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人物 「魚人島編」の登場人物 ハンフリー デマロ・ブラック ショコラ トルコ マウンブルテン ドリップ マンジャロウ ココア のらギツネ PX-5 PX-7 アルビオン リップ・ドウティ カリブー コリブー カタコンボ スルメ メガロ アンコロ ワダツミ バンダー・デッケン九世 ハモンド カサゴバ ヒョウゾウ イチカ ニカ サンカ ヨンカ ヨンカツー イシリー カイレン ヒラメラ セイラ メロ ルリス アデル フィヨンセ ソラ ホーディ・ジョーンズ リュウグウ号 フカボシ リュウボシ マンボシ スプラッシュ スプラッタ シャーリー ジャイロ ドスン ゼオ No.650 ダルマ イカロス・ムッヒ ジュナン ネプチューン ホエ 右大臣 左大臣 しらほし デン サーファンクル ハリセンボン フィッシャー・タイガー アラディン パパニール オトヒメ カダル コアラ ミョスガルド聖 ダイダロス マリア・ナポレ ペコムズ タマゴ男爵 シャーロット・リンリン ボビン
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ダンジョンについてはここで話し合います。 名称 特徴 概略図 宝箱の配置 敵 使用するマップチップ BGM イベントの詳細 名称 特徴 概略図 宝箱の配置 敵no.1 no.2 no.3 no,4 no.5 no.6 no.7 BOSS 使用するマップチップ イベントの詳細 エルゼアの森 簡易的な森 - - おばけかずら 盗賊の山道 とうぞくボス 船上 死の大陸に行く間 - - モービーディック 死の大陸の洞窟 ロストドラゴン ウルストンクラフト社 偽ヴィクター 獣人族の渓谷 タルカス クリスタルの秘境 ミノタウロス テレジアの城地下 シヴァ ハイラントの森 アルビオンの山 アルビオン 寄り道用ルアノク フェンリル 機械帝国闘技場 皇帝?ヴィクター? 機械帝国地下水道 研究所 チョコフォンの森 ミオンのいる海 ファミュールを手に入れるダンジョン ピサマヤー内部 妖精王の洞窟 ダミアン・ルカの古城 エデンVSワールド 創世神の世界 はじめに クリアまでにどの程度のダンジョンをクリアするのか? それを踏まえた上でプロットを構築する必要があるかなと で、調査したところ 3→27、4→18、5→29、6→30、7→21、9→21 番外でドラクエ3→20 5と6は行く必要のないサブダンジョンが8~10ほどあります つまり・・・20前後という数字がカギってことです サブを除いて20 {一つのダンジョンをクリアして次の目的地へ行くまでに2~3レベルが上がるとして、ラスダン到着時にレベル40~60。 これは偶然ではなく、バランスを取るとこのくらいの数字に落ち着くと見て間違いないと思います。} もしかしたら他のゲームでもこのくらいで抑えてる可能性も あ、あまりに小さいダンジョンはカウントしてません。またはファブールでの襲撃イベントのようなものも。 あくまで頭を使って攻略しなければならない、通常のダンジョンでそのくらいってことです 全部でダンジョンのマップは 色違いを抜いて(海 溶岩 毒 氷) 6種類のイメージです ダンジョンの内訳は ダンジョン1(森林) ダンジョン2(鍾乳洞) ダンジョン3(地下道 遺跡) ダンジョン4(山道 渓谷) ダンジョン5(要塞) ダンジョン6(神殿) 浅瀬 雲海 墓地等は新たにダンジョンを用意するのではなくパーツの組み合わせで構築したいと考えています 仮テンプレ 名称 特徴 概略図 宝箱の配置 敵 使用するマップチップ BGM イベントの詳細 * FF5のマップ考察 町は整備された通路、村はむき出しの緑で分けて、建物のチップ自体は全部使い回している。 屋根の色は違っている。プレイヤーが順番に回るAとBの街・村では必ず違う色である。(が色自体は使い回している) 地形がどの町・村も工夫されていて特徴的である。 噴水や用水路の使い方も工夫してある。 森は上からのアングルで作られている。 現段階のダンジョン案(22か所) 寄り道無し 最初のエデン 西の大陸北西 冒頭のダンジョンとも言えないような森 (おばけかずら) (・カトプレパスの巣) ワールド 最初の丘 (黒衣の騎士 イベントのみ) 西の大陸中央 山賊の山道(初心者向けのチュートリアルダンジョン そこに巣食うはぐれテャン兵 とうぞくボス&リザード) 西の大陸南東 レントの沖合い(5の船の墓場っぽく色々と座礁してる船がある場所 組織(機械帝国)の作った魔獣 モービーディック) 死の大陸(の中の何かのダンジョン) (黒衣の騎士2) 同大陸内での洞窟のダンジョン (機械帝国の実験魔獣 ロストドラゴン) 東の大陸南部 ウルストンクラフト本社(がダンジョンになってる ヴィクターの姿をしたエヌオー) 東の大陸中央 渓谷のダンジョン (途中で出くわすのがバララントその1) 東の大陸中央奥 風の(?)クリスタルまでのまた別のダンジョン (クリスタルの試練の魔物 ミノタウロス) 東の大陸北西ミーデルフォン城 (悪逆領主の変身した ゴグ・マゴグの二匹 それを始末に来たガルダ) 地図北東のハイラント アルビオンの山 地図北東のハイラント 造船ドック (ハイラントを占領する機械帝国の将軍が変身したグレートデーモン) 地図北部中央 機械帝国西端 研究所のダンジョン (研究所中心部に存在する魔導兵器タルカス) エデン 西の大陸南東 エルゼア南の関所を抜けた先にチョコフォンの森 東の大陸北東 ピサマヤーの高僧までのダンジョン 東の大陸北西 ファミュールの巣(山頂の途中の道でバララントその2) 南部中央の大陸 妖精王の洞窟 (黒衣の騎士3) 地図北東 ダミアン・ルカの古城 (城の中では クリス リーヴァ エヌオーと対決) 再度ワールド(ワールドとエデンの中間的なところ?) 地図中央北部の大陸 機械帝国北東 忘れ去られた遺跡 (バララントその3 ガーディアン) 地図中央北部の大陸 機械帝国中央部 首都(エヌオー ガルダ 皇帝) 場所未定 大戦艦 (超巨大戦艦とスクロールしながら各箇所を破壊するバトル) 場所未定 大戦艦内部 (エヌオー ヴィクター ガルダ 皇帝 バロール) エデン 地図中央 世界の深淵 (アスタロート アーリマン ??? ?????) 寄り道一切無しでクリアのみの場合に絶対に通らなきゃいけない場所です
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前ページ次ページ確率世界のヴァリエール 彼(女)はカオスの伝導体 彼(女)は世界の特異点 確率世界の彼(女)の中で 虚無〈ゼロ〉と無限は等価となって 眠れる分岐が目を覚ます 確率世界のヴァリエール - Cats awaking the Box! - 第六話 テーブルを挟んで椅子に腰掛けた少女が二人。 両手をくねらせ猫耳を立てて、ルイズが喜色満面に黄色い声を上げる。 「こんな下賎な場所へお越し頂けるなんて、姫殿下! このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、 光栄の極みに御座いますわ!!」 「そんな、ルイズ・フランソワーズ。 そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい。 それはそうと、、、」 アンリエッタが部屋のすみをちらりと見る。 「もったいないお言葉ですわ! 姫殿下!」 「昔馴染みの懐かしいルイズ、ルイズ・フランソワーズ。 あなたまでそんなよそよそしい態度をとらないで。 で、ええと、、、」 「感激ですわ! 私を覚えてくださっていたなんて!」 「あ、あの、あちらのお二人は、、」 ルイズが部屋のすみの二人を指差し睨みつける。 「せーざっっ!!」 部屋のすみにはキュルケとシュレディンガーが、 頭の上にコブをこさえてぺたりと並んで座っている。 「なーによ。 ちょっとからかっただけじゃない」 先ほどのサカリの付いたメスライオンの様な表情はどこへやら、 キュルケがしれっとした顔で言い放つ。 「安心なさいなルイズ。 あんたみたいなオコチャマは好みじゃ無いし、 殿方もちゃんと好きだから」 「殿方「も」ぉお?!!」 ルイズが聞き返すのへ答えず、ぷい、とそっぽを向く。 「なんでボクまで、、」 涙目で頭のコブをさするシュレディンガーを怒鳴りつける。 「何で、じゃ無いでしょ何でじゃ! 助けなさいよあーいう時は!」 アンリエッタに向き直ると、にっこりと顔を作る。 「アレは隣部屋に生息する淫乱赤毛牛と 馬鹿で生意気な私の飼い猫です。 お気になさいませんよう、姫さま」 さわやかな笑顔で紹介する。 「で? そちらの姫さま、なーんかお悩みみたいだけど?」 「お黙んなさいよウシ女! 姫さまに悩みなんかあるわけ無いでしょう!!」 「い、いえ、実はその、ルイズ」 「、、え?」 アンリエッタが、胸の内の悩みをぽつりぽつりと語りだした。 「そーいうことならお任せ下さい、姫さま! 不肖、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 姫殿下の憂いの種たるその手紙、 無事取り戻してご覧に入れますわ!!」 「な、何を言っているの、ルイズ! 私は宮廷の中では漏らすことすら叶わぬこの悩みを、 ただあなたに聞いてもらいたかっただけなの!! 戦時下のアルビオンへ赴くなど、そんな危険なこと、、 頼めるわけがありませんわ!」 「この身をご心配頂けるなんて、感謝の極みに御座います! でも、ご安心ください、姫さま。 私、こーいうの得意なんです!!」 アンリエッタがポロリと涙をこぼす。 「この私の力になってくれるというの? ルイズ、、」 「もちろんですわ、姫さま!」 ルイズが瞳をうるませつつアンリエッタの手をとる。 「友情を確認しあってるところ悪いんだけど、、、 その話、あたしも聞いてよかったの? あたしー、一応ゲルマニア貴族なんだけど」 「え?」「あ」 手を取り合う二人が固まる。 「ご心配なく姫さま。 後顧の憂いは今すぐこの場で永久に! 取り除きます!!」 ルイズが椅子を振りかぶる。 「ちょ、冗談よ冗談だって! 人の恋路に口出す野暮天なんて ツェルプストーにはいないわよ!」 キュルケが顔を引きつらせ両手をぶんぶんと振った。 アンリエッタが机でしたためた手紙をルイズに手渡す。 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡して下さい。 すぐに件の手紙を返して下さるでしょう。 それから、これは母君から頂いた『水のルビー』です。 せめてものお守りに、、」 アンリエッタから手紙と指輪を受け取る。 「明日にでも馬車と手形を仕立てさせます」 ルイズがにっこりとお辞儀を返す。 「いいえ、それには及びませんわ、姫さま。 言いましたでしょう? こーいうの、得意なんです。 そうそう、キュルケ。 私がいない間に姫さまに手ぇ出したら頃スわよ!!」 ギロリとキュルケを睨みつける。 「あのねぇ、あたしだってそんな命知らずじゃ無いわよ。 安心して行ってらっしゃいな。 長引いたら明日の授業は代返しといたげるから」 キュルケがため息をつく。 「冗談よ。 さ、行くわよ、シュレディンガー!」 「了解っ!」 自分の使い魔の猫耳頭を抱え込む。 「では。 朝には戻りますわ、姫さま!」 にっこりとそう言うと、ルイズは使い魔と唇を重ね、『跳ん』だ。 ============================== 「きゃ! な、何を、、、え?」 突然の行為にアンリエッタが思わず目を伏せ、目を開けると そこに二人の姿はなかった。 「え?、、、へ?」 「あら、ご存じなかったんですか? 姫さま。 これがあのシュレちゃんのチカラですわ。 今頃二人はもうアルビオンですよ」 「あの使い魔さんの、、チカラ?」 「そう、あの子はどこにでもいてどこにもいない。 だから、どこにだって行けるそうなんです」 「え、、? それはまた、、なんという、、、」 「ま、マジメに考えるだけ無駄ですわ」 その時、コンコンとガラスをノックする音がした。 「ぅわお、いい男」 窓を開け覗き込んだ顔に、キュルケが思わず声を上げる。 「あのー、、姫殿下。 私はどうすれば、、、」 「あら、ごめんなさいワルド。 忘れてたわ。 部屋に戻って待っていて頂戴、朝には戻るわ」 「は、はあ、、、 かしこまりました」 髭を蓄えた男前が窓を閉めて夜に消える。 キュルケがベッドに座るアンリエッタの横に腰をおろす。 「ふう。 夜は長ごう御座いますわ、姫さま。 宜しければ、小さな頃のルイズとの思い出でも、、 お聞かせ願えますか?」 暗い面持ちで隣に座る姫君に、キュルケは優しく微笑んだ。 。。 ゚○゚ 浮遊大陸アルビオン。 宵闇に包まれようとする白の大陸、そのはるか上空。 そこにルイズ達は居た。 「うわー! すごい! ラピュタは本当にあったんだ!」 「ラ、、? アルビオンよアルビオン。 えーと、暗くてよく分っかん無いわね」 降下しながら空中に浮かぶ大陸を目を凝らして見下ろす二人を 突如として閃光が照らし出し、数瞬遅れて爆音が空を震わせる。 「ルイズ、あれ!!」 大陸と空との境界、せり出した岬の突端にそびえる城の一角が 煌々と燃えている。 「うそ?! あれってニューカッスル城じゃない!」 目指す手紙の所有者、アルビオンのウェールズ王子が居ると 思われるニューカッスル城は、今まさに艦砲攻撃を受けていた。 「え?アレって船? 戦艦? ルイズ、戦艦が浮いてる!」 「じょーだんじゃ無いわ、行くわよ!!」 ============================== 二人が口付けて跳んだ先は、およそ城の中とは思えぬ巨大な洞穴の中だった。 直後、轟音が洞窟を揺らし、岩の破片をそこらじゅうに降らせる。 「ちょ、何よここ、ホントにニューカッスル城の中なの?!」 「そうとも、で、君らは誰だ?」 後ろからの突然の声に二人が振り返る。 