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クリフトとアリーナの想いはPart8 65 :胸騒ぎの髭剃り 1/4 ◆e.sLpeggy2 :2007/11/26(月) 20 47 49 ID ZW5/e2s90 「うーん、やっぱり川で顔を洗うのって、最高!!」 アリーナは、川辺でぶるぶると顔を振ると、思い切り伸びをした。 ここは、サランからやや離れた森の中。 城を飛び出したアリーナは、クリフト、ブライとともに3人で旅をしていた。 アリーナにとっては何もかもが新鮮で、毎日が驚きと喜びの連続であった。 アリーナは顔を洗った後、そのまま川沿いを歩いていたが、 下流の方向に、やはり川辺で顔を洗っているクリフトを見つけた。 ―――へえ、クリフトが顔を洗ってるところなんて初めて見たわ…。 何となく興味を持って眺めていると、クリフトは丁寧にタオルで顔を拭いた後、 なにやら顔を撫で回し、腰の袋からキラリと光るものを出した。 「―――!」 クリフトが手にしたものを見て、アリーナは息を飲んだ。 それは、鋭い刃を持った小さなナイフ。 ―――何を…クリフト―――!? クリフトが、ナイフの刃をゆっくりと喉元に押し当てた。 「―――クリフト!!」 アリーナは叫ぶと同時に前に飛び出していた。 「は?ひめさ…ふごぉっ!!!」 アリーナの声に振り向いたクリフトの顔面に、アリーナの鉄拳がめり込んだ。 「がはっ、げほっ、な、何をなされるのですか、姫様!!!」 タオルで顔を抑えながら、クリフトが涙目でアリーナを見た。 「それはこっちのセリフよ!!クリフト、あなた今何をしようとしたの!?」 「…は?」 クリフトがぽかんとした顔で、顔からタオルを離す。 そこには、痛々しい鉄拳の跡がくっきりと残っていた。 「何って…髭を剃ろうとしていたのですが…?」 一瞬、アリーナの頭の中が、真っ白になった。 「ひ…げ…?」 「はぁ…それが、何か?」 クリフトは、アリーナを怪訝そうに見上げた。 アリーナは、かすれた声でクリフトに尋ねた。 「ク、クリフト…って、髭、生えてるの…?」 クリフトは少し傷ついたような顔をした。 「それは、私だって一応男ですから、髭くらい生えます。」 ―――オトコ デスカラ…。 「―――!!」 アリーナは、ふいに、自分の心臓が跳ね上がったような気がした。 「姫様…?」 言葉無く立ち尽くすアリーナに、クリフトは心配そうに眉をひそめた。 「大丈夫ですか…なにやら、お顔が赤いような…。お熱でもおありですか?」 クリフトがそっとアリーナの額に手を伸ばした。 「わわわわわわわ!!!」 アリーナは、真っ赤な顔をして飛び退った。 「姫様!?」 「だ、大丈夫、熱なんかないから!今日は涼しいし!晴れてるし!!」 アリーナは意味不明の言葉を口走ると、くるりと向きを変えて走り出した。 「……一体、何だったんだ……?」 後には、膝立ちのまま、疑問符で頭をいっぱいにしたクリフトが残された。 「姫様?どうなされましたのじゃ?」 弾丸のように木立から飛び出すと、テントの側で髭を梳っていたブライが アリーナを見て目を丸くした。 「ブライ…。」 アリーナは立ち止まると、ブライをまじまじと見つめた。 「ブライにも、髭があるのよね…。」 アリーナの言葉に、ブライは、ほ、と口を丸めると嬉しそうにうなずいた。 「ようやく姫様もお気づき召されたか。 『ブライの白髭』と言えば、城ではちょっとしたものなんですぞ。」 自慢気に髭をなでるブライを見ながら、アリーナは考えた。 ―――ブライだけじゃない、お父様も大臣も、男の人は、皆、髭を生やしてるわ…。 いままで、そんなこと、気にもとめなかったのに。 当然のこととして受け止めてきていたのに。 ―――私だって一応は男ですから――― ふと、クリフトの先ほどの言葉が蘇る。 再び胸が騒いで、アリーナは思わず胸元をきつく握りしめた。 ―――…どうして、クリフトだと、こんなにヘンな気持ちになるのかしら。 「まあ聞いてくだされ、この輝くような白さと艶やかさを保つのが大変でしてな…。」 胸を張りながら髭の手入れ方法を話すブライの言葉を適当に聞き流しながら、 朝日差し込む森で、いつまでもアリーナは首を傾げていた。 オマケ** 「あっれー?髭剃り見つかんねーな。クリフト、お前の貸してくんない?」 「!!…ソロも、髭生えてるんだ…。」 「何だよアリーナ、馬鹿にするなよな。俺だって立派な大人だぜっ!」 「…立派な大人なら、自分の持ち物くらいきちんと管理してくださいね。 はいどうぞ、ソロさん。」 「おお、クリフト、サンキュー!」 2人を見ながら、アリーナはここでも首を傾げていた。 ―――…ソロが髭生えてるって聞いても、びっくりはするけど、やっぱり クリフトのときみたいにはドキドキしないんだ…ヘンなの…。
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クリフトのアリーナの想いはPart11 287 名前 名前が無い@ただの名無しのようだ Mail sage 投稿日 2010/07/02(金) 19 44 41 ID qOH1l68AQ 神官クリフトは、今日も仕事で疲れきって、遅くなって城に帰ってきた。 すると、彼の主人でありひそかに慕っていたアリーナ姫がドアのところで待っていた。彼は驚いて言った。 「まだ起きていらっしゃったのですか。もう遅いですし早くお休みになられてください」 「クリフト、寝る前に聞きたいことがあるんだけど」 「なんです?」 「クリフトは、一日いくらお金をかせぐの?」 「そのようなこと姫様には関係がないと思いますが…」 クリフトは不思議そうな顔をして言った。 「どうなさったんです?そんなこと聞くなんて」 「どうしても知りたいだけよ。一日にいくらなの?」 アリーナは嘆願した。 「私は神に仕えるものゆえあまり多くは貰いません・・・100Gくらいですね。」 「ふーん」 アリーナは言った。 「ねえ。クリフト。私に50G貸してくれない?」 「なんですって!」 アリーナのお目付け役でもあるクリフトは激昂した。 「まさかまたお城を跳びだすおつもりですか! 魔王が滅びたとはいえあなたにとって大変なのはこれからなのですよ。だめです!早くお部屋にお戻りください!」 アリーナは,黙って自分の部屋に行った。 しばらくして,クリフトは後悔し始めた。あぁ神よ、私は少し厳しく叱りすぎたかもしれません... たぶん、姫様はどうしても自分で買いたい物があったのでしょう それに、姫様は旅を終えてからというもの毎日壁一つ壊さず勉学に励んでおられたというのに・・・ 次の日早めに仕事を切り上げたクリフトは、アリーナの部屋に行くと、そっとドアを叩いた。 「姫様、私です、いらっしゃいますか?」 彼は小さな声で言った。 「どうしたの?クリフト」 クリフトの声がした。少し落ち込んでるようだ。 「昨日はとんだ無礼をお許し下さい、姫様のお気持ちも考えず言い過ぎてしまいました・・・余計なお節介かもしれませんが陛下から明日の姫様の外出許可をもらってきました。この50Gで息抜きでもなさって下さい」 アリーナは,部屋から飛び出して、顔を輝かせた。 「ありがとう。クリフト!」 そして,部屋に戻りしばらくすると、数枚の硬貨を手に戻って来た。 クリフトは少しびっくりして言った。 「なんです、もういくらか持っていらっしゃるではありませんか」 「だって足りなかったんだもん。でももう足りたわ!」 アリーナは答えた。 そして,顔を少し赤らめ恥ずかしそうに硬貨をクリフトに差しだした... 「クリフト。私100G持ってるわ。これでクリフトの一日、買える?」
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クリフトとアリーナの想いはPart8 764 :想い 1:2008/02/25(月) 21 52 11 ID HSQml0LdO 世界樹の花を手に入れた勇者一行はその足でロザリーヒルへ向かい、蘇生したロザリーと共にデスピサロと対峙した祠へ辿り着いた。 「デスピサロ様…!」 最愛の人を目の前にしてデスピサロの凍った心がゆっくりと溶けていくのをクリフトは身に染みて感じていた。 デスピサロを心底から憎みきれないのは彼があまりにも人間…否、自分と似ていたからだと理解する。 例えばアリーナがロザリーの様な立場に置かれていたら、自分は躍起になって力を欲していただろう。目前の彼のように。 アリーナを守る為に神に背いて死の呪文を覚えた自分と、ロザリーを守る為に自ら闇に堕ちたデスピサロは酷く、似ていた。 しかし、ふと感じた違和感に思考を止め隣に視線を向ける。 そこには今にも泣きそうなアリーナがクリフトの服の裾を弱々しく摘んでいた。それでも顔はまっすぐ前だけを向いていて。 デスピサロを倒すことだけを考え、その後に訪れる平和を信じ、憎しみだけでここまで来た少女にこの光景はどう映ったのだろうか。 人を狂わせる《想い》 人を救う《想い》 (…貴女には理解できますか?デスピサロの想い、ロザリーの想い) そして、私の……… クリフトはアリーナの手をゆっくりと自分から剥がすと、その手をしっかりと自分の手のひらに握りなおした。優しく、それでいて強く。 アリーナに想いが通じるように願いをこめて。 エビルプリーストは以外にも呆気なく死んだ。 導かれし者達は本人等が思う以上に強くなっていたのだ。 「また、会う日まで」 その言葉を交わしてそれぞれは散る。ある者は故郷へ、ある者は新天地へと。 「帰ろっか」 サントハイムに。 アリーナは笑った。クリフトとブライもええ、と笑顔で返す。 可能性は0に近い。が、0でないなら最後まで希望を持とうと三人は心に決めていた。 「ただいま、お父様お母様」 誰も居ない玉座に向かってアリーナは言葉を続ける。 「帰るのが遅くなってごめんなさい。話したいことが山ほどあるのよ」 「クリフト、下へ」 アリーナに聞こえないような声でブライはため息をついて階段へ目配せする。 本人は実在しなくともアリーナな確かに両親に語り掛けていたのを見て、家族の逢瀬に水を差すわけにはいかないだろう、とブライは考えていた。 しかしクリフトは階段を2、3段降りると足を止め、ブライの方へと向き直った。 「ブライ様、申し訳ございません…私は、陛下にご報告することがあります」 ブライは何かを考え口を開いたが、それを飲み込んでわかった、と了承した。そして、 「それがお前の選んだ道なのじゃな、クリフト」 と言った。クリフトは恥ずかしそうに笑みを浮かべて、階段を降りていくブライに丁寧に礼をした。 クリフトが振り替えるとそこには静寂の中に小さな小さな嗚咽だけが残っていた。 「アリーナ姫様」 名を呼べばぐすっ、と一度鼻をすすり、乱暴に目を擦る後ろ姿に胸が軋む。 振り返った彼女はそれでも健気に口の端を上げて見せた。 「ごめんね、二人も悲しいのに……って、あれ?ブライは?」 クリフトはそれに答えずアリーナが居る玉座へと歩を進めると、誰も座っていないそこへ膝をついて話し始めた。 「陛下、このクリフト我が故郷サントハイムにブライ様と姫様と無事に帰還することができました。つきましては陛下に御報告しなければいけないことがあります。」 アリーナは唯黙ってその横顔を見つめる。彼が何を話すのかはわからなかったというのもあったが、そもそも、そこにいたのはアリーナの知らないクリフトだった。 それは、幼少の頃チャンバラごっこで泣いたクリフトでなく、 姫様姫様と困り顔でついてきたクリフトでもなく、 一人の「男」の顔だった。瞳に強い決意を抱いた、男の。 「私は幼少の頃より姫様のお側でお遣いしておりました。