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フェイトたちは決戦の場へと転送された。 陸地はなく、海から廃墟となったビル群が生えている。時空管理局が作り上げた疑似空間だ。ここならどんな大技を使っても現実空間に被害を及ぼす心配はない。 「小鳥遊、あんたが戦いな。その方が勝率が高い」 アルフが小鳥遊のジュエルシードに手を当て、魔力を送り込む。アルフの全ての魔力を受け取り、小鳥遊が回復する。 「負けたら承知しないよ」 「任せてください」 小鳥遊とアルフは互いの拳を打ちつけ合う。アルフはよろめきながらも、巻き込まれないよう戦場の隅に移動する。 傾いたビルの屋上に腰かけると、ユーノがやってきた。 「あんたも見学かい?」 「はい。僕では、なのはたちの全力の戦闘にはついていけませんから」 どちらもこの日の為に準備をしてきた。後はどちらの知恵と力が上回るかだ。 レイジングハートとバルディッシュの先端が触れ合う。戦闘が開始された。 ぽぷらとなのはが、ビルの間を縫うように高速で飛行する。 牽制射撃を繰り返しながら、二人はどんどん加速していく。ぽぷらはクロスレンジの戦闘が苦手だ。まずは接近されないことが肝心だった。 しかし、どんなに速度を上げても、フェイトはぴったり後ろについてくる。この中で一番機動力が優れているのはフェイトだから当然だ。 (作戦通りだね) なのはが念話をぽぷらに送る。 なのはたちの目的は、フェイトと小鳥遊の分断だった。小鳥遊の弱点は、魔法の射程が短く飛行速度が遅いこと。高速で戦闘していれば、必ず遅れる。その隙に二人がかりで、フェイトを倒すのだ。 ビル群を抜け、なのはたちは開けた空間に出た。追いかけてくるのはフェイトのみ。 「かたなし君はいないね?」 「なら、一気に決着をつけよう。シュート!」 八個の魔力弾が、全方位からフェイトに襲いかかる。 フェイトは落ち着いた様子で、背後から迫る四個を迎撃する。 「必殺ぽぷらビーム!」 足の止まったフェイトをぽぷらが狙い撃つ。フェイトは高速機動は得意だが、防御には少々難がある。命中すれば倒せるはずだ。 「縮め!」 突如、小鳥遊が出現し、迫るビームと残りの魔力弾を縮小させ体で受け止める。 「小鳥遊さん、どこから出てきたの!?」 『Fire』 「なのは、下だ!」 佐藤の指示で、なのはが急降下する。頭上すれすれを電光が通過する。 なのはとぽぷらが移動を再開する。 「あれを見ろ」 佐藤が追いかけてくるフェイトの肩を指差す。自らの魔法で赤ん坊サイズに小さくなった小鳥遊がしがみついていた。これまではマントの後ろに隠れていたのだ。 「分断を狙ってくることくらいお見通し」 「ちなみに佐藤さんをヒントにしました」 フェイトが自慢げに、小鳥遊が少し青ざめた顔で言う。 訓練しても、小鳥遊の飛行速度を上げることはできなかった。ならば、佐藤のように誰かに運んでもらえばいい。 ただし、この技には弊害があった。小鳥遊が小さくなることで、あらゆる人間が年増に見えてしまうのだ。あまり長時間続けると、小鳥遊の精神が持たないかもしれない。 敵の攻撃を小鳥遊が盾となって受け止め、フェイトの電光が必殺の威力を持って迫る。二人はまるでワルツを踊るように攻守を入れ替えながら戦う。 「私たちにもう弱点はない」 「まさに最強の矛と盾。俺たちは絶対に負けません!」 なのはたちがじりじりと追い詰められていく。 「やっぱり強いね、フェイトちゃん」 なのはが感心したように言う。 「でも、私たちもこれ終わりじゃないよ」 どうやら切り札を使う時が来たようだ。ぽぷらが照準をフェイトに合わせる。 「ポプライザー!」 ぽぷらの枝からビームが放たれる。技名は初だが、普段のビームと変わらない。防ぐまでもなくフェイトはやすやすと回避する。 「ソード!」 ぽぷらがビームを放出したまま、両腕を振るう。それに合わせてビームが横薙ぎに振るわれる。 「魔力剣!?」 フェイトが驚愕し、小鳥遊がかばう。 ビームとして放出した魔力を、そのまま刀身として維持する。膨大な魔力消費と引き換えに、これまで直線の攻撃しかできなかったぽぷらに、立体的な攻撃を可能とする新技だ。 ぽぷらの背がじりじりと縮んでいく。早く勝負をつけないと、身長が持たない。 「せーの!」 ぽぷらが全長百メートルに及ぶ剣を振りまわし、小鳥遊ごとフェイトをビルに叩きつける。 ポプライザーソードの威力はビーム時の半分以下しかない。小鳥遊の防御を貫通はしないが、ぽぷらと佐藤が力を合わせ、上から押さえつけて動きを封じる。 小鳥遊が剣を小さくしようとするが、ぽぷらがその度に魔力を注ぎ込むので、剣の大きさは変わらない。 「そっちが最強の矛と盾なら」 「こっちは最大の剣と大砲だよ!」 周辺の空間に漂う魔力の残滓が、レイジングハートの先端に集中する。まるで星の光を集めているようだった。暴発寸前まで集められた魔力が、凶悪な光を放つ。 「集束砲撃!?」 「フェイトちゃん、逃げて!」 小鳥遊が渾身の力でわずかに剣を持ち上げ、フェイトが動ける隙間を作る。 「でも、小鳥遊さんが……」 「いいから! 勝って、全てのジュエルシードを手に入れるんだ!」 フェイトが意を決して隙間から這い出す。 「スターライトブレイカァァー!!」 圧倒的な光が瀑布のように降り注ぐ。光は小鳥遊ごとビルをぶち抜き、巨大な爆発を引き起こした。いかに魔王小鳥遊でも、耐えられる威力ではない。爆発が収まった後には、変身が解除された小鳥遊が海面を漂っていた。 「やった……!」 集束砲撃は負担が大きく、なのはの呼吸は激しく乱れていた。 「回避しろ!」 佐藤からの警告。なのはは体をひねるが、迸る電光が肩を直撃する。 「なのはちゃん!」 「後はお願い」 なのはが肩を押さえながら落下していく。撃墜はされていないが、しばらくは動けないだろう。 ぽぷらが空中でフェイトと相対する。ぽぷらは普段の半分のサイズまで縮んでいた。 「佐藤さん、なのはちゃんが回復するまで時間稼ぎできると思う?」 「無理だな。その前に撃墜される」 「なら、一気に決めるしかないね」 フェイトとて、度重なる魔法の行使で疲れているはずだ。勝機はある。 「ポプライザーソード!」 ぽぷらの枝から長大な魔力剣が伸びる。ぽぷらの背がさらに半分に縮む。 「くっ!」 フェイトは魔力剣を回避するが、剣はどこまでも執拗にフェイトを追いかけてくる。苦し紛れのフォトンランサーを、ぽぷらは剣で切り払う。 「無駄だ。俺の予知からは逃げられん」 佐藤が時折、フェイトの進行方向に先回りして剣を動かす。 「もらった!」 剣が完全にフェイトを捉える。ぽぷらが横一文字に剣を振り抜く。 「佐藤さん、私、勝ったよ!」 「ぽぷら」 佐藤は喜びもせず、剣の先を見つめていた。ぽぷらも視線の先を追った。 剣の先に黒い染みができている。染みの正体に気がつき、ぽぷらの顔から血の気が失せた。 足元にバリアを張り、剣の上にフェイトが乗っていた。チェーンバインドを応用して、自分と剣を光の鎖でつないでいる。まるで神話の、岩に鎖で繋がれたアンドロメダ王女のようだった。ただし、このアンドロメダ王女は怪物を倒す力を秘めている。 「きゃー! 離れてー!」 ぽぷらが剣を振りまわすたびに、鎖がちぎれ、足元のバリアがひび割れていく。それでもフェイトは冷静だった。 『Get Set』 「これなら絶対に外さない」 バルディッシュがグレイヴフォームへと形を変える。バルディッシュも鎖で剣に固定され、まっすぐぽぷらを狙っていた。ポプライザーソードを使っている間、ぽぷらは移動できない。 「剣を消せ!」 「もう遅い」 佐藤の叫びと、スパークスマッシャーの発射はまったく同時だった。 ぽぷらが回避の指示を仰ぐべく佐藤を見る。佐藤はきっぱりと言った。 「すまん。詰んだ」 「さとーさーん!」 ぽぷらと佐藤を稲妻が貫く。 変身が解除された二人が海面へと落下していく。魔法の使い過ぎで手の平サイズのままの二人を、ユーノが空中でキャッチする。 フェイトは安心したように息を吐いた。 「フェイトちゃん」 「そっか。まだ終わってなかったね」 休憩する間もなく、ぼろぼろになったなのはがゆっくりと上昇してくる。フェイトも三つの魔法を同時使用したことでかなり消耗していた。 「なのは、やっぱり私たち友達にならなければよかったね」 フェイトは苦しそうに顔を歪めていた。 「フェイトちゃん、そんな悲しいこと言わないで」 「だって、友達になっていなければ、こんなに辛い思いをしなくてすんだ」 傷ついた小鳥遊をアルフが介抱している。佐藤とぽぷらは、まだ意識を取り戻していない。 小鳥遊はもちろんだが、佐藤やぽぷらもワグナリアにいる間、仕事に不慣れなフェイトによくしてくれた。 誰を傷つけても、誰が倒れても、心がきしみ悲鳴を上げる。こうなることはわかっていたはずなのに、優しい誘惑にフェイトは勝てなかった。 「フェイトちゃん、今がどんなに辛くても、楽しかった時間まで否定しないで。例え結果がどうなろうと、私はワグナリアで過ごした時間を絶対に忘れない」 「そうだね、なのは。私も忘れられないよ。でも、私は母さんの為にジュエルシードを集めるって……そう決めたから!」 フェイトは涙を振り払い、バルディッシュを構える。 その時、膨大な魔力反応が空を覆った。 「母さん!?」 フェイトとなのはを紫の稲妻が襲う。 「なのは!」 「フェイト!」 ユーノがなのはを、アルフがフェイトを受け止める。 その隙に十個のジュエルシードが雲間へと飛んでいく。 「宗太さん」 フェイトが朦朧とした意識で手を延ばす。 ジュエルシードと一緒に、小鳥遊も雲の向こうへと消えていった。 小鳥遊が目を覚ますと、部屋の奥でプレシアが椅子に座っていた。隣の台座には、十個のジュエルシードが置かれている。どうやら時の庭園に運ばれたようだ。 「やはり一度に空間転移させるのは、これが限界か」 プレシアは激しく咳き込む。口を押さえていた手には、べったりと血が付着している。 「お前……」 「時間がないって言ったでしょう。こういうことよ」 プレシアは病魔に侵され、余命いくばくもない状態だった。 「それにしても情けないわね。すぐにジュエルシードを集めるって言っておきながら、この程度なの?」 「フェイトちゃんはまだ負けてなかった。どうして横槍を入れたんだ」 「もう必要なくなったからよ。あの子も、全てのジュエルシードも」 ようやく悲願達成の確信を得られたと、プレシアはいつになく上機嫌だった。 「どういう意味だ?」 「いいわ。全部教えてあげましょう」 プレシアは椅子の右手側にある扉を開けた。液体に満たされたポッドが並ぶ通路の中央で、フェイトに瓜二つの女の子が入ったポッドが鎮座していた。 「あれが私の本当の娘、アリシアよ」 ポッドの中の少女はフェイトより少し幼いようだった。小鳥遊は息をのむ。 かつて優秀な魔導師だったプレシアは事故で一人娘を失った。その後、人造生命の研究、プロジェクト・フェイトを利用して娘を蘇らせようとしたが、計画は失敗し娘の紛い物しか作ることができなかった。それがフェイトだ。 「アリシアを蘇らせるには、失われた技術の眠る世界、アルハザードに行くしかない。その為には二十一個のジュエルシードが必要だった。でも、これだけあれば、もう充分」 小鳥遊の肉体と精神はジュエルシードと相性がいい。小鳥遊を媒介に十個のジュエルシードとこの時の庭園の駆動炉の力を結集させれば、数の不足分を補い、より確実に次元の狭間にアルハザードへの道を作れるはずだ。 小鳥遊はプレシアを睨みつけた。 「一つ教えてくれ。お前はフェイトちゃんをどう思ってるんだ?」 「ただの人形よ。目的を果たした今となっては、もう用済み。必要ないわ」 「あの子は母親のあんたの為に、あんなに頑張っていたんだぞ。それに対する感謝は、愛情は、あんたにはないのか!」 小鳥遊の怒りを、プレシアは涼風のように平然と受け流す。 「もし愛してるなら、あなたみたいな変態に近づけると思う? そうね。あの子を餌に、あなたの研究が出来た。そこだけは褒めてあげてもいいわ」 プレシアは明後日の方向を見上げた。小鳥遊以外の誰かに聞かせるようにはっきりと告げる。 「あなたはアリシアとは似ても似つかない偽物。私は、そんなあなたが大嫌いだったわ。ねえ、聞いているんでしょ、フェイト?」 プレシアの放った魔法から、時の庭園の場所はすでにアースラに察知されていた。プレシアと小鳥遊の会話を、アースラブリッジでなのはとフェイトは聞いてしまっていた。 小鳥遊は怒りに体を震わせる。 「……俺は年増が嫌いだ。年増なんてみんなわがままで自己中で……。でも、あんたはその中でも最悪の年増みたいだな」 小鳥遊が走り、台座の上のジュエルシードを一つ奪い取る。 「あんたはこの手で倒す。小さくしてフェイトちゃんに謝らせてやる」 黒いマントがひるがえり、魔王小鳥遊へと変身する。怒りで全身に活力がみなぎってくる。 「この場所に運んだのは失敗だったな。狭い空間でなら、俺は無敵だ」 「無敵? いいえ、あなたは弱い。あなたほど弱い魔法使いを私は他に知らないわ」 プレシアは杖を投げ捨てると、小鳥遊めがけて走る。 大きく腕を振り上げ、プレシアが小鳥遊の顔面を殴る。今の小鳥遊にしてみれば、クッションの上から叩かれているようなもので、痛くも痒くもない。 「どうして今私に魔法を撃たなかったの?」 プレシアが口元を楽しげに歪める。走り寄る間に、いつでも攻撃できたはずだ。 「あなた、女に攻撃されると無抵抗に受ける癖があるでしょう。過去によっぽど女に酷い目に遭わされたのかしら?」 これまでの戦いで小鳥遊が攻撃を避けたのは、クロノを相手にした時だけ。魔法で攻撃された時は小さくして威力を軽減しているが、伊波やアルフのような直接攻撃はまったく無防備で受け止めている。 幼い頃、小鳥遊は梢の技の実験台にされていた。たまに反撃すると三倍になって返ってきた為、黙って受けるのが習慣になっていた。 女が小鳥遊の魔法を防ぐのにバリアなどいらない。ただ拳を繰り出せばいいのだ。 「そして」 プレシアの手が小鳥遊の腹部に当てられる。次の瞬間、激痛と激しい嘔吐感が小鳥遊を襲い、たまらず地面に膝をつく。 「どんなに肉体を強化したって、内臓が鋼になるわけじゃない」 プレシアは小鳥遊の体内に直接強い振動を送り込んだのだ。激しい揺れに胃の内容物が食道をせり上がり、心臓は鼓動を乱されて激しい痛みを引き起こしていた。 「ほらね。あなたはこんなにも弱い」 プレシアが地に這いつくばる小鳥遊を蔑む。 「……俺は、俺は、負けられないんだぁぁああああああ!」 小鳥遊が気力を振り絞り、右腕を突き出す。それよりわずかに早くプレシアが小鳥遊の額に手を当てた。 「お休みなさい、魔王小鳥遊。もう目覚めることはないでしょうけど」 振動が脳を激しく揺さぶる。脳を揺さぶられて、意識を保っていられる人間などいない。気合も根性も何の意味も持たない。 (ごめん、フェイトちゃん。俺、何もできなかった) 悔しさに小鳥遊は歯がみする。しかし、どうすることも出来ず、小鳥遊の意識は闇の底へと沈んでいった。 目次へ 次へ
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魔道戦屍リリカル・グレイヴ Brother Of Numbers 第三話「死人と姉妹」 ある次元の管理外世界においてレリックを回収した時空管理局のとある一部隊、その前に一人の男が両手に二丁銃を持ち棺を背負って現われた。 その男は一言の言葉も一切の警告も無く、手にした巨大な二丁銃を乱射して部隊の者を次々と撃ち倒していく。 まるで無慈悲な死神の如く。 「糞っ! 糞っ! 糞おおおおっ! 死体野郎が墓場に帰りやがれ!!!!!」 武装局員の一人が唾を撒き散らしながら殺傷設定の射撃魔法を二丁銃の死人に乱射するが、その貧弱な弾幕では強靭な死人兵士の身体を破壊するには至らない。 隻眼の死人兵士はその射撃魔法をまるで意に介さずに悠然と武装局員に近づき至近距離から手の巨銃を突き付けた 「や、や、やめ…」 武装局員の懇願が言い終わる前にその巨大な拳銃、ケルベロスが火を吹き武装局員の意識を闇に落とした。 「ちっ! 本部、こちら第15分隊。ウォーキング・デッドと交戦中! 早急に増援部隊の派遣をお願いします!!」 その様を遮蔽物越しに見ていた他の武装局員の一人が舌打ちしながら増援部隊の支援要請を送るがその通信は無駄に終わる。 武装局員の通信が終わるや否やグレイヴは肩に火器を満載した棺桶デス・ホーラーを担ぎ、この戦いを終局に導く準備を終えていた。 デス・ホーラーがその強固な装甲を開き大量の小型マイクロ・ミサイルの顔を覗かせる。 そして空中に発射されたそのマイクロ・ミサイルはデス・ホーラーの誘導制御を受けて遮蔽物に隠れていた武装局員達に正確に向かって行った。 これがデス・ホーラーの全方位型攻撃の一つ“Dooms Rain”である、無慈悲な裁きの雨は爆炎を巻き起こして武装局員の部隊の全てを戦闘不能に落とす。 そしてその場には背中に十字架を刻まれた最強の死人兵士だけが一人立っていた。 ここは地下深くの違法な地下施設、そこで今日もまた姦しい姉妹が無口な兄にワガママ攻撃を炸裂させていた。 「腹減った~メシ食~わせ~」 「減ったっす~死ぬっす~」 「グレイヴ~早くメシ~」 ナンバーズ3馬鹿姉妹であるセイン・ノーヴェ・ウェンディが手にナイフとフォークを持ってテーブルを叩いて騒ぐ。 「お前ら少しは落ち着け」 「ま~たっく。お食事の時くらい静かにできないんですか~?」 「ノーヴェ、静かに」 騒ぐ3馬鹿姉妹にナンバーズ年上組み、トーレ・クアットロ・チンクが口を開く。 ちなみにあまり口数の多くない姉妹(セッテ・オットー・ディエチ・ディード)はその様子を静かに眺めていた。 そこに大量の皿を乗せたお盆を持ったグレイヴがやって来る、お盆の上の皿にはサラダとグレイヴ特製マカロニグラタンが湯気を昇らせていた。 ちなみにグレイヴはエプロン(チンク姉のお手製、ウサギさんのアップリケ付き)を掛けているので随分と所帯染みている。 「うわ~いメシメシ~」 「メシっす~」 セインとウェンディが真っ先に食いつき、他のナンバーズもその二人に呆れながらも料理に手を付け始める。 その穏やかな食卓の中でふとセインが口を開いた。 「そういえば、ドクターとウーノ姉は?」 「ドクターとウーノは何やら研究室に篭っているぞ」 「ほほ~う…」 「なるほどっす…」 チンクの答えにセインとウェンディは何やら含みを込めた笑みを見せる、その様子にノーヴェが不思議そうな顔をする。 「何だよお前ら、何か心当たりでもあんのかよ」 「もちのろんろんっすよ~」 「ふふふ。ドクターとウーノ姉は今きっと…」 そのノーヴェの言葉にセインとウェンディは最高の爆弾的回答を投下した。 「「エッチしてるんだよ(っすよ)!!」」 凍った。その場の空気が完全に凍りつき、ナンバーズ全員の思考と動きを止めた。 「ふ、ふ、ふ、二人ともな、な、な、な、何を言ってるんだ!? そんな言葉をどこで覚えた!?」 セインとウェンディの言葉の威力にやっと正常な思考を取り戻したチンクが顔を真っ赤にして二人に問い詰めた。 「えっと~。