約 738,026 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1294.html
「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 「たべちゃうだってさ」 「おおこわいこわい」 魔法の森のゆっくり達は襲い掛かるゆっくりれみりゃを見てゆっくり構えつつも即座に逃走に移った。 森を熟知しているゆっくり達はれみりゃが手を伸ばすよりはるかに前に散り散りになりれみりゃの視界から消えた。 「うー?う゛ー!う゛ー!ざぐやー!おながずいだー!」 相当おなかがすいていたのか、ごはんにありつけずゆっくりれみりゃは地べたに座り込んで泣き出した。 その汚らしい声に木に止まっている森の鳥達が眉根をひそめて囀るのをやめた。 このゆっくりれみりゃ、ある人間の女の子に飼われていたのだが大きくなった上にわがままで、親に言われて泣く泣く捨ててしまうことになったのだ。 父親が戻ってこれないようれみりゃが寝ている間に魔法の森に入って木の洞に入れておいたのである。 洞の中に朝日がさして目を開けたとき、誰も居ないことで最初はさびしくてずっと森の中で泣いていたが そこはゆっくりブレイン、すぐに飼い主のことなど忘れおいしそうな匂いのするゆっくりを見つけると本能なのかすぐにゆっくりを狩り始めた。 最初のころは油断したゆっくりを何匹か捕まえることが出来た。 しかしれみりゃが居ることがゆっくりネットワークによって広まるとすぐに警戒され、ゆっくりを発見するところまではいけるのだが 捕まえようとするとすぐに逃げられてしまい全く狩りは成功しなかった。 そんな状況が二日ほど続きれみりゃはもはやふらふらでもうザグヤザグヤと泣き喚くしかなかった。 ちなみにさくやというのは前の飼い主の女の子のことである。 その子はさくやという名前ではないのだが何故かれみりゃは飼い主の女の子のことをそう呼んでいた。 「うー!ざぐやー!うあー!うあー!だれでもいいからごはんー!ごはん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ー!!」 「ゆっくりでてきましょうか?」 そんなれみりゃの前に森の木々の間からぴょこん、とゆっくりゆかりんが飛び出してくる。 「ほらゆっくりでてきました」 「う?うー!ぎゃおーたーべちゃうぞー!」 ゆっくりゆかりんが目の前に出てくるとすぐに噛み付こうと諸手をあげて突っ込んでくるれみりゃだったが あっさりとゆっくりゆかりんによけられて顔面から地面に思い切り突っ込んだ。 「う、う゛ー!どおじでみ゛んな゛れ゛み゛り゛ゃにだべら゛れ゛でぐでだいどぉー! お゛な゛がずいだー!ざぐやー!ざぐやー!!」 案の定泣き出したれみりゃを見てゆかりんはあきれながら言った。 「ゆー…れみりゃにたりないのはゆっくり人のはなしをきくことかしら ごはんにありつくための」 「うー?ごはん?うー♪ごはんちょーだいーごはんー!」 現金なものでれみりゃはごはんと聞くとすぐにごはんをくれると勘違いして河馬の様に大きく口を開いて食べ物を貰うための体勢を整えた。 「だからゆっくりゆかりんのはなしをきいてね」 ゆっくりゆかりんは溜息をつくと嗜める様にれみりゃに言った。 「ゆかりんがごはんを集めるのをてつだってあげるよ そしたられみりゃはおなかいっぱい食べられるようになってゆっくり出来るよ そのかわりにゆかりんが冬を越すためのたべものをいっしょに集めてほしいの」 「うー♪れみりゃたべものいっぱいあつめるー!だからごはんごはんごはんー!うー!」 とにかくご飯にありつきたいれみりゃは躊躇せずにいい笑顔で即答した。 「ゆっ、れいむゆっゆっれいむぅ…!」 「ゆっ、ゆっまりさ!まりさぁ!」 「ゆゆぅっ、すっきりするぅ…!すっきりしちゃうぅ…!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 『ゆんほぉおおお!?』 粘餡を出しながら体をこすりつけ合わせている、要するに交尾真っ最中のゆっくり二匹を発見し ゆっくり近づいて茂みから飛び出したゆっくりれみりゃ。 「ゆ!すぐににげないとゆっくりできなくなるよ!」 名残惜しみながらもすぐさま体を離すゆっくり二匹。 その頬からは粘着質な糸が引いていた。 「ゆー…まりさたちにたりないのはの少女臭かしら あさましいしょうどうを抑えるための」 ゆかりんはれみりゃに抱えられながらそう言い放つと地を這うれいむとまりさに口から何かを吐いてかけた。 「ゆぐぅうう!?くさい!くさいよおおおおお!?」 「ゆ!ひどいよ!れみりゃもゆかりんもゆっくりしね!!」 納豆を頭にかけられたゆっくり二匹は捨て台詞を吐くと即座に用意していた逃走ルートを通って逃げて行った。 「うー!ま゛っでぇー!う゛ー!」 追いかけようとして思い切り転んでしまうれみりゃを尻目に二匹は後で落ち合って続きをしようと目配せをした。 「ゆー…臭いよ…れいむ…」 苦もなくれみりゃとゆかりんの魔の手から逃げ切ったまりさはゆかりんの吐いた納豆の臭さに辟易していた。 「ゆっくりけんじゃなんていってゆかりんもぜんぜんたいしたことなかったよ! あんなばかはゆっくりしねばいいのに」 ゆかりんに対して文句の一つも言わないと収まりきらない気分だった。 ああこんなゆっくり出来ない気分の時は早くれいむと落ち合って体を洗ってさっきの続きをしたい。 そのことを考えると体がぬとっとしてくるまりさであった。 「ま゛り゛さ゛にげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆ゛!?」 突如後ろから聞こえてくる声にその忠告を無視して思わずまりさは後ろを振り向いた。 「うー!ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 「れいむうううううううう!!!!」 まりさの目の前に居たのはゆかりんとれいむを両腕に抱えるれみりゃだった。 れいむの頭にリボンが外れかけて変わりに黒っぽいものが見える。 あれはなんだろうか、あの黒いものは。 「どうじでれ゛い゛む゛のあ゛んごがああああああ!!!」 「はいゆっくりでてきました」 恐怖に駆られ逃げ出そうとするまりさの前にれみりゃの上でから飛び降りたゆかりんが立ちふさがった。 「うーたーべちゃうぞー!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ま゛りざああああああああああああ!!!」 ゆかりんを避けるか、それとも弾き飛ばすかを躊躇した瞬間、まりさの頭をれみりゃの手が掴んでいた。 こうなればもうまりさに逃げる手段は無い。 「どうじでえ゛え゛え゛え゛!どうじでみづがっだの゛おおお! ちゃんとにげだの゛に゛い゛いいいいいい!!」 絶望で包み込まれたまりさが考えたことは何故自分の逃げた行方がれみりゃにわかったのかということだった。 「まりさの少女臭をゆっくり追って来たよ!」 「うー♪くちゃいくちゃい!」 「臭くないよ!少女臭だよ!」 そう、れみりゃとゆかりんはまりさ達についた納豆の臭いを追って来たのだ。 なんということだ、ゆっくり歩かずにすぐにでも川に向かって体を洗うべきだった、とまりさは嘆いた。 「うああああああああああああ!!!! じにだくな゛い!も゛っどゆっぐりじだいいいいいいいいい!!!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!!」 「だべだいでええええええええええええ!!!」 「そんなにゆっくりしたいなら、いくらでもゆっくりさせてあげるわよ」 「!?」 「ほんとに!?」 生気を失っていた二匹のゆっくりの目に光が戻った。 「うー?だめ~、これはれみりゃのごはんー!」 「れみりゃもおなかいっぱいになれるはなしよ」 「う~?おなかいっぱいー!ごはんー!ごはんー!」 「ただしゆかりんの言うことを聞いたらだよ そしたらゆっくりさせてあげるよ」 片目を閉じて二匹を横目に言うゆかりん。 「聞きます!聞きますうううううううう!!!」 泣きながらまりさはゆかりんにすがりついた。 しかしれいむは警戒を解こうとはしなかった。 既に頭を齧られているので当然といえば当然だろう。 そんな二匹に対してゆかりんは言った。 「れいむかまりさの家族の居るおうちをおしえてくれたらゆっくりさせてあげるよ」 ニヤリ、とゆかりんの口元がいじわるそうに歪んだ。 「!ぜったいにおしえたりしないよ! れいむたちをたべるならゆっくりしてないでとっととたべてね!」 やはりそんなことだろうと思った、れいむは胸中でそう自分の命は諦め代わりに家族を守るために硬い決心をした。 絶対に家族を売ったりするものか、その想いはまりさも同じである。 「こ゛っち゛です゛!ごっぢに゛れ゛い゛む゛だぢのおうぢがありまずううううう!!!」 「ま゛り゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 と思っているのはれいむだけだったようだ。 まりさは顔中から餡子汁を流してニヘラニヘラと卑屈な笑いを浮かべながらゆかりんとれみりゃを案内し始めた。 ゆかりんはそれをみてケラケラと笑いながらついていった。 「まりさだよ!ゆっくりあけてね!」 「ゆ、いまあけるよ!ゆっくりしていってね!」 巣の中で冬の支度をしていたお母さんれいむは娘のれいむの友達のまりさが娘と共にゆっくり帰ってきたようなのですぐに家の扉を開けた。 「お゛があ゛ざんあげぢゃだめ゛え゛え゛え゛!!!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!!!」 「ぎゃあああああああああ!?」 扉を開けるとそこにあったのは娘とその友達の笑顔ではなく小さな、それでもゆっくりにとってはとても大きな手。 その手はお母さんゆっくりのおでこに5本の指を突き刺すとまるでみかんの皮でもはがすかの様に顔面の皮を引き剥がした。 黒い餡子にぽっかりと開いた空洞から断末魔が響き渡った。 「うー♪うま♪うま♪」 「いやー!」 「どうじでごんなごどずるのま゛り゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「はなぢでええええええええええええええ!!!!」 次々と食べられていくれいむの家族達。 「ここはゆかりんのおうちにするから汚さないでね!美しくね!」 ぼろぼろと食べこぼしながら巣の中を漁るれみりゃのおしりにゆかりんが噛み付いて抗議していた。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!お゛があ゛ざんお゛があ゛ざんお゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」 「ゆー、騒がしくて美しくないからそのれいむももう食べていいよ」 「うー?うあー♪たーべちゃうぞー!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 ゆかりんからの許可が出て早速さっき付けた傷の辺りから餡子を吸い出すれみりゃ。 れいむは一瞬で全ての餡子を吸い出されて湿った皮だけになった。 「うー、あま♪あま♪」 まるでその皮はデスマスクのようで、その表情は恐怖と悲しみと怒りの全てが入り混じった恐ろしい表情だった。 人間を使ってもこうも見事なデスマスクはそう簡単に作れないであろう。 「これいあない♪ポイっ、するの♪ポイっ♪」 しかして残念なことに餡子を吸い出した後の皮にれみりゃは全く興味は無くその辺に放り出して その皮はゆっくり、鳥と虫の滋養となった。 「これでまりさはゆっくりできるよ!」 その惨状を後ろから見ていたまりさは全てが終わったと思い歓声を上げた。 その笑顔はとても清清しいもので、それを見て思わずゆかりんも微笑み返してこういった。 「あのまりさももう用が無いから食べていいよ」 まりさの笑顔が凍りついた。 「ど、どどどどどどどどどどどどど」 まりさはカタカタと震えだした。 交尾の時でもこの半分も震えないだろう。 清清しい笑顔は引き攣った笑いとなってまりさの顔にへばりついた。 思い切り泣きわめきたいのに涙だけが一筋こぼれても引き攣り笑いしか出来なかった。 「どっどっどどどおしてややややくそっそそくしたたたたたた」 「ゆー、たしかまりさとはこれが終わったらいくらでもゆっくりさせてあげるわよってやくそくしてたわね」 「!?そそそうだよ!わすれちゃだめだよ!ゆっくりできないところだったよ!」 ただ単に約束を忘れていただけなのだ、そう知って安心したまりさは引き攣り笑いをやめて再びあの清清しい笑顔をしようとした。 「お友達のれいむのところで、永遠にゆっくりしていってね」 「たーべちゃうぞー♪」 しかしそれよりも早く現実とれみりゃの爪がまりさを引き裂いた。 「うー♪おなかいっぱい♪うーうーうあっうあっ♪」 そんな風にゆかりんとれみりゃが協力して狩りを続けて一週間ほどが経った。 れみりゃもゆかりんの指導の下で大分野生の生活と魔法の森にも慣れて、頑張れば一人でも餌を取れるようになっていた。 特に姿が見え無いときは饅頭の臭いを辿ってゆっくりを捕まえればいいとゆかりんに教わったことでれみりゃの狩りの力は大きく成長した。 まあ野生のれみりゃ種やフラン種は本能で簡単にやってのけてしまうことではあるのだが。 「そろそろゆっくりしてないでゆかりんのごはん集めを手伝ってね!」 れみりゃも一人前になってきたのでそろそろ当初の予定通り自分の冬越え用の食料集めを手伝ってもらってもいいだろうと ここ二日ほどゆかりんはしきりにそのことをれみりゃに訴えかけていた。 「…うー」 「拗ねても駄目だよ!ちゃんと集めてね!約束だよ!」 しかしれみりゃはせっかく気分良く踊っていたところで怒鳴られて邪魔されて面白くない。 ここ二日間ほどはずっとそうだった。 れみりゃはそのゆっくりブレインで考えた。 もう狩りの仕方も覚えたしれみりゃがゆっくりするのを邪魔するこの納豆は要らないのではないか。 そうだ、もうこれは要らない。 「うー♪こえいらない!ポイっするの!」 「ズギマ゛!?」 思い立てばその行動はすばやかった、全くゆっくりしていない。 ゆかりんは森の木に向かって投げつけられた。 「ゆ…ゆぐほっ!?」 ゆかりんはずるりと地面に落ちて、口から納豆を垂らして咳き込んだ。 「うー♪くちゃいくちゃい♪こえいらなーい♪ぽいっ♪するの、ぽいっ♪」 れみりゃは今までの鬱憤を晴らすためにもう何度も投げて壊れるまで遊んでやろうとゆかりんの方へと歩き出した。 「鼻につくわ…そのゆっくりれみりゃ特有の上から目線…!」 ゆっくりゆかりんの目付きがそれまでのゆっくりした目付きから鋭い、肉食獣のような目付きに変わった。 しかしれみりゃはそれに気づかずに屈んで手を伸ばした。 ゆかりんは負傷しているとは思えないほどの速さでその手の上に跳ね乗るとそこからさらに跳び、れみりゃの鼻に噛み付いた。 「!?う゛あ゛ー!?あ゛ぐや゛ー!!!あ゛ぐや゛ー!!!」 予期せぬ反撃にしりもちをついて手をぶんぶんと振り回すしか出来ないれみりゃの鼻の中にゆかりんはプッと何かを吹き込んだ。 「!?!?!?!?!?!?!?」 れみりゃが目を白黒させる。 「う゛あ゛あ゛ああああああああああ!?ぐぢゃ゛い゛!ぐぢゃ゛い゛い゛い゛い゛!!!!!??????」 そう、ゆかりんはれみりゃの鼻の中に納豆を吹き込んで居たのだ。 「まったく、れみりゃ風情が、ゆかりんとの約束をやぶるのは絶望的にはやいわ」 ゆかりんはれみりゃの鼻を離して地面に降りると、冷めた表情でれみりゃに問いかけた。 「ゆっくりでていきましょうか?」 「う゛あ゛あ゛あああぐぢゃ゛い゛の゛おおお!!!あ゛っぢい゛っでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ほらゆっくりでていきました」 そういうと、ゆっくりゆかりんはどこからともなく現れたときのようにいつのまにか木々の間へと消えていった。 「う゛あ゛ー!!!ざぐや゛!ざぐや゛あ゛あああ゛ああ゛ああ゛あ゛!!!!」 「うー、うー…」 それから数日が経ち、何とか臭いになれて動けるようになったれみりゃは生きるために餌のゆっくりを探して何日もさまよい続けていた。 しかしゆかりんの下で覚えた狩りの方法は全くその効果を発揮しなかった。 れみりゃはあの鼻納豆で嗅覚を完全に破壊されていたのだ。 再生力の強いれみりゃ種でもここまで鼻の機能を壊されてしまえば臭いを追って獲物を捕まえることも出来ない。 目視できる場所からでは空腹で力の出ないれみりゃでは捕まえる前に逃げられてしまう。 れみりゃは着々と衰弱していた。 「うー…おなかすいた…さくや…さくやー………」 恐らくれみりゃが獲物にありつくことは二度とないだろう。 「さくや、さくや、さくや…」 遂に森の中でへたり込み、何度も飼い主の名を呼ぶ。 困ったときはいつもさくやが助けに来てくれた。 そのまま一歩も動かずれみりゃはさくやとの思い出を反芻し続けた。 「これかってもいいの?ありがとうおかあさん! よろしくね、わたしはあなたのかいぬしの○○○よ」 初めてさくやにあった日、まだ顔だけだったれみりゃにさくやは奮発してプリンをプレゼントしてくれた。 「もー!れみりゃー!散らかしたら駄目でしょ!」 れみりゃがおもちゃを散らかすとさくやはぷんぷんと怒りながらも代わりに片付けてくれた。 「れみりゃ、もうちょっとまわりのことを考えて迷惑をかけないでね お父さんとお母さんもちょっとれみりゃのわがままに迷惑してるんだから」 さくやは本当に心配そうにれみりゃにそう言った。 れみりゃにはよく意味がわからなかった。 「もうみんなに迷惑かけないって約束して、ね れみりゃだってがんばればちゃんと私との約束守れるよね」 さくやはれみりゃに不安で不安で仕方ないのを隠しながらきっと出来ると言った。 れみりゃは横を向いておやつを食べながらうんと返事をした。 「もう庇い切れないの!お願いだからもうお父さんとお母さんに迷惑かけるようなことしないで! 約束を守ってくれないと次は本当に…!お願いれみりゃ!私との約束を守ってぇ!!」 さくやは泣きながら、縋るようにれみりゃに頼み込んだ。 れみりゃはさくやに笑顔で返事をしてあげた。 その日の夕方ごろ、おかしはないかと食べ物を入れてある棚の中をぐちゃぐちゃにして結局おかしは見つからずふてくされてベッドで眠った。 朝起きると森の中に居た。 「うー、さくや、さくや…」 段々と、れみりゃにもわかり始めていた。 『拗ねても駄目だよ!ちゃんと集めてね!約束だよ!』 『まったく、れみりゃ風情が、ゆかりんとの約束をやぶるのは絶望的にはやいわ』 『約束を守ってくれないと次は本当に…!お願いれみりゃ!私との約束を守ってぇ!!』 「うー…ごべんな゛ざい゛…やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざい…うー、うー…!」 ようやく、れみりゃにも何が悪かったのかがわかった。 「ざぐや゛ごべんな゛ざい゛…!やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざいい…! う゛ー!ごべんな゛ざい゛ごべんな゛ざい゛ごべんな゛ざい゛、う゛ー!う゛ー!」 れみりゃは涙ながらに今までの自分の行いで裏切り、傷つけてきた人たちのことを想い心から謝った。 「やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざいい…!ざぐや゛!ごべんあざい!ごべんあ゛ざいいい!ざぐや゛!ざぐや゛ぁ!」 飼い主の女の子がこの言葉を聞いたならばどれほど喜んでれみりゃを家まで連れ帰ってくれるだろう。 だがこの心からの謝罪がその子に届くことは無かった。 木々の枝葉の間から、鳥達が何も言わずにれみりゃが力尽きるのを見下ろしていた。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1057.html