今までもこれかも姫様をお守りすることだけが我が使命と思っております……。」 クリフトはそこまで言うと俯き言葉をつまらせた。 アリーナはクリフトの真意がどこにあるのか、何を言いたいのか皆目検討もつかずただ言葉を待つしかなかった。 「………しかし…、」 クリフトはゆっくりと酸素を体に取り込むと再び話し始めた。 「しかし、これからは姫様の生涯の伴侶という立場として姫様を守っていきたいと考えております」 アリーナはクリフトの口から紡がれる言葉に眼を見開いた。 クリフトが話している言葉は、待つだけ相手に迷惑がかかるのだと、アリーナが自身に言い聞かせて諦めていた言葉。――つまり、それがアリーナが初めて聞くクリフトの気持ちだったのだ。 (声が、震える。) 臣下であり聖職者である自分がこの言葉を言っていいはずがないと、この気持ちを封印しようと日々を過ごしてきた。 世間体や立場を考えてずっと言いたかった言葉は心の奥底に閉まわれていたはずだった。 だけど。 離したくない。 傍にいたい。 隣で笑っていてほしい。 頼ってほしい。 《クリフト》 ――自分を、求めてほしい。 今クリフトを動かしているのはまぎれもないアリーナへの想いだった。 「言う順番が、違うわ。私が一番先じゃないの?」 しばらくの沈黙の後。 声にクリフトが顔を上げると桃色の頬をしたアリーナは鼻水やら涙やらでぐしゃぐしゃの顔でクリフトを責めた。 「そうですか?私はこれで良かったと思っていますが」 立ち上がりアリーナに手を伸ばすとアリーナはそれをつかんでよろよろとクリフトの元へと来て、その胸元にしがみついた。 「ぐすっ、ひっく、ひっく、ふっ、ぅえ、うぇええ~っ」 声を出して幼子のように泣くアリーナ。こんな泣き方をしたのは王女が亡くなられた時以来だな、とクリフトは懐かしく感じながらあやすように背中を撫でる。 「アリーナ」 初めて呼ばれた呼び名にアリーナが顔を上げるとクリフトは照れ臭そうに微笑んだ。 「アリーナ、私と共に生きてくれますか?」 「ぅ゛んっ、ひっく、ぐりふとっ、だい、すきぃ」 想いが通じた二人は、玉座の前で誓いの口付けをした。 おわり。 おまけ。 「…はて、いつ戻るべきか。」 階下では髭を触りながらそわそわと行ったり来たりを繰り返しているブライがいましたとさ。
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クリフトとアリーナの想いはPart7 202 :シンシアのこと1/7 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/03/20(火) 00 47 26 ID XNCrYX/d0 クリフトが倒れた。 先日の戦闘で、クリフトはアリーナをかばい、ちょっとした怪我を負ったが、 その後も、連日の戦闘続きで、皆、体力、気力ともに限界の状態であったため、 クリフトの怪我が完治していなかったことに、誰も気がつかなかったのだ。 戦闘中、最後の魔力でアリーナにべホイミをかけると、そのまま地面に倒れ込んだクリフトに、 戦っていたアリーナ、勇者、マーニャは驚愕した。 彼らが魔物達をものすごい勢いで片付けている間に、馬車から飛び降りたミネアが クリフトに懸命に回復呪文を施した。 それでどうやら怪我は癒えたようであるが、今度は熱がひどく、起き上がれない。 結局、一行は手近な街を目指すと、クリフトを宿に担ぎ込んだ。 心配顔でクリフトの枕元に集まった仲間達だったが、医者の 「怪我から少々ばい菌が入って弱っていたところに、風邪を引いたんじゃよ。 ま、いずれにせよ、しばらく安静にしていれば大丈夫じゃろ。」 との診立てに、ほっと胸をなでおろした。 「…申し訳、ありません…。」 高熱にうなされながら、途切れ途切れに謝るクリフトに、ブライが真っ赤な顔をして怒った。 「こんのアホ神官めが!ミントスの時の教訓が全然生きとらんではないか!」 その横で、ミネアが安心したようにため息をつく。 「でも、今回は大したことにならなくて、本当によかったですわ…。」 「まーったく、あんたは人騒がせなんだから!怪我くらいちゃんと治しときなさいよ!」 マーニャはクリフトにびしっと指を突きつけると、 迷惑だから、とっとと寝て早く元気になりなさい、と、皆を誘って部屋を出ようとした。 しかし、1人だけ、クリフトの枕元から離れようとしない者がいた。 「アリーナさん…お医者様もああおっしゃってるんだから、大丈夫ですよ。」 トルネコに声をかけられても、アリーナはうつむいたまま動こうとしない。 「今回は、ミントスのときとは違うのよ、アリーナさん。」 ミネアに覗き込まれて、ようやくアリーナは顔を上げたが、その目には涙が光っていた。 「…本当に、大丈夫?今回は、パデキアはいらないの?」 涙に潤んだアリーナの声を聞いて、クリフトが体を起こそうとした。 「姫様、ご心配を、おかけして…。」 「ああもう、あんたはいいから寝てなさい!」 マーニャがクリフトを殴り倒すようにしてベッドに押し戻す。 「ほれ、姫様…。姫様がおられては、こ奴もゆっくり休むことができませんじゃ。」 ブライの言葉に、アリーナはしぶしぶ腰を上げた。 「そうそ、後の世話はソロに任せて。」 マーニャに言われて勇者が「げ。」と声を上げたが、マーニャはそれを無視した。 「アリーナ、私達は、下の食堂でおいしーいもの、いっぱい食べてましょ!」 皆が部屋から出て行くと、勇者はやれやれ、とクリフトの向かいのベッドにごろりと横になった。 「ソロさん…。あなたも、風邪が、うつりますから、他の部屋に…。」 クリフトがかすれ声で勇者に呼びかけたが、勇者は起き上がろうとしない。 「お前じゃあるまいし、そんなへなちょこ風邪なんかうつるかよ。 大体、今日は宿は満室だぜ?アリーナと相部屋してもいいなら、出てくけどな。」 勇者の答えに、クリフトが黙り込む。 しばらくの間、部屋にはクリフトの苦しげな息遣いだけが響いた。 勇者は、そのまま天井を見つめていたが、やがて、ポツリと呟いた。 「…お前さ。もうちょっと自分を大切にしろよ。」 「…?」 クリフトが、いぶかしげに顔を勇者の方に向けた。 勇者は、上を向いたままクリフトの方を見ずに続ける。 「どうせ、お前、アリーナへの回復呪文を優先して、自分の怪我放っておいたんだろ。」 「…。」 「自分を犠牲にして、アリーナを守ろうなんて、考え違いもいいところだよ。」 「…それは。」 言いかけたクリフトを、勇者が強い口調でさえぎった。 「残された方の気持ちも考えてみろってんだよ!」 クリフトは、その口調の激しさに驚き、片肘をついて半身を起こした。 見ると、勇者の手には、小さな羽帽子が握られていた。 クリフトは、その羽帽子をこれまでにも何度か見たことがあった。 何に使うかも分からなかったが、荷物が増えても、決して勇者が手放さないアイテム…。 「…ソロさん。」 勇者の答えはない。 「よろしければ…その、羽帽子の、方のこと、お話、いただけますか…?」 そういうと、クリフトは激しく咳き込んだ。 「ああ、もう、寝てろっつんだよ、この馬鹿。」 勇者が慌ててクリフトに駆け寄ると、その背中を支えて寝かせ、額にタオルを乗せる。 クリフトは、世話を焼かれながら、懇願するように勇者を見上げた。 「…そんな目で見るんじゃねえっての。…仕方ねえな。」 泣く子と病人には勝てねえよ、と勇者は頭をかくと、アリーナが座っていた椅子に腰掛けた。 「そんじゃ、ま、子守唄代わりにでも聞いてくれ。」 勇者は、どこか遠い目をすると、語り始めた。 故郷の村で、自分を育ててくれた桃色の髪のエルフの乙女。 もの心ついたときから、いつも一緒だった。 幼い頃は、母親のように、その後は、姉のように… そして気がつけば、自分は彼女の背を越すほどに成長していた。 ずっとずっと、誰よりも、大切な存在だった。 いつもまでも、彼女と一緒にいられれば、それだけで幸せだと思っていた。 ところが、あの日。 魔物達の咆哮、村人達の怒号と悲鳴が聞こえてくる中で ―――あなたにもしもの事があったら 私……。 心配そうに自分を見上げるシンシア。 ―――でも大丈夫。あなたを、殺させやしないわ。 その言葉を最期に、彼女は目の前から去っていった。 この、羽帽子だけを残して…。 淡々と語る勇者を、クリフトは、瞬きも忘れたように見上げていた。 勇者は、ふと気付いたようにクリフトの額の上のタオルを取り上げる。 「ああ、温まっちまった。ひどい熱だな、お前。」 クリフトは、タオルを洗面器に浸して絞る勇者に問いかけた。 「…ソロさん。あなたは、その、シンシアさんの、ことを…?」 「好きだったかって?まあ、好きだったのは確かだよ。」 勇者がさらりと答える。 そして、絞ったタオルを広げると、小さい声で付け加えた。 「だけど…女性として、好きだったのか、よく分からないんだよな。 だいたい、シンシアだって、俺のこと男として見てたのかどうか…。」 誰よりも、大切に思っていたのは、事実。 誰よりも、大切に思ってくれていたのも、分かる。 でも…。 ―――私達、大きくなっても、ずっとこのままでいられたらいいね―――。 ―――ソロのことが大好き!だから、いつまでも一緒よ、ソロ! 笑顔と共に言われた言葉が、恋心の表れだったのか、単なる親愛の情だったのか、 それを確認する前に、その機会は永遠に失われてしまった―――。 そして、それと一緒に、自分の気持ちも永遠に宙に浮いたまま…。 「なんで、お前が泣いてるんだよ。」 勇者は、クリフトを見ると、畳んだタオルをその目元にポン、と軽く叩きつけた。 クリフトは、そのタオルを上から押さえると、すいません、と謝る。 「…なんで、謝るんだよ…。」 「…いえ、ソロさんが、泣かないのに、私などが、泣いていいものでは、ないのに…。」 「…泣くのに、資格なんかいらないだろ。」 勇者は呟くと、声の調子を変えた。 「俺の話を聞いて泣くくらいなら、自分を犠牲にしてアリーナを守るなんてこと、やめろよ。」 「…。」 「俺は絶対に認めないからな。残された者の気持ち、考えろ。」 クリフトはタオルに手をやったまましばらく黙り込むと、低い声で答えた。 「シンシアさんと、私とでは、立場が…。私が、いなくても…姫様は、大丈夫です。」 クリフトの言葉に勇者はカッとなった。 「馬鹿ヤロ、お前、さっきのアリーナの様子、見ただろ! どうあれ、お前がアリーナにとって大切な存在であることは確かだよ!」 どこまでも自分の価値を認めようとしない神官に、勇者の苛立ちは募る。 「お前が自分を卑下するのは勝手だけど、それで辛い思いをするのはアリーナなんだ! 分かってくれよ…俺みたいな状態に、アリーナを置きたくないんだよ…!」 勇者は、もどかしげに叫んだ。 その声に含まれた悲痛な響きに、クリフトが目の上からタオルをどけて見上げると、 勇者は、背中を丸めて両手に顔を埋め、肩を震わせていた。 クリフトは、無言で起き上がると、勇者の肩にそっと手を回した。 勇者は頭をクリフトに持たせかけると、弱々しい声で呟いた。 「頼むよ…。もう、あんな思いをするのも、あんな思いを誰かがするのを見てるのも、 俺は嫌なんだよ…。」 誰よりも、大事な人が。 目の前で。 自分のために。 クリフトは、初めて、勇者の心の傷の深さを思い知った。 そして、自分の行動が、知らず、勇者を傷つけていたということも。 それは裏を返せば、勇者が、自分やアリーナをそれだけ心に受け入れてくれている証でもあり。 クリフトは、嬉しさと申し訳なさが入り混じった思いで、勇者の肩に回した手に力を込めた。 「ソロさん、すいません。…ありがとう、ございます…。」 