約 1,216,850 件
https://w.atwiki.jp/higurashi_remake/pages/6.html
更新履歴 @wikiのwikiモードでは #recent(数字) と入力することで、wikiのページ更新履歴を表示することができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_117_ja.html たとえば、#recent(20)と入力すると以下のように表示されます。 取得中です。
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/446.html
「だー!また負けたぁ!」 俺は持っていたトランプを放り投げた。 「無様ですわね、圭一さん」 「圭一君、弱いね~」 「よし、じゃあ圭ちゃん罰ゲーム!」 すっかりお馴染になってしまった罰ゲームに、俺は溜め息をついた。 何か罰ゲームが日毎過激になってる気がするのだ。 さて、今日はどんな罰ゲームなのやら… 「じゃ、圭ちゃん。ズボン脱いで」 「へ?」 おいおい…詰まらん冗談はよしてくれ。…え、本気…? 「今度はこれにしようって、皆で決めたんだよ。ねー♪」 ちょっと待て、その皆ってのに俺は含まれているのか? 「圭一には拒否する権利はないのですよ。罰ですから」 拒否権くらい認めてくれてもいいだろう。せめて弁護士を付けさせてくれ。そうだな、大石さんで手を打とう。 「往生際が悪いですのよ!」 魅音とレナに両腕を押さえられ、身動きできない。沙都子がズボンを下ろしにかかる。 分かった、すまん俺が悪かった、ごめん、だから許して…それだけは… 謝罪も虚しくズボンと下着が一気に下ろされ、俺はこのまま外に出たら間違いなく白黒の車に連れていかれそうな格好になった。 「さぁ、まずはわたくしですわね」 沙都子が俺のアレの前で屈んだ。見る見る大きくなる俺のマグナム。 沙都子の小さな手がそれを鷲掴み、動かした。そうなるともう俺は快楽に身を任せるしかなかった。 「…ふふ、圭一さん以外と大きいんですのね」 「…うあ…」 「直ぐにいかせてあげますわ…」 速くなったかと思えば、ゆっくり焦らすように動かしたり、我慢汁でびちょびちょの亀頭を指でくりっと弄ったり、何かすごく上手だった。 限界が来た俺はそのまま出してしまった。 沙都子の顔面に精液が放たれる。 「うっ…」 「ふぁ!…あぁ…熱いですわぁ…!」 指で掬って口に含み、沙都子が言った。 「次は僕なのですよ~」 ぐったりと垂れたアレがまた大きくなり始めると、今度は梨花ちゃんがそれの前に屈んだ。 「圭一のおちんちん、元気元気、なのです~僕がお口でしてあげますよ~」 ナニを掴み、小さな口一杯に頬張った。先端の方しか口に入らない。残りは両手で動かしている。 舌で舐めたり、吸ったりしながら頭を振っている梨花ちゃん。時々歯で刺激したり口を離して舌先で亀頭をつついたり、これもまたすごく上手だった。 臨界点を突破した俺は、マグナムから白濁した弾丸を梨花ちゃんの口内に発射した。 「んむ…んんぅっ…!」 「うあっ」 ぷはっ、と口を離すと、その唇とアレの間に粘液が糸を引いた。 梨花ちゃんはごくりと精飲し、唇に付いた物をぺろりと舐めると、俺の耳元で囁いた。 「…はぁ…美味しかったわ、坊や…」 「次、あたしの番っ!」 俺は椅子に座らされ、魅音が前に出た。沙都子が代わりに俺を拘束する。大丈夫、逃げる気力なんて無いから。 魅音が服を脱ぎ出した。下着をはずし放り投げ、上半身裸になる。また勃起した。 魅音の胸は…脱ぐと分かるが、かなりでかかった。 俺は股をぐっと広げられ、その間に魅音が入ってきた。 「さぁ、圭ちゃん、気持よくしてあげる…」 魅音が見上げてくる。すでに勃起して尖った乳首がエロい。 ふっくらとした双丘が、俺のナニを挟み、そのまま上下に振る。魅音が垂らした唾液が滑りを良くした。 魅音の体が揺れる度、ふわっと浮く髪からいい香りがする。 「はっ…は、あっ、圭ちゃんっ!ふぁっ!…顔に、出してっ、いいよっ…んん!」 言われずともそうなってしまう。谷間に出たり入ったりするムスコを見ていたら、もう限界だった。 「ぐっ…」 「んんっ!…あぁん…ぁ…圭ちゃん…熱いよぉ…」 乳に挟まれナニが上を向いたまま、魅音の顔面へ精子を浴びせた。胸も顔もベトベトにしてしまった。 「…圭ちゃん、ごちそうさまっ!」 顔を拭って、俺に笑い掛けた。 俺は変にテンションが高くなっていた。罰ゲーム・ハイ。 さぁ、次は何だ?かかってこいや。 「次はわたしだね」 俺は床に仰向けで寝かせられた。両手足は未だ拘束されている。両手を押さえる魅音はまだ裸で、俺の目の前にけしからん乳が垂れ下がる。いい眺めだ。また勃起した。 レナはスカートを穿いたまま下着だけをずり下げた。 スカートをたくし上げ、薄毛のアソコを指差す。 「圭一君、また元気になったね。レナのココ、欲しいのかな?かな?」 御託はいい。とっとと始めようぜ。早く解放してほしいんだよ。 内心、ちょっと楽しみだったが。レナは処女なのかな?かな? レナは俺に跨がると、俺のナニを掴み下の口に当てがい、一気に沈み込ませた。 「…あ…はぁっ…!」 「ぐう…!」 結構きつい、が、処女ではないな。 「圭一君の…おっきいよ…かぁいい…」 レナはゆっくり動き始めた。少し浮いては、座って奥まで突き込む。 「…はう…あっ……ん……んっ…んぁっ…!」 俺のはそんなにいいのか、声を殺しきれない様子だった。 「あぁん…圭一君の、おっきくて…ぁっ…太くて…っ!…あんっ!…いいのぉっ!」 レナが腰を激しく降り始めた。 レナはスカートを両手で捲りながら跳ねるので、接合部からカウパー液と愛液が混ざった物がぐぷぐぷと流れるのが丸見えだった。 「はぁっ、はぁっ!気持ち、いいぃっ!…んん!…い、いっちゃうぅぅ!」 レナも限界っぽいが、俺ももうやばい。 「レナどけっ!出るぞ…!」 「んあっ!はぁっ!わ、わたしもっ…も…いっちゃ…うぅっ!…はあぁっ!…このままっ!このままだしてっ!はあぁん!」 神様すみません。これは罰ゲームなんです。だから許して… そして、レナの膣へとぶちまけた。 「うっ!レナっ…」 「あぁっ!熱いよぉっ!圭一君んん!中にっ、中にっ熱いのぉっ!あ、あぁあああああっ!!」 直ぐにレナもイった。 レナは後ろに反り返り、すぐに倒れそうになったが、俺の両足を押さえていた梨花ちゃんと沙都子が体を支えていた。 「レナさん、気持ち良さそうですわぁ」 「いっぱい、いっぱい出たのです~」 「はいっ、皆お疲れ!じゃあ帰ろうか!」 やっと終わった… 帰り道、女子四人が談笑する中、俺は一人げっそりやつれ後方を歩いていた。 「じゃあね!圭ちゃん、またやろうね!」 「圭一さん、今度はわたくしも気持ちよくしてくださいませ」 「僕もしてほしいのです~」 「圭一君、いっぱいくれてありがとう♪またね!」 俺は引きつった笑顔で手を降っていた。 それから一週間はオナニーを控えた。
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/469.html
前回 鬼畜悟史~ペット~ 俺は、なんてモノを目撃してしまったのだろう。 その日、俺はとても退屈だった。 休みの日だから家でゆっくりと寝ていても、身体が物足りなくて寝付けない。 このまま家に居ても何もすることもないのなら外に遊びに行こうかと、思ったんだ。 太陽から降り注ぐ日差しに身を焦がされながら、俺はどこに行こうかと悩んだ。 最近、悟史は魅音と詩音を連れて家の片付けをしているらしく、部活も無かった。 部活の無い学校など暇で仕方が無い。でも「あと数日で終わるから」と悟史に頼まれたのでは断れない。 レナは家の家事で忙しいらしく、彼女もすぐに家に帰った。 ぽつん……と、俺と沙都子、梨花ちゃんが取り残され、そのまま部活は自然解散の流れとなったのだった。 悟史……か……。 俺の第一印象では穏やかで争いごとを嫌うタイプなように見えた。 実際その通りであったし、害の無い人間だった。 今はまだそこまで打ち解けてないが、そのうち仲良くなる日が来るのだろうか。 そこまで考えて、考えを思い改める。そのうちではなく今、仲良くなろうと思った。 だから俺は何の前触れも無しに、悟史の手伝いに行ったんだ。 それが、俺の未来を変えたとも知らずに……。 どうかこの夜に何があったか教えてください。 それは例えるなら猫を詰めた箱。 どうかこの夜に何があったか教えてください。 箱の中の猫は、生か死かすらもわからない。 どうかあの夜に何があったか教えてください。 箱の中の猫は、死んでいたのです。 Frederica Bernkastel ひ ぐ ら し のなく 頃 に ~ 鬼 畜悟史 ~ 第六話~異端者~ 悟史の家が目の前にそびえ立っている。 俺自身、ここには入った事は無かったし、沙都子でさえ入ろうとはしない家だった。 一時の緊張。 決意し、玄関前に取り付けられたチャイムを鳴らそうとしたとき━━━━ 「にーにーのザーメン!私にたっぷりかけてくださいまし!ふあぁぁぁ!」 なんだ今の声は。沙都子なのか……? チャイムを押そうとする指を寸前で引っ込め、代わりに聞き耳を立てる。 そこから聞こえてくる声と音は、引越しの作業で間違っても出てこないものだった。 もしかして沙都子は誰かに襲われているのか?まさか、北条鉄平か……!? 居ても立っても居られなくなった俺はドアを開けようとするが鍵が掛かっていて開かない。 チャイムは相手にこちらの存在を知らせてしまう。もしチャイムを鳴らして犯人の神経を逆撫でしてしまえば、それこそ沙都子が危ないかも知れない。 せめて沙都子の安否さえ判断できれば……! そう思い、他の窓から部屋の様子をこっそり見ることにした。 一つ目、二つ目、そして三つ目の窓。どれも家の中の様子が分からない。 しかし、四つ目の窓の前で本能が警告する。ここは見てはならない。見ればきっと何かが壊れてしまう。 でも、止まれない。仲間の沙都子の為なら……俺はどうなっても良い! 危険を知らせる信号を無視し、その部屋の中を覗き込む。 心臓の高鳴りが一層高く感じられた。そして次に我が目を疑った。 な…………!? 裸体の上から白濁液に穢された沙都子。一目で沙都子が陵辱された事を理解する。 そして何故かその部屋には魅音が居て、騎乗位の体勢で淫らに腰を振って喘いでいた。 だが何よりも驚いたのは、魅音の下から肉棒で貫いている悟史の邪悪な笑みだった。 あれが悟史なのか……!?いつもの朗らかで優しそうで気の弱そうな性格はどこにいったんだよ!? それよりも沙都子を犯した犯人はどこに居るんだ!? ━━分かってるくせに……。内なるもう一人の自分が俺に話しかける。 この状況を考えれば、犯人は悟史だと分かる。 だけどアレがいつもの『悟史』と同一人物だという確証が持てない。 あの悟史がこんなことを出来るはずがない。きっとアレは悟史によく似た違う人物なんだ。 …………いい加減にしろよ、前原圭一。 そんなのは関係がない。一番重要なのは沙都子が、魅音が悟史に穢されたことだ。 そして一つ分かった事。それは悟史には注意が必要だという事だ。 あれは悟史かもしれない。そうでないかもしれない。でもそれは悟史への注意を怠らせるモノではない。 沙都子と魅音はどうなんだ……? 二人は悟史に弱みでも握られているのか?それとも喜んで悟史のモノを咥え込んでいるのか? ……結論は付かない。だからと言って、今ここでドアを蹴破って家の中に入り込んで、理由でも聞くのかよ。 結局、今の俺には成す術など無い。もし悟史と会話が出来ても上手く誤魔化されそうな気もした。 ん?家の中の空間には一人足りない気がする。悟史といつも居るはずの人物、それは詩音だった。 悟史に恋心を持った詩音がいないのだ。 悟史が好きなあいつなら何か知っているかも知れない。今日、電話で聞いてみることにしよう。 今、こうして何も出来ない自分に歯痒さを感じたが、それを胸の奥に押さえつけ、俺は北条家を後にした。 「圭ちゃん?何の話ですか?」 「その……言いづらいんだけど……最近、悟史に変わったこととか無かったか?」 息を呑む音。その音は悟史がおかしいと答えたのと同じ意味だ。 「圭ちゃんの言いたいことは分かっています。なので、圭ちゃんに警告をしておきます」 「警告……?」 「圭ちゃんはレナさんのことが好きですか?」 「お、おい!俺は真面目に聞いているんだ!そんなのはどうでもいいだろう!?」 なんでそこにレナが出てくるんだよ。レナには関係のないはずだ……! 「いいえ良くありませんよ。だって、数日後にはレナさんは悟史君の物になりますから」 「……何を言ってるんだ詩音は。詩音の言っている意味が分からない」 「本当ですか?圭ちゃんは今日、悟史君の本性を垣間見たんじゃないんですか? これは警告です。 もしも圭ちゃんがレナさんのことを好きなら、彼女を明日にでも抱いてあげてください。そうでもしないとレナさんは悟史君の虜になってしまいますよ」 「でもだからといってレナをいきなり抱くなんて出来ない……」 「抱く事が出来ないなら彼女の側にいつでも付き添ってやってください。そうすればあの悟史君でも諦めるかもしれません」 悟史は一体どうしてしまったんだろう。悟史からレナを守ることになるなんて。 「では、頑張ってくださいね。私には、何も出来ませんから」 「どうしてなんだ?」 聞かないほうが良かったかもしれないが、俺の余計な好奇心は詩音の先を促した。 「だって私は悟史君の肉便器なんだから」 ガチャン! 「おっはよ~圭一君!」 「おはようレナ」 次の日。俺とレナはいつも通りの通学路で待ち合わせ、学校に向かう。 空は青く澄み渡っていて、蝉の声が少々うるさい日だった。 何もかもいつも通り。でも、すでに異変は始まっているんだ。 レナはいつもと同じように見える。恐らく悟史の豹変のことなど知らないのだろう。 こんなに眩しく優しいレナがあの悟史の餌食になるというのか。俺にはとても信じられなかった。 彼女と一緒に歩いているときはいつもシャンプーと彼女の汗のにおいが俺の鼻腔をくすぐる。 レナは俺が引越してきてすぐに俺がこの雛見沢に打ち解けれるように世話をしてくれた。 料理も上手で誰に対しても優しく、なによりその可愛さに俺の目は自然に彼女を追うようになっていた。 清楚に切り揃えられた髪。小さく、柔らかそうな唇。透き通った西洋人形のような白い肌。その全てが俺を魅了した。 俺はその魔力に屈し、何度も妄想の中でレナを穢したりもした。 彼女のセーラー服をビリビリと切り裂き、嫌がる彼女を無視して胸を荒々しく揉み、バックからガンガンと俺のモノを突き上げる。 そして彼女の中に俺の性欲をぶちまけたあとで、必ず俺を罪悪感が襲った。 妄想の中とはいい、仲間である彼女を穢すなんて許される事ではなかった。でもレナに告白する勇気も持てない俺は今も仲間として彼女と付き合っている。 「ねぇ圭一君。聞いてるの、け~いちく~ん」 「おわっ!」 彼女の可愛らしい顔が俺の顔の目の前まで接近していた。大きな瞳が俺を捉えている。 「昨日は寝不足だったのかな?かな?」 俺の顔は眠たそうだったのか、レナが不安げに尋ねてくる。 「そんな事ないぜ。俺はこの通り正常だ」 そういいつつも俺の頭は違う事を考えていた。 『数日後にはレナさんは悟史君の物になりますから』 昨日、詩音と話したときの会話。その言葉が俺に重くのしかかっていたのだ。 「なぁレナ。お前は悟史についてどう思ってる?」 さりげなくレナに悟史に対する心情を尋ねてみると、レナは可愛らしく微笑みながら答えた。 「悟史君?優しくて妹思いのいい人だよ」 以前の俺と全く変わらない言葉。それが嘘だと言えば彼女は信じてくれるだろうか。 いや、信じてくれないだろう。俺だって仲間を疑うのは良心が痛んだ。でも、事実なんだ。 彼女が悟史のことをどう思っていても事実は変わらない。 でもレナにわざわざこのことを言うのも躊躇われた。悟史だって俺がレナの側にいれば諦めてくれるかもしれない。 なら黙ってレナの隣にいつでも居よう。学校も見えてきた。 ━━俺は、悟史にレナを穢させたりしない。 その想いを胸に秘め、俺たちは教室のなかに入っていったのだった。 授業中に悟史を監視していても、悟史に変わった様子は無い。 極めていつも通り。むしろ俺がおかしいのではないか、とさえ思えた。 だがやはり昨日のあれは本当にあったのだ。それは沙都子と魅音を見ればわかる。 二人とも呆然としていて授業の事など上の空。生気の宿っていない瞳はその何よりの証拠だった。 そして詩音。彼女は魅音や沙都子に比べるとだいぶマシだったが、時折悲しそうな表情をしている。 『だって私は悟史君の肉便器ですから』 電話を切る前に詩音が呟いたあの言葉。あの言葉を額面どおりに受け取るならば、 詩音はもう悟史に純潔を捧げたという事になる。でも、そうすると何故、詩音は悟史を裏切るような行為をしているのだろうか。 俺には何もわからない。詩音や悟史、沙都子や魅音の表情からそれを察することは無理のようだった。 だが、例え何も分からなくても。それでも俺はレナを守ってみせる。仲間としての行動かもしれない。レナにどう思われてもいい。 俺が願うのはレナの幸せただ一つ。 だって俺はレナのことをこんなにも好きなんだから。 レナにいつかこの想いを打ち明けるときは来るのだろうか。 「……えばら君!前原君!先生の話をちゃんと聞いていますか!?」 「わ!す、すいません!ちょっと考え事してて……」 またか。今日の俺は少し考えすぎているようだ。 先生がチョークを構えて鬼のような表情でこちらを見ている。 しばらく頭でも冷やしてきたほうがいいかもしれない。 「ちょっと俺、眠いので顔洗ってきてもいいですか?」 先生の許可を得ると俺はクラスの皆に笑われながらも教室を出た。そのなかに無垢な顔でじっと俺を見つめる顔にも気付かずに。 顔に当たる冷水が気持ちいい。何度も顔に水を打ち付け意識を覚醒させる。 俺が蛇口を捻って水を止め、後ろを振り返ると誰かが俺の後ろに立っていた。 逆光でその姿を認識できなかったが、次第に目が慣れてきた。 「なんだ、梨花ちゃんか……」 「僕も顔を洗いに来たのですよ、にぱ~☆」 愛くるしい笑顔が俺を癒してくれる。彼女も蛇口を捻ってその顔に水を当てている。 梨花ちゃんか……。彼女はまだ悟史の異変には気付いていないのだろうか。 縁起でもない話だが、もしレナが襲われてしまったなら次は梨花ちゃんだということも十分に考えられる。 もしかしたら、悟史について何か話しておいたほうがいいかもしれない。 梨花ちゃんとは雛見沢全体に関わる陰謀を打ち破った仲間だ。俺は、救えるのなら仲間全員を救いたい。 「梨花ちゃんに一つ話しておきたいことがある」 「みぃ?何の話ですか?」 こんなにも純粋な彼女に、悟史がおかしいと伝えるのは忍びなかった。 でも…………。 「単刀直入に言う。悟史に気をつけてくれないか」 「え……?圭一は何を言っているのですか?」 「悟史の様子が最近おかしいんだ。もしかしたら症候群が再発してるのかもしれない」 「本当ですか圭一?」 「本当かどうかは分からない。でも様子がおかしいんだ。だから気をつけてくれないか?」 どうおかしいかなんてこんな少女に話せるレベルではない。 話しても意味など理解できないだろう。 「……そこまで圭一が言うのなら僕は信じます。それで具体的にはどういう風に気をつければいいですか?」 「少なくとも悟史と一人っきりになるのはやめてくれ。誰かの目につくところ以外で悟史と行動しないでほしい」 「わかりましたです」 結構すんなりと受け入れてくれて助かった。これなら梨花ちゃんに悟史の魔の手が襲い掛からないかもしれない。 俺たちはそのあと少しばかり他愛の無い話をして教室に戻ったのだった。 その後も悟史は何も行動を起こさず、ついに楽しい部活の時間になった。 しかし梨花ちゃんは御三家の会合で忙しいとかなんとかで帰ってしまったが、魅音は帰っていない。 「さ~今日はなんの部活にしようかな~」 魅音は元気よく某ネコ型ロボットのポケットのようなロッカーからトランプを取り出し、机に置いた。 「今日は大貧民でもしようか!」 全会一致で即決。すぐにカードが配られる。ちなみに五回負けると罰ゲームらしい。 (お?なかなかいい手札じゃないか!) ジョーカーは無かったがペアが結構揃っており、少なくとも最下位は免れる手札。 これなら運次第でいけるかもしれない。が…… 「負けた……」 何故か負けてしまった。俺の思考能力がおかしかったに違いない。 その後も大貧民から脱出することは出来ず、ついに罰ゲームを受けることになってしまった。 「くそ~、こうなりゃコスプレでもなんでもかかってこいや!」 魅音の手が指令内容を筆記してある紙を箱からランダムに取り出す。それは 『今日一日中部活に参加出来ない』 「ちょ、まじかよ!?それってコスプレとかより酷いぞ魅音!」 「まぁまぁ。罰ゲームだから諦めなよ圭ちゃん♪」 椅子に縄跳びの紐で縛り付けられ身動きが出来ない俺。情けないぜ……。 はぁ、今日はもう部活出来ないのか……。 そんな俺を置き去りにして部活は再開される。 次に最下位になったのはレナだった。 「はぅ~……。負けちゃったよ……」 レナは五回負けたので、魅音がまた罰ゲームが記された紙を取り出す。そこに書いてあったのは 『負けたら一回で一枚ずつ脱衣』 おいおい!どこのどいつだよこんなの書いたのは!そいつを褒め称えてくれ! 「魅ぃちゃん……」 「罰ゲームだから仕方ないよ」 仕方なくレナはまず両足の靴下を脱ぐ。まぁ、最初だもんな……。微妙にがっくりする俺がそこにいたのだった。 しかしレナは次の勝負にも負けてしまった。 恥じらいながらも、レナはいつも着ていたセーラー服を身体から取り外す。 まずはかぁいいおへそが空気に触れ、その上についている形の良い胸を保護するピンクのブラが目に入る。 彼女はこの状態で次も勝負しなければならない。 そんな状況で本領発揮できるはずもなく、レナはまたも惨敗してしまった。 流石にこの先はまずいんじゃないのか……?そう思いながらも、それを口に出せない自分が恥ずかしい。 レナは顔を先ほどよりも沸騰させながらスカートを脱ぐ。 