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クリフトのアリーナの想いはPart11 455 :従者の心主知らず さえずりの塔 中編 1/7 :2010/12/12(日) 14 41 09 ID IGxLLnPj お父さま。声が出せないだなんてすごくつらいはずよ。助けられるのは私たちだけよ。絶対にご病気を治してみせるわ! 「さえずりの蜜ならもしかしたらお父さまの病気も治せるかもしれない。さあ 急ぎましょう!」 「では行きますぞ!」 私たちはじいの魔法ルーラで再び砂漠のバザーに舞い戻った。夕方だったせいかやっぱり片づけ始めてるお店もあった。 「さえずりの蜜はどこ?早く手に入れてお城にもどらなくちゃ!」 私たちは急いでお店の人たちに聞いて回った。 「さえずりの蜜?うーん、そんなのあったかなあ」 「さえずりの蜜?ああ、昔あったかねえ。向こうの道具屋で聞いてみておくれ」 「道具屋?ほら、あそこでシートをかけてるとこだよ」 私たちはやっと道具屋さんへ! 「さえずりの蜜?ああ、この店にも昔1つだけあったっけ」 「1つだけ?今は置いてないの?」 「今はないのよ。あれはたまたま手に入ったものだったからねえ」 …………。 「あー、でもエルフが来るという西の塔に行けば今も手に入るかもね」 「西の塔?そこに行けばあるの!?」 「前もあそこで手に入れたものって聞いてたからねえ。でも昔と違ってあの塔には魔物が住み始めたしやめたほうがいいと思うよ」 「魔物が何よ!そんなの私が恐がるとでも思ってるの!?行きましょう西の塔へ。そしてさえずりの蜜を手に入れるのよ!」 「フム。ここより西にある塔。そこにさえずりの蜜があると。ならば決まっております。魔物が出ようが塔にのぼりさえずりの蜜をこの手に!」 じいも賛成してくれた。やった!じいが賛成してくれるって初めてじゃないかしら。私はクリフトに振り返る! 「ええ、行きましょう」 クリフトも力強くうなずいた。初めてみんなの意見がいっしょになった!どうしよう、ワクワクしてきたわ。 「目的地もはっきりしたところで少し腹ごしらえをしますか。腹が減ってはなんとやらですからな」 「あ」 じいに言われたらなんだか一気におなかがすいてきた。そういえば今日のお昼まともに食べてなかったんだわ。 「そうね!ひとまずごはんにしましょう!」 「あ!姫さま!王様はいかがでしたか?もう心配で心配で……」 振り返ると兵士が。私たちにお父さまのことを伝えに来てくれた兵士だわ。私は思わず口ごもる。 「フム、この度はご苦労だったの。王はずっと過労が続いていたようじゃ。今は安静にしておるゆえじきによくなるじゃろう」 「そ、そうですか……」 「姫さまの長期不在もたたっておったようでの、一度顔を見たらまあ落ち着きよったわ。そう心配しなくてもよいぞい」 「はい……」 すかさずじいがごまかした。じいってごまかすの本当に上手だわ。 兵士は持ち場に戻ってった。テンペの件があってから見回りをたくさんするようになったみたいでしばらくここにいるみたい。 もっと早くこうなってればテンペもあんなになるまで苦しまずにすんだのにね。でも…… 「私、うそをつくのはあんまり好きじゃないの。でも、この人に本当の事を知らせたほうがいいのか、それとも……?」 私は兵士を見ながら考える。だめ。言えないわ。お父さまがあんなに苦しそうなお顔をしてたなんて、私とても言えない……。 「王のご病気についてはなるべくご内密に」 「クリフト……」 まるでクリフトが私の心を読んだみたいに言ってきた。勘の鋭いクリフトっていや。でも言えないのは事実であって……。 「そうですよ!だって私たちがすぐに治してしまうんですから」 …………。 「うん。そうよね。すぐに治るんだもんね!」 「むむ……。そうですな。ここは黙っておきましょう」 ちょっと悔しい。またクリフトに先を越された気がする。でもすぐ治るって言われて少し気が楽になったのも事実であって……。 クリフトって不思議。 私たちはやっと落ち着いてごはんを食べた。スパイスのきいたシチューとそのままでも味のあるおっきなパン。 「西の塔かー。どんな魔物が出るのかしら」 「エルフが来る塔。さぞかし高い塔なのでしょうね。……っ」 クリフトが少し身震いした気がする。 「高さがなによ、何階でものぼってやるわ!さえずりの塔!」 「な、なんですかその名前は」 「え?さえずりの蜜があるからさえずりの塔!」 「いやはや、安価なネーミングじゃのう」 「い、いいじゃない!さえずりの塔なの!今日から西の塔はさえずりの塔!」 ごはんも終わってひと休み。じいはお手洗いに行ってる。なんとなくクリフトを見たらうつむいてた。 あれ、確かさっきまで地図を見てたはずだけど。よく見たら地図を持ったままうつむいてた。あ、また寂しそうな顔してる……? 「クリフト、どうしたの?」 「え?あ、どうかしましたか?」 「私がクリフトに聞いてるのよ」 「そ、そうでしたか」 「そうよ。どうかしたの?」 「…………」 黙っちゃった。でももう慣れたわ。なんでもありませんって言ったらもっと聞いてやるの。私はクリフトの返事を待った。 「姫さま……」 「なあに?」 「一つ、お伺いしてもよろしいでしょうか……」 「え、なによそんなに改まって。いいわよ、なんでも聞いて」 地図をテーブルに置いて私のほうに向き直る。今回はなんでもありませんって言わなかったわね。 クリフトは少しだけうつむいたまま小声でぼそっとしゃべった。 「……もう少しだけ、とは、どういう意味だったのでしょうか……」 「え?」 「その、神父様とお話されていたとき、もう少しだけクリフトをお借りしていきますと……」 「えーと。私そんなこと言ったっけ?」 「え?」 神父さまとお話してたとき? 確か神父さまは、クリフトは奥にいますよ、早く準備をなさい、眠れません、お気をつけて行ってらっしゃい神のご加護のあらんことを。 んーいつ言ったんだっけ。もしかしてどっか抜けてる?今日はいろんなことがありすぎてぜんぶ覚えてないわ。 「いえ、あの……覚えていらっしゃらないのならいいのです。おかしなことを聞いて申し訳ありませんでした」 「んー……」 なんか気になるわ。こういうのがもやもやしていやなのよ。 「ねえクリフトー」 「は、はい」 「私はクリフトみたいに難しいこと考えてしゃべってるわけじゃないの、だからそんな言葉のひとつひとつなんて覚えてないのよ」 「い、いえその……はい……」 「だから、どうしてそんなことを聞こうと思ったのかを教えてちょうだい。そのほうが早いわ」 「…………」 また黙っちゃった。うつむいてる。きっとクリフトの頭の中は今難しいことでいっぱいなんだろうな。私はもう少し待ってみた。 「では、では……っ……もう一つだけ、お伺いしてもよろしいでしょうか……」 「っもう、クリフトったら。前も言ったじゃない。いいのよ、なんでも聞いて、なんでも話して」 クリフトは下くちびるをかんだ。またそわそわしてる。まるで昨日のクリフトみたい。また男の子の秘密でも打ち明けるのかしら。 「……その……王のご病気が完治されたら、また旅を続けられますか?」 「え?」 思わぬ質問にちょっとびっくりした。 「もちろんよ!だってバザーも全部回りきってないし、まだ他にも行ってないところがありそうだし、それに!」 夢のような国!エンドールの武術大会! 「武術大会の出場者も、きっともっと強い人と戦いたいと思うのよね……。じつはお姫さまでしかもものすごーく強い!たとえばそんな子とか。 お父さまが治ったら許しては……」 許しては…… 「くれないわよね。はあー……」 「…………」 「でもでも、まだこの大陸は回るつもりよ!それでうんと強くなって、お父さまを拝み倒すの!」 「そう、ですか」 「そうよ!」 あれ、クリフト、少しだけ笑った? そういえば、前笑ったときも旅の話をしてたときだった気がする。そう、旅はいつでもできるからって言ったとき。 なんでだろう。なんでそこだけははっきり覚えてるんだろう。 ――私は姫さまと外に出たかったんです!―― ふとフレノールでのクリフトの言葉が浮かんできた。なんで今になって思い出すんだろう。 クリフトが旅に出たいのは私といっしょで強くなりたいからであって、クリフトだったらたぶんいつでも旅に出られるわけで。 私がいっしょに強くなろうねって言ったからって別に本当にいっしょに強くならなくてもいいわけで。 ――姫さまは私が命にかえてもお守りいたします!―― ~……。 なんであのときのクリフトが浮かんでくるのよ。お父さまと向かい合って真剣な顔してたクリフト。お父さままで真剣な顔しちゃって。 別にあのセリフは兵士たちだって普通に言うし、私が姫っていう立場だから言っただけで、特別でもなんでもないわけで。 あーもう頭の中がグチャグチャだわ。結論は、私は真剣な顔してるクリフトが苦手ってことね。 いつでも弱虫で泣き虫で私のあとばっかついてくるあのころのクリフトだったら私もこんなに気にしなくてすむのにっ 「姫さま?」 クリフトが顔をのぞきこんできた。クリフトの目に私が映る。変な顔した私。あーもう! 「クリフト!」 「はい!」 「クリフトは、私が守るんだからね!」 「は、はい?」 「私が守るの!じいも私が守るの!だから、クリフトは私のあとをついてきなさい!」 「は、あ……」 クリフトは驚いた顔で私を見てる。 「私のあとをついてくるの!いいわね?」 「は、はい!」 大げさに返事するクリフト。でも、少しだけ笑ってもう一度言ったの。 「はい、姫さま……。どこまでもついていきます……」 「うん!」 「なんだかみなぎってきたわ!クリフト、今からさえずりの塔に行くわよ!」 「い、今からですか?」 「そう、今からよ!」 外はたぶんもう真っ暗ね。でもなんだか無性に動き回りたい気分なの。 「朝までなんて待ってられないわ。