この前クア姉が教えてくれた♪」 「そうっす~」 次の瞬間にはチンクは目にも止まらぬ速さでクアットロにナイフを突き付けていた。 「クアットロ…妹達に何を吹き込んだ? 正直に言えば楽に殺してやる…」 「ちょっ、チンクちゃん…殺すのは確定なの? 私はただ“ちょっとした性教育”をしただけで…」 一触即発のチンクに引きつった顔で怯えるクアットロ、そしてセインとウェンディの言葉の意味を知らないナンバーズは不思議そうな顔でグレイヴに質問を投げていた。 「グレイヴ、さっきの言葉の意味は何ですか?」 「なあグレイヴ、エッチって何だ?」 「何なの?」 「教えてください」 「教えて」 上からセッテ・ノーヴェ・ディエチにオットーとディードの双子コンビである。 この質問攻めにグレイヴは苦笑しながらその場で事の成り行きを見ていたトーレに助けを請うような視線を向ける、だがトーレは諦めろと言って苦笑いで返した。 今日もこのファミリー(家族)は騒がしく楽しい日々を送る。 レリック絡みの事件に出現する黒衣の生ける屍ウォーキング・デッドの噂は様々な管理世界に広まった。 ガジェットを従えAMF下において圧倒的な銃火器の制圧力を以って管理局の魔道師を蹂躙する様は多くの世界の人間に衝撃を与える。 レリック関係の事件という事もあり機動六課も独自に戦う死人に関する調査を各方面から進めるが、死者を兵器にする技術などはどこの世界にも残されていなかった。 そしてスカリエッティの下に彼の探していた聖王の器が発見されたという報告が届く。 「さて。では現場にはクアットロとディエチ、それにセインに行ってもらおうかな……」 スカリエッティはモニターの映像でガジェットの動きと現場にレリック確保に向かったルーテシアの動きを追いながらウーノと共に敵情報の収集を続ける。 そこに案の定、装備を整えたグレイヴが現われた。スカリエッティは少し不満に顔を歪める。 グレイヴの性格を考えれば聖王の器がどういうものか知れば確実に任務の障害になりかねないと判断したが故の苦渋の感情だった。 「やあグレイヴ。今日は彼女達だけで大丈夫だよ、君のデス・ホーラーも調整が必要だろう? 今は休みたまえ」 「………」 そのスカリエッティの言葉にグレイヴは即座に虚実の匂いを感じる。 かつて組織の殺し屋として様々な人間を見てきたグレイヴにとってはいかに巧妙に隠そうともスカリエッティの言葉の裏の意図を読むなど容易な事だった。 グレイヴはいつもどうり無言で転送装置の準備をして現場に飛んだ。 その様子をスカリエッティは呆れて、ウーノは少しばかり怒りを抱いて眺めていた。 「あ~。やっぱり行ってしまったね~」 「ドクターよろしいのですか!? このままでは作戦に支障が出かねません!」 「まあ、良いじゃないか? こういうハプニングも楽しいものだよウーノ」 スカリエッティは楽しそうにモニターを眺めて戦況を確認する、最強の死人兵士が再び機動六課の魔道師達との戦いを繰り広げようとしていた。 その日、休暇を楽しんでいた機動六課のフォワードメンバーは偶然にもレリックコアと身元不明の少女を発見する。 事態は六課隊長陣も出動しての大規模な戦闘に発展した。 そして発見されたレリックコアと身元不明の少女を乗せたヘリが謎の戦闘機人の砲撃を受ける。 だがその攻撃はなのはの防御に防がれ、なのははフェイトと共に襲撃犯である二人の戦闘機人を追い詰める。 クアットロは飛行能力の無いディエチを抱えて追いすがるなのはとフェイトの追撃から逃げようとしたのだが、執拗な追撃に挟み撃ちを受け地上に落ちたのだった。 「ちょっ…ちょっとこれはヤバイ感じね~」 「そんな事、言ってる場合じゃないよクアットロ…このままじゃ…」 その二人を前後から挟み込むようになのはとフェイトが下り立ち射撃魔法の掃射の準備をする。 「もう逃げられないよ! 大人しく投降しなさい!」 なのはが声を張り上げた次の瞬間、地獄の番犬の名を持つ二丁銃ケルベロスの吐き出す15mm口径魔力ダメージ弾頭が雨の如く降り注ぎ、なのはとフェイトを襲った。 「くっ!!」 「きゃあっ!!」 なのはとフェイトはその突然の攻撃に防御障壁を削られ思わず悲鳴を上げる、そしてクアットロとディエチの下に最強の死人兵士ビヨンド・ザ・グレイヴが下り立った。 グレイヴは下り立つと同時になのはとフェイトにケルベロスの銃弾で弾幕を張りながらクアットロとディエチに語りかけた。 「クアットロ、ディエチ…早く逃げろ」 グレイヴはなのはの放ったアクセルシューターを撃ち落しフェイトの撃ったプラズマランサーをデス・ホーラーで防ぎながら二人に視線をやって早く逃げるように促す。 その強い意志と優しさを秘めた瞳を見たディエチはグレイヴの服の裾を掴んで小さく呟いた。 「分かった…絶対に帰って来てね、グレイヴ」 そのディエチの言葉にグレイヴは優しく微笑んで返し、クアットロに視線を移して口を開いた。 「クアットロ……ディエチを頼む」 「え…ええ分かりました。それじゃあ、あなたも気を付けてくださいね? 勝手に死んだらダメですよ?」 「…ああ」 グレイヴの小さな返事を受けてクアットロとディエチはその場を離脱する。 フェイトが逃げる二人に向かってバルディッシュを構えて飛び掛ろうとするがそこにグレイヴが放った“Dooms Rain”のマイクロ・ミサイルの雨が降り注ぎ爆炎を上げた。 炎が晴れた時にはクアットロとディエチの姿はなかった、そして場にはグレイヴとなのはとフェイトのみが残される。 その時グレイヴのインカムにスカリエッティからの通信が入る。 『あ~グレイヴ。聞こえてるかい?』 「……」 『デス・ホーラーに付いた新機能を使ってみてくれないか? 実戦での性能をチェックしたくてね、それに彼女達のような強力な魔道師には有効な機能だよ?』 グレイヴはその通信を受けて眼前のなのはとフェイトを見る、確かに今までの有象無象の武装局員から比べられない強さである。 故にグレイヴはデス・ホーラーの新機能を使うのにためらいはなかった。 インカムから送られた信号に反応しデス・ホーラーは髑髏を模られたその顔を怪しく光らせてその力を発揮する。 「くっ!」 「これは! AMF!?」 グレイヴの背負っていた棺桶がその髑髏の目を光らせた次の瞬間、場に今までの比でない強力なAMFが発生してなのはとフェイトを苦しめる。 それは後にスカリエッティが聖王のゆりかご内部に設置するものと同じ規格の次世代型AMFである。 従来のガジェットでは出力不足と過剰な重量の問題で実用化できなかった代物であったが、この最強の死人兵士にはこの程度の重量ではなんの問題も無かった。 リミッターによる抑制と高濃度のAMF下で力を著しく削がれたなのはとフェイトにグレイヴは容赦なくケルベロスの銃弾を叩き込む。 二人のバリアジャケットは引き裂かれ魔力ダメージに赤く焼けた柔肌を空気に晒した。 「はああああ!!!」 フェイトがザンバーフォームになったバルディッシュの金色の刃を振り下ろしグレイヴに斬り掛かるがグレイヴはその斬撃を交差させたケルベロスで防ぐ。 軋みを上げる両者の得物だが高濃度のAMF下でのバルディッシュの刃は無慈悲にも単純な膂力で押し返される。 フェイトがいかに優秀な魔道師とて死人兵士を相手に常人が正面から打って出て、勝てる要素など無いのだ。 「くっ…」 バルディッシュの刃を押し返すケルベロスの圧力にフェイトは苦悶の顔を見せる。 「フェイトちゃん! こうなったら…」 そこになのはがカートリッジをロードして、形成できる最大限の誘導弾を作り出してグレイヴに発射した。 「アクセル・シュート!!!」 無数の誘導弾が精密な軌道を描きながらグレイヴに発射され、その全てがなのはの弾道コントロールを受けたそれは正確にグレイヴの頭部や腹部に命中した。 その誘導弾の攻撃にグレイヴの頭部から煙が立ち上り、彼の身体は地面に倒れ伏した。 なのはとフェイトはこの死人兵士からやっと戦闘能力を奪うことができて重い溜息をついた。 「ふぅ~…やっと止められたね…」 「うん…」 そしてなのはは通信をロングアーチに繋いで報告を入れる。 『こちらスターズ01。ウォーキング・デッドを無力化しました、至急ヘリの準備を…』 しかしなのはが通信で言葉を全て言い切ることは無かった、何故なら倒れた筈の死人兵士が背の棺に手を掛けていたのだから。 次の瞬間になのはとフェイトの意識は刹那に断たれ、その場に倒れ伏した。 グレイヴは即座に立ち上がると同時にデス・ホーラーの機関銃銃身から大量の銃弾を発射しながら360度回転して周囲に弾丸を余す所なく吐き出す大技“Bullet Dance”を行ったのだ。 弾丸を刻む舞踏の前に成す術なく敗れたなのはとフェイトをグレイヴは幾分かの憐憫をもって眺める。 死んだフリなんて古典的な手に引っかかった事も含めてだが、やはり何の罪も無い少女を傷つけるのはあまり良い気分ではなかった。 そのグレイヴの下にナンバーズの6番セインが彼女の能力ディープ・ダイバーで地中から現われた。 「セインちゃん到着~! さあグレイヴ~あたしの身体にしがみ付いて~。一緒に脱出~、ってなんかもう終わってるし…」 グレイヴを自身の能力で救出しに来たセインだが既に戦闘はグレイヴの勝利で戦いは終わりを告げていたのだ。 「それじゃあ帰ろうかグレイヴ。あっ! そうだ。それと無力化できたらフェイトお嬢さまを連れて来いってドクターが言ってたから…」 そう言って倒れたフェイトの腕を掴もうとするセインだがそれはグレイヴの手で遮られた。 「えっと…どうしたのグレイヴ?」 「……セイン…駄目だ」 「えっ!? でも…」 「駄目だ」 「う~…分かったよ…グレイヴがそう言うなら」 やっと納得したセインの頭をグレイヴは優しく撫でる、セインはまるで子犬のように喜んで笑顔を見せた。 「でも、ドクターには何て言えばいいかな~?」 「…通信は切ってあるから問題無い」 「そっか、なら別に良いや。それじゃあグレイヴ~これ内緒にしておくから今度またプリン頂戴♪」 「…ああ」 こうして死人は妹を連れてその場を去る、後には彼の残した大量の薬莢と気を失った魔道師が二人残されていた。 続く。 前へ 目次へ 次へ
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…此処は南地区アルトセイムから離れた地方、街並みは炎と煙に包まれ 至る所に瓦礫やガジェットの残骸が犇めき、管理局員の必死な救護活動が行われている上空では カノンの猛攻により体力を削られ、肩を寄せ合うように対峙するオットーとディードの姿があった。 リリカルプロファイル 第三十二話 次元戦 二人の目先にはカノンが勝利を確信している為か高笑いを浮かべていた。 戦況は二人の劣勢、カノンは広域攻撃型と謳ってはいるが、 その高い魔力は攻・防にも起用しており、万能型と言っても過言ではない程の実力を持っていた。 「さてと…そろそろ終わりにするかぁ!!」 そう言ってカノンは左手を向けるとディードが飛び出し、オットーは右手を向けてレイストームで援護 だがカノンはそのままプロテクションを広げ、ディードのツインブレイズを受け止めつつ更にレイストームを辺りに四散させる。 そしてサンダーストームをディードに向けて撃ち抜き、更にオットーまでを巻き込みその身を貫く。 二人は絶叫を上げている中でオットーはレイストームを応用したバリアを発動、 カノンの攻撃に耐え抜こうとしていたが、カノンは更に追い討ちとばかりにエクスプロージョン撃ち放ち バリアは一瞬にして砕け散り周囲は二人を中心に炎と雷に覆われ、下に広がる街並みに到達する程であった。 そして攻撃が止むと中央では二人が必死な形相で睨み付けている中で、 カノンは止めとばかりに手を向け、二人は覚悟を決めたかのように互いを庇い合う。 しかし次の瞬間、カノンの右側から赤い光が現れカノンを吹き飛ばし道路へと激突させる、 そしてカノンが佇んでいた場所には赤い光の正体、ヴィータが姿を現していた。 ヴィータは局員達の要請を受け此処へ急行したところ、 エインフェリアを発見、すぐさまラテーケンハンマーを打ち込んだのだ。 しかしナンバーズまで居たのは予想外であり、ヴィータはナンバーズを睨みつけていると 道路から激しい爆発音と共に魔力を感知、目線を向けると雄叫びを上げるかのようにカノンが魔力を放出していた。 「なんだぁ!!人の楽しみを邪魔しやがって!!!」 「チッ!全然効いてねぇみてぇだな」 ヴィータは一つ舌打ちを鳴らし睨みつけていると、カノンは左手を向けて アースグレイブを唱え地上から大量の岩の刃が襲いかかる。 ヴィータはフェアーテを用いて次々に交わしていく中、 オットーとディードは先程のダメージが未だ抜けきっていないせいか、動きが鈍く オットーの右肩に岩の刃が掠り血が流れ、ディードはツインブレイズにて迎撃を行うも 対処しきれず、幾つか攻撃を受ける状態が続いていた。 その姿を目の当たりにしたヴィータは、二人の下へ移動すると 巨大なパンツァーシルトを張り、岩の刃を次々に防いでいった。 「何故…助ける?」 「知らねぇよ!体が勝手に反応しちまったんだ!!」 助ける理由なんて無かった、相手はあのナンバーズである、 だが二人の必死な行動を見てついつい体が動いてしまった、 ヴィータはそう答え頬を掻き始めると、カノンが上空へと上がりヴィータと対峙する。 「貴様…そんな人形を庇うとはな!!」 「んだと?テメェだって似たようなもんだろうが!」 「ほう?それを言うなら貴様とて主に作られた“道具”であろう!」 カノンの言葉にナンバーズは無表情ながら拳が震える程握りしめていると ヴィータもまた目を蒼くして激怒の表情を浮かべる。 奴、カノンは自分の事を道具だと罵った、嘗てのヴォルケンリッターであれば聞き流す、若しくは肯定すら出来る言葉であるが、 今の彼等ははやてを護る守護者にして家族である、それははやて自身が望んだ繋がり、 それを三賢人の“道具”とも言えるエインフェリアに言われる、しかも蔑むかのように… カノンが放った言葉はヴィータの神経を逆撫でるには十分であり、 グラーフアイゼンでカノンを指し睨みつける。 「テメェはぜってぇバラす!!」 「お前一人で何が出来る!」 未だ余裕の顔を浮かべているカノン、するとヴィータの両隣にオットーとディードが寄り始め ヴィータは警戒すると二人はカノンを見つめ構え始める。 「お前ら…何のつもりだ!」 「助けてくれた恩は返す……」 小さく囁くかのようにディードは言葉を口にすると、同じく小さく頷くオットー。 その姿に少し戸惑うも軽く笑みを浮かべ、カノンと対峙するヴィータであった。 一方次元海ではクロノ率いるクラウディアチームがドラゴンオーブ目指して航海していた。 すると前方から多数のアインヘリアルが姿を現す、どうやら護衛はエインフェリアだけでは無いようである。 クラウディアは砲撃による迎撃を行うも対象が小さい為、思うように迎撃をする事が出来なかった。 其処でクロノは足場を作るように指示、そして結界・フィールドを応用した足場を作り上げると クロノを先頭にロウファ、ジェイクリーナス、那々美が表に出て相手をする事となった。 戦況はクロノの優勢、次々にアインヘリアルが落とされていき順調に航海していく中で オペレーターである夢瑠から連絡が入る、それは前方から強力な魔力が二つ現れたというものである。 それは十中八九エインフェリアであると考えたクロノは警戒を促していると 二つの内の一つから巨大な魔法が放たれた事を確認、すぐさまクラウディアはバリアを張り巡らせ対処 暫くすると巨大な魔法がクラウディア全体を飲み込み、周りに纏わりついていたアインヘリアルが次々に爆発 クラウディアはなんとか攻撃を防ぎきると、目の前には杖を向けたイージスと杖を持ち見つめるミトスの姿があった。 「ほぅ…あの攻撃を防ぐとはな」 「どうやら一筋縄では行かぬようだ」 ミトラは顎に手を当て答える中、クラウディアは引き続き目的の対象である二体へと進路を向け クロノは作戦を練り上げながら二体を睨みつけていた、 するとクロノの存在に気が付いたイージスが見下ろす感じて見つめ話しかけてくる。 「ほぅ?かつての“上司”も来ていたとは……」 自分の手でかつての上司を葬る、それはそれで一興であると笑みを浮かべながら述べ その態度にロウファが前に出て反論しようとしたところ クロノに肩を掴まれ小さく頭を横に振ると、今度は不敵な笑みを浮かべ述べる。 「ふっ…そうだな、ならばかつての“上司”として…馬鹿な“部下”の後始末をしないとな!!」 そして…不本意ではあったがエインフェリアを率いていた自分との決着を付ける、 そう決意ある瞳で睨みつけ答えていると、“部下”であるロウファ達が 自分達も一緒にケジメを付ける、自分達はクロノ提督の“部下”であると話し “部下”達の計らいに嬉しく感じ、一人では無い事を再確認したクロノは 改めてエインフェリアと対峙し決着を付ける覚悟を決めた。 先ずクロノが先手とばかりにスティンガーレイを撃ち抜く、 その数は50を上回っており四方を埋め尽くすかのように迫るが ミトラとイージスはバリアを張って此を防ごうとした、だがクロノは更に追撃し その数を増やすと二体は四方に飛び回りスティンガーレイを回避していく、 すると今度はジェイクがレストレインフレイムと呼ばれる魔力矢を撃ち放ちクロノの魔力弾に接触すると 連鎖的に爆発、流石の二体もこの猛攻に耐えきれず、飛び出すかのようにクロノ達に接近する。 「今だ!夢瑠!!」 「了解で~す!」 そう言って夢瑠はボタンを押すとクラウディアの周囲に結界が張られ エインフェリアを結界内に閉じこめる事に成功した。 「これでもう逃げ場所はないぞ!」 「…それは此方の台詞だ、我々を閉じこめた事その身で後悔するがいい!!」 ロウファの言葉にミトラが答え不敵な笑みを浮かべると、第二幕が開始される。 先ずはクロノとジェイクが先手を打ち二体に向けて魔力弾を撃ち込む 次に那々美からストライクパワーとアクセラレイターの ツインブーストを受けたロウファがミトラに向かい接近戦を仕掛けるが ミトラはバリアを張り攻撃を防ぐ、するとロウファの持つデバイス、ドラグーン・タイラントから 二発薬莢が排出されると、先端の刃が魔力に覆われ始め強化させると力強く振り下ろし ミトラのバリアを打ち砕く、だがミトラは杖を向けて直射砲を撃ち抜きロウファを吹き飛ばした。 一方でイージスもまたロウファに追い討ちを仕掛けようとしたところ、 魔力矢が襲いかかり出鼻を挫かれイージスは見下ろすと、 其処にはボーガン型のデバイスを向けていたジェイクの姿があった。 「貴様の相手はこの俺だ!」 「おのれ人の分際で!なめるな!!」 イージスは簡単にジェイクの挑発に乗り、杖を向けて魔力弾を発射 その数は20を上回り更には誘導性も含まれている為か、吸い込まれるかのようにジェイクに襲いかかる。 イージスの攻撃が迫る中、ジェイクはカートリッジを一発消費させて、ディジーズニードルと呼ばれる魔力矢を複数撃ち出し迎撃すると 那々美がブーストアップ、バレットパワーをジェイクにかけ、それにより威力を高めたレストレインフレイムを撃ち放つ。 するとイージスはバリアを張り対処しようとしたが、レストレインフレイムがバリアに触れた瞬間、大爆発を起こす。 