"ゆっくり落とし" ゆっくり消しゴムを指で弾き、相手のゆっくり消しゴムにぶつけて盤上から落とす遊び。 テーブルやイスがあれば、どこでも行える。ゆっくりは柔らかく弾力に富んだ体をしており、 しかも若干ながら自分で動いたり声を上げたりできるため、 普通の消しゴム落としよりも変化の多い展開が楽しめる。 基本的には何も無い台の上で行う単純な遊びなのだが、 盤面に障害物を置いたり、台を傾けたりといった方法でゲームを複雑にすることもできる。 また、大きなゆっくり(消しゴムとしては)を用意したり、消しゴム自体を改造したりする者もいる。 改造の例としては、すべりを良くしてスムーズに動けるよう :体の底の部分に紙を貼る :糊を塗って乾かす :ホッチキスの針を刺す といったものがあるが、攻撃を受けた時に弾き飛ばされ易くなってしまう諸刃の剣でもある。 逆に、飛ばされにくくするための工夫としては :勝負に使う前のゆっくりを予め何かに強くこすり付けて粘液を大量に分泌させ、 それを利用して盤面にゆっくりを貼り付けてしまう :ゆっくりは丸っこい体をしており、攻撃された時にそのまま転がって落ちてしまうことがあるため 型に詰めたり掌で押し潰したりして、体の形を転がり難くする といったものもある。 追記 このゲームは、ある意味プレイヤーとゆっくりの連携が重要となる。 ゆっくりは勝手に動くので、勝負に勝つためには「盤の端に近寄るな」などといった立ち回り方を 教え込むことが欠かせない。 ゆっくりには幼児程度の知能と学習能力しか無いが、 根気良く教え込めば次第に覚えていく。最初は基本的なことから教えていくとよい。 水の中に転がし落として沈めたりすると、すぐに盤から落ちることを嫌がるようになる。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3902.html
ゆっくり虐めSS ~YDF~ ゆっくり地球防衛軍2017 中編 その1 [[前編その2 ゆっくりいじめ系2342 ゆっくり地球防衛軍 前編 その2]]からの続きになります 読みづらいとの声がありましたので、文を練り直しましたがあまり変わっていないと思います。 これが作者の文章力の限界です。 前回の後書きで前後編か前中後編になると言いましたが、結局前中後編になりました。 「ストーム1に続けぇぇぇ!!」 「「「「「おおおおおおおおおおおお!」」」」」 あの戦い以来、負け戦続きで諦めかけていたYDFに何か筋金が入ったようであった。 今まで恐怖の対象でしかなかったゆっくり、しかしそれが彼の活躍により兵士達の中で「憎むべき侵略者」と書き換えられたようなのだ。 現に他のチームでもゆっくり達にそれなりの損害を与えている。 現在もレンジャー5、6とストーム1による、地下鉄に巣食ったゆっくり達の戦いが行われている。 この戦いでもかなり被害を抑え、そして奴らの半分以上を掃討したようだ。 作戦区域内の無人カメラが捉えた映像が流れている。 同時刻 =地下鉄構内= 「ゆぅ、ぱちゅりーれいむつかれたよ・・・はやくおうちにかえろうよ・・・」 「むきゅ・・・そんなこといわれても・・・」 「ありすもよ!だいたいなんでここからうごかないの?じっとしてるのはとかいはじゃないわ!!」 「むきゅ!いまでていったらふくろのねずみよ!いまはあいてのうごきをゆっくりぶんせきするのよ!」 「ゆぅ・・・ゆぅぅ!!まりさぁぁぁ!!なんでかってにいなくなっちゃったのぉぉぉ!?ばかぁぁぁぁ!!」 「ひとりだけにげるなんてとかいはじゃないわぁぁぁ!りーだーぁぁぁ、どごにいるのぉぉぉ!!」 「ばりざぁぁぁ!!ばぢゅりーだぢはどぼすればいいのぉぉぉ!!」 「「「ゆーん!ゆーん!ゆーん!」」」 この3匹のゆっくり達は少し前の戦いで主戦力であり、リーダー格のまりさ種を全滅させられた。 他にも3~4匹いたようだがそいつらはどうでもいいらしい。 しかしそのリーダーまりさは自分達が優勢なうちは、 「いくじなしさんはさっさとしぬんだぜ!!」 と前線で戦っていたようだが、ストーム1が合流し形成が逆転すると 「ゆっふっふ、みんながおとりになってくれるんだぜ!まりさはせんりゃくてきてったいだぜ!そろーり、そろーり!」 と言って一人逃げ出そうとしているところに集中砲火を受け、殺されたのだが・・・。 部下の前では頼れるリーダーだったようだ、だが自分がピンチになると本性を出すタイプらしい。 とんだゲス野郎め。 そしてまりさが逃げ出したため、不利になり逃げ込んだのがこの地下鉄構内らしい。 構内は所々崩落しており、今出口になるのは地上と地下を結ぶ2箇所の階段だけだ。 その出口はレンジャー5、6が固めているため、もう既に袋の鼠なのだが・・・気づいていないようだ。 今の数ならこの2チームとストーム1を突っ込ませれば勝てる・・・だが、奴らとて死に物狂いとなればこちらの被害もかなり大きくなる。 そんな危険なことをさせるわけにはいかないだろう。 それに狭い地下では奴らの強酸餡子を避けるのも難しくなってしまう。 「隊長!この後どうするんですか?」 「うむ、このまま両方から攻めても勝てるがこちらの被害も増えてしまうだろう」 「よって、わざと片方の道を開けて攻め込み、そこで逃げたところを待ち伏せしよう。我々レンジャー6が追い込むから君達レンジャー5が待ち伏せしてくれ。」 「まかせろ!なんてったってこっちにはストーム1がいるんだ。1匹も逃がしゃしないぜ!なぁストーム1!」 「・・・・・」 「頼むぞ!!」 「了解した!気をつけろよレンジャー6」 「本部!こちらレンジャー5、ゆっくり達をわざと逃がし、待ち伏せて攻撃します!この作戦の許可を!」 なるほど・・・現場のとっさの判断にしてはなかなかいい案じゃないか。 「許可する!!だがゆっくり達を逃がすなよ!」 「レンジャー6了解!」 「火炎放射隊!配置に付きます!」 合図と共に火炎放射器「灼熱火炎砲」を持った隊員達が銃口を地下入り口に向ける。 「よし、威嚇攻撃開始!!」 「くらえええええええええ!!」 「この饅頭野郎!!」 「汚物は消毒だーーーっ!!」 火炎放射隊が攻撃を始めたようだ、ゆっくりたちが錯乱している。 「あぢゅいいいいいいいいい!!ありすのぎゅーてぃぐるへあーがぁぁぁ!!」 「でいぶのおりぼんがぁぁぁ!!」 「むぎゅうううううう!!ばぢゅりーのちてきなおぼうじがぁぁぁぁ!!」 たまらずに逃げ出した、さすがに炎の壁がが押し寄せてくる状態では作戦だのと言っていられないようだな。 ありす、れいむと出口から飛び出してくる。 おや? ぱちゅりー種が出てこない・・・ 地上に上がる前に死んだのだろうか。 「今だ!ショットガン、撃て、撃てぇーーーっ!!」 「お前達がくるまでは平和だったんだぁぁぁ!」 「よくも俺の町を、家族をぉぉぉ!!」 「宇宙に帰れぇぇぇ!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!あづいぃぃぃ!いだいぃぃぃ!でいぶなんにもわるいごとじてないのにぃぃぃ!!」 「ゆうううううう!ありずのおべべがぁぁぁ!かれんなおはだがぁぁぁ!!」 技術部による最新式ショットガン「ガバナーSX」の一斉掃射だ。 彼らによるとこれは装弾数を減らした変わりに拡散力を上げ、散弾の数を増やし、1回の攻撃力を極限まで上げた銃らしい。 至近距離での全弾命中時の攻撃力はスナイパーライフルの一撃を超える恐ろしい銃になったようだ。 「ぼっど・・・ゆっぐりじだがった・・・」 「どがぃは・・・な・・・ありず・・・が・・・」 さすがに至近距離での一斉射撃を与えれば奴らに反撃を許さずに葬れるようである。 最近分かったらしいが、ゆっくりはかなり痛みに弱いらしい。 戦闘スイッチとでも言うのだろうか、一旦戦いになるととても手ごわいが非戦闘状態からの不意打ちを行えば比較的簡単に無力化できるようだ。 すなわち、精神的にピンチに追い込めば簡単に勝てる。 しかし一度でも相手を優位に立たせてしまい、気持ちをノらせてしまうととうてい勝つことはできない。 このゆっくりの、「思いこみの力」に奴らを攻略する鍵があると私は考えている。 「本部!ゆっくり達を全滅させました!」 「この作戦は成功だ、レンジャー6は帰還せよ。」 「了解!」 「ストーム1・レンジャー5森隊長は念のため構内を確認してから退却しろ、レンジャー5隊員は周囲の警戒を怠るな」 「こちら森、了解!」 「・・・・・」 しかし、あのぱちゅりーは一体何処にいったんだ? カメラに死骸は映っていない・・・ あれは・・・帽子の燃えカスか。 まさか死骸も跡形も無く燃え尽きたということはあるまい。 となればカメラの死角か・・・? 「むぎゅうううう!!」 「うわぁっ!」 「!!・・・」 しまった!まだ生きていたのか! 私はあわててカメラを切り替える。 なんということだ、森隊長がぱちゅりーの下敷きにされて呻いている。 カメラの画面奥に瓦礫の中の地下鉄車両が映っている。 そうか、あの中に隠れて火炎放射をやり過ごしたのか・・・ ぱちゅりー種は他の種に比べて知恵があると聞いていたが、あんな状況でここまでやるとは思わなかった。 「むっきゅっきゅ・・・、ふいうちでゆっくりけいせいぎゃくてんね!」 「ぐぅぅ・・・」 「・・・・・」 「むきゅきゅ、さわがないでそのいたいいたいさんをすててね。すてないと、このたいちょうさんをころすわよ」 「・・・・・」ガシャン 「ストーム1!俺のことはいいから早くこいつを・・・ぐあああ!」 「だまりなさい!!このおまぬけさん!! 「・・・・・」」 「ほのおにまかれたあと、ひのついたおぼうしさんをすててでんしゃさんにかくれたのはゆっくりりこうなぱちゅりーだけのようね」 「・・・・・」 「れいむたちはばかだからこんなことにもきづかないのね、ほんねをいうとあんなばかどもはぱちゅりーのむれにはじゃまなのよ!」 「う、ぐぁぁ・・・」 「だいたい!まりさだってぱちゅりーのさくせんのおかげでかてたのに、うぬぼれてひきょうものだからはやじにするのよ!」 「ぐぅぅ、くそっ・・・ストーム1・・・これを・・・」 「それなのに!ぞれなのにぃぃぃ!ありすもれいむもまりさばっかりほめて!」 「・・・・・」 「しんにつよいのはあたまのよいものなのよ!むぎゅう!いくらちからがつよくてもばかものはゆっくりながいきできないのよ!!」 「・・・・・」 「そうよ!かしこいぱちゅりーはゆくゆくはどすをもしはいするそんざいになるはずなのよ!そうしてぱちゅりーは・・・むきゅ?」 ぱちゅりーが自分の世界に浸っているうちにストーム1はこっそりと森からなにかを受け取っていたようであった。 あれは・・・ 「かしこいばぢゅりーのえんぜづぢゅうにかっでなごどをずるなぁぁぁ!なに!?いまなにじだの!」 「・・・・・」 「むしずるなぁぁぁぁ!!ぞれをばぢゅりーにわだぜぇぇぇ!!」 「渡してやれっ!ストーム1!」 「むぎゅうっ!?」 次の瞬間、ストーム1はぱちゅりー目掛けてパイナップルを投げつけた。 無論、本物のパイナップルではない。 中に火薬がたっぷり詰まった、手榴弾と言う名の殺人パイナップルである。 「むきゅ!!ごっくん!!」 大口開けて熱弁していたのが仇となり、ぱちゅりーの口の中目掛けて投げ込まれた手榴弾は見事に彼女の体内にINすることになった。 「ぱ、ぱちゅりーになにをのませたの?」 「・・・・・」 「お、お、おこらないからとくべつにこたえるけんりをあげるわ・・・」 「5・・・6・・・7・・」 「な、なんなのおおおおお!?おじえろおおおおおお!!」 「・・・10、ざまぁみろ饅頭め!」 「ゆっぶうううううううううううう!!」 ぱちゅりーは読んで字の如く、木っ端微塵になった。 確かに体内で手榴弾が爆発したらどんな生物でも生きてはいられないだろう。 しかし・・・2人とも命知らずな真似をするものだ。 「くそ・・・酸を浴びちまった・・・」 「・・・・・」スッ 「すまない、ストーム1」 「・・・・・」 「ふふふっ・・・でも勝ったぜ・・・」ニヤリ 「・・・・・」ニヤリ 「本部!こちら森、生き残っていたゆっくりぱちゅりーを撃破した。これより帰還する」 まったく・・・帰ったら指令室に呼びつけなければな・・・ 「了解した、帰路も気を抜くなよ」 勝った・・・向こうの総合戦力は分からないが、今回はこちらの圧勝だろう。 しかし、気を抜くわけにはいかない。 レンジャー5,6チームは4時間後に通常種との戦闘が、ストーム1は2時間後に飛行戦力(れみりゃ・ふらん種)との戦闘が待っている 人間たちの復讐はまだ始まったばかりである。 中編その2に続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1591.html
※このSSは、ゆっくり虐めSS「赤い靴」よりお借りした設定が含まれております キャベツ 「むーしゃーむーしゃーしあわせぇ~♪」 ここは人間の畑、植わっているのはなんとも大きく瑞々しい立派なキャベツ。 そこで食事をしているのは1匹のゆっくりれいむ、ソフトボール程の大きさから見るにまだ子供だろうか。 「ゆゆーん、ここはとってもゆっくりできるよ! なんでみんなこないんだろう?」 群れのゆっくり達は人間の恐怖を充分理解している。そのため不用意に人里に近づくような愚は冒さない。 しかし、どのような賢明な集団においてもそれに背く者は出てきてしまう。 このちっこいれいむも例にそぐわず、比較的利口な群れのゆっくりにおいては馬鹿な部類であった。 もっとも、れいむ自身に悪意は無く決して人間を馬鹿にしていたり、あるいは群れや家族に対して反発しているわけでもない。 ただそれらを理解するにはあまりに経験が少なく、また純粋でありすぎた。 そのため好奇心に勝てず単独で人里へとやって来てしまったのだ。 そうしてれいむは人間の畑へと辿り着き、そこで見つけたおいしい野菜に夢中になった。 森の中ではこんな丸い変わった草なんて見たこと無い。 なんだか良い香りもする、食べられるだろうかと口にしてみた。 するとその葉はなんとも柔らかく甘いではないか! いつも食べている草に比べなんとおいしいことだろう! れいむはあっという間にキャベツの虜になってしまった。 そうして今へと至る。 「けぽぅ・・・いっぱいたべたらなんだかねむくなってきちゃったよ・・・」 キャベツにはメラトニンと言う物質が含まれており、これには睡眠作用があるそうな。 ゆっくりにホルモンが効くかはわからないが先程までの興奮による疲れ、そしてたらふく食べた満腹感かられいむは睡魔に襲われた。 「ゆ! いいことおもいついたよ!」 そう言うとれいむはキャベツの外葉をめくり、中をくり抜き始めた。 そうして出来上がった中が空っぽのキャベツ、この中にゆんしょゆんしょと潜り込み外の葉を戻し蓋をした。 即席のベッドといったところか。キャベツの中は適度にヒンヤリとしており、また程よい弾力を持っていた。 「さすがれいむ、てんさいだね! これでゆっくりねむれ・・る・・よ・・・・・zzz」 こうしてキャベツに包まれたれいむは何とも言えぬ幸福感に満たされ、深い深い眠りへと誘われていった。 「お、ここの畑も良い出来だな!」 数分後現れたのはここの畑の主人、今はまさしくキャベツの収穫期なのである。 テキパキと手馴れた様子でキャベツを収穫していく男、この瞬間が農家にとって努力の報われる至福の瞬間なのだ。 そうこうするうち、男の手はれいむの眠るキャベツへと近づいてゆく。 そして・・・ 「よっと! こいつもズッシリしてやがる、中身の詰まった良いキャベツだな!」 気付かずに男はれいむごと収穫してしまった。 一方れいむもよもや自分が収穫されるとは露にも思わず、涎をたらして夢のなかである。 そうしてれいむは他のキャベツ達同様に出荷されていくこととなった。 数時間後・・・ 辿り着いたは町の洋食屋、れいむキャベツはここへと卸されやってきた。 時刻は夕刻、調理場はディナーの仕込みに大忙しでまさに戦場である。 まな板の側に詰まれたキャベツ達は目にも留まらぬ包丁捌きであっという間に千六本へとその身を変える。 いよいよれいむキャベツの番となった次の瞬間 「よし、千切りはこんなもんでいいだろ。 残りの分スープに回してくれ。」 「わかりましたー。」 こんなやりとりを経て、間一髪れいむは細切れになるのを免れた。 しかし、ここで切られてしまったほうが幸運だったのかもしれない・・・。 プスッズリズリ・・・プスッズリズリ・・・ 鍋側に運ばれたれいむキャベツの外葉が串により固定されていく、こうしてキャベツの煮崩れを防いでいるのだ。 ここの洋食屋の人気メニュー「丸ごとキャベツのチキンスープ」の仕込みである。 このスープは丸ごとのキャベツと鶏の骨付きモモ肉を、各種香味野菜と共に煮込んだダイナミックな料理である。 作り方は固定したキャベツを大鍋の中央に鎮座させ、周囲と鍋との間に玉ネギや人参などの野菜を隙間無く詰めてゆく。 その上に骨付きチキンを乗せヒタヒタになるまで水を注ぎ、弱火でじっくりと煮込んでゆく。 そうして充分に火が通った所で少量の塩コショウで味を整えて完成、実にシンプルである。 だがそのシンプルさゆえ素材の旨味が十二分に引き出される絶品の一品である。 そのためこの店は、毎日新鮮な野菜を農家に卸して貰っているのだ。 れいむキャベツも上記のレシピ同様に鍋へと収められ、そして火にかけられた。 5分後 「んぅ~・・・ぽかぽか~・・・」 10分後 「んぅ・・・? んんん・・・」 20分後 「ゆがああぁぁぁぁ!! あぢゅいいいいいい!!?」 ここでようやくれいむは目を覚ました。 「なんでこんなにあついの!? れいむはゆっくりここをでるよ!!」 暴れてみたがキャベツの葉はピクリともしない。しっかりと固定されてしまっているためである。 ならばどうだとキャベツに齧りついたところ ジュンジュワァ・・・ 「あぢょぢょぢょぢょ!?」 れいむの口は熱せられた汁により火傷を負ってしまった。 しかし涙を流したところで現状を打破出来る訳ではない、れいむは泣きながらキャベツを齧り続けた。 シャグ、ゆぎぃ!・・・シャグ、ゆごぉ!?・・・シャグ、ゆべぇ!!目に入っだあぁぁぁ!!!・・・ そうしてキャベツ汁の熱と水分にやられ、れいむの口が真っ赤なタラコになる頃ようやっと外が見えてきた。 「ゆぅ・・・ようやくおそとにでられるよ・・・」 れいむは後悔していた。 人間の里なんかに近づいた結果不幸な目にあってしまった。 ここから出たら森へ帰ろう、そして二度と人間には近づかずゆっくりと平和な日々をすごそう。 そう決心したれいむは最後の薄皮へと歯を立てる。 プシイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ・・・・・ 「!!!???ゆげぼべばっぺぽぷぴぃいいぃ!!???」 歯がキャベツに小さな穴を穿った瞬間、熱々に熱せられた熱湯がさながらレーザーのように勢いよく発射された。 そしてそのレーザーはれいむののどちんこにピンポイントヒットを叩きこんだ。 普段触らない様なデリケートゾーン。そこへの突如として襲い掛かる激しい急襲、しかも熱々。 呼吸すら満足に出来ずれいむはエヅキながらのたうち回った。 しばらくして立ち直ったれいむは外へ出られないことを理解した。 外には熱々のお水がいっぱいある、何故こんなことになったかは解らない。 だが、今外へ出てはずっとゆっくり出来なくなってしまう・・・!!! 餡子脳にはこれが限界だったが、それでも絶望を感じるには充分だった。 そこでれいむはいつかキャベツが冷えるという僅かな希望に全て賭けて、ゆっくりとキャベツサウナに耐えるという決意を固めた。 