勇者は、しばらく黙ったまま動かなかったが、やがて、ふっと笑い声をもらした。 「謝ったり礼を言ったり、ややこしい奴だな。……お前、また泣いてるのかよ…。」 「…泣いて、ません…。」 「ま、いいけど…それより、俺、男と抱き合う趣味はないんだけどな…。」 そうぼやきながらも、勇者は、クリフトから離れようとはしなかった。 翌日、すっかり回復したクリフトの隣のベッドでは、勇者が熱で赤い顔をして横たわっていた。 「ちょっとちょっと、何なのよ~。風邪なんかうつらないって言ってたくせに。」 マーニャがベッドの横で呆れ顔をするが、勇者は反論する元気もない。 「…そもそも、風邪がうつるほど近くに寄ったというのは、どういう状況ですの?」 ミネアがドスのきいた声で勇者に歩み寄る。 勇者は本能的に身の危険を感じ、思わず助けを求めるように辺りを見回した。 それを見たクリフトは、勇者の枕元に走り寄ると、その場をとりなすようにミネアの前に立った。 「ミネアさん、ソロさんは私の看病をしていて、風邪がうつってしまったんです。 ですから、こんどは私が責任を持って看病いたしますから…。」 「……これは、由々しき問題ですわね…。」 今にも懐から銀のタロットを出しかねない雰囲気のミネアに、勇者はシーツの中に潜り込んだ。 そこに、 「でも、ソロのおかげで、クリフトは元気になったのよね?ありがとう!ソロ!」 アリーナの元気な声が響いて、勇者はシーツから顔を覗かせた。 アリーナがクリフトの隣で、花が咲いたかのような笑顔を見せており、その横ではクリフトが、 優しい目で幸せそうにアリーナを見つめていた。 ―――ああ、ほら、こうじゃないと。 勇者は、満足そうな吐息をついた。 それにクリフトが気づき、小さく頭を下げる。 勇者は、目を瞑ると、アリーナとクリフトの会話を遠くに聞きながら、心の中で呟いた。 ―――シンシア…俺達の身代わりにするわけじゃない。だけど…こいつらだけは、幸せに…。 意識が途切れる直前に、笑顔で微笑むシンシアが見えたような気がした。
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クリフトとアリーナへの想いはPart9 クリフトとアリーナの想いはPart10 951 名前 1/14 ◆e.sLpeggy2 Mail sage 投稿日 2009/05/16(土) 11 07 00 ID hFO5/clX0 一行が、コーミズ村のその話を聞いたのは、モンバーバラでのことだった。 モンバーバラに来る前にコーミズ村に立ち寄ったという旅人の話によると、 最近、コーミズに悪質な詐欺集団が横行していると言うのだ。 聖職者らしき格好をしたその一団は、村人たちに対し、 「魔王の復活により世界は破滅する。ただし、我らに捧げものをすれば、 教祖である魔道士様があなたの魂を守ってくれる」 と、まことしやかなでたらめで金品を巻き上げているらしい。 最近はアッテムト鉱山での出来事もあり人々の不安はピークに達していたから、 純朴なコーミズ村の人々を騙すのは容易いことだっただろう。 「連中に抵抗した人達もいたみたいだが、何故か皆、次々に魔物に襲われてるらしい。」 声を潜めた旅人の言葉に、クリフトは首をかしげた。 クリフトの表情を見て、勇者も片眉を上げて見せた。 「何だか妙だな、クリフト。」 「ソロさんも、そう思われますか?」 「え?何?何が妙なの?」 テーブルに手をついて伸び上がるアリーナに、クリフトが向き直った。 「彼らに抵抗する者だけを魔物が襲うなんて、偶然にしてもできすぎています。 かといって、人間に魔物を操ることはそうそうできるものではありません。 …ということは…連中の裏に、人型の魔物がいる可能性も…。」 その言葉に、それまで黙って話を聞いていたマーニャとミネアが立ち上がった。 「ソロ。旅の途中に寄り道させて悪いけど、コーミズに行ってもらえるかしら。」 「故郷が魔物に蹂躙されているとしたら…見捨てておくわけには行きませんわ。」 勇者は、黙って一同を見回した。皆、勇者の目を見返して頷く。 勇者はにやりと笑った。 「ここにいる連中は、みんな同じ考えみたいだな…よし、コーミズ村に進路変更だ!」 一行は、夜になってから闇にまぎれてコーミズ村に入った。 幸い、マーニャとミネアの家は村はずれにある。誰にも見咎められずに家にたどり着いた。 「旅人の話では、連中は村の家々から酒や食べ物を『捧げもの』と称して取り上げては、 村長の家の前庭で、宴会を開いて酔っ払っている、ということでしたわね。」 ミネアの言葉にマーニャは憤った。 「村長や村の大人達は何をやってるのよ、情けない!」 「いずれにせよ、まずは、村長宅に行ってみなければ、どうにもならんようだな。」 ライアンが、髭をなでながら呟いた。 クリフトは、皆があれやこれやとアイディアを出し合っている中、黙って座っていた。 普段なら、ブレーンであるクリフトは、作戦会議の中心となることが多い。 しかし、今日のクリフトは、時々必要な指摘をする意外はほとんど口を開かなかった。 そんなクリフトをアリーナがいぶかしげに見つめていた。 その日の夜遅く、クリフトは1人、村を見渡せる小高い丘の上に佇んでいた。 目の前の村には明かりも見えない。 クリフトは、胸に手を当てると小さく祈りの言葉を呟いた。 と、背後に気配を感じ、弾かれたように振り向いた。 そこには部屋着にマントを羽織ったアリーナの姿があった。 「姫様!このような時間にそのような格好で、お1人で出歩くなど!」 慌てて駆け寄ると、アリーナはクリフトの叱責の言葉にむっとした顔をした。 「その言葉、そっくりそのまま返すわよ。クリフトこそ、1人でどうしたの? 今日は、ずっとふさぎ込んでたじゃない。」 腰に手を当てて自分を見上げてくるアリーナに、クリフトはハッとした。 「姫様、もしかして、私の後を追って出ていらしたんですか…?」 申し訳ありません、と謝るクリフトにアリーナは苛立った声を出した。 「んもう!そんなこと聞いてるんじゃないわよ!私の質問に答えてよ!」 アリーナは本気で怒っているようだ。 きちんと話さなければ部屋に帰ってもらえそうにない。 クリフトは、しばらく沈黙した後、低い声で語り始めた。 「考えごとを、しておりました。」 「考えごと?」 「はい。…お城で暮らしていた頃、私は、神官の使命とは、一心に神へ祈りを捧げること、 それが全てだと、そうすれば皆を幸せにできると、真剣にそう思っていました。」 アリーナは、口を挟まず黙ってクリフトを見つめていた。 「しかし、この旅を始めて…祈るだけでは平和は来ないかもしれないと思うようになりました。」 クリフトは暗い目で、眼前に広がる暗い村を眺めた。 「私は間違っていました。聖職者達が、教会の中で安穏と祈りを捧げて過ごすうちに 世の中は、人の心は、こんなにも荒れ果ててしまっています。 このままではいけないんです。祈るだけでなく、…行動しなければ、戦わなければ。」 クリフトは両手を硬く握り締めた。 自分は、戦うため、大切なものを守るために教会の戒律を破って禁呪を覚えた。 しかし、自分ひとりではどうしようもない現実が目の前に広がっている。 「神官として、自分は、いったいどうすれば良いのか…それを考えると眠れなくて。」 「…クリフト。」 アリーナが、つと歩み寄ると、クリフトの手をしっかりと握った。 「ひ、姫様?」 「クリフトは、えらいね。…いつも人のことを考えて悩んでる。」 「え、いえ、そんな…。」 「…私には、クリフトの悩みの答えは、難しすぎて分からないけど…。 でもね。だったら、できることから、始めればいいんじゃない?」 「…え?」 クリフトは、ぽかんとアリーナを見返した。 「私も、お城の皆が消えてしまったとき、最初、どうしたらいいか分からなかった。 でも、できることから1つ1つやってきて、今は確実にお父様に近づいてるって思えるの。」 アリーナはクリフトを見て、にっこり笑った。 「大丈夫。クリフトならできるって。」 クリフトはしばらく呆然とアリーナを見つめていたが、やがて小さく笑った。 「姫様は…本当にお強い…太陽の申し子ですね。 姫様を見ていると、何だか、うじうじと悩む自分が情けなくなります。」 アリーナが、握ったクリフトの手をぶんぶんと振り回した。 「何言ってるの、クリフト。 私が強くいられるのは、クリフトやブライがいてくれるからじゃない。 それに、クリフトは人のために悩んでるんだから、情けなくなんかないの!」 「…。」 「もう、いいから部屋に戻りましょ。体が冷えちゃう。」 くるりと背を向けて先を行くアリーナを、クリフトはしばらく見つめていたが、 その後ろ姿に向かってゆっくりと頭を下げた。 翌朝。 すっきりした顔のクリフトは、アリーナと顔を合わせるとにっこり笑って見せた。 クリフトの表情からは、昨日の憂いはすっかり消え去っていた。 それを見て、アリーナも嬉しそうにうなずいた。 「行きましょう。」 一行は家を出ると、堂々と、村長の館に通じる村道を歩き始めた。 「昨日は夜だから気づかなかったわ。こんなになっていたなんて…。」 ミネアが暗い顔であたりを見回した。 春も半ば、本来であれば新芽が顔を出す頃のはずの畑は、手入れもされずに荒れ果てており、 村人は、大人も子供も生気のない目をして、玄関横のチェアや庭のベンチにうずくまっていた。 その中で、生気溢れる勇者達の道行きは、異質な光を放っていた。 いぶかしげに一行を眺める村人達は、マーニャとミネアの顔を認め、はっとしたように腰を浮かした。 そんな村人達を力づけるように、マーニャとミネアは笑顔を返す。 村人達は、何かに惹かれるように立ち上がると、よろよろと一行の後を追い始めた。 村長の館に着く頃には、一行の後ろには、村人達の長い行列ができていた。 村長の館は惨憺たる有様だった。 前庭に並べられたテーブルの上には、空になった酒瓶が乱雑に転がり、その周りには へべれけになっている男達が十数人ほどたむろっていた。 男達が、近くに控えている疲れた様子の男に「村長、酒が足りねーぞ!」とわめくと、 村長と呼ばれた男は、びくりと体をすくませ、もたもたと新しい酒瓶を奥から持ってきた。 聖職衣をだらしなく着崩した男達を見て、クリフトはさも不快そうに眉をしかめた。 「彼らは、どう見ても人間のようですが…。」 そのとき、男達の一人が、一行に気づき、ゆらゆらと立ち上がった。 「なんだぁ。お前ら。」 勇者がクリフトをちらりと見、クリフトがうなずき返して前に進み出た。 「私は旅の神官です。魔道士様の噂を聞き、ありがたいお話をお聞きしたいと思いまして。 …魔導士様にお会いすることはできますでしょうか?」 「ふん。魔導士様は奥の館におられるが、お前らがお会いできるようなお方じゃねぇよ。 お前らには、俺が代わりに祈ってやるって。」 男はそう言うと、酒に汚れた口をぬぐったその手でふざけて十字を切った。 クリフトの顔色が変わった。 「これは、話して分かる相手じゃなさそうねえ。」 「はい…そのようです。」 腕組みするマーニャに、クリフトは男達に険しい目を向けたまま答えた。 「お前ら、何を言ってやが…っ、ぐっ!」 クリフトの胸倉をつかもうとした男は、逆にその手をねじ上げられて呻いた。 「物騒な神官さんだなぁ。」 呆れたように呟いた勇者は、自分でも殴りかかってきた男を蹴り倒した。 「人に対する力の行使は望むところではありませんが、こうなれば致し方ありません。」 決然と答えるクリフトの前方では、マーニャとライアンを中心に乱闘が始まっていた。 アリーナも目を輝かせて前へ出たが、ブライに襟首をつかまれた。 「姫様の相手として、このような者達はふさわしくありませんじゃ。」 