ついにレナを覆う衣服は無くなり、かろうじて下着がレナをカバーしていた。 下着のみになった彼女の体のラインは美しく、細い手足は恥ずかしげに身体を少しでも隠そうと動いている。 魅音ほどではないが年齢的には充分大きな胸。白い肌で浮き彫りになった鎖骨も俺の欲情を駆り立てた。 「ねぇ魅ぃちゃん……。まだ、やるのかな。かなぁ……」 次に負けてしまえば下着さえも外さなければならない。それだけは俺と悟史という異性がいる状況で避けたいようだった。 でも魅音は 「罰ゲームだからね」 その一言でレナの異論をばっさりと切り捨てる。 そして、次の勝負。 レナの手札がちらっと見える。 (おお!?強いじゃないか。これならレナが負けたりはしないな) しかし、 「嘘……レナ、負けちゃった……?」 (そんな馬鹿な!?あの手札で負けるなんてありえないだろ!?) 「じゃあレナ。そのブラジャー脱いでね。異論は認めないよ」 そのころには俺もレナも、魅音の様子がおかしいことに気付いていた。 いや魅音だけじゃない。沙都子も詩音も。様子がおかしい。 レナは躊躇いながらも、ブラジャーのホックを外し、肩から遠慮がちに紐をずらしていく。 パサリ、と床にブラジャーが落ちる。 彼女の胸がついに俺たちに披露された。柔らかそうな胸にちょこんと添えられたかぁいい乳首が俺の目を釘付けにする。 レナはとっさに手で胸を隠しながら俯いていたが、その手を魅音が胸から引き離す。 「ほら。隠したら罰ゲームじゃないでしょ」 「ぅぅ……」 そしてレナの最後の砦をかけて勝負が始まる。 レナの手札は2が4枚というかなりの手札。ジョーカー2枚は大富豪の沙都子に取られてしまったが 今度は勝てる! そう思っていたが、見てしまった。レナ以外の全員が机の下で手札を交換しあっているのを。 なるほど。だからレナは負けてたわけか。今までの不自然な勝負が思い出された。 しかしこの部活は『勝つためならなんでもして良い』というのがモットーな為、それに口を挟むことは出来ない。 そして予想通り沙都子が最初の番で革命し、レナの2は最低カードへと成り下がったのだった。 耳まで真っ赤にしながらレナは自分の下着に手を掛けゆっくりと下にずらしていく。 ごくり、と唾を呑みこむ俺の前で、ついにレナは身に纏っていたもの全てを脱いでしまった。 散らかっている彼女の衣服の上に、彼女はもじもじしながら立っていた。 レナの秘裂に薄く生えた毛の奥はぴっちりと閉められている。 (綺麗だ……) 改めて彼女の裸体を見つめるとレナが俺の視線に気付き、更に顔を赤くする。 「ねぇ、魅ぃちゃん。もう……いいよね……? レナ、脱ぐものが無いよ……」 一刻も早く彼女は部活を終えて帰りたいだろう。しかし、魅音はレナが忘れたかったであろう罰ゲームの存在を伝える。 「で、でも! まだ4回目じゃないの? 5回目じゃないよ」 「最初の罰ゲームの時のも含めて5回だよ。言ってなかったっけ?」 そんなこと言ってなかったはずだ。 「魅音! こんなこと止めろよ! レナが可哀そうじゃないのか!?」 「全然。罰ゲームなんだから」 きっぱりと言い放ち、罰ゲームの紙を取り出す。そこに書いてあった内容は分からない。 でもそれがレナに危険な物だと、直感的に分かってしまった。 魅音はレナにその紙を渡し、声に出してその内容を読むように指示する。 レナがその紙を見たとき、彼女の目が大きく開かれる。そしてその華奢な身体が小刻みに震える。 声を震わせながらレナは紙に書かれた内容を読み上げた。 「北条悟史……から……犯される……」 「なっ……!?」 しまった!今日の部活は全てレナを陥れるための巧妙な罠だったのか! そのために、邪魔者の俺の自由を先に奪っておいたのだ。 そして、今ここにいるレナ以外のメンバーは全員悟史の手篭めにされていた。悟史だけに気をつければ良いなんて思っていた俺を自分で呪いたかった。 悟史の顔を見る。そこには、三日月のように開かれた口から爬虫類のように舌を出す悟史の顔。 くそ! はめられた! 「逃げろレナ! この教室から早く出るんだ!!」 あまりのことに我を失っていたレナは俺の言葉で正気に戻り、とっさに身を翻し教室の扉を開こうとする。 「駄目! 開かないよ!」 力一杯開こうとしているが扉は開かない。鍵がかかっているのか!? 「あっ!?」 必死に逃げようとするレナを後ろから魅音が羽交い絞めにする。 レナが抜け出そうともがいても、それは彼女の乳房を揺らす程度にしか意味を成さない。 「駄目だよレナ。罰ゲームはちゃんと受けなきゃね?」 「やだ! 離して魅ぃちゃん! 離してよぉ!」 悟史がレナに近付いてくる。そして、声をあげるレナの唇を悟史の唇が塞いでしまった。 「ふむぅぐ!! んん! んんん! んむぅ!」 最初は抵抗していたレナだったが、次第に力が抜けていく。 「ふぅ……はぁ……んんん……」 ああ……レナと悟史との間に絡めつけられた舌が見え隠れするのが悔しかった。 俺が最初にレナのファースト・キスを貰いたかった。 でも、動けない!ここから動けないんだ! 魅音がレナを床に押し倒す。レナが起き上がった時には、レナを囲むようにみんなが立ちはだかっていた。 「い、嫌ぁ! 圭一君! 助けてぇ!」 レナは全員に手足を押さえつけられ、全員から身体を舐め回される。魅音は顔を、詩音は胸を、沙都子は手を、悟史は脚を。 各々がレナの身体に己の唾液を付ける。その状況に、俺は愕然とした。 俺たちはあの6月を乗り越えた仲間だった。なのに、ただ一人の男にその友情は壊されたのだ。 「やぁ! みんな止めてよぉ!」 レナがたまらず悲鳴を上げる。全身が唾液によって舐められた身体は妖艶な光を含ませていた。 しばらくするとレナの口から先程までとは明らかに異なる甘美な声が出されるようになる。 「あっ……あん……なんか変だよ……」 「どうしたんだいレナ?」 「レナね……なんかおかしいの。さっきから身体が熱いというか……」 胸を舐めていた詩音が今度はレナの胸を手で揉み始める。 「どうですかレナさん? 気持ちいいんじゃないですか?」 「あ、はぁぁ……。詩ぃちゃん。そこ、胸が気持ちいいの……」 「ふふふ。私、素直な女の子って好きですよ」 「あ~も~ずるい~! 詩音ばっかりいいところ責めて! 私は顔だけなんだよ~!」 目を開いて、閉じて。もう一回同じ動作を繰り返して、思った。 ━━━━あれ? なんかおかしくね? 先ほどまであんなに嫌がっていたレナは、いつの間にか周りと話したりしてるし。もうちょっと嫌がらないか普通? それともこんなもんなのか……? 困惑する俺の目の前でその行為は徐々にエスカレートしていく。 魅音が顔を舐めることを止め、詩音に弄られていないほうの乳房に手を伸ばす。 「あ! あぁ……ん……はぅぅ……」 硬く尖った乳首を、魅音は軽く捻るとレナは甲高い声で反応を示す。 それが面白かったのか、魅音は一層乳首に専念したようだ。そして、そこはやはり双子。詩音も同じように突起を指先で転がす。 「はふぅ! はぁ……はぁ……はうん!」 ああ……レナの胸がぐにゃぐにゃと姿を変えていく……。 それはなんて……羨ましい光景だろうか。 双子の口に挟まれた両乳首はそのまま大きな音を立てて吸い上げられる。 ジュブジュボジュブジュボ! 一定のリズムで吸い上げられ、レナは身体を大きく仰け反らせた。 「あっはぁぁぁ! ああ! いいよぉ、気持ちいいよぉ!」 現実離れした光景は、俺のオットセイの盛り上がりで現実だと思い知らされる。 「レナ。こっちがもうぐしょぐしょだよ」 レナの居る床の上には既に小さな水溜りが出来上がっている。それはレナの愛液のみならず、唾液も混じっているだろう。 ぴちゃり……。悟史はレナのつま先から舌を這わせ、レナの脚をその汚らわしい舌で上へ上へと舐めていく。 レナの秘部を目指す舌とは対照的に、悟史が濡らした唾液はレナの脚から落下していく。 それが水溜りに跳ね、極小の波紋を立てた。粘つく音はレナの身体中から広がり、教室内に木霊する。 それを聞いて興奮する俺は何なんだ? 今日学校に来る前、俺はレナを守る事を決めた。 なのにレナの喘ぐ声を聞いて勃起している俺は一体何なんだ!? 俺は偽善者なのか……? でもレナだってレナだ。最初はあんなに抵抗してたのに、今じゃあんあん喘いで。そうさ、確かに悟史の目論見に気付けずに拘束されたが、俺だけが悪いんじゃないんだ……。 悟史の舌はついにレナの秘裂に辿り着く。 「ふやぁぁぁ!!」 明らかに今までより高い声。悟史はレナのアソコを大きく指で押し広げ、ご親切な事に俺に見せ付けてくる。 レナのソコ、ヒクヒク動いてる……。綺麗なピンク色のそこは男を拒むように蠢いていた。 そしてその中にくちゅりと指を一本差し込む悟史に反応し、一瞬、身を震わせるレナ。そして緩慢な動きで悟史は指を動かした。 「ひぅぅ! あぁ! はぅぅ! あっ! あっ! ああっ!」 テンポを乱し、ランダムに快楽を与える指。部活メンバーを堕としてきたテクは伊達ではないようだ。 ああもう。俺のペニスはギチギチに硬く反り返っている。 だれかこの生殺し状態から開放してくれ! レナのあんなに気持ちよさそうな顔を見て、我慢できる男なんて居ない筈だ。 でも叫びたくても、そんなこと恥ずかしくて言えやしない。 ずっと執拗に舌を動かしていた他のメンバー達は休憩しているようだ。 でもそんな彼女たちだって丸裸。今の俺にとってはまさに地獄だった。 沙都子は悟史とレナの行為を羨ましそうに見つめていたが、火照った身体を押さえきれなくなったのか自慰を始める。 「ッ! にーにー! 気持ちいいですわ! おっぱいが疼くんですのぉ!」 あの沙都子があんなことを言うなんて信じられない。けどその身体はすでに女そのものだった。 「みんなどうかしてる! どうしたんだよみんな!?」 その光景に耐えられず、思わず叫んでしまった。みんなが一斉にこちらを振り返る。 でも、その目はとろんとしていて俺の目を直視してはいなかった。 「お前ら洗脳されてんのか!? どうなんだよ! 何とか言ってくれよ!」 みんな答えない。俺一人だけが隔離された世界に存在するかのような錯覚。 もはや俺は異端だった。世界に対応できずに慌てふためき、この世界を否定する。 でも、こんな現実は否定したかった。 「お前ら全員悟史が好きだってわけじゃないんだろ? ならなんで悟史の言いなりになるんだ!?」 俺の出来る唯一の抵抗も彼女たちに届かない。むしろ彼女たちは俺を蔑むような視線を送りつけてきた。 ━━何故、この愚か者は分からないんだろう。悟史君は私たちのご主人様なんだよ。 そんな言葉を俺は聞いた気がした。 「じゃあさ、圭一にも判らせてあげようよ」 悟史の声。レナは動けない俺に近付いてきて、俺のズボンのチャックをゆっくりと下げた。 「レナ、止めろ! こんなのは止めるんだ!」 「はぅぅ、圭一君のオットセイさんおっきいのかな? かな?」 もうレナに俺の声は届いていないようだった。レナは俺のズボンから反り立つペニスを取り、目を輝かせた。 「わ!圭一君のオットセイ、ビクビクしてる!レナがすぐに鎮めてあげるからね……」 レナはちろちろと俺のペニスを舌で舐めあげたあと、そのかぁいいお口一杯にペニスを頬張る。 恐らくはそういう類の本を少し見た程度であろう。レナの舌使いはとてもたどたどしかった。 好きな女の子にフェラチオされるというシチュエーションに俺のペニスは更に興奮したが、こんな状況でしたくはなかった。 もっと愛し合う状況でしてほしかった。このフェラチオには、好きだからやってあげる、というものが無い。 じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……。 それでもレナは必死に頭を動かし俺を気持ちよくさせようとスピードをあげた。 「…………ッ!」 普段、清楚な彼女が俺のペニスをいやらしくしゃぶっているという事を再認識すると、欲情が高まってくる。 この頭を俺が上下させたい衝動が高まるが、俺の手は拘束されていて、何も出来ない。 「はむぅ……んん……んはぁ……んむぅ」 「くっ!出るぞレナ!」 「ふむぅ!んんんんんん!」 俺の精液はそのままレナの口の中で発射され、レナの口をべとべとに汚す。 ごく……ごく……ごく……。 そのままレナは細い喉を鳴らし、全てを飲み込んでしまった。 「ふふっ。圭一君のせーえき、おいしかったよ♪」 もう、何が何だか判らなかった。判るのはこの世界がおかしいという事だけ。 俺の目の前にいるレナの身体がビクンと揺れ、レナの後ろからずちゅ、という音が聞こえてきた。レナの顔は悦びで一杯になる。 「はぁぁぁぁ♪悟史君のオットセイ大きいよぉ♪」 「じゃあレナ。いくよ?」 レナの後ろにいた悟史がゆっくりとレナの中を突き進んでいく。そして全部入りきったのか、再び引き抜き、突き入れる。 ……って、おいおい! レナは処女じゃないのか!? なんでちっとも痛がらないんだよ!?これじゃあ本当の痴女じゃないか……! そんな俺の心配をよそに結合部からは卑猥な水音が響く。 「あぁぁ! はぁあん! おっきぃ! 悟史君のオットセイ、最高だよぉ♪」 「じゃあもっと激しく行くよ?」 悟史は今までの腰の動きの倍はあるスピードでレナのお尻に腰をぶつける! 「あああ、ああ、あああああ、あん、あ、あああん、あっ、あっ、あっ、あっ、あああっ!!!」 パンパンパンパンパン!! レナの胸が俺の目の前で激しく揺れ、レナの口から涎が飛び散る。 グチョグチョグチョグチョ!! レナのマンコから愛液が零れ落ちる。 「ああん、あん、あん、あん、ああああぁん!」 レナの吐息が俺の顔に吹き付けられる。レナの唾が俺の顔に撒き散らされる。 「出すぞレナぁ!」 「はぁん! あああっ! ああっ! あああっ! ッあああああああああ!!!」 ドピュドピュドピュ!! レナは身体を大きく仰け反らせ、数秒痙攣する。 「あはぁ……♪ 悟史君のせーえき、暖かいよ……♪」 レナの蕩けた瞳を見たとき、俺の中で何かが弾けた。 こんな現実なんて嫌だ。でもこれ以上否定してどうなる。 否定しても傷しか付かない。全てを受け入れたならここは天国のはずなんだ。 世界が壊れているのなら……俺モ壊レテシマエ。 だから、自分でトドメをさすように。俺はあと少しで壊れそうなガラスの心を、自ら金槌で叩き壊したんだ。 <続く> 鬼畜悟史~古手の巫女~ TIPS 「竜宮レナ」 気が付いた時にはみんな悟史君と圭一君の白濁液で身体中が汚れていました。 けど、それは全然嫌な事ではありません。だって自分の身体から好きな男の子のにおいがするのって、嬉しいじゃないですか。あ、今度は圭一君が来ました。さっき圭一君を縛りつけていた縄をほどいてやったら、圭一君は獣のような勢いで私たち全員に中出しをしました。男の子って元気なんだね、はぅぅ。今度はレナの太ももを片手で持ち上げてから、レナのおまんこにオットセイを入れてきました。硬くて暖かいオットセイさんは私の精神を心の内側からかき混ぜていきました。自分の声とは思えないほどのオンナっぽい声を出していて、自分でも驚きました。レナはいけない子なんだよ。だからその凶暴なオットセイさんにお清めしてもらっているの。ああでも、やっぱりご主人様の方が大きいかな。私はご主人様からお仕置きされるのを心から願ってます。 圭一君も良かったね。ご主人様に受け入れて貰えて。これで圭一君も幸せになれるよ。みんなみんなご主人様のことが大好きみたい。でも、でもね。これは女の勘なんだけど、詩ぃちゃんは心の底からご主人様に忠誠を誓ってない気がするの。そんなわけないかな。……いや、やっぱりそれでもいいよ。詩ぃちゃんがその気でないならご主人様を貰っちゃうんだから。でもね、もし詩ぃちゃんがご主人様を裏切るなら……そのときは、どうなっても仕方ないね。仕方ない仕方ない。 あ、なんか来る……。くるくるくるくるくる!あはぁぁぁ♪もう、圭一君も元気なんだから。 ふぁぁ……。急に眠くなってきたよ。お休みなさいご主人様、圭一君♪
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/396.html
大 注 意 書 き。 サブタイどおり、 レナ 寝 取 ら れ ものです。 ん……ここは……どこだ? 俺はいったい……どうなった? たしか……そう、俺はゴミ山で富竹さんと会ったんだ。 そこまでは憶えている。 本当はレナを探しに行ったんだが、彼女はそこにはいなかったんだ。 そして代わりにひょっこりと現れた富竹さんとたわいない話をして、その後………。 あれ? その後が思い出せねぇ……なんだっけなんだっけ……う~ん……。 いまだ自分が置かれている状況がわからず、俺はなんとか記憶の糸を手繰ろうとする。 するとかすかにズキリっとした感覚が後頭部に走った。 背後からいきなり殴られでもしたのだろうか……そこはズキズキとした痛みとなって俺の頭の中に響いていく。 頭を殴られたのなら、ここは病院か? または警察か、あるいは自宅にでも連れてこられているはずだろうが。 ここはそんな感じの場所じゃ……。 そんな試行錯誤をしていると、俺はようやく自分のおかれている異常な状況に気が付いた。 あたりが真っ暗だった。 まるで光というものが見えない。 感じられない……。 俺が富竹さんと会った時には、まだ夕方だったはず。 どんな場所にいるにしろ、何らかの光があってもいいはずなのだ。 ……ということはここは屋外ではない? どこかの部屋の中にでもいて、電気が点いていないだけなのか。 それともどこか狭いところに押し込められているのか……。 押入れかどこかか? 最初はそうも思ったが、俺一人が入るには十分な、それでいて広い部屋のような感じだ。 空気の伝わり具合から、なんとなくわかる……分かるような気がした。 ……もう一つ異常なことがある。 本当ならこれを先に言うべきだったのだろうが……。 俺の手足が、何か頑丈なもので拘束されている。 まったく身動きが取れない……。 両手が後ろにまわされていて見えないが、手首には何か冷たい感触がある。 手錠のようなものでもされているのだろうか、動かすとカチャカチャと鉄のような音が聞こえた。 足にも似たような感触がある。 足首のところに同じような拘束がされちるようだった。 両手両足がそう拘束されているのだから、当然立っていられるはずもなく。 俺はまるでイモ虫のように床に這わせられているのだ……。 なんとか動こうとモゾモゾしてみるが、両方ともビクともしない。 動けないのならばあとできることは一つだけ。 声を出そう…と思って口を開けようとしたがそれも無理だった。 口にも何か拘束されるようなもの。 猿ぐつわ?までされていて、悲鳴はおろか声を出すこともできなかった。 ……拘束……監禁……誘拐? そんな言葉が次々と頭の中に浮かび上がってくる。 だが普通、さらうなら女の子とか子供じゃないのか? だいたい一緒にいた富竹さんはどうなったんだ? お、おいおい、ここはどこだよ? だ、誰かそばにいないのかよ、なぁっ!? ……ま、まじかよ。 ま、まじで俺、誘拐されちまったのかよ……じょ、冗談じゃねぇ! そんな嫌な想像ばかり頭を巡っていると、突然、目の前にパっと光が浮かび上がった。 誰かが部屋に入ってきた……? 部屋の中にいると思っていたため、俺はとっさにそう考えたが……ちがうようだった。 よく見るとそれは光ではなかった。 そこだけがくっきりと、四角い形で点灯していたのだ。……何かのモニターのようだった。 それが俺によく見える位置で初めから固定されていたのだ。 真っ暗な部屋の中でテレビだけが点いている、あの感じに似ている。 それが俺の目の前に浮かびあがってきたのだ。 まだこの異常な状況を受け入れられたわけじゃない。 だがこの暗闇の中では、どうしてもそこに目がいってしまう。 俺の五感に与えられた唯一の情報源だからだ。 ましてやそこに写っていく映像は、俺にとって無視できないものだったのだから……。 「だいじょうぶ? もう落ち着いたかい……?」 モニターの中の男がそう話し始める。 どうやらどこか部屋の中の様子のようだ。 白いシーツが張ってある、真新しいベッド。 書類のようなものが乱雑に置かれている机。 いくつかのパイプイスに、何やら医療器具のようなものが置いてある台もみえる。 入江診療所……? まっさきにそれが思いつくが、俺が監督に診察を受けたところとは少なくともちがうようだった。 何よりも驚いたのは、その男が俺の知っている人間だったことだ。 さっき会ったばかりの人間……忘れるはずもない。 富竹さんだった。 彼はその真新しいベッドに腰掛けながら、同じく隣に座っている誰かに言葉をかけているようだった。 そこに誰が座っているのかは写っていない。 モニター……というかカメラというべきなのか。 それは富竹さんがベッドに腰掛けているところしか写していない。 もう少し横にズレれば、そこに誰がいるのかわかるのに……。 そう思った途端、まるでカメラが俺の意思で動いたかのように…クククっとモニターの画面を動かした。 そしてそれは富竹さんの隣に座っていた人物を映し出す。 その人物の姿に、俺はおもわずドキリとした……。 「はい……。 ありがとうございます、富竹さん……」 茶髪の髪に、青色のセーラー服……。 この人物こそ見間違えるはずがない、毎日見てるのだから。 レナだった。 レナが富竹さんの隣に腰掛けながら、彼に何やら声をかけられている。 その表情はどこか寂しげで、元気がないようにみえる。 何かあったのだろうか? まっさきに思いつくのは俺のこの状況だったが、あれからまだそれほど時間が経ってるようには思えない。 まだそれほどの騒ぎにはなってないはずだが……。 意味がわからない。 そもそも犯人(?)はなぜ俺にこんな映像を見せる? 富竹さんとレナが何か関係あるのか? こんなものを見せて、奴に何か得があるのか……? そ、それともまさか、この二人もこの部屋に監禁されてるってのか! ……あぁ、で、でもすぐそこの窓には外が見えてるな……。 富竹さんくらいの大人なら、あんな窓くらいすぐ割って逃げられるはず。 ってことは、ちがうのか? それならなおさら意味がわからねぇ……は、犯人はいったい? 次々沸いてくる想像に頭が混乱しながらも、俺は目の前のモニターに目をやるしかなかった。 身動きの取れない俺にとって、これを見ることだけが唯一残された人間らしい行動だったからだ……。 