そこに居たのは篝火に照らされた凛々とした金髪の青年だった。 「こやつら、何者だ!」 「猫耳の亜人? 貴族派の間諜か?!」 杖を掲げた兵士達が二人を取り囲む。 「ち、違います、私達は貴族派なんかじゃありません! トト、トリステインの大使です!」 「ふざけた事を、、取り押さえろ!」 「まあ待て。 トリステインの大使といったな」 金髪の青年が進み出る。 「その大使殿がこんな所に何の用だ?」 「その、、アンリエッタ姫よりウェールズ皇太子殿下へ、 こ、この手紙を!」 手紙を取り出そうとした時、ポケットから指輪がこぼれ 青年の足元へと転げ落ちる。 「あっ、、! 姫様の指輪!」 青年がつま先に触れたその指輪を拾い上げる。 「これは、、! トリステインの『水のルビー』、、」 その時、青年の指にはめられた指輪と拾い上げた指輪の石が共鳴し、 虹色の光を振りまいた。 「水と風は、虹を作る。 王家の間にかかる虹だ。 皆、杖を下げよ。 このお二方はまごう事なきトリステイン大使であられる」 周りの兵士が杖を引き、二人に礼を取る。 青年は居住まいをただし、威風堂々、名乗った。 「ニューカッスルへようこそ、猫耳の大使殿。 私がアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 手渡した手紙を一読し、件の手紙の返却を快諾したウェールズに付き従い 二人は砲撃の止んだ城内の階段を上っていく。 (ルイズー、その手紙って何が書いてあるんだろ?) シュレディンガーが歩きながらこそこそと耳打ちする。 (しっ!) 前を行くウェールズをちらりと見つつ、猫耳に口を寄せる。 (あんたってニブいわねー。 姫様の口調で気付かなかったの? ラブレターよラブレター。 姫様がゲルマニアにお輿入れしようって時に そんなものが見つかっちゃったら一大事でしょ?) (へー。 でも元カレに「ラブレター返してー」なんて、 可愛い顔してあのお姫様もキツいねー) (なに言ってんの! それだけ王家の責任ってのは重いものなのよ! それに、、それだけじゃないわ。 書いてらっしゃる時にチラッと見えちゃったんだけど、 殿下へトリステインへの亡命を、、) 「さあ着いた、この部屋だ」 扉の前で立ち止まったウェールズの声にかしこまる。 質素な部屋の机の中にしまわれた小箱を取り出す。 「宝物でね」 幾度も読み返されたのだろう、ぼろぼろになった手紙を 最後に一読した後、ルイズに差し出す。 「さ、確かにお返しいたしますよ、大使殿」 うやうやしく頭を下げ、王子より手紙を押し戴く。 「明日の朝、非戦闘員を乗せた最後の便が港を出る。 大使殿はその船に乗って姫の下へお帰りなさい」 「え、、、? 最、、後?」 「そう。 明日の正午に攻城を開始すると、叛徒共が伝えてきた。 城の中に残る兵共々、王家の誇りを存分に示すつもりだ」 「そんな、、、 王軍に、、勝ち目は、無いのですか?」 「此方は三百、彼方は五万。 万に一つも無かろうさ。 私に出来ることは、王家の務めを果たす事だけだ」 ルイズを見つめ、にこやかに微笑む。 ルイズの中で、現実が急に色あせていく。 皇太子は、この人は、明日の戦いの中で死ぬつもりなのだ。 あの手紙には、確かに亡命を勧める一文が添えてあったはずだ。 しかし、それをおくびにも出さず、己が務めに殉じようとしている。 どうして、恋人の切なる願いより、死を選ぶのか。 己が愛する人より大切なものなど、この世にあるのだろうか。 あるのだろう。 そしてそれこそが、貴族の務め、王家の務め、なのだろう。 優しく見つめる皇太子の瞳の中に、確固たる意思が見える。 己が憧れる真の貴族の姿が、そこにはあった。 あふれ出ようとする全ての感情と、言葉と、涙とを飲み込むと、 歯を食いしばって面を上げ、ルイズは精一杯の笑顔を返した。 「御武運を、お祈りいたします。 殿下」 「お心遣い、痛み入る。 大使殿」 † 最後の晩餐会。 絶望的な決戦を明日に控えた城内。 それでも兵達は皆、晴れやかな顔をしていた。 「猫耳の大使殿、このワインをお試しなされ! 上等なものですぞ!」 「いやいや、それよりこの鳥の蜂蜜焼きを! 頬が落ちますぞ!」 かわるがわるルイズをもてなす貴族達に、にこやかに答える。 シュレディンガーは年老いた貴族達が語る武勇伝を 目を輝かせて聞き入っていた。 やがて老王が立ち上がり、二人の大使への謝辞と 兵への労いが述べられると、共に立ち上がっていた貴族達から 「アルビオン万歳!」の大合唱が沸き起こる。 そこに居並ぶ誰も彼もが、曇り無き決意を顕わにしていた。 老王が去り、なお続く晩餐会で。 ルイズはテラスで一人、夜風に煽られていた。 「あ、ここに居たんだー」 声に振り返ると、猫耳の使い魔がそこにいた。 「どしたの? 不機嫌そ」 「どうもしないわよ」 不機嫌さを隠しもせずにそっぽを向く。 「すごいねー。 雲と一緒にふわふわ浮いてるなんて。 この大陸も、船も」 身を乗り出し、眼下を見下ろす。 宙に浮かぶ白の大陸の、切り立った岬の突端に築かれたニューカッスル城。 その端に構えられたテラスの下には、雲しか見えない。 「ここのみんなも意固地にならないでさー、 この雲みたいに亡命でも何でも、 どこにでも行っちゃえば良いのに」 のん気につぶやくシュレディンガーの胸ぐらを掴み、 歯を喰いしばり、ルイズは激しい剣幕で使い魔を睨みつける。 「あんたは、、、! あんたには、判んないわよ!! 彼らは、誇りを捨てた叛徒どもを相手に、 貴族の務めを全うしようしているの!」 「そーかなー?」 眉を上げ涼しい顔で返す。 「国と領地と領民を守ってこその貴族でしょお? 死んで守れるものなんて、ひとっつもないよ?」 「貴族の誇りを守れるわ!」 「だから死ぬの? それがルイズの思う『貴族の務め』?」 「そうよ! 彼らこそ、、彼らこそ、本当の貴族だわ!!」 知らず、絶叫する。 「だったらルイズ。 、、、どうして泣いてるの?」 その言葉で初めて、ルイズは自分の頬を伝うものに気付いた。 唇を震わせ、シュレディンガーを見つめ、胸に顔をうずめる。 小さく震えるルイズの頭をシュレディンガーが優しく抱く。 「シュレ、、、 あの人たちに、今日、はじめて会ったばかりなのに、、 私、、、わたし、、 私、あの人たちを、死なせたくない、、」 シュレディンガーは涙に濡れた頬にそっと手をそえると、 顔を引き上げてその唇にやわらかく口づけた。 ============================== 突風が髪を巻き上げる。 今までいたテラスよりさらに上、中空に張り出した見張り塔の 狭く急な円錐形の屋根の上に二人はいた。 「わわっ?!」 バランスを崩し、あわてて屋根の中央の避雷針を掴む。 「ルイズ、見える?」 隣で同じく避雷針を掴んだシュレディンガーが、 もう片方の手で遥か彼方を指し示す。 いくつもの山々の向こうに、天を照らす光りが見えた。 「あの港町に、さっきこの城を砲撃していた船、貴族派の旗艦 『レキシントン』号をはじめとした戦艦三隻が寄港してる。 王と王子を生け捕りにして「公平な」裁判にかけるのは諦めたみたい。 明日正午に殲滅戦をしかけてくるってさ」 ルイズがつばを飲みこみ、彼方の光を見つめる。 「けれど」 シュレディンガーが向き直る。 「僕ならルイズをあそこへ連れて行ける。 誰にも気付かれず、誰の目にも留まらず」 ゆっくりとルイズの目を見る。 「そして」 猫がうすく笑う。 「ルイズには『破壊の魔法』がある。 モチロン戦艦を沈めるのは難しいだろうけど、 動力炉や機関部を、燃料庫や火薬庫を 壊して回る事は出来る、かもしれない」 「、、、!」 ルイズの瞳に光が戻る。 「そうすれば彼らを助ける事が出来る、かもしれない」 「そうよ、それだわ! 私、皇太子を、、彼らを助ける!!」 ルイズが叫ぶ。 「でも」 緩やかに、その輪郭が夜に滲む。 闇が、さえずる。 「本当に、それで良いの? 本当に? 本当に? 確かに彼らを助ける事は出来るかもしれない。 でも、あとたった三百人が死ぬだけで終わるはずだった この戦争は、もっともっと続くことになるだろうね。 三百どころじゃあない、もっと死ぬよ、もっと死ぬ。 そしてその中には、君自身も居るかもしれない。 僕はカオスの伝導体、 僕は世界の特異点。 確率世界の僕の中で、 虚無〈ゼロ〉と無限は等価となって 眠れる分岐が目を覚ます。 僕は君に約束したよね。 いつでも、なんどでも、どこへだって、 君が望む場所に連れて行ってあげる、って。 でも、僕自身はただの力、ただの君の使い魔だ。 この力を使うのは、君の意思だ。 さあどうする? ご主人様。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 いつしかそこには、いつもと同じ姿をした、 しかし、ルイズの見知らぬ使い魔が居た。 その闇が、目を見開き、口元を歪ませ、問いかける。 その力を、『この世界』に使うのか、と。 確かに、この力を使えばどこにでも行ける。 戦艦の中へも、宝物庫へも、敵国の王の寝室でさえも。 この力を『この世界』へ使うとは、そういうことなのだ。 だが自分に、世界の運命を変える権利などあるのか。 だが自分に、人の命を奪う権利などあるのか。 否、そんな権利など、誰にも無い。 神にも悪魔にも、私にも。 あるのは権利ではない、運命を変える覚悟、命を奪う覚悟、ただそれだけだ。 その覚悟が、、、自分に、あるか。 顔を上げ、息を吐き、目を開く。 「私をなめないで、使い魔!! 私は言ったわ、「彼らを助ける」と! 「助かれば」でも「助けたい」でも無い、 「助ける」と言ったの! それは何も変わらない、変わらないわ! 彼らが死ぬのがこの世界の定めというのなら、 そんな定めは、私が変えてみせる! 変えられた運命が私を殺すと言うのなら、 そんな運命、 変 え て や る ! ! 」 手を離して屋根を蹴り、己が身を夜空に投げた。 もはや心に曇りは無い。 満天の星に包まれ、両手を広げ、遠く足元に浮かぶ ニューカッスル城を、アルビオン大陸を見上げる。 「はははっ! 了解っ! やっぱり君はすごいや、ルイズ!!」 いつの間にかそばに来ていたシュレディンガーが 満面の笑みを浮かべている。 その手を繋ぎ、夜空を滑る。 「そう、それが第一歩だよ、ご主人様。 ではご案内いたしましょう、ミス・ヴァリエール。 目覚めた分岐のその先へ!」 その夜、一人の少女と一匹の使い魔は 自らの運命と契約の口付けを交わした。 ============================== その日の未明ーーー、 アルビオン貴族派の旗艦『レキシントン』号は 正体不明の襲撃者の手により攻撃を受け損傷、 動力源の「風石」の大半と火薬の半分を失逸した。 また、伴船二隻もこの攻撃により係留樹より墜落、大破した。 これによりニューカッスル攻城戦は実行されず、 転機を掴んだ王党派は地下へ潜伏、ゲリラ戦に転ずる。 王党派による「大反攻」が、開始された。 † オ マ ケ ============================== 「ふう、何とか朝には戻れたわね。 あら、キュルケ。 姫さまはお休み?」 「そ、そーなのよ。 た、旅の疲れ、とかかな! アンったら疲れて寝ちゃって。 ねえ?」 「はぁ?! アンだあ~~っ?! 姫さまをなんて呼び方してんのよ!!」 ベッドで毛布をかぶっていたアンリエッタがぴょこりと顔を出す。 「ち、違うのよ、ルイズ! キュルケとは待ってる間に、お話をして仲良くなったの!! ご、ごめんなさいな、ルイズ。 こんな格好で。 ええと、あの、、そう! 長旅の疲れ? で!」 シュレディンガーがこわばった笑顔で、しっとりと湿った布切れを拾い上げる。 「えっと、ルイズー? こんなん見付けちった、あははー、、」 「そ、それ?! 私のショーツッ、、!」 アンリエッタが赤面し手を伸ばした拍子に、毛布で隠していた乳房がこぼれる。 「あ、、、、」 ルイズの猫耳が、ゆっくりと、逆立っていく。 「、、、キュルケ? 、、、姫さま? あなたさまの初恋のお相手の命を救うため、、、 こっちは命がけで、お務めを果たしてきたってのに、、、 ばっ、、! フッ! ザッ! けっ、ん、なぁ~~っっ!!!」 ルイズの怒りが白み始めた空を震わせた、とか。 。。 ゚○゚ 前ページ次ページ確率世界のヴァリエール
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第15話の構成。 台本14のところ全部と、15の半分。 メインキャラ ■イース(主人公):hinoさん ■ヘラクレス:hinoさん ●レイオン:テケさん ●ロベル:テケさん ▲ステイア:こく サブキャラ ●アルビオン:テケさん ▲???:こく 街や神殿にいる人ら ▲老人A~D ▲街人A・B ▲少年 ▲女性A~D ▲老婆A・B ▲船大工A~F ▲迷った船大工 バオール強調回&夢の街が見つかる回。 【伏線やキーポイントなど】 トランティアで慕われているバオールが何かやらかしたらしい。 そのせいでまくろきものが人を襲うようになったらしい ???(ガイア)がイースに向かって名前を囁く。 (他の人には聞こえない)
