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ひより「5月1日っス!」 みゆき「今日は扇の日です。京都扇子団扇商工共同組合が1990年に制定しました。『源氏物語』では女性が光源氏に扇を贈っていることから、『こ(5)い(1)』(恋)の語呂合わせだそうです」 かがみ「ちなみにスズランの日でもあるのよね。イギリス・フランスでは、この日にスズランを贈られた人には幸せが訪れると言われているとか」 ゆたか「こなたお姉ちゃん…この扇とスズラン、受け取って」 こなた「あ、ありがとう…一応訊いておくけど深い意味は…」 ゆたか「こなたお姉ちゃんは…私が幸せにします」 こなた「ちょwww」 かがみ「ゆたかちゃん、抜け駆けは許さないわ」 つかさ「私たちもこなちゃんに扇とスズランをプレゼントするよ」 みゆき「泉さんにはきっとたくさんの幸せが訪れますね。扇で扇いであげます。パタパタ」 こなた「あ~涼しい…あれ?なんだろ…なんだか…ヘンな気分に…」 みゆき「扇に媚薬を仕込んでおきました」 かがみ「GJみゆき!」 つかさ「さぁこなちゃん、私のナニでスズランのお花畑に連れて行ってあげるよ♪」 ゆたか「菊とスズランのコラボレーション…くはっ」 こなた「ま、またしても媚薬ネタに…でも感じちゃう!ア―――ッ!!」 ☆ ☆ ☆ こなた「5月2日だネ」 かがみ「今日は歯科医師記念日よ。日本歯科医師会が1957年5月に制定したの。1906年、歯科医師の身分や業務を確立する『歯科医師法』が施行されたんだって」 こなた「じゃあ今回も白衣着てお医者さんごっこしようかみゆきさ~ん」 みゆき「Σ(゜Д゜)」 つかさ「ゆきちゃんの口内に妖しげな器具を挿入してじっくりねっぷり治療をするんだね~」 かがみ「いいえ!ここは私たちの指と舌を治療器具に見立てて歯医者さんプレイを!」 みゆき「虫歯のある人とちゅーすると虫歯がうつるって本編でもいっt…ア―――ッ!!」 ☆ ☆ ☆ ひより「5月4日っスよ~」 かがみ「今日はファミリーの日よ。中華料理店チェーンの東天紅が1985年にこの日が休日になると決定したとき、それにふさわしい愛称を公募し制定したの。それまで家族全体の記念日がなかったことが理由みたいよ。というわけで…こなたぁ~ん、私たちも家族水入らずで過ごしましょうよ~」 こなた「は?いつ私とかがみが家族になったのさ?!」 つかさ「ママー」 こなた「Σ(゜Д゜)」 かがみ「私たちは、私とこなたと娘のつかさの三人家族でしょ」 こなた「つかさが私たちの娘?!」 かがみ「ほらぁ~萌えない?つかさの園児服姿…」 こなた「うっ…」 かがみ「この格好で『パパー』なんて呼ばれた日にゃあ妄想が暴走で…」 こなた「じゅろす」 つかさ「あれ?いつのまにか私がフェチ対象?台本にはそんなこと書いてn…」 こなた「パパって呼んでー!」 つかさ「アッ――――!!」 ☆ ☆ ☆ こなた「今日は5月5日、こどもの日だね…って、ゆーちゃんどこ行くの?」 ゆたか「だって…らき☆すたメンバーの中で一番子どもっぽいって理由で私がフェチ対象なんでしょ?!逃げないと…」 かがみ「ほぉ…逃げられると思っておるのか」 ゆたか「ふぇっ!」 かがみ「され、どのネタで苛めてくれようか… わかめの日ということでワカメ酒の刑に処するか…(日本わかめ協会が1983年に制定。こどもの日にちなみ、子どもの成長・発育に欠かせないミネラル・カルシウムを含んだわかめをたくさん食べてもらおうと設けられた) ボーイズデーということでふたなりネタか…(1946年~1948年。この日が男の子の節句であることから。1949年からは、こどもの日に引き継がれた) はたまたおもちゃの日ということで愛らしいぬいぐるみにしてくれようか…それとも大人なおもちゃを持ち込むか…(東京玩具人形問屋協同組合が制定。端午の節句にちなみ、おもちゃや人形のPRの為に設けられた)」 ゆたか「私…その…生えてないので、ワカメ酒はできないです///」 かがみ「Σ(゜Д゜)」 こなた「じゃあかがみがワカメ酒すればいいんだ。ここで攻守が逆転する!これで勝つる!」 かがみ「ちょwww」 ゆたか「未成年だけど…じゅるるる」 かがみ「ふぁっ!あ……ア――――――ッ!!!」 ☆ ☆ ☆ ひより「5月7日っスね~」 みゆき「今日はコナモンの日です。日本コナモン協会が2003年に制定しました。『こ(5)な(7)』の語呂合わせです。たこ焼き・お好み焼き・うどんなど粉を使った食品、『コナモン』の魅力をPRする日です」 つかさ「粉の日でもあるんだよね~『こ(5)な(7)』の語呂合わせで、小麦粉などを食糧としての粉の有用な利用方法をアピールする日だよね」 かがみ「こなたぁ~逃げようたってそうはいかないわよ~」 ゆたか「コナモン♪コナモン♪」 こなた「ちょwww名前が似てるからって私関係ないってば!」 かがみ「こなた焼きじゅろす」 つかさ「こなた焼きうにょ~ん」 みゆき「こなた焼きだばだば」 ゆたか「え?コナモンって、こなたお姉ちゃんを使った料理のことでもあるんじゃないの?」 こなた「Σ(゜Д゜)」 こなた「みなみちゃん助けて!」 みなみ「先輩方…それはよくない」 こなた「みなみちゃんっ!」 みなみ「生が一番」 こなた「Σ(゜Д゜)」 つかさ「じゃあお刺身だね!この際女体盛りに!!」 こなた「ビールネタにはならn…アッ―――!!」 ☆ ☆ ☆ こなた「5月8日だネ」 みゆき「今日はゴーヤの日です。JA沖縄経済連と沖縄県が1997年に制定しました。『ゴー(5)ヤ(8)』の語呂合わせと、5月からゴーヤ(苦瓜)の出荷が増えることが理由だそうです」 つかさ「こなちゃん、ゴーヤーチャンプルー作ってみたの。食べて~」 こなた「お~いただきま~す。ん~やっぱりゴーヤは苦いねぇ」 かがみ「こなた…今、なんて言った?」 こなた「え?ゴーヤは苦いねぇ…って」 つかさ「こなちゃん。このミルクを飲んで同じことを言ってくれるかな…」 こなた「んっ…こくん…にがぁい……つかさ、何故前かがみに?」 みゆき「い、泉さん…ここにホイップしたての生クリームがあるのですが…指ですくって舐めて同じセリフを…」 こなた「ん~ぺろっ…にがぁい」 みゆき「くはっ」 どぴゅっ! こなた「わっ!みゆきさんの母乳がかかっちゃったよぉ~」 かがみ「こなた……ぶっかけはジャスティス!」 こなた「もはやゴーヤの日関係ねぇ!アッ―――――!!」 ☆ ☆ ☆ ひより「5月9日っス~~♪」 みゆき「今日はアイスクリームの日です。東京アイスクリーム協会(現在のアイスクリーム協会)が1965年より実施しています。1964年、アイスクリームのシーズンインとなる連休明けの時期であるこの日に、東京アイスクリーム協会が記念事業を行い、諸施設へアイスクリームをプレゼントしました。以降、この日を『アイスクリームの日』として、各種のイベントを実施しています。さぁ泉さん!高良家自慢のバニラアイスを召し上がってください!白いモノにキスをするようにペロペロと舐めてください!口の周りを溶けかけたアイスクリームで白く汚してください!」 こなた「昨日と同じオチ?!アッ―――――!!」 ☆ ☆ ☆ こなた「5月13日だよ」 みゆき「今日は愛犬の日です。ジャパンケンネルクラブ(JKC)が1994年に制定しました。1949年、同クラブの前身である全日本警備犬協会が創立されたことがきっかけです」 こなた「というわけで今回は、本編で犬に例えられていたつかさで某有名ネタに走ろうと思うよ」 かがみ「制服を着せて…白マントをつけて…白い帽子をかぶせて…フリスビーを…取ってこ~い!」 つかさ「わふ~~~~~~~♪」 ゆたか「チェリーちゃんの出番がn」 みなみ「取ってこ~い…」 ゆたか「わふ~~~~~~~♪」 ☆ ☆ ☆ ひより「5月15日っス!原稿落ちるっス~~!!」 かがみ「ねえみゆき…ストッキング、破らせてくれない?」 みゆき「かがみさん?急に何を……」 ゆたか「みなみちゃん…ストッキング、破らせて…」 みなみ「ゆたか…息が荒いよ…どうして…?」 こなた「今日がストッキングの日だからだよ。1940年、アメリカのデュポン社がナイロン・ストッキングを全米で発売した。それまでアメリカのストッキング市場は日本の絹製のもので独占されてたけど、これ以降、ナイロン製のものに王座を明け渡したとか。ちなみにキャラの選択は、制服着たときにストッキングをはいてるキャラね。本編コミック5巻参照」 みなみゆ「Σ(゜Д゜)」 かがみ「破いたストッキングは…」 ゆたか「もちろんお~もちかえり~♪」 みなみゆ「ちょwwwやめwwwアッ―――――!!!」 ★ ★ ★ 白石「あきら様…ストッキングを…ハァハァ(;´Д`)」 あきら「このシリーズ初登場がこんな役回りかよ!アッ!!」 ☆ ☆ ☆ こなた「5月16日~♪」 かがみ「……」 つかさ「……」 みゆき「……」 ゆたか「……」 みなみ「……」 こなた「ど…どうしたのみんな?なんか生気が感じられないんだけど…」 ゆたか「お姉ちゃん…今日は性交禁忌の日なんだよ…江戸時代の艶本『艶話枕呂』に、旧暦5月16日は性交禁忌の日で、禁忌を破ると3年以内に死ぬと書かれているの…」 つかさ「信じられないよ…こんな日があるなんて…ひっく」 みなみ「つかさ先輩…お酢で酔っ払いますか…」 みゆき「フェチネタの天敵とも言うべき記念日ですね…これは…」 かがみ「私たちに対する拷問としか思えないわ…はぅっ!股間が…疼いて…」 こなた「性交はダメでもひとりえっちなら大丈夫なんじゃないの?一日くらいそれで我慢すれば?」 かがみ「そうよ!そのテがあるじゃない!」 みゆき「どうせなら泉さんを視姦しながらシませんか?」 ゆたか「賛成です!というわけでお姉ちゃんを中心に輪になって…ん…あっ…」 こなた「ゆーちゃん?!」 かがみ「はぁ…ん…こなたぁ」 こなた「かがみ?!うわ…みんな私を見てる……なんだろう、この気持ち…なんか、ムズムズして…」 つかさ「んあっ…こなちゃん…あっ…あっ」 こなた「うう…私も……シちゃうっ!アッ―――――!!」 ☆ ☆ ☆ ひより「5月19日っス~なんか出番多いっスねぇ」 やまと「今日は、ボクシング記念日・チャンピオンの日。1952年、挑戦者・白井義男が世界フライ級チャンピオンのダド・マリノに判定勝ちして、日本初のチャンピオンになった日」 かがみ「ん…ちゅぷ…ちゅ…じゅる…ちゅぴ…」 こなた「ふぁっ…あ…らめぇ!!」 ビクッ! あやの「はやい…圧倒的ね」 みゆき「では、誰が一番短時間で泉さんをノックアウトできるか選手権。結果を発表したいと思います。 かがみさん、1分17秒 つかささん、7分7秒 日下部さん、7分20秒 みなみさん、9分12秒 私高良みゆき、10分25秒 峰岸さん、11分4秒 小早川さん、12分20秒 よって、チャンピオンは柊かがみさんに決定しました! 賞品はもちろん泉さん本人です!」 ゆたか「ラッピングはもちろん制服だよね~」 かがみ「お・お・お持ち帰り~」 こなた「アッ―――――!!!」 ☆ ☆ ☆ こなた「5月21日ー」 みゆき「今日は小学校開校の日です。1869年、京都市に日本初の小学校『上京第二十七番組小学校』が開校しました。住民たちが自分たちで資金を調達して開校したものでした。ところでかがみさん。小学生時代のかがみさん、かわいいですねぇ~(本編2巻67ページ参照)」 こなた「かがみん…かわいいよ…かがみん」 みゆき「ここにかがみさんがつかっていたリコーダーがあるのですが…3万円くらい。写真付きで」 かがみ「汚れきった発想ね…」 こなた「こんなときこそ『精神年齢退行ランドセル』で小学生かがみんカムバック!(何の日シリーズ3月編参照)」 かがみ「そのネタしつこいぞ!アッ―――――!!」 ☆ ☆ ☆ ひより「5月22日っス~」 みゆき「今日はガールスカウトの日です。ガールスカウト日本連盟が制定しました。1947年のこの日、第二次世界大戦で中断されていた日本のガールスカウトを再興するために準備委員会が発足しました」 つかさ「ガールスカウトっていうのは、活動しながら自分を輝かせ、『人との交わり』を大切にする女の子の集まりだよ。『学校では学べない体験学習』がメインなんだよね」 かがみ「普通の文章にハズなのになんかイヤラシイわね…」 つかさ「お姉ちゃん…学校では教えてくれない体験って、なぁに?教えて欲しいなぁ~」 かがみ「それは…その…」 つかさ「教えてせんせいさん!」 かがみ「懐かしいわね!元ネタわかる人いるのかしr…アッ――――!!」 ☆ ☆ ☆ こなた「5月23日…読めたよ…5月が誕生日の私とひよりんを全てのタイトルコールに出演させようって魂胆だネ」 つかさ「ん…んむっ…お姉…ちゃん」 かがみ「つかさ…ちゅぷ…好きよ…」 ななこ「…」 みなみ「はぁっ…ん…みゆき…さ…んんっ」 みゆき「ステキですよ…みなみさん…」 ななこ「……」 ゆたか「お姉ちゃ…んっ…学校でなんて…ふむっ」 こなた「ゆーちゃんの唇…柔らかいねぇ~癖になるよ」 ななこ「………」 ひかる「黒井先生どうしましたか?」 ななこ「また一体どうしたんや…校内のカップルどもがあっちゃこっちゃでキスしとる…またなんかの記念日か?」 ひかる「そうですな。今日はキスの日です。1946年のこの日、日本で初めてキスシーンが登場する映画である、佐々木康監督の『はたちの青春』が封切りされた日ですな。主演の大坂史郎と幾野道子がほんのわずか唇を合わせただけでしたが、それでも話題を呼び、映画館は連日満員になったとか」 ななこ「またか…またこんな恋人たちのための記念日が!」 ふゆき「ひかる!これを受け取って!」 ひかる「これは…手紙?ラブレター?!」 ふゆき「今日はラブレターの日よ。松竹が制定したの。『こい(5)ぶ(2)み(3)』(恋文)の語呂合わせと、浅田次郎原作の映画、『ラブ・レター』の公開初日であったことがきっかけよ。ひかる…私の思いを受け止めて!ついでに奪って!」 ひかる「ふゆき…………結婚してくれー」 ふゆき「ア―――――――ッ!!!」 ななこ「くっ…こんな日は平然を装いつつ、空の郵便受けを除きながらリップクリームを弄ぶ自分がいやや…おぼえとれー」 ☆ ☆ ☆ ひより「5月24日っス!自分の誕生日をタイトルコールできるなんて…」 こなた「ハッピーバースデーひよりん!誕生花の贈呈だよ~」 つかさ「5月24日の誕生花はヘリオトロープ(Heliotrope)だよ。花言葉は『愛よ永遠なれ』だよ」 かがみ「田村さんに対する私たちの愛も、永遠であってほしいわ…」 ゆたか「では永遠の愛を確かめるために…」 ひより「ちょwww返して私のセーラー服!」 『愛すべき弄られキャラひよりんよ!永遠なれ!Happy Birthday!』 ひより「アッ――――!」 ☆ ☆ ☆ こなた「5月26日…ひよりんがイったか…次は我が身…」 みゆき「今日はル・マンの日です。1923年、自動車耐久レースの最高峰、ル・マン24時間耐久レースの第一回大会が、フランス北西部の町、ル・マンで開催されました」 かがみ「こなた…耐久レース、やらないか?」 ゆたか「みなみちゃん…耐久レース、しない?」 つかさ「ゆきちゃん…耐久レース、しよ?」 こうしてかがこなVSみゆつかVSゆたみなの耐久レースは始まった。一番に100回イクのはどのペアか?! ひより「もちろんかがこなペアっス!」 こう「正解者にはフェチネタの賞品が…」 ひより「Σ(゜Д゜)」 ☆ ☆ ☆ ひより「5月28日っス!泉先輩…大丈夫っスかねぇ」 かがみ「今日は花火の日よ。1733年、隅田川で水神祭りの川開きが行われ、慰霊祭を兼ねた花火が打ち上げられたの。というわけで、こなたの誕生日は花火で祝おうと思うの」 こなた「花火で?(フェチネタは避けられた?)」 かがみ「うん!向こうの空を見て…」 ヒュルルルルル… パ―――――――ン!! ハ ッ ピ ー バ ー ス デ ー こ な た こなた「かがみ…」 かがみ「誕生花の贈呈よ。5月28日の誕生花はペパーミント(西洋薄荷)よ。花言葉は『心の暖かさ』よ。私の心の暖かさ、感じてくれた?」 こなた「もちろんだよ!ありがとうかがみ!」 かがみ「じゃあ次は身体の暖かさを感じていただくということで…」 こなた「Σ(゜Д゜)」 こなた「結局こういうオチ?!アッ――――!!!」 ★ ★ ★ ★ ★ プルガトリオ 5月13日 ななこ「ふっふっふっ…ついにきた!恋人たちの日が続いてピンク色に染まったこの世界を!ウチが真っ黒に染め上げる日がきたんや!」 こなた「黒井先生…ノリノリですね…」 ななこ「ふっ!今日はメイストームデー(5月の嵐の日)や!バレンタインデーから88日目、『八十八夜の別れ霜』ということで、別れ話を切り出すのに最適とされる日や!さぁさぁ目障りなカップルども!別れてフラれて暗雲をバックにブラックコーヒーを啜るがいいわ!!」 黒井先生を中心に黒き嵐が吹き荒びます。 黒き風にあてられたカップルたちの雰囲気がどんどん悪くなっていきます。 このまませっかく結ばれたカップルたちは崩壊してしまうのでしょうか… 少子化問題にますます拍車がかかりそうですね。 そのとき、ピンクの衣装をまとった少女が立ち上がりました。 かがみ「先生…ご存知ですか?2月14日の『バレンタインデー』、3月14日の『ホワイトデー』、4月14日の『オレンジデー』と、14日付近には恋人に関連した記念日が続きます。今日を乗り切れば6月12日には『恋人の日』が待っています」 ななこ「Σ(゜Д゜)」 ゆたか「そのほかにも、7月7日には『サマーバレンタイン』、9月14日には『セプテンバーバレンタイン』と、他にも恋人たちの記念日は目白押しです」 あやの「それぞれの記念日に応じたネタをご用意いたしますので、楽しみにしてくださいね」 みなみ「こんなところで…終われない」 つかさ「恋する女の子は絶対無敵!集え!ラブパワー!!」 こなた、かがみ、つかさ、みゆき、ゆたか、みなみ、背景×2を中心にピンク色のオーラが集まります。 いつのまにか全員の服が魔法少女よろしくフリフリ~ヒラヒラ~な衣装に変化しています。 本当にa(ry ななこ「フェチパワーのまちがいやろ?!!ア―――――――ッ!!!」 出展 今日は何の日~毎日が記念日~:日本記念日学会/富山いづみ さすらいのらき☆すたファン氏に戻る コメントフォーム 名前 コメント GJっス! 5月16日のネタにも萌えた… -- 名無しさん (2009-07-26 11 31 43) 毎回毎回ご苦労様です! ここに「日wikiさん」の称号を献上いたします -- 名無しさん (2009-06-13 21 10 12) 誤字を訂正しました。ご指摘ありがとうございます。 -- 作者 (2009-06-05 20 00 08) つかさ、台本ってなんだ…… -- 名無しさん (2009-05-31 22 28 49) あやのは背景じゃない!!そこんとこ夜露死苦!! -- 名無しさん (2009-05-31 20 21 26) 5月23日のひかる先生の表示がひたるになってるような・・・ でも面白いですGJ -- 名無しさん (2009-05-31 19 27 14) おもろいのお・・・ でもわかんないネタもいくつか・・・ 6月はどうなるのやら・・・ -- 名無しさん (2009-05-31 19 16 42) いつもお世話になってます 後、ネタも使っていただき有難う御座います -- ペテ・クルルーソウ (2009-05-31 15 18 26)
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つかさが専門学校を卒業するに当たり親からパソコンが贈呈された。しかしつかさはパソコンの操作や内容がよく理解できていない。そこでこなたにセットアップを依頼した。 こなた「これでよしっと……メール、インターネットは使えるようにしたよ」 つかさ「ありがとう、操作方法も教えてもらうと助かるんだけど」 こなた「つかさ、後は使って覚えるしかないよ、メールとインターネット、ワープロとかなら今までも使えてたでしょ、それと同じだから」 つかさ「そうなんだ、分ったよやってみるよ」 こなた「ところでつかさ、このパソコン、メールとインターネットだけやるには勿体無い仕様だよ……どうだいゲームをインストールしてあげようか?」 つかさ「私今はそんなにお金持ってないよ」 こなたは不敵な笑みを浮かべた。 こなた「ふふふ、別にお金なんか要らないよ、ほら、いくつか持ってきた、選り取り見取りだよ」 こなたは鞄からいくつかソフトを取り出しつかさの机の上に並べた。 こなた「ネットゲームは?」 つかさ「んー、時間かかりそうだし難しそうだよ」 こなた「ギャルゲーは?」 つかさ「そうゆうのはやった事ないし、それに私は女性だし……」 こなたは暫く考えた。 こなた「それじゃロールプレイングはどうかなこのゲームは全年齢対象だし面白いかもよ」 つかさ「それならいいかも」 こなたはつかさに許可を取る間も惜しむようにパソコンにそのゲームをインストールしだした。 つかさ「ちょっと、私まだゲームをするって言ってないよ」 こなた「いいから、いいから、興味なければアイコンをクリックしなければいいんだし……」 こなたに押し切られた。つかさはそれ以上何も言わなかった。そこにかがみがやってきた。 かがみ「ほー、こなたにしては珍しいわね、ちゃんとやってるみたいね」 こなた「……一言余計だよ、私だってやる時はやる」 かがみ「言ってくれるじゃない、まさか変なゲームなんか入れていないわよね」 疑いの眼でこなたを見つめるかがみ。 つかさ「今ゲームを入れてもらってる」 こなた「バカ……そんなの言っちゃ……」 かがみ「……つかさに変なの教えないでよね」 こなた「ただの普通のロールプレイングゲームだよ……それにもうつかさだって大人なんだしそのへんの分別はついてよ、いつまでも子ども扱いしてると嫌われるよ」 こなたとつかさは見合って頷いた。 かがみ「ただの普通のって強調する所が怪しいわね、つかさも相槌なんかして……まあいいわ、一段落したら台所に来て、お昼作ってあるから」 こなたは驚き、嫌な顔をした。そんなこなたを尻目にかがみは台所に戻って行った。 こなた「も、もしかしてそのお昼ってかがみが作ったの?」 つかさ「今日はお母さんも居ないし、お姉ちゃんしか他に居ないよ」 こなた「うっげー、つかさの作ったのが良かったな、おばさんのもなかなかだったよね……期待してたのに……」 こなたは項垂れた。 つかさ「それよりこなちゃんゲームの方は終わりそうなの?」 こなた「もう放っておいても大丈夫だよ」 つかさ「それじゃお昼食べに行こうよ」 こなたは渋々と台所へと向かった。 @まつりの部屋 まつり「ちゃんとインストールできたみたいね」 いのり「・・・でも、さすがにこれはヤバイんじゃないの?ドッキリとはいえ」 まつり「いいっていいって。べつにファイル削除したりするわけじゃないし、エロくもグロくもないし。」 いのり「・・・ほんとに?」 まつり「夜になったら勝手に起動してびっくりさせるだけだから。あとカメラの準備もしなきゃ。」 いのり「・・・何言われても知らないよ。」 まつり「大丈夫だって!」 こなた「まつり姉さ~ん。インスコ終わったよ~」 まつり「おーサンキュ!かがみには気づかれてない?」 こなた「疑いはしていたけどたぶん私のせいになるから大丈夫!」 まつり「よーし!あとは夜になるのを待つだけ!」 @陵桜学園保健室 ふゆき「今夜はいよいよドッキリ仕掛ける日ですね。」 ひかる「本当に・・・やるのか・・・?」 ふゆき「柊さんのお母さんとお姉さんには許可とってますから。」 ひかる「マジだ・・・この人マジだ」 ふゆき「だってあのくらいじゃ全然怖くないんですもの。」 ひかる「・・・はぁ。」 @鷹宮神社境内裏 みき 「・・・さて。」 くぁwせdrftgyふじこlp! かなた「はい。」 みき 「ふゆき先生もドッキリ参加するらしいけど大丈夫ですか?」 かなた「『大丈夫だ、問題ない。』・・・ですよね?」 みき 「どこで覚えてきたんですか?それ」 かなた「伊達にこなた見守っていないですよ。」 みき 「ああ・・・そう。じゃぁ予定通りよろしく。」 かなた「はーい。」 さて、その夜… つかさ「もぅこんな時間だ。そろそろパソコン止めて寝よっと」 パソコンをいじるのに夢中になっていたつかさは、普段なら既に寝ている時間なのにようやく気がついた。 つかさ「あ、でもこなちゃんのくれたゲームやってないや…明日でいいかな?いいよね」 そういいながらもシャットダウンを実行し、さて眠ろうかと布団に入ったその時ー …ウイィィィン ドッキリが開始された。 つかさ「あれ、今確かにパソコンを止めたはずなのに…」 不審に思いながら再びパソコンの前に座るつかさ。だが彼女の考えと異なり、パソコンの電源は入っている。 つかさ「なんでだろ…あ、そっか。この『再起動』っていうのやっちゃったんだ」 適当にいじったつかさはドッキリとは思わず、単に自分がケアレスミスをしたと勘違いした。 が、次の瞬間に、そうではないと思い知らされたー。 逃げなきゃ…そう思う意志とは裏腹に、つかさはモニターを凝視していた。 ずるり…ずるり…と、湿った音をたてて髪の長い少女らしきモノが、モニターの奥からこちらに向かいはいずってきていた。 そのモノがモニターの縁に手をかけたのを見て…つかさは声も無く真後ろに倒れた。 「あ、あれ…?」 モニターからはいずり出てきたモノ…かなたは乱していた髪の毛を整えると、気絶したつかさの横にしゃがみ込み、頬をつついた。 「…わたし、そんなに怖かった?ちょっとショック」 気絶したつかさをとりあえずベッドに寝かせたかなたは、少し考えるように腕を組んだ。 「一応ドッキリは成功したのかしら…んー…他の人だとどういう反応するのかしら。例えば…そう君とか」 ずるり…ずるり…。 『…なにやってんだ、かなた?』 『あ、あれ…わかっちゃった?』 『そりゃわかるさ…どんな姿になっても、俺にはかなただってわかるよ』 『…やっぱり、かなわないな…そう君には…』 「…なんて…えへへへ…おっと」 かなたは口の端から垂れそうになったよだれを拭い、つかさの様子を見た。 そして、つかさの寝息が安定しているのを確認すると、部屋の窓の方へと向かった。 「これは、そう…アレよ。知的好奇心を満たす実験とか、そういう感じよ…うん」 自分に言い聞かせるようにそう呟き、かなたは夜空を泉家に向かいふよふよと飛び立った。 どことなく、緩んだ笑みを浮かべながら。 「………なんだったの今のは」 夕方仕掛けたこなたとのドッキリの内容は『電源を落とそうとするとつかさのパソコンが暴走し、突然エロゲーが始まる』といった事になっているハズだった。しかしドアの隙間からいのりと覗いていたまつりの目にはパソコンから半透明な髪の長い女の子が出てくるようにしか見えていなかった。 「とりあえずあれはこなたちゃんの仕掛けたものじゃなさそうね…よっと」 パソコンから女の子が出てきた瞬間いのりと揃って気絶していたが、まつりの方が早くに気が付きつかさの部屋の隠しカメラの映像を確認しようと今だに気絶している姉を跨ぎ部屋に入った。 「うわーこれって本物の…にしても変わった幽霊ね」 隠しカメラの映像を見てみると幽霊が気絶したつかさを丁寧にベッドに乗せ窓から出ていく所までが映っていた。 「とりあえずこの映像はこなたちゃんに見せた方がいいわね。随分予定と違うけどつかさの気絶するいい瞬間も撮れてるし」 まつりニヤつきながらカメラを回収すると、姉を起こすために廊下へ戻っていった 翌日、泉家の居間。 みき、いのり、まつり、かがみ、つかさ、こなた、ゆたか、そうじろう、さらには、ふゆきまでが、そこにずらりと勢ぞろいしていた。 ふゆきは、ゆたかが電話をかけて、来てもらったのだ。 こなた「えーっと、話を整理すると。 まず、私がつかさに仕掛けるいたずらのことを、ゆーちゃんと、いのりさんとまつりさんに話して。 ゆーちゃんが学校に遊びに行ったときに、天原先生にそれを話して。 天原先生は、ゆーちゃんに、仕掛けるエロゲーを差し替えるようにと、ホラームービーを手渡したわけですね」 ふゆき「はい。青少年に不健全なものよりは、こちらの方がよりふさわしいかと思いまして」 こなた「そんで、天原先生は、みきさんといのりさんにはそのことを伝えていたと。ここまでは、まあいいよね」 つかさ「みんなひどいよぉ」 つかさが涙目でそう訴えたが、 ゆたか「ごめんなさい、先輩」 謝ったのは、ゆたかだけだった。 他のみんなは、それどころではない事態の方に関心が向いていた。 それはすなわち、 まつり「で、最後に本物の幽霊が出てきちゃったわけね」 かがみは、いろいろとツッコミたいところが満載だったが、あまりに多すぎて、言い出せずにいた。 そうじろうは、例の映像を停止させて、じっと見入っていた。 そうじろう(ここでもうちょっと角度がよければ、顔が見えるんだが……) パソコン画面から出てきた場面では、髪を前にたらしているため顔が確認できない。そのあとの場面では、角度が悪くて、顔がよく見えなかった。 そうじろうは、その幽霊をどこかで見たことがあるような気がしていた。だからこそ、顔を確認したかったのだが。 ふゆき「でも、本物の幽霊も見れましたし、予想外の収穫でしたね」 ふゆきは、うれしそうな顔をしてそんなことを言った。 かがみ「たたられたりしないかしら」 心配なのは、まさにそこだ。 ふゆき「見る限りでは、純粋ないたずら目的のようですから、その心配はないでしょう。つかささんをベッドに寝かせるといった律儀な対応をしていらっしゃいますし。専門家としては、どう思いますか? 柊さん」 ふゆきは、みきに意見を求めた。 みき「先生がおっしゃられるとおり、実害はないと思いますよ」 いのりは、みんなの会話そっちのけで、居間の一角をじっと見ていた。 いのり「ねえ、母さん。あそこ、いる?」 いのりが、指差した先には誰の姿もないのだが……。 みきが、ふいに笑みを漏らした。 みき「ふふ。やっぱり、いのりには分かっちゃうのね」 みきは、そこにいる存在に対して、呼びかけた。 みき「かなたさん、出ていらっしゃい」 未完です 続きを書きたい方はどうぞ コメント・感想フォーム 名前 コメント
