朔とランドルフ、そんな一名と一不定形に駆け寄る殺意の篭った足音。 空腹のせいで警戒心の緩んでいた九朔はそれにゆっくりと振向く。 そして次の瞬間、 「ぐほぁぁぁあああっ!!」 ルイズの両足ぞろえのとび蹴りが、美事に顔面にクリーンヒットした。 本来の九朔であったら喰らうはずのないそれに、女性っぽい中性的なキレイな顔が見事 フッ飛ぶ。 空中二回転して地面とキス、どこぞのスナイパーもびっくりである。 「おお……うぐぉ………んぐぅぅ………」 顔面へのダメージに悶絶する九朔。 おかしい、こういう役回りは自分ではない、何故か分からないが走馬灯のように緑の ■■■■っぽい誰かが頭に浮かんだ。 「良くも起こさなかったわね? 良くも良くも起こさなかったわね? 起こせって言ったのに 起こさなかったせいでもう少しで私、寝坊して朝ごはん食べ損なうところだったわ……」 静かな怒りがルイズの周りで渦巻いていた。 ズンと、大地を踏みしめる。 「キュルケにも思い切りバカにされたわ。『貴女ったら使い魔が平民なだけじゃなくて ちゃんと使役もできてないの?』って思い切り見下ろして言われたの。 分かる? ねえ、分かる? バカにされて悔しい私の気持ち?」 人間を、しかも平民を召喚したという事実が今更になってルイズに怒りをもたらしている ようであった。 「て、てけり・りぃ………」 その鬼気迫る、大気震わす怒りにランドルフは身を恐怖で震わせた。 何かトラウマ的なものが幻視できた。 「でも、良いわ。今回はこれだけで許してあげる。でも次やったら今度はもっと 酷いんだから………わかった?」 「て、てけり・り!」 ぎろりと、ランドルフを睨みつけるルイズ。 逆らってはいけない、決して逆らってはいけないと彼は理解する。 脳内で主役とは思えぬ邪悪な笑い声をあげる少女の声が響いたのは恐らく幻聴では あるまい。きっと、彼女はそれと同種のものを持っている。 「行くわよぷにぷに」 「てけり・り!」 彼女は本来の主ではない。 だが、彼はそれに従う。 ショゴスも恐怖によって平伏するするのである。 悶絶する九朔をランドルフに引きずらせ、ルイズは教室へ向かう。 無論九朔もランドルフも朝食を食べる事まかりならなかった。 嗚呼、無残、無残。 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3683.html
前ページ次ページ魔法騎士ゼロアース 「寝過ごしたああああ!?」 昨日の疲れでぐっすり眠ったルイズ。 起きたらとっくに朝食の時間だった。 「モコナ! どうして起こさなかっ……」 「ぐーすかぷぅー」 「そうよね、まあ寝てるとは思ってたわよ!」 昨日の続きといきたいところだが時間がない。 急いで着替えて部屋を飛び出した。 「……ぷっぷっぷー」 実は起きてたモコナ。窓から今日も元気に飛び出すのだった。 「お、終わってる……」 朝食時間は終わっていた。次の授業まであと30分ほどしかない。 ほとんど人のいなくなった食堂をトボトボと後にしようとするルイズを呼び止める声があった。 「ミス・ヴァリエール? どうなさったんです?」 「ええと……シエスタ、だっけ?」 昨日、モコナを一緒に追いかけたメイドだった。 「もしや、朝食に遅れたのですか?」 「そ、そんなことあるわけないじゃない! ま、まったく何を言って」 ぐ~~ 「……寝坊したのよ」 「やはりそうでしたか。実は私も昨日はそのまま寝てしまって……少し仕事に遅れてしまいました」 「そうなの? なんか悪かったわね。クビとかにされそうなら言いなさい、私が悪いんだって証言してあげるから」 「いえ、そんな大事になることではありませんから。そうだ、良ければ料理長に頼んで軽食をご用意しましょうか?」 