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「おうおうおうっ! やってくれんじゃないのっ! ブチ撒けられてぇかぁぁぁぁっ!!」 だんっ! と床に叩きつけられて、梨花は、こほ、と咳き込んだ。思いつく限りの罵声を口の中で吐きながらも、涙で滲んだ視界の向こうで狂った笑いを浮かべている、園崎魅音――いや、この場合は園崎詩音と言うべきか――を睨みつける。 右手の注射器の頼りない感触に身震いしながらも、梨花は詩音からじりじりと間合いをとった。 手詰まりだった。奇襲が通用しない今となっては、古手梨花と園崎詩音とではスピードもパワーも差がありすぎる。催涙スプレーは突き飛ばされた時にどこかに飛んでいってしまった。 (くそ、こうなったら……) 誰があんたなんかに殺されてやるもんか。 そう胸中で吐き捨てて、梨花は背中に隠した包丁を手に取り、自分の喉元に突きつける。 そうしている間に、すでに詩音は梨花の目の前まで来ていた。 そして詩音は哄笑しながらバチバチと放電するスタンガンを振りかぶり――。 「……あれ?」 そのまま床に転がっていた催涙スプレー缶を踏みつけて、ごっちーん、とひっくり返った。 「……………………」 包丁の切っ先を自らの喉に当てて硬直したまま、梨花は目の前で目を回している詩音を眺めていた。 やがてそろそろと包丁を下ろすと、包丁の背でつんつんと詩音の頬をつついてみる。 ……反応なし。どうやら完全に気絶しているらしい。 とりあえず、梨花は注射器の針を詩音の腕に刺すと、ちゅう、と中の薬剤を注入する。これで、とりあえず詩音の発症の危険は去った。 ほっと肩を脱力しかけて、梨花は慌てて首を振った。自分は園崎家の地下に監禁されている魅音と沙都子を助けなければならないのだ。 園崎魅音として雛見沢をあちこち駆け巡っていたことから、祭具殿の鍵はおそらく常に身に着けているはずだ。そう考えて、梨花は詩音の身を確認しようとした。 だがまだだ、と首を振る。雛見沢症候群の危険はないとはいえ、さっきの状況から考えると目を覚ました詩音が襲い掛かってくる可能性は十分に高い。 梨花は周囲をきょろきょろと見回すと、物干し用のロープで目を止めた。そのままいそいそとロープを持ち出すと、詩音の両手と両足をしっかりと縛る。ロープを結び終えると、梨花はうつ伏せに倒れた詩音の腹に跨ると、ぺたぺたと詩音の上半身を調べ始める。 上着のポケットを裏返し、ジーンズの尻ポケットにごそごそと手を突っ込んでみるが、 (……ないわね) 芳しくない結果に、ふむと梨花は腕組みした。後ろにないとなると、 (やっぱり、前にあるのね) 頷いて、梨花は詩音の身体を仰向けにひっくり返し、再び馬乗りになる。 ふと、梨花はきょろきょろと辺りを見回した。周囲には誰もいない。 無論、そんなことなどわかりきっているが、そこはそれ、儀礼的なものに理由などないのだ。 そのまま、モデルガンのホルスター、ジーンズなども確認してみるが、やはりそれらしきものは見当たらない。 (……おかしいわね) 苛立ちに、梨花は眉根を寄せる。何処だ、何処にある? まだ魅音と沙都子をいたぶる必要があった以上、飲み込んでいるなどということはないはずだ。ならば何処に――。 苛立ちは焦燥へと変わり、せわしなく視線が動き回った。 と。 そこで、梨花は二つの場所で視線を止めた。 即ち――詩音の、胸と、股間に。 たしか、尻の中に針金を隠して脱獄した脱獄犯というのを以前にTVでやっていた。ならば、詩音がそんな場所に隠しているということは十二分にあり得る。 なにせ穴は二つあるから可能性は単純計算で二倍だ。 梨花は詩音の奇抜な発想に驚愕し、そしてそれを見破った自分の閃きに感謝する。 (待っていて、沙都子、魅音。すぐにこの拷問狂の手から救い出してあげるから) 新たに決心しながら魅音の服に手をかける。上か下かどちらからやるか迷ったが、ライブ感を出すために上から剥いていくことにした。 ふと、梨花は自分の状況を確認してみる。両手両足を縛られて気絶した女に跨って、それにぺたぺた触れながらひん剥こうとしている幼女。 (どう見ても、身体に隠したものを探っているようにしか見えないわね) 力強く頷いて、梨花は、ぱん、と自分の頬を張って気合を入れた。 続いて、自分の目前で静かにいただきますと合掌すると――。 がばちょ、と詩音のTシャツをまくり上げた。 「おおっ」 始めに見えたのは黒い花。 鎖骨の辺りまでまくり上げると、黒いブラに半分包まれた詩音の豊かな乳房が顔を出した。 さて、と梨花は再び腕を組んで考えた。 やあスカリー。詩音ちゃんの胸に隠すとなると、どこら辺が一番怪しいと思うかな? やっぱり胸に隠すとなると基本は胸の谷間だと思うわ、モルダー。 脳内会議で出した結論に、完璧ね、と梨花は会心の笑みを浮かべる。なくても下を探せばいいだけだし。 そうと決まれば、と詩音の胸にシフトするために跨りながら体を前にずらす梨花。 しかし、そこではて、と首を傾げる。 (……これ、どうやって外すのかしら) ぼんやりと母がつけ外ししているのを見た記憶はあっても、具体的にどうやっていたのかまでは思い出せない。 がくり、と梨花は膝をついた。またもや自分は間に合わず、沙都子も魅音も救えず、そして再び六月は回り続けるというのか。 (ごめんなさい、沙都子。ごめんなさい、魅音。……そしてごめんなさい、お母さん) こんなことなら穴の開くほどじっくりきっちりむっちり確認しとくんだったよ畜生くそう、と続けて、梨花は意気消沈した視線を下に落とし――。 その目が、驚愕に見開かれた。 そこにあったのは、さっきの包丁。 梨花は包丁を掲げながら、この素晴らしき偶然を神に感謝した。 しかし、あぅあぅと威張るナマモノを連想したらなんだか腹が立ってきたので、懐にしまっているおしおき用銀紙をがむがむと噛んでおく。 ぎゃああ、という悲鳴が何処かから聞こえてきたが気にしない。 閑話休題。 包丁を構えると、梨花は詩音の胸の間にその切っ先を当てた。傷をつけてしまうといろいろと商品価値とか落ちるので、ブラを切るのには慎重の上に慎重を期することにする。 キコキコと包丁を前後にスライドさせるのに呼応して、ぷちぷちと繊維が切れる小気味よい音に、ふふふ、と梨花は思わず含み笑いを漏らした。 いやあくまで音にだってば。 そんなこんなの内に最後の一本までナイロンがぷつりと切れ、梨花はわきわきとした手つきで双丘のてっぺんの黒帽子をつまみ取る。 「おおー!」 ぽよぽよと重たげに揺れる乳房に梨花は思わず歓声をあげた。 ブラを外すという、たったそれだけのことでこんなにも揺れるものなのか、おっぱいは。 感心しながらも、梨花は当初の目的のである胸の谷間を確認しようと、がっちりと乳房を両手で握った。 掌からは、弾力と柔らかさがブレンドされた心地よい感覚を返ってくる。指の間からは、乳肉が窮屈そうにはみ出ていた。 そのまま指で先端をつまむと、ぐい、と左右に開く。 「……え?」 梨花は呆然と声を上げる。ない。鍵どころか、はさんだ痕さえ残っていなかった。 (くっ、ならばやはり下の方だというの?) まさかそんなところに隠すなんて。 戦々恐々としながらも、梨花はズボンの方に手をかけようとした。 だが、と思い留まる。そして一つの考えが浮かんだ。 (……この胸が、偽者である可能性) いえ、まさか。とその考えを切り捨てたくなる。つーかそろそろ詩音ファンに刺されそうだし。 しかし、可能性のある以上はそれを一笑に付して却下するわけにはいかない。コマンド総当りはAVGの基本なのだ。 梨花は上半身の方に重心を移し、再び乳房をぎゅむ、と握る。やわらかい感触。対して自分の胸を見下ろしてみる。 すとーん。 まさに断崖絶壁。マロリーも「そこに崖があったから」とか言って登頂をあきらめそうなくらいの絶壁ぶりだ。さすがに大石のような三段オリーブ園ほどではないにしても。 なんだか、無性に腹が立ってきた。 もみゅもみゅもみゅ。 一心不乱に詩音の胸を揉み倒す梨花。親の敵でも見るかのように目尻を吊り上げて、こやつめっ、こやつめっ、と強く握っては緩める。 くそう、こやつのおっぱいは何が入っているというのだ。やはり夢か? 夢が詰まってるのか? と、何かに気づいたように梨花はぴたりと手を止めた。 ぱ、と手を離すと、乳房の先端部がぴんと自己主張しているのが見える。それに梨花はニヤリと邪悪な笑みを漏らすと、ちゅうう、と乳首に吸い付いた。 「……くぅ、ふぁぁ……」 瞳を閉じたままの詩音が、梨花の愛撫に反応して悩ましげな吐息を漏らす。だが、梨花がちゅぽんと乳首を口内から引き抜くとまたすぐに鳴きやんでしまう。その反応が面白く、詩音の乳首がピンク色に上気するまで、くすくすと笑いながら梨花は詩音の胸をいじり回していた。 「よし、次ね! 下よ下、とにかく下!」 さすがに自ら隠語をべらべらと垂れる度胸はない。兎にも角にも、詩音が股の穴に以下略という無視できない可能性を検証するためだ。 梨花はずるずると詩音のジーンズをパンツごと膝まで下げると、うっすらと若葉色の茂みが生えている泉に指を這わせる。 「んぅっ!」 「ふふふ、やっぱり啼いたわね。となるとやはりここに隠していたわけね」 くっくっく、と悪の女幹部のような口調でつぶやくと、梨花はぴっちりと閉じている詩音の秘部を観察する。穴としては尿道、ヴァギナ、アナルの三つだが、さすがに尿道に鍵を隠すのは無理だろうということで外すことにした。 とまれ、穴の中に隠してあるなら直接手で確かめるべきだろう。何のかんのと回りくどく調べるより、そうした方が遥かに手っ取り早い。そういうことだ、じゃあ入れようか。 決断は早かった。 梨花は、右手の人差し指と中指をぴんと立たせると、ぺろり、と丹念に舐めあげて唾液で湿らせてから、 「……私は鬼を食う者だから(性的な意味で」 勢いよく、詩音の下の穴に二本の指を突っ込んだ。 「うぐぅぅ! んふ、はぅ……」 下半身への衝撃はやはり凄まじいものがあったのか、詩音は大きく声をあげる。 しかし、そんなことはお構いなしに梨花の指は詩音の秘所をぐにぐにと犯す。 指をグラインドさせるたびにぬちゃぬちゃと奏でられる卑猥な音が、詩音の声を余計に妖艶にしていた。 「んぅ、は、ふ、あっ、ああっ、あっ」 「むう、おかしいわね。ここかー? それともあそこなのかー?」 指を挿入し、さらに詩音の恥丘を揉みしだきながら、梨花はノリノリで詩音に言葉責めをする。聞いていないであろうことはわかってはいるが、これもまた気分の問題だ。 しかし、ここにもないとなると後はひとつしかない。 ぬちゃぬちゃと挿入した指を止めることはせず、梨花は詩音の足を前に倒す。すると、自然と詩音の股が全開で見えた。 ビバ消去法。 うふふふふふ、とアヤしい笑みを漏らしながら、もう一方の指をアナルに、そして口をぷっくりとした陰核に近づける。 「シンメトリカルドッキングー!」 下ネタ解禁。 じゅぷ、かりっ。 「くぅ――あぁぁッ……! いぃ、くぁ……!」 新たな方向から突如爆発した快感に、詩音は意識を真っ白にし、びくびくと身を仰け反らして絶頂に震えた。 つーか起きてんじゃねーのかこいつ、という指摘をする者は、幸か不幸か梨花を含めてこの場には存在しない。 そんな事は露知らず、梨花はしばらく詩音の膣にくちゅくちゅと指を出し入れして思う存分楽しんだ後、ふう、と身を起こした。 ごちそうさまでした、と詩音に向かって手を合わせると、ふむう、と腕を組む。 (しかし詩音が身に着けているわけじゃないとなると、どこなのかしら) 絞りこむにしても、精々園崎家の中ということくらいしかわからない。 これはちょっと探すのに時間がかかりそうね、と梨花はため息をつくと、とりあえず手近な居間から取り掛かろうと立ち上がった。 そしてずるべたーん!とすっ転ぶ。 受身すらとれずに顔面を強打し、痛そうに鼻を押さえながら、何なのよもう、と梨花は険のある目で足元を見やり…… そしてそのまま、さあっ、と顔色を蒼白にする―― 自分の足が、ぴんと伸ばしたまま投げ出されている。そこまではいいのだが、足先に、なにか、白い、ものが。 それは、こちらの足をがっちりとホールドしていた。 また、それは詩音の肩先から伸びていた。 とどのつまりは。 梨花の足を、詩音が握っていた。 「お、おおおおお起きていたのですか、詩ぃ」 「ええ。きっちりくっきりきっかりはっきり起きてましたよ、梨花ちゃま」 冷や汗を滝のように流しながらも、詩音に口を開く梨花。とりあえず敵意はなさそうなのでほっと息をつく。 が、それもすぐに打ち破られた。 「ねえ梨花ちゃま」 「みぃ?」 「さっき、いろいろと私の身体を弄繰り回してくれたみたいですねぇ」 ぎくり、と身を震わせる。加えて情欲に濡れた詩音の瞳が、梨花の不安を現在進行形で膨らませていた。 「え、えーと」 「ですから」 一息。 「私もお返しに弄繰り回しちゃっても、構いませんよね……?」 思わず呼吸が停止しそうな台詞に、梨花は硬直した。しかし、同時にずるずると引っ張られていく己の足に身も凍るほどの戦慄が走る。 「み、みぃぃぃぃーー!」 叫びながら、慌てて手近な柱につかまる。梨花と詩音の膂力差を考えると捕まることすらできなくてもおかしくはなかったが、未だ足のロープが解けていないのと絶頂の直後で身体に満足に力が入らないのとで、梨花と詩音の間に拮抗が生まれつつあった。 ぐいぐいと足から胴、胴から腕へと伝わる力に身震いしながらも、柱に絡めた両腕に力を込める。詩音の根が尽きるまで自分の力が持つともあまり思えなかったが、それでも抵抗はしなければならない。 しかし、それも長くは続かなかった。 「みぃっ!」 業を煮やしたのか、梨花の足の裏をちろりと舐めあげる詩音。 思わず手を離してしまい、あっと気づいたときにはすでに柱はこちらの腕の射程外にあった。 「みぃぃぃーー!!」 かりかりと床に爪を立てるが、その程度で何とかなるはずもなく。 程なくして、梨花はうつぶせのまま詩音にすっぽり抱きかかえられる格好となった。 「んん~、やっぱり可愛いですね梨花ちゃまは。髪はつやつやですし肌はすべすべですし、ああ素晴らしき哉幼女補正!」 きゃー、と黄色い声を上げながら、すりすりとこちらの髪やら顔やらを撫で回す詩音を、梨花はどこか諦めたように眺めていた。 とは言え、抵抗らしい抵抗もできないし、詩音の手つきはそれなりに優しくて心地よいのでとりあえず何もしないでおく。やはりなでなでされなれている者は違うということか。 恐るべしにーにー。 (さすがね、悟史) 頬に一筋の汗を垂らしながらも、不敵に笑って、梨花。 (んっ、やっぱり、沙都子ゲットの道程での最大の障害は、くンっ、あなただけか……って) 「……って、どこ触ってるのですか、詩ぃ!」 いつの間にかワンピースの隙間から腕を突っ込んでぴこぴことこちらの乳房を弾いていた(揉むとは言えないのが悲しい)詩音に、慌てて叫ぶ。 「んー? だって言ったじゃないですか、梨花ちゃま」 くすり、と笑みを吐息に変えて零すと、詩音は覆いかぶさったまま、こちらの首筋をぺろりと舐めあげた。 「ひゃう!?」 「――弄り回してあげる、って」 言葉と同時に、乳首をきゅうっ、とつねられ、梨花は仰け反って嬌声を上げる。 「ふふっ……可愛い」 仰け反った拍子にこちらに近づいてきた梨花の頭に首を巡らせ、はむ、と梨花の耳を甘噛みした。 梨花は首を振って逃れようとするが、その動きもどこか弱々しい。 「はむ……ん……ちゅ。ほら、こんなに濡れてます。私が押し倒さなかったら、どうせ後で自分でヤッていたんでしょう?」 ちっちゃくても思春期ですもんねぇ、と淫蕩な笑みを漏らす詩音に、 「あっ……ふ……んんっ。ち、ちが――」 「ふーん。じゃ、確かめてみます?」 「……へ?」 何を、と聞き返す間もなく、詩音はするりと体位を変えると、梨花の下着をするすると剥ぎ取った。足首を縛られているというのに、驚異的な動作のなめらかさである。FPSに直すと85は優に出ていそうなぐらいの快適さだ。 「さてさて、ご開帳~☆」 そのまま、かぱちょと梨花の膝を掴んで股をM字に開く。梨花はと言えば、抵抗を諦めたのかぐったりと脱力していた。 ふんふんと当たる詩音の吐息をもどかしげに感じつつ、スカート越しに詩音の頭をぎろりと睨む。 ええい、もうどうにでもなれだっ。 詩音はといえば、うわー、と感嘆の言葉を漏らすと、 「ふむふむ、梨花ちゃま"も"生えてないんですねー。沙都子とおんなじ」 さわさわとこちらの恥丘を撫でる詩音に、恥ずかしさのあまり梨花はぷい、とうつむき―― 「……って待ちなさい! あんた沙都子に何やったのよ!」 思わず猫かぶりも忘れて、がばと身を起こす。 「何したって言われましても……ナニに決まってるでしょ?」 「きぃぃぃぃっ、この泥棒猫っ! やっぱりでか乳にはロクなのがいないわねっ! もう怒ったわ、あんたみたいなサカッた雌猫なんかこの私にオとされてしまえー!」 「ふっふっふ、上等ですよ梨花ちゃま! 梨花ちゃまのブラックリストにお姉は入ってるのかとかいうツッコミは華麗にスルーしつつ、私は悟史くんと沙都子とお姉さえ手に入れば他は何も要らないんですがそれはそれとして梨花ちゃまも頂いておきましょう!」 ふーっ! と毛を逆立てて威嚇する梨花に、するり、とこれまたあっさりと足首のロープを外して笑みを浮かべる詩音。 ツッコミ禁止。 「百年かけて仕入れたエロ知識なめんなー! かかって来なさいグギャ女!」 「言ってくれるじゃないのっ! イき倒されてぇかぁぁぁぁっ! ぐげげげげげげげ!」 「ん……む。はぁ……ちゅ」 「く……んんっ。ぺろ……ちゅぷ」 ぴちゃぴちゃと淫猥な音を響かせて、二人の少女が絡み合う。お互いの髪が動く度に舞い踊り、まるでのたくる蛇の群れの様だ。 詩音の上半身に被さった梨花が、詩音の乳首を吸い上げる。むにむにと手の中で暴れる乳房をしっかりと握り締めて、すりすりと乳輪を擦りあげた。 梨花の胸の突起を、詩音がついばむ。そのまま唇と歯でコリコリと転がし、もう一方の乳頭をかりかりと爪で引っかいた。 (……んっ。さすがに、はんっ、ヤバいわね。手馴れてそうだとは思ったけど、まさか、んんっ。これほど、とは) (……くっ。こ、子供だと思って、甘く、はんっ、見ちゃいました、ね。ていうか、くンッ、お姉より数段巧いじゃないですか、この子っ) 内心で焦りを覚えながらも、互いを責める手は止まらない。 頭に靄がかかったままさらに肉欲に溺れていき、理性が磨り減っていく。回れば回るほどに堕ちていく、正に快楽地獄だ。 やがてお互いの胸だけでは満足できなくなったのか、二人は体位を変えると、お互いの股間に顔を埋めた。 詩音が、梨花の秘所を舌で撫でる。秘裂をちろちろとねぶり回し、奥まで舌を突き入れる。 梨花が、詩音の淫核を口に含む。赤子のように、一心にちゅうちゅうと吸いたてる。 (ええと……なんだっけ。私、何をしにここへ来たんだっけ) なんだろう。なにか大切なことを忘れてるような。 ぼーっと半ば放心したまま、梨花は詩音が自分のヴァギナを股間にあてがうのを、他人事のように見ていた。 ――くちゅっ。 「「は、あああああああああっ!!」」 お互いの接合部から爆発した快感に、一瞬ならず意識が飛んだ。 はあはあと肩で息をつきながらも、にちゅにちゅとお互いの動きに合わせて形を変える秘裂に、確信を込めて直感する。 (*1) お互いに、それが自らにどれだけの影響を及ぼすか、今の絶頂だけで容易に想像がつく。これ以上は、踏み込んではならない。 だが、しかし。 「はっ、あっあっあっあっ、ああっ!!」 「んんっ、んっんふ、んううううううっ!!」 腰が、身体が、止まらない。お互いに次なる快楽を求めて腰をくねらせ、新たに爆発する甘い感覚に身悶えする。 蜜に惹かれる虫のようだ。皮膚の下でぞわぞわと蠢き、ぞくりと寒気を伴った戦慄と、とろけるほど熱い恍惚とをもたらしてくる。 と、その時、二人の淫核がこりっ、とお互いを弾きあった。 「「あ、ああああああああああああっ!!!」」 落下感にも、浮遊感にも似た絶頂の余韻を味わいながら、梨花の意識はゆっくりと黒く塗りつぶされていった。 ……結局、梨花が当初の目的を思い出したのは、翌朝になってからだった。
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← メギドラオン。 それは極大の火力に他ならない。 単純な破壊力だけに絞って言えばリンボ自身の本来の宝具よりも数段上を行く。 龍脈の龍を経由してその身に会得した異世界の魔法。 蘆屋道満程の術師であれば、それを最上の形で扱いこなすなど朝飯前の茶飯事だった。 更に禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満として完成された素体をもってすれば尚の事。 結果として歓喜のままに解き放たれた最上の炎は屍山血河舞台の総てを焼き尽くし。 後に残された者達は、当然のように敗残者らしい姿を晒す憂き目に遭った。 「これはこれは」 アビゲイル・ウィリアムズは右腕を黒焦げの炭に変えられ。 新免武蔵は髪房を焼き飛ばされた上、炎の中に生存圏を捻出する為に多刀の半分以上を溶かさねばならなかった。 そして伏黒甚爾の損傷が一番重篤だ。 彼は左腕を肩口から消し飛ばされ、それだけに留まらず左胴全体に大火傷を被っていた。 如何に彼が天与呪縛のモンスターであると言えども、これは紛うことなき致命傷だった。 「皆様お揃いで、随分と見窄らしい姿になりましたな」 らしくもなく息を乱した姿に溜飲が下がったのかリンボは満足げに彼の、そして彼らの有様を嘲笑する。 一番被害の軽い武蔵でさえ二天一流の強みを大きく削ぎ落とされた形。 アビゲイルと甚爾は四肢を三肢に削がれ、後者に至っては生命活動の続行さえ危うい容態にまで追い込まれている始末。 無様。 神に弓引いた者達の顛末としては実に"らしい"体たらくではないか。 そう嗤うリンボだけが唯一無傷だった。 三人が負わせた手傷もダメージも、メギドラオンの神炎が晴れる頃にはその全てが消え失せてしまっていた。 「…大丈夫、二人とも」 「私は、なんとか。でも…」 アビゲイルの眼が甚爾を見やる。 甚爾は答えなかった。 それが逆に、どんな返事よりも雄弁に彼の現状を物語っている。 “…こりゃ駄目だな。流石に年貢の納め時らしい” 冷静に自分の容態を分析して判断を下す。 此処まで数秒足らず。 自分の肉体の事は嫌という程よく分かっている。 何が出来るのかも、何が出来ないのかも。 以上をもって伏黒甚爾は自分の末路を悟った。 “不味い仕事を受けちまったな。タダ働きの果てがこれじゃ全く割に合わねぇ” ほぼ間違いなく自分は此処で死ぬ。 反転術式なんて便利な物が使える筈もない。 マスター経由での治癒も見込めず、体内は主要な臓器が半分程焼損している有様だ。 今こうして生き長らえている事が奇跡と言っても決して大袈裟ではなかった。 “従っても歯向かっても、結局汚れ仕事やるような奴は長生き出来ねぇってか。…返す言葉もねぇな” あの時。 伏黒甚爾は、アイドルの少女を射殺した後――芽生えた違和感に逆らわなかった。 大人しく尻尾を巻いて逃げ帰った。 それでも結局こうして屍同然の姿を晒すに至っているのはどういう訳か。 問うまでもない。 そういう訳なのだ。 散々暗躍して来たツケか、どうやら往生際という奴が回ってきたらしい。 何か途轍もない幸運に恵まれて生き長らえる事が出来たとしても隻腕の猿など何の使い物にもなりはすまい。 つまり此処で自分は、ごくあっさりと詰んだ訳だ。 仕事人らしくひっそりと…呆気なく。 似合いの末路だ。 甚爾は満身創痍の体の可動域を確かめながら自嘲げに笑う。 とはいえこれで最後なら、もう後先考える必要もない。 最後に死に花咲かせてアビゲイルにバトンを渡せばそれで終いだ。 “化物退治の英雄になるつもりなんざ端からねえんだ。ド派手な英雄譚なんざ、持ってる奴らに任せとけばいい” 例えば、得体の知れない神に魅入られているガキだとか。 例えば、差し向けられた呪いも力も全部真っ向斬り伏せちまう剣客だとか。 