いずれにせよ、アリーナが出る幕もなく、男達は全員その場にのされてしまった。 一行についてきた村人達は、皆、声もなく事態を見守っていた。 村を蹂躙してきた男達が退治されたというのに、その表情には喜びの色は見えない。 村長が、恐怖の色を浮かべて自分の館を振り返ると、勇者に詰め寄った。 「あんた達…なんてことをしてくれたんだ…!」 「は…?」 意外な反応に、勇者が戸惑った顔をする。 「こんなことをして…魔道士様の怒りに触れたら、我々は…!」 村長の言葉に、他の村人達も口々に同意する。 「こんなこと、誰もあんた達に頼んでないのに…!」 「俺達は、このまま、ただ静かに最期のときを待ってるだけで良かったんだ…!」 村人達の言葉に、勇者がすっと目を細め、クリフトが口を開いたそのときだった。 村の入り口辺りで悲鳴が上がった。 「大変だぁぁぁ!魔物の大群が現れたぞぉぉお!」 振り返ると、村の境界を示す木々の向こうに、砂埃を上げて向かってくる魔物の群れ。 その中心には、凶悪な顔をした巨大なドラゴンが、火を噴いてこちらに向かっていた。 村人達は、恐ろしげなドラゴンの姿を見て、力なくその場に座り込んだ。 「あああ、あんた達のせいだ!魔道士様のお怒りに触れてしまった!」 「俺達は魔物にやられて地獄をさまようことになるんだ!」 そんな村人達に檄を飛ばすようにマーニャが大声で叫んだ。 「泣き言を言ってる場合じゃないでしょう!」 魔物は、四方から押し寄せて来ている。 「あれだけの魔物、さすがにあたし達だけじゃ手に余るわ。みんな一緒に戦うのよ!」 しかし、マーニャの言葉にも、村人達は動こうとしなかった。 「何よ、どうしたのよ!自分達の故郷が魔物に踏みにじられてもいいって言うの!?」 激昂するマーニャに、ポツンと村人の1人が言った。 「今、戦ったって、どうせ、近いうちに世界は終わっちまうんだ。」 「そうだ、俺達はみんな、死んじまうんだよ!遅いか早いかの違いだ!」 「何をやっても、無駄なんだよ!神様は、この世を見限ったんだ!」 クリフトは叫んだ。 「そんなことはない!神は、決してあなたたちを見捨てたりはいたしません!」 しかし、その言葉は絶望した村人達の耳には届いていないようだった。 ―――もはや神の御心は、彼らには届かないのか…! クリフトは、絶望的な気持ちで唇を噛んだ。 そのとき、クリフトの後ろから低い声がした。 「ふざけるなよ…。」 「ソロさん?」 振り向いたクリフトは、勇者の形相に思わず息を飲んだ。 ここまで怒りを露にした勇者は、今までに見たことがなかった。 勇者は、怒りの表情のまま、無言で剣を抜くと、その手を空にかざした。 勇者の体から青白いオーラが立ち上る。 「…これは…!?」 クリフトは、自分や仲間達の体力が勇者に向かって吸い取られていくのを感じた。 「ちょっと、何よこれ、ソロ!」 マーニャが叫んだ。 凄まじいエネルギーが勇者の右手に集約されていく。 勇者は、掲げた剣を両手で握り直すと、空に向かって叫んだ。 「―――ミ ナ デ イ ン―――!!」 辺りを切り裂くまばゆいばかりの閃光と鼓膜が破れそうな轟音が辺りに響き渡った。 その場にいた者は、皆、思わず地面にひれ伏した。 そして、閃光と轟音がやんだ後、おそるおそる顔を上げた者達は、目を疑った。 先ほどまで火を噴いていた巨大なドラゴンは、たった一撃で動かない骸と成り果てていた。 生き残った魔物達は、恐れをなしたようにいったん後ろに引いている。 「これが、天空の民の本当の力か…!」 ブライが、喉に絡まったような声で呟いた。 勇者は、両手を降ろすと、村人達に向かって叫んだ。 「お前ら、ふざけんな!世界が終わるかどうかなんて、そんなこと、 ぎりぎりまで頑張って見なきゃ分からないだろうが!」 まだ、勇者の周囲には青白いオーラが漂っていた。 翡翠色の瞳を煌かせ、顔の回りを縁取る同じ色の髪は、漂うオーラに揺らいでいる。 「何でもかんでも、そう簡単にあきらめるんじゃねえ!」 その神がかかった美しい姿に似合わない、乱暴な口調。 クリフトには、勇者の考えていることが痛いほどに分かった。 今、勇者の脳裏に浮かんでいるのは、きっと、魔物に襲われた彼の故郷。 花1つ咲かぬほどに蹂躙されても、彼の村の人々は決してあきらめなかった。 彼らは皆、最後の瞬間まで、勇者が世界を救うのだと信じて戦ったのだ。 そんな勇者にとって、コーミズの村人達のこの姿は、決して許せないに違いない。 ―――そうだ…ソロさんのためにも、ここでくじけてはいけない…! そのときふいに、昨日のアリーナの言葉が、クリフトの胸に浮かんだ。 ―――できることから始めればいいんじゃない? クリフトは、自分の手を眺め、周囲を見回した。 「私に、できること…。」 小さい声で呟く。 自分には勇者のような特殊な能力もない。アリーナのような地位も力もない。 自分は、ただ心をこめて、人々に説くことしかできない。 それは容易には受け入れてもらえないかもしれない…けれど。 ―――それでも、あきらめずに、私のできることから、1つ1つ…! クリフトは、自分に言い聞かせると、声を張り上げた。 「お願いです、皆さん、あきらめないで下さい! 皆さんは、ともに生きてきた、愛するこの土地を見捨てるのですか!」 クリフトの言葉に、村人達がはっと顔を上げた。 「皆さんは、長い冬にも日照りにも耐えて、この土地を愛し、慈しんできた。 そのときの気持ちを思い出してください!あきらめずに頑張ることの大切さを、 皆さんこそ、一番良く知っているはずじゃないですか!」 クリフトは、心を込めて、村人達一人ひとりに語りかけた。 「そして、大地は、必ずいつも、その努力に報いてくれてきたはずです! 同じです!あきらめずに努力すれば、報われないことなどない! あなた方が慈しんだ大切な土地を守るためにも、戦うのです!」 祈りを込めて叫ぶクリフトの声は、清冽たる響きを持っていた。 「大丈夫、神は、必ず我々を見ています!」 勇者の起こした奇跡と、クリフトの言葉に触発され、村人達の目に光が戻り始めた。 「そうよ!」 明るい声が、クリフトの言葉を引き継ぐ。 アリーナは、満面の笑みでクリフトに笑いかけると叫んだ。 「たとえもしも、明日世界が終わるとしても、最後の瞬間まで私は戦うわよ! いいえ、その前に、世界を終わりになんかさせやしない!」 アリーナのソプラノに続き、ライアンのバリトンが朗々と響き渡る。 「武器を取れ!戦う前から闇雲に恐れてはならぬ!おぬしらは強い!自分の力を信じるのだ!」 一行の励ましに、村人達は、1人、また1人と、その手に武器を握り締めて立ち上がった。 「そうだよ…歯を食いしばって、あのリンゴの木をここまで育ててきたんじゃないか…。」 「大切な畑を魔物に踏み荒らされたんじゃ、あの世に行っても爺様に会わせる顔がねえ。」 「んだな…俺達の大切な村を、俺達が守らなきゃ、誰が守るんだ…!」 村長は、立ち上がった村人達を見回すと、震える手で顔を覆った。 トルネコが、村長に近寄ると、励ますようにその肩を叩いた。 「1人ひとりの力は小さくても、皆で力を合わせれば、何とかなるものですよ。」 村長はトルネコを見上げて小さく頷くと、倒れていた男の腰から剣を引き抜いた。 頬を紅潮させて目の前の光景を見ていたクリフトの肩を、勇者が叩いた。 「さすがは神官だ。やるじゃねーか。」 「そんな、私は…。むしろ、これはソロさんのおかげで。」 慌てて手を振るクリフトに、勇者は厳しい顔を向けた。 「クリフト。外の魔物の方は、もう、皆と村の連中に任せて大丈夫だろう。 俺達は例の魔道士とやらにご挨拶に行くとしようぜ。」 「…はい!神を冒涜した魔物を、決して許してはおけません!」 クリフトは、勇者に向って力強く頷いた。 「私も行くわ!」 そのとき、後ろから、アリーナの声がした。 「クリフトが行くんだったら、私も行くわよ!」 「いや、姫様ここは…!」 クリフトは、アリーナをこの場に留めようと口を開いたが、 「…よし、クリフト、アリーナ、行くぞ!」 既に勇者は身を翻しており、アリーナもすぐに勇者を追って駆け出していた。 クリフトは首を振ると、仕方なくアリーナの後をついて走り出した。 村長の館は、村の外の騒ぎが嘘のように、ひっそりと静まり返っていた。 しかし、その静けさには得体の知れない圧迫感があり、3人は知らず息を殺していた。 と、入口が音もなく開き、3人はいっせいに身構えた。 「これはこれは、勇者様。我が館に、ようこそおいでいただきました。」 暗闇の中から、魔道士の衣装を身にまとった男がぬるりと滑り出てきた。 にこやかな表情とは裏腹に、男が発する凄まじい悪意の奔流に、3人の背中が総毛立つ。 魔道士の手には、聖職者の証である指輪が嵌っていた。 それを見たクリフトは、はっと息を飲んだ。 「まさか―――。」 残りの2人が驚いたようにクリフトを振り向き、魔道士も表情を改めた。 「ふむ…どうやら、我の正体を知っている人間がいるようだな…。」 「なに、どういうことだ?クリフト。」 勇者が混乱顔でクリフトに尋ねた。 クリフトは、魔道士から目を離さずに、答えた。 「サントハイムの大神官様から聞いたことがあります。 昔、非常に優秀な神官であったにもかかわらず、闇に堕ちた男がいたことを…。 男は教会で身につけた聖なる力を、人の心を苛むため、邪悪な業に用いていると…。」 「貴様、大神官の愛弟子と言う訳か…。」 魔道士は、ふん、と鼻を鳴らした。 「教会の聖なる力、か。だが教会は、その聖なる力をもって何をしているというのだ?」 魔道士の問いに、クリフトがぐっと言葉に詰まった。 「己の持つ力の使い道さえ分からぬ教会なぞに、我が見切りを付けたのは当然のことよ。」 言いつつ、クリフトの左手に目を留めて、魔道士が含み笑いを漏らした。 「それに…見たところ、貴様も我と同じ道をたどっているようだが?」 クリフトの表情がこわばった。 「お前のようなものと、一緒にするな…!ザキ!」 しかし、魔道士にはザキは効かなかった! 魔道士は、ヒステリックに笑った。 「愚か者め!闇の大魔道士である私に、闇の呪文が効くものか! まあよい、この村では充分に人間の心の操り方を研究できた。 もはやこんな田舎に用はない。我が目的に向けて、退散させてもらおう。」 そう言うと、その姿が徐々に空に融け始めた。 「目的…!?待ちなさい、お前、いったい何をするつもり!?」 アリーナの問いに、半分透き通った魔道士は不気味な笑みをもらした。 「…今に分かる。人間どもは、欲に弱い。それを少し煽ってさえやれば…。 人間どもは自ら滅びの道へと足を踏み出すであろう…我が手を汚さずともな。」 「くっ。」 勇者が剣で切りかかるが、その切っ先は残像を切り裂くのみであった。 「しばしのお別れだな。貴様らにはまだ使い道があるから生かしておいてやるが…。 …今度貴様らに会うときが、本当に世界の終わりだと思え!」 もう一度高笑いを残して、魔道士の姿は完全に消え去った。 3人はしばらく、その場にぼんやりと立ち竦んでいた。 やがて、アリーナがぽつりと呟いた。 「…逃げられちゃったね…。」 「…ああ。」 「…クリフト、大丈夫?」 青褪めた顔で魔道士が消え去った跡を黙って見つめているクリフトに、 アリーナが心配そうに声をかけた。 クリフトはビクリと肩を震わせると、アリーナに弱々しい笑みを返した。 「ああ…、いえ、失礼しました、大丈夫です、姫様。」 勇者が忌々しそうに、魔道士のいた辺りの壁を殴りつけた。 「くそ…っ!ああいう人の心を弄ぶような奴は、絶対に許せねえ…! 今度会ったら終わりなのは、奴の方だ!」 そのとき、村の外れの方から、歓声が上がった。 クリフトは、ぼんやりと歓声の上がった方に顔を向けた。 