しかしその希望は一瞬で潰えることとなった。 「・・・ゆゆ!? はっぱさん、ゆっくりがんばってね!!」 「おみずさんはいってきちゃだめだよ! ゆっくりしないでね!!」 「なんでおみずさんれいむのいうこときいてくれないのおおおお!!?」 れいむが齧ったためキャベツの強度は限界に来ている。 先程貫通した穴は真っ赤に腫れたタラコ唇が千切れ、偶然にも穴を塞いでいた。 だが饅頭の皮では長くも持たず、今まさに熱湯の浸水は再開された。 「ゆぐうぅぅぅぅっっ!!!」 とっさにれいむは自身の背中を穴へと押し付け蓋をした、熱湯に満たされてはゆっくり出来なくなってしまうからだ。 これでは背中に火傷を負ってしまうものの、命まではとられはしない。彼女の判断は最善のものだっただろう。 もし彼女がゆっくりではなければだが。 「ゆ、ゆ、ゆごおおおおぉぉぉぉ!!???」 饅頭の皮は限界に達し、れいむの体内に熱湯が勢いよく流れ込んできたのだ。 全身の餡子が熱い液体に溶かされていく苦痛にれいむは恐怖した。 しばらくしてれいむの体は2倍ほどにまで膨らんでしまった。 れいむは必死に歯をくいしばった、だがもはや限界である。 「・・・!!! うぉっろっぱあぁぁぁぁおろおろおろおろ・・・」 盛大に口から汁子を流し始めたのだ! その様はまさにぶっさいくなマーライオン!! れいむは悲しかった、頑張ったのに結局死んでしまうことになってしまった。 だが反面、ようやく楽になれるという安らぎおもこの時感じていた。 ところが・・・ (・・・!!?? なんでまだぐるじいぃのおおおおおお!!!??) キャベツに包まれているため餡子が漏れることなく、れいむは体を失ってもなお意識を保っていたのだ。 本人の気持ちとは裏腹にれいむは逝くことができず、数時間たっぷり釜茹でを味わうこととなってしまった。 数時間後・・・ 「なんだこれ・・・」 そこには怪訝な顔をした調理師達に囲まれるキャベツスープがあった。 いつも通りの丁寧な仕事で仕上がったそれは実に旨そうである。 ただ、キャベツが黒く変色していることを除いて・・・。 「キャベツの病気かなんかかね? 何か甘ったるい臭いしてるし。」 「変な汁出てますよ、これ・・・」 「これは客に出すわけにはいかんなぁ、とりあえず開けてみるか。」 そうして開かれたキャベツからは勢いよく餡子が流れ出した。 調理師達はその中から僅かに原型をとどめたリボンを見つけ出し、これがゆっくりであったことを理解した。 閉店後・・・ 「見た目はアレですが結構いけますね、これ。」 「だな。 こうなると鶏肉から逆に臭みを感じちまうがそれ以外は結構うまいな。」 れいむ入りスープは賄いとして振舞われていた、食材を無駄にしないと言う料理人のプライドである。 最初は皆おっかなびっくり恐る恐る口に運んだのだが、このスープが思いのほか旨く調理師たちの評判は上々だった。 じっくりと長時間意識のあるまま煮込まれたゆっくりの甘さは、恐怖と苦痛により極限の域に達していた。 だがそこに野菜たちの自然な風味と旨味が加わり、全体としては何とも心地よいスープに仕上がっていたのだ。 数日後・・・ この洋食屋に「丸ごとゆっくりキャベツの洋風汁粉」が追加された。 巷で噂の人気スイーツ(笑)として天狗の新聞に取り上げられるのは、また別の話である。 終われ 後書き 冒頭に書いた「赤い靴」の設定ですが、餡子がなくならなければ体がなくなっても意識が残ると言うアイデアをお借りしました。 煮込んでいる時にふと思い出して、コレだ!!ってなわけでお借りしてしまいました。 こんな駄文に勝手に用いてしまい申し訳ないっす(・ω・`) 他に書いたもの ゆっくりディグダグ ゆっくりディグダグⅡ ゆっくりいじめ 「ミカン」 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/922.html
代表ゆっくり(前) 帰ってくると、今にゆっくりの一家がいた。 思わず「あっ」と声を出してしまい、奴らはそれに気付いた。 「ゆ!ここはまりさたちのおうちだよ!ゆっくりしていってね!!」 「おなかがすいたよ!!まりさたちにおかしをもってきてね!!」 「おにいさんはゆっくちできりゅひと?ゆっくちちていってね!!」 「ゆっくりできないひとはでていってね!!」 ゆっくりどもは一斉に俺に向き直ると、口々に好き放題抜かした。 大きめのまりさ種が一匹、これは母親らしいがまだ若そうだ。 更に子供らしいのがれいむ二匹、まりさ三匹の五匹。子供たちの中には赤ちゃんサイズのものも混じっている。 どこから入ってきたのかと思って見回すと、窓が開いていた。暑さから窓を開けて過ごしていたので、出る時閉め忘れたようだ。 台所に備蓄してあった食糧は食い荒らされ、大事に飾っていた花瓶は割られて中の花も食べられている。 押入れのふすまも体当たりで破られていた。あ、押入れの中にもう一匹子れいむ発見。ハマって出られなくなっていたんだな。 「ゆ!くらくてこわかったよ!れいむをこんなこわいめにあわせるおにいさんとはゆっくりできないよ!!はやくあやまってね!!」 とか、頬を膨らましながらありえないことをのたまっている。 以前ゆっくり虐待仲間である友人に聞いたのだが、 奴らの“自分の家宣言”は、そこが自分の家だと完璧に思い込んでいるわけでは必ずしもなく、 ゆっくりによっては頭のどこかで「本当はニンゲンのおうちである」と認識しているらしい。 その論拠には、自宅で“自分の家宣言”をしたゆっくりに「ここは誰の家?」と暴行を加えつつ詰問したところ、 「お゛にぃざんのお゛うちでずぅぅぅぅ」と答えた、ということだ。そのあと死んだってさ。 この子れいむは勝手に侵入した人家で勝手に怖い目に陥っておきながら、 それを自分のせいとは決して考えず、「この家が自分を怖い目に遭わせた」というあらぬ方向に考えを曲げ、 あろうことか、この家に現れた本来の持ち主だと思われる俺に責任転嫁してきたのだ。 よって先ほどの友人の論は、少なくともこのれいむ相手に限っては立証されたことになるだろう。殺したい。 しかし、そんなムカつきエピソードはとりあえずどうでもいい。 俺は無断で家に入ってきたゆっくりは全て苦しめながら殺す信条だ。 結果としてこいつらに待っているのは拷問死、それはどう足掻いても変わらない決定事項。 部屋を荒らしたり俺をイラつかせるのは、死際のささやかな抵抗として見守ってあげようじゃないか。 その点、この子れいむは良い線いってると思うよ。苦しむ時間が若干延びたかも知れないけど。 「一応言っておくけど、ここは俺の家であってお前らの家ではないよ!」 「ゆ?おにいさんなにいってるの?ここはまりさたちがさきにみつけたんだよ!!」 「まりさたちのいってることわからないの?ばかなの?」 「ゆっくりできないおじさんはゆっくりしね!」 別に言っても無駄なのは解ってたからどうとも思わない。むしろ素直に聞かれたら俺がびっくりして死ぬ。 とはいえこれで遠慮は要らなくなったので、とりあえず親まりさを蹴り飛ばして俺強いアピールしておく。 強めに蹴ったので、壁に顔面から叩きつけられた親まりさから多量の餡子が飛び散る。染みになっちゃうな。 子ゆっくり達は「ゆ゛ゆ゛っ!?」とか喚いて非難の限りを俺に浴びせてきたが、 親をぶっ飛ばしたことで人間の強さは印象付けられたらしく、同じ目に遭いたいかと問いかけると静かになった。 次に俺は、家に侵入してきた悪いゆっくりは全員殺すこと、子供達をどう潰していくかを宣言しておいた。 死刑宣告にも似た俺の言葉に、静かにしていた子ゆっくり達は泣き出してしまう。 何も知らせないまま虐待した方が新鮮なリアクションが得られるのでは?というご意見もあるだろうが、 俺は泣かせられる時は泣かせておく主義なのだ。それにどうせこんなの、ちょっとしたことでコロッと忘れるし。 閉ざされた居間の中を逃げ惑い始めた子ゆっくりたち。それをゆっくり追い回していると、 今まで俺が経験したこともなく、また思ってもみなかったことが起こった。 怪我をして顔面餡子まみれになった親まりさが俺のところまで這って来てこんなことを言ったのだ。 「ごべんばざい。ごごはおにいざんのおうぢでず。ばりざがみんなをざぞいまじだ。 だがらごろずならばりざだけにじでね。あがちゃんだぢはだずげてね」 おいおい、ピンチとなれば家族をも売ると悪名高いまりさが何を言い出してるんだ? 頭でも打ったのか? 打ったか。 「お前が家族を代表して罰を受けるってことか?」 「ぞうだよ。ばりざがだいひょうだよ」 「何でそんなこと考えた? 家族を売っても助かろうとするお前らまりさが……」 「がぞぐをうっだりじないよ。おにいざんはづよいよ。ざがらっでもむだだよ」 子ゆっくりをビビらせるためにやった俺TUEEアピールが、思わぬ効果を発揮したようだ。 このまりさは強いものに大人しく従うタイプのようだ。森の生活でも辛酸を舐めさせられてきたんだろう。 俺の怒りを鎮めるのが不可能だと悟るや、せめてその怒りを自分だけで全て引き受けようと思ったらしい。 うーむ、餡子頭の饅頭でも母親ということだろうか。惜しむらくは、家に入る前に人間の強さに気付けよ。 しかしその条件を飲むとなると、俺のどんな拷問や虐待もこいつらの美しい親子愛を演出するだけだ。 そんなのは気に食わないし絶対にごめんだ。とはいえ、虐待時のコミュニケーションを重視する俺としては、 まりさからの珍しい提案を全くの無碍にするのも惜しい。どうしたものか…… 「うーん……そうだな、気に入ったぞ! まりさ種にしては珍しい心掛けだ。殺すのは無しにしてあげよう」 「ゆゆっ!?」 「ただし、別のおしおきはするぞ。悪いことしたって解ってるなら、しょうがないって解るよね?」 「ゆ゛っ・・・わがっだよ。でもあがぢゃんだちはたずげでね」 「解ってるよ、お前が家族の代表だからな。お前こそ、その言葉忘れるなよ」 「ゆっ!?れいむたちころされなくてすむの?」 「おかあさんがおにいさんにゆるしてもらったんだよ!!」 「おがあざああぁぁぁぁん!!だずげでぐれでありがどおおぉぉぉぉ!!」 話を聞いていたらしい子ゆっくりたちもいつの間にか集まってきて、歓喜の涙を流している。 これでじぶんたちはたすかるんだ。忘れていた生の喜びを噛み締めている。 こいつらの餡子頭では、どうせまたすぐ忘れるだろうけどね。 でも一つ忘れちゃいけないのは、俺は家に入ってきたゆっくりはみんな殺す信条ってことだ。 たださっきのまりさの勇姿を見て、ちょっと別のことを思いついただけさ。 ーーー 俺は別室に行き、透明な仕切り板を使って、部屋を真ん中から二つに分けた。 一方にはゆっくり飼育道具が一揃い。すべり台やブランコなど、ゆっくり用の大きな玩具もある。 もう一方には今は何も置いておらず、仕切り板は人間にはまたげるがゆっくりに飛び越えるのは不可能な高さだ。 俺は手早く準備を済ませると、居間にいるゆっくり一家のところに戻る。 奴らは傷の癒えてきた親まりさを中心に、早くもゆっくりし始めていた。 手を叩いて注目を集めると、全員に聞こえるように話し出す。 「みんな聞いてね! お母さんまりさの立派で優しい姿に胸打たれた俺は、みんなを叩き潰すのをやめることにしました」 「ゆ!さすがおかあさんだね!!」 「おにいさんもこんなすてきなゆっくりにであえてよかったね!!かんしゃしてね!!」 「はいはい。でも悪いことをしたみんなにはお仕置きが必要だよね!」 「ゆ・・・おしおきいらないよ!れいむたちわるいことしてないよ!!」 「まりさはまりさたちのおうちでゆっくりしてただけだよ!!」 「ド饅頭は黙ってね! それでどんなお仕置きにしようかなって考えたんだけど、恐ろしいお仕置きを思いついちゃったんだ」 「ゆ゛ゆ゛!?もういやだよぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!」 「おしおきだめぇぇぇえぇぇぇ!!ゆっぐりでぎないのぉぉぉぉおぉぉ!!」 「まりざもうおうぢがえるぅぅぅぅぅ!!」 「ここがおうちじゃなかったのかよ。まあいいや、とにかく新しく考えたお仕置きを改めて発表します! それは……『ゆっくりさせること』!」 「「「ゆ?」」」 さっきから鬱陶しく表情を二転三転させていた子ゆっくりたちは、俺の言葉に戸惑い、一瞬固まった。 ゆっくりすることが至上の目的であるゆっくりに対し、ゆっくりさせることがお仕置きだとは。確かに意味不明だろう。 「みんな全然大したことないって思ってるだろ? でもそんなことないよ。これは恐ろしいことなんだ。 怖い人間のところで悪さをして、せっかく生き延びて反省する機会を与えられたのに、 君たちはその機会すら生かせず、逆にゆっくりさせられてしまうんだ。 そうするとまた調子に乗って人間のところで悪さをして、今度は殺されちゃうかもしれないよね! ある意味ただ殺すよりも恐ろしい、残酷な制裁行為だね!」 「ゆゆ!ここでずっとゆっくりするからだいじょうぶだよ!!」 「おにいさん、れいむたちをゆっくりさせてね!!おかしいっぱいちょうだいね!!」 「おにいさんもまりさたちのおうちでゆっくりしていっていいよ!!」 「ゆっくちちていってね!」 「ゆっくり~!!」 俺のありがたいお言葉には耳も貸さず、ゆっくりどもはニコニコしながら嬉しそうに跳ねている。 こいつらの脳内ではもう思い思いのゆっくりライフが始まっているらしい。 親まりさは俺の言っていることの意義を一応理解したらしかったが、自分もゆっくりしたいという誘惑には勝てないらしく、 子ゆっくり達と一緒にニコニコして喜んでいる。まったく。まあこんなのは詭弁だから良いんだけどね。 大体「ゆっくり」って何なんだよ、抽象的過ぎるんだよ糞が。それで何か意図が通じるとでも思ってるのかね? そんな良く解らないものを人様に強いるゆっくりどもには、一度同じ苦痛を味わってもらいたい。 「じゃあみんな、お仕置き部屋に移動しようね。覚悟しててね」 俺はゆっくりたちを全員抱きかかえ、先ほど板で仕切った別室へと移動を開始した。 「わーい!おそらをとんでるみたい!!」 「ゆゆ!たのしそうなものがいっぱいみえるよ!!」 「とってもゆっくりできそうだね!れいむきにいったよ!」 「はやくゆっくちちたいよ~~!!」 「おにいさん!はやくあのおもちゃのあるところにおろしてね!まりさのゆっくりスポットにするよ!!」 覚悟しろとやや凄んで言ったにも関わらず、ゆっくり達は能天気なものだった。 部屋に置いてあるおもちゃなどを見て、期待に目を輝かせている。 親まりさもそんな子供達を見て満足そうに微笑んでいた。苦痛に歪ませてやりたかったが、今は我慢した。 さて、子ゆっくりたちを床に降ろしてやる。ゆっくりを抱きかかえたまま身体を低くかがめると、 子供達はゆっくり~!とか奇声を発しながら各々畳の床へとべちょべちょ着地していく。 親まりさも子供達と一緒に飛び出そうとしたが、そこをぐっと押さえつける。「ゆ?」とか言いながら こっちを見上げて来る親まりさだが、俺は視線に構わず、親まりさだけ仕切りのもう一方側へと降ろした。 「おにいさんありがとう!!れいむたちのためにおもちゃをよういしてくれたんだね!!」 「いっぱいゆっくりしてあげるからほめてね!!」 「ゆゆゆ~♪」 すべり台やブランコ、シーソーにアスレチック、ゆっくり用柔らかクッション、涼しげな水場などなど。 さしずめゆっくり用遊園地とでも形容すべきパラダイスに、我先にと飛び込んだのは、好奇心旺盛な赤ちゃんれいむであった。 しかしその楽園への跳躍の途中で、赤れいむは無様に「ぶべっ!」と叫んで床に落ちてしまう。 夢中だった赤れいむはその存在に気付かなかったが、透明な仕切り板にぶつかったのだ。 「ゆゆ?かべがあってとおれないよ!!」 「おにいさん!これじゃれいむたちゆっくりあそべないよ!!」 「はやくかべをどかすか、まりさたちをむこうにはこんでね!!」 「これじゃゆっくちできにゃい~~!!」 ぷくーっと膨らんで怒ってみせる子ゆっくり、泣き出してしまう赤れいむ。 しかし俺はにっこりと優しく微笑んで返す。 「大丈夫だよ、安心してね!」 「あんしんできないよ!ゆっくりはやくしてね!!」 「まあまあ。実は君たちには、お仕置きしなくても良いことになってるんだ」 「ゆ?なにいってるのかわからないよ!ゆっくりせつめいしてね!」 「さっき聞いてた子もいるだろ? 君たちのお母さんが、『まりさがだいひょうになるからこどもたちをたすけてね』って言ったんだ」 「ゆゆ!まりさたちのおかあさんはりっぱだよ!!」 「りっぱなこどものれいむたちもはやくゆっくりさせてね!!」 「だからぁ、君たちはそんなことしなくていいんだって」 「ゆ?」 「君たちのお母さんが代表になって、君たちの分まで『ゆっくり』してくるからね!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ーーー!!?」 驚愕の表情を隠せない子ゆっくりたち。やがて一匹の子れいむが発見してしまう。 透明な板の仕切りの向こうに一匹だけたたずむ、親まりさの姿を。 「ゆゆゆ!?なんでおかあさんだけそっちにいるの!?」 「ずるいよぉぉぉおぉぉぉ!!れいむだぢもゆっぐりそっぢにづれでってねぇぇぇぇ!!」 「はやくこのかべをゆっくりなんとかしてね!!」 親まりさはおろおろと戸惑った様子で、子供達の方を見ている。 「おにいさん!これはどういうこと!?こどもたちもこっちにつれてきてあげてね!!」 「おいおい、そりゃ無いだろ。お前さっき自分で言ったこと忘れたの? 代表じゃなかったの?」 親まりさの苦情に、俺は親まりさにだけ聞こえるような小声で応えた。 「ゆ゛っ・・・でもこどもたちがゆっくりできないとかわいそうだよね!!ゆっくりはやくしてね!!」 「あのね、さっきの俺の話理解したよね? ここで『ゆっくり』しちゃうのは、子供達のためにならないんだよ。 正しい躾を受けられない子供ほど不幸なものは無いって、お前も親だったら解るよな?」 「ゆぅ~・・・?」 「だからお前が子供達の分まで『ゆっくり』するのは、立派な親の勤め! あいつらを助けることに繋がるんだよ。 むしろこんなところで『ゆっくり』させることは、お前らにとって大きな苦しみになるんだ! ゆっくり理解したか? お前は子供達のために、良いことをしているんだよ!」 「ゆゆっ?まりさ、ゆっくりしたほうがいいの?」 『子供達のため』『良いことをしてる』というフレーズに心が揺れたらしい。 そもそも『ゆっくりさせる刑』なんて意味不明なことを言い出した俺のマッチポンプなんだが、そんな難しい事は餡子には解らない。 ここまで来れば、思いついた通りの展開に持ち込むまでもう一押しだ。 「そうだよ! その板越しにお前らを分けたのは、見せしめのためなんだ。 恐ろしい『ゆっくり刑』を受ける母親を、子供達に見せて反省させるためのね」 『ゆっくりすると反省できず、結果的に恐ろしい』という論理から、 『ゆっくりすること自体が子供にとって恐ろしい』にすり替える。 冷静に考えればおかしな話だが、俺の畳み掛けに親まりさの餡子脳では対応できない。 「ゆ~・・・じゃあまりさ、みんなのためにしょうがなくゆっくりするよ!」 「偉いぞ! お前はまさしく親の鑑、子供達の誇りだな。だからちゃんと、家族の代表として宣言してやれ」 「ゆゆっ!わかったよ!!」 そして親まりさは、仕切り板の向こうでゆーゆーぴーぴー喚く子ゆっくりどもに笑顔で向き直った。 「おーい、お前らの偉大なお母さんから発表があるぞ!」 「みんな!!おかあさんがみんなのぶんまでちゃんとゆっくりしていくからね!! しんぱいしないでね!!ゆっくりしないでね!!」 「「「「ゆ゛ゆ゛!?な゛んでなのぉぉぉぉおおぉぉぉ!!」」」」 親まりさに裏切られ、自分達のゆっくりプレイスを独り占めされたと思った子ゆっくり達は、一斉に悲鳴を上げた。 うーん、親の心子知らずとはこのことか。 「おにいさんありがとう!!