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[部分編集] http //www.nicovideo.jp/watch/sm9314244 投稿者コメント1.コメント2.コメント3.コメント この作品のタグ:第3回ニコニコ紅白MAD合戦 「黒組」 レビュー欄 色々やってるのにムリヤリ感がなくて自然。 演出を使いこなすって、こういうことなんですね。 素直に感心してしまいました。 -- 名無しさん (2010-02-07 16 09 28) 名前 コメント 第3回ニコニコ紅白MAD合戦 「黒組」
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(がんばってね!!期待してるよ!!) がんっばってないかな?何に期待してるの? (そうじゃなくて!わかんないかなぁー!?) ごめんなさい、ごめんなさい。もっと勉強します!もっと努力します! (笑顔がいいよね!うん!笑顔が最高!) 笑ってなきゃだめなのかな?ずっと笑ってなきゃだめかな? 梅雨などとっくに明けたというのにこの曇り空。 あ゛~っ!気が滅入るわ。 だいたい、この仕事、OKしたわけじゃないのよねー? あいつ、ちゃんと仕事選んでるのかしら? この間もトーク番組だから気楽に~、なんて言ってて結局バラエティのひな壇だったじゃない。 そりゃ、面白い事言えない私のほうが悪いのかもしれないけど、ネタ振りにしたってどーしよーもなかったよね? あんな若手じゃ、私のこと気にしちゃって振りにくいっつーの! あ゛~っ!いやだ!いやだ!いやだ! 「小神さーん、出番ですー!」 「あ!はぁ~い♪いまぁ、行きまぁす☆」 なんだかんだで芸能生活も長くなると、スタッフにしろスポンサーにしろ立ててくれるのは嫌じゃないけど、 私だってそんなに無神経じゃない。 特別これといったヒット作もなく、3歳から仕事してるからとか、現役中学生だからとか、そんな理由に乗っかってたって、この世界じゃ先が見えてる。 何とかしなくちゃいけないのは、私が一番わかってる。 だけどね・・・。 「あれぇ?あんなところに人がいますよぉ?」 「あれ?本当だ!まいったなぁ~。おーい!君たちぃー!」 言わんこっちゃない!予算ケチりすぎなんだよ!このあきら様を呼んでおいてスタッフ3人とかありえねぇっつの! 「君たちごめんね~、今収録中だから、ちょ~っと、あっちに行っててもらえるかな?」 「ねぇ!ねぇ!あれ、小神あきらでしょ!?サイン!サインをーーー!」 「ちょーっと!こなた!自重しなさいよ!収録中だって言ってるじゃない!」 「あんな小さい子がタレントさんなんだね。すごいね!」 「小神さんですね。確か3歳からタレント業をしているんですよね?」 まぁた、ミーハーな連中でしょ?カメラ見つけて近づいてきたんじゃないの? ていうかさ、一般人が勝手に出入りできるようなところで収録してることがまず、問題じゃないの? 「伊藤P!私行ってもいいですか~?私が行ったらすぐ終わると思うんですけどぉ~☆」きゅぴ~ん☆ 「あぁ、ごめんね、小神ちゃん~、ちゃちゃっと終わらせてきてもらえる?」 「わっかりましたぁ~☆」 めんどっ、ちっ。まぁ、いいわ。 「うおぉ~~ん!あきら様!あきら様ぁ~!『三十路岬』買いましたぁ~!!!」 「えぇ!本当ですかぁ~!ありがとうございますぅ~☆」きゅぴ~ん☆ ふむ、この子は分かってるみたいね? 「へぇ、この子がタレントなんだ?さすがにかわいいわね?」 なんだ、このツインテール?喧嘩売ってんのか?ぺっ! 「ありがとうございまぁ~す!かわいいだなんて!ありがとっ☆あきらすっごーく!うれしいでっす♪」 「サイン!サインくださいぃぃっ!」 「ちょっと、こなた仕事中よ!?迷惑よ?」 「少しだけなら大丈夫ですぅー!えっと、どこに書けばいいんですかぁ?」 「こ、この『三十路岬』のジャケットにーーー!」 すごいわね、この子!アイドルの心をつかみまくってるわ! 「えっとぉ、こなたさんね?これからもよろしくね☆」きゅぴ~ん☆ 「うおぉー!やたー!あきら様のサイン~!」 「こなちゃん、嬉しそうだね」 「わ、私もお願いしちゃおうかな~・・・。べ、別にミーハーとかそうじゃなくて(汗」 ってめっちゃ、ミーハーじゃないの?ツインテールの上にツンデレ+つり目って狙ってんの~?ちっ! 「はい、かがみさんね。つぎぃ~」 「冷たっ!ちょ、ちょ・・・」 「小神さんですね?小さい頃のドラマを母がとても気に入ってまして」 「えー!あきら感激☆」きゅぴ~ん☆ いい子じゃない?それにしても乳でかいわね?いくらなんでもでかすぎない?ワールドクラスね。決めた。私の中でこの子は牛よ。牛。 「えと、次は・・・」 「つかさです。ごめんなさい。あんまり知らないのにこんなこと頼んじゃって・・・」 「えー、いいんですぅー!これから見てくださいね?」 この子、ツンデレに似てるわね?でも、こっちは素直でいい感じね。 「あきらちゃん・・・ちょっと疲れてるのかな?」 は?何言ってんのこの子?このあきら様のスペシャル営業スマイルが見えてないの? 「あきらわぁ、超~元気だよっ!」きゅぴ~ん☆ 「そか、それなら安心!お仕事中にごめんね!」 「ほーーーんとに気にしてませんからぁ!応援ありがとでっす!」きゅぴ~ん☆ 「小神ちゃんありがとー!助かったよ~!」 「ぜぇんぜん、いいんですぅー!さっ、伊藤Pはじめましょ!?」 うっわー、あの青いちっちゃい子はしゃぎすぎだろ?ま、あの子達のおかげで今の私があるわけだけどぉー。 それにしても・・・。 「ねぇ、伊藤P。私、疲れてるように見えますかぁ~?」きゅぴ~ん☆ 「はっはっは!何言ってんの?今日もいい笑顔だよー!!!」 「ですよねー☆」 二日目 うわぁ・・・。雨じゃん。こりゃ今日の収録は中止ね・・・。 「小神さぁん!今日はオフですー!」 「はぁい!」 って、ほらね。これでこの山に足止め一日伸びたよ。ちっ。 はぁーぁ、部屋にいても気が滅入るだけね。ちょっと外の空気でも吸ってこよっかな。 (疲れてるのかな?) なんだろ、すごくひっかかる・・・。 あのリボンが言ったことがすごいひっかかるわね。 「はーぁ」 いけない、また溜息出ちゃった。やっぱ、疲れてるのかな?わざわざ一人でこんな山小屋でたそがれてるなんてさぁ。 雨、止まないな。でも、この雨音はちょっと気持ちいいかな。目の前の湖も晴れてたらきっときれいなんだろーなぁー・・・。 「あきらちゃ-----ん!」 だれ!? 「あはは、こんなとこにいたんだね?」 リボン!? 「今日は収録ないんだってね?スタッフさんに聞いちゃったよ。ごめんね、ずうずうしくて」 いや、いいけど、何しに来たんだろ? 「となり、座っていいかな?」 「はい♪どうぞ!」 人は見かけによらないってこの事ね。ずいぶんなれなれしい子だわ。まぁ、素直ってことかもしれないけど。 「私、尊敬しちゃうな」 「ありがとです☆」 「大変なんだよね?芸能界って。体調の維持とかもすごい苦労してるんだよね~?」 なんだろ?この子?何が目的なのかな?私と仲良くなりたい?あぁ、そうか、タレント志望か! 「ぜぇーんぜんそんなこと無いですよぉ」 ま、見てくれもいいし、天然系なら適度に売れるでしょ。ここは単刀直入に・・・。 「つかさ、さんでしたっけ?よかったら社長に紹介しますよぉ?」 「え!?ちがうよー」 すっごい笑ってる。悔しいけどこんな笑顔わたし出来ないかも・・・。 「私の夢はね~、調理師になることなの!私ね、あんまり頭とかよくないんだけど、お料理やお菓子には自身があるんだ!」 なんなんだろ、この子・・・。すごくかわいい。この笑顔・・・やっぱり、出来ない・・・。 「でね、きょうはあきらちゃんにお菓子作ってきたの!キャンプ場でお菓子作るとか難しかったから、おいしく出来てるといいんだけど・・・」 「あ、ありがとう・・・」 「うん!食べてみて!」 サクッ 「むぐむぐ・・・お、おいしい・・・」 「よかったぁ~。もっと食べてね」 「う、うん」 「私ね、ほんとにすごいと思ったよ。あきらちゃんすっごいがんばってるんだなって」 そういえば、『あきらちゃん』って呼んでくれる人減ったよな。コアなファンは『様』付けだし。 「こんなに疲れてるのに、あんなに笑えるなんて、私にはできないもの!」 「んぐ!つ、疲れてなんか・・・」 「うぅん、いいよ。楽にしてね。 なんかね、強がってるところがね、お姉ちゃんに似てるっていうか・・・。あ、お姉ちゃんって昨日サインの時の二つに結んだ子ね」 あの、ツインテールか! 「でも、お姉ちゃんには私やこなちゃんがついてるけど、あきらちゃん、ひとりぼっちに見えたから・・・」 独りに? 「あ!ごめん!失礼なこと言っちゃった!?」 「え、あ、いや・・・」 「私ね、お姉ちゃんが3人もいるの。昔からずっとお姉ちゃんに憧れてたの。 双子のお姉ちゃん、二つ結びの子はいつも私のこと守ってくれるんだ。 宿題や勉強教えてくれたり、小さい頃はいじめられた時によく助けてくれたなー」 「・・・」 「お姉ちゃんってすごいなーっていつも思ってたよ。私もおねえちゃんになりたいって、いつも思うんだ!」 「・・・」 「だから、わたしもね、あきらちゃんに何かしてあげたいって思ったの。本当に疲れてない?」 疲れてるも何も・・・。仕事してればほっておいてもつかれるし、何よりこの世界にいることが疲れるわ。 先輩には気を使い、スポンサーやクライアントにはぺこぺこ頭下げたりしてさ。 後輩には先輩らしく接さないといけないのに、殆どの後輩は私より年上で、どっちが気を使ってるんだか・・・。 同期の子達もうまく局に取り入ったりしてるけど、私はそゆのは苦手だしな・・・。 この前だってうっかり激情しちゃって、せっかく貰ったレギュラー自分で潰しちゃったし・・・。あの時は確かに疲れてたかも・・・。 家に帰ってもお母さんは妹と外食に行ってて私一人。お父さんの家は教えてくれない。 「あ、きらちゃん?」 「はい!?」 「途中から声出てたけど・・・(汗」 「ご、ごめんなさいぃぃっ!」 やっちゃった・・・。こうやって私、独りになってくんだよなー・・・。 「あのね、私、頭よくないから分かんないし、上手に言えないけど・・・。 疲れちゃったら止めちゃうのもいいんじゃないかな?」 へ? 「私はがんばって調理師目指してるよ。将来、おいしい料理作れるようになって優しい旦那様に食べさせてあげたいなって思うよ。 でも、つかれたら止めちゃうの。苦しくなったら止めちゃうの!おいしく出来ない時は止めて寝ちゃう!疲れてるときにどんなにがんばってもいいものは出来ないから、 だから、やめちゃう!ベッドに入っちゃう!」 「止めちゃう・・・?」 「そ、あきらちゃんの夢がなんなのかは分からないけど、疲れたらやめちゃえ! で、元気になったら、ね?もう一回がんばろ?」 私の・・・夢・・・。私の夢って・・・なんだっけ・・・? 元気になったら・・・もう一回・・・。 「つかさー!そろそろお昼よー!」 「はぁい!今行くよー!」 「あ・・・」 「じゃあ、またねあきらちゃん!」 「うん・・・また・・・ね・・・」 「お姉ちゃんてすごいよね?私も悩んでる時におねえちゃんに言われたんだ。苦しかったら止めちゃえ!って」 あの、ツインテールが・・・。 「じゃあ!」 「うん、また・・・」 疲れたら・・・やめちゃえ・・・。 苦しかったら・・・やめちゃえ・・・。 私の・・・夢・・・。 あ、つかさ、さん、行っちゃった・・・。 私の・・・夢・・・ 三日目 「いくぞー!こなたー!早く荷物ま乗せなさいよー?」 「分かってるってばかがみんや~、そう急かさないでおくれよ」 あれは・・・。 「お、あきら様だー!あきら様ー!ばいばーい!」 いかなきゃ・・・。 「今日も収録なんですね。昨日の雨が響いてるみたいですわね」 伝えなきゃ・・・。 「さぁ、もう、バス出るよー?みんな忘れ物ない?」 「うん、お姉ちゃん。大丈夫だよ!」 もう、会えないかもしれないから・・・。 「お、おい!小神ちゃん!カメラ!回ってるよ!!!」 バスが行っちゃう!撮影より、仕事より大事なものがあるんだ! 行かなきゃ!早く! 「あ!あきら様だ!」 「追っかけてきてる!?」 言わなきゃ!早く、言わなきゃ!! 「ありがとう・・・ありがとう!つかさ・・・お姉ちゃんー!」 「あきらちゃん!」 「わたし、がんばるね!もっと、がんばれる気がする!つかさお姉ちゃん!」 「うん!」 「だから、また会おうね!」 「また会おうね!」 つかさお姉ちゃんが手を振ってる。私も手を振る。 スタッフの呼んでる声が聞こえるけど、見えなくなるまで、手を振る。 あのね、つかさお姉ちゃん!私の夢はね!私の夢は・・・・・・。 「クッキーまた食べたいな!」 おわり
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「あーあーあー……やっちゃったよ……」 広く名の知れた写真週刊誌の表紙を睨みながら率直な感想を漏らす。 少女の顔色はフグの毒にでも当たったかと思うほどに真っ青だった。 「っ……」 数年ぶりの貧血に体が揺らぐが、辛うじて踏みとどまる。 ――どうしよう。どうすればいい? 答えはすぐに出る。 速やかに問題を解決することは不可能、まずは全容を把握するのが最善であると。 そうと決まったらさっさと記事を読み終えなければ。表紙にでかでかと名前まで書かれている以上、買って帰ることもできない。 今後、外出する時は帽子を肌身離さず持ち歩くよう心がけるか―― 心の中で舌打ちし、小神あきらはひたすらに文章を追い続けるのだった。 「きらっち! スキャンダルってマジぶっ」 週が明けた月曜。 大声を張り上げながら教室に駆け込んできた少女をあきらは顔面狙いのラリアットで迎え撃ち、そのまま廊下の窓際へと追いやった。 「りっ、りんちゃん大丈夫!?」 「きゅう……」 鼻と口を押さえる音無りんこの身を案じたのは後から現れた大原。二人ともあきらの親友である。 「ったぁ……いきなり何すんだよー」 「あんなの大声で言うことじゃないだろがっ!」 唾が顔にかかりそうな剣幕であきらは怒鳴る。 この反応を見て、音無はようやく自分が地雷を踏んだのだということに気が付いた。 「む。悪かったよぅ」 反省のそぶりは全くと言っていいほど見られないが、一応の詫びは口にした。 あきらは矛先を納め、はあっとため息をついてから壁にもたれかかる。 よもやああいった雑誌には微塵も興味を示さないはずの音無がいの一番に声をかけてくるとは。 彼女でこうならヤツはどれだけ陰湿にからかってくるのか―― 「……音無、それ誰から聞いたの?」 「お? くるっちだけどー?」 「――やっぱりか」 そう、これは彼女が自ら進んで調べようとする話題ではない。 つまり入れ知恵をした「誰か」がいるのだ。そしてその人物とはまさしく―― 「おはよう。朝から元気ね」 「白々しい! 音無に教えたのあんたでしょ!?」 中谷あくる。やはり大原らと同じく王国カルテットの一人に数えられるあきらの親友だ。 「前に盛り上がってたわね。アイドルはスキャンダルを経てより大きくなる、だとか」 「う、うん……そういう話はしてたけど」 「よかったじゃない。あきらに一定の知名度があることも証明されたし、これを踏み台に躍進していけるんでしょう」 「ぐ……そうは言うけどさ……」 ばっさりと切り伏せるような中谷の言葉に、あきらですらもたじろぐ。 彼女はいつも少々暴力的なくらいに意見を投げつける人間なのだ。 「今回は事情が違うっつーか――」 「なーくるっち、それで? お相手って誰なのさ?」 呟きは元気を象徴するかのような音無の声にかき消される。 中谷はどこから取り出したのか、いつの間にやら件の写真週刊誌を持っている。 迷いなくページをめくっていき、やがて手を止めるとその記事を彼女の目の前に突き出した。 「知ってるでしょ。らっきー☆ちゃんねるの白石みのる」 小神あきらと白石みのる、二人が夜の住宅街を並んで歩いている写真。 後方から撮られたものばかりではっきりと顔が写っているわけではないが、それでも彼女たちに違いないと断定するには充分すぎる材料だった。 何より、あきら自身このシチュエーションに覚えがあるのだ。たとえ口で否定しても認めざるを得ない。 ヘタな盗撮よりも数段タチが悪い――とはよく言ったものである。 「おーっ! へえぇ……きらっち案外イロモノ好きだにゃー」 「でも、こういう雑誌で取り上げられるのって大抵ガセネタだよね?」 「そうね……だからこそ踏み台にできるんだと思うわ」 「なるほど! ともかくよかったじゃんきらっち!」 ――人の気も知らず。 「そーいやその白石みのるのことよく知らないや。らきちゃんは聴いてるんだけどさー」 「あ、この間バラエティに出てるの見たよ」 「私も……」 「ほほぉ。どんなヤツなん?」 「イジられキャラって言うの? 面白い人だよ」 「タレントより芸人って呼んだ方がしっくり来るわね……女の子と仲良くなっても友達以上になれない、典型的な『いい人』タイプよ」 気の置けない友人だからこそ、悪意のない言葉が重い。 耳を塞ぎたくなる衝動を抑えながら、あきらは俯きくっと唇を噛む。 「ふむふむ。んでこのスキャンダル? あっりえねーなー!」 「あきらにだって男を選ぶ権利くらいあるわ……」 「……やめて」 「あ、あっちゃん……さすがに白石さんに失礼だよ」 「そうかしら」 「きらっちだって毎週こんな感じでイジってんじゃんなー」 「向こうも何を考えてるかわかったものじゃないわ。今回の件であきらに迷惑がかかるようなことを思いついたり――」 「やめろって言ってんでしょおがッ!!」 そして、苛立ちは頂点に達した。 音だけが消失したかのようにしんと静まり返り、皆が四人に注目する。教室から顔を覗かせる生徒も少なからずいた。 予想だにしなかった怒声に、音無と中谷はぽかんと口をあけている。 「……あきらちゃん」 大原が伏し目がちに、小さな声で尋ねる。 「もしかして、白石さんのこと――」 長い静寂。 やがて廊下が喧騒を取り戻し始めた頃、あきらはぽつりと呟いた。 「……好きになって、何が悪いのよ」 いつもならとっくに終わっているはずの収録が二十三時近くまでずれ込んでいた。 そもそも集合時間からして普段よりも遅かったのだ。スタッフ側に何か事情があったのは間違いない。 この業界では別に珍しいことでもない。口先では文句を並べ立てていたものの、あきらはそういうものだと割り切っている。 近頃、真白学園の周辺にしばしば変質者が出没するらしい。 あきら自身が目撃したわけではないものの遭遇例は多いようだったし、新聞やニュース番組で取沙汰されている。 もっとも、だからと言って何がどうなることもない。そういったモノに出くわす確率など限りなく低いのだし。 そして、あきらはこの日やや寝不足だった。 待ち時間に居眠りをしてしまったり、収録中に大あくびが出てNGになってしまったり。 早く家に帰って眠りたい――と、白石にも何度か愚痴をこぼしていた。 「あきら様。送っていきますよ」 ようやく仕事から解放されたあきらに白石がそう声をかけてきたのは、きっとそれらの要因が積み重なったせいなのだろう。 実のところ、彼女は以前から白石みのるという異性を意識していた。 明確なきっかけがあったわけではない。共に仕事をしているうちに抱いた、純粋な恋心というやつだ。 もっとも、不器用な彼女にはアプローチをかける勇気もなく、二人の関係はこの一年間「仕事仲間」でしかなかった。 だからこそ今日、彼の口から出たその言葉があきらにはたまらなく嬉しかった。 「……でも、あんた帰りの電車なくなるかもしれないじゃん」 その時はタクシーでも拾いますよ。白石はそう笑う。 二人は寝静まりつつある住宅街を並んで歩く。 交わされる会話は決して多くはないが、彼女たちの間にある空気はいたって穏やか。 そんな心地良い世界に少しだけ酔いながら、あきらは口を開く。 「白石」 「はい?」 「なんで送ってくれてるの?」 「へ?」 質問の内容が変だったか。 白石は目をぱちくりさせ、もしかして余計なお世話でしたか――などと聞き返してくる。 「そんなことないわよ。急に言われて……びっくりしたってわけじゃないけど」 なぜ今日になって唐突に声をかけてきたのか。それが気になっていたのだ。 「最近、この辺物騒らしいじゃないですか。だからなんて言うか……何かあったら嫌ですし」 とどのつまり純粋な善意。 下心もあるのかもしれない。それでも、終電に乗り遅れる可能性が多分にあるこの時間まで自分の身を案じて付き添ってくれているのだ。 もし小神あきらをなんとも思っていないのなら白石は今ここにはいない。彼女はそう解釈する。 