約 1,871,423 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3190.html
前ページ次ページゼロのロリカード 「気にすることはない」 講義が中止となり、爆発で滅茶苦茶になった教室の後片付けをし、煤だらけだったローブと服を着替えた後。 アーカードとルイズは食堂へと向かっていた。 「慰めなんて不要よ」 「・・・・・・他意はないぞ」 「変に気を回さなくていいわ。この程度のこと、慣れてるもの」 ルイズは淡々と答える。 (これは何を言っても無駄のようだな) そもルイズはきちんと自己分析はしているようだし、現状を把握して今を見据えてるようだった。 多少なりと意地になっているのも、次こそは成功させるといった気持ちの裏返しなのかも知れない。 失敗を糧に、後悔をバネに努力し、いずれはその想いを成就させる日もくるだろう・・・・・・恐らく。 なにかしら助言をするのは主が重圧に耐え切れなくなり、落ち込んだ時にで十分と判断する。 少なくとも、今はまだその時ではない。 「ねぇアーカード、食堂へ向かってるわけだけど・・・・・・あなたは食事するの?」 人間に於ける食物は、アーカードにとって血液である。 一般的な食事は嗜好品の域を出ず、無理して食べる必要性がないのは既に聞いている。 「いや・・・・・・こちらの食文化を堪能するのは、また別の機会にしておこう」 「ふ~ん、じゃあどうするの?」 「そうさの・・・・・・寝る」 昼にさしかかって陽も高くなり、あまり起きて行動したい時間帯ではない。 ルイズの部屋に戻り、また夜になるまで眠るのが丁度良いだろう。 「わかったわ、それじゃまた夜に」 ◇ 真昼のギラつく太陽の光は、容赦なくアーカードを照りつけた。 日光が大嫌いなアーカードにとって、あまり動きたくないくらいの晴天。 たまたまいい感じの日陰を見つけたので、とりあえずそこで休むことにした。 その場に座り込み、壁にもたれかかる。心地よさに思わず目を瞑った。 「ふぅー」 息が漏れる。度重なる未知との遭遇、自分で思ってるより疲れているのかもしれない。 (血が飲みたい喃・・・・・・) 「あのぅ・・・・・・大丈夫ですか?」 瞼を薄っすらと開く、目の前にいたのは黒髪ショートで黒瞳の少女だった。 顔には微かにそばかすがあり、あどけない少女の顔には似つかわしくないほどの、豊満な胸をメイド服で包んでいる。 「あぁ、気にするな。少々疲れていただけさ」 その少女の視線は、何故かアーカードの左手に注がれていた。 「・・・・・・もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔ですか?」 「むっ、私を知っているのか」 「はい。なんでも平民の少女を召喚したって、噂になってまして」 左手に描かれたルーンを見て、使い魔と判断したのだろう。 と、同時にコルベールと会った時の疑問が浮かんだ。 何故あのハゲ教師は、わざわざ自分のルーンを夢中になって書き写していたのか。 昨夜ルイズに聞いた話では、使い魔にルーンが刻まれるのは当然の事である。 思い返せば、鼻息荒げてまで書き写す程のモノだったのか。 (やはり変態か・・・・・・?) そこではたと気付く、目の前の少女の指に。そこには包帯が巻かれていた。 「それは?」 指をさして質問をする。 「はい?あぁ・・・・・・これですか。実はついさっき洗い物をしていたらお皿が割れてて切っちゃったんですよ、包帯は大袈裟なんですけどね」 少女は「あはは」と笑いながら答える。アーカードはスッと手を伸ばすと、いきなり包帯を取る。 指には思ったよりも大きな傷があった。本当につい先刻のことのようで、まだ血が滲んでいる。 アーカードはそのまま衝動的に少女の手をとると、指を舐め口に含んだ。 「あっ・・・・・・ん・・・」 一瞬刺さるような痛みがするものの、すぐにそれは快感へと変わった。 患部を舐められて気持ちいいなんて、少女は自分が変態なのかなどと邪推する。 「もう痛くあるまい」 あっという間の出来事だった。離れた唇からは微かに糸を引き、痛みはなくなっていた。 患部を見ると傷痕まで目立たなくなっていた。 「え・・・・・・?何で?」 「ちょっとしたおまじないさ」 本当は血を少しばかりもらったのだが、適当な理由で誤魔化す。 少女は少し腑に落ちてない様子であったが、すぐに笑顔に切り替わった。 「あの、私シエスタっていいます。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」 「私はアーカードだ、よろしく」 「はい!よろしくおねがいします」 屈託のない笑顔だった。思わず嬲りたい衝動に駆られる。 しかし本人は知らないものの、勝手に血を貰ったという借りもあるし自制する。 「それでは失礼しますね」と言い残しシエスタは去っていく。 アーカードはシエスタに興味を持った。 個人的にそそられたのもそうだが、先程血を飲んだ時に少々不可解な点があったからである。 太陽は相も変わらずギラギラと照りつけている。アーカードは少しばかり悩んだが、我慢して追いかけることにした。 ◇ 追いかけ巡りついたその場所は食堂の裏手であった。 「・・・・・・アーカードさん?」 扉に入ろうとするところでシエスタはアーカードに気付く。 「どうしたんですか?お腹でも空きました?」 「いやなに、もう少しシエスタと語り合いたいと思ってな」 その言葉を聞きシエスタは悩む仕草を見せる。 「う~ん・・・・・・それはいいんですけど、お仕事があるんですよ。もう指も大丈夫みたいなので」 アーカードは考える。少量だが血を貰った、借りを返す丁度いい機会かもしれない。 それにこの昼日中、シエスタの仕事が終わるまでただ待つのも正直苦痛だった。 今更ルイズの部屋まで行って、寝るのというのも些か面倒だ。 「ふむ、では私がその仕事とやらを手伝っていいか?」 「アーカードさんがですか?そんな、無理して手伝っていかなくても結構ですよ」 確かにシエスタにしてみれば、理由なくアーカードに手伝ってもらう謂われはない。 よって、アーカードは適当な理由を振りかざすことにした。 「んむ、その服を着てみたいのだ」 そういってアーカードはシエスタが着ているメイド服を指さした。 「これをですか?」 アーカードは無言で首を縦に振り肯定する。シエスタは少し悩んだ後に告げる。 「そうですね、とりあえずこちらに来て下さい」 扉を開け中へ入ると厨房へと繋がっていた。ヌッと大きな人影が現れる。 「おう、シエスタどうした?」 恰幅のいいおじさんだった。服装から判断するにコックのようだ。 「はい、怪我も大丈夫そうなので、やっぱりお仕事しに戻ってきました」 「そうか、無理はするなよ。ところでそちらのお嬢ちゃんは誰だ?」 おっさんコックの視線がアーカードに注がれる。 「こちらはミス・ヴァリエールの使い魔のアーカードさんです」 「ほほ~、お前さんが噂の・・・・・・」 珍しいものでも見るかのようにアーカードを覗き込む。いや、事実珍しいのだろう。 なにせ人間、平民の使い魔、と流布されているのだから。 「アーカードさん、こちらはコック長のマルトーさんです」 ただの厨房担当の一人かと思ったら、コック長だったか。となると一番偉いのだろうか。 「余分なメイド服ってありますか?」 マルトーはアーカードの観察をやめシエスタの方へと向く。 「もう一着欲しいのか?」 「いえ私がじゃなくて、アーカードさんが着てみたいそうなんですよ」 アーカードはシエスタの言葉に付け加える。 「んむ、シエスタを見ていたら試しに着てみたくてな。ついでに手伝いくらいしてやるぞ」 マルトーは再びアーカードへと向き直る。 「う~ん・・・・・・あるにはあるが、見る限りサイズが合わなそうだな。シエスタも別の意味でサイズがないんだがな」 「何を言ってるんですか!!」 シエスタは抗議の声を上げ、マルトーはがっはっはと笑いながらアーカードの肩をバシバシと叩いた。 馴れ馴れしいがこれも人柄なのだろう。シエスタは少々うつむき加減で自分の胸を見始める。 聞こえるか聞こえないかギリギリの溜息が聞こえる。こういったやりとりも日常茶飯事と見える。 「無理みたいですね」 今まで見せてきたそれよりも、少し乾いた笑顔でシエスタが言ってくる。 と、マルトーの笑い声が止まった。何かを考えているようだった。 「いや・・・・・・少し待ってろ」 そう言うやいなやマルトーは席をはずす。暫しの間待つとなにやら袋を持って戻ってきた。 「ほれっ」と言ってその袋をアーカードに手渡す、アーカードは躊躇なく袋を開け中身を取り出した。 「これは・・・・・・」 「これって・・・・・・」 出てきたのは黒を基調としたメイド服、市販品には見えなかった。 しかもアーカードが着れそうなくらいのサイズ、オーダーメイドかはたまた手作りか。 「これ、どうしたんですか?」 シエスタが疑問を投げかける、マルトーは口を濁しながら答えた。 「ん、あ~~~その・・・・・・貰い物だ」 目が泳いでいた、怪しい、限りなく怪しすぎる。 そもそも何故これをすぐ持って来れたのか、シエスタは依然として疑いの眼差しを向けている。 「俺は物を大切にするんだ」 苦しい言い訳が虚しさをさらに引き立てる。一方アーカードはそのメイド服を気に入っていた。 最初は適当に言った理由だったが、素直に着てみたい。そう思わせるほどの完成されたデザインのメイド服だった。 マルトーの人格は兎も角として、これが趣味であるならば極まっていると言えるかもしれない。 「いい、いいぞ!気に入った!!その服はお前さんにやる!!!」 「アーカードさん、すっごく似合ってます!」 着替え終えるといつの間にか厨房の人々がここぞとばかりに集まり、ちょっとしたお披露目会のようになっていた。 マルトーは鼻息を荒げ興奮し、シエスタは感心していた。 黒く流れるような長髪と、紅く輝く瞳のアクセント。少女特有のスレンダーさと、アーカード自身から放たれる妖艶さ。 それら全てが黒いメイド服と調和し、一つの芸術と言えるくらいに美しかった。 「んむ、悪くない」 そうだろうそうだろうとマルトーは頷く。他の者達も各々様々な反応を見せている。 アーカードはふと、『英国名物』"メイド隊"として、メイド服を着させられたような記憶が甦る。 あの時は少女姿ではなかった(・・・・・・・・・)所為で、それはもう酷い有様だった。 というか、自分も主人も従僕も執事も。 しっくりと似合ってる者が一人もいなかったという、ある種の惨事であった。 「・・・・・・ところでこのメイド服、予め計算されていたかの如くピッタリなんだが?」 空気が止まり、周囲者達の冷たい視線がコック長マルトーへと突き刺さった。 マルトーは慌てて身振り手振り弁解する。 「いやいやまてまて、誤解だ。それは知らん」 「それ・・・・・・は?」 シエスタの容赦ないツッコミが入った。 「ちっ違うッ!何も知らん!」 冷たい視線は未だやまずマルトーを見つめ続けた。 「だぁあああ!さっさと持ち場に戻れー!貴族どもに何言われるかわからんぞ!」 その言葉で皆々が我に返り散っていき、それぞれの仕事へと戻る。 仕事が滞ればどんな仕打ちを受けるかわからない、自分達の進退は貴族の心一つでどうとでも変わってしまうのだ。 とりあえずピンチを強引に有耶無耶にしてホッとするマルトーであったが、彼の評価が既に落ちているのは言うまでもない。 「何を手伝えばいい?」 「それじゃ私と一緒にデザートを配るのを手伝ってもらえますか?」 「了解した」 シエスタはにこやかに笑い、アーカードはそれに頷いた。 大多数の生徒達にとって、アーカードの存在ははちょっと変なメイド服を着た給仕がいる。 そんな程度でしかなかった、唯一人を除いては。 「なっ・・・・・・アーカード!?」 「やぁ、我が主」 二度も食事を食べ損ない、昨日から続く心身の疲弊と寝不足、駄目押しの午前講義の後片付け。 ただの一回の食事に、これほど感謝したのは初めてかもしれなかった。 少々量が足らないと感じたがそこは我慢する、最後のデザートでお腹を満たそうと思っていた。 配られるケーキ、普段は気にも留めない給仕の姿。 しかしいつもとは変わった服を着ていた給仕、それ故たまたま目に留まる。 昼前に分かれたはずの自分の使い魔、ニヤニヤ笑ってこちらを見ている。意味が分からない。 何故食堂にいるのか、何故メイド服を着ているのか、何故給仕としてデザートを運んでいるのか。 「な・・・・・・何やってんの?」 「見て分からないか?メイドだ」 ルイズの口元が引き攣る。 「そうじゃなくて、どうして!」 と、そこで周囲からくすくすと笑い声が漏れ始める。 「あっはっは、なんでルイズの使い魔が給仕やってんのよ」 「これはこれは、ミス・ツェルプストー」 アーカードは右手にデザートを乗せたトレイを持ちつつ、左手でスカートの端を持ち会釈をする。 「あら?ルイズの使い魔にしては礼節を知ってるのね」 アーカードはその態勢のまま顔を上げ笑みを浮かべ答える。 「無論。主に恥をかかせるわけには参りませんので」 "優秀な執事"の立ち振る舞いを近くで見てきたし、人間だった頃にはそういった者達を雇っていた側だ。 そうでなくとも己の中の膨大な命の中には、そういった職種についていた者と記憶がある。 ルイズは素直に驚いていた。アーカードがこんな礼儀を弁えた態度を取れるということに。 しかし怨敵ツェルプストーの女に、敬語を使っている姿を見るのは癪だった。 「アーカード、ツェルプストー家の者に礼節は要らないわ。こんなのはキュルケと、呼び捨てで十分よ」 「ほぉ・・・・・・言ってくれるじゃない、ルイズの癖に」 キュルケはルイズをグッと睨みつける、ルイズも負けじとキュルケをグッと睨みつけた。 二人の視線が交錯し、バチバチと火花が散っているようだった。 (犬猿の仲というやつか・・・・・・) アーカードは一歩退いた位置から二人の様子を観察していた。 ふと、アーカードの・・・・・・吸血鬼の聴覚が本当に些細な言葉を鋭敏に感じ取る。 シエスタの声ともう一人、なにやら揉め事のようであった。 ルイズとキュルケは依然として睨み合い、アーカードは聞こえる方向へと視線を向ける。 金髪の少年とシエスタが話しているのが見える。 「ルイズ、キュルケ」 二人の視線が綺麗に揃ってアーカードへと向く、間髪入れずアーカードは言葉を紡いだ。 「これを頼んだ」 ケーキの乗ったトレイとトングを二人にそれぞれ手渡し、アーカードはシエスタの元へと向かった。 ルイズとキュルケはいまいち状況が把握出来ていなかった。 「ふん!やっぱりアンタなんか呼び捨てで十分ね」 「でもアンタも呼び捨てにされてたじゃない」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 二人の間には妙な沈黙が流れていた。 前ページ次ページゼロのロリカード
https://w.atwiki.jp/kokoronokizuna1/pages/14.html
目次 目次概要 画像のUPの説明 洞窟系のバグ洞窟で飛行船に乗るバグ PCの姿がないバグ 戦闘系のバグフリード巨大化1 フリード巨大化2 戦闘背景が移動の風景 水関係のバグ水上テント 水の上に立つPC テント関系のバグテントに入ったらそこは・・・・ フィールド関係のバグ持ち物欄のバグ 概要 ここのページは私1人だとなかなかUPできないのでここに乗っているバグ以外のバグ画像があるならUPしてくれると嬉しいです。 画像のUPの仕方は私が記入しているのを参考にしてください。 画像UPの際のアカウントはギルドIDがあるのでそれを使ってください。 ここはバグ画像を集めて皆で楽しむために作りました。 皆さんが楽しめれば幸いです。By†ノア† 画像のUPの説明 スクリーンショットで保存した画像を選択して右クリックで編集を選択する。 名前が気になる人はID名を塗りつぶしてください。 名前をつけて保存で種類をJPGファイルにして保存。 保存した画像をこのページにアップロードするために編集の三角押して「このページにファイルをアップロード」という項目押して、参照ボタンクリックでアップロードしたい画像をダブルクリックOR選択して開くをクリック。 後は私が書いてるimege欄の部分をコピペして 数字が入力されている部分を自分がアップロードした画像の名前に変更してください。 洞窟系のバグ 上へ←ここをクリックで一番上に戻ります。 洞窟で飛行船に乗るバグ オーストラリアの洞窟で起きたバグその1をUPしました。 洞窟内で飛行船にのっているバグ←の方にはなぜかUFOのアイコンが・・・By★シエスタ★ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (0412194432.jpg) 名前 コメント テストUP -- シエスタ (2010-11-13 13 40 17) PCの姿がないバグ オーストラリアの洞窟で起きたバグその2をUPしました。 見ての通り姿が見えなくなったバグです。 By★シエスタ★ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (0412194540.jpg) 名前 コメント 戦闘系のバグ 上へ←ここをクリックで一番上に戻ります。 フリード巨大化1 15st中に起きたバグ By★シエスタ★ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (1112210845.jpg) 名前 コメント フリード巨大化2 同じく15st中に起きたバグ By★シエスタ★ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (1112211259.jpg) 名前 コメント 戦闘背景が移動の風景 12Qの場所で起きた移動風景での戦闘シーンです By★シエスタ★ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (1003150906.jpg) 名前 コメント 水関係のバグ 上へ←ここをクリックで一番上に戻ります。 水上テント 水の上に立つテント By★シエスタ★ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (1106195708.jpg) 名前 コメント 水の上に立つPC 見たまんま水の上にたつPCw By★シエスタ★ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (1113212727.jpg) 名前 コメント テント関系のバグ テントに入ったらそこは・・・・ 上へ←ここをクリックで一番上に戻ります。 テントに入ったらそこはWonderlandONLINEでしたwwww By★シエスタ★ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (1125141300.jpg) 名前 コメント フィールド関係のバグ 上へ←ここをクリックで一番上に戻ります。 持ち物欄のバグ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (1231214904.jpg) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4125.html
「うちのぶどうは最高なんですっ!」 だん、とシエスタがテーブルを叩く。いつもならそういう態度を真っ先になじるルイズも、酔ったシエスタに文句を言うほど馬鹿ではない。ルイズとサイトは顔を見合わせて溜息をついた。 今日は新物ワイン解禁の日で、シエスタの村はこの日、新ワインをブリミルに捧げて皆で飲むワイン祭が毎年開かれる。そんなわけでシエスタに誘われたサイト達が村にやってきたのだが、ほんの1時間も経たないうちにシエスタがいつものように悪酔いし始めたというわけだ。 「赤は飽きたんらろ?ならー、白飲もー」 シエスタは広場の真ん中に山と積まれたワインの瓶にふらふらと寄っていき、一本の瓶を引っこ抜く。酔っているくせに器用にコルクを抜くと三人のグラスになみなみと注いだ。 「ミースー・ヴァリエール!勝負れす!」 ルイズは眉をひそめて流そうとする。だがシエスタの言った内容は放置できるものではなかった。 「ワインのー飲みっ比べでー、勝った方はー、明日サイトさんを独占でー」 「私もやる」 明後日の方向から冷静な声がした。タバサだ。 「ちょっと!勝手に決めないでよ!」 「挑まれて逃げる貴族は不戦敗」 「ふーせんぱーい!」 タバサとシエスタの言葉にルイズも冷静さを失った。 「ななななによ!お子様と酔っ払いに負けるほどラ・ヴァリエール家は弱くないわ!」 叫んで。賞品の意思を無視した女三人の戦いが始まった。 「お互い苦労するわね」 酔い潰れたギーシュの頭を撫でながら、モンモランシーはサイトに声を掛けた。サイトの周りには引き分けた三人の女たちが倒れており、時折「水……」と呻いている。モンモランシーは水差しをサイトに渡して言った。 「水魔法の使い手として、こんな子たちには水なんてやりたくないけど」 言いつつも水差しに数滴、二日酔いを楽にする薬をおとしてくれる。 「で、誰が本命なの?」 「本命って……」 モンモランシーも酔っているのか、悪戯っぽく笑って三人を指差した。 「だらしないのよ、あんた。しゃきっと決めないからややこやしくなるの」 「んなこと言ったって」 「言い訳無用。ほんとのことなんだから」 サイトは苦笑して椅子にもたれかかる。と、モンモランシーはテーブルに載せられたフルーツの山を指差した。それは様々な果物を美しい銀の皿に飾り盛ったものだった。 「何か一つ選んで」 サイトは迷った末、桃をつかんだ。モンモランシーはその桃を受け取ると皮を剥き、コップの中で潰した。次いで飲み残した白ワインを加えて掻き混ぜる。よく混ざったのを確認すると一口飲んで味を確認して、サイトの目の前に置いた。 「飲んでみて」 言われるままに一口含む。桃の甘味と白ワインの酸味が混ざって心地よい。 「その色と味はだれ?」 言われてサイトはぼんやりとルイズに目を向ける。くすっ、とモンモランシーが笑ったのに気付き、サイトは慌ててルイズから目を逸らした。だがモンモランシーは満足そうに言う。 「桃髪のルイズが一番好き、なのね」 「いや一番とか何とかは……」 誰も訊いてないのに、とまたモンモランシーは笑う。サイトは溜息をつくと、モンモランシーに諦めの表情で頷いた。モンモランシーは頷き返す。 「あんただけ恥ずかしいのは卑怯よね。だから」 言ってモンモランシーはギーシュの髪をかきあげ、そっと額に口付ける。 「秘密ね、お互い」 「だな」 桃入りの白ワインのグラスと、ほんのわずかに赤ワインの入ったグラスを二人はかちり、と鳴らしあった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9099.html
