約 1,317,248 件
https://w.atwiki.jp/lord_of_vermilion/pages/383.html
コスト別 使い魔リスト コスト 種族 使い魔名 10 超獣 クァール,ヴォーパルバニー,コカトリス,ハーピー,バグベア,つちのこ 亜人 ウィッチ,オーク,ゴブリンファイター,マジシャン,アサシン,ドワーフ,マグス,コボルト,【狂】オークオラクル 神族 アルヒアンゲロス,ユニコーン,ハヌマーン,エンジェル,アヌビス,セルケト,ギリメーカラ,ブラフマー,シームルグ 魔種 インキュバス,サキュバス,グレムリン,エルダーワイバーン,マンティコア,ヒッポグリフ,マイコニド,メデューサ,レッドキャップ,牛頭,馬頭 海種 マカラ,ニクシー,マーメイド,キラーフィッシュ,スライム,水虎,ローレライ,ブージャム,スヨトロール,ウンディーネ,ウォーターリーパー, 機甲 デネブ,アルタイル,カペラ,ベテルギウス 不死 アンデッドバタフライ,レイス,ゴースト,ゾンビホルスタイン,スケルトンファイター,レザード・ヴァレス,【呪】ゾンビードッグ, ポイズンモス,アルプ,ブラックウィドウ,スリーピーホロウ 15 超獣 イエティ,ワーウルフ,レオントケンタウロス,カトブレパス,シペ・トテック,ライノケンタウロス,ドライアード,【狡猾】ハーピー,【進化】カトブレパス,ケリュネイア,【残忍】セイレーン 亜人 ゴブリンアーチャー,バーサーカー,オークオラクル,ローグ,マンティス,【理知】コボルト 神族 パワーズ,フェニックス,玄武,麒麟,サラマンダー,ミネルバ,エルフ,アポロン,ケプリ,【神秘】エルフ,ティファリス,エロス,ペリ 魔種 ケルベロス,グリフォン,バジリスク,マンドレイク,ミノタウロス,【錯乱】キメラ,アルラウネ,バロル,サムヴァルタ 海種 シー・パンサー,アクアライダー,ニクサー,オケアノス,アリオーシュ,ナーガ,【誘惑】マーメイド,ケートス,ケルピー 機甲 スピカ,ポルックス,レグルス,【自我】カペラ,【再興】ポルックス 不死 ダンピール,落武者,リッチ,アンデッドスカラベ,スピリット,ゾンビ,ゾンビードッグ,シャドゥナイト,マミー,ニエ,【酷薄】ゴースト,ライル,バンシー 20 超獣 ケイロン,ワータイガー,セイレーン,【激昂】ワータイガー,ゲイター 亜人 トロール,シャーマン,ハーメルン,ドルイド,処刑人 神族 セラフ,ヴァーチューズ,ペガサス,朱雀,ガネーシャ,スフィンクス,アルテミス,ファラオ,不動明王,クロ,【覚醒】アポロン,ガブリエセレスタ,アフロディーテ 魔種 オルトロス,イフリート,ガーゴイル,キメラ,オーガ,ガルーダ,アンヘル,リリス,【蛮】酒呑童子,ゴーレム,ロキ,ブラックドッグ 海種 トリトン,みずち,ポセイドン,シュクラケン,【優雅】ポセイドン 機甲 フォーマルハウト,ミザール,デネボラ 不死 デュラハン・ランサー,ヴァンパイア,ネクロマンサー,重装暗黒騎士,暗黒騎士,死神,フック,【悟り】スペクター,フライング・ヘッド,ヘル,ヴルコドラク,ドラゴンマミー 25 超獣 ニーズヘッグ,ケンタウロス,ワーライオン 亜人 メフィスト,【魅惑】ウィッチ,クリフ・オーグル,【暴虐】トロール,リザードマン 神族 愛染明王,やまたのおろち,レナス,フレイ,フリースヴェルグ,ホルス,アッシュール,イセリアクイーン 魔種 バハムート,ディアボロス,ワイバーン,木霊,ベルゼバブ,レオナール,サイクロプス,雷獣,ぬえ 海種 クラーケン,アルビオン,シー・サーペント,【憤怒】アルビオン 機甲 リゲル,【復帰】ツバーン 不死 ファントム,スペクター,フランケン,ドラゴンゾンビ,破戒神,スケルトンアーチャー,カースドラゴン 30 超獣 グレンデル,ヨルムンガンド 亜人 ラース・ジャイアント,カイム,覇王 神族 オーディン,ゼウス,【掌握】セラフ 魔種 ギガス,酒呑童子,【猛鬼】ギガス,青龍 海種 わだつみ,リヴァイアサン,テティス 機甲 ベガ,ツバーン 不死 ヴァンパイアロード,スカルドラゴン,ブラムス コメント *編集が苦手な方はこちらへ訂正指摘等々、お願いします ver1.3を反映したつもり。 誤植の指摘はコチラへ。 -- (名無しさん) 2009-05-17 18 24 23 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/535.html
前へ / トップへ / 次へ アルビオンの首都、ロンディニウム。 その郊外にロサイムという町がある。王立空軍の工廠として有名な町である。巨大な煙突立ち並ぶ製鉄所、広大な木材置き場、 兵器工廠……ハルケギニア最強を唄われるアルビオン空軍の要である、ということはすなわちアルビオンの生命線であるというこ とでもある。 そこにひときわ目立つ大きな建物がある。空軍の発令所だ。かつて王立空軍の頭脳であったこの建物も、戦争終結によりレコン・ キスタに占有されてしまい、今は三色旗が翻っている。さらにひときわ異彩を放つのが、テントに覆われた巨大戦艦だ。レコン・キスタ は鹵獲した戦艦「レキシントン」を改装中なのである。 現在、ロサイムの町は完全封鎖体制、戒厳令の真っ只中にあった。 通りを歩くのは巡回する警備兵のみである。 その警備兵を見ていると妙なことに気づく。表情に生気がないというか、顔が妙に青白いのである。しかも、このハルケギニアでは ありえないことに、機関銃らしきものを首からぶら下げているではないか。 警備兵の動きをさらによく見ていると、ある建物を中心にして警戒していることがわかるだろう。それは見た目何の変哲もない建物 である。もともと空軍の戦艦の整備を担当していた、この街ではごくありふれた工房の一つに過ぎない。 中に入っても、兵士がただならぬ様子で詰めていることを除けば、ただの工房にしか見えないだろう。だが、その工房の地下が問題 であった。工房の地下室にエレベーターが隠されている。そのエレベーターは地下50mにあって、水爆の直撃にも耐え切れるだけの 防御力をほこる秘密基地へと繋がっていた。 すなわち、この工房はヨミの秘密基地への入り口の一つであった。 現在その秘密基地はフル稼働中である。何かの胴体を思わせるものが次々と運ばれてくる。装甲にスクウェア級のメイジが数人 がかりで固定化の魔法をかけている。見たこともない複雑な回路が運ばれてきては、竜の頭部を思わせるもの、人間の頭を模した ようなものにつけられている。 「なんとも大きく、頼もしいものですな。これが完成した暁には、さすがの3つのしもべも敵ではないでしょう。」 アルビオンの新たなる指導者の地位に着いた、オリヴァー・クロムウェル皇帝は、供の者を引きつれその工事を遠方からはるばる やって来た1人の男に誇らしげに解説していた。 黒い、緩やかな衣に身を纏った男。顔の真ん中にX印の傷痕が残っている。黒く長いあごひげを蓄え、眼光は稲光のようである。 ヨミだ。 「とうとうV2計画も大詰めだ。このぶんだと、あとひとつきもあれば、計画は完了するだろう。」 満足げに工房を見学するヨミ。その顔には自信と余裕がみなぎっている。 「V2計画の進捗状況については、満足できるものであった。あとはトリステイン攻略についてだが…」 「それは、このあとの会議にて報告させていただきます。」 まるで中国人のように礼をとるクロムウェルに「うむ。」と返すヨミ。アルビオンでは、普通このように拳と掌を合わせるような礼をとる ことはない。いったい、なぜ。 「それではV2作戦の状況、およびA計画についての報告、血笑烏作戦についての会議を行う」 ヨミがおごそかに宣告し、着席する。クロムウェルが威厳に満ちたようすで続く。他の人間も次々に着席する。 クロムウェルの背後にはフーケと、ペド、そして幾人かの姿がある。中にはフードを目深にかぶった人間も。 クロムウェルが、「まずはV2計画の進捗状況について説明いたします。」と起立し、挨拶をする。技術主任、と呼ばれた男が前に 出て、モニターを示しながら説明を始める。 「V2作戦はご存知の通り、ロプロス計画を発展させた計画であります。」 映像が移り変わる。そこにかつてロプロス計画によって生産され、バビル2世と3つのしもべを苦しめたV号が映し出された。 「V号はみなさまご存知の通り、ロプロスと互角の力を持っています。ごらんのようにロプロスの体当たりにびくともせず、ポセイドンの レーザー光線をも受けつけません。」 さらに切り替わり、しもべの攻撃をものともせぬ姿があらわれる。 「さらに頭部から超高熱線を放ち、ポセイドンを尻尾で子ども扱いします。腹部からは爆弾を投下でき、サルダン国はじめ周辺国に 多大な成果を与えました。ですが……」 さらに場面は切りかえって、苦しむ搭乗員の姿が映し出された。 「ロプロスの超音波振動攻撃により、搭乗員はヨミ様を除き全員気絶。最終的には…」 画面には爆発炎上を起こすV号。 「爆弾投下口をレーザーで狙われ、墜落しバベルの塔に激突しました。また、同じようにここからロデムに進入され、内部のコンピュー ターを狂わされてしまい、最終的には自爆を余儀なくされました。」 おっほん、とセキをする技術主任。 「以上から、我々はV号の弱点であった、『搭乗員』『爆弾投下口』を排除し、簡略化。さらに効果の高かった『超高熱線』『体当たり』 を強化すべく研究に励みました。結果、超高熱線は特殊なマジックアイテムの使用により威力が1.7倍に、体当たりは『固定化』に よって2.8倍にまで上昇しました。このデーターを用い、量産型V号、すなわちV2号ドラゴンの開発に取り組みました…。」 映像は黒色をした、まさにドラゴンというべき機体に移り変わった。頭にはユニコーンのような角があり、顔は猛々しい。 「これは艦船護衛型のFタイプですが、都市攻撃型のBタイプは爆撃も可能です。また、V号の攻撃に加え、魔法の使用により火炎 放射を口から行うこともできます。操縦方法は原則頭部の人工頭脳によって自動操縦によりおこないます。」 以上です、と礼をすると全員が一斉に拍手をする。 「見事だ。」と満足げなヨミ。 「それで、現在までの生産状況は?」 「現在13体が完成済みです。ひとつき後までには、あと5台は可能でしょう。」 「親善訪問へは何体が間に合いそうかね?」とクロムウェル。 「15体はまちがいなく出動可能です。」 ヨミがにやりと嗤う。 「ふっふふ。この世界で恐れるものはバビル2世とそのしもべのみ。だが、これで空のしもべ、ロプロスは問題ではなくなった。よし、 ではサンダーはどうなっている。」 はっ、と会釈しさらに画像を変えさせる技術主任。映し出されたのは、ポセイドンだ。 「これはご存知のように海のしもべポセイドンです。アルビオンはごぞんじのように空に浮かぶ国。他国に侵略しようとすれば、地上に 兵が降りて、その上で都市を制圧する必要があります。空の航路はドラゴンが確保するとして、問題は地上に降りた兵です。いくら 強力な兵隊やメイジであっても、ポセイドンにはおそらく歯が立たないでしょう。」 そこで…とポセイドンの横に巨大ロボットを表示させる。 「ポセイドンに対抗しうるものとして、我々は巨大ロボットの開発を行いました。ただ、現在の我々の技術ではポセイドンを超えるロボット の開発は不可能である、と判断しました。そこで、我々は量産により、多人数でポセイドンに対抗することを考えました。」 ポセイドンの横に映し出されたのは、まるで古代ギリシャの兵隊のような姿をしたロボット。 「さらに空を飛べないポセイドンに対抗すべく、V2号サンダーは風石を装備し、ある程度の飛行能力を持ちます。これはアルビオンの 地形上の理由からも必要な装備でした。風石は30分で交換可能となっており、作戦に備えて現在量産中であります。また、風石は V2号ドラゴンにも装備されており、移動をジェット噴射、浮遊を風石が行うことで、搭乗者のいない人工頭脳兵器ならではの、アクロ バティックな動きが可能となっています。攻撃手段は、魔法を利用した全身からの発熱、格闘となっています。」 満足げにヨミが頷いた。 「これでポセイドンも問題外となった。あとはロデムだが、ロデムもサンダーで充分に対抗できるだろう。そのために発熱機能を持た せたようなものだからな。」 「次はA計画についてクロムウェルから発表します。」 立ち上がり、技術主任と入れ替わってモニターの傍に立つクロムウェル。 「おほん。さて、A計画、すなわちアルビオン奪取計画ですが、王党派の駆逐に完全に成功したものの、いくつかの問題が出てい ます。」 「最後の攻防戦で我々に多大な被害が出ているというあれか」 「はい。200ばかりの兵が篭るニューカッスルの城を、念を入れて5万の兵で攻め立てました。しかし、連中は火薬を用いて城を爆破、 そのどさくさにまぎれて脱出し、亡命政権を作りました。公式には我々は王党派が最後まで抵抗したため、こちらにも甚大な被害が 出たとしています。そのため連中を無視していますが、こちらに工作活動を行っているという情報もあり、多少手を焼いています。 が、内部の不穏分子の粛清も進んでおりますので問題はないかと。」 「問題はない?」 ピクリ、とヨミの額が動く。 「問題がなくはないだろう。2万以上の兵がニュー・カッスルでは犠牲になったというではないか。おまけに呂尚も行方不明と聞く。 その上で部下をうしなうような行動はあまり感心できんな。」 クロムウェルの顔が青ざめた。 「で、ですが、ニューカッスル攻略の指揮を執っていた呂尚様はヨミ様から…」 「それはそのとおりだ。ゆえに犠牲に関してはおぬしを責めはしない。だが、犠牲者についてなんの感慨も抱かず、おまけに部下を 殺していることを自慢するような態度は感心できない、ということだ。」 恐縮し縮こまったクロムウェルが応える。 「も、もうしわけありません。今後、改めます…」 だが、クロムウェルの命令は、自分たちの目の上のたんこぶを処分しようとする部下たちに無視される形となってしまう。新政権ゆえ の猟官意識が起こした悲劇であった。 「だが、それ以外は完璧と言ってよいできだ。みごとだ。」 ヨミの賞賛に、あっというまに豹変し喜色を浮かべるクロムウェル。 「ありがとうございます。血笑烏作戦にも全力をあげさせていただきます。」 「ではその血笑烏作戦について聞こうか。」 「はい。では続けて説明させていただきます。まずは皆様、この地図をご覧ください。」 モニターにハルケギニアの地図が映し出された。その上に赤線が引いてある。 「これはアルビオン大陸の移動経路を示しています。ご覧の通り、アルビオンは地上に接点がありません。ほぼ唯一の経路というの は、ラ・ロシェールという港町です。ですが、ここは山中にあり、守るに易く攻めるに難しい町です。重要拠点ということもあり、常に 兵が警戒していますし、万一バビル2世がここを守れば我々の被害は甚大となるでしょう。そこで……」 地図が拡大された。ラ・ロシェールのとなり、タルブと描かれた村が映し出された。 「ここ、タルブに部隊を降下させようと考えています。ここは広大な草原が広がっており、身を隠す場所はなく、攻めるにたやすいと いえるでしょう。また目的地のラ・ロシェールにほど近く、この村を占拠し、地上と空からラ・ロシェールを攻め落とすのが、作戦の おおまかな概要です。」 「本来ならばSBC基地からラ・ロシェールに打って出、空との2面作戦をする予定であったな。」 「はっ。ですが、ご存知のようにSBC基地はバビル2世によって完全に破壊されました。そのための作戦変更です。トリステインは 始祖の祈祷書もあり、ハルケギニア進行においても重要な場所にあります。GR計画のためにも、ぜひとも落とさなくてはいけません。」 「またしてもバビル2世か。どこまでもわしの前に立ちふさがる男よ。」 だが、と力強くヨミは立ち上がった。 「だが、今回はわしがバビル2世の相手をする。そこで決着をつけてやろう。」 そして指をつきたて、部下に指示をする。 「よいか。バビル2世はおそらくまだこの世界の秘密に気づいていないはずだ。新月の2日前から超能力をなるべく使わせろ。その ために被害がでてもかまわぬ!よいな!」 全員が起立し、ヨミの命令に応えた。 オスマンは王宮から届けられた一冊の本を、ルイズに渡しながら 『どう見ても、まがい物じゃなあ』 と思っていた。なにしろ文字さえ書かれていないのだ。噂には聞いていたが、まさか本当に真っ白と思っていなかったのである。 「これは?」 怪訝そうに本を見つめるルイズ。なんとも言いにくいな、と思うオスマン。 「始祖の祈祷書じゃ。」 「始祖の祈祷書?これが?」 王室に伝わる伝説の書物。国宝のはずだ。わざわざ召喚して、そんなものを渡されルイズは戸惑っていた。 そんなルイズに噛んで含めるように王族の結婚式の作法を説明してやるオスマン。 「というわけで、姫は巫女に、ミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ。」 「姫様が?」 「その通りじゃ。巫女は式に備えて、この祈祷書を肌身離さず持ち歩き、詠みあげる詔を考えねばならん。」 そのあと名誉なことだぞ、とルイズは説得されていたが、ちっとも聞いてはいなかった。なにしろ幼いころ共に過ごした姫様が、自分を 式の巫女に選んでくれたのだ断る理由などない。 こうして、ルイズはゲルマニア皇帝とアンリエッタ王女との結婚式の巫女役に選ばれ、始祖の祈祷書を手に入れたのであった。 「始祖の祈祷書だって?」 自分の頬をつねるバビル2世。夢ではないかと思った。なにしろ、デルフリンガーを脅して得た情報によると、虚無の魔法を目覚め させるのに始祖の祈祷書とやらが必要だと知っていたからだ。その本が、よりによって虚無の魔法使いかもしれない少女の手に 握られているのだから。 「そうよ。王女様の結婚式で、わたしは巫女役になって詔を読み上げるの。それに必要ってわけよ、この本が。」 えっへんと胸を張るルイズ。よほど光栄に感じているのだろう。 「で、その本を読んでみたのかい?」 高鳴る胸を押さえながら聞くバビル2世。さすがにヨミがいる以上、いますぐ帰るわけには行かないが、いずれ帰らなくてはならない。 その鍵が、目の前にあるのだ。 「読んだかいって……言われてもね。」 本をめくってバビル2世に示すルイズ。 「……真っ白?」 「そうよ。前にも説明したでしょ。