まりさ、あのこたちをくるしめるところだったよ!!」 「うんうん、お前も親として一皮剥けたな」 こいつはこいつで、俺の暗示にかかりまくってるしな。お礼まで言ってるよ。 ゆっくりがゆっくり出来ないことのどの辺が良いことなんだろうね。人間の子供の躾じゃないんだから。 親まりさだって、『自分がゆっくりするのが子供達のため』なんて本気で思ってるかどうか怪しいもんだ。 俺のこねた屁理屈の尻馬に乗って、自分がゆっくりする大義名分を得ようとしているんじゃあないのか? 自分がゆっくりするためには、他の全てを正当化する。そういう奴らだから今ここにいるんだ。 まあ仮に反省したとしても、全くもって無駄なことだけどね。それを生かす機会は永遠に来ないのだから。 こうして嘘と欺瞞で二重三重にコーティングされた、俺と親まりさによる躾が始まった。 子ゆっくりどもは真摯に反省する必要もなければ、欺瞞を暴き立てる必要もない。 ただ突きつけられた理不尽な現実に、ゆっくり出来ずに泣いててくれればいいのさ。 ーーー さて、それからゆっくりタイムが始まった。 まずは「おなかがすいたよ!!ゆっくりごはんもってきてね!!」と言う親まりさの要望に応え、 とりあえず棚にしまっておいたお菓子を出してやる。つーか、よくもいきなりここまで図々しくなれるもんだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」と癇に障る声を出しながら美味そうに食っている。 それを透明な板の向こうでうらやましそうに眺める子ゆっくりたち。 「おにーさん、れいむたちにもおかしちょうだいね!!」 「ゆゆ!おかーさんばっかりずるいよ!!」 「そう言うなよ。お母さんはお前らの為を思ってゆっくりしてるんだぞ。 良いお母さんだな! お前らはそんなお母さんの思いに応えないとね!」 「そんなことよりゆっくりおかしだしてね!!おもちゃももってきてね!!」 「こんなんじゃゆっくりできないよ!!」 こりゃ押し問答だな。しかし親に対して「そんなこと」は無いだろうに。 大体ゆっくり出来ないってどういう事だ? 針のむしろにいるわけじゃなし、畳の上で充分ゆっくりできるだろ。 極めて限られた条件下でしか『ゆっくり』とやらを出来ないこいつらを、果たしてゆっくりと呼んでいいものか。 「お前ら全然ゆっくり出来てないね! ちゃんとお母さんの想いを受け止めてるんだね。 お母さんがああしておしおきを受けている甲斐があるってもんだね」 「ゆゆ!?あれのどこがおしおきなの!!とってもゆっくりしてるよ!! あとまりさはゆっくりできないゆっくりじゃないよ!!ゆっくりできるよ!!」 おや、それは問題だ。俺はそう言う子まりさの帽子を取り上げた。 「ゆ゛ゆ゛ー!!まりさのぼうしかえして!!それがないとゆっくりできないよ!!」 「それはそれは、良かった良かった。お母さん思いの良い子だよお前は」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ーーー!!ゆっぐりじだいのぉぉぉぉ!!」 俺はしきりに『ゆっくりするのは悪いこと』であると強調していく。 しかし子ゆっくりたちにそんな論理を受け入れられるわけがない。親まりさに苦情を言う子ゆっくりも当然出てくる。 お菓子を食べ終えた親まりさは、すべり台を「ゆ~♪」と滑って子供のように遊んでいる。 子供の分もゆっくりするんだから当然か。 「おかーさん!なんでたすけてくれないでひとりでゆっくりしてるの!!」 「そこにあるおもちゃはまりさたちのだよ!!ひとりじめしないでね!!」 「しょんなおかあしゃんとはゆっくちできにゃいよ~~!!」 「それでいいんだよ!ここでおかあさんがだいひょうとしてゆっくりしてるからみんなはゆっくりしないですむんだよ!! そっちでおかあさんにかんしゃしててね!ゆっくりしないでね!!」 「な゛んでぞんなごどい゛うのお゛ぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!?」 この親まりさの子供に対する態度には、虐待好きの俺も顔負けである。クレイジーだぜ…… つがいや家族の絆を引き裂いて遊ぶ為には、いかにゆっくりの思考を誘導するかが問題になるが、 ここまで俺に追従してくれるとは予想外だ。 一瞬立派かもしれないと思ったが、所詮まりさはまりさだったかな。 そんなことを考えながら、俺は親まりさの乗るブランコを後ろから押してやる。 徐々に振れ幅が大きくなり、勢いを増していくブランコ。前後に振れる度に「ゆっゆっ」と声を出して喜ぶまりさ。 ある高さに達した時、ついに親まりさはぽーんと空中に投げ出される。 「ゆ~ん♪ おそらをとんでるみたい!!」 その様を見つめる子ゆっくりたちの瞳は、親まりさが地面に激突し、怪我をすることへの期待に輝いていた。 一人でゆっくりした罰を受けろ、と。さっきは身を挺して自分達を助けた母親なのにだよ? ひどい話だね。 しかしそんな子供達の様子など視界にも入れず、親まりさはやわらかクッションの上にぽよんと落下し、 そのままクッションの上で気持ち良さそうに転げまわっている。 一人ゆっくりした罰を受けるどころか、ますますゆっくりしてしまっている親まりさ――― その圧倒的ゆっくりっぷりは、まるで運命が味方をしているようにも映っただろう。 あまりに理不尽な現実に、子ゆっくり達は何とも言えない絶妙な表情で固まっている。 「ゆ~!このクッションとってもきもちいいよ!すごくゆっくりできるよ!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!なんで!!な゛んでなのぉぉぉぉぉ!!!」 「何でって、あれは加工所でも売ってないような高級ゆっくりクッションだからね。 並のゆっくりじゃ一生触れないような代物だよ。そりゃあ気持ちいいだろうなあ」 「ぞんなごどぎいでないぃぃぃぃぃい゛ぃぃぃ!!」 「おがあざんばっがりずるいの゛ぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!れいぶだちのゆっくりどらないでぇぇぇえぇぇぇ!!!」 「ここはあちこちゆっくりできるものだらけの、さいこうのゆっくりプレイスだよ!! みんなこっちにこれなくてよかったね!!そっちでゆっくりしないでみててね!!」 「「「おがあざんのばがぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」 「ゆゆ!みんなのためにやってることだよ!ゆっくりりかいしてね!!」 ホーントにバカですねぇ。 子供に罵倒されたゆっくりが悲しむ様は何度か見てきたが、こいつはゆっくり出来る喜びの方が勝っているようだ。 子供達に見せ付けるように本能の赴くまま、色々なアイテムを使って存分にゆっくりしている。 思えば、ゆっくり特有の人を見下す態度、他が自分のために動くのが当然というような言動。 それも本能なのだとすれば、他者を見下して「よりゆっくりしている自分」を際立たせることにより、 更なるゆっくりを実現するための無意識の働きなのかもしれない、と俺は思った。 つまり「みんなのぶんまでゆっくりする」為には、そういった優越感も親まりさにとっては重要なのだ。 子供達のためという大義名分、最高のゆっくりプレイスという具体的動機。 ゆっくりするのに充分なお膳立てを得たまりさは、もはや全力でゆっくりすることに何の躊躇も無かった。 「ゆゆゆ!おにいさん、おなかがすいたよ!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 「ゆ!れいむもおなかすいたよ!!」 「ゆっくちごはんたべゆ~~!!」 「おっと、もうそんな時間か。用意するから待ってろよ」 ゆっくり達全員から催促され、俺は台所に向かう。 ちゃちゃっと晩飯を作り、俺と同じ献立をお盆に載せ、親まりさのところに持っていく。 そう豪華な食事ではないが、野生のゆっくりにとっては人間の食事というだけで至上のごちそうだろう。 よだれをだらだらと垂らした子ゆっくりどもが、飯を催促しながら足にぽんぽんぶつかって来るが無視。 結局、「ゆぅ~・・・」とか言って萎んでいきながら親まりさに食事を運ぶ俺を見送るしかない。 「ゆ!おそいよおにいさん!」 「悪い悪い、ゆっくりしてたもんでな。お前もゆっくりしてたろ?」 「ゆゆ!もちろんゆっくりしてたよ!!まりさはみんなのぶんもゆっくりするよ!!」 「よーし、そんなゆっくり出来るゆっくりまりさにご飯だぞー」 「ゆー!おいしそうなごはんがいっぱいあるよ!!」 「みんなの分もたくさん食べないとな?」 「ゆっ!そうだね、いただきます!はっふ、うっめ!めっちゃうんめ!すごくゆっくりできるごはんだよ!!」 俺達はしきりにゆっくりしていることを確かめ合っていた。 『ゆっくり』が何を指すのかは、未だに全然解らないが。 板の向こうまで美味しそうな匂いが流れていくので、子ゆっくり達は辛抱たまらないだろう。 脱水症状起こすんじゃないかってぐらいよだれを流しながら、爛々と輝く目で親まりさの食事を見つめる子ゆっくりたち。 「ゆゆ!れれれいむたちにもはやくごはんちょうだいね!!」 「ゆっくちはやくたべたいよ~!」 「おなかがへってしにそうだよ!しんだらゆっくりできないよ!!」 「ゆ゛!?まりざあぁぁぁぞんなこといっちゃだめぇぇぇえぇぇぇ!!」 「ゆ゛ゆ゛!!しんだらえいえんにゆっくりしちゃうよ!!!」 子まりさの『ゆっくりできない』発言に反応した子れいむが子まりさを咎める。自浄作用。 ゆっくり出来ないのは良いことだが、死なれてはつまらないので食事を与えるとする。 予め抜いてきた庭の雑草を子ゆっくりたちの前に放り捨てる。サービスで土は付いたままだ。 「ゆ゛ぅぅぅ!!なにごれぇぇぇえぇぇぇ!!」 「きたないよ!!こんなのごはんじゃないよ!!」 「お前らいつもこんなの食ってるだろう」 「お゛があざんだげずるいよ゛ぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!」 「こんなまずそうなくさたべられないよ!!おかあさんとおなじごはんをだしてね!!」 「これじゃゆっくちできないよ!!」 「へぇ~、ゆっくり出来ないのかい」 子れいむや子まりさ達はしまったという顔で、失言をした赤れいむを睨んでいる。 赤れいむは何が悪いのか解らず、目に涙を浮かべたまま姉ゆっくり達の視線に震えている。 「ゆ!いまのみんなにとってさいこうのごはんだね!!みんなはずっとそれをたべてね!!」 「「「ゆ゛ぎぃぃぃぃいい゛ぃぃぃぃぃぃ!!」」」 ごはんをべちゃべちゃ食い散らかしながら、親まりさは子供達に向かって笑顔で言い放つ。 子ゆっくり達は涙を流し、ぎりぎりと歯噛みしながら、 何匹かは失言の赤れいむを攻撃し、何匹かは仕切り板にべちゃべちゃ体当たりしている。 何か俺、親まりさと息が合って来た? 人生に二度とない、貴重な体験かもしれない。 しばらく見ていると、最初は文句を言っていた子ゆっくりどもも空腹には勝てないのか、 ごちそうの良い匂いの漂う中、ばらまかれた雑草をもそもそ食べ始めた。 うなぎを焼く匂いだけでご飯一杯いけた人もいたということだし、これはこれでオツなのかもしれないな。 だが「しあわせー♪」などと言い出すゆっくりは一匹もおらず、親まりさと対照的に重苦しい食卓となった。 もっとも、もしも雑草が美味しかったとしてもそれを口に出そうものなら、 俺に……いや、親まりさに咎められ、更に食事のグレードを下げられるだろう。 なぜなら親まりさのゆっくりは、みんなの分のゆっくり。 子供達がゆっくりしてしまっては、自分が存分にゆっくりできないのだ。それもこれも『子供達のため』。 このパラドックスに対してわずかな疑念が浮かんでも、ゆっくりしたいという本能的欲求に掻き消される。 クックック、この状況……いつまで続けようかな? よく考えてなかった。 しかしこの分では限界も近そうだ。ゆっくり見守っていくとするか。 やがてゆっくり達は食事を終え、就寝の時が近付いてきた。 あくびをした親まりさは、先ほどのクッションをベッド代わりにうとうととしていた。 と、そこに俺は小さなタオルケットをかけてやる。 「ゆ?おにいさん、これはなに?」 「掛け布団だよ。寝汗が冷えて風邪でもひいたらゆっくりできないだろ? よく汗を吸うし、風も通すから暑苦しくもならないぞ!」 「ゆ!とってもやわらかくてきもちいいよ!これならゆっくりねむれるよ・・・」 「それからこれもな」 ゆっくり用耳当てを親まりさに見せる。 「ゆ!こんどはなあに?」 「これをつけると静かになって、ぐっすり眠れるようになるよ。 風の音とか犬の鳴き声とかで起こされちゃったらゆっくり出来ないだろ? 朝になったら取ってやるよ。ほうら」 「ゆゆ!すっごくしずかになったよ!ありがとうおにいさん!!」 ゆっくりに耳なんてものがあるのか甚だ疑問だったが、効果は発揮されているようだ。 しかし今の俺って、まるでゆっくり愛でお兄さんだよな。正直気分悪いが、何事も経験だな。 それに後ろの方で苦しんでるゆっくり達もいるわけだし。 俺は親まりさにおやすみと声をかけて頭を撫でると、親まりさは小さく身体を震わせ、すぐに寝息を立て始めた。 親の過剰なゆっくりっぷりに、「ゆ゛!ゆっぐりねるなぁぁぁあぁぁぁ!!」「おがあざんはねむれずにくるしんでね!!」 などと呪詛の声を送っていた堪え性のない子ゆっくり達だったが、耳当てによって何も聞こえなくなったことを悟ると、 さんざん喚き倒して疲れたのか、みんなうとうとと夢の世界に入り始めた。 と、そこで俺が一喝。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」」」」」」 俺の挨拶に対し、本能的に子ゆっくり達がお決まりの返事をする。 こればっかりは逆らえないのでしょうがない。たとえゆっくりが何をしている時であっても。 「ゆ!おにいさんなにするの!!やめてね!!」 「まりさたちはつかれたからゆっくりねるんだよ!!」 「ねみゅれないよ~!!」 「え~? だからお母さんの眠った夜中ぐらい、君達にゆっくりしても良いよって言ってるんじゃないか。 ほら、ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっくりしていってね!ゆ゛~~!!」」」」」」 ゆっくりって、本当にマヌケな生き物ですねえ。ちなみに親まりさは耳当てをしてるのでぐっすり夢の中だ。 その安眠を保障するためにも、子ゆっくり達をゆっくり眠らせるわけにはいきませんもんねー。 とはいえ、俺も人間なので一晩中ゆっくりに付き合って起きてるわけにはいかない。 そこでこいつの登場だ。河童謹製、蓄音機~。 これは音を記録し、再生できる機械だ。更に自動ループ機能もついている。作業用BGMとか流す時に使える。 まあ作業っつっても主に虐待なんスけどね。 で、今回はゆっくりが「ゆっくりしていってね!」と言った時の音声を記録したものを、一晩中ループさせ続ける。 声は数秒置きに流れる。眠りに落ちつつある子ゆっくりを確実に引きとめ、覚醒させるだろう。 ゆっくりに止められないように高い台に置いて、セット完了だ。 いきなり知らないゆっくりの声が流れ出し、子ゆっくりたちは戸惑いの表情を浮かべた。 《ゆっくりしていってね!》 「「「「「「ゆっ、ゆっくりしていってね!ゆぅ・・・」」」」」」 《ゆっくりしていってね!》 「「「「「「ゆっくりしていってね!ゆ゛があ゛ぁぁぁぁ!!」」」」」」 《ゆっくりしていってね!》 よしよし、ちゃんと動作しているな。 ゆっくりは寝不足が原因で死ぬことはないと噂に聞いたので、実験してみる次第だ。 機械の作動を確認した俺は、「おやすみ~」と小さく声をかけ、部屋を出て自分の寝室に向かった。 寝る時は俺も耳栓をした。子ゆっくりの悲鳴が聞こえてきてうるさいのなんの。 明日に備えて、俺もゆっくり眠らないとね。 続き このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1105.html
ネチョ注意 人里離れたところにある粗末なつくりの小屋から、濡れタオルをはたくような音が連続で響く 小屋の中では、男はゆっくり霊夢を両手でがっしりと捕まえて。自らの男根をその口に突っ込み、ピストン運動を繰り返していた 「うぐっ・・・・・・・・ゆぐ・・・・・・ぼぅえ・・・・・んちゅ・・・・・・」 男は腰を激しく振ってラストスパートをかけて、いっきに絶頂に登りつめた ゆっくり霊夢の中に大量のザーメンをぶちまける 「がぼぼぼぼぼぉぉ!!」 大きく体を揺すられて、自分の『中身』と『異物』が混ざり合う感覚に眩暈と吐き気をもよおしてゆっくり霊夢は息を荒くしてへたりこんだ 男はそのぐったりとしたゆっくりをつまらなそうに一瞥すると、今度はその部屋の隅で震えていた小さなゆっくり達に手を伸ばす たった今犯したばかりのゆっくり霊夢の子供たちである 「ゆっくり来ないでね!!」 一匹が口火を切ると、右習えの要領で他の子供ゆっくりも口々に拒絶と懇願の言葉を合唱する 男は子供達の悲痛な叫びなど意にも返さず、むしろその声に身を奮わせつつ一匹の小粒なオナホールを手に取る 「ゆっくりやめてね!!ゆっくり降ろしてね!!だぁめええええぇぇぇ!!! 」 あっさりと捕まったちびゆっくりが、男の手の中で絶叫する 母が遭わされたのと同じ目に自分も遭わされるのだと想像するだけで喉から餡子がせり上がってくる その時 「ゆっくり出してね!」 先ほどまでぐったりとしていたはずの母ゆっくりが再び起き上がり、男のイチモツを自ら咥えこみ、舌を使って奉仕しだした 男の興味をわが子から再び自分に向けるために、男の陰毛に目を痛めながら必死に口をすぼめる 我が身を犠牲にして子を守る親の姿を、男は口先を吊り上げて嘲る 嘲り、今捕まえた子供のゆっくりを床に置き。自らのイチモツを咥えてきた母ゆっくりの再び頭を両手で掴み、獣のように腰を振り始める 男のイチモツが母ゆっくりの喉と一度目の射精でザーメンカクテルと化した餡子を蹂躙する 腰を動かすこと数分、男はイチモツをゆっくりの口から引き抜いた この時、母ゆっくりは『顔射』されると思った しかし男は男根の発射口である尿道をゆっくりの鼻の片方の穴にあてがう 男のそれはゆっくりの唾液と餡子、自らの精液にまみれており、まるでナメクジが通った跡のようにヌラヌラと輝いていた 「ゆ?」 間抜けな声をもらして瞬間 鼻腔に異臭、その後に激痛が走った 「いぎぃ!!」 男はゆっくりの鼻の穴にぶちまけた その量は二度目とは思えぬほどの量で一瞬で鼻の中を満たすと、残った量は全て眼球に飛ばしてぶつけた 「ばあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 目が焼けるような痛みに襲われ、のたうちまわり。しばらくして母ゆっくりはその場に気を失う 男は身をぶるりと振るわせたあと、気を失った母ゆっくりの口に再びイチモツを入れると、今度は小水を排泄した それにより母ゆっくりは強制的に覚醒させられ、餡子とスペルマと尿が混ざり合う感覚と格闘する 死を覚悟して再び意識が遠のく直前、怯えた目で自分を見つめる子供達が視界に入った 『母は強し』 母ゆっくりはその不快感と吐き気に最後まで耐え、意識を手放さないことで辛うじて自らの命を繋ぎとめた その母に子が一同に駆け寄り、汚物まみれの母に頬を摺り寄せる 男は部屋の隅に水と食べ物を置くとゆっくりの家族など目もくれず廃屋を後にした 獣欲を満たした今、男はゆっくりなど眼中に無かった ゆっくりレイパーがその家族の前に現れることは二度と無かった
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/951.html