華々しい勝利や首級はそれが似合う奴らに任せるのが絶対的にベターだ。 能無しの猿がやるべき仕事はその手伝いと後押し。 奴らが気持ちよく本懐果たせるように裏方仕事で敵を削り、死ぬ前に野郎の吠え面が見られればラッキーと。 そうまで考えた所で、 『猿では儂は殺せぬ。誅せぬ。一芸、一能、道具を用いようと知恵を使おうと、人の真似を超えませぬ』 『黄金ほどの衝撃もない。 雷光ほどの輝きもない。 火焔ほどの鋭さもない。 絡繰ほどの巧拙もない。 鬼女ほどの暴力には、些か足りない』 ――違和感。 自らの意思と相反して隻腕に力が籠もった。 その右腕を見下ろす視線は忘我。 次に浮かんだのは苦笑だった。 「俺も懲りねえな」 "違和感に逆らい続けると、ろくなことがない"。 結局の所猿は猿なのだろう。 然り。 この身に正義だの信念だのそんな大層な観念は今も昔も一度だって宿っちゃいない。 只強いだけの空洞。 そしてその空白を埋める物は、もう未来永劫現れる事はない。 自分も他人も尊ぶことない。 そういう生き方を選んだのだから。 そんな青を棲まわせる余地なぞ、この体に一片だってあるものか。 それは今も変わらない。 きっとこれからも。 何があろうとも――。 「フォーリナー」 リンボの五指は今や指揮棒だった 振るその度に呼吸のような天変地異が発現する光景は悪夢じみている。 地震。火災。雷霆に怪異の跳梁、束ねた神威を放てばそれは必滅の審判と化す。 傷口が炭化して血すら流れない欠けた体で地面を蹴り、それらをどうにか掻い潜りながら。 すれ違う僅か一瞬、甚爾はアビゲイルへと耳打ちをした。 「――――――」 少女の眼が見開かれる。 だめよ、と口が動いた気がした。 それに耳は貸さない。 伝えるべき事は伝えたと、猿は戦端へ戻っていく。 “しかし流石に坊さんだな。人の陥穽探しは得意分野か” 捨てられるものは残らず捨てた。 何だって贅肉と断じて屑籠へ放り込んだ。 それをとっとと焼き捨ててしまわなかったのが"あの時"の失敗。 だから今回は歯車たれと。 依頼人のオーダーを完璧にこなして座へ帰る、そういう役割に殉ずるべきだと。 そう決めていた。 今だってそのつもりだ。 なのに猿は何処までも愚かしく。 そして、何処までも人間だった。 ――後先がなくなった。 未来が一つに定まった。 後任は用意出来ている。 何より今この場を仕損じれば、その時点で仕事は失敗に終わるのが確定している状況。 そんな数々の理由が…言い訳が。 英雄が生前の偉業をなぞるが如くに。 術師殺しの男に、その愚行をなぞらせる。 「…さて」 右腕は問題なく動く。 両足の火傷も軽微だ。 内臓の損傷は重度。 失血で脳の回りは悪い。 何より片腕の欠損がパフォーマンスを著しく低下させている。 仕事人として、術師殺しとして片手落ちも良い所だ。 以上をもって伏黒甚爾は結論付ける。 ――問題ない。 「やるか」 悪神と化したリンボを討たずして仕事の続行は有り得ない。 ならばその為に今此処で死力を尽くそう。 この違和感に逆らって。 この衝動に従って。 甚爾は地を蹴った。 無形の魔震を斬り伏せながら吶喊する。 嘲笑うリンボへ獰猛に笑い返して、男は愚かのままに突き進んだ。 呪霊の海が這い出でる。 禍津日神の呪力によって無から湧き出す百鬼夜行。 それを切り払いながら進む甚爾の奮戦は隻腕とは思えない程に冴え渡っていたが、しかしそれは大局に何の影響も及ぼしていなかった。 「健気なものよ。これしきの芸当、今の儂には無限に行えるというのに」 夜行は攻め手の一つに過ぎない。 甚爾を嘲笑うように九頭竜の顎が開き、九乗まで威力を跳ね上げた魔震を炸裂させた。 アビゲイルが鍵剣を振るって空間をねじ曲げる。 そうして出来上がった脆弱点を武蔵が押し広げ、力任せにぶち破った。 だが足りない。 無茶をしても尚砕き切れなかった震動の余波が彼女達の体を容赦なく蹂躙する。 武蔵が血を吐いた。 アビゲイルが片膝を突いた。 されど休んでいる暇などない。 甘えた事を宣っていれば、足元から間欠泉宛らに噴き出した呪炎の泉に呑まれていただろう。 「チェルノボーグ、イツパパロトル」 二神が列び立って天元の桜を迎撃する。 暗黒と吸精が、女武蔵の体を弾丸のように弾き飛ばした。 彼らは次の瞬間にアビゲイルの喚んだ触手に呑み込まれ即席の牢獄へ囚えられたが、それも所詮は僅かな時間稼ぎにしかならない。 空に瞬く赫い、何処までも赫い太陽。 先刻三人が見た最強の魔法を嫌でも想起させるそれが弾ければ、地上はまたしても熱波の地獄に置き換わった。 「メギド」 メギドラオンに比べれば遥かに威力は落ちる。 だがそんな事、何の救いにもなりはしない。 最上に比べれば威力が幾許か落ちる。 ――だから何だというのだ。 「では十度程、連続で落としてみましょうか」 今のリンボが繰り出せばどんな術でも致命の威力を纏う。 ましてや格が低いという事は、即ち連射に耐える性能であるという事でもあり。 稚気のように言い放たれたその言葉は、彼女達に対する死刑宣告となって降り注いだ。 「絵画を楽しむ趣味は御座いませんでしたが。なかなかに愉しい物ですなぁ、絵筆で何か描くというのも」 この体を筆に、この力を絵具に。 自由気ままに絵を描く。 世界という名の白紙を塗り潰す。 そうして描き上げるのだ、色とりどりの地獄絵を。 地獄の業火より逃れ出んとする不遜者があれば直ちに罰を下そう。 羅刹王を超え髑髏烏帽子を卒業し、現世と地獄を永久に弄ぶ禍津日神と化したこの蘆屋道満の眼が黒い内は斯様な不遜なぞ許さない。 「このようになァ」 「あ、ぎ…!」 鍵を掴み立ち上がろうとした巫女の右足が吹き飛んだ。 リンボの放った呪詛が鏃となって無慈悲に罪人を誅する。 「如何ですか、アビゲイル・ウィリアムズ。純真故に怒る事すら正しく出来ない哀れな貴女」 全身の至る所に火傷を負い、酷い部分は炭となって崩れ始めているその様相は悲惨の一言に尽きる。 そんな彼女の姿にはこの状況でも尚何処か退廃的な美しさが宿っており、それを嬉々と感傷しながらリンボは綴る。 「主の仇を討つ事は愚か、彼女へ引導を渡したのと同じ攻撃で為す術なく膝を突かされる気分は。 是非とも、えぇ是非とも、この九頭竜新皇蘆屋道満へお聞かせ願いたい。それはさぞや芳しい蜜酒となりてこの身を潤すでしょうから」 「…とても痛くて、辛いわ。泣いてしまいそうになるくらい」 向けられるのは只管に思慮等とは無縁の悪意。 生傷に指をねじ込んで穿り返すような嗜虐。 それに対し滔々と漏らすアビゲイルの声にリンボは笑みを深めたが。 そんな彼に対して巫女は、鍵を杖によろよろと立ち上がりながら言う。 「可哀想な御坊さま。貴方は、私に怒ってほしいのね」 「ほう、これはまた面妖な事を仰る。 確かに、ええ確かに銀の鍵の巫女たる貴方が髪を振り乱し目を剥いて怒り狂う姿を見たくないと言えばそれは嘘になりますが」 ギョロリとリンボの眼が動いた。 「言うに事欠いてこの拙僧を哀れと評するとは…いやはや、異界の感性というのは解らぬ。 こうも満ち足り、満ち溢れて止まらないこの霊基が貴女には見えぬのですかな? 今まさにこの蘆屋道満は過去最高の法悦のままに君臨し、御身らの奮戦さえ喰らって地平線の果てへ漕ぎ出さんとしているというのに!」 「ええ。貴方はきっと…とても可哀想なひと。酷い言葉と、棘のような悪意で着込んでいるけれど……」 今のリンボは奈落の太陽そのものだ。 底のない黒を湛え、脈打ち肥え太る破滅の熱源。 既にその性質は赤色矮星と成って久しい。 彼はあるがまま思うがままに全てを呑み干すだろう。 まさに至福の絶頂。 哀れまれる理由等何もない。 「本当は…とても寂しいのね。 分かるわ。その気持ちを、私は何処かで知っているから」 巫女はそんな彼の逆鱗を、その指先で優しく撫でた。 「どれだけ手を伸ばしても届かない誰かに会うために歩き続ける。 星に手を伸ばすみたいに途方もない事だと知りながら、それでも諦められない何か。 頭のなかに強く、そう太陽みたいに焼き付いて消えない憧憬(ヒカリ)……」 …朧気に揺蕩う記憶が一つ、アビゲイルにはあった。 それはきっと"この"アビゲイルに起こった出来事ではない。 魂の原型が同じだから、存在が分かれる際に偶々流れ込んでしまっただけの記憶と想い。 ある少女の面影を探して、きっと今も宇宙の果てを旅しているのだろうもう一人の自分の記憶。 「だからお空を見上げているのでしょう。あなたは」 「――黙れ」 そんなものを抱えているから、アビゲイルはこうして悪逆無道の法師へと指摘の杭を打ち込む事が出来た。 昂るばかりであったリンボの声色が冷たく染まる。 絶対零度の声色の底に煮え滾る怒りの溶岩が波打っている。 その証拠に次の瞬間轟いた魔震は、先刻彼女と武蔵が二人がかりで抉じ開けた物より更に倍は上の威力を持って着弾した。 「ン、ンンンン、ンンンンンン…!」 それはまさに極大の災厄。 自分で生み出した呪符も百鬼夜行も全て鏖殺しながら、リンボは刃向かう全てを押し潰した。 立っている者は誰も居ない。 猿が倒れ。 巫女が吹き飛び。 剣豪でさえ地に臥せった。 「…いけない、いけない。神たるこの儂とした事が餓鬼の戯言に揺さぶられるとは」 誰一人禍津日神を止められない。 天を目指して飛翔する禍津の星を止められない。 力は衰えるどころか際限なく膨れ上がり、無限大の絶望として悪僧の形に凝集されている。 彼こそが地獄、その体現者。 この偽りの地上に地獄の根を下ろし。 いずれは世界の枠さえ飛び越えてありとあらゆる平行世界を悪意と虐殺の海に変えるのだと目論む邪悪の権化。 そんな彼の指先が天へと伸びた。 昏き陽の輝く空には鳥の一匹飛んでいない。雲の一つも流れていない。 孤独の――蠱毒の――お天道様が口を開けた。 白い歯と真っ赤な舌を覗かせながら、神に挑んで敗れた愚か者達を嗤っている。 「とはいえ今ので多少溜飲は下がりました。拙僧も暇ではありませんので、そろそろ幕を下ろすとしましょう」 そうだ。 これは太陽などではない。 斯様な悪意の塊が天に瞬いて全てを笑覧する豊穣の火であるものか。 彼男の真名(な)は悪霊左府。 かつて藤原顕光と呼ばれ、失意の内に悪霊へ堕ちた権力者の成れの果て。 蘆屋道満の盟友にして、彼の霊基に宿る三つ目の柱に他ならない。 「因縁よさらば。目覚めよ、昏き陽の君」 其処に収束していく呪力の桁は最早次元が違った。 単純な熱量でさえ先のメギドラオンを二段は上回る。 放たれたが最期、全てを消し去るに十分すぎる凶念怨念の核爆弾だ。 全ては終わる。 もの皆等しく敗れ去る。 「この忌まわしい縁の悉く平らげて、三千世界の果てまで続く大地獄の炉心と変えてくれよう――」 太陽が瞬くその一瞬。 リンボの高らかな勝利宣言が響き渡る中。 「ぞ……?」 …しかし彼はそこで見た。 視界の中、倒れた三人の中で誰よりも早く。 灼け千切れた体を動かして立ち上がった女の姿を、見た。 その姿は見る影もない程ボロボロだった。 勇ましく啖呵を切ってのけた時の清冽さは何処にもない。 死に体と呼んでもそう的外れではないだろう。 二天一流を特殊たらしめる多刀も今や二振りが残るのみ。 足を止めて死を受け入れても誰も責めないような、血と火傷に塗れた姿格好のままで。 それでもと、女武蔵は立ち上がっていた。 「――」 その姿を見る蘆屋道満。 惨め、無様。 悪足掻き、往生際悪い事この上なし。 罵る言葉なぞ幾つでも思い付くだろう醜態を前にしかし彼は沈黙している。 得意の嘲笑を口にするのも忘れて。 道満は――リンボは己が霊基の裡から浮上する光の記憶を思い出していた。 “…莫迦な。そんな事がある筈がない” 既視感。 本願破れて失墜し。 常世総ての命を殺し尽くすとそう決めた己の前に立ち塞がった男が、居た。 青臭くすらある喝破は子供の駄々とそう変わらなかったが。 それを良しとする神が笑い。 愚かしい程真っ直ぐなその男に、英雄に――剣を与えた。 あの光景と目の前の女侍の姿が重なる。 有り得ぬと。 布石も理屈も存在すまいと。 理性ではそう解っているのに何故か一笑に伏す事が出来ず、リンボは抜き放たれたその刀身を見つめ呟いていた。 「――神剣」 都牟狩、天叢雲剣、草那芸剣。 神が竜より引きずり出した都牟羽之太刀。 霊格では到底それらに及ぶべくもない。 禍津日神は愚か羅刹王にさえ遠く届かないだろう、桜の太刀。 それが何故ああも神々しく目映く見えるのか。 あれを神剣だなどと、何故己は称してしまったのか。 「…そう。貴方がそう思うのならきっとそうなんでしょうね、蘆屋道満」 「……否。否否否否否否否! 有り得ぬ! そんな弱い神剣がこの世に存在するものか! 世迷言を抜かすな新免武蔵ィ!」 「残念吐いた唾は飲めないわ。他でもない貴方自身が"そう"認識したんですもの。 うん、ちょっと安心しました。私、まだちゃんと貴方の敵であれてるみたいね」 これは神剣等ではない。 宿す神秘はたかが知れており。 神域に届くどころか一介の宝具にさえ及ばないだろう一刀に過ぎない。 だがリンボは先刻確かにこれに神の輝きを見た。 かつて己を滅ぼした、あの雷霆の如き光を。 悪を滅ぼしその企みを挫く――忌まわしい正義の輝きを見た。 「…銘を与えるなら"真打柳桜"。繰り返す者を殺す神剣」 勝算としてはそれで十分。 リンボの示した動揺が武蔵の背中を後押しする。 他の誰でもない彼自身がこの剣に神(ヒカリ)を見たのなら。 それこそは、これが目前の大悪を討ち果たし得る神剣なのだという何よりの証明だ。 たとえ贋作の写しなれど。 贋物が本物に必ずしも劣る、そんな道理は存在しない。 「――おまえを殺す剣よ、キャスター・リンボ!」 「ほざけェェエエエエエエ新免武蔵! 光の時、是迄! 疑似神核並列接続、暗黒太陽・臨界……!」 桜の太刀、煌めいて。 満開の桜に似た桃光が舞う。 見据えるのは空で嗤う暗黒の太陽。 地上全てを呪い殺すのだと豪語する奈落の妄執。 これは呪いだ。 これらは呪いだ。 改めて確信する。 こいつらが存在する限り、あの子達は笑えない。 あの二人が共に並んで笑い合う未来は決して来ない。 …それは。 爆ぜる太陽の猛威も恐れる事なく剣を握る理由として十分すぎた。 「伊舎那、大天象ォォ――!!」 「――狂乱怒濤、悪霊左府ゥゥッ!!」 光と闇が衝突する。 成立する筈もない鬩ぎ合い。 それでも。 負けられぬのだと、武蔵は臨む。 その眼に。 あらゆるモノを斬る天眼に。 桜の花弁が、灯って―― ◆ ◆ ◆ 必中、そして必殺。 古手梨花のみを殺す、古手梨花を確実に殺す領域。 時の止まった世界を駆ける弾丸、それは沙都子の先人に当たる女が駆使した運命の形だった。 人の身に生まれながら神を目指した愚かな女。 自分自身でもそう知りながら、しかし只の一度として諦める事のなかった先代の魔女。 今となっては彼女さえ沙都子の駒の一体でしかなかったが。 それでも梨花に勝つ為ならばこれが最良の形だろうと沙都子は確信していた。 上位の視点から異なるカケラを観測する術も持たぬ身で、百年に渡り黒猫を囚え続けた女。 彼女が振るった"絶対の運命"は後継の魔女、今は神を名乗る沙都子の手にもよく馴染んでくれた。 …止まった世界の中を弾丸が駆け。 そして古手梨花は為す術もなく撃ち抜かれた。 胸元から血が飛沫き、肉体を貫通した弾丸は彼方へ飛んでいく。 「チェックメイトですわ、梨花」 夜桜の血による超人化。 それも即死までは防げない。 梨花が頭と心臓への被弾だけは避けていたのがその証拠だ。 そんな解りやすい弱みを見落とす沙都子ではなかった。 部活とは、勝負とは相手の弱みを如何に見つけどう付け込むか。 仮に自分でなくとも、部活メンバーであるなら誰しも同じ答えに辿り着いただろうと沙都子は確信している。 「最後の部活…とても楽しかった。今はこれで終わりですけど、すぐに蘇らせますから安心してくださいまし」 決着は着いた。 役目を終えた領域が崩壊する。 それに伴って止まった時間も動き出した。 世界に熱と音が戻る。 心臓を破壊された梨花の体がぐらりと揺らぎ、地面へ吸い込まれるように倒れていき… 「――なってないわね、沙都子」 完全に崩れ落ちる寸前で、踏み止まった。 ――え。 沙都子の眼が驚愕に見開かれる。 演技でも何でもない。 本心からの驚きに彼女は目を瞠っていた。 馬鹿な。有り得ない。そんな筈はない。 弾丸は確実に命中していた――心臓を破壊した確信があった。 それに何十年分という体感時間を鍛錬に費やして技術を極めた自分がこの間合いで動かない的相手に外す訳がない。 じゃあ何故。 どうして。 答えが出る前に思考は中断された。 梨花の拳が、沙都子の呆けた顔面を真正面から殴り飛ばしたからだ。 「が、ぁッ…?!」 鼻血を噴き出して転がる。 只殴られただけだというのに、先刻刀で斬られた時よりも酷く痛く感じられた。 垂れ落ちる血を拭いながら立ち上がる沙都子の鋭い視線が梨花の顔を見据える。 「どう、して。どうして生きているんですの…! 私は外してなんかない、確実に貴女の心臓を撃ち抜いた筈ですのに!」 「さぁね。私にも…答えなんて解らない。所詮借り物の力だもの。小難しい理屈や因果なんて知らないわ」 そう言い放つ梨花の瞳には或る変化が生じていた。 桜の紋様が浮かび、発光しているのだ。 梨花にはこの現象の理屈は解らなかった。 しかしそんな彼女の裡に響く声がある。 『それは"開花"。夜桜(わたし)の血が極限まで体を強化したその時に花開く力』 …夜桜の血を宿した者は超人と化す。 これはその更に極奥の極意。 流れる血をまさに花開かせる事で可能となる正真の異能だ。 『元々兆候はあったけれど…まさか実戦で使えるまでに至るなんて。梨花ちゃんはつくづく夜桜(わたし)と相性がいいのね』 開花の覚醒は夜桜の力を数倍増しに強化する。 古手梨花は夜桜と成ってまだ数時間という日の浅さだが、しかし初代も驚く程の速度でこれを発動させる事に成功した。 北条沙都子が彼女に対して用いた絶対の運命――領域展開はまさに確殺の一手だった。 認めるしかない。 あれは梨花にとって本当にどうする事も出来ない詰みだった。 梨花もそれをすぐに悟った。 失われた記憶の断片が自分に告げてくる底知れない絶望の感情。 この運命からは逃げられないと、古手梨花の全てがそう語り掛けてきた。 「私は、こんな所で終われないと強く強く思っただけ」 「…ッ。そんな事で……そんな事で、私の運命を破れるわけが!」 「あら。私の通ったカケラを全部見てきた癖にそんな簡単な事も解らないの? 良いわ、改めて教えてあげる。運命なんてものはね、金魚すくいの網よりも簡単に打ち破れるものなのよ」 だとしても。 まだだ、と。 今際の際に梨花は詰みを回避する唯一の手段を捻出する事に成功した。 それが開花。 夜桜の血との完全同調。 簡単にとは行かなかったが。 それでも確かに古手梨花は、北条沙都子が繰り出した絶対の魔法を打ち破ってみせた。 「勝ち誇った顔をしないでくださいまし。たかが一度私の鼻を明かしたくらいでッ!」 「言われるまでもないわ。こっちもようやく温まってきた所なんだから」 これにて戦いは仕切り直し。 沙都子が銃を向け、梨花は切っ先を向ける。 『だけど気を付けて。その体は、開花の負担に耐え切れていない』 そんな事だろうと思っていた。 奇跡とはそう簡単に起こるものではない。 奇跡の魔女となる可能性を秘めた少女も、人の身では依然その偉業には届かないまま。 中途半端な希望は脳内に響く初代の声によって否定される。 『貴女の開花は"奇跡"。肉体の死を跳ね返す、本家本元の夜桜にさえ勝り得る異能』 生存の可能性がゼロでない限り、小数点の果てにある奇跡を手繰り寄せて自身の死を無効化する。 それこそが梨花の開花。 沙都子は絶対の魔女として急速に完成しつつあるが、神の因子を得た今の彼女でもまだ真なる絶対(ラムダデルタ)には程遠い。 だから彼女が扱う絶対の魔法には穴があった。 人間にとっては"無い"のと同義と言っていいだろう限りなくゼロに近い穴。 真なる奇跡(ベルンカステル)と袂を分かった梨花のそれもまた、沙都子と同様に穴を抱えていたが。 絶対のなり損ないと奇跡のなり損ないとでは本来あるべき相性の構図が反転する。 絶対の中に生まれた小数点以下極小の「もしも」を梨花の奇跡は必ず手繰り寄せる事が出来るのだ。 故に梨花は生を繋いだ。 しかしこんな、夜桜の血縁にさえ例がない程の芸当をやってのけた代償もまた甚大だった。 『二度目の開花で貴方は完全に枯れ落ちる。だから事実上、次はないと思っていい』 一度きりの奇跡。 まさに首の皮一枚繋いだ形という訳だ。 仮に沙都子がもう一度あれを使って来る事があればその時点で今度こそ梨花の敗北は確定。 断崖絶壁の縁に立たされたのを感じながら――それでも梨花は恐れなかった。 「行くわよ、沙都子」 「…来なさい、梨花!」 地を蹴って刀を振るう。 弾丸が脇腹を吹き飛ばすが気になどしない。 恐れず突っ込んだのは結果的に正解であった。 “力が、使えない…!?” 当惑したのは沙都子だ。 先刻まであれだけ漲っていた力が、急に肉体の裡から出て来なくなった。 消えた訳ではない。 確かに体内に溜まっている感覚がある。 なのに出力する事だけがどうやっても出来ない。 もう一度時を止めて撃ち殺せば済むだけだというその想定が、不測の事態の前に崩壊する。 ――沙都子は術師ではない。 だから当然知る筈もなかった。 領域の展開は確かに絶技。 生きて逃れる事は不可能に近い。 だが反面弱点も有る。 領域を展開して暫くの間は、必中化させて出力した術式が焼き切れるのだ。 従って今、沙都子は時を止められない。 黒猫殺しの魔弾を放つ事が出来ない…! “もう一度あれを使われたら、その時こそ私の負け” “もう一度あれを使えれば、私の勝利は確定する” ――最後の部活。 その制限時間が決まった。 北条沙都子の術式が回復するまで。 それが、この大勝負と大喧嘩のリミット。 梨花はそれまでに沙都子を倒さねばならず。 沙都子は、その刻限まで逃げ切れば勝ちが決まる。 有利なのは言わずもがな沙都子の方だ。 しかし彼女は、梨花から逃げ回る事を選ばなかった。 間近に迫る刀を躱す。 降臨者化を果たした体は完成度で決して夜桜に劣らない。 だからこそ梨花の斬撃を紙一重まで引き付けて躱し、その上で間近から頭部に向け銃弾の乱射を見舞うような芸当さえ可能だった。 梨花はこれを桜の花を出現させて受け止めさせ対処するが、先のお返しとばかりに沙都子の拳が鼻っ柱をへし折った。 次いで腹を蹴り飛ばされ、もんどり打って転がった所をまた銃撃の雨霰に曝される。 「は、はッ…! どうですの梨花ぁ……! 貴方が私に勝てるわけ、ないでしょうが!!」 「げほ、げほ…ッ。はぁ、はぁ……良いじゃない、そっちの方がずっとあんたらしいわよ沙都子。 神様気取りなんて全然似合わない。あんたはそうやって感情を剥き出しにして、生意気に向かってくるくらいが丁度いいのよ……!」 「その減らず口も…いつまで利いてられるか見ものですわね!」 群がる異界の羽虫を斬り飛ばし。 殺到する触手は斬りながら逃げて対処する。 湧き上がらせた桜の木々が触手を逆に絡め取って苗床に変えた。 異界のモノ…沙都子を蝕む冒涜的存在を片っ端から捕まえて殺す食虫花。 古手梨花は徹底的に、神としての北条沙都子を否定していく。 「そう――こんなの全然似合ってない。らしくないのよ、あんたが黒幕とか悪役とか!」 「私をこうしたのは梨花でしょうが!」 「解ってるわよそんな事! だから、引きずり下ろして同じ目線でもう一回話をしようとしてるんじゃない…!」 鉛弾が右腕を撃ち抜いた。 刀を握る力が拔ける。 知った事かと左手で沙都子を殴った。 沙都子の指が引き金から外れる。 知った事かと、沙都子も右手で梨花を殴る。 そうなると最早武器の存在すら彼女達の中から消えていく。 能力も武器もかなぐり捨てて。 二人は只、思いの丈をぶつけ合いながら殴り合っていた。 「そんなまどろっこしい事してられませんわ…! 私が勝って貴方を思い通りにすればいいだけの話じゃありませんの! 雛見沢を、私達を……私を捨てて何処かへ行こうとする梨花の言う事なんて信用出来る訳がありませんわ!」 沙都子が殴れば。 