王室に伝わる祈祷書は真っ白だって。」 やれやれと肩をすくめるルイズ。たしかに、聴いた記憶がある。 「……で、特殊なメガネや道具はなかったのかな」 「この本しか渡されてないわ。」 あっさりバビル2世の希望を打ち砕くルイズ。ガクッとバビル2世は肩を落とした。 まあ、そんなにあっさり都合よくなにもかもうまく行くわけはないか。そう考えて、気をとりなおすことにした。あとでデルフを脅して、 どうやって読むのか聞けばいい。それで読めなければ、贋作ということだろう。 「で、詔を考えなきゃいけないんだけど……」 「ぼくはわからないよ。」 「でしょうね。異世界の人間だし。」 「残月なんかどうだい?」 仮にも王族、仮にももと愛し合った人間。あるいみロマンティックだ。きっといいものを考えてくれるはずだ。 「却下。」 吐き捨てるように却下された。 「あんな色情狂を頼るなんてお断りよ!」 おっぱいフェチはゲラウトヒア。そう、ルイズの目が語っていた。 「なら孔明はどうだい?仮にもブリミルの使い魔だったらしいじゃないか。」 「それなのよね。ブリミル様がどんな人か聞こうと思って聞いていないし、いい機会と思って探したんだけど……」 首を振って応えるルイズ。 「どこにもいないのかい?」 「そうなのよ。あのヒゲ親父、また街をほっつき歩いてるのかしら…」 ブツブツ文句をたれるルイズ。おそらく情報収集をしているのだろう、と思いバビル2世もとやかく言わなかった。 「……コウメイ様。ウェールズさまがよこしてくれた、平民のあなただからこそ言います。」 ここはトリスタニアの王城。アンリエッタの私室である。アンリエッタは、ここ最近何度も孔明を極秘裏に召喚していた。 「わたしはもう、魔法を使う人間が信用できなくなってきています…」 悲しそうに、アンリエッタは言う。自分が使者として選んだ人間がよりによって裏切り者で、しかも愛するウェールズを殺したと思って いるのだ。かなり、ショックだったのだろう。 「しかし、この国は始祖ブリミルから伝わるメイジの国。わたしの周りの信頼できる人間は、みなメイジ。そんなかたがたにメイジは 信用できない、などと誰がいえましょうか。」 その言葉を黙って聞いている孔明。これまでは、孔明に話す内容は全て雑談か、ルイズたちの様子ぐらいであった。何度目かの招き で、ようやく信頼できると確信したのだろう。アンリエッタは本音を話し出している。 「私は今、平民を貴族に上げようとすら考えています。それならば一気に悩みが解決いたします。しかし、理由もなく貴族の列に加え ては、メイジたちの反発は必至……。なにか、良い方法はないでしょうか……。」 にっこりと嗤い、孔明は頷いた。 「私のような人間に、そこまで打ち明けていただけるとは、恐悦至極。この孔明でよければ、ぜひお力添えにならせていただきます ぞ。」 優雅に一礼する孔明。 「ですが、まずは貴族に上げるに足る人材を見つけることが先決ではないですかな?すでに、心当たりはあおりかな?」 「……いえ、それは……」 ふむ、と首を斜めにしてアンリエッタをジッと見る孔明。やがて、口を開いて 「よろしい。この孔明、全力を挙げて貴族にするに足る人材を在野から見出してきましょう。その上で、アンリエッタ様自身が、自らの 目で、己が信用できるか否か、お試しくだされ。」 「そうして、いただけますか?」 はい、と答える孔明。 「また、貴族に素直にあげるに足る機会の件もなんとかいたしましょう。」 アンリエッタは、素直に頼もしさを感じていた。やはりウェールズ様がよこしてくださったお方だわ。と感激さえしていた。 簡単に騙されやすい王女様であった。 前へ / トップへ / 次へ
https://w.atwiki.jp/trinity_kristo/pages/517.html
偽福音書の1つで、初期キリスト教の異端であるエビオン派によって用いられた。エピファニオスがエビオン派について、彼らは『マタイによる福音書』を受入れて、これを『へブル人福音書』と呼んだ、と述べているところから、いわゆる『ヘブル人福音書』としばしば同一視されてきたが、現在は異なるとする意見が強い。断片からの推定によれば,その内容は,共観福音書の素材を混合し、伝説的粉飾を加えたもので、ギリシア語で書かれ、エビオン派の根拠地ヨルダン東岸の地方において2世紀に成立したらしい。 内容としては、『マタイによる福音書』を改変したものである。 エビオン派 Ebionites 初期ユダヤ人キリスト教徒の一派。エルサレムの原始キリスト教団が紀元70年のエルサレム滅亡直前にヨルダン川東岸へ脱出し、以後教会史の主流を外れてその地に成立したもの。その呼称はエルサレム原始教団の自己表示〈貧しい者たち〉(《ローマ人への手紙》15:26など)にさかのぼるとされる。イエスの処女降誕を拒否し、正典福音書を改竄するなど独特の教義と祭儀を形成し、やがてシリア、パレスティナのグノーシス主義的洗礼運動の中へ解消していった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1674.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 倒れ伏した少女二人を、見つめるものが二人。 「わが娘がまさか、虚無の担い手とは…」 高貴さを身に纏った紳士が、深い動揺を強い意志で覆い隠して呟く。 倒れ伏したうちの一人、黒髪の少女の手を取り、『固定化』のルーンを唱え、発現する。 「財務監督官殿、これは…」 心配そうな声で話す老齢の剣士に、財務監督官と呼ばれた男は動揺のかけらさえも見せずに説明した。 「『固定化』の応用です。これで全てを…そう、全てをなかった事にできるでしょう」 そう言った彼の視線と、剣士の視線が絡まり合い、無限とも思えるほどの時が流れ… やがて、剣士は黒髪の少女を背負うと、財務監督官の脇を通って、ゆっくりと歩き出した。 「ミセス・エスメラルダ」 その背中に、声がかかる。 「願わくは…願わくは、娘達の『虚無』の力が振るわれることの無い様、願っております」 エスメラルダは歩を止めることなく、確かな声で答えた。 「願わくは、娘達の生涯が平和のうちに過ぎ去るよう…」 大国の財務監督官と、外国の剣士。二人の生涯は二度と交わることなく過ぎ去ることになる。 だが、その娘達は。娘達の生涯は今まさに交錯し、物語の幕を開ける。 それは誰もが知り、誰も信じない。 ハルケギニアの正義、愛、友情…全てを表す、そんな物語。 ゼロのアトリエ 32 ~イーヴァルディの勇者~ 南の森に逃げれば安全だ。タルブの村人誰もがそう考えていたが、その希望は儚くも打ち砕かれた。 略奪に乗り遅れたアルビオン兵が隊伍を組んで、南の森に向かうのを見たものがいたのだ。 村人は一気に恐慌状態となり、なりふりかまわず自分が安全と思う場所、自分だけが見つけていた最後の場所に向かう。 普段人の入らぬ森の中、村人達はたやすく互いを見失い、また、互いの立てる音に対して疑心暗鬼に陥り… 一人、また一人と孤立して、悲鳴だけを残して消息を絶つ。 混乱の中、家族とはぐれてしまったシエスタは、やはり自分が考えていた最後の隠れ場所… 祖母の使った廃屋へと足を向ける。確実に隠れられるという合理性よりも、 何だか安心できるという非合理の方が、今のシエスタには必要だったから。 「ここなら絶対大丈夫…大丈夫だから…」 自らに言い聞かせるようにそう呟いて、廃屋に足を踏み入れたシエスタが見たのは、あまりにも意外な客。 そこにいるはずのない人外の存在が、部屋の片隅に鎮座している。 「よう」 ヴィオラートの背にあるはずのデルフリンガーが、状況と比べるとあまりにも軽すぎる挨拶を発した。 「相棒を『忘れて』いくなんてひどいと思わねえか?」 ちっとも深刻に聞こえない、演技臭い調子でうそぶくデルフリンガーに、 シエスタは思わずいつもの調子で問いかける。 「あ、あの…ここで、何をしてらっしゃるんですか?まさか本当に、忘れられて…」 「あいつはよお、何考えてんだかわかんねえが、俺様を本気で忘れるほど間抜けだとも思えねえ」 「だから、何か意味があるんだろうよ。俺様が今ここにあることによ」 それだけ言うとデルフリンガーにしては珍しく、黙り込んだ。 シエスタはデルフリンガーと話したことで少し冷静になり、デルフリンガーの脇に座り込むと、 自分の果たすべき役割について思いを巡らせた。自分には魔法など使えないし、祖母のような強さもない。 ただ、メイドとして学院にいただけで、できることといえばヴィオラートに教わった錬金術、 それも何時間もかけてようやく魔法のケーキを作り出せるだけ。今ここでシエスタにできることは…多分ない。 大切な家族の命を守ることさえできない、無力な平民。それがシエスタの全てだ。 でも、こんな自分でも、デルフリンガーを確保して略奪から守ることぐらいはできるかもしれない。 ほんの少しの善意から、シエスタは何気なく、本当に何気なくデルフリンガーに手を伸ばし、掴む。 緊張が抜けていなかったのか、弾みで、勢いよくデルフリンガーが抜き放たれた瞬間―― シエスタの左手が輝き、何かが…手の甲を覆っていた何かが吹き飛ぶ。 その下には、虚無のルーンが。虚無の使い魔たる証の、ガンダールヴのルーンが描かれていた。 柄の部分を、おそらくはあんぐりと開けて、デルフリンガーは思わず叫んだ。 「これは…そうか、『固定化』か!それに…もう一つ虚無の…」 デルフリンガーは少し間をおくと、ようやく思い当たってもう一度、叫ぶ。 「『忘却』だな!おでれーた!全部忘れてたってわけだ!」 ようやく本来の『使い手』を見つけたデルフリンガーはおおはしゃぎでシエスタを煽る。 「そうか、あいつはこれを見越してたってわけか!とんだ策士だ!いや、錬金術師か?どっちでもいいけどな! 嬢ちゃん!お前さんには戦う力がある!さあ、俺を使いな!ガンダールヴ!あいつらやっちまおうぜ!」 しかし。しかしシエスタはそれには答えず、デルフリンガーを抱えて、震え始めた。 「嬢ちゃん?」 「私…戦いなんてできません!な、何かの間違いなんです、こんな私が、伝説の使い魔だなんて…」 それだけ言うと、シエスタは廃屋の隅にちぢこまって、あたりの木片や枯れ草で自分を覆い始めた。 「そうか。手前が戦わねえってんなら仕方ねえ、このまま隠れるとするさ。何しろほれ、 いくら伝説って言っても俺様しょせん剣だからな。『使い手』様には逆らえんよな」 二人の会話はそこで途切れ、静まり返った廃屋に、外からの微かな音が容赦なく響き渡る。 幼い子供のかすかな悲鳴。どこかの民家が消失し、崩れ去る音。 アルビオン兵の下卑た歓声と、村人の慟哭。 何かを懇願する泣き声と、それに続く断末魔の叫び――― 「いや…いや…」 シエスタは悲惨な現実から逃げるように頭を振りながら、顔を伏せた。 廃屋の隅に丸まってすすり泣くシエスタに、デルフリンガーは淡々と、穏やかな声で語りかける。 「なあ嬢ちゃん。逃げたって変わんねえのさ。いや、逃げたら最悪の結果が出るのを待つだけになるぜ」 シエスタはゆっくりと顔を上げて、泣きはらした目をデルフリンガーに向けた。 「ぶっちゃけ、あいつらは村の奴らの命なんてどうも思ってねえからな。やべえって言やあ、村人全員だな。 最悪全滅だ。もちろん、嬢ちゃんも含めての話ね、これ」 シエスタの顔が、絶望に覆われて深く沈みこむ。しかし、デルフリンガーは構わずに先を続ける。 「そりゃ恐えよな、命張るんだからよ。できりゃ戦いたくねえってなあそりゃ真理だ」 シエスタは暗い顔をしたまま、しかし、デルフリンガーの話の続きを待って、わずかに顔を上げた。 「俺の昔の相棒だって、そりゃ逃げたこともあったよ。かなわねえ相手に考えもなく突っかかるなんざ、 馬鹿のする事だってさんざん愚痴こぼしてたのは俺自身だよ。逃げるのは、悪いことじゃねえと俺も思うよ」 デルフリンガーはそこで間をおくと、声のトーンを徐々に上げる。 「でもな。馬鹿がいねえと何も始まらんのさ。ただ強え奴が、好き勝手するだけになっちまう」 シエスタの顔が徐々に上を向いて、その瞳に、わずかな光がともりはじめた。 ついに大声になって、デルフリンガーは叫ぶ。 それは彼とその相棒が、場所を変え、時を変え、役者を変え…繰り返し見てきたこと。 長い時を過ごしたデルフリンガーが悟った、彼の真理。 「戦える奴の後ろには、いつだって守りたい奴がいるんだよ!」 「!」 「手前には、守りたい奴はいねえのか!?命賭けても守りてえ、命賭けるに値する、大切な奴は! それとも、命を賭けるに値しねえか?手前の命の方が価値が高いか?手前の育った、村の全てよりよ!!」 その説教が。デルフリンガーの、全てを賭けた説得が、ようやくシエスタの心に変化をもたらした。 シエスタは立ち上がり、自分を覆っていたみじめな木片と枯れ草を振り払うと、凛とした顔で言い放つ。 「…私なら、勝てるんですね?祖母のように戦って、村を救えるんですね?」 「そうだ、戦に勝つのはあの錬金術師がやってくれる。でもな、今この村を守れるのは、手前ぇだけしかいねえ」 シエスタは決意を込めて立ち上がり、窓から漏れる怒号、叫び、悲鳴…全てを跳ね返すような強靭な声で誓う。 「村の全て…それで私は命を賭けます、賭けられます!」 シエスタは廃屋に駆け込んだ時とは様変わりした足取りで扉の前に立つと、デルフリンガーを一閃し、 閉じられた扉を切り放った。外に出て、素早く辺りを見回す。 一、二、三…ちらりと確認しただけで、森の中に十を超えるアルビオン兵が見える。 シエスタは怯え、思わず震えを抑えきれなくなるが…村の人の、家族の、そして…祖母の笑顔を想い、 その震えを無理矢理に押さえ込むと、動揺を隠した声でデルフリンガーに尋ねた。 「デルフリンガーさん。信じて…いいんですね?」 「おう、俺にまかせときな。何しろほれ、俺様伝説だしな。最初はほれ…あいつらなんてどうでえ?」 その先には、『戦利品』片手に談笑しているアルビオン兵三人が見える。 「三人…いえ、その、最初はもっとその…お手軽なところから行ったほうがいいんじゃないかと…」 伝説といえど、さすがに三人のメイジを相手にするのはきついんじゃなかろうか? シエスタの不安を、デルフリンガーは軽く笑い飛ばすと、自信を持って予言した。 「でえーじょうぶだって。何、お前さんなら一瞬でカタぁつけられるぜ?ほれ、あるだろ? ガキの頃憧れてたあの技やらその技やらなんかよ?」 「…使えるんですか?」 憧れて見ていただけなのに、この剣は、シエスタにもその技が使えると言ってのけたのだ。 「え?ああ、そうだぜ、どんな技でも、俺様が使えるように補助してやるぜ?」 実は、デルフリンガーは適当に、シエスタに自信を付けさせようとほらを吹いただけなのだが… その嘘が、シエスタに絶対的な自信を与えた。あの技が…自分に使えるなら。 祖母の技が使えるのなら、兵士の十や二十はものの数ではない。 「…おい、嬢ちゃん?」 シエスタの異変に気付いたデルフリンガーは、思わずそう問うたが… その時既に、シエスタはデルフリンガーを上段に構え、人間を超越した迅さで駆け出していた。 アルビオン兵三人は、そんなシエスタを見ても真剣に反応せず、ただの村娘と侮り、 適当に魔法を詠唱して黙らせようとした。 しかし。その魔法は全てシエスタの構えた剣に打ち消される。 そこまで来て彼らは初めて不可解な顔を浮かべ、次いで真剣さを取り戻して距離をとろうと試みたが… 全ては手遅れだった。 見える。三人をつなぐ線、全てをなぎ倒す多対一の間合い… 「メル…ブリッツ!」 まさに迅雷、そう表現するしかない剣閃が通り抜けた後に。 あわれなアルビオン兵三人が、同時にくず折れる。 太陽は既に傾き始め、森の中は午後の日差しに覆われていた。 その森を見下ろす岩棚に、ただじっと辺りを見やる人影が二つ。 アルビオン軍から隠れながら移動を続け、今ようやくタルブに到着したルイズとヴィオラートがいた。 「ねえ、ヴィオラート。こんな所で何をしようって言うの?」 「まだ…もう少し。ルイズちゃんが全てを決める時が、必ず来るから」 何度も繰り返されたヴィオラートの曖昧な説明にルイズは不承不承頷き、 即席のテーブルに置かれた『始祖のオルゴール』と『カリヨンオルゴル』を撫で回す。 その二人はただそこで、その時が来るのを待ちつづける。 マチルダ・オブ・サウスゴータが森の中で目にしたものは、 左手を光らせた剣士が、一人、また一人とアルビオン兵を屠る姿だった。 (お友達は、左手にルーンが…) 平民、黒髪、そして左手に描かれたルーン。 こんな偶然があるものか、助けようと思っていた平民の中にティファニアの『お友達』がいて、 その『お友達』が目にも止まらぬ速さでメイジたちを倒し続けて… シエスタの動きを追ったマチルダの視界の隅に、銃を構える兵士の姿が映る。 貴族のプライドを捨ててでもシエスタを仕留めるつもりか。…今さら。 マチルダは反射的に『錬金』を唱え、シエスタを狙う銃を土くれに変成させた。 「ミス…?」 シエスタは訝しげに振り返り、その瞳にかつての知己『ミス・ロングビル』の姿を映す。 フーケ騒動の後、いつのまにか消えていた… 後になって噂を聞いただけのシエスタにはそうとしか感じられなかった『ミス・ロングビル』が、 何故こんな所で錬金を唱えているのだろうか? 「ああもう!もっと派手に登場するつもりが…習慣ってのは怖いもんだね」 マチルダはそれだけ言って、シエスタの死角をカバーするように背を合わせた。 「とりあえず、今は味方だ!いいね!」 「はい!」 たしかに、シエスタも「フーケ」の噂は聞いたが、 シエスタにとって、それはまるで絵空事のような出来事であった。 シエスタが接したのは、『ミス・ロングビル』の姿だけ。「フーケ」を確認した事は、一度もない。 だから、シエスタはフーケに対してのわだかまりを全く持っておらず、 持っていなかったので、あっさりと共闘に同意した。 最強の前衛、ガンダールヴの力を限界以上に引き出したシエスタと、 それを補佐する後衛、まがりなりにもトライアングルのマチルダ・オブ・サウスゴータ。 二人はがっちりと絡み合い、タルブの森を駆ける。 その前には常に敵を捉え、捉えられた敵は数瞬を置かずに倒れ伏し、 シエスタを捉えようとした兵器は一瞬にして土くれへと変わる。 一人を墜とす度にその精度は完成形を超え、やがてそれは事実上の戦線となってアルビオン兵を食い止める。 散り散りになっていた村人たちが、始めは恐る恐る、やがて堂々とシエスタの後に集い出した。 「いいぞ!いいぞ相棒!そう!その調子だ!思い出したぜ!」 村を守りたい。自分の血が沸き立つのを感じる。 「俺の知ってる『ガンダールヴ』もそうやって力を溜めてた!いいか相棒!」 左手の虚無のルーンが、歓喜に打ち震えるように輝きを増した。 「『ガンダールヴ』の強さは心の震えで決まる!怒り!悲しみ!愛!喜び!」 まるで生まれる前から知っていたように、体が動く。 「なんだっていい!とにかく心を震わせな、俺のガンダールヴ!」 習った事のない…受け継がなかったはずの剣技が、シエスタを導き。 「忘れるな!戦うのは俺じゃねえ!俺はただの道具に過ぎねえ!」 封印された、いや、使われなかった血の記憶が解き放たれる。 「戦うのはお前だ!ガンダールヴ!お前の心の震えが、俺を振る!」 森の木々の間を抜けて、空に、巨大なグリフォンが舞い上がった。 ワルドより下賜された…ワルドのグリフォンに乗った兵士が、空からの奇襲を試みたのだ。 だが。この期に及んで彼は、貴族と平民という概念に囚われていたのであろう。 平民は貴族にかなわない…その根拠のない傲慢な判断が致命的ミスとなった。 シエスタを敵と認めていれば、正面から突っ込むという愚策をとることはなかったろうに。 シエスタは横薙ぎに剣を構え、遥か過去の記憶を呼び覚ます。 祖母がシエスタの前で一度だけ見せた必殺剣。いつか使えたらいいと、幼き心に刻み込んだ憧憬。 剣聖グレイデルグが編み出せし究極の剣技、その子孫の血の中に眠る――― 「アイン、ツェル…カンプ!!」 交錯。 そして。 巨大なグリフォンが、轟音と共にシエスタの背後に墜落した。 木々を巻き込み、無謀なる騎乗者と共に迎えたその最後の戦いはあまりにも哀れで、滑稽で、 そして、美しかった。 その光景を目の当たりにした村人たちの間に、ある一つの幻想が浮かぶ。 誰もが知り、そして誰もが信じない。ありえないはずの奇跡。 「……イーヴァルディ……」 誰かが、そう囁いた。 「イーヴァルディの、勇者だ」 そう呟いた。 幻想は燎原の炎となり、それを信じたい者達の間を駆け巡る。 新たなるイーヴァルディの伝説が、生まれようとしていた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/monosepia/pages/4990.html