前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia 「もうしない、もう絶対しないから。 あだっ! 君、年寄りにそんな乱暴じゃから婚期を……あいだっ!」 ここはトリステイン魔法学院本塔・最上階。 暇を持て余したオスマン学院長が秘書のミス・ロングビルにセクハラを行い、反撃を受けている。 いつもの光景だ。 そこへ早足で向かってくる足音が聞こえ、続いて扉をノックする音が響いた。 ロングビルはさっと机に戻ると、何食わぬ顔で業務の続きを始める。 オスマンも素早く起き上がって軽く服を整え直すと、腕を後ろに組んで重々しく威厳のある態度を装う。 これもまたいつもの事で、二人とも手慣れたものだ。 「誰かね?」 「私です、オールド・オスマン」 「ああ、ミスタ・ゴートゥヘル君か、はいりたまえ」 「私はコルベールです!」 コルベールは仏頂面で扉を開けて部屋に入ってきた。 これまた、よくあるやり取りだ。 どうもわざと名前を間違うのは、この学院長の持ちネタであるらしい。 「お邪魔して申し訳ありません、学院長。 実はヴェストリの広場で、決闘を始めようとしている生徒がおりまして……」 「まったく、暇をもてあました貴族ほど性質の悪い生き物はおらんな。 ……で、君は止めなかったのかね?」 「その、情けない話ですが……、 止めようにも生徒たちの熱狂がひどくて、どうも」 オスマンはそれを聞いてひとつ溜息を吐く。 「やれやれ、君はそういうことになるとどうにも気弱でいかんの。 それで、誰が暴れておるんだね?」 「はい……、すみません。 その、一人は、二年生のギーシュ・ド・グラモンです」 「ああ、あのグラモンのとこのバカ息子か。 オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きと見えるわい。 大方他の男子生徒と女の子の取り合いになって、といったところかの?」 「いえ、それが………」 コルベールはそこで、言いにくそうに言葉を濁した。 「む? ……なんじゃ、違うのか?」 「相手は男子生徒ではありません、というか生徒でもなければメイジでもなく――メイドです」 「………、なんじゃと?」 「そのため、私以外の教師もどう対応していいものか戸惑っているようで。 中には止める必要はないと生徒に混ざって傍観している者も……」 オスマンはそれを聞いて、困惑したように眉間に皺を寄せた。 「……平民と決闘……? 何を馬鹿な事をしでかしておるんじゃ。 性質が悪いにもほどがある」 興味深げに横合いで聞き耳を立てていたロングビルの目がきらりと光った。 「学院長、でしたら大事にならないうちに止めた方がよろしいのでは。 私に宝物庫の鍵を貸していただければ、急いで『眠りの鐘』を用意してきますわ」 「むう、そうじゃな……、」 オスマンが考え込みながら杖を振ると、壁にかかった『遠見の鏡』にヴェストリの広場の様子が映し出された。 なるほど、周囲を熱狂した観衆に取り囲まれたギーシュとメイドらしき少女が、今まさに決闘を始めようとしている。 オスマンはその様子を見てますます顔をしかめたが、少女の後ろに昨夜この部屋を訪れた亜人の姿を見つけると表情を変えた。 視線を止めて、少し首を傾げながら数秒ほどじっと鏡を見つめる。 「……学院長、どうされるのです?」 ロングビルに怪訝そうに声を掛けられて、オスマンははっと我に返った。 見ればコルベールも似たような顔をしている。 「む……、ああ、そうじゃな。 ひとまず用意はしておいてくれ、使うべきかどうかはもう少し様子を見てから判断するとしよう」 オスマンはそう言ってロングビルに鍵を渡すと、困惑したような顔のコルベールをよそに鏡の光景をじっと見つめ続けた。 一方ロングビルは、鍵を受け取ると一礼して学院長室を足早に立ち去った。 その顔に怪しげな笑みを浮かべながら……。 ヴェストリの広場では、いよいよ決闘が開始された。 シエスタはディーキンの『勇気鼓舞の呪歌』の演奏を背に受けながら、剣を構える。 そして小細工も何もなく、ぐっと姿勢を低くして勢いをつけると、真っ直ぐワルキューレに斬りかかっていった。 対するギーシュは余裕の姿勢を崩さない。 普通に考えれば青銅製のゴーレムを剣で、それも素人の女性が斬り付けたところで大した傷が与えられるはずもないのだから、当然と言えよう。 しかもワルキューレは硬いのみならず、屈強な成人男性以上の腕力と素早さを持っている。 その気になれば防御も反撃も容易いことだ。 (よし、まずは振り下ろしてくる剣を余裕で弾いて見せて……、 体勢が崩れたところへ、可哀想だが軽く一撃叩き込んでやるとしよう) 実際に力の差を痛感させれば、あのメイドも目を覚ます事だろう。 ギーシュはそう考え、余裕たっぷりに薔薇の杖をくいと持ち上げてワルキューレに指示を出した。 ――――が、しかし。 「え……?」 シエスタの剣はギーシュがその足の速さから想像していたよりもずっと速く、力強く振り下ろされていた。 ワルキューレが主の命令を受けて拳を持ち上げる遥か前に肩口を鋼鉄の刃が捕え、青銅をまるで粘土のように容易く斬り裂いていく。 斜めに両断されたゴーレムは瞬く間に形を失って、ぐしゃりと地面に崩れ落ちた。 「……!? お、おい、あのメイド、ゴーレムを倒したぞ?」 「せ、青銅ってあんなに簡単に壊れるもんだったのか? なあ、お前土メイジだろ、どうなんだよ?」 「そ、そりゃあ……、出来具合にもよる。けど、まさか女の子の力で………」 「あのメイド、実は剣の達人だったのか!」 予想外の展開に、観衆が一斉にざわめきだす。 シエスタ自身もまた、自分の攻撃がもたらした結果に少し目を丸くしていた。 ある程度想像はしていたが、まさか自分のような素人同然の娘に、ここまでの力を……。 「……な、なかなかやるじゃないか! どうやら、丸っきりの素人というわけではないらしいね」 ギーシュは若干顔をひきつらせながらも精一杯余裕のある態度を装い、薔薇の杖を大きく振った。 複数の花びらが舞い落ちて、今度は同時に六体ものワルキューレが、しかも盾を装備した状態で構成される。 全部で七体のワルキューレがギーシュの武器なので、これで数の上では全力を出したことになる。 盾を持たせたのは一撃でワルキューレを斬り倒した攻撃力を警戒したのと、流石に殺傷力の高い武器を持たせて殺し合いにするわけにはいかないためだ。 「おおっ、ギーシュが本気を出したか?」 「これで勝負は決まったな」 「そう? でもあのメイド、同じゴーレムをさっき一瞬で斬り倒していたじゃない」 「いや、どんなに力があってもあれだけの数に囲まれたら、魔法が使えない平民じゃ対応できないさ。 それに今度は、盾を持たせてるしな……」 「着てる鎧は粗末なもんだし、一度殴られて体勢を崩したら殺到されて終わりだな」 わいわいと沸き立ちながら今後の予想などを話し合っている観衆をよそに、ディーキンは内心少し感嘆していた。 駆け出しのメイジが中型サイズのアニメイテッド・オブジェクトに類似する人造を簡単に作れるだけでも大したものだが、同時に六体とは。 しかもどうやら、任意の武具を装備した状態で作ることも可能らしい。 ただ、呪歌でサポートしたとはいえシエスタに一度斬られただけで倒れるあたり、強度や耐久性は少し低いようだ。 青銅ならもう少し硬くてもよさそうなものだが……。 そういえば先程の授業で、錬金の魔法はどうしても不純物が混じったりするものだ、と言っていたか。 ならば作成者の腕もまだ未熟なのだろうし、見てくれはよくても中身が炉でしっかりと精製した青銅には劣るのは仕方ないのだろう。 瞬殺されるのを見た以上、数を増やすよりもより強い大型のゴーレムを出した方が良さそうな気もするが……、それはできないのだろうか。 そのあたりのことも後でまた、しっかりと調べておこう。 「まずは褒めよう、ここまでメイジに楯突く平民がいることには感激したよ。 レディーとはいえ手加減は無用のようだ、僕も本気を出すとしよう。 悪いが君の活躍はここまでだ」 「………はい、私も、最後まで全力でお相手します」 ギーシュは一時の動揺から回復して、新たに呼び出した忠実な僕たちにシエスタを囲ませながら、一斉攻撃を仕掛けるタイミングを見計らっている。 シエスタは少し険しい顔をして周囲を囲むゴーレムに視線を走らせつつ、いつでも動けるように身構えている。 ディーキンは数秒ほど思案に耽っていたが、ギーシュとシエスタのやりとりを聞いて我に返った。 考え込みながらも演奏に全く乱れが無いのは流石といったところだろうか。 まあ、激しく戦闘しながら演奏を続けなければならないこともあるバードがこの程度で演奏を乱していたら、それこそお話にならないのだが。 ……この状況は、『勇気鼓舞の呪歌』だけでは少し厳しいかもしれない。 この呪歌では攻撃力は上がっても、耐久力や回避力まで上がるわけではないのだ。 これだけの数に囲まれれば、周りの観衆も論じている通り、恐らくかわし切れずに攻撃を喰らってしまうだろう。 数発も殴られれば、一般人と大差ないシエスタの体では持つまい。 たとえそうでなくとも、シエスタにこんなことであまり痛い思いをさせたくはないし……。 ならば。 「オオ、いよいよ決戦なんだね? ちょっと待って、ディーキンもそれに相応しい音楽で応援するよ!」 そう宣言して周囲の注目を集めると、歌うようにして素早く二、三の音節を呟き、今まで演奏していたリュートから手を離した。 するとリュートはその場で宙に浮かび、今までと変わらない演奏をひとりでに続ける。 おおっ、と驚きの声を上げる観衆をよそに、続けて更にもう一つ呪文を唱えた。 呪文が完成するや、ディーキンの手の中にバイオリンが出現する。 それをさっと構えると、今まで以上に心を高揚させる荘厳で勢いのある旋律を、浮かぶリュートの演奏に重ねて奏で始めた。 《動く楽器(アニメイト・インストゥルメント)》と《楽器の召喚(サモン・インストゥルメント)》という、2つの呪文を使用した芸当だ。 「せ、先住魔法だ!」 「精霊の力を借りる恐ろしい技だって聞いていたけど……、こんなこともできるの!?」 「いや魔法もすごいが、演奏も……」 普段は畏怖している“先住魔法”による楽しい演出と、お抱えの宮廷詩人のものだと言っても通用しそうな勇ましく荘厳な演奏。 観衆の興奮は、最高に高まっている。 一見するとただ注目を集めて気分よく歌っているかに見えるが、実のところディーキンの負担は、ある意味戦っているシエスタ自身よりも大きかった。 2つの呪歌を立て続けに“強化”して歌った反動で、ディーキンの喉には鈍く熱い痛みが走り始めている。 もしシエスタの体にこれと同じ反動を負わせたら、耐えきれずにたちまち昏倒してしまうだろう。 だがその苦痛を少しも表情には出さず、胸を張って楽しげに、誇らしげに、歌い続ける。 ここで苦しそうな顔などしていたら演出が台無しだし、何より実際、ディーキンはその表情通りの気分なのだから。 英雄の活躍に立ち会えて、その手伝いまでできる。 観衆も、最高に沸いてくれている。 この状況で楽しさと誇らしさとを感じないバードがいようか。 これで、決戦に向けての準備は整った。 「おおっ、何とも気の利いた音楽と演出じゃないか! ワルキューレたちの総突撃に相応しい調べだな、感謝するよルイズの使い魔君!」 「…………」 ギーシュは先程の焦りなどすっかり忘れて、自分の活躍を引き立ててくれる(と自分では思っている)勇ましい調べに気を良くしていた。 一方シエスタは、自分の中に湧き上がってくる更なる力に驚愕して言葉を失っていた。 今までの力でさえ信じられないほどだったのに……。 しかも今度のは、ただ力が漲っているというだけではないような気がする。 何か、感じたことのないような――――。 「さて場も整ったことだし、今度こそ覚悟をしたまえ」 「……………! はい、行きます!」 ギーシュがワルキューレの布陣を終えて、いよいよ一斉突撃を命じようと余裕ぶって杖を構えたあたりで、シエスタはハッと我に返った。 間髪入れずにばっと駆け出すと、一番手近のワルキューレに向けて先程と同じように剣を叩きつけようとする。 囲まれて不利な立場に追いやられる前に、先手を打って数を減らそうとしたのだ。 明らかに数で不利な状況だというのに、敵がこちらを囲んで突撃してくるまでただ漠然と構えて待ち受けるほど愚かではない。 「えっ……!?」 先程まで少しぼうっとした様子だった少女があまりにも唐突に、素早く行動に移ったことで、宣言をしたギーシュの方がかえって不意を突かれた。 ワルキューレは所詮ギーシュの指示を受けて動くもの、ギーシュ自身の命令よりも素早い反応はできはしない。 そして今のギーシュの反応速度は、シエスタよりも明らかに遅かった。 突撃を命令しようとしていたのを慌てて防御の指示に切り替えるが、既にシエスタはワルキューレの眼前に迫っている。 しかも重い盾を持たせたためにかえって腕の動きが鈍り、先程以上に速いシエスタの剣を防御するのには全く間に合っていない。 盾に遮られない角度から横薙ぎに斬り付けた長剣が、そのワルキューレの胴体を両断して仕留めた。 「くそっ!」 ギーシュとて全くの素人ではなく、軍人の家系であるがゆえにゴーレムを運用する戦闘の訓練はそれなりに受けている。 自分が命令しようとしていた個体がもう駄目なのを悟ると、悔しげに呻きながらもすぐに残りのワルキューレに指示を出して体勢を立て直させた。 もしシエスタが真に凄腕の剣士だったなら、間髪おかず手近のワルキューレに連続攻撃をかけて、体勢を立て直す前に更に一、二体は仕留められただろう。 だが呪歌の効果で大幅に攻撃が素早く、力強くなっているとはいえ、シエスタの技量自体はやはり素人に毛が生えた程度でしかないのだ。 数秒の内に三体も四体も敵を倒すというような真似は無理だった。 「これ以上はやらせない、いけワルキューレ!」 ギーシュの命令が飛ぶのを聞くと、シエスタはさっと視線を巡らせて周囲のワルキューレたちの動向を確かめた。 残った五体全てがこちらへ向かってきているが、二体はまだ若干距離が遠い。 早急に対峙しなくてはならないのは正面に二体、そして背後に一体。 シエスタはそれだけ確認すると、攻撃される前に素早く正面右側のワルキューレの懐へと飛び込んで行った。 今度はワルキューレの側も既に攻撃に対する備えができており、向かってくるシエスタに反応してさっと盾を構える。 しかしシエスタは強引に盾の上から斬り付けるような事はせず、ワルキューレの前で踏み止まると下から構えられた盾を思い切り蹴り上げた。 予想外の方向からの衝撃に盾を弾かれて体勢を崩した隙に、腰をすかさず全力で斬り付けてまた一体倒す。 ワルキューレはギーシュの指示によって動いている関係上、事前に想定していなかった状態になると立て直すのが遅れるのだ。 一見して見事な戦い方のようだが、見る者が見れば速さと力は並外れているが動作自体はあまり洗練されていない、ということにすぐに気が付くだろう。 呪歌の効力によって攻撃の素早さや力強さは段違いに上がっているが、技量自体が高まっているわけではない。 戦い方も実に大味だが、それに関しては単に未熟だからというだけではないちゃんとした理由があった。 仮に剣技を身に付けた人間相手なら、シエスタも未熟なりに牽制や受け流しなどを交えてもう少し技巧的に戦おうとしていただろう。 だが、今戦っている相手は人間とはまったくその性質が違う。 ワルキューレは基本能力はそこそこ高いが剣技などの技巧は皆無で、その代わりに人間と違って痛覚も恐怖もなく、体は金属製で硬い。 人間相手なら鎧の隙間を突けば軽い攻撃でも有効打となるし、それゆえにフェイント気味の素早いが軽い突きなどで牽制することもできる。 だが全身くまなく青銅製のワルキューレ相手では力の乗っていない攻撃は有効打になり得ないし、当然それに怯むこともない。 それに数が多いので丁寧に一体ずつ相手にしていては不利になるばかりであり、その間に囲まれて集中攻撃を受けてはたまらない。 ここはできる限り素早く倒して数を減らさなければならない。 ならば躊躇わずに一気に防御を崩しに行き、多少強引にでも隙を作ってそこを全力で斬り付け、一撃で倒すことを狙っていく……。 それがシエスタが自分なりに考えて選択した戦い方だった。 そのためにフェイントなどの技巧を駆使しない、全力で振り抜く攻撃ばかりの大味な戦い方になっているのだ。 シエスタは敵を仕留めた余韻に浸る間もなく、すぐに残る二体に対峙しようと体の向きを変えた。 しかし振り向いた時には既に一体が目と鼻の先にまで迫っており、今まさに殴りかからんとして盾を振り上げていた。 「………っ!」 慌てて地面に転がるようにしてどうにかその攻撃は避けたが、そこに残る一体がすかさず拳を繰り出す。 シエスタはとっさに革鎧の小手の部分をその腕の内側に叩きつけるようにして拳の軌道を逸らし、どうにか凌いで体勢を立て直した。 だがその時には既に距離の離れていた二体もシエスタの後ろに回り込んでおり、すっかり体勢を整えたワルキューレたちに取り囲まれてしまっていた。 これでは、もうこの囲みから抜けるのは難しい。 今と同じことをやろうとしても、一体に飛び掛かればすかさず残り三体が背後から襲ってくるだろう。 (よ……、よし! 少し冷や汗をかかされたが、これで何とかなる!) ギーシュは内心で安堵する。 まさか平民の、それもただのメイドがこれほどの使い手だとは思ってもみなかったので、ワルキューレを次々と撃破された時は少々焦った。 だが先程ワルキューレ二体がかりでの攻撃を切り抜けた時は相当際どい様子だったから、こうして四体で囲んで攻撃すれば流石に避けきれはしまい。 いかに動きが速かろうが太刀筋が鋭かろうが、革鎧を着ただけの生身の人間。青銅の拳や盾が直撃すれば痛みで動きが鈍るはずだ。 そこへ周囲から数発追撃を入れてやれば一気に逆転、勝負を決められる。 だが、ここで気を抜いてまたワルキューレを失えば今度こそ勝利が危うくなるだろう。 ギーシュはここまでの反省から今度は余裕ぶった態度も取らず、周囲を取り囲み終えると即座に杖を振って一斉に攻撃を仕掛けさせた。 シエスタは正面から盾で殴ろうとしてきた一体のワルキューレの懐に、姿勢を低くして飛び込んだ。 攻撃を仕掛けようと盾を掲げたために隙だらけになった脚から腰に掛けて、一気に斬り上げるようにして倒す。 そしてその勢いのまま、身を捩るようにして横へ飛んだ。 シエスタに迫っていた一体のワルキューレの拳は間一髪で脇を掠め、今倒した相手の体を打つ。 だが、身を捩りながら飛び退いた先に向かってきた、もう2体の攻撃はかわせない。 シエスタは咄嗟に体を捻って、斜め前方から向かってきたワルキューレの拳をかろうじて防具の硬い部分で受け止めた。 しかし、背後から迫っていたもう一体が、脇腹を盾で強く殴りつけた。 たかが革の防具などでは殺しきれない威力の、常人なら体を折って悶絶するような強烈な一撃だった。 シエスタは攻撃を受けたと悟った瞬間、思わず目をぎゅっとつぶって襲ってくるであろう痛みを必死にこらえようとした。 だが。 (……………、えっ?) シエスタは、覚悟していた苦痛が無い事に気が付いた。 受けた攻撃が決して弱いものでなかったことは間違いない、それは感じ取れた。 だが、その攻撃は実際のダメージをまるで伴わない、形ばかりの痛みと衝撃しかもたらさなかったのだ。 まるで毛布を何重にも分厚く体に巻き付けた、その上から殴られたかのように。 (これも、あの人の歌の………?) シエスタはワルキューレたちがここぞとばかりに追撃を掛けようと向かってくるのに気が付くと、困惑を振り捨ててぎゅっと剣を握り直した。 自分を殴りつけた背後のワルキューレを蹴り退け、正面で拳を振り上げたワルキューレの脇をその勢いで駆け抜けざまに斬り捨てる。 相手は苦痛で身動きが取れまい、と油断しきっていたギーシュは、まるで痛みなど感じさせないその素早い動きに全く反応できなかった。 「ばっ……、馬鹿な!?」 シエスタはギーシュが狼狽して指示を出せないでいる間に、素早く踵を返して先程自分を殴りつけた背後のワルキューレも袈裟懸けに斬り捨てる。 ギーシュは我に返ると、慌てて最後に残ったワルキューレを戻らせ、自分をガードするよう命じた。 だが、今更守りを固めたところで、ワルキューレは既に残り一体。 連携作戦も取れない以上、もうギーシュに勝ち目はない。 血気に逸ったシエスタはそう確信し、一気に片を付けようと突進していった。 今の自分に勝てるものなどいるのだろうか? 歌のもたらす高揚感も手伝って、そんな考えさえ、心に浮かんでくる。 つまるところシエスタは、やはり素人であった。 一流の戦士ならば、単純な動きしかできないゴーレム同士での連携よりも、ゴーレムとメイジの連携の方がずっと脅威であることを失念したりはするまい。 加えて、後がない状況に追い詰められた敵は往々にして覚悟を決めて、最後の激しい抵抗に出てくるもの。 そこへ攻め込んでいかねばならないこの状況は、先程までと同様心してかかるべき正念場であり、決して消化試合などではないのだ。 敵に対する然るべき敬意、すなわち警戒心を忘れたものは、往々にして手痛い代償を支払わされることになる。 シエスタはギーシュの前で盾を掲げて防御姿勢を取ったワルキューレに突撃すると、盾で守られていない側面から一気に斬り裂きにかかった。 狙い過たず、刃は防御姿勢を取ったまま棒立ちのワルキューレに食い込んでいく。 事前に防御の態勢を整えていたにも関わらず、全く反応せずに棒立ちで両断されていくワルキューレを見て、シエスタは一抹の不安を覚えた。 今のは、攻撃に対する反応が間に合わなかったのではなく、最初から対応させる気が無いように見えた。 最後に残った一体のゴーレムで必死に対抗しようとせず、操作を放棄した? と、すれば、 それは、つまり………。 「……あ……、っ!?」 はっとして顔を上げたシエスタの目に、倒れていくワルキューレの陰からこちらに向けて薔薇を突きつけているギーシュの姿が飛び込んでくる。 その目には今までのような余裕も、気取りも、女性への遠慮も……、そして焦りも、狼狽も感じられない。 シエスタが駆け寄るまでの数瞬の間に、ギーシュは相手の強さを認め、これまでの自分の数々の慢心と自惚れを反省した。 そして勝敗はどうあれ、ただ最後まで全力を尽くそうという覚悟と決意とを固めた。 その、闘志の炎だけが燃えていた。 何か対応せねばとは思えど、全力で振り下ろした刃がまだワルキューレの体に食い込んだままで、満足に身動きが取れない。 背後のギーシュの動向に対してまるで無警戒であったために、完全に意表を突かれた。 「――――この時を待っていた! くらえ、『石礫』だァーー!!」 杖の先から飛び散った多数の薔薇の花びらがそれぞれ石礫に変化し、高速の散弾となってシエスタに襲い掛かる。 ギーシュが最後に残ったワルキューレを囮として、残る精神力を振り絞って勝負をかけた攻撃だ。 シエスタは咄嗟に剣から手を離し、飛び退きながら顔などの急所をガードしようとしたが、間に合わない。 石礫は容赦なくシエスタの体を叩きつけ、何発かは鎧に覆われていない剥き出しの部分に命中した。 普通なら致命傷にはならないまでも打たれた場所が内出血を起こし、骨にはひびが入り、大きな被害を受けるであろう攻撃だ。 だが、ギーシュの顔には快哉の笑みは無く、緊張した面持ちのままシエスタの様子を伺っている。 つい先程同じような状況で油断して反撃を受け、ワルキューレを壊滅状態にさせられた件を忘れるほど愚かではない。 もっとも、これに耐え抜かれたらもう油断もくそもなく、精神力もほぼ尽きているしこれ以上打つ手もない自分の負けは確定なのだが……。 例えそうなるとしても、油断した無様な姿を晒して負けたくはなかった。 果たして彼が懸念したとおり、シエスタは無事であった。 石礫にまともに撃たれても顔をしかめて一瞬怯んだだけで、やはり倒れなかったのだ。 ギーシュの最後の攻撃も、ディーキンの『武勇鼓舞の呪歌』による守りを打ち破るには至らなかった。 苦痛に怯まないだけならまだしも、剥き出しの肌をあれだけ打たれても傷ついた様子さえないのは不思議だったが……、 どうあれ、この期に及んで抗議や言い訳などは無様なだけだな。とギーシュは自嘲して、疑問を頭から追いやった。 「……まいった、僕の負けだ」 ギーシュは杖を捨て、降伏した。 それを見た周囲の観衆からどよめきや歓声、野次などの様々な反応が巻き起こる。 ディーキンもひとつ頷いてにこりと笑みを浮かべると、クライマックスを弾き上げて演奏を終えた。 だがシエスタは呆然とした様子で打たれた部分を撫で、それから捨てられた杖と手放した剣とを交互に見て……、 やがて、ゆっくりと首を横に振った。 「………、いいえ……、いいえ、ミスタ・グラモン。 私の負けです、ありがとうございました」 そう言って深々とギーシュに頭を下げ、次いで背後のディーキンの方を振り返って、同じように頭を下げた。 せっかく応援してもらったのに勝てなくて申し訳ありません、というように。 ギーシュは呆気にとられ、ディーキンは二、三度まばたきして首を傾げた。 周囲の観衆も、あまりに思いがけない展開の連続にがやがやと騒ぎ、首を傾けながら決闘の当事者たちを見守っている。 「……い、いや、何を言っているんだね? 誰が見ても君の勝ちだよ、残念だが僕にはもう、戦う力は残っていないんだ……」 「いいえ、私はミスタ・グラモンが杖を捨てられるより先に、思わず自分の剣を手放してしまいました。 杖を失ったメイジが負けとなるのなら、剣を手放した平民も同じのはずです」 シエスタはそう言って静かにギーシュの方に歩み寄ると、先程彼が落とした杖を拾って、もう一度頭を下げてからそれを差し出す。 その敗者らしい礼儀と顔に浮かぶ力のない微笑みを見て、ギーシュにもシエスタがおためごかしなどではなく、本心からそう言っているのはわかった。 だが、それであっさり納得して喜べるほどには彼のプライドは安くない。 ギーシュは差し出された杖を受け取らずに、悔しげに顔をしかめてシエスタを睨んだ。 「待ちたまえ、そんなことは事前に決めていなかったはずだ。 剣を手放したと言っても君は無傷で、僕にはもう、戦える力が残っていない。悔しいが、素手で君に勝てないのは、やってみなくてもわかる。 誰が見ても君の勝ちさ。君が勝者として僕の降伏を受け容れてくれない限り、その杖を返してもらうわけにはいかないよ」 「いいえ、私がミスタ・グラモンと戦えたのは、ディーキン様が応援してくださっていたからです。 それなのに……、それに最後まで全力で戦うとお約束したのに、それを忘れて、私は、……」 シエスタは口篭もって俯いた。 悔しさに唇をかみしめ、少し震えて、目に涙まで浮かべている。 彼女がこの戦いを自分の負けだと感じたのは、本当を言えば剣を手放したから、などという形式的な理由からではなかった。 ギーシュは、誰が見ても自分の負けだと言った。 だがそれ以前に、もしディーキンの歌による援護がなければ、自分はとっくに倒されている。 他の誰が知らなくても、自分にとっては明らかなことだ。 他人の援護のお陰で戦えているだけだと知りながら、最後には慢心し、自分のものでもない力に思い上がってしまった。 虚栄と傲慢の罪に塗れてしまった。 その結果が、あの被弾である。あれは、歌の力によって守られていなかったら、致命的だっただろう。 苦痛こそ殆どなかったが、精神的なショックは大きかった。 最後まで全力でお相手しますなどと約束しておきながら、あんな不義で、恥知らずな考えを胸に抱いてしまった自分が許せなかった。 望外の助力まで得ておきながら、なんという無様な体たらくか。 こんなことで、どうして他人の不義を咎める事などできようか。 「……………、」 ギーシュは神妙な面持ちで、そんなシエスタの姿を見つめた。 何故ここまで彼女が落ち込んでいるのか、どうして勝ちを受け容れないのか、彼ははっきりと理解はしていなかった。 ただ一つだけ確信したのは、このメイドが高貴な心を持っているという事。 おそらくは、貴族である自分以上に――――。 「……分かった、それではこの戦いには勝者はいないということだ。 それでも、たとえ君が勝者でなくとも、僕が敗者である事は変わらない事実だ」 そうきっぱりと宣言すると、人ごみの中にモンモランシー、ケティの姿を見つけて、詫びの言葉を述べてから深々と頭を下げた。 それからシエスタとディーキンにも向き直って、同じように。 「すまない、2人とも、僕が悪かった! ……君たち2人に責任を負わせようとしたのは、僕が間違っていた。この通りだ!」 それを聞いてシエスタはハッと顔を上げると、慌てて自分も礼を返した。 「そ、その……、私の方も、貴族様に逆らうような事をしてしまって申し訳――――」 「いや、あれは悪いのは僕の方だった。君に否はない」 ギーシュはその言葉を押し留めると、剣を拾ってシエスタに差し出した。 「君は自分が敗者だと言うが、今、僕が否を認められたのは君の……、いやあなたのお陰だということを忘れないでほしい。 そのあなたが堂々と胸を張っていてくれないと、僕がますます惨めになるだろう?」 「あ………、は、はい!」 2人がそれぞれ剣と杖を差し出して交換すると、誰かが拍手を始めた。 それを皮切りに、すっかり静まり返って事態を静観していた観衆から満場の拍手と喝采が沸き起こる。 ディーキンは何か場に会った演奏をしようかとリュートに手を掛けたが、周りの様子を見てもうその必要もないと悟ると、自分も拍手に加わった。 こうして、誰も傷つかず、誰もが勝者であり敗者であるという、奇妙な決闘は幕を閉じた。 後にディーキンによって詩の形にされ、永く歌い継がれることになる物語を残して………。 前ページ次ページNeverwinter Nights - Deekin in Halkeginia