「うるさいわね、馬鹿! 捨てるだの何だのいちいち言う事が重いのよあんたは…!」 梨花も負けじと殴り返す。 容赦のない拳は肉を抉り骨をも砕く。 だが双方ともに、人間などとうに超えているのだ。 少女達は可憐さを維持したまま無骨な殴り合いに興じていく。 「外の世界に行きたい。今まで知らなかった景色を見たい。そう願う事が悪いなんて話は絶対にない!」 「貴女がそんなだから私がこうして祟りを下さなければいけないのでしょうが…! あんな監獄みたいな学園で、背中が痒くなるような連中に囲まれてちやほやされて暮らす未来。 それが……そんなものが、梨花の理想だったんですの? ねえ、答えて――答えなさいよッ!」 「そんな、わけ…ないでしょ――!」 そうだ、そんな訳はない。 憧れがなかったとは言わない。そういう世界に。 何しろ百年の日々は自分にとってそれこそ監獄だった。 雛見沢の古手梨花以外の何者にもなれない。 オヤシロさまの巫女。 古手家の忘れ形見。 村人みんなに愛される村のマスコット。 自分は只、そんな世界から一歩踏み出してみたかっただけ。 自分の事なんか誰も知らない世界で自由に生きてみたかった、それだけ。 そしてその横に…一つ屋根の下で一緒に暮らして来た親友が居てくれたらとそう思ったのだ。 「雛見沢症候群も安定して、何処にでも行けるようになった。 そんなあんたと一緒に外へ出て、色んな物を見てみたいと思った。 だからあんたを誘ったのよ。お山の大将になるのが目的だったなら、あんたみたいなお転婆連れてく訳ないじゃないッ」 「だったら…! 私とずっと二人で居れば良かったじゃありませんの! 梨花が一緒に居てくれたのなら、梨花さえ一緒に居てくれたら……! 私だって大嫌いでしょうがない勉強も、いけ好かないお嬢様気取りの連中も…我慢出来たかもしれませんのに!」 一際強い拳が打ち込まれて梨花が蹌踉めき後退する。 荒い息が口をついて出る。 夜桜の血を宿し、仮に一昼夜走り続けても疲れないだろう体になったにも関わらず酷く呼吸が苦しかった。 見ればそれは沙都子も同じのようだ。 「ッ…。それは、……本当に後悔してるわよ。誓って嘘じゃない」 理由や因果を求める等無粋が過ぎる。 彼女達は今、かつてない程に本気なのだ。 だから息も乱れる。汗も掻く。拳が痛くなるくらい力も込める。 「すれ違いがあったとかそんなのは体のいい言い訳に過ぎないわ。 …私はあの時、周りの連中を振り切ってでもあんたに会うべきだった。 ふて腐れてむくれたあんたの手を引っ掴んで側に居てやるべきだった。 病気が治って狂気が消えても、……あんたの心に残った傷までなくなった訳じゃないって事、忘れてた」 北条沙都子には傷がある。 人間誰しも心の傷くらいある。それは確かにそうだ。 でも沙都子のそれは常人と比にならない数と深さであると、梨花は知っている。 両親との不和とそれが生んだ悲しい惨劇。 叔母夫婦からの虐待。 兄への依存とその顛末。 村人からの冷遇。 全て解決した問題ではある。 過ぎ去った過去ではある。 だとしても…心に残った傷痕まで消える訳ではない。 その傷が雛見沢症候群なんて関係なく不意に疼き出す事も、きっとあるだろう。 それをかつての自分は見落としていた。 蔑ろにしていた、見ていなかった。 …それが古手梨花の"業"。 「――なにを、今更」 梨花の告白を聞いた沙都子は思わずそう口にした。 湧いて出た感情は怒りとやるせなさ。 後者は見せる訳にはいかないと。 そう思ったから唇を噛み締めて拳を握る。 そのまま梨花の横っ面に叩き付け殴り飛ばした。 「誰が…! 信じるって言うんですの、そんな言葉……!」 梨花は拳を返してこない。 されるがままだ。 地面に倒れたその胸へ馬乗りになって沙都子は拳を振り下ろした。 「何度繰り返しても、何度閉じ込めても! 私がどんなに工夫して殺しても甚振っても追い詰めても…! それでも最後の世界まで雛見沢の外を目指し続けたわからず屋の梨花! 必死に説得してどうにか心をへし折っても、きっかけ一つあればそうやってまた外の方を向いてしまう! そんな貴女の言う事なんて……! 何一つ信用出来ないんですのよ、馬鹿ぁッ!」 何度も何度も。 何度も何度も振り下ろす。 鼻が砕けて歯がへし折れる。 顎が砕けて目玉が潰れ、顔を顔として識別するのが不可能になっても沙都子はそれを続けた。 「私は…! 外の世界なんて一生知らないままで良かった!」 何が悲しくて大好きな雛見沢を捨てなければならない。 そうまでして見る価値があるのか、あんな世界に。 「外なんて大嫌い、勉強も都会も全部だいっキライ! 何処もかしこも排気ガス臭くて五月蝿くて暑くて…雛見沢の方がずっといい! 何が良いんだかさっぱり解らない甲高いだけの歌声をバカみたいな音量で流してありがたがってる神経もさっぱり解らない!」 井の中の蛙と呼ぶならそれでいい。 あの井の中には全てがあったから。 北条沙都子が幸福に生きていける全てが揃っていた。 「…私は!」 梨花も同じだとばかり思っていた。 そして今も、自分と同じになるべきだと思っている。 「私は……あの家であなたと一緒に居られたなら、只それだけで良かったのに!」 …それが北条沙都子の"業"。 此処に二人は互いの業をさらけ出した。 梨花の手が。 ずっと無抵抗だった彼女の手が動いて、沙都子の拳を受け止める。 次の瞬間沙都子は顔面へ走る衝撃によって吹き飛ばされた。 顔を再生させながら梨花が立ち上がる。 沙都子も呼応するように立ち上がった。 仕切り直しだ――梨花は再び刀を、沙都子は再び銃を握って相手に向ける。 「…ねえ、沙都子」 「…何ですの、梨花」 忌まわしい花だ。 視界にちらつく花弁を見て沙都子は思う。 桜は嫌いだ。 門出の季節をありがたがる気にはなれない。 "卒業"なんて誰がするものか。 この業は、これは、私のものだ。 誰にも渡さない。 一生、世界が終わったって抱え続けてやる。 「私が勝った時の罰ゲーム。今の内に言っておくわね」 そんな沙都子に梨花はこんな事を言った。 沙都子はそれを鼻で笑う。 負ける気などさらさらないのだ、何だっていい。 どんな罰ゲームだって受けてやるとそう不遜に示す。 「ボクは…もう一度、沙都子とやり直したいです」 「――――」 そんな沙都子の思考が止まった。 魔女としての言葉ではなく。 敢えて猫を被り、自分のよく知る"古手梨花"として話す彼女の言葉。 「外の世界への憧れはやっぱり捨てられません。 沙都子の言う通り、ボクは何度だって雛見沢という井戸の外を目指してしまう。 そしてボクの隣に沙都子が居て、二人で同じ景色を見る事が出来たらいい。そんな夢を見てしまうのです」 「…何、を。言って――話、聞いてませんでしたの? 私は……!」 「解っています。だからこれは沙都子にとっては罰ゲームなのですよ」 それはあまりにも愚直な言葉だった。 馬鹿げている。 何を聞いていたのかと思わず反論しそうになったが、罰ゲームの一語でそれを潰された。 理に適っているのがまた腹立たしい。 相手が嫌がる事でなくては罰にならないのだから。 「沙都子が勉強したくなるように、定期テストは毎回ボクら二人の部活にしましょう。 負けたら当然罰ゲーム。それなら沙都子だってちょっとはやる気が出ると思います」 「…付き合ってられませんわそんなの。毎回カンニングでクリアしてやりますわよ、面倒臭い」 「みー。沙都子はやる気になれば出来るタイプだと思うので、そこは実際にやってみて引き出していくしかないですね。 ちなみにボクの見立てじゃ沙都子は二回目くらいから真面目に勉強してくるようになる気がしますです。 部活で負けた罰ゲームを適当にこなすなんて、ボクが許しても魅ぃの部活精神が染み付いた沙都子自身が許せない筈なのですよ。にぱー☆」 「む、ッ…。見透かしたような事を言うのはおやめなさいませッ」 そんな未来は来ないと解っていてもついつい反応してしまう。 威嚇する犬のように声を荒げた沙都子に、梨花は微笑みながら問い掛けた。 「沙都子は、どうしますか?」 「……」 「ボクが負けたらその時は言った通りどれだけだって沙都子に付き合います。 それでも外を目指してしまったら、沙都子が頑張って止めてください。 何なら決して外に出られない…そんなカケラを作って閉じ込めたって構わないのですよ。 ボクに勝って先に進んだ沙都子ならきっとそういう事も出来るようになるでしょうし」 梨花の言う通り、きっと遠くない未来にはそんな事も可能になるだろう。 沙都子にはそもそもからして魔女となる素養が秘められている。 其処にリンボの工作と龍脈の力が合わされば、最早そう成らない方が難しい。 カケラを自由自在に渡り歩きはたまた自ら作り出し。 思うがままに神として振る舞える存在として"降臨"する事になる筈だ。 そう成れれば当然、可能である。 古手梨花を永遠に閉じ込めて飼い殺す封鎖された世界。 ガスが流れ込む事のない猫箱を作り出す事なぞ…朝飯前に違いない。 「私、は…」 自分自身そのつもりで居たのに。 今になってそれが何だかとても下らない考えのように思えて来るのは何故だろう。 梨花のあまりに場違いで暢気な言葉に毒気を抜かれてしまったのだろうか。 魔女の力。 神の力。 絶対の運命。 永遠の牢獄。 魅力に溢れて聞こえた筈の何もかもがつまらない漫画の、頭に入ってこない小難しい設定のように感じられてしまう。 「私は…梨花と雛見沢でずっと暮らしていたい。それだけで十分ですわ」 そうして北条沙都子は原初の願いに立ち返った。 此処にはもうエウアもリンボも関係ない。 願いは一つだったのだ。 其処にごてごてと付け足された色んな恐ろしげな言葉や大層な概念は全て自らを大きく見せる為の贅肉に過ぎなかった。 「ちゃんと罰ゲームでしょう? 梨花にとっては。 あの息苦しい学園にも、人混み蠢く東京にも出られないで私と一緒にずっと暮らすなんて」 「…みー。ボクは猫さんなので、沙都子の眼を盗んでお外ににゃーにゃーしちゃうかもしれないのですよ?」 「その時は首根っこ引っ掴んででも捕まえて連れ帰ってやりますわ。逃げ癖のある猫だなんて、ペットとしては面倒なことこの上ありませんけど」 一瞬の静寂が流れる。 それから少女達はどちらともなく笑った。 「――くす」 「……あはっ」 「どうして笑うのですか、沙都子。くす、くすくす……!」 「ふふっ、ふふふふ! 梨花の方こそおかしいですわよ、あははは……!」 もっと早くにこうしていればよかった。 そう思ったのは、果たしてどちらの方だったろう。 或いはどちらもだろうか。 答えは出ないまま刀と銃が向かい合う。 彼女達の部活が…終わる時が来た。 「ごめんなさいね、梨花」 沙都子が口を開く。 その笑みは何処か寂しげだった。 部活はいつだって全力勝負。 手を抜く事だけは絶対に許されない。 それが絶対不変の掟だ。 だから沙都子はこの瞬間も、自分に出来る全力で勝ちに行く。 「終わりですわ」 少女達が想いを交わし合っていた時間。 互いの罰ゲームを提示し合い、久方振りに通じ合って笑い合った時間。 その間に沙都子の勝利条件は満たされていた。 領域展開の後遺症。 術式が戻るまでのインターバル。 それはもうとうの昔に―― 「…梨花……」 名前を呼ぶ。 梨花は答えない。 体が動く事もない。 時は、既に止まっていた。 引き金が引かれる。 弾丸が発射される。 二度目の開花は死を意味し。 そして開花以外にこの死を逃れる手段はない。 ――たぁん。 長い大喧嘩を締め括るには些か軽すぎる、寂しい破裂音が響いた。 ◆ ◆ ◆ 「――莫迦な」 目を見開いて溢したのは悪僧だった。 美しき獣と称されたその視線は天空へと向けられている。 嘲笑う太陽は既に笑っていない。 代わりに響いているのは、消え逝く悪霊の断末魔であった。 「莫迦な――莫迦な莫迦な莫迦な莫迦なァッ!」 剣豪抜刀と暗黒太陽。 一閃と臨界が衝突した。 起こった事はそれだけだ。 その結果、嗤う太陽は中心から真っ二つに両断された。 文字通りの一刀両断。 それはまるでいつか、この女武蔵という因縁が自身に追い付いてきた時の光景を再演しているかのようで… 「偽りの…紛い物の神剣如きが何故呪詛の秘奥たる我が太陽へ届く!」 溶け落ちる太陽はリンボにとっての悪夢へと反転した。 最大の熱を灯して放った一撃を文字通りに斬り伏せられた彼の顔に最早不敵な笑みはない。 この有り得ざる事態に動揺して瞠目し、冷や汗を垂らしていた。 太陽を落とす花という不可思議を成就させた武蔵はそんなリンボへ凛と言い放つ。 「黒陽斬りしかと成し遂げた。此処からが本当の勝負よ、蘆屋道満…!」 「黙れェ! おのれおのれおのれおのれ新免武蔵! 我が覇道に付き纏う虫螻めがッ!」 駆ける武蔵を包むように闇色の球体が出現した。 それは一層だけには留まらない。 十、二十…百を超えてもまだ重なり続ける。 呪詛を用いて造った即席の牢獄だ。 彼程の術師になれば帳を下ろす技術を応用して此処までの芸当が出来る。 しかし相手は新免武蔵。 そう長い時間の足止めは不可能と誰よりリンボ自身がそう知っている。 急がねば――そう歯を軋らせた彼の左腕が、不意に切断されて宙を舞った。 「…ッ! 死に損ないめが、邪魔をするなァ!」 「憎まれっ子世に憚るって諺、お前の時代にはなかったのか?」 隻腕の伏黒甚爾が釈魂刀を用いて切り落としたのだ。 普段なら容易に再生可能な手傷だが、今この状況ではそちらへ余力を割く事すら惜しい。 暗黒太陽…悪霊左府はリンボの霊基を構成する一柱である。 以前にもリンボは武蔵によってこれを両断されていたが、今回のは宝具による破壊だ。 受けた痛手の度合いは以前のそれとは比べ物にならない程大きい。 「いい面じゃねぇか。似合ってるぜ、そっちの方が道満(オマエ)らしいよ」 不意打ちが終われば次は腰に結び付けていた游雲へ持ち帰る。 咄嗟に魔震を発生させ、羽虫を振り払うように甚爾を消し飛ばそうとしたが――この距離ならば彼の方が速い。 リンボの顔面に游雲が命中しその左半面が肉塊と化す。 あまりの衝撃に叩き伏せられたリンボが見上げたのは嘲笑する猿の顔だった。 「古今東西何処探しても安倍晴明の当て馬だもんなオマエ。ようやられ役、気分はどうだい」 「貴、様…! 山猿如きが軽々と奴の名を口にするでないわッ」 立ち上る呪詛が怒りのままに甚爾を覆う。 しかし既にその時、猿は其処に居ない。 片腕を失って尚彼の速度に翳りなし。 天与の暴君は依然として健在であった。 無茶の反動に耐え切れず游雲が千切れ飛ぶが、それすら好都合。 ギャリッ、ギャリッ、と耳触りな金属音を響かせて。 甚爾は折れた游雲同士をぶつけ合い擦れ合わせ、その折れた断面を鋭利な先端に加工。 綾模様の軌道を描いて飛来した無数の呪詛光の一つが腹を撃ち抜いたが気にも留めない。 痛みと吐血を無視して前へ踏み出す。 その上で棍から二槍へと仕立て直した特級呪具による刺突を高速で数十と見舞った。 「づ、ォ、おおおおォ……!」 如何なリンボでもこの間合いでは分が悪い。 相手はフィジカルギフテッド。 純粋な身体能力であれば禍津日神と化したリンボさえ未だに置き去る禪院の鬼子。 呪符による防御の隙間を縫った刺突が幾つも彼の肉体に穴を穿ち鮮血を飛散させた。 「急々如律――がッ!?」 「黙って死んでろ」 こめかみを貫かれれば脳漿が散る。 猿が神を貫いて惨たらしく染め上げていく冒涜の極みのような光景が此処にある。 一撃一撃は致命傷ではなく自己回復――甚爾の常識に照らして言うならば"反転術式"――を高度な次元で扱いこなせるリンボにとっては幾らでも巻き返しの利く傷であるのは確かにそうだ。 だが塵も積もれば山となるし、何より重ねて言うが状況が悪い。 左府を破壊された損害とそれに対する動揺。 それが自然と伏黒甚爾という敵の脅威度を跳ね上げていた。 猿と蔑んだ男に弄ばれ、蹂躙されるその屈辱は筆舌に尽くし難い。 リンボの顔に浮いた血管から血が噴出するのを彼は確かに見た。 「■■■■■■■■■■――!」 声にならない声で悪の偽神が咆哮する。 物理的な破壊力を伴って炸裂したそれが今度こそ甚爾を跳ね飛ばした。 すぐさま再び攻勢へ移ろうとする彼の姿を忌々しげに見つめつつ、リンボは武蔵を閉ざした牢獄に意識を向ける。 “そろそろ限界か…! しかし、ええしかし――今奴に暴れ回られては困る!” 今この瞬間においてもリンボは目前の誰よりも強い。 指先一つで天変地異を奏で、気紛れ一つで視界の全てを焼き飛ばせる悪神だ。 にも関わらず彼をこうまで焦らせているのは、ひとえに先刻経験した予想外の痛恨だった。 重なる――あの敗北と。 輝く正義の化身に。 星見台の魔術師に。 彼らの許へ集った猪口才な絡繰に。 何処かで笑うあの宿敵に。 完膚なきまでに敗れ去った記憶が脳裏を過ぎって止まらない。 そんな事は有り得ないと。 理性ではそう理解しているのに気付けば武蔵の"神剣"を恐れているのだ。 “恐るべしは新免武蔵! 忌まわしきは天元の花! よもやこの儂にまたも冷や汗を流させようとは…! しかし得心行った。奴を討ち果たすには最早禍津日神でさえ役者が足りぬ! 拙僧が持てる全ての力、全ての手段をもってして排除しなければ――!” 猿の跳梁等どうでもいい。 さしたる問題ではない。 武蔵さえ消し飛ばせれば、あんな雑兵はいつでも潰せる。 かくなる上はとリンボは瞑目。 修験者の瞑想にも似たらしからぬ静謐を宿しながら意識を芯の深へと潜らせ始める。 「天竺は霊鷲山の法道仙人が伝えし、仙術の大秘奥…!」 それは単純な攻撃の為にあらず。 疑似思想鍵紋を励起させ特権領域に接続する仙術の領分。 安倍晴明を超える為に用立てた技術の一つ。 かの平安京ではついぞ開帳する事叶わなかった秘中の秘。 反動は極大、この強化された霊基で漸く耐えられるかどうかという程の次元だが最早惜しんではいられない。 「特権領域・強制接――」 全てを終わらせるに足る切り札。 嬉々と解放へ踏み切らんとしたリンボ。 しかしその哄笑は途中で途切れた。 肉食獣の双眼が見開かれる。 彼の肉体は、触手によって内側から突き破られていた。 それは宛ら寄生虫の羽化。 宿主を喰らい尽くして蛆の如く溢れ出す小繭蜂を思わす惨劇。 「ぞ、…ォ、あ?」 片足を失った巫女が笑っていた。 その手に握られた鍵は妖しく瞬いている。 「貴、様」 リンボは勝ちに行こうとしていた。 此処で全てを決めるつもりでいた。 後の覇道に多少の影響が出る事は承知の上で、絶大な反動を背負ってでも目前の宿敵を屠り去るのだと腹を括った。 そうして始まったのが擬似思想鍵紋の励起とそれによる特権領域への接続。 只一つ彼の計画に陥穽があったとすれば、励起と接続という二つの手順を踏まねばならなかった事。 それでも十分に正真の天仙へも匹敵し得る驚異的な速度だったが、"彼女"にとってその隙は願ってもない好機であった。 「――巫女! 貴様ァァァァァァァァ!」 「大丈夫よ。抱きしめてあげるわ、御坊さま」 接続のラインに自らの神性を割り込ませた。 無論これは演算中の精密機械に砂を掛けるも同然の行為。 特権領域とリンボの疑似思想鍵紋を繋ぐ線は途切れ。 逆にアビゲイルが接続されているかのまつろわぬ神、その触腕が彼の体内へ流れ込む結果となった。 臓物をぶち撒け。 洪水のように吐血しながら絶叫するリンボ。 その姿に巫女は微笑み鍵を掲げる。 全てを終わらせる為、絞首台の魔女が腕を広げた。 「さようなら」 リンボの断末魔は単なる雑音以上の役目を持てない。 命乞いか、それとも悪態か。 定かではないままに処刑の抱擁は下され。 外なる神の触手が…かつて彼が求めた窮極の力が――悪意と妄執に狂乱した一人の法師を圧殺した。 …その筈だった。 だが――しかし。 血と臓物に塗れたリンボが。 血肉で汚れたその美貌が白い牙を覗かせた。 「これ、は…?」 途端に神の触腕が動きを止める。 巫女の笑みが翳る。 其処に浮かんだのは確かな動揺だった。 「…油断を」 それが、この処刑劇が半ばで遮られた事を他のどんな理屈よりも雄弁に物語っており。 「しましたねェエエエエエエエエエエアビゲイル・ウィリアムズ! ――――急々如律令! 喰らえい地獄界曼荼羅ッ!」 →
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私は冷静にならないといけなかった。 「沙都子~。お風呂沸きましたのですよ~」 貼ったお湯の熱さを手でちょいちょいと確認する。 夕食の準備を始めている沙都子に、先に入るよう言った。 「梨花が先に入るといいですわ。私、今は手が離せませんの」 「みぃ。まだ材料を並べているだけなのです」 じゃがいも、にんじん、たまねぎ、豚肉。 沙都子はむき出しの棚からまな板を手にとって、敷いた。 「一度始めたものを途中でやめるのは嫌ですわ。それに……」 頬をかすかに染めて、私の顔を見てくる。 「私が先に入ったら、梨花が何も言わないで入ってくるじゃありませんの」 「みぃ、沙都子。一緒に入ったほうが楽しいのですよ」 「それはそうでございますけど……恥ずかしくもありますわ」 「今までだって洗いっこしてきたのです。恥ずかしいことは何もないはずなのですよ、にぱー☆」 そう言ってもうぅん、と曖昧に唸るだけで、夕食の準備をやめようとしない。 「沙都子は、お胸が大きくて羨ましいのです」 じゃがいもを取りこぼしそうになって、私から見ればふくよかなその胸に抱きとめる。 「り、梨花がそう言って……、お風呂でぺたぺた触ってくるから恥ずかしいんじゃないですのー!」 「にぱー☆」 私は明るく意地悪く笑って、逃げた。 狭い室内で、ちゃぶ台を挟んだ攻防が終わってから、やれやれと最後の切り札を出す。 「二人で入ったほうが、お湯を節約できるのですよ」 「うっ……」 我が家計に関わる問題を突きつける。 「せ、先月は少し高かったですわ……」 がくり、と思い出したように項垂れた。 「にぱー☆」 「あーもうっ。わかりましたわよ! 梨花、早くお風呂に入りましょうですわっ」 「わーい、なのです♪」 やけになったかのように、顔を赤くして風呂場に向かう沙都子だった。 また、就寝時。 「沙都子、たまには同じお布団で寝ましょうなのです」 「もう。子どもじゃありませんのよ。私たち」 思いっきり子どもだけれど。 子ども同士だから、かしら。 「窓際は寒いのですー。沙都子がお布団に居てくれれば温かいのですー」 ごそごそと、タオルケットを擦る音をわざと鳴らして沙都子に近づいていく。 「なら場所を変えればいいだけではありませんの」 「みぃ。沙都子が冷たいのです。……もういいのです。冷たい沙都子とお布団に入ってもきっと温かくないのです」 転がってもとの位置に戻る。 沙都子に背を向けながらも、動きの気配を探る。 「り、梨花……。わ、分かりましたわよっ。一緒に寝ればいいのでございましょう?」 「にぱー☆」 沙都子が言い終わる前に、私は身を翻して沙都子の布団にもぐりこんだ。 おでこがくっつきそうな位置で、目を合わせる。 むすりとした瞳と頬で、私に相対した沙都子が何か言いたそうにしているのを言葉で遮った。 「優しい沙都子のお布団は温かくて気持ちいいのですよー、にぱー☆」 「梨花……もう」 諦めたような溜息をついて、薄く笑う。すでに眠気がきているのだろう。 「明日も、早いですわ。……おやすみなさいですわ」 「おやすみなのです」 一日が終わる。 そう、思い返してみても、これが普通だった。 普通のはずだった。うん、そうよね。沙都子は恥ずかしがりやで、強情で、でも優しくて……。 「梨花~。お風呂沸きましたわよ~」 「はーい、なのですよ」 味噌汁をお玉で掬い、味見をする。うん、と納得して鍋の蓋を閉めた。 エプロンを外して浴室に向かうと、裸の沙都子がいた。 「遅いですわよ、梨花」 「……みぃ。ごめんなさいなのです」 ここ最近こういうことが続いている。 沙都子が一緒にお風呂に入りたいといって、私を待っているのだ。 そこまでなら、何も気にすることなどないのだけれど。 「洗いっこしましょうですわ、梨花」 湯船に浸かった沙都子が浴槽の縁にふにふにのほっぺを乗せて、提案してくる。 「……では、ボクが先に洗ってあげますですよ」 沙都子が瞳を輝かせて、私の前に背を向けて座った。 傷つけないようにもちもち肌の背中を擦る。以前なら、洗いっこはお互いの背中を洗うことで終わっていたけれど。 「梨花ぁ、前も……」 と、なまめかしい声で沙都子が懇願する。 途切れ途切れに漏れる荒い息を耳で、上下に忙しなく動く胸部を掌で確認した。 やがて、沙都子は同じように下半身への洗いも要求してくる。 「梨花ぁ……」 その際、沙都子はぴたりと閉じている陰唇を指で開くのだ。 沙都子が望むように、私の指はその場所へと誘われた。 じきに入れ替わると、沙都子が耳元で悪戯っぽく囁いてくる。 「梨花。私も全てさらけ出したのですから、梨花も私と同じようにしてほしいですわ」 「……みぃ」 両手を使って中を空気にさらしていた沙都子とは違って、私は右手の人差し指と中指だけで開く。 控えめにそうすると沙都子が満足そうに私に擦り寄ってきて、たどたどしく小さな手が股に差し込まれてくる。 背中を洗うよりも先に、沙都子は私のあそこを弄ぶのだった。 そして、就寝時。 「……どうしてお布団が一つしか敷かれていないのですか?」 ちなみに枕は二つ。 「勿論、一緒に寝るためですわよ」 邪気なく私に笑いかけると、布団の皺を伸ばす作業に戻る。 「さ、明日に備えて寝ましょうですわ」 「……みぃ」 電灯を切り同じ布団に入る。 私は天井を見上げていたけれど、沙都子はずっと私の方を見ている。 「梨花、温かいですわ」 肩に顔を預けられて、薄い胸がさわさわと撫でられる。 ついでに、脚が絡みついてきていた。 しかし寝つきのよさは相変わらずのようで、おやすみなさいですわ、と言うと沙都子は眠りに落ちた。 朝になり目を覚ますと、私は何も着ていなかった。 パジャマの上に下着が折り重なって布団の外に追い出されていた。 追い出した覚えはないのだけれど。 ふと横を見てみるとやはり、沙都子も裸だった。 「んっ――」 裸のまま、差し込む朝日に向かって伸びをする。 今日の朝食の担当は私だった。 安らかに眠る沙都子を起こさないようにと布団から這い出し、服を着た。 そのうちに、沙都子も目を覚ます。 「ん~、梨花ぁ~?」 目を擦って隣に私がいないことを確認すると、恐らく匂いを辿ってだろう、台所へと顔を向ける。 「おはようなのですよ、沙都子。もう朝ごはんもできるのです」 「んにゃ、んむ、わかりましたわー」 大口を開けてあくびをした沙都子は、茶碗を並べる私のそばまでやってくる。 「おはようですわ。梨花」 打って変わって明朗快活に、朝の挨拶を言った。 同時に、私のほっぺにキスをする。裸のままだった。 「……沙都子、服は着ないといけませんですよ」 「わかってますわ」 着替えたあと、沙都子はトイレに行った。 私は、ちゃぶ台に置いた味噌汁から立ち上る湯気をぼーっと眺めていた。 その向こうに座る羽入に焦点を合わせる。 「羽入……これって……」 「……」 「百年の奇跡?」 「梨花、にやけすぎなのです」