ちょっと今、調べています。まだまだ拾います。 アルビノ〔言葉で検索〕 / 黒人 / 白人 / 黄色人 / 白子 / 【黒いアテナ】 ● 【嘘だらけのヨーロッパ製世界史:岸田秀著】 ● アルビノ〔Wikipedia〕 動物学においては、メラニンの生合成に係わる遺伝情報の欠損により 先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患、ならびにその症状を伴う個体のことを指す。対義語はメラニズム。 症状のことは先天性白皮症(せんてんせいはくひしょう)・先天性色素欠乏症・白子症などと、個体のことは白化個体・白子(しらこ・しろこ) [1]などとも呼ぶ。またアルビノの個体を生じることを白化(はくか・はっか)とか白化現象という。 また、植物学の分野においては、光合成色素を合成できない突然変異個体のことを指す用語として用いられる[2] 。このような個体は独立栄養が営めないため、種子中の栄養を使い切ってしまった時点で枯死することになる。 ------------------------------ ● ジョニー・ウィンター〔Wikipedia〕 ■ ユダヤの起源と白人のご機嫌 「虚空と君のあいだに(2009.1.11)」より 知ってのとおり、人類の起源はアフリカである。 枕にこぼしたヨダレのように、アフリカの中央部から人類は広がっていったんだ。 この時点で人種というものは存在しないが、勢力図が拡大する上で環境による個性が生まれた。赤道直下で肌色が濃いものや、北上する上で肌色が徐々に薄まったものなどの個性である。 その個性が出てきた中で、「アルビノ種」という変異体が生まれた。 目の色素が残っているので完全なアルビノ種ではないが(白変種、白子)、この個体の多くは、当時のホモサピエンス生息地は紫外線が強い環境下であったため、その動物社会という組織の中で、迫害を受けた。 つまり、これが差別の始まりである。 差別を受けた個体は、共同体を作るようになり、その中で種の固定化が行われた。愛玩動物や熱帯魚、農作物などで現在も行われることと同じことが人間で行われたわけである。数代も掛け合わせて種を固定化するという作業ですね。 差別が、そうなる特殊な環境下を作り上げたわけだ。 これが、白人の誕生であり、ここで初めて「人種」という区分けが生まれた。 反論として遺伝的に白人種が生まれたとは考えられるか?それも違う。 白人種と黒人種のハーフである次期大統領を見ればわかるとおり、白人形質は圧倒的な劣勢遺伝である。 そもそもコーカソイド=白人人種郡の起源はモンゴルやキルギスが発祥の地とされている。日本人などのモンゴロイドとルーツは同じことになるが、こんな状況で優性遺伝でもない白人種が確立されたとされる説が主流となってい(※ ママ 「し」の誤記?)まっているわけである。 イヌイットなどでもわかるとおり、寒い地方へ行ったから肌色素が薄くなったわけではない。 ■ グレートジャーニーとアルビノとの関係について教えて下さい。 「人力検索はてな(2004.12.5)」より / 魚拓 【回答】より ヨーロッパ民族というのは白人種であるが、白人種というのは人類最初の被差別民族だったというのが私の考えである(高野信夫著「黒人→白人→黄色人」がその基礎になっている)。 ☆ 古代アフリカ・エジプト史への疑惑〔Web無料公開〕 近代ヨーロッパ系学者による“古代史偽造”に真向から挑戦! -------------------- どちらかというと、「アルビノが忌み嫌われ…」云々というおとぎ話をどこで仕入れられたのかに興味がありますが、「白いから追い払われた」のではなく(それではそもそも日差しの強い赤道近くで生き延びるコト自体ができません)、生存域を拡大した結果北方にたどり着いた人々が、紫外線の少ない北方に適応するためにより退色の薄いものを選択した結果、白人種になった、と考えるのが妥当です。 (※ 生き延びることは出来ない、と言っているが、現在もアフリカで生まれ生活しているアルビノに関してはどう考えるのだろうか、成人している人々も大勢いるようだが・・・) -------------------- 最近では一元的発祥説が有力になっています。更に遺伝学の方面からも一元的発祥説を補強する研究も盛んです。B型肝炎ウィルスの起源からみた人類移動の歴史のような研究も進められ、非常に興味深い展開を示しています。 しかし、このような人類の発祥・起源説の展開と人種の優秀性とか、アルビノとかを結びつけて考えるのは、全く根拠のない虚妄説としか云えません。 そもそも後者のような観念が生まれたのは、たかだか千年、最長見積もっても二千年と遡ることはありません。 対して人類の発祥は600万年レベルの進化の歴史です。 両者を同一レベルで結びつけて考えること自体、虚妄といえないでしょうか。 後者のような観念が生まれたのは・・・以降が理解できません。アルビノという観念が生まれたのは・・・、という事でしょうか?観念が生まれたのがいつか、という事ではなく事実だけに興味があるのですが・・・。 -------------------- とりあえず、「白人」と「アルビノ」は全然違うものだ、ということをまず認識されると良いかと思います。 白人とアルビノが全然違うとなぜ言えるのか、を教えて下さい。素朴な疑問として程度の違いはあれアルビノと白人が同じような身体的特性を持っているのではないか?と思えます。つまり突然変異的(アルビノ的)に生まれた白人種が追放され、環境に適応していくうちに逞しくなったのでは、と考えたのです。別に科学的根拠や思想背景がある訳ではないので間違っているなら間違っているで明確な否定が欲しいだけです。 ■ 「黒人」のアルビノが「白人」になった・1――「白子混血説」(前半) / 後半 「アルビノについてのマニアックな知識をひけらかすブログ(2011.9.18)」より ■ 「退化」か「進化」か 「アルビノについてのマニアックな知識をひけらかすブログ(2011.9.19)」より おそらく高野はビュフォンの「退化の理論」を知らなかっただろうと僕が考えた理由は、皮膚の色の変化を「進化」と表現するか「退化」と表現するかの違いです。ビュフォンは、白い肌の人たちから始まった人類が気候に応じて白→黄色→黒と変化していったプロセスを「退化」ととらえています⇒。このプロセス自体は「白人起源論」と矛盾しないというか、「退化」ととらえておけば「白人」たちにとっても別に都合悪くありません。この「退化の理論」は、五大人種を提唱したことで有名な形質人類学の創始者・ブールメンバッハには影響を与えた模様ですが(ポリアコフ 1985 230)、ラマルクやダーウィンがどうだったかは僕は知りません。 ただ、高野がもし「退化の理論」のことを知っていたとすれば、「環境への『適応』を『退化』ととらえて、自分たちに都合のよい恣意的な解釈をする白人学者」とか言ってそうな気がするので、やっぱり知らなかったんじゃないかなぁと思います。 ● 高野信夫, 1977,『黒人→白人→黄色人――人種の起源』三一書房 ■ 黒人の夫婦に白人のように真っ白な赤ちゃんが生まれる! 専門家「極めて異例だ」 「ロケットニュース(2010.7.21)」より ■ 黒人の両親から生まれてきた白人にしか見えない兄弟 「ぱるぷんてにゅーす(2009.9.4)」より ■ 白人と黒人の両親から、肌の色が違う双子の男の子が生まれる 「らばQ(2008.7.20)」より ■ 成長するにつれて少女の肌が褐色から白へ変わり、17歳で白人への変身を完了(画像あり) 「なんでも評点(2009.8.11)」より ■ 両親は白人なのに肌の色は黒!過酷な運命をたどった女性の実話を映画化! 「シネマトゥデイ(2009.11.11)」より ▲ 【映画】白人の両親の間に生まれながら肌の色は黒!過酷な運命をたどった女性の実話を映画化! 「2ch 芸スポ速報+ ダイジェスト(2009.11.25)」より ■ 東アフリカに広がる「アルビノ狩り」の恐怖 「ニューズウィーク日本版(2010.11.11)」より ▲ アフリカに広がる「アルビノ(人間)狩り」…アルビノの人肉が高値で取引 「痛い2ちゃんねるニュース(2010.11.11)」より ☆ 人間のアルビノ(先天性白皮症)は色素が薄い白人とは全く関係ありませんか? 「Yahoo!知恵袋(2012.4.7)」より 【回答】 la_rendicion_de_bredaさん 関係ありません。アルビノは現に黒人にも黄色人種にも多くいます。 目立つというのもありますが、未だに「アルビノの人の臓器を食べる不老になる」など迷信が残り、人身売買で高く売れるため被害者が絶え間せん。 白人で色素がとても薄い方はアルビノではなく(染色体異常)、「亜メラニン」というのが多く身体に存在するからです。人にはメラニンと亜メラニン二つのメラニンがあります。 ■ 白人はこうして生まれた? 「ITスペシャリストが語る芸術(2007.3.1)」より 白子は2~3万人に1人しか発生しないので、とてもではないが集団を形成することはない。ただ、上にあげた本では、なぜか白子が大量発生したとある。もう古い本なので見てはいないが、そのようなことは起こるとは考えにくいし、証拠もないと思う。 また、白子は色素がないので紫外線の影響を強く受け、最初に人類が住んでいたアフリカでの生存は難しい。また、白子は視覚障害を持つ場合がほとんどであり、生存し、さらに子供を作り育てるということが、原始時代に可能であったとは考えにくい。 今では、宇宙人、地底王国、超能力などと共に、トンデモ学説とみなされているかもしれないが、私も仕方がないと思う。 【上記エントリーに対するコメントから】 人類の起源はアフリカ単一起源だと考えます。白人種が初めから存在したような他地域起源説はヨーロッパ製世界史ではないでしょうか。 ■ 白人起源≒単なる寒冷適応?〔 川井孝浩〕 「るいネット」より しかし、アフリカ東部だけがアルビノ比率が異常に高い理由については、何も解っていません。一説には、アフリカにおけるこのようなアルビノ種の人々は差別。迫害を受けた歴史を持ち、隔離された人々がアフリカを出て拡散した人類の系譜であるとの話があります。しかし、アルビノのみの集団が生き残り拡散適応した、というには少し無理があるように想います。 現生人類は多地域進化と同時に幾度もの混血を得て現在に至るので、その意味においても純粋な白人というもの自体が作られた定義に過ぎない事も、付け加えておく必要があるでしょう。 ■ ~肌色による外圧適応~ 「生物史から、自然の摂理を読み解く(2010.12.9)」より / 魚拓 同緯度にも関わらず、肌の色が違う民族がいる。ということに対して、水蒸気説が考えられます。 上記の追求で肌の色はUV-Bに大きく影響を受けることがわかっています。 UV-Bは短波でオゾン層だけでなく雲や霧等の水蒸気にも反射し拡散します。 そこで、やはり肌色の地域差というのは、気候=地形的特徴に関係があると考えています。 -------------------- ■ 白人起源は、迫害の歴史が始まり? 「るいネット」より -------------------- ■ ユーラシア東部では、高緯度でも皮膚が白くならないのはなぜ? 「るいネット」より ドイツと同じ緯度というと、モンゴル高原からバイカル湖周辺に当たる。 モンゴル高原は草原であるから、降水量は少なく、湿度は低い。ということは、水蒸気に吸収されず、高緯度でもそれなりに日射は強いということになる。モンゴル人は(乾燥地帯なので)あまりお風呂に入らないので、赤っぽい皮膚をしているのかと思っていたが、日射が強いからか。 ▼ ☆ 嘘だらけのヨーロッパ製世界史 [単行本] 「Amazon.com」より カスタマーレビューより 岸田秀の歴史観を一言でいえば「目には目を」です。彼は同じ方法論で日本と中国、韓国の現状についても分析しています。何と中国と北朝鮮はかつての大日本帝国が“目指した”白人勢力からのアジア開放を受け継いでおり、本質的には同じだというのです。さすがにこれには抵抗を感じます。 勿論岸田秀の主張にも一理あることは認めざるを得ませんし、何を指摘しても「無意識ではそうなのだ」と言われるような気がします。しかし、日本がアジア開放を言い出したのは戦争が始まってからであって、当時の日本人も最初からそれを目標にしていたわけではありません。アジア開放はそれを正当化するための後付の理屈の筈です。 岸田秀は経済や思想だけでは歴史は語れないと言っています。もっともです。歴史は縄のように様々な事情が絡み合っているものだと想います。しかし、私には岸田秀は唯幻論だけで歴史を語ろうとしているように思えるのです。 By 鞘町流市 ■ ■[書評][お勉強]岸田秀『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』:あきれた。こんなトンデモ妄想垂れ流し読んで目が穢れたぜ 「山形浩生 の 経済のトリセツ(2011.12.25)」より 準トンデモ本黒いアテナをネタに、岸田がどうしようもない歴史妄想を垂れ流すだけの、ホンッと情けない本。なんでも、アフリカではみんな黒人だったんだけど、その中に白人が生まれたので差別されちゃって、それでその人たちはアフリカを逃げてヨーロッパにでかけたんだって。だからいまの白人はその時のうらみで、仕返しに黒人差別するんだってさ。 あほくさ。 ----------------------------------- ■ [書評]嘘だらけのヨーロッパ製世界史(岸田秀) 「極東ブログ(2007.5.23)」より 別の言い方をすると、各論点のサマリーとコメントに留めておけばいいのに、彼にとっては関心や関係性があるのだろうが、普通の知識人には関係のない話が諸処にぐちゃぐちゃと脈絡なく書き込まれてこれが辟易とするにはする。特に、黒人の一部がアルビノ(白子)となって白人が発生した説については、事実上本書と関係ないので、そのあたりは笑ってスルーして読むといいだろう。 とはいえ、岸田の思い入れの側からこの本を読むと、特に、近代日本史の関連で読むと、実に奇妙な味わいのある本ではある。率直にいうと、ある種の狂気のようなどろっとした迫力があってかなり気持ち悪い。ただ、この部分に本書の真価があるという評価もあってもいいのかもしれない。私は率直に言うと、その部分については触れたくない。それとかなり率直に言うと、本書は高校生とかあるいは現代では大学生か、そのレベルのお子様に読ませるにはかなり危険な本だと思う。岸田はある経緯を経てああいう知的怪物になったのだが、その怪物性だけを若い知性に移植しがちな強さが本書にはある。 ----------------------------------- ■ 世界は『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』でできている。アメリカは罪悪感を正当化するため、他の国におせっかいをし続けなくてはいられない 「株式日記と経済展望(2007.9.26)」より (※ ページ別立て) 誤った歴史観なら誤ったものとして残せばいいと思うのですが、誤っていないからマッカーサーは本を回収して燃やしたのだ。しかしこのような事は文明国が行うべき事ではなく、アメリカでは進化論すら否定するキリスト教原理主義の国なのだ。だからこそ安倍総理の「戦後レジームの脱却」ということは歴史を書き換えであるとアメリカは警戒したのだ。 ヨーロッパ人やアメリカ人が、このようにアジア・アフリカで傍若無人な振る舞いを続けてきたのは、古代においては白人は被差別民族であり奴隷として使われた怨念があるからだと「黒いアテナ」では言う。スペインやポルトガルの船はイスラムやアフリカの船を見かけるや襲いかかり、アフリカやアジアの王国を次々と滅ぼしていった。なぜ白人国家がこのように凶暴なのかは遠い過去の怨念があったからだろう。 .