富竹さんはなおも隣に座っているレナに言葉をかけていく。 レナの肩に手をやりながら、なおかつ二人の座っているところがベッドだというのが気にはなったが、今はそんなこと気にしている場合じゃない。 「あまり気にしない方がいいよ。 その……は、初恋は実らないって言うしね? ははは」 「………はい。そうですね……」 富竹さんの軽はずみな言葉に、レナはやはり元気がなさそうに答えていく。 顔を下に俯かせていて、普段あれだけニコニコ笑っているあのレナと同一人物だとは到底思えない。 なんとなく状況だけで判断すると、富竹さんが意気消沈しているレナを慰めているような…。そんなふうに思える光景だった……。 まだ混乱している頭でなんとかそれだけを理解していくと、富竹さんはレナの肩の手に力を入れていった。 そしてそのまま彼女の体を引き寄せるように……自分の胸へと招き入れていった。 「ほら、もう少しこっちにおいで……? つらいんだろう?」 「あ……はぅ……」 富竹さんの胸に抱き寄せられると、レナは多少困惑した表情を見せた。 だがそのまま、彼の広い胸に顔を寄せていった。 そして富竹さんもそんなレナの顔をギュっと抱き寄せていく……。 まるで恋人同士のような甘い雰囲気。 それが当たり前のように、俺の目の前のモニターで繰り広げられていく……。 ……へ? な、なんですかこれ? なにかの冗談? な、なんでレナと富竹さんが、こんな親しそうにしてんだよ? そもそもなんでレナはそんなに落ちこんでんだよ? そんなに嫌なことでもあったのか? そ、それに……いくら富竹さんだからって、そんな簡単に抱きしめられていいのかよ? そりゃあ普段はあれだけ頼りない人だけど、い、いちおうその人だって、男だぜ? しかもベッドの上でって……これじゃあまるでベッドシーンかなんかじゃねえか? おまえはそんなふうに、簡単に身体を許す人間じゃないはずだろ?……お、おいレナ? いくら頭の中で言葉をかけようと、モニターの中の二人にそれが届くことはない。 それをいいことにレナと富竹さん……富竹の二人は更に会話を重ねていく。 「かわいそうに。 本当に好きなんだね? 圭一くんのことが……」 「………はい」 富竹さんの興味深い質問に、レナは少しだけ間を置いてそう答えた。 こんな異常な状況に立たされているというのに、それを聞いた俺は少しだけ安堵してしまった。 レナが俺のことを好きだという、なによりも嬉しい情報が得られたからだ。 何か落ち込むようなことがあったのかもしれないが、レナは俺のことを好きだという事実。 てっきり片想いだと思っていた俺には、それが何よりも幸運な情報だった。 ナイスだ富竹さん!あれだな? きっとレナは大人な富竹さんに、恋の相談でもしに来たんですね? それでレナはもう圭一くんが好きで好きでたまらないの、なんて言ってきて、富竹さんはそれは正しい感情だよ、なにもガマンすることはないんだ。 って寸法なわけだ! ようやくわかったぜ、この光景の真相が! ははは! 俺が置かれている状況の説明にはまるでなっていないというのに、混乱していた俺はそれですっかり解決した気になっていた。 なりたかったというべきか……。 だが次の彼女の言葉を聞くまでは、本当にそう思っていたんだ……。 「レナは圭一くんのことが好きです………『好きでした』」 ………へ? でした? でしたって、どういうこと? な、なんで過去形なんだよレナ? わざわざ言い直したってことは、間違いじゃないよな? そ、それってつまり……今はもう俺のことを……? さっきまで誘拐されただの慌てていて、今度はレナの告白に有頂天。 そしてまたレナの発言に慌てていく男。 俺はもう、目の前のモニターに釘付けになっていた。 レナの今の言葉が何かの聞き間違いだったと、スピーカーの故障じゃないかと思いながら、ただその四角い画面をジっと見つめていく。 だが俺のそんな期待を裏切るかのように、隣にいた男……富竹は当たり前のようにレナを慰めていった。 彼女のかぁいい顔にスっと手を添えると、柔らかそうな頬を撫でていく……。 「そうだろうね。でももう彼は君の元には戻って来てくれない。 それは君もわかっているんだよね?」 「………はい。圭一くんには、あの子がいるってわかったんです……」 「あの子……?何か見たのかい?」 「はい……レナ、ついさっき見ちゃったんです。あの子と圭一くんが、キスをして愛し合っているところを……」 …………は? な、なんだよ、それ……な、何言ってんだレナ?何の話だ? 俺はそんなことしちゃいない……。少なくとも俺の頭の引き出しには、そんな事実一切ない。 あの子ってのが誰かは知らないが、俺は生まれてこのかたまだ誰ともキスすらしたことがないんだぞ!ましてや、あ、愛しあうだなんて……むしろこっちからお願いしたいくらいだぞ! お、おもわず童貞だと告白しちまったが……でもそれはな?それはレナ、お前とするために俺はずっとずっとガマンしてきたんだ……。色々な誘惑をグっとガマンしてきたんだよ! なぁ……さっきから一体何を言ってんだよレナ。 何か勘違いをしてるんじゃないか……? 俺がそう心の中で問いかけていっても、レナは何も語らずただ落ち込んでいますといった様子だ。 何か確信めいたような……そんな具合を示している。 まるでこの目で『その光景』を見たからこそ、こんなに悲しいんだよと言わんばかりだ……。 「だから、もういいんです。 圭一くんが自分であの子を選んだのなら、レナは諦めないとダメなんです。 あの子とは大切な仲間だし、なおさら……そう……」 「……いい子だねレナちゃん。つらいだろうに……」 そう言って富竹は、今にも涙を流しそうなレナを……レナの身体を強く抱きしめていった。 ガッシリとした体格と、大人の男特有の包容力のようなもので、俺のレナをその胸に抱いていく。 それを見ると、俺の中に何ともいえないモヤモヤとした嫉妬の念が沸き出してきた。 ち、ちがう、ちがうぞレナ騙されるな! そ、そいつに騙されちゃいけない! 何があったか……何を『見た』のか知らないが、それはおまえの誤解だ!絶対勘違いだ! なぜなら俺は、最初からお前を選んでいるからだ! 俺はお前のことが好きなんだぞ、レナ!俺達は両想いなんだぁぁぁ!!! だ、だからいますぐその富竹を引き剥がせぇぇぇぇ!! イモ虫のように縛り付けられ、さるぐつわまでされてる俺の声が届くはずもなく……。 レナは富竹の広い胸の中に顔を埋めていった。 失恋したと思い込み、傷心直後の女の子……これほど落としやすい相手はいないだろう。 ましてや富竹のような大人の男ならば、こういう時どう言葉をかければいいか、どう慰めていけばいいかなどはお手の物なのだろう。それはたとえあのレナであっても、なかなか抗えるものではないということか……。 「ほら、つらいんだろう? 無理することはないよ。 もっと僕の中においで……」 「う……ごめんなさい富竹さん……少しだけ、少しだけレナにこのお胸を貸してください…」 「いいよ……好きなだけ僕の胸で泣くといい。 好きなだけ、ね……」 ついに泣き崩れていくレナを、そっと胸に抱きしめていく富竹。 ……その時、俺は見た。 とても信じられないものを。 有り得ないものを。 レナを抱きしめていた富竹が、とてつもなく邪悪な顔をしていくのを……見てしまった。 普段あれだけいいお兄さんな笑顔を浮かべている奴が、とても醜悪でいやらしい表情を浮かべたのを、たしかにこのモニターごしに見た。 絶対に見た。 そしてそれを俺が見たのを気づいたかのように、奴の声がすぐ耳元で聞こえてきたんだ…。 『やあ圭一くん。聞こえるかい?』 本当にすぐ耳元で言われているようなほどクリアな音。それが俺の耳に入り込んできた。 だがそんなはずはない。 奴は今レナとあの部屋にいるらしいのだから、こんな場所に押し込められている俺に話しかけられるわけがない……。 ……ってことは、この映像は録画したもの? これはリアルタイムの出来事じゃないのか? しかし富竹は俺のそんな想像をあざ笑うかのように、憎たらしい声を耳元に響かせてくる。 『ははは、驚いただろうね? じつは今君の耳には、特殊なイヤホンをはめさせてもらっているのさ。 それで僕の声……というか、心の声のようなものが聞こえるようにさせてもらっているってわけだよ。 わかるかい?』 富竹の言葉に、俺は呆然とする。たしかに耳に何かはめられているような感触がある…。 しかも……心の声だと? 奴の心の声が、イヤホン越しに俺の耳に伝わってきている? そんな馬鹿な! そんなこと有り得ない! 絶対に有り得ない! 有り得ない有り得ない…。 『あははは、それが有り得るのさ、この雛見沢ではね。まあ僕の本業の方の仕事で使っているものだけど、好都合だからこの状況で使用させてもらったってわけさ……いい音だろう?』 本業……? その言葉の意味が気になったが、今はそんなことどうでもいい。 どうやら俺の方の声も奴には聞こえているようだ。ならば今すぐ奴に……富竹の野郎にこんなことやめさせなければ!!! その口ぶりだと……てめえだな!俺をこんなとこに押し込んだのは! 何が目的だ! なぜこんなことをする! というか今すぐ俺のレナからその汚ねぇ手を離しやがれぇぇぇっ!! 『離す? あははは、あいかわらずおもしろいね圭一くん。僕がこんな絶好のチャンス、みすみす逃すわけないじゃないか。 これでもいちおうカメラマンだよ? な~んてね』 何を……何をふざけてやがる! てめぇレナを騙してどうするつもりだ! くだらねえ口車でレナをハメやがって! 俺とあの子が愛し合ってたってのもてめえの仕業か! さっさと俺をここから出しやがれぇ! いくら年上だろうがなんだろうが、この前原圭一の愛する女に何かしたら承知しねえぞおぉぉ!!! 『あはははは、まあまあ落ち着いて。どうせ今の君には叫ぶこともできないんだから、そこでゆっくり見ているといいよ……』 その言葉を言い終えた途端、富竹の声のトーンがワンランク低くなった。 とてもドス黒く、あきらかに悪意をこめているぞといった感じの声……。 それで奴は俺にこう告げていく。 『君の大好きなレナちゃんが……僕に寝取られていくところをね? あはははは』 …………!? なんだって……ね、寝取る? 寝取るってこの、レ、レナをか?今そこで? この俺の見ているモニターの中で……か? レナと、す、するってことかよ? なあ! 俺のことが好きで……今も振られたという誤解だけでそんなにも落ち込んでいる純真なレナを、こ、これからお前がヤっちまうってことかよ! なあおい答えろぉぉぉ!!! 富竹の口から聞き捨てならない言葉を聞くと、俺は背筋が凍るような感覚に包まれた。 いくら心の中で怒号を唱えても、奴のその言葉を撤回させることにはならない。 そして富竹はそんな俺を尻目に、レナにそれを実行していく。 抱きしめていたレナの顔をスっと上げさせると、その唇に……自らの口を近づけていった。 「え……と、富竹さん、あの……?」 「ジっとしてるんだレナちゃん。すぐに何もかも忘れさせてあげるよ……」 「あ、ダ、ダメです……はぅ!……ん、んふぅ……」 一瞬レナは躊躇する仕草を見せたが、富竹はそれを無視しそのままムチュっと唇を重ね合わせてしまった。 一度閉じさせてしまえばこっちのもの…ということか、富竹はニヤリと笑うとレナの唇をおいしく頂いていく。 ハムハムと食べていくように、レナのおいしそうな唇を貪っていく……。 「あふ……と、富竹さ、ダメ……レナは……レナはぁぁ、んぅぅ!」 「無理をしちゃいけないよ。傷ついているんだろう? 僕が慰めてあげるから……」 「で、でも、でもでも、あっ!……はぅ、んぅ……」 富竹は太い腕でガッチリとレナの身体を抱きしめている。 だからレナは力での抵抗はできるはずもなくて……奴とのくちづけを続けていくしかないようだった。 そうしておそらく初めてのキスであろう神聖な儀式を、俺よりも年上の成熟した男と体験していく……。 とても受け入れがたい光景が、俺の目の前で繰り広げられていく……。 や……やめろぉ富竹ぇぇぇ!すぐにレナの唇から離れやがれぇぇぇぇ!!! レ、レナももっと抵抗するんだ! そりゃあ、あ、あんなにガッチリ抱きしめられてりゃ無理かもしれねえけど……そ、それでもそんな男とキスなんてしちゃダメだ! そいつはおまえを食いもんにしてるだけなんだぞ! ただ身体が目当てなだけなんだぁぁぁ!!!! あぁ……そんな、て、抵抗をあきらめるなぁ……身体の力を抜かないでくれぇぇぇ!! 今すぐその手をもう一度奴の胸において、つ、つっぱねるんだ! あぁぁぁキスしちまってる……レナ……う、受け入れるなぁぁぁやめろぉぉぉ……。 ピチュ……ピチュ……ピチャ……。 「ん……あ、あ、はぅ……ふぅぅ♪……と、とみたけさ……あ、あふ……♪」 どうやら舌も使っているらしい。奴はレナの唇を舐めるように、いやらしい音をさせながら唇を貪っているようだ。 その強引でいてなおかつ卓越したキスに、レナはだんだんと身体の力が抜けているようだった。 俺はその卑猥な光景を、ただモニター越しに見つめていくことしかできない。 ピッチリと重なり合っていく、レナと富竹の唇……。それがピチュピチュと絡み合い、だ液が混ざり合っていくところを……ただ見ていることしか……でき……ない……。 ピチュ……ピチャピチャ……ピチャァ……♪ 「んぅ、んふ……。 富竹さん、こんなの、こんなのってダメだよぉ……はぅぅ……」 「ダメじゃないんだよ。 ほら、口を開けてごらん? もっと慰めてあげるよ……」 「んはぁ……ら、らめれす、らめ、らめぇ……あぁぁ……♪」 脱力してしまっているレナの身体に、富竹の濃厚なくちづけを拒む力はない。それを良いことに奴は、ついに舌をレナの口の中にニュルリと入り込ませてしまった。唇を半ば強引に開かせ、ついさっき初めてのキスをしたばかりの彼女の口内までをもジュポジュポと犯していく。富竹のいやらしい舌が、レナのかぁいいお口を蹂躙していく……。 ピチャピチャピチャと、だ液が混ざり合う音がスピーカーから聞こえてくる。レナと富竹がしていく、濃厚なディープキスの証明だった……。 あ、あぁぁあの野郎あの野郎! あんな舌まで絡ませやがって! 俺のレナの唇を……レナのファ、ファーストキスの存分に奪ってやがる! あんな男の汚ねぇだ液で、レナの初めてが汚されてやがる! や、やめろ!やめろぉ富竹ぇ! そ、それ以上俺の大好きなレナを汚すなぁ……性欲の食い物みてえにキスをするんじゃねえぇぇぇぇ!!! 俺の叫びにようやく答えようと思ったのか、富竹はレナとピチャピチャキスをしながらチラっとカメラの方を……俺の方を見た。 『あははは、いやぁ圭一くん。 レナちゃんの唇ほんとに最高だよ。 マシュマロみたいに柔らかくて、おまけに僕の口に吸い付いてくるようないい感触なんだ。 おまけに口の中もとっても温かくて……僕の舌にピチャピチャおいしいだ液をたくさん味あわせてくれるんだよ。 さすが初めてのキスだけあって、とっても初々しい反応だよ。……あぁ、ごめんね? ほんとはこれは君がもらうはずだったのにねぇ、いやぁごめんごめんごめんははははは』 殺してやりたいほど憎たらしい声が、ご丁寧にもレナとキスをしている真っ最中でも俺の耳に届いてくる。 せめて……せめて俺がもっと早くレナとキスだけでもしていれば……。 そんないまさらな後悔だけが頭を通り過ぎていく。 そして奴は濃厚なディープキスを続けたまま、そのままゆっくりとレナの身体をベッドに押し倒していった……。 「あ……ダ、ダメ! こ、これ以上は、圭一くんに悪いです……レナ裏切れない……」 「何言ってるんだい、もう諦めたんだろう? それに…彼があの子とこういうことしているの、『見た』んだよね? だったらおあいこなんじゃないのかな?」 「そ、それは……んぅ! ら、らめれすぅぅぅ……」 レナをベッドに押し倒しながら、富竹は彼女の腕をガッチリと掴みながら離さない。 そして俺の名前を出した彼女の言葉をあっさりと覆すと、それに躊躇したレナの唇をまたもやあっさりと奪っていく……。 ご丁寧にもカメラはベッドのところにも備えてあるようで、カチっとモニターが切り替わると、そこには男と女の子が濃厚なキスをしている場面がありありと映し出されていった……。 「はぅ……。 と、富竹さん……ん、んぅ、んぅ、んふぅ……」 「ほら、そのまま力を抜いてごらん? 身体のほうも良くしてあげるよ……」 「え、そ、そこは、そっちは恥ずかしいよぉ……はぅぅ……」 レナはイヤイヤと首を振ったが、富竹は彼女の上半身のセーラー服にまで手を入れてしまう。 左手を乳房のあるあたりに潜り込ませていき、中でモゾモゾと手を動かしていく。 俺からは服の上から動いているのしか見えないが…レナの胸をブラ越しに揉んでいるのだろう、とわかった。 意外と大きいレナの胸……少なくとも俺の想像では大きいと思っている乳房が、富竹の手のひらの中でグチャグチャに弄ばれていった……。 「あぁ……と、富竹さんダメだよぅ。レナ、レナこんなのって嫌だぁぁ……」 「大丈夫、怖くないから僕に身をまかせてごらん? それに…だんだんとよくなってきてるんだよね?感触でわかるよ。 レナちゃんのおっぱい、僕の手の中で柔らかくなってるからね……」 「う、嘘! 嘘だ嘘です! はぁ……あ、あん、あん……」 あぁ……ち、畜生、ちくしょう! 俺でさえまだ揉んだことないのに……触ったこともないレナの胸を、あ、あんなにモミモミ好き勝手に……くそ、くそくそ、くそぉぉ富竹ぇぇぇぇ!!!! ああでも……でもでも、レナもなんでもっと抵抗しないんだ! そ、そんなちょっと気持ちよさそうな顔までしやがって……あ、あんあん言ってんじゃねえよぉぉぉ! いくら俺に振られたと思っているからって、そんな簡単に身体なんて触らせるんじゃねえよぉ! 女の子の大事な胸を、やすやすとモミモミさせてんじゃねえよぉぉぉぉ!!! モミュ……モミュモミュ、モミュゥ……。 「あふ! はぁ、はぁ、あぁぁぁ……。ダ、ダメぇダメだよぅ……はぁぁ……」 レナのセーラー服の中で、モゾモゾと動いていく富竹の手。 それが動くたびにレナはくすぐったいような……感じているような声をあげてしまっている。 しかも奴のもう片方の手は、レナの下半身にまで伸びているように見えた。 まさか……あ、あの野郎! 『あぁ、いい揉み心地だよ圭一くん。レナちゃんの胸、意外と大きいんだね? 僕の手のひらにモチみたいな柔らかい感触をくれて……。 おまけに先っぽはもうピンピンさ。 コリコリとした感触が指にとても心地いいよ……あぁ、最高だねこのかぁいい乳首は。 それにね……君からは見えないだろうけど、じつはレナちゃんのお尻も揉んでるんだ。モミモミと揉み解しているんだよ。 こっちも大きいんだねぇ彼女は。 ムッチリとしていてとてもいやらしいお尻だよ……これなら将来、たくさん子供が産めるんじゃないかなぁ。 ははは』 レナの身体全体が見えなかった俺にとって、憎たらしい富竹が教えてくれる予想外の情報は、それだけでズキズキと胸をえぐられていくようだった。 レナが富竹に身体を触られている……好き勝手に弄られている。セーラー服の中から乳房をモミモミと揉まれまくり、おまけにお尻まで奴の手で揉みほぐされているらしい。 大好きな女の子が、モニターごしとはいえ目の前で犯されている……。 大人の男である富竹の手で、多少嫌がりながらも感じさせられていくレナの卑猥な姿……。 それを見ていた俺は……不覚にもこの光景に……興奮していた。 「どうだい? おっぱいとお尻を揉まれて、どんな気分だいレナちゃん」 「ん……へ、変なんです。 レナなんだか身体が熱くなって……でもこんなのダメだよぉ…」 「いいんだよレナちゃん、君はまだ圭一くんのことが好きなんだよ。 だからその気持ちは否定しなくていいから、身体だけでも……僕に預けてごらん?」 「はぅ……。 レナは圭一くんが好き……好きだけど、富竹さんにきもちよくされちゃう……」 富竹はいかにも偽善者ぶったことを言いながら、レナのかすかに残っていた抵抗を弱めていく。 あくまでも自分は君を慰めるだけ。 俺への気持ちを無理に否定させず、レナの身体だけを弄んでいくのだ。 なんて卑怯な野郎だ……。 調子に乗った富竹はついにレナのセーラー服を脱がせてしまい、ブラジャーもペロンと捲り上げてしまう。 綺麗なピンク色の乳首が見えていく。 かすかな興奮と共に、このかぁいい乳首をさっき富竹が弄りまわしていたことにムカムカとした感情が湧き上がっていった……。 「は、恥ずかしい……。 レナ、こんなこと初めてで、圭一くんともシタこと……」 「わかってるよ。 できれば彼に奪ってもらいたかっただろうけど、もうそれはできないよね? だから僕が優しく、もらってあげるよ……」 ささやくようにそう言うと、富竹はチュウッとレナの乳首に吸い付いていった。 吸い付いてしまった。 まだ誰の口にも触れられてないピンク色のそれが、男の欲望で汚されていった。 富竹はそのままチュウチュウと音が聞こえるほど強く吸うと、舌を使ってレナの乳首をペロペロ舐めていく。 ピンピンになった肉突起に、ヌラヌラと…奴の舌が汚らしく這い回っていく。 「あ、あん……富竹さん、レナ変なかんじ……おっぱいが、く、くすぐったいよぉ……」 「それはくすぐったいんじゃないんだよ……きもちいいのさ。 レナちゃんは処女のわりには感じやすいね? ここももうピンピンになっちゃってるし……」 「はぅ、そんなピンピンだなんて恥ずかしい……あぁ、そんなちゅうちゅうしちゃダメだよぉ……あぁぁ……」 あぁ……な、なんだよ、なんなんだよレナぁ! お、おまえどうしてそんなに感じて……はぁはぁ言って、顔を赤くしてんだよぉぉぉ! そんなに富竹の奴の舌はいいのかよ、なぁぁぁ? そ、そりゃあ……そりゃあこいつは俺なんかとちがって慣れてるだろう。 童貞の俺なんかとはちがって、何度も何度もセックスを経験しているだろうさ。 そりゃあ上手いだろう……。 普段あんな頼りない感じを見せてたって、やはりそこは成熟した大人の男。 そばに鷹野さんみたいな素敵な女性がいることが、何よりの証明だろう……。 でも……だからってそんな簡単に……こんな簡単に感じたりするなよぉレナぁぁぁぁ……。 『あははは。 ダメだよ圭一くん、レナちゃんを責めたら。 