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1624.html
あの後、ルイズと一緒に朝食の席へ向かった。 もちろんちゃんと服を着てだ。 今度ルイズに代えの服を買ってもらったほうがいいかもしれない。 代えの服があればあんなことにはならなかっただろうからな。 ルイズは必要なものであれば買ってくれるだろう。 というか代えの服なんて必要なのは当然に決まっているが。 買わないと言っても言いくるめればいい。 ルイズ相手なら言いくるめるのもちょろいもんだ。 私が朝食の場に現れた時にはもう既に家の者全員がそろっていた。 遅れたことに詫びを入れ空いている席に着く。 全員が昨日と同じ席に着いているので、空いている場所は昨日自分が座っていた席だった。 普段から自分が座る席が決まっているのだろう。 そんなどうでもいいことを考えながら私は朝食をとった。 そのさいシエスタの父親にオレンジを勧められたがシエスタに全力で怒られていた。 シエスタに何かを全力で言われた父親は何かはっとした顔になり全力で謝ってきた。 ……全力オレンジって一体なんなんだ。 口からでまかせで言っただけなのに…… それが頭から離れず悶々としながらも朝食取り終え、私は早々に自分の部屋へ戻ることにした。 だが戻る前に一つシエスタに聞いておかなければならないことがある。 「シエスタ。いつ草原を見に行くんだ?」 そう。いつ草原へ行くかだ。私はそれを見に来たのだ。 草原を見なければこんなちんけな村に来た意味は無い。 「そういえばそうね。わたしたちってそれを見に来たんだったわ」 ルイズはすっかり忘れていたのか、何かを思い出したような顔をしてそう言った。 「あ、そうですね。日が沈む前ぐらいが一番綺麗ですからその頃に行きましょう」 「わかった」 シエスタは食器を片付けながらそう言った。 しかし夕方が一番綺麗なのか。 まあ、夕暮れの景色は美しいものが多いからな。 「夕飯はヨシェナヴェですから楽しみにしててくださいね」 「ああ、楽しみにしとくよ」 「シエスタって料理が上手だから期待してるわ」 「はい!腕によりをかけて作ります!」 いい返事だ。 そう思いながら私は自分の部屋へ戻った。 午前中は特に何もないまま終わり、昼食も無事すんだ。 さてこれからどうするか。 午前中のようにベッドに寝転がって時を待つのか? というかそれ以外になにかすることがあるのだろうか? ルイズは午前中出かけていたらしいが私は出かける気にはなれない。 村を見るだけなら夜が明けきる前に走り回りながら見たしな。よく憶えていないが。 そんな時、シエスタのある一言がなんとなく私の心を揺さぶった。 「ヨシカゲさんにミス・ヴァリエール。お暇なら少し出かけませんか?」 「どこに行くの?」 「村の近くの寺院です。そこに『竜の羽衣』って呼ばれるものがあって、それを纏ったものは空を飛べるって言われてます」 この一言だった。 何故かはよくわからない。 ただ惹かれたのだ。その言葉に。 虫の知らせという奴だろうか? 「へえ、『風』のマジックアイテムかしら?」 「そんなたいしたものじゃありません。インチキなんです。どこにでもある名ばかりの『秘宝』。 でもこのなにもない村のなかではそこそこには見る価値があるんじゃないかなって思いまして」 「おもしろそうじゃない。行きましょうよ」 「ヨシカゲさんはどうしますか?」 そんな答えは決まっているようなものだ。 「行く」 「それじゃあ、もう少ししたら出ましょうか。ご飯食べたばかりですし」 「そうね。すこし休憩したほうがいいかも」 そして私たちは休憩のあと、村の近くの寺院へ行くことになった。 メンバーは私、シエスタ、ルイズの3人だ。 村の近くだというのだから歩いてそれほどもかからないだろう。 そして食後の休憩のあと、予定通り寺院へ向かうことになった。 というかもう寺院へ向けて足を運んでいる。 「実は……、『竜の羽衣』の持ち主、私のひいおじいちゃんだったんです」 「そうなの?」 「はい。ある日、ふらりとこの村に、ひいおじいちゃんは現れたそうです。そして、『竜の羽衣』で、東の地から、この村にやってきたって、皆に言ったそうです」 「すごいじゃない」 「でも、だれも信じなかったんです。ひいおじいちゃんは、頭がおかしかったんだって、皆言ってます」 シエスタの曽祖父はそのあと色々あってタルブの村に住み着いたらしい。 ここで暮らすようになると一生懸命働いて金を作り、その金で貴族に『竜の羽衣』に『固定化』かけてもらったそうだ。 空も飛べないインチキなものを大事にしていた以外は働き者で皆からそう好かれていたらしい。 そんなことをはなしながら私たちは歩いていた。 しかし、シエスタとルイズ、なんだか仲がよくなってるような気がするな。 シエスタの口調は丁寧だがそれだけで、緊張も殆んどなく気楽に喋っている。 ルイズもそれに不満を持っていないようだし。 旅の間になにかあったのだろうか? 「あ、あそこです。あそこに見える建物が寺院です」 そう思っているうちにどうやら着いたらしい。遠くのほうに建物が見える。 「あの寺院、実はあれひいおじいちゃんが建てたんですよ」 「建築までできたの?」 「はい」 寺院は草原の片隅に建てられていた。 しかし、近づくにつれわかったが、なんだか日本建築みたいな感じだな。 そんなことを思っていた私は数分後、寺院にあるものを見て月まで吹っ飛ぶ衝撃に襲われた。
https://w.atwiki.jp/moejinro-log/pages/113.html
デジュー さわやかな朝がやってきました 村の川辺に無残に引きちぎられたオペこさんの死体が見つかったようです… デジュー /chjoin ピットガレージ デジュー 村人の皆様、今日もがんばってください オペこ 死滅 3 (ピットガレージ) BBL まあ無駄な疑いでしたけどね デジュー 昼の部スタートです 3 (ピットガレージ) シエスタXX いざ指定となると 1 (でじ村) SEIRIOS おーのー 1 (でじ村) エルレイナ シンプルな遺言だなwww 1 (でじ村) シキワロス さあさあ・・・ 1 (でじ村) エルレイナ 占いロラ続行かな 1 (でじ村) かこちん 占いCO ソラユイ○ 狼帽子かわいいです 3 (ピットガレージ) シエスタXX 発言内容までみて寡黙とか判断できないよねー ソラユイ は デジュー に言った さっきー 1 (でじ村) エルレイナ もうどうせ白しかでない ソラユイ は デジュー に言った まちがった 1 (でじ村) ソラユイ さっきー 3 (ピットガレージ) デジュー やべぇ、普通に時間オーバーsちゃった 1 (でじ村) シキワロス 最終日が確実なのは占いロラ続行 1 (でじ村) かこちん ついでに デジュー●狼でもこうも違うとは( 3 (ピットガレージ) デジュー てへぺろ 3 (ピットガレージ) BBL ドンマイ 3 (ピットガレージ) オペこ お邪魔します 3 (ピットガレージ) シエスタXX おつおつ 3 (ピットガレージ) オペこ 死んだ・・・ 3 (ピットガレージ) BBL お疲れ様でした 3 (ピットガレージ) jinjahime ドドンマイマイ 1 (でじ村) エルレイナ わたし視点かこさん真だけど 1 (でじ村) かこちん もう、吊られるだけなのでネタに走りましたごめんなさい 3 (ピットガレージ) jinjahime おつかれー 1 (でじ村) ソラユイ 最初に誰か指定したときジンジャーはしえすたさんーカコチンはーシッキーえらんだじゃん 1 (でじ村) エルレイナ 決め打ちしろとかいっても 1 (でじ村) エルレイナ 猛反発くらうだけだろうし 1 (でじ村) かこちん うん? 1 (でじ村) シキワロス ん 1 (でじ村) エルレイナ じっくり話し合うためにも 1 (でじ村) かこちん ソラさんそれでそれで? 3 (ピットガレージ) BBL シッキーとは新しい呼び方だなあ 1 (でじ村) ソラユイ でー 3 (ピットガレージ) オペこ 狩人COって 1 (でじ村) ソラユイ かこちんしっきー●っていったじゃん 1 (でじ村) シキワロス うむ 3 (ピットガレージ) オペこ あの時点でする必要あるんですか? 1 (でじ村) かこちん はい 1 (でじ村) ソラユイ じゃあ最初にぜったいシッキーえらばないじゃん 3 (ピットガレージ) BBL ●が狩人ならOKだと思います 1 (でじ村) ソラユイ 狼どうしなら 3 (ピットガレージ) オペこ なるほ 3 (ピットガレージ) BBL それ以外なら必要ないかな 3 (ピットガレージ) jinjahime だって、噛む場所ない&狼全露呈=グレーは確定白 3 (ピットガレージ) BBL まあその場合対抗出ると思いますけどね 1 (でじ村) シキワロス 我がワロス家につたわる、猫書房:人狼1000の勝ち方でも、この選択は載っていない。 1 (でじ村) かこちん だね 囲うことはあっても吊りにもってかない 1 (でじ村) エルレイナ 吊れちゃったらシャレにならないからまずえらばないね 1 (でじ村) ソラユイ じゃあー 1 (でじ村) ソラユイ しっきー 3 (ピットガレージ) シエスタXX これは決まったか? 1 (でじ村) ソラユイ 狼じゃないー? 1 (でじ村) シキワロス 俺つられたら負けだからさすがにあがくけど 1 (でじ村) シキワロス とりあえず占いロラ完遂しよう 3 (ピットガレージ) BBL あーそう考えればいいのか 1 (でじ村) かこちん 狼じゃないー?っていうのは 3 (ピットガレージ) シエスタXX なんかソラさんが確信に触れてる気がするwww 3 (ピットガレージ) BBL わざわざそんなこと狼がしないと思われますからね 1 (でじ村) かこちん どっちともとれる発言ですね 1 (でじ村) シキワロス 流れ的に 1 (でじ村) ソラユイ しっきーが狼 1 (でじ村) シキワロス 俺が狼と見られてる 3 (ピットガレージ) jinjahime うわーーソラさんの信頼がなぜかかこちんラインに沿ってる(´・ω・`) 1 (でじ村) シキワロス 理由は十分だけど。 1 (でじ村) エルレイナ シキさん吊りたいけど、占いロラして明日じっくり話し合いたいなら占いロラで確実に最終日もってくのもあり 3 (ピットガレージ) BBL jinjaさんを信じた私が間違っていた 3 (ピットガレージ) BBL たぶん デジュー 5分経過(あと2分) 1 (でじ村) ソラユイ まにあうなら 1 (でじ村) ソラユイ うらないろーらー 1 (でじ村) かこちん うむ 1 (でじ村) ソラユイ しよー 3 (ピットガレージ) BBL でもなんで潜伏しようとしたんだろう 1 (でじ村) かこちん 私に投票で 1 (でじ村) ソラユイ はーい 3 (ピットガレージ) jinjahime 狼だからでしょ 1 (でじ村) かこちん 私はシキさんにしておくよ 1 (でじ村) エルレイナ わたしはシキさんいれるけど、わたしを村きめうちしないならかこちんさんいれてね 1 (でじ村) SEIRIOS ううう。議論参加できなくてすまない・・・ 1 (でじ村) かこちん ってwwwエルレイナwww 1 (でじ村) シキワロス www 1 (でじ村) シキワロス んま 1 (でじ村) かこちん 吹いたしw 1 (でじ村) シキワロス 俺はあがこうともあまりおもわん 3 (ピットガレージ) BBL でもなあ 占い理由とソラさんの推理で考えがだいぶ変わってきました 1 (でじ村) シキワロス 村アピ:特になし 1 (でじ村) シキワロス これが最大の村アピ 1 (でじ村) エルレイナ だって、わたし視点ではシキさんだものLW… 3 (ピットガレージ) シエスタXX 噛まれ対策でしょ? デジュー あと1分 1 (でじ村) SEIRIOS 占いロラの方向でいいのかな 1 (でじ村) エルレイナ じっくり明日議論したいならかこちんさんでいいんじゃないかな 1 (でじ村) シキワロス うん 1 (でじ村) かこちん じゃあ私も村CO! デジュー 20秒前 1 (でじ村) エルレイナ 村騙り!? 1 (でじ村) ソラユイ えーーーー? 1 (でじ村) かこちん なわけないwww 3 (ピットガレージ) jinjahime 村COってあんた、占いCOしてるやん 1 (でじ村) デジュー ---------------STOP--------------- 1 (でじ村) デジュー ---------------STOP--------------- 1 (でじ村) デジュー ---------------STOP--------------- デジュー 夜まで時間がありません 皆様今日の尊い犠牲をお選びください(会話はストップです) デジュー 投票は私に直Tellでお願いします 3 (ピットガレージ) BBL 噛まれたら対抗は狼確定してしまうので噛まれないと思っているのですが・・・ シキワロス は デジュー に言った かこちんさんに。 3 (ピットガレージ) BBL そうでもないのかな? SEIRIOS は デジュー に言った かこちんさんに投票します 2 (三矢の刺客) エルレイナ シキさんかな 2 (三矢の刺客) かこちん シキさんでw ソラユイ は デジュー に言った かこちんー かこちん は デジュー に言った シキワロスさんで 3 (ピットガレージ) jinjahime 噛んで逆囲いにする手もある エルレイナ は デジュー に言った シキワロスさんで~まぁつれないだろうな~ 2 (三矢の刺客) かこちん いや、今の村アピって今から吊られますって言う感じだったよね・・・・ 3 (ピットガレージ) BBL なるほどね 3 (ピットガレージ) シエスタXX 手はあるけど薄くね? 3 (ピットガレージ) jinjahime 薄いよー私ならやるけどね 3 (ピットガレージ) デジュー さてさて最終日 2 (三矢の刺客) エルレイナ あきらめた狼みたいなw 3 (ピットガレージ) jinjahime 最終日濃厚だけど 3 (ピットガレージ) シエスタXX 相方の狼が納得するのかな 3 (ピットガレージ) jinjahime (*´・ω・)(・ω・`*)ネー 3 (ピットガレージ) デジュー GJ出ても吊り増えないしねー デジュー あと1分 3 (ピットガレージ) シエスタXX 狼1なら俺も奇策にでるんだけど 3 (ピットガレージ) jinjahime 騙りした時点で吊られるのは確定だし 2 (三矢の刺客) エルレイナ もにーさんシキさんいれたらおもしろいなw 2 (三矢の刺客) かこちん 無いとは言い切れない デジュー 20秒前 3 (ピットガレージ) BBL 狼1の狂人で狼なったら占いCOもありかな 2 (三矢の刺客) エルレイナ どきどき 3 (ピットガレージ) シエスタXX 素直にソラさんGJと言ってあげたい 3 (ピットガレージ) BBL 狂人が空気読んだらですけどね かこちん 3票 シキワロス 2票 デジュー さよならかこちんさん…あなたの勇姿は忘れない デジュー /chjoin ピットガレージ デジュー 日が沈み始めました よい子も悪い子も寝る時間です 2 (三矢の刺客) エルレイナ ちっw デジュー 役職の方は私にTellお願いします 3 (ピットガレージ) BBL ソラさんMVPかな かこちん サーセン重量不足でうごけませんorz 3 (ピットガレージ) シエスタXX もし推理当たってたなら 2 (三矢の刺客) かこちん サラだバー デジュー そこでいいよww 2 (三矢の刺客) エルレイナ まぁセイさん噛みだな~ソラさん狩人だったらもうまけでいいやww 3 (ピットガレージ) シエスタXX 流れはソラさんが掴んだように感じる 3 (ピットガレージ) BBL ですね かこちん ! 3 (ピットガレージ) BBL あの推理は説得力がありました エルレイナ は デジュー に言った セイリオスさんを噛み噛み~~ 3 (ピットガレージ) かこちん てすてす 3 (ピットガレージ) シエスタXX 言い方が上手いよねw 3 (ピットガレージ) シエスタXX おつおつ 3 (ピットガレージ) BBL 初日の勘違いはビックリしましたけどね デジュー は エルレイナ に言った 了解ー、噛み噛みしちゃっていいよ! 3 (ピットガレージ) シエスタXX だな 3 (ピットガレージ) BBL お疲れ様でした 3 (ピットガレージ) jinjahime 信じる理由とか、私がこぐねえだからで十分じゃない? 3 (ピットガレージ) jinjahime おつかれー 3 (ピットガレージ) BBL にゅたこ派なので・・・ 3 (ピットガレージ) jinjahime 狼め・・・ 3 (ピットガレージ) シエスタXX エイプリルフールネタ? 3 (ピットガレージ) シエスタXX こぐねぇとか 3 (ピットガレージ) かこちん さて、どっちが勝か・・・ 3 (ピットガレージ) シエスタXX 存在悪じゃん? 3 (ピットガレージ) デジュー ふあーあ、実はこれキンクリできちゃうのよ 3 (ピットガレージ) デジュー どうする? 3 (ピットガレージ) BBL マジで 3 (ピットガレージ) シエスタXX まじすかw 3 (ピットガレージ) かこちん あぁ狼しかいないからね 3 (ピットガレージ) デジュー エイプリルフールだけどね 3 (ピットガレージ) かこちん 狼が指定した後ならできるんじゃね(っておい 3 (ピットガレージ) BBL 騙された!!!! 3 (ピットガレージ) かこちん デジューさんが狂人でしたか ソラユイ は デジュー に言った ソラのいってるのあたってたらーソラがかわれるー 3 (ピットガレージ) シエスタXX でじゅこちね! ソラユイ は デジュー に言った かまれるー ソラユイ は デジュー に言った ひとりごとー 3 (ピットガレージ) jinjahime みんなしってる>デジューが変態 3 (ピットガレージ) BBL 変態のくせに・・・ 3 (ピットガレージ) デジュー なんで変態なのよ!? 3 (ピットガレージ) jinjahime いわせんなはずかしい 3 (ピットガレージ) デジュー GMに変態はいません 3 (ピットガレージ) かこちん 狩人ソラさんとみてたが・・・どうなんだろう デジュー あと1分 3 (ピットガレージ) BBL え・・・どうみても変態・・・ 3 (ピットガレージ) デジュー おいおい、BBLさんは信じてたのに・・・ 3 (ピットガレージ) シエスタXX いいえでじゅこは常識人です!!! 3 (ピットガレージ) デジュー なぁ、エイプリルフールだろ? デジュー 20秒前 3 (ピットガレージ) シエスタXX でじゅこ最高!!はっはー 3 (ピットガレージ) BBL だって初めて会ったときは普通のカッコだったのに次見たらその恰好だったんだよ 3 (ピットガレージ) BBL ビビりましたよ 3 (ピットガレージ) かこちん でじゅこ変態 ひゃっはー 1 (でじ村) デジュー ---------------STOP--------------- 1 (でじ村) デジュー ---------------STOP--------------- 1 (でじ村) デジュー ---------------STOP--------------- 噛み SEIRIOS 2012-3-31 でじ村(5)
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4274.html