本当に? と一瞬目を輝かせるルイズだったが、丁重に断った。 「結構よ。貴族は平民に弱みな (ぐ~~)……ごめん、やせ我慢だけど貴族のプライドを守るわ……」 「そ、そうですよね。申し訳ありません」 「ううん、ありがとう。それじゃあね」 教室へ向かおうと振り返るルイズ。と、その視線の先に跳ねてくる生き物一匹。 「あっ、モコナ。残念だけど、アンタの御飯も抜きよ~」 「使い魔は貴族ではありませんし、良いのでは……」 「駄目よ、ご主人様が御飯抜きなんだから使い魔だって抜きなの」 そう問答していると、モコナの様子に変化が現れた。 「ぷっぷぷー!」 ピカッと額の飾りがふわふわと揺らめく光を放つ。 「な、なにこれ?」 「あれじゃないでしょうか、使い魔の必殺技。すたーらいとなんたらーとか、せきはなんたらけんとか」 「それ何か違うわよね……というか攻撃じゃないでしょこれ」 ふわふわとした光は、ルイズとシエスタの手の付近まで近づくと。 やたらでかいイチゴに変わった。 「ええ!? なにこれ、錬金? ってかデカ! モコナくらいあるわよ?」 「……とても美味しいですよ?」 「食べちゃうんだ!? こんなあやしいのに!? ……あ、ホントだ美味しい」 二人してそれぞれ一つずつイチゴモドキをペロリと食べる。 「ミス・ヴァリエール。お手拭です」 「ありがと……それとモコナも。ご主人様の危機を救うなんて、やっと使い魔の自覚が」 「あの……ミス。もういませんよ」 「あはは、やっぱり捕まえて食べてやる」 結構お腹の足しになったので、そのままルイズは教室へと急いだ。 残されたシエスタは、ルイズが見えなくなると浮かべていた笑みを消した。 「今のって……「この世界」の食べ物じゃあないですよね」 モコナが跳ねていった廊下を振り返るが、姿はもちろんない。 「ミス・ヴァリエールの使い魔……あなたは、もしかして……」 その呟きは、誰の耳にも届くことはなかった。 「きゅいきゅい。今日も良い天気なのねー!」 学園の外の森の上を、学園の生徒の一人タバサの使い魔シルフィードが飛び回っていた。 「きゅい? あれはなんなのね?」 なんだか目の前を、妙なものが飛んでいる。 「きゅいきゅい。あれは桃色の髪の子が呼んだ使い魔なのね。でもおかしいのね、なんで飛べるのね?」 目の前を飛んでいるモコナ。もちろん自力で飛んでいるわけではない。 台座に翼が付いたような乗り物に乗っているのだ。 お互い、すぐ近くで止まる。 「なんなのね、お前は。空はシルフィのお庭なのね。ふわふわしたお前は地面で跳ねてるのがお似合いなのね!」 「ぷーぷぷぷー!」 「きゅい? 最近変な生き物を見ないか、ですって? それは見るに決まってるのね。 ふわふわもよっぽど変わってるけど、変だけじゃなくもっと怖い「魔物」が一杯増えたのね」 魔物。昔はいなかった異形の生物。植物の怪物や鳥の怪物など、どれも凶暴で危険な生物だ。 ハルケギニア全土……特にガリアでは多数出没している。 最近では、アルビオンにも魔物の数が増えているという。 「そんな当然のこと、どうかしたのね?」 「ぷっぷー」 モコナは方向転換して行ってしまった。 同時にシルフィードの目の前にふわふわした光が近づき、その姿を変えた。 「きゅい!? おにくになったのねー♪ 嬉しいのね、あのもこもこは良い奴なのね!」 かぶりつき、シルフィードは幸福そうにきゅいきゅい声をあげていた。 それからしばらくして、遥か下の魔法学院で起きた爆発が空気を奮わせた。 「きゅい? この音はまた桃色の髪の子なのね。使い魔と違って駄目な奴なのね」 その爆発の原因。ルイズは、教室を掃除していた。 「ゼロ」の二つ名の所以……「どんな魔法も爆発して失敗する」を今日も発揮したのだった。 もちろん、普通は爆発なんてしない。