約 1,871,166 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1538.html
「ふむ、つまり何者かの妨害にあったと?」 「はい……」 学院長室では、オールド・オスマンがシエスタの報告に頭を悩ませていた。 昨晩、シエスタはマントに波紋を通し、ハングライダーのように空を飛んでいた。 だが滑空中に『エア・ハンマー』らしき魔法を受け、墜落死の危機に陥ったのだ。 「悪質じゃのう、こうなると生徒同士の問題は生徒同士で…という訳にもいかんし」 シエスタは元平民であり、波紋という得意な魔法を使うのを理由として、魔法学院では生徒と同じ扱いを受けている。 つまりは、貴族扱い。 しかし貴族至上主義者が少なくないトリステイン魔法学院の貴族子弟達にとって、元平民のシエスタが簡単に受け入れられるはずはなかった。 オールド・オスマンには一つの誤算があった。 シエスタが吸血鬼を退治したのを理由に、『シュヴァリエ』の称号を得られるよう便宜を図ろうとしていたが、それがフイになってしまったのだ。 領地を持つことで得られる爵位ではなく、実力と功績によって与えられるシュヴァリエの称号をシエスタが得ることで、少しでも立場を固めようと考えていたのだ。 だが王宮からは、「シュヴァリエを得るには従軍が必要だ」との返事が返ってきたのだ。 近年、シュヴァリエを得ようと功績をねつ造する事件も報告されているので、審査が厳しくなるのは当然だった。 オールド・オスマンは、「タイミングが悪いのう」、とため息をついた。 「オールド・オスマン、私、自分で解決してみたいと思います」 シエスタの力強い言葉に、オスマンが驚く。 「ほう? 勝算はあるのかね」 「…………」 シエスタは無言で頷く。 「ならワシは余計な手出しはせんよ、じゃが一つ忠告をさせてくれんかの」 「『勝者』でも『敗者』でもない、第三の立場を得るよう努力しなさい」 「第三の立場?」 「戦争に例えるとな、傷病兵を治癒する水のメイジのような立場じゃ。波紋は吸血鬼を打ち倒す……しかし、吸血鬼に先導された群衆は打ち倒せん。それを味方に付ける立ち回り方を学ぶんじゃ」 シエスタは少し考え込んだ後で、頷いた。 「……はい。」 シエスタは学院長室を出た後、キュルケとタバサの二人を探し、波紋の訓練をしている教室へと来て貰った。 「ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、お願いがあります。」 「私達に頼み? 何かしら」 「実は……」 シエスタが説明しようとしたところで、タバサが口を開いた。 「シルフィードから聞いている」 タバサは、シエスタが夜に波紋の訓練をして、その最中に魔法で邪魔された事など、シルフィードが見ていることを話した。 シエスタがそれに重ね、『エア・ハンマー』で突然襲われた話をする。 キュルケはその話を聞き、怒りが湧いてきたらしく、目つきが鋭くなった。 「悪戯にしちゃ度が過ぎてるわね」 このキュルケ、窓から男を焼き捨てたことなどすっかり忘れているらしい。 「で、その犯人を捜してほしいってところかしら?」 「いえ、違います」 シエスタの言葉にキュルケが驚く、タバサは無言のままだったが、シエスタをじっと見ている。 「これは私の問題です、危険もありますが、自分で解決しなければならないと思っています……お二人に頼みたいことは、それとは違うことです」 そして、シエスタが語ったのは、二人を驚かせるに十分な内容だった。 波紋は技術であり、平民とメイジの隔てなく、ある程度の習得が可能 水に波紋を流すことで、周囲の生物を探知できる メイジの索敵能力を高め、感覚を鋭敏にさせる効果 吸血鬼に対して絶大な攻撃能力を誇る ディティクト・マジックでも解らない吸血鬼や食屍鬼を、波紋で識別できる 人間を治癒する『水の秘薬』の効果を、劇的に高めることが可能であること 植物や水などを利用した精霊魔法に干渉し、ある程度なら無効化できること 波紋を利用して人間の思考を狂わせることも、治すこともでき、ディティクト・マジックに反応しない 波紋をメイジに供給することで、集中力、魔力のキャパシティが一時的に上昇する 生物の生命力を高めることで、毒や病の回復を促進する 食屍鬼になりかけの人間ならば波紋で元に戻すことが可能 若さを保ち、美容健康にとても良い 現時点でわかっている『波紋』の効能を、シエスタから説明され、キュルケは感心した。 タバサも表情こそ変わらないが、ほう、とため息をついて聞いていた。 「凄いじゃない……水の秘薬の効果が高まるなんて……具体的にはどのくらい?」 シエスタはマントを外すと、シャツのボタンを外し、肩を見せた。 そこには鋭利な刃物でつけられたような傷痕がついていたが、ほぼ治っている状態だった。 「この間、ギ……吸血鬼と戦ったんですが、その時に受けた傷です」 「あんた吸血鬼と戦ったの!?」 「はい、水の秘薬を使って、ここまで塞がりました」 「その傷を塞ぐのに秘薬を?」 キュルケが傷口をまじまじと見つめる。 「はい、100倍に希釈された水の秘薬を、一滴だけ分けて頂いたんです」 シエスタの言葉に驚く。 水の秘薬といえば、水の精霊の身体の一部であり、同じ量の黄金と同じかそれ以上に高額で取引されている。 シエスタの肩についた傷は、長さ12サント、深さはよく解らないが、浅くはないだろうと思えた。 それがごくごく少量の水の秘薬ですぐに塞がってしまうのなら、水の秘薬を取引している秘薬屋は、秘薬の暴落に嘆いてしまうだろう。 「水のメイジと協力すれば、より凄い効果があるかもしれないわね…ホント驚きだわ」 感心するキュルケの横で、タバサは何かを考えていた。 「……解毒効果は?」 「まだよく解らないんです、ただ、オールド・オスマンは波紋を習得されてから『眠りの雲』にかからなくなった……と言っていました」 「そう」 「それで、お二人にお願いしたいことなんですが、波紋の研究のために協力して頂きたいんです」 「面白そうじゃない、美容にも良いんでしょう?それなら断る理由なんかないわよ」 「私も協力する、そのかわり、解毒作用についてより詳細な効果を知りたい」 「ありがとう、ございます」 シエスタは頭を下げ、二人に感謝の意を表した。 「ところで、生物を探知するってどんな感じなの?」 「はい、それじゃあ……お二人とも私の手を握って下さいませんか?」 キュルケの質問に答えようと、シエスタが手を出す。 タバサが右手を、キュルケが左手を掴んだのを確認すると、シエスタは呼吸を整えて波紋を流し始めた。 「「「……!」」」 三人が同時に同じ方向を向く。 黒板の上、三人を見下ろすような位置から何かを感じた。 タバサが杖を取り出し、ディティクト・マジックを唱える。 光の粉が周囲を舞い、タバサの感覚にぼんやりと何かが写った。 シエスタが出て行った後、オールド・オスマンは水パイプを吸おうとし、ちらりと秘書の机を見た。 ミス・ロングビルは用事があるとかで、外出中だった。 「やっぱり美女に怒られつつ吸うパイプの方が美味いのぅ」 そんなことを呟きつつ、『遠見の鏡』を見ると、そこにはシエスタの姿が映されていた。 場所は、シエスタが訓練に使っている教室だった。 傍らには二人の生徒、確かツェルプストー家の娘と、ガリアから来ているタバサという少女がいて、何かを話している。 オールド・オスマンは、波紋の研究を発展させるつもりでシエスタの立場を良くしようと画策していた。 だが、それとは別に、生徒としてのシエスタ、恩人の子孫としてのシエスタが魔法学院で友達を見つけてくれたのが嬉しかった。 鏡に映るシエスタは、波紋について説明しているようだった。 ふと、シエスタがタバサとキュルケの手を握ると、三人がオールド・オスマンの方を『見た』。 鏡の中ではすかさずタバサが杖を抜き、何かを呟いている。 唇の動きから『ディティクト・マジック』の類だと予測し、慌てて『遠見の鏡』を停止させた。 「ふぅ~、生物探知だけでなく、鏡越しの視線まで感じるのかの…いやはや、波紋は恐ろしいわい」 ぷかぁ、と煙を舞わせて、呟く。 「……波紋の効果を教えるのはあの二人か、それにしても波紋を用いた者は、勘が鋭くなるのかのう?」 いずれにせよ、シエスタの監視は難しくなってしまった。 オールド・オスマンは水パイプを吹かしながら、机の上に置かれた一枚の報告書を手にした。 そこにはアルビオンで『鉄仮面』とも『石仮面』とも呼ばれる傭兵が、鬼神のような活躍で貴族派の包囲網を突破した、と記されていた。 「石仮面か……リサリサ先生の仰っていた『DIO』や『柱の男』のように、吸血鬼の王国を作られる前に殺さねばならん……」 オールド・オスマンは、再度、遠見の鏡に魔力を込めた。 鏡に映るシエスタ達は、既に手を離している、今度は視線には気づかれないだろう。 丁度鏡の向こうでは、シエスタが『石仮面』のことをキュルケとタバサに説明しているところだった。 キュルケとタバサの顔が、心なしか青ざめている気がする。 青ざめるのも無理はないだろう。 かつての級友は『勇敢に戦って死んだ』のではなく『操られて死んだ』のだと告げられたのだ。 波紋の研究を手伝ってほしいというのも、吸血鬼として人を襲うルイズを殺すため。 オールド・オスマンにも、石仮面への怒りがあった。 人間だったルイズのためにも、吸血鬼と化した『ルイズだった者』を、一刻も早く殺さなければならない。 そう決意していた。 だが一つ誤算があったとすれば、オスマンは、石仮面の恐ろしさ『だけ』に、心を奪われていた点だろうか。 ゼロと揶揄された生徒は、オスマンが考えている以上に、誇り高かった。 人間であり続けようとする程に。 現時点で波紋を『技術』だと知る者 オールド・オスマン、ミス・ロングビル、シエスタ、キュルケ、タバサ ルイズが吸血鬼だと知る者 オールド・オスマン、ミス・ロングビル、ウェールズ・テューダー、アンリエッタ 石仮面でルイズが吸血鬼化したと知っている者 オールド・オスマン、ミス・ロングビル 『石仮面』と名乗る吸血鬼に、ルイズの肉体が乗っ取られたと思いこんでいる者 シエスタ、キュルケ、タバサ ルイズが正気だと知っている者 ミス・ロングビル、ウェールズ・テューダー、アンリエッタ To be continued → 27< 目次
https://w.atwiki.jp/gods/pages/45192.html
ハルシエス ホルス(2)の別名。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4069.html
前ページ次ページKNIGHT-ZERO シエスタの操るKITTは、広いが車を転回させるには狭すぎるモット伯爵の寝室の中心へと素早く動いた 各タイヤの駆動力を状況に応じて適正に配分する高機能な電子制御四輪駆動を備えたKITTの機動システム ルイズはその膨大な走りこみから得た経験則で、普段は前輪と後輪の駆動比率を35:65に固定していた それはKITTの居た世界ではターマックポジションと言われ、アクセルのオンオフで車を自在に操れる シエスタはその駆動配分を95%前輪寄りに切り替え、停止したまま操縦桿をフルロックまで据え切ると オートマティック・セレクターをRに入れて思いきりアクセルを踏んだ、前輪が斜めに蹴られたように滑る FF車がジムカーナでよく使うバックターンを駆使し、シエスタは狭い室内で一気に車首を出口に向けた ルイズは自分が得意とする戦車の旋回に似た片輪逆転ターンよりも素早い方向転換にちょっと嫉妬する KITTはルイズが開けたドアの穴を少し広げながら、前から引っ張られるように部屋の外に飛び出した 邸のメインホールを囲う階段、ルイズがブっ壊しながら駆け上がってきた東側の階段は既に消滅してる シエスタはKITTを操り、西側の階段を下り始めた、前輪で車体を引っ張りながら後輪でバランスを取る 手すりがバックミラーにカカカっと当たるが、手すりも階段も壁に飾られた絵画も、何一つ壊さなかった ルイズが突風のようにすべてを叩き壊しながら駆け上がった階段の逆側、幅も構造も対称の西側の階段を シエスタはそよ風のように、しかしルイズに劣らぬ速度で、王宮を去るシンデレラのように駆け降りた 段差を感じさせない乗り心地にルイズは頬を膨らす、自分が駆け昇った時は振動でお尻が痛くなったのに KITTは片側の壁が崩壊したメインホールから邸を脱した、目前に広がるのは瓦礫が広がる急斜面 ゲレンデの上級者用モーグルコースを見下ろすような、直角の斜面が奈落の底まで続いてるような感覚 シエスタの故郷には曽祖父が作ってくれた竹のスキーがあって、彼女はスキーなら村では一番だった ルイズが今更KITTの正しい使用法を思い出したのは、目の前の急斜面への恐怖だった、身震いをする 邸に接近するために降りた盛土の堤よりずっと急角度な斜面には、鋭く割れ砕けた大理石の瓦礫が広がり 入念な基礎工事で立てられた柱の残骸が、この柱のやたら多い別邸の墓標のように何本も突き立っていた あの柱に激突すればKITTのボディは無事でも、乗ってるこっちはアバラの2~3本も折れるだろう 操縦席のシエスタはといえば同じように黙り込んでいる、ルイズが助け舟を出す積もりで話しかけた 「え~とシエスタ、そこの柱にワイヤーアンカーを固定しなさい、それで下まで降りられるわ」 一刻も早く逃走する必要に迫られる中、一言も発さず急斜面を見下ろしていたシエスタが口を開いた 「失礼しましたミス・ヴァリエール・・・いいダウンヒル・コースだなぁ…と思って、見とれていたんです」 そしてシエスタは「じゃあちょっと落ちますね」と言うと無造作にアクセルを踏み、斜面に飛び出した 顔を強張らせたルイズと微笑むシエスタ、双方の座る操縦席と助手席は異なった心理効果をもたらした 地球では他人の飛ばす車の助手席に乗るのをとても怖がるレーサーやパイロットはとても多いという 「私とKITTさんは…何でも出来る!」 「ああああんたねぇ!それを言っていいのはわたしだけよ!…っきゃぁぁ!落ちる落ちるおちるぅぅ!!」 突き出た太い柱に向けKITTを直滑降させたシエスタは、瓦礫を跳ね飛ばしながら車体を横滑りさせた そのまま切り返し、車体を反転させて柱を回りこむ、大理石の柱がKITTのドアを掠り、白い煙を上げる シエスタは激しい斜滑降と切り返しを繰り返し、連続して立つ柱を左右に避けながら斜面を滑り降りた KITTは自分の生まれた異世界に存在したある人間の名を思い出した、ジャン・クロード・キリー アルペンスキーの三冠王、史上最も有名なスキーヤーにして、モータースポーツでも高い実績を残す男 旗竿に体をぶつける彼の豪快な大回転の技術はレースのコーナリングから得たという事は知られていた まさかこの異世界で、キリーの生まれ変わりとも言えるようなスピードの神に愛された者に出会えるとは 「私とKITTさんなら…誰にも負けない!」 「てってってててってっ訂正しなさぁい!…『わたし達』、よが…ひ、舌噛んだぁぁ!!」 シエスタの操るKITTは邸の残骸の広がる斜面をあっという間に駆け降り、渓谷の底の川に飛び込む ここからいち早く逃走するには、別邸付近で大きく湾曲した堤防道路をショートカットする様に川を下り そのまま数㎞先で斜面を駆け上がり堤防道路に戻るのが最短のルートだった、当然KITTは推奨していない 樽に詰められて激流下りをしてるような騒がしい車内で、ルイズは大声を上げてシエスタに話しかけた 「シエスタ!ねぇシエスタ!…わたし…アルビオンに行くわ!…今度こそ…死んじゃうかもしれないの!」 「何ですって?ミス・ヴァリエール…聞こえませーん!」 シエスタ…わたしね…あんたのことが… ルイズの言葉は川岸に上がり、そのまま岩礫の斜面をヒルクライムするKITTの騒がしい音にかき消された きっと…言いかけたその言葉は、もう少しの間、胸にしまっておいたほうがいいものなのかもしれない その晩、トリスティン魔法学院では初夏の恒例行事、セント・クリストファーの舞踏会が催された KITTの居た世界で主イエスを担いで河を渡った聖者の名前、その由来から旅人の守護神とされている 二つの世界が遥か昔から様々な形での相互干渉をしている事実を証明する事象がKITTには興味深かった ルイズがオスマン学長にねじこんだ退学届は、公的な書類には必須である日付が入ってなかったため 結局、提出の直後にオールド・オスマンの執務室で、季節外れに火を入れられた暖炉の灰となった 舞踏会は豪奢な絵画と美術品に囲まれた本塔二階のダンスホールで行われるのが慣わしになっているが 今夜の舞踏会はオスマンの決定により、生徒達が普段の正餐を摂る一階のアルヴィーズの食堂で行われた 大窓の外には芝生の中庭があり、開け放たれた大窓からは気持ちいい初夏の夜風が吹き込んでいる そして、中庭にはオスマンにとっての今夜の主賓が、黒い肌に窓明かりを輝かせながら鎮座していた 食堂の大窓の外、芝生の庭に停まるKITTのフェンダーにメイド服姿のシエスタが寄りかかっていた ルイズと共にモット伯爵の別邸から戻ったシエスタは、今日は部屋で休めというマルトーの勧めを断り 帰るなりすぐに学院メイドの仕事に戻ると、大量の馳走が供される舞踏会の給仕に忙しく立ち回った 舞踏会が滞りなく開始された頃、マルトー親父に取らされた休憩時間、シエスタはKITTの側に居た 静かな庭から舞踏会の喧騒を黙って見つめるシエスタは、どこか現実感覚を喪失したような瞳をしている 今日は長い一日だった、こんな思いをしたのはタルブに向かったルイズの帰還を待ったあの一日以来 「シエスタさん…お聞きしていいですか?