※fuku2275の続きです ※「ちーんぽ」と言わないゆっくりが出ます。 「らんしゃまぁぁぁぁ!!」 恐怖を振り払う様に、そう叫びながらちぇんは駆け出していった。 それに反応してか、らんの下敷きの形になっていた蜘蛛は、 あっさりとらんの束縛を解き、まるで地面に潜るかのように移動を始める。 先程まで、まるで居ないモノであるかのように対応していたというのに、 これはちぇんを新たなる外敵と認めての反応だろうか。 それに対して、ちぇんはらんを一瞥しただけでそちらに駆け寄ろうとはしなかった。 敵の束縛が解けたというのに、ビクビクと痙攣するだけのらんにしてやれる事などなかったのは勿論の事、 それを間近で見てしまう事に対しての恐怖も有った。 だが何よりも、らんとちぇんがゆっくりする為には、 今は眼の前の敵を撃退する事に全神経を傾けなければならない事を理解していたからだ。 「わかるよー」 地面を掻き分けるように移動する蜘蛛を後ろから追う形となったちぇんは、 出来るだけ扱い易く、そして丈夫そうな木の枝を探しそれを口に咥えた。 蜘蛛の力は物凄いモノが有るが、その表皮はゆっくりの皮膚と耐久性は余り変わらない。 と、先程掴まれた時の感触から、ちぇんはそう判断した。 ならば、自分でも渾身の力を込めた攻撃を行えば、致命傷を与えられるかもしれない。 そう考えながら、ちぇんは敵の後を追い続ける。 「……疲れているかもしれない」 ちぇんのその行動を観察しながら、副長は呟いた。 その言葉は、誰に対するものだろうか? そう私は思ったが、恐らくはちぇんでは無く、その相手である蜘蛛の方に向けた言葉であろう。 地面を潜って移動しているとはいえ、動きの方もかなり鈍く感じる。 そもそもあの蜘蛛は、らんやちぇんが落下する前からかなりのゆっくりを処分していた。 無機質な顔をして感情など窺う事など出来はしないものの、生物である以上疲れは蓄積するものだ。 更に、自然界の生物は「危うい闘い」とも言える、五分五分の闘いを出来るだけ避けたがる。 それは例えその闘いに勝ったとしても酷い傷などを追った際には、遅れて死に至る結果になったり、狩りが出来ずに飢え死にしたりする事もあるからだ。 そんな蜘蛛からしてみれば、らんはかなりの強敵であった。 攻撃を受けたのは一度だけとはいえ、精神的な消耗はかなり激しいものがあった筈だ。 らんとの闘いにより今まで敵ですら無かったゆっくりという生物であったが、思いも寄らぬ力を見せられ、そういった危険な敵という認識が芽生えたのかもしれない。 それが今現在の、「敵から一旦逃げ出す」という行動を起こしているのだろう。 蜘蛛は一目散にちぇんから距離を取ろうとする。 しかし、其処は限られた空間である水槽の中。 すぐさま蜘蛛は端まで辿り着き、すぐさま切り返して距離を取ろうとした時には、ちぇんが跳びかかって来た後で有った。 「ゆっぐぅぅぅ!!」 ちぇんは口に真横の形で咥えた棒を地面が盛り上がった場所へと突き立て、何かを突き破る手応えを感じた。 そのまま体重を乗せて押し込むように突き刺すと、やはりズシリとした感触が感じられる。 ――勝てる!! 不意打ちに近いとはいえ、あの怪物に手傷を負わせる事が出来た事に、一種の感動にも似たものを覚えた。 「ゆっぐりじね!!ゆっぐりじねぇ!!」 口に棒を咥えたままちぇんは叫び続け、グイグイと棒を押し込む。 ここで決めねば勝機は無い。 もし殺り損ねれば、敵にはまだあのよく判らない見えない攻撃が有る。 一度見たのでそのまま喰らう事は無いにしても、打開策など考え付くわけも無く、あれを出されれば成す術も無い。 ちぇんはそう考え、元より短期決戦で臨むつもりであった。 するとふと、ちぇんは体が浮き上がるような感覚に陥る。 いつのまにか、敵に吹き飛ばされたのか? いや、違う。自分の体が引き摺られながら木屑の海を移動している。 蜘蛛がちぇんが咥える棒を刺したまま移動し、あがき苦しんでいるのだ。 暫く、ちぇんはヨットの帆にでも成ったかの様に、木屑を飛散させながら引き摺られていた。 それでもちぇんは、歯を喰いしばって棒を敵の体奥底へと押し込もうとしていた。 臆して離してしまう様な事があっては、折角の勝機が逃げてしまう。 と、何度も頭の中で反芻し、必死に成って蜘蛛の動きに抗うように眼を瞑り力を込める。 だが、そんなちぇんの思いを裏切るような事が起きた。 「ゆ”っっっ!!?」 急に無重力になった感覚を感じ、地面を転がっていた。 ちぇんには一瞬何が起きたのか判らず、眼を開ける。 そこには予想外の情景が広がる。 蜘蛛が移動する負荷と、ちぇんの押さえ込む負荷に棒が耐え切れずにその半ばから折れてしまったのだ。 そして、眼の前には敵である筈のあの大蜘蛛が存在していた。 その上にはちぇんが突き立てた棒の柄が少しだけ覗く。 背中に掛かっていた負荷が取れたのを好機として、すぐさま地面から這い出てちぇんの前に立ちはだかったのである。 「わ、わかんないよぅー」 突然の事態の急変に、ちぇんは眼に涙を溜めて呟く。 そこには先程までの勇敢なゆっくりちぇんの面影は何処にも無かった。 らんの言葉で一種の興奮状態に陥り、最初の攻撃が改心のモノで有ったため、ボルテージが一気に上がりはした。 しかし、その幸運も長くは続かず、敵を仕留め切れなかった事についで、 自身の身が今正に風前の灯火で有る事を理解し、一気に熱が冷めてしまったのである。 「ゆゆ、ゆっくりしよう。ゆっくりしよう……ね?」 何を思ったのか、ちぇんは先程まで殺すつもりであった蜘蛛に対してそう問い掛け始めた。 命乞いのつもりなのか、ゆっくりとしての本能としての言葉なのか。 よく判らないが、それでもちぇんは涙を流しながらも引き攣った笑顔で「ゆっくりしようね。ゆっくりしようね」と、何度も眼の前の相手に語りかけた。 もちろんの事では有るが、そんなものは何の解決の手助けにはなってくれなかった。 眼の前の蜘蛛は、口の鋏角を動かし「シャワシャワ」と威嚇音を出す。 その無機質な八個の眼も、どこか傷に対する怒り醸し出しているように感じられる。 じりじりとちぇんの方に近付き、補足するべくその脚がカサカサと音を奏でる。 「ゆ……ゆ”っぐじ、じよう”よ”ぉぉぉぉぉ!!」 それに耐え切れなくなったちぇんの絶叫に合わせて蜘蛛が飛び掛る。 結局、駄目なゆっくりである自分では最初からどうしようもなかったのだ。 そう頭の中で思った一方、相反するものも去来した。 そこには自分の愛するらんと、それにいつも甘えてばかりの自分の姿。 頼ってばかりで何もしてこなかった自分の駄目な姿である。 ――そういえば、らんしゃまのためにじぶんがなにかして「あげれた」ことなんてなかったなぁ。 そう思った。 何かして「あげよう」とした事は確かに存在した。 ここに来る事になった原因でもある盗みの件だ。 それにしても、らんに対しては迷惑にしかならず、何かして「あげれた」事には成らなかった。 本当に駄目なゆっくりだ。と、自分に対して呆れる。 今回の闘いも、何だかんだで途中で諦めてしまったではないか。 何をやらせた所で、何も出来ないゆっくりなんだ。 自分なんかが死んでも、他のゆっくりに迷惑を掛けるゆっくりが消えるだけだ。 と、ちぇんは自分自身でそう納得しようとした。 ふと、「そんなことないよ」という声が聞こえてくる。 らんしゃまのこえだ。 らんは言った。 「らんしゃまは、ちぇんがいるからゆっくりできるんだよ」 ――と。 一度は納得し掛けたちぇんではあったが、その言葉に、 自身の声とらんしゃまの声、どちらを信じれば良いのか全く判らなくなった。 又、頭がガンガンと痛くなってしまう。 いつもそうであった、ちぇんが難しい事を考えるといつも頭が割れるように痛くなる。 そして、いつもであれば、ちぇんはそこで考えるのを辞めてしまう。 考えた所で何も判る筈が無いのを、ゆっくりちぇんは理解していた。 結局判っていなくても、何も考えずに「わかるよー♪」と言ってしまう生物なのだから。 だが、今回はもう少しだけ考えてみようと思った、考える事が出来るのはここが最後なのかもしれないのだから。 もうちょっとだけ、考えてみよう。 そして、その結論もまた、物凄く速かった。 ――らんしゃまのことばをしんじてみよう!! 「ゆぶぅぅぅぅぅ!!」 飛び掛る蜘蛛に対して、ちぇんはいきなり何かを吹きかける。 先ほど地面を引き摺られた際に、棒を咥える口の横から入り込んできた木屑であった。 それを自身の肺活量を最大限に使って蜘蛛の顔面に吹き掛けたのである。 さしもの、野生の生物である蜘蛛も虚を突かれたのだろう。 一瞬、そのまま捕縛するかに見えた脚の動きが止まる。 「わかるよぉぉぉぉぉぅ!!」 そのまま間を置かず、ちぇんは空中の敵の対して正面から渾身の体当たりをぶちかまし、 それが直撃した蜘蛛は、大きく吹き飛び裏返しになってしまう。 その蜘蛛の起き上がろうと慌てたように忙しなく動かす八本の脚を見ると、 相手が焦りを見せているのを、ちぇんにも初めて感じられた。 ここで、一気に決める。 そう決意を決め、敵との距離を詰めるちぇんの耳に意外な声が響く。 「みょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!」 突然何かが落下してきた思うと、それは裏返った蜘蛛の真上へと落ち、ボスンと大きな音を発する。 ちぇんにしても、ましてや蜘蛛にしても意外なそれは、唯一人上空の棒へと喰らい付いていたゆっくりみょんであった。 「みょん、みょん!!みょん、みょん!!」 呆然とするちぇんを尻目に、下敷きとなった蜘蛛を何度も飛び跳ねて潰そうとする。 ハッとしてちぇんは理解した。 上に居たみょんも、ちぇんを助けるべく様子を窺っていたのだという事を。 そして、自分の真下にそれがやってきた今が最大のチャンスであり、それを実行した事を。 ただひたすらに、蜘蛛に攻撃を仕掛けるみょんに対して、今すぐ飛び付きたくなる程の喜びの衝動を感じた。 「みょん、みょんみょん、みょぉぉぉぉぉん!!」 そんなちぇんに、みょんは飛び跳ねながら向き直り、そう叫んだ。 何を言っているのかさっぱり判らなかったが、その鬼気迫る表情から察するに、このまま二人で潰し切ろうという意思表示だと受け止められた。 ちぇんはそれに呼応して、蜘蛛に飛び掛ると、そのジタバタと動く脚と、たまに舞い散る毒毛に気を付けながら、何度も攻撃を繰り返す。 「へんなけが、めにはいらないよぅにきをつけるんだよー!!」 みょんにそう掛け声をあげながら、跳ね回り、みょんもそれを受けてか「みょんみょん」言いながらも攻撃を続ける。 何度も踏みつけられながら、蜘蛛は木屑の中に埋まっていき、 その忙しなく動いていた筈の脚の動きが鈍くなってきたのを見れば、攻撃が効いているのは見て窺えた。 それでも時折、出糸突起から糸を噴出したり、裏返ったまま脚で敵を捕まえようとしたり、鋏角で噛み付こうとしている辺り、まだ戦意は有る様に思えた。 しかし、この劣勢の中ではそんなものは然したる問題にならず、多少糸がくっ付こうとも、体が傷付こうとも二匹は構わず攻撃を続けた。 自分の大切ならんしゃまを、他のゆっくり達をあんな風にした怒りをちぇんはぶつけた。 そんな単調な攻撃が何十秒か、それとも何分かは判らないが続いた後、 あろう事か、実験当初からは想像も付かない驚愕の光景が広がる。 千切れてそこらに落ちている脚や、痙攣したように動く脚。 ゆっくり達がその上から飛び退いても起き上がろうともしない姿。 何処と無く、その体も潰されたように平べったく見える生物。 この光景は明らかに、あの脆弱なゆっくりが異常とも言える大蜘蛛に勝利した光景だ。 「みょんみゅおんみょんみょん、みゅおぉぉぉぉん!!」 勝利の雄叫びであろうか。 その蜘蛛の様子を見て、ゆっくりみょんは嬉しそうに辺りを跳ね回っていた。 一方のちぇんではあるが、そんなみょんを尻目にすぐさま何処へ駆けて行ったかと思うと、絶望に染まった顔で立ち尽くす。 らんの絶望的な現状を目の当たりにしてしまったのである。 勝利の報を伝える為か、それとも安否を気遣ってか、気丈に笑顔で駆けて行ったちぇんが見た物は陰惨な現実であった。 眼や口や、切れた尻尾など、穴という穴から液体化した中身を噴出し、その張りの有った皮は、中身が減った事と液状化により、 まるで老人の肌のように皺だらけになっていた。 赤黒く充血したその眼も、近寄って来たちぇんを捕らえる事すら無く、ただ何処か虚空を見つめて何を映していない。 呼び掛けるちぇんに対しても、「ちゅぅぇん、ゆっぐり……じで、ね」と、単調に繰り返すだけで、 それはちぇんの言葉に反応している訳でなく、最後の言葉を繰り返し呟いているだけだというのが見て窺えた。 そんな死に行くだけのらんを眼にし、勝利の感慨など一気に吹き飛び、ちぇんは唯立ち尽くすしかなかった。 遅れてやってきたみょんも、どう声を掛けて良いのか判らず、困惑した表情を浮かべるのみである。 「二人とも、今回の試験はクリアだよ」 すると、二匹の頭の上から誰かの声が聞こえてきた。 今までこの様子を窺うだけであった、人間の声である。 そして、今の現状を産み出した相手であった。 「取り合えず、ちぇん君は蜘蛛を撃退。みょん君は凄い事に、棒と蜘蛛ダブルクリアになるのか」 みょんが落下した時には、もう10分経過後であったが、下の様子から副長は止める事も無く傍観していた。 みょんにしても、10分がどうとか、試験をクリアなど頭に無く、ただひたすらに下の様子を伺い、ちぇんを助け出すことだけを考えていたのだ。 「みょんみょん、みょんみょおぉぉぉぉん!!」 そんな人間の言葉に対して、みょんは怒りを露にして水槽の壁に体を打ちつける。 この眼の前の人間が、自分達をこんな目に合わせた元凶だと、みょんの餡子脳でも理解する事が出来たからだ。 その様子のみょんを、少し眺めていた副長は何ら怒っている様子も無く、 「ところで、君達はお腹が空いたりはしていないか?他にも何か望むものはあるかい?」 と、ゆっくりに対して優しい言葉で問い掛けた。 その言葉に反応を示し、食事でも要求しようかと思ったのか、一瞬みょんの動きが止まったが、それを振り払うかのように頭を左右に振ると、 再び水槽に体をぶつけ、怒りを表現して見せた。 だが、もう一匹のゆっくりであるちぇんは様子が違った。 「……てください」 俯き加減に何かを呟いているのである。 「んっ、何だって?すまないが、もう一度お願い出来るかい?」 それを聞き逃した副長は、そんなちぇんに対してもう一度言ってくれるようにとお願いする。 横で見ていた私は、口を尖らせてそんな一人と一匹の様子を見続ける。 するとちぇんは暫く沈黙していたが、思いを決めたかのように顔を上げると、 「だんじゃまを……だんじゃまを、ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃ!!」 涙と涎を流しながら、必死の形相でそう要求してきた。 苦渋の決断と余程の思いを込めた言葉なのだろう。 その言葉を聴いたみょんも意外そうな顔でちぇんの方を振り向く。 「ゆっくりか……流石にその状態のゆっくりを、ゆっくりさせられる術を私は知らないなぁ」 その要求に対して、副長は困った顔をしてそう返した。 私も流石に、あそこまで瀕死のゆっくりを助けられるとは思えもしなかった。 そして一方で、私達二人はちぇんの様子から「ゆっくり」に対するもう一つの意図を何と無く理解はしていた。 「それでも、だんじゃまをゆっぐりざぜでぐだざい!!」 「ううむぅ、それは何と言うか……「一思いに殺してくれ」と受け取っても良いのだろうかね?」 「ぞうでしゅ、だんじゃまをこでいじょうぐるじまぜない”でぐだざぃぃぃ!!」 自分が何を言っているのか理解して、堰を切ったように嗚咽を上げ始めるちぇん。 それに対して、「何を言っているのか?」と問い掛ける様に、ちぇんの周りを跳ね回るみょん。 そんな二匹を眺め、一度頷くと、副長は瀕死のらんをゴム手袋を装着したその手で掬い上げる。 その際、それに気付いたみょんが何度も体当たりを敢行し、それを止めようとしていたが、そんな事はお構い無しに回収する。 そして、泣きじゃくるちぇんに対して一度、 「本当に良いんだね?」 と問い掛けると、頷いたちぇんを確認し、らんを白い布に乗せて水槽の中から様子が見える近くの机に乗せた。 そのまま、近くの棚から何やらゲンノウという木槌を取り出すと、白い布の上でピクピクと震えるらんの前に立った。 みょんは、これから何が行われるのか理解し、それを止めるべく必死に水槽の強化プラスチックを破ろうとしてみたり、壁を登ろうとしている。 ちぇんは、机の上のらんをずっと眺め、体を震わせるだけであった。 「……ちぇん君、君が次の言葉を言い切ったら私はこれを彼女に振り下ろそう」 そう、副長は真剣な顔付きでちぇんに言葉を投げ掛ける。 それを受けて、ちぇんはビクリと身を震わせて、その場で再び俯いてしまった。 色々と、胸に去来する何かがあるのかもしれない。 それにしても、何て残酷な事をさせるんだ。と、私は思った。 要するに、「死刑執行の合図」を、自らが行えと言っている様なものではないか。 よりにもよって、自分の最も親しく大切な相手に対してだ。 それとも、ちぇんに決別させる事によって、さっき言っていた「悪意を乗り越える進化」というものを期待しているのか。 どちらにしても、何という研究者のエゴイズムであろうか。 私はそんな副長の行動に対して、何故か憎しみにも憐れみにも似た、複雑な感情を持った。 これも私自身が「自身の大切な相手に対してそれを行う事」を想像しての感情であるかもしれない。 ――そんな馬鹿な妄想しなければ良い。 と、私は自分に言い聞かせて気分を落ち着かせる。 こんな感情など、疾の昔にかなぐり捨てたものだと思っていたのに、時折ふとした拍子に湧き上がってくる。 困ったものだ。 「どうしたのかね、私としてはこのまま、君が近くで看取ってやる方が良いと思っているのだが?」 私が、その様なくらだない事を思案していた一方。 ちぇんも必死に思いを巡らせていたのだろう。 暫くの沈黙が続いていた。 俯いたちぇんの周りを、「考えを改めろ」と言わんばかりのみょんが、「みょんみょん!!」と大声を出して跳ね回るだけであった。 すると突然、ちぇんが意を決したように、 「だんじゃまぁぁぁ、でんごぐにいっでも、ゆ”っぐり”じでっでねぇぇぇぇ!!」 そんな叫びにも似た声が響いたかと思えば、間を置かずに「ドスンッ!!」という、何かが叩き付けられる音が聞こえた。 約束通り「ゆっくりさせて」やったのだろう。 そう思った私は、そちらを見る事も無く、ちぇんだけを見ていた。 隣に居たみょんは「みょぉぉぉぉぉぉぉん!!?」と、らんの最後を察して驚愕の表情で叫んでいたが、 ちぇんはというと眼を瞑り、涙を流して追悼の意を送っているのかのように見えた。 ゆっくりにもそういった「死者を慈しむ」感情なんてものが有るのか。 と、不躾な事ではあるがそのような感想を持ってしまった。 副長はというと、そのまま何の感慨も見せずにすぐさまその潰れたであろうゆっくりらんを白い布で包み込むと、 スタスタと水槽へと歩いて行き、ゆっくり二匹で無く、あの蜘蛛をその手で回収した。 「ふむ、この傷跡から体液が噴出して、それが致命傷になったか」 何やらそれをまじまじと見詰めて、死因を述べる。 あのちぇんの攻撃で背中に穴を開けたものの棒によって体液の噴出を抑えられていたが、 ゆっくり二匹の猛攻でそれが吹き飛び出され、そのまま一気に連続して加えられる圧力で噴出したのだろう。 それにしても――蜘蛛の死体を見て改めて思う。 本当に、あのゆっくりがあんな化け物にも見える大蜘蛛に勝ったんだなぁと。 自分は心の何処かで、ゆっくりを馬鹿にしていた部分が有ったのかも知れない。 そうでなくとも、ゆっくり対蜘蛛を一方的な虐殺としか捕らえてなかった節が有った。 それを、今は眼の前の現実で裏返されたのだ。 