約 1,317,248 件
https://w.atwiki.jp/gundammasters2/pages/80.html
期間 2012年07月9日11時00分~2012年7月18日23時59分 ※当初発表のイベント期間 チャレンジバトルとは? イベント内でしか入手できない限定パイロットを獲得することが目的。 詳細はチャレンジバトルのページをご参照下さい。 限定パイロット 今回のイベントパイロット ★3イザーク・ジュール★3刹那・F・セイエイ CPUデッキ ランク CPUデッキ名 戦艦 地形 主な搭載機 CPU撃破に必要なデッキ攻 梅 ユニオンMS隊出撃! サラミス 宇 フラッグカスタム、フラッグ、リアルド 竹 グレミーの切り札! レウルーラ 宇 クィンマンサ Lv1を約7900で勝利 松 発進!★5NT-1アレックス アルビオン 地 NT-1アレックス、ダブルオー、Vガンダム等
https://w.atwiki.jp/web_soc/pages/501.html
最終更新日時:2013-08-09 12 22 43 (Fri) プラットフォーム yahoo! - mixi - 引退 - アルビリ エリア適性 選手情報 フルネーム サミ・アルビリ 肩書き サイドバック 国籍 サウジアラビア ポジ DF 区分 ノーマル 在籍 スピ テク パワ スタ ラフ 個性 1期目 2期目 3期目 4期目 5期目 6期目 7期目 8期目 9期目 10期目 PK FK CK CP 知性 感性 個人 組織 本日の閲覧数: - 昨日の閲覧数: - 合計の閲覧数: -
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1674.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 倒れ伏した少女二人を、見つめるものが二人。 「わが娘がまさか、虚無の担い手とは…」 高貴さを身に纏った紳士が、深い動揺を強い意志で覆い隠して呟く。 倒れ伏したうちの一人、黒髪の少女の手を取り、『固定化』のルーンを唱え、発現する。 「財務監督官殿、これは…」 心配そうな声で話す老齢の剣士に、財務監督官と呼ばれた男は動揺のかけらさえも見せずに説明した。 「『固定化』の応用です。これで全てを…そう、全てをなかった事にできるでしょう」 そう言った彼の視線と、剣士の視線が絡まり合い、無限とも思えるほどの時が流れ… やがて、剣士は黒髪の少女を背負うと、財務監督官の脇を通って、ゆっくりと歩き出した。 「ミセス・エスメラルダ」 その背中に、声がかかる。 「願わくは…願わくは、娘達の『虚無』の力が振るわれることの無い様、願っております」 エスメラルダは歩を止めることなく、確かな声で答えた。 「願わくは、娘達の生涯が平和のうちに過ぎ去るよう…」 大国の財務監督官と、外国の剣士。二人の生涯は二度と交わることなく過ぎ去ることになる。 だが、その娘達は。娘達の生涯は今まさに交錯し、物語の幕を開ける。 それは誰もが知り、誰も信じない。 ハルケギニアの正義、愛、友情…全てを表す、そんな物語。 ゼロのアトリエ 32 ~イーヴァルディの勇者~ 南の森に逃げれば安全だ。タルブの村人誰もがそう考えていたが、その希望は儚くも打ち砕かれた。 略奪に乗り遅れたアルビオン兵が隊伍を組んで、南の森に向かうのを見たものがいたのだ。 村人は一気に恐慌状態となり、なりふりかまわず自分が安全と思う場所、自分だけが見つけていた最後の場所に向かう。 普段人の入らぬ森の中、村人達はたやすく互いを見失い、また、互いの立てる音に対して疑心暗鬼に陥り… 一人、また一人と孤立して、悲鳴だけを残して消息を絶つ。 混乱の中、家族とはぐれてしまったシエスタは、やはり自分が考えていた最後の隠れ場所… 祖母の使った廃屋へと足を向ける。確実に隠れられるという合理性よりも、 何だか安心できるという非合理の方が、今のシエスタには必要だったから。 「ここなら絶対大丈夫…大丈夫だから…」 自らに言い聞かせるようにそう呟いて、廃屋に足を踏み入れたシエスタが見たのは、あまりにも意外な客。 そこにいるはずのない人外の存在が、部屋の片隅に鎮座している。 「よう」 ヴィオラートの背にあるはずのデルフリンガーが、状況と比べるとあまりにも軽すぎる挨拶を発した。 「相棒を『忘れて』いくなんてひどいと思わねえか?」 ちっとも深刻に聞こえない、演技臭い調子でうそぶくデルフリンガーに、 シエスタは思わずいつもの調子で問いかける。 「あ、あの…ここで、何をしてらっしゃるんですか?まさか本当に、忘れられて…」 「あいつはよお、何考えてんだかわかんねえが、俺様を本気で忘れるほど間抜けだとも思えねえ」 「だから、何か意味があるんだろうよ。俺様が今ここにあることによ」 それだけ言うとデルフリンガーにしては珍しく、黙り込んだ。 シエスタはデルフリンガーと話したことで少し冷静になり、デルフリンガーの脇に座り込むと、 自分の果たすべき役割について思いを巡らせた。自分には魔法など使えないし、祖母のような強さもない。 ただ、メイドとして学院にいただけで、できることといえばヴィオラートに教わった錬金術、 それも何時間もかけてようやく魔法のケーキを作り出せるだけ。今ここでシエスタにできることは…多分ない。 大切な家族の命を守ることさえできない、無力な平民。それがシエスタの全てだ。 でも、こんな自分でも、デルフリンガーを確保して略奪から守ることぐらいはできるかもしれない。 ほんの少しの善意から、シエスタは何気なく、本当に何気なくデルフリンガーに手を伸ばし、掴む。 緊張が抜けていなかったのか、弾みで、勢いよくデルフリンガーが抜き放たれた瞬間―― シエスタの左手が輝き、何かが…手の甲を覆っていた何かが吹き飛ぶ。 その下には、虚無のルーンが。虚無の使い魔たる証の、ガンダールヴのルーンが描かれていた。 柄の部分を、おそらくはあんぐりと開けて、デルフリンガーは思わず叫んだ。 「これは…そうか、『固定化』か!それに…もう一つ虚無の…」 デルフリンガーは少し間をおくと、ようやく思い当たってもう一度、叫ぶ。 「『忘却』だな!おでれーた!全部忘れてたってわけだ!」 ようやく本来の『使い手』を見つけたデルフリンガーはおおはしゃぎでシエスタを煽る。 「そうか、あいつはこれを見越してたってわけか!とんだ策士だ!いや、錬金術師か?どっちでもいいけどな! 嬢ちゃん!お前さんには戦う力がある!さあ、俺を使いな!ガンダールヴ!あいつらやっちまおうぜ!」 しかし。しかしシエスタはそれには答えず、デルフリンガーを抱えて、震え始めた。 「嬢ちゃん?」 「私…戦いなんてできません!な、何かの間違いなんです、こんな私が、伝説の使い魔だなんて…」 それだけ言うと、シエスタは廃屋の隅にちぢこまって、あたりの木片や枯れ草で自分を覆い始めた。 「そうか。手前が戦わねえってんなら仕方ねえ、このまま隠れるとするさ。何しろほれ、 いくら伝説って言っても俺様しょせん剣だからな。『使い手』様には逆らえんよな」 二人の会話はそこで途切れ、静まり返った廃屋に、外からの微かな音が容赦なく響き渡る。 幼い子供のかすかな悲鳴。どこかの民家が消失し、崩れ去る音。 アルビオン兵の下卑た歓声と、村人の慟哭。 何かを懇願する泣き声と、それに続く断末魔の叫び――― 「いや…いや…」 シエスタは悲惨な現実から逃げるように頭を振りながら、顔を伏せた。 廃屋の隅に丸まってすすり泣くシエスタに、デルフリンガーは淡々と、穏やかな声で語りかける。 「なあ嬢ちゃん。逃げたって変わんねえのさ。いや、逃げたら最悪の結果が出るのを待つだけになるぜ」 シエスタはゆっくりと顔を上げて、泣きはらした目をデルフリンガーに向けた。 「ぶっちゃけ、あいつらは村の奴らの命なんてどうも思ってねえからな。やべえって言やあ、村人全員だな。 最悪全滅だ。もちろん、嬢ちゃんも含めての話ね、これ」 シエスタの顔が、絶望に覆われて深く沈みこむ。しかし、デルフリンガーは構わずに先を続ける。 「そりゃ恐えよな、命張るんだからよ。できりゃ戦いたくねえってなあそりゃ真理だ」 シエスタは暗い顔をしたまま、しかし、デルフリンガーの話の続きを待って、わずかに顔を上げた。 「俺の昔の相棒だって、そりゃ逃げたこともあったよ。かなわねえ相手に考えもなく突っかかるなんざ、 馬鹿のする事だってさんざん愚痴こぼしてたのは俺自身だよ。逃げるのは、悪いことじゃねえと俺も思うよ」 デルフリンガーはそこで間をおくと、声のトーンを徐々に上げる。 「でもな。馬鹿がいねえと何も始まらんのさ。ただ強え奴が、好き勝手するだけになっちまう」 シエスタの顔が徐々に上を向いて、その瞳に、わずかな光がともりはじめた。 ついに大声になって、デルフリンガーは叫ぶ。 それは彼とその相棒が、場所を変え、時を変え、役者を変え…繰り返し見てきたこと。 長い時を過ごしたデルフリンガーが悟った、彼の真理。 「戦える奴の後ろには、いつだって守りたい奴がいるんだよ!」 「!」 「手前には、守りたい奴はいねえのか!?命賭けても守りてえ、命賭けるに値する、大切な奴は! それとも、命を賭けるに値しねえか?手前の命の方が価値が高いか?手前の育った、村の全てよりよ!!」 その説教が。デルフリンガーの、全てを賭けた説得が、ようやくシエスタの心に変化をもたらした。 シエスタは立ち上がり、自分を覆っていたみじめな木片と枯れ草を振り払うと、凛とした顔で言い放つ。 「…私なら、勝てるんですね?祖母のように戦って、村を救えるんですね?」 「そうだ、戦に勝つのはあの錬金術師がやってくれる。でもな、今この村を守れるのは、手前ぇだけしかいねえ」 シエスタは決意を込めて立ち上がり、窓から漏れる怒号、叫び、悲鳴…全てを跳ね返すような強靭な声で誓う。 「村の全て…それで私は命を賭けます、賭けられます!」 シエスタは廃屋に駆け込んだ時とは様変わりした足取りで扉の前に立つと、デルフリンガーを一閃し、 閉じられた扉を切り放った。外に出て、素早く辺りを見回す。 一、二、三…ちらりと確認しただけで、森の中に十を超えるアルビオン兵が見える。 シエスタは怯え、思わず震えを抑えきれなくなるが…村の人の、家族の、そして…祖母の笑顔を想い、 その震えを無理矢理に押さえ込むと、動揺を隠した声でデルフリンガーに尋ねた。 「デルフリンガーさん。信じて…いいんですね?」 「おう、俺にまかせときな。何しろほれ、俺様伝説だしな。最初はほれ…あいつらなんてどうでえ?」 その先には、『戦利品』片手に談笑しているアルビオン兵三人が見える。 「三人…いえ、その、最初はもっとその…お手軽なところから行ったほうがいいんじゃないかと…」 伝説といえど、さすがに三人のメイジを相手にするのはきついんじゃなかろうか? シエスタの不安を、デルフリンガーは軽く笑い飛ばすと、自信を持って予言した。 「でえーじょうぶだって。何、お前さんなら一瞬でカタぁつけられるぜ?