お父さまのご病気を治すためなんだから、急いだほうがいいに決まってるじゃない。 誰が何と言おうと私はぜったい行くからね!」 「そうですか……。では行きましょう、今から」 「え?」 今度は私が聞き返しちゃった。だって。 「旅の支度もできておりますし、ブライ様が戻られたらすぐにでも参りましょう」 「え、だって、いいの?だって、夜歩くのは危険だから宿をとりましょうっていつも言うじゃない」 「それは確かにそうですが、事情も事情ですし、姫さまがそこまでおっしゃるなら私にお止めする理由はありませんよ」 「…………」 「私はただ、おそばに……この身に代えても姫さまをお守りするだけです」 あ。またあの顔。私の苦手な真剣な顔。だ、だから私がクリフトを守るって言ってるのになんでそういうこと…… やっぱり顔が熱くなっちゃう。 「じいは?じいはきっと反対するわ」 私は目をそらして言った。 「いえ、いえ……王の安否を気遣われるそのお気持ちは、きっとブライ様にも伝わると思いますよ」 「………………」 「姫さま……」 クリフトが私を見てる。きっとものっすごく見てる。でも、あの真剣な顔してると思うと私は見られない。どうしよう。 「わしがなんじゃって?」 「じい!」 振り返るとじいが戻ってきてた。じいも出かける準備ばっちりだった。うそ!なんで! 思わずクリフトを見たらクリフトは下を向いてた。それもなんで! 「聞けば、塔に行き着くまで最低でも二日はかかるとのことじゃ。途中大森林を抜けるようでの。 砂漠に大森林、前回のように早朝に出ればすいすいと行き着けるわけでもなさそうじゃ。 山での野宿もごめんじゃが森での野宿もごめんじゃからの、今のうちに行けるところまで行っておいたほうがいいじゃろう」 「では、ブライ様……」 クリフトが顔を上げた。私はクリフトを見たりじいを見たりで忙しい。でも今度はしっかりとじいを見た。 「眠いしコシも痛いし夜出歩くのは感心しませんが、いたしかたありませんな」 「ブライ様……」 「う、そ……」 話の展開が早すぎて頭がついていけない。つまり、どういうこと?私はいっしょうけんめい頭の中を整理した。 夜に出かけてもいい。じいもクリフトも賛成してくれたんだ。つまり、そういうことなんだ。なんで……。そんなの初めて。 前にテンペへ行くとき一度だけ野宿をしたことがあったけど、あのときはさんざんお説教してたのに。 フレノールでもさんざんしかられて、黄金の腕輪を取りに行くときも砂漠のバザーへ行くときもずっと朝からだったのに。 ――自由―― 私は今、自由なのかな。ねえクリフト……。 私はクリフトを見た。そしたらクリフトも私を見て、笑顔で言ったの。 「行きましょう、姫さま」 「…………うん…………」 私たちはバザーを出てさえずりの塔へ向かった。はんぶん泣きそうになってたのは気合いでこらえた。 砂漠を抜けて森の近くまで来て仮眠をとる。あたりには何の明かりもない真っ暗闇。 じいが言うには、森の中は魔物たちの住み家みたいなものだから少数で野宿するには向かないんですって。 魔法も発動させにくいんですって。なんでって聞いたらクリフトに木々を傷つけてしまいますからねって言われた。 じいもそういうことじゃって。ふーん。そういうものなのかな。魔法のことはよくわからないや。 寝袋にくるまったけど眠れなくて夜空を眺めた。今日は少しくもってる。月や星が見えたり見えなかったり忙しそう。 じいも寝袋にくるまった。クリフトだけはやっぱり起きてる。今夜はじいと交代でたき火の番をするんですって。 私も見張りするって言ったんだけどクリフトに姫さまは塔に着いてからが出番ですよって言われた。 私はぼんやりとクリフトを眺める。あごに手をついて考えごとしてるクリフト。目を閉じた。あ、うつむいちゃった。 …………。 「クリフトー」 「…………」 「クリフトー?」 「え、あ、なんでしょうかっ」 「何考えてたの?」 「い、いえ、特に何も……」 「でもうつむいてたじゃない」 「…………」 クリフトは黙って私を見てる。たき火の明かりだけじゃよくわからない。今どんな顔してるの? 「クリフト……?」 「…………」 クリフトはしばらく私を見てたけどゆっくりたき火のほうを向いた。 「エルフは不思議な種族。魔法やさまざまなチカラを持っているといいます」 「エルフ?」 「ええ、私たち人間に比べて長身で痩せ型であり、耳がとがっているのが特徴だそうですよ」 「ふーん」 「古くから人間との接触を避けてきた種族だそうで、さえずりの蜜を手に入れられるかどうか少し不安ではあります」 「そんなの行ってみなくちゃわからないじゃない」 「……そうですね」 クリフトが少し笑ったのがわかった。っもう、また難しいこと考えて悩んでたのね。クリフトのばか。心配性。 クリフトはそのあともエルフのこと、魔法のこと、いろんなことをお話してくれた。クリフトの低い声がだんだん遠のいてく。 私は話を聞いてたつもりだったんだけど気づいたら空が明るくなってた。じいもクリフトも出かける準備をしてた。 「おはようございます、姫さま」 「おはようございますじゃ、姫さま」 「んーおはよー……」 昨日のことを思い出そうとしてもはっきり浮かぶのはクリフトの「お休みなさいませ、姫さま」っていう優しい声だけ。 バザーで買っておいたパンや干し肉で朝ごはんをかんたんにすませて私たちはまたさえずりの塔へ向かう。 大きな森を抜けて塔にたどり着いたときにはまた真っ暗だった。
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クリフトとアリーナの想いはPart7 353 :【惚れ薬】1/12 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/05/08(火) 22 06 19 ID j51YEDoX0 ミネアは、馬車の中で、液体の入った皮袋を目の前にして悩んでいた。 占いの御代にといって、怪しげな老婆がよこしたのは、曰く「史上最強の惚れ薬」。 「恋しい人の口にほんの数滴、あとはそれを飲んだ後に、一番先にそいつの目に入るようにな。」 いかにもありがちな話であり、うさんくさいことこの上ない。 にもかかわらず、ミネアが、皮袋に入った緑色の液体を捨てられずにいるのは、 脳裏に浮かぶ、碧い髪、碧い瞳を持つ青年のせいだった。 ―――クリフトさんがアリーナさんのことを好きなのは、分かってる。 ―――それでいい…私は、このままで、全然かまわないの。 ―――だいたい、こんなもの効かないに決まってるし…。 ―――効いたとしても、すぐに効き目は切れるだろうし…。 ―――だったら、ほんのひと時、ちょっと夢見るくらいなら…。 そこまで考えて、ミネアは、はっとした。 ―――馬鹿なことを考えるんじゃないの、ミネア。 頭を振って、皮袋の中身を捨てようとしたが、少し躊躇する。 そして、結局、中身を捨てずに皮袋を自分の荷物の横に押し込むと、 昼食の用意をするために馬車を降りた。 ミネアが馬車から降りた後、しばらくして、勇者がバタバタと馬車に戻ってきた。 「まーったくクリフトの奴は、自重しろっていってるのに…風邪薬、風邪薬、と、これか?」 ぶつぶつ言いながら、馬車の奥の荷物を探っていた勇者は ミネアの荷物の横にあった小さな皮袋に気づき、それを開けて中身を覗くと 「んーー、何か変な色と臭いしてるから、多分、これだろ、よし。」 皮袋を手に馬車を飛び出して行った。 食事の用意をしていたミネアは、背中で勇者、クリフト、アリーナの言い合いを聞いていた。 「大丈夫です、風邪なんかじゃないですって、ソロさん。」 「いーや、大丈夫じゃない!さっき、ヘンな咳してたじゃないか!」 「そうよ!クリフトはそうやって、いつも無理するから、倒れちゃうんじゃない!」 薬、飲みなさい!と2人に諭されて、クリフトがしぶしぶそれに従う気配がする。 ―――クリフトさん、また、体調を崩されたのかしら…? 心配になって振り向いたミネアは、息を止めた。 クリフトが今まさに飲もうとしているのは、例の「惚れ薬」。 ―――なんで、あれがここに!? 混乱する頭で、ミネアはクリフトに叫んだ。 「クリフトさん、それ、飲んじゃダメです!!」 ごっくん。 皮袋の中身を一口飲み下したクリフトが、ミネアの叫びに驚いたように振り向き、 そして、そのままの姿勢で固まった。 「―――!!」 ミネアの心臓が、跳ねた。 クリフトの碧い瞳は、ミネアを真っ直ぐに見つめていた。 ミネアは、周囲の音が、突然聞こえなくなったのを感じた。 クリフトから目を離せず、時間さえも止まってしまったかのようだった。 クリフトが、ミネアに向かって、一歩前に踏み出した。 しかし。 「クリフト?どうしたの?」 アリーナが、怪訝そうにクリフトの服を引っ張った。 クリフトが、はっとしたようにアリーナを見下ろすと、その顔をまじまじと眺めた。 「な、なによう、どうしたって言うのよ、クリフト。」 珍しく至近距離から見つめられ、アリーナは照れたようにえへっと笑って見せた。 その笑顔を見たクリフトは、衝撃を受けたように後じさった。 そして、慌ててミネアを振り返ると、ひどく混乱した表情で頭を抱えた。 「う…あああぁぁぁぁあああ!」 クリフトが頭を抱えたまま叫び始めた。 「ど、どうしたんだ、クリフト?この薬、なんかやばかったのか!?」 「クリフト!?やだ、どうしちゃったの!?」 パニックになる勇者とアリーナ、そして、それを呆然と見守る他の仲間達。 そこに鋭い声が飛んだ。 「ラリホー!」 倒れこんだクリフトを勇者が慌てて支える。 クリフトは、安らかな寝息を立てていた。 呪文を唱えたブライは、ゆっくり進み出ると、震えているミネアの前に立った。 「さて、何が起きたのか話していただけますかの、ミネア殿。」 ブライの声音は厳しかった。 「惚れ薬ぃ~!?また、なんでそんなものを取っておいたわけ!?」 