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※虐め成分は少ないです。 ※超俺設定満載でお送りします。 ※ゆっくりが賢かったり強かったりします。 ※主人公のゆっくりの台詞を他と区別する為に、各“「」”の前に、 “@=ゆっくり・R=れいむ・A=ありす・⑨=ちるの”等の記号を付けています。 ※音を無理矢理文字表記しています。 読み難いかもしれません。 ※海より深く、山より高く、空より広い心でもってお読み下さい。 【ゆっくりぷれいすを探して… ~放浪者達~】 「ありがとうございます! おかげで無事収穫を迎えられそうです!」 「それは良かったですね。 美味しい野菜が出来るよう祈ってますよ」 依頼人は感謝の言葉を述べて帰っていった。 俺は報酬の金額を帳簿に記録し、大切に金庫にしまった。 ?「ゆっ! こんかいのしごともだいせいこうだったね!」 その言葉の主は人間ではない。 俺の相棒の“ゆっくり”だ。 「ああ、お前の働きのおかげで野良ゆっくりの群れを潰す事が出来た。 あの依頼人の畑はきっと大豊作になるな」 ?「とくせいの“ひりょう”をたっぷりとまいたしね!」 俺は、相棒に今回の仕事の首尾を聞く。 「途中で正体がばれたりしなかったか?」 ?「だいじょうぶ、この“かざり”のおかげでうまくまぎれこめたよ!」 「その飾り、奪っておいて正解だったな」 ?「ゆん! みんな、すっかり“わたし”を“れいむ”だとしんじきっていたよ!」 そう言い終わると、相棒はゆっくりと飾りを取り払う。 すると、相棒の言葉遣いも態度も雰囲気も、全てがガラッと変わった。 ?「でも、髪の毛がちょっと邪魔だったかしら?」 「まぁ、普段が“ハゲ饅頭”だからな」 ?「ちょっと! それは禁句だっていつも言ってるでしょ!!」 跳ねながら抗議する相棒、その姿は顔の付いた饅頭としか言い様が無い。 そう、俺の相棒はかなり変わったゆっくりなのだ。 ……………。 ………。 @「お兄さん、わたしを雇わない?」 そう言って、一匹のゆっくり…、 後の相棒が俺の店を訪ねて来た時、俺は夢でも見ているのかと思った。 「何だ…? ハゲ饅頭…!?」 @「ハゲ饅頭じゃないわ! ゆっくりよ! ゆっくり謝罪を要求するわ!!」 俺の目の前で飾りどころか髪の毛すらない饅頭が怒って跳ねている。 自称ゆっくりだが、饅頭との境目は顔だけと言っても良かった。 「あのな、俺は忙しいんだ。 自称ゆっくりに構っていられるほど暇じゃないんだよ」 @「知ってるわよ。 お兄さん、悪いゆっくりを退治しているんでしょ? そのお仕事を、わたしに手伝わせて欲しいんのよ」 「おいおい、ちょっと待てよ…」 突然の出来事に頭が混乱しているが、このゆっくりは俺の仕事に詳しい様だ。 こいつの言う通り、俺の仕事は害ゆっくりの駆除だ。 だが、こいつは害ゆっくりとは言え同属の駆除を手伝わせろと言っている。 餡子脳が残念なのかとも思ったが、先程からの受け答えはしっかりしている。 態度も堂々としたもので、尋常では無い雰囲気を纏っている。 「なぁ、お前自分の言っている事の意味が分かってるか?」 @「勿論よ! わたしは悪いゆっくりが許せないのよ!」 こいつは本気だ…! そう思わせる何かがあった。 「何か事情があるみたいだな? 詳しく話してみろ。 話次第だが、場合によって考えてやる」 @「ゆっくり聞いて、ゆっくり考えて、ゆっくり決めて!」 自称ゆっくりは、何故悪ゆっくりを憎むのかを話し出した。 @「お兄さん、わたしの姿を見てどう思う?」 「どう見てもハゲ饅頭だ、ゆっくりの髪を剃ったらこんな感じになるのかな?」 @「ゆぐぐ…! あんまりハゲ饅頭って言わないでね! 非常にデリカシーに欠ける言葉よ!」 「何でそんな姿になったんだ? 悪いゆっくりに毟られたのか?」 @「実はわたしは、産まれた時から髪も飾りさえも無かったんの…」 「ふーん?」 つまり、“奇形”ってやつか? 思わず口を突いて出そうになったが、さっき注意されたばかりなので何とか堪える。 @「お兄さんも知っていると思うけど、ゆっくりは飾りの無い仔を虐めるのよ。 わたしは髪さえ無いから、とても辛い生活を送っているのよ…」 「よく今まで、生きてこられたな?」 @「小さい頃は殆ど他の仔がいない場所にいたから、 虐められる事は少なくて、大事には至らなかったの」 「それで、今はどうしてるんだ? 誰にも見つからない様に常に隠れて生活しているのか?」 @「ううん。 いつまでも隠れ通す事なんて出来ないわ。 だから、わたしは自分から皆の前に出て行ったわ」 「普通に考えれば、そこで殺されて終わりなんだが?」 @「ええ、普通ならね…。 でも、わたしは普通じゃなかった…。 飾りも髪の毛も無いわたしには、生き残る為の力が備わっていたの」 そう言うと、こいつは口の中から何かを取り出した。 「何だそれ? れいむ種のリボンか?」 @「ええ、その通りよ。 これは、わたしを虐めていたれいむのリボン…」 「奪ったのか?」 @「わたしが過去に犯した忘れることの出来ない罪の証よ…。 ある日、隠れ住んでいた巣が見つかって、れいむが殴り込んで来たの。 揉み合いの争いになって、わたしは生き残る為に必死に戦ったわ。 気が付いた時には相手は冷たくなっていた…。 私は重い罪を犯したの…」 「……………」 @「どんなゆっくりにも家族はいるわ…。 例え襲われたにしても、わたしがれいむの命を奪ったのは事実…。 わたしはそのれいむの家族に謝りに行く事にした。 でも…」 そこまで言うと、こいつは悲しみを堪える様に涙ぐんだ目をぎゅっと閉じた。 @「でも、わたしは謝りに行けなかった! 怖かったのよ!!」 「……………」 @「わたしだって死にたくない! でも、罪は罪! 償わなくちゃいけない! だから、わたしは最期の夢を叶えてから、れいむの家族に会いに行こうと決めたの」 「それは…?」 @「一度でいいから、飾りを付けてみたかったの…。 争っている時に外れた飾りだから、ゆっくり出来ない臭い(所謂死臭)はしなかったわ。 でも、それを持って家族に会いに行けば、私の説明を信じてもらえる。 そのリボンを“巻いた”わたしは、確実に殺される筈だったわ…」 (髪の毛が無いので、“結べない”から“巻いた”のか…) そんな事を考えたが、空気が読めていない感じがするので言うのは止めた。 @「夜になっていたから、次の日の朝にれいむの家族の所に向かう事にしたの。 れいむのリボンを巻いたまま一晩を過ごしたわ…。 翌朝、目覚めたわたしは頭に妙な違和感を感じたけど、リボンの所為だと思ったわ。 でも、違ったの…」 「何が違ったんだ?」 @「いつもの様に他の仔の目を避けてれいむの家族に会いに行ったわ。 でも、その途中運悪く他の仔と出合ってしまったの。 わたしは咄嗟に逃げようとしたんだけど、向こうの反応がいつもと違ったの。 普通のゆっくりに会った時の様に、“ゆっくりしていってね!”と挨拶されたわ。 わたしは驚いたわ。 挨拶されるなんて今まで一度も無かった。 虐められる事無く、相手がそのまま立ち去ってしまったんですもの」 「………?」 @「理由は分からないけど、助かった事に感謝して、家族の巣に急いだわ。 わたしは死を覚悟して、巣の中に入っていった。 でも、私に掛けられた声は、やっぱり“ゆっくりしていってね!”だった。 わたしはゆっくり説明したわ、わたしがれいむを殺してしまったという事を…。 でも、返ってきた言葉は予想外のものだったの」 「どんな言葉だったんだ?」 @「“よるになってもおうちにかえってこなかったうえに、 やっとかえってきたとおもったら、じぶんはころされたなんていってるよ? なにかゆっくりできないものでもたべたの?”って…。 まるで、わたしがれいむであるかの様ににこやかに話しかけてくるの! 気味が悪くなったわたしは、つい逃げ出してしまったわ…。 走って、走って、もう足が痛くて動けなくなる位走ったわ…。 気が付いたら、わたしは池の近くにいたの。 そこで初めて真実に気が付いたわ…」 「………!」 @「水面に映っていたのは、飾りも髪の毛も無い醜い“ゆっくり”じゃなかった! 黒い髪に紅白のリボンを巻いた“れいむ”だったの!」 「な、何だって!?」 @「驚いて振向いても、誰もいない…。 それは紛れも無いわたし自身の姿だったの…」 「い、一体どういうことなんだ…?」 @「詳しい事は私にもまだ分からない…。 でも、その後色々試して分かった事があるの。 わたしは、ゆっくりの飾りを身に着けると、そのゆっくりに姿が変わる…! そして、その飾りの持ち主に成り済ます事も出来る…!」 「………!?」 そこまで話すと、こいつはゆっくりと一息吐いた。 俺も突拍子も無い話の連続に大分混乱していたので、大きく深呼吸をする。 「俄かには信じ難い話だな…。 何か証拠はあるのか?」 @「今から、お兄さんの目の前でれいむに変わって見せるわ。 それなら信じてもらえる?」 「そんなに直ぐに変われるのか?」 @「ええ、最初は時間が掛かったけど、今では簡単に変わる事が出来るわ」 「じゃあ、やって見せてくれ」 @「分かったわ」 そう言うと、こいつはリボンを舌で体の中心に固定した。 そして、まっすぐ前に伸ばして右にゆっくり動かし、体の左側に素早く移動させた。 その後、リボンを頭に乗せたかと思うと…! @「しゅいしゅいしゅいしゅいしゅい、しゃきーん!」 「うおおっ!!?」 こいつの体が次々と形を変えいく! 徐々に頭部から黒い髪の毛が生えてきて、地面にまで届くほど伸びた! 最後に小さな稲妻の様な光が走り、紅白の飾りが顔の横と頭の後ろに現れた! それはあっと言う間の出来事だった! 俺の目の前で、一瞬で“ゆっくり”は“れいむ”に変身したのだ! R「ゆっ! れいむはれいむだよ! ゆっくりしていってね!」 「そっ、そんな馬鹿な…っ!!?」 俺はというと、驚きの余り開いた口が塞がらない。 思わずこんな顔のまま表情が固まってしまう。 → (゚Д゚;) R「ゆっふん! れいむのあまりのびぼうにことばがでないみたいだね!?」 「は、話し方や性格…、態度まで変わるのか…!」 R「そうだよ! これがこのおりぼんさんのもちぬしのれいむなんだよ! ゆっくりりかいしてね! あまあまさんちょうだいね!」 どうやら、“れいむ”は余り褒められた奴ではなかったらしい…。 呆然としている俺の前で、“れいむ”はリボンを外した。 飾りは消え、髪の毛も縮んでいき、やがて元の“ゆっくり”の姿に戻った。 @「どう? これで信じてもらえたかしら?」 「あっ、ああ…。 全く理解は出来んが、信用せざるを得ないな…」 @「私はこの力で今まで生き延びてきた。 今まで寂しかった分を取り返す為に、色んな仔達と出合って話をしたわ。 でも、良い事ばかりじゃなかった…。 皆良い子ばかりじゃなかった! 自らのゆっくりを優先する余り、他のゆっくりを平気で侵害する奴がいる…! 許せない…! ゆっくり出来ないのは私だけで十分なのよ!!」 「お前、そこまで…!」 俺は、このゆっくりの話に完全に心を打たれていた! 姿こそ不気味で、常識では計り知れない奇妙な能力を持っているが、 その心はとても熱い思いを持っていた! 青臭いまでの正義感…、それはかつて俺がこの仕事を始めた時に持っていた…、 今ではすっかり失ってしまった思いと同じであった。 その消えた筈の思いが…、熱い炎が再び俺の中で燻り始めていた! 「お前の気持ちは良く分かった。 お前に俺の仕事の手伝いをさせてやる。 いや…、俺の相棒になってくれ!!」 @「お兄さん…!」 こうして俺達は、最高のパートナーになったのだ! ………。 ……………。 俺は相棒との出合いを思い出し、再び熱い思いが蘇るのを感じた…。 @「お兄さん、何ぼーっとしているの?」 「あっ、ああ…、ちょっと昔の事を思い出していたんだ…」 @「ふーん? まぁ、良いわ。 わたしはお腹が空いたから、ゆっくり食事にしない?」 「そうだな、折角報酬も入ったんだから、ちょっと贅沢に外食にするか」 @「あら、それは良いわね」 そう言うと、相棒は赤いカチューシャを取り出した。 @「だったら、わたしもおめかししないとね!」 鏡の前に立ち、舌でカチューシャを見せ付ける様に前に突き出し、素早く左側に伸ばす。 そこから、舌を右下に引いて体の中央で止める。 そして、カチューシャを頭に乗せた瞬間…! @「しゅわぃいいい…、ぴしゅう、ぴしーん!」 鏡に映った相棒の姿が左右反転したかと思うと、 相棒は金髪に赤いカチューシャを身に着けたゆっくりありすに変わっていた。 A「ごうかなでぃなーは、とかいはのありすにこそふさわしいのよ! おにいさん、ありすをみせまでえすこーとしなさい!」 「やれやれ…」 確かにハゲ饅頭の姿で出歩く訳にも行かないだろうが、 果たしておでんの屋台の料理に、“とかいは”は存在するのだろうか…? A「でねぇ~? ぶちょ~がせくはらするから、おくさんにうったえてやったのよ~! そひたらおくさんかんかんにおこって~、りこんだ、いしゃりょうだのおおげんか! つぎのひのぶちょうのかおったら、みてられなかったわ~!」 隣ではんぺんを齧りながら、俺は肩身の狭い思いをしていた。 相棒は止せば良いのに酒飲んで酔っ払ってやがる…。 始末の悪い事に絡み上戸で、隣のおっさん相手に滅茶苦茶言っている。 何でゆっくりのお前が、都会のOLみたいな事言ってんだよ! 「うっひゃっひゃっひゃっひゃwwwww! それは見てみたかったなぁ~www! でも、何となくぶちょ~のきもひも分かるぜぇ~www? こんな美人があひてじゃ~、つひ手も出るってもんらぁ~www」 A「ゆほほほほっ! おだてたってなんにもでなひわよ~!」 隣のおっさんも相当酔っているらしい…。 こいつは笑い上戸かよ…。 語尾の“www”が限りなくウザイ…! あんまりしつこいと芝刈るぞ! 酩酊の余り、ゆっくりありすが人間に見えている様だ…。 「うんうん、わかる、わかるよ~(泣)!」 その上、店のゆっくりちぇんまで同情して騒ぎ出した。 誰だ酒を飲ませた奴は!? 泣き上戸なのか知らんが、(泣)とか久しぶりだぜ! しかも、店の親父は止めもしない。 お前、それでもちぇんの飼い主か!? 店の名前は“ゆっくりしていってね!”でも、もうちっともゆっくり出来ねぇよ! A「おやじぃ~、もっとさけもってきなさぁ~ひ!」 「今夜は飲みあかすぞ~wwwwwwwww!」 気が付いた時には空いた酒瓶が山の様になっていた。 俺幾ら持って来たっけ…? 慌てて財布の中身を確認するのであった…。 A「ゆぃ~、ひっく! もうのめなひわぁ~」 「そりゃあ、あれだけ飲めば当然だ!」 完全に泥酔していて跳ねる事さえ儘ならない相棒。 仕方なく、抱きかかえる様にして自宅兼店舗に運ぶ。 A「おすなよ~!? ぜったひおすなよ~!!? むにゃむにゃ…」 「まったく、一体どんな夢見てるんだ…?」 ……………。 ………。 相棒は今回の仕事の夢を見ていた。 群のれいむを一匹誘拐し、その飾りで変身した相棒。 誰にもばれる事無く、群に紛れ込む事に成功した。 この群は最近長が交代したのだが、その新長がとんでもない奴だった。 今までの長は人間に関わらない様に注意し、接触を厳しく禁じていたのだが、 新長は若い頃から度々村に接近し、畑に侵入しては野菜を荒らす常習犯だった。 狡猾な事に、一度荒してから次に荒らすまでかなりの期間を開けていた為、 警戒が薄れた頃に再度畑を荒らされる事になる。 その上、目欲しい物を予め調べておき、他の物には手を出さずに直ぐに立ち去る為、 犯行の途中を目撃する事が難しかったのだ。 その腕前に憧れてかは分からないが、次第に群の若い世代を中心に人気を集めていき、 ついには新長の座を手にするにまで至った。 さて、新長の座に着いたは良いが、そんな素行の悪いゆっくりであった為、 今までの長の教えが気に入らなくて仕方が無かった。 本人(本ゆん?)の考えからすれば、人間は野菜をゆっくりに提供する為に存在する、 便利な奴隷位にしか思っていない。 いや、野菜は勝手に生えてくるものであり、人間だけがそれを独占している、 人間は悪い奴だから奪って当然だとでも思っているのかもしれない。 そんな訳で、群のゆっくり達にこんな事を言ったのだ。 「みんな、よくきいてね! ずるいにんげんたちがおやさいさんをひとりじめしているのはゆるせないよ! おやさいさんはまりさたちにたべてもらうためにはえてくるんだよ! だから、おやさいさんをたべてあげるために、にんげんたちのはたけにいって、 おやさいさんをとりかえしてこないといけないよ!」 「ゆゆっ!? まえのおさはそんなこといわなかったよ!?」 「まえのおさはこっそりにんげんたちとあってやくそくしていたんだよ! にんげんたちのはたけにだれもはいらないようにするかわりに、 ときどきおさだけがおやさいさんをわけてもらうっていうやくそくをね! まえからあやしいとおもっていたから、まりさはこっそりあとをつけたんだよ! そしたら、そんなことをはなしていたんだよ!」 「ゆっ! まえのおさはひどいやつだったんだね! じぶんだけおやさいさんをたべるなんてずるいよ!」 「だからまりさはときどきにんげんからおやさいをとりかえしてきたんだよ! みんなのおやさいさんをにんげんからまもったんだよ!」 「おさ、ありがとう! おさのくれたおやさいさん、とっておいしかったよ!」 「ここで、おさはあたらしいおきてをつくるよ! これからはじゆうににんげんたちのはたけにいっていいよ! あそこはもともとまりさたちのゆっくりぷれいすだったんだよ! それをかってににんげんさんたちがうばってしまったんだよ! まりさたちのおやさいさんをとりもどさないといけないよ!」 「で、でも! にんげんはこわいよ!?」 「だいじょうぶ! このまりさがじきじきにおしえるよ! まぬけなにんげんたちはとられたことにきがつかないよ!」 「さすがおさ! たよりにしてるよー!」 「ゆっくりおやさいさんをとりもどすよーっ!!」 「みんなのゆっくりのために、まりさたちはたたかわないといけないよー!!」 「ゆぉおおおおお! おーさっ、おーさっ、おーさっ、おーさっ!!」 その新しい掟が出来てすぐ、付近の村の畑で甚大な被害が発生した。 長の交代による影響で暫く畑への侵入は無かったので、 少し油断していたところを一気に攻め込まれたのだ。 今までは新長とその仲間という極少数による被害で済んでいたが、 今度は群全体という比べ物にならない数での侵害である。 畑にある物全てを根こそぎ奪われてしまい、 被害にあった畑は踏み均されて硬くなり、再び耕す事さえ困難になってしまう。 その上恐ろしい事に、新長の指導により的確な侵入が行われ、 大群であるにも拘らず未然に防ぐ事が出来なかった。 このままでは畑に止まらず、いつ家屋が被害を受けるか分からない。 もし、そうなれば村は全滅の危機に瀕してしまう…! そんな訳で、最近ゆっくり駆除屋として注目を浴びだした俺達に依頼が届いた。 依頼を受けた俺は、まず群の一匹を捕獲。 “友好的”な“話し合い”の結果、“平和的”に群の情報を聞き出す事に成功した。 その情報から、新長と対立するグループがある事が分かった。 そこで、俺はそのグループを利用する事にした。 相棒に、群から誘拐したゆっくり(れいむ種)に化けてもらい、 対立グループのリーダーであるれいむと接触してもらう。 「しんおさのなかまのれいむが、れいむにいったいなんのようなの?」 R「しーっ、こえがおおきいよ」 「こんなところによびだして…。 しんおさのめいれいなの?」 R「しんおさはかんけいないよ。 れいむのどくだんのこうどうだよ」 「だとしたら、ますますりかいできないわ。 いったいなにをたくらんでいるの?」 R「じつは…、れいむはれいむのなかまになりたいんだよ」 「………? りゆうをはなしてくれない?」 R「しんおさにはもうついていけなくなったんだよ! たにかにゆうのうかもしれないけど、よわいものをないがしろにしているよ! としおいたりびょうきのゆっくりをすこしもたすけないよ! ちいさなこどもたちは、まいにちつらそうにしているよ! このままだと、みんなゆっくりできなくなるよ!」 「たしかに、そうだね…。 いまのおさはわかくてげんきのあるゆっくりしかみていないよ…」 R「だかられいむは、れいむにあたらしいおさをやってほしんだよ! れいむのおかあさんもいもうとも、れいむにとってもかんしゃしているんだよ!」 「れいむ…」 俺の筋書き通りにリーダーを説得し、次の長として群を治める様に仕向ける。 下手に現長を消すと、指導者を失った群が暴走する恐れがあるからだ。 次に、相棒は現長と接触し、次の標的となる畑を誘導する。 その畑に予め罠を仕掛けておき、侵入したところで一網打尽にするのだ。 今までは何処がいつ狙われるのか全く予測できなかったので対応できなかったが、 次にどの畑が狙われるのかが分かっているならば問題無い。 「れいむ、はなしがあるっていってたけど、いったいなに?」 R「おさ、まずはこのおやさいさんをたべてほしいよ!」 「おいしそうなおやさいさんだね! む~しゃ、む~しゃ、しあわせー!」 R「ねっ? とってもおいしいでしょ?」 「ほんとうだね! どこでてにいれたの?」 R「にんげんのむらのあるはたけからとってきたんだよ! れいむひとりだったからすこししかもってかえれなかったけど、 まだまだたくさんあったから、むれのみんなでとりにいこうよ!」 「それはいいかんがえだね! きめたよ! つぎのもくひょうはそのはたけにけっていだよ!」 こうして、群の次の標的の誘導に成功した。 後は罠とも知らずにやって来るのを待つばかりである。 「奴等、やってきますかね?」 @「大丈夫よ! おじさんの美味しい野菜に釣られて、確実にやって来るわ!」 「ああ! この野菜、何ていう名前か知らんが“結構イケルな”! スタミナがついて、疲労回復に効きそうだ!」 @「唯一つ残念なのが、お兄さんの部屋のゴミ箱の中の紙屑の臭いがする事ね」 「失礼な事言うな! あれは“青臭い臭い”じゃない、“迸る若さの香り”だ!」 @「どちらにせよ、臭いのよ!」 「あのー…? こう言っては何ですが、ゆっくりに食べられるより、 あなた方に食べられている量の方が多い気がするんですが…」 俺達は、モリモリ食べてドンドン元気になった! この野菜は食べると何だか気分までハイになってくるみたいだ!! テンション上がってきたぜぇええええ!!! @「来たわ! 長のまりさが先頭よ!」 「ヒャッハー! 戦闘準備だぁ!!」 罠とも知らずゆっくり達がやって来た。 なるほど、今まで誰にも侵入する姿を見られなかった訳だ。 少数単位で集まって、物陰に潜みながら、周囲の様子を伺っている。 地面を跳ねずに姿勢を低くしてゆっくりと這っており、 遮蔽物が無く目立つ所では、素早く移動して次の陰に隠れる。 しかも体に草や葉っぱを貼り付けて茂みに潜む為、日中でも気付き難いだろう。 何より、皆が一言も声を上げず、目で合図を送っている。 @「思ったよりやるわね…」 「長の奴、技術も凄いが、指導力もかなりのものだな」 @「でもまぁ、もう少し利口ならよかったんだけど」 「奴の驚く顔が楽しみだぜ」 群が畑に辿り着いた。 まりさは一言も話さず、目と口と舌…、体を使って、群に指示を出す。 群のゆっくり達は指示を受けて頷くと、それぞれの持ち場に移った。 一班は出入り口の確保、一班は周囲の警戒、一班は野菜の回収…、 全てのゆっくりが予め決められた仕事に従事する。 こんなに警戒されていては、まともに近づく事も出来ない。 落とし穴等も考えたが、地面を棒で突く等して発見された事もあったそうだ。 