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8164.html
前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い 「どうぞ」 「ありがとうございます」 ややあってトリステインの未来予想図(妄想)から帰還した二人はエリスから水を手渡され、同時に息をついた。 何故か満足そうな二人の一方で、柊はどこか疲れたように腕を組んで口を開く。 「……で、結局俺達に頼みたいことってなんなんだ」 「あぁ、はい。……どこまで話しましたっけ」 「同盟のために姫さんがゲルマニアに嫁ぐってとこ!」 苛立たしげに柊がそう言うとアンリエッタは思い出したかのように手を叩いた。 もはや王女に対する敬意も何もあったものではないがアンリエッタは気にした風もない。 「そう、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶのです。ですがそれは当然レコン・キスタにとっては好ましからざる事態……それゆえ同盟を妨げる材料を血眼になって探しているのです」 「……つまり、姫さんはその材料ってのに心当たりがあって、それをどうにかして欲しいって事だな?」 この話の流れで秘密裏に頼みたい事がある、となればこれくらいは大体予想の範疇ではある。 心なし低い声で柊が呟くと、アンリエッタははっとして彼を見やった後、気まずそうに顔を俯けた。 「そうなのですか、姫様?」 「……はい。以前わたくしがしたためた一通の手紙……それを確保して欲しいのです」 「手紙? どんな?」 「それは言えません。ですがもしそれが明るみに出れば、ゲルマニアはわたくしを許さず、同盟は破棄されるでしょう」 「そのようなものが……」 ルイズは戦慄と共に呟いた。 話が深刻なものになって流石にエリスもやや緊張した面持ちでアンリエッタを見つめている。 それは柊もまた同様で、思案顔で顎に手を添えながら尋ねる。 「それで、その手紙ってのは何処にあるんだ?」 手元にあるならさっさと処分してしまえばいいだけの話なのだから、その手紙は取り戻すことのできない場所にあるのだろう。 問題はそれが何処にあるのか、だ。 「手紙はアルビオンにあります。今もレコン・キスタと闘っているアルビオン王家の皇太子……ウェールズ様がお持ちになっているでしょう」 「プリンス・オブ・ウェールズ……あの凛々しき王子様が」 「もはや王家……王党派の敗北は決定的とも言われています。そうなればあの方もいずれ囚われ手紙が明るみに出て……きっとゲルマニアの皇帝は『このビッチ!!』と怒り狂い同盟を破棄するでしょう!!」 「一国の姫さんがビッチとか言うなよっ!?」 とりあえず突っ込んでおいてから柊は深く息を吐く。 まあ既にレコン・キスタとやらの手中にあってそれを奪還して来い、などという事態にはならなかっただけマシというものだろう。 だがいずれにしろ戦争中の国――それも災禍の中心に赴くという点ではあまり変わりはない。 それに気付いているのかいないのか、ルイズはアンリエッタの前に進み出て恭しく跪いて見せた。 「委細は承りました。この件、土くれのフーケを捕らえたわたくしめにお任せ下さいますよう」 「ああ、ルイズ……本当にいいの? かの国は今や戦いの荒れ狂う混沌の地、しかも事が知れればレコン・キスタの者共が妨害に現れるでしょう。死地に赴くも同然なのですよ?」 「何をおっしゃいます! この身に流れるヴァリエールの血は祖国トリステインに捧げしもの、姫様に永遠の忠誠を誓っております! 未だにわたくしなどをおともだちと言ってくださる姫様のためならば、地獄の釜の中であろうと竜のアギトの中であろうと喜んで参りましょう!!」 「ああ、忠誠……これがまことの忠誠なのですね! この天上にも昇る思いの丈を感動と呼ばず何と呼びましょう! わたくし、あなたの友情と忠誠を一生忘れません、ルイズ・フランソワーズ!」 大仰な身振り手振りで二人はまくしあい手に手を取り合って語り合う。 本人達はいたって大真面目なのだろうが、外から見ているエリスと柊からすればまるでどこぞの演劇でも見ているような気分だった。 「す、すごいですね……」 呆れるを通り越してもはや感嘆の域に達してエリスがぽつりと呟くと、柊は頭が痛そうに眉を潜めてこめかみを指でかく。 「そーだな……けど」 面倒臭そうに大きく息を吐いて、柊は最高潮の二人に向かって声をかけた。 「盛り上がってるところ悪いんだけど、ちょっといいか?」 「……何よ。まさか怖いからアルビオンに行きたくないなんて言い出すんじゃないでしょうね」 「いや。話も聞いちまったし、頼まれたんだから行くのは行くよ。けどな、」 アンリエッタの手をしっかと握ったまま睨みつけてくるルイズに柊は再び溜息をつくと、静かに切り出した。 「なんでお前も行くことになってんだ?」 「……?」 ルイズとアンリエッタの動きがぴたりと止まった。 二人は同じような表情――言われた台詞の意味が理解できないといった感じでしばし柊を見つめる。 ルイズが不思議そうに首を捻ると、柊は改めて言った。 「いや、だから。お前はアルビオンに連れて行かねえって言ってんだよ」 「………………なっ」 まるで火山の噴火の兆候を思わせるような、そんな30秒ほどの間をおいてルイズは轟くような怒声を上げた。 「なによそれえぇっ!?」 こうなるのは予想できていたし準備の時間もちゃんとあったので柊は耳を塞いでそれをやり過ごすと、腕を組んで言い聞かせるようにルイズに口を開く。 「お前が頼まれたのは俺を貸すことで、アルビオンに行くってのは俺が受ける依頼だろ。そうだよな、姫さん?」 「あ、はあ、それは……そうですが」 柊が眼を向けるとぽかんとしたまま固まっていたアンリエッタが問われるままに頷いた。 しかし勿論ルイズがそれで引き下がる訳がない。 「あんたはただのゲボクでしょ! これは小間使いじゃなくて王女殿下からの密命なの! ゲボク一人に任せられる訳がないじゃない!」 「その王女殿下が俺を指名してきたんだろうが……。大体な、アルビオンは今内戦中なんだぞ? タルブ村の時とは訳が違うんだ」 「危険だって言うんでしょ、そんなこと百も承知よ!」 「……承知なら言わせてもらうけどな。俺は侵――魔物とか相手の修羅場ならうんざりするほどくぐってきたが、人間同士の戦いに参加したことはそんなにねえ。 無責任に守ってやるっていえるほど自信過剰じゃねえぞ」 「――ふっ」 憤るルイズに対して憮然として柊が言うと、何故か脇で聞いていたエリスが小さく噴き出した。 「な、なんだ? どうした、エリス?」 「い、いえ。なんでもありません。ごめんなさい」 不思議そうに見やる柊に、笑みを必死に押し殺しながらエリスが頭を下げた。 彼はおそらく本気でそう言っているのだろうが、柊が実際に“そういった状況”になった時には躊躇なくそれを実行してしまう人間だという事をエリスは身をもって知っているのだ。 柊はそんな彼女を怪訝そうに見つめた後、気を取り直すようにルイズに向き直る。 「……と、とにかく。最低限自分の身も守れない奴を連れて行くわけにはいかねえってことだよ」 「な、何よ。わたしが足手まといだとでも言うつもり……!?」 「端的に言うとその通り」 「!!」 反応に詰まることでも期待していたのだろうか、しかし即座に断言されてルイズは絶句して固まってしまった。 しかし柊としては特に理由もなく彼女を連れて行く道理などまったくない。 ウィザードとして任務に赴く際には依頼主であるアンゼロットが戦力の調整などをやってくれるのだが、自分でやれと言うのならばこれくらいはやれるのである。 「そんな訳だから、エリスもここで留守番な」 「はい、わかりました。気をつけて下さいね」 固まってしまったルイズを置いて柊がエリスに顔を向けて言うと、彼女の方はすんなりとすんなりと頷いた。 エリスは一時期ウィザードとして柊達と共に戦いを潜り抜けた経験があるし、自分の力量を――ウィザードでなくなった事もちゃんわきまえていた。 なのでこの状況で特に口を挟むことなど何もない。 ……が、やはりもう一人の彼女はそうも行かないようだった。 「あ、あんたみたいな平民が一人で行ってどうしようっていうのよ! そりゃ王党派の所まで辿り着くことはできるかもしれないけど、そこで門前払いされるのがオチじゃない!」 薄桃の髪を振り乱して詰め寄るルイズに、柊は僅かに眉を寄せて息を吐いた。 別の方向からアプローチをしたようだが、そう来るのなら柊としてもやり方はある。 彼は口を挟むことができず心配そうにやり取りを見守っているアンリエッタに振り返った。 「信用されりゃいいんだろ? 姫さん、そのウィールズ王子宛に手紙だか親書だかを書いてくれるか?」 「え、あ、はい」 彼女は慌てたように周囲を見回すとルイズの机に向かい、そこでさらさらと所をしたため始める。 それをいらいらとした表情で見つめながら、ルイズは柊に視線を移した。 「し、親書があるってだけじゃ身の証にはならないわよ。ちゃんとしかるべき人間が赴いて――」 「――って事なんで姫さん。何か身の証になるようなもの、ねえか?」 「えっ、はっ、はいっ」 状況に押されてアンリエッタは年相応の少女のように慌てふためき、ペンを止めると探るように身体のあちこちに手を当てた。 そして思いついたように顔を上げると、右手に嵌めていた指輪を抜き取り柊に歩み寄った。 「母より頂いた王家の秘宝たる『水のルビー』です。 これを同じくアルビオン王家に伝わる『風のルビー』に近づければ虹の架け橋が浮かび上がる……何よりの身の証となりましょう」 手渡されたルビーを確認して小さく頷き柊はルイズを見やる。 「これで文句ねえだろ……って、ルイズ?」 と、何故かルイズは今までの剣幕がなかったように黙り込んでいた。 訝しげに首を捻る柊を気にも留めず、彼女は柊の手元にある水のルビーを食い入るように見つめている。 「ルイズ? どうしたのですか?」 「ルイズさん?」 少女二人の声もルイズの耳には届かない。 今の彼女の頭の中に浮かんでいるのは、先だってのフール=ムールの言葉だ。 始祖のルビーを手に始祖の秘宝と接触する事が正規の虚無覚醒の手順、と。 巡り会わせがよければ始祖の遺産に辿り着くこともあるだろう、とも。 ならばこれがその“巡りあわせ”というものではないのだろうか。 「……いやよ。わたしもアルビオンに行く! 絶対行くんだからー!!」 「お前なあ……っ」 まるで癇癪を起こしたように叫んだルイズに流石にいらついてきて柊は唸った。 何しろルイズがフール=ムールから得た情報は彼女自身半信半疑であったため柊やエリスには話していないので、彼らから見れば完全に駄々をこねているようにしか見えないのだ。 彼女を諌めようとして柊が口を開き――かけた時。 それを遮るように部屋の扉が勢い良く開け放たれた。 「話は全て聞かせてもらったわっ!!」 バーンと威勢よく開いた扉と部屋に響き渡る声。 燃えるような紅髪の少女――と、その彼女に続いて従者のように姿を現した青髪の少女の闖入に四人は完全に固まってしまった。 「つぇ、ツェルプストー……?」 「と、タバサ……?」 呆然と掠れた声を漏らしたルイズと柊。 凝固した場の空気と各々の表情を眺めやってキュルケは満足そうに笑みを浮かべると、つかつかとアンリエッタに歩み寄って恭しく膝を折った。 「恐れながら姫殿下、我が寮の壁は王宮のそれほど厚くはございませぬ。魔法を使わずとも聞き耳を立てる不埒者もおりますゆえ、お気をつけになられたほうがよろしいかと」 「…………」 恭しく告げられた諫言にアンリエッタは眼を数度瞬かせた後、ふっとその場に倒れ伏した。 どさりとアンリエッタの体がベッドに倒れこんだ音で部屋の中に時間が流れ始め、ルイズは烈火のような表情でキュルケに詰め寄った。 「ふ、ふふ不埒者のあんたがどの面下げて言ってるのよおぉぉっ!!!」 しかし当のキュルケは一向に悪びれた様子はなく、むしろ不服だといわんばかりに息を吐いた。 「失礼ね、あたしはちゃんと放言して良いことと胸に秘すべき事の区別はわきまえてるわ。むしろ感謝されてもいいぐらいよ。“あんな不埒者”に聞かれたらどうなったことか」 言いながらキュルケは顎で部屋の入り口のほうを示した。 ルイズは怒りを露にしながらも、そして柊とエリスもそちらを見やる。 その先にいたタバサが言葉もなく脇に動くと、その向こう――部屋の外の廊下。 ……いい感じに丸焦げになったギーシュがぶっ倒れていた。 「ギーシュ……」 返事がない。流石に生きてはいるようだが。 無残な彼の遺体をよそに、キュルケは得意げになって鼻を鳴らしてルイズをねめつけた。 「それにあれだけおともだちだの何だの騒いでおいて誰にもばれないだなんて本気で考えていたの? それとも考えてすらなかったの?」 「くっ……!?」 反論することができずにルイズは唇をぎゅっと噛み締めた。 はっきり言ってキュルケ達の行為は出歯亀以外の何者でもないのだが、結果的には彼女達以外の誰にも漏れないように人払いをしてくれていたことになっていたという訳だ。 黙り込んでしまったルイズを見てキュルケはふふんと勝ち誇ったように笑みを浮かべた後、改めて場の三人(アンリエッタは気を失っている)を見やってから自慢の紅髪を掻き揚げた。 「まあとにかく。そんな訳で話は全て聞かせてもらったわ」 「……ゲルマニア貴族のところも?」 「……ノーコメントにさせて頂きます」 柊がおずおずと尋ねると、キュルケは珍しく穏便に――聞かれた瞬間こめかみに青筋が立ち拳を握り締めたが、それでも穏便に話を流した。 いかな慇懃無礼の彼女とて、気を失ってはいるものの仮にもトリステイン国の王女であるアンリエッタに対して暴言を吐くことはできなかったのだろう。 キュルケは平静を取り戻すよう努めて大きく深呼吸した後、改めて口を開いた。 「お偉方の決定だからその是非はおいておくとして、ゲルマニアとの同盟というならあたしにとっても無関係の話ではないわ」 貴女だってそうでしょう? とキュルケはタバサに声を投げかけた。 当のタバサは眠いのだろうか半分眼を閉じふらふらと頭を揺らしていて聞こえているかどうかすら定かではない。 怪訝そうに声を上げたのはルイズだった。 「何? この子、ゲルマニアの人間だったの?」 話の腰を折られて、そして更にゲルマニアの人間かもしれないという事でルイズの声音には明らかに不機嫌の色が浮かんでいる。 しかしタバサは黙して語らず、キュルケは溜息をついて肩をすくめた。 「実はあたしも知らないのよ。トリステインのどこだかの貴族だと思ってるんだけど……ルイズ、あなたも知らないの?」 「知らないわよ。あんた、家名は?」 「……」 ますます怪訝な表情になってルイズはタバサを覗き込む。 視線を真正面から受けてタバサはようやく船をこぐのをやめたが、ルイズの質問自体はこれまで通りに黙殺――いや、一度だけルイズから眼を外してアンリエッタを見やった。 タバサにとってアンリエッタが気を失っていたのは幸運だったかもしれない。 もっとも、『彼女』がアンリエッタに逢ったのは一度だけであり、しかもそれは十年近く前の話だ。 その時は“顔見せ”程度のもので会話らしい会話もなかったし、何より今の『タバサ』からは当時の『彼女』の印象や面影を見出すことはできないだろうが。 「まあいいわ。それより話を元に戻しましょう」 タバサの微妙な空気の変化を読んでくれたのか、あるいはさほど興味がないことだったのか。 キュルケは軽く手を叩いてから場にいる全員に顔を巡らせ、最後に柊に向かい合ってからにっこりと笑みを浮かべて口を開く。 「ダーリン、貴方アルビオンに一人で行くつもりなのよね?」 「なんだよそのダーリンってのはよ……」 「わたしも行くって行ってるでしょう!?」 嘆息交じりに言いながらも柊は首肯し、そしてルイズが肩を怒らせてから口を挟む。 