約 227,502 件
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/334.html
※場所は学校の教室と思って下さい 良太郎「えぇっと…ここ…どこ?」 こなた「あれぇ?自分の通ってる高校も忘れたのかな?」 良太郎「えぇ?僕、働いてるんだけど…」 こなた「ふふふ…細かい事は気にしちゃイケナイヨ」 良太郎「細かくはないと…ってゆうか君だれ?」 こなた「=ω=.)あぁれぇ??自分の彼女まで忘れたの?とてもあたしは傷付いたよ?」 良太郎「えっ…えぇぇぇええええええええ?僕、彼女とかそんなのは…?」 こなた「=ω=.)じーっ」 良太郎「…うっ…」 こなた「=ω=.)じーーっ」 良太郎「……うぅっ……」 こなた「=ω=.)じーーーっ」 良太郎「…付き合ってる…のかな?」 かがみ「おーす…ってこなたが絡んでる人って誰?」 つかさ「あ、お姉ちゃん。うーんとね、確か野上良太郎って人だよ?」 かがみ「随分仲いいのね…」 つかさ「だね」 かがみ「……………もしかしてこなたに先越された…?」 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン 良太郎「あ、教科書持って来てないや…てゆうか僕の席どこ?」 こなた「ん?良ちゃんの席はあたしの隣だよ?」 良太郎「あぁ、そうなの」 こなた「で、教科書は?」 良太郎「ないのかな?突然始まったから何がなんだか…」 こなた「じゃ、あたしの見せたげるよ」ニマ~ 良太郎「…うん、ありがと…」 こなた「別にいいよぉ~」 良太郎「えと…あの…」 こなた「ん?なに?」 良太郎「教科書見せてくれるのは有り難いんだけど…」 こなた「有り難いけどなぁに?」 良太郎「こんなにくっつく事は無いんじゃ…」 こなた「=ω=.)じーっ」 良太郎「うっ…!…じゃせめて机は自分のを使ったら…」 こなた「=ω=.)じーーっ……」 良太郎「ぇっと…あの…えっと、その…」 こなた「=ω=.)なに?」 良太郎「なんでも…ない…です…」 ななこ「(もしや泉に先越された…?)」 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン 良太郎「お弁当ない…よね…」 こなた「んぁ?お昼ご飯は?」 良太郎「やっぱりないみたい」 こなた「=ω=.)じーっ…」 良太郎「………」 こなた「分けてあげようか?」 良太郎「いや、大丈夫(嫌な予感がするし…)」 こなた「=ω=.)分けてあげようか?」 良太郎「いや、大丈b「=ω=.)分けてあげようか?」 良太郎「いy「=ω=.)分 け て あ げ よ う か ?」 良太郎「…はい」 こなた「はい、これお昼ね」 良太郎「これって…チョココロネ?」 こなた「そだよ」 良太郎「お昼がチョココロネって…てゆうかまず二等分無理だよね?」 こなた「…」 良太郎「真ん中から切ったらチョコ垂れるし…てゆうよりまず切るものないし…」 こなた「……ふっ…」 良太郎「え…なに…?」 こなた「愛の力に不可能の文字は無いのだよ、良ちゃん!」 良太郎「は?」 こなた「まぁつまり、交互に一口ずつ食べればイインダヨ」 良太郎「いや…それはさすがに…」 こなた「=ω=.)じーっ」 良太郎「…ウぁ…!」 こなた「=ω=.)じーーっ」 良太郎「…うぅ……じゃなくてこれは本当にキツいから…」 こなた「………グスッ…」 良太郎「!?」 こなた「……グスッ……ヒッグ……」 良太郎「うぇあぁあぁぁぁあ、っ分かったから!交互に食べるから!」 こなた「…………ホント?」 良太郎「ホントだからッ!泣かないで!お願いだから!視線がっ!痛いから!」 こなた「(=ω=.)」ニヤリ 良太郎「!!」 ※放課後、愛理さんの店で働いてるところと思って下さい 良太郎「なんか今日はホントにワケがわかんなかったな…」 愛理 「良ちゃん、今日から新しくバイトの娘が入るからよろしくね」 良太郎「え…?バイトの娘…ってまさか」 こなた「(背後から)そのまさかなのだよ、良ちゃん」 良太郎「うあぁぁぁあああああっ!?」 愛理 「その娘、良ちゃんの彼女さんなんでしょ?こなちゃん、良ちゃんをよろしくね」 こなた「任せたまへぇ~」 良太郎「…もう反論する力も無い…」 ↑ここで1話をリメンバーしたらホンモノ こなた「御注文の方は以上でよろしいでしょうか?はい、ありがとうございまぁす」 良太郎「…………」ジーッ こなた「ん?なに?あたしに見とれてたとか?」 良太郎「………いや、その格好なに?……団長ってなんの団?…それどこの制服?」 こなた「=ω=.) …知りたい?ねぇ知りたい?」 良太郎「……少し…」 こなた「じゃ欲しい本がいっぱい出たから今度の土日にちょっと付き合ってね!」 良太郎「それだけなら…」 こなた「ω=.) お金もそこそこ持って来てね…」 良太郎「…え…うん…」 こなた「ふんふふ~ん♪」スタスタッ 良太郎「あれ?答えは…?」 愛理「ふふっ、仲が良いのねぇ~」 尾崎・三浦「美しいっ…!」 良太郎「あー、疲れた…早く寝よう…」 こなた「そだねぇ、あたしもちょっと疲れたヨ」 良太郎「うぁあ!?なんで僕の部屋にいるの!?」 こなた「だって、明日も学校あるじゃん。良ちゃん来ないかも知れないし」 良太郎「いや、僕入学手続きとかしてないし…」 こなた「=ω=.) 良ちゃんが引き蘢りにならないためにもあたしが見張っとかないと!」 良太郎「いや、引き蘢りもなにも僕は…」 こなた「=ω=.)とにかく良ちゃんに学生としての自覚ができるまであたしはここに泊まるから 」 良太郎「泊まるって…えぇぇええ?ちょっと待って!寝るとことかも1つしかないよ?」 こなた「=ω=.) 男は床で寝ろ」 良太郎「え…やっぱりそうなるの…?」 こなた「=ω=.) もしくは一緒の布団で寝る」 良太郎「……じゃ僕床でn「=ω=.) 一緒の布団で寝る?」 良太郎「………床d「=ω=.) 一緒の布団で寝る?」 良太郎「…………はい……」 こなた「ワーイ!」 良太郎「はぁっ……」 良太郎「あの…」 こなた「………」 良太郎「そんなにくっつかれると寝にくいんだけど…」 こなた「………」 良太郎「聞いてる…?」 こなた「……スゥ…」 良太郎「……寝てる……ハァッ…」
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/629.html
『つかさの催眠』 学校の屋上にて。催眠術で遊んでる4人。 つかさ「じゃあ次は私の番。ゆきちゃん相手して。」 みwiki「わかりました。」 5円玉をゆらゆらと揺らすつかさ。 つかさ「あなたは鳥、そう鳥です。」 みwiki「ああ、私は鳥、鳥なの。」 みゆきの表情が変わる。 つかさ「そう、あなたは鳥、大空を舞う鳥、空も飛べるよ!!」 みwiki「飛べる!!今なら飛べる!!それ!!」 次の瞬間、みゆきは空に舞った!! こなた「みゆきさん動かない・・・」 かがみ「みゆきのやつ無茶しやがって・・・」 つかさ「馬鹿だな、牛が空飛べるわけないのに。」 一方こちらはみゆき みwiki「すごい、私本当に空に浮いています!!おーい、みなさーん!!」 手を振るみゆき、だが次の瞬間。 みwiki「あれ?下の方で誰か倒れてますね・・誰でしょう?」 近寄るみゆき、そして顔を覗きこむ。 みwiki「うわ・・、この人とてもブスですね。しかも不幸そう・・・。」 (完)
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/598.html
