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クリフォート・アセンブラ(OCG) ペンデュラム・通常モンスター 星5/地属性/機械族/攻2400/守1000 【Pスケール:青1/赤1】 (1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。 この効果は無効化されない。 (2):自分がアドバンス召喚に成功したターンのエンドフェイズに発動できる。 このターン自分がアドバンス召喚のためにリリースした「クリフォート」モンスターの数だけ、 自分は[[デッキ]]からドローする。 クリフォート クリフォート補助 ペンデュラムモンスター 上級モンスター 地属性 手札増強 機械族
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クリフトのアリーナの想いはPart12.5 94 名前 1/6 Mail sage 投稿日 2012/01/21(土) 02 06 32.41 ID qaQC8ELG0 81ですがGJありがとうございました! また書いたので投下します。 ---------- 「好みじゃないわ」 そういって書類から目を逸らす。目の前ではブライが怒ってる。 「姫様。いい加減にしてください」 「だってヒョロヒョロして、全然強そうじゃないじゃない。 なあに、これ。趣味はチェスだって。つまんない」 私はうんざりしていた。 毎日毎日、ブライはお見合いのことばかり。 求婚されるってのは正直悪い気はしないけど、私はまだ結婚なんてする気はないし、 何よりどの男も弱そうなこと! 「姫様、あなたより強い男などこの世におりません」 「別に、私より強くなきゃダメなんて言ってないわ。 でも、勉強しか出来ないようなタイプは絶対嫌」 「…夫婦揃って脳みそまで筋肉じゃ、サントハイムの将来は暗いですな」 「どういう意味よ」 「姫様。強いのはあなた一人で十分です。夫となる者には、姫様に無い部分を 補える、聡明なものを選ばないと」 「…じゃあそういう人を連れてきなさいよ」 「…いればとっくに紹介しています」 ブライの言いたいことも分かる。だって、私はあまり勉強が得意じゃないし、 お父様の仕事を毎日横で見ているけれど、難しくてよく分からないことも多い。 「強くて頭も良い人かあ…」誰かいたっけ。 … 「うわぁ!」 「わっ!驚かさないでください姫様」 「ご、ごめん」 「姫様?顔が赤いようですが…?熱でもありましたかな?」 「そ、そうかも。悪いけど今日はもう出てって」 ブライは私の部屋を後にした。 ああびっくりした。だって。 いきなりクリフトの顔が思い浮かんだんだもの。 「…」 確かに、クリフトは、けっこう強くなったし、頭もすごくいい。 神官学校は首席で卒業したとか聞いたことあるし、魔法だって一杯知ってるし 私の知らないことを沢山知ってる…けど。 「でも私別にクリフトのことなんて」 ああどうしよう。顔が熱い。 参った。 あれから。クリフトのことばかり考えてしまっている。 難しい書類。クリフトに聞けば分かるかな? クリフトなら、組み手の相手もしてくれるかな? 特訓で怪我してもすぐに治してくれるよね。 ああもう。なんでこんな。 「クリフトのバカ。いきなり頭の中に出てくるから」 「…お呼びですか?」 「ひゃあ!」 急に廊下の角からクリフトが出てきたものだから、私は大声を出してしまった。 「な、何よいきなり!バカ!」 「え、あ、驚かせてしまってすみません…」 うなだれるクリフト。ああもう、そんなつもりじゃ。 「ご、ごめん。違うの。それよりどうしたの、こんなところで」 「ああはい、今朝バザーに用事がありまして出かけたのですが、 異国の焼き菓子を売っているのを見つけまして。 姫様のお好みに合うかと思いまして、いくつか買ってきたのですが」 「お菓子!?」 なにそれ、外国のお菓子?ちょっと気になる。 「もしお時間がありましたら、いらっしゃいませんか?お茶をご用意いたしますので」 「うん!じゃあおやつの時間になったら行く!」 うれしい。どんなお菓子だろう! 「おいしそう」 色とりどりのかわいらしいお菓子を前に、私は目を輝かせた。 「紅茶でよろしいですか?」 「うん」 「マカロン、と言うらしいです。アーモンドで出来たお菓子だそうですよ」 「へえ」 「サランの子どもたちをバザーに連れて行く約束をしたもので。 久しぶりでしたね、姫様たちと行って以来ですので」 「いいなー。私も行きたい」 「では、そのうち行きましょうか」 ドキっとする。それってデートのお誘い? 「2人で行くの?」 「誰か誘っても構いませんよ?」 「…」 そうじゃなくて。何聞いてんだろう私。 「どうぞ」 急に黙った私に疑問を抱く様子もなく、クリフトがお茶を出してくれた。 「ありがとう。じゃ、いただきまーす!」 わ、甘い。美味しい。お茶を一口。 「おいしい!」 「それは良かったです」 クリフトはニコニコしている。 「その赤いのは、フランボワーズで、茶色いのはチョコ、緑はピスタチオ…だそうです」 「わーどれもおいしそう。全部食べていい?」 「どうぞ」 美味しい。嬉しい。お茶もおいしい。しあわせ。 「あ、そういえばさ」 「なんでしょう」 「この間ね、若い女の子たちが集まって、アフタヌーンティ?だかをしたんだけど」 「はい」空のコップにおかわりを注ぎながらクリフトが答える。 「肝心のお茶があんまり好みじゃなかった」 今日のお茶はおいしい、そんなことを思いながら。 「甘いお菓子だと伺っていたので。少し濃い目に淹れてあります。 茶葉も、姫様が確か前に好きだと仰っていた物を」 「あ、そうなんだ。さすが」 感心して答える。 「今までどれだけ姫様にお茶を淹れてきたと思ってるんですか」 クリフトが微笑んで言う。 うわ。なんか。 「…」 私のことよく分かってるみたいな。いや、分かってるんだけど。 「あ、濃すぎました?」 「ううん、ちょうどいいよ」 赤くなった顔を見られたくなくて、下を向いたまま答えた。 それ以来、私は一層クリフトのことが頭から離れなくなってしまった。 幸か不幸か、クリフトは忙しいらしくお城の方に来ることも無い。 私もブライのもってくるお見合い写真を眺めるのに忙しかった。 クリフトのほうがかっこいいとか、 クリフトの方が強そうとか。 クリフトのほうが優しそうとか。 頭に浮かぶのはそんな言葉ばかり。 もうなんでこんなにクリフトのことばっかり! 「もういい加減にして!」 「いい加減にして欲しいのはこっちです」目の前のブライが言った。 ああ忘れてた、ブライ居たんだった。 「そろそろ一人くらいお会いしても良いのではないですかな!」 「…」 だって。そんな時間あるならクリフトに会いに行けるのに。 「ブライ…私やっぱりお見合いなんてしたくないわ」 「そうは言いましても姫様。もうそろそろ結婚していただかないと」 そうだけど。だって。今はこんなに 「クリフトのことばっかり考えちゃうんだもん」 「はっ!?」 「クリフトといるほうが楽しいに決まってるのに、お見合い相手なんかと会いたくない」 「姫様…クリフトと何かあったんですかな」 怒るかと思ったけど、ブライは優しい目をして聞いてきた。 「何も無いよ、別に。ただ私が、勝手にクリフトのことばっかり考えてるだけ」 ブライに何言ってるんだろう私。でもお見合いとかもう真っ平。 「…私どうしちゃったんだろう…」 ほんと、どうしちゃったんだか。 「…それは、クリフトに聞くのが一番ではありませんか?」 「クリフトに?」 