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…梨花ちゃんと口付けをして肌を触れ合った日から数日がすぎた。 あれから、みんなの前では梨花ちゃんは前と同じように俺に接してくれる。 魅音もレナもそれに安心したようで部活も大いに盛り上がっている。 時々、レナが梨花ちゃんに何かささやくたびに、真っ赤になる梨花ちゃんを見て 少々不穏なものは感じているのだが… 「おっしゃ!!これで今日は俺の勝ちだな!!」 大富豪で革命を起こし一気にトップに躍り出た俺はそのままトップを維持し、 勝利をもぎ取った!めずらしく今日の罰ゲームは魅音だ。 「さて、魅音。今日負けたらメイドさんの格好をして 校長先生の頭をなでにいくんだったよなぁ…」 「にぱー。 きっと魅ぃはエリアルコンボをくらって星になってしまうのですよ かぁいそかぁいそなのです」 「おーほっほ。 残念でしたわね、魅音さん。さて、覚悟を決めてくださいまし」 わいわいと罰ゲームに決定した魅音を攻め立てているうちに、 さりげなく梨花ちゃんが隣に立つ。 周りの皆にあまりばれないように、としているつもりみたいだけれど 梨花ちゃんは以前にもまして甘えてくるようになったと感じる。 俺は、こんなときはまず梨花ちゃんの頭に手を置いて髪をなでてやることにしている。 梨花ちゃんもそれを望んでいるようで特に抵抗されることもない。 ただ、今日はいつもとちょっと様子が違った。 何かを言おうとしてこっちをみたまま必死で口をぱくぱくとさせてくる。 俺はちょっと首を傾げつつ、梨花ちゃんの次の言葉を待った… 「あ…あの…圭一…、今日の放課後、時間はありますですか?」 私は何度か声にならない声を出しての予行演習の後、思い切って声を絞り出す。 今日は私の炊事当番だ。だから買出しは私の仕事。 それに事前のレナからの情報で今日圭一の両親は留守とのこと。 だから、きっと大丈夫。なんども心に言い聞かせる。 どうにも先が見えなくなってから私はひどく臆病になってしまったかもしれない。 とても楽しみで、どきどきして、でもとても不安なのだ。 断られたら…、と言う不安と。一緒に行けたら…という期待と。 両方の思いを込めて圭一を見つめる。 「いいぜ、どうせ今日は帰ったらすることもないしな。 学校から直行するのか?」 「は、はい…なのです。よ、良かったら圭一の分も作るから一緒に…」 「ん…夕飯までご馳走になるのは悪いけど…いいのか? ちょうど今日は俺一人だから好都合ではあるんだけどな」 圭一が何かを思い出したのかちょっと恥ずかしそうにぽりぽりとほほを掻く 「にぱー。 さ、沙都子と羽入も一緒の予定なのです。みんなで仲良く食べるのですよ」 本当は二人っきりの方が都合が良いのだがその場合は私の心臓が持ちそうにない。 二人っきりで食事を作ってなんてまるで夫婦…。 まてまてまて、何を考えてる古手梨花。羽入も沙都子も一緒。だからそんなことにはならない! だから静まれ、この頬の熱…!沙都子や魅音に気が付かれる! 真っ赤になったまましばらく圭一の手の感触に幸せを覚えるのだった… 梨花ちゃんからのお誘いに正直俺は驚いていた。 今日は両親がいないから買い置きの豚骨しょうが味のカップラーメンで 済ませようと思っていたところだった。 もしかしたら、レナあたりからの差し入れには期待していたが梨花ちゃんからの誘いは ちょっと意外だった。 部活メンバーと別れ、二人で買い物に行く。 そして梨花ちゃんがやっぱり村の人気者なのは代わらない。 俺は荷物持ちに専念。梨花ちゃんは村の中で買い物をおこなうとサービスが多い。 俺と言う荷物持ちいるからか、遠慮なくいろいろと持たせてくれる。 本来の買い物より多いんじゃないか…これ… 「梨花ちゃん、相変わらず人気者だな」 「…どうせ、みんな古手梨花としては見ていないのです」 「え…?」 「みぃ、なんでもないのですよ。 圭一早く次いくのです」 梨花ちゃんに促されて足を速めたのにあわせて歩いていく。 でも、さっきの言葉が心に引っかかった。 そしてすぐに思い当たることがある。 梨花ちゃんは村の人にもともと好かれる「オヤシロさまの生まれ変わり」だと。 「村の連中がみんなそんな目で見ているわけじゃないだろ。 少なくても俺やレナ、魅音や沙都子はオヤシロさまの生まれ変わりだ、 なんて特別扱いする気はないからな」 頭に手をのせてゆっくりと撫でて行く。 少々不満そうな目線で見上げられるが、抵抗する気はないらしい。 此処最近の梨花ちゃんをみていると女の子なんだといっそう意識する。 そういえばコレって梨花ちゃんと二人きりで買い物って… 「これってデートみたいだよな…」 言葉にして体がかっと熱くなる。二人っきりで村の中の店を回ったわけだから 宣伝しているのも一緒と言うことで…。いや、考えすぎだ前原圭一。 梨花ちゃんの面倒を見ている前原屋敷のせがれ…くらいのものだろう。 見れば梨花ちゃんも真っ赤になって抗議の視線を向けていた 「け、けけけ…圭一っ、な、ななんてことを言うのっ! で、でも、圭一となら…嬉しいのです…」 梨花ちゃんが体をぴったりと寄せてくる。 梨花ちゃんの感触にこの間のことを思い出しさらに真っ赤になる。 「さ、さあ、もう買うものはないのか…?」 「あ、ま、まだあるのです…」 さらに、二三件回ったところで買い物は終了となる…。 「おんやぁ…梨花ちゃま。今日は将来の婿殿といっしょかえ?」 そんなことを言われて二人して硬直したのだが。 …時々私は馬鹿じゃないかと思う。 せっかく圭一との仲はひっそりと深めていこうと計画していたのに、 こんなに目立つことをすれば村のうわさになるのは当然ではないか。 村の皆への不満はやや八つ当たりだった。 ただ、その後に圭一が頭をなでながら話をしてくれる。 言われなくても感じていることだったが、口にしてくれるとなお嬉しい。 「これってデートみたいだよな…」 この言葉はそんな嬉しさに心に隙が生まれた瞬間に届いた。 頭が真っ白になるのと同時に一気に混乱が押し寄せてくる。 「古手梨花」を演じられないほどに心がざわめく。 つまりつまり、デートを皆に見られている、というかむしろ宣伝していると言うか。 思わず時を止めて圭一とともに全力で逃げ出したいとさえ思う。 そんな思いをこらえるように思い切り圭一にすがりつく。 買わなければいけないものはまだあるのだ。 自分の体がにげないようにと、しっかり圭一の体を感じつつ その香りに幸せをかみ締めていた ……帰ってきて、私は完全にしてやられた、と思った。 仕掛けの犯人はレナだろう。 …実はレナにはすっかり私のことはばれているようだ。 レナほど鋭くて頭の回転が速ければ私の行動の意味などはばればれだろう。 そもそも、圭一を私の家に送り込んだのがそもそもレナだったこともある。 今日のこの状況からしてもレナはどうやら私を応援してくれているらしい。 「予定外で困るのです…」 帰ってきて返事がないのを不思議に思ったのが第一。 つづいてテーブルの上に置手紙。沙都子の筆跡で書かれていた内容は以下の通り。 「レナさんにお呼ばれしましたの。羽入と一緒にお食事して参りますわ。 梨花もよろしければいらっしゃいまし。 必要がなければ自分で作って食べてくださいな」 羽入も一枚噛んでいるとみて間違いはない。 …この恥ずかしさはどうしてくれようか。後で激辛キムチでも準備しよう。処刑用で。 圭一と二人きり。 考えれば考えるほど顔から火がでそうなシチュエーションだ。 今こうして食事を作る間にもこの心音が聞かれているのでは、とすら思ってしまう。 ちらり、と視線を送ると圭一も私の方を気にしてくれていたらしい。 目が合ってしまい、あわてて目をそらす。 圭一も二人きりの事を意識してくれているんだろうか…。それとも平気なんだろうか…。 緊張でいつもの倍くらいの気合と時間をかけて料理しながら、不安と期待を心に抱いて、 食事の準備を続けていく… …正直梨花ちゃんと二人きりになるとは思わなかった。 「落ち着け、クールになれ、前原圭一。 此処には食事をしに来たんだ。梨花ちゃんを襲うために来たんじゃないだろ」 梨花ちゃんと二人きり、というシチュエーションが否が応でも前回の記憶を引き出す。 あのときの感触を思い出すとどうもこちらから襲い掛かってしまいたくなる。 梨花ちゃんが制服のままエプロンを付けている姿はかわいい。 そう、幼な妻が夫のために健気に食事を作るときの魅力とでも言おうか。 お盛んな夫婦が朝食をつくっている奥さんを襲うきぶんというのはこんな感じだろうか。 そして今この場所は梨花ちゃんが寝泊りしているところだと改めて意識をする。 なにもしないでじっとしている、というのもどうにも性に合わない。 「なぁ、梨花ちゃん。俺にも手伝えることは何かないか?」 「みー、圭一に料理を任せるのは怖いので食器を準備してもらえますですか? そこの棚に入ってますですから」 「よっしゃ。任せとけ!」 来客用なのだろう。あまり使われている様子はないがきれいに拭かれている食器を準備する。 「そこにおいてくれると助かるのです。今煮物をそこにもりつけますから。 盛り付けたらもって行ってくれると助かるのですよ」 そんなやり取りを行いながらできたものから順番にテーブルに運ぶことにする。 体を動かしていたほうがいろいろ考えなくて良い。 そして、今日のメニューがそろっていく・・ 圭一に配膳だけを手伝ってもらい、今日の食事の準備が完了した。 「お待たせしましたですよ。いっぱい食べてください、なのです。にぱー」 「おう、それじゃ、遠慮なくいただくぜ」 私は圭一が食べ始めるのを座ってじっと見つめる。 失敗はしていないはずだ。だからきっとおいしいはず…。 期待と不安と交えつつ圭一が食べるのを待つ…。 味噌汁、煮物、ご飯…と一通り口にした圭一が笑顔を見せてくれる 「さすが梨花ちゃんだな。ちょうど良い味になってるぜ? 梨花ちゃんも食わないと俺が全部食っちまうぜ?」 「みー。ボクもちゃんと食べるのですよ。 圭一があまりにもおいしそうに食べてくれるので嬉しかったのです」 圭一の笑顔に鼓動の高鳴りを確認しながら、笑顔で返す。 「ボク」に比べてかわいげのない「私」は圭一の前ではできるだけ控えるようにしている。 普段圭一が見ているのは「ボク」だ。 だから「私」を全面にだすようになればきっと嫌われる。 部活のメンバーとの食事のときのようなにぎやかさはない。 いつもと比べて圭一も私も口数は少ないのだけれど、どこか暖かい。 圭一も緊張してくれているのだろう。顔が赤かったり、動きがぎこちなかったりしている。 その様子をみて、ちょっと安心している自分が居る。意識しているのは私だけではないんだと。 ちゃんと私を女としてみてくれているんだと。 そう思うと頬の熱の高まりと共に安心感が胸のなかに沸いてくる。 沙都子が帰ってくるまで、もう少し圭一に甘えたい、と思う…。 「ふぅ…ごちそうさま。美味かったぜ」 …食事の味は実際にはあまり覚えてなかった。 隣にいる梨花ちゃんの事を意識していることの方が大きかったからだ。 そんなことを言ったら悲しませるので言うことはないが。 「お粗末さまでした。なのです」 俺が空になった食器を運ぼうとすれば、梨花ちゃんはボクがやるのです、といってさせてくれなかった。 仕方がないので、てきぱきと梨花ちゃんが片付けていく様子を見ることにする。 どことなく動きが硬い気がするのは気のせいだろうか…。 しばらく台所の方で動き回っていた梨花ちゃんは食後のお茶を準備していたらしい。 二人分のお茶をテーブルに置いてくれたその後、無言でぴったりと俺に擦り寄って…。 「り、梨花ちゃん…?」 「け、圭一……あの……」 ごく、とつばを飲み込む。梨花ちゃんの香りが俺の鼻腔をくすぐる。 梨花ちゃんが真っ赤になりながらこちらを潤んだ瞳でじっと見つめてくる。 こういう目をするとき、梨花ちゃんが何を求めているか、察した俺は小さな体を抱きしめながら、 梨花ちゃんの唇へと口付けをする。 ……あれ以来、梨花ちゃんは二人きりになったとき、よくキスを強請って来る。 梨花ちゃんと触れていたい俺としては好都合なので断ることもない。 唇を絡ませるような深いキスの方が好きなことを知っている俺は、 唇を舌でつついてやり、梨花ちゃんの口内へと舌を差し入れていく。 互いの唾液を交換するような舌の動きをするほどに、 梨花ちゃんとつながっていくような気がする。 最初に肌を重ねたときのようにまた、梨花ちゃんの胸へと手を当てる。 前回と違うのは制服の上にエプロンがある、と言うことだ。 「梨花ちゃん…、触ってもいいだろ…?」 「きょ…今日は沙都子がいつ帰ってくるかわからないの…です。 本当は圭一の好きにされたいのですが…」 プルルルルル… プルルルルル… 抱き合ったまま沙都子が帰ってきたときのようにびくっと体を振るわせる。 突然の電話に狼狽したまま梨花ちゃんが慌てて離れ、 顔を赤くしたまま電話に出る。 「…は……え…、じゃ…ちょ…」 なにかいろいろと話しているようだが此処からはよく聞こえない。 口調からすれば部活メンバー、もっといえば沙都子のようだが… しばらくの時間が相手からゆっくりと梨花ちゃんが帰ってくる。 うつむいていてどこか元気がないように見える… 「どうかしたのか?梨花ちゃん…」 「け…圭一…あの…良かったら今日泊まって行きませんですか?」 どきん、と胸が高まる、いやいや、落ち着け前原圭一。 今日は沙都子が帰ってくるんだろ、だからそんなことにはならない。 深呼吸をしてから改めて問い返す。 「お、俺は嬉しいけど、いいのか?沙都子も帰ってくるだろうし」 「そ、それが…、沙都子は今日レナの所急遽泊まるって今電話が… なので…圭一さえよかったら今日泊まって行って欲しいのです… そして…」 ぺたん、と梨花ちゃんが俺の前に座る。 うつむいていた表情がここではっきりと見える。 真っ赤になっているが、上目遣いで瞳を潤ませて居る。 ゆっくり緊張しながら梨花ちゃんの体を引き寄せて抱きしめる。 「梨花ちゃん…良いんだよな…?」 「…圭一以外には許したくないのです…、 そ、それと…二人きりの時には……り、梨花…って呼び捨てにして欲しい。 みんなの中でわた…ボクだけ呼び捨てじゃない…ですから」 抵抗されることなく俺の腕の中にすっぽりと梨花ちゃんが納まる。 此処が自分の指定席だと主張するように服をしっかりとつかんで離さない。 「わかったよ。梨花…でいいか? なんかちょっと気恥ずかしいな」 俺は恥ずかしさをごまかすために梨花ちゃんに口付けをすることにした…。 ……レナはどこまで私に不意打ちをしてくれれば気が済むんだろう。 圭一の腕の中でその体温を感じる幸せに浸りながら、ぼんやりと考える。 今夜は二人きりで泊まっていって、なんて、どこかのドラマみたいな展開だ。 実際に言ってみて、やっぱり恥ずかしかった。 そして、圭一との距離をもっと縮めたくて、ぼんやりした頭で名前だけで呼んで欲しいと強請る。 あまりにもボーっとしていて思わず呼び方を間違えそうになってしまう。 でも、圭一のはずかしそうな表情を間近で見ることができた。 うれしい、と感じる間もなく唇を圭一に奪われる。拒む要素はない。 圭一との口付けの甘さに頭の中がさらに融けていく。 「ボク」の仮面はヒビだらけだ。嫌われるかもしれない、と思っても感覚に逆らうほうがつらい。 さっきの続きを体も心も求めている。 圭一の手が胸に触れた。一度経験はしていてもやっぱり不安はある。 沙都子にばれないようにと何度も自慰をして求めた手。 片手で圭一にしがみつきながらも、求めるように手を重ねる。 どきどきと心音だけで壊れてしまいそうな身体。 「…圭一、私を、圭一だけのものにして…。他の誰の物にもしないで…。 そして、圭一も私から離れないで…」 圭一のぬくもりを無くすのが怖い。 そんな私に圭一はぎゅっと抱きしめてくれた。 より体が熱を持つ。熱くて、とても心地良い… 「…離すわけないだろ。梨花ち…梨花はずっとつらかったんだろ。 だったら、俺が居てやる。俺だけじゃない、沙都子やレナや、羽入、 魅音や詩音だって梨花と一緒に居る。きっと、だ」 目を閉じれば圭一の雄姿が目に浮かんでくる。 この圭一は持っていないはずの記憶。大人たちやお魎にも一歩も引かなかった姿。 圭一に服を脱がされていく感触がする。 「いいんだよな…?」 圭一の声がちょっと震えている。顔をみればきっとまた、真っ赤になるだろう。 だから、目を閉じたまま、こくん。とうなずいた。 エプロンも取り外され。胸が空気にさらされる感触がする。 そして素肌に圭一の手が触れる。ぞくっと背中に何かが走る気がする。 自慰の時に思い出しても、再現はとてもできなかった、圭一の手がそこにあった。 梨花ちゃんを腕の中に抱える密着状態で白い肌を暴いていく。 梨花ちゃんとこんな関係になるのを想像していなかった数日前。 目の前の梨花ちゃんを愛しく思う気持ちはここ数日で何倍にも膨れ上がっていた。 「いいんだよな…?」 理性で抑えられるぎりぎりのところで最後の確認をする。 けれど梨花ちゃんは抗わない。 こくん。とうなずいたのを確認してその白い肌に手を這わせる。 こうして抱きしめていると緊張しているとかがちょっとだけ伝わってくる。 まだ未成熟だけれど、確実に存在するやわらかさを手で感じる。 俺はこの白い肌に俺だけの証を残したくなり、胸元に痕が付くくらいに強く吸い付いた 「つっ…」 梨花ちゃんの肌には刺激が強すぎたのかびくっと身体が震えたのがわかった。 それでも、抵抗が無い事を良い事に梨花ちゃんの肌への何箇所にも 口付けを落としていく… 「や…圭一…そんなに吸わないで、お風呂に入ってないから汗臭いでしょ…」 「そんなこと無いぜ…、梨花の匂いしかしないからな…」 梨花ちゃんの身体を持ち上げるようにしながら口づけする場所を増やしていく。 この体勢では梨花ちゃんの表情が丸見えだった。 俺の呼吸も梨花ちゃんの呼吸も、高まりあう。 夏で薄着をしているはずなのに身体が熱くて、服なんか着て居たくない なんども口付けを繰り返していくうちに、梨花ちゃんの胸の先の感触が変わってくる… 「梨花…胸の先、固くなってるぜ…。たしか、こういう時って気持ちよくなってるんだったか?」 どこかの本で読んだ無駄な知識に当てはめつつ、たずねる。 梨花ちゃんはいやいやをするように首を横にふる。 「やぁ…圭一…そんな風に言わないで…恥ずかしい…」 「こっちも確かめないとな…」 「ぁ…そこっ…んっ…!」 真っ白な下着の上から梨花ちゃんの一番恥ずかしいと思われる場所に触れる。 驚いた事にそこはしっとりとした湿り気を帯びていた。 直接の刺激は強すぎるかもしれないと思って、下着の上からなぞり始める。 「や、そこ、ぞくぞくしすぎるっ…あんまり触ったら、私が…んぷ…」 更に何か言おうとする梨花ちゃんの唇をふさぐ。 下着の生地を押し付けるようにしながらなぞっていくと湿った感触が指に伝わってくる。 舌を絡ませて。互いにむさぼるように求めあいながら、下着を更にぬらしてしまおうと 細かく指を振るわせていく…。 やがて、かすかにおくに入り込むような感触とともに何か突起のようなこりっとした感触を 指が感じた瞬間 「~~~~~~!!」 舌を絡めていた梨花ちゃんの身体が思いっきり突っ張る。 一瞬、何が起こったかわからずにびくんびくんと連続して振るえる梨花ちゃんの身体を抱き続ける 少しの間をおいて…ぼんやりとした表情で俺の事を見つめ… 「け、圭一…私…真っ白になったの…。圭一に触られてるところが熱くてぞくぞくして…」 「それって、達した…って奴なのか…?」 「わからない…初めて…だもの、こんな風になったのは…」 多少落ち着いたのか視線をそらして恥ずかしそうに縮こまる。 そんな姿をみて、俺の股間のテントはいっそうそそり立つのだった。 ……私の身体ってこんなに気持ちよくなりやすいものだったのだろうか 圭一に痕をつけてもらった場所が熱い。 圭一が触れる場所がぞくぞくとする。 圭一もこういうことをしたのは初めて…と思っているのだが妙に手馴れている気がする。 熱に融けた思考で、思わずたずねる… 「…ぅぁ…圭一…、妙に手馴れてない…?んっ…」 「俺はこうするのは初めて、だぜ…? そ、そりゃ、本とかには興味はあったけど…、それだけ、相性がいいって事じゃないか?」 気恥ずかしそうに、ぶっきらぼうに、だけど目をそらさずに応えてくれた。 ああ、相性がいいのか…、それならいいかもしれない、と思考を放棄する。 もうひとつ気になるのは圭一のふくらみ、 半裸の姿のまま。圭一のズボンへと手をかける…。受けるだけじゃ…だめよね…。 「梨、梨花…?ちょ…」 「さっき、私はとても気持ちよくしてもらったし… 私だけされるのは嫌…、圭一にもしたい…」 「う…」 うるうるとした瞳で見つめるとしぶしぶながら身体を一度離してくれた。 すこし肌寒くなり寂しさを覚えたが、これは私が望んだ事。 圭一のズボンを下ろし、オットセイを… 「え…け…圭一の…こんな…?」 てっきり、オットセイと思っていた圭一のそこに居たのはかめさんだった。 知識と違う形のそれにまっかになって戸惑う。 