「…あちらは、首尾よく行ったようですね…。」 「ああ…。もう、この村は大丈夫そうだな…。」 クリフトと勇者は、浮かない顔で言葉を交わした。 クリフトの心の中は、勝利の歓喜とは程遠い境地にあった。 と、2人の前に、腰を手に当てたアリーナが仁王立ちになった。 「もう!クリフト!ソロ!そんなにへこたれた顔しないの! 2人のおかげで、村の皆は、立ち上がることができたのよ。 あいつだって、このまま旅を続けていけば、絶対にまた会う敵だわ!」 「姫様…。」 アリーナの瞳には、諦めの色はかけらもなかった。 ―――一つ一つ、できることから…。 アリーナの言葉が再び胸によみがえる。 ―――そうだ…私は…。 クリフトは頷いた。 「…そうですね。姫様の言うとおりです。 あんな奴をのさばらせておくわけには行きません…!」 勇者も、2人に向って唇を引き結んだ。 「そうだ、俺達は、絶対にあきらめない。今度こそは、必ず…!」 「その意気よ!あんな奴らに、世界を終わりになんてさせないわよ!」 笑顔でうなずくアリーナを、クリフトは眩しい思いで見つめた。 いったい、このひとは、どうしてこんなに強くいられるのだろう。 どんな逆境でも希望を失わない、強く光り輝く少女。 仕え、支えているつもりが、気がつけばいつも支えられているのは自分の方だ。 ―――こんなことではいけない…。 クリフトは、自分の左手に目を落とし、ぐっと歯を食いしばった。 この姫を守るために。そして、世界を守るために。 もっと自分は強くならなければならない。 自分の力はほんの小さなものかもしれないが、それでも、 自分にできる全てのことに力を尽くしていけば、きっと何かが変わる。 そう、自分にできるのはそれだけだから。 姫のためにできるのは…それだけだから。 ―――貴女の住む世界を、決して終わりになんてさせやしない…! クリフトは、誓うように固くこぶしを握りしめた。
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本当はクリアリが好き 204 名前: 198(SS新人) 投稿日: 02/05/22 20 21 ID ??? ~これはアリーナ、クリフト、ブライの3人がデスピサロを倒す旅を終えて、 サントハイムに戻って来てからのお話~ サントハイムの城に国王を始め城のみんなが戻って来て、城の復興も日を追 うごとにすすんでいきました。 旅から戻った3人も、以前の生活に戻っていきました。 変わった事といえば、旅を終えて強くなってしまった姫の手合わせがまとも にできる兵士が一人もいなくなってしまい、手合わせの相手が教会の仕事を 終えたクリフトになってしまったことくらいでしょうか。 城が落ち着きを取り戻すと、次なる課題としてサントハイム王室にのしかかって来た問題は、 「アリーナ姫の結婚相手探し」となるのでした。 王にとっては実に頭の痛い問題だったのでした。 クリフトが密かに姫に想いを寄せている事にうすうす勘づいていたのでなお さらなのでした。 旅に出る前なら、仮にもアリーナはサントハイム王室の王女、クリフトは一 介の神官に過ぎない、ということでこの二人の仲を認めない、ということは 簡単だったのですが、旅が終わってクリフトが「デスピサロを倒した勇者の 仲間の一人だった」ということになると話が変わってしまうのでした。 しかも勇者自身がクリフトについて「普段頼りにならないんだけど、いざと いうときになるとクリフトほど頼りになる仲間もいなかった」と語っていた のですから問題は更に難しく…。 サントハイム国王、「世界をすくった一人」という肩書きがあっても、一介 の神官であるクリフトとアリーナの仲は認めたくなかったのです。 サントハイム国王にとっては、一つだけ救いがありました。 それは、今のところ二人の関係はクリフトの片想いであるということ、そし てクリフトは自分が一介 の神官であるということからその想いを内に秘めていた事、でした。 そして2人と旅をともにしたブライから、 「どうもクリフトは姫がいずれはよその王室の王子あたりと結婚する事にな るだろう、それならそれでもいいと思っているらしい」、 という話を聞いていました。 が、今はそうでも、いずれどうなるか解らない。いつの間にかクリフトはサ ントハイム国王にとって扱いにくい人物になっていたのでした。 ならば早めに手を打っておこう、と国王は決断しました。 その決断とは、クリフトをサントハイム城内の教会から他の教会に行かせて しまおう、ということでした。クリフトは若いながら神官としての能力はか なりのものでしたから、他の国からもクリフトは引く手あまたの存在となっ ていたので、引き抜きの話もいくつか来ていましたから、その話の一つに乗 ってクリフトがいなくなったあとはゆっくりとアリーナの縁談を進めれば… と画策したのでした。 もちろん、クリフトにとっては「栄転」になるような行き先を選んで…。 数カ月後、クリフトが次の赴任地へ旅立つ事にきまりました。クリフトは 「このままサントハイムにいたところで姫への想いはかないそうにないし」 と割りに冷静でしたし、アリーナはアリーナで「淋しくなるけど幼馴染みと 別れる事になる。けどまたいつか会えるし」位にしか思っていなかったので すが、クリフトがサントハイムを離れる日が近付くにつれて、アリーナの気 持ちは少しづつ揺れてくるのでした。 そして…、クリフトがサントハイムを離れるその日…、アリーナは呆然と彼 を見送るのでした。 クリフトを見送ったあと…、自分の部屋に戻るとアリーナはベッドにもぐっ てしまいました。 「なんでこんな気持ちになるのよぉ!なんでこんな心の中がからっぽになっ たような感じになるのよぉ!」 そんなアリーナ姫の様子についてへ、サントハイム城内の人たちは、「急に 幼馴染みと別れる事になって淋しいんだ」くらいに思っていたのですが…。 もちろん、アリーナ本人も…。 クリフトが去ったあとのサントハイム城は、これまでと変わらないように見 えました。 ただ、アリーナの様子が、何か無理しているような感じである事を除いて。 今日もアリーナは一人でぼんやりと部屋で考え事をしていました。 「もしかして…、私…、クリフトの事を…?」 それはクリフトが原因不明の病で倒れたとき、ふっと一瞬頭をもたげた感情 でした。そのときは勇者たちが持って来たパデキアの根っこのおかげでクリ フトが回復し、それ以来忘れていた感情だったのですが…。 その感情は日を追うごとに強くなっていき、アリーナは部屋にこもる事が多 くなりました。 そんなアリーナを見てサントハイム国王も心配しだしました。 城下の人々も同じでした。いつもの元気なアリーナ姫が見られない…。 皆心配しだしたのでした。 ある晩のこと 「私、クリフトの事、好きだったんだ…」 すでにその気持ちはアリーナの中で揺るぎないものになっていました。 思えば、クリフトは、自分が幼少の頃からいつも必ずそばにいた… 私が危ない目にあうと、いつもクリフトが助けてくれた… デスピサロを倒す旅をしているときもそうだった… いつもは頼りないのに、いざというときに助けてくれたのがクリフトだっ た…。 あまり身近すぎる存在だったので、一人の異性として考えた事なかったっ け…。 もうクリフトはこの城を離れて遠くの国の教会でお勤めを果たしているんだ ろうな…。 今頃クリフト、どうしているんだろ…。 会いたい…けど、いつ会えるんだろう…。もしかするとこのまま会えないの かな…。 ……あの頃に戻りたいよ…。 アリーナは月明かりだけに照らされた自分の部屋でひとり涙するのでした。 アリーナの部屋の窓からは、サントハイム城の裏手にある、頂上に1本の木 が立つ丘が見えました。 そこは昔、アリーナとクリフトがよく遊びにいっていた丘…。 私はその木にに登って…、高い所が苦手なクリフトはおろおろしながら下か ら眺めてたっけ… 何度か私ってば、その木から落っこちてケガしたりして、一緒にいっていた クリフトがよく怒られてたっけ… 楽しかったな……あの頃は…… そんな事を考えながらベッドに寝そべりながら窓の外をぼんやり眺めていた のですが、 「……………!」 はっとしてベッドから起き上がると、とるものもとりあえずアリーナは部屋 から飛び出していきました。 丘の上に人影らしきものを見たのでした。 それも見覚えのある… 「クリフトっ!!」 丘の上にいたクリフトははっとして声のした方を振り向いた瞬間、猛然と走 って来たアリーナの勢いに押されてそのまま後ろにひっくり返されました。 「あ…、え…、ひ…姫?」 「…クリフト…、会いたかったよ…」 クリフトは何が起きたのか頭の中の整理がつかないままでした。 …少しして、アリーナが落ち着きをとりもどすと、 「…どうして、クリフトが…、ここに…?」 クリフトは自分が何をしていたかを口にだすのがちょっとためらわれたので すが、ひと呼吸置いてこう言いました。 「気になったのです…、姫様のことが…。私がサントハイムを去るとき姫様 の様子がおかしかったものですから…。異動してからずっと気になって仕方 がなくて、意を決して今日の勤めを終えたあとルーラで飛んできて様子を見 にきたのです…。この丘からなら少しは姫様の様子が解るかもしれないと思 って…。すみません、迷惑でしたよね、すぐ帰ります…」 「待って…!私、クリフトにいっておきたい事が…」 「……………」 「……………」 「……………」 二人の間には永遠とも思えるような長い時間が流れました…。そしてアリー ナがその沈黙を破ってとぎれとぎれに… 「……………私……、クリフトと……、離ればなれに……なって……、 気が……ついたの……。私……、クリフトの事が……」 「待って下さい!」 アリーナが次の言葉を発しようとしたその時、クリフトは次の言葉を言 わせまいとアリーナの口を手でおさえました。 「んぐ…。な、何するのよクリフト!」 「…そこから先は…、…私から言わせて下さい…。」 その少しあと、月明かりに照らされた丘の上の二つの影が一つになるのを 見つめる視線がサントハイム城にあるのでした。 その人物は、一人でこう呟くのでした。 ああ、結局あの二人はおさまる所におさまったか…儂は喜んでいいんだか 困った方がいいんだか… 二人が幼少の頃から面倒をみてきて、あの旅のとき生死をともにした者とし ては喜んでいいんじゃろうな…。