ほれ、あるだろ? ガキの頃憧れてたあの技やらその技やらなんかよ?」 「…使えるんですか?」 憧れて見ていただけなのに、この剣は、シエスタにもその技が使えると言ってのけたのだ。 「え?ああ、そうだぜ、どんな技でも、俺様が使えるように補助してやるぜ?」 実は、デルフリンガーは適当に、シエスタに自信を付けさせようとほらを吹いただけなのだが… その嘘が、シエスタに絶対的な自信を与えた。あの技が…自分に使えるなら。 祖母の技が使えるのなら、兵士の十や二十はものの数ではない。 「…おい、嬢ちゃん?」 シエスタの異変に気付いたデルフリンガーは、思わずそう問うたが… その時既に、シエスタはデルフリンガーを上段に構え、人間を超越した迅さで駆け出していた。 アルビオン兵三人は、そんなシエスタを見ても真剣に反応せず、ただの村娘と侮り、 適当に魔法を詠唱して黙らせようとした。 しかし。その魔法は全てシエスタの構えた剣に打ち消される。 そこまで来て彼らは初めて不可解な顔を浮かべ、次いで真剣さを取り戻して距離をとろうと試みたが… 全ては手遅れだった。 見える。三人をつなぐ線、全てをなぎ倒す多対一の間合い… 「メル…ブリッツ!」 まさに迅雷、そう表現するしかない剣閃が通り抜けた後に。 あわれなアルビオン兵三人が、同時にくず折れる。 太陽は既に傾き始め、森の中は午後の日差しに覆われていた。 その森を見下ろす岩棚に、ただじっと辺りを見やる人影が二つ。 アルビオン軍から隠れながら移動を続け、今ようやくタルブに到着したルイズとヴィオラートがいた。 「ねえ、ヴィオラート。こんな所で何をしようって言うの?」 「まだ…もう少し。ルイズちゃんが全てを決める時が、必ず来るから」 何度も繰り返されたヴィオラートの曖昧な説明にルイズは不承不承頷き、 即席のテーブルに置かれた『始祖のオルゴール』と『カリヨンオルゴル』を撫で回す。 その二人はただそこで、その時が来るのを待ちつづける。 マチルダ・オブ・サウスゴータが森の中で目にしたものは、 左手を光らせた剣士が、一人、また一人とアルビオン兵を屠る姿だった。 (お友達は、左手にルーンが…) 平民、黒髪、そして左手に描かれたルーン。 こんな偶然があるものか、助けようと思っていた平民の中にティファニアの『お友達』がいて、 その『お友達』が目にも止まらぬ速さでメイジたちを倒し続けて… シエスタの動きを追ったマチルダの視界の隅に、銃を構える兵士の姿が映る。 貴族のプライドを捨ててでもシエスタを仕留めるつもりか。…今さら。 マチルダは反射的に『錬金』を唱え、シエスタを狙う銃を土くれに変成させた。 「ミス…?」 シエスタは訝しげに振り返り、その瞳にかつての知己『ミス・ロングビル』の姿を映す。 フーケ騒動の後、いつのまにか消えていた… 後になって噂を聞いただけのシエスタにはそうとしか感じられなかった『ミス・ロングビル』が、 何故こんな所で錬金を唱えているのだろうか? 「ああもう!もっと派手に登場するつもりが…習慣ってのは怖いもんだね」 マチルダはそれだけ言って、シエスタの死角をカバーするように背を合わせた。 「とりあえず、今は味方だ!いいね!」 「はい!」 たしかに、シエスタも「フーケ」の噂は聞いたが、 シエスタにとって、それはまるで絵空事のような出来事であった。 シエスタが接したのは、『ミス・ロングビル』の姿だけ。「フーケ」を確認した事は、一度もない。 だから、シエスタはフーケに対してのわだかまりを全く持っておらず、 持っていなかったので、あっさりと共闘に同意した。 最強の前衛、ガンダールヴの力を限界以上に引き出したシエスタと、 それを補佐する後衛、まがりなりにもトライアングルのマチルダ・オブ・サウスゴータ。 二人はがっちりと絡み合い、タルブの森を駆ける。 その前には常に敵を捉え、捉えられた敵は数瞬を置かずに倒れ伏し、 シエスタを捉えようとした兵器は一瞬にして土くれへと変わる。 一人を墜とす度にその精度は完成形を超え、やがてそれは事実上の戦線となってアルビオン兵を食い止める。 散り散りになっていた村人たちが、始めは恐る恐る、やがて堂々とシエスタの後に集い出した。 「いいぞ!いいぞ相棒!そう!その調子だ!思い出したぜ!」 村を守りたい。自分の血が沸き立つのを感じる。 「俺の知ってる『ガンダールヴ』もそうやって力を溜めてた!いいか相棒!」 左手の虚無のルーンが、歓喜に打ち震えるように輝きを増した。 「『ガンダールヴ』の強さは心の震えで決まる!怒り!悲しみ!愛!喜び!」 まるで生まれる前から知っていたように、体が動く。 「なんだっていい!とにかく心を震わせな、俺のガンダールヴ!」 習った事のない…受け継がなかったはずの剣技が、シエスタを導き。 「忘れるな!戦うのは俺じゃねえ!俺はただの道具に過ぎねえ!」 封印された、いや、使われなかった血の記憶が解き放たれる。 「戦うのはお前だ!ガンダールヴ!お前の心の震えが、俺を振る!」 森の木々の間を抜けて、空に、巨大なグリフォンが舞い上がった。 ワルドより下賜された…ワルドのグリフォンに乗った兵士が、空からの奇襲を試みたのだ。 だが。この期に及んで彼は、貴族と平民という概念に囚われていたのであろう。 平民は貴族にかなわない…その根拠のない傲慢な判断が致命的ミスとなった。 シエスタを敵と認めていれば、正面から突っ込むという愚策をとることはなかったろうに。 シエスタは横薙ぎに剣を構え、遥か過去の記憶を呼び覚ます。 祖母がシエスタの前で一度だけ見せた必殺剣。いつか使えたらいいと、幼き心に刻み込んだ憧憬。 剣聖グレイデルグが編み出せし究極の剣技、その子孫の血の中に眠る――― 「アイン、ツェル…カンプ!!」 交錯。 そして。 巨大なグリフォンが、轟音と共にシエスタの背後に墜落した。 木々を巻き込み、無謀なる騎乗者と共に迎えたその最後の戦いはあまりにも哀れで、滑稽で、 そして、美しかった。 その光景を目の当たりにした村人たちの間に、ある一つの幻想が浮かぶ。 誰もが知り、そして誰もが信じない。ありえないはずの奇跡。 「……イーヴァルディ……」 誰かが、そう囁いた。 「イーヴァルディの、勇者だ」 そう呟いた。 幻想は燎原の炎となり、それを信じたい者達の間を駆け巡る。 新たなるイーヴァルディの伝説が、生まれようとしていた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/aousagi/pages/1490.html
氏名:サーシャ・シスネル 年齢:19 種族:人間 ICV:無し 1年戦争後に連邦軍に志願した兵士で階級は少尉… 星の屑作戦における北米のコロニー落としで両親を亡くした… 女性だけの部隊『ジュエル小隊』のメンバーだったが… 友人のミーネを残して全滅してしまう… その為、補充要因としてアルビオンへ異動してくる事となった… 愛機はトルネードガンダムでコールナンバーはジュエル3 性格は冷静でどこか冷めた感じを漂わせている… 常日頃から亡き隊長の愛用していた紅いリップグロスを付けている…
https://w.atwiki.jp/generation-world/pages/550.html
戦艦リスト 機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー 名前 搭載 COST SIZE 捕獲 HP EN 攻 防 機 移 宇 空 地 水上 水中 散 撹 盾 備考 アルビオン 4×2 160500 3×6 6 33000 97 41 18 6 6 B B - - - ○ サラミス(83) 4x1 生産不可 1x4 4 22500 87 34 14 6 5 A - - - - ムサイ後期型 4×1 生産不可 3×4 4 24400 89 34 16 6 5 A - - - - ムサイ後期型(シーマ艦隊) 4×1 69300 3×4 4 24400 89 34 16 6 5 A - - - - リリー・マルレーン 4×2 155400 3×5 6 32500 96 40 18 6 6 B B - - - ○ グワデン 4×2 生産不可 3×7 8 40000 108 42 20 4 7 A - - - - ○
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8164.html
前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い 「どうぞ」 「ありがとうございます」 ややあってトリステインの未来予想図(妄想)から帰還した二人はエリスから水を手渡され、同時に息をついた。 何故か満足そうな二人の一方で、柊はどこか疲れたように腕を組んで口を開く。 「……で、結局俺達に頼みたいことってなんなんだ」 「あぁ、はい。……どこまで話しましたっけ」 「同盟のために姫さんがゲルマニアに嫁ぐってとこ!」 苛立たしげに柊がそう言うとアンリエッタは思い出したかのように手を叩いた。 もはや王女に対する敬意も何もあったものではないがアンリエッタは気にした風もない。 「そう、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶのです。ですがそれは当然レコン・キスタにとっては好ましからざる事態……それゆえ同盟を妨げる材料を血眼になって探しているのです」 「……つまり、姫さんはその材料ってのに心当たりがあって、それをどうにかして欲しいって事だな?」 この話の流れで秘密裏に頼みたい事がある、となればこれくらいは大体予想の範疇ではある。 心なし低い声で柊が呟くと、アンリエッタははっとして彼を見やった後、気まずそうに顔を俯けた。 「そうなのですか、姫様?」 「……はい。以前わたくしがしたためた一通の手紙……それを確保して欲しいのです」 「手紙? どんな?」 「それは言えません。ですがもしそれが明るみに出れば、ゲルマニアはわたくしを許さず、同盟は破棄されるでしょう」 「そのようなものが……」 ルイズは戦慄と共に呟いた。 話が深刻なものになって流石にエリスもやや緊張した面持ちでアンリエッタを見つめている。 それは柊もまた同様で、思案顔で顎に手を添えながら尋ねる。 「それで、その手紙ってのは何処にあるんだ?」 手元にあるならさっさと処分してしまえばいいだけの話なのだから、その手紙は取り戻すことのできない場所にあるのだろう。 問題はそれが何処にあるのか、だ。 「手紙はアルビオンにあります。今もレコン・キスタと闘っているアルビオン王家の皇太子……ウェールズ様がお持ちになっているでしょう」 「プリンス・オブ・ウェールズ……あの凛々しき王子様が」 「もはや王家……王党派の敗北は決定的とも言われています。そうなればあの方もいずれ囚われ手紙が明るみに出て……きっとゲルマニアの皇帝は『このビッチ!!』と怒り狂い同盟を破棄するでしょう!!」 「一国の姫さんがビッチとか言うなよっ!?」 