「り、梨花ちゃ…そんなにまじまじと見られると恥ずかしいぜ…」 「さっき、私の事をじっと見ていたお返しよ。我慢して」 本当は私の方が恥ずかしくてどうにかなりそうだったけれど、何とか強気に返事をする。 恐る恐る、圭一のかめさんに手を触れる。 ぴくん、とそこが跳ねる。恥ずかしいけれど、ちょっとかわいい、と感じる。 だけど、ここから、どうすればいいのかがわからない…ちょっと戸惑いながら… 「け、圭一は…どうされるのが気持ちいいの?」 「そ、それはだな……梨花の舌で、舐めてもらっても良いか…?」 これを舐める…じっとかめさんを見つめる。 これも、圭一の一部…そう思うと匂いすらもあまり気にしなくなっていく。 舌をだして、ゆっくりと圭一のを舐める。 正直、おいしい物ではない。だけど、圭一に喜んで欲しい、と思ってさらに舐める。 半裸になって圭一のを舐めている自分、味も、匂いもちょっと我慢しているとすぐに慣れた。 それどころか、頭の芯がぼーっとしてくる。 「はぁ…圭一…こう…?」 「そ、そうだ…梨花…の舌…気持ち良い…、やばい、俺、長く持たないかもしれない…」 何が持たないのか…ぼんやりとした思考では思いつかないまま、圭一のをなめ続ける。 さきっぽから、更に味が悪い液体が出てきたけれど、きれいにしようと舐めていく… 「うぁ…、そこ舐められると…やばい…でるっ…」 あ…と思う間もなく鼻先に白い粘着質の液体が張り付いてくる。 すごい匂いに顔をしかめる…コレが…男の人の…精子なのだろうか…。 おしっことはぜんぜん違う匂い…。 「うわっ…梨花ちゃんごめん…。今吹いてやるからちょっとまってくれよ…」 圭一がティッシュを探して戻ってくるまでのちょっとの時間で顔にへばりついている液体を指で触れる。 そしてちょっとだけ口に含んでみる。とても不思議な味だった… 俺は慌ててティッシュの箱を探してきて梨花ちゃんの顔についている俺の出したものを ふき取っていく事にする。 どこかぼんやりした様子なのはきっとこんなのをかけられたショックからだろう。 これは、嫌われたか…?と思うと明日の部活メンバーの様子が恐ろしくなった。 特に沙都子のトラップが…。 人形のような顔立ちの梨花ちゃんの顔に俺のモノがべったりと張り付いている…という絵は 神聖なものを穢して自分だけのものにしたような、そんな屈折した支配欲を満たすが、 このまま、続けてもいいのかどうか、悩む…。 「梨花ちゃ…っと。梨花。大丈夫か…、ごめんな…」 なんどか身体をゆすって正気に返ってもらうようにとする 「あ…圭一…、謝らなくていいわ…でも、気持ちよかったの…?」 「ああ、とっても気持ちよかったぜ…。正直、あそこまで気持ちがいいとは思わなかった」 「よかった…、圭一は満足した…?それとも…」 さきほどまで白濁に汚れていた顔で笑う。その顔を見ているとまだまだ自分も満足はできていない 「つ、続けてもいいのか…?もっと、梨花にいろいろしちゃうかもしれないぜ?」 こくん、と梨花ちゃんがうなずいてくれる。 さっきの梨花ちゃんの自分を俺だけのものにして欲しい、という言葉が、 更に俺の欲望を加速させていく…。 梨花ちゃんの身体を引き寄せるとそのまま、床に寝かせる。 そして、先ほどすっかり湿らせた下着を脱がせてしまう…。 「此処も、きれい…だな…」 「いいえ、そんな事はない、そんな事はないからじっと見ないで…」 「さっき、梨花は俺のをじっとみてたろ、おあいこだぜ」 直に触れるのは初めて。だ。ゆっくりと秘所を開くように指で触れてみる。 「…け、圭一…そんな広げて見ないで。いや、汚いから」 顔を見られたくないのか真っ赤になって頭をぶんぶんと振る。 でも、俺の目には梨花ちゃんのあそこはとてもきれいに見えた。 さっき、俺のものを舐めてもらったお礼。といわんばかりにその場所を舐め始める。 「な、なめちゃ…そこは汚いから…駄目…はひゃっ…」 ぶんぶんと頭をふって嫌がってはいるけれど足の方の抵抗は無いので続ける事にした。 こうしてみると、さっきふれたと思われる小さなものが見えた。 慎重に舌でつついてみる。 「ひぁっ…圭一…そこ…しびれて…さっきみたいに…真っ白に…」 此処が俗に言うクリトリスなのだろうか…と考えながら、更に舐める。 ぴくびくと太ももが震えているのがとてもいやらしく見える… 「梨花…そろそろ…ひとつになろうぜ…」 この俺のものを、巫女の梨花ちゃんに突き入れて、ひとつになる。 魅力的な誘惑に呼吸もあらくなる。 梨花ちゃんも真っ赤になってぐったりとしながらこく、とうなずいたのを確認し、 ゆっくり俺のものを梨花ちゃんのモノにあてがう、 サイズが異なるので、ちょっと不安に思いつつ、少しずつ慎重に腰を… 「ひ、ぎっ…、いやっ、痛いっ…痛いッ!!いやっ…」 わずかに肉棒が中にこじ入れられようとしたところで梨花ちゃんがおもいっきり痛がり暴れる 俺も驚いて思わず挿入をやめる。 はっ、と我に返った様子の梨花ちゃんはひどくおびえた表情を浮かべた。 「け、圭一…ちょっと初めてなのでびっくりしただけよ… 大丈夫…だから…このまま…」 選択肢 このまま、抱く やっぱり抱けない -圭x梨花 2 俺自身もう、止まる事もできない欲望が渦巻いている。 梨花ちゃんの意思を確かめるように一度口付けを行ってから肉棒を梨花ちゃんのそこにあてがう。 「梨花…、次、悲鳴を上げたらここでやめるからな…」 「わ、わかったわ…、圭一…」 こく、とうなずいたのを確認してまた肉棒をゆっくりと進める。 ぐ…と眉を寄せて耐えてはいるけれども、声は出すことがなくなった。 つらそうな様子にやや腰が引けるが、やると決めたからには腹をくくる。 ゆっくりと腰を推し進めていく。 すこしずつ俺のを締め付けてくる梨花ちゃんの中に強く興奮しつつ できるだけ負担を減らせるようにとゆっくり奥へ進む事に意識をさく。 「~~~~~」 声を出さないようにとはを食いしばる梨花ちゃんが歯をいためてはまずいと 一度動きを止めて呼吸を整えるときに、エプロンの一部を咥えてもらい、 更に奥へと進む…。 どのくらいかかったかわからないが、とうとう梨花ちゃんの中に俺のものがすっかりと埋まる。 正直狭くて痛いくらいの中で動くに動けず。 ぎゅっと痛みに耐え、本当に声を出さなかった梨花ちゃんの頭をなでながら、口付けをする。 「これで、すっかりうまったぜ…。 大丈夫…なのか…?」 「はぁっ…はぁっ…大丈夫…このくらい…、本当に身体を引き裂かれる痛みより 何倍もましなんだから…。 圭一を受け入れてる…嬉しい痛みよ…。 それより…圭一…まだ…終わっていないんでしょ…?」 この状態で動け、というのは梨花ちゃんにもだいぶ負担を与えそうな気がする。 俺自身もうごくかどうかためらっていたときに中の動きが微妙に変わった気がした 俺も勢いでしてしまったが、正直長く持ちそうに無いのを感じていた。 ゆっくりと動いて梨花ちゃんの身体を十分に感じていく。 時間の感覚が途絶えたまま、梨花ちゃんの中をゆっくりと往復をし続ける。 「く…また…」 梨花ちゃんの声はやや苦しそうだが、さっきよりは落ち着いているように聞こえる。 自分のものに走る感覚にそのときが来たのを感じれば、 中に出すのはまずい…と思って引き抜こうとしたところで梨花ちゃんの腰が絡みついてきた 「り、梨花ちゃ…このままだと、中に…」 「はぁ…んく…いい…の…このまま…」 一度こみ上げてくるものをせき止めるすべを知らない俺は、そのまま、梨花ちゃんの中へと 精をはきだしていく… 「あ…、圭一…」 圭一の熱が身体の中に伝わってくる。 身体は痛いけれど、心にはようやく落ち着きが満ちていた。 圭一と一つになれた事がとても喜ばしくて。熱を受けた腹部をゆっくりとなぞる。 「わ、わるい、思いっきり中にだしちまったな…。 その…もし、できちまったら…責任、取らないといけないよな…」 「圭一は…私にこんな事をした時点で責任を取るつもりではなかったの…?」 「いや、それもそうなんだけどな。やっぱりきちんと定職に付くまでは子供は…」 妙に慌てふためいている圭一がかわいくなって私から口付けをする。 一緒に居る、という証をもらった気がして心にすこし余裕が出てきたみたいだ。 本当に現金だと自分でも思う。 「ん…ところで梨花ちゃ…と梨花…気になってたんだけど… そのしゃべり方、こっちが本来の梨花なのか」 「え…あ…に、にぱー。 そ、そ、そ、そそんな事ないのですよ」 すっかり幸せを感じていて忘れていた事を思い出して慌てて取り繕う。 そんな取り繕いも今の圭一には通用しないらしく、じーっと見つめてくる。 心の中まで見透かされているような気がしておとなしく白状する。 「ええ…、そうよ…。こっちが本当の私。 みんなの前ではかわいい子ぶってるって所ね…」 もしかしたら、声が震えていたかもしれない。ここまでして、もしかしたら嫌われて コレっきりになるんじゃ…って。そう考えたら世界が終わる気がした。 「なんだ、ちょっと大人びた口調だったからびっくりしたけど、 やっぱり梨花ちゃん何だな。じゃあ、梨花ちゃ…ってまた言ってるか。 梨花も俺と二人きりのときは演技はやめてくれよ?」 きょとん。とした私の頭に圭一の手が乗る。 「え…、でも、みんなの前に居るときよりかわいげが…」 そんな言葉も圭一の口先の前に轟沈する。 言葉を並ばせたら右に出る人は居ないその言葉にすっかり言いくるめられて。 「私」は圭一の前だけは「私」で居続ける事にした…。 その夜。ちょっと硬い畳の上で二人で抱き合いながら、 初めての二人きりの夜を過ごした…。 翌朝。朝帰りの圭一は両親にいろいろからかわれたとか。 おきた時に来ていた服がいろいろ大変な事になって予備の服を出したとか。 レナがいっそう意味ありげな視線を送るようになったとか、 いろいろ合ったけれど。今日も圭一の隣に私が居る。 一緒に居ればどんな逆風でも立ち向かっていけるから。 おまけ 「梨花も圭一も奥手ですからね、 ここまで強烈に意識させて挙げないといけないとは 二人とも手がかかるのです」 「は、羽入…、あの、私その…羽入にまた…」 「沙都子はいけない子なのですね。 それじゃ、また、二人でゆっくり過ごすのです」 ボクはボクでこの生を思い切りたのしむのです。
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誕生日裸祭り事件・前編 誕生日裸祭り事件・後編 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! ついに俺の一人勝ち。 最初のターゲットは・・・パンツ一枚の沙都子! 「わかるなぁ、沙都子ぉ~?そのスジをさらすんだー!!!!!」 「ふ・・・ふ・・・・・・ふわあああああああああああん!!!!!!!!」 沙都子は号泣しつつ、俺にパンツを投げつけた。 一緒にバレーボールやバスケットボールまで飛んできたが、スジを垣間見ることに成功した俺は満足だった。 「最下位は沙都子に決まりだね!」 「わたくしの誕生日ですのにー!!!」 「沙都子ー、全部終わるまで着ちゃ駄目ですよー?」 「はぅー。涙目の沙都子ちゃんかぁいいよ~」 「かわいそかわいそなのです♪」 主賓といえども容赦はしない。 それがわが部活の恐ろしさだ。 次のターゲットは、沙都子と同じくパンツ姿の魅音。ただし上はセーラー服だ。 「パンツだ、魅音!それ以外は許さん!!!」 その言葉に魅音は何故かにやりと笑い、するりとパンツを脱いだ。その下から現れたのは・・・紐パン!? 「くっくっく。圭ちゃんが思いつくようなこと、おじさんが気づかないと思うー?」 「ふーん。これはこれでいいもんだな。じっくり見られるし」 至近距離から前後左右、舐めるように魅音の紐パン姿を鑑賞する俺。 紐に縛られた豊かな尻周りの肉付きは実に見ごたえがある。 「ちょ、圭ちゃん!?」 ガスッ!!!!! 「圭一くん。何してるのかな?かな?」 レナぱんによって紐パンから遠ざけられる俺・・・。 「わかったわかった。次はレナだな?」 「はうっ!?」 墓穴を掘ったことに気づき、うろたえるレナ。 スカートはあえて残し、タンクトップを脱いでもらう。 これで上半身はブラ一枚。 「はぅううう・・・」 これで形のいい乳が鑑賞できるぜうへへ。 シュミーズ姿の梨花ちゃんに指令。 「わかったのです」 梨花ちゃんがシュミーズを脱ぐと・・・その下はビキニだった。 肩紐のないタイプなので気づかなかったぜ・・・。 「まだいけるのですよ。みぃ?・・・あまり見ても面白くないのですよ・・・」 後ろを向いてしまう梨花ちゃん。 確かにレナや魅音と違って、あまり起伏というものがないが、それが大事なんだよ! 「俺は十分面白いけどなー」 「梨花ちゃんはかぁいいんだよ!だよ!」 「みー・・・」 本人が気にしている所がまたツボだ。 詩音はブラとパンスト姿。 もちろん、俺の選択は――――。 「( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!ブラを取るんだ( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!」 「仕方ありませんね・・・この自慢の乳をせいぜい目に焼き付けなさい!」 バッ!と思い切り良く外された下着が宙を舞う。 白日の下にさらけ出された二つの大きな塊には男の夢や希望がぎっしりと詰まっているに違いない。そして、中央には――。 あれ?あるべきものが見当たらなくて、俺は目を凝らす。 「どうしたんですか~?ニプレスなんて常識ですよー?」 夢の山頂は二つの小さな丸い物体で封印されていたのであった・・・。 と、がっかりするのはまだ早い。ほとんどモロだしには変わりないのだから、この機会にしっかり目に焼き付けておこう。 ボヨン。ん?腕に弾むような感触が。 「圭ちゃあ~ん、詩音ばっかり見てないでおじさんのも見てよぉ~」 「ボクの平らなお胸はどうなのです~☆」 ふに。うお。反対の腕にはまた青い果実の甘酸っぱい感触が・・・。 「レナも混ぜて~。はぅ~圭一くんだってかぁいいんだよ~?」 すりすり。 股間に違和感。 ど、どこに頬摺りしてるんだレナぁ~~~!!! 「――沙都子」 「これでも喰らえですわぁ~!!!」 詩音の合図で俺たちはタライの山に埋められた。 「ふぇえええええええええ!!?」 「終わりですね。お姉」 魅音は最後に残った紐パンを、半泣きでゆっくりと脱ぐと、その場にへたり込んだ。 「はぅ~!!!!!」 ばったり。 ブラを外して力尽きたレナ。 沙都子と魅音が部屋の隅へと引きずっていく。 勝負は、俺と梨花ちゃんと詩音の三人に絞られた。 「よい!!!!」 梨花ちゃんと詩音がチョキ、俺は・・・パー。 今は再びブルマ姿。靴下も上着ももはや無い。 「圭ちゃん~?」 「圭一~?」 みんなの期待に応えて俺は――。 「――やりますね」 「みぃ」 「いや~、日本人なら褌だよなー!身も心も引き締まるぜー!」 褌一枚で仁王立ちする俺。見た目だけならブルマよりも遥かにましだ。 「褌はやっぱりあの食い込みだよねぇ」 「はぅ~。圭一くんのお尻かぁいいよ~」 背後から身の危険も感じるが。 何度か際どい勝負が続いた後、再び俺にピンチが訪れた。 「さあ、圭ちゃん。度胸を見せて下さい」 「みぃ。決心がつかないなら、ボクが手伝ってあげるのです」 「それには及ばないぜ・・・。よくここまで来たもんだ・・・」 ゆっくり紐を解く。 「だが、まだ終わっちゃいねえ!!!」 みんなの目が点になる。 俺の股間には紐を通した葉っぱが一枚。 あらかじめ柏餅用の葉っぱをこっそり仕込んでおいたのだ。 「・・・くすくすくす。あっはっはっははははははははは!!!面白い、面白いわ、圭一!!!あなたはどこまで私を楽しませてくれるのかしら!?おいで、葉っぱ男。――遊んであげるわ!!!」 「みぃーーーーーーーー!!?」 激戦の末、とうとう梨花ちゃんが脱落した。 もはや上だけになったビキニを脱ぐ。けだるい仕草が妙に色っぽい。 「やっぱりあのセリフは負けフラグよね・・・」 その場に体育座りをして見物に回る梨花ちゃん。 残る敵は詩音のみ。 静寂が訪れる。 衆人環視の中、俺と詩音は最後の封印、葉っぱとニプレスの存亡をかけて、最終決戦に挑む!!! 「覚悟しろ、詩音!そのいまいましい代物は俺様がじきじきに剥ぎ取ってやるぜぇーーー!!!!!」 「ふっ!圭ちゃんこそかぁいいオットセイの虫干しの準備はいいですかぁ~!!!?」 「野球~す~るなら!こういう具合にしやしゃんせ~」 グーか?チョキか? 「アウト!」 それともパーか? 「セーフ!」 選択肢は三つだけ。 「よよいの・・・」 シンプルなルールだからこそ先が見えない。 「よいッ!!!!!」 勝負だ詩音ーーーーーーーー!!!!!」 光がまぶしい。 「ん・・・?」 もう朝か。 夕べは楽しかったな。 綿流しの日以来の大騒ぎ。 何だかスースーする。 ああそうか。 結局全裸のままで寝てしまったのか・・・って、え!? 目を開けた俺は異様な状況に気づいた。 魅音と詩音が両腕にぶら下がっている。 梨花ちゃんは横にくっついており、レナは・・・頭を下にして、こっちに尻を向けていた! いや、沙都子が股間に頭を乗せているのに比べれば大したことでは――。 「ふ、ふええええええええええ!!?」 「はうーーーーーーーーーーー!!?」 決定的な問題は、全員が全裸ということだ。 ほぼ同時に魅音とレナの悲鳴が上がる。 「うーん・・・。にーにー・・・」 「うるさいですねぇ・・・。夕べは遅かったんですから、もうちょっと寝かせて下さいよぉ・・・」 魅音とレナは飛び起きると、ほれぼれするようなスピードで服を着始めた。 「ぎゃあああああああああああッ!!!何するんですのこの変態ッ!!!!!」 沙都子に蹴りを入れられながら、梨花ちゃんを起こす。 「起きろ、梨花ちゃん!あれから何があったんだ!?」 「みー・・・。優勝は・・・」 ゆさゆさと揺さぶられ、目を閉じたまま梨花ちゃんは夕べの出来事と語った。 二つの拳はグーとパー。 勝ったのは・・・。 「もらったああああああああああああ!!!!!」 「ひぎぃいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 詩音が葉っぱをもぎ取った。 「圭ちゃんのオットセイは元気だったかなぁ~?くっくっく!!」 「お持ち帰りぃ~!!!」 「オットセイさん、こんにちわなのです」 「やめてー。つつかないでー。らめええええええええ!!!!!」 「商品は頂きましたよ!あははははは!!!」 「ふわああああああああああん!?」 ドタバタ。 こんな調子で大騒ぎの中、長かった戦いは終わりを告げた。 「ふう・・・。一人だけ仲間外れというのも寂しいもんですねぇ。ええい、こんな物取っちゃええええええええ!!!」 ついに詩音までが自らニプレスを剥がして騒ぎに加わった。 しばらくみんなで全裸のまま追いかけっこをしていた記憶はあるが・・・。 「詩ぃの勝ちなのです~・・・。沙都子は一週間詩ぃのペットなのです~・・・」 「いやあああああああああ!!!」 沙都子の悲鳴で、梨花ちゃんがぱっちりと目を開ける。 目の前の全裸の俺に目を見張り、自分の体を見直すと急激に蒼ざめ――台所に逃げ込んだ。 魅音も服を着ると、何も言わずに涙を振りまきながら外へ飛び出して行った。 「た、楽しかったね・・・。えへへへ」 レナも取り繕うように照れ笑いをしてそそくさと帰ってゆく。 げしげし。 沙都子に蹴られながら着替えをする。 着替え終わった詩音が沙都子に服を着せていた。 「変態!変態!変態!変態!変態!変態!変態!変態!変態!変態!変態!変態!」 「はいはい沙都子ぉ~。変態の圭ちゃんは放っておいて、一緒にマンションに帰りますよぉ~」 「・・・みぃ~。誰か、ボクの服を取って欲しいのです・・・」 台所から梨花ちゃんの哀れな声がする。 「これかぁ?」 「みぃッ!?近寄らないでよッ!!!」 「え!?別に何も見てな」 「梨花に何する気ですのこのド変態めええええええええええええッ!!!!!」 ドラップの嵐が吹き荒れる中、俺の意識は再び闇に落ちていった・・・。 「レナ・・・私もう学校行けない・・・」 「魅ぃちゃん、忘れるんだよ・・・だよ・・・」 階上の騒ぎをよそに傷を舐めあう二人。 だが、この「誕生日裸祭り事件」は、その後も忘れられない思い出として長く語り継がれ、 ことあるごとにほじくり出されてはみんなの古傷をえぐるのであった・・・。 終わり
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前回 鬼畜悟史~古手の巫女~ ひ ぐ ら し のなく 頃 に ~ 鬼 畜悟史 ~ 第八話~罪滅し~ 「そんな! あの悟史君が……? そんなの有り得ません……!」 「監督。私だって信じたくはありません。けど、事実なんです!」 村唯一の医療施設で、私たちは言い合っていた。 魅音たちの隙を突いての脱走。 私はその後、診療所めがけて夜の雛見沢を疾走した。 夜ということもあり、怪訝な表情で私を出迎えた監督だったが、私の必死な顔を見てすぐさま相談に乗ってくれた。 だが、私の突拍子のない話は、監督をすぐに納得させることはできなかった。 当たり前だろう。特に監督は悟史君を治療してきた経歴もあり、悟史君をよく知っている。 その悟史君が、人を陥れるようなことをするなんて、私が監督の立場なら信じられない。 普段は冷静な監督が髪をしきりに掻き分け、眼鏡を曇らせるのを私は初めて見る。 監督は一度大きく息を吐いた後、眼鏡を右の中指でクイッと押し上げて位置を修正する。 これは監督が落ち着くときにする動作。私の情報を裏打ちするように、彼の表情はいつもと変わらなくなった。 私よりも長く生きているだけあって、不備の自体にもある程度慣れているようだ。 「では、質問します。あなたが悟史君の様子がおかしいと感じたのはいつぐらいからですか?」 「悟史君が編入してから三日後ぐらいだったと思います」 沙都子に言われるまで悟史君に何の疑問も持っていなかった。私を撫でてくれた在りし日の彼と全く変わらなかったように感じた。 でも、編入してきた日から悟史君の計画は始まっていたのだ。 まずは私を。次に魅音を堕とす。 こうすることで雛見沢での不祥事を園崎家の権力でもみ消すことを考えていたのだ。なんて冷静で計画的な犯行。 私ですら思わず舌を巻いてしまう。 しかもその計画はたった二日で成し遂げられ、次からはその計画の幅を大きく広げることに成功している。 「次の質問ですが、彼が症候群を再発させているとどうして考えましたか?」 「最初は予感のようなものでした。もしかしたら、彼は何らかの病気を抱えているのかもしれないと。 確信したのは沙都子に教えられた後です。悟史君の放つ鋭い眼光に捉えられたとき、彼が悟史君の姿をしている 別人ではないかと思いました。そしてそのときに症候群を発症してるんだと気付いたんです」 監督には今まで起こった全てを話した。 恥ずかしくもあったが、今はそんな面子を気にしている場合ではない。 最初に騙されて抱き合ったことから魅音に辱められたことまで。 唯一の味方とも言える監督は、それら全ての話を聞いても黙っていてくれた。 静かに私の話に耳を傾け、全てを話した後でも軽蔑したりせず「そうですか……」と呟いてくれた。 それがどんなに嬉しかった事か。 信じてくれるなんて最初は期待していなかった。 一か八かの大勝負。私はその賭けに勝ったのだ。 だけど、流石に悟史君が症候群を再発させているかもしれないという可能性については、彼は疑った。 それは彼の医者としての仕事が完璧ではなかったという事にも繋がるのだから。 「監督。今は最悪のケースを前提として動かなければなりません」 「……ええ、そうですね。詩音さんがここまで話してくれたんです。その決意を無駄にはさせません」 監督はばつが悪そうに頭を掻いた後、椅子から立ち上がると近くの白い棚に近づき、何かを探す。 彼の目は真剣そのもので、彼が私の相談に真面目に乗っていることを覗わせた。 やがて監督は一つのケースを握り締め、私のところまで戻ってきて、椅子に腰掛ける。 