ミネアの説明に、マーニャが素っ頓狂な声を上げた。 「……こ、恋占いとか、何かの、役に立つかと思って…。」 苦しげに言い訳をするミネアの隣で、勇者が青ざめた。 「ってことは、俺は、クリフトに惚れ薬を飲ませちゃったってこと…?」 「そうよ、だいたい、あんたも中身確かめないで飲ませるってどういうことよ!」 そのとき、大人しく皆の話を聞いていたアリーナが、ぽつんと呟いた。 「それじゃ、今は、薬のせいで、クリフトはミネアのこと好きになってるの…?」 「まあ、話を聞くと、そういうことになりますかな。」 あっけらかんと答えるライアンの後頭部に、マーニャが無言で鉄扇を叩き込んだ。 「でも、それだったら、クリフトは何であんな苦しそうに叫んでたの?」 アリーナの問いに、トルネコは、アリーナとミネアを交互に見やり、首を振った。 「考えられる原因は、まあ、1つでしょうねえ…。」 勇者も、不機嫌そうに、手の平にこぶしを打ちつけた。 「あいつは、何でもくそ真面目に思いつめるからな。」 ミネアは、皆の会話に、耳をふさぎたい気分だった。 ―――結局、そういうことよね…。馬鹿みたい…。 所詮、薬では、クリフトのアリーナに対する想いを消すことはできなかった。 無理矢理自分へとねじ向けられた想いは、クリフトを混乱させ、苦しめるだけだった。 ―――こんなみじめな思いをするなんて、薬を捨てなかった罰があたったんだわ…。 打ちひしがれた様子のミネアを見て、マーニャが心配そうに眉根を寄せた。 アリーナは、しばらく黙って考え込んでいたが、やがて決然とした表情で顔をあげた。 「何かよく分からないけど、つまり薬のせいで、クリフトは、あんなに苦しそうなのね?」 唇を噛み締めるミネアを横目で見ながら、ブライがうなずいた。 「まあ、惚れ薬の効き目が切れれば…あやつの混乱も治りますじゃろ。」 「だったら、早く解毒剤を探さなきゃ!」 アリーナが立ち上がった。 「と言っても、こういう蠱惑系の薬の解毒は、作り手自身でないとなかなか…。」 トルネコが困ったように言う。 「だったら、そのお婆さんを探せばいいのよね、ミネア!」 アリーナの強い瞳に見据えられ、ミネアはたじたじとなる。 「で、でも、どこに住んでいるか聞いてないわ…。」 「だったら、占って!ミネアの占いだったら、探し出せるわ!」 アリーナの必死の表情に、ミネアは胸がちくりとうずくのを感じた。 ―――アリーナさん、そんなに、クリフトさんが私のことを好きなのが、いや…? 「…じゃあ、水晶玉を取りに行かないと…。」 ミネアは、のろのろと立ち上がった。 「馬車にはクリフトが寝てるだろ、ミネアが行っても大丈夫か?」 勇者が心配そうに声をかける。 「でも、水晶玉は、分かりにくいところに隠してあるから…。」 「他の者がガサガサ探し回るより、ミネア殿が行ったほうがいいじゃろう。」 ブライがミネアにうなずいた。 「くれぐれも、クリフトを起こさんようにな!」 ミネアは、馬車の入口近くで眠るクリフトを気にしながら、静かに、水晶玉を取り出した。 しかし、気配に敏感なクリフトは、目が覚めてしまったらしい。 「…あれ?…ここは…?」 クリフトの呆けたような声に、ミネアは水晶玉を持った手を止めた。 ―――ど、どうしよう…。私に気がついたら、クリフトさんはまたさっきみたいな状態に…。 ミネアが固まっているうちに、クリフトがミネアに気付いたようだ。 「そこにいるのは…ミネア、さん…?」 背後から聞こえたクリフトの声に、乱れは見られなかった。 ―――もしかして、薬の効き目が切れた…? ほっと息をついて振り返ったミネアは、水晶玉を手から取り落とした。 起き上がったクリフトは、顔を赤らめ、熱い瞳でミネアを見つめていた。 「ミネアさん…私は、どうしてここに…?」 クリフトは、赤い顔をしながらも、不思議そうに辺りを見回した。 クリフトが先ほどの出来事を思い出せば、また混乱するかもしれない。 ミネアは、慌ててクリフトに駆け寄ると、その肩に手をかけ、横になるよう促した。 「大丈夫です…ちょっと体調を崩されて、貧血を起こしただけ…。」 と、そのミネアの手をクリフトがつかんだ。 ミネアは息を飲んだ。 顔を上げると、こちらを見下ろすクリフトの真剣な表情に、そのまま動けなくなった。 気がつくと、ミネアはクリフトの腕の中に抱きしめられていた。 「ミネアさん…私は…。」 甘く低い声で囁かれて、ミネアは気が遠くなりそうだった。 そのとき、馬車の外から、アリーナが小さく呼びかける声が聞こえてきた。 「ミネア、水晶玉、見つかった?」 その瞬間、クリフトは、弾かれたようにミネアから体を離した。 そして、真っ青な顔をして手で口を覆う。 「私は…今、何を…?」 ミネアは、すかさず呪文を唱えた。 「ラリホー!」 クリフトは、再び安らかな寝息を立て始めた。 「遅くなってごめんなさい、アリーナさん。クリフトさんが目を覚ましかけたので…。」 「あ、それでラリホーかけてくれたのね、ありがとう、ミネア!」 無邪気に礼を言うアリーナの顔を、ミネアは見ることができなかった。 いまだ胸の鼓動は収まらない。 気を落ち着けるために、大きく息を吸い込むと、ミネアは水晶玉に集中した。 「…で?結局、その婆の住んでる場所は分かったのか?」 気力を使い果たし、ぐったりとしたミネアの横から、勇者が水晶玉を覗き込んだ。 「ええ。ここだったら、すぐそばまでルーラで行けそう…。」 「よし、疲れてるだろうけど、善は急げだ。ミネア、行こう! こんな物騒な薬をばらまく奴には、一言言ってやらなきゃな!」 「物騒なのは、それを確かめもせず人に飲ませるあんたでしょーが!」 「ソロ!マーニャ!待って、私も行くわ!」 「…確かに、姫様は、今は、あ奴から離れていた方が良いかもしれませんのう。」 結局、ミネア、マーニャ、勇者、アリーナの4人が、老婆の住む森に向かって飛び立った。 老婆は、いきなり現れた4人に驚いたようだったが、ミネアから話を聞くと楽しそうに笑い始めた。 「あの薬に抵抗するとは、大した男だわい。よっぽど惚れてる女子がおるんじゃの。」 老婆の言葉は、ミネアの心に鋭い痛みをもって突き刺さった。 しかし、アリーナはほとんど老婆の言葉を聞いておらず、もどかしげに前に進み出た。 「あなたの薬で、クリフトが苦しんでいるの。お願い、解毒剤の作り方を教えて!」 老婆がアリーナをじろりと見やった後、ミネアの方を向いた。 「その男のお相手は、このお嬢ちゃんかい。」 「…ええ。」 ミネアは痛む胸を押さえながら小さい声で答えた。 「ふん。」 老婆は、アリーナに向き直ると、からかうような目つきでアリーナを見た。 「お嬢ちゃん、クリフトって男は、あんたにとって何なんだい?」 アリーナは、突然の問いかけに、目をぱちぱちさせた。 「何って…クリフトは、大事な仲間よ!」 「それだけかい?」 「それだけって、どういうこと?」 アリーナが、いぶかしげに眉根を寄せる。 老婆は、そんなアリーナに向かって、再び「ふん。」と鼻を鳴らした。 「つまり、お嬢ちゃんは、クリフトとやらが苦しんでいる状態が治ればいいわけじゃな。」 「そうよ!」 「じゃったら、話は簡単だわ。ほれ、この占い師の姉さんを目の前に置いて、 残りの惚れ薬を全部その男に飲ませればいいんじゃよ。」 老婆はミネアを指差して笑った。 老婆の言葉にミネアとアリーナは呆然と立ちすくんだ。 「今は、惚れ薬の量が足りてないから、気持ちがあっちこっちするんじゃ。 皮袋の中身を全部飲めば、なんぼなんでも、収まるところに収まるじゃろ。」 勇者が慌てて前に飛び出した。 「ダメだ!そんなの、絶対にダメだ!」 「何がダメなんじゃ。おぬしら、その男の混乱を収めたくて来たのじゃろ。 この姉さんと一緒になってめでたしめでたし、解毒剤なんぞ使わんでも円満解決じゃ。」 「円満でも何でも、とにかく、惚れ薬で解決なんて、絶対にダメだ!」 「兄ちゃんに、何の関係があるんじゃ。」 「あるんだよ!あいつは、自分で、自分の気持ちに決着をつけなきゃいけないんだ!」 必死に叫ぶ勇者の隣で、マーニャがゆっくりと腕組みを解いた。 「悪いけど、あたしも、お婆さんの案には賛成できないわ。」 「…姉さん。」 「何が円満解決よ。そんなことしたって、ミネアは幸せになんかなれないわよ。」 ミネアは、マーニャから目をそらした。 そんなことは、分かりすぎるほど分かっていた。 惚れ薬で、クリフトが自分のことだけを見るようになったとしても、それはまやかしに過ぎない。 それでも。 ―――ミネアさん…私は…。 あのときの自分を見つめるクリフトの表情と、腕のぬくもりが蘇る。 あの甘い囁きの続きを聞くことができるのなら…例え、まやかしでも…。 そのとき、ミネアの横で、凛とした声が聞こえた。 「だめ。そんな解決方法、絶対に許さない。」 アリーナが老婆を睨みつけていた。 「薬で好きにさせるなんて、クリフト自身の気持ちは、全然無視じゃない! そんな方法で、クリフトが、幸せになれるわけない!」 正論だが、ミネアにとってはひどく残酷な言葉だった。 ―――アリーナさんの立場だったら、そう言うのは簡単よね…。 ミネアはうつむき、初めて、クリフトに愛されているアリーナを憎らしいと思った。 そんなミネアを横目で見ながら、老婆が意地悪そうな笑みを浮かべてアリーナに尋ねた。 「えらそうに言うが、お嬢ちゃんは、その男の気持ちを知ってるのかい?その男は、 もしかして本当に、この占い師の姉さんのことが好きなのかもしれないじゃないか。」 「え…。」 アリーナは、老婆の指摘に、うろたえたように一歩後ろに下がった。 「た、確かに、ミネアは優しくてきれいだし…、クリフトはミネアと一緒にいること多いし…、 私だって、クリフトは……ミネアのこと本当に好きみたいって、思うことあるけど…。」 先ほどまでの勢いはどこへやら、アリーナの声はだんだん小さくなり、消えていった。 ミネアは、驚いて顔を上げた。 