とりあえず突っ込んでおいてから柊は深く息を吐く。 まあ既にレコン・キスタとやらの手中にあってそれを奪還して来い、などという事態にはならなかっただけマシというものだろう。 だがいずれにしろ戦争中の国――それも災禍の中心に赴くという点ではあまり変わりはない。 それに気付いているのかいないのか、ルイズはアンリエッタの前に進み出て恭しく跪いて見せた。 「委細は承りました。この件、土くれのフーケを捕らえたわたくしめにお任せ下さいますよう」 「ああ、ルイズ……本当にいいの? かの国は今や戦いの荒れ狂う混沌の地、しかも事が知れればレコン・キスタの者共が妨害に現れるでしょう。死地に赴くも同然なのですよ?」 「何をおっしゃいます! この身に流れるヴァリエールの血は祖国トリステインに捧げしもの、姫様に永遠の忠誠を誓っております! 未だにわたくしなどをおともだちと言ってくださる姫様のためならば、地獄の釜の中であろうと竜のアギトの中であろうと喜んで参りましょう!!」 「ああ、忠誠……これがまことの忠誠なのですね! この天上にも昇る思いの丈を感動と呼ばず何と呼びましょう! わたくし、あなたの友情と忠誠を一生忘れません、ルイズ・フランソワーズ!」 大仰な身振り手振りで二人はまくしあい手に手を取り合って語り合う。 本人達はいたって大真面目なのだろうが、外から見ているエリスと柊からすればまるでどこぞの演劇でも見ているような気分だった。 「す、すごいですね……」 呆れるを通り越してもはや感嘆の域に達してエリスがぽつりと呟くと、柊は頭が痛そうに眉を潜めてこめかみを指でかく。 「そーだな……けど」 面倒臭そうに大きく息を吐いて、柊は最高潮の二人に向かって声をかけた。 「盛り上がってるところ悪いんだけど、ちょっといいか?」 「……何よ。まさか怖いからアルビオンに行きたくないなんて言い出すんじゃないでしょうね」 「いや。話も聞いちまったし、頼まれたんだから行くのは行くよ。けどな、」 アンリエッタの手をしっかと握ったまま睨みつけてくるルイズに柊は再び溜息をつくと、静かに切り出した。 「なんでお前も行くことになってんだ?」 「……?」 ルイズとアンリエッタの動きがぴたりと止まった。 二人は同じような表情――言われた台詞の意味が理解できないといった感じでしばし柊を見つめる。 ルイズが不思議そうに首を捻ると、柊は改めて言った。 「いや、だから。お前はアルビオンに連れて行かねえって言ってんだよ」 「………………なっ」 まるで火山の噴火の兆候を思わせるような、そんな30秒ほどの間をおいてルイズは轟くような怒声を上げた。 「なによそれえぇっ!?」 こうなるのは予想できていたし準備の時間もちゃんとあったので柊は耳を塞いでそれをやり過ごすと、腕を組んで言い聞かせるようにルイズに口を開く。 「お前が頼まれたのは俺を貸すことで、アルビオンに行くってのは俺が受ける依頼だろ。そうだよな、姫さん?」 「あ、はあ、それは……そうですが」 柊が眼を向けるとぽかんとしたまま固まっていたアンリエッタが問われるままに頷いた。 しかし勿論ルイズがそれで引き下がる訳がない。 「あんたはただのゲボクでしょ! これは小間使いじゃなくて王女殿下からの密命なの! ゲボク一人に任せられる訳がないじゃない!」 「その王女殿下が俺を指名してきたんだろうが……。大体な、アルビオンは今内戦中なんだぞ? タルブ村の時とは訳が違うんだ」 「危険だって言うんでしょ、そんなこと百も承知よ!」 「……承知なら言わせてもらうけどな。俺は侵――魔物とか相手の修羅場ならうんざりするほどくぐってきたが、人間同士の戦いに参加したことはそんなにねえ。 無責任に守ってやるっていえるほど自信過剰じゃねえぞ」 「――ふっ」 憤るルイズに対して憮然として柊が言うと、何故か脇で聞いていたエリスが小さく噴き出した。 「な、なんだ? どうした、エリス?」 「い、いえ。なんでもありません。ごめんなさい」 不思議そうに見やる柊に、笑みを必死に押し殺しながらエリスが頭を下げた。 彼はおそらく本気でそう言っているのだろうが、柊が実際に“そういった状況”になった時には躊躇なくそれを実行してしまう人間だという事をエリスは身をもって知っているのだ。 柊はそんな彼女を怪訝そうに見つめた後、気を取り直すようにルイズに向き直る。 「……と、とにかく。最低限自分の身も守れない奴を連れて行くわけにはいかねえってことだよ」 「な、何よ。わたしが足手まといだとでも言うつもり……!?」 「端的に言うとその通り」 「!!」 反応に詰まることでも期待していたのだろうか、しかし即座に断言されてルイズは絶句して固まってしまった。 しかし柊としては特に理由もなく彼女を連れて行く道理などまったくない。 ウィザードとして任務に赴く際には依頼主であるアンゼロットが戦力の調整などをやってくれるのだが、自分でやれと言うのならばこれくらいはやれるのである。 「そんな訳だから、エリスもここで留守番な」 「はい、わかりました。気をつけて下さいね」 固まってしまったルイズを置いて柊がエリスに顔を向けて言うと、彼女の方はすんなりとすんなりと頷いた。 エリスは一時期ウィザードとして柊達と共に戦いを潜り抜けた経験があるし、自分の力量を――ウィザードでなくなった事もちゃんわきまえていた。 なのでこの状況で特に口を挟むことなど何もない。 ……が、やはりもう一人の彼女はそうも行かないようだった。 「あ、あんたみたいな平民が一人で行ってどうしようっていうのよ! そりゃ王党派の所まで辿り着くことはできるかもしれないけど、そこで門前払いされるのがオチじゃない!」 薄桃の髪を振り乱して詰め寄るルイズに、柊は僅かに眉を寄せて息を吐いた。 別の方向からアプローチをしたようだが、そう来るのなら柊としてもやり方はある。 彼は口を挟むことができず心配そうにやり取りを見守っているアンリエッタに振り返った。 「信用されりゃいいんだろ? 姫さん、そのウィールズ王子宛に手紙だか親書だかを書いてくれるか?」 「え、あ、はい」 彼女は慌てたように周囲を見回すとルイズの机に向かい、そこでさらさらと所をしたため始める。 それをいらいらとした表情で見つめながら、ルイズは柊に視線を移した。 「し、親書があるってだけじゃ身の証にはならないわよ。ちゃんとしかるべき人間が赴いて――」 「――って事なんで姫さん。何か身の証になるようなもの、ねえか?」 「えっ、はっ、はいっ」 状況に押されてアンリエッタは年相応の少女のように慌てふためき、ペンを止めると探るように身体のあちこちに手を当てた。 そして思いついたように顔を上げると、右手に嵌めていた指輪を抜き取り柊に歩み寄った。 「母より頂いた王家の秘宝たる『水のルビー』です。 これを同じくアルビオン王家に伝わる『風のルビー』に近づければ虹の架け橋が浮かび上がる……何よりの身の証となりましょう」 手渡されたルビーを確認して小さく頷き柊はルイズを見やる。 「これで文句ねえだろ……って、ルイズ?」 と、何故かルイズは今までの剣幕がなかったように黙り込んでいた。 訝しげに首を捻る柊を気にも留めず、彼女は柊の手元にある水のルビーを食い入るように見つめている。 「ルイズ? どうしたのですか?」 「ルイズさん?」 少女二人の声もルイズの耳には届かない。 今の彼女の頭の中に浮かんでいるのは、先だってのフール=ムールの言葉だ。 始祖のルビーを手に始祖の秘宝と接触する事が正規の虚無覚醒の手順、と。 巡り会わせがよければ始祖の遺産に辿り着くこともあるだろう、とも。 ならばこれがその“巡りあわせ”というものではないのだろうか。 「……いやよ。わたしもアルビオンに行く! 絶対行くんだからー!!」 「お前なあ……っ」 まるで癇癪を起こしたように叫んだルイズに流石にいらついてきて柊は唸った。 何しろルイズがフール=ムールから得た情報は彼女自身半信半疑であったため柊やエリスには話していないので、彼らから見れば完全に駄々をこねているようにしか見えないのだ。 彼女を諌めようとして柊が口を開き――かけた時。 それを遮るように部屋の扉が勢い良く開け放たれた。 「話は全て聞かせてもらったわっ!!」 バーンと威勢よく開いた扉と部屋に響き渡る声。 燃えるような紅髪の少女――と、その彼女に続いて従者のように姿を現した青髪の少女の闖入に四人は完全に固まってしまった。 「つぇ、ツェルプストー……?」 「と、タバサ……?」 呆然と掠れた声を漏らしたルイズと柊。 凝固した場の空気と各々の表情を眺めやってキュルケは満足そうに笑みを浮かべると、つかつかとアンリエッタに歩み寄って恭しく膝を折った。 「恐れながら姫殿下、我が寮の壁は王宮のそれほど厚くはございませぬ。魔法を使わずとも聞き耳を立てる不埒者もおりますゆえ、お気をつけになられたほうがよろしいかと」 「…………」 恭しく告げられた諫言にアンリエッタは眼を数度瞬かせた後、ふっとその場に倒れ伏した。 どさりとアンリエッタの体がベッドに倒れこんだ音で部屋の中に時間が流れ始め、ルイズは烈火のような表情でキュルケに詰め寄った。 「ふ、ふふ不埒者のあんたがどの面下げて言ってるのよおぉぉっ!!!」 しかし当のキュルケは一向に悪びれた様子はなく、むしろ不服だといわんばかりに息を吐いた。 「失礼ね、あたしはちゃんと放言して良いことと胸に秘すべき事の区別はわきまえてるわ。むしろ感謝されてもいいぐらいよ。“あんな不埒者”に聞かれたらどうなったことか」 言いながらキュルケは顎で部屋の入り口のほうを示した。 ルイズは怒りを露にしながらも、そして柊とエリスもそちらを見やる。 その先にいたタバサが言葉もなく脇に動くと、その向こう――部屋の外の廊下。 ……いい感じに丸焦げになったギーシュがぶっ倒れていた。 「ギーシュ……」 返事がない。流石に生きてはいるようだが。 無残な彼の遺体をよそに、キュルケは得意げになって鼻を鳴らしてルイズをねめつけた。 「それにあれだけおともだちだの何だの騒いでおいて誰にもばれないだなんて本気で考えていたの? それとも考えてすらなかったの?」 「くっ……!?」 反論することができずにルイズは唇をぎゅっと噛み締めた。 はっきり言ってキュルケ達の行為は出歯亀以外の何者でもないのだが、結果的には彼女達以外の誰にも漏れないように人払いをしてくれていたことになっていたという訳だ。 黙り込んでしまったルイズを見てキュルケはふふんと勝ち誇ったように笑みを浮かべた後、改めて場の三人(アンリエッタは気を失っている)を見やってから自慢の紅髪を掻き揚げた。 「まあとにかく。そんな訳で話は全て聞かせてもらったわ」 「……ゲルマニア貴族のところも?」 「……ノーコメントにさせて頂きます」 柊がおずおずと尋ねると、キュルケは珍しく穏便に――聞かれた瞬間こめかみに青筋が立ち拳を握り締めたが、それでも穏便に話を流した。 いかな慇懃無礼の彼女とて、気を失ってはいるものの仮にもトリステイン国の王女であるアンリエッタに対して暴言を吐くことはできなかったのだろう。 