見た目にも大きく頑丈そうなケースを監督が開くと、そこには大きな注射器が収められていた。 「最新版のH103という薬物です。雛見沢症候群のL5クラスの患者を、L3クラスまで症状を抑えることが出来ます」 「これを使えば、悟史君を治せるんですか……?」 それなら早くこれを悟史君に打てばいいんだ。それならこの悪夢は幕を下ろす。 だけど監督は私のそんな淡い希望を、ゆっくりと残念そうに顔を横に振って掻き消した。 「……いいえ。残念なことに、これは症状を抑える薬であって、症状を治療する薬ではないのです」 「それでも、悟史君は元通りに生活できるんですよね?」 「はい。一日二本の注射さえ忘れなければ普通の人となんら代わりの無い生活を送ることが出来ます」 「良かった…………」 あの昭和57年の関係を再び取り戻せるのなら、私は何だってしてみせる。 悟史君が好きだということもあるが、あと一つ、今の私にとって重要な大きな支えがあった。 それは沙都子との誓い。 悟史君の言いなりになっていた私を、目覚めさせてくれた沙都子。 でも、沙都子はあくまでか弱い女の子だった。 悟史君の策略にはまり、一人では決して抜け出せない沼の中に沈もうとしている。 私が沙都子に手を差し伸べるんだ。絶対に私が沙都子の目を覚まさせる。 あの時沙都子がしてくれたように、きっと。 だが、それは悟史君という核を取り除いた後だ。 環境を変えなければ、沙都子は決して元通りに戻れないだろう。 「一番の問題は、これを誰が注射するかです。詩音さんの話から推測すると、悟史君はL5クラスに近いようです。 今の彼に近づけば何をされるのか分かりません。それは詩音さん、あなたであっても例外ではないのは既にお分かりですね?」 監督はすでに私が悟史君に注射すると決意していることを汲み取っているようだ。 よく私という人間を理解してくれている。 それにこの出来事はあくまで私たちだけの問題だ。 富竹さんもいないし、元より番犬を呼べるような大事でもない。 そんな環境で監督はただの非力な医者だった。 警察への訴えも考えはしたが、証拠も無いこの状況下で果たして助けてくれるだろうか? ……無理に違いない。 それに、下手をすれば死んでしまうかもしれない今回の出来事に、監督をこれ以上踏み込ませるわけにもいかない。 結局は私たちの内の誰かが悟史君を止めなければならないのだ。そして今動けるのは私だけ。 もしかしたら警察は動いてくれるかもしれない。でもそれは『何か』が起こった後だ。それでは遅すぎる。 「分かっています。それでも私は彼を救いたいんです」 監督は真っ直ぐ私の目を捉えている。私の覚悟を理解した彼の最後の詰問。 彼の真剣な眼差しは言葉よりも確実に私の心に直接訴えかけてくる。 悟史君に注射を刺すことを失敗するのは、すなわち私という人間の生命の危機。 もし生かされても、その先にあるのは悟史君の手による私という精神の危険。 そこまで理解しながら彼は私に問う。 本当に、いいんですね? それでも私の意志が揺らぐことなどない。 私の存在は彼を救うためのもの。 すでに穢れたこの身体で彼を助けられるのならなんでもしよう。 心に灯された勇気という炎が激しく燃え盛る。 そして勇気を覆っていた恐れは、激しい業火に照らされて消え失せた。 監督は私の心を確かめたあと、私にあの薬物を渡す。 中に入っている透明な液体が小刻みに揺れていた。 「くれぐれも取り扱いには注意してください。間違えても自分に使ったりしないように」 監督の言葉に重々しい印象。万が一にでも、自分に注射でもしようものなら死に至るのではないかと想像する。 きっとこれは症候群を発症した者にだけ効果を発揮する薬物。 そして監督の血の滲む様な努力が完成に導いた貴重なもの。 絶対にこの一本を無駄にするわけにはいかない。 掌の注射器をしっかりと握り締める。 監督はしばらく私の様子を見ていたが、突然何かに気づいたようだ。 「でも、これからどこに泊まるつもりですか? 恐らく詩音さんの自宅はもちろん、雛見沢で安心できる場所なんてないでしょう」 「ぁ…………!」 そういえば寝る場所なんて考えてもいなかった。抜け出すことで精一杯で、そこまで頭が回らなかったのだ。 頭を両手で抱えながら寝れる場所を考えている私を見て、監督は微笑みかけてくれる。 「そんなことだろうと思いましたよ。診療所には空きスペースなどいくらでもあります。とりあえず、今日はここにお泊り下さい」 全く持って頭が上がらない。監督にはお世話になりすぎている。 でも今日ばかりは監督の言うことを素直に聞いたほうが言いようだ。 近くのベッドに寝転がると、それまで押さえていた眠気や疲れがどっと押し寄せてきた。 もう、今日はいいよね? 自然と目蓋が重くなっていき、目が閉じられる頃には、私は意識を手放していたのだった――。 翌日の昼間、監督の白い車の中に私と監督の姿はあった。 がたがたと舗装されていない道を抜け、興宮の町が見えてくる。 いつも通りの興宮の風景。仕事に向かう人や買い物をする人が多く行きかい、車が道路に並んでいる。 「詩音さん。見えてきましたよ」 「ありがとうございました。もうここら辺りで下ろしてくれて結構です」 信号機で止まった車から飛び出て、バタン、と扉を閉める。 監督は不安げに私を見て何か言いたげだったが、「頑張ってくださいね」と一言告げて車で走り去っていった。 ポツンと一人興宮に残された私。そこからしばらく自分の家の方向に歩き、家の前の公園で一休みする。 これは吉とでるか凶とでるか。 私が何をしに興宮へ来たかというと、簡単に言えば服を取りに来たのだ。 もちろん私服などではなく、魅音と全く一緒の服だ。 私が考えた作戦は魅音と入れ替わり、悟史君が隙を見せた瞬間に治療薬を注入するという、シンプルだが意外と難しい作戦だ。 まずレナさんと魅音の二人が邪魔である。 レナさんはたまに鋭いことがあるし、魅音は変装の邪魔になる上、沙都子や梨花ちゃまもいる。 そう簡単にいくとは思えないが、私はこの作戦に全てを賭けることにした。 これ以外に思いつかなかったし、私でも悟史君に近づける唯一の作戦だったからだ。 そして最初の問題点が『アレ』だ。 今、私は自分の家の玄関がよく見える公園から家を監視しているのだが、私の家の玄関の前に人がいるのだ。 白い服に、白い帽子、清楚に切り揃えられた髪。それは間違いなく私服姿のレナさんだった。 彼女はきょろきょろと辺りを伺い、何かを探している。探し物は恐らく私だろう。 私が脱走したので、自分の家に帰っているかもしれないと悟史君が見張りを付けた、といったところか。 でも、家に入らないと服を手に入れることができない。 虎穴に入らずんば虎児を得ず、か――。 私はポケットに忍ばせていたスタンガンを握り締め、レナさんに気づかれないように家に近づいていく。 そして私の部屋の階の壁に張り付き、見つからないようにそっと家の前を伺った。 レナさんの様子は先ほどまでと違わず、きょろきょろと辺りを伺っている。 恐らく私の接近には気づいていないはず。 だが――――。 「ねぇ……。そこに居るの誰なのかな、かな?」 「ッ!?」 「隠れてないで出てきなよ。聞いてる~?」 明らかに私に当てた言葉。声にも何か怒りのような感情が含まれていた。 どうする園崎詩音……? 今ここで逃げ出すのか? そんなことしても何の解決にもならないってわかってるじゃないか。 気づかれているのなら選択肢は一つ。 先手必勝! 私は壁から躍り出て、レナさんがいる場所まで一直線に走る。勝負は一瞬で決まるだろう。 まさか飛び出てくるとは予想していなかったのか、彼女は突然出てきた私に驚き、 私は体勢を整えるレナさん目掛けてスタンガンを構える。 電流が鮮やかに迸るのと同時に繰り出されるレナさんの右ストレート。 その一瞬だけスローモーションになる世界。 風を切り裂くレナさんのパンチは私の左頬をかすめ、私のスタンガンは彼女の腹部を完全に捕らえる。 スタンガンの音が鳴り響き、レナさんの悲鳴を遮断した。 がくりと力なく倒れこむレナさん。スタンガンを当てられたお腹を抑えながら私を見据えている。 「詩ぃ……ちゃん……」 「スタンガンのパワーは抑えてあるので、すぐに立てるようになると思いますよ。……縛らせてもらいますけどね」 家の中からビニールの紐を取り出し、いまだに身体の痺れが取れないレナさんの両手両足を縛りつける。 これで動くことはできない。誰かに見つからないように、レナさんを自分の家の中に放り入れる。 さて、魅音の服は…………。がさごそと私のたんすを漁り、発見。 これで用は済んだ。次の計画に入らなければ。 レナさんを家の中に放り入れ、そのまま立ち去ろうとすると彼女の低い声が耳に入った。 「罰なんだよ……」 「え…………?」 「これは悟史君を裏切った私たちのけじめ。私たちには悟史君の願望をかなえる義務がある」 「悟史君を……裏切った……?」 レナさんの言っている意味が分からない。 彼女が悟史君を裏切ったことなどあっただろうか? うつぶせに伏せたままのレナさんの言葉には何故か達観したような含みがあった。 彼女は誰に言っているのかも分からないほど小さな声で言葉を続けていく。 「あの時私たちにも何か出来た筈なのに結局何もしなかった。……引っ越してきてすぐだったから、なんて甘やかすつもりもないよ」 「………………」 「だからね? 悟史君がもし帰ってきたなら悟史君の望むことをなんでも叶えてあげようって思った」 それは昭和57年の悟史君の失踪を指して言っているのか――。 私は彼女の告白にただただ耳を傾ける事しか出来ない。 「この前教室で悟史君たちに襲われたとき、途中で悟ったんだよ。 『抵抗するのはやめよう。私たちは悟史君を見殺そうとした。結果的には死んでいなかったけど見殺しにしようとした。 ならこれは当然の報いなんだ。彼の憎しみは素直に受け止めて、彼の言うとおりに行動しよう』ってね」 「レナさん……」 「そしたら、なんだか全てがどうでも良くなっちゃった。頭を空っぽにしてたら、その中に快感が流れ込んできて、 私はその快感に無我夢中になった。後は悟史君の従うがままだったんだよ。あははははは……」 自嘲気味に笑い出すレナさん。 知らなかった。 レナさんはレナさんなりに悟史君を救えなかったことに悲しんでいたのだ。 そしてその罪に対するけじめまで自分で行っていた。 レナさんは敵ではない。それが明確に分かってしまった。 私は家の中にあったはさみを取ってきて、それをレナさんの紐に近づける。 レナさんの紐をはさみで切って開放しようとすると彼女は微笑みながらそれを拒んだ。 「そんなことをしたら駄目だよ。私は出来る限り悟史君の力になろうと思ってる。その紐を切ったなら私は詩ぃちゃんに立ちはだからなければならない。だから……ね?このままにしておいてくれないかな、かな?」 彼女の思いを知ってしまったからこそ、この縄を切ってしまうことができない。 レナさんは悟史君の罪滅しをしたい一方でもうこんなことに加担したくないのだ。 私は結局、縄を切らないことにした。 レナさんから離れ、玄関で靴を履く。玄関の扉に手をかけ、扉を開け放つ。 扉を閉めて出て行くときにちらりと垣間見えたレナさんの顔は安堵していて、レナさんの罪悪感を利用している 悟史君を早く元に戻そう、そう強く思いながら扉を閉めたのだった。 続く
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黒沙都子×白梨花(賽殺し編)からの続き そして、取り押さえている子達は古手さんの着ている体操着を脱がせた。 「ひゃぁぁ!! な、何なのですかー!!?」 そして、全部脱がせて裸にしてやった。 古手さんは、やっぱり泣きそうだった。あはは、いい気味ね。 やだ! やだやだやだ!! なんで、私は裸にされてるの!? 私は押さえる手を精一杯振りほどこうとするけど、そんなことできっこなかった。 そういえば、朝に女子たちが集まって、例のごとく私はその中に入れなくて。 なんだか、お話が盛り上がってたみたいだけど。 もしかして、このための……? そんなことを考えているうちに、北条さんが私の前に来た。 「古手さんってばちびで胸もぺったんこで、かっこ悪いわねー」 そう言って、私は古手さんの胸を撫でてやった。 「……んっ」 あれ……? 手が乳首に触れたら、古手さんは変な声を小さく出した。 なんだろ……もっと触ってみようかな。 「んっ……あっ……」 なんだろ……やっぱり、乳首を触られるのが嫌なの? もっと触ってみよう。 ちょっとだけ、つねってみようかな? 「んぁっ……あぁ……」 やっぱり……。 なんか、変な声をあげて面白い! もっとやってみよっと……。 身体を襲う変な感触のせいで、思わず声が出てしまう。 なんだろ……なんだか、電気が走ってるみたいにピリピリする。 そしてその変な感触は、容赦なく私の身体に連続して流れてくる。 「んぁっ……くっ……」 ダメ。 「あんっ……んくっ……」 声を抑えようとしても、無意識に出ちゃう。 それに、なんだか気持ちいい……。 私は、古手さんの乳首への手を緩めずに触り続ける。 ぷにぷにしたり、つねったり、なぞったり。 そんなことをしているうちに、乳首がなんだか、硬くなってきた。 いったいなんでこんなことになるんだろう。 ……家に帰ったら、自分でもやってみようかな? そんなことを考えているそばで、他の子が驚くようなことを言った。 「なんだかおしっこ出るところが光ってるよー?」 「ホントだー!」 「もしかして、おもらししちゃったのー?」 「かっこわるーい!」 北条さんに乳首を触られているうちに、身体がなんだか火照ってきた。 それに、おもらしっていうのも気になる。 おしっこを漏らしたような感覚はないのに、一体どうなってるんだろう。 「んああぁっ……あぁんっ!!」 身体にまた電流が走る。 北条さんじゃない誰かが、私のおしっこが出るところに触ったみたいだ。 そして、そこを触られて。 私の身体はさらに火照って、気持ちいい感覚も、より強まってきた。 「ひゃあぁんっ……あぅっ! あんっ!!」 古手さんが、高い声をあげる。 私は、それをただ見てるだけ。 でも、古手さんの様子を見て、だんだん私も古手さんのそこを触りたくなってきた。 今触っている子達にお願いして、触らせてもらった。 古手さんのおしっこが出るところには、なんだか変な突起もあったので、それを触ってみた。 「んあっ……ひゃあああっ!!!」 古手さんはより高く喘いで、そして古手さんの立っているところは水溜りが出来ていた。 はぁ……はぁ……。 身体が、熱いよ……。 なんだか、頭が真っ白になっちゃいそう。 さっきから気持ちいいのが止まらなくて、無意識に声が出ちゃう。 そして―――― 「あっ、あんっ、あっ、ひゃんっ!! ひゃぁぁーーーーーーーーー!!!」 今まで出したことも無い位の、自分でも驚くくらいの。 高い声を―――― 「……はぁ……はぁ」 私、どうなっちゃったんだろ……。 なんだか身体がガクガクするよ……。 疲れちゃった……。 古手さんの身体が大きく跳ねて、止まったと思ったら倒れこんじゃった。 本当に、どうなってるんだろ……? 後で自分で試してみようっと。 fin.
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「………………はぁ」 空に綺麗な満月が見える真夜中。 時刻はこんなにも遅くなっているというのに、私は今たった一人で街頭もない暗い夜道を歩いていた。 いくらのどかで平和な雛見沢といっても、こんな真夜中に女の子一人で出歩くなどとても物騒だ。 こんなにも可愛い私を狙い、そこらの茂みからどこぞの変質者が襲いかかってくるかもしれない……。 だがそんなこともお構いなしに、私はどうしてもこの夜道を一人で歩かなければいけない理由に、おもわずため息をついていた。 すると隣でそれを聞いていた彼女が、スっと口を開く。 「どうしても行くのですか?……梨花」 「………………」 舌ったらずな感じに喋る彼女の問いに、夜道をトコトコと歩いている私は何も答えなかった。 今この道を歩いているのは一人だけなのに、あたかもそこには彼女との『対話』が成立しているようだった。 私は今この手に、小さなバックを持っている。 こんな幼い体でも持てるようにと控えめなそれには、ハブラシやパジャマといったいわゆる『お泊りセット』が入っていた。 それももちろん自分の分だけで、もう一人の彼女にはそもそもそんなもの必要ないのだ。 そしてもう一つ。 買い物用のビニール袋に包まれて、野菜などが入った『夕食セット』も一緒に抱えていた。 「そんな荷物まで持って……やめておいた方がいいのです。 行ったら、地獄なのですよ?」 「ふん。 神様であるあんたが地獄なんていうと、なんだかほんとにそんな気がしてくるわね。……嫌がらせ?」 「あ、あぅあぅあぅあぅ……」 そんなつもりはなかった、と責められた彼女はそのままあぅあぅと鳴きだした。 まるでふざけているような鳴き方だが、これは彼女の口癖のようなもので、普段からよく口にする言葉なのである。 初めの頃は少しうるさく感じたが、さすがに百年近い付き合いにもなるとそれも慣れてくる。 今ではこれを一日一回は聞かなければ、その日が物足りなく感じるほどだった。 「あぅあぅ、梨花はマゾなのです。 どうしてあんな男の家になんか……」 「……ま、あんたはいいわよね。 ただ私を眺めながら、いつもどおりあぅあぅ鳴いているだけでいいんだもの。……今夜も」 「だ、だから! さっきから『行かない方がいい』と止めているではないですかぁっ! あぅあぅあぅ~」 そうしてふたたび泣き出すと、彼女……羽入はなんとか私の腕を引っ張ろうと、チョイチョイとその手を伸ばしてくる。 だが実体のない彼女にそんなことができるはずもなく、それはスカスカと私の腕をかすめるだけだった。 なぜこのあぅあぅとなく羽入は、こんなにも私の行動を止めようとしているのか。 まがりなりにも雛見沢で神と崇められている彼女は、これから私が向かおうとしている『ある場所』に一抹の不安を抱えていたのである。 沙都子と住んでいる家を出てから、その場所までの道のりを歩いている間……羽入はずっと私を説得しているのである。 「絶対、行かない方がいいのです。 あの男は危険すぎるのですよ? 梨花の体が、た、食べられてしまうかもしれないのですよ?」 「しょうがないでしょう? だってこれは罰ゲームなんだから……行かなかったらそれこそ、ねぇ?」 私は羽入に自分もほんとは嫌なんだ、と言うようにチラっと目線を送った。 羽入も普段から私にくっ付いて生活しているため、『部活』というものがどれだけ厳しいものか……。 そしてそれにおける罰ゲームが、どんなに非情なものかよく知っている。 だが彼女はそれをも踏まえたうえで、なお私に彼の家へ行くのをやめろと警告しているのだ。 普段から魅音やレナにセクハラし放題の、あの男……前原圭一。 魅音のあのふくよかな胸に、あくまで偶然だと言っておもいきり鷲づかみしたり……。 レナの安産型の大きなお尻に、虫がついてるなどと言ってサワサワと撫でまわしたり……。 そんな最低でスケベな行為が日常茶飯事の彼の家に、これから私は部活の罰ゲームとして『お泊り』しに行くのだ。 「あぅあぅ、梨花が。 僕の大好きな梨花が圭一にぃ……うあぁぁぁぁ嫌なのですっ!」 「何もう、『汚されちゃった』みたいな感じに言ってんのよ。 まだ彼の家に着いてもいないでしょうが」 「そうですけど……。 着いたらもう、逃げられないのですよ?」 そうして羽入はふたたび泣き出し、すでに私が犯されてしまったかのように悲しんだ。 さきほどから夜道を進むたびにこうして羽入が泣き出すため、私はいつまでたっても心の決心をつけることができなかった。 もっとも逆にいえば、こうして泣き出す彼女のおかげでなんとか冷静でいられているともいえるが……。 どちらにしろ、圭一の家に一人で向かうということへの一抹の不安は消せなかった。 「ま、私はもう半分あきらめてるわ。 古手梨花は今夜彼の手によって穢され、それを境に『鬼隠し』にあっちゃう……かもね?」 「!?……あ、あぅあぅあぅあぅあぅ~っ!!!」 おもわず言った捨て鉢な言葉に、羽入は腕や足を子供のようにバタつかせて暴れた。 そんな悲しいことを言うな、とばかりに私の体にすがりつき、首をイヤイヤと必死に振ってわんわんと泣き出すのである。 それを見て、今のはちょっとイジワルが混じってたかな? と、自分のサドな部分におもわずニヤリとしてしまう。 「そ、そんなのいやなのですー! 梨花が『鬼隠し』なんて絶対ダメです! オヤシロ様として断固それは承諾しないのですーーっ!?!?」 「あーわかったわかった。 ていうかもういい加減泣き止んでよ、歩くだけで疲れちゃうわ……」 「あぅぅ、梨花が変なことばかり言うからなのですよぉ……」 さっきからわざと弱音ばかり吐く私に、羽入はもう知らないとプイッと首を背けた。 神様のくせにこんな性格をしている羽入は、普段からこうして魔女な私にからかわれる(イジメ?)ことが多い。 だがそれはもちろん仲が悪いというわけでなく、むしろ喧嘩するほど仲が良いの見本のような関係であった。 そしてそんな間柄を、私も羽入もとても心地よいと感じている……。 生まれた時から一緒にいる私達はお互いを可愛い妹のように思っていたり、または頼りない姉でもあるように慕っているのである。 「僕はこんなにも梨花を心配しているのに、もう知らないのです! 梨花なんて犯されてしまえなのですっ! ふん、なのですっ!」 「はいはい。 ほら、そんなこと言ってるあいだに……見えてきたわよ」 あいかわらずふてくされる羽入を鼻であしらうと、私は前方に見えてきた大きな屋敷に目をやった。 おそらく村で一、二を争うほどの立派な家。 俗にいう、前原屋敷である。 月明かりに照らされ、どこか仰々しくも見えるその建物に……おもわず羽入が口を開く。 「あぅあぅ、悪魔の根城なのです……」 「……なかなかうまいこと言うわね」 さすが何百年も生きただけのことはある、と私はおもわず感心してしまった。 今回のこの罰ゲームも圭一が決めたことであるし、その彼が住んでいる家となると……なるほど、たしかにその例えはそのとうりだなと思ったのである。 そうして私はしばらくテクテクと道を歩いていくと、その屋敷が一望できる前まで辿りついた。 「あいかわらず大きな家ね……」 近くで見ると本当にその大きさがよくわかる。 父親のアトリエがあるからだと彼は言っていたが、それを差し引いても家の規模は相当なものであった。 この家が建築されているときから、どこぞのお金持ちが来るのかと村中の噂になっていたほどだ。 やはり圭一の家がそれなりの資産を持っているのは間違いないのだろう。 家の周りの庭やその他を含めて、土地だけでもいくらほどになるのだろうとつい計算してしまった。 「う~ん。 あのスケベをたらしこめば、この大きな家も私のものになるのよね? 羽入」 「!? な、な、ななななな、何を言ってるのですか梨花っ! あんな男と結婚するなんて僕は絶対に認めないのですよっ!」 「……冗談よ、冗談。 そんな本気で怒らないでよ、っていうか結婚とか言わないでくれない? 恥ずかしいから」 「認めないのです! あ、あんな最低でドスケベな圭一と梨花が、ふ、夫婦になるなんて……僕は絶対認めないのですよぉぉぉぉっ!!!」 「………………」 この子、わざと言ってるの……? 私はもうこれで何度目かというほどのため息をつきながら、その家の玄関にまで歩いていった。 後ろで離婚だ慰謝料だととんでもないところまで話を進めている羽入を無視し、自分の身長の二倍ほどはあろうかという立派な扉に辿りついた。 「……ご両親、いないって言ってたわよね」 「梨花、こ、これが最後のチャンスなのですよ? 今ならまだ……」 チャンスとはもちろん、逃げるチャンスという意味である。 このチャイムを押してしまったらもう後戻りはできない。一度中に入ってしまったら、圭一は絶対に私を家に帰さないだろう。 