どうやら、周囲の状況に応じて、逐一まりさが指示をする事で対応しているらしい。 ゆっくりとは思えない大した統制だが、大きな弱点が存在していた。 「こういう場合、司令塔が潰れると脆いんだよな…」 R「おさ、ちょっとこっちにきて!」 「ゆっ! れいむ、しずかにしないとだめだよ! にんげんにきづかれちゃうよ!?」 R「ゆっくりごめんなさい! でも、これをみてほしいんだよ!」 「ゆゆっ、これは!? おやさいさんがいっぱいのってるよ」 R「ねっ? すごいでしょ! これをもってかえればとってもゆっくりできるよ!」 「ゆ~ん…。 でも、おおきくてうごかせそうにないよ…」 R「みんなでひっぱればいいんだよ! みんなでちからをあわせればうごかすことができるよ!」 「ゆゆっ! それはめいあんだよ! れいむはすごくあたまがいいんだね!」 R「ゆんっ! とうぜんだよ! あんこがちがうんだよ、あんこが!」 (相棒の奴、ちょっと調子に乗ってるな…?) 「みんなー! ちからをあわせてひっぱるよー!」 「ゆーえす! ゆーえす!」 野菜を満載した台車を引っ張る為に、見張り役まで集めるまりさ。 目の前のお宝に意識が集中しすぎて、 気が付けば大声を張り上げて指示を飛ばしている。 さっきまでの慎重さなど欠片も無く、咄嗟の判断など不可能だろう。 「みんなー、ちょっとさかになってるよー! ちからをこめておさえてねー!!」 R「きをつけないと、おやさいさんがつぶれちゃうよー!」 畑から何とか台車を引きずり出し、少し坂になった道に出る。 坂道なので放っておいても自然に台車は下へと動いていくが、 それでは台車が崖に当たってしまうので、 全員で下側から押さえながらゆっくりと坂道を降っていく。 かなり重たい台車なので、全員が必死になって押さえている。 俺達は全てのゆっくりに逃げ場が無くなるこの瞬間を待っていた。 「今だ、相棒っ!」 「ゆっ! みつかった!?」 R「りょうかいだよ、おにいさん!」 「れいむ!? なにいってるの!?」 相棒が台車の車輪の留め金を外す。 今まで台車を押さえていたと言うよりは、台車に押されていたゆっくり達。 重力に従い、徐々に加速していく台車。 速度の上昇に伴い、次第に底部が削られていくゆっくり達。 遂に耐え切れなくなり、長と後何匹かが押さえるのを止めて離れてしまう。 すると…。 “ギシッ、ギッ、ガタンッ、ガガガガガガッ!!!” 支えを失った台車は、ゆっくりの群を轢き潰しながら崖へと進んでゆく。 「ゆわぁあああ!? ゆっくりこっちにこな…、ゆげっ!」 「ど、どいてね! れいむはにげるよっ! ぢゅびっ!!」 「ゆぎゃああああ! がらだがげずれるぅうううう!!」 群がる饅頭を踏み潰し、餡子の轍を作りながら進む台車。 最後の一匹は、台車の降下速度で押さえ付けられてしまい、動く事も出来ない様だ。 「ゆぎぃいいい! うごけないよぉおおおお!?」 そして台車は最高速度で崖に激突した。 「ぐぎゃ!!!」 真っ黒な飛沫が飛び散った。 予め緩衝材として布団を置いておいたので台車は壊れなかったが、 布団の方は餡子塗れでドロドロになっている。 R「あれじゃあ、つかいものにはならないね!」 台車が完全に停止してから、それまで呆然としていたまりさが動き出した。 「ゆっ!? れ、れいむ! なんでこんなことしたのっ!?」 R「ゆ? それはね…」 「頼まれたからやったのさ!」 「な、なんでれいむとにんげんがいっしょにいるのぉおおおっ!!?」 俺と相棒はまりさの前に立ち塞がっている。 「じゃまなにんげんとうらぎりもののれいむはせいさいだよ! みんなゆっくりしないでやっつけてね!」 「ゆっくりしないでしねぇえええええ!!!」 生き残ったゆっくり達が、まりさの指示で飛び掛ってくる! 俺が相手してやっても良いが、結果は分かり過ぎている。 ここはゆっくり同士、相棒に任せる事にしよう。 「頼んだぞ、相棒!」 R「まかせてね、おにいさん!」 相棒は既に紅白のリボンを外している。 俺は青いリボンを取り出すと、相棒に投げてやった。 相棒はそれを舌で受け取ると、すっと右側に構える。 そのまま、体の中央に向けて触れるか触れないかギリギリの所へと舌を翳す。 そして青いリボンを頭の上に乗せると…! R「ぴろりー、ぴろりーろり! ぴろりー、ぴろりーろり! ぴぽっ! しゅるるる…、がしゃん! ぱぁ~ん、がしゃん、がしゃん!」 相棒の黒髪と紅白の飾りが消え、青い髪と生えてきた。 最後に青い菱形の塊が顔の上を走ったかと思うと6枚の細長い羽に展開した。 ⑨「あたい、さんじょうっ!」 舌で“ビシッ!”と自分を指す相棒。 全く持って根拠の無い自信に満ち溢れた姿である! 「れ、れいむがちるのになったぁ!!?」 ⑨「いっとくけどあたいは、さいしょっからワライマックスよっ!!」 相棒の変化を見て驚くゆっくり達。 一瞬怯んだが、直ぐにまた攻撃を再開した。 「へんなちるのはゆっくりしねぇえええ!」 ⑨「いくわよっ! あたいのひっさつわざ…!」 そう言うと、相棒の羽が体から離れてゆく! ⑨「ぱーと⑨!」 羽が広がったところでクルッと一回転する相棒。 次の瞬間、周囲のゆっくりは上下二つに分かたれた。 「むれのゆっくりたちが!!?」 ⑨「きまったわ…!」 離れた所で見ていたまりさを残して、群のゆっくりは全滅した。 ⑨「おにいさん、かざりをとってほしいなっ!」 飾りを取ってやると、相棒はハゲ饅頭の姿に戻った。 「お、おまえはいったいなにものなのっ!!?」 @「覚えておきなさい、通りがかりの…」 「ハゲ饅頭だ」 @「違うって言ってるでしょおおおおおっ!!?」 「こ、こんなゆっくりできないやつが、まりさのじゃまぉおおおおおっ!!?」 @「違うわよっ!? 通りがかりのゆっくりだからねっ!!?」 「はげまんじゅうはゆっくりしねぇえええええっ!!!」 怒りに我を忘れたかの様にまりさが突っ込んでくる! 不意を突かれて相棒は避ける事が出来ない! @「ゆっ!?」 「ゆわぁあっ!!?」 その時、相棒とまりさの間の空間に歪が生じ、飛び掛ってきたまりさを弾き飛ばした。 「(何か良く分からんが)今だ、相棒!」 @「ゆん!」 相棒が歪みに向かって飛び込むと、相棒の姿も歪みだす! そして真っ直ぐにまりさへと向かって加速していった! @「ゆぁーっ!!」 相棒の凄まじい体当たりを受けてまりさは宙に吹き飛ぶ! 「もっと…、ゆっくり…、ゆぼぉ!!」 地面に落ちたまりさは、断末魔を残して爆散した! @「ゆふぅ…。 今のは何だったの…?」 「俺にも分からねぇよ…」 相棒には、まだまだ俺も相棒自身も知らない謎が隠されている様だ…。 「道が餡子でグチャグチャだな…。 どうしたものか…」 @「そうねぇ…? 畑にでも撒いてみる?」 俺達は掃除という名の後始末に追われる事になった…。 ………。 ……………。 @「ゆぅ~ん…。 もう餡子は見たくない…」 「おい、起きるんだ、相棒!」 @「ゆぅ~ん? お兄さんが揺れてる~?」 「お前も揺れてるんだよ! いいから早く起きろ!」 @「何よぉ~? 気持ち良く寝てたのにぃ…」 「そんな暢気な事言ってる場合じゃない! 地震だ! かなり激しい! 早く逃げないと潰れ饅頭になっちまうぞ!!」 @「ゆぇえええっ!!?」 俺達は慌てて着の身着のまま家の外に飛び出す。 間一髪で家が崩れる前に脱出する事が出来た。 「あ、危なかったぁ~!」 @「ゆぅ、ゆぅ…! 何よ! この家、こんなに脆かったの!?」 「そりゃまあな…。 格安で買い取ったわけだし…」 @「どうするのよ!? 家財道具その他、全部瓦礫の下敷きよ!?」 「金庫と通帳、印鑑なら持ち出したが?」 @「れいむのリボンは!? あのリボンは失くす訳には…!!」 「あのリボンは頑丈な箱に入れておいたから潰れてはいないだろう…。 ただ、この中から探し出すとなると…」 @「ゆわぁあああああっ!!」 「よ、よせっ! 怪我するぞっ!?」 @「構わないわっ! 絶対に見つけだすんだからっ!!」 「落ち着けって! 朝になったら、業者に頼んで瓦礫を片付けてもらうから! 保険金も手に入るから、見つかるまで別の家で過ごそう!」 @「ゆぅううううう…、れいむぅうううううっ!!!」 相棒の悲痛な泣き声が夜の闇に吸い込まれていった…。 泣きたいのは俺も一緒なんだけどなぁ…。 今夜は何処で眠れば良いのだろうか…? 【おまけ】 「なぁ相棒、お前って結局どんな種族のゆっくりな訳?」 @「ゆぅーん…。 わたしにも分からないのよね…」 「え~? じゃあ、両親はどうなんだ?」 @「実は両親の顔も分からないの…。 覚えていないんじゃなくて、見た事が無いんだと思う…。 小さい頃は殆ど一人ぼっちだったし…」 「そうか…。 悪かったな変な事聞いて…」 @「気にしないで。 わたしも私自身の事を知りたいと思っているし…」 「小さい頃から苦労の連続だったんだろうな…」 @「ええ、わたしは自分がゆっくりできる場所を探して彷徨い続けたわ…。 でも、どこもわたしのゆっくりプレイスじゃなかった…」 「……………。 今は…、今はどうなんだ…?」 @「今は…、とってもゆっくり出来ているわ」 「まだ…、探しているのか…?」 @「さぁ…? どうでしょうね…?」 【後書き】 こんな滅茶苦茶なお話を最後まで読んでいただきありがとうございました! どこに投稿するべきか非常に悩みましたが、これで良いのでしょうか? 書いている内にどこかで聞いた事のある話になってしまいましたが、 初期のコンセプトは自由に別の種族に変わるハゲ饅頭だったんです…。 もしかすると続きを書くかもしれませんが、 その時はまた最後までお付き合い頂ければ幸いです。 それでは、皆様の健康と幸運を願って…。 このSSに感想をつける
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かつてはたくさんのゆっくりが生息していたこの森も 急速に近代化が進んだ影響で木々が切り倒され巨大な重機により平坦なさら地へと変化していった。 しかし、森の奥のゆっくりプレイスに生息する、れいむとまりさの一家は そんな事を知る術もなく今日もゆっくりと平和に過ごしていた。 「ゆっくり〜していってね〜♪ゆっくり〜♪」 「「「ゆっくち〜していっちぇね〜♪ゆっくち〜♪」」」 お歌を唄う親れいむと赤ちゃんれいむ3匹 その傍には子まりさと赤ちゃんまりさ3匹。 岩肌の頑丈な窪みに雨水がたまり、2メートル四方程度の水溜りが出来ており それを囲むようにして赤ちゃんれいむと同じ大きさのピンポン玉くらいの赤まりさが 熱心に子まりさの話を聞いている。 「この水溜りなら落ちても大丈夫だから、ゆっくり練習していってね お帽子をこうやって逆さにして枝で押さえてから真ん中に跳び乗るんだよ!」 「ゆっ、むずかちいよ!」 「おぼうしさん、ゆっくりうごかないでね!」 「ゆゆゆっ!」バシャーン! 1匹の赤まりさがバランスを崩して水溜りに落ちる。 子まりさは慌てずに、かつて自分の親まりさがしてくれたように口にくわえた枝を伸ばし 水溜まりの赤まりさを突っつくようにして水溜りの浅い部分へ押し出してから岸へ上げる。 「ゆっくりでいいから慌てないでおぼえてね!」 そこへ遠くからぴょ〜ん、ぴょ〜んとゆっくり独特の跳ねる音がして 親れいむ赤れいむもお歌をやめ、子まりさも赤まりさもその音のほうへ集まってきた。 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 「「「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!」」」」」 子まりさよりも一回りもふたまわりも大きい親まりさだ。 森の奥はまだ人間の手が入っていないため自然の果実や木の実、餌となる虫達が豊富にあり 親まりさ1匹が午前中だけ狩に行くことで十分一家全員の食料と蓄える分を持って帰ることが出来た。 「今日は、苺とリンゴがとれたよ、虫さんは乾かして食べるものがないときに食べようね!」 親まりさの帽子は収納スペースが多分にあり、ひっくりかえすと 丸々と完熟した苺が20個と真っ赤なリンゴが4個、それにバッタ等の虫が半分は生きたまま ワサワサと蠢いていた。 「ゆ〜ん、ばったさんおいちちょうだよ、ゆっくりしてるよ!」 1匹の赤れいむがお尻をピコピコとしながらこびこびに前に進み出て、果物よりも 生きのいい虫の方に興味心身だった。 巣から近い蟻の巣は赤ちゃんたちが面白半分で狩りつくしてしまったため、生きている虫も珍しいのだ。 「だめだよ、虫さんは保存が利くから今食べたらもったいないよ!」 「そうだよ、お母さんれいむの言うとおりだよ」 親れいむと子まりさがそう赤れいむに注意した。 「ゆ〜、れいみゅはいきてるばったさんたべちゃいよ!」 巣穴の近くの蟻の巣が全滅したのは、この赤れいむともう2匹の赤れいむで巣穴を見つけては そこにおしっこをして蟻が溺れるのをみて楽しんだり 「これは、せいさいだょ!」・・・と 巣穴を掘って、そこにうんうんをして塞いだりしたせいである。 親まりさは時々は子まりさを連れて行っては狩を教えていたが、大きくなるまでは森も危険だから 赤れいむは過保護に育ててきた。 その結果、赤れいむ3匹はゆっくりの中でも少々わがままに育っていたのだ。 「いいよ、今日はばったさんを食べようね!まりさが明日また頑張ってもっと虫さんとってくるよ!」 「ゆっ・・・」 親れいむは親まりさに子供の教育によくないよと促そうと思ったが まりさの左ほほに小さな切り傷を見つけると、それ以上何も言えなかった。 きっと虫を追いかけて小枝で傷つけてしまったのだろう。 本当はゆっくりしたいだろうに、そんなまりさが自分のつがいである事がれいむには誇りに思えた。 「ぺーろ、ぺーろ」 「ゆっ、れいむくすぐったいよ!」 そのほほ傷をれいむは舐めてあげた。 ゆっくりの体は饅頭なので皮も小麦粉に良く似ている 故に、水分で湿らせて伸ばせばたちどころに小さな傷くらいなら塞がるのだ。 自分自身の舌では届かないため、こういったグルーミングはゆっくり間でよく見る光景である。 「それじゃあ皆、今日は苺さんと虫さんをいただきますしてりんごは明日のごはんにしようね!」 「ゆっくり、いただきます!」 「「「「「いちゃだきます!」」」」」 「むっちゃ、むっちゃ、しあわせー!」 「バッタさんゆっくりまっちぇね!にげないでにぇ!」 その夜 「おかーしゃん、すーりすーり」 「みゃみゃのほっぺはおもちみたいにやわらきゃいよ」 赤ちゃんれいむも赤ちゃんまりさも親れいむと親まりさにすりよって眠る。 子まりさも昼間は姉妹の手前、親に甘えないようにしていたが眠るときは姉妹と一緒に 親れいむと親まりさの間に挟まれるように寝息をたてる。 「みんな、明日もゆっくりしようね。」 こうして、ゆっくりプレイスの平和な一日が過ぎていった。 これがゆっくり出来る最後の一日だとは知らずに・・・。 朝、「ゆっくりしていってね!」の声で 一斉に目を覚ますのがゆっくり一家の通例である。 しかし、今朝はゆっくりの声ではなく不快な機械音によって覚醒させられた。 ガガガガ・・・ゴゴゴゴ ドドドドドド・・・ガガガガガー 「ゆっ?なんのおと・・・ゆっくりできないよ」 「ゆゆ〜ん、うるしゃくてゆっくちできにゃい」 巣穴の外には見たこともない巨大な鉄の塊が木を薙ぎ倒していたのだ。 ブルドーザーやパワーショベルといったいわゆる重機である。 とうとう、このゆっくりプレイスにも近代化の波が押し寄せてきたのだ。 「よーし、ここにプレハブおったてて開発工事の拠点にするべ」 重機が止まると、ヘルメットを被ったTシャツに作業ズボン首タオル姿の40歳前後の男が降りてきて あたりを見回し、そう呟いた。 ゆっくり一家の巣穴周辺は森の中にぽっかりと切開かれた平地になっていたため 重機や機材、工事関係者が住むための仮設住宅を建てる場所にうってつけだったのだ。 一家の眠りを妨げられ、自分たちの縄張りに侵入してきた生き物がいる 大黒柱である親まりさは先陣を切って抗議をするため巣穴の偽装を取り除き表にでた。 「ゆっくりしないで、その音を止めてね! それからまりさのおうちからでていってね!」 「「「ゆっくちでちぇいっちぇね!」」」 その後ろには、危ないから出てこないでねという注意を無視してついてきた 赤れいむが3匹 巣穴の中には親れいむと子まりさ、赤まりさが不安気に外を眺めている。 「あ〜ん?なんだゆっくりじゃねーか」 「おお、なんだよまだ森に残ってたなんて珍しいな」 「こりゃ、例のあれにつかうべか」 よくみると、重機にいた人間だけではなく、ぞろぞろと似たような風体の男たちが次々と増えて 親まりさに近づいてきた。 今この場に15人の男がいるのだが、ゆっくりからしてみれば3以上は数え切れないため およそ3人より多い そういった認識になる。 親まりさは自分の言葉が無視されたことで 話し合いの余地はなし、先手必勝にして倒すべし そう直感し勢いよくぴょーんっと跳びかかった。 実際、この森ではゆっくり以外には小動物も見当たらず せいぜい、ゆっくりの次に強いのはカマキリ、それから少し大型のかたつむり まりさは先手必勝の理論でほぼ無傷でそういった強敵を排除してきた実績があった。 時には多勢に無勢、20匹もの蟻に囲まれたこともあったが 勇敢なまりさは家族を守るために容赦なく飛び掛り押しつぶし、圧倒的な戦闘力の差をみせつけ 後悔させるまもなく命を奪ってきたのだ。 「ちょっ、やる気だぜこの饅頭」 一番まりさに近い位置にいた少し若い30半ばの男がヒョイとまりさと体当たりをかわす。 まりさにしてみれば自分の攻撃が回避されるのは始めての経験であった。 「ゆゆっ!」 たらり、とまりさの額に汗がにじむ。 ゆっくりとはいえ栄養状態が良い成体はバスケットボールよりも一回り大きく 重量はマッチョのダンベルに匹敵する。 柔らかいとはいえ修学旅行の枕投げよりは強い衝撃がある事うけあいだ。 かといって、人間からしてみれば子供でも成体ゆっくりに負けるわけがないのだが この三十路男は、勇猛果敢な親まりさと少し遊んでみたくなった。 さっきまでガニ股だった三十路男は、バイクのニーグリップをするようにやや内股に構えなおし 左半身を前に半身になって、右足かかとの重心を浮かせて爪先立ちのような格好をとる。 右こぶしは自身の顎の辺り、左こぶしは鼻先前から垂直に前に置いて肘をやや伸ばしている。 男の仲間たちはニヤニヤと笑いながら、男が一発でもまりさにからだを触れさせるかどうか タバコを賭けていた。 「おかーしゃんがんばっちぇ!」 「ゆっくちじじいをやっちゅけちぇね!」 「じじいはゆっくちちんでね!」 赤れいむ達の声援。 「ゆゆ!ゆっくり潰れてね!」 まりさは再度、男の顔面をめがけて飛び掛る。 その刹那、まりさの鼻のあたりにパッっと火花がとぶ錯覚を覚えた。 三十路男の左肘が鞭のようにしなり、手首のスナップを利かせてピシャッとまりさを叩き落したのだ。 ヒュー!っと男の仲間から口笛が鳴る。 まりさにも赤れいむにも何が起こったのかわからない。 一歩も動いていない男の前に見えない壁があるように弾かれたのだ。 「ゆゆぅ?」 体重が乗らないよう手加減があったため、まりさはさほどダメージを受けていない 再度、男に飛び掛る。 ピシャ!ヒュッ、ピシャ! 「ゆべぇ!」 グシャっとまりさが顔面から地面に崩れ落ちる。 今度は赤ゆっくりにも見えた。 一発目はやはりなんらかの見えない壁に阻まれた様でわからなかったがが、同時に男の足がススッと動くと まりさが落ちる前に、ペニペニのあたりに左手の手の甲で払うように叩いていた。 幸い、まりさのペニペニは発情しなければ内臓されているため 人間の様にタマタマを打ち付けることがないためダメージにはなってない。 しかし、まりさには何が起こったのかやはりわからず 「どぼぢであだらないのおぉぉぉお!」 と喚いていた。 今度はまりさは一旦後ろに退き、助走をつけて飛び掛った。 いまだかつて、どんな生物にも使ったことがないまりさが思いつく限り最大最強の必殺技である。 おそらく同サイズのゆっくり相手にならかなり効果的な攻撃方法であろう。 「ゆっぐりじねぇぇぇえ!」 ニヤリ、三十路男はスッと左こぶしをさげると キュキュッっと足先で体重移動を行い、垂直に跳んで来るまりさの産道の当たりめがけて いままで使っていなかった右こぶしを動かした。 半ひねり加えて肩まで前のめりに体重を乗せて放つ渾身の右 人間でもひとたまりのない高速のストレートがまりさの産道にめり込んだ。 「ぶぎゅがぎゃああぁ・・・」 わけのわからない奇声をあげて地面に突っ伏すまりさ。 ぴくぴくと痙攣しながら、水分が放出され失禁していることがわかった。 赤れいむ3匹は、親まりさのしーしーに濡れないように 「ゆっ、きたないよ!」と遠ざかった。 そして、しばらく間をおいて まりさは相変わらずピクピク痙攣しながら 「まりざのたまたまがぁぁぁああああ・・・」 などと泣きじゃくりはじめた。 それを聞いた男たちは大いに笑い 「まりさのたまたまがぁ♪」 「うははははは」と腹を抱えた。 その惨状を離れた巣穴から見ていた親れいむは涙を流しながら 巣穴の隠すために偽装の枝を口に加えて並べ始めていた。 子まりさは、赤ちゃんたちがまだだよ!と訴えたが 「ごめんね、ごめんね!」と呟きながら巣穴を塞ぐ作業に没頭していた。 「おう、おまえら遊びは終わりだ!仕事にかかれや!」 60代の男がドスの聞いたよく通る声で一括すると 男たちは 「よーし、仮設トイレから設置するぞ」と赤れいむ3匹を手に取る。 いまだ痙攣を続ける親まりさを足でつつき 「巣穴はどこだ?れいむ種がいるってことは、親のれいむがいるってことだろ?」 と巣穴の場所を聞いた。 まりさは 「ゆぐぐぐ・・・まりさに子供はいないよ その赤ちゃんもまりさと関係ない、人間に飼われてる赤ちゃんの子を預かってるものだから ゆっくり逃がしてあげてね・・・」 精一杯の嘘に男は「なに、飼いゆっくりの子だって!?」と一瞬動揺するが 赤ゆっくりの 「おかーしゃん、どうちてうちょつくのー!れいみゅはおかーしゃんのこどもだょ!」 という言葉ですぐに無駄になってしまった。 ペッっと唾を吐くと 足でドスンとまりさに重みをかけ 「もう一度聞くぞ巣穴はどこだ?」と問い直した。 「まりざはてんがいこどくだよ・・・だからその赤ちゃんは」 「れいむちゃんよ、巣穴はどこだ?」 赤れいむを握る手に力を少し込めると 「ゆゆ〜、くるちいよ!れいむのおうちはすぐそこだよ!」とあっさり場所を教えた。 男はまりさを踏みつけていた足に体重をかける。 「ゆっ・・・」 ブチッ 頭部を踏み抜く事が、これから起こる不幸に対するせめてもの情けであった。 「へーい、おこんにちわー」 ビクッっと口に加えていた小枝を落とす親れいむ ほとんど巣穴を塞ぐ作業は終了していたが、結局赤れいむにより場所が明らかになり 簡単に偽装は取り除かれ、たった一つの出口から容赦なく人間の手が入り込んできた。 子まりさは自分の後ろに赤まりさを隠しぶるぶると震えている。 ここに人間が来たということは、あの強いお母さんまりさはもう殺されてしまったのだろうと直感した。 親れいむも子まりさも声を立てないように震えていたが、そんな事はもはや意味をなさず ひょいひょいと人間の手につかまり捕らえられていった。 赤まりさは感極まって「ゆえ〜ん」っと大泣きを始め そのせいで暗がりの奥にいた赤まりさは見つからないはずだったのにあっさりと一緒に捕らえられ 先に死んだ親まりさを除いて一家全員が虜となった。 「よ〜し、今日からお前らにはこの簡易トイレの中で働いてもらうぞ」 「くちゃい〜」「ゆっくちできにゃい〜!」 「ゆゆゆ・・・赤ちゃんだけでも助けてあげて!」 