あなたはこの舞踏会に参加してみたいとは思わないのですか?」 「私は平民のメイドです…それは望んでもしょうがないことです、ずっとずっと昔に…諦めましたわ…」 KITTはシエスタにある提案をした、困惑し渋るシエスタの後ろでその計画に大いに乗り気だったのは 使い魔の白鼠モードソグニルを使って一人と一台の会話を盗み聞きしていたオールド・オスマンだった 「シエスタさん、あなたとルイズは私に教えてくれました、人はその知恵と勇気で…なんでも出来ると」 舞踏会の会場 ルイズとキュルケはダンスに興じる同級生から外れたテーブルで、向かい合ってワイングラスを重ねていた 「…どうしても一人で行くのね?…もう一度言うわ、私を連れてきなさい、タバサも同じ気持ちよ…」 「一人じゃない、KITTが居るわ、それにあんたの事は嫌いだけど、命をくれとまでは言えないわよ」 イブニングドレスで着飾ると、他の男子学生が見とれるほどの華やかさを持つルイズとキュルケ この舞踏会で男達の注目の的だった二人は、ダンスなど目もくれず互いの杯にワインを注ぎ合っている リエージュでモット伯爵の別邸をブっ壊し、使用人を攫った事については、何らかの裁きがあるんだろう もし伯爵が訴えたとしてもルイズの元に役人が来るまで時間がかかるし、その頃には国外に逃亡してる アンリエッタ女王からの辞令によるアルビオン駐留軍への従軍任務は、まだ帰国期限が決まっていない ルイズにとっては酒宴となった舞踏会も佳境に入った頃、アルヴィーズの食堂の入り口が開け放たれた KITTが草案した呼び込みの文句を読み上げたのは、他でもない学院長オールド・オスマンだった 「大日本帝国海軍佐々木武雄少尉が曾孫娘、タルブ御料村の最高責任者、シエスタ・ササキのおな~り~!」 聞きなれない口上に生徒達が注目する、ルイズとキュルケも千鳥足で正面入り口まで見物に向かった 濃紺のディナー・ジャケット、清冽な光を放つ白いシルクシャツ、瀟洒に緩く結んだ真紅のボー・タイ ごく軽く撫でつけた黒髪を輝かせながら入場したのは、男物の略礼服に身を包んだシエスタだった シエスタのタキシードは、黒い燕尾服に黒タイの野暮な礼服に身を包んだ男子生徒の間でも際立っていた 地球の中世よりもだいぶ早く普及したタキシード、この世界でのそれは貴族婦人を篭絡するジゴロの象徴 高価な衣装を快く貸し出し、着付けてくれたオスマンが楽団に演奏を止めさせると、KITTに合図をした KITTがそのサウンド・システムで「薔薇は美しく散る」をアルヴィーズも踊り出すほどの音量で流す 普段の引っ込み思案など嘘のような姿のシエスタ、堂々と伸びた背筋がその服装を更に魅惑的に変える 舞踏会を楽しんでいた生徒の多くは見慣れた学院メイドの珍奇な姿、平民風情の乱入に不快感を露にする しかしその中の何人か、数人の女子が表情とはうらはらに、足がシエスタの方に向かうのを止められない シエスタが薄化粧さえ伊達に映えるその顔で、午睡から目覚めたばかりの妖精のような微笑みを見せた時 着飾った女子生徒のほとんどが共の男性の手を振り払い、タキシード姿のシエスタに向かって押し寄せた 「メイドのシエスタ、私が踊って差し上げてもよろしくてよ」 「ジェントル・ウーマン!よろしければあたしと一曲踊ってくださいな!」 「麗人様、後生です…どうかわたくしに、その薔薇のような御手をお許しください」 男装のシエスタは淑女達の誘いを優雅にすり抜けると、アルヴィーズの食堂の奥まで迷わず歩を進める シエスタの通った後に漂う香り、その体から自然に放射される魅力に触れた女達は、揃って息を喘がせた シエスタは桜色のイブニングドレスに不似合いな、腰に手を当てた姿で仁王立ちするルイズの前に立つと すっと腰を屈め、胸に手を当てる粋な仕草で跪いた、曽祖父から習った江田島海軍士官学校仕込みの作法 「谷間の百合よ、あなたの芳しい吐息に導かれここまできました、どうかこの恋の盲と・・・一時の夢を…」 それはかつてシエスタの曽祖父が、その美貌からタルブの美神と言われた曾祖母を射止めた時の言葉で シエスタは幼い頃より、ソロモン王の麗句から頂戴したその台詞を誇張した自慢話と共に聞かされていた ルイズは魔法の靄に包まれたように、シエスタに手を差し出す、学院入学以来初めて応じるダンスの誘い KITTのサウンドシステムは、アルゼンチン・タンゴの名曲「ラ・クンパルシータ」を奏で始める ヘソの中まで響くパーカッションに困惑するルイズ、しかしシエスタは既に腰でリズムを取り初めている 「ちょ…ちょっとシエスタ!そんな馬鹿な服着てなんの積もり?大体私こんな舞踏曲なんて知らないわよ」 ルイズの腰を取ったシエスタは、その耳に唇を寄せ、ルイズの膝が砕けてしまいそうな甘い甘い声で囁く 「大丈夫…わたくしにお任せください…KITTさんと一緒に走るように…踊ればいいんです」 シエスタは曲に合わせて、ルイズの腕を少し強引に導く、その刺激がまたルイズの瞳をとろけさせた 「さぁ!ミス・ヴァリエール、ヘアピンカーブです!カウンターステア!ドリフト!フルアクセルです!」 シエスタの逞しい腕の動きと足さばき、ルイズとシエスタの共有するもの、彼女はすぐに気づいた 「面白いじゃない…こうなったら踊ってやろうじゃないの…シエスタ!あんたとわたしは何でも出来るわ!」 シエスタとルイズはアルヴィーズの食堂の中心で、激しく、艶かしく、そして誰よりも自由に踊った 女生徒達は嫉妬と羨望の眼差しで二人の円舞を見つめていたが、やがて神々しいものへの畏敬に変わる KITTがタンゴ、ジャズ、ツゥイスト、テクノ、シンフォニーとプレイした曲がクライマックスに達し シエスタが見事にルイズを高々とリフトしフィニッシュした時には男子さえもがこの二人に見とれていた ルイズはKITTを信じていた、シエスタと友人達、自分とゼロと蔑んだ人たちまでもを信じていた 自分だけでなく、KITTと、それを信じる人たちの気持ちがあれば何でも出来るような気がしていた 「おでれーた!」 地球から遠く離れた、少し似ていて少し違う世界、魔法がいくつかの進歩と引き換えに得たいくつかの事 この古くて新しい大陸ハルケギニアは地球がまだ到達していない「言語の統一」を既に成し遂げていた 地球ではオランダ語系統に属する南アフリカの言語アフリカーンスに似たハルケギニア各国共通の公用語 その独得の言語にも語尾を引きずるアルビオン訛りやフレンチポップのヴォーカルのようなガリア発音等 各地方独得の変化はあって、それは言葉が機械の記号ではなく、人間と共に生きる物だという証明だった KITTは普段のボストン訛りとは異なる「チクトンネ言葉」と言われる蓮っ葉な口調でもう一度繰り返した 「おでれーた!…あんなイカした二人、ブロードウェイでも宝塚でも見た事無ぇぜ…こりゃおでれーた!」 それは科学と魔法、二つのテクノロジーの進化をもたらした人間の持つ可能性への、惜しみない賛美だった ルイズはその数日後、アンリエッタの手配した船にKITTを載せ、空路アルビオンに向かった これからのルイズを待ち受けている運命がどういうものなのか、彼女には予想もつかなかったが ひとつだけわかっていたのは、もうすぐやってくる夏がとびっきり熱い物になるであろうという事だった ~~~~パラレルなオマケ~~~~~~ アルヴィーズの食堂の中心、純白の帝国海軍士官服のシエスタと桜色のイブニングドレスのルイズが踊る KITTは庭に控え、ジョー・コッカー ジェニファー・ウォーンズの「愛と青春の旅立ち」を流していた 左腰に帯びた恩賜の短剣、それが小国のひとつも買えるほどの価値があることをシエスタは知らない 右腰に納まった士官の象徴、南部拳銃が同時に7人のスクゥエアメイジと渡り合える武器だということも シエスタにとって、彼女が受け継いだ誇り高き曽祖父の魂の重みにくらべれば、いかほどのものでもない 周囲で踊る生徒達は自分のパートナーよりもこの二人を盗み見ては、その優雅さにため息を漏らしていた 「…わたし…他の誰に何を言われてもアルビオンに行く積もり…でもあんたが行くなって言ってくれたら…」 「…ミス・ヴァリエール…お心を偽らないでください、わたしはいつまでも変わることなく…待ってます」 「…わたし…必ず生きて帰って来る…そしたら…ドライブしたりお茶飲んだり…また一緒に踊ってね・・・」 「約束です、ミス・ヴァリエール…大日本帝国海軍の菊の御紋、ひい爺様の誇りにかけて約束いたします・・・」 ルイズはシエスタの白い詰襟服、三列の略綬に彩られた胸に頬を寄せ、にじんできた涙ごと押し当てた KITTをこの世界に召喚して以来初めて、いつまでもこの夜が明けないことを願いながらずっと踊り続けた 前ページ次ページKNIGHT-ZERO
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4142.html
364 :戦場のメリー・クリスマス〜シエスタの見た夢 ◆mQKcT9WQPM :2007/12/03(月) 03 46 46 ID iv147R+v 「起きて下さい、サイトさん」 耳慣れた声に目を醒ます。 目を開くと、黒髪のメイドがベッドに腰掛け、自分に呼びかけていた。 「んあ?シエスタ…?」 寝ぼけ眼で身体を起こす。 すると。 シエスタはかぶり布団を才人から器用に剥ぎ取った。 「うわさぶっ!?シエスタ何すんだよっ?」 上半身裸の才人は、身体を抱えてシエスタに抗議する。 「はーい、今日はせっかくの冬の晴れ間ですからねー。 お布団干しちゃいますよー」 言って今度はベッドのシーツに手を掛ける。 外は確かに快晴で、絶好の物干し日和だった。 しかし。 「だから寒いって!」 快晴で室内とはいえ、冬の空気は半裸の才人にはキツかった。 シエスタはそんな才人に、指を突きつけながら言う。 「いつまでもそんな格好してるからです。 さ、早く服着てください」 さすがにこのまま凍えているわけにはいかないので、才人はシエスタに言われるまま服を着る。 その間にも、シエスタはてきぱきとシーツとかぶり布団をまとめ、抱え込む。 「シエスタって、なんだかお母さんみたいだな」 なんとなく呟いた才人の言葉に。 「…もう、何言ってるんですか。 ほら、早く朝ごはん食べてきてください。ミス・ヴァリエールが食堂でお待ちですよ」 そういえば、既に部屋にルイズの姿はなかった。 「やっべ、急がないとまた不機嫌になる!」 「いってらっしゃ〜い」 シエスタに見送られ、才人は寮の廊下を駆け抜ける。 そして、駆け抜けながら思うのだった。 シエスタみたいな子がお嫁さんだったら、最高なんだろうな、と。 365 :戦場のメリー・クリスマス〜シエスタの見た夢 ◆mQKcT9WQPM :2007/12/03(月) 03 47 50 ID iv147R+v 夢を、見ていた。 どこか遠くで、こことは違う場所で、生活する夢。 それはとても楽しく刺激的で。 いつまでもそうして、まどろんでいたかった…。 「起きて下さい!才人さん!」 夢は唐突に終わる。 聞きなれた声が耳元で炸裂し、才人は思いっきり布団を跳ね上げて起き上がる。 「うわっ!?なんだなんだっ?」 慌てて辺りを見渡す。 目に入る、見慣れた部屋の光景。 白い壁紙。その壁に立てかけられたスチール製のラック。そのラックに雑多に積まれた書籍と、オーディオ機器。 そしてその前で、腰に手を当てて怒っている制服の少女が一人。 黒髪のその少女は、まだ寝ぼけ眼の才人に、顔をぐーっ、と近づけて言った。 「ほら、早く着替えて!また遅刻する気ですか?」 言いながら、手に持った橙色の折りたたみ式の携帯を開いてみせる。 可愛らしい猫の時計の壁紙が、十二月二十四日の午前八時前を指していた。 このままだと、二人は確実に二学期最後の始業時間に間に合わない。 「うわっ?もうこんな時間っ?」 慌ててベッドから飛び降りる才人。 その才人に、少女はてきぱきと着替えのブレザーとカバンを渡す。 「はい、着替え。ネクタイはあとで締めてあげますから、制服だけ着て。 今日の準備は全部しておきましたから。携帯もカバンの中」 手渡すとすぐに、ぐちゃぐちゃのベッドの掛け布団をばさっ、と開いて直す。 才人は慌てて制服に袖を通し、脱いだパジャマを放り投げる。 「あーもう!脱いだらきちんと畳んで! 時間ないんですから慌てずに急いで!」 「ムチャゆうなよ!全く、結婚前からこんなのって、先が思いやられるよ…シエスタ」 「…それはこっちの台詞です。いつまでもだらしのない許婚じゃ私が困るんです」 言いながら才人のネクタイを締める少女の名前はシエスタ。 才人の幼馴染であり、そして、両家の親が認めた許婚でもあった。 準備を整えた二人は玄関を飛び出していく。 「行って来ます!」 「それじゃ行って来ますね、おばさま」 パンを咥えた才人を、シエスタが押しながら駆けていく。 二人の背中を、才人の母親が手を振りながら見送った。 366 :戦場のメリー・クリスマス〜シエスタの見た夢 ◆mQKcT9WQPM :2007/12/03(月) 03 48 46 ID iv147R+v 「ま、間に合ったぁ」 閉じた校門の内側で、才人は肩で息をする。 その隣では、シエスタが同じように肩で息をしていた。 「これで、無事冬休みが迎えられますね」 言ってにっこり笑うシエスタだったが。 「…残念ながら、そういうわけにもいかないんですよ」 言って二人に話しかけたのは、生徒指導部教諭、コルベール。 「え?それってどういう…」 そう尋ねる才人に、コルベールは手元のボードに挟まれたプリントを才人に見せる。 そのプリントには二学期の遅刻・欠席数がカウントされており、才人のそれはちょうど三十回に達していた。 「遅刻三十回。罰則規定により、終業式の後片付けをお願いします」 「え?ちょっと待って先生、俺まだ二十九回しか…」 才人の言うとおりだった。 二学期に入って、才人は二十九回しか遅刻していない。従って罰則発生しないはずであった。 「お忘れですか?夏休み中の登校日、才人君遅刻してきましたよね」 「え」 「夏休み中の登校は、二学期分にカウントされます」 「えええええええええええええーっ!?」 頭を抱える才人だったが、結果は覆らず。 結局、終業式の後片付けをする羽目になったのだった。 367 :戦場のメリー・クリスマス〜シエスタの見た夢 ◆mQKcT9WQPM :2007/12/03(月) 03 50 26 ID iv147R+v 後片付けをまかされた才人の仕事は、主に体育館の隅に並べられた教員用のパイプ椅子を片付けることだった。 それ自体は、1時間もせずに終わるような内容の仕事だったのだが、いかんせん始めたのが大掃除の後では、遅すぎた。 才人がヒイコラ言いながら椅子を片付け終わった頃には、外は真っ暗になっていた。 才人は慌てて玄関に向かう。 「うっわ、もうこんな時間かよ!」 「お疲れ様でした。三学期は遅刻は少なめにね、才人君」 コルベールは手を振って、会釈だけ返した才人を見送った。 才人が慌てて家に帰ると、ダイニングで冷め切ったクリスマスのご馳走が、『お母さんたちはちょっと氷川くんのクリスマスライヴに行ってくるからあとはよろしく♪』と言う手紙と、物凄く不機嫌な顔の、制服の上にエプロンを着たシエスタと一緒に待っていた。 「…オコッテル?」 恐る恐る、才人は尋ねてみる。 「…怒ってます」 言ってシエスタはぷい、と横を向く。 どうやら怒っているようだ。 「…今日、帰りにデートしてくれる約束でしたよね」 むすっとした顔で、シエスタは才人を責める。 彼女の言うとおり、今日のクリスマスイヴ、才人はシエスタとデートの約束をしていた。 というより、持ちかけたのは才人の方だ。 まず映画。そしてプレゼントを買い、家へ。夕食の後、以下省略。 という予定だったのだが。 今からではせいぜい夕食その後、くらいなものだ。 「あ、あのさ」 「…言い訳は聞きたくありません」 言ってシエスタは、テーブルの上のフライドチキンの皿を電子レンジに突っ込む。 レンジを淡々と操作するその背中には、妙な気迫がこもっているように見えた。 「え、えと、怒ってる?」 さっきと同じ質問を、才人は繰り返す。 「えーえ、怒ってます」 背中を向けたまま、シエスタは応える。 一切才人の方を向かないのがなんだか怖い。 才人はなんだか声を掛けづらくなって、ごにょごにょと下を向いてしまう。 「…全く。どこかの遅刻魔人のせいで、せっかくのクリスマスがダイナシです」 言って、温め終わったフライドチキンの皿をどすん、とテーブルの上に置く。 その音にびくん!と身体を震わせる才人。 顔を上げると。 息のかかりそうな距離に、シエスタの顔があった。 「あ、あの、シエスタ?」 