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(がんばってね!!期待してるよ!!) がんっばってないかな?何に期待してるの? (そうじゃなくて!わかんないかなぁー!?) ごめんなさい、ごめんなさい。もっと勉強します!もっと努力します! (笑顔がいいよね!うん!笑顔が最高!) 笑ってなきゃだめなのかな?ずっと笑ってなきゃだめかな? 梅雨などとっくに明けたというのにこの曇り空。 あ゛~っ!気が滅入るわ。 だいたい、この仕事、OKしたわけじゃないのよねー? あいつ、ちゃんと仕事選んでるのかしら? この間もトーク番組だから気楽に~、なんて言ってて結局バラエティのひな壇だったじゃない。 そりゃ、面白い事言えない私のほうが悪いのかもしれないけど、ネタ振りにしたってどーしよーもなかったよね? あんな若手じゃ、私のこと気にしちゃって振りにくいっつーの! あ゛~っ!いやだ!いやだ!いやだ! 「小神さーん、出番ですー!」 「あ!はぁ~い♪いまぁ、行きまぁす☆」 なんだかんだで芸能生活も長くなると、スタッフにしろスポンサーにしろ立ててくれるのは嫌じゃないけど、 私だってそんなに無神経じゃない。 特別これといったヒット作もなく、3歳から仕事してるからとか、現役中学生だからとか、そんな理由に乗っかってたって、この世界じゃ先が見えてる。 何とかしなくちゃいけないのは、私が一番わかってる。 だけどね・・・。 「あれぇ?あんなところに人がいますよぉ?」 「あれ?本当だ!まいったなぁ~。おーい!君たちぃー!」 言わんこっちゃない!予算ケチりすぎなんだよ!このあきら様を呼んでおいてスタッフ3人とかありえねぇっつの! 「君たちごめんね~、今収録中だから、ちょ~っと、あっちに行っててもらえるかな?」 「ねぇ!ねぇ!あれ、小神あきらでしょ!?サイン!サインをーーー!」 「ちょーっと!こなた!自重しなさいよ!収録中だって言ってるじゃない!」 「あんな小さい子がタレントさんなんだね。すごいね!」 「小神さんですね。確か3歳からタレント業をしているんですよね?」 まぁた、ミーハーな連中でしょ?カメラ見つけて近づいてきたんじゃないの? ていうかさ、一般人が勝手に出入りできるようなところで収録してることがまず、問題じゃないの? 「伊藤P!私行ってもいいですか~?私が行ったらすぐ終わると思うんですけどぉ~☆」きゅぴ~ん☆ 「あぁ、ごめんね、小神ちゃん~、ちゃちゃっと終わらせてきてもらえる?」 「わっかりましたぁ~☆」 めんどっ、ちっ。まぁ、いいわ。 「うおぉ~~ん!あきら様!あきら様ぁ~!『三十路岬』買いましたぁ~!!!」 「えぇ!本当ですかぁ~!ありがとうございますぅ~☆」きゅぴ~ん☆ ふむ、この子は分かってるみたいね? 「へぇ、この子がタレントなんだ?さすがにかわいいわね?」 なんだ、このツインテール?喧嘩売ってんのか?ぺっ! 「ありがとうございまぁ~す!かわいいだなんて!ありがとっ☆あきらすっごーく!うれしいでっす♪」 「サイン!サインくださいぃぃっ!」 「ちょっと、こなた仕事中よ!?迷惑よ?」 「少しだけなら大丈夫ですぅー!えっと、どこに書けばいいんですかぁ?」 「こ、この『三十路岬』のジャケットにーーー!」 すごいわね、この子!アイドルの心をつかみまくってるわ! 「えっとぉ、こなたさんね?これからもよろしくね☆」きゅぴ~ん☆ 「うおぉー!やたー!あきら様のサイン~!」 「こなちゃん、嬉しそうだね」 「わ、私もお願いしちゃおうかな~・・・。べ、別にミーハーとかそうじゃなくて(汗」 ってめっちゃ、ミーハーじゃないの?ツインテールの上にツンデレ+つり目って狙ってんの~?ちっ! 「はい、かがみさんね。つぎぃ~」 「冷たっ!ちょ、ちょ・・・」 「小神さんですね?小さい頃のドラマを母がとても気に入ってまして」 「えー!あきら感激☆」きゅぴ~ん☆ いい子じゃない?それにしても乳でかいわね?いくらなんでもでかすぎない?ワールドクラスね。決めた。私の中でこの子は牛よ。牛。 「えと、次は・・・」 「つかさです。ごめんなさい。あんまり知らないのにこんなこと頼んじゃって・・・」 「えー、いいんですぅー!これから見てくださいね?」 この子、ツンデレに似てるわね?でも、こっちは素直でいい感じね。 「あきらちゃん・・・ちょっと疲れてるのかな?」 は?何言ってんのこの子?このあきら様のスペシャル営業スマイルが見えてないの? 「あきらわぁ、超~元気だよっ!」きゅぴ~ん☆ 「そか、それなら安心!お仕事中にごめんね!」 「ほーーーんとに気にしてませんからぁ!応援ありがとでっす!」きゅぴ~ん☆ 「小神ちゃんありがとー!助かったよ~!」 「ぜぇんぜん、いいんですぅー!さっ、伊藤Pはじめましょ!?」 うっわー、あの青いちっちゃい子はしゃぎすぎだろ?ま、あの子達のおかげで今の私があるわけだけどぉー。 それにしても・・・。 「ねぇ、伊藤P。私、疲れてるように見えますかぁ~?」きゅぴ~ん☆ 「はっはっは!何言ってんの?今日もいい笑顔だよー!!!」 「ですよねー☆」 二日目 うわぁ・・・。雨じゃん。こりゃ今日の収録は中止ね・・・。 「小神さぁん!今日はオフですー!」 「はぁい!」 って、ほらね。これでこの山に足止め一日伸びたよ。ちっ。 はぁーぁ、部屋にいても気が滅入るだけね。ちょっと外の空気でも吸ってこよっかな。 (疲れてるのかな?) なんだろ、すごくひっかかる・・・。 あのリボンが言ったことがすごいひっかかるわね。 「はーぁ」 いけない、また溜息出ちゃった。やっぱ、疲れてるのかな?わざわざ一人でこんな山小屋でたそがれてるなんてさぁ。 雨、止まないな。でも、この雨音はちょっと気持ちいいかな。目の前の湖も晴れてたらきっときれいなんだろーなぁー・・・。 「あきらちゃ-----ん!」 だれ!? 「あはは、こんなとこにいたんだね?」 リボン!? 「今日は収録ないんだってね?スタッフさんに聞いちゃったよ。ごめんね、ずうずうしくて」 いや、いいけど、何しに来たんだろ? 「となり、座っていいかな?」 「はい♪どうぞ!」 人は見かけによらないってこの事ね。ずいぶんなれなれしい子だわ。まぁ、素直ってことかもしれないけど。 「私、尊敬しちゃうな」 「ありがとです☆」 「大変なんだよね?芸能界って。体調の維持とかもすごい苦労してるんだよね~?」 なんだろ?この子?何が目的なのかな?私と仲良くなりたい?あぁ、そうか、タレント志望か! 「ぜぇーんぜんそんなこと無いですよぉ」 ま、見てくれもいいし、天然系なら適度に売れるでしょ。ここは単刀直入に・・・。 「つかさ、さんでしたっけ?よかったら社長に紹介しますよぉ?」 「え!?ちがうよー」 すっごい笑ってる。悔しいけどこんな笑顔わたし出来ないかも・・・。 「私の夢はね~、調理師になることなの!私ね、あんまり頭とかよくないんだけど、お料理やお菓子には自身があるんだ!」 なんなんだろ、この子・・・。すごくかわいい。この笑顔・・・やっぱり、出来ない・・・。 「でね、きょうはあきらちゃんにお菓子作ってきたの!キャンプ場でお菓子作るとか難しかったから、おいしく出来てるといいんだけど・・・」 「あ、ありがとう・・・」 「うん!食べてみて!」 サクッ 「むぐむぐ・・・お、おいしい・・・」 「よかったぁ~。もっと食べてね」 「う、うん」 「私ね、ほんとにすごいと思ったよ。あきらちゃんすっごいがんばってるんだなって」 そういえば、『あきらちゃん』って呼んでくれる人減ったよな。コアなファンは『様』付けだし。 「こんなに疲れてるのに、あんなに笑えるなんて、私にはできないもの!」 「んぐ!つ、疲れてなんか・・・」 「うぅん、いいよ。楽にしてね。 なんかね、強がってるところがね、お姉ちゃんに似てるっていうか・・・。あ、お姉ちゃんって昨日サインの時の二つに結んだ子ね」 あの、ツインテールか! 「でも、お姉ちゃんには私やこなちゃんがついてるけど、あきらちゃん、ひとりぼっちに見えたから・・・」 独りに? 「あ!ごめん!失礼なこと言っちゃった!?」 「え、あ、いや・・・」 「私ね、お姉ちゃんが3人もいるの。昔からずっとお姉ちゃんに憧れてたの。 双子のお姉ちゃん、二つ結びの子はいつも私のこと守ってくれるんだ。 宿題や勉強教えてくれたり、小さい頃はいじめられた時によく助けてくれたなー」 「・・・」 「お姉ちゃんってすごいなーっていつも思ってたよ。私もおねえちゃんになりたいって、いつも思うんだ!」 「・・・」 「だから、わたしもね、あきらちゃんに何かしてあげたいって思ったの。本当に疲れてない?」 疲れてるも何も・・・。仕事してればほっておいてもつかれるし、何よりこの世界にいることが疲れるわ。 先輩には気を使い、スポンサーやクライアントにはぺこぺこ頭下げたりしてさ。 後輩には先輩らしく接さないといけないのに、殆どの後輩は私より年上で、どっちが気を使ってるんだか・・・。 同期の子達もうまく局に取り入ったりしてるけど、私はそゆのは苦手だしな・・・。 この前だってうっかり激情しちゃって、せっかく貰ったレギュラー自分で潰しちゃったし・・・。あの時は確かに疲れてたかも・・・。 家に帰ってもお母さんは妹と外食に行ってて私一人。お父さんの家は教えてくれない。 「あ、きらちゃん?」 「はい!?」 「途中から声出てたけど・・・(汗」 「ご、ごめんなさいぃぃっ!」 やっちゃった・・・。こうやって私、独りになってくんだよなー・・・。 「あのね、私、頭よくないから分かんないし、上手に言えないけど・・・。 疲れちゃったら止めちゃうのもいいんじゃないかな?」 へ? 「私はがんばって調理師目指してるよ。将来、おいしい料理作れるようになって優しい旦那様に食べさせてあげたいなって思うよ。 でも、つかれたら止めちゃうの。苦しくなったら止めちゃうの!おいしく出来ない時は止めて寝ちゃう!疲れてるときにどんなにがんばってもいいものは出来ないから、 だから、やめちゃう!ベッドに入っちゃう!」 「止めちゃう・・・?」 「そ、あきらちゃんの夢がなんなのかは分からないけど、疲れたらやめちゃえ! で、元気になったら、ね?もう一回がんばろ?」 私の・・・夢・・・。私の夢って・・・なんだっけ・・・? 元気になったら・・・もう一回・・・。 「つかさー!そろそろお昼よー!」 「はぁい!今行くよー!」 「あ・・・」 「じゃあ、またねあきらちゃん!」 「うん・・・また・・・ね・・・」 「お姉ちゃんてすごいよね?私も悩んでる時におねえちゃんに言われたんだ。苦しかったら止めちゃえ!って」 あの、ツインテールが・・・。 「じゃあ!」 「うん、また・・・」 疲れたら・・・やめちゃえ・・・。 苦しかったら・・・やめちゃえ・・・。 私の・・・夢・・・。 あ、つかさ、さん、行っちゃった・・・。 私の・・・夢・・・ 三日目 「いくぞー!こなたー!早く荷物ま乗せなさいよー?」 「分かってるってばかがみんや~、そう急かさないでおくれよ」 あれは・・・。 「お、あきら様だー!あきら様ー!ばいばーい!」 いかなきゃ・・・。 「今日も収録なんですね。昨日の雨が響いてるみたいですわね」 伝えなきゃ・・・。 「さぁ、もう、バス出るよー?みんな忘れ物ない?」 「うん、お姉ちゃん。大丈夫だよ!」 もう、会えないかもしれないから・・・。 「お、おい!小神ちゃん!カメラ!回ってるよ!!!」 バスが行っちゃう!撮影より、仕事より大事なものがあるんだ! 行かなきゃ!早く! 「あ!あきら様だ!」 「追っかけてきてる!?」 言わなきゃ!早く、言わなきゃ!! 「ありがとう・・・ありがとう!つかさ・・・お姉ちゃんー!」 「あきらちゃん!」 「わたし、がんばるね!もっと、がんばれる気がする!つかさお姉ちゃん!」 「うん!」 「だから、また会おうね!」 「また会おうね!」 つかさお姉ちゃんが手を振ってる。私も手を振る。 スタッフの呼んでる声が聞こえるけど、見えなくなるまで、手を振る。 あのね、つかさお姉ちゃん!私の夢はね!私の夢は・・・・・・。 「クッキーまた食べたいな!」 おわり
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「あーあーあー……やっちゃったよ……」 広く名の知れた写真週刊誌の表紙を睨みながら率直な感想を漏らす。 少女の顔色はフグの毒にでも当たったかと思うほどに真っ青だった。 「っ……」 数年ぶりの貧血に体が揺らぐが、辛うじて踏みとどまる。 ――どうしよう。どうすればいい? 答えはすぐに出る。 速やかに問題を解決することは不可能、まずは全容を把握するのが最善であると。 そうと決まったらさっさと記事を読み終えなければ。表紙にでかでかと名前まで書かれている以上、買って帰ることもできない。 今後、外出する時は帽子を肌身離さず持ち歩くよう心がけるか―― 心の中で舌打ちし、小神あきらはひたすらに文章を追い続けるのだった。 「きらっち! スキャンダルってマジぶっ」 週が明けた月曜。 大声を張り上げながら教室に駆け込んできた少女をあきらは顔面狙いのラリアットで迎え撃ち、そのまま廊下の窓際へと追いやった。 「りっ、りんちゃん大丈夫!?」 「きゅう……」 鼻と口を押さえる音無りんこの身を案じたのは後から現れた大原。二人ともあきらの親友である。 「ったぁ……いきなり何すんだよー」 「あんなの大声で言うことじゃないだろがっ!」 唾が顔にかかりそうな剣幕であきらは怒鳴る。 この反応を見て、音無はようやく自分が地雷を踏んだのだということに気が付いた。 「む。悪かったよぅ」 反省のそぶりは全くと言っていいほど見られないが、一応の詫びは口にした。 あきらは矛先を納め、はあっとため息をついてから壁にもたれかかる。 よもやああいった雑誌には微塵も興味を示さないはずの音無がいの一番に声をかけてくるとは。 彼女でこうならヤツはどれだけ陰湿にからかってくるのか―― 「……音無、それ誰から聞いたの?」 「お? くるっちだけどー?」 「――やっぱりか」 そう、これは彼女が自ら進んで調べようとする話題ではない。 つまり入れ知恵をした「誰か」がいるのだ。そしてその人物とはまさしく―― 「おはよう。朝から元気ね」 「白々しい! 音無に教えたのあんたでしょ!?」 中谷あくる。やはり大原らと同じく王国カルテットの一人に数えられるあきらの親友だ。 「前に盛り上がってたわね。アイドルはスキャンダルを経てより大きくなる、だとか」 「う、うん……そういう話はしてたけど」 「よかったじゃない。あきらに一定の知名度があることも証明されたし、これを踏み台に躍進していけるんでしょう」 「ぐ……そうは言うけどさ……」 ばっさりと切り伏せるような中谷の言葉に、あきらですらもたじろぐ。 彼女はいつも少々暴力的なくらいに意見を投げつける人間なのだ。 「今回は事情が違うっつーか――」 「なーくるっち、それで? お相手って誰なのさ?」 呟きは元気を象徴するかのような音無の声にかき消される。 中谷はどこから取り出したのか、いつの間にやら件の写真週刊誌を持っている。 迷いなくページをめくっていき、やがて手を止めるとその記事を彼女の目の前に突き出した。 「知ってるでしょ。らっきー☆ちゃんねるの白石みのる」 小神あきらと白石みのる、二人が夜の住宅街を並んで歩いている写真。 後方から撮られたものばかりではっきりと顔が写っているわけではないが、それでも彼女たちに違いないと断定するには充分すぎる材料だった。 何より、あきら自身このシチュエーションに覚えがあるのだ。たとえ口で否定しても認めざるを得ない。 ヘタな盗撮よりも数段タチが悪い――とはよく言ったものである。 「おーっ! へえぇ……きらっち案外イロモノ好きだにゃー」 「でも、こういう雑誌で取り上げられるのって大抵ガセネタだよね?」 「そうね……だからこそ踏み台にできるんだと思うわ」 「なるほど! ともかくよかったじゃんきらっち!」 ――人の気も知らず。 「そーいやその白石みのるのことよく知らないや。らきちゃんは聴いてるんだけどさー」 「あ、この間バラエティに出てるの見たよ」 「私も……」 「ほほぉ。どんなヤツなん?」 「イジられキャラって言うの? 面白い人だよ」 「タレントより芸人って呼んだ方がしっくり来るわね……女の子と仲良くなっても友達以上になれない、典型的な『いい人』タイプよ」 気の置けない友人だからこそ、悪意のない言葉が重い。 耳を塞ぎたくなる衝動を抑えながら、あきらは俯きくっと唇を噛む。 「ふむふむ。んでこのスキャンダル? あっりえねーなー!」 「あきらにだって男を選ぶ権利くらいあるわ……」 「……やめて」 「あ、あっちゃん……さすがに白石さんに失礼だよ」 「そうかしら」 「きらっちだって毎週こんな感じでイジってんじゃんなー」 「向こうも何を考えてるかわかったものじゃないわ。今回の件であきらに迷惑がかかるようなことを思いついたり――」 「やめろって言ってんでしょおがッ!!」 そして、苛立ちは頂点に達した。 音だけが消失したかのようにしんと静まり返り、皆が四人に注目する。教室から顔を覗かせる生徒も少なからずいた。 予想だにしなかった怒声に、音無と中谷はぽかんと口をあけている。 「……あきらちゃん」 大原が伏し目がちに、小さな声で尋ねる。 「もしかして、白石さんのこと――」 長い静寂。 やがて廊下が喧騒を取り戻し始めた頃、あきらはぽつりと呟いた。 「……好きになって、何が悪いのよ」 いつもならとっくに終わっているはずの収録が二十三時近くまでずれ込んでいた。 そもそも集合時間からして普段よりも遅かったのだ。スタッフ側に何か事情があったのは間違いない。 この業界では別に珍しいことでもない。口先では文句を並べ立てていたものの、あきらはそういうものだと割り切っている。 近頃、真白学園の周辺にしばしば変質者が出没するらしい。 あきら自身が目撃したわけではないものの遭遇例は多いようだったし、新聞やニュース番組で取沙汰されている。 もっとも、だからと言って何がどうなることもない。そういったモノに出くわす確率など限りなく低いのだし。 そして、あきらはこの日やや寝不足だった。 待ち時間に居眠りをしてしまったり、収録中に大あくびが出てNGになってしまったり。 早く家に帰って眠りたい――と、白石にも何度か愚痴をこぼしていた。 「あきら様。送っていきますよ」 ようやく仕事から解放されたあきらに白石がそう声をかけてきたのは、きっとそれらの要因が積み重なったせいなのだろう。 実のところ、彼女は以前から白石みのるという異性を意識していた。 明確なきっかけがあったわけではない。共に仕事をしているうちに抱いた、純粋な恋心というやつだ。 もっとも、不器用な彼女にはアプローチをかける勇気もなく、二人の関係はこの一年間「仕事仲間」でしかなかった。 だからこそ今日、彼の口から出たその言葉があきらにはたまらなく嬉しかった。 「……でも、あんた帰りの電車なくなるかもしれないじゃん」 その時はタクシーでも拾いますよ。白石はそう笑う。 二人は寝静まりつつある住宅街を並んで歩く。 交わされる会話は決して多くはないが、彼女たちの間にある空気はいたって穏やか。 そんな心地良い世界に少しだけ酔いながら、あきらは口を開く。 「白石」 「はい?」 「なんで送ってくれてるの?」 「へ?」 質問の内容が変だったか。 白石は目をぱちくりさせ、もしかして余計なお世話でしたか――などと聞き返してくる。 「そんなことないわよ。急に言われて……びっくりしたってわけじゃないけど」 なぜ今日になって唐突に声をかけてきたのか。それが気になっていたのだ。 「最近、この辺物騒らしいじゃないですか。だからなんて言うか……何かあったら嫌ですし」 とどのつまり純粋な善意。 下心もあるのかもしれない。それでも、終電に乗り遅れる可能性が多分にあるこの時間まで自分の身を案じて付き添ってくれているのだ。 もし小神あきらをなんとも思っていないのなら白石は今ここにはいない。彼女はそう解釈する。 やがて二人は明かりの消えた一軒屋の前で立ち止まった。 正確にはあきらが先に足を止め、白石がそれにつられた形だったのだが。 「ここなんですか」 「うん」 女の子に夜道を一人で歩かせるのは忍びないので家まで送った。白石にとってはそれだけのこと。 だから次に彼がこう別れを告げるのも当然の流れなのだ。 「それじゃあきら様、今日はお疲れ様でした。また来週スタジオで」 「あのさ」 彼女にはどうしても言いたいことがあった。 タイミングよし、シチュエーションよし。たぶん今この瞬間はまたとない機会のはず。 「……あの、さ」 「はい」 固唾を呑み込んだ後、意を決して少女は精一杯を伝える。 「オフでは『様』とか付けなくていい、っつーか付けないで!」 「え――でも」 「いいから!」 「……わかりました」 「敬語もなし!」 「えぇ!?」 白石はしばらくの間仰天していた。上下関係に厳しい小神あきらにまさかこんなことを言われるなど想像もしなかったからだ。 「あ、あきら様……」 「だーかーら!」 「ああっと……参ったな。いきなり言われてもなんて呼べばいいのか……」 「……呼び捨てで、いいから」 だが、気付く。 ちらちらと逸らしがちな瞳の奥に垣間見える不安。彼女の「気持ち」に。 「あきら様、それって」 「――!」 「あ、っと、すいません……」 いや、もはやあきらの胸の内などたやすく見て取れてしまう。 顔はこれ以上ないほどに赤面しているし、するなと言ったのに様付けを続けられたのが原因か涙目にすらなってしまっている。 「……ごめん。いきなりこんなこと言われても困るか」 ならばここで応えねば男とは呼べるまい、と彼は決意する。 そもそも、これまで口に出すことはしなかったが白石みのるもまたあきらを意識していたのだ。 「そんなことないです。大丈夫ですよ」 「え、」 かきむしりたくなるほどに頭が痒くなってきたが、この際無視することにした。 「……あきら」 「白石――」 「……や、やっぱ譲歩してくれませんか。呼び捨てはさすがに慣れそうにないんで――」 白石が苦笑いし、同時にあきらも満面の笑みを浮かべ―― 「白石っ!」 「おあぁ!? ちょ、まっ!」 少女は少年の胸に飛び込み、少年は少女が取った予想外の行動にたじろぐ。 そんな二人を、街灯がさながらスポットライトのようにぱあっと照らし出していた。 この夜あったことはそれだけ。 小神あきらにとってみればスキャンダルでも何でもなく、写真週刊誌ごときに邪魔をされる筋合いもなかったのだ。 「……ごめん」「ごめん!」 涙があきらの目に溜まっているのを見て、音無と中谷がほぼ同時に頭を下げる。 馬に蹴り殺されても文句は言えないわね、と中谷は続けて呟いた。 「いいよ。こっちこそ、怒鳴ってごめん」 各々が非を認め謝った。だからこれで終わりだ。 これ以上責め立てるような性格の悪さなど四人の誰も持ち合わせてはいない。 「……さ、チャイム鳴るよ。教室入ろう?」 そして大原の一声が固まった空気を元に戻す。 あきらはふうっと息をつき、ばつが悪そうに頬をかいた。 「ま、そんなだからさ。この際だし公言しちゃってもいいかなあって」 「白石さんもそれでいいって?」 「ん。別にやましいことしてるわけじゃないしさ」 「確かに、下手に火消しに走らない方が調子付かせなくて済むわね……」 「いつかお話してみたいなぁ。どうかな、あきらちゃん」 「白石と?」 「うん。あきらちゃんの彼氏がどんなひとかもっとよく知りたいから」 「お、いいねー! きらっちの相手にふさわしいかどうかウチらが審査しちゃる!」 「そうね……あきらと気心が知れているとは言え、心の底でどう思っているかはまだわからないものね」 「よっ、余計なことすんなっ! 絶対連れてこないっ!」 こうして今日もまた、騒がしくも平穏な一日が始まりを告げる。 ちなみにあの夜、カメラを所持していた不審者が付近を歩いていた少年の通報によって逮捕された――というのはあまり関係のないお話。 完
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「……どうかしたの? 私の顔、何かついてるかしら」 私の目の前の青い髪を持つ女性は、自らの顔を手で払うような動作をした。 確かに生きている。泉かなた。こなたの、実の母親。 「な、なんで」 ようやく口に出来た言葉が、これだった。 心臓が8ビートを陽気に刻み、私の体を徐々に暖めていく。呼吸が落ち着かなくなっている。 口の中が乾燥して、つばきを飲み込むことさえ難しい。 「なんであなたが、ここに」 落ち着け私。なんでこんなに声を震えさせているんだ。 自らに暗示を掛けても、心臓は徐々にビートを荒げるだけであった。 「あら、どういうこと? 私がここに居ちゃ……おかしいかしら?」 相手の顔に、僅かに不快の色が見えた。 いや、確かに微笑んではいるのだが、その笑顔を取り巻く気配が変化したのを感じ取ったのだ。 別に私を襲おうとか、呪ってやろうとか、そういう意思は彼女に全くないのだろうが、何故か恐怖を感じた。 蛇に睨まれた蛙――とでも言うのだろうか。身動きが全く取れない。 そのとき、彼女の背後に、また新たな影が一つ見えた。 「先輩ー、何やってんスか?」 田村さんだった。顔だけを覗かせて、目を細めていた。 私が水を汲みに行ってから10分も姿を見せないので、様子を見に来たのだろう。 「あ、かなたさん。お邪魔してますー。いつお帰りになられたんスか?」 「丁度5分前ぐらいにね。買い物してたのよ」 「それはご苦労様ッス。あ、お水いただきますね」 「いいわよ、後で麦茶持っていくから。ちょっと待っててね」 「あ、本当ですか? ありがとうございますー」 私をそっちのけで話すものだから、蛇に睨まれた蛙、すなわち私もようやく身動きが取れるようになった。 足は勝手に部屋の外へと向かっていた。今この場所に居たら、頭が変になりそうだったからだろう。 亡くなったはずなのに、生きている人間がこの世に居るわけがない。 私は田村さんについて、部屋に戻った。 震えが何故か止まらない。さっきのかなたさんの表情からは、私に対する敵意は微塵も感じられなかった。 だが、どうしてか、彼女を恐れている自分が居た。 彼女の中に、何か特別な、それこそ恐れるべき感情が隠れている――そんな気がしたのだった。 ☆ 「――え? かなたさんと知り合ったのはいつか、ですか?」 ゆたかちゃんの部屋に戻ってから、私は田村さんに質問した。質問内容は、今の田村さんの返事から察してもらいたい。 パトリシアさんは、持ち込んだゲーム機と格闘していた。 「確かゆーちゃんと話すようになって、初めて家にお邪魔したときだから……6月ぐらいッスかねぇ?」 「その時、何をしたの?」 「いや別に、普通に会話しただけッスよ。他愛もない会話ッス。私たち、まだオタク入ってるってこと知られてなかったですし」 「っていうか、何で“かなたさん”なのよ」 「いやぁ、“おばさん”と呼ぶには若すぎるような気がしまして。というか、柊先輩だってそう呼んでるじゃないッスか」 「確かにそうね。同意するわ」 何でこんなこと質問してるんだろ。 「何でこんなこと質問してくるんスか?」 私が考えるのと同時に田村さんが聞き返してきたので、少し焦った。 こなたがいなくなって、かなたさんがいる。私は、その理由を知りたかったんだろう。 でも、それを聞いたところで、返事をしてくれる人はいない。 こなたが現実にいないのだから、答えられる人間など世界のどこを探してもいないのだ。 しかし、だ。 かなたさんがいる理由を知ったところで、現状を打破することが出来るのか。 答えは限りなくノーに近いと思う。根拠はないが。 でも、私は知りたい。かなたさんがいて、こなたがいない理由を。 窓から外に目をやる。おじさんが、玄関に立っているのが見えた。 手には紙袋。またオタクなグッズを買ってきたのだろうか。 しかし、今はそんなことどうでも良いんだ。 かなたさんの夫である彼に、直接尋ねるのが一番早いのは間違いない。 「Oh~、ヤラレました」 パトリシアさんがゆたかちゃんのベッドに仰向けに寝転がった。 スプリングが彼女の体を僅かに弾ませる。 「mm~、ヒヨリ、このゲーム難しくないデスか?」 「操作難しいからねぇ。慣れたら上手くいくよ」 パトリシアさんが顔だけを私たちに向けた。目を細めている。よほど難しいんだろうな、そのゲームは。 こなたにやらせたらどうなるんだろう。アイツほどのゲーマーは居ないからな。 「カガミ……死相が出てマスね……気をつけるがヨロシイ」 「え……?」 直接的な表現で申し訳ないが、ドキッとした。 死相なんて言葉よく知ってるな、とも思ったが、パトリシアさんの表情がやけに真剣だったので、戸惑った。 「またパティ、そーやってゲームに出てくる言葉使わないの。冗談でも死相が出てるなんて言っちゃ駄目だって」 「ダッテぇ~、このゲーム難しいんデスもん」 「それとこれとは関係なし。すいません柊先輩」 「あ、あはは、冗談、だったのね……」 冗談だとわかっていても、心のどこかで心配に思っている自分がいた。 もし真実を知ったら、死ぬ……? ――んなバカな。何で私が死ななきゃいけないんだ。 声や態度には出さないように、心の中でそっと溜め息をついた。 ☆ 部屋を出るときに理由を聞かれたが、また「トイレに行く」と言ったらきっと疑われると思い、 今度はちゃんと事実を言って、つまり、おじさんと話がしたいと言って部屋を出た。 そのために、自分の将来や進路を捏造しなければならなかった。 「ちょっとおじさんと話がしたいの」 「ははーん、さては柊先輩、将来は作家希望ッスか?」 