ゆっくりに対して「物凄い生物だ」とまでは思わないが、かなりの部分で認識を改めさせられた結果となった。 その点を考慮すれば、「勝てる可能性は有る」と言って述べていた副長は、自分よりも遥かに真摯にゆっくりに対して向き合っていたのかもしれない。 一度そう考え、私は思い悩むように額を手で押さえた。 何て馬鹿な事を思っているのか、奇人変人に対して、真っ当な感情を持ってしまうとは。 このままその道に引きずり込まれてしまう言い知れぬ不安に、私は副長に対して感心してしまったという事実を、頭の中から消す事にした。 フツフツと頭を巡るそれらに思い悩まされている内に、副長は何処かに行って来た後なのか、入り口から戻ってきた姿が見えた。 色々と沢山の物を盆に乗せて、何かがこんがりと焼けた匂いを漂わせる。 そのままゆっくり達の水槽の前に立ったかと思うと、 「この焼けた物と私が持ってきたこちらの食事、どちらを食べるかね?」 と問い掛けていた。 ちぇんは未だに落ち込んだ表情で無言である。 もう一匹のみょんは怒りの表情を見せてはいたものの、差し出されたお菓子を見せられその表情も若干緩む。 そしてどちらかを選択したかと言えば、みょんが勝手に「焼けた物」では無い方を選び、すぐさま飛びついていた。 「みょーん、みょーん……みょみょみょおおおん♪」 ゆっくりで言うところの「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」であろうか。 中を覗いてみるとなるほど、ゆっくりにとっては思いもよらないほどの豪華な食事だ。 それにしても、あのゆっくりみょんは言葉を喋れないのか? まぁ、そんな事は私には関係無い。 だが、それを食べたていたのはみょんの方で、ちぇんは一向に口を付ける素振りは見せなかった。 みょんは心配そうな顔を見せていたが、ちぇんの分を取っておき、自分の分を食べる事が出来る内に食べておく事にした。 自分が慰めた所でどうしようもないと判断したのだろうか。 「……君がそんな様子では、君を守った彼女も安心してゆっくり出来ないな」 ちぇんのそんな様子に対して、副長はそんな言葉を投げ掛ける。 それを聞いたちぇんはハッとした表情を見せた。 何て無神経な事を言うのか。 と、隣で食べていたみょんが口から食べた物を飛ばしながら抗議する。 相変わらず「みょん、みょん!!」しか言わないが。 そのような状態で有ったが、ちぇんは意を決したように食事に口を付け始める。 みょんは驚いた表情を一瞬見せたが、ちぇんが立ち直ったように見えたので、一緒に笑顔で食事をし始めた。 それを見て、副長は満足した様に微笑むと、私の隣に有る机に腰を下ろし、 「そういえば、例の物は其処に用意して有るよ」 そう言って、床に置いて有る箱を指差す。 そういえば、私はある荷物を取りに来てこんな部屋に居るのであった。 余りに衝撃的な事の連続で忘れかけてはいたが。 私は言われた通り、その小包程度の箱を手に取ると、お礼を言う為に振り返る。 そこにはまたしても驚くべき光景が広がっていた。 副長は何と、そこで食事の用意をしていたのだ。 驚くべきなのは食事の為のお茶を湯飲みに注いでいる事では無い。 もちろん、何の脈絡も無しに食事を始め出すのも十分に驚くべき事では有るが、問題は其処では無い。 副長が食べようとしている物が問題なのだ。 その口にしているもの、それは――先ほどまで其処で動いていたあの蜘蛛だ。 「あの二人が食べないというので私が食べる事となったが。中々どうして、美味しそうではある」 「海老のような味がするらしいよ、私は海老というもの図鑑で見ただけで食べた事は無いからよく判らないが」 私の視線に反応して、そんな奇妙な事を口走る。 その後、「君もどうかね?」と問い掛けてきたので、私はすぐに「遠慮します」と返すと、残念そうな顔をした。 「彼女には可哀想な事をした……ゆっくり達は二つの機会が有るというのに、彼女は一度負けたら終わりなのだから」 「実に不公平な実験だったと言えるかもしれない」 何を言っているのか最初は判らなかったが、考えてみると――ああ、なるほど。 ゆっくりは棒に10分間ぶら下がっているか、下で蜘蛛を倒せばそれで良いが、 蜘蛛は連続して落ちてくるゆっくり対して、一度たりとも負けてはいけない。 ゆっくりのダブルチャンスに対して、一方の蜘蛛は戦闘力で見た優位は有れど、ワンチャンスなのだ。 幾ら強いからといっても、連続して敵が出現し、疲弊して本来の実力を出せずにやられてしまうという事態は、どれだけの無念さが残ろうか。 よくよく思い返せば、蜘蛛にしてみればこの実験はかなり分が悪かったかもしれない。 「まぁ、しかし……」 そのまま副長は言葉を続ける。 「彼女は子孫を残す事は出来た」 そう言って、奥の棚の方へと眼をやる。 私は思わずその視線を追ってしまうが、そこで見てしまった物に対して、視線を追わせた事を後悔した。 其処には透明な容器に入れられた人の頭部の二倍程度の大きさの、大人のゆっくりまりさが居た。 生きてもいる。 それだけなら問題は無いのだが、周りに居る生物が問題だ。 大量の子蜘蛛が、まりさの顔面や髪の間に群生し、もしかしたら帽子の中にはもっと存在しているかもしれない。 あの綺麗であったろう金髪には、白い糸が満遍無く掛かっていた。 そして、その光を失った眼が、じっと正面だけを見据えているのが確認出来る。 悲鳴を上げ尽くし、涙も流し切った、そんな全てに絶望した表情。 そういった感想がピッタリくる、何とも言い難い顔だ。 子蜘蛛が顔面や足元を這い回っていると言うのに、それに慣れ切ったかのように虚ろな表情のまま動かない。 口の端からも涎が垂れている。 そして、その頭から管のような物が体の中に通されているのが眼に入る。 恐らくはそれを通して定期的に栄養を与えられ、死に至る前に餡子を再生させ、 まりさが死なないように、 いや、死ねないようにしているのだろう。 何てモノを見てしまったのか。 ゆっくりまりさ全体が、子蜘蛛の苗床とでも言おうか、餌でもあり巣でもある物体へと化しているのだ。 これはほとんど食事を摂取しない幼虫限定であるが、これなら他の生物を犠牲にしないで食事をし、成長する事が出来る。 新たなる生物の構造。 何と素晴らしい、何と合理的――などとは口が裂けても言わない、少なくとも私は。 こんな物の眼の前で食事を始めようとするとは、この副長は何と言う胆力か。 総じて肝も太そうだから、暇が有れば肝試しにでも誘ってやろうか。 きっと何が出てきても動じないだろう。 いやいや私は何を考えているのか、頭がおかしくなりかけているのか? 色々と後悔している私に、一瞬光が戻ったかに見えたまりさが私に視線を投げ掛ける。 そして、何かを訴え掛けるように口をパクパクと動かし始める。 思わず私はそれを、口の動きだけで判別しようと試みてしまう。 「ゆ」「っ」「く」「り」「さ」「せ」「て」 其処まで言い切ると、ブワッっと、まりさの口の中から子蜘蛛が一気に這い出てくる。 巣であるまりさが動き出したので、それに驚いたのだろうか。 喉の奥から、体内に生息していたと思われる子蜘蛛達がワラワラと押し寄せてくるのを、私は凝視してしまう。 それで呼吸が不可能となったのだろうか、まりさは餡子と子蜘蛛が入り混じった泡を吹いて白目を見開いて痙攣を始める。 その眼からも、小さな隙間を掻き分けるように、子蜘蛛が次々に這い出てくるではないか。 そんな緊急事態に「蜘蛛の子を散らしたように」子蜘蛛がそこかしこを這い回る。 もちろん例えであるが、比喩的表現ではない。 まりさがビクビクと痙攣しながら全身を子蜘蛛で覆われていくのを見て、身体中を蟲が這い回るおぞましさを想像し、そこで眼を逸らす。 流石に、これ以上は見てはいられなかった。 そのまま視線を副長へと戻すと、恐ろしい事に丁度蜘蛛の脚を口へと運ぶ場面である。 美味しそうにそれを噛み締めるのが見て窺えた。 そこでも視線を逸らすと私は、 「どうも、ありがとうございました」 とだけ残すと、出来るだけ冷静にその場を立ち去った。 「先輩君!!新入りの……外来人の彼によろしく言っといてくれ!!」 という言葉を背中に受けたが、そんな事、知った事ではない。 もう二度とこんな場所に来るか。 と思ったが、そんな我侭が適う事は無いだろうと頭の中では理解していた。 後書き これは誰に対する虐待なのか? ゆっくりなのか蜘蛛なのか、はたまた先輩という人物に対してか? by推進委員会の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5392.html
いじめシーン少ないので注意。 ここは、ある男の家。 この家の庭には、ゆっくり捕獲装置が置いてある。 「ゆん♪ゆん♪ゆーん♪」 「おちびちゃん!おさんぽたのしいね!」 「ゆ?いいにおいがちゅる!」 「ゆっくりいこうね!」 このゆっくり一家は、散歩の最中。 「ゆぎいぃぃ!」 「おちびちゃ・・・ゆぎいぃぃ!」 「みゃみゃ・・・ゆぎいぃぃ!」 「「「「ゆぎいぃぃ!」」」」 「だずげでえぇぇ!」 悲鳴を聞きつけた男が駆けつける。 「大きいのが二匹に小さいのが五匹か。大漁だ!」 「おじさんなにいっでるのぉぉ!ばやぐでいぶをだずげでえぇぇ!」 「おちびちゃんはころしていいから、ばりざをだずげるんだぜぇぇ!」 「みゃみゃひどいぃぃ!」 「助けてやってもいいんだが、条件がある。俺の家の中にある回し車を回し続けろ。明日の朝まで回していられたら全員逃がしてやる。」 「ゆっくりわかったよ!」 「ゆっくりわかったんだぜ!」 男はゆっくり一家を捕獲装置から取り外し、かごの中に入れた。 そしてそのかごをテーブルの上に置き、親ゆっくり二匹をそれぞれ回し車に入れた。 そして、蓋を閉じゆっくりが脱走できないようにする。 「ああ。言い忘れたことがあった。その回し車、五秒間回さないと電気ショックが流れるようになっている。」 「そういうごどははやぐいっでよぉぉ!」 「ゆびびびびび」 「ばりざぁぁ!」 「いだがっだんだぜぇぇ!はやくだずげでぐなんだぜぇぇ!」 「へーっ。そう言う事言うんだ。じゃあ小さいのもお前らも全員助からないな。」 「それはもっどいやなんだぜぇぇ!」 「嫌なら黙って走れ!」 「「ゆうぅぅ・・・」」 男がなぜこのようなことをするのか。 それは発電のためだ。 捕獲装置で捕まえたゆっくりに回し車を回させ、それで発電した電気を生活に使っている。 回し車は河童製の回し車で、大量の電気を発電できる。 ちなみに赤ゆっくりや子ゆっくりはすぐに力尽きてしまうので、回し車は回させない。 なので、赤・子ゆっくりには加工所製栄養剤入り成長促進剤を与え、成ゆっくりと同じ大きさまで育てる。 (A)人工的に発情させ、子供を作らせ、その子供を食べる。 (B)ゆっくりに栄養剤を与える。 (C)回し車を回させる。 (D)虐待お兄さんに売る。 そして、Aをしばらく繰り返し、弱ってきたらBをする。 それを繰り返し、子供が作れない状態まで弱ってきたら、CまたはDをする。 余った電気は電力会社に送り、お金をもらう。 男はこうして生活しているのだ。 ちなみに、先ほどの親れいむと親まりさは・・・ 「ゆう・・・ゆ・・・」 親まりさだけ生き残っていた。 「驚いたな。まさか朝まで耐えるとは・・・」 「まりさはがんばったのだぜ・・・だからおちびちゃんをかえしてくれだぜ・・・」 「断る。」 「なんでぇぇ!じじいのうそつきぃぃ!」 「こいつは虐待お兄さんにでもやろうかな・・・」 「ゆうぅぅぅぅ!!!」 END
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/494.html
二匹のゆっくりが、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。 「このやまはゆっくりできないね。ちょうちょもありさんも、ぜんぜんいないね。」 「はやくつかまえてゆっくりしたいね。ゆっくりしようね。」 それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鴉天狗も、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。 「ゆっくり寒くなってきたね。」 「ゆぅ、ゆっくりもどろうね。」 ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。 風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。 「お゙な゙がずい゙だよ゙ぉぉ。な゙に゙がだべだい゙よ゙ぉ。」 「れいむ、やまを下りたらお花をいっぱい食べようね。」 「あ゙る゙ぎだぐな゙い゙よ゙。何がだべだい゙よ゙ぉ。」 「ゆぅ、まりさも何か食べたいんだよ」 二匹のゆっくりは、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。 その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。 そして玄関には RESTAURANT 西洋料理店 SLOWLY HOUSE 低速亭 という札がでていました。 「れいむ、おうちだよ」 「れいむたちが見つけたんだかられいむたちのおうちだよ」 「ゆ!いいにおいがするよ」 「たべもののにおいだよ、ゆっくりしようね!!!」 二匹は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで、実に立派なもんです。 そして硝子の開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。 「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」 二匹は字が読めないので中に入りました。 「あたたかいね、ゆっくりできるよ」 「うん、あたたかいね。もっと奥があるよ」 「いってみよう」 そこには扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。 扉には赤い字で、 「お客さまがた、ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落してください。」 と書いてありました。 「ゆ、れいむがむこうにもいるよ」 「それはカガミっていうんだよ。とかいはのゆっくりアリスがもってたよ」 二匹は字が読めないので、そのまま扉をがたんと開けて、次の室へ入って行きました。 早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、ゆっくりできなくなってしまうと、二匹とも思ったのでした。 扉の内側に、また変なことが書いてありました。 「鉄砲と弾丸をここへ置いてください。」 見るとすぐ横に黒い台がありました。 「ゆ、また扉があるよ」 「ゆっくり開けてね」 二匹は字が読めないので中に入ると、また黒い扉がありました。 「どうか帽子と外套と靴をおとり下さい。」 しかし二匹は字が読めないので気にせず中に入りました。 扉の裏側には、 「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、 ことに尖ったものは、みんなここに置いてください」 と書いてあり。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵まで添えてあったのです。が。 二匹は気づかずにそのまま飛び跳ねていきました。 「おっきなおうちだね」 「これだけおっきいといっぱいゆっくりできるね」 すこし行きますとまた扉があって、その前に硝子の壺(つぼ)が一つありました。扉にはこう書いてありました。 「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」 みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。 「うっめ、これめっちゃうっめ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、 「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」 と書いてあって、ちいさなクリームの壺がここにも置いてありました。 「ゆー、おいしくてゆっくりできるね!!!」 「きっと、おくにはもっとゆっくりできるものがあるよ!!!」 するとすぐその前に次の戸がありました。 「料理はもうすぐできます。 十五分とお待たせはいたしません。 すぐたべられます。 早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振りかけてください。」 そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。 二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振りかけました。 ところがその香水は、どうも酢のような匂いがするのでした。 「すっぺ、これめっちゃすっぺ」 「すっぱいけどおいしい!!ふしぎ!!」 二人は扉をあけて中にはいりました。 扉の裏側には、大きな字で斯う書いてありました。 「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。 もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさん よくもみ込んでください。」 なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが。 「おしおはたべれないね」 「のどがかわいてゆっくりできなくなるね」 奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、 「いや、わざわざご苦労です。大へん結構にできました。さあさあおなかにおはいりください。」 と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉がこっちをのぞいています。 二人は扉をあけて中にはいりました。 ばたん ゆっくりたちの入ってきた扉が勢いよく閉まり、ゆっくりたちが何をしても開きません。 ゆっくりたちの目の前に、胸の平らなメイド服の女の人が立っていました。 「おねえさん、ここはまりさたちのおうちだよ!!!」 「ゆっくりできないならでていってね!!!」 女の人はゆっくりたちを掴むと、さらに奥の部屋へと進んでいきました 「「いたいよ!!やめてよ!!ゆっくり放してね!!!」」 女の人は部屋の中にゆっくりを投げ入れると、外から鍵を閉めました。 「いたいよ!!ゆっくりやめてね!!」 「まりさ、ここはゆっくりできそうだよ!!」 部屋にはふかふかなベッドを始め、高級そうな調度品が並んでいました。 二匹はベッドに飛び乗り、ポンポン飛び跳ねます。 「ゆっくりできるね♪おねえさんはゆっくりおいしいものをもってきてね♪」 「ここがまりさたちの新しいおうちだよ♪ゆっくりしていってね♪」 「うっう~♪」 _,,....,,_ _人人人人人人人人人人人人人人人_-''" `> !!!!!!!!!!!!! <ヽ  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ :__ _____ ______ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、:_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7´ .. .、ン、: rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/≧- -─==', i :r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! Σiヾ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i | :!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' i (◯), 、(◯) | .|、i .|| :`! !/レi' (◯), 、(◯)Σ'i !て ,rェェェ、 ". 「 !ノ i | :,' ノ !'" ,rェェェ、 "' i .レ',.く |,r-r-| . L」 ノ| | : ( ,ハ |,r-r-| 人! :||ヽ、 `ニニ´ . ,イ| ||イ| / :,.ヘ,)、 )>,、_`ニニ´_,.イΣハ ル` ー--─ ´ルレ レ´: このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/547.html