しかしキュルケはルイズの怒号を委細気にせずに柊に向かって指を差し、軽く振って見せた。 「ダーリンなら力量は十分でしょうけど、王党派の拠点に行くまでの道程はどうするつもりなのかしら? こっちに来たばっかりでアルビオンどころかトリステインですら詳しくないでしょう?」 「……う」 それを言われると流石に柊は口ごもらざるを得ない。 ハルケギニアに着てから約一月程度しか経っておらず、しかもこの魔法学院からさほど離れたこともないのでキュルケの言う通り土地勘などないも同然だった。 手当たり次第という手もあながち不可能ではないが、やはりある程度の前知識があるに越したことはない。 するとルイズが嬉々として声を上げた。 「そ、そうよ。一刻を争う任務なのに迷子になったらどうするつもり? わたしなら一度アルビオンに行ったことあるから土地勘もあるわ。だから――むぎゅ」 勢い込んだルイズの頭を押さえつけてキュルケが詰め寄った。 「そこであたし達の出番って訳よ。アルビオンには何度か行ったことあるからそれなりに土地勘もあるわ。それに何より……」 言いながらキュルケはどこか蛇を髣髴とさせる、にやりとした笑みをルイズに向けた。 「ゼロのルイズと違ってあたしとタバサはれっきとしたトライアングル。自分の身は自分で守れるだけでなく、ダーリンの手助けもきっとできますわ。中々お買い得な取引だと思わない?」 「ツェルプストー、あんた……っ」 ルイズは屈辱に顔を引きつらせ、頭を押さえつけているキュルケの手を払って睨みつけた。 しかし当のキュルケは余裕綽々で敵意の視線を受け流して払われた手をひらひらと振っている。 その態度がどうしても気に食わないが、ルイズはそれ以上に気に食わない事が一つあった。 それは、キュルケの提言を聞いた柊が特に難癖(ルイズにとっては)をつけて断る訳ではなくそれを思案している事だった。 理屈ではちゃんと理解していた。 今のアルビオンが危険な場所であることも、そこへ向かうこの任務が危険なことも。 魔法を使えない自分よりも魔法を使えるキュルケ達の方が戦力になることも、ちゃんと理解はしている。 だが理屈でそう理解してはいても、感情がどうしても納得してくれなかった。 柊が自分よりもキュルケ達を選ぼうとしている。 それが間接的に自分がゼロで役立たずだと言われているようで、裏切られたような気がしたのだ。 そして――それは“気がした”ではすまされなかった。 「……本当にいいのか?」 柊がキュルケに向かって言ったその一言で、ルイズは完全に言葉を失い肩から力が抜けてしまった。 そんな彼女の様子などお構いなしにキュルケは喜色を称えて柊に歩み寄り強引に手を取る。 「ええ、勿論よ! ダーリンの助けになるなら地獄の釜の中だろうと竜のアギトの中だろうとお供いたしますわ!」 「だからダーリンってのは……まあいいや。ただ、一つだけな」 「うん、なぁに? もしかしてタバサも一緒じゃなくて二人だけで行きたいの? ダーリンがそうしたいならあたしとしては心苦しいけどタバサには残ってもらうわ?」 「いや、そうじゃなくて……ある意味そうなんだけど」 どんどんと詰め寄ってくるキュルケに柊はやや身体を仰け反らせながら、言った。 「連れてくのはタバサだけでいい」 間。 「なンでタバサだけなのよぉォォォーーっ!?」 まるで寮全体を震わせるようなキュルケの叫び声が響き渡った。 直近でそれを受けた柊は顔を顰めながらも、彼女に向かって言う。 「いや、トライアングルっつってもピンキリだろうし、お前が実際どれほどのモンかわからねえし……」 しかもデルフリンガーに『火遊びの達人』とまで言われてしまっては戦中の国――実戦の場所には連れて行きかねる。 その点で言えばタバサはギーシュと初めての決闘をした際に少しだけ力量を垣間見ていた。 魔法に関してはそこまで深くはわからなかったが、少なくとも身のこなしだけは相当なものだ。 更に言うならタバサだけを――というより、『一人だけ』を選んだのにはもう一つ理由があるのだが、そこまでは彼女には言えなかった。 「どれほどですって!? だったらギーシュを見なさいよギーシュを!!」 そんな柊の事情を知る由もないキュルケは怒りも露に廊下にぶっ倒れているギーシュを指差した。 「あんな風に生かさず殺さずミディアムレアに仕上げるのは並大抵の技量じゃできないのよ!!」 「……そうなのか?」 「そうなのよ!!」 「でもギーシュだしなあ」 「あんただってこないだ負けたじゃない!!」 「う、うるせえな!?」 キュルケの怒りは収まるところを知らず、だんだんと床を踏み鳴らしながら苛立たしげに紅髪をかいてから次いでタバサを指差す。 「だ、大体ねえ! タバサは元々乗り気じゃないの! 今日のだってあたしが無理矢理連れてきただけなんだから! そのあたしが行かないのにこの子だけが行く訳がないでしょう!?」 聞いている分には酷いいいようではあるが、タバサは一向に気にしている風はない。 しかし話題が出てきて自然と注目がタバサに集まると、彼女は少しの沈黙のあと、ぼそりと呟いた。 「……行く」 「タバサ!?」 出てきた肯定的な発言にキュルケは勿論のこと、この場にいる他の全員――提案した柊自身も含めて――が少なからずの驚きを浮かべた。 しかしタバサは一切表情を変える事なく、僅かに眼を細めて柊を見据えて更に言葉を続けた。 「その代わり、教えて欲しいことがある」 「……」 その表情と目つきで柊はそれが何なのかを理解した。 彼女とのほぼ唯一の接点であったあの日に聞かれた事だ。 柊は僅かに首を傾けると、諦めたかのように溜息を吐き出した。 「……わかったよ。けど、前にも言ったとおり知ったからってどうにかなるかはわからねえぞ」 「それで構わない」 「……もうっ、何なのよ一体!」 お互いに頷きあった柊とタバサを見やっていたキュルケが溜まりかねた様に声を上げた。 そして彼女は烈火のように柊を睨みつけると、タバサとの間を遮るように身を乗り出して床を蹴る。 「こんなの納得いかない! タバサが行くんならあたしだって行くわ!」 すると今まで黙り込んでいたルイズが便乗して怒声を張り上げる。 「納得いかないのはこっちの方よ! ツェルプストーもヒイラギも、どいつもこいつもなんでわたしを無視して話を進めてるのよ!! これは姫様がわたしに持ってきた話なの! わたしがいなかったらそもそもこの話自体がなかったんだから!」 言いながらルイズは感情任せにキュルケを突き押した。 ルイズと同じく半分感情的になっている今のキュルケがそれを受け流せるはずもなく、顔を怒りに赤く染めてルイズに掴みかかった。 「戦力外通告されてんだから無視されて当然でしょう、引っ込んでなさいよゼロのルイズ!」 「な、なんですってぇ!?」 そして二人の取っ組み合いが始まった。 お互いの家名やら先祖やらを引き合いに出して口汚く罵りあう二人を眺めやりながら柊は本日何度目かの溜息をつく。 タバサもそれをぼんやりと見ながら小さく息を吐いた。 今まで完全に話しに入っていけなかったエリスは二人の喧嘩を止めることもできずおろおろとするしかない。 どたばたとしたやりとりに流石に眼が覚めたのか、ベッドで気を失っていたアンリエッタが頭に手を当てながらふらふらと起き上がった。 それを見やってから柊は苛立たしげに頭をかきむしり、押し合い圧し合いしている二人を制するように大きく声を上げた。 「ああもう、わかったよ! 連れて行けばいいんだろ!」 その言葉に二人はぴたりと動きを止めて、同時に柊に眼を向けた。 「俺とキュルケとタバサ、そんでルイズも一緒に行く。それでいいな、姫さん?」 「え? あ、はい……よくわかりませんが、ヒイラギ殿のよろしいように……」 起き抜けにいきなり話を向けられれば当然だが、アンリエッタはぼんやりとした調子で頷いた。 「なんでツェルプストーまで……」「なんでルイズまで……」 予想通りの台詞を異口同音に吐き出した二人に、柊は首を捻りっぱなしのアンリエッタに視線を送ってから有無を言わせぬ態度で二人に言い放つ。 「王女殿下の認可は貰ったんだ、文句あるのか?」 「……」 こういう形のやり方は正直好みではないが、こういう世界では一番効果的ではある。 実際二人は顔には不満をありありと貼り付けていたが口答えするつもりはないようだ。 「そんで姫さん、腰折っちまったけどとりあえず親書を書き上げてくれねえか」 「は、はい。少々お待ちを」 慌てて机に戻ってペンを手に取ったアンリエッタを見届けて、柊は次いでタバサに眼を向けた。 完璧に我関せずといった調子で推移を見守っていたタバサに向かって、柊は口を開く。 「タバサも……それでいいな?」 あえて念を押す形で問いかけた。 すると彼女はしばし柊を見つめた後、はっきりと頷いた。 「あの……柊先輩?」 と、おずおずとエリスから声をかけられて柊は彼女を振り返った。 見つめてくる翠の瞳に込められた表情は「自分も行きたい」という風ではなく、むしろ柊の意図をなんとなく察しているようだ。 「……後でメール入れっから」 「はい、わかりました」 エリスは特に何も聞くことなく小さく頷いた。 それはそれで嬉しくはあるのだが、やはり彼女に対する申し訳なさも感じてしまう。 「悪いな、面倒ごと押し付ける風になっちまって……正直、この世界で一番頼りになるのはエリスだよ」 すると彼女は眼を丸め、僅かに頬を染めて微笑んだ。 頼りにされた嬉しさが半分、純粋に頼りにしかされていない寂しさが半分の、わかる人間にはわかる微妙な笑顔だったが生憎柊はわかる人間ではなかった。 ※ ※ ※ ややあってアンリエッタが書き上げた親書と託された水のルビーは柊が預かることとなった。 これにはルイズが少し渋ったが、ものの重要性を考えれば事実上柊以外の人間には決して手が出せない月衣の中に入れておくのが一番安全――と言われては流石に引き下がるしかない。 出発は翌明朝という事でこの場は一旦解散になり、柊も黒焦げになったギーシュを引き摺ってルイズの部屋を後にした。 とりあえずギーシュを彼の部屋に放り込んでおいてから、柊はそのまま就寝はせずに寮の外へと赴く。 そのまま学院の敷地から外へ出て、辺りを軽く見渡してから外壁に背を預け懐からO-PHONEを取り出した。 エリスにメールを送信し終えると、彼はその場に座り込んで眼を瞑る。 それから30分程経った頃合だろうか、柊の元に近づく気配があった。 柊が眼を開いて訪れた相手に眼を向けると、それは果たして予想通り、タバサだった。 「通じてたみたいだな」 安堵するように柊が息を吐いて言うと、タバサは答えるように小さく頷く。 「私も多分そうする」 そうする、とは言うまでもなくルイズやキュルケを置いてアルビオンに出立することだ。 端的に言ってしまって、国家間の同盟を左右するほどの任務に対して遊び半分――彼女等からすれば大真面目なのだろうが、だからこそ大問題だ――で参加しようとする人間など力量とか言う以前の段階で連れて行ける訳がない。 なのであの場は妥協する形で収めておいて、こうしてすぐに出立することにしたのだ。 柊としてはあまり面識のないタバサがそれを察してくれるか微妙なところだったので、もう30分ほど待って来なかったら本来の予定通り一人で行くつもりだった。 だが幸い、彼女の気色はルイズ達より柊に近いらしい。 翌朝になってルイズとキュルケは怒り狂うだろうが、必要なものはこちらが握っているので騒いでも後の祭りだ。 ……二人の気性からして追いかけてすら来そうなのでエリスにメールで後詰を頼んでおいたのである。 「けど、本当にいいのか? そこまで知りたいってんなら別についてこなくても教えはするけど」 「それは公平じゃない。報酬に見合う対価は払う」 一応改めて聞いてみたがにべもなくそう言われたので柊は黙り込むしかなかった。 タバサは柊に背を向けて少し距離を取った後、空に向かって指笛を吹いた。 静まり返った夜闇の中に刺すような音が響き渡り、ややあって大きな影――風竜が風を切って飛来してきた。 風竜はタバサの側に降り立った後、その口を大きく開けてあくびを吐き出すと恨みがましげに彼女を見やる。 「アルビオンまで」 「……きゅい」 幼体とはいえ仮にも竜であるその威容に見合わない、まるで愚痴を零すような鳴き声を漏らして風竜……シルフィードは頭を地面に下げる。 その頭を軽く撫でてからタバサが振り返ると――柊は何故か微妙な顔つきでタバサとシルフィードを見やっていた。 「……その風竜ってお前の使い魔だったのか」 「……?」 柊の言葉にタバサは首を捻ってしまった。 てっきり彼が自分を選んだのは力量に加えて移動手段を確保するためだと思っていたのだが、その様子を見るとどうも違うらしい。 柊は溜息を漏らした後困ったように頭をかいた。 「だったらキュルケはいてもよかったかもな……いや、まあ態度がちょっとアレだけど」 「……どういうこと?」 「コレで行こうと思ってたからよ」 タバサの質問に柊は月衣からガンナーズブルームを取り出すことで答えた。 何もない中空から現れた巨大なモノにタバサは眼を見開き、呟く。 「……破壊の杖?」 タンデムシートなしでの三人乗りは非常に危険、という事は先日のタルブ村行きの際に嫌と言うほど体験していた。 なのでこの箒でアルビオンに行くなら一人だけの方が望ましく、それならキュルケよりもタバサの方がいいだろう……というのが柊の思惑だったのだ。 タバサはしばし破壊の杖を興味深げに眺めやった後、シルフィードに向き直ってから告げた。 「今回は留守番。帰っていい」 「きゅいっ!?」 驚愕の声を上げて頭を持ち上げるシルフィード。 しかしタバサは一方的な宣告を終えた後、話は終わりとばかりにシルフィードから離れ柊の方へと歩き出す。 するとシルフィードは大口を開けて背後から彼女を咥え込み、ぎょっと目をむいた柊をよそに翼を翻してその場からタバサを連れ去ってしまった。 柊から十分に距離を取った後シルフィードはタバサを解放し、そしてひそひそ声で“喋った”。 「ちょ、ちょ、ちょ、お、お姉様! どういう事!? あんな棒っきれでアルビオンに行くとかホザくなんて頭が沸いてるに決まってるのね! そんな奴の言う事を聞くの!?」 「今回の私は同行者。だから指示には可能な限り従う。それに……破壊の杖にも興味がある」 言ってタバサは再び柊の元に向かおうとするが、シルフィードの巨体がそれを行く手を遮った。 「ほ、本気で置いていくつもり!? シルフィードはお姉様の使い魔……いわば右腕のはず……っ!」 「……私の右腕はここにある」 「!!!」 自らの右腕を軽く叩いてタバサがそう言うと、シルフィードは愕然とした表情を浮かべて固まってしまった。 そんなシルフィードの脇を擦り抜けてタバサは柊の下へと歩いていく。 彼女が柊の傍に辿り着くと、彼はおそるおそるといった感じで彼女に声をかけた。 「お、おい、なんかすっげえ睨んでるぞ……」 学院のすぐ側とはいえ街灯もない暗闇の中、シルフィードの怒りに満ちた双眸が爛々と柊を射抜いていた。 殺気すら纏わせてガチガチと牙を鳴り響かせているその様は、隙を見せれば襲ってくる魔物のそれに等しい。 「問題ない。それで、破壊の杖でどうするの」 「お、おう……」 ただならぬシルフィードの様子を完全に無視したタバサの言葉に促されて柊は破壊の杖――ガンナーズブルームを起動させた。 中空に浮かばせたそれに跨ってタバサを促すと、彼女は普段の無表情な顔に興味を浮かばせてしきりに何か頷きながら観察し、箒に同乗する。 ゆっくりと機体を上昇させながら柊はタバサに言った。 「アルビオンって確かここから北西だったよな? ラ・ローシェルの更に先」 タルブ村などといった局地的な地理はともかく、流石に国やその主要都市くらいの地理はこちらに来たときに既に仕入れている。 確認に首肯で返した彼女を見て柊は一つ頷くと、出発しようと機首を返し、 「うおっ!?」 下方から飛び出した影に僅かに姿勢を崩された。 