563 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/09/30(土) 23 45 35 ID fTTyy3DP 『序章』 『一度でいいから私も乗せて下さいね…』 奇しくもシエスタのその願いは実現していた。 コルベールが修理してくれた零戦の試験飛行中… ひょこっと後部座席から顔を出したシエスタに才人は驚いたが、 今更空に放り出すわけにもいかない。 かくして二人の空のデートは現実のものとなったのである。 シエスタは最初は怖がり目を丸くしていたが… やがて慣れてくると、凄い!凄い!と大はしゃぎを始めた。 「ひいおじいちゃんも、こんな景色を見ていたんですね!」 眼下に広がる陽の香る草原を見ながらシエスタは感激していた。 「もう少し遠くに行って見よう、燃費を調べたいんだ」 ガソリンの積載量を計器で確認しながら才人は言った。 「良く分かりませんが、才人さんと一緒ならどこまででも♪」 シエスタは才人を独り占めしている事実に酔いしれていた。 才人がふいに「なぁ」と、立てかけてあったデルフ話しかける。 「なんでぇ相棒!」「どうしよう…」「なにが?」 しばらく考えた後デルフは口を開いた! 「ははぁ〜ん、帰った後の事かぁ?!」 才人の顔が一瞬こわばった。 「図星か?!おしおきはキツいもんなぁ〜」とデルフは笑った。 会話の内容から察したシエスタが口を挟んだ。 「わ、私が勝手に乗ってしまったのが悪いんですから…えと、えと」 「ミス・ヴァリエールには、私からちゃんと説明します!」 「だから才人さんはお気になさらないで下さい」 シエスタは両手のこぶしを握り締め、硬い決意を表明して見せた。 「あ、ありがとう…」 一応、礼は言ってみたものの…二人で空の散歩に出掛けていた事を、 あのルイズが許そうはずも無く、おしおきは間違い無いであろう。 面白そうに笑うデルフを鞘に深く押し込み黙らせ、進路を確認した。 564 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/09/30(土) 23 46 24 ID fTTyy3DP 『旅立ち』 ルイズはやきもきしていた。 才人の飛行機にシエスタが潜り込んだらしいという噂を小耳に挟んだからだ。 使い魔が飛行機で出かけたことはいい。修理したから試運転というのも、 意味は良くわからないけれど、必要な事らしいから許す。 でも、あのメイドと一緒「かもしれない」とはどういう事? 今更追いかけようにもタバサのシルフィードでは追いつけない…。 今やその怒りは嫉妬となり、頂点に達しようとしていた。 嫉妬の炎は身を焦がし、嫌な想像や妄想ばかりが浮かんでは消えていった。 キスしたくせに、キスしたくせに、キスしたくせに、キスしたくせに〜! 昼食もろくに喉を通らず、不安を打ち消すようにベッドに潜り込んだ。 「見てごらん!綺麗な夕焼けだよ!」 才人が指差す方向には太陽が沈みかけ、真っ赤な姿を見せていた。 「シエスタ?どうしたの?」 見るとシエスタは怪訝な顔でその光景を見つめていた。 「夕焼け…って何ですか?あの真っ赤な色は何ですか?」 「こういうの…見たこと無いの?」 才人は、異世界だからそうなのかな?と気にも留めずに妙に納得した。 「あ、あの才人さん?!」 「なに?俺のいた世界では、こういうのを『夕焼け』って言うんだよ」 「い、いえ、そうじゃなくて…」 改めて夕焼けを見た才人は驚いた!沈みかけた太陽と思っていたが… 太陽は地平線に沈んでいる訳では無かったのである。 「月の影…」 地平線に見える山に見えたのは、まさしく月の影だった… その影に隠れる太陽…みるみる暗くなる景色…。 「ま、まさか?!」「日蝕?」「ばかな!」 その時デルフが口を開いた!「どうする?相棒!千載一遇の好機だ!」 シエスタを乗せたままだ、ルイズにもまだ何も言ってない。 才人の口から「…ルイズ」の言葉が漏れた瞬間、シエスタが動いた! 背後から操縦桿を握り、日蝕めがけてコースを固定した。 「シ、シエスタ!いったい何を!?」 シエスタは決意に満ちた表情で、搾り出すように言葉を告げた。 「私、平気です!才人さんと一緒ならどこでも。たとえ異世界でも!」 「それに…」「異世界なら…もう、ミス・ヴァリエールも…」 シエスタの決意に、才人は抵抗していた操縦桿の力を緩めた…。 「本当にいいの?」「はい、後悔なんてしません」 「こりゃ、おでれーた」デルフが呆れたように言い放った。 零戦は、やがて日蝕の中へと消えていった…。 568 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 00 18 38 ID hzfqaHg4 さぁ続きは才人&シエスタin日本編だ!気が向いたら書いてみよう。 576 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 02 46 30 ID hzfqaHg4 『日本』 才人とシエスタは大通りに面した公園で一休みしていた。 飛行機は民間の飛行場に着陸させ、空いている古ぼけた格納庫に隠した。 近所の人の話によると、もうずいぶん前に使われなくなった廃棄飛行場で、 災害などの緊急避難時の集合場所に利用する為に放置された場所らしい。 幸い、こちらの世界に戻ってもガンダールヴの力は残っていたようで、 着陸時も難なく無事に済んだ。左手にはルーンもしっかり残っていた。 シエスタは見るもの全てに興味を示し、不安がる事も、怖がる様子も、 全く無いのは意外だった。 「才人さん、あれは何ですか?」「これって触っても平気でしょうか?」 屈託の無いシエスタの様子に、思わず笑みがこぼれる…。 「才人さんと一緒ですもの、不安なんて何もありません♪」 シエスタは「それに曽祖父の故郷ですから…」とも付け加えた。 「よう、相棒!」こちらの世界に戻ってから初めてデルフが口を開いた。 「これからどうするつもりなんだ?」 才人は正直困っていた…勢いに任せて戻ってきたものの、このまま家に… しかもシエスタや「話す剣」を連れて帰る訳にも行かないだろう。 (いや、それ以前に銃刀法違反で逮捕されてしまうかもしれない…) 自分は行方不明…もしかしたら既に死んだ事になっているかもしれない。 まずは現状の把握と、えと…その次に… と、考えていると腹が鳴った。シエスタが満面の笑みで振り返り… 「お腹、空いちゃいましたね♪」 そこで才人は初めて無一文な事を思い出した。コンビニ弁当一つ買えない。 困ったような顔をしている才人の心を見透かしたように… 「心配ありませんよ!ちゃんとお弁当作って来ましたから♪」 とニッコリと微笑んだ。 才人はシエスタの作った弁当を食べながら、今夜の宿を思案していた…。 577 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 02 48 19 ID hzfqaHg4 『残されたルイズ』 ルイズは悶々としていた…。 夜になっても戻ってこない使い魔。例のメイドも帰っていないらしい。 もはや二人が行動を共にしていることは火を見るよりも明らかだった。 キスしたくせに…キスしたくせに…キスしたくせにぃ〜! 何ども心の中で呟きながら、ある場所に向かっていた。 途中ですれ違ったキュルケに「どうしたの?」と聞かれても耳に入らず、 一心不乱に前を見つめ、全く歩みを止めようとはしなかった。 ふ〜ん、何かあったわね…とばかりにキュルケは興味本位で後に続いた。 階段を降りる途中で会ったタバサに「面白そうだから付いてらっしゃい」 と、半ば強引にキュルケは同行させた。 学院の一角にその建物はあった。普段誰も立ち入らないひっそりとした 建物だが…その静寂は一瞬にして破られた。 かくしてドアは開かれた!というよりも蹴破られたのだ、ルイズによって。 「才人はどこ?!」 開口一番、ルイズはコルベールに言い放った。 「な、なんだねいきなり?まぁ来客は珍しいので、歓迎はするが…」 「サイトはどこにいったの?」「いまどこにいるの?」 まくし立てるようにルイズが畳み掛ける。 「ま、まぁ、落ち着いて…」 「いったい今どこで何してるのよ?」 なるほど…そういうこと♪ と、キュルケが鼻で笑う。 コルベールはコホンと一息ついた後、こう続けた。 「実は…私にも分からないんだ」 「ど、どういう意味?」 「計算では、とっくに帰ってきているはずで、がそりんも多く入れてなかった」 「それって…」 「おそらくどこかに降りているか…もしくは…」 「な、何?何よ?」 「落ちた…か」 ルイズの顔色がみるみる変わるのが誰の目にも見て取れた。 何かを思いついたように外に走り出そうとするルイズをキュルケが引き止めた…。 「どこに行くのよ?」 「決まってるでしょ!探しにいくのよ!タバサ、シルフィードをお願い!」 「探すってドコを?落ち着きなさい!」 「だって、だって…才人が…才人が…」 「アンタ…そんなに…」 「それに」 「それに?」 「あのメイドと一緒ってのが、ぜ〜ったいに許せない!」 キュルケは呆れ顔で見つめながら、タバサを見た… 「夜は危険」 「そうね、今夜はもう遅いから…とにかく夜明けまで待ちましょう」 皆に促され…ルイズはしぶしぶ承諾して部屋に戻った。 579 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 06 03 05 ID hzfqaHg4 『宿泊』 「私、村娘ですし…野宿でも一向に構いませんよ♪」 シエスタはサラリと言ってのけたが、都会の真ん中でそれは無謀だ。 公園で野宿などしようものなら不審者扱いで通報されるか、ヘタすりゃ 逮捕だ。おまけにシエスタはメイド服のままで目立って仕方がない。 とにかく落ち着ける場所が必要だったが…生憎と使える金が無い。 シエスタは笑顔で「少しなら持って来ています♪」 と、大切そうに抱えた鞄の中から、少しばかりの銀貨を渡してくれた。 才人もポケットを探り…ありったけの金貨と銀貨を取り出した。 シエスタは驚いた顔でそれを見て 「才人さん、凄い大金を持ち歩いてるんですね」と言った。 しかしハルケギニアの金は日本では使えない…途方に暮れていた…。 「才人さん…そのお金…この世界では使えないんですか?」 「うん…残念ながら…使えない」 「なぁ相棒!思うんだけどよ!」デルフが口を挟んだ! 「俺ぁ、何度か鉄屑扱いで溶かされそうになった事があるんだが」 デルフが最後まで話し終わらないうちに才人は弾かれた様に歩き出した! 「お前、最高の相棒だよ!」 「おぅ、あたりめぇだぁな!」 シエスタは訳も分からず慌てて才人の後に続いた。 才人は金貨と銀貨を「貨幣」としてでは無く、金塊・銀塊として売った。 グラム当たりの価格、今日の金相場がどうとか色々な面倒はあったが、 なんとか現金を手に入れることが出来た。 その金額は2人でしばらく暮らすには充分すぎる金額で、高校生の持つ 金としては破格だった。正直、こんな大金になるとは思っていなかった。 とにかく安宿をと探す才人にシエスタは、出来れば「風呂」に入りたい と言い出した。学院の庭で入ったような「風呂」を体験したいと…。 さすがに銭湯の女湯にシエスタ一人を入らせるのは不安だったので、 仕方なく…大きな風呂付のラブホテルを利用することにした。 「ここですか?安宿でいいのに…まるで貴族用の宿じゃないですか!」 豪華な造りの外観に、シエスタは少々気後れしたような様子だったが、 ここなら余計な詮索もされず都合がいいんだ、という才人の言葉を信じ 手を繋いで一緒に派手なアーチをくぐった。 「ごめんくださいまし!お部屋をお願いしたいのですが…」 メイド口調でシエスタは大きな声でフロントに呼びかけた。 貴族の従者としての躾もされているシエスタにはごく普通の行為… しかし…ここはラブホテル…フロントから手が出て指を刺す。 その方向にはパネルがあり、空室の部屋のランプが点灯している。 状況を飲み込めず呆気に取られるシエスタにシステムの説明をする。 「便利な仕組みなんですね?!魔法みたいですね♪」 目をキラキラ輝かせているシエスタに、気に入った部屋を選ばせた。 やはり選んだのは「お風呂の大きな」部屋だった。 才人はとにかく落ち着けるなら、どんな部屋でも良かったのだ。 部屋に入りデルフをクローゼットに押し込むとソファに身体を投げ出した。 シエスタは終始大騒ぎではしゃいでいた。特にエレベーターに興味津々で、 扉が開くたびに違う世界にいける「どこでもドア」のように解釈していた。 「今日は疲れただろ?ゆっくり休むといいよ、後の事は明日考えよう」 「あ、あの…才人…さん」 「なに?」 「お風呂…一緒に…入りませんか?」 「え?で、でも、それって」 「あの、私、この世界の…お風呂の使い方とか分かりませんし…」 赤面する才人を尻目に…シエスタは何の躊躇も無く既に服を脱ぎ始めていた。 581 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 06 57 42 ID hzfqaHg4 『ルイズ&キュルケ』 部屋に戻ってもルイズは落ち着くどころか、眠る事さえ出来なかった。 どんなに振り払っても、頭の中に才人とメイドの情事が浮かんでは消え、 想像は妄想となり…顔が赤らんでいるのが自分でもハッキリ分かった。 「なに?なに?なんでこんなに気になるのよ?!」 使い魔のくせに!キスしたくせに!メイドのどこがいいっていうの? そりゃ、まぁ少しは胸が大きいかもしれないけど… 私だって…私だって…もう少しすれば、きっと…きっと… 無意識に自分の胸を触り…改めて大きな溜息…。ばっかじゃないの!? 魅力っていうのはね、胸の大きさだけで決まるもんじゃないんだから! 自分で言って、更に自己嫌悪に陥る… 揉めば少しは大きくなるかしら…前にキュルケがそんな事を言ってたわ。 恐る恐る…ゆっくりと自らの胸をまさぐり、揉みしだいてみた。 その時、ふいにドアが開きキュルケが顔を覗かせた。 「あら〜?お邪魔だったかしら〜?♪」 「キ、キュルケ!あ、あんた…の、覗いてたわね!」 「心配だから様子を見に来ただけよ♪そしたらお楽しみの真っ最中♪」 キュルケは悪びれずケロっと言ってのけた。 「出てってよ!」 「あらん♪ダーリンがいなくて持て余してるモヤモヤした気持ち…」 一呼吸置いた後、ゆっくりと艶のある声で言葉を続ける。 「解消する方法…教えてあげようと思ったのにぃ♪」 一瞬言葉に詰まり、やがてルイズは口を開いた。 「な、なによ?」 「あらん♪知りたいの?」 「き、聞くだけなら聞いてもいいわよ!」 「『教えてください』でしょ?」 「う、う〜…お、おしえてくださいぃ!これでいいでしょ?」 「その一言が聞きたかったのよ!ツェルプストー冥利に尽きるわぁ♪」 「いいから早く教えなさいよ!」 「はいはい、慌てないの♪」 キュルケは後ろ手に杖を振りドアに、かなり強固なロックの呪文を唱えた。 その瞬間ルイズは…あのキュルケに教えを乞うた事を激しく後悔した。 586 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 08 47 05 ID hzfqaHg4 『独り遊び』 タバサは部屋で静かに本を読んでいた。区切りの良い所でその本を閉じると、 彼女なりにルイズの様子を気遣い…風の魔法で部屋の様子をそっと伺った。 すると風に乗ってルイズの声に混じりキュルケの声が舞い込んできた…。 何事かと耳を澄ます…やがてそれが艶のある夜の宴の声だと分かるまでに、 そう長い時間は掛からなかった。 小さな頃から他人との交わりを避けてきたタバサは一人遊びに長けていた。 それはガリア王家の血筋ゆえなのかもしれない…。また違った意味で、 現ガリア国王ジョゼフも、一人遊びに長けた人物であった。 タバサは聞き耳を立てながら…幼い身体を自らの指で愛撫し、時には… 風の魔法で優しく撫で回し、あらゆる快感をむさぼった。 その指が下半身に至り、無毛の丘に辿り着き…緩やかな渓谷に触れる頃… そこは既に溢れんばかりの湖と化していた…。 「うっ…」 噛み殺したような声を出し、苦痛にも似た表情…普段なら絶対に見せない、 自分一人だけに許されるこの聖域だけで行われる行為であった。 キュルケには何度か求められた事もあったが、タバサは頑なに拒絶していた。 今は何よりも一人の時間が大切なのだ。 心身ともに…人と交わるにはタバサは、まだまだ幼く未熟なのであった。 そうして2度目の絶頂を迎えた頃…風の声も止んだようだ…。 タバサは気だるそうに下着を代えた後…静かに眠りに落ちていった…。 589 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 09 36 12 ID hzfqaHg4 『混浴』 確かにその風呂は大きかった! 学院の庭の片隅に大鍋を使い即席に作った風呂とは雲泥の差であった。 ジャグジー付きである、なんと照明まで付いている、泡風呂である! 才人自身こんな場所は初めてなのだが…シエスタの手前頑張ってみた。 そんな事してもシエスタも何も知らないのだから意味の無い事だけど、 何ていうか…男の本能がそうさせたのだ…たぶん。 「才人さん、これってどうすればいいんでしょう?」 「あぁそれはね、こうして捻るとお湯がココから…」 ドシャー!バシャバシャ!! 「あ、あの才人さん?違う場所から違うものが出てるみたいですけど?」 「あ、そうそう、こっちだった!」 ビシャー!ドバドバ!! 「キャ!つ、冷たい!」「あ、ご、ごめん!」 ダメだ…いくらガンダールヴでもラブホテルの装備じゃ全く意味が無ぇ〜。 何とかその場を取り繕い…浴槽にたっぷりのお湯を張り…シエスタを呼んだ。 「やっぱり大きなお風呂って凄いですね〜」 そう言いながらシエスタはバスタオルも巻かず産まれたままの姿で現れた…。 才人は目のやり場に困り、真っ赤になりながら浴室を後にしようとしたが、 シエスタにがっしりと二の腕を捕まれた!ふくよかな胸が直接腕に当たる。 「一緒に入りましょ♪って言ったじゃないですか」 「わ、分かったから…先に入っていて、後から行くから、ね?」 「約束ですよ、待ってますからね♪」 高鳴る胸の鼓動を抑えながら…一度浴室を後にした。 浴室からは「才人さぁ〜ん、まぁだですかぁ〜♪」と、声が…。 ここにはルイズもいない、告げ口する目撃者や覗き魔もいない、問題ない! 意を決した才人は服を脱ぎ…腰にバスタオルを巻きつけると浴槽の扉を開けた。 そこには浴槽に気持ちよさそうに肩まで浸かって幸せ一杯のシエスタがいた。 「才人さん、服を着たまま入るんですか?」 「あ、いや、これはバスタオルといって…服じゃなくて…えと…」 「恥ずかしいなら、私、後ろを向いていますから…どうぞ入って下さい♪」 そう言って後ろを向いたシエスタと背中合わせになる形で、才人は入った。 「久しぶりですね、一緒にお風呂なんて♪」 「また一緒に入れる事になるなんて、とっても嬉しいです♪」 そう言いながらシエスタは、こちらに向き直った。 屈託の無いキラキラした瞳で見つめられると…恥ずかしがっていることが むしろ恥ずかしいことなんじゃないかとさえ思える程だった。 「あの…才人さん…」「な、なに?」「お願いがあるんですけど…」 「抱きしめて貰って…いいですか?」 「え、で、でも…」 「才人さんの心の中にミス・ヴァリエールがいるのは承知しています」 「私…2番目でもいいんです。妾でもいいんです。」 「平民と貴族との関係なら、そういう事もあるって…ちゃんと知ってます」 階級社会の世界で育ったシエスタには、それはごく当たり前の事らしい。 事実、正妻の他に平民の妾を取る貴族の話は良く聞いていた。 シエスタをエロ貴族の魔手から救い出した事もあった。 なんて健気で一途なんだろうと思うと…とても愛しく思えてたまらなくなった。 気が付くと…唇を合わせ、激しく抱き合い、歯止めが利かなくなっていた。 608 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 13 34 39 ID hzfqaHg4 『使い魔の行方』 翌朝、ルイズは学院の誰よりも早く起きた! 実のところ一睡もしていなかっただけなのだが、真っ先に向かった先は… 「キュルケ!起きて!いつまで寝てんのよ!」 壊れんばかりにドアを叩き大声で怒鳴り散らした! しばらくするとカギの外れる音が聞こえ、ドアが開いた。 そこには大きく胸をはだけたままの姿で寝起きのキュルケが呆けていた…。 「何よぉ、こんな朝っぱらから?」 「こんなに早く起きるなんて…ルイズにしては珍しいじゃない?!」 一向に緊迫感の欠片も見せぬキュルケにルイズは苛立ちを感じた。 「そんなこと、どうでもいいじゃない!」 キュルケはルイズを嘗め回すように見た後、からかうように… 「アンタ、もしかして寝てないの?」 「そ、それが何よ?」 「昨夜の『あれ』じゃ…足りなかった?とか?」 ルイズは昨夜の出来事を思い出して顔を真っ赤に染めた。 「あら、可愛い♪」 「そんな事どうでもいいの!さぁ早く着替えて才人を探しに行くわよ!」 魔法を使いクローゼットから服を取り出し着替えながらキュルケは尋ねた。 「昨夜から探す探すって大騒ぎしてるけど、いったいアテはあるの?」 「な、ないけど…」「とにかく探すの!」「探さなきゃダメなの!」 キュルケは呆れ顔で 「まずタバサの所に行きましょ、シルフィードは必要みたいだから」 二人でタバサの部屋を訪ねると、いつも通り本を読んでいた。 「あのねタバサ…お願いがあるんだけど…」「…虚無の曜日」 「それは分かってるんだけど…」 相変わらずのタバサに頼み込み、シルフィードで王宮に向かう事にした。 国内の情報なら王宮の情報機関の耳に入るはず…というのがタバサの意見だった。 ルイズはアンリエッタ直属の女官という権限により、容易に謁見を許された。 「彼が消えた?」 「ただの外泊、朝帰りですわ…たぶん」と、キュルケがちゃかした。 「まさか…あの日蝕…」アンリエッタが呟くように言った…。 ルイズの顔色が青ざめた。 「日蝕、日蝕って?もうずっと無いはずじゃ?」ルイズの声が上ずる。 アンリエッタの側近が代わって報告書を読み上げた。 「昨日夕刻、タルブの東の空にて皆既日蝕を観測…との報告がありました」 「なにそれ?どういう事?」とキュルケ。 「一部の地域にだけ日蝕が?そんな事ありえないわ!」ルイズは困惑した。 「…虚無の干渉作用」タバサが静かに口を開いた…。 確かにタルブの空で虚無は発動した…その中心には才人もいた…。 同じ場所で…虚無の残り香のような物が作用した…?まさか? 「アルビオンとの戦闘の可能性は?」 「ありません」 メイドを乗せた才人なら、十中八九まず間違いなくタルブに向かうだろう。 そしておそらく… ルイズは急に目の前が暗くなり…その場に倒れこんでしまっった。 609 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 13 35 11 ID hzfqaHg4 『才人&シエスタ』 脱いだら凄いシエスタは健在だった。キスをすれば舌を激しく絡ませてくる。 風呂の中で才人は「胸は水に浮く」という、どうでもいい知識を身に着けた。 激しく抱き合っていた為に少々のぼせた二人は、続きはベッドでと風呂を出た。 私…とうとう才人さんのモノになるんだわ…少し怖いけど…でも…嬉しい。 先にベッドで待つシエスタの元に行くと、なぜかちょこんと正座をしている。 神妙な顔をして才人に向かい深々と頭を下げると… 「この度はお情けを承る事、光栄に存じます。末永く宜しくお願い致します。」 才人は一瞬ひるんだ!こ、これがあの世界での作法ってヤツなのか? 童貞の才人にとっては「この世界」だろうが「あの世界」だろうが初めてだ。 「こ、こちらこそ…よ、よろしく」と、当たり障りの無い返答をすると、 シエスタはいつもの表情に戻りニッコリ微笑みながら一言、 「やさしくして下さいね…初めてなんです…」と、すこし頬を染めた。 やがてベッドに横たわり…優しい口付けを交わし、体中にキスの嵐を…。 ルイズの数倍はあるであろう胸に顔をうずめ、優しく愛撫を始めた時… ふいにシエスタが聞いた。 「ミス・ヴァリエールとは…その、もう…したんですか?」 ふいに出たルイズの名前に一瞬動きが止まったが、更に愛撫を続けながら、 「いや、ルイズとは…まだしてない…」 「そうですか…『まだ』してなかったですか…」 「どうしてそんな事、今聞くの?」 「え、えと…それなら、私の勝ちかなぁって♪」 勝ち負けの問題なんだろうか?などと思いながら才人は攻め続けていた。 ややストレート気味のアンダーヘアーは柔らかく、まるで羽毛のようだった。 その奥の秘部に指が触れたとき…シエスタの身体がピクンと跳ねた…。 「あ、あぁ…才人さん…」 既にシーツを濡らすほどのシエスタの秘部に、才人はそっと漢の武器で触れた。 と、その時…大切な事を忘れていた事に気づいた。避妊である! 途中で動きを止め何やらゴソゴソ始めた才人に、シエスタが怪訝な顔で尋ねた。 「あ、あん、どうしたんですか?」 「あ、いや…避妊を、子供が出来たら困るでしょ?」 「どうしてですか?私、子供大好きですよ♪」 忘れていた…向こうの世界には「避妊」という概念すら存在していないのかも。 そういえばシエスタも8人兄弟の長女だって言ってたっけ…。 「いいんですよ、そのまま中でお出しになっても♪」 「責任とって下さいなんて言いませんから!」 「あ、でも、こっちの世界で暮らすから…責任とって貰わなくちゃですね♪」 「あ、えと、いや、その…」才人は…一気に萎えてしまった。 610 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/01(日) 13 37 25 ID hzfqaHg4 『メイド服』 「昨夜はゴメンね」 「いえ、いいんです、気にしないで下さい♪」 結局、昨夜は「ルイズ」「責任」の言葉に撃沈、何も出来なかった。 一介の高校生には荷が重過ぎるですハイ!しかも今や身分証明はおろか、 住民票すらあるかどうか怪しいのに…子供抱えて生活なんてムリだよ。 ホテルのチェックアウト前にシエスタと今後の事を話し合ってみた。 