第三夜 学園の敷地内を一周して3人が目指す先、それは今、目の前にある体育館、ただ一つとなった。 「あとは、ここだけですね……」 部活動が行われていないためか静かに、どっしりと佇む、大きな建造物。 目的が目的だけに、いつも見慣れているはずの風景さえ不気味に感じる。 「じゃ、いこっか」 こなたは意気揚々と先頭を歩く。 その後ろには最初の意気込みとは裏腹に、ブルブルと震えるみゆき。 さらに、小首を傾げて呟きながらつかさが続く。 「……んー、気のせい?かな?」 鍵が掛けられていないことが不自然であった。 だが、妖魔が自分達をおびき寄せていると考えれば、それは逆に自然なこととも思える。 「こなちゃん……なんか、変……」 「ほへ?」 おおよそ慣れているはずのつかさがみゆきと同じくらいに身体を震わせている。 彼女の困惑が気になり、こなたは足を止め、後ろを振り返る。 体育館の中はひんやりとしていた。普段ついているはずの照明が無いだけで、 これほど不気味な雰囲気を漂わすものだろうか? 「つか……さ?」 「……変だよ。絶対変だよ!!」 つかさの声に反応したかのように、開け放たれたままの扉が、大きな音を立てて閉まった! 「何!?」 暗闇が辺りを支配し、少女達の視界が一旦途切れる。 そして、次の瞬間……。 「泉さん!後ろですっ!」 慌ててみゆきの指差す方向に身体を向けるこなた。 その視界に飛び込んできたのはいくつもの鋭い眼光と、爪。 「うぐぅ!」 「こなちゃん!」 こなたは体勢が不完全だった為に大きなかぎ爪の攻撃をまともに喰らった! つかさとみゆきの間をこなたの身体が舞う。 まるでバスケットボールのように床にバウンドするこなたの身体。 「い、いきなりだねぇ~……。まだ、あいさつもしてないのに……」 軽口を吐き出すも、全身が軋んでいる。床に打ち付けられた際の衝撃だろう。 つかさがみゆきの手を引き、自分の背後に回らせる。 同時に言霊を紡ぎだし、こなたの身体を癒しの風で取り巻いた。 「思念の集合とか、ポルターガイストとか、そんなんじゃないよ?もっと、もっとすごいのだよ!」 徐々に闇に慣れてきた視界が捉えたのは、犬――いや、”狐”の群れ……。 「だね……。油断してたよ……」 最初の落下により強かに打ちつけた右肩を押さえながら、ようやくこなたが立ち上がる。 みゆきはうずくまり、頭を抱えて震え続けていた。 自らが望んでいた状況を目前にして、自分の発言と希望がどれほどの愚行であったかに気づく。 「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめなさ……」 「ううん、いいの。謝らないで。私たちも甘かったよ。ごめんね、ゆきちゃん」 必死に謝罪を繰り返すみゆき。つかさは彼女の方を揺らし、それを制す。 彼女は悪くない。彼女を連れて来た自分達が、自分達の判断が甘かったのだ。 つかさとこなた、二人で妖魔を相手取るようになってからは苦戦を強いられたことは一度たりとも無い。 そこに慢心があった。 つい先日もその慢心ゆえに危機に陥った。 「でも、やるしかないよね」 その声につかさは無言でうなずき、消えかけていたこなたの防御結界を補修する。 こなたは戦闘の構えをとり、異形の”狐”の群れを睨む。 虎や熊ほどもあろうかという巨躯。全身は灰色の毛で覆われ、眼光は生物のそれとは思えないほどに気味悪く釣り上がっていた。 耳元まで裂けた口からは、醜悪な臭いを発する涎を床に撒き散らし、じりじりと3人に近づく、”狐”。 「――――明王火炎呪!!!」 こなたの詠唱完了と共に”狐”たちの足場に炎が巻き上がった! 反応しきれない妖魔のいくつかが、その炎に焼かれ悶絶する。 「つかさっ!」 「うん!召還します。天岩戸!私たちを守って!」 ”狐”たちの頭上に突如現れた巨石は無数に砕け散り、それの一つ一つが堅く鋭利な雨となって降り注いだ。 さらに数匹が、降り注いできた礫に押しつぶされる。 断末魔が気味悪く耳に残る。 難を逃れた”狐”を更に追い込む。 こなたは得意の体術で”狐”の群れの中に飛び込むと、両の拳を巧みに振り回し、妖魔の急所を突いていく。 そのこなたを後方で援護する紫の巫女。こなたの視界の外にいる”狐”を呪縛の言霊で足止めしていた。 すると、いつの間にか、つかさの詠唱を背後で見守っていたみゆきが呟いた。 「狐狗狸さんです――」 「え?こっくりさん?」 つかさがみゆきの言葉に反応する。 「はい。皆さんが御存知の、あの狐狗狸さんです」 みゆきは本来の冷静で落ち着いた声を響かせる。 「恐らく、呼び出されたまま、儀式を中断され、憑くことも還ることも出来ず彷徨っている悪霊……。 人の我儘と傲慢から生まれ、更にそれを肥やしに生き永らえる憑き物の集合体」 みゆきは愁いのこもる目で”狐”を見つめ、自らが発した言葉を呪った。 多くの知識を持ち、賢い彼女には、現状と知識とを重ねて出た解答がいくら信じたくなくとも、事実と認めざるを得なかった。 彼女のおおらかさと優しさは、優秀な頭脳に裏打ちされた、全てのものに対する慈しみから生まれていた。 「つかささん!”あの子”たちを還してあげてくれませんか?」 みゆきの語気が強くなる。 「うん、がんばってみる!」 両手を握り締めつかさが力強くうなずく。 膝を床につけ、手を重ね、目を閉じる。そして、ゆっくりと言霊を紡ぎはじめた。 「おけー。妖魔に思念が流れ込んでるわけね。道理で生半には行かないわけだね」 こなたがにやりと笑った。 振り返りざまの蹴撃を”狐”に打ち込む。 ”狐”は大きく吹き飛び、壁にぶつかると動きを止めた。 しかし、その一匹に集中する余裕はない。妖魔たちの攻撃はやむことを知らず、次々とこなたに襲い来る。 「そ、それにしても、ちょっと強すぎるよーな気が……」 すでに、半数以上を今の攻撃で殲滅できているはず。 それにも関わらず、”狐”たちの勢いは止まらない。 こなたが、次々と襲い来る”狐”に苛立ちを感じたその時―――― こなたの視界に入ったのは目を疑う、信じることの出来ない光景。 「嘘、でしょ……」 焼かれていく”狐”から発せられる煙と、潰されて飛び散った肉片、転がる死骸が重なり、霧となって集まり始めた。 「え?うそ……」 つかさは振り向く。背後には沈黙を守る鉄筋の壁。他には何も無い。 再び向きなおしたつかさと、こなたが目にしていたのは、紛れも無く親友の囚われの姿!!! 『ふはははは。いい~女だねぇ~。それに”私達”にまで気を遣ってくれるなんて、優しいね~』 霧の中から声が吐き出された。 こなたはつかさの位置まで飛び退り、姿勢を低く構えた。 「ゆき……」 言いかけて、つかさは口を押さえる。 『少々若いが私が頂くよ?』 残りの”狐”が霧の中に飛び込んでいく。 それに従い霧はどんどん大きくなり、天井を埋め尽くすと、そのままみゆきを包み込んだ! 「みゆきさん!」 こなたが叫ぶ!しかし、その声が届きそうも無いほど霧は厚く、濃く、虜囚となった少女を飲込んでいた。 「ん~~~~~ふふふふ!いいねぇ!実に素晴らしい肉体だ!」 「そんな……」 こなたは唖然とし、床に膝を落とす。 「このしなやかな腕や足。豊満な胸部。なんともいいじゃないかい!」 目の前の”人物”がみゆきのジャージの袖を、裾を引き裂きながら悦に入る。 「暑苦しい布キレなんざ私には必要ないね。ほら、キレイだろう?小娘ども?」 「やめて!ゆきちゃんは何もしてないよ!?」 「あぁ、何もしてない。ただ、運が悪かった。実に私好みのいい女”だった”」 みゆき”だった”目の前の身体は無残にも全身をさらけ出され、中空に浮かび上がっていた。 その顔は既にみゆきのそれではない。目は釣りあがり、口は裂け、いやらしい笑みを絶えることなく湛えている。 「この乳房が実にいい!人間も進化するのだねぇ~」 二人の少女の全身に寒気が走る。 ”狐”に憑かれた”みゆき”は自らの乳房を愛おしそうに揉みしだき、淫猥な声を漏らし始めた。 「やめてよ!みゆきさんを馬鹿にするなー!」 怒りが頂点に達し、こなたが飛び上がる。 「こなちゃん!ダメーッ!」
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/784.html
こなたが、かなたの願いどおりに育っていたら ・身体の成長 「胸の大きい人は頭が悪いって言うけど、私もそれが原因でバカなのかなあ……」 「でも、ゆきちゃんは勉強できるよね」 「うん。そうなんだよね」 「羨ましいよね~。こなちゃんみたいに、背が高いのにも憧れるけど」 「うん――ところで今。つかさは私がバカっていうところ、否定しなかったよね」 「え、えっと」 ・性格 「こなた。これ貸してあげるから読んでみなさいよ」 「え? うーん。ラノベってさ、オタクっぽいイメージがあるんだよね」 「そんなこと言わないで、試しに読んでみなさいよ。アニメにもなっている人気作品よ?」 「いやいや、アニメなんて見るほど子供じゃないから」 「わかってないわね。大人が見ても感動するような名作アニメだってあるのに」 「……かがみって、私のお父さんと話が合いそうだよね。年齢は違うけど、オタク的な趣味の部分で」 ・アルバイト 「最近の喫茶店には、変わった趣向の店があるそうですね」 「ああ、メイド喫茶とか言うんだっけ。テレビで見たけど、気持ち悪いよね」 「そうですか? 何事も経験だと思い、そういった場所で働いてみようと思ったのですが」 「やめときなよ。アルバイトなんて、他でいくらでも募集してるじゃん」 「ええ。確かにそうかもしれません……」 「みゆきさんは、どうしてそんな所に応募してみようと思ったのさ」 「理由は特にないですよ。ただ、泉さんなら……たとえ冗談で言ったのだとしても、きっと――」 「きっと?」 