彼女は失恋した直後なんだ、無理もないだろう? こんな時の女性はとても寂しいものなんだよ……あの鷹野さんのような女性ですら、寂しさという感情にはとても弱いんだよ? だからこんなふうに……』 富竹は俺に語りかけながら、ふたたびレナの乳首を舌で舐め盗っていった。 ピチャリ…ピチャリ…とわざと音が出るように舌を動かし、そのかぁいい突起をジュポジュポと食べるようにも飲み込んでいく。 レナはそれをされるたび、あっあっ…とかぁいい声をあげていって……。 真っ赤な顔をして首をイヤイヤするあたり、本当は声なんてあげたくないのかもしれない。 だが富竹の口愛撫はよほどイイらしく、奴の舌で乳首をコロコロ転がされるたび彼女は喘ぎ声をあげてしまうのだ……。 「あっ、あっ……はぁう……ん、んぅぅ……あぁ……♪」 「ほぉら、どうだいレナちゃん。 おっぱいを舌で舐められるのはきもちイイだろう? 寂しい心なんて、身体の快楽がすぐに癒してくれるのさ……」 「お、おっぱいが、おっぱいがビリビリするよぅ……富竹さんの舌がヌルヌルしてて、指も……レナの恥ずかしいとこがビクビクしちゃいます……あん、あん……」 レナは言葉どおり、身体をビクビクさせながら富竹の舌愛撫にもだえていく。 しかも……今ようやく気がついたことだが、奴の手はレナの下半身の前あたりを触っているように見える。 さっきまでお尻を触っていたのだから、次に触るところといえば……まさか! 『うん、そうだよ。 悪いけど圭一くん、僕は今レナちゃんのスカートの中……どころかパンティの中にまで手を入れちゃってるんだ。 指でかぁいい割れ目を弄ってあげてるんだよ……』 それを聞いた途端、俺は愕然とする。 たしかにレナはさっきから乳首への愛撫とは別に、どこか腰をモジモジとさせているふしがあったが……。 じゃ、じゃあレナの恥ずかしいとこがビクビクってのは、つ、つまりあそこのことだったのかよ! あ、あの女の子の一番大事なところまで、もうすでに富竹に弄られまくってるってのかよ! ああそういえばレナの奴あきらかに気持ちよさそうだもんなぁ! たとえ乳首を責められたってこんな色っぽい声出すわけないと思ってたぜあぁあぁわかってた!!! それだけは俺は否定したくて……受け止めたくなくて……あえて無視してただけなんだ…。 想像したくなかった事実を突きつけられ、俺はただ意気消沈していくしかなかった。 だが奴はまたまたご丁寧に、自分が今レナにしている下半身への愛撫を説明していくのだった……。 『見えないだろうから教えてあげるね。 僕は今、指でレナちゃんのかぁいい割れ目を弄ってあげてるんだ。 スリスリスリって、処女だからもちろん優しくだよ? でも彼女はやっぱり感じやすいらしい、もうしっかり濡れているみたいだ。 僕の指にヌルヌルしたものをたくさん付けながらヒクヒクと震えているよ。 あはは、さすがにこれは聞こえないかな? レナちゃんの処女おま○こが、クチュクチュといやらしい音をさせてるんだけどなぁ……』 やめろ……やめろやめろやめろぉそんな音なんて聞きたくねぇそんな説明なんて聞きたくねぇぇ!!! い、いますぐ、レナの大切なところから汚ねぇ指を離せ……離しやがれぇこのクソ野郎ぉぉ……。 自分でもだんだんと弱まっていくのがわかる声を出しながら、俺はまたもや自分の醜い部分に気がついてしまった。 さっき確認したズボンの前が……更にパンパンに腫れあがっていたのだ。 俺は興奮しているんだ。 富竹に……他の男にレナが愛撫されちまっているというのに、性的な興奮を覚えてしまっているんだ。 なんて、なんて馬鹿な男だよ前原圭一……。 富竹の指先で割れ目をクチュクチュと刺激され、いままで感じたことのない快感にあえいでいくレナ……。 はぅはぅあんあん、変な感じだよぉ身体が熱いよぅ富竹さん……。 そんなふうに喘ぐレナをモニターごしに見ながら、聞きながら……情けなくもペニスをギンギンに勃起させているなんて……こんな最低男じゃあ、そりゃああっさり寝取られるわけだ…。 くそ、くそくそくそぉレナぁぁぁ! ああでもその顔かぁいいなぁくそぉぉ! 俺の大好きなレナの喘いでいる顔、息づかい! こ、これをせめて俺の手で出させてやれたら……うぅぅぅぅ…。 『あはははは、そんなにかわいそうな声を出さないでくれよ圭一くん、まったくしかたないなぁ……。 それじゃあ特別に、もっと君に見えやすい視点に変えてあげようか。 ちょっと待っててね……』 その富竹の声を遠くに聞いていると、突然、俺の目の前のモニターがパシュンと消えた。 ふたたびあの真っ暗な闇……それだけが俺の周りを埋め尽くしていった。 あんなにも見たくない光景だと思っていたのに、それがいざなくなると……途端にジリジリとした不安感が俺の胸を襲ってくる。 いま見えてない間に、もしかしてレナは富竹にもっとすごいことをされているんじゃ? すごいことどころか、もしかしたらすでに入れられてしまっていて、あんあん喘がされているんじゃ……? そんな嫌な妄想ばかりが頭の中を埋め尽くしていき、俺は発狂しそうなほどの苦しみに襲われていった。 あれほどやめてくれと願っていたのに、今度は早く見せてくれ……まさかこのままモニターは消えたままなのか……? じゃ、じゃあこのままレナは奴に……? あぁぁぁぁ!!!は、はやく! はやく俺にレナの姿を見せてくれ富竹ぇぇぇ!!! そんな……寝取られている相手に懇願までしてしまう始末にまで追い込まれていった。 だからようやく……ようやくそれが……といっても時間にすればほんの数秒後に、ふたたびモニターが点灯すると俺はとてもつもない安堵感に胸を撫で下ろしてしまった……。 「はぅ……恥ずかしいよぉ……。 と、撮らないでください……」 最初に俺の目に飛び込んできたのは……レナのどアップだった。 恥ずかしそうに顔を真っ赤にしているレナの顔が、モニターいっぱいに写しだされたのだ。 あきらかにさきほどとはちがったカメラ視点……。 というより、これはレナも気がついている撮影のようだ。 つまり彼女のすぐ目の前に、カメラが突きつけられている? そして俺はすぐに気づく。 気がついてしまう。 前にもこんな視点の映像を見たことがあることに……。 それは昔、親父の部屋で見つけたアダルトビデオの映像だった。 そのAVはいわゆる普通の男優、女優、カメラマンという、三人以上の撮影で繰り広げられるものとはちがっていたものだった。 男優と女優……というか、男と女の二人だけで撮影されているアダルトビデオだったのだ。それは俗にいう、ハメ撮りと呼ばれるものだった……。 男が片手にビデオカメラを持ちながら、女の感じる姿をすぐ目の前で撮影していく。 女が愛撫されているときの表情も、挿入している時……した後の表情もバッチリと目の前で撮れる、おもしろい視点のビデオだったのを憶えている。 そしてそのハメ撮りというジャンルに興奮したのも……憶えている。 ということは、これはさっきまでのベッドやそこらからの映像ではなく、富竹が手に持っているカメラからの視点……? レナの恥ずかしい、撮らないで…という言葉が何よりもその事実を忠実に物語っていた…。 「ダ、ダメだよぉ富竹さん……こんなところ撮られたら、レナ恥ずかしくて死んじゃいそうです……」 「あはは、やっぱり恥ずかしいかい? まあ僕はフリーなカメラマンだからね。 かぁいいレナちゃんの姿、これでバッチリ撮らせてもらっちゃおうかな?」 く……と、撮らせてもらっちゃおうかなじゃねえ! て、てめえは……てめえって奴は、こんなことまでしてレナを辱めようってのかよ、く、くそがぁぁぁぁ! こんなの撮られたら、女の子はもうお前の言いなりってことじゃねえかよくそぉぉぉおおぉぉぉ!!! ……ああでもやっぱかぁいいなレナレナ俺のレナ。 画面いっぱいにレナのかぁいい顔があって、ウルウルした目も火照ったほっぺもすげぇかぁいいよぉぉぉあぁちくしょぉぉぉ!! こ、こんなかぁいいレナが……これから富竹の野郎に、ハ、ハメ撮りされる? レナの処女ま○こにチン○をハメられちまうってのかよなぁおいぃぃぃぃぃ!!! 身動きが取れないながらもう~う~もがく俺の耳に、またもや奴の憎たらしい声が聞こえてくる。 撮影している時にも俺に語りかけられるなんて……あぁ、たしかにあんたはたいしたカメラマンだなぁぁぁくそがぁぁぁぁ!!! 『まぁまぁ圭一くん落ち着いて。 約束したよね?レナちゃんのことをよく見せてあげるって……。 ちゃんと見せてあげるからね? 僕はこれでも優秀なカメラマンなんだよ、はははは』 また沸々と奴に対しての怒りが沸いてくるのを感じながら、俺はモニターの映像を食い入るように見つめていった。 画面がいかにも人の手で撮影されているとわかるようにブルブル揺れていき、かぁいらしいレナの顔がスっと消えていく。 細い首筋を通り越して、そのまま胸の方へ……。 もうすっかりピンピンになってしまっているピンク色の乳首が、カメラのすぐ目の前で撮影されていった。 モニター画面がレナのかぁいらしいおっぱいで埋め尽くされていく……。 「は、はぅぅ! ダメダメダメぇぇ富竹さんのエッチ! そんなとこ目の前で撮っちゃダメなんだよぉぉ……」 「あはは、ごめんごめん。 あんまりにもレナちゃんの乳首がかわいらしかったから、ついシャッターチャンスだとばかりにね? それにしても綺麗だねー、これは撮影しがいがあるよ」 「でも! あ、あん! ダ、ダメぇそこ弄られたら……あん、あん、んぅぅ……♪」 さすがに乳首なんて撮影されたら、そりゃあレナも恥ずかしいだろう。 当然嫌がる。 ……と思っていたのに、レナはあっさりと富竹の撮影を受け入れてしまった。 ダメダメという言葉があっさりあんあんという喘ぎ声にかわり、いやらしい乳首がカメラのレンズに張り付いてしまうほど超至近距離で撮影されてしまっている。 画面にはそのいやらしく震える乳首しか映し出されていないので、レナの喘ぎ声しか聞こえないが……俺にはすぐにわかった。 なぜ抵抗を止めたのかが。 また奴に『下』を弄られているのだ。 レナの喘ぎ声の中に、かすかだがクチュクチュと…水っぽい音が聞こえてきている。 つまり富竹は、この最中にもレナの割れ目を弄り倒しているのだ。 レナが恥ずかしがるのを見ながら勃起乳首を撮影し、彼女が拒むとすかさずおま○こを指で刺激し黙らせる……。 な、なんて……なんて計算し尽くされた愛撫しやがるんだくそがくそがくそ野郎がぁぁぁぁ! お、女の身体をなんだと思ってやがる! 特にレナみたいな純真な子にはそんなふうにヤっちゃいけねえだろうがよぉぉぉちくしょぉぉぉぉ!!! しかもこんな時にもなに俺はビンビンにさせちまってんだ最低野郎がぁぁぁぁ!!!! く、くそぉ、うらやま……。 それだけは言ってはいけない言葉だと思い、俺は心の中のその声をグッとガマンした。 そしてそんな俺のガマンとは裏腹に、富竹はついに下の方に……俺がもう気になって気になってしかたなくなっていた、レナの下半身へとカメラを向けていった……。 - フリーなカメラマン 生本番 ~ネトラレナ~に続く……。
https://w.atwiki.jp/nicorpg/pages/244.html
富竹の技「富竹フラッシュ」、「角材ホームラン」、「機関車トミー」の元ネタ。 波動の極意書の名称元ネタとも考えられるが定かではない。 ひぐらし原作者の竜騎士07氏と技術力の高さで定評のある同人サークル黄昏フロンティアが共同開発して作られたゲーム。略して「ひデブ」などと呼ばれる。 3Dで作られたフィールドを舞台に2対2で戦う対戦アクションゲームで、ネット対戦も実装されている。 操作はカプコン開発、バンダイ発売のアクションゲーム「機動戦士ガンダムVSシリーズ」に近い。 同人ゲームだが、キャラの声優にドラマCD版と同じ声優を起用したというかなり豪華な作り。 「ひぐらしデイブレイクPortable」としてPSPでの発売が決定。 アニメの声優とほぼ同じだが、赤坂役の声優は小野大輔氏でなくドラマCDの子安武人氏である。(PSP版では小野氏に変更された。) 登場するキャラのセリフや技、称号は声優ネタや漫画やアニメ、ゲームのパロディ満載である。(詳しくはこちら) +... 確定情報ではないが、機関車トミーの戦闘アニメで富竹が走るドット絵は「ジョジョの奇妙な冒険~未来への遺産~」のジョセフ・ジョースターの走りモーションと似ており、上記の声優ネタから参考にしたのかもしれない。
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/559.html
まず最初に放たれたのは、龍の神威とも呼ぶべき空震だった。 蘆屋道満が取り込んだ龍の心臓。 大元である龍脈の龍は斯様な能力は有していなかった。 しかし今、その力・性質を担うのは天下にその悪名轟き渡る法師道満。 神は祀り、鎮めるもの。拝跪し、畏れ、敬うもの。 正しく祀り、収め、人にとって都合のいい福音を吐き出す存在に零落させるのは陰陽師の仕事の一つだ。 道満が今しているのもそれに似ていたが、しかし度合いで言えば数段は冒涜的だった。 何しろ彼は今、龍脈の龍という原典を単なる炉心としか見ていない。 龍の心臓を荒駆動させて余剰を濾過して力のみ引きずり出し、その上で自らが望む容(カタチ)に無理やり当て嵌め酷使している。 「なりませんな、神へ刃を向けるなぞ失敬千万。ゆえ罰を与えましょうぞ――このように」 その結果として生み出されるものは、付近一帯を更地に変えるほどのエネルギーの炸裂だった。 空震。いや、もはや魔震とすら呼ぶべきか。 地脈に眠る龍ならばこれくらいはして貰わねばという身勝手極まりない増長と願望が現実の悪夢と化して形を結ぶ。 直撃すればサーヴァントであろうと五体が拉げる一撃に、九頭竜討伐に名乗りを上げた三人は素早くそして利口に対応した。 「門よ」 アビゲイルの片手にいつの間にか握られていた巨大な鍵。 それが虚空へ、他者を主とする領域の内である事なぞ知らぬとばかりの我が物顔で潜り込む。 ガチャリと鍵穴の回る音がした。 次の瞬間、虚空が宇宙とも暗闇ともつかない無明の冒涜を記した口蓋を開ける。 龍神の生んだ震動はそこへ呑まれ、アビゲイル及び最も対抗手段に乏しい伏黒甚爾を魔震の脅威から遠ざけた。 一方で救済策から外された宮本武蔵は動ずるでもなく迷わず直進。 震動という形のない脅威の輪郭を捉えているかのように過たず、桜舞う剣閃でこれを切り裂く。 壮絶な破砕音は万象呑み込む龍の怒り――リンボが斯くあれかしと捏造した偽りの神威が粉砕された音に他ならない。 「とんだ悪食ね。ゲテモノ食いも大概にしなさいな」 「これはこれは…いや、素晴らしい。神明斬りとは。原初斬りの偉業は大層実になったようで」 第一陣は突破。 しかしリンボの顔に焦りはない。 人を小馬鹿にしたような微笑みを湛えながら拍手の音色を空ろに響かせている。 「まぁそれも詮なき事か。下総に始まり希臘に至るまで、随分と入れ込んでおりましたものなあ。 どうです。なかなかどうして心地良いモノでしょう? 誰かの心に消えない傷を残すという所業は」 悪意の言葉を吐きながらけしかけたのは、祭具殿の残骸から浮上した髑髏の怨霊だった。 武蔵の脳裏を過るのは下総の国にて、過去にこの陰陽師が呼び出し使役した名無しの大霊。 成程確かに土地も合っている。 此処は東京、古今東西あらゆる武士の魂が眠る場所。 界聖杯により再現された熱のない贋作だとしても、見る者が見れば因果因縁に溢れた絶好の畑だ。 峰津院大和が其処に着眼し霊地の獲得に舵を切ったように。 この厭らしい陰陽師も彼に学び、土地そのものを武器に変えた。 「勘違いしないで頂戴な。今此処にいる私は、あの子のサーヴァントではないの」 それに対して武蔵は驚きすらしない。 過去を、今はもう瞼を閉じて思い馳せるしか出来ない遠い記憶を。 あえてなぞる事で心を削りに来るなんていかにもこの生臭坊主がやりそうな事ではないか。 だから、かつて世界を救う旅路に力添えした人斬りの女は毅然と答えた。 「大業を遂げ、空にも至り。後は泡と消え去るだけの亡霊なんか引き寄せてしまった娘が居るのよ。 私が今こうして剣を握り、貴方に挑んでいる理由はあの子の為。他の誰の為でもないわ」 そういう意味では似ていると思う。 身の丈に合わない運命と宿命を背負わされて、それでも業に呑まれることなくもがき苦しむ女の子。 …だからかと少し納得した。 だからこんなにも彼女の下で振るう剣は手に馴染むのだ、きっと。 「それに…消えない傷を残されたのは何も私だけじゃないでしょう。 貴方がこんな辺境の戦に参戦しているなんて、つまりそういう事としか考えられないものね。異星の神の尖兵さん」 「ンン!」 迫る大霊の腕。 精神を冒し魂を穢し凶死させる呪詛はしかし、かつて相見えた真作に比べれば数段も劣る紛い物。 ――遅い。そして浅い。 ならば一体何を恐れろというのか。 新免武蔵、ただ前へ。 そして振るう、桜花の太刀。 怨念一閃。 宿業両断。 刹那にして辺獄の大霊を斬殺し、主であるリンボの首に向け白刃を迸らせた。 「…ええ、認めましょう。この拙僧……御身亡き後、あの小娘めに敗れ去った。 蜘蛛糸の如き奸計は水泡と帰し、正義を気取る若僧の黄金の前に確かに爆散しました」 下総の時とは比べ物にならない太刀の冴え。 神を斬り混沌を斬り桜花に触れて磨き上げた一刀はまさしく真打。 触れれば断つ。 触れずとも斬る。 今、新免武蔵は間違いなく剣豪として一つの極点に達している。 だが。 「です、がァ――」 粘つく悪意が清らかなものを阻む。 神の瘴気か龍の神気か。 リンボは今、武蔵の一刀をその右手一つで阻んでいた。 武蔵の眦が動く。 これほどか。 これほどまでに極まったか、悪党。 その絶句に応えるように肉食獣は牙を剥いた。 「悪党とは懲りぬもの。業とは決して癒えぬもの。 この拙僧、生憎と諦めの二文字を知りませぬ。卒業の二文字を知りませぬ。 ましてやそこにかくも芳しく香る災禍の予兆があるというのに、一体どうして伸ばす手を止められようか!」 「づ…!」 炸裂する神気が武蔵の体躯を軽々弾き飛ばす。 防御も迎撃も許さない一撃は最初の魔震が単なる小手調べに過ぎなかった事を物語っていた。 その隙を突くべく、音速にすら迫る速度で走るは天与。 無策の突撃ではない。 彼は確かにこの場に揃った三者の中では最も能力で劣っていたが、しかし己しか持ち得ない強みを自覚していた。 一つは言わずもがな呪力の不所持による透明化。 迎撃一つするにも視覚での認識と反応を要求する点。 そしてもう一つは、抜く事さえ許されれば天衣無縫と呼ばれるモノにさえ届く呪具の数々を有している事。 “釈魂刀の斬撃はあらゆる防御を参照しねえ。龍だろうが羅刹だろうが触れれば斬れる” リンボの冷眼が甚爾を捉える。 だが軌跡だけだ。 本気の甚爾はサーヴァントの視覚など容易に振り切る。 現にこの場には彼を対象にしたと思しき束縛の呪詛が溢れていたが、それら諸共に斬り伏せて進む武蔵、自前の術で対処できるアビゲイルとは違い、甚爾は単純に脚力に任せてそれを引きちぎり進んでいた。 残像を認識するだけで精一杯の高速移動を繰り返しながら、鎌鼬宜しくすれ違いざまリンボの首をなぞらんとする。 しかし禍津日神を僭称する悪神道満は――それさえ一笑。 「曲芸で神が獲れるものか」 速く動く蝿を箸で捕らえようとするから苦労する。 蝿を潰したければ、炎を焚いて燻り殺せばいいのだ。 「目障りな猿には、どれ、毒など馳走してみよう」 次の瞬間。 甚爾は自身の生命力が肌から霧散していくような得体の知れない感覚に襲われた。 黒き呪力が霧のように、それでいて花畑を舞う蝶のようにリンボを中心に溢れ出している。 “呪霊とは違うな。神霊の類…それも日本のものじゃない。吸い上げて弱らせる黒曜色の呪力と来れば――” 甚爾は呪力を持たない。 だからこそ体力を削られる程度で済んだが、これがアビゲイルや武蔵であったならそうは行かなかったろう。 これは純粋な生命力だけでなく魔力も呪力も…とにかく対象が内包しているありとあらゆる力を吸い上げる貪食の呪いだ。 ましてや高専の等級で換算すれば間違いなく特級相当だろう神の吸精だ、生易しい訳もない。 事実甚爾でさえ数秒と長居すれば致死域まで削られると、あの僅かな時間でそう確信した程だった。 「南米。アステカ辺りか?」 「ほう。知識と見る目はなかなかどうして」 「ゲテモノ食いの神が人間の成れの果てに喰われたか。皮肉なもんだな」 甚爾の推理は当たっている。 蘆屋道満がその霊基の内に取り込んだ神の一体。 暗黒神イツパパロトル。 太陽の楽園にて黒曜石の蝶を侍らせたアステカ神話の女神。 奪い、平らげる事をあり方の一つとして持つ神も今は悪僧の腹の中。 ハイ・サーヴァント…リンボの素性を一つ見抜けたのを収穫として甚爾は利確する。 纏わり付く蝶を撒いて後退しながら、追撃に放たれた黒炎の狐数匹を撫で切りにした。 「侍。オマエ、あの生臭坊主と知り合いみたいだな」 「ええ。知り合いというより宿敵ね。やり口は嫌という程知ってるけど、足しになるような情報はあんまり」 「アイツは神霊の核を取り込んでやがる。可笑しいと思ったぜ、只の坊主にしちゃ幾ら何でも出鱈目すぎるからな」 「…マジ? うぇえええ…悪食にも程があるでしょそれ……」 蘆屋道満は確かに優れた術師である。 生前の段階ですら、かの安倍晴明が認めた程の力量を持った法師であった。 しかしこの界聖杯で跳梁跋扈の限りを尽くすこの"リンボ"は、それにしたってあまりに節操がない。 単なる術師としての優秀さだけでは説明の付かない不可思議を幾つとなく引き起こしていた。 サーヴァントの領分を超えた生活続命法。 話に聞く窮極の地獄界云々とて、明らかに真っ当な英霊では不可能な無茶を通す事を前提とした野望だった。 不可思議とは思っていたが、蓋を開けてみれば何という事もない。 最初から真っ当な英霊などではなかったというだけの事。 「別人格(アルターエゴ)とはよく言ったもんだ。その時点で気付くべきだったな」 「情報提供感謝するわ。本当なら私の因縁、一対一で果たしたい気持ちはちょっとあるんだけども」 「其処は諦めてくれ。ウチのクライアントもアレには恨み骨髄でな、絶対ブチ殺して来いと仰せなんだわ」 それに、と甚爾。 言葉の続きを待たずして無数の羽虫が空を埋めた。 まるでそれは黒い暴風雨。 