やがて二人は明かりの消えた一軒屋の前で立ち止まった。 正確にはあきらが先に足を止め、白石がそれにつられた形だったのだが。 「ここなんですか」 「うん」 女の子に夜道を一人で歩かせるのは忍びないので家まで送った。白石にとってはそれだけのこと。 だから次に彼がこう別れを告げるのも当然の流れなのだ。 「それじゃあきら様、今日はお疲れ様でした。また来週スタジオで」 「あのさ」 彼女にはどうしても言いたいことがあった。 タイミングよし、シチュエーションよし。たぶん今この瞬間はまたとない機会のはず。 「……あの、さ」 「はい」 固唾を呑み込んだ後、意を決して少女は精一杯を伝える。 「オフでは『様』とか付けなくていい、っつーか付けないで!」 「え――でも」 「いいから!」 「……わかりました」 「敬語もなし!」 「えぇ!?」 白石はしばらくの間仰天していた。上下関係に厳しい小神あきらにまさかこんなことを言われるなど想像もしなかったからだ。 「あ、あきら様……」 「だーかーら!」 「ああっと……参ったな。いきなり言われてもなんて呼べばいいのか……」 「……呼び捨てで、いいから」 だが、気付く。 ちらちらと逸らしがちな瞳の奥に垣間見える不安。彼女の「気持ち」に。 「あきら様、それって」 「――!」 「あ、っと、すいません……」 いや、もはやあきらの胸の内などたやすく見て取れてしまう。 顔はこれ以上ないほどに赤面しているし、するなと言ったのに様付けを続けられたのが原因か涙目にすらなってしまっている。 「……ごめん。いきなりこんなこと言われても困るか」 ならばここで応えねば男とは呼べるまい、と彼は決意する。 そもそも、これまで口に出すことはしなかったが白石みのるもまたあきらを意識していたのだ。 「そんなことないです。大丈夫ですよ」 「え、」 かきむしりたくなるほどに頭が痒くなってきたが、この際無視することにした。 「……あきら」 「白石――」 「……や、やっぱ譲歩してくれませんか。呼び捨てはさすがに慣れそうにないんで――」 白石が苦笑いし、同時にあきらも満面の笑みを浮かべ―― 「白石っ!」 「おあぁ!? ちょ、まっ!」 少女は少年の胸に飛び込み、少年は少女が取った予想外の行動にたじろぐ。 そんな二人を、街灯がさながらスポットライトのようにぱあっと照らし出していた。 この夜あったことはそれだけ。 小神あきらにとってみればスキャンダルでも何でもなく、写真週刊誌ごときに邪魔をされる筋合いもなかったのだ。 「……ごめん」「ごめん!」 涙があきらの目に溜まっているのを見て、音無と中谷がほぼ同時に頭を下げる。 馬に蹴り殺されても文句は言えないわね、と中谷は続けて呟いた。 「いいよ。こっちこそ、怒鳴ってごめん」 各々が非を認め謝った。だからこれで終わりだ。 これ以上責め立てるような性格の悪さなど四人の誰も持ち合わせてはいない。 「……さ、チャイム鳴るよ。教室入ろう?」 そして大原の一声が固まった空気を元に戻す。 あきらはふうっと息をつき、ばつが悪そうに頬をかいた。 「ま、そんなだからさ。この際だし公言しちゃってもいいかなあって」 「白石さんもそれでいいって?」 「ん。別にやましいことしてるわけじゃないしさ」 「確かに、下手に火消しに走らない方が調子付かせなくて済むわね……」 「いつかお話してみたいなぁ。どうかな、あきらちゃん」 「白石と?」 「うん。あきらちゃんの彼氏がどんなひとかもっとよく知りたいから」 「お、いいねー! きらっちの相手にふさわしいかどうかウチらが審査しちゃる!」 「そうね……あきらと気心が知れているとは言え、心の底でどう思っているかはまだわからないものね」 「よっ、余計なことすんなっ! 絶対連れてこないっ!」 こうして今日もまた、騒がしくも平穏な一日が始まりを告げる。 ちなみにあの夜、カメラを所持していた不審者が付近を歩いていた少年の通報によって逮捕された――というのはあまり関係のないお話。 完
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「……どうかしたの? 私の顔、何かついてるかしら」 私の目の前の青い髪を持つ女性は、自らの顔を手で払うような動作をした。 確かに生きている。泉かなた。こなたの、実の母親。 「な、なんで」 ようやく口に出来た言葉が、これだった。 心臓が8ビートを陽気に刻み、私の体を徐々に暖めていく。呼吸が落ち着かなくなっている。 口の中が乾燥して、つばきを飲み込むことさえ難しい。 「なんであなたが、ここに」 落ち着け私。なんでこんなに声を震えさせているんだ。 自らに暗示を掛けても、心臓は徐々にビートを荒げるだけであった。 「あら、どういうこと? 私がここに居ちゃ……おかしいかしら?」 相手の顔に、僅かに不快の色が見えた。 いや、確かに微笑んではいるのだが、その笑顔を取り巻く気配が変化したのを感じ取ったのだ。 別に私を襲おうとか、呪ってやろうとか、そういう意思は彼女に全くないのだろうが、何故か恐怖を感じた。 蛇に睨まれた蛙――とでも言うのだろうか。身動きが全く取れない。 そのとき、彼女の背後に、また新たな影が一つ見えた。 「先輩ー、何やってんスか?」 田村さんだった。顔だけを覗かせて、目を細めていた。 私が水を汲みに行ってから10分も姿を見せないので、様子を見に来たのだろう。 「あ、かなたさん。お邪魔してますー。いつお帰りになられたんスか?」 「丁度5分前ぐらいにね。買い物してたのよ」 「それはご苦労様ッス。あ、お水いただきますね」 「いいわよ、後で麦茶持っていくから。ちょっと待っててね」 「あ、本当ですか? ありがとうございますー」 私をそっちのけで話すものだから、蛇に睨まれた蛙、すなわち私もようやく身動きが取れるようになった。 足は勝手に部屋の外へと向かっていた。今この場所に居たら、頭が変になりそうだったからだろう。 亡くなったはずなのに、生きている人間がこの世に居るわけがない。 私は田村さんについて、部屋に戻った。 震えが何故か止まらない。さっきのかなたさんの表情からは、私に対する敵意は微塵も感じられなかった。 だが、どうしてか、彼女を恐れている自分が居た。 彼女の中に、何か特別な、それこそ恐れるべき感情が隠れている――そんな気がしたのだった。 ☆ 「――え? かなたさんと知り合ったのはいつか、ですか?」 ゆたかちゃんの部屋に戻ってから、私は田村さんに質問した。質問内容は、今の田村さんの返事から察してもらいたい。 パトリシアさんは、持ち込んだゲーム機と格闘していた。 「確かゆーちゃんと話すようになって、初めて家にお邪魔したときだから……6月ぐらいッスかねぇ?」 「その時、何をしたの?」 「いや別に、普通に会話しただけッスよ。他愛もない会話ッス。私たち、まだオタク入ってるってこと知られてなかったですし」 「っていうか、何で“かなたさん”なのよ」 「いやぁ、“おばさん”と呼ぶには若すぎるような気がしまして。というか、柊先輩だってそう呼んでるじゃないッスか」 「確かにそうね。同意するわ」 何でこんなこと質問してるんだろ。 「何でこんなこと質問してくるんスか?」 私が考えるのと同時に田村さんが聞き返してきたので、少し焦った。 こなたがいなくなって、かなたさんがいる。私は、その理由を知りたかったんだろう。 でも、それを聞いたところで、返事をしてくれる人はいない。 こなたが現実にいないのだから、答えられる人間など世界のどこを探してもいないのだ。 しかし、だ。 かなたさんがいる理由を知ったところで、現状を打破することが出来るのか。 答えは限りなくノーに近いと思う。根拠はないが。 でも、私は知りたい。かなたさんがいて、こなたがいない理由を。 窓から外に目をやる。おじさんが、玄関に立っているのが見えた。 手には紙袋。またオタクなグッズを買ってきたのだろうか。 しかし、今はそんなことどうでも良いんだ。 かなたさんの夫である彼に、直接尋ねるのが一番早いのは間違いない。 「Oh~、ヤラレました」 パトリシアさんがゆたかちゃんのベッドに仰向けに寝転がった。 スプリングが彼女の体を僅かに弾ませる。 「mm~、ヒヨリ、このゲーム難しくないデスか?」 「操作難しいからねぇ。慣れたら上手くいくよ」 パトリシアさんが顔だけを私たちに向けた。目を細めている。よほど難しいんだろうな、そのゲームは。 こなたにやらせたらどうなるんだろう。アイツほどのゲーマーは居ないからな。 「カガミ……死相が出てマスね……気をつけるがヨロシイ」 「え……?」 直接的な表現で申し訳ないが、ドキッとした。 死相なんて言葉よく知ってるな、とも思ったが、パトリシアさんの表情がやけに真剣だったので、戸惑った。 「またパティ、そーやってゲームに出てくる言葉使わないの。冗談でも死相が出てるなんて言っちゃ駄目だって」 「ダッテぇ~、このゲーム難しいんデスもん」 「それとこれとは関係なし。すいません柊先輩」 「あ、あはは、冗談、だったのね……」 冗談だとわかっていても、心のどこかで心配に思っている自分がいた。 もし真実を知ったら、死ぬ……? ――んなバカな。何で私が死ななきゃいけないんだ。 声や態度には出さないように、心の中でそっと溜め息をついた。 ☆ 部屋を出るときに理由を聞かれたが、また「トイレに行く」と言ったらきっと疑われると思い、 今度はちゃんと事実を言って、つまり、おじさんと話がしたいと言って部屋を出た。 そのために、自分の将来や進路を捏造しなければならなかった。 「ちょっとおじさんと話がしたいの」 「ははーん、さては柊先輩、将来は作家希望ッスか?」 「あ、ええ、そんなところよ」 ――こんな具合に。 それはさておき、私は今おじさんの部屋の前にいる。 耳を澄ませると、中からはPCのキーボードの音が聞こえる。そのリズムから、仕事がはかどっていることが感じ取れた。 邪魔しちゃ悪いだろうかという感情が芽生える。 人間、上手くいっているときに横槍を入れられると調子を崩すものなのだ。そんな経験、私だって何度もある。 散々悩んだ挙句――まぁ時間にして3分程度だったが――私は襖を軽く手の甲で叩いた。 キーボードを叩く音が止まり、畳を歩く音がした。その足取りも、何となく軽く感じる。 5秒も経たないないうちに、襖は、静かに開かれた。 「誰だい? ――あ、君はゆーちゃんの」 「はい。柊って言います。おじさんとちょっとお話がしたくて」 「あぁ、そうかい。じゃあ入って待っててくれるかな。仕事に区切りをつけるから」 私が思ったよりもすんなりと、おじさんは部屋に招きいれてくれた。 デリケートな人だと思っていたから、後にしてくれと一蹴されるかと思っていた。 こういう大らかなところは、こなたにも受け継がれたんだろう。 おじさんの仕事場には、あまり物が置かれていなかった。いわゆる“殺風景”というやつだ。 ちゃぶ台の上に仕事用のパソコン。麦茶の入ったコップ。棚が部屋の隅に一つ。 かなたさんが、定期的に片付けをしてくれているのだと思う。仕事に集中してもらうために。 偏見かもしれないが、どこかにフィギュアの一つでも置いてあるものだと思っていた。 仕事には真面目な人なんだな。こなたにもこういう所があるのだろうか。 かたかた、とキーボードを叩く音が止む。おじさんが、ふっと息をついた。 「待たせちゃったね。で、何の用?」 笑顔で私に振り向く。どこか、笑ったときの雰囲気がこなたに似ているような気がした。 ――さて、本題だ。 「単刀直入に訊きます。奥さん――かなたさんは、出産をしなかったんですか?」 おじさんの顔が、突然強張る。さっきまで顔全体に笑みを浮かべていたが、その顔の全てのパーツから笑みは消えうせた。 「どういうことだい? なぜ、君がそれを」 「私が、かなたさんが産んだ子供と友達だったから……。信じてもらえないかもしれませんけど」 「言っていることがさっぱりわからないな」 おじさんの目が怖い。部屋の空気が怖い。全てが、私を敵対視しているように感じた。 「“こなた”という子を、かなたさんは産むはずだったんです。出産後、かなたさんは亡くなってしまうけど。こなたは、陵桜に入学して、私と出会う」 おじさんの肩から力が抜けていくのが見て取れた。 「それなのに、今、かなたさんが生きている。そして、こなたがいない」 「……かなたは、死ぬのが怖くなったんだ」 私が喋るのを遮るように、おじさんが口を開いた。低い声で、呟くように。 「子供を授かったときに、医者に言われた。かなたは、子供を産んだら死んでしまうかもしれないということを。 でも、かなたは、それでも産むといって聞かなかった。俺はかなたに死なれるのが嫌だったけど、かなたの意見を尊重することにしたんだ」 おじさんが、俯く。その口は、微かにほころんでいた。 「出産予定日が近付いたある日に、かなたが突然叫んだ。死ぬのは嫌、死ぬのは嫌……ってね。誰の顔も見ようとしない、一人で頭を抱えて。 その都度、医者や看護士たちが抑制してくれたけど、その後、俺は医者に呼び出されたんだ。このままいくと、ストレスで中の子供にも影響があるって」 「……だから、出産を中止したんですか?」 「苦渋の決断だった。かなたは、1週間は立ち直れなかった。ずっと部屋に閉じこもった。ドアの前で耳を済ませる度に、中からかなたの泣く声が聞こえるんだ」 おじさんが歯を食い縛った。拳がぶるぶると震えている。 「今でもたまに、かなたがパニックを起こす時があるんだ……。 何であの時、私は自分の身を優先させてしまったんだろう……。 何であの子に幸せな暮らしをさせてあげられなかったんだろう、って……」 おじさんが、ちゃぶ台を拳で殴った。上に乗っていた空っぽのガラスのコップが、その拍子に倒れた。 「俺は何も出来なかった。かなたが苦しんでいるのに、夫として何も出来なかった。ただ、見守ることしか出来なかった」 そこまで言って、おじさんはとうとう黙ってしまった。この静寂が、息苦しく感じる。 こなたは、この世に生を与えられることが出来なかった。 そして、かなたさんは、この世から生を奪われることを恐れた。 かなたさんを責めることは出来ない。死ぬことなんて、誰でも怖い。考える事も、恐ろしい。 おじさんも、最愛の妻を奪われることが怖かったのだろう。 誰も責められない。責めることもできない。 人の生死に関わる判断は、どんな判断であろうとも、誤りなどないのだから。 「……今日は帰ってくれないか。一人にさせてくれ」 時間にしたらほんの数分の静寂だったが、私には2時間にも、3時間にも感じた。 よくこんな表現を小説で見かけたりするが、まさにこのことなのか、と実感した。 私は、黙って部屋を出ることしか出来なかった。 私は……こなたに会いたい。 でも、私がこなたに会えば、おじさんが悲しむことになる。かなたさんが死んでしまうから。 おじさんは、こなたにかなたさんの姿を写して、愛している。 でも、本当は、かなたさんに会いたいのだ。心の隙間を、こなたで完全に埋めることが、できないのだ。 私の心の中では、複雑な感情の糸が絡まってしまっていた。 襖の向こうで、すすり泣く声が聞こえた。 私は、昔おじさんがかなたさんが嘆き悲しむ声を聞いていたときのように、ただ襖の前に立ち、拳を強く握り締めることしか出来なかった。
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ばれるわけが無い。そう自分に言い聞かせて、少女はそれに近づいた。 ばれてしまっても、ちょっとした悪戯で済むはずだ。そういった軽い気持ちで事を実行に移す。 それが、あの惨事への幕開けとも知らずに…。 - チョココロネは食べられない 出題編 - 「ふ~んふふ~ふふ~ふん♪」 「朝からえらくご機嫌ね」 ある日の登校時。かがみは先程から鼻歌を歌いながら歩くこなたにそう聞いた。 「そりゃあ、機嫌も最高潮になるよ…ほら、これ見てよ」 そう言ってこなたが鞄から取り出したのは、なにかの店の名前が書かれた紙袋だった。 「ベーカリーってことはパン?どこのお店の?」 「あ、こなちゃんそれって駅前のパン屋さんの!?買えたんだ、すっごーい」 それを見たつかさが歓声を上げた。 「ホントですか!?わたしもあのお店のパンは凄く好きなんですよ」 珍しいことにみゆきまでもが食いつく。 「えっ…二人とも知ってるんだ。どこのだろ…」 「おーっと。食いしん坊かがみんがこの情報を知らないなんて、槍が降るねこりゃ」 「うるさいなあ。わたしだって年がら年中食べ物のこと考えてるわけじゃないわよ…ってかそんなに食いしん坊って訳でもないわよ」 かがみが何時も通りこなたにからかわれようとしているのを察したつかさは、助け舟を出そうと二人の会話に口を挟んだ。 「ほら、お姉ちゃんアレ。この前まつりお姉ちゃんが買ってきたのだよ。お姉ちゃん、美味しいって五個くらい食べてたじゃない」 助けるどころか上から重しを落としていた。 「…五個て…」 「…あのパン屋さん、普通のところより全体的にパンが大きかったですよね…」 こなたどころか、みゆきまでもが一歩引いてかがみを見つめていた。 「…つかさ…後で覚えてなさいよ…」 「えーっと…あ、そうだこなちゃん!どんなパン買ったの!?見せてほしいな!」 見つめられている箇所がチリチリと熱いかがみの視線を受けたつかさは、冷や汗をたらしながら話題を変えようとした。 「つかさ、タゲ逸らし乙。ま、それはそれとして…聞いて驚け!なんと限定チョココロネをゲットできたんだよ!」 某ハイラルの勇者のごとく、高々と紙袋を掲げるこなた。それを見て、かがみが呆れた顔をした。 「チョココロネって、またあんたらしいな…ってかコロネ一つでそんな大層な…つかさ?」 かがみはつかさの様子がおかしいことに気がついた。魂が抜けたかのように、こなたの持つ紙袋を見つめている。 「つかさ?おーい、つかさー?」 かがみがつかさの顔の前でひらひらと手を振る。 「って、えええええええぇぇぇぇぇぇっ!?」 「うわあ!?びっくりした!」 それに反応したのか、つかさが突如大声を上げ、かがみは驚いて三歩ほど後ろに下がった。 「ど、どうしたのよ?急に…」 「だってチョココロネだよ!数量限定だよ!一番人気なんだよ!普通買えないよ!どうやって買ったのこなちゃん!?」 普段からは想像もつかないような勢いでまくしたてるつかさを、かがみは冷や汗をたらしながら見ていた。 「そ、そんなに凄いんだそのコロネ…みゆきは当然知ってるのよね?…って、みゆき?」 かがみが先程までいた場所からいなくなったみゆきを探すと、こなたが掲げる紙袋に今にも食いつかんとする位置にいた。 「ちょっとみゆき!なにやってんの!?」 「え?…って、うわあ!みゆきさん!?」 かがみの声でみゆきの接近に気がついたこなたが、慌てて紙袋を胸元に抱き込んだ。 「あっぶなー…かがみならともかく、みゆきさんは盲点だった…」 「どういう意味だ…ってか、ホントになにやってるのみゆき…」 「す、すいません…その紙袋を見てたら無意識に…」 「みゆきが理性を無くすほどなんだ…ねえ、こなた」 「一口もあげない」 「…まだ何も言ってないわよ…いや、当たってるんだけど…」 これ以上外に出しておくのは危険だと感じたこなたは、紙袋を鞄の中にしまい込んだ。 「今日はニ時間目の体育がマラソンだったから、かなーりブルーだったんだけどねー。これでばっちり乗り切れるよー」 これ以上はないくらい嬉しそうに鞄を抱きかかえて歩き出すこなた。 「こなちゃん、いいなー」 「はい。羨ましいです…」 そのこなたの後ろをつかさとみゆきがついていく。 「………ふーん」 その更に後ろを歩くかがみは、顎に手を当てて何かを考え込んでいた。 体育の時間。こなたは文字通り風となっていた。 「うりゃりゃりゃりゃー!!」 「…こ、こなちゃん…速すぎるよ…」 「…ぜ、全然追いつけませんね…」 つかさどころか、みゆきすらも周回遅れにしそうな勢いのこなたを、クラス全員が『こいつホントに人間かよ』みたいな目で見ていた。 「いやー、走った走った。これだけお腹空かせれば、お昼もより美味しくなるに違いないよ」 「…それで…あんなに、張り切ってらしたんですね…」 満足気に汗を拭くこなたの横で、みゆきが息も絶え絶えに座り込んでいた。 「ってかみゆきさん、わたしに合わせようとしなくても良かったのに」 「…周回遅れは…嫌でしたので…」 「うーん。みゆきさんは、変な所で負けず嫌いだなあ…タオル、濡らしてこようか?」 「…はい…お願いします…」 こなたはみゆきからタオルを受け取ると、水道の方へと駆け出した。 「…まだ…走れるんですね…」 呆れたようにこなたを見送ったみゆきは、自分と同じようにへたばっていたつかさが、立ち上がって校舎の方を見ているのに気がついた。