今まで沈黙を保っていたシルフィードが唐突に飛び上がり、柊達を掠めるように旋回した後高く一鳴きしてそのアルビオンの方向へと向かっていったのである。 その行動の意図はもはや言うまでもなく『挑発』だった。 「……箒と勝負しようってのか? 上等じゃねえか」 流石に風竜というべきか、あっという間に夜闇の中に消えていったシルフィードを見据えながら柊は獰猛な笑みを浮かべた。 彼は手前に乗せていたタバサの身体を片腕で抱いて固定し、背中越しに振り返った彼女に向かって告げる。 「魔法で風圧……風を避けられるか?」 「度合いによる」 「よし、なら飛ばして行く。辛いようなら言うなり合図してくれ」 柊の言いようにタバサは僅かに眉を動かした。 メイジでない彼は知らないのかもしれないが、エア・シールドなりを使えば例え物理的なモノでもかなりの防御効果があるのだ。 なのでどれほどの速度であっても風だけなら辛いという事態にはまず陥らない。 特に指摘するような事でもないので彼女はあえて何も言わなかった。 ――箒の尾部スラスターがまるで破裂するように閃光を迸らせ夜の闇を切り裂いた。 回りの何もかもが一瞬で吹っ飛んだのと同時に、彼女は自分の『常識』も一緒に吹っ飛んだのを感じた。 ※ ※ ※ 「遅い! 遅すぎるのね!!」 二つの月明かりが照らす夜空の中を飛翔しながら、シルフィードは歌うように声を上げた。 出立した魔法学院は既に遥か遠く、幾つもの山の向こうに消え去っている。 彼女にとってはわかりきったことではあったが、柊達の姿などどこにもありはしない。 なんだか楽しくなってぐるぐると切りもみしはじめながら、シルフィードは完全なる勝利の余韻に酔いしれる。 このままアルビオンまでひとっ飛びした後は三日ぐらいかけてひいこらやってくるだろう二人を優雅に待ち受けるつもりだった。 そうすれば少々空に浮かぶ程度のみょうちきりんな棒を持ったあの馬鹿もシルフィードの偉大さを思い知るだろうし、そんな偉大なる使い魔をないがしろにした主も己の浅はかさを悔いるだろう。 柊:うわーだめだー、シルフィード様はなんて凄いんだー! それに比べて俺はなんて無知蒙昧な豚野郎なんだー!! タバサ:ごめんなさい。やっぱり私には貴方しかいない。 シルフィード:だめだ許さないのね。でもシルフィードは鬼というわけではありません。これからは待遇を改善して毎日お腹一杯お肉を食べられるようにしてくれれば全て水に流してあげるのね。 タバサ:そんな事で許してくれるなんてなんて優しいの……素敵、抱いて! 柊:一生ついていきます! 「コレなのね!! もう無敵の未来しか見えてこない!! あっははははは、きゅいきゅいぃぃっ!!」 夜の静寂をぶち破る馬鹿笑いを上げながらふらふらと空中で踊りだす。 まるで人生の絶頂のような喜びに浸るシルフィードだったが、ふと後方で何かが光ったのに気付いた。 何かと首をめぐらせた瞬間、その光は尾を引いて彼女へ向かって一直線に突進してくる。 眼を覆うばかりの輝線がシルフィードを掠めるように駆け抜けて消えて行き、一瞬遅れて強烈な風が身体を襲う。 「!? ……!?」 数瞬の忘我の後、シルフィードは慌ててその光を追って空を駆けた。 全力で飛ばしてもなお追いつけない。 尾を引いて零れ、掠れて霧散する光を辿ることしかできず、それにすら追いすがる事ができない。 「そんな……嘘……!」 必死に翼を動かしながら、シルフィードは愕然と呻いていた。 光とすれ違った瞬間に垣間見たもの。それはあの妙な棒に乗った人間とタバサだった。 信じたくない思いとどれほど死力を尽くしても追いかけることができない事実に打ちのめされながらシルフィードは夜空を疾走する。 やがてようやく空の向こうに光が見えてくると、しかしシルフィードはむしろ屈辱感すら覚えてしまった。 なぜならこれはシルフィードがあの光に追いついたのではなく、あちらの方が明らかに速度を緩めてこちらに近づいているからだった。 光の先頭――柊とタバサがシルフィードの隣に並ぶ。 そして彼はにやりとした笑みを浮かべて開口一番こう言った。 「……俺の勝ちだな」 「!!!!!」 ぎりぃっ、とシルフィードは牙を砕かんばかりに歯を食いしばった。 生まれて初めて殺意が生じた瞬間だった。 ぶち殺すのねヒューマン、という言葉すら吐き出せないほどの怒りが彼女の中に渦巻いていた。 おそらく今ブレスを吐き出したらガリアの王城であるリュティス城すら吹き飛ばすほどの威力を叩き出していたであろう。 しかし主人であるタバサが一緒に乗っている以上巻き添えにする事はできない。 ……その主人であるタバサが、感嘆したようにぼそりと呟いた。 「シルフィードより、ずっとはやい……」 「!!!!!!!!!!!!!」 その瞬間、シルフィードの中で何かが弾け飛んだ。 「サ、サラマンダーなんかとは違うのねーっ!!」 「おぉっ!?」 意味不明の咆哮と共にシルフィードはこれまでにないほどの速度で柊達を一気に引き離し夜空の向こうへぶっ飛んでいく。 まるで裡に溜め込んだ衝動やら何やらを全て放出するかのような猛烈な勢いであった。 慌てて柊は機首を駆ってシルフィードを追い夜闇を飛翔する。 地上から見れば流れ星と見紛う光の軌跡が、ハルケギニアの夜空を過ぎ去っていった。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8797.html
前ページ次ページデュープリズムゼロ 第十八話『亡国の宴』 ルイズ達一行にその正体を明かした空賊の頭。その正体は部隊を偽装し、貴族派への補給部隊を襲撃していたウェールズだった。 極限られた人間しか知るものは無い秘密の航路を使用し、アルビオン最後の軍艦イーグル号は硫黄を積載したマリーガラントと共にルイズ達の最終目的地であるニューカッスル城へと到達する事が出来た。 その優れた航海術と秘密の軍港を褒め称えたワルドに対しウェールズは「最早我等はまさしく空賊なのだよ。」と自嘲めいた冗談を溢しながら… 現在そのウェールズに案内され、ルイズ達はニューカッスル城のウェールズの自室へと招き入れられていた。 「…宝物なんだ。」 ウェールズはそう言って愛おしそうにアンリエッタの肖像が描かれた小箱から件の手紙を取り出してルイズへと手渡す。 ルイズの手に収まった手紙はウェールズの手によって何度も読み返されたのだろうか、隅の方は随分とすり切れており手紙についた折り目の癖がどれだけ大切にされていたか…それを雄弁に語っていた。 ルイズはアンリエッタからの密書を読んでいたウェールズの表情と回収した手紙から二人の間にあるであろう想いを察してしまう。 「恐れながら殿下…王党派に勝ち目は?」 「無いよ。こちらは300、向こうは50000だ。もはや我々は勝つ為に戦うのでは無い…名誉ある死の為に、誇りと勇気を示す為に戦うのだ。」 聞くまでも無いルイズの問いにウェールズは何の躊躇いも無くキッパリと答える。 「殿下も戦死なさるおつもりなのですか?!」 「当然だ。私は王族の務めとして真っ先に死ぬつもりだ。」 ミントは気難しげな表情でずっと二人のやり取りを黙って見守っている。ウェールズの語る王族の誇りや正義、それが全く分からないと言う程ミントも外道では無いがそんな物はくそ真面目な妹のマヤの分野だ… 「殿下、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます。」 「ふむ…聞こう。」 「殿下、何とぞトリステインへと亡命なさいませ!!アンリエッタ姫殿下もきっとそれを望まれております!」 「ルイズ。」 熱を上げてウェールズに語るルイズをワルドが一言制止の意味を込めて呼びかける。 しかしルイズは構う事も無く訴えを続けた。 「お二人が恋仲で在らせられたのならば姫様は絶対にあなたを助けようとなさるはずですっ!!私が姫様より預かった手紙にもそう書かれていたのではありませんか!?」 「それはあり得ない話だよミス・ヴァリエール。何故なら私は既に心を決めている。 それに一国の王女が個人的な感情でその様な文を手紙に書くと思うかね?私の亡命を受け入れると言う事は貴族派、つまりはレコンキスタのトリステインへの進行を助長するだけだ。 君達はそれを妨げる為にここに来た。それでは本末転倒では無いか。」 そうキッパリと語るウェールズの表情は僅かに曇っていた… 「ぁ…………ぅ…」 しかしだからこそルイズはそこに果てしない強固な意志と苦悩を見いだしてしまいそれ以上は言葉を上手く紡げなくなってしまった。 分かってしまったのだ…もはや説得などではどうしようも無いと言う事が… 「さて、そろそろパーティーの時間だ。君達は我がアルビオン王家にとって最後の客、是非とも今夜のパーティーに出席して頂きたい。」 沈んだ空気を払拭する様にウェールズが明るく言うとワルドとルイズはミントを残してウェールズに一礼をして部屋を出て行った。 「…………さて、ミント王女殿下お待たせしたね。」 部屋に残されたのはミントとウェールズの二人。 「悪いわね王子様。時間無いってのに。」 手紙の話の前にミントはウェールズに身分を明かし、事前にやり取りを行っていたのだ。 「構わないさ。さて、早速だが我が王家に伝わる始祖の秘宝及び秘伝だけど秘宝は二つある。 一つはこの『風のルビー』。君達が預けられた『水のルビー』と同様の物だ。これは明日君達がこの城から脱出する際に他の宝物と一緒に差し上げよう。奴らにくれてやるよりも君達に貰ってもらった方が遙かに良いからね。 次に『始祖のオルゴール』なのだが残念ながら以前我が国で起きた騒動によって管理を行っていたサウスゴーダ領から紛失しているんだ。これについては諦めてくれ。まぁ元々壊れているのか音が鳴らないって事で有名だった代物だよ。」 親切丁寧なウェールズの説明にミントはしきりに頷く。 「それと君の国がどうかは知らないが口頭のみで伝えられる様な秘伝らしい秘伝という物は残念ながらアルビオン王家には存在しないよ。」 「そう。それじゃあ最後に…始祖関係で『遺産』『エイオン』『ヴァレン』この言葉に聞き覚えはあったりする?」 ミントの問いにウェールズは瞳を閉じて頭を捻ると真剣に自分の記憶を探す。 だが、それらに該当する知識は生憎ウェールズは持ち合わせていなかった。 「申し訳ないが特には思い当たらないな。」 「そう…残念だわ。」 言いながらミントは真摯に対応してくれたウェールズに満足そうに微笑む。正直遺産の情報などそう簡単には手に入らない事など分かっているのだから。 「わざわざありがとう。それじゃあまた後で。」 「あぁ、パーティーを楽しんでくれたまえ。」 ___ニューカッスル城 セレモニーホール 『全軍前へっ!!全軍前へっ!!アルビオン万歳!!!』 玉座に座る国王ジェームズ一世の演説を終えてアルビオンの最後のパーティーに参列している兵士達は今最高の盛り上がりを見せていた。 その様子をミントは並べられた晩餐を無遠慮に腹に収めながら見つめていた。誰も彼もが明日には命を捨てる…その光景は勇ましくも儚げでミントの食欲を僅かに削がさせる程悲しい物だった。。 「どうだろう、楽しんでくれているかい?」 そんなミントに不意に声がかけられる。 声の主はウェールズで差し出されたのはグラスに注がれた赤ワイン。 「楽しくは無いわ。料理もはっきり言って不味いし。」 ミントの物言いに流石にウェールズも苦笑いを溢すしか無い。アルビオンの料理の不味さはハルケギニアでも有名なのだから。 「ハハ…だが、このワインはどうだろうか?これはレコンキスタの奴らに渡すには惜しいヴィンテージ物でね。自信を持ってお勧めするよ。」 「ん…頂くわ。」 普段積極的にアルコールを飲む事は無いミントも今日は素直にグラスを受け取りウェールズの持つグラスと乾杯を交わすとそっと口を付ける。 芳醇な香りに深い味わい、確かにそうはお目にかかれないであろう良いワインだ… 「あんた…明日死ぬのね…」 「あぁ…先程も言ったが真っ先にね。不躾な頼みだがアンには最後まで勇敢だったと伝えて欲しい。」 そう言ってウェールズはワインを一息に飲み干す。 「男ってのは何でそんなに恰好付けたがるのかあたしには分からないわ…ほんとバカみたい、って言うか間違いなくバカよ…」 ミントもウェールズに倣いグラスの中身を空にする。ミントがこのパーティーを楽しく感じていないのは偏にこの目の前のバカのせいなのだ。 既に想い人の願いをも振り切って自ら死に向かうこの男をミントには説得する術は無い。それでもそれはどこか悲しい話だ… そんなミントの胸中を知ってか知らずかウェールズは再びミントと自分のグラスにワインを注いだ。 「バカ、か…不思議な物だね明日死ぬというのに生まれて初めて言われたよ。………王族というのは中々に生き難いものだ。このバカな男にそんな真っ直ぐな言葉をぶつけてくれる友も居ない。君も王族ならば分かるだろう?」 酔いが回っているのかほのかに赤い顔でウェールズはワインを呷りながら自嘲めいた笑いを浮かべる。確かにアンリエッタに面と向かってバカだと罵る様な人間もトリステインにはいないだろう。 「ハッ、あたしをあんたみたいなのと一緒にしないで貰える?そんな物は言い訳よ。あたしは遺産を手に入れていつか世界を征服して見せるんだから。」 「言い訳か…確かにそうだ。しかし世界征服とは大きく出たね、君は侵略を是とするのか?」 「あたしのする事にかぎってはそれは問題ないわ。だってあたしが世界を征服すれば世界は必然的に平和になるじゃない? それでもあたしの事を邪魔するって奴が居るならボコボコに叩きのめしてやるし、もし反乱なんかが起きるって言うならその前に圧倒的な力を見せつけてそんな気起こさない様にしてやるわよ!! 勿論、この国もトリステインもいつかはこのあたしの物にしてみせるわ。」 自信満々に何の迷いも無く言い放ったミントの言葉にウェールズは思わず目を見開いて呆気にとられてしまう。 何という力押しな解決法だろうか…しかしそれは絶対的な真理でもあるだろう。 「くくく…ハハハ……君とはもっと早く出会いたかったよ。」 「あら、何それ?もしかしてあたしに惚れちゃった?しょうが無いわね~・・・」 「いやいや、そこは否定させて貰おう。僕の心はアンだけの物さ…何、世界とは言わずとも君がアルビオンを征服していてくれていたならばこの様な結末を迎える事も無く僕は唯のウェールズとしてアンと生きていけたのか等と夢想してしまってね。 あぁ、やはり僕は馬鹿だ。ミント王女、いや我が友ミントよ、いつか必ず世界を征服してくれたまえ。僕はそれをヴァルハラで楽しみにしておくよ。」 「言われるまでも無いわ……さて、それじゃあたしはご主人様捜しに行ってくるわ。多分今頃泣いてると思うし。それじゃあねウェールズ。」 ミントはウェールズにウィンクをしてホールを離れて行く。アンリエッタの男で無かったなら景気づけとして最後に頬にキス位はしても良かったかも知れないと少し思う。 「さようならミント…………アンを頼むよ。」 ___ニューカッスル城 庭園通路 「あぁ……居た居たルイズ。」 レコンキスタ軍の度重なる砲撃によって破壊されたのだろう…かつて美しかったであろう庭園を見下ろせる通路の窓辺でルイズは月に照らされてミントの予想通り一人泣いていた。 二人の男女の悲恋と300の人達の無念を想えばルイズはとてもパーティーには出席できる気分では無かったのだ。 「……何でみんな逃げないのよ……死にたがりばっかり…姫様が逃げてって言ってるのに……そんなに名誉が大事なの…?」 そうとう今回の事がショックなのだろう…ミントが辛うじて聞き取れる様な声でルイズはそう呟く。 そしてミントはそのルイズの言動に思わず心の底から呆れ返ってしまった。 「はぁ?あんたがそれを言う?フーケの時も、空賊に捕まった時も、敵を前に逃げたりする位なら死んだ方がマシってあんた啖呵切ってたじゃ無い。」 