ゆっくりチルノの一日 紅魔館の前に広がる巨大な湖。 正確な大きさすら分からぬその湖畔には妖精からゆっくりまで、様々な生物が生息している。 それは生態系ピラミッドの下層に位置するゆっくりにとっては天敵も多いという事実を示しているが、 それでもやはり豊富な水や食料と言うのは捨て難い魅力らしく、ゆっくり達は日々危険にさらされながらも ゆっくりとした生活を送っていた。 そんなゆっくり達のうちの一匹、水色の髪に薄い色の羽、 氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝も狭い巣穴の中で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 近くには誰もいないのだが、そんなことは気にせずに伸びをする。 「ん~~~っ!」 さて、さっそく朝食を取ってこよう そう思ったゆっくりチルノは草むらに穴を掘っただけの小さい巣穴から元気よく飛び出す。 実は昨晩のうちに明日の朝食にしようと思って巣穴に木の実をいくらか蓄えていたのだが、 そんなことはもう忘れてしまったらしい。 まぁしょうがないよね!⑨だもの! 夏の暑い日差しもこんな朝早くは厳しさを感じさせない。 だが晴れ渡った青空はその日も暑い一日となることを告げていた。 そんな日差しの射す湖畔をぴょんぴょんととび跳ねるゆっくりチルノ。 しかし空腹に悩まされているその体はあまり元気がない。 「う~~………あたいってば腹ぺこね……」 誰にともなく呟きながら餌を探すゆっくりチルノ。 そもそも燃費の悪いゆっくりにおいて昨晩から何も食べていないのだから元気がないのは当然であった。 しかしどれだけ探しても餌となりそうな虫も花もなかなか見つからず、段々とその足取りは重くなっていく。 実際は探し方が悪いだけでそこら中に食べられる物はあったのだが、 ゆっくりの中でも極めつけの餡子脳、ゆっ⑨りブレインではそんなことは分かるはずもなかった。 あたいってばここで死ぬのかしら、とゆっくりチルノ空腹で朦朧とした意識で考え始めていたその時、 急に足場を踏み外して湖の近くの池とう(小さい池みたいなもの)に突っ込んでしまった。 「1+1=11!!?」 意味不明な⑨ソウルを叫んでぷかぷかと池とうに浮かぶゆっくりチルノ。 早く上がらなきゃ、と僅かに残った意識が警鐘を鳴らすが最早そこから脱出する力は残されていなかった。 頭の中に走馬灯が流れ始める。 記憶力が無いので1秒で終わった。 「ゆっくりした結果が⑨だよ……!」 ⑨なこととゆっくりしていたことはあまり関係ないのだが、 それはともかくそんなつぶやきとともにゆっくりチルノの意識は闇に沈んだ。 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆ~ゆ~♪ゆ~ゆゆ~♪」 何やら音痴な歌声が聞こえてきてゆっくりチルノは意識を取り戻した。 体は相変わらず池とうに突っ込んだままだが、先ほどと違って空腹は満たされ、体は元気に充ち溢れている。 「んっぷはっ!あたいってばゆっくりね!」 何で元気になったのかはよく分からないが、とにかく元気になって復活したのだ。 あたいってばひょっとして最強に運が良いのかもしれない。 と幸せ脳回路で考えたゆっくりチルノ元気いっぱいな叫び声とともに池とうから抜け出した。 実際は運が良いとか何か特別なことがあったとかいうわけではなく、 ただ単にゆっくりチルノの体が氷でできており、池とうにはまったことで体が勝手に水分を吸収して 回復しただけなのだが、そんな理屈は当の本人は知る由もなかった。 だって⑨だもの。 因みにゆっくりチルノの氷は微妙に糖分を含んでおり、溶かすと砂糖水になっておいしいらしい。 ここでなんで氷のくせに常温で溶けないんだとか、そもそも氷が動くわけないだろとか言う突っ込みは、 饅頭が生きている世界においては野暮である。 さて、池とうから上がったゆっくりチルノは音痴な歌声の方に向かって跳ねていく。 「あたいってばゆっくりね!」 向かった先には予想通りゆっくりがいた。 それも一匹ではなくゆっくりれいむの家族である。 ゆっくりチルノよりも二回りは大きな母れいむ一匹に4匹の小さい赤ちゃんで構成されたその家族は、 歌を歌いながらお散歩を楽しんでいる最中のようだ。 「「ゆ?ゆっくりしていってね!」」 ゆっくりチルノに気付いた一家がお決まりの挨拶をする。ゆっくりチルノもそれに応えて 「ゆっくりしていってね!れいむってばゆっくりね!」 と返す。 「ゆ?おねえさんゆっくりできるちと?」 赤ちゃんれいむの問いかけに 「あたいってばゆっくりね!一緒にゆっくりしようね!」 とゆっくりチルノが楽しそうに返す。 「「一緒にゆっくりしようね!」」 あっという間に仲良くなった一家とゆっくりチルノは一緒に遊び始めた。 「ゆー。それにしても暑いよ!ゆっくりできないよ!」 しばらく遊んだあと、体中から汗を流しながら母れいむがいった。 太陽は既に天頂近くまで上っており、夏の暑い日差しがぎらぎらと降り注ぐ。 先ほどまではキャッキャッと楽しそうに遊んでいた子れいむ達も今は暑さに疲れて ぺたんと地面にへたり込んでいた。 「あたいってば暑くてもゆっくりね!」 そんな中、氷でできたゆっくりチルノだけが元気にしていた。 「ゆ?おねえちゃんつべたい?」 ふと一匹の子れいむがゆっくりチルノから発せられる冷気に気づき、側に近づいて行く。 「ゆー!おねえちゃん涼しくて気持ちいいよ!ゆっくりできるよ!」 「ゆ?ほんと?」 「れいむも涼しくなりたい!」 「ゆっくりさせてね!」 一匹の子れいむの言葉を皮切りにして次々と他の子れいむたちもゆっくりチルノに近づいて行った。 「ゆ!ほんとだ!とっても涼しいよ!ゆっくりできるね!」 「おねえちゃんすごいよ!」 「ゆっくりさせてね!」 そう言いながら4匹の子れいむはゆっくりチルノを取り囲んでその冷気にあたり、ゆっくりし始める。 「あたいってばとってもゆっくりねっ!」 ゆっくりチルノもわけはわかってないがとにかく子れいむ達が自分を頼ってくれるのが嬉しいようだ。 一方母れいむは 「おかあさんも入れてね!おかあさんもゆっくりさせてねっ!」 とその周りをぴょんぴょん飛び跳ねている。 自分も冷気にあたって涼みたいようだ。 しかしすでに4匹の子れいむで囲まれたゆっくりチルノの周りに巨大な母れいむが入る余裕はなく、 何とか押し入ろうと子れいむ達をぐいぐい押し始めた。 「ゆゆっ!どいてね!おかあさんも入れさせてね!」 しかしそんな母の態度に子れいむたちから非難の声が上がる。 「ゆゆっ!おかあさん押さないでね!」 「そんなにされたらゆっくりできないよ!」 「おかあさんはあっちでゆっくりしててね!」 「ここにおかあさんのはいる場所はないよ!ゆっくりりかいしてね!」 「どうしてそんなこというのぉぉぉ!!?」 一家が危うく親子げんかに発展しかけた時、ひらひらと何処からか蝶が飛んできた。 「ゆ!ちょうちょさんだ!ゆっくりしていってね!」 さっきまで押し入ろうとしていたのも忘れて蝶を食べよう追いかける母れいむ。 「ゆっ!ゆっ!ゆっくりして言ってね!早く食べられてね!」 何とか飛び跳ねて捕まえようとするもうまくかわせれてなかなか捕まえることができない。 そんな母の様子を、子れいむ達はゆっくりチルノの近くで涼みながら見ていた。 「ちべたいねー」 「きもちいねー」 「あたい!」 と、母親に追い立てられた蝶がふらふらとゆっくりチルノの方に飛んでいき、その顔の中心に止まった。 蝶の方も暑かったのかもしれない。 しかし突然の事に驚いたチルノは対応できず 「ゆっゆっゆ……ゆっくし!」 とくしゃみをしてしまったのだ。 本人は自覚していないがくしゃみはゆっくりチルノ最強の武器である。 体の奥の冷たい冷気と水滴を同時に飛ばすことによって向いている方向の物を一瞬にして凍らせてしまう 破壊力を持つのだ。 その冷気はゆっくりレティやゆっくりもこーでも無ければ耐えることはできないだろう。 上手く活用すればあっという間にゆっくりチルノはゆっくりピラミッドの上位まで 上り詰める事が出来るかも知れない。 最も意図してくしゃみしたりなんて出来ないので意味ないんだけど。 さて、そんなわけでその行動は本人の意思にかかわらず相応の結果をもたらす。 すなわち、その時ゆっくりチルノの正面にいた子れいむの凍結という結果を。 「ゆっ!」 短い悲鳴を上げて驚愕の表情をして凍結した子れいむを見てその場にいた他のゆっくりたちの表情も凍りつく。 茫然としたゆっくり達が凍った子れいむを見つめる凍った時間の中で、 くしゃみに驚いた蝶だけが時間が動いているようにひらひらと飛んで行った。 数秒後、我にかえった母れいむが激昂してゆっくりチルノに掴みかかる。 「れっ、れいむの赤ちゃんになにするのおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!??」 その叫び声を受けて他のゆっくり達の時間も動き出す。 「ゆっ、こんなことするおねえちゃんとはゆっくりできないよ!」 「ゆっくりどっかにいってね!」 「ゆっくりしね!」 今まで涼ませてもらっていたことも忘れてゆっくりチルノを罵倒しながら母れいむの陰に逃げ込む子れいむ達。 一方激昂した母れいむはゆっくりチルノを責め続ける。 「赤ちゃんを元に戻してね!早く元に戻してね!今すぐ元に戻してね!直ちに元に戻してね! マッハで元に戻してね!元に戻せたら許してあげてもいいよ!」 「ゆ、ゆー……」 一方責められているゆっくりチルノ。 さすがに自分が悪いことは分かっているのか申し訳なさそうにしていて何も言い返さない。 だが、凍ってしまった子れいむをすぐに戻す方法など思いつかなかった。 「黙ってないで何か言ってね!早く溶かしてあげないと二度とゆっくりできなくなっちゃうよ! それでもいいの!?」 「ゆ……ゆ!?」 ーその時、ゆっくりチルノに電流走る―! 溶かす!そうだ、溶かせばいいのだ! ゆっくりチルノはそのゆっ⑨りブレインにも関わらず、水に沈んだゆっくり達がどうなるか知っていた。 そう、水に「溶ける」のだ。 ちょうど近くには大きな湖がある。そこに入ればすぐにでも「溶ける」だろう。 色々と間違っているがとにかくゆっくりチルノにとってこれは名案に思えた。 この子れいむを元に戻すことが出来ればまた一家と仲良くゆっくりできるに違いない。 あたいってば天才ね! さて、そうとなれば善は急げ。ゆっくりチルノは母れいむに言い放った。 「分かったよ!あたいがこの子を「溶かし」て元に戻して来るよ!あたいに任せてゆっくり待っててね!」 そう言うと凍った子れいむを口にくわえ、一目散に湖に向かって走って行った。 湖畔に辿り着いたゆっくりチルノは、さっそく湖に凍った子れいむを浮かばせた。 ここで勢いよく落として氷を砕いてしまうような真似はしない。 同じ過ちを犯さないなんてあたいってば天才ね! ……実際このゆっくりチルノにそんな経験はないのだが、多分平行世界の記憶でも流れ込んできたのだろう。 とにかく、これで子れいむは氷が溶けて元に戻るに違いない。 戻った時にはきもちよく「すっきりー!」という声を聞かせてくれることだろう。 そう、「すっきりー!」という声が聞ければいいのだ。 ゆっくりチルノはゆっ⑨りブレインにそう刻み込むと、凍った子れいむがその声を聞かせてくれるのを 今か今かと待ちわびた。 落とされた凍結子れいむはぷかぷかと浮かんだあと、はたしてゆっくりチルノの思惑通り融解しだす。 その様子を見て得意満面のゆっくりチルノ。 「やっぱりあたいってばゆっくりね!」 表面の氷が溶け、やがて子れいむ本体にも水温が伝わりその体が徐々に熱を取り戻し始める。 「…ゅ…さむいよ……ゆ…?」 ついに子れいむが意識を取り戻した。 無事子れいむが生き帰ったことに全身で喜びを表すゆっくりチルノ。 すぐに元気になって「すっきりー!」という声を聞かせてくれるに違いない。 しかし聞こえてきたのは予想と真逆の悲鳴だった。 「ゆ……ゆ!?い、い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!み゛ず!み゛ずがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 急に寒くなって意識を失い、意識を取り戻したらそこは地獄だった。 子れいむの経験を端的に表すとこうなる。 本能的に水の危険性を知っている子れいむは、何とか岸に上がろうともがくがもがけばもがくほどその体は 岸から離れていく。 「ゆ?れいむってば何してるの?遠くに行かないで早く戻ってきてね!」 予想と違った状況にゆっくりチルノは慌て始める。 どうしてだろう、子れいむを「溶かせ」ばいいはずなのに。 「お゛ね゛え゛ち゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛!!だずげでえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」 ゆっくりチルノの姿を認めた子れいむは必死に助けを求め始めた。 しかしどんどん離れていく子れいむはもはやゆっくりチルノが届く範囲とはかけ離れた位置にいた。 「なんでえええええええ!?!?どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおお!?!?」 幸運なことにゆっくりチルノは知っていた。 ゆっくりは水に「溶ける」ということを。 そして不幸なことにゆっくりチルノは知らなかった。 ………自分は水に入っても溶けないという事を。 「ゆ、ゆー。」 母れいむに責め立てらてた時のような困惑の声をあげるゆっくりチルノ。 助けにいこうとすれば自分が溶けてしまう。 何がいけなかったのだろう、自分は母れいむが言ったとおり子れいむを「溶かし」ただけなのに。 「ゆぅー!早くこっちに来てね!あたいが引き上げるよ!だから早くこっちに来てね!」 「ぞんな゛あああああああああああ!!!!だずげでよおおおおおおおおおお!!!」 ゆっくりチルノにできるのは応援の言葉を贈るだけだった。 やがて水を吸った子れいむの皮がぶよぶよと伸びはじめ、体内から餡子が漏れ始める。 その事に気づいた子れいむが涙と絶望と恐怖と後悔にまみれた悲鳴を上げた。 「いやだああああああああああああああああああああ!!!じにだくない!じにだくないよおおおおおおお!!! も゛っどゆっぐりじだいよおおおおおおおお!!まだゆっぐりじだいごとだぐざんあ゛っだのにいいいいいいい!! ぎょうはがぞぐみんなでどっでもゆっぐりずるはずだっだのにいいいいいいいい!!! まりざとあじだあぞぶやぐぞぐもじでるよおお!がまんじでどっでおいだりんごまだだべでないよおおおお!! ほがのおいじいものももっどもっどだべだいよおおおおお!!いつかどおぐまでおざんぽじだがっだよおお!! おうだももっどうまぐなりだがっだよおおおお!!ぶゆのゆぎもみだがっだよおおおおおお!! ぞれにいづがおがあざんになっでおがあざんとれいむどこどもだぢでゆっぐりしたがっだよおおおおおお!! それなのにどおじでれ゛いむ゛がごんなめ゛に゛あう゛どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!? なにもわるいごどじでないのでぃいいいいいい!!おがじいよおおおおおおおおおおおお!! ゆめならざめでええええええええええ!!どうじでざめないのおおおおおおおおおおおお!?!? がみざま!もうゆるじで!ゆっぐりじでないでれいむをだずげでよおおおおおおおお!!! おがーざん!おねーぢゃん!まりざ!だずげでええええええええええええええええええええ!! どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおお!?!?もうやだおうぢがえるううううううううううう!! ゆっぐりじだいいいいいいいいいいいいい!ゆっぐりざぜでええええええええええ!!! ごんなどごろでじにだぐないのにいいいいいぃぃ…ぃ……あ、あんごが……あ………ぁ…………」 胸の内の全てを吐露するようなうざくてクソ長い断末魔の後子れいむの声は聞こえなくなっていった。 やがで皮も餡子も全て水に溶け、残されたリボンだけが子れいむの生きた証であるかのように水面に ぷかぷか浮かんでいた。 「ゆっ……うっうっ……」 その一部始終を見届けていたゆっくりチルノは耐えられない悲しみに涙を流し始める。 涙なのか氷が溶けてるだけなのかハタから見ると良く分からないが本人は泣いているつもりである。 「うっうっ……うあああああああああああああああああああああああ!!!」 耐えきれずついに大声をあげてゆっくりチルノは泣き始める。 どうして、どうして。そう聞きたいのはゆっくりチルノの方だった。 自分は子れいむを助けるために湖に落としたのに。 何で子れいむは死んでしまったのだろう。 母れいむの言うとおり「溶か」そうとしただけなのに。 わからない。わからない。 ただ悲しかった。さっきまで一緒に遊んでいた子れいむが死んでしまった事が、ただ悲しかった。 「うえええええええええええええええええええええええええんんん!!!!!」 あたりにゆっくりチルノの悲壮な鳴き声が響き渡った。 そしてひとしきり泣いた後 ゆっくりチルノは泣いていた理由を忘れた。 精神の防衛本能なのかとにかくなぜ自分が泣いていたのかすっぱり忘れてしまった。 さすが⑨!俺達に出来ない事を(ry そしてその後に残ったのは思う存分泣いてすっきりしたという感覚のみ。 「すっきりー!」 思わず声に出して叫ぶゆっくりチルノ。 そういえばよく覚えていないが確か自分は「すっきりー!」という声を聞きたがっていた気がする。 素晴らしい。目的は達成されたのだ。 何となくうれしい気分になるゆっくりチルノ。 「あたいってばゆっくりね!」 と思わず叫ぶ。そして湖に背を向け、戻ろうとしたその時 「やっと見つけたよ!」 という声が響いた。驚いてそちらを見ると先ほどのゆっくりれいむ一家だった。 いきなり子れいむをくわえて走り去ったゆっくりチルノをずっと探しまわっていたのだろう。 母はともかく子供たちはやや疲れた表情をしている。 「れいむの赤ちゃんはどこ!?早くれいむに返してね!」 母れいむがゆっくりチルノの側に娘がいないのを見て急いで詰め寄る。 しかし当のゆっくりチルノは困惑の表情を浮かべるばかり。 何故ならこの一家のことも既にゆっ⑨りブレインからは消え去っていたからだ。 「おねーさんだれ?なにいってるのかわからないよ?」 正直に自分の気持ちを言ったゆっくりチルノだったがその言葉を聞いた母れいむは驚愕の表情を浮かべたあと、 体(顔?)