おまけに彼の両親は仕事の都合で東京に行っているらしく、少なくとも今夜はもうこの家に帰ってこない。 つまりこの広いお屋敷に、私とあのスケベな圭一、二人だけになるのである。 「ま、いざとなったらあんたが何とかしてね? 一応神様なんだから」 「!? ま、まかせるのです! おもいっきりドタンバタンして、圭一の家の家具を壊しまくってやるのですよっ!」 「………………」 それもどうだろう、と思いながら、私は目の前にあるチャイムをピンポーンと押した。 するとすぐに、家の中から待ってましたとばかりのドタバタとした足音が近づいてきた。 「!?あぁ……い、いいですか梨花!すぐに逃げられる体勢をとっておくのです! い、いきなり押し倒されるかもしれないのですよぉっ!」 凄みのある足音にただならぬ気配を感じたらしく、羽入は私の体をかばうようにしながら叫んだ。 さすがの圭一でもそれはないだろう……と思ったが、こんな玄関先で犯すのも興奮するぜぇぇぇぇと叫ぶ彼が想像できたのも事実である。 中から飛び出てくるかもしれない獣に警戒しながら、私は昼間、部活で圭一に言われた『命令』を思い出していった。 「えーっと、たしか……」 ずいぶんと長い文章だったのを、ゆっくりと思い出していく。 普段使わない言葉が含まれていたため自信がないが、多少のオリジナルを加えても彼は許してくれるだろう。 うーんうーんと呻きながら、私は目の前でガチャリとカギが外されていく音を聞いていった。 「ん……こほん」 声色を変えるため、小さく咳をする。 そして目の前で勢いよくその扉が開かれると、グアっと大きな風が吹いて私の体を突き抜けていった。 『梨花ちゃん! 梨花ちゃん梨花ちゃん梨花ちゃん!!!俺の梨花ちゃんはっ!!!』 家の中から、私の名前を叫ぶスケベ男が現れた。 いきなり自分の名前を五回も叫ばれ、おもわず顔を赤くしてしまう。 「こ、こんばんはなのです。 圭一♪」 『ああっ、梨花ちゃん来てくれたんだなっ! くぅぅぅぅっ!』 羽入の言うようにいきなり押し倒したりはしてこなかったが、圭一は玄関に立っている私を見るとそれに感動したようにうめいた。 その様子は少しだけ不気味だったが、とりあえず私はさきほど思い出していたことを口に出そうと思った。 まずはキャミソールの下すそをクイっと指で持ち上げ、足を左右にクロスし……メイドさんが挨拶するように、ちょこんと首をかたむける。 「ほ、本日はお招き頂き、どうもありがとうございますなのです♪ だ、大好きな圭一のために、今夜はたくさんご奉仕させて頂きますので…… どうかこの巫女であるボクのお体を、た、たっぷりと可愛がってくださいませ……なのです♪」 とびっきりの笑顔を向けながら、私は圭一に完全服従の言葉をささやいた。 もちろんこの内容も、昼間罰ゲームを決めるときにこう言えと彼に命令されたものである。 私は自分がとても恥ずかしい格好、言葉を言っていることにとめどない羞恥を感じながら……それをグっとガマンした。 「あ、あの……。 圭一?」 『梨花ちゃん、か、かわいすぎるよぉっ! 俺の梨花ちゃぁんっ!』 「…………きゃっ!」 恥ずかしいから早く家の中に入れてくれと思っていた矢先、突然圭一が私の胸に顔を埋めてきた。 薄いキャミソールの上からガバっと抱きつかれ、まったく凹凸のないこの胸にグリグリと顔面を押し付けられたのである。 「みぃ。 け、圭一ダメなのですよ。 こんな玄関で……」 『あぁ、これだよこれ。 このツルペタのおっぱいにコリコリって……ハァハァ』 「や、やだ圭一、ちょっと……んぅ」 彼はそのままクンクンと私の胸のニオイを嗅ぎ、そのセクハラ行為に酔っているようだった。 わざと鼻先をグイグリと擦りつけてきて、小さな乳首の感触を薄い布ごしに堪能していったのだ。 押し倒されるよりは数倍ましだが……。 そのいきなりの行為に、私はただなすすべもなく声を出していった。 『梨花ちゃん梨花ちゃん! 梨花ちゃんのおっぱいだ~!』 「あ、あん。 そこグリグリしちゃダメなので……んっ!」 「あ、あわわわわわ!? り、梨花のおっぱいが! 梨花のツルツルできもちいい僕のおっぱいがぁぁぁぁっ!?」 「だ、だれがあんたのよ! って、あ、あんっ。 圭一ちょっとやめてなのですぅ……」 圭一にセクハラをされるは、羽入につっこみを入れるはで忙しくなった私は、おもわずそれにパニックになってしまった。 このままでは、こんな玄関先でレイプされる……。 私はなんとか彼の頭を掴み、それを引き剥がそうとした。 「け、圭一、ちょっといきなりすぎるのです。 こんないきなりなんて……あん!」 『だ、だって梨花ちゃんが可愛過ぎるから……お、俺もうガマンできないんだよぉっ!』 「そ、それはわかるのですけど。 雛見沢のアイドルであるボクが可愛いくてしかたないのは、とてもよくわかるのですけど……いきなりはダメなのですよ?」 「…………………梨花……」 何を調子に乗っているんだこの女は……。 といいたげな羽入の目を無視して、私はなんとか圭一の頭を胸から引き剥がした。 すると彼は鼻息を荒くしてもう一度飛びついてきそうな顔をしたが、私はお得意の猫撫でモードでその瞳を見つめ返す。 「お楽しみはまだ始まったばかりなのですよ? そんなに焦らなくても、今夜ボクの体は圭一のものなのです♪」 『!? り、梨花ちゃん……』 可愛くウインクをして、圭一のスケベ心に訴えかける。 単純な圭一なら、これでとりあえず大人しくなるだろう……。 その目論見はまんまと成功し、私はなんとか彼を落ち着かせると家の中に招き入れてもらった。 『いやーつい興奮しちゃってさぁ。 いきなりはまずいよなぁ?』 「みぃ、レディーに失礼なのですよ? ぷんぷんなのです」 そうして玄関先で靴を脱ぐと、圭一はそのまま私にピッタリと寄り添いながら家の中へと案内していった。 その時、やけに私の肩や背中をベタベタと触ってくるのが気になったが……それはこのさいよしとしよう。 「あぅあぅ、圭一単純すぎるのです。 そして梨花は悪女すぎるのです……」 「しょ、しょうがないでしょ? あのままじゃ、何されるかわかったもんじゃないんだから……」 羽入のお小言を聞きながら、そのまま私は家のリビングへと案内されていった。 そこにはいかにも高級そうなソファーや机が並び、お金持ちですという雰囲気がかもし出されていた。 ご両親がいないというのは本当のようで、ここから見えるキッチンの方にも人の気配は感じられなかった。 『さぁ梨花ちゃん、まずは何をする? 一緒にテレビでも見ようか? そ、それとも一緒にお風呂にでも入ろうか?』 「み、みぃ。 あのボク、今日は圭一にご飯を作ってあげようと思って……その……」 一難去ってまた一難。 早くも下心丸出しの発言をする圭一に、私は手に持っていた買い物袋を見せた。 オズオズとしながら、あくまで恥ずかしそうに……。 幼妻のような上目遣いで、彼の瞳を見つめていく。 「あんまり上手ではないのですけど、圭一に食べてもらいたくて……み~♪」 『!? り、梨花ちゃん……そんなに俺のことを? お、お、俺のためにぃぃっ!!!』 この幼女、俺にベタ惚れだ! とでも思ったのだろうか。 圭一はガッツポーズをしながらまるで子供のように喜んだ。 それを見て私は、ああ、やっぱり単純ね……とあらためて思い、彼にキッチンへと案内されていくのであった。 そうして案内されていくと、そこもまた驚くほど素敵なキッチンだった。 水周りやガスコンロはとても広く設計されていて、女の私から見てもこれなら使いやすいだろうなと人目でわかるものだった。 私が今日ここで料理することをお母様は知っていたのか、テーブルの上にはすでにいくつかの食器が並べられていて、すぐにでも夕食を広げられそうなほど綺麗に整頓されていた。 「あぅ、ウチとは大違いのお台所なのです……」 「ほんとね。 どこぞのスケベ男の家とは思えないほど、綺麗で素敵なキッチンだわ……」 これで圭一さえ変態じゃなければ完璧なのになぁ……と悪態をつきながら、私はバッグの中から持ってきたエプロンを取り出し体に身につけた。 さすがの圭一も料理を始めてしまえば大人しくなるだろうと考えていた私は、まずすでに置いてあったお鍋に水を入れていった。 蛇口から勢いよく流れる水があっというまに中を埋めると、次にその鍋をガスコンロの上に持って行く。 「よいしょっ……と。 羽入、圭一は何してる?」 「向こうでテレビを見ているのです。 とりあえずは平気そうなのですけど……」 そう言って羽入は、リビングでくつろいでいる圭一をチラチラと警戒していた。 さすがの彼もこんなときに手を出そうとは考えないのか、私がこの場にいないかのように見ているテレビに没頭していた。 料理のできない自分には手伝えることがないと思い、邪魔しないようにとああしているのだろうが……。 それはそれでちょっと寂しかった。 「なんか、ちょっと意外ね。 なにかちょっかい出してくると思ったのに……」 「いや、きっとあれは『溜めている』のです。 今夜梨花の体を思う存分いたぶろうと、やつはじっくりおのれの牙を研いでいるのですよ!」 「いや、テレビ見てるだけじゃない……」 あいかわらずずれたことを言う子だなぁと思いながら、私は立てかけてあったまな板を取り出し、その上に持ってきた材料を並べていく。 あらかじめ持ってきておいたお野菜。 じゃがいもやたまねぎ、にんじんなどをまな板の上に次々と乗せていく。 「あぅ……梨花、あのスケベにいったい何を作ってあげるつもりなのですか?」 「いいかげん、ちゃんと圭一って呼んであげたら?…………肉じゃが」 「あぅ? 肉じゃが?」 私の言葉に、羽入がおかしいなといった顔をする。 なぜならそれは、普段の私のレパートリーに入っていない料理だったからだ。 「あぅ、どうして肉じゃがなのですか? 梨花そんなもの作れましたっけ?」 「……とりあえず料理の仕方だけレナに教えてもらったの。 今日の帰りにね」 「……今日の帰り?」 今日の帰りとはつまり、この罰ゲームが決まった部活の後ということだ。 私は今夜圭一の家に泊まりに行くことが決まったあと、わざわざレナにこの肉じゃがの作り方を教わったのだ。 べつに自分が作れるものを作ればいいのに、わざわざ人に教わってまでこれを作ろうと思った『理由』に……羽入がハっと気づくような素振りをする。 「ま、まさか梨花……あのスケベのために? この『男がもっとも喜ぶといわれている料理』を、わ、わざわざ教わってまで?」 「!? ば、ばか!ちぁぐわよ! あ、噛んだ。 そ、そうじゃなくて! べ、べつにそんなつもりじゃ……!」 顔を赤くしながら、私はおもわず羽入の言葉に手に持っていた包丁をブンブンと振り回してしまった。 それが目の前の実体の無い彼女の体をズバズバと切り刻んでいったが、そんなことではダメージを受けない羽入は更にいらぬ口を開いていく。 「あぅあぅあぅあぅ! 梨花、顔真っ赤なのです! め、目を覚ますのですよ! あんな変態になに本気で惚れてるのですかぁっ!」 「!?……ほ、惚れてなんてない! ば、ばか羽入! なに勘違いしてんのよ! そ、そんなわけないでしょ!」 「あぅあぅあぁぁぁぁぁっ!?ツンデレの常套句なのです! おもいっきり惚れ込んでやがるのです僕の梨花がー! 僕の清い巫女があんな男にー!」 「……だ、だからちがうって言ってんでしょうがぁぁぁぁっ!!!」 いつまでも口を閉じようとしない羽入に、ついに私は大声まで出して彼女の体をザクザクしていた。 はたから見ればその光景は、包丁を振り回しているあぶない女の子がいるだけだろう。 「あぅあぅっ! つ、つまり今夜は、肉じゃがで圭一をゲット大作戦だったのですか? だから僕がいくら止めても聞いてくれなかったのですか!」 「う……べ、別に圭一にこれを食べさせてあげたいとかじゃないわよ! た、ただ」 「あぅ、ただ?」 「ただ……は、初めて男の人に作ってあげる料理だから、それで何か特別なものがいいなぁとか思っただけよ! それだけ!」 「いや……それってようは、同じことだと思うのですけど?」 「!? う、うるさいうるさい! あんたは少し口を閉じてなさい!」 羽入の鋭い指摘に、私はさらに顔を真っ赤にしてまな板の上のじゃがいもを真っ二つにした。 そういえばレナにこれのレシピを聞いていたときにも、彼女は何か含みのある笑い方をしていたような気がする。 はぅ~梨花ちゃん、まるで恋する乙女モードだね♪と言わんばかりの……。 そんな自分でも有り得ないと思っている想像を押し殺そうと、私は目の前の野菜を切り刻んでいった。 「あぅあぅ、そんなにしたらお野菜がかわいそうなのですよぉ~梨花~?」 「あ~そうね。 どっかの誰かさんの体が切れなかったから、ストレスが溜まってしょうがないわ」 そうしてダンダンと音をさせながら、私はまな板の上のものを『調理』していった。 その間も羽入が後ろでちょろちょろとうるさかったけど、何も聞こえないふりをしてなんとか全ての野菜を切り終わったのだった。 「ふぅ……とりあえずこれで終わりっと。 次は……」 「り、梨花ぁ……」 「うるさいわね。 口を閉じてろって言ったで……しょ……?」 羽入の呼びかける声をとがめようとした、その時。 私の前のまな板にヌっと大きな影が現れた。 それはあきらかに人の形をしたもので、それだけで私は背後に誰か立ったということがわかってしまった。 「!?……は、羽入っ!」 「あぅ、だって梨花が黙ってろと言うから! あぅあぅあぅ~」 たしかに言ったが、これは例外だろう……。 そう思ったときにはすでに遅く、彼はもう私の背中にピッタリと近づいていた。 ハァハァというあの危険な吐息が、耳元に絡みつくように感じられる。 それに私は、意を決して口を開いていく。 「みぃ……。 圭一、まだお料理は終わってないのですよ?」 『ああ、そうなんだけどな。 でもなんか、梨花ちゃんがエプロンして可愛く料理しているとこを見てたら……俺』 そうして息を荒げながら、圭一は目の前に立っている私の髪にピタっと鼻を付けてきた。 一応……あくまでも一応、だが。 家でお風呂に入ってから来ていた私には、そこから漂うシャンプーの香りを彼に嗅がれているのだなとわかった。 『ん~いい匂い。 梨花ちゃんの髪すっげえいい香りだぜ……。 風呂に入ってから来たのか?』 「は、はいなのです。 圭一のお家にお邪魔するので、し、失礼のないようにと……」 いい訳がましい言葉が、逆になんか『誘っている』ようなふうに聞こえてしまう。 普通に考えれば、男の家に泊まる女があらかじめお風呂に入っているなど……それをある程度期待しての行動としか取られない。 たしかに私はまだとても女といえる年齢ではないが、このスケベな圭一にはそんな常識が通用しないのをよく知っている。 目の前の梨花ちゃんは。 俺の家に来る前に。 自分の体を綺麗にしてきている。 その都合のいい事実だけが彼の頭に入り、もはや圭一は私がオッケーサインを出しているものと思っているだろう。 『梨花ちゃん、俺、今日はそこまでなんて考えてなかったけど……。 こんなちっちゃな体で、お、俺のこと受け入れてくれるのか? い、いいのかよ、なぁ?』 「え、えーと……」 完全に勘違いしてしまっている圭一に、私はこの変態どうしたものかと考え込んでいた。 力ではまるでかなわないし、ましてやここで嫌がって逃げようとすれば……。 『梨花ちゃん……? そ、そうか、そういうのが好きなんだなっ!わかったぜぇぇぇっ!』 「い、いやー!いやなのですぅ圭一ーっ! あ、あっー!?」 ……なんて状況になりかねない。 もはや欲情全開の圭一には、それすら私が誘っているものとして考えてしまう恐れがあるだろう。 しかたなく私はこういう時に頼りになる。 かどうかわからない神様に助けを求めることにした。 「は、羽入! 助けて羽入! このままじゃ私、圭一に……」 「犯されてしまうのですね。 でも、いいのではないですか? そんなに惚れているなら~」 「だ、だからちがうって言ってるでしょ! ていうか、それでもこんなキッチンでむりやりなんてやだやだーっ!」 私の必死な訴えに、羽入はしょうがないですねぇと呟くと、何も言わずただ私の右手を指差した。 さっきまで野菜を切っていたため、そこに握られていた……黒光りした包丁を指差したのだ。 「……? こ、これがなんだっていうのよ?」 「簡単なことなのです。 それで圭一の体のどこでもいいから、ブスリとやってしまえばいいのです! さあ早く!」 「!? ば、ばばば、ばかなこと言ってんじゃないわよ! い、いくらなんでもそんなことできるわけ……」 たしかにこのままレイプされるのは嫌だが、いくらなんでもそれはやりすぎな気がする。 圭一はこんなにもスケベでどうしようもないけれど、一応私達部活メンバーの仲間なのだ。 ……別に好きだからとかそういうわけじゃない。 「あーそうなのでしたねー。 梨花は圭一にベタ惚れですからそんなことできませんでしたねー僕うっかりでしたー」 「だ、だからちがうって! しかもなんでそんなふうに言うのよ……って、きゃあっ!」 羽入の微妙にやる気のない言葉に戸惑っていると、ついに背後の圭一が私の体に手を伸ばしてきた。 その左手がキャミソールの上から胸を撫で、右手はスススっとスカートの中に差し入まれてくる。 「みぃ! け、圭一、やめてなのです……こんなこと、悪いネコさんのすることなのですよ?」 『わかってる。 梨花ちゃんはこんなにちっちゃい女の子だもんな? や、優しくするからな……』 「そ、そういうことじゃないのですぅ……ふあぁぁん!」 私の言うことをまるで聞かず、圭一はそのまま薄い胸をサワサワと撫でたり、スカートの中のショーツをゴソゴソとまさぐってくる。 一瞬、羽入の言うとおりこの包丁で刺してやろうかという殺意が沸いたが、そこはなんとかクールな頭でガマンする。 「うう……は、羽入、羽入ぅぅぅぅっ!」 「あーはいはい、わかりましたですよ! 僕だってこんなスケベに梨花が汚されるの見たくないですから……」 ようやく私の悲鳴を本気だと受け止めてくれた羽入は、今度は圭一の下半身。 私の体を触って興奮しているのか、こんもりと膨れ上がっているその股間をピっと指差した。 「……へ? ちょ、ちょっと羽入! 本気で助けてって言ってるでしょう!」 「だから本気なのですよ! だいたいこんなことになったのは梨花にも原因があるのです! 罰ゲームとはいえ、お料理を作ってあげたり! 髪からお風呂上りのいい香りを漂わせたり!」 「う……そ、それはそうだけど。 でもそれと、こ、この圭一の……」 場所が場所だけに、私は羽入の指差しているところをチラっと覗き見る。 そこはもう痛そうなほどパンパンに膨れ上がっていて、よく見るとかすかにビクビクとズボンの布を押し上げていた。 その卑猥な動きに、おもわず顔が真っ赤になっていく。 「この、す、すごいことになっちゃってる圭一の股間と……な、なんの関係があるのよ!」 「あるのですあるのですよ! いいですか梨花? 男という生き物は愛だなんだと口では言いますが結局! とどのつまりっ!」 そうして羽入はふたたびビシっと圭一の股間を指差す。 なんだかまだまだ大きくなっているような……そこをもう一度見る。 「ここのみで生きている生物なのです! この今まさに圭一のビクビクとしている……これ! これが梨花を苦しめている原因なのですぅ!あぅあぅあぅーっ!」 「…………………」 あんたどうしたの……というほどのテンションの高さに、私はドン引きだった。 たしかに何百年も生きてきた彼女が言うだけあり、背後の圭一のスケベったらしい顔を見るとそれなりに説得力もあるように思えるが……。 だからといって、これを私にどうしろというのか。 「わ、わかったから……で、圭一のこれをどうするのよ? け、蹴飛ばせとでもいうの?」 「ちがうのです、逆なのです! 圭一のこれを満足させてやればいいのですよ! そうしたら少なくとも、今の梨花は助かるのです!」 「な!? ちょっと、ま、満足っていったって……」 なんとなく言ってることはわかるが、見るだけでも恥ずかしい私にこれ以上何をしろというのか。 そうしてドギマギしていると、羽入は勇気を出して!ほらその手を!などと言って、私の行為を後押ししようとする。 一方、圭一はそれで真っ赤になる私にまたもや変な勘違いしたらしく、なんとスカートに入れた手で中のショーツをずりずりと降ろし始めたのである。 「ひゃ、ひゃあん! 圭一ダメなのです! ボクのおパンツ降ろしちゃイヤなのですよぉ……」 『大丈夫だよ梨花ちゃん。 そんなに恥ずかしがらなくても、俺はまだ生えてない方が興奮するから……な? 見せてくれるよな?』 「そ、そういうことじゃ……あ、ダメ、ダメなのですよぉ! あっー!」 そうして、私のショーツはついに下まで降ろされてしまった。 ご丁寧にも圭一は足の付け根まで綺麗にそれを脱がすと、私の可愛いプリントのされた布を顔にまで持っていった。 そしてそれの匂いを嗅ぐ様に……スースーと息を吸いだしたのである。 『あーいい匂い。 梨花ちゃんのパンティ、お日様の匂いがするぜぇ……はぁはぁはぁ』 「………………へ、変態」 だめだこの男……早くなんとかしないと! しかたなく私は、さっき羽入が言っていたとおりにしようと彼の股間に目をやった。 あいかわらずそこはすごい大きくなっていたけれど、もはや羞恥心など考えている余裕はない。 私は圭一の……その男性器にピタリと手を置いていった。 『……うっ!? り、梨花ちゃん?』 「う、動いてはいけないのですよ? 圭一」 突然のことに、圭一はビクンと体を震わせて驚いていた。 同時に私は体への愛撫も止めさせるため、彼に動くなと声をかけていく。 はからずも羽入の言ったとおり、圭一はそれだけでピタリと体を止めて抵抗しなくなったのである。 「ほ、ほんとに効き目あるのね。 それともスケベな圭一だから?」 「男はみんなこういうものなのです! ほら梨花、そのまま手をこう……撫でるように動かすのです!」 「わ、わかってるわよ……」 正直不本意だったが、私はしょうがなく圭一の股間に置いた手をスリスリと動かしていった。 動かし方はよくわからないが、とりあえず羽入の教えてくれたとおり。 上下に優しく撫でるようにすると、圭一の口からうぅっとうめき声のようなものが漏れていった。 ズボンごしにでもわかるその大きさと硬さが、私の手のひらいっぱいに感じられていく……。 「羽入……。 これなんか、す、すっごく大きいんだけど? おまけにすごくカチカチで……へ、平気なの? こんなになって?」 「それはむしろ圭一が喜んでいる証拠なのです。 梨花の手がきもちよくて、梨花にもっとして欲しくて、そんなになっているのですよ?」 「え……わ、私にして欲しくてって……」 羽入の言葉が、圭一は梨花のことが好きだからこうなっている……というふうに聞こえた。 たしかに圭一は私にセクハラばかりしてくるけど、もしかしたらそれは、私のことが好きだからしている? そう考えていくと、この苦しそうな股間もどうにかしてあげたいという気持ちになるから不思議だった。 「そ、そうよね。 圭一だって男の子なんだし……今日の罰ゲームだって、もしかしたら私と二人きりになりたかったから……」 「ということはないのです。 まあきっと、この手が魅音やレナや沙都子でもビンビンになったでしょうね。 男はそういうものなのです、あぅあぅあぅ」 「!?…………は、羽入ぅぅぅぅぅっ!」 乙女モードになった私を、羽入は待ってましたとばかりにぶち壊しにした。 しかもそれに合わせるように、圭一が私に対して信じられない言葉を言い出したのだ。 『う……梨花ちゃんってスケベな女の子だったんだな。 こんなにちっちゃいのに、男のペニスを自分から触るなんて……』 「!? ち、ちがうのです! ボクは羽入に……!」 言われてやらされたとは言えなかった。 圭一に羽入のことが知覚できるわけがないし、そんなことを言っても信じてもらえるわけがない。 しかたなく私は圭一の言うとおり、エッチな女の子のようにその股間を擦るしかないのだった。 『あぁ……き、きもちいいぜ梨花ちゃん。 ずいぶん慣れてるんだな?』 「そ、そんなことないのです。 