「いえ、なんでもありません。気にしないでください」 ・記憶 「おっ? どうしたんだ、こなた。こんな夜遅くに起きてるなんて」 「お父さん……。ううん。よくわからないんだけど、目が覚めちゃって」 「そうか。あまり夜更かしはするなよ。徹夜は健康と美容の敵だからな」 「わかってるよ。でも、何かやるべき事があるような気がして……。お父さんはなんで起きてるの?」 「ん、深夜にアニメをやっているんだが、録画が失敗していないか気になってな」 「野球中継があったからね」 「ああ、時間がずれ込むんだよな。よし、折角だ。久しぶりに親子でアニメを見るか?」 「……いい。私はもう寝るね。おやすみなさい」 ・習慣 「お姉ちゃん。友達にゲームを借りたんだけど、一緒にやらない?」 「ゲームか。苦手なんだけど、たまにはいいかな」 「うん。私はちょっと経験があるから、少しだけハンデを付けるね」 「――あはは。ビギナーズラックって言うのかな。適当にやってただけなのに」 「すごい。すごいよ、お姉ちゃん。まるでプロみたい」 「…………うん」 「お姉ちゃん? どうかしたの?」 「大丈夫。なんでもないよ。こういうのにも、プロがいるんだろうかと考えてただけ。本当だよ?」 ・願い 「たぶんさ、これは私らしくないと思う」 そうかもね。 「身体の成長とかには不満があっても、他人に言いづらい趣味だからといって、後悔したことはないよ」 押し付けたりして、ごめんね。 「私こそ。希望に添えなくてごめんなさい」 いいのよ。どう成長するのかは、本人が決めるべきことだから。こなた、幸せになってね。 「……ありがとう。お母さん」 ・いま 「やっぱり、かがみはツンデレだよねー」 「違うわよ」 「ツンデレは、そうやって否定するんだよ」 「まったく。カエルの子はカエルって言うけど、どんな風に育てられたらこうなるのよ」 「そりゃあ、私の幸せを願って育てたら、こうなるんじゃない?」 「幸せを願うなら、もうちょっと違った感じに育つのを望むと思うけど」 「どう育って欲しいという希望があっても、たぶんこれで正しいんだよ。少なくとも、今の私にとっては」 「ふむ、まあ確かに……人生をやり直せるって言われても、趣味までは変えたくないかもね」 「そうそう。話がまとまったところで、いざアニメイトへ」 「って、話を逸らしたまま誤魔化すな!」
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/499.html
みゆきの急襲に、苦戦を強いられるこなた。 こなた「ぐはぁ!?何するんだよ!?みゆきさん!」 みゆき「グゥブォア…グゥブォア」 みゆきの手がこなたの首を捉えた。 こなた「ぐぎぎぎ…」 次第に強まるみゆきの力。圧倒的な力差、 自慢の技がみゆきには通じない。 「レーザーバルサミコビーム!」 どこからともなく、紫の光がみゆきの腕を貫いた。 その威力は凄まじく、硝煙を上げ、みゆきの腕が分断されている。 こなた「な、何!?」 光の来た方に目をやると、そこには2つの人影が存在した。 ツカサリオン「宇宙刑事!ツカサリオン!」 カガバン「宇宙刑事!カガバン!」 こなた「へ?」 逆光で姿が確認できないが、なんとなくメタリックの装甲を纏っているらしい。 カガバン「大丈夫?こなた!」 跳躍し、こなたを拾い上げると、再び来た道を引き返した。 ツカサリオン「こなちゃん、待っててね」 跳躍する二つの影。同時に光の剣を腰から抜く。 『レーザーブレード!』 着地と同時に2人の斬舞が始まった。必死に抵抗するみき。 目を見張る攻防の末、隙を見せたのはみゆきだった。 ツカサリオン「今だ!バルサミコインパル酢!」 カガバン「いくわよ!カガバンクラッシュ!」 夕日を背に、みゆきは爆散した。 こなた「みゆきさん!」 カガバン「アイツはみゆきじゃないわ。大丈夫。みゆきは無事よ」 ツカサリオン「ゆきちゃんなら保健室で寝てるよ。それじゃ、またね」 光に消える2つの影。空には不可思議な何かが浮かんでいた。 それから間もなくして、埼玉県警のパトカーが到着した。 ゆき「こなた!さっきの爆発!」 こなた「あぁ、ゆい姉さん…。色々凄かったよ…」 2人の戦いの痕跡はどこに見あたらなかった。 そして、空の何かも消えていた。 こなた「あ…みゆきさんだ!みゆきさん!」 ゆい「え?あ、ちょ?」 みゆきは保健室で寝息を立てていた。 ほっとするこなた。 しかし、こなたは知らなかった。 これがこれから始まる戦いの序曲であることを。 闘え!つかさ!バル酢せよ!宇宙刑事ツカサリオン!
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1094.html
―お祭り― こなた「今回はゆーちゃんも初参加ー」 ゆたか「よ、よろしくお願いします///」 つかさ(さ、最強コンビだ……) かがみ「じゃあ行きましょうか」 つかさ「お姉ちゃん帰るよ! 今回ばかりはガチで死んじゃう!」 かがみ「何わけわかんない事言ってんのよ、つかさが来たいって言うから来たんじゃない」 つかさ(あわわわわ、守らなきゃ! 私がお姉ちゃんを守らなきゃ!!) ―わたあめ― こなた「お祭りと言ったら綿飴! もふもふ♪」 かがみ「うっ……」 つかさ(ちょ、いきなりかよー!?) ゆたか「あ、お姉ちゃんちょっとしゃがんで」 こなた「え、こう?」 ゆたか「……」ペロペロ ゆたか「えへ、ほっぺにわたあめが付いてたよ♪」 こなた「ちょ、恥ずかしいよ……///」 つかさ(なんというコンビネーションアタック! 私もやば――) かがみ「…………」 つかさ「お姉ちゃん?」 かがみ「ん? ごめん、ぼーっとしてた」 つかさ(死なない……?) ―金魚すくい― こなた「あ、これやってこー」 かがみ「私はまだ前のが生きてるからいいわ」 こなた「ちょ、まだ生きてたんですか……」 こなた「よーし、とぁっ! このぉっ! えぃっ……なかなか取れないなー」 かがみ「あぅ……」シュー つかさ(こなちゃん何で一々そんな可愛い声を出すのかなー!) つかさ「お姉ちゃんしっかり! まだ逝くには早すぎ――」 ゆたか「お姉ちゃんちょっと貸して、えぃっ」 ゆたか「ほら取れたよ♪」 こなた「おぉー、ゆーちゃん凄いね」 ゆたか「コツはこうやって……」 かがみ「……してんのよ」 つかさ「お、お姉ちゃん?」 かがみ「え、いや、何でもないわ……」 つかさ(あれー? なんかお姉ちゃん怒ってる?) ―かき氷― こなた「皆でかき氷の早食いしよー」 かがみ「普通に食べなさいよ」 つかさ「頭が痛いねー」 ゆたか「……」シャリシャリ こなた「ひゃうん!?」ビクビク かがみ「ぶっ! ……どうしたの……こなた……」 つかさ(効果はばつぐんだ! って何いきなり変な声出すかなー……) こなた「氷の塊が、浴衣の中に……取って……」 かがみ「うっ……」グラッ つかさ(間に合わなかった……結局こうなるんだね) ゆたか「お姉ちゃん、ちょっとごめんね」ガサゴソ こなた「ひぁっ……ゆーちゃんもーちょい下……」 つかさ(やば……私ももうダメ……)グラッ ガシッ つかさ(あ、あれ? お姉ちゃん?) かがみ「あのガキ……」ボソッ つかさ(お、お姉ちゃん……顔が恐いよー……) ゆたか「取れたよ」 こなた「はぁー、ありがとうゆーちゃん……なんか暑くない?」 ゆたか「あれー、かき氷が一瞬で溶けちゃったよー><」 かがみ「…………」メラメラ つかさ(そっかぁ……そういう事だったんだね……) ―解散― こなた「そろそろ帰ろーか」 ゆたか「そうだね、ちょっと眠いかも……」 かがみ「……」 つかさ「……今日は楽しかったねー♪」 こなた「じゃあね、かがみ。また学校で」 かがみ「おぅ、また……」 かがみ「ねぇ、つかさ……」 つかさ「何?」 かがみ「ゆたかちゃんってさ……じゃ――ごめん、何でもない。私たちも帰るわよ」 つかさ「うん……」 つかさ(お姉ちゃんにとって、ゆたかちゃんは邪魔かも知れないけど……ゆたかちゃんが居るおかげで、お姉ちゃんは死なずに済んでるんだよね。 でも、ゆたかちゃんのせいでストレスが溜まっちゃうんなら……お姉ちゃんにとってはどっちが幸せなのかな……) ☆ みゆき「………………………………………………………………今日は質問が無く喋る機会がありませんでした。え? 居たのか? 酷いですね、ずっと居ましたのに……」 みなみ「私は……見ていましたから……」 みゆき「ありがとうございます、みなみさん」ナデナデ みなみ「いえ……///」 みなみ(今回は沢山の人を萌え死にさせることが出来た……。目標達成値まであと少し……ゆたかと泉先輩が一緒に居ることで萌え力があんなに増すなんて……。これからも二人には頑張って欲しい……でも少しだけ、泉先輩が羨ましいな……) みゆき「…………」 先日、とあるお祭り会場にて男性数人が謎の死を遂げていました。 特にわたあめ・金魚すくい・かき氷屋の店主の死に方は異常で、かき氷屋の店主に至っては血溜まりが出来ていた模様。 死因は不明。 萌え☆死に 第2萌に続く
