約 632,112 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4250.html
『れみりゃ修行する』 17KB 愛で ギャグ 飼いゆ 姉妹 失礼します ※ 「anko4058 まちょりーになりたい」のキャラが少し出てきます。 ※ めーりん語は翻訳してあります。 チートあきです。 「おねえさま、しね! しねー!」 「うー。いたいんだどー。やめるんだどー」 ぽかぽかとれみりゃの頭を叩く胴付きのふらん。 れみりゃは必死に反撃しているが、ふらんの方が優勢である。幼稚園児のような体格で の殴り合い。身体能力ではふらんはれみりゃよりも上だ。れみりゃでは分が悪い。というか ふらんがほぼ一方的にれみりゃを叩いている。 「平和だなー」 その様子を眺めながら、飼い主の男はのんびりと麦茶を飲んでいた。 れみりゃとふらんのケンカはいつもの事であるし、今更気にするものではない。習性や本 能のようなものである。無理に止めるとかえってストレスが溜まってしまうらしい。殺し合い になることは、あまりない。 「いもうとのくせになまいきなんだどー!」 れみりゃが反撃に出るが、あっさりと突き倒された。 「あはははは! だらしないおにくのおねえさまは、ぶたのようにしね!」 マウントポジションを取り、ふらんは楽しそうに拳を振り回す。 みしり、とれみりゃの顔面に肘が打ち込まれた。 そんなある日。 男の前にれみりゃが正座した。 「うー。おにいさん、おはなしがあるんだど。れみぃはふらんにかちたいんだど。いもうとに やられっぱなしは、いやなんだど」 「ふむ。そう言われてみればそうだな」 男は首を傾げる。 記憶にある限り、れみりゃがふらんに勝てたことはない。それどころか優位に立てたこと すらない。連戦連敗。それは姉のプライドが許さないらしい。 生まれる順番からするとふらんの方が姉だった。余談であるが。 「じゃあ、修行してみるか?」 畳の上に正座をした男と、隣で同じく正座をしているれみりゃ。とある空手道場の練習場 だった。壁には『剛よく柔を断つ』と記された書が掲げられている。 「というわけでオヤジ。しばらくれみりゃを預けたい」 「くくく。そいつは面白れぇな」 男とれみりゃの前に座っている、厳つい男。 空手着の上からでも分かる筋骨隆々な肉体。きれいに剃髪された頭は、その異様な空 気をさらに強めている。手や顔には古傷がいくつも見えた。全身から立ち上る気迫。男の 父親であり、空手の師範だった。 ふらんのれみりゃの関係を手短に説明し、鍛えるように説明してある。 「おねがいしますだど」 父の迫力に気圧されつつ、ぺこりと頭を下げるれみりゃ。 父はれみりゃの細目を見据え、 「れみりゃ。修行は辛く苦しいぞ? 途中で何度も挫けたり泣いたり家に帰りたくなったりす るだろう。だけど、諦めず最後まで頑張ってくれるって、オレに誓ってくれるな?」 「うー。ちかうど」 れみりゃが頷いた。 「ぱちゅりー」 父が声を上げる。 その声に応えるように部屋の戸が開いた。 「よんだかしら、しはん?」 「うーあー!? ばけものー!」 正座を崩し両手を床に付き、れみりゃが悲鳴を上げる。 無骨な筋肉を持つ胴付きのぱちゅりー。まちょりーだった。身の丈二メートル近い長身に 紫色の服がきつくなるほどの分厚い筋肉。巨木、もしくは大岩。そんな表現の似合う体躯 である。腰に黒帯を巻き、袖は無く、スカートの左右にスリットが付けられていた。足とドロ ワが見えているが、色気は無い。むしろ変な卑猥さがある。 まちょりーとしてもかなり規格外の体格だ。 父親の飼いゆっくり兼弟子である。 「バケモノとはしつれいね。ぱちぇはぱちぇよ。むっきゅりしていってね」 のしのしと足を進め、ぱちゅりーがれみりゃの傍らまでやってくる。身長で二倍、容積なら 十倍以上の差はあるだろう。バケモノという表現は間違っていない。 「なかなかかわいいれみぃね。おにんぎょうさんみたい」 無造作に手を伸ばし、れみりゃの頭を掴んだ。 「うあああ!? つぶれるぅぅ!? つぶれるどおおお!」 ぱちゅりーの手を掴み返し、れみりゃが暴れる。 ぱちゅりーとしては軽く撫でる感覚だった。だが、れみりゃにしては万力で頭を挟まれた ようなものだ。実際ぱちゅりーが少し力を込めれば潰れるだろう。豆腐のように。 腕組みしながら父が笑っていた。 「んじゃ、ぱちゅりー。れみりゃの事は頼むぜ? 死なない程度にな」 「わかったわ」 ぱちゅりーが手を放した。 うつ伏せに倒れたれみりゃを見下ろし、 「はなしがまとまったところでさっそくだけど、トレーニングをはじめようかしら。まずはきそた いりょくをつけるために、ぱちぇといっしょにマラソンね」 「まらそん……どれくらいだど?」 「10キロよ」 見上げるれみりゃにさらりと答えるぱちゅりー。 「じゅっきろって……どれくらいだどー?」 れみりゃは冷や汗混じりに男を見る。 10という数字が理解できないわけではない。kmという距離の単位が理解できないわけ ではない。だが、10Kmという言葉は理解できなかった。 男は少し考えてから、笑顔で答える。 「たくさんだ」 「………」 れみりゃが顔を引きつらせる。凄く多いという事は理解した。 「れみりゃ。今になって『やっぱやめる』ってのは無しだぜ?」 父が凶暴な微笑みとともに告げる。いつの間にか右手を持ち上げていた。拳ではない。 親指と人差し指、中指で何かを掴むような形。れみりゃは本能的に悟った。拳よりも危な い手の形。もし迂闊な事を言えば、ここで死ぬ。 「ぜんはいそげ。いくいわよ、れみぃ」 「うーあー!?」 ぱちゅりーに引きずられ、れみりゃは無力に泣いた。 ぱちゅりーのマラソンコースは近所の運動公園だった。マラソンやウォーキングができる ように小さな道が造られている。一周およそ一キロ。コースにはマラソンをしている若者や 犬の散歩をしているおばさんの姿があった。 「むっきゅ、むっきゅ」 両手両足にパワーリストを巻き付け、ぱちゅりーは軽快な足取りで走っていた。 走る度にスリットの刻まれたスカートが翻り、丸太のような足が覗く。 マラソンするまちょりーという光景は異常なものだが、周りの人間は既に慣れてしまって いるので、普通に道を開けたりしている。 「ぅ……」 一方、のたのたと走るれみりゃ。視線は何もない空を彷徨い、足取りもおぼつかない。現 在二キロを過ぎたあたり。体力の限界はとうに越えていた。 「さー、れみぃ。あとはっしゅうよ」 ゾンビのように走るれみりゃを、ぱちゅりーが追い抜いていく。 「あんしんしなさい。たおれたらたたきおこしてあげるわ」 「………」 れみりゃには呻く余力も無かった。 赤い空と広い河原。 その隅の方の石に三匹のゆっくりが腰掛けていた。身体の細い胴付きのぱちゅりー、れ いむ。そしてれみりゃ。川岸に着けられた小舟の横でこまちが一匹眠っている。 「ところであなた、いったいなにをしてここにきたの?」 「まちょりーとまらそんしてたら、ここにいたんだどー。そこからよくおぼえてないんだど……。 ぱちゅりーとれいむはなんでここにいるんだど?」 れみりゃが尋ねる。 「おふとんかけすぎておひるねしちゃったから、たぶんだっすいしょうじょうね」 「れいむはばななのかわさんで、すべってころんじゃったよ。うっかりしてたね!」 「それはさいなんだどー」 ガバッ! 薄い布団をはね除け、れみりゃが起きる。 「なんだどー!? なんかざんすのかわっぽいところで、かいわれだいこんみたいなぱちゅ りーとのうてんきそうなれいむと、しっぽりはなしこんじゃったどー!?」 「むきゅ。おきたのね」 ぱちゅりーが声をかけた。 道場にあるトレーニングルームである。今は人はいない。隅に置かれた椅子の上にれみ りゃは寝かされていた。 横には回復に使ったらしいオレンジジュースの空パックが置いてある。 「………。うー?」 かちゃり、かちゃりと金属の鳴る音。 ぱちゅりーがダンベルを持ち、腕を上下に動かしていた。ウエイトトレーニングらしい。鉄 の棒に巨大な円盤がよっつ付けられている鉄塊。それを両手にひとつづつ。腕が動くたび に留め具が鳴っていた。動きはかなり速い。 「それ、なんキロなんだど?」 椅子に座り直しながら、れみりゃは聞いてみた。 「かたほう80キロよ」 「……はちじゅっきろって、どれくらいなんだどー?」 80という数字が理解できないわけではない。kgという重さの単位が理解できないわけで もない。だが、80kgという言葉は理解できなかった。 「たくさんよ」 そう説明してから、ぱちゅりーはダンベルを床に置いた。 「とりあえず、れみぃは10キロからね。むきゅ。ちょっとかるいかしら?」 近くに置かれていた小さなダンベルを掴む。銀色の棒の左右に小さい円盤をひとつづつ 取り付けたもの。ぱちゅりーが今使っていたものに比べると随分と小さく軽く見えた。 ぱちゅりーはおもちゃでも持つように軽々と持ち上げている。 だが、ゆっくり基準では十二分に重いことを、れみりゃは理解した。 「はい」 ぱちゅりーがダンベルを投げてくる。 「う!?」 れみりゃは目を見開いた。 緩い放物線を描いて飛んでくる鉄の塊。もしかしたら門下生と一緒に鍛錬をする時に軽 いバーベルは放って渡しているのかもしれない。ともあれ、れみりゃにとっては絶対に持て ない代物だ。それを投げつけられた。受け止めたら危険、受け止めなくとも危険。 「どおおおおお!?」 鈍化した時間の中で、れみりゃは滝のような涙を流した。 ダンベルを投げてはいけません。れみりゃとお約束だぞ☆ ぐちゃ。 夕暮れのような赤い空。湖のように広い川。丸い砂利が敷き詰められた河原。石に座っ ている細い胴付きぱちゅりーと普通っぽいれいむ。 その前で、れみりゃは呆然と立ちつくしていた。 「あら、もうもどってきたの? きがはやいわね?」 「おかえりなさい、れみりゃ! ここがきにいったの? ゆっくりしていってね!」 「れみぃ、もうおうちかえるどおおおお!?」 両手を振り上げ、れみりゃは叫んだ。 「むっ、きゅっ!」 勢いよく空を切る正拳。 公園の端っこで、ぱちゅりーが正拳突きをしていた。足元から拳の先端まで流れるように 伝わっていく力。鮮やかな構えから突き出された拳が、重い風切り音を立てる。 「うー……あー……」 その横でぎこちなく正拳突きをしているれみりゃ。全身から流れる汗と真っ青な顔色、焦 点の合っていない瞳、身体は小さく震えている。ぱちゅりーによる鍛錬のおかげで死にか けていた。実際日に十回以上臨死体験を繰り返している。 「ぱちゅりーのくせにおねえさまをいじめるなんて、なまいきだわ。おねえさまをいじめてい いのは、ふらんだけなのに……」 二匹の修行の様子を、ふらんが物陰から伺っていた。嫉妬に歯を軋らせながら。 ふらんがれみりゃを虐めるのは、ふらんなりの愛である。自分以外の誰かられみりゃを 虐める。ふらんはそれが許せなかった。 もっとも、あのぱちゅりーにケンカを売って勝てるとは思っていない。 「こまったわ。おねえさまがつよくなったら、いじめられなくなっちゃう……」 そして最大の問題はれみりゃが強くなることだった。ふらんが見ても無茶苦茶と思える鍛 え方。だらしないれみりゃでもこの鍛錬を続ければ確実に強くなるだろう。れみりゃがふら んよりも強くなっては虐めることができなくなってしまう。 「そうだ」 ふらんはぽんと手を打った。 街外れにある古い日本家屋。日の光が差し込む客間で、男とふらんは座布団の上に正 座をしていた。床の間の壁には『柔よく剛を制す』と書かれた掛け軸が飾ってある。 「というわけで、婆ちゃん頼む」 「それは面白いのう。ふぇっへっへ」 ふらんの前には男の祖母である婆さんと、年老いた胴無しのめーりんがいた。 強くなったれみりゃに負けないように強くなりたい。その言葉を聞き、男が連れてきたの が祖母の元だった。かつては柔術の達人と言われた女傑である。最近でも麓に下りてき た熊を素手で仕留めたりと元気に暴れているが。 「それじゃあ、めーりんや。しばらくふらんを鍛えてやってくれ。まぁ、死ななきゃ何してもい いわ。アタシが直してやるからのう。へっへっへ」 楽しそうに笑いながら、祖母がめーりんを見る。 「わかったじゃお」 頷くめーりん。 「めーりんが、ふらんをきたえる?」 ふらんは眉を寄せてめーりんを眺めた。一目で分かるほど老いている。ここまで老化した ゆっくりはむしろ珍しいだろう。赤い髪は色褪せており、ほぼ白髪だ。帽子に付いた星マー クもくすんでいる。顔にも沢山のシワが入っていた。 「ふらん。そのかおだと、めーりんがつよいってしんじていないじゃお? まあ、とうぜんじゃ お。ろんよりしょうこじゃお、おもてにでるじゃお」 「わかった」 ふらんは立ち上がった。 庭に出てふらんとめーりんが対峙する。 男と祖母は縁側に座って二匹を眺めていた。 「相手はシロウトだ。うっかり殺すんじゃないよ?」 「わかってるじゃお」 祖母の言葉にめーりんが頷く。 ふらんは地面を蹴った。ふらんは単純な身体能力ならゆっくりでも随一だ。胴付き化する ことにより、人間の子供並まで上昇する。そこにふらん種特有の破壊衝動を加えれば、ゆ っくりではほぼ最強となる。 「めーりん、しね!」 めーりんめがけ、右手を振下ろす。五指を伸ばした狩りの動き。 「じゃお」 見たままを言うなら、めーりんがふらんの手に軽く体当たりをした。普通なら。普通のめー りんが相手なら、ふらんの指と爪がその身体を抉り取っていただろう。 跳ね返ってきた衝撃は大きかった。 慌てて後ろに飛退くふらん。 「うあ。ふらんのうでが……」 右手が壊れていた。五指があらぬ方向にひしゃげ、前腕に新しい関節が増えている。肘 もおかしな方向に曲がっていた。裂けた皮から、餡子がこぼれている。右腕は動かない。 これでは治療するまで使い物にならないだろう。 不思議と痛みは無かった。意識が追い付いていないらしい。 「じゃ~お」 ぽよん、と。 めーりんが跳んだ。 ゆっくりと。のんびりと。だが、ふらんの頭より高く跳び上がり、近付いてくる。それは風船 が動くような軽さだった。ぶつかっても痛みもないだろうと思わせるほど。 だが、そこに映るのは明確な死だった。 「もうこんてぃにゅーできなくなっちゃうわ!?」 ふらんは近くに落ちていた拳大の石を左手で掴み、めーりんに叩き付けた。 ガコッ。 粉々に割れた石が地面に落ちる。 ふらんは左手を下ろした。右腕のように目に見えたダメージはない。だが、肩から先の感 覚が全部消えていた。左腕が無くなってしまったかのように。 もし素手で受けていたら、どうなっていだろう。 「………」 唾を呑み込み、ふらんはめーりんを見る。絶対に勝てない。付け入る隙も無い。捕食種と 赤ゆっくり。それほど、いやそれ以上の差だった。理解を超えた圧倒的な強さ。 「これが『き』をつかうことじゃお」 赤い瞳をふらんに向け、めーりんが頷く。 「ひつようなとき、ひつようなすべを、ひつようなそくどでしようするじゃお。そのタイミングを しることじゃお。かんぜんなタイミングをてにいれているなら、もはやそこにはそくどさえもい らないじゃお」 「うー……。おわった……ど……」 道場の玄関に手をつき、れみりゃは肩で息をしていた。流れ落ちた汗がコンクリートに小 さな染みを作る。父の元に預けられてから一週間が立っていた。 「むきゅ。マラソンおわってもうごけるていどには、たいりょくついてきたわね」 れみりゃはぱちゅりーを見る。 最初は途中で気絶していた。だが、今は一応最後まで走り終えることができる。れみり ゃの身体は、この地獄に適応しようとしていた。適応せざるをえない。 ぱちゅりーが空を見上げ、口を開く。 「ふらんがしゅぎょうしているらしいわ」 「う?」 れみりゃは妹を思い浮かべた。 妹のふらん。正確には姉だが、れみりゃにとって年齢は関係なくふらんは妹だ。可愛く元 気な妹だが、理不尽な暴力が玉に瑕だった。いつもいきなり思いついたように殴りかかっ てくるふらん。思い返してみると、久しく殴られていない気がする。 「ふらん、が……? しゅぎょう……?」 嫌な予感がれみりゃの背を撫でる。 その予感は的中した。最悪な形で。 「おばあちゃんのところのめーりんにでしいりしたわ。むきゅ。あのめーりんはぱちぇのらい ばるなの。とってもつよいわよ。ふらんもきっとものすごくなってくるわね」 重機のような腕を動かしながら、ぱちゅりーが獰猛な微笑を見せる。 「それはたいへんなんだど……」 ふらんよりも強くなろうとしているのに、ふらんはさらに強くなってしまう。必死に鍛えても、 ふらんがさらに強くなっていては、意味がない。 ぱちゅりーが大きく腕を振る。 「そうね、たいへんよ。だから、ぱちぇのとっておきをおしえてあげるわ。れみぃにおんそく のせかいをみせてあげる。これでふらんもこなごなよ!」 「おん、そく……?」 音速。 その単語に、れみりゃは嫌な予感しか覚えなかった。 賽の河原にて。 れみりゃは石に座ってため息を付いていた。 「こぶしでおんそくこえるって、むちゃなんだど……」 ぱちゅりーが見せた音速。最大速度が音速に達する無茶苦茶な突きだった。曰く、全身 を無数の関節として加速する。ぱちゅりーが拳を突き出した瞬間大爆発が起り、れみりゃ はまたここに来ていた。超音速拳の余波で吹っ飛ばされたらしい。 「というか、なんでれみぃはこんなことしてるんだど……? れみぃはただ、ふらんといっし ょになかよくくらしたいだけなんだどー……」 れみりゃの前にはこまちが座っていた。横に鎌が置いてある。 「まあ、こまちにはよくわからないけど、あんたもたいへんだねー。まいにちいったりきたり。 いまはてもあいてるしひまだから、ぐちくらいはきいてあげるよ」 「ありがとなんだどー」 「どうしてこんなことになってるんだど……?」 れみりゃは小声で自問した。 一ヶ月半の鍛錬を経て、れみりゃの筋肉は成長していた。ぱちゅりーのような異様な形 ではないが、街路樹の枝程度には逞しくなっている。以前のふらんと戦ったらさほど苦労 もなく勝てる。その程度には成長していた。 「おねえさま、ひさしぶりね」 正面に目を向けると、ふらんがいた。前に見た時よりも一回り細くなっていた。どのような 修行をしたのかは分からない。痩せたとは違う。窶れたわけでもない。鋼鉄を削り、研ぎ、 一振りの刃に変えたような変化だった。 「あのぶたまんじゅうが、ずいぶんとたくましくなったみたいだけど、ふらんはもーっとつよく なったわ。だから、しね! ぶちまけてしね! ごみのようにしね! そしてもげろ!」 ふらんは満面の笑顔で親指を真下に向ける。 ぱたぱたと嬉しそうに羽を動かしていた。 「がんばりなさい、れみぃ! たたきつぶしてやるのよ!」 「おう、れみりゃ。一応お前もうちの看板背負ってるんだ。負けるんじゃないぞ」 れみりゃの後ろの応援している父親やぱちゅりー。 「ふぇっへっへ。試し割の相手としちゃぁ上等じゃないか。捻ってやりな、ふらん」 「ちゅーごくよんせんねんのれきし、そのちからをみせてやるじゃお」 ふらんの後ろでは祖母と老めーりんが応援をしていた。 近くにある運動公園にて、れみりゃとふらんは対峙している。色々あった末に姉妹の決 着を付けると決闘の場が用意された。れみりゃは遠回しに止めさせようとしたが、誰も相手 にせず今に至る。もはや引き返せない。 ただならぬ雰囲気に野次馬も集まりつつあった。 「審判は俺だ」 れみりゃとふらんの間には、飼い主の男が立っている。 「勝った方には洋菓子屋サクヤのカスタードプリンご馳走してやるぞ」 「さくやぷでぃ~んぐ……。ごくり」 出てきた単語に、れみりゃは涎を呑み込んだ。 洋菓子屋サクヤ。近くにある有名なお菓子屋で、さくやがマスコットをしている。そのプリ ンの味は絶品で、遠くから買いに来る者も多い。れみりゃとふらんは一口だけ食べた事が ある。その時はあまりの美味しさに気絶しかけた。それほど美味しいのだ。 「あははは! ぷでぃーんぐはふらんがいただくわ!」 瞳に赤い輝きを灯し、ふらんが牙を見せる。 「わかったど……」 れみりゃは右手を握り込んだ。小指から人差し指まで、緩く握り締める。余計な力は入れ ず、だが気は緩めずに。体内の謎肉が熱を帯びるのが分かった。 「こうなったら、やってやるんだどおおおお! ふらんもたおして、おねえさまのカリスマをと りもどすんだど! それから、さくやぷでぃ~んぐもいただくんだどおおお!」 れみりゃが駆け出した。 胴付きれみりゃののたのた走りではない。しっかりと地面を踏みしめ、勢いよく地面を蹴 り、身体を前へと撃ち出す疾走。小さな羽がなびく。修行の成果だった。 「かくごしろおおお、ふらんんっ!」 「おねえさまああ、しねえええ!」 ふらんが笑った。 過去SS anko4193 BGM 真ゲッターロボ anko4158 お帽子さん、外れてね anko4147 ぐんまりさ迷子になる anko4144 いたさなえ anko4128 ちぇん CV:若本規夫 anko4109 ゆっくり・ボール・ラン 2nd STAGE anko4108 ぱちゅりーの居場所 以下略
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2100.html
