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リリカル魂 クロス元:メダロット 最終更新:07/12/27 プロローグ 第一話「人?天使?空に舞う白い子」 第二話「魔法と管理局」 第三話「ハラオウン家へ(前編)」 第四話「ハラオウン家(後編)」 第五話 「ダベリ DE 八神家」 第六話 「OH! お買い物」 拍手感想レス :どこでも相変わらずなイッキとメタビーと、なのは達との絡みが最高です。 :復活、おめでとうございます、頑張って下さい。 :異世界ロボトルは有るのでしょうか? TOPページへ このページの先頭へ
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それにしても……。 「提督、いくら連れの『あの人』がいたからって、あんな無防備なことで良いのかな」 「なのはさん?」 「いえ、ヤン提督って、結構有名な人ですから、色々狙う人たちがいて……」 「へえ、何となく察してはいましたが、……成る程」 相づちをうつクロ。 「だから、本当は護衛の人がついてなきゃいけないんだけど……」 訝しむなのは。 《マスター》 「何、レイジングハート」 《上空から通信です》 「えッ、上から? 誰だろう……」 《マスターもよく知っている存在です。IFFの確認も完了しています》 「……解った、読んでみて」 RHは、その謎の通信文を読み上げた。 〈This is B‐1 Wonder is not verified within radius 200 meters Mission CMPL RTB〉 「……成る程、ね」 「なのはさん?」 「どうやら、頼もしい護衛が、遙か上空にもいたみたいですね」 そうして、なのはは空を見上げ、肩をすくめた。 「ちょっと気まぐれな天かける妖精の女王、『メイヴ』がね」 「へえ、妖精の女王様の加護、ですか。少々気まぐれでも、それは結構頼もしい護衛かも知れませんね……」 そう言って、帽子の鍔をめくりつつ、クロも見上げる。 あの一筋の飛行機雲は、その形を徐々に崩し始めていた――。 「お疲れ様です、深井大尉」 『棺担ぎのクロ。リリカル旅話』 インターミッション1・CMPL 戻る 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ クロス元:戦国BASARA ※完結 最終更新 08/01/01 プロローグ 第一話「忠勝、ミットチルダにて起動」 第二話「忠勝と機動六課」 第三話「忠勝、訓練をする。」 第四話「忠勝と予言、そして鬼」 第五話「聖夜の夜、そして風魔」 第六話「その日、機動六課。そして崩れ落ちる城(前編)」 第七話「その日、機動六課。そして崩れ落ちる城(後編)」 第八話「戦国最強がいなくなった世界/戦国最強が戻ってきた世界」 第九話「立ち上がった白銀の城」 第十話「龍と雷光」 第十一話「天覇絶槍」 第十二話「starlight and steel」 第十三話「第六天魔王VS究極戦国最強」 最終話「それから」 魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER クロス元:モンスターハンター 最終更新:08/03/03 第一話「狩人」 第二話「再会」 第三話「異変」 第四話「赤鳥」 第五話「水竜」 第六話「過去」 第七話「風翔龍」 第八話「休暇」 第九話「対面」 第十話「鎧竜」 第十一話「新生」 第十二話「白影竜」 第十三話「黒龍伝説」 第十四話「挑戦」 第十五話「轟」 第十六話「危機」 拍手感想レス :島津出るかなと期待したがでなかったので残念 個人の好みもあるから仕方ないけど :ドクターが凄く格好いい TOPページへ このページの先頭へ
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魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ クロス元:戦国BASARA ※完結 最終更新 08/01/01 プロローグ 第一話「忠勝、ミットチルダにて起動」 第二話「忠勝と機動六課」 第三話「忠勝、訓練をする。」 第四話「忠勝と予言、そして鬼」 第五話「聖夜の夜、そして風魔」 第六話「その日、機動六課。そして崩れ落ちる城(前編)」 第七話「その日、機動六課。