「本人にそのまま伝えて来なされ」 ブライは呆れたような、笑ってるような…複雑な顔をして言うと、ブライは部屋を出て行ってしまった。 クリフトに…直接聞く? 「急にどうしたんですか?」 夜、クリフトの部屋を訪れた。随分驚いているようだった。 「ちょっと、聞きたいことがあって」 どうしよう。緊張してきた。 「…どうぞ。」 もうクリフトは寝巻きを着ていて、「こんな格好ですみません」とガウンを羽織った。 「何かありましたか」 何かっていうか。なんて言うか。 「…」 そのまま伝えろと、ブライは言ったけど。 なんていえばいいんだろう。 朝から晩までクリフトのことばかり考えてしまうんだけどなんだろう?って言えばいいの? ダメダメそんなの恥ずかしすぎる! 「…よっぽど深刻なのですね?」 「いや、深刻ってわけじゃ…えと…」 どうしよう…あ、そうだ! 「あ、あのね。ある人のことをね」 「はい」 「あ、ある人ってのはよく知ってる人なんだけど…なんだかその人のことばかり 朝から晩まで考えてしまって!ドキドキして、顔が熱くなっちゃって…」 クリフトの顔が見れない。 「わたし、ど、どうすればいいのかな…?」 そうっと、顔を上げてみる。クリフトが一瞬目を見開いた気がした。 次の瞬間、優しく微笑むと、「そうですか」と答えた。 「その方は幸せですね」 そ、そうなの?ていうかクリフトなんだけど。 「姫様は、その方のことが好きなんですね」 …え? 「きっとそれは恋ですよ、姫様。」 恋…恋!?これが恋!? 顔が赤くなるのがわかる。 クリフトのことばかり考えて、会いたくて、お見合いなんてどうでもよくなっちゃって。 恋。そっか、言われてみれば。 「ク、クリフトは!」 「はい」 「クリフトは恋、してるの…?」 言ってしまって後悔した。どうしよう。怖い。 「私は…そうですね。ずっとお慕いしてる方がいらっしゃいました」 …え。 「ですが、私は神官ですから。そういった感情はもう持たないと決めたのです」 …それは。どういう。 「今後また恋をすることは無いでしょうね」 「そ、そうなんだ」 どうしよう、声が震える。 「あああ、あの、ありがとう、その、教えてくれて。 じゃあ私、もう行くね!」 言い終わると部屋を飛び出した。 そっか、私恋してたんだ。でも、クリフトは。 自分の部屋に飛び込むと、ベッドに突っ伏した。涙があふれてきた。 「クリフト…」 朝が来てるのはわかったけど、気にせず寝ていたら、ブライの怒鳴り声が聞こえた。 「姫様!!!公務をサボる気ですか!!!」 ドアの開く音がして、ドンドン、と大きな足音を鳴らしてブライが入ってきた。 「いい加減にしてください。何時だとお思いで…」 「なによう」 むくりと起きた私の顔を見てブライが絶句した。 「なんですかその顔は」 一晩泣きはらしていたから、きっと目がはれて酷い顔なんだろう。 「ああもう、お客様が見えるというのに…」 「今日は何もしたくない…」 「何を仰いますか!姫様、一体どうしたって言うんです」 どうしたって。 「クリフトが…」 また思い出して、涙があふれてきた。 「クリフトは私のこと好きじゃないの」 「はい?」 「クリフトは私じゃない人が好きで…でも神官だから一生恋もしないの」 最後の方は涙声でグズグズだった。 「そんなアホな」らしくない口調でブライが言う。 「だって、言ってたもん~~~」 涙が止まらなくて大声で泣き続けた。 顔をあげるとブライがいなくなっていた。 「…」 考えてみたら、私、ブライにクリフトが好きだって打ち明けたようなもんだよね。恥ずかしい。 「はあ」 私はこんなおてんばで、クリフトに今までいっぱい迷惑かけてきて。 そうだよね。クリフトが私のこと好きなわけない。 その瞬間、ドアが勢い良く開いて、ブライに蹴飛ばされてクリフトが転がり込んできた。 「もう一度ちゃんと話をしなされ!」 ブライはそう言うとドアを閉めて出て行ってしまった。 え?なに?え? 「ひ、姫様…」 クリフトが起き上がって、真っ赤な顔でこっちを見てる。クリフトの目は腫れあがっていた。 「…な、何?」 クリフトに会えたのは嬉しいけどつらい。 「あ、あのですね…姫様…」 「まったく、世話の焼ける」 扉の向こうから、ブライの声が小さく聞こえた。 .
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プロフィール 職業: デュエリスト LV: 140 最近の趣味: ラテールでLV上げ!!! 好きなラテールBGM: 寺 ひとこと とうとう140になりなすた!!!!!!!!!!!!!! これからジャッジメントを楽しんじゃうんだぜ(´∀`)(。・ ω )ゞ GMからひとこと 140Lvおめでとうございます。 サブクラスとなって新しいラテールの世界観を見ることとなるでしょうね。 一度目標を立てたら必ずこなす、これがクリフさんのかっこいいところですねw (クリ手140%作り上げた天才っていうのはクラスの皆には内緒だy・・・!) これからも頑張ってほしいと思います!
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上級 椿姫ティタルニア ×2 冥府の使者ゴーズ 制限 ギガプラント サイバー・ドラゴン ×2 準制限 下級 ボタニカル・ライオ ×2 ローズ・バード ×2 ナチュル・クリフ ×2 ナチュル・ローズウィップ ×2 ローンファイア・ブロッサム ×2 クリッター 制限 ダンディライオン 準制限 メタモルポット 制限 マシュマロン 制限 マッシブ・ウォリアー コピー・プラント スポーア 魔法 大嵐 制限 サイクロン 制限 精神操作 制限 洗脳-ブレインコントロール 制限 収縮 増草剤 ×2 月の書 手札抹殺 制限 薔薇の刻印 封印の黄金櫃 ×2 準制限 抹殺の使途 罠 激流葬 制限 聖なるバリア-ミラーフォース 制限 リビングデットの呼び声 制限
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《ビザール・サクリファイス》 通常魔法 ①:自分フィールドのモンスターをすべて破壊する。
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クリフトとアリーナの想いはPart8 415 :ガーデンブルグ 1/12 ◆e.sLpeggy2 :2008/01/26(土) 17 43 42 ID QelAnpVz0 ガーデンブルグで泥棒に間違われた勇者一行。 真犯人を探し出す間、人質を差し出せという女王に、当初はアリーナが人質を買って出た。 他の者なら知らず、アリーナだったら、無体な扱いはできないだろうと考えたのだ。 しかし、姫様バカの過保護神官がそれを許すわけもなく、 さんざん揉めた後、結局クリフトが人質として残ることになったのだった。 心配するアリーナに、 「神はいつでも我らを見ておいでです。 我々への疑いが早く晴れることを祈りつつ、ここで待っていますよ」 クリフトは、笑顔で一同を送り出した。 「クリフトってば、今ひとつ危機感てものが欠けてるのよねー。 それとも、意外と肝が据わってるってことかしら?そんな風には見えないけど…。」 南の洞窟で、アリーナが首をかしげてつぶやいた。 「クリフトさんは、アリーナさんに心配かけまいとしてるのよ、きっと。」 ミネアは微笑んだが、マーニャは、ふんと鼻を鳴らした。 「単に鈍いだけじゃないの?あーあ、それにしても洞窟は気が滅入るわ。」 洞窟嫌いのマーニャはさっきから機嫌が悪い。 そのとき、先頭を歩いていた勇者が叫んだ。 「敵だ!逃げるぞ!回り込め!」 3人はいっせいに戦闘体制を取った。 