「かわいそうなれみりゃをかいほうしてあげよう!!!!」 ここは一つのゆっくり達の群れである。 ドスはいないが、その分ゆっくり達の知能も高く、むやみやたらに人間のものを盗むような輩はいない。 問題が起こったときには、ゆっくり裁判と言う、言ったもん勝ちの裁判を行い有罪か否かを決める。 そして、本日行われた裁判。 議題は、ゆっくり霊夢の一家がお散歩の途中で見つけたお屋敷でのことだった。 「うっう~~~♪ れ☆み☆りゃ☆だどぉ~~~~♪」 「ゆ!! れみりゃだよ!!! みんなかくれてね!!!」 屋敷の中でれみりゃを確認した一家は、即座に身を屈めて姿を隠した。 トレードマークのリボンが草原で存在感を誇示しているが、特に問題ではないのだろう。 「うっう~~~♪ れみりゃおさんぽにいくどぉ~~~~!!!」 「おぜうさま~~~♪ ぷっでぃんをおもちしましたよ~~~♪」 「う~~~~~~!!!!! ぷっでぃ~~ん!! おっぎぃ~~~~どぉ~~~~~~~!!!」 「おいしいですか? れみりゃさま?」 「うっう~~♪ べりーでないすだどぉ♪」 外に出ようとしたれみりゃは、興味をなくしたようで、プリンをぱくつきながら屋敷の中へと戻ってゆく。 それは、紅魔館ではよく見る光景であった。 その後ろには、獲物を見つめるような目をした小悪魔とスカーレット姉妹が隠れていたりするのだが、今回は割愛させていただく。 「ゆゆゆ!!! あのれみりゃはにんげんにつかまってるんだよ!!」 「ほんとだね!! おさんぽにもいけないなんて、ゆっくりできないね!!!」 しかし、飼うという概念を知らないゆっくりにとって見れば、この光景は正に人間がゆっくりを閉じ込めていることに他ならず、いくら捕食種といえども見過ごせないことであったのだろう。 「ゆっくりりかいしたよ!! いまからはんけつをいいわたすよ!!」 そして舞台は裁判に戻る。 家族から話を聞いたパチュリーは、他の事は一切聞かずに、息を大きく吸い込んで判決を言い渡した。 「そのゆっくりをかいほうして、このむれにむかえてあげるよ!!」 「ゆゆ!! だめだよ!! れみりゃはゆっくりできないよ!!」 「そうだよ!! みんなたべられちゃうよ!!」 一気に騒然となる観衆を尻目に、パチュリーは咳払いで間をおき、ゆっくりと話し出した。 「あんしんしてね!! ぱちゅりーのいうことをよくきいてね!!」 パチュリーが説明した内容は、助けてもらったのだからきっと自分達には返しきれないほどの恩が出来る。 そうしたら、れみりゃにボディーガートになってもらおうというものであった。 「それはいいかんがえだね!!」 「れみりゃがいれば、こわいものなしだね!!」 パチュリーの説明を聞き、この考えに同調したゆっくり達。 その頭の中には、空を縦横無尽に飛びまわるれみりゃが、敵をどんどんやっつけていく様子が思い浮かんでいた。 そのしたで、沢山の食べ物をこれでもかと食べている自分達の姿も幻視していた。 「むきゅ!! それじゃあ、これから、どうやってたすけるか、みんなでかんがえるわよ!!」 既に裁判はどこへやら、いかにしてれみりゃを助けるかという会議が行われていった。 既に大半のゆっくりがすやすや寝息を立て、巣に戻った子供達が空腹に負けて食料庫を荒らしまわる中、パチュリーとその他数匹のゆっくり達によって、その会議は深夜まで続けられた。 翌日。 練りに練られた作戦を実行するべく、ゆっくり達は行動を開始した。 「まずは、れいむたちがなかにはいるよ!!」 事実上の実行部隊となった一団が、眠っている門番の横をすり抜け、中に入っていく。 「れいむたちは、みぎにいったっていってたよ!!」 はじめて見る大きな建築物に、若干浮き足立ったメンバーに活を入れるべく強めの口調で話す魔理沙。 一団は、その言葉に従って門を抜けて右手へと進む。 「あれ? ゆっくりですか?」 しかし、そこにれみりゃの姿はなく、いるのは赤い髪が特徴的な小悪魔であった。 「ゆゆゆ!! ま、まりさたちはれみりゃのおともだちなんだぜ!!」 「わかってねー!! きょうもあそびにきたんどよー!!」 とっさに出たのは常套句の嘘であった。 箱入り娘同様に飼われているれみりゃに友達などいるわけはなく、屋敷のものからすれば明らかな嘘である事は見て取れた。 「あらあら。そうだったんですか。今なら、反対側で遊んでいると思いますよ」 しかし、小悪魔はあえて追求せずに親切にれみりゃがいる場所をゆっくりに教えていた。 満面の笑顔で説明する小悪魔を見て、ゆっくり達は親切なお姉さんと思った事であろう。 「ゆゆ!! おねーさんありがとーね!!」 「ゆっくりさせてもらうよ!!」 口々にお礼を言ってその場を後にするゆっくり達。 既にコソコソ進入した事を忘れて、かって知ったる我が家のように、堂々と庭を進んでゆく。 「うまくだませたぜ!!」 反対側へ回る途中、魔理沙が何気なく呟いた一言。 自分の機転で危機を回避できたことで、まりさはこの作戦が上手くいくことを確信していた。 「うっ!! う~~~~♪ れ☆み☆りゃ☆う~~♪」 言われた通り反対側へ着てみると、一匹のれみりゃがさも真剣と言うかのようにダンスを踊っている最中であった。 「ゆゆ!! れみりゃがいたぜ!!」 「わかるよー!! さくせんかいしだよ!!」 その合図に、物陰に隠れていたもう一つのゆっくりのグループが姿を現した。 そのグループのゆっくりは、どれもまだ小さく、成体ゆっくりと呼べるものは何一つなかった。 「ゆゆ!! おねーちゃんたちばっかりあそんでじゅるいよ!!」 「れいむたちもゆっきゅりあそびたいよ!!」 それは、昨日いち早く自分たちの巣にもどり、さっさと食糧庫を空にしたこゆっくり達。 表面上は、何のお咎めもなかったゆっくり達である。 「ゆんゆん!! おねーーちゃんたちは、しゃっさとなくなったごはんをあちゅめてね!!」 そして、お説教に耳をまったく貸さなかったゆっくりであった。 「だいじょうぶだよ!! このなかにはいれば、すっごくゆっくりあそべるよ!!」 「とってもゆっくりできるたべものがたくさんあるよ!!」 「ここからはいれるから、ゆっくりしていってね!!」 言うまでもなく、それは全くのウソ。 が、ゆっくりの、しかも子供にその真偽を判断できるわけもなく、とたんに目を大きくした子供たちはわれ先に紅魔館の中へと入って行った。 「う~~!! そこはれみりゃせんよ~~のつ~~ろだどぉ~~!!」 いつもは、れみりゃが出入りする通路から。 れみりゃの声に耳も貸さずに。 「うーー!! れみりゃをむしするなだどぉーー!!」 無視されたと思ったれみりゃは、両手を大きく上げて未だ庭にいる魔理沙たちに向き直る。 しかし、勢いあまって足をひねり、そのまま顔面から地面にぶつかってしまう。 「う~~!! う~~~~!!!」 余りの痛みに涙目になって泣き出してしまい、威嚇どころではなくなってしまった。 これ幸いと、魔理沙が代表して話しかける。 「ゆっゆ!! れみりゃ!! ここからにげるんだぜ!!」 「そんだよ!! こんなところにいたらゆっくりできないよ!!」 「う? 」 しかし、ここで満足な生活が出来ているれみりゃには、何が言いたいのか分からなかった。 従者である咲夜が、キチンとわがままを聞いていくれている。 たまに友人が消えることはあっても、それが自分でないのだから気にはならない。 「う~~? れみりゃはこ~まかんでゆっぐりしてるんだどぉ~~♪」 両手を大きく掲げ、今の生活の充実感を表現する。 しかし、今のゆっくり達には、それさえも演技にしか写らない。 「ゆゆ!! だいじょうぶだよ!! いまは」だれもいないからね!!」 「そうだよ!! さっさとにげるんだぜ!! まりさたちのむれにくるんだぜ!!」 「わかるよーー!! おいしーたべものがたっくさんあるよ!!」 「う? ぷっでぃ~んよりぃも~~?」 食べ物の話題が出た瞬間。 それまで、しかめっ面をしていたれみりゃの表情が劇的に変化した。 「もっちろんだぜ!! はやくくるんだぜ!!」 「う~~♪ はやくつれていくんだどぉ~~♪」 何不自由なく暮らしていたとしても、飽きる事は避けられない。 おいしい食べ物に釣られた格好ではあるが、れみりゃはゆっくり達の目論見通りに屋敷からの脱出を果たす事になる。 その時、紅魔館の中では、例の子ゆっくり達が元気百パーセントで遊びまわっていた。 「ゆゆっゆ!! ひっろ~~いよ♪」 「ゆっくりできるよ~~~!!」 「れいむたちの、ゆっくりぷれいすにしようね!!」 屋敷内を駆け巡り、大声で騒ぎ、勝手に自分達の所有物とする。 やっている事は殆どれみりゃと変わりないが、そんな事は関係ない人物がここには住んでいる。 「ちょっと……」 「ゆゆ? んびゃ!!」 「ゆ? まりさ……ぎゃ!!!!」 声の下方向を振り向くと、既にそこにはナイフが突き刺さった饅頭が二つ。 お供え宜しく、垂直にナイフが突き刺さっていた。 「こんなところで何してるのかしら? 一介の饅頭風情が」 その表情は、明らかに怒りのオーラを出しているが、そんな事に気が付くゆっくりではない。 「ゆゆ! おねーーさん! ひどいことしないでね!!」 「どうしてこんなことするの?! ゆっくりあやまってね!!」 「おなかすいたよ!! はやくたべものもってきてね!!」 口から出るのはどれも身勝手な事ばかり。 聞くに堪えない自己主張に構っていられない、とばかりにナイフを握り締め、踏み潰し、饅頭たちの殲滅にかかる。 「ゆっくちにげるよ!!!」 「かくれるよ!!」 「ゆゆ!! かぁっくれんぼだね!!」 広い屋敷内。 時間を止める能力を持っていても、既に隠れているモノを見つけるのは容易い事ではない。 結果として、彼女が考えるよりも、十二分に余計な時間がかかってしまう事となった。 その間に、ゆっくりはれみりゃを連れ、自分達の群へと無事到着する事が出来た。 そこには、群中のゆっくりが集まって、今か今かと帰りを待っていた。 「むきゅ♪ このむれにようこそ♪ かんげーするわ♪」 「うっう~~♪ かん、げ~されるんだど~~♪」 リーダーであるパチュリーの挨拶、そして歓迎ムードの群のゆっくり達を見て、ご機嫌になるれみりゃ。 そして、紅魔館のお嬢様としての自信の表れだろうか。 お礼とばかりに、たどたどしいダンスを踊る。 それを見て、お世辞抜きでそのダンスに賞賛の声を送るゆっくり達という、非情にシュールな光景が夕刻続いていた。 「それじゃあ。さっそくえんかいにしようね!!」 それを終わらせたのは、一匹のゆっくり霊夢の声。 目の前のご馳走の山。 お預け状態に、とうとう我慢の限界が来たようであった。 それは、他のゆっくりも同じだったようで、その言葉を合図に、我先に食べ物にかぶりついていく。 「うっう~~♪ れみりゃもたべるどぉ~~♪」 当然、食べ物に釣られてきたれみりゃも、おいしいモノを食べるべく、他のゆっくり同様に積み上げられた食べ物へと向かっていく。 しかし、いざ手にしようとしたところで、その両手を突き出しそのまま山を突き崩してしまう。 雪崩のように崩れる食べ物の山に、食べる事に夢中だったゆっくり達が食べる事を止め、一斉に れみりゃに視線を向ける。 「う~~♪ こんなのぽい♪ ぽい♪ だどぉ~~♪」 それをどう勘違いしたのか、れみりゃの行動はヒートアップしていき、そのまま散らばった食べ物をドンドンと音を立てて踏み潰してゆく。 「ゆぎゅう!! いだい!! いじゃいーー!!」 稀に、踏み潰した中に雪崩に巻き込まれた赤ちゃんゆっくりもいたが、ノリノリのれみりゃが気付く訳もなく、結局全てが潰されるまでれみりゃオンステージは続いていった。 「うっう~~♪ はやくすい~~つをもってくるんだどぉ~~♪」 全て潰し終えたことに満足したれみりゃは、運動したことも手伝って、空腹を訴えてきた。 が、野生のゆっくり達に用意できるものではない事は明らかで、ゆっくり達もどうして良いのか分からないと言った表情をしている。 「ゆゆ……。にんげんさんのたべものはじゅんびできないよ!!」 「そうだよ!! ……つぶれちゃったけど、このかきさんも、おとなのにがみでおいし~よ!!」 「うっう~~♪ そんなのしらないんだどぉ~~♪ はやくぷっでぃ~んをもってくるんだどぉ~~♪」 先ほどと同様に、再び平行線を辿る会話であったが、今回それを終わらせたのはれみりゃの方であった。 「うあーーー!! ぷでぃ~~んがたべたいどーー!! さぐやーー!!!」 何時までたってもプリンが出てこない事に痺れを切らし、潰れた果物や虫の汁などで服が汚れる事も構わず、腰を下ろし手足をバタつかせて泣き出した。 「うあーー!! さぐやーー!! ゆっくりしてないで、すぐにでてくるんだどぉーー!!!」 その様子に、呆気に取られたのはゆっくり達のほうであった。 今まで見てきたれみりゃとは比べ物にならないほど幼く、そして弱弱しく見えたからである。 下手をすれば、自分達の赤ちゃんよりも幼いかもしれない。 口には出さずとも、ゆっくり達の中で誰もがそう思った事であろう。 「ゆっくりわがままいわないでね!!」 一匹の霊夢。 先ほど食欲に負けた霊夢であるが。 お説教といわんばかりにれみりゃに体当たりを仕掛けた。 威力は殆どなく、赤ちゃんゆっくりを叱る程度の力しか込めていない。 それは、余り強くすると、怒らせてしまうのではないかと言う恐怖心からのものでもあった。 「うっぎゃーー!! さぐやーー!! さぐやーーー!!! れみりゃのぽっべいだいーー!!」 しかし現実は奇妙なもので、れみりゃは怒るどころか、さらに声を大きくして泣き叫ぶだけであった。 しかも、ぶつかったところは赤くなり、必死に手をあて痛みを訴えるれみりゃ。 それを見ていたゆっくり達は、ある一つの結論に至った。 「ゆ? このれみりゃは、とってもよわっちいよ!!」 「ほんとだね!! こんなやつじゃ、まもってもらえないよ!!」 「こんなのをたすけるために、かわいいかわいいこどもたちがぎせいになったんだね!!」 「れみりゃはゆっくりしんでね!!」 当然といえば当然。 しかし、聊か強引なところもあるのだが、ここに来てこのれみりゃが普通のれみりゃとは比べ物にならないほど貧弱であると結論付けたゆっくり達。 それと同時に、今までの苦労が怒りへと変わり、期待をかけていたれみりゃへ、その代わりにぶつけられる事となる。 「うあーー!! ……? うぐぁ!! あががー!! たすげでーーー!!!」 ゆっくりによるたこ殴り。 普通ならば絶対に反撃されるこの様な方法は行わないが、れみりゃは反撃できない。 種としても攻撃の本能すら忘れたのか、ただただ泣き叫び、助けを呼ぶ事しか出来なかった。 「さぐやぁ……。あとでおしおきだどぉーーー……」 餌となり、格好の食料源となり、既にボロボロになったれみりゃは、薄れ行く意識の中最後まで咲夜を呼び続けた。 「まったく。こんなに屋敷を汚して。お嬢様の機嫌が損なわれるわ」 当の咲夜本人は、漸くゆっくりを全て駆除した事を確認すると、今までほったらかしにしていたれみりゃの事を気にし始めた。 「れみりゃさま? どこですか?」 何時ものように直ぐに出てこないれみりゃを不思議に思いながら、主であるレミリアに出す為の紅茶を淹れ部屋まで運んでゆく。 「咲夜さん。れみりゃさまなら、ゆっくり達に連れられて東南の方向にある森の、三本の栗の木がある群に行かれたようですが」 道中、ばったりとであった小悪魔がれみりゃの居所を伝えた。 「ありがとう子悪魔。悪いけど、この紅茶をお嬢様のところに持って行っておいてくれないかしら?」 伝えられた咲夜は、いてもたってもいられずに、お盆を小悪魔に押し付け近場の窓から外に飛び出して行ってしまった。 「がってん任されました!! どうぞ行ってらっしゃいませ」 その後姿に返事をし、暫く眺めていた子悪魔は、その足をレミリアの寝室へと向ける。 「……。これだから人間を嵌めるのは止められないですね」 その呟きを聞き取れたものは、誰もいなかった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/813.html
注意書き 人間に飼われるゆっくりがいます うーぱっくが登場します さらにうーぱっくは自分の脳内設定全開です あとすこし人間、飼い主虐めな部分もあるかもしれません では、本編行きます 「おにいさん!まりさはゆっくりいってくるよ!!おひさまがしずんだころにはかえるからね!!」 「ああ、ゆっくり気をつけてな」 畑で農業をやっているお兄さんに大切に飼われているこのまりさは毎日朝ごはんを食べた後は夕方、日没まで外で遊ぶのが日課になっていた。 「ゆゆ!きょうもゆっくりたんけんするよ!!」 このまりさは人間に家から出してもらえない飼いゆっくりのために家の外の楽しいもの、面白いもの、怖いものを見聞し、ゆっくり集会で発表するのが楽しみだった。 今日もその集会のネタ探しのために里のはずれの野原まで跳ねていった。 「ゆ~、おひさまがちもちいいね!!」 目的地の原っぱについたまりさは原っぱのど真ん中で日向ぼっこをしていた。 ここは飼いゆっくりや野生のゆっくりがたまに訪れるゆっくりプレイスであり、ここに来る野生のゆっくりは温厚なものが多いため野性と飼いゆっくりの衝突もほとんど起きていなかった。 今日は自分以外のゆっくりがいないな?そうまりさが思ったとき、自分の後ろから声が聞こえた。 「う~、たべちゃうぞ~」 「れ、れみりゃだぁー!!」 なぜ昼間にれみりゃが居るんだ? まりさにはその理由は分からなかったがそこにれみりゃがいることは確か、まりさは全力で森の中へ逃げ出した。 このれみりゃは昨日の夜から餌を探していたが餌が見つからなかった、一日ぐらいなら我慢できたが二日も餌が見つからないと空腹で辛くなる、 そのためれみりゃは本来活動時間ではない昼間も起きて餌を探していたのだ。 ちなみにれみりゃが白昼堂々飛んでいるのを見た周囲一帯のゆっくりみんなが巣にこもってしまい逆に餌が取りにくくなったことは言うまでもない。 まりさは何とかれみりゃの攻撃をかわしていた。 もともとれみりゃは旋回性能が低い、全速力で飛んでるときは致命的なまでに。 河に流されていたれいむを救ったれみりゃが目の前の電柱をかわしきれない…そんな絵はかなり有名なので見たことがある人も多いと思う。 そのためれみりゃは「たべちゃうぞ~」とゆっくり達の恐怖心を刺激し、恐怖したゆっくりは直線コースでしか逃げようとしないためれみりゃにつかまってしまう。 だがある程度成長したゆっくりや、飼いゆっくりはれみりゃの欠点を知っているためれみりゃの進行方向に対し垂直に動くことでれみりゃの攻撃をかわすことができるのだ。 「う~逃げると食べちゃうぞー!!」 何度も自分の突撃をかわすまりさにしびれを切らしたれみりゃは全速力で突っ込んできた。 「まりさはれみりゃになんかたべられないよ!!ゆっくりしね!!」 れみりゃの牙がまりさに刺さる直前、まりさは横にはねた。 「う~?うああぁぁぁぁ!!!」 目の前にいたまりさがいなくなったと思ったら目の前には切り株、れみりゃはよけることも止まることもできずに正面から激突してしまった。 「う~…」 そのまま白目をむいて気絶するれみりゃ、これで一安心だ、しばらくは目を覚まさないだろう。 「ふぅ、これでやっとゆっくりできるよ…ゆ?」 そのとき、まりさはある事に気づいた。 「ここ゛どこ゛お゛ぉぉぉぉ!?!?」 そう、まりさはれみりゃから逃げるのに夢中になり、森の奥深くに入った結果、道がわからなくなってしまったのだ。 さらにもう夕方じゃないか、このまま日がくれればれみりゃの時間になる、もし複数のれみりゃに襲われれば自分は簡単に食われてしまうだろう。 お兄さんとの約束を破って怒られるのは怖くなかった、悪いのは自分だからだ。 でもお兄さんにもう二度と会えないと思うと震えが止まらなかった、れみりゃに食われることよりもお兄さんの方が大事だったのだ。 その時、饅頭に神がいたかどうかは知らないがまりさのすぐ近くを通りがかったうーぱっくがいた、あれに乗ればゆっくりできる!そう思ったまりさはうーぱっくを呼びとめた。 「ゆゆ!そこのうーぱっく、ゆっくりとまってね!!」 「う~?」 「まりさはみちにまよっちゃったの!かえりたいからゆっくりのせてね!!」 「うー!うー!」 うーぱっくから了承を得たまりさはうーぱっくの上に飛び乗った。 うーぱっくが上昇してくれたおかげでまりさはなんとか里の方向を特定した、まりさはうーぱっくに目的地と方角を告げるとうーぱっくの中へ入って行った。 「ゆぅ…これでゆっくりできるよ…」 これで家に帰れる、つく頃には真っ暗になっているかもしれないがそれで怒られるのなら仕方がない。そうまりさは思った。 そういえばうーぱっくにあげるお礼、持っていないな…お兄さんにお願いしなきゃ… そのまままりさはうーぱっくのなかで眠ってしまった、きっと精神的な疲れと肉体的な疲れがどっと溢れたのだろう。 「まったく、まりさのやつ遅いな…いったい何をやっているんだろう?」 お兄さんはそう呟きながら家の前を左右に何往復もしていた。 いままでまりさがこんな遅くまで帰ってこないことはなかった、もしかして怒られると思ってすぐ近くで様子をうかがってるのかもしれない、まったく自分には起こる気なんてないのに… 「おい、まりさー!!出て来いよー!!俺は怒ったりはしないぞー!!」 うん、出てこない。 もしかしたら本当になにかあったのかな?お兄さんは胸騒ぎのようなものを感じた。 その時、満月をバックにこっちに飛んでくる物体が目に入った。あれはうーぱっくだ、あの特徴的なシルエットは鳥とか蝙蝠ではないだろう。 「あの糞段ボール…ついに来たか!!」 男は急いで家の中に「ある物」を取りに行った。 うーぱっくは目的地の人間の家を視界に収めた、載せているまりさのいった特徴そっくりだからあそこで間違いないだろう。 「うー、うー!」 うーぱっくが中で寝ているまりさを起こそうとしたとき、自分のすぐそばを何かが通過した。 「う?」 気がつくとうーぱっくの角が削れていた。 「う、うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!」 その悲鳴でまりさも飛び起きた。 「ゆゆっ!?どうしたのうーぱっく、ゆっくり!!ゆっくりしてね!!」 