「ダイナシにしたぶん、しっかり償っていただきます♪」 その満面の笑顔は、才人には何故か怒っているように見えた。 368 :戦場のメリー・クリスマス〜シエスタの見た夢 ◆mQKcT9WQPM :2007/12/03(月) 03 51 47 ID iv147R+v まずは、ダイニングで一回。 当然の事だ。裸エプロンで迫られて抵抗できるほど才人に根性はないのだから。 そしてお風呂で二回。 致し方のない事である。圧倒的な物量と、そしてシャンパンで紛れ込んだアルコールが才人の理性を場外までかっとばしたのだから。。 才人が疲れきって寝巻きで部屋に戻ったら。 「さーいーと、さん♪」 超ミニのサンタが、ベッドの上でおいでおいでしていた。 「あのー、シエスタさん…?」 疲れきった顔で、才人は部屋の入り口から黒髪のミニスカサンタを見つめる。 「まだ、なさるんで…?」 若いとはいえ、さすがに一夜で立て続けはこたえる。 しかし。 「何言ってるんですか。ここからが本番ですよ♪」 言って、それまで横で組んでいた足を才人の方に向け、膝を立てる。 そして。 膝を立てたまま足を開いて、膝の下から手を差し込む。 当然、シエスタは履いていなかった。 くぱぁ。 自らを両手で割り開き、真正面から才人に晒す。 粘液に滑る桜色の肉襞が、真っ赤に充血した肉の真珠が、才人の視線を釘付けにする。 ごくり、と才人の喉が鳴り、悲しいかな、男の本能が目覚める。 「ほぉらサイトさん♪」 立てられた膝の間で、シエスタはにっこり笑う。 それは、発情した雌の肉食獣に酷似していた。 「サイトさんの、クリスマスプレゼント…。 いーっぱい、くださいな♪」 才人は一瞬くぅ、と考え込んだが。 「ええいもう、明日っから冬休みだし!どーとでもなれー!」 叫んでパジャマを脱ぎ去り、シエスタに飛び掛ったのだった。 369 :戦場のメリー・クリスマス〜シエスタの見た夢 ◆mQKcT9WQPM :2007/12/03(月) 03 53 06 ID iv147R+v 「サイトさん、お・き・て♪」 シエスタは才人の耳元でそう囁き、彼の耳朶に熱い吐息を吹きかける。 「うわっ!?もうカンベンっ!?」 意味不明な叫び声を上げ、才人はがばっ!と起き上がった。 「さぶっ!?」 そして慌てて布団の中に戻る。 何故か裸だったから、冬の外気は余計にこたえた。 「おはようございまぁす」 シエスタの声は布団の中から聞こえた。 才人が布団を捲り上げると。 才人の下半身に柔らかい胸を乗せて、朝立ちの真っ最中の、才人の一物の向こうで全裸のシエスタが微笑んでいた。 「ちょ、シエスタなにしてんだよっ!」 「んー。夢の続き、かなー。 サイトさんてばあんな夢見せるんだもの。欲しくなっちゃうじゃないですか♪」 言って、柔らかい二つの肉球で才人を包み込む。 「ほ、欲しくなるって何を?」 この状況で何を言ってるんだか、とシエスタは思ったが。 盛り上げるために、あえて応えることにした。 「『クリスマスプレゼント』ですよ♪いっぱい出してください、サンタさん♪」 「ってそれ違っ…!」 才人に反論する隙も与えず。 シエスタは、口と胸を巧みに使って才人を搾りにかかった。 結局、その日才人は夢の中とたいして変わらない回数、シエスタに搾り取られたのだった。〜fin
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1381.html
虚無の曜日。 休日であるこの日、シエスタは朝早く自分の服を掃除し、洗濯する。 一通り部屋の掃除を終わらせた後、マジックアイテムの入ったポーチを腰に付け、マントは畳んで小さなバッグにしまい込む。 一般的なメイジ達よりも小さく作られた杖は、腰ではなく脇の下に下げて、外出の準備を終えた。 魔法学院の裏門で、貴族用に作られた靴よりも丈夫に作られた靴の紐を確認する。 シエスタの曾祖母が伝えたという”ブーツ”という靴らしい。 忘れ物がないか再度確認すると、シエスタは駆けだした。 走りながら考える。 貴族の生徒達と一緒に授業を受け、最初に感じたのは恐怖だった。 何せ貴族の使う魔法は、この世界で無くてはならないものであり、同時に平民を蹂躙する力でもある。 貴族の生徒の中に放り込まれ、シエスタは泣きそうになった。 だが、シエスタという異質な存在を受け入れさせるため、オールド・オスマンはルイズを利用する。 オールド・オスマンは、土くれのフーケを道連れにルイズが起こした爆発の規模を教師陣に説明し、一つの仮説を立てた。 「ミス・ヴァリエールは魔法を『失敗』していたのではなく『暴走』させていたのではないか」 魔法の暴走などという事象は聞いたこともない。 しかし、その破壊力と、自分自身までをも傷つけてしまう危険な魔法がこれから先現れないとも限らないとし、トリスティン魔法学院は既存の魔法だけではなく、文献に残された『特殊なケース』に目を向けることになる。 それが他ならぬオールド・オスマン自身であり、シエスタでもあった。 魔法の原理を研究するため、自身の身体を実験台としていたオールド・オスマンは、まったくの偶然で長寿を手に入れたと説明した。 もちろんこれには『波紋』が関わっているが、その事はロングビルとシエスタ以外には伏せられている。 シエスタの場合は、曾祖母リサリサが『東方より癒しの力を伝えた人物である』と説明することで一応話はまとまった。 この背後には、ルイズの母、カリーナ・デジレの働きもある。 若きメイジ達の育成に細心の注意を払い、未知の現象をただ『失敗』と断じるのではなく、その原因究明に勤めるようにとメッセージが届いたのだ。 また、意外なことに、魔法学院の教師の一人『疾風のギトー』がシエスタを評価してくれた。 疾風のギトーは風系統のメイジであり、風の魔法に強い自信を持っている。 授業が始まれば「風は最強だ」「風に勝る属性はない」ばかりを繰り返し、度が過ぎるためか、同じ風系統のメイジからも煙たがられている。 その評価が変わるのは、ギトーがシエスタを指名した日だった。 「……む、今日から一人多いのだったな、右奥の君」 「はっ、はい!」 「ミス・シエスタだったかな、オールド・オスマンから話を聞いている」 シエスタは突然名前を呼ばれ、緊張して返事が上ずってしまう。 「早速だが、私の属性は風、二つ名を『疾風のギトー』という」 依然、シエスタに視線を向けたままのギトーは、杖を取り出して得意げに言った。 「諸君らの前で、風が最強であることを示そう。折角だ…ミス・シエスタ、君の得意な魔法を私に放ってみたまえ」 「えっ!?」 「オールド・オスマンが言うには、君は特殊な魔法を使うそうだな、良い機会だと思ってね」 シエスタは驚き、慌てたが、そこでキュルケが助け船を出した。 「ミスタ・ギトー。ミス・シエスタは治癒に特化したメイジですわ、そんな彼女に人を傷つけさせようなどと仰っては、疾風の名が泣きますわよ」 キュルケの言葉を聞いて、ギトーが顔を綻ばせた。意外だった。 「ほう!治癒か!これはいい、なら是非それを見せてくれないか」 「えっ…えっと…」 シエスタが困ったように辺りを見回す、すると、窓際に置かれている花瓶に気が付いた。 いつも手入れされている教室には珍しく、何本かの花は枯れかけていた。 シエスタはおもむろに立ち上がり花瓶に手を当てると、呼吸を整える。 そしてオールド・オスマンの言葉を思い出す。 『君はいつも、重い物を持ち上げる時、呼吸を整えてから持ち上げるそうじゃな?それをやってみたまえ』 大丈夫。 何回も練習した。 だから大丈夫。 シエスタは身体の中を流れる”何か”を感じていた。 呼吸をする度に身体の内側から”何か”が流れていく。 呼吸がそれを押し出すように、一定の方向にそれを向かわせるように、ゆっくりと確実に呼吸を整えていく。 生徒達の耳に、コォォォォォォォ…という風のような音が聞こえたかと思うと、花瓶に挿された花に異変が起こった。 つい先ほどまで萎れていた花が、水分を吸収できずに枯れかけて変色した花が、まだ花の咲かぬ蕾のまま腐りかけた花が、だんだんと生気を取り戻していく。 三十秒ほど続けた後、花は生けられた時のように、いや、野に生えるよりも活き活きとその花を咲かせた。 そして教室にふわりと風が舞う、実際には窓の閉められた教室で、魔法も使わずに風が起こるはずはない。 花から漂ってくる香りが、まるで風のように教室中に舞ったのだ。 それと同時に、シエスタの身体が光り輝いて見えた生徒も居たが、目の錯覚だと思い黙っていた。 「素晴らしい…」 ギトーが、呟いた。 ギトーの言葉は生徒達にとって意外なものだった。 何人かの生徒は、シエスタの魔法(波紋)を見て『それぐらい水のメイジなら誰だって出来る』と言おうとしたが、ギトーの言葉にそれを挫かれた。 「諸君、風は最強だ、すべての障難を吹き飛ばし、また風は偏在する」 そう言いながら杖でシエスタの席を指し、シエスタに自席に戻るよう促す。 「だが今の治癒を見て分かるとおり、治癒に適する水の魔法のようなことはできない、風は最強であるが故に攻撃に特化しているのだよ」 それから一時間、授業は皆の予想とは違う方向に進んだ。 相変わらず『風は最強だ』とか『風は何者にも負けない』と繰り返すが、それは攻撃手段としてのもの。 最強だからこそ、『傷』を癒す『水』のメイジを、風の系統が保護してやらねばならないと熱弁していた。 シエスタをからかってやろうと思っていた貴族は出鼻を挫かれたのだ。 不満そうに腕を組んで黙り込んでいたのを見ると、ギトーの言葉に驚いたが納得はしていない様子だ。 授業が終わると、興味を牽かれた生徒達から質問攻めにされ、シエスタはしどろもどろになりながら”波紋”について答えた。 オールド・オスマンから口止めされている部分もあるので、詳しく説明することは出来なかった。 しかし、水の魔法と違い生命を癒す能力に特化していると説明すると、特殊な治癒魔法の使い手として生徒達に受け入れられるのだった。 それには、ルイズの死が関係している。 微熱のキュルケ、風上のマリコルヌ、青銅のギーシュ、香水のモンモランシーは特にルイズのことを良く覚えていた。 常日頃馬鹿にしていた相手が、その失敗魔法が原因で死んだというある種のトラウマがあるのだ。 ルイズは爆発を起こすという特殊なケースだった。 今度のシエスタは、爆発ではなく癒しの力を使う。 ある者からは贖罪のためにシエスタを受け入れ、ある者からは癒し手としてシエスタを受け入れ、ある者は成り上がりの平民を嫌い、そしてタバサは……… 「……もしかしたら」 シエスタの”力”に、一つの可能性を期待していた。 魔法学院から馬で二時間ほどの距離にある、小さな池。 ルイズが死んだと言われている場所だが、オールド・オスマンが言うには、訓練に丁度良い場所らしいい。 シエスタはここで”波紋”の訓練をしろと言われていた。 ここにたどり着くまで、シエスタは馬と大差ない速度で走り続けていた。 そればかりか、途中で休憩すらしていない。 タルブ村にいた頃は、一日がかりで山菜を採りに行くこともあった。 重い荷物を遠くから運んでくることもあった、しかし、これほど長距離を休まず走り続けた事があっただろうか。 シエスタは、自分の身体の中に、不思議な力がわき上がってくるのを実感した。 一通りの訓練を終えて、夕焼けが射す頃に、シエスタは魔法学院に帰還した。 「失礼します」 「鍵はかかっとらんよ、入りなさい」 シエスタはオールド・オスマンに一日の様子を報告した。 訓練の内容、成果、それらを毎日報告しろと言われていたのだ。 今日はロングビルが休みのため、学院長室にはオールド・オスマンとシエスタの二人しかいない。 「よく分かった、やはり水の上に立つのはまだ無理かのう」 「はい…申し訳ありません…」 「……ついこの間まで平民として過ごしていたんじゃ、上達が遅いのは仕方ない。…しかし、こちらにも急がねばならぬ理由があるんじゃ」 「理由、ですか?」 オールド・オスマンは、懐から一冊の本を取り出した。 それは土くれのフーケに盗まれ、ロングビルが持ち帰った『太陽の書』だった。 「それは、この間の本ですね」 「うむ、いいかねミス・シエスタ、これから言うことを誰にも言ってはならんぞ」 「…はい」 オスマンがディティクトマジックを唱え、次にサイレントの魔法を唱える。 」 「君がタルブ村から持ってきた、ひいお爺さんの日記は読ませて貰ったんじゃが…ワシには全部は読めん。この『太陽の書』と同じ、異国の文字で書かれておるようでのう」 「はい、その本も、日記も、ひいお爺さんの生まれた国の文字で書かれてるそうです」 「そうじゃろう、そうじゃろう。そして君はその文字を教わっている…と。」 オールド・オスマンは『太陽の書』のあるページを開き、それをシエスタに見せた。 「このページを読んでみなさい、君なら読めるはずじゃよ」 「はい。えーと…」 『この仮面は人間を吸血鬼に変身させ…』 学院長室に、シエスタの音読する声だけが響く。 しかし、シエスタの声はだんだん小さくなっていき、一ページ読み終わる頃には顔が青ざめていた。 「吸血鬼って、怖いんですね…本当にひいお婆ちゃんが、こんな吸血鬼と戦っていたんでしょうか」 「………ショックを受けるのはまだ早いぞ、これを見たまえ」 オールド・オスマンが差し出したのは小さな箱、中には復元された『石仮面』が入っている。 「これって、この本に書かれている『石仮面』ですか?」 「本物は唇と顎の部分じゃ、他は全部復元した物であって、人間を吸血鬼にしてしまうような効果はないわい」 「そうなんですか…でも、これが存在するという事は、吸血鬼が存在するって事…ですよね」 「まあ、そういう事になるじゃろうな」 「それじゃあ、私は、この石仮面で吸血鬼になった人を……退治するために魔法学院に入学させられたんですか」 オスマンは無言で頷いた。 「無理に、とは言わん、だが、人間と吸血鬼を区別できる魔法など、存在しないんじゃよ。その”波紋”意外にはのう」 「……わかりました、やります、私、自分にできることをします」 「ルイズ様が仰っていました、貴族は貴族の、平民には平民の、一芸に秀でた物には一芸に秀でた物としての役割があるって…ですから、私、精一杯やってみます」 オスマンはにっこりと微笑んだ。 しかし、微笑みの仮面の裏に、途方もない罪悪感があることを、シエスタは知らない。 To Be Continued → 17< 目次
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4242.html
591 名前:for584[sage] 投稿日:2006/09/17(日) 10 07 27 ID gqDoDK+Y 俺のメイドは従順だ。いつでも、どこでも言うことを聞いてくれる。 ある日の午後、廊下で二人、並んであるいていた。 「シエスタ」 「何ですかサイトさん?」 今日も彼女はメイド服だ。可愛らしいカチューシャ、程よく育った胸、白く細く伸びた脚。 「今日も言いつけ、守ってるよな?」 「…はい…」 少しだけ顔を俯かせ、赤らめた。彼女に守らせてる事。それは 「ここでみせてくれよ?」 「えっ…」 「あの水兵の服の時はしてくれたじゃないか」 「…わかりました」 いつ、誰が通り過ぎるかもわからない廊下で、シエスタはまずサイトの手を取り、自らの胸を布の上から触らせた。 余程柔らかいのだろう、布の上から指が沈む。 「サイトさん…どうですか?」 彼女がたてようとしている証。それは、下着を着けていない事だ。これが言いつけの一つ。 確かめ方も決めた。 布の上から突起を触れさせる事。ただし、実際に服の上からわかる程の突起にするには勃たせなければならない。 シエスタはサイトが「確認」する度に自らを興奮させなければならなかった。 「勃ち方がたりない…下着着けてるんじゃ?」 「そ…そんな事ありません!」 592 名前:for584[sage] 投稿日:2006/09/17(日) 10 11 25 ID gqDoDK+Y 実際にシエスタは着けていない。 要するにサイトは、自分の望んだタイミングでシエスタが「支度」できるか確かめているのだ。 「もう少し…待ってて下さい…」 シエスタは後ろを向き、胸を支えるカップ型の布の中に手をいれ、自らの胸を虐め始めた。 「これで…いいですか?…」 次にこちらを向いた時には服の上からもわかる突起が二つ。ポツリと形を見せていた。意地悪にもサイトはその上から乳首を摘む。 「ひゃ!」 「確かにコリコリしてる…シエスタ?」 「はい?」 「暇つぶしさせてくれよ」 不意につまんでいた片手を離し、スカートの中に入れた。 サイトは何も着けてないシエスタの、ふっくらとした割れ目を人差し指と薬指で割り、中指をシエスタの中で暴れさせていく。 「そんな…こんなトコでイクことなんて出来ません!」 徐々に腰に力が入らなくなって来たのか、サイトに寄りかかりながら言う。 「他のトコならいいのか?」 「ココはいやです!」 既に水音を立てているシエスタに説得力は無い。しかしサイトは、シエスタの提案を聞くことにした。 ヌルリ、と指を引き抜く。 「あ…」 粘液の絡んだ指をサイトは、シエスタにの口に含ませた。 