「ああっ、もう何よ! こいつ、完全にクリフト向きの敵じゃないの!」 盗賊バコタと闘いながら、マーニャは切れかけていた。 確かに、スクルト、ヒャダルコを扱い、力溜めで攻撃してくるバコタ相手に、 クリフトのマホトーンとスクルトがないのは少々厄介だった。 「クリフトのヤツ、人がこんな目に合ってるって言うのに自分はのうのうと昼寝して、 絶対許さないんだから!」 「…姉さん、それは、八つ当たりというのよ…。」 ミネアがバギを唱えながら呟くが、マーニャには聞こえていない。 「あのアホ神官、今頃は、シスター達に囲まれてデレデレしてるに決まってるわよ!」 「姉さん、なんてこというの!クリフトさんに限ってそんなことあるわけないじゃない!」 「わっからないわよ~。残るとき、やけにニコニコしてたのも、そのせいじゃないの? クリフトって、シスター達にはやたら親切だし。」 その言葉に、バコタに蹴りを入れていたアリーナが反応した。 「ええ?そ、そうなの!?」 「姉さんったら!クリフトさんは誰にでも優しいじゃない!」 「いやいや。あいつ『シスターに疑われるのは心苦しい』なんて言ってたし。怪しいわよね~。」 「そ、そうなんだ…。」 「…おーい、お前ら、戦闘に集中してくれー…。」 勇者が小さい声で呼びかけるが、もはや女性陣は誰も聞いていない。 勇者は、無理矢理にでもクリフトを連れてくるんだったと心から後悔しながら、 とっとと決着をつけるべくライデインの詠唱を始めた。 その頃クリフトは、牢屋の小さい窓に向かい、姫と一行の安全を一心に祈っていた。 牢屋は、狭くはあったが衛生状況は悪くなく、小さな窓も、石造りのむきだしの壁も、 教会の横の小部屋で過ごしてきたクリフトにはそれほど苦にはならなかった。 「神官様、お食事です。」 祈るクリフトのもとに、若いシスターが食事を持って来た。 「いつもどうもありがとうございます、シスター。」 食事を受け取りながら微笑むクリフトに、シスターは赤くなった。 「私のせいで、却ってシスターのお仕事を増やしてしまって、申し訳ありませんね。」 「いえ、そんなことは…。」 赤くなってもじもじしているシスターに、見張りの女戦士がからかい顔に声をかけた。 「だったらネリー、あなた、神官様に、洗濯物干しでも手伝ってもらったら?」 そしてクリフトに意味ありげに笑いかける。 「ねえ、神官さん。この子、お城の洗濯物、ほとんど一人で引き受けてるのよ。」 「え、それは大変。しかし、私は人質なので、外に出ることは…。」 「大丈夫よ、私達が見張ってるから。それとも、あなた、私たちを倒して逃げてみる?」 女戦士は、薄笑いを浮かべてクリフトをじろじろと眺めた。 牢に入れられても文句一つ言わず、暇さえあれば神に祈っている優しげな雰囲気の神官に、 見張りの女戦士達はすっかり警戒を解いているようだ。 随分と見くびられたものだ、とクリフトは苦笑したが、ここで張り合う気もなかった。 それに、何より外に出られるのは嬉しい。 そこで、シスターに向き直ると丁寧にお辞儀をした。 「それではシスター、及ばずながら、お洗濯の手伝いをさせていただきます。」 こちらは、勇者一行。 結局ほとんど勇者一人でバコタを倒し、洞窟を出た後も、女3人の会話は続いていた。 「だいたいね、クリフトって女に免疫ないくせに、シスター連中は全然平気じゃない。 そこが、そもそも怪しいと思わない?」 「…でも、クリフトは、ミネアとも仲良いけど…。」 「アリーナさん…まさかと思うけど、まだ、私とクリフトさんとのこと、誤解してるの?」 「…分からない…。」 むー、と口を結ぶアリーナに、まったくこの子は、とミネアは上を向いてため息をついた。 その横で、マーニャが口の端に笑いを浮かべてアリーナを覗き込む。 「そうよね~オトコとオンナの間のことなんて、予測できないことばっかりよ。 クリフトも、ガーデンブルグで、運命的な出会いをしちゃうかもしれないわよ~。」 もはや、勇者は我関せずとばかりに黙々と先を歩いていた。 ミネアがマーニャの袖を引いて小さい声でささやいた。 「ちょっと、姉さん、一体何を考えてるの?」 「いや、あんたが先日言ってた、『アリーナの自覚』とやらに、手を貸そうかと思って。」 マーニャが指差す先には、考え込んだ表情で立ちすくむアリーナがいた。 「姉さん…。本当は、単に面白がってるだけでしょ。」 呆れ顔のミネアに、マーニャはにやりと笑うと言った。 「さ~て、捕まってるカワイソ~な人のためにも、とっととお城に帰りましょ!」 ガーデンブルグの中庭にある物干し場には、大量のシーツがはためいていた。 背が高いクリフトがいるおかげで、洗濯物干しはあっという間に片付いた。 久しぶりに当たる太陽の日ざしは、やはり気持ちが良い。 クリフトは最後のシーツを洗濯ばさみでとめると、うーんと伸びをした。 「すいません、何だか面倒なことを…。」 小さくなって詫びるシスターに、クリフトはとんでもない、と手を振った。 「こちらこそ、シスターのおかげで外に出られて、むしろ感謝してますよ。」 「…私、ネリーと申します。神官様。」 シスターの言葉に、クリフトは慌ててシスターに向き直った。 「これは失礼しました、シスターネリー。遅ればせながら、私の名はクリフトと申します。」 笑みを浮かべ優雅に胸に手を当てるクリフトに、シスターはのぼせたような表情になった。 「あの、クリフト様、私…。」 シスターは、震える体を支えるかのように、干してあった大きなシーツをつかんだ。 しかし、いくら大きくても所詮はシーツ、体は支えられない。 シスターに引っ張られたシーツは物干しロープから外れ、ばさっと2人の上に落ちてきた。 「うわっ。」「きゃっ。」 慌てるシスターとクリフトだが、城で使う重くて大きいシーツからは、なかなか抜け出せない。 と、そのとき。 魔法の気配が近づいたかと思うと、 ドシーン! 地響きを立てて、勇者一行が中庭に着地した。 「いたた、マーニャ殿、もうちょっと年寄りを労わってくだされ…。」 「うっさいわね~文句あるなら自分がルーラすりゃいいでしょ!…ってクリフト!? こんなところで何やってんのよ、あんた達!!」 一行の目の前にいたのは、地下の牢屋に捕まっているはずのクリフト。 しかも、あろうことか、うら若いシスターと2人、シーツにまみれていた。 「あ、姫様!」 しかしクリフトは、マーニャの叫びに頓着する様子もなく、アリーナの姿を見て顔を輝かせた。 そして、慌ててシーツの海からシスターを救い出すと、その顔を覗き込んだ。 「シスターネリー、お怪我はありませんか?」 「は、はい、クリフト様…。」 シスターは真っ赤な顔をして消え入りそうな声で答えた。 「ちょっと何よ、あの妖しげな雰囲気は…。今あのコ、『クリフト様』って、言ってたわよ…。」 マーニャの呟きに、呆然とクリフト達を見つめていたアリーナの肩が、ピクリと動く。 クリフトは、シスターに怪我がないことを確かめると、嬉しそうにアリーナに駆け寄った。 「姫様!良くぞご無事で…!」 ここで、いつもなら満面の笑みであれやこれやと戦果を報告するはずのアリーナであったが、 今日はうつむいたまま、クリフトと目を合わせようとしない。 「…姫様?」 心配そうに身をかがめたクリフトに、アリーナはキッと顔を上げた。 次の瞬間。 「クリフトの、馬鹿ーーーーーー!!」 クリフトの体は中庭の壁を越え、彼方に飛んでいった。 「…ですから、誤解です…。私は、シスターネリーの洗濯物を干すのを手伝っていただけで…。」 「そもそも、そこがおかしいわよね、何で人質が洗濯物なんか干してんのよ。」 ベッドに力なく横たわるクリフトに、さっきからマーニャがしつこく食い下がっている。 