キュルケは平静を取り戻すよう努めて大きく深呼吸した後、改めて口を開いた。 「お偉方の決定だからその是非はおいておくとして、ゲルマニアとの同盟というならあたしにとっても無関係の話ではないわ」 貴女だってそうでしょう? とキュルケはタバサに声を投げかけた。 当のタバサは眠いのだろうか半分眼を閉じふらふらと頭を揺らしていて聞こえているかどうかすら定かではない。 怪訝そうに声を上げたのはルイズだった。 「何? この子、ゲルマニアの人間だったの?」 話の腰を折られて、そして更にゲルマニアの人間かもしれないという事でルイズの声音には明らかに不機嫌の色が浮かんでいる。 しかしタバサは黙して語らず、キュルケは溜息をついて肩をすくめた。 「実はあたしも知らないのよ。トリステインのどこだかの貴族だと思ってるんだけど……ルイズ、あなたも知らないの?」 「知らないわよ。あんた、家名は?」 「……」 ますます怪訝な表情になってルイズはタバサを覗き込む。 視線を真正面から受けてタバサはようやく船をこぐのをやめたが、ルイズの質問自体はこれまで通りに黙殺――いや、一度だけルイズから眼を外してアンリエッタを見やった。 タバサにとってアンリエッタが気を失っていたのは幸運だったかもしれない。 もっとも、『彼女』がアンリエッタに逢ったのは一度だけであり、しかもそれは十年近く前の話だ。 その時は“顔見せ”程度のもので会話らしい会話もなかったし、何より今の『タバサ』からは当時の『彼女』の印象や面影を見出すことはできないだろうが。 「まあいいわ。それより話を元に戻しましょう」 タバサの微妙な空気の変化を読んでくれたのか、あるいはさほど興味がないことだったのか。 キュルケは軽く手を叩いてから場にいる全員に顔を巡らせ、最後に柊に向かい合ってからにっこりと笑みを浮かべて口を開く。 「ダーリン、貴方アルビオンに一人で行くつもりなのよね?」 「なんだよそのダーリンってのはよ……」 「わたしも行くって行ってるでしょう!?」 嘆息交じりに言いながらも柊は首肯し、そしてルイズが肩を怒らせてから口を挟む。 しかしキュルケはルイズの怒号を委細気にせずに柊に向かって指を差し、軽く振って見せた。 「ダーリンなら力量は十分でしょうけど、王党派の拠点に行くまでの道程はどうするつもりなのかしら? こっちに来たばっかりでアルビオンどころかトリステインですら詳しくないでしょう?」 「……う」 それを言われると流石に柊は口ごもらざるを得ない。 ハルケギニアに着てから約一月程度しか経っておらず、しかもこの魔法学院からさほど離れたこともないのでキュルケの言う通り土地勘などないも同然だった。 手当たり次第という手もあながち不可能ではないが、やはりある程度の前知識があるに越したことはない。 するとルイズが嬉々として声を上げた。 「そ、そうよ。一刻を争う任務なのに迷子になったらどうするつもり? わたしなら一度アルビオンに行ったことあるから土地勘もあるわ。だから――むぎゅ」 勢い込んだルイズの頭を押さえつけてキュルケが詰め寄った。 「そこであたし達の出番って訳よ。アルビオンには何度か行ったことあるからそれなりに土地勘もあるわ。それに何より……」 言いながらキュルケはどこか蛇を髣髴とさせる、にやりとした笑みをルイズに向けた。 「ゼロのルイズと違ってあたしとタバサはれっきとしたトライアングル。自分の身は自分で守れるだけでなく、ダーリンの手助けもきっとできますわ。中々お買い得な取引だと思わない?」 「ツェルプストー、あんた……っ」 ルイズは屈辱に顔を引きつらせ、頭を押さえつけているキュルケの手を払って睨みつけた。 しかし当のキュルケは余裕綽々で敵意の視線を受け流して払われた手をひらひらと振っている。 その態度がどうしても気に食わないが、ルイズはそれ以上に気に食わない事が一つあった。 それは、キュルケの提言を聞いた柊が特に難癖(ルイズにとっては)をつけて断る訳ではなくそれを思案している事だった。 理屈ではちゃんと理解していた。 今のアルビオンが危険な場所であることも、そこへ向かうこの任務が危険なことも。 魔法を使えない自分よりも魔法を使えるキュルケ達の方が戦力になることも、ちゃんと理解はしている。 だが理屈でそう理解してはいても、感情がどうしても納得してくれなかった。 柊が自分よりもキュルケ達を選ぼうとしている。 それが間接的に自分がゼロで役立たずだと言われているようで、裏切られたような気がしたのだ。 そして――それは“気がした”ではすまされなかった。 「……本当にいいのか?」 柊がキュルケに向かって言ったその一言で、ルイズは完全に言葉を失い肩から力が抜けてしまった。 そんな彼女の様子などお構いなしにキュルケは喜色を称えて柊に歩み寄り強引に手を取る。 「ええ、勿論よ! ダーリンの助けになるなら地獄の釜の中だろうと竜のアギトの中だろうとお供いたしますわ!」 「だからダーリンってのは……まあいいや。ただ、一つだけな」 「うん、なぁに? もしかしてタバサも一緒じゃなくて二人だけで行きたいの? ダーリンがそうしたいならあたしとしては心苦しいけどタバサには残ってもらうわ?」 「いや、そうじゃなくて……ある意味そうなんだけど」 どんどんと詰め寄ってくるキュルケに柊はやや身体を仰け反らせながら、言った。 「連れてくのはタバサだけでいい」 間。 「なンでタバサだけなのよぉォォォーーっ!?」 まるで寮全体を震わせるようなキュルケの叫び声が響き渡った。 直近でそれを受けた柊は顔を顰めながらも、彼女に向かって言う。 「いや、トライアングルっつってもピンキリだろうし、お前が実際どれほどのモンかわからねえし……」 しかもデルフリンガーに『火遊びの達人』とまで言われてしまっては戦中の国――実戦の場所には連れて行きかねる。 その点で言えばタバサはギーシュと初めての決闘をした際に少しだけ力量を垣間見ていた。 魔法に関してはそこまで深くはわからなかったが、少なくとも身のこなしだけは相当なものだ。 更に言うならタバサだけを――というより、『一人だけ』を選んだのにはもう一つ理由があるのだが、そこまでは彼女には言えなかった。 「どれほどですって!? だったらギーシュを見なさいよギーシュを!!」 そんな柊の事情を知る由もないキュルケは怒りも露に廊下にぶっ倒れているギーシュを指差した。 「あんな風に生かさず殺さずミディアムレアに仕上げるのは並大抵の技量じゃできないのよ!!」 「……そうなのか?」 「そうなのよ!!」 「でもギーシュだしなあ」 「あんただってこないだ負けたじゃない!!」 「う、うるせえな!?」 キュルケの怒りは収まるところを知らず、だんだんと床を踏み鳴らしながら苛立たしげに紅髪をかいてから次いでタバサを指差す。 「だ、大体ねえ! タバサは元々乗り気じゃないの! 今日のだってあたしが無理矢理連れてきただけなんだから! そのあたしが行かないのにこの子だけが行く訳がないでしょう!?」 聞いている分には酷いいいようではあるが、タバサは一向に気にしている風はない。 しかし話題が出てきて自然と注目がタバサに集まると、彼女は少しの沈黙のあと、ぼそりと呟いた。 「……行く」 「タバサ!?」 出てきた肯定的な発言にキュルケは勿論のこと、この場にいる他の全員――提案した柊自身も含めて――が少なからずの驚きを浮かべた。 しかしタバサは一切表情を変える事なく、僅かに眼を細めて柊を見据えて更に言葉を続けた。 「その代わり、教えて欲しいことがある」 「……」 その表情と目つきで柊はそれが何なのかを理解した。 彼女とのほぼ唯一の接点であったあの日に聞かれた事だ。 柊は僅かに首を傾けると、諦めたかのように溜息を吐き出した。 「……わかったよ。けど、前にも言ったとおり知ったからってどうにかなるかはわからねえぞ」 「それで構わない」 「……もうっ、何なのよ一体!」 お互いに頷きあった柊とタバサを見やっていたキュルケが溜まりかねた様に声を上げた。 そして彼女は烈火のように柊を睨みつけると、タバサとの間を遮るように身を乗り出して床を蹴る。 「こんなの納得いかない! タバサが行くんならあたしだって行くわ!」 すると今まで黙り込んでいたルイズが便乗して怒声を張り上げる。 「納得いかないのはこっちの方よ! ツェルプストーもヒイラギも、どいつもこいつもなんでわたしを無視して話を進めてるのよ!! これは姫様がわたしに持ってきた話なの! わたしがいなかったらそもそもこの話自体がなかったんだから!」 言いながらルイズは感情任せにキュルケを突き押した。 ルイズと同じく半分感情的になっている今のキュルケがそれを受け流せるはずもなく、顔を怒りに赤く染めてルイズに掴みかかった。 「戦力外通告されてんだから無視されて当然でしょう、引っ込んでなさいよゼロのルイズ!」 「な、なんですってぇ!?」 そして二人の取っ組み合いが始まった。 お互いの家名やら先祖やらを引き合いに出して口汚く罵りあう二人を眺めやりながら柊は本日何度目かの溜息をつく。 タバサもそれをぼんやりと見ながら小さく息を吐いた。 今まで完全に話しに入っていけなかったエリスは二人の喧嘩を止めることもできずおろおろとするしかない。 どたばたとしたやりとりに流石に眼が覚めたのか、ベッドで気を失っていたアンリエッタが頭に手を当てながらふらふらと起き上がった。 それを見やってから柊は苛立たしげに頭をかきむしり、押し合い圧し合いしている二人を制するように大きく声を上げた。 「ああもう、わかったよ! 連れて行けばいいんだろ!」 その言葉に二人はぴたりと動きを止めて、同時に柊に眼を向けた。 「俺とキュルケとタバサ、そんでルイズも一緒に行く。それでいいな、姫さん?」 「え? あ、はい……よくわかりませんが、ヒイラギ殿のよろしいように……」 起き抜けにいきなり話を向けられれば当然だが、アンリエッタはぼんやりとした調子で頷いた。 「なんでツェルプストーまで……」「なんでルイズまで……」 予想通りの台詞を異口同音に吐き出した二人に、柊は首を捻りっぱなしのアンリエッタに視線を送ってから有無を言わせぬ態度で二人に言い放つ。 「王女殿下の認可は貰ったんだ、文句あるのか?」 「……」 こういう形のやり方は正直好みではないが、こういう世界では一番効果的ではある。 実際二人は顔には不満をありありと貼り付けていたが口答えするつもりはないようだ。 「そんで姫さん、腰折っちまったけどとりあえず親書を書き上げてくれねえか」 「は、はい。少々お待ちを」 慌てて机に戻ってペンを手に取ったアンリエッタを見届けて、柊は次いでタバサに眼を向けた。 完璧に我関せずといった調子で推移を見守っていたタバサに向かって、柊は口を開く。 「タバサも……それでいいな?」 あえて念を押す形で問いかけた。 すると彼女はしばし柊を見つめた後、はっきりと頷いた。 「あの……柊先輩?」 と、おずおずとエリスから声をかけられて柊は彼女を振り返った。 