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前ページ次ページSERVANT S CREED 0 ―Lost sequence― 「おお、大鷲よ! ようやく戻ったか!」 「お久しぶりです、オスマン殿。只今アルビオンより帰還いたしました」 胸に手を当て、エツィオが一礼する。 魔法学院に帰還し、ルイズとの再会を終えたエツィオは、オスマン氏に報告を行うため、学院長室を訪れていた。 オスマン氏はうれしそうに立ち上がると、この来訪者を心から歓迎した。 「帰還が遅れ、申し訳ない、任務の後始末をしていたもので」 「いやいや、無事で何よりじゃ」 オスマン氏はエツィオと握手を交わし、エツィオに席を勧める。 エツィオは再び一礼し、オスマン氏が勧めたソファに腰を下ろした。 「ニューカッスルでは、ミス・ヴァリエールを窮地から救ってくれたそうじゃな」 オスマン氏が向かいのソファに腰掛け、エツィオを見つめた。 「よくぞ、生徒を守ってくれた、お主には礼の言葉もないくらいじゃ」 「どうか顔を上げてください、オスマン殿、私は当然のことをしたまでです。 それに、あの時ギーシュ・ド・グラモン達が助けに来なければ、私も主人も、帰還することは叶わなかった。 この任務の真の功労者は主人のラ・ヴァリエールであり……彼らです」 頭を深々と下げたオスマン氏にエツィオはにこりとほほ笑む。 オスマン氏は目を細めて頷くと、髭を撫でながら呟いた。 「ほっほっ、まったく、お主の様な男を使い魔にしておるとは、ミス・ヴァリエールは幸せ者じゃて。 ……さて、それはそうと大鷲よ。今、トリステインで、とある噂がささやかれているのを知っているかね?」 「さて、それはどういったもので?」 「『アルビオンの死神』……聞いたことはあるかね?」 オスマン氏は口元に笑みを浮かべ、エツィオを見つめた。 「ええ、今までアルビオンにいたものですから、小耳に挟むくらいならば」 エツィオは肩を竦めた。紛れもなく自分の噂である。 どうやらこの二つ名はトリステインにも伝わっているようであった。 オスマン氏はソファの背もたれに深く身を沈めると、言葉をつづけた。 「神聖アルビオン共和国建国と同時に突如として現れ、新政府の要人を次々に葬る、正体不明にして神出鬼没のアサシン……。 初めに死神が現れたのは、スカボローの港街。その最初の犠牲者は……」 オスマン氏の目がタカの様に鋭くなった。 エツィオを見つめ、まるで物語を聞かせるように語って見せた。 「ウェールズ殿下を討った、レコン・キスタの英雄、元トリステイン王国魔法衛士隊グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵……。 斯くして彼の名は命と共に失墜し、レコン・キスタの貴族どもは突如現れた死神の影におびえる事となった……」 「私が聞いた話とほぼ同じの様だ。……最も、トリステインにまでその名が知られているとは思いもしませんでしたが」 エツィオはニヤリと笑みを浮かべると、オスマン氏と同じようにソファに深く腰掛ける。 オスマン氏はどことなくうれしそうな表情でエツィオを見つめた。 「あのワルド子爵を暗殺するとは、流石じゃな、大鷲よ。これならば、アサシンは安泰じゃ。マスター……、アルタイルも鼻が高かろうて」 「まだ修行中の身です。それに彼はあの時、片目と片腕を失っていました、もし彼が万全の状態なら、実行は困難を極めたでしょう」 「しかし、その片目片腕を奪ったのは、他ならぬお主ではないか。それに、いかな強力なメイジとは言え、常住坐臥戦に備えておるわけではないからのう。 仮に彼が万全の状態であったとしても、演説の真っ最中なんぞに襲われたらひとたまりもあるまいて。相手がお主ならばなおさらじゃ」 その言葉に、エツィオは左手の甲に刻まれたルーンを掲げ、オスマン氏に見せた。 「このルーンのお陰である部分が大きいですよ。せめて過信に繋がらぬよう、肝に銘じておかなければ」 「良い心がけじゃ、それを忘れるでないぞ、若きアサシンよ」 神妙に呟くエツィオに、オスマン氏は満足そうに頷き、言葉をつづけた。 「……ワルド子爵は、衛士隊の隊長という国防上重要な役職についておった、これ以上の情報漏えいも防ぐという意味では、お主はトリステインを救う働きをして見せたのだ」 「救うなどと……。私はただ、裏切り者を消したまでです。それに、彼の企みを早期に見抜けなかった……私の失態です。故に彼を始末いたしました」 「気にすることはない、きみの失態であるものか。全ては王宮の連中の責任じゃ。それを言い出したら、私にも非がある。 ともあれ、きみの働きにより、同盟破棄の危機は去り、ミス・ヴァリエール、そしてお主までもが無事にアルビオンより帰還した、これほど良い知らせはあるまいて」 「はい。……とはいえ、我ながら少々派手に動きすぎたようだ、まさかここまでその名が伝わっているとは、これでは、彼女の追及は免れないでしょう」 彼女には何も話してはいませんでしたから、と、エツィオが肩を竦めながら呟く。 オスマン氏は顎髭を撫でながら、ふむ、と呟いた。 「じゃろうな……、そういえば以前、彼女の元を尋ねた際、きみのことを聞かれたよ。何者なのか、とね」 「……彼女にはなんと?」 「何も話してはおらんよ、きみが明かしていないことを私が勝手に言うわけにはいくまいて」 「御配慮、感謝いたします、ご迷惑をおかけして申し訳ない」 「なに、きみが明かさなかったのも仕方のないことじゃて。まさか『私はアサシンです』、だなんて素直に言うわけにはいかんじゃろ」 「ええ。ですが、明かしていたとしても、信じてもらえないか、平民のアサシンなどメイジにとって取るに足らないものだと一蹴されてしまいそうですけどね」 「ほほ、今ならお主に消されたワルド子爵が、その言葉を否定してくれるじゃろうな」 肩を竦め苦笑いを浮かべたエツィオに、オスマン氏は冗談めかしてそう言った。 エツィオは小さくため息をつくと、左腕のアサシンブレードをじっと見つめる。 「しかし……、元の世界に帰還するまでは『アサシン』として動くことはないと思っていたのですが……どうやらそうも言っていられないようだ」 「『我らが力は鞘の中の刃』、……アルタイルの言葉じゃ。本来ならば、お主のその刃、振われることが無ければよかったのじゃがな」 「……はい、この国には『レコン・キスタ』の影が迫ってきている。そのために私は、奴らの企みを食い止めるために、今までアルビオンに残っていたのです」 「うむ、死神の噂はそれだけでは終わってはおらぬからな」 オスマン氏は膝をぽんと叩くと、本題はここからだとばかりに、身を乗り出す様にしてエツィオを見つめた。 「この老いぼれに聞かせてくれぬかな、若きアサシンよ。私は君の話が聞きたくて仕方がなかったのじゃからな」 その姿はまるで、大好きな英雄譚の続きをせがむ子供の様だ。 エツィオはオスマン氏に事の次第を報告した。 ワルド暗殺の際、レコン・キスタによるトリステイン侵攻計画を掴んだこと。 侵攻を遅らせるために、レコン・キスタの資金源、物資、および戦力を削り、士気を挫くために数々の暗殺を実行したこと。 アルビオン空軍の切り札、『レキシントン』号、それに搭載された新兵器と設計図、及び周囲の軍事工廠を破壊し、その艦の艦長をトリステインに亡命させたこと。 臨時で開かれた貴族議会会議に侵入し、議員の一人を暗殺、その後、逃走したトリステイン侵攻軍総司令官を暗殺したこと。 そして、トリステインに帰還後、アルビオンで得たほぼ全ての情報をアンリエッタ姫殿下に報告したこと。 それら全ての報告を聞いたオスマン氏は、驚嘆とした様子でエツィオの働きを褒め称えた。 「素晴らしい! 見事な働きじゃ、大鷲よ。正直、そなたを見くびっておった、まさかここまでとは思っていなかったわい」 「ありがとうございます。……ですが、侵攻計画自体を頓挫させたわけではありません、油断はできぬかと」 「確かにのう……、しかし宮廷の連中も馬鹿ではない、お主が亡命させたという男、ヘンリ・ボーウッドだったか、彼のもたらす情報により何かしらの対策が立てられるじゃろう」 オスマン氏は髭を捻りながら言った。 それからエツィオは、言うか言うまいか、少しだけ迷ったような表情になったが、ややあってオスマン氏に尋ねた。 「それとオスマン殿、お聞きしたいことが」 「何かね?」 「死者を蘇らせる力を持った指輪に心辺りは?」 オスマン氏は何かを思い出しているのか、腕を組みながら少し考える。 それから、思い当たるものがあったのか、ぽんと手を打った。 「あるにはある、『アンドバリの指輪』がそうじゃな」 「それはどういったもので?」 「『水』系統の伝説のマジックアイテムじゃよ。伝承によれば死者に偽りの生命を与えるそうじゃ。どうしてそんな事を?」 なぜそんな事を聞くのだろう、と疑問に思ったのか、オスマン氏がエツィオに尋ねる。 エツィオはオスマン氏に、アルビオン皇帝クロムウェルがウェールズ殿下を蘇らせたということを報告した。 それを聞いたオスマン氏は驚愕したように座っていたソファから立ち上がった。 「なんと……! お主もそれを確認したのかね?」 「はい、レキシントン号破壊の際に、クロムウェルに随伴する殿下をこの目で確認しました。 彼の身体は、クロムウェルの持つ指輪と同質の魔力に覆われているのが見えました」 「それは姫殿下には報告したのかね?」 「いいえ、今は興し入れの時、姫殿下の御心を乱すわけにはいきません」 その報告を聞いて、安堵したのか、オスマン氏はほっと胸をなでおろした。 「お主には感謝してもしきれんな、大鷲よ。この事を知れば、まず間違いなく姫殿下は御心を乱されただろうな。同盟もどうなっていたか……」 オスマン氏は再びソファに腰を下ろし、小さくため息を吐いた。 「しかしお主、もしかして、特別な"眼"を持っておるのか?」 「はい、"タカの眼"と呼んでいますが……それがなにか?」 エツィオが首を傾げると、オスマン氏はエツィオの目をじっと見つめた。 「ふむ……実はな、アルタイルもお主と同じ眼を持っておったことを思い出してのう。なんでも見えぬものが見えるとか。 お主の血筋をたどれば、もしかすると、かのアルタイルと同じ所に行きつくのかもしれぬな」 「私が……アルタイルと……」 「なに、仮定の話じゃよ。それは兎も角、奴も運がないのう、まさかよりにもよって、アルタイルと同じ、タカの眼を持つお主に見られるとはな。 真実を見抜く目、幻を払うお主たちに相応しい力じゃ」 オスマン氏はくつくつと笑った。 「オスマン殿は、その『アンドバリの指輪』を見たことは?」 「いや、何しろ伝説の品じゃ。本来はトリステインとガリアの国境にあるラグドリアン湖、そこに住まう水の精霊が守っている、そう伝えられている」 「精霊?」 「人ならざる先住民、私たちとは違う先住の力を持った、大いなる存在、といったところかの」 「なるほど……。しかし偽りの生命か……」 顎に手を当て、エツィオが考え込む。 もしや、クロムウェルが持っていたのは、そのアンドバリの指輪だろうか? それを使い、ウェールズを蘇らせた? とはいえ、これ以上考えても所在の確認など出来ようもない、ただ、そのような指輪が存在することは確かのようだ。 エツィオは小さく肩を竦めた。 「偽りの生命を与える……、とんでもない力だ。もしや、それもエデンの果実の一つなのでしょうか?」 「ふむ、現時点では何とも言えぬが、私に言わせてもらえば、その可能性は薄い。秘宝がもたらす力は決まっておるからな」 「と、いいますと? そういえば、以前触れたことがあるとおっしゃっていましたが、秘宝の働きを御存じなのですか?」 エツィオのその問いに、オスマン氏は顔を俯かせると、少々苦い表情で、左の頬を撫で始めた。 「……うむ」 「教えてください、オスマン殿、一体、エデンの果実とは何なのですか?」 「アレは……、誘惑そのものじゃ」 「誘惑?」 エツィオが首を傾げると、オスマン氏は、打ち明けるように話し始めた。 「以前、お主に話したな、アルタイルは今の私ですら足元に及ばぬくらい、多くの知識を身に着けていたと。 その知識に強く惹かれた私は、彼がとても大事そうに持っていた銀の塊になにか秘密があるのではないかと目星をつけた」 「銀の塊? それがエデンの果実?」 「うむ、掌ほどの大きさの球体じゃ。それでな、彼に気付かれぬようにこっそりと"眠りの雲"の呪文をな……」 「眠らせたと言うのですか!」 エツィオは思わず声を荒げ立ち上がる。 オスマン氏はビクッと身体を震わせ、顔を青くしながら慌てたように両手を振った。 「う、うむ……、も、もう過ぎたことじゃよ!? だから落ち着くのじゃ!」 「……それで、どうなったのですか?」 「私がそれを手に取った瞬間、それがどんなものなのかを悟った。これを使えば、私が望む事、全てが思い通りになる、そう確信した。 アレは神の言葉じゃ……。どんな者であれ、それこそエルフでさえ、あの秘宝の幻に抗える者はいない。誰もが味を占め、虜になる。 私はすぐに『リンゴ』の虜になった。私が頭に思い描いたものを、あの銀の塊は全てを教え、与えてくれたのじゃ。そんな誘惑にどうして抗うことができよう?」 「幻……」 「そう、幻じゃ。あの秘宝が持つ力は単純じゃ、幻を見せ、その者の精神を意のままに操る事が出来る。その気になれば世界中の人間をな」 「そんな事が……」 「幸い、大事に至る前に、アルタイルが私を止めてくれたがの。もうぶん殴られたよ、思いっきり」 殺されなかっただけマシだったんじゃろうけどな……と、オスマン氏は苦虫を噛み潰したような表情で左頬を撫でながら、呟いた。 当時のことを思い出してしまったせいか、心なしか顔色が悪いように見える。 「というわけじゃ、エデンの果実は、共通して『人間を意のままに操る』という力を有しておる。 もしクロムウェルが持っている指輪がエデンの果実ならば、ボーウッドという離反者を出していない筈じゃからな」 「なるほど……。しかし疑問も増えます、そのエデンの果実を持っていないのだとしたら、奴はどのように勢力を拡大させたのでしょうか? 聞けば奴は、反乱が起こるまでは、無名の司教に過ぎなかったそうです。 死者を蘇らせるという力を虚無と称するだけで、どうやってあそこまで支持を集め、上り詰めることができたのか……、不思議なことです」 オスマン氏はうむ、と頷くと、しばらく顎に手を当て思案する。 目を細め「これは推測じゃが……」、と口を開いた。 「人を従わせるのは、上に立つものなら当然じゃ、それができなければ指導者にはなれん。 言葉で無理なら金じゃ、それで足りなければ汚い手段もある。賄賂に脅迫……そして魔法を使う。 『水』系統の力は、傷を治したり、精神を操ったりと身体と心の組成を司っておってな、『制約』、『魅了』。これらがそれにあたる。 いずれも秘宝の力には遠く及ばぬが、人を意のままに操ることができる呪文じゃ」 「しかし、奴はメイジではない、魔法は使えないのでは?」 「そこでその指輪じゃよ。