「あ、ええ、そんなところよ」 ――こんな具合に。 それはさておき、私は今おじさんの部屋の前にいる。 耳を澄ませると、中からはPCのキーボードの音が聞こえる。そのリズムから、仕事がはかどっていることが感じ取れた。 邪魔しちゃ悪いだろうかという感情が芽生える。 人間、上手くいっているときに横槍を入れられると調子を崩すものなのだ。そんな経験、私だって何度もある。 散々悩んだ挙句――まぁ時間にして3分程度だったが――私は襖を軽く手の甲で叩いた。 キーボードを叩く音が止まり、畳を歩く音がした。その足取りも、何となく軽く感じる。 5秒も経たないないうちに、襖は、静かに開かれた。 「誰だい? ――あ、君はゆーちゃんの」 「はい。柊って言います。おじさんとちょっとお話がしたくて」 「あぁ、そうかい。じゃあ入って待っててくれるかな。仕事に区切りをつけるから」 私が思ったよりもすんなりと、おじさんは部屋に招きいれてくれた。 デリケートな人だと思っていたから、後にしてくれと一蹴されるかと思っていた。 こういう大らかなところは、こなたにも受け継がれたんだろう。 おじさんの仕事場には、あまり物が置かれていなかった。いわゆる“殺風景”というやつだ。 ちゃぶ台の上に仕事用のパソコン。麦茶の入ったコップ。棚が部屋の隅に一つ。 かなたさんが、定期的に片付けをしてくれているのだと思う。仕事に集中してもらうために。 偏見かもしれないが、どこかにフィギュアの一つでも置いてあるものだと思っていた。 仕事には真面目な人なんだな。こなたにもこういう所があるのだろうか。 かたかた、とキーボードを叩く音が止む。おじさんが、ふっと息をついた。 「待たせちゃったね。で、何の用?」 笑顔で私に振り向く。どこか、笑ったときの雰囲気がこなたに似ているような気がした。 ――さて、本題だ。 「単刀直入に訊きます。奥さん――かなたさんは、出産をしなかったんですか?」 おじさんの顔が、突然強張る。さっきまで顔全体に笑みを浮かべていたが、その顔の全てのパーツから笑みは消えうせた。 「どういうことだい? なぜ、君がそれを」 「私が、かなたさんが産んだ子供と友達だったから……。信じてもらえないかもしれませんけど」 「言っていることがさっぱりわからないな」 おじさんの目が怖い。部屋の空気が怖い。全てが、私を敵対視しているように感じた。 「“こなた”という子を、かなたさんは産むはずだったんです。出産後、かなたさんは亡くなってしまうけど。こなたは、陵桜に入学して、私と出会う」 おじさんの肩から力が抜けていくのが見て取れた。 「それなのに、今、かなたさんが生きている。そして、こなたがいない」 「……かなたは、死ぬのが怖くなったんだ」 私が喋るのを遮るように、おじさんが口を開いた。低い声で、呟くように。 「子供を授かったときに、医者に言われた。かなたは、子供を産んだら死んでしまうかもしれないということを。 でも、かなたは、それでも産むといって聞かなかった。俺はかなたに死なれるのが嫌だったけど、かなたの意見を尊重することにしたんだ」 おじさんが、俯く。その口は、微かにほころんでいた。 「出産予定日が近付いたある日に、かなたが突然叫んだ。死ぬのは嫌、死ぬのは嫌……ってね。誰の顔も見ようとしない、一人で頭を抱えて。 その都度、医者や看護士たちが抑制してくれたけど、その後、俺は医者に呼び出されたんだ。このままいくと、ストレスで中の子供にも影響があるって」 「……だから、出産を中止したんですか?」 「苦渋の決断だった。かなたは、1週間は立ち直れなかった。ずっと部屋に閉じこもった。ドアの前で耳を済ませる度に、中からかなたの泣く声が聞こえるんだ」 おじさんが歯を食い縛った。拳がぶるぶると震えている。 「今でもたまに、かなたがパニックを起こす時があるんだ……。 何であの時、私は自分の身を優先させてしまったんだろう……。 何であの子に幸せな暮らしをさせてあげられなかったんだろう、って……」 おじさんが、ちゃぶ台を拳で殴った。上に乗っていた空っぽのガラスのコップが、その拍子に倒れた。 「俺は何も出来なかった。かなたが苦しんでいるのに、夫として何も出来なかった。ただ、見守ることしか出来なかった」 そこまで言って、おじさんはとうとう黙ってしまった。この静寂が、息苦しく感じる。 こなたは、この世に生を与えられることが出来なかった。 そして、かなたさんは、この世から生を奪われることを恐れた。 かなたさんを責めることは出来ない。死ぬことなんて、誰でも怖い。考える事も、恐ろしい。 おじさんも、最愛の妻を奪われることが怖かったのだろう。 誰も責められない。責めることもできない。 人の生死に関わる判断は、どんな判断であろうとも、誤りなどないのだから。 「……今日は帰ってくれないか。一人にさせてくれ」 時間にしたらほんの数分の静寂だったが、私には2時間にも、3時間にも感じた。 よくこんな表現を小説で見かけたりするが、まさにこのことなのか、と実感した。 私は、黙って部屋を出ることしか出来なかった。 私は……こなたに会いたい。 でも、私がこなたに会えば、おじさんが悲しむことになる。かなたさんが死んでしまうから。 おじさんは、こなたにかなたさんの姿を写して、愛している。 でも、本当は、かなたさんに会いたいのだ。心の隙間を、こなたで完全に埋めることが、できないのだ。 私の心の中では、複雑な感情の糸が絡まってしまっていた。 襖の向こうで、すすり泣く声が聞こえた。 私は、昔おじさんがかなたさんが嘆き悲しむ声を聞いていたときのように、ただ襖の前に立ち、拳を強く握り締めることしか出来なかった。
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■ルール■(今回は大幅に変更) ・冒頭に続けて文章を書く(冒頭はすぐ下) ・長さは3レスまで ☆冒頭☆ パラリ、パラリ。 紙の捲れる音が小さな部屋にこだまする。 「ああ、あった」 私は探している物を見つけ、安堵する。そして考える。 ……何をしているか説明しよう。 簡単に言うと、辞書を引いているのだ。 辞書を引き、目的の語句を見つけては、左手のシャープペンシルをすらすらと動かしている。 普段勉強などそっちのけでネトゲにのめり込んでいる私が、何故真面目にもこんなことをしているのかって? 実はこれには深ーいワケがあるのだ。 ID LyHnAQSO氏:後悔 「こなたー、まだー?」 「こなちゃん早くー」 「泉さん。時間はありますから、焦らなくても大丈夫ですよー」 …責っ付かせたり、なだめたりする声が背後から聞こえる。 ようするに、賭に負けたわたしはみんなの分の宿題をやらされているのだ。 お泊り会の余興にと、変な事提案するんじゃなかった。 ってか、つかさに負けるとは思わなかった。 ついでに、みゆきさんまで乗ってくるとは思わなかった。 『後悔先に立たず』 開いた辞書に、そんな言葉が載っていた。 ID ZJ5JuAAO氏:合成魔法 「こなた!合成魔法まだなの!?」 「もーちょっとー!」 この魔界、いつ魔物が現れてもおかしくないというが、まさか自分の部屋に現れるとは思わなかった。 そして私は今、強力な合成魔法を作り魔物を倒すため呪文辞典で呪文を探しているのである。 合成魔法のエキスパートが倒れてしまった今この魔物を倒せるのは私しかいない。 「こなた早くしてー!」 「・・・・・あ・・・あった!」 「よし、その呪文を掛け合わせるのよ!」 ・・・・・・。 こなたは硬直してしまった。 「・・・・・・ごめん、この呪文のこことここってどうやって計算するんだっけ・・・」 「は?」 「やっぱり普段から勉強しとくのって大事なんだなー・・・」 ズバッ バタッ 『GAME OEVR』 かがみ「ちょっとこなた!あんたのせいで負けちゃったじゃない!」 こなた「ごめんごめん、合成魔法ってはじめて使うから・・・」 かがみ「え?アンタこのゲーム結構やりこんだって言ってたじゃない?」 こなた「魔法の合成だけは数学みたいでやる気にならないんだよねー」 かがみ「別に合成くらい攻略本のこの表見れば一目瞭然でしょ?」 こなた「いや、攻略本は見ない主義なんで」 かがみ「一生終わらんぞ」 おわし ID Flp/hsSO氏:頑張って考えたんだよ ――翌日。 「やっほーかがみん。かがみ昨日さ、金魚の名前で悩んでたよね」 「え、うん。でm、」 「それでね私昨日かがみの為に凄い名前考えたんだ! しかも超かっこいいんだよ!」 「こな、」 「その名も『宇宙金魚の朱き龍』!」 「お、」 「宇宙金魚の朱き龍と書いて、『Space goldfish red dragon スペースゴールドフィッシュレッドドラゴン』って読むんだよーっ! カッコイイ! もうこれで決まりでしょ!?」 「……いや、もう名前決まってるから」 「え? あ、そうだよね……」 その後、こなたは自分のアホ毛に『一点集中蒼髪海流神 ワンポイントブルーリヴァイアサンヘアー』と名付け、一人盛り上がっていたという……。 ID bjl35kDO氏:だって一緒にいたいじゃん! 「ほな、来週までに進路調査表提出な~」 「むぅ~進路か~どうしようかな~」 と、そんな風にいかにも悩んでますという雰囲気を醸し出しながら周りの皆に進路先を聞いていた高3の春… 「私?私は弁護士が夢だから◎△大学行くわよ?」 「私はお姉ちゃんと同じ大学がいいけれどやっぱり私の学力じゃ…」 「お恥ずかしながら留学を考えておりまして…」 なんて皆しっかり将来考えてるんだなぁって思ってた けれど夏休みが明けたあたりから皆で同じ大学に行くことになった みゆきさんとかがみんの秀才コンビに私とつかさはスパルタで勉強した …が 「お姉ちゃん!あった!あったよ!私も!」 「おめでとうございます、つかささん、これで残るは泉さんですね」 「どう?こなた?あった?」 「ぃ…」 「え?」 「ない…私……落ちちゃった、まぁ、普段勉強しない私が急にやったって受かるはずないよねーははっ、いやーつかさに負けたのは悔しいけどしかたないか…ごめんねみゆきさん、かがみ、あんなに教えてくれたのにダメだったや」 「泉さん…」 「こなちゃん…」 「こなた……」 「なんや?落ちたんかいな?」 「Σっ!先生!」 「まだあきらめるのは早いで泉ぃ~後期が残ってるで、ま、さらに厳しいかもしれへんけど」 「……。」 「え?どないした?ウチなんか変なこと言うた?」 「そうよ!こなた!後期があるじゃない!」 「そうですよ!泉さん!これから私もさらに力を入れて教えますからがんばりましょう!」 ……ってな理由 「あぅ~頭が…」 「こなたーかがみちゃん達が来たぞー」 「待ってました!先生!」 受験まであと2週間…絶対受かる! ID bjl35kDO氏:代役 「と言うわけで臨時の方が見えるまで明日、あさっての2日間だけどなたか…」 あの時や…あの時に視線が合うてしまったからや… 英語の担当が急に病気になったさかい、代わりがくるまで代役をゆうてウチが選ばれたんや 「つまりや、訳すとこれは…あれ?toss aboutってなんや?」 さっきから調べては訳し、訳しては調べての繰り返しや あーもうあかん!なんでウチが生徒らの問題解かなあかんのや… 「そや!ネトゲで英語できるやつおったわ、さっそく聞いて…」 【ただいまメンテナンス中】 そやな、そううまく世の中は回らんわな… 「うだうだ言うてもダメや!よっし!やったるでぇ」 時刻は夜中の3時すぎ… 独身の淋しい夜が今日もまた更けていく ID g01gamoo氏:キャラ崩壊~ep.0~ 話は1週間前の日曜日にさかのぼる。 その日、ネトゲを寝落ちした私の夢の中にお母さんが降臨してこう言った。 『ゲームばっかりしてないで、勉強もしなきゃダメよ』 今思えば、この忠告は素直に聞いておくべきだった。 その時の私は若気の至りというやつで、母に反抗的な態度をとってしまったのだ。 「えー。だって、お父さんもしてるじゃん」 『そう君は、あれでも一応は立派な社会人だからいいの。こなたは、まだ学生でしょう?』 「そうかもしれないけどさぁ」 『やっぱり、素直に聞いてくれないのね……仕方ないわ、本当はこんなことしたくなかったけど』 「ふぇ?なに?なにするつもりなの?」 『かわいそうだけど、最後の手段をとらさせてもらいます。大変なことがおきるけど覚悟してね、こなた』 「えっ!?うそ!?最後の手段って……まだそんなに話し合って無いじゃん!!大変なことってなにさ!?」 『問答無用です!え~いっ!』 私はこれをただの変な夢だとしか思っていなかったのだが、そうではなかった。 翌日、確かに大変なことが起こったのだ。 「おはよー、かがみにつかさ」 「……誰よ、あんた?つかさ、知ってる?」 「……ううん。初めて会ったけど」 「えっ?……ちょ、ちょっと、変な冗談はやめてよ、かがみ」 「お姉ちゃん、同じクラスの人とかじゃないの?」 「自分のクラスの人間の顔くらい覚えてるわよ」 校舎の前で会ったかがみとつかさに、私達の関係を完全否定されてしまったのだ。 それだけではなかった。 「おはようございます、みなさん。どうかされたのですか?」 「おはよう、みゆき。ちょっとね、変なヤツにからまれちゃって」 「ゆきちゃん、おはよー。えっとね、この人が私達に挨拶してきたんだけどね……」 「み、みゆきさん!みゆきさんは、私のことわかるよね!?」 「ええ。同じクラスの泉さんですよね。こうして言葉を交わすのは初めてですが」 「そっ、そんなぁ……」 「あの、大丈夫ですか?顔色が優れないようですが?」 「あ、うん。大丈夫……です……」 その後、かがみとつかさ、それにみゆきさんは私を置いて3人で校舎へと向かった。 何も考えられなくなった私は、その日は学校に行くことをやめた。 まっすぐに家へと戻り、シャワーだけ浴びると、すぐにベッドにもぐりこんだ。 何もする気が起きなかったから。 やがて私が眠りにつくと、前日と同じように夢の中にお母さんが降臨した。 『こなた、少しは反省したかしら?』 「……うん」 『そう。それじゃあ、ちゃんと勉強も頑張るって約束できる?』 「……うん、約束するよ。だからさ、かがみ達を元に戻してよ」 『わかったわ。こなた、両手を出しなさい』 その言葉に従って差し出した手の上に、広辞苑レベルのやたら分厚い本が置かれた。 表紙には、何故か私の名前が書かれている。 『その辞書には、あなたの記憶がその記憶を表すキーワードと一緒に刻まれているの。もちろん、かがみちゃん達との思い出も』 「それで、私はこれをどうすればいいの?」 『あなたが取り戻さなければならないすべての記憶、その記憶にまつわるキーワードをこのノートに記しなさい』 そう言って、お母さんは3冊のノートを取り出した。 ノートにはそれぞれ、柊かがみ、柊つかさ、高良みゆき、と名前が書かれている。 「えっとさ、こんなこと言うのアレなんだけどさ……もっと簡単に戻せないの?こう、どばーっと一気に」 『別にいらないって言うのなら、このノートはあげないし、辞書も返してくれていいのよ?』 「うう……ごめんなさい。自分で招いた結果なのに、楽をしようと考えた私がバカでした」 『よろしい。それじゃあ、これをあげるわね。猶予は明日の朝4時よ。頑張ってね、こなた』 「ええっ!?ちょ、それなんて無理ゲー!?短すぎるよっ!!」 私は母の姿が消えた直後に目を覚ますと、慌ててベッドから飛び起き、時計だけ確認してすぐに机にむかった。 そして、手に持っている辞書を猛スピードで捲り、最初のキーワードとなる『偶然』や『出会い』という単語をみんなのノートに描き込んだ。 ☆ そして、現在の時刻は深夜2時。 辞書を引き始めてからかれこれもう14時間にもなる。 ここにきて、ようやく最後のページを捲り終えた。 「やった……やっと、終わった……」 半日以上にわたり集中力フルパワー状態で体と頭を酷使し続けたせいで、もうくたただ。 すべては終わった。もう寝よう。 そう思いベッドに向おうとしたその瞬間、私の脳裏にふとすばらしい考えがひらめいた。 コホン。えー……諸君、心して聞いて欲しい。 間に合ったと言う達成感。 そして、今日経験した絶望的な寂しさから抜け出せると言う喜び。 さらには、安堵感からくる眠たさ。 これらのことから、今の私は正常な思考ができる状態ではないと言えよう。 だから、これから私がやろうとしていることっていうのは、ほんの出来心な訳で。 神のいたずら的なアレというか、小悪魔の囁き的なアレというか。 つまり、私は悪くないし、これだけ頑張ったんだから、ご褒美くらいあってもいいし。 私がかがみのノートに今からある言葉を書き込んじゃうのは、偶然と言う名の必然と言う名の偶然。 誰も悪くない。もちろん、私も悪くない。オーケー? えいやっ、と辞書に無いはずのキーワードをかがみのノートに書きなぐってから、私はベッドに飛び込んだ。 どうか、私がこんなことしたのをお母さんが見ていませんように、と願いながら。 ……見ててもいいから、見逃してくれますようにっ! ☆ 翌日、というよりは私が寝てからほんの数時間後。 かがみとつかさは、いつもの集合場所で私のことを待ってくれていた。 「おはよー、かがみにつかさ」 「おっす。こなた」 「こなちゃん、おはよー!」 よかった。2人が私のことを認識してくれた……んだけど、つかさの様子がおかしいような……? 「つかさ、今朝はなんだか元気――」 「こなちゃん!そんなテンションじゃ、俺より強いヤツを探してる人とか全方位において負けが無い人達に負けちゃうよ!?」 「……か、かがみ、つかさはどうしちゃったの?壊れたの?」 「え?何が?いつも通り元気でつかさらしいじゃない」 「うひゃーっ!わたし、なんだかワクワクしてきたよっ、こなちゃん!引かない!媚びない!省みない!我が生涯に一片の悔いなーしっ!」 あああああ。つかさが頭髪を金色に輝かせて、天に向ってオーラを立ち上らせて、凄い動きをしながら「師匠ー」って叫んでる…… 漫画が違うよー。こわいよー。 「ところで、こなた。今日の放課後さ、体育館の裏に来て欲しいんだけど……ダメ?」 「え?……い、いや、別にいいけど」 「何よ、その態度。イヤなら別に断ってくれたらいいのよ?」 「べ、別にイヤじゃないよっ!むしろ、喜んで行くよっ!」 壊れてしまったつかさはどーでもいい。 今の私は、かがみのことが非常に気になるのだ。 何故なら、私は昨日かがみのノートに…… 「そう?そんなに乗り気なら、放課後じゃなくて今でもいっか」 「ふぇ!?い、今デスカ!?……ひ、人がいっぱいいるじゃん。恥ずかしいよ。告白はやっぱり人気の無いところのほうが……」 「ああ、大丈夫よ。私がしたいのは告白とかじゃなくて、もっと肉体的かつ直接的なスキンシップだから」 「ふわぁっ!?ぬ、脱いだ!?かがみが脱いだっ!!……た、助けてぇーっ!お母さぁーんっ!」 かなたはノートから目をはずすと、悲鳴をあげて全裸のかがみから逃げ惑うこなたの姿を天上から覗いて、溜息をついた。 『自業自得……かしらね。もっと勉強させなきゃダメかしら』 かなたはそう呟くと、こなたが昨晩必死で書いたノートに視線を戻し、今現在の騒動の原因となった単語を改めて見つめなおす。 眠たさゆえか、学力のなさゆえか、はたまた凡ミスか……こなたが間違って記してしまった単語を。 みゆき:無的 つかさ:天燃 かがみ:変 ID C5N4Q2AO氏:無題 かがみ「珍しいわね、アンタが辞書片手に書き取りしてるなんて」 こなた「さすがに私も何時ももれなく遊んでるわけじゃないよー」 つかさ「私手伝っていい?」 こなた「え・・・いや・・・その・・・・・・、私一人の力でやりたいんだよ!」 つかさ「え、そうなんだ・・・」 かがみ「遠慮しなくていいわよー♪」グイッ こなた「アッー」 かがみ「ん?・・・・・『エッチ』・・・変態の意。hentaiの頭文字をとったもの。・・・陰・・・男子の生殖器の一部で、さおのように伸びたりする部分。・・・強姦・・・・・・・・・」 こなた「いやー暇な時辞書があるとついそんな単語ばっかを・・・」 かがみ「お前は思春期の中学生か」 ID E39Zayw0氏:ネトゲのためなら 数日前のこと。 ネトゲもやりつくして退屈だった私は、お母さんの部屋をたずねた。 世間にはラノベ作家として有名なお母さんだけど、その辺のオタクたちが束になってもかなわないほどのスーパーオタ女でもある。 そんなお母さんなら、マイナーだけど面白そうなネトゲでも知ってるかもしれないと思ったのだ。 部屋に入ると、お母さんはちょうどパソコンに向かってネトゲ中。 画面をのぞいてみると、そこはカオスだった。 アルファベットや日本語、中国の漢字、ハングル文字、なんかミミズのようなよく分からない文字までがごたまぜになったチャットが、ものすごい勢いでスクロールしてる。 お母さんは、鼻歌まじりに、そのカオスなチャットと戦闘コマンドを神速のキーパンチでこなしていた。 モンスターを倒すと、チャットのスピードがやや落ちた。 お母さんは、パーティメンバーとのチャットをこなしながら、 「ん? どしたの?」 「お母さん、これ、何言ってるか分かるの?」 「分かるよ。最初は苦労したけどね。基本的な会話とスラングとアスキーアートさえ分かれば、とりあえずは大丈夫」 このネトゲは、世界でも難易度最高クラスのMMORPGで、世界中のディープなネットゲーマーたちが集っているそうだ。 コンピューターが扱える文字なら使用言語は自由というルールのため、ゲーム上の会話は国際色豊かすぎるカオス状態。 「いやぁ、世界中の文字を表示するのに、フォント入れまくったよ。エリアごとにモデルの国があってね。NPC(ノンプレイヤーキャラクター)は、そのエリアの言葉で話すんだよね。新しいエリアに行くたびに、辞典めくりまくり」 お母さんは、「旅先でよく使う各国語会話辞典」なる本を手に取った。 「ちなみに、このエリアはスワヒリ語だね」 なんという凝った設定だ。 泉こなた──我が母は、ついにこの域にまで到達してしまったのだ。 お母さんは、朝までそのネトゲで遊び続け、私は後ろからその画面を眺めていた。 チャットの内容はさっぱり分からないけど、雰囲気は伝わってくる。 なんだかとても楽しそうだった。 ネトゲからいったん落ちたお母さんが、 「やってみるかい?」 「チャットが大変そうだよね」 「大丈夫だよ。古参は初心者相手なら英語であわせてくれるし、『English OK』モードにすればNPCの会話もみんな英語になるから。初心者用の練習エリアもあるしね」 お母さんはことなにげにそういったけど、私の英語の成績からすれば、それは最高難易度だといってもいい。 というわけで、私は英語をマスターすべく辞典をめくっているのである。 スラングやネトゲ用語はネットで検索するとして、基本的なところはよく使う文章を辞典を見ながら訳して覚えるしかない。 とりあえず、流れるような英語の会話を見た瞬間に理解できるようにならないと。 その後、私の英語の成績が急にあがって、クラス担任の黒井先生を驚愕させたというのはまた別の話。 ID J7t352SO氏:意地 「ねえ、お母さん…無理しなくていいんだよ?」 後ろから、何と言うか気遣うような声。 「…無理してないよ。いいからお母さんに任せなさいって」 その声の主が自分の娘ってのが、なんとも情けない。 「もう…変なところで意固持なんだからあ」 娘が呆れた声をあげる。 そりゃ意地にもなろうというもの。 『たまには親を頼りなさい』なんてカッコつけて娘の宿題を手伝いだしたのだから、この泉こなたの名にかけても、やり遂げなければならないのだ。 「…こんなの習ったっけ…」 名をかけても、解らない所はやっばり解らない。 こんな事なら、学生時代にもう少し真面目にやっとけばよかったよ。 「…お母さん…頭から煙りでてるよ」 「うるさい、気が散る。少し黙ってて」 「…もう…提出間に合うのかな…あ、ちゃんと読める字で書いてね」 誰に似たのか、生意気な子だ。 「…こんな無理してくれなくても、お母さんの事好きなのにね」 …ホント生意気な子だ。
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sideゆたか ジリリリリリリリリリリリリ! 「う…ん…ふあぁ、もう朝か…」 何だか少し眠り足らない気分で私は目覚めた。 「もう朝よー、起きなさーい!」 下でどこかで聞いたような女性の声が聞こえた。私は急いでベットから飛び起き、そして自分の部屋に立った…? 「あれ?」 ふと私に妙な違和感が襲い掛かった。私の部屋じゃないような… そこが私の部屋じゃなくて、私の親友みなみちゃんの部屋だと気づいて、私は驚いた。 確かに昨日はみなみちゃんとここで遊んだけど、私は家に帰ったのに… 「…私何でみなみちゃんの部屋に…?あれ?」 私はそこでもう1つの違和感に気づいた。 「何だかいつもより目線が高いような…」 いつもなら私が見上げなければ見えないものが、今では私と同じ高さだった。身長が伸びたのかなぁ…。 とりあえず私は部屋を出てリビングにむかってみることにした。 「おはよう」 リビングにはみなみちゃんのお母さんがいた。 「あ、おはようございます」 私は笑顔でそう返した。…あれ?みなみちゃんのお母さんが少しびっくりしたような顔つきになってるんだけど…。 私何か変なこと言っちゃったかな… 「どうしたの、みなみ?口調が変よ」 え?みなみ?私はゆたかなんですけど…と言おうとたが、嫌な感じがしたのでやめておいた。私は顔を洗いに洗面所へむかい、そこで鏡を見た。 「え…あれ…私が…み、みなみちゃんになってる!!!」 私は驚きのあまり大きな声を出していた。 sideみなみ 「…あれ?ここはゆたかの部屋…どうして…?」 私の朝一番はこの奇妙な言葉から始まることになった。とりあえずベットから起き上がり周りを確認してみる。 …やっぱりゆたかの部屋だ…。私、昨日は自分の部屋で寝たはずなのに。 「ゆーちゃーん!ご飯できてるよー!」 下から泉先輩の声が聞こえた。…ゆーちゃん? 私は部屋を出て辺りを見回したがゆたかの姿はなかった。それにしてもゆたかの部屋のドアノブってあんなに高かったっけ? 私は泉先輩の声がする方へと足を進め、リビングについた。そこには泉先輩の父親であるそうじろうさんがいた。 …なにがおかしくてそんなにニヤニヤしてるんだろう…? 「ゆーちゃんが寝坊なんて珍しいね~」 泉先輩が話しかけてきた。…え?ゆーちゃん?私はみなみなんですけど………もしかして! 「え?ちょっとゆーちゃんどうしたの!?」 「トイレなんじゃなのか?」 「お父さん無神経すぎだよ」 そんな泉家二人の会話が聞こえた。 私は急いで洗面所に向かい、自分の姿を鏡で見てみた。 「……え?私がゆたかに、ゆたかになってる…」 私は茫然自失になった。 結局その後、私はリビングに戻らず部屋でゆたかの携帯から自分の携帯に電話をかけてみることにした。 …まさか自分の携帯に電話することになるとは… ゆたかの電話帳から自分の名前を探して電話した。それにしても自分電話番号って案外覚えていないものだ。 電話を耳に近づけて、少し待ってみる。すると 「ただいま、電話に出ることができません」 今の私にとってはまさに非常な通告が私の耳を貫いた。 「ゆーちゃ-ん!大丈夫!?」 リビングから泉先輩の声が聞こえた。とりあえず怪しまれない為にも私はリビングへと足を運んだ。 sideゆたか 「う~、どうしよう、やっぱり誰も出ないや」 私がみなみちゃんの家の洗面所で大声を上げた後、みなみちゃんのお母さんが心配して来てくれた。 私はなんとかごまかして、今みなみちゃんの部屋でみなみちゃんの携帯から私の携帯に電話してみたけど 「電話に出ることができません」と返ってきた。 「…どうしよう、みなみちゃん大丈夫かな」 私は今私が使っている体の本来の持ち主であるみなみちゃんのことを思い浮かべた。みなみちゃん今頃どうしてるんだろう…。 …もしかしたら私の体の中にいるのかも…。ううん、そうに違いないよ。 「みなみー、もう出ないと遅刻するわよー」 部屋の外からみなみちゃんのお母さんが呼んでいる。…今はとにかく学校に行こう、そうすればみなみちゃんにも会えるかもしれない。 そう考えた私は急いで制服に着替えて家を飛び出した。 …あ、朝ごはん忘れてた… sideみなみ 私はとにかく学校に行ってみることにした。どうして私がゆたかの体になっているのかはわからなかったが、 学校に行けばゆたかに会えるかもしれない。そこで相談してみようと思ったからだ。 私は急いで制服に着替えて、失礼だけどかばんの中身を確認し今日の時間割どおりに教科書を入れようとしたが、 やっぱりゆたかは前日に用意を済ませていた。それにしてもゆたかの制服って体の大きさから考えて少し大きいような…。 私はかばんを持って部屋を出て玄関で靴を履き替えようとした。 「ゆーちゃん、一緒に学校行くからちょっと待って」 泉先輩が私を呼び止めた。正直こんな状態であまり人と接したくない。 「すみません、私今日は学校に用事があるので先に行きます…あ…」 気づいたときにはもう遅い。泉先輩はまたしても心配そうに私に近づいてきた。…目線が一緒だ…。 「ゆーちゃん、今日は何か変だよ、どうかしたの?」 そう言いながら泉先輩は私のおでこに自分のおでこをくっつけた。…何だか恥ずかしい。 それにしてもこういう風に熱を測られるのは久しぶりだった。昔はよくお母さんやみゆきさんにやってもらったりしていたが、 今ではそんなことはしていない。さすがに恥ずかしい…。 「ん~、熱はないみたいだね」 私のおでこから泉先輩のおでこが離れた。何だか寂しい…。 私は赤くなっているであろう顔を先輩から少し背けて、ゆたかの口調で、 「だ、大丈夫だよ、いず…お姉ちゃん…」 危ない危ない、一瞬泉先輩って言いかけてしまった。あ…また泉先輩が何か言いかけてる。 私はいってきますと言って急いで家を飛び出した。すると後ろから 「ゆーちゃん、自転車乗らなきゃ!」 私は一旦家に戻って先輩から鍵を渡してもらった。 