まずは現在の平賀家の状況! これは電話か実際に覗きに行けばなんとかなるだろう・・・たぶんね。 次にシエスタのひいおじいちゃんの子孫探し。 戦争中の行方不明なら戦没者として記録が残っているかもしれないし、 残された家族(いたらの話だが)の子孫もいるかもしれない。 特に目的も無く歩き回っても仕方が無いので、当面の目標と決めた。 しかし…メイド服は思った以上に目立つ! 出掛けにメイド服に着替えようとするシエスタに聞いてみた。 「どうして今日もメイド服なの?もしかして着替え…無い?」 「いいえ、これは昨日とは違ったタイプです♪着替えもありますよ」 「えと…出来れば他の服にして貰えると嬉しいんだけど…」 「メイド服以外で…という事ですか?」 「まぁ、そういう事」 「なら、とっておきのお気に入りがあります♪」 着替える為に奥の部屋に入る後姿が妙に嬉しそうだった…。嫌な予感。 そして…その予感は見事に的中した! 才人の目の前でクルリと一回転!指を立てて「 お ま た せ ♪ 」 それは紛れも無くセーラー服だった。 「ごめんシエスタ…やっぱ、メイド服で行こう」 今日はとりあえず…シエスタに服を買おうと心に決めた才人であった。 と、次から才人&シエスタin秋葉原 ルイズご乱心! 678 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18 54 48 ID vBbTRVxw 『溢れる想い1』 ルイズが目覚めると、そこは見慣れない部屋だった…。ランプの明かりだけで、 周囲の様子までは窺い知れないが、布団はもふもふふかふかで肌触りが心地良く 上掛けはとても軽い。中身はガリア産の高級羊毛だろうか…羽毛かもしれない。 天蓋付きのベッドはささやかながらもいくつもの美しい装飾品で飾られていた。 枕元に見覚えのある「ぬいぐるみ」があった… 「これは、たしか…」 寝ぼけ眼をこすり我に返ったルイズは、初めて自分が何処にいるかを知った。 アンリエッタ姫殿下の…寝室。 弾かれるように飛び起きたルイズは、服を着ていないことに気が付いた。 姫様のお部屋なら、クローゼットに服の何着かはあるだろうと…開けてみた。 色とりどりの寝巻きに緊急用の指揮服、今のルイズには不必要なものばかり。 指揮服用の下に着るコルセットが、なまめかしいラインをかもしだしている。 「こ、これが姫殿下のスタイル…」特に胸の辺りが…見るだけで虚しい。 試しにちょっとだけ…とも思ったが、ここは王宮、しかも姫殿下の下着だ… 身に着けることなど恐れ多くて出来ようも無い。ムリな相談だった。 しかし「寝るときには下着を着けない習慣」を知ってか知らずか、ご丁寧に 下着まで無いのは困った。冷静になって良く見れば…今来ている寝巻きさえ 私の物では無い。いったい誰が脱がしたの?これ、まさか姫様の寝巻き? 「落ち着けルイズ…落ち着くのよ…」 ここが姫様の寝室なら…扉の外に女官の一人や二人は控えているはず…と、 真横に垂れ下がる「呼び鈴紐」の存在に気付かずに大きな声を張り上げた! 「誰か!誰かいるんでしょ?!お願い!」 その叫びが終わるか終わらないかの内に扉がバタン!と大きな音で開けられ 一人の人物が駆け寄ってきた。逆光で顔は良く見えなかったが、それがいったい 誰なのかはすぐに分かった。アンリエッタ姫、その人だった。 「あぁルイズ、私の唯一無二のお友達!ルイズ・フランソワーズ!」 「よかった、よかった、目が覚めたのですね!」 「あ、あの姫殿下…これは…」 「いやだわルイズ、そんな堅苦しい言い方しないでちょうだい」 ルイズは「恐縮ながら」と付け加えた後、状況の説明をアンリエッタに求めた。 679 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18 55 25 ID vBbTRVxw 『溢れる想い2』 自分が倒れた後、キュルケとタバサが姫殿下の寝室に運んでくれた事。 姫殿下たっての希望により、自らの寝室の使用を周囲に進言した事。 その際「いつも脱いで寝るのよ」とキュルケが手際よく服を脱がせた事。 (姫殿下はルイズが下着を付けず寝る事など百も承知で驚きもしなかった) 二人は既に学院に報告がてら戻っていて、そのまま報告を待つという事。 そして最後に一番重要なこと…。 私が勝手な行動を取らない様に王宮内に留めて置くよう配慮したという事。 「ルイズ…ごめんなさい。今のアナタは…」 「分かっています、御前で取り乱し醜態を晒した事、深くお詫び申し上げます」 ゆっくりひざまづき深々と頭を垂れた。 「いえ、構いません、さぁ昔のように隣に座って、少しお話しましょ」 「そ、そんな」 「ここは私の寝室、他には誰もいません。何の為にここで休ませたと?」 「で、では失礼します」 とにかく頭を冷やして落ち着こう。王宮なら情報の第一報が真っ先に届く。 姫殿下も調査団を組織して現地調査や情報収集の指示を出してくれたらしい。 「国を上げての大騒ぎになっちゃたじゃない…」「ふぅ〜あのバカ犬…」 大きな溜息を一つ付くと…ぱふ!とアンリエッタの隣に腰を下ろした。 「そういえば…」談笑を始めたアンリエッタを尻目に、ルイズの頭の中は 才人の事で一杯になっていた。 「寂しいのですね…?」ふいの言葉に驚いた。 「え?えと…何がでしょう?」 「隠しても分かります…好きなんでしょ?」 何とも姫殿下らしい極めて的確な的を射た物言いである。 「あ、あれはタダの使い魔で、好きとかそういうんじゃなくて…」 「そ、そりゃキスもしたし…その…色々あったけど…別に…」 自分でも顔が赤くなっているのが分かる、余計なことまで口走っている。 「私、使い魔さん…だなんて、一言も言いませんでしたよ♪」 いたずらっぽく笑うアンリエッタに、ルイズはますます恥ずかしくなった。 「大丈夫、心配ありません。だって…彼はルイズ…アナタの使い魔なのでしょ?」 真っ直ぐな瞳に見つめられ…ルイズは硬直した。 「羨ましいわ、でも少し寂しい…まるで大切な人を奪われてしまった様…」 「ひ、姫様は…いつまでも何があっても私のお友達であり理解者で…」 その言葉が終わらない内…ルイズの唇はアンリエッタの唇によってふさがれた。 「ひ、姫さ」「黙って、お願い…今だけ」 アンリエッタのしなやかな指の動きに反応したランプは、その灯を消し去り、 部屋は暗闇に包まれた。 680 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18 56 29 ID vBbTRVxw 『シエスタin秋葉原』 「才人さん、ここがアキバララという街ですか?」 何を見ても、何をやっても、全てに興味を示すポジティブ・シエスタ! とにかくどこに連れて行っても目立つ。衣装だけではない…スタイル抜群、 顔も可愛い、声も可愛い…ここまできたら目立たない方がどうかしている。 むしろおかしいとも言える。 昨夜のラブホテルからのチェックアウト、朝っぱらから流石にセーラー服で 街を出歩かせる訳にもいかず…仕方なく標準装備のメイド服にした訳だが、 メイドがいても違和感が無く一番目立たない…という事で、秋葉原に来た。 それでも「挙動」という面では充分すぎる程に目立っているシエスタだった。 「こんなにお店が沢山!城下町でもこんなに大きくないですよ♪」 町の小さな商店街を「お祭りみたい」と称したシエスタである。 秋葉原大通りは想像をはるかに超えた街並みに見えている事だろう。 幸い休日で、大通りは歩行者天国になっていた…一安心。 「あの、才人さん、歩行者天国って何ですか?」 エンジンで走る自動車が道に入れず、人が安心して往来出来る日だ。と、 簡単に説明をすると 「素晴らしい♪貴族の馬車も避けずに自由に道を歩いても良い日なんて♪」 まぁ、解釈としてはそんな感じでOKですハイ。 電脳都市(古)秋葉原…ここならネットから色々と調べる事が出来るだろう。 シエスタを連れていても不審者扱いで通報される事もあるまい…って? あれ?シエスタ?ど、どこ?? 「はい、そこで笑顔お願いしまーす」「振り向きポーズいいですかぁ?」 「こっち視線お願いしまーす」「ちょい胸を強調して貰ってもいいかな?」 シ、シエスタさ〜ん…お〜い、何をしているのかな〜? 「あ、才人さん、この方達がシャシンと言うものをとりたいとかで…」 「あ、すいません、くるっと回転お願いしま〜す!」 「はぁ〜ぃ♪」くるくる〜人差し指を立てて「お、ま、た、せ、♪」 周囲から一斉に 萌え〜♪萌え〜♪ の大合唱…。 「良く分からないんですけど、ポーズをお願いしますと言われたもので…」 「あの…いけなかったでしょうか?」 いや、いけないでしょうか?というより…むしろイイ!なんだけど、いや、 今はそういう事じゃ無くて…。俺と離れて迷子になったら困るでしょ? 「あ、すいませんでした」 ちぇ、もうお終いかよ…と言いながら散っていくカメラ小僧…その中に、 妙にローアングルから撮っていたヤツを見つけ…蹴り一線で取り押さえた。 珍しくデルフが口を開いた…「相棒よ、おめぇ、女絡みだと強ぇなぁ」 そういうとカタカタと震えた、どうやら笑ってるらしい。 気弱そうなカメラ小僧は「ごめんなさい」を繰り返していた。 「今まで撮ったヤツ…」全部消せ!と言いかけて… 「そうだ、シエスタ、一緒に写真を撮ろう!」 カメラ小僧にシエスタとのツーショット写真を撮らせ、近所の写真屋に行き、 その場で今まで撮った写真を全てプリントさせた後、メモリーを消去させた。 ツーショット写真はルイズに見られたら面倒だから、シエスタにあげよう… シエスタは貴族の肖像画よりも綺麗でそっくりだと感心していた。 しばらくして、二人の写真は家宝にしますと鞄の奥に大切そうに仕舞い込んだ。 残りのパンチラ写真は、もちろんしっかりと才人の所有物となった。しかし… もう二度と戻らないであろう世界にいる、ルイズの事をまだ考えている… そんな自分に少し戸惑いを感じていた。 681 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18 57 03 ID vBbTRVxw 『ショッピング』 さぁとにかく服を買いに行こう! 「私、この服で何の不自由もありませんよ?無駄遣いは勿体無いです」 「それに…」「皆さんも同じような服装みたいですが?」 しまった秋葉原は逆効果だったか?見渡せばコスプレで溢れかえっている。 「あ、あれはね…個人の趣味嗜好の産物というか…特殊なというか…」 あ、あれ?シエスタ?シエスタさ〜ん?また消えてるしぃ〜。 この世界に警戒心の欠片も無い彼女は、少し目を離すとすぐに消えてしまう。 まぁ幸いな事にシエスタの方からは才人の姿を常にロックオンしているらしく、 そのまま見失い、はぐれてしまう様な事は一度も無いのだが…。 「才人さ〜ん、こっちですぅ〜!こっち〜!」 見ると狭い横道を入った奥で数人のメイド姿の子達と談笑しているではないか。 「へぇ〜アンタ面白いね〜それってサイコーだよw」 「メイドたるもの、そのような言葉遣いは感心できません!」 「いいのいいの、アタシ達…今は休憩中!お昼休みなんだからさ〜」 「そ、それでも、そんな醜態をこんな往来で殿方に晒すなんて!」 「かったいこと言わないの♪アンタドコのお店?そんな厳しいの?」 お世辞にも談笑と呼べる物では無かった。休憩中のメイド喫茶の店員達に、 シエスタが腰に手を当て胸を張り、しっかと睨み説教の真っ最中だったのだ! え、えと…シエスタさん…いったい何をなさっているので…? というか、出来るだけ現時点でのトラブルは避けたいところなんですが。 3人組のリーダー格と思われる髪の長い女性がすっくと立ち上がって言った、 「この子アンタの連れ?っていうか店外デート?」 「あ、いやまぁ…そんな感じで」 するとケラケラと腹を抱えて笑ったかと思うと残りの2人に向かって言った、 「少しは見習ったほうがいいかもね!この子ってば最高だよ♪」 そして耳元で…アンタは見る目がある、この子は大当たりだ…と囁かれた。 シエスタはまだ納得し切れていない様子だったが、別れ際に三人に挨拶され、 それがとても丁寧で、シエスタが教えた通りの儀礼だったので上機嫌になった。 後に「まるでメイド長になったみたいでした♪」とその時の感想を述べた。 まずは服だ…目立つのは良くない、派手過ぎず地味すぎず…と思った所で… あぁ無理だ、万年童貞・出会い系にまで手を出した俺に、女性の服を選ぶ… そんなセンスがあるわけがないじゃないか。 シエスタはキョロキョロと興味津々で見ている、何の躊躇も無く店内に入る。 え?ま、まさか…こ、ここは?噂のアニオタの聖地と呼ばれる店なのでは? 思った時には時既に遅し…シエスタは店内の巡回コースの流れに乗っていた。 いきなり現れたメイドに店内は騒然としていた!いや、メイド自体は珍しく無い。 ここは秋葉原だ。しかし、このメイドは一癖も二癖も違っていた…。 魔法少女やエロフュギア、果ては着ぐるみ系までも「可愛い、着てみたい」と、 なんとも嬉しい…いや、困った事を言い始めたのである。 どうやら秋葉原のコスプレ系衣装がお気に召された様である。 「ほら才人さん!私にプレゼントしてくれたセーラー服も売っていますよ♪」 一斉に周囲の視線が突き刺さった!い、痛い…。 才人は慌ててシエスタの手を引くと…店を後にした。シエスタの希望を聞き、 結局「ドン・キ・ホーテ」で「セーラー服っぽい」無難な服を購入した。 その足でネットカフェに立ち寄り、戦没者名簿を調べることにした。 大き目のペアシートの個室を取り、今夜はここで一晩を過ごすことに決めた。 「慣れないせいか…なんかスースーしますね♪」 着替えを終えたシエスタが呟いた…あれ?以前にも似たようなセリフを…。 才人はある言葉を…反芻していた 『意地悪だわ…わたし、貴族の方みたいにレースの小さな下着なんて…』 『持ってませんもの…それなのに、こんな、短いスカートをはかせて…』 小さな下着なんて…小さな下着なんて…小さな下着なんて… 持ってませんもの…持ってませんもの… 服のことに夢中で…し、下着…買ってなかった…。 才人の心を見透かしたように…シエスタはスカートを少したくし上げ… 「確認してみますか?」と、頬を赤らめながら囁いた…。 682 :ものかき ◆XTitdn3QI6 :2006/10/02(月) 18 57 38 ID vBbTRVxw 『競艶』 灯りの消えたアンリエッタの寝室… 押し殺すような小さく艶のある声が響いていた… 「ひ、姫様…そんなにされると…こ、声が、声が出てしまいます…」 「構わないわ、私の可愛いルイズ…この部屋には誰も来ませんもの…」 「で、でも扉の外には…女官が控えて…聞こえてしまいます…」 「聞かせてあげたら良いのですわ…黙するのも女官の役目…」 「で、でも…」 「愛しいルイズ…ここでは…案ずることは何も無いのですよ…」 ルイズはアンリエッタのされるがままだった…元より姫殿下に逆らうなど、 抵抗することなど出来ようはずがなかった。 「ルイズは感じやすいのですね…」 「そ、そんなことは…あ、ありません…」 アンリエッタが産毛のような柔らかいピンク色の薄い茂みをかき分けると、 そこは既にシーツに地図を描くほどに潤っていた…。 「あん、姫さま…」「あぁ可愛いわ…ルイズ…とっても…」 ルイズの幼い渓谷に指を滑らすと…中指を軽く中央に差し入れる… その瞬間ルイズの身体が大きくうねり、そして背中をのけぞらせた。 「もう…こんなに…」 ふいに目の前に差し出された指を、一度摘む様にしてから広げると… ルイズの体内から分泌されたその体液は…長く糸を引いた。 「姫さま…恥ずかしい…」ルイズは真っ赤になり両手で顔を覆った。 その手を強引に払いのけ…アンリエッタは唇を重ね、下を絡ませた。 無意識にルイズも…アンリエッタの下腹部に手を伸ばしていた…。 既にアンリエッタは下着を着けてはいなかった… ゆっくり恐る恐る手を伸ばす…その様子に気づいたアンリエッタが、 「構わないのですよ♪さぁ一緒に…」 太股に触れるとそこには溢れる体液が…涙の跡のごとく通り道を作り、 それは既にシーツにまで達して、ルイズと同じ様に地図を描いていた。 「ルイズ…アナタと私は…何も変わらない…ただの…女…」 「さぁ…」 ルイズは促されるままに、黒いふかふかな森をかき分けアンリエッタの 秘部に指を這わせる…。 一瞬ひざをガクンと落とし、そのままルイズに覆いかぶさった…。 「ご、ごめんなさい、初めてだったもので…ケガは無かった?」 「いえ、姫さま…大丈夫です」 「もしかしたら…刺激が強すぎるのかもしれませんね…」 ルイズはおずおずと…言葉を選びながら精一杯の提案をした。 「あ、あの…姫様…お、お互いに…舐める…と言うのは…」 アンリエッタの目が輝いた! 「それ、そうしましょう!舌先なら刺激も弱いし柔らかいし…」 そう決めると2人は身体の向きを入れ替え…互いの股間に顔を埋めた。 アンリエッタは『ディティクト(探知)マジック』と『ロック』の呪文を 改めてもう一度掛け直した…。2人の競艶は明け方まで続いた…。 29 名前:ものかき前スレ『競艶』の続き投下 ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 01 08 48 ID Sfuo01+Y 前スレ『競艶』の続き投下 『確認1』 才人は激しく動揺していた…。「確認してみますか?」確認するまでもなく、 それを履いてない事は、火を見るよりも明らかであった。 「い、いいの?」実に間の抜けた童貞丸出しのセリフである…。 「ですから、才人さんが見たいと言ってくれれば…私はいつでも…」 スルスルとたくし上げられるスカートに目を奪われ、頭の中が沸騰し掛けた時、 予想外の出来事が起きた!シエスタが半ば強引に唇を重ね…舌を絡めてきたのだ。 視線を太股に集中していた為に不意打ちを喰らった形の才人は呆然とした。 長い…長い…気の遠くなるような…永遠とも思える時間のキス…時が止まる。 長いキスの後…シエスタは「ぷはぁ♪」と息をつきながらやっと唇を離した。 「てへ♪もうディープ・キスは完璧にマスターしちゃいました♪」 上気した顔でニッコリ笑い、おどけて見せるその仕草はとても可愛かった。 「あの…シエスタ。ここはネットカフェといって、壁も薄いし、天井も…」 「私、村娘ですから♪気にしません♪」「あ、いや…そうい事じゃなくて」 「そうですね…ちょっと狭いかもしれませんね〜♪」 30 名前:ものかき ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 01 09 44 ID Sfuo01+Y 『確認2』 2人きりになるとやたらと積極的なシエスタである。 「では…こういうのはどうでしょう?」 と言うが早いか…シエスタの手が才人の股間に伸び、ベルトを器用に外す。 いつの間にこんな技を…と思った頃には漢の武器が引きずり出されていた。 「シ、シエスタ?!」 「大丈夫です、弟達のなら何度も見た事がありますし…」 「ただ…こんなに大きくて…硬くなったモノを見るのは初めてです」 「無理しなくていいんだよ…」 「いいえ、大好きな才人さんのモノですもの♪」 そう言いながら、拙い手つきで…とても愛しそうに優しく握りしめた…。 「どうすれば殿方が喜んでくれるのか…最低限の教育は受けているんですよ」 それは貴族の家に売られたり…そういう時の為なんだろうか? 階級社会で生き残る為に仕方ない事なんだろうか? 少し考え込んでいる風の才人の表情を読み取ったのか…シエスタは言った。 笑顔で振り返り…「花嫁修業だと思ってください♪」と。 手でしごいた後、少し口に含み…また手でしごく…。やがて胸をはだけて… その豊満な胸の間に挟みこんで刺激を与える…。唾液で濡らす…。 体中の血液が下半身に集まるのを感じながら…方手でシエスタの股間に触れた。 一瞬動きがピクリと止まったが…まるで競争でもするように刺激を増してきた。 シエスタの股間は日本人のそれと変わらず(と言っても才人は童貞だが)・・・ 指を動かす度にクチュクチュという湿った音が聞こえた。 シエスタは『先にイカせた方が勝ち』とばかりに一心不乱にしごき続ける…。 やがて才人は自らの限界を悟ると、素直にシエスタに告げた…。 「外に出すと汚れてしまうので…このまま口の中へどうぞ…」とだけ言った。 その言葉に後押しされた才人は…最上の快感の中…シエスタに放出した! それを搾り出すように、吸い出すようにシエスタは残らず飲み込んでしまった。 少しの間…余韻を楽しみ…お互い寄り添い、体温を確かめ合う…。 シエスタはグッタリとしている…このまま寝てしまうのかな、と思った時… 薄いレースのハンカチで軽く口の周りをぬぐうと、神妙な顔でこう言った、 「今宵はお情け…確かに頂戴致しました。有難う御座いました…」 「あ、えと、いえ…お粗末様でした」 あ〜やっぱり俺はバカだぁ、こんなセリフしか言えないなんて最低だ。 「才人…さん?」「え?」「私…どうでしたか?上手に出来ました?」 「と、とっても!凄く気持ち良かったよ!うん、最高!」 最高も何も…童貞じゃないか…これが始めてなんだから、そりゃ最高だよ。 そこまで思って考えた…そういやシエスタも初めてだったんだよな…。 「なぁシエスタ?」「はい?何でしょう?」 「え、えと…シエスタはどうだった?」 すると急に顔を真っ赤にしてうつむきながら消え入りそうな声で呟いた… 「大好きな才人さんの指でしたし…恥ずかしいけど…実は…二度も…」 それ以上は才人の胸に顔を埋めたまま、ただモジモジするだけだった。 しばらくすると、やはり疲れが出たのだろうか…寝息を立て始めたので 備え付けのソファに寝かせ上着を毛布代わりに掛けた。 才人はシエスタを起こさないように注意しながらパソコンの電源を入れ、 検索を始めた・・・「海軍少尉」「佐々木武雄」 32 名前:ものかき『確認』の次 ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 01 10 56 ID Sfuo01+Y 『事実』 朝は早かった!やはり…シエスタはそのように教育されているらしく、 「殿方より遅く起きるなどもってのほかです!」と言い放った。 どうせ慌てる事も無いのだから、ゆっくりすればいい。と言っても、 一向に聞き入れてはくれなかった。 ネットカフェの厨房に入り自分で朝食を作ると言い出したのには困ったが、 電子レンジ調理品やファーストフード系の物しか置いて無かったらしく、 不服そうな顔をしながらも、やがて諦めて戻ってきた。 トレイには飲み物とハンバーガー・ポテト、いわゆるモーニングセット。 「才人さん凄いんですよ!こう押すと甘い水が出てくるんです!」 「それに、冬でもないのに氷が沢山あるんですよ!」 「貴族のお屋敷にだって、こんなにすごい仕掛けはありませんよ!」 興奮気味に息せき切って話すシエスタは、まるで小さな子供の様だった。 ハンバーガーを器用に食べるシエスタは意外だったが、ハルケギニアにも 似たような食べ物はあるという話だった。ストローの使い方を教えると いたく感動していた。同様に熱いスープを飲もうとして火傷しかけた事は、 シエスタの名誉の為に、ここだけの秘密にしておこう。 早々に朝食を腹に押し込むと清算を済ませ、また街へと繰り出した。 清算時にメイド姿の少女に「昨夜の宿代の清算をお願いしたいのですが…」 と言われ、戸惑う店員が滑稽だったが…シエスタは気にも留めなかった。 今日はシエスタの下着を買うことも忘れないようにしないと…と再確認。 「まずは、今日は実家に連絡してみようと思うんだ」 「才人さんの、ご実家ですね?直接行かないんですか?」 「昨日調べてみたんだけど…無いんだ…」 「無い?」 「たぶん…引っ越したか…良く判らないけど、見つからない…」 「とにかく電話して…それから考えてみるよ」 シエスタには電話の仕組みが理解出来なかったが、遠くの人と話せる、 そんな便利な仕組みがこの世界には有る…と、それだけは判ったらしい。 探すと意外と見つからない電話BOX。しばらく歩いた後、大通りに面した 少々騒音でうるさい場所だが、やっとのことで電話BOXを見つけた。 シエスタと一緒にBOXに入り、緊張しながら自宅の番号を押す… しばらくの無音の後…呼び出し音…番号は生きている! 1回2回3回…出ない、、、平日だからか?いやそれなら母親が… 4回5回…『プッ』と小さな音がした!繋がった!誰かが出た! 『も、もしもし・・・』 『何?悠二?』 『あ、えと、才人だけど…』 『はぁ?何言ってんのよ?!悠二でしょ?』 『いえ、平賀才人と…』 『自宅にイタ電してど〜すんのよ!大体どこまでメロンパン買いに行ってんの?』 