見つめてくる翠の瞳に込められた表情は「自分も行きたい」という風ではなく、むしろ柊の意図をなんとなく察しているようだ。 「……後でメール入れっから」 「はい、わかりました」 エリスは特に何も聞くことなく小さく頷いた。 それはそれで嬉しくはあるのだが、やはり彼女に対する申し訳なさも感じてしまう。 「悪いな、面倒ごと押し付ける風になっちまって……正直、この世界で一番頼りになるのはエリスだよ」 すると彼女は眼を丸め、僅かに頬を染めて微笑んだ。 頼りにされた嬉しさが半分、純粋に頼りにしかされていない寂しさが半分の、わかる人間にはわかる微妙な笑顔だったが生憎柊はわかる人間ではなかった。 ※ ※ ※ ややあってアンリエッタが書き上げた親書と託された水のルビーは柊が預かることとなった。 これにはルイズが少し渋ったが、ものの重要性を考えれば事実上柊以外の人間には決して手が出せない月衣の中に入れておくのが一番安全――と言われては流石に引き下がるしかない。 出発は翌明朝という事でこの場は一旦解散になり、柊も黒焦げになったギーシュを引き摺ってルイズの部屋を後にした。 とりあえずギーシュを彼の部屋に放り込んでおいてから、柊はそのまま就寝はせずに寮の外へと赴く。 そのまま学院の敷地から外へ出て、辺りを軽く見渡してから外壁に背を預け懐からO-PHONEを取り出した。 エリスにメールを送信し終えると、彼はその場に座り込んで眼を瞑る。 それから30分程経った頃合だろうか、柊の元に近づく気配があった。 柊が眼を開いて訪れた相手に眼を向けると、それは果たして予想通り、タバサだった。 「通じてたみたいだな」 安堵するように柊が息を吐いて言うと、タバサは答えるように小さく頷く。 「私も多分そうする」 そうする、とは言うまでもなくルイズやキュルケを置いてアルビオンに出立することだ。 端的に言ってしまって、国家間の同盟を左右するほどの任務に対して遊び半分――彼女等からすれば大真面目なのだろうが、だからこそ大問題だ――で参加しようとする人間など力量とか言う以前の段階で連れて行ける訳がない。 なのであの場は妥協する形で収めておいて、こうしてすぐに出立することにしたのだ。 柊としてはあまり面識のないタバサがそれを察してくれるか微妙なところだったので、もう30分ほど待って来なかったら本来の予定通り一人で行くつもりだった。 だが幸い、彼女の気色はルイズ達より柊に近いらしい。 翌朝になってルイズとキュルケは怒り狂うだろうが、必要なものはこちらが握っているので騒いでも後の祭りだ。 ……二人の気性からして追いかけてすら来そうなのでエリスにメールで後詰を頼んでおいたのである。 「けど、本当にいいのか? そこまで知りたいってんなら別についてこなくても教えはするけど」 「それは公平じゃない。報酬に見合う対価は払う」 一応改めて聞いてみたがにべもなくそう言われたので柊は黙り込むしかなかった。 タバサは柊に背を向けて少し距離を取った後、空に向かって指笛を吹いた。 静まり返った夜闇の中に刺すような音が響き渡り、ややあって大きな影――風竜が風を切って飛来してきた。 風竜はタバサの側に降り立った後、その口を大きく開けてあくびを吐き出すと恨みがましげに彼女を見やる。 「アルビオンまで」 「……きゅい」 幼体とはいえ仮にも竜であるその威容に見合わない、まるで愚痴を零すような鳴き声を漏らして風竜……シルフィードは頭を地面に下げる。 その頭を軽く撫でてからタバサが振り返ると――柊は何故か微妙な顔つきでタバサとシルフィードを見やっていた。 「……その風竜ってお前の使い魔だったのか」 「……?」 柊の言葉にタバサは首を捻ってしまった。 てっきり彼が自分を選んだのは力量に加えて移動手段を確保するためだと思っていたのだが、その様子を見るとどうも違うらしい。 柊は溜息を漏らした後困ったように頭をかいた。 「だったらキュルケはいてもよかったかもな……いや、まあ態度がちょっとアレだけど」 「……どういうこと?」 「コレで行こうと思ってたからよ」 タバサの質問に柊は月衣からガンナーズブルームを取り出すことで答えた。 何もない中空から現れた巨大なモノにタバサは眼を見開き、呟く。 「……破壊の杖?」 タンデムシートなしでの三人乗りは非常に危険、という事は先日のタルブ村行きの際に嫌と言うほど体験していた。 なのでこの箒でアルビオンに行くなら一人だけの方が望ましく、それならキュルケよりもタバサの方がいいだろう……というのが柊の思惑だったのだ。 タバサはしばし破壊の杖を興味深げに眺めやった後、シルフィードに向き直ってから告げた。 「今回は留守番。帰っていい」 「きゅいっ!?」 驚愕の声を上げて頭を持ち上げるシルフィード。 しかしタバサは一方的な宣告を終えた後、話は終わりとばかりにシルフィードから離れ柊の方へと歩き出す。 するとシルフィードは大口を開けて背後から彼女を咥え込み、ぎょっと目をむいた柊をよそに翼を翻してその場からタバサを連れ去ってしまった。 柊から十分に距離を取った後シルフィードはタバサを解放し、そしてひそひそ声で“喋った”。 「ちょ、ちょ、ちょ、お、お姉様! どういう事!? あんな棒っきれでアルビオンに行くとかホザくなんて頭が沸いてるに決まってるのね! そんな奴の言う事を聞くの!?」 「今回の私は同行者。だから指示には可能な限り従う。それに……破壊の杖にも興味がある」 言ってタバサは再び柊の元に向かおうとするが、シルフィードの巨体がそれを行く手を遮った。 「ほ、本気で置いていくつもり!? シルフィードはお姉様の使い魔……いわば右腕のはず……っ!」 「……私の右腕はここにある」 「!!!」 自らの右腕を軽く叩いてタバサがそう言うと、シルフィードは愕然とした表情を浮かべて固まってしまった。 そんなシルフィードの脇を擦り抜けてタバサは柊の下へと歩いていく。 彼女が柊の傍に辿り着くと、彼はおそるおそるといった感じで彼女に声をかけた。 「お、おい、なんかすっげえ睨んでるぞ……」 学院のすぐ側とはいえ街灯もない暗闇の中、シルフィードの怒りに満ちた双眸が爛々と柊を射抜いていた。 殺気すら纏わせてガチガチと牙を鳴り響かせているその様は、隙を見せれば襲ってくる魔物のそれに等しい。 「問題ない。それで、破壊の杖でどうするの」 「お、おう……」 ただならぬシルフィードの様子を完全に無視したタバサの言葉に促されて柊は破壊の杖――ガンナーズブルームを起動させた。 中空に浮かばせたそれに跨ってタバサを促すと、彼女は普段の無表情な顔に興味を浮かばせてしきりに何か頷きながら観察し、箒に同乗する。 ゆっくりと機体を上昇させながら柊はタバサに言った。 「アルビオンって確かここから北西だったよな? ラ・ローシェルの更に先」 タルブ村などといった局地的な地理はともかく、流石に国やその主要都市くらいの地理はこちらに来たときに既に仕入れている。 確認に首肯で返した彼女を見て柊は一つ頷くと、出発しようと機首を返し、 「うおっ!?」 下方から飛び出した影に僅かに姿勢を崩された。 今まで沈黙を保っていたシルフィードが唐突に飛び上がり、柊達を掠めるように旋回した後高く一鳴きしてそのアルビオンの方向へと向かっていったのである。 その行動の意図はもはや言うまでもなく『挑発』だった。 「……箒と勝負しようってのか? 上等じゃねえか」 流石に風竜というべきか、あっという間に夜闇の中に消えていったシルフィードを見据えながら柊は獰猛な笑みを浮かべた。 彼は手前に乗せていたタバサの身体を片腕で抱いて固定し、背中越しに振り返った彼女に向かって告げる。 「魔法で風圧……風を避けられるか?」 「度合いによる」 「よし、なら飛ばして行く。辛いようなら言うなり合図してくれ」 柊の言いようにタバサは僅かに眉を動かした。 メイジでない彼は知らないのかもしれないが、エア・シールドなりを使えば例え物理的なモノでもかなりの防御効果があるのだ。 なのでどれほどの速度であっても風だけなら辛いという事態にはまず陥らない。 特に指摘するような事でもないので彼女はあえて何も言わなかった。 ――箒の尾部スラスターがまるで破裂するように閃光を迸らせ夜の闇を切り裂いた。 回りの何もかもが一瞬で吹っ飛んだのと同時に、彼女は自分の『常識』も一緒に吹っ飛んだのを感じた。 ※ ※ ※ 「遅い! 遅すぎるのね!!」 二つの月明かりが照らす夜空の中を飛翔しながら、シルフィードは歌うように声を上げた。 出立した魔法学院は既に遥か遠く、幾つもの山の向こうに消え去っている。 彼女にとってはわかりきったことではあったが、柊達の姿などどこにもありはしない。 なんだか楽しくなってぐるぐると切りもみしはじめながら、シルフィードは完全なる勝利の余韻に酔いしれる。 このままアルビオンまでひとっ飛びした後は三日ぐらいかけてひいこらやってくるだろう二人を優雅に待ち受けるつもりだった。 そうすれば少々空に浮かぶ程度のみょうちきりんな棒を持ったあの馬鹿もシルフィードの偉大さを思い知るだろうし、そんな偉大なる使い魔をないがしろにした主も己の浅はかさを悔いるだろう。 柊:うわーだめだー、シルフィード様はなんて凄いんだー! それに比べて俺はなんて無知蒙昧な豚野郎なんだー!! タバサ:ごめんなさい。やっぱり私には貴方しかいない。 シルフィード:だめだ許さないのね。でもシルフィードは鬼というわけではありません。これからは待遇を改善して毎日お腹一杯お肉を食べられるようにしてくれれば全て水に流してあげるのね。 タバサ:そんな事で許してくれるなんてなんて優しいの……素敵、抱いて! 柊:一生ついていきます! 「コレなのね!! もう無敵の未来しか見えてこない!! あっははははは、きゅいきゅいぃぃっ!!」 夜の静寂をぶち破る馬鹿笑いを上げながらふらふらと空中で踊りだす。 まるで人生の絶頂のような喜びに浸るシルフィードだったが、ふと後方で何かが光ったのに気付いた。 何かと首をめぐらせた瞬間、その光は尾を引いて彼女へ向かって一直線に突進してくる。 眼を覆うばかりの輝線がシルフィードを掠めるように駆け抜けて消えて行き、一瞬遅れて強烈な風が身体を襲う。 「!? ……!?」 数瞬の忘我の後、シルフィードは慌ててその光を追って空を駆けた。 全力で飛ばしてもなお追いつけない。 尾を引いて零れ、掠れて霧散する光を辿ることしかできず、それにすら追いすがる事ができない。 「そんな……嘘……!」 必死に翼を動かしながら、シルフィードは愕然と呻いていた。 光とすれ違った瞬間に垣間見たもの。それはあの妙な棒に乗った人間とタバサだった。 信じたくない思いとどれほど死力を尽くしても追いかけることができない事実に打ちのめされながらシルフィードは夜空を疾走する。 やがてようやく空の向こうに光が見えてくると、しかしシルフィードはむしろ屈辱感すら覚えてしまった。 なぜならこれはシルフィードがあの光に追いついたのではなく、あちらの方が明らかに速度を緩めてこちらに近づいているからだった。 光の先頭――柊とタバサがシルフィードの隣に並ぶ。 そして彼はにやりとした笑みを浮かべて開口一番こう言った。 「……俺の勝ちだな」 「!!!!!」 ぎりぃっ、とシルフィードは牙を砕かんばかりに歯を食いしばった。 生まれて初めて殺意が生じた瞬間だった。 ぶち殺すのねヒューマン、という言葉すら吐き出せないほどの怒りが彼女の中に渦巻いていた。 おそらく今ブレスを吐き出したらガリアの王城であるリュティス城すら吹き飛ばすほどの威力を叩き出していたであろう。 しかし主人であるタバサが一緒に乗っている以上巻き添えにする事はできない。 ……その主人であるタバサが、感嘆したようにぼそりと呟いた。 「シルフィードより、ずっとはやい……」 「!!!!!!!!!!!!!」 その瞬間、シルフィードの中で何かが弾け飛んだ。 「サ、サラマンダーなんかとは違うのねーっ!!」 「おぉっ!?」 意味不明の咆哮と共にシルフィードはこれまでにないほどの速度で柊達を一気に引き離し夜空の向こうへぶっ飛んでいく。 まるで裡に溜め込んだ衝動やら何やらを全て放出するかのような猛烈な勢いであった。 慌てて柊は機首を駆ってシルフィードを追い夜闇を飛翔する。 地上から見れば流れ星と見紛う光の軌跡が、ハルケギニアの夜空を過ぎ去っていった。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