中を怒りで真っ赤にしてゆっくりチルノに詰め寄った。 「な゛っ……ふざけるのもいい加減にしてね!今すぐ赤ちゃんを返してね!じゃないと本当に許さないよ!」 そう言ってゆっくりチルノに軽く体当たりをする。 「ゆっ!?なに!?」 突然ことに後ろに転げるゆっくりチルノ。それを視線で追った母れいむはその先に信じられないものを見た。 湖に浮かぶ子れいむのリボンである。 「あ、あ、あ、あ……」 信じられない、といった表情で母れいむが体を震わせる。そして次の瞬間感情が爆発した。 「れいむの赤ちゃんに何したのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 ようやく体勢を立て直したゆっくりチルノにゆっくりとは思えぬ勢いで体当たりする母れいむ。 しかも今度は手加減抜きの全力である。 「れいむの赤ちゃんをどうしたの!?今すぐ答えてね!!赤ちゃんはどこ!?」 涙を流しながら激怒の表情でゆっくりチルノを問い詰める。 それを見て他の子れいむ達も状況を察したのか、ゆっくりチルノに攻撃を始めた。 「れーみゅをかえせええええええええええ!!」」 「よくもおねーちゃんを殺したなああああああああああ!!」 「ゆっくりしねえええええええええええええ!!!」 一家の総攻撃が始まる。 氷でできたゆっくりチルノは比較的硬いのでダメージは少ないが、それでも袋叩きはたまったものではない。 まるで抵抗できずに 「あたいは何も知らないよ!本当だよ!信じてよ!」 ただ必死に弁解をするだけだ。 「れいむの赤ちゃんを返せえええええええ!一緒にゆっくりしてた、これからもゆっくりするはずだった 赤ちゃんを返せええええええええ!!」 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」」 ひたすら体当たりを続けるゆっくり一家。並のゆっくりならとっくに餡ペーストになっているだろう。 「れいむってばゆっくりしてないよ!今すぐ辞めてよ!」 ゆっくりチルノは責められる心当たりがないものの必死にやめるよう懇願する。 やがてただ攻撃してもあまり効果が無い事に気づいたゆっくり一家は新たな行動に出た。 「「「ゆっくり落ちてね!」」」 ゆっくりチルノを湖に突き落したのである。 「ゆっ!?やべで!だずげてよ!」 先ほどの子れいむの凄絶な死にざまを覚えているわけではないが、それでも水はとても危険なものだと 頭に刻まれている(本当は何ともないのだが)ゆっくりチルノは必死にもがく。 しかし子れいむの時と同じようにもがけばもがくほど体は岸から離れていってしまう。 「あたいってば水だめなのおおおお!いやああああああああ!!!助けてえええええ」 必死に助けを請うゆっくりチルノ。 それに対してゆっくり一家は罵声を浴びせる。 「そうやってたすけをもとめてたれーみゅを殺したんだね!」 「おねーちゃんと同じくるしみを味わってしね!」 「おねーちゃんの仇、ゆっくりしね!」 「死ぬまでここで見ててあげるよ!感謝してね!だから苦しみながらゆっくり死んでね!」 「⑨~~~~~~!?!?!?」 ついにゆっくりチルノはパニックに陥る。 本当はゆっくりチルノは羽を使って飛ぶことができるため、簡単に水から脱出する事が出来るのだが、 パニックに陥った彼女はそれに気づくことができなかった。 例え冷静であっても自分が飛べる事を思い出せたかあやしいが。 「「ゆっくりしね!ゆっくりしね!ゆっくりしね!!」」 もはや一家は完全にゆっくりしねコールだ。 どうやらゆっくりチルノが溺れ死ぬまでそこで鑑賞し続けるつもりらしい。 だが溺れることもなく、また脱出する方法も思いつけないゆっくりチルノはいつまで待っても死ぬことはない。 このままではいつまでもコールを続けることになっただろう。 そしてその事に気付けなかったのが、ゆっくり一家の命取りとなった。 ゆっくりチルノを湖に落としたらさっさと立ち去っていればよかったのに、大騒ぎを続けたせいで、上空を 飛んでいた天敵に自分たちの存在を気づかせてしまったのだ。 「うー?」 気分よくお空を飛んでいたれみりゃは下の湖面が騒がしい事に気づいた。 自分のご機嫌なお散歩を邪魔するなんて許せない。食べちゃうぞ。 そう思って下降しながら湖面に近づいていくれみりゃ。 そこによく見るゆっくりれいむの一家とあまり見かけない青いゆっくりを見つける。 何やら騒いでいるようだがれみりゃにとってはどうでもいい。 それよりお腹がへってきた。やっぱりみんな食べちゃおう。 そう思って一気に狩りの態勢に移るれみりゃ。 ゆっくり一家が気付いた時には、すでに手遅れだった。 「れみりゃだぁぁぁぁーーーー!!」 一匹の子れいむの叫びで一家が慌てて空を見上げた時、もうすぐそばまでれみりゃが近づいていた。 逃げる間もなく、二匹の子れいむがれみりゃの両手に捕われる。 「い、いやあああああああああああああ!!はなしてえええええええええええ!!」 「れーむ食べられたくないよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 悲鳴を上げる子れいむ達。 残った一匹の子れいむは訳もわからず一目散に逃げ出して行った。 それに対して一瞬ためらいを見せたものの果敢にれみりゃに立ち向かう母れいむ。 もう一匹たりとも自分の赤ちゃんを死なせたりするものか。 「れーむの赤ちゃんをはなせええええええええええええええええ!!!」 その瞳には強い決意が宿っていた。 だがれみりゃにはそんな母れいむの気持ちは分からない。 両手の小さいれいむを見て、自分に向かってくる大きいれいむを見て、それから考える。 ―両手が塞がっていては大きいれいむが食べられない― 大きいれいむを捕まえて食べるためには両手を空ける必要がある。 ではどうするか。 そこでれみりゃが取った行動は小さいれいむをさっさと食べて両手を空けるという合理的な方法 ――ではなかった 「うー!小さいのはいらないからぽいするの!ぽい!」 そう言って両手の子れいむを湖に投げ込んだのだ。 「み、みずいやああああああああああああああ!!れーむ死んじゃうよおおおおおおおおおおお!!」 「おねーちゃんみたいになりたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 水に放り込まれた子れいむ達が絶叫を上げる。 それを見て母れいむは慌てて方向転換して子れいむ達に向かって突進する。 「待っててね!今すぐ助けるからね!」 そして湖に飛び込もうとジャンプした瞬間れみりゃの手に捕われた。 「ゆ!?ゆっくりしないで離してね!赤ちゃんが死んじゃうよ!」 慌ててれみりゃの手の中でもがく母れいむ。 だがその訴えはれみりゃの耳を右から左に抜けていった。 れみりゃが考えるのは別のこと。 ―大きいれいむも片手で持てる― つまりそれはもう片方の手にもう一匹持つことができるということだ。 どうせなら両手に持たないともったいない。 そう考えたれみりゃはのこったゆっくりの物色を始める。 「うー♪一番おいしぞうなのをだべるどぉー♪」 結果、れみりゃが選んだのは残ったゆっくりの中では一番大きく珍しい、ゆっくりチルノだった ゆっくりチルノは既に自分が何で水の中にいるか忘れていた。 もがくのも疲れたので顔を水につけて水の中を見ながらぷかぷか浮いている。 「おさかなさんがいっぱい!あたいってばゆっくりね!」 もごもごと泡を出しつつ誰にも聞こえないつぶやきをもらす。 「!?」 と、急にその体が持ち上げられた。れみりゃである。 「う~♪あっかいぷでぃんとあっおいぷでぃん~♪」 楽しそうなその歌声の間違いに突っ込むものはこの場にはいなかった。 ただ両手にゆっくりを抱えて楽しそうに飛び上っていく。 「はなじでえええええええええええええ!!!あがぢゃんが!れーむのあがぢゃんが死んじゃうううううううう!!」 「あたいってばお空を飛んでるみたいね!」 対照的な声音を上げつつ、れみりゃに抱えられた二匹は空に上がっていった。 「おがあざああああああああああんん!!いがないでえええええええええええええええ!!」 「どおじでだずげでぐれないのおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」 絶望の声を上げる二匹の子れいむを残して。 飛び上がったれみりゃはさて、どっちから食べようかと二匹のゆっくりを眺めた。 かたや 「れーむの赤ちゃんが……なんで……どうじでごんなごどにいいぃぃ……」 悲しみに暮れて嗚咽を漏らすゆっくりれいむ。かたや 「たかい!たかい!あたいってば最高ね!」 自分の危機的状況を理解していないのか、楽しそうにしているゆっくりチルノ。 ちょっと悩んだ後、れみりゃはとりあえず大きい方から食べることにした。 「う~♪おっきいぷでぃんをだべちゃうど~♪」 「ごべんねえええええええ……守れながっだおがあざんをゆるじんぶぎゅっ!?」 自分の世界に入り込んでいた母れいむにいきなり走る激痛。 れみりゃが後頭部を齧り取っていた。 「いだいいだいやべでえええええええええ!!れーむまだあがぢゃんづぐるんだがらああああああああああ!! たべぢゃらめえええええええええええええええええ!!!」 「うっ♪うっ♪うぁうぁ~♪」 絶叫を上げる母れいむに楽しそうなれみりゃ。 ―こっちのぷでぃんはなかなかの甘さだ。もう片方のぷでぃんはどうだろう― そう思って今度はゆっくりチルノを食べることにするれみりゃ。 どうやらこのれみりゃは本物のプリンを食べた事が無いらしく、 食べ物の総称としてぷでぃんと言っているらしかった。 「う~♪あ~ん♪」 大口を開けてゆっくりチルノに噛み付く。 がぶっ その瞬間二つ分の悲鳴が上がった。 「い、いだいいいいいい!あだいってば食べられないいいいいぃぃぃぃ!」 「う゛あ゛ぁぁぁぁぁ!ざぐや゛ああああああああああぁぁぁぁ!!」 何度も述べているようにゆっくりチルノは氷である。 当然固い。そして冷たい。 そんなものに思いっきり噛み付けば……痛いに決まっている。 「ざぐや゛あああああああああああ!!ざぐや゛どごおおおおおおおおお!?!?」 噛み付いた歯から頭に響く冷たさと痛みにれみりゃは悲鳴を上げて見知らぬ人物の名を呼ぶ。 そして勢いのまま抱えていた二匹を放り出し、何処かに飛んで行ってしまった。 「い、いやああああああ!!!!いがないでええええええええええええ!!」 「あたいってばおぢぢゃうのおおおおおおおおお!!」 放り出された二匹はたまったものではない。 さっきまで離してと言っていたのに今度はそのれみりゃに助けを乞う。 が、その願いが聞き入れられることはなかった。 「もっどゆっぐりじだがっだよおおおおおおおおおおお!!!」 「アイシクルウォールイーーーーーズィィィィィィィ!!」 重力に任せて二匹はばらばらに落ちていった。 さて、ここで場面は変わってさきほどの襲撃から逃げ出した子れいむである。 パニックになって逃げ出してしまって家族と離れ離れになったが、今は何とか落ち着きを取り戻していた。 そしてその落ち着きを取り戻した餡子脳は先ほどの襲撃の一つの結論を導き出していた。 ―もう自分の家族はいない― れみりゃの恐ろしさは子れいむもよく知っている。 あの状況で他の家族が助かったとは思えない。 これからは、自分はひとりで生きていかねばならないのだ。 「ううっ、おかーしゃん……おねーちゃん………」 ついさっきまでみんなでゆっくりしていたのに、いきなり自分一人になってしまった。 その悲しみはいかほどのものであろうか。 「みんなともっとゆっくりしたかったよ……でも……これからはみんなの分までれーむがゆっくりするね……」 新たな決意を胸(顔?)に子れいむが顔をあげた時、上から懐かしい声が聞こえてきた。 「ゆううううううううううううううううううううっっっ!!!!」 「おかーしゃん!?」 その声に驚いて上を見上げる子れいむ。そこには空からものすごいスピードで 自分に向かってくる母の姿があった。 「ゆ!?おかーしゃん!てんごくから会いに来てくれたんだね!とってもうれしいよ!またいっしょに ゆっくりしようね!!」 喜びでぴょんぴょん飛び跳ねつつ母へと言葉を投げかける子れいむ。 そんな娘の姿に母れいむも気付き、思わず喜びのあまり落下と言う絶望的状況を忘れる。 「ゆ!れいむの赤ちゃん!生きててくれたんだね!とっても嬉しいよ! もうほかの赤ちゃんはいないけど一緒にゆっくりしようね!」 親子の感動の再会である。 二人の距離はどんどん近付いていく。 そして…… 「おかーしゃあああああああああんぶべっ!?!?」 「れえええええええええええむぎゃあっ!!!!!」 天文学的な確率で二人の距離が0になった瞬間、お互いの名を叫びつつ仲良く餡ペーストになった。 一方同じように投げ出されたゆっくりチルノ。 重力に引かれどんどん地面が近づいてくる。 「あたいってばゆっくりしてないいいぃぃぃぃぃ!!!」 ゆっ⑨りブレインでもこのままでは死んでしまうことは分かる。 ゆっくりチルノの頭にこれまでの楽しかった思い出が走馬灯となって流れ始めた。 その走馬灯は……今度は0.5秒で終わった。 楽しかった思い出も忘れてしまうゆっ⑨りブレインの悲劇である。 そしてそんな事とは関係なく死という現実が迫ってくる。 「あたいってば幻想郷最速ねぇぇぇぇぇぇっ!」 どこぞの天狗が聞いたら怒りそうな事を叫びつつ、ゆっくりチルノは恐怖で目を閉じる。 加速された体は地面に向かって一気に落下し激突――-―― しなかった。 「ゆ?」 疑問の声を上げてゆっくりチルノが恐る恐る目をあけると、何と自分の体が浮かんでいるのではないか。 そう、この危機的状況でゆっくりチルノの本能が彼女の羽を無意識に羽ばたかせるという行動をさせたのだ。 何という奇跡!生命の神秘! 次第にゆっくりチルノも自分が飛んでいることに気づいたのか、喜びの声を上げ始める。 「すごい!あたいってば飛べたのね!」 しばらくパタパタと低空飛行を楽しんだ後、着地するゆっくりチルノ。 ふぅ、と一息ついて空を眺める。 あれほど太陽が輝いていた空は、いつの間にか夕焼け色に染まっていた。 よく覚えていないけど今日はもう疲れた。 さっさとおうちに帰って休もう。 そう考えたゆっくりチルノはゆっくりとおうちに戻っていった。 おうちの場所を忘れて3時間ほどさまよった後、 ようやくゆっくりチルノは自分のおうちを見つけることができた。 途中で自分が何をしているのかも忘れたりしたため余計に時間がかかった。 「ふぅ、あたいってばゆっくりね!」 そう言って巣穴に潜り込むゆっくりチルノ。 しかしそこには………先客がいた。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪……ゆっ?だれ!?ここはまりさのおうちだよ!」 ゆっくりチルノが蓄えていた木の実を頬張っていた黒帽子のゆっくりが振り向き、自分のおうち宣言をする。 一瞬呆気に取られるゆっくりチルノだが、しかしさすがのゆっ⑨りブレインでもこれには黙っていない。 ここは頑張って自分が掘った巣穴なのだ。他人に渡すわけにはいかない。 「何言ってるの!ここってばあたいがつくったおうちよ!その木の実もあたいが集めたものだよ!」 「ふざけないでね!この木の実は最初からここにあったんだよ!ここはまりさが先に 見つけたからまりさのおうちだよ!」 傍若無人な事を言うゆっくりまりさ。 普通のゆっくりならここでさらに強く言い返すところだが、ゆっくりチルノの頭は既に混乱し始めていた。 ―そういえば勢いで言ってみたけど、自分がその木の実を集めた記憶はない。 このあたりは草が茂っていて場所が分かりにくいし、もしかしたら本当に巣穴の場所を間違えたのかも… そうだとするとここはこのまりさのいうとおり自分のおうちじゃないんじゃないんだろうか― うーん、と悩むゆっくりチルノにゆっくりまりさの言葉がとどめを刺した。 「ここはまりさのおうちだよ!でも今すぐ出ていくなら木の実を少し分けてあげてもいいよ!」 既に傾きかけていたゆっくりチルノにこの言葉は決定的だった。 ―自分がおうちを間違えてとても失礼なことをしたのに、食べ物を分けてくれるなんてなんて親切なんだろう― 「ごめんね!間違えちゃった!あたいってばゆっくりね!」 照れるように笑ってゆっくりチルノが言う。それを聞いてゆっくりまりさは 「分かったのならさっさと出て行ってね!もう来ないでね!」 そういっていくつかの固い、食べかけの木の実をゆっくりチルノの側に投げた。 「ごめんね!ありがとね!」 ゆっくりチルノは礼を述べると木の実を口に詰め込み、巣穴を抜け出していった。 後にはニヤリと笑うゆっくり魔理沙が残された。 「むーしゃむーしゃ、⑱ー!」 巣穴の側で木の実を食べてよく分からない叫びを発するゆっくりチルノ。 18は9の2倍なので2倍幸せと言う意味である。 こんなギャグを思いつくなんてあたいってば天才ね! と自己満足に浸りつつゆっくりチルノは木の実を食べ終えた。 色々あったとは言え何度も水没したことで既に必要な食事量はほとんど満たしていたので、 少ない木の実でもゆっくりチルノは満腹だった。 しかしそろそろ本当に急いでおうちを探さなくてはならない。 もうすでにまんまるのお月さんが浮かんでいる。 「あたいってばゆっくりしてらんないわ!」 慌てておうち探しを再開する。 が、いくら探しても自分のおうちはみつからなかった。 さきほどの巣穴が本当のおうちなのだから、当然である。 さらに一時間ほど涙目で巣を探し続けたがついに見つからず、 ついにゆっくりチルノは木陰にばったりと倒れ伏した。 「あたいってばゆっくりしすぎね……」 もう仕方が無い。きっと巣穴の場所を忘れてしまったのだろう。 今から巣を掘ったり探したりなんてできないし、今夜はこの木陰で眠ろう。 きっと明日になったら巣の場所も思い出すに違いない。 そう考えたゆっくりチルノは木の側で隠れるように横(縦?)になった。 しかし瞼を閉じ、いざ寝ようとすると頬にあたりがなにかかさかさするものがいる。 何かと思って目を凝らしてみると、それは蟻の行列だった。 「あたいってばラッキーね!」 目を輝かせながら目の前の蟻をパクンと食べるゆっくりチルノ。 何匹か食べたところで今度は蟻たちに息を吹きかけ始めた。 「ふーっふーっ」 本来、ゆっくりチルノが他の生物を凍結させるほどの冷気を出すにはくしゃみをするしかないが、 蟻ぐらいの小さい生き物相手であればただ息を吹きかけるだけでも凍結させることが可能なのである。 こうして蟻を冷凍保存しておき、明日の朝起きたら食べよう、と言うのがゆっくりチルノの考えだった。 20個ほど蟻の氷塊を作ったところでゆっくりチルノは眠ることにした。 そして、その氷塊を眺めながら、これなら明日の朝ご飯はごちそうね!と幸せな気分で眠りに就いた。 しかしそこはゆっくりチルノ、ちゃんと作戦に穴が開いている。 いくら凍らせたとはいえこの夏の熱帯夜、小さな氷塊などすぐ溶けてしまう。 ゆっくりチルノが熟睡した後、溶けた氷塊から蟻たちが抜け出していくのに、気づくものはいなかった。 そして翌朝。 水色の髪に薄い色の羽、氷精を模したゆっくりであるゆっくりチルノは今朝は 木陰で起床の一声を挙げた。 「おはよう!あたいってばゆっくりね!」 そして昨日作った朝食用の氷塊など当然のように忘れ、また朝食探しに飛び跳ねていく。 果たして今日はどのような一日になるのだろうか。 夏の青い空は、昨日と変わらぬ晴天の色を湖畔に住む生き物たちに伝えていた。 あとがき 今まで何度もSSを書きかけて途中で挫折したけど、初めて一つ書き上げる事が出来ました。 こういうの書く時は勢いって大事ですね。 しかしおかげで貴重な時間が6時間ぐらい潰れてしまった。 ゆっくり虐待してた結果がこれだよ! あれ?そういえばあんまり虐待はしてないような…… このSSに感想を付ける