「こんなになってる」 「もう…意地悪…」 人目のつかない場所を探し、歩いていく。時折サイトは、シエスタのタテスジの肉を楽しんだ。フニフニとした感触がたまらない。 「ひゃ…」 「ココはいつでも触れるんだよな?」 「わかってます…わかってますぅ…」 そのまま前方の、女性らしい下腹部の膨らみを撫でていく。 「毎日剃ってる?」 「はい…もう生えないと思います」 サイトはシエスタに剃毛も強要していた。手遊びに使うとき、その感触を損なわない為だ。 「シエスタ」 「?」 「いい子だ」 軽くサイトは口付けた。これでいつも彼女は言いなりになる。その一方で、しっかりと下腹部を撫でている。 「私はサイトさんのものですから…」 彼女は、健気だ。 その内、余り使われていない休憩所を見つけた。この学舎は結構穴場が多い。 「ここにすっか」 「そうですね」 従順シエスタっつーか、調教路線?とりあえず埋めも兼ねて。 続きは…どうするかな?いい加減この路線ばっかじゃ問題じゃないか?ちょっと心配になってキタヨ… 590 いいね〜。調子出てきたんじゃないか? 93 名前:for584[sage] 投稿日:2006/09/19(火) 09 59 46 ID ZS6MxyKE 前スレ 592より 小さなホール状のその部屋には、幾つかベンチ状の椅子が置かれていた。 二人は並んで座る。 「じゃ、確かめさせて?」 シエスタはこちらの方を向き直り、椅子に脚を載せて開脚した。世に言うM字開脚だろう。 膝まで掛かったスカートが影になり、肝心の場所が見えない。 「自分でめくるんだ」 「ハイ…」 その裾を持ち上げ、腰を突き出す。 下腹部の膨らみ。 手入れされ、剃毛により露わになった割れ目。 彼に何度も突かれた結果、開いている桜色の粘膜。そこからは既にヨダレが垂れていた。 「どう…ぞ…」 「うん」 彼は躊躇なく、本来なら「男」を差し込む穴に二本指を差し込んだ。 彼女の体温と、潤滑油がサイトの指にまとわりついていく。 グチュグチュと音を立てているのは、本当は「男」が欲しい証拠。 「ひっ…あぁ…」 「シエスタ?ここは誰のもの?」 「は…いぃ…サイトさんのものですぅ…」 彼の指が与えてくれる快感。同時に切なくもなってくる。 「ほら?もっとキツく締めないと飽きちゃうよ?」 「いやぁっ!飽きちゃダメです!私…頑張りますからぁ…おまんこいっぱい使いますから…飽きないで下さい!」 「…可愛い…」 94 名前:for584[sage] 投稿日:2006/09/19(火) 10 01 03 ID ZS6MxyKE 懸命にシエスタはサイトの指を締め付けた。今まで以上に涎を垂らし、自らクリトリスを弄ってまで、サイトの指を楽しませようとした。 「こんなに濡れてる…」 「サイトさん…もう…私…」 「おいで。シエスタ」 椅子に座ったサイトはチャックから一物をそそり立たせている。シエスタがサイトの上に座ればソレが深々と突き刺さる仕組みだ。 「は…い…」 サイトの首に腕を回しつつ、慎重に腰を落としていく。 「ん…んん」 ヂュプッ 「「俺」はどうだ?」 「はぁ…サイトさん…熱い…」 何もせずともシエスタは腰を打ち付けていく。まるでサイトを貪るように。 「ひっ…あん…」 「締まり方が前より良くなった…いいよシエスタ…」 「あ…りがと…ございます…」 「もっ…キツ…」 シエスタは交わる度にサイトとの体の相性を合わせていく。自らをサイト専用に作り替えるように。 サイトの我慢できる時間の方が削られる程だ。 「…出るっ!」 「今日も…沢山下さいますかぁ…」 「ああ…」 急に中の収縮が激しくなり、シエスタの腰使いも激しくなった。もうサイトは限界だ。 彼女の中に、容赦なく白い液体をぶちまけた。 「ハァ…ハァ…」 繋がったまま、シエスタは呼吸を整えている。 これ以上は彼女も限界だ。そっと脚に力を入れて立とうとした。しかし。 グッ 「ふぇっ?」 太ももを押さえつけた手は彼の手。 「こうしてる間は抜けないんだよな…」 太ももを押さえられている以上、引き抜く事は出来ない。 中で硬直する存在に、彼女は気付いた。 「あの…サイトさん?…」 「俺が満足するまで…引き抜かせねぇよ…」 「…また、沢山下さい…」 「こないだみたいに、下っ腹が膨れるまで…注いでやる」 彼女がサイトの子を身ごもるのは、近い日だろう。 ー完ー とりあえず従順シエスタ完っス。何か希望のシチュあったら言って下さい。 …つっても基本調教とかそんな感じだろーけど。俺と趣味が合う人、お願いしまーすorz
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1371.html
前ページ次ページ使い魔のカービィ 「ミス・ヴァリエール……カービィさん……」 校長室から決闘を見ていたオールド・オスマンとコルベールが、伝説の使い魔・ガンダールヴについて談義を交わしている頃。 シエスタは顔面蒼白のまま、厨房の椅子に座っていた。 あの時、自分がギーシュの言う通り機転を利かせていれば。 あの時、自分がすべての責任を負っていれば。 あの時、ルイズとカービィを止めていれば。 様々な考えが泡のように浮かんでは消えてゆく。 メイド仲間やマルトーが慰めようと何度か話しかけてはいるが、「大丈夫」と苦笑いするだけで一向に誰とも話そうとしなかった。 そして今頃ギーシュにボロボロにされているであろうカービィのこと、カービィを傷つけられ悲しむルイズのことを考え、シエスタは胸が引き裂かれるような思いに苛まれていた。 同時に、ルイズの言葉を信じ、本当になんとかなるのではないかと思っている節目もあった。 しかしそれはあまりに絶望的な確率の話。 メイジに逆らって無事でいられる筈がないのだ。 「私が……私のせいで……」 もしかしたらルイズは、カービィが傷つけられた責任を自分に問うかもしれない。 それも仕方のないことと、罰を甘んじて受けようと覚悟していた。 「シエスタ!」 シエスタの耳にルイズの声が入って来る。 彼女にはそれが死刑宣告のように重く聞こえたという。 「シエスタ! どこ!? カービィが、カービィが!」 (ああ……カービィさん……) シエスタの頭に無残なカービィの姿が浮かび上がる。 それだけで彼女はもう泣き出してしまいそうだった。 「勝ったのよ!」 (………………えっ?) 全く予想していなかった一言に顔を上げ、シエスタは急いで食堂へ出てみた。 すると、食堂の入り口にはルイズと―― 「ぽよー♪」 ――元気に手を振るカービィの姿が見えた。 一見しただけでも目立った外傷はなく、想像していた無残な姿とは程遠い。 それもそのはず、カービィは決闘後、水のメイジに治療してもらっていたのだ。 柔軟性のお陰で打撲は思ったより酷くなく、痕も残らなかった。 「シエスタ! もう凄かったのよ! こうズババーンって! それからドババーンというか!」 ルイズはシエスタの姿を見つけると、畳み掛けるように話し出した。 未だ興奮覚めやらぬようで、自分でも何を言っているのか分かっていない。 「それで、それでね!」 「ミス・ヴァリエール、カービィさん」 「ん?」 「ぽよ?」 シエスタはカービィを抱き上げると、ルイズと一緒にキツく抱きしめた。 「ちょ、し、シエスタ?」 「ぽょ」 「良かった……お二人とも無事で……」 シエスタが腕の力を強める。 彼女の胸がルイズに当たったが、ルイズが感じたのはコンプレックスからくる嫌悪感ではなく、意外なことに安心感だった。 (………ちいねえさま)カービィとはまた違った柔らかさに、ルイズは自分が敬愛する姉の面影を見出していたのだ。 シエスタの暖かさが、優しさが、すぅっとルイズの心に染み込む。 ルイズはそれに安堵感を覚えつつ、シエスタが慌てて2人を離すまでその感触を味わっていた。 「す、すみません! あまりにその、嬉しかったもので……」 「いいわよ、気持ちは分かるから」 こういう所はまるで違うけど、と、ルイズは心の中で微笑んだ。 「ところでシエスタ、ちょっといいかしら?」 「は、はい。なんでしょう、ミス・ヴァリエール?」 直立し、身構えるシエスタ。 恩人であるルイズとカービィの頼みとあらば、何があろうと協力しようという意思の表れらしい。 力みすぎてとても不自然に映る。 「そんなに身構えなくていいわよ………ねぇ、厨房にまだ食べ物は残ってる? それもたくさん」 「たくさんかは分かりませんが……賄いの残りやパンならまだあると」 「それ、全部カービィに食べさせてあげて! 今日のご褒美よ!」 「ぽょぉ! ぽよぽよぉ♪」 ルイズの言葉に飛び跳ねて喜ぶカービィ。 全身を使って喜びを表現する彼を見て、シエスタは思わずクスクス笑ってしまった。 「そういうことならお任せください。賄いだけじゃ足りないでしょうから、料理長や厨房のみんなと腕に腕によりをかけた料理を作らせていただきます!」 「えっ、いいの?」 「はい。きっと料理長も快く引き受けてくれると思いますよ」 ルイズとカービィに一礼し、シエスタは厨房へと駆けていった。 その後、カービィを主役とし、料理人やメイド達との宴会が行われた。 用意されたのはカービィも大満足な量の料理、マルトー秘蔵だと言うワインが2、3本、そして最高の歓迎体制だった。 生意気な貴族を叩きのめしたカービィは皆からもてはやされ、マルトーからは『我らの星』という名誉な称号までいただいていた。 ルイズの方もシエスタに手を差し伸べてくれた貴族として好印象を持たれ、メイド達からワインのお酌を受けたりしてた。 宴会の勢いはカービィの食欲のように止まるところを知らず、時が過ぎる毎にワインの空き瓶はその数を増やしてゆく。 遂には日が沈み、双月輝く夜となってしまった。 宴会が終わったのは月が真上に来た頃で、少し飲み過ぎたルイズと眠ってしまったカービィをシエスタが部屋へ送り届けることとなった。 「ふぃー……ふぃー……」 「ぐっすり眠っていますね、カービィさん」 「初日からいろいろあったからね、疲れたのよ」 シエスタの背で幸せそうに眠るカービィを見てルイズが呟く。 シエスタも「そうですね」と同意し、微笑んだ。 そうこうしている間に2人と1体は部屋の前に着いた。 ルイズはシエスタからカービィを受け取る。 「それでは、今日は本当にありがとうございました」 「お礼ならカービィに言って。よく考えたら、私は何もしてないもの」 「そんなことはありません。あの時ミス・ヴァリエールがお声を掛けて下さらなかったら……私、きっと自室に逃げてお二人を待つことが出来なかったと思います」 「……そう?」 「はい」 「まあ……シエスタがそう言うんなら、感謝されてあげてもいいわよ?」 せっかく礼を言われているのに突き返すのも悪いと思い、ルイズは照れ隠しに言い放った。 シエスタもそれが照れ隠しだと分かっているのか、キツいと思われる言葉を言われても笑顔だった。 「じゃあ、おやすみシエスタ」 「ふぃゅ……シエスタ……」 「ふふっ、おやすみなさいませ。カービィさん、ルイズ様」 深々と礼をし、シエスタは元来た道を戻っていた。 ルイズはその後ろ姿を見送ってから部屋に入り、カービィと一緒にすぐに寝入ってしまった。 同じ頃、窓から入る月光が照らし出す図書室内。 「………ない」 タバサはそこで幻獣や魔獣、その他諸々の生物の本を漁っていた。 彼女もキュルケに連れられギーシュとカービィの決闘の場にいた1人だった。 最初から決闘に興味がなかったため、黙々と本を読んでいるだけだったのだが。 しかし、途中急に吹き始めた強風に、タバサは読んでいた本を閉じた。 ギーシュが風のメイジではない以上、この風はカービィの吸い込みにより起こったもの。 『朝の惨劇』でカービィに少なからず興味を持っていた彼女は、その威力がどれほどの物か、風のメイジとして見極めてみようと思ったのだ。 「……!」 そして目の前で繰り広げられる逆転劇。 黄金の剣がワルキューレを微塵に切り刻み、エネルギーの刃が地面を抉る。 先住魔法にも似たその力は、タバサの興味を一気にかっさらっていったのだ。 それでこうしてこの不思議生物の正体を突き止めるため、タバサは図書室の魔法生物に関する本を引っ張り出しているというわけだ。 しかし成果はゼロ。 物を吸い込み、吸い込んだ物の特性を写し取る力。 そんな反則的な力を持った幻獣など、絶滅種にも絶滅危惧種にも存在していなかった。 「あの使い魔は、一体……」 興味のないものは基本的に冷たく切り捨てるタバサだが、一度興味を持つと意外に熱心になりやすい。 今もカービィに対する好奇心に、彼女の小さな胸は熱くなりつつあった。 前ページ次ページ使い魔のカービィ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1674.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 倒れ伏した少女二人を、見つめるものが二人。 「わが娘がまさか、虚無の担い手とは…」 高貴さを身に纏った紳士が、深い動揺を強い意志で覆い隠して呟く。 倒れ伏したうちの一人、黒髪の少女の手を取り、『固定化』のルーンを唱え、発現する。 「財務監督官殿、これは…」 心配そうな声で話す老齢の剣士に、財務監督官と呼ばれた男は動揺のかけらさえも見せずに説明した。 「『固定化』の応用です。これで全てを…そう、全てをなかった事にできるでしょう」 そう言った彼の視線と、剣士の視線が絡まり合い、無限とも思えるほどの時が流れ… やがて、剣士は黒髪の少女を背負うと、財務監督官の脇を通って、ゆっくりと歩き出した。 「ミセス・エスメラルダ」 その背中に、声がかかる。 「願わくは…願わくは、娘達の『虚無』の力が振るわれることの無い様、願っております」 エスメラルダは歩を止めることなく、確かな声で答えた。 「願わくは、娘達の生涯が平和のうちに過ぎ去るよう…」 大国の財務監督官と、外国の剣士。二人の生涯は二度と交わることなく過ぎ去ることになる。 だが、その娘達は。娘達の生涯は今まさに交錯し、物語の幕を開ける。 それは誰もが知り、誰も信じない。 ハルケギニアの正義、愛、友情…全てを表す、そんな物語。 ゼロのアトリエ 32 ~イーヴァルディの勇者~ 南の森に逃げれば安全だ。タルブの村人誰もがそう考えていたが、その希望は儚くも打ち砕かれた。 略奪に乗り遅れたアルビオン兵が隊伍を組んで、南の森に向かうのを見たものがいたのだ。 村人は一気に恐慌状態となり、なりふりかまわず自分が安全と思う場所、自分だけが見つけていた最後の場所に向かう。 普段人の入らぬ森の中、村人達はたやすく互いを見失い、また、互いの立てる音に対して疑心暗鬼に陥り… 一人、また一人と孤立して、悲鳴だけを残して消息を絶つ。 混乱の中、家族とはぐれてしまったシエスタは、やはり自分が考えていた最後の隠れ場所… 祖母の使った廃屋へと足を向ける。確実に隠れられるという合理性よりも、 何だか安心できるという非合理の方が、今のシエスタには必要だったから。 「ここなら絶対大丈夫…大丈夫だから…」 自らに言い聞かせるようにそう呟いて、廃屋に足を踏み入れたシエスタが見たのは、あまりにも意外な客。 そこにいるはずのない人外の存在が、部屋の片隅に鎮座している。 「よう」 ヴィオラートの背にあるはずのデルフリンガーが、状況と比べるとあまりにも軽すぎる挨拶を発した。 「相棒を『忘れて』いくなんてひどいと思わねえか?」 ちっとも深刻に聞こえない、演技臭い調子でうそぶくデルフリンガーに、 シエスタは思わずいつもの調子で問いかける。 「あ、あの…ここで、何をしてらっしゃるんですか?まさか本当に、忘れられて…」 「あいつはよお、何考えてんだかわかんねえが、俺様を本気で忘れるほど間抜けだとも思えねえ」 「だから、何か意味があるんだろうよ。俺様が今ここにあることによ」 それだけ言うとデルフリンガーにしては珍しく、黙り込んだ。 シエスタはデルフリンガーと話したことで少し冷静になり、デルフリンガーの脇に座り込むと、 自分の果たすべき役割について思いを巡らせた。自分には魔法など使えないし、祖母のような強さもない。 ただ、メイドとして学院にいただけで、できることといえばヴィオラートに教わった錬金術、 それも何時間もかけてようやく魔法のケーキを作り出せるだけ。今ここでシエスタにできることは…多分ない。 大切な家族の命を守ることさえできない、無力な平民。それがシエスタの全てだ。 でも、こんな自分でも、デルフリンガーを確保して略奪から守ることぐらいはできるかもしれない。 ほんの少しの善意から、シエスタは何気なく、本当に何気なくデルフリンガーに手を伸ばし、掴む。 緊張が抜けていなかったのか、弾みで、勢いよくデルフリンガーが抜き放たれた瞬間―― シエスタの左手が輝き、何かが…手の甲を覆っていた何かが吹き飛ぶ。 その下には、虚無のルーンが。虚無の使い魔たる証の、ガンダールヴのルーンが描かれていた。 柄の部分を、おそらくはあんぐりと開けて、デルフリンガーは思わず叫んだ。 「これは…そうか、『固定化』か!それに…もう一つ虚無の…」 デルフリンガーは少し間をおくと、ようやく思い当たってもう一度、叫ぶ。 