そして崩れ落ちる城(後編)」 第八話「戦国最強がいなくなった世界/戦国最強が戻ってきた世界」 第九話「立ち上がった白銀の城」 第十話「龍と雷光」 第十一話「天覇絶槍」 第十二話「starlight and steel」 第十三話「第六天魔王VS究極戦国最強」 最終話「それから」 魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER クロス元:モンスターハンター 最終更新:08/03/03 第一話「狩人」 第二話「再会」 第三話「異変」 第四話「赤鳥」 第五話「水竜」 第六話「過去」 第七話「風翔龍」 第八話「休暇」 第九話「対面」 第十話「鎧竜」 第十一話「新生」 第十二話「白影竜」 第十三話「黒龍伝説」 第十四話「挑戦」 第十五話「轟」 第十六話「危機」 拍手感想レス :島津出るかなと期待したがでなかったので残念 個人の好みもあるから仕方ないけど :ドクターが凄く格好いい TOPページへ このページの先頭へ
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ルイズ・フランソワーズ ハルゲニアという世界の貴族の少女。 トリステイン王国の名門”ヴァリエール家”の出であるが、魔法の才能なし、「ゼロ」の二つ名を与えられた少女。 本人はプライドがとにかく高く、キュルケたちとはよく喧嘩している。 深井零 フェアリィ空軍特殊戦(SAF-V)の大尉。 戦闘中に愛機であるメイヴ”雪風”とともにハルゲニアにやってきた男。 なかなかの日本美人で容貌を動物にたとえると黒猫に近い。 ナイーブな戦隊長。 テレサ・テスタロッサ ”ミスリル”作戦部”トゥアハー・デ・ダナン”の戦隊長であり、艦長。 階級は大佐。 頭脳は天才だが、運動はかなりニガテで、わずか数センチの段差で躓いてしまうほど。 彼女が天才なのは彼女の能力によるもの。 愛称はテッサ。 雪風 フェアリィ空軍特殊戦の人工知能。 元々は”スーパーシルフ”(シルフィード)に搭載されていたが、スーパーシルフ撃墜により、新機体”メイヴ”へ体を移し変える。 その時、零も射出している。 シン・アスカ ザフト軍ミネルバ所属のMS、”デスティニー”のパイロット。 かなりの馬鹿で自身の感情による命令違反が多い。 真っ赤な赤い瞳の少年。 ダーナ ”トゥアハー・デ・ダナン”に搭載されている人工知能。 人工衛星等さまざまな場所にハッキングを行ったりしている。 かなり高度なAIでプログラミング語源”ベイダ”を主に使用するテスタロッサ大佐の命令により従う。 高町なのは 時空管理局機動六課所属の魔導師。 教導官でもある。 日本の海鳴市出身で元々はごく平凡な小学生であったが、ユーノ・スクライア、そしてデバイス”レイジングハート”との出会いにより魔導師となる。 主に砲撃魔法を使用している。 二つ名は「管理局の白い悪魔」。 フェイト・テスタロッサ・ハラオウン 時空管理局機動六課所属の魔導師。 執務官でもある。 十年前には海鳴市に散らばった”ジュエルシード”を母プレシアの命により集めていた犯罪者。 使用デバイスは”バルディッシュ”。 接近戦を主に使用する。 相良宗介 ざんばらに切った黒髪にへの字の口をしている少年。 過去に飛行機墜落事故に巻き込まれた時からずっと兵士として生活してきたため平和な国でのルールがさっぱりわかっていない。 学校内などに手榴弾や拳銃等、普通なら逮捕されるであろう物を持ち込んでいる。 また”ミスリル”のトゥアハー・デ・ダナンのSRT(特別対応班)の所属でもあるエリート。 人工知能”アル”のお喋り癖に呆れている様子。 ”レーバテイン”のオペレータ。 メリッサ・マオ トゥアハー・デ・ダナンSRT所属の中尉。 釣り目のベリーショートの容貌。 零と同じく動物にたとえるなら黒猫。 何かと悪運の強いM9オペレータ。 コールサインは”ウルズ2” クルツ・ウェーバー トゥアハー・デ・ダナンSRT所属の曹長。 コールサインは”ウルズ6”。 宗介、マオとトリオを組んでよく戦闘に出る狙撃手。 狙撃に関しては天才だが格闘等は平凡。 金髪碧眼の美男子だが喋るとボロが出る。 ベルファンガン・クルーゾー トゥアハー・デ・ダナンSRTの部隊長。 階級は大尉。 愛機は黒いM9”ファルケ”。 殺された元SRT部隊長の後輩でもある。 格闘術に関しては右に出るものはいない。 レイフォン・アルセイフ 自立移動都市”ツェルニ”、第十七小隊所属。 槍殻都市グレンダンのエリートである”天剣授受者”であったがある騒ぎで天剣を剥奪され学園都市”ツェルニ”に移り住んだ少年。 頸の使用や剣術など、トップクラス。 一般教養科から武芸科に無理矢理転科させられた。 ニーナ・アントーク ”ツェルニ”第十七小隊隊長。 武芸科の3年生。 2年前の”武芸大会”でツェルニがみっともない負け方をしたのがきっかけでもと居た隊をやめ、小隊を作った頑張りやさん。 少女ながらに重いクロムダイトの鉄瓶を振り回す。 フェリ・ロス ツェルニ十七小隊所属の念威操者。 髪やまゆ毛から念威の光を飛ばすほど強い念威能力を持っている。 無理矢理武芸科に転科させた生徒会長の兄を恨んでいる。 感情を顔に出すのがニガテ。 ハーレイ・サットン 十七小隊のダイトメカニック。