つかさの目線を辿ってみると、どうやら自分達の教室の方を見ているようだった。 「…つかささん?どうかなさいましたか?」 みゆきがそう声をかけると、つかさはビクッと身体を震わせ慌てて視線を戻した。 「な、なんでもないよゆきちゃん…なんでもないから」 「…そうですか?」 「次乗り切れば、お昼だねー」 三時間目終了後の休み時間、こなたは嬉しそうにつぎの授業の準備をしていた。 「こなちゃんのコロネが気になってしょうがないよ…」 「そうですね…」 つかさとみゆきは授業の準備をしながらも、こなたの鞄を見つめていた。 「よし!準備完了!トイレでも行くか!」 そう高らかに宣言しながらこなたは席を立った。 「こ、こなちゃん…そんな事あんまり大きな声で………あ…こなちゃん、わたしもいくよ」 そう言いながら、こなたに続いてつかさも席を立つ。 「んじゃ、連れションといきますか!」 「こなちゃーん、やめてー」 教室にいる全員の視線を集めながら、二人は教室を出て行った。 「…つかささんも、大変ですね」 二人を見送ったみゆきは、次の授業の予習を始めようとした。しかし、ふと目に入ったこなたの鞄に視線が止まる。しばらく鞄を見つめていたみゆきは、何かを振り払うように首を振ると、自分の机に向かった。 「ただいまー」 しばらくして、こなたが一人で教室に入ってきた。 「お、おかえりなさい、泉さん…あ、あのつかささんは?」 「んー、それがね、わたしがトイレから出た時にはもういなかったんだよねー…どこ行ったのやら」 「そ、そうですか…」 「…みゆきさん?」 「は、はい?なんでしょう?」 「なんか顔色悪いよ?気分でも悪いの?」 「い、いえ!なんでもありません!何時も通りですよ、わたしは!」 「そう?…んー、まあいいけど」 二人が話していると、つかさが教室に入ってきた。 「あ、つかさー。どこ行ってたの?せっかく肩組んで帰ろうとでも思ってたのに」 「ごめんね、ちょっと喉が渇いたから自販機に行ってたの…っていうか、そんな恥ずかしいこと出来ないよ…こなちゃんと肩組むの大変そうだし」 「む、それは遠まわしにわたしの背の低さを非難しているのかね」 「そ、そうじゃないけど…って、あれ?ゆきちゃん?」 「…な、なんでしょう?」 「なんだか顔色悪いけど、大丈夫?」 「あ、つかさもやっぱそう思う?」 「うん…気分悪いんだったら、保健室行こうか?」 「い、いえ…ご心配には及びません、はい…」 「そう?だったらいいんだけど…」 こなたとつかさは、なんとなく腑に落ちない表情で、顔を見合わせた。 そして昼休み。 「うにょわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 それは、こなたの奇妙な悲鳴で幕を上げた。 「ど、どうしたのこなちゃん!?…ていうか今のって悲鳴でいいの?」 「つかさ!つかさー!なんで…なんでこんなことにー!」 こなたは近寄ってきたつかさの両肩をがっしり掴むと、力任せに前後に揺さぶった。 「お、お、お、お、落ちつい、落ち着いて、こな、こな、こなちゃ」 「あ、あの泉さん…つかささんが大変なことになってますんで…」 みゆきがこなたを止めようと声をかけたが、今のこなたに声は届かないようだった。 「なーんーでーだーよー!」 「…こ、こな…おねが…まって…」 さらに激しくこなたがつかさをシェイクしていると、教室のドアが開いてかがみが入ってきた。 「ねえ、さっきの悲鳴?で、いいの?は、こなたっぽかったんだけど、何かあったの…って何をやってるんだお前は」 かがみはこなた達に近づくと、意識が朦朧としてるのか力なくカクカク揺れてるつかさを、こなたから引き剥がした。 「大丈夫ですか?つかささん…」 「…大丈夫…地球が震えてるから大丈夫…」 「かがみー!かがみー!これ見てよー!」 みゆきがつかさを介抱してる傍で、こなたはかがみにコロネの入った紙袋の中を見せた。 「…え…こ、これって…」 それを見たかがみは絶句した。 紙袋の中にあったのは、無残にも踏み潰されたチョココロネだった。袋の内側にチョコが飛び散り、靴の跡も痛々しく、もはや食せる物ではなかった。 「…なんで?…どうして、こんなことに?…」 「そんなのわたしが聞きたいよ!」 少し顔を青ざめさせながら聞くかがみに、こなたは噛み付きそうな勢いで答えた。そしてしばらく考え込むと、つかさを介抱しているみゆきに顔を向けた。 「みゆきさん!」 「は、はい!?」 「犯人見つけてよ!この前の資料室の時みたいにパパッとさ!」 「…え…あ、わたしが…ですか?」 「みゆきさんがこういうとき一番頼りになるんだから!」 期待に満ちた目で見つめるこなたからみゆきは目を背けると、俯いて考え込み始めた。 「…みゆきさん?」 「…いえ…そうですよね…分かりました、放課後までには何とか…」 俯いたまま答えるみゆきに、こなたは違和感を感じた。 「みゆきさん、ホントに大丈夫?」 「大丈夫です…ご心配なく」 「…だったらいいんだけど…はい、これ」 こなたはみゆきに、コロネの入った紙袋を手渡した。 「何かのヒントになるかもしれないし、みゆきさんが持ってて」 「あ、はい…」 みゆきは紙袋の中を覗き込んだ。中に入ってるのは目を背けたくなるような惨状のチョココロネ。 「…あれ?」 それを見たみゆきは首を捻った。 「どうかしたの?みゆきさん」 「…これって…」 こなたの言葉が聞こえなかったのか、みゆきはコロネを見つめながら考え込んでしまった。 放課後。すっかり人の出払った教室に、みゆき以外の三人が集まっていた。 「…みゆき、遅いわね」 机の上に頬杖をついたかがみが呟いた。ホームルームが終わった直後にみゆきの姿が消えたため、三人はしかたなく教室で待機していた。 「うん…どうしたんだろ?」 「わたし、ちょっと見てくるよ」 こなたが立ち上がり、みゆきを探すために教室出ると、丁度廊下の向こう側から歩いてくるみゆきを見つけた。 「あ、みゆきさーん」 「…泉さん」 「どこ行ってたの?みんな待ってるよ」 「すいません、少し証拠固めに職員室と購買の方にいってました…あまり利用しないので知りませんでしたが、購買は朝から開いているんですね」 「うん、部活の朝連の人とか利用するみたい…それで、犯人は分かったの?」 「はい、一応は…行きましょう、泉さん…真実のその向こうまで…」 「…え?」 こなたとみゆきの二人が教室に入り、四人はいつもお昼ごはんを食べる時のように机を囲んで座った。 「さて、今回の事件の犯人ですが…」 切り出すみゆきに他の三人の視線が集まる。 「残念ながら、この四人の中の誰かです」 「…え」 「…うそ」 「…わたしも容疑者なの?」 みゆきの言葉に、かがみとつかさは唖然とし、こなたは自分を指差して困った顔をした。 「一応、前提としてはそうなります。被害者だからと言って犯人ではないということはありませんし…勿論、探偵役も特別ではありません」 「で、でもなんでわたしたちなの?」 「泉さんが、このチョココロネを持っているのを知っているのは、恐らくこの四人だけだからです。コロネの存在を知らなければ、わざわざ泉さんの鞄を漁ることはないでしょうから」 みゆきはいつになく緊張した声でそう言った。そして、心を落ち着かせるために深呼吸をして、犯人を指摘する為に口を開いた。 「チョココロネを踏み潰した犯人は…」 「はい、今回は出番の無かった小早川ゆたかです」 「…同じく岩崎みなみです」 「…みなみちゃんは前回も出てなかった気がするんだけど…」 「無残にも踏み潰されたチョココロネ。果たして犯人は四人の内の誰なのか?」 「え?あれ?みなみちゃん?」 「みなさんもみゆきさんと共に、正解率99%の暇つぶしに挑んでみてください。では、今回はこの辺で…」 「え?もしかして締めちゃった?わたしがここにいる意味は?」 「………」 「みなみちゃん、どこいくの!?みなみちゃーん!」 ※ここから解答編 「岩崎みなみです」 「………」 「さて、みなさんは真相に辿り着くことができましたか?」 「………」 「それでは、解答編の幕開けです………ゆたか?」 「………」 「…等身大ポップ…いつの間に…」 - チョココロネは食べられない 解答編 - 「チョココロネを踏み潰した犯人は…」 みゆきはそこで言葉を止めてしまった。やはり指摘するのを躊躇してしまう。だが、それでも言わなければいけない。みゆきは勇気を振り絞って、言葉の続きを口にした。 「犯人はわたしです」 そう、これは自分の罪なのだから。 「………みゆきが?」 実際には短かったのだろうが、異様に長く感じる沈黙の後、かがみがそう呟いた。 「はい、わたしです」 「いつ?」 「三時間目と四時間目の間の休み時間です。その時に、泉さんとつかささんが教室から出て、わたし一人になっていました」 「…どうしてそんなことをしたの?」 「…言い訳に聞こえるかもしれませんが、踏み潰すつもりはありませんでした。ただちょっとだけ見てみたい…そう思ったんです」 みゆきはそこで、自分の鞄の中からこなたから預かった紙袋を取り出した。 「紙袋からチョココロネを取り出したときに、手を滑らせて床に落としてしまったのです。そして、それを慌てて拾おうとして、足をもつれさせて…」 その時の惨状を思い出したのか、みゆきは目を瞑って身を震わせた。 「幸い…いえ、不幸にもその時、クラスの誰もわたしの方を見ておらず、気づいた人はいませんでした。わたしは何を思ったのか、潰れたチョココロネを紙袋入れて泉さんの鞄に戻し、床に付いたチョコをふき取って自分の席に戻ったのです…そして、戻ってきた泉さんに何も言えず、そのままお昼休みになってしまったと言うことです…本当に、申し訳ありませんでした」 みゆきはこなたに向かい深々と頭を下げた。 「…泉さん?」 しかし、こなたからの反応が何もない。みゆきは違和感を感じて、顔を上げてこなたの方を見た。こなたは俯いていて表情が読み取れない。 「とりあえずこれで、今回の事件は終りよね?後はこなたとみゆきの問題だし、わたし達は帰るわよ…行こう、つかさ」 そう言って、かがみが席を立った。 「待って下さい、かがみさん。まだ終わってはいません」 こなたからの反応が未だに無いのを気にしつつも、みゆきはかがみが帰るのを引き留めた。 「え、でも踏み潰したのがみゆきならこれ以上何が…」 「あるんです…見ててください」 みゆきは自分の鞄から、ビニール袋に入ったチョココロネを取り出した。 「これは先程購買で購入したものです」 そして今度は、紙袋から潰れたチョココロネを取り出して、手で出来るだけ元の形になるように整えた。 「それを、わたしが潰したチョココロネに重ねてみます」 みゆきが二つのチョココロネを重ね合わせる。それを見たかがみの顔色が変わった。 「このように、この二つのチョココロネは大きさが全く同じです…おかしいですよね?」 かがみに向かい、みゆきがそう言った。かがみが思わず視線を逸らしてしまう。 「な、なにがよ?」 「朝の会話を思い出してください。泉さんがチョココロネを買ったお店は、普通のお店よりパンが大きいんです。それはチョココロネも例外ではありません。にも拘らず、このチョココロネは購買で購入したものと大きさが同じ…そこから考えられることはただ一つ」 みゆきは一度言葉を切り、改めてかがみの方をしっかりと見据えた。 「わたしが踏み潰す前に、何者かがチョココロネをすり替えていた…ということです」 「な、なんでそれをわたしの方向いて言うのよ…」 「すり替えたのが貴女だからです、かがみさん」 少しばかり長い沈黙の後、かがみはみゆきを睨むような目つきで見据え、席に座りなおした。 「わたしが、いつチョココロネをすり替えたって言うの?昼休みまでのどの休み時間も、そっちのクラスには行ってないわ」 「そうですね。それに、休み時間に来たとしてもわたし達のうち誰かがいましたから、チョココロネをすり替えるのは不可能です」 「だったら…」 「休み時間以外ならどうでしょう?」 「い、以外って…そんなの…」 「かがみさんは、朝のわたし達の会話を聞いて、チョココロネをすり替える計画を思いついたのではないでしょうか…一時間目が始まる前に購買でチョココロネを購入しておき、二時間目の間に授業を抜け出して体育でクラス全員が出払ったわたし達のクラスに入り、チョココロネをすり替えた…違いますか?」 「…証拠は…あるの?」 「購買の方より、朝に髪をふたくくりにした女の子がチョココロネを買って行ったという証言と、かがみさんのクラスの二時間目を担当された教師の方より、授業中にお手洗いに出て行ったという証言をいただきました」 「…う」 「あとは…つかささん次第です」 そう言いながら、みゆきがつかさの方を見ると、つかさは咄嗟に顔を伏せてしまった。 「…ゆきちゃんは、分かってるんだよね?」 そして、顔を伏せたまま呟いた。 「つかささんの件に関しては、ほとんど推測ですが」 「…そっか…わたし次第…そうだよね…」 「つかさ!」 思わずつかさの方に詰め寄ろうとしたかがみに、つかさは顔を向けニコッと笑った。 「お姉ちゃん、もうやめよう?…ゆきちゃんには分かってるみたいだし、隠し通せるものじゃないよ…ううん、隠してちゃいけないんだよ。悪いことは悪いことなんだから…」 それを聞いたかがみが、力なく項垂れる。 「つかささんは、かがみさんの行動に気が付いていたんですね?」 「うん。体育の時にね、お姉ちゃんがわたし達のクラスからこっちを見てるのに気が付いてね、あんなところで何やってるんだろうって気になって…」 「それで、泉さんとお手洗いに行く振りをして、かがみさんに問い質しに行った…」 「うん…なんか凄くいやな予感がして、こなちゃん達には言わないほうがいいかなって思って…お姉ちゃんの所に行ったら、こなちゃんのコロネ食べようとしてて…半分あげるから黙っててって言われて…それで…」 「それでは、チョココロネはその時に…」 「うん、お姉ちゃんと食べちゃったの…ごめん…なさい…」 こなたに向かい頭を下げるつかさ。しかし、こなたからの反応はまたしても無かった。 「…最初はね、ちょっとした悪戯のつもりだったの…」 それに気づいてか気づかずか、かがみが項垂れたまま話し始めた。 「こなたがあんまり得意気だったから、すり替えられたときにどういう反応するかなって…気づかずに食べちゃったら、思い切りバカにしてやろうって思って…でも、実物見たらどうしても我慢できなくなって…どうせバレっこないって、つい…」 「みんなの言い分はそれで全部?」 急に聞こえたこなたの声に、三人がびくりと身体を震わせた。そして、いつの間にか顔を上げていたこなたの方に顔を向ける。 「つまり、わたし以外のみんながなにかしらやらかしていて、わたしに何一つ言い出せないでここまで来ちゃった、と」 表情の無い眼で三人を見渡しながら、抑揚の無い声でこなたはそう言った。 「あ、あの、泉さん…」 そのこなたに恐怖にも似た感情を覚えたみゆきが、何かしら言い繕おうとした。 「…見損なったよ」 こなたはその言葉を遮り、鞄を持って席を立った。 「こ、こなちゃん、どこに…」 「帰る」 一言だけ残して教室を出ようとするこなた。 「待って、こなた!」 そのこなたの肩を後ろからかがみが捕まえる。 「ごめんなさい…わたしが…わたしが悪かったから…」 「だから許せって?」 振り返りすらせずに、こなたがそう聞いた。 「…償いはするから…なんでも、するから…お願い…」 「…なんでも?」 「…うん…わたしに、出来ることなら…」 「おーけー…その言葉が聞きたかったよー」 そう言って振り向いたこなたの顔は、笑顔だった。なんというか、ニンマリといった擬音がぴったりの笑顔だった。 「え?あれ?」 呆気にとられるかがみの前で、いつもの調子でこなたが喋りだす。 「そうだねー。じゃあ決行は今度の日曜日って事で、土曜日にでもミーティングをしよっか。みゆきさんとつかさはどうする?」 「え?は、はい?…あ、いえ。わたしも償いはさせていただきます…結果的にはわたしが踏んだのは違うチョココロネでしたけど、そうじゃなかった可能性もあったわけですし…」 「わ、わたしも、お姉ちゃんを止められたのに、コロネに釣られて止めなかったから…」 「おーけーおーけー、いいねいいねー三人かー。こりゃ楽しくなりそうだねー。早速帰って準備しなきゃ…あ、みゆきさん。このチョココロネ貰っていい?お昼ご飯食べてなくて、ちょっとお腹空いた」 「あ、はい…どうぞ…」 「あんがとー。そいじゃみんな、土日はちゃんと空けといてねー」 チョココロネにかぶり付きながら、教室を出て行くこなた。それを唖然と見送る三人。 「…ねえ、みゆき」 「…なんでしょう、かがみさん?」 「こういう時は『ぎゃふん』でいいのかな…」 「適切かと、存じます…」 泉家の日曜日の朝は遅い。 休み前日には、いつも以上に夜更かしをするこなたは勿論だが、平日には徹夜明けでもこなたやゆたかと朝食を共にするそうじろうも、昼頃まで寝ていることが多い。 そんなふたりの生活パターンに引き摺られてか、最初の頃は日曜日も早く起きていたゆたかも、段々と昼近くまで寝ているようになっていた。 カーテンの開ける音と共に、眩しい光が部屋に満ちる。 「う、うーん?」 その光でゆたかは目を覚ました。 「こなたお姉ちゃん?」 ゆたかはこなたが起こしに来たのだと思った。しかし、まったく予想していなかった声がした。 「おはようございます。お嬢様」 「………え?」 上半身を起こしたゆたかが、寝ぼけ眼で見たのは、メイド姿で深々と頭を下げているみゆきだった。 「え?ええ!?高良先輩!?って、メイドさん!?なんか色々と、ええええ!?」 「えーっと…こういう罰ゲームだと思って、少し落ち着いて貰えますか?」 混乱するゆたかをなだめるみゆき。 「え、罰ゲーム?高良先輩が?」 「ええ、まあ。色々ありまして…では、お顔を洗いに参りましょうか?」 用意してあったタオルを手に取り、みゆきは部屋のドアを開け、ゆたかに出るように促した。 「どうぞ、お嬢様」 「あ、はい…ありがとうございます」 「そんなお気遣いは無用ですよ、お嬢様」 「…うぅ、なんだかわたしが罰ゲームを受けてるみたい…」 なんだか妙な気分を味わいながら、ゆたかが廊下に出た瞬間。 「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 と、悲鳴が上がった。 「い、今の声…」 「かがみさんですね。どうなされたのでしょうか?」 「…かがみ先輩も来てたんだ」 「ゆーちゃん、おっはよー。どうだったかね?今日のお目覚めは?」 ゆたかとみゆきが洗面所に向かっていると、こなたが声を掛けてきた。後ろには、やはりメイド姿のつかさを従えている。 「…こなたお姉ちゃん…訳がわからないよ…」 「まあ、折角のメイドさんなんだし、しっかり楽しまないと…ね、つかさ」 「…うぅ…こなちゃんの要求は恥ずかしいのが多くて…」 「ほら、つかさ。言葉遣い」 「あぅ…申し訳ありません、ご主人様…」 そんな二人を見ていたみゆきは、ふとさっきの悲鳴が気になり、こなたに聞いてみることにした。 「あの、ご主人様。先程かがみさんの悲鳴が聞こえたようでしたが…」 「ああ、あれ。わたしの予想通りだと、面白いことになってるよー」 「…おはよう…こなた、ゆーちゃん」 話してる後ろから、そうじろうが挨拶をしてきた。 「あ、おはよー。お父さ…うわーお」 こなたは挨拶を返そうとして、そうじろうの顔を見て思わず止まってしまった。そうじろうの右目に見事な青あざが出来ていたのだ。そのそうじろうの後ろには、顔を真っ赤にして俯いているメイド姿のかがみがいた。 「…頬に紅葉作ってくるくらいは、予想してたんだけどね…」 こなたは冷や汗を垂らしながらそう言った。 「お、おじさん…どうしたんですか?」 「いや…朝起きたらメイドさんに、グーパンチを顔面に貰ったんだが…訳がわからない…」 「流石はかがみ…容赦ないね…」 泉家の面々が話してる後ろで、つかさはかがみに小声で事情を聞いてみた。 「な、なにがあったの?お姉ちゃん…」 「…きのこの山がね…たけのこの里に…」 「お姉ちゃん…全然わかんないよ…」 「あー、それはねーつかさ。男性の朝の生理現象ってやつだよ」 いつの間にか二人の間に入り込んでいたこなたが、話に割り込んできた。 「お父さんのきのこの山がテント張って、たけのこの里みたく…」 「説明せんでいいっ!!」 「はい、かがみ。言葉遣い」 「…う…申し訳ありません、ご主人様…」 「さーて、次は何してもらおっかなー…お風呂で背中流すってのはどうかな?」 「ええええ!?それはダメだよこなちゃん!」 「で、出来るわけ無いでしょ!?」 「はい、二人とも。言葉遣い」 「あう…」 「もう、勘弁して…」 みゆきは、そんな光景を見ながら思っていた。 もしかしたら、こなたは四人のうちの誰かが犯人と聞いたときから、ずっとこういうことを考えていたのではないか、と。 友達の誰かが犯人。そう分かった時点で、こなたが考え始めた事は、誰が犯人ではなく、どうやってこれを笑い話に変えてしまおうか、だったのでではないか。 だから、なんでもするという台詞を引き出すために、あえて冷たい態度を取ったのではないか。 そして、罪にかこつけてわがまま放題をして自分にも非を作り、みんなの中の罪悪感を消していこうとしているのではないか。 すべては「あの時、こんなことがあったね」と、将来笑いながら話せるように。 「…とんでもない、被害者ですね」 みゆきはクスリと笑うと、未だなにかを言い合ってる三人に混ざりに行った。 自分もまた、その笑い話の一部として。 - おしまい - 471 名前:チョココロネは食べられない[saga] 投稿日:2009/01/25(日) 17 48 23.56 ID SazeaJw0 以上です。 途中でシリアスになりかけたので、方向修正しようと思ったら、何故かメイドに。 以下、NG場面(校正時点で判明した誤植) 「…半分投げるから黙っててって言われて…」 「ぶふぅっ!」 「こらこなた、吹くんじゃない。NGになる」 「…吹かなくてもNGです」