死者に偽りの生命を与え、意のままに操る事ができる『アンドバリの指輪』。 それを奴が使ったとするならば、生きた人間を操ることくらい、造作もないことではないかね?」 「そうか……筋は通るな……」 エツィオは拳を握りしめ、唇を噛んだ。 「クロムウェル……、奴にはいずれ、報いを受けさせねばなりませんね」 怒りに満ちた目で、小さく吐き捨てる。 人々の意思を奪い、戦乱を招こうとしている、 死者の魂すら冒涜するそのやり方に、エツィオは強い怒りを覚えた。 「私もアルタイルを師と仰いだ身……そなたの気持ちはわかる。じゃが、既にお主は打つべき手を全て打った、今は連中の出方を待つべきじゃ」 「しかし奴は……」 「忍ぶときは忍べ、アサシンよ。ここはハルケギニアじゃ、お主のいた世界ではないのだぞ? それに、今のお主の身分では、再びアルビオンへ赴くことは難しいじゃろうて」 オスマン氏は静かにエツィオを見つめ、たしなめるように言った。 オスマン氏の言葉にも一理ある、エツィオは俯き、思案する。 「アルビオンでの働き、真に見事であった。お主はしばらく身体を休めるとよい、よいな」 「わかりました、そうさせていただきます……ですが」 「だが、何かね?」 エツィオはそこで言葉を切ると、顔を上げオスマン氏を見つめた。 「彼女に、主人に危険が及ぶのであれば、私は刃を振うことにためらいはありません、脅威となる者は消すまでです」 「よろしい、まさにそれこそ、そなたの使命」 その言葉に、オスマン氏はにっこりとほほ笑んだ。 それからエツィオはニヤリと口元に笑みを浮かべると、わざとらしく肩を竦めた。 「とはいえ、彼女に命じられるのは雑用ばかりでしょうけどね」 「ほっほっほ、アサシンを雑用扱いとは、ミス・ヴァリエールは将来大物になるに違いないわい」 オスマン氏は、一しきり大声で笑うと、再びエツィオを見つめ、首を傾げる。 「それよりもじゃ、彼女には明かすのかね? お主の身分を」 「……そのつもりです、もう隠し通すことは難しいかと」 エツィオは、呟きながら、ちらと廊下へ続く扉へと視線を送る。 そんなエツィオを見つめながら、オスマン氏はふむ……、と頷いた。 「それがよかろう、秘密は時に不和を生む、しかし共有する秘密ならば、それは強い繋がりになるじゃろう」 「受け入れてもらえるか、それが一番の問題な気もします」 「心配するでない、彼女ならばきっと受け入れてくれるじゃろうて。なにせ、ここ数日間、帰らぬお主を心配して泣いておったのじゃからな。若いっていいのう」 オスマン氏はからかうようにエツィオを見つめた。 ところがエツィオは、ああやっぱりなと、澄ました表情でニヤリと笑って見せた。 「やれやれ、使い魔思いのご主人様に仕えることができて、使い魔として幸せですよ」 一方その頃、学院長室の扉に貼りつき、オスマン氏とエツィオの対談に聞き耳を立てている一人の少女がいた。 桃色がかかったブロンドの髪に、大粒の鳶色の瞳、ルイズであった。 その手には、インテリジェンスソードのデルフリンガーがいた。 エツィオにオスマン氏の元へ報告に行くように伝えたルイズであったが、こっそり彼の後をつけ、こうしてオスマン氏との話を盗み聞きしていたのであった。 デルフリンガーは、アルビオンでエツィオと共にいたために、いろいろ聞くために持ってきていたのであった。 「アサシン……? 暗殺者? ……エツィオが?」 学院長室の扉に貼りつき、オスマン氏との会話を途中まで盗み聞きしていたルイズはぽつりと呟いた。 扉から耳を離し、手元のデルフリンガーに視線を落とす。 「……本当に?」 「聞いての通りさね。あいつはアサシンだよ。とびっきり凄腕のな」 恐る恐る尋ねるルイズに、デルフリンガーはあっさりと答える。 あまりにあっさり答えられたので、ルイズはかえって反応に困ってしまった。 「えっと、その……、そんなにすごいの? その……あいつは」 「すげぇもなにも、話聞いてたろ?」 「『アルビオンの死神』……だっけ?」 「ああ、その名前を聞いただけで『レコン・キスタ』の連中が震えあがるな」 「震えあがるって……」 ルイズが信じられないといった様子で呟く。 そんなルイズを見透かしてか、デルフが尋ねた。 「信じられないかね?」 「……」 「まぁ、普段の相棒を見る限りじゃ、娘っ子が見抜けないのも無理はないさね。大体、あんな奴がアサシンだなんて誰も信じないわな」 「そ、そうよ……あんなバカみたいなあいつが……」 デルフのその言葉に、ルイズは呆然と呟く。 それからルイズはキュルケから聞いたアルビオンの噂を思い出した。 手元の剣を見つめ、尋ねてみた。 「ねえ、ほんとにワルドを殺したアサシンって、あいつなの? あんた、それを見てたの?」 「ああ、頸動脈と一緒に頸椎を一突き。一瞬さね、苦しむ間も無かっただろうよ」 「そんな! どうやって? だってワルドは……!」 「スクウェアのメイジ、か? 子爵だって人間さね、油断もすれば、身動きの取れない瞬間だってある。 相棒はそこを突いたんだよ、演説中の子爵に躍りかかってそのまま……」 あとはわかるだろ? と、デルフリンガーはそこで言葉を切った。 「ま、そんなわけで、今や相棒はアルビオン一の有名人だ。懸賞金かかってるくらいだからな」 「しょ、賞金ですって!?」 「お、おい、声でけぇって! なんのためにコソコソしてんだよ!」 デルフのその言葉に、ルイズは心底驚いた。 エツィオの首に懸賞金がかかっている? 何かの冗談ではないのだろうか? ルイズは声を潜めながらデルフリンガーに尋ねた。 「う、嘘でしょ? 嘘よね? い、いくら? いくらかかってるの?」 デルフリンガーが短く答えた。 「ごまん」 ……今、このボロ剣は何と言った? ルイズはひきつった笑みを浮かべながら、大きく深呼吸をする。 落ち着け、落ち着くのよ、今のはきっと聞き間違いね、絶対そうよ。このボロ剣がいきなり変なこと言うんだもん、わたし混乱してるんだわ。 だって桁がおかしいもん、なによ『ごまん』って、こんな時に聞き間違いだなんて、いやだわ、もう。 百歩譲って『ごまん』と聞こえたとしても、このボロ剣は『ごまんといる小悪党どもとかと同じくらいだぞ』って言いたかったのよね、ええ、きっとそうよ。 ルイズはこほん、と一つ咳払いをし、気を取り直して手元のデルフに尋ねる。 「あの、ごめんなさい、よく聞こえなかったわ、もう一回言ってくれない?」 「だからごまん」 「……はい?」 「だから五万エキューだっつってんだろ」 その言葉にルイズは『硬質』の呪文がかかったかのように固まった。瞬きどころか呼吸一つしていない。 静寂に包まれる廊下をよそに、学院長室からはオスマン氏の笑い声が聞こえてくる。 「お、おーい、娘っ子……?」 「はっ!!」 見かねたデルフリンガーが声をかけると、呼吸の仕方を思い出したのか、ルイズが息を吹き返す。 そして、廊下に響き渡らん程に絶叫した。 「ごっ、ごごごご、ごおおおお!?」 「だぁから、声でけぇっつうの!」 「ななな、なによそれ! あ、あああ、あいつアルビオンでなにをやったの! なにをしたらそんなデタラメな懸賞金がかかるのよ!」 デルフの警告を無視し、ルイズはガクガクとデルフリンガーを振って問い詰めた。 五万エキュー……、国家予算クラスの金額である、それだけあれば領地と城を買っても余裕でお釣りがくるだろう。 過去、ハルケギニア全体で見ても、たった一人のお尋ねものに、そこまで莫大な懸賞金がかかったなんて事、聞いたことが無い。 一体全体、エツィオはアルビオンで、なにをしでかしたのだろうか? 「な、なにって言われてもよ……そりゃ、あの子爵を殺ったろ? 他には金貸しの銀行家を数人暗殺して……」 不安に慄くルイズに、デルフリンガーは仕方ないとばかりに答えた。 だが、デルフリンガーの言う、エツィオの"仕事"っぷりは、ルイズの想像を遥かに上回っていた。 「ああそうだ、えーっと『レキシントン』号だっけか、あれ爆破したんだった。んで、そのついでにロサイスに停泊していた艦隊を軍港ごと灰に変えて」 「かぅは……!」 ルイズは、肺の中の空気を全部出すかのような、うめき声を上げた。 『レキシントン』号……、『イーグル』号の甲板から見た、あの禍々しい巨艦の名前だった筈……。それを沈めた? エツィオが? たった一人で? っていうか、ロサイスって、アルビオンでも有数の軍港じゃ……。それを艦隊ごと灰に変えたって? 気が付けば、ルイズの膝は笑っていた。驚愕のあまり、声すら出ない。というか、この先聞くのが怖い。 だが、そんなルイズに気がつかないデルフリンガーは次々に言葉を続けた。 「そうそう、貴族派の親玉連中、貴族議会って言うのか? そいつらを暗殺したんだったな、えーっと確か……全部で十五人いて……」 ああやめて、お願い、やめて、もういい……、それ以上言うな。 「その中の五人消したんだっけか。おでれーた、たった一人相手に半壊してやんの」 ああ……。ウソ……。 そこまで聞いて、ルイズは仰向けにぶっ倒れた。 「おい、おい! 娘っ子! どうしたよ、おいっ!」 デルフリンガーは慌ててルイズに声をかける。 しかし全く反応を見せない。呼吸はしているので死んではいないようだ。 「あーあ、気絶しちまってら……」 そんなルイズをみて、デルフリンガーが呆れたように呟いたその時……。がちゃりと学院長室の扉が開いた。 「はっ!」 意識を取り戻したルイズはがばっと跳ね起きる。 あわてて周囲を見渡すと、そこは学院長室のソファの上であった。 どうやら自分は気を失ってしまい、ここに運び込まれたようであった。 ルイズが目を覚ました事に気が付いたのか、窓の外を眺めていたオスマン氏が振り向き、にっこりとほほ笑んだ。 「目が覚めたかね?」 「あっ……!」 オスマン氏に声をかけられたルイズは、慌ててソファから立ち上がり頭を下げる。 「も、申し訳ありません! えと……」 オスマン氏は、そんなルイズに軽く手を掲げながら制止すると、髭を撫でながら笑い声を上げた。 「ほっほ、驚いたぞ、扉を開いたらお主が倒れておったものじゃからな」 「お、お恥ずかしい限りです……」 気恥ずかしそうに、ルイズは俯く。 オスマン氏はそんなルイズに、にっこりとほほ笑みながら話しかけた。 「ミス、私の言った通りじゃったろう? 大鷲は無事にそなたの元へ帰還したではないか」 「は、はい……」 まぁ座りなさい、と、オスマン氏に促され、ルイズはおずおずとソファに腰掛けた。 気が付くと、持っていたはずのデルフリンガーが無かった。どうやらエツィオが回収し、共に部屋に戻ってしまっていたようであった。 オスマン氏は、同じように向かいのソファに腰かけ、ルイズを見つめた。 「さて、その様子から察するに、話を聞いていたようじゃな」 「えと、その、エツィオがアサシンだというところまでですけど……」 ルイズはこくりと小さく頷いた。 俯き表情を曇らせたルイズに、オスマン氏は、諭す様に話しかけた。 「ミス・ヴァリエール、彼のこと、どうか攻めんでやってくれぬか?」 オスマン氏は髭を擦りながらため息を吐くように言った。 「彼にとっても、仕方のないことだったのじゃ。『アサシン』などと、軽々しく人に明かせるものではないからのう」 「それは……わかっています」 ルイズは呟くようにして頷いた。 ルイズも心のどこかでは納得はしていた、エツィオが自身に付いてあまり多く語らなかった理由が、身分によるものならば、それも理解できた。 アサシン……暗殺者……、確かにこんなこと、どんなに親しい間柄であっても、明かせるようなことではないだろう。 しばらく俯いていたルイズであったが、ややあって顔を上げると、オスマン氏を見つめた。 「あの、オールド・オスマン」 「なにかな?」 「この間おっしゃっていた、オールド・オスマンの先生って……やっぱり……」 ルイズがそう尋ねると、オスマン氏は重々しく頷いた。 「うむ、そなたが思っている通りじゃ、我が師は『アサシン』であった」 「その……どんな暗殺者だったんですか?」 「どんな、とは?」 「えと、やっぱり、お金で雇われて人を……」 ルイズが問うと、オスマン氏は首を横に振って応えた。 「それは違うぞ、ミス。彼は……いや、彼ら『アサシン』は、そなたが考えているような、金で殺しを請け負う殺し屋ではない」 「彼ら? ではどのような……」 オスマン氏はソファから立ち上がると、机の引き出しから一枚の羊皮紙を取りだし、ルイズに手渡した。 「これに見覚えはあるかね?」 「は……はい、エツィオがいつも身につけているので……」 それを手に取ったルイズは頷いた。 見覚えもあるもなにも、エツィオが普段身につけているローブの所々にあしらわれている紋章だ。 なぜオスマン氏がこれを持っているのだろう? 首を傾げるルイズにオスマン氏はゆっくりと口を開いた。 「その紋章は、とある『教団』のシンボルでな」 「教団……ですか?」 「そう、ここではない、遥か遠くの世界の話じゃ」 オスマン氏は窓辺に立つと、外の景色を眺める。 窓の外には、一羽の大鷲が、夕陽を背に、翼を広げ悠然と空を舞っている。 それを見つめながら、遠くの世界に思いを馳せるように目を細め、語り始めた。 「彼らの起源は三百年程前に遡る。そこでは『キリスト』と『イスラム』、この二つの宗教が、一つの『聖地』を巡り、長い間争っておった。 キリスト教徒は度々『十字軍』と呼ばれる軍隊を結成し、イスラム教徒から聖地を奪還せんと遠征を繰り返していたそうじゃ」 「十字軍?」と、ルイズが首を傾げる。 「キリスト教を信仰する国々が結成した軍隊じゃよ、我々で例えるなら、ロマリアを筆頭としたハルケギニアの連合軍じゃな。 ついでに言えば、イスラム教徒はエルフ、といったところかの。 我々とエルフの関係と同じく、キリスト教徒にしてみれば、イスラム教徒は聖地を占拠する異教徒であり、 イスラム教徒にしてみれば、キリスト教徒は侵略者であり、仇敵であるというわけじゃ。……なんだかどこかで聞いたような話じゃないかね?」 オスマン氏は皮肉な笑みを浮かべる。 キリスト教徒とイスラム教徒、ブリミル教徒とエルフ、聖地を巡る対立関係にしろ、まるでそっくりだ。 オスマン氏は話を続けた。 