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アンゼロット宮殿:ティアナ・ランスター アンゼロット宮殿からの出発を1時間後と定めた機動六課はそれぞれが最後の準備を始めていた。 ティアナもカートリッジの残り弾数を数えている。 絶滅社との戦闘が終わった後でも十分な量が残っていた。 多め、というよりも多すぎに持ってきておいて正解だった。 クラウディアのスタッフに無理を行って規定の1.5倍も持ってきておいたのだ。 おかげでスバルのカートリッジも不安はないようだ。 灯はどうしているのだろう。 隣を見ると、まだバラバラのガンナーズブルームが置かれていた。 なのはを助けた後、分解してしまったガンナーズムルームはさっきまで灯の手で修理されようとしていた。 だが、修理していたはずの灯の姿が見えない。 「……ねえ」 その灯の声がいきなり真後ろから聞こえた。 突然の声に心臓が体ごとびくつく。 「お、脅かさないでよ」 胸に手を当てると心臓がどきどきしているのがよくわかる。 「で、どうしたの?灯」 ティアナは会ってからそんなには経っていないのに、灯と名前を呼び合えるほどなじんできていた。 スバルも同じようで、なのはに注意されるまで灯がガンナーズブルームを修理する様子をじっと興味深げに見ていた。 「……八神部隊長の事が聞きたい」 灯は前と同じように表情の変化が乏しい。 それでも、互いに警戒しあっていたときとは、どことなく違うのは気のせいでないとティアナは感じていた。 「八神部隊長の事?」 灯が小さくうなずく。 「……リィンというのがあると八神部隊長は強くなるの?」 ティアナは何故、灯がリィンの名前を知っているのかわからなかったが、すぐに悩むようなことではないのに気づいた。 柊蓮司を説得──と言っていいのかわらないが──した後で、はやてが作戦を提案した。 そこでなのはとフェイトがリィンがいないことに不安を覚え、はやてと議論していたのである。 アニエス・バートンはその眷属の蝗が食べたものを自らの力をする。 戦闘中、その力によりアニエス・バートンが強化され、また回復することは防がなければならない。 そのため、はやては自分を結界の中心にある黒いドーム周辺の蝗と戦う役割に配置していた。 無数の蝗と戦うのは広域・遠隔魔法を得意とするはやてが最も適している。 「うん。リイン曹長は八神部隊長のデバイスでもあるの。リイン曹長とユニゾンすると八神部隊長は単独で戦うよりもずっと強くなるわ」 蝗と実際に戦ったフェイトは、はやてが単独で戦った時の広域・遠隔魔法の命中精度と魔力では危険ではないかと言っていた。 「……何故、一緒にこなかったの?」 「私たちが帰る時のため。八神部隊長とリィン曹長のつながりが道標になるの」 それでもはやては単独で蝗の群れと戦うことを選んだ。 他に代わりはいない。砲撃魔導師と呼ばれるなのはでさえ、蝗の群れに対しては点と言っていい程度の攻撃しかできない。 それに、魔王2人と戦うための戦力を蝗と戦うために裂くことは避けたかった。 「せめてクラウディアとリアルタイム通信ができればいいんだけど」 命中精度ならクラウディアからのオペレートによって上昇が見込める。 だが、クラウディアと冗長性を持たせた圧縮通信でしかデータのやりとりができない今の状況ではそれも不可能である。 ──他に方法はないの。 ティアナは改めて考える。 副隊長達、ヴォルケンリッターがいれば・・・・・・。 これも無理だ。クラウディアのアルカンシェルの修理はまだできていない。 仮に穴を開けられたとしても、時間がない。 アニエス・バートンが徐々に力を蓄えている今、残り時間は貴重だ。 世界結界に開いた出口とアニエス・バートンの結界の位置は合流するには離れすぎている。 「……そう」 考え込むティアナにその一言を残し、灯は横顔を向けて歩き出す。 「ちょっと、どこに行くのよ」 灯は首だけティアナに向けて両足を揃えて立ち止まった。 「……武器を用意してくる」 ティアナは隣に置きっぱなしのガンナーズブルームを見た。 あそこまでバラバラでは新しいものを用意した方がいいかもしれない。 「手伝おうか?」 灯は首だけを横に向けた姿勢のまま動かない。 しばらくして、灯は唐突にも思えるタイミングで首を縦に動かした。 「行きましょう、案内して」 ティアナはクロスミラージュをカード状に戻し、ポケットに入れながら立ち上がった。 