sideゆたか 「まだかな…」 私が学校に着いたのは予鈴の35分前だった。 学校に着いた私はとりあえず正門で自分の体を待ってみることにした。 すると「ヴヴヴヴヴヴヴヴ」 と携帯のバイブ音が聞こえた。とっさに私は自分の…じゃなかった、えっとみなみちゃんの携帯を手にとって液晶に表示された名前を見てすぐに電話に出た。 「もしもし」 電話の向こうからは私の声が聞こえた。 「もしもし」 私は驚いたが一応私も返事をしてみた。…少しの沈黙、そして… 「あなたはだれなんですか?」「あなたはだれなんですか?」 一字一句同じ言葉を同時に話してしまいまた沈黙。 今度は私が 「えっと、あなたは誰なんですか?私は小早川ゆたかですけど」 私は自分の声に向かって聞いてみた。すると… 「ゆたか!よかった、大丈夫!?」 「やっぱり、みなみちゃんだね。よかった」 私は心底安心した。みなみちゃん無事だったんだ。…無事…? 「ねえ、みなみちゃん、もしかして今私の体の中にいるの?」 私は恐る恐る聞いてみた。返答は予想通り 「…うん」 やっぱり…。 「朝起きたらゆたかの家にいて、鏡を見たらゆたかになってた」 「私と一緒だよ。私も今みなみちゃんだもん」 それにしてもなんでこんなことになったんだろう。 「私もわからない。とにかくこのことはあまり人に知られない方が…あ…すみません…ブチッ、ツ-ツーツー」 唐突に電話が切れた。私は携帯電話の電池を確かめたが、電池は満タンで電波は三本だった。 「みなみちゃんどうしたんだろう」 私は正門の前で私の姿をしたみなみちゃんが来るのを待つことにした。 sideみなみ 「すみません」 …びっくりした、やっぱり電車の中で電話はまずかったみたい。 私の声のゆたかと話しているといきなり横から車掌さんが来て注意された。初めてだったのでかなり驚いてあたふたしてしまった。 …とりあえず学校に行こう、話はそれから…。 電車は私の降りる駅にもうすぐ着くころあいだった。 sideゆたか 「あ…えっと、おはようみなみちゃん…」 「お、おはようゆたか」 校門前で私達はようやく会うことができた。それにしても自分に挨拶するって何だか変な気分。でもお姉ちゃんならこういうの喜びそう。 私は正門にある時計を確認した。予鈴まではあと25分、まだまだ時間はある。 私達は学校内のできるだけ人気のない所に移動して話をすることにした。 sideみなみ 私はゆたかの提案に乗って学校の人気のないところを探し、なんというかよくある感じだけど体育館の裏に向かうことにした。 しかしゆたかの少し早いスピードに私の体はいとも簡単に悲鳴を上げた。 「うっ……」 急に吐き気がこみ上げてきた。そういえば今の私はゆたかなんだ。 「み、みなみちゃん大丈夫?」 ゆたかが心配して私の顔を覗き込んできた。自分の顔に覗き込まれるなんて…。 「だ、大丈夫…だよ、ゆたか…」 私は何とか元気なふりをしたがゆたかは「そんなことないとい」言って私を抱えた。お姫様抱っこされるなんておもわなかった。 しかもゆたかに…。私は気分が悪いのも忘れて回りを見たが幸い人はいなかった。それでもかなり恥ずかしい。 「ゆ、ゆたか」 「遠慮しなくていいよ、みなみちゃん。いつもみなみちゃんには助けてもらってるしこれぐらいしないとね」 「あ…う…」 ゆたかが私にほほえみながらそう言った。私ってあんなにきれいに笑えるんだ。ゆたかってやっぱりすごいな。 「ここぐらいでいいかな?」 「…いいと思う」 色々考えている内に私達は体育館裏に来た。ゆたかはそこで私を下ろした。何だかほっとしたようながっかりしたような…。 「みなみちゃん、これからどうしよっか?」 …正直なんて答えたらいいかわからない。とりあえず 「あまり人に気づかれないようにしないといけないと思う」 と答えておいた。 「どうしてこうなっちゃったんだろう?」 確かにそれが一番の謎である。予想さえすることもできない。こればっかりは博識なみゆきさんでもわからないだろう。 ふとゆたかを見ると少し心配そうな顔をしている。…どうしてゆたかだと私の顔であんなに表情が出せるのだろう? 「とにかく私はゆたかとして、ゆたかは私として今日をやり過ごすしかない」 と、私は提案した。ゆたかもこれには納得したが依然として懸案事項は残ったままの状態にある。 ふと携帯で時計を見ると予鈴の3分前だった。私達は急いで教室へと向かったが、 いつも通りにロッカーを開けて上履きを履いたためにゆたかは私の体で自分の小さな上履きを履こうし、 私はゆたかの体で自分の大きな靴を履こうとしてしまった。 要するに私達は体が入れ替わったことを忘れていつも通りに上履きを履き替えてしまった。 そのため二人であたふたし、結局私達は遅刻した。 こうして私達の奇妙な一日は始まった。 一時間目 数学Ⅰ sideゆたか(inみなみ) どうしよう、まさか私とみなみちゃんの体が入れ替わっちゃうなんて…。 何だか授業にも集中できないけど、ノートはしっかり書かないとね。 ふと私はみなみちゃんの方を見た。みなみちゃんは先生の話を熱心に聞いているように見えた。私も頑張らないと! と思ったときいきなり先生が 「じゃあこの練習問題の一問目を○○、二問目を××、三問目を岩崎。今呼ばれた三人は問題が出来次第、黒板に解法と解答を書きに来なさい」 と言った。って、え~~~~~~~~~!私先生の話全然聞いてなかったよ~、どうしよう…。 と、とにかくこの練習問題の上の例題の解き方を参考にして考えてみよう。 …たぶんこんな感じかな。よし書きに行こうっと。 私は黒板に自分の解法と答えを書いて席に座った。あ~ドキドキした~… ん~、でも黒板に書かれた一問目と二問目の解答を見てるとなんだか違和感が…。 私が座ったのを見計らい先生が一問目から順番に赤いチョークで添削していってる。 一問目と二問目は丸みたい、三問目は…うわ~なんだかまたドキドキしてきた~。 そして三問目…って先生なんで何も書かずに私が黒板に書いた私の解法とにらめっこしてるんですか? ……あ、私違う練習問題やっちゃった…。さっきの違和感はこれだったんだ。 その後私は先生に少し怒られて、クラスメートに笑われた。 ごめんね、みなみちゃん…。 sideみなみ(inゆたか) それにしてもどうしてこんなことになったんだろう。 前では先生が熱心に説明をしてるけど私には届かない。私はひたすらぼうっと前を見ていた。 ふと気になってゆたかを見てみた。 なんだか奇妙な気分がする。私はここにいるのに私の体はそこで一緒に授業を受けてるなんて。 それにしてもゆたかはすごいな。ずっと前を向いて熱心に授業を聞いてる。私も見習わないと。 すると先生が練習問題を解く人を当てていった。岩崎と呼ばれたとき驚いて、体がビクッとした。危ない危ない今は私はゆたかなんだ。 変なことをしてゆたかに迷惑はかけられない。しっかりしないと。とにかく私も練習問題解かないと。 …どの練習問題かわからない… ゆたかは黒板にすごく可愛らしい丁寧な字で解答を書いて席に戻った。 …あれ?なんだか他の二問と少し違うような… 先生が問題に赤いチョークで添削を行っている。ゆたかの問題までは全て丸だった。 そしてゆたかの書いた問題にさしかかったとき先生はチョークを止めた。 「…岩崎、お前どこの問題をやったんだ?」 「え、えっと86ページの練習問題12の(3)の問題です…」 「やるのは練習問題11だ。話をしっかりと聞かないからこうなるんだ」 「す、すいません」 私の周りのクラスメートがクスクスと笑っているのが聞こえた。周りから見れば私が間違えた様に見えているだろう。 ゆたかは耳まで真っ赤にしてうつむいている。 ゆたか、大丈夫かな… sideひより い、岩崎さんが解く問題を間違えるとは驚きっスね。少し疲れてるのかな…? でも珍しいものが見れたし、ま、いっか。 それにしても岩崎さん耳まで真っ赤にしてる。何だか小早川さんみたい。 で、その小早川さんは心配そうに岩崎さんを見つめてる。何だか今日はふたりの立ち位置が逆な気がするような… その数分後、私達の鼓膜を予鈴という福音が振るわせた。 あー、やっと休み時間キターーーーーーー。 一時間目から数学って息が詰まっちゃうよ。 あ、そうだ岩崎さんにさっきはどうしたのか聞いてみよっと。 「岩崎さん、さっきはどうしたの岩崎さんらしくないミスっスね」 って岩崎さん無視することないよね。聞こえてないのかな。 「何?田村さん?」 「いや、小早川さんじゃなくて私が呼んだのは岩崎さんなんだけど」 「あっ!」 何だか今日は変な日だなぁ… 二時間目 化学Ⅰ sideゆたか(inみなみ) う~~、まさかこんな時に解く問題を間違うなんて…。 休み時間に田村さんにばれないようにみなみちゃんに謝っておいたけど許してくれたかな。「別にいい、大丈夫」って言ってたけど…。 それにもしかしたら田村さんに怪しまれてしまったのかもしれないよ…。 とにかく今度からはしっかりしないと! 幸いにも今回の授業は当てられることもなく平和に過ぎていった。助かった~…。 sideみなみ(inゆたか) ゆたか、大丈夫かな。それにしてもなんだか物凄く熱心に授業を聞いてる。さっきのことなら気にしなくてもいいのに。 私だって違う問題をやってたんだから。 …あ、黒板を写し前に消された…。 自分のノートだと気にならないけどこのノートはゆたかのなんだからしっかりと書かないといけないのに…。 どうしよう、後で誰かに見せてもらわないと。 私は周りを見渡した、田村さんはなんだか過ぎ勢いでノートに何か書いてる。板書してるのだろうか、それとも絵を書いてるのか。 次にパトリシアさんを見た。パトリシアさんは結構熱心に授業を受けている。パトリシアさんに見せてもらおう。 ……でも何だか板書できなかったことゆたかに隠すみたいでなんだか嫌。ここは正直にゆたかに見せてもらおう。 sideパティ やっとニジカンメがオわりました。ニポンゴわかってもカガクはつらいでス!エイゴでもわからないことだらけでしょうネ…。 あ、ユタカがミナミとハナしていまス。ナニしてるのかな?ちょっとミにイってみましょう。 「ゆたか…じゃなくて、みなみちゃん…?」 「な、なにかなみ…じゃなくてゆたか…?」 ナンだかフタリともぎくしゃくしていまス。 「さっきの授業でノートにうつしきれなかったところがあって、ゆ…みなみちゃんのノート見てもいい?」 「う、うん…はいこれ」 「あ、ありがとう、ごめん」 「いいよ」 …やっぱりヘンでス。キョウのミナミはヒョウジョウがユタカのようにユタかでス。 でもキョウのユタカはミナミのようにアマりヒョウジョウがデてません。まるでフタリのココロがイれカワってしまったようでス。 …ていうかフタリともヨコにワタシがいることにキづいてますカ? 三時間目 英語 sideゆたか(inみなみ) …う~ん、やっぱりこの状況にはなれないなぁ。 さっきだって呼び方間違いそうになっちゃったし…。 でも朝よりかは大分なれてきたかな。 …よく考えたら慣れることも大事だけど戻る方法を探すことのほうが大事なのかもしれない、…じゃなくて大事だね。 本当にどうしたらいいんだろう…?そもそもどうしてこうなったんだろう?前日の晩ははいつも通りに布団に眠ったけど…。 …寝相…かな…? やっぱり思い当たる物がないなぁ。 あ、もしかしたら昨日じゃなくてもっと過去のことに原因があったのかもしれない。 確か一昨日は…そういえば、学校で体育の時間に久しぶりに参加していつもよりかなり気分が悪くなっちゃって病院に行ったっけ。 あの時は本当に皆に迷惑をかけたなぁ。う~ん、でもこのこととはあまり関係なさそう。…はぁ…。 私は小さくため息を吐いた。 …とにかく授業に集中しようっと。 sideみなみ(inゆたか) …この状況にはどうにも慣れることができない。さっきもついつい呼び方を間違えたし…。 今日はゆたかに迷惑ばかりかけてしまっているし、しっかりしないと! …そういえばどうしてこんな不可解な事がおこったのだろうか…。 特に前日の行動にいつもと違うことはなかった。ゆたかと一緒に私の家でおしゃべりしたり、一緒にチェリーの散歩に行ったぐらい。 これらのことをしてもこんな事になるとは到底思えない。 …じゃあその前の日は……確かゆたかが体育のときに倒れちゃってとてもひどい状態だったから病院に運ばれたっけ…。 あの時はすごく心配したな。学校を早退してゆたかのお見舞いに行ったっけ…。幸い医者とその時一対一で話して、 心配要らないって言われてすごく安心したのを今でもよく覚えている。でも顔はこわばったままだったと思うけど…。 確かその後に泉先輩が病室に大きな音をたてて入ってきた。でもさすがにこれらのことは関係性がなさそう。 …一体何が原因でこんなことに…、とにかくその理由を特定できれば解決法もおのずとわかる可能性が高い。 次は少し長い休憩時間だし、その時に二人でまた人気のないところで話すことにしよう。 休憩時間(20分.ver) sideこなた ふわ~、よく寝た~。ほんとこの時間帯の授業って眠たくなるよね~、ってこの前かがみに言ったら 「あんたの場合は年中無休でそうじゃない」 と言って頭をピシャリと叩かれたっけ。 「こなちゃん、お弁当一緒に食べようよ」 「私もご一緒させて下さい」 いつも通りにつかさとみゆきさんがお弁当を持って私の席まで来てくれた。もうちょっと待てばかがみも来るだろう。 「うん、食べよっか」 とりあえず私は二人と近くの席を寄せ集めた。 そうしてるとかがみがお弁当を持ってやって来た。私達は今日も四人でお弁当を食べる……はずだった。 「ねえ、そういえば今日学校の玄関のところでゆたかちゃんとみなみちゃんが二人して急いで校舎の中に走っていったけどさ、 しかも予鈴がなった後なんだけど。二人にしては珍しいよね?」 え?ゆーちゃんは私よりも随分早く家を出たけど。…なんだか様子は変だったけど。 それって人違いじゃない? 「そんなことないわよ、確かにゆたかちゃんとみなみちゃんだったわよ。顔もちゃんと見たんだから間違いないわ」 …どういうことだろう。私より早く出て遅刻?私だって今日は遅刻寸前だったのに。 「みなみさんが遅刻するとは珍しいですね、今までそのようなことは一度もなかったと思いますよ」 みゆきさんも不思議に思っているようだ。 確かに真面目なあの二人ならそんなことはまずないと言ってもいい…あ! 私は今日の朝に見たゆーちゃんの妙な様子を思い出しゆーちゃんのクラスに行くことにした。 どうしたんだろう、ゆーちゃん。学校に着くまでに気分が悪くなったのかな。少し心配だ。 かがみ達には適当に言っておいて、私は教室を出た。 …あ!お弁当忘れるところだった…。 sideゆたか(inみなみ) 三時間目が終わって、20分の休憩時間が始まった。 とにかく今はみなみちゃんとお話したいな。色々考えたけどこのままみんなに隠しとおせる自信がない。 もういっそみんなに話してしまったほうがいいのかもしれない。 私はゆっくりと席を立ってみなみちゃんのいる元私の席へと足を進めた。 sideひより さーて、いつも通りに岩崎さん達と一緒にお弁当食べようかな。 岩崎さんの方へお弁当を持って行った。岩崎さんの席には小早川さんがいた。二人で何か話しているみたい。 「岩崎さん、小早川さん、お弁当食べよう」 私は二人に言ったが 「…ごめん、今日はちょっと用事がある」 「ごめんね、田村さん」 そうっスか。ん?やっぱり二人の言動がおかしい気がする。なんだか二人が入れ替わってる感じなんだけど…。 あ、二人とも「ヤバッ!」見たいな顔してるし。本当に変だなぁ。 「イッショにおヒルタべませんカ?」 パティがお弁当を持ってきた。私はパティに二人は用事があるから今日は無理って言ってたって言った。 その後小早川さんと岩崎さんは二人でお弁当もってどこかに行っちゃった。 とりあえず私達は二人でお弁当を食べることにした。 sideパティ キョウのランチはヒヨリとフタリでタべることになりましタ。 いつもならユタカにミナミもイッショにタべるけどキョウはいません。ヨウジがあるらしいでス。 「一体どうしたのかな、二人とも」 「ウ~ム、もしかしたらフタリともできてしまったのかもしれませんネ」 とりあえずジョウダンでカエしましたがタシかにキになりまス。 キノウとかにこんなコウドウをフタリがミせてもベツにおかしいとはオモいませんが、 キョウはフタリともヨウスがヘンでしたからミョウにキになりまス。と、そこに 「Yahoo!パティ、ひよりん!」 OH!コナタがトツゼンやってきましタ。どうしたのでしょうカ? sideみゆき いつもなら四人で囲んで食べる昼食ですが今日は三人で食べています。 なぜか泉さんがゆたかさんのところに行ったからです。ゆたかさんが遅刻したのが気になるのでしょうか…? 四人で食べているのに慣れているせいか、少し寂しく感じてしまします。 そういえば、先程かがみさんが小早川さんだけでなく岩崎さんも遅刻していたと言っていました。 よく考えると今日、みなみさんと一緒に学校へ行こうとしてみなみさんの家を尋ねてみましたが、 みなみさんはすでに学校に行った後でした。 無論私は遅刻はしていません。これは少々不可解ですね。後でみなみさんに聞いてみましょう。 sideみなみ(inゆたか) いつみならお昼を食べている時間だが、今日はゆたかと一緒に学校の屋上で食べることにした。 それにしても未だに中身がゆたかとわかっていても自分の姿と話すのは中々慣れない。 屋上に着いた私達は二人で座ってお弁当を食べ始めた。少し経ってからゆたかが話しかけてきた。 「みなみちゃん、これからどうしよっか?」 …私にもわからない。原因不明だしどうしようもない。 「わからない、でもこのままこのことを皆に隠しとおせるのは無理だと思う」 私は考えていたことを言った。そろそろ田村さんかパトリシアさんかが気づくとはいかないとしても違和感は感じているに違いない。 「じゃあ話すの?」 それも正直不安だ。もし誰かに話して学校中に広まりでもしたら周りから何か言われることは間違いない。 私はそういうのが苦手だから話すのは避けたい。でも誰かに話したい、話して楽になりたい。 「…みゆきさんに相談してみるのは?」 私はゆたかにそう意見を提示した。 ゆたかは少し考えてるそぶりを見せてから、あまり時間をかけずに 「そうだね、私もそれでいいと思う。このまま二人だけで抱え込むのは正直辛いしやっぱり他にも相談相手がほしいからね」 ゆたかは微笑みながらそう言った。 sideこなた 私がゆーちゃんの教室に着くとひよりとパティがお弁当を食べてた。教室を見渡してもゆーちゃんどころかみなみちゃんもいない。 とりあえず私は二人を呼んでみた。 「Yahoo!パティ、ひよりん!」 パティが私に気づいて声をあげた。 「OH!コナタ!どうしましたカ?」 私は二人の席まで歩いた。 「ゆーちゃんかみなみちゃんにちょっと用事があってね。ふたりがどこに行ったか知らない?」 「ウ~ン、シりませんネ」 「私もっス」 …そっか、二人も知らないんだ。 私は二人に今日の朝のゆーちゃんの様子が妙だったこととゆーちゃんが私よりもかなり早く出たのに遅刻したことを話した。 「確かに妙っスね。それに今日二人ともなんだか様子が変だったっス」 「ミナミはヒョウジョウユタかになってたり、らしくないミステイクをおかしましたし、ユタカはなんだかムヒョウジョウでした」 ん~、何だか二人が体か心が入れ替っちゃったみたいだね。 「そう、それっス!私もそう思うっス!」 「ワタシもです!でもそんなことありえないですヨ。マンガやゲームじゃないですシ…」 何だかそう言われると本当に二人が気なってきたな~。そうだ! 「ねえ二人とも、ゆーちゃんとみなみちゃんを探しに行かない?」 私がこう言うと二人は少し考えてから私の誘いを承諾した。 とかなんとかあって今私達三人は学校の屋上の扉の裏から、ゆーちゃんとみなみちゃんが二人でお弁当を食べているのを覗いている。 私達が着いたころには二人は座ってお弁当を食べているようだった。 私達は三人で耳を澄まして会話を聞いてみることにした。 「…私達何やってんでしょうかね?」 ひよりんが疑問を口にした。 「シー!ヒヨリ、シズかにするでス」 「パティも声が大きいよ。まあここはなんか出て行きにくい感じだし空気読んでここで聞いてるんだから。 今いきなり二人に声をかけるより大分ましだよ」 と言って私はひよりんを静かにさせた。まあひよりんもまんざら二人の会話に興味のないわけではないらしい。 私達は集中して二人の会話を聞きにはいった。 「みなみちゃん、これからどうしよっか?」 みなみちゃんが自分で自分の名前呼んでるんだけど。 「わからない、でもこのままこのことを皆に隠しとおせるのは無理だと思う」 …え、何を?やっぱり何かあったんだ。ていうかゆーちゃんの口調がおかしいよ。朝もこんな感じだったっけ。 「じゃあ話すの?」 何だか今日のみなみちゃんは表情がよく出てるね。 「わからない、でもこのままこのことを皆に隠しとおせるのは無理だと思う」 …やっぱり私達に何か隠してるみたい。 「…みゆきさんに相談してみるのは?」 あれ?ゆーちゃんいつからみゆきさんのことを高良先輩じゃなくてみゆきさんって呼ぶようになったんだろう? 「そうだね、私もそれでいいと思う。このまま二人だけで抱え込むのは正直辛いしやっぱり他にも相談相手がほしいからね」 ここで二人はお弁当を食べ終えたようだ。立ち上がってこちらの方へ来ようとしていたので私達は急いでその場から離れた。 それにしても、ゆーちゃんとみなみちゃんは私達に何を隠してるんだろう…。 その後は廊下でパティとひよりと別れて私は教室に戻った。その時には予鈴三分前だった。 …私、お弁当食べてないよ。 四時間目 数学A sideゆたか(inみなみ) やっぱりなかなか解決策は見つからないなぁ。とりあえず高良先輩には相談することにしたけど他の皆には話したほうがいいかな。 でももしかしたら信じてもらえないかもしれないし…。…はぁ…。 そういえば五時間目は体育だったっけ。もしかしたらこの前みたいに気分が悪くなって皆に迷惑かけないで思いっきり楽しめるかも。 でも、みなみちゃんは…、私の体じゃ参加できないよね。私も見学しようかな…。 「じゃあこの練習問題の一問目を○○、二問目を岩崎、三問目を××。今呼ばれた三人は問題が出来次第、黒板に解法と解答を書きに来なさい」 はう!まさかまたなんて…、どうしようまたどこの問題か聞いてなかったよ~。 ふとみなみちゃんの方を見ると私に手でどこの問題か伝えてくれた。ありがとう、みなみちゃん。 それにしても自分はここにいるのに体は違うところにあるなんてやっぱり不思議な気分だなぁ、どうにも慣れないよ。 私は問題を手際よく解いて黒板へむかった。 sideみなみ(inゆたか) この授業の後は確か体育だ。でも次のお昼休みに高良先輩に相談しようと私は思っている。授業が終わればすぐに行かないと。 …そういえば今、私はゆたかの体だから体育は見学したほうがいいかもしれない。 今日の朝も気分が悪くなってゆたかに抱いてもらったこともあるし…。 確か見学の場合はジャージに着替えて先生に見学することを伝えるのだったかな。したことないからよくわからない。 とりあえず授業に集中しておこう。一時間目に様なことがまた起こるかの知れないし。 そして予想通り同じことが起こった。まさか同じようなことが起こるなんて。 でも今回はしっかりと話は聞いてたし大丈夫。ゆたかは……何だか不安そうにこっちを見てる。 私は手でゆたかにどの問題をやるのか伝えてみることにした。 お昼休み sideみゆき 予鈴がなってお昼休みの時間となりました。まわりでは外に元気に出て行く人や誰かとおしゃべりしている人などがいます。 私も少し体を動かしたい気分です。最近は受験勉強にとられる時間が多くて…。 一年生や二年生のときよりゆったりできる時間は減っています。 あ、そういえばみなみさんに少々聞きたいことがありましたね。すっかり忘れていました。 幸い次の時間は英語ですので少し遅くなっても大丈夫そうですね。 私は席から立ち上がりみなみさんのところへむかうため教室を後にしました。 一年生の廊下を歩き、みなみさんのクラスが見えてきました。 すると私の目線の先にみなみさんとゆたかさんの姿が見えました。 私は呼ぼうと思いましたが小早川さんとみなみさんからこちらに近づいてきたので呼ぶのはやめました。 「少し聞きたいことがあるのですが…、お時間は大丈夫ですか?」 私はそう二人に話しかけました。 sideみなみ(ゆたか) ゆたかと一緒にみゆきさんのところへ行こうとするとみゆきさんが教室の近くにいたので私達は難なくみゆきさんと会うことができた。 「少し聞きたいことがあるのですが…、お時間は大丈夫ですか?」 「ごめんなさい、今はあまり時間はなくて……、みゆきさん、ちょっと着いてきてください」 私はもう自分をゆたかと偽るのはやめていつも通りに話すことにした。 みゆきさんは少し不思議そうな顔していた。 私達は体育館の裏の方へ行った。 「どうしたのですか、みなみさん、小早川さん。何だか二人とも様子がいつもと違いますよ」 「みゆきさん」 私はみゆきさんにゆたかの体で話しかけた。 「は、はい」 「これから話すことをよく聞いてください。すべて本当のことです。信じられないかもしれませんがお願いします」 みゆきさんの頭上には珍しくクエスチョンマークが浮かんでいるようだった。 「みなみちゃん」 ゆたかが少し心配そうに見つめている。 「とにかく話を聞きましょう」 みゆきさんがそう言ったので私は全て話した。今日のこの不可解な現象のこと、その全てを。 sideゆたか(inみなみ) みなみちゃんが高良先輩に全て話し終えた。高良先輩は驚いた顔していましたが、私とみなみちゃんの真剣な眼差しのせいか信じてくれたみたい。 「…つまりみなみさんとゆたかさんの心が入れ替わってしまった、ということですね」 「…はい」 「…え~と、今小早川さんが話したということはみなみさんが話したということですよね」 「はい、すいません、わかりにくくて…」 「いえ…そうようなことは…」 みゆきさんは少し困惑顔で話している。 「高良先輩、どうしたら元に戻れますか?」 私は単刀直入に聞いた。 「……すみません、私には全く…わかりません…」 「…そうですか」 正直やっぱりとは思ったが、小さな期待が私の中にあったのかもしれない。少しがっかりした。 「このことを私以外に話しましたか?」 「いえ、みゆきさんだけです。あとできれば秘密にしておいてください。他の皆さんにはまた色々考えてから伝えようかなと思っているので」 高良先輩の質問にみなみちゃんが答えた。 「わかりました……けれども一体どうすれば……原因などで心当たりなどはおありですか?」 「それも特には…、色々考えましたがそういう事は全くなかったと思います」 私も聞かれたが、みなみちゃん同様に答えた。本当にこれからどうしよう…。 sideこなた あれ?みゆきさんがいないや。もしかしたらみなみちゃんのところかな。確か二人はみゆきさんに相談するとか言ってたっけ。 じゃあ、今はみゆきさんはみなみちゃんやゆーちゃんと話をしてるのかな。 それにしてもゆーちゃんどうしたんだろう、私達に内緒なんて。皆の誕生日はまだまだ先だし…。 …私達が知らなくてみなみちゃんがだけが知ってることかぁ。何かあったっけ…。 私は席に浅く腰掛けて上を向いて考えを巡らせた。…何だか私っぽくないね。 あ、そういえば確か一昨日にゆーちゃんが体育で倒れて病院に運ばれたな。私が病室に行ったときみなみちゃんが先にいたっけ…。 なんか医者から話を聞いてたみたいだけど、みなみちゃん何かすごく怖い顔してたような。 ……まさか……そんなことないよね……でももしかしたらゆーちゃんの体に何かが……。 ははは、まさかねー……。 でも、さっきの二人の会話はかなり怪しい…。 確かに病院にいたのゆーちゃんは少し苦しそうな感じはあったけど今は元気だし、 でもじゃあ今日の朝のゆーちゃんの妙な様子はなんだろう。 それに私より早く家を出たのにどうして私より遅い上にみなみちゃんと一緒なんだったんだろう。 まさかもう時間がないからって遊んでた、いやどこかでおしゃべりしてたとか……。 私はこの後つかさとかがみに話しかけられるまで上を向いて考えていた。 あはは…そんなことないよね…。後でみゆきさんに二人と何を話したか聞いてみよう。 …またお弁当食べるの忘れてた… 五時間目 体育 sideゆたか(inみなみ) 結局高良先輩と話したけどあまり成果は上げられなかったなぁ。でも誰かに相談できて少しだけスッキリした気がする。 今日の体育はバスッケットボール、私はいつも見学してるか、参加できてもみんなと同じように素早く走り回ることができない。 それどころか途中で気分が悪くなって倒れそうになってチームを抜けてみんなに迷惑をかけちゃったりする。 でも今回は違う。今はみなみちゃんなんだから。今までろくに参加できなかった分今日は張り切っていくぞ~!!! ホイッスルが鳴り私の試合が始まる。私は積極的に動いてボールを受け取ってはドリブルで相手に突っ込んでいった。 でもなかなか上手くいかない、それどころか上手にドリブルがつけない。結果相手チームにボールを何回も取られちゃった。 あんまり授業に参加してないツケが回ってきたみたい。でもすごく楽しかった。体を動かすと気持ちいいし、何だか気分が高揚する。 …確かお姉ちゃんがそういうことを「最高にハイッってやつ」って言ってたっけ。 結局私達のチームは四試合やって一勝しかできなかった。 でもその勝った試合で私のシュートが始めて入ったときはその場にへたり込んでしまった。 もう泣きたいぐらいに嬉しかった。今だけ心が入れ替わったことに感謝できる、…みなみちゃんには申し訳ないけど…。 sideみなみ(inゆたか) お昼休みにみゆきさんに相談したせいか、今は相談する前より少し気が楽な感じがする。 