「だから、それは、見張りの女戦士さんが私に手伝えと…。」 繰り返すクリフトに、マーニャが声を荒げた。 「ほんっとに、あんたも鈍いわね!なんで見張りがあんたに手伝えって言ったか、分かってんの?」 「…は?シスターネリーが1人で大変だから…ではないんですか?」 「あー…。」 マーニャは口を開きかけたが、何も言わずに口を閉じ、頭をかきむしった。 「…もういいわ。何だか疲れてきた。あとはまかせたわ、ミネア。」 マーニャは肩をすくめると、やれやれと部屋を出て行った。 部屋に1人残ったミネアに、クリフトは、ため息をつきながら呟いた。 「なぜ、姫様はあんなにお怒りになられたのか…。皆さんが戦っているというのに、 人質である私が、中庭でのんびりしていたのが悪かったのでしょうか…。」 ミネアは、人一倍繊細なくせに肝心なところで鈍感な青年に、哀れみの視線を向けた。 「アリーナさんは、きっと、やきもちを焼かれたんですよ。」 「やきもち!?」 クリフトは思わず起き上がり、背中に走った痛みに声を上げた。 「ああ、ダメですよ、動いては。背骨が、まだ完全じゃないんですから…。」 「しかし、なぜ、やきもちなど、…いや、そもそも姫様が私にやきもちを焼くなんてことは…。」 混乱の坩堝にいるクリフトに、ミネアは優しく笑いかけた。 「時間はありますから、ゆっくりお考えになってくださいな。」 その頃、アリーナは、城壁の上に寝転がって、空を見ていた。 ―――なんであたし、クリフトにあんなことしちゃったのかな。 目を閉じたアリーナの脳裏に、真っ赤な顔でクリフトを見つめていたシスターの顔が浮かぶ。 さすがのアリーナにも、彼女がクリフトに特別な想いを抱いていることは分かった。 ……クリフトも、ガーデンブルグで、運命的な出会いをしちゃうかも……。 マーニャの言葉が脳裏に蘇る。 そして、シスターに怪我がないか案じていたクリフトの様子を思い出した。 ―――もしかして、クリフトも、あのシスターのこと好きなのかな。 その考えが心に浮かんだとたん、急に胸がキュッと締め付けられるような気持ちがした。 ―――まただ。この感じ。 以前の惚れ薬騒動の際、クリフトが本当はミネアを好きなのかもしれない、と思ったときも、 同じような胸の痛みを感じた。 ―――私は、いつでも、姫様のお側にいますから…。 遠い日の、子供の頃の約束。 ミントスで倒れたとき以外に、クリフトがその約束を違えたことは一度もなかった。 それが嬉しくて居心地が良くて、いつの間にか、それが当然のように思ってしまっていた。 クリフトが自分の側から離れると思うだけで、不機嫌に思ってしまう程に。 ―――いつから、私、こんなに我が侭で自己中心的になっちゃったんだろう…。 アリーナは、起き上がると膝を抱えて目を瞑った。 「姫様がお幸せなら、それが、私の幸せです。」 クリフトは、いつも、そう言って優しく微笑んでくれる。 ―――私も、ちゃんと、心から、クリフトの幸せを願えるようにならなきゃね…。 アリーナは、目に決意を宿して立ち上がった。 こんこん。 ノックの音にミネアがドアを開けると、そこにはアリーナが悄然と立っていた。 「姫様!」 起き上がろうとして、クリフトは、再び背中に走った痛みに顔をしかめた。 アリーナは、泣きそうな顔でクリフトに駆け寄った。 「クリフト、ごめん、ごめんね…。」 ミネアが、そっと部屋を出たことに、2人は気がつかなかった。 ミネアが部屋を出ると、シスターネリーを連れた勇者に行き会った。 「なんか、この人がどうしてもクリフトに会わせろって…。」 勇者が困った顔でミネアに言う。シスターは赤い顔をして勇者の後ろに隠れていた。 ミネアは、厳しい顔をシスターに向けた。 「あなたのお気持ちは分かるけど、遠慮してくださいな。」 「え…?」 「彼のことを見ていれば、彼の気持ちが誰に向いているかは、お分かりでしょう?」 「…。」 「あなたが、彼を本当に愛しているのなら、彼の想いを応援してあげて…。」 ミネアは寂しげに微笑んだ。 勇者は、そんなミネアをまじまじと見つめた。 「ミネア、お前…。」 「…さ、行きましょ、ネリーさん、ソロさん。」 ミネアは、2人を促すと、部屋の前を離れた。 部屋の中では、ひとしきり謝った後、黙り込んでしまったアリーナを、 クリフトが気遣わしげに見つめていた。 「姫様、私の体ならたいしたことはありませんから…。」 アリーナは、クリフトの言葉をさえぎって、クリフトに尋ねた。 「クリフト、あのね。あの…。クリフト、あのシスターのこと、好き?」 「…は?」 唐突な質問に、クリフトはとまどった顔をした。 アリーナは、クリフトから目をそらし、窓の外を見ながら、なるべく軽い調子で言った。 「シスターは、クリフトのこと、きっと好きよ。…ねえ、クリフト…。」 アリーナは、少し言い淀むと、思い切って言った。 「クリフトが、あのシスターと一緒にこの国に残りたいなら、遠慮なくそう言って?」 「…!」 クリフトからは何の返事もなかった。 しばらくして、余りの沈黙の長さに不安になったアリーナが振り向くと、 クリフトは怖いくらい真剣な表情でアリーナを見つめていた。 「…姫様。」 クリフトは、低い声でアリーナに呼びかけた。 「もし、私がシスターネリーのことが好きで、この国に残りたいと言ったら…。 姫様は、どうされるのですか。」 アリーナは、深く息を吸い込んだ。 ―――言わなければ。「あの人のことが好きなら、この国に残りなさい。」って。 ―――言わなければ。「子供の頃の約束は、もう終わりにしていいから。」って。 ―――言わなければ、いけないのに…。 アリーナの目から、涙がポロリと落ちた。 「え、姫様!?姫様、どうされたのですか!?」 慌てるクリフトに、アリーナはふるふると首を振った。 「分からない…。もう、何がなんだか、分かんないよぉ…。」 アリーナの頬を、涙が次から次へと零れ落ちる。 「わた…、クリフト、に、残っていいよ、って、い、言わなきゃ、いけないのに、 クリフト、幸せに…だったら、いいよ、って…なの、に…。」 ―――どうしても、その言葉がでてこなかった。 小さくしゃくりあげながら涙を流すアリーナを、クリフトは黙って見ていたが、 「…姫様…。」 アリーナが今まで聞いたことのないような優しい声で、呼びかけた。 「…申し訳ありません。私が、姫様を困らせるようなことを言ったために…。 私の使命は、姫様をお守りすることです…ここに残るなんて持ってのほか。」 クリフトの言葉にアリーナが顔を上げた。 「だって、だって、あのシスターのことは…。」 「私は、シスターネリーのことは、良き信徒であると言う以上に何とも思っておりません。 私を、この国に引き止めるものは何もないのです。」 ですから、どうか、この先も姫様のお側に仕えさせてください、と微笑むクリフトに、 アリーナは顔をくしゃくしゃにゆがめると、思い切り抱き付いた。 クリフトは、抱き付かれた瞬間痛みに顔をしかめたが、優しくアリーナの頭を撫でた。 アリーナは、そのまま、大声を上げて泣き始めた。 「…雨降って地固まる、ですかしら。」 「どうだろう、あいつら一筋縄じゃいかねーからな。あれでも自覚してない可能性大だぜ。」 「心配召されるな。自覚というのは、状況に応じて自ずと身につくものですぞ。」 「……あんた、それ、何の話だか分かってて言ってる…?」 「わしとしては、これ以上の面倒ごとは抱えたくないのじゃがのう…。」 「なーんて言って、顔がうれしそうですよ、ブライさん。いやーいいですねぇ。青春ですねぇ。」 部屋の外では、不器用な2人を心配して集まってきた仲間たちが、ドアにへばりついていた。 このドアが、その重みに耐えかねて、一行が部屋になだれ込むまであと数秒…。