https://w.atwiki.jp/necofan/pages/2.html
メニュー トップページ ヤマネコさんへの質問コーナー 登場人物一覧ステータス詳細 NPC一覧 地名一覧 +北部 北部 ミレスト(国)ヴァルヴァ(村) +西部 西部 ロストフ(国)ロストフ・ナド(首都) カムア(地方都市) ムスタ(国) +南西部 南西部 ラン(国)タンヨウ(首都) アモイ(街) セイワン(都市) +半島部 半島部 アルビオン(国家未所属の島) サハン(国) +中央北部 中央北部 中央北部都市国家群(複数の国家からなる自治区)グラスコ(国)ローリエス(街) アーレン(国) +中央山脈部 中央山脈部 ファーザン(国)ビオン(都市) 中央山脈地帯地下(地帯・ダンジョン) +中央南部 中央南部 ダリキア(国)ヴラフ(首都) オルテ(地域名)ルムニク(街) パルーサ(国)ファルス(首都) エラン(地方都市) +東部 東部 ローム(国)アウルム(首都) ゴール(国) アルダ(国) 出来事ストーリーライン ローム帝都大火 世界観、基本設定種族 時代区分 神神話 デーモン 文明レベル衣食住 魔法 奇跡 契約 組織 未分類 雑多 参考資料 SS集 ここを編集
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7373.html
ルイズが変わったのは、春の使い魔召喚の儀式からである。 と言っても、当時のわたしはルイズにさしたる興味を持っていなかったので、これは後になって友人に聞き知ったことだ。 ゼロのルイズが平民の女の子を使い魔にしたという話は、少しの間、話題になった。 リリイという名の、その使い魔は、コウモリのような羽根があったり、犬のような耳を生やしていたりと、どう見ても亜人であったのだが、 その女の子が大した能力がなさそうな人畜無害な見た目をしていたり、羽根があるくせに飛べなかったりということで、ゼロのルイズに亜人が召喚できるはずがないという偏見から、そう噂されたのだ。 魔法の成功率ゼロのルイズが使い魔の召喚に失敗して、その辺りを歩いていた平民の女の子を捕まえてきて仮装させて使い魔扱いしている。 そんな根も葉もない噂を流されて、しかしルイズは何の反応もしなかった。 友人に言わせると、ここからしてありえないということだが、わたしは、それをおかしいと思えるほどルイズの事を知らない。 そして使い魔召喚の儀式の翌日、ルイズの使い魔が決闘をすることになる。 相手は、ドットの土メイジ、青銅のギーシュ。 決闘に至った原因は、リリイのせいでギーシュが二人の女の子と付き合っていたのがバレて、フラれたとのことだが、そこはどうでもいい。 見た目はどうあれ、リリイは亜人である。ならば、その戦い方を見ておいて損はないだろうと、わたしは考えた。 もしも未知の魔法でも使いこなせるようなら、その知識を得ておくことは決して損にはならないのだから。 だけど、期待は裏切られる。 リリイは、普通の平民よりは強かった。 だけど、それだけの話。ギーシュの作り出した一体目の青銅ゴーレムを破壊したまでは良かったが、彼が六体を同時に生み出した後は、数の暴力に負けて敗れさった。 そこで、わたしのルイズとその使い魔に対する興味は消えた。 たから、わたしの使い魔である韻竜のシルフィードに、二人が夜になるとこっそりどこかに出かけていると聞かされても、何も思わなかった。 ルイズも、その使い魔も自分が興味を向けるだけの価値のある存在ではない。 その認識を改めたのは、かなり後になってからなのだけれど、きっかけになったのは、学院に土くれのフーケを名乗る盗賊が現れたときだったのかもしれない。 学院の宝物庫を襲ったフーケの討伐に名乗りを上げた三人の一人がルイズであった。 もっとも、実際に名乗りを上げたのはルイズだけで、残りの二人、キュルケはルイズに対抗してみただけであるし、わたしはそんなキュルケが心配で付き合っただけである。 そして、わたしたち三人とルイズの使い魔のリリイとフーケの情報を持ってきた学院長秘書のミス・ロングビルの五人はフーケのアジトと思われる廃屋に向かい、そこで奪われた宝物を見つけた後、フーケの巨大な土ゴーレムに襲われた。 この時、不可解なことがいくつか起こった。 わたしやキュルケでは、どうにも対抗できなかった土ゴーレムに、自分の身長よりも長大な剣を持ったリリイが立ち向かったのだ。 ギーシュのゴーレムにすら敵わなかったはずのリリイは、フーケの巨大ゴーレムと五分に渡り合っていた。 もちろん、巨体であり、いくらでも再生するゴーレムを剣一本で倒せる道理はない。 だけどゴーレムも、素早く動き剣で容易くゴーレムを切り裂くリリイを倒せず、しばらくの膠着状態の後。土ゴーレムは自然に崩れ落ちた。 その後である。 フーケは逃げ出したらしい、自分とミス・ロングビルは、あと少し辺りを調べてから帰るから、先に宝物を持って帰って欲しい。 そう、ルイズから連絡があったとリリイが言い出したのは。 思い返せば、ルイズとロングビルは、わたしたちが廃屋に入ったときに、周囲を見てくると言って姿をくらませたままである。 その時のわたしは、冷静な判断力を失っていたのだと思う。 メイジとその使い魔は、精神で繋がっている。だから、離れていても連絡をしてくることが出来るのだから、これは不思議なことではない。 その程度にしか思わなかったのだが、思い返してみれば、何故ルイズにフーケが逃げたと判断できたのかを疑問に思うべきだったのだ。 そう、これも後になって分かったのだが、フーケは逃げてなどいなかった。捕まり、拘束されていたのだ。ルイズの手によって。 ルイズの目的が、フーケを捕まえて官憲に引き渡すことではなく、自身の手駒とすることだと知ったのは、ずっと後になってからの話。 わたしたちに遅れて二人が帰ってきたとき、ロングビルは着ていた服が引き裂かれ、肌も露わな姿で憔悴した顔をしていて、その理由が分かったのは、これもかなり後になってからのこと。 ルイズは、フーケに襲われた結果だと言っていたが、それは嘘だろう。ミス・ロングビルの正体がフーケなのだから。 キュルケは何かを察していたが、その時点では教えてくれなかった。 ともあれ、そこでルイズとの縁は切れるのだと思ったのだけれど、そうはならなかった。 それから、何日もの日々が過ぎたある日のことである。 ルイズが、トリステイン魔法衛士隊の隊長と出かけるのを見かけたキュルケが、後を追うと言い出したのだ。 そして、その後わたしたちが魔法学院に帰ることはなくなる。 ルイズたちの目的はアルビオンに向かうことであり、とりあえず港町ラ・ロシェールの前で賊に襲われていた彼女たちに加勢したわたしたちは、不可解なものを見ることになった。 そこにいたのは、ルイズとギーシュと魔法衛視隊隊長でありルイズの婚約者であるワルド子爵。ルイズに個人的に雇われたのだと言って一緒にいた、目が死んでるミス・ロングビル。 そして、わたしたちと同年代の亜人の少女。 ルイズの使い魔と同じ種族に見えるその少女が、リリイ本人であると聞かされたときは、目を疑った。 何をどうすれば、あの小さな女の子が急に成長するというのか。 とはいえ、驚いてばかりもいられない。 夜も遅かったので、ラ・ロシェールに宿泊することにしたわたしたちは、ルイズたちが乗るアルビオン行きの船が出るまでの間、そこに留まることにした。 そして、二つの事件が起こる。 一つは、早朝のリリイとワルドの決闘。 かつてギーシュにすら敗れたリリイは、スクウェアメイジであるワルド子爵とすら互角以上の実力を見せた。 そして、もう一つの事件は夜に起こった。 アルビオンは今、王党派と貴族派に分かれて戦っていると聞く。 その一方。貴族派に雇われた傭兵が宿を襲ったのだ。 その時、ワルド子爵は二手に分かれて、片側が傭兵の足止めを、もう一方はアルビオンに向かう船に乗り込むべきだと主張し、わたしも同意した。 それは正しい判断であったはずである。真相を知っている今では、そうではないとわかるが、あの時点で知りうる情報からでは、それ以上に正しい判断ができるはずがない。 そのはずなのに、ルイズはその主張を退けた。 それが、仲間を置いて自分だけが逃げるのは嫌だなどという感傷であれば、わたしもワルド子爵も黙殺したのだろうが、そうではなかった。 どのみち船が出るのは、翌日である。ならば、それまでに傭兵たちを倒してしまえばいい。 そう言った彼女には、それができる自信があったのだ。 そして、現実に傭兵たちは、わたしたちの前に倒れた。 それは、ほとんどがリリイの仕業であった。 ルイズの防衛をわたしたちに任せて一人で突撃したリリイは、強かった。 それだけではない。いかにスクウェアメイジと五分に戦える実力を持っていても多勢に無勢、無傷で戦えるはずもないのだが、たとえ傷を負っても ルイズの唱える聞いた事もない呪文ですぐに癒されていたのだ。それは、敵対している傭兵たちからすれば不死身の怪物と戦っているような錯覚を覚えさせただろう。 そうして全ての傭兵を打ち倒したわたしたちは、なし崩しに全員でアルビオンに向かうことになった。 何故、わたしとキュルケまで? と気づいたのは、勢いでマリー・ガラント号という船に乗った後。 その後、空賊に扮したアルビオン皇太子の乗った空賊船に襲われたり、それらと戦い皇太子の正体に気づかずに捕らえ拘束してしまったりという珍事はあったが、わたしたちは、無事にアルビオン王城ニューカッスルに到達した。 そこで初めて、わたしとキュルケは、ルイズたちの目的がトリステイン王女がアルビオン皇太子ウェールズに送った手紙の回収なのだと知ったのだが、それもどうでもいいことである。 