と喚いたが、一匹残らずトイレのいわゆるボットン部分に落とされた。 工事現場の簡易トイレは水道のある場所であるなら水洗式にもなるが このような辺鄙な森では汲み取り式となる 人間の糞尿の始末をするために一家はボットンにおとされたのだ。 すぐにお昼休憩となり、次々と工事現場の男がトイレにかけこみ用をたす 主に小便が多い。 上からジョロローっと落ちてくる臭い汁に親れいむも赤れいむも自分の体にかからないように 壁いっぱいに逃げた。 子まりさと赤まりさはお帽子を傘のようにして耐えている。 「ゆっくちこないでね!しーしーきちゃないよ!」 やがて、小便は溜まってきて 壁に避けても足元が濡れるようになってきた。 一家全員泣きつかれたおめめに、再び涙がにじんでくる。 「すーぱー、うんうんたーいむ♪」 次にトイレに入ってきた男は親まりさを痛めつけたあの三十路男だ。 よっと和式の便座にうんうんスタイルで構えると ブババッっと汚い音とともに、リアルうんうんが降り注いだ。 これはしーしーの比ではない。 悪臭と不快な重量感にまりさ達も壁沿いに逃げた。 赤れいむと親れいむが壁を占拠していたため、おしあいへしあい結果 1匹の赤れいむが壁から押し出されて、リアルうんうんの直撃をうける。 「ゆぎゃあぁああ!ゆっくちできにゃいよぉぉおお!」 ピンポン玉くらいしかないその体はリアルうんうんに埋没し 脱出するためにはそれを食すしかなかった。 手足のないゆっくりは口でしか、物を動かすことが出来ないのだ。 壁際に逃げられたまりさ達は、それが自分達の明日の姿だとゆっくり理解し 親れいむと一緒にゆんゆん泣いた。 次の日にもなると、簡易トイレは便と小便でいっぱいになってきて やむなく親れいむが、餡子をはきながらぐびぐびと飲んだり、んぐんぐと塊を体内に押し込んだ。 「ゆっくり見てないで、みんなもやってね!」 と叱ったが、甘やかされた赤れいむはもちろん、赤まりさもそれを拒否して しかたなく子まりさが一緒に食べた。 「にがいよぉぉおお、くさいよぉぉおお・・・ゆっくりできない・・・」 やがて、初日にうんうんに埋没した赤れいむが半死半生で外に出ようとしたが 一心不乱に食べる、親れいむはついつい赤れいむをかじり飲み込んでいた。 「いちゃいっ!れいみゅだよ!かわいいかわいいれいみゅだよ!」 そんな声は届かず 懐かしい甘みに「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」と声を漏らした。 子まりさは、赤れいむが食べられたところを目撃してしまい 顔を真っ赤にして親れいむに体当たりをする。 「どぼじでまりさのいもうとをたべちゃうのぉぉおお!」 親れいむは正気に返り、また泣いた。 簡易トイレ生活から数日、便は食べることが出来ても リアルしーしーは床に溜まってきて、とうとう赤れいむ2匹がとけだしてしまった。 「もっとゆっくりしたかった・・・」「うへっへ♪ゆっくり〜♪していっちぇ・・・♪」 子まりさはお帽子を逆さにして水に浮き、赤まりさも右にならえで帽子に乗る しかし、赤まりさの1匹はどうしても帽子に乗ること出来なくて 親れいむの頭に乗せてもらった。 成長して大きくなればきっと水に浮くことが出来るからねと、その赤まりさをはげましたが その夜、寝てる間に赤まりさはおちてしまい、それに当たってしまったもう一匹の赤まりさも水没してしまった。 親れいむは2匹を助けたかったがすでに底面がふやけてしまい 2度と歩くことの出来ない体になっていた。 もはや出来ることといえば残された、子まりさと赤まりさのために少しでもリアルうんうんを食べてあげるくらいだ。 2週間が過ぎた。 親れいむのからだもずっと漬かっていたせいかダルマおとしのように足は完全になくなり スライム状になって、最後には目まで解けて無残な姿を晒していた。 子まりさにも赤まりさにも、もう親れいむが生きているのか判別することが出来なくて ただ、ただ一生懸命 リアルうんうんの始末に追われていた。 2匹には希望があった。 うんうんに潰されないようにしーしーだけでこの簡易トイレを満たすことが出来れば 水かさが増して最後には外にでることができると・・・。 「ゆっくりがんばってね!」 「いっちょにいきのこりょうね!」 簡易トイレが設置されてから一ヶ月が過ぎた。 あともう少し、しーしーをしてもらえれば自分たちは助かる。 そんな思いから人が入るたびに 「ゆっくり、しーしーしていってね!」 「しーしーしてくれてありがちょうね!」と言うようになっていた。 これは男達から見慣れた光景である。 親まりさがいると脱出できる水かさが早めに達してしまうため どのみち早めに処分をするが、最終的にまりさが生き残るのだ。 やがて工事の期日が近づいてきて、そろそろ簡易トイレを撤去しようということになった。 いまでは森は完全に消えていて、そこにはクライアントの館が建っており もし、まりさがその館の窓を割っておうち宣言をしたりしたら困りもものだ。 だからどうしても生かしておくわけにはいかない。 最終日 簡易トイレに、あの三十路男がやってきた。 子まりさも赤まりさも巣穴から親まりさを痛めつけるところを見ていたため どうしても、その男が来るとはらわた煮えくり返り 愛想よくする気にならなかった。 「お前ら、ご苦労さん これはお前らの巣穴にあったリンゴだ。」 「ゆ?」「ゆゆ?」 2匹はあの日のことを思い出した。 赤れいむが我侭を言って、苺と虫を食べることになり リンゴは次の日にとっておくことになったのだ。 もちろん、ずいぶん時間がたってそのリンゴは腐っている これは男が市場で買ってきたリンゴだ。 そんなことはゆっくりにはわからないし、三十路男は余計なことを言うつもりはない。 フンっ!と両手で力を込めるとリンゴは握力で砕け 食べやすいように、そしてお帽子が沈まないように小分けにされて2匹に渡された。 子まりさも、赤まりさもゆっくりプレイスにいた事を思い出しながら 泣きながらリンゴをむさぼった 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 そして、便座を木の板で塞ぎ その場を後にした。 過去の作品 ゆっくり繁殖させるよ! 赤ちゃんを育てさせる 水上まりさのゆでだこ風味 ゆっくり贅沢三昧・前編 ゆっくり贅沢三昧・後編 まりさの皮を被ったアリス 肥料用まりさの一生 ゆっくっきんぐ ドナーツ編 可愛そうな赤ちゃんにゆっくり恵んでね ゆっくりしなかった魔理沙と愛のないアリス ゆっくりクアリウム 作者:まりさ大好きあき
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ここはゆっくり牧場。 のどかにゆっくりと暮らすゆっくり達。 「ゆっくりおいしくなるよ!」 「いっぱいゆっくりしてもちもちになるよ!」 みんな、饅頭としての誇りにあふれている。 少しでも美味しくなって、消費者に届きたい。 そんな願いを持っていた。 だが、牧場出身のゆっくりから大量の危険物質が発見されてしまう。 被害を抑えるため、同時期に出荷されたゆっくり達はすべて廃棄処分に。 「どぼじでええええ?!れいむおいじいのにいぃぃ!!ぢゃんどだべでよぉおお!!!」 「まりざ、きけんじゃないのにい!ちゃんとおいじぐなっだんだよぉおお!?」 「おねがいだがらだべでよぉおおっ!!」 牧場に返品されてきたゆっくり達は、みなプライドをズタズタにされていた。 せっかく美味しくなったのに。 せっかく一生懸命育ったのに。 「おねがいだよぉおお!!のござないでだべでええええ!!!」 とある家では、オヤツにゆっくりを食べている最中にニュースで事件を知った。 半分だけ食べられ放置されたれいむ。 その半分の眼には涙があふれていた。 痛いけど嬉しかった。 ちゃんと人間に美味しく食べてもらえていたのに。 自分の体のことは自分が一番よく知っている。 「れいむにはめらにんはいっでないのにぃいいい・・・」 「うるさい汚染饅頭!死んだらどうすんだボケクソ!」 あまい、と笑顔でいっぱいだった顔はそこにはない。 その目はまるでウンコでも見ているよう。 半分になったれいむは声をあげずにないた。 なんのために生まれたのだろう。 なんのために痛い思いをしたのだろう。 れいむは足りない餡子で答えを探したが、結局それは見つからなかった -- 2008-10-07 18 30 30
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ゆっくり家族のある夏の日 良く晴れた夏の日。 木漏れ日優しく涼しい森の中でゆっくりれいむとゆっくりまりさのカップルが仲良さそうに枝や草を集めていた。 「ゆっくりあつまったね!」 「あとはおうちでゆっくりしようね!!」 二匹は新婚夫婦だった。 二匹はお互いの家族のおうちが近かったので子供の頃から一緒にゆっくりしてきた幼馴染。 両思いだと知ってから付き合い始めて一か月。 親元から離れて同棲を始めて一週間。 それから赤ちゃんを作ろうと決めて、今までずっと準備をしてきた。 赤ちゃんのために食べ物を蓄え、枝と草を組み合わせてベッドを作った。 何匹産まれるか分からないのでたくさんの食べ物とベッドが二匹のおうちに用意されている。 おうちの入口も枝で組んだ簡易扉が被さって防犯対策も完璧(?)だ。 最後のベッドを作り終え、二匹のゆっくりは緊張した面持ちで見つめ合っている。 赤ちゃんを迎える準備が整え終えた今、残るは子作りのみ。 二匹にとっては子作りだけでなくすっきり自体も初めてだった。 「れいむ、やっとだね」 「うん。れいむは…れいむははじめてだからやさしく、してね?」 「まりさがんばるよ。だからきんちょうしないでね」 「ゆふふっ、まりさもふるえてるよ」 「だ、だいじょうぶだよ! あかちゃんのためだもん。だからいくよれいむ……」 「いいよ。ゆっくりきて……」 そして重なる二つの饅頭。 まりさがれいむの上に被さり、体を揺らしていく。 れいむは実にゆっくりとした表情でまりさの起こす振動に身を任せている。 そして程なくして、二匹の巣からは「「すっきりー!!」」の声が響いた。 交尾終了だ。 「ゆ! れいむからはえてきたよ!!」 交尾が終わってから数分経つと子種を受け入れたれいむの頭から茎が生えてきた。 茎は母体のれいむから栄養を吸って先端付近にいくつかの実を生らせていく。 「ゆゅ!? あかちゃんができてきたよ!!」 「ゅ…ゆっくりそだってね」 赤ちゃんの実は徐々に大きくなり、数分で髪が生えて飾りも形成される。 そして十分程度で赤ちゃんゆっくりの形が出来上がった。 後は産声を上げて茎から離れるのを待つのみ。 「ゆ~! すごいよ! ゆっくりしてるよ!!」 「ゅぅ、れいむもみたいよ…」 母体の霊夢は赤ちゃんを実らせた後でさすがに元気がない。 まりさが用意した食べ物をゆっくりともそもそ口に運んでいる。少しすれば元気を取り戻すだろう。 れいむが元気を取り戻した辺りで赤ちゃんの実に変化が訪れた。 「ゆ! ゆれたよ! あかちゃんゆれたよ!!」 「ゅ!? ほんとう? ゆっくりうまれてね!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 れいむとまりさは目を輝かせて赤ちゃんゆっくりに声援を送る。 声援と言っても「ゆっくりしていってね!!!」を何度も言い続けるだけだが。 しかし二匹は期待に心膨らまして声援を続ける。 そして、二匹の熱心な声に赤ちゃんゆっくりがとうとう目を開いた。 それを見たまりさは感動で泣きそうになるのを堪えながら、 目をぱちくりと開いた赤ちゃんゆっくり達に目覚めの挨拶をする。 「ゆっくりしていってね!!!」 「「「「ゆっくりちていっちぇね!!!」」」」 総勢八匹の赤ちゃんゆっくり達がまりさの挨拶に対して元気に生まれて初めての挨拶を返した。 眉を吊り上げて、"やってやったぞ"と言わんばかりの勝気な表情で元気満点の赤ちゃんだ。 「ゆ!? あかちゃんうまれたの!? れいむもはやくみたいよ!!」 「ゆ~! すごくゆっくりしてるよ!!」 「おかーしゃん! ゆっくりうごきちゃいよ!!」 「ここじゃうごけにゃいよ!!」 「ゆっくりまってね!! すこししたら、くきからはなれるはずだよ!!」 母まりさの言った通り、少しした所で赤ちゃんゆっくり達はれいむの茎から切り離されて枝と草製のベッドの上に落ちた。 落ちた赤ちゃんゆっくり達はまず一番傍にいた母れいむへと擦りよった。 「おかーしゃん、ゆっくりちていっちぇね!!」 「ゆっくちちようね、おかーしゃん!」 「ゆぅぅ~、ずっといっしょにゆっくりしようね!!」 「「「ゆっくりちようね!!!」 母まりさもその輪に加わり、家族みんなで肌を合わせてお互いの生を確かめ合った。 ほんのりと温かい小さな赤ちゃん達の存在が母れいむと母まりさの心を満たした。 赤ちゃんゆっくり達もお母さんの温かみを体全体で感じて幸せそうに笑顔を浮かべていた。 このままずっとゆっくりしていたいが、お腹の空いた赤ちゃんゆっくり達はそうもいかない。 母達に体をくっつけながら次々と空腹を訴える。 「ゆっきゅりおなかしゅいたよ!」 「おかーしゃん、おなかしゅいたよ!!」 「このままじゃゆっきゅりできないよ!!」 だが母ゆっくり達はそれも予測済みだ。元々は自分たちも赤ちゃんの時そうだったのだから。 まりさはれいむの茎を咥えて力を込めると茎は簡単に根元から折れる。 その茎を地面に置いて食べるように促した。 「ゆ! これがさいしょのごはんだよ! ゆっくりたべていってね!!」 「いっぱいあるからね! ゆっくりたべようね!!」 「ゆっきゅりたべるよ!!」 「おかーしゃん、ありがちょー!!」 「いっぱいたべるよ!!」 自分たちの生えていた二本の茎を、初めての食べ物を食べていく赤ちゃんゆっくり達。 「「「むーしゃ、むーしゃ、ちあわちぇ~!!」」」 総勢八匹の赤ちゃん達が幸せそうに食事する様子を眺める母ゆっくり達もまたこの上なく幸せだった。 二匹は頬を擦り合わせ、今確かにそこにある幸せを噛みしめていた。 それから毎日まりさは狩りへと出かけた。 おうちに食料を貯蓄させているが、それは食料があまり集まらなかったときなんかの非常用だ。 食欲旺盛な赤ちゃんゆっくり達のために狩りの上手なまりさは木の実を採り、虫を捕まえに外へ出る。 対するれいむはまりさが出かけている間に赤ちゃんゆっくり達の世話をする。 おうちの前で一緒に遊んだり、歌を教えてあげた。 転んで泣いてしまったりしたときも「ゆっくりいたいのとんでってね!」と、赤ちゃんを舐めてあやしたりもした。 赤ちゃんゆっくりは親ゆっくりが常に見てあげていないと、 勝手におうちの外に出かけていって死んでしまったりおうちの食べ物を自制せずに食べてしまう。 とてもじゃないがそれでは長く生きていられない。生きられたとしても自分勝手な嫌われゆっくりになってしまう。 なので両親が存命の場合はこの夫婦のように片方が狩り、もう片方が子の世話を行うのだ。 「ゆっくりかえったよ!!」 母まりさがリスのように頬袋に食べ物を詰めて帰ってきた。 その声に母れいむに甘えていた赤ちゃんゆっくり達は目を輝かせておうちの入り口へ跳ねていく。 「まりさおかーしゃん!」 「ゆっくりおきゃえりなしゃい!!」 「ゆっきゅりしていっちぇね!!」 一歩遅れて母れいむが姿を現して微笑み、 「ゆっくりおかえり、まりさ!」 新妻のノリで母まりさを出迎えた。 赤ちゃんゆっくり達に体を擦り付けられ、愛するれいむの可愛い笑顔を向けられて母まりさは照れくさそうだ。 その後、母まりさが吐き出したたくさんの食べ物を家族みんなで仲良く食べていく。 「ゅ~、おいちいよ!」 「ありがちょー、おかーしゃん!」 「すごくゆっくちできるよ!!」 赤ちゃんゆっくり達のその言葉だけで母まりさの疲れは取れる。そして次もがんばる気になれた。 それからしばらく家族団らんの時を過ごし、その後は夕食のために狩りへと出かける。 日が暮れるまでには母まりさは帰ってきて同じように家族みんなで食事し、 日が完全に暮れて真っ暗になったら家族で身を寄せ合いゆっくりと眠りに着く。 そんな日がずっと続くと思ってた。 だが自然はいつだって気まぐれで無慈悲だった。 「ゆっくりたべものとってくるね!!」 お昼ごはんを食べてゆっくりした後、いつものようにまりさは狩りに出かける。 天気は晴れ、森の中なのでそこまで暑くはない。絶好の狩り日和だ。 「まりさ、ゆっくりがんばってね!!」 「ゆっきゅりきをつけてね!」 「ゆっくりいっちぇらっしゃいね!!」 家族総出で見送られ、母まりさは意気揚々と森を駆けて行った。 「ゆ…?」 母れいむは駆けていくまりさの姿が何だか儚く見えた。 根拠のない不安を覚えたが、赤ちゃんゆっくり達が「ゆっくりあしょぼうよ!」と元気に誘ってくると不安はすぐに忘れた。 母まりさが夕食のための食べ物を頬袋に詰め終えておうちに帰ろうとした時だった。 さっきまで晴れていたはずの空がいつの間にか曇り始めていた。 「ゆゆっ、ゆっくりしないでかえるよ!!」 母まりさは経験上これから雨が降るだろうと考え、急いでおうちに帰ろうとした。 しかし食べ物で重くなった体ではいつもの半分程度の速さでしか駆けることは出来ない。 そしてとうとう雨が降り出した。 ちょっとの距離ならこのまま跳ね続けておうちまで駆け込めば大丈夫だろう。 だが今、母まりさはおうちからおよそ30分の場所にいた。それも食べ物を持ってない状態で30分かかる場所だ。 これではおうちに着く前に、雨で体が崩れて死んでしまうだろう。 母まりさは身近にあった大きな木の根元に身を寄せて雨を凌ぐことにした。 「ゆっくりしないではやくやんでね…」 母まりさはこの時期に多い夕立はすぐに止むと知っていたが、それでも長く降り続けることもあるのでそうならないよう願った。 あまり雨が長く降り続けると日が暮れてしまう。 そうなると家族の夕食は貯蓄があるから大丈夫だろうが、自分がいないとみんなを不安がらせてしまうだろう。 それに夜はれみりゃやふらんといった危険と遭遇して、一生ゆっくり出来なくなる可能性も高い。 母まりさは大木の下でも降りかかる雨の雫を耐水性のある帽子で弾きながら雨が止むのを待ち続けた。 しかし10分待っても、20分待っても、一時間待っても雨は止まなかった。 それどころか雨はさらに激しくなっていた。 「ゆっくりできないよ!!」 母まりさは我慢できずに大雨の中を飛びだした。 我慢弱さから飛び出したのではない。 雨宿りしていた大木の根元は窪んでいて、雨が流れ込んで水溜りになってしまったのだ。 おうちの方向へとぐちゃぐちゃになった地面を蹴って駆ける。 他に雨宿りできる場所を探すが辺りは細い木が多くて見つからない。 こうなれば食べ物どころではなかった。 口の中の食べ物をすべて吐き捨てて全速力でおうちへ向かう。 「ゆ"っゆ"っゆ"っゆ"っゆ"…」 まりさは顎の下辺りに出来た排泄口から体の余分な水分を放出しながら走る。 しかしそれでは吸収する水分の量には追いつかない。 直に水に触れる下半身を中心に体がブヨブヨになっていく。 全速力で走っているはずが、徐々に跳ねる力は弱まっていく。 そして… 「うごいでよ"っ!! なんでがらだがお"も"い"の"!!?」 とうとう下半身がたるんで跳ねることも、そして這うことすらも出来なくなってしまった。 何故動けないかは分かっているが、母まりさは叫ばずにはいられなかった。 今ここで死ぬわけにはいかない。 可愛い赤ちゃんゆっくり達の成長をまだ見届けていないし、愛するれいむを一人残すわけにもいかない。 だが体は動かなかった。 どんなに力んでも、どんなに強く願っても体は言うことを聞かない。 むしろ時間が経てば経つほど水に浸かる下半身から機能を失っていく。 「ゆっぐり…できないびょ……」 その言葉が母まりさの最後の言葉になった。水の浸食は口にまで届いてしまった。 ザーザーと降り注ぐ雨。 水を弾くまりさの帽子が時間を追うごとに地面へと下がっていく。 帽子が下がるのに合わせて帽子の周りに茶色い水たまりが広がっていった。 おうちの中で激しい雨音を聞きながら母れいむと赤ちゃんゆっくり達は帰りの遅い母まりさを心配していた。 「ゅ! まりしゃおかーしゃんがおしょいよ!」 「どうちたのかなぁ」 「ゆっくちしんぱいだよ!!」 「おかーしゃんおなかしゅいたよ!!」 「ゆっ! だいじょうぶだよ!! まりさはつよいもん! きっとゆっくりあめがやむのをまってるんだよ!!」 母れいむは不安がる娘たちを元気付けようとしながらも、何度もおうちの入り口を見ていた。 結局、真っ暗になってもまりさは帰ってこなかった。 赤ちゃん達は泣きつかれて母れいむに寄り添って眠っている。 「ゅふふふ…」 「まりしゃおかーしゃん…」 夢の中では母まりさと会えているのだろう。幸せそうな寝言が聞こえる。 明日の朝になればひょっこり帰ってくるだろうか。 母れいむは未だに止まない雨音を聞きながら眠りについた。 翌朝、まだ雨が降っていた。 母まりさはまだ帰ってこない。 そして体の小さな赤ちゃんゆっくり達に異変が起きていた。 「れいむおかーしゃん、からだがいつもよりのびるよ!」 「なんだかゆっきゅりできるよ!!」 「ゆゆっ!?」 母れいむは赤ちゃんゆっくりの言葉を聴いて焦りだした。 それはつまり、湿気によって赤ちゃんの体が水気を増したということ。 そしてこのままではゆっくり出来なくなってしまうと言うこと。 「みちぇみちぇ~! からだがくっつくよ~!!」 「ゆっ!! だめだよ!!!」 二匹の赤ちゃんれいむのべた付く頬同士がくっ付きそうになっているのを見て母れいむは寒気を覚えた。 有無を言わさず舌で二匹の赤ちゃんを引き離す。 「ゅゅ~! なにしゅるのおかーしゃん!」 「たのしきゃったのに!!」 赤ちゃんゆっくり達からは不平がもれるがそんなの聞き入れない。 「ゆ! からだをくっつけたらゆっくりできないよ!! みんなはなれてね!!」 しかし何も分かってない赤ちゃんからすれば離れることこそが最もゆっくり出来ないことだ。 当然文句を言い始める。 「ゅゅ~ん!! にゃんでしょんなこというのぉ!!」 「おかーしゃんとくっつきたいよ!!」 「みんなとあしょびだいよ!!」 「はなれたらゆっきゅりできないよ!!」 「おかーしゃんくっちゅこうよ!!」 「ゅ…」 赤ちゃん達の言葉に心が揺れるが、そんなことをして赤ちゃん達が自分にくっ付いたら危険だ。 だからそんなことは出来ない。母れいむはそう判断した。 「ゆゆ! だめだよ!! いまくっついたらみんなゆっくりできなくなるんだよ!!!」 「ゅ~!! おかーしゃんなにいっちぇるの!?」 「にゃんでなの!?」 「どうしゅればいいにょ!?」 母れいむは悩んだ。 とりあえず赤ちゃん達は素直に言うことを聞いてバラバラに佇んでいる。 しかしこのまま放置しても雨が続く限り状況は悪化するだろう。 母れいむは体の余分な水分を顎の下に排泄口を作って排泄できるが、赤ちゃんはまだ出来ないのだから。 「ゆゆ…」 悩みに悩んだ結果、母れいむは一つの手しか思いつかなかった。 「あめがやむまでゆっくりそのままうごかないでね!!!」 余談だが、赤ちゃんの余分な水分を排出する方法は複数ある。 一つは単純で、涙を流させることだ。 だがこれは良心の痛むようなことを赤ちゃんに対してしなければならない。例えば暴力や食事抜きなど。 もちろん普通の親ゆっくりはこんな事思いつかないし、やろうとも思わないだろう。 もう一つは親が赤ちゃんの顎の辺りを舌先を細めて舐めてやることだ。 赤ちゃんは顎を舐められると体が反応して、排出口が出来る。