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ジャスティン・ヒースクリフをお気に入りに追加 ジャスティン・ヒースクリフのリンク #bf Amazon.co.jp ウィジェット ジャスティン・ヒースクリフの報道 フラワー・トラベリン・バンド、スピード・グルー&シンキなどニューロック期のアルバム9作が再発 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE ジャスティン・ヒースクリフとは ジャスティン・ヒースクリフの半分は愛で出来ています。ジャスティン・ヒースクリフの27%は汗と涙(化合物)で出来ています。ジャスティン・ヒースクリフの13%は欲望で出来ています。ジャスティン・ヒースクリフの7%は乙女心で出来ています。ジャスティン・ヒースクリフの3%は野望で出来ています。 ジャスティン・ヒースクリフ@ウィキペディア ジャスティン・ヒースクリフ Amazon.co.jp ウィジェット 掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ ジャスティン・ヒースクリフ このページについて このページはジャスティン・ヒースクリフのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるジャスティン・ヒースクリフに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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アポクリフォート・キラー(OCG) 効果モンスター 星10/地属性/機械族/攻3000/守2600 このカードは特殊召喚できず、自分フィールドの 「クリフォート」モンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。 (1):通常召喚したこのカードは魔法・[[罠カード]]の効果を受けず、 このカードのレベルよりも元々のレベル またはランクが低いモンスターが発動した効果も受けない。 (2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、 特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。 (3):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。 相手は自身の手札・フィールドのモンスター1体を墓地へ送らなければならない。 アポクリフォート クリフォート補助 モンスター効果耐性 モンスター破壊 地属性 最上級モンスター 機械族 罠耐性 能力弱化 魔法耐性
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クリフトとアリーナの想いはPart7 169 :【ルーシア】1/7 ◆XJ3Ut0uuQQ :2007/03/16(金) 13 20 58 ID +sx+E7nd0 「きゃー、クリフトさん、見てください、あの青くてプルプルしてるのはなんですかあ?」 「またかよ、勘弁してくれよ…。」 ルーシアの歓声に、御者席に座っていた勇者は頭を抱えて呟いた。 一行が世界樹の上で拾った、ルーシアと言う天空に住む少女。 羽を痛めて天空に戻れないという彼女を連れて、地上に降りたのは数日前のことだった。 地上に降りるのが初めてと言うルーシアは、見るもの全てが珍しいらしく、 馬車から頭を突き出し、何かに目を止めては馬車を降りて走り出す。 天空の塔に入るために必要という天空の装備を揃えるため、海鳴りの祠に向かう一行であったが、 その道行きは、遅々として進まなかった。 ルーシアの声に、勇者以外にもう1人、不機嫌そうに眉根を寄せた者がいる。 アリーナだった。 旅の仲間達は、ここ数日のルーシアの止め処もない質問の嵐に疲れて、 ルーシアに何かを聞かれても、適当にあしらうようになっていたのだが、 クリフトだけは、生来の生真面目な性格故、根気良くルーシアの質問攻めに付き合っていた。 自然、ルーシアも、クリフトにもっぱら話しかけるようになる。 今では、クリフトはルーシアにつききりの状態となっていた。 今も、 「ああ、あれはスライムですよ。世界樹にはいないんですか。 弱いですが、一応モンスターですから、余り近くによってはいけませんよ。」 「ええ~、あれ、モンスターなんですかあ。あんなに可愛いのに~。」 ルーシアの言葉に、クリフトがクスクス笑う声が聞こえてくる。 「スライムが可愛いなんて、ルーシアは面白いことを言いますね。」 アリーナが馬車の後ろを振り返ると、クリフトがルーシアの頭をぽんぽんと叩いていた。 アリーナは思わす、馬車を飛び降り、2人の元に駆け寄った。 「クリフト!こんなにしょっちゅう馬車を止めてたら、全然前に進まないじゃない!」 いつになくきつい語調のアリーナに、クリフトは驚いたような顔をした。 ルーシアも怯えたようにクリフトの後ろに隠れる。 それを見て、アリーナは眉間の皺を深くした。 「皆が待ってるんだから、早くして!」 投げ捨てるように言うと、アリーナは2人から顔を背け、その場を足早に立ち去った。 「アリーナさんは、どうしてあんなに怒ってるんですかあ。」 ルーシアの不思議そうな声を背中で聞きながら、 アリーナは、それが知りたいのは自分の方だと思った。 アリーナ自身、何故、ここのところ自分がこんなに苛々するのか、理由が分からなかった。 しかし、この苛々があの天空の少女に関係していることだけは、何となく分かる。 彼女が一緒に旅するようになってから、どうも気分が良くない。 ―――あの子が、ああやって皆に迷惑をかけるからだわ。 アリーナは自分自身にそう言い聞かせた。 結局、その日はほとんど前に進まないままに、一行は森のそばで足を止めた。 「へえ~。シチューはこうやって作るんですかあ。」 夕食の準備をするクリフトの隣に、ルーシアがへばりついていた。 いつもであれば、夕食の準備をするクリフトの隣はアリーナの特等席であり、 クリフトを手伝いながら(と言っても、ほとんど手伝いになっていないのであるが)、 その日にあったことを色々とおしゃべりをするのはアリーナの楽しみの一つだった。 しかし、ルーシアが来てからは、アリーナが割り込む隙間がない。 アリーナは仕方なく、不機嫌のオーラを漂わせながら、ミネアと一緒に食器を並べていた。 周囲の仲間達は、そんなアリーナを腫れ物を扱うように遠巻きにしていたが、 アリーナは仲間の反応にも気づかず、クリフト達の会話に一心に耳を済ませていた。 「天空人は、ホントは、食べ物を食べる必要はないんですよお。 でも、単に楽しみとして食事をすることはあるんです。」 クリフトさんのお料理はおいしいから、つい私も食べちゃいます、というルーシアに、 クリフトは「それは光栄ですね。」と嬉しそうに笑った。 アリーナは、その笑い声を聞いた瞬間、手にした食器を地面に叩きつけた。 木でできた食器は、壊れはしなかったものの、大きな物音に皆が驚いて振り返る。 アリーナは、自分の行動に自分でも驚いたが、ルーシアを睨むと声を張り上げた。 「何よ、食べなくてすむんだったら、食べないでよ! 食べ物がいつもいっぱいあるわけじゃないんだから!」 アリーナのいつにない乱暴な態度に、クリフトが叫んだ。 「姫様!」 その厳しい声音に、アリーナは思わず身構えたが、反抗的な目でクリフトをにらみ返す。 クリフトはそれを見てため息をつくと、ルーシアに、 「少しの間、この鍋を見ていてくれますか?」 と言い置くと、アリーナの方を向いた。 「姫様…。ちょっとこちらに。」 アリーナは、頬を膨らませると、しぶしぶクリフトに付いて行った。 皆から離れると、クリフトは静かな声でアリーナに尋ねた。 「姫様、最近、一体どうなされたのですか?」 「…。」 「確かに、ルーシアは、何かと我々とは相容れない部分があるかもしれませんが、 地上人ではないのですから、多少は仕方ないじゃありませんか。」 アリーナは、相変わらず頬を膨らませたままだったが、ふとあることに気がついた。 「クリフト…。何でルーシアを呼び捨てにするの?」 クリフトが女性を呼び捨てにするのは非常に珍しいことだ。 クリフトはアリーナの質問に面食らったような顔をした。 「姫様、私の話を聞いて…。いえ、ルーシアの呼び名の件は、 彼女がそう呼んで欲しいというものですから。」 天空では、皆から呼び捨てにされていたので、他の呼び方をされると寂しいらしいんですよ、 と優しい目をしていうクリフトに、アリーナの中の苛立ちが再び顔を覗かせる。 「だったら、もし、私が呼び捨てにして欲しいって言ったら、 クリフトは私のこと、呼び捨てにしてくれるの?」 「な、何をおっしゃるんですか。そんな畏れ多いこと、とんでもありません。」 ぶんぶんと物すごい勢いで手を振るクリフトに、アリーナはいつになく距離を感じた。 ―――今まで、クリフトを遠くに感じたことなんかなかったのに…。 まるで、ルーシアが、自分に取って代わってしまったかのようだ。 アリーナは、じわりと目の奥が熱くなって下を向いた。 そのとき、遠くから能天気な声が聞こえてきた。 「クリフトさーん、お鍋、焦げてますけど~。」 ほてほてとこちらに向かってくるルーシアに、クリフトは額に手をやった。 「ルーシア…。『見ていて』というのは、そういう意味ではないんですが…。」 と、クリフトの額に当てた手がそのまま止まる。 アリーナも、はっと顔を上げた。 2人のそばまで来たルーシアは、不思議そうな顔をして2人を見たが、次の瞬間、 アリーナに突き飛ばされた。 「きゃあ、何するんですかあ!」 アリーナは、ルーシアの前に立つと、背中でルーシアに声をかけた。 「そのまま、立たないで!向こうの木まで這って移動して!」 既にクリフトは、アリーナの横で剣を構えている。 2人の視線の先を追ったルーシアは、ブルホークの集団が森から現れたのを見てとった。 「うわわ、これもまた、初めて見るモンスターですね…。」 のん気に呟くルーシアに、アリーナが叫ぶ。 「ルーシア、早く!クリフト!」 アリーナの声に、クリフトが、はい!と答えてスクルトの呪文を詠唱する。 防御の光が完成すると同時に、アリーナは前に飛び出した。 その隙にクリフトはルーシアを抱えて、ほとんど放り出すように木の陰に置いた。 「いたた。乱暴ですねぇ。」 ルーシアの抗議に全く耳を貸さず、クリフトは踵を返すとアリーナの元に走り寄った。 「姫様!」 ブルホークの鋭い角で怪我をしたアリーナにすかさずべホイミをかけると、 クリフトは手近の1頭を剣で切り倒した。 回復したアリーナが再び前に出てブルホークの横面を蹴り飛ばす。 アリーナが奮闘している後ろで、クリフトは左手を掲げ、死の呪文の詠唱を始めた。 「闇の遣い魔達よ、我が呼び声に答えよ…。」 クリフトの左手に黒い気が溜まる。 クリフトがアリーナに声をかけた。 「姫様!」 それに応じてアリーナがクリフトの横に飛びずさった。 「ザラキ!」 魔物達は、一瞬にして灰となった。 ふう、と肩で息をつく2人の後ろから、ぱちぱちと拍手が聞こえた。 「すごいすごい、お2人は、ものすごく息が合ってるんですね~。」 ルーシアがはしゃいだように手を合わせている。 「もしかして、お2人は恋人同士なんですかあ?」 ルーシアの無邪気な質問に、剣を背中に収めていたクリフトが固まった。 「な、な、な、な、何を!?ルーシア、あなたは…。」 パニックに陥っているクリフトに、ルーシアはのほほんと首を傾げてみせる。 「ええ、違うんですかあ?だって、あんなに息がぴったんこなのに…。」 アリーナも何となく自分の頬が熱くなっているのを感じ、クリフトを見上げた。 クリフトは、赤くなったり青くなったりしていたが、アリーナに見上げられ、 飛び上がるように背筋を伸ばすと、 「そ、そうでした、シチューが焦げてるんですよね!鍋を見に行かないとっ!」 と叫び、焚き火に向かって脱兎のごとく駆け出した。 「へんなクリフトさんですねぇ。」 首を振るルーシアに、アリーナが慌てて言い訳をする。 「あ、あのね、ルーシア、別に私とクリフトは恋人なんかじゃないよ。」 「ええ、そうなんですかあ?でも、お2人の間には、他にはない強い絆が見えますよお。」 天空人の私には分かるんです、と胸を張るルーシアを、アリーナは疑わしそうに見つめたが、 それでも、ルーシアの言葉はアリーナの胸にほんわりと暖かく広がった。 ―――強い絆、かあ。 何となく、頬が緩んでくるのが分かる。 さっきまでルーシアに感じていた苛立ちも、何故か嘘のように消え去ってしまったようだった。 それからというもの。 「アリーナさん、見てください~!すごいきれいなお花ですう!」 「わあ、ホント!