アリーナが、クリフトと自分のことをそんな風に見ているなんて、思っても見なかったことだ。 ―――だったら…アリーナさんが必死になって解毒剤を求めているのは……? 肩を落としていたアリーナは、何かを思い切るように、ぶん、と頭を振った。 「でも、だったら、だからこそ、クリフトは自分の気持ちでミネアに好きって言わなきゃ!」 アリーナの口調は勇ましかったが、その顔は今にも泣き出しそうだった。 ―――アリーナさん…あなた…。 「やれやれ、あんたは、何の権利があって、その男の人生に口出しするんだね、お嬢ちゃん。」 またしても意地悪げに尋ねる老婆に、アリーナは呆れたように答えた。 「権利ですって?クリフトの幸せを考えるのに、権利なんて必要ないわ!」 老婆は絶句した。 「分かった分かった、そこまで言われちゃ、わしの負けじゃよ。」 老婆は笑いながら、机の中から青い液体の入った小瓶を取り出した。 そして、それをアリーナに渡しながら、優しく微笑んだ。 「どうやら、クリフトとやらの想いは、成就しそうじゃの。」 「え?そうなの…?」 アリーナは、何とも言えぬ複雑な顔でミネアを振り向いた。 「アリーナさん、あのね…。」 アリーナの誤解を解こうとするミネアを、老婆が横からつついた。 「姉さんも大変だったんじゃから、お嬢ちゃんも、これくらいは悩んでもいいじゃろ。」 ミネアに向かって片目をつぶると、しっしと片手を振った。 「さ、あんたら、用が済んだらさっさと帰っておくれ。わしは忙しいんじゃ。」 4人は急いで帰ると、クリフトをたたき起こした。 そして、勇者が有無を言わせず、小瓶の中身を全部クリフトの口に流し込んだ。 「げほっ、何をするんですか、ソロさん!風邪薬はさっき飲んだじゃないですか!」 クリフトは、この間の出来事を全く覚えていなかった。 ミネアは、少し寂しい気持ちになったが、これでいいんだと思い直した。 ―――覚えてたりしたら、クリフトさん、きっと、私と目も合わせられないもの。 夕暮れの中、ミネアは馬車の御者台に座って、ぼんやりとクリフトとアリーナを眺めていた。 アリーナは、夕食の用意をするクリフトの周りを、いつものようにうろちょろしながらも、 ミネアの方をちらちらと気にしているようだ。 ―――ほんとに、まったく、あの子ときたら…。 苦笑するミネアの後ろから、声がかかった。 「今回の件は、あんたには、とんだ災難だったわね。」 振り向くと、両手に酒の入ったグラスを持ったマーニャが立っていた。 「…そうね。でも、災難だけってわけでもなかったのよ。」 ミネアは、マーニャからグラスを受け取りながら、くすりと笑った。 マーニャが、ミネアの笑顔にほっとしたような顔をして、その隣に座った。 「なによ、姉さん、何か言いたいことでもあるの?」 「別にー。あんたが良けりゃ、あたしからは何も言うことはないわよ。」 「………私ね。…心の底では、クリフトさんに想われたい、ってずっと思ってた。」 姉さん、知ってたでしょ、とミネアは笑い、酒を一口飲んだ。 「でもね、今回のアリーナさん見てて、自分はだめだなって、しみじみ教えられちゃった。」 「…。」 「…相手が誰を想おうが、何よりも相手の幸せを一番に思える関係って…すごいわよね。」 「…。」 「ずっと年下なのに、何かもう、全然敵わない。却って、すっきりしちゃった。」 「…あの子の場合は、その自覚が全くないところが、それはそれで厄介だけどねえ。」 「そうね、うふふ…。そこら辺は、これから頑張って自覚してもらいましょ。」 ミネアは空になったグラスを置いて立ち上がると、クリフトに手を振って叫んだ。 「クリフトさーん、夕食の用意、手伝いましょうかー!」 クリフトが嬉しげにミネアに向かってうなずき返し、アリーナがその横で体を強張らせた。 「…ミネア、あんたって、けっこう意地悪ねー。」 「あら、私だって災難だったんだから、これくらいのお返しはかまわないと思わない?」 それに、そろそろアリーナさんにも自覚してもらわないと、とミネアは明るく笑うと、 馬車を降りてクリフト達のもとに駆け寄った。
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冥闇騎士 グリード・サクリファイス コスト 44 レベル 1 MAX 進化元 漆黒騎士 グリード (A+) 進 化 素 材 - - ランク S HP 1,072 2,144 進化先 - - - MAX Lv 70 攻撃 1,066 2,132 進化費用 - - - No.1541 Aスキル シャイニングブラスト 5問連続正解でダメージ大アップ 売却価格 33,600 - - 編集 Sスキル タイムスタンプ (10) 攻撃ターンを3遅らせる 入手方法 クリスタルガチャ(『【挑戦】煉獄より来たる者』期間限定)、進化 個別データ 備考 全体イラスト
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クリフトのアリーナの想いはPart11 422 名前 従者の心主知らず 砂漠のバザー編 1/11 Mail sage 投稿日 2010/11/21(日) 23 57 27 ID 3GeiDYf70 最近クリフトが独り言を教えてくれなくなって、ちゃんと聞こうと決めたのはお城を出てからのこと。 今まででわかったことは、 独り言の内容は、立場や身分、町の構造について?みたいなやっぱり難しいことだったってことと、 教えてくれない理由は、なんて言えば私に一度で伝わるかすぐに浮かばないからなんだって。 確かにクリフトってたんたんとしゃべるときは難しい言葉を使いがちだけど。 でも私なんか思ったことはぽんぽん言っちゃうのにクリフトは気をつかいすぎなのよ。ほんとそう思うわ。 でも私は今別のことで頭がいっぱい。やっと来たわよ砂漠のバザー! 「来たわ来たわ!ここが砂漠のバザーね。うっわー面白そう!」 「にぎやかですね!どこからこれだけの人が砂漠のまん中に集まったのか」 クリフトもまわりをきょろきょろしてる。それもそのはず、砂漠にテントやお店、人や物であふれてたんだもの。 ブライはちょっと疲れてるみたい。なんにも言わないわ。 「すっかりおそくなっちゃったわ。今からぜんぶのお店を見物するわよ!いいでしょ?ねっねっ」 「やれやれ、遅くなったのは姫さまがほこらへ寄り道するからでしょうに……」 やっとブライがしゃべったと思ったらお説教だった。でもほんとに疲れた声だったから無視できなかった。 「だってだって、もしエンドールにこっそり通してくれるようならバザーのあと行こうと思ったんだもんっ」 「ほー。しかし優秀な衛兵のおかげでそうはいきませんでしたなあ」 「うー。じいのいじわるっ」 そう、私たちはここに来る前にエンドールに続くらしい旅の扉があるほこらに寄ってきたの。 というより、私が道を間違えちゃって偶然たどりついただけなんだけど。 いつだったか誰かが言ってた旅の扉がここなんだと知って、思わず喜んだのをじいはよく思ってなかったのね。 ほこらにはお城の兵士がいて結局通してもらえなかった。 肝心のクリフトは、あれが旅の扉、なんと神秘的な!みたいなこと言っててぜんぜんこっち見てくれないし。 こういうときこそその難しい話で兵士を説得させてくれればいいのよ。 でもお父さまの命令なら仕方ないわ。 お城の外には出てもいいってお許しをくれたんだもの、今度エンドールにも行きたいってお願いしてみよう。 兵士をみね打ちしてこっそり通るのはそれからでも遅くないわ。 どうせ旅するならこっそりじゃなくて堂々と行きたいものね。 そんなことがあって、ほんとうなら午後のティータイムには着くはずの砂漠に夕方近くにたどり着いたわけなの。 「姫さま、もし店を回るのでしたら急ぎませんと。片付けているところもありますよ」 「えっうそっ」 クリフトの視線の先を追ってみると、お店の人が売り物にシートをかけたり片付け始めたりしてた。 「ほんとだ!何よー、夜はお店は開いてないの?つまらないわねー」 「おー残念ですな。寄り道した報いですかな?砂漠のバザーはもう終わり!ささ、帰りましょう」 「やだ、帰らないもんっ」 そこでひらめいたの。すぐ先に見えた宿屋の看板! 「決めたわ、今日はあそこで泊まりましょ?それで明日めいっぱいバザーを楽しむの!ねっねっ」 私はふたりに振り返る! 「……まあ、夜に外を歩くよりは無難でしょうね」 「わたしは静かな所でないとよく寝つけないと以前申し上げたはずですのにのう……」 「ちょっと、なんでふたりとも元気ないのよ」 「い、いえ、元気がないわけでは……ともかく、宿をのぞいてみましょうか」 「うん!」 クリフトの言葉で私たちは宿屋のテントをくぐった。 「うわーすごーい」 中に入ったら砂の上にシートがひいてあって、もう何人かの人が荷物をまとめたり寝転んだりしてた。 「こんばんは。旅人の宿屋へようこそ。3名様でいらっしゃいますか?」 「……ええ」 宿をとるのはクリフトにお願いして私はシートの一つをさわってみた。編みこんである。うすーい。 あそっか、砂がやわらかいから厚いおふとんにする必要がないのね。でも編みこんであるのは? 「ブライブライー。どうしてこんなに編みこんであるおふとん使うのー?」 「これ姫さま、声が大きい」 「あ、ごめんなさいっ」 私は思わずまわりを見た。そういえば他の人もいるんだったわね。 「旅の方、砂漠は初めてかね?」 となりで荷物をまとめてた人がにこにこしながら話しかけてきた。白い変てこなぼうしをかぶってる。 「ええ、そうなの。うるさくしてごめんなさい」 「いいっていいって。まだ寝る時間じゃないしねえ」 「すまんのう」 話しかけてきた人は優しい人だった。怒ってなくてよかったー。 その人は行商人で、バザーのこととか砂漠のこととかエンドールの武術大会のことまで話してくれた。 そうそう、編みこんであるおふとんを使うのは強度を重視したためなんだって。 