「『忘却』だな!おでれーた!全部忘れてたってわけだ!」 ようやく本来の『使い手』を見つけたデルフリンガーはおおはしゃぎでシエスタを煽る。 「そうか、あいつはこれを見越してたってわけか!とんだ策士だ!いや、錬金術師か?どっちでもいいけどな! 嬢ちゃん!お前さんには戦う力がある!さあ、俺を使いな!ガンダールヴ!あいつらやっちまおうぜ!」 しかし。しかしシエスタはそれには答えず、デルフリンガーを抱えて、震え始めた。 「嬢ちゃん?」 「私…戦いなんてできません!な、何かの間違いなんです、こんな私が、伝説の使い魔だなんて…」 それだけ言うと、シエスタは廃屋の隅にちぢこまって、あたりの木片や枯れ草で自分を覆い始めた。 「そうか。手前が戦わねえってんなら仕方ねえ、このまま隠れるとするさ。何しろほれ、 いくら伝説って言っても俺様しょせん剣だからな。『使い手』様には逆らえんよな」 二人の会話はそこで途切れ、静まり返った廃屋に、外からの微かな音が容赦なく響き渡る。 幼い子供のかすかな悲鳴。どこかの民家が消失し、崩れ去る音。 アルビオン兵の下卑た歓声と、村人の慟哭。 何かを懇願する泣き声と、それに続く断末魔の叫び――― 「いや…いや…」 シエスタは悲惨な現実から逃げるように頭を振りながら、顔を伏せた。 廃屋の隅に丸まってすすり泣くシエスタに、デルフリンガーは淡々と、穏やかな声で語りかける。 「なあ嬢ちゃん。逃げたって変わんねえのさ。いや、逃げたら最悪の結果が出るのを待つだけになるぜ」 シエスタはゆっくりと顔を上げて、泣きはらした目をデルフリンガーに向けた。 「ぶっちゃけ、あいつらは村の奴らの命なんてどうも思ってねえからな。やべえって言やあ、村人全員だな。 最悪全滅だ。もちろん、嬢ちゃんも含めての話ね、これ」 シエスタの顔が、絶望に覆われて深く沈みこむ。しかし、デルフリンガーは構わずに先を続ける。 「そりゃ恐えよな、命張るんだからよ。できりゃ戦いたくねえってなあそりゃ真理だ」 シエスタは暗い顔をしたまま、しかし、デルフリンガーの話の続きを待って、わずかに顔を上げた。 「俺の昔の相棒だって、そりゃ逃げたこともあったよ。かなわねえ相手に考えもなく突っかかるなんざ、 馬鹿のする事だってさんざん愚痴こぼしてたのは俺自身だよ。逃げるのは、悪いことじゃねえと俺も思うよ」 デルフリンガーはそこで間をおくと、声のトーンを徐々に上げる。 「でもな。馬鹿がいねえと何も始まらんのさ。ただ強え奴が、好き勝手するだけになっちまう」 シエスタの顔が徐々に上を向いて、その瞳に、わずかな光がともりはじめた。 ついに大声になって、デルフリンガーは叫ぶ。 それは彼とその相棒が、場所を変え、時を変え、役者を変え…繰り返し見てきたこと。 長い時を過ごしたデルフリンガーが悟った、彼の真理。 「戦える奴の後ろには、いつだって守りたい奴がいるんだよ!」 「!」 「手前には、守りたい奴はいねえのか!?命賭けても守りてえ、命賭けるに値する、大切な奴は! それとも、命を賭けるに値しねえか?手前の命の方が価値が高いか?手前の育った、村の全てよりよ!!」 その説教が。デルフリンガーの、全てを賭けた説得が、ようやくシエスタの心に変化をもたらした。 シエスタは立ち上がり、自分を覆っていたみじめな木片と枯れ草を振り払うと、凛とした顔で言い放つ。 「…私なら、勝てるんですね?祖母のように戦って、村を救えるんですね?」 「そうだ、戦に勝つのはあの錬金術師がやってくれる。でもな、今この村を守れるのは、手前ぇだけしかいねえ」 シエスタは決意を込めて立ち上がり、窓から漏れる怒号、叫び、悲鳴…全てを跳ね返すような強靭な声で誓う。 「村の全て…それで私は命を賭けます、賭けられます!」 シエスタは廃屋に駆け込んだ時とは様変わりした足取りで扉の前に立つと、デルフリンガーを一閃し、 閉じられた扉を切り放った。外に出て、素早く辺りを見回す。 一、二、三…ちらりと確認しただけで、森の中に十を超えるアルビオン兵が見える。 シエスタは怯え、思わず震えを抑えきれなくなるが…村の人の、家族の、そして…祖母の笑顔を想い、 その震えを無理矢理に押さえ込むと、動揺を隠した声でデルフリンガーに尋ねた。 「デルフリンガーさん。信じて…いいんですね?」 「おう、俺にまかせときな。何しろほれ、俺様伝説だしな。最初はほれ…あいつらなんてどうでえ?」 その先には、『戦利品』片手に談笑しているアルビオン兵三人が見える。 「三人…いえ、その、最初はもっとその…お手軽なところから行ったほうがいいんじゃないかと…」 伝説といえど、さすがに三人のメイジを相手にするのはきついんじゃなかろうか? シエスタの不安を、デルフリンガーは軽く笑い飛ばすと、自信を持って予言した。 「でえーじょうぶだって。何、お前さんなら一瞬でカタぁつけられるぜ?ほれ、あるだろ? ガキの頃憧れてたあの技やらその技やらなんかよ?」 「…使えるんですか?」 憧れて見ていただけなのに、この剣は、シエスタにもその技が使えると言ってのけたのだ。 「え?ああ、そうだぜ、どんな技でも、俺様が使えるように補助してやるぜ?」 実は、デルフリンガーは適当に、シエスタに自信を付けさせようとほらを吹いただけなのだが… その嘘が、シエスタに絶対的な自信を与えた。あの技が…自分に使えるなら。 祖母の技が使えるのなら、兵士の十や二十はものの数ではない。 「…おい、嬢ちゃん?」 シエスタの異変に気付いたデルフリンガーは、思わずそう問うたが… その時既に、シエスタはデルフリンガーを上段に構え、人間を超越した迅さで駆け出していた。 アルビオン兵三人は、そんなシエスタを見ても真剣に反応せず、ただの村娘と侮り、 適当に魔法を詠唱して黙らせようとした。 しかし。その魔法は全てシエスタの構えた剣に打ち消される。 そこまで来て彼らは初めて不可解な顔を浮かべ、次いで真剣さを取り戻して距離をとろうと試みたが… 全ては手遅れだった。 見える。三人をつなぐ線、全てをなぎ倒す多対一の間合い… 「メル…ブリッツ!」 まさに迅雷、そう表現するしかない剣閃が通り抜けた後に。 あわれなアルビオン兵三人が、同時にくず折れる。 太陽は既に傾き始め、森の中は午後の日差しに覆われていた。 その森を見下ろす岩棚に、ただじっと辺りを見やる人影が二つ。 アルビオン軍から隠れながら移動を続け、今ようやくタルブに到着したルイズとヴィオラートがいた。 「ねえ、ヴィオラート。こんな所で何をしようって言うの?」 「まだ…もう少し。ルイズちゃんが全てを決める時が、必ず来るから」 何度も繰り返されたヴィオラートの曖昧な説明にルイズは不承不承頷き、 即席のテーブルに置かれた『始祖のオルゴール』と『カリヨンオルゴル』を撫で回す。 その二人はただそこで、その時が来るのを待ちつづける。 マチルダ・オブ・サウスゴータが森の中で目にしたものは、 左手を光らせた剣士が、一人、また一人とアルビオン兵を屠る姿だった。 (お友達は、左手にルーンが…) 平民、黒髪、そして左手に描かれたルーン。 こんな偶然があるものか、助けようと思っていた平民の中にティファニアの『お友達』がいて、 その『お友達』が目にも止まらぬ速さでメイジたちを倒し続けて… シエスタの動きを追ったマチルダの視界の隅に、銃を構える兵士の姿が映る。 貴族のプライドを捨ててでもシエスタを仕留めるつもりか。…今さら。 マチルダは反射的に『錬金』を唱え、シエスタを狙う銃を土くれに変成させた。 「ミス…?」 シエスタは訝しげに振り返り、その瞳にかつての知己『ミス・ロングビル』の姿を映す。 フーケ騒動の後、いつのまにか消えていた… 後になって噂を聞いただけのシエスタにはそうとしか感じられなかった『ミス・ロングビル』が、 何故こんな所で錬金を唱えているのだろうか? 「ああもう!もっと派手に登場するつもりが…習慣ってのは怖いもんだね」 マチルダはそれだけ言って、シエスタの死角をカバーするように背を合わせた。 「とりあえず、今は味方だ!いいね!」 「はい!」 たしかに、シエスタも「フーケ」の噂は聞いたが、 シエスタにとって、それはまるで絵空事のような出来事であった。 シエスタが接したのは、『ミス・ロングビル』の姿だけ。「フーケ」を確認した事は、一度もない。 だから、シエスタはフーケに対してのわだかまりを全く持っておらず、 持っていなかったので、あっさりと共闘に同意した。 最強の前衛、ガンダールヴの力を限界以上に引き出したシエスタと、 それを補佐する後衛、まがりなりにもトライアングルのマチルダ・オブ・サウスゴータ。 二人はがっちりと絡み合い、タルブの森を駆ける。 その前には常に敵を捉え、捉えられた敵は数瞬を置かずに倒れ伏し、 シエスタを捉えようとした兵器は一瞬にして土くれへと変わる。 一人を墜とす度にその精度は完成形を超え、やがてそれは事実上の戦線となってアルビオン兵を食い止める。 散り散りになっていた村人たちが、始めは恐る恐る、やがて堂々とシエスタの後に集い出した。 「いいぞ!いいぞ相棒!そう!その調子だ!思い出したぜ!」 村を守りたい。自分の血が沸き立つのを感じる。 「俺の知ってる『ガンダールヴ』もそうやって力を溜めてた!いいか相棒!」 左手の虚無のルーンが、歓喜に打ち震えるように輝きを増した。 「『ガンダールヴ』の強さは心の震えで決まる!怒り!悲しみ!愛!喜び!」 まるで生まれる前から知っていたように、体が動く。 「なんだっていい!とにかく心を震わせな、俺のガンダールヴ!」 習った事のない…受け継がなかったはずの剣技が、シエスタを導き。 「忘れるな!戦うのは俺じゃねえ!俺はただの道具に過ぎねえ!」 封印された、いや、使われなかった血の記憶が解き放たれる。 「戦うのはお前だ!ガンダールヴ!お前の心の震えが、俺を振る!」 森の木々の間を抜けて、空に、巨大なグリフォンが舞い上がった。 ワルドより下賜された…ワルドのグリフォンに乗った兵士が、空からの奇襲を試みたのだ。 だが。この期に及んで彼は、貴族と平民という概念に囚われていたのであろう。 平民は貴族にかなわない…その根拠のない傲慢な判断が致命的ミスとなった。 シエスタを敵と認めていれば、正面から突っ込むという愚策をとることはなかったろうに。 シエスタは横薙ぎに剣を構え、遥か過去の記憶を呼び覚ます。 祖母がシエスタの前で一度だけ見せた必殺剣。いつか使えたらいいと、幼き心に刻み込んだ憧憬。 剣聖グレイデルグが編み出せし究極の剣技、その子孫の血の中に眠る――― 「アイン、ツェル…カンプ!!」 交錯。 そして。 巨大なグリフォンが、轟音と共にシエスタの背後に墜落した。 木々を巻き込み、無謀なる騎乗者と共に迎えたその最後の戦いはあまりにも哀れで、滑稽で、 そして、美しかった。 その光景を目の当たりにした村人たちの間に、ある一つの幻想が浮かぶ。 誰もが知り、そして誰もが信じない。ありえないはずの奇跡。 「……イーヴァルディ……」 誰かが、そう囁いた。 「イーヴァルディの、勇者だ」 そう呟いた。 幻想は燎原の炎となり、それを信じたい者達の間を駆け巡る。 新たなるイーヴァルディの伝説が、生まれようとしていた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/3999.html
384 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 01 58 34 ID rvYfeHEl 寝台の上でか細い寝息を立てるルイズの傍ら、憔悴した才人が椅子に座ったままじっとしている。 その背中に、シエスタはそっと声をかけた。 「サイトさん、そろそろお休みになってください。もう三日も、ほとんど横になっていないじゃない ですか」 こんなことを言うのは、今日でもう何回目だろうか。そして、返事もやはり一緒だった。 「ダメだ、ルイズがまだ起きてない」 シエスタはそっと息を吐く。才人の気持ちは分からないでもないが、このままでは彼の方も参って しまうだろう。 (ミス・ヴァリエール) 眠り続けるルイズの顔を、シエスタは複雑な気持ちで見つめた。 (早く、またわたしたちに元気な顔を見せてください。サイトさんは、この一ヶ月、ずっとあなたの ことばかり考えていたんですよ) 紆余曲折、様々な冒険を経て、コルベールが指揮するオストラント号は、ついに東方へと旅立った。 この船には才人とルイズ、そしてシエスタも同行し、他にもキュルケにタバサ、ギーシュにモンモラ ンシーなど、見知った顔が多数参加している。 だが、当初のどこか浮き立つような冒険気分に反して、この旅は実に過酷なものとなった。 東方のエルフは、予想以上にこちら……特に、虚無魔法を操るルイズに対して、強い敵意を持って いたのである。そのためにオストラント号も頻繁に襲撃を受け、シエスタ自身何度も危険な目にあった。 一度西方へ引き返した方がいいのではないかという声が上がり始めた頃、事件は起きた。オストラ ント号に急襲をかけてきたエルフ達の手によって、ルイズがさらわれてしまったのである。 当然、才人は半狂乱になった。すぐにでもルイズを探しに行くと一人で飛び出しかけた彼をなだめ つつ、一行は根気強くルイズの行方を追った。そして、彼女があるエルフの一団の本拠地に捕われて いることが知れたのが、四日ほど前。それを聞いた才人が止める間もなく突撃し、そのエルフの本拠 地を壊滅させ、無事ルイズを救出して戻ってきたのが三日前である。 以来、才人はほとんど一睡もせずに、ルイズのそばに付き添っているのだ。 ルイズの行方が知れなかった間の才人を思い出すと、シエスタは今でも胸が痛くなる。それは、才 人の苦しみを思っての痛みであり、才人がどれだけルイズを愛しているかを決定的に悟ってしまった、 女としての心の痛みでもあった。 だからと言って、「このままミス・ヴァリエールが帰ってこなければ」などとは考えなかった。シ エスタにとっては、自分が一番に愛してもらえないという悲しみよりも、ルイズを失った才人の苦し みの方がずっと重要だったのである。 それに、ルイズだって、恋敵とは言っても長い間共に過ごしてきた友人である。無事を祈る気持ち は、シエスタとて一緒だった。 戻ってきたルイズは、予想に反して無傷であった。体に拷問の跡などの外傷は見られなかったし、 意識を失っていることを除けば、体の方は至って健康と言ってもいい状態だ。今眠っている彼女の顔 を見ても、その寝顔は安らかであり、うなされたり苦しげに呻いたりといった様子は少しも見られない。 (後は、目を覚ましてさえくれれば) シエスタが、祈るような気持ちでそう思ったとき。まるでその願いを神が聞き届けでもしたかのよ うに、ルイズが低いうめき声を上げながら、ゆっくりと目を開けた。 「気がついたのか」 憔悴しきって嗄れた声に隠しきれない嬉しさを滲ませながら、才人がルイズの顔を覗き込む。ルイ ズはしばらくの間虚ろな瞳で才人のことを見上げていたが、やがてぽつりと、呟いた。 「……サイト?」 「そうだ。俺だよ」 「……ここは?」 「船の中だ。お前、戻ってこれたんだよ。可哀想に、怖かっただろ。もう大丈夫だぞ」 声に優しさを滲ませて、才人がルイズの頭を撫でる。ルイズは一瞬詰まったような吐息を漏らした あと、頬を赤らめた。 「……夢じゃないの?」 「ああ。悪い夢はもう終わったんだよ」 「本当?」 「そうだって。信じられないのは分かるけどな、安心していいぜ」 才人がそこまで言ってやっても、ルイズは何故か疑うように、何度も何度も「本当?」と繰り返し た。あまり何度も繰り返すので、それが何かを待つような、あるいは期待するような態度にも思えて くる。シエスタは怪訝に思ったが、ルイズは十数回ほどで問うのを止め、安堵したように長く息を吐 いた。 385 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 01 59 23 ID rvYfeHEl 「そう。わたし、戻ってこれたんだ」 自分がいる場所を確かめるように呟いたあと、ルイズは才人を見上げて微笑んだ。 「ただいま、サイト」 「ルイズ、ルイズ……!」 たまらなくなったように名を呼びながら、才人がルイズを抱き起こし、そのまま強く抱きしめた。 ルイズが短く悲鳴を上げる。頬が少し赤く染まった。 才人の激しい抱擁に、シエスタの胸がまた少し痛んだ。だが、耐えられないほどではない。 「サイトさん、サイトさん」 シエスタは苦笑気味に笑いながら、才人の肩に手をかける。 「ミス・ヴァリエール、今起きたばかりなんですから。もっと優しく扱ってあげてください」 「あ、悪い、つい」 才人が慌てふためきながらも、丁寧にルイズの体を横たえなおす。優しい手つきから、相手のこと を最大限労わろうとする気持ちが滲み出ているようだ。シエスタの胸に、痛みを覆い隠すような暖か さが生まれた。 (よかった。わたし、嫌な女にならずにすみそう) 内心ほっとしつつ、シエスタはふと、横たえられたルイズを見る。そして、かすかに眉をひそめた。 どうも、ルイズの様子がおかしい。顔が熱を帯びたように赤く染まり、瞳は焦点を失ったまま潤ん でいる。