ねえ、クリフト、これで花冠作れそう!?」 ルーシアの行動にアリーナが便乗するようになり、旅の進行はさらに遅れることになった。 「何なんだよ、あいつら…。アリーナ、一体どういう風の吹き回しなんだ?」 勇者は御者台の上で胡坐をかいて、花冠を作り始めた3人を眺めていた。 その後ろから、マーニャが顔を出した。 「大方、クリフトに『姫様が一番大事です』とか何とか言われたんじゃないの?」 いつものことじゃない、と笑うマーニャに、 「ったく。まあ、この前みたいにピリピリされるよりはいいけどさ…。」 旅が進まねえんだよなあ、と勇者はため息をついた。 その後、何とか天空の塔までたどり着き、いろいろあったが、一行は、 ルーシアと別れを告げ、再び旅を続けることとなった。 のべつ幕なしに歓声を上げていたルーシアがいなくなり、一行の日常は元に戻ったが、 「何だか、あの『見てください~!』が聞こえないと、妙に静かに感じるわね~。」 伸びをしながら言うマーニャに、クリフトがうなずいた。 「いなくなってはじめて、人の良さってわかるものですね。 いえ、ルーシアは一緒にいるあいだも ちゃんといい子でしたけど。」 慌てたように付け加えるクリフトに、マーニャがニヤニヤと笑った。 「あんたは大変だったものね~。ルーシアに付きまとわれたおかげで、 大好きな姫様のお世話もロクにできなくてさあ。」 マーニャの言葉に、クリフトが真っ赤になる。 クリフトの隣にいたアリーナも、一緒になって赤い顔をした。 マーニャは面白そうに、赤くなった2人の顔を見比べた。 「ホントに面白いわね、あんた達。いいから、ほら、アリーナ。 これからはゆっくりクリフトに世話を焼かせて上げなさい。」 マーニャはアリーナをクリフトに向かって押し出すと、 あとはごゆっくり~と手を振って馬車に戻って行った。 後に残された2人は、しばらく気まずそうに突っ立っていたが、 クリフトがコホンと咳払いをすると、アリーナに話しかけた。 「姫様…?陽気も良いようですし、しばらく、馬車を降りて歩きますか…?」 アリーナは、顔を上げると、目を輝かせてうなずいた。 「うん、クリフト、一緒に歩きましょ!」 「ああ、でも、一応マントはお召しくださいね、それから飲み水も持った方が…。」 クリフトが忙しそうにバタバタと用意を始める。 それを見て、アリーナは嬉しそうに笑った。 ついこの前までは、クリフトに細々と世話を焼かれることを、何となくうるさく感じていた。 でも、今は、クリフトがいろいろと構ってくれることが、こんなにも嬉しい。 ―――私とクリフトは、強い絆で結ばれているんだから…。 ―――いつまでも、一緒に歩いて行こうね、クリフト。 アリーナは、心の中でそっとクリフトに呼び掛けた。
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登録日:2011/02/05(土) 21 16 42 更新日:2024/07/02 Tue 18 37 50 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 Thousand Eyes Bible -千眼の魔術書- アルティメットレア サウザンド・アイズ・サクリファイス サクリファイス ペガサス・J・クロフォード 元禁止カード 原作出身 吸収 星1 融合 融合モンスター 装備カード化 遊戯王 遊戯王OCG 遊戯王ボスキャラ 邪眼 闇属性 魔法使い族 ハロー、ボーイズ&ガールズ!! この項目では私のカード、サウザンド・アイズ・サクリファイスについてお教えしマース。 若干のネタバレを含むので注意して下サーイ。 それではまずは、原作における活躍デース。 王国編最終戦において私と激突した遊戯ボーイ……。 千年眼のパワーとトゥーンの魔力により遊戯ボーイを圧倒した私でしたが、闇遊戯ボーイと表遊戯ボーイの人格を入れ替える妙技「マインド・シャッフル」によって攪乱され、トゥーンを攻略されてしまいマシタ……No〜ォォォ。 しかし、私はすぐさま闇のゲームを展開、第2の切り札サクリファイスを儀式召喚し表遊戯ボーイのマインドを戦闘不能にしまシタ。 表遊戯ボーイのマインドが消えていくのがわかりマス……。 そして、サクリファイスとタイム・ボマーの生け贄コンボで、孤立無援の闇遊戯ボーイを倒すかに見えましたが、Oh-no! ここでアクシデンツ!! なんと遊戯ボーイの仲間の心が立ちはだかり、マジシャン・オブ・ブラックカオスの儀式召喚を許してしまったのデース。生け贄コンボもかわされてしまいマシタ……。 そこで私は、もうサクリファイス単体では通用しないと考え、サクリファイスと千眼の邪教神を融合させマシタ。サウザンド・アイズ・サクリファイスの誕生デース! 最上級魔術師の降臨という予期せぬ事態に、満を持して登場したのが私の更なる切り札、サウザンド・アイズ・サクリファイスなのデース。イッツ・ア・ファンタスティック!! しかも、サウザンド・アイズ・サクリファイスはサクリファイスの能力であるモンスター吸収の邪眼に加え、相手モンスターを永続呪縛に陥れる千眼呪縛の能力を持っているので、いかに最上級魔術師と言えどもひとたまりもありまセーン。 クリボー? 眼中にすらありませんネー。 千眼呪縛でマジシャンとクリボーの動きを封じた今、遊戯ボーイに打つ手はありまセーン。 さあ最上級魔術師を取り込むのデース!! 「フフ…それはどうかな……」 「エ……!!」 アンビリーバボォー!! 遊戯ボーイはリバースカード、増殖を発動したのデース。マジシャンを吸収するハズが無数のクリボーを吸収してしまいまシタ。しかもクリボーの隠された能力、機雷化が発動してしまい、サウザンド・アイズ・サクリファイスの呪縛の千眼が全滅デース! オーマイガー!! …………こうして千眼呪縛を失い、0という最低攻撃力を晒したサウザンド・アイズ・サクリファイスは、最上級魔術師の攻撃に破壊され私は遊戯ボーイに敗北してしまったのデース……。 以上が原作におけるサウザンド・アイズ・サクリファイスの活躍デース。負けはしまシタガ王国編ラスボスに相応しいカードだと自負していマース。 ちなみに変身前のサクリファイスともども、「遊戯王」シリーズのラスボスのエースカード恒例の「攻撃力・守備力とも0だが効果が凶悪」というパターン、および「複数の召喚法を組み合わせて呼び出すモンスター」のハシリとなったカードでもありマース。 ちなみにアニメオリジナルのドーマ編では孔雀舞戦で再登場しマシタ。 「ハーピィズペット竜」を装備して優位に立ったまではよかったのデスが、「ハーピィ・レディ-鳳凰の陣-」で破壊された上にバーンダメージを食らってまたしても敗北を喫してしまいマシタ……。 サクリファイスもそうなのデスガ、耐性がないのが痛いデース。 次は、オフィシャルカードゲームにおけるサウザンド・アイズ・サクリファイスデース。 ステータスは以下の通りデース。 融合・効果モンスター 星1/闇属性/魔法使い族/ATK 0/DEF 0 「サクリファイス」+「千眼の邪教神」 このカードがフィールドに存在する限り、他のモンスターは表示形式を変更できず、攻撃宣言もできない。 相手モンスター1体を指定してこのカードに装備する(この効果は1ターンに1度しか使用できず、同時に装備できるモンスターは1体のみ)。 このカードの攻撃力・守備力は装備したモンスターの数値になる。 戦闘によってこのカードが破壊される場合、かわりに装備したモンスターが破壊される。 吸収能力が1体までになった点は原作より弱体化した点デスガ、千眼呪縛は見事に再現されていマース。自分モンスターも攻撃できないのは難点デスガ、サウザンド・アイズ・サクリファイスで攻撃すれば問題ありまセーン。 サクリファイスにあった戦闘ダメージ共有効果が失われているのが残念なところデスネー。 ちなみに9期のデュエリストパック-王の記憶編-での再録時にテキストのフォーマットが以下のように変わっていマース。 融合・効果モンスター 星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0 「サクリファイス」+「千眼の邪教神」 (1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、 このカード以外のフィールドのモンスターは表示形式を変更できず、攻撃できない。 (2):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。 その相手モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する(1体のみ装備可能)。 (3):このカードの攻撃力・守備力は、このカードの効果で装備したモンスターのそれぞれの数値になり、 このカードが戦闘で破壊される場合、代わりに装備したそのモンスターを破壊する。 吸収能力が対象を取る効果であることが明文化されてマース。また、以前のテキストではフィールドに存在する限りとあったのが、モンスターゾーンに存在する限りとなり、わかりやすくなりマシタ。 さて、このカードデスガ……OCG化した当初は融合サポートやサーチカードの少なさ、千眼の邪教神の非力さなどがあり非常に出しにくく、多くのデュエリストは見向きもしなかったそうデース。私が使ったカードナノニ…… しかし、「突然変異」や「魔導サイエンティスト」の登場により、出しにくさは改善。使用者が徐々に増えてきたそうデース。さすが私のエースモンスターデース。 更に、召喚・リバース時に場のモンスター1体を裏側守備にするスピリットモンスター、月読命の登場で毎ターン相手モンスターを吸収するコンボが可能になりマシタ。 また闇属性の月読命は、光属性のレベル1(レベル1はサウザンド・アイズ・サクリファイスに突然変異できマース)で魔法カードのサルベージ能力を持つ聖なる魔術師と共に、凶悪な効果を持つカオスに無理なく採用できたのデス。 サウザンド・アイズ・サクリファイスなど強力な融合モンスターとカオスシリーズを混合したデッキ「変異カオス」は猛威をふるったヨウデスネ。 しかし、この頃になるとサウザンド・アイズ・サクリファイスは、相手モンスターの除去手段の1つに成り下がってしまい、単体で活躍することはなかったといいマース。 他の強力カードのせいデスネ……「インチキ効果もいい加減にしろ!」とはよく言ったものデース。 最終的に、突然変異、魔導サイエンティスト、月読命、聖なる魔術師、カオスなどは禁止カードとなり「変異カオス」は消滅しまシタ。 これだけなら良いのデスガ、サウザンド・アイズ・サクリファイスも禁止カードになってしまったのデース。 レベル5以下の融合モンスターを特殊召喚する簡易融合、蘇生カードの増加、相性が良すぎるエクシーズ等、かつてより利用手段が増加。禁止解除は絶望的とも言われたほどデース。 バーット、エクストラデッキの上限、ノーデンの存在、何よりもカードパワーの上昇などから、解除すべきとの声もありマシタ。 この論争の一端はコメント欄で見ることができマース。 デスカラ私のファンデッキを作るデュエリストは少々不満足かもしれまセンネー。 でも、トゥーンがあれば満足デース☆ とか何とか言っていたら、2016年4月1日付けで晴れて制限復帰したのデース! その3ヶ月後には準制限、そして10月にはとうとう無制限に返り咲きまシタ! 今や何の耐性を持たないのが玉に瑕デスが、簡易融合1枚でお手軽召喚出来る上、金華猫デノ吊り上げや豊富な闇属性・低ステータスサポートを受けられる為、非常にフットワークの軽いモンスターとして活用出来マース☆ もっとも、現環境は攻撃以外の除去手段が豊富なので、考えなしに使用しても排除される可能性が濃厚デース。 