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/910.html
ある日のこと、私はつかさがパティシエ修行をしているという店に来ていた。 「ねぇ、こなちゃん」 「ん?」 「こなちゃんはどうして、ラノベ作家になろうって思ったの?」 「ん~…ぃやぁ、話せば長くなるんだけどね?」 遡ること3年前のある日曜日。今日も書斎にこもって頭を抱えているお父さんに、コーヒーを入れてあげた。 「はい、お父さん。コーヒー入れてきたよ」 「あぁ、サンキューな。…はぁ」 「どうしたの?」 「いいアイデアが浮ばないんだよなぁ…まぁ、こなたの入れたコーヒーを飲めば浮ぶかもなハハハ☆」 「またそんな気楽なこと言っちゃって…」 親子の笑いが部屋中に響くそんな日曜日… 「ねぇ、お父さん」 私は、それとなくお父さんに聞いてみた。 「お父さんってどうして小説書いてるの?」 「ん?何でそんなこと聞くんだ?」 「だって最近アレでしょ?…売れ行きがかんばしk」 「待て待て待て!それ以上言っちゃいかーん!」 …あぁ、図星だなこりゃ。必死の形相で泣き叫んでるから余裕じゅした。 「…そうだな」 ふと、お父さんが口を開いた。 「こんな小説でも、読んでくれる人がいるから…かな」 「え?」 読んでくれる人がいる?…まぁ、いるんだろうな、多少は売れてるんだから。 「いいか、こなた。これだけは覚えておいてくれ」 「ん?」 「小説なんてのは金稼ぎの道具じゃない。読んでくれる人がいるから書くものなんだ」 うーん、お父さんが言っても説得力ないって言うか…。 まぁ、口に出したらお父さんがショック受けちゃうだろうから言わなかったけど。 「どんなに立派な文豪でも、生活費を稼ぐのには苦労してた。だけどその人の作品を読んでくれる人はいっぱいいるだろ?それと同じでな、父さんも金のためじゃなく、読んでくれる人のために小説を書こうと思った」 さらにお父さんは続ける。 「まぁ、ようはどんな人間でも何かしらの形で必要とされていたり、愛されてたりするってことさ」 そうか…お父さんも何かしらの形で愛されてたんだ。 その、読んでくれる人の中にはきっと、お母さんもいたんだと思う。 お父さんの書く小説は、登場人物に感情移入できるのが売りなんだそうだけど、まさかそんな大した文を書く人がロリコンのエロ親父だとは思わなかっただろうな~。 あ、いやいや、勿論言わないよ?言ったらお父さん大泣きしちゃうだろうから。 何はともあれ、こんなお父さんの書いた作品でも読んでくれる人がいる。 読んでくれる人がいるからお父さんはそれに応えようと小説を書いてる。 今…ちょっとだけ、お父さんの背中が大きく見えたような気がした。 ちょっとだけ、ね…。 「…お父さん」 「なんだ?こなた」 「私、決めたよ。お父さんのような作家になる」 「こなっ!?」 驚きのあまりイスから転げ落ちるお父さん。そりゃ当然だよね。 「私ね、こっそり雑誌に投稿してるんだ。評価もそこそこでね、こんな私の文章でも読んでくれる人がいるんだってわかったんだ。だからね、私作家になろうと思うんだ」 「…そうか」 と言いながらお父さんは立ち上がると、 「そぉかそぉか、それでこそ俺の娘だ~」 とか叫びながら、勢いよくほお擦りしてきた。…あの、不精ヒゲが当たって痛いんですが。 「ま、お前の人生だから、俺がどうこう言える立場じゃないな。こなた、お前はお前の道を行きなさい」 「うん、ありがとう、お父さん」 そして現在…。 「…とまぁ、そういうやり取りがあってさ」 「そうか、それでこなちゃんはラノベ作家になったんだね」 「ま、半分はお父さんの影響だったこともあるんだけどね…今はバリバリ売れまくりだけど、あとで売れ行きが落ちたときが心配なんだよね…」 「でも、私はこなちゃんの作品好きだよ?」 「え?」 「だって、こなちゃんの作品ってキャラが立ってるっていうか、頭の中に画が浮かんでくるっていうか、読んでるだけで夢中になれる気がするの。だから私、こなちゃんの書くラノベ、好きだな。お姉ちゃんもこなちゃんの作品は好きだって言ってたみたいだよ」 そうか、読んでくれる人はこんなに近くにいたんだ…。 こんなオタクの私が書くラノベだって、読んでくれる人たちがいる。 だから私は…読んでくれる人たちのために、ラノベを書き続けていこうと思った。 私がラノベ作家になった理由。 それはいたって単純な理由だけど、いたって大切な理由。 そう…読んでくれる人たちがいるから。
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/1653.html
蒼い月の夜~Lady in blue~ 雲がどんよりと空を覆った、6月末の蒸し暑い夜9時半。私は部屋の窓を開けて机に向かっていた。期末試験まではまだ少し間があるけど、私は今週末中にこの『人間と社会Ⅰ』のレポートを書き上げてしまわないといけなかった。期日そのものまではもう少し期間があるのだが、スケジュールの都合上、今のうちにやってしまわないと時間が取れそうにない。かと言ってもう少し早く書けばよかったのかというとそうでもない。 しかし、今になってみると、あと1日でも早く書いておけばこんなことにはならなかったのに、と思う。うっかりにもほどがある。レポートを書き終えて印刷したはよかったが、まさか最後にホッチキスの針がなくなっているなんて。普段そんなところチェックしてるわけないじゃない、と自分自身を擁護してみたり、まあホッチキスくらい明日でもいいんじゃないの、と言い訳をしてみたりもした。 しかし、今を逃すと買いに行けるのは明日の夕方だ。というのも、専門学校は”空きのコマ”というものがなく、90分の授業を1日4つ、毎日コンスタントにこなしていかなくてはいけないからだ。そのうち半分以上は調理実技なこともあって、これは意外に疲れる。お姉ちゃんの大学のように空いている時間があれば、そこでしっかり休むこともできるのだが。 それでも、お姉ちゃんは名門大学の法学部に通う大学生だから、あまり知られていない専門学校に行く私のような双子の妹がいるとは、誰にも思えないだろう。高校生の頃までは成績の差はあれど、なんとか同じ高校にとどまれていたが、こうして人がそれぞれの然るべきところへと収まると、またお姉ちゃんとの差を感じてしまう。お姉ちゃんは、私と違って、賢いから。 このレポートを明日以降に回せば、私のことだからどうせ忘れるのだろう。そんな間抜けな自分自身をよくわかっているからこそ、思ったときにすぐ行動できるようになったとも思う。ゆきちゃんやこなちゃんが私にアドバイスしてくれたことが、未だにこうして生きている。ちょっとコンビニ行ってくる、とお母さんに告げると、私はこの春に大学に入るときに買った真っ白いノースリーブのワンピースだけで、財布と携帯電話を持って家を出た。外は真っ暗で、街灯だけが私の進む道を照らしている。 コンビニまでは歩いて15分ほど。こんな格好だからこそ、わずかに夜風が吹いているのがわかった。でも出来れば知ってる人には会いたくないかな。コンビニに行けば中学校の時の同級生がアルバイトなんかしてるかもしれないけど。 私はもともとコンビニの深夜営業には疑問を持っていたのだが、いざこうして自分がその必要性に迫られてみると、その便利さがわかるような気がした。高校生の頃までは夜9時に寝ていたのだから、その便利さなど実感するはずがなかったのだ。もっとも、今でも10時半に寝ているのは、まつりお姉ちゃん曰わく世間一般では「だいぶ早い方」らしい。私が何時に寝ようが起きようが、コンビニはこうして24時間営業している。深夜でもフリーターや大学生は働こうとするからこそ、そんな無茶が出来るんだ。そういえば同級生にもコンビニで働いてる人がいたような。 ああ、あったあった。ホッチキスの針。あと、久しぶりにVAN HOUTENの冷たいココアでも買おうかな。ちょっと粉っぽいところが大好きだ。あとは、夜食でも買って帰ろうか? いやいや。365日年中無休でダイエット営業中のお姉ちゃんの前でこんな時間に夜食なんか食べるべきではない。今は我慢しておこう。 ふと店内のバック・グラウンド・ミュージックに耳を傾ける。