そしてそこから余分な水分を排泄する。 しかし母れいむはこの方法を知らない。 母れいむ自身が赤ちゃんのときは雨が降らなかったのでこの方法を知る機会がなかったのだ。 そしてゆっくり家族は雨が止むのを待ち続けた。 「おかーしゃんおなかしゅいたよ!!」 「れいみゅたちはうごいちゃだめだからおかーしゃんがもってきちぇね!!」 「ゆっ、もってくるからまっててね」 食事は母れいむがおうちにある貯蓄から赤ちゃんゆっくり達に分け与えた。 お腹を空かせた赤ちゃんゆっくり達は目の前の食べ物を大口を開けて食べようとする。 「むーちゃ、むーちゃ…むーちゃ、むーちゃ…むーちゃ……」 母れいむは不思議に思った。 いつもよりむーちゃむーちゃが長いことに。ゆっくり的には二回のむーしゃの時点で飲み込んでるはずなのに。 嫌な予感がよぎった。 「おかーじゃん、のみこめにゃいよぉぉ!」 「なんでかめにゃいのぉぉ!!」 赤ちゃんゆっくり達は歯型の跡すらない食料を吐き出しながら母れいむに訴えた。 母れいむは顔を青ざめていく。 ここまで赤ちゃん達の体が危険なことになっていたなんて… 赤ちゃんゆっくり達はすでに口の中もブヨブヨに柔らかくなってしまって噛むことも飲み込むことも出来なくなっていた。 中には口に蝶の羽が貼りついて息が出来ない赤ちゃんまでいた。母れいむは急いで蝶の羽を取ってあげる。 「おがーしゃん! どういうことぉぉ!!」 「にゃんでゆっきゅりたべれないのぉぉ!!」 「おがーじゃんのみこめにゃいよぉぉ!!!」 「ゆ! ま、まってね! ゆっくりかんがえるからね!!」 母れいむは何とかして赤ちゃん達を元に戻せないか考えるが何も思いつかない。 頭にあるのは『あめがあがるのをまつ』という考えだけだ。 「おかーじゃんはやきゅだしゅけてよね!!」 「やきゅたたずもいいかげんにしてよね!!」 「まりさおかーしゃんもなんでかえってきょないの!?」 「こんなおうちじゃゆっきゅりできないよ!!」 そして何も思いつかない母れいむに対して始まるのが親批判。 「なんでそんなごどいうのぉぉぉ!! れいむはいっしょうけんめいかんがえてるよ!!」 「だったらはやくたしゅけてよね!」 「かんがえるだけだったらまりしゃもできりゅよ!」 「おかーしゃんならたしゅけられりゅでしょ!!」 母れいむは愛する赤ちゃん達に罵倒されて涙目になる。 昨日まではあんなにゆっくり出来たのに。 まりさが帰って来れないのも赤ちゃんが危ないのも、全て雨のせいなのにどうしてここまで言われないといけないのか。 母れいむの頭には様々な考えが渦巻いて混乱するだけだった。 「もういいよ! おかーしゃんいがいでくっちゅこうね!!」 「しょうだね!! みんにゃでなかよくしよーね!!」 「おかーしゃんはくっちゅいたらだめだからね!!」 「ゆ!? だめだよ! くっついたらだめだよ!!」 「ゆっきゅりだまってね!!」 「ゅ…ああああ」 赤ちゃんゆっくりに嫌われてしまった。母れいむは子供みたいに泣きじゃくる。 そして赤ちゃんゆっくり達は母が泣いてるのにも構わず一箇所に集まる。集まろうとする。 だがその体は動けていなかった。 「どうしゅてうごけないにょぉぉぉ!!?」 「ゆっきゅりできないよぉぉ!!」 「にゃんでぇぇぇ!!?」 それは母まりさと似たようなものだ。 体内の餡子が水分で柔らかくなって力を伝えられず、跳ねることも這うことも出来なくなったのだ。 「ゅぅぁぁぁ! たしゅけて! たしゅけちぇよぉぉ!!」 「おかーしゃん!! いちゅまでないちぇるのぉぉ!!」 「うぎょけないよ! ゆっきゅりできないぃぃぃ!!」 「ゆっ!! うごけないの!? ゆ"…う"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! どうずればいいのぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくり達が動けなくなったことで母れいむはどうすればいいのか益々分からなくなった。 体をガクガクと震わせて狂ったように叫び続けた。 それから半日経って激しい雨は嘘のように止んだ。 今は憎たらしいほどの陽の光が森に差している。 ゆっくり家族のおうちの中では、 赤ちゃんゆっくり達が涙を流し、涎を口から垂らしていた。 それはつまり体内の水分を外に排出しているということだ。 だがそれはあまりにも遅すぎた。 今更余分な水分を吐き出せたところで、赤ちゃんゆっくりの体の中はすでにグチャグチャだ。 とっくに赤ちゃんは体の機能を失って死んでいる。 今、涙を流しているのは体内の飽和した水分が目の穴から流れ出ているだけだ。 涎を垂らしているのも同じ理由だ。 母れいむはそれを見ている。嬉々とした表情で。 「あめはやんだよ! かわいたらまたゆっくりしようね!! それにあめはやんだからまりさもかえってくるよ!!!」 母れいむは赤ちゃんが死んでいることに気づかない。気づこうとしない。 全てを壊した雨が止んだ。だから全て元に戻る。 母れいむのゆっくり脳はありもしない希望を信じることを選んだ。 それから数日経った今も母れいむは赤ちゃんゆっくりが元気になると信じている。 それに愛するまりさも帰ってくると信じていた。 母れいむはそんな幻想を抱きながら誰もいないおうちの中でゆっくりと生涯を終えた。 終 by ゆっくりしたい人 スレに書き込めないのでアップだけで報告なし、というか報告できない。 スレを見てるだけってこんなにさびしいんだね。全てゆっくりのせいにしてやるもんね。 しかし赤ちゃんゆっくりは可愛い。それを自然で虐める妄想するのがマイブーム。書きづらいけどね。 このSSに感想を付ける
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注意 虐待ありません パロディです。 都合上、ゆっくりが現れてからの年数を「Y歴○○年」と表記しています。 『YUKKURI of THE @%#$?』 #1 あそぼうれみりゃ 「ねぇ、まりさ知ってる? 子ゆっくり達の間で流行っている噂」 「ゆっくり知ってるぜ! あれだろ? "あそぼうれみりゃ"」 「ええ、おかげで遊び場に遅くまで居座る子ゆっくりがいなくなって助かるわ」 今、子ゆっくり達の間で『あそぼうれみりゃ』という噂がまことしやかに流れている。 どのようなものかと言うと… 「ゆぅ、すっかり遅い時間だよ! 早くゆっくり帰るよ!」 ほぼ太陽が沈んだ頃、子れいむは忘れ物を取りにドーム型の人工洞窟に戻ってきた。 この人工洞窟はいつからあったのかは定かではないのだが、天井に発光成分のあるコケが張り付いており、 いつでも明るかったため子ゆっくり達の遊び場となっていた。 成ゆっくり達はこの場所を利用できない。 なぜなら、入り口が横に狭く、成体ゆっくりでは進入できないから。 「でも、みんなばかだよ! "あそぼうれみりゃ"なんてただの噂話なのに怖がって!!!」 (むきゅ、夕方過ぎまでこの洞窟にいると、入り口にれみりゃがくるそうよ!) 「ゆ…あ………ぁ……」 洞窟の入り口にはゆっくり通常種の天敵の捕食種、れみりゃがいた。 普通のれみりゃは太っていて鈍重だが、このれみりゃは骨と皮だけと言わんがばかりに痩せている。 腕も足も木の棒のように細く、服もスカスカ。 顔も下膨れが引き締まり、まるで餓死直前であるかのような様相だ。 (それでね! れみりゃは洞窟の中には入ってこないのよ! だから、こういって誘い出そうとするのよ!!!) 「あそぼお」 「ゆっくりこの中に入れないのはわかってるよ!!! れいむはゆっくり帰るからさっさと出て行ってね!!!」 子れいむは振り絞れる勇気すべてを使ってれみりゃに威嚇する。 「はやぐででいっでよおおおおぉぉぉ!!! れいむががえれないでじょおおおおぉぉ!!!」 れみりゃは出入り口に両手足をかけ、入り口を揺さぶる。 「あそぼおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「あそぼおおおおおぉぉぉおおおおぉぉぉおおおお!!!」 「あそぼおおおおぉぉおおおおおぉぉぉおおおおぉぉおおおおおお!!!」 「あそぼおおおおぉぉおおおおおおぉおおおぉおぉおお!!!」 入り口がガタガタと音を立てて揺れる。 子れいむは恐怖のあまり声を出すこともできずにこの光景を見ている。 もし、『あそぼうれみりゃ』が「入ってこない」のではなく「入ってこれない」のだとしたら? もし、「入ってこれない」理由が「入り口が狭いから」だとしたら? もし、洞窟に進入するためにガリガリに痩せたのだとしたら? ----Y暦31年.人工洞窟 #2 訪問 がさがさ… 「はぁ」 またか、とみょんはため息をつく。 夜中、たまに自分の家と間違えてバリケードを破って入ってくるゆっくりがいる。 しかもたちの悪いことにそのままおうち宣言するということもある。 みょんは少々手荒だが、木の棒でしたたか叩いてから追い出すようにしている。 光コケの蓋を取り、明かりを確保。武器である木の枝を咥え、侵入者を待つ。 がさささ!!! ひときわ大きい音がしてバリケードが完全に崩れた。 そこにいたのは 「み"ょん!!?」 ゆっくりれいむであったが、額から右頬にかけて皮が破れだらりと垂れ下がり、 左頬は損壊し歯が見える。 そして頭には見たこともない金属片が突き刺さり、眉間には木の枝が突き刺さっていた。 「ゆュ……まチガえタ」 みょんが固まっているとれいむは一言 そう残してどこかへと跳ねていった。 ----Y暦27年.泉のほとりにほど近い洞窟 #3 帰り道 ザーザー… 「ゆぅ、全くついてなんだぜ…」 友達のれいむと遊んでいたら、突然雨が降り出した。 れいむの巣はすぐ近くだがまりさの巣は結構遠い。 最初はぽつぽつとしか降らなかったので、大きな葉っぱを傘代わりにすれば濡れずに帰れるだろう。 そう思ってれいむの巣で雨宿りせずに帰路についたが、 もうそろそろ巣につくであろう頃になって雨脚が強まった。 傘代わりの葉を見ながらまりさは思う。もっと早くに帰ってれば良かった。と。 ずん! 「ゆっ?」 突然葉が重くなった。 バランスを崩しながらも葉をのぞくと、そこには沢山のゆっくりの顔が映り込んでいた。 「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」 「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」「げらげらげらげら!!」 「ゆ、ゆうぅぅうううう!!!」 恐ろしくなって葉を離し、逃げ出す。 後ろを振り返り、葉を見るとそこにはゆっくりの顔も笑い声も無くなっていた。 「……………」 ----Y暦3年.まりさの巣の近辺 #4 訪問2 「ゆぅ……ゆぅ……」 ちぇんとらんは二匹寄り添って眠っていた。 「おい」 「おいィ」 「おい」 「おいィ!!!」 「ゆぅ?」 「むにゅ…、どうしたのらんしゃまぁ…」 何者かの声にらんが気付き、起きる。ちぇんはらんが起きるとつられて起きた。 何だろうと光コケの蓋を外す。 すると、気の棒などで覆ったバリケードの外に何者かがいることがわかった。 「おいィ!」 ガタガタガタ!!! 木の棒の隙間から声が聞こえる。 二匹はそちらを見て絶句した。 木の棒の隙間から目玉が何個も二匹を凝視しているのだ。 「おいィ…………」 「こコを……アけロ」 正体不明の訪問者にがたがた震える二匹。 「オいぃ!!!」 ----Y暦30年.場所は伏す #5 他に、誰がいたのか 「ゆー、ありす、まりさ! こっちだよ! 早く来てね!!!」 「れいむ、都会派は焦らないのよ!!!」 「そうだよ、もうちょっとゆっくりしようよ…」 れいむ、まりさ、ありす。 仲の良い三匹はこのたび親元を離れ、新しい巣に引っ越そうとしていた。 「でも、そこ本当に誰もいなかったの?」 「ゆ! 誰もいなかったよ! れいむちゃんとこの目で見たもん!!!」 れいむが見つけたのは中くらいの大きさの洞窟。 前日に中をのぞいて見たところ、住人もおらず、誰かが住んでいる様子もない。 三匹で生活するには広すぎるくらいの広さ。 れいむは一目で気に入り、三匹での生活に心踊らせ、二匹に知らせ 早速翌日三匹で下見をしに来たのだ。 「ゆ! ついたよ! ここだよ!!!」 岩肌に見える小さめの穴。成ゆっくり一匹分の入り口。 「ゆー! なかなか都会派な場所じゃない!!!」 「まりさここ気に入ったよ!!! さすがれいむだね! ゆっくりできるよ!!!」 早速三匹は順番に洞窟の中に入った。 「ゆわ~ひろ~い!」 「ありす、ここが気に入ったわ! さっそく、お引っ越しの準備しましょ!」 「ゆ? 誰かいるよ!!!」 入ってきたときは誰もいなかったはずなのに、気がつけば自分たちの目の前にゆかりんがいた。 そのゆかりんは一瞬だけ笑ったように見え、 ザクッ! 袈裟に切られた。 しかし三匹には何がゆかりんを切り裂いたのか、見えなかった。 ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ! ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ!ザクッ! ゆかりんは中身をまき散らかし、残骸があちこちに散らばった。 その中で、目玉だけはしっかりと三匹を見据えていた。 ----Y暦27年.山奥の洞窟 お気づきの方もいらっしゃると思いますが、 これらは「不安の種」のエピソードを元に作成されています。 これかなり怖いので、怖いの苦手な方は見ない方がいいです。 次は「不安の種+」のエピソードも書こうかなぁ、と思っています。 今まで書いたSS? ドスまりさとゆうか1~3 ゆっくり闘技場(性)1 不幸なきめぇ丸 名物餡玉 行列の出来るゆっくり スカウトマンゆかりん前・後 ファイティング親子とゆっくり まりさの商売 ぱちゅりーの失敗1~4 盲点 進化 ぶっかけ!ぱちゅりー! 短い話しを一つだけ ありふれた話 対決!ドスまりさ! 被虐のみょん_その一 とあるきめぇ丸の一日 おさんぽバターみょん さなえに首ったけ ゆっくり兵団 このSSに感想をつける
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何の苦痛もなく暮らすゆっくりがいます 食い意地の張った名無しのお姉さんの日常独白形式です 虐待描写は無いに等しいです 借り物設定、俺設定あり ------ゆっくりは何でできているの?------- What are little girls made of? Sugar and spice And all that s nice, That s what little girls are made of. 私が小さい頃、父が私と遊びながら歌っていた歌がある。 女の子は何でできてるの? 私はそんな風に歌われている女の子になりたかったが、ある時からその歌を歌うことをやめた。 それでも得意の菓子作りだけはやめられない……悔しいけど、そういうものよね。 私は目の前で堕落の限りを尽くす饅頭を見つめながらため息をついた。 「ゆゆっ!おねーさんだ、ゆっくりみていってね!」 「おねーさんゆっくりしていってね!」 「おねーさん、とかいはのありすはきょうもうつくしいでしょう?」 「むきゅー、びようのためにゆっくりすいみんをとったわ」 不愉快な声を聞きながら私は飼育箱にいる饅頭たちを見比べた。 れいむは肌艶もいい、まりさも今日は髪が乱れていない、ありすは自惚れ入ってお手入れに時間かけてないな。 ……ん?ぱちゅりーが珍しく生き生きしてる。 饅頭たちは私の言葉を待って目を輝かせて見つめている。こっちみんな。 「発表しまーす、今日一番可愛いのは……ぱちゅりーです」 そういうと饅頭たちはいっせいにぱちゅりーの方を向く。 「一番になったぱちゅりーには一番たくさんお菓子をあげるね」 「むきゅー?!」 当のぱちゅりーは自覚がないのかきょとんとしている。ぱちゅりーは今まで一番になった事がない。 他の3つに比べればまだまだだが貧弱饅頭の努力が実ったという事で今回は一番にして褒めてやることにした。 「ゆっ、あしたはれいむがいちばんになるよ」 「まりさももっときれいになってやるぜ」 「そうだね、頑張って綺麗になってね」 「ぱちゅりーゆっくりきれいになったよね」 「まえよりずっとげんきになったぜ」 「む、むきゅ?そう?」 普通なら罵声が上がりそうなものだがこの饅頭たちには三つの事を教えてある。 綺麗になったらもっとたくさんお菓子が食べられる。 可愛くない事を言ったりしたりするゆっくりはお仕置きされる上、ご飯が食べられない。 毎日綺麗になる努力をして頑張ったゆっくりからたくさん食べられる。 だからここで自分の方が、なんていえば餌抜きになるのを饅頭たちはよく知っている。 「ああああぱちゅりーにまけるなんてえええ」 ありすだけが自分の努力不足を認められないでいる。このありす、身体(といっても生首だけど)のお手入れが得意で最初から綺麗な方だった。 最初の方はずっと一位だったが最近はれいむたちが追いついてきて一位でない日の方が増えてきた。 「二位は……れいむもまりさもどっちも頑張ってるから二人とも二位。一番ダメなのはありす」 最近では面倒だから適当に順位をつけていたがありすを最下位にした事はなかった。 「ああああああああああありすがいちばんだめなのおおおおおおおお????」 あ、しまった。ストレスかけちゃダメ。 「かわいいありす、聞きなさい」 饅頭におべっか使うのも癪だがこうでも言わないとこいつは人の話を聞かない。 「ぱちぇりーが一番なのは今まで頑張ってきたから、れいむとまりさも頑張ってきた。ありすは今日、なにか頑張った?」 ありすは箱の中で少し考え、ようやく思い出したのか俯いた。本当に何もしてなかったのか、この饅頭。 別に何も努力しなくてもいいんだがストレスかけさせることだけはさせたくない。 「わかったのなら明日から真の都会派ビューティーを目指しなさい。可愛くなるのは好きでしょう?」 自分でも意味不明な事を言っているがありすは納得してとかいはびゅーてぃーを目指す決意を固めたようだ。 そして私は用意した餌をそれぞれの飼育箱に放り込んで部屋を後にした。 「もう頃合かな。あれだけストレスかけないようにしたんだから相当甘みはない筈……」 甘い饅頭は既に食傷気味だった。 家を出て、裏の小屋へ向かう。元々は鶏小屋だったが今ではあの小綺麗な饅頭の餌用の饅頭繁殖小屋だ。 一応今も鶏はいる事はいるが日中は庭を走り回っているし、夜は基本梁の上で寝ている。 最終的に自分がおいしく食べるためには餌の管理もしっかりやっておいた方が安心する。 あの小奇麗な饅頭に何を食べさせてもいいんだけど一応別の饅頭で一回濾過しておきたいというのはある。 まあ、天然物もそれはそれで好きだけど、人里近くに住む饅頭は人家のゴミを食べている可能性があるから。 天然物は基本的に山奥で採取することになるんだけどね。 「饅頭生きてる?」 「ゆゆゆっ!!!」 あからさまにゆっくりできない人が来たと言わんばかりの饅頭たちだが気にしない。鶏小屋に入って鶏が騒いだって気にする人はいないでしょ? 物置小屋の床の上には透明な箱がいくつか並んでいる。その中には大人饅頭がそれぞれ詰められていて大きめの箱には頭から何本も茎を生やした母親饅頭が何匹かいた。 何故か茎の数が昨日と変わっていない。 「あれ?もうとっくに落ちてると思ったのに。餌が足りなかったかな?」 「ゆっ、そうだよ、まだうまれてないよ。ゆっくりまっててね」 「ふうん……」 原因はすぐにわかった。母の一念岩をも通す、生まれ落ちたらゆっくりできないからずっと枝についていろと母饅頭の祈りが通じたようだった。 しかしよく見れば本来なら枝から離れる大きさであり、既に枝についたまま私の方をしっかりと見つめている。 生まれていてぶら下がっているのか、未だ生まれていないのか判別方法は簡単。 「ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっくりちていってね!!」」」 饅頭の条件反射に笑いたくもなるが母饅頭は真っ青な顔をしていた。 「ち、ちがうよ。いまのはれいむがしゃべったんだよ、あかちゃんはしゃべってないよ」 しかしそんな言葉など聞き流して饅頭の頭の茎の根元をつかむとグラグラ揺すった。 「やめてえええれいむのあかちゃんがおっこちちゃうううう」 枝の赤ん坊は事実上生まれている。単に枝に引っかかっているのと同じこと。 やがて小さな饅頭は枝からぽろぽろと零れ落ち、感動の親子対面となった。 まあコレくらいは許す。というかコレをやっておかないと美味しくならない。 「おかーしゃん、やっとおかおみれたあ」 「おかーしゃんおにゃかしゅいたー」 子供がすべて落ちる。生やした茎の数からするとちょっと赤ん坊饅頭の数が少ないが最近消費量増えて連続出産させてるから仕方ないか。 あの四匹用にそれぞれまりさ、ありす、ぱちゅりーの三匹同時に相手させて常に四種類取れるようにしてたからなあ。 饅頭の数を数えているうちに母饅頭の頭から茎がもげ、赤ん坊饅頭はそれにかじりついた。 最初が肝心、ここで最初で最期の幸せな想い出を作ってもらおう。 さて、このれいむはしばらく休ませて別のを母体にしよう。 赤ん坊饅頭がすべて腹を満たし幸せそうに母親に擦り寄っているのを確認し、私は母饅頭の髪をつかみ箱から取り出す。 「いいいだいいいいいいいいいいばな゛じでえええ」 「おかーしゃーん!!」」 空いている透明な箱に収め、さっさと回収作業開始。 髪が抜けそうになって頭皮の痛みに涙目になっていた母饅頭はようやく私の行動を理解したようだ。 「やめてええ゛え゛え゛れ゛い゛む゛の゛あ゛がち゛ゃんも゛っでがな゛い゛でえ゛え゛え゛え゛え゛」 私は鶏小屋で卵を拾うように生まれて間もない赤ん坊饅頭を拾っていく。 「ゆゆゆ?おかーしゃんはどこー?」 「おかーしゃんのところにちゅれてってね!」 「むきゅむきゅ?」 「とかいはのありすのかわいしゃにみとれてるにょね」 疑うことを知らない図々しいチビ饅頭は口々にそんなことを言うが拾った饅頭が入るのは母親とは違う別の箱。 「まずあなたたちはこっち、大丈夫よ」 とりあえず先に四種各一匹を完全防音の箱に入れ周囲の刺激から隔離する。こいつらが音も外の様子もわからなくなった所で残りの赤ん坊饅頭を見下ろす。 「おねーしゃん、れいむをおかーしゃんのとこりょにちゅれていってにぇ!」 「お母さんの所には連れて行かないよ、これからずっとゆっくりできない場所に連れて行ってあげる」 そういうとチビ饅頭たちは火がついたように泣き始めた。 「まっでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛れ゛い゛む゛ばな゛に゛ざれ゛でも゛い゛い゛がら゛あ゛がち゛ゃんばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 母親の悲痛な叫びにそれが脅しではない事を悟るチビたち。生まれたばかりのまっさらな餡子が次第に甘みを帯びていく。恐怖はこいつらの餡子を甘くする。 死んだ瞬間から本当の意味で饅頭になるこいつら、餡子を腐らないよう日持ちさせる方法って知ってる? そう、餡子の糖度を極限まで高めるの。 牛肉は三週間、鳥は十二時間、魚は数時間。 普通の動物なら死後硬直の関係で熟成期間というものがあるのだけど、こいつらに関してはそれがない、まるで動物ではないというかのように。 それでも私達はおいしくする方法を知っている。 