今日の体育、私は見学せずに参加することにした。 前回の授業でゆたかが倒れてしまったせいか担当教師は止めたが私はそれを聞き入れなかった。 ゆたかも「無理しないほうがいいよ」って言ってくれた。 でも、前回途中で抜けて、ただでさえ見学が多いのにこれ以上授業に参加しなでいるとゆたかの体育の成績が下がってしまいそうな気もした し、それにたまにはゆたかだって出来るところをみせたいはず、と思いできるだけ私は頑張ってみることにした。 そして試合は始まった。私はいつもよりさらに気合を入れて臨んだ。ちなみに試合はハーフコートではなくオールコートだった。 最初のうち私はドリブルで相手を抜き、そのままレイアップや三点シュートを連発し取れるだけ点をとった。 この小柄な体は相手を抜いてリングの下まで向かうのにかなり好都合だった。でも数分で気分が悪くなって交代を余儀なくされてしまう。 交代して脇で座って休んでいると、同じチームの休憩している人や他の人達が来て、 「どうしたの小早川さん、すごいじゃない!」・「キョウのMVPはユタカですネ」・「今回は調子いいんだね、安心したよ」と言ってくれた。 何だか私は嬉しくて、少し恥ずかしくなった。 「小早川さん顔真っ赤だよ」・「あはは、かわい~」・「も、萌えるっス」とも言われた。 何だかこの体も悪くないな、と思った、…ゆたかには悪いけど…。 そうこうしているうちに今まで最高に楽しかった体育の時間は終わった。ゆたかもすごく楽しんでいた。 ゆたかとは敵チームだったけど、一緒に試合をした時は本当に楽しかった。 私はゆたかのシュートを阻止したり…背が全然足りなかったけど。私のドリブルしているとボールを取られて、また取り返したり。 私は自分の体のこととか忘れていた。 だからその後気分が少し悪くなってしまったけど、最高に充実した授業だった。 ちなみに一番勝った回数が多かったのは私のチームだった。その後私はみんなにMVPに選ばれて軽い胴上げまでされた。 …明日も確か体育あったはず、心が入れた替わった状態が明日まで続いてもいい気がしてきた。 その後私達は教室で着替えた。 昼休みに着替えたときはみゆきさんに相談した後で時間がなかって急いでいたからあまり気にしなかったけど、 ゆたかって胸結構あるんだ…。 皆に、特にゆたかにばれないように気をつけて少しだけもんでみた。…やわらかい。いいな…。 私は小さなため息をついた。それは周りの喧騒の中に消えていった。 sideこなた ようやく五時間目が終わった、疲れた~。半分眠っていたような感じだったよ。 そんなことよりみゆきさんに何を話していたか聞いてこよっと。 私は席を離れてみゆきさんの席へ行った。みゆきさんは何だかぼうっとしていた。 「ねえ、みゆきさん」 「……」 へんじはない ただのしかばねのようだ …じゃなくて、どうしたんだろう。何だか考え事で頭が一杯みたい。そういえば授業中も当てられてしどろもどろで答えてた。 四時間目まではこんなことなかったのに、やっぱり原因はゆーちゃんとみなみちゃんの話を聞いたからかな。…たぶんそうだろうね。 そんなに大変なことになっちゃってるのかな…。本当にゆーちゃんが心配になってきたよ。 「みゆきさん!」 私は少し大きな声で呼んでみた、すると 「わひゃぁ!」 と可愛い声を出した。 「な、ななななんんですか、泉さん?」 「…びっくりしすぎだよ、みゆきさん」 「す、すいません、少々考え事があって」 「ゆーちゃんとみなみちゃんのことだよね」 私は単刀直入に切り出した。みゆきさんは驚いたような顔をした。 「…泉さんも知っていましたか…」 「まあね」 知らないけどここはわかってるフリをしておく。さっき盗み聞きした時のゆーちゃんとみなみちゃんの会話で 「でもこのままこのことを皆に隠しとおせるのは無理だと思う」って言ってたってことは皆には隠すつもりでいるってこと。 たぶん皆には内緒にするようにみゆきさんは言われてるだろうけど、 ここは知っていることにして適当に話を合わせれば大体のことはわかるかもしれない。 だてに私もバカじゃないってことだね。今まで色んなゲームをしといてよかったよ。 「しかし大変なことになりましたね、泉さんも心配ですよね…」 みゆきさんはとても心配そうな顔で話し始めた。やっぱり何かあったんだ…。 「…そうだね」 私は適当に相づちをうった。 「あんな状態の治し方なんて医学界には存在しませんし、私もそんな症例自体聞いたこともありませんし」 「え……?」 私はすごく嫌な感じがした。やっぱり病気?…治らない? 「でももしかしたらすぐにでも…泉さん?」 私はみゆきさんの言葉を聞く前にみゆきさんの席から離れた。……すぐにでも……死ぬ……とかだったり……。 怖い、その後を聞くのが怖い、怖くて怖くてたまらない。 どうしよう、ゆーちゃんが死んじゃったら…どうしよう…。私お姉ちゃんなのに…何で気づいてあげられなかったんだろう。 私は予鈴が鳴り先生に注意されるまで呆然と立っていた。この後の授業は頭に入らなかった。 …もう何も考えられなかった…。 六時間目 古典 sideゆたか(inみなみ) 今日最後の授業は古典。…やっぱり難しいや。 それにしても何だかこの体でいるのも結構なれてきたかな。まだ小早川や、ゆたかと呼ばれると反応したりしてしまうけど。 そういえばさっきの休み時間みなみちゃん何だか体育の時間の時よりも少しだけ暗くなってた感じがしたけどどうしたのかな? あと田村さんとパトリシアさんが何だか私とみなみちゃんの方を見て内緒話をしてたし、どうしたんだろう。…ばれちゃったのかな…? 私は教室にある時計を見た。授業終了まではあと15分だった。放課後に本格的に治す方法を考えたほうがいいね。 …とりあえず、みなみちゃんと高良先輩と一緒にどこかに行くことにしよう。 sideみなみ(ゆたか) 今日の授業終了まではあともう少し。今日は突然こんなことになって驚いたけど楽しいときもあったし、 今はそれなりに落ち着いてきている。 今日の放課後は事情知っている私とゆたかとみゆきさんで話し合って今後どうするか決めることにしよう。 「次のところを…小早川、読んでくれ」 …あ、今のゆたかは私なんだった。ちょっと油断してた。 私は先生に指定されたところを読み、ホッと安心してまた考えを巡らし始めた。 とりあえず放課後は三人で今後のことについて話し合ってみようかなと思う。 その数分後授業終了を伝えるチャイムの音が学校中に響き渡った。 放課後 sideゆたか(inみなみ) 今日の学校がやっと終わった。 私はみなみちゃんを誘って二人でみゆきさんを誘って三人で、とりあえずみなみちゃんの家にむかうことにした。 sideみなみ(inゆたか) 私はゆたかの願ってもない提案に乗り、みゆきさんと三人で私の家にむかうことにした。 私はゆたかとみゆきさんのクラスに行き、みゆきさんを呼んで三人で帰った。 そういえばみゆきさんのクラスを覗い時、泉先輩が自分の席でぼうっとしていた 。どうしたんだろう、授業は終わっているのに…。 私達には全く気づいていないみたいだった。 道中でも三人で色々話してみたが、結局解決策は見出せず、気がつくともう私の家についていた。 みゆきさんは家に一旦荷物を置きに行った。 ゆたかと私が庭に入るとチェリーがゆたかにじゃれついてきた。散歩に行きたいのだろうか…。 …何だか少し寂しいな。最近チェリーは私にそっけなかったのにこういうときに限ってじゃれついている。 ゆたかがうらやましい…。私はちょっとだけ微笑みながらチェリーをなでた。するとチェリーは尻尾を振ってじゃれついてきた。 あれ?もしかして今のゆたかは私だって気づいたのかな、さっきまでじゃれついていたゆたかにはあまり構わなくなったし。 私達はチェリーと一緒に家に入った。中ではお母さんが「久しぶりね、ゆたかちゃん」と言ってくれた。 …さすがにお母さんにこう言われると悲しい。 ゆたかはおじゃましますと言いかけたが、途中で気づいてただいまと言った。 「こんにちは、おじゃまします」 「あら、みゆきちゃん、こんにちは」 みゆきさんが入ってきた。お母さんがうれしそうにみゆきさんを迎えた。 その後私達三人は私の部屋に入った。 sideこなた 「こなちゃん、こなちゃん、どうしたの?」 「何ボーっとしてるのよ、とっくに授業は終わったわよ。ていうか学校自体終わったけどな」 私は誰かに体をゆすられて何もない思考から目覚めた。 「よかった~、どうしたのかと思ったよ~」 「ほんと何やってんだか…」 私をゆすっていたのはつかさだった。安心した様な顔をしている。 横にはあきれ顔をしたかがみがいた。二人を確認した後私は周りを確認した。教室には生徒が数人いるだけだった。 窓から差し込んでくる夕焼けが私にはとてもまぶしく感じられた。 「あっ!」 私はがばっと起きて時計を見た。時刻は六時間目終了から15分経っていた。もちろんみゆきさんはもうクラスにはいない。 「もう、びっくりっせないでよ、こなちゃん」 「何驚いてんのよつかさ。ほら、こなたも変な事してないで帰るわよ」 「みゆきさんは!?」 私は二人に聞いた。おそらく大声だったのだろう、二人は驚いていた。 「ど、どうしたのこなた」 「いいからどこ行ったの!?」 「ゆ、ゆきちゃんならもう帰ったよ、ゆたかちゃん達と帰るって言ってたけど…こ、こなちゃん!」 私はつかさからそこまで聞くと勢いよく立ち上がり、かばんも持たずゆーちゃんのクラスへ向かった。 ゆーちゃんのクラスを覗くとそこにはひよりんとパティが二人で話していた。他にも何人か生徒がいる。 「い、泉先輩、どうしたんスか?」 「コナタ、どうしたネ?イキがアがってますヨ」 教室にはやっぱりゆーちゃんとみなみちゃんの姿はない。 「ゆーちゃんとみなみちゃんは!?」 私は二人に聞いた。ここでも大きな声だったのだろう、教室の中にいる人の目線が私に集まった。 しかし今の私には気にならなかった。 「こなた!落ち着きなさい!」 突然後ろから声がした。 「カガミ!」 私が振り向いて誰か確認するよりも早くパティが答えた。 「あんた何をそんなに焦ってるのよ。とにかく落ち着け!」 かがみは私の肩をつかんで結構な大声で言った。私は少しずつ落ち着いきを取り戻してきた。かがみの横ではつかさが肩で息をしている。 「落ち着いた?」 「う、うん、ごめんかがみ」 「いきなり教室からでていくんだもん、びっくりしたよ。はい、かばん」 教室に忘れてきたかばんをつかさが渡してくれた。…必死になって忘れてたんだ、今思い出したよ。 「ありがと、つかさ」 私はつかさにお礼を言った。 「で、いきなりどうしたんスか?」 ころあいを見計らってかひよりんが本題をぶつけてきた。 「ユタカとミナミのことですカ?」 話が早くて助かった。私はみんなに話した。 sideかがみ 「うそ…そんな…」 横ではつかさが顔を真っ青にしている。今にも泣きそうだ。私はつかさの手を握ってあげた。 「ね、ねえこなた、さすがにそれはないんじゃない?」 私もこなたの話はさすがにいきなり信じることはできなかった。ゆたかちゃんが死ぬなんて…。 「た、確かに泉先輩の話は的をえてるっス」 「…ワタシもそうオモいまス」 田村さんとパトリシアさんはこなたの話を少なからず信じているようだ。 「でも朝の様子が変で遅刻しただけでそれはいくらなんでも…」 私はこなたに反論した。 「でも…一昨日に病院でみなみちゃんが怖い顔をして医者と話してるのを見たし…」 「で、でもそこでそんなゆたかちゃんの命の話なんてしないはずよ、まずは家族に話すもんでしょ」 「…今日、ゆーちゃんとみなみちゃんが屋上で話してるのをひよりんとパティと一緒に聞いたんだ。 そこでゆーちゃんが皆に隠してるってはっきり言ったんだよ」 「違うことなのかもしれないじゃない」 反論していく私にも何だか嫌な感じがしてきた。 「それに二人はみゆきさんに相談するって言ってたんだ。だから五時間目の後の休み時間でみゆきさんに聞いてみたんだ」 こなたの声がどんどん重くなってくる。 「みゆきは何て言ってたの?」 この先を聞くのが少し怖かったが、私はこなたに聞いた。 「あんな状態の治し方なんて医学界には存在しませんし、私もそんな症例自体聞いたこともありませんって…言ってた…」 こなたの目から一筋の涙がこぼれた。…これは本当にやばいのかもしれない。 田村さんとパトリシアさんは無言でうつむいている。つかさはこなたの倍以上の涙を流していた。 「…じゃあ…こなたの言うとおり…ゆたかちゃんは…」 私の中でもこなたと同じ結論が出た。 「みんな、ゆたかちゃんを追うわよ!」 私達は五人でゆたかちゃんのもとに急ぐことにした。 この言葉についてこない人は 誰もいなかった sideつかさ ゆたかちゃんが…死んじゃうなんて…信じられないよ、信じたくないよ…。 私はお姉ちゃん達と急いで校門まで来た。 「そ、そういえばユタカはどこにイったんでしょうカ!?」 パトリシアさんがお姉ちゃんに聞いた。 「よ、よく考えたらわからないわね」 確かによく考えたらゆたかちゃんがどこにいるか私達わからないや。 隣ではこなちゃんが電話をしていた。…あ、今切った。 「…みんな、ゆーちゃんはみなみちゃんの家だって」 「わかったわ、ありがとうこなた」 「こなちゃん、誰に電話してたの?」 私が聞いた。 「みゆきさんの家に電話したんだよ。みゆきさんやゆーちゃん達だと言ってくれないかもしれないからね。 みゆきさんが一緒に帰ったんならみなみちゃんかみゆきさんのどちらかの家だと思ってたし。 さすがにみゆきさんもお母さんに口止めするのを忘れてたみたいだね。みゆきさんがかばんを置きに来たときに言ってたみたいだよ」 「す、すごいねこなちゃん。まるで探偵みたいだね」 私は素直に感心した。他の三人も驚いているみたい。 「あんた案外すごいじゃない。みんな、みなみちゃんの家に急ぐわよ!」 再びお姉ちゃんの号令に従って私達は急いでみなみちゃんの家へとむかった。 それにしてもここまで必死なこなちゃんなんて始めて見たよ。 sideかがみ 私達は今、みなみちゃんの家にむかうために電車に乗っている。 それにしてもこなたってすごいわね。こんなに頭がきれるなんてね。 …やっぱりゆたかちゃんが大事なんだ。私にも妹がいるからその気持ちはすごくわかる。 そういえば私が読んでる小説に、ピンチになったら急に頭のきれるって人がいたわね。正確には人だったものだけど。 …さすがにこんなこと考えてる場合じゃないわね。…ゆたかちゃん…大丈夫かな…。 こなたの話を聞く限りふざけているようなそぶりはなかった。それどころかこなたのマジ泣きなんて始めて見た。 それにこなたの話には文句がつけられない。反論できるところが存在しなかった。 電車がみなみちゃんに家の最寄り駅に近づくにつれて私の心臓の鼓動はどんどん高まっていった。 sideひより まさかこんなことになるなんて…小早川さん、どうして私達に教えてくれなかったんだろう。 やっぱり日ごろの行いかな。そう言われると反論なんてできないし。 でも今日の体育の様子から考えるとまだ信じられないよ。あんなに頑張って、すごく活躍してたのに…。 もしかしたらもう時間がないからあんなに張り切って活躍していたのかもしれない。 電車は私達の降りる駅の二つ手前だった。 sideパティ ユタカ…ダイジョウブでしょうカ…。 すごくシンパイでス。せっかくここにキてできたシンユーなのに…それをウシナってしまうなんてたえられません…。 …ミナミはそんなジュウヨウなことをシっていてどうしてワタシタチにオシえてくれなかったのでしょうカ? いくらユタカにクチドめされていたとしてもひどいでス。ワタシタチだってゆたかのシンユーなのに…。 デンシャはワタシタチのオりるエキのヒトツテマエでしタ。 sideこなた 心臓がバクバク鳴ってるのがすごくわかるぐらいに私は緊張してる。 みゆきさんの「でももしかしたらすぐにでも…」って言葉を思い出すたびに私は心が壊れそうな程に締め付けられる。 私は窓の外の景色を見てそれらの気持ちから逃避を試みた。しかし、外に走っている救急車が目に入り、私は咄嗟に目をそらした。 ……怖いよ……。 電車のスピードが落ち始めた。私達の降りる駅に着くようだ。 sideゆたか(inみなみ) みなみちゃんの家に来てもう30分ぐらい経ったかな。 三人で色々話したけど具体的な解決策は全くない。 とりあえず明日にはみんなを集めてこのことを言うっていうのは決まったけど…。 私達ずっとこのままなのかな…。部屋は静けさに満ちていた。 すると下からインターホンが鳴り響く音が聞こえた。 みなみちゃんのお母さんが出たみたい。 「みなみー!田村さん達が来たわよー!」 私達は階段を駆け降りてドアを開けた。 「ゆーちゃん!」 するといきなりお姉ちゃんがみなみちゃんに飛びついた。みなみちゃんは困惑顔に少しばかりの朱を添えた顔をしている。 「み、みなさん、どうしたんですか?」 みゆきさんの驚いた声とともにドアのほうを見てみるとそこには、かがみ先輩につかさ先輩、田村さんにパトリシアさんまでいた。 「岩崎さんどうして言ってくれなたんスか!?」 「そうでス!ひどいですヨ!ワタシタチシンユーなのに…」 私はいきなり田村さんとパトリシアさんから糾弾をうけた。 「別に隠すことなかったんじゃない」 「…そうだよ~」 横では抱きつかれたままのみなみちゃんにかがみ先輩とつかさ先輩が諭すように言っている。つかさ先輩は今にも泣きそうだ。 私はとりあえず皆にみなみちゃんの部屋へ行くように促した。 sideみなみ(ゆたか) 私の部屋には今、私を入れて八人の人がいる。 どうやらみんな私とゆたかを心配して来てくれたようだ。…やっぱりばれてたんだ。 「どうして隠してたの?」 泉先輩が口を開いた。 「あ…えっと…余計な騒ぎを起こしたくなくて…」 ゆたかが答えた。 「私達すごく心配してたんだよ」 「そうでス!」 「別に話してもよかったんじゃない?」 「そうだよ、ゆたかちゃんにみなみちゃん。それにゆきちゃんも」 つかさ先輩がみゆきさんを糾弾した。 「すいません、二人の意思を汲んだつもりでしたが私の間違いだったようですね」 「それで…治す方法は…ないの…?」 泉先輩がつらそうにみゆきさんに質問した。 「すいません。三人で話したのですが私も聞いたことがない状態なので…」 みゆきさんの声が若干しょんぼりしているように聞こえる。 「ゆーちゃん、体は大丈夫なの?」 泉先輩が私に向かって話した……あれ?泉先輩、ゆたかは私じゃなくてあっちなんですけど…。 「…あの泉さん…」 みゆきさんが怪訝な顔で泉先輩に話しかけた。 「何?みゆきさん?」 「泉さん達の言う私達の隠し事はどのような内容なのですか?」 sideこなた みゆきさんが隠し事の内容を聞いてきた。正直ゆーちゃんを問いただしたかったけど、 何だか今のみゆきさんは無視したらやばそうな感じだったので答えることにした。 私が話した後、ゆーちゃんにみなみちゃん、みゆきさんは唖然としていた。…え?どうしたの?何か変なこと言った? 「わ、私が死んじゃうの!?」 みなみちゃんが答えた。 「え?いや死ぬのはゆーちゃん…じゃないの?みなみちゃんじゃないでしょ」 「そ、そういえばどうして今日は岩崎さんが小早川さんの名前で反応して、小早川さんは岩崎さんの声で反応してるの?」 ひよりんが尋ねた。そういえば屋上での会話でそんな事あったような…。 「皆さん、小早川さんは死にません。あなた達は大きな勘違いをしています」 みゆきさんが立ち上がって言った。え?どういうこと? 「実は…」 みんながみゆきさんの声に耳を傾けた。さっきまであんなに騒がしかった部屋は静まりかえっている。 「小早川さんとみなみさんは、今心が入れ替わった状態なんです」 一瞬の静寂が辺りを包み込みその後 「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」 私達五人は大きな声で答えた。 その夜 sideゆたか(inみなみ) 「じゃあね、みなみちゃん、高良先輩」 「またね、ゆたか」 「みなさんさよなら」 日がかなり傾き、辺りは少し暗くなっていた。みなみちゃん達はみなみちゃんの家を後にした。 今私はみなみちゃんの体なのでみなみちゃんの家に泊まることになった。高良先輩も一緒に泊まってくれるので安心できた。 高良先輩が真実を話した後、お姉ちゃん達はすごく驚いていた。お姉ちゃんは私に泣きながら抱きついてきた。 ちょっと恥ずかしかったけど、私は嬉しかった。だってお姉ちゃんが私のことすごく心配してくれたのが痛いほどわかったから。 かがみ先輩はお姉ちゃんに何か言いたそうだったけど、泣いているお姉ちゃんを見て何も言わないことにしたみたい。 つかさ先輩も安心したのか泣いていた。田村さんもパトリシアさんも目に涙を溜めていた。やっぱり皆には話したほうがよかったみたい。 あの時のみんなの様子を見て私は思った。 しかしこの状態を治す方法は結局思いつかなかずに、お姉ちゃんの「明日になったら治ってるよ」の一言でなぜか片付いた。 私はみんなが帰った後、高良先輩とみなみちゃんのお母さんと一緒に晩御飯を食べて、その後一緒にお風呂に入った。 二人で背中を流し合ったりしてすごく楽しかったな。 体育で疲れたせいもあってか、お風呂はすごく気持ちよかった。 …それにしてもみなみちゃんの家のお風呂ってすごく大きいんだね。びっくりしたよ。 sideみなみ(inゆたか) ゆたかとみゆきさんと別れて、私達は泉先輩や柊先輩達、それに田村さんやパトリシアさんと一緒に帰宅の途についた。 「あんたねえ、本当にいい加減にしなさいよ」 「あはは…今回はわざとじゃないし許してよ~かがみん」 「上目遣いしても無駄だっつの」 泉先輩の頭上に拳骨が降り落ちた。泉先輩はうめきながら頭を抱えている。 それを見てつかさ先輩はおろおろし、田村さんやパトリシアさんは笑っている。私もついつい笑顔になってしまう。 「それにしてもこばや…じゃなくて、え~と…岩崎さん…?」 「何?」 田村さんはまだ慣れていないようだ。 「今日一日なかなか大変だった?」 「…大変だったけど、すごく充実してた。いろんな人と話せたしそれに…」 「それニ…?」 隣からパトリシアさんが話しに入った。 「…みんなが私達の事をすごく心配してくれているのがわかってうれしかった」 私は言い切ると恥かしさのあまりうつむいた。 「あはは…」 「トウゼンですヨ!」 田村さんは少し照れ笑い、パトリシアさんは胸をはって言った。…あんまり胸を強調しないでほしい…。 「でも本当に安心したよ」 泉先輩が言った。拳骨からは回復したようだ。 「はい…本当にすいません。迷惑をかけてしまって」 「いやいや、勘違いした私も悪いんだし別にいいよ」 と言って泉先輩は笑った。本当に安心したような笑顔だった。…でも私とゆたかはまだ入れ替わったままなんですけど…。 「でもまだ入れ替わった心を戻す方法はわからないまだだから安心できないよ、こなちゃん」 つかさ先輩、ナイスです。 「大丈夫だって、つかさ。一日経てば元に戻るよ」 どういう理論かわからない。 「それはあんたのギャルゲーの話だろ」 …ギャルゲー…ですか…。 泉先輩にかがみ先輩がつっこみを入れた。何だか面白くて私は笑った。 「…ゆた、じゃなくてみなみちゃんも笑ってる場合じゃないでしょ」 「まあまあかがみんや。私の持ってる漫画に、その姿で自分の望んだ事をやれば元の戻るってのが…」 「だからそれは漫画の話でしょうが!」 かがみ先輩の拳骨が再び快音を響かせた。こういうのを見ているとこのままでも悪くない気がしてくる。 私達は駅に着くたびにバラバラになっていき、最後に柊先輩達が電車を降り、泉先輩と家にむかった。 家に着いた私は泉先輩に続いて朝以来にこの家に入った。確か朝のときはすごく焦って大慌てだったっけ…。 私は家に入り、泉先輩は晩御飯の準備を始めたので私も少なからず手伝った。 その途中に泉先輩が「みなみちゃんはいいお嫁さんになるね」と言ってくれた。 すなおに嬉しかったが父親の前ではゆーちゃんと呼んでくれないと怪しまれますよ。 晩御飯が大体できて来た時泉先輩が何かをレンジで暖め始めた。 「…何を暖めてるのですか…じゃなくて暖めてるの?」 すると泉先輩はにんまり笑って「今日食べそびれたお弁当」と言った。泉先輩の晩御飯の量は二食分だった。 そして晩御飯を無事に食べた私はお風呂に入ることにした。 私が脱衣所に入ろうとすると泉先輩が一緒に入ろうと言っていきなり入ってきて服を脱ぎだした。 私は遠慮したがなんだかんだで一緒に入ることになった。湯船はそれほど大きくはなかったが私達二人が入っても十分に余裕があった。 私達は二人でずっとおしゃべりを楽しんだ。 お風呂から上がった私は泉先輩の部屋で勧められた漫画などを読んでいた…いや読まされたと言うほうが的確な表現なのかもしれない。 それにしてもすごい部屋だと思う。壁にはアニメのポスターが貼られ、パソコンや机の周りにはフィギュアが所狭しと並んでいる。 しかも泉先輩はあきらかに男性が好むようなゲームし始めた。やらないか?と言われたがさすがにこれは断った。 ただ漫画は結構楽しかった。そうしていると私…じゃなくてゆたかの携帯が鳴った。ゆたかからのメールだった。 「こんばんわ、みなみちゃん そっちは大丈夫?こっちはとても楽しいよ。チェリーちゃんもなんだかすごくなついてくれてるしね。 今日は迷惑ばかりかけてごめんね。あとありがとう。明日には元に戻ってるといいね。」 私はそのメールに返事を送って部屋にある時計を見た。もう11時だった。いつもの眠る時間を大幅に過ぎていた。 漫画の続きが気になったが私は泉先輩にオヤスミと言い、部屋を後にした。ていうか先輩受験生ですよね、勉強しないといけないのでは? そう思い、私はもう一度部屋に戻って泉先輩に言った。 すると泉先輩はなんとか話をそらそうとしたが結局はパソコンを消して勉強し始めた。 私はそれを確認してゆたかの部屋に戻り、ベットの上で今日一日を思い返しながら眠りについた。 …が明日の学校の用意を忘れていたことを思い出して明日に必要な教科書をカバンに入れて、もう一度ベットに入り今度こそ眠りに落ちた。 明日には元に戻っていることを祈りながら… 次の日 sideゆたか 「う~ん、よく寝た~」 私は大きくあくびをすると周りを見渡した。…あれ?ここはどこ? 私は部屋を出ると隣の部屋からつかさ先輩が出てきた。すごく驚いたような顔をしている。 「あ、あれどうしてかがみが…?ていうかどうして私はここに…!」 つかさ先輩は何かに気づいて走ってどこかへむかった。私もついていった。 つかさ先輩の向かった先は洗面所だった。そこでつかさ先輩は 「えーーーーーー!私がつかさになってるーーーーーー!」 私も鏡を覗くとそこには予想通り私の顔でなくかがみ先輩の顔が写っていた。 「…昨日よりひどくなってる…」 この私の言葉を聞いてつかさ?先輩が私の方を向いて 「え…それって…、あの一応聞きたいんだけどあなた…誰?」 と聞いてきた。 「えっと…小早川…ゆたか…です…」 「ちょっ!ゆーちゃん!?」 朝の柊家に二人の双子?の声が響き渡った。 sideみなみ 「う…うん…」 私が目覚めるとそこは文字通り私の部屋のベットの上だった。 「よかった…元に戻ってる」 私は安心して横を見た…何で私が寝てるの? そして自分の体をよく確認してみた。長い桃色の髪、そして…大きな胸…これって…みゆきさん…。 「う…みゅぅ……ふわ~~…」 隣で寝ている自分が起きた。 「あれ?ここどこ?…確かみなみちゃん家だっけ?」 まさかこの人も… 「あの、あなたは誰ですか?」 私は尋ねた。 「ふぇ?私はつかさだよ~」 外では小鳥があさから美しい音色でコーラスを奏でている。 私は朝からため息をついた。 こうして私達のさらに奇妙な一日が始まった。