普段はラジオなんか流しているような気がするのだが、今流れている曲はほんわかしていて、歌っている声が可愛らしく、聴いていてとても心地が良い。“いらっしゃいませ 私のこころに探しているのはなんですか? ” 私はただホッチキスの針を買いに来ただけなのだけれど……もっと違ったもの、ここにしかないようなものを求めて、このコンビニにやってくる人もいるのだろうか。 ありがとうございましたー、という抑揚のない夜勤の店員の声を聞きながら、私がコンビニを出ようとしたその時、すれ違いざまに入ってきた長い髪の女性。 「あやちゃん?」 「……ひーちゃん?」 それは、私の、そしてお姉ちゃんの長年の友人である、峰岸あやのちゃんだった。 「どうしたの? こんな時間に」 「うん、ちょっと、レポート書いてる途中に、要るものがあってね。あやちゃんは?」 「私もおんなじような感じ。履歴書と雑誌買おうと思って」 「履歴書? アルバイトするの?」 「うん、前期の間は全然働いてなかったから、正直お金なかったしね。自分のお金くらい自分で稼がなきゃ、と思って」 「へぇー、すごいなぁ」 あやちゃんが店内に入っていこうとするので、私もそれに付き添って店内に戻る。あやちゃんはnon-noの最新号と(毎号買っているわけではないらしい)、アルバイト・パート向けの履歴書セットをすぐにレジに持って行った。私はnon-noもan anも嫌いじゃないけれど、どちらかと言えばオレンジページとか、NHKきょうの料理とか、そっちの方が読んでいて楽しいような気もする。私の本棚の比率で言えば2対8くらいかな。あやちゃんは着飾る相手がいるもんね。みさちゃんのお兄さんらしいけど。 「待たせちゃってゴメンね、行こっか」 あやちゃんがレジから戻ってきた。雑誌と履歴書のせいで、ビニール袋が若干伸びている。乗ってきたのであろう自転車の前かごにそれを放り込んで、あやちゃんは自転車を押して歩き出した。 「最近どう? メールしてても全然会わなかったけど」 「うん、楽しいよ。朝から晩まで食べ物ばっかり扱ってる。たまに一般教養の授業とかがあるけど……今一番大変なのは、フランス語かな」 その言葉自体に偽りはなかった。友達もできたし、毎日学ぶことはたくさんある。それに自分の進学、選択には後悔もしていない。なのに、私はそんな自分自身が、ひどく……空元気を出そうとしているのではないかと思うことがたまにある。自分自身を慰めようとしているのか、正当化しようとしているのか。 私がそれをどんな時に感じるのかといえば、大抵の場合、自分の姉(特に双子の姉・かがみお姉ちゃんだ)や、陵桜学園の同級生の話を聞いた時だ。 「そっか。ひーちゃんも楽しんでるみたいで、よかった」 「あやちゃんは楽しくないの?」 「楽しいよ。陵桜もマンモス校だったけど、大学はそれよりももっともっと人が多くって大変。学部もたくさんあるしね」 「そうなんだ……すごいんだね、大学って」 「どうしたの? ひーちゃんだって自分のやりたいこと見つけたじゃない」 「そうなんだけどね。なんか最近、みんながうらやましくなってきちゃって」 そこまで言った頃、ちょうど私の家のすぐ近くまで来ていたので、私は境内にあやちゃんを案内した。私が小走りで石段に駆け寄って座り込むと、あやちゃんはゆっくりと自転車のスタンドを立てて、私の隣に座った。 私たちにとって、この境内は何年も前からずっと慣れ親しんできた場所だ。どのあたりに木の根が出ていて、どのあたりに大きな石が露出しているのか。そんなことも、私たちはよく知っている。そして、お姉ちゃんもそうだ。私たち4人の姉妹だけでなく、あやちゃんたちも、この境内で一緒に育ってきたのだ。今でこそ4人はバラバラの進路になってしまったが、私たちはついこの間までの6年間、一日も欠かすことなく毎日同じ学校に通ってきたのだ。 「あやちゃんは、みさちゃんがうらやましくないの?」 「なんで?」 「うーん、わかんない。でも何となく。みさちゃんとか、お姉ちゃんとか」 「そんなものかなぁ。みさちゃんは確かに素敵だけれど、みさちゃんはみさちゃん、私は私だもん」 私はあやちゃんから視線を外して、空を見上げてみた。まだ雲が空にかかっているけれど、その雲の裏側が青白い光を放っている。 「ねぇひーちゃん」 「なに?」 「私はね、まだまだ自分のことを月だと思ってるの」 「月?」 「うん。みさちゃんっていう太陽がいてくれたおかげで、今まで輝いてこられた月。いつも元気で私を引っ張ってくれたみさちゃんがいなきゃ、私は一人じゃ何も出来なかったと思う。私が落ち込んでる時も、みさちゃんは空気も読まずに私の肩を叩いて元気づけてくれたしね。みんなが腫れ物に触るように私を扱っている時でも、みさちゃんだけは私の心の奥深くまでやってきて、光をくれた……だから、私は何となくひーちゃんが悩んでいる理由も分かる気がする」 「そう、なんだ……」 「うん。でも、今になってやっとわかったのね。私とみさちゃんはずっと親友だけれど、目指してるものが違う。だから進学先も違うし、得意なことも勉強してることも全然違う。大学生にもなったらそれが普通だし、それが自分たちのあるべき姿だって、もう分かるけど」 「私とお姉ちゃんも、目指してるものは全然違うよ?」 「そう。だからそれぞれを測る物差しを換えなきゃいけないところまで、私たちはもう来てるのよ。もうみんなが同じように数学とか日本史とかやってるわけじゃないしね。私たちがどんなに頑張ったって、法学部の彼女に、例えば法律のことでかなうわけないわ。でもひーちゃんはお料理のことをもっとたくさん勉強してるでしょ? ならそれで充分よ。」 「そんなものかなぁ」 「少なくとも私は、そう思うよ」 境内は静かだが、時々通る東武鉄道の音がここまで聞こえてくる。ここは薄暗いけれど、東武の鷲宮駅の方向はそれなりに明るい。 よく山奥に行ったりして、びっくりするくらい人気がなかったり、物音がなかったり、まったく人間の生活感がないという体験をすることがある。でも、そんな人里離れたところに行かなくたって、街のど真ん中から少し外れただけで、こんなに静かな場所があるのだ。私たち人間はつい目立つものや人の集まるものに気を取られてしまうことが多々あるけれど、実はそんなもののすぐ近くの、私たちが普段気にもとめないような物陰に、また違った幸せや人生の形が転がっているんじゃないか。そんなことを思った。 有名大学の法学部というひとつの幸せがお姉ちゃんだとするならば、自分が本当にやりたいことをやるために陵桜では珍しく専門学校に進学したのが私だ。そんな私の感じる幸福は、ひょっとしたら日陰の幸せだと、周りの人たちは言うかもしれない。お姉ちゃんが持っている幸せほど、みんなが無条件で共感してくれることでもなければ、分かりやすくもないかもしれない。それでも、私は今の自分が幸せだと、自信を持って言えるような気がしてきた。 幸せの物差しは、一つじゃない。 当たり前だと言葉では知っていたことを、やっと本当に分かったように思えた。 「つかさ、もう帰ってるの?」 家の方からお姉ちゃんの声がした。私の帰りが遅く、境内から物音がするから出て来たんだろう。 「今帰ってきたとこだよ。心配かけたかな?」 「心配するわよ、1時間半も帰ってこなかったら。あれ、峰岸?」 「ごめん、お邪魔してるね。もう帰るよ」 「わざわざ送ってきてくれたのね、ありがとう」 「ううん、たまたまコンビニで会ったから着いてきただけ」 「そう。じゃあ、そういうことにしとくわ」 「そうしといて。じゃあ、おやすみ」 あやちゃんは自転車に乗って、夜の鷲宮の住宅街へと消えていった。長い付き合いでも、彼女から学ぶことはまだまだたくさん残っているようだ。 今度一緒にケーキでも焼こうかな。私ひとりじゃ出来ないようなものでも、あやちゃんとなら作れそうな気がした。 お姉ちゃんの誕生日に、誰よりも素敵なプレゼントをあげる。それもまた、私が学んでいることを活かすひとつの形なのかもしれない。 (おしまい) コメント・感想フォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/756.html