聖書に語られる蝗害の悪夢のように、狂乱した陰陽を喰らうべく異界の眷属が狂喜乱舞する。 「な、この通りだ。俺としては生臭坊主の処断なんざ誰がやっても構いやしねえんだが」 虚ろな顔に、仄かな笑みを浮かべて。 鍵を指揮棒(タクト)に捕食を主導する金毛の巫女。 羽虫の群れが払われた途端、次は触手が這い回る。 波濤の勢いで溢れて撓るそれは鞭のようにリンボを打擲する。 英霊一人原型残さず砕き散らす事など容易なその波が、ケダモノのシルエットを呑み込んだ。 「あは」 恍惚と法悦を虚無の中に織り交ぜて。 嗤う幼さは妖艶なる無垢。 其処には既に、透き通る手の女が生きていた頃の彼女の面影はない。 無垢に色を塗り。 清廉に別れを告げ。 信仰の形さえ、歪みと無念の中に溶かした降臨者(フォーリナー)。 「教えてあげるわ。色鮮やかな悪意のあなた。 私の祈りが、満たされることを知らないあなたの秘鑰になればいい」 異端なるセイレム。 この結界のベースになったある寒村に酷似した穏やかで残酷な村に生まれ落ちた魔女の卵。 最愛の主との離別と、彼女を思う人間への負い目。 そして渦巻く怒りと後悔を肯定された事が卵の殻に亀裂を入れた。 いざ此処に魔女は産声をあげる。 救うと豪語しながら痛みを振り撒く矛盾の魔性。 彼女の鍵が天高く掲げられ、次の瞬間駄目押しに触手が落ちてきた。 「イブトゥンク・ヘフイエ・ングルクドゥルゥ」 紡がれる冒涜の祝詞。 祝福と共に墜落した大質量はリンボの全身を余す所なく押し潰し圧殺するに十分な威力を秘めている。 質量による力押し。 神を潰すならば同じ神を用いればいいのだと、幼い故の直情的発想が此処に最上の形で具現化した。 だが―― 「急々如律令」 触手の真下から響く声がある。 刹那、彼を覆う触手の全てが爆散した。 姿を現すは禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満。 血の一滴も流す事なく悠然と佇む姿は、まさに神の如し。 「素晴らしきかな、そして美しきかな虚構の神よ。 それもまた拙僧が描く地獄の理想像の一端を体現しておりますが…」 アビゲイルが鍵を振るう。 リンボが爪を振るう。 火花を散らしながら削り合う異端と異形。 一見すると互角に見える。 だが、明らかに余裕が違った。 じゃれつく子供とそれをあやす大人のような。 そんな、努力と工夫では埋め難い絶対的な差が両者の間には垣間見えている。 「遅きに失したな外なる神。全にして一、一にして全なる貴殿。 人と神の混ざり物、成り立ての魔女如きではあまりに役者が足りぬよ」 空を引き裂く神の手足。 それは確かにリンボの腹に着弾した筈だった。 にも関わらず、極彩色の獣は揺らぎもしない。 たたらさえ踏む事なく、素面の耐久のみで受けてのけた。 もはや物理においてすらリンボに隙はない。 耐久無視の釈魂刀のような例外を除けば皇帝、混沌…その領域に入って初めて痛痒を与えられる次元。 まさに怪物。まさに悪神。 背後に背負った骸の九頭竜が、瘴気を撒き散らしながらその顎を大きく開ける。 「吠え立てよ、龍よ」 「――っ」 零距離での龍震の炸裂。 咄嗟に防御の為の触手を呼び出しはしたものの、それでも巫女の痩躯は無残に吹き飛んだ。 桃色の唇を、真紅の血が艶かしく濡らす。 「とはいえ一時は拙僧を魅了した全知の門。その神聖に敬意を示し――ンンンン! 大盤振る舞いにて見送りましょう!!」 リンボはすぐさま追撃の為、総数にして数百にも達する呪符を出現させる。 アビゲイルを取り囲む紙々の舞。 それは宛ら紙の監獄塔だ。 しかしその用途は戒めに非ず。 捕らえた罪人を、祓われるべき悪徳を消し飛ばす抹殺の法に他ならぬ。 …銀の鍵の巫女は空間を超える権能を持つ。 故に監獄ではアビゲイルを捕らえられない。 だがそれが彼女の為の処刑場であり火葬場であるならば―― 「破ッ!」 巫女が空間を脱けるよりも、妖術の極みのような火葬塔が焦熱地獄と化す方が早い。 強化された霊基でも耐える事はまず不可能だろう超高熱の檻の中に取り残されたアビゲイル。 そんな彼女を救い出したのは、既の所で塔そのものを一刀両断した宮本武蔵であった。 「ありがとう、お侍さん。危ない所だったわ」 「そういうのは後! 今はとにかく目の前のアレを何とかしましょう。 言っておくけれど、首を取るのは早いもの勝ちよ。私も私であの御坊には煮え湯飲まされてきたんだから」 「勿論。恨みっこなしで行きましょう」 邪魔をするなとばかりに武蔵へ迸った魔震。 それを今度は、アビゲイルが触手を数段に折り重ねた防御壁を形成する事でカバーする。 暴穹の飛蝗を思わす勢いと密度で敵を喰らう羽虫を召喚する巫女に、女侍は相乗りする事を選んだ。 羽虫の波に身を沈ませ、自身の気配や魔力を彼らをチャフ代わりにして隠蔽。 リンボの感覚の盲点に潜り込みながら天眼を廻し一斬必殺の斬撃を叩き込むべく颶風と化す。 「流石は音に伝え聞く二天一流。節操のない事よ」 嘲りはしかし侮りに繋がらない。 リンボは知っている、二天一流の強さと恐ろしさを。 手塩にかけて拵えた英霊剣豪を討ち倒し、己が陰謀を砕いた忌まわしき女。 結果的にリンボが彼女と再び相対する事はなかったが。 依然としてリンボは自身に引導を渡した黄金のヒーローよりも、この麗らかな人斬りの方をこそ真に厄介な敵だと認識していた。 「であればどれ、拙僧は大人げなく行きましょう」 だからこそ油断も慢心も捨て去る。 格下が相手なら隙も見せよう、驕りも覗かせよう。 だが天眼の光、死線を駆ける女武蔵の冴えが相手となれば話は別だ。 リンボの周囲に顕現する無数の光球。 臓物に似た悍ましいまでの赫色を宿したそれは、魔と呪をありったけ練り込んだ呪符を核に造られた即席の黒い太陽だ。 太陽だけで構成された闇の星空。 それが芽吹くように感光するや否や、数にして千を優に超える数の光条が全方位へと迸った。 「「「――!」」」 そう、全方位だ。 波を形作る羽虫を鏖殺しつつ其処に潜んだ武蔵を狙いつつ。 今まさに新たな触手を呼び出そうとしていたアビゲイルを撃ち抜かんとし。 背後から迫っていた甚爾に対してもその五体を蜂の巣に変えんと光を放つ。 さしずめ凶星の流星群。 掠めただけでも手足がちぎれ飛ぶ星の追尾光も、今のリンボにとっては単なる余技の一つに過ぎない。 その証拠に―― 「凶風よ、吹けい」 漲り煮え立つ呪の風が、災害そのものの形で吹き荒れる。 凶兆、凶象…その全てが今やリンボの思うまま。 そんな呼吸するだけでも死に直結する地獄絵図の中でも、しかし天与呪縛の男は流石だった。 呼吸を完全に断ちながら風圧を引き裂いて吶喊する。 間近まで迫った上で振るう刀身は、速度でなら武蔵の振るう刀にすら決して引けを取らない。 術師殺しはは技の冴えを重要視しない。 剛力を載せて超高速で振り抜く、効果的な斬撃を放つにはそれだけで充分なのだから。 だが…… 「ンン。まさに、馬鹿の一つ覚えよな」 リンボは当然のように刃の軌道を見切りながら、己に迫る死に対して笑みを浮かべた。 この男ならば来るだろうと思っていたからだ。 そしてその上で待ち受けていた。 煮え湯を飲まされたままでいる程癪に障る事もない。 “――カウンターか? いや…” 訝む甚爾だったが、その疑問に対する答えはすぐに出された。 リンボの背後。 九つの龍骸が並ぶ向こう側に、絶大な存在感を放つ黒い人形が立ち上がったのだ。 呪霊操術という術式がある。 読んで字の如く、呪霊を操り使役する術式だ。 極めれば呪霊の軍隊を率いての国家転覆すら不可能ではない、数ある術式の中でも容易に上位一握りに食い込むだろう規格外の力。 甚爾はかつてその使い手と相対し、その上で正面から打ち破っている。 だがその彼をしても――今リンボが出した"これ"は、呪霊だの祟り神だのとは全く格の違う存在であると断言出来た。 「黒き太陰の神。名をチェルノボーグと言いまする」 チェルノボーグ。 それはスラヴ神話に語られる、夜、闇、不幸、死、破壊…あらゆる暗黒を司る悪神。 呪霊等とは次元が違う。文字通り世界そのものが違って見える程の隔絶感があった。 「猪口才な猿の曲芸、存分に試してみるが宜しい」 次の瞬間、甚爾は強烈な衝撃の前に吹き飛ばされた。 ただ飛ばされたという訳ではなく、不可思議極まる力で以て殴り飛ばされたに等しい。 即座に跳ね起きようとする彼の頭上に影がかかる。 見上げればそこには既に巨腕を振り下ろすチェルノボーグの姿があり、甚爾は釈魂刀を盾に受け止めるしかない。 真上から押し寄せる衝撃と重量は如何に彼が超人と言えども涼しい顔で受け切れる次元ではなかった。 骨肉が軋む。皮下の血管がブチブチと千切れていくのが分かる。 游雲を抜いていなかった事を悔やむ甚爾は身動きが取れず、それを良い事にリンボが迫った。 「ンンンンン! 無様!」 「ッ……!」 繰り出す掌底。 掌に呪符を貼り付けて放つ一撃は甚爾の内臓を容易に破砕した。 腹を消し飛ばされなかったのは咄嗟に身を後ろに引き、どうにか直撃だけは避けた機転の成果だ。 それでも完全に威力を殺し切る事は出来ず、粘り気の強い血を吐いて地面を転がる。 「死ねェいッ!」 肝臓と脾臓が砕け散ったのを感じながらも甚爾の動きは迅速だった。 地を蹴り真上に逃れる。 地面を這う呪の濁流に呑まれるのを防ぐ為だ。 だがそれすら知っているぞと嗤いながら、リンボの呪符が付き纏う。 呪具を切り替えるには状況が悪い。 多少の被弾は承知の上で、刀一本で全て斬り伏せるしか甚爾の取れる選択肢はなかった。 呪符に描かれた目玉が赤く輝き…そして。 「…!」 伏黒甚爾の脇腹が弾けた。 飛び散る鮮血。 優越の笑みを浮かべるリンボ。 しかし追撃は成せなかった。 流星群を斬り伏せながら猛進してきた女武蔵が、呪符数百を鎧袖一触に薙ぎ払って剣閃を放ったからだ。 「おぉ、怖い怖い。流石は宿業狩り。七番勝負を踏破した恐るべき女武蔵と言う他ない」 既に武蔵の剣は鋼の銀色を超克している。 夜桜の血と繋がり、真打の桜に至った事を示す桜色の太刀筋。 剣呑さは美しさに幾らか食われたが、それは脅威度の低下を意味しない。 寧ろ真逆だ。 宿業両断はおろか、神と斬り結んだギリシャ異聞帯の時分よりも彼女の太刀は遥かに高め上げられている。 「神の分霊になぞ頼っていられぬ。貴様の相手は、この拙僧が手ずからしなくてはなァ」 この場において最大の脅威は間違いなく新免武蔵である。 リンボはそう信じていたし、だからこそ彼女に対しては一切驕らなかった。 イツパパロトルやチェルノボーグに頼るのではなく自らが出る。 それは裏を返すまでもなく、禍津日神たる自分自身こそが最大の戦力であるという自負ありきの行動に他ならず―― 「はああああああッ!」 「ンンンンンンン!!」 そして現にリンボは、一介の法師でありながら空の極みに達した剣豪と接近戦を演じる離れ業を実現させていた。 用いるのは自らの呪と、遥か異郷の地で会得した仙術。 無敵の自負を抱くに十分なそれらに加え龍脈の力で更に倍率をかけた肉体だ。 三位一体の自己強化はリンボを真の魔神に変える。 現に彼より遥かに技巧でも速さでも勝る筈の武蔵だが、その顔には三合ばかりしか打ち合っていないにも関わらず既に苦渋の色が滲んでいる。 “此処まで高めたか、蘆屋道満…!” 重い。 硬い。 先に斬り伏せた大霊はおろか、伏黒甚爾を吹き飛ばした神の分霊とすら格が違う。 オリュンポスで目の当たりにした機神達にも比肩、ないしは上を行くだろう重さと硬さは悪い冗談じみていた。 「硬いでしょう。それも当然。 鉄囲山の外鎧。そして僧怯の大風…これなるは法道仙人めより掠め取った仙術の粋。 ンン、感じますぞ。これまでの巡り合わせ、鍛錬、試行錯誤! そのすべてが拙僧を野望の高みへ押し上げてくれている!」 「らしくない台詞はやめて頂戴、槍が降るわ。どうせ最後はすべて踏み潰してしまうんでしょう?」 「当然。並ぶモノなき久遠の地獄絵図を描き上げ、万物万象へ阿鼻叫喚の限りを馳走する事。それこそが拙僧の伝える感謝の形なれば」 「でしょうね! 相変わらず、救えないヤツ…!」 迫り合いを長く続ければ腕が砕ける。 現に今のだけでも、武蔵の右腕は罅割れていた。 にも関わらず戦闘を続行出来ている理由は、古手梨花から流れてくる夜桜の力。 初代夜桜との同調を果たした梨花は武蔵にとって、劇的なまでの力の源泉と化していた。 片手の骨折程度の傷ならば忽ち癒せてしまうくらいには。 これでも武蔵に言わせれば十二分にズルの境地だというのに、初陣がこんな怪物となればそれも霞んでしまう。 リンボの徒手を桜花の刀で防ぎ。 隙を抉じ開けて刺突を七つ。 それを凌がれれば本命、左右同時の逆袈裟二刀撃。 神をも斬り裂く剣を呪符が阻み、役目を終えたこれが音を立てて爆裂する。 「づ…!」 熱波を直に浴びて顔が焦げる。 癒えていく最中の視界でリンボの背後に、剣を携えた黒い女神が立ち上がるのを武蔵は見た。 「そうれ、隙あり」 イツパパロトルの一閃を止めた瞬間、武蔵は悪手を悟る。 “そうか、こいつ…黒曜石の……!” 黒曜石の蝶を侍らす楽園の導き手。 その剣も当然、強力な吸精能力を宿しているのだ。 手足の力が拔ける。 分霊とはいえ神は神。 夜桜の力さえ上回る速度での吸精に、武蔵の手足から力がガクリと抜けた。 「――唵!!」 禹歩で呪の効力を高め真言一喝。 武蔵が瞠目した。 見えなかったからだ。 見切れなかったからだ、リンボの歩みを。 その代償として真紅の呪が武蔵の総身を丸呑みにする。 咄嗟に刀を構え、二天一流の手数を活かして切り裂き即死は逃れたが、しかしこれさえリンボにとっては予測の内。 当然。 相手は新免武蔵。 神に逢うては神を殺し、仏に逢うては仏を殺す悪逆無道の英霊剣豪を撫で切りにした人斬りの極み。 猿を殺し巫女を封殺できる程度の業で屠れるのならばあの時苦労はしなかった。厭離穢土は遂げられていたのだ。 「等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱、大焦熱、無間――」 怖気の走る詠唱は祝詞ですらない。 それは列挙だ。 人が悪業を抱えて死ねば堕ちるという死後の形、その形相の羅列。 武蔵としても聞き覚えがあるだろう名前も幾つかあり、だからこそ彼女は其処から特大の不吉を感じ取らずにはいられなかった。 「――デカいのが来るわ! 各々、死ぬ思いでなんとかして!!」 武蔵が叫んだ事にきっと意味はなかった。 甚爾もアビゲイルも、その時には既に彼女同様嫌な予感を覚えていたからだ。 呪いが渦を巻く。 冒涜が練り上げられる。 地獄が形を結ぶ。 衆生が住む閻浮提の下、四万由旬の果てへと堕ちる奈落の旅路が幕を開ける。 「堕ちよ――――遥かな奈落、八熱地獄へ!!」 名付けて八熱地獄巡り。 呪の限り、熱の限りがのどかな村の一角を吹き飛ばして三騎の英霊達を焼き払った。 これこそがアルターエゴ・リンボ。 否、禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満。 髑髏烏帽子ならぬ戴冠新皇。 九頭竜を従え。 黒き神を喰らい。 盟友を侍らせ。 そして呪の限りを尽くす、極彩色の肉食獣。 故にその理想の具現たる八熱地獄はすべての英霊にとって致死的なそれ。 逃れられる者など居ない――普通なら。 しかし忘れるな、リンボよ。 しかし侮るな、蘆屋道満よ。 この地に集い、熾烈な予選と数多くの激戦を潜り抜けて二度目の朝日を拝んだ者達はそう甘くない。 その証拠に。 八熱地獄の赫を引き裂きながら現れたのは、アビゲイルが行った再びの宝具解放により呼び出された触手の渦であった。 「ぬ……!?」 リンボが瞠目する。 今のは確かに渾身の呪を込めた一撃だった。 視界に入る全て、猿も巫女も人斬りも皆々焼き払う心算の大地獄だった。 だというのにこの小娘は。 よもや―― 「馬鹿な…有り得ぬ! アレを……あの熱量を内から食い破っただと!?」 「駄目よ、東洋のお坊さま。地獄(インフェルノ)だなんて僭称したら、神様もきっとお怒りになるわ」 「ほざけ小娘がッ! この拙僧に地獄の何たるかを語るか!!」 規格外の事態に唾を飛ばすリンボ。 その傲慢を窘めながら、アビゲイルは八熱地獄の火力を破って尚余力を残した触手で彼が展開した呪符を悉く押し流した。 殺到する触手は一本一本が外なる神の触腕。 格で言えばリンボの扱う黒き神々にすら勝る絶対と無限の象徴。 さしものリンボも冷や汗を流し、件の二神を顕現させて足止めに使う。 チェルノボーグ、イツパパロトル。 強さで言えば流石の一言。 アビゲイルの宝具解放をすら押し止める働きを果たしていたが、攻防の終わりを待たずして動く影がある。 「手酷く言われたわね、リンボ」 「ッ――新免、武蔵ィ!」 「百聞は一見に如かず。地獄の何たるか、自分の眼でしっかり見て来なさい」 花弁と共に駆けるは武蔵。 神速の太刀筋は今のリンボなら決して対応不能のそれではない。 だが、だが。 アビゲイル・ウィリアムズ、銀の鍵の巫女の無限に通ずる宝具を相手取りながらでは話も変わる。 「…急々如律令!!」 リンボが選んだのは武蔵に取り合う事の放棄。 今や此処ら一帯が己の陣地と化しているのを良い事に地へ埋め込んだ呪力を地雷宜しく爆発させた。 そうして武蔵の進撃を無理やり押し止めつつ、自分は宙へと逃げる。 二柱の黒き神は強力だ。 普通ならばサーヴァントの宝具解放が相手であろうと押し負けはすまいが、しかし今回の相手はアビゲイル・ウィリアムズ。 すべての叡智とすべての空間へ繋がる"門"の向こう側に坐す"全にして一、一にして全なる者"の巫女。 彼女に限っては万一の危険性が常に同居している。 だからこそ念入りに、抜かりなく。 最上の火力で以って相対さねば、禍津日神と化した今の己でさえ予期せぬ一噛みを食らいかねない。 そう考えて空へ逃れたリンボの更に上へと――躍り出た影が一つある。 「よう。そんな成りになっても猿の一匹上手く殺せねぇんだな」 「…ッ! 貴様――」 伏黒甚爾。 この場では間違いなく最も劣った、それでいて最も可能性を秘めた猿だ。 先の一合で力押しは不可能と理解した。 武蔵とリンボが打ち合う光景を見てその感情は更に強まった。 彼は天与呪縛の超人。 生身一つで百年の研鑽をもねじ伏せる規格外。 しかしあくまで超"人"、天変地異を拳一つで調伏出来る程の可能性は持たない。 甚爾はそれをよく理解している。 挫折と劣等感に満ちた幼少時代を経て術師殺しに成った彼が、それを知らない訳はないのだ。 だから潜んだ。 敵が繰り出した地獄の炎すら隠れ蓑に使った。 呪殺ないし主従契約を書き換えられる事を厭ってずっと表に出さずにいた武器庫呪霊。 それをあの死地の中でこれ幸いと引きずり出し、呪具の入れ替えを行った。 釈魂刀、龍をも断つ魔剣を納めて新たに取り出したのは――純粋な破壊力でならば最も伏黒甚爾を高め上げられるだろう三節棍の呪具。 即ち游雲。数時間前、この嗤う道化師にも一撃打ち込んだ暴力の塊。 「生臭坊主が羽化昇天なんざ片腹痛ぇわ。身の程弁えて五体投地でもしとけ」 リンボはその瞬間、確かに自身の視界が緩慢と化すのを感じた。 濃密の一言では済まされないあまりにも致死的な暴力の気配。 それを前に脳が走馬灯に酷似した活動をしているのだと気付き、屈辱で顔が赤黒く染まる。 ――侮るな、猿めが! そう叫ぼうとしたし術を行使しようともした。 だがそれよりも、甚爾の振り下ろす棍が彼の顔面を粉砕する方が遥かに速かった。 「ご、がッ――」 游雲は担い手の膂力に応じて威力を向上させる。 完成されたフィジカルギフテッドが、真に全力で振り下ろしたその一撃は当然絶大。 鉄囲山の外鎧も僧怯の大風も押し破って、宣言通り禍津日神を地まで落とした。 粉塵を巻き上げ、地に減り込む無様を晒せていたならまだリンボにとっては救いだったろう。 しかし現実は彼にとって更に非情。 地獄に堕ちたその先では、犇めく触手の海が待ち受けていた。 「――ぬ、あああああ"あ"あ"ッ!?」 二柱の神を相手取りながら。 彼らがリンボの許へ帰れぬよう、帰り道を堰き止めながら。 「つかまえた」 アビゲイル・ウィリアムズは漲る力に物を言わせてリンボ本体を叩きに掛かったのだ。 初撃に続く、二連続での宝具解放は言わずもがな相当の無茶。 空魚へ押し寄せる負担も相応だったが、しかし許可は出ている。 無茶をする旨をアビゲイルが念話した際。 それに対して紙越空魚は、愚問だとばかりに即答した。 ――私の事なんて考えなくていい。あんたがそうした方がいいと思うなら、迷わずそうして。 其処にあったのは果てしない程の怒り。 相棒を殺され、穢された事に空魚は今も怒り狂っている。 だからこそ掟破りの宝具二度撃ちは成り。 その結果としてリンボは想定を大きく狂わされ、武蔵と甚爾の連携も相俟ってまんまと触手の坩堝へ叩き落された。 「見ていてマスター。鳥子さんも、空魚さんも」 艶かしく粘液に塗れたそれはしかし断じて凌辱など働かない。 これはもっとずっと悍ましく、吐き気がする程冒涜的な何かの片鱗だ。 「いあ、いあ」 いあ、いあ。 光よ、光よ。 白き虚無が溢れる。 黒く果てなき闇が口を開ける。 その内側に、蘆屋道満は確かに地獄を見た。 境界線の青年の精神世界で目の当たりにしたのとは違う、しかしあれに何ら劣らぬ無尽の地獄を。 意識と精神が埋め尽くされていく。 あらゆる者の精神と肉体を蝕む異界の念。 それは、神さえ誑かす無道の陰陽師でさえも例外ではなく。 狂気と混沌が、愚かな偽神のすべてを呑み込み―― 「 ンン 」 下す、その寸前で。 触手の蠢動が止まった。 坩堝の中から嗤い声が響いた。 時が止まる。 誰もがアビゲイルの業の底知れなさを感じ取っていて、リンボの終焉を確信していたからこその静寂だった。 外なる神がもたらす虚無と無限のきざはし。 それは決して並大抵のものに非ず。 一人の殺人鬼が呑まれて消えたように。 跳梁跋扈する蝿声の如き魘魅、蘆屋道満でさえ無力のまま消え去るしかない。 その筈だった――これまでは。 しかし今の彼は道満にあって道満に非ず、リンボにあってリンボに非ず。 龍脈の力と百年の累積を一緒くたに喰らって高め上げたその力は今や、不可避の滅亡すら覆す闇の極星として機能するにまで至っていた。 「実に見事。実に甘美。しかし、しかァし――」 だからこそ此処に闇の不条理が具現する。 絶対不可避の敗亡の内側から浮上する禍津日神。 触手共を消し飛ばしながら。 虚無へと繋がる門を自らの力の大きさに飽かして閉じる離れ業を成しながら。 リンボはその掌に、一つの火球を生じさせた。 「忘れたか。儂こそは禍津日神、髑髏烏帽子を越えて戴冠の儀を終えた九頭竜新皇! 異界の神なぞ取るに足らず。猿の足掻きなぞ嗤うにも及ばず、仁王如きが断てる丈にも非ず!」 それは、一握の砂にも満たない極小の火。 煙草の先に火を灯すのが精々の種火でしかない。 少なくとも傍目にはそう見える。 しかし三者三様。 神殺しを成さんとする者達は其処に、あるべきでない威容を見た。 巫女は遥かフォーマルハウトにて脈打つ生ける炎の神核を。 猿は蠢き沸騰して止まない悍ましい呪力の塊を。 そして人斬りは、手を伸ばしたとて届く事のないお天道様の後光を。 各々確かに拝んだ。 その上で確信する。 あれを弾けさせてはならない――それを許せば自分達は此処で終わると。 巫女が鍵を回し。 猿と人斬りが地を蹴った。 だがすべて遅い。 嘲り笑うようにリンボは諸手を挙げ、歓喜のままに"それ"の生誕を言祝いだ。 「これなるは界聖杯が拙僧に授けた"縁"の結晶」 充填される魔力の桁は尋常ではない。 宝具の格に合わせて言うなら最低でも対城級。 直撃すれば英霊さえ軽々蒸発させる、正真の規格外に他ならない。 「屈辱と挫折の中、決して膝を屈する事なく歩み続けた甲斐もあるというもの。 つきましてはこの禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満の前へ立ち塞がった勇気ある貴殿らの葬送、この拙僧が承りましょう!」 蘆屋道満は斯様な力を持ってはいなかった。 力量の問題ではなく、性質そのものが彼の生まれ育った世界には存在しなかったからだ。 故にこれは彼の言う通り、界聖杯というイレギュラーが彼へと仲介した縁の結晶。 地を這い泥を啜り何とか手中に収めた龍の心臓。 受け継いだその脈動から伝わって来た力の最大出力…それこそがこの魔技の正体。 「刮目せよ。跪いて笑覧せよ。これなるは拙僧から貴殿らへと贈る最上の敬意にして至高の葬送」 その名を―― 「――メギドラオンでございます」 メギドラオンと、そう呼ぶ。 属性は万能。 あらゆる防御も相性も無に帰す究極の火力。 指で摘める程度の大きさだった火球が天に昇り、見る見る内にそのサイズを直径十メートルを超す巨体へと変じさせ。 それが弾ける瞬間を以ってして、最終最後の屍山血河舞台に万象滅却の爆熱が吹き荒れた。 「はは、ははははは、あはははははははは――!」 響き渡るのは禍津日神の哄笑ばかり。 光が晴れて熱が引き、そして…… →