『あ、いや、だから…』 『駅前のパン屋って言ったでしょ!』 『あ、あの…話を…』 『ちゃんとモフモフのカリカリを買ってくるのよ!』 『もしも〜し?』 『メロン果汁入りは邪道だからね!ちゃんと網目模様があるヤツね!』 『聞いてますかぁ〜?』 『じゃ、早く帰ってきなさいよね!』 『は、はぁ…』 『待ってるんだから!』 「ガチャン!ツー・ツー・ツー・ツー…」 どうやら現在の我が家にはルイズの分身が住み着いてしまっているらしい…。 「才人さん…?」 「あ、大丈夫!大体…こんな予感はしてたから…あはははは…はぁ〜」 まぁ、仕方ないか…。向こうの世界に行ったときに一度は諦めた事だし。 あいも変わらず順応性が高いのか、諦めが早いのか、楽天的な才人だった。 (しかし…俺、メロンパン…買わなくてもいいんだよなぁ?) などと思いつつ、とりあえずシエスタの下着を買いに行くことにした。 33 名前:ものかき『事実』の次 ◆XTitdn3QI6 [sage] 投稿日:2006/10/03(火) 01 11 56 ID Sfuo01+Y 『試着』 ランジェリーショップ…才人とは全く無縁の場所…のはずだった。 しかしシエスタをこのままノーパン・ノーブラのままというのはまずい。 個人的には嬉しいが…道徳的?世間の目?いや才人の理性の為にだ! 店頭に並ぶ色とりどりの下着にシエスタは目を丸くして驚いていた。 「こんな貴族の方がお召しになるような…こんな高価な物、私には…」 この世界では普通に誰もが着用していると説明するが、信じてくれない。 仕方が無いので店員にお願いする事にした。 元よりワゴン売りの安物ではシエスタの胸を収める事が適わなかった。 一通りの説明を受け、何とか納得した様子のシエスタに下着を選ばせ、 専門の店員に着けて貰う。(フィッティングというらしい) 一着付けるごとにカーテンを開け「才人さん!これ、どうですかぁ」 と、周囲の視線を釘付けにするシエスタであった。 「これなどいかがでしょう?まぁお似合いですわぁ♪」 売り子の常套句だと分かっちゃいるが、俺にだって下着の良し悪しなど 判るはずも無い…せいぜい布面積と色くらいなもんだ。 「じゃ、そこで一回転して見せて下さいますか?」 え?おいまて!一呼吸置いて…予想通りカーテンの中から 「お ま た せ ♪」の声が。 店員の絶句する姿が目に浮かぶ…条件反射か?条件反射なのか? かくして一週間分という事で7セットを購入。 先がまだ見えない現状では、最低限のもので我慢して貰うしかない。 さて…買い物が済んだ所で午後の予定を話し合う。 「シエスタ…次は、ここだ!」 才人は小さなメモの走り書きを見せながら言った! 「才人さん…ここって!」 「才人さん…私…」 「どうしたの?嫌?怖い?」 「いえ、そうじゃなくて…」 才人は首を傾げた…どうしたというのだろう?シエスタらしくもない…。 『才人さん…私…その…字が読めませんので…』 才人はその事をすっかり忘れていた。 『研究成果』 コルベールは王宮から直々の呼び出しを受け、才人達の失踪の原因を究明すべく、 尽力すべしとの命令を受け、王宮内の一角をあてがわれ研究を進めていた。 才人がいない今、零戦の事に一番詳しいのは彼一人しか居なかったし… 日蝕時の異世界移動の仮説を立てたのは、他の誰でもない彼であったのだから。 彼は日蝕の起こる仕組みから、太陽を隠す「影」の存在の関連性を検証した。 そして突発的に起こった日蝕の原因を調べるにあたり、どの系統にも属さない、 すなわち「虚無」の与えた影響に行き着いたのである。 アルビオン艦隊の先遣隊が現れた日、あの日あの空で起こった「虚無」の発動。 魔法を構成する粒子…それを構成する更に小さな粒子…それがあの空に舞った! 余りにも巨大で…拡散し漂い続けたその粒子はやがて太陽に影を落とした…。 偶然の出来事ではあっただろうが、理論上はそれを再現する事は可能だろう。 研究の成果をまとめ、彼は報告に向かった。 「ですから影を作り出せば良いのです!」 コルベールは自分の研究成果を興奮しながら会議室で熱弁していた。 「つまり、大きな光は…同時に大きな影を作り出すのです!」 少し落ち着いて…という仕草でコルベールを制したアンリエッタが言った。 「虚無の魔法を使って日蝕を作りだせば、異世界に行けると言うのですね?」 かしこまった口調でコルベールは訂正を加えた… 「擬似的な日蝕です。しかし先日観測された物も同じ現象と考えます」 それから「しかし…」と言葉を続け 「あくまでも彼が異世界に行った…という前提での話ではありますが…」 少し語調を弱め「その確証までは、私にも判りかねます…」と加えた。 今までコルベールの話はチンプンカンプンとばかりにイラついていたが、 要するに…という段になり、それなら話が早いとばかりにルイズが言った! 「行ったのよ!間違いないわ!」ルイズは小さな胸を、精一杯張った! 「アイツは行ったの!異世界に!間違いないの!だから…行くの!」 コルベールは確信に満ちたその表情に迫力負けしながらも進言した… 「しかし何の保証も無いんですよ、ミス・ヴァリエール」 「保証なんてどうでもいいの!とにかく行くの!絶対に見つけるの!」 ルイズの決意には一点の曇りも見られなかった…。 コルベールは少し呆れたようにコホンと一つ咳払いをすると言った… 「実を言いますと…ひとつ…問題があります」 (ここで短編に書いたカトレアのエピソード。エロ追加書き直しあり) 『カトレア』 カトレアは窓の外を眺めていた… 優しい日差しは庭の木々を照らし…時折り吹く心地良い風がその葉を揺らしていた。 どこからか羽音が聞こえたかと思うと一羽のつぐみが窓枠の隅に舞い降り… …しなやかな動きで差し出した指先を、そっと優しいキスをする様に啄ばんだ。 「あなた…まだみんなのところに戻っていなかったの?」 カトレアは少し悲しげな顔で尋ねた。 「そう…でも、帰らなくてはいけないわ…きっと…あなたを待ってる…」 「私なら…大丈夫」そう微笑みかけると… ツグミはクイっと小首を傾げた後…木漏れ日の中へと姿を消した。 午後の日差しはカトレアには強すぎ、散歩は専ら早朝か夕刻に限られていた… それでも遠出は出来ず、せいぜい庭先が今のカトレアの世界の全てだった。 その日も夕刻になってからの外出だったが…二頭立ての馬車で少し遠出を… というのがカトレアの思惑だった。夕刻に湖畔に水を求めて集まる動物達… 目的地は領地の外れにある小さな湖。時折りそこで動物達と戯れることを とても楽しみにしていた。 その日はいつもと様子が違っていた…湖の辺が何やら騒がしい…動物達が… あの子達の怯えた声が聞こえる…。 馬車を止め、馬達に「いい子で待っていてね」と伝えると湖畔へ向かった。 するとそこには自分の背丈の2倍はあろうかという竜の姿が、夕日を背に 黒いシルエットを描き出していた…。 なるほど…みんなそれで怯えていたのね…。 恐れるそぶりも無く竜に近づくカトレアに、隣にいた男が声を発した! 「いけません!なだめすかしてはいますが、今は危険です!離れて!」 初対面のしかも男性相手で戸惑ってはいたが、動物の事なら話は別である。 それでもカトレアは、おずおずと言葉を紡いだ。 「その子、怯えています…それに、右足に怪我を…」 男は驚いて竜の右足を見た!「あ、いつの間に…なんでお前言わないんだ?!」 「主人に余計な心配を掛けたく無かった…そう言っています」 「言葉が判るのですか?」 少し戸惑いながらもカトレアは正直に話した…動物達と会話が出来るのだと。 男はカトレアの前に膝を付くと、仰々しく言葉を継げた。 「恐れながら私も同じく動物の気持ちがわかるのです」そして… 「しかしながら私はメイジではありませんので治癒の術を持ちません…」 そこまで聞いたカトレアは…メイジでもないのに竜を操る男に興味を持ったが、 治癒が先決とばかりに「わかりました、では私が…」とだけ言った。 竜の足の治癒が終わった頃には、もうすっかり日は落ちていた。 「感謝致します…ミス…」 「カトレア…カトレアです」 「感謝致します、ミス・カトレア」 「とても、お美しい方だ…妖精に出会ったかと思った程です…」 良く見れば端正な顔立ちのその男は左右の目の色が違う「月目」であった。 初めてその顔を正面に見たカトレアは…頬を染めた…胸の鼓動が高鳴った。 いつもの気分が悪くなる兆候とは明らかに違っていた… 見詰め合ううちに自然と近づき、やがて寄り添い…そして… 月明かりに2人のシルエットが重なり、いつしか抱きしめ合っていた。 「今は軍役に付いていますが…私はロマリアの神官で…平民です」 貴族と平民の恋の行方は誰もが知っている。叶わぬ恋、辛い別れ…。 「…構いません…」消え入りそうな声でカトレアは言った。 その直後、彼女の唇は塞がれた…。 湖畔の大木にもたれかかり激しく求め合う2人…月明かりは淫靡な影を 足元に落としていた。 「服が…汚れてしまっては…困ります…」と、懇願するカトレア。 「大丈夫です、私の言うとおりに…」 胸のボタンを器用に外し…優しく手を滑り込ませる…初めての刺激に 「あ…」と思わず声が漏れる。 程よく育った胸を揉みしだき乳首に刺激を与え、時折り口付ける…。 「いつもより…」と思わず口走り、ハッとして口を押さえるカトレア! 「いつも?いつも…どなたと?」と子供のような目で尋ねる… 「だ、誰とも…初めてですもの…」と顔を真っ赤にしながら答える。 「一人で…慰めておられたのですね…」 図星を指され更に顔を赤くする。その隙に乗じてワンピース型の服を するするとたくし上げ下着に手を掛ける…。 「そ…それは…いけません…そんな…」 言葉とは裏腹に充分に濡れた陰部はクチュクチュと音を立てて泣いた。 大木に両手を付き、桃のような尻を突き出した形のカトレアは… 後ろから受け入れた…。服が汚れないようにとの配慮であったが… まるで動物の交尾のような体位での行為にカトレアは興奮していた。 頭の中は淫靡な行為に没頭し、痛みなど感じる余裕すら無かった。 月目の男が果てる頃には、自ら腰を振り…自分でも信じられ程に、 「もっと…もっと…」と喘いでいた。 動物達の交尾は何ども見た。興味が無かったと言えばウソになる。 寂しい夜は…一人で慰めていた、何度も、何度も、何度も…。 でも今は…暖かい、心を通わせた人と…。 カトレアは今までに感じたことの無い程の幸せを感じていた。 熱い抱擁、口付けを交わし、別れを惜しみながら… カトレアはあまりに夢中で…大切な事を忘れていた事に気付いた。 竜にまたがり飛び立とうとする男に向かいカトレアは尋ねた… 「あの、あなたのお名前は?」 「これは大変失礼しました、すっかり忘れていました」 「急ぎますゆえ竜上より失礼致し…」言葉尻を遮ってカトレアが言う、 「構いません」 「私の名はジュリオ!ジュリオ・チェザーレと申します」 そう告げると一瞬で竜は虚空に舞い上がり見えなくなってしまった。 その男の目は両眼の色が違う、いわゆる月目であった。その月目の様な 二つの月に照らされた小道を馬車に向かって歩きながら呟いた… 「ほんと…動物と話し、竜の心を読んでいるのね…」 竜で飛び立ったジュリオは名残惜しそうに湖畔を眺めていた…。 「また逢えるさ、きっとな!そんな気がするんだ。さぁ行こう」 ジュリオはカトレアに運命的な出会いを感じていた。 そしてカトレアもまた同様に、これを運命的な出会いと確信していた。 そう…まるでルイズと才人の出会いのような。 『都会での出会い』 「才人さん!ここでしょうか?」 そこは大きなマンションの入り口だった。インターホンで呼び出して、 施錠を解除して貰うタイプの、まぁそこそこ立派な建物だった。 「住所はココであってるはずだよ、いるといいんだけど…」 2人は零戦の戦没者・行方不明者の名簿からその子孫を探し出していた。 『吉田一郎』それがあの零戦パイロットの孫に当たる人物であり、 ここの住人の名前だった。シエスタの遠い異世界の親戚でもある。 「ところでシエスタ?」 「はい?才人さん、何でしょう?」 「今朝のネットカフェでも思ったんだけど…どうしてメイド服なの?」 そう、折角買った平服を着ないで、なぜかまたメイド服を着ている。 「基本です!」人差し指を立てて胸を張る。 「朝目覚めたらメイド服!これは基本です!常識です!当然です!」 「そ、そういうもんなの?」 「メイドとはそういうものです!」 「でもホラ、遊びとか外出とかは…普通の服でいいんじゃないかな?」 「才人さん?何を言っているんですか!」 「はぁ?はい?」 「今日は遊びではありません!ひいおじいさんの異世界のご家族に…」 そこまで言われて初めて『メイド服はシエスタの正装』なんだと、 そう理解した。 「ですから、身なりはキチンと!」 才人は、その通りだね…と相槌を打った。 メモに書かれた部屋番号を押してしばらくすると返答があった。 「は〜い♪どちらさまでしょうか?」 高校生くらいだろうか?かなり若い女性の声である。 正直に「佐々木武雄」さんの事で訪ねて来た旨を簡単に伝える。 シエスタは不思議そうにずっと声の主を一生懸命に探していた。 それだけでも充分に面白かったのだが・・・ やがて1階エントランスの自動ドアがゆっくりと開かれる。 いきなり開いた扉に「ビクっ!」と驚き反射的に飛びのくシエスタ。 驚いて飛びのいた時にスペシウム光線ポーズになるのは異世界でも 同じなのかぁと…シエスタを見て笑ったら頬を膨らませていじけた。 「才人さん、笑い過ぎですぅ〜!」 「ごめん、ちょっと面白かったから」 目ざとくエレベーターを見つけたシエスタがニコニコして乗り込む。 「私、この乗物はもう憶えましたから大丈夫です♪」 「じゃ、まかせるよ」 「はい、まかせて下さい♪」ニコニコ♪ニコニコ♪ニコニコ♪ 「………」 「………」 「えと、シエスタ?」 「はい?」ニコニコ♪ニコニコ♪ニコニコ♪ 「それ…押さないと動かないんだけど…」 「え?え?どれですか?これでしょうか?」あたふたあたふた。 「それ、そこの5番目のを…」 「は、はい!これで完璧です♪」 ボタンを押せば勝手に着くエレベーターだけど、シエスタは満足気。 「ありがとうシエスタ」「どういたしまして♪」 一仕事終えた満面の笑みで微笑んでいた。まぁいいでしょ。 「ごめん下さいまし〜」メイド口調で大声で呼びかける…もう慣れました。 インターホンを押すまでも無くドアが開き、少女が顔を覗かせた。 「先ほどお話した平賀です、お父さんかお母さんい…るか…な…って?」 誰かに似ているなぁと思っていたら、シエスタが叫んだ! 「ジェシカ!?」 そうそれは魅惑の妖精亭の娘でシエスタの従妹ジェシカに瓜二つだった。 『異世界の親戚』 「こりゃおでれーた!」思わずデルフが口を開いた。 「こら、こっちの世界では黙ってろって教えただろ!」 「でもよ相棒、これは大当たりって事だろ?良かったじゃねぇか!」 デルフを鞘に深く押し込み、話を続けた。 「生憎と両親は旅行中で不在ですが、とりあえず中でお話を…」 と促され、あまりの驚きに言葉を失ったシエスタと共に部屋に入った。 吉田一美と名乗ったこの家の娘はお嬢様育ちらしく物腰も柔らかかった。 両親は長期の旅行中で留守で、今は母方の実家の従妹が受験勉強の為に 泊まりに来ていて2人で暮らしているとの事だった。 「ジェ…じゃなくて、吉田さんは、ひいおじいさんの話はご存知ですか?」 「一応知っています。零戦のパイロットで…戦死したと」 才人は思い切って、その零戦は異世界に行った事、そして自分達はその 異世界から来た事。才人自身は元々こっちの世界の人間で、シエスタと 君は異世界の遠い親戚筋に当たる事を…出来る限り判りやすく…。 ひとしきり話し終えるとお茶をすすり…反応を待った。 しばらくすると… 「あれ…本当だったんだ…」 遠い目をして小さく呟くと…シエスタの手を優しく握ってこう言った。 「ようこそ♪異世界の私の親戚さん♪」 失踪した曽祖父と共に飛んだもう一機の零戦のパイロット… この世界に帰還できたパイロット… その人も既に亡くなっていたが「異世界を見た」「彼は異世界に残された」 と、言い続けていたのだそうだ。誰一人信じなかったが… その話だけは笑い話程度に語り継がれていたのだ。 「日蝕と…広い…とても広い…綺麗な草原を見たんだ」 彼の墓標にはそんな言葉が刻まれていると聞いた事がある…と彼女は言った。 「それ…私の故郷の風景です」シエスタは遠い昔を思い描き…涙した。 その時インターホンが鳴り、従妹が帰宅した…と伝えられた。 シエスタとまた今夜の宿を探さないといけないなぁと思っていると… 親戚なのだから泊まっていけばいい!と、シエスタは引き止められた。 「いえ、でも才人さんが…」 「そんなの一緒でいいわ。どうせ行くアテも無いんでしょ?」 俺…一応、男なんですが…危機感とかは無いのね?!夜這いしたろか! 「ただいま〜♪あれ〜お客さん?友達?」 帰宅した従妹と紹介されたその人物… 才人はその場に凍りついた! シエスタは思わず膝を付き、その場に控え…小刻みに震えていた! そこにいたのは、紛れも無くアンリエッタ姫その人だった。 『胸の内』 「それ、どういう事?詳しく説明して!」 ルイズは凄い剣幕でコルベールに食って掛かっていた! もはや教師と生徒という関係…姫の御前であることすら頭に無かった。 「ですからミス・ヴァリエール…日蝕を作り出しても、そこに入る…」 「それはもう聞いたわ!あのぜろせんってのが無いからでしょ?」 「その通り。飛び込むには…その速さタイミング…様々な条件が…」 「だから、それは何度も聞いたわ!私が聞きたいのは」 テーブルを両手で「バン!」と叩きつけて叫んだ! 「どうすればいいかって事なの!わかる?」 アンリエッタが思わず口を挟んだ… 「皆さんお疲れでしょう…少し休憩しましょう…」 「でも姫さま!」 アンリエッタは「こちらで話しましょう」とルイズを自室に向かえた。 立ったままのルイズを自分の隣に座らせ…アンリエッタは聞いた… 「そんなに心配?」 「べ、別にそういうわけじゃ…ただの使い魔だし…」 「今では国を挙げての大騒動になるほどの出来事…ですよ?」 「そ、それは申し訳ないと思っています…」 「意地悪な言い方でしたね…ごめんなさいルイズ」 「そんな姫さまが謝るなんて…そんな必要ありません」 「私の愛しいルイズ…あなたの本当の心の内を知りたいの…」 「姫さま…」 「ルイズの大切な人は…私にとっても大切な人…そうでしょ?」 「才人が…あのバカ犬が…」 「彼は人間でしょ?」アンリエッタは優しく微笑んだ。 「アイツがこのまま帰って来ないかも…って…」 「まだ異世界に行ったと決まったわけじゃ…」 「分かるんです!私!だから…行きたいんです!」 「危険な事だと…保証も無いと…そう言われても?」 話をしている相手が姫である事も忘れ、気持ちが一気に爆ぜる。 「…だって…帰って来ないなら…迎えに行くしかないじゃない!」 我慢していた涙がルイズの瞳から溢れ出した…。 「バカだけど…サカリの付いた犬だけど…いないのは嫌なんだもん!」 子供のように泣きじゃくりながら思いの全てを吐き出すように… 「才人のバカ〜!どこに行ったのよ〜!使い魔の癖に〜!」 「一緒にいてくれるって言ったじゃない!キスだってしたじゃない!」 「今なら何だって許して上げるのに…帰ってきなさいよ!」 しゃくりあげるように泣き続け、やがて泣きつかれたルイズは… アンリエッタの膝枕で…涙の地図を描き上げながら眠ってしまった。 やがてルイズを起こさないように静かに側付きの女官を呼びつけると 小声で指示を与えた…。 『あらゆる手を尽くし、一番早く飛べる竜と、その乗り手を探すべし』 しかし零戦に匹敵する早さで飛べる竜を見つけたところで、その竜を 正確無比かつ自由に扱える乗り手など、簡単に見つかろうはずも無かった。 そう…その運命の日が訪れるまでは… 『嵐の前の…』 「姫さま?」才人は面食らった…アンリエッタそっくりのその子に。 シエスタは姫の御前とばかりに恐縮しまくりでガタガタ震えている。 才人はすぐに…ジェシカに似てる子がいるくらいなんだから、 姫さまに似てる子がいたって不思議じゃないよな…と妙に納得した。 いやまてよ?シエスタの親戚がジェシカで…その従妹がアンリエッタ? つまり…向こうの世界で…シエスタとアンリエッタの祖先が同じ? そういえば…シエスタとアンリエッタは雰囲気や容姿が似ているかも。 そんな思いを巡らせていると…その少女は軽い調子で挨拶をした! 「やぁ!一美の親戚なんだって?じゃ私とも親戚って事だよね〜♪」 「ひぃじぃちゃんの代じゃ…従妹?鳩子?ひょっとこ?にゃははは」 やたらと明るく軽薄そうな姫さまである。ノリが良いというのか…。 「江田杏里!よろしくねっ♪」 エダ・アンリ? アンリ・エダ? アンリエッタ? 嘘だろ? ご都合主義にも程がある…まぁ名前なんてこんなもんだろう。 「シ…シエスタと申します…」 「それって苗字?名前?あ!もしかして、シエ・スタとか?きゃはは」 「杏里ちゃん!今日の夕飯どうする?」と一美が口を挟んだ。 「そうだね、人数も増えた事だし…買出しに行こっか?」 「近所のスーパーだけどシエスタちゃんも行く?」 「お…お供させて頂きます…」 シエスタそいつは偽者だ!早く気付け!っていうかそれも条件反射か? 「才人君はお留守番お願いね!」 「あ、あでも…」 あ、いや…シエスタ連れて行っちゃって…大丈夫かなぁ…なんて… 「私がいますから…心配しないで下さい。すぐに帰ってきます」 一美が才人に耳打ちした。事情も話してある事だし…大丈夫かな。 じゃ…3人の留守中に下着の物色でも…と良からぬ事を考えていると、 「下着はクローゼットの下の引き出し!洗濯物は洗濯籠だよ〜ん♪」 「見てもいいけど…後が怖いよ〜♪」杏里に先手を打たれた! 「じゃ行こうか!」 捨てられた子犬のような目で不安をあらわにしているシエスタ…。 しかし…メイド姿を見て、良くツッコミ入れなかったなぁと思っていると、 ドアの外で… 「ところでシエスタちゃん、なんでそんな格好してんの?きゃはは!」 「はい…メ、メイドですので…」 「そっかぁ!じゃしょうがないね、きゃははは!」 軽い…こっちの世界のアンリエッタ姫は…軽過ぎる…。 さて…お約束タイムである!世の男性諸君!留守中の女性の部屋だ! ご丁寧に下着の場所まで教えて頂いた!覗いて見たかどうかなんて、 元通りに戻しておけば分かりゃしないさ。 ルイズの下着は腐るほど見ているが…それはそれ、これはこれ。 さてさて…彼女達はどんな下着をお召しになられているのかなぁ?? 引き出しを…そ〜っと開ける。 「・・・」 え? ・・・絶句・・・ そこにはタオルや枕カバーなどが入っていて…下着は一枚も無く… 『やっぱり見たね?!エッチ!』 と書かれた紙が一枚入っていた。 良く見れば漫画などでよく見る…一度ドアを開けたら分かるように… 髪の毛を一本貼り付けて…という古典的なトラップまで仕掛けてあった。 俺…ダメダメじゃん…ベタ過ぎる。 しばらくするとインターホンが鳴った。 「才人く〜ん!エントランス開錠してぇ〜!」 後ろでは何やら話し声も聞こえ賑やかだ!女三人寄れば何とやら…。 再びインターホンが鳴りドアを開けてくれというので開けてみれば、 いったいどんな宴会を始めるつもりなんだと思わんばかりの買い物を 両手一杯に抱えた3人組が立っていた。 シエスタはすっかり打ち解けていた…偽者と気付いたか?エライぞ! と思ったら…スーパーの試食コーナーのシャンパンやらワインやらを しこたま飲んで上機嫌になったとか。酒乱モードで上機嫌っすか? 「シエスタ!今夜は鍋パーティにすっからね♪」 「私もお手伝いさせていただきましゅ!」 「宜しいシエスタ!ではこちらの下ごしらえを頼もうかな?」 「はい!やらせていただきましゅ!」 一応の主従関係は無意識とはいえ有る様だ…しかしそいつは偽者だ! 「シエスタさん目立ってましたよ、スーパーで♪」 一美が思い出し笑いをした。 「な、何かまずい事しちゃった?」 「杏里が…シエスタさんを連れ歩くのが面白くなっちゃったって…」 「メイド姿で『はい』『はい』って後を付いて歩いてるから…」 「周囲の人が『どこのご令嬢かしら?』って…勘違いし始めて」 「あの子、調子に乗って…面白がって…ごめんなさいね」 才人はホっとした。トラブルがあったわけじゃないならそれでいい。 「大丈夫!シエスタはそういう事には慣れているし…それにきっと」 「明日になれば半分くらいは忘れてるから」 『大嵐』 その夜は皆が酔っていた…未成年なのに? シャンパンは正月の祝い酒や甘酒みたいなもんだから問題無い! それが杏里の言い分だった。シエスタは素直にそれに従った…。 異世界には未成年の飲酒の規制は無かったように記憶している。 