眉は悩ましげに下がり、半開きになった唇からは湿っぽい吐息がかすかに漏れ出しているよ うだ。それに、よく見ると、体が小刻みに震えている。 (……お風邪でも召されたのかしら) だとすると、汗ばんだ服を着替えさせないといけない。シエスタは、椅子に座って一息吐いている 才人の両肩に手を置いた。 「ほら、サイトさん、ミス・ヴァリエールも目覚めたことですし、ひとまず安心できたでしょう。サ イトさんにもお休みが必要ですし、わたしもミス・ヴァリエールのお世話をしなくちゃいけません から、一度お部屋に戻られてはどうですか」 「でも」 才人は少し迷う様子だった。本当は、一時も離れずルイズのそばにいたいのだろう。 だが、「ミス・ヴァリエールのお世話」という単語を聞いて、気を遣ったらしい。彼は不意に大き く欠伸をした。 「いや、そうさせてもらうかな。なんか、ほっとしたら急に眠くなってきた」 「ええ、ゆっくり休んでください」 「じゃあルイズ、俺……っと」 才人はルイズに声をかけようとして、途中で止めた。彼女はもう、布団の中にもぐりこんでいたのである。 「また寝てしまったみたいですね」 「だな。無理もないか、精神的な疲れが半端じゃねーだろうし」 小声で話しながら、二人は部屋を出る。 シエスタが後ろ手にドアを閉めると、才人が疲労の濃い顔に真剣な表情を浮かべて見つめてきた。 「じゃあ休ませてもらうけど。シエスタ、何かあったらすぐ俺を呼んでくれな」 「ええ、分かっています。と言っても、何もないと思いますけど」 現在、オストラント号は西方に向けて帰還する針路を取っている。ルイズが奪還されたことを受け て、指揮者のコルベールが一度引き返すことを決定したのである。エルフ側にもかなり損害が出てい るはずだし、おそらく逃げる敵を追う余力は残っていないだろう。 それでも才人は、なおも不安そうな面持ちであった。 「でもな、やっぱ安心できねえんだ。またルイズに何かあったらと思うと、俺」 それから才人は少しの間目を閉じてから、決心したようにシエスタを見た。 386 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02 00 01 ID rvYfeHEl 「シエスタ。俺、君に謝らなくちゃならない」 「え、どうしたんですか、急に」 才人が言おうとしていることが何かはすぐに分かったが、シエスタはあえて分からない風を装って、 きょとんとした表情で首を傾げた。 「俺、今回ルイズがいなくなって、改めて思い知ったんだ」 才人は少し躊躇いながらも、力強い口調で言う。 「俺が、どれだけあいつのことを、その、好きなのか、ってことをさ」 また、胸に鋭い痛みが生まれる。 「ああ、そのことですか」 だが、シエスタは何でもないことのように、にっこりと笑って才人の言葉を受け取った。 「今更何を仰るんですか。そんなこと、わたしはずうっと前から知ってますよ」 「シエスタ?」 才人が驚いたように目を見開く。シエスタは唇に手をやって笑った。 「もう。急に謝らなくちゃ、なんて言うものだから、びっくりしちゃいましたよ」 「ええと、あのさ、それで」 「分かってます」 喋りにくそうに口ごもる才人の声を、シエスタはすまし顔で遮った。 「お二人のお邪魔をする気はありませんよ。ミス・ヴァリエールだって、ずっとさらわれてて不安 だったはずなんです。今、彼女の心をかき乱すようなことは絶対にしません」 「ごめん」 「謝らないでください。お二人とも、わたしにとっては大切なお友達なんです。ちゃんと、お二人の 幸せを祝福してあげますから」 「シエスタ。俺、なんて言っていいか」 才人が悔やむように俯く。シエスタは苦笑して彼の肩を叩いた。 「そんな顔しないでくださいよ。ミス・ヴァリエールのこと、全力で見てあげるって決めたんでしょ う? だったら、そんな顔しちゃダメです」 「そうか。そうかな、うん」 才人の顔に、少しだけ元気が戻ってくる。シエスタは「そうですよ」と頷いてから、手を打ち合わせた。 「さ、そろそろミス・ヴァリエールのお世話をしなくちゃいけませんから。サイトさんはお部屋に戻って何も考えずにお休みになってください。今後のことは、それからゆっくり話し合いましょう」 「そうだな。それじゃ、シエスタ、ルイズのこと……」 「大丈夫です。サイトさんの……いえ、わたしたちのお姫様は、ちゃんとお守りしてみせますから」 シエスタが自分の胸を叩いてそう言ってやると、才人はもう一度だけ「頼むな」と言い置いて、二 つほど離れた船室に戻っていった。 才人が船室に消えたあと、シエスタは長い吐息を吐き出した。同時にこらえていた感情が、胸の奥 からせり上がってきて、瞳の奥から涙を滲み出させた。才人に聞こえてはいけないと思い、シエスタ はしばらくの間その場にしゃがみ込み、声を押し殺して泣き続けた。 「大丈夫?」 と、不意に声をかけられた。慌てて涙を拭いながら顔を上げると、そこに見知った少女が立ってい た。小柄な体と、肩の辺りで切り揃えられた青い髪、そして湖のように静かな、青い瞳。 「ミス・タバサ」 「これ、使って」 タバサが差し出したハンカチを、シエスタは遠慮なく受け取った。それで完全に涙を拭ったあと、 小柄な少女に問いかける。 「あの。もしかして、さっきの会話」 「聞いてた。立ち聞きになってごめんなさい」 「いえ、それはいいんですけど」 その先を言うのは、少し躊躇われた。シエスタの知る限り、タバサもまた才人に恋焦がれていたは ずである。だとすれば、彼女も自分同様の胸の痛みを抱えているのではないかと思ったのだ。 だが、そんな気遣いなど無用と言うように、タバサは静かに首を振る。 「わたしは、サイトが幸せならそれでいい。ずっとそう思ってきたし、これからだってそう」 迷いのない声で断言されると、泣いていた自分が少し恥ずかしく思えてくる。「あーあ」と息を吐 き出し、シエスタは照れ笑いを浮かべながら立ち上がった。 「ダメですね、わたし。もうとっくに、諦めはついてたはずなのに」 「大丈夫?」 「はい、大丈夫です」 今度はちゃんと返事が返せた。泣いたおかげか、少しだけ心が軽くなっているように思える。 387 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02 00 47 ID rvYfeHEl 「あ、そうだ。ミス・タバサ、お願いがあるんですけど、聞いていただけますか」 「なに?」 「この部屋……ミス・ヴァリエールの船室の周りに、あの、音が聞こえなくなる魔法、かけていただ けないでしょうか」 この冒険に参加し、間近で貴族と接することによって、シエスタも多少魔法のことを知るように なった。今タバサに頼んだ「サイレント」の魔法も、以前何度か見たことがあって、思い出したの だった。 「静かにしてあげたいの?」 「はい。ミス・ヴァリエールも、なんだか少し様子が変でしたし。もっとお休みが必要なのかもしれ ません」 「分かった」 タバサが詠唱して杖を振る。見た目には分からないが、それで魔法がかけられたらしい。 「これで、部屋の中の音は外に聞こえないし、部屋の外の音は中に聞こえない」 「ありがとうございます」 「わたしは隣の部屋にいる。他にも、何か協力できることがあったらいつでも言って」 「はい、分かりました」 シエスタがお辞儀をすると、タバサは黙ってその場を去り、隣の船室に入っていった。 「さてと。ミス・ヴァリエールのお世話をしてあげなくちゃ」 気持ちを切り替えるように呟き、シエスタはルイズの船室に戻る。部屋に入った途端、航行中はい つも聞こえる風の音や、階上で誰かが歩き回る音なども聞こえなくなり、シエスタは感心した。 (これなら、ミス・ヴァリエールにもゆっくりと休んでもらえそうだわ) そんなことを考えたとき、ふと、シエスタは部屋の隅から音が聞こえてくることに気付いた。 かすかな音であった。「サイレント」で部屋の外の音が遮断されていなければ、聞き逃していただ ろう。 聞こえてきた音は、小さな衣擦れの音。それに混じって、切ない喘ぎ声と、湿っぽい水音がかすか に聞こえてくる。 (え、なに?) 一瞬状況が分からず、シエスタは困惑する。喘ぎ声の主が寝台の上で寝ているルイズであることを 悟ると、その困惑はさらに大きくなった。 (どうしたのかしら。苦しくて呻いてる、って訳ではなさそうだし) シエスタは息を潜め、出来る限り足音を立てないように注意しながら、部屋の隅の寝台に近づく。 だが、そこまで注意深くなる必要はなかったようだ。ルイズは寝台に横たわったまま、何かに夢中で 没頭しているようで、そもそもこちらが部屋に入ってきたことにすら気付いていないようだった。 近づくにつれ、音も大きく聞こえるようになる。やはり、衣擦れの音がする。寝台を見る限り、ル イズが布団の中で何やらもぞもぞと動いているようである。水っぽい音は、先程よりもさらに湿っぽ さを増しているように見える。 (……これ、ひょっとして) シエスタの背筋に悪寒が走る。何か、猛烈におかしなことが起きているような気がする。 そして、ルイズの喘ぎ声がさらに明瞭に聞き取れるようになったとき、シエスタの悪寒は背筋から 這い出して全身を駆け巡った。 「だめぇ、指なんかじゃ全然ダメなのぉ……もっと太いの欲しいよぉ……」 頭がクラクラした。何がなんだか分からないまま、不吉な焦燥に駆られて、シエスタは寝台の上の 布団に手をかけた 「何やってるんですか、ミス・ヴァリエール!」 叫びながら布きれを引っぺがすと、その向こうからルイズが現れる。その姿が悪い予感通りだった ので、シエスタはその場で卒倒しそうになった。 赤い頬と潤んだ瞳のルイズは、薄手の寝衣を激しく乱したまま、左手で小さな乳房を弄り、右手で 股間をまさぐっていたのである。陰裂深く二本の指が差し込まれており、その奥から水っぽい液が失 禁のようにあふれ出して、寝台の敷布を濡らしている。 要するに、自慰の真っ最中なのであった。 388 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02 01 36 ID rvYfeHEl (何やってんですかあなたは) 口に出しては何も言うことができず、シエスタはルイズを見下ろしたまま目を白黒させてぱくぱく と口を開く。 その間もルイズは指を動かし続け、露骨な視線を浴びながらも一向に自慰を止める気配を見せな かった。それどころか、その指使いはより一層激しくなっているようにも見える。 「シエスタぁ、どうしよぉ」 指で陰裂の奥をまさぐり、時折声を詰まらせながら、ルイズはぐずるように言う。あまりに常識を 超えた状況に頭がついていかなかったが、シエスタはかろうじて返事をした。 「どうしようって、何がですか」 「あのねぇ、さっきからこうやって指でたくさん弄ってるんだけど、どうしてもイケないのぉ」 (何言ってるんですかあなたは) だが、やはり口に出しては何も言えない。シエスタは軽く現実逃避していた。 彼女が頭の中のお花畑で遊んでいる間にも、ルイズの自慰は休むことなく続けられていた。だがい つまで経っても絶頂にはたどり着けないらしく、ルイズはその内切なく啜り泣きを始める。そして、 一旦指を陰裂から引き抜いた。 (何やってるんだろこの人) 虚ろな意識で、シエスタはルイズの動きを見守る。陰裂から愛液で濡れそぼった指を引き抜いたル イズは、その手をそのままさらに下の方に持っていき、 「って、何やってんですかミス・ヴァリエール!」 さすがに今度ばかりはシエスタも声に出して叫んでいた。指を肛門に突っ込む寸前だったルイズの 腕を無理矢理引っつかみ、その常識外れの蛮行を何とか止める。すると、ルイズが狂ったように泣き 叫び始めた。 「やだ、離してよぉ、シエスタぁ!」 「離しません! なんてところに指をいれようとしているんですかあなたは!」 「だって、イケないんだもん、おマンコじゃイケないんだもん。だからケツ穴ホジホジするのぉ!」 「お、おま……けつ……」 ルイズの口から飛び出した卑猥な単語に、シエスタは絶句するしかない。 (い、一体何がどうなってるの……?) さっきまで己の失恋について傷ついたり、泣いたりしていたところにこれである。この状況はほと んど非現実的であり、悪夢のようにしか思えなかった。 だが、これはまごうことなき現実なのだった。シエスタが才人との恋愛にケリをつけている背後で、 ルイズは夢中になって自分の性器をいじって、獣のように快楽を貪っていた訳だ。まるで悪い冗談の ようだが、重ね重ね、これは現実である。 未だ失恋のショックから立ち直りきれていないシエスタの前で、勝利を収めた恋敵は、自分の尻の 穴に指をいれたいと言って泣き叫んでいる。 (なんなのこれ。なんなのこれ) 答えてくれる者はいない。シエスタは呆然としつつも、まだ自分の指を肛門にいれたがってジタバ タ暴れているルイズを抑えるのだけは忘れなかった。 (落ち着いてシエスタ。ミス・ヴァリエールは、あまりにも状況が目まぐるしく動きすぎて、激しく 錯乱なさっているのかもしれないわ) 無理のある理論で心を落ち着かせつつ、シエスタはルイズを安心させるような笑みを浮かべた。頬 が引きつっているのが自分でも分かったが、さすがにそれはどうしようもない。 「ねえ、ミス・ヴァリエール?」 「やだぁ、離してよぉ」 「じゃ、お尻に指をいれようとするの、やめていただけますか?」 「いやぁ。ケツ穴で気持ちよくなるのぉ」 まるで異常者と会話しているような気分。「もうイヤ、何もかも忘れて逃げ出しましょう!」と叫 ぶ理性を根性で押さえつけて、シエスタはなおもルイズと会話を続けた。 「いやですわミス・ヴァリエールったら。いくらなんでも冗談が過ぎますよ」 「やだぁ、お尻ぃ」 話が全く通じない。仕方がないので、別のアプローチから攻めてみることにする。 389 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02 02 26 ID rvYfeHEl 「どうして、お尻をいじりたいんですか?」 よもやこんな質問を口にする日が来ようとは、予想もしていなかった。なんとなく泣きたくなりな がら、シエスタはルイズの答えを待つ。 ルイズは、「えっとねえ」と童子のように呟き、目をとろんとさせた。締まりのない半開きの唇の 隙間から涎を垂れ流しつつ、だらしない口調で言う。 「ケツ穴ホジホジするとねえ、とってもいい気持ちになるのよぉ。わたし、おマンコも大好きだけど ケツ穴も大好きぃ」 「そうですか」 頭が痛くなってきた。シエスタは歯軋りをしながら、何とかルイズを説得しようと試みる。 「いいですか、ミス・ヴァリエール。お尻の穴はね、とっても汚いんです。そんなところに指を突っ 込んじゃいけませんよ」 なんでこんなことを説明しなくちゃならないんだと、心の中で地団駄を踏む心境である。シエスタ は噛んで含めるような口調でルイズに言い聞かせた。するとルイズは、「そうよぉ」と、うっとりし た口調で呟く。 「わたしのケツ穴ね、とっても汚いの。わたし、汚いの。薄汚いメス豚の、精液便所なの。えへ、えへへへ……」 自分の言葉でさらに興奮してきたのか、ルイズは自由な左手をまた陰裂に突っ込んで、夢中で中を かき回し始める。 このまま発狂してしまいたいと思いながらも、シエスタは寸でのところで踏みとどまる。そして、 有無を言わさぬ口調でルイズに命令した。 「ミス・ヴァリエール! 今すぐ、そんなことをするのはお止めなさい!」 「どうしてぇ」 「どうしてって、考えれば分かるでしょう!?」 「えっとねぇ」 ルイズは唇に濡れた指を当てて、しばらく考えていたが、やがて何かに気付いたように、目を輝か せて叫んだ。 「分かった、シエスタが弄ってくれるのね!」 「は?」 予想だにしない答えに呆然とするシエスタのことなど全く気にせず、ルイズは寝台の上で四つんば いになって、こちらに尻を向けてきた。 「え」 「お願いシエスタ、わたしのだらしないケツ穴、たくさんいじめてぇ」 「ちょ」 「早く、早くぅ」 ルイズが待ちきれない様子で尻を振りながら、病的に紅潮した横顔でこちらを見つめてくる。 シエスタはそのルイズの横顔と、自分の目の前に突き出された小ぶりな尻を見比べた。幼い弟や妹 などを除けば、人の尻をマジマジと眺めるなど初めての光景である。ひくついている肛門を見ている と、この世の理不尽について滔々と考えたくなってくる。 だが、いつまでもそうしている訳にはいかなかった。もしも、才人が気まぐれでおきだして、再び この部屋を訪れたりしたら。 (破滅だわ……!) 凄まじい恐怖に駆られて、シエスタは思わず自分の左手でルイズの尻をつかまえる。肌と肌が触れ 合った瞬間、ルイズの体が大きく跳ねて、彼女の口から聞いたこともないような激しい嬌声が上がった。 その声を聞いた瞬間、シエスタの中で何かが切れた。 390 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02 04 02 ID rvYfeHEl 「ふふ、ふふふふ……」 「シエスタ?」 