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水だ。辺り一面が水、水、水。いや、何も水をぶちまけたわけじゃない。それに風呂場でもプールでもない。 しかしながらここに水があることは至極当然だろう。そしておそらく、これ以上たくさんの水を貯めておける場所は日本には存在しないと思う。 そう、日本最大の“貯水池”、琵琶湖の真ん中に、私たちはいた。 L amour Est Bleu ~マザーレイクと侘寂[ワビサビ]の心得~ 1. 私たちが3年生になって早半年、終わってみればあっという間の夏休みも終えて少しずつ受験に向けて学年全体の雰囲気が殺気立ってきた9月だが、私たちは今一つ目の休戦協定、すなわち修学旅行の真っ最中だった。 今年から修学旅行の行き先が京都・奈良から京都・滋賀に変わった。何でも、今年から我が陵桜学園が文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールに指定されたとかで、どうやら理系科目に力を入れなければならなくなったらしい。 その結果文系科目、すなわち日本の歴史に触れるための奈良よりも、琵琶湖の水質などの理系分野に触れられる滋賀県に行き先が変わり、しかもそのついでに修学旅行のコストまでもが下がった。昨年から集めていた積立金の額は例年と同じだったので、余った予算分のボーナスとして、私たちは琵琶湖の外輪船・ミシガンに乗って琵琶湖をクルージングできることに相成ったわけである。 正直に言えば文系の私たちにとってスーパーサイエンスハイスクール指定など何の恩恵もなく(積極的に恩恵を享受しようとしなかった私にも責任はあるが)、むしろ文系蔑視とさえ思ったこともあったが、今回限りは陵桜学園が指定されて良かったと素直に思った。 私たちの班は同じ3年C組からいつもの4人。小早川ゆたか、田村ひより、クラス委員長の若瀬いずみ、そして私、岩崎みなみだ。 私は仮にも日本海運の先駆者・日本郵船の創始者にして三菱財閥の祖・岩崎弥太郎から続く岩崎家の人間だというのに――たとえ分家だとしてもだ――、未だに客船などに乗ったことがなかった。もちろん偶然といってしまえばそれまでなのだが、どことなく今までの18年近い人生を勿体なく過ごしてきてしまったような気がして、だからこそこの生まれて初めて外輪船で感じる大海原(いや、大湖原だ)を心から嬉しく思い、また強く惹かれていたのだ。 「パティちゃんもいれば良かったのにね」 甲板の私の隣で、私と同じ風に当たっているゆたかが小さな声で言った。 「それは、言っちゃダメ」 「……ごめん。ちゃんと空港でお別れしてきたから、だよね」 「そう。帰ってしまっても友達だけど、すがりついてはいけない」 そうだ。今年の3月に、パトリシアさんはオハイオ州に帰ってしまったのだった。彼女は埼玉県の姉妹友好州であるオハイオ州からの交換留学生で、留学期間が元々丸1年の予定だったことも知っていたから、いつかは別れの時が来ると頭では分かっていたつもりだったが、いざ春になってみるとやっぱり寂しかった。本人の前では泣くまいと決意を固めて羽田空港まで皆で見送りに行ったのに、最後の3秒、彼女がゲートの向こうに消えてしまう3秒前、涙をこらえることが出来ずに泣き出してしまった。パトリシアさんにも、そしてゆたか達にも、私が初めて見せた涙だった。 「うん、でも写真は送ってあげたいな」 「田村さんがいっぱい写真撮ってる。きっと喜ぶと思う」 「そっか。やっぱり田村さんが一番仲良かったもんね」 「そう……姉妹みたいだった」 田村さんは外輪船に乗る前も乗ってからも、常にカメラを首から下げて写真を撮って周っている。それでも写真に追われることなく修学旅行を楽しんでいるようなので、私が心配することはないだろう。 この船の名前から分かるように、滋賀県の姉妹友好州はアメリカ北東部のミシガン州である。パトリシアさんの住むオハイオ州の北隣にあるので、ひょっとしたら彼女は五大湖なんかも訪れたことがあるかもしれない。きっと日本の琵琶湖とはまた違った湖なのだろうとは思うが、残念ながら私はそこまで予習を深めてこの修学旅行に臨むことは出来なかった。 「ゆたか」 「何?」 「今夜も、みんなで一部屋だっけ」 「そうだよ。明日の夜だけ二人部屋」 「……そう。ありがとう」 昨日の早朝に幕を開けた修学旅行で、新幹線から古都に降り立った私たちは京都駅からほど近い清水寺と金閣寺に行った。今日は滋賀県の大津港からミシガンに乗ったあと、琵琶湖博物館で琵琶湖の歴史や生態系について学び、明日は東山の京都市動物園や琵琶湖疎水と知恩院と南禅寺、そして最終日は嵐山と嵯峨野へ行き、北野天満宮で合格祈願をしてから新幹線に乗って東京まで戻る、というのが今後の予定だ。かつてのみゆきさんや今の私のような東京都民も陵桜学園にはわずかながら居るので、希望すれば東京駅からバスに乗らずに現地解散することも許されていた。 もうすぐこの外輪船は、出発地の大津港とは対岸に位置する烏丸半島の琵琶湖博物館に到着する。私はゆたかに行こう、と小さな声で下船を促した。また大津港まで戻ってくる時に、湖の風に吹かれることにしよう。 2. 滋賀県立琵琶湖博物館は、全国でも珍しい、淡水湖をテーマにした博物館である。日本最大の湖をテーマにしているだけあって(そして世界でも屈指の歴史ある湖でもあるのだ)その展示品のボリュームも計り知れない。琵琶湖の歴史や、その周辺に生活していた人々と琵琶湖との関わり、“近畿の水瓶”として琵琶湖が果たしてきた役割などなど、学校の地理の授業でも生物の授業でも到底及ばないほど専門的な展示室を、私たち4人は知的好奇心とカルチャーショックを両手に抱えながら周った。さっきミシガンの甲板にいた時は、ここは海でもおかしくないとさえ思ったのだが、東西両方に岸があること、そこに橋がかけられていること、そして両岸の向こうにそれぞれ山々が連なっていることから察するに、これだけ巨大でもやはり琵琶湖は湖なのである。 この琵琶湖博物館の最大の見所は、琵琶湖の水質と生態系を再現した水槽を“くぐれる”水族展示室である。厚さ数センチのガラスで水槽下部をトンネルが貫いていて、まるで湖底を歩いているかのように水槽を見上げることができる。 「ねぇ岩崎さん」 「どうしたの?」 私より少し後ろを歩いていた若瀬さんが話しかけてきた。 「岩崎さんこういうとこ来るの?」 「……博物館とか?」 「っていうか、水族館とか」 「ひとりでは来ない、かな」 「だよね……私も中学の修学旅行で美ら海[ちゅらうみ]水族館行ったきりだわ」 「どうだった?」 私も沖縄に行ったことはあるが、残念ながら美ら海水族館を訪れる機会には恵まれなかった。水族館なんてどこでも同じと思ったら、意外と各水族館によって売りが違ったりするのだ。 「美ら海?海水魚ばっかりでここと全然雰囲気違うわよ。こっちの方が変わってるのかな?淡水魚だから派手じゃないけど、いろんな奴がいて面白いよね」 「うん……私たちもそうかな」 「まあ、確かに私ら4人は派手ではないかな、失礼を承知で言えば」 「いや、そんな意味じゃ」私は慌てて失言をフォローする。 「あはは、分かってるよ。岩崎さんそんなこと言う人じゃないしね」 「ごめんなさい……」 「謝りなさんなって。癖になるよ?」 「……ありがとう」 若瀬さんは私の背中をバシバシ、と叩いた。普段よりいささかテンションが高いのだろうか?修学旅行中だからはしゃいでしまう気持ちはよく分かる。分かるけれど、少しだけ背中が痛かった。 ゆたかは田村さんと一緒に、その背中が見えないくらい、私たちよりも前を歩いている。私と若瀬さんは一度展示物に見入ってしまうと周りが見えなくなってそのまま置いてけぼりを食らうという大変間の抜けた点が共通していたようで、私はゆたかに、若瀬さんは田村さんに、それぞれ自分たちのことは気にせずに先に行くように言っておいたのだ。 「しっかしアレだね、あの子らちゃんと展示物見てんのかな」 「うん……急ぎ足のようでも、あれでゆたかはちゃんと見てるから」 「問題は田村さん、か」 「田村さんのことは未だに分からないことがいっぱいあって……」 「見当つかないの?」 「うん……ごめん」 「いやいや、私だってそうよ。仲良くしてる私らがこんなこと言うのも何だけどさ、あの子のことは正直よく分からないわ」 「若瀬さんでも?」 「いやいや、あんたらの方が付き合い長いんじゃないの?とにかく謎めいてるっていうのかな、冗談で自分でわざと作ったキャラがあるせいで、本心があんまり見えて来ないのよね。本人の性格の中に、“私とはこうあるべき”っていう形が出来てるから」 「そう……確かに、時々距離を感じることはある」 「でしょ?これは私がこの1年半彼女を見てきた推測でしかないんだけど、多分、自分は当事者より傍観者でいたいタイプなんじゃないのかって。だから私たちにもある程度は歩み寄って来てくれるけど、一定ラインよりも内側には足を踏み入れまいとしてる。例えばあなたと小早川さんみたいな、お互いが不可欠なくらい親密な関係っていうのが苦手なんじゃない?」 それなら、田村さんは一体誰を心の支えとして生きているのだろう。考えようと思ったけれどやめにした。そんな無粋なことをして気分を盛り下げたくない。 「まあ、何にせよアレだわね」 「……何?」 「田村さんが一番周りが見えてないタイプだし、あとでちゃんと展示見たか聞きただしとかなきゃいかんわ」 「そう」 ただ一つだけ言えるのは、田村さんだって私たちには不可欠だということだ。私もゆたかも、深く思いつめて全体が見えなくなったり必要以上に悩んだりすることがある。そんな時に田村さんはいつも、私たちの重荷を下ろすために手を貸してくれるのだ。1年生の頃の桜藤祭のチアダンスや長距離走の大会なんかがその最たる例で、私がゆたかへの接し方に悩んでいた時に彼女が解決策を示してくれた。 だから決して彼女はこの水槽の水ではなく、私たちと同じ魚の一員であると私は思う。同じようにそばにいる人であっても、彼女と私の間に妙な距離を置くのはやはり、あるべき姿ではないと思うのだ。 3. 「岩崎さんって意外と頭にタオル載せるの似合うよね」 「え……」 「あ、本当だわ。また岩崎さんの新しい魅力はっけーん」 「これは写真にしたら売れるなぁ……いろんな意味で」 頭に手拭いを置いた人たちの写真集なんか見たことも聞いたこともない!あと私はグラビアアイドルなんかじゃないからこんな写真撮られても……需要あるのかな。ふと、ゆたかの居候先の小さな先輩の顔が浮かんだ。そういえば需要が何だとか言っていたな。ずいぶん前の話になるけれど。 修学旅行2日目の夜、私たちは昨日と同じような、京都のとあるホテルの4人部屋に泊まることになった。部屋にあるお風呂は欧米型のユニットバスだけだったので満場一致で大浴場への突撃が可決され、私たちは同じ陵桜の他の生徒たちと同様に、残暑厳しい9月にしてはやや熱めの41℃のお湯に1日の疲れを溶かし込んでいる。 「ゆたか、熱いから気をつけて……」 「ん、ありがと」 「やっぱり岩崎さんは優しいッスよね。見てて妬けるよ、ねぇ委員長?」 「これこれ、あんたが妬いてどうすんのさ。そりゃ私も……ちょっとはうらやましいけど」 珍しく若瀬さんが委員長としてではなく、いち高校生の若瀬いずみの主観での率直な感想を話してくれたので、私を含めた4人は珍しく皆吹き出すように笑った。ゆたかも少し苦笑いを見せている。 でもよくよく考えたら、いくら体格差があるとはいえ、ゆたかを膝の上に座らせて後ろから抱き締めるのは良くなかったかもしれない。私はこうやってゆたかを落ち着かせるのが好きで、また私もこれをやると物凄く落ち着くのだ。 「確かに、もうあんたら結婚しちゃえよ、って思うことは多々あるわね」 また若瀬さんがおかしなことを言う。お湯の温度が割と高かったが、ひょっとしてのぼせてはいないだろうか? 「でしょ?もう傍から見てると面白いというか、微笑ましいというか」 「みなみちゃん、これは喜んだらいいのかな」 「……悪い気はしない、たぶん」 ずいぶん遠回しではあるが、仲がいいことを良く言ってくれているのだから、実のところ私は結構嬉しかった。こうやってからかわれるのも悪意がなければなかなか楽しい。 「うーん、でも2人は多分一生仲良くやっていけると思うよ」 「そうね。そういう意味で言えば確かに妬けるわ」 「……ありがとう」 「うん、私はみなみちゃんずっと大好き。大学に行って疎遠になるなんて考えられないよ」 自分の顔が赤くなっていくのが分かった。きっとお風呂のせいだけれど。 確かに卒業までのタイムリミットが近付いているから、受験までの残り日数においても、思い出を残す最後の機会としても、1日1日が大変貴重に感じられる。今になって、と言われればそれまでだが、最近の私は何だって楽しんでやろうと思うことにしている。駆け込み需要みたいなものではあるが、ゆたかやみんなと同じ教室で毎朝顔を合わせて同じ授業を受けて一緒にお昼ご飯を食べて春日部駅まで肩を並べて帰ることが出来るのは、泣いても笑ってもあと半年しかないのだ。無論みんな平等にいつかは卒業する日が来ることは分かっていたけれど、私もいざそれを実感するようになると、もう卒業まで時間がないのだということをひしひしと感じる。 「みなみちゃん……上がりたいんですけど……」 ゆたかの小さな声で目が覚めた。目が覚めた?熱いお湯にのぼせたのは私の方だろうか、どうやらゆたかの方に頭を載せたまま惚けてしまっていたらしい。少し意識のなかった時間がある。私は慌ててゆたかの華奢な身体から腕をほどいて、自分も風呂から上がることにした。 「ふう……お風呂も入ったし、おいしいバイキングも楽しんだし、やることなくなっちゃったね」 4人でホテルの自室に戻り、一番最後に部屋に入った田村さんは開口一番こんな台詞を口にし、そこに若瀬さんがこんな一言を放った。 「いやいや、お楽しみはこれからでしょ!ねえ小早川さん?」 「え?お楽しみって?」 「頼んでもないのに親切な返答ありがとうさん!修学旅行の夜のお楽しみと言ったらアレしかないでしょ?」 「ああ、アレね。アレだよね」 田村さんが答える。ああ、あれか。さすがの私も薄々分かってきた。本当にこのメンバーでやるのか。 「そう、じゃあやると決まったらほら、ジャンケンでローテーション決めて」 順番はすぐに決まった。みんなから一体どんな話が出て来るのかが楽しみで、私はまるで後に歴史に残ることが間違いないであろう名演説を目にする3分前のような気分だった。オバマ大統領の就任演説を待つ米国民はきっとこんな気分だったのだろう。 掌編1. みんなもう知ってると思うけれど……私は中学3年生の春までピアノを習ってて、自宅で個人でピアノレッスンをしてる先生に1対2で指導してもらってた。その丸10年間ずっと一緒にレッスンしてた子がいて、私の数少ない幼馴染みで、私と違って明るくてちょっとやんちゃな子で、学校は別々だったけど、よくレッスンのあとに2人で晩ご飯食べに行ったり、それぞれの家に行って自分の作曲した曲を聴かせ合ったり、発表会で連弾したりもした。 高校受験でピアノをやめる寸前の最後の発表会の前の日の夜に、私の家に彼が来て、不安だから一緒にいさせてくれっていうから、私の部屋にいたんだ。 ずっと手をつないで私の部屋のベッドにもたれて、揃いも揃って座ったまま寝てた。次の日は土曜日なのに朝の6時半に目が覚めて、朝からピアノも弾けないから2人で散歩をした。確か高校はどこを目指すかとか、ピアノはまだやるのかとか、そんなことを話してたと思う。 そのままお互いの家に帰って、発表会に行って、発表そのものは意外なくらいあっさりと、不思議といつもの練習と同じように弾くだけで終わった。 全てを終わらせた後、今度は彼の家に呼ばれて、10年間の最後のわがままだから明日1日だけ自分の彼女になってくれ、って言われて。日曜日に2人だけで横浜まで遊びに行って、カップルみたいにいろんなところを回って、ランドマークタワーの展望台から夕方の海と港町を眺めて……彼に抱きしめられて、そのままキスまでされた。最後のわがままってこのことだったんだな、って思ったし、全然嫌な気持ちじゃなかった。それはたぶん、女として私を見てるってことを、あの子が初めて形にして表してくれたからだと思う。 私はその時は恋愛感情があったのかどうか分からなかったけど、ひょっとしたらあの子のことが好きだった自分に気付いてなかったのかな、って思った時には、もう高校生になった後だったから……。 掌編2. 私に兄ちゃんが2人いるのはみんな知ってると思うけど、下の兄ちゃんの友達で、私のこともけっこう可愛がってくれてた人がいたんだ。中学で私が入った部活のキャプテンだったから、私が入部したその日からは先輩・後輩の関係になって、昔と同じようにはいかなくなった。 でも運動部なのに上下関係が緩い部活でさ、「先輩の言うことは絶対!」みたいなことは全然なくて、疑問に思うことやおかしく感じたことはどんどん言ってくれ、っていう優しい先輩だった。でもなんて言うか、引っ込み思案で照れ屋な先輩で、「先輩とかキャプテンとか呼ばれるのは違和感あるから、部活中じゃなかったら昔みたいに呼んでいいよ」って言われたんだ。だから私もそうしたんだけど、これがけっこう楽しかった。部活してる最中は控えめながらも真剣な顔になるのに、部活じゃない時はちっちゃい頃みたいに頭を撫でられたりしたよ。今から思えばヘンな人だよね?でも,もううちのバカ兄貴どもはどうしようもないけど、こんな兄ちゃんならいてもいいかなって思った。 その人が部活引退する時に言ったんだ。「君のバカ兄貴のバカな友達が最後に見せ場作るから絶対見て」って。だから私は誰よりも大きな声で応援して、その試合が終わるその瞬間までは目を皿のようにして、先輩だけを目に焼き付けた。 試合には負けたってのに、ものすごくいい顔で笑ってたよ。今まではおとなしい微笑しかしなかったのにさ、何か、燃え尽きたボクサーみたいな顔してた。 戻ってきた先輩にタオルとドリンクを……まあお茶だったけど、それを渡した時に、今までされたことのないように、抱え込んで抱き寄せるように頭を撫でられた。真夏だったし、お互い汗だくで普通そんなことしないもんなのにさ。でもすごく気持ち良かった。昔から、私を誉めてくれる時には頭を撫でてくれたけど、これも最後だと思ったら、みっともないけどいつの間にか泣いちゃってさ。でも先輩はそんな私をずっと撫でてくれてたんだ。最後に「ありがとう」って言われたのが忘れられないよ。 掌編3. うーん、2人ともいい話だったからプレッシャーかかるわ。私は幼馴染じゃない人の話。 私が中学の頃行ってた塾の同級生の男の子がまた賢い人でさ、私なんかが束になってもかなわんような人で、今は某大学附属の高校にいるんだけどね。とにかくその人はすごいなぁって、何か私と違う世界にいるなぁって思ってた。 でも受験生になったばっかりの頃のある休日に、お昼ご飯食べに近くのスーパーに行って、休憩所でサンドイッチ食べてたらそいつが向かいに座って来てさ。確かに休憩所はいっぱいだったし、他に相席できそうな人もいなかったから私のとこに来たんだろうけど、それから毎週末、ご飯食べてるとそいつがまた弁当買って相席しに来るのよ、混んでなくてもね。 でもまあ、お互いに話すようになって、勉強だけじゃなくていろんなことを教わったわ。2人とも意外と朝が弱いとか、近所のマズいラーメン屋の水がレモン水に変わって、水までさらにマズくなったとか、他愛もない会話もよくしてたけどね。 でもそのうち毎日勉強してるのがだんだん面倒でも苦痛でもなくなってきて、むしろ塾に行ってそいつと勉強して夜遅くに一緒に帰る、ってのが楽しくなってきたのよ。 夏休みは毎日一緒に昼ご飯食べて、夜まで授業して自習して、でもお盆は遊べる最後のチャンスだからって説得して市民プールに連れて行ってさ……なのにあいつ、カナヅチだったのよ。なんであんな頭いいくせに泳げないのかね。ちょっと意外だったけど、逆にそれが面白かったわ。ついでに泳ぎ方も叩き込んだしさ。 秋には長い2学期の途中で力尽きて熱出して倒れた私のお見舞いに、わざわざ氷枕なんか作って来てくれたしね。私は風邪うつるから帰れー!って言ったのに、お前が風邪で放っとけるかドアホ!って言われた。 お正月には合格祈願に行って、そこの神社で、お守り代わりに3本セットの鉛筆を買って、色違いだったから1本ずつ交換してさ。ここまでやっときゃ受かるだろ、って言ってたら本当に受かっちゃった。お互いの合格を見て、それからずっと抱き合ってた、っていうところがまあ、話の山場かな。お恥ずかしながら、キスしたかどうかは覚えておりません、ってことにしといて。 掌編4. 最後は私だね。私がまだ実家にいた時の話。 同じ町内の中に私の古い友達がいてさ、昔はよくお互いの家に遊びに行ってたんだ。その女の子には年子の弟がいて、その子も私と一緒によく遊んでた。学校もみんな同じだったけど、先輩後輩っていう意識はなかったなぁ。温和で気配りが出来るから、いつも丁寧に話す子だったよ。 中学2年の頃かな、その男の子と私とだけが、それぞれの家の都合で留守番しなきゃいけなくなった時があったんだ。うちはお姉ちゃんの結婚式の準備で、向こうは両親は親戚のお通夜とお葬式、お姉ちゃんは部活の合宿。だから私の家にその子に来てもらって、晩と次の朝に、私がご飯作ってあげることになったんだ。今よりも全然料理出来なかったんだけどね。 その日の夜に私がキッチンで料理してたら、うちの姉ちゃんじゃなくてこんな姉が欲しかったなぁ、ってその子が突然言ったんだ。 「なんで?お姉ちゃんに不満でもあるの?」 「いや、だってこっちの方が可愛いもん。僕けっこうタイプだよ」 「それって、お姉ちゃんにしたいっていうのとまた別じゃないかな」 「どうかなぁ。とにかく今日と明日は僕の姉ちゃんになってくれるんでしょ?」 晩ご飯食べながらいろんなことを話した。お互いのクラスのこと、私の友達でその男の子のお姉ちゃんのこと。最近は身体壊してないかって心配もしてくれた。 寝る時はお客さん用の布団出して別々の部屋で寝てたんだけど、夜中の1時くらいに、落ち着かないから一緒にいたいって言って、私の部屋に来たんだ。私は昔からみんなに迷惑かけてばっかりで頼られたことが少なくて、人に甘えてもらって嬉しかったからかな、今日と明日だけは好きなだけ甘えてくれたらいいや、って思った。 今思えば変な話だけど、2人とも昔の小さな頃みたいに並んで眠った。私より二周りは大きかったから、昔と同じように頭を撫でてくれて、昔と同じように抱きしめられて眠った。私の方が年上だったのに、いつも私をかわいがったりしてたから。 でもその時だけは、まだ一度もしたことがないようなキスをされた。私はいつまでも『女の子』のままだったのに、いつの間にかその子が『男の子』から『男』に変わっていくのを感じたよ。自分でこんなこと言うのも何だけど、今思えばその子はたぶんずっと私を好きでいてくれてたんじゃないかな。今こうやってみんなに話してると、だんだんそんな気がしてきたなぁ。 4. 次の日、私たちは京都市動物園の見学を挟んで、昨日に引き続き琵琶湖についての造詣を深めるべく、東山の琵琶湖疎水記念館にいた。琵琶湖から水が流れ出ているのは本来は一本の川だけだったのだが、この疎水の完成によってさらなる水の供給や、水力発電まで可能になったという。 インクラインという、船を陸上で運ぶための線路が道路と平行に遺っていたのが印象深かった。レンガ造りのトンネルなんかも、武士や貴族の時代とはまた違った西洋の近代化が推し進められた頃の、いわゆるハイカラな雰囲気が独特で、またそれが長い歴史を誇る知恩院や南禅寺のほど近くにあるものだから、東京に遷都されてもなお歴史ある都市としての地位を保っていたことがくっきりと目に見えて新鮮だった。 「岩崎さんはこういうハイカラなの好き?」 「うん、けっこう」 田村さんが私に問う。 「岩崎さんの地元の方にこんな感じのとこないの?」 「横浜まで出ればある、かな。博物館とか、カレーミュージアムとか」 後に気付いたのだが、カレーミュージアムはすでに数年前に閉館していた。最近はこういう施設が入れ替わり立ち替わりで消えていく。 「ふーん、じゃあそこにあの幼馴染の子と一緒に行ったわけだ?」 「え、それは……」 実は田村さんの言う通りで、私は確かにあの日には、洒落たお店なんかではなくて、そういった歴史的な施設や、見て楽しめる施設を回っていた。カレーミュージアムで昼食をとっていたのだが、2人とも食べたことのないカレーにわくわくしていた記憶がある。お互い飾らない、自分と相手に正直な関係だったから、食べ物に対する欲望を少しくらい見せることもためらわなかったのだろう。 「まあ、人生いろいろあるよね。今までも、これからも」 「……でも変わって欲しくないものもある」 「小早川さん、とか?」 「うん、やっぱり卒業して離れ離れになるのは寂しいから……」 正直、あと半年だと思う度に胸が苦しくなる。だからといって考えないまま逃げ続けられるものでもないから、私は仕方なく目の前に迫る現実と向き合っているのだが。 「いや、意外と大丈夫だよ。泉先輩とか高良先輩みたいに、何だかんだでまだまだ一緒につるんでる人もいるしさ。うちの兄貴だってそうだし」 「そういうものかな?」 急にみゆきさんの顔を思い出した。そういえば去年から髪型を変えたのだ。でも今でも昔のメンバーでよく遊びますね、と言われたこともある。 「まあ、お互いに仲良く居続けようと思うなら、だけどね」 「それは、大丈夫。ゆたかとはずっと一緒にいたいと思ってるから」 「だろうねぇ。私も太鼓判を押すよ。これだけ愛されたら小早川さんも幸せだよね」 「田村さんも、私には大事だよ……」 「私?私は今まで2人に助けられてばっかりだったよ。もうお世話になりっぱなしだし」 「そんな……いつもいろんな相談に乗ってくれてたのに」 「ああ、それは野次馬根性っていうの?老婆心っていうかさ、何か見てて放っとけないんだよね。2人にはずっと仲良くしてて欲しいし、そういう幸せそうな岩崎さんと小早川さん見てるのが、ここ2年くらいずっと趣味の一環になってるんだよ」 「趣味?」 「そう。こっちは好きでやってることだからさ、私としては義理を感じてもらう必要は全然ないわけよ。パティもそうだったけど、人の幸福でご飯が美味しくなるタイプだね私は」 「……何、それ」 私はわざとぶっきらぼうに聞き返した。それでも田村さんなら、きっと昔と違うリアクションをしてくれるはずだ。 「何かまだ会ったばっかりの頃の岩崎さんみたいだね。どしたの急に」 「別に、何となく……」 「そんなこと言って、実は全然怒ってないんでしょ。もう今は照れ隠しなの分かるよ。前は小早川さんしか分からなかったけどね」 「……バレた?」 こんな風にいつもと違ったことをしても、田村さんは笑い飛ばしてくれる人だ。このポジティブな性格に救われたことも多々あった。田村さんは、岩崎さんも面白くなったね、と言ってまた少し意地悪な笑みを見せた。この人がいてくれたから、私はどんな悩みでも乗り越えて来られたのだと思った。 あとでもう一周、記念館を周ることにしよう。展示物を見ていないのはどっちだ。 5. 「みなみちゃん、温泉行こう」 修学旅行3日目の夕食はとある旅館での京野菜料理が中心だった。普段なかなか食べられない高級食材だ。お母さんの料理も美味しいけれど、家で食べている食事とは味が全然違った。 皆で座敷で夕食を食べ、部屋に戻ってきて明日の準備を終えたゆたかは私に温泉に行くことを促した。私はまだ少し荷造りが終わっていなかったので、5分だけゆたかに待ってもらった。 昨日は大浴場だったが、今日は小さな露天風呂だった。厳密には温泉ではないのだが、私立高校の修学旅行というのは妙に豪華だ。1日の疲れを洗い流して、私はまたゆたかよりも先にお湯に浸かった。 ここからは見えないが、どこかで水が流れているのか、鹿脅し[ししおどし]の音がする。15秒に一回くらいだと思うが実際のところは分からない。 ゆたかが私より少し遅れて洗い場から露天風呂の方へと歩いてきた。昨日は何事もなかったが、ゆたかが足を滑らせることのないように、私は彼女の足元に注意を払った。 「修学旅行、明日で最後だよね」 ゆたかは私の隣で岩肌に背中を預けた。9月だが今夜は涼しい。肩から上だけにひんやりとした風を感じる。 「うん」 「みなみちゃんはどうだった?やっぱり楽しかった?」 「うん、また来たい」 「私も。京都に来たのは初めてだったけど、何もかも違うね。実家とも、幸手とも、もちろん春日部とも」 「ゆたかはまた来たい?」 「そうだね、出来ればみなみちゃんと2人で、かな。時間の都合で見られなかったところもあったし」 「じゃあ、また来よう。卒業したら」 「うん。ずっと友達だもんね」 私がゆたかからその言葉を聞く度に、私は計りがたいほどの安らぎを覚える。私たちは親友だと、確かめ合えるという安心感。それは今までとこれからの私を支えてくれるものなのだろう。 「ゆたか……おいで」 私は昨日と同じように、ゆたかに膝の上に座ることを提案した。この露天風呂はけっこう深いから、今のゆたかはあまり落ち着いて座っているようには見えない。むしろ溺れないように半分立っているような感じだ。 まっすぐ伸ばした私の脚の上に座ると、ゆたかは私と同じ肩の高さになった。普段こうやって同じ目線でいられる機会はあまりない。私はまた昨日と昨日と同じように、ゆたかを抱きしめて目を閉じた。人を抱きしめている時が一番落ち着くというのもおかしな話だ。ただ少なくとも田村さんや若瀬さんは私の変わった部分――あまり他人様には聞かせられない部分を知っている。 「ねぇゆたか、私たち、ずっと友達だよね」 「もちろん。どうしたの?」 「うん……あと半年で卒業だと思うと、やっぱり不安で……」 「そんな、仲悪くなっちゃうわけないじゃない。変なみなみちゃん」 「変?」 「やっぱり変じゃない、かな」 「……どっち?」 「うーん……分かんないや」 分からない?ゆたからしくない。珍しいこともあるものだ。人一倍何かを知ることに喜びを感じるゆたかが、分からない、とは。 「ゆいお姉ちゃんがたまに言うんだけどさ、世の中には答えのないことがいっぱいあるし、難しく考えなくてもいいこともある。今お姉ちゃんがここにいたら多分こう言うんじゃないかな、『お互い親友でいたいと思ってるんなら、それでいいじゃん』って」 「そう……うん、そうだね」 「私も不安だったけど、それでも今は、これからもずっと親友でいられるのかな、って思うんだ。人も世界も変わっていくけど、変わることだけが大事なんじゃないもん。変わらないでいることもきっと、同じくらい難しくて、同じくらい大切なことなんじゃないかな」 「変わらないこと?」 「そう。私たちがずっと変わらないこと」 「変わらないこと、か……」 私は両手で少しだけお風呂のお湯をすくって、ゆたかの頭にかけた。なんでそんなことをしたのかと言われれば、それこそ何となくとしか言いようがない。ゆたかは目の前に自分の前髪が落ちて鬱陶しかったのか、髪を全て後ろに流し、私が初めて見るような髪型になった。ゆたかはどんな髪型になっても、やはりゆたかだった。 水というのもその形を自由に変え、また変えられるけれど、どんな形を取っても、やはりそれは本質的には水なのだ。氷は冷たいしお湯は温かい。蒸気になれば機関車なんかも動く。今日の疎水のように、水力発電にも流れる水や滝は必要不可欠で、それでも極端に言えばそれらは全て水である。 私たちが卒業して離れ離れになって、たとえ歳を重ねたとしてもやはり私たちは私たちなのだろう。だからきっと本質は何も変わらない。 でもそばにいられないのは寂しいな、と思う。だからあと半年間はこうやってそばにいたい。急にゆたかが恋しくなる時もきっとあるのだろう。そんな時のために、私はゆたかをまた強く抱きしめた。ゆたかは何も話さず、じっと目をつぶったままだ。 ゆたかまで寡黙になってしまったので、途端に辺りが静かになった。相変わらずどこからかちょろちょろと水の流れる音がして、鹿脅しがいっそう高らかに鳴り響いた。 〆 コメント・感想フォーム 名前 コメント いい話だがタイトルバイバイかも -- 名無しさん (2010-12-28 15 46 19)