学院でも食事中に普通に飲まれていたし、咎められる事も無かった。 一美は元々、酒には弱いようで少量で既にヘロヘロになっていた。 杏里とシエスタの飲みっぷりは実に見事だった! 「なんと!?これはヨシェナヴェじゃないですかぁ?」 「そうよ〜♪寄せ鍋よ!わかってんじゃない♪」 「才人さん才人さん!これヨシェナヴェですよ〜故郷の料理です〜」 はいはい…何度も聞きました。 シエスタは料理を手伝いながら、その言葉を何度も繰り返していた。 「さっすがシエスタ!異世界から来たって言っれも親戚よね〜♪」 「ちゃぁんとわかっれるじゃなぁ〜ぃ♪」 ろれつが回っていませんよ杏里さん?!っていうか…え?え?え? 異世界から来たって…なに? 「一美さん…説明してくれたんですか?」 「一応簡単には話しておいたけど…」 もっと驚くとか、どうして?とか、疑うとか…気にならないのか? 「んっとね…シエスタの事を気に入ったから…いいんだって」 そ、そんなアバウトな! 「細かい事はこの際ど〜でもいいのらよ♪君ぃ〜♪」 さすが異世界の姫殿下…器が大きくていらっしゃる。 「才人さんったら〜私がこんなに思っているのに」 シエスタが絡み始めた…やばい。 「あんな傲慢で我侭な女の事なんて!忘れちゃえばいんですぅ!」 いきなり抱きついてきたかと思うと強引にキスをされた。 「おぉ〜やるねぇ♪シエスタがんばれ〜♪」 「あなたもあなたです!」 杏里を指差し、激しい口調で続けた… 「立場を利用して、才人さんに色目なんて使わないで下さい!」 杏里はただ笑っていた。シエスタ…それは似ているが…偽者だ。 「私、絶対に負けませんから!」 完璧にマスターしたというディープキスが…才人を襲う…。 杏里は大喜びで囃し立て、一美は目を覆い指の隙間から見て赤くなった。 「才人さん!いいかげんハッキリ決めて下さい!」 「シ、シエスタ?今ここでそんな話をしなくても…」 「私…と〜っくに覚悟は出来てるんですよ!」 おいおい、そんな嬉しい…いや、困らせるような発言を…。 杏里は「え〜そんな関係なんだぁ?♪」と、はしゃぎまくり、 一美は、さすがに少し酔いを醒ました方が良いと判断したのか、 「少し、換気しましょうか…」と窓を大きく開け放った。 と同時に心地良い夜風が吹き込んで来る。 窓から見えるその夜空には大きな月が…ひとつ…浮かんでいた。 『ガリア王国』 ガリア王国のヴェルサルテイル宮殿を造る煉瓦は青く彩られている。 青い髪はガリア王家血筋の特徴でもあり、宮殿のレンガもそれに倣い …宮殿はグラン・トロワと呼ばれていた。 その宮殿の一番奥の部屋に、先の戦争を終結へと導いた張本人、 ガリア国王…ジョセフはいた。 なにやらテーブルの上にチップを並べ…考えては…また並べていた。 「閣下…何かまた新しい遊びを始めましたのね?」 モリエール夫人は不安げに覗き込んだ。 「なぁに、ただの独り遊びだ!心配しなくても大丈夫だ!」 以前は巨大なハルケギニアの模型を使い戦術を巡らせていた策士、 いったい今度は何を始めたのやらと夫人は気が気では無かった。 「ふむ、なるほど…」 盤面には格子状に線が引かれ、そのマス目にチップを並べている。 奇妙な事にそのチップは表裏で色が違う不思議なものであった。 「ときにモリエール夫人?」 「は、はい?何でしょう閣下!」 「これを、どう見るかね?」 「どう…とは?」 「二つの色…どちらの数が勝っていると思うかな?」 モリエール夫人は、見たままを答えた。 「白い色のほうが多いように見受けられますわ」 そうか…というと1枚のチップを盤面に置き…指をパチン!と弾いた。 するとみるみる内に盤面の多くのチップが音を立てながら裏返り… 気が付くと盤面の殆どが黒い色で多い尽くされていた。 モリエール夫人は訳が分からず、ただ唖然とそれを見ていた。 「わからぬか…まぁ無理も無い」 立ち尽くす夫人に1枚のチップを見せるとこう言った… 「どうだね?試しに1枚、好きな場所に置いてみるがいい」 先の戦で自分がサイコロを振り戦局を左右した記憶が蘇る…。 「めっそうも御座いません閣下!ご遠慮申し上げます…」 そう告げると、夫人はそそくさと逃げるように部屋を後にした。 「そこにいるのだろう?」 扉の陰からフードを被ったシェフィールドが静かに進み出た。 「どうだった?」 「確かに…生きているようです」 青い髭を摩りながら少し考えるような仕草をして見せる… 「お考えは…とうにお決まりかと存じます」 「アルビオン王家の者なら生かしておくのは得策では無い」 「承知しております」 「何者だ?」 「王弟が妾に産ませた子と…」 「なるほど…サウスゴータ…か」 「おそらくは」 「兵も与えよう!必ず見つけ出し亡き者にせよ!」 「仰せのままに」 「ときにシェフィールド…」 「はい」 「これをどう見る?」 先程と同じように盤面を指し尋ねる…。 「既に勝敗は決しているかと思われます」 「ふむ、そうか…」 1枚のチップを盤面に置き、先程と同様にパチン!と指を弾くと、 黒一面だった盤面が、白一面に変わった。 「先をいかに見通すか…2手3手…常に先を読まねば」 「機を逃さぬ事は、とても重要な事だ!…しかし」 「先を見通してこその『機』なのだよ!」 「肝に銘じます…閣下!」 そう…これはまだ序盤の一手に過ぎぬのだ! シェフィールドを下がらせると深く椅子に腰をおろし… オルゴールを開け…その調べに耳を傾けた。 『ラ・ヴァリエール家』 ヴァリエール家では久しぶりに帰った公爵を囲み夕食を取っていた。 エレオノールはまた婚約を解消され…ひとしきりの説教を受け終り 一段落してホッと一息ついたところであった。 相変わらずカトレアは食が細く……もっと食べなきゃいかん!と、 公爵や夫人、皆から心配された。 「最近ルイズは帰って来ないわね」 とエレノアが言うと 「あんな親不孝な娘などいらん!」 と言われてしまった。 ルイズの様子を心配して王宮や学院にふくろうを飛ばしてるくせに! 先週も飛ばしたの知ってんだから…とエレノアは心の中で思っていた。 意地っ張り…。 食事も終りくつろいでいる所に…ふくろうが舞い込んできた。 ふくろうが話す 「書面にて!王宮からの勅命です」 どれどれ…と羊皮紙を広げる。 …各領主に通達… 「いったい何事だ?」 「どうしたの?お父様?」 高速で飛べる竜と、それを正確無比に自由に扱える乗り手、 心当たりがあるなら至急報告せよ…と書かれ、最後に王宮印があった。 「何をバカな!竜にも得手、不得手がある!」 「何のために部隊を分けているんだ?全く何を考えているのやら」 何も分かっちゃいない…と手紙に一瞥をくれるとポイ!と放った。 「飛ぶのは竜だ!竜と一体化でも出来なきゃ無理な相談だ!」 「大体、何だってこんな竜が必要なんだ?また戦争か?!」 公爵の機嫌を損ねたふくろうはカトレアが連れて行った。 執事のジェロームは機嫌を直すよう気を使い…ワインを注いだ。 カトレアは部屋に戻り羊皮紙に羽ペンを走らせていた。 『心当たり有り、ついては事の詳細をお知らせ頂きたく…』 小さく丸めた羊皮紙の手紙をふくろうに託すと、窓から放った。 翌朝、食卓は大変な騒ぎになっていた。 「ど、どういうこと?カトレア!」 エレオノールは目を白黒させて驚いた。 「カトレア!なぜ突然そんなことを言い出す?」 「父さま?私が使い魔を欲しがるのがそんなに変ですか?」 コロコロと笑いながらカトレアは言った。 「だって便利でしょ?色々と♪」 「そりゃ呼び出す幻獣にもよるが…」 「竜やヒポグリフやグリフォンだったら、お散歩が楽になるわ♪」 「そう言われればそうね…」 エレオノールは妙な説得力に得心したようだ。 「身体にも負担が掛かるんだぞ!」 「構わないわ♪」 「全く…言い出したら聞かないんだな…我が家の娘たちは…」 「えぇ!それがラ・ヴァリエール家の血筋ですもの♪」 血筋か…まぁ仕方なかろう…戦争に行きたがる娘よりはマシだ。 「私は今日発たねばならん!」 「エレオノールとお前が、しっかり見届けるんだぞ!」 公爵夫人は黙ってニッコリと微笑み… エレオノールは「はい!お父さま!」と姿勢を正し… カトレアは「お父さま…ありがとう…」と頭を下げ礼を言った。 『月目の理由』 右手にはめた手袋を見つめ大きな溜息を1つ、2つ、3つ目を吐こうと 息を吸った時…背後から声を掛けられた。 「疲れているのではないかね?」 「これは教皇…こんな場所に、何用で?」 「右手のルーンは、まだ痛むか?」 「いえ、大丈夫です」 手袋を外すと…そこには見慣れぬ不完全なルーンが刻まれていた。 「このような偽りのルーンに何の意味がありましょう…」 「我がロマリアは知恵の国だ!長年の研究の成果のルーンだ!」 「虚無を手に入れ、エルフを滅ぼし、東方へと至る為に…」 「しかし私がルーンを刻んだとて、担い手が居なければ…」 「それも時間の問題だ、案ずる事は無い」 何も分かっていない…担い手と使い魔は絆で結ばれるものだ… 造られた…偽りの絆など…何の意味がある。 ロマリアの虚無の研究により右手にルーンを刻まれたジュリオは、 その時の影響で片目の色が変わってしまっていた。 失うものばかりで…いったい自分は何を得るというのだろう? 「今しばらくの辛抱だ、やがて全てが手に入る…」 「それまでは手袋で隠していろ」 そう言うと教皇は建物の中へと消えていった。 湖の辺で出会ったあの女性…カトレアと言ったな…綺麗な人だった。 以前にもどこかで会ったような気がしているんだが… 世話をしていた風竜がキュイキュイと鳴いた! 「あぁ、アズーロもそう思うかい?どこだったかなぁ?」 綺麗な桃色の髪で…と思い出していると…風竜がまた鳴いた! 「偉いぞ!アズーロ!あのお嬢さんだ!ミス・ヴァリエール」 ガンダールヴの主人にして虚無の担い手…ミス・ルイズ。 彼女に良く似ていた…確かにあの辺りはラ・ヴァリエール領だった。 なるほど…そうか…そういう事か…絆…真の絆! ロマリオに囚われている偽りの絆…鎖から解き放ってくれるのは、 あの人なのかもしれない…。 ふいに不完全なルーンに痛みが走り、左手で痛みを押さえ込む。 「大丈夫…たぶん…きっと…もうすぐだ」 アズーロが答えるようにキュイ!と鳴いた。 『ルイズの提案』 「そうよ!タバサがいるじゃない!」 ルイズのその一言で王宮から学院に勅使が向かい、早朝にも関わらず タバサとシルフィードは呼び付けられる事になった。 「なによぉ〜こんな朝っぱらから」 大きなアクビをしながらキュルケは言った。 「なんでアンタまでいるのよ?呼んで無いわよ!」 「気にしない気にしない!才人のトコ行くんでしょ?」 「そ、そういうわけじゃないわよ!」 「聞いたわよ〜♪アンタ…またピーピー泣いたんですって?」 「な、な、な、なんでアンタが知ってるのよ?」 「あ、やっぱり♪」 「あの子がね…」とタバサを指差し 「アンタはきっと泣いているだろう…って言うからさぁ」 「ちょっとカマかけてみただけ♪」 既にバレバレだが、ルイズは顔を真っ赤にして反論した! 「な、泣いてなんかいないわよ!」 「あらそう?まぁどっちでもいいんだけどね〜」 「あぅ〜」 ルイズを散々からかうと満足したのか真顔になって言った。 「でもルイズ!たぶん…あの子、ダメよ」 え?とタバサの顔を見るが…その表情からは何も読み取れない。 「どうして?」と尋ねるルイズ。 「…速さ…足りない」 「…まだ子供…」 キュルケが説明を補足する。 「あのね、確かにタバサは優秀だけど…使い魔のシルフィード…」 「あの子はまだ子供なの。だから成竜ほど速くは飛べないの」 ルイズは肩を落として…うつむいた… 「……がい」 「え?何?」 キュルケが聞き返す。 「おねがい!ねぇお願いだから!」 「試すだけでいいの!1度だけでいいから!」 「お願い…」「お願い…」「…ねぇ…お願い…」 気が付けば、ルイズは大粒の涙をポロポロとこぼしていた。 「お願いだから…」 キュルケにすがり付くように泣きじゃくるルイズ…。 「そんなに心配?」 「もう…あんな思いは…嫌」 先の戦いで才人が死んだと思い、一度は自らの死をも覚悟したルイズ。 もう二度と離れたくないと心の底から思っていた。 「ずいぶんと素直になったものね?驚きだわ!」 「な、なによ!?」 「まぁいいわ…試すだけよ」 「え、偉そうに…やってくれるのはタバサじゃない!」 「まぁそうなんだけどね♪」 キュルケは鼻の頭をポリポリかいて、おどけて見せ…タバサに向い、 「いいかしら?」と聞いた。 タバサがシルフィードに何か呟くとシルフィードはキュイ!と鳴いた。 「…いい」 「…試すだけなら」 「じゃ、試験飛行としゃれこみましょ♪」 「だからぁ、アンタは関係無いでしょ?!」 「気にしない!気にしない!」 詳細な説明を受ける為に3人と1匹は王宮の中央庭へと向った。 そこにはコルベールが待っていた。キュルケは嬉しそうに手を振った! 『王家の血筋』 街道から森を抜けたウェストウッドの村に彼女は暮らしていた。 先の戦いで傷ついた際、才人がしばらくの間、身を寄せていた村… 誰も知らない…ティファニアと子供達だけが暮らす平和な村。 サウスゴータの森を抜けた先にある世間とは隔絶した隠れ里…。 「ティファニアおねぇちゃん!また考え事?」 「え?あ、ち、ちがうわ」 「また、あのにいちゃんの事だろ?」 「ちがうったら、もう!」 顔を真っ赤にして否定しても子供達には何の意味も無かった。 「ねぇティファニアおねぇちゃん?一緒に行きたかった?」 少女の真っ直ぐな問い掛けに正直戸惑ったが… 「ううん、みんなと一緒にいたいし…それに」 「また会える…から…きっと」 ティファニアは人間とエルフとの間に生まれたハーフエルフだった。 王弟の妾だった母は疎まれ、その身をサウスゴータ家に寄せていた。 やがて情勢が変わりその身を追われると、なんと王家は母を匿った サウスゴータ家から貴族の称号を剥奪し取り潰したのだ。 母は殺され…必死の思いで逃げ延びたティファニアは転々とし… 人間ともエルフとも交われず…そっと隠れ住むようになった…。 「また…会えるよね」 自分を見ても怖がらず接してくれた初めての人。 こんな私を見て…綺麗だと言ってくれた心優しい人。 誰とも関わりを持たないと決めていた頑なな心を開いてくれた人。 胸の事をあれこれ言われたけど、楽しかった賑やかな人達。 でもいつも目に浮かぶのは…才人さん。 生まれて始めて話をした…同世代の男の子…。ドキドキした。 ううん、今でも…思い出すだけで胸が…高鳴る。 毎晩、夜になると彼の事を思い出しながら…独り慰める…。 初めて知った自分の胸の大きさ… 才人さんは…本当はどっちが好きなのかな?大きいのは嫌? 今度会ったらハッキリ聞こう! 才人さんは知らない…私が本当は男の子に興味津々だってこと。 怪我で寝込ている時…デルフリンガーさんを別の部屋に置いたのは、 本当はうるさかったからじゃないんですよ。 私のしている事を見られないように、聞かれないように…。 隅々まで見た…男の子の大事な所だって…ちゃんと確認した。 怪我がちゃんと治ったかどうか…ちゃんと機能するかどうか… 仕方ないです…これは…治癒魔法の…その…確認だったんだから。 でも…手で触っているだけで何か出てきた時は驚いた! 最初は傷口が開いちゃったのかと思って大慌て…。でも才人さん、 とっても気持ち良さそうにしてたから…気付くまでの間…何度も 何度も出して上げていたんですよ。手でシコシコって感じでしたり、 胸の間に挟んだ事もあったかなぁ…お口でした時は勇気がいったけど 才人さんのモノだから嫌じゃなかった…ちゃんと飲んだんですよ。 だから…いつも通りにしてあげよう♪って部屋に入ったときに… もう気付いて起きていて…だから、あんなに驚いてしまったんです。 今思えば…最後までしちゃえば良かったかなぁ…なんて思ってたり。 もう毎晩独りでするのは切ないです。寂しいんです。 また会えるように…記憶も消さなかった…いつかまた…きっと。 ウェールズ亡き後…唯一の王家の血筋とも言えるティファニア。 その王家の血が今再び災いを飛び寄せている事に彼女はまだ 気付いてはいなかった。 余談ではあるが… 王家のお家騒動に巻き込まれる形で没落に追い込まれた貴族… サウスゴータ家の1人娘…「マチルダ・オブ・サウスゴータ」 土くれのフーケもまた、王家の血に翻弄された1人だった。 『松の湯へ』 「ここが銭湯よ♪」 「そうそう、うちのお風呂は小さいからね」 「へぇ〜凄いお屋敷ですねぇ〜」 一同はマンションから少し離れた場所にある老舗の銭湯にやってきた。 シエスタが銭湯の話を聞き「ぜひ経験したいです!」と言ったからだ。 才人は少し面白くなかった。 「一緒にお風呂に入ろうか?」という話に喜び勇んで飛びついてみれば、 なんの事は無い…銭湯だ。それなら「入ろうか?」じゃなく「行こうか?」 って言えよ!期待させやがって。 門構えの立派な銭湯で、聞けば昭和の時代から外観は代わってないそうだ。 入り口で靴を脱ぎロッカーに入れる。へぇ…木板の鍵かぁ懐かしいなぁ。 シエスタがそれを見て何やら騒いでいる様だ。 「靴はここで脱ぐんですか?これが鍵ですか?面白いですね?うわ〜♪」 鍵の掛かる仕組みが気になるようで、しきりに覗き込んだり眺めたり…。 「これは何ですか?…この記号」 「あぁそれは『ひらがな』っていう文字よ」 「他の人と区別して間違えない様に全部違う文字が書いてあるのよ」 「あ、ちなみにシエスタは『し』ね。で私は杏里の『あ』♪」 「私は一美の『か』です」 「でもココに同じ文字がありますよ?」 「それは『つ』よ♪向きも横だし逆でしょ?」 「じゃコレは?」 「『め』と『ぬ』!字なら後でゆっくり教えてあげるよ♪」 「はい!」 シエスタは偉いなぁ…文字を覚えようとしてるのか…それに比べて俺は、 未だに読み書き出来て無いし…っていうか覚える気は皆無だったしなぁ。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6035.html
前ページ次ページゼロの氷竜 ゼロの氷竜 十三話 トリステイン魔法学院では、多くの貴族の子弟や教師である貴族が生活している。 当然、生活に携わる様々な雑事を行う平民、つまりそれら貴族にかしずくものも数多い。 家具などをはじめとする調度品の修繕、管理をする執事やフットマン。 町から離れているため馬や馬車もあり、その世話をする下男や馬丁、馬車があれば無論御者もいる。 そして、食事の際の給仕や掃除洗濯を担う多くのメイド。 ルイズの唯一の友人であったシエスタは、そのメイドとして魔法学院に所属する立場だ。 そのシエスタの心は、今ほとんどが驚きによってしめられている。 魔法学院に通うギーシュ・ド・グラモンから、激しく問いただされながらも、シエスタは恐怖ではなく驚きを感じていた。 大半の貴族は、いついかなる時も平民を意識しない。 かしずかれていることが当然だからだ。 シエスタ達が会釈をしながら給仕をしたところで、何か言うこともない。 だがルイズをはじめとする幾人かの貴族、そして一部の教師達は平民を人間として認識している。 ギーシュが入学して最初の食事で、給仕をしたシエスタは礼を言われたことを覚えている。 同級生にはやし立てられ、以降は給仕する人間にだけ聞こえる程度に声をひそめるようになってしまったが、礼の言葉を聞いたのはシエスタだけではなかった。 「親の躾がいいのか、とんでもない女好きかのどっちかだな」 という料理長マルトーの言葉に、そのとき厨房にいた全員が笑っていた。 それは至極好意的なもので、決して悪意の込められたものではない。 だからこそ、だからこそ今、トリステイン魔法学院のアルヴィーズの食堂で、自分を罵る男がギーシュだと、シエスタは信じることが出来なかった。 ゆえに、シエスタの心は驚きによってそのほとんどがしめられている。 転んだ拍子に膝を床で打ち、手に持っていたトレイをその上のケーキごと放り投げた。 トレイを投げ込んだ先で悲鳴があがったとき、シエスタの心に浮かんだのは一縷の希望。 顔を上げる前に、どうか被害にあったのが同僚であるように、という願いは叶わない。 救いをもたらす蜘蛛の糸は、貴族の証であるマントを見た瞬間に掻き消えた。 だがその貴族がギーシュであると認識し、シエスタの目の前に再び蜘蛛の糸が姿を見せる。 恐怖ではなく、深い謝罪の気持ちがシエスタの心をしめた。 シエスタが謝罪の言葉を口にしようとした刹那、それはギーシュの言葉に遮られる。 「なんてことをしてくれるんだ!?」 怒りをあらわにし、口から怒気そのものといった言葉を投げ放つ。 「平民は最低限の礼儀作法すら知らないのか!?」 赤みが差したシエスタの膝を気にすることもなく、足下の砕かれた香水瓶だけに注視する。 シエスタと同じようにデザートを配っていたメイドたちも、平民を人間扱いしてくれていた普段と、あまりにもかけ離れたその態度に驚きや失望の表情を浮かべていた。 その理由は明白だ。 やはり貴族は貴族でしかないのだと。 しかしシエスタはそんな言葉を投げかけられても、まだ失望にはいたっていなかった。 自分がしでかしてしまった不始末に対しての叱責も、甘んじて受けている。 貴族たちが持つそれとは違うが、平民たちにも誇りというものが存在していた。 料理長のマルトーが、自らの料理に自信を持つように。 メイドたちは給仕の際、空気のように振舞うことを当然と思っている。 誰からも意識されることのない空気どころか、衆目の関心を集めている今の状況は、シエスタにとって恥ずべきものに他ならない。 であるからこそ、自らの失態に対するギーシュの酷な物言いも必然と受け止められる。 うなだれシエスタの心は、口から出る謝罪の言葉と等しかった。 ギーシュの詰問が、たった今シエスタが起こした失態のみ、もしくは過去に遡ったとしても個人に対してであれば、それほどの時間を必要とせずに事は収束しただろう。 知らぬうちに平民たちから得ていた人望を、どぶに投げ捨てるだけですんでいたはずだ。 ところが今、ギーシュは心の平衡を失していた。 ある種喜劇のように、ギーシュは自らの足場を切り崩していく。 ギーシュ・ド・グラモンは心の平衡を崩していた。 いくつかの要因があってのことではある。 一つはつい先刻、ブラムドに圧倒的な力の差を見せ付けられたこと。 自身の予想の甘さが、そして余計な挑発が招いたことでもあったが。 そして今一つは、その後モンモランシーに慰められたことだ。 無論、慰められたことに喜びもある。 しかしそれでも、貴族としての誇りが、男としての矜持が、ギーシュの心を揺らし続ける。 モンモランシーが近くにいれば、笑顔を浮かべる程度の虚勢は張れた。 だが食堂に入り、席が離れてしまえばその必要もなくなってしまう。 普段であればくだらない話をする友人たちから話しかけられても、気のない返事をするか無視するといった有様だ。 陰鬱な黒さが、ギーシュの心を塗り潰しつつあった。 往々にして大きな出来事というものは、小さな因子が積み重なった上に起こる。 ギーシュの様子に、その他愛もない友の一人、マリコルヌ・ド・グランプレが幾度か呼びかけていた。 ところが何度呼んでも真っ当な返事は得られない。 貴族である誇りからか、重ねてきた経験の少なさからか、彼ら貴族が持つ自制のたがは小さく、しかも外れやすいものだ。 「おい、ギーシュ!」 マリコルヌの手がギーシュの肩を掴み、振り返らせる。 そのはずみで、ギーシュの懐から一つの香水瓶が零れ落ちた。 モンモランシーから送られた香水瓶が。 床に落ちた衝撃でも運良く割れなかったそれも、シエスタの踵と床に挟まれてはひとたまりもない。 香水瓶によって体の平衡を失ったシエスタは、抗うこともできずに転んでしまう。 いくつものケーキが乗せられたトレイを放り投げながら。 マリコルヌに振り向かされた横顔に、ケーキごとトレイが投げつけられる。 声をかけようとしていたマリコルヌは二の句が継げない。 ケーキや皿が落ちる音に周囲の人間も振り向くが、同じくとっさに言葉は出なかった。 当のギーシュにしても、すぐに事態を把握することなどできるはずがない。 ケーキのクリームで一時的に張り付いていたトレイも、自重で床へと落ちる。 その下から現れるのは、フルーツやクリームで彩られたギーシュの姿だ。 トレイが落ちた一瞬のあと、マリコルヌは笑いがこみ上げるのを感じた。 二瞬のあと、怒気に色付けられたギーシュの表情に、その笑いを飲み込む。 三瞬のあと、第一声を放ったのはギーシュだった。 「なんてことをしてくれるんだ!?」 その身に貼り付いたフルーツやクリームは、ギーシュの視界を遮っていない。 トレイがぶつかった衝撃で麻痺しているのか、大した痛みも感じていない。 ギーシュの目には、砕けた香水瓶だけが映っていた。 一年前、魔法学院に入学した当日、ギーシュは余所見をしていて誰かを転ばせてしまった。 