「あ、待って」 スバルも机と椅子をがたがた言わせながら立ち上がる。 高級そうな椅子と机が傷まないかとティアナは少し気になった。 「あたしも行く」 「私も行こうかな。灯さんにまだお礼できてないし」 なのはまで椅子を引いている。 「……来て」 少し多めになった手助けを見て、灯は一言だけつぶやくように言った。 アンゼロット宮殿:ティアナ・ランスター ティアナ達が案内されたのは宮殿の地下だった。 そこには地上の優美な城とはかけ離れた、いかにも倉庫然としている無骨で頑丈そうな扉が並んでいる。 灯が立ち止まったのは、その中でも最も良く使われた形跡のある「ウィッチブルーム」のプレートのつけられた部屋だった。 重い扉の中は真っ暗であったが、手探りで見つけたスイッチを入れると天井の蛍光灯が部屋を照らしてくれた。 中には細長い棒状と形容したらいいようなものが幾つも並んでいる。 初めて見たならばそれらの用途は全くわからなかっただろうが、灯のガンナーズブルームを見た後ならそれらがファー・ジ・アースの航空兵器の一種であることがわかる。 どことなくガンナーズブルームに似ている所があるからだ。 「ねえ、灯。これって、一体どう言うものなの?」 その質問に灯が答えるのには少し時間がかかった。 「……魔法の箒」 「は?」「え?」 予想外の答えにティアナとスバルは口を開ける。 それを答え方がわからなかった仕草だと判断した灯はよりわかりやすく答えた。 「……空飛ぶ魔法の箒」 「って、なんで箒なのよ」 「……デッキブラシや掃除機の方がいい?」 「なんで、清掃用品ばかりなのよ。そうじゃなくて、これが箒だとは思えないって事」 それを聞いた灯は手近にあったガンナーズブルームを持ち上げる。 そして、オプションとプレートの貼られた棚から取り出したものをガンナーズブルームに取り付けた。 次の瞬間、灯の背の二倍以上もあったガンナーズブルームは竹箒に姿を変えていた。 灯はそれが当然のことのように床を掃き始めた。 「……掃ける」 「わ、すごいよティア。細かい埃までちゃんと掃けてる!」 「スバル、感動するところが違うと思うわ」 灯は別のパーツをこめかみを押さえるティアナに見せた。 「……モップもある」 「そ、そう」 ティアナは納得する機会を後にとっておくことにした。 ファー・ジ・アースの魔法文明や魔法文化に触れるカルチャーショックは楽しそうではあるが、今は別のことを急ぐべきだ。 「で、それでいいの?」 竹箒に変化するオプションを外したガンナーズブルームは灯が使っていた物と同じ型に見えた。 灯は仕草だけでティアナの言葉を否定すると、倉庫のさらに奥に足を進めた。 アンゼロット宮殿:ティアナ・ランスター 倉庫の最奥部のガラスケースに厳重におさめられたウィッチブルームは他と一線を画していた。 不思議な機能美を感じさせるその姿に、ティアナは思わず感嘆の声を上げた。 「これって」 未だため息が止まらないティアナの目の前で灯は右手を振り上げる。 「……エンジェルシード」 言葉と同時に腰の入った突きをガラスケースに一撃。 粉々に砕けたガラスが澄んではいるが不快な音を立てて地面に落ちる。 「い、いいの?」 「……いいの。いつでも使っていいから」 灯は枠組みだけになったケースに両腕を突っ込み、固定具を引きちぎりながらエンジェルシードを引っ張り出す。 「……持ってて」 エンジェルシードは呆けているティアナに投げ渡される。 「待ってよ!」 エンジェルシードもガンナーズブルーム同様に長大なウィッチブルームだ。 ティアナの両手にその重みがのしかかる、と思ったがそれは意外に軽かった。 むしろ予想外の軽さに落としそうになる。 その間に灯はガラスケース横にあるに専用オプションと書かれた引き出しを蹴りつけ、鍵をたたき壊す。 「ほ、ホントにいいのかな」 あはは、と笑うスバルにはまた長大なものが投げ渡される。 「わ、わわわ。これ、なに?」 「……超ロングレンジライフル」 さらに棚からコンテナと、何かラベルの貼った箱を取り出した灯はその二つを月衣に入れながらきょろきょろ周りを見る。 「……なのはは?」 「あれ?そういえば……なのはさん、なのはさん」 倉庫に入るまでは確かになのはは一緒にいた。 スバルの呼びかけにも、なのはの返事はなかった。 アンゼロット宮殿:高町なのは 倉庫の中でそれを見たなのはは足を止めたきり動けなくなってしまった。 幼かった頃のあの出来事が思い出される。 ちょっとした魔法を使えるようになっただけで飛び上がって喜び、空を飛べると聞いてはしゃいだあの頃のことが。 あの頃の魔法をうまく使えるようになりたいという夢はかなっていたが、1つだけかなっていない夢があった。 ほとんど忘れていた夢の具現を見たなのははそれから目を離せなくなっていたのだ。 