小箱の四匹は小奇麗な饅頭の部屋においておき、先ほど回収した生まれたての大量のチビ饅頭を台所へ持ち込んだ。 「ゆゆっおかーしゃんのことろへゆっくちかえちてね?」 饅頭が何か喚いてるけどさて、飼ってる家畜のために餌の準備を始めましょうか。 私は饅頭に向き直って美味しくなるための呪文を唱える。 「あんたたち、実は親に捨てられたの」 本当は生む気がなくて枝についているうちに殺したかったの。 でも生まれちゃったから代わりに私が殺してあげる事になったの。 なんで私がって?だって子供殺したらゆっくりできなくなるもの。 だから汚れ役を私が引き受けたの、お母さんがゆっくりするためにね。 あんたたちのお母さん、演技うまいよね、アレだったら誰も子供殺しを依頼した母には見えないもんね。 うん、恨むならお母さんを恨みなさい。 お母さんは自分がゆっくり生き残るためにあんた達を捨てたの。 「おお、非道非道」 ……呪文長いよ。 言っておくが私は虐待お姐さんでもドSでもない。普通の動物は苦しまないようにさっさと絞めないと美味しくなくなるのにこいつらだけは逆なんだから全く面倒くさい。 鶏だったら逆さ吊りにして首落すだけなんだけどな。 とりあえず涙でふやけない様に布巾もたくさん用意したし、逃走防止に竹串で串饅頭にしたし、あとはあの家畜好みの甘~い饅頭に仕上がりますように、っと。 「もう一つ教えてあげる。あんたのお母さんね、できるだけあんた達を苦しめて殺して欲しいって。そういう約束だから」 胡散臭い方法だが言質は取ったのでまあ大嘘って訳ではないのだが。 包丁まな板菜箸お玉木杓子竹串鉄串爪楊枝タコ糸骨抜き擂り粉木当り鉢ささら簡易バーナー下ろし金ピーラー裏ごし器スライサーはさみ焼き網シノワやっとこ肉叩き、必要な道具はすべて揃えた。 「ゆっくり苦しんで逝ってね」 「「「「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」」」 あ、私の耳栓忘れた。 小奇麗な饅頭用にこのチビ饅頭を加工する。最終的にゆっくりだとわからなくなるように、髪の毛やら目玉やら歯やら舌やら丁寧に取り除く、もちろん生きたままで。 途中虐待お兄さんから教わった四十八の虐待技をいくつか試してみるがチビ饅頭だと加減が出来ずにオレンジジュースのお世話になることもしばしば。 いい加減チビ饅頭用の加減を覚えないと余計な金がかかって仕方がない。 今回収穫分の処理を終え、ご褒美お菓子がようやく完成した。 これじゃ足りないないなあと思いつつ、再び物置小屋へ戻る。来週収穫する分の種まきのためだ。 面倒な揺さぶり作業を終え、明後日収穫する茎付き饅頭の様子も確認。明後日はたくさん取れるから今回はまあ我慢しておくか。 収穫ごとの面倒な作業も終わり、小屋の隅の鶏スペースから卵をいくつか失敬しつつ私は小奇麗な饅頭の部屋へ行く。 チビ4匹の箱を開けると思った以上におとなしくしていた。私が覗き込んでいることにも気付いていないようだった。 チビ饅頭の箱に菓子を入れておいた所為か親から引き離された事など忘れて菓子を貪っていた。 「む~しゃむ~しゃ」 「ちあわせ~♪」 先週生まれた姉の成れの果てだというのにのんきなもんだ、このまま死ぬまでのんきに育って欲しい。 菓子を食べつくした所で私はチビ饅頭に声をかけた。 「ねえ、おちびちゃん」 「ゆゆっ?」 顔を上げたチビ饅頭を箱から出し手に乗せ、私は透明な箱の中でお洒落に余念がない四匹の饅頭を見せる。 「あそこにいるの、すごく綺麗なゆっくりでしょう?」 そういうとチビたちはぽかーんと口を開けて饅頭たちを見つめていた。 母親以外ほかの饅頭を見たことがないこのチビでもあいつらの美しさはわかるらしい、私には何がどう違うのかよくわからないけど。まあやつれた母親よりはずっと綺麗かな? 「しゅごーい……」 「きれい……」 チビの視線に気付いたか食材たちは優雅(……なのか?)に微笑んだ。 「これからね、貴方達はここであんな風に綺麗になるためにゆっくり過ごすの」 「ゆ?」 この小指の先ほどの餡子脳にもわかるように説明する。 近いうちにあの饅頭はもっとゆっくりできるところに行く。空いた部屋に入って次に綺麗にゆっくりするのは自分達、ご飯はいつも美味しくて甘いお菓子がついてくる。 箱の中はゆっくりし放題のベストプレイスであると。 チビは簡単に信じてくれた。実際に綺麗なゆっくりがゆっくり過ごしてる様子を見れば納得するしかない。 「ゆゆー!れいむゆっくりちゅるよ!」 「ゆっくりきれいになりゅよ!」 嬉しそうなチビ饅頭たちだったがその時、一匹が忘れかけていた事を言う。 「おかーしゃんは?おかーしゃんと一いっしょにきれいににゃれにゃいの?」 当然聞かれるとは思っている。答えはいつも同じ。 「お母さんはね、貴方達を生んで凄く疲れてるからゆっくり元気にさせているんだよ」 「おねーしゃんやいもうとたちはー?」 「今お母さんを元気にさせるためにお姉さんのお手伝いしてくれてるんだ。お母さんが元気になればみんなゆっくりできるよ」 「まりさもおかーしゃんゆっくりしゃしぇるのてちゅだうー」 「ううん、大丈夫よ。他の皆が手伝ってくれてるから。何で貴方達が特別にここに連れてこられたか教えてあげようか?」 「むきゅ?しりたいでしゅね」 「それは貴方達がほかのどのゆっくりよりもゆっくりして可愛かったから」 うそうそ、適当、超テキトー。 「だから貴方達は特別なゆっくりなの、もっと綺麗になってお母さんをびっくりさせようね?」 「「「「はーい」」」」 チビ饅頭はあっさり信じた。今度はでかい饅頭の方に話をすると綺麗な自分に憧れている赤ちゃんという事であっさり面倒を見るといった。 同種同士なら問題は起こりにくい。あとは頃合を見てでかい方を箱から出すだけ。 一応、赤ちゃんをいじめるのは美しくない行為だと教えたのでいじめる事はないだろう。 「ゆっくりきれいになってね!」 「ゆっくりきれいになるよ!」 箱の中からは元気な声が八つ聞こえてきた。 さあ、明日はあのデカ饅頭からようやく中身を取り出す日だ。 二ヶ月に一度の私の楽しみ、極上の食材が明日手に入る。 それだけで私の顔は自然と笑みを浮かべていた。 小奇麗な饅頭は食材用。時々食肉用の家畜に名前をつけて大事に可愛がる人がいるでしょう?あれとおんなじ。 潰して中身の餡子を食材にするだけなのに何故こんな面倒なことをするのかといえば理由は二つ。 一つは甘さ控えめにするため。 餌用は極限まで甘くして食材にとっては最高の菓子になるように作っているが、どれほど甘いものを食べさせてもストレスのかからない餡子脳は甘くならない。 虐待された饅頭は甘いが甘すぎてよほどの甘党でなければ食べられない上に非常に太りやすい食材だ。なので体重が気になる乙女としては甘さ控えめで自分の好みに調整できるくらいの方がいい。 お菓子好きにとって体重との戦いは最重要課題なのだ。 そしてもう一つの理由。 楽しく頭を使わせることでうまみやコクを増やすため。 無理矢理頭を使わせるとストレスがかかって甘くなるが、自分が綺麗になるための努力や工夫ならあの饅頭はストレスなく進んで少ない餡子脳を働かせる。 多頭飼いするのも向上心を持たせたり他人のアイディアを取り入れたりとよい方向で頭を使うからだ。 虐待饅頭が美味いのは己にふりかかる理不尽な暴力に対して必死に理由を求めるからで、使いすぎて頭が心ごと壊れると間違いなく味は最高だ。 けれども甘みも最高、カロリーも最高になってしまう、これは乙女にとって非常に辛いもの。 それを解決するためにこんな面倒な方法を使っている。 この方法が見つかってから私は潰した饅頭の中身で菓子を作って友人や職場の人間に配っている。 甘すぎず、しかし濃厚。最高の食材だ。 あの饅頭が材料だと気付かない人が多いのでその件は黙っている。おかげで私は職場ではお菓子作りの好きな女の子らしい女性と見られている。 女の子は何で出来てるの? 砂糖 スパイス 素敵な何か そんなこんなで出来てるわ。 そう、私はお砂糖とスパイス、そして人には明かせない何かでできている。 私はお菓子が好き、花を見るのが好き、愛らしい小物やキラキラ光る小石が好き。穏やかな陽だまりで日向ぼっこするのも好きだ。 けれど。 時々それがあの饅頭を思い出させて嫌な気分になる。 女の子なら誰でも持っているその菓子や可愛いものが好きな感覚をあの饅頭は持っている。 女の子は綺麗で可愛くありたがる。自己満足のために、愛しい人を手に入れるために、時に同性からの羨望の眼差しを受け悦に入るために。 私は饅頭の群れがそんな女の浅ましさを披露しているさまを見た。 この性別不詳の饅頭は、時として女よりも女らしい思考をしてみせた。 その瞬間、まるで自分がこの饅頭と同じだと言われたような気がした。 私は決して美人ではないけれど、石を投げられるほど不細工でもない。 何の特徴もない可もなく不可もなくそれこそ群れた饅頭のように。 大して美人でもないくせに、と男どもに笑われながらも着飾ることをやめられない。 私達が見るあの饅頭のように私たちも端から見ればどれも同じ、そういうことなのだ。 今まで腹の立つおやつとしか考えなかった私だが正体不明の腹立たしさの理由にに思い至りしばらく虐殺に走った。このとき虐待お兄さんと知り合ったがそれはまた別の話。 しばらくして、饅頭を殺しても私が女である事は変えようがないのだと気付いて虐殺はやめたが、おやつ集めと称して森に入ることは続いている。 それ以上に種別名の元ネタにされた人たち見たら悩むのが馬鹿馬鹿しくなったというのもある。 結局私は私、饅頭は饅頭ということ。 何も饅頭に乙女になれとか、駄目な女は饅頭になれとかそういうことではない。 誰かがこの饅頭たちは人間を映す鏡と言ったけれども残念ながら私は饅頭じゃない。少なくとも饅頭を見て己を省みるような事はしない。 「次は何を作ろうかなあ」 小屋で回収した卵を台所へ持ち込み、私は明日の予定を考える。 「ぱちゅりーの生クリームが上手くいっていたら明日の晩御飯はシチューね、後で鶏絞めとかないと。失敗して甘くなったら……」 んーと小さく呻いて私は手を叩いた。 「ババロアにするか。卵があるからありすはウフ・ア・ラ・ネージュのソースに使おう、残ったらシュークリームに入れればいいか」 残った皮や顔側について甘くなった部分はバラして食材饅頭の餌にしよう。 「そういえば由蔵さんがそろそろ冬用に豚潰す時期だっけ?まりさとれいむは晒し餡にして由蔵さんの豚肉と交換してもらおう」 明日は仕事も休みだし、朝から一日お菓子作りが出来るんだ。 そう思うと明日が楽しみで仕方なかった。 休み明けの職場、午後のお茶時。 誰かが外部から持ち込まない限り、お茶請けは裏の工場で作られている製品か開発室の試作品。 流石に皆饅頭には飽き飽きているようで、上司はメタボな腹を揺らしながら甘さ控えめシュークリームを絶賛している。 誰も中身のカスタードと生クリームがゆっくりだとは気付いていない。この流通課の人にはわからないみたい。 一人、小首をかしげているのは虐待お兄さん、職場の先輩であり虐待術の師匠でもある。流石に気付いたようで小声で話しかけてきた。 「これ、ゆっくりの中身だよな?」 「ばれましたか」 「甘くしないなんて虐待技を身につけた君らしくない調理法方だな」 「だって虐待すると甘すぎて……でもコレの餌は虐待技で甘くしてますよ?自分が美味しく食べるために手間は惜しみませんから。そうだ、来月暇あります?」 虐待お兄さんは私からの誘いに不思議そうな顔をした。 「知り合いが豚を潰すんですよ、よかったら一緒に手伝いに行きませんか?豚を絞めるのには虐待はありませんけど、解体作業とか新しい虐待技のヒントになるかもしれませんよ?」 しかし虐待お兄さんは首を横に振りながら苦笑する。 「俺は餡子以外の内臓には興味ないんだ」 「それは残念です」 由蔵さんが美味しくなあれと育てた豚も、私が美味しくなあれと育てた饅頭も、どっちも同じ食べ物なのに。 「そういえば社員旅行の観光コースどうします?やっぱり秋の虐待散策コースですか?」 「そりゃ当然、君はどうする?」 「んー、幻の芋饅頭栗饅頭姉妹も気になるんですが、幻追いかけるより素直に河原で鮭ときゅうり饅頭捕まえて酒飲んでますわ」 ちなみに河童饅頭はきゅうりの漬物が入ったおやき風の饅頭だ。 「河童饅頭にまで食欲掻き立てられるとは……」 「……饅頭に加虐心煽られる人に言われたくありません」 こうして午後の穏やかな時間がすぎて行く。 その後終業間際に急遽ドス饅頭と群れ饅頭が運ばれてきて伝票製作と工場への移送で残業になったが、それほど嫌な気分にはならなかった。 工場へ送られるドス饅頭たちを見送りながら、鼻歌交じりに餡子玉を口にする。 ゆっくりはなにで出来てるの? What are YUKKURI made of? 餡子 小麦粉 Beans Paste and dough. 不気味な何か And all that s eerie, そんなこんなで出来てるわ。 That s what YUKKURI are made of. 「……お前、また勝手に中身えぐったな?」 「いいじゃないですか、ほんの数百グラムですよ?」 ドス饅頭の餡子は大味で美味しくないとは思った。 end のちがき 初投稿 お姉さんは加工所の流通課、集荷場勤務 食いネタは幽々子様の専売特許だかそんなことは気にしない。 餌用饅頭の加工風景は気が向いたら書いてみます タイトルの元ネタは鵞鳥小母さん 男の子は何で出来てるの? What are little boys made of? 男の子は何で出来てるの? What are little boys made of? カエル カタツムリ Frogs and snails 小犬の尻尾 And puppy-dogs tails, そんなこんなで出来てるさ。 That s what little boys are made of. 女の子は何で出来てるの? What are little girls made of? 女の子は何で出来てるの? What are little girls made of? 砂糖 スパイス Sugar and spice 素敵な何か And all that s nice, そんなこんなで出来てるわ。 That s what little girls arc made of. このSSに感想を付ける
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※fuku2275の続きです ※「ちーんぽ」と言わないゆっくりが出ます。 「らんしゃまぁぁぁぁ!!」 恐怖を振り払う様に、そう叫びながらちぇんは駆け出していった。 それに反応してか、らんの下敷きの形になっていた蜘蛛は、 あっさりとらんの束縛を解き、まるで地面に潜るかのように移動を始める。 先程まで、まるで居ないモノであるかのように対応していたというのに、 これはちぇんを新たなる外敵と認めての反応だろうか。 それに対して、ちぇんはらんを一瞥しただけでそちらに駆け寄ろうとはしなかった。 敵の束縛が解けたというのに、ビクビクと痙攣するだけのらんにしてやれる事などなかったのは勿論の事、 それを間近で見てしまう事に対しての恐怖も有った。 だが何よりも、らんとちぇんがゆっくりする為には、 今は眼の前の敵を撃退する事に全神経を傾けなければならない事を理解していたからだ。 「わかるよー」 地面を掻き分けるように移動する蜘蛛を後ろから追う形となったちぇんは、 出来るだけ扱い易く、そして丈夫そうな木の枝を探しそれを口に咥えた。 蜘蛛の力は物凄いモノが有るが、その表皮はゆっくりの皮膚と耐久性は余り変わらない。 と、先程掴まれた時の感触から、ちぇんはそう判断した。 ならば、自分でも渾身の力を込めた攻撃を行えば、致命傷を与えられるかもしれない。 そう考えながら、ちぇんは敵の後を追い続ける。 「……疲れているかもしれない」 ちぇんのその行動を観察しながら、副長は呟いた。 その言葉は、誰に対するものだろうか? そう私は思ったが、恐らくはちぇんでは無く、その相手である蜘蛛の方に向けた言葉であろう。 地面を潜って移動しているとはいえ、動きの方もかなり鈍く感じる。 そもそもあの蜘蛛は、らんやちぇんが落下する前からかなりのゆっくりを処分していた。 無機質な顔をして感情など窺う事など出来はしないものの、生物である以上疲れは蓄積するものだ。 更に、自然界の生物は「危うい闘い」とも言える、五分五分の闘いを出来るだけ避けたがる。 それは例えその闘いに勝ったとしても酷い傷などを追った際には、遅れて死に至る結果になったり、狩りが出来ずに飢え死にしたりする事もあるからだ。 そんな蜘蛛からしてみれば、らんはかなりの強敵であった。 攻撃を受けたのは一度だけとはいえ、精神的な消耗はかなり激しいものがあった筈だ。 らんとの闘いにより今まで敵ですら無かったゆっくりという生物であったが、思いも寄らぬ力を見せられ、そういった危険な敵という認識が芽生えたのかもしれない。 それが今現在の、「敵から一旦逃げ出す」という行動を起こしているのだろう。 蜘蛛は一目散にちぇんから距離を取ろうとする。 しかし、其処は限られた空間である水槽の中。 すぐさま蜘蛛は端まで辿り着き、すぐさま切り返して距離を取ろうとした時には、ちぇんが跳びかかって来た後で有った。 「ゆっぐぅぅぅ!!」 ちぇんは口に真横の形で咥えた棒を地面が盛り上がった場所へと突き立て、何かを突き破る手応えを感じた。 そのまま体重を乗せて押し込むように突き刺すと、やはりズシリとした感触が感じられる。 ――勝てる!! 不意打ちに近いとはいえ、あの怪物に手傷を負わせる事が出来た事に、一種の感動にも似たものを覚えた。 「ゆっぐりじね!!ゆっぐりじねぇ!!」 口に棒を咥えたままちぇんは叫び続け、グイグイと棒を押し込む。 ここで決めねば勝機は無い。 もし殺り損ねれば、敵にはまだあのよく判らない見えない攻撃が有る。 一度見たのでそのまま喰らう事は無いにしても、打開策など考え付くわけも無く、あれを出されれば成す術も無い。 ちぇんはそう考え、元より短期決戦で臨むつもりであった。 するとふと、ちぇんは体が浮き上がるような感覚に陥る。 いつのまにか、敵に吹き飛ばされたのか? いや、違う。自分の体が引き摺られながら木屑の海を移動している。 蜘蛛がちぇんが咥える棒を刺したまま移動し、あがき苦しんでいるのだ。 暫く、ちぇんはヨットの帆にでも成ったかの様に、木屑を飛散させながら引き摺られていた。 それでもちぇんは、歯を喰いしばって棒を敵の体奥底へと押し込もうとしていた。 臆して離してしまう様な事があっては、折角の勝機が逃げてしまう。 と、何度も頭の中で反芻し、必死に成って蜘蛛の動きに抗うように眼を瞑り力を込める。 だが、そんなちぇんの思いを裏切るような事が起きた。 「ゆ”っっっ!!?」 急に無重力になった感覚を感じ、地面を転がっていた。 ちぇんには一瞬何が起きたのか判らず、眼を開ける。 そこには予想外の情景が広がる。 蜘蛛が移動する負荷と、ちぇんの押さえ込む負荷に棒が耐え切れずにその半ばから折れてしまったのだ。 そして、眼の前には敵である筈のあの大蜘蛛が存在していた。 その上にはちぇんが突き立てた棒の柄が少しだけ覗く。 背中に掛かっていた負荷が取れたのを好機として、すぐさま地面から這い出てちぇんの前に立ちはだかったのである。 「わ、わかんないよぅー」 突然の事態の急変に、ちぇんは眼に涙を溜めて呟く。 そこには先程までの勇敢なゆっくりちぇんの面影は何処にも無かった。 らんの言葉で一種の興奮状態に陥り、最初の攻撃が改心のモノで有ったため、ボルテージが一気に上がりはした。 しかし、その幸運も長くは続かず、敵を仕留め切れなかった事についで、 自身の身が今正に風前の灯火で有る事を理解し、一気に熱が冷めてしまったのである。 「ゆゆ、ゆっくりしよう。ゆっくりしよう……ね?」 何を思ったのか、ちぇんは先程まで殺すつもりであった蜘蛛に対してそう問い掛け始めた。 命乞いのつもりなのか、ゆっくりとしての本能としての言葉なのか。 よく判らないが、それでもちぇんは涙を流しながらも引き攣った笑顔で「ゆっくりしようね。ゆっくりしようね」と、何度も眼の前の相手に語りかけた。 もちろんの事では有るが、そんなものは何の解決の手助けにはなってくれなかった。 眼の前の蜘蛛は、口の鋏角を動かし「シャワシャワ」と威嚇音を出す。 その無機質な八個の眼も、どこか傷に対する怒り醸し出しているように感じられる。 じりじりとちぇんの方に近付き、補足するべくその脚がカサカサと音を奏でる。 「ゆ……ゆ”っぐじ、じよう”よ”ぉぉぉぉぉ!!」 それに耐え切れなくなったちぇんの絶叫に合わせて蜘蛛が飛び掛る。 結局、駄目なゆっくりである自分では最初からどうしようもなかったのだ。 そう頭の中で思った一方、相反するものも去来した。 そこには自分の愛するらんと、それにいつも甘えてばかりの自分の姿。 頼ってばかりで何もしてこなかった自分の駄目な姿である。 ――そういえば、らんしゃまのためにじぶんがなにかして「あげれた」ことなんてなかったなぁ。 そう思った。 何かして「あげよう」とした事は確かに存在した。 ここに来る事になった原因でもある盗みの件だ。 それにしても、らんに対しては迷惑にしかならず、何かして「あげれた」事には成らなかった。 本当に駄目なゆっくりだ。と、自分に対して呆れる。 今回の闘いも、何だかんだで途中で諦めてしまったではないか。 何をやらせた所で、何も出来ないゆっくりなんだ。 自分なんかが死んでも、他のゆっくりに迷惑を掛けるゆっくりが消えるだけだ。 と、ちぇんは自分自身でそう納得しようとした。 ふと、「そんなことないよ」という声が聞こえてくる。 らんしゃまのこえだ。 らんは言った。 「らんしゃまは、ちぇんがいるからゆっくりできるんだよ」 ――と。 一度は納得し掛けたちぇんではあったが、その言葉に、 自身の声とらんしゃまの声、どちらを信じれば良いのか全く判らなくなった。 又、頭がガンガンと痛くなってしまう。 いつもそうであった、ちぇんが難しい事を考えるといつも頭が割れるように痛くなる。 そして、いつもであれば、ちぇんはそこで考えるのを辞めてしまう。 考えた所で何も判る筈が無いのを、ゆっくりちぇんは理解していた。 結局判っていなくても、何も考えずに「わかるよー♪」と言ってしまう生物なのだから。 だが、今回はもう少しだけ考えてみようと思った、考える事が出来るのはここが最後なのかもしれないのだから。 もうちょっとだけ、考えてみよう。 そして、その結論もまた、物凄く速かった。 ――らんしゃまのことばをしんじてみよう!! 「ゆぶぅぅぅぅぅ!!」 飛び掛る蜘蛛に対して、ちぇんはいきなり何かを吹きかける。 先ほど地面を引き摺られた際に、棒を咥える口の横から入り込んできた木屑であった。 それを自身の肺活量を最大限に使って蜘蛛の顔面に吹き掛けたのである。 さしもの、野生の生物である蜘蛛も虚を突かれたのだろう。 一瞬、そのまま捕縛するかに見えた脚の動きが止まる。 「わかるよぉぉぉぉぉぅ!!」 そのまま間を置かず、ちぇんは空中の敵の対して正面から渾身の体当たりをぶちかまし、 それが直撃した蜘蛛は、大きく吹き飛び裏返しになってしまう。 その蜘蛛の起き上がろうと慌てたように忙しなく動かす八本の脚を見ると、 相手が焦りを見せているのを、ちぇんにも初めて感じられた。 ここで、一気に決める。 そう決意を決め、敵との距離を詰めるちぇんの耳に意外な声が響く。 「みょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!」 