「糞段ボールがぁ!!こっちに来るんじゃねぇよ!!」 パチンコを連射していたお兄さんが叫んだ。 彼は飼っているゆっくりを愛してはいるがゆっくり愛護派というわけでもない、畑を荒らすゆっくりは今まで撃退しているし、罠にかかった野生のゆっくりは加工所に売り飛ばしている。 しかしうーぱっくはゆっくりを載せ、畑のど真ん中に着地、そのまま畑を荒らし、飛んで去っていく。今までの対ゆっくり用の罠の殆どがうーぱっくのせいで無効化されるのだ。 彼はまだこのうーぱっくを使った畑荒らしの被害は受けたことはなかったが、知り合いから話を聞いて何時自分のところにも来るかと警戒していたのだ、 そして対策用ネットの準備が整うまでの間パチンコで迎撃することにしていたのだ。 当然あのうーぱっくの中には畑を荒らそうとする糞饅頭が入っている、お兄さんはそう信じて疑わなかった。 ふつう畑荒らしの際、うーぱっくは野菜を持って帰る個体が随伴する、つまり最低でもうーぱっくは二匹いるのだが…知り合いから話を聞いただけのお兄さんは知らなかったのだ。 「うー!うー!」 「ゆっくり!!ゆっくりしてねー!!」 うーぱっくは何とか体を左右にずらし回避行動をとろうとするが飛んでくるパチンコ玉はどんどん近くを通るようになってくる。 「う、うー!!」 うーぱっくは引き返そうと思った、指定の位置に積み荷を降ろせないことはうーぱっくの沽券にかかわることだがこのままあの家の前に着陸しようものならあの人間に殺されかねない。 中のまりさには悪いが少し離れた所から歩いてもらおう、そう思い、高度を上げて離脱しようとした。 「逃げる気か糞段ボールが!!」 しかし、人間は許してくれなかった。 「直撃させる!!」 なんか額から火花のようなものを出しながら放ったパチンコ玉。 お兄さんの全力全開のパワーを一身に受けたそのパチンコ玉はうーぱっくの後頭部を突き破り、中のまりさの後頭部を突き破り、眉間から飛び出て、うーぱっくの目と目の間から飛び出した。 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…」 「まり゛さの゛な゛か゛み゛があ゛あ゛ああ゛あ゛ぁぁぁぁ…」 うーぱっくは飛行能力を失い近くの小川へ墜落していった。うーぱっくのほかにゆっくりまりさの悲鳴も混ざっていたがお兄さんには聞こえなかった。 「ふぅー、すっきりしたぜ!!」 うーぱっくが逃げようとしたときはどうしようかと思ったが撃墜できてよかった、あの高度から落ちたんだ、中のゆっくりも死ぬだろう… 「しかし…まりさは遅いな…」 明日になって帰ってこなかったら、近所の飼いゆっくり達にまりさを見なかったか聞いてみよう、そう思いお兄さんは家の中に入っていった。 結局、飼いゆっくり達の捜索作業にもかかわらずまりさは発見できなかった。 最愛のゆっくりを失ったお兄さんはこの後、堕落していくことになるがそれはまた別のお話 あとがき 自分の脳内設定うーパックについて少し… 内部は空洞、飛行中も中に乗ったゆっくりはうーぱっくの頭の上に乗って周りの風景を見ることができます。 このSS内では説明不足の部分もあるかと思うのでその時は質問してくだされば大抵のことにはこたえようと思います。 8月31日 0111 セイン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1209.html
一人暮らしでゆっくりゃを飼うとどうなるんだろ。 毎朝8時には家を出て9時に帰宅。その間ゆっくりゃはケージの中で昼のやざいを食べてもらう。 ケージから出すとゆっくりゃは背中の羽をダバダバさせながら「うっうー♪おかえりうー!」 ってもたもたと甘えてくる。 「ただいま、れみりゃ。寂しかったね」 「ん”-!ざびじがっだぁぁあああ!ん”-!」 とか豚みたいなキモいしゃがれた鳴き声で擦り寄ってくるの。 この時が一日で最も自尊心が満たされる瞬間。 でゆっくりゃの帽子をとって水色の不健康な頭をナデナデしてあげる。 「モッドナデナデジテー」とか泣きながら肉汁の匂いが漏れてくる。クセェ。 そう思ってゆっくりゃの首筋にチョップしたら「モルスァ」とか言いながら飛んで行った。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3725.html
おかあさんのおくちのなか ある日私が買い物から帰ると、ゆっくりの一家が居間を占領していた。 私の姿に気が付いた一際大きいれいむ、恐らく母親であろうれいむが、ぽよーんぽよー んと跳ねながら近付いてくる。 「ゆっくりしていってね!」 どうやら、私が鍵をかけ忘れた台所の窓から侵入したらしい。 どうしたものかと眺めて居ると、その後から親れいむの子供と思しき小型のゆっくり達 が、あるものはぽいんぽいんと軽快に飛び跳ねながら、あるものは転がりながら母親の周 りに集まった。 「ゆゆ? おにいさんはゆっくりできるひと?」 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ! ゆっくりできないおにいさんはゆっくり しないでさっさとでていってね!」 「ゆっくりできるおにいさんなられいむたちにあまあまさんをちょうだいね!」 「「「「「「ちょうりゃいね!」」」」」 「ゆっくりしないではやくあまあまさんをもってくるんだぜ! でないといたいめをみる んだぜ!」 「「「「みりゅんだぜ!」」」」 おお、出て来るは出て来るは、直径40センチ程の親れいむに、子れいむが5匹、子まりさ が2匹、赤れいむ8匹、赤まりさ6匹の大家族だ。これまでの巣穴が手狭になり、子連れで引っ 越して来たのだろう。 床が三分にゆっくりが七分と言う壮大な眺めにしばし圧倒されていた私は、ふと常々疑 問に思っていたゆっくりの或る生態に関する疑問を解明しようと思い立った。 「勿論さ、僕はゆっくり出来るお兄さんだよ。その証拠にほら、沢山のあまあまを持って 来たよ!」 私はそう言いながら、先ほど「おかしのまちおか」で買ったお徳用チョコレートの袋を 買い物袋から取り出して見せびらかす。 「ゆゆ! そのあまあまさんをゆっくりはやくちょうだいね!」 「さっさとそのあまあまをまりさにちょうだいね!」 「りぇいむにもちょうらいにぇ!」 「ゆゆーん あまあまさんれいむのおくちにゆっくりおちてきてね!」 「ぐずなじじいはさっさとそのあまあまをおいてどっかにいくんだぜ!」 「ゆー♪ あみゃあみゃしゃんはしゅごきゅゆっくちできりゅよ! むーちゃむーちゃ…… ちあわせー!」 「ゆぎぎぎ、やめてね、おちびちゃんおねえちゃんのほっぺたたべないでね!」 「おちびちゃんきがはやいよ! ゆっくりまってね! おにいさん、さっさとそのあまあ まをかわいいれいむとれいむのおちびちゃんにちょうだいね!」 「ゆげぇ、おきゃーしゃんまりしゃをふみゃにゃいでにぇ!」 お菓子の袋を前に大興奮の一家。早くも我を忘れて押し合いへしあいだ……おいおい、 中には半分潰れてる赤ちゃんもいるぞ。 こんなところで数を減らされては、実験に差し障りが有る。私はお菓子の袋をしまいな がら、親れいむに向って話しかけた。 「お菓子をあげる前に、少し教えて欲しいんだ。れいむは敵が来ると赤ちゃんや子供を口 の中に隠すよね? あれって、何人まで入るのかな?」 あまあまへの期待によだれで顔中をべたべたにしていた親れいむは、急な質問に戸惑う。 確かに口の中におちびちゃんを隠すのはゆっくりの習性だ。しかし、意識してやっている わけではないので、改めて何人入るのかと聞かれても困る。 「ゆう……そんなのやってみないとわからないよ……」 「そう、それだ! 是非ここで何人のおちびちゃんが入れるか、試して貰いたいんだ。そ うしたら、このあまあま一袋はみんなのものだ」 「ゆゆ! ゆっくりりかいしたよ!」 ついに夢にまで見た人間のあまあまが手の届く距離に。興奮したれいむは、自分の周囲 に居た赤ゆっくり達に声を掛ける。 「おちびちゃん、おかあさんのおくちのなかにゆっくりはいってね!」 「「「ゆゆ! わきゃったよ!」」」 ゆっくり特有の長い舌を伸ばし、赤ゆっくりを一匹一匹口の中に運ぶ親れいむ。赤ゆっ くり達も親とのスキンシップが楽しいのか、 「ゆゆーん、おしょりゃをちょんでるみちゃいー」 「おきゃーしゃんのおくちのなかはしゅごくゆっきゅりできりゅよ!」 「ここはまりしゃのゆっくちぷれいしゅなんだじぇ!」 等と舌に巻かれて運ばれたり、口の中に入るのを楽しんでいる。 こうして五匹のあかちゃんが口の中に入った時点で、親れいむは舌をしまい、私に向き 直る。 「おにいさん、れいむのおくちのなかにはいるおちびちゃんは……たくさんだよ!」 「ああ、ゆっくりは3以上数えられないんだっけ。えーと、五人か。結構入ったね」 「ゆっへん!」 「……本当に、もうこれ以上は入らないのかい?」 私の質問に少し怯む親れいむ。確かに、ゆっくりのバカでかい口の中にはまだ余裕があ る。しかし、これ以上おちびちゃん達を入れたら自分もあかちゃんもゆっくりできないし、 あまあまを前に我慢も限界だ。 「そうだよ! もうおにいさんのごようはすんだんでしょ! やくそくどおりあまあまを ちょうだいね!」 「さっさとよこすんだぜ!」 「ぐずなじじいだね! もうれいむはおこったよ! ぷくー!」 親子揃っての大合唱に、このままでは実験の続行は不可能と見た私はお菓子の袋を破り、 地面にバラ撒く。 「みんなありがとう、ゆっくりたべていってね!」 一斉にお菓子に群がるゆっくり一家。親れいむは流石に口の中に赤ゆっくりを仕舞い込 んでいるのでお菓子に駆け寄ったりせず、子供達を舌で運び出している。まぁ、目はお菓 子に釘付けで口からはよだれがだらだらと垂れており、心ここにあらずといった様子では あるが。 「あかちゃんたちはゆっくりおかあさんのくちからでていってね!」 「ゆゆ! あまあまさんゆっくりれいむにたべられてね!」 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」 「ゆががが、それはりぇいみゅのあまあまさんだよ! ゆっくりかえしてね!」 「へっへっへ、はやいものがちだぜ!」 ゆっくり達の注意がお菓子に集まったところで、ゆっくりの退路を断つべく部屋の戸じ まりを確認。すかさず別室に行き、こんな事もあろうかと用意して置いた新しいアイテム を持って来た。実験第二段階のスタートだ。 「うっうー! れみりゃだどー! たーべーちゃーうーぞー!」 私が持って来たのは、ゆっくりれみりゃの帽子である。これを被りながら、れみりゃの 真似をしてゆっくり達に声を掛けると…… 「「「「!!!? うわあああああああ! れみりゃだー!」」」」」 「ゆう、ゆぅ、やっちょたべれちゃよ……むーちゃむーちゃ、ち、ちあわせぇぇぇーー!」 私をれみりゃと誤認し、本能に従って硬直するゆっくり達……中にはお菓子に気を取られ るあまり気が付かないものもいるが、私が手近でむーしゃむーしゃしている赤れいむを踏み つぶし、そのままれみりゃのダンスの真似を始めると、慌てて逃げ出した。とはいえ、ここ は森の中ではなく私の家の居間であり、逃げ道はない。自然とゆっくり達は部屋の隅に集ま り、母親を中心に固まってしまった。追い詰められた事を悟ったのか、比較的大きめの子ゆっ くり達が膨らんで威嚇を始める。 「ぷくー! ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしないでさっさときえてね!」 「ゆっゆっゆ、ままままままりささまはれれれれれみりゃなんかこわくないんだぜ!」 うーん、がんばるなぁ。私が親子愛に感心しているその隙に、親れいむは赤ゆっくりを舌 で巻き取り、口の中に入れてゆく。 「おちびちゃんたち! おかあさんのおくちのなかにかくれてね!」 「ゆゆ! おきゃーしゃんのおくちのなきゃならあんじぇんだにぇ!」 「れみりゃがきえるのをゆっくりまちゅよ!」 次々と親の口の中に隠れてゆく赤ゆっくり。遂に全部の赤ゆっくり─当初14匹、私が先ほ ど一匹踏み潰したので、現在は13匹─が口の中に隠れた。流石に親れいむは苦しそうで、脂 汗でぬとぬとになりながらも、表情だけは不敵に 「ゆゆーん、これでばかなれみりゃはあかちゃんたちにてがだせないよ! ゆっくりりかい してね! わかったらゆっくりしないでさっさとしんでね!」 と私に勝ち誇った態度で命令して来た。 「なんと……まだ喋る余裕が有るとは!」 私はれいむのぼせい(笑)に感動して思わずひとりごちてしまった。よし、これなら更に 実験を進める事が出来る。 「うっうー、おくちのなかににげたあまあまはたべれないんだどー! でも、ほかのあまあ まをたべればいいんだどー!」 親れいむの周囲で「ぷくー」と膨らみながら威嚇を続ける子ゆっくり達をオーバーアクショ ン気味に指差す。 「「「「どぼじでぞうなるのおおおおおおおおお」」」」 これまでは、狙われているのは赤ゆっくりだと若干高をくくって油断していた子ゆっくり 達は、自分を標的にされて恐慌状態に陥り、或るものは砂糖水の涙を流しながら立ち竦み、 或るものは震えながら母親に体を摺り寄せ、兎に角少しでも私から離れようと足掻く。 その内、子まりさの一匹が目を輝かせながら姉妹たちに提案する。 「ゆ! そうだ! まりさたちもおかあさんのおくちのなかにいれてもらうんだぜ!」 「ゆゆ!? それがいいね! おかあさんゆっくりいれてね!」 「ゆう……でもおかあさんのおくちのなかはもうおちびちゃんたちでいっぱいだよ……」 赤ゆっくり13匹を口に入れ、もう限界に近い親れいむ。しかし、危険におののく子供達を 前に、やめてね! とも言えずに困惑気味だ。そこで私はダメ押しとばかりに、れみりゃダ ンスを踊りながら近付く。 「うー、おくちのなかににげられたらこまるどー! はやくたべるどー!」 ついでに、先ほど口の中に入るのを躊躇っていた親孝行な子れいむを踏み潰す。これがきっ かけになり、子ゆっくり達もおかあさんの口の中に体を突っ込んで行く。 初めの内こそ「おちびちゃんたち、ゆっくりおくのほうにいどうしてね!」とか「おねえ ちゃんたちはそろーりそろーりはいってね! おちびちゃんたちをふまないでね!」等と子 ゆっくり達を受け入れて居た親れいむだったが、その内口を閉じて子ゆっくり達を阻み出し た。勿論それで諦める子ゆっくりではなく、 「ゆー、もうすこしではいれるんだぜ!」 「まりさ! ゆっくりしないでいそいではいってね!」 「ゆぎぎぎ…おねえじゃんおざないでぇぇぇ」 と言う具合に体というか頭をひねりながら、ぐいぐいと親れいむの唇をめくり上げ、歯を こじ開けて中に入って行く。当然、先客の赤ゆっくり達は奥に向けてぎゅうぎゅうと押し込 まれ…… 「ゆぎぎぎぎぎぎ……まりしゃおねえじゃんおざないでええええええ! でいぶのあんごが ぶべぇ」 「みゃみゃだじゅげぶべら」 「ゆげぇ……もっちょゆっきゅりじだがっだよ……」 親れいむの口の奥深くで、新たに三匹の赤ゆっくりがくぐもった悲鳴を上げながら潰され た。無残に飛び散った餡子は、その周辺で矢張り押しくらまんじゅうをしていた赤ゆっくり の口に飛び込む。突然の甘味に驚いた赤ゆっくり達は姉妹の亡骸を「ゆゆ!? あまあましゃ んがありゅよ」とばかりに食べ始めてしまった。普段ならそうした同族食いは親や姉によっ て止められるのだが、ここは真っ暗な親れいむの口の中、咎める者はいない。 「あまあましゃんすごくゆっくりできりゅよー!」 「むーしゃむーしゃ、ちあわしぇー!」 「ゆゆ、にゃんだかひろくなっちゃようにゃきがするんだじぇ!」 こうしてあまあまを食べれば自分のスペースも確保出来ると気付いた赤ゆっくり達は、遂 に目の前に広がる突き当りの壁、即ち親れいむの餡子を食べ始めた。 自分の体内で恐ろしい事が起こっていると気付いた親れいむだが、既に口の中には10匹の 赤ゆっくりに加え、5匹の子ゆっくりが入り込み、とても声を出す余裕はない。最早脂汗で表 面をてらてらぬらぬらと光らせながら、「ゆぎぎぎ」とか「ゆががが」とか意味の無い呻き 声を出すのみだ。 そして今、最後の子れいむがお尻だけを親れいむの口に突っ込んで顔だけを出しながら 「ゆっへん! これでれみりゃもこわくないね!」と得意顔を浮かべた。 ……そう、遂に全部の子供がれいむの口の中に入ったのだ! れいむのぼせい(笑)がこ れほどまでとは!! 知的好奇心をすっかり満足させた私は、この子供思いの優しい親れいむを賞賛すべく、れ みりゃの帽子を取ってこれまでの非礼を詫びた。残念ながら親れいむは気絶していて反応は 無かったが、口から顔だけ出した子れいむが 「ぷくー! れいむをだますなんてひどいね! おにいさんはおわびにあまあまをもってきてね!」 と言うので、手近にあった餡子を掬って嘗めさせてあげたら許してくれた。優しくて聞き 分けの良い子で助かった。 その後、私は子れいむの案内に従って親れいむを彼女たちの本来の巣穴の近く(近所の森 だった)に帰すと、新たに生じた疑問──果たして、まりさのすてきなおぼうしの中には、 何匹の「おちびちゃん」が隠れられるのだろうか──を解明すべく、今度は成体まりさを探 す事にした。 私の知的探求の旅は、まだ始まったばかりなのである。 おまけ 『ゆゆ!? ここはどこなの?』 親れいむが目を覚ますと、そこはあの暖かくて広い「ゆっくりぷれいす」ではなく、すっ かり日も暮れて真っ暗な森の中であった。一体何が有ったのか? れみりゃが急に襲って来 て、おちびちゃん達をお口の中に隠した所までは覚えているのだが……そうだ、おちびちゃ ん達を早くお口から出さなければ! おちびちゃん達、暗くて狭い場所に閉じ込めてごめんね! 「ゆげえっ! ゆげげげっ!」 親れいむが激しくえづくと、愛しい我が子達が飛び出して来た。どの子も唾液まみれだが、 幸い体がふやけて死んでしまいそうな子供はいなかった。 「ゆゆ! おかあさんゆっくりしていってね!」 「ゆぐぐ、ごわがっだよおおおお!」 「ゆげぇ……やっど……ひろいどごろにでられだよ……」 1、2、3……たくさん、とてもたくさん。全員の無事を確認した親れいむは、長く続い た悪夢のような一日がやっと終わったのだと思い、子供達にぺーろぺーろやすーりすーりを して落ち着かせる。 「でいぶのがわいいあがぢゃんだぢにごわいおぼいをざぜでごべんでえええええ!」 「みゃみゃー、ぺーろぺーろ」 「すーりすーり……それにしても、あのおうちはれみりゃがでてぜんぜんゆっくりできない おうちだったよ……」 「あんにゃおうちはまりしゃしゃまにふしゃわしくにゃいんだじぇ!」 「ゆわーん、もうおうちかえりゅ!」 どうやら今回のお引っ越しは失敗のようだ。仕方が無い、元のおうちに戻ろう。親れいむ はそう判断し、子供達を促して巣の方に移動しようとしたが、その瞬間黒い影が視界を横切っ た。 「うーっ! うーっ!」 「「「「「「「「れみりゃだああああああああ!」」」」」」」」 今度は人間の変装等では無い、本物の胴なしれみりゃだ。子供達は咄嗟に母親に近寄り、 母親がその頼もしく長い舌ですくい取って口の中に匿ってくれる事を期待したが、親れいむ は歯を食い縛って決して口を開けなかった。 「おきゃーしゃん、おくちにいれてえええええ」 「れみりゃごわいよおおおおお」 親れいむは口に向かって擦り寄ってくる赤ゆっくりを跳ね飛ばすと、 「ごめんね……おちびちゃんたちをおくちにいれると、ゆっくりできないよ! ゆっくりり かいして、がんばってついてきてね!」 と言い捨てて、巣穴の方に行ってしまった。どうやら実験のトラウマのせいで、赤ゆっく りを口に入れる事が出来なくなってしまったらしい。子ゆっくり達も慌てて親に従って去っ てゆく。赤ゆっくり達は一瞬呆然としたが、すぐにれみりゃの脅威が迫って居る事に気付き、 親を追って必死に飛び跳ねる。 こうして「おかああさんのおくちのなか」と言う最大のゆっくりぷれいすを失ってしまっ た彼女らに、安息の日は有るのか? 赤ゆっくり達の苦難のゆん生は、まだまだ始まったばかりだ。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/335.html