「あ、なのはさん。何してるんですか」 スバルが少し頬をふくらませている。 後ろを向いたスバルが手を振ると、灯とティアナも追いついてきた。 「こ、これって」 なのはは少し声をかすれさせ、それを指さした。 灯はそれを覗き込む。 「……ウィッチブルーム、テンペスト」 「やっぱり。飛べるの?」 灯はうなずく。 テンペスト……それは、高速飛行用に開発されたウィッチブルームである。 ガンナーズブルームのような武装は装備されていないものの、それとは比べものにならない高機動性能、トップスピードを誇る。 空力を最大限考慮されたその形状は木製の柄に箒の穂という形状になっている。 すなわち、まさに魔法の空飛ぶ箒がそこにあったのである。 なのはは幼馴染みのユーノ・スクライアと出会ったばかりのことを思い出していた。 あの頃、空を飛ぶために箒が必要かどうかをユーノに聞いた事があった。 そのことはずっと忘れていたが、テンペストを見た途端に思い出が心にあふれ出してきた。 「ねえ、灯さん。これって、どのくらいするの?」 「……200万v.」 v.(ヴァルコ)とはウィザード間で流通している通貨のことである。 「えっと、日本円でどのくらい?」 「……200万円」 なのはは腕組みをして眉にシワを作る。 頭の中では預金データの数字が上下していた。 「貯金がこれだけ……今度のお給料が……」 「あ、あの……なのはさん?」 はっ、と我に返る。少し思い出に浸りすぎてしまった。 「あ、スバルごめん。それ、私が持つよ」 後輩達に恥ずかしいところを見せてしまったなのはは慌ててスバルが持っている超ロングレンジライフルを持つ。 なのは少しはしゃぎすぎてしまった事を反省をしながら倉庫の外にでた。 戻る 目次へ 次へ
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なのは「この番外編は際どい表現が入ってるなの」 フェイト「レイヴンの人達は本当はこんな変態じゃない筈だけど・・・」 はやて「まぁ、ええんとちゃうか?」 ???「いいだろう、それではドミナントである私が相手をしよう!!」 三人「「「…トリプルブレイカー!!」」」 ???「・・・あ、後は頼んだぞ、レイヴン!!」 リリカル・コア番外編4「バーテックスからの刺客なの」 「・・・、どうしよう・・・」 一人ぼっちで薄暗い施設の廊下をトボトボと歩くルーテシア・アルピーノは呟く。 いつも一緒にいる守護者の筈のガリューがいない。友達のエリオとキャロもいない。 回りにいるのは数匹の極小サイズのインゼクトのみ。 「はぐれちゃった・・・」 つまりは迷子である。 バーッテクスに占拠された施設内に突入、フェイトおば・・・、訂正フェイトさん以下七名で 広大な施設内を掃討にかかった。だが施設は広く部屋も多いためチームを三組に分けることになった。 ルーテシアはいつものようにライバルのキャロとほのかな恋心を抱くエリオと組行動をとった。 しかし、エ・キャ・ル組は運悪くバーテックス占拠部隊主力と接敵してしまう。 通路から通路へ、部屋から部屋へ・・・。交戦を繰り返した結果、ガリューや他の二人とはぐれてしまったのだ。 「みんな、周りはどう?」 通信しようにも強力なジャミングが施設内に仕掛けられているのか誰にも通信が繋がらない。 そのためインゼクトを周囲の探査に放った。 だがどのインゼクトも何等の兆候を発見してこなかった。 「・・・そう、ありがとう」 一人ぼっちでいることは怖い。特に薄暗く肌寒い無機質な廊下では。 自分の足音だけが響く、それがさらに不安を掻き立てる。 昔、それほど過去ではないが隣にはゼストがいてナンバーズもいた。あの忌まわしい事件の時に 友達ともいうべきキャロに出会い、そして自分が心のどこかで待ち望んでいた母親・メガーヌを得た。 「アスクレピオス、開ける?」 <ロック解除不能> 袋小路のゲートが目の前にあった。だがロックは開かなかった。 「ふぅ・・・」 ルーテシアは溜息をつく。開かないならここで待ちぼうけをする必要はない。 また来た道を引き返そうとルーテシアが踵を返した時だった。 『前方のゲートに反応接近。IFFを確認、バーテックス所属のレイヴンです』 アスクレピオスが警告を発する。 「どうして・・・、・・・こんな時に!!」 警告を聞いたルーテシアが後ずさる。自分は直接戦闘が出来る魔導士ではない。 直接戦闘を担任するガリューはいない。レイブンのコアデバイスの大半は 極小のインゼクトによる介入操作を無効化できるCPUを搭載している。 そのため残っている極小のインゼクトを使えない。 地雷王に白天王を召喚しようにもこの閉鎖空間では自分も被害を被る。 