より重要なのは、実はワルド子爵がアルビオンの貴族派レコン・キスタと通じており、手紙とウェールズの命を奪わんとしていたことであろう。 結論から言ってしまえば、彼は上手くやった。 手紙をルイズから預かり、ルイズと結婚式を挙げたいと訴え、ウェールズを王党派の軍人から引き離し、見事その胸を貫いた。 だが、そこには一つの計算違いがあった。 ワルド子爵は、ルイズには力があると信じていた。そして、その力を自身の欲望のために利用しようと考えていた。 実際、ルイズには力があった。だけど、それはワルド子爵に制御できる程度のものではなかったのだ。 結婚式の時、ルイズは遅れて礼拝堂にやってきた。 リリイとロングビルに持たせた大きな風呂敷包みが、なんだか不安を誘ったが、そこはみんなでスルーした。 そして、いざ始祖ブリミルへの誓いをというときになって、ルイズはワルド子爵に言ったのだ。 「何をそんなに焦っているのだ?」 その言葉で、わたしたちは気づいた。 幼いときからの知り合いで、婚約者であるはずのワルド子爵は、この旅の間、発情期の孔雀のようにルイズに自分をアピールし続けていた。 まるで、この機会を逃せば、もうルイズを手に入れることが出来なくなるのだというように。 ルイズを自身の手駒として手に入れようと考えていたワルド子爵の考えは、当のルイズ本人に看破されており、自身の望みが果たせないことを理解した彼は、正体を明かすと同時にウェールズの命を奪った。 そして、手に入らないのならばとルイズの命を奪わんとしたとき、ルイズが隠していた能力を見せる。 ルイズには、ワルド子爵と互角の戦闘力を持つ使い魔のリリイがいる。普通に考えれば、ワルドに勝ち目はない。 だが、風のスクウェアメイジには、偏在という魔法がある。 それは、自身とまったく同じ能力を持った分身を生み出す魔法。いかにリリイが強くとも本体を含めて五人ものワルド子爵に勝てる道理はない。 そして、リリイ以外の人間。わたし、キュルケ、ギーシュ、ルイズ、ロングビルの五人には、残念ながらワルド子爵に勝てるほどの能力はない。 ゆえに、ルイズの生存は絶望的なはずであった。 この時ルイズが使った魔法は、原理としてはサモンサーヴァントに似たものだったのだと思う。 離れた場所にいる者を召喚する魔法。違うのは、それらは複数であり、すでにルイズと契約を済ませ命令を聞く存在であったこと。 現れたのは、オーク鬼や翼人や吸血鬼といった亜人たち。 毎夜どこかに出かけていたルイズは、それらを倒し配下としていたのだ。ちなみに、前の事件でフーケを捕らえたのも、彼らだったのだという。 平民とは比較にならない強靭な肉体を誇るオーク鬼や、先住の魔法を使う翼人と吸血鬼。 それらは、ただでさえメイジにとってすら脅威となりうる戦闘力を持つのに、ルイズの下で働かされ戦いを繰り返すことで、それぞれがリリイと互角の実力を持っていた。 数で、こちらを蹂躙しようとしたワルド子爵は、より多くの数で敗れ去ったのだ。 だけど、ルイズは裏切り者であるワルド子爵を殺しはしなかった。 それが、婚約者への未練であるのではないかと思ったのは、一瞬のこと。 ルイズは、倒れたワルドの服を剥ぎ、同時にリリイにも脱ぐようにと命じた。 その後、何かを察したキュルケに一時放り出されたわたしは、しばしの時間の後、やけにグッタリした顔の皆と再会する。 全員。ルイズもリリイもキュルケもロングビルもギーシュも、妙に上気した顔をしていて服も乱れていたのだから、さすがにわたしにも何をしていたのか理解できるのだが、なんの目的でそんなことをしていたのかは分からなかった。 キュルケも、ルイズの目的は分かっていなかったはずなのに、躊躇いなく参加するのは如何なものか。 まあ、目的の方も尋ねてみればすぐに答えが返ってきたのだけど。 ルイズには、性魔術という魔法が使えて、それを使うと魔法を使うための精神力を簡単に回復できるのだそうだ。 それで、亜人たちを召喚するのに使った精神力を回復させた理由は、レコン・キスタを倒すことであるとルイズは言った。 無茶だ。と、わたしは思ったが、彼女には勝算があった。 礼拝堂に遅れてやってきたルイズたちが持ってきた荷物。それは、この城中から集めてきた宝物。 呆れたことに、火事場泥棒をしてきたルイズが運んできた物の中に古いオルゴールがあった。 それが、勝利をもたらすのだと言われても、納得できようはずもない。 とはいえ、思ったより早く攻めてきたレコン・キスタを相手に逃げる暇のなかったわたしたちには、ルイズの賭ける以外に他に手立てがなかった。 ルイズがオルゴールから得たものは、虚無の魔法。 その魔法が、どれほどの威力を持つものなのか、わたしたちは知らなかった。多分、ルイズも正確には予想できてなかったに違いない。 だって、一個人の使う魔法が、一撃で万単位の兵士を吹き飛ばすだなんて、誰に予想できるというのだ。 大爆発の魔法の後に敵兵士の襲いかかった亜人の群。それが、レコン・キスタを完膚なきまでに叩きのめし、敵軍の首魁クロムウェルすら虜囚にする。 それで、全てはおしまい。 それが、思い違いであったと、わたしたちはすぐに思い知らされる。 ルイズは、別にアルビオンの王党派を救おうなどとは考えてはいなかった。 ただ単に、自分の集めた戦力とここで手に入れた魔法を試してみたかっただけなのだ。 そして彼女は、もう充分だと判断した。のみならず、クロムウェルから人の心を操るアンドバリの指輪というマジックアイテムすら奪い取った。 その結果、ルイズは彼女が欲するものの足がかりを手に入れたのだ。 この世界全てを蹂躙する力と軍隊を。 そうして初めて、彼女は自身の正体と目的をわたしたちに話す。 ここではない、ある世界での物語。 そこには、魔王と呼ばれる邪悪がいて、そいつは勇者たちによって倒された。 だけど、魔王は自身の魂だけを切り離し、使い魔に持たせ逃れさせた。 それをルイズが召喚してしまった。 魔王の魂を持つ使い魔を。 そして事故が起こる。 使い魔、リリイの持つ魔王の魂がルイズに入り込んでしまったのだ。 これは、お互いにとって不本意な事態であったろう。 ルイズとしては、そんな得体の知れないものに肉体を乗っ取られるなど、望んでいたはずがないし、魔王としても、少女の肉体に憑依するなど納得できようはずがない。 なにしろ、性魔術を使うに当たっては、男性を相手にしなくてはならなくなったのだ。リリイという、代わりを務めてくれるものがいなければ発狂していたかもしれないとは本人の弁である。 なんにしろ、魔王は自身の望みを叶えるために活動を開始する。 リリイを育て、戦力を集め、元の世界に帰る方法を探す。 封印された肉体を取り戻すために。かつて、自身を打ち倒した者たちを責め滅ぼすために。 今、レコン・キスタとアルビオン王党派を、アンドバリの指輪の力で手に入れたルイズは、ハルケギニアの全てを支配するつもりである。 元の世界を攻める戦力を手に入れるという理由ために。 そして、今わたしやキュルケはルイズの下でハルケギニアを征服する軍体の指揮を取っている。 わたしたちとは、わたしとキュルケとギーシュとワルドと、ついでに更に成長したリリイのこと。 ルイズがわたしたちに秘密を話したのは、ようするに仲間になれという宣言であり、それ以外の選択を許さないという通告である。 わたしたちに選択肢は与えられていなかったのだ。 ただし、わたしは条件を出した。 わたしタバサ、いや、シャルロット・エレーヌ・オルレアンの命は、母を守ること。復讐を果たすこと。そのためにある。その二つを叶えてくれるなら、従おうと答えた。 ルイズは、それを了承した。それどころか事情を聞いて、毒を飲まされ正気を手放した母を癒してくれるとまで言った。 その勇気があるならばと、前置きしてだったが。 母は、優しい人だったと記憶している。 その母が、魔王の配下となった自分を見てどう思うのか? そんなことを今の今まで、考えていなかった、むしろ考えないようにしていたわたしは、自分に勇気などないことに気づかされた。 だからといって、ルイズの仲間になるのをやめるという選択肢はない。ルイズはそんなことを許さないし、あのままガリアで働いていても救いなどないと分かりきっていたのだから。 だから、ルイズの力を借りて連れ出した母は、今も気がふれたままであり、執事のペルスランに任せきりになっている。 わたしにとって意外だったのは、キュルケが素直にルイズの仲間になったことである。ギーシュのことはどうでもいい。 元々ルイズと仲がよかったわけでもはなく、ルイズの世界征服にも興味を持たないであろうキュルケが何故と思ったわたしに、彼女は苦笑と共に答えた。 「だってねえ。本当にルイズが魔王に完全に乗っ取られていたら、わたしたちは今生きてないわよ」 キュルケが魔王の過去の話を聞いて最初に感じたのは違和感であったという。 魔王が、自身の話した通りの存在なら、それは人の命を虫ケラの如く扱い、自分たちのことなど、さっさと口封じに始末しているか、どこかで使い捨てにしているだろう。 なのに、それをしなかった理由はどこにあるというのか? それは、魔王に乗っ取られた身の裡に、ルイズ本人の心が残っているからに違いないとキュルケは考えた。 ならば、魔王からルイズに守ってもらっている自分としては、その借りを返さないわけにはいかないではないか。 そんなことを言う親友に、わたしは今更ながらに彼女がルイズを嫌ってなどいなかったのだと、それどころか好きだったのだと気づかされた。 そうでなくて、借りがあるからと、家族のいる祖国にまで戦争を仕掛けようという魔王に手を貸そうなどと誰が考えるものか。 わたしは、わたしと母を取り巻く過酷な運命から救ってくれたルイズに感謝している。 わたしは、キュルケまで、こんな運命に巻き込んだルイズを憎んでいる。 わたしは多分間違っているのだろう。だけど、今更道を違えることは出来ない。 この先、わたしたちにどのような結末が待っているのかは分からない。分からなくても進むしかないのだから。 小ネタで姫狩りダンジョンマイスターからリリイ召喚
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/157.html