レミリアの気まぐれ レミリア編 「咲夜…ゆっくり捕まえに行くわ、付いてきなさい」 物事の発端は私の気まぐれだった 私の名前はレミリア・スカーレット、紅魔館の主よ 私は何を思い立ったのか、紅魔館の近辺にも生息するゆっくりと言う生物を飼ってみようと思ったの ちょうどいい暇つぶしになると思ったからね 「ゆっくりは五匹ぐらい捕まえてくると面白そうね、家族なら尚更」 五匹ぐらいとなると何かゆっくりを持ち運べる物が必要になって来るわね 「お嬢様、持ち運ぶための物は私が用意しておきます、準備をお願いします」 私は館の外に出る際、図書館の司書を務める小悪魔に会った 「レミリア様、こんばんは、今日も月が綺麗ですねぇ」 「ええ、そうね…何か用があると見たけど?」 「はい、用件は手短に説明しますね」 やはりそうだったのか小悪魔はコホンと喉の調子を整えた 「作戦を説明する、雇い主はいつものパチュリー」 「目標は紅魔館近辺に生息するゆっくり一家五匹まで」 「雇い主はゆっくりの生態調査を独自に行ってみたいとのことだ」 「なお、未確認だがゆっくりさくやが存在するとの情報がある」 ゆっくりさくや?へぇ…咲夜を模したゆっくりも存在するなんてね…… 案の定咲夜もびっくりしているわ 「もしそれが本当なら特別報酬の対象だ、逃がすなよ」 「こんなところか…まあ仕事は増えるが見返りは大きいと思うぜ、やるか?」 ……何かに影響されたと見るべきだろうけどまあいいか 「私もちょうどゆっくりを捕まえに行こうと思っていた所よ」 「良かったら一緒に育ててみる?」 「ああ、ありがとうございます!」 「パチュリー様を呼び捨てにした件については内密にお願いしますね?」 念を押されたのでこの件はパチェには黙っておく事にする 館の外、門番は相変わらず仕事をサボり、居眠りをしてしている 「起きろ中国、用がある」 咲夜が中国を起こす、その光景は相変わらず暴力的だ 「イタタ……私が妖怪だからって毎回頭にナイフを刺さないでくださいよ!」 「ゆっくりを捕獲するための籠が欲しい、貸してくれるか?」 「無視ですかそうですか…籠なら……」 そう言うと中国は自分の小屋から籠をいくつか持ち出してきた 「これ一つでゆっくり十匹分、体つきも一匹入りますよ!」 「ありがと美鈴、もう眠いのは見てわかるし、夜勤と交代して良いわ」 呼び名が中国から美鈴にグレードアップしているのは彼女が任務を果たしたからなのだろう これだけで普段中国と呼ばれているからか、美鈴の気分はとても良くなるようだ 「ありがとうございます!」 そう言うと美鈴はとっとと夜勤と交代、小屋に入っていった 頭にナイフが刺さったままなのは気にしないでおく、どうせ後で抜くだろう 「ちょっと出かけるわ、すぐに帰る」 私は夜勤に軽い挨拶を済ませ、咲夜と共に夜の森に行った 紅魔館周辺の森 「ここもはずれかしら……」 ゆっくりの巣は他の動物と比べてとても見つけやすい なぜならゆっくり達は体つきでもない限り、巧妙に巣を隠すことが出来ないのだ それどころか自己顕示欲の強いゆっくりになると 「まりさのおうち」といった汚い文字の看板を付けるようになる それはそれで見つけやすくなるからありがたい物だけどね…… 覗いてみても案の定ゆっくりさくやが見つからない もうすぐ、夜明けの5時になろうとしていた 「ゆっくりめーりんですね、門番でしょうか……」 私達はまたゆっくりの巣を見つけた、もうそろそろ当たりが出て欲しい物ね 外にはゆっくりめーりんが寝ている、恐らく門番だと思うわ 咲夜曰く中国がモデルになっているだけであって習性もよく似ているとの事 中を覗いてみるとゆっくりれみりゃが一匹 ゆっくりぱちゅりーにゆっくりふらんが一匹 「いました…ゆっくり私ですね……」 ゆっくり……これがゆっくりさくやか…… 見てみると咲夜の髪型に服装、体つき…… 見れば見るほど咲夜にそっくりね、デフォルメされている点を除けばの話だけど 「咲夜、この子達が起きないようにゆっくり捕まえて」 咲夜は一瞬でゆっくり達を籠に詰め終える、ゆっくり達は起きる気配もない 何だか咲夜も眠たそうだ、目的を果たした私達は紅魔館に帰ることにした 紅魔館門前 「お嬢様、メイド長、お疲れ様です!」 「あなたもお疲れ様、もうちょっと頑張ってね」 私は玄関で待っていた小悪魔に目標を捕獲したことを伝え自室に向かう 「さて…明日にでも何か買いに行こうかしら……」 咲夜も特別報酬がもらえると言うことで嬉しそうだ 部屋ではメイド妖精達が紅魔館の見取り図を見ていた 事前に通達しておいた手の空いているメイド妖精達に ゆっくりを飼育するスペースの場所を決めてもらっていたんだっけ 「お帰りなさいませ、お嬢様!」 だいたい目星がついた所…問題は無さそうね 私と咲夜は指定された二階の空き部屋に向かうことにした 二階の空き部屋、適度な広さが確保されている ゆっくりが五匹…いや十匹生きていくスペースを確保するのも問題ないだろう 「さて…咲夜、ゆっくり達を降ろしてやって」 咲夜が籠を降ろし、ゆっくり達を降ろし始める さて…ゆっくり達が過ごせるように部屋の改造を行わないとね 「咲夜、この程度一瞬で作れるわね」 「はい、お望みであれば一瞬で」 だが一瞬で作るというのも芸がない 「面白そうだから私も一緒に作るわ、退屈しのぎにもなるし」 「はい、お嬢様が手伝ってくださるのなら!」 咲夜が何だか嬉しそうだ、まあそれは気にせず、物置から材料を運び始める ゆっくり達が脱走しないための柵、まあゆっくりが怪我しない素材を使うべきね いや、特にゆっくりれみりゃは私と同じく空を飛ぶことが出来る それを考慮すると柵ではなく、窓を強化ガラスにしてゆっくりには割れないようにする ドアをゆっくりでは開けられないようにする、この二つで十分ね ちょうど咲夜があの眼鏡の店から丈夫な粘着性ビニールシートと鍵を買っていたわね この部屋の脱出口はさっき私たちが入ってきたドアと二つの窓 咲夜が粘着性ビニールシートを窓に貼り付けている内に 私はゆっくりにはとても壊せるとは思えない鍵を付ける ちょっとゆっくり達には可哀想だけど脱走なんかさせる訳にはいかない 次にゆっくり達の生きていくために必要な物を用意する えさ、基本的に何でも食べるそうだけど…料理の失敗作とかで大丈夫かしら ゆっくり達は舌が肥えやすいと聞くけどね……しばらくの間は森で採取した 自然の産物を与え続けてみようかしら 水、砂糖水、ジュースだと効果的…ね、ブラッドオレンジジュースなら 沢山あるんだけど…与えてみようかしら…… 寝床か…ちょうど天狗達が発行しているいらない新聞があるわね それに都合の良いことにフランが壊してしまったベッドの綿が沢山あるわ 新聞は他にもいろいろ役立つのでちょっとだけ拝借していくわ ゆっくりを飼うのに必要な物は大体そろっていた さて…支度も出来たのでゆっくり達が起きるまで私も仮眠を取ることにするわ 朝、基本的には夜に行動する私にとっては少々辛い ゆっくり達は育てる際に活動時間を調整してやれば 十分夜行性に出来ると聞いている、じっくり調整してやるわ 「う?…ここどこ?……」 紅魔館周辺でもよく見るゆっくりれみりゃ、私をモデルにしたゆっくりね もっとも私とは違ってカリスマを欠片も持ち合わせていないと聞くわ 「……おくない…あのおねえさんにつれてこられたといったところかしら」 それ以外の地域での目撃例もあるゆっくりぱちゅりー どうやらパチェと同じく喘息持ちらしく、他のゆっくりより丁寧に扱う必要がありそうね 「うー!ゆっくりしね!!!」 私の妹であるフランをモデルにしたゆっくりふらん フラン同様、ゆっくりにしては凶暴だけどそれでもメイド妖精にも敵わないでしょうね 「zzz…zz!…あ…ゆっくりしていってね!!!」 門番をモデルにした「ゆっくりめーりん」 本人同様シエスタを好むみたい、ゆっくりの中では打たれ強い傾向にある様ね 皮が厚いらしく傷つけるのはちょっと難しいと思われるわ 「………」 さっきから私と咲夜を警戒しているゆっくりさくや 家族内唯一の体つきゆっくり、まだわからないことが多々あるけど そのあたりはパチェが解明してくれると思うわ 私はゆっくり達に説明を始める 「いい?これからはあなた達には私が用意した家に住んで貰うわ」 「文句は一切受け付けない、だけど私もそれなりの環境は用意したつもりよ」 一部私のことを全く気にせず遊んでいるゆっくりがいる ゆっくりれみりゃとゆっくりさくやだ ゆっくりさくやがゆっくりれみりゃに付き合ってあげていると言ったところか 「なるほど…わたしたちはあなたにかわれるというわけね……」 ゆっくりぱちゅりーが返答を始める、とりあえず話は通じるみたいね 「そう言うこと、まあ酷い目には遭わさないつもりだからゆっくりしていきなさい」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 数匹のゆっくりが脊髄反射的に例の台詞を唱える 「わかったわ、どうやらにげることはできそうにないし…ゆっくりしていくことにするわ」 ゆっくりぱちゅりーね…本当に物分かりが良いじゃない まあ物分かりが良いと言われているゆっくりぱちゅりーがいる分 この家族を飼っていくのは簡単そうね そろそろ私はパチェを呼ぶことにした、生態観察は彼女の方が上手そうだからね と思ったところで咲夜が叫んだ、何を見たの? 「お嬢様…いつの間にかれみりゃがプリンを食べています!」 咲夜が指さした先にはれみりゃとさくやがいた 「うー、ぷりんうまうま……」 れみりゃはどこから出したのかプリンをおいしそうに食べている 「咲夜…どこから私のプリンを出したの、まさか貴女が持ってきたの?」 「とんでもない!お嬢様のプリンはちゃんと冷蔵庫の中にありますよ!」 念の為に私が確認したところ確かに私のプリンは私専用冷蔵庫内に七つあった 毎日のプリン、それが私の楽しみの一つ、い…今のは忘れなさい! 「確かに私のプリンは七つあったわ、後で一つ頂こうかしら」 「レミィ、少々遅れてしまったわ…」 鍵が開いたままだったからかまだ呼んでもいないのにドアからパチェが入ってくる 足に保冷剤を巻き付けている、本でも足に落としてしまったのだろうか 「小悪魔から話は聞いたわ、ゆっくりさくや、本当にいたみたいじゃない」 「ええ、確かに見つけたわ、ゆっくりさくやの生態観察を頼めないかしら」 「勿論、そのために来たような物だけどね」 さくやは相変わらず私たちに対して警戒心を解かずにいる もうめーりんは何の警戒もせずに咲夜に寄り添っているというのに 「お嬢様、たとえ昼寝してばかりの中国でも、ゆっくりだとかわいく見えてくる物ですね」 咲夜……あの門番はこの紅魔館でも一二を争うほどのナイスバディなのよ? それとも咲夜はあのスタイルが羨ましい訳?あの噂もあながち間違ってはなさそうね…… 私はそれ以上深く考えるのをやめ、ゆっくりれみりゃと遊んでやろうと思った けどれみりゃに手を触れようとした途端にゆっくりとは思えない速度で ゆっくりさくやが立ちはだかる、ふらん、ぱちゅりーでも同様だ なぜめーりんだけノーマークなのかは気にしないでおく ひょっとしてこのゆっくりさくやは私にかまってほしいのかしら わたしはゆっくりさくやと遊んであげることにした 「私と遊んでほしいの?」 「………ゆっくりしていってね!!!」 私の興味がさくやに向いた途端に楽しげに向かってくるさくや その間にパチェや咲夜が他のゆっくり達と遊んでいるのは気にしない さくやと遊んでいるうちにちょっとだけわかってきたことがある このゆっくりさくや、やっぱりゆっくりのなかでは恐ろしく速い そのあたりはモデルである咲夜の影響もあるのかしら それに他のゆっくり達にどこからともなくプリンを差し出すことがある 私のプリンじゃないから良しとしておくわ れみりゃを贔屓にしているのは気のせいかもしれないけどね そう思っていた所パチェが部屋から出た、何か実験でもするのかしら…… まあそれはおいといてゆっくりれみりゃに近づいてみる さくやも私が自分たちに害を及ぼす存在ではないと考えたのか止めるそぶりを見せない 「うー!うー!ゆっくりしていってね!!!」 私にあるカリスマなんか微塵も感じられない、でもこっちの方がかわいいかもね…… 私は手頃な所にあるボールでれみりゃと遊んであげることにする ボールにぶつかるれみりゃ、何だか楽しそうね…咲夜が和むのも無理はないわね…… 私はボールを少し遠くへ飛ばすとれみりゃはそれを追いかけていく 他のゆっくりと変わらず跳ねていく、その羽は飾りなの? よく考えたら私が捕獲したれみりゃは木の下に作った巣で暮らしていた 地上で生活していたら羽がなまるのも無理はないか…… そう考えつつ、私はボールを高く飛ばす れみりゃは羽で飛び上がり、ボールを空中でキャッチする 「……飛べるじゃない…ああ、飛べないのは体つきね……」 私とれみりゃのボール遊びはパチェが帰ってくるまで続いた パチェと小悪魔が部屋に入ってくる ゆっくりれいむの家族を引き連れてね…… れいむが二匹、その内一匹が赤ゆっくり…まりさ種も同じ構成ね…多分一つの家族よ 「レミィ、これから実験を始めるわ」 実験ね…大方あのゆっくり達と私が捕獲したゆっくり達を争わせるつもりね さくやがいることによってどのような変化がでるのか楽しみね…… 「パチェ、このゆっくり達に被害が出そうだったら咲夜に止めてもらうわ」 「ええ、そのつもりよ」 そして小悪魔がゆっくりを降ろした 「ここがまりさたちのあたらしいゆっくりプレイスだね!!!」 「むきゅ…ここはわたしたちのすんでいるところよ、あなたたちのいえじゃないわ」 ぱちゅりーがまりさ達に説得を試みているようだけどどうかしら… 「ゆっ!…ここはまりさたちのいえだよ!よそものはゆっくりでていってね!!!」 「いつそうきまったの…これはしょうしょうおきゅうをすえるひつようがありそうね……」 ほらやっぱり…物わかりが良いから説得が無駄だというのもすぐに理解できるようね 「れみりゃ…ゆっくりできないこがきたわ……むかえうつわよ……」 「う?……うー!!!」 私は信じられない光景を目にしている あのれみりゃがあっという間にゆっくり達を無力化してしまった 私はだらしないことに口をぽかーんと開けていた 正確に言うとれみりゃがれみりゃとは思えないほどの指揮能力を発揮し 効果的にれいむ達を追いつめたと言った所かしら 赤ゆっくりはさくやに抱えられ、れいむ達はまったく動けなくなっていた 「むきゅ…これがわたしたちとあなたたちのちからのさよ……」 「ゆ…ゆゆゆ……」 完全に負けたからか何も言えないまりさ、ぱちゅりーはさらに追いつめていく 「あなたたちはわたしたちからわたしたちのすんでいるところをうばおうとした」 「でもあなたたちはわたしたちにまけてしまった、つまりあたらしいいえをとれなかった」 「ゆ゛……ゆ゛ゆ……」 悔しいのかまりさが泣きそうになる、あれだけ打ちのめされたのに こうやってさらに打ちのめされている、プライドだけは無駄に高そうなこのまりさの事 相当悔しいのだろう、私も霊夢にやられた際に咲夜の膝枕で泣き寝入りした事がある その気持ちはわからない事もない……今のは聞かなかった事にして だけどぱちゅりーはさらに打ちのめそうとする 「ないたってむだよ……むだだとわかったらとっとと」「そこまでよ、ぱちゅりー」 れみりゃがぱちゅりーを止める、戦闘態勢に入ってからずっとこのままよ 「このゆっくりたち…こどもがいるじゃない」 さくやが抱えている赤ゆっくり達も信じていた親ゆっくりが 完膚なきまでに打ちのめされたのを見て大泣きしている さくやはさくやであやしているが一向に泣き止む気配がない 「せめて……このこどもたちがいるぶんにはほりょにしてやらない?」 「むきゅ…れみりゃがいうならそれでもいいわ、それはそれでおもしろそうだし」 良かったわね、あなた達は新しい家を手に入れる事ができたのよ まあゆっくりを九匹育てる事などうと言う事ない そう思っている内にぱちゅりーが私に寄ってくる 「むきゅ…かいぬしさんたちにはめいわくだけどもうよんひきついかしていい?」 「良いわ、あなたの言う通りそれはそれで面白そうだしね……」 これで私が飼っているゆっくりは九匹になった、ちょっと手間がかかるかもね いつの間にかパチェがいないけどどうせ今の事態を独自に調べるくらいだし 特に気にする事は無いわ、それにしても面白い物が見れたわね ゆっくりをこのまま飼ってみようかしら、退屈しのぎにはなりそうね…… 「ねえ、れみりゃ?」 「う?なあに?」 いつの間にかれみりゃは元に戻っていた、それはそれで安心する私だった 小悪魔の依頼説明時の口調の元ネタはARMORED CORE for Answerから -- ありすアリスの人 (2008-10-13 16 18 07) 紅魔館ゆっくり、恐るべし…! -- トミー (2008-12-07 16 29 30) 通常時とカリスマモードの落差が可愛すぎる!!! -- 名無しさん (2008-12-16 17 14 08) 紅魔館ゆっくり、こええwww -- 名無しさん (2010-06-10 23 00 27) うー!うー! -- 名無しさん (2010-11-30 16 22 14) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/547.html
ゆっくりチルノの一日 紅魔館の前に広がる巨大な湖。 正確な大きさすら分からぬその湖畔には妖精からゆっくりまで、様々な生物が生息している。 それは生態系ピラミッドの下層に位置するゆっくりにとっては天敵も多いという事実を示しているが、 それでもやはり豊富な水や食料と言うのは捨て難い魅力らしく、ゆっくり達は日々危険にさらされながらも ゆっくりとした生活を送っていた。 そんなゆっくり達のうちの一匹、水色の髪に薄い色の羽、 氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝も狭い巣穴の中で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 近くには誰もいないのだが、そんなことは気にせずに伸びをする。 「ん~~~っ!」 さて、さっそく朝食を取ってこよう そう思ったゆっくりチルノは草むらに穴を掘っただけの小さい巣穴から元気よく飛び出す。 実は昨晩のうちに明日の朝食にしようと思って巣穴に木の実をいくらか蓄えていたのだが、 そんなことはもう忘れてしまったらしい。 まぁしょうがないよね!⑨だもの! 夏の暑い日差しもこんな朝早くは厳しさを感じさせない。 だが晴れ渡った青空はその日も暑い一日となることを告げていた。 そんな日差しの射す湖畔をぴょんぴょんととび跳ねるゆっくりチルノ。 しかし空腹に悩まされているその体はあまり元気がない。 「う~~………あたいってば腹ぺこね……」 誰にともなく呟きながら餌を探すゆっくりチルノ。 そもそも燃費の悪いゆっくりにおいて昨晩から何も食べていないのだから元気がないのは当然であった。 しかしどれだけ探しても餌となりそうな虫も花もなかなか見つからず、段々とその足取りは重くなっていく。 実際は探し方が悪いだけでそこら中に食べられる物はあったのだが、 ゆっくりの中でも極めつけの餡子脳、ゆっ⑨りブレインではそんなことは分かるはずもなかった。 あたいってばここで死ぬのかしら、とゆっくりチルノ空腹で朦朧とした意識で考え始めていたその時、 急に足場を踏み外して湖の近くの池とう(小さい池みたいなもの)に突っ込んでしまった。 「1+1=11!!?」 意味不明な⑨ソウルを叫んでぷかぷかと池とうに浮かぶゆっくりチルノ。 早く上がらなきゃ、と僅かに残った意識が警鐘を鳴らすが最早そこから脱出する力は残されていなかった。 頭の中に走馬灯が流れ始める。 記憶力が無いので1秒で終わった。 「ゆっくりした結果が⑨だよ……!」 ⑨なこととゆっくりしていたことはあまり関係ないのだが、 それはともかくそんなつぶやきとともにゆっくりチルノの意識は闇に沈んだ。 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆ~ゆ~♪ゆ~ゆゆ~♪」 何やら音痴な歌声が聞こえてきてゆっくりチルノは意識を取り戻した。 体は相変わらず池とうに突っ込んだままだが、先ほどと違って空腹は満たされ、体は元気に充ち溢れている。 「んっぷはっ!あたいってばゆっくりね!」 何で元気になったのかはよく分からないが、とにかく元気になって復活したのだ。 あたいってばひょっとして最強に運が良いのかもしれない。 と幸せ脳回路で考えたゆっくりチルノ元気いっぱいな叫び声とともに池とうから抜け出した。 実際は運が良いとか何か特別なことがあったとかいうわけではなく、 ただ単にゆっくりチルノの体が氷でできており、池とうにはまったことで体が勝手に水分を吸収して 回復しただけなのだが、そんな理屈は当の本人は知る由もなかった。 だって⑨だもの。 因みにゆっくりチルノの氷は微妙に糖分を含んでおり、溶かすと砂糖水になっておいしいらしい。 ここでなんで氷のくせに常温で溶けないんだとか、そもそも氷が動くわけないだろとか言う突っ込みは、 饅頭が生きている世界においては野暮である。 さて、池とうから上がったゆっくりチルノは音痴な歌声の方に向かって跳ねていく。 「あたいってばゆっくりね!」 向かった先には予想通りゆっくりがいた。 それも一匹ではなくゆっくりれいむの家族である。 ゆっくりチルノよりも二回りは大きな母れいむ一匹に4匹の小さい赤ちゃんで構成されたその家族は、 歌を歌いながらお散歩を楽しんでいる最中のようだ。 「「ゆ?ゆっくりしていってね!」」 ゆっくりチルノに気付いた一家がお決まりの挨拶をする。ゆっくりチルノもそれに応えて 「ゆっくりしていってね!れいむってばゆっくりね!」 と返す。 「ゆ?おねえさんゆっくりできるちと?」 赤ちゃんれいむの問いかけに 「あたいってばゆっくりね!一緒にゆっくりしようね!」 とゆっくりチルノが楽しそうに返す。 「「一緒にゆっくりしようね!」」 あっという間に仲良くなった一家とゆっくりチルノは一緒に遊び始めた。 「ゆー。それにしても暑いよ!ゆっくりできないよ!」 しばらく遊んだあと、体中から汗を流しながら母れいむがいった。 太陽は既に天頂近くまで上っており、夏の暑い日差しがぎらぎらと降り注ぐ。 先ほどまではキャッキャッと楽しそうに遊んでいた子れいむ達も今は暑さに疲れて ぺたんと地面にへたり込んでいた。 「あたいってば暑くてもゆっくりね!」 そんな中、氷でできたゆっくりチルノだけが元気にしていた。 「ゆ?おねえちゃんつべたい?」 ふと一匹の子れいむがゆっくりチルノから発せられる冷気に気づき、側に近づいて行く。 「ゆー!おねえちゃん涼しくて気持ちいいよ!ゆっくりできるよ!」 「ゆ?ほんと?」 「れいむも涼しくなりたい!」 「ゆっくりさせてね!」 一匹の子れいむの言葉を皮切りにして次々と他の子れいむたちもゆっくりチルノに近づいて行った。 「ゆ!ほんとだ!とっても涼しいよ!ゆっくりできるね!」 「おねえちゃんすごいよ!」 「ゆっくりさせてね!」 そう言いながら4匹の子れいむはゆっくりチルノを取り囲んでその冷気にあたり、ゆっくりし始める。 