「聖地の目前にまで差し迫った十字軍に、迎撃の準備を万端に整えたイスラム軍、聖地はいつ戦火に包まれてもおかしくない、まさに一触即発となった。 戦で苦境を強いられるのはいつだって民草じゃ。再び罪なき民の血が流されようとしたその時、彼ら……『アサシン教団』が動き出した」 「アサシン……教団……?」 聞きなれぬ名に再び首を傾げるルイズに、オスマン氏は大きく頷いた。 「うむ、イスラムにもキリストにも属さぬ第三の勢力。 『真実は無く、許されぬことなどない』を信条とし、『全ての平和』の実現を至上目的とする、暗殺集団。それが『アサシン教団』じゃ。 『アサシン教団』は、両勢力の存在こそが聖地に混乱をもたらす存在と考え、それぞれの幹部を排除するために、一人のアサシンを送り込んだ」 「アサシン……それがオールド・オスマンの?」 ルイズが尋ねると、オスマン氏は頷いた。 「うむ、名を『アルタイル』と言ってな。若くしてアサシンの最高位、『マスターアサシン』の地位に昇りつめる程の実力を持った、優秀なアサシンじゃった。 彼が暗殺を命じられた標的の数は九人、そのいずれもがイスラム軍や十字軍の重要人物であり……、権力を笠に民を苦しめる悪党じゃったそうじゃ」 「それで……どうなったんですか?」 「簡単に言えば、アルタイルは見事、両勢力の幹部九人、そして裏で手を引いていた黒幕すらも暗殺してのけた。 首脳部を失い、混乱し、疲弊しきった両軍は遂に休戦協定を結び、聖地にはつかの間の平和が訪れた……。 と、このようにじゃな、『アサシン教団』の暗殺対象はただ一つ、平和を乱し、民を虐げる者じゃ。 歴史の闇にて撥乱反正を行う存在、それが彼ら、『アサシン』じゃ。彼らが刃を振うは、世の安定の為であり、人々の自由の為なのじゃよ。 彼……、そなたの使い魔であるエツィオ・アウディトーレもまた、その信条を受け継いだアサシンの血盟の一人というわけじゃ」 「そんな……」 ルイズは口元を押さえながら、信じられないとばかりに小さく呟いた。 たった一人のアサシンが、戦を終わらせる、そんな馬鹿げた話、どうしても信じられなかった。 だが、なによりも信じられなかったのは、平和の為に人を殺す、『アサシン』の存在だった。 「で……でも、アサシンが……、エツィオがやっていることはっ……!」 「殺人、かね?」 愕然としながらも、ルイズはやっとの思いでその疑問を口にする。 だが、オスマン氏はそれの一体なにが問題なのか? と言わんばかりに首を傾げて見せた。 「確かに、人の命は、貴賎問わず何物にも代え難い尊い物だ。そんなことは、ブルドンネ街の乞食ですら知っている。成程、それを奪う彼の行為は、我々から見れば悪なのだろうな。 じゃがな、戦が起き数千数万もの罪なき人々の命が失われるくらいなら、たった数人の、それも悪人の命など取るに足らないものとは思わんかね? それが戦を引き起こそうとする者どもの命ならば、なおさら安い物だ。僅かな犠牲で多くを救う。大いなる善の為の、ささやかな悪じゃ。 確かに、お主の言うとおり、彼の行ったことは殺人じゃ。そしてそれは紛れもなく罪じゃ。 では聞こう、その罪を罰する法は、誰が創ったのかね? 天に座す神か? いや、『人間』じゃよ。 法は神ではなく人の理性より生まれしもの。故にこの世には『真実は無く、許されぬことなどない』のじゃ」 「だからって……」 「無論、この教えは自由を意味するものではない。この世をあるがままに見よ。若きメイジよ、賢くあれ」 その言葉に、ルイズが呻くように呟く。 確かに、オスマン氏の言うことにも納得できる部分はある。 戦を引き起こそうとする原因を取り除き、平和をもたらす。少数の悪人の死で、数千、或いは数万の人々の命が助かるのだ、そこになんの問題があるのだろうか? しかし、やはり心のどこかで、殺人という禁忌に対するわだかまりがあった。 そんな彼女の心境を見透かすかのように、オスマン氏は目を細め、頷いた。 「割りきれぬ気持ちもわからんでもない。 だがな、ミス、残念なことに、この世には話が通じぬ者もおるのじゃよ、『レコン・キスタ』の連中がまさにそれじゃ。 無知による過ちなら救いようがある。しかし、心まで毒され、魂が穢れているのであらば、それは打ち倒さねばならん」 オスマン氏は力強く言い切ると、ルイズをじっと見つめた。 「そなたの使い魔は、ただそれを遂行した。全ては、トリステイン……否、ハルケギニアの平和の為に、そして何より、そなたを戦火に晒さぬために」 「平和の、わたしの為……」 ぽつりと呟きながらルイズは押し黙ってしまった。 オスマン氏は、俯きながらじっと考え込むルイズを見守っていたが、ややあって、小さな笑みを浮かべながら呟いた。 「私に言えるのはここまでじゃ、あとは、そなたの問題じゃて。今夜にでも、彼とよく話してみることじゃな」 前ページ次ページSERVANT S CREED 0 ―Lost sequence―
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前ページゼロのチェリーな使い魔 フリオニール達が「スカボロー」の港でルイズとワルドを待ち伏せしていた頃 ルイズとワルドの乗った船がフリオニールの想像通り空賊の軍艦に拿捕されていた。 捕まえた船にトリステインの貴族が二名同乗していたので、賊はとりあえず軍艦の船蔵に 軟禁し、賊の一人がアルビオン行きの目的を問いただすときびすを返して蔵から出て行った。 空賊なんぞに屈服してたまるものか、と毅然とした態度を崩さないルイズにワルドが 「いいぞ、ルイズ。さすがは僕の花嫁だ」 すっと近づき肩を抱いて励ます。ポイントを稼ごうと躍起になっているようだ。 しばらくすると先程の賊が二人の元へやってきて 「お頭がお呼びだ」 船長室へと案内した。 狭い廊下を通り細い階段を上るとある一室の中へ入るよう促された。二人はドアを開けて 中を見渡すと豪華なディナーテーブルがあり、上座に派手な服を着飾り水晶の付いた杖を 握った男が鎮座しているのを確認した。恐らく元メイジの船長だろう。 「さぁ、名前を言え」 「大使としての扱いを要求するわ」 ルイズは恐怖に震えながらも空賊のお頭に一歩も引くことはなかった。 押し問答の末、このお頭こそがアルビオン王国の皇太子ウェールズ・テューダーその人で あることが判明した。 ウェールズは賊に扮した変装を解き、拿捕は敵の補給路を絶つ為であることを弁明すると 「アルビオン王国へようこそ大使殿。君達を試すような真似をしてすまかった。外国に 我々の味方がいるなど夢にも思わなかったのだよ」 歓迎の挨拶と無礼の謝罪をした。 ルイズとワルドは居住まいを正し自己紹介を済ますと、 「アンリエッタ姫殿下より密書を言付かって参りました」 ルイズは胸のポケットからアンリエッタの手紙を取り出した。 恭しくウェールズに近づき手紙を渡そうとしたルイズだったが 「あの・・・失礼ですが、本当に皇太子様ですか?」 躊躇いがちに伺った。するとウェールズはクスクスと笑い出し 「さっきまでの変装を見ていれば無理もない。僕はウェールズさ。何なら証拠をお見せしよう」 ルイズの指にはめられた指輪を見つめて言った。 この指輪はアンリエッタがルイズに手紙を託す際に困った時の旅の資金にでも、とプレゼントした ものでルイズはこれから一体何が起こるのか好奇心に駆られた。 ウェールズは自身の薬指に光る指輪を外すとルイズの手をとりアンリエッタの指輪に 近づけた。二つの宝石は共鳴し合い虹色の光を放った。 「僕の指輪はアルビオン王家に伝わる『風のルビー』だ。君が嵌めているのはアンリエッタの 『水のルビー』。そうだね?」 ルイズはコクリと頷く。ウェールズは微笑を浮かべ 「水と風は虹を作る。王家の間にかかる虹さ」 大使を労った。ルイズは改めて謝罪の言辞を述べ手紙をウェールズに手渡す。 ウェールズは大事そうに手紙を受け取り花押に接吻すると封を開け便箋を取り出した。 真剣な表情で手紙を読み耽るウェールズ。途中驚いたように目を見開いた瞬間があったが 最後の一行まで読み終えるとルイズとワルドを笑顔で見つめ 「了解した。しかし、姫より返して欲しいと頼まれた物は今手元にはない。ニューカッスルの 城にあるのだ。僕の宝物だからね。多少面倒だがお二人にはご足労願いたい」 ニューカッスルまで同行するように促した。 ローブをまとった怪しい男と対面するフリオニール達。 「いいんじゃない?そのかわりガゼネタ掴ませたら承知しないわよ!」 キュルケは他に当てがあるわけではないので、ラ・ロシュールから出港した船に男女一組の 貴族が乗っていて昼頃にはこのスカボローに到着しているはずである旨をローブの男に 伝えると金貨10枚を支払った。 持ち逃げされたら困るから、という理由でフリオニールがローブの男に付き添うことになり 約束が違うとゴネるローブの男の袖を引っ張ってレストランから出て行った。 フリオニールはローブの男と共に波止場をはじめ裏通りのカジノなど人が集まる場所へ 出向いて聞き込み調査をしたが目ぼしい情報を得られなかった。 どういうことだ!と怒るフリオニールにローブの男はおずおずと 「お客さん、何かの勘違いではありませんかね」 「そんなことはない!ラ・ロシェールの発着場には船はなかったんだ!」 「でしたら賊に捕まったとしか・・・」 「やっぱりそうか!?くそっ!」 「・・・お客さん、これは噂なんですがね・・・」 ローブの男は顔を近づけると小さな声で 「王党派が空賊に化けて反乱軍の物資を横取りしているそうな」 「本当か!?」 「まぁ、あくまでも噂ですし実際に目撃したものはいませんがね」 「王党派はどこにいるんだ?」 「はぁ、ニューカッスル城に篭って最後の抵抗をしてますが」 フリオニールは「ご主人様」からアルビオン行き同行を言いつけられたが何の用事で出向いて いるのかまでは判らない。 王党派が味方であるにせよ敵であるにせよニューカッスルへ行けば手がかりが得られる かもしれない、と顎に手を当てて思考を巡らせていたが意を決して 「ニューカッスルまで案内してくれ!」 「しかし、あそこは今激戦区ですよ?」 「かまわん!」 「じゃあ、保険金としてあと金貨40枚を」 ローブの男は右手を差し出し甲高い笑い声を発するのであった。 フリオニールはローブの男を伴って波止場のレストランへ戻り今後の対応を協議する。 行き違いになっては困るのでキュルケを留守番役とし、とりあえず様子見という形で フリオニール、タバサ、ローブの男の3人が出向くことになった。 留守番に文句を言うキュルケを懸命に宥めている間にシルフィードが夕日を背にやってきた。 立派な風竜を目の当たりにしローブの男はゴクッと唾を飲むと 「いやぁ、立派なドラゴンですな。これなら明日未明にはニューカッスルに着くでしょう」 お世辞を言いつつ保険金の催促をした。 やってられない、とばかりにキュルケは憤然と財布から金貨10枚を抜き出すとローブの男に 乱暴な手つきで渡した。 ローブの男は提示した金額より低い額を渡されたので文句を言おうとしたが、このような ドラゴンを飼い慣らしている連中はきっと只者ではないと考え直しひひひっ、と薄気味悪い 声を出して金貨を受け取った。 その日の夜 ルイズはニューカッスル城に無事到着しウェールズからある物を受け取ったことにより この度のミッションの折り返し地点まで来た筈なのだが何故か物憂げな表情だった。 無理もなかった。アンリエッタより受けた密命は以前、アンリエッタがウェールズに送った ラブレターを取り戻すことだったのだ。しかも内容は始祖ブリミルに誓った愛の告白が 刻まれている。始祖に誓う愛は婚姻の際の誓いである。アンリエッタがこれから嫁ごうと するゲルマニアの皇室にその手紙が伝われば重婚の誹りを受けて婚約解消となってしまう。 そうなればゲルマニアとの同盟関係も破談しレコン・キスタへ小国トリステイン1国で 立ち向かわねばならなくなるだろう。 アンリエッタは王女としての責務を果たそうとしウェールズはそれを認め自ら身を引こう としている。 深い絆で結ばれているのに引き裂かれる数奇な運命。アルビオン王家を窮地に追いやった レコン・キスタと呼ばれる反乱軍に対する怒りがルイズの心にふつふつと湧いた。 しばらくして怒りが治まると自身の使い魔がハルケギニアへ来る前にそのような組織に 属していたことをふと思い出した。 (あいつ、何やってるのかしら!?) ラ・ロシェールではぐれて以来顔を見せないフリオニールに対し不安と苛立ちを募らせる ルイズの元へワルドがやってきた。 「さぁ、ルイズ。これからパーティだ」 「ええ」 ルイズは一言返事をするとワルドと共に大使を歓迎するパーティ会場へ足を運んだ。 宴も終わり宮廷内が静けさを取り戻した頃 ニューカッスル城近郊まで到着したフリオニール達はシルフィードでこれ以上進むと捕らえられて 尋問を受けることになるだろうと考え徒歩で森の中を抜けることにした。 しばらく歩き兵隊に見つかることなく辛くも城外までたどり着いたが、城は軍艦や大勢の 兵士に取り囲まれていて落城一歩手前の様相だ。 森の木陰に隠れながら本当にここにルイズがいるのだろうか?と半信半疑になるフリオニールに ローブの男が 「着きましたぜ。さぁ、宝物庫目指して頑張りましょうや」 揉み手をして言った。この男の目的が火事場泥棒であることを理解したフリオニールと タバサはジト目でローブの男を見る。 男はひひひっ、とバツの悪そうな笑いを発すると 「何なら私がこっそりと中の様子を偵察してきましょうか?」 城へ忍び込むと言い出した。どうする?とタバサにアイコンタクトをとるフリオニール。 「え~と、桃色の髪の小柄な少女と羽帽子をかぶった口ひげの大男ですね」 ローブの男は再確認するようにぶつぶつ呟くと例によって右手を差し出した。 しかたがない、とフリオニールは背中のデルフリンガーを外して男に差し出す。 「これ、新金貨20枚で買ったんだ。本当はもっと値が張るらしい」 「あ、相棒!この俺っちを身売りするなんてひでぇじゃねぇか!」 「我慢してくれデルフ!あとでルイズさんに頼んで買い戻すから!」 「こんな怪しい奴に渡して大丈夫かよ・・・」 ローブの男は口元をニヤつかせてデルフリンガーを受け取ると 「私の記憶が確かならば通用口は向こうですな。では行ってきまっせ。もしお目当ての 人がいれば「外でお友達が待っている」と伝言しときますよ」 闇夜に消えるように静かに城壁に近づいて行った。 前ページゼロのチェリーな使い魔