「わたしが真剣に真剣に悩みぬいて、サイトさんをあなたに譲り渡そうと決めた途端に、これですか……」 この一ヶ月間の苦しみと悲しみ、先程までの痛みが、一気に胸の中を駆け抜けていく。 (もう、どうにでもなれ) シエスタは目を見開き、思いっきり右手を振り上げた。 「そんな悪い子には、たっぷりお仕置きして差し上げます!」 「してぇ、お仕置きしてぇ!」 シエスタの怒りの声に、ルイズがむしろ悦びの声を上げると同時。振り下ろされた平手が、小ぶり な尻を思いっきり打った。 ルイズが声にならない悲鳴を上げる。だが、シエスタは躊躇せずもう一度手を振り上げ、何度も何 度も憎い尻肉に向かって振り下ろした。そのたび乾いた音が鳴り響く。その響きがあまりにも快いも のだったので、シエスタはなおさら怒りを募らせる。 「この、いきなり変態になって帰ってきて、本当に、悪い子、悪い子、悪い子……!」 「ごめ、ゴメンなさいぃ、悪いメス豚でゴメンなさいぃ……!」 そうやって、十分ほどの時間が経過しただろうか。 すっかり精根尽き果てて、シエスタは寝台のそばに座り込んでいた。散々ルイズの尻を打った手の 平がひりひりと痛み、腕が痺れたような感覚に包まれている。 病的な怒りと興奮が去ったあとに残ったのは、凄まじい疲労と絶望感である。シエスタはのろのろ と首を巡らし、寝台の上を見る。 そこでは散々打たれて真っ赤になった尻をさらしたまま、ルイズが半ば白目を剥いて倒れ伏してい るのであった。尻を叩かれている途中で失禁まで始めたので、異臭と尿に包まれて、目も当てられな い状態である。 だが、何よりもシエスタの心を重くしたのは、そんな状態にあってもなお、ルイズの口元に締まり のない幸せそうな笑みが浮かんでいることであった。 「えへへぇ、お尻ぃ、気持ちいぃ……」 そんな、寝言だかうわ言だか分からない言葉まで聞こえてくる。 (どうしよう、これ……) 寝台の上を片付ける気にもなれないまま、シエスタは頭を抱えて長い長いため息を吐き出した。 420 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 22 56 31 ID DThkf9y/ あまりのことに茫然自失となったシエスタだったが、残念ながらいつまでもその場に座り込んでは いられないのだった。ルイズが今少し大人しくなっているとは言え、いつ才人が入ってきてもおかし くない状況は全く変わっていない。 シエスタは立ち上がり、後ろを向いた。乱れて一部が湿っている敷布、跳ね除けられた布団、その 上に半裸で白目を剥いてぴくぴくと痙攣しているルイズ。 (こんなところを見られたら、おしまいだわ) 慌てて寝台に取り付き、意識が混濁しているらしいルイズの肩を軽く揺さぶる。 「さ、ミス・ヴァリエール。起きてください。今から体をきれいにしましょうね」 ルイズからの反応はない。瞳は虚ろで、口は半開きになったままだ。少し待ってみたが、正気に戻 る気配はない。シエスタは部屋の隅の長櫃から長い布を取り出して、ルイズの体を拭き始めた。まず 彼女から綺麗になってもらい、敷布や布団の問題は後回しにするつもりだった。 汗と尿でぐっしょりと濡れた寝衣を脱がせ、ルイズの肌に直接布を当てて汚れを拭き始める。する と、先程まで無反応だったルイズが、突然奇声を上げた。その唐突さに驚かされ、シエスタは思わず ルイズの体から手を離してしまう。 「どうしたんですか?」 「もっと、もっとやってぇ」 呂律が回っていない声である。シエスタは嫌な予感を覚えたが、ルイズを汚れたまま放置しておく 訳にもいかず、嫌々ながら彼女の体を拭くのを再開する。 ルイズはシエスタが布越しに彼女の体を撫でるたびにいちいち淫靡な奇声を上げ、切ない喘ぎ声を 漏らした。その内小柄な体が火照って赤くなり始め、小さな乳首もぴんと突っ立って硬さを増してい くのが見て取れた。顔に視線を移すと、だらしなく舌を垂らした悦びの表情が浮かんでいる。シエス タはうんざりした。 「ふざけないでください、ミス・ヴァリエール」 「だって、シエスタが上手すぎるんだもん」 悩ましげな声で言ったあと、ルイズはこちらに身を乗り出してきた。あるかなしかの乳房を両手で 寄せて、ねだるような甘ったるい声で言う。 「ねぇ、もっと、この辺りをたくさんこすって」 「わたしはそんなつもりであなたの体を拭いているんじゃありません!」 怒鳴りつけてやると、「シエスタのいじわる」と拗ねた声が返ってきた。そして、ルイズはまた 黙って自分の股間に手を伸ばしかける。シエスタは慌ててその腕をつかんだ。 「ちょっと、何なさってるんですかミス・ヴァリエール」 「オナニー」 「そういうことを聞いてるんじゃありません。やめてください、お願いですから」 苛立ちを必死にこらえながらそう言うと、ルイズはいやいやするように体を強請りながら、切なく すすり泣き始めた。 「焦らしちゃやだぁ」 「焦らしてるんじゃありませんったら! もう。とにかく、黙って大人しくしていてください」 「いじわる」 「何とでもお言いなさい」 もうその辺りはすっぱり無視することに決めて、シエスタはルイズの体を乱暴に拭き始める。ルイ ズは相変わらず奇声や喘ぎ声を漏らし、「ダメ、もっと優しくしてぇ」「でも、乱暴なのも好きぃ」 だのとうわ言を呟いてシエスタの集中をかき乱したが、彼女はなんとか己の仕事を完遂した。 (自分で自分を褒めてあげたい気分) だが、一仕事終えた達成感に浸っている余裕はなかった。次は寝台を片付けなければならない。 「ミス・ヴァリエール。一度寝台から降りていただけますか」 「うん」 「で、服を脱いでそこに置いてください」 もちろん、「汚れたので服を着替えてください」という意味である。だが、ルイズは何か別の意図 のように解釈したようだ。異様なまでに目を輝かせると、寝台から降りて待ちきれない様子でいそい そと服を脱ぎ捨てた。そして、一言。 「して」 「何もしません」 421 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 22 57 25 ID DThkf9y/ もはや怒鳴る気力もない。シエスタは裸で待ち構えているルイズのことは無視して、汚れた布団を 完全に床に下ろし、敷布を寝台から引き剥がす。その途中で、小さな二つの腕が腰の後ろから伸びて きて、彼女の体に抱きついてきた。背中に火照った体の熱を感じる。 「何してるんですか、ミス・ヴァリエール」 「いじめちゃいや」 「いじめてませんから。いいから早く服を着てください」 「だって、まだ何もしてないのに」 「だから何もしませんってば」 「やだ、切ないの。ねえシエスタ、お願い。何でもするから、わたしのこといじめて」 「じゃあ服を着て大人しくしていてください」 「シエスタぁ」 幼子のような声で恥ずかしげもなく泣きながら、ルイズは自分の体を上下に揺すって、シエスタの 背中にこすりつけ始めた。主に胸の辺りを重点的に。 「んふぅー……気持ちいいぃ」 服の布地越しに湿りきった吐息を感じる。シエスタの背筋に悪寒が走った。 「ちょ、やめてください、ミス・ヴァリエール!」 「だって、シエスタがわたしのこと弄ってくれないんだもん。だからね、自分で気持ちよくなるの」 とろけるような声で言い、ルイズはさらに激しくシエスタの背中に自分の前半身をこすりつけ始め る。その内息がさらに荒くなり、体の動きも速くなってきた。 (早く、片づけを終わらせないと) シエスタはメイドとしての半生で得た経験をフルに活かし、素早く寝台を整えた。そのまま、未だ 体を揺すり続けているルイズを引き剥がし、乱暴に寝台の上に放り出す。 「いやぁ、シエスタぁ」 「いい加減にしてください、ミス・ヴァリエール。こんなことがサイトさんに知れたら……」 脅し文句として多少は有効かと思って才人の名を口にしてみる。ルイズはその名前を聞いた途端、 きょとんとした様子で目を瞬いた。 「サイト?」 「そうです。サイトさん。ミス・ヴァリエールがこんなことしてるってサイトさんに知られたら、ど うなると思いますか?」 ルイズは目を輝かせた。 「たくさんしてもらえる」 逆効果だった。虚脱感のあまり腰砕けしそうになるシエスタの前で、ルイズは夢見るように唇を緩ませる。 「サイト、すごくえっちだもん。わたしもえっちになったの知ったら、きっとわたしのこといっぱい 愛してくれるわ。わたしたちね、昼も夜もずーっと愛し合うの。動物みたいにずぼずぼするの」 淫靡な想像がどんどん膨らんでいくらしく、ルイズの瞳がまた焦点を失い始める。 (これはお手上げだわ。とてもわたしの手には負えない) シエスタは心の中で白旗を上げた。こうなれば、誰かに助力を求めるしかない。 (でも、こんなこと誰に相談したらいいのかしら。サイトさんに言うのは論外だし、だからって、他 に頼れる人も……あ、そういえば) タバサの顔が頭に浮かんだ。協力するから何でも言ってと言ってくれたし、彼女は口が堅そうだ。 と言うかそもそもあまり喋らない。それに何より、冷静沈着な知識人である。その知識欲が性的な分 野にまで及んでいるかは定かでないが、とにかくいい助っ人になってくれるはずである。 (よし、ミス・タバサに相談してみよう) そう決めたものの、シエスタは少し迷う。タバサは隣の部屋にいる。呼びに行くと言っても、部屋 を離れる時間はせいぜい数十秒ほどのはずである。だが、たとえその程度の時間でも、今のルイズか ら目を離すのは不安だった。 「ミス・ヴァリエール」 「なぁに」 ぼんやりと首を傾げるルイズの眼前に、シエスタは指を突きつけた。 「いいですか、わたしは今からほんのちょっとだけ部屋を空けますけど、その間にさっきみたいなこ としちゃダメですよ」 「さっきみたいなことって?」 「ええと」 さすがに卑猥な単語を口にするのは躊躇われたので、シエスタは曖昧に説明した。 「だから、自分の指を、その、そこにいれたり、とか」 股間を指差されたルイズは、少しの間何やら考えていたようだったが、やがてにっこり笑って頷いた。 「分かったわ。何もしないで待ってる」 422 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 22 58 38 ID DThkf9y/ 「本当ですよ。絶対ですよ」 何度も念を押しつつ、シエスタは部屋を出ると、滑稽なほど急いで隣の部屋の扉をノックした。 「誰」 静かな声が返ってくる。シエスタが「わたしです」と答えると、中に入るよう促された。 船室の中に足を踏み入れたシエスタは、机に向かって本を広げていたタバサのそばに一直線に歩み 寄り、言った。 「ミス・ヴァリエールが大変なので来てください」 あまりにも適当すぎる説明ではあるが、上手く説明できないので仕方がない。幸い、こちらの様子 から何かがあったことを察してくれたらしい。タバサはすぐに本を閉じ、杖を手にとって立ち上がった。 「こちらへ」 シエスタはタバサの部屋の扉を開け、すぐにまた隣のルイズの部屋に戻ろうとする。 そして、扉を開けて絶句した。 「ああ、サイト、サイトの太いのぉ」 「何やってるんですか!」 寝台の上でまた陰裂の奥を弄っていたルイズのそばにすっ飛んでいって、無理矢理彼女の腕をつか み止める。先程「自慰は絶対しないように」と厳命してから、一分と経っていない。いくらなんでも 早すぎである。 「こういうことは止めてくださいって言ったでしょう!?」 「そうです」 と、ルイズは何かを期待するかのように目を輝かせた。 「ルイズ、変態なので約束を破っちゃいました。お仕置きしてください」 そう言って、自分から股を広げてみせる。最初からそれが目的だったことは明らかである。シエス タはため息を吐いた。 「なるほど」 背後から納得したような声が聞こえてくる。振り返ると、タバサが後ろ手に扉を閉めたところで あった。 「そういうこと」 何やら、確認するように何度も頷いている。変わり果てたルイズの痴態を見ても、全く動揺した様 子が見られない。やっぱりこの人は凄い、とシエスタは内心感心した。 「こういうことなんです」 「いつから」 「起きたときにはもう様子がおかしくて」 「そう」 そんなことを喋っている間にも、ルイズはまた自慰に没頭し始めている。背後から聞こえてくる喘 ぎ声と絶え間ない水音を、シエスタはあえて聞こえない振りで流した。 「どうなってるんでしょうか」 「ある程度、推測はつく」 答えは期待していなかったが、タバサは静かにそう返答する。シエスタは驚きに目を見張った。 「え、それってどういう」 「多分」 と、タバサが何か言いかけたところで、シエスタは不意に背後から服の裾を引っ張られた。 「ねえ、シエスタぁ」 振り向くと、床にしゃがみ込んだルイズが、左手でこちらの服の裾を引っ張っていた。右手はもち ろん股間に潜り込んでいる。 「無視しちゃイヤ。ね、わたし、シエスタの言いつけ破った、悪い雌犬なの。早く、躾けて。ねえ、 躾けてよぉ」 「何バカなこと言ってんですかあなたは」 「ああ、いい、もっと、もっと口汚く罵って!」 ルイズは目を閉じて大きく体を震わせる。何を言っても興奮の材料になってしまうようだ。こんな 風に邪魔をされては、いつまで経っても話が進まない。 (どうしましょう) (任せて) シエスタの困惑の視線に、タバサは小さく頷いた。こちらに歩み寄ってきて、しゃがみ込むルイズ を無表情に見下ろす。 423 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 22 59 22 ID DThkf9y/ 「ルイズ」 「ああ、タバサ。タバサもいじめてくれるの」 「分かった、いじめてあげる」 言うが早いか、タバサは小柄な体には似合わない力で、ルイズの体を抱え上げた。そのまま寝台に 相手の体を横たえて、ゆっくりと覆いかぶさる。 (え、何を) 驚くシエスタの前で、タバサは躊躇いなくルイズの唇に自分の唇を押しつけた。舌を突き入れ、吸 い上げ、ねっとりとした水音を響かせる。ルイズもまたうっとりと頬を染め、タバサの激しい接吻に 応じている。 そうして激しく唇と舌を絡ませつつ、タバサは同時に腕も動かしていた。左手でルイズの頭を押さ えながら、右手は滑るように相手の肌を這い回り、要所要所を指先でくすぐったりつねったりしなが ら、相手の反応を窺っている。 「あ、ああ、そこぉ」 「ここ?」 ルイズの唇を攻め立てながら、タバサはルイズの左胸の辺りを指でなぞる。ルイズの体が小さく跳 ねた。 「そこ。いい、いいの」 「そう」 タバサの唇がルイズの唇から離れ、混ざり合う唾液の跡を残しながら、彼女の体を這い下りる。顎 を伝い首を通り、やがてルイズが最も敏感に反応するスポットに到達する。タバサはその辺りを、舌 と唇で重点的に攻め立てた。甘噛みを交えながら、舐め、吸い寄せ、音を立ててキスをする。そのた びにルイズはむせび泣くような喘ぎ声を上げ、何度も何度も小さく体を跳ねさせる。 (……凄い) シエスタは、その光景に淫靡さと同じぐらいの美しさを感じていた。タバサは刻々と変化するルイ ズの反応を敏感に感じ取り、次々に場所を変えながら、滑らかに相手の体を刺激していく。そのたび、 ルイズは長く、あるいは短く悲鳴を上げて体を震わせる。タバサの洗練された指使いと相まって、そ れはまるで一流のピアニストが素晴らしい旋律を生み出しているようにも見えるのだった。 そうやってシエスタが見入っているうちに、二人の情交は終わりを迎えつつあった。 タバサの指がルイズの陰裂に潜り込み、休みなく中をかき回している。ルイズは全身を上気させ、 身悶えしながら切なげな喘ぎ声を漏らし続けている。正気を失った顔は、先程自慰していたときより もさらに崩れ、まさに快楽を貪る獣の表情である。開きっぱなしのその目を、タバサは静かに見つめ ている。 「そろそろ?」 「うん……ああ、もう、もう……!」 「そう」 小さく呟くと、タバサは最後の仕上げとばかりに、ルイズの陰核を軽く摘み上げる。その瞬間、ル イズの体が弓なりに反り返った。大きく開かれた口から長い長い悲鳴が上がり、やがて小柄な体が寝 台に崩れ落ちる。半ば白目を剥きかけているルイズの口元から、唾液が一筋流れ落ちて、取り替えた ばかりの敷布をまたも濡らしていた。 「これで黙った」 ぽつりと言い、タバサは少しだけ乱れた着衣を軽く直す。その言葉どおり、ルイズは荒い呼吸を繰 り返すだけで、もう何も言わなかった。時折痙攣しているものの、もう先程のように興奮して自慰に 没頭することもない。完全に意識が飛んでいるようである。 (ううん、飛ばされたんだわ。この人に、指と唇だけで) 性に関する知識が豊富とは言えないシエスタにも、今目の前で披露されたタバサの手腕が並外れて いたことだけはハッキリと分かる。 しかも、完全に正気を失くしているルイズに比べ、タバサの方はあれほど激しく相手を弄んだと言 うのに、息一つ乱していない。事前と事後で全く様子が変わらない静かな佇まいに、シエスタはただ ただ呆然とするしかなかった。 「あの、ミス・タバサ」 「なに」 「ええと、何というか、とてもお見事でしたけど……一体、どこであんな技術を?」 タバサはそっと目をそらすと、ルイズの愛液に塗れた自分の指先を見下ろして、小さく呟いた。 「そういう任務もあった」 なんだかいろいろ怖かったので、シエスタは深く追及しなかった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3107.html