前ページ次ページシロウが使い魔 第9章 思惑 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」 アンリエッタは女王の前に膝を突いたルイズへ抱きついた。 ルイズはかしこまって、アンリエッタを立たせようとするが、抱きついたまま離れない王女。 「……あ~、俺は紅茶でも入れてきますよ」 席を立つ士郎。 「彼は?」 とアンリエッタがルイズに尋ねる。 「えっと、彼は私の……使い魔(サーヴァント)です」 「そうなの。従者(サーヴァント)なのね。」 (ラ・ヴァリエール家くらいになると専属の従者を雇うのかしら?) 少々、行き違いがあるようだ。 部屋を出て厨房へ向かう士郎。夜になったばかりなので、まだ厨房では大勢働いていた。 メイドの一人に紅茶を用意してもらう。 ここで、シエスタが声をかけてきた。 「シロウさん、どうしたんですか?」 「いや、ちょっと紅茶を貰いにきたんだ」 「紅茶ですか? 仰っていただければ、幾らでもおいれしますのに」 「いや、俺がルイズにいれるんだけど……」 きゅぴーんとシエスタの目が光る。 「それなら、ちゃんとしたいれ方を覚えないといけませんね!」 「いや、今は急いでいるから、また今度教えてもらうよ」 「……約束ですよ! 私、絶対忘れませんから!」 なんか、シエスタが怖い士郎であった。 ……… ルイズの部屋のそばまで来ると、扉の前で一匹の土メイジが、中の様子を伺っていた。 <ごちぃん> ギーシュを殴りつける士郎。 「なにをしている」 「ぐぉぉっ。 いきなり殴るとは酷いね、君は」 扉を開け、ギーシュを部屋へ蹴り入れる。 「こいつが盗み聞きしてましたよ」 驚くルイズとアンリエッタ。 こんな簡単に盗み聞きされたら、先ほどの探知の魔法など意味がないだろうに。 「おい、出歯亀メイジ。どこまで話を聞いた?」 「え~と、なんかアルビオンに手紙を取り戻しに行って欲しいと姫殿下が仰られて……」 士郎はルイズと王女の反応を窺う。 どうやらそんな話をしていたようだ。 「で、コイツはどうしましょうか? 塔の天辺から吊るして、魔法でロープを切るとかしますか?」 ギーシュはがばっと床に伏せて、王女に嘆願する。 「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」 「なんてほざいてますよ。お二方」 士郎はあくまで冷静だ。 「グラモン? あの、グラモン元帥の?」 「息子でございます。姫殿下」 「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」 なんかギーシュがその任務とやらに参加することになったようだ。たぶん自分もそのメンバーに 入っているのだろう。 仕方ないので、詳細を最初から訊くことにした。 ……… 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。 すぐに件(くだん)の手紙を返してくれるでしょう」 そしてアンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜き、ルイズへと手渡す。 「母君からいただいた『水のルビー』です。せめてものお守りです。 お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」 概要はこうだ。現在トリステインはゲルマニアとの同盟を結ぼうとしている状態で、 アンリエッタはそのためゲルマニアへ嫁ぐことになった。 だが、アンリエッタは過去、アルビオンの皇太子宛に一通の手紙をしたためた。 これが、同盟関係を妨げる障害になるらしい。 それなので、ルイズにアルビオンまで手紙を取り戻しに行ってほしいということらしい。 士郎としては、ルイズが行くというなら、付いて行くしかないだろう。 結局明日の早朝出発となった。 ────────────────────────────── 『閃光』のワルドこと、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは振って沸いた 幸運に笑いが止まらなかった。。 この男、トリステインのグリフォン隊隊長でありながら実は、アルビオンの貴族派 『レコン・キスタ』と通じているのだ。 レコン・キスタの総司令と会ったときに、一つ頼みごとをされていた。 「魔法の使えない貴族が、人を使い魔にしたり未知の魔法を使うことがあったと情報を得たら、 是非知らせて欲しい。 伝説の『虚無』の魔法使いかもしれない」 ワルドは魔法の使えない魔法使いと聞いて、真っ先にルイズのことを思い出した。 『虚無』について調べたりもした。『ガンダールヴ』『ヴィンダールヴ』『ミョズニトニルン』 という名称の使い魔を従えていたらしい。 このあたりはまだ士郎達も知らないことだ。 そして最近学院で、人が使い魔として召喚されたとの噂を聞いた。 これがルイズの仕業なら、『虚無』の力をこの手に出来るチャンスかもしれない。 丁度、学院に立ち寄る偶然がおきて、しかも王女自らがアルビオンまでの任務を頼んできた。 ルイズの情報を仕入れるチャンスだ。 王女はルイズにも任務を頼むようだ。もうここまで幸運が重なると怖いくらいだ。 明日はまず、ルイズの使い魔を確認しよう。と思うワルドであった。 ────────────────────────────── 王女の我侭のせいで、突然魔法学院などに泊まることになったマザリーニは、仕事をしていた。 本来なら城に戻ってやらなければならない書類仕事だが、幾許かを学院まで届けてもらった。 認可、不認可の印を押していく。 <こんこん> そんなマザリーニの部屋の扉をノックするものがいた。 「誰だ?」 「枢機卿、学院の教師が面会を求めてきておりますが……」 なんぞ、嘆願や文句でもあるのだろう。 突然の来訪はこちらの都合によってである。 学院側にとってはいい迷惑だっただろう。 さすがに、話くらいは聞かなければなるまいと、客を通すように伝える。 面倒くさいことにならなければよいなと思いながら。 ────────────────────────────── 翌朝 朝もやけむる学院の門前にルイズがやってきた。ギーシュが先に待っていた。 「やぁおはよう、ルイズ君。清清しい朝だね」 「あれ?あんただけ?」 「他の皆は、今準備をしているとこだよ」 「みんな?? シロウだけじゃないの?」 「おや、今回の任務のメンバーはこれだけかね?」 朝もやの中から登場してきたのは、ワルドである。 「ワルド様!!」 ルイズが思わず立ち尽くす。 「僕はこの学院の土メイジ、ギーシュ・ド・グラモン。そちらのお名前をお聞かせ願いたい」 ギーシュが現れたハンサムに張り合う。 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 「これは失礼しました。今回の任務にご同行されるのでしょうか?」 「陛下直々の任務だからな。 よろしく頼むよ」 ギーシュとワルドのやり取りの間呆然としていたルイズがはっとして、尋ねる。 「私、聞いてないです! ワルドさま……」 「久しぶりだね。 僕のルイズ!」 ルイズに駆け寄り、その体を抱えあげるワルド。 「昨夜突然に陛下に命ぜられてね。 しばらく一緒の旅になる。 楽しみだね」 「相変わらず軽いなきみは! まるで羽のようだ」 「……お恥ずかしいですわ」 「ところで改めて尋ねるが、今回の任務、私を含め3人なのかね?」 「いえ、6人です」 士郎の声が聞こえた。 <ばさっ、ばさっ> 大きな羽ばたきの音と共に青い竜の背に、士郎、タバサ、キュルケの3人が乗って現れる。 「シロウっ!……。……?」 ルイズが驚く。現したその姿に改めて驚く。 学院のマントに白髪姿の衛宮士郎。凄く違和感があった。背中にはデルフリンガーを背負って…… ワルドが皆に尋ねる。 「ふむ、君達も今回のメンバーなのかな? ルイズは知らなかったみたいだけど」 「はぁ~い、私はキュルケよ、おひげが素敵な2枚目さん。よろしくね」 ワルドにしなだれかかるキュルケ。それを押しやるワルド。 「すまんな。婚約者が誤解すると困るんだ」 ルイズに目をやるワルド。するとルイズが顔を赤らめてうつむいた。 「なあに? あんたの婚約者だったの?」 キュルケがつまらなさそうに言う。 「えっと、あの青い髪の子があたしの親友タバサ。それでこっちの白い髪の男の子はシェロ」 「よろしく」 一言で済ます士郎。タバサは頷くだけだ。 「え?」 理解が出来ないルイズ。シェロって誰?? 「よろしく。では、出発しようか。 ルイズは私と一緒にグリフォンに乗ろう……」 「あ~、申し訳ないんだけど、ルイズと話があるんで、そっちにギーシュを乗せてください」 士郎がそう言う。 ワルドもルイズと話をしたいというので後で乗り換えるということにして、 まずはタバサの竜に士郎、ルイズ、キュルケ、タバサと乗り、グリフォンにワルド、ギーシュと 乗ることになった。 見知らぬ男とグリフォンに跨ることになったワルドは、やはり少々不機嫌だった。 前ページ次ページシロウが使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6896.html
モニターとレバーと計器に囲まれたコクピットの中で、才人は軽く息をついた。 今となってはその正体を知るものもいない、アルビオンの虚無の使い手が召喚した “名を記すことも憚られる使い魔”。 鈍く輝く使い魔のルーンを胸に刻み、自らを「破壊大帝」と名乗る銀色の悪魔が アルビオンを滅ぼし、ハルケギニア全土に死と恐怖を振り撒き始めてから三ヶ月。 現在ガンダールブの才人、ヴィンダールブのジュリオ、ミョズニトニルンの シェフィールドの三人は、ハルケギニア諸国連合が結成したメガトロン討伐軍の 主力として、タルブ村南東の丘陵地帯に展開していた。 才人の右翼には、赤と黒のボディカラーも禍々しい恐竜型ロボットがいる。 鋭い牙と手足の鉤爪、そして背中に装備された左右一対のカウンターサイズが 一層悪役風味を引き立てる。 それは惑星Ziの主力兵器ゾイドの中でも、抜群の俊敏性と格闘戦能力を持つ EZ-027レブラプターと呼ばれる機体だった。 兵器といっても野生の闘争本能を持つレブラプターの性能を100%発揮させる ことができるのはやはりヴィンダールブということで、パイロットはロマリア教皇 聖エイジス三十二世の使い魔であるジュリオ・チェザーレが勤めている。 そして才人の左翼には、右手に長剣、左手に盾を持った鋼鉄の青鬼。 それは惑星アーストで発掘された機甲兵と呼ばれる兵器の中の一体で、個体名は ザウエルという。 見た目はロボットだが、ミョズニトニルンのシェフィールドと最も相性が良かった ところからすると、魔法で動くゴーレムに近いのかも知れない。 これらの機動兵器はサハラの砂漠から回収され、ロマリア法王庁奥深くに死蔵されて いたものの中からガンダールヴの能力によって戦闘に耐えると判断され、固定化の 解除と再装備が施されたものだ。 唐突にアラームが鳴り響く、センサーが高速で接近する飛行物体を捕えたのだ。 ハルケギニアの生物には有り得ない速度、メガトロンに間違いない。 両手に握ったコントロールレバーを通じて、才人の頭の中に機体のコンディションが ダイレクトに流れ込んで来る。 20ミリチェーンガン:連続射撃17秒分 75ミリ速射砲:残弾32発 地対地ミサイル:全6発 動力系・駆動系ともに問題無し そういえば正規の燃料の代用にタルブ村名物のブドウ酒を、樽ごと機体側面のバルジに 取り付けたんだったと、その時の騒動を思い出した才人は小さく笑い、次の瞬間 気合いを入れた。 「ショータイムだ、酔っ払うんじゃねーぞガンヘッド!」