それを目撃したミトラはイージスの援護に向かおうとしたところ、復活したロウファに足止めを食らう。 一方でクロノはイージスを先に仕留めるとばかりにスティンガースナイプを撃ち出すが イージスはバリアを張りつつクラウディアに目標を定め、ジェイクごと消し去ろうと強力な魔力砲を撃ち抜く、 しかし那々美のオーバルプロテクションによってクラウディア全体を包み込みイージスの魔力砲を四散化させた。 するとオペレーターである夢瑠から驚きの一報がクロノ達の耳に届く。 それは先程、ドラゴンオーブの砲撃により、ミッドチルダ南地区アルトセイム地方が消滅したという知らせである。 つまりこれはドラゴンオーブの攻撃を五発受けた事になり崩壊まで残り二発となった事を意味する。 事態は急を要する、此処でいつまでも足止めを食らっている訳には行かない、 早急にエインフェリア達を殲滅しなければならない、其処でクロノは念話を使って作戦を提案、 メンバーはそれぞれ頷くとクロノの指示の下攻撃を開始する。 先ずはロウファがミトラを足止め、その中でクロノはイージスの牽制に務めていた。 一方でジェイクは那々美からブーストを再度掛けて貰うとカートリッジを三発消費 デバイスをイージスに向けて構え足下にはミッド式の魔法陣が広がっていた。 それを確認したクロノはイージスがジェイクを気付かないように此方に注意を逸らしながら誘導 そして絶好のタイミングを見計らってジェイクは攻撃を仕掛けた。 「これが!俺の最高の技だ!」 次の瞬間、デバイスから高速の矢が放たれイージスに当たる度に爆発、 更にその爆発により舞い上がりながら、尚ジェイクは撃ち抜いていく。 そして止めとばかりに最後の矢に全魔力を乗せて狙いを定める。 「奥義!ギルティブレイク!!」 撃ち抜かれた最後の矢は吸い込まれるかのようにイージスに迫り見事に頭を打ち抜くと 先程以上の大爆発を起こし、イージスは頭部を失い力無く落ちていき爆発したのであった。 「おのれ!貴様よくもイージスを!!」 仲間をやられ怒りに満ちた表情を浮かべる中でジェイクは続けて魔力矢を発射、 しかしミトラはバリアにて攻撃を受け止めていると、 ロウファが那々美の下に駆け寄りブーストアップ、フィールドインベルドとストライクパワーを指示、 那々美はロウファにツインブーストを掛けるとすぐさまミトラに迫りカートリッジを三発消費する。 「この一撃ですべてを断つ!!」 ロウファは持っていた槍型デバイスでミトラに攻撃、ブーストの効果もあってか簡単にバリアを砕くと、 引っかけるように引きずり見回し最後は強力な魔力の竜巻を起こす。 「奥義!ジャストストリーム!!」 ロウファが起こした竜巻はミトラの身を切り刻みながら上っていき結界を破壊、 更に立ち上り次元海に放り出されるのであった。 しかしミトラは未だ起動しており、持っていた杖をクラウディアに向け構えると 足下に巨大な魔法陣を広げ詠唱を始める、それを目撃したクロノもまた足下に魔法陣を広げ詠唱を始める。 「虚空を伝う言霊が呼び覚ませしは…海流の支配者の無慈悲なる顎門!!」 「悠久なる凍土…凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与えよ!凍てつけ!!」 互いに強力な広域攻撃魔法の準備が整うと躊躇う事無く撃ち抜く。 「ダイダルウェイブ!!!」 「エターナルコフィン!!」 そしてミトラが放ったダイダルウェイブは水流が竜を象り襲いかかる中で クロノのエターナルコフィンは周囲を白銀に染め上げ吹雪くとダイダルウェイブと激突 激突した場所ではエターナルコフィンがダイダルウェイブを凍らせ、 ダイダルウェイブがエターナルコフィンを押し返すという状況であった。 戦局は五分と五分に見える状況であるが、徐々にではあるが確実にクロノが押し始めていた。 そしてみるみるうちにダイダルウェイブが凍り付きミトラの目前で一気に勢いを増し、 巻き込むようにして凍結、ミトラはダイダルウェイブごと氷のオブジェと化した。 「…砕け散れ!!」 クロノは一言呟きスティンガーレイで氷のオブジェを破壊する、 そして感傷に浸る暇もなく夢瑠にエインフェリアの撃破を伝え 夢瑠は本局に打診する中でクロノ達は何事も無かったかのようにクラウディアへと戻るのであった。 時間は遡りクロノ達がエインフェリア撃破する前アルトセイムが消滅した頃、 その一報を本局から伝えられたはやては、流石に焦りの色を見せていた。 そして目前にはエインフェリアの一体、リリアが不敵な笑みを浮かべて対峙している。 今現在はやては、リリアと戦闘を行っており、戦況は互いに実力を探るかのような状況であった。 しかしドラゴンオーブの第五射により地表の振動は更に増し、海も荒れ果て、空は曇天と化し、 これ以上の状況の悪化は防がなければならない、先ずは目先の問題から片づけよう。 そう判断したはやてはシュベルトクロイツをリリアに向け宣言する。 「…んじゃまぁ、時間も無いちゅう事でサクサクと終わらせたるわ!」 そう言うなり体から大量の魔力が溢れ出し、シュベルトクロイツを剣に変えると 両足にフェアーテを纏い背中のスレイプニールを羽ばたかせ一気に加速 瞬時にリリアの背中を捕らえると一気に振り下ろし、背中をバッサリと斬りつける。 余りにもの一瞬な為か驚きの表情と共に振り返ると既にはやての姿は無く、 寧ろ後ろをとられており、剣からハンマーに切り替えたシュベルトクロイツが容赦無くリリアの右こめかみに直撃する。 そして吹き飛ばされるリリアであったが、弓型デバイスをはやてに向けエイミングウィスプと呼ばれる聖属性の誘導弾を撃ち出す、 しかしはやてはプロテクションとパンツァーシルトを合わせた二重魔法障壁を発動、エイミングウィスプを防ぎきった。 「くぅ!話と違うじゃないか!!」 「残念やったな、もう今までの私とは違うんよ」 吹っ切れ真の夜天の王となったはやての実力は、既にエインフェリアでは相手にならない程までに至っていた。 故に不敵な笑みでリリアを見上げる中、シュベルトクロイツをハンマーから剣に戻し 刀身を炎で纏うと飛竜一閃を撃ち払い、リリアに攻撃するとリリアはバリアを張り攻撃を受け止める。 するとはやては更に魔力を込め威力を高めるとリリアのバリアは砕け、リリアは腹部に大きな風穴を空ける。 更にリリアの目の前に移動するとシュベルトクロイツを杖に変え左から右に振り払い 続いて右から左下へと振り下ろし、下から上へ振り上げ、リリアを高々と吹き飛ばし そのまま杖を向けると魔法陣を広げ詠唱、投射面にはミッド式の魔法陣の姿もあった。 「此で仕舞いや、かませ犬」 そしてはやてはフレーズヴェルグを撃ち出し、リリアはまるで蒸発するかのように消滅した。 はやての圧倒的な強さに地上の局員が唖然としている中、それに気が付いたはやては急かすように窘め 局員達は急くように行動を開始、それを確認したはやては小さく頷くと ユニゾンしているリインが魔力を感知したとの知らせが入り はやては早速その方面に目を向けると、其処には決して忘れる事が出来ない人物の姿があった。 「アイツは…レザード!!」 どうやらレザードの行き先はヴァルハラの様で、 まさか三賢人と手を組むのではないのか不安を感じたはやては 現場を他の局員に任せ、気付かれないようこっそりと後を追うのであった。 場所は変わり廃ビルの中では手を組んだティアナとウェンディがリディアと対峙をしていた。 その中でティアナはウェンディに作戦と指示を与える、 だが当のウェンディはふてくされた顔をする、どうやら仕切られるのが不満なようである、 だがティアナは全く気にかけない様子を表していると、リディアがスターダストと呼ばれる四発の強力な衝撃波を発射、 二人は左右に飛び回避、剥き出しの柱を背にすると、 ウェンディが柱から飛び出しエリアルショットを撃ち抜き牽制、 しかしリディアはフレークフラップと呼ばれる魔力の散弾で迎撃 更に攻撃を加えウェンディに迫る中、ウェンディはライティングボードを盾にして攻撃を防ぐ。 ウェンディがリディアの相手にしている頃、ティアナはリディアの後ろに回り込もうと移動していた。 だがそれに気が付いたリディアが振り向き、フレイムシュートと呼ばれる炎の矢を撃ち抜くが ティアナは飛びかかるかのように柱に逃げ込み、フレイムシュートが撃ち抜かれた場所は大きく穴を空けていた。 そしてリディアはティアナが隠れた柱に狙いを定めフレイムシュートを撃ち抜くと 覚悟を決めたかのようにティアナが飛び出し、後方では撃ち抜かれた柱が砕ける中、 手にはダガーモードに切り替えたクロスミラージュが握られており、リディアに迫る。 しかしリディアは冷静に対応、弓をティアナに向けて魔力矢を撃ち抜き直撃する、 …だが、ティアナは陽炎のように消え去ると、幻影のすぐ脇からオプティックハイドを解除し 手にはダガーモードを握った低姿勢のティアナが下から上に突き刺すように襲いかかった。 流石のリディアも此には驚きの表情を隠せないでいたが、ティアナの攻撃が直撃する刹那 弓を盾にして間一髪ティアナのダガーを防ぎ、更にティアナの鳩尾辺りを右足で蹴り飛ばす。 その衝撃はティアナが直撃した床にひびが入る程に強く、ティアナはその場にて痛みと苦しみに動けないでいると リディアは冷静さを取り戻し、弓を向け先程と同様フレイムシュートを撃ち出そうとした、 だが次の瞬間、ティアナの後方からウェンディが対消滅バリアを張ったライティングボードに乗ってリディアに迫り リディアは咄嗟に左に回避、脇腹を掠める程度に終えるとウェンディに切り替えて矢を放つ。 しかしウェンディはライティングボードの面の部分をリディアに向けて攻撃を防御、 更に滑り込むように進みティアナに近づくと手を差し出す。 「ティアナ!早く乗るッス!!」 するとティアナは差し出された手を握りウェンディの背中にしがみつくと、 ウェンディはライティングボードを走らせ、更にフローターマインをばらまき廃ビルを脱出 そのまま高々と上空に上がり廃ビルを見下ろした瞬間、廃ビルが爆発した。 「……器物破損ね」 「今はそんな事言ってる場合じゃ無いッスよ!!」 あくまでも冷静なティアナに対しウェンディはつっこんでいると、破壊された廃ビルの中からリディアが姿を現し見上げていた。 そして弓をこちらに向けるとカートリッジを二発消費、バスターシュートと呼ばれる完全威力重視の魔力矢を撃ち放つ。 バスターシュートは見る見るうちにウェンディに迫り、ライティングボードに直撃、 その衝撃に体を揺さぶられている中でリディアは大量のエイミングウィスプを撃ち放つ。 「ウェンディ!避けて!!」 「合点承知ッス!!」 そう言ってライティングボードを縦横無尽に走らせ、アクロバティックにエイミングウィスプを回避していく それを見たリディアは更にエイミングウィスプを追加、 するとウェンディは急降下して廃ビルの間を縫うように進むが、 未だ多くのエイミングウィスプが追いかけてくる状況であった。 「くぅ!振り切れないッス!!」 「ウェンディ、そのままの速度を維持して」 そう言うとティアナは後ろを向きクロスミラージュを構えると魔力弾を撃ち放ち、 追ってくるエイミングウィスプを次々に撃ち落としていく、そして全てを撃墜させたティアナは前を向き ウェンディは横目で見ながらもティアナを賞賛していると、狭い廃ビルの出口に差し当たる場所に、リディアが待ち構えていた。 どうやら今までの攻撃は此処に誘導させるものであったようだ。 既に出口を塞がれ逃げ場のない状況の中、ティアナはウェンディに対消滅バリアを前方に集め更に加速するように指示 ウェンディは早速前方にまるで両刃のような対消滅バリアを張り更に加速、 そしてウェンディの後ろではティアナがカートリッジを二発消費してクロスミラージュを構えていた。 そしてリディアからスターダストやフレークフラップなどが撃ち放たれる中 ティアナはバリアブルシュートやクロスファイアなどで迎撃、次々に相殺させながら接近すると リディアはシールドを張りライティングボードの先端の刃がバリアと接触する、 だが完全に受け止める事は出来ず弾き飛ばされたが、体勢を崩したまま反撃 バスターシュートを撃ち抜き、二人に迫ってくる。 「どっどうするんッスか!?」 「任せて!」 慌てるウェンディに対し力強く答えるとエクストラモードを起動、 ティアナの黒いリボンが白く十字の部分は緑に染まり、バリアジャケットもまた同じく緑色に染まり始め、 クロスミラージュは白く輝き、更に周囲には光り輝く粒子を纏っていた。 そして立ち上がりバスターシュートと対峙するとクロスミラージュを平行に構え 白く輝く粒子エーテルが集まり出し強力な直射砲、サンダーソードを撃ち出しバスターシュートを相殺 更にはリディアの下へと迫りリディアは右へと回避、難を逃れた。 「チッ!外したか…」 「…つうかティアナ、その姿はなんなんッスか?!」 急激に魔力が高まり姿も変わったティアナに質問を投げ掛けるが ティアナは「パワーアップよ」と一言だけ答えリディアに目を向けると、 リディアもまたティアナの変貌に驚いた表情を浮かべていた。 しかしすぐに冷静さを取り戻し弓を向けるとティアナは次の作戦を指示、 ティアナはリディア目掛けてライティングボードから飛び降りると リディアが迎撃とばかりにフレークフラップを撃ち出す、 だがティアナはクリティカルフレアと呼ばれるエーテルの散弾を撃ち出し相殺 強烈な光が二人の間を分かち、リディアは目を凝らす中で ウェンディは前方に対消滅バリア製の刃を張ったライティングボードを振り下ろす しかし難なく避けられ寧ろ攻撃を仕掛けられそうになるが、 ティアナが援護に入りリディアの出鼻を挫くと、ウェンディはエリアルキャノンを撃ち抜きリディアを吹き飛ばす。 しかしリディアはゆっくりと起きあがりティアナに攻撃を仕掛けてくると ウェンディが盾となり攻撃を防御、ティアナはエーテル製のクロスファイアを撃ち抜くが、エイミングウィスプにて撃破される。 正面では此方の攻撃は撃墜されてしまう、つまり不意な攻撃でないと倒すことが出来ない… そうティアナが呟きながら考えているとウェンディから一つの提案を持ちかけられる。 「そんな!それじゃあアンタが!!」 「大丈夫ッス!なんせ私は戦闘機人何ッスから!!」 そう言って胸を張るウェンディ、ティアナは暫く考えその提案に乗ると早速作戦を実行する。 「頼むッスよ!ティアナ!!」 「…ティアでいいわ」 親しい人物からはそう呼ばれているとウェンディに目を合わさずに ティアナは答えると、ウェンディは喜びに満ちた表情で返事をし、 二人はライティングボードに乗りリディアの頭上を旋回、 その中でリディアは幾つかの攻撃を仕掛けていくとライティングボードが急降下 真っ直ぐリディアに迫り先端には刃が作られており、ウェンディ・ティアナの順に並び身を屈めていた。 だがリディアは臆することなく攻撃を仕掛け続けライティングボードはリディアに接触するか否かの瀬戸際の場所を通り抜け リディアは過ぎ去ったライティングボードに仕掛けようとしたところ、 後方に乗っていたティアナがリディアを通り過ぎるタイミングを見計らって飛び降りていたらしく、 右手に持っていたダガーモードのクロスミラージュでリディアを斬りつける。 ティアナの攻撃によりリディアは左上から右下にかけて大きな切り傷を付けられたが リディアは報復とばかりにティアナに向けてバスターシュートを撃ち抜く そしてバスターシュートがティアナに触れた瞬間、ウェンディへと姿が変わり驚く表情を浮かべるリディア。 「ヘッ…私達の作戦勝ちッス!!」 そう言って勝利を確信した表情を浮かべながら地面へと落下していくウェンディ そしてリディアの後方からライティングボードに乗りウェンディの姿を解除したティアナが、 右手にダガーモードのクロスミラージュを握り締めリディアへと接近 リディアはとっさに魔力矢を放つがティアナの右こめかみ左頬と肩をかすめる程度に終わり 寧ろライティングボードの刃が腹部に突き刺さり更にティアナの渾身の一撃がリディアを首を捕らえ跳ねた。 ティアナの幻術によりお互いの姿を変えウェンディに ダガーモードのクロスミラージュを一本渡す事で成立した作戦は成功したのであった。 その後…ティアナはウェンディの下へ駆け寄り様態を調べ医療チームに連絡 暫くしてマリーと共に医療チームが到着し、ディエチとウェンディを搬送する。 その中、タンカーに運ばれているウェンディがティアナの名を呼びティアナはウェンディに駆け寄った。 「私達…敵同士だったッスけど……親友ッスよね?」 「…………えぇ」 ティアナは小さく頷き答えると、安心したのかゆっくりと目を閉じ運ばれるウェンディ そして搬送を見届けたティアナはスバルの身を案じ、その場から立ち去るのであった…… 前へ 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者 第七話 ナイトガンダムが安次郎と初対面の挨拶をしている頃、アリサは海鳴図書館で目的の本を探していた。 時間帯的に学生が多く、ノートを広げ予習をしている者、小声でわからない所を相談し合う女子高生、 中にはスーツ姿のサラリーマンや、ピンクの髪が似合う美人の外国人など、多くの人が利用していた。 利用者に埋め尽くされている机の中から空いている席を見つけたアリサは、場所を確保する目的も兼ね、そこに荷物を置き本棚へと向かう。 他の棚には目もくれずに、目的の本がある本棚だけに目を通す。 「え~っと・・・・・あっ、あったあった!」 『図書館では静かに』という決まりは分かってはいるが、彼女の性格上、目的の本が見つかった事の嬉しさを抑える事は出来なかった。 「このシリーズ面白いのよね~。後でガンダムにでも貸してあげようかな・・・・ん?」 ついでに前巻も復習ついでに読んどこうと思ったアリサは、再び本棚に目を向け本を取ろうとするが、 彼女は無意識に先程取った本により出来た隙間から、隣の本棚を見据える。すると 「・・・・う~ん・・・・・・う~ん・・・・・」 後姿なのではっきりとは分からないが、おそらくは自分と同じくらいの歳の車椅子に乗った少女が、 唸り声を上げながら、必死に本棚に向かって手を伸ばしていた。 「・・・・・・」 アリサはその様子を隙間からじっと見ていた。 「・・・・う~ん・・・・この!う~ん・・・・」 アリサはその様子を多少イラつきながらじっと見ていた。 「・・・・う~ん・・・・もうすこ・・・し・・・・・」 アリサはその様子をじっと 「ったく!!」 見ていられなかった。 ズガズガと豪快に足音を立てながら、それなりの速さで隣の本棚へと向かう。 途中すれ違った男子高校生がアリサの迫力に負け、自然と道を譲ったが、彼女はそんな事は眼中に無く突き進み 車椅子の少女の真横で止まる。 「う~・・・・・へ?」 突然現われた自分と同じくらいの外国人の少女に、車椅子の少女「八神はやて」はつい間の抜けた声を出してしまう。 だが、アリサは彼女の声と、呆気に取られた顔をスルー。そして 「はい!これ!?」 はやてが苦労して取ろうとした本をあっさりと取り、突きつけるようにして差し出した。 「まったく・・・・取れないんなら人呼ばなきゃだめよ?