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クリフトのアリーナの想いはPart12 105 名前 恋をしては……恋をしても…… 1/12 Mail sage 投稿日 2011/04/29(金) 23 51 31.06 ID XkHOuB/z0 いっちに、さんし……よし、整理体操終わりー。日課のトレーニングもやったしお風呂も入ったし、あとは寝るだけ! 私はフカフカのベッドにもぐった。今までいろんな宿に泊まってきたけどやっぱり自分のおうちのベッドがいちばんだわ。 そう、私は今お城に戻ってきてる。 どうしても旅に出たくて一度はお城を飛び出したんだけど、お父さまがご病気にかかってしまったからあわてて帰ってきたの。 でもお父さまののどのご病気も無事治って、そしたら今度は世界を旅していいってお許しをくれて、明日から旅を再開するところ。 そう、明日からはエンドール!また新しい世界に旅立つんだわ。 ううん、エンドールだけじゃない、これからはどこへでも好きなように旅ができるんだわ。なんていい気分! まずはエンドールで武術大会に優勝して……次はどこに行こうかな? 明日からのことを考えるとわくわくが止まらない。今夜は眠れそうにないなー。 小さい頃、眠れない時はいっつもお父さまとお母さまがいっしょに寝てくれた。 昼でも夜でも、楽しい時も寂しい時も、ずっといっしょにいてくれた。 お母さまのこと、もうおぼろげにしか覚えてないけど、でも思い出すお母さまはずっと笑顔だった。 お父さまもきっと、笑顔だった…? 私はぼんやりとお母さまの肖像画に目を向ける。記憶の中とおんなじの、ずっと笑顔のお母さま……。 お母さまがお亡くなりになってお父さまは変わってしまった。 礼儀作法に厳しくなって、お外に出るときは見張りを何人もつけるようになって、じいとそろって勉強勉強って言うようになって…… お父さまは本当に変わってしまった。 私はお勉強がいやでいっつも教会に逃げ込んでたっけ。いつからかお父さまもじいも教会にまではどなりこんでこなくなったから。 教会には神父さまとクリフトがいて、神父さまはにこにこしてこんにちはって言ってくれるのにクリフトはいっつもお説教を言うの。 今は作法の時間ではありませんか?歴史の時間ではありませんか?文学の時間ではありませんか?扉は静かに開けてください。 でも結局誰かが呼びに来るまでは教会にいさせてくれるの。あきれるくらいいつものパターン。 そうだ。久しぶりに教会に泊めてもらおう。なつかしいなー。あの頃はクリフトともよく寝たっけ。 いっしょに寝るって言うとすっごくさわぐクリフトだけど、いざいっしょに寝るとなると笑っちゃうくらい静かになるの。うん、行こう! パジャマだけじゃ寒いかもしれないから上着を羽織ってまくらを持って。くつは音がするからはかないほうがいいわね。 よし、行こう!教会! 私は静かにお部屋を出てお父さまのお部屋の前を通った。お父さまはもうお休みの時間かな。 お父さまはいっつも扉に鍵をかけちゃうから中に入ろうと思っても入れないの。そういえば鍵、お部屋に置いてきちゃったわ。 いっしゅんお父さまといっしょに寝ることも考えたけど想像したらなんだか恥ずかしくなった。やっぱり教会に行こう。そうしよう。 お父さまのお部屋を通り過ぎて階段を静かに下りる。さすがにこんな時間じゃじいも大臣もいないわね。 兵士も見当たらない。よし、今のうち! 「姫さま?どうされました!」 きゃっ見つかった!ど、どうしよう。お手洗い?同じ階にあるじゃない。散歩!まくらを持って?ええい、みね打ち! 「ごふっ……ひ、め……さっ」 倒れる兵士。急いで抱き上げて壁に寄りかからせた。ごめんなさいごめんなさい。ちゃんと見張りをしててあなたは優秀だわ。 もしじいや大臣がこんなところでうたた寝してってしかっても私は全力であなたの味方をするからね。だから今日はごめんなさい。 「何者!ぐはっ」 「ひ、姫さまいけません、そのようなお姿で……がはっ」 よし!やっと教会まで来た!ふうー、長かったわこの道のり。みんなごめんなさい。今日はたまたま悪い夢を見てたのよ。 私はゆっくり教会の扉を開けた。誰もいない。神父さまもクリフトも奥の部屋にいるのね。私は静かに扉のところまで進んだ。 「……どなたですか」 きゃっ。扉のすぐ向こうで声がした。もしかして気づかれてたのかな。忍び足で歩いてたはずなのに……。 声が小さくてだれが言ったのかまではわからなかった。神父さま?クリフト?私は耳をすましながら答えた。 「あの……アリーナです……」 「…………」 返事はなかった。うーん、そのうちあるわよね。待ってみた。そしたらずいぶんたって返事じゃなくって扉が開いた。 お部屋から明かりが漏れる。扉を開けたのは神父さまだった。ぼうしのかぶってない神父さま。白っぽい服着てる。 「姫さま……」 「こんばんは、神父さま」 「なぜ……どうしてここに……」 「えっと、眠れなくって……」 「兵は。見張りはどうしたのです」 「えーと、ちょうどみんないなかったの」 「そんなばかな」 「それより神父さまー、私ここで寝ちゃだめ?」 「…………」 神父さまは答えない。お部屋の中は明るいけどちょうどかげになっててお顔が見えないの。今どんなお顔をしてるの? 「……いけません」 「えー」 「……いけません……」 「寂しくって眠れないの。お願い神父さま。明日からまたお城を離れるんだし、ねえお願い」 「………………」 はんぶんうそだけどはんぶんはほんと。私は神父さまをまっすぐ見つめた。でも神父さまは答えない。 「神父様、どなたかいらしたのですか?」 奥で声がした。クリフトだ。中をのぞくとベッドから下りようとしてるクリフトが見えた。やっぱりぼうしのかぶってないクリフト。 寝てたみたい。そんなに大きな声で話してたわけじゃないのに起きちゃったのね。クリフトも私って気づいたみたい。 「姫、さま…?」 「うん。こんばんは、クリフト」 「な、なぜここにっ」 「眠れなくって。ねえクリフト、いっしょに寝よ?」 「な、なにをおっしゃるのですか!神父様!」 「神父さまーお願い」 「……………………」 私は神父さまを見た。クリフトもたぶん見てた。でも神父さまは答えない。そしたら手でお顔を隠した。息が乱れて…… 「どうして、どうしてあなたは」 「神父さま…?」 「あなたはいつも……」 「…………」 「こまります、今夜は……」 「神父様……」 「今夜は…………」 「…………」 言いながら神父さまは壁に寄りかかった。私の目の前が空いた。クリフトがよく見える。驚いて神父さまと私を見るクリフト。 神父さまは手でお顔を隠したまんま。困ってる。でも道は空けてくれた。私が来て困ってるのに、道は空けてくれた……。 「神父さま、私……中に入っていいの……?」 「……………………」 神父さまはしばらく黙ってたけど寄りかかったまま言ったの。 「今の私にそれを許可する資格はございません。ですが、無理を推してここまで訪れたあなたを拒否する理由もございません。 ですからどうか、すべてはあなたの望むままに……」 「神父様……」 「………………」 私は中に入って扉を閉めた。あわてるクリフト。神父さまは手をほどいて私を見た。その手を胸に当ててゆっくりおじぎをする。 「このような姿で失礼、わが教会へようこそ」 顔を上げた神父さまはもういつものお顔をしてた。いつものお声。 「先ほどは申し訳ありません、少々取り乱してしまいました」 「ううん……」 神父さま笑ってる。さっきまで困ってたのに。いっつもそう。お城の神父さまは不思議な人。 