うすいのは持ち運びを楽にするためでもあるんだって。 それからこの宿ではみんなで並んで寝るんだって。外で星を眺めながら寝る人もいるみたい。 私たちのことも聞かれたけど、じいがかわいい孫ふたりと気ままな旅をしてるんじゃってごまかした。 あれ、私クリフトの妹ってことになっちゃったのね。でも確かにそんな感じかも。 もうすぐ夕食だからといってその人が宿を出ていくとき、私はお礼を言うのを忘れなかった。 お部屋も仕切りもない。たった今出会ったばかりの旅人たちが、みんなで並んで寝転んで夜を明かす。 そこでさっきみたいに情報を交わし合ったり仲よくなったりするんだわ。ああ、これこそ旅って感じじゃない? やっぱり旅って、冒険って、最っ高!!!あーあ、やっぱりメイとももう少し話がしてみたかったな。 クリフトがお支払いをすませたみたいでこっちに来た。気づいたらまわりに人はいなくて三人だけだった。 わくわくする私とは正反対にクリフトはかたまってた。 「予測はしていました。していたのですが、いざ目の当たりにしますと……」 「クリフトどうしたの?何を予測してたの?」 「……この宿の構造です」 クリフトは青ざめた顔してる。青ざめたというか、表情はそんな雰囲気なんだけど、顔自体は赤いの。 クリフトってほんと赤くなったり青くなったり器用よね。 宿の構造かー。あ。そういえば。そういえばそうじゃない!そうよそうよ!私はにこにこしてクリフトに言った。 「クリフトー、今日は見張りをしなくていいわよね。部屋も分かれてないし仕切りもないし」 「……………………」 「じいも、今日はいっしょに寝るわけよね」 「……まあ、そうなりますな」 「じゃあじゃあ、今日は姫とか教育係とか家来とか、そういうのぜんぶ抜きにして三人並んで旅人しましょっ」 「とんでもないことですっ」 ひっくり返った声を出したのはクリフトだった。 「な、なによ、なんでよー」 「た、ただでさえ仕切りがないというのにまして、ひ、ひ、姫さまと隣り合わせで眠るだなんてそんなっ」 「?」 クリフトは壁のほうを向いてぶつぶつ言い始めた。あ、いつもの独り言だ。 「神よ、これは日頃の善行に対する恩恵なのでしょうか、それとも日頃の悪行に対する試練なのでしょうか。 不肖クリフト、今日ほどあなたの存在を遠くに感じたことは……」 「ちょっとクリフト、どうしちゃったのよ。いきなり神学のお勉強始めないで」 クリフトの独り言は止まらない。やけに神よ神よって言ってる。 なんだろう。ただでさえ仕切りはないのに、いっしょに寝るなんてそんな……なに?神さまが遠いってなに? クリフトは、私といっしょに寝るのいやなのかな。あ、寝相が悪いからかな。 でもちっちゃなころはいっしょに寝たことだってあったはずなのにな。いっしょに。そう、いっしょに……。 しばらくぶつぶつ言ってたクリフトがやっとこっちを向いた。さっきよりはもとに戻った顔色で言う。 「やはり私は警備をさせていただきます」 「だめよ、今日は三人で旅人するの。クリフトが見張りをするんだったら私も見張りする!」 「なにをおっしゃいますか、姫さまはどうかお休みください」 「いやよ、私が寝るんだったらクリフトも寝るの!」 「姫さま……っ」 「今日はみんないっしょなのっ!」 なんで私こんなに必死になってるんだろ。なんでちょっとだけ泣きそうになってるんだろ。わかんない……。 「……クリフト、姫さまに寝ずの番をさせるつもりはあるまい?今回は引き下がれい」 そこにじいが。じいが……。 「そうよそうよ!引き下がれーいっ」 「そ、そんな……」 じいのまねして私も口をとがらせた。じいが言ってくれれば絶対よ!だって2対1でクリフトの負けだもの! クリフトは諦めたようにがっくりと下を向いた。私はちょっとだけ胸がちくっとした。クリフトがゆっくりと顔を上げる。 「あの、ブライさま……ではせめて、中央にいてくださいますか……」 「むぅ?」 「あっダメっ。中央は私が寝るの。だってふたりを守るには真ん中にいたほうがいいでしょ?」 「姫さま……いえ、視界にはふたりが同時に入ったほうが一瞬の隙を突かれた際には」 「おぬしら、さっきから何を口論しておるんじゃ。わしゃ疲れた。腰も痛いしのう。この場所はもらうぞ」 「あ、うん。ごめんなさい」 「は、申し訳ありません……」 じいは一番はじっこにおふとんを用意してねっころがった。 「クリフト」 「はい!」 「隣人にはおぬしらは兄妹ということになっておる。おぬしに限ってそんなことはないとは思うが、くれぐれも わしの目を覚まさせるまねはするでないぞ」 「……はい……」 クリフトは返事をしながら口に手を当てた。難しい顔してる。でも私はじいの言葉が気になって。 「じい、それどういうこと?」 「んん?そうさの、姫さまの素性を知られぬよう兄妹らしい振る舞いを心がけよと言ったんじゃよ」 「ふーん、そういうこと……」 気づいたらクリフトはあっちを向いてた。視線の先を追ってみると他の人たちの荷物とかおふとんとか。 なに見てるの?って聞こうと思ったらクリフトのほうが先にしゃべった。 「姫さま、今夜はやはり、中央でお休みになっていただけますか……」 「え?う、うん……」 クリフトはまた口に手を当てて考えごとしてる。きっと難しいこと考えてるんだろうな。 ふたりを守るには真ん中にいたほうがいいと思ったんだけど、それもちがったのかなあ……。 でも宿の人が戻ってきたせいもあって結局聞けなかった。 夜。 もう一つの大きなテントで夕食をすませてオアシスの水で体を流して歯みがきして。 見たことのない料理、何もかも初めてのことで楽しいはずなのに、なんでか気分はすぐれなかった。 早く三人で休みたい。早く三人でいっしょにごろんてなりたい。私はそのことばっかり考えてた。 宿に戻るともう寝てる人もいた。あの行商人さんももう横になってた。羊を数えてるみたい。声が聞こえた。 「さて、わしらも休みますかの」 「うん」 私はおふとんにごろんてなってブランケットにくるまった。けっこうあったかい。 砂漠の夜は冷えるって聞いたけどこれならぐっすり眠れそう。 「これこれ姫さま、お祈りを忘れてはなりませんぞ」 「……はーい」 私は起き上がって両手をぎゅっとした。私たちの国では朝晩のお祈りはおつとめとして日課になってるの。 お祈りを簡単にすませて私はまたブランケットにくるまった。 となりを見るとブライが上着をたたんでた。反対側を見たらクリフトもぼうしをとって上着を脱ぎ始めてた。 よく考えたら、旅に出てからふたりが着替えてるの初めて見るかも。 だって今までは私が寝るまでふたりは起きてたし私が起きたときにはふたりはもう着替えてたから。 なんか、新鮮だなー。そう思ったら自分が今パジャマになってるのがちょっと恥ずかしくなった。 「では姫さま、おやすみなさいませ」 「うん、おやすみ、じい」 じいもお祈りを終えたみたいでブランケットにくるまった。私はちょっとだけほっとした。 でもクリフトはまだ起きてた。手を胸に当ててぎゅっとしてる。それから両手をぎゅっとして目を閉じた。 たいまつの火でほのかに見える顔は、何か考えごとをしてるみたいにも見えた。長い……。 「……クリフト?」 「……………………」 思わず声をかけちゃったけど返事はなかった。私はずっとクリフトを見てた。 ずいぶん長いこと待ったと思う。やっとクリフトが目を開けた。ゆっくり私のほうを見る。 「姫さま、申し訳ありません。なんでしょうか」 「ううん、ごめんなさい。お祈りのじゃましちゃったのね」 「いえ、そんなことは……少々長すぎましたね」 それだけ言うとクリフトは前を向いた。 「普段はそうでもないのですが、心に迷いや戸惑いがあるとどうしても長くなってしまうのですよ」 苦笑いするクリフト。でも私はぜんぜん笑えなくて。 「……心に迷いや戸惑いがあるの?」 聞いちゃった。クリフトはしばらく黙ってたけど、前を向いたまま言ったの。 「……そうですね。旅に出てからいろいろなことがありすぎまして、未熟な自分を思い知らされる毎日ですよ」 「……そう」 「寝ましょうか」 そう言ってクリフトも横になった。ブランケットを胸もとまであげて、両手を胸に置く。 まるで寝ててもお祈りしてるみたい。 宿の人が来てたいまつの火を消してった。一瞬真っ暗になって、そのうちあたりがぼんやりしてきた。 「お休みなさいませ、姫さま」 「うん、おやすみ」 まわりで寝てるのは知らない人たち。砂漠ではみんなでいっしょに夜を過ごす。 普通の家に生まれてたらきっと何でもないことだったんだろうな。 でも、今は私もいっしょよね。姫とか関係なく普通の旅人として、じいとクリフトといっしょに寝てるのよね。 私今、自由なんだよね。ねえクリフト……。 ふと目が覚めてとなりを見るとクリフトがいなかった。あわてて反対側を見たらじいはいた。寝てる。 なぜかほっとした。クリフト、お手洗いにでも行ってるのかな。どうしよう、私も外に出ようかな。 うん、そうしよう。私が外に出るときクリフトはついてきたんだから、今度は私がクリフトについていこう。 外に出たら少しだけ風がふいてた。月や星がきらきらしてて思ったより明るかった。 だからオアシスのそばでクリフトが座ってるのもすぐわかった。今夜はぼうしのかぶってないクリフト。 「クリフト」 「ひ、姫さま!どうかなさったのですか?」 「どうかなさったじゃないわよ。クリフトがいなかったからさがしに来たんじゃない」 「そ、そのようなこと……」 「っもう、心配させないでよね。ほんとにびっくりしたんだから」 「……申し訳ありません……」 私はクリフトのとなりに座った。クリフトは少しだけ後ずさりしたけど、私は気にしないふりをした。 「夜になると砂漠もずいぶんすずしいわ。風がきもちいい……」 「……そうですね。熱を吸収しやすく放出しやすい、この地表や気候のなせる業だそうですよ」 「ふーん、そうなの」 普通に話はしてるけど、何だかよそよそしい気がする。