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わたしは人より恵まれてるという事に、小さなころから気がついていました。だからわたしは、欲というものが人よりも少なかったのです。知識を得る事は好きでしたが、欲というほどのものではありませんでした。 けど、稜桜学園に通い始めてから、わたしに一つの欲が生まれました。それはわたしの中でとても大きくなり、自分では押さえることはできなくなっていったのです。 - Desire - 出会いは一年生の時。正直に言いますと、当時のわたしは彼女が少し苦手でした。気まぐれで奔放、わたしと合う要素など何もないと思っていました。 でもなぜか、わたしは徐々に彼女が気になり始め、その行動を目で追うようになりました。そして、少しだけでも彼女と話がしたいと思い、その機会を持とうとしましたが、なかなか上手くいきませんでした。 そうこうしてるうちに、彼女に仲のいい友達ができた事を知りました。同じクラスのその子と彼女は、お昼ご飯も共に食べるようになったようで、楽しそうな声をよく耳にするようになりました。 それから少し経ち、彼女とお昼を食べる友達がもう一人増えました。委員会で話した事のあるその人は、わたしを見かけると「一緒に食べない?」と誘ってくれました。しかしわたしは、何故か「少し用事がありますので」と断ってしまったのです。彼女と親交が持てる、願ってもないチャンスだったというのに…。 その年の夏休みは、溜息ばかりついて過ごしていました。考える時間が増えると、どうしても彼女の事を思ってしまうのです。どうしてここまで彼女にこだわるのか、いくら考えても答えは少しも見えてきませんでした。 二学期が始まり、また毎日学校で彼女と会うことができるようになりました。しかし一度距離を置いてしまうと、どうしても近づく事ができなってしまいました。気ばかり焦り、無駄な時間が過ぎていきました。 再び機会が訪れたのは桜藤祭の時でした。彼女とその友達の班の進行がひどく遅れていたのです。彼女自身は悪い意味で適当で、その友達は頑張ってはいるのですが、不器用というか要領が悪いというか…わたしは実行委員として彼女達を頻繁に手伝うようになりました。そしてごく自然に親交を持つ事ができたのです。 こうしてわたしは彼女とその友人、泉こなたさんと柊つかささんかがみさんと友達になる事ができました。 それからの学校生活はとても充実していました。泉さんと友達となる事ができた。ただそれだけで、こうも自分の気持ちが高ぶるとは予想もしていませんでした。でもそれを知られるのはとても恥ずかしく思え、わたしはいつも一歩引いた位置で泉さん達を見ていました。 泉さんは日常の些細な疑問をよくわたしにぶつけてきました。友達となる以前から、泉さんはオタクと呼ばれるような人だとは知っていましたから、会話が大変なのではと勝手に思っていました。ですが泉さんは時々わたしが理解できない事を話すものの、ほとんどはわたしがたまたま答えを知っているような質問ばかりを振ってきました。 しばらくして、泉さんは泉さんなりにわたしとの接点を探っていたのではないかと思うようになりました。わたしが最初泉さんを苦手だと感じていたように、泉さんもわたしに苦手意識を持っていたんじゃないか。その溝を彼女なりに埋めようとしてるのではないかと、思ったのです。 二年生になり、泉さんの事が少しずつ分かるようになってきました。知らない人にも物怖じしない。言いたいことは少しも遠慮せずに言う。意外と友達思いな面もある。コミュニケーションやスキンシップなどの方法に少し問題があって、かがみさんに良く怒られている…そんな泉さんのおかげで、わたしは退屈など感じることなく過ごす事が出来ていました。 少し経ったとき、わたしは前々から考えていた事を実行してみました。今まで泉さんと名字で呼んでいたのを、こなたさんと名前で呼んでみる事にしたのです。かがみさんやつかささんは名前で呼んでいるのに、泉さんだけ名字はおかしい等理由は有りましたが、急に呼び方を変えたことで泉さんがどういう反応を見せるのかを見たい。それが一番の理由でした。 しかし、泉さんは特に反応を示す事はありませんでした。というか、わたしが呼び方を変えたことすら気付いていないようでした。結局わたしは数日で呼び方を元に戻しました。 泉さん自身は自分がどう呼ばれるのかをほとんど気にしない人のようでした。わたしは泉さんが友達の中でわたしだけさん付けで呼んでいる事を、少し気にしていました。しかし、少し考え方を変えたときから、それは気にならないどころか嬉しい事だと思えるようになりました。わたしは友達の中で泉さんだけを名字で呼んでいる。そして泉さんはわたしだけをさん付けで呼んでいる。それはつまり、わたし達はお互いを特別な呼び方で呼んでいるのではないか、と思ったのです。もちろん、わたしのただの自惚れに過ぎないかもしれせんが。 二年生も終りに近づく頃、わたしは自分の中に今までにないような気持ちが膨らむのを感じていました。泉さんの事をもっと知りたい。少しでも多くの時間を共に過ごしたい。そう思うようになってきたのです。一年生の当初からあった欲、泉さんを知ったときに生まれた欲、それは友達になった事では少しも満たされていませんでした。その時に初めて、わたしはとても欲深い人間だという事に気がついたのです。 三年生になり、受験生となったわたしの周囲は、とても慌しくなってきました。その中でも泉さんは自分のペースを崩すことなく過ごしていました。かがみさんはその事についてよく泉さんに意見していましたが、泉さんはあまりちゃんと聞いていないようでした。進路や受験をまるで他人事のように受け止めている泉さんを、わたしも少し心配でした。このまま進路も決まらずに卒業するのではないか?など、よからぬ考えが頭から離れませんでした。 二学期が始まってすぐのある日の放課後、わたしは委員会の人に「いつまで泉さんと付き合っているの?」と聞かれました。わたしはその質問の意図がつかめず、どういうことなのかと問い返しました。その人は泉さんの成績の事を持ち出してきました。そして、あまり良くない生活態度の事も。そして、それがわたしにとっての悪影響になると。その人は言いました「友達は選んだ方がいいよ」…わたしは頭の奥の方が熱くなるのを感じていました。 冗談じゃない。わたしが嫌々泉さんに付き合ってるとでも言うのか。泉さんと友達でいる事を決めたのはわたしだ。あなたじゃない。泉さん自身にならともかくあなたにそんな事を言われたくない。泉さんの事を何も知らないくせに。 その人がその場からいなくなった後も、わたしの頭の熱はなかなか冷めませんでした。これほどまでに人に強く意見した事などいつ以来だったでしょうか。少し頭が冷えるのを待って、私はその場を離れようとしました。その時にばつの悪そうな顔でこちらを見ている泉さんに気がつきました。 わたしが声をかけるより早く、泉さんが「みゆきさん、大丈夫?」と話しかけてきました。わたしはその質問には答えず、逆に泉さんにどこから聞いていたのかを質問していました。泉さんはわたしから目を逸らして、最初の方から聞いていたと素直に答えてくれました。わたしが何を言うべきか迷っていると、泉さんがもう用事がないなら一緒に帰ろうかと、誘ってくれました。 泉さんの提案で、わたし達はバスを使わず徒歩で駅に向かう事になりました。そして、気がつきました。泉さんと二人きりで下校するのは、これが初めてではないかと。 しばらくは二人とも無言で歩いていました。わたしは、先ほどの事を泉さんがどう思ってるのかそればかり考えていて、何か適当な事も話す事は出来ませんでした。 「さっきのアレ、わたしのために怒ってくれたのかな?」 駅まで半分ほど来た辺りで、泉さんは唐突にそう聞いてきました。わたしはは黙ってうなずきました。そのわたしを見て泉さんは目を瞑ってしばらく考えるような仕草の後、いつもと同じ笑顔を浮かべわたしに向かって親指を立てて見せ、こう言いました。 「いやーおしい。女同士じゃなかったらコレ絶対フラグ立ってたね」 わたしはそんな彼女に対し、苦笑するしかありませんでした。 そこまで書き終えると、みゆきはシャーペンを置きノートを閉じた。 「こんなの書いて、どうするんでしょうね…」 自嘲気味に呟くと、ノートを引き出しの奥の方にしまいこむ。 未だに自分は満たされていない。それどころかどんどん乾いていくようだ。 「まるで恋みたいですね」 恋愛経験など皆無だというのに。ましてや自分たちは女同士だというのに。なぜかみゆきはそう感じた。そして、そう思った自分が可笑しくなり、クスクスと控えめに笑った。 泉さん達はどうなのだろう。みゆきはふとそう思った。彼女たちも自分と同じように、欲を満たすために友達としているのだとうか。 きっとそうだ。妙な確信を持って、みゆきは自分の考えを肯定した。四人が四人とも欲を満たそうと求め合うからこそ、わたし達はここまで友達でいられたのだろう。そしてこれからもそれはきっと、変わりはしないだろう。 みゆきは晴々とした気分で消灯をし、布団に潜り込んだ。今日はきっといい夢が見れる。そして、明日もきっと。 明日は卒業式。旅立ちの時、巣立ちの日と人は言う。 違う道を歩んでいこうとも、欲深いわたし達は望むがままにお互いを求め合うのだろう。 満たされることなく、いつまでも。 - 終 -
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【デュエルパート2】 ここまでの状況を説明しよう。 こなたの手札は3枚、フィールドには『泉そうじろう』攻撃2200、『泉こなたLV6』攻撃2500、『田村ひより』守備1900。ライフは8000で、デッキは28枚。墓地は5枚で除外されたカードは『パトリシア・マーティン』1体だ。 かがみの手札は3枚(内1枚はいのり)。フィールドには『柊みき(タダオカウンター1)』攻撃1500。ライフは7000で、デッキは26枚。墓地は9枚で除外されたカードは『柊つかさ』1体だ。 そして今はかがみのターン。余程すごいカードを引いたらしいのだが、果たして……。 「魔法カード『幸せ未来日記』発動! デッキからモンスターを選択し、そのモンスターに必要な生贄をデッキ、または手札から墓地に捨てることで、次の私のスタンバイフェイズに選択したモンスターを特殊召喚できる」 かがみはデュエルディスクからデッキを取り出し、モンスターを選ぶ。 「私は、私自身『柊かがみ』を選択」 「やっぱりかがみは上級モンスターだったか……」 「私のレベルは7つ、生贄に必要なモンスターは2体だけど……」 「……?」 「ここで手札のいのり姉さんの効果発動、光属性のモンスターを生贄召喚する場合、このモンスター1体で2体分の生贄とすることが出来る!!」 「そんな効果が……!」 手札から『柊いのり』を墓地に捨てる。 「でも、このターン召喚出来る訳じゃないんでしょ? 次の私のターンで差を付けさせてもらうよ」 「そうね、でもまだ私のターンは終わりじゃないわ」 かがみは最後の手札をこなたに見せ付ける。 「それは?」 「これがさっきドローしたカードよ」 このデッキは、使用するプレイヤーに合ったデッキになる……。 「魔法カード――」 故にこんなカードがあっても、不思議ではない。 「『同性愛』発動!!」 「同性愛……なんか嫌な予感が……」 カードには、ツインテールの少女と長髪の少女が唇と唇を合わせている絵が描かれていた。それってつまり……。 「こなたぁ、キスしよっか(///)」 「…………はぁ!?」 驚くのも無理はない。どこの世界にデュエル中キスする奴がいるというのか!? 「な、何言ってんのさ! 今はデュエル中だよ!」 「キスしてくれないの……?」 「だ、だって……」 「この際だから聞いておくわ、こなたって私の事……どう思ってるの?」 今度はどこぞのカップルの別れ話か? かがみが何故こんな話をするのか……それはきっと確かめたいのかもしれない、こなたとの愛を……。 「どう思うって……」 「私ね、薄々は気付いてたの。こなたが私の事、迷惑に感じてるんじゃないかって……」 「いや……」 まさにその通りなので、何も言えないこなた。 「こなたにどうアタックしても、いつも逃げられちゃうしね……」 「…………」 「だからね、もう諦めてこなたと一緒に死ぬつもりだった」 「え……!?」 一緒に死ぬ、それはつまり、よく漫画とかであったりする「君を殺して僕も死ぬ!」と言うキチガイの台詞を意味するのか……。改めて『コナタニア症候郡』は恐ろしいと思うこなたであった。 「でも、そんな事を考えてたとき、調度良いタイミングでこのデュエルに会えたの」 キッと、こなたに真剣な眼差しを見せ付ける。 「だから決めたの、これを最後の賭にしようって」 「かがみ……」 ということは、こなたがデュエルを持ち掛けなければ、今日の夕方にでもかがみはこなたを殺して、自分も死ぬつもりだったということか。ホント恐ろしい病気である。 「でも、その前に確認したいの! こなたの気持ち……、こなたが私の事迷惑に思うならキスしなくて良い。でもこなたが私の事……、迷惑に思ってないなら……キスして……」 かがみは泣いていた。こなたはそれを見てどうしようか迷っていると、 「こなた、これはかがみちゃんの為でもあるの。可哀相だけど、心を鬼にしなくちゃダメよ」 「う、うん……」 こなたもまた、キッと真剣な眼差しでかがみを見る。 「ごめんかがみ」 「!?」 「かがみの気持ちは嬉しいよ。でもこういうことは、お互いの気持ちが重なり合って初めて出来ることだよね? 別にかがみが嫌いなんて言ってないよ? かがみは友達として好きなんだ。だから私はこのデュエルに勝って――」 「あっはははははは」 「かがみ?」 突然、何かが吹っ切れたように渇いた笑いをするかがみ。 「もういい、もういい! これ以上こなたの口からそんな言葉聞きたくない!!」 「ちょ、かがみ……」 両耳を塞ぎ、目を閉じ叫ぶ。 「聞かなきゃ良かった……聞かなきゃ良かった!! そうすればこんな思い……!!」 かがみが目を開け、こなたの方を見たと思ったら、急に静かになった。そしてその顔は次第に険しくなる。 「何?」 「あんたね……あんたが邪魔してるのね……!!」 「え?」 突然何を言い出すのかと思い、かがみと目を合わせようとするが、その視線はこなたに向けられたものではなかった。 そう、かがみの視線の先にいたのは……。 「私が……見えてるの?」 かなたであった。かなたはこなたにしか見えないはずなのに、何故……? 「どうしてお母さんが……」 「……恐らく、症状が悪化して、見えないものが見えるようになったのかも知れないわ」 はて、こういう設定……どこかで見たことがあるぞ。という読者の方もいらっしゃるかも知れないが、ここは目をつむっておいてほしい。 「知ってるわよ、あんた……闇こなたね」 闇こなたって……所謂『もう一人の僕』ってことだろう。かなたが持ってきた飴の効果には、そんな知識まで増えてしまうようだ。 「闇こなたって……かがみはお母さん見た事あるはずなんだけど……」 以前、かがみが泉家に遊びに行ったとき、アルバムでこなたの母を確認している。どういうことだろうか? 「多分だけど、今のかがみちゃんには私が悪者にしか見えてないのよ。症状が悪化している証拠ね」 「かがみ……」 かがみを救おうと、遥々天界からやってきたかなたが、かがみには悪者に……闇こなたに見えてしまうなんて……つくづく厄介な病気だ。 「こなたは騙されてるのよ、そんな悪魔の囁きに耳を貸しちゃダメ」 「……」 「あ、悪魔なんかじゃないよ!! かがみこそ、いい加減に自分の言ってることが――」 「もう心も支配されてるみたいね……、可哀相なこなた。今助けてあげるからね」 「かがみのバカ! なんでそうなるんだよ……」 もはやこなたの言葉は、かがみには通じないようだ。 「こなた……」 「私、絶対負けない。勝ってかがみを取り戻してみせる」 こなたの瞳には、かがみを救うという決意が見て取れた。 「魔法カード『同性愛』の効果。相手がキスに応じなかった場合、私は手札が5枚になるようデッキからドローする!」 「な……5枚ドロー!?」 かがみの手札は現在0枚。よって、5枚ドローすることが出来るのだ。 相手がキスに応じなかった場合って……なんという禁止カード!! 「因みに相手がキスに応じた場合は、私の手札を全て捨て、デッキの上から10枚カードを墓地に送るっていう効果だったのよ。キスすれば勝てたかも知れないのに、残念だったわね、闇こなたさん?」 確かに、残りのデッキ枚数を見て10枚も墓地に送れば、キーカードが無くなり勝率は上がるかもしれない。しかし常識的に考えてデュエル中に握手なら未だしも、キスはないだろう。 「私はここでみゆきを攻撃表示で召喚!」 「みゆきさん?」 フィールドに『高良みゆき』が「お恥ずかしながら」と笑いながら姿を表す。 攻撃力1500、守備力1500。☆×4。 「みゆきの効果発動! 1ターンに1度、カードの種類を1つ宣言する。相手の手札を1枚選択し、宣言した種類のカードだった場合、そのカードを墓地に送り、相手ライフに1000ポイントのダメージを与える!」 「1000ポイント!?」 「私は魔法カードを宣言するわ」 こなたの手札は3枚。その中に魔法カードがあったとしても、当たる確率は3分の1だが、果たして……。 「真ん中のカードよ」 「うっ……」 「どうしたの、見せなさい」 「くっ……」 こなたは渋々とカードを見せる。そのカードは魔法カード『ごみ箱から元に戻す』、『泉こなた』を復活させることが出来る重要なカードだった。 「当たりね、しかもその厄介なカードだったなんて運が良いわ」 「くそぅ……流石みゆきさん、何でもお見通しか……」 カードを墓地に捨てる。 「更に1000ポイントのダメージを受けてもらうわ!」 「うっ」 ここでこなた初のダメージ、8000から7000へ。かがみのライフと並んだ。 「私はお母さんを守備表示に変更し、カードを2枚伏せてターンエンドよ」 『柊みき』の守備力は2500、『泉こなたLV6』の攻撃力と同じ数値だ。更に攻撃を1回防ぐタダオカウンターが1つ乗っているので、倒すのは困難だ。そして『高良みゆき』は攻撃力1500の下級モンスターだが、伏せカードが2枚もあるので迂闊に攻撃できないだろう。 除去カードがあれば別なのだが……。 「私のターン、ドロー」 「この瞬間、罠カード発動!」 「え!?」 「『背景放題やりほーだい』!!」 「ちょ……」 カードには背景コンビ(主にみさお)がドンチャン騒ぎをしている絵が書かれていた。 「墓地の日下部と峰岸をゲームから除外することで、3つの効果の内1つ選択する」 「“やりほーだい”ってそーゆー事か」 かがみの墓地から「みゅ~ん」と情けない声が聞こえた。除外された誰かさんの断末魔だろう。 「私は3つの効果から“相手の手札を1枚墓地に捨てる”を選択。右端のカードを捨てなさい」 「な、ちょ……えぇー……」 顔を片手で抑え、あちゃーと仕種するこなた。 「あら、よっぽど大事なカードだったようね」 墓地に捨てられたカードは魔法カード『授業中に何してんねん!!』というカード。