FILE.5 「えっ!?」 「そ、そんな……!?」 みさおの指差した人物を見て、二人は驚いた 「……!!」 「ちびっこを、あやのを殺した犯人はアンタだ! 柊つかさ!!」 差された本人、柊つかさは数瞬、硬直し、 「じょ、冗談はやめてよ! 日下部さん!」 「冗談なんかじゃない。私はいたって真剣だ」 つかさのこめかみがピクリと動く 「で、でも、日下部さん自分で言ってたじゃない! 私は犯人じゃないって!」 「そうよ!」 つかさの言葉に反応し、かがみもみさおに反論する 「私だって聞いたわ! こなたが殺されたのは、つかさがお風呂に入ってる時だって、アンタ言ってたじゃない!」 「わ、私も確かに聞きました!!」 みゆきも加わり、みさおは完全に孤立してしまった しかし、その瞳は死んではいなかった 「……妙な話だな。その話をしてた時、つかさはその場にいなかったはずだぜ?」 「!!」 「その時は確か、つかさは部屋で眠ってたはずだよな。なんでその話を知ってるんだ? 気絶したふりをして、私達の話を二階からこっそり聞いてたんだろ?」 その言葉に、つかさは何も言い返さなかった。何も言い返さず、ただ立ち尽くしていた 「で、でも、つかさには、峰岸を殺す理由がないじゃない!!」 かがみの言う通り、ほんの数日前まで、あやのとつかさは会ったことすらなかった 昨日今日で恨みを持つようなハプニングなど、起きるはずがない 「これは私の推測だけど、あの時本当は、私が殺されるはずだったんだと思う」 「日下部が……?」 「ああ。二階でこっそり私達の話を聞いていたアンタは、私がちびっこの部屋を調べると言った時に相当焦ったはずだ。 だからアンタは、部屋の前で待機していたんだ。私が部屋から出てきた瞬間に殺せるよう、ボーガンを持って」 「……」 つかさはなおも、その場に立ち尽くしている。加えて、目の焦点が定まっていない。明らかに動揺している 「だが、そこであやのが出てきたんだ。多分、トイレに行くためにな。顔を見られたと思ったアンタは、トイレから出てきたあやのに向けて……」 「……で、でもまだ、私が、犯人だって、いう証拠が、ないよ? 全部、日下部さんの、推測だよ……」 恐怖か焦りか不安か、呂律が回らないようだ。言葉が途切れ途切れになる だがみさおは、追撃の手を休めなかった 「証拠ならあるぜ」 「!!」 「とりあえずみんな、つかさの部屋に移動してくれ」 三人に背を向け、階段を上っていく その後を追うように、かがみが、みゆきが、そしてつかさが階段を上る 「まず、密室殺人のトリックから説明しようか」 つかさの部屋の前で三人に振り返り、ドアノブに手を掛け、開く 「殺すのは、簡単だろう。二人は親友だったからな、油断しきったちびっこの首元めがけ、隠し持っていたナイフを刺した」 「う……」 こなたの変わり果てた姿を思い出したのか、かがみは反射的に口元を覆った 「そしてつかさ、アンタは頑丈な紐のようなものをちびっこの部屋の鍵に引っ掛けて、この穴からこっちの部屋に通した」 「穴……って?」 「そっち側の部屋にはないかもな。こっち側はそれぞれの部屋を隔ててる壁全部に穴があるんだ」 みさおは一つの穴を指差し、かがみにそれを見るよう促した 恐る恐る見てみると、飛び散った血液に残る線のような跡を見つけた 「その跡が、このトリックを使った証拠だ。自分の部屋に戻ったあと、この紐を引いて鍵を掛け、そして切った。残った紐は、私達がちびっこの死体を見て慌ててるうちに回収したんだろう」 「で、でも!! そんなテグスを使ったトリック、私がお風呂に入ってる間なら、だれでも出来たよ!?」 「いつお風呂からあがるかわからないのに、そんな危険を冒してまでつかさを犯人に仕立てあげる必要あるか?」 「でも!」 「……あら? ちょっと待ってください」 何かに気付いたのか、みゆきが突然、手を挙げた 「日下部さん、今までの推理でテグスなんて言葉、使いましたか?」 「いや? 覚えが無いけど?」 「!!」 つかさは拳を握りしめ、唇を噛み、ただ地面を見つめていた 「自爆、だな。誰がテグスを使ったトリックなんて言った?」 「……そ……それは……そ、そこの工具箱に、テグスが入ってたから、それを使ったのかな、って……」 つかさの言葉を無視するかのように、みさおは窓に向かって歩いていく 「そして、この窓の下に証拠がある。それが、アンタの一番の失敗だ」 窓を開け放ち、持っていた懐中電灯で地面を照らす 「雪……?」 「ああ、私もさっき気付いたよ。そしてアレを見てくれ」 みさおは地面に落ちていた、あのボーガンに懐中電灯を向ける 「あれは……ボーガン、ですか?」 「そうだ。護身用なのかは知らないけど、全部屋のベッドの下にあったよ」 「!!」 かがみは急いで部屋のベッドの下を覗き込む が、そこには何も存在していなかった 「そう、そこには何もない。あやのを殺した後、外にぶん投げたんだ。全部の部屋にボーガンがあることも、もうこっち側の部屋には私とつかさしか残っていないことも知らず」 つかさは手で自分の胸を差し、言い返す 「だからって、私が捨てた証拠にはならないよ!」 「そうよ! 私達が来る前から落ちてたかもしれないじゃない?」 「残念だけど、それはないと思うぜ?」 今度は懐中電灯を林に向け、みゆきに尋ねた 「高良、こういった片方に雪がべっとり付いた木から天候とかわかるか?」 「あ、はい。おそらく、吹雪いていたと思います。風も強かったのでしょう。雪が強い風に乗って吹くため、片方に雪が集中したのでしょう」 「吹雪、ね。じゃあ、これを見て何か感じないか?」 再び懐中電灯を雪の上のボーガンに向けた それを見て少し考え、そしてつぶやいた 「……かがみさんの意見は、通用しませんね。はじめから落ちていたなら、普通ボーガンは雪の下に埋まるはずです」 「あ!」 「……」 「そういうことだ」 みゆきまでも、疑いの眼差しでつかさを見始めた 「あやのの部屋からつかさの部屋の方に投げたってことも考えたけど、私はちびっこの部屋にいたんだ。私がそれを見る可能性を考えると、危険すぎる」 「で、でも! やっぱりつかさには無理よ!」 「……ところで柊、なんでさっきからつかさをかばってるんだ? 言っとくけど、『妹だから』なんて理由なら私は認めない。柊はただ、つかさが犯人だと認めたくないだけだろ!?」 「!!?」 ものすごい形相でかがみをにらみつける 同情だけで妹をかばうかがみに、相当の怒りを感じていた 「ち、違うわ! だってアンタ、言ってたじゃない! 『つかさがお風呂に入る前に、こなたと話してた』って!」 「そ、そうだよ」 横を見たかがみの背筋に悪寒が走った つかさが、笑っている。ただその顔は、普段からは想像もできないほどドス黒いものだったのだ そのつかさを、みさおはポケットに手を突っ込んだ状態でじっと見つめていた 「私は確かに、二階でみんなの話を聞いてたよ。それは認める。ただ私が行ったら、みんなが心配するだろうから降りなかっただけ その時、日下部さんは確かにこう言ったんだよ? 『お風呂に入る前、私はこなちゃんと話していた』って」 みさおはポケットに手を突っ込んだまま目を閉じ、一言 「ああ、確かに言ったよ」 「でしょう!? その日下部さん自身の言葉が、私が犯人じゃない証拠じゃ……!」 「私はちびっこの声を聞いた憶えはないけどな!!」 「!!」 目を見開き、つかさをにらみつける 怯んだのか、つかさは身体を震わすも、まったく動くことができなかった 「どういうこと!?」 「人間の記憶っていうのは曖昧なんだよ、柊」 みさおは顔だけをこなたの部屋に向け、 「つかさがドアをノックした時、本当はちびっこの声は一切しなかったんだ。つまり、この時にちびっこが生きていたと言い切ることはできない。これでつかさのアリバイは崩れた」 「でも、日下部に聞こえなかっただけで、つかさには聞こえ……」 「もういいよ、お姉ちゃん」 声がした方向を見ると、つかさが地面に座り込んで、深いため息をついていた そしてその行為は、その発言は、自分が犯人ですと言っているようなものだった 「日下部さんの推理は、全部当たってるよ。峰岸さんを殺した理由も」 「いいのか? まだ柊がしたような言い逃れは出来たぜ?」 「ううん、いいの。お姉ちゃんの必死な顔、見たくないもん。それに、あの距離で日下部さんだけが聞こえてないっていうのはおかしいし」 つかさのその言葉にかがみは絶望的な気分になった 信じていたのに。つかさは犯人じゃないと、信じていたのに! 「教えてくれ、つかさ。この事件は、前から計画してたのか?」 「ううん。この屋敷に着いたのは、まったくの偶然。最初はこの田舎の空気に癒してもらおうと思ってたんだけど……穴とか、テグスとか見た時に、全部思いついたの」 「……じゃあ、もう一つ。つかさは気絶したふりをして、二階からこっそり話を聞いてたと思ったけど、なんで一回戻ってきたんだ?」 「さっきの言葉とだいたい同じ。お姉ちゃんの辛い顔、見たくなかったから」 絶望にうちひしがれるかがみの横で、みゆきは悲しそうな視線でつかさを見つめた 「つかささん……なぜ泉さんを……? お二人は……親友ではなかったんですか?」 「親友だったよ。親友だったからこそ、憎かった。