ルイズに対しての慰めなど一切無い、ミントのその尤もな言葉にルイズは思わず顔を落とす。 「……………そうだけど…でも…死ぬなんて…」 消え入りそうな声でルイズは言った…無論ルイズにも分かっているのだ。 しかしミントもそれを察して慰めてやる様な大人の対応をしてやれる程今は心の余裕など持ち合わせては居ないのだ。だからついきつく言ってしまったのだ。 「あんたさ~…この際はっきり言っておくけどちょっと甘えてんじゃないの? 少なくともあたしは意地でも叶えたい目的の為に命張ってそれこそ化け物を蹴散らしてきたわ。そう、全ては世界征服の為に!! いい?ここに残った人達も自分の為に命張ってんのよ、本人が腹を括ったからにはあんたがそれを否定する事は出来ないの!!」 ミントのその言葉にルイズは勢いよく顔を上げミントをボロボロと涙を溢しながら真っ赤な目で睨み付けた。 「私は甘えてなんか無いっ…何よ!?世界征服??バッカじゃないの!?あんたがやろうとしてる事は結局は侵略でしょ!?レコンキスタの連中と変わらないじゃ無い!!」 売り言葉に買い言葉とも言うべきか…二人の間に冷え切った空気が流れる。 「もう知らない!!ミントなんて!!」 一瞬の間を置いて子供の様な捨て台詞を残しルイズはその場を逃げ出した。 「………全く…」 ミントは肩を落とし明かりの外に消えていくルイズの背中を見送った… これがマヤであったならばこの後は肉体言語による討論へと移るのだろうがどうにもルイズはへたれ過ぎる。 「余り彼女を責めないでくれたまえ。」 ふと背後から声がかけられる。振り返ればそこにはこちら側にゆっくり歩いて来ているワルドの姿があった… 「盗み聞きってのは感心しないわね。」 「それは素直に謝罪させて頂く。しかしどの様な会話が行われていたかまでは聞いてはいないさ。」 「どうだか……」 ミントは苦笑いを浮かべるじワルドをじと目で睨む。 「で?何か話があるんでしょう?」 「あぁ…実は明日、僕はルイズとここで結婚式を挙げようと思う。先程ウェールズ皇太子に結婚の媒酌をお願いしてある、快く引き受けて頂けたよ。」 「はぁっ!??急すぎるでしょ?」 ワルドの突然の話に驚いているミントに構わずワルドはその佇まいを突然正した。 「そう言われるとは思っていましたが是非とも私はあの勇敢なウェールズ皇太子にお願いしたかったのです。 そこで是非ミント殿下にも式に出席して頂きたいのですが一つ問題がありまして…出席して頂いた場合、イーグル号もマリーガラント号も出航してしまい帰りの足が無いのです。 私とルイズの二人ならばグリフォンで滑空すれば問題なく戻れますが…」 ワルドは少し申し訳なさそうにミントに頭を下げた。それはミントに先にアルビオンを発てと言う意味だ。 「あたしはそんなに重くないって-の…まぁ事情は分かったわ。それじゃああたしは先に戻るからラ・ロシェールの宿で落ち合いましょう。」 呆れながらもミントはワルドの頼みを了承する。ウェールズが引き受けたならば結婚などは本人同士の話なのだ。一応使い魔とはいえミントには関係ない。 「感謝致します。それでは…」 そう言ってワルドはミントに会釈すると振り返り来た道を戻って行く。 「ねぇ…ワルド!」 しかし、ミントにはどうしても一つ気がかりがあった… 「何でしょう?」 振り返るワルド。 「おめでとう。ルイズの事、泣かしちゃ駄目よ。」 ミントは微笑むでも無く意味深にそう淡々と言ってワルドに背を向けた。 前ページ次ページデュープリズムゼロ
https://w.atwiki.jp/lord_of_vermilion/pages/384.html
速度 種族 名称 4 超獣 グレンデル,ワータイガー,ワーウルフ,クァール,ヴォーパルバニー,ケンタウロス,【激昂】ワータイガー,シペ・トテック,ドライアード,ケリュネイア,【残忍】セイレーン,ゲイター 亜人 神族 オーディン,ヴァーチューズ,愛染明王,ゼウス,ペガサス,朱雀,パワーズ,フェニックス,ガネーシャ,麒麟,ハヌマーン,アヌビス,レナス,フレイ,アルテミス,ミネルバ,エルフ,アポロン,【掌握】セラフ,クロ,【覚醒】アポロン,イセリアクイーン,ガブリエセレスタ,ペリ,アッシュール,ティファリス,アフロディーテ 魔種 ガルーダ,雷獣,メデューサ,サムヴァルタ 海種 わだつみ,アクアライダー,みずち,ニクサー,テティス,シー・サーペント,ローレライ,【優雅】ポセイドン,ケートス 機甲 リゲル 不死 アンデッドバタフライ,スペクター,ゾンビードッグ,シャドゥナイト,【酷薄】ゴースト,フライング・ヘッド,ポイズンモス 3 超獣 ケイロン,セイレーン,イエティ,レオントケンタウロス,コカトリス,ヨルムンガンド,ハーピー,カトブレパス,ワーライオン,ライノケンタウロス,【狡猾】ハーピー,【進化】カトブレパス,つちのこ 亜人 メフィスト,オークオラクル,ゴブリンファイター,ローグ,カイム,マジシャン,アサシン,覇王,マグス,コボルト,マンティス,リザードマン,ドルイド,【理知】コボルト 神族 セラフ,やまたのおろち,アルヒアンゲロス,ユニコーン,エンジェル,ファラオ,ギリメーカラ,フリースヴェルグ,ケプリ,【神秘】エルフ,シームルグ,ブラフマー,ホルス,エロス 魔種 バハムート,ギガス,酒呑童子,ディアボロス,ワイバーン,イフリート,ケルベロス,ガーゴイル,グリフォン,キメラ,オーガ,サキュバス,グレムリン,ベルゼバブ,アンヘル,レオナール,マンティコア,ヒッポグリフ,リリス,【猛鬼】ギガス,【蛮】酒呑童子,【錯乱】キメラ,青龍,ロキ,ブラックドッグ,ぬえ,バロル,牛頭,レッドキャップ,アルラウネ,馬頭 海種 マカラ,アルビオン,シー・パンサー,ニクシー,マーメイド,キラーフィッシュ,オケアノス,アリオーシュ,【憤怒】アルビオン,シュクラケン,ケルピー,ウンディーネ,【誘惑】マーメイド 機甲 フォーマルハウト,ベテルギウス,【再興】ポルックス 不死 ファントム,ダンピール,ネクロマンサー,リッチ,スケルトンファイター,ブラムス,レザード・ヴァレス,暗黒騎士,死神,【悟り】スペクター,【呪】ゾンビードッグ,バンシー,アルプ,ブラックウィドウ 2 超獣 ニーズヘッグ,バグベア 亜人 ラース・ジャイアント,ゴブリンアーチャー,ウィッチ,トロール,バーサーカー,オーク,シャーマン,ハーメルン,【魅惑】ウィッチ,クリフ・オーグル,【狂】オークオラクル,【暴虐】トロール,処刑人 神族 玄武,スフィンクス,サラマンダー,不動明王 魔種 オルトロス,木霊,バジリスク,インキュバス,サイクロプス,マイコニド,ミノタウロス,ゴーレム 海種 リヴァイアサン,クラーケン,トリトン,スライム,ポセイドン,水虎,ナーガ,ブージャム,スヨトロール,ウォーターリーパー 機甲 スピカ,ベガ,ツバーン,ミザール,デネボラ,【復帰】ツバーン 不死 ヴァンパイアロード,デュラハン・ランサー,スカルドラゴン,ヴァンパイア,落武者,フランケン,レイス,ゴースト,ゾンビホルスタイン,アンデッドスカラベ,スピリット,ゾンビ,ドラゴンゾンビ,破戒神,重装暗黒騎士,スケルトンアーチャー,カースドラゴン,ニエ,フック,ヴルコドラク,ドラゴンマミー,ヘル,スリーピーホロウ,ライル 1 超獣 亜人 ドワーフ 神族 セルケト 魔種 マンドレイク 海種 機甲 デネブ,アルタイル,ポルックス,カペラ,レグルス,【自我】カペラ 不死 マミー コメント *編集が苦手な方はこちらへ訂正指摘等々、お願いします ver1.3まで反映のはず。 誤植指摘はコチラへ。 -- (名無しさん) 2009-05-17 18 46 57 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3145.html
武装ゲリラ組織『12月のクリスマス』推薦!! ナオンと彼らだけの蜜あふるる約束の地、神聖マルコメ帝国。 これは、その理想郷の実現を目指す、彼ら二人の物語である。 豪快すっとばし作品。(読者が) 『神聖マルコメ帝国AZ(あのゼロ)』 第三話 悪の大王クロムウェル その頃、浮遊大陸アルビオンでは。 「フハハハハハハ、デーーーーービーーーーール! 汝ら右の頬を打たれる前に、打つべし打つべし! このポーズ万歳!!」 テューダー王家への貴族による反乱組織『レコン・キスタ』代表、オリヴァー・クロムウェル。 もと司教であった彼は悪魔に魂を売り渡し、例の「両手を挙げて構えるポーズ」をこよなく愛する悪人となっていた。 「今日の目標は、人の嫌がることを進んでやること。汝ら、進んで嫌がらせをせよ!!」 「さて、我が出来の悪い使徒たちよ。今日のこの悪い報告だが…… 悪いぞ貴様ら、よくぞしでかした! 何か粗悪品を与える。」 「……はぁ。」 「フフフ、アルビオンのほとんどは我らの手に落ち、残すはニューカッスル城のみ。 すみやかに全土を統一し、『レコン・キスタ』改めデビル教団の名の下に、ハルケギニアを治める悪の帝国を築くのだ」 「はっ、クロムウェル大王」 「これで、暴れ馬に乗ってビョウのついた服を着た悪党たちが、 ヒャハハハハハハッて笑いあえるような理想の世界が生まれるであろう。悪い、実に悪いぞ!」 《悪のデビル帝国 建国宣言書》 アルビオン王党派のみんなー、元気かにゃ? ほんとは病気なのに、隠してる子はいないじゃろかー? そんな事はさておき、悪のデビル帝国を建国せんとす。 小便はすませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はオッケー? まあ今後なにか困ったことでもあったら、気軽に滅亡して下さい。 終わり 「あのー今日の作戦はあのーあれー……なんじゃっけ?」 「お前、人と話すときは、内容をよく吟味してからにしろ」 召喚からおよそ3週間。ファーザーがちょくちょく死ぬ以外は、わりと平和だ。 最近『土くれ』のフーケという盗賊が学院に襲来したとき、運悪く巨大ゴーレムの足で踏み潰されたが、生きていた。 ただ直後に、後頭部にレンガが落下して再び死んだ。血みどろで頭上にピヨピヨと小鳥が飛びまわっていた。 立て続けに2回以上死ぬと、復活までタイムラグが出来るらしい。 「しかし、あの『レンガさん』が学院長秘書のロングビルじゃったとはにゃー。 東大デモクラシーじゃった、あのような高エネルギーのナオンが内に潜んでおったとは」 「ルイズたちが捕らえたんだってな。お手柄だ、僕らには関係ないが。 いいから黙ってこのトンカツ定食(夜食)を平らげろ、片付かん。しかし、旨いなこれ」 「うむ、このトンカツってやつは、まさに食べられるために生まれてきたんじゃよ。 一万年と二千年前からトンカツ定食ってやつよ。トンに勝つことから縁起もよい。 どこから湧き出すのかは分からないんじゃが……ご馳走さまでした」 「トンってなんなんだ……で、作戦の概要はまとまったのか?」 ファーザーが頬にご飯粒をつけたまま、バカそうに宣言する。 「えーと、関係筋から、明日トリステイン王国のアンリエッタ王女殿下がやってくるという情報を掴んだんじゃよ。 王宮に一輪咲く高嶺の花を摘み取るのは、この国王のわし。そういう作戦です。 ララァなら分かってくれるよね?」 「ほう、そんな情報が。でかしたぞお前のくせに。 じゃあ僕らは、お出迎えに整列しなくちゃならんな。授業は休みか。 そしてこうやってがんじがらめに縛っておくから、お前はそこでかわいてゆけ」 「アーーーーーーー、いつの間に? オー、この変態人間!」 ファーザーは縛られた上、口と鼻を布で塞がれ、窒息死したまま朝まで放置された。 翌朝、そして翌昼が来た。王女と枢機卿がやってきたらしいが、わしは縛られたままなので分からぬ。 それに何度も死ぬのも飽きた。いっそ殺せ。考えるのはやめねーんじゃよ。 「ええい、この形態では無限収束法によるワープもままならぬ。ワープ!(言っただけ)」 マルクスキーも帰ってこねーし、どこほっつき歩いてるんじゃよ、あのどぐされスキー。 別にあんな野郎、帰ってこなくても構わないんじゃよー!(ツン) 見よ、この高度なツンデレ技術を。 「……ム? そう言えば、いつの間にやら顔の布切れが外れているにゃー。 ならば、これをこうして、ここをこうと、うむ、アレクサンダーくんが乱麻を絶ったごとく…… よけいに絡まった気もするんじゃが、いいから早く戻って来てー、エウメネスキー!!(デレ)」 そして夜、マルコメがようやく帰ってきた。 「うるさいぞファーザー、また死にたいのか。どうも僕がお前と同じ部屋に存在すると、 どこからともなくトンカツ定食二人前の乗ったちゃぶ台が出現している気がするが」 「テヘッ、フラグが立ったんじゃよ。さっそく中東全土を攻め取り、イル汗国を建国せよ。 わしはキプチャク平原を攻め取って、黄金のオルドにナオンを侍らせてご覧に入れる」 「なんのことだかさっぱり分からん」 「で、王女様は?」 「お前が知る必要は何一つない、このトンカツ定食発生装置め。僕がますます太ってしまうじゃないか。 うん、旨い美味い上手い(モグモグ)」 「ええいくそったりゃあ、早くわしを解放しろ高エンゲル係数スキーの小僧めが。 喰らえ必殺、自分なりの高速回転!!」 ズドグルグルとファーザーが旋回しながら跳び、マリコルヌを吹き飛ばす。 「早く王女様にお手を拝借して、手の甲に忠誠のキスを、とか言われているのに、 無理矢理唇を奪いたいにゃー。わしって高貴系ツンデレ殺しなんじゃよねー(ニコリ)」 高速回転で縄目を抜けたファーザーは、シルクハットをかぶり燕尾服を纏い、 さらによく分からない扮装をした。 【機動紳士ファーザー00(ダブルオー)】 機動紳士ファーザー00は、007とかの影響下に生まれた300年後の世界の宇宙紳士である。 またの名をナオンマイスター。キャラクターデザインは電波がゆん。 00はせっかくなのでゼロゼロと読みたかった。 「まあよい、王女の部屋を探さねば。これこれそこのメイドくん、ちとものを尋ねるが」 「キャアア、変態!!」 「なにぃ!? ……ああしまった、パンツをはき忘れていたんじゃよー! 三流メイジ捨て駒スキーと闘った際にずり落ちたんじゃろかー!」 核弾頭級の危険性を帯びた紳士が爆誕した。現在およそかっこよさ5.8枚目。 「しかし、いまさらあの部屋に帰るのもなんじゃし、この落としていったテーブルクロスを拝借。 うむ、下半身に巻きつけるとかっこよさがいや増し、合計2.5枚目ぐらいにはなったじゃろか」 計算以前の問題だが、機動紳士は出撃した。そしてある部屋で立ち止まる。 「ム、あれはギーシュ? 何を覗いているのじゃろか?」 「おお、姫殿下! この『青銅の正義』ギーシュ・ド・グラモンが、 遥かなテレザート星で貴女のご健康をお祈りしています! 全裸で。」 「ええいどけ、そして謝るな偽善者! 王女殿下の中年スパイを務めるのは、 このスパイ大作さまよ!!(ズガアア)」 「……なにか騒がしいけど、見つかってしまったの?(ガチャ) ……あの、貴方は?」 「ボンソワール、姫殿下。わしは宇宙の果てのどこかから、ふらりと大気圏を突破して現れた、 高貴なる機動紳士00(ダブルオー)。その真の正体はファーザー・ブラウン卿です」 「あの、貴方も貴族? では、先ほどのルイズへのお話を、聞かれてしまったのですね。 お願いします、どうか貴方もルイズに協力し、アルビオンへ向かって下さいませんか」 ……な? あ、あら? 想定外の展開じゃよ? 「げっ、あんたはマリコルヌの変態使い魔!? 姫様、こんなのと普通に会話しないで下さい!」 「神聖モテモテ王国国王になんという言い草じゃよー! 断固抗議する!」 「ええっ、国王陛下!? まあ、これは失礼をば」 数十分後、僕の部屋に血塗れで帰ってきたファーザーは、 なぜか明日の早朝、僕やルイズと一緒にアルビオンへ行く事になっていた。 あと何かがあったらしく、パンツをはいてなかった。 (続くんじゃぜ?)