突然何かが落下してきた思うと、それは裏返った蜘蛛の真上へと落ち、ボスンと大きな音を発する。 ちぇんにしても、ましてや蜘蛛にしても意外なそれは、唯一人上空の棒へと喰らい付いていたゆっくりみょんであった。 「みょん、みょん!!みょん、みょん!!」 呆然とするちぇんを尻目に、下敷きとなった蜘蛛を何度も飛び跳ねて潰そうとする。 ハッとしてちぇんは理解した。 上に居たみょんも、ちぇんを助けるべく様子を窺っていたのだという事を。 そして、自分の真下にそれがやってきた今が最大のチャンスであり、それを実行した事を。 ただひたすらに、蜘蛛に攻撃を仕掛けるみょんに対して、今すぐ飛び付きたくなる程の喜びの衝動を感じた。 「みょん、みょんみょん、みょぉぉぉぉぉん!!」 そんなちぇんに、みょんは飛び跳ねながら向き直り、そう叫んだ。 何を言っているのかさっぱり判らなかったが、その鬼気迫る表情から察するに、このまま二人で潰し切ろうという意思表示だと受け止められた。 ちぇんはそれに呼応して、蜘蛛に飛び掛ると、そのジタバタと動く脚と、たまに舞い散る毒毛に気を付けながら、何度も攻撃を繰り返す。 「へんなけが、めにはいらないよぅにきをつけるんだよー!!」 みょんにそう掛け声をあげながら、跳ね回り、みょんもそれを受けてか「みょんみょん」言いながらも攻撃を続ける。 何度も踏みつけられながら、蜘蛛は木屑の中に埋まっていき、 その忙しなく動いていた筈の脚の動きが鈍くなってきたのを見れば、攻撃が効いているのは見て窺えた。 それでも時折、出糸突起から糸を噴出したり、裏返ったまま脚で敵を捕まえようとしたり、鋏角で噛み付こうとしている辺り、まだ戦意は有る様に思えた。 しかし、この劣勢の中ではそんなものは然したる問題にならず、多少糸がくっ付こうとも、体が傷付こうとも二匹は構わず攻撃を続けた。 自分の大切ならんしゃまを、他のゆっくり達をあんな風にした怒りをちぇんはぶつけた。 そんな単調な攻撃が何十秒か、それとも何分かは判らないが続いた後、 あろう事か、実験当初からは想像も付かない驚愕の光景が広がる。 千切れてそこらに落ちている脚や、痙攣したように動く脚。 ゆっくり達がその上から飛び退いても起き上がろうともしない姿。 何処と無く、その体も潰されたように平べったく見える生物。 この光景は明らかに、あの脆弱なゆっくりが異常とも言える大蜘蛛に勝利した光景だ。 「みょんみゅおんみょんみょん、みゅおぉぉぉぉん!!」 勝利の雄叫びであろうか。 その蜘蛛の様子を見て、ゆっくりみょんは嬉しそうに辺りを跳ね回っていた。 一方のちぇんではあるが、そんなみょんを尻目にすぐさま何処へ駆けて行ったかと思うと、絶望に染まった顔で立ち尽くす。 らんの絶望的な現状を目の当たりにしてしまったのである。 勝利の報を伝える為か、それとも安否を気遣ってか、気丈に笑顔で駆けて行ったちぇんが見た物は陰惨な現実であった。 眼や口や、切れた尻尾など、穴という穴から液体化した中身を噴出し、その張りの有った皮は、中身が減った事と液状化により、 まるで老人の肌のように皺だらけになっていた。 赤黒く充血したその眼も、近寄って来たちぇんを捕らえる事すら無く、ただ何処か虚空を見つめて何を映していない。 呼び掛けるちぇんに対しても、「ちゅぅぇん、ゆっぐり……じで、ね」と、単調に繰り返すだけで、 それはちぇんの言葉に反応している訳でなく、最後の言葉を繰り返し呟いているだけだというのが見て窺えた。 そんな死に行くだけのらんを眼にし、勝利の感慨など一気に吹き飛び、ちぇんは唯立ち尽くすしかなかった。 遅れてやってきたみょんも、どう声を掛けて良いのか判らず、困惑した表情を浮かべるのみである。 「二人とも、今回の試験はクリアだよ」 すると、二匹の頭の上から誰かの声が聞こえてきた。 今までこの様子を窺うだけであった、人間の声である。 そして、今の現状を産み出した相手であった。 「取り合えず、ちぇん君は蜘蛛を撃退。みょん君は凄い事に、棒と蜘蛛ダブルクリアになるのか」 みょんが落下した時には、もう10分経過後であったが、下の様子から副長は止める事も無く傍観していた。 みょんにしても、10分がどうとか、試験をクリアなど頭に無く、ただひたすらに下の様子を伺い、ちぇんを助け出すことだけを考えていたのだ。 「みょんみょん、みょんみょおぉぉぉぉん!!」 そんな人間の言葉に対して、みょんは怒りを露にして水槽の壁に体を打ちつける。 この眼の前の人間が、自分達をこんな目に合わせた元凶だと、みょんの餡子脳でも理解する事が出来たからだ。 その様子のみょんを、少し眺めていた副長は何ら怒っている様子も無く、 「ところで、君達はお腹が空いたりはしていないか?他にも何か望むものはあるかい?」 と、ゆっくりに対して優しい言葉で問い掛けた。 その言葉に反応を示し、食事でも要求しようかと思ったのか、一瞬みょんの動きが止まったが、それを振り払うかのように頭を左右に振ると、 再び水槽に体をぶつけ、怒りを表現して見せた。 だが、もう一匹のゆっくりであるちぇんは様子が違った。 「……てください」 俯き加減に何かを呟いているのである。 「んっ、何だって?すまないが、もう一度お願い出来るかい?」 それを聞き逃した副長は、そんなちぇんに対してもう一度言ってくれるようにとお願いする。 横で見ていた私は、口を尖らせてそんな一人と一匹の様子を見続ける。 するとちぇんは暫く沈黙していたが、思いを決めたかのように顔を上げると、 「だんじゃまを……だんじゃまを、ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃ!!」 涙と涎を流しながら、必死の形相でそう要求してきた。 苦渋の決断と余程の思いを込めた言葉なのだろう。 その言葉を聴いたみょんも意外そうな顔でちぇんの方を振り向く。 「ゆっくりか……流石にその状態のゆっくりを、ゆっくりさせられる術を私は知らないなぁ」 その要求に対して、副長は困った顔をしてそう返した。 私も流石に、あそこまで瀕死のゆっくりを助けられるとは思えもしなかった。 そして一方で、私達二人はちぇんの様子から「ゆっくり」に対するもう一つの意図を何と無く理解はしていた。 「それでも、だんじゃまをゆっぐりざぜでぐだざい!!」 「ううむぅ、それは何と言うか……「一思いに殺してくれ」と受け取っても良いのだろうかね?」 「ぞうでしゅ、だんじゃまをこでいじょうぐるじまぜない”でぐだざぃぃぃ!!」 自分が何を言っているのか理解して、堰を切ったように嗚咽を上げ始めるちぇん。 それに対して、「何を言っているのか?」と問い掛ける様に、ちぇんの周りを跳ね回るみょん。 そんな二匹を眺め、一度頷くと、副長は瀕死のらんをゴム手袋を装着したその手で掬い上げる。 その際、それに気付いたみょんが何度も体当たりを敢行し、それを止めようとしていたが、そんな事はお構い無しに回収する。 そして、泣きじゃくるちぇんに対して一度、 「本当に良いんだね?」 と問い掛けると、頷いたちぇんを確認し、らんを白い布に乗せて水槽の中から様子が見える近くの机に乗せた。 そのまま、近くの棚から何やらゲンノウという木槌を取り出すと、白い布の上でピクピクと震えるらんの前に立った。 みょんは、これから何が行われるのか理解し、それを止めるべく必死に水槽の強化プラスチックを破ろうとしてみたり、壁を登ろうとしている。 ちぇんは、机の上のらんをずっと眺め、体を震わせるだけであった。 「……ちぇん君、君が次の言葉を言い切ったら私はこれを彼女に振り下ろそう」 そう、副長は真剣な顔付きでちぇんに言葉を投げ掛ける。 それを受けて、ちぇんはビクリと身を震わせて、その場で再び俯いてしまった。 色々と、胸に去来する何かがあるのかもしれない。 それにしても、何て残酷な事をさせるんだ。と、私は思った。 要するに、「死刑執行の合図」を、自らが行えと言っている様なものではないか。 よりにもよって、自分の最も親しく大切な相手に対してだ。 それとも、ちぇんに決別させる事によって、さっき言っていた「悪意を乗り越える進化」というものを期待しているのか。 どちらにしても、何という研究者のエゴイズムであろうか。 私はそんな副長の行動に対して、何故か憎しみにも憐れみにも似た、複雑な感情を持った。 これも私自身が「自身の大切な相手に対してそれを行う事」を想像しての感情であるかもしれない。 ――そんな馬鹿な妄想しなければ良い。 と、私は自分に言い聞かせて気分を落ち着かせる。 こんな感情など、疾の昔にかなぐり捨てたものだと思っていたのに、時折ふとした拍子に湧き上がってくる。 困ったものだ。 「どうしたのかね、私としてはこのまま、君が近くで看取ってやる方が良いと思っているのだが?」 私が、その様なくらだない事を思案していた一方。 ちぇんも必死に思いを巡らせていたのだろう。 暫くの沈黙が続いていた。 俯いたちぇんの周りを、「考えを改めろ」と言わんばかりのみょんが、「みょんみょん!!」と大声を出して跳ね回るだけであった。 すると突然、ちぇんが意を決したように、 「だんじゃまぁぁぁ、でんごぐにいっでも、ゆ”っぐり”じでっでねぇぇぇぇ!!」 そんな叫びにも似た声が響いたかと思えば、間を置かずに「ドスンッ!!」という、何かが叩き付けられる音が聞こえた。 約束通り「ゆっくりさせて」やったのだろう。 そう思った私は、そちらを見る事も無く、ちぇんだけを見ていた。 隣に居たみょんは「みょぉぉぉぉぉぉぉん!!?」と、らんの最後を察して驚愕の表情で叫んでいたが、 ちぇんはというと眼を瞑り、涙を流して追悼の意を送っているのかのように見えた。 ゆっくりにもそういった「死者を慈しむ」感情なんてものが有るのか。 と、不躾な事ではあるがそのような感想を持ってしまった。 副長はというと、そのまま何の感慨も見せずにすぐさまその潰れたであろうゆっくりらんを白い布で包み込むと、 スタスタと水槽へと歩いて行き、ゆっくり二匹で無く、あの蜘蛛をその手で回収した。 「ふむ、この傷跡から体液が噴出して、それが致命傷になったか」 何やらそれをまじまじと見詰めて、死因を述べる。 あのちぇんの攻撃で背中に穴を開けたものの棒によって体液の噴出を抑えられていたが、 ゆっくり二匹の猛攻でそれが吹き飛び出され、そのまま一気に連続して加えられる圧力で噴出したのだろう。 それにしても――蜘蛛の死体を見て改めて思う。 本当に、あのゆっくりがあんな化け物にも見える大蜘蛛に勝ったんだなぁと。 自分は心の何処かで、ゆっくりを馬鹿にしていた部分が有ったのかも知れない。 そうでなくとも、ゆっくり対蜘蛛を一方的な虐殺としか捕らえてなかった節が有った。 それを、今は眼の前の現実で裏返されたのだ。 ゆっくりに対して「物凄い生物だ」とまでは思わないが、かなりの部分で認識を改めさせられた結果となった。 その点を考慮すれば、「勝てる可能性は有る」と言って述べていた副長は、自分よりも遥かに真摯にゆっくりに対して向き合っていたのかもしれない。 一度そう考え、私は思い悩むように額を手で押さえた。 何て馬鹿な事を思っているのか、奇人変人に対して、真っ当な感情を持ってしまうとは。 このままその道に引きずり込まれてしまう言い知れぬ不安に、私は副長に対して感心してしまったという事実を、頭の中から消す事にした。 フツフツと頭を巡るそれらに思い悩まされている内に、副長は何処かに行って来た後なのか、入り口から戻ってきた姿が見えた。 色々と沢山の物を盆に乗せて、何かがこんがりと焼けた匂いを漂わせる。 そのままゆっくり達の水槽の前に立ったかと思うと、 「この焼けた物と私が持ってきたこちらの食事、どちらを食べるかね?」 と問い掛けていた。 ちぇんは未だに落ち込んだ表情で無言である。 もう一匹のみょんは怒りの表情を見せてはいたものの、差し出されたお菓子を見せられその表情も若干緩む。 そしてどちらかを選択したかと言えば、みょんが勝手に「焼けた物」では無い方を選び、すぐさま飛びついていた。 「みょーん、みょーん……みょみょみょおおおん♪」 ゆっくりで言うところの「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」であろうか。 中を覗いてみるとなるほど、ゆっくりにとっては思いもよらないほどの豪華な食事だ。 それにしても、あのゆっくりみょんは言葉を喋れないのか? まぁ、そんな事は私には関係無い。 だが、それを食べたていたのはみょんの方で、ちぇんは一向に口を付ける素振りは見せなかった。 みょんは心配そうな顔を見せていたが、ちぇんの分を取っておき、自分の分を食べる事が出来る内に食べておく事にした。 自分が慰めた所でどうしようもないと判断したのだろうか。 「……君がそんな様子では、君を守った彼女も安心してゆっくり出来ないな」 ちぇんのそんな様子に対して、副長はそんな言葉を投げ掛ける。 それを聞いたちぇんはハッとした表情を見せた。 何て無神経な事を言うのか。 と、隣で食べていたみょんが口から食べた物を飛ばしながら抗議する。 相変わらず「みょん、みょん!!」しか言わないが。 そのような状態で有ったが、ちぇんは意を決したように食事に口を付け始める。 みょんは驚いた表情を一瞬見せたが、ちぇんが立ち直ったように見えたので、一緒に笑顔で食事をし始めた。 それを見て、副長は満足した様に微笑むと、私の隣に有る机に腰を下ろし、 「そういえば、例の物は其処に用意して有るよ」 そう言って、床に置いて有る箱を指差す。 そういえば、私はある荷物を取りに来てこんな部屋に居るのであった。 余りに衝撃的な事の連続で忘れかけてはいたが。 私は言われた通り、その小包程度の箱を手に取ると、お礼を言う為に振り返る。 そこにはまたしても驚くべき光景が広がっていた。 副長は何と、そこで食事の用意をしていたのだ。 驚くべきなのは食事の為のお茶を湯飲みに注いでいる事では無い。 もちろん、何の脈絡も無しに食事を始め出すのも十分に驚くべき事では有るが、問題は其処では無い。 副長が食べようとしている物が問題なのだ。 その口にしているもの、それは――先ほどまで其処で動いていたあの蜘蛛だ。 「あの二人が食べないというので私が食べる事となったが。中々どうして、美味しそうではある」 「海老のような味がするらしいよ、私は海老というもの図鑑で見ただけで食べた事は無いからよく判らないが」 私の視線に反応して、そんな奇妙な事を口走る。 その後、「君もどうかね?」と問い掛けてきたので、私はすぐに「遠慮します」と返すと、残念そうな顔をした。 「彼女には可哀想な事をした……ゆっくり達は二つの機会が有るというのに、彼女は一度負けたら終わりなのだから」 「実に不公平な実験だったと言えるかもしれない」 何を言っているのか最初は判らなかったが、考えてみると――ああ、なるほど。 ゆっくりは棒に10分間ぶら下がっているか、下で蜘蛛を倒せばそれで良いが、 蜘蛛は連続して落ちてくるゆっくり対して、一度たりとも負けてはいけない。 ゆっくりのダブルチャンスに対して、一方の蜘蛛は戦闘力で見た優位は有れど、ワンチャンスなのだ。 幾ら強いからといっても、連続して敵が出現し、疲弊して本来の実力を出せずにやられてしまうという事態は、どれだけの無念さが残ろうか。 よくよく思い返せば、蜘蛛にしてみればこの実験はかなり分が悪かったかもしれない。 「まぁ、しかし……」 そのまま副長は言葉を続ける。 「彼女は子孫を残す事は出来た」 そう言って、奥の棚の方へと眼をやる。 私は思わずその視線を追ってしまうが、そこで見てしまった物に対して、視線を追わせた事を後悔した。 其処には透明な容器に入れられた人の頭部の二倍程度の大きさの、大人のゆっくりまりさが居た。 生きてもいる。 それだけなら問題は無いのだが、周りに居る生物が問題だ。 大量の子蜘蛛が、まりさの顔面や髪の間に群生し、もしかしたら帽子の中にはもっと存在しているかもしれない。 あの綺麗であったろう金髪には、白い糸が満遍無く掛かっていた。 そして、その光を失った眼が、じっと正面だけを見据えているのが確認出来る。 悲鳴を上げ尽くし、涙も流し切った、そんな全てに絶望した表情。 そういった感想がピッタリくる、何とも言い難い顔だ。 子蜘蛛が顔面や足元を這い回っていると言うのに、それに慣れ切ったかのように虚ろな表情のまま動かない。 口の端からも涎が垂れている。 そして、その頭から管のような物が体の中に通されているのが眼に入る。 恐らくはそれを通して定期的に栄養を与えられ、死に至る前に餡子を再生させ、 まりさが死なないように、 いや、死ねないようにしているのだろう。 何てモノを見てしまったのか。 ゆっくりまりさ全体が、子蜘蛛の苗床とでも言おうか、餌でもあり巣でもある物体へと化しているのだ。 これはほとんど食事を摂取しない幼虫限定であるが、これなら他の生物を犠牲にしないで食事をし、成長する事が出来る。 新たなる生物の構造。 何と素晴らしい、何と合理的――などとは口が裂けても言わない、少なくとも私は。 こんな物の眼の前で食事を始めようとするとは、この副長は何と言う胆力か。 総じて肝も太そうだから、暇が有れば肝試しにでも誘ってやろうか。 きっと何が出てきても動じないだろう。 いやいや私は何を考えているのか、頭がおかしくなりかけているのか? 色々と後悔している私に、一瞬光が戻ったかに見えたまりさが私に視線を投げ掛ける。 そして、何かを訴え掛けるように口をパクパクと動かし始める。 思わず私はそれを、口の動きだけで判別しようと試みてしまう。 「ゆ」「っ」「く」「り」「さ」「せ」「て」 其処まで言い切ると、ブワッっと、まりさの口の中から子蜘蛛が一気に這い出てくる。 巣であるまりさが動き出したので、それに驚いたのだろうか。 喉の奥から、体内に生息していたと思われる子蜘蛛達がワラワラと押し寄せてくるのを、私は凝視してしまう。 それで呼吸が不可能となったのだろうか、まりさは餡子と子蜘蛛が入り混じった泡を吹いて白目を見開いて痙攣を始める。 その眼からも、小さな隙間を掻き分けるように、子蜘蛛が次々に這い出てくるではないか。 そんな緊急事態に「蜘蛛の子を散らしたように」子蜘蛛がそこかしこを這い回る。 もちろん例えであるが、比喩的表現ではない。 まりさがビクビクと痙攣しながら全身を子蜘蛛で覆われていくのを見て、身体中を蟲が這い回るおぞましさを想像し、そこで眼を逸らす。 流石に、これ以上は見てはいられなかった。 そのまま視線を副長へと戻すと、恐ろしい事に丁度蜘蛛の脚を口へと運ぶ場面である。 美味しそうにそれを噛み締めるのが見て窺えた。 そこでも視線を逸らすと私は、 「どうも、ありがとうございました」 とだけ残すと、出来るだけ冷静にその場を立ち去った。 「先輩君!!新入りの……外来人の彼によろしく言っといてくれ!!」 という言葉を背中に受けたが、そんな事、知った事ではない。 もう二度とこんな場所に来るか。 と思ったが、そんな我侭が適う事は無いだろうと頭の中では理解していた。 後書き これは誰に対する虐待なのか? ゆっくりなのか蜘蛛なのか、はたまた先輩という人物に対してか? by推進委員会の人 このSSに感想を付ける
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ゆっくり虐めSS ~YDF~ ゆっくり地球防衛軍2017 中編 その1 [[前編その2 ゆっくりいじめ系2342 ゆっくり地球防衛軍 前編 その2]]からの続きになります 読みづらいとの声がありましたので、文を練り直しましたがあまり変わっていないと思います。 これが作者の文章力の限界です。 前回の後書きで前後編か前中後編になると言いましたが、結局前中後編になりました。 「ストーム1に続けぇぇぇ!!」 「「「「「おおおおおおおおおおおお!」」」」」 あの戦い以来、負け戦続きで諦めかけていたYDFに何か筋金が入ったようであった。 今まで恐怖の対象でしかなかったゆっくり、しかしそれが彼の活躍により兵士達の中で「憎むべき侵略者」と書き換えられたようなのだ。 現に他のチームでもゆっくり達にそれなりの損害を与えている。 現在もレンジャー5、6とストーム1による、地下鉄に巣食ったゆっくり達の戦いが行われている。 この戦いでもかなり被害を抑え、そして奴らの半分以上を掃討したようだ。 作戦区域内の無人カメラが捉えた映像が流れている。 同時刻 =地下鉄構内= 「ゆぅ、ぱちゅりーれいむつかれたよ・・・はやくおうちにかえろうよ・・・」 「むきゅ・・・そんなこといわれても・・・」 「ありすもよ!だいたいなんでここからうごかないの?じっとしてるのはとかいはじゃないわ!!」 「むきゅ!いまでていったらふくろのねずみよ!いまはあいてのうごきをゆっくりぶんせきするのよ!」 「ゆぅ・・・ゆぅぅ!!まりさぁぁぁ!!なんでかってにいなくなっちゃったのぉぉぉ!?ばかぁぁぁぁ!!」 「ひとりだけにげるなんてとかいはじゃないわぁぁぁ!りーだーぁぁぁ、どごにいるのぉぉぉ!!」 「ばりざぁぁぁ!!ばぢゅりーだぢはどぼすればいいのぉぉぉ!!」 「「「ゆーん!ゆーん!ゆーん!」」」 この3匹のゆっくり達は少し前の戦いで主戦力であり、リーダー格のまりさ種を全滅させられた。 他にも3~4匹いたようだがそいつらはどうでもいいらしい。 しかしそのリーダーまりさは自分達が優勢なうちは、 「いくじなしさんはさっさとしぬんだぜ!!」 と前線で戦っていたようだが、ストーム1が合流し形成が逆転すると 「ゆっふっふ、みんながおとりになってくれるんだぜ!まりさはせんりゃくてきてったいだぜ!そろーり、そろーり!」 と言って一人逃げ出そうとしているところに集中砲火を受け、殺されたのだが・・・。 部下の前では頼れるリーダーだったようだ、だが自分がピンチになると本性を出すタイプらしい。 とんだゲス野郎め。 そしてまりさが逃げ出したため、不利になり逃げ込んだのがこの地下鉄構内らしい。 構内は所々崩落しており、今出口になるのは地上と地下を結ぶ2箇所の階段だけだ。 その出口はレンジャー5、6が固めているため、もう既に袋の鼠なのだが・・・気づいていないようだ。 今の数ならこの2チームとストーム1を突っ込ませれば勝てる・・・だが、奴らとて死に物狂いとなればこちらの被害もかなり大きくなる。 そんな危険なことをさせるわけにはいかないだろう。 それに狭い地下では奴らの強酸餡子を避けるのも難しくなってしまう。 「隊長!この後どうするんですか?」 「うむ、このまま両方から攻めても勝てるがこちらの被害も増えてしまうだろう」 「よって、わざと片方の道を開けて攻め込み、そこで逃げたところを待ち伏せしよう。我々レンジャー6が追い込むから君達レンジャー5が待ち伏せしてくれ。」 「まかせろ!なんてったってこっちにはストーム1がいるんだ。1匹も逃がしゃしないぜ!なぁストーム1!」 「・・・・・」 「頼むぞ!!」 「了解した!気をつけろよレンジャー6」 「本部!こちらレンジャー5、ゆっくり達をわざと逃がし、待ち伏せて攻撃します!この作戦の許可を!」 なるほど・・・現場のとっさの判断にしてはなかなかいい案じゃないか。 「許可する!!だがゆっくり達を逃がすなよ!」 「レンジャー6了解!」 「火炎放射隊!配置に付きます!」 合図と共に火炎放射器「灼熱火炎砲」を持った隊員達が銃口を地下入り口に向ける。 「よし、威嚇攻撃開始!!」 「くらえええええええええ!!」 「この饅頭野郎!!」 「汚物は消毒だーーーっ!!」 火炎放射隊が攻撃を始めたようだ、ゆっくりたちが錯乱している。 「あぢゅいいいいいいいいい!!