「ごめんね、みんな・・・」 殆ど戦闘力の無い数匹の極小のインゼクトがルーテシアを守るように前に出る。 そしてゲートが開く・・・。 ゲートが開いたその向こう側にいたのは・・・。 「お前もレイヴンなら戦場で・・・、 や ら な い か ? 」 <識別信号を受信、パンツァー・メサイア:G・ファウストです> アスクレピオスが報告する。 <敵はパンツです。どう見てもパンツです。危険です。> 「お前もレイブンなら覚悟は出来ているな?」 <敵は多彩なパンツを装備。特に遠距離では多彩なパンツです。 近接時の連続撹乱パンツ攻撃に注意してください> その名の如く、なのはのブラスタービットの如く多種多様なパ ンツが舞っている。 <なお、パンツアーメサイアである機甲救世主:G・ファウストはパンツの救世主です> 悪いデータでも受信したのか何時に無く饒舌なが分析データを伝える。 『つまり、彼はパンツの救世主だということ』 「?!」 ルーテシアには一瞬スミカ・ユーティライネンの声が聞こえたような気がした。 「悪く思うな、これも任務だ!!」 「わ・・・、わたし・・・、レイヴンじゃないし・・・」 震えながら涙目のルーテシアが呟く・・・。 「スパッツなんだけど・・・」 そう、彼女のバリアジャケットの下はスパッツを履いているのである。 「・・・なんと!!」 それを聞いた機甲救世主:G・ファウストはなぜか崩れ落ち、爆散した・・・。 「ルーちゃん!!」 開いたままとなっていたゲートの向こう側から白竜:フリードを連れてキャロが駆け寄ってくる。 「大丈夫だった?怪我は無い?」 隣にはエリオがストラーダを片手に駆け寄ってきた よくみると散乱しているはずの多種多様なパンツが消えている。 「まだジャミングが酷くてフェイトさん達やトーレさん達に連絡が取れないんだけど・・・、ルーちゃん?大丈夫?」 「うん、ちょっと・・・疲れた・・・」 強敵とも言うべきレイヴンを退けた後で、どっと冷や汗が流れ、さらにキャロに体を預けるように倒れこむ。 「うん、ちょっとここでお休みしようか・・・」 「でもすごいな、ルーテシアさんがこれを一人で倒したんだ・・・」 機甲救世主:G・ファウストの残骸を調べていたエリオが驚きの声を上げる。 「あ、・・・私は・・・」 「すごいよ!!ルーちゃん!!旧式とはいえレイヴンを一人で倒すなんて・・・、私も見習なくちゃ」 二人ともものすごく勘違いをしている。 「エリオ、キャロ、ルーテシア、みんな無事!?」 自分の歩いてきた方向からフェイトおば・・・、訂正フェイトさんが執務官補のティアを抱えて飛んでくれば。 「ルーお嬢、ご無事ですか?」 「セッテさんにトーレさんだ」 セッテとトーレもゲートの向こう側より飛んでくる。 やっと三組が合流できるようだ。 「G・ファウストがやられたか・・・」 ネタアセンとしか思えないレイヴンが呟けば・・・。 「所詮あいつはその程度だ!!ドミナントである私が相手をしよう!!」 ちょっと自己顕示欲の強いレイヴンが現れる。 「なるほど・・・、だがこの程度では力を図るには不十分か・・・、彼女らを倒してから・・・」 「 や ら な い か ?」 「いいだろう、私の実力を証明してやる、よく見ておくんだな!!」 ちょっと自己顕示欲が強いレイヴンが去っていく。 「私も急がねばならんな・・・」 ネタアセンとしか思えないレイヴンもまた踵を返しその場を去る。 変態集団バーテックス、その魔の手はクロスSSでも健在であった・・・。 エリオ「あれ?」 ???「何をしに現れた?」 エリオ「隊長はバーテックスじゃなくて戦術部隊では・・・?」 ???「なるほど、お前もか・・・。いいだろう選ばれたもののドミナント!!よく見ておくんだな!!」 エリオ「じょ、冗談じゃ・・・!!アーーーー!!!!」 数刻後 ジナイーダ「この静寂・・・、遅かったと言うのか?・・・一体誰が?」 戻る 目次へ 次へ
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「グラディーヴァ、グランカイザーとコネクト、いや合神する。これらのビークルに使用されている駆動系や制御系に用いられているテクノロジーの解析は現在レベル4まで進んでいる」 地上本部のグラヴィオン研究所ではスカリエッティがグランカイザーとグランディーヴァを小さくした立体映像を使いながら、 グラヴィオンについてわかった事をレジアスに見せて説明していた。 「ご覧のように、グランディーヴァにはデバイスの素材やフレームとはまったく違った構造の複数のジェネレーターと駆動系が使用されている。 だがこれは普通の航空機や車などには必要ない。合神の為の補助動力と駆動系しかない。そこにグラヴィオンの高出力を生み出すテクノロジーは存在しない。 