だが、ルイズはどんな魔法でも爆発して失敗する。 最大四つまで組み合わせられるはずの系統魔法を一つでも失敗する。 それゆえに「ゼロのルイズ」。 名門貴族の子女であるルイズにとって、最大のコンプレックスなのである。 ルイズは一人残され、教室の瓦礫を掃き続ける。 「ぷぷー!」 「……なによ。今は遊んでる暇はないの」 やってきたモコナに、思わずそんな言葉を吐いてしまう。 この爆発にモコナは無関係なのに、と自己嫌悪を感じる。 だが、妙なことにモコナは特にイタズラもせずにじっとしていた。 「どうしたの? 別に笑ったっていいのよ、こんな失敗するのは私だけなんだから」 「ぷーぷぷぷ、ぷっぷぷぅ!」 「なに? もしかして……慰めてくれてるの?」 キリッとしてるつもりらしい顔を見て、ルイズは思わず笑ってしまう。 「まったく、普段からこうならいいのに……さて、さっさと片付けて昼食にしましょう」 「ぷっぷー!」 この10秒後、まとめたゴミをモコナが散らして、再び追いかけっことなるだった。 なんだかんだで掃除が終わり、食堂で昼食を食べに来たルイズ。 目の前で、目立つ赤髪をした長身の女性、キュルケが立ち止まる。 「あら、昼食はちゃんと間に合ったみたいね」 「なによ、キュルケ。さっきは私の爆発に怯えてたくせに」 「ええ、怖いわよ? なにせ先生を気絶させるような爆発がいつ起きるかわからないんだもの」 さっき吹き飛ばした教師、ミセス・シュヴルーズがルイズの頭に浮かぶ。 「う、うるさいわね! キュルケのファイアボールだって似たようなものでしょ!?」 「わかってないわねー。私は錬金する時に人を吹き飛ばす炎なんか出さないわ。 吹き飛ばすときは吹き飛ばす。焼き尽くす時は焼き尽くす。あなたと違って自分でコントロールしてるの」 確かにその通りだった。キュルケは振った男を炎で吹き飛ばしたり過剰なことも良くする。 だが、それも全てはキュルケの意志。ルイズのように思いも寄らない爆発なんて起こさない。 「まっ、使い魔を召喚できたのは幸いだったわね。契約できなかったら留年だったんだし。 次の進級まで余裕が出来たんだから。その間に着火の魔法くらいは使えるようになるんじゃない?」 「ふん、その使い魔はとんだ悪戯大好き動物で困ったもんだわ。ってこら、食堂中を飛び回るんじゃないの!」 縦横無尽に跳ねるモコナを見て、キュルケは疑問を口にする。 「ねえ、食事は? あの子、何を食べるの?」 「た、多分……果物とか?……きっと森で勝手に食べるのよ」 「適当ねぇ……まああれだけ元気なら平気そうよね」 立ち去るキュルケを、憂鬱そうにルイズは見送った。 「そうよね……キュルケがしつこい男を吹き飛ばしたりするのに魔法を使うことが多いからって、それ以外も使えるのよね」 反面、自分は何かを吹き飛ばすことしかできない。 威力は中々だと思う。盗賊や亜人退治……戦争でも使えるだろうが、日常で必要とは思えない。 怪我人や、ちい姉さまのような病人を治したり、錬金で物を作ることも、飛ぶことも出来ない。 (もういっそのこと、軍人にでもなるべきかしら。でも爆発しか出来ないメイジなんていらないわよね) せっかくの食事も、美味しく感じることもなく食べ終えぼんやりしていた。 「はぁ……甘いものでも食べて、頭をすっきりさせましょ……」 そろそろデザートが運ばれてくる時間のはずだ。 ちょっと遅いわね、と思っているとなにやら喧騒が聞こえる。 「なにかしら……あれ、シエスタ?」 騒ぎの中心らしき場所を見ると、誰かがシエスタに詰め寄っているようだった。 急ぎ向かうと、詰め寄っているのはギーシュだった。 「ちょっと、ギーシュ。貴族という地位を利用してメイドに破廉恥な真似はよしなさい!」 「してないよ! なんだいその決め付け!?」 