もう気にしないふりは無理。私は思い切って聞いた。 「ねえクリフトー」 「……なんでしょうか」 「私といっしょに寝るの、いやだった?」 「え?」 「クリフトが今起きてるのって、私のせい?」 「そ、そのようなことは……」 「でも、ここについたときからクリフトずっと変。いっしょに寝ようって言ったときもすっごく反対してたし」 「……………………」 私はまっすぐクリフトを見た。でもクリフトは私から目をそらした。前を見たまま難しい顔してる。 やっぱり、いつもと違う……今までと違う……。ねえ、昨日の笑ってたクリフトはどこ……? 「立場を、考えますから」 「………………」 「お忍びの旅とはいえ、姫さまは姫さまであり、私は一従者に過ぎません」 「…………」 「教育係のブライさまならまだしも、私のような身分の者が姫さまの寝所までお供をするなど」 「だから、今日はそういうの抜きにしてって言ったじゃない」 「……………………」 「私は今日はクリフトの妹なの。じいは私たちのおじいちゃんなの。家族がいっしょに寝ることってあるでしょ? ちっちゃなころはいっしょに寝たことだってあるのに、なんでそんなに立場立場って」 「それが、以前申し上げた絶対的称号だからです」 クリフトの言葉がやけに冷たく響いた。なんで……。なんで私、泣きそうになってるんだろう。 「…………っ」 「ひ、姫さま……?」 クリフトが私を見たのがわかった。 「だから、だからそういうの抜きにしてって言ってるじゃない!!難しい話なんか聞きたくない!!! そんなこと言って、ほんとは私のこときらいなんでしょ!?」 「ち、ちがいます!断じてそのようなことはっ!!」 「じゃあなんで、なんで今日はいっしょに寝てくれないのよ!他の人たちはみんないっしょに寝てるのにっ!! なんで私だけ、みんなと違うのよっ!!!」 「姫さま……」 「なんでっ……」 私に自由を教えてくれたのはクリフト。でも、その自由を奪うのもクリフト……? 私きっと、ショックだったのね。クリフトはいっつも私の意見に賛成してくれる、そう思ってたから。 力強く反対されたことが、まるで私のこと否定されたみたいで、ショックだったのね……。 「姫さま……」 私は返事ができなかった。早く、宿に戻ろう。早くじいといっしょに寝ちゃおう。そう思って立ち上がろうとした。 「姫さま……もしも……もしもの話です」 クリフトが話し始めた。やけに低い声。そう、昨日のフレノールのときみたいに。 私は立ち上がるのをやめて少しだけ顔を上げた。クリフトは、今度はちゃんと私を見てた。 「仮定の条件を持ち出すことは現実性に欠ける話題であり、身にそぐわぬものとすら思っていましたが…… もし、姫と従者、いえ、神官という立場すらなくして申し上げてよいのなら、そのように考慮していただけるのなら、 私の答えには、その……もう一つ、あります……」 「う、うん……」 「このような場に相応しからぬ発言を、お許しいただけますか……?」 「いいわよ、なんでも話して」 そうは言ったものの、少しこわかった。クリフトからまた否定されるようなことを言われたら……。 でも私は次の言葉を待った。きっと、それでもクリフトは私に賛成してくれるって、心のどこかで期待してるのね。 クリフトはやけにまわりをきょろきょろしてた。かと思ったらオアシスのほうをじっと見たりして。なんでだろう? しばらくたってやっと、遠慮がちに小さくぼそっとつぶやいた。 「……私も、男なんです」 「え?」 私はクリフトの言っていることがよくわからなかった。 「男なんですよ……。ですからその、あまりに目の前に無防備な女性が横たわっていますと、その……」 「………………」 「だ、だきしめたくなったりするんです……」 「…………」 えっと……。私はいっしょうけんめい頭の中を整理した。これは難しい話?かんたんな話? 「い、いえ、だからといって別に好きだからとか姫さまだからとかそういうわけではなく、その……っ あ、あるんですよっ!男にはそういう……衝動が……っ」 「えっと、じゃあじゃあ、じゃあさ、クリフトの向こうに寝てた女の人も、おんなじように抱きしめたくなっちゃうの?」 「いえ、それは……いや、あの……ああもう、なんと申し上げればよいかっ」 手で顔を隠すクリフト。余裕のない感じが昨日のフレノールと重なる。子どもみたいなクリフト。 「…………あるいは、そういうこともありえるという話です…………」 顔を隠したままクリフトは小さく答えた。そっか。あるんだ。……そっか。そうなんだ……。そうなんだ! そうよね、私はともかく知らない女の人を抱きしめちゃったら失礼だものね。ううん、変態だわ。痴漢だわ。 だからそうならないようにクリフトは外に出てたのね。 そうか、だから人は宿をとるとき男の人と女の人で別れるのね。確かにお城でも寝るときはみんな別々だったわ。 なーんだ、そういうことだったのかー。そう思ってふと一つの結論にたどりついた。 「クリフトのエッチ!」 クリフトは手で顔を隠したまま小さくため息をついた。 「……ええ、ええ、私は未熟者です……」 やけにがっくりしてるクリフト。さっきまでの冷たい雰囲気はどこへやら。私はもう少しからかいたくなった。 「うふふ、クリフトのえっちー」 「ひ、姫さま……?」 「えっちー」 「……………………」 「クリフトって、ああいう大人の女の人がいいのね。クリフトのへんたーい」 「そ、そんな……もう、勘弁してください……」 「ふふふ。へんたーい」 「でも安心した。私ね、クリフトは私のことほんとにきらいなんだって思ってたの」 「そんなわけありませんよ」 「うん、よかったー」 「私はむしろ、姫さまのほうが……」 「え?」 「その…………寛大さに救われました……」 「え、なんのこと?」 「いえ……私も姫さまへの誤解がとけて安心しましたということです」 やっとクリフトが笑った。もうよそよそしくない。冷たい雰囲気もない。昨日の笑ってたクリフトだ。よかった……。 今夜も月がきれい。星がよく見える。 クリフトが外に出たのはもう一つ理由があって、このきれいな景色を眺めるためなんだって。 さっきまで数えて理由が三つじゃない?やっぱりクリフトって難しいこと考えすぎだわ。 でもオアシスを眺めながらため息をついてまったりしてるクリフトを見ると、ほんとにそうなんだなって思う。 「……私が、姫さまを嫌いになどなるはずがないのです」 「え?」 「毎晩、こうして景色を眺める度に思わずにはいられません」 「…………」 「特にこんな、星のきれいな夜には……」 言いながらクリフトは遠い夜空を眺めた。私もなんとなくいっしょに眺めてみる。 「夜には……なあに?」 「いえ、その、ふるさとや……ふるさとが……い、いえっきれいな星ですね!」 「?う、うん、そうだね」 …………ぷ。 「もうー、クリフトったらー」 「な、なんでしょうか」 「こういうの、昨日もなかったー?いい夜とか、きれいな星とか。でも別に私にわかるようにっていっしょうけんめい かんたんな言葉に変えてくれなくっていいよー」 「は…………」 「夜にはふるさとのことを思うんでしょ?そうよね、お城を出てからもうずいぶんたつものね」 「は、はい……そうですね」 「お父さまも大臣も、神父さんもあのネコも、みんな元気にしてるかなぁ」 「……便りがないのは元気な証拠。皆さま元気にしていらっしゃると思いますよ」 「うん、そうよね」 「私にはあの星はこれから会うはずの強いライバルたちの顔に見えるわ」 「ライバルですか。数え切れないではありませんか」 「その数え切れないライバルたちをどんどん打ち負かしていくのよ!」 「なるほど。そして姫さまがあの夜空の一番星になるのですね」 「そう!私がいちばん輝くの!」 クリフトが笑ってる。よかった。あのとき宿に戻っちゃわないでほんとうによかった。よかったー。 「姫さま、宿に戻りましょうか」 「え?クリフトは大丈夫?」 「ええ、あれはただの衝動ですから。今はもう大丈夫です」 「そっか。わかったー」 「ご迷惑をおかけいたしました……」 「ううん、いいのよ。もしクリフトがあの女の人を抱きしめそうになったら私がみね打ちしてあげるから安心して」 「そ、それはたのもしいですね…」 肩の力が一気に抜けた。クリフトといっしょに宿に戻ってまたごろんとなる。今度はぐっすり眠れそう。 きっとクリフトは、いちばん言いにくいことを言ってくれたのね。男の子の秘密。 私だって、女の子の秘密を話すのはちょっと恥ずかしいもの。 でも、そうやってちっちゃなころみたいに何でも話してくれればいいのよ。あんまり難しく考えないで。 幼なじみなんだから。ねえクリフト……。 「私もあのくらいたくさん買い物したいわ!いいでしょ?いいでしょ?」 「強欲なる者はやがて地獄におちると言いますな。姫さまもゆめゆめ買いすぎることのないように」 「わかってるって。私はささやかな物でいいの。強い武器があればそれで。防具はいいの。武器があれば。 だってやられる前にやっつけちゃえばいいんだから」 「やれやれ。強欲なのやら強情なのやら」 「さすがは姫さまですね」 「さあさ、めずらしいツボはいかが?見るだけでも見てってちょうだい」 ふと女の人に声をかけられた。 「めずらしいツボ?ふつうのツボに見えるけど。どこが違うのかしら?」 「だまされてはなりません。めずらしかろうとツボはツボ。必要のないものは買わないことです」 「ブ、ブライさま、聞こえていますよっ」 「ふふふ。まあまあそう言わずにダンディーなおじいさん、見るだけ見てってちょうだいな」 「な、なぬっ」 「ねえねえクリフト、今の人、昨日クリフトの向こうで寝てた女の人よ。抱きしめちゃう?」 「だ、抱きしめませんっ」 「ふふふ」 南の砂漠のバザー。世界中を旅してるからこの砂漠でバザーを開くのはひさしぶりなんだって。 そんな偶然に出会えるなんて、私はきっと運がいいのね。やっぱり旅って最高だわ。 「フー、しかし暑い暑い。こう暑いと頭がぼーっとしてきますな」 「少しどこかで休みましょうか」 「ねえねえ。私ね、お昼のメニューはもう決まってるの。昨日のご飯のときメニューを見て決めておいたのよ。 休むならあそこにしましょ?ねっねっ」 「そういえばもうすぐ昼時ですね」 「日陰ならどこでもええわい。とりあえず一杯の水が飲みたいのう」 「じゃあ決まり!ほら、あそこのおっきなテント!行きましょ!行きましょ!」 「あ!姫さま探しましたぞ!すぐにお城にお戻りください!王様が、王様が大変なのです!」 「え……?」 突然私たちを呼び止めたのはお城の兵士。楽しく過ごすはずの時間が、音を立てて崩れ始めた。