装甲の材質は別として、構造上はグランディーヴァはグラヴィオンの手足に過ぎないのだよ。ふふふ、ただのユニットとはね……」 スカリエッティは不気味な笑いをしながら説明を続ける。 「つまり、我々がグランディーヴァと完全に同じマシンを製造したところでゼラバイアにまったく勝てない。どうだい、よく出来ているだろう? 手に入れたデータを元に原寸の38分の1で作ったこの立体映像は……。やはり全ての鍵はこのグランカイザーにあるのだろうね」 「で、その機体については何かわかったのか?」 レジアスがいらつくように質問をするとスカリエッティはまた笑いながら答える。 「ふふふ、この私をもってしてもまだ何もわからないのだよ。ただ、面白い計測データがこの前届いてね、グラヴィオンが戦闘を行った地域全てに通常じゃありえない重力異常値が観測されたようなのだよ」 「重力だと?」 「その通り。くっくっくっくっ……」 スカリエッティの笑いに思わずレジアスは身振るいをする。本当は何かわかっていて隠しているのではないのかと考える。 しかしスカリエッティは本当にまだ何もわかってないのだ。だったら何故笑うのか? それはスカリエッティが生粋の科学者であるからだ。と言ってもスカリエッティはまともな科学者ではない。 スカリエッティの笑いには色々含まれているがそれは置いておこう。 あたしは夢を見ました。それは変わった夢です。いなくなったギン姉があたしを膝枕で寝かせている夢。 しかもそれは昔のあたしじゃなくて、今のあたしです。ギン姉は眠くなりそうなあたしの顔に自分の顔を近づけてこう言いました。 「スバル、グラヴィオンに乗っていれば。必ず会えるわ。だから頑張ってね……。それとノーヴェとは仲良くね……」 ギン姉が言い終わると、あたしは目を覚ましました。 「夢か………」 あたしにはあれが夢だとは思えません。だってギン姉のぬくもりが自分の体に残っている気がするのだから…。 あたしはベッドから起き上がって、カーテンを開けて強い日差しを浴びました。 (ギン姉、会えるよ。ううん、絶対に会う!) 第5話 ひび割れるもの 「グランファントムシステムは順調ですか?」 ヴェロッサとクロノが格納庫でグランカイザーやグランディーヴァの整備士代表のマリエル・アテンザ(通称マリー)に聞く。 「グランファントムシステム(略称ファントムシステム)」とはグランナイツのメンバーを乗せなくてもグランディーヴァを動かせるようにしてグランカイザーと合神できるようにするシステムである。 簡単に説明するとアームドデバイスに使われているAIコンピューターをコックピットに接続して、グランナイツ不在時でも合神することである。 ちなみにファントムシステムはグランカイザーには適用できない。それはグランカイザーは完全に操縦者の意志が必要な機体だからである。 何故ヴェロッサがファントムシステムを今まで採用していなかったのかと言うといくつか訳がある。 一つはグランカイザーに適応できないため。また一つはヴェロッサが無人機を好まない人間だったため。そしてもう一つは……。 「はい、順調に出来てます。ただ…」 「ただ?」 マリーは思わず顔を伏せてしまう。 「ファントムシステムグラヴィオンのパワーが10%ダウンしてしまいます」 「10%…。上出来じゃないか」 ヴェロッサがマリーの仕事のよさを褒める。 ヴェロッサがファントムシステムを今まで採用していなかった最大の理由、それはグラヴィオンのパワーが下がることだったのだ。 しかしこの前のティアナの故郷近くが襲われたときはたまたまグランナイツ全員が近くにいたからよかったが、もしティアナが近くにいなかったら合神できないままゼラバイアと戦っていた。 その事を懸念したヴェロッサはファントムシステム採用に踏み切ったのだ。そしてマリーのおかげで悩んでいたグラヴィオンのパワーダウンは自分の予想よりもいいほうに持っていった。 「そう言ってもらえると嬉しいですけど私は科学者です。可能な限りグラヴィオンのパワーを下げないようにしたいと思ってます」 マリーの誠意にヴェロッサは感服の念を見せる。 「そうか、でも無理はしないようにね」 「はい」 「ところで、なのは達は?」 クロノがなのは達がいないことにヴェロッサに尋ねる。 「ああ、彼女達なら買出し班と一緒に外に出てるよ」 「どうりで静かなわけだ……」 聖王教会から少し離れた街では教会のシスター達が食料などの買出しをしていて、なのは達もお手伝いと言うかついでと言う形で外に出ていた。 この前のバカンスは別として、なのはは10年ぶりに外に出て街には色々あるのに感心して遊び回っていた。なのはと共に行動していたティアナはなのはの無邪気っぷりに疲れそうになっていた。 