効果は、相手の魔法・罠カードを1枚破壊でき、更に手札から1枚カードを捨てる事で、もう1枚破壊できる優れたカードだった。 もし、このカードが捨てられなかったら、これを使い、罠を警戒せずに攻め込むことが出来たのだが。 「さぁ、どうするのかしら? こなたのモンスターならみゆきを倒すことは可能よ?」 「……」 明らかに誘っている。この事から、かがみのもう1枚の伏せカードは罠だと確信するこなた。しかし今ここで『高良みゆき』を倒さなければ、次のかがみのターンで、またあの効果を使われてしまう。どうするこなた!? 「こなた、あれは罠と思い込ませる罠かも知れないわよ?」 「はったりって事でしょ? それに賭けてみよっかな……どっちみち、このままターンエンドするわけにはいかないしね」 こなたは2枚の手札を見つめ、思考する。 「魔法カード『チョココロネ』を私、『泉こなたLV6』に装備。チョココロネを装備した私は、戦闘で破壊したモンスターの守備力分ライフを回復できる」 フィールドの『泉こなたLV6』がチョココロネを包装袋から取り出し、剣の様に構える。 「ふぅん、ライフをいくら回復したところで私には勝てないけどね」 「そんなのわからないじゃん。バトルだよ!」 勢いよく『泉こなたLV6』が攻撃! と見せ掛けて……。 「念のために、先ずはお父さんで攻撃! ごめんね」 親で罠を確かめるなんて……なんて娘だ! といっても実物じゃないのでそれほど酷くはないがな。 『泉そうじろう』が『高良みゆき』に突っ込む! 「その選択は失敗ね! 罠カード発動『ツンデレ』!!」 「ツンデレ……?」 「ターン終了時までモンスター1体の攻撃力は、自分フィールド上・手札のカード×200ポイントアップするわ」 かがみの手札・フィールドのカードはそれぞれ2枚で、合わせて4枚だ。よって『高良みゆき』の攻撃力は800ポイントアップして、2300。『泉そうじろう』を上回った。 「げ……」 「返り討ちにしてやりなさい! ウィキペディハリケーン!」 『高良みゆき』の背後から、無数の文字列が『泉そうじろう』に向かって襲い掛かる。ポケモンを知らない人には申し訳ないが、これは『みwiki版アンノーン達の突進』と言っても良いだろう。 「あぁ、お父さんが……」 「そう君……」 今の戦闘でこなたのライフは6900になってしまった。 「この効果を受けたモンスターが相手モンスターを破壊した場合、相手はカードを2枚ドローすることが出来る。早くドローしなさい」 「なるほど、それで『ツンデレ』か……」 素早くカードをドローし、確認する。 「あんたが罠を警戒して、おじさんで攻撃してくれて助かったわ」 「くそぅ……」 かがみの言う通り、最初から『泉こなたLV6』で攻撃していれば、貴重なモンスターを減らさずに済んだのである。 「でもまだ私がいるもんね! 行け、チョコレートブレイバー!!」 『泉こなたLV6』が持っているチョココロネの中のチョコが溢れ出し、剣の様に形を作る。そして『高良みゆき』を切り付けた。 切り付けられたと言っても、剣がチョコなのでグロ描写は無いが、『高良みゆき』の制服は血の代わりにチョコがびっしりと付いてベタベタになってしまった。 「うーん、チョコレートプレイ?」 「知るか!」 やがて「ひっく……ひっく」と啜り泣く声が聞こえ、「着替えてきます」と共に自ら墓地に向かって行った。 「何だろう、この罪悪感は……」 「あんなにチョコが付いたら洗濯が大変そうね」 「いやいやお母さん、あれは立体映像だから……」 この戦闘でかがみのライフは6800に。 「『チョココロネ』の効果により、みゆきさんの守備力分のライフを回復するよ!」 『高良みゆき』の守備力は1500、つまりこなたの残りライフは8400だ。先程受けたダメージを、余裕で取り返している。 「せいぜい今のうちに回復しておけばいいわ。直ぐに削ってやるんだから」 「……私はモンスターを守備表示でセットし、カードを1枚伏せてターンエンド」 このターン、なんとか厄介な能力を持つ『高良みゆき』を倒せた(撤退させた?)が、まだまだかがみの驚異は終わらない。 「私のターン、ドロー!」 ここから、かがみの大進撃が始まる……。 「このスタンバイフェイズ『幸せ未来日記』の効果により、私自身『柊かがみ』をデッキから特殊召喚する! 出て来て、もう一人の私!」 フィールドに日記帳が現れ、ページの真ん中ぐらいが開く。するとページが光だし、その中から『柊かがみ』が出てきた。日記帳はそこで消える。 攻撃力2700、守備力2500。☆×7。 「これが……かがみ」 『柊かがみ』の容姿は今までのモンスターは違い、特別な格好をしていた。見た目は巫女服なのだが……肌の露出が多く、上着はジャケットの様な物一枚で、胸は包帯で巻いて隠してある。へそも丸見えだっ! 袴の隙間から見える股からは「穿いてない」という言葉に相応しい美脚が見て取れる。しかも! 袴を穿いてる位置が超ギリギリというか、後少し下にずらしたら――。 「解説さん? 少し自重してください☆」 ……とにかく、今までと明らかに違う容姿、もはやコスプレレベルだ。右手には剣……特大ポッキーを装備している。 「このカードは戦闘で破壊されない」 「攻撃力2700で戦闘で破壊されないモンスター!?」 「それだけじゃないわよ、このモンスターが攻撃する度、ダメージステップ終了時に攻撃力が300ポイントアップする」 ダメージステップというのは、攻撃終了時と思ってくれれば良い。 「まだあるわよ、このカードが戦闘以外によって破壊され墓地に送られたとき、墓地の『柊』と名のつくカードをゲームから除外することで、このカードをフィールド上に特殊召喚することが出来るのよ! 私の墓地には『柊いのり』がいるわ、つまり私の分身を倒すには最低2回倒さないとならないのよ」 「…………」 「驚いて声も出ないかしら? もっとも、最後の効果はデュエル中、1回しか使えないのだけれど」 例え1回でも、その驚異的な能力は恐ろしい。このモンスターを、こなたは攻略出来るのだろうか? 「私はこんな一方的なデュエル、本当はしたくないわ……だけどこれもこなたを救うため……私は心を鬼にする! 覚悟しなさい、闇こなた!!」 こちらは勘違いして心を鬼にしていらっしゃる。こういう状態の奴には何を言っても通じないというのがお決まりである。 「随分と恨まれてるのね、私……」 「気にしちゃダメだよお母さん。絶対勝って見せるから」 「頑張ってね、こなた」 果たして、本当に勝てるのだろうか? こなたのフィールドには『泉こなたLV6』と『田村ひより』と裏守備モンスター、それに伏せカードが1枚だ。『柊かがみ』の攻撃目標は『田村ひより』の厄介な能力を警戒して確実に『泉こなたLV6』を狙うだろう。そうすると多少のダメージは喰らうが、『田村ひより』の守備力を超えるモンスターは『柊かがみ』以外いないので、このターンを凌ぐ事が出来る。まだ勝つ希望はあるかもしれない。 「何その顔は? まだ勝機があるとか思ってるんじゃないでしょうね?」 「思ってるよ、私は最後まで諦めない」 「ふん、甘い、甘いわね。ポッキーみたいに!」 「な、何でさ!?」 呆れたように溜息を吐くかがみ。 「じゃあ教えてあげるわ! 魔法カード『夜逃げでリセット』」 「!?」 「つかさがゲームから除外されてるとき、ライフを2000ポイント払って発動。ゲームから除外されたレベル4以下のモンスターを可能なかぎりフィールドに特殊召喚できる!」 「な、なんだってーっ!!?」 『柊つかさ』は魔法カード『双子の絆』の効果によってゲームから除外されていたのである。 かがみのライフは6800から4800へ。 「私は除外されているモンスター、つかさ・日下部・峰岸をフィールドに特殊召喚する」 「あはは」「あいよー」「うふふ」とそれぞれの特徴ある声と共に、『柊つかさ』・『日下部みさお』・『峰岸あやの』が、かがみのフィールドに攻撃表示で再び姿を現す。 「更に峰岸の効果により、峰岸を日下部に装備!」 これにより、『日下部みさお』の攻撃力は2200になった。 「あ……」 攻撃力が2000を超えるモンスターが2体……、壁であった『田村ひより』が倒されてしまう。 「まだ終わりじゃないわよ。私はこのターン、通常召喚をしていない……」 「うぐ……」 「私は、まつり姉さんを召喚!」 『柊まつり』の召喚で、かがみのフィールドには5体のモンスター。物凄い迫力だ。 攻撃力1700、守備力1100。☆×4。 「そんな……」 絶望……、これを防ぐ手段はないといった、そんな顔をしていた。 「私はカードを1枚伏せ、バトルよ!」 「っ!!」 「その伏せカードが気になるけど……何かしらね?」 「さぁね、教えるわけな――」 「はったりね」 「!!」 確信を突かれたのか、一瞬顔に出てしまった。まるで最初から分かっていたかのように断言するかがみには驚ざるをえない。 「図星みたいね、行け! 私でこなたに攻撃、一直切断猪口零刀!!」 なにやら凄い技名である。『柊かがみ』が一直線に『泉こなたLV6』に向かいジャンプする。「イヤァーッ!」と掛け声をし、切り掛かる。『泉こなたLV6』はチョココロネで防ごうとするが、やはりそこは攻撃力の差。腹に思い切り叩き込まれ(ポッキーなので切れない)「ぐふっ」と悲鳴を上げ、その場に倒れ消えてしまった。 こなたのライフは8200に。 「何度やっても、こなたを倒すなんて嫌な気分ね。もう復活しないでよ?」 「……そういうわけにも行かないよ」 「今の攻撃で私の攻撃力は上がったわ」 『柊かがみ』、攻撃力が2700から3000に。 「続いて日下部で田村さんを攻撃、ヴぁーストボイス!」 強烈な電波ボイスにより、『田村ひより』は跡形も無く消し飛んでしまった。 「くっ……、でもひよりんの効果でみさきちは2ターン攻撃出来ないよ!」 「分かってるわよ、続いてまつり姉さんで裏守備モンスターを攻撃! 祭だわっしょい!」 フィールドで『柊まつり』が「変な技名付けるな!」と悪態をつきながらも、こなたのモンスターを攻撃する。すると「オーノー!」と叫びが聞こえ、そのまま破壊されてしまった。裏守備モンスターの正体は『パトリシア・マーティン』(2枚目)だったようだ。 「まつり姉さんの効果、まつり姉さんがモンスターを破壊したとき、デッキから魔法カードを1枚選択して手札に加える」 かがみはデッキからカードを選び、手札に加える。 「私は『狂気のバルサミコ酢』を手札に加えるわ。もっともこの効果で手札に加えた魔法を使用する場合、500ポイントのライフを払わなければならないから使わないかもしれないけどね」 「…………」 こなたは自分が窮地に立っている事を自覚し、かがみの説明に相槌を打つ余裕すら失くなっているのだろうか……。 「とにかく、これで壁はいなくなったわね」 「やばっ……」 「つかさでプレイヤーこなたに直接攻撃(ダイレクトアタック)よ! マヨネーズアタック!」 『柊つかさ』がこなたの目の前に立ち、ニコっと笑う。 「何……?」 すると、セーラー服の中からマヨネーズを取り出し「こなちゃん、マヨネーズかけるよ?」と言い放ち、こなたの返事も待たずにマヨネーズをぶっかけた。 「うわあぁぁぁぁ!!」 「こ、こなた!?」 どうやらプレイヤーの直接攻撃は文字通り本人に直接降り懸かるようだ。かなたもそれは知らなかったようで慌ててハンカチを取り出す。現実の人間に被害を齎す立体映像……天界の技術は素晴らしく発達しているようだ。 「お、おいしそう……」 この呟きは誰の者かは言わなくても分かるだろう……。この戦闘でこなたのライフは7000に。 「ありがと、お母さん。まだベタベタするけど……」 「さぁこなた、この状況をひっくり返せるかしら?」 「…………」 やはり黙り込んでしまう。手札は1枚、フィールドにははったりとバレた使い道の無い(?)罠が1枚……。さっきも言ったが絶望的だ。 「降参しちゃいなさいよ? これ以上こなたを苦しめたくないわ」 「…………嫌だよ」 「へ?」 「まだライフは残ってるんだ、諦めるもんか!!」 先程の状態からは考えられない、力強い声でかがみに返す。そう、こなたにはまだ、友を救うという強い意思があるのだ。その意思が砕かれない限り、こなたは沈むことは無い!! 「こなた……」 「ふぅん? なら手加減はしないわ、私もこなたを救い出すために必死なんだから」 こちらは勘違いなのだが、こなたと同じぐらい強い意思を感じる……。半分は邪(よこし)まな意思も感じるが……。 「私はこれでターンエンドよ」 「私のターン、ドロー!」 こなたはここから逆転できるのだろうか!? デュエルパート3 へ
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かなた「ふっしぎし~ぎ~摩~訶不思~議~る~わ~…」 こなた「!?…悪寒が…」 ゆたか「友(ひより、パティ、いずみ)よ、君達は何故、悪魔(ヲタク)に魂を売ったのか?!」 ひより「…じゃ私オブラーで」 いずみ「ずるい!じゃ私は爆弾抱えて突撃する」 ひより「パティは…ギルドスかな…」 いずみ「ブッチーじゃないわね…って仙田と月形がいないわね」 ひより「アニ研の先輩にでも…そんで」 こう「誰がビアスなのかなぁひよりん」 やまと「誰がガードノイドなのかしら、ひよりちゃん」 ひより「ギャー!」 みなみ「慣れないネタフリは…しない方がいい…」 こなた 「 吸血鬼に血を吸われている時って性的な快楽を得られるんだってぇ~。 」 ゆたか 「 や~ん お姉ちゃんえっち~ でも何か見た目的には痛そうだよねぇ~。 」 いずみ 「 ・・・・・・・・・。 」 ゆたか 「 ・・・ ? 若瀬さんどうかしたの・・・ ? 」 いずみ 「 ・・・・・・うぅ・・・。 」 こなゆた 「 ・・・・・・ ? 」 いずみ 「 うぅ・・・う・・・うあああああああっ !!!! 」 こなゆた 「 !!! 」 ゆたか 「 ど、どうしたの若瀬さん ?! 」 いずみ 「 ううぅ・・・血・・・血が・・・。 」 ゆたか 「 えっ ? ち・・・ ? 」 いずみ 「 ・・・血が・・・吸いたい・・・。 」 こなゆた 「 えっ・・・。 」 いずみ 「 私だけじゃ寂しいわ・・・。 貴女達も私の仲間になってよ・・・。 私が貴女達の血を吸えば貴女達も私と一緒・・・。 一石二鳥でしょ・・・ ? 」 こなた 「 え、え~と と・・・とりあえず落ち着こうか・・・ ! そ・・・そのぉ・・・ 若瀬さん・・・ ? 」 ゆたか 「 がくがくがくがく 」 いずみ 「 ・・・ええ・・・。 私は落ち着いてますよ・・・ ? さあ・・・ 観念なさいっ !!! 」 こなゆた 「 ああああああ・・・・ !!! 」 その後三人は仲良く吸血鬼になりましたとさ。 めでたしめでたし。 こなた「あー…だるい…」 かがみ「またあんたは…」 こなた「五月病ってのがあるなら、二月病ってのもあるんじゃないかなってふと思った」 かがみ「…なんだそりゃ」 こなた「受験やら就職やら、将来への不安が今まさに渦巻いて、精神に苛酷なダメージを…」 かがみ「やめい!生々しい!…ってかあんたに将来の不安とかあるの?」 こなた「んー…とりあえず、佐〇急便がちゃんと荷物を届けてくれるかどうか」 かがみ「将来って言わんわ、それ」 隠し味は愛 かがみ「ほら、チョコよ」 かがみは手作りチョコをこなたに手渡した こなた「えっ?かがみが?私の為に?」 かがみ「いらないならいいわよ!!わ、悪かったわね!!形がイビツで!!」 こなた「いやいや、味とか形云々の前にかがみが作ってくれたのが嬉しいのだよ」 かがみ「ばっ…バカじやないの!!何を言ってんのよ!!別にそんなんじゃないんだから!!」 こなた「表向きはこう言っているかがみんではあったが、実はとても嬉しいのだ」 かがみ「お前は何を言っているんだ」 つかさ「(言えない…こなちゃんに言えないよ~…)」ブルブル それは一体、何なのであろうか? こなた「つかさ?」 回想 つかさ「あれ?台所の明かりがついてる。何してるんだろ?」 かがみ「♪いつだって、真っ直ぐに走れLOAD OF THE SPEED」 つかさ「お姉ちゃん?」 つかさは台所にいるかがみを覗き見した。その時である!! かがみ「こなた…こなたハァハァ…隠し味~、隠し味~♪こなた…ハァハァ…///」ハァハァ かがみは何かをしていた。それは一体、何なのであろうか? つかさ「(お姉ちゃぁぁぁぁん!?何それ、何の隠し味!?)」ガタガタ 回想、おしまい こなた「どったの?つかさ」 つかさ「(言えない…言えないよー!!お姉ちゃんがあんなモノを隠し味に使うなんて…)」 こなた「…つかさ?」 かがみ「……こなた……ハァハァ……///」ボソ こなた「ん???」 誕生日と黒歴史 たまき「やさこ、誕生日おめでとう!これ私と毒さんから」 こう「ありがと……って今度出来た店の食べ放題券?うれしいけど、なんでまた?」 みく「あれ、アクセサリだったんじゃないの」 たまき「いやいや、『ぱくちゃん』ならこれかなって」 こう「…山さん、怒らないからそのアダ名誰から聞いたか答えてくんない?」 たまき「あっはっは、偶然入ったお店でね~」 みく「また気まぐれ起こしたのか…」 こう、誕生日おめでとう みゆき「そうして、節分の時には柊の枝に鰯の頭をつけるようになったんですよ?」 こなた「へーさすがみゆきさん (じーっ」 かがみ「何よ?」 こなた「いや別にぃ」 かがみ「あんた今、私に鰯の頭つけようかなぁってなんて思ってたんじゃない?」 こなた「思ってない思ってない」 かがみ「あんたは嘘つくとアホ毛が小刻みに揺れるのよ」 こなた「Σっ!?え、嘘!」 かがみ「やっぱり思ってたわね」 こなた「あ、ひどい!みゆきさーん、かがみんがね、かがみんがね」 みゆき「まぁまぁ、よしよし」 こなた「よし、学校でチョコを売ろう」 かがみ「いきなり何を言い出すんだ…」 こなた「いやね、バレンタイン当日に、みゆきさんに売り子してもらったら、チョコ貰えなかった男子が慰みに買っていくかなって」 かがみ「…あのな」 こなた「さらに最初の何個かには、限定版と称してみゆきさんの秘蔵ショットを封入すれば…おおっなんか売れる気がしてきたよっ!」 かがみ「いいから、やめとけ…」 バレンタイン当日 つかさ「こなちゃん、ホントにやるのかな?」 かがみ「まさか…ってかみゆきが引き受けないでしょ」 みゆき「はーい。お買い上げありがとうございます…チョコいかがですかー?」 つかさ「ってゆきちゃん普通に売り子してるっ!?」 かがみ「引き受けたのかっ!?ってかどうやって言いくるめたんだ!?」 こなた「あ、おーい二人共見て見てー。限定版買えたよー」 かがみ「ってお前も買ったのかよ!」 つかさ「こなちゃんが売ってるんじゃなかったの!?」 こなた「だって限定版…」 かがみ「それ設定したのお前だろ!自分で引っ掛かるなよ!ホントその言葉に弱いな!」 みゆき「つかささんも、お一ついかがですか?」 つかさ「え…えーっと…(なんでゆきちゃんこんなに楽しそうなんだろ…)」 まつり姉さん、トランスフォーマーアニメイテッド出演決定記念 かがみ「まつり姉さん、こなたから伝言があるんだけど」 まつり「こなたちゃんから?どんな伝言?」 かがみ「『トランスフォーマーアニメイテッド出演決定オメ』だって…」 まつり「は?トランスフォーマー???」 かがみ「何で私じゃないのよ…私が出てたら、こなたに『かがみーん、トランスフォーマーアニメイテッド出演決定オメ』とか言ってもらえるのに…」ボソボソ まつり「……かがみ?」 -つかもうぜ- こなた「ついにドラゴンボールが七つ揃ったよ!早速、いでよ神龍わたしの願いをかなえたまへー!」 神龍「我が名は神龍。さあ、お前の望みを言うがいい」 こなた「わたしをみゆきさんのような、ナイスバディにしておくれ!」 神龍「その願いは我の力を超えた願いだ」 こなた「………マジで?」 こなた「…ってな夢を見ましてな」 かがみ「…神龍超えるか」 つかさ「…ゆきちゃん凄いね」 みゆき「あ、あの、それはあくまで夢ですから…その、わたしそんなに凄くは…」 こなた「チョココロネってホラ貝にも見えるよね」 かがみ「いきなりだな。まぁ、見えなくもないが・・・」 こなた「吹いてみたり・・・」フーフー チョココロネ「ぶおぉ~~ぶおぉ~~~」 こなた「え?」 かがみ「は?」 ドシン! ドシン! かがみ「なに? 地震!?」 こなた「ちょ! 外!!」 こ な た ん イ ン パ ク ト 登 場 ! ! こなた「なにあれ私――ってうわぁ!」 かがみ「こなた!?」 こなた「飲み込まれ――」 かがみ「こなたぁぁぁあぁぁぁぁぁ」 がんばれコナタン3 柊かがみんの萌え萌え卍がため 好評発売してない!! ~色々ショック受けたんで勢いで書いた~ ひより「委員長、パティから借りたDVD間違ってなかった?