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こなたの部屋 こなた「ちょっとトイレ行ってくるから適当にくつろいでてよ」 かがみ「ほーい」 かがみ(パソコンでもいじってるか) 画面スイッチON かがみ「げ……」 そこにはエロゲーのエロシーンが かがみ「しかも……」 こなた「おまた……わぁーっ!!」 こなた(消すの忘れてた……) かがみ「何で主人公の名前が私でヒロインの名前がアンタなわけ?」 こなた「いや……これは別に深い意味は……」 かがみ「ふーん、別に良いけど」 その夜の柊家 ただお「性転換なんて認めないぞ!」 まつり「そうよ、何考えてんのよ」 つかさ「ダメだよお姉ちゃ~ん><」 かがみ「離して! こなたが私を求めてるのよ!!」 ゆたか「ホラーはやっぱり怖いよぉ……」 みなみ「大丈夫……怖くないよ……」 ゆたか「(やっぱりみなみちゃんはクールでかっこいいなぁ)」 ゆかり「こう言ってるけど昔はホラー映画とか見せると「オバケ怖いよーみなみ一人でトイレ行けなくなっちゃう~」とか「いい子にするからチェリーに意地悪はしないで」とか言ってたよねぇ?」 みなみ「(そんな昔の話を……ここは冷静に対処しないと)でたらめ言わないでください」 ゆかり「証拠ならビデオテープあるけど見る?」 ゆたか「見ます」 みなみ「(やばい……もしかしたらあれが……)」 ゆかり「あらこれは確かホラー映画見せたあとみなみちゃんを一人にしたときの映像ね」 幼みなみ「みなみを一人にしないで……ヒック……グスン…オバケに食べられちゃう…」 みなみ「(もう駄目だorz)」 ゆたか「(可愛いすぎる…これがおじさんやお姉ちゃんが言ってた萌え……)」 ゆかり「確かこのあと私とみなみちゃんのお母さんとで白い布かぶって……アハハ」 ガチャ 幼みなみ「ししし白いオバケ…もう……ヒック…エッグやだぁ…もうお家帰るーウァーンウァーン」 みなみ「(お母さん、お父さん、先立つ娘をお許しくたざい……)」 ゆたか「(やばいおじさんの言ってた萌え死にを体感してる……テラ……萌えす…)」 ゆかり「まだまだあるみたいね。よかったねみなみちゃん、ゆたかちゃん」 みなみ「(しかたないビデオを壊すしかない)そのビデオ処分します」 ゆかり「みなみちゃん恥ずかしいビデオ集は108本あるから別にいいわよ……ウフフ。それとはいゆたかちゃんビデオ貸してあげる」 ゆたか「あなたが神か……ありがとうございます」 みなみ「諦めよう………」 かがみ「こなた、福笑い知らなかったんだ」 こなた「やったこともないからね……」 つかさ「私は知ってるけど、実際にやったことないや」 みゆき「そうなんですか……てっきり、全員がやっているものかと……」 かがみ「まあ、今のご時世じゃね。仕方ないわよ」 つかさ「こなちゃん、ぼたもちとおはぎの違いはわかる?」 こなた「ぼたもちとおはぎ?」 かがみ「つかさは知ってるの?」 つかさ「ううん……確か時期が関係あったような……」 かがみ「はあ……みゆき、教えてあげて」 みゆき「つかささんがおっしゃったように、違うのは食べる季節だけで同じ食べ物なんですね」 こなた「え、そうなの?」 みゆき「はい。秋のお彼岸にいただくのがおはぎで、春のお彼岸にいただくのがぼたもちなのです。しかし、最近は区別しないで売ったりしている方が多いんです」 つかさ「へー」 こなた「勉強になったよ」 かがみ「最近の日本人はそういうのを面倒がってるからね、いつか日本から鯉のぼりが消えるかもね」 こなた「確かにね~。でもかがみは季節とか関係なくひなあられとか食べてそう」 ガンッ! かがみ「殴るぞ!」 こなた「殴ってから言わないでよ~……」 こなたんちにお泊り会 ―風呂上がり― かがみ「あんたね、もうちょっとマシな格好出来ないの?」 こなた「いいじゃまいか」 つかさ「でも涼しそうで良いね」 こなた「ねー、ゲームしよー。敗者は勝者の言うことを何でも聞くっていうオマケ付きで」 かがみ「別にいいわよ、今日は絶好調なんだから!」 テレビ「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ」 こなた「はっ、やっ、ほっ!」 かがみ(くっ、このままじゃ負けてしまうわ……) かがみ「あ…こなた、乳首見えてるわよ」 こなた「え? 嘘?」 かがみ「隙あり!!」 こなた「あぁー!」 GAME SET! こなた「ずるいよかがみー!」 つかさ「どんなことをしても勝つ女、柊お姉ちゃん!!」 かがみ「なによそれ……」 つかさ「てゆーかこなちゃん…女の子同士なんだし、慌てる必要無かったんじゃない?」 こなた「いや、相手がかがみだからね~」 かがみ「どーゆー意味だ!」 こなた「まぁ、負けは負けだし、何でも言うこと聞いてあげるよ」 かがみ「よし」 かがみ「全部脱げ」 こなた「帰れ」 つかさ「ねえお姉ちゃん。」 かがみ「どうしたのつかさ?」 つかさ「春眠暁を覚えず、だね♪」 かがみ「・・・・それ前にも聞いたわね。いつだったかしら?」 つかさ「えーとねぇ、お姉ちゃんが風邪をひいてみゆきさんがお見舞いに来てくれた時だよ。」 かがみ「あぁ~そうね、そういうこともあったわね。 それよりさ、つかさ。」 つかさ「ん?」 かがみ「学校も始まったことだし、そろそろ春休みモードは抜けた方がいいんじゃない?」 つかさ「あうぅ・・・・いつも起こしてもらってごめんねお姉ちゃん。 明日からは頑張って早起きするよ・・・><;」 こなた「かがみーん! 今週の日曜暇ー?」 かがみ「んー? 特に予定は無いけど」 こなた「じゃあさ映画行こうよ! ここにチケットがあるんだー」 かがみ「良いわよ、なんの映画なの?」 こなた「ふふふ、それは──」 つかさ(ふーん、私は誘わないんだ。そうだよね、こなちゃんにとって私なんかより お姉ちゃんのほうが話しやすいし面白い友達何だよね。 あーあ、私は所詮友達その二とかそのへんの類なんだよねー) こなた「…………^^;」 こなた「も、もちろんつかさも行くよねー?」 つかさ「えぇ! 良いのー!? うわぁー、凄い楽しみだよぉー!!」 かがみ(目で訴えるとは……我が妹ながら恐ろしい子ね……) 友達の二人と姉と一緒に映画を見る約束をしていた私は、携帯電話の時計を確認すると「遅いな」と呟いた。 チケットを買い終えた私達は、待ち合わせの時間になっても現れない二人を、入り口の目立つ位置で待つ。 「二人とも遅いね。メールや電話もないし……なにかあったのかな?」 「うーん……お姉ちゃんは用事があるから遅くなるかもって言ってたけど、ゆきちゃんは連絡ないよね」 「みゆきさんにしては珍しいよね。明日は隕石でも降るかな」 何も疑っていない彼女の言葉を聞いて、私は心の中で謝った。 いつまで待っても二人は来ない。それは既に決まっている。 「ねえ、こなちゃん。私は」 そこまで言って、喉に異常な渇きを感じて言葉が続かなくなる。 緊張と不安、そして今の関係を崩したくないという想いが、用意をしていたはずの私の言葉を歪めた。 「こなちゃんは、好きな人っている? 昨日の夜にお姉ちゃんと恋愛話をしてから、気になっちゃって」 「んー、同年代の男子生徒って子供っぽいし、あんまり興味はないかなぁ……」 私は「じゃあ同年代以外は?」と聞きたい気持ちを抑えて、わかるかもと言って頷いた。 小さなリスクの質問には、小さな価値の内容しか返ってこない。 それでも変に思われるよりはいいと考えていた。 小さな安心だけで、満足してきた。 ――同じ学校に通える時間がもう半年も残っていないと気がつく、昨日までは。 「そろそろ上映時間だよね。暗くなると席がわからなくなるし、仕方がないから私達だけで見ようか」 私を置いて彼女は歩き出す。行ってしまう。今の話の流れでしか聞けないことが、まだあるのに。 「こなちゃん!」 無関係の人間からも注目を集めるほどの大きな声に、彼女は振り返ると周囲を見回して二人の姿を探した。 だけど、どこを見ても二人はいない。 不思議そうな顔をする相手に私は最後の質問をした。 「たとえばだけど、お姉ちゃんが、こなちゃんの事を好きだったら……どんな返事をする?」 それは、好きな人にとって自分の性別が恋愛対象かを調べるための、攻めの質問のつもりだった。 女性が恋愛対象外だと言われても、自分へのダメージは減らせる。安全で賢い問い方だと自分でも思った。 「……ああ、かがみが来ない理由はそれなんだ。でも、そういうのは直接本人から言って欲しかったな」 けれど、現実には完璧な作戦はどこにもなくて、裏目に出る可能性は常に存在する。 「つかさに頼んで探りを入れるなんて、かがみも臆病だよね。かがみの好意を私が拒否するわけないのに」 違う。姉には頼まれていない。 誤解だと伝えようとしたが、悔しさのあまり、訂正の言葉は出てこなかった。 私は泣きそうになるのを必死に堪え、友達として一緒に映画を見るためにいつもどおりの笑顔を作った。 「そうだよね。ほんとバカみたい。こなちゃんが好きなのは、お姉ちゃんに決まってるのに」 「つかさ。売る本はこれで全部?」 「うん。そうだけど、本当にお姉ちゃん一人で大丈夫?」 「大した量もないから平気よ。帰ってきたらつかさの取り分のお金を渡すから、ゆっくり待ってなさい」 つかさは一緒に行くと何度も言ったが、やがて説得に応じて部屋の戸をぱたんと閉めた。 さてと。 ドアが完全に閉まったのを確認して、私は紙袋の中身を漁った。 つかさの買った漫画は私も読ませてもらっていたが、どんな本を「いらない」と思ったのか気になったのだ。 一度は読んでいるはずだから、プライバシーの侵害にはならない。……たぶん。 まあ、つかさなら許してくれるだろう。 そう考えながら一冊一冊を手に取り確認していくと、見慣れない本があった。 「おまじない、ね」 表紙にはデフォルメされた黒猫がウィンクしており、一目で少女向けの本だと判った。 何とはなしにページを捲っていくと、ある項目が目に飛び込んできた。 『好きな人と同じクラスになれるおまじない』 ――くだらない。 おまじない如きで、望みを叶えられるはずがない。 私は乱雑に本を袋に投げ込んでしまってから、今の衝撃で本が傷ついていないかを慌てて確認した。 どれどれ、うん、問題はない。 だけど、念のためにさっきのページも……。 ……まず、二枚の紙に名前を書いて、それで? ふむふむ。 「なにを読んでるの?」 「えっ。ああ、びっくりさせないでよ、まつり姉さん。売る本よ。中古本屋に売りに行く本」 「それで最後に読み返しか。……かがみって、そういうの読むんだ」 「へっ? なっ、ちが、違うわよ。これはつかさの本で――」 「はいはい」 「私が行くついでに、売ってきてあげるだけだから!」 「わかってるって。気をつけてね。姉さーん、ちょっといい? かがみがね~」 「本人を前にして、言いふらしに行こうとするなー!!」 腹黒こなたん こなた「ねえ、みゆきさん。靴の中に十円玉を入れるとニオイがとれるってホント?」 みゆき「はい、本当ですよ。銅でできているものならなんでも良いのですが、一番身近、かつ手頃な大きさなので、十円玉が一番適当とされています」 こなた「いいこと聞いちゃった! みんなに教えてこよっと!」 みさお「ヴぁっヴぁっヴぁヴぁヴぁヴぁ、ヴぁっヴぁヴぁっヴぁ♪」 こなた「お、みさきちだ。おーい!!」 つかさ「こなちゃん、嬉しそうだね」 みゆき「そうですね」 かがみ「いいコト知ったからって、あんなにはしゃいで……意外と可愛いトコロあんじゃん」 みさお「へー、そーなんか」 こなた「今度、試してみれば?」 みさお「よっし、あやのにも教えてやろっかな」 こなた「みんなに教えてあげようよ。ね?」 あやの「ぼ~く~さ~つ~天~使~♪ 血みどろドロドロ○クロちゃ~~ん♪」 みさお「お、噂をすれば。お~い、あやのー!」 ――翌日、生徒玄関―― かがみ「くさくってさー!」 つかさ「あはは! ……あれ?」 こなた「にっしっし~。思った通り、み~んな十円玉入れてるよ」 みさお「ああ、こりゃ二人して山分けだな!」 こなた「って、みさきちいつの間に!? てゆーか、みさきちに教えたのは私でしょ!?」 みさお「なにをー!? アタシも一緒に広めてやったじゃねーか!」 こなた「それとこれとは話が別だよ!」 つかさ「こなちゃんに……日下部さん……」 かがみ「はぁ……アンタらは……」 そうじろう「実はな、かなたもライダーだったんだ」 こなた「お母さんもバイク乗ってたの?」 そうじろう「のんのん。何もバイク乗りだけが ライダーじゃない。騎手もライダーだし ライドってのは跨って乗るって意味んだ」 こなた「跨って?」 そうじろう「そう。あいつ、俺の腰に跨っ …ぐがはぁ!?…いきなり拳は…ぐぐぐ…」 こなた「娘に何話てんのさ!お父さん最低」 そうじろう「…何…勘違いしてんだ?あいつの 指圧の巧さを語ってやろうとしたのに …ぐぉふぉ!?」 こなた「紛らわしい!」 そうじろう「ぐ…はぁ…(頬を赤らめるこなた…萌…え…)」 つかさ「あ、流れ星!」 流れ星「イヤッホオォォォゥッ!!」 つかさ「あー、もう消えちゃった……」 こなた「何をお願いしようとしてたの?」 つかさ「え、えと……」モジモジ かがみ「?」 つかさ「お姉ちゃんやこなちゃんといつまでも仲良くしたいなー……って」 かがみ「つかさ……そんなの願う必要なんてないじゃない」 こなた「そーだよ、私達はいつまでも友達だからね♪」 つかさ「えへへ、そうだよね☆」 こなた「でも、つかさ?」 つかさ「へ?」 こなた「さっきの台詞にみゆきさんが入ってなかったけど、それはどーゆーことなのかな?」ニマニマ つかさ「はぅっ、違うの! 忘れてたわけじゃないよー><」 あきら「……おいしいけどさぁ、1人で食べるぶんにはくどい」 白石「そ、そんな……」 あきら「リスナーのウケ狙わなくていいからさー、おみやげくらいはもっとこうオーソドックスなの買ってきてよ……」 白石「栃木。栃木栃木……うーん、やっぱり餃子ですかね?」 あきら「そーだよ、普通の餃子だったらもっと素直に喜べたんだよー」 白石「まあ、たー……しかに僕もちょっとウケ悪いかなーとか思ったんですけどね、餃子羊羹」 あきら「ていうかさ」 白石「はい」 あきら「その、世界遺産博物館? 誰かと行ったの?」 白石「東武ワールドスクエアです。1人でしたよ」 あきら「そう」 白石「ええ」 あきら「(GW、割とヒマだったんだけどねぇ)……ちぇ」 白石「どうしました?」 あきら「なんでも」 かがみ「よし、予習も終わりっと。…はぁ、みゆきと勉強会開いたり、つかさに勉強教えたり 今日は全然遊ばなかったわね。…お、電話だ。……もしもし?」 こなた「やふ~、かがみん」 かがみ「よう、どうした?こんな時間に」 こなた「どうしたってわけでもないんだけどね?休みももう終わりだな~って」 かがみ「早いわよね、休みの日って」 こなた「今になって考えると、今日1日何やってたんだろうな~って憂鬱になってくるよ」 かがみ「どこにも行かなかったの?遊びとか」 こなた「今日は秋葉でまったり過ごしてきたよ?家に帰ってアニメ観たりゲームしたり…」 かがみ「随分満喫していたみたいだが?」 こなた「まぁね。欲しい物も買えたし、珍しい物も手に入ったし…休み足りなすぎるよ」 かがみ「…まぁ…ね。で、宿題はやったの?」 こなた「かがみ」 かがみ「いや」 こなた「明日休まないでね?」 かがみ「風邪引いて休むわ」 こなた「かがみ、ラノベ作家の○×のファンだったよね?」 かがみ「それが?」 こなた「サイン色紙当たったの。でも…そっか、かがみ明日お休みするんだ。 しょうがない、オクに流すか。…もう二度と手に入らないだろうな、これ。…かがみ、お大事にね?じゃ」 ブチ かがみ「え…あ…ちょ…こなた?…(りだいやる)…もしもし?こなた?」 こなた「…日々のお礼にかがみにプレゼントしようと思ったんだけどね?ぐわい悪いんじゃ」 かがみ「そんな事したらあんたに呪いかけるわよ?」 こなた「…交渉成立で…FA?」 かがみ「…FA…」 こなた「…んじゃ、そういう事だから、…ほじゃ!」 ブチ かがみ「…こなた…GJ!」 翌日 かがみ「あれ?こなたは?」 つかさ「こなちゃん風邪でお休みだって」 かがみ「ヲイヲイ…まぁ…メールでも入れといて…あれ?きてるな 『ごめん、昨日のアレは嘘。本当は私の手書き。テヘ』」 かがみ「……『一生寝てろ!』」 まさかあいつが寝たきりになるなんて、その時は思ってもみませんでした…。 かがみ「こなた、林檎たべる?」 こなた「あ、あ、あぅえうぅ~きゃっきゃ!」 色々あって、BADEND! 白石「しかしホントに機械音痴なんですねぇ」 あきら「だって前に言ったじゃん、携帯よくわかんなくてアドレス全部消しちゃったことあるって」 白石「いや確かに言ってましたけど……そういえばゲーム繋げてないってことはらきすたのPS2で出たあれも?」 あきら「あーもらったねえ! 箱開けてー、おぉー制服だすげーとか言ってたけどゲームは1回もやったことない」 白石「もったいないですよ! すごい面白かったですって!」 あきら「んー。うち来てさー、ゲーム繋いでよ」 白石「はっ……はあ。あの、弟さんに頼んだりは?」 あきら「忙しくてなかなか時間できないみたいでさー。白石くんそれなりにヒマでしょー?」 白石「そ……う、ですか。ええ、考えておきますね」 あきら「ありがとー♪」 P「白石君あのさ、CM編集とかの部分ってちょっと……」 白石「え……ぁ、やば……いですかね」 P「たぶん大丈夫だと思うんだけどね……」 『こなたと不思議な箱』 それは学校帰りのある日。 陵桜学園に通う女子高生、泉こなたは不思議な箱を見つけた。 「なんだろ…この箱…」 黒光りするその箱。なにやらヒモのような物で結びとめられている。 こんなところに突然、箱があるなんておかしい。 何かのドッキリか?それとも拾うことでフラグが立つキーアイテム? はたまた、某国のテロ…? (今なら誰も見ていない…人気のないところへ持っていってこっそり開けよう) こなたは箱を抱えて走り出した。公園の裏へと。 仮に開けたとしても、被害が最小限ですむのならばそれでいい、こなたはそう思っていた。 「それにしてもこの箱…どっかで見たことあるなぁ…玉手箱?」 こなたは箱を裏返した。 「何か書いてある…どれどれ…『こなたへ。開けてみてください 柊かがみ』…かがみん?」 かがみの書いた手紙なら大丈夫かな、と思って箱を開けたその時だった。 「なっ…ゲホッ、ゲホッ…何この煙…本物の玉手箱?」 こなたは玉手箱がどういうものかを知っていた。この煙を浴びたら自分は年老いた老婆になってしまう…。 そんなこなたの予想は、思わぬ形で覆された。 「え…?」 驚くのも無理はない。小さなこなたの身体は萎縮し、さらに小さくなっていく。 そして、全身を覆い尽くす異質な感覚。 「やっ…ちょ…!こ、これなんて…イベント…!?」 そんなことをぼやいている間にも、こなたの身体には変化が起きていく。 肘や膝に刻み込まれていく筋彫り。硬くなっていく身体。 そしてその大きさが6分の1ぐらいの大きさになったところで…こなたはようやく自分に何が起きているかを理解した。 「そっか…私……フィギュアになっちゃうんだ……」 ☆ 「フフフ…大成功。これで一生私のもの。さぁこなた、帰って着せ替えごっこしましょうね~☆」 「ちょ、かがみん苦しい!放せ、HA☆NA☆SE!」 小神あきらの○○ ※パラレル設定です。死にネタ(特に自殺ネタ)嫌いな人はスルー。 まったく、あんたは本当に世話の焼ける奴だわ。 私にここまで来させるなんて。 本当なら、あんたが私のところに来るのが筋でしょって…。 まぁ、あんたがこうなった以上、仕方無いか。 最初、あんたと会ったとき、じゃがいもにしか見えなかった。 こんなのと仕事、ぶっちゃけやってられんと思った。 まぁ、現実にやってられなかったけどね。 でも、あんたは私のわがまま聞いてくれた。 ただ、構ってほしかった私が言ったわがままに付き合ってくれた。 ま、あんたにとっては、猛獣にはエサやっとけばいい程度だったかもしれないけど。 あんたいなくなってからさ、素で絡める人間がいなくなった。 私さ、あんたと会うまで、スタッフにも他の人にもぶりっこ演技してたんだ。 テレビ以外でも自分を偽ってたんだよ。 でもさ、あんたにだけは素を出すことができた。 まぁ、あんたが馬鹿だったからかもしれないけど。 でも………もう私疲れたよ。演技するのも疲れたよ。 今死んだら、多分私は地獄生きだろうね。 だって、富士の樹海に送り込んであんた死なせたの、私のせいだもん。 でも生まれ変わって、どこかで一緒になったら、その時は夫婦漫才でもやろうよ。 私が突っ込みであんたがぼけで。 これですべて言えたかな。 あと、最後のわがまま、聞いてくれるよね。 私の……。 ああ、死ぬのってこんなに痛いんだ…。 ごめんね、大好きな人。さよなら、……大……好きな……人。…みのる。 先日、○●霊園にてアイドルの小神あきらさん14歳が血を流して倒れているところを 通行人に発見され119番通報、すぐに病院に送られましたが、すでに死亡していた模様。 死因は腹部をナイフでメッタ刺しにしたことによる失血死。 発見当初、小神さんの手には血のついたナイフを持っていたため、警察は自殺・他殺両面の線で捜査していたが、 発見現場が先日死亡した状態で発見された白石みのるさんの墓の前であったこと、及び指紋より自殺と断定。 また、通行人が倒れた小神さんを発見した時、穏やかな表情だったといわれている。 Fin 数日前 こなた「ねぇねぇ、今月の28日、何か予定ある?もしよか」 かがみ「28日…あーごめん、その日、神社の仕事で早引きするわ」 みゆき「残念ですが、私も家の用事がありまして…」 こなた「そなんだ(´・ω・`,)」 つかさ「その日、何かあるの?こなちゃん」 こなた「…ううん、何も、何もないよ?」 今日 こなた「ただいま…。今日はお父さん、取材で帰ってこない。ゆーちゃんもお泊まり。私独り。でも… やふー!泉こなたん18歳の誕生日おめでとうー!これで成年指定本もエロゲーも、 誰に臆することなく買える!しかも既に今日、買ってきた!うひひ…楽しみだぜ… そして誕生日といったらケーキ! 苺とチョコのショートとプリンアラモードの、豪華三点盛り!こなたん太っ腹!ひゅーひゅー! これにこうしてこうして…できました!18の蝋燭!これに火をつけて…よし、電気消さなきゃ。 なんか…私に似合わないくらいにロマンチック…消すの勿体ないな。…でも…ふぅ~(消えた!) どんどんどんぱふぱふー!お誕生日おめでとう!私!私!お誕生日おめでとう! …え?あ、あれ?何で?何でみんな…? かがみ「誕生日おめでとう、こなた。びっくりした?」 つかさ「おめでとう、こなちゃん!えへへ、サプライズ?って言うのかな?」 みゆき「誕生日おめでとうございます、泉さん」 こなた「ちょ…みんな…いきなりそれ、卑怯…卑怯すぎるから…」 かがみ「こなた?…泣いてるの?」 こなた「な、なわけないじゃん!も、もう、からかわないでよ…かがみのばか… なんてね。切ない妄想。切なさ炸裂! さて、晩ご飯晩ご飯♪今日は誕生日スペシャルだよ~♪ あ、やば、ケーキぐちゃぐちゃだ!お父さんとゆーちゃんの分なのに」 ろんりーお誕生日(≧ω≦.)こなちゃん 「かがみはどうかしたの?」 朝、靴を履き替えている最中にみゆきとつかさに偶然会ったこなたは、一人足りない事への疑問を口にした。 「うん。風邪をひいたらしくって、家で寝てるよ」 「それは心配ですね。どんな様子でした?」 「わかんない。風邪をうつしたくないからって、ドア越しで話をしただけだから」 暗い顔をするつかさに、こなたは昨日の出来事を思い返して言った。 「そうだ。昨日は新しく出来た銭湯にみんなで行ったじゃん? そこで体重計に乗ってたから、きっと――」 「なるほど。体重を気にされて、精神的に弱ってしまったわけですね」 「そういえば夕食のときのお姉ちゃん、全然ご飯を食べてなかったかも」 つかさは他の二人と同じように納得して笑った。 「あーダメだね。そういうの。ちゃんと食べないと体力付かないよ」 「もしかするとその栄養不足のせいで倒れて、学校を休むことになったのかもしれませんね」 「じゃあさ」つかさは口元に笑みを浮かべながら、二人に提案をした。 「今日の帰りに、おいしいケーキでも買って帰ろうかな?」 「イイネ。遠いけど、みゆきさんも一緒にお見舞いに行かない?」 「ええ、是非とも行かせてもらいます。かがみさんには、食べることの重要性を理解してもらわなければ」 みゆきの言葉に二人が頷いた。 どんなスイーツでかがみを陥落させるかを話し合いながら、三人は教室を目指して歩く。 「そういえば、かがみってたまに体調を崩すよね。いつもそんな感じで倒れてるのかな」 「さすがにそれは無いかと……」 「うーん。でもさ、妹であるつかさは風邪とか滅多にひかないよね?」 「つかささんは人一倍健康ですよね。他人に自慢できるほどに」 「あんまり得してるとは思わない長所だけどね。二人は、不治の病とかに憧れた事ってない?」 「あるある」 「……不治の病に、憧れる?」 「みゆきさんにはわかんないかな。漫画の悲劇のヒロインとかを見て、格好いいと思う感じ」 こなたは詳しく説明をしたが、みゆきは首を傾げた。 「でも、実際にそんな状態になったら辛いだろうし、健康なほうがいいよね」 困っているみゆきをフォローしようと、つかさが言った。 「まあね。たとえロマンがあっても、それは現実じゃないからこそ楽しめるんだろうね」 「そうですね。悲劇は物語の中だけで充分です」 三人が階段を上り終えると、自分達の教室が見えてきた。 「あっ!」 いつもと変わらない光景だったが、今日は一人が転んで倒れた。 「つかささん?」 「何も無い場所で転ぶなんて、さすがは天然」 「えー、私は天然じゃないよ」 「じゃあ、不治の病の伏線を張っているんだ」 「そんな伏線はいらないよ。テレビで百歳の双子を見て、私達もそれを目指そうねって約束してるんだから」 「つかささん。今の発言は、泉さんがフラグと呼んでいるものでは……」 「おおっ。みゆきさんがついにオタクっぽい知識を身につけた。これで完璧だね」 「なに? よくわかんないけど、不吉なものなの?」 本気で怯えるつかさを見ながら、二人は楽しげに笑った。 こんな些細な出来事が、大病の発覚する前触れであるはずがなかった。 かがみの風邪は軽いもので、両親からつかさが余命わずかだと聞かされて倒れた、というわけでもない。 もちろん、みゆきの隣で笑うこなたが謎の奇病をかかえている事もありえない。 だから、いつものように。笑顔で。 一人足りないグループの中で、みゆきはいつもどおりに笑っていた。 「誰?」と不審げな表情で私を見つめながら言ったのは、みなみちゃんだった。 声からして、他人の空似ではないと思う。 田村さんの家の前で顔を合わせたという事を考えても、他の誰かであるはずがない。 「あの、小早川ゆたか……です」 最後で自信をなくして、小さな声になってしまった。 ふざけているだけであって欲しいと私は願ったが、彼女はまるで初対面であるかのように私を見ていた。 「はじめまして?」 「違うよ。ねえ、本当に私のことがわからないの?」 やだ。やだ。やめて。 そんな困ったような顔をしないで。 私が泣きそうになっているともう一人、私がよく知っている人が歩いてきた。 「どうかしたの?」 「お姉ちゃん!」 こなたお姉ちゃんは心配げに私に近寄ってきて、そして、私を通り過ぎてみなみちゃんに話しかけた。 「ちょっと。この子知り合い?」 「……たった今、初めて会った」 私に聞こえないように話しているつもりなのだろうが、声は残らず届いていた。 どうして、二人とも私の事を知らないふりをするの? 私が何かしたのなら謝るから、だから――。 「あー! なんで、もう顔合わせをしてるのさ!」 慌てて振り返ると、そこには私を忘れてしまったはずの二人が立っていた。 「お姉ちゃん……みなみちゃん……?」 「ゆたか、泣いてるの?」 間違いない。この声、この気遣い。私の知っている人に間違いない。 「うわっと。ごめんごめん。ちょっと前に私達と声が同じ人と知り合ってさ、驚かせようと思ったんだよ」 「うう……ひどいよ。私、本当に、忘れられちゃった、の、かと……」 私が二人に抱きついて泣き始めると、そっくりさん達は困った様子でお姉ちゃんに話しかけてきた。 「泉さん。なんか失敗しちゃったみたいだし、今日はとりあえず帰っていい?」 「うん。カツラまで作ったのに、打ち合わせ不足で無駄にしちゃってごめんね。涼宮さん、長門さん」 そうじろう「……はあ……」 こなた「おとーさん。肩凝ってない?肩たたきでもする?」 そうじろう「ん?ああ、頼む」 こなた「ん、しょ……どう?」 そうじろう「気持ち良いよ。昔は力がなくて全然効かなかったけどな」 こなた「むう……」 そうじろう「でも、なんで急に肩たたきなんだ?」 こなた「んとね、こないだ父の日だったでしょ?でも忘れちゃってたからさ……。気付いたのもさっきだし、プレゼントもないけどごめんね」 そうじろう「……いや、思い出してくれただけでも嬉しいよ。あ、もうちょい右……」 こなた「忘れちゃってた分、おとーさんの誕生日は盛大に祝うからね」 そうじろう「楽しみにしてるからな」 こなた「ふふふ……」 こなた「みゆきさんに頼りたくなる理由がわかった」 みゆき「理由……ですか?」 こなた「それはずばり母性! みゆきさんって慈愛に満ち溢れてる人だからついつい甘えたくなっちゃうんだよ」 みゆき「いえ、私はそんな」 こなた「あれかな、お母さんに甘える感じなんだと思うわけだよ。まあよくわかんないんだけどさ」 みゆき「泉さん……」 こなた「お母さんギュッてして~ >ω<. なんちゃtt」 ギュッ こなた「えty」 みゆき「……泉さんのお母さんの代わりにはなれそうにありません。ですが、これくらいなら私でよければ」 こなた「……」 * 5分後 こなた「もういいよ、みゆきさん」 みゆき「あ……はい」 こなた「まさに母だね、聖母だ! 胸の豊かさなんかが特に」 みゆき「はう!?」 こなた「冗談冗談。でもお母さんみたいってのはホントだよ。優しくて暖かくて、ほっとしちゃった」 みゆき「……」 こなた「ね、やっぱりもう一回ギュッてしてよ。――お母さん」 みゆき「……ふふっ。まったく、しょうがない子ですね?」 こなた「親に甘える子供はいい子供なんだよ!」 なんかこう、後ろからふわっと抱きしめてる感じで 白石「らっきー☆ちゃんねる収録終了! おつかれさまでしたあっ!!」 あきら「……」 白石「あら? あの、あきら様?」 あきら「白石さー」 白石「はっ、はい!」 あきら「……いや、やっぱなんでもない」 白石「え?」 あきら「疲れたから帰るわ。1年半おっつらっきー」 白石(おっつらっきー……) * 白石「あきら様!」 あきら「……何?」 白石「何? じゃないですよ。打ち上げ行かないんですか?」 あきら「遠慮しとくわ」 白石「何かあったんですか?」 あきら「別に。じゃーね」 白石「……あきら様!」 あきら「大声出さなくても聞こえるっての」 白石「あ……すいません。あの、1年半ありがとうございました!」 あきら「……久々に素で気楽にやれた番組だった。結構楽しかったわ。あと――」 白石「あと?」 あきら「樹海のこととか、色々……悪かったわ。ごめん」 白石「……や、なんだかんだ言って僕も楽しんでた節ありましたから」 あきら「いいわよ、気遣わなくても」 白石「本音ですよ。そりゃ色々ありましたけど……学ぶことはそれ以上に多かったです」 あきら「少なくともおべっかだけは上手くなったみたいじゃん」 白石「ちょっ、えぇっ……」 あきら「冗談だって。ピュアなのは1年半前と変わらないわね」 白石「は、はぁ……」 あきら「それ、大事にしなさい。ずっとね」 白石「……はい」 あきら「そんじゃ、バイバイ」 白石「あきら様。もし別の番組でご一緒させていただくことがあったら、その時はまたよろしくお願いします!」 あきら「……ふん、いっぱしの顔してんじゃないわよ。まずはこの世界で生き残ることだけ考えなさい」 白石「はい!」 つかさ「『開運ペンダント』……」 かがみ「なに?カタログ?」 つかさ「うん。これ見てたんだ」 かがみ「なになに?『宝くじに連戦連勝』『志望していた大学に見事合格』『胸がAカップからCカップに』etc……」 つかさ「買った人みんなに良いことが起こってるんだって。私も買おうかな」 かがみ(うわ、我が妹ながら騙されやすい……) かがみ「ねえ、つかさ?こんなのを信じるよりも努力した方がよくない?」 つかさ「努力しないでこんなになるんなら買った方がいいんじゃないかな?」 かがみ(チッ、手強いわね……) こなた「あれ?つかさ、何見てるの?」 つかさ「えへへ、これだよ」 こなた「なになに?開運ペンダント……」 つかさ「買おうかな~って思ってるんだ」 かがみ(お願い、こなた!妹を止めて!) こなた「へぇ~。すごいんだね、これ」 つかさ「でしょ?」 かがみ(こ、こなたまで……!?) こなた「でもさ」 つかさ「なに?」 こなた「こんなにすごいのを売ってるのに、なんでこの企業は有名じゃないんだろうね」 つかさ「……やめた」 こなた(これで良かったんだよね?) かがみ(……いや……それは禁句ってもんでしょうが……)