「あたいってばとってもゆっくりねっ!」 ゆっくりチルノもわけはわかってないがとにかく子れいむ達が自分を頼ってくれるのが嬉しいようだ。 一方母れいむは 「おかあさんも入れてね!おかあさんもゆっくりさせてねっ!」 とその周りをぴょんぴょん飛び跳ねている。 自分も冷気にあたって涼みたいようだ。 しかしすでに4匹の子れいむで囲まれたゆっくりチルノの周りに巨大な母れいむが入る余裕はなく、 何とか押し入ろうと子れいむ達をぐいぐい押し始めた。 「ゆゆっ!どいてね!おかあさんも入れさせてね!」 しかしそんな母の態度に子れいむたちから非難の声が上がる。 「ゆゆっ!おかあさん押さないでね!」 「そんなにされたらゆっくりできないよ!」 「おかあさんはあっちでゆっくりしててね!」 「ここにおかあさんのはいる場所はないよ!ゆっくりりかいしてね!」 「どうしてそんなこというのぉぉぉ!!?」 一家が危うく親子げんかに発展しかけた時、ひらひらと何処からか蝶が飛んできた。 「ゆ!ちょうちょさんだ!ゆっくりしていってね!」 さっきまで押し入ろうとしていたのも忘れて蝶を食べよう追いかける母れいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっくりして言ってね!早く食べられてね!」 何とか飛び跳ねて捕まえようとするもうまくかわせれてなかなか捕まえることができない。 そんな母の様子を、子れいむ達はゆっくりチルノの近くで涼みながら見ていた。 「ちべたいねー」 「きもちいねー」 「あたい!」 と、母親に追い立てられた蝶がふらふらとゆっくりチルノの方に飛んでいき、その顔の中心に止まった。 蝶の方も暑かったのかもしれない。 しかし突然の事に驚いたチルノは対応できず 「ゆっゆっゆ……ゆっくし!」 とくしゃみをしてしまったのだ。 本人は自覚していないがくしゃみはゆっくりチルノ最強の武器である。 体の奥の冷たい冷気と水滴を同時に飛ばすことによって向いている方向の物を一瞬にして凍らせてしまう 破壊力を持つのだ。 その冷気はゆっくりレティやゆっくりもこーでも無ければ耐えることはできないだろう。 上手く活用すればあっという間にゆっくりチルノはゆっくりピラミッドの上位まで 上り詰める事が出来るかも知れない。 最も意図してくしゃみしたりなんて出来ないので意味ないんだけど。 さて、そんなわけでその行動は本人の意思にかかわらず相応の結果をもたらす。 すなわち、その時ゆっくりチルノの正面にいた子れいむの凍結という結果を。 「ゆっ!」 短い悲鳴を上げて驚愕の表情をして凍結した子れいむを見てその場にいた他のゆっくりたちの表情も凍りつく。 茫然としたゆっくり達が凍った子れいむを見つめる凍った時間の中で、 くしゃみに驚いた蝶だけが時間が動いているようにひらひらと飛んで行った。 数秒後、我にかえった母れいむが激昂してゆっくりチルノに掴みかかる。 「れっ、れいむの赤ちゃんになにするのおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!??」 その叫び声を受けて他のゆっくり達の時間も動き出す。 「ゆっ、こんなことするおねえちゃんとはゆっくりできないよ!」 「ゆっくりどっかにいってね!」 「ゆっくりしね!」 今まで涼ませてもらっていたことも忘れてゆっくりチルノを罵倒しながら母れいむの陰に逃げ込む子れいむ達。 一方激昂した母れいむはゆっくりチルノを責め続ける。 「赤ちゃんを元に戻してね!早く元に戻してね!今すぐ元に戻してね!直ちに元に戻してね! マッハで元に戻してね!元に戻せたら許してあげてもいいよ!」 「ゆ、ゆー……」 一方責められているゆっくりチルノ。 さすがに自分が悪いことは分かっているのか申し訳なさそうにしていて何も言い返さない。 だが、凍ってしまった子れいむをすぐに戻す方法など思いつかなかった。 「黙ってないで何か言ってね!早く溶かしてあげないと二度とゆっくりできなくなっちゃうよ! それでもいいの!?」 「ゆ……ゆ!?」 ーその時、ゆっくりチルノに電流走る―! 溶かす!そうだ、溶かせばいいのだ! ゆっくりチルノはそのゆっ⑨りブレインにも関わらず、水に沈んだゆっくり達がどうなるか知っていた。 そう、水に「溶ける」のだ。 ちょうど近くには大きな湖がある。そこに入ればすぐにでも「溶ける」だろう。 色々と間違っているがとにかくゆっくりチルノにとってこれは名案に思えた。 この子れいむを元に戻すことが出来ればまた一家と仲良くゆっくりできるに違いない。 あたいってば天才ね! さて、そうとなれば善は急げ。ゆっくりチルノは母れいむに言い放った。 「分かったよ!あたいがこの子を「溶かし」て元に戻して来るよ!あたいに任せてゆっくり待っててね!」 そう言うと凍った子れいむを口にくわえ、一目散に湖に向かって走って行った。 湖畔に辿り着いたゆっくりチルノは、さっそく湖に凍った子れいむを浮かばせた。 ここで勢いよく落として氷を砕いてしまうような真似はしない。 同じ過ちを犯さないなんてあたいってば天才ね! ……実際このゆっくりチルノにそんな経験はないのだが、多分平行世界の記憶でも流れ込んできたのだろう。 とにかく、これで子れいむは氷が溶けて元に戻るに違いない。 戻った時にはきもちよく「すっきりー!」という声を聞かせてくれることだろう。 そう、「すっきりー!」という声が聞ければいいのだ。 ゆっくりチルノはゆっ⑨りブレインにそう刻み込むと、凍った子れいむがその声を聞かせてくれるのを 今か今かと待ちわびた。 落とされた凍結子れいむはぷかぷかと浮かんだあと、はたしてゆっくりチルノの思惑通り融解しだす。 その様子を見て得意満面のゆっくりチルノ。 「やっぱりあたいってばゆっくりね!」 表面の氷が溶け、やがて子れいむ本体にも水温が伝わりその体が徐々に熱を取り戻し始める。 「…ゅ…さむいよ……ゆ…?」 ついに子れいむが意識を取り戻した。 無事子れいむが生き帰ったことに全身で喜びを表すゆっくりチルノ。 すぐに元気になって「すっきりー!」という声を聞かせてくれるに違いない。 しかし聞こえてきたのは予想と真逆の悲鳴だった。 「ゆ……ゆ!?い、い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!み゛ず!み゛ずがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 急に寒くなって意識を失い、意識を取り戻したらそこは地獄だった。 子れいむの経験を端的に表すとこうなる。 本能的に水の危険性を知っている子れいむは、何とか岸に上がろうともがくがもがけばもがくほどその体は 岸から離れていく。 「ゆ?れいむってば何してるの?遠くに行かないで早く戻ってきてね!」 予想と違った状況にゆっくりチルノは慌て始める。 どうしてだろう、子れいむを「溶かせ」ばいいはずなのに。 「お゛ね゛え゛ち゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛!!だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 ゆっくりチルノの姿を認めた子れいむは必死に助けを求め始めた。 しかしどんどん離れていく子れいむはもはやゆっくりチルノが届く範囲とはかけ離れた位置にいた。 「なんでえええええええ!?!?どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおお!?!?」 幸運なことにゆっくりチルノは知っていた。 ゆっくりは水に「溶ける」ということを。 そして不幸なことにゆっくりチルノは知らなかった。 ………自分は水に入っても溶けないという事を。 「ゆ、ゆー。」 母れいむに責め立てらてた時のような困惑の声をあげるゆっくりチルノ。 助けにいこうとすれば自分が溶けてしまう。 何がいけなかったのだろう、自分は母れいむが言ったとおり子れいむを「溶かし」ただけなのに。 「ゆぅー!早くこっちに来てね!あたいが引き上げるよ!だから早くこっちに来てね!」 「ぞんな゛あああああああああああ!!!!だずげでよおおおおおおおおおお!!!」 ゆっくりチルノにできるのは応援の言葉を贈るだけだった。 やがて水を吸った子れいむの皮がぶよぶよと伸びはじめ、体内から餡子が漏れ始める。 その事に気づいた子れいむが涙と絶望と恐怖と後悔にまみれた悲鳴を上げた。 「いやだああああああああああああああああああああ!!!じにだくない!じにだくないよおおおおおおお!!! も゛っどゆっぐりじだいよおおおおおおおお!!まだゆっぐりじだいごとだぐざんあ゛っだのにいいいいいいい!! ぎょうはがぞぐみんなでどっでもゆっぐりずるはずだっだのにいいいいいいいい!!! まりざとあじだあぞぶやぐぞぐもじでるよおお!がまんじでどっでおいだりんごまだだべでないよおおおお!! ほがのおいじいものももっどもっどだべだいよおおおおお!!いつかどおぐまでおざんぽじだがっだよおお!! おうだももっどうまぐなりだがっだよおおおお!!ぶゆのゆぎもみだがっだよおおおおおお!! ぞれにいづがおがあざんになっでおがあざんとれいむどこどもだぢでゆっぐりしたがっだよおおおおおお!! それなのにどおじでれ゛いむ゛がごんなめ゛に゛あう゛どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!? なにもわるいごどじでないのでぃいいいいいい!!おがじいよおおおおおおおおおおおお!! ゆめならざめでええええええええええ!!どうじでざめないのおおおおおおおおおおおお!?!? がみざま!もうゆるじで!ゆっぐりじでないでれいむをだずげでよおおおおおおおお!!! おがーざん!おねーぢゃん!まりざ!だずげでええええええええええええええええええええ!! どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおお!?!?もうやだおうぢがえるううううううううううう!! ゆっぐりじだいいいいいいいいいいいいい!ゆっぐりざぜでええええええええええ!!! ごんなどごろでじにだぐないのにいいいいいぃぃ…ぃ……あ、あんごが……あ………ぁ…………」 胸の内の全てを吐露するようなうざくてクソ長い断末魔の後子れいむの声は聞こえなくなっていった。 やがで皮も餡子も全て水に溶け、残されたリボンだけが子れいむの生きた証であるかのように水面に ぷかぷか浮かんでいた。 「ゆっ……うっうっ……」 その一部始終を見届けていたゆっくりチルノは耐えられない悲しみに涙を流し始める。 涙なのか氷が溶けてるだけなのかハタから見ると良く分からないが本人は泣いているつもりである。 「うっうっ……うあああああああああああああああああああああああ!!!」 耐えきれずついに大声をあげてゆっくりチルノは泣き始める。 どうして、どうして。そう聞きたいのはゆっくりチルノの方だった。 自分は子れいむを助けるために湖に落としたのに。 何で子れいむは死んでしまったのだろう。 母れいむの言うとおり「溶か」そうとしただけなのに。 わからない。わからない。 ただ悲しかった。さっきまで一緒に遊んでいた子れいむが死んでしまった事が、ただ悲しかった。 「うえええええええええええええええええええええええええんんん!!!!!」 あたりにゆっくりチルノの悲壮な鳴き声が響き渡った。 そしてひとしきり泣いた後 ゆっくりチルノは泣いていた理由を忘れた。 精神の防衛本能なのかとにかくなぜ自分が泣いていたのかすっぱり忘れてしまった。 さすが⑨!俺達に出来ない事を(ry そしてその後に残ったのは思う存分泣いてすっきりしたという感覚のみ。 「すっきりー!」 思わず声に出して叫ぶゆっくりチルノ。 そういえばよく覚えていないが確か自分は「すっきりー!」という声を聞きたがっていた気がする。 素晴らしい。目的は達成されたのだ。 何となくうれしい気分になるゆっくりチルノ。 「あたいってばゆっくりね!」 と思わず叫ぶ。そして湖に背を向け、戻ろうとしたその時 「やっと見つけたよ!」 という声が響いた。驚いてそちらを見ると先ほどのゆっくりれいむ一家だった。 いきなり子れいむをくわえて走り去ったゆっくりチルノをずっと探しまわっていたのだろう。 母はともかく子供たちはやや疲れた表情をしている。 「れいむの赤ちゃんはどこ!?早くれいむに返してね!」 母れいむがゆっくりチルノの側に娘がいないのを見て急いで詰め寄る。 しかし当のゆっくりチルノは困惑の表情を浮かべるばかり。 何故ならこの一家のことも既にゆっ⑨りブレインからは消え去っていたからだ。 「おねーさんだれ?なにいってるのかわからないよ?」 正直に自分の気持ちを言ったゆっくりチルノだったがその言葉を聞いた母れいむは驚愕の表情を浮かべたあと、 体(顔?)中を怒りで真っ赤にしてゆっくりチルノに詰め寄った。 「な゛っ……ふざけるのもいい加減にしてね!今すぐ赤ちゃんを返してね!じゃないと本当に許さないよ!」 そう言ってゆっくりチルノに軽く体当たりをする。 「ゆっ!?なに!?」 突然ことに後ろに転げるゆっくりチルノ。それを視線で追った母れいむはその先に信じられないものを見た。 湖に浮かぶ子れいむのリボンである。 「あ、あ、あ、あ……」 信じられない、といった表情で母れいむが体を震わせる。そして次の瞬間感情が爆発した。 「れいむの赤ちゃんに何したのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 ようやく体勢を立て直したゆっくりチルノにゆっくりとは思えぬ勢いで体当たりする母れいむ。 しかも今度は手加減抜きの全力である。 「れいむの赤ちゃんをどうしたの!?今すぐ答えてね!!赤ちゃんはどこ!?」 涙を流しながら激怒の表情でゆっくりチルノを問い詰める。 それを見て他の子れいむ達も状況を察したのか、ゆっくりチルノに攻撃を始めた。 「れーみゅをかえせええええええええええ!!」」 「よくもおねーちゃんを殺したなああああああああああ!!」 「ゆっくりしねえええええええええええええ!!!」 一家の総攻撃が始まる。 氷でできたゆっくりチルノは比較的硬いのでダメージは少ないが、それでも袋叩きはたまったものではない。 まるで抵抗できずに 「あたいは何も知らないよ!本当だよ!信じてよ!」 ただ必死に弁解をするだけだ。 「れいむの赤ちゃんを返せえええええええ!一緒にゆっくりしてた、これからもゆっくりするはずだった 赤ちゃんを返せええええええええ!!」 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」」 ひたすら体当たりを続けるゆっくり一家。並のゆっくりならとっくに餡ペーストになっているだろう。 「れいむってばゆっくりしてないよ!今すぐ辞めてよ!」 ゆっくりチルノは責められる心当たりがないものの必死にやめるよう懇願する。 やがてただ攻撃してもあまり効果が無い事に気づいたゆっくり一家は新たな行動に出た。 「「「ゆっくり落ちてね!」」」 ゆっくりチルノを湖に突き落したのである。 「ゆっ!?やべで!だずげてよ!」 先ほどの子れいむの凄絶な死にざまを覚えているわけではないが、それでも水はとても危険なものだと 頭に刻まれている(本当は何ともないのだが)ゆっくりチルノは必死にもがく。 しかし子れいむの時と同じようにもがけばもがくほど体は岸から離れていってしまう。 「あたいってば水だめなのおおおお!いやああああああああ!!!助けてえええええ」 必死に助けを請うゆっくりチルノ。 それに対してゆっくり一家は罵声を浴びせる。 「そうやってたすけをもとめてたれーみゅを殺したんだね!」 「おねーちゃんと同じくるしみを味わってしね!」 「おねーちゃんの仇、ゆっくりしね!」 「死ぬまでここで見ててあげるよ!感謝してね!だから苦しみながらゆっくり死んでね!」 「⑨~~~~~~!?!?!?」 ついにゆっくりチルノはパニックに陥る。 本当はゆっくりチルノは羽を使って飛ぶことができるため、簡単に水から脱出する事が出来るのだが、 パニックに陥った彼女はそれに気づくことができなかった。 例え冷静であっても自分が飛べる事を思い出せたかあやしいが。 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっくりしね!!」」 もはや一家は完全にゆっくりしねコールだ。 どうやらゆっくりチルノが溺れ死ぬまでそこで鑑賞し続けるつもりらしい。 だが溺れることもなく、また脱出する方法も思いつけないゆっくりチルノはいつまで待っても死ぬことはない。 このままではいつまでもコールを続けることになっただろう。 そしてその事に気付けなかったのが、ゆっくり一家の命取りとなった。 ゆっくりチルノを湖に落としたらさっさと立ち去っていればよかったのに、大騒ぎを続けたせいで、上空を 飛んでいた天敵に自分たちの存在を気づかせてしまったのだ。 「うー?」 気分よくお空を飛んでいたれみりゃは下の湖面が騒がしい事に気づいた。 自分のご機嫌なお散歩を邪魔するなんて許せない。食べちゃうぞ。 そう思って下降しながら湖面に近づいていくれみりゃ。 そこによく見るゆっくりれいむの一家とあまり見かけない青いゆっくりを見つける。 何やら騒いでいるようだがれみりゃにとってはどうでもいい。 それよりお腹がへってきた。やっぱりみんな食べちゃおう。 そう思って一気に狩りの態勢に移るれみりゃ。 ゆっくり一家が気付いた時には、すでに手遅れだった。 「れみりゃだぁぁぁぁーーーー!!」 一匹の子れいむの叫びで一家が慌てて空を見上げた時、もうすぐそばまでれみりゃが近づいていた。 逃げる間もなく、二匹の子れいむがれみりゃの両手に捕われる。 「い、いやあああああああああああああ!!はなしてえええええええええええ!!」 「れーむ食べられたくないよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 悲鳴を上げる子れいむ達。 残った一匹の子れいむは訳もわからず一目散に逃げ出して行った。 それに対して一瞬ためらいを見せたものの果敢にれみりゃに立ち向かう母れいむ。 もう一匹たりとも自分の赤ちゃんを死なせたりするものか。 「れーむの赤ちゃんをはなせええええええええええええええええ!!!」 その瞳には強い決意が宿っていた。 だがれみりゃにはそんな母れいむの気持ちは分からない。 両手の小さいれいむを見て、自分に向かってくる大きいれいむを見て、それから考える。 ―両手が塞がっていては大きいれいむが食べられない― 大きいれいむを捕まえて食べるためには両手を空ける必要がある。 ではどうするか。 そこでれみりゃが取った行動は小さいれいむをさっさと食べて両手を空けるという合理的な方法 ――ではなかった 「うー!小さいのはいらないからぽいするの!ぽい!」 そう言って両手の子れいむを湖に投げ込んだのだ。 「み、みずいやああああああああああああああ!!れーむ死んじゃうよおおおおおおおおおおお!!」 「おねーちゃんみたいになりたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 水に放り込まれた子れいむ達が絶叫を上げる。 それを見て母れいむは慌てて方向転換して子れいむ達に向かって突進する。 「待っててね!今すぐ助けるからね!」 そして湖に飛び込もうとジャンプした瞬間れみりゃの手に捕われた。 「ゆ!?ゆっくりしないで離してね!赤ちゃんが死んじゃうよ!」 慌ててれみりゃの手の中でもがく母れいむ。 だがその訴えはれみりゃの耳を右から左に抜けていった。 れみりゃが考えるのは別のこと。 ―大きいれいむも片手で持てる― つまりそれはもう片方の手にもう一匹持つことができるということだ。 どうせなら両手に持たないともったいない。 そう考えたれみりゃはのこったゆっくりの物色を始める。 「うー♪一番おいしぞうなのをだべるどぉー♪」 結果、れみりゃが選んだのは残ったゆっくりの中では一番大きく珍しい、ゆっくりチルノだった ゆっくりチルノは既に自分が何で水の中にいるか忘れていた。 もがくのも疲れたので顔を水につけて水の中を見ながらぷかぷか浮いている。 「おさかなさんがいっぱい!あたいってばゆっくりね!」 もごもごと泡を出しつつ誰にも聞こえないつぶやきをもらす。 「!?」 と、急にその体が持ち上げられた。れみりゃである。 「う~♪あっかいぷでぃんとあっおいぷでぃん~♪」 楽しそうなその歌声の間違いに突っ込むものはこの場にはいなかった。 ただ両手にゆっくりを抱えて楽しそうに飛び上っていく。 「はなじでえええええええええええええ!!!あがぢゃんが!れーむのあがぢゃんが死んじゃうううううううう!!」 「あたいってばお空を飛んでるみたいね!」 対照的な声音を上げつつ、れみりゃに抱えられた二匹は空に上がっていった。 「おがあざああああああああああんん!!いがないでえええええええええええええええ!!」 「どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 絶望の声を上げる二匹の子れいむを残して。 飛び上がったれみりゃはさて、どっちから食べようかと二匹のゆっくりを眺めた。 かたや 「れーむの赤ちゃんが……なんで……どうじでごんなごどにいいぃぃ……」 悲しみに暮れて嗚咽を漏らすゆっくりれいむ。かたや 「たかい!たかい!あたいってば最高ね!」 自分の危機的状況を理解していないのか、楽しそうにしているゆっくりチルノ。 