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1925.html
女盗賊が投獄された地下の監獄。 杖もない、金属もない、身動きもとれないで脱出は不可能だと早々に決め付け、観念した女盗賊。 眠りにつこうと思っていた刹那、階段の上からコツコツと靴の音が聞こえてくる。 「『土くれ』だな」 男は低い声を出した。 「あんた、何者?」 フーケは男に問い掛ける。男は質問には答えずに 「再びアルビオンに仕える気はないか?」 「ふざけたことを言わないで、それ以上そんな話をするようなら助けに来てもらったところ悪いけど死んでもらうよ」 半透明で薄緑色のゴーレムのような物体が現れる。 「物騒だな、勘違いをするな。アルビオンの王家に仕えろと言っているのではない。あそこの王家はもうすぐ倒れる」 「バカどもがドンパチやってるらしいからね」 「その片方のバカの誘いだ。トリステイン貴族などという枠を越え、この世界を憂う貴族たちの連盟だ。目的はハルケギニアの 統一、そして最終的には『聖地』を奪還する。手始めにあそこの風石と造船技術を頂く。造船所のお上は掌握済みだ、 最後の詰めに、そしてこの先の夢をキャンバスに描くためにお前のような優秀なメイジが一人でも多く欲しい」 フーケは肩をすくめて笑う。 「バカ言わないで、夢は寝ながら描くものよ。私は貴族が嫌いだし、ハルケギニアの統一なんかには興味が無いわ」 男は更に低い声を出す。 「断っても構わん。牢獄に転がっている死体にまで頼むほど人材は足りていないわけではないからな」 フーケはため息をつく。 「なら最初からそう言いなさいよ」 「そうか、なら話は早い」 男はフーケに杖を投げつけ、衛兵から奪ったであろう鍵で扉を開け、拘束具を外す。 「好きに脱出するんだな、三日後にラ・ロシェールの『サンジェルマン』で待っている」 フーケは男に杖を向ける。 「あんた、私をバカにしてるんじゃないの?殺すなんて脅した後に杖を渡されてそのまま従うほど従順じゃないね。 『ジャッジメント』!」 フーケのスタンドが檻を破壊し、杖からは男に向かって石礫が飛ぶ。 しかし、そこに立っていた男はもう影も形もなく、今度は数人『その男』が階段から降りてくる。 「『土くれ』、なかなか頭の回転が速いが、相手の属性もクラスもわからないまま攻めるのは感心しないな」 数人の『男』が同時に同じ声を出し、エコーのように響く。男は重なり合い、一人になる。 「『偏在』かい、一瞬で消えたのは魔力温存のため当たる前に引っ込めたのかい?」 「『偏在』の部分はその通り」 「ずいぶんと余裕だね、偏在は偏在に重なれない、あんたが本体だってのはわかりきってるのにね!」 もう一度フーケは石礫を飛ばす。 今度こそ男の体を捉らえる。 そして、男の体は消える。 「なッ!これも『偏在』!?」 今度は一人増えた『男』が階段から降りてくる。 「どうだい、力の差というものがわかったかな?これで断るようでも、ここの裏に墓標くらいは立ててやる」 フーケは再度ため息をつく。 「わかったわよ、完全敗北ね。当面の間は大人しく従ってあげるわよ」 「そうか、ではラ・ロシェールでな」 男は重なり、今度こそ一人になり、そして、今度は一人も居なくなり、消えた。 * * * 「で、ワムウ、わかってるの?ふざけたことしないで大人しくしてなさいよ?」 「ああ、大体わかった。この国の姫が学校の視察に来るのか、また騒がしくなりそうだ。俺は適当なところにいる」 「そうはいかないわよ、使い魔と主人は一心同体、あんたも出ないと失礼に当たるのよ」 「面倒だな」 「だから大人しくしてなさいって言ってるのよ」 ルイズはワムウに言い聞かす。 先ほどコルベールが珍妙な格好で授業に割り込み、姫殿下が行幸されると伝えて今日の授業は中止となった。 姫殿下が通過するというだけでその街道はさながらパレードで、近隣の一般人が多く集まっていた。 王室の紋章の入ったレリーフが街道に並べられ、ユニコーンの引く馬車の中からアンリエッタ姫が手を振る。 「トリステインバンザイ!」 「アンリエッタ姫殿下バンザイ!」 「マザリーニ枢機卿バンザーイ!」 「君に会えてよかった!」 脇の民衆から歓声が沸きあがる。 馬車は魔法学院の正門をくぐり、整列した生徒が一斉に杖を掲げる。 アンリエッタ姫が馬車を降りると、歓声があがる。姫は優雅に手を振る。 ワムウが呟く。 「あれがそのアンリエッタ、か」 いつもならば姫を呼び捨てにするなんてといってすごい剣幕でまくしたてるルイズだが、ルイズはその呟きには答えなかった。 視線の先には姫の近衛兵であろう羽帽子をかぶり、グリフォンにまたがっている貴族がいた。 ワムウは鼻を鳴らし、ルイズが見とれている隙に人ごみから抜け出していった。 * * * 日も沈み、二つの月が部屋を照らす。 鍵をかけないことが暗黙の了解となっている窓が外から開き、ワムウがルイズの部屋に入ってくる。 てっきり、途中でいなくなったことについてなにか言われるとでも思っていたが、 ルイズは放心状態で入ってきたことにも気づかないようであった。 が、ワムウは気にも留めず、部屋に来る目的であった先日買った剣を拾い再度窓から出て行こうとした。 その時、ドアが規則正しくノックされる。 ルイズはハッとしたように立ち上がり、ドアを開ける。 そこには頭巾を被った少女が立っていた。 「静かに」 少女は呟き、杖を出す。 それを一振りすると光の粉が部屋に舞う。 「ディテクトマジック?」 魔法の正体にルイズが気づき、怪訝な顔をする。 「どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね」 と頭巾の少女は返事をし、頭巾を外す。 その少女は、昼間歓迎式典を行った相手である 「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」 アンリエッタ姫であった。 彼女は感極まったようにルイズを抱きしめる。 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!私の友達のルイズ!」 「姫殿下、こんな下賎なところにお越しになられるなんて…」 「ルイズ、そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!あなたにまでよそよそしい態度をとられたら、私死んでしまうわ!」 「ああ、そんな姫さま…」 二人は昔話に花を咲かせる。ワムウはそれをつまらなそうに眺める。 「……忘れるわけ無いじゃない、あの頃は毎日が楽しかったわ。なんにも悩みなんてなくって」 アンリエッタはため息をつく。 「姫さま?」 「あなたが羨ましいわ、王国に生まれた姫なんて、籠の鳥も同然…飼い主の機嫌次第であっちにいったりこっちにいったり…」 憂鬱げに外の月を眺め、呟く。 「ルイズ、私結婚するのよ」 「…おめでとうございます」 アンリエッタの陰のある言葉にルイズは手放しでは喜べなかった。 「…あら、そこに立っているのはどなた?」 アンリエッタはワムウに気づき、尋ねる。 「私の使い魔です、姫さま」 アンリエッタは感嘆の声を上げる。 「すごいじゃないルイズ、こんなすごい亜人を召還したなんて!あなたって昔から変わってると思ったけれど… こんな使い魔みたことないわ!」 「そ、そんな…確かにすごいことはすごいですが私の命令に従うことなんて滅多に無くて…」 「そんな謙遜することないわよ」 「まだ数日しか立ってないのに決闘騒ぎに色々と言えない事まで…もし使い魔にするならイモリかこいつを選べと言われたら 迷わずイモリを選びますわ」 ルイズは憮然とする。それに合わせるようにアンリエッタはため息をつく。 「どうしたんですか姫さま」 先ほどからの過剰ともいえるおかしな様子にルイズが尋ねる。 「…いえ、なんでもないわ・・・ごめんなさい、あなたに相談できるようなことではないのに…」 「なんでもおっしゃってください、姫さま。そんな様子ではとんでもないお悩みを抱えているんでしょう?」 「いえ、話せません…悩みがあるなんてことは忘れてちょうだい、ルイズ」 「そんな、私を友達なんて呼んでいただいたのに、悩みを話せないのですか?」 ルイズは語勢を強める。 アンリエッタは嬉しそうに微笑む。 「嬉しいわ、ルイズ。今日初めて私を友達と呼んでくれて。わかりました、そこまで言うのなら話しましょう」 「外しても構わないか?」 ワムウは面倒ごとに巻き込まれるのは勘弁だと思い、なおかつこの姫には大してよい印象を持っていなかった上での発言だったのだが 「あら、人語も介するのね!お気遣いは嬉しいけれども使い魔と主人は一心同体、外さなくて構いませんよ」 やんわりと一蹴される。 そして、静かに話し始める。 「これから、話すことは、他言無用ですよ…私はゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが…」 「ゲルマニアですって!あんな野蛮な成り上がりどもごときのうすっぺらな藁の家が深遠なる姫様の砦に踏み込んで来るのッ!」 ルイズが甲高い声をあげ、語を荒げる。 「ええ、でも仕方ないの…反乱を起こしたアルビオンの貴族がこのまま順当に王家を倒せば、トリステインに攻め込んで くるでしょう……地理上は隣接しているようなものですし、ゲルマニアの軍事力は驚異的、ガリアとは政治的主張が 似通っています…あの反乱軍は腐敗した王家を倒すのが目的だといっていますが、その建前で同じような政治形態の トリステインに攻めてくることはリンゴを幹から切ったら地面に落ちるくらい確実なの… それで、軍事的庇護を受けるためにゲルマニアと同盟を結ぶのに私が嫁ぐことは致し方ないのです……」 アンリエッタは手で顔を抑え、下に向ける。 「そうだったんですか…」 ルイズは沈んだ声で言う。 「それで、礼儀知らずのアルビオンの貴族派どもは私の婚姻を妨げるための材料を血眼になって探しているのです」 「…では、もしかして姫様の婚姻を妨げる材料があるのですね?」 ルイズはその意味を察し、尋ねる。 アンリエッタは悲しげに頷き、ひざまずき、顔を両手で覆う。 「おお、始祖ブリミルよ、この不幸な姫をお救いください…」 ルイズの顔は紅潮し、興奮した様子でまくしたてる。 「では姫さま!その婚姻を妨げる材料とはなんなのですか!」 アンリエッタは呻き声を出すように呟く。 「…私が以前したためた一通の手紙なのです…それがアルビオンの貴族派に渡れば、それをゲルマニアの皇帝に届けるでしょう」 「どんな内容なのですか?」 「それはいえません…ですが、それをゲルマニアの皇帝が読めば、この私を許さないでしょう。そうすれば婚姻は潰れ、 あのアルビオンの貴族派にトリステイン一国で立ち向かうことになります…それだけは避けなければなりません…」 ルイズはアンリエッタの手を取る。 「して、その手紙はどこにあるのですか?私、姫さまの御為とあれば鬼が島でもヒンタボ島でも夢見が島でも向かいますわ!」 「それが…現在火中にあるアルビオン王家のウェールズ皇太子が…」 「プリンス・オブ・ウェールズ?あの凛々しい皇太子様が…では、姫さま!この『土くれ』のフーケを捕らえた ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールとその使い魔にその任務、お任せください!」 「ああ、そんな無理よルイズ!現在火中であるアルビオンに赴けなんて危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」 「何をおっしゃいます! 姫さまとトリステインの危機とあらば、私見過ごすわけにはいけません!」 ルイズは強い意思を伝える。 「この私のためにそこまで言って下さるの!これが誠の忠誠と友情というものなのですね!ありがとうルイズ!」 アンリエッタは感涙したように眼を手で拭う。 ワムウが自分たちの言葉に酔っている2人の話に割り込む。 「俺も行くのか?」 「当たり前でしょ、連れて貰えないとでも思ったの?」 「断る。受身の対応者である悲劇の姫気取りの尻拭いなど俺がやるようなことではない」 ルイズは顔を紅潮させる。 「なななな、なに言ってんのよあんたは!すみません姫さま、私の教育が悪くて…」 「言った通りだ、若いとは言え姫なのだろう?心酔している者も多くいるようだしな。一国で事を構えられるだけの国力と軍事力を 整えるなり、アルビオンに介入して反乱の目を摘んでおくなり、開戦を察知して安全なうちに手紙を回収することもできた。 だが、それを怠ったのはお前の責任だ。結婚による同盟も一つの選択肢であることを割り切っているならともかく 敗戦が確実になるまで行動をおこさず、悲劇の姫を気取っているような奴にただで手を貸すほど暇でないんでな」 「ワムウッ!姫様になんたる失礼を!謝りなさい!」 「いえ、ルイズいいのです。彼の言うとおりです、これは私の責任です…ただで、とおっしゃいましたね? ならば…母君からいただいたこの『水のルビー』を差し上げましょう。どうか、ルイズをお守りください」 アンリエッタは右手の薬指から指輪を引き抜き、ワムウに差し出した。 「そんな姫さま、畏れ多い…」 「ワムウッ!姫殿下になにをしたァーーッ!」 ギーシュが扉を開けて現れ、ワムウを怒鳴る。 すかさずワムウが殴り飛ばし、片方の手で指輪を受け取る。 「いいだろう、この依頼引き受けた。他言無用だったな?こいつは終了まで軟禁でもしておけ、なんなら証拠も残さず食うが」 ワムウの物騒な発言と拳を意に介さず、ギーシュはアンリエッタの前にひざまずく。 「姫殿下!その任務、どうかこのギーシュ・ド・グラモンにもお申し付けください!」 「あら、グラモンといえば…ワイルドキャット……じゃなくて…西部の投手でもなくて…」 「グラモン元帥の息子です、姫殿下!」 「知ってますわよぉおお!あなたも、私の力になってくれるとおっしゃるのですか!」 「ええ、もちろんです!加えて貰えるとしたらこれはもう望外の喜びに違いありません!」 「ではお願いしますわ、ギーシュさん」 ギーシュはひざまずいたまま深く礼をする。 「では、明日の朝に出発してください。貴方たちに始祖ブリミルのご加護かありますように」 * * * ラ・ロシェールの『サンジェルマン』。 一人の男と一人の女。 「…それで、お前には『女神の杵』亭を襲ってもらう。狙いはワルドとルイズ以外…たぶんあの使い魔だけだろう、その殺害だ」 「使い魔一人殺すのに私を使うのかい?自分を過信してるわけじゃないが、随分無駄な使い方だね」 「あの使い魔を舐めるな、『ゼロの使い魔』だ、なにが起こるかわからん。それにお前一人だけではない」 「やれやれ、あんたは敵の実力を過信しすぎじゃないか?まあ、軍人なんてのはそれがお似合いなのかもしれないけどね せいぜい丘の向こうの見えない敵に怯えてな。それで、私以外に襲うのはどんな連中なんだい?」 「お前と同じ貴族くずれのメイジだ、『同じ』、な。報酬の先払い分だ」 女は報酬の袋を開け、中身の量をみて驚く。 「使い魔一人殺すのにこんなに金を積むなんて、軍人の貴族さんは違うわね」 「相方も同額だ、文句は無いだろう。それに、戦争と暗殺と人脈に金を惜しむほど馬鹿なことはない。 コストパフォーマンスを考えればお前たちの力量ではむしろ割安だ」 フーケは袋をしまい、話を再開する。 「で、その相方とはいつ落ち合えるんだい?」 「二日後の同じ時間で先ほど言った『女神の杵』亭で下見も兼ねてもらう」 「わかったわ、任務はワルドとルイズ以外の殺害ね、あんたの言うように好きなように暴れさせてもらうさ」 「暴れるだけなら相方の方が上だ、対象以外の尊き犠牲がどれくらいでるか…ああ、心が痛むな」 「心にもないことを、じゃあ私は行かせて貰うよ、ここの勘定も報酬に含めときな」 女は店を出、扉の鈴が鳴る。 残された男は呟く。 「ふむ、勘定か。やれやれ、自腹など払うのもな、俺への報酬とさせていただこうか」 男は、一瞬のうちに姿を消していた。