私の頼んだやつと間違えたらしくて…」 いずみ「…コレでしょ?はい」 ひより「なんか暗いけど…(ボソッ)家族の前で見たとか?」 いずみ「違うわよ。ただね、中身でね」 ひより「中身?」 いずみ「…ジースタッグが…ブラックビートの部下で…アゲハがニンジャレッドとタイムファイヤーに…星獣剣で斬られて…ドルに…乗り込むなんて…」 ひより「こっちが本物ですよ」 たまき「ありがとひよりん。やっと見れるよ」 こう「なにそれ」 みく「パワーレンジャーワイルドフォースのDVDだって」 こう「あぁ、前に言ってた歴代レッドが出てるやつか」 ひより「委員長が『スパイダーマンの復讐にちがいない』とか呟いてましたけど…」 みく「しょぼい復讐だね」 たまき「毒さん、今度こそ一緒にみよう」 こう「…うーん」 ひより「こうちゃん先輩、ED集聴きながらどうしたっスか?」 こう「いや、泉先輩が歌ってるとこなんだけど…なんでキョーダインで泣いてアクマイザー3は平気なのかなぁって」 ひより「確かに泣いてましたけど…アレなんでっスか?」 毒島「キョーダインのラストは主人公二人が敵に特攻したりとか自分達のオリジナルを名前で呼んだりとか、結構泣けるとこ多いんだよ」 ひより「なるほど。ならアクマイザー3は?」 山辺「たしかね~、ボスは主人公3人が相討ち覚悟の技でなんとか倒すんだけど。裏ボスにその魂を封印されてTHE END」 ひより「駄目じゃないっスか!」 山辺「でもだからこそ悲壮感漂うじゃんか」 こう「だよね。平和党三人の最後とか、残されたダイアナやノッペラーJrとか」 ひより「でもボスが無事なのは」 毒島「いや、倒したけど」 ひより「え゛」 毒島「倒したって。次のヒーローの『超神ビビューン』が」 こう「ああ、一話でアクマイザー3の魂を引き継いだ三人だっけ」 ひより「ってな話を部活でしてまして」 こなた「…(超神ビビューンって何?)」 口直しのネタ かがみ「そういえばあんたの髪の毛のアホ毛が直っているのを見たことないんだけど」 つかさ「そうだね~」 みゆき「言われてみれば…そうですね。いつからだったのですか?」 こなた「お父さんによると髪の毛が生え始めたころからだって。」 みゆき「直そうとは思わなかったのですか?」 こなた「思ったことはあるんだけど、お父さんがどうしても許さなくてずっとこのまんまなんだよね。 自分でやろうとしたところでどんなワックス使っても直らないし。」 かがみ「ためしに押さえつけてみようか。こなたは私の髪で遊ぶこと結構あるから許してくれるよね?」 こなた「ん~、いいよ。何か分かるかもしれないし。」 かがみ「じゃあ遠慮なく・・・(あれ?根元のほうがなんかかたい。えいっ。)」 ガタン かがみ「今『ガタン』っていわなかったか?」 こなた「…あれ?ここは…こなたの学校?何がどうなっているの?」 みゆき「少しの間目をつぶっていただけませんでしょうか?」 こなた(?)「これでいい?」 ガタン こなた「…ハァ、あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! おれはアホ毛をいじられていたと思っていたらお花畑のど真ん中にいた な… 何を言ってるのか わからねーと思うが おれも何が起きたのかわからなかった…」 頭がどうにかなりそうだった… テレポートとか臨死体験とかそんなチャチなモンじゃ断じてねぇ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」 三人 「…」 かがみ 「 いい加減あんたの雰囲気にはウンザリさせられるわ・・・。 そのアホ毛といい、 腑抜けた顔といい・・・。 どうも盆暗に見えて仕方がないわ ! 」 こなた 「 そ、そんなぁ・・・ ! 酷いよかがみん ! 」 かがみ 「 顔はまず問題無しとして、問題はそのアホ毛ね ! どうも鬱陶しいわ ! 毟り取ってやる ! 」 こなた 「 毟るって・・・ !? ひいいいぃぃぃっ !? 止めてよぉぉっ ! 」 かがみ 「 Shut up, asshole !!! 」 ブチリッ !! かがみ 「 HAっHAっHAっ ☆ 無様な ! 」 こなた 「 ・・・・・・・・・。 」 かがみ 「 ・・・ ? こなた ? どうしたの・・・ ? 」 こなた 「 ・・・あら ? ここは・・・ ? それと・・・何方様でしょうか ? そ、そうだ、貴女そう君を知らない ? 」 かがみ 「 げっ !!! な、何と !! こんな秘密があったとは・・・ ! 」 つかさ 「 でも泣き黒子はそのままなんだねぇ~。 」 こなかが 「 あ・・・。 」 -堅い- かがみ「最近、堅あげポテトってお菓子にはまっててねー」 みゆき「かがみさんのお気に入りなら、美味しいのでしょうね。今度わたしも食べてみますね」 みゆき(…美味しいのですが、かなり堅いですね)バリッバリッ みゆき(結構強く噛まないとかみ砕けないです…)バリッバリッ…ガキンッ みゆき(………) みゆき「………」 こなた「で、銀歯かみ砕いちゃったみゆきさんが、口きいてくれない、と」 かがみ「…うぅ…これってわたしのせい?わたしのせいなの?」 かがみ「ふふふっ、お題は『二人』…さぁこなた!私と二人きりの愛の世界…へ……って」 こう「もぅ一回!もぅ一回お願いします泉先輩!」 こなた「なんどきても無駄無駄無駄」 やまと「…格闘ゲームという名の二人の世界に没頭してるわね」 かがみ「こ……こなた………」 やまと「みじめね」 かがみ「アンタはどうなのよ!」 やまと「…親友が楽しそうにしているのを見るのは、悪くないわよ」 こなた「さて、かがみさんや。今回のコンクールは、投下数が少ないのではないかという懸念があるわけなのですが」 かがみ「うん」 こなた「奮起を促すためにも、我々が一肌脱がねばなるまいかと思う次第でありますよ」 かがみ「また変な事する気か…」 こなた「つーわけで…コンクールの大賞受賞者に、好きな女性キャラのツンデレをプレゼントーっ!」 かがみ「いや、なにをどうするのかわかんないんだけど、ツンデレという言葉に凄く嫌な予感がする」 こなた「大丈夫だよかがみー。かがみのツンデレなんてありきたりなんだから、みんな意外性のあるキャラリクエストするって」 かがみ「ふーん…例えばこなたとか?」 こなた「は?え?わ、わたし?…い、いやわたしのツンデレなんてつまんないって!へ、変な事言わないでよー」 かがみ「はーい、みなさん頑張って作品書いて、こなたを指名してやって下さいねー」 こなた「うわーん!煽るなー!かがみのバカー!」 かがみ「…それはそうと、最下位の人にはまた店長?」 こなた「あー、それは…」 兄沢「呼んだか!?呼んだな!?呼んだよな!?アニメ店長参上!この俺がアニメ店長としての全てをかけて、貴様に最高のツンデレを叩きつけてやろうっ!」 こなた「…これ書いてるアフォが『野郎のツンデレなんざ書きたくねぇ』とほざいてるので、ソレは無しの方向で」 兄沢「んなにぃぃぃぃぃぃぃっ!?」 かがみ「…なるほど、それで女性キャラ限定なのか………つーかこんな小ネタ書いてる暇あるなら作品進めろっての」 ピュ.ー ( =ω=) <これからも私を応援してよね(=ω=.)。 =〔~∪ ̄ ̄〕 = ◎――◎ 泉こなた 727:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2010/06/01(火) 15 12 48.77ID EyrQzMSO -今日は何の日?- こなた「朝にカレンダー見て知ったんだけど、今日は写真の日なんだって」 つかさ「へー」 こなた「それで、みんなの写真を撮ってみたよ」 かがみ「いつの間に…」 つかさ「どんなの?」 こなた「えーっと、かがみが背のびした時におへそが見えたのとか、つかさがこけた時にパンツ見えたのとか、みゆきさんがしゃがんだ時のブラチラとか…」 つかさ「…えー」 かがみ「…それ、どうするつもりなの?」 こなた「PCの壁紙にでもしようかと」 かがみ「みゆき。このデジカメのデータ全部消去して」 みゆき「了解しました」 こなた「せっかく撮ったのに!?…わ、わたしが下着で昼寝してる写真あげるから勘弁してくれない?」 かがみ「よし、許す」 つかさ「…ゆるしちゃうんだ…」 みゆき(というか、その昼寝の写真はどなたが撮られたのでしょうか…) こなた「ねぇ、お父さん」 そうじろう「なんだ?こなた」 こなた「この掲示板見てよ、あたしやかがみにそっくりな人達が出て来てるよ」 そうじろう「ほんとだなぁ、口調とかそっくりだww」 こなた「あたし思ったんだけどー」 そうじろう「うん?」 こなた「つかさそっくりな人は頻繁に出て来るのに、どうしてみゆきさんそっくりな人は余り出て来ないんだろう?同じ天然系なのに」 そうじろう「そりゃああれじゃないか?博学な人物を画くには、それ相応の知識が無いとダメだからじゃないか?」 こなた「ということは、ここに書いてる人達は余り調べて無いってこと?」 そうじろう「いゃぁ、そうとも限らないかな。もう一人の天然系キャラが色々と吸収し易いからかもしれんぞ」 こなた「ふぅ~ん、お父さんならどっちを書く?」 そうじろう「そうだなぁ、両方書いてみて気に入った方かな」 こなた「あたしのことは書いてくれないんだ…」 そうじろう「いや!紙に書いたりしてないだけで書いてるぞ!」 こなた「書いてるんだ…」 そうじろう「いや、え~と…」 こなた「冗談だよ(笑)ちょっとからかっただけ♪」 そうじろう「親をからかうんじゃありませんっ!」 こなた「地震に備えて、念のためにカロリーメイトと水買ってきた。意外と美味しいねコレ。パサパサしてるから水も買ってきて正解だったよ」モグモグ かがみ「今食べちゃ意味ないだろ!」 つかさ「ほんとだね、こなちゃん美味しいね♪」 みゆき「なかなか美味しいですね」モグモグ かがみ「みゆきもか!?」 みゆき「…詰め物が取れてしまいました(泣)」シクシク かがみ「ご愁傷様」 こなた「きっとさ、私たちの中には『もう一人の自分』がいてさ、 例えば勉強してるときに『勉強したくないー』って言ってる自分がいたり、 マンガ今日は買うのはやめとこうって決めたのに『やっぱ買いたいー』とか言ってる自分がいたり、 外出てるときふと気づいたら目の前に自分がいたり」 かがみ「いやいや、ドッペルゲンガーなんている訳ないでしょ」 -梅雨の定番- つかさ「昨日、後で食べようって置いてたお饅頭にカビがはえてたの…」 こなた「うへ…」 みゆき「この時期は大変ですね…」 かがみ「美味しかったらいいんだけど、食べてもまずいだけだしね…」 つかさ「え」 こなた「え」 みゆき「え」 かがみ「え?なに?」 こなた「そういえばみゆきさんって家はネットにつながってないの?」 みゆき「あ、はい、つなげていませんが…… この時世にはつなげていない家庭の方が珍しいと聞きますね」 こなた「つなぐ予定とかはないんだ?」 みゆき「今のところありませんが……つなげた方が良いのでしょうか?」 こなた「ああいやいや、つなげてほしいわけじゃないんだけどね」 みゆき「?」 こなた(みゆきさんが万が一にもニコ動なんかにはまっちゃったら…… ものすごい勢いでスラング覚えそうで怖いし) -ぶっとばせ ゆい姉さん- たいへん 町の銀行が強盗に襲われたよ いったいどうなるの? 強盗「おらー さっさと袋にカネ詰めろ―!!」 行員「は、はいぃぃぃぃぃー」 ゆい「やめなさい!!」 強盗「な、なんだてめー!? 動くんじゃねー!!」 ゆい「おとなしく銃を置いて両手を挙げなさい!! さもなくば、この爆弾を爆発させる!!」 強盗「!?」 ゆいの体には驚くほど大量のプラスチック爆弾が巻かれていた 強盗「お、おい!! そんな事したらどうなるか判ってるのか!?」 ゆい「んー、ここにいる人たちはおろか建物ごと木端微塵になるかな?」 強盗「て、てめーそれでも警察か------!?」 何度かノリと勢いでスイッチを押しそうになるゆいを強盗は必死に説得した その間に警官隊が突入し強盗を取り押さえた 強盗は抵抗しなかった… ゆい「ってな感じでこの前は大活躍だったんだよ」 こなた「それって脅迫じゃないの? そもそも姉さん交通課でしょ?」 ひより「この前4コママンガに挑戦してみたんだけど意外と難しくてね~」 ゆたか「そっかー大変だったねー」 ひより「この前4コマ描いてみたんだけどね~」 みなみ「そう……」 ひより「そんでこの前4コマとかやってみたんスけど……」 こう「あー、あれ難しいよねネタとか詰まるし」 ひより「うおおおやっぱりわかってくれるのはこーちゃんだけッス!!」 こう「なんだなんだ、なんか鬱なことでもあったのかー」 ニコニコ動画 こなた「おっ追ってるシリーズの新作が来てる」 こなた「早速チェック……」カチカチッ 『動画に接続できませんでした』 こなた「えーウソ? ちぇっリロードして……」ポン 『動画に接続できませんでした』 こなた(チクショー!! これは運営(ニ◯ンゴ)の罠かっ!?) おめえに見せる動画はねえという罠かーーーっ!?) みさお「拙者の顔に照り映える、月の光が、お主のこの世の見納めでござる!…なんて昔やってたなぁ」 かがみ「チャンバラしてた上に渋いことしてたんだな」 こなた「お、円月殺法?いいねぇ。乱舞の太刀よかそれだよね」 かがみ「…まて、お前元ネタの方だって理解してるか?」 あやの「柊ちゃん、ヲタクをよく理解してるのね。私さっぱりわかんないんだけど」 -麺- こなた「………」ズルズル つかさ「………」ズルズル みゆき「………」ズルズル かがみ「…ねえ」 こなた「………」ズルズル つかさ「………」ズルズル みゆき「………」ズルズル かがみ「坦々麺だからって、淡々と食べなくてもいいと…思うん…だけど…」 こなた「………」ズルズル つかさ「………」ズルズル みゆき「………」ズルズル かがみ「………」ズルズル 本スレ見れないのでこっちに投下 みさお「なぁ、あやの~。」 あやの「なに、みさちゃん。」 みさお「さっき教室であの眼鏡ちゃんがコスプレしてたんだってヴぁ。」 あやの「何のコスプレ?」 みさお「フレッシュプリキュア!のキュアパッションだってヴぁ。」 あやの「あれ?みさちゃん、プリキュア見てるの?」 みさお「そりゃ、戦隊→ライダー→プリキュア→DB→ワンピースは普通だぜ。」 あやの「そういえば、みさちゃんは『二人はプリキュア』って見てた?」 みさお「当たり前だぜ!今でもなぎさは私の兄貴だぜ!」 あやの「私も見てたよ。あれはナージャやどれみとは違う意味で熱いよね!」 みさお「あやの!私たちも一度やってみねぇか?コスプレ。」 あやの「いや・・・髪の色が合ってないし・・・。」 みさお「そういうときこそちびっ子に相談だぜ!」 数日後 みさお・あやの「「二人はプリキュア!」」 かがみ「私の周りはプリキュアコスする奴しかいないのか・・・?」 -盆- こなた「お盆かあ…なんか、もの哀しいね…」 そうじろう「…そうだな」 かなた『…こなた…そう君…』 こなた「いつも読んでる漫画週刊誌が全部お休みなんて」 かなた『そっち!?』 そうじろう「いや、まったく」 かなた『そう君まで!?』 -缶コーヒー- こなた「うー…眠いー…」 かがみ「また夜更かししてたのか…缶コーヒーだけど飲む?」 こなた「ありがと………んー」 かがみ「なに?それ、嫌いな銘柄だった?」 こなた「あーいや…この『ご褒美ブレイク』ってのが『ご褒美プレイ』に見えたわたしはもうダメなのかなと…」 かがみ「いや、あんたはそれで平常運転だ」 -てもちぶたさ- かがみ「みゆきとつかさ、遅いわね」 こなた「そうだねー」 かがみ「もっと周りになんかあるところで待ち合わせたらよかったわね。てもちぶたさになっちゃうわ」 こなた「そうだねー」 かがみ「…こなた」 こなた「なに?」 かがみ「わたしを掴んでるその手はなに?」 こなた「これがほんとのてもちぶたさん…なんちゃって」 かがみ「………」 こなた「………」 かがみ「それはわたしへの宣戦布告と判断していいのかしら?」 こなた「いや、その…怖い、怖いって…かがみその顔マジ怖い」 -動物- ゆたか「…でね、みんなを動物に例えたらどうなのかなって話になったの」 いずみ「へー。どんな感じになったの?」 ゆたか「えーっと、こなたお姉ちゃんが狐で、かがみ先輩が兎で、つかさ先輩が犬で、わたしがリスで、みなみちゃんが鷹で…」 ひより「ふーむ、結構いい線いってるような…」 ゆたか「…高良先輩がう…え、えっと羊、だったかな…」 いずみ「…う?」 ひより「…もしかして牛って言おうと…」 パティ「ホルスタインですネ」 みなみ「………」 ゆたか「みなみちゃん?どうしたの?」 みなみ「ううん、なんでもない…ゆたか、今日ちょっと用事があるから先に帰ってて」 ゆたか「うん…」 つかさ「お姉ちゃん、何か視線を感じるんだけど…」 かがみ「き、気のせいじゃないかな…(なんでみなみちゃんがデジカメ持って後をつけてきてるのー!?)」
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いつもの生活。いつもの風景。そして住み慣れた家。平和な我が家、柊家。そう、あいつが来るまではそうだった。でも、あいつがきてから我が家は困り果てている。 でもあいつのせいで私たち柊家は変わった。 まつり「またやられたよ」 憤るまつり姉さん。 みき「私も」 相槌をするお母さん。 ただお「この前は盆栽をひっくり返された、もう許すわけにはいかん」 さすがのお父さんも憤慨している。そして、私も。 かがみ「私もぎょぴちゃんを食べられそうになった、これは私に対する挑戦ね」 まつり「ぎょぴちゃん?……ああ、金魚ね、私なんか洗濯物にオシッコ引っ掛けられた、もう許さないんだから!!」 ここ数週間くらい前に近所に野良猫が住み着いた。住み着くだけなら誰も文句は言わない。しかし数日前から家の裏庭に来ては糞尿を撒き散らし、悪戯の限りを尽くしている。 寛容な柊家もさすがにこれ以上野放しにはしておけなくなった。それでこうして家族会議をして野良猫をどうするか話し合っていた。 みき「ご近所にも相談してみたのだけど、あの猫は他所では悪さはしていないそうよ、協力はしてくれそうだけど、やっぱり追い出すしかないわね」 まつり「少なくとも裏庭に入れないようにしないと」 ただお「猫の入りそうな壁には園芸用の網を張ればなんとかなりそうだ」 かがみ「それじゃダメよ、猫は高い塀も飛び越えられるのよ、それだけじゃ生ぬるいわ」 喧々諤々の意見が飛び交った。それでも決定的な対策は出てこなかった。さすがに案が出なくなってきた。そんな時だった。 まつり「姉さん、つかさ、さっきからずっと黙ってるけどやる気あるの?……少しは対策案だしてよ」 いのり・つかさ「えっ……」 意見に夢中で気が付かなかった。たしかにいのり姉さんとつかさはさっきから私達の意見を聞いてばかりで何も発言していない。私達は二人に注目した。 しかし二人は何も言わなかった。 みき「二人ともしっかりしてもらわないと、この前だってつかさの下着がビリビリに破られていたのよ」 いのり「そんな事言っても私は実際に被害を受けていないから、あまり実感がない」 みきはため息をついた。 つかさ「……あまり猫さんのせいにしちゃいけないような気がするけど……」 まつり「甘い、甘すぎる、つかさは、だから野良猫が図に乗るんだ……つかさ、あんたもしかして餌付けしてないでしょうね、最近家ばかり来るようになった」 まつり姉さんはつかさに詰め寄った。つかさは大きく首を横に振った。 まつり「……どうだか怪しい」 つかさを疑いの目で見ている。今はそんな事をしている時ではない。 かがみ「そんな事よりこれからどうするのよ、野良猫は待ってくれないわよ」 私は話を元に戻した。 いのり「それならペットボトルに水を入れて玄関とか猫の来そうな所に置くのはどう?」 まつり「……それいいね、お父さんの網を張るのと併用すれば来なくなるかも」 ただお「やってみるか……」 結局一番無関心ないのり姉さんの一言で対策が決まってしまった。私自身はあまり有効な手段とは思えなかったが他に良い案が浮かばなかったので賛成するしかなかった。 会議が終わると各々自分の部屋に戻っていった。ふと私はつかさの顔を見た。何か俯いて元気が無い感じだ。まさかまつり姉さんの言っているのが本当なのか。 私もつかさを疑った。これが本当なら止めさせないといけない。暫くしてから私はつかさの部屋に向かった。 つかさの部屋に入った私は早速聞いた。 