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 九六 コルベールと会おうと考えた君は、その辺りをうろついている生徒たちに、彼の居そうな場所を訊いてみることにする。 ほどなく、見覚えのある顔を目にしたので話しかける。 相手はおどおどした目つきの小太りの少年だ。 たしかルイズの級友で、彼女を頻繁に≪ゼロのルイズ≫と呼んでからかっている者たちのひとりだ。 ≪風っ引き≫とかいう二つ名をもつはずだが、本名を思い出せない――君の彼に対する印象は薄いが、向こうは君のことを、貴族を恐れぬ心と力をもつ油断ならぬ平民とみているらしく、 話しかけられるとぎょっとした様子を見せる。 「ミ、ミスタ・コルベールなら、用事のないときはいつも『研究室』に居るよ」 少年は君に悪意がないと見てとると、気をとりなおして言う。 「本塔と『火の塔』に挟まれたところに掘っ立て小屋を作って、秘薬や妙ちきりんなからくりの研究をしているらしい」と。 少年に礼を言うと、君はコルベールの『研究室』へと向かう。 『研究室』はすぐに見つかる。 いたる所が掃き清められ手入れの行き届いている学院の中では、ありあわせの材木で作られたとおぼしき粗末な小屋は、いやがおうにも目立つのだ。 君が扉を叩いて名乗ると、すぐに返事が返ってくる。 「おや、ミス・ヴァリエールの……。どうぞ中へ、しかし建てつけが悪いので気をつけて!」と。 君は脚も使いつつ扉を強く押し開けると、小屋の中へと踏み入る。 君は室内を見回す。 鉱石や壺、薬品の入った瓶が壁際の棚に並び、その隣には書物でいっぱいの書棚が据えられている。 空いた壁には地図や星図が貼られており、天井からは奇妙な鳥やトカゲの入った鳥籠がぶら下がっている。 まさに、絵に描いたような魔法使いの住処だ。 君はかつて修行時代をすごした森の庵を思い出し、妙に気持ちがくつろぐ。 薬品、埃、黴(かび)、錆、油……さまざまなものが混ざり合った異様な臭気が鼻をつくが、それさえも心地よく感じられるのだ。 この小屋の主、魔法学院の教師であるコルベールは君の姿を認めると片手を挙げて挨拶をする。 テーブルの上には、両手で持てるほどの大きさの奇妙な形をした機械が置かれており、彼は今までそれをいじっていたようだ。 機械は真鍮と鉄でできていて、筒や歯車や車輪が複雑に組み合わさっているが、君にはそれがどういう働きをするものなのか、想像もつかない。 コルベールは手についた油をぼろ布で拭き取ると椅子から立ち上がり、君に話しかけてくる。 「今、お戻りですか。六日もかかってしまうとは、オールド・オスマンに頼まれた使いは、思いのほか長引いたようですな」 学院長は、君とルイズの主従が学院を留守にしていた理由をでっち上げ、教師たちに説明してくれていたようだ。 「さて、ご用のおもむきは?」 君はコルベールになにを尋ねる? テーブルの上の機械はなんなのか・六二へ 異世界からの来訪者に関する記録は見つかったのか・二八五へ 左手に刻まれた≪ルーン≫について・一三七へ 一三七 君は自身の左手の甲に刻まれた、未知の文字らしき奇妙な模様について知りたいのだと言う。 「ああ、それですか。それほど珍しいルーンではありませんが、人間に刻まれたのは初めてでしょうな――もっとも、≪サモン・サーヴァント≫で人間が召喚されたこと自体、前代未聞なのですが。 普通、ルーンを刻まれた主人と使い魔は、言葉に頼らずに意思を通じ合わせたり、視覚や聴覚といった感覚を共有させたりするものなのでが……あなたの場合はどうです?」 コルベールはそう尋ねてくるが、君はそのようなことはないと答える。 「ふむ、獣などと違って、強固な意志と高い知能をもつ相手にはルーンの効果も薄いのかもしれませんな。ミス・ヴァリエールに召喚されてから、なにか心身に変化はありませんでしたか? 些細なことでも構いませんよ」 君はにやりと笑い、ここに来てから少し太ったうえに物忘れが激しくなったと冗談を言う――平和すぎるのも考えものだと! それを聞いたコルベールは沈黙するが、やがて笑顔を見せる。 「いやいや、平和こそなにより貴いものですぞ。平和だからこそ、私はこうやって趣味の研究と発明に打ち込めるのですからな」 そう言って、小屋のあちらこちらに積み上げられた書物、機械、薬品、そのほか雑多ながらくたを示す。 「それで、実際のところはどうです? なにも変わったことはありませんか」 あらためて考えてみた君は、アルビオンでの不思議な出来事に思い当たる。 最初は、手負いの傭兵がルイズに向かって剣を振り上げたとき。 次に、ワルド子爵がみずからの婚約者を振り払ったとき、君は奇妙な衝動に突き動かされていたのを思い出す。 ルイズを護らなければならぬ、ルイズに危害を加えようとした者を倒さねばならぬという思いに、心を支配されたのだ。 このことをコルベールに伝えるべきだろうか? 自分の『ご主人様』を名乗る少女を守るために、無我夢中で飛び出してしまったなどと言うのは気恥ずかしく、あまり気の進む内容ではない。 そもそも、あの出来事は≪ルーン≫とは無関係なことかもしれぬのだ。 正直に語ってみるか(二五九へ)、それとも秘密にしておくか(六一へ)。 二五九 「ほほう、それは興味深い。≪コントラクト・サーヴァント≫によってルーンを刻まれた使い魔は普通、生来の野生を抑えこまれて主人に忠実な存在に変わるといいますが、あなたの場合はそのようなことはなく、 ルーンによって付与される能力も顕れなかった。しかし、主人であるミス・ヴァリエールの危機を前にして初めて、ルーンが本来の効力を発揮したのかも……」 コルベールは顎に手を当て考えこむ。 彼の言葉を聞いて、君は寒気を覚える。 『野生を抑えこまれ』『忠実な存在に変わる』とコルベールは言った。 とくに不都合もないので気にもかけずにいたこの模様に、そのような力があるとは知らなかったのだ。 飼い慣らす手間が省けるうえに、特殊な力を与えることができるのだから、≪コントラクト・サーヴァント≫とはずいぶんと便利な術だ。 相手が知性をもたぬ鳥や獣ならば、何者にも非難されるいわれはなかろう。 しかし君は、意思も人格もある人間だ。 ルイズはその人間に対して、獣を相手にするのと同じような気持ちで≪ルーン≫を刻んだというのだろうか――自分に対する絶対の忠誠と、無私の奉仕を期待して。 つまり、彼女にとって『平民』とはその程度の存在に過ぎなかったというのだろうか? 今のルイズは君を召喚してしまったことを詫び、カーカバードに戻れるよう協力してくれてはいるが、それは、≪ルーン≫が意思を奪わなかったためであり、 もしも≪ルーン≫の魔力が君の心を完全に支配していたならどうなっていたことかと考えて、大きく身震いする。 コルベールは高い知性をもつ生き物――韻竜や亜人――に≪ルーン≫が刻まれた場合、どのような影響があったのかを、文献をあたって調べてみると言う。 「もっとも、オールド・オスマンから別の調べ物を頼まれていますので、結果をお伝えするのはしばらく先になりそうですが」 そう言って薄くなった頭を掻くコルベールに別れを告げ、君は研究室をあとにする。三七へ。 三七 寄宿舎へと戻る途中で、食堂に向かうギーシュを見かける。 城下町に居たときと変わらずぼうっとしており、並んで歩む少女の言葉にも生返事を返すばかりだ。 少女は、どうやって整えたのかと疑問に思うほど仰々しい金色の巻き毛を、赤く大きなリボンで飾っており、泉のように深く青い瞳の持ち主だ。 背が高いわりには肉付きが悪く、痩せぎすと言ってもよい。 彼女も先刻出会った小太りの少年と同じく、ルイズの級友のひとりであることを思い出す――ルイズを≪ゼロ≫と呼んでからかっているのも同じだ。 君は片手を挙げてギーシュに挨拶するが、彼の眼には映らなかったらしく、そのまま通り過ぎてしまう。 金髪の少女のほうは君に気づいた素振りを見せるが、冷ややかな視線で一瞥するとすぐに顔をそむける。 君はギーシュと少女の後姿を見送りつつ、首を傾げる。 今までに彼女の気に障るようなことをしでかした覚えはない。 かつて決闘でギーシュを打ち破ったことを、いまだに恨んででもいるのだろうか? 夕食を終えた(体力点二を得る)君はルイズの部屋に戻るが、≪ルーン≫のことを知ったいま、どことなく彼女に話しかけることがはばかられてしまう。 あいも変わらず≪始祖の祈祷書≫を見つめているルイズをちらちらと横目で見ながら、君は考える。 彼女は、人間である君に≪コントラクト・サーヴァント≫を施すにあたって、良心の呵責にさいなまれたりはしなかったのだろうか? 目の前の平民にも故郷や家族、そして果たすべきことがあるだろうとは考えなかったのだろうか? このハルケギニアに召喚された最初の日のことを思い起こすに、とてもルイズがそれらのことを真剣に考えていたようには思えない。 頭の中でルイズとのやりとりを再現していた君は、突然、あることに思い当たって愕然とする。 ルイズから≪使い魔≫の契約についての説明を受けたとき、なぜ君は、それをすんなり受け入れたのだろう? 祖国を救うための重大な任務の途中で、人さらいも同然のやり口で連れてこられ、下僕になれと言われたのだ。 ふざけるなと一喝するのが当然であり、一刻も早く元の場所に戻せとルイズを脅し、できぬと言う彼女が嘘をついておらぬかと魔法を使ってでも調べるのが、 あのときの君のとるべき行動だったはずだ。 しかし、君は彼女の言葉をあっさりと信じ、当面は≪使い魔≫として働くことを受け容れたのだ。 ≪ルーン≫は刻まれたその瞬間から、君の心に影響を及ぼしているのではなかろうか? 『ご主人様』に暴力を振るってはならぬ、と。 「相棒、どうしたね? なにか悩み事でも……ああ、国に帰れる目途が立たねえことだな?」 傍らに置いていたデルフリンガーが君に声をかける。 「アルビオンじゃ残念だったみてえだが、ここは気長に……」 それ以上は言わせず、君はデルフリンガーを手にすると素早く鞘に押し込む――魔剣の声を耳にしたルイズが≪始祖の祈祷書≫から顔を上げ、君のほうをじっと見つめているからだ。 君はなんでもないと手を振ると、明日からまた学業を修める日々が始まるのだ、≪始祖の祈祷書≫とにらめっこしていないでもう寝るぞ、と告げる。 ルイズが寝台に潜りこんだのを確認すると、君は暗澹たる気持ちで毛布にくるまり眠りにつく。一五一へ。 一五一 君たちが学院に戻って三日が経つ。 「今朝早くに、王宮よりの勅使があった」 朝食のために『アルヴィーズの食堂』に集ったすべての教師と生徒に向けて、オスマン学院長が重々しく告げる。 ガリア王国を中心としたアルビオン解放のための連合軍が結成され、トリステイン王国もこれに加わることになった、と。 オスマンによれば、諸国の軍がアルビオンへ向けて出征するのは、一月ほど先のことになるという。 戦の報せを受け、食堂は沸き立つような歓声に包まれ、そこかしこから「トリステイン万歳!」という叫びが上がる。 彼ら若き貴族たちのほとんどは、前々からアルビオン王家打倒を企む反乱軍の行いを噂に聞いており、憤りを覚えていたのだ。 もっとも、ここに居る者たちのなかで実際にその非道を眼にしたのは、君とルイズ、ギーシュだけだろう。 タバサならば戦乱のアルビオンを訪れたことがあるかもしれぬが、約束の≪虚無の曜日≫の前日になっても、彼女は姿を現さぬのだ。 「一度戻ってきたのに、またすぐ出て行くなんて初めてよ。まあ、あの子のことだからいつの間にか帰ってきてるんでしょうけどね」 キュルケはなにくわぬ風を装ってはいるが、無口な友人のことが心配らしく、昨日も一昨日も、授業中はずっと窓のほうを向き、空をぼんやりと眺めていたのだ。 食前の祈りが済み、生徒たちは食事をしながら歓談するが、その話題は来たる戦のこと一色に染まる。 彼らの大半は楽観的であり、夏が来る前に戦は終わり、アルビオンの謀叛人どもは高く吊るされることになるだろうと語り合う。 なかには、内乱で疲弊しているとはいえ、精強なアルビオン空軍を打ち破って上陸を果たすのは一苦労だろうと言う者や、 今まで頑なに中立を貫いてきたガリアが、なぜ急にアルビオンへの介入を思い立ったのかを、もっともらしく説明する者も居る。 食堂のいたる所に将軍きどり・軍師きどりの少年が現れて戦術を語り、なかには休学して軍に志願しようと言いだす者まで出る始末だ。 君はいつものように、ルイズの分けてくれたパンと料理を載せた皿を片手に食堂を出る。 苦労知らずの貴族の小僧どもと肩を並べて食事など、ぞっとしない――ろくに血を見たこともないような連中が、したり顔で戦について語っているなかではなおさらだ! 石造りのベンチのひとつに腰を下ろし、戦のことを考える。 人間同士の戦など醜くつまらぬものだが、邪悪な七大蛇を従える≪レコン・キスタ≫の首魁が倒され、ウェールズ皇太子が救われるというのならば、それは喜ばしいことだろう。三一五へ。 三一五 食事をとっていると(体力点一を加えよ)、ひとりの少女が食堂から現れ、つかつかと君のほうへ歩み寄ってくる。 二日前にギーシュと並んで歩いていた、金髪の少女だ。 少女はマントを翻すと、 「ちょっとよろしいかしら、≪ゼロのルイズ≫の使い魔さん?」と話しかけてくる。 君は聞こえよがしにパンをクチャクチャと噛みしめながら、なんの用だと横柄に返す。 フーケの一件以来、面と向かってルイズを≪ゼロ≫呼ばわりする者はだいぶ減ったのだが、この高慢な少女は態度を変えぬのだ。 この少女がルイズに向かって吐く言葉からは、キュルケのようにいくらか親しみが込められた――当のルイズは気づいておらぬようだが――ものとは違い、 あからさまな悪意が感じられるのだ。 そのような相手に礼を尽くすこともなかろうと考えた君の態度に、少女は細い眉を吊り上げる。 「あ、あなたねえ……まあいいわ。