ゆきちゃんも、お姉ちゃんも」 つかさは立ち上がり、ベッドに腰掛けた 「こなちゃんは足が早いし、お姉ちゃんは勉強ができるし、ゆきちゃんはそれに加えてスタイルがいいよね。 でも、私にはなんの特技もない。みんなに迷惑をかけてばかり……。みんなが羨ましくて、そして、憎かった」 「だから……殺したのか?」 みさおが上からつかさを見下ろす。先ほどつかさに向けたものとは違う、憐れみの眼差しで 「ううん、違うの。死ぬのは、私だけで充分だった」 つかさはゆっくりと、右腕の袖を捲り上げる 「!!」 「う、嘘……!」 その手首には、何かで切ったような、生々しい傷跡が残っていた 「つかささん、まさか!?」 「そう、リストカット。他にもいろいろやろうとしたよ。校舎の屋上から飛び降りようとしたり、自分の首に包丁を突き立てようとしたり。生きていくのが、辛かったから。……でも、出来なかった。死ぬのが、怖かった」 ……なぜ? なぜ自分は、こんなにも辛い思いをしている妹を、わかってあげられなかったのか? かがみはただひたすら、自分を責め続けていた つかさは袖を下ろし、今度は左手を胸に当てる 「それで、思ったんだ。みんなが向こうで待っててくれたら、すんなり死ねるんじゃないかって。ゆきちゃんとお姉ちゃんを殺したら、私もすぐに死ぬつもりだった」 今度は立ち上がり、窓辺へと歩きだす 「でも、私バカだね。人を殺した私は、天国へ……こなちゃんと同じところへは逝けないのに……なんてことをしちゃったんだろ……」 「つかさ……」 それから少しして、つかさの啜り泣く声が聞こえてきた 自分がしでかしたことに、深く後悔しているのだろう。それで二人が戻ってこないことは、充分理解しているのに、涙が止まらなかった 「みんな……ちょっと、部屋から出てくれないかな……?」 「……わかったわ。みんなで広間にいるから、落ち着いたら来なさいね……」 そして三人は、ゆっくりと、つかさの部屋を後にした 「……なあ、なんか変じゃね?」 部屋から出てすぐ、みさおがそんなことを言ってきた 「何がよ?」 「いや、まだ夜中だけど、だいぶ明るいんじゃねえかって思ってさ」 「そういえばそうですね。それに、少し暑いような……」 加えて、メラメラという音も、微かに聞こえてくる 「――まさか!!」 かがみは走り、階段の上に出た 「うわっ!?」 「やっぱり……!」 あちこちから火の手があがっている。――火事だ! かがみは元来た道を引き返し、つかさの部屋のドアノブを回す が、なぜか開かない。中から鍵がかかっている! 「つかさ! 火事よ! 早く逃げないと! ……つかさ!?」 ――ゆきちゃんとお姉ちゃんを殺したら、私もすぐに死ぬつもりだった―― 「――! つ、つかさ! あんたまさか!?」 「言ったはずだよね。私は死にたかったって」 そのつかさの声は、震えていた 死ぬのが怖かったと、さっきつかさは言っていた。だとすると、今もつかさは恐怖を感じているに違いなかった 「時限式の発火装置を作っておいたんだ。逃げられないなら、確実に死ねるでしょ?」 「バカ! いいからドアを開けなさい!」 「そうです! 今ならまだ間に合います!」 かがみとみゆきが必死に説得を続けるも、つかさはまったく出てこようとはしなかった 「私は、みんなに迷惑を掛けたりしたくないの! それくらいだったら、死んだ方がマシだよ!」 「迷惑なんかじゃない! 私達にはつかさが必要なのよ!」 「私達は、親友ではなかったんですか!?」 「……二人なんかに、私の気持ちはわからないよ!」 「なんですって……」 言い掛けて、みさおの手がかがみの肩に伸びた 「柊、高良! これ以上は無理だ! このままだとみんな死んじまう!」 「!」 「私はつかさとちびっこをよく知らない! だから、二人には生きてもらわなくちゃいけないんだ! ちびっこ……いや、こなたとつかさが生きた軌跡を、失わないためにも!」 みさおはかがみの目を見たまま、動かない。決断を迫っているのだ かがみは拳をにぎり、唇を噛みしめ、 「……つかさ、ごめん! あんたのこと、一生忘れないから!!」 それだけ言うと、かがみは大粒の涙を流しながら燃え盛る屋敷を駆けていく 振り返らない。振り返ると、別れが一層辛くなる。かがみはただ、前を見て走る 「ハア……ハア……つかさぁ……」 屋敷から出て、入り口手前の草むらで自らの膝に手を置き、体重を預ける あふれ出る涙を拭おうともせず、ただただ妹の名前を呟いていた 「ハア……ハア……ん?」 その後を追ってきたみさおがあたりをキョロキョロと見回した 「お、おい! 高良がいねぇぞ!?」 「……え……!?」 ・・・ 「……こな……ちゃん……」 フラフラになりながらも、つかさはこなたの部屋に歩いてきた。流れた涙がベッドに落ちてシミをつくる そしてつかさは、もう動かないこなたの身体を抱き上げた 「ごめんね……こなちゃん……! うう……!」 深い後悔の念を抱きながら、こなたの身体を強く抱き締めた その時―― 「つかささん!」 「ふぇ!?」 よく聞きなれた声が、つかさの耳に届いた ドアをぶち破って入ってきたその人は、高良みゆきだった 「ゆきちゃん! なんで戻ってきたの!? ここにいるとゆきちゃんまで……」 「つかささんを一人にするなんて、私にはできませんから」 みゆきはつかさに向かって、ゆっくり歩きだす 「でも、私は二人を殺したんだよ!? 一緒に焼け死んだって、同じところに逝けないよ!」 「でしたら……」 「……え!?」 みゆきの左手に視線を落とすと、そこには銀色に光るモノが…… 「私が今ここでつかささんを殺せば、私も地獄に行くことになります。それなら……私達は一緒ですよね?」 微笑みながら、つかさの隣に座る 「……いい、の……?」 「はい。親友の――つかささんのためなら、この身体を血に汚しても構いません。……いいですか?」 つかさは、自らのためにここまでしてくれる親友に涙しながら、ゆっくりと頷いた そして、深く息を吸い込むと、みゆきは左手に持つソレを――ナイフを、つかさの腹部に突き刺した 「かは……!」 血にまみれたナイフを抜いた時、つかさの血が、みゆきの身体をも赤く染め上げる バランスを崩したつかさの身体は、みゆきの腕によって抱き抱えられた 「ご、ごめん、ね……ゆき、ちゃん……。最後まで……頼って、ばかり、で……」 「いいえ。私だって、つかささんに何度も助けられてきましたから」 「あり、がと……ゆき、ちゃん……。向こうに……行って、も……親友で……いよ……う……ね……」 つかさはフーっと長い息を吐き、今までで最高の笑顔を親友に向けると、それきり動かなくなった 「……もし生きているのが私ではなく、泉さんだったとても……私と同じ選択をしたでしょうね……」 みゆきは動かない二人の顔を撫で、そしてつかさを殺めたナイフを自分の首元に向ける 「私のやっていることは……間違っているのでしょう……。それでも、私は……」 目をつぶり、深く深呼吸をして、手の中のナイフを、思い切り振りかぶった ――さよならです、かがみさん、日下部さん。どうかお二人は、途中で道を踏み外さないでくださいね―― ・・・ 「日下部! 離してよ!」 「離さねぇ! 絶対に行かせるもんか!!」 燃える屋敷に走ろうとするかがみの身体をみさおが羽交い締めにしていた 「離して! みゆきが死ぬんなら、私も死ぬ!」 「ヴァカっ!! 高良がなんで残ったのか、わからねぇのか!?」 「!!」 必死に抵抗していたかがみの動きが止まる 「あいつはつかさを一人にさせないために……私がさっき言ったこと全部を柊に任せて、つかさと一緒に死ぬことを選んだんだ!」 「……そんなの……みゆきの勝手よ! なにがなんでも、私はあそこに行く!」 「ぐあ!!」 みさおの身体を押し退け、かがみは屋敷に走りだそうとしたその時、 「おい、ひいら……!!」 「!!」 屋敷が 音を立て 二人の目の前で 崩れ落ちていった 「いや……いやーーーーーーーーーーーー!!」 地面に座り込み、頭を抱えて泣き叫ぶかがみの顔を、みさおは黙って見つめていた その瞳を、わずかに潤ませながら――
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/454.html