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仕事も一段落をして久々に家でのんびりとできる休日だった。気が付くともうお昼を過ぎていた。これでも寝足りないくらいだったがさすがにおなかがすいた。 そうじろうは台所に向かった。適当に食事を済ませると居間に行った。居間に行くのは久しぶりだった。原稿を書くためにほとんど自分の部屋と台所の往復 しかしていなかった。たまに台所でこなたやゆたかと会うくらいだった。居間でテレビでも見ようとリモコンを探していた。テーブルに画用紙が数枚置いてあった。 そうじろうは手にとって見てみた。風景画のようだ。夕焼けの景色か。こなたは絵心が親の目からもあるとは言えない。するとこの絵はゆたかが描いたのか。 よく見ると赤とんぼが空いっぱいに描かれてる。どこの風景だろうか。この近所にあったか。それとも学校付近なのか。 そうじろうはしばらくその絵を見ていた。するとこなたがドタドタと慌しく居間に入ってきた。 こなた「あ、お父さん、お父さんのカメラ貸してくれないかな」 会うなりいきなり貸してくれときた。何事かと思った。 そうじろう「なんでだい」 こなた「公園の風景を撮りたくてね」 そうじろう「風景なら携帯でも充分だろう、それに風景なんか撮ってどうするんだ」 こなたはそうじろうが持っていた画用紙を取った。 こなた「ゆーちゃんが絵本を描くって言ってね、公園の夕焼けなんだけど、どうしてもイメージどおり描けないって、でもちょっと今調子が良くないんだよ」 そうじろう「だから写真を撮ってやろうと?」 こなたは頷いた。 こなた「携帯だとトンボまでちゃんと撮れない」 そうじろう「トンボ?」 こなた「いいからカメラ貸してよ」 そうじろうの問いを無視するかのようだった。 そうじろう「デジカメなら居間に置いてあるのがある、もっと良いのがいいなら倉庫から出すが」 こなた「あった、これでいいよ」 こなたは画用紙をテーブルに置くとデジカメを手に取り居間を出ようとした。 そうじろう「まだ夕焼けには時間があるぞ、もうすこし経ってからでいんじゃないか?」 こなたは無視し、玄関まで来ると立ち止まりそうじろうの方を向いた。 こなた「お父さんも来る?」 ぽつりと言った。娘に買い物にさえ最近は誘われたことがない。断る理由はなかった。そうじろうは支度をした。 居間にゆたかの絵をおいたのはこなただった。しかもそうじろうに分るように目立つところに置いた。そうじろうは絵を見ていたようだったがこなたの期待したような 反応がなかったからだ。ほんとうはそうじろうの方から誘ってもらいたかった。それなら直接公園に連れて行くしかないと思った。 一方そうじろうの方はこなたがやけに機嫌が悪いと思っている程度だった。 公園に着いた。 そうじろう「公園ってこの公園か?」 こなた「そうだよ」 そうじろう「久しぶりだな」 この言葉を待っていた。こなたは期待に胸を膨らませた。 そうじろう「ここに来るのはかなたと来た以来だな」 そうじろう、父はこなたと一緒にこの公園に来ていたことをすっかり忘れている。 こなた「本当にここに来たの一回だけ?」 念を押すこなた。そうじろうは覚えていない。答えようがなかった。 こなた「こっち来て」 こなたはそうじろうの手を引いた。池の一角に連れてきた。 こなた「お父さん、ここだよ、覚えていない?」 そうじろう「一体なんだ、分らん……」 こなた「覚えてなんだ……私は覚えてるよはっきり、お父さんが私をこの公園に連れてきた時の事をね」 そうじろう「そんな、はずはない……」 こなたは池の水面も指差した。 こなた「ここで傷だらけの赤とんぼが溺れていた、それを助けた、その時のお父さんの悲しげな顔も覚えてるよ」 そうじろう「何時の頃……」 こなた「小学校に入る前、もっと小さい時……その傷ついたトンボ……その子孫達が今、大群になって……」 そうじろうは笑った。 そうじろう「はは、こなた、この公園は化学工場の跡地なんだ、水質汚染が酷くね、トンボどころか魚だって三十年は生息できないと言われている」 こなたは池の中央を指差した。そこには沢山の赤とんぼが水面スレスレに飛び交っていた。 こなた「……かがみ達と来た時の半分くらいに減っちゃった」 そうじろうは息を呑んだ。これで半分。信じられなかった。田舎の田園風景を見ているような光景だった。その時、居間で見た絵を思い出した。 夕焼けに飛ぶ沢山の赤とんぼの絵。 そうじろう「あの絵は、この公園の絵だったのか」 こなた「そうだよ」 そうじろうはかなたとできたばかりのこの公園に来た。綺麗な公園だったが何かが足りなかった。ブランコやジャングルジム、植木や、草花も植えてある。池もあった。 でもなにか無機質な感じがしていた。かなたがこの池に赤とんぼでもいれば夕焼けが綺麗だろうと言っていた事を思い出した。そして池を見に行った時、 池に赤とんぼの死骸が浮いていたのを見た。 こなた「お父さん、この公園の話、ゆーちゃんには話して私には話さなかったね」 思い出している最中、こなたはぽつりと呟くように話した。 そうじろう「ゆーちゃんは何か調べ物をしていたからな……いろいろ質問されてね、こなたは、なにも聞いてこなかった」 こなた「何もって、それが理由なの、お母さんの話はいろいろ聞いてきた、その話は私から聞いた話は少なかったよ、お母さんと来たこの公園、そんなに嫌いなんだ」 そうじろう「嫌いって訳じゃない……どうした、こなたらしくないぞ」 今日はいやに絡んでくる。こなたに話さなかったから焼き餅でも焼いているのか。難しい年頃になってきた。小さい頃はもっと素直だった。小さい頃、 そう思いながら幼い頃のこなたの姿を思い出した時だった。かなたが池に浮いていた赤とんぼの死骸を掬い上げたのを思い出した。 そしてそのとんぼを見ながら、このとんぼがこの公園いっぱいに飛んだ夕焼けを見たいと言っていた。 こなた「お父さん、黙ってるけど思い出した?」 三十年はないと思っていた光景。しかし今となっては三十年が二十年になった所でなんの変りもない。全てが遅すぎた。しかしこんな事を言えばこなたはもっと怒るだろう。 そうじろう「お父さん、仕事で疲れていたんだ……悪いが先に帰らせてもらうよ」 そうじろうは体を公園の出口に向けた。 こなた「お父さん、帰っちゃうんだ……かがみ達と来た時、私は帰らなかった」 そうじろう「もっと調子が良くなったら来るよ、また今度だな」 そうじろうは足を進み始めた。 こなた「お父さん、また今度はないよ、あの池は埋められちゃうかもしれない、そうなったらもう見れないよ」 そうじろうの足が止まった。 そうじろう「何故、あんなに沢山いる赤とんぼをわざわざ消す……しかし、もうお父さんには関係ない話だ」 こなたは思った。かがみ達と来た時の自分と同じだと。 こなた「お父さん、こっち向いて」 そうじろうはこなたの声のする方に向いた。こなたは池の直ぐ近くに立っていた。こなたと目が合うとこなたは左腕を空高く上げて人差し指だけを空に向けた。 こなた「お父さんのとなりにお母さんが見えるトンボはこの指とーまれ」 するとこなたの近くに居た赤とんぼがこなたの指に近づきホバリングをして止まった。丁度赤とんぼはそうじろうの方を向いていた。 こなた「ほら、お父さん止まったよ、このトンボには見えるんだよお母さんが」 そうじろうは笑った。 そうじろう「赤とんぼの習性を利用したな、子供の頃、そうやって赤とんぼを捕まえたもんさ」 こなたは腕を下ろし笑い返した。 こなた「ふふふ、私とまったく同じこと言ってるよ、やっぱり親子だね……指に赤とんぼが止まるのは分ってた、どんな台詞でもいいよね」 そうじろうはこのたの指に止まっていた赤とんぼを目で追っていた。こなたの頭上でホバリングしばらくすると。こなたの頭の上、アホ毛に止まり羽を休めた。 こなたはそれにまったく気付いていない。こなたは話を続けた。 こなた「かがみは私が赤とんぼを助けたのを褒めた……かがみが私を褒めたのはあれが初めてだった、普段は貶しあってばかり、あの時のお父さんみたいに褒めた」 この公園で……。こなたはそうじろうを引き止めようとかがみと来た時の話をしている。しかしそうじろうにはその話は聞こえていなかった。 こなたを褒めた。この言葉がそうじろうの頭に響いていた。 あれは車で買い物に行った帰りだった。こなたが急にトイレに行きたいと言い出した。もうすぐ家に着くからと言ったが我慢ができないと言う。 仕方がなくこの公園の脇に車を止めて公園のトイレに連れて行った。そして車に戻る時、こなたが私に傷だらけの赤とんぼを見せた。そうじろうは思い出した。 たしかに幼いこなたをこの公園に連れてきていた。連れてきたと言うよりは来させられたようなものだった。なんでそんな事をこなたは覚えていたのか不思議におもった。 そうじろうはこなたを見た。まだこなたの頭には赤とんぼが止まっていた。こっちを見ている。そして首を小刻みに傾げている。そうじろうの隣りを見ているように。 こなた言うように隣にかなたがいるかのようだ。 そうじろうは思った。幼いこなたが持っていた傷だらけの赤とんぼ。かなたが掬った赤とんぼと重なった。その当時まだこの池はトンボは一匹も飛んでいなかった。 急にそうじろうは悲しくなってしまったのを覚えていた。それに追い討ちをかけるように幼いこなたは『死ぬって何』と聞いてきた。説明できなかった。 しかしこなたは傷ついた赤とんぼを草に逃してあげた。思わずそうじろうはこなたを褒めた。何も出来ない自分。それ以来この公園の出来事は思い出さないようにしてきた。 そういえばこなたにはかなたの死について正面向いて話していない。二十歳になってからとも思ったが正直今でもまともに話せる自信がない。 自分自身が一番かなたの死に正面から向いていなかった。そう思った。しかしこなたはトンボを逃がした時、すでに全てを知ったのかもしれない。 こなた「ちょっと、お父さん聞いてるの?」 やや怒った口調だった。そうじろうは聞いていなかった。しかしこなたが何を言っていたのかは想像がついた。 そうじろう「……いい友達を持ったな、大事にしなさい」 こなた「え、まぁ、そうする……」 こなたはなにか煮え切らなかった。その時、こなたの頭に止まっていた赤とんぼが飛び出した。それにこなたが気が付いた。こなたは頭を触った。 そうじろう「さっき指に止まったトンボだ」 こなた「黙って見てたんだね、何故教えてくれなかったの」 そうじろう「トンボがお父さんを見ててね、帰るのはまだ早いって言うんだよ……夕焼けを見なさいってね、そう言っているような気がした」 こなた「もうすぐ夕方だね……やっとお母さんの願いが叶うね、赤とんぼの夕焼けが見られる」 ゆたか「おじさん、お姉ちゃん、やっぱりここだった」 二人は声のする方に振り向いた。そこにゆたかの姿があった。 こなた「ゆーちゃん、調子は大丈夫なの?」 ゆたか「うん、もう大丈夫、やっぱり写真じゃ本当の景色は描けないと思って」 ゆたかは画用紙を持っていた。池の近くのベンチに腰を下ろすとクレヨンをバックから取り出した。 そうじろう「クレヨンで色をつけたのか……」 ゆたか「うん、水性、油性は難しいから、クレヨンで色をつけてる、やっぱり子供っぽいかな」 そうじろう「いや、大人でもでもクレヨンを使ってる人はいる、独特な感じを出すためにね、ゆーちゃんの絵にピッタリだ」 ゆたか「ありがとう」 夕焼けの時が来た。ゆたかは画用紙に向かって絵を描き始めた。そうじろうは観た。思っていた以上の光景だった。今日は雲ひとつ無い快晴。 沈み行く太陽がはっきりと見えた。そらが黄金色に染まった。それを背景にして赤とんぼが池の上を大群で飛んでいた。 こなた「さてと、もうそろそろ帰らなきゃ、夕飯の支度もしないといけないしね」 ゆたか「私も帰る」 こなた「絵はいいの、まだ色はついていないみたいだけど?」 ゆたか「うん、色は帰ってからつけるんだよ、頭の中で思い出しながら付けた方がうまく行くような気がするから」 こなた「お父さんは?」 そうじろう「お父さんはもう少しここに居る、悪いな、夕飯の支度手伝えなくて……」 こなた「いいよ、ゆっくりお母さんと、たっぷり夕焼けを観て……行こうゆーちゃん」 帰り道、ゆたかは不思議そうな顔をしながらこなたに質問をした。 ゆたか「お姉ちゃん、あの赤とんぼが大群になるようになったのは何時なの、高良先輩といくら調べてもどこにも載ってなかった」 こなた「私も毎年あの公園に行ってるわけじゃないけど、中学三年の頃はあれほどじゃないけど居たね」 ゆたか「おじさん、あの公園にトンボが居ること知らなかったみたいだけど……もっと早く教えてあげられたような気がする」 こなた「あの公園でお母さんとお父さんが何か関係していたのは薄々分っていたよ、ゆーちゃんの話でかがみもすぐ気が付いたくらいだしね、でも……言えなかった」 ゆたか「どうして?」 こなた「怖かったから……」 ゆたか「怖いって……よく分からないよ」 こなた「お父さんの口からお直接母さんが亡くなったって聞くのがね」 ゆたか「え、聞いてないって……おじさん、私とお姉ちゃんと一緒におばさんの事色々話していたよね?」 こなた「自然に分った、周りの雰囲気とか、親戚の話とか……仏壇があれば自然にね……そう……お父さんは私に話してくれなかった、お父さんはよくお母さんの話を する、でもお母さんが死んだことは話さない、だから私はお母さんはと聞かれると居ないって言うんだ……そう、居ないって、かがみやつかさ、みゆきさんにも 聞かれたときそう言った……お父さんはずるいよ、お母さんとの惚気話ばっかり聞かせて……今でも生きているような話し方でさ、肝心な事は話さない、 だから私の中にはまだお母さんが生きている、話したこともないのに……でも……このままでもいいとも思っちゃうんだよ……」 ゆたか「そうだったんだ……」 ゆたかは気が付いた、先日公園でゆたかに怒っていたのはこの事だったんだと。そうじろうの話を聞いていると確かにリアリティがあった。かなたの性格や こんな時はこんな事をするんじゃないか。そんな事が分る。親戚といえども会ったこともない他人の母親なのに。 こなた「可笑しな親子でしょ、笑っていいよ」 ゆたか「そんな事ないよ、そうゆう話って言い辛いよね、何となく分るよ」 こなた「さっき、それが聞けたとおもったんだけどね、でもお父さんはぐらかしちゃってね……ゆーちゃんとしか話さなくなった」 ゆたか「それならお姉ちゃんから聞いてもいいような気がするけど」 こなた「それもいいかな……だからあの公園にお父さんを誘った……ゆーちゃんの絵を利用しちゃったけどね」 しばらくしてゆたかが思い出したように質問をした。 ゆたか「ところで、公園の池、ひょうたん池の事なんだけど……」 こなた「埋められちゃうって話だね……かがみもどうしていいか分らないみたい、みゆきさんは署名運動するのがいいて言ってたけど……そこまでする気はしない」 ゆたか「絵本が何かの役に立つかな」 こなた「どんな絵本にするの?」 ゆたか「あの公園が舞台、長旅で傷ついた赤とんぼを女の子が助けるの、その赤とんぼの子供達が恩返しするお話だよ」 こなた「……その女の子って?」 ゆたか「もちろんお姉ちゃんがモデルだよ」 こなたの顔が赤くなった。しかし夕焼けのせいでゆたかは気付かなかった。 こなた「なんか恥ずかしいな……」 ゆたか「大丈夫だよ、絵本だから誰だか分からないよ」 こなた「ゆーちゃん、この前なんだけど、怒鳴っちゃって……ごめん」 ゆたか「この前って、かがみ先輩達が居たときのこと?」 こなたは頷いた ゆたか「うんん、気にしてないよ」 こなた達が夕食の準備が終わった頃、そうじろうが帰ってきた。そうじろうの顔はいつになく真剣な顔だった。 そうじろう「こなた、夕食の前に話がある、大事な話だ、聞いてくれるか?」 こなたとゆたかは顔を見合わせた。 こなた「いいよ」 短くそう答えた。 ゆたか「おじさん、私も聞いていいですか」 ゆたかは聞きたかった。いづれ、いつの日か自分も同じ話を聞く、話す時が必ず来ることを知っているから。そうじろうは頷いた。 そうじろうはこなたの目を見ながら話した。 そうじろう「こなた、かなた……お母さんは、こなたを生んだ後、暫くして……亡くなった」 こなた「あれ、おかしいな、ずーと前から知っているはずなのに、もう……高校生だよ……かがみの時で最後だと思ったのに、なんでかな、また涙が出てきたよ…… なんで……なんで、もっと、もっと早く言ってくれなかったの……お父さん……」 こなたは泣き出した。そうじろうもこの言葉をいうのが精一杯だった。二人はその場に泣き崩れた。 ゆたかは二人を見て思った。二人の心の中ではまだかなたが生きていた。そして今本当にこの世に居ない事を確認したのだと。 二人の止まっていた時間、いや、止めてしまった時間が動き出した。これからはお互い普通にかなたの事を語り合うことができるようになるだろうと思った。 公園の赤とんぼはこなたに恩返しをした。絵本のように。ゆたかは潤んだ瞳で二人を見ていた。 …… …… いつもの四人が学校の図書室でいひょうたん池について話していた。 かがみ「署名運動……本気か、こなた」 こなたは頷いた。かがみはこなたの目をみた。ふざけている様には見えない。 かがみ「無理よ」 短くそう呟いた。 こなた「高校生でできるとしたらこのぐらいだよね、他になにか方法あるとも思えないよ、それにかがみが言い出したんだよ、池を守りたいって」 かがみ「確かにそうは言ったけど、署名運動はそんなに簡単にいかないわよ、チラシを配るのとは訳が違う、有権者……つまり大人の署名が必要」 かがみも薄々は気が付いていた。この方法しかないと。踏ん切りがつかなかった。自信がなかった。 みゆき「アキアカネは一年一世代、池が無くなればその池のトンボは全滅でしょう」 つかさ「お姉ちゃんそれでいいの、もうあの夕日見れなくなっちゃうよ、それに標本の虫達もだって悲しむよ」 みゆき「標本?」 つかさ「うん、お姉ちゃんが中学生の時……」 かがみ「つかさ止めなさい、話さなくていい」 かがみはつかさを止めた。 こなた「かがみ、何があったのかは知らないけど私はもう時間を止めるはいやだ、だからやれるだけの事はしたい」 かがみ「時間を……止める」 がみはいままでのこなたとは違う何かを感じた。それよりもこなたの言葉に心が動かされた。 かがみ「……署名運動、やってみてみてもいい、でも皆の意見も……」 こなた「それじゃかがみ、家に来て続きを話そう、もうゆーちゃん、ひよりん、南ちゃんはもう家で絵本の準備をしてるから」 みゆき「日下部さんと峰岸さんにはもう連絡はついています」 こなた「それじゃ一時間後、家で」 かがみは二人を見ていた。こなたとみゆきは打ち合わせしているかのように動き出した。そして図書室を飛び出すように出て行った。かがみ一人図書室に取り残された。 かがみ「なによ、もう決まってるじゃない……日下部と峰岸にいつの間に言ったんだ……」 独り言を言って席を立ち図書室を出た。図書室出るとつかさが待っていた。つかさは苦笑いをしていた。 かがみ「私に内緒で話を進めてたのね、まったく、そらならちゃんと言いなさいよ」 つかさは片腕を上げてごめんねのポーズをした。 つかさ「お姉ちゃんあまり乗る気じゃなかったように見えたよ、だからこなちゃんがね、先に話を進めていたんだよ……でね、今日お姉ちゃんをあの時に戻すって」 かがみ「戻すって……そんな事はない、私は今でもあの池を守りたいと……そんな風に見えた?」 つかさ「最初の頃の意気込みが無くなってから」 確かにそうだった。自分から言っておいて自分からは何も決めようとしてなかった。それどころかこなたの提案を反対した。かがみは黙ってしまった。 つかさ「お姉ちゃん、さっき私の話止めたけど、中学の標本の話、こなちゃんにもう話しちゃったんだ……」 かがみ「……そう、止めること無かったのか、さぞかし笑われたでしょうね……」 つかさ「うんん、笑ってなかったよ、お姉ちゃんってツンデレじゃなかったって言ってた」 珍しいこともあるもんだと思っていた。こなたの大笑いの姿がかがみの目に浮かんだ。 つかさ「こなちゃんがね、喧嘩して競った男の子の事お姉ちゃんが好きじゃなかったんじゃないかなって言ってたよ……気を引くために自由研究で競って…… いつの間にか賞を取ってしまって……お姉ちゃん勝ったから男の子が気を悪くしちゃって……」 かがみ「告白出来なかった……日下部も知らないはずなのに、こなたの奴、あの話だけでそこまで分るならギャルゲーもバカにしたものじゃないわね」 つかさ「えっ、こなちゃんの言ったこと本当だったの、こなちゃんの想像の話だと思ってた」 こなたの感性が鋭いのか、つかさが鈍感なのか、今のかがみにはそれはあまり興味のないことだった。 かがみ「彼との勝負に勝つつもりはなかった、でも日下部と共同研究だったから手が抜けなかった、それだけよ……もう終わった事……」 しかし心の中では終わっていなかった。中学卒業まで何度告白しようとしたか。結局それは出来なかった。それが今でも尾を引いていた。 中学時代は一年しかクラスは同じではなかった。高校も別になり彼との接点は皆無である。自由研究で競うのではなくもっとストレートに『好きです』 と言えば良かった。たった一言なのに。結果が同じならば……どうせ同じならせめて自分の意思を伝えたかった。 黙っているかがみにつかさが問いかける。 つかさ「こなちゃんの話、お姉ちゃん以外には話さないように言われた、私って言わなくていいことまで言っちゃうからって……そんな事ないよね?」 こなたは標本の話をすでに知っているのに図書室ではすこしもかがみを茶化すような態度を取らなかった。しかも標本の話を自分は知らない素振りをしていた。 そんなことより署名運動をしたいと言った姿はとても今までのこなたとは思えないほど大人びて見えた。 かがみ「あいつ、変ったわね……」 つかさ「あいつって、こなちゃんのこと?」 かがみ「そうよ、何があったんだ」 つかさ「……それなら知ってるよ……あっ」 つかさは自分の両手で口を塞いだ かがみ「話しなさいよ」 つかさ「お姉ちゃんが図書室で反対するようなら話しても良いって言ってた……お姉ちゃん賛成したから……話せない…よ」 かがみ「そこまで話して何言ってるのよ、図書室に戻るわよ、それに私は一度反対したから聞く権利はあるわよ」 かがみはただこなたの熱意に流されて賛成したにすぎなかった。こなたの心境の変化の真意が知りたかった。かがみは図書室に戻ろうとした。 つかさ「お姉ちゃん、もう時間だよ、こなちゃんの家に行かないと遅れちゃう」 初めてつかさは言わなくてもいい事の意味を理解した。しかし少し遅かったようだ。 つかさはその場を逃れようとした。かがみは腕時計を見た。 かがみ「こなたの家なら急げば三十分で着くわよ、さあ、来なさい」 こうなったら何を言っても許してくれそうにない。つかさは諦めた。二人は図書室に戻り席に着いた。 つかさ「えっと……この前ね、こなちゃんとおじさんが公園に行ったんだって……」 …… …… かがみ「待たせたわね、私……」 かがみは何もしていなかった事を謝ろうとした。 こなた「かがみ、その先は言わなくていいよ、皆がもう待ちくたびれてる、さーて、主役が来たから始めよう……発起人だからね」 こなたの言葉に思わず涙ぐむところだったが堪えた。 つかさとかがみは約束の時間から三十分も遅れてこなたの家に着いた。つかさの話はそこまで遅れるほど長くはなかった。それなにになぜ遅れた。 それはがみの涙の跡が消えるのを待つのに時間が掛かったからだった。こなたには見せたくなかった。次に泣く時はひょうたん池が助かった時にと決めたのだった。 それからのかがみは率先して意見を言うようになった。そこに迷いはもうなかった。かがみのもう一つ止まっていた時間も動き出した。 数日後、駅前で署名運動をしているこなた達の姿があった。初めは一日に数名程度しか書いてくれる人がいなかった。中には心無い人の非難を浴びた。 学校でも冷かされたりした。それでも彼女達は止めなかった。止めてしまえば池が埋められてしまうから。 署名してくれた人には手作りの絵本が渡された。絵本の資金はそうじろうが出した。絵本に描かれていた夕焼けの風景。赤とんぼの大群。その絵本を見た人の中で 次第に公園にその夕焼けを観に行く人たちが増えてきた。その人たちの中に署名運動を手伝う人々が出てきた。 こなた達は卒業したがそのまま署名運動は続いた。この頃になると非難は鳴りを潜めて署名する人々が一気に増え始めた。 二年後、署名人数は目標を大きく上回った。こなた達は市長に署名簿を提出した。 …… …… こなたとゆたかが公園のひょうたん池に居た。ゆたかが悲しそうに夕日を見ていた。 こなた「ゆーちゃんもう行こう、日が沈んだよ」 ゆたか「お姉ちゃん、もう少し観ていたい」 こなた「そうだね、家でもうこのひょうたん池を見るのも最後、赤とんぼ達にさよなら言わないとね」 ゆたか「うん……さようなら……ひょうたん池……さようなら……赤とんぼ……」 もう時間がないようだこなたは腕時計を気にしていた。 こなた「行こう、ゆーちゃん、ゆい姉さんが待ってるよ」 ゆたか「うん……」 赤とんぼが居ないひょうたん池に別れを告げに来ていた。ゆたかは公園の出口付近でもう一回池に振り向いた。 ゆたか「三年間ありがとう、私は……大学に進学しました……秋になったら……またあの綺麗な夕焼けを見せてね」 池の水面に夕焼けの光が反射して今までにない幻想的な美しさを見せていた。ゆたかはこの町を離れるのを惜しんだ。 今日はゆたかの卒業式だった。三年間住んだ泉家ともお別れとなった。そして四月から新しい生活が待っている。 公園を後にするこなたとゆたかはしばしのお別れに涙をみせた。そして秋にまたこの公園で皆と会う約束をした。 その美しい夕焼けから公園は夕焼け公園と改名された。 夕焼け公園のひょうたん池は人の手で埋められる事はもうない。そして池が無くならない限り赤とんぼも居なくなることはないだろう。 終 コメント・感想フォーム 名前 コメント なんだか色々と考えさせられます 死と向き合うっていうのは人間のとって一番難しい課題なんですよね とにかく素晴らしいSSでした。作者さん本当にお疲れ様でした -- 名無しさん (2010-09-20 10 16 26)