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/311.html
コドク箱 裏 次の日の午前中、詩音が遊びに来た。はろろ~ん。 「あれ、誰も居ないようですね。おかしいですわね、自転車はあるのに」 呼んでもでてこない。雰囲気からして留守のようだ。ただ、二人の自転車は置いてある。 「うーん。どうしたものでしょうね」 なぜか気になる。何となく嫌な予感がする。さて、どうしたものか。 「ここは一つ、確認するしかないでしょう」 呟きながら、詩音はどこからともなく合鍵を取り出した。どうやって用意したかは追及してはいけない。 鍵を開けて入る。トントンと階段を駆け上がる。そして、降りて来る事はなかった。 「あれ、魅ぃちゃん、どうしたのかな。かな?」 夕方。もう日は傾き空は赤から青く黒く夜に染まろうとしている。レナは鍋を自転車の籠に入れて梨花と沙都子の家に向かう途中、魅音に出会った。 「ああ、レナか」 そういうと、ため息をついた。 「何か、あったの?」 自転車を並べて聞いて見る。 「いやー、詩音が午後から遊びに来るといってたのに、中々こなくてねー。午前中に沙都子たちに会いに行ってお昼を作ってくるといっていたけど──何をやってるのやら」 苦笑いを浮かべて魅音は言った。 「レナはどうしたんだい?」 魅音の疑問にレナは、 「うん、ちょっと料理を作りすぎたからおすそ分けに」 と、言った。 「へぇー、愛しの圭ちゃんでなく、沙都子と梨花にねー」 魅音はそう言ってからかう。 「あはははは。圭一くんの家にはとっくに届けてあるよー」 さらりと返された。「……そっ、そう」苦笑いをするしかない。 「でも、どうしたんだろうね?」 レナは首をかしげる。詩音はちゃらんぽらんに見えて義理固いところがある。自分で言った事は守るほうだ。少なくても約束を齟齬にすることはない。 「うん──実は電話したけど出なくてね。それで、ちょっと不安になって見に来たんだ」 声のトーンを落として魅音は言った。 「それ──何かあったんじゃないのかな?」 レナは目を見開いて言った。 「あははは、そんなこと無いって。無いって。まあ、大方どこか遊びに行ってるんだろう。そろそろ帰って来る頃だと思うしね。レナもいるし、ちと狭いけど、みんなで夜通し騒いでも面白いかもね」 一転してにやりと笑う。 「そうだね。圭一くんも呼んで騒ぐのもいいよね」 レナも笑って、同意した。 「おやー、無粋だな、レナは。こういう時は女の子同士で秘密の話を興じるもんでないの? ──それとも、圭ちゃんを夜に呼んでを何をする気なのかな? 圭ちゃんの限界まで絞る気なのかな?」 からかうように魅音は言う。けど、ちょっぴり意地悪も含んでる。レナと圭一は付き合っているわけでないが、この頃微妙な空気が流れてるような気がする。 「そっ、そんなこと無いって。──ただ、みんなと騒ぎたいだけだよ」 もじもじと赤くなって、レナは言う。 「ふんふん、レナは圭ちゃんと夜通し騒ぎたいのか──何をする気なのかな?」 この言葉にレナは「もー、魅ぃちゃん!」と、ぷんぷんして追いかけ、魅音は「あははは、ごめーん」と、逃げる。 そんな平和なひと時だった。 「誰も居ないね」 日はすっかり落ちている。レナと魅音は古手神社奥の沙都子たちが住んでる家に赴いた。誰も居ない。窓から灯りは見えない。人の気配は無い。だが── 「自転車はあるね」 レナはポツリと呟く。 「ああ、詩音のもな」 少しだけ目を細めて、魅音はいった。狭いとはいえ村の中を移動するのに自転車は必須だ。どこに行ったというのだろうか? 「鍵──開いてるよ、魅ぃちゃん」 レナはドアノブをひねって言った。かすかにドアを開く。 「そうだな」 予感がする。何かがあったと。尋常ではないと。 「──とりあえず、上がってみるしかないかな」 少し考えて、魅音はいった。 「……そうだね。上に行って調べてみようよ」 レナも同意する。 ドアを開き、階段を上がる。その日、レナと魅音が家に帰ることは無かった。次の日も。そのまた次の日も帰らなかった……。 「全く、どうしたんだよ、みんな──」 夏休みの登校日。圭一は一人、愚痴をこぼした。教室の雰囲気は暗い。久しぶりに会う級友たちなのに笑顔は無い。 理由は連続鬼隠し事件だ。梨花、沙都子、羽入、詩音、魅音、レナと全員が行方を消した。もう、一週間はたつ。誰も目撃情報は無い。狭い村だ。何かあればあっという間に広まる。だが、それは無い。本当に神隠し──鬼隠しにあったようにするりと消えている。 詩音、魅音、レナは梨花たちの家に行くと言って消えている。実際に家に向かうという目撃情報はあった。だが、その後はぷっつりだ。梨花たちの家は鍵が開いており事件性が強く指摘されている。 村の重要人物ばかりが消えてるだけに警察は力を入れて捜査している。もちろん、村総出で捜索等も行なった。何の手がかりも無い。 この事件の怪奇性はそれだけでない。梨花たちが生活している部屋には布団が敷いてあった。それはいい。だが、玉串や神社で使う府、鈴や榊など神道の小道具が散乱していた。さらに服も──レナ、魅音、詩音が外出時に着用していた服が下着も含めて散乱していたのだ。さらに沙都子のパジャマ。二人分の巫女服もあった。この特異性が事件をますます浮き立たせていた。 これは一体、どういうことなのか。 分からない。分からないから苛立つ。先の捜索には圭一も積極的に参加した。それでも何の手がかりも無い。村中に不安な空気が漂っている。連日、古手神社にはみんなの無事を願う人たちが列を成している。立ち行く家から読経が絶える事は無い。夏だというのに不快で重い空気がのしかかる。 「あーあ」 空を見上げる。憂鬱になるほどすがすがしく青い。 「ほんと、どこに行ったんだよ」 ぼそりと圭一は呟いた。 「行っても、何が分かるとは限らないけどな」 圭一はいつものように梨花たちの家に向かう。誰も居ない。寂しい。今までみんなと楽しく遊んできた。色んな障害もみんなで相談して突破してきた。今の胸のうちにあるのは虚しい穴。ああ、この雛見沢に来て数ヶ月。充実していた。それこそ百年の時を過ごしたかのように。ここに来て分かった。故郷だ。求め足掻いていた。向こうでは手に入らない虚構の現実。すべてはここにあったのだ。 「さみしいよ、まったく……」 部屋に入る。許可は貰っている。誰も居ない。何も感じない。けれど、ぬくもりが残っている。残照がある。ここにみんながいた。そのはずなのだ。どこに行った? どこに消えたのだ? 「ちくしょー。チクショー。さっさと出て来やがれ!」 圭一の絶叫に応えるものが居た。 「かなえてあげましょうか?」 え? というまもなく圭一は消えてしまった。 永遠に循環する。混濁とした意識。すでに感覚は麻痺している。今はいつなのか分からない。いつ食事を取ったのか眠ったのか分からない。けだるくて緩慢。しびれるほど刺激的。そんなときを過ごした。 生暖かい空間。柔らかくてふわふわしている。安らぎに満ちている。そんな気がする。 「ふわぁっ」 沙都子は啼く。すでにどれだけの刺激を与えられたのか分からない。とろとろ溶けて腐り行く。それでも反応してしまう。誰かが舐めて触る。薄くふっくらとしたムネに刺激を与えられる。とがる乳首を舐めると同時に捻られついばまれる。緩慢なときもあればいたぶられる時もある。共通してるのは常にだ。しかも胸だけではない。耳たぶも首筋も頬も二の腕も指先も脇の下もわき腹もへそも背中も鎖骨もお尻も太ももも肘もひざもふくらぎも足の指もかかとも──優しく激しく咀嚼され続けられる。ああ、ここはどこだ? 母の胎内か。似て非なる世界。空間が襲う。誰かがそこにいて誰も居ない。流れる刺激。責めはてる。 「沙都子、可愛いのです」 梨花が寄り添い、キスをする。どこだろう。甘い唇かもしれない。桜色の乳首かもしれない。まだ早熟な秘裂かも知れない。互いにキスをして慰める。全身に快楽は与えられる。優しく激しく緩慢に。理性というものは奪われ刺激に反応する。沙都子は責められて啼く。否、出来ない。なぜなら、 「うふふ、可愛いですわよ」 くちゅりと詩音にキスされたからだ。やわらかな肢体を沙都子に押し付ける。舌をすすりツバを入れてツバを飲む。大きな乳房を含ませて喘ぐ。ああっ。 絡み合う手と足。指と舌。ぬめぬめと溶ける。 「みぃー、沙都子はボクのものなのです」 無理やり梨花は割り込み、沙都子の唇を奪う。チュウチュウと吸い付いていく。歓喜の声を上げる暇は無い。 「うふふ。梨花チャまもかわいいですわ」 つるぺったんな胸に吸い付く。 「ふぅんっ」 平らだが自己主張激しい胸に吸い付き、片方も捻る。強い刺激を絶え間なく送り続ける。 「ダメです! ダメなのです!」 いやいやと梨花は首を振る。 「何がいやですの?」 沙都子の小さな指が梨花の秘裂に向かう。汗か空間の体液か相手のか己の愛液か。すでに分からないほどぬるぬるしている。指を入れれば熱くとろける。沙都子は詩音の胸に吸い付きながら梨花のあそこをいじる。梨花も沙都子にキスしながら指を詩音の濡れそぼる秘裂を責める。尖る芽を弾いたとき、詩音は甲高く啼いた。詩音は梨花にキスの雨を降らせて沙都子のあそこをいじる。ツルツルで心地よい。互いに責めながらも見えない刺激に包まれる。誰かを責めて責められる。絶え間ない快楽は思考を破壊する。己の赴くままに貪り喰らう。ここがどこなのか。何をしているのか。もはや、そういうことは考えない。 「ふわぁっ」 誰かが啼く。沙都子なのか梨花なのか詩音なのか分からない。とろとろと溶けて交じり合っているのだから。もはや個と他の区別はつかない。ぐつぐつに煮えてきている。 ずるいよ。 どちらが言ったのか分からない。レナが言った。魅音も言った。互いに言いながらキスを交え抱きしめる。 「こんなに大きな胸してずるい」 レナはそういいながらフニフニと魅音の大きな胸を揉む。柔らかくて不和付していていつまで触っていても揉んでいても飽きない。 「だっダメだよ」 魅音はうめく。でも、拒絶はしない。むしろ受け入れる。ぎゅっとレナを抱きしめる。深い谷間にレナの顔は埋もれる。 「でも、ずるいのはレナだよ」 レナの顔をかかげ、魅音はいった。 「もう、キスしたんでしょう?」 レナの赤い唇を見て言った。 「しっ、してないよー」 レナは顔を真っ赤にして否定する。 「うそ」 否定する。 「嘘じゃないよ」 さらに顔を真っ赤にしてレナは否定する。 「なら、体に聞いてみる」 キスをする。唇に吸い付き舌をほじくる。とろとろと熱い空間の中でさらに熱い口の中。蹂躙していく。 「もう、あんっ、だから、つぅ、ふぅー、だっ、だめ。なの」 レナを攻め立てる。小ぶりな胸も、尖る乳首を責めていく。じゅるじゅるすすり、ついばむ。レナは柔らかくて暖かい。どこから攻めよう。耳からか首筋か。うん、やはり胸。柔らかく揉んで見る。 「もう、魅ぃちゃんの方が大きいでしょう?」 喘ぎながらもレナは手を伸ばす。魅音の巨乳を掴み弄り回す。 「あぅっ、ちょっと、レナ。痛い。痛いって」 悶えてみるがレナは止まらない。 「うそ。気持ちいいんだよね」 互いにせめて蕩け合う。緩慢な地獄。誰も居ない中、嬌声だけが鳴り響く。 「もー、お姉ぇーたち、何してるんですか」 「私たちも混ぜるのですわよ」 「みぃー。そうです。このふかふかの胸が欲しいのです」 みんなが集まり絡み合う。誰かの舌が誰かのあそこを舐めて行く。誰かの指が誰かのあそこを掴み捻りいじる責める。今上げている声は自分が上げているのか。他人が上げて行くのか。ああ、トロトロに蕩けていく。小さな世界で溶けて崩れていく。そして一つになるのだ。 「一体、どういうつもりなのです?」 羽入だけは饗宴に加わっていない。誰もが取り込まれもがき苦しみ麻痺し堕ちていった。けれでも羽入は正気を保つ。空間が責め立てる。全身を舐めてしゃぶり啜りたてる。それでも耐える。ここで落ちたらみんなが崩れ去るのだから。 「強情ね」 目の前の人物──羽入は言った。いや、それは羽入なのか? 似ている。けれど、違う。巫女服を着ている。黒く染まった巫女服を。紫色の髪をしている。濁りきってはいるが。角はなくお尻に八本の尻尾が生えている。 「あなたは誰なのです?」 羽入の問いかけに、 「わたしはオヤシロ様よ」 と、言った。 「あなたが本物の神だそうね。うふふ。威厳も何も無いわね」 羽入は全裸で宙に浮いている。手足は動かせない。空間に絡められ攻め立てられている。 「さすがは男を知ってるだけに耐えるわね」 くくくと笑う。 「男は嫌いよ。あいつらは女をただのはけ口にしか見ていない。本当はあの子達をわたしの体験したことをなぞらせようとしたの。でも、あんまりにも可哀想だから、やめたわ。せっかくの客人だもの。少しでも楽しまないと損よね。いずれとろりと溶けて一つになるんだもの。ああ、なんて優しいのかしら」 羽入は息を呑む。目の前のオヤシロ様という者の正体が分かった。 「──そうか、お前は?」 あ、確かにオヤシロ様だ。ただし、違う。自分と同じ鬼である。ただし、同じ一族ではない。あれは人間であるのだから。 「ふふっ。ダメよ。言わなくてもいいわ。あなたがどう思うと遅いのよ。私はそうあり続けた。これからもそうあり続ける。この雛見沢の地が望んだことよ。本当はずたずたに引き裂いてもいいの。ほんの気紛れを。痛みは一瞬。壊れるのも一瞬。面白くないわ。けど──あなたは壊してもいいわよね」 オヤシロ様は黒い巫女服を脱ぐ。裸身を晒す。艶と同時に早熟な香りがする。 「あなたはいつ散らしたのかしら? あの子達はいつ散らすのかしら? 好きな人がいるのかしらね? わたしはいつだと思う? どうしてだと思う? そうなったのは誰の所為だとと思う? あなたは分かるのでしょう?」 うねうねと動く八つの尻尾は羽入に絡む。獣毛は蠢き責めたてる。 「優しく? 激しく? どちらがお好み? 神よ。どうして居るのよ! あなたが居るのにどうしてこうなるの? あなたは何をしていた! 何をしようとしていた! ああ、会えて嬉しい。こうやってくびり殺せるのだから」 それはまさに憎しみだ。八つの尻尾は羽入を締めくびり殺そうとしている。獣毛は針のごとき硬さで突き刺さる。血は流れ落ちる。 「あなたはオヤシロ様。わたしもオヤシロ様。殺して入れ替わるわ。それが雛見沢の望みですもの!」 力を込めていく。「ああっ!」甲高く悲鳴を羽入は立てる。オヤシロ様は笑う。高らかに狂う。いや、違う。狂っていた。作り上げられたときからすでに狂っていたのだ。 「さあ、死ね! 死んでしまえ!」 そう宣言した。 「おっと、そうは行かないぜ」 声が響いた。ヒーロー推参である。 「誰だ!」 振り向くと、一人の少年──圭一が立っていた。 「馬鹿な。どうしてここに? 一般のものが入れるんだ? 私は招待してないぞ?」 驚愕する。自分が呼んだ物以外にここに入ることは出来ない。 「理由? 簡単だぜ、それは」 圭一は宣言する。 「なぜなら、俺が前原圭一だからだ! この前原圭一に不可能という文字は無い! 全てを壊し打ち立てるぜ!」 天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ。もえを語れと圭一を呼ぶ! 「おい、レナ、魅音、沙都子、梨花ちゃんに詩音。さっさと目を冷めろよ──まあ、こういうのも嫌いじゃないけどさ。その──間違っているからな」 全裸のみんなに目をそらしながら圭一は言った。 「なんだと?」 オヤシロ様は唸る。見れば分かる。ただの少年だ。だが、護りを抜けて、ここまで来た。ただの少年ではない。 「そもそもだな。全裸で絡むというのが安直なんだ。ヌルヌルは良い。格闘技の試合に厳禁でも、こういうプレイには欠かせない。男と女よりも女同士の方が映える事は認めよう。だが、全裸とは何事だ? 生まれたまんまの姿が美しい? 貴様、歯を食いしばれ! 違うだろ! 安易だ安易だ安易なんだよ! 男はパンツを見たいんではない。パンチラが見たい! パンツだけを見たくない。パンツに包まれた形を見たい。ああ、そうだ! お前のやったのはただ見せてるだけだ。情緒もへったくれも無い! 知ってるか? テレビチャットですぐ脱ぐ女には客がつかない。ああ、簡単に終わって事を済ませるからな。焦らしとチラリズムを馬鹿にするな!」 とうとうと語り始める。唖然とする。こいつはなんなのか? 誰なのか。分からない! けれど、レナたちは圭一に気付かず溶け合っている。 「よし、全員ブルマ着用!」 驚くことが起きた。圭一の叫びと共に全裸で絡み合うレナたちがブルマを着用したのだ。 「ほら、みろ、これこそが萌えだ。濡れて透きとおる体操服の乳首をかんでしごく。ブルマ越しに責め合う。感覚が鈍り、つい力が入ってしまう。そんな嬌声を俺が見たいんだ。裸の穴を突っ込むより、ブルマとショーツをずらした方が良い。絶対だろ、それは? そもそもブルとは女性の復権のシンボルだったんだ。女の自立の象徴だったんだ。それが今では二次元のみに。情けないとは思わないか? いや、スパッツも良いぞ。張り付くお尻はなんとも言えん。だぶだぶズボンも良いな。ジャージは隠れてしまう。だが、それがいい! 隠れて見えないのを責め立てる。脱いで汗にまみれた素肌を拝む。ううん、燃えて来たぞ。よし、次は水着だ! まずはスク水からだな」 今度は全員がスク水姿になった。 「なんだ? どういうことなんだ? 何で、あいつはわたしの中で自由に振舞えるんだ?」 分からない。オヤシロ様には分からない。前原圭一は何者なのか? どうして自由にここをいじれるのか?」 「分からないのですか?」 後ろから声がした。振り向こうとする。それが最後だった。 激しい音に圭一ははっと気がつく。目の前にはあのオヤシロ様は居ない。代わりに知恵先生が立っている。 「大丈夫でしたか、前原君」 いつものサマーワンピースではない。二の腕などに刺青が見える。手には馬鹿でかいパイルバンカーを持っている。 「あなたのおかげで本当に助かりました」 血まみれで倒れる羽入に癒しの光を当てながら知恵先生は言った。 「えっと、それにしても、ここはどこなんです? 何で、あいつはこんなことをしたんです?」 そもそも今も絡み合うレナたちをどうして連れてきたのか。圭一にはさっぱり分からない。 「そうですね──ここはあのオヤシロ様と言っていた者の世界です。そして、あれは──」 知恵先生が言おうとしたとき、 「あれは作られたオヤシロ様なのです」 と、羽入が言った。 「羽入! 大丈夫なのか?」 慌てて、圭一は駆け寄る。羽入は血まみれなのだ。 「ボクは大丈夫です。それより、知恵先生、あいつは──」 はあはあと荒い息をついて、羽入は聞く。 「あれなら消滅しました。転生すら敵わないでしょうね」 知恵先生の言葉に羽入は「……そうですか」と、呟いた。 「んで、あいつはなんだっだ?」 圭一の疑問に、 「オヤシロ様です。ただし、雛見沢の住民が作り上げた虚構の神です」 と、言ったのだ。 「蟲毒と言う術があるのです。元は中国から伝わった外道の術です」 蟲毒──それは呪いの一つで壷の中に毒虫や毒蛙や蛇などをぎゅうぎゅうに入れて土の中に入れる。中のものは共食いを始めて一匹だけが生き残る。その力を利用し、さまざまなことを行なうのだ。人を呪い、内臓から腐り果てたり家自体の断絶。蟲主となって、その力で己の家に金を呼び込んだり(ただし、定期的に生贄を提供しないと喰われてしまう。生贄は人でないといけない)本家中国も蟲毒はさまざまな方法があるが、日本でも独自の発達を遂げていた。 「──昔の雛見沢は鬼の住まう地として近隣から怖れられたのです。