かがみ「つかさ、もしかしてあの野良猫に餌付けしてるんじゃないでしょうね」 つかさ「やっぱりお姉ちゃんも同じ事言うんだね……」 つかさにしては珍しく反論をしてきた。 かがみ「私だって疑いたくない、だけど家族でそんな事をするのはつかさくらいじゃない」 つかさ「そうだね、そうだよね、あのネコさんを最初に見つけたら私だってそうしたかもしれない」 かがみ「最初、最初ってどういう意味よ」 つかさは暫く黙り込んでしまった。私はつかさを睨み付けた。 つかさ「……やっぱりお姉ちゃんには隠せない」 そう言うと一回深く呼吸してから話した。 つかさ「餌付けしてるのはいのりお姉ちゃんだよ」 つかさの言葉が信じられなかった。いのり姉さんが猫を可愛がるなんて。動物はそんなに好きではなかったはず。しかも野良猫なんて。 かがみ「それでいのり姉さんを庇ったの?」 つかさ「そうゆう訳じゃないけど……私もきっと同じ事をしたから、何となく……」 これ以上つかさを問い詰める事が出来なかった。 かがみ「なるほどね、これでいのり姉さんがあの案を出したんだな」 つかさ「案ってペットボトルで追い出すって言った?」 私は頷いた。 つかさ「いのりお姉ちゃんは私達の為に大事にしていた猫さんを追い出す決意をしたんだね……」 かがみ「いいや、その逆よ、いのり姉さんは追い出すつもりなんかないわ」 つかさは驚き不思議そうな顔で私を見つめた。 つかさ「どうして、水の入ったペットボトルを見ると猫は怖がるんじゃないの?」 かがみ「バカね、それは都市伝説みたいなものよ、そんなので猫が怖がるわけがないじゃない、つかさは見たの、猫がペットボトルを怖がっている姿を」 つかさ「……ないけど、お姉ちゃんは見たの、猫がペットボトルを素通りする姿」 見てはいなかった。しかし確信はある。そしていのり姉さんもペットボトルで猫が怖がらないのを知っている。それあの案を持ち出して私達の怒りをやり過ごそうとしている。 つかさとの話でそう私は結論した。 つかさ「お姉ちゃん……この事、皆に話すの?」 つかさは小さな声で私に質問した。私はその質問の意味を理解した。こんなのは話すまでもない。 かがみ「どうせ効かないのはすぐにばれるわね、その時にでも話すわよ、でも、それまでにぎょぴちゃんが食べられちゃったら元も子もない、金魚鉢にでも避難させる」 あれから二週間が過ぎた。私の予想とは裏腹に猫はすっかり鳴りを潜めた。裏庭に来た様子が全くなった。まさかあれだけで猫撃退が出来たとでも言うのだろうか。 未だに信じられない。しかし結果が全てを証明していた。 まつり「凄い効果ね、あれからあの猫一回も庭に来ていない、かがみも金魚元に戻せそうだよ」 かがみ「どうかしら、一ヶ月くらいしないと安心できない」 負け惜しみか。自分で心の中でそう呟いた。 しかしこれが本当だとするといのり姉さんは餌付けまでして可愛がった猫を自ら追い出した。そんな事が簡単に出来るものなのか。それとも一時の気まぐれか。 それが事実なら私はいのり姉さんを軽蔑する。猫の、生き物気持ちを弄ぶなんて。 つかさ「お姉ちゃん、あれ……」 つかさが居間の窓を指差している。私はつかさの指差す方を見た。庭の植え込みに一匹の猫が座っている。そう、あの悪戯猫だ。尻尾の先が黒いのが特徴。 一度見たら忘れなれない猫だ。 猫対策をしてから三週間目の休日だった。もしかしたら確かめられるかもしれない。 つかさ「猫さんが入ってきちゃった……追い払う?」 かがみ「シー」 私はつかさを猫が気付かない位置まで呼び寄せた。私達は猫を観察することにした。猫は水の入ったペットボトルの壁をじっと見つめている。猫はご自慢の尻尾を左右に 揺らしている。いい気なものだ。4,5分くらいしただろうか。猫は立ち上がりペットボトルを背にして引き返してしまった。猫はペットボトルを越えなかった。 つかさ「ほら、言ったとおりでしょ、猫さんは怖いんだよ」 自信満々のつかさ。別に賭け事をしていた訳じゃない。悔しくもなければ怒りも湧いてこない。しかし少なくともあの猫に関して言えばペットボトルは有効だった。 これは認めるしかなさそうだ。なんだろう、このやり切れない気持ち。猫に対してではない。いのり姉さんに対してだ。 みき「丁度良かった、これをいのりに渡してきて」 お母さんは私達をみつけるとお守りの入った箱を差し出した。 つかさ「分かった、行って来るよ」 つかさは箱を受け取ろうとした。 かがみ「私が行って来る」 お母さんから箱を受け取った。 つかさ「え、いいの、この前お姉ちゃんが行ったから今度は私の番だよ」 かがみ「ちょっと気晴らしに外に出たくなった、ついでに渡してくる」 いのり姉さんとは二人きりで話したい。あの猫をどう思っているのか直接聞く。それしかこのもやもやした感情を消す事はできない。 飼い主の途中放棄。私が一番嫌う行為だ。子供でもそのくらいは知っている。いのり姉さんはそれをしようとしている。許せない。猫を飼いたいのならそう言えば良い。 追い出された猫は路頭に迷う。きっと野垂れ死にだ。たとえ生き残っても他の家で同じ悪戯をして迷惑をかける。 お守り売り場にはまつり姉さんしかいなかった。私はお守りの箱をまつり姉さんに渡した。 かがみ「いのり姉さんは?」 まつり「あれ、会わなかった、ついさっき帰ったけど……」 行き違いになったのか。それなら夕方家族が集まった時にでもいいか。 かがみ「それじゃ私も帰るわ」 帰り道。神社の鳥居を出ようとした時だった。私の正面から歩いてくる猫の姿を見た。尻尾の先が黒い。あの猫だ。猫はそのまま私を通り過ぎ私の来た道を戻るように神社の 境内に入っていった。私はある程度の距離を保ちつつその猫の後を追った。 猫は神社の奥の方に入っていった。普段は人が来ない所だ。林道を抜け広場に出た。そこにいのり姉さんが居た。猫はいのり姉さんを見つけると駆け足で近づいて行った。 『にゃー』 猫はいのり姉さんの足に絡みつくように擦り寄った。いのり姉さんはしゃがむと猫を優しく抱きかかえた。 『ゴロゴロ』 嬉しそうに喉を鳴らす猫。いのり姉さんを信頼しきっている様子だ。いのり姉さんもまるで子供をあやす様だ。飼い主と飼い猫の良く見る光景だ。 いくら餌付けをしているとはいえ数週間でここまでの関係になれるのか。まるで仔猫から育てたような感じすらする。私はいのり姉さんに近づいた。いのり姉さんは気付いた。 驚くわけでもなくいのり姉さんは私の方を向きながら猫をあやし続けた。 いのり「かがみ……つかさ意外に見られるなんて……」 かがみ「その猫が案内してくれたわよ」 いのり姉さんは黙って猫を撫でている。猫は目を閉じて今にも眠りそうだ。やはり私から聞かないと何も言いそうにない。 かがみ「その猫がどんな猫なのか、姉さんなら分かるわよね、私が納得できる説明をして」 いのり姉さんは困った顔をした。 かがみ「私がこの神社を出ようとしたとき、その猫が境内に入って行った、目的が決まっているように、何かを求めるようにね、思わず追いかけたら姉さんが居た」 猫はいのり姉さんの腕の中で寝てしまったようだ。いのり姉さんは観念したみたいだ。ゆっくりと話し始めた。 いのり「十年前、そう、もうそんなになるかな、かがみ達はまだ小学生、私が中学の時だった、神社に捨てられた仔猫を見つけた、しっぽの先が黒い仔猫……だった」 十年前、姉さんは十年も前からこの猫を知っている。信じられない。私はこの猫を初めて見たのは数週間前だった。 いのり「見て直ぐにその猫が気に入ってね……タマって名づけたよ、私は抱きかかえてタマを家に持ち帰った、そしてお父さんとお母さんに言った『この猫を飼いたい』」 姉さんはそのまま黙ってしまった。私にはその答えが分かった。願いが叶ったならその猫は家の猫になっていた。 いのり「『ダメ!!』この一言だった、泣いて頼んでも聞いてもらえなかった……今思えばつかさを利用すればよかった、でもその時はそんな知恵なんか無かった…… 私は猫を抱いたまま家を飛び出した、神社で私は何時間も泣いていた……」 姉さんはタマを胸元まで抱きかかえた。その時の悲しさが私にまで伝わってきそうだ。 いのり「そんな時、私に声をかけてきた人が居てね、事情を話すとタマを飼ってもいいよって言ってくれた……それが山田さん」 かがみ「山田さんって隣町の?」 姉さんは頷いた。山田さん隣町の地主さんでよく神社の寄付をしてくれる人。家から1キロ位はあるだろうか。 いのり「いつでも会いに来て良いと言ってくれた、私は毎日のように山田さんに家に行ってタマの世話をした、何時しかタマはこの神社にまで遊びにくるようになってね、 ここでいつもタマと遊んだものね……」 かがみ「知らなかった、今まで内緒にしていたなんて、どうやって十年も秘密にしていたの?」 いのり「知らない、秘密にしようとしてはいたけど、特に何もしていない……でもタマは何故か家に来ようとはしなかった、そのせいかもね」 それがどうして数週間前から来るようになったのだろう。分からない。 かがみ「その利巧なタマが最近になって悪さをするようになった、姉さん、何かしたんじゃないの?」 いのり「そうね、一つだけ思い当たる事がある」 かがみ「それは?」 いのり「私ね、一ヵ月後に結婚する」 私は言葉を失った。初めて聞いた。相手は誰。何故今まで黙っていた。そんな素振りも一回も見せてはいない。 かがみ「け、けっこん」 姉さんは少し微笑んだ いのり「まだ、お父さんやお母さんにも言っていない、もちろんまつりやつかさにもね、まさかかがみに最初に言う事になるなんてね、 彼は、仕事でちょっと遠くに行く、私も行く事になる、タマにそれが分かってしまったのかもしれない」 かがみ「相手は誰なの、何処に行くのよ、何故黙っていたの、そんなのいきなり言われても私はどうしていいか分からない」 動揺している私に姉さんは諭すように話した。 いのり「相手はかがみの知らない人、行き先はヨーロッパとだけ言っておく……何故黙っていたか……何故かしらね、何より嬉しい事なのに、皆に話したかったのに……」 タマは姉さんが遠くに行くのが分かった。だから家にまで来て悪戯までした。それで姉さんを止めようとした。私達家族でも気付かなかったのに何故タマには分かる。 猫や犬と人間の付き合いは長い。有史以前まで遡る。野生の猫は人間と共に生きる選択をした。餌をくれるから。人間も数ある野生の動物から猫を選んだ。 ネズミを獲ってくれるから。最初はその程度の関係だったかもしれない。時が流れ次代がかわるにつれて猫は人間を理解するようになる。 もちろん人間の言葉なんかわかるわけは無い。だから微妙な表情の変化、もしかしたら匂いなんかで人の心を読むのかもしれない。人の心が分かれば 付き合い方も分かる。こうして猫は人間社会に溶け込めた。 タマにとって姉さんは居なくなっては困る存在。いのり姉さんの微妙な変化をタマは感じ取った。私達家族にも分からないような微妙な変化を。 いのり「家で悪戯したのは私を結婚させたくなかったのかな、ふふ、暫くここに来なかったから……でも、こんなに甘えてくるのはここ数年なかった、 そこまでして私を行かせたくないみたいね」 タマを優しく撫でる姉さん。その時。裏庭でペットボトルを見つめるタマの姿が脳裏に浮かんだ。タマはペットボトルを越えようとはしなかった。 私はタマの心が分かったような気がした。 かがみ「猫が水の入ったペットボトルなんて怖がらないのを知っていて私達に提案したでしょ?」 いのり「知っていた、知っていたけど私はもうタマとは一緒に居られない、だから少しでも遠ざけようとした……だけどタマは諦めなかった…… こんなに甘えて私を止めようとしている……もうタマは高齢、タマが亡くなるまで結婚を延期してもいい」 姉さんの目が潤んできた。そう、姉さんが提案したペットボトル作戦。庭に置かれた沢山のペットボトル。それでタマは理解した。姉さんがこの町を去ろうとしているのを。 かがみ「タマは姉さんを止めに来たんじゃない、お別れを言いに来た」 いのり「何故」 姉さんは私を見て怒り気味に言った。私にタマの何が分かるのかと言いたげだった。私もそれに答える。 かがみ「タマはここに来る前に家の庭に来た、タマはペットボトルを越えずに引き返して姉さんの居る神社に向かった、怖がったフリをしたのよ、 姉さんがこの町を去るのを分かっていた、だからそうやって思いっきり甘えて最後のお別れをしている、私はそう思う、きっと明日からは この神社にも、家にも来ないと思う、結婚を延期したりしたら、それこそタマは暴れるわね」 姉さんはタマを抱いたまま泣き崩れた。タマは眠ったままだった。猫の十歳は人間に例えるとかなりの歳だろう。山田さんの家からここまでの距離を移動すればその疲労は 辛いに違いない。姉さんとタマ、最後の時間を邪魔するのはもういいだろう。 かがみ「結婚の話を私はしない、姉さんの口から皆に話して」 私はそっとその場を後にした。 いのり姉さんが結婚だって。驚き半分。当然が半分って所か。もうとっくに結婚してもいい歳だ。内心このまま結婚なんかしないと思っていた。 柊いのり。柊家四姉妹の長女。歳が離れているせいかつかさやまつり姉さんに比べると一緒に遊んだりした覚えは殆ど無い。気が付いた時からお姉さんだった。 まつり姉さんと喧嘩している時、真っ先に止めに入るのはいのり姉さん。弱気なつかさを励ましていたのは私よりいのり姉さんの方が多かったかもしれない。 そんな弱気なつかさも中学までか。こなたとみゆきが友達になってからは見違えるようになった。こなたとみゆきの影響も大きいがいのり姉さんが励まなさなければ こなたとみゆきはつかさの友達になれなかったかもしれない。 気が付くと私は家に帰っていた。自然と裏庭に向かっていた。園芸用ネットと水の入ったペットボトルが今となっては空しいだけだ。 そういえば私は姉さんに祝福の言葉を言っていなかった。なぜか祝う気持ちにはなれなかった。猫を飼っていたのを黙っていたから、結婚する姉さんへの嫉妬心か、 家を離れてしまう淋しさからか、素直になれない。タマが庭で悪戯をした心境が分かったような気がした。そして、そんなタマは姉さんの別れを決意した。 私は庭に置かれたペットボトルを片付け始めた。 つかさ「どうして……お姉ちゃん」 私を不思議そうに見ていた。 かがみ「もうこれは必要ない」 つかさ「でも、また猫さんが来たらどうするの」 かがみ「もうタマは二度とここに来ない」 つかさ「えぇ、お姉ちゃん、その名前どうして知ってるの」 つかさは驚いた。しかし私は何も言わない。そんな私を見て何かを感じたのかつかさは二階に行った。暫くするとつかさは私の部屋から金魚鉢を持ってきた。 つかさ「池に戻してもいい?」 私は黙って頷いた。 つかさ「うわー、元気に泳いでる、やっぱり大きい池の方が嬉しそうだよ」 つかさはそう言うとお父さんが仕掛けた園芸用の網を片付け始めた。 夕方になっていのり姉さんが帰ってきた。家族全員が居るまで姉さんは自分の結婚の話をし始めた。皆は動揺した。お父さん、お母さんは叱り付けて怒った。 まつり姉さんは呆れた顔で姉さんをみていた。つかさは放心状態。それぞれが姉さんに辛く当たった。それを見てまたタマを思い出す。家族それぞれ態度は違うけど 同じような反応になる。まつり姉さんもこれが分かっているから言い出せなかった。そんな混乱の中、私はもう心の整理がついた。 かがみ「姉さん、結婚おめでとう」 その言葉に皆は次第に冷静さを戻した。そして祝福ムードへと変化していった。 二ヵ月後。 つかさ「それじゃお姉ちゃん行こう!」 かがみ「そうね」 先月いのり姉さんは旦那さんとヨーロッパに行ってしまった。空港での別れの時のつかさの泣きじゃくりぶりは周りの人々の涙を誘った。そんなつかさも今では普通に戻っている。 今日はわたしとつかさで山田さんの家へ今までタマをを育ててくれたお礼に行く予定をしていた。私達は歩きながら話した。 かがみ「つかさはタマをいつ知ったのよ」 つかさは少し間を置いて話した。 つかさ「えっと二年くらい前かな、たまたま掃除しようとして神社の奥の方に行った時にいのりお姉ちゃんとタマちゃんが居たのを見つけた」 そうか、その時タマは山田さんの家で飼っているのを知ったのか。だからつかさはいのり姉さんが追い出そうとしても平然と居られたのか。タマには帰る所がある。 かがみ「そうだったの、それにしてもお父さんとお母さんが猫嫌いだったとは思わなかった、家ではもう猫は飼えないわね」 つかさ「それは違うよ」 かがみ「違う、違うってどうしてよ、いのり姉さんはタマを飼うのを反対されたじゃない」 つかさは空を見上げならが話した。 つかさ「私ね、お母さんに聞いたんだよ、あの時お父さんとお母さんは喧嘩してたんだって、だから素直に聞き入れられなかったって言ってたよ、いのりお姉ちゃんの 一所懸命に猫を飼いたいって言ってた姿が今でも覚えているって言ってた、でもね、それが切欠でお父さんとお母さんは仲直りしたんだって」 頼むタイミングが悪かっただけないのか。つくづく不運だった。でもその不運を自分の力で乗り越えてタマを育て続けた。 かがみ「私、姉さんを誤解していた、いい加減で、ズボラでお調子者で……だからペットに対してもなんの責任も感じていないと思ってた、でもタマを見て分かった 姉さんはいい加減でもズボラでもないってね」 つかさは無いも言わず微笑みながら空を見上げていた。 つかさ「ごめんください」 山田さんに家に着いた。つかさは早速呼び鈴を押した。中から奥さんの浩子さんが出てきた。 浩子「いらっしゃい、つかささん……かがみさん」 浩子さんは少し暗いかをしていた。 つかさ「えっと、少し遅れてすみません、いのりお姉ちゃんが持ってきた猫のタマをいままで預かってくれて有り難うございました」 私達は深々と頭を下げた。 浩子「別に改まってそんなお礼なんかいらないよ、泣いているいのりさんを見ていたら放っておけなくてね、それに丁度あの時は猫を飼いたいと思ってたから お互いの利害が一致しただけ、お礼を言いたいのはこっちのほうよ、いのりさんは毎日のように家に来てはタマの世話をしてくれたからね」 かがみ「そうですか、それを知ったのもついこの間なんです」 私はお礼の品を手渡そうとした時だった。 つかさ「あの、タマちゃんに何かあったのですか?」 つかさは心配そうに浩子さんに質問をした。後から聞いたがつかさは弘子さんの口調が普段と違っていたと言っていた。私には全く分からなかった。 つかさの質問に浩子さんは言葉を詰まらせた。 浩子「その、タマがね……昨日息を引き取ったのよ」 つかさ「そんな……」 浩子「眠るように亡くなった……」 つかさは私の胸の中で泣き崩れた。 あの日以降タマは家にも神社にも来ていない。来なかったわけではない。病気で来られなかった。 違った、タマは姉さんと別れをしに来たわけじゃなかった。タマは姉さんに自分の死期が近いのを伝えに来た。それがタマの真意だったのか。 タマは姉さんと一緒に居たかった。それだけだった。 私は姉さんに、タマになんて事をしてしまったのか。私は姉さんに結婚を急がせてしまった。タマの寿命が数ヶ月だったら姉さんに言うように延期しても良かった。 私はタマの心、姉さんの気持ちなんて全く理解していない。 浩子「もう荼毘に付しているけど……祈ってあげて」 つかさ「是非そうさせて下さい」 つかさは私から離れると部屋の奥に走るように向かっていった。もともとこのお礼はつかさの提案だった。つかさのタマに対する想いも姉さんと同じ位なのかもしれない。 私が部屋に入るとつかさは既にタマの小さな骨壷の前で手を合わせていた。私はつかさの隣に並びつかさと同じように手を合わせて祈った。 帰り道、私はつかさに聞いた。 かがみ「私は姉さんに怒られるだろうね、まさかこんな事になるなんて、神社で私が姉さんに言った事は聞いてるでしょ、私は姉さんを急がせただけかもしれない」 つかさは何も言わず携帯電話をいじっていた。答えるまでもないか。つかさも怒っているに違いない。つかさは急に立ち止まった。私も立ち止まる。きっと私に対する 怒りをぶつけてくるに違いない。覚悟を決めた。 つかさ「浩子さんに渡したお礼の品の中にね、いのりお姉ちゃんが書いたお礼の手紙と葬式のお金が入っているんだよ」 かがみ「えっ?」 私は意外なつかさの言葉に何の反応も出来なかった。姉さんは知っていて旅立った。 つかさ「神社でお姉ちゃんが言った言葉で分かったって言ってたよ、もうタマちゃんは長くはないって」 かがみ「それなら何故予定通り結婚して外国まで行ったんだ、今日まで待つ事だって出来たはず、神社で姉さんはそう言ったんだ」 つかさ「結婚はいのりお姉ちゃんと司郎兄さんで決めた事だからって……」 決めた事。解せない。司郎さんは山田家の息子。