青葉生い茂る峠道を、一台の二人乗りバイクが走っていた。 6月になったばかりで、空高くから太陽が二人を照らす。 400ccの中型バイクは、カーブを器用に曲がりながら徐々に高度をま増していく。 バイクを操るのは日下部みさお。そして後部座席には、あやのがまたがっている。 二人ともフルフェイスのヘルメットをかぶり、薄めのジャンパーを着込んでいた。 この格好では一見して性別は分からない。 途中、別のバイクと刷れ違う事がある。ライダー達は、同じくライダーであるみさお達に対して挨拶をすることがあるのだ。 自分の挨拶している相手がまさか、女性であるとは多分思っていないだろう。 挨拶の仕方は様々だ。 あるライダーはピースをし、あるライダーは敬礼をする。 あやのはそのライダー達に対して、礼儀正しい会釈で返していた。 「あやのー!あんまり動かないでくれよなっ、結構揺れるんだぜ!?挨拶するなら片手を上げたりするもんだぞ!」 「ごめんね、次からそうするね!」 強い風に当てられて、自然と声は大きくなる。 風が涼しい。 山が都会に比べて、季節の廻りがゆったりしている事を感じさせる。 標高が高くなるごとに、季節が逆転していく様だ。 二人にとって、これが生涯で19回目の夏だ。この夏に、あやのの結婚式が開かれる。 式が開かれるのは明日だ。 相手はみさおの兄。すで籍は入れてある。だから二人は正式な夫婦だし、あやのの苗字も峰岸ではなく日下部になっている。 19才。 まわりからは、結婚するには、まだ若いと言われる。しかしみさおにとっては、これでも遅く思える程だ。 二人がそれほどに仲が良かったからだ。 バイクは山の奥へ入り込んでいく。人の気配は無く、少し薄暗い山道。 枝葉が作るトンネルをくぐれば、とてもまぶしいその場所にたどり着く。 そこは清流だった。 バイクはそこを少し下り、充分な広さを持つ河原へ降りる。 バイクを停めて、スタンドを降ろし、ヘルメットを脱ぐ。 二人は伸びをした。 「くあー、着いたぁー。」 「みさちゃんご苦労様。キレイだね。あっ、ほら、カッコウが鳴いてるよ。」 「きゅー、それよりお昼ごはんにしようぜ?お腹すいたよ。」 「そうね、そうしようか。」 6月とはいえ、山の中だからなのか少し涼しい。二人とも強い風に当てられていたため、体はやや冷えていた。 あやのがリュックから魔法瓶を引き出す。その中の味噌汁を器に移すと、はっきり白く見える程、たくさんの湯気が立ち昇った。 あやのは稲荷寿司と味噌汁と、卵焼き等の弁当を用意していた。二人は自分のペースで食事をする。 「久しぶりだよな。二人で弁当を食べるのって。」 「うん、そうだね。高校の時以来だもん。」 「あの時、いっつも柊は隣のクラスに行っちゃってたよな。私、あれはさみしかったなー。」 「でもそのお陰で二人だけでいられる時間が増えたのよ。」 「むー。ものは言い様だよな。」 「もう、みさちゃんてば。でも私は二人でも楽しかったなあ。」 「アハハ、まあなっ。そう言えばあやの、昔ここに来たときの事、覚えてるか?あやのがこんな所に来たいって言ったんだからな。」 「あの頃は小さかったし、ぼんやりとし覚えてないけどね。でも少しは覚えてるよ。夏だったよね?」 二人がここに来るのは初めてではない。 幼稚園に入ったばかりの夏休み。二人と二人の家族は、夏の思い出に、と出掛ける事にしたのだ。 それでやって来たのがここであり、その時はバーベキューなどをした。 「そうそう、それであやのが迷子になるんだよな。」 その時の事件は、バーベキューの片付けの最中に起った。気が付くとあやのの姿がなかったのだ。 一時間もの間見付からず、溺れた可能性も考えて警察に連絡しようかと言う頃に、あやのは見付かった。 「そうだったね。誰にも話してなかったけど、私、あの時不思議な体験をしてたのよ。」 「えー?どんな不思議体験?言ってみな。」 「うん。私ね、あの時、岩の隙間に落ちてたの。暗くて狭い岩の中で、その時の私はずっと一人ぼっち。すごく不安で、すごくさみしかった。 もう不安で不安で、このまま家族において行かれて、ずっと、ず~っとここで一人でいなきゃいけないのかって思った。 あんまりさみしくて、わんわん泣いていたら、穴の隙間にキツネがやって来てこう言ったの。 『泣かないで、僕がずっと一緒にいるから。』 キツネが喋るなんてありえないと思うかも知れないけど、あのキツネは確かにこう言ったの。 もう私はさみしくなかった。 他にもキツネと何かを話した気がするけど、それはちょっと覚えてないや。 でもあの言葉で私は元気づけられたんだよ。このキツネといればさみしくないと思った。 それからすぐだったと思う。確かお父さんが私を見付だして、狭い岩の隙間から引き出してくれた。 その時にはもうキツネはいなかった。いつの間にいなくなったのか分からないけど、ずっと一緒にいるって言う言葉は今でも覚えてるんだよ。」 食事を終えたみさおは、石を川に投げていた。石は断続的にいくつかの白い水しぶきを立て、水面をキツネの様に跳ねて行く。 あやのは自分が作った稲荷寿司を、自分が落ちたと言う穴の横に置く。あのキツネへのお礼なのだ。 あやのは森の中に向かって叫ぶ。 「キツネさーん!私は昔ここに落ちてしまって、キツネさんに元気付けられたの。覚えてるかしら?あの時ずっと一緒にいるって言ってくれてありがとう! だけど私は謝らなきゃいけない事があるの。私は明日、結婚式をするの。彼はずっと一緒にいてくれるって、きっとその時に誓ってくれる。私もそう誓うわ。 キツネさんがいなかったら、もしかしたらまだ一人ぼっちだったかもしれない。とっても感謝してるよ。でも私はキツネさんとは違うパートナーを見付けたの。 キツネさんの言葉通りにならなくてごめんなさい! でも、やっぱりキツネさんにずっと一緒にいて欲しい。こんな贅沢叶えてくれるかな?」 みさおの投げた石は対岸までたどり着き、そこで他の石に当たってはじけた。 水面に残る波紋は、流れに流されながら拡がり、消えていく。 ───今から16年前のこの場所で、少年は川に向かって石を投げていた。ただし一度も跳ねない。 ここで少年は自分の家族と近所の家の人達でバーベキューをしていた。 その中には少女がいた。少女は一緒に着いてきた、近所の家族の娘だった。 少女は森の方へと向かっていく。何か動くものを見付けたのだ。 近付いてみると、図鑑でしか見たことがないが、それがキツネだと言うことに気付いた。 少女に見つかったキツネは、当然逃げる。少女は追い掛ける。 そして少し岩の多い辺りに来て、少女は足を滑らせてしまう。 しばらくして少女がいない事に気が付いたのは少年の妹だった。それを家族に知らせると、事態は騒然となった。 大人達は少年と少年の妹に、その場を動くなと言った。 少年は少女がいない事が不安でしょうがなかった。少女は妹と同い年で、まだ幼いのだ。 よく少年の家に遊びにくるため、少年にとっては妹同然だった。 少年は少女のリュックの上にある、小さなカチューシャを見付けた。大きなリボンがついている。 少年は少しでも少女の存在を感じようと、そのカチューシャを頭につけてみる。 カチューシャは小さくて頭に食い込む。あまりつけ心地は良くない。 大人達は出払ってしまい、その場は静かになり川の流れる音しか聞こえない。 いや川の流れる音に混じって、聞きなれた泣き声が聞こえる。 河原を見渡してみる。 少年はすぐに、その声が少女の泣き声だとわかった。その位置を探しまわり、岩の隙間に何かを見付けた。 少女だった。 少女は隙間を覗く物が何か分からなかった。逆光のためにシルエットしか分からなかったのだ。 そのシルエットの頭には何かがついている。 突起が二つ。少女にはそれが耳に見えた。 シルエットが少年であり、耳がカチューシャのリボンであるとは気が付かない。 少女はそれがキツネであると記憶した─── 二人乗りバイクは峠道をエンジンブレーキを効かせて、慎重に降りていく。 みさおは、あやのを最初に見付けたのが兄であった事は記憶していた。あやのの言うキツネの正体は兄だ。 しかしそのことをあやのには言わない。 みさおは思う。 いつかはあやのが気が付く時が来るだろうか。キツネは、ずっと一緒にいる、という言葉を守っている事を。 その事は兄が自分で言うかもしれないし、あるいはあやのが自分で思い出すのかも知れない。 まあ、気が付かなくたって良いのだけど。これ以上あやのばっかり幸せになるのもなんとなくしゃくだ。 ちょっと意地悪でもしてみてもいいかも知れない。 秘密にしよう。 二人は結ばれている。きっと気が付くだろう。 だから、その時までは……。 ───ある結婚式。 成長した少年と少女が教会から姿を表す。 少年はタキシードであり、少女はウエディングドレスだ。 青い空の下、二人を大勢の人が祝福する。 その中の一人。紫色の髪をツインテールにした女子大生の鼻先が、一滴の雫でポツリと濡れた。 別に涙で塗れたわけではない。 女子大生は空を見上げる。 雲ひとつない快晴だというのに、小降りの雨が降っている。 雨粒は日の光を反射して輝く。虹も見える。 女子大生は呟いた。 「キツネの嫁入りだ。綺麗……。」