ちょっと悩んだ後、れみりゃはとりあえず大きい方から食べることにした。 「う~♪おっきいぷでぃんをだべちゃうど~♪」 「ごべんねえええええええ……守れながっだおがあざんをゆるじんぶぎゅっ!?」 自分の世界に入り込んでいた母れいむにいきなり走る激痛。 れみりゃが後頭部を齧り取っていた。 「いだいいだいやべでえええええええええ!!れーむまだあがぢゃんづぐるんだがらああああああああああ!! たべぢゃらめえええええええええええええええええ!!!」 「うっ♪うっ♪うぁうぁ~♪」 絶叫を上げる母れいむに楽しそうなれみりゃ。 ―こっちのぷでぃんはなかなかの甘さだ。もう片方のぷでぃんはどうだろう― そう思って今度はゆっくりチルノを食べることにするれみりゃ。 どうやらこのれみりゃは本物のプリンを食べた事が無いらしく、 食べ物の総称としてぷでぃんと言っているらしかった。 「う~♪あ~ん♪」 大口を開けてゆっくりチルノに噛み付く。 がぶっ その瞬間二つ分の悲鳴が上がった。 「い、いだいいいいいい!あだいってば食べられないいいいいぃぃぃぃ!」 「う゛あ゛ぁぁぁぁぁ!ざぐや゛ああああああああああぁぁぁぁ!!」 何度も述べているようにゆっくりチルノは氷である。 当然固い。そして冷たい。 そんなものに思いっきり噛み付けば……痛いに決まっている。 「ざぐや゛あああああああああああ!!ざぐや゛どごおおおおおおおおお!?!?」 噛み付いた歯から頭に響く冷たさと痛みにれみりゃは悲鳴を上げて見知らぬ人物の名を呼ぶ。 そして勢いのまま抱えていた二匹を放り出し、何処かに飛んで行ってしまった。 「い、いやああああああ!!!!いがないでええええええええええええ!!」 「あたいってばおぢぢゃうのおおおおおおおおお!!」 放り出された二匹はたまったものではない。 さっきまで離してと言っていたのに今度はそのれみりゃに助けを乞う。 が、その願いが聞き入れられることはなかった。 「もっどゆっぐりじだがっだよおおおおおおおおおおお!!!」 「アイシクルウォールイーーーーーズィィィィィィィ!!」 重力に任せて二匹はばらばらに落ちていった。 さて、ここで場面は変わってさきほどの襲撃から逃げ出した子れいむである。 パニックになって逃げ出してしまって家族と離れ離れになったが、今は何とか落ち着きを取り戻していた。 そしてその落ち着きを取り戻した餡子脳は先ほどの襲撃の一つの結論を導き出していた。 ―もう自分の家族はいない― れみりゃの恐ろしさは子れいむもよく知っている。 あの状況で他の家族が助かったとは思えない。 これからは、自分はひとりで生きていかねばならないのだ。 「ううっ、おかーしゃん……おねーちゃん………」 ついさっきまでみんなでゆっくりしていたのに、いきなり自分一人になってしまった。 その悲しみはいかほどのものであろうか。 「みんなともっとゆっくりしたかったよ……でも……これからはみんなの分までれーむがゆっくりするね……」 新たな決意を胸(顔?)に子れいむが顔をあげた時、上から懐かしい声が聞こえてきた。 「ゆううううううううううううううううううううっっっ!!!!」 「おかーしゃん!?」 その声に驚いて上を見上げる子れいむ。そこには空からものすごいスピードで 自分に向かってくる母の姿があった。 「ゆ!?おかーしゃん!てんごくから会いに来てくれたんだね!とってもうれしいよ!またいっしょに ゆっくりしようね!!」 喜びでぴょんぴょん飛び跳ねつつ母へと言葉を投げかける子れいむ。 そんな娘の姿に母れいむも気付き、思わず喜びのあまり落下と言う絶望的状況を忘れる。 「ゆ!れいむの赤ちゃん!生きててくれたんだね!とっても嬉しいよ! もうほかの赤ちゃんはいないけど一緒にゆっくりしようね!」 親子の感動の再会である。 二人の距離はどんどん近付いていく。 そして…… 「おかーしゃあああああああああんぶべっ!?!?」 「れえええええええええええむぎゃあっ!!!!!」 天文学的な確率で二人の距離が0になった瞬間、お互いの名を叫びつつ仲良く餡ペーストになった。 一方同じように投げ出されたゆっくりチルノ。 重力に引かれどんどん地面が近づいてくる。 「あたいってばゆっくりしてないいいぃぃぃぃぃ!!!」 ゆっ⑨りブレインでもこのままでは死んでしまうことは分かる。 ゆっくりチルノの頭にこれまでの楽しかった思い出が走馬灯となって流れ始めた。 その走馬灯は……今度は0.5秒で終わった。 楽しかった思い出も忘れてしまうゆっ⑨りブレインの悲劇である。 そしてそんな事とは関係なく死という現実が迫ってくる。 「あたいってば幻想郷最速ねぇぇぇぇぇぇっ!」 どこぞの天狗が聞いたら怒りそうな事を叫びつつ、ゆっくりチルノは恐怖で目を閉じる。 加速された体は地面に向かって一気に落下し激突――-―― しなかった。 「ゆ?」 疑問の声を上げてゆっくりチルノが恐る恐る目をあけると、何と自分の体が浮かんでいるのではないか。 そう、この危機的状況でゆっくりチルノの本能が彼女の羽を無意識に羽ばたかせるという行動をさせたのだ。 何という奇跡!生命の神秘! 次第にゆっくりチルノも自分が飛んでいることに気づいたのか、喜びの声を上げ始める。 「すごい!あたいってば飛べたのね!」 しばらくパタパタと低空飛行を楽しんだ後、着地するゆっくりチルノ。 ふぅ、と一息ついて空を眺める。 あれほど太陽が輝いていた空は、いつの間にか夕焼け色に染まっていた。 よく覚えていないけど今日はもう疲れた。 さっさとおうちに帰って休もう。 そう考えたゆっくりチルノはゆっくりとおうちに戻っていった。 おうちの場所を忘れて3時間ほどさまよった後、 ようやくゆっくりチルノは自分のおうちを見つけることができた。 途中で自分が何をしているのかも忘れたりしたため余計に時間がかかった。 「ふぅ、あたいってばゆっくりね!」 そう言って巣穴に潜り込むゆっくりチルノ。 しかしそこには………先客がいた。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪……ゆっ?だれ!?ここはまりさのおうちだよ!」 ゆっくりチルノが蓄えていた木の実を頬張っていた黒帽子のゆっくりが振り向き、自分のおうち宣言をする。 一瞬呆気に取られるゆっくりチルノだが、しかしさすがのゆっ⑨りブレインでもこれには黙っていない。 ここは頑張って自分が掘った巣穴なのだ。他人に渡すわけにはいかない。 「何言ってるの!ここってばあたいがつくったおうちよ!その木の実もあたいが集めたものだよ!」 「ふざけないでね!この木の実は最初からここにあったんだよ!ここはまりさが先に 見つけたからまりさのおうちだよ!」 傍若無人な事を言うゆっくりまりさ。 普通のゆっくりならここでさらに強く言い返すところだが、ゆっくりチルノの頭は既に混乱し始めていた。 ―そういえば勢いで言ってみたけど、自分がその木の実を集めた記憶はない。 このあたりは草が茂っていて場所が分かりにくいし、もしかしたら本当に巣穴の場所を間違えたのかも… そうだとするとここはこのまりさのいうとおり自分のおうちじゃないんじゃないんだろうか― うーん、と悩むゆっくりチルノにゆっくりまりさの言葉がとどめを刺した。 「ここはまりさのおうちだよ!でも今すぐ出ていくなら木の実を少し分けてあげてもいいよ!」 既に傾きかけていたゆっくりチルノにこの言葉は決定的だった。 ―自分がおうちを間違えてとても失礼なことをしたのに、食べ物を分けてくれるなんてなんて親切なんだろう― 「ごめんね!間違えちゃった!あたいってばゆっくりね!」 照れるように笑ってゆっくりチルノが言う。それを聞いてゆっくりまりさは 「分かったのならさっさと出て行ってね!もう来ないでね!」 そういっていくつかの固い、食べかけの木の実をゆっくりチルノの側に投げた。 「ごめんね!ありがとね!」 ゆっくりチルノは礼を述べると木の実を口に詰め込み、巣穴を抜け出していった。 後にはニヤリと笑うゆっくり魔理沙が残された。 「むーしゃむーしゃ、⑱ー!」 巣穴の側で木の実を食べてよく分からない叫びを発するゆっくりチルノ。 18は9の2倍なので2倍幸せと言う意味である。 こんなギャグを思いつくなんてあたいってば天才ね! と自己満足に浸りつつゆっくりチルノは木の実を食べ終えた。 色々あったとは言え何度も水没したことで既に必要な食事量はほとんど満たしていたので、 少ない木の実でもゆっくりチルノは満腹だった。 しかしそろそろ本当に急いでおうちを探さなくてはならない。 もうすでにまんまるのお月さんが浮かんでいる。 「あたいってばゆっくりしてらんないわ!」 慌てておうち探しを再開する。 が、いくら探しても自分のおうちはみつからなかった。 さきほどの巣穴が本当のおうちなのだから、当然である。 さらに一時間ほど涙目で巣を探し続けたがついに見つからず、 ついにゆっくりチルノは木陰にばったりと倒れ伏した。 「あたいってばゆっくりしすぎね……」 もう仕方が無い。きっと巣穴の場所を忘れてしまったのだろう。 今から巣を掘ったり探したりなんてできないし、今夜はこの木陰で眠ろう。 きっと明日になったら巣の場所も思い出すに違いない。 そう考えたゆっくりチルノは木の側で隠れるように横(縦?)になった。 しかし瞼を閉じ、いざ寝ようとすると頬にあたりがなにかかさかさするものがいる。 何かと思って目を凝らしてみると、それは蟻の行列だった。 「あたいってばラッキーね!」 目を輝かせながら目の前の蟻をパクンと食べるゆっくりチルノ。 何匹か食べたところで今度は蟻たちに息を吹きかけ始めた。 「ふーっふーっ」 本来、ゆっくりチルノが他の生物を凍結させるほどの冷気を出すにはくしゃみをするしかないが、 蟻ぐらいの小さい生き物相手であればただ息を吹きかけるだけでも凍結させることが可能なのである。 こうして蟻を冷凍保存しておき、明日の朝起きたら食べよう、と言うのがゆっくりチルノの考えだった。 20個ほど蟻の氷塊を作ったところでゆっくりチルノは眠ることにした。 そして、その氷塊を眺めながら、これなら明日の朝ご飯はごちそうね!と幸せな気分で眠りに就いた。 しかしそこはゆっくりチルノ、ちゃんと作戦に穴が開いている。 いくら凍らせたとはいえこの夏の熱帯夜、小さな氷塊などすぐ溶けてしまう。 ゆっくりチルノが熟睡した後、溶けた氷塊から蟻たちが抜け出していくのに、気づくものはいなかった。 そして翌朝。 水色の髪に薄い色の羽、氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝は 木陰で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 そして昨日作った朝食用の氷塊など当然のように忘れ、また朝食探しに飛び跳ねていく。 果たして今日はどのような一日になるのだろうか。 夏の青い空は、昨日と変わらぬ晴天の色を湖畔に住む生き物たちに伝えていた。 あとがき 今まで何度もSSを書きかけて途中で挫折したけど、初めて一つ書き上げる事が出来ました。 こういうの書く時は勢いって大事ですね。 しかしおかげで貴重な時間が6時間ぐらい潰れてしまった。 ゆっくり虐待してた結果がこれだよ! あれ?そういえばあんまり虐待はしてないような…… このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/90.html
ゆっくりゆゆこ。 それはれみりゃ以上に数が少ない希少種で、なおかつモデルと同じく食欲旺盛。 しかしその食欲はハンパではなく、ゆっくりれいむ50匹など30分あれば喰らい尽くすだろう。 それどころかれみりゃを捕食していた等の報告もある。 そのために小さいうちに民家に侵入しては住人に発見され叩き潰されることがしばしばある。 成長すれば人を喰らうという縁起でもない話もある。 今のところ『ゆっくりに食われた』という報告はないので安心しておこう。 さて、このゆっくりゆゆこ、成体になると短い手足が生える。 このゆっくりゆゆこ以外で手足や胴体が生えるゆっくりはれみりゃとフランぐらい。 通称、『ゆービィ』と呼ばれる。由来は言うまでもあるまい。 実はこのゆービィ、希少種のためにあまり生態がはっきりしていない。 さて、今日はそんなゆービィを観察することにする。 ゆービィはいつもの小さな洞窟の塒で目を覚ます。 「ゆゆ~」 ゆービィは群れを作らない。作ったとしてもきっと食べてしまうだろう。 ゆービィは塒の周りを見渡すが、ただ岩壁が広がっているばかり。 そりゃあゆービィに食料を保存するといった習性はないからだ。 ゆービィはもたもたとした足取りで洞窟の外に出る。 月が煌々と周りを照らしている。 ゆービィは周りを見渡してみる。 するとゆっくりれみりゃが目の前でゆっくりれいむたちを襲っているのが目に入った。 「うー♪うー♪あまあまー♪」 「ゆ゛ぅ…ゆゆゅ…」 「ゆっくりやめてね!!!ゆっくりやめてね!!!」 れいむはやめるように言うが、そんなことをれみりゃが聞くはずもなく、次々とれいむを平らげていく。 そんなれいむ達を見てゆービィはある行動に出た! れいむを救済?いいえ、吸い込みです。 ゆービィは大きな口を開けて大きく息を吸い込んだ。 その吸引力はすさまじく、大門…じゃなくてダイソンと同じくらいとも言われる。 「ゆゆゆ?」 生き残っていたれいむがゆービィの方向へと吸い込まれていき、 「ゆっ!!!」 すっぽりと口の中へれいむをしまった。 痛みはないだろう。噛まれてもないのだから。 しかし問題は獲物を横取りされたれみりゃである。 「ゆゆ~」 「ぶー!ぶー!」 ゆービィに近付いていくれみりゃ。 しかしそれはあまり賢い行動とは言えない。 このれみりゃ、世間知らずなのかゆービィがれみりゃ種より強いことを知らないようだ。 「うあー!」 雄叫びをあげて突進するれみりゃ。 普通のゆっくりだったらそのまま噛まれて弄られて「はいそれま~で~よ~」なのだが、そうもいかない。 ゆービィは素早く身をかわし、そのままれみりゃに圧し掛かった。 重さに耐えられず、べちゃ、と地面にへばり付くれみりゃ。 その時に顔を(というか顔しかないけど)強打したらしく、痛さで泣き喚くれみりゃ。 「う゛あ゛ー!!う゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」 頬には滝のように涙が流れている。 ゆービィは地面へと着地し、さっきのようにれみりゃを吸い込む。 「う゛ー!!」 吸い込まれまいと必死なれみりゃだったが、さっきのダメージが大きかったようで、 力ともなくゆービィの口の中へと飲み込まれていった。 「ゆゆ~!」 しばらくしているとゆービィの背中かられみりゃにあった羽が生えてきた。 どういう仕組みなのかは不明だが、どうやら捕食したゆっくりの特性を自分に活かす能力があるらしい。つまりコピー。 ちなみにれいむはスカだそうだ。 ゆービィは羽を広げてまだ月明かりが明るい夜空を舞った。 しばらくゆービィは空を舞っていたが地上に瀕死のゆっくりを見つけた。 もう生きているのか死んでいるのか分からない。瀕死だから当然と言えば当然だが。 ゆービィはそれに向かって一直線に舞い降りた。 「ゆ~♪」 ゆービィはそれに齧り付く。 このあとはまた夜空を飛ぶ予定だった。 だがしかし、現実はそんなに甘くない。 「ゆゆっ!?」 ゆービィを下から出た鉄の籠が閉じ込めた。 「ゆ~ゆ~」 ゆービィは鉄網を叩くが所詮はゆっくり、意味が無かった。 こんな狭いところでは羽も邪魔なだけだ。 ゆービィは羽を千切って鉄網の隙間に投げた。 痛いには痛いが仕方ないのだ。 外に投げられた羽はみるみる成長し、なんとゆっくりれみりゃに変貌したではないか! これぞゆービィに秘められた能力、ヘルパーそのものである。 このヘルパー、ある程度の自我は持つが基本的にはゆービィのしもべ、手下…もとい仲間。 ヘルパーはゆービィを助ける事になら命を惜しむ事は無く、命を散らしていく。 そのため、用が済んだら大抵はゆービィに食われていくのが悲しい。 「ゆゆゆゆゆ~」 「うー!うー!」 れみりゃは鉄網に体をぶつけ始める。 ガンと鉄音はするが、破壊までには至らない。 一方ゆービィは傍観しているだけ。 ゆービィはヘルパーを作るとヘルパーに物事を任せっぱなしにする特徴があった。つまりは物臭なんだろう。 そんなことも気にせずれみりゃは体当たりを続ける。 帽子が傷ついてもそんなことは気にせず体当たりをする。だってヘルパーだから。 それを10分くらい続けていると、向こうから足音が聞こえてきた。 「あらあら…ずいぶんと仲間思いのゆっくりだこと」 そこに現れたのは八意永琳。通称マッドドクターとか言われているのは気のせい。 彼女はこうして罠をはってゆっくり達(今回は捕食種)を集めていたのだ。 永琳は籠に体当たりしていたれみりゃを手で掴む。 「ふぅ…今日はこれで2匹目…なんだかいまいちね」 「うー!うぅぅ…」 動きが取れなくて羽をバタつかせて暴れるれみりゃ。 しかし饅頭ごときが人間に敵うはずがなかった。 ゆービィはと言うと、呑気に籠の中で眠っていた。 「さて…籠の中身は…おおぅ、これはゆっくりゆゆこの成体ね…珍しい種が手に入ったわ 今日は希少種が手に入った事だし、まぁいいでしょう」 永琳は、鉄の籠を持って永遠亭へと足を急がせた。 ゆービィは気付くと四角い天井が見える部屋にいた。 沢山の鉄製の机が並べられ、その上に書類が大量に並べられ、さらにその横には怪しげな薬が音を立てている。 ラベルを見ると、『ドーピングヤゴコロスープ』、『マジョカルスープ』等が書かれている。 そんなことはともかく、ゆービィとしてはこのせまっくるしい籠から脱出したかった。 ヘルパーはどこへ行ったのかゆービィの周りにはいなかった。 しかし周りからはなにやら甘ったるい臭いが立ち込めている。 よくよく耳を澄ますと小さく「ゅ-ゅ-」とか細い声が聞こえてくる。 ゆービィは周囲に自分の餌が大量にいることを知った。 しかしゆービィがいるのは籠の中。これではゆっくりを食べる事が出来ない。 ゆービィはとりあえず吸い込みをしてみる。 積み上げられている書類が宙を舞い、フラスコの中の液体がジュワと音を立てた。 すると、何かゆービィ口の中に入ってきた。 それはガンパウダー。火薬だった。 ゆービィが今手に持っているのは爆弾。 世界一かっこいい一頭身がいたら、『あれぞボムゆービィ!』とか言うに違いない。 ゆービィは何をしていいのか分からず、とりあえず手に持っているものを投げた。 その瞬間、研究室はボムの炎につつまれた。 「なッ!?なにが起こったの!?」 永琳が慌てて研究室に飛び込んできた。 永琳が見たものは目にも当てられなかった。 薬は枯れ書類は裂け……捕まえていたあらゆるゆっくりが絶滅したかに見えた………。 「あ、あああああぁ…」 絶望のあまり項垂れる永琳。 だが…ゆービィは死滅していなかった!! そーっとこの部屋から抜け出そうとするゆービィ。 しかし入り口近くで永琳に鷲掴みにされた 「ゆゆゆっ!!」 永琳の表情はよく見えない。だが腸が煮えくり返っているのはよく分かった。 「よくも!このクソ饅頭がッ!わたしの研究を台無しにしてくれたなァああっ――ッ!」 永琳はゆービィの頬を思い切り殴り飛ばした。 「ゆぐぅっ!?」 ゆービィはなすすべも無く壁に叩きつけられ床に落ちた。 衝撃のあまり体を痙攣させるゆービィ。 だがそんなことお構いなしに永琳は近付いてくる。 「よりによってこの部屋でッ!大切な研究成果を灰にしてくれたなァ――――ッ!!」 永琳は顔を血管を浮き出させヒクつかせている。 「蹴り殺してやるッ!このド畜生がァ――――ッ」 プッツンと何かが切れた音がした。 それと同時にゆービィは蹴りを入れられた。 「ゆぐぅえっ!!」 ゆービィが苦しそうな声を上げる。 「おまえを殺すのは一瞬だッ!それでは私の怒りがおさまらんッ! キサマが悪いんだ!キサマがッ!わたしを怒らせたのはキサマだッ!キサマが悪いんだ!」 永琳はゆっくりには理解できない台詞を吐きながらゆービィに蹴りを入れ続ける。 ゆービィから餡子が漏れる。ゆービィは桜餅なのである。餡子は甘さ控えめらしい。 「ゆぐっ!ゆぐぅ!ゆがっ!ゆぶぅうっ!」 蹴られるたびに苦しそうな声を上げるゆービィ。 しかし永琳は蹴るのをやめない。まぁ当たり前か。 「思い知れッ!どうだッ!思い知れッ!どうだッ!どうだッ!」 助けてくれる輩もいない部屋で蹴られ続けるゆービィ。 もう大きさは半分以下にまで縮んでいた。 声ももうほとんど出ず、ただただ涙を流すだけだった。 「どうだ!どうだッ!どうだァァァァァ――ッ」 最後の蹴りは特別強烈だった。その蹴りはゆービィを貫き、文字にし難い断末魔をあげさせた。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛う゛う゛うぅぅぅっ!!!」 ボロボロになったゆービィは高く宙を舞い、これまで食べてきたものを走馬灯のように思い出し、床にべちゃとへばりついた。 もう動く気力など残っていない。吸い込む元気も無く、餡子もほとんど吹っ飛んでしまった。 ゆービィは動く事無く静かに息絶えた。 「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…勢いでやってしまったわ…ああ、もったいない…ゆっくりゆゆこ…」 永琳はめちゃくちゃになった研究室で損失を悔やんでいた。 あれを研究すれば、今までの分を取り戻せたかもしれないのに… 「師匠ー?何やってるんですかー?」 ふとウサギの耳をした女性が声をかける。鈴仙である。 「ああ、うどんげ…ちょっと見てよこの部屋…ゆっくりゆゆこを見つけたはいいけど 研究結果とかがめちゃくちゃにしてくれたから…つい、やってしまったわ」 これからの事を考えると項垂れる永琳。 しかし鈴仙は意外な返事を返した。 「めちゃくちゃ?どこがです?」 「え?」 永琳は研究室を見て目を丸くした。 何も変わっていなかったのである。山積みになっている書類もそのままだし、ゆっくり達は相変わらず泣いている。 まるで爆発など無かったかのように。 「あ、あれ?確かにめちゃめちゃに…おかしいわねぇ…」 永琳は首を傾げるほか無かった。 ある洞窟で一匹のゆっくりが生を受けた。 普通のゆっくりと違い、「ゆゆ~」としか喋れないゆっくりは、獲物を求め、空腹のままに外に跳ねていった。 FIN. by GIOGIO