圭一のために、よ、よくわからないけど……やってあげているのですよ?」 『嘘つけ、このやり方はあきらかに慣れている感じだぜ? 一、二本咥えたことありますって感じだぜぇ? くっくっく』 「み、みぃぃ~……」 私を辱めるためにわざと言っているのか、それとも本気でそう思っているのか……。 圭一はサドっ気たっぷりの目で、巧みに股間を撫でる私を罵倒する。 このやり方もそもそもは羽入に言われてやっているもので、彼のこうした言動も彼女の引き出した罠だったんではないかと思えてくる。 「羽入……な、なんかものすごいエッチな子だと思われちゃったじゃない! ど、どうするのよ!」 「あぅあぅ~大変なのです。 こうなったら、圭一のおちんちんを最後まで満足させてあげるしかないのですねぇ~」 「さ、最後までって……?」 そうすると羽入はまたもやツンツンと圭一の股間を差し、今度は直接これに触れと合図する。 ズボンの上からでも恥ずかしいのに、このまま直にそれを触れというのか……。 さすがにそこまでするのはちょっとためらわれた。 「む、無理よそんなの……。 は、恥ずかしいっ!」 「ここでやめたら、圭一はたぶん梨花にむりやり襲い掛かるのですよ? 『そんなに男のペニスが欲しいなら、今すぐブチ込んでやるぜぇ~~っ!』とか言われて終わりなのです。 あぅあぅ~、梨花の純潔もここまでなのです」 「う……ううぅぅぅ~っ!わ、わかったわよ! やればいいんでしょやればーっ!」 羽入のある種もっともな意見に、私は半ばやけになりながら圭一のズボンのチャックに手をかけた。 パンパンに張ったそれはとても降ろしにくかったけど、力いっぱい下げるとそれが中から飛び出るように露出した。 彼の下着を突き抜けて、あろうことか私の手のひらの中にそれが……出てきたのである。 「!? あ、あああ、け、圭一のが、手、手に! 私の手の中にぃぃっ! は、羽入ぅぅぅっ~!」 「落ち着くのです! さっきまで一応触っていたところではないですか! ちょっと硬いソーセージくらいに思っておくのです!」 「そ、そんなこと言ったって……ひっ!や、やだやだなにこれ! 私の手の中で、ピ、ピクピクしてる!」 直接手のひらで触れると、それはほんとに驚くほど硬く大きいものだというのが実感できた。 おまけに圭一のそれは私の手の上できもちよく……ドクッドクッと脈を打つように震えていたのである。 『くぅ……ま、まさか直接触ってくれるとは思わなかったぜ。 ほんとに梨花ちゃんはペニス大好きな女の子だったんだなぁ?』 「ち、ちがうのです! ボ、ボクはおちんちん大好きっ子なんかじゃないのです……」 『くっくっく、そうかなぁ? 今だってほら、俺のこれを手の中で嬉しそうに転がしてるじゃんか? ほんとはちんこシゴくの好きなんだろー、なー?』 「ち、ちがうちがう、圭一のイジワル……」 圭一はもはや自分が主導権を握っているとばかりに私を罵っていた。 実際私はこうして彼のおちんちんを手にしているし、羽入に言われたとおりやんわりとしごいていたりもする。 だがそれはあくまで、この状況を抜け出すためなのである。 けっして自分から触りたいとか……そんなことは……。 「は、羽入……なんだかこれ、ほ、ほんとにすごいわよ? 私の手の中でこんなビキビキになっちゃって……すごいの」 「それはきっと梨花の手が上手だからなのですよ。 オヤシロ様の巫女である梨花は、なんとおちんちんを扱う才能まであったということです。 まったく汚らわしいですねぇ、あぅあぅあぅ……」 「!? そ、そんなこと言わないでよ……あんたまで……」 圭一にペニス大好きな女の子と罵られ、羽入におちんちんを扱う天才だと罵られ……。 私はまるで、自分が本当にそんな女の子であるような気がしてきてしまった。 手をずっと動かしていたせいか、いつのまにか呼吸まで荒くなっていて……これじゃあまるで私も興奮しているみたいだ。 「ん……お、大きいのです。 圭一の……はぁ」 『……なぁ梨花ちゃん。 ほんとは今すぐ俺のこれが欲しいんだろう? そんなに息荒くしてよぉ』 「!? ち、ちがうのですっ! これはちょっと疲れただけで、そんなつもりじゃ……」 『嘘つけって。 俺のこのビンビンにでかくなったペニスを、この……』 すると圭一は突然、ガバっと大きく私のスカートをめくり上げた。 さっきショーツが脱がされていたため、そこには何も履いてない可愛いわれ目が露出してしまう。 「!? ひゃうんっ! け、圭一!」 『このちっちゃなお○んこに入れてもらいたいんだろっ! なあっ!』 「あ、あぅぅっ! そんなこと思ってないのですよぉ……」 『どうかなぁ? こりゃあ今夜一晩かけて、オヤシロ様の巫女がしっかり純潔を守っているか調べてやらないとだなぁ? くっくっく……』 急に声を荒げる圭一に、私はビクっと体を震わせて怯えた。 こんなの、いつもの私のペースじゃない……。 スケベで変態な圭一を、逆に私があしらうくらいが正しい形のはずだ。 なのになぜか頼っていた羽入にまで罵られ、手の中でビクビクと血管を浮き立たせるそれを見ていると……どこか自分の中の感情が抑えきれなくなっている。 「は、羽入? なんか圭一のこれ、ビクビクって……は、破裂しちゃいそうなんだけど、どうなるの?」 「あぅあぅ~、それはきっともうすぐ射精する合図なのですよ。 梨花のスケベな手つきにたまらず、圭一はドピュドピュしちゃいそうなのですねぇ?」 「ス、スケベって……なんであんたまでそんなこと言うのよ。 これはしかたなくやってるんだって知ってるでしょ?」 「ほーしかたなくだったのですか。 その割には、梨花はずいぶん興奮しているように僕には見えたのですけどぉ~?」 「う……あ、あんたいつからそんなに……」 ドSになったの……? 羽入はいつのまにか、圭一と同じような突き刺さる目つきで私を見ていた。 普段からイジメられていたことへの仕返しのように、こんな卑猥なことをする私を淫乱な巫女だと言わんばかりの目で見つめていたのである。 「ほらほら、そのままもっと激しく動かして圭一を射精させてあげるのですよ? 梨花もおちんちんがドピュってするところ、見たいのでしょう?」 「み、見たいわけないでしょ。 そんな恥ずかしいところ……ばか」 「あぅあぅ~そうなのですか? てっきり僕は、梨花は古手家歴代一位の淫乱だとくらい思っていたのですけど。 そうですか~、見たくないのですか~」 「くっ……あ、あんたこれが終わったら覚悟してなさいよ……」 とにかくこの手に握りしめているものを鎮めないことにはどうにもならない。 私は羽入の言うようにその手を激しく動かし、圭一のおちんちんを射精とやらに導いていった。 手首を前後に動かすたび彼のおちんちんの先から何か透明な液が噴き出し、それがピチャピチャとエプロンの前にかかっていく。 『くうぅ! す、すげえぜ梨花ちゃん! なんて上手な手コキだ! こりゃあやっぱり相当数をこなしてるなぁ?』 「いいから早く……しゃ、射精をするのです圭一。 ボクは早くお料理を続けたいのですよ……」 『くっくっく、それはペニスのお料理をって意味かぁ? なぁ淫乱梨花ちゃんよぉ?』 「!?……く、あ、あんたも後で覚えてなさい……」 圭一と羽入。 二人のドSに挟まれながら、私はその手にしたおちんちんを乱暴にしごいていった。 だんだんと先っぽの割れているところが開き始め、初めての私でもここから何か出てくるの?と感じ、その部分をジーっと観察した。 パックリと割れているそこはもうとめどないほど液を吐き出し、ビチャビチャと私の手や腕を容赦なく汚していった。 「なにか出てきそう……しゃ、射精っていうのが起こるの、羽入?」 「そうなのです。 白いのがい~っぱい出てくるのですよ? それを浴びた女の子は、その男の子供を身に宿すのです」 「へぇ、そうなの…………子供?」 羽入の言葉に、一瞬、私は今自分が置かれている状況を考えた。 圭一が仁王立ちし、その下半身の目の前にいる私。 いまその白いものがこのおちんちんから出たら、それは私の体にかかってしまうのでは? さっきから出ている透明なものでさえ顔や手にかかっているというのに、更にそんなものまで体にかけられたら……私は妊娠する? 彼の子供を? 『く……い、いくぜ梨花ちゃん! そんなに俺の精液が欲しいなら、そのスケベな体で受けとめやがれぇぇぇぇっ!!!』 「!? ま、待ってなのです圭一! 今出したらボクにかかっちゃ……!」 ビュル! ビュルルルルッッッ!!! ドビュルルルルッッッ!!!!! 私が言葉を言い終える前に、圭一のペニスからミルクのような液体が発射された。 先っぽの割れ目からドピュドピュと吐き出され、とても濃い液が次々と目の前の私に降り注ぐ。 反射的にそれは浴びちゃいけないと思ったが、彼は私の体をガシっと掴んで逃がそうとしなかった。 「!? い、いやぁっ! かけちゃダメなのですっ! 圭一ぃぃっ!」 『何言ってんだ! これが欲しかったんだろう! ほらほらその可愛い顔にぶっかけてやるよぉぉぉっ!!!』 ドビュル! ドピュピュピュピュッー!!! しっかりと抑えつけられた体に、ビチャビチャと生温かい液体がかけられていく。 毎日家で沙都子と交代で使っている可愛いエプロンに降り注ぎ、そのままそれが下に向かって剥きだしの足にドロリと……。 その勢いのすごさに腕や首すじまでもがまんべんなく白く染められ、おもわず顔を隠そうとした手も払いのけられ、彼の子供の元が容赦なく私の顔面をグチャグチャと汚していく……。 「み、みぃぃ~っ!ダメなのですダメなのです! 赤ちゃんできちゃうのですよぉぉあうぅぅぅっっ~!!!」 『はっはっは、そうだそうだ! 俺の子供を妊娠しちまうほどたくさんぶっかけてやるぜ~っっ!』 ビュルルッ! ビュルッビュルッ!!! ドビュウゥゥッッ!!! ビチャっとした固まり、そしてヌトリした液体が顔じゅうにパックするように塗りたくられていく。 圭一はそんなにも……私のことを妊娠させたいの? そんなことを考えながら、私はその生温かいドロリとしたものたちを浴びていった。 そしてそのまま体じゅうの全てを汚されたと感じたとき……ようやく彼のペニスはその動きを止めた。 『くっくっく、どうだ梨花ちゃん? 俺の精液の味はよぉ?』 「あうぅ……ひどいのです圭一……。 こんなにたくさん……ボク、絶対赤ちゃんできちゃったのですよぉ……」 自分の体からのぼるむせ返るような匂いに、ああ、私は汚されたんだな……と感じた。 圭一の家に来た時点である程度は覚悟していたけれど、それがこんなにも悲惨なものになるとは思わなかった。 好きな人の家に来たはいいけど、まさかこんなふうにされるなんて……。 まさか妊娠させられるところまでいかされるとは思ってもみなかった。 「あぅあぅ~梨花かわいそうなのです。 ドロドロにされちゃったのですよぉ……」 「ばか……あんたがこうしろっていうからしたのに……ひ、ひどいじゃない。 まさかこの年で赤ちゃんができちゃうなんて……う、う、う」 妊娠させられたという悲しい現実に、私はおもわず涙を流してしまった。 よく考えたらこれは、全て私の体に九代目を宿させるための羽入の作戦だったのかもしれない。 最初にここに来るのを止めていたのだって、やめろと言われるとやりたくなる、人間の心理を逆手にとったものであるにちがいない。 現にこうして彼女の言うとおりにしたら、私は圭一に妊娠させられた。 信じていた羽入に裏切られたという事実が、ただ私の胸を切なく苦しめていった。 「ばか、ばか……あんたなんて嫌い! だいっ嫌いっ!……う、う、うぅぅ」 「あぅ~そんなこといわないでなのです……梨花」 いまさらそんな申し訳なさそうな顔をしたって無駄だと思った。 全ては羽入が裏切ったことから始まったのに、これが冗談でしたということにもならないかぎり……。 「あ、ちなみに妊娠なんてしないのですよ? その白いのは梨花のお股に入らないと意味ないのです」 「う、う……ぐしゅ……え?」 「だ・か・ら、赤ちゃんなんてできないのです。 というかそもそも梨花は初潮すらまだなのですから、子供なんてできるわけないのですよ」 「え……で、できないって……?」 「つまりあれですよ……。 梨花ばっかでぇ~、騙されて泣いてやんの~ってことなのです。 あぅあぅあぅ~♪」 「…………………」 羽入のその言葉に、だんだんと頭の中がクールになっていく。 まだ体じゅうが精液まみれだったが、今はとりあえずもっとも効率よく、かつ適切に彼女を殺す方法を思い浮かべていく。 まず私はまな板の上にあった包丁を取り、二番目に殺したい人物にゆっくりとそれを向けていった。 『ふぅ~気持ちよかったぜぇ、梨花ちゃん。 いやーこんなに出たのは初めてだなぁ。 もうすっごく気持ちよく……て』 圭一が何やら感想を言っていたが、今はとりあえずその私を汚した肉の棒にスっと包丁をあてていく。 いや、これは肉じゃなくて海綿体だったか……。 それなら切り落とした時、さぞかし血がドバドバ噴き出るのだろうとむしろ好都合だった。 『!? お、おいおい梨花ちゃん、冗談きついぜ~? そんなとこに当てたら、あ、あぶないよ~?』 「うっさいわね、そんなことわかってんのよ。 そのよく喋る口閉じないと、今すぐ切り落とすわよ?」 『!?…………は、はい』 圭一は私の口調と行動に一気に怯えたのか、あきらかに萎縮してしまっていた。 急所であるところにピタリと刃物を当てられているのだから無理もないが、所詮、彼も強者には逆らえないただのオスだったというわけだ。 今夜、私の体が純潔かどうか確かめるとか言っていたが……。 むしろ私がこの汚れた体を祓ってやろうか?と考えながら、ゆっくりと口を開いていく。 「ねぇ、圭一。 あんたの家に、何かキムチ的なものはある? もしくわすごく苦いものとか……。 まあなんでもいいわ、そんな感じの」 『キ、キムチ……ですか?』 私の放った言葉に、包丁を突きつけられた彼よりも一層それを恐れた女がいた。 背後からなにやらあぅあぅと慌てる声が聞こえてくるが……今はそんなことはどうでもいい。 とにかく早くこの女を罰しなければ、殺さなければという考えだけが頭の中を占めていく。 『え、えーとたしか。 親父が通販で買った……激辛本場キムチとやらが、れ、冷蔵庫にありますけど……?』 「そう。 じゃあそれをここに持ってきなさい。 冷蔵庫って、そこのでしょ?」 『は、はぁ。 でも梨花ちゃんなんでそんなもの……』 「いいから早く持ってこいって言ってんのよ! それともこの***今すぐブチ切られたいのっ!!!」 『!? は、はいはいはいっ!!! 不詳前原圭一すぐに梨花様にキムチを持ってくるでありますぅーっ!!!』 最初からそうしていればいいものを、圭一はようやく私が本気だということがわかったように冷蔵庫に走っていった。 そんな情けない彼を見ながら、私はいままでこんな男のセクハラに怯えていたのかとほとほと馬鹿らしくなった。 男の弱点はペニスだ、と後ろの女がのたまっていたが……。 なるほど、そう考えるとたしかにあそこが弱点ねと納得していくのだった……。
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「けーいーちくーん!」 圭一はその声の聞こえる方に顔を向ける いつもの風景、いつもの香り、その中でも何より大切な… 狂おしいほど愛しい笑顔をこちらに向けて… 「おはよう圭一くん!」 慌てて走ってきたのか、肩で大きく息をしている 「おはようレナ、それにしても珍しく遅かったじゃねぇか。もしかしてお寝坊さんか?」 「ううん!違うよ違うー!お寝坊さんじゃないもん!お弁当作るの遅れちゃっただけだもん!」 レナはぷくーとほっぺを膨らませ子供のようにそっぽを向く 茶色の髪を優しくなでてやる はぅ…と声を出し顔を赤くして俯くレナ その姿が可愛くてしかたない 2人で歩き出す。いつものように… 最近、授業中もレナのことで頭がいっぱいで内容が何一つ入ってこない 青色のぱっちりとした瞳、茶色の綺麗に切りそろえられた髪、ピンク色の潤った唇 レナの全てが俺を魅了する その美しさに自然と惹かれる 俺はきっと…レナのことが好きだ 「─ちゃーん?おーい、圭ちゃーん?」 「うわぁぁぁ!?」 「うわぁぁ!?」 いきなり話しかけられ、びっくりする 魅音だ 圭一の驚きようを見て魅音も驚く 「なっ、なんだよ魅音!」 「何って、圭ちゃんこそ何ボーってしてんの」 「っ…それはっ…」 「もしかして、好きな人でも出来たァ?」 「ばっ!バカっお前!そんなはずないだろ!?」 思わず図星をつかれ慌てる 「あっそうなんだぁ。へへっおじさんが相談にのろうかぁ?」 魅音がニヤニヤして肩を組んで来る 「おいおい勘弁してくれよ」 あまり怪しまれないように軽く流す 「どうしたの?圭一、魅音?」 声のした方を見る。悟史だ 「いや!何も……」 「圭ちゃんねぇ、好きなひ…うぐっ」 咄嗟に魅音の口を手で塞ぎ、悟史になるべく笑顔で話しかける 「いや違うんだ悟史!今日の部活は何かなと思ってだな!ははは…」 上手にごまかせているだろうか?少し不安だった 「……むぅ」 悟史は困ったように喉を鳴らした 休み時間に圭一はお手洗いに行った その時に偶然見た レナと悟史が人目につかないような場所で、話しているところを… こんなところで何を話しているのだろうか? わざわざ人目のない所を選ぶのだ 人気のない場所でしかできない話とすると… 相談?それとも…… 駄目だ考えれば考えるほど悪い方向へ行ってしまう 考えるな、考えるな… その後の部活も俺は休み時間のことが忘れられなかった 「圭一くん、今日は乗り気じゃないのかな?かな?」 レナが圭一の顔を覗き込む 「ごめん、ちょっと具合悪くなっちまった。今日は帰らせてくれ」 途中抜け出して1人帰ることにした 「圭一…くん?」 「何〜?圭ちゃん逃げちゃうの〜?」 と、後ろからそんな声が聞こえてきたが無視した 1人で帰るのは珍しいから少し寂しかった 隣にレナがいるのが当たり前になっていた だが、休み時間に見たことがちらちら頭にでてくるのだ レナは悟史が好きなんだろうか レナは俺の事仲間としか思ってないのだろうか 「……レナ」 さっき別れたはずなのに会いたくて仕方がない 自分から帰っといてなんて身勝手なんだろう しばらくすると家の前に来た 隣を歩くレナがいないとこんなにも道のりが長くなるのかと少し驚く 中に入り、ドアを閉めかけた時… 「圭一くーん!」 圭一は反射的に振り向いた 圭一が今1番見たかった顔であり、今1番聞きたかった声 レナが俺の元へ走ってくる それでも先程いきなり部活から抜け出し、帰ってきたものだから、少し気まづかった レナは息を整えようと大きく息をしている 「レナ、どうしたんだ?」 「け…、圭一くん、具合、大丈夫かな?かな?」 「…レナ、…部活は?」 この少女は、レナは、圭一のことを心配してここまで追いかけて走ってきてくれたのだろうか? こんな俺のために…? 「心配で抜け出して来ちゃった。でももう遅かったね!あはは…」 乾いた笑みを浮かべてレナは残念そうに俯く 「それで、具合は…?」 「あ…ああ…もう大丈夫だよ」 「よ…良かったぁ!レナ、心配したんだよ!」 最初から具合なんて悪くもないのに心配してくれるレナが愛らしく感じる一方自分に腹たった 暫くの沈黙が2人を襲う 先に口を開いたのはレナだった 「じゃ…じゃぁ、まあ明日!圭一くん!」 レナは手を力なく振りながら踵を返した 思わずその手をパッと掴んでレナを止めた 離れたくない、まだ君と一緒にいたい 「あ…えっと…とりあえず寄ってかないか?」 「……うん!」 レナはパァっと表情を明るくし、頷いた 「はうぅ!圭一くんのお部屋!」 レナははぅはぅいいながら圭一の部屋の中を見物していた 「そんな大したものないぜ、ま、ゆっくりしていってくれよ」 「はーい」 圭一の部屋を一回り見たレナは圭一が座っていた横に腰を下ろした また2人に沈黙が襲う 「レナ」 「圭一くん」 どちらも沈黙に耐えられなかったのか同時に相手の名前を呼びハモりが生じる 「あ、ごめん、先に…いいぜ」 「あ…ううん、大したことじゃないから」 「えっ、いやでも…」 「いいから」 「あ、ああ…」 真剣な顔で言われるものだから、圭一が折れた 「あのな、レナ、聞きたいことがあるんだ…」 「?何かな、かな?」 うるさい心臓の音が聞こえない振りをして口を開く 「俺のこと…好きか?」 「うん!好きだよ!」 レナは可愛らしい笑顔で応える 「じゃあ、悟史のことは好きか?」 「うん!好き!」 レナのことだからそう応えるのは正直知っていた レナが仲間を傷つけることを言うわけが無い だが、レナが言った好きはきっと…圭一がレナに抱く『好き』とは違う『好き』 続いて圭一は口を開く この質問の答えが圭一が本当に聞きたかった答えだ 「レナは俺と悟史、どっちが好きか?」 「えっと……ぇ?」 レナは戸惑う 当然だろう レナに、そんな選択、決められるはずがない 「…圭一くん?どうしてそんなことっ…ん!?」 俺は咄嗟にレナの唇に自分のそれを重ねる 重ねると言うより、噛むような勢いだった 「けぃ……ち…くん…やっ…」 レナは酸素を欲しがるように口を少しだけ開けた 圭一はすかさずそこから舌を入れた レナの舌はそれから逃げるように奥に引っ込んだ しかし圭一はレナの舌を捉えると舐めまわすように自分の舌を絡めてきた ねちゃ…ねちゃ…ねちゃ… いやらしい音が口の中から聞こえてくる 「んっ…んぁ……!」 レナの顔がとろけてきて力が入らなくなってきたのか後ろに2人して倒れた しばらくして息が苦しくなってきたレナが圭一の胸元を力ない拳でポンポンと叩いてきた 圭一は惜しむような思いで唇を離す 艶のある銀の糸が2人の唇を繋いだかと思ったらレナの方へ落ちていった 「……はぅ、け…圭一くん?」 とろりとした瞳でレナが圭一を見る 少しの理性を頼りに圭一は口を開く 「俺は…レナが好きだぜ。友達じゃなく、1人の女性として」 「……はぅ」 レナは既に火照っていた頬をさらに赤くした 「レナは、俺を1人の男性として好きになってくれるか?」 「…えっと、んぅ」 圭一は自分で聞いた問の答えを聞くのが怖かった だからまたレナの唇を塞いだ 圭一はたまらずレナの服の中に手を入れた 「圭一くん!それは……やっ…」 2人の恋はまだ終わらない 続く
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ある日、時を止める能力に目覚めた圭一。 そして当然の事ながら、若い健康な男子として、至極有り体にこの能力の悪用方法を考え付いた。 詩音「あれ? 一体なんの用事ですか圭ちゃん」 魅音「しかもなにそのラジカセ?」 圭一「ん? いや、なんでもねえよ」 そこで圭一はラジカセのスイッチを押した。 すると、曲が流れ出すのと同時に時間が止まった。 フカーイーナゲーキーノーモーリー 圭一「フハハ! 動けるぞ! 止まった時の空間を俺だけが自由に動くことができる!」 魅音と詩音は目の前でまばたきもせずに硬直している。 圭一は恐る恐るながら魅音の胸の先を突っついた。 そして、全く反応が無いことを確認して、今度はがしっとわしづかみにした。 圭一「うおお! 柔らけー! 父ちゃん、俺は今猛烈に感動しているぜー!!!」 次第にだんだん調子に乗り出した。 なんと圭一は魅音と詩音の胸をサンドイッチ状にくっ付けて、そこに自分の大きくなったかぁいいブツを擦り付けていた。 圭一「ハア……ハア……最高だぜ……」 しかし圭一は痴漢行為に夢中になるあまり、大変なことに気づいていなかった。 時間停止からすでに数分が経過し、流していた曲がもうすぐ終わりそうになっていたのだった。 ヒグラシノーナークー 圭一「うっ、やべっ……出るっ!」 詩音「おや?」 魅音「あれ?」 ドピュッ! ドピュッ! 圭一「あ…………」 しばしの硬直と沈黙、そして。 詩音&魅音「…………し……死ねえええええ!!!!!!」 直後、スタンガンのスパーク音と金づちでクギを打ち込む音が響き渡った。 圭一は命に別状こそ無かったものの、体のある大切な部分に全治2ヶ月の重傷を負った。 完