謝罪をしながら振り向いたギーシュは、転ばせてしまった少女の可憐さに呆然とする。 その少女、モンモランシーが立たせてもらうために上げた手に、一瞬気付かないほど。 「女の子には、優しくするものよ?」 手を貸されて立ち上がった後、モンモランシーが戯れにいった言葉を、ギーシュは今でも律儀に守っている。 二人は自己紹介を交わして打ち解け、それから一年が経つうちにとても親しくなった。 そして今日、ブラムドとの事件のあと、モンモランシーが香水瓶を差し出していう。 「あなたのために、作ったのよ」 白皙の頬を染めながら、つぶやくような一言を、ギーシュは心に留め置いている。 その大切な香水瓶を踏み砕かれ、しかも心を黒く塗り潰していたギーシュは、自分の口から溢れ出る言葉を止めることができなかった。 「平民は礼儀作法も知らないのか!?」 口に出していながらも、ギーシュは常からそう思っていたわけではない。 あまり裕福とはいえない領地では、当然平民との距離も近しくなる。 平民たちと食卓を囲んだこともあった。 だが今ギーシュの口から次々と溢れる言葉は、同級生たちに影響されたためか、平民への蔑視に満ち溢れている。 そしてギーシュは、悪魔に囁かれたかのような自身の変貌に、まだ気付いていない。 「モンモランシーが僕のために作ってくれた香水を、一体どうしてくれるんだ!?」 この言葉で、ギーシュは奈落へ続く階段を一段下りた。 不意に、人垣を分けて一人の少女が姿を見せる。 「ケティ?」 ギーシュに名前を呼ばれた少女は、目に涙を浮かべながらつぶやく。 「ギーシュ様、やはりミス・モンモランシーと……」 ギーシュにとって、この一言はあまりにも思いがけないものだった。 思いもかけず、あまりに当然すぎる問いかけをされたため、返事をすることもできない。 ケティはその態度を、不実が暴露されたことによる狼狽だと誤解する。 そして怒りと悲しみに心を染め、それ以上何を言うこともなく人垣の中へと消えた。 取り残された形のギーシュだが、ケティの態度の意味が理解できない。 態度を決めかねていることが、致命的な誤りだということにも気付けない。 さしたる時間も経ないまま、ケティが消えた先とは違う人垣が開かれる。 そこに立つのは、怒りを押し殺し、笑顔を浮かべたモンモランシーだ。 察しの良いものならば、その表情に秘められた感情に気付いただろう。 ところがギーシュはひどく鈍かった。 「ギーシュ、あの子はだあれ?」 言い方だけは甘やかだったが、人垣の大多数はそれに含まれる恐ろしさに気付いている。 「一年のケティ・ド・ラ・ロッタだよ。先日ラ・ロシェールの森へ遠乗りに誘われてね」 ざわついていた人垣が静まりかえる中、ギーシュは奈落へ続く階段の二段目を踏んだ。 「そう……。喜んでくれた?」 「ああ、とても喜んでくれたよ」 ギーシュの表情は、むしろ晴れやかだった。 ただし、彼は決して開き直っているわけではない。 とある方面で非常に優秀な父親や兄の影響で、女性への態度が非常に洗練されていること。 そしてその整った顔で非常に、非常に誤解を招きやすかったが、ギーシュ自身はとても純朴な少年だった。 彼にとって不幸なことは、魔法学院内でその事実に気付いているのが極々少数だという事実と、モンモランシーが大多数に含まれていることだったろう。 モンモランシーが無言でギーシュに近付き、フルーツとクリームで彩られたその頭に、鮮やかな赤を振りかけた。 愕然とするギーシュと、無表情になったモンモランシーは視線を合わせる。 「さようなら」 とだけ告げ、ケティと同じようにモンモランシーは人垣の向こうへ消えた。 ギーシュは混乱の極みにある。 彼にとって、ケティの誘いを受けたのはモンモランシーとの約束を守ったことだ。 女の子に優しくするという約束を。 ケティの態度で起こった混乱に、モンモランシーの態度が盛大な拍車をかける。 年若く経験の少ないギーシュは、偉大と信じてやまない先人の言葉に頼ろうとした。 つまり、とある方面で非常に優秀な父親と兄のそれに。 ……ワインを引っかけられたぐらい、笑って許すのが男の度量だ。 どんな名言も価値のある至言も、使う時を誤れば、呆れるほど容易に世迷言へ姿を変える。 しかも悪いことにギーシュが心の中から拾い上げた言葉は、名言でも至言でもなかった。 それを言った当人でも、なぜ今その言葉を使うのかと首をかしげたに違いない。 そもそも引っかけられたという程度ではなく、ぶちまけられたというのが正しいだろう。 「仕方のない人だ」 とギーシュが笑ってつぶやいたところで、人垣の構成員たちは狂ったのかと思うだけだ。 幸か不幸か、ギーシュはその事実に気付くこともなかったが。 黒く染まっていたギーシュの心が、二人の少女がもたらした混乱によって、いつの間にかぬぐわれていた。 しかしこびりついていた残りかすが、暗く口を開ける奈落へ向けて、少年の背中を押す。 ギーシュがシエスタにいった最後の言葉には、嫉妬が含まれていた。 かつて偶然見かけた光景、ルイズがシエスタに屈託なく笑いかけていたその光景に、ギーシュは深い嫉妬を覚えていた。 ギーシュには、素顔の自分をさらけ出せるような相手は学院には存在しない。 小さなことを、平民への礼の言葉をあげつらうような同級生しか。 モンモランシーならばと思ったこともあるが、男としての矜持と若さがそれを許さない。 その嫉妬が、悲劇の幕を開く。 「もういい。せいぜいあのゼロに慰めてもらいたまえ」 いつの間にか人垣の外に、状況を見守る三つの視線が増えていた。 ルイズたちに先んじて食堂に到着していた、ブラムドと二人の教師たちだ。 ともあれギーシュを止めようとするコルベールを、ブラムドとオスマンが押しとどめる。 「ひどいことにはならぬようにする」 というオスマンの言葉に、コルベールも不承不承ながら従う。 ただし、オスマンの目に浮かんでいた面白がるような光を見逃してはいなかったが。 「眠りの鐘を準備しますか?」 「いらん。魔法の力で有耶無耶にしても、後顧に憂いが残るだけじゃ」 提案をしたコルベールも、オスマンの正しさに首肯する。 二人の教師を横目に、ブラムドはシエスタへと視線を送っていた。 主であるルイズが自ら紹介した、身分の違う友人へ。 ブラムドが友と呼ぶ一人の魔術師、アルナカーラでさえ、魔術師が蛮族と呼ぶものたちに友はいなかった。 時代が、そうさせなかったのかもしれない。 今、別の世界にいるブラムドは、友と呼ばれたシエスタがルイズをどう思っているのか、この一件を一つの秤にしようとしていた。 ギーシュの一言で、うなだれていたシエスタの頭が持ち上がる。 その瞳には光が差していた。 それは詰問から開放された喜びでも、貴族に対する恐れでもない。 友を侮辱されたことへの怒りが、その目に宿っていた。 シエスタは知っている。 いや、シエスタだけが知っている。 ゼロという言葉が、彼女の友人をどれだけ傷付けてきたか。 ゼロという言葉が、彼女の友人の涙をどれだけ流させてきたか。 シエスタは、自分を友といってくれたルイズへの侮辱を、看過することなどできなかった。 腰を伸ばしたシエスタの顔から、表情が抜け落ちている。 その中で、目だけが光を放っていた。 「今のお言葉、取り消していただけませんか?」 炯々と光る目に気付き、ギーシュが問おうとした瞬間、口火を切ったのはシエスタだった。 さすがに、ここまで真正面から平民に楯突かれた経験は、ギーシュにも、人垣の構成員たちにもない。 「なんだって?」 余裕を持って応じたつもりだが、ギーシュの声は大きな驚きとささやかな怒りによって、わずかに震えていた。 「ヴァリエール様をゼロと呼んだことを、取り消していただけませんか?」 ギーシュの心を占める、驚きと怒りの比率が徐々に変化する。 少年の心を、再び黒さが塗りつぶしていく。 「なぜだい?」 「あの方は、昨日使い魔を召喚されました。少なくとも、ゼロではありません」 ギーシュの心を塗りつぶす黒は、嫉妬という名前だ。 平民が貴族に楯突くことは、自らの首を処刑台に据えるに等しい。 貴族の気分で殺された平民は決して多くはないが、探すのが難しいほどでもなかった。 殺されないまでも、手足を折られたり切られたりといった程度であれば、探す必要もない。 そんな危険をおかしてまでも、たかだか一つの言葉を取り消させる理由が何か、もちろんギーシュは気付いている。 気付いているからこそ、自分の傍らにそんな友がいないからこそ、その嫉妬は強い。 「ゼロが一になったところで、大して変わりはないさ」 ギーシュの言葉は、ある意味で助け舟に等しい。 うなずきさえすれば、もう一度謝りさえすれば、ギーシュの暗い喜びは満たされただろう。 だがシエスタはかたくなだ。 「いいえ、ゼロと一では大きな違いがあります」 それゆえにギーシュの嫉妬は強く、自身の卑小さを悟らざるを得なくなる。 今、自らを犠牲にしても悔いはないというほどの友がいないこと、もし友を王家や有力貴族に侮辱されたとして、自分は同じことができるだろうかと。 その感情が、ギーシュの口を滑らせる。 「君は、平民の分際で貴族に楯突くつもりか?」 食堂へ入ろうとしていたキュルケと、食堂から駆け出そうとしていたモンモランシーがぶつかった。 ひとまず文句を言おうとしたキュルケだったが、モンモランシーの目に滲む涙に気付く。 「どうしたの?」 モンモランシーの様子に、そして食堂の一角に作られた人垣に、三人の少女が気付いた。 前からモンモランシーに恋の相談を受けていたキュルケは、何とはなしに事態を把握する。 「ギーシュ?」 こくりとモンモランシーがうなずく。 「浮気?」 再び、モンモランシーがうなずく。 そのまま声を殺して泣くモンモランシーに、キュルケはその豊かな胸を貸す。 事の次第が理解できないルイズとタバサは、不思議そうな顔を見合わせるだけだ。 だが人垣の中から上がったギーシュの声に、ルイズは表情を凍らせる。 「もういい。せいぜいあのゼロに慰めてもらいたまえ」 怒気をみなぎらせるルイズの様子を眺めながら、キュルケはモンモランシーへ自室へ戻るように促す。 一歩、二歩と人垣に近寄るルイズの耳に、聞き慣れた声が聞こえた。 「今のお言葉、取り消していただけませんか?」 それは友の声だ。 ルイズの足が止まる。 その肩に手を置きながら、キュルケがつぶやく。 「いい友達じゃない」 キュルケへ振り返ったルイズの顔には、誇らしげな笑顔が浮かんでいた。 そこではっと気付く。 ギーシュの声に続いてシエスタの声が続いたということは、人垣の中心にいるのが二人だということだ。 しかも会話から状況を考えれば、シエスタがギーシュに楯突いている形になる。 貴族の機嫌を損ねた平民がどうなるのか、ルイズもキュルケもタバサもよく知っていた。 慌てて走り出そうとするルイズを、キュルケの腕が絡め取る。 さらに文句を言おうとする口を、空いた片手で塞いだ。 「ちょぉっと、様子を見ましょうよ」 煌めく少年の瞳でつぶやいたキュルケの様子に、ルイズは説得をあきらめかける。 だが友人を危険な目に遭わせるわけにはいかない。 それは自らを支えてくれたシエスタに対する恩義と、平民を守る貴族たらんとするルイズの誇りが許さないからだ。 なおも軛から脱しようとするルイズに、キュルケが声をかける。 「ひどいことになる前には止めるから」 その言葉に説得された訳ではないが、ルイズは四肢から力が抜けていくのを感じていた。 ついさっき、朝食の栄養分を使い果たしていたことへ、ルイズは思い至らない。 もどかしくうごめきながら、ルイズはシエスタとギーシュのやりとりを聞くことしかできなかった。 そのルイズを抑えながら、キュルケは人垣の中から聞こえる声に耳を奪われる。 平民と貴族を隔てる垣根の低いゲルマニア、その母国と魔法学院があるトリステインの違いを、キュルケは一年間のうちに学んでいた。 歴史や伝統というものがどれだけ人の心を蝕むのか、増長する貴族とひれ伏す平民の姿に表れる。 そのトリステインにいながら、友のために貴族へ楯突く平民がいることが、キュルケの心を震わせた。 その感動を、ギーシュの言葉が切り裂く。 「君は、平民の分際で貴族に楯突くつもりか?」 キュルケはギーシュを知っていた。 それはただの同級生としてではなく。 立ち居振る舞いとは裏腹な純朴さを見抜いていた。 平民を人間として見ていたことも知っている。 そのギーシュが、よりにもよって権威を振りかざした。 鋭く、熱く、純粋な怒りが、キュルケの口から放たれる。 「そこまでにしておきなさい!!」 人垣が、二つに割れた。 前ページ次ページゼロの氷竜
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7415.html
前ページ次ページゼロのメイジと赤の女王 翌朝、早々に目覚めた陽子はとりあえずいいつけを済ませようと、そっとルイズの部屋を抜け出した。 広い廊下を歩きながら周囲を見て回るが、無駄に大きな城は何がどこにあるのかさっぱりわからない。 「・・・さて、水場はどこにあるんだろう」 少し困ったようにひとりごちた陽子に、冗祐が助言する。 「使用人をつかまえて訊いたほうが早いのでは?」 「そうだな、これだけ広いのなら働いている人も大勢いるか・・・」 「ならば丑の方角に、人が」 「わかった、ありがとう」 教えられた方向へ向かえば、遠くから人影が向かってくるのが見えた。彼女――――どうやら女性だ――――は陽子に気づくと軽く目を見張って、にこりと笑んだ。 切りそろえられた黒髪と白い肌に散ったそばかすの愛らしい、陽子とそう歳の変わりなさそうな少女だ。 「お早うございます。・・・えーと、新しい使用人の方ですか?」 陽子は苦笑して首を振る。 「お早う、・・・わたしは使用人ではないよ。どうやら昨日、ルイズという子に召喚されたらしくって」 「まあ。・・・それじゃ、あなたがミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」 驚いた様子の少女に、陽子は苦笑したまま尋ねる。 「・・・もう、そんなに有名か?」 「ええ。召喚の魔法で平民を呼んでしまったって、それは噂になっていますわ」 「そうか・・・」 どうやら人間が召喚されたことは本当に珍しいことらしい。これはしばらくは見世物かなと辟易する陽子に、少女が小首を傾げた。 「それで、ミス・ヴァリエールの使い魔さんは、こんなに早くにどうされたんですか?」 「ああ、彼女に洗濯を申し付けられて・・・そうだ、すまないけれど、洗濯する場所を教えてもらえないか?」 少女はそうですかと屈託なく笑んで、片手に下げた籠を示してみせる。中にはシーツか何かだろうか、白い布が丸められて詰め込まれていた。 「わかりました。私も丁度向かうところだったんです。一緒に参りましょうか」 「助かる。・・・わたしは中陽子。あなたは?」 少女は珍しいお名前ですねとにっこりして、先導して歩き出した。 「シエスタと申します。平民同士、これからよろしくお願いしますね、ヨウシさん」 他愛無い話をしつつ洗濯をしながら、陽子はシエスタにうまく表現できない不思議な感覚を覚えていた。 無礼にならないように気をつけてはいたが、あまりに視線をやるのでシエスタも見られていることに気づき、少々居心地が悪そうに訊ねる。 「・・・あの、ヨウシさん?私に何かついてますか?」 「・・・あ!・・・いや、」 ぶしつけを恥じるように陽子は視線を逸らし、そしてようやく彼女に感じるものが何かに思い至る。――――郷愁、だ。 「・・・じろじろ見てしまってごめん。なんだか、懐かしい気がして。・・・わたしが昔住んでいたところの人々が、シエスタのような綺麗な黒髪をしていたんだ」 「まあ、そうなんですか」 シエスタはわずか陽子にさした影に気づかぬ振りで笑って見せた。召喚というものがどういうものか、学院に住み込みで奉仕しているシエスタは多少ではあるが知っている。 シエスタと同年代か少し下のように見えるこの少年は、いきなり家族や友人や馴染んだ場所から引き離されたのだ。心細い中に懐かしさを感じるものを見つければ気にもなるだろう。 それにシエスタは曽祖父譲りの髪色を気に入っていたので、褒められたことは単純に嬉しかった。 「この色、珍しいでしょう。曾お祖父ちゃん譲りなんです。私の地元でも、この髪は私の家族だけなんですよ。 もしかしたら、ウチの曾お祖父ちゃんとヨウシさん、同郷だったのかもしれませんね」 「・・・・・・だったら、面白いね」 苦笑交じりに答える陽子に、シエスタは余計なことを云ってしまったことを悟る。 ふるさとのことはタブーなのかしら――――召喚されてしまった身であるならばそれもあるのかもしれない、あるいはもっと複雑な事情かもと考えて、シエスタは話題を変えることにした。 「ところで、人が使い魔として召喚されるなんて今までになかったって話ですけれど、ミス・ヴァリエールはヨウシさんになんておっしゃっていました?」 「ああ・・・」 陽子は思い出すようにすいと視線を上に向ける。 「・・・そうだね、普通人が召喚されることはないって云っていたな。それで、使い魔は主人の目となり耳となり、そして主人を守る存在だって云ってたけど、わたしには無理だから雑用とかをやるようにって」 「まあ。それじゃ、使い魔というよりは使用人に近いんですね。そうですよね、幾ら何でも人間にそんな危ないことはさせられませんよね」 「そうだね。・・・よし、シエスタ、これで洗濯物は全部?」 ぱん、と最後のシーツの水気をきって、陽子はシエスタを見た。シエスタは空の籠を見下ろし、笑顔でシーツを受け取る。 「はい、これでお終いです。・・・すみません、私の分まで手伝ってもらっちゃって」 陽子も薄く笑んで答える。 「案内してもらったお礼代わりに。また何かあったら頼りに行ってしまうかもしれないし」 「ああ、それならいつでもいらしてください。私、基本的に厨房周りにいますから。もしいなくても厨房の誰かに聞けばどこにいるか教えてもらえると思います。それから、」 シエスタは陽子の脇に絞ってある白いレースを手に取った。 「ついでに、これも干しときますね。乾いたらミス・ヴァリエールのお部屋まで持っていきますので」 少し迷ったが、陽子は素直にシエスタの好意を受けることにした。 「ありがとう。じゃあ、お願いしても構わないかな」 「どういたしまして。それでは、私戻りますね」 「うん、ありがとう、シエスタ」 「いいえ。それでは」 礼をしてぱたぱたと駆けていくシエスタの背を見送り、さて、陽子は聳え立つ白亜の城を見上げた。金波宮とはまるで違う建築様式で造られた城は朝日を受けきらきらと輝いている。 「・・・それじゃ、お姫様を起こしにいこうか。そろそろ良い時間だろう」 呟いて、朝特有のざわめきに溢れ出す城をストロベリーブロンドの髪の少女の元へと歩き出した。 「ルイズ。ルイズ、朝だよ」 「んー・・・。あと5分・・・・・・」 「・・・どこかで見た光景ですね」 「煩いぞ冗祐」 余計なことを呟く使令を黙らせて陽子はルイズを呼ぶ。少女はむにゃむにゃとなにやら呟いて顔をしかめ、むーと寝返りをうち朝日に背を向けた。意外に寝起きはよくないようだ。 「ルイズ。そろそろ起きないと、遅れてしまうんじゃないか?起きて、ルイズ」 「うー・・・。うるさいわねえ・・・」 身体を軽く揺さぶられ、とうとう観念したようにルイズがむっくりと起き上がる。手の甲でこしこしと目元をこすると、ようやくそこで陽子の存在に気づく。 「ひぇっ?!あ、あんた誰よ?!どういう訳で私の部屋に入ってきてるの?!」 「・・・どういう、って。ルイズが起こせと云ったんだろう」 悲鳴さえ上げられて、陽子は流石に呆れ返る。盛大に寝惚けているにしても忘れられているとは思わなかった。 「あなたが昨日召喚した使い魔だ。もう一度自己紹介が必要か?」 「・・・・・・・・・。あー。・・・あー・・・、そうだったわね。・・・いいえ、自己紹介は必要ないわ」 ルイズは可愛らしく欠伸をしながら、ベッドの上に座り込んだ。服、と単語だけで命じられ、陽子はベッド脇の制服を彼女に渡す。 「下着」 制服を受け取ったルイズは次いでそう告げた。まだ眠たそうで、とてものこと意識がはっきりしているとは思えない。 「どこにあるの?」 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」 妙に間延びした口調に苦笑を噛み殺しながら適当に一揃い取り出して彼女に渡す。ルイズはのっそりした動きで下着を身につけた。 「服」 「その服は違うの?」 「着せて」 こどもではあるまいしと陽子は呆れたが、はたと思いついてなまぬるい顔をする。・・・そういえば、王になった直後はいつでもどこでも女官がついてまわり、なんでもやろうとしてくれたことを思い出す。 特に陽子を着飾らせることについてはそれが使命とばかりにものすごく燃えており、どれだけ簡素な格好で赦してもらうかが重大な問題だった。ちなみにその攻防戦は現在進行形である。 (・・・・・・そんなもんなんだろうか) どうせ同性なんだしと陽子はいまだ寝惚け眼のルイズにブラウスを着せだした。 老人ホームのボランティアで要介護者の着替えを手伝ったときのことを思い出しつつだったことは、ルイズには云わないほうがいいかもしれない。 前ページ次ページゼロのメイジと赤の女王
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2138.html
わたしは夜遅く魔法の練習を広場の隅で行っていた。 「ウル・カーノ」 火は起こらず爆発するだけだった。錬金、風鎚、凝縮、着火・・・ 相変わらず何を唱えても爆発しか起こらない、変わった事といえば 抜群にコントロールが良くなった事位ね。 夜も遅いというのに本塔からメイドたちがゾロゾロと出てきた。 「精が出ますねミス・ヴァリエール」 その中の一人が声を掛けてきた。 「シエスタこそ、こんな時間まで仕事してたの?」 「はい、厨房と食堂は常に清潔にしておかないと、虫が出たら大変ですから」 確かに食事に虫が入っていたら大騒ぎよね。 「ミス・ヴァリエール・・・あまり根を詰めると体に良くありませんよ」 「それは、あなたの方じゃないの?」 わたしがこんな生活を始めたのは、つい最近だというのにシエスタは 今まで朝早くから夜遅くまで働き詰だ。 「私ですか?私はキチンと息抜きしてますよ」 エプロンの下からスッと一冊の本を取り出し、わたしに手渡した。 「さあ、どうぞどうぞ」 読んでみろっていうの?建物の明かりを頼りに本を読んでみる。 なになに・・・バタフライ伯爵夫人の優雅な一日。 なっ、何?何なのコレは!?××××って何!? 「あががががががががが・・・か、返すわ」 シエスタに本を突っ返す。 「お気に召しませんか?」 「召さないわ」 本をエプロンの下に戻すと今度は紙束を取り出した。 どれだけ入れてんのよ。 「では、こちら等いかがでしょう」 紙束を受け取り読んでみる、また同じような内容なんだろうか。 見つめ合うギーシュとプロシュート。 ギーシュ、プロシュート、ギーシュ、プロシュート。 お互い名前を囁き合いながら顔を近づけ、そして・・・ 「えーと、シエスタさん・・・これは一体なんでしょう?」 「ギーシュ様×プロシュートさん。ギーシュ様へタレ攻めですわ」 シエスタは極上の笑みを見せた。 「あの男同士なんですけど?」 理解出来ないわ。 「ミス・ヴァリエール」 シエスタがコホンと静かに告げる。 「そこが、いいんじゃないですか」 「ごめん、わかんないわ」 ていうか、プロシュートの名前を勝手に使わないで欲しいんだけど。 「そうですか・・・」 シエスタ、こちらが申し訳なく思うぐらいガッカリしていた。 「お力になれなくて残念です」 シエスタは肩を落とし、トボトボと去って行った。 わたしは走り込みの後建物の周りを息を整えながら歩いていた。 バタフライ伯爵夫人・・・あんな物が平民の間で出回っているの? それに、あの紙束・・・ 角を曲がると出会い頭に紙束を山ほど抱えた人とぶつかり 向うの人が持っていた紙束がバサバサと地面に落ちていった。 「ご、ごめんなさい。拾うわ」 ぶつかった人はマリコヌルだった。わたしは紙束を拾うためにしゃがみこむ。 「ル、ルイズ!?いいよいいよ、僕がやるから」 彼が杖を振るうと落ちていた紙が元通りに纏り、彼の両手の中に納まる。 「じゃあ、僕は急ぐから」 マリコヌルはワタワタと駆け抜けていった。 「なんなのよ一体」 わたしも寮に戻ろうと足を向ける。 カサッ。一枚の紙が足元に落ちていた。 取りこぼしだろうか、わたしは紙を拾い上げるとそこには絵が描かれていた。 キュルケとタバサ、二人が服を半分脱いだ状態で絡み合っていて 下にこう書かれていた。 タバサ×キュルケ ああ・・・世の中って広いなあ・・・