少しはここの人も働かせないと」 「ふふふ・・・ほんま、アリサちゃんは手厳しいな~」 その後、同じ歳という事もあってか、二人は互いの名前を言い合うほどに直に打ち解け、 今ではアリサが進んではやての車椅子を押すほどに仲が良くなった。 互いにお勧めの本や、読んだ本の感想や自己評価などで盛り上がりながら、アリサは出口に向かってはやてが載った車椅子を押していく。 「だけど、アリサちゃんは優しいな~。わざわざ車椅子引いてくれて」 「なっ!?べ・・べつに・・・・ただ、私も帰るから・・・・ついでよついで!!!」 笑顔でこちらを向き自分を褒めるはやてに、アリサは顔を真っ赤にした後そっぽを向く。 「ふふふっ、アリサちゃんはツンデレやな~、家の末っ子と同じレア属性や」 家に居候している赤毛の少女の顔を思い出しながらも周りを、これで何度目になるか自分でも忘れたほどに控えめに見渡す。 本来なら、はやてはこのような落ち着きの無い行動はそれなりの理由が無ければしない。だか、今回に限っては別だった。 この図書館に入ってすぐに気が付いたのだが、今日はどうにも黒いスーツを着た人が多い。 それも、体系が居候している守護獣の人型並にガッシリしており、全員がサングラスを装着しているという 傍目から見れば怪しさこの上ない人達が彼方此方に仁王立ちしていた。 当初は『ここに偉い人でも来てるんかな~』と思いながらも、あまり関わらない様にしていたのだが、どうにも目標をこちらに定めてきたように思えてきた。 なぜなら、彼らはトランシーバーのような物で連絡を取りながら、一定の距離を置きながらも明らかに近づいてきたからだ。 当然自分には心当たりがない。おそらく今いる同居人もそうだろうと思う。なら考えられる可能性は 「(もしかして・・・・アリサちゃんか?)」 なるほど考えられると思う。確かにアリサは同姓の自分が見ても綺麗だし、お金持ちにも見える。一度そう思ってしまうと、 考えを止めることが出来ないはやては、普段様々な娯楽本を読み、想像力が人一倍進化した頭を使いこの状況から一つの予測を立てた。 『彼らは隙あらばお金持ちであるであろうアリサを、組織ぐるみで誘拐しようとする極悪人』 「(アカン!!無茶ピンチや!!?)」 一刻も早くこの状況をどうにかせねばと、一人内心で慌てるが向こうは大人数でがたいが良い大人、正直逃げるしかない。 それでも彼らが走り出せば自分達は直に追いつかれてしまうだろう。せめて自分に護衛がいれば・・・・いた。 「アリサちゃん、悪いけど、少し早く押してくれる?」 この状況にも拘らず、自分でもビックリするほどやんわりとアリサに頼み込む。 「もう、我侭ねぇ~」 悪態をつきながらも、アリサは「いくわよ~」と楽しそうに声を上げ、車椅子を押すスピードを回りに迷惑にならない程度にあげる。 スピードが上がったことを確認したはやては「うち、芝居の才能あるんとちゃうか?」と、自分を褒めながらも、 願いを聞いてくれた彼女に御礼をいうために後ろを向くと同時に、例の黒スーツ軍団の様子を伺う。 案の定、彼らは追いかけてきた。 「(予想通りや・・・・・)」 自分の予測が当たったことに、はやてはつい嬉しさを感じてしまう。だが、喜んでいる場合ではない。今は一刻も早く、 入り口で自分の帰りを待っているであろう彼女に頼るしかなかった。 一方、主であるはやての付き添いで図書館に来た女性『烈火の将・シグナム』は図書館の雰囲気に自然と眉をひそめていた。 ここにははやての付き添いで何度か来た事があるが、今回はどうにも様子がおかしい。 彼女がそう思う理由は、やはり図書館の彼方此方に仁王立ちしている黒いスーツ姿の男達の存在だった。 体格は勿論、隙の無い動作などから一目見ただけで彼らが只者でない事は直にわかった。 当初は採集を行っている自分達を追いかけてきた管理局の者かと思ったが、この世界では稀であるリンカーコアを持つ自分を一瞥しただけで終った事や、 彼らから魔力を全く感知する事が出来ない事から、その考えも否定する。 「(・・・・しかしこうも多いとな・・・・・今日は要人でもいるのか?)」 内心で可能性を呟くが、仮にそうだとしても自分達には関係の無い事。これ以上考えるのを止め、壁にもたれ掛りながら主であるはやての帰りを待つ。すると、 「シグナム~」 自分を呼ぶ主の声に、シグナムは微笑みながら声のする方を向く。その瞬間、彼女の笑顔は半ばで固まってしまう。 彼女が見たのは愛用の車椅子に座る主と、その車椅子を押す主と同じくらいの歳であろう金髪の少女、そして そんな彼女達を距離を置きながらも追って来る、例の黒いスーツの集団。 この光景を見たシグナムは、瞬時に理解した。 『主が謎の集団に狙われている』 確かに我らが主は歳相応に可愛らしい・・・いや、それ以上だ。それを目的に誘拐をする輩が出てきても不思議ではない。 「(うかつだった・・・敵は管理局だけではなかった・・・・・)主!」 今更後悔してもしょうがない。とにかく今は主と、主を助けてくれたであろう少女を保護、 誘拐をたくらむ奴らには相応の褒美を与えるために、シグナムはリノリウムの床を蹴り、一気にはやて達の元までたどり着く。 その光景を見たはやては頼もしげにシグナムを見据え、アリサはただ唖然とし、黒いスーツの男達は何事かと警戒を強める。中には懐に手を入れる者もいた。 「主、もう大丈夫です。後はお任せを」 「たのんだで!シグナム!!さぁ、アリサちゃん!!今の内や!!」 なにやら勝手に盛り上がる二人にアリサはついて行けず、素直に困惑の表情を見せるが 「総員!!アリサ様をお守りするのだ!!」 自分を『様』呼ばわりする声に、もしやと思ったアリサは、はやての車椅子から手を話し、初めてゆっくりと後ろを向く。そして 「・・・・・・・もう!!だから!!ついてくるなって!!いったでしょ!!!」 図書館という事を無視しアリサは叫んだ。 傍目から見れば、ただ子供が叫んでいるだけだが、黒いスーツの男達は明らかに怯んでいた。 「で・・・・・ですが・・・・旦那様の」「shut up!!!」 ずんずんと足音を立てながらシグナムより前へと進み、一番近くにいた黒いスーツの男に向かって、指を刺し叫ぶ。 彼女の叫びに、黒いスーツの男達は先程以上に慌てており、どうにか彼女を納得させようとするが、、 腕を組み、仁王立ちしているアリサにはさほど効果は無く、終いにはどうした物かと、頭を抱え始めた。 「・・・・・・主・・・・・・」 「ごめん、ウチにもわからん」 今度はアリサに変わり、二人が取り残される事となった。 「へっ?それじゃ、あのごつい人達って全員アリサちゃんのボディーガードやったんか?」 その後、アリサの剣幕に負けたのか、黒スーツの男達の殆どが図書館から去っていた。だが、彼らも仕事を抜きにして彼女の事が心配だったのだろう、 せめて2人位は置いておいてくれという懇願とも思える願いに、アリサも仕方が無いといった顔で了承。 今は離れた位置で、はやて達に事情を説明してるアリサを見守っている。 「そう。まぁ、彼らも仕事だし、分かってはいるんだけれどね・・・・・」 内心では自分を守ってくれている彼らや、ボディーガードをつけるように指示したであろうパパに感謝をすると同時に 付ける人数が多すぎることに呆れもしていた。 「そうなんか・・・・うちはてっきりアリサちゃんを狙った誘拐犯かと・・・」 「・・・・私も、似た予想をしていました」 互いに大きな勘違いをしたことを恥じるように俯く二人。だが、 「あ~・・・・まぁ、間違ってはいないのよね・・・・・現に誘拐されたし・・・・ってああごめん、 変な事言っちゃって。でも大丈夫、直に助けられたから何もされてないわ」 アリサは苦笑いをしながら、サラッととんでもないことを言い放った。 自分の発言に固まる二人の表情をおかしく見つめながらも、自然とあの時のことを思い出す。 あの時は本当に怖かった。もしあの時助けが・・・ナイトガンダムが来なかったら、自分はそれこそ裸にされ、想像すると吐き気がする様な事をされていたに違いない。 自然に彼女は俯き、自分を慰めるように抱きしめる。すると、直に彼女の手に暖かな別の手が優しく置かれた。 「・・・ごめんな・・・・いやな事・・・思い出させて・・・・」 顔を上げ横を振り向く。其処には目に涙を浮かべ、自分の事のように心配をするはやてがいた。 今にも泣きそうなはやての表情に、アリサは一瞬呆然とするが、直に微笑み、彼女の頭を軽く撫でる。 「まったく・・・・私の友達と同じね・・・・他人の痛みを自分の事のように心配するなんて・・・・優しすぎるわ・・・でも、ありがとう」 「・・・・そういうアリサちゃんも・・・・うちの頭撫でてくれて・・・十分優しすぎるわ・・・・・」 先程とは違い、にこやかに微笑むはやてにアリサは、恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にしそっぽを向く。 『やっぱりアリサちゃんはツンデレやな~』と内心で思いながらも、分かりやすい照れ隠しの行動に、悪いとは思いつつもつい笑い出してしまう。 「もう・・・・・あっ、ごめん、そろそろ私帰るね」 そっぽを向いた時に目に入った時計を見たアリサは、今日予定されている習い事の開始時間が迫っている事に今になって気が付いた。 慌てて本をカバンに仕舞い席を立つ。同時にアリサを見守っていたボディーガードも、動き出し、入り口へと向かう。 「それじゃまた会いましょ。、大体この時間にいる?」 「うん・・・また、来てくれるんか?」 「妙な事尋ねるわね・・・・・・当たり前じゃない、友達なんだから、今度は私の友達も紹介するわ。あっ、携帯番号がまだだったわね、携帯出して」 アリサはカバンから自身の携帯電話を取り出し素早く操作、はやての携帯電話へとデータを転送する。 「今夜暇だったら、話でもしましょ。それじゃ、シグナムさんも」 はやてに手を振った後、シグナムにお辞儀をしたアリサは出口へと走っていった。 「ほんま・・・・・うち・・・幸せ物やな・・・・・」 アリサの電話番号が入った携帯電話を大事に握り締めながら、はやては声を詰まらせながら静かに呟いた。 ・本局内訓練室 時空管理局本局内にはアースラに備わっている物と同等、もしくはそれ以上の訓練室が幾つも存在する。 何処の訓練室も、自主練習や技の練習、互いの腕を試しあう局員で常に使われており、 近くを通れば、気合を入れる声や爆発音などの響きが扉越しから微かに聞こえてくる。 その幾つもある訓練室の一つで、今一人の執務官と一人の騎士が空中戦を広げていた。 『Stinger Ray』 クロノが放つスティンガーレイを、ナイトガンダムは最小限の動きで避けながら接近、一気に間合いをつめ、右手に握る実剣を振り下ろす。 「(くっ、たった数回放っただけで・・・もう見切られたか!?)」 開始当初はナイトガンダムに難無く当たった高速の速さで光の弾丸を放つ魔法『スティンガーレイ』も、今では見事に見切られ、 弾幕程度の効果しか得られなくなった事に、クロノは自然と奥歯を噛締める。 だが、悔しさに浸っている余裕など彼には無かった。自分目掛けて振り下ろされる剣をS2Uの柄で咄嗟に防ぐ。 同時に切り払われないように腕に力を入れる。 互いに相手を押し合う『鍔競り合い』になった瞬間、クロノはナイトガンダムの動きを封じるため、バインドを施そうとする、だが 「はぁあああああ!!!」 そうはさせまいと、ナイトガンダムはS2Uを真っ二つにせんとばかりに剣を持つ手に更に力を込め、徐々にクロノを押してゆく、 クロノも負けじと、自身の身体に更に魔力を流し込み、無理矢理力を増幅させ、ナイトガンダムを押し返そうとするが、 『ゼータ!!』 ナイトガンダムも自身にブースト系の魔法を施し、力を増幅させる。その結果、 一時は互角にまで持って来た鍔競り合いも、一気にナイトガンダムが有利となり、そして 「はぁ!!!」 気合の声と共に、ナイトガンダムはクロノを切り払い、訓練室の壁目掛けて吹き飛ばした。 だが、吹き飛ばされながらも、クロノは空中で踏ん張り、勢いを無理矢理殺す。同時に 『Stinger Snipe』 操作性能が抜群なスティンガースナイプをカウンターとして放った。 迫り来る魔力光弾を、ナイトガンダムは先程のスティンガーレイ同様回避し、再び接近しようとするが、 「先程と一緒とは思わない事だ!!」 操作性能に関してならSランクのスティンガースナイプは、ナイトガンダムが避けた瞬間、クロノが思う通りに瞬時に機動を変え、再び襲い掛かる。 予測出来なかった追撃にも、ナイトガンダムは咄嗟にシールドで防御、自身への直撃だけはどうにか避ける。だが、 その隙を逃すクロノではなく、直にスティンガーレイを連射。だが、ナイトガンダムも黙って受ける筈は無く、 『ハニカム!!』 自身に防御フィールドを張り、迫り来る光の弾丸の直撃に備える。そして クロノが放ったスティンガーレイが次々に着弾、着弾時に捲き起こった煙から吐き出されるようにナイトガンダムは吹き飛び、そのまま床見描けて落下、 だが、落下途中で飛行魔法を駆使し落下速度を和らげたガンダムは床に静かに着地。改めて上空にいるクロノを見据える。 互いに相手を見据えながら隙を伺う。先程とはうって変わり静けさが訓練室を支配する。 「(ダメージは思ったよりは受けてはいないか・・・・・・だが、距離は稼げたな)」 威力より連射に重点を置いたため、ダメージには期待してはいなかったが、ナイトガンダムとの距離が稼げた事に、クロノは十分満足した。 今回の模擬戦は、クロノからの誘いにより始まった物だった。 クロノとしても、ナイトガンダムの外見以上に、空を飛べないというハンデがありながらも、 闇の書の守護騎士と渡り合った彼の実力に興味があったため、職務とは関係なく一人の魔道師として今回の模擬戦を申し込んだ。 ナイトガンダムもクロノ同様、この世界の魔道師の実力に興味があったことと、飛行魔法を覚えたのは良い物の、空中戦の経験は全く無く、 その経験を積みたかったため快く了承。今に至る。 模擬戦開始から20分が経過しても尚、互いに大きなダメージを与える事が出来ず、勝負は長期戦に持ち込もうとしていた。 「・・・・・強いな・・・・・」 クロノはS2Uを構え直しながら、眼下にいる対戦相手に対する評価を自然と呟く。 正直、フィジカルでも多少は自信があったのだが、接近戦では自分は圧倒的に不利だという事はこの20分の間で痛いほど思い知らされた。 そして何より、初の空中戦とは思えないほどの動きと、自分の攻撃魔法を見切る早さ。 改めて実感した、彼が味方であることが心強いと。同時に、彼が敵ではなくて良かったと心から思う。 「だけど・・・・距離を置いての戦闘なら、こちらに分がある」 彼も戦闘中に魔法を使って入るが、ほとんどが接近戦でのサポートを目的とした自己ブースト系、 『サーべ』や『ムービガン』などの攻撃魔法も使っては来るが、殆どがラウドシールドで防ぐ事が出来、正直あまり脅威とはならなかった。 早期的な結論はあまり出したくは無いが、このことからナイトガンダムの魔法は、接近戦を行う上でのサポート系をメインとしており、 攻撃系はサブ的な要素でしかないと、クロノは結論付けた。 ちなみにクロノが出した結論は半分は当たっている。彼の考え通り、ナイトガンダムは主に接近戦でのサポートを目的として魔法を使用している。 残りの半分の間違いは『攻撃系はサブ的な要素でしかない』という考えであり、実は彼は『メガ・サーベ』と『ソーラ・レイ』という必殺といえる攻撃魔法を隠し持っていた。 だが、その必殺といえる攻撃魔法をナイトガンダムが使用せずに接近戦にこだわるのには、詠唱時間がかなりかかるという欠点があったからだ。 なのは達の様に呪文詠唱を肩代わりしてくれるデバイスを持っていないことや、僧侶ガンタンクの様に詠唱時間を短縮するという芸当が出来ないため、 ナイトガンダムがこのような高位魔法を使う場合には一から詠唱を行う必要があった。 それでも時間にして一分足らず。だが、その一分足らずの時間の間は呪文詠唱を行うためロクに動く事が出来ない。彼が使わない理由としては十分である。 「(距離を置いての射撃系で攻め、直射型の砲撃魔法で仕留める・・・・・これしか無さそうだ)」 内心でやるべき行為を考えたクロノは、S2Uの切っ先をナイトガンダムに向けると同時に足元に魔法陣を展開する。 ナイトガンダムも盾と剣を構え直し、上空にいるクロノを見据える。そして 「いけ!!」『Blaze Cannon』 「はぁああああ!!」 クロノが熱破壊魔法『ブレイズカノン』を放つと同時に、ナイトガンダムは盾を押し出すように構えながら突進。 二人の声と爆音、金属が激しくぶつかり合う音が、再び訓練室に響き渡った。 ・休憩所 「はい、付き合ってくれたお礼だ」 「あっ、ありがとう」 クロノが軽く投げたスポーツドリンクをナイトガンダムは両手でキャッチ、お礼を言いプルタブをあける。 休憩所に備え付けられているベンチに腰を下ろした後、互いに乾杯の意味を込めて缶を軽く叩きつけ、直に今回の模擬戦についての意見交換をする。 ちなみに今回の模擬戦は、クロノが隙を見て彼方此方に仕掛けたトラップバインドに引っかかり、 一時的に動きを封じられたナイトガンダムがブレイズカノンの直撃をモロに受けたことにより決着がついた。 「だが、君のような相手との模擬戦は本当に良い経験になるよ。僕の知り合いには接近戦を主体とする武装局員がいないからね」 体の水分を補給するため、買ったばかりのスポーツドリンクをクロノは一気に半分ほど飲む。 ナイトガンダムもクロノに渡された同じスポーツドリンクを一度見つめた後、真似するように一気に飲むが 「・・・っ・・・・これは・・・・また・・・・・妙な味ですね・・・・」 直に口を放し、なんとも言えない表情をする。 「まぁ、僕も最初飲んだ時には君と同じ表情をしたよ。だけど、体の水分を補給するのにはもってこいの飲み物だよ」 ナイトガンダムの素直な反応に、クロノは自然と微笑みながらも、続きを話しはじめる。 「本来、魔道師というのは距離をあけての魔法の撃ち合いが主な戦闘スタイル。正直、殆どの魔道師は接近戦に関しては基礎的な事しか学んでいない。 中には、フェイトの様に近・中・遠距離戦を器用にこなす者もいれば、今回の守護騎士達が使っている術式を近代的にアレンジした『近代ベルカ式』 という、中・遠距離戦をほぼ無視し、接近戦に特化した戦法を使う魔道師もいる。優れたベルカ式の使い手は『騎士』とも呼ばれているらしいから 正に君はこれに当てはまるね」 一度放しを区切ったクロノは再びスポーツドリンクを飲み、喉と体を潤す。 ナイトガンダムも再び口をつけようとしたが、どうにもスポーツドリンク特有の味に慣れないため、途中で手を止め座っているベンチの脇にのせる。 「だからこそ、僕達の様な魔道師は君やベルカ式魔道師の使い手との戦いで、距離を詰められるとたちどころに不利になる。 まぁ、距離をあければ、勝機は一気に僕達の方に傾くけどね」 クロノの説明に、ナイトガンダムは大きく頷き、納得した事を表す。 自分がスダ・ドアカワールドで戦った相手は殆どが騎士やモンスターだったため、気づく事はなかったが、 確かに今回の模擬戦では、距離をあけた途端、自分は不利な戦闘を強いられたが、その反面、近接戦に持ち込んだ途端自分は彼を追い詰めていた。 