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【クリアリ】クリフトとアリーナの想いは Part13【アリクリ】 18 1 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2013/04/29(月) 13 36 52.81 ID cNCjJZMv0 「クリフト、出来ておるかの」 「ええ、出来ております」 クリフトは乳鉢を混ぜている手を止めて、ブライの方を向いた。 「いつもの香りに、最近腰の調子が悪いとお聞きしましたので、腰痛解消の香りがあるハーブを入れました」 「おお、ありがたい」 クリフトは作ったばかりのサシャ(匂い袋)をブライに渡した。 「それ、何? 」 クリフトの正面に座っていたアリーナは、興味津々でクリフトに聞いた。 「サシャでございますよ、姫様。魔を避ける効果がある香水のようなものです。ハーブを詰めて作ります。 クリフトは自分の法衣のポケットから、自分のサシャを取り出した。 「私も欲しい」 アリーナはクリフトをジッと見つめ、両手を出した。 「私の作るサシャでなくとも、姫様は香水とか持っていらっしゃるのでは? 」 「クリフト、分かってない」 頬を膨らませて、アリーナはむくれたように横を向いた。その様子にクリフトは困った表情を浮かべた。 「分かってないですか…… 」 「分かってない。私はクリフトやブライと同じ香りを持つサシャ、クリフトが私の事を考えて、香りを組み合わせてくれるのが欲しいのよ」 察してくれない神官に、アリーナはキッと睨みつけた。 「クリフト、今日はお主の察しが悪いの」 「はっ、はい。姫様、申し訳ありません。姫様の事だけを考え、姫様の為に作らせて頂きます」 「楽しみにしているわ、クリフト」 アリーナは頬杖をついて、にっこり笑った。 「ヴァルプルギスの夜? 」 「ええ、死者と生者の境が弱くなる日と言われます、クリフトくん。だから死者と死者に混じって悪い事をするモノを追い返す為に、 篝火を炊いているんです」 トルネコの説明にクリフトは頷いた。 旅の途中の多数の篝火にクリフトが不思議そうに首を傾げていると、トルネコが大きな腹を揺らしながら近づき、クリフトが知らない 異教の祭りの説明を始めたのだった。自分の信仰している神学は詳しいクリフトでも異教については、全くの無知同然だったので、興 味深くトルネコの説明に耳を傾けていた。 「大丈夫だと思いますが、クリフトくんもくれぐれも気をつけて下さい。クリフトくんは特に生と死の神聖魔法を使いますから、普段 から曖昧な場所にいるって事でしょう」 「確かに、トルネコさんの言う通りですね。気をつける事に致しましょう」 クリフトはトルネコの意見ももっともだと、先程より大きく頷いた。 「あら、これって、クリフトのサシャじゃないの」 馬車に落ちていた糸の切れたサシャ(匂い袋)を拾い上げた。 「アリーナさん、どうしました? 」 「ミネア、クリフトのサシャが落ちていたの」 ミネアに声をかけられて、アリーナは振り返った。 「サシャ? 」 「クリフトが作ってくれる魔除けのおまじないの匂い袋。私とブライとお揃い。気休めなんだけどね。サントハイムって、魔法とか、 予知する能力が発現したりとする、元々境界が曖昧な土地だから……、気をつけないと…ひ、き、こ、ま、れ、る……の」 「アリーナさん」 何かに引き込まれたようにトランス状態になったアリーナをミネアは揺さぶった。 「えっ、私どうしたの? 」 「聞きたいのは私の方ですわ。何か起こらなければいいのだけど」 正気になったアリーナにホッとした表情を浮かべたミネアは不安そうなビジョンを思い返していた。 (深くて暗い穴に引きず込まれるビジョンって……) 「アリーナさん! クリフトくんが大変な事に」 「何があったの! 」 堰を切ったようにトルネコが駆け込んで来たのは、その時だった。 「クリフトが消え……た?」 「ええ、先程まで、私とヴァルプルギスの夜の話をそこでしていたのですが……、冷たい風と共に一瞬何か闇のようなモノが通り過ぎ たと思うと、姿がかき消されるように」 「何よ、それ……。クリフト! クリフト! いたら返事しなさい」 少し震えるようなアリーナの声が暗闇に響いた。アリーナは知っていた。あの真面目な神官はこのような冗談は決してしないという事 を、そして主である自分が呼べばすぐ来る事を、その事から、今の事態は猶予もない事態である事を。 「ブライ、どうしよう」 アリーナの顔に不安な表情が浮かんでいた。その表情は王女ではなく、一人の少女の顔だった。 「姫様、落ち着いて下され。クリフトは姫様に黙って何処かにいく人間じゃありません。それはこのブライが保証致します」 「アリーナさん、先程貴女が口走った事ですが、もしかして今起きている事と関わりがあるのではないでしょうか。そして私が見たビ ジョンが気になります」 「私が口走った事? 」 「ええ」 ミネアは先程、アリーナが口走った内容と自分が垣間見たビジョンを皆に説明した。 「もしや……」 「ブライ」 思案を巡らしているブライに、アリーナは落ちていたクリフトのサシャを見せた。 「引きずられてしまったのかの。クリフトは生と死の呪文を身につけ、ただえさえ境界が曖昧な場所にいる。そして血の繋がりの濃い 両親を早くに亡くしておるからの。もしクリフトの両親がこの機会に何かを成そうとしておったら……」 (あやつの親が、もし今のあやつの悩んでおる様子を見ておるならば、親心として何かを成そうとするかもしれん) 「嫌、クリフトの身に何かあったら嫌よ」 アリーナはそう言うやいなや、暗闇の中に感情のまま身を投じた。
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クリフトとアリーナへの想いはPart.9 781 名前 737  Mail sage 投稿日 2009/02/23(月) 01 06 08 ID QQESyeu40 【違和感の正体】1 アリーナはあの日以来、自分の部屋でぼんやりとすることが多くなった。 もちろん1階にも一度も行っていない。 クリフトに会うのがなんだか怖いのだ。 どうしても部屋を出るのがおっくうになってしまう。 そんな引きこもりがちなアリーナに説教をしてきたのは教育係のブライだった。 「姫、お部屋にずっと閉じこもるなんて不健康にも程がありますぞ!」 「なによ!お城の外には出してくれないじゃないの!」 「城内の国民に元気なお姿を見せるのも姫の大事な役割です。さ、行きなされ!」 アリーナは泣きそうな気分になった。 自分の家みたいな気でいたサントハイム城を まさかこんなに緊張しながら歩く時が来るとは思わなかった。 すれ違う国民と愛想よく挨拶を交わしていく。 アリーナはダンジョンを探索する時よりずっと緊張していた。 この時間帯なら、クリフトは教会の中にいるはず。 クリフトに会わなくて済むルートを頭の中で何度も反芻した。 (曲がり角を曲がる時は周囲を確認して・・・っと・・・) 高揚感がずっと続いている。心地良いような悪いような、変な感覚。 (教会が近くなってきたから、ここからもっと警戒しないと・・・!!) 柱の影に隠れて前方を確認した時だった。 緑色の神官の制服を着た男性がいる――― クリフトだ。 クリフトは銀の十字架のオブジェを磨いていた。 こちらには気づいていない。 (よかった・・。気づかれる前に気づいて。) アリーナは安堵の息をついた。 丁寧に、慎重に、大切そうに十字架を磨いていくクリフトのその所作を じっとアリーナは見つめていた。 その時である。 『ア リ ー ナ 姫 様 ! ご 機 嫌 う る わ し ゅ う !!』 全身の毛穴が一気に開いた。 声の主はガタイのいいサントハイム兵士だった。 (こ、こ、こここ、声がデカイ) 『城 内 、異 常 あ り ま せ ん !!』 (やめて、やめて、やめて、クリフトに気づかれちゃう) 変な汗が出る。 『そ れ で は 、 失 礼 い た し ま す ッ!!』 最敬礼をし、兵士は去っていった。 頭がクラクラする。 そんなことよりも一刻も早く ここを立ち去らないと・・・・そう思って一歩踏み出した時にはもう遅かった。 目の前にはクリフトがいた。 「クリフト・・・・。」 今すぐに逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。 「姫様。」 クリフトはまじまじと自分を見つめている、のが分かる。 目を合わせられない。クリフトの指先を見る。 長い指。銀の酸化した黒ずみが付いて少し汚れていた。 「姫様、何かお悩みでもあるのですか?」 どきりとした。 「な・・!?そんなもの・・・・ないわ。」 ひどく狼狽する。 「そうですか・・・・?」 クリフトは腑に落ちない様子だったが 無理に納得したような素振りをした。 暫く無言の後、クリフトは思い切ったように言う。 「姫様。失礼ですが、先日から様子が変です!」 「へ、変って何よ・・・。」 目線をクリフトに向ける。クリフトの頬にはやはり髭はなかった。 そんなことを確認してしまった自分がなんだか恥ずかしい。 「もしかしたら、私の風邪がおうつりになってるのでは・・・!?」 クリフトの顔が近づく。無意識に同じ分だけ離れる。 「う、うつってなんかいないわ。」 「でも、お顔が赤いですよ。」 「!!」 アリーナは目を見開いた。 「私の顔が、赤い・・・・・?」 「はい。ですから熱があるのではないかと。」 「・・・・・まさか、前に会った時も赤かった?」 「はい。」 アリーナは呆然とした。 自分はクリフトに対して赤面している? あの時からずっと感じている“違和感” クリフトにだけ感じている“違和感” だるくて、息が詰まる、この“違和感” この違和感の正体はもしかして――― 「・・・・私、部屋に戻って休むわ。」 「女官を呼んで参りましょうか?」 クリフトは当然だがアリーナの部屋のある3階には出入り出来ない。 「大丈夫。一人で戻れるわ。」 フラフラとアリーナは歩き出す。 クリフトが何か色々と喋っているがアリーナの耳には入らなかった。 歩きながらアリーナはずっと考えていたが、 自分の感情がうまくまとまらない。 ただ、これだけは確実に言える。 自分はクリフトを男性として意識してしまっている―――。 2009.2.26へ続く