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/509.html
前 俺が、にやにやとれいむを見下していた、そのとき。 『ドン!』 閉められていた玄関の扉に何かがぶつかった。嵌めこみのガラスの向こう側に何かの影がある。 「う゛―――」 唸り声。それは、つい先ほど聞いた様な。 俺は扉を思いっきり蹴り開けた。 「う!?」 まるで既視感(デジャヴュ)。桃色の影が、家の門柱まで吹き飛んでいった。 俺はすぐさまそれの下に走った。 ――ゆっくりれみりゃの成体だった。 不細工な下膨れはひっぱりねじ切ってしまいたくなる。赤ん坊のような小さい未熟な手足は、踏 み潰す、ひねり上げてもぎ取るなど、多彩な方法で甚振れる。気分が高揚していくのが実感できる ほどだった。 それにしても今日はいい日だ。稀少種類だと言われるゆっくりれみりゃが、幼体、成体ともに手 に入るとは、運が味方しているらしい。否、それとも、家をめちゃめちゃにされた代償として誰か が与えてくれたのだろうか。そう思える。ここで神様がもたらしてくれたとは一切考えない。幻想 郷に住むものならわかるだろう、この世界に住む神は高く崇められるほど素晴らしき存在に在らざ るものだ。 「……うー?」 目がゆっくりと開かれていく。つぶらな瞳とは陳腐な褒め言葉として使われるありきたりな言葉 だが、それすらも使う気が起きない。可愛さ余って憎さ千倍など、生ぬるい表現だ。憎さ余って殺 意億倍だ。 「うー、でびりゃになにするんだどー! こーまかんのあるじだどー! たべちゃうどー!!」 ゆっくりれみりゃの成体は――区別が面倒なので此方を《おぜうさま》と呼ぶことにする――し ゃがんだままで、まるで子供騙しの余興のようなヒーロー戦隊モノに出てくるショボイ怪獣のよう に、諸手を高々と掲げてそう言った。俗に《十進法がなんとやら》と呼ばれるものだ。笑顔である 。気持ち悪い。肉まんの分際で笑うな。しゃべるな。 暫時その様子を見つめる。そのうちにおぜうさまは立ち上がり、おぼつかない足取りでこちらに 近寄ってきた。獲物を捕らえるつもりでいるのだろう。少しの段差にも蹴躓きそうな歩みで、何を 言うか。バカにされている気分だ。 それにしても、ゆっくりれみりゃはなぜ成体になるのだろう。先ほどから幼体の動きも見ている が、そう考えても幼体のままで居る方が動きも素早い。成体になると、自らに手足が生えたことに 喜びすぎているのか解からないが、羽根を使って飛ぶような様子は無い。これはゆっくりちるのよ りも頭がよろしくないと見える。まさに『スカーレット・デビル』そのものだ。 そういえば、今日の宴会では珍しく大妖精と一緒にきていたチルノを大泣きさせた。悪酔いした のか、はたまた救いようの無いバカなのかは判じ切れないところだが、俺に対してレミリアも斯く やと言わんほどの傍若無人な態度を取るので、博霊神社の裏に連れ込んで『バカちるのは水にとけ て死んでしまえ!! お前の身勝手な言動で大妖精がどれだけ迷惑しているのか判ってるのかこの 屑が!! 最強最強とほざいているがどれだけ最強なのか見せてみろ! あ? どうした? でき ないのか? できねえんならでかい口叩いて人間様に突っかかってくるんじゃねえこのマルキュー !! 冬でさえまっとうに敵を叩くことも出来ねえ癖に蛙をちょっと苛めたぐらいで最強最強天才 天才ってなめとるんかバカタレ大蝦蟇に食われて必死こいて這い出した挙句にションベンたれたこ ととか魔理沙に怖い話聞かされてその夜に寝ションベンたれたことも知ってるんだ、それであたい 最強あたい天才って人間様をバカにするんじゃねえってんだ臍で茶を沸かすって言葉知ってるか知 らないだろうよ諺のひとつも知らないようなお前のことを言うんだよこの腐れ脳みそすら入ってな い脳無し大バカ妖精が!!!』と言葉の限りに罵倒した。すると、みるみるうちに涙をためて大妖 精に救いを求めて逃げていったのだ。霊夢からは失笑されたが、何故か守矢神社の諏訪子ちゃんに は大喜びされてしまい、俺の方が当惑してしまった。 チルノはその一件の後、宴会場の隅っこで膝を抱えて泣いていたが、面白いことに大妖精すらチ ルノを慰めには行かなかった。延々と泣いているのが見ていられなかった霊夢は『宴会の盛り上が りに邪魔だから帰って』の素気無く言われて鳥居まで蹴り出され、チルノはさらに大泣きして湖に 帰っていった。血の涙が流れていたのではないか、とは上白沢慧音の言葉である。 思考をめぐらせているうちに、おぜうさまはもう少しで俺の足に食らいつくかというところまで 来た。俺は一歩後退した。 「ウガー! ツブスゾー!!」 真上から、俺の出来うる鬼の形相で叫んだ。子供のけんかのようだが、これも意外と楽しいものだ。 「う……」 はっと何かに気づいたように歩みを止めるおぜうさま。一瞬、表情が崩れる。いや、とっくに崩 れているとも見える顔つきだが、それがさらに崩れてしまったということだ。見れたものではない。 しかし、おぜうさま自らその表情を隠した。しゃがみこんで頭を体に近づけるようにし、さらに 両の腕で頭を覆った。ガードのポーズだろうか。 無駄だ。 お腹あたりを助走付きで蹴飛ばした。 おぜうさまは声も無くきれいな放物線を描いて飛んでいく。幸か不幸か、おぜうさまは傍らの木 に激突した。 そもそも、近くの集落の子供たちに蹴球を教えている俺が、球体に類似した物体を見て蹴らずに 居られようか。それで姿が見られなくなるのならいいが、おぜうさまの場合逃げた方が懸命のはず だ。本当に餡子というものは馬鹿の象徴になりえる。餡子という言葉で馬鹿という意味を表現して もいいのではないだろうか。 とりあえずそばまで寄った俺は、もう一発真上から踵落としを喰らわせ、気絶の度合いを高めて おいて、俺は家へと戻りロープを一本取ってきた。すぐさまおぜうさまを縛り上げた。ゆっくりの 力はたかが知れているし、どうせ紐で身体を圧迫されているだけで何もできずに助けを請い始める だろうから、過度に心配する必要はないだろう。ただ、こいつの穢らわしい肢体を素手でつかむこ とに辟易した俺は、目覚めてしまうのも許容範囲と見做して家まで引きずることにした。 家の前の砂利は角が取れていない、非常にとがっているものだ。流石のおぜうさまも、皮膚、と いうか皮が抉り取られていく感触に、いつまでも気絶はしていられなかったらしい。 「ひぎゃあーーー!! いだい、いだいぃぃぃーーー!! ざぐやっ、ざぐやっ!!」 「黙れ」 「やべっ! ぎゃああああ!! でみりゃのうづぐじいまっじろなはがーー!」 おぜうさまには牙があるとかないとか。探してみれば、やたら仰々しい汚らしい牙があったので もぎ取ってみた。案の定痛がって噛み付いてきたが、肉まんに挟まれても痛くもかゆくも無い。さ らに言えば、おぜうさまの牙は黄土色をしていて、美しさの欠片も無かった。 嘆きを背後に聞きながら家の中に入る。れいむが俺の姿を確認すると再び命乞いを始めるが、俺 の後ろを見ると皮色をさらに悪くした。それにしても、ゆっくりの餡子と皮はどういった仕組みで 出来ているのだろうか。知能を持った餡子。まさにミステリー。 否、そんなことはどうでもいい。今ここでれいむを食べられるとあまり意味が無いので、れいむ を下駄箱の中に箱ごと押し込む。食われる心配が軽減されたくらいは餡子脳でもわかったのだろう 。扉を閉める寸前に「騒ぐとれみりゃに食われるぞ」と脅しをかけてやると、ゆっくりれいむは馬 鹿みたいに騒ぐのはやめた。生きることへの執着は恐ろしく強い。 次はチビれみりゃの身元確認だ。 箱の中の袋かられみりゃを放り出す。情けなく床に転がると、れみりゃはピクピクと震えだす。寒いのだろうか。 ――いや、違う。死にかけているのだ。 よく聞けば、う、うっ、と呻いている。涙――否、肉汁がナイアガラのようだ。 れみりゃを入れていた袋は、れみりゃを取り出した後も重みが残っていた。中を覗くと、途端に 肉まんの芳香が漂う。中身の大半は袋の中に落としてしまったのだろう。こいつらには、人間で言 うところの血小板のようなものは備わっていないのだろう。 「あ゛――――!! でみりゃのあがぢゃんが―――――!!」 背後から突如として絶叫が響く。おぜうさまはその豚のような目を見開いて涙を――否、肉汁を 垂らしながら喚いている。やはりおぜうさまの子供だったか。 「ま゛、ま゛……、だず、げでぐ、れ、だど……」 「だんでっ!! だんでごんだごどぢだんだどー!?」 対訳するならば、射し当たって『何でっ! 何でこんなことしたんだど!?』と俺に訊いている のだろう。肉汁を目から鼻から垂れ流し、醜い表情でがなる。全くゆっくりというものは、興奮し 始めると濁点の付いたような言葉で話し始めるから困るのだ。 しかし、だ。 「何でって言われてもねぇ……」 理由は一体何だろうか。やはり存在すべきではないモノだからだろうか。 「でみりゃのあがぢゃんにごんだごとずるやづはっ! ざぐやにやっづげでぼらうっだどー!! ばがなおにいざんはざぐやにやっづげでぼらうっだどー!!」 また言った。《ざぐや》。 これは、あれか? やはり十六夜咲夜のことを言っているのか? よく聞くところの話では、ゆっくりれみりゃは幼体、成体を問わず、命の危険を感じたり、自分 の恣に物事が進まなくなると、『さくや、さくやー』と叫びだすらしい。紅魔館に多く生息すると いうゆっくりれみりゃだが、これは日々咲夜に面倒を見てもらっているからなのか、はたまた本物 のレミリアが咲夜を呼びつける真似をしているのか、その真意は全くのなぞだ。だが、事実として 、今もこいつらは《さくや》という単語を発した。全く、うざったいことこの上ない。そのくせ他 のゆっくりを襲うから、こいつはしょっちゅう人間に虐殺されるのだ。寧ろそれは虐殺ではなく、 当然の酬いなのかもしれない。 ――今度、本物の咲夜に相談してみようか。癪に障るからレミリアは無視して。 「そうかい、そうかい。そんなこという馬鹿肉まんにはプリンは無しだな」 「ぷっでぃーん!? ぶっでぃーんがあるの!? ぶっでぃーんぐれだらゆるじでやるど!!」 「馬鹿か、お前」 「れみりゃはばかじゃないんだど! こーまがんのあるぢだど!」 おぜうさまは全身を使ってじたばたと喚き散らす。床はワックスを塗ったように光っている。肉 汁だろう。どうしてくれるんだ、全く。 一体紅魔館の主という存在はこの世にどれだけ居るのだろう。ほんのりとだが、本物のおぜうさ まに同情の念を抱く。 「だから、良くない言葉遣いをするれみりゃにやるプリンは無いって言ってるだろ?」 「ぶっでぃーんだど! ぶっでぃーんぐれだらゆるぢでやるんだどー!」 「だからさぁ。馬鹿とか死ねとか、汚い言葉遣いをするやつに食べさせて上げられるプリンはない んだってば」 「ぶっでぃーんはれみりゃのものだどー!! このちーさいおうちもれみりゃのものなんだど ー! はやぐぶっでぃーんをよごずんだどー!」 「くどいな。このおぜうさまは何度訊いたら解かるんだ? いいか? ここは俺の家。お前に食わ せてやるプリンもないの。解かる?」つーか、成体でもチビのくせして、小さい家とか。バカにす んなよ腐れ肉まん。 「こーまかんのあるぢはえっらいんだどー! わかったらはやくれみりゃにぶっでぃーんをよこす んだどー!」 ――堂々巡りじゃねーか。 というか、《こーまかんのあるぢ》なら家はその《こーまかん》であるわけで、此処は少なくと もれみりゃのものではないはずだが。 ああ。そういえば、居間でつぶれたまりさのことを忘れていた。早く処理をしないことには、も う蠅だの虻だの御器齧(ごきぶり)だのリグルだの、雑虫害虫の類がわんさか居る恐れもある。 「ぶっでぃーんはやくよこさないと、さくやに―――」 子供が死に掛けていることも忘れて、すっかりプリンの要求に没頭しているおぜうさま。俺はそ の様子を視界に入れないように、同時におぜうさまの視界に入らないようにしながら靴箱をあけ、 中で震えているゆっくりれいむを持って居間へと突入した。 やはり、まだ死んでいた。いや、生き返られていても困るんだ。幸いリグルの類――訂正、害虫 の類も集まっていなかった。腐った性根の饅頭は虫も嫌うのだろうか。 れいむに目前に広がる餡子の海を見せぬようにしながら、部屋に深々と開いた穴に近づく。 「おにーさん。どこつれてくの? れいむにきょかなくれいむのいえをあらさないでねっ!」 「……」無言で後頭部(背中か?)をつねる。 「いだいいいいい! やめでねっ!!! ゆっぐりさっさとやめでね!!」 しばらく安全な下駄箱に入れておいたことですっかり元の調子を取り戻してしまったようだ。他 のゆっくりと同じく、ジャイアニズム(これはもう新しく《ユックリズム》と命名したほうがいい のだろうか)を発動した。居間まで俺はその様子を見たことが無かったのだが、いざ目の前で言わ れてみると、いやはや、これが頭に来るものだ。苛立ちに身を任せながら体罰を与えるのはこの上 なく気分が良い。 ところで、《ゆっくりさっさと》行動するとは、どうすればいいのだろう? まったく矛盾を抱 えた生き物だ。 「よし。バカれいむ、目的地に着いたぞ」 「ゆ!? ばかじゃないよ、れいむはばかじゃないよ!!」 まりさが餡子を散らした穴に背を向けた状態で床におろしてやる。れいむは抓られる恐怖から開 放された所為か、復た身勝手に騒ぎ出す。 「バカだろ。おまえ、自分の後ろをよく見てみろ」 「おじさん、ばかばかうるさいよ! ばかっていうほうがばかなんだよ、ばかおじさん! ばかな おじさんはゆっくりしねばいいよ!!」 ついにおじさんに格下げされてしまった。まだ二十歳だってのに。 「ほら、ほら。れいむはかしこくてかわいいゆっくりだよー、っと。ほれ、さっさと後ろを良く見 てね!」 くるりと反転。 霊夢の表情は硬直。すぐさま崩壊。 「あ゛あ゛あ゛あ゛!! まりざがああああ!!」 絶叫。餡子汁を垂れ流し、大声で喚く。何デシベルあるのだろう。既に騒音レベルだ。 それにしても、こんな皮と餡子の塊を見ただけで、よくまりさだと判別できる。これほどまでに 状況判断が出来るのに、どうしてこんなにバカなのか。理屈ではないだろう、何かがこのゆっくり には存在している。 あ、違ぇや。帽子だ。帽子を見ただけだ。 この反応だけでは判らないが、ひょっとするとこのれいむと穴の下のぺしゃんこまりさは《こい びとどーし》とかいう腐戯(ふざ)けた間柄なのかもしれない。 「おじざんっ! まりさをどーじだの!?」 「殺したの」 しれっと答えてやる。 「だんでっ!? だんでごろじだの!?」 「うるさかったから。むしゃくしゃしてたから。後悔はしてない」 某事件の犯人のようなコメントをする。あくまで、しれっと。 「ゆううううううう!! くそじじいはさっさとしね! ゆっぐりじゃなぐ、ざっざどじね!!」 暴言をしこたま吐きながられいむは俺に体当たりを仕掛ける。ぷにょん、ぷにょんとした感触が 気色悪い。だが、ここで蹴飛ばしてもあまり愉しくない。 「わあー、わあー、たーすーけーてー」 一般的な、やられているフリをしてみる。 「ふふん、れいむはつよいんだもん! くそじじいなんて、れいむにさっさとやっつけられてね! まりさのかたきだよ!!」 わわわわーと棒読みで喚きながら、俺は玄関方面に向かう。れいむも、あと一息とばかりに必死 に俺の足に体当たりをかましてくる。よく飽きないものだ。 「はぁ、はぁ……。これでとどめだよっ!! さっさとしねえええええ!!」 数歩下がって、れいむは助走を付けて跳んでくる。ただ、先ほどから数十回と飛び跳ねて体当た りをしていたためか、高さは稼げていない。俺の膝よりやや低いくらいだった。本人(本ゆっくり が正確だろうか)は鬼の形相をしていると思っているのだろうが、血走った目と肉汁を垂らした口 を見る限り、キチガイにしか見えない。 「そぉー、れっ!」 タイミングを見計らって、俺は身体をずらしながら背にしていた玄関への扉を開ける。 「ゆぶふうっ!?」 全力で飛び込んできたため、着地のことを考慮していなかったれいむは俺の足元に顔面から転が る。 「まだまだ逝かせるよお!」 無駄なテンションでれいむを玄関に蹴り飛ばすと、扉を閉める。 「ああああ!!」 「うー! うー!」 何が起こるかわからないが、とりあえず俺はまりさにとある処置をするため、大穴のもとに向か った。 ○ 数秒で処理を終え、ちょっと時間稼ぎがてらに珈琲を煎れてから玄関の方を向く。と。 「うわ、気持ち悪ぃ」 引き戸に何かがへばりついていた。ぶにょんとした柔らかそうなものが、引き戸のガラス部分に くっついているのだ。 「ゆううう!! おにーざん、はやぐごごあげでえええ!!」 都合のいいものだ。先ほどまで『くそじじい!』だの『さっさとしね!!』だのほざいた分際で 。その糞爺に助けを求めるのか。 察しがよくない人間でもわかるだろうが、ガラスにへばりついて叫んでいるのはゆっくりれいむ だ。ここにはおぜうさまやチビれみりゃが居る。れいむにとっては生きた心地のしない、まさに《 アンチゆっくりプレイス》だ。 だが、こうして叫んでいるということは、生きているということを証明している。ゆっくりを捕 食するはずのおぜうさまが、この《腐れいむ(くされいむ)》を食べないとはどういうことだろう か。 恩を売るためにも、とりあえず引き戸を開放する。 弾丸のように、れいむが逃げ込んできた。 「ゆうぅぅぅ、ゆうぅぅぅ……」 肩で(そんなもの無いが、何となくそう見えた)息をするれいむ。死ぬ思いをするとはこのこと だろう。人間なら、餓えたライオンの群れの中に放り出されるようなものだ。 「どうした、腐れいむ。随分ゆっくりしてたみたいだな」 ゆっくりしていないのは承知しているが、その反応を見てみたい。 「ゆうう! くそじじい!」 ――まだ言うか、この身の程知らず。此処まで来ると傑作だ。 「またそっち行きたいのか? 引き戸を開けられるようになってから殺陣を突いたらどうなんだ? ああん!?」 真上から凄んでやると、見る見るうちにその汚い目から餡子汁――涙とは言ってやらない――を 流す。そして、頻りに顔を上下させたと思ったら、口を床に擦り付け始めた。床とキスするのが好 きなのかと思っていたがどうやら違うようだ。 「いやですううう! ごべんだざいっ! もうぐそじじいなんでいいばぜんがら、ゆるぢでぐだざ いいいい!!!」土下座のつもりらしい。 「了解、了解。それで、あそこに居たれみりゃはどうしてた?」 胡坐をかいて座り、組んだ膝にれいむを乗せる。れいむは一瞬身体を震わせたが、意外にも大人 しく乗った。このれいむには然して肉弾戦を行っていないからだろう。攻撃と言っても、引き戸で 挟んだのと、玄関に蹴りだしたくらいだから。素直すぎるのは気色悪いこと限りないのだが、我儘 であるよりは余程いい。 「ゆうう……。れみりゃは、あかちゃんれみりゃにくっついててれいむのほうをみてなかったよ」 「お前、結構騒いでたろ? それでもか?」 頷いた。今ひとつ釈然としないが、現実に起こっていることだから飲むしかないだろう。 「解かった。じゃあ、れいむ。お前は少しそっちに行っててくれ」 「ゆゆ?」 れいむは(人間の動作で考えれば)首を傾げた。 「そっちの部屋にれみりゃがいたらゆっくりできないだろ?」 「ゆ! ぜんぜんゆっくりできなかったよ! あれじゃれいむのいえとしてはしっかくだよ!」 「うん、そもそも、ここお前の家じゃないからな」 軽くいなすように訂正する。 「ゆ? なにいってるの? ここはれいむのいえだよ! おじさんかってなこといわないでね!」 なおもすがりつくようにほざくれいむ。こいつは俺の二人称を定形化することを考えないのだろ うか。恐らく、人間の態度が自分に対して優しければ《おにいさん》、ゆっくりプレイスを横取り しようとすれば《おじさん》、それがひどくなれば《くそじじい》になるのだろうか。なんだか、 面白い思考回路だ。 「じゃあ、例えばここをれいむの家だと仮定しよう。なぜれいむは、ここの扉を開けてこっちに来 れなかったんだ? 自分の家なのに、これじゃ、そこの部屋しか使えないぞ?」 「ゆゆ! いちいちうるさいよ! ここはれいむのいえだってきまってるの!」 少し甘くすればすぐ付け上がる。この単純至極の単細胞餡子はどうにかならないものか。 「いつから?」 「ゆ……、そんなことかんけいないよ! ここはれいむのいえなの!」 時間の概念を朝、昼、夜しか持たないゆっくりが、詳細な時間を理解しているはずがない。 「おまえ、ここに来たときに、部屋にいろんなものがなかったか?」 「あったよ! へんなまずいものとかいっぱいあるよ!! まずいのはきらいだけど、がまんして あげるよ!!」 何が言いたい。 「じゃあ、それはお前がここに来る前からあったんだよな? じゃあそれは誰のものなんだ?」 「れいむのにきまってるよ! れいむがきめたんだかられいむのものなの!! ばかなの!! あ んこくさってるの!!? にどとれいむのまえでばかなこといわないでね!!」