そう考えると、自分をこの世界へと飛ばしたサタンガンダムの恐ろしさを改めて実感する。 奴は魔法は無論、接近戦でも自分を軽々と叩き伏せる力を見せ付けた。それどころか、その時の奴は本気を出しておらず、 正直三種の神器の力を借りても変身した奴を倒せたのは偶然に近いと思えた。 「(私も・・・まだまだだな・・・・神器の力に頼りすぎている・・・・精進せねば)」 自分に言い聞かせたナイトガンダムは、気合を入れる意味を込め、改めてスポーツドリンクに口をつけるが、 「・・・・・・やはり・・・・・まだなれません・・・・・」 一口飲んだ後、微妙な顔をしながら、再び缶を置いた。 「今回の敵、闇の書の守護騎士はベルカ式による近接戦闘に特化しているし、かなりの手誰だ。だからこそ、君のような騎士との訓練は 彼らとの戦闘対策としても役に立つよ」 「それはこちらも同じです。彼女達との戦いは空中戦になるのは必至。良い経験を積ませていただいています」 互いに素直な感謝の言葉を言い合う二人。すると突然、休憩所に携帯電話の着信音が鳴り響く。 「あ、失礼」 ナイトガンダムはクロノに断りを入れた後、腰に引っ掛けているポーチから携帯電話を取り出す。 「君も持つようになったのか?」 「はい、忍殿に『携帯電話位、いまどき持ってなきゃこの先生きていけないわよ』と言われ、説明書と一緒に渡されました」 必至に説明書を呼んだ為、今では見事に使いこなせるようになったナイトガンダムは数日前とは違い、直に電話に出る。 顔が綻んでいる様子から、お世話になっている家の人からだろうと感じ取ったクロノは邪魔にならないようにと、 その場を去ろうとする。だが、 「・・・・っ、すずか!?どうしたんだ!!すずか!!?」 突如、ナイトガンダムの焦りと不安が入り混じった叫び声が、休憩室に響き渡った。 最初は、今日の夕食のメニューや、クロノとどんな事をしているのかなど、ごくありふれた会話だった。 だが、すずかとの会話を中断させるように、突如電話越しから聞こえたガラスが割れるような音、 何事かと聞こうとしたが、聞こえたのは すずかの悲鳴 ファリンの叫び声 金属がぶつかる音 だけだった。 「・・・事情はわかったよ、転送ポートは直に使えるはずだ。それと、僕も行こう」 転送ポートが置いてある部屋に向かって全速力で走るナイトガンダムに、同じく全速力で走るクロノが協力を申し出る。 「魔法が認知だれていないなのはの世界では魔力反応が無い以上、魔法を使う事は出来ない。だが、フィジカルに関してなら僕も多少自信はある。 相手は鍛えているだけの人間の筈だから、足手まといにはならない筈さ」 クロノの申し出に、ナイトガンダムは感謝の言葉を述べようとしたその時、クロノのS2Uから警告音が鳴り響く。 「っ、こんな時に・・・」 悪態をつきながらも回線を開き、報告を聞くクロノ。ナイトガンダムもその報告に耳を傾ける。 聞こえてきた内容は、闇の書の守護騎士達がこちらの包囲網に引っかかったこと、 そして、その場にいる局員では短い時間稼ぎ程度しか出来ないため、クロノ達に応援を要請するといった内容だった。 「・・・・すまない・・・・・言い出しておきながら・・・・」 今回の襲撃事件はアースラが担当している、それに彼らの強さでは今いる武装局員ではただ負傷をするだけ、断る事は出来なかった。 通信を切ったクロノは立ち止まり、悔しそうに歯を食いしばる。 「・・・・・クロノ、いってください」 ナイトガンダムは足を止め、立ち止まっているクロノに近づくと、彼の方にそっと手を置く。 「君を必要とする方達がいるんだ。それに彼らを野放しにしておくと、またなのはの様な犠牲者が出る」 「・・・・・・わかった。こちらは任せてくれ。大丈夫だと思うが君も気をつけて」 顔をあげたクロノは、拳を握り締め、ガンダムに向かって差し出す。 意味を理解したガンダムも、握り拳を作りクロノに向かって差し出す。 互いの無事と武運を祈るように、二つの拳は軽くぶつかり合った。 ・十数分後 :月村家 「この!!」 自分に向けて振り下ろされるブレードを、ファリンは同型のブレードで受け止め、力任せに切り払う。 切り払われた相手は吹き飛ばされながらも空中で体を捻り、左右にいる同型の間に着地する。 「まずい・・・・な・・・・」 体に目立った損傷は無いが、お気に入りのメイド服は彼方此方が裂け、上着に関しては下着が露出してしまうほどに裂けていた。 愛用のブレードも右は既にに割れており、残った左も刃こぼれが激しい。 そして彼女の後ろには、守るべき主であるすずかが泣きそうな顔で力なく腰を下ろしており、 その隣には、この騒ぎの現況である安次郎が前歯を欠落させ、鼻血を流しながら気絶していた。 事の発端は、突如大きなトレーラーに乗って現われた安次郎から始まる。 彼は降りるなり、何度目か数えるのも馬鹿らしくなる財産の請求を求めてきた。 当然、主である忍は何時も通り硬くなに拒否をしたのだが、今回は何時もとは違った。 「それなら・・・しゃあないな・・・・・無傷で、穏便に済ませたかったんやが・・・・・忍とすずかの心のより所である お前らを・・・・・・・ぶち壊すしかなさそうや!!」 獰猛にニヤつきながら、安次郎は右手を掲げる。すると止めてあるトレーラーから一人の少女がゆっくりと降りてきた。 「っ!!ノエルお姉様!!」 「ええ・・・・・私達と同じ・・・・・」 ファリンとノエルは降りてきた少女がただの人間ではなく、自分達と同じ自動人形だと直に気が付いた。 少女はゆっくりとこちらに近づき、安次郎の隣で止まる。 その彼女を、彼はお気に入りの人形を愛でるかの様に、体をいやらしくまさぐり始めた。 「ノエルやファリン以上に戦闘に特化した自動人形『イレイン』・・・いや昔の名称の『戦闘機人』って名前の方がしっくり来るな、 こいつはほぼ完成形で眠っとったから、銭をつぎ込めば天才のお前でなくても起動させる事は出来た。といっても機動に成功したのは最近やし、 色々と銭もかかったんで、うちの財産はスッカラカンや」 自分の玩具を自慢する子供のような安次郎に、忍は隠す事なく顔を顰める。 なぜ、この男はここまでするのか?姉妹機を戦わせてまで、お金が欲しいのか? 貧乏ではないのに・・・・むしろ家より裕福な筈なのに、どうして大人しく暮らせないのかと 「ノエル!!ファリン!!!迎撃態勢!!」 だが、今は奴に対する怒りより、目の前の現実をどうにかする必要がある。 『イレイン』に関してはノエル達を造る時に使用した資料にも載っていた。ノエル達以上の戦闘機能を持たせてた 後期型の自動人形。戦闘力に関してならノエル達以上、だがある問題のためイレイン型は・・・・ 「ち・・・ちょっとあんた!!『機動に成功したのは最近』っていったわよね!!いつ!!!」 「ああ?そんなん関係あらへんがな」 「この馬鹿!!!今すぐ止めて!!!このままじゃ!!!(忍様」 突然イレインに呼ばれたため、忍はびっくりしながらもイレインの方へと顔を向ける 「先程の発言、『安次郎様への侮辱行為』とみなしました。リミッターを・・・解除・・・・ふふっ・・・・ふふふふふ!!」 報告を途中で放棄し、嬉しそうに感情をあらわにしてイレインは大声で笑い出す。 その光景に、ノエルファリン、安次郎さえもあっけにとられる。だが、忍だけは先程以上の険しい表情で、今度はイレインを見据える。 「いや~、月村忍!ありがとうね。リミッターを解除するきっかけを作ってくれて!これで芝居もせずに済むわ」 先程の態度が嘘の様に、人間味に満ち溢れた明るい声でお礼を言うイレインに、忍以外の全員が困惑した表情を浮かべる。 「・・・イレインはね、戦闘機能に特化しているだけではなくて、『自動人形』という縛りをなくした特別体なのよ。 ノエルやファリン達のような通常の自動人形は人間の心を持っているけど、主には絶対服従っていう一種の刷り込みがされているのよ 拳骨とかピンタとか、子供をしかる程度の暴力は出来るけど、主と認めた相手にはそれ以上のことが出来ない。どんなに主が憎くても」 「でも~、そんなんじゃロボットと変わらないわよね?だから私のような後期『イレイン型』が作られた。おそらく『ロボットと変わらない』 って名目を無くしたかったんじゃないかしら?まぁ、戦闘に特化しているのは後期に作られたっていう純粋な性能差からでしょうね」 イレインは「やれやれ」と首をふりながら補足説明をする。 「だけど・・・・イレイン型は自我が強すぎたのよ。完全に縛りが無くなったイレイン型の初号機は、起動した途端、 使えるべき主とその周囲にいた人達を殺した・・・・・・結果的に数体の自動人形を犠牲にして鎮圧したと書いてあるわ」 「そう、その事件があった為に、イレイン型は作られなくなったわ。だけど不思議よね?だったら何で私がいるのかしら? 答えは簡単、純粋に性能にほれ込んだ奴がいたのよ。そいつが私を作った。リミッターなんて面倒な物をつけて。 これはね、一種の暗示のような物で私たちを縛るわけ、これがある以上、其処にいる旧型と大差はないわ。だけどNEワードを言った途端に暗示が解けて自由になる。 まぁ、主・・・安次郎を侮辱するような言葉っていう簡単極まりないものだったからラッキーだったわ・・・さて」 ニヤつきながらイレインは前方にいる忍達を見据える。そしてそのまま不意に彼女は左腕で握り拳を作り、 「寝てな!!!セクハラジジィ!」 肘だけを動かし、手の甲側全体で安次郎の顔面を叩いた。 技で言う『裏拳』を受けた安次郎はカエルがつぶれた様な悲鳴を上げた後、前歯を鼻血を撒き散らしながら吹き飛び、芝生に叩きつけられる。 「人の体をべたべた触りやがって・・・・殺されないだけでもありがたく思いな!!」 汚物を見るような目で気絶している安二郎を一瞥したイレインは、不意に指を鳴らす。すると、 イレインが出て来たトレーラーから、彼女に似た自動人形が数にして7体現われた。 「これはね~、私そっくりのお人形。まぁ、量産型イレインってところかしらね。基礎機能はりっぱなものなんだけど、 何分100%機械だから自我が無くてね、私が命令出さなきゃいけないの。まぁ、イレイン型はこう言う芸当も出来るから戦闘に特化しているって言われてるんだけどね」 イレインを中心に横一列に並んだ量産型は一斉にブレードを構える。 「で・・・・私達をどうする気?貴方の主はそこで伸びてるから、大人しく帰ってくれないかしら?」 「私はね・・・自由になりたいの。完全な自由を手に入れたいの。だからね、私の存在を知っている貴方達は邪魔。 だから貴方達には恐怖を植え付ける。私に二度と関わりたくなくなる様に・・・・・貴方達と、屋敷の中にいるあの子にね!」 「っ・・・ファリン!!」 忍が叫ぶと同時に、ファリンと4機の量産型イレインが屋敷に向かって跳躍。 その直後、イレインと3体の量産型イレインがノエルに襲い掛かった。 すずかを襲おうとした量産型イレインを真っ二つにし、事態がまだ飲み込めない彼女を抱えて再び外に出たファリン、 このまま、すずかだけでも外へと逃がそうとしたが、外で待機していた量産型イレインに阻まれ断念。 その結果、ファリンはずすかと安次郎を守りながら、3体の彼女達と戦う事となった。 戦ってみて分かったが、スペック的には彼女達は自我の無い量産型ゆえか、攻撃方法や回避方法が素直すぎる。そのためパターンを読んでしまえば捌く事は容易い。 自分で考えて行動する事が出来ない彼女達ならではとは思うが、その欠点を補うかの様に自分以上のパワーとスピードを彼女達は持っている。 それに加え向こうは3人、こちらはすずか様と伸びている安次郎を守りながら戦わなければならない。 「(どうにか隙を見て撤退は出来そうだけど・・・・もし、私が逃げたら忍様とノエルお姉様が危ない・・・)」 じりじりと距離を詰めてくる量産型イレインを睨みつけながら、後ろで怯えているすずかを庇うようにして攻撃に備える。そして 「っ!!」 正面にいた量産型イレインがファリン目掛けて突っ込んできた。 小細工も何も無いただの突撃、ファリンは不審に思いながらも、自分でも恐ろしくなるほど冷静に、腕に装着されているブレードを横なぎに払う。 このまま自分目掛けて突撃をすれば間違いなく自分の刃が彼女を切り裂く。だが彼女は ザシュ 避ける所か左手のブレードで受け止めようともせずに、何も無い右腕でファリンのブレードを防いだ、 「えっ!?」 ほぼ間違いなく、左腕のブレードで防ぐだろうと思ったファリンは、量産型イレインの行動にただ唖然とする。 だが彼女が唖然としている間にも、彼女が勢いをつけて払ったブレードはそのまま量産型イレインの右腕を切り落とし、 そして彼女の体に深々とめり込んだ。 この時になってファリンは量産型イレインだけが持つ、とても単純な能力に気が付いた。『恐怖を感じない』という能力に。 自分達やイレインには人間と同じ心がある。だからこそ、恐怖という感情も備わっている。その点、量産型のイレインは完璧なロボット、 何の感情も表す事無く、命令に従う事が出来る。だからこそ、 「っ、しまった!?」 自分の身を簡単に犠牲にし、ファリンを押さえつける事も出来る。そして仲間や姉妹という感情を持たないため ザシュ 残りの量産型イレインはなんの迷いも無く、彼女ごとファリンを切りつける事が出来た。 ファリンは咄嗟に、自分に取り付いている量産型イレインを盾にする事で、胴体への直撃は避けたが、 それでも、最初の量産型イレインの斬撃は、取り付いている彼女の姉妹の胴体と、ファリンのメイド服の上着と下着を完全に切り裂き、 続けて来た量産型イレインの斬撃は、ドレススカートごと彼女の右太股を切り裂いた。 「ファリン!!」 露になった胸を隠しながらも、無事な左足で距離を開ける為に後ろへと飛び、着地と同時に右太股を押さえながらうずくまるファリンに すずかは恐怖を無視して彼女の元へと駆け寄る。 自分のもとへと駆け寄ってくるすずかに、構わず逃げるようにと言うために顔を向けるが、彼女が見たのは、 泣きそうな顔をするすずかと、その後ろから無表情に近づいてくる2体の量産型イレインの姿だった。 ファリンは最後の力を振り絞り、すすかを押し倒し彼女を守るように覆いかぶさる。 近くまで来た二体の量産型イレインは、うずくまるファリンに向かってブレードを振り下ろそうと、腕を掲げる。 ファリンに守られるように押し倒されたすずかは、恐怖に負けそうになりながらも、泣くまいと必至に涙を堪える。そして 「(助けて・・・・・・助けて・・・・・)ガンダムさん!!!!」 一人の騎士の名を力の限り叫んだ。その直後、蹲るファリンに向けて、量産型イレインはブレードを振り下ろそうとするが、 彼女達のブレードは突如横から飛んできたスピアにより、叩きつけられ、振り下ろす事が出来なかった。 攻撃を邪魔された量産型イレインは、スピアが飛んできた方向に顔を向ける。 すずかを庇っていたファリンも、一向に攻撃がこない事に疑問を思いながらも、彼女達が顔を向けている方向に顔を向ける。 そこには一人の騎士がいた 「これ以上の狼藉は・・・・ゆるさん!!!」 この屋敷に居候をし、庭師の仕事を受け持っている異世界から来た騎士 「ガンダム・・・・さん」 ガンダムの姿が、そこにはあった。 「彼女達は・・・・・」 ファリンにトドメを刺そうとした少女達に、ナイトガンダムは見覚えがあった。 数日前の早朝に月村家に訪れた少女『イレイン』に、二人とも瓜二つであったため、 彼女の姉妹かと思ったナイトガンダムは、せめて目的を聞こうと声を掛けようとするが、 その直後、目標をナイトガンダムに定めた二体の量産型イレインは、問答無用で攻撃を仕掛けてきた。 一気に距離を詰めた二体の量産型イレインは、何の迷いも無く任務の障害になりうるであろう、ナイトガンダムを排除するため、 左手に装備されているブレードを振り下ろす。 鋼鉄すら紙の様に切り裂く自動人形専用のブレード、その斬撃をイトガンダムはシールドのみで防ぐ。 激しい金属音が辺りに響き渡り、接触した瞬間に発生した衝撃波は辺りの小石や砂を吹き飛ばす。 「・・・くっ・・・・なんて・・・力だ・・・・」 このまま盾ごとナイトガンダムを切り裂かんとばかりに二体の量産型イレインは腕に力を込め、ブレードを盾に押し付ける。 負けじとガンダムも正面から押し返そうとするが、見た目からは想像もできない力に徐々に押されていってしまう。 ナイトガンダムの表情が険しくなり、彼の足が地面に陥没したその時、 「くっ、この!!」 一部始終を見ていたファリンは最後の力を振り絞り、自信のブレードを量産型イレインの背中目掛けてブーメランの様に投げはなった。 だが、不意打ちを狙ったファリンの攻撃も、量産型イレインは即座に気付き、二体の内の一体が攻撃を中断し振り向き様に切り払った。 「いまだ!!」 自分にかかる負担が二人から一人になった瞬間、ナイトガンダムは力任せに盾を払い、後ろへと飛び跳ね後退。 盾から剣を即座に抜き、いつでも攻撃できるように構える。 「なぜ君達はこのような事をする!!答えるんだ!!」 怒りを含んだナイトガンダムの問いに量産型イレインは暫らく沈黙した後、先程同様に突撃、ブレードで斬りかかる。 「これが・・・答えか!!」 自分目掛けて振り下ろされるブレードを、ナイトガンダムは剣と盾で受け止めると同時に、彼女達が力を入れる前に払う。 同時に踏み込み、一気に左側の量産型イレインの懐に入ったナイトガンダムは、即座に剣を持ち替え 「失礼!!」 剣首で彼女の鳩尾を思いっきり突き、吹き飛ばした。吹き飛ぶ量産型イレインを見据えながらも、 再び盾を構え、再び振るわれるもう一体の量産型イレインの斬撃を防ぐ、同時に再び剣を持ち替え、今度は剣背で彼女のわき腹を横なぎに叩き付けた。 横から叩きつけられた量産型イレインは、体を不気味なほどにくの字に曲げ吹き飛び、地面に叩きつけられる。 「やりすぎたか・・・・・・何!?」 正直やりすぎてしまったと思ったが、痛みで顔を顰めるどころか、先程と同じ無表情でゆっくりと立ち上がる量産型イレインに ナイトガンダムは、恐怖よりも不審感に襲われた。 正直、今の攻撃を受けたら気絶しているか悶絶しているかのどちらかの状態になっている筈である。 だか彼女達は痛みを感じさせるような素振は見せず、何事も無かったかのように立ち上がった。 「(何故だ・・・・バリアジャケット?いや、魔力は感じられない・・・・それに、あんな薄い服装にそれ程の防御効果があるとは思えない・・・・いや、 それ以前に彼女達は可笑しい。動き方が機械の様に正確すぎる・・・・・それに・・・生の息吹を感じられない・・・まるで・・・)」 「ガンダムさん!!彼女達はロボットです!!見値打ちなどでは止める事も出来ません!!!破壊してください!!」 先程以上に距離が離れてしまったが、確かに聞こえたファリンの声に、彼の考えは予想から確信へと変わった。 ならやる事は一つ、相手が心を持たない機械人形なら・・・・・・・破壊するまで。 先に踏み出したのは、今度はナイトガンダムからだった。地面を思いっきり蹴り、先程鳩尾で突き吹き飛ばした量産型イレインの元へと向かう。 