「足音を立てずに歩くためには止むをえなかったのでしょうが、そのままでは足を痛めてしまいます。さあ、こちらへ」 神父さまが私を奥にすすめてくれた。私はそばにあったいすに座る。ベッドには足を抱え込んでかたまってるクリフト。 一度ベッドから下りようとしたんだけど神父さまに止められてそのままかたまっちゃったみたい。神父さまは戸棚のほうへ。 「クリフト」 「はい!」 「このような夜更けにわが教会をおとずれてくださった大切な家族です。ごあいさつを」 「も、申し訳ありませんっ」 クリフトが私を見た。 「こ、こんばんは、姫さま……」 「あ、うん。起こしちゃってごめんね」 「そんなことは……」 「小さい頃のこと思い出してたらどうしてもここに来たくなっちゃって」 「…………」 「姫さま、少し失礼しますよ」 神父さまが私の前にかがんだ。白い布を持ってる。そのままで、そう言って足をきれいに拭いてくれた。 ぬらしてあったみたいで足が少しひんやりしたけどそのうちあったかくなってきた。 「足がぽかぽかしてきたわ」 「そうですか。それはよかった」 「さて、今夜はこちらでお休みになるとのことですが」 言って神父さまはベッドを見る。あ、クリフトを見たのかな。クリフトも神父さまを見てるし。少しして神父さまが私に向き直った。 「あいにくベッドはまだひとつしかないのですよ。クリフトとお休みになるにはもうおふたりともずいぶん大きくなりましたし」 「いいわよ。私はぜんぜん気にしないわ」 「そうですか?」 「うん。ね、クリフト!」 「ひ、姫さま…っ」 私はクリフトににっこり笑ってみせた。でもクリフトはなんだかこわばってる気がする。まだかたまってるし。なんだかなー。 「さてクリフト、あなたは」 神父さまがもう一度クリフトを見る。クリフトは今度は神父さまを見なかった。少しだけ間があったのは気のせい? 「……クリフト、今夜は姫さまとご一緒してさしあげなさい」 「そ、そんな神父様!」 さすが神父さま。話のわかる人だわ。 「そうよクリフト、ごいっしょしなさーい」 「ひ、姫さま!そんなっ」 「おや、嫌なのですか?」 「そ、そういう問題ではっ」 「え、クリフトいやなの?」 「そ……」 クリフトったら今度はたじたじになってる。いいのかいやなのかはっきりしないし。なんかもやもやするなあ。 「ふむ、クリフト……」 神父さまももやもやしてるのかな。ちょっと首をかしげてるような気がする。 「ならば求めよ。さらば与えられん」 ぴた。クリフトが止まった。下を向いて黙ってる。 「あなたが今求めるものは、己が望みか、彼女の望みか、それとも?」 「神父様……。ですが、しかし、わ、私は……」 「迷うのならば神を求めよ。さらば信仰は与えられん」 「………………」 クリフト黙っちゃった。神父さまも黙っちゃった。なんでだろ、私も黙ってみた。しーん。ど、どうしよう。 「どれでも構いませんよ。いずれにせよ、今あなたがたに与えられるものは解釈が異なるだけの同じもののようです」 あ、やっと神父さまがしゃべってくれた。私を見る。 「姫さま、今夜はクリフトとお休みになってください」 「そ…っ」 「え?あ、うん!じゃなくてはい!」 私はあわてて返事した。神父さまは笑顔で返してくれた。 うーん、私たちに与えられるものは同じものってどういうことだろう。求めよさらば与えられんって聞いたことはあるけど…… もしかして私がここで寝たいって求めたからここで寝ていいってお許しが与えられたってことなのかな。そういうことなのかな。 神父さま笑ってる。うん、どっちにしても私はここで寝ていいってことなのよね。 そう思ったらわくわくしてきた。だってほんとに久しぶりのお泊まりだもの。もしクリフトが反対したって2対1でクリフトの負けー。 私はにこにこしてクリフトに言う。 「クリフト、となり入るわよ」 「そ、そんな姫さま!いけません!やっぱりだめですっっ神父様!」 もう聞こえなーい。 「あ、おふとんの中あったかーい」 「ああああひめさまちかすぎますっっ」 「クリフト逃げないのっ」 クリフトとってもあわててる。子どもみたいなクリフト。なつかしくなって思わずぎゅって抱きしめちゃった。 「ああっ」 クリフトはおとなしくなった。ふふ、やっぱり。クリフトはいざ寝るとなるとすっごく静かになるの。 でも体が震えてる。寒いのかな。とりあえずそのままいっしょに横になっておふとんをかぶった。 「あ、ひめさま、そんな…っ」 クリフトの体おっきいな。いつの間にこんなにおっきくなったんだろう。なんだか悔しいな。男の子と女の子の違い。 クリフト、いい匂いがする。 「あっ…っ」 「おふたりとも、私は少し席を外しますよ。留守番をよろしくお願いします」 振り返ったら神父さまがお着替えをしてた。 「えー神父さまどこ行くのー?」 「お手洗いですよ。年を取るとどうにも近くなっていけません」 「お手洗いに行くのに着替えていくの?」 「ええ、私は見栄っ張りなんです。着替えないと恥ずかしくて外に出られないのですよ」 「えー神父さま早く帰ってきてー」 「そうですね。この時間なら混んでないでしょうし、うっかり大きなほうにならなければすぐ戻りますよ」 「やだ神父さまったら」 「神父様、私も行きます!やはり私には無理です!どうかふたりだけにしないでください!」 え…?今、なんて? 「私、私、何をしてしまうか……」 「クリフト…?」 「私は城に仕える身で……神に捧げた身で……!」 「…………」 「私は……!」 クリフト……? 「このままでは私、罪……っ」 「…………」 「罪を…っ!」 「………………」 え、なに、どうしたの?どうしてクリフトはこんなに取り乱してるの?どうして? 神父さまは背中を向けたまま黙ってる。クリフトは泣きそうな顔してて……。 「……クリフト」 「神父様っ……」 「………………」 少しして神父さまが振り返った。クリフトの前まで来てかがむ。神父さまは……優しいお顔をしてた。 「罪悪と捉えるから衝動に駆られるのです。 われわれに課せられた戒律のすべては、罰するためにあるのではありません。神はすべての罪をお許しになります。 この意味がわかりますか?」 「……っ…………っ……」 「…………」 私はわからなかった。すべての罪を許すんだったらどうして戒律があるの?そもそもどうして罪のお話になんて…… クリフトが何か罪を犯したの…? 「神父さまー、それどういう意味?」 「おや、あなたが聞いてしまいますか」 神父さまが私を見た。優しいお顔。優しいお声。いつもの神父さまだ。 「そうですねえ……」 少しだけ考えるしぐさをする。しばらくして神父さまは遠くのほうを見ながら話し始めた。 「私たちは生きていく上で、たくさんの道の中から一つの道を選び進んでいきます。 そこで多くのことを学び、そこからまた新たな道を選び進んでいきます。 例えばあなたが、城でずっと過ごすより、外の世界を旅する道を選んだように。 また、旅をずっと続けるより、一度城に戻り異変を解決する道を選んだように」 あ。神父さま、やっぱりお父さまのご病気のこと知ってたのかな。神父さまは言葉を続ける。 「そうして道を選び前に進もうとする私たちを、優しく見守り後押ししてくださるのが神なのです。 果たしてその道が、正しかったか、間違っていたか、そこは大した問題ではないのです」 「っ……」 クリフトが少しだけこわばったような気がした。 「戒律とは一つの道しるべに過ぎません。 その戒律に触れることは、学ぶべきことがあまりにたくさんある険しい道ですから、進むときは気をつけて進みなさい、という 神からのお告げに過ぎないのですよ」 「…………」 お告げ……。 