いのり姉さんが毎日のようにタマの世話をしに通っていくうちに司郎さんはいのり姉さんを好きになった。 ごく自然の成り行きだ。司郎さんだってタマと毎日のように暮らしていた。二人を結びつけたのはタマ。 私は神社で姉さんとタマが触れ合って居る所を見て人間とペットの関係以上の絆を感じた。そう感じただけだったのか。タマが悪戯をしていた時以上に姉さんを軽蔑する。 つかさがいじっている携帯電話が目に入った。 かがみ「つかさ、その携帯で姉さんにタマが亡くなった知らせをしてるんじゃないでしょうね?」 つかさ「うん、今送信するところ……」 かがみ「止めておけ、そんなの送っても二人はもう幸せモードで楽しんでいるわ、タマの事なんか忘れている、放っておきなさい」 つかさ「私はそうは思わないよ、いのりお姉ちゃんは……違うよ」 つかさの目が潤んでいる。元々このお礼はつかさの提案だった。私は付き添いみたいなもの。 姉さん達はあのお礼の品で全てを終わりにするつもりだ。つかさだってそのくらいは分かっているはず。 でもタマは幸せかもしれない。つかさがあんなにタマの為に泣いてくれたのだから。私は涙がでない。タマとの付き合いが殆どないからか。感情移入ができない。 つかさは携帯電話をポケットにしまった。送信したのだろう。もう姉さん達の問題だ。 数日後いのり姉さんと司郎さんは帰ってきた。たった一日の滞在だった。そう、タマを埋葬するためだけに。 私は学校を休んで空港に居た。姉さん達を見送るためだった。いや違う。わざわざ帰国するのだったらなぜタマを見送らなかったのか聞きたかった。 出航ロビーで姉さんに聞いた。 かがみ「姉さん、ひとつ聞きたい事がある、そこまでするなら何故待ってあげられなかった、姉さん達ならそれができたはずじゃない」 やや怒り気味で姉さんに伝えた。司郎さんは私から少し離れた。姉さんは少し目を閉じて考えてから話した。 いのり「あの時、神社で私とタマはお別れをした、そうね、したはずだった、だけどつかさのメールを見た時、まだお別れをしていなかったのに気付いてね」 かがみ「どうして、そんなのはすぐ気付くじゃない、その時間もあったはずよ」 いのり「かがみ、周りを見て」 私は姉さんに言われるまま周りを見た、出航ロビーで人々が行き交い、別れを惜しんでいる人もいれば手を振って送る人もいる。 かがみ「何よ、何も変わらないじゃない」 姉さんに意図が分からない。 いのり「違う、よく見て、先月の出国の時は家族全員が送ってくれた、でも今回はかがみ一人だけ」 かがみ「そんなのは聞いていない、私の聞いてる事に答えて」 いのり「覚えているかな、つかさなんか泣きっ放しだった」 かがみ「一ヶ月前の話なんか覚えている、今更なによ」 一向に答えない姉さんに苛立った。 いのり「つかさ達が来ない、もうお別れが済んだから」 私は言い返せなかった。あんなに泣いていたつかさは確かに今回来ていない。 いのり「別れは遠ければ遠いほど、期間が長ければ長いほど辛い、そうでしょ、みんなは、特につかさはそれをよく知っていたみたいね、感情を隠すことなく私に表してくれた」 かがみ「そ、それと私の質問とどんな関係があるのよ」 私は動揺した。そんな私を諭すように話しかけた。そう。それはまさしくお姉さんそのものだった。 いのり「私もね、あの時つかさと同じようにお別れは済んだと思った、だけどね、つかさのメールを見た時気付いた、まだお別れを済んでいなかった……ってね」 遠くで話を聞いていたのか司郎さんが俯いている。 いのり「それからもう一人お別れを言っていない人が居てね、本人もそれに気付いていない、だから帰ってきた」 かがみ「誰よその人は」 いのり「目の前に居るじゃない、かがみ」 お別れを言っていない。そんなはずは無い。誰よりも先に結婚の祝福をした。お別れだってちゃんとした。 かがみ「私は……タマの事を聞きたくて来ただけよ」 いのり「ふふ、かがみ、相変わらず素直じゃないね、その話なら後から手紙でもメールでも聞ける、そうじゃないの」 笑って話す姉さん。まるで私の心の中を見透かしたような言い方。違う断じて違う。 かがみ「はぐらかさないで」 私は話を戻そうとした。 いのり「いつもそう、かがみ、先月もつかさに譲ったんでしょ、だから私も何もかがみに言えなかった」 今別れれば五年は帰ってこない。あの時別につかさに譲ったつもりは無かった。だけど確かに姉さんに正面から話を交わしていない。 かがみ「いのり姉さん……」 いのり「そして私はもう柊家の人じゃない、だからもうまつりに遠慮することも無い……今まで良くやってくれた、お父さん、お母さん、まつり、つかさを帰ってくるまで よろしく……まつりと喧嘩しちゃだめだ……めだから」 いのり姉さんの目から涙が出ていた。その時気付いた。私は姉さんにお別れを言いに空港まで来たのだと。 かがみ「そっちこそ、夫婦喧嘩して離婚なんか承知しない」 姉さんは無言で頷いた。 かがみ「いのりお姉ちゃん」 私は思わず幼少の頃の呼称で名前を言った。 空港の別れのシーン。よくある光景。お互いに抱き合って別れを惜しむ。周りの人々と同じように私たちは別れを惜しんだ。 『〇〇行き〇〇〇便の出航準備ができました……』 アナウンスが響いた。 いのり「あ、もう時間、それじゃ、かがみ……」 いのり姉さんは振り返って私に背を向けると司郎さんと手を繋ぎ小走りに飛行機の方に向かった。『幸せに』と心の中で祈った。 私は二人が見えなくなるまで見送った。でも涙で歪んで見えて最後まで見届けられなかった。たった五年間の別れだと言うのに。 いのり姉さんとタマの出会いはお父さんとお母さんの喧嘩を仲直りさせた。十年以上経っているのに覚えているのだからきっと危機的なものだったに違いない。 つかさの性格にも大きな変化を与えた。最後にいのり姉さん自身は結婚にするに至った。そして私はどんな影響を受けたのか。 私自身は分からない。だけど何かを感じる。それが悪いものではないのは分かる。 空港から帰宅するとつかさは既に帰ってきていた。 つかさ「おかえりお姉ちゃん、どうだった?」 かがみ「どうだったって、何が?」 つかさの聞きたい事はすぐに分かった。だけど直ぐには言えなかった。つかさはそれ以上聞かなかった。空港で何があったのか分かったようだ。 私もこれ以上答えなかった。つかさはそんな私に微笑んだ。 かがみ「姉さんが居なくなって淋しくなったわね、犬か猫でも飼いたくなったわ」 つかさ「お姉ちゃんからそんな台詞を聞けるとは思わなかったよ、そういえばね、まつりお姉ちゃんの友達が飼っている猫が子供を産んだんだって、話聞いてみる?」 一番タマを憎んでいたはずのまつり姉さんも影響をうけたのか。 話くらいなら聞いてもいいかな。 三日後私達は仔猫を貰いに向かった。三匹の仔猫から気に入った子を選んでよいと言われた。つかさは真っ先に一匹の仔猫を箱から取り出し抱いた。 私とまつり姉さんも直ぐにその仔猫を気に入った。つかさはタマと名付けた。 柊家に新しい家族が加わった。尻尾の先が黒い可愛い仔猫。 終 コメント・感想フォーム 名前 コメント イイハナシダナー -- 名無しさん (2011-03-27 23 21 49)
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こなた「おはよー!つかさ、みゆきさん!」 みゆき「おはようございます、泉さん」 つかさ「こなちゃん、おはよー。今日は遅刻ギリギリだね~」 こなた「いやー、ちょっとだけのつもりでネトゲに手を出したら、明け方まで盛り上がっちゃってさ」 つかさ「そうなんだ~」 みゆき「夜更かしは体に障りますから、程々にされた方がいいと思いますよ」 こなた「わかっちゃいるんだけどねー……ところで、かがみはもう自分の教室に戻ったの?」 つかさ「それがね、お姉ちゃん今日はお休みなの」 みゆき「どうやら、風邪をひかれてしまったとかで」 こなた「へぇ、そうなんだ。つかさのがうつっちゃったのかねぇ?風邪はうつすと治るって言うし」 つかさ「ひどいよ~、こなちゃん」 ~さらば!怪傑かがみん!~ まさか、つかさに続いて私までもが風邪で倒れてしまうとは思わなかった。 昨日つかさに『この時期に風邪なんて気がゆるんでる証拠よ』なんて言うんじゃなかった。 漫画じゃあるまいし、注意したそばから倒れるなんて、姉としての面目が丸潰れだ。 それにしても、やることが無くて困る。 昼食後に薬を飲んでひと眠りしたらだいぶ調子は良くなったが、ベッドを抜け出してウロウロする訳にもいかない。 ベッドの上でも出来る事といったら読書くらいだが、今は頭がボーっとしていて大好きなラノベも読む気にならない。 四の五の言わずに寝ていればいいのだが、私はつかさと違ってそう何時間も寝てはいられない人間なのだ。 そんなことを考えながらじっと天井の一点を見つめていると、ふと先週の出来事が思い出された。 みゆきは怪傑かがみんの正体についてどう考えているのだろうか。 みゆきの発言を額面どおりに捉えれば、みゆきはその正体が私だとは思っていないことになる。 しかし、もしかしたらアレは正体に気が付いた上での私への気遣いなのではないかとも考えられる。 常識で考えれば、目の前で自白して衣装を身にまとったのだから正体に気が付かない訳がない。 ……もっとも、本当に本当の常識ってヤツで考えれば一番最初の時にバレてるハズなんだけど。 それともう1つ。 最後にみゆきが私の事を『親友』と表現したあの発言は、正体に気付いている事を踏まえての発言ととれる。 『私は、正体がかがみさんだと気付いていないフリをさせていただきます』という意味にとれなくもないのだ。 さすがにコレは深読みのし過ぎかもしれないが、あの時のみゆきの表情からはそうとしか考えられないから困る。 そういう風に考えていくと、みゆきだけじゃなくこなたも正体に気付いている可能性がある。 自白こそしていないものの、私はこなたの目の前で着替えをした事があるのだ。 あいつも普段はバカっぽい事ばかりしているが、他人の思惑なんかに対して妙に鋭い節がある。 バカと天才は紙一重なんていう言葉があるが、こなたは紙一重で天才の方なのかもしれない。 だとしたら、私の趣味がコスプレだと決め付けてバイト先であんなことをしたのも、あいつなりの気遣いということだろうか。 『私は、正体がかがみだって気付いていないフリをさせてもらうヨ』という考えに基づく行動だと、とれなくもない。 もしかして『ダブル怪傑かがみん』の写真を撮るという2人の行動は、秘密を共有することへの覚悟、或いは気遣いなのだろうか。 仮に、仮に私のこの考えが当たっていたとしよう。 その場合、私が怪傑かがみんを演じる必要はほとんど、いや、まったく無くなってしまうのではないだろうか。 正体がばれているのなら、柊かがみという人間の想いを伝える代役の存在意義は0に等しい。 それにみゆきはあの時――彼女が正体についてどう考えているにせよ――怪傑かがみんにではなく、私、柊かがみに感謝の言葉を捧げた。 怪傑かがみんは必要ないのだろうか。 考えることに少し疲れたので、私は天井を見つめながらボーっとすることにした。 扉が控えめにノックされるのが聞こえたが、面倒なのもあってわざと返事をしない。 しばらくして、遠慮がちにお母さんが部屋の中に入ってきた。 み き「かがみ、入るわよ……あら、起きてたの?調子はどうかしら?」 かがみ「うん、だいぶ良くなったみたい。明日には学校に行けると思うわ」 み き「そう?無理しなくていいのよ?」 かがみ「別に無理なんかしてないって」 み き「ならいいんだけど。辛くなったらすぐに言いなさいね」 かがみ「うん、ありがと……ねえ、お母さん」 み き「なあに?」 かがみ「お母さんも私と同じ様に17歳の頃から怪傑の力を使い始めたんでしょ?」 み き「そうだけど、急にどうしたの?」 かがみ「ただ、この間のお父さんの反応から考えると最近は力を使ってなかった」 み き「ええ、そうよ。あの時はずいぶん久しぶりだったから緊張したわ」 かがみ「何か理由があったの?」 み き「理由?何の?」 かがみ「怪傑の力を使わなくなった理由。何か特別な理由とかきっかけみたいなものがあったのかなって」 み き「そうねぇ……忘れちゃったわ。ずいぶん昔のことだから」 お母さんは少しだけ考える仕草をしてから、笑顔でそう答えた。 かがみ「結構大事なことだと思うんだけど、本当に忘れちゃったの?」 み き「そんなことより、お友達がお見舞いに来てるわよ。起きてるなら、あがってもらってかまわないわね」 かがみ「お母さん、私の質問に――」 み き「あら、いけない。そういえば、お鍋を火にかけっぱなしだったわ」 かがみ「ちょっと、お母さんってば……ああ、もう。まだ話は終わって無いってのに」 逃げられた。おそらく私の質問に答える気は無いということだろう。 まあ、お見舞いに来ている友人を放ったままにしておくにはいかないし、今は答えを追求するのは諦めよう。 数分後、お見舞いの品と思しきぽっきー1箱を携えて、こなたが姿をあらわした。 こなた「やふー、かがみ。元気してたー?」 かがみ「風邪ひいて学校休んでる人間が元気なわけ無いだろ」 こなた「うむ、なかなかの反応だネ。元気そうで何よりだよ」 かがみ「人の体調をどこで判断してるんだ、あんたは」 こなた「――でさ、つかさはまた携帯電話を没収されたってわけなんだよ」 つかさ「うわああ、こなちゃん。それはお姉ちゃんには言わないでって言ったのに~」 こなた「あれ?そだっけ?」 かがみ「ふふ。まったく、つかさはしょうがないんだか……ケホッ、ケホッ」 つかさ「お姉ちゃん、大丈夫?まだ喉が痛むの?」 かがみ「ああ、心配しなくても大丈夫よ。ちょっと違和感が残ってるだけだから」 こなた「ちょっとしゃべり過ぎちゃったカナ?とりあえず、何か飲んだ方がいいんじゃない?」 つかさ「そうだね。私、何か飲み物もってくるよ。こなちゃんも何か飲むでしょ?」 こなた「あー、おかまいなく」 つかさ「遠慮しなくていいよ。お茶がいい?それともコーヒーがいいかな?」 こなた「んー、じゃあかがみと一緒のでいいや。ありがと、つかさ」 つかさが台所へと降りていき、こなたと2人きりになった。 私の喉を気遣ってか、こなたは何もしゃべらずに部屋の中を見回したりしている。 かがみ「ねえ、こなた」 こなた「んー?」 かがみ「変な遠慮しなくていいから、何か話しなさいよ」 こなた「あ、ばれてた?」 かがみ「まあね」 話を仕切りなおすためか、それとも照れ隠しのためかはわからないが、こなたはアハッと笑った。 こなた「そだねー、じゃあ何を話そうかな」 かがみ「私が休んでる間にあった事とかでいいじゃない」 こなた「もうほとんど話しちゃったよ。後はみゆきさんが、かがみにくれぐれもお大事にって言ってたくらいかなぁ」 かがみ「おい。それって一番最初に言わなきゃダメだろ」 こなた「まあまあ、忘れずに言ったんだからいいじゃん」 かがみ「おまえなぁ……みゆきに申し訳ないとは思わんのか?」 こなた「あー、それとさ、かがみがいない間に怪傑かがみんは1回も登場しなかったから」 かがみ「は?」 こなた「ん?」 かがみ「えーっと、何でその情報を私に言う必要があるんでしょうか、こなたさん?」 こなた「え?だって、かがみはコスプレするくらいにあの人の大ファンなんでしょ?気になるかと思って」 どうやらこなたは紙一重でアレの方だったようだ。 せっかくだから、少し試してみようか。 かがみ「ごめん、こなた。ちょっとトイレいってくる」 こなた「いってらー」 つかさの私服を無断借用して着替えを済まし、こっそり持ち出した仮面とマントを身に着ける。 部屋に戻ると、都合の良い事に中にはこなた1人しかいなかった。 どうやら、つかさはまだ飲み物の準備をしているみたいだ。 当のこなたはやることが無くて余程ヒマだったのか、私の机の周りでなにやらゴソゴソしていた。 こなた「うわっ!?か、かがみ、コレは違うんだよ!?別に家捜しとかしてたわけじゃ……あれ?」 こなたは扉の前に立つ私をもう一度よく見る。 こなた「か、怪傑かがみん!?」 怪傑K(あー、やっぱりそうなっちゃうんだ。この間、目の前で着替えた時は柊かがみって認識してたのになぁ) こなた「な、何でここに?私、今日は別に悩み事なんて無いですよ?」 怪傑K(完全に気が付いてないな、あの表情は。とりあえず、これでこなたはシロだって確認できたわね) こなた「もしかして、私じゃなくてかがみに用があるんですか?」 怪傑K(残るはみゆきか……いっそのこと、今週末にでも家に招待して同じように試してみようかしら) こなた「おーい」 怪傑K「はっ!?……な、何か用かしら?」 こなた「それはこっちの台詞なんですけど」 怪傑K「あ、ああ、ええっと……その、今日は柊かがみに会いに来たんだけど、どうやらいないみたいね」 こなた「そうですか。かがみならすぐに戻ってきますから、待ってたらどうですか?」 怪傑K「え?い、いや、そうもいかないのよ。ほら、こっちにも事情ってもんがあるし」 こなた「むー……?」 怪傑K「な、何よ、そんなに私の事をじっーと見て。何か変かしら?」 こなた「いや、いつもと何か違うなーって思いまして」 怪傑K「ち、違うって、どこが?」 こなた「髪型がツインテールじゃなくてストレートなトコとか、服装が制服じゃなくて私服っぽいトコとか……」 怪傑K(ヤバッ、バレるかも!?どうしよう、今更だけどこれはコスプレだってことにしようかしら……でもそれもなんか嫌だな) こなた「ああっ!?もしかして!?」 怪傑K(まさか、バレちゃった!?とりあえず否定しなきゃ!!) こなた「2号?」 怪傑K「違うの!!……は?あれ?2号って?あれ?」 こなた「違うんだ。じゃあ、あなたは誰なんですか?」 怪傑K「あれ?え?……え、ええ~っと、私は、その……そう!V3よ!怪傑かがみんV3!」 こなた「V3!?ということは3人目!?」 怪傑K「ま、まあ、そうなっちゃうわね」 こなた「かがみにも教えてあげなきゃいけないね、怪傑かがみんは3人いるって。ってことは、いずれ3人揃ったところとかも見れるのかなぁ」 怪傑K「ええっ!?そんなの無理に決まってるじゃないッ!!……あ、えっと、そうじゃなくって。違うのよ。3人もはいないから」 こなた「ふぇ?なんで?だって、あなたはV3で、3人目の怪傑かがみんなんですよね?」 怪傑K「それは、ほら、アレよ、アレ。まあ、アレっていったらアレしかないじゃない?」 こなた「アレ?」 怪傑K「だから、アレよ、アレ……そ、そう!消えたの!1号と2号は消えちゃったのよ!」 こなた「な、なんだってーーーーー!!!?」 かがみ「はぁ~……なんか、ものすごい墓穴を掘ってしまった気がするわ……」 困っている人々を救うため、悪の組織に立ち向かうことを決めた怪傑かがみん1号と2号。 V3にすべてを託し、彼女らは組織の本拠地へと乗り込んでいった。 そして彼女らの活躍により組織は壊滅し、その本拠地も謎の大爆発により消え去ったのだった。 しかしそれ以降、1号と2号の姿を見た物はいない。 勢い余ってそんな話をしてしまった。 とりあえず、つかさの部屋で再び着替えて自分の部屋へと戻る。 扉を開けると、こなたは目をキラキラと輝かせながら興奮気味に話しかけてきた。 こなた「かがみ!すっごい情報を入手したよ!」 かがみ「わ、わかったから、少し落ち着け。何よ、すごい情報って?」 こなた「怪傑かがみんってさ、なんと3人もいたんだよ!」 かがみ「へ、へえー、本当に?」 こなた「本当だヨ!力の1号に技の2号、そのすべてを受け継いだ力と技のV3!彼女らは世界をまたにかけ、地球征服を企む巨大な悪と闘ってるんだって!」 こいつ、もう話に尾ひれをつけてやがる。 なんだよ力と技って。地球征服って。 こなた「――でね、ついに1号と2号はその身を犠牲にして、悪の首領もろとも炎の中へと消えていったんだってさ!いやー、燃える展開だよねー!」 かがみ「はいはい。どうせまた、何かのネタかなんかでしょ?まったく信じらんないわよ、そんな話」 こなた「えー、少しくらいは信じようよ。せっかく教えてあげたのに」 かがみ「はいはい。もうわかったから……それにしても、つかさ遅いわね。何やってんのかしら?」 こなた「言われてみれば、結構時間たってるよね。ちょっと見てこようか?」 かがみ「いいわよ。そのうち来るでしょ」 それから数十分後、心なしか元気のない顔をしたつかさが飲み物を持ってきた。 戻ってくるまでやけに時間がかかったし、台所で何か失敗でもしたのかしらね。 私は飲み物を口にしながら、再びこなたが『怪傑かがみん』の最新情報をつかさにまくしたてる姿を少し呆れて眺めていた。 コメント・感想フォーム 名前 コメント