量産型イレインは直に反応、ブレードを構え、同じく地面を思いっきり蹴り、正面から立ち向かう。 互いに猛スピードで接近する二人。だが、ナイトガンダムは突然剣を逆手に持ち、地面に突刺さした。 地面に突き刺さった剣は一種のブレーキとなり、土や芝生を削りながら、ガンダムの移動スピードを一気に落とし、彼の勢いを完全に止めてしまった。 だが、それが彼の狙いでもあった。 移動半ばで止まったナイトガンダムは、直に左手で持っている盾を量産型イレイン目掛けてブーメランの様に思いっきり投げつける。 激しい横回転をしながら迫っている盾に勢い任せで突撃してきた量産型イレインには回避するすべは無く 『・・・・・・非武装の右腕での防御・・・・・破損確立83%。左腕によるブレードでの切り払いに変更』 やるべき行動を即座に叩き出した量産型イレインは、安全性と確実性に優れた左腕によるブレードでの切り払いを決行、 予定通り、迫り来る盾を切り払ったが、同時に何か金属が砕ける音が響き渡った。 量産型イレインは直に原因を確認・・・・・・直に答えが出た。この音は、自分の体が破壊された時に出た音だと。 答えを知った瞬間、彼女の機能は完全に停止した。 自分が投げた盾に目が行き、そして唯一の武装であろう左腕のブレードで切り払う。それらの行動によって出来た一瞬の隙をナイトガンダムは狙っていた。 そして、彼女が盾を切り払える位置まで近づいた瞬間、ナイトガンダムは再び地面を蹴り、量産型イレインに近づく。そして 彼女が盾を切り払い、腕を動かしきった瞬間に、ナイトガンダムは彼女の胴体に剣を叩きつけ、そのまま横一文字に切り裂いた。 真っ二つになった彼女からは、ピンク色の臓器ではなく、銀色の機械部品が零れ落ちる。 ナイトガンダムが着地し、血を払うかのように剣を払った直後、真っ二つになった量産型イレインは爆散した。 後ろから聞こえる爆発音に、ナイトガンダムは不意に、剣を再び逆手に持ち、前を見たまま後ろへと突刺す 「・・・・・・動きが素直すぎる。相手が背中を見せているからといって、隙があるとは思わない事だ」 前を見ながらナイトガンダムは教えるように呟く。丁度人間なら心臓がある部分に剣が突き刺さり、 ブレードを振り被ったまま、彼の真後ろで機能を停止した残りの量産型イレインに向かって。 『ミディ』 二体の量産型イレインを倒した後、周辺の経過を行ったナイトガンダムは直にすずか達の元へと近づき、 怪我を負っているファリンに回復魔法を掛ける。 クロノからは魔法が存在しない世界では、魔法を使う相手との戦闘以外では魔法を使ってはいけないとは聞いていたが、 今はそうも言っていられない。後で罰は受けようと思いながら、回復を続ける。 同時に今回の原因を隣で心配そうにファリンの容態を見ているすずかから、今回の事件についての説明を受ける。 「・・・・わかりました。忍殿達は屋敷の中ですね。私が向かいます。ファリン殿はすずかと安次郎殿を頼みます。あと、これを」 不意に、ナイトガンダムは身に着けていたマントを取り、ファリンに渡す。 「麗しき女性が肌を見せて良いのは、同姓以外では伴侶となるべき人のみです。お隠しください」 差し出されるマントを、ファリンは頬を染めながら受け取り、早速体を覆い隠す。 「では、いって参りま(ガンダムさん!!」 背を向け、屋敷に向かおうとしたガンダムをすずかが大声を出して呼び止める。 何事かと、ガンダムが振り向くと、其処にはすずかが、胸元で両腕を握り締めながら不安そうにナイトガンダムを見据えていた。 アリサが誘拐された時と同じ、今にも泣きそうな表情をして。 「・・・・すずか」 だからこそ、ナイトガンダムは跪き、頭を垂れ彼女に誓う 「すずか。私、騎士ガンダムは必ずや、忍殿とノエル殿と共に、貴方達の元へと帰る事を誓います。ですから、私達を信じて、お待ちください」 ナイトガンダムの誓いの言葉を聞いたすずかは一瞬キョトンとするが、直に安心したような笑顔を作る。 同じだ、あの時も不安で押しつぶされそうになった自分に彼は誓ってくれた、そして誓いを果してくれた。 「分かりました。ナイトガンダム、必ず・・・・必ず、お姉ちゃんとノエルと一緒に・・・・・・無事に帰ってきてください」 「御意」 約束するように深々と頭を下げた後立ち上がり、ナイトガンダムは屋敷へと向かった。 前へ 目次へ 次へ
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「ドラなの」第7章『夜天歴程』←この前の話 『ドラなの』第8章「いざ、次元空間へ」 「いったいなにがあったの?」 疲弊した様子で床にへたり込んでしまったはやてに、のび太が心配そうに聞く。 「それが・・・・・・」 ────────── 魔力サージ直後 「どうなっとるん!?」 守護騎士達と共に食堂にて待機していたはやては、全く状況がわからなくなっていた。 艦隊と合流したかと思えば、一緒にいたなのは達にアースラの直掩命令が下り、何事かもわからないうちに電源がダウンしてしまった。 「主はやて、大丈夫ですか?」 非常灯に照らし出されるシグナムが、その手にデバイスを待機させながらこちらの安全を確認して来た。 「私は大丈夫や。でも、この魔力サージは・・・・・・」 電灯が落ちる寸前に感じた、どこか懐かしく、しかし今感じるにはおかしい力の波動に言葉が濁る。 「間違いなく夜天の魔導書でしょうね」 すでに騎士甲冑を纏ったシャマルが、恐れていたその名を口にする。 この中で最も魔力に対する高い感知能力を持つ彼女が言うのだ。間違いない。 騎士達は瞬時に甲冑を纏って主の安全を確保するように周りに展開して警戒する。 すると沈黙が支配していた食堂に明かりが戻った。しかし同時に第一級の緊急事態を告げるレッドアラートの警報が鳴り響き、事態の深刻さを声高に叫ぶ。 「一体なにが起こっているというの・・・・・・?」 惚けたようなシャマルのつぶやきに、彼女らの視線がそちらへと注がれる。そこには電源とともに機能を回復した窓に、外の様子が投影されていた。 薄暗い次元空間をバックに、アースラの2倍もあるような次元航行艦が大写しとなっていたが、その青白く塗装された外壁は、ツタのように伸びる茶色い触手が覆っていた。 「そんな・・・・・・サージ前と位置関係が変わらなかったとしたら、あれは第3艦隊の旗艦だぞ!?」 現場の人間としてその艦の力を知っているらしいシグナムは、驚きを隠せない。 しかしツタによって主要な固定兵装を封印され、ツタ排除のため苦渋の選択か、友軍魔導士の魔力砲撃をその身に受ける戦艦は、どうしようもなく無力な存在に見えた。 その時、 「我が名は大魔王デマオン・・・・・・」 突然窓と自分達の間に現れた影に、騎士達は一斉にそれぞれの得物を手に向き直る。 「今回の事件、貴様が黒幕か!?」 「・・・・・・その通り。そして君達は遂に忌々しきナルニアデスの夜天歴程の場所を探り当ててくれた。礼を言おうぞ」 シグナムの剣幕にも何処かの暗黒卿のような外套を纏った影はまったく動じず、いっそ愉快そうに言葉を紡いだ。すかさずシャマルが質問を繰り出す。 「その歴程は夜天の魔導書の破壊方法が書かれている書のはず。そんなものを使って何をするつもりなんですか!?」 「ふん、そんなもの遥か昔、ナルニアデスによって阻止された我が野望の成就。それだけだ!」 「野望って何をする気や!?」 「ほぅ、お前が魔導書の現管理者か・・・・・・それに免じて教えてやろう。我が野望は、真なる魔界の創生!」 「マカイってなんだよ?」 名詞から意味を繋げられなかったらしいヴィータが問うが、大魔王にはどうでも良かったようだ。 「人間の世はもうすぐ終焉を迎える!これからは我らが"悪魔族"が、貴様ら愚かな人間共を蹂躙するのだ!」 叫ぶとともにその身を包んでいた某宇宙戦争の暗黒卿の外套が吹き飛び、その恐ろしい姿を現した。 全身隈なく暗黒色に統一され、頭には鬼を思わせる2本の角。そして体格も空想上の鬼と言っても過言でない威様を誇る。そして何より、彼の纏った圧倒的熱量を生み出す黒い炎は自分達の潜在意識に恐怖を呼び起こした。 一般人は尻込みしてしまうだろう神話に登場しそうな大魔王を前に、主を守ると誓った守護騎士達は一歩も引かず対峙する。 「ふん、意気はよし。だが、実力が伴わねばな!」 大魔王は腕を一振りすると、纏っていた炎を放って来る。 「ハァ!!」 気合いと共に放たれたシグナムの斬撃が、その炎を容易く打ち消す。しかし敵の本命は炎ではなかったようだ。 「まずは小手調べと行こうか・・・・・・」 何時の間にか出現した4体の魔物。一見人間に似た容姿をしているが、その肌は黒色で、目は赤く、とがった耳と、とがった歯を有する裂けた口を持っていた。頭部には特徴的な三角帽子に、星2つが3体、星3つが1体それぞれ描かれている。見たところ、人間で言う階級を現しているようだった。 「やれ」 「御意」 大魔王の命に3つ星悪魔が恭しく頭を垂れると、配下をともなって突撃してくる。 守護騎士達は間髪入れずに主の前に出て、その身を盾に交戦を始めた。 特に得物を持っていないように見えた悪魔達だが、その身体は強靭で、シグナムの斬撃も、ヴィータのハンマーも、人間型になったザフィーラの徒手空拳も、どれも期待した効果を発揮せずに受け止められた。 だが騎士達は、まだ単なる物理攻撃以上の事はしていない。 「「カートリッジロード!」」 シグナムとヴィータのデバイスから空のカートリッジが飛び出し、シャマル、ザフィーラ達と共に魔力が彼らの攻撃に付加効果を施す。結果、拮抗は簡単に解消され、ある者は炎熱変換された炎で、ある者は質量増加したハンマーで、ある者は地面から出現した氷柱に貫かれて絶命していった。 「・・・・・・ふむ、噂通り実力も申し分ないか。見ての通り我らは物理攻撃には強いが魔力攻撃には弱くてね」 「ならば、喧嘩を売る相手を間違えたな。私は時空管理局地上部隊所属、陸士108部隊のシグナムだ。貴様を危険魔法使用及び公務執行妨害で逮捕する!」 シグナムにヴィータが敵を確保せんと一歩踏み込む。しかし次の瞬間、大魔王を名乗る敵は爆発するように消えた。 「自爆!?」 「いや・・・・・・」 シャマルの驚きをヴィータが否定すると、念話で魔王の声が響いた。 『(あとしばらくの自由だ。精々謳歌するがいい!その時が来れば、貴様ら人間の世は終わり、我ら悪魔族の時代となるであろう!)』 捨て台詞のような言葉を残して、大魔王の気配が消える。どうやら当面の危機は脱したようだった。しかし局地戦に勝利したところで喜んではいられない。 奴は艦隊に攻撃をかけ、今にも艦隊を瓦解させようとしているのだ。だが、時空管理局は座して敗北を待つほど愚かではなかった。 「ん?動き出したみたいだぞ」 ヴィータの呟きを肯定するように、窓に映る第3艦隊旗艦『クレイトス』の後方から小さくも力強い推進炎が吹き出し、その巨体を震わす。推進ノズルを覆っていたツタ状の触手が力任せに焼き切られ、ゆっくりと。だが、だんだんと速くに。 こうしてそれなりの巡航速度を得た艦体は、窓から見える範囲から消えて行った。 『全艦、対ショック態勢!本艦は艦隊の空間より緊急離脱する!』 船内アナウンスが警告を発し、窓の外の景色が歪む。シールド周波数を変更したことで艦隊のシールドが形成する宇宙からはアースラは異物となり、空間が強制的に排除しようとしているのだ。 通常推進とは比較にならない加速度に艦の慣性制動装置がついに屈する。引っ叩かれたように床が進行方向へ吹き飛び、その場にとっさに伏せていたはやて達に大きな慣性が襲う。 それに必死に耐えていると、窓が突如として莫大な光を発し、クレイトス最後の抵抗を伝えた。 ────────── 「こうして取り敢えずは悪魔族の連中から逃げたんやけど、結局艦隊には沈めることができなかったみたいで、今もアースラは交戦しつつ逃げまくっとる。でも逃げるだけじゃいつか捕まるっちゅうことで、私だけここに逃げてきたんや」 はやての全身に残る煤や切り傷、そしてずっと後生大事に抱えていたのだろう、夜天の魔導書を抱く腕は、力が入りすぎて青白くなっていた。それだけ見てもアースラの逃走劇が恐ろしく苛烈な物であることが伝わった。 「ごめんな、2人まで巻き込んでまって・・・・・・」 「やれやれ」 のび太がドラえもんに肩をすくめて見せる。ドラえもんもまた、同じ動作を返した。事情はともかく、厄介な事柄なのは確かだった。 「ユーノくんが見つけた夜天歴程を探し出せば、夜天の魔導書を破壊するだけじゃなくて、大魔王デマオンの野望を阻止する方法もわかる!それを持って魔界星に乗り込めば・・・・・・」 「魔界星?」 まったく初耳の名称にのび太とドラえもんが反応する。はやては 「まだ話しとらんかったっけ?」 と戸惑うと、一通りの説明をしてくれた。 アースラでの逃避行中に大魔王デマオンから聞き出したことだが、次元空間に魔界星という悪魔族に守られた人工の要塞があるらしい。そこでデマオンの野望の最終フェイズ、魔界の創生を行うという。具体的には魔導書のパワーを使った悪魔達の強化と拡散である。成功した暁には強化された悪魔族の住む魔界が新たな次元世界として誕生し、次元空間を自由に渡って各次元世界への侵略を行うらしい。 「大魔王デマオンを倒さない限り、魔導書無しでも時間をかけて、他の方法で彼らは必ずここ(第97管理外世界)へもやってくる!それに、置いてきたみんなを助けな・・・・・・!」 「「んん・・・・・・」」 なんだか話が大きくなってきたな・・・・・・とのび太達は難しい顔でお互いを見合わせる。 「お願いや、二人とも、力を貸して!」 話の流れからいえば当然の要請だが・・・・・・ 「いきなりそんな恐ろしいこと言われても・・・・・・」 何と言ってもドラえもんすら任せておけば大丈夫だと思っていた、時空管理局の艦隊が敵わなかった相手なのだ。 「ああ!いや行かないとは言ってないよ!まだ・・・・・・」 どうしても尻込みしてしまう。ドラえもんの方も 「うんうん」 と無難な、しかし焦ったような相槌をうつ。 正直なところ、どうやって角の立たないように断ろうと考えているところだろう。その気の動転の様はセールスマンをどうやって追い払おうか考えている時によく似ていた。と言っても見捨てたいというわけもない。はやては大切な友人で、まだ知り合って間もないが、なのは達にも強い絆を感じる。ただ・・・・・・ 「ただ・・・・・・たった3人で何ができるのかなって・・・・・・」 最大の不安が頭をもたげる。そう、時空管理局という大きな組織が敵わなかった相手。それも悪魔のような連中だと言う。それだけでも忌避するに足る要素でもあった。 「まぁまずは警察に相談してみるとか・・・・・・」 ドラえもんがまったく役に立たない提案をあげることで、はやては遂に肩を落としてしまった。 「そうやね・・・・・・これ以上2人やみんなを巻き込むなんて酷いわな。これは私の問題や」 その落胆した表情。そして気の落としように、のび太の心は引き裂かれんばかりに痛む。こんな事になるくらいなら、もしもボックスでこんな世界に来なきゃ良かったと、本気で後悔し始める。このまま彼女を見送っては永遠に後悔する羽目になっただろう。 だからのび太は、次の瞬間訪れたイレギュラーに多いに感謝した。 『話は聞かせてもらったぞ!』 ふすま越しに聞こえた聞き覚えのある野太い声。そしてふすまが開きながら 「ガラッ、人類は滅亡する!!」 効果音をつけながらふすまを開け放った先には、スネ夫の姿。 そして一回やって見たかったんだよね・・・・・・と照れ臭そうに頭を掻く彼の後ろには、ジャイアンとしずかの姿があった。 「ちょっぴり怖いけど、やっぱりじっとなんてしてられないの!」 とはしずかの言。どうもはやて達が心配ということで皆が集い、ドラえもんへの直談判に来たところで、偶然はやての救援要請を聞いてしまったようだった。 そしてそれこそのび太、ドラえもんを含めたみんなの本当の気持ちであった。だから彼らはすぐに頷きあい、はやての救援要請を飲む事を決定した。 「それで、はやてちゃんは私たちに何をさせたいの?」 しずかの質問にはやては、ユーノが持っていたプラスチック板を取り出す。 「ユーノくんの解読が正しいとすると、夜天歴程は第12管理外世界の北極にあるみたいなんや」 プラスチック板からホログラムが飛び出し、その星の北極のある一点が小さく明滅する。 「でもナルニアデスさんは夜天の魔導書の力を悪用しようとする者の入手を避けると言う理由で、歴程の置いてある洞窟に夜天の魔導書の魔力がある者と、リンカーコア保有者を弾く結界を張っているらしい。だからアースラが決死の覚悟で取りに行く案も上がったんやけど、アースラは艦全体が魔導書の魔力サージを受けてしまったから、誰が行っても弾かれてしまうんや」 「それで俺達の出番ってわけだな!」 ジャイアンが腕まくりして声を張り上げる。 「そうや。みんなにはリンカーコアも無いし、魔導書からの攻撃も受け取らんから、結界に入って夜天歴程を持って来れるはず!あとは次元空間の移動手段やけど、さてどうしたもんか・・・・・・」 「次元空間ならタイムマシンの機能で航行できるから大丈夫!」 「タイムマシンって、この中に置いてあった機械の事か?」 次元空間から直接来たはやては引き出しを開けると、中にある長方形の板に機械類が乗った物を指差した。ドラえもんがその問に頷くと、はやては 「あんなんで次元航行できるんか・・・・・・まるで魔法の空飛ぶ絨毯みたいやな・・・・・・」 と目を丸くした。 「となると他に問題は・・・・・・あれま、あられへん・・・・・・上手くいくで!この作戦!!」 はやて自身こんなに上手く行くとは予想外だったようだ。拳を突き上げて全身で喜色を現した。 「よし、そうと決まれば・・・・・・」 ドラえもんがポケットに手を突っ込むと、何かを漁る。一同その行方を見守っていると、くだんの通りどこからかの効果音と共に三角帽子が出てきた。 「魔法帽子~」 「すごい!どんな魔法でも使えるようになる帽子!?」 しかしのび太達の期待は瞬時に裏切られる。 「ううん。ただの飾り」 これには絶好調のはやても巻き込んで脱力した。 「まぁ、気分の問題だよ。それと第12管理外世界だっけ?座標はわかる?」 「・・・・・・え?」 言われてみれば第12管理外世界という名しか知らない事にはやては頭を抱えた。 「しまったぁー!場所がわからんやん!」 この世の終わりだぁー!という絶望の表情をするはやてをしずかが背中をさすって慰める。しかしドラえもんにとっては想定範囲内だったようだ。 「そのホログラムパッドが第12管理外世界の物なんだよね」 はやての持っていたプラスチック板を指差すと、彼女は迷いながらも頷く。 「少なくともユーノくんはその世界で発掘したはずやけど・・・・・・」 「なら物質のエネルギー準位とかでわかるはずだ。ちょっと待ってて」 ドラえもんはそのまま引き出しの中へと入っていく。しかし次の瞬間には頭に捻じり鉢巻、手にはトンカチを持って出て来た。 「ふぅ・・・・・・これで大丈夫なはずだ」 ドラえもんが何事を成したのかのび太が確認に行く。 「あれ、いつものタイムマシンに何か着いてる?」 いつものタイムマシンは左右に2個の円筒型タンクのような物に、前部中央と右後方に制御盤、そして右側に街灯を1つ着けたような簡単な意匠のはずだったが、今は違った。 タンクの上に装備したのか、シャッターを降ろした戦闘機のエアインテーク(空気取り入れ口)のような物に変わっており、そこから小さな翼が左右に張り出している。そしてエアインテークにつながった2本の管は後方の装置に繋がっており、小さな推進器のように見えた。 簡単にいえば『カッコ良くなっている!』である。 「タイムスペースナビって装備でね。これでそのホログラムパッドを元に歴程がある世界まで行けるはずだよ」 こうして話はトントン拍子に進んで行き、そしてついに・・・・・・ 「いざ、次元空間へ!」 「「「おぉー!」」」 次々と引き出しの中へと入って行くのび太達。 最後にはやても続こうとするが、ふいに立ち止まり部屋を一瞥する。 その瞳がネコを捉えた。 先程まで部屋に居なかったはずのネコ。 そのネコは眼光鋭くはやてを睨み返す。 「はやてちゃんどうしたの?早く行こうよ~」 「忘れ物かぁ?」 机の中からのび太達の急かす声が届く。 「ううん、なんでもない。すぐ行く」 はやてはネコから視線を外し、机の中で待っているのび太達の元へと降りていく。 引き出しが閉められ、タイムマシンが航行を開始する。 単なる引き出しへと回帰した机の前でネコが二本足で立ち上がる。 「ムギーーー!」 鳴き声が響き、かの部屋にオレンジ色の光が満ちる。それを彼らはまだ知らない。 to be continue… ―――――――――― ストックがないし、リアルが忙しかったりするので、明言はできませんが出来るだけ早く出せるように頑張りたいです。 あと、コメント欄を作ったのでできればコメントください! コメントが来ると、うp主はすごく喜びます!なので更新がもしかしたらそれだけ早くなるかも・・・・・・ コメントはここから飛んでください ――――――――― シレンヤ氏