あなた、≪ゼロのルイズ≫の旅のお供をしていたわよね。ギーシュと一緒に」 君は彼女を睨みつけながら低い声で、≪ゼロ≫ではなくルイズ、もしくはミス・ヴァリエールだろう、と言う。 少女はぎょっとしてあとずさり、もごもごと言い始める。 「な、なによ。怒らなくてもいいでしょ……。その、まさかとは思うけど、旅先でギーシュと≪ゼ……ルイズのあいだになにかあったりしなかった?」 君は、そのようなことはありえぬと答える。 宿屋の同室で眠ったりはしたが、そこには自分も居たのだから間違いなど起こりえぬ、と。 「じゃあ、途中でどこぞの村娘を口説いたりはしなかった?」 君が黙ってかぶりを振ると、彼女はふたたびもごもごと何事かをつぶやく。 君は呆れ顔で、お前はなにを訊きたいのだと尋ねるが、少女ははっきりと答えようとはしない。 どうやら彼女は、恋人であるギーシュが旅先で何者かと浮気をしなかったかと、心配しているようだ。 しかしそのことを、平民であり、目のかたきにしているルイズの≪使い魔≫である君に気取られたくはないのだろう。 もっとも、この態度で気づくなというほうが無理な話だが。 心配せずとも、ギーシュは浮気などする暇はなかった――そう告げようとした君だが、唐突にアンリエッタ王女の存在に思い当たる。 そういえば、ギーシュはアンリエッタ王女に一方的に恋焦がれている。 あれはもはや、崇拝といってもよいだろう。 このことを少女に伝えるべきだろうか? 迂闊なことを言っては、若き恋人たちの騒動に巻き込まれてしまうかもしれない。 ギーシュが王女に惚れていることを伝えるか(一〇二へ)、黙っておくか(二四三へ)? 術を使ってみてもよい。 HOW・三六六へ TEL・三四一へ SUS・四七二へ SUD・三九四へ GOD・四三二へ 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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【クラス】 アサシン 【真名】 アンジェ・ル・カレ@プリンセス・プリンシパル 【属性】 中立・中庸 【パラメーター】 筋力:D 耐久:D 敏捷:B 魔力:E 幸運:C 宝具:C+ 【クラススキル】 気配遮断:A 自身の気配を消す能力。隠密行動の技能。 完全に気配を断てば発見はほぼ不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。 【保有スキル】 専科百般:A スパイとして体得した多数の専門技能。 戦術・学術・隠密術・暗殺術・詐術・変装術など、工作活動におけるスキルをBランク以上の習熟度を発揮できる。 心眼(真):B 訓練と実戦によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦術論理”。 跳躍:B 宝具『Cavorite Moon』発動時にのみ効果を発揮するスキル。 三次元機動を行う際、敏捷値にプラス補正が掛かる。 また敵への接近、攻撃の回避、戦線離脱と言った敏捷値が関わる行動においても優位な判定が得られる。 鹵獲:B 自身が調達した物資・装備に低ランクの神秘を付与させることが出来る。 対サーヴァント戦において通用する武装の現地調達が可能となる。 神秘を帯びた装備は他者への譲渡も可能だが、アサシンが魔力パスを切断することでいつでも効果は解除される。 なお一度神秘を付与した物資は、宝具『Princess Principal』で“変身”してる最中にも効果が維持される。 【宝具】 『Cavorite Moon』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1\~2 最大捕捉:5 空間・物質の重力を遮断する動力源「ケイバーライト」。 それを個人携行型の球状移動装置へと落とし込んだ「Cボール」が宝具化したもの。 レンジ内の重力へと干渉し、アサシンの肉体を無重力化させることで変幻自在の三次元機動を行う。 アサシンの操作によって自在に無重力状態が制御される他、他の物質を無重力化させることで攻撃や妨害を行うことも出来る。 『Princess Principal』 ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:- 瓜二つの顔を持つ“王女”への変装。そして“真実の姿”への回帰。 アルビオン王国の王女と入れ替わる極秘任務「チェンジリング作戦」が宝具化したもの。 サーヴァント『プリンセス・シャーロット』へと変身する。 宝具の領域へと到達したことで、“変装”ではなく“変身”と化している。 発動と解除はアサシンの意思で自在に可能。なお肉体や霊基は完全にプリンセスと同一のものになるが、人格や記憶はあくまでアンジェのままである。 宝具発動中は以下のステータスに切り替わる。 《パラメーター》 筋力 E 耐久:E 敏捷:D 魔力:E 幸運:A 宝具:- 《クラススキル》 気配遮断:D 自身の気配を悟られにくくする。 最低限の隠密行動は出来る。 《保有スキル》 カリスマ:C+ 大衆の上に立つ天性の才能。 集団の士気を向上させる他、他者との駆け引きや交渉で優位な立場を引き出しやすくなる。 政治的バックを持たず、王位継承権からは遠い立場にある王女だったが、それでも人々を惹き付ける十分な才覚を備えていた。 鋼鉄の王冠:B+ 王族としての器量と覚悟。 自身に対する精神干渉の効果を大きく軽減する。 また窮地においても冷静に状況を見極め、確固たる意志を持って判断を下すことが出来る。 掩蔽の姫君:A 始まりは貧民。やがて王女と化し、そして内通者となった。 自らの真実の姿を隠しながら大衆の前に立ち続けた逸話の具現。 サーヴァントとしてのステータスを視認されず、魔力の気配も一切感知されない。 専科百般:E スパイとして体得した多数の専門技能。 学術・詐術・話術・変装術など、工作活動におけるスキルをある程度発揮できる。 アンジェと霊基を共有していることに伴い、劣化した状態でスキルが引き継がれている。 【Weapon】 オートマチック式リボルバーを携行。 遠距離にワイヤーを射出するワイヤーガンなども装備。 【人物背景】 壁によって東西に二分された19世紀英国。 その西側、アルビオン共和国に所属するスパイの少女。 東側の王女であるプリンセス・シャーロットと瓜二つの風貌を持っている。 その容姿を活かした「チェンジリング作戦」を立案し、名門校クイーンズ・メイフェア校の生徒として東側のアルビオン王国へと潜り込む。 アンジェとプリンセス。二人には、ある秘密があった。 サーヴァントとして召喚されたアンジェは英霊として限定的な再現に留まっており、TV版最終話以降の記憶を持たない。 【サーヴァントとしての願い】 差別。貧困。分断。戦争。 人々を隔てる“壁”を壊して、少しでも善い世界を齎したい。
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ハンフリー デマロ・ブラック ショコラ トルコ マウンブルテン ドリップ マンジャロウ ココア のらギツネ PX-5 PX-7 アルビオン リップ・ドウティ カリブー コリブー カタコンボ スルメ メガロ アンコロ ワダツミ バンダー・デッケン九世 ハモンド カサゴバ ヒョウゾウ イチカ ニカ サンカ ヨンカ ヨンカツー イシリー カイレン ヒラメラ セイラ メロ ルリス アデル フィヨンセ ソラ ホーディ・ジョーンズ リュウグウ号 フカボシ リュウボシ マンボシ スプラッシュ スプラッタ マダム・シャーリー ジャイロ ドスン ゼオ ダルマ イカロス・ムッヒ ジュナン ネプチューン ホエ 右大臣 左大臣 しらほし デン サーファンクル ハリセンボン フィッシャー・タイガー アラディン ハバニール オトヒメ カダル コアラ ミョスガルド聖 ダイダロス マリア・ナポレ ペコムズ タマゴ男爵 シャーロット・リンリン ボビン
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前ページ次ページ蒼い使い魔 「では、ここで一旦お別れだな、使い魔君」 「………」 翌朝、ニューカッスルの秘密の港では『イーグル』号に女子供等の非戦闘員の搭乗が行われている、 その中で、バージルとワルドが向かい合っていた。 「ルイズが結婚式の準備でこれなくてね、見送りは僕だけだが、どうか許してほしい。 キュルケ達はタバサの風竜で帰るらしい、では再びトリステインで会おう」 特に会話をすることもなくバージルはさっさと『イーグル』号へと乗り込む。 全ての搭乗が完了した『イーグル』号は音をたて出港していった 「もう生きて会うことはないだろうがね…」 それを見送りながら誰にも聞こえないようにワルドがニヤリと口元を歪め呟く、 同時にワルドの姿が、一陣の風となってかき消えた。 『イーグル』号の出港から暫くした後… 始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、ウェールズは皇太子の礼装に身を包み新郎と新婦の登場を待っていた。 扉が開き、ルイズとワルドが現れた。ルイズは呆然と突っ立っていたが、ワルドに促され、 鎧兜に身を固めた十数人ばかりの衛士が作る花道を通り、ウェールズの前に歩み寄った。 非戦闘員は既に港に向かい、兵士達は最後の戦いの 準備を始めている。式を見守っている人間は、タバサとギーシュ、そしてキュルケの三人だけだった。 「でも、ビックリよねぇ、子爵ったら急に結婚式挙げるって言うんだもん、驚いちゃったわ」 キュルケは言葉とは裏腹にのんびりとした口調で言った。 「しかし、勇敢なウェールズ皇太子殿下に婚姻の媒酌を頼むとは…子爵も粋なことをするね」 ギーシュはなぜか誇らしげに見ている。 「ふーん…ところでダーリンは?」 「帰った」 タバサが短く答える、キュルケは「そう…」と呟くと足を組みルイズへと視線をもどした。 一方のルイズは戸惑っていた。 今朝方早く、いきなりワルドに起こされ、ここまで連れてこられたのだった。 戸惑いはしたが、自暴自棄な気持ちが心をしはいしていたので、深く考えずにここまでやってきた。 死を覚悟した王子たちと、昨夜のバージルの態度が、ルイズを激しく落ち込ませていた。 「でもなんか…ルイズの様子がおかしいわねぇ?」 キュルケが相変わらずのんびりとルイズを見て呟く 「そうかい?緊張してるんだよ、きっと」 「そうかしら?」 顔を寄せ合ってぼそぼそと続けられる彼らの会話は、ウェールズの声によって中断された。 「では、式を始める!」 彼の前にワルドとルイズが並ぶ。ルイズはうつむいたまま、顔を上げようとしない。 「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、 そして妻とする事を誓いますか」 「誓います」 ワルドは重々しくうなずいて、杖を握った左手を胸の前に置いた。 ウェールズはゆっくりとルイズへと視線を移す。 「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール……」 朗々と誓いの詔を読み上げるウェールズ。 今が、結婚式の最中だという事を改めてルイズは実感した。 相手は憧れていた頼もしいワルド。 二人の父が交わした結婚の約束。幼い頃、ぼんやりと想像していた未来が現実のものに。 ワルドの事は嫌いじゃない。むしろ好いている。好いているはずだ。 なのになぜ、自分の気持ちはこんなにも沈んでいるのだろう。 ……彼は……もう艦に乗っただろうか? まるで言う事を聞かない使い魔の事を、どうして思い出してしまうんだろう。 「新婦?」 心配そうなウェールズの声がかけられる。 ルイズは戸惑っている。この結婚が本当に正しいのか戸惑っている。 しかしワルドは、落ち着かせるように諭す。 「緊張しているのかい?しかし、何も心配する事はないんだ。 僕のルイズ。君は僕が守ってあげるよ。永遠に。それをたった今、誓った。 ……殿下、続きをお願いいたします」 しかしルイズは、拒否するように首を振る。 「新婦?」 「ルイズ?」 二人が怪訝な顔でルイズの顔を覗き込んだ。 ルイズはワルドに向き直り、悲しい表情で首を振る。 「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」 違うそうじゃない。でも、こんな気持ちのままじゃ結婚できない。 「日が悪いなら、改めて……」 ウェールズの言葉の途中、ルイズは首を振っていた。理由はわからない。わからないけど、気付くと首を振っていた。 「ごめんなさい。ワルド、わたし、あなたと結婚できない」 否定の言葉、それが出てきた。少なくともルイズに今わかると言えば、この結婚を望んではいないという事だ。 だって、望んでいたらこんな気持ちにはならないはずだ。 はっきりとルイズは言った。ワルドの顔が強張る。ウェールズは腰に手を当てる。キュルケ達は口をあんぐりと開けている。 「新婦は、この結婚を望まぬのか?」 「はいッ……! お二方には、大変失礼をいたす事になりますが……」 ウェールズの表情に緊張が走る。そして静かにワルドへと視線を向けた。 「子爵。誠に気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続ける訳にはいかぬ」 ワルドの両手がガバッとルイズの手を握るしめる。痛いほどに。 「……緊張しているんだ。そうだろルイズ。君が、僕との結婚を拒む訳が……ない!」 「ごめんなさいワルド。憧れだった、恋だったかもしれない。でも今は違う、違うの」 今度はルイズの肩を掴むワルド。表情は冷たく、双眸が鋭さを増した。 「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる! そのために君が必要なんだ!」 豹変したワルドに戸惑うルイズ。しかし構わずワルドは興奮した口調で続ける。 「僕には君が必要なんだ! 君の『能力』が! 