たしかにそういう様子ではなかった。シエスタは少し青ざめている。 「あら失礼。じゃあ何、どんな難癖をつけて虐めてるわけ?」 「難癖なんかじゃないさ。この平民の罪を咎めていたところだ」 ギーシュの説明によるとこうだ。 シエスタがデザートを運んでいたところ、床に香水が入ったビンを拾った。 それを、最も近くに居たギーシュに尋ねたところ 「し、知らないね。そ、そこのテーブルの上にでも置いておけば、持ち主が拾うさ」 そう言われたので、シエスタはテーブルに置くとデザートを配り続けたそうだ。 しかし、しばらくしてギーシュが「あの香水はどこだ!」と詰め寄ってきた。 置いたはずのテーブルの上には何もなかったという。 「さては、君が盗んだんだな!」 ギーシュはそう決め付けて、今に至る。 「やっぱり難癖じゃない! それに、その香水はギーシュの物じゃないんでしょ?」 「い、いや、それは」 「いいえ。あれはギーシュのものよ、ルイズ」 それぞれ学年が違う、二人の女生徒が前に出てくる。 「ゲェー!? モ、モンモランシーにケティ!?」 狼狽するギーシュを、凍った笑顔で見つめる二人の女性。 「騒ぎは聞いたわ。なんでも私のあげた香水を落としたそうね」 「酷いですわ、ギーシュ様。付き合っている女性はいないと仰っていたのに」 「い、いや、それはだね」 ルイズも、誰もが感づいた。香水を自分のだと証言すれば、モンモランシーと付き合っているとケティに発覚する。 だから知らないと嘘をつき、後で回収しようとしていたのだ。 「このケティって子にも言いたいことはあるけど。あなたの姑息さの前ではどうでもいいわ」 「これから私と会う予定だったのに……他の女性からの贈り物を持ったまま、なんて馬鹿にしているにもほどがありますわ」 そう言い切るや否や、ケティがギーシュの顔面に何かをぶつける。 デザートのケーキだった。コントみたいに顔面に食らったギーシュに、上から液体が降り注ぐ。 「あら大変。汚れを落としてあげるわね」 そう言いながら、モンモランシーはギーシュの頭にワインをドボドボぶちまけた。 「さようなら。「嘘吐き」のギーシュ」 完膚なきまで打ちのめされたギーシュを置いて、モンモランシーとケティは食堂を後にした。 冷静なまま完璧にキレていた二人の様子に、周りの面々も背筋が凍った。 哀れなギーシュはうつむいたまま小刻みに震えている。 「………決闘だ」 全員、その呟きに「え?」と聞き返す。 「メイド! 君に決闘を申し込む! 盗人のせいで傷ついた二人の乙女の心の傷、君の命で払ってもらおう!」 「な、何とち狂ったこと言ってるのよ! そもそもシエスタが盗んだなんて決め付けないでよ!」 「モンモランシーの香水は特製のものでね。売れば平民の給金の何倍にもなる。だから盗んだのさ!」 そんな特別な物を落とすなよとつっこむ声も、冷静さを失ったギーシュには届かない。 「ミスタ・グラモン。私はそんな卑しい真似はけして。始祖ブリミルにお誓いします」 「――は、平気で嘘をつく平民だな。よっぽど卑しい血でも混じってるに違いない」 完全に言いすぎだ。ギーシュ自身、頭が醒めるほどに自分の失言を悔いる。 その発言に、シエスタの様子も変わった。 「――そこまで言いますか。ギーシュ・ド・グラモン」 どれだけ理不尽な物言いにも耐えていた表情が、素のものへと変わっている。 「決闘でしたね。いいでしょう、受けて立ちます」 おおっと野次馬から声が上がる。 「君の罪を明らかにしてみせよう。ヴェストリの広場で待つ。逃げずに来たまえよ!」 ギーシュの去った後、大勢がその後を追ったがルイズはシエスタの脇に残った。 「シエスタ! あんた、自分が何言ったかわかってるの?」 「はい、ミス・ヴァリエール。十分理解しています」 その顔は真っ青だった。