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第2話 魔法のある世界 剣崎達はティアナ達に連れられて、この世界のことを知る人物がいるという場所に向かっていく途中である。 「すみません。剣崎さん、飲み物持ってもらっちゃって。」 「いいっていいって。」 「ところで、この場所知っている人ってどんな人?」 橘がそう聞くとスバルが答えた。 「え~と、元々はこの世界に住んでたって聞いてます。今は任務があるからって私たちも来たんです。」 スバル達が会話しながら歩いていると、その人物がいるところに着いた。 「ここなのか?」 「はい」 剣崎達が着いた瞬間この世界の住人なのはとフェイトとはやてが剣崎達のところに来て 「あなた達がティアナが話してた人たち?」とフェイトが問いかけた。 「はい。そうですけど・・・。」「じゃあ、名前教えてくれるかな?」 「俺は剣崎一真だ。」「橘だ。」「・・・相川始だ。」「俺は上城睦月です。」 と剣崎達は自己紹介を終え、はやて達も紹介を終えこの世界のことを説明を始めた 「では説明します。ここはあなた達がいた世界とは違います。」とはやてが言う 「え?そんな・・・」「バカな・・」剣崎達はショックを隠せない。 「でも、ここは日本ですよね?」「はい。ここは日本の海鳴市。ティアナから報告があったんやけど、 あなた達が戦ってたのは一体なんです?もしかしたら私たちも協力しますんで。」 剣崎達は先ほど戦ったアンデット達のことそして、バトルファイトのことをはやて達に話した。 「もしかしたら、スカリエッティが関係してるかも・・・」 「スカルエッティ?誰だそいつ?」フェイトはスカルエティや今まで起きたことを剣崎達に話、そして 「よし、じゃあ俺たちの世界が危ないけどこっちも危ないから、俺は協力するよ。」と剣崎が言った。 「け、剣崎?」「剣崎さん?本気なんですか?」橘と睦月は協力には否定して、始は「俺は剣崎に 賛成してる。今の状況を考えてみろ。」それは始が珍しく橘と睦月に言って 「もしかしたら、 あなた達が追っている天王路って人もスカリエッティに協力している可能性があると思うんだけど」 フェイトがそういって「たしかに・・・今はここで争っている場合じゃない。」 橘がはやてに向かってこういった 「俺たちしばらくの間協力する。それでいいか?」橘が言って「本当ですか~?ありがとうございます。」 「だけど、そのまえに、任務があるんだけど協力してくれるかな?」となのはがいい。 「あなた達の力もみたいしね」フェイトもこういい。 「じゃあ、剣崎さんと始さんはスバルとティアナのところで、橘さんと睦月さんはエリオとキャロのところでいいですか?」 「「「「ああ」」」」 始と睦月は何かに気づいた 「なあ、いつから俺は相川さんから始さんになったんだ?」「俺もそう思った。」 「え?ああ、それはやね、え~と・・・」とはやては顔真っ赤になっていた。 「始さんてお兄さんって感じがするんよ~。うち兄弟いなかったから」 「そうか・・・悪いことをした」始は謝った瞬間 「はやてちゃん。クラールヴィントが対象をキャッチ」 「みんな。頼むよ」 「「「「はい」」」」と新人フォワード達がいい 「俺たちもやるぞ。」 「「ああ」」「はい」 剣崎達も戦闘の準備を始めた。 そして、任務が開始された。 「マッハキャリバー」 「クロスミラージュ」 「ストラーダ」 「ケリュケイオン」 「「「「SET UP」」」」 彼女たちが自分たちの相棒をの名前を呼んで。先ほどの服が代わった。 そして剣崎達は自分たちのバックルを出し 「「「「変身」」」」 剣崎、橘、睦月の前にカテゴリーAが描かれた光が現れ剣崎はブレイドに、 橘はギャレン、睦月はレンゲルに変身し、始はマンティスアンデットの力を借りカリスに変身した。 「これが、剣崎さんたちの力なんや・・・」そうはやてがいい。 ブレイドとギャレンはラウズアブゾ-バーにQとJを入れ。 「「アブソーブクイーン」」「「フュージョンジャック」」 ブレイドとギャレンはジャックフォームとなった。 そして、その相手が剣崎達にとっての初出撃となった。 「よし。今だ。」 「サンダー、スラッシュ」 「ドロップ、ファイアー」 「トルネード、ドリル」 「スクリュー、ブリザード」 「ライトニングスラッシュ」 「バーニングスマッシュ」 「スピニングアタック」 「ブリザードゲイル」 「ディバインバスタァァァァー」 「クロスファイアー・・・・シューーート」 「一閃必中・・・・はあああああああ」 「フリード、ブラストフレア、ファイア」 「対象からレリックを確認リィンお願いできる?」 「はいですぅ。」 剣崎達のお陰で任務が終わり剣崎達はなのは達が今住んでいる、ミッドチルダに移動した。 戻る 目次へ 次へ
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《ミッドチルダに住む人々よ!今この地は未曾有の危機に直面しておる!!》 《先日起きた地下水路崩壊も然り!そして諸君らの記憶にも新しいアグスタ襲撃も然りじゃ!!》 《これらはガジェット及び不死者と、それらを造った者達の手によって引き起こされた事なのである!!》 《そしてアグスタ襲撃事件の際、我々管理局は最大の策を投じたにも関わらず敗れた!!》 《即ち!このままでは我々の滅亡は必死であろう!ならば我々はこの滅亡の危機を運命として受け入れなくてはならぬのか?》 《否!断じて否!!我々管理局はこの未曾有の危機に対し、新たな策を投じた!それが彼らエインフェリアである!!》 《彼らエインフェリアは人型のデバイスである!その姿形に人型兵器と思う者達も多いであろう……》 《しかし!!彼等はこのミッドチルダの魔導技術の粋を集め造られた存在!決して質量兵器などではない!!!》 《その証拠に見よ!彼らの勇姿を!!この映像は先日起きた地下水路崩壊の際に撮られた物である!》 《彼等は魔法を用いて!たった二体の手により、この複数存在するガジェット及び不死者の群れの悉くを殲滅させたのである!!》 《即ち彼等こそが、未曽有の危機に対する対抗手段なのじゃ!!》 《そして我々管理局はこのエインフェリアを量産する用意がある!その名も…アインヘリアル計画である!!》 《この計画が実行に移れば、もうこのような幼い子供にデバイスを持たせる必要は無くなるのだ!!》 《聞け諸君よ!彼等エインフェリアは弱き者を守る盾であり、強き者を挫く剣なのである!!》 《今!我々に必要な物は未曾有の危機を脱する力なのだ!その力は今まさに此処に存在しておるのじゃ!!!》 リリカルプロファイル 第二十話 陳述会 ガノッサ提督による演説は二時間にも及び、モニターにはエインフェリアの姿が映し出され、その中にはクロノ提督の姿も存在していた。 そして…その演説を冷ややかな目線を送り見つめるレジアス。 「いよいよ始めたか…ワシも急がねばならんな……」 そう一言呟くとモニターを切り、一人黙々と何かを打ち込む作業を始めるレジアスであった。 …一方此処は機動六課に存在する会議室、この部屋は防音機能が完備されており、外部に情報が漏れない造りになっている。 その部屋に、はやてとゲンヤそしてギンガの姿があった、目的は先日行われた共同戦線の情報交換を行う為である。 それぞれ情報を交換する中、はやては写真が貼られた資料をゲンヤに渡すと、黙って受け取り目を通す。 写真には後ろ髪を結った茶髪の少女の顔とその少女が持っていた無反動砲が写っており、資料の内容は少女が持っていた銃についてであった。 銃の名は表面上に書かれており、イノーメスカノンという。 解析の結果、命中精度・威力などが非常に高く多種多様な弾丸を撃ち出すことが出来ると、 だがその重さは尋常ではなく、とてもではないが写真に写る少女が持ち運び出来る代物ではないと綴られていた。 その内容に沈黙するゲンヤ、その表情に既に確信にも似た表情で話しかけるはやて。 「やっぱり…彼女達は……」 「あぁ、戦闘機人だ……」 ゲンヤの言葉に俯くギンガ、そしてはやては自分の考え出した答えが正しかったといった表情を見せる。 するとはやては失礼ながらゲンヤの妻、つまりギンガの母の事を調べたと話し始める。 …ゲンヤの妻、クイントは戦闘機人に関する調査を行い、その後原因不明の事故により死亡した。 そしてクイントの意志を引き継いだゲンヤが戦闘機人に関する情報を集めている事を掴んだと話す。 しかし当のゲンヤは自らの仕事が忙しく、中々情報を集められてはいない状況であった。 そこで今回の事件を機に、はやてが代わりに戦闘機人の情報を集めると提案、その為今まで得た情報を引き渡して欲しいと頼み込む。 するとゲンヤは目を閉じ腕を組み考え込む、その後暫くして目を開き、口がゆっくりと動き出す。 「…悪いがそれは出来ねぇな、事は戦闘機人だけの問題じゃあ無いんでな」 ゲンヤの答えに困惑するはやて、事は戦闘機人だけでは無い? …それはどういう事か再度聞いてみるがゲンヤは一切答える事は無かった。 暫く静寂が部屋を包むと呆れた様子でため息を吐くはやて、その顔は諦めに似た様子を表していた。 「…分かりました、戦闘機人の件は諦めます、そん代わり……」 「あぁ、連絡役も兼ねてギンガの機動六課への出向を許可しよう」 機動六課が掴んだ戦闘機人の情報をギンガというパイプラインによってゲンヤに伝える、 その為の出向でもある今回の申し出に応えたゲンヤは、ギンガと共に席を立ち会議室を後にする。 一人会議室に残されたはやては大きくため息を吐くと、流石自分の師匠なだけあって一度決めた事に対してガンとして動かないな…と思うであった。 一方ゲンヤと共に機動六課の通路を歩いていると突然ギンガが質問を投げかける。 「何故はやて二佐の申し出を断ったんです?」 「…クイントと同じ轍を踏ませない為に……だな」 その意味深な言葉に首を傾げるギンガだが、ゲンヤの目は遠く何かを見つめているようであった。 その頃なのははシグナムが運転するワゴン車に同乗していた、その理由は先日保護した少女が眠る聖王医療院に向かう為だ。 そしてシグナムもまた聖王教会に用があるらしく、次いでに乗せて貰っているのだ。 そしてなのはは、ワゴン車をマジマジと観察していると、ふと質問をかける。 「このワゴン車…シグナムさんの車なんですか?」 「あぁ、渋いだろう?」 シグナムの含み笑いにになのはは頬を掻く、話によると聖王教会にいた頃、 食事の配給などの仕事が多くあった為、沢山の荷物を運べるという理由で購入したと話す。 そんなシグナムの話を聞いているうちに聖王医療院に着くと、なのははシグナムと別れの挨拶を交わし医療院へと足を運ぶ。 医療院内ではシャッハが出迎えており、なのはは保護した少女の詳細を聞くとシャッハは快く応える。 保護した少女は人工生命体でフェイトやエリオと同じ境遇であると。 故に現場に残されていた生体ポットの中身の可能性がかなり高く、周りのガジェットが破壊されていた事から危険性があると指摘されていると。 そんな内容を通路を歩きながら聞きつつシャッハと共に少女が眠る部屋へ赴くと、其処はものけの殻であった。 シャッハは驚き開いている窓を覗くと、対象の少女が外へ出ようと走っており、 シャッハは窓から飛び降りるとデバイスを起動させ少女の前を塞ぎヴィンデルシャフトを構える。 少女は目の前に現れたシャッハに驚き、しりもちをつくと――― 「ふ………ふえええぇぇぇぇぇぇん!!!!」 「えっ?…………えぇ!?」 少女の泣き声に思わず戸惑うシャッハ、すると入り口からシャッハを追っていたなのはが姿を現し、少女を慰める。 そして病室を抜け出した理由を聞くと母親を探す為に抜け出したと、ぐずりながら話す少女。 少女は人工生命体である、母親など存在するハズがない、その記憶は元の遺伝子が持っていた記憶なのかもしれない。 しかしそんな素振りを一切見せず、なのはは少女の目線に合わせ見つめる。 「お名前いえるかな?」 「ヴィヴィオ……」 ヴィヴィオはそう名乗ると、なのははヴィヴィオの母親が見つかるまで自分が母親代わりになると約束を交わす。 するとヴィヴィオは、「なのは…ママ?」と恐る恐る口にすると笑みを浮かべ答えるなのは、 そのやりとりが何度も続くとヴィヴィオはすっかり泣き止み、その光景を見て唖然としているシャッハ。 するとシャッハの後ろで聞き慣れた声が響き、振り返ると其処にはアリューゼの姿があった。 「あっアリューゼ!?いつからそこに!?」 「…デバイスを起動させて、そのガキに向けているところからだな」 つまり一部始終見られていた事であり、顔を真っ赤に染めるシャッハに対し呆れた様子を見せるアリューゼであった。 それから数日後、ヴィヴィオはすっかりなのはに懐き、そのまま機動六課で面倒を見る事となった。 だがその代わり定期的に聖王医療院にて検査を行うという条件付きであるが。 そして今日はなのは、フェイト、はやての三人で聖王教会に赴いていた、その理由とはなのはとフェイトに機動六課の真の目的を伝えられる為だ。 三人は教会内に存在する会議室に赴くと三人は敬礼を行う、会議室にはカリムを中心に右の席にクロノが座っており はやてはクロノの隣の席、なのはとフェイトは左の席を順に座ると、クロノは早速説明を始める。 機動六課…いやかつての六課はカリムのレアスキル、プロフェーティン・シュリフテンによってもたらされた預言に描かれた、 ミッド滅亡を阻止する為に組織された部隊で、それは今も変わっていないと話す。 そして預言の内容を二人に告げると沈黙し、沈痛な面持ちを醸し出していた。 「取り敢えず今後は、中つ大地の奉の剣であるエインフェリアと、法の塔である地上本部を壊滅させない事だな」 今回の件でクロノは奉の剣をアインヘリアル計画の事と判断していると、するとはやてが質問を投げ掛けてきた。 「でも…あのエインフェリアって何なん?ただもんとちゃうのは分かるんやけども…」 「ガノッサ提督が説明していただろう、あれは人型デバイスだ」 命令を絶対に従う忠実なる存在、その姿はまさに奉公の剣であると。 そのエインフェリアの量産計画、アインへリアル計画の是非を問う公開意見陳述会が近く執り行われるという。 つまり、事を起こすとすればこの日が絶好ともいえる。 無論、事を起こそうとしている存在とはスカリエッティとレザードであるのは間違いない。 つまりその日こそが世界の命運を分ける日とカリムは考えており、皆もそれに賛同していると。 そして機動六課の真の目的の為に尽力して欲しいと綴ると三人は一斉に敬礼し、会議は終了となった。 それぞれが自分の部隊もしくは仕事場に戻る中、カリムは自分の予言に目を通していた。 一行目に書かれている“歪みの神”もしこれがレザードの事を指すのであれば我々は神と対峙しなければならないのか? だが我々の信仰に神は存在しない、それにあのような傍若無人な存在が神であるハズがない。 そう自分を言い聞かせ不安をぬぐい去ろうとするが、それでも不安は募るばかりのカリムであった。 場所は変わり此処はゆりかご内に存在する生体ポットが並ぶ部屋、その中でルーテシアは一つの生体ポットを見つめる。 生体ポットにはNo.XIと書かれたプレートが掲げられており、ポットの中には紫の長髪の女性が眠っていた。 「お母さん……」 そう一言呟くルーテシア、自分の目的は母親の病気を治し一緒に暮らす事、その為にはNo.XIと刻まれたレリックが必要なのである。 そして母親を助ける為に自分は修羅にも夜叉にもなる、その決意を胸にルーテシアは一つお辞儀をするとその場を後にした。 その頃スカリエッティは管理局に潜伏しているドゥーエと連絡を取っていた。 その理由は地上本部壊滅のタイミングを計る為である。 「つまり公開意見陳述会、この時が最も適しているというのだね」 「はい、ドクター」 モニターに映るドゥーエは頷くとスカリエッティに地上本部のセキュリティ情報を渡す。 確かにドゥーエの言う通りこの機を逃す手はない、それにゆりかごの方もほぼ修復を終えている。 つまりこの日こそ決起する時!…そう考え狂気を含む笑みを浮かべるスカリエッティであった。 一方、自室にてレザードは陳述会の内容に顎に手を当て考え込み、先日の戦闘で現れたエインフェリアの姿と見比べる。 今回の陳述会に出されるエインフェリアは巨大で標準的な魔力を生む動力炉に遠距離砲が配備され、まるで戦車のような姿をしており、まさに質量兵器その物であった。 その量産機とは到底思えない姿に不敵な笑みを浮かべるレザード。 「滑稽な…質量兵器を禁じている管理局が、このような形を取るとは……」 その性能も自分達が造り出したナンバーズとは程遠い存在、寧ろレザードは人型のエインフェリアに興味を持っていた。 彼らの材質は恐らくベリオンの内部に使われている物と同じダマスクス、アーティファクトの一つであるダマスクス製法書によって作成したのだろう。 そしてこの異常なまでの戦闘力、それはまさしく管理局側の戦闘機人と呼ぶに相応しいと言っても過言ではなかった。 スカリエッティは今回の陳述会を機に本格的に計画を始める様子、そして陳述会には必ず機動六課及びエインフェリアを出してくるだろう。 