ありすのぎゅーてぃぐるへあーがぁぁぁ!!」 「でいぶのおりぼんがぁぁぁ!!」 「むぎゅうううううう!!ばぢゅりーのちてきなおぼうじがぁぁぁぁ!!」 たまらずに逃げ出した、さすがに炎の壁がが押し寄せてくる状態では作戦だのと言っていられないようだな。 ありす、れいむと出口から飛び出してくる。 おや? ぱちゅりー種が出てこない・・・ 地上に上がる前に死んだのだろうか。 「今だ!ショットガン、撃て、撃てぇーーーっ!!」 「お前達がくるまでは平和だったんだぁぁぁ!」 「よくも俺の町を、家族をぉぉぉ!!」 「宇宙に帰れぇぇぇ!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁ!あづいぃぃぃ!いだいぃぃぃ!でいぶなんにもわるいごとじてないのにぃぃぃ!!」 「ゆうううううう!ありずのおべべがぁぁぁ!かれんなおはだがぁぁぁ!!」 技術部による最新式ショットガン「ガバナーSX」の一斉掃射だ。 彼らによるとこれは装弾数を減らした変わりに拡散力を上げ、散弾の数を増やし、1回の攻撃力を極限まで上げた銃らしい。 至近距離での全弾命中時の攻撃力はスナイパーライフルの一撃を超える恐ろしい銃になったようだ。 「ぼっど・・・ゆっぐりじだがった・・・」 「どがぃは・・・な・・・ありず・・・が・・・」 さすがに至近距離での一斉射撃を与えれば奴らに反撃を許さずに葬れるようである。 最近分かったらしいが、ゆっくりはかなり痛みに弱いらしい。 戦闘スイッチとでも言うのだろうか、一旦戦いになるととても手ごわいが非戦闘状態からの不意打ちを行えば比較的簡単に無力化できるようだ。 すなわち、精神的にピンチに追い込めば簡単に勝てる。 しかし一度でも相手を優位に立たせてしまい、気持ちをノらせてしまうととうてい勝つことはできない。 このゆっくりの、「思いこみの力」に奴らを攻略する鍵があると私は考えている。 「本部!ゆっくり達を全滅させました!」 「この作戦は成功だ、レンジャー6は帰還せよ。」 「了解!」 「ストーム1・レンジャー5森隊長は念のため構内を確認してから退却しろ、レンジャー5隊員は周囲の警戒を怠るな」 「こちら森、了解!」 「・・・・・」 しかし、あのぱちゅりーは一体何処にいったんだ? カメラに死骸は映っていない・・・ あれは・・・帽子の燃えカスか。 まさか死骸も跡形も無く燃え尽きたということはあるまい。 となればカメラの死角か・・・? 「むぎゅうううう!!」 「うわぁっ!」 「!!・・・」 しまった!まだ生きていたのか! 私はあわててカメラを切り替える。 なんということだ、森隊長がぱちゅりーの下敷きにされて呻いている。 カメラの画面奥に瓦礫の中の地下鉄車両が映っている。 そうか、あの中に隠れて火炎放射をやり過ごしたのか・・・ ぱちゅりー種は他の種に比べて知恵があると聞いていたが、あんな状況でここまでやるとは思わなかった。 「むっきゅっきゅ・・・、ふいうちでゆっくりけいせいぎゃくてんね!」 「ぐぅぅ・・・」 「・・・・・」 「むきゅきゅ、さわがないでそのいたいいたいさんをすててね。すてないと、このたいちょうさんをころすわよ」 「・・・・・」ガシャン 「ストーム1!俺のことはいいから早くこいつを・・・ぐあああ!」 「だまりなさい!!このおまぬけさん!! 「・・・・・」」 「ほのおにまかれたあと、ひのついたおぼうしさんをすててでんしゃさんにかくれたのはゆっくりりこうなぱちゅりーだけのようね」 「・・・・・」 「れいむたちはばかだからこんなことにもきづかないのね、ほんねをいうとあんなばかどもはぱちゅりーのむれにはじゃまなのよ!」 「う、ぐぁぁ・・・」 「だいたい!まりさだってぱちゅりーのさくせんのおかげでかてたのに、うぬぼれてひきょうものだからはやじにするのよ!」 「ぐぅぅ、くそっ・・・ストーム1・・・これを・・・」 「それなのに!ぞれなのにぃぃぃ!ありすもれいむもまりさばっかりほめて!」 「・・・・・」 「しんにつよいのはあたまのよいものなのよ!むぎゅう!いくらちからがつよくてもばかものはゆっくりながいきできないのよ!!」 「・・・・・」 「そうよ!かしこいぱちゅりーはゆくゆくはどすをもしはいするそんざいになるはずなのよ!そうしてぱちゅりーは・・・むきゅ?」 ぱちゅりーが自分の世界に浸っているうちにストーム1はこっそりと森からなにかを受け取っていたようであった。 あれは・・・ 「かしこいばぢゅりーのえんぜづぢゅうにかっでなごどをずるなぁぁぁ!なに!?いまなにじだの!」 「・・・・・」 「むしずるなぁぁぁぁ!!ぞれをばぢゅりーにわだぜぇぇぇ!!」 「渡してやれっ!ストーム1!」 「むぎゅうっ!?」 次の瞬間、ストーム1はぱちゅりー目掛けてパイナップルを投げつけた。 無論、本物のパイナップルではない。 中に火薬がたっぷり詰まった、手榴弾と言う名の殺人パイナップルである。 「むきゅ!!ごっくん!!」 大口開けて熱弁していたのが仇となり、ぱちゅりーの口の中目掛けて投げ込まれた手榴弾は見事に彼女の体内にINすることになった。 「ぱ、ぱちゅりーになにをのませたの?」 「・・・・・」 「お、お、おこらないからとくべつにこたえるけんりをあげるわ・・・」 「5・・・6・・・7・・」 「な、なんなのおおおおお!?おじえろおおおおおお!!」 「・・・10、ざまぁみろ饅頭め!」 「ゆっぶうううううううううううう!!」 ぱちゅりーは読んで字の如く、木っ端微塵になった。 確かに体内で手榴弾が爆発したらどんな生物でも生きてはいられないだろう。 しかし・・・2人とも命知らずな真似をするものだ。 「くそ・・・酸を浴びちまった・・・」 「・・・・・」スッ 「すまない、ストーム1」 「・・・・・」 「ふふふっ・・・でも勝ったぜ・・・」ニヤリ 「・・・・・」ニヤリ 「本部!こちら森、生き残っていたゆっくりぱちゅりーを撃破した。これより帰還する」 まったく・・・帰ったら指令室に呼びつけなければな・・・ 「了解した、帰路も気を抜くなよ」 勝った・・・向こうの総合戦力は分からないが、今回はこちらの圧勝だろう。 しかし、気を抜くわけにはいかない。 レンジャー5,6チームは4時間後に通常種との戦闘が、ストーム1は2時間後に飛行戦力(れみりゃ・ふらん種)との戦闘が待っている 人間たちの復讐はまだ始まったばかりである。 中編その2に続く
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"ゆっくり落とし" ゆっくり消しゴムを指で弾き、相手のゆっくり消しゴムにぶつけて盤上から落とす遊び。 テーブルやイスがあれば、どこでも行える。ゆっくりは柔らかく弾力に富んだ体をしており、 しかも若干ながら自分で動いたり声を上げたりできるため、 普通の消しゴム落としよりも変化の多い展開が楽しめる。 基本的には何も無い台の上で行う単純な遊びなのだが、 盤面に障害物を置いたり、台を傾けたりといった方法でゲームを複雑にすることもできる。 また、大きなゆっくり(消しゴムとしては)を用意したり、消しゴム自体を改造したりする者もいる。 改造の例としては、すべりを良くしてスムーズに動けるよう :体の底の部分に紙を貼る :糊を塗って乾かす :ホッチキスの針を刺す といったものがあるが、攻撃を受けた時に弾き飛ばされ易くなってしまう諸刃の剣でもある。 逆に、飛ばされにくくするための工夫としては :勝負に使う前のゆっくりを予め何かに強くこすり付けて粘液を大量に分泌させ、 それを利用して盤面にゆっくりを貼り付けてしまう :ゆっくりは丸っこい体をしており、攻撃された時にそのまま転がって落ちてしまうことがあるため 型に詰めたり掌で押し潰したりして、体の形を転がり難くする といったものもある。 追記 このゲームは、ある意味プレイヤーとゆっくりの連携が重要となる。 ゆっくりは勝手に動くので、勝負に勝つためには「盤の端に近寄るな」などといった立ち回り方を 教え込むことが欠かせない。 ゆっくりには幼児程度の知能と学習能力しか無いが、 根気良く教え込めば次第に覚えていく。最初は基本的なことから教えていくとよい。 水の中に転がし落として沈めたりすると、すぐに盤から落ちることを嫌がるようになる。
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※作者はふらんが大好き。 「ゆぴゃぁぁぁぁ、おきゃーしゃーん!」 薄暗い中、愛するれいむと子供たちのいるおうちへの道を急ぐ一匹のまりさがそんな声を聞いた。 「ゆゆっ、これはゆっくりしていない赤ちゃんのこえだね」 夜は、夜行性である恐ろしい捕食種、れみりゃやふらんが本格的に活動し始める時間だ。そのために家路を急いでいたまりさは、当然、様子を見に行くか迷った。 「おきゃーしゃーん! おきゃーしゃーん!」 ひたすら母親を呼ぶ声から、その赤ちゃんゆっくりが迷子になったであろうことが容易に知れた。暗くなるというのに、あんなに大声を出していたら、あっという間に捕食種がやってくるだろう。 「赤ちゃん、どこにいるの! ゆっくりしてね!」 まりさは逡巡した後、その声がする方へとぽよんぽよんと跳ねていった。自分にも最近子供ができた。どうしてもほうってはおけなかった。まだおうちには遠い所だが、まりさは自分の足には自信があった。 「ゆぴぃ、おきゃぁしゃーん……」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆっきゅりちていっちぇね!」 まりさがその姿を見つけて声をかけると、赤ゆっくりは嬉しそうに返事をした。まりさと同じ種の赤まりさだ。 「まいごになったんだね。おうちはどっちかわかる?」 「ゆぅ……おうちは……」 「ゆゆ?」 さっきまでの張り裂けんばかりの大声はどこへいったのか、小声でぼそぼそと言う赤まりさへ、まりさが近付いて声を聞き取ろうとする。 がさがさっ―― そばの繁みが音を立てたのはその時だ。 「ゆっ!?」 そちらへ目をやって、まりさの目は、限界まで見開かれてしまった。 「うー」 「ゆ、ゆ、ゆ」 悲鳴を上げようとして、それが喉で詰まってしまったように、まりさは細切れの音声を吐いた。 「うー、ゆっくりしね」 「ふ、ふらんだぁぁぁぁぁぁ!」 それは、出会えばゆっくりできなくなること確実の凶暴な捕食種。同じ捕食種のれみりゃと似た姿をしているが、れみりゃよりも恐ろしいふらん種であった。 それほど大きくないまだ子供のふらんだったが、子ふらんでも通常種の大人ゆっくりを平気でなぶり殺してしまうだけの力がある。 「うー」 「うー」 「うー」 「ゆ……ゆぎゃぎゃぎゃああああ!」 まりさは、つかえていた悲鳴が一気に溢れ出たかのように絶叫した。一匹でも恐怖する以外になかったふらんが新たに三匹、別の繁みから飛び出したのだ。 「「「ゆっくりしね!」」」 ふらんたちが声を揃えて言った。まりさのただでさえ容量の少ない餡子脳には既に対処不可能な事態である。硬直してまったく動けなくなって当然の状態でありながらも、なんとか逃げ出した。 「ゆっくりごめんね!」 この状況では、赤ちゃんなど守りようがない。そして赤ちゃんが自身を守れるはずなどない以上、100%助からない。それならば、まりさが全力で逃げた方がまだまりさだけは生き残れる可能性がある。限りなくゼロに近くはあるが……。 あのふらんが空腹ならば、望みは無いこともない。捕まえやすく美味な赤まりさにまずは殺到するに違いないからだ。だが―― 「うー!」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛、やべでえええ!」 ふらんたちは赤まりさには目もくれずに逃げ出したまりさを追い、すぐさま追いついた。そして、一匹のふらんが帽子を噛んで持ち上げた。 「ゆ゛あ゛あ゛、おぼうじがぁ!」 まりさの大切なお帽子をくわえたふらんが、嬉しそうに「うー!」と鳴いた。他のふらんは少し悔しそうにそれに唱和した。 れいむと子供たちのために一生懸命集めた食べ物がぶちまけられる。その中には、ふらん種が食べるものも入っていたが、当然、一番の御馳走があるのだから、そんなものは無視である。 「ゆっくりしね!」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛」 次々にふらんがまりさに噛み付く。力の強いふらん種といっても、子供である。大人ゆっくりのまりさは容易に持ち上がらなかったが、帽子をくわえていたふらんが、それをぺっ、と吐き出して加わると、とうとうまりさの底部は地面から離れてしまった。 「や゛べぢぇぇぇぇ! はなぢでえええええ!」 必死に暴れるまりさだが、ゆっくりに牙を突き立て中身の餡子を吸い出すことができるふらんの噛む力は強い。四匹のふらんはぶんぶんと振り回されながらも、決してまりさを離そうとはしなかった。 「うー!」 「ゆ゛っ゛」 ふらんたちが甲高い嬉しそうな声を上げるのと同時に、まりさのただでさえ緊迫していた顔が、さらに切羽詰ったものになる。 「ず、ずわないでえ、ぢゅーぢゅーしないでえ」 遂に、ふらんたちがまりさの中身を吸出し始めたのだ。 子供とはいえ、四匹に一辺に吸われたのだからたまらない。まりさは見る見るうちにしぼんでいってしまった。 「もっどゆっぐり゛じだがっだ……でいぶ……あ゛がぢゃん゛」 もはやこうなっては覚悟を決めるしかなかったが、どうしても断ち難い未練は、自分の帰りを待つ愛するゆっくりたちであった。 まりさを襲った出来事は、確かに不幸には違いなかったが、それでもふらん種に捕食されたゆっくりにしては楽に死ねた方であったろう。 あまり空腹ではないふらんは、捕まえたゆっくりをいたぶって殺すことが多いからだ。 「うー、おちびたち、あまあまおいしかったかー 死の寸前、まりさの視界が捉えたのは、おそらくこの子ふらんたちの親であろう、胴付きふらんであった。その掌の上に乗っているさっきの赤まりさを見て、まりさはもう一度、二度と会えない子供たちのことを思い出した。 子れいむと子まりさが二匹ずつ、赤れいむが二匹、赤まりさが三匹の子供たち。友達のぱちゅりーとありすには、無計画にすっきりしすぎだと怒られたけれど、まりさが頑張って狩りをして一度も飢えさせたことはない。 しかし、自分が死ねば、自分ほど狩りが得意ではないれいむに同じだけの食べ物を集めることは不可能だろう。それが、どうしても未練だった。 胴付きふらんが、赤まりさを乗せた掌の上に、もう一方の掌を被せた。 ――ああ、あの赤ちゃんもたべられちゃう。ゆっくりさせてあげたかったよ。 そう思った次の瞬間、まりさの意識は途絶えた。限界を超えて中身を吸い出されてしまったのだ。 だから、その後に起こったことをまりさが見ることはなかった。見たら、とても信じられなかっただろう。ふらんは捕食種、まりさは被捕食種、その常識を覆す光景だったからだ。 「うー、いいこいいこー」 優しい顔をした胴付きふらんが、優しく優しく、赤まりさの頭を撫でていた。 赤ちゃんまりさは、自分の家族が大好きだ。 やさしいおかあさんと、いっしょにあそんでくれるおねえさんたち。 そして、なんといっても嬉しいのは、狩りを成功させた時におかあさんが頭を撫で撫でしてくれること。その瞬間、まりさはとってもゆっくりできるのだ。そのために、まりさは狩りのお手伝いをしていた。 「なんでばりさがふら゛んどいっじょにい゛う゛のぉぉぉぉ!」 狩りの獲物にはよく言われる。しかし、なんでと言っても、そんなの家族だからとしか答えようがない。 「うー、そろそろふゆさんがくるの、きょうもあまあま狩りにいくよ」 おかあさんの号令に、姉妹たちはパタパタと飛び回る。狩りは生活のためであると同時に楽しみであった。 飛べないまりさは、おかあさんの掌の上に乗って狩りに出発だ。 「ゆぅ、暗くなってきたよ……」 れいむは、不安そうに呟いてハッとして後ろを見た。 「ゆっくり! ゆっくり!」 「ゆっくち! ゆっくち!」 お姉さんたちの声に合わせて舌足らずだが、元気一杯の声を上げる赤ちゃんたち。自分の弱気な言葉が聞かれていなかったことに、母れいむは安堵した。 「おうちまでもう少しだよ、ゆっくりするのは後にして、すこしだけ急ぐよ!」 まだ、おうちは遠い。このままでは帰り着く前に完全に陽が落ちてしまう……。そんな内心の不安を表に出さずに、母れいむは子供たちを励ます。 「おうちに帰ったらゆっくりしようね!」 あくまでも、ゆっくりするために家路を急ごうと促す。こういう時、暗くなったられみりゃがくるよ! ふらんがくるよ! などと下手に脅かすと、子ゆっくりはともかく赤ゆっくりはパニクって動けなくなるだろうから、この判断は賢明であった。 急ぐだけ急いで、赤ちゃんが疲れたらおくちの中に入れて行こう、それでなんとか間に合うはず。と、母れいむは算段する。 「ゆわぁぁぁん、もうあるけにゃい~!」 しかし、赤ちゃんたちが母れいむの計算よりも遙かに早く音を上げてしまった。このれいむは賢いゆっくりだったが、餡子脳の限界と言うべきか、未来予測がどうしても楽観的過ぎた。 「ゆゆっ! おちびちゃんたち、おかあさんのお口にはいってね!」 予定よりは早いが、母れいむはそれでもまだ楽観論者であることを止めようとはしない。急げば間に合う、急げば間に合う、と思い続けていた。 赤ちゃんたちは大喜びで母れいむの口の中に入る。れいむが二匹、まりさが三匹、みんなが入ったところで口を閉じて、ぴょん、と一飛び。 「ゆっ!」 これは行ける、と確信して、母れいむはゆっくりとした笑顔になる。 口の中に赤ゆっくりがいるために、小刻みに跳ねていると、やがて口の中から、赤ゆっくりたちの寝息が聞こえてきた。 「ゆぴぃ~」 「ゆゆぅ……ゆゆぅ……」 ゆっくりしたおねむの声を聞きながら、母れいむはますますゆっくりした笑みを浮かべた。 しかし…… 「ゆぅ~、もう歩けないよ……」 「つかれたよ、あんようごかないよ」 やがて、子ゆっくりたちまでもがもう進めぬと訴え始めるに至って、母れいむはようやく自分の見込みが甘かったことを悟った。母れいむの算段では、子ゆっくりたちはおうちに着くまで元気に飛び跳ねていられるはずだったのだ。 「ゆぅ……おちびちゃんたち、がんばって進んでね、くらくなるよ」 母れいむの激励に応えようとはする子ゆっくりたちだが、苦しそうな顔をしている。母親に甘えているのではなく、本当に疲労困憊してしまっているのだ。 「くらくなったら、れみりゃとかふらんがくるよ、ゆっくりできなくなるよ!」 とうとう、控えていた脅し言葉を口から出すが、子ゆっくりたちは恐怖をあらわに必死に跳ねようとするものの、すぐに止まってゆひぃゆひぃと荒く息をついたり、転んで泣いたりする。 「ゆゆぅ……」 母れいむは困ってしまって唸るばかり。 口の中の赤ゆっくりたちを外に出して、子ゆっくりたちを口に入れようかとも考えるが、子れいむ二匹と子まりさ二匹はさすがに入らない。 妙案は浮かばず、思いつくのは泣き言ばかりだ。 「ゆぅ、まりさがいてくれたら……」 番のまりさがいてくれたら、子ゆっくりたちを運んでくれただろう。まりさはお帽子を被っているので、半分を口に入れ、半分をお帽子に入れることが可能だ。 そもそも、こんな追い込まれた状況になっているのは、番のまりさが行方不明になってしまったことが原因である。 行方不明――と、言っても、ほぼ十中八苦死んでしまっているだろうことは母れいむにはわかっている。まりさは、自分や子供を捨ててどこかに行ってしまう無責任なゆっくりではない。強くて優しくて、自分がゆっくりする時間を全て削ってでも、大勢の子供たちの腹を空かせまいと夜明けから日没まで狩りに励んでいた立派な大黒柱だったのだ。 子ゆっくり四匹に赤ゆっくり五匹を養うのには、その優れたまりさの能力と献身が必要だった。れいむには、まりさほどの食べ物を集めることはできなかった。備蓄はすぐに尽きた。 友達のありすとぱちゅりーは狩りに行っている間に子供の面倒を見てくれたり、色々とよくしてくれたが、彼女たちもそれぞれ家族があり、食べ物の援助などはやはり最低限のものにならざるを得なかった。 遠出の狩りに、子ゆっくりはともかく、五匹もの赤ゆっくりを伴ったのは、どう考えても失敗であったと言わねばなるまい。赤ゆっくりたちは、ありすとぱちゅりーに預けるべきであった。 しかし、ゆっくりを全てに優先させるゆっくり脳である。まりさがいなくなってからというもの、必死に得意でない狩りに一日を過ごし、ろくに子供たちとゆっくり遊べずに眠り起き、狩りに出かけることを繰り返していた母れいむは、赤ちゃんたちがそれに不満を漏らして「もっちょおかあしゃんとゆっきゅちちたい!」と訴えたのに心動かされてしまったのだ。 「それじゃあ、きょうはみんなでゆっくりと狩りにいこう!」 と、母れいむが言ってしまったのが、今朝のことだ。もちろん子供たちは大喜び、狩りとは言っても、実態はピクニックみたいなものであった。 一家は幸い外敵にも遭遇せずに、元気に愉快に森を進んだ。そして、草花が咲き乱れ、虫さんたちが這い回り飛び回り、おひさまが照りつけるゆっくりプレイスを発見し、そこで思う存分ゆっくりした。そのあまりの居心地のよさに、この近くに引っ越してもいいのではないかと思ったほどだ。 結果、ゆっくりとし過ぎた。正に、ゆっくりとした結果がこれである。 母れいむを擁護してやるならば、彼女は心の底から今日の子供たちとのゆっくりを活力に明日からまた頑張ろうと思っていた。しかし、そんな擁護もなんの役にも立たない。明日を迎えられるかが危うくなりつつあるのだから。 「ゆぴゃぁぁぁぁん! おきゃーしゃーん!」 「ゆゆっ!」 赤ゆっくりらしき泣き声が聞こえてきたのはその時だ。 一瞬、母れいむはそれが自分の口の中の赤ちゃんのものかと思ったが、声の聞こえてくる方角から、すぐにそんなことは無いとわかった。 「おかあさん、赤ちゃんがゆっくりしていないみたいだよ」 疲れる体を引きずるように動かしながら、子供たちが言う。 「ゆゆぅ、ゆっくりしてるばあいじゃないけど、赤ちゃんがないてるのはほうっておけないよ」 声のする方は、おうちへの最短距離からは少しズレてしまうのだが、やさしい母れいむは、そちらへとあんよを向けた。 「ゆえーん、ゆえーん」 「あ、いた。まりさだね」 泣きじゃくる一匹の赤まりさを見つけて、そばに行くと叫んだ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ? ……ゆっきゅり、ちて、いっちぇね!」 餡の繋がらぬ他ゆっくりでも、赤ちゃんの舌足らずな挨拶には、見聞きするゆっくりをゆっくりさせる効果がある。母れいむも、それに遅れて跳ねずにずーりずーりとやってくる子供たちも、赤まりさの挨拶にゆっくりと微笑む。 「どうしたの? まいごになったの?」 「あんよがいちゃくてあるけにゃいの!」 話を聞くと、おうちの場所はわかるのだが、歩けないので帰れずに途方にくれていたらしい。 「ゆゆ? おうちはすぐちかくなの?」 「うん、ありゅければ、しゅぐにつくよ!」 赤まりさがそうならば、相当に近いのだろう。母れいむはこの子を送ってあげることにした。 「おちびちゃんたち、ゆっくりおそとにでてね」 口を開けて、体を傾けると、ころころころりと口内で寝ていた赤ゆっくりたちが転がり出る。もちろん、優しく衝撃を与えぬようにしているし、そこは心得たものでおねえさんの子ゆっくりたちが赤ゆっくりたちを受け止めて上げる。 「ゆゆ? もうおうちにちゅいたの?」 「このおちびちゃんをおうちに送ってくるから、少しここで待っててね! おねえさんたちの言うことを聞いてね!」 「ゆっ!?」 