「安全地帯」と組み合わせるのがベターな防御手段デスが、バウンスや除外がメジャーな現在はそれでも安心しきれマセン。このカードに限ったことではありマセンが、カステルやトリシューラは天敵デース。 実際、制限復帰から制限解除まで半年しかかかっていマセンが、環境の変化により攻撃抑制効果が全くロックとして機能しなくなっていたのが理由だそうデース。確かに青眼の亜白龍なんかには一発で突破されてしまいマスネ。 そして時は流れて2017年、なんとこのカードがリメイクされることが決定したのデース! 《ミレニアム・アイズ・サクリファイス》 融合・効果モンスター 星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0 「サクリファイス」+効果モンスター (1):1ターンに1度、相手モンスターの効果が発動した時、 相手のフィールド・墓地の効果モンスター1体を対象として発動できる。 その相手の効果モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。 (2):このカードの攻撃力・守備力は、このカードの効果で装備したモンスターのそれぞれの数値分アップする。 (3):このカードの効果で装備したモンスターと同名のモンスターは攻撃できず、その効果は無効化される。 身代わり効果がなくなった上、吸収効果も効果モンスター限定、かつその効果が発動した時となっていマース。 簡易融合で出せるのも同じデスガ、こちらは融合素材が名称指定から効果モンスター全般となっているため、融合素材代用モンスター+金華猫で出せるのが強みデース。 中でもパラサイト・フュージョナーは金華猫での吊り上げからすぐに融合召喚出来る為、非常にベストマッチなカードデース。 サウザンドとの違いは、効果モンスターの効果発動をトリガーとする誘発効果になったため、相手のターンでも吸収効果が使えるという点デース。強制の誘発効果持ちがターゲットとなるので、ラヴァ・ゴーレムなどとコンボするのがベターデショウ。 しかし、最大の利点は《見切りの極意》や《墓穴の指名者》と同様の裁定にありマース。 三つ目の効果による「装備モンスターと同名のモンスターは攻撃できず、効果が無効になる」という部分。これは、装備したモンスター自体も当然含まれマース。つまり、《灰流うらら》《エフェクト・ヴェーラー》などの「手札から捨てて発動する」誘発効果持ちに対しては、コストとして墓地に送られたそのカード自体を吸収して妨害を踏み潰せるのデース! グレイト! 相手も相手で、ミレニアムがいるのが見えていてそれらのカードを使うことはまずないので、抑止力としての働きになりマース。 ただし、吸収は1ターンに1度なので、タイミングには注意デース。 単体ではリメイク前より少々使いづらいのデスガ、同時収録のサポートカードが補っていマース。 《サクリファイス・フュージョン》 速攻魔法 このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 ① 「アイズ・サクリファイス」融合モンスターカードの融合素材モンスターを自分の手札・フィールド・墓地から除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。 ② 自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。 自分フィールドの「アイズ・サクリファイス」融合モンスターまたは「サクリファイス」1体を選び、その効果による装備カード扱いとして対象の相手の効果モンスターを装備する。 召喚補助+効果発動補助と至れりつくせりの速攻魔法デース。 また、このカードとミレニアムの登場により、アイズ・サクリファイスという新たなカテゴリが誕生していマース。 素材さえあれば墓地からもアイズ・サクリファイスを呼び出せるのデ、奇襲性は十分デース。ただし、通常の融合と違い素材を除外するのは注意が必要デース。 さらには、闇のゲーム開始時に私の一番手を飾った《ダーク・アイズ・イリュージョニスト》も手札誘発のサポートカードとしてリメイクされてマース。 《ミレニアム・アイズ・イリュージョニスト》 効果モンスター 星2/闇属性/魔法使い族/攻 0/守1400 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 (1):このカードを手札から捨て、 相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。 自分フィールドの「アイズ・サクリファイス」融合モンスターまたは「サクリファイス」1体を選び、 その効果による装備カード扱いとして対象の相手の効果モンスターを装備する。 この効果は相手ターンでも発動できる。 (2):フィールドに「アイズ・サクリファイス」融合モンスターまたは「サクリファイス」が特殊召喚された場合に発動する。 墓地のこのカードを手札に加える。 リメイク前と異なり守備力が1400になりマシタ。デザインとしては全身が金色になり、ウジャトの眼はやっぱり千年眼デース。 肝心の効果デスガ、手札誘発と墓地からのサルベージ効果デース。これらの効果が上2枚と強いシナジーを持っており、サポートとして非常に優秀デース。相手の効果発動を待つこともなく、効果モンスターが出てきた瞬間に吸い込めマース。 もちろん、ミレニアム・アイズが出た時点で相手にも狙いは筒抜けなので、このカードの存在をチラつかせて牽制するのが主な仕事になるデショウ。 《黄金の邪教神》 効果モンスター 星1/闇属性/魔法使い族/攻 0/守 0 このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。 (1):自分・相手ターンに1度、発動できる。 相手の手札を全て確認する。 このカードのカード名はエンドフェイズまで「千眼の邪教神」として扱う。 (2):このカードが除外された場合、または効果で墓地へ送られた場合、 相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。 その効果モンスターを自分フィールドの通常召喚できない「サクリファイス」モンスター1体に装備する。 この効果でモンスターを装備している限り、 その攻撃力分、装備モンスターの攻撃力はアップする。 PRISMATIC GOD BOXにて千眼の邪教神もリメイクされマーシタ。このモンスターも全身が金色でウジャトの眼はやっぱり千年眼デース。 マインドスキャンしながら「千眼の邪教神」になる効果と自身が除外or効果で墓地に送られた場合に相手のモンスターをサクリファイスモンスターの装備カードとして吸収させマース。 通常のサクリファイスの儀式召喚のリリース若しくは融合サクリファイスの融合素材として使うだけでサクリファイスを出しつつ吸収効果が使えマース。 バット…マインドスキャンしなければ「千眼の邪教神」にならないので手札融合ではサウザンドアイズ・サクリファイスの素材に出来ないのと、リンクモンスターであるサクリファイス・アニマのリンク素材にした場合は吸収効果が使えない事、サクリファイス・フュージョンと違い「サクリファイスモンスターの効果」扱いでの装備ではないのでダメージの押し付けや身代わり・同名カードの攻撃制限と効果無効化は使えないので注意が必要デース。 ちなみにこれは完全なネタデスが、 「サモン・ゲート」というエクストラからの特殊召喚を制限する永続罠がありマース。 これのイラストは収容所らしき場所から大きな荷物を持ったサウザンド・アイズ・サクリファイスが出ていくというものなのデスガ、 見送っている=まだ捕まっているのが旧神ノーデン、Emヒグルミ、No.16 色の支配者ショック・ルーラー、そしてゴヨウ・ガーディアンという面々デース。 どうやら、この収容所は禁止カードのモンスターを閉じ込める場所のようデース。実際、このカードが出たのはサウザンド・アイズが制限復帰した三か月後の2016年7月なので、たぶんそのネタだと思われマース。 見送る面々は「何でお前だけ」と怒っているのデスガ、ゴヨウ・ガーディアンだけ寂しそうデース。 この2体は「召喚制限-エクストラネット」というフィールド魔法のイラストで一緒に捕まっているので、その縁で仲が良かったのデショウ、きっと。 リチュアやガスタに限らず、モンスターの世界でも色々あるようデース。 ちなみにゴヨウ・ガーディアンも2017年には無制限となり社会復帰してマース。 その7年後、Emヒグルミもエラッタされたうえで釈放されたそうデース。 追記・修正はトゥーンと生け贄コンボを破ってからお願いしマース☆ △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] コメント欄が長くなってきたのでリセットしました -- 名無しさん (2016-05-06 23 58 31) サモン・ゲートのサウサクがニッコニコ! -- 名無しさん (2016-07-08 21 12 14) 仮にも王国編ラスボスの最終エースで体中眼球まみれという正真正銘バケモノデザインなのに、サモンゲートやらエクストラネットやらですっかりかわいいマスコットキャラが板についてて笑う -- 名無しさん (2016-07-20 20 08 26) 遊戯王は何がマスコットになるか分かったもんじゃないからな -- 名無しさん (2016-07-22 11 48 01) インフレ進行具合からして禁止解除はまだわからんでもないが、コイツが無制限で許されるって今の遊戯王はどんだけ魔郷なんだ。 -- 名無しさん (2016-10-15 13 50 19) 2、3年前から別段解除されても問題無かったであろう辺りインフレに置いていかれた旧禁止の悲しさよな -- 名無しさん (2016-10-15 22 49 52) 身体中目玉だらけのキモい見た目なのにウジャド眼の部分が笑ってると可愛くしか見えんのよな -- 名無しさん (2016-10-16 03 37 02) まさかの進化系と専用融合…王国編ラスボスモンスターだからいい優遇 -- 名無しさん (2017-09-15 17 37 37) バカな! 既にミレニアム・アイズの情報が追記されているだと!? このペガサスという男…KONAMI社員の思考を読み取っているとでも言うのか! ありえん!そんなオカルトは断じてありえん! -- 社長さん (2017-09-15 17 43 22) もともとキモい姿だったが、ミレニアムになってもはや蓮コラ・・・ -- 名無しさん (2017-09-19 21 48 12) 最近妙に項目が上がってるなーとか思ってたら成る程納得。まさかコイツまでリメイクされるとは。 -- 名無しさん (2017-09-19 21 57 11) ぶっちゃけ今だから言えるが、最近流行りのD-フェニックスガイにかなり刺さっているよなサクリファイスシリーズのカード。 -- 名無しさん (2021-08-11 13 33 17) 眼中になかったクリボーが文字通り眼中に入って致命傷に・・・ -- 名無しさん (2022-11-02 00 57 29) サモン・ゲートのイラストからするに、効果が凶悪なだけでサウサク自身はそんな悪い奴でもなかったりする・・・? -- 名無しさん (2023-12-26 19 48 18) 名前 コメント