独自の掟から他と交流することが少なかったのです。だから、たまに起こる交流が激しい偏見と迫害で迎えられる時期もありました。そんな時に自らを守るために作り上げたのです」 今でこそ偏見と迫害は少ないが(とにかく表向きは)かつては、その地に住まう地域ごと区別(差別)していた時期は確かにあったのだ。「一体、どういう呪法です。ほぼ、自分の世界を構築していて、かなりの力の持ち主ですよ」 知恵先生もかなりの力を持つ。並みの術者など比べ物にならない。まして、戦いに特化した術者だ。異端を断罪し、代行し続けてきた。それでも、このオヤシロ様には手を焼いた。少なくても正面からでは戦うのはかなりの厄介だった。幸いにして前原圭一の力を借りて、何とかできたのだが。 「──あまり、言いたくないのです。これを作り上げるのには、それこそ目をそむける所業の数々の果てですから」 羽入が言いよどむのも無理は無い。まさに悪魔の所業と言うか正気では行なえぬ法だった。 簡単に言うとただの蟲毒ではない。虫や蛙。蛇などだけではなく、犬や猫、狐──さらには赤子まで使用していた。貧しき村で次々と生まれる赤子はただの邪魔として始末する場合もあった。さらに近親相姦で奇形の場合も。これらをいくつかの壷で育てたコドクに掛け合わせ純度を高めていった。これはこの雛見沢に生まれた業ではなく他から伝わった秘伝秘術と言われる。 あまりの呪いの強さに持て余し封印し忘れ去ろうとしたモノだった。 だが、沙都子があの日、カラクリ箱を開けたことで封印が解けた。少しずつ現実に侵蝕し呪い己の世界に引き込んでいった。蟲毒は互いを貪り合い箱の中で一つにしかなれない。ある意味で沙都子たちは幸運だった。場合によってはすぐさまにドロリと腐りはてる場合もあるのだ。高められた純度ゆえ、持ち主はある種の正気があったからだ。だが、いずれは溶けて贄となるのだが。 「それにしても、どうやって、あいつの術を解いたのです。圭一は何をしたのです」 羽入は疑問を口にした。ここはあいつのうちの中。いわば主のようなものだ。だが、圭一は暴れ叩き潰した。どうやって? 「ああ、それは簡単ですよ。前原くんの妄想──ではなく、仲間を思う力を利用したのです」 呪いを破る一番の方法は単純である。上まわればいいのだ。鈍感な人は呪いにかかりにくい。呪いを信じず吹き飛ばしてしまうからだ。 不安な予兆から人は怯える。つけこまれる。圭一は何も知らなかった。さらに激しい妄想というか口が達者というか相手を引き込むと言うか、そういうものを持っている。全てをぶち壊してでも突き進む強い心を育ててきたからだ。 「……はあ、なんとも凄いのです」 もう、あきれるしかない。知恵先生は圭一のある方向に特化した強い意志で相手の世界を侵蝕させ隙をつくり叩き壊したと言うことなのだろう。 「ははっ。とにもかくにも解決だな。おーい、いつまでやってんだ? そろそろ帰るぞ」 からからと圭一は笑い、いまだ絡み合うレナたちに声をかける。 「あっ、圭一君だ」 「──圭ちゃん?」 「あらら、圭ちゃんですね」 「圭一さんですか」 「みぃ、圭一、見つけたのです」 うつろな目でにじり寄ってくる。 「えっ?」 うろたえる。 「こらまて、正気に戻れ。と言うかズボンに手をかけるな、お尻触るな、破ける引っぱるな、服っ、服っ、あっ、あー。ていうか、知恵先生、羽入。見ていないで助けろー!」 圭一はレナたちに絡まり飲み込まれていった。あてられいまだ正気でない彼女たちは理性と言うたがを外し圭一にのしかかる。キスをして、あらゆるところを舐めてしゃぶり、己へと導く。 「あらあら激しいですわね」 知恵先生は目をぱちくりとする。 「あぅあぅ、エッチ過ぎるのです」 羽入もおろおろとする。 「でも、どうしましょう?」 主は消えた。けど、世界は崩壊しない。 「……たぶん、残り香があるのです。みんなの中に変質して蔓延してるのです」 と、羽入は答えた。 「んー、そうなると彼女達を満足させるまで消えないわね」 少し考えて、知恵先生は言った。 「──そうなると思います」 羽入も答えた。 「と言うわけで前原くん。みんなを満足させてあげてね。そうすれば出られるから。大丈夫。後のことは何とかしておきますから」 にっこりと微笑んで、知恵先生は言った。 「ああっ、まって。まって。置いて行かないで。あっ、こら、そんな所舐めるな。うわっ、これは──ええい、もうやけだ。みんなまとめて面倒見てやる!」 といって、自ら飛び込んでいった。まず、レナにキスをした。魅音と詩音は圭一の乳首を舐め、沙都子と梨花は怒張する男根を舐めている。脳髄がとろとろに溶けそうだが気をしっかり張って挑む事にした。 誰もがうらやむ修羅のヘブンへと飛び込んだのだった。 次の日、古手神社の境内でみんなが発見された。満足そうに寝ていた。さまざまな着崩れた衣装に身を包み、全身に白くこびりつけたものをつけて発見された。圭一は全裸だった。その後、どうなったかについてはご想像に任せることとしよう。 おわり
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/284.html
「圭ちゃん、レナ、沙都子に梨花ちゃん!ちょっと良い?」 ようやく退屈な授業が終わり、いざ部活を始めようという時に魅音が皆に号令をかけた。 なんだ、まさかまたこの前の我慢大会でもやるんじゃないだろうな。いくらなんでも真夏にストーブつけてコタツでなべやきうどんは死ぬぞ。 「ちーがーうー!あれは私も死にそうになったからね、もう当分はやらないよ!!」 魅音が顔を真っ赤にして反論する。…もう“当分” はやらない、という事はまたいつかやるのか。迷惑な話だな。 「…で、魅ぃちゃん。私たちに言いたい事って何かな、かな」 レナが小動物のように可愛らしく首を傾げる。 その言葉を聞いて、思い出したかのように魅音が言った。 「そうそう!実はね、詩音の事なんだけど…」 「詩音?詩音がどうかしたのかよ?」 何の前触れもなく出てきた詩音の名前に少し驚く。…そう言えばここのところあんま見かけてないな。 詩音にはからかわれてばかりだけど、それでもいくつもの困難を共に乗り越えてきた大切な仲間の1人だ。その詩音に何かあったとなると、もちろん心配するに決まってる。何かあったのだろうか。 「あ、そんな大したことじゃないよ?ただあの子、風邪ひいちゃったみたいでさ」 身を乗り出して聞く俺を軽く受け流し、魅音が説明した。 ……なんだ、風邪か。てっきり何かトラブルに巻き込まれたかと思ったぜ。 とはいえ、魅音によると結構な熱らしい。うんうん唸りながら苦しんでいるとかいないとか。 「んー、一応注射はしたんだよねえ。だから熱はもうじき下がるとは思うんだけど…」 そこでチロリと俺を見る魅音。それからレナを見て、申し訳なそうな顔をして言った。 「……今、園崎の方で結構大きい問題抱えててさあ。今日は私も母さんも父さんも葛西も席が外せないんだよ。良ければ会合が終わる夕方まで、詩音の看病してあげてくれない?」 無理ならうちの若いもんに行かせるけど、詩音もあんた達が来てくれた方が喜ぶと思うし。 そう言うと魅音はお願い、と頼む仕草をした。 …どうするかって?決まってるじゃないか。 1人は皆のために、皆は1人のために! 「もちろんOKだぜ!仲間の危機にはかけつけなくっちゃな!」 「レナもOKだよ、だよ。はぅ、詩ぃちゃんに何か栄養のつく物食べさせてあげたいな!」 俺とレナがにこりと微笑む。魅音もつられてありがとう、と微笑んだ。 「沙都子と梨花ちゃんは?」 2人に目線を配る。2人の様子からして、どうやら用事があるみたいだった。 「…詩音さんが風邪とあらば私たちも是非お見舞いに行ってさしあげたいですわ。ですけど、今日は…」 沙都子が俯いて押し黙る。それをフォローするように梨花ちゃんが言った。 「…今日は入江の所へ行かなければならないのですよ。お注射は痛くて怖くてガタガタぶるぶるにゃーにゃーなのです。」 ―――――注射。そうか、今日は診察の日か。 沙都子が暗い顔をして謝る。…いや、謝るとこなんて一つもないぞ。そういう意味を込めて頭をくしゃくしゃに撫で回してやると、沙都子は真っ赤になって俺の手を振り払った。 「……詩音の部屋はここだよ。ほら、これが鍵ね。勝手に入ってくれて構わないから」 魅音に案内されるがまま着いたのは、小綺麗でお洒落なマンションだった。 ちゃら、と音をたてて魅音が俺に鍵を渡す。 俺がそれを受け取ると、急いでいるのか魅音は腕時計をチラチラ見ながら言った。 「ほんじゃ、ちょっとばかし行ってくるよ!夕方にはたぶん戻れると思うから、それまで看病よろしく。じゃね、ありがと2人とも!」 そう言い残すと、魅音は猛スピードで階段を駆け降り、あっという間に姿を消してしまった。 マンションの廊下にぽつんと取り残された俺とレナ。俺たちはそのあまりのスピードの速さに顔を見合わせて笑う。 「…よっぽど急いでたんだね、魅ぃちゃん」 「みたいだな。なのにあいつ、良い姉ちゃんじゃねえか」 …なんだかんだ言って仲良いんだよな、詩音と魅音は。 さっき渡された鍵のキーホルダーを指に引っ掛けて、くるくると回しながら呟く。回しすぎて指からスポンと抜けて飛んでいってしまい、おうちの鍵で遊ぶなとレナに怒られてしまった。…情けない。 「それじゃあ、……お邪魔しまーす」 かちり、と鍵を差し込んでその扉を開けた。 返事がないが、そのまま勝手にあがりこむ。玄関は予想以上にきちんと片付けられていて、玄関だけでなく居間も充分に綺麗だった。 少し意外だ。…詩音のヤツ、1人暮らしなんじゃないのか?もし1人暮らししているのが俺なら、それはもう地獄絵図になると思うぞ。 「えーと、じゃあとりあえずレナはおかゆでも作ろうかな。圭一くんは奥の部屋に行って、詩ぃちゃんの様子見てきてくれる?」 「おう、任せろ!」 レナがエプロンをつけて、棚からお米を取り出す。………制服にエプロン、っていうのはなんかこう…ぐっとくるものがあるな。思わず後ろから抱きつきたくなるぜ。 そんな邪な考えを隅に追いやって、奥の部屋へと足を進める。 部屋のドアには「しおん」と書かれた可愛らしいプレート。どうやらここが詩音の部屋で間違いないみたいだな。 「詩音ー、入るぞー」 一応のためコンコンとノックをする。返事がないことからしてまだ寝てるのだろう。 そう思いガチャリとドアを開ける。…そういえば、女の子の部屋に入るのは初めてだった。 「……詩音、大丈夫か…?」 風邪なんだから大丈夫じゃないだろう。そう思いつつ、とりあえず声をかける。 詩音はベッドでおとなしく寝ていた。すぅすぅと寝息をたてて眠るその姿は、いつもより幼く見える。 圭一はその横に置いてあった椅子に腰掛け、まじまじとその寝顔を見つめていた。 ―――――いつもは分からないけど、こうして見るとやっぱり可愛いな―――――。 薄く閉じられた瞼をびっしりと縁取る長いまつげ。熱のせいかうっすらと赤い頬に、微かに開かれた唇。 ………魅音とそっくりだけど、何かが違うんだよなあ。 そう、言うなれば色気とでも言うのだろうか。サバサバして男の子らしい雰囲気を持つ魅音に対し、詩音はいかにも女の子という感じがする。 呼吸に合わせてゆっくりと上下する胸を見て、思わずごくりと息を呑んだ。 (ダメだ) 詩音の手に自分の手を重ね、ぐっと身を乗り出す。 (やめろ) 視線の先は、薄桃色の柔らかそうな唇。 (相手は病人だぞ) ゆっくりと、ゆっくりと。でも確実に近付いていく、2人の距離。 (寝込みを襲うような、こんな真似―――――) 残りわずか3センチ。 あとちょっと―――― そこで、詩音の目がうっすらと開かれた。 「…………ん……」 「う、うわッ!?」 思わずさっと後ずさる。 …まさかこのタイミングで起きようとは。 残念に思いながらも、少し安堵している自分がいた。 「……んんー……」 「おおおおはよう詩音ッ!風邪は大丈夫かっ?!あのだな、今のはデコで熱を計ろうとしてだなっ、決してやましい考えなんかこれっぽっちもないんだぜ?!現に未遂に終わっ、じゃなくて!!」 今更ながら恥ずかしさが込み上げ、あたふたしながら次々と言い訳を並べていく。 そんな俺をとろんとした瞳で見つめる詩音。…こりゃ聞いてねぇな。 「えーとえーと……おおお俺、レナの様子を見てくる!」 早くこの空間から立ち去りたくて、慌てて立ち上がる。 逃げ去ろうとしたその時、俺の制服の裾を詩音が掴んだ。 そして何かぼそりと呟く。 「………し……くん…」 「…え?…………って、むがっ?!」 突如、ものすごい力で引っ張られた。 俺はその引力に素直に従って、詩音の方へ倒れ込む。 ふにゅ、と顔に柔らかい感触。 (ち、窒息する!!) 詩音は俺の顔を胸に押し付けるようにして抱きしめていた。 離れようともがくけれど、病人だとは思えないほどの力で抱き締められてそれも出来ない。 …う、やーらかくてあったかくて、おまけに良いにおいが…。 「……やっと、やっと会えた。私が風邪をひいたから、お見舞いに来てくれたの…?…私、ずっと待ってたんだよ…。寂しかった…!」 「ぷはっ!!…し、詩音?」 やっと解放されたかと思うと、甘えるようにして頬ずりをしてくる詩音。その目はとろんと潤み、うっすらと涙を浮かべている。こんなしおらしい詩音は初めてだった。 「いや、そんな、お見舞いに来ただけ…」 思わず視線を反らす。なんなんだ、この詩音の様子は。なんか調子が狂うというか、でも………嫌じゃない。 そんな俺に対し、詩音は目尻の涙を拭い…こう言った。 「ううん、来てくれただけでも嬉しい。すごく嬉しいよ。 ………ありがとう、悟史君」 ―――――――どくん。 俺の心臓が一際大きく跳ねる。 北条悟史。…この名前は聞いたことがある。 確か、去年失踪した沙都子の兄……だよな? そいつの名前がなんで今出てくるんだ? 「私のために目を覚ましてくれたんだよね…?相変わらず悟史君は優しいです…。だから、大好きなんですよ」 ぎゅ、とまた抱き締められる。 目を覚ます?何を言ってるんだ詩音は。悟史は失踪したんじゃなかったのか? いや、そんな事は置いといて。 ………もしかして、詩音は。 俺のことを――――――――― 「…………」 「……悟史君、どうしたの?」 ――――俺のことを、悟史だと勘違いしている? 「はは、は………」 「…悟史君……?」 なんだ、やっぱり、道理でおかしいと思った。 そうだよな、最初から冷静に考えてみれば詩音が俺にあんな事するはず無かったじゃないか。 詩音は悟史が好き。 ―――――そういえば、そういった話を昔魅音から聞いた気がする。 バカだ、俺。 「………さっきから黙りっぱなしですけど、どうかしましたか…?」 改めて詩音を見る。…ほら、やっぱり俺を見ちゃいねえ。その濡れた瞳は、いるはずがない悟史を映し出していた。 「………俺は悟史じゃないよ。熱のせいで意識が朦朧としてるんだな。俺、レナに氷嚢もらってくる」 詩音の額に手を当てる。…やはり、異常に熱かった。監督は本当に注射したのだろうか。 「………熱なんてないです。ほら、こんなに元気なのに。 やっぱりおかしいですよ、悟史君…」 ―――――――また。 悟史君悟史君悟史君悟史君―――――――― いい加減にイラッときた。 だから、俺は悟史じゃないって言ってるだろ。 …………もう、うんざりだ。 「ねえ、悟史君ってば、悟史く……」 「………さい…」 「え?」 俺は悟史じゃない。 俺は、悟史じゃない…!! 「…うるさいって!!言ってるだろ!!??俺は悟史じゃない!!悟史じゃないんだよ!!」 し…ん。 静かな部屋に、俺の怒鳴り声が響いた。 言って……しまった。…思わず……。 詩音の方を見る。詩音は、ひどくショックを受けた顔をしていた。 「ご、ごめ、詩音、俺…」 慌てて謝罪の言葉を口にする。 だけど、その言葉は最後まで言い切れなかった。 詩音が顔をくしゃくしゃにして、泣きながら俺を押し倒したから。 「なんで、…なんでそんなひどい事言うんですか…っ!? 悟史君は悟史君です。悟史君はいます…!現にほら、こうして目の前に、う、ううう…っ!! いや、やだ、悟史君、行っちゃやだぁ…っ!!」 詩音はぽろぽろと涙を零し、俺の胸に顔を埋める。 制服のシャツにじんわりと広がっていく涙が切なくて、悲しくて、愛しくて。 こんなに取り乱して泣き喚く詩音は初めて見た。 いや、本当は、いつも心の奥で泣いていたのかもしれない。 悟史がいない寂しさを、苦しさを、どうやって押し込めてきたのだろう。…それは沙都子にも言えることだ。 そう思うと、何だか無性に切なくなった。 その寂しさが少しでも紛れるよう、俺はそっと詩音を抱きしめてやる。 詩音もそれに答えるように俺を抱きしめた。 お互いにしばらくの間身体を重ね、見つめ合う。 そして、…キスをした。 「…ん、…」 「…さ…としく……」 相変わらず詩音はうわ言のように悟史の名を繰り返し呟いているが、不思議と嫌じゃなかった。 …詩音の悲しみがそれで晴れるなら。俺が、喜んで悟史役になってやる。 「ん、ちゅ…ふぅ…っ!」 触れるだけのキスが、徐々に深いキスへと変わっていく。 お互いに舌を絡め合い、唇を貪る。 その間に俺は詩音のパジャマのボタンに手を掛けた。 ぷち、ぷち。一つボタンを外していくごとに、曲線的な体が露になっていく。 全部のボタンが外された時、その肢体の美しさに眩暈がした。 「あ、硬くなってる…。私ので反応してくれたんですか…?嬉しいな」 詩音が俺のモノに手を這わす。すでにカチコチになったそこは、刺激を求めて膨れ上がっていた。 その笑顔も。…俺に向けてじゃないんだよな。悟史に向けたものなんだよな? …俺、勘違いしないから。今だけは、俺は悟史だ。 「…詩音が可愛いから、な」 「んんッ!」 詩音の下着に手を突っ込んで、秘部をまさぐる。 そこはほんのりと湿っていて、数回指を擦っただけでじんわりとした蜜が溢れだした。 「なんだよ、これ?もうビチョビチョじゃねぇか」 その蜜を秘部に塗り付け、存在を主張する肉芽をつまむ。 指でこねくりまわしてやると、詩音は一層高い嬌声を上げた。 「あ、…んん…っ!それはぁ…っ!」 「それは?」 指でソコを開いたり閉じたりする。充分に潤った秘部は、すんなりと俺の指を受け入れた。 「それは、…いつも、悟史君の事考えて……ッ …や、拡げないでくださ…ッ」 「続き」 耳たぶに軽くキスをする。詩音の額からは玉のような汗が噴出し、小刻みに震えている。 「悟史君で…っ、あっ、ふああっ、オ、…ナニー… してた、から、ですっ、んあああっ!」 「…よく出来ました」 「ひ、あああああああっ!!」 もう我慢の限界だった俺は、ご褒美と称してそのいきり立ったモノを詩音の中へと挿入した。 ずん、と思い切り貫いてやると、それに比例して詩音の声も大きくなる。 「やっ、あっ、すごいいっ、んんんんっ!!!」 「くっ、…う、あ…」 獣のように腰を打ちつけ、お互いを貪りあう。 詩音の膣は吸い付くように俺のモノを締め付けて離さなかった。 そのまま俺は豊かな胸に手を這わせ、激しく揉みしだく。 その胸の頂を捻りあげると、詩音は悲鳴のような声をあげ、びくびくと震えた。 「あっ、イくッ、悟史くっ、私、もう…!」 「お、れも…! 詩音、詩音…っ!!」 「あ、ああああああああッ!!!………ちゃ、…けい…ちゃ……っ!」 どくっ、どくん、どくんっ…。 普段からは想像もつかないような卑猥な声をあげ、詩音がイった。 俺も自分の欲望を詩音の白いお腹へとぶちまける。 くたり、と倒れこむ詩音。どうやら気を失ったようだった。 「…服、着替えさせなきゃ。あと、汗もふいて、それで……」 風邪、悪化しちゃうかもな。それとも、俺に移るかも。 ぼんやりとした頭でそんな事を考えていた。 詩音が目覚めたら、どう思うだろうか。 良い夢だったと思うだろうか、それとも悪い夢だったと思うだろうか。ちゃっかり悟史の代役と称して自分の純潔を奪った俺を恨むだろうか。 そのどの反応をするかは分からない、けど。 ――――――詩音がイく、最後の最後。 「圭ちゃん」と聞こえたような気がした。 「…お…ねえ…?」 「あー、目ぇ覚めた?」 目が覚めると、お姉が私のおしぼりを取り替えているところだった。 視界がずいぶんとスッキリして、頭も幾分軽い。監督の注射が効いたんだろう。 「わたし、どれくらい寝てました…?」 寝ぼけ眼を擦り、お姉にたずねる。お姉は時計を見て、唸りながら問いに答えた。 「ん~………。何時間ぐらいだろ。夕方ごろまで圭ちゃんたちがお見舞いに来てくれてたんだよ。 そん時もあんたずーっと寝てて、せっかくレナがおかゆ作ってくれたのに食べずじまいでさあ! あー、あのおかゆ美味しかったなあ~?」 「なっ!お姉、あんた病人のご飯奪うなんてどれだけ食い意地張ってんですかっ!」 あれは病人でも3杯はイケるね!と豪語するお姉。私は今更ながらお腹が空いている事に気付き、ぐぅうとお腹の虫が鳴るのを必死で我慢していた。 「…なーんてね!嘘嘘!ちゃんと取ってあるよ。あっためて食べな。ほれ、今からチンしてきてあげる」 魅音がにやりと笑った。お姉のくせに私をからかうなんて…!一生の不覚だ。 ぱたぱたとお姉が台所に駆けていく。その後姿を見て、私はポツリと呟いた。 「…ごめんね、魅音」 ほんとは、途中から気付いてた。 …私は、ずるい女だ。 TIPS:もう一つの恋心 「…ね、圭一くん。ひとつ聞きたいことあるんだけど、良いかな?」 詩音のマンションからの帰り道、レナがポツリと呟いた。 さっきの行為の余韻でまだ頭がぼーっとしていた俺は、適当に「うん」と返事を返す。 …レナのおかゆ、うまかったな。病人向けで、薄味なのに、それでいて飽きなくて、さっぱりで… 「…どうだった?初めての感想は」 …………。 ん、な。 「レ、レナッ、おま、まさか、見て…っ!?」 「何のことかな?レナはおかゆの感想を聞いただけだよ? 圭一くん、レナのおかゆ食べたの初めてだもんね。ねえ、どうだったかな、かなあ?うふふふ!」 「ちょ、待っ、おいコラ、レナ―――ーっ!!」 「あははは、あははははは!また行こうね、詩ぃちゃん家!」 そう言って笑いながら走り出すレナ。 その笑顔がまぶしくて、俺はレナを必死で追いかけていった―――。 …あんな大声出してたら誰だって気付いちゃうよ。 圭一くんの、ばーか。 でも、諦めないからね?