「じゃあじゃあ、戒律を破っても神さまは怒らないの?」 「ええ怒りませんよ。罰することもありません。むしろ応援してくださるでしょう。 険しい道をあえて進もうとがんばるわけですから、それはもう神様もがんばってよき方向へと導いてくださるでしょう」 神父さま笑ってる。そうなんだ……。そうなんだ! 「つまり神さまは、がんばる人の味方ってことね!」 「そう、そういうことです。さすがは姫さま、うまくまとめてくださいましたね」 「えへへ」 神父さまに褒められちゃった。私、神父さまの難しい話を解き明かしたんだわ。 「クリフト」 「………………」 神父さまはクリフトに向き直る。 「身の内に起こる感情もまた、神が与えたもうた貴重な賜物です。 偽ってはなりません。法に囚われ本質を見失うことは、大変もったいないことです。 己が感情を正直に受け止めなさい。まっすぐに見つめてみなさい。そこから学べること、得られることがたくさんあります。 そうすることでまた進むべき道も見つかることでしょう」 ――神の愛は無限です―― 「学校ではこうは教えないかもしれませんが、そういうものだと私は思いますよ」 「…………」 クリフト……。クリフトは下を向いたままずっと黙ってる。 「安心して眠りなさい。神はいつでも私たちをあたたかく見守っていてくださいます」 そう言って神父さまは扉のほうに歩いてった。 「ああ、それと……」 背中を向けたまま話す。 「ここは教会です。王も大臣も姫も従者も、神の前では皆平等ですよ」 「……………………」 では留守番をお願いします、そう言って神父さまは出ていった。お部屋がいっしゅんしんとなる。 「……クリフト」 「………………」 …………。 クリフトは何か罪を犯してしまって、でも神さまはがんばる人の味方だから、がんばってるクリフトはなんにも悪くない。 だからそれは大丈夫。 じゃあ、どうしてクリフトは何もしゃべってくれないんだろう……。 私はさっきまでの流れをもう一度思い出しながらクリフトにかけられる言葉を探した。 でも、そうして思い出されたのはクリフトの「ふたりだけにしないでください」っていう言葉。 私……私は…… 「クリフトー……」 「…………」 「……クリフトは、私とふたりっきりになるの、いやだった…?」 「ち、ちがいます!そんなわけありません!」 「ん……」 やっとクリフトがしゃべってくれた。ちがうって。そんなわけないって……。 「……むしろ逆です。嬉しいんです。とても嬉しいんです…!姫さまとこんなに近くにいられることが、私には…っ!」 「クリフト……」 「姫、さま……」 やっとクリフトが私を見てくれた。切なそうな、何かを訴えるような、もどかしい目をしてる。前にも見たことあるような目……。 クリフトが私に手を伸ばしてきた。ゆっくり。でも今度はつかむようでつかまない手じゃない、そのまま私をぎゅってした。 「ん…」 「…………」 クリフトは何度も何度も確かめるみたいに私をぎゅってしてきた。なんだろう。なんでだろう……。 「あ、男の子の衝動だ」 クリフトがいっしゅん止まったような気がした。 「……はい、申し訳ありません……」 やっぱりそうだったんだ。砂漠のバザーで夜話してたとき打ち明けてくれた男の子の秘密。女の人を抱きしめたくなる衝動。 あ、つまり私も女の人として見られてるってことなのね。私は女の人じゃなくっておてんば姫なのに、クリフトったら変なの。 「ううん、いいよー」 「姫さま……」 「私だったらいいよ。大丈夫、クリフトを変態扱いしないから」 「……そうですか……。それは助かります……」 クリフトが少しだけ笑った。 「横に、なりましょうか」 「うん」 「姫さま……姫さま」 「なにー?」 「その……腕まくらをさせていただけませんか?」 「え?」 「その、どうか……」 腕まくらー?そんな言葉今まで聞いたことないってくらい使わない言葉だわ。クリフトは今度はもごもごしてる。変なクリフト。 「えーと、私がクリフトに腕まくらすればいいのね?」 「い、いえ、私が姫さまに腕まくらをしたいのです」 「えー腕が疲れちゃうじゃない」 「したいんです」 むう。今日はやけに食い下がってくるじゃない。ますます変なクリフト。 「ふーん変なの。いいよー」 私は持ってきたまくらをはじに置いた。言われるままクリフトの腕に頭を乗っける。思ったよりおっきくてがっしりしてるクリフトの腕。 寝心地いいのか心配だったけどそんなに気にならなくて、クリフトの腕はあったかかった。 すき間を作らないようにクリフトにくっつく。クリフトはちょっとびっくりしたみたいだけど笑っておふとんをかけ直してくれた。
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ゲイリー・J・タニクリフをお気に入りに追加 ゲイリー・J・タニクリフのリンク #blogsearch2 ゲイリー・J・タニクリフとは ゲイリー・J・タニクリフの80%はやさしさで出来ています。ゲイリー・J・タニクリフの16%は世の無常さで出来ています。ゲイリー・J・タニクリフの3%は夢で出来ています。ゲイリー・J・タニクリフの1%は血で出来ています。 ゲイリー・J・タニクリフ@ウィキペディア ゲイリー・J・タニクリフ ゲイリー・J・タニクリフの報道 gnewプラグインエラー「ゲイリー・J・タニクリフ」は見つからないか、接続エラーです。 ゲイリー・J・タニクリフのキャッシュ 使い方 サイト名 URL ゲイリー・J・タニクリフの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ ゲイリー・J・タニクリフ このページについて このページはゲイリー・J・タニクリフのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるゲイリー・J・タニクリフに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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【クリアリ】クリフトとアリーナの想いは Part13【アリクリ】 97 名前 ヴァルプルギスの夜(後編)1/2 Mail sage 投稿日 2013/05/21(火) 23 54 56.01 ID Jm4JkLt40 「クリフト、あの…… 」 「食べる訳ないでしょう。黄泉の食べ物などを」 (そして貴女を残していけるものですか) 苦笑いを浮かべたクリフトの手から零れ落ち転がったのは、先程持っていたドライフルーツとすり替え食べたと思わせた柘榴だった。 「良かった……、もうダメかと思った」 「申し訳ありません。ご心配をかけまして」 少し鼻声でアリーナはそういうとギュッとクリフトを抱きしめた。そのアリーナをクリフトは微笑みながら愛おしむように抱き締め返した。 「お父さん、お母さん、お迎えが来ましたので、お暇させて頂きます」 「戻っても貴方は、叶うか分からない願いの為に茨の道を突き進まなければならないのですよ。これからも――」 クリフトは母の言葉に頭をゆっくり左右に振った。 「茨の道と言われても選びます。たとえ人から報われていないと言われても……、真っ直ぐその道を歩んで行くそれが私の選んだ道。そしてそれを邪魔する権利は血の繋がっているとは言えども貴方方にありません。そして私には――」 (姫様がいます) 心の中で愛しい人を呼びながら、優しく微笑んだ。 「お前の負けだ。もうクリフトは私達が知っている子供ではない。強く逞しい若者になっている。