人間はお前らと違 って複雑な細胞が集まって脳が出来てるの。餡子なのはお前らゆっくりだけだ。腐ってるのはお前 の餡子だろう。 「なら、ひとつ例え話をしよう」 「おにーさんしつこいよ!! ここはれいむの」 「そっちの部屋に行きたいのか?」 もう一度警告をすると、れいむは口を真一文字にしてガタガタと震え始めた。 「お前が、たとえば森の中で、洞穴を見つけてそこに住んでいたとするぞ。食べ物を探しに出かけ て自分の家に帰ってきたら、まりさが中でお前が昨日見つけてきた木の実を食べていたとする。そ の木の実は誰のものだ?」 「もちろんれいむのものだよ!!」 「まりさが『なにいってるの!? これはまりさがみつけたんだからまりさのものだよ!』って言 っても?」 「ばかなこといわないでよ! れいむがさきにみつけてたんだかられいむのものにきまってるよ! !」 俺はれいむの返答に思わずほくそ笑む。 「じゃあ、ここの家も俺が先に見つけたんだから俺のものに決まってるんだよな? れいむのもの ではないよな!?」矛盾を突いて言論で押さえ込むのは愉快なものだ。 「ゆゆゆう!?」 「これ以上ガタガタぬかすと、またそっちの」 「ゆうううう! ここはおにいさんのいえですううう! れいむがかってにゆっくりしてただけな んですうう!!!」 玄関を睨んだだけで恐れをなしたれいむは必死に命乞いを始めた。あれくらいの論弁術で人間を あしらえると思うなよ、ということだ。こうなるだろうとは思っていたので然して驚きもしないが、聞き分けはまあまあ良いほうなのだろう。 「よし。ゆっくり理解できたかな?」 「ゆっくりりかいしたよ! だからそっちにはつれていかないでね!」 余程おぜうさまが怖いのだろう。 「聞き分けの良い子には、すごくゆっくりできるものをあげようかな」 「ゆゆ!! ほんとう!! おにいさん、ゆっくりできるものちょーだい!」 豹変。ゆっくりできるものに目を爛々と輝かせるれいむ。 「わかった、わかった。今から連れて行くから」 さっとれいむを抱き上げる。例の『おそらとんでる』発言をしながら、れいむは俺からもらえる 《ゆっくりできるもの》に思いを馳せていた。 二秒後。目的地に到着した。 「はい、れいむ。ゆっくりできるものだよ」 れいむの目の前には巨大な穴。中には餡子の塊があった。 ――簡潔に言って、ものの数秒前、衝撃的な邂逅を果たしたゆっくりまりさの亡骸だ。先ほどと 異なっている点は、まりさの帽子を骸から取り上げて台所のコンポストに押し込んだくらいだ。 「……?」 おお、聞いていたとおりだ。 ゆっくりは基本的に、付けている髪飾りや帽子でその固有種を判別するらしい。ゆっくりまりさ にゆっくりれみりゃの帽子をかぶせただけで、まりさはゆっくりれいむの群れに襲われて死んだら しい。捕食種と判断され最初は敬遠されていたらしいが、次第に追い詰められ、最期は母親に押し つぶされて凄惨に殺されたしまったらしい。帽子を失くしたものは即刻殺されたり村八分になり、帽子を奪ったものには制裁が待っているとのこと。命と同等に重要なのだ。 今、れいむは、目の前の餡子を何だと思っているのだろう。訊いてみようか、と思ったそのとき だった。 「おにーさん!」 をゐをゐ。目がめちゃくちゃ光ってるぞ。血走ってるぞ。 「なんだ?」 「このあんこ、たべてもいいの!?」 「よいぞっ!」サムズアップで高らかに。「腹いっぱい食べるがいい」 「ゆゆゆうっ!」 れいむは穴に飛び込むと、一心不乱に餡子にむしゃぶりついた。うめうめと騒ぎながら食べる姿 は傑作だ。 当初の目論見通り、まりさの処理はれいむに任せることができた。ここに来る以前、このれいむ とまりさが恋人同士だろうと関係の無いことだ。れいむが関係ないといっている証拠のような行動 を取っているからだ。床にへばりついているため、すべてを綺麗に平らげるのには時間が掛かるだ ろうと踏んだ俺は、れいむに依れば玄関で呻いているというおぜうさまの様子を見に向かった。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/354.html
注意:一部死なない(虐待されない)ゆっくりを含みます 俺はゆっくり種の研究をしている。 一応個人的な研究になるのだろうが、「ゆっくり加工場」という施設で研究結果を高値で買い取ってくれるために最近では設備も整ってきた。 最近では「体つきのゆっくりの種類と繁殖のさせ方」等、指定つきで依頼されることもある。 加工場のほうがそういう研究は進んでいるのかと思ったが、研究科は人手不足で思うように進まないのだという。 最近では・・・そう、捕食種の研究を依頼されることが多い。(数が少ないので研究が進まないのだという) 朝、俺は最近やっとできた助手(研究内容もゆっくりも増えてきたので、一人は何かとキツかった)とともに長期的な環境変化の実験をしているゆっくりの部屋を回る。 "極寒の地、酷暑の地でゆっくりの体にどういう変化が現れるのか"。 どうでもいいことだが、この実験をするための設備は、何にでもよく効く薬を作ってくれる美人の薬師さんにもらったものだ。 対価が「普通と違うゆっくりができたらその都度数匹ゆずる」だったのには面食らったが、まぁそれだけでいいというのだから素直にお言葉に甘えた。 まず極寒の部屋。 ここのゆっくりは普通のゆっくりより一回り大きく、触るとつるつるした感触がある。 しかし持ち上げてみると見た目より軽いのだ。 まず体が大きいのは、皮の部分が内側で何枚かに分かれ、空気の層を作っているからだ。 実験当初は毛皮のようなものができると予想していたのだが、どちらかというと人間の服のような構造に進化したらしい。 つるつるしているのは雪を付着させにくく、重みで移動が困難になるのを防ぐためだろう。 味? 皮はふわふわ、あんこはしまっているのでかなり美味い。 助手も気に入っているようだ。 部屋に入るとゆっくりたちが集まってくる。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 「「ゆっくりちていってね!」」 「ゆ? このおにーたんはゆっくりできるひと?」 昨日のうちに増えたらしい。このプチゆっくりとは初対面か。 「まぁ、ゆっくりできる人だよ。ほら、お菓子をあげよう」 そういってエサを撒き、個体数や状態(病気、怪我など)を助手にメモさせて部屋を出る。 次は酷暑の部屋だ。 ここのゆっくりは以外にも外見上の変化はあまりない。 ただ触ってみるとその硬さに驚くだろう。 外側の薄皮が硬質化し、水分が逃げないようになっているのだ。 地面に接する部分が特に顕著で、皮の厚みの半分くらいが硬質化し、あんこに地面の熱を伝えにくくしている。 味? あんこは水分が多めでいろいろ使えそうなのだが・・・ 皮がこう、1日素でさらした饅頭のようになっていて、そのまま食うとかなりマズい。 加工場にうってつけの素材だろう。(実際職員たちは喜んでくれた) 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 ここで出てくるのは成体のゆっくりだけで、幼生は1匹もいない。 生まれたばかりのゆっくりは皮がやわらかめで、外に長時間いると脱水症状を起こしてしまうのだ。 なのでプチたちは地中深く掘られた巣穴から出ず、お母さんやお姉さんの持ってくるエサを騒がずゆっくりと待っているのだ。 こういった行動様式がちゃんと確立されているあたり、野生動物(?)としては(少なくとも進化の方向性としては)合格ラインだろう。 「よしよし。ほら、飯だぞ。」 そういってエサを撒くのだが、ここでも面白い変化を見ることができる。 クッキーやパンなど、水分のないエサには目もくれず、野菜やクリーム系などの水分の多いものに寄っていくのだ。 そして食べ終わった後に残ったものをくわえて行き、巣の中の地下水があふれている所にひたしてからやっと食べる。 その場で食べて万が一にも水分不足にならないためだろう。 同じ理由だと思うが、こいつらが交尾するのも決まって水場の近くだ。 やはり厳しい環境で生き残るための知恵なのだろう、極寒、酷暑ともに普通のゆっくりでは考えられないような知恵と絆を見せてくれる。 俺はゆっくり達の状態を確かめ、助手にメモさせて部屋を出た。 廊下を歩いていると、庭で観察しているゆっくりのことを思い出し、助手に尋ねる。 「そういえば庭のあいつはどうしている? まだ大きくなっているか?」 助手がうなずいたのを見て、庭に行ってみることにする。 庭には巨大なゆっくりゆゆこがいる。 "理想の環境でゆっくりはどこまで大きくなるのか"という研究の実験体の1つだ。 最初は部屋の中で飼っていたのだが、大きくなりすぎて庭に出したのだが・・・。 2週間ぶりに見るゆっくりゆゆこは2メートル50を超えていた。 もはや狙ってきたカラスやフクロウなども食べてしまうらしい。 「ゆー?おにーさん、おはよー」 ずっと普通に話しかけていたら、「こぼね」以外の言葉もしゃべるようになった。 生態はまったく変わらないようなのでゆゆこに挨拶をしてそのまま次の部屋へ向かった。(正直少し威圧されていた) 昼食をとった後、予定通りゆっくりブリーダーの人が訪ねて来た。 "ゆっくりブリーダー"とは、ゆっくりに知性を与え、人間と共存させようと日々努力している人たちだ。 俺もゆっくりの知能を高める研究をしているため、たまに相談に来て情報交換をするのである。 「お邪魔します」 「おじゃまします!ゆっくりさせてね!」 「ゆっくりしていくね!」 「ゆっくりしていってね!」 調教(しつけ)は、ほぼ完全なのが1、半分くらいなのが1、残りの1匹は・・・まだ始めたばかりか? 一方こちらは、 「いらっしゃいませ!お部屋にどうぞ!」 「お部屋でゆっくりしていってくださいね!」 「・・・案内します。こっちにどうぞ」 まぁ幼生のときにあんこの密度を上げる増量剤を使い知識を埋め込んできたから当然だが、ゆっくりパチュリーに至っては口調まで変わってしまった。 茶を沸かし、茶菓子をゆっくりたちに用意させ(菓子はゆっくりではない)、ゆっくりとくつろぐ。 ゆっくり達は語彙も豊富にしゃべくりあっている(会話が続く分普通よりうるさい・・・)。 と、そこへ 「大変だ!! うちの畑とゆっくりがあんたのゆっくりで・・・!!」 ふもとの農家のおっさんが駆け込んできた。 要点はこうだ。 この人はゆっくりが比較的好きで、ブリーダーの人にゆっくりをもらい、ともに畑を耕しともに生活していたのだが、 最近畑にちょっかいを出していたゆっくりたちが集団で襲ってきて、畑のゆっくりとたまたま近くを通りかかったうちのゆっくり(お使いに出していた)が応戦。 しかし数に負け、押されつつあるというのだ。 他の家にも救援を頼むため子供を向かわせたが、1件1件が遠いため時間がかかるという。 せっかく知能、体力面で徹底的に強化したゆっくり達に死なれては困るので、俺は助手を連れて速攻でふもとまで向かった。 畑はひどい有様だった。 ただでさえゆっくりたちが食い散らかしている上に、その上で乱闘しているのだから当然だ。 「ゆっくりしないやつはゆっくりしね!」 「こ・・・ここはゆっくりたちとおじさんのはたけだよ・・・おじさんのおやさいたべないで・・・」 「これはまりさのおやさいだよ!ゆっくりし・・・うぶぎゅ!」 「ゆっくりやめろ! 早く出てけ!」 「ここは人の畑だよ!ゆっくりでてけ!」 お、うちのゆっくりは生きてるな。 しかし相当疲労しているようで、動きにキレが無い。 この畑のゆっくり達は半数程度やられているようで、おっさんがぼろぼろ泣いている。 「ハフ、これうっめ!」 「むーしゃ、むーしゃ、おやさいよりもおいしいよ!」 「や゛め゛でえ゛え゛ぇぇぇ!!れ゛い゛む゛の゛ごども゛だべな゛い゛でえ゛っぇぇぇぇ」 早いとこけりをつけよう。 しかし持ってきた装備の中で広範囲タイプは無差別な噴霧タイプのみだ。 この場で発射するわけには行かないので、入り口にトラップとして仕掛け、畑の中のやつは手作業で排除する。 幸いゆっくりたちの行動パターンは知り尽くしているので、効率的に潰していける。 「おにーさん!ここはれ・・・ぶぎ」 「なにするの!ゆっく・・こぴゃ」 「ゆゆっ。・・・ ゆっくり死んでい・・・げぴょ」 ゆっくりの体構造を調べ上げて完成させた殺傷用鞭だ。面白いように弾け飛ぶ。 バチッ、ブチュッ、バシュッ、パシャッ、ガシュッ、プシャァッ・・・ 「ゆ・・・ゆっくりしんでいってね!」 さすがにやばいと認識した数匹が入り口へ向かって逃げ出すが、そこは俺特製の殺ゆっくり剤(すごく言いにくい)の出番だ。 ボシューーーー・・・ 「ゆゆっ!」 「ゆ?」 「なんともないよ!はやくにげようね!」 甘いよ。 「ゆっ・・・ゆげえ゛え゛ぇぇぇ!!」 「ゆぐっ・・ぎあ゛あ゛あ゛ぁあぁ・・・!」 「ま゛り゛さ゛の゛か゛ら゛だあ゛ぁああぁぁ!!!」 皮もあんこもぐずぐずに溶け、ものすごい表情で地面と同化していく。 「よし、実践でもちゃんと成功だな。」 これはゆっくりのみに作用し、体に付着すれば30秒で発症し、全身を腐らせて溶かす、その名も対ゆっくりパープル・h(自主規制) 「ゆっ。ぬけたよ!おにーさんのばーかばーか!」 霧の薄いところを抜けた数匹が余裕の表情でこちらを挑発している。 まぁそこを抜けられたとしても、外の地面は技術屋のカッパさん謹製"振動地雷"なるもので泥沼となっているのだが。 「ゆっ!ゆっくりしずんでいくよ!」 「ゆぶっ!ぬけないよ!」 「ゆぐぐぼごぼごぼ・・・・」 内輪もめする暇もなく全部沈んでいく・・・流石と言わざるを得ないな。まさにお値段以上だ。 感心して見ていると、袖を強く引っ張られた。 助手が指差すほうを見ると、野菜の一時保管所でこの畑のプチゆっくり達をかばっているうちのお使い組の1匹、ゆっくりパチュリーが危機に瀕していた。 「・・・ここは通さない。ゆっくりあっち行って」 「あっちいってだってさ。おお、こわいこわい」 明らかに他のと表情が違うゆっくり(俺は長命種と名づけている)がうちのパチュリーを挑発している隙に、同じ長命種のやつが後ろに回りこんでパチュリーに噛り付こうとしている。 やばい! しかし逃げられないとわかったゆっくりたちが俺に総攻撃を仕掛けてきて思うように走れない! 助手を見ると食い入るようにそちらを凝視している。 こいつに行かせるか!? しかし今は"食事制限"中・・・! しかしもう後ろのやつはもう口を開いている!! 仕方ない・・・! 「ちゃんと"区別"できるか!?」 力強くうなずく。 「よし・・行け!」 口を大きく開いてパチュリーの頭を咥えようとしていた長命種が、たぶん向かってくるものを認識する前に粉々になり中を舞う。 「おお!?」 「キャハハハッ♪ ゆっくり死ね!!」 狡猾かつ運動能力上位な長命種だったが、体つきゆっくりフランにかかってはひとたまりもないだろう。 まして、研究を重ねて大幅に改良されているのだ。 もう1匹の長命種にごぼうを3本突き刺し、三脚のようにして立てた後(早贄のつもりだろうか)、フランはまだ畑に点在するゆっくり達に向き直る。 「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!いだいいだいいだいいだいいだいいいいいい!!」 ほぉ、長命種があの程度であんな表情をするのか。 よほどの急所を狙って刺したらしい。 ものすごい勢いで泣き喚いている。 フランは・・・おお、全開で暴れ回っている。 齧っては投げ、ちぎっては投げ、足元のゆっくりを踏み潰し、後ろから果敢に飛び掛って来たやつを羽で両断し・・・ ただその性質ゆえか、食い尽くす、即死させるというようなことはあまりなく、嬲って楽しむことを優先させている。 「ゆぎいぃぃっ!れ゛い゛む゛の゛あ゛だま゛あ゛あ゛ぁぁ!!」 「ほっぺがああぁぁあ!!いだいよおおおぉぉぉぉ!!」 「あがあああぁあぁぁ!!あーー!!あーーーー!!!」 家族連れらしいゆっくりに近づき、プチをすべて両手に握りこむ。 「ま゛り゛ざの゛あ゛がぢゃんがえじでえええぇぇぇ!!」 ぐにぐにと手を動かした後、手の中を親ゆっくりに見せるフラン。 器用にも顔を上手に外側に出したあんこおにぎりが出来上がっている。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!まりざのあがぢゃんがああぁぁぁ!!」 親ゆっくりには近くにあった雑草用の鎌を突き刺し、地面へ固定する。。 はたから見るとお地蔵様とお供えのおにぎりのようにも見えるが、お地蔵様の表情はまるで般若のそれだ。 喚き続ける親ゆっくりには興味が失せたのか、早くも次のゆっくりへ向かうフラン。 進行方向にいたうちのゆっくりとこの畑の生き残りをまとめて野菜保管所へ放り込む。 「ゆぶっ!」 「ゆぐぇっ!」 「ゆぎゃっ!」 安全地帯へ送る判断力は買うが、加減なく放り込んだため、全員少々どころではないダメージを被っている。 あんこ吐いちゃってるやつまでいるよ。大丈夫か? 固まって逃げ回るゆっくりたちの前へ回り込み、1匹を抱き上げる。 「ゆ?たすけてくれるの?ほかのみんなはたべてもいいよ!!」 「ゆっ、ひどいよ!れいむもたすけてね!」 「そいつはたべてもいいから、まりさをたすけてね!」 うーむ。やはり野生は自己保存本能が何より優先するか。 見ればフランも流石にあきれ返った表情をしている。 「ゆ?・・・ゆががああああぁぁぁっ!!」 抱えていたやつの下あごを踏みつけ、上あごを片手で限界まで開く。 そしてもう1匹をつかみ、その中へねじ込む。 「や、やめてね。ゆっくりやめ・・・うぶっ・・・・」 すっぽりはまり、抜け出すことができない。 ジャストサイズなため、中のゆっくりも口を開くことさえできない状態だ。 「んー!んーーー!!」 「むー!んむぅ~!!」 2匹ともまともに呼吸ができず、死の苦しみを味わっている。 フランはといえば、残りの1匹をかじりながら次へ向かっている。 かなり無駄なことをしているように見えるが、動作が人間並みに速く、しかも飛べるためかなり効率よく駆逐していっている。 こちらもまとわりついてくるやつはあらかた殲滅したため、フランの応援に回る。(手作業の場合、人間より"命令をよく聞く"ゆっくりフランのほうが効率がよかったりする) 畑から(フランの"作品"以外で)生きているゆっくりが消えたころ、他の農家の人も駆けつけてくれたようだ。 「あんた、一人でゆっくりの大群を全滅させたのか!?」 「俺達もみんなで組んで待ち伏せしてやっと駆除したことはあるけど・・・」 「すげぇなぁ・・・」 「いえ、私にはこの殺ゆっくり剤(もう少しいい名前を考えよう)がありましたし、優秀な助手もいますからね」 「助手って・・・これか?」 「ゆっくりじゃねぇか」 「賢くて優秀ですよ・・・この薬は進呈しましょう。もう少し低コストになったら商品化できるかもしれません」 まぁ体つきゆっくりの繁殖の研究時に偶然できたものなのだが、調教(一部拷問)でここまで躾けた。 調教内容は・・・今語る必要はないだろう。 「そうかー。ありがとなゆっくりのお嬢ちゃん。村によく来るゆっくりれみりゃとは大違いだぜ」 「本物?ゆっくりれみりゃって肉まんの形でしか見たことないの」 語彙量が増えない割に、たまに教えてもいない言葉を発するときがある。これもいまだ原因不明の現象だ。 村人たちに感謝され、おっさんとブリーダーさんにまだ生きているゆっくりの治療を頼まれ、怪我をしたゆっくり達の乗った台車を引いて家(兼研究所)に向かう。 ゆっくりフランは久しぶりに暴れられて機嫌がよさそうだが、こっちはひたすらに疲れた。 なお、フランの作った早贄達はゆっくりフランの生態研究用に加工場が買ってくれた。(うちのフランの"作品"では野生種の研究はできないと思うのだが・・・) 畑を立て直す資金として足りるといいのだが・・・ 夜。 幸い俺の治療で怪我をしたやつは全員生き延びた。 治療がすべて終わったあと、夕食を助手と一緒にとる。 もうかなり人間としての生活に慣れたようだ。 後は語彙量の少なさをクリアすれば完成といって差し支えないだろう。 短期的な研究の失敗などで死んだゆっくり(の中の死体が使えないやつ)を捕食種に配り、メモを研究冊子にまとめる。 今日は身体的に疲れたな・・・そろそろ寝るか。 まだまだ元気な助手に声をかけ、自室に戻る。 布団の中で、最近来るいろいろな通知のことを思い出す。 Y-1グランプリとやらの出場依頼、薬師さんのところからの実験体譲渡依頼、紅魔館付近の捕食種(主にゆっくりレミリア)の駆除依頼、加工場からの助手の研究依頼・・・ まぁ、今日はゆっくり眠って明日考えよう。 夜何か異変が起こり、助手にたたき起こされないことを祈って俺は眠りについた。 ****************************************************************************************************************************** 駄文長文申し訳ありません・・・初投稿なのでご勘弁を。 なんかいろいろすんませんでしたOTL 読み返してみると、前半いらない子な気がするなぁ・・・ いろいろな方のネタをパクって詰め込んだ結果がこれだよ! 新しいものに挑戦しようとして自爆したというのもあります 主人公の感情(ゆっくりへの憎しみ等)があまり現れないのは、ゆっくりを(野生種含めて)研究対象としてしか見ていないからです。 ゆっくりフランに不満がある方は、サドッ気の高い人間の助手とかで脳内保管お願いします。 でもこの設定で懲りずにまた何か書くかもしれません ここまで読んでくださりありがとうございました