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年齢:59歳誕生日:不死鳥の月11日所在:海賊船『キプロス号』クラス:歩兵系使用武器:剣肩書き/通称: 『ダレス海賊団』の一員。 先代の船長、ダレス=アクナディンとは親友であり、彼の死後も海賊団に留まり、支えている。 昔気質で、義理と人情に弱い。 元、ロードリアの海軍軍人で、灰十字船団第4師団に所属しており、当時、師団長だったバルトロメイの部下だった。 25年前のクリフ沖海戦で敵の増援として戦っていた海賊のダレスに命を助けられて以来、海賊団に留まることとなった。 所有AF:
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術・技名 分類 武器・魔鏡 備考 グレイブ 術技 メタルフレーム フリーズランサー 術技 クリスタルフレーム シャドウランス 術技 ダークコア エンシェントノヴァ 術技 ルビーレンズ 移転鏡 術技 クロノスギア エアスラスト 術技 リアルフェザー ホーリースパイラル 鏡装 「融合」の使い手 フィリップ 秘技→セイクリッドスパイラル センティルレイ 鏡装 5th Anniversary フィリップ 秘技→セレスティアルレイ 転移裏鏡 裏鏡装 鏡精とお祝い フィリップ 秘技→デモンソード グレイブランス レアリティ零 サーシェスギア 零術技→アイシクルランス デス・パニッシュメント 報酬魔鏡 ティル・ナ・ノーグの当代ビクエ ディバイン・ミラージュ 通常魔鏡 言えなかった気持ち オン・ザ・クリフ 季節魔鏡 名探偵の推理 岩斬刹界衝 CO魔鏡 熟達の連携技 +マーク
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クリフトのアリーナの想いはPart11 380 名前 従者の心主知らず(2/3) Mail sage 投稿日 2010/11/06(土) 16 24 54 ID QZL5sHhn0 クリフトったら最近変なの。 変といえばいつも変なんだけど、あっでもクリフトは神官だもの、普通と違うところはあっていいはずだわ。 でもそうじゃなくて、本当に変なの。 私と話してても目をそらすことがあるし赤くなったり青くなったりするし独り言が多いのはいつものことだけど 何の話か教えてくれなくなったし。いつもなら聞けばすぐ教えてくれたのに。 だいたいが神学のこととか気候のこととか立場のこととか頭が痛くなるような難しいことだったけど。 そういえば、私が旅に出てからだったのかなあ。 「お城の外って広くて気持ちいーい!さあ、魔物たち!どこからでもかかってらっしゃい。みんなやっつけちゃうわよ」 「やれやれ、姫さまにはまったく困ったものですな。行動的なのは長所なのでしょうが、ここまで来ると……」 やだ、ブライのお説教が始まっちゃう! 「いいじゃない!長所なんでしょ?じいが何と言おうともうぜったいお城には戻らないわ。ぜったい!」 「……やれやれ」 よし、お説教回避! 「……姫さま、生き生きしていらっしゃいますね」 「え?」 やだ、今度はクリフト!お説教第2弾にならないようにしなくっちゃ! 「もちろんよ。だってやっと外に出られたんだもの。わくわくするわ!クリフトもそうでしょ?」 「え?あ、いえ、その…………そうですね」 笑いながらそう言うとクリフトは前を向いちゃった。 変なクリフト。そうですねって言ってもあんまりわくわくしてるように見えないんだけど。 でもお説教第2弾回避! って、クリフトがなんか喋ってる。独り言かな、この距離なら私に言ってるのかな。 「……非常事態とはいえ、姫といっしょに旅をすることになるとは……なんだか私、ドキドキしてきました。 「でしょ!私もドキドキするわ!」……ではなく!え?」 「え?ごめん今なんて言ったの?」 クリフトのドキドキ発言に思いっきり賛成しちゃった私はクリフトの次の言葉を遮っちゃったみたい。 「え、あ、いえ……なんでもありません」 「何よ、今何か言いかけたでしょ、なんて言ったの?」 「…………」 クリフトがうつむいちゃった。 なによー。 「どしたの?クリフト」 「……姫さま、姫さまは先ほど、なんとおっしゃったのですか……?」 「え?私?私はー……ってちょっと、私がクリフトに聞いてるのよ」 「あ、申し訳ありません」 「やだ謝らないでよ。ちょっと待って、ええっと、えっとね……」 なんて言ったんだっけ。 確かお城の外は気持ちよくってブライのお説教は回避して、クリフトは生き生きしててわくわくのドキドキ…… そう、ドキドキよ! 「だから、私も旅に出られてドキドキするわって言ったの」 「…………」 「え、だって未知の世界が私を待ってるのよ?!」 「…………」 「……えっと……」 なにこの空気。 なんかクリフトがすっごい難しそうな顔してるんだけど。 「……そうですね、そうですよね。ええ、私も城から出るのは初めてなので、未知の世界にドキドキしておりますよ」 笑いながらそう言うとクリフトはまた前を向いちゃった。 むうう、じゃあさっきの難しい顔はなんだったのよ。本当はクリフトもブライみたいにお説教したいんじゃないの? 気になっちゃうじゃない。 「さて姫さま、クリフト、サランが見えてきましたぞ」 「はい、ブライさま」 「え」 ブライの言葉にクリフトが反応しちゃったからそのままになっちゃったんだけど、思えばあれが始まりだったのかも。 やっぱりちゃんと聞いておけばよかったなー。今度はちゃんと聞いてやるんだから。
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南太平洋 ガタマ環礁 スポット案内 南太平洋 ガタマ環礁ガタマ環礁エントランス・スクエア ドルフィンズ・アイランド ドーナッツ・リーフ スプリング・ガーデン ブルー・クリフ トラフィックス プライベート・リーフの入り口 ディープ・ホールの入り口 ミニスポット ディープ・ホールグレート・コロシアム マウス・オブ・トゥルース ボトム・ドーム ミニスポット プライベート・リーフ ガタマ環礁 ミクロネシアのバオウル共和国付近に位置する美しい環礁。 ガタマは現地語で「母の宝物」を意味している。 バオウル共和国自体が架空の国であるため、明確な位置は不明だが、 Googleマップで言うとこの辺りがモデルと思われる。 エントランス・スクエア A-1周辺 初めに行く場所。小さな魚がたくさんいる。 ドルフィンズ・アイランド B-4周辺 マイルカ、マンタなどが見られるエリア。 ドーナッツ・リーフ G-2周辺 マナティが見られるエリア。 ちなみに基本的に南太平洋に生息する海牛類はジュゴンなのだが、 ガタマにはなぜかマナティが生息しているらしい。 (大人の都合とか言ってはいけない) スプリング・ガーデン C-6周辺 ザトウクジラの親子やアオウミガメなどが見られるエリア。 ブルー・クリフ A-7周辺 外洋へと繋がる断崖。 トラフィックス F-7周辺 オサガメが見られるエリア。 プライベート・リーフの入り口 H-6の東端 コガネシマアジやキイロハギが多いことから、イエローゾーンとも呼ばれる。 ディープ・ホールの入り口 E-8の南端 ナポレオンフィシュが優雅に泳いでいる。 ミニスポット ケーキ岩D-4周辺カリフォルニアアシカやキイロハギの群れなどが見られるエリア。 ガタマのへそD-5周辺ナポレオンフィッシュが見られるエリア。ジンベエザメの周回コースでもある。 静寂の洞窟A-7断崖北面、水深20m付近 バードアイランド(ミニスポット表示なし)F-5の小島。オセアンヌのガイドによるとそういう名前らしい。海中を飛ぶ海鳥たちが見られるエリア。 ディープ・ホール ガタマ環礁の南にある海底縦穴。 最深部は水深35m。 グレート・コロシアム ディープホールを中心に広がる円形の地形。 昼間はトビエイ、カマイルカ、マンボウなどが見られるが、 夜に行くとまさにコロシアムとなるエリア。 マウス・オブ・トゥルース グレート・コロシアムの中心に開いた穴 タマカイなどが見られる。 ボトム・ドーム ディープ・ホール最下層 あるイベント後にはコマッコウが見られるようになる。 ミニスポット ケルプの回廊グレートコロシアムに続く水路。ズームポイントにはリーフィーシードラゴンが生息。 精霊の岩屋第2層B-3南西側の穴 魔神の岩屋第2層B-3南東側の穴。ハナヒゲウツボがいる。 修行者の岩屋ボトムドーム北側の洞窟 プライベート・リーフ 詳細は別ページプライベートリーフを参照。