そう言われて、家族以外の赤まりさがいることに気付く。 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 赤ちゃん同士の挨拶に、とってもゆっくりした気分になった母れいむだが、ゆっくりしている場合じゃないことを思い出し、赤まりさに頭の上に乗るように促す。口の中に入れては、道案内をしにくいからだ。 子ゆっくりたちに手伝ってもらって、赤まりさは母れいむの頭上に乗った。 「ゆゆーん、おしょらをとんじぇるみちゃい~」 「ゆぅ、いいにゃあ、いいにゃあ」 「ゆっきゅちちてるね! うらやまちぃね!」 おかあさんの頭上で楽しそうな赤まりさを羨望の眼差しで見つめる赤ゆっくりたち。 「すぐにかえってくるから、おうちにかえろうね。おうちにかえったらゆっくりあそぼうね」 母れいむがそう言って赤ゆっくりたちを宥める。 「みんにゃのおうちはどきょにゃの?」 頭上の赤まりさが尋ねる。ちょっとここからは遠くて、今から急いで帰っても真っ暗になる前に着けないかもしれない、と言うと、赤まりさは言った。 「しょれなら、まりしゃのおうちにおとまりしゅればいいよ!」 「ゆゆっ」 そう言われてみれば、そうすることができるのならば、願っても無い申し出である。詳しく話を聞くと、赤まりさの家族は、子供は赤まりさだけで、両親ゆっくりとの三匹家族。その上におうちが広いのでスペースがかなり余っているらしい。 「しょれに、おとーしゃんもおきゃーしゃんも、かりのめーじんなんだよ! おうちにはおいちーあまあまがたーくしゃんありゅよ!」 さらに、この言葉である。 おうちに帰るのに精一杯で、食料の備蓄も乏しい事情から、今晩のごはんはおうちの近くに生えている美味しくない草さんを食べるしかないと覚悟していた母れいむの心を動かすには十分過ぎた。 「あまあま!」 「あまあまちゃべたいよ!」 「ゆっきゅちおとまりしよーよ!」 もちろん、子供たちの心は一気に赤まりさのありがたい申し出を受ける方に傾く。 「まりしゃをおうちにつれていけば、おとーしゃんもおきゃーしゃんも、おれいにあまあまをくれりゅよ」 「ゆっ、それじゃえんりょせずに、ゆっくりおとまりさせてもらうよ」 状況が状況であるから、母れいむもありがたく受けることにした。母れいむがこの赤まりさの両親の立場だったとしたら、大事な子供をおうちに連れてきてくれたゆっくりには精一杯のおもてなしをするのが当然と思う。きっとこの赤まりさの言うように、両親は快くゆっくりと歓迎してくれるに違いない。 「それじゃあ、おうちのほうを教えてね!」 「ゆー、あっち!」 赤まりさがそう言いながら、母れいむから見てやや右斜め前方を向くが、頭の上に乗っているために、母れいむからはそれが見えない。 「こっちだよ!」 「きょっち、きょっち!」 しかし、子供たちがそれを見て、そっちの方へと跳ねて行くので、それを見て、母れいむは方向を知ることができた。……当初は自分だけで送って行こうとしていたのだが、そうしたら方向がわからなかっただろう。その辺は餡子脳である。 まだまだ遠い道のりと思えば、余力が残っていても、それを振り絞る気力が無くなってしまいがちだ。すぐそこでゆっくり休めて美味しいものも食べられると知って、子ゆっくりたちは先ほどまでの疲れを吹き飛ばして、ぴょんぴょんと跳ねていく。おかあさんのおくちの中で休んだ赤ゆっくりたちもすっかり元気になっていた。 「きょきょだよ!」 赤まりさの言った通り、おうちはすぐだった。 「それじゃ、ゆっくりおじゃまします」 「ゆっくりおじゃまします」 「ゆっきゅちおじゃましみゃす」 礼儀正しく、挨拶しておうちに入っていくれいむ一家。おうちは、天然の洞窟で、中は確かに凄く広かった。一家がおとまりしても、それでもなお広いぐらいだ。 「ゆわわわわ!」 「あみゃあみゃだー!」 そして、さらに、おうちの隅にこんもりと積み上がった、とっても甘い臭いのする大量のあまあま! 黒い山、白い山、黄色い山と、色とりどりのそれはどの色もとっても美味しそうだ。 「ゆっくりしてね! まだたべちゃだめだよ!」 今にもそのあまあま山の登山を開始しそうな子供たちを、母れいむは制止する。大事な赤ちゃんを送り届けたれいむたちへのお礼に御馳走してくれるだろうことは全く疑っていなかったが、それでも一応、両親に許しを得るべきであろうと思ったのだ。この辺り、母れいむはゆっくりとしてはだいぶ自制心がある方だ。 「おとうさんとおかあさんはいないの?」 しかし、その許可を取るべき両親が見当たらない。おそらくは、赤まりさを探しに出ているのであろうが、いつ帰ってくるのかわからない。 「ゆぅ、赤ちゃん……」 おうちの入り口の所にいる赤まりさへと声をかける。とりあえず子供たちは母の制止に従って、よだれをダラダラと垂れ流しつつも、おとなしくあまあまの山を見つめているが、あれだけの御馳走を目の前にしては、そう我慢は続かないだろう。 だから、赤まりさの許しを得ようと思ったのだ。もちろん、赤まりさが、 「まりしゃをおうちにつれてきてくれちゃみんにゃにごちそーすりゅよ!」 と、言ってくれることは疑っていない。 「……ゆびゃっ!」 しかし、それどころではないものを赤まりさの背後に見てしまい、母れいむは短く絶叫して硬直してしまう。 その声を聞いて母れいむを見て、その硬直ぶりを見て母れいむの視線の先を追った子ゆっくりと赤ゆっくりたちも同じく、 「ゆぴぃ!」 「ゆああ!」 「ゆ、ゆゆぅぅぅぅ!」 と、震える声で叫んで硬直し、すぐにガタガタ震え出し、赤ゆっくりたちは全員残らずしーしーをもらした。 「うー!」 赤まりさの背後、つまりおうちの入り口の所に、胴付きのふらんが立っていた。 すぅ、と右足を上げる。その先には赤まりさがいる。 ――潰される! 母れいむたちは、もちろんそう思った。しかし、ふらんは大きく足を踏み出して、赤まりさをまたいだ。 ほっ、としたのも束の間、ふらんがそうやっておうちの中に入ってくるのと同時に、その背後から四匹の子ふらんが羽をパタパタさせて現れる。 「ゆあああああああ!」 「ふ……ふらんだあぁぁぁぁ!」 「きょわいよー!」 「おきゃーしゃーん!」 たちまち恐怖の叫びが上がり、子供たちは一斉に母親の元へと集まっていく。 「ゆびぃぃぃ……」 もう完全にビビりまくって涙ぐんでいた母れいむだが、そうやって子供たちに頼られて、なけなしの勇気を総動員した。 「おちびちゃんたち! いそいでおくちに入ってね! ゆっくりしたらだめだよ!」 あーん、と大口を開けて、子ゆっくり四匹と赤ゆっくり五匹をその中に受け入れる。口の中がパンパンになるが、すぐに母れいむは、ぷくーっ、と空気を吸いこんで膨れた。 これは、威嚇であると同時に、口の中のスペースを広げて、子供たちがぎゅうぎゅう詰めになって苦しむのを防ぐ効果があった。 ――おちびちゃんたちは、れいむが守るよ! 声は出せないが、れいむは心中で叫んだ。ちらりと赤まりさを見た。 ……かわいそうだが、この状況ではとても助けられない。とってもゆっくりとした赤ちゃんなので心は痛むが、しょうがない。 胴付きふらんが、後ろを振り返って赤まりさを掴み上げた。 自分が子供たちを口の中に隠してぷくーっと威嚇したので、とりあえず赤まりさを捕獲したのだ、と母れいむは思った。 「うー、いいこいいこー」 「ゆ! ……」 だがしかし、思わぬ光景に、声を出すまいと決意していたのに、少し声を上げてしまう。それはそうだろう。凶悪さで知られる捕食種ふらんが、赤まりさの頭を撫でて、あろうことか、赤まりさがとってもゆっくりした笑顔で言ったのだ。 「おきゃーしゃん!」 と。 「……」 ――ど、どぼい゛う゛ごどな゛のぉぉぉぉぉぉぉ! と、叫び散らしたいのを必死でこらえる母れいむ。 「うー、よくやったー」 「うー、たいりょー(大漁)」 「うー、うー」 子ふらんたちも、そのまりさの周りを飛んで、彼女を誉めている。まりさは、とても嬉しそうだ。 ――なんで? なに? なんなの? なにがどうなってこうなってるの? 母れいむは、全く事態を把握できない。餡子脳ゆえではなく、通常種ゆっくりの常識とあまりにも乖離した事態だからだ。 まりさは、産まれた時のことを今でも覚えている。 「ゆ、ゆっきゅちちていっちぇね!」 本能に従って、生まれ落ちた瞬間に元気に挨拶した。 「うー!」 目の前には、パタパタ飛び回るおねえさんたちがいた。でも、はじめはそれをおねえさんとは認識できなかった。 「ゆゆ?」 このゆっくりたちは誰だろう? まりさと餡の繋がった姉妹たちはどこにいるのだろう? 「ゆべ!」 後ろから、そんな声が聞こえた。ゆっくりと振り返ると、そこには飛び回るおねえさんたちと同じ顔をして、胴体と手足がついたゆっくりがいた。 「うー! ゆっくりしていってね!」 「ゆ! ゆっきゅちちていっちぇね!」 まりさは、心の底からわき上がるゆっくりとした気分を吐き出すように、元気に答えた。 「うー、ゆっくりしろ」 飛び回っていたゆっくりたちも、そう言ってまりさを祝福してくれているようだった。 「うー、これたべる」 「むーちゃ、むーちゃ、……ち、ちあわちぇぇぇぇ!」 彼女たちがくれた黒っぽいものは、信じられないような美味しさだった。 狩りをしたのは、生後すぐだった。わけがわからず、その辺に放置されてしまい、悲しくて泣き喚いた。ゆんゆん泣いていると、一匹の大人のまりさがぽよんぽよんと跳ねて来た。 はじめて見る同類だった。一緒に住んでいるふらんというゆっくりたちよりも自分に似ていることに、まりさは親近感を抱いた。 「ゆゆ、赤ちゃん、どうしたの?」 だが、そう言って近付いてきたその大人まりさは、ふらんたちが現れると目を見開いて絶叫し、後ろを向いた。しかし、後ろにもふらんがいることを知ると右左と視線を走らせ、そちらにもふらんの姿を見出すと、泣き喚いてその場で動けなくなった。 まりさには、それが不思議だった。何をそんなに怖がっているのか? ふらんたちは、とてもやさしいのに。 そのやさしいふらんたちが大人まりさをなぶり殺すのを、まりさは呆然と眺めていた。 「うー、まりさ、これたべろー」 大人まりさの中に入っていた黒っぽいもの。そうか、あれはそういうものだったのか、と思った。普通ならば、そんなものは食べられないと思うところだが、まりさは何しろ生まれて初めて食べたものがそれで、しかもその美味は忘れ難いものであった。 「ゆ、ゆっきゅちたべるよ!」 戸惑いながらも、食欲のままに食べてしまった。 胴付きふらんを、おきゃーしゃん、胴のついていないふらんたちを、おねーしゃん、と呼んで、まりさに似たゆっくりや赤いリボンをつけたゆっくりなどの中身を食べて暮らしているうちに、まりさは、自分が姿こそ違えどふらんたちの側――つまり、帽子やリボンのゆっくりたちを捕食する側――であり、姿こそ同じだが、帽子をかぶったゆっくりたちが捕食される側であると認識していった。 狩りのお手伝いについてもゆっくりりかいした。最初は寂しくて泣いていたが、その内に、意識してわざと泣くようになった。 獲物たちは大概、まりさがふらんと一緒に暮らしていて、その狩りを手伝い、ゆっくりを食べていることを口を極めて非難した。おかしい、ひどい、ゆっくりしてない! 「まりしゃ、ゆっきゅちちてるよ」 だが、とってもゆっくりしているまりさはいささかの痛痒も感じない。そのゆっくりとした笑顔に、獲物たちは絶望する。本当にゆっくりしているいい笑顔だからだ。 まりさは、すっかりふらん一家の一員であることの幸福を喜び、ゆっくりするようになっていた。なにしろ、ふらんは、家族たちは強い。ゆっくりたちは、その姿を見ただけでしーしーちびって泣き喚くほどである。 生物として相当弱い部類に属する赤ゆっくりとしては、そんなふらんに頼もしさを感じ、それを恐れ抵抗らしい抵抗もできずになぶられ食われていくゆっくりに軽蔑を感じざるを得ない。 見た目こそ同じだが、まりさはあいつらとは違う。強い強いふらんたちの仲間なのだ。そのことへの幸運に感謝する。 まりさは、この家族の一員であることを当然だと思っていた。だって、ゆっくりできるのだから。 胴付きふらんは、成果に満足していた。生まれたばかりの四匹の子供たちのためにゆっくりれいむを狩って来た。頭からは茎が生え、その先には五つの赤ゆっくりがゆっくりと誕生の時を待っていた。 「うー、やった。ごちそう」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 当然、れいむは泣き喚いているが、ふらんの力には到底かなわない。 おうちに帰ると、早速、赤ゆっくりたちを収穫して一匹ずつ子供へと与える。ふらん種の本能か、子供たちは教えられずとも、赤ゆっくりたちを軽く殺さない程度に痛め付ける。 と、言っても、まだ生まれる時期でないところを無理に茎からもぎ取られた赤ゆっくりだから、すぐに死んでしまった。 「……うー!」 胴付きふらん、最後に一匹残ったまりさを見ていて思いついた。 元々、ふらん種はゆっくりの中でも知能が高い方である。同じ捕食種で性質や能力も似ているれみりゃが馬鹿で、そこを衝かれると通常種に敗北することもあるのに対し、ふらんにそのような例が稀であるのはそのためだ。 その胴付きふらんは、かつて自分の親が、一匹の赤ゆっくりをすぐに殺さずにその辺に放置して、その泣き声を聞いてやってきたゆっくりたちを捕獲していたのを思い出し、自分もそれをやってみようと思った。そして、親が囮に使った赤ゆっくりをすぐに食べてしまったのに対し、すぐ殺さずに囮として使い続けようとした。 子供たちが襲わないように、これは姿形は違えど妹なのだ、と言って聞かせた。それでも、殺されてしまったらしょうがないと思っていたのだが、幸い、子ふらんたちは赤まりさを妹として扱っていた。赤まりさを囮にした狩りが順調で、一度たりとも空腹にさせたことがないせいであったろう。 親ふらんも、この赤まりさには、人間が使い馴染んだ道具に持つのに似た愛着を抱いていた。いざとなれば、真っ先に食料にすることは動かなかったが。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛」 ぷくーっと膨らみながらも混乱の絶頂の母れいむ。ふらん一家は、赤まりさを誉めるのにかかりっきりでれいむたちのことを忘れてしまったかのようだ。 ――いまならゆっくりしなければにげられるかもしれないよ。 母れいむは、ぽよん、と全力の跳躍をした。口の中に子供たちがいるので、当然その飛距離は悲しいほどに短い。 もちろん、ふらんたちはれいむのことを忘れていたわけではない。ただ単に、出入り口を完全に塞いでいるから逃げられっこないと判断していたので平気で目を離していただけだ。 「ゆ゛う゛う゛う゛」 母れいむも、逃げ道が完全に絶たれていることにたちまち気付いた。 ぷくーっ! 膨れる。それぐらいしかやれることが無いのだ。 「ゆゆぅ、ぎゅうぎゅうしてるのがすこしきついけど、ゆっくりしてるよ!」 「さすがのふらんも、おかあさんのぷくーにはなにもできないんだね!」 「しゃすがおきゃーしゃん!」 「ゆっきゅちできるよ!」 「しゅーり、しゅーりしようにぇ!」 特に何も起こらないので、口の中の子供たちは、母れいむの威嚇にふらんたちが恐れをなして手出しができない素晴らしい情景を想像してゆっくりしている。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ」 喋ったら、ぎゅうぎゅう詰めの子供たちが零れ落ちそうなので、母れいむは唸ることしかできない。 「うー、そろそろちいさいあまあまであそびたい」 「うー」 やがて、恐れていた瞬間が来た。子ふらんたちに言われて、親ふらんが母れいむの方へと向かってきた。 「うー、くちのなかのあまあまよこせ」 「ゆ゛ーっ!」 母れいむは頑として拒否する。 無造作に親ふらんのパンチが母れいむを叩く。凄まじい衝撃。ごろんと転がった母れいむの口の中に子供たちの悲鳴が響き渡る。 「ゆっくりできないよ! なんなの!」 「おかーさん! どうしたの! ゆっくりさせてね!」 「ゆあああ、いちゃいいいい」 「ゆべっ」 「お、おねーしゃんがしんじゃうよ!」 一匹の子れいむは、丁度殴られた所にいたため、母れいむの頬越しとはいえ衝撃をモロに食らってしまった。 口の中に、甘い味がしたのに、母れいむは恐怖する。中の子供たちが負傷か、或いは餡を吐いたかに違いないからだ。 「うー、うー、うー」 ぼこ、ぼこ、ぼこ、と滅多打ちにされ、母れいむの頬は腫れ上がる。口の中の悲鳴も一層大きく、切迫感のあるものになっていった。 「いぢゃい゛ぃぃぃぃぃ!」 もう、痛みを訴えるしかできなくなったようだ。それでも、母れいむは口を開けなかった。 「うー」 親ふらんは、少し迷った。このまま殴り続ければ口を開かせることはできるだろうが、その時には、中の子供たちは死んでいるだろう。ただ食べるだけならそれでもいいが、食べる前にあそぶのがふらんの習性であり、子ふらんたちもそれを楽しみにしている。 「うー、ればてぃん!」 子ふらんの一匹が言った。 「うー、おかーさんのればてぃんみたい」 「うー、みたいみたい」 他の姉妹たちも、それに唱和し出す。 「うー」 親ふらんは頷いて、奥の方に行った。そこには狩りの途中で見つけた色々なものが置いてある。その中から、ればてぃんを取り出す。 胴付きふらん種は、棒状の武器を使う時にそれを「ればてぃん」と呼称することがある。 ただの木の棒だったりすることが多いが、この親ふらんが持っているのは、人間がキャンプをした時に忘れていったナイフであった。 「ゆ゛っ!」 親ふらんが離れたので一息ついていた母れいむは、その光に本能的な恐ろしさを感じてずりずりと後ずさった。 しかし、そんなのお構い無しに親ふらんはずんずん近付いてきて、母れいむを押さえつけた。左手一本でだ。それほどに胴付きふらんとごく普通のゆっくりれいむの間には力の差がある。 突き刺しては中の子供を傷つけてしまうので、母れいむの頬を軽く切った。一度目は浅すぎて表面が切れただけだったが、何度かやっているうちに、切れ目が頬に口を開けた。 「うー!」 切れ目に指を突っ込んで左右に思い切り広げる。 「ゆ゛びびび」 右頬にぱっくりと口が開き、震える子供たちが丸見えになった。 「うー」 親ふらんは手を突っ込んで、どんどん子供たちを取り出していってしまう。 「うー、あそぼあそぼ!」 「うー、なにしてあそぶ?」 「うー、ぽんぽん」 「うー、ぽんぽんやろー」 たちまち、子ふらんたちが群がって来て、一匹の子れいむをくわえて行ってしまう。 「おぢびぢゃんがああああああ!」 「おねーさんつれてかないでええええ!」 「ゆわーん、きょわいよー!」 残された母れいむと子供たちは、それを見ていることしかできない。子供たちはダメージと恐怖で動けないし、母れいむは子ふらんたちの邪魔をしないように、親ふらんが押さえつけている。 子ふらんの一匹が子れいむをくわえたまま飛び上がり、他の三匹が地面に降りる。 「うー!」 子ふらんが、くわえていた子れいむを離した。 「ゆっ、おそらを、ゆべ」 とんでるみたーい、とお決まりの台詞を続けようとした子れいむだが、その前に、衝撃を受けて中断。 衝撃は、地面への衝突によるものではなく、下にいた子ふらんが羽で叩いたためであった。 「うー!」 ぽーんと飛んでいった子れいむの先にいた子ふらんが、羽で子れいむを叩く。後は、その繰り返しだ。最初に上から子れいむを落とした子ふらんも地上に降りてそれに加わる。 ぽんぽん、と子ふらんたちが呼んでいる遊びだ。いわば、ゆっくりを使った蹴鞠のようなものか。 「うー!」 「いぢゃい!」 すぐに殺さないように、それほど強くは叩かないが、それでも子ゆっくりには相当な激痛だ。一定の間隔を置いて連続して加えられる痛みというのも精神へのダメージは大きかった。さらには、子ふらんが打ち返し損なえば、地面に落ちて痛い目を見る。つまりは、なにがどう転んでもこのまま子れいむは死ぬまで痛みを感じ続けるのだ。 「うー、こいつもうおしまい」 しばらくすると、子れいむが悲鳴を上げなくなった。まだ生きてはいるのだが、このぽんぽん遊びは打つ度に上がる悲鳴も楽しみの一つである。 「ゆっ、しょれたべちぇいい?」 子ふらんたちのぽんぽん遊びをゆっゆっと楽しそうに見ていた赤まりさが涎をたらしながら、尋ねる。 「うー、いいよ」 「ゅゅゅ、や……め……ちぇ……」 「ゆわーい、むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー」 「うー、おいしいか」 半死半生の子れいむの言うことなど全く聞く耳持たずにそれを貪り食らう赤まりさ。地獄のような光景を見る子れいむの姉妹たちの目に浮かぶのは一様に恐怖、というわけでもなく、そこには恐怖を上回る羨望があった。 ――なんで、あのまりさはあんなにゆっくりできているの。 強いふらんたちにいじめられるどころか可愛がられて、むーちゃむーちゃして、ちあわちぇで、自分たちと同じ通常種のゆっくりなのに、どうして自分たちはふらんになぶられ殺され食べられるのを恐れてゆっくりできないのに、なぜあのまりさはその逆なのだ。 「うー、べつのでやろー」 「うー、まだまだたーくさん」 「うー、ぽんぽんできるおおきいの三ついる」 子れいむ一匹が鬼籍に入ったが、まだ子れいむ一匹、子まりさ二匹がいる。赤れいむ二匹と赤まりさ三匹もいるが、これは小さいので数に入れていない。あまり小さいと打ち返すのが困難で地上への落下で死んでしまうことが多いため、ぽんぽん遊びには適していないのだ。 「うー、こんどはくろいの」 「ゆびぃぃぃ、やべで! やべでええええ!」 くわえられた子まりさが絶叫して懇願する。おそらをとんでるみたい、などと言う余裕も無かった。さっきの子れいむのようになぶられ生きながら食べられて殺される。そんな運命を受け入れられるわけはない。わけはないが、それに抗うことなどできない。聞く耳持たれぬに決まっている懇願を繰り返すだけ。 そして、子まりさもまた当然同じ運命を辿った。ただ、子れいむと少し違ったのは、途中で帽子が脱げてしまったことだ。 「うー」 「いぢゃい! おぼ!」 「うー」 「おぼうじ! いぢゃ!」 「うー」 「ばりざのおぼ!」 「うー」 「おぼ、いぢゃ!」 痛みへの悲鳴と、帽子を求める悲鳴が混ざり合ってわけのわからぬことになり、この悲鳴には子ふらんたちは大喜びであった。 「うー、こいつもおしまい」 「うー、こいつはたのしかった」 「うー、おぼうしかえしてやろうか」 「……ばりざ……の、おぼ……がえじで……」 死に掛けの状態だというのに、帽子をくわえてきた子ふらんに向かって懇願する子まりさ。 「ゆー! そのおぼうちちょうらい!」 だが、ふらん一家の赤まりさが言うと、子ふらんは赤まりさの方へと帽子を落とした。そもそも、帽子を返してやろうというのは気紛れ以外のなにものでもなかったのだから、家族の「妹」である赤まりさの方を優先するのは当然と言えた。 「うー、これくしょんにするのか」 「ゆん! このおぼうちカッコいいにぇ!」 人間の目からは全く同じに見えるゆっくりの装飾具だが、ゆっくりたちはこれで個体識別をするので、違いがわかる。それゆえに、ゆっくりの目から見ると、中にはカッコいいと分類されるものもある。この赤まりさは、自分と同じまりさ種の帽子で気に入ったものをコレクションしていた。もちろん、死ぬ前にまりさから離れて死臭がついていないものに限ってだが。 「ゆ゛ぅぅぅ」 赤まりさが嬉々として自分のお帽子を持ち去ってしまうのをなす術なく見ながら、子まりさは絶命した。 (後編へ?)