どれだけのことをしているのか理解しているからの顔色だ。 「ギーシュの非は絶対に謝らせるから、行っちゃ駄目よ! 平民とメイジの決闘なんてどうなるかわかってるでしょ!?」 「……いいえ。本気ではないにしろ、血まで馬鹿にされてしまいましたから。 この体に流れる血……曾祖母の血は私の誇り。私自身の手で、ミスタ・グラモンに非を認めさせてみせます」 それこそ難しいのだとルイズは思う。 トリステイン貴族は典型的な貴族が多い。 平民を蔑ろにする貴族は少ないとは言えず、おそらくはギーシュのような理不尽な扱いを受けるものもいるのだろう。 頭に血が昇っていた時の発言とはいえ、プライドを守るためにギーシュは決闘をしない限り取り消すこともない。 「死ぬかもしれないのよ。昨日今日の付き合いだけど、死地に知り合いをを赴かせるわけには行かないの」 「本当にありがとうございます。ですが私は行きます。何の策もないわけではありませんから、死なないよう祈ってくだされば幸いです」 「準備してきます」と会釈して、シエスタは食堂を後にした。 他の生徒たちも、決闘を見るため広場へと移動を始める。 ルイズもまた、最悪の事態が起こるようなら全力で止めて見せると決意し、広場に急いだ。 「シエスタッ!」 料理長マルトーは、シエスタの部屋のドアを開ける。 私服に着替え終えたシエスタがきょとんとした顔でマルトーを見る。 「マルトーさん? どうしたんです、仕事は……」 「本気なのか、貴族と決闘だなんて」 既に知れ渡っているらしい。シエスタは気まずそうに表情を変える。 「すみません、こんなことになってしまって……皆さんには迷惑をかけないよう……」 「そんなことはどうでもいい! シエスタ、お前……「本気」で決闘するのか?」 「……ただ殴られても、と考えましたが。でも、やっぱり私は自分の血に誇りを持っています。 敵うとは思いませんが、精一杯の「本気」で挑もうと思います」 その言葉に、マルトーは諦めたような顔つきになる。 「その決意を崩すことは、無理みたいだな。貴族どもめ……やっぱりろくでもない奴ばかりだ!」 「そうでもありませんよ。私を本気で心配してくれている方もいます。マルトーさんは一括りに貴族を嫌いすぎです」 「ふん、魔法を使えるだけで威張るメイジどもなんぞ……って、いや別に魔法がどうのじゃなくて……」 「わかってますよ、マルトーさん。……結果によらず、ここに戻れないかもしれませんけど……そろそろ行きます」 マルトーの横を通り、シエスタは部屋を後にする。 その手に握られた、私服とは明らかに不釣合いの物をマルトーは見つめる。 「無理だ、シエスタ……お前の「魔法」じゃ、貴族を本気にさせるだけ……死ぬ可能性が増えるだけだ」 シエスタの持つ「杖」を見て、悲しげにマルトーは呟くのだった。 「こ、これは!?」 図書館で調べ物をしていたコルベールは驚きの声をあげる。 けして見つからないだろうと思っていた手がかりが見つかったのだ。 あまりにも古ぼけた書物。誰も呼んだ形跡もなかった。 「少し、根拠としては弱いが……オールド・オスマンにご報告しよう」 その書物を持って、コルベールは飛び出した。 それは、内容の繋がった書物ではなかった。 長い歴史の中、焚書の対象になった本の失われなかったページを集めただけのもの。 どうやって学園の図書館に紛れ込んだかも知れないが、これも存在すら許されぬ禁書の類だった。 その中に、一枚の絵が描かれていた。描かれた人物の顔もわからないほど不鮮明なものだ。 左に剣を、右に槍を置いた戦士らしき人物と、美しい衣に身を包んだ人物が跪いている。 その上空に、翼を広げた丸い何かが描かれていて……その姿は、翼こそ無いがモコナとあまりにも酷似していた。 前ページ次ページ魔法騎士ゼロアース