朝、太陽が昇り、生徒達は起きて身だしなみを整えて使い魔と一緒に朝食に向かう。 しかし、その流れに真っ向から反している生徒がいた。そう、ルイズのことである。 あの一件がおきてからルイズは突如部屋に引きこもるようになってしまったのだ。 そもそも大勢の生徒の目の前であのような痴態を曝け出してしまったのだ。無理も無い。 そしてルイズは何より小宮山さんの事を快く思っていなかった。もう、小宮山さんの顔を見たくないとも思っていた。 「何よ! あの使い魔、いきなり私にあ、あんなことするなんて………」 部屋に閉じこもって早一日が過ぎ、真夜中になろうとしたとき、ルイズはふと目を覚ました。 起き掛けに思い出されたことはやはりあの時のことだった。ルイズはあのときのことを思い出すだけですぐに顔が真っ赤になった。 頭の中はずっとあいつは生意気だとか腹立たしいとかそういう思いで渦巻いている。 ふと、ルイズはあの時にされた情熱的なキスを思い出した。 下唇を人差し指でそっとなぞってみると、あの時のキスの感触が生々しく蘇って来た。 「あ………。」 口の中から唾液が沸いてくるのがわかった。ルイズは左手の人差し指をおもむろに口の中に突っ込む。そしてそれを音を立てて吸った。 ちゅぱちゅぱ、ちゅーちゅー……… 最初は第一関節までつっこんでいく。汗によるしょっぱい味と唾液の味が混ざり合っていた。 ちゅぱちゅぱ、ごりっ、ごりっ、ちゅーちゅー……… 更に、第二関節まで突っ込む。ルイズは歯を立ててごりごりと音を立てて人差し指を齧る。 がぶっ、……ちゅうううううううう ついに、ルイズは左手の人差し指全てを口の中に含んだ。それを側面から舌で嘗め回し上の歯で適度な強さで押さえつける。 ちゅぱっ、ちゅぱっ、ちゅぱっ………… ルイズは人差し指から始まり、中指、薬指も口の中に突っ込んでいく。そして爪の部分まで満遍なく舌と唾液で濡らして、指はもうトロトロになっていた。 するとルイズの耳元からある声が聞こえてきた。 「あら、あなたなかなかやりますのね。」 ルイズには上に小宮山さんが下着姿で乗っかっているように見えた。あの年下で生意気な使い魔が、私にとても恥ずかしい思いをさせた使い魔が しかし、ルイズはなぜかそれを嫌とは感じず、むしろ嬉しいと感じていた。そして自分に芽生えたひとつの感情。それは、 「はぁ、はぁ、はぁ………あっ、あんたなんかに負けるものですかっ…。」 くちゅっ、くちゅくちゅくちゅっ、 ルイズは口の周りに汚く唾液を垂らしながら必死になって小宮山さんの舌に絡み付こうとしていた。 しかしルイズの前にいる小宮山さんはただにやにやと笑みを浮かべるだけで全くルイズに絡み付こうとしない。 「あんふぁねぇ! いいあえんいいないとっ、うるはないんだふぁらぁ!!!」 いつの間にかルイズは舌を虚空に向かって突き出し、ぺろぺろと舌を動かしていた。 冷たい空気が舌に触れ、ルイズは動きを止めた。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」 布団の中で激しく身体を動かしたせいか、ルイズの身体は汗まみれになっていた。 「やだっ、気持ち悪い………」 ルイズは布団を跳ね除けておもむろに立ち上がる。するとそこには部屋の中で一人荒い息を吐いている自分がいた。 「えっ、それじゃあさっきのは………」 ルイズの顔は見る見るうちに青ざめていく。ルイズは思いっきり頭を振ると汗ばんだ服を着替えもせずにそのまま眠りに就いた。 翌日もルイズは一度も部屋から出ることはなかった。 キュルケやコルベールが心配して部屋をノックしてみるものの、ルイズは全く部屋の扉を開けようとはしなかった。 しかし、引きこもっていても腹は減る。ルイズと多少なりとも面識のあったメイドのシエスタがルイズの部屋まで食事を運ぶ事になったのだ。 朝食のときはシエスタがひとりで訪れた。 ルイズの部屋には入ろうにも入れなかったのでシエスタは「良かったらお召し上がりください。」と部屋に向かって声を掛けて立ち去る他なかった。 昼食のときもシエスタがひとりで訪れた。見ると、そこには空になった食器がのせられたおぼんが部屋の前に置かれていた。シエスタはひとまず安堵した。 「何? ルイズが部屋に引きこもったまま出てこないですって?」 夕食のときは小宮山さんも一緒にルイズの部屋まで訪れることにしたのだ。 学生寮の中をシエスタは今日の夕食を持って、小宮山さんは腕組みをしており、どこか怒っているような表情で寮内を闊歩していた。 「全く、私の主人になる人物ですのにこの体たらくは誠にいかんともし難いですわっ!」 いや、完全に怒っていた。シエスタは苦笑しながらもルイズに対する怒りというものはあった。 なぜ私やルイズよりも幼いこの娘が一生懸命がんばっているのに、彼女は部屋に閉じこもってしまったのか。 そしてそんなことを思っている自分にそれほど違和感を感じなくなったシエスタは彼女を負かしてやりたいという心が急激に芽生え始めていた。 「ここですわ。」 シエスタはルイズの部屋の前で足を止めた。そこには昼食のときと同じように空になった食器がおぼんと一緒にのせられていた。 「食事はちゃんととられてるみたいですね………。」 シエスタが持ってきたお盆を下に置き、空になったお盆を取り上げようとすると――― 「………えっ?」 シエスタは驚きのあまり言葉が出なかった。小宮山さんが空になったお盆を思いっきり蹴り飛ばしたからである。 蹴り飛ばされた食器は壁に当たって粉々に砕け散る。破砕音が廊下にこだました。 そして小宮山さんはルイズの部屋の前で大声を上げた。 「ルイズ! あなた全っ然女らしくありませんわっ!!!!」 部屋の中でうずくまっていたルイズの目がかっと見開いた。 「ですから、シエスタ」 「えっ?」 小宮山さんはメイド服をその場で脱ぎ捨てて、下着姿になった。 「さあ、お脱ぎなさい。今こそあなたの女らしいところをあいつに見せ付けてやりますのよ。」 「えっ、えっ、えええ?」 シエスタはメイド服を脱ぎ捨てるとたわわな胸ときれいな股体をあらわにした。 「はっ、恥ずかし…っ」 シエスタの唇は小宮山さんによってあっという間に塞がれる。 「んっ、んっ……。」 かすかにもれた唇からシエスタの喘ぎ声が聞こえてくる。小宮山さんの唇はとても甘美でやわらかくて脳が破裂してしまいそうな感覚に陥る。 くちゅっくちゅっ、ぴちゃっぴちゃっあ、じゅくっ、くちゅっ、じゃぶ、ちゅうううう……… 音はルイズの部屋まで聞こえていた。いつのまにかルイズは部屋の扉に聞く耳を立てて一音たりとも聞き漏らすまいとしていた。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ」 小宮山さんが口を離すと、シエスタとの間に透明な糸ができていた。 シエスタは顔が真っ赤になり、息を荒くしていた。 「どっ、どうして………?」 シエスタはまず疑問を口にした。そう、小宮山さんからのこういう行為を受けることは初めてのことなのである。しかし、小宮山さんは言った。 「私があなたを立派な女性にして見せますわ。」 小宮山さんは爛々と眼を輝かせていた。 「これを使いなさい。」 小宮山さんは自分のパンツを脱ぐとそれをシエスタに渡した。 「こっ、これは………?」 「それを使って下腹部をこすりなさい。濡らしておかないと後で痛い目を見ますわよ?」 シエスタの手には小宮山さんの脱ぎたてのパンティーが握られていた。 手から小宮山さんの温もり、匂い、そういった物が伝わってくるのを感じる。シエスタはパンティーを持った左手を胸にこすり付けて右手を自らの下腹部に侵入させた。 「はぁっ、はぁっ、はぁ、はぁっ……」 シエスタは自分がものすごくドキドキしている事に気づく。もしかして心臓が飛び出てしまうのではないかと思ったほどだ。 左手で胸を揉み下していたが、だんだんスピードが速くなって止められなくなっていく。 「!」 下腹部に右手の人差し指を突っ込んだシエスタは、下腹部がぐちょぐちょに濡れていることに気づく。 今までこういう行為は何度もしたことはあるが、ここまで濡れていたのははじめてであった。 「ふぁ、はぁあ、んやぁ、はぁ」 シエスタは喘ぎ声を上げながら夢中になって下腹部をいじりまわる。 その様子を小宮山さんはただじっと見ているだけであった。綺麗で鋭さを持った瞳がシエスタの身体を捉えていた。 「はぁ、はぁ、んぁっ、あああっ!」 シエスタの下腹部はずっと小宮山さんに見られてるとわかった瞬間、急激にシエスタの指を痛いほどに締め上げる。 いつの間にか一本から三本にシエスタの指は増えてそれらがシエスタの下腹部を所狭しと暴れまわる。 その間にも左手は胸を弄り回すことを忘れない。胸は左右上下に形を変えてぷるんぷるんと震えながら汗を飛び散らす。 そしてシエスタの指が一番敏感なところに触れた瞬間、 「ふあああああああああっ!!!!!」 シエスタが嬌声を上げた瞬間シエスタの下腹部から大量の液が溢れ出てきて、床を濡らした。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ………」 シエスタは液でできた水たまりの中に腰を下ろしたまま動くことができなかった。 「さて、そろそろ準備ができたみたいですし…ルイズっ!」 小宮山さんはもう一度ルイズの部屋の扉を思いっきり叩いた。 「いつまでそこで覗き見していらっしゃるのかしら? そこにいるのは最初からわかってますのよ!」 「わっ、私は別に見てなんか」 「嘘おっしゃい!」 ルイズの弁明に小宮山さんはいち早く反応した。 「はしたなく床を濡らしてるのはシエスタだけではありませんわ。」 我に返ったルイズは自分の身体をあらためて見た。そこにはぺたんこ座りをして液まみれになった右手と盛大に濡れている床があった。 「わっ、私は……その……。」 「こっちへ来なさい。」 一転して小宮山さんはルイズにやさしく呼びかけた。 「今度こそあなたを一人前の女性にして差し上げますわ。」 ルイズが服を脱いで扉を開けるとそこには身に何も纏わない二人の姿があった。 「こっ、ここでするの?」 「ええ。ここでやったらスリルが増してとっても気持ちよくなりますよー。」 そう言ってシエスタは手招きをする。ルイズがどうしようかと戸惑っているところに、小宮山さんの唇が襲い掛かってくる。 小宮山さんは少し背伸びをしてルイズの身体にしがみつくようにして抱きつく。 ルイズは小宮山さんの腰に手を添えて、しっかりと抱きかかえた。 ちゅくっ、くちゅっ、ぴちゃ、ぴちゃっ……… (この前のと一緒だ………) 小宮山さんがルイズの口の中を蹂躙してくるのに対し、負けじとルイズも小宮山さんの舌に自らのを絡めていく。 「!」 小宮山さんの目が見開いた。ルイズが小宮山さんの口に溜め込んでいた唾液を流し込んだのだ。 すかさず、小宮山さんも舌でルイズの歯の裏までまんべんなく嘗め回す。 そして、双方が十分に互いの口の中を味わえ終えたとき、二人はゆっくりと身体を離した。 「私、今までずっとあんたから逃げてた。」 ルイズは小宮山さんの瞳をじっと見つめながらそういった。ルイズは続ける。 「あの時思った感情は何かの間違いだと思っていた。そんな事はない。そんなはずは無いと思ってた。でも………」 ルイズは小宮山さんの肩を強く抱き寄せる。珍しく小宮山さんには抵抗するそぶりが見られなかった。 「私はあんたの事を思うとドキドキするのよ! はしたない事だって何度もした。いけないって思ってても何度もした! でもっ…わたしいつまでたっても素直になれなくてこのまま終わっちゃってもいいように思ってた。……けどっ……」 いつのまにかルイズは涙を流していた。ルイズはふっと二人の状況をじっと見ていたシエスタのほうに顔を向けた。 「………ごめんなさい。」 「…何を謝ってらっしゃるのですか? ミス・ヴァリエール」 ルイズの謝罪にシエスタは穏やかな笑みでそう答えた。 「あなたも私もお嬢様のことが好き。これでいいじゃありませんか。だから…」 シエスタは胸を押し付けながら小宮山さんをルイズもろとも床に押し倒した。 床の一番下にルイズが仰向けになり、間に小宮山さんがうつぶせの状態で、シエスタが上からうつぶせになってのしかかってくる。 小宮山さんの身体を二人で挟んだサンドイッチのような状態になった。 「あっ、あんたいったい何を 「だからみんなで気持ちよくなりましょうよ。ね?」 シエスタはにっこりと微笑んだ。 小宮山さんはともかくシエスタが意外なほど軽かったのでルイズはそれほど重く感じることはなかった。 「ふぁっ……」 小宮山さんとルイズの局部同士がぴったりと重なり合う。局部からあふれてくる液はどちらのものなのかはわからないがとても熱く感じた。 「むふふふぅ……」 早速シエスタは大きな胸を小宮山さんの背中にぴったりと貼り付けてそれを上下に擦り始めた。 「あっ、シエスタ… きっ、気持ちいいですわっよ…んっ、はぁっ……」 小宮山さんは思わず身悶えする。その様子にむっとしたルイズは、小宮山さんの乳首に触れてそれをぷにぷにと弄り始めた。 「んっ…… 二人とも、素敵ですわっ……よっ……ふわあああっ!」 小宮山さんが嬌声を上げる。シエスタが小宮山さんの菊門に指を突っ込んだのだ。 「すごい締め付け………」 シエスタは思いがけない反応に驚いた。ルイズのほうも空いている指を小宮山さんの中に思いっきり突っ込んだ。 「ふわあああああっ!!! ふっ、二ついっぺんに攻められるなんてぇぇぇぇぇぇっ!!!」 小宮山さんは弓なりに身体をそらそうとするも、シエスタががっちりと重なっているので思うように動けない。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ………かぷっ」 小宮山さんは目の前にあるルイズの乳房にむしゃぶりついた。 「ふぁなゎふぁ、ふぇっふぉおふぁふぃふぁふほへ(あなた、結構ありますのね)」 「ひゃうう! おっ、おっぱいは、びっ、敏感だからぁ、ひゃああああああっ!!」 性感帯を思いっきり刺激されたルイズは思わずくねくねと身を捩じらせる。 「わっ、わたしもっ、いっ、いきますっ!」 シエスタは股で二人の下半身を挟み込んでそれを激しく擦り合わせた。 誰もいない廊下に、局部をいじる音と、乳首を吸う音と、身体同士が擦りあった音が響き渡る。 「わっ、私もうっ、だめっ。いっ、いっちゃう!」 「あっ、わっ、私もいっ、いやっ、イク…イキます…わっ」 「ふあっ、ふわぁっ、ふわああああん!」 三人に限界が迫ってくる。三人ともスピードを急速に上げて一緒に高みを目指す。そして、 「「「ふわああああああああああっん!!!!!!!」」」 ぴしゃああああああ………… 三人の局部から液が勢いよく放出されて、床はもう水浸しの状態になっていた。 「「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……………」」」 「…床、後で掃除しないといけませんね。」 「そうね……」 シエスタとルイズが全裸のまま脱力しきっていたが、すぐさま服を着て靴を履いて正装に戻った小宮山さんは廊下の角のほうへと歩を進めた。 「どうしたんでしょうか………」 「さあ………」 シエスタとルイズは長い廊下を進んでいく小宮山さんを見てもなにがなんだかわからないようであった。 そして遠くから小宮山さんの怒りの声が聞こえた。 「ミスタ・コルベール! あなたっ、神聖なる女子寮で自慰行為にふけるなどとは全っ然男らしくありませんわ!!!」 「うわぁああああああっ!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいーっ!!!」 「「…………」」 「早く着替えちゃいましょうか。」 「ええ、そうするわ……。」 シエスタとルイズは遠い目をして着替えの作業に取り掛かったのであった。 数日後、小宮山さんたちはトリステイン学院の男女を立派に更生するために行動を起こした。 「ルイズ、シエスタ、これで今日の掃除は終わりですわ」 「うん。今日も良くやったわね。」 「はい! 今日も良い掃除ができましたねお嬢様!」 メイド服姿のシエスタとルイズ、そして小宮山さん。 彼女たちはこの手でに学院内を掃除して回ることにしたのである。 その内容は実際の掃除を行いながらも、行く先々で出会った「男らしくない男」「女らしくない女」に教育を行うことで彼らを立派に更生させてしまう。 というなんとも羨ましいものであった。 「おーほっほっほっほ! 私の掃除はいつも完璧ですわ! この調子でこの学院全てを掃除して回ってみせますわことよ!」 小宮山さんの高笑いが学院中に響き渡る。このままトリステイン学院を小宮山さんが掌握する日はそう遠くはなさそうだ。