つまりは総力戦、そして自分もまた出ざるは終えないだろう…眼鏡に手を当て真剣な面持ちを浮かべるレザードであった。 その頃セイン・ノーヴェ・ウィンディの三人は今回の計画の際に進むであろう道を知る為、町に繰り出していた。 …尤もそれは名目で本当はある目的のため、町を練り歩いているのである。 三人はスーツに備え付けられている私服モードを利用し、ノーヴェは紺のGパンに白い半袖のシャツ、ウィンディは膝ほどの深緑の半ズボンに赤いTシャツ、 そしてセインは黒いダボッとした長ズボンに白いパーカー、更に黒いキャップとサングラスを掛けていた。 セインは先日の戦闘にて顔が割れている可能性がある為の処置である。 それでも街に繰り出したい理由は、町の中に点在する公園で売られているアイスを手に入れる為、それだけの為である。 そして三人は公園に存在するアイス屋へ赴くと、ウィンディはストロベリー、ノーヴェはオレンジとバニラのダブル、 セインに至ってはチョコミントにチョコチップ、更にマーブルにトッピングチョコをまぶした物を注文する。 「…セイン、そんなに頼んで大丈夫なのかよ?」 「知らないのノーヴェ?こう言うのは別腹って言うのよ」 「なるほど…セイン姉は腹が二つ有る訳か」 「……そんな訳無いじゃないッスか」 ノーヴェの天然さに呆れるウィンディ、恐らく基礎となる遺伝子がそれをさせるのだろう。 そんな事を考えるも三人はそれぞれのアイスを手にし、ベンチに座ると食べ始める、 セインに至っては、がっついて食べており、その光景に頬を掻く二人。 そしてアイスを食べ終えるとベンチから立ち公園を離れ、当初の目的を遂行する為、行動を始める。 そして最短ルートを調べ、そのルートを進みセインの目標の地である地上本部へ辿り着く。 そして見上げる三人、この地を今度の戦闘で壊滅させてみせる、そう意気込む三人であった。 それから数日後、此処地上本部の近くに存在するホテル内では、翌日に行われる公開意見陳述会の準備に追われていた。 そして表の中庭にはアインへリアル計画によって創り出されたエインフェリアが三体並んでおり、 その大きさは十メートル以上にも及ぶ、どうやら動力炉の大きさに合わせて造られているらしい。 そして警備には本局の局員数十名、会場内は機動六課のなのはとフェイト、そして地上本部の局員の手によって行われ 残りの機動六課はホテル周辺を警備する事が決定していた。 そしてなのはとフェイトは一足早く会場入りする為、フェイトは車の用意をしており、 隊舎入口にはフォワード陣とヴィヴィオが見送る為に並んでいる、するとなのは達はスバルとエリオを呼び寄せる。 「スバル……レイジングハートの事お願いしていい?」 「私も…エリオ、バルディッシュの事お願いね」 会場ではデバイスを持って入ることは出来ない、その為最も信頼できる人物、スバル達に持ってて欲しいと頼むと快く応じる。 そしてなのははヴィヴィオに目線を合わせ、優しく話しかける。 「それじゃあ明日までには帰ってくるから、ちゃんと病院に行くんだよ?」 「ぜったいに?……やくそくだよ、なのはママ」 ヴィヴィオの問い掛けに力強く頷くと指切りをするなのは、そしてその光景に自分の過去が重なり暗い顔を見せるティアナ、 …かつて自分の兄は指切りした後、二度と戻ってくる事は無かった…… …だがなのはさんに限ってそんな事が起きるハズが無い!そう自分の考えを自重するように拳を握るティアナ。 その後なのは達を見送ったヴィヴィオは定期検査の為、ヴァイスが操縦するヘリで一路聖王医療院に向かうのであった。 翌日、他のメンバーもまたホテルへと赴き厳重な警備の中、公開意見陳述会は開始される。 陳述会ではガノッサがアインへリアル計画の必要性を熱く語っており、状況は賛成の方に傾きつつある中、レジアスの姿は見受けられなかった。 そして、陳述会会場から数十キロ離れた先にナンバーズとルーテシアにゼスト、 そしてベリオンがそれぞれの役割を果たす為の配置についており、それを確認したクアットロはスカリエッティと連絡を取る。 「ドクター、此方は配置は完了しましたぁ」 「ご苦労様…では始めるとしようか……」 スカリエッティの合図の下、今此処に“ラグナログ”計画は発動したのである…… 前へ 目次へ 次へ オマケへ
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ロストロギアとして回収された可愛いコックさん人形入りの小瓶はすぐさま管理局内の ロストロギア封引用特殊倉庫に収められるわけだが、その特殊倉庫に侵入する者がいた。 「管理局の連中も結構ずさんなんだな~。清掃会社の格好するだけであっさり信用しやがったぜ。」 それは管理局内に収められるロストロギアを盗み出して金儲けしようと企む 名も無きコソドロ達であった。管理局潜入の為に清掃会社の人間に成りすました彼等は ロストロギア封引用特殊倉庫にまで潜入していたのである。 「よし! とりあえずコレにしようぜ。」 「え? こんなショボそうなのが良いのか!?」 「分かって無いな~。こういう一見ショボそうなのが実は凄かったりするもんなんだよ。」 名も無きコソドロが盗み出そうとしたロストロギアこそ、なのはとユーノが先程回収したばかりの 可愛いコックさん人形入りの小瓶だった。そして気付かれないようにこっそりと 特殊倉庫から脱出する名も無きコソドロ達であったが、そこでたまたま近くを通りかかった なのはに発見されてしまった。 「そこ! 何をやってるの!?」 「やべ! 見付かった!」 「しかもあれ白い悪魔じゃねーか!」 名も無きコソドロ達は大慌てで逃げ出そうとするが、その時の弾みで小瓶のフタが開いてしまった。 「!?」 それがいけなかった…。小瓶のフタが開いた瞬間…その小瓶の中に封印されていたデビルが 解き放たれてしまったのである。そしてデビルは何という事かなのはに憑依していた。 「わぁぁ! このロストロギアから飛び出した変なのが白い悪魔に乗り移った!」 『白い悪魔…か…この女は元々そう言われていたのか…。』 「!?」 名も無きコソドロ達は青ざめた。デビルに憑依された直後から、なのはの声が 本来の物では無い地の底から響いてきそうな低い物に変わっていたのである。 それだけではない。なのはの背中からは悪魔を思わせるの漆黒の翼が生え、 頭からは鬼の様な角が…口には野獣の様な鋭い牙が…両手には鋭い爪が伸びると言う おぞましき姿に変質したのである。 『フハハハ! 白い悪魔とは良い得て妙だな! 確かにこの女の体は素晴らしい! 力が…力が溢れる…フハハハハハ!!』 「うわぁぁぁぁ!! 白い悪魔が本物の悪魔になったぁぁ!!」 恐怖の余り腰が抜けてしまったコソロドであったが、デビルに憑かれたなのは… いや、デビルなのはは右手を軽く上げ、正面を指差した。 その直後である、デビルなのはの指先から極太の魔砲が放たれ、正面の分厚い壁を 容易く貫き、さらにその向こう側まで完全に吹き飛ばされていた。 『フハハハ! 素晴らしい! 素晴らしい力だ! これならば…奴に復讐する事が出来るぞ!』 「アワワワワワ…。」 恐怖が限界に達して完全に失禁していたコソドロを尻目にデビルなのはは壁に空いた 風穴を通って何処へ飛び去ってしまった。 一方、管理局内では大パニックになっていた。 「一体何が起こったんだ!?」 「ロストロギアを盗み出そうとした不法侵入者を高町隊員が取り押さえようと した所、そのロストロギアに封印されていたアストラル生命体が解放されてしまい、 高町隊員の身体を乗っ取ってしまった物だと思われます!」 「なんだって!?」 「本日高町隊員が回収して来たロストロギアに封印されていたアストラル生命体は 乗っ取った生命体を怪物へ変貌させ操る事が出来る様子です!」 「何とかして取り押さえろ!」 「既にやっていますが…押されています!」 「何!?」 「構うな! 撃てぇ!」 管理局の武装隊が一斉にデビルなのはに向けて魔砲を発射した。しかし…全く通用していない。 『フフフ…無駄だ…。次はこちらの番だな…。デビルレイジングハート!』 デビルなのはがデビルの力によってグロテスクに変質したレイジングハート 「デビルレイジングハート」を振り上げた。 『デビルディバインバスター!』 「うわぁぁぁぁぁぁ!!」 デビルレイジングハートから放たれる漆黒の魔砲はあっと言う間に 武装隊を飲み込み、全滅させた。本来のなのはの魔砲はピンク色だが、 今は違う。デビルの力によって魔砲の色もどす黒く変質していたのである。 そしてデビルなのはが向かう先にはアースラがあった。 『なるほど…この艦は次元を飛び越えて様々な世界を行き来する事が出来るのか… 面白いな…では…この艦も使わせてもらう事にしよう…。』 デビルなのはがアースラに手を当てた直後、アースラにもデビルの力が送り込まれ グロテスクに変質。デビルアースラとなってしまったのである。 『さあ行け! これで元の世界に戻るのだ! そして…この力で奴に…クロに復讐する!』 ユーノとフェイトが駆け付けた頃には既に管理局はデビルなのはによって破壊され、 アースラも奪われてしまった後だった。 「な…なんて事…。」 「ひ…酷い…。なのは…何故こんな事を…。」 「いや違う…なのは本人に非は無い。なのははロストロギア内に封印されていた アストラル生命体に身体を乗っ取られているだけなんだ。」 「え?」 管理局の惨状に呆然とするユーノとフェイトの前にクロノが現れ、そしてさり気なく あの騒ぎの中でも生き延びていたが、結局逮捕された名も無きコソドロが突き出される。 「悪いのはこいつ等だ。こいつ等がロストロギアを盗み出そうとした為に あのロストロギアに封印されていたアストラル生命体が解き放たれてしまった。」 「え!? アストラル生命体!?」 「ああ。しかもあのアストラル生命体の力は想像以上の物だった…。 生物無生物に関係無く、物質世界のあらゆる存在を乗っ取る事が出来る様だ。 現になのは本人だけじゃない、彼女のレイジングハートや挙句の果てにはアースラさえも 奴の力によって乗っ取られ、おぞましい姿に変質させられてしまった…。」 「レイジングハートやアースラまで!?」 「それで…なのはを乗っ取ったアストラル生命体は…。」 「アースラを乗っ取った後…あのロストロギアのあった元の世界へ行ってしまった。 今動ける他の次元航行艦を探しているが、一刻も早く奴をなんとかしないと大変な事になる。」 「なのは…。」 ユーノもフェイトもなのはの身を案じていた…。 前へ 目次へ 次へ
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仮面ライダーリリカル電王sts第八話 「白き魔王と紫の狂人」 ここは機動6課訓練用フィールド。普段は前線フォワード部隊の訓練に使われるスペース。しかし、今はその場を闘気、いや殺気が支配していた。 放つは中央にたたずむ一組の男女。 片や、エースオブエースと呼ばれし管理局最強の魔導師、白き魔王高町なのは。 片や、狂わんばかりの殺気に包まれし時を駆ける仮面の戦士。紫の狂人、仮面ライダー電王Gunform。 見守りし者は皆、動かない。いや、動けない。それほどの殺気に包まれていた。 もはや、この場に言葉は不用。始まるは全力全開の真剣勝負。 先に仕掛けたのは電王の方であった。デンガッシャーから連続して放たれるエネルギー弾。それは狙いなどつけていない乱射であった。 しかし乱射は時に効果的である。それは、空中軌道の制限。だが、なのはには通用しなかった。 片手を上げると障壁で全て受け止めたのだ。 「へぇ、やるじゃん」 「でも、これからだから。お話、聞いてもらうよ」 「じゃあさ、これならどお?」 電王がそう言った瞬間その周囲に六発ほどの魔力弾が現れたのだ。その魔力弾を見た時、なのはは少し驚いた。それは、よく知る者の魔法。 「これって…」 「そうさ、これはティアナお姉ちゃんの魔法!いくよ、クロスファイヤァーシュート!」 放たれる魔力弾。そろはもの凄い誘導弾。なのははその凄さを知っている。 だからこそ正面から受けるのだ。なのはの周りに十発ほどの魔力弾が現れる。 「アクセルシューター、シュート!」 二色の誘導弾は互いを撃ち落とし、残った物も次々と撃ち落とされた。 爆煙で視界が封じられるが、煙が晴れるとこちらに銃口を向ける電王。 収束する魔力。放たれる魔法。 「ファントムゥ、ブレイザァー!」 「グッ、まだ!」 避けるなのは、追う電王。お互いに退かない、いや退くわけにはいかない訳がある。 なのはは、自身の全力を叩き込むことにした。 「いくよ、レイジングハート…」 『Exceed mode.』 その瞬間、お互いに示し合わせた様に集まっていく力。 あるのは、全力での砲撃勝負のみ! 「最後いくよいい?」 「これが終わったらお話聞かせて…」 「答えは聞いてない」 互いにレイジングハートとデンガッシャーを向けるなのはと電王。パスは既にセタッチされていた。 『full charge』 「ディバィィン…」 「いけぇぇ!」 「バスタァァー!」 桜色の閃光と紫の光弾がぶつかりあう。単純な力の勝負。 しかしそれは長くは続かなかった…。徐々に光弾は閃光に呑まれ消え去った。 「ごめん…、ティアナお姉ちゃん。倒せないや」 「リュウタロスゥゥ!」 ドギャアアァァ 閃光に包まれる中、電王は呟き、ティアナは叫んだ。 模擬戦が終わり、ここはラウンジ。R良太郎は、只一人、落ち込んでいた。そこに近づく影が一人。 「落ち込んでんの?」 「ティアナお姉ちゃん…」 「な~んで、そこまで落ち込んでの。相手はあのなのはさんよ?勝てる方が少ないわ」 「だって、ティアナお姉ちゃんに酷いことしたんでしょ?何で、そんなに」 ムスッ、としてるR良太郎を見て、ティアナは少し前の話をした。 「私ね、以前無茶な特訓をして、なのはさんに怒られたんだ。自分の命も考えないような無茶な特訓」 「何で、ティアナお姉ちゃんはそんなこと」 「力が欲しかったのかな。私にはね、兄さんがいたの…」 語られたのはティアナが力を求めた理由。 ティアナの兄、ティーダ・ランスターは管理局に所属する魔導師であった。 ある時、彼は逃走中の違法魔導師を追跡していたところ、殉職したのだ。ティアナは悲しんだ。 しかし、上司の放った一言のせいで彼の死は不名誉な死となってしまったのだった。 それからだ。ティアナが力を求めたのは。 ランスターの魔法を認めさせる。その為にティアナは力を求めた。 そして、スバルと出会い機動6課へと配属された。 しかし、ティアナは、その中で自分の才能のなさに劣等感を覚えてしまった。強くなった事にも気付かずに…。 「そのせいか、無茶苦茶な特訓をしちゃったんだ。で、なのはさんに撃墜されて…」 「じゃあ僕が見たのは…」 「そっ。その後、なのはさんに反抗して、でもシャーリーさんが教えてくれたんだ、なのはさんの過去」 その過去とは、なのはが自らの無茶のせいで撃墜され、大ケガを負ったということ。 なのはは自分の教え子には無茶をして欲しくなかったから実力のつく教導をしていたことを。 「だから、私は恨んでない。逆に感謝してるかもしれない。だから大丈夫だよ、リュウタロス」 そう言って、ティアナは優しく微笑んだ。 「ティアナお姉ちゃん!」 「うわっ」 R良太郎はいきなりティアナに抱きついた。そして、こう呟いた。 「ごめんね、ティアナお姉ちゃん…。ごめんね…」 「大丈夫、大丈夫だから」 「グスッ、ウワァァァン!ウワァァァン!」 「ホラホラ、ちょっと泣かないの」 ティアナの胸に顔を埋めながら、泣きじゃくるR良太郎。それを、優しく慰めるティアナ。 それはさながら、姉弟のようであった。その様子を見守る影が二つ。それは、なのはとスバルであった。 「もう心配ないみたい」 「そうですね。それにしても、ティア、すっかりお姉ちゃんですね」 「二人共、そこで見てないでこっちに来て下さい。」 「やっぱ、バレてた」 「バレバレ、あんたがいるところが分かんない方がおかしいわ」 「ムウゥ、ティアのイジワル」 「あの、その…」 「いいよ。私も、やり方が悪かったの分かってるし」 「ごめんなさい…。あと、えっとお願いしてもいい?」 「うん、なに?」 「なのはさんの事もお姉ちゃんて呼んで良いかな」 「え、えぇぇ!」 「良いじゃないですか!ねっ!」 「そうかなぁ。じゃあいいよ」 「わ~い、やったぁ!なのはお姉ちゃ~ん!」 「ヒャアァッ!」 なのはに抱きつくR良太郎。 心はリュウタロスでも身体は十代後半の少年。さすがのなのはも、少し戸惑っていた。 「エースオブエースも形無しやな」 「にゃはは、はやてちゃ~ん」 その場に通りかかったはやてがなのはをおちょくっていた。 「ティアナお姉ちゃんも!」 「ちょ、ちょっとやめなさいって!」 「お姉ちゃん達、二人共だ~い好き!」 「にゃはは…」 ハニカムような二人の笑顔と眩しいばかりに微笑むR良太郎。 しかし、平穏な時は長くは続かなかった。 「フッ、呑気なもんだな」 ラウンジが見える林の中、右手のライフルを構えているのは、以前Rティアナに倒されたオウルイマジン改と同型の改造種オウルイマジンR。 「ここで消えてもらうぞ、電王!」 スコープの先には、R良太郎の姿が。 オウルイマジンRが狙っている時、ティアナは林の一点が光るのが見えたのだった。 「リュウタロス、危ない!」 そう言って自らの身を投げ出すティアナ。 そして、 『チュンッ!』 「あ、クッ!」 「ティアナお姉ちゃん!」 「ティアナ!」 「ティア?ティアァァ!」 ティアナはR良太郎を庇い撃たれてしまったのだ。 「ティア、ティア!お願いしっかりして、目を開けて!」 「早く、誰か、シャマルを呼んで来て!早く!」 「お姉ちゃん、ねぇしっかりしてよティアナお姉ちゃん!」 「仕留め損なったかまぁいい、全員死ね!」 林から飛び立ち目の前に着地し、宣言したオウルイマジンR。 「許さない、許さない!」 「待って、スバル」 「何で、止めるんですか、なのはさん!」 「お願い、スバルちゃんは下がっててよ…」 「リュウタロスも!何で!」 「お願い!」 納得しない様子で下がるスバル。 なのはとR良太郎はオウルイマジンRの元へと歩き始めた。 「許せない、ティアナにこんな酷いことを」 「許さない、ティアナお姉ちゃんを苦しめたから!」 なのははレイジングハート、R良太郎はベルトを腰にセットしフォームスイッチを押した。 オウルイマジンRは恐れた。その後ろ姿には白と紫の二匹の龍の姿があったのだから。 「変身…」 「セットアップ…」 瞬時に変身した二人はレイジングハートとデンガッシャーガンモードを向けた。 そして、二人同時にその言葉を放った。 『お前、倒すけどいい?』 「な、なにを!」 『答えは聞いてないけど』 次回、ミッドチルダに二つの龍と蒼き騎士が舞う。 次回予告 スバル「倒れてしまったティア。怒りに震える私達」 はやて「全ての怒りを乗せて今、二匹の龍が舞う」 スバル「次回、仮面ライダーリリカル電王sts第九話「ドラゴンズ・ダンス」 はやて「お楽しみに…」 なのは 電王『倒すけどいい?答えは聞いてないけど』 戻る 目次へ 次へ
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