もう干渉すべきではない」 「貴方」 「最期にクリフト、お前の成長した力を見せておくれ」 青い髪の男女は寂しげにクリフトの方を向いて微笑んだ。 「はい。この世に生を受けさせて頂き感謝しております。思いもよらず逢えて嬉しかったです。そして永遠にさようならです。不出来な息子で心配でしょうが、お還り下さい。私には支えてくれる大切な人がいます」 「クリフト……」 幾分か抱きしめられた腕に力が入った事に気がついたアリーナはクリフト名を小さく呼んだ。 「ザラキ(永遠の住処へお帰り下さい)」 いつもとは違う震えた声で唱えられた呪文はクリフトの心情を表しているかのようだった。 「逝ったの」 「はい」 「そう」 音がない世界に、二人の静かな声だけが響いた。 「クリフトごめんなさい」 「姫様がどうして謝罪されるのですか」 「だって……」 (クリフトにこの道を選ばせたのは私。そしてクリフトのお父様とお母様にこのような事を起こさせてしまったのも、そしてこんな寂しげな表情でお別れをさせたのは私のせい) 全ての言葉は口にせず、アリーナはただクリフトの法衣に顔を埋めた。 「いいんですよ。姫様が御心を痛める事ではありません。これは私が全て選んだ事。姫様と私が、どのような事になっても、どのような形になっても私の心と体は姫様の元に」 クリフトの指がアリーナの髪を優しくゆっくりすいた。その心地良さを無償の愛で与えてくれるクリフトをアリーナは心を痛めながらも手放したくなかった。 「姫様……、戻る方法を考えませんと」 「それは大丈夫よ。貴方が作ったサシャが、ブライを……、みんなを導いてくれるわ。私のように。だから」 「だから? 」 「みんなが来るまで、こうしていてくれる。クリフトがまた闇に消えてしまわないように、そして私が闇の中に迷い込まないように」 「分かりました、姫様」 朝日が二人を照らし出した。 「夜が明ける」 そうしてヴァルプルギスの夜は明けたのだった。
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クリフトとアリーナの想いは Part4.2 244 :1/6:2006/02/15(水) 23 31 04 ID z/EDl3ZT0 「ああーもう嫌あー。休憩しようよー」 「ダメです。まだ先ほどの休憩からそれほど進んでいませんよ」 嫌な嫌なお勉強の時間。分厚い本をめくりながら、あたしは大きなあくび。 「……姫様」 いつもよりずっとずっと低いクリフトの声に、あたしははっとして本に目を落とす。 そこには、サントハイムの地図。 「……あれ?」 その地図の中に、小さな赤い×印。 「なんだろ、これ」 「なんでしょうね」 どうも、印刷じゃないみたい。もしかして……。 「宝の地図じゃない!?」 あたしは興奮して立ち上がる。クリフトは既にあきらめの表情。 ──判ってるじゃない。 「……行かれるんですね、姫様」 ため息が、ひとつ。さすがクリフト、もうあたしの行動はお見通しってわけなのね。 「こっちの方かなー」 古い本の地図は、今とは少し様子が違う。家が建ってたり、木は切り落とされていたり。 「……あっ」 しばらく森の中を進むと、クリフトが小さく声を立てた。 「どうしたの? 何か見つけた?」 「い、いえ」 クリフトは落ち着き無く、きょろきょろとあたりを見回している。 「ふうん」 もう一度地図に目をやって、大きな岩や木を頼りに、印の場所を探して歩き回った。 「姫様、そろそろ戻りましょう」 「何で。まだ見つけてないわよ」 「ほら、もうすぐ陽が暮れますから」 「まだ明るいじゃない」 「お風邪を召されますよ」 「寒くなんてないわよ」 「いえ、ほら天気もあまり良くありませんし」 「ちょっと雲があるだけじゃない」 その後もクリフトはいろいろと理由を探しては、戻りましょう、帰りましょうとしつこい。 あたしはそのたびに、うるさいって言って、森の奥へ進む。 しばらく進んだ先には、小さな泉。その脇には大きな木。 「ここだ!」 あたしは木の根元に向かって走り出す。そしてもう一度地図と見比べてみる。 ……うん、間違いない。 「クリフト、持ってて」 クリフトに本を手渡すと、あたしは木の根元を掘り起こした。 まだクリフトは何か言ってるみたい。何かおろおろとして、落ち着きが無い。 しばらく掘ってみると、小さな箱がひとつ、出てきた。 「……これかな?」 「あああぁああぁっ」 クリフトが本を落として、あたしから箱を奪い取ろうとした。 「何すんのよ、危ないじゃないの!」 「あ、危ないですから、何が入っているのか判りませんから、私が開けますから!」 こんな小さな箱に、そんな危険な物が入ってるわけないじゃないの。 あたしはクリフトの頭を一発ぺちんと叩いて、その隙に箱を開けた。 「……なに、これ」 入っていたのは、折り畳まれた紙切れがひとつと、おもちゃの指輪が、ふたつ……? その紙を、そっと開いてみる。 ひめさまへ おおきくなったら、ぼくのおよめさんになってください。 クリフト 「……申し訳ございません……」 クリフトは顔を真っ赤にして、俯いたまま。 「……どういう、こと……?」 小さな小さなおもちゃの指輪。赤い石と青い石はきらきらと光ったままだった。 「……実は、もっと幼いとき、です。姫様にこの手紙を渡そうとしたのですが……」 相変わらずそわそわとして、クリフトは服をいじくり回す。 「そ、そのままお渡しするのは恥ずかしくて、その、宝探しのようにすれば、 きっと姫様に楽しんでいただけるかと……」 そうか。きっと、そんな想いをこめて、本の中の地図に印をつけて、 この本をあたしに貸してくれたんだ。 あたしは……読まなかったんだね、この本。 「ごめんね……」 あたしは謝りながら、クリフトに赤い石の指輪を渡した。 「……いえ。私こそ……。無礼をお許しください……」 寂しそうな顔をして、クリフトは指輪を握り締めた。 「……戻りましょうか」 「……待って」 あたしは、クリフトの前に、左手の甲を上に向けて、差し出した。 「……姫様?」 「……それ。あたしに、くれたんでしょ?」 クリフトが驚いた顔をして、握り締めた指輪と、あたしの顔を交互に見る。 「あ……」 顔を真っ赤にして、クリフトはあたしの左手を取った。 震える指で指輪を持って、あたしの指にはめようとする。 ぷるぷると小刻みに震えて、なかなか入らない。 「ふふっ」 そんなクリフトの様子が可笑しくて、思わず笑いがこみ上げる。 小さな赤い石の指輪は、あたしの小指にはめられた。 「ふう……」 クリフトが大きく息を吐く。顔は真っ赤で、汗までかいて。 「ありがとう、クリフト」 あたしはクリフトの左手を取って、青い石の指輪を、同じように小指にはめた。 「……」 クリフトは何だか複雑な表情で、手にはめられた指輪を眺めていた。 「ねえ、指輪の交換の後は?」 「……え。あ、はい。……え!?」 クリフトの大きな声。ちょっとびっくりして、身体がぴくっと動いた。 「あの手紙、嘘なの?」 「そそそそそそんなことは……お、幼いときのことですから……」 「じゃあ、今は?」 「…………」 クリフトの顔は真っ赤。目に涙まで浮かんでるみたい。 ……クリフトが、あたしの肩をぐっと掴んだ。 少し、怖くなって、あたしは目を閉じる。 ふっ、と、暖かくて、やわらかい感触。 それは、ほんの一瞬、ほんの少し触れただけ。 「も、もう勘弁してください……」 目を開けると、クリフトはぽろぽろと涙を流していた。 「この手紙に、お返事、書かなきゃねー」 帰り道、あたしはクリフトの手を握りながら、からかうように言った。 「え、あ、いや、ですからそれは……」 「渡さなーい。ふふっ」 クリフトは必死に手紙を取り返そうとする。 返してあげない。あたしの宝物だから。