君の『力』がッ!」 恐ろしい、とルイズは思った。これが、あの優しかったワルドなの? 違う。ルイズが憧れたワルドは『彼』ではない。 「ルイズ、君は始祖ブリミルに劣らぬ優秀なメイジに成長するだろう……。 今はまだその『才能』に気づいてないだけだ!君の『才能』が必要なんだ!」 肩を握り潰されるほどの痛みに表情を歪めながら、ルイズははっきりと理解した。 ―ワルドは、私を愛していない… だから心から拒絶する。本心本音の奥底から。 「あなたは……私を愛していない、今解った……。 あなたが愛しているのは私にあるという在りもしない魔法の才能。 そんな理由で結婚しようだなんて……酷い……こんな侮辱……最低だわ……」 ルイズは暴れてワルドから逃れようとした。 ウェールズはルイズを引き離そうとワルドの肩に手を置いたが、逆に突き飛ばされてしまう。 その瞬間ウェールズが腰に当てていた手で素早く杖を抜きワルドへ向けた。 「なんたる無礼!なんたる侮辱!子爵!今すぐラ・ヴァリエール嬢から手を引け! さもなくば我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!」 ワルドはようやくルイズから手を離し、再び訊ねる。 「こうまで僕が言ってもダメかい? ルイズ。僕のルイズ」 「誰があなたと結婚なんか……!」 「そうか……この旅で君の気持ちを掴むために努力はしたが……仕方ない。 こうなっては……『目的のひとつ』は……あきらめるとしよう……」 「目的?」 さっぱり意味が解らないというようにルイズは呟いた。 「そう。この旅における僕の目的は『三つ』あった。 そのうちの二つが達成できただけでも、よしとしよう。 まず一つは君だルイズ。君を手に入れる事……だがもう果たせないようだ。 二つ目の目的はアンリエッタの手紙だ。これは手に入れるのはたやすい……」 「ワルド、あなた……」 何やら只ならぬ雰囲気が場を支配する、キュルケとタバサがゆっくりと杖を構えた。 「そして三つ目……」 『手紙』という単語で今こそ確信を得たウェールズは魔法を詠唱する。 だがそれよりも早く、二つ名の閃光のようにワルドは杖を引き抜き呪文を詠唱。 ワルドは風のように身をひるがえらせウェールズの心臓を青白く光るその杖で貫いた。 「ウェールズ・テューダー、貴様の命だ」 「き、貴様……まさか…『レコン・キスタ』……」 ウェールズの口から、ゴボリと大量に吐血すると、その体が仰向けに床に倒れた。 ルイズは甲高い悲鳴をあげた。 「殿下!!貴様ァッ!!」 突然の暴挙に凍り付いていた衛士がいっせいにワルドに飛びかかる。 しかしワルドが杖の一振りで巻き起こした『ウィンド・ブレイク』で、その全員が紙切れのように吹き飛んだ。 それを見たキュルケとタバサがワルドに向け一斉に魔法を放つ、 だがそれはワルドが生み出した風の障壁によって阻まれ霧散した。 キュルケが杖を構える、タバサは自身の周りに氷剣を生成している。 ギーシュも慌てたようにワルキューレを生み出した。 ルイズはワルドに向かって叫ぶ。 「貴族派…!ワルド、あなたアルビオンの貴族派だったのね!」 ワルドは喉の奥で笑うと、頷いた。 「いかにも。だが『アルビオンの』というのは正確ではないな。我々『レコン・キスタ』は国境を 越えて繋がった貴族の連盟さ。我々に国境はない」 そう言ってから、ワルドは再び杖を掲げた。 「残念だよ、ルイズ。君の才能が僕たちには必要だったんだ。今からでも考え直してはくれないかい?」 ルイズは力を失ってへなへなと床にへたりこみ、涙を飛ばしながら首を振った。 「いやよ!あなたはわたしの知ってるワルドじゃないわ!」 「残念だよ…では君を殺して手紙を奪うとしよう、そこの仲間も一緒にな」 ワルドは冷たく言うと、杖を構える、その光景がなぜかルイズにはゆっくりと流れて見えた。 「―ッ!」 非戦闘員を満載させ、アルビオンから離れつつあるイーグル号の中でバージルが突如目頭を押さえた、 まただ、この視界、目の前にいるのは…ワルド…?ウェールズに向かい何かを言っている、 「ウェー…ズ・テ……ダー、貴様…命…」 その言葉とともにウェールズが崩れ落ちる 「貴族派…!ワルド、あなたアルビオンの貴族派だったのね!」 ノイズが消えルイズの声が聞こえる、 「残念だよ、では君を殺して手紙を奪うとしよう、そこの仲間も一緒にな」 そう言うとワルドが杖を引き抜く、そこで普段のバージルの視界に戻ってしまった。 「チッ……」 「どうしたよ?相棒」 「ワルドが裏切った…奴は貴族派のスパイだ」 「おいおい!どうすんだよ!いまさらアルビオンへは戻れないぜ!? てか相棒!お前薄々気がついてたんじゃねーのかよ!」 「チッ…」 バージルが忌々しく舌打ちをすると、砲撃音とともにイーグル号に激震が走る。 「何だ!?何が起こった!?」、 「貴族派の巡洋艦です!囲まれています!」 「クソッ!港がバレていたのか!?」 船内に船員たちの怒号が響く、 その言葉を聞きバージルは甲板に飛び出した。 バージルが甲板に出ると、巡洋艦が4隻、イーグル号を取り囲んでいた。 巡洋艦からは竜騎士隊が出撃し、イーグル号へと向かってきている、 バージルはそれを見てニヤリと笑うと、突如甲板から走り出し、宙へ身を投げ出した。 「おい!相棒!なにしてんだ!」 そのままデルフを引き抜き、飛んできた竜騎士にヘルムブレイカーを浴びせる、 頭を叩き割られた竜騎士は風竜を残しそのまま地上へ転落していった。 風竜を足場に次々と飛んでくる竜騎士を屠っていくバージル、やがてそれは巡洋艦の目に留まったのか 目標をバージルに変え、砲撃と魔法を仕掛けてきた、 軽く舌打ちをすると、竜騎士を風竜ごと叩き斬り、墜落しつつある死骸を器用に足場にしながら巡洋艦の甲板へと降り立つ。 甲板上の兵士は目の前に降りてきた男に戦慄しつつも武器や杖を抜き応戦の構えに入る、だがそれを振るう暇もなく男の姿が消えた。 次の瞬間、甲板上にいた兵士全てが大輪の血の花を咲かせる、それと同時に船が文字通り真っ二つに叩き斬られ地上へと落下していった。 「おでれーた!何したんだ相棒!?」 「黙ってろ」 そう言いながら、バージルは次々と同じように皆殺しにしながら巡洋艦を沈めて行く。 「な…なんだあれは…あ…悪魔だ…!」 あっという間に周囲にいた巡洋艦と竜騎士隊が全滅させられ最後の生き残りの一隻が撤退しようとする、 だが、それを見逃すはずもなく、その巡洋艦の甲板にバージルが着地した。 「ひっ…!悪魔めッ…!」 甲板に兵士たちが集まる、それを文字通り一瞬で殲滅すると、腕を斬り飛ばされ悶絶している生き残りの兵士に冷たく言い放つ。 「この船はもらった。今すぐ操舵に伝えろ、俺の言う通りにアルビオンへ進め、そうすれば命は助けてやる。」 「わっ…わかった!わかったから!たっ…助けてくれ!」 そう懇願しながら首を縦に振り、兵士は操舵室へと転がるように走って行った。 「相棒…相変わらずひでぇな…空賊よりタチわりぃぜ…」 「仕掛けてきたのは奴らだ、文句は言わせん」 イーグル号は、戦闘空域を離れたらしく、もう視界には入らなかった。 バージルは静かに、再び近づきつつあるアルビオンを睨みつけた。 するとアルビオンから一つの影が近づいてくる。 「………」 「おい相棒!ありゃシルフィードじゃねぇか?」 デルフの言うとおり飛んできた影はタバサの使い魔シルフィードであった。 「きゅいきゅい!大変なのね!今すぐ乗るのね!」 シルフィードがバージルに話しかけてきた、 「おでれーた!韻竜だったのか!?」 シルフィードが声を発したことに驚いたのかデルフが声を上げる。 「そんなことはどうでもいいのね!お姉さま達があぶないのね!」 その言葉を聞くとバージルはシルフィードの背中に飛び乗った。 右手には抜き身になった閻魔刀を握り締めている。 「おい…相棒まさか…」 ―ズッ…ズズズズ… デルフがバージルに声をかけた瞬間後ろの巡洋艦が音をたてて真っ二つになり、地上へと落下していった。 「おいおいおいおい!ここまでやるか!?命助けるって言ってたろ!?」 「知らんな…こいつが来れば奴らは用済みだ」 巡洋艦が素直にアルビオンに到達しても叩き斬るつもりだったのかバージルがしれっと言う 「かぁー…昨日の言葉を撤回するぜ…お前さんは悪魔だ…正真正銘の!」 叫ぶデルフを背にバージルはアルビオンへと向かった。 礼拝堂ではキュルケとタバサ、ギーシュ、そしてルイズがワルドと対峙していた。 四人はもはや満身創痍だ、一方のワルドは傷一つ負うことなく余裕の表情を浮かべている。 「どうしたのかね?魔法学院の生徒はその程度なのかね?」 「やっ…やっぱり僕らじゃダメなのか…?」 「ギーシュ!何弱音吐いてんのよ!!」 呻くように呟くギーシュにキュルケが檄を入れる。 「ハハハハ!実に美しい友情だな!」 そう笑うワルドにタバサがバージルの円陣幻影剣を真似た氷の剣を周囲に展開。 風を纏わせた杖を長剣に見立てこれもまた見よう見真似でスティンガーを突き放つ、バージルのそれには遠く及ばないが一応形にはなっていた。 その技の危険性を見抜いたのかワルドがバックステップで距離をとる、が、タバサが突き出した杖の先からエア・ハンマーが発動し、ワルドを吹き飛ばした。 モット伯邸で見て以来密かにバージルの戦い方や剣技を盗み日々必死に杖を振るい、自身の魔法を加えアレンジをしたのであろう、 「っ…!やるなっ…!」 ワルドがフライを使い空中で受け身をとり、タバサが追撃として飛ばした氷剣を叩き落とす。 「あれじゃまるでミニバージルね…」 切り結ぶ二人を見たルイズが小さく呟く。 危機的状況にも関わらずキュルケが噴き出す。 「あはは!それもそうね!頼もしいじゃないの、ここで死んじゃったらダーリンに笑われるわよ!」 そう言うと杖を握りワルドへフレイム・ボールを飛ばす、 「わっ…わかってるわよ!ギーシュ!行くわよ!」 そう言うと、ルイズは立ち上がりへたりこんでいるギーシュに檄を飛ばした。 「レディが戦っているのに僕だけ見ているなんて…そんなことはできないね!」 ギーシュは立ち上がり少ない魔力を絞り出しワルキューレを作り出した。 ルイズが「ファイアボール」を放つ、だがそれはあさっての方向が爆発し天井に小さな穴をあけてしまった、 穴から外の光が洩れ始祖像を照らす、 それを見たワルドが叫ぶ 「その力だ!その力こそ虚無の系統の証!君の力が欲しい!だから僕と来るんだ!ルイズ!」 「いやよ!誰が行くものですか!」 ルイズは再び拒絶の言葉を口にした、 ワルドが飛んでくる火球をかき消し、ギーシュのワルキューレを蹴散らすようにウインドブレイクで吹き飛ばす。 その破片がタバサに襲い掛かり手から杖が落ち、転倒してしまった。 「タバサッ!」 キュルケが叫ぶより早くワルドの足がタバサの腕を踏みつけ、顔に杖をつきつける。 「ぐっ…」 拘束されたタバサがうめき声をあげる。 「さて、ルイズ、君が僕と来るというならばこの仲間の命は助けよう、無論そこの二人もな、 それでも断るというならば…わかっているね…?」 ワルドは楽しそうにルイズに話しかける。 「くっ…人質を取るなんて…!そんなの卑怯よ!貴族の誇りも失ってしまったの!?」 「僕も本来はこんな手は使いたくないんだ、だが君が僕を困らせるからさ、さてどうするんだね? それとも使い魔の助けを期待してみるかね?残念だが彼は来ないよ、永遠にね…」 歌うようにワルドが口にした言葉にルイズが反応する 「バージルが…!?ワルド…貴方なにをしたの!?」 「簡単なことさ、貴族派にアルビオンの隠し港の場所を教えた。 彼の乗ったイーグル号は撃沈され今頃海の藻屑さ…」 その言葉を聞きルイズは崩れ落ち座り込む。 「そんなっ…バージル…」 あのバージルが…あんな別れ方してしまったのに…一言謝りたかったのに… ルイズの目から大粒の涙があふれる キュルケが呆然とした表情を浮かべている、 だが唯一あさっての方向を見ていたギーシュだけは視線をワルドに戻し鋭く睨みつけた。 「さて、そろそろ答えを聞きたいな、僕のルイズ、さぁ、大事な友達を救いたいなら僕と来るんだ…」 ワルドが優しく囁く、そしてルイズに向かって手を差し伸べようとしたその時 「ヴェルダンデ!!」 ギーシュの叫び声が礼拝堂内に響く、それと同時にタバサが倒れている床がボコッっと陥没し、 拘束を逃れたタバサは穴の中へと消えていった。 「何ッ!?」 ワルドが驚くのもつかの間、強烈な殺気を感じ即座に飛び退く、 その瞬間ワルドが立っていた空間が音を立てて切り刻まれた。 その場にいた全員が始祖像の上を注視する、そこには… 「「「バージル!!」」」 ルイズ達が驚愕の声を上げる、 始祖像の頭の上で彼を象徴する氷のように蒼いコートを翻しながら、バージルがワルドを睨みつけていた。 「返してもらうぞ…貴様には過ぎた力だ」 そう言いながら右手の閻魔刀をワルドに向け、 ルイズとワルドの間に割り込むように飛び降りる。 「バージル!遅い!遅いわ!一体何してたのよ!ご主人様を待たせるなんてっ!」 ルイズが大粒の涙を流しながら叫ぶ、そんなルイズを横目でチラとみるとバージルが口を開く 「お前らは下がっていろ、巻き込まれたくなかったらな」 そう言うと再びワルドへ視線を戻す、ギーシュがタバサを穴から救出し、キュルケがルイズを抱えそそくさと礼拝堂の隅へと移動していくのが見えた。 「貴様ッ!!なぜだ!あれだけの艦に囲まれてなぜ生きている!」 「フッ…本当に”あれだけ”だったな…奴らは今頃海の藻屑だ」 巡洋艦をすべて叩き落としてきたにもかかわらずしれっとバージルは言う。 「この世は…力こそ全てだ…こいつが欲しければ、俺から奪い取って見せろ」 「フッ…ハハハハハ!!!言ってくれるじゃないかガンダールヴ!いいだろう!ラ・ロシェールでは不覚を取ったが… 今度は全力で相手をしてやる!どんな手品を使っているかは知らんが、それが私に通用すると思わないことだ!」 ワルドが高らかと笑い、再び杖を構える、それを見たバージルがゆっくりと左手の閻魔刀に手をかけ静かに目をつむりながら宣告する。 「You shall die.(―死ぬがいい。)」 前ページ次ページ蒼い使い魔