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/153.html
私は、はやる気持ちを抑えながら、いつもの病室のドアを開けた。 そのカーテンの先には……悟史くんが居る。 悟史くんは、ベッドの上に身だけを起こし、監督と話をしていた。 問診というやつだろう。 「あの、監督……入っていいでしょうか?」 「いいですよ、詩音さん」 その言葉だけで胸が跳ねた。 一歩一歩慎重に、悟史くんを驚かさないように…… 「さ、悟史くん……おはよう」 「……誰?」 少し、言葉に詰まる。 「詩音……園崎詩音、覚えてる?」 「……ああ、魅音の妹か」 なんとなく、記憶の中の悟史くんと違う。 でも、目の前のこの人は……間違いなく悟史くんだ。 「詩音さん、悟史くんは……少々記憶の混乱が見られますので、 今質問は控えてもらえますか? 記憶の程度を今分析していますので……」 監督が耳打ちした。 悟史くんはそれを不審に思うこともなく、 ただぼうっと空中を見つめていた。 「は、はい……また来ますね」 「ええ、ぜひ」 監督は笑顔で私を送り出してくれた。 本当は……私が今入ってきてはいけなかったのかもしれない。 そんな気持ちを胸の中に抑えつつ、 私は駆け出した。 次の日に診療所へ向かうと、 私がいつも同じ時間に来るのが分かっている監督が、 診療所の前で待ち構えていた。 「あ、詩音さん……あの、悪いんですが」 「まだ無理なんですね、いえいえ、悟史くんに会えるんですから……ちょっとの間ぐらい我慢しますとも」 「……はい、すみません」 今度は私が、監督を笑顔で診療所へと送った。 次の日も……その次の日も。 私は、一ヶ月待った。 その時間は、私が今まで待った時間よりもはるかに長く感じられた。 それでも悟史くんが居ると分かった後の期間は、 どこか寄りかかるところが無かった今までよりも充実していた。 だから…… 私は。 生まれて始めて、手首を切った。 「詩ぃちゃん……腕時計なんかしてたっけ?」 レナは、恐ろしいぐらい勘がいい子だ。 私を放課後の教室に呼びつけるなり、 そう言った。 「……ええ、確かに今日からしてますけど、 それが何か?」 「……ごめんね、ちょっと気になったの」 「何が……です?」 こちこちと、時計の針の音がうるさかった。 その音が、この長い静寂がそれほど長くないものだということを、 嫌というほど聞かせてくれる。 「あの、レナ……帰りますよ?」 「詩ぃちゃん、これ見て?」 いつも手首を曲げているレナが、 私にはっきりと、私の手についたのと同じものを見せてきた。 「……あのね、こんなことするのは、何かあったからだよね? レナ、相談に乗るよ?」 私は、恥ずかしさに頬を染めた。 一緒に戦い抜いた仲間じゃないか。 それなのに、私は自らを集団の少し外に置いていた。 悔しかった。 悟史くんに会えたのは……皆を信じたからなのに。 悔しくて悔しくて、手首を切った時には溢れなかったものが、 目からぽろぽろと零れ落ちる。 「し、詩ぃちゃん……」 レナは、おろおろとしつつも、ごく冷静にハンカチを差し出してくれた。 「悟史くんのこと?」 どきっとした。 この子の勘は……鋭すぎる。 「……って、言われたの」 「何?」 「近づくなって……うぇ、っ……うううう、うぁああああああ!!!」 レナはそんな取り乱した私を……包み込んでくれた。 「大丈夫だよ……悟史くん、居たんだよね? どこかに行ったんじゃないんだよね? じゃあ、大丈夫だよ?」 「うぇえ、うぅ、うぇえええ!!」 背中をぽんぽんと、レナは叩いてくれた。 「好きなだけ泣いて? でも、その後は笑お? だって、詩ぃちゃんは今幸せなんだもの。 意中の人が、ちょっと遠ざかっただけだから」 レナの言っている意味が……心の奥に染み渡った。 レナの好きな圭ちゃんは、お姉を選んだから。 「……男の子なんて、この世にいくらでも居るよ」 本当は、自分だって泣きたいはずなのに。 私は自分がまた恥ずかしくなって…… また泣いた。 「それに……女の子が好きな……女の子だって居るんだよ?」 突如として、私はより強く抱きしめられるのを感じた。 レナの鼓動がすぐ近くにあって、 この世に存在するあらゆる音より大きく聞こえた。 「詩ぃちゃん……私、一杯慰めたよね? だから……私も慰めてくれる?」 レナの手が、少しずつ下へと這っていく。 「れ、レナ……?」 私が信じられないものを見るかのような目でレナを見ると、 レナはびくっとして、すぐに手を引いた。 「ご、ごめ、わ、私……何してんだろ?」 「い、いいですよ……レナを、慰めますよ…… でも、私……どうしたらいいか」 「本当にいいの? 詩ぃちゃん?」 真っ赤になったレナの顔が、急にいとおしく感じた。 「……ぅん」 私は、机を掴んでお尻を突き出す形になった。 レナが後ろから、私の胸に手を回していた。 右手は胸に……左手は、太ももに。 「はっ……くっ、れ、レナぁ」 それだけの行為なのに、 私の腰は抜けそうになって、がくがくと震えていた。 「詩ぃちゃん、かぁいいよ」 レナが囁くように言った。 そのまま、みみたぶを噛んで来る。 「あぅっ!」 「詩ぃちゃん、感じやすいんだね……もう、大変なことになってるよ? もしかして、毎日毎日してたのかな?」 「れ、レナ……おじさんみたいです……はくっ!」 レナが首筋を撫でてきた。 もうどこを撫でられたって、 私の全ての皮膚は鋭敏になって、 下着がずれただけで体が痙攣するようになってしまった。 「じ、焦らさないでッ!」 「詩ぃちゃんずるいよ……私はまだ気持ちよくなってないのに」 そういうレナの目は、とろんとしていた。 「嘘でしょ、レナ……」 私は机に座り、レナを抱きしめた。 そのままレナとキスをする。 唇へのキスだ。 本で見たとおり、舌を突き出してみる。 レナはそれに応えて、舌を付き返してくれた。 「あむぅ……にゅ、ちゅりゅ」 声にならない声を、口の間から出す。 レナの顔は再び真っ赤になった。 すごく分かりやすい子だ。 「レナ……胸をいじったことはあります?」 「……ぅん」 「包皮を剥いたことは?」 「詩ぃちゃんも……おじさんみたいだよ?」 「質問に答えない悪い子は、全部やっちゃいます」 私は、口でレナの乳房を責めた。 右手はレナの左胸に。 左手はレナの秘所に。 「あっ、あぅ……はぅぅぅ、だっ、詩ぃちゃん、いっぺんにはダメェ!」 レナは……一瞬にしてイってしまった。 また私はキスをする。 レナが窒息しそうだったので、今度はすぐに口を離した。 はっ、はっと苦しそうに、レナは肩を上げ下げしていた。 「し、詩ぃちゃんにも……しないとね?」 レナは恐ろしい回復速度で、 私を押し倒した。 「あ、レッ!」 私はレナに犯される様に、机に仰向けに寝そべる形になった。 目に見えるのは教室の天井じゃなく、一面のレナの顔。 私はまた、唇を奪われていた。 しかも今度は、私が一方的に責め立てられている。 レナの無秩序とも言える、 痙攣するような手が、私の大事なところで震えていた。 口をふさがれているから、息をすることもままならない。 レナがやっと口を離してくれた。 私は大きく息を吸う。 「詩ぃちゃん、悟史くんに沙都子ちゃんのこと頼まれてたんだよね? 沙都子ちゃん、近頃詩ぃちゃんが全然かまってくれないって、 私に泣きついてたよ?」 レナは責める手を止め、今度は言葉で責めてきた。 「ぇ……あ、だ、だって……沙都子はもう大丈夫……」 「嘘だ」 レナがそう囁きゆっくりゆっくり、手を動かす。 私の中に指を挿入しようかどうか、迷っているように。 「詩ぃちゃんは沙都子ちゃんのこと……頼まれてたんでしょ?」 「は、はぃ……沙都子のこと頼まれてましたぁぁあ……あぅっ!」 突如として、レナが私の中に指を入れた。 「れ、レナぁ……」 突然の衝撃に……私は失禁してしまった。 「ご、ごめ……ぐすっ、うう」 「わ、私こそ……ごめん、考えもなしに嫌なこと言っちゃって……」 「ううん、私が悪いんです、悟史くんのことばっかり考えて、 沙都子のことをないがしろにしてたから…… 私が悪いんですぅぅぅ……」 「詩ぃちゃんは悪くないよ……私のほうが悪いもん。 失恋したからって……詩ぃちゃんに当たって…… 魅ぃちゃんに似てるからってね……」 私たちは、雑巾で後片付けをした。 なんだが自分が情けなくなってくる。 こんな年になって、おもらししてしまうなんて…… 「あ、あの、レナッ……その、今度は」 「今度は無いよ、詩ぃちゃん。 今度は私も、いい男の子を見つけるんだ」 レナはそういって、笑ってみせた。 「じゃ、じゃあ、その時はダブルデートしましょ、 レナなら絶対見つかる! 圭ちゃんなんかより、 万倍いい男が見つかるよ! だって……」 「あっ」 私は、レナの傷ついた手を取った。 「こんなに綺麗な手をしてる」 レナは、また赤面した。 リハビリ室は、突き当りを曲がったところ。 あらかじめ位置は把握していた。 そのドアを叩かず、私は元気に開けた。 「おっはよー、悟史くん! 監督!」 「あはは、元気ですねぇ、詩音さん」 「むぅ、詩音、ここは病院だよ?」 私は、あの後苦労しつつも、なんとか悟史くんと普通に接せるようになっていた。 「悟史くんも、元気ですねぇ、さっすが朝」 「ふぇ?」 悟史くんは、私の言葉に騙されて、下を向いた。 「ひっかかったー!」 「む、むぅ……」 いま思えば、悟史くんの変化なんて、一瞬のことだった。 私は悟史くんの外見を見て恋をしてたの? 違う。そうだよね? レナ? 私は、レナの醜いけども……お料理やお裁縫や、 その他の努力で何年も頑張った手を思い出した。 綺麗な手 ―完―
https://w.atwiki.jp/when_they_cry/pages/428.html
圭梨 クリスマス編① 十二月二十二日が終業式だった。その日は沙都子たち(クラスメート二人、あわせて四人)でパーティーを開いた。場所はエンジェルモート。その時はクリスマス当日に休めるようにアルバイトをしていた詩音が、随分サービスをしてくれた。悟史との惚気もお盆に載せて運んできた。頼んでもいなかったのに。 次の日はレナや魅音たち雛見沢のメンバーとのパーティーだった。前日は制服も着ていたし、そうそうはしゃぐことはできなかったけれどこの日は違った。お酒に一発芸、罰ゲームというスリルを楽しむ要素が加わって、とても盛り上がった。富田と岡村のピエロぶりは笑えた。二人には人を笑わせる才能があるようだ。くっつけばいいのに。 目一杯楽しんだつもりだ。 けれど、圧倒的に足りないものがあった。 みんなの言葉を思い出す。 『圭ちゃん?』 『圭一くん?』 『圭一さんですの?』 かぁ~っと顔が熱くなる。 「?マークはついていなかったのですよ。みんな圭一と断定していたのです。梨花は往生際が悪いのです」 空気の読めない神が思考に割り込んできたのでキムチをお供えしておいた。その辛さは声を奪ってしまいかねない程に強烈なものであり、あぅあぅ喘ぐこともできず標的は地に伏すのだ。 「さて。これで準備万端ね」 あと一時間ほどでイヴを迎える。念入りに持ち物をチェックしていたためここまで遅くなってしまった。いつもならとっくに布団を敷いている時間だけれど、全く眠くないのはどうしてだろう。不思議だわ。 「何が持ち物チェックですか。わくわくしながら何度も同じものを出し入れしていただけなのです。二時間もそうしているなんて、ボクは梨花の正気を疑うのですよ」 キムチおいしい。 「もう寝ようかしら」 電灯を消し、ふと思いついてまた点ける。財布に入れた乗車券を光にかざしてみた。自分でも頬が緩んでいくのがわかった。明日、圭一に会えるんだと思って。 「り、りかぁああ……」 「あんたいたの?」 羽入が、文字では表現できないうめき声で私を呼んでいた。その通り何を喋っているか全く不明だったのだけれど、私に向かって墓場から這い出たゾンビのように手を伸ばしていたから名前を発しているのだと判断することにした。 「……」 「え? なに?」 完全に分からない。とりあえず、テレビのコマーシャルのようにキムチの箱を掲げてみた。 頬の横だといかにも辛そうな匂いが鼻孔を漂ってくる。私は何とも思わないけれど。 羽入は白眼になっていた。 さすがに怖いので、今度はシュークリームを……と思ったところで、突然電話が鳴った。 もう寝ようかと思っていたときだけに少し驚く。いつもなら羽入を巻き込んで悪態をつくところだけれど、今日はいいか。それにしても、一体なんだろうこんな時間に。 「はい、古手です」 『あ、梨花ちゃんか……?』 胸が高鳴った。 「圭一っ? どうしたの?」 『起こしちまったかな、悪い』 「ううん、起きてたわよ」 圭一との電話はほとんど夜の九時を超えない。好きに電話をかけ合いたい。でも出てもらえないと辛いのでお互いに確実に居る時間を選んでいる。九時以降はその条件に高確率で当てはまるけれど、一種のけじめみたいなものだ。……まぁ、電話代もままならないものだしね……。 『起きてたのか? もう寝てる時間じゃないか?』 「……あ、明日の準備があって」 楽しみで寝付かれないと、言えるはずもない。 『あ、梨花ちゃんそのことなんだけどな……』 「なに」 圭一の声が、ぐっと低く小さくなった。はっきりしないものの喋りからは何かを言いにくそうにしているというのがすぐにわかった。その時点で、私に対する気遣いが感じられて不安になった。返事も短いものになってしまう。 『明日……その、来ないでくれないか……?』 「……」 声が出なかった。不意に動けなくなってしまい頭だけがふらふらとした。垂れ下がる受話器のコードが目の中で回っている。 『正月には帰れるんだ。それまで、悪いけど……』 「私が、行っちゃいけないの?」 『……り、梨花ちゃんっ、泣いてるのかっ?』 泣いているかどうかは分からない。けれど悲しいのは事実だった。 「……っく」 どうやら泣いているみたいだった。弱くなったものね、と自嘲する。こういう心のもち方は久しぶりな気がする。六月を抜け出せなかった頃、世界をどこまでも客観的に見ていつも考え、行動していた。それは自分の殻に閉じこもる逃げでしかないと教えられたわけだけれど。辛いことがあったとき寄りかかれる場所ができた。それが圭一で、もしもその存在が居なくなってしまえば私はどうなるのだろう。 ふと暗闇の中で一人座っている幼い私が浮かんで、震えた。 『ぐすっ』 これは私じゃない。 「……圭一?」 『あ、ああ。実は風邪ひいちまったんだボゴホッ!』 「……」 『だから、梨花ちゃんがこっちに来たらうつしかねないと思ってだな……。クリスマスの穴埋めも考えながら、こうして電話してる』 あぁ寒い、と少し遠くで聞こえた。圭一の話を理解するまできっかり五秒。 『梨花ちゃん?』 じゃあ、圭一は自分のせいで私が風邪をひくのが嫌だからと考えて明日の予定を取りやめようと電話してきたのね。どれだけ私のことを考えてくれているのだろう。優しいのだろう。なんてなことを私が思うはずもなかった。 「泣いてなんかないわよっ!」 『え、ええ? な、んだよ急に……』 「うるさいわね! なに、風邪ひいたの? 貧弱なことこの上ないわっ。それもイブ前日にだなんて、あんた少しは空気読みなさいよ! 魅音じゃないんだから! ったく……待ってなさいよ、すぐ行くからっ」 『いや、それは……』 「いいからっ。……圭一、寂しいんでしょ」 私が寝込んだときのことを思い出す。自分以外が普段どおりの生活サイクルを送り、ひとり取り残されていると感じたとき、ひどく寂しくなったのだ。圭一が「ひとりで家に居ると寂しいもんな」と笑ってお見舞いに来てくれたことが何より嬉しかった。 『……そう、だな。正直、寂しいな……ん、でも……』 「すぐ行くから」 『あ、いや』 乱暴に受話器を置く。面と向かい合っていれば別だったかもしれないけれど、電話越しでなら圭一に有無を言わさせないことは簡単だった。 「羽入。急用ができたわ。留守よろしく」 「どこに行くのですか?」 「圭一のところよ。朝に出るつもりだったけれど、もう行くわ」 羽入がきょとんとした顔をする。着替え始めていた私がそれを不思議がると、羽入はテーブルの上の切符をしげしげと眺め始めた。あ。 「明日の朝八時が発車時刻なのですよ。東京行きの切符は」 また電話が鳴った。どうでもいいけれど、深夜のコール音はびっくりする。ただでさえ部屋が狭いというのに。暴力的とさえいえる。私は受話器を僅かに持ち上げ、がちゃりと切った。圭一だろうと思ったからだ。すぐ行くと言っておいて、実は家を出るのは明日まで待たなくてはならないという早くも前言撤回が必要な状況に、私はきまりの悪いものを感じてしまったのだった。 「はぁ。明日まで待たなきゃだめなのね」 無駄な気を張った分、脱力も大きかった。テーブルに肘をついてテレビのリモコンに手を伸ばす。ちょうど明日の天気を伝えていた。とはいっても事前に確認してあるので今更見たところで新しく得られるものはない。明日は快晴。電車も通常通り運行できるだろうということを聞いて、私は数日前から安心していたものだ。 完全に目が冴えているので眠ることさえ容易ではなさそうだ。何しろ布団に入ろうという気も起こらない。羽入と、いや羽入で遊ぼうか。私の遠出するときはいつも駄々をこねる。 遊べ遊べと前日にはよく言ってくるのだ。今日もそうだった。 圭一とどちらが一番とは言えないけれど羽入のことも疎かにはできない。 そう思って声をかけようとしたら、当の本人は気持ちよさそうに寝ていた。 「これほど待ち望んだ朝はないわ」 白のコートに身を包み、旅行鞄を片手に玄関に立つ。 薄いピンクのマフラーが首を温めてくれるけれど、それでも冷気は入り込んでくる。からっと晴れたせいか今日の冷え込みは一段と強い。氷の匂いが鼻を冷やし、吐き出した息でそれを温めなおす。バス停に行かないと。 「避妊はちゃんとするのですよ~」 「うっさい」 見送る羽入に手を振ってイブの雛見沢を出た。 帰ってくるのは二十八日。そのときは圭一も一緒だ。 しょうがや梅干、ネギとにんにく。風邪を引いた身体に効きそうなものを。昨日新たに荷物に詰め込んだ。忘れ物はないか、と電車の中でチェックする。やがて発車の合図が鳴る。学祭のときはこのベルが恨めくてしょうがなかったけれど今は大歓迎だ。 早く鳴れ早く進めと念じていただけにいざ動き始めると「レッツゴー!」と言ってみたくなった。当然恥ずかしくてできない。けれどそのとき車両の前の方でタイミングよく、幼い女の子が言ってくれたので私は右手を突き上げることだけをした。 到着は昼過ぎ。 背もたれに深く寄り掛かり、私は去り行く景色を眺めた。 上下巻ある四百頁強の文庫本をあと少しで読み終えようというとき到着した。幾度かの乗換えと、数え切れないほどの発進と停車の感覚が体に刻まれ、少しだるい。雛見沢ほどではないけれど東京にも雪は積もっていた。今もぱらぱらと舞い落ちている。少し汚いような気がする。見上げても誰かがビルの窓から落としているのではないかと疑うほど。 「くっ……少し詰め込みすぎたわね……」 東京はやはり人が多く、荷物の想像以上の邪魔さ加減に苛々してしまう。すれ違うたび追い抜かれるたび、誰かに当たりそうで嫌だった。けれどもうこの駅から歩いて二十分ほどで圭一の家に着ける。……いえ、三十分くらいかしらね。 とりあえず着いたことを連絡しようと思い、公衆電話を目指した。十円玉が無かったので百円玉を使う。鳴ったコール音×十円分だけ圭一に請求しようと思った。果たして。 「百円ゲットー」 ではなくて。 「出ない」 寝ているのだろうか。だとすれば無闇に起こす必要もない、か。風邪なんかに罹ったら動くのも億劫だしね。圭一の部屋はそんなに広くはないけれど、なんでも座っていて手に届くというほどでもないし。……ただ、ノックをしても起きてくれなかったら少し悲惨なことになりそうね。受話器を置いて振り返る。 「よ、梨花ちゃん」 「……」 ポケットから出した片方の掌をこちらに向けている。私のあげたマフラーに顔を埋め、ややくぐもって聞こえたその声は掠れているのがすぐに分かった。鼻も啜っている。 「久しぶり」 「なんでいるのよ」 詰問するかのような口調。驚きよりも呆れ、嬉しさよりも怒り。そういう感情が先に立つ。 病人は動くな、そう言ったのは誰だったか。額に手を当て溜息、吐息の消えかけのところに視線を飛ばす。若干眉間に皺を寄せて。 「へへっ」 悪戯が成功した子どものように笑う。軽く無邪気な笑顔と振る舞いはどこか頭のねじがぶっ飛んでいるのでは、と思わされる。それとも風邪をひいたというのは嘘だったのだろうか。その想像は怖かったけれど、こうして迎えに来てくれた以上心配することはなさそうだ。目下、気にかけるべきは。 「久しぶりね、圭一。体は大丈夫なの?」 「ん? 梨花ちゃん、道分からないだろ?」 ええ、と。微妙にかみ合っていない。まずは圭一の言ったことだけに反応してみる。 確かに過去数度こうして訪れたときはいつも迎えにきてもらっていた。途中、喫茶店に寄ったり買い物をしたりということもあったけれど、東京のお店の豊富さはそうそう遠くに足をのばす必要性を感じさせないわけで。この駅から圭一の家までのルートを大きく外れたことは一度もない。歩いて二十分ほどの道ならばすぐに覚えられる。だとしても迎えにきたいといったのは圭一で、私も賛成だったのだけれど、さすがに体調が悪いときにまでそれを要求するほど私は冷血じゃない。よって道ぐらい知っているから家で大人しく寝ていなさい、とする私の主張は間違っていないわよね。うん、何か圭一のあっけらかんとし た様子にどちらが正しいのか分からなくなってしまったのよね。おまけに言う気もなくなるし。 「? 行こうぜ梨花ちゃん」 圭一がごく自然に私の手をとる。がらがら声でなければ全くいつもことなのだけれど。どうも体の調子に関しては私の主観で判断するしかないらしい。本人の申告は得られていないのだし。圭一は意地を張るタイプだから、答えなかったのは私に心配をかけまいと考えてのことだろう。とりあえずここは圭一を立てておくとして(うん、いい女)、家に着いたら即刻布団に放り込んでやろう。 「へへへっ」 「なによ」 「会えて嬉しいんだよっ」 「……」 じっ、と隣を歩く圭一に視線を移した。 寒さで赤らんだ笑顔が吐息に紛れている。また、額には汗も滲んでいた。歩き出してから圭一が何度かふらつくのを、私は繋いだ手に軽く力を込めて支えていたのだけれど、その瞬間だけつい忘れてしまった。 「お、おお……? へふぶッ!」 こけた。頭から盛大に。 「あ、ごめんなさい」 何の抵抗もなく雪に顔を埋めてしまっている。首を捻りこちらを見た。 「なぜ梨花ちゃんが謝る?」 自分が万全の体調でないことを、理解していないようだった。起き上がるのも辛そうなのに、相変わらず顔には笑みが張り付いている。風邪だと私に電話してきたくらいだから当然自覚症状はあったに違いないのだろうけれど、今ではさも健康であるかのように振舞っている。意識と身体のずれを今の圭一に見る。お酒に酔った状態に近いのかもと私は思った。であれば、早く休ませてあげたほうがいい。多分、これはうぬぼれではなく、圭一は私と再会したことで妙に気分が盛り上がっているのだろうから。 「早く行きましょ」 私も同じように嬉しく、気持ちが高ぶっていた。なのに学祭のときと違って幾分か平静でいられたのは、珍しく子どものような圭一の振る舞いをじっくり見ていたいと思ったからだった。可笑しさと愛おしさで心は穏やかだった。 たまには風邪もいいかもしれないわね。 ようやく到着、と。 「ってなによこれ……」 前に見た雰囲気とは随分違った。なかなか綺麗にしてある、と感想を持った当時が懐かしい。今でもそんな言葉が出てこようものなら私は女として失格に違いない。 入ってすぐが台所でその奥が六畳の和室になっている。半分開いた隙間から覗く、圭一の主な生活拠点である和室の惨状も目にはついたけれど、まずは食器のごった返す流しについて突っ込んだ。 「いったい何日洗ってないのよ」 「んー?」 玄関で私の後ろに立っていた圭一。振り返ると視線が上手いこと定まっていなかった。そうだった。風邪だったのだ。家に着いたことで安心したのか、自分の身体の感覚が舞い戻ってきたのかもしれない。先ほどまでは気持ちが頭の少し上をぐるぐる回っているようだったから。ランナーズハイが急に止まったような感じだろうか。 「ま、まぁいいわ。とりあえず着替えて寝なさい」 「おー……」 足元が頼りなかったけれどそんなに距離があるわけでもないので何事も起きず圭一は奥の部屋に消えていった。ごそごそと億劫そうに衣服を脱ぐ音が聞こえる。というか、襖閉めなさいよ……。 「さて……」 私は荷物を玄関脇に置くと、コートを脱いで袖をまくった。少し寒い。 まずは食器洗い。キッチンの構造自体はうちのものとよく似ている。左右に半歩歩けば料理の全てを賄える、といったところだ。 「スポンジと洗剤が見つからない……」 コンロに置いたままの鍋に箸やスプーンが入ってたり、空の牛乳パックが、胸まで積み重なる不安定な食器タワーの土台を作っていたりと、何かと恐ろしい。流しの底にかすかに見えた丼、それに付着している汚れは落ちにくそうだと一目で悟った。 きょろきょろと探すうちにスポンジはアメーバーのように広がった台拭きの下に発見。洗剤は見つけたと思ったら重みを感じなかったので新しいものを出した。それは一番に開けた棚の中に転がっていたので、助かった。 それから三十分ほど経ち、ようやく体裁が整ったので私はお粥を作ることにした。 出来上がるまで少し時間がかかる。 喉が渇いたので冷蔵庫を開けた。 「予想していたけど……」 ビールだけが入っていた。私はビールは好まなかったので手に取る気は起きなかった。たとえ飲むにしても時刻はまだ十五時過ぎだった。圭一の看病のことも考えると、今日はお酒を飲むことはしないほうがいい。そこでふと気づく。ああ、お酒は、圭一に止められていたのだっけ。気分がいいと、どうしても飲みたくなってしまうのだった。 静かな寝息が、隣の部屋から私の家事の途切れ途切れに聞こえていた。それが心地よく、家事が落ち着いたところで私は、ああ、二人でいるんだと今をかみ締めることができた。 「圭一ー……」 と控えめに和室を覗く。視線を走らせたベッドの上には圭一はおらず……。 「って、なんでこたつで寝てるのよっ」 「……んあ?」 「ちょっと圭一」 間の抜けた声に被せるようにして呼びかける。同時に肩も軽く叩いた。風邪をひいているのにこたつで寝るなんて頭が悪すぎる。体調が悪化の一途を辿るだけじゃない。 「んん~……? んー…梨花ちゃん……?」 「起こしてごめんなさい、でもこたつで寝るのはよくないわよ」 「あーあたま……くらくらする」 「だからちゃんとベッドで」 「ん」 圭一がベッドの方を指差す。気づかなかったけれど、そこはさながら物置のようだった。 主に新聞紙によって埋められており、所々では書籍や雑誌がひょっこりとに顔を出している。足元にはゴミ袋まで……。目線を挙げると、空っぽのペットボトルが窓枠から落ちそうでもあった。なるほど、これでは寝床として使えるはずもない。 「たはは……」 膝元で恥ずかしそうに笑っている。男の一人暮らしなんてこんなもんだよ、といわんばかりに。はぁ、と溜息をついた。こたつのテーブルにもごみが散らかっていた。カップラーメンの空き箱がまるで紙コップのように自然に鎮座している。あと缶詰。そして私は圭一の私服を踏んづけている。またまた溜息が出てしまった。 「圭一、いったいいつから風邪なのよ」 「ん。一週間前くらいかな……」 「それでこの散らかりようなわけね――一週間前?」 一週間も風邪なんて……悪いのは病原菌なのかしら、それとも圭一の身体? けれどこのだらしなさ漂う生活を目の当たりにすると、そんなこともさして気にならなかった。 「これもあって……梨花ちゃんに来てもらうのは気が引けたんだよな……」 「そうね……って勝手に膝を枕にしないで」 折った膝に圭一の頭が乗っていた。おそらくお風呂にも入っていないのだろう。ぼさぼさの髪を撫でようとするけれど、それをしてしまえばこのまま落ち着いてしまいそうなのでこらえた。 「こうして寝かせてくれたらすぐ治ると思う」 案の定そう言う。治るわけもないし。 ……。 「…け、い、い、ち?」 びくりと手の動きがとまる。声色を変えたことに気づいたのだろう。スケベな横顔を睨む。 「おいたはそこまでにしときなさいよ」 圭一はスカートの中に入れようとしていた手を苦笑いしながら引っ込める。同時に私は立ち上がった。頭の置き場を失った圭一が変に呻いたけれど気にしない。さらに邪魔な物を無造作に手にとって床にばら撒いていく。ベッドを空けるのに数分とかからなかった。空けるだけなら、ね。圭一をちゃんと寝かせた後の整理が大変そうだわ。今日はゆっくり休める暇もないみたい。 「ひー。つめてー。梨花ちゃん一緒に寝てくれー」 「すぐに温かくなるわよ。それより、この部屋寒いわね。ストーブはつけないの?」 「つけている間に眠っちまったら怖いじゃないか……」 「じゃあ私が起きていればいいのね」 にやり。 「あ」 「さっさと就寝」 「あーあ……」 布団の中で悔しそうに動き回るのを見て、これは当分寝そうにないわねと思った。ちょうどいい。部屋を綺麗にしている間にお粥も出来上がるだろうから。そのことを伝えると急に神妙になり礼を言った。 それから、散らばった物を一つ二つと手に取り、片付け始めた。 片付けの最中に発見した体温計には三十八度と表示されていた。渡してすぐに圭一は咳を二回。そんなに異常な咳ではない。その証拠に、何かと私の背に話しかけてくる。 「ごめんなーせっかくのクリスマスなのに」 「イブよ」 テレビは聖夜の街並みを映してている。インタビューを受ける人もその後ろを過ぎていく人たちもみんな幸せそうだった。浮き足立っている様子が伝わる。それに比べてこの部屋ときたら……。ちらりと圭一を見る。本当に申し訳なさそうな顔で息を吐いている。不思議と文句を言う気にはならなかった。 「明日までに治ればいいんだけどな」 「……これはこれでいいんじゃないかしら」 ゆっくりと時間が過ぎた。 続く