一方スバルはフェイト、リイン、ヴィヴィオと共に食料の買出しをしていたが、じゃんけんで負けてしまったために荷物のほとんどがスバルの手にあった。 「はあはあ、もう疲れたよ」 「私も持ってあげるよ」 フェイトがスバルの手にある買い物袋を一つ持ってあげようとする。 「いいですよ。これ結構重いんですから……」 「いいって、いいって…。あ…」 フェイトがスバルの手の荷物を取ろうとすると思わず手を滑らせてしまい、荷物の中身のじゃがいもが外に出てしまう。 「ああ、拾わなきゃ」 「ごめんね、ごめんね」 フェイトはスバルに謝りながら一生懸命、スバル、リイン、ヴィヴィオと共に中身を集めてようやく回収し終える。疲れたので皆でベンチに座る。 「ふう、疲れた~」 スバルが根を上げたように声を洩らして、ベンチでくつろぐ。 「あ」 ヴィヴィオが何かあるのに気付いて、それを取りに行く。それは先ほど落ちたじゃがいもの一つだった。 ヴィヴィオはそれをフェイトに手渡す。 「はい、フェイトママ」 「ありがとう、ヴィヴィオ」 フェイトがヴィヴィオの頭を撫でて、ヴィヴィオは照れる。 そんなフェイトの様子を見て、スバルが質問をしてみる。 「そう言えば、なのはさんとフェイトさんって、10年前からの付き合いですよね」 「そうだよ」 「フェイトさんはなのはさんの事をどう思ってるんですか?」 フェイトは少し考えるがすぐに答えが出る。 「大切な友達かな。私となのはは固い友情で結ばれた大切な友達」 「なのはママもフェイトママもヴィヴィオの大切なママだよ」 フェイトが笑顔で答え、ヴィヴィオも笑顔で言う。 それにつられるようにスバルも笑顔になる。 「そうだね」 皆でのんびりしていると突然空の色が変わる。 そのよどんだ空の渦からはゼラバイアが現れ、地面に着地する。 『ゼラバイア!』 ゼラバイアの出現で市民は皆急いで避難し始める。ゼラバイアは触手で自分の周辺にある建物を片っ端から自分の周りに引き寄せる。 ゼラバイアから比較的近い位置にいたスバル達は急いでその場を離れる。その途中ヴィヴィオは一匹の子猫がいることに気付いてそっちの方に行き、子猫を助けようと抱きかかえる。 するとヴィヴィオの立っている地面が割れて、ヴィヴィオは下に落ちてしまう。 「ヴィヴィオ!」 「フェイトさん、危険です!」 スバルがヴィヴィオを助けに行こうと飛び込もうとするフェイトを懸命に止める。 ヴィヴィオは自分の腕に抱えている子猫をフェイト達に向かって投げて、子猫はリインが受け取る。 ヴィヴィオはそのまま穴へと落ちていく。 「ヴィヴィオーーーーーーー!!」 フェイトはヴィヴィオを助けれなかった事を泣く。 「あたしが行きます! あたし災害救助部隊にいたのでこういったのは得意です」 スバルはバリアジャケットを展開させて、ヴィヴィオの落ちていった地面にと飛び降りる。 スバルが行ってすぐになのはとティアナが駆けつける。 「フェイトちゃん、どうしたの?」 「ヴィヴィオが……」 フェイトが泣きながら説明しようとすると、グランフォートレスに乗ってきたドゥーエがやって来る。 「皆、早く乗って!」 聖王教会の司令室ではシャーリー達がゼラバイアの行動を捕捉していた。 「ゼラバイア、周りの建物で自分の身を覆っていきます」 「守りを固める作戦か……」 クロノが推測をしている、マリーが司令室に入ってくる。 「大丈夫。私が整備したグラヴィオンならあれくらいの装甲…」 「ゼラバイア内部より、シータ線を感知」 シャーリーがゼラバイアが内部で溜めているものを調べる。 「体内に素粒子崩壊システムを持ってるようです」 「シータ線が照射されれば、半径100キロ以内の生き物は全て死滅します!」 シャーリーとルキノの報告で司令室に緊張が走る。 「時間は?」 「およそ、1800秒」 アルトが指を使いながら計算する。 「え~と、残り時間30分しかない」 それからしばらくしてスバルから報告が入る。 「すみません! ヴィヴィオがゼラバイアに捕まってるんです」 『え!?』 スバルがは急いでヴィヴィオを探し出し、ヴィヴィオが居る方を見るとヴィヴィオは瓦礫にゼラバイアの触手で縛られた状態でゼラバイアの近くにいた。 『ヴィヴィオ!』 司令室はさらに険しくなる。ヴェロッサはシャーリーに残り時間を聞く。 「シータ線照射までの残り時間は?」 「後、987秒です」 「ゼラバイアが完全に真っ白になったら照射されるみたいです」 ヴェロッサが次にマリーに聞く。 「マリーさん、ファントムシステムは既に搭載されていますか?」 「はい、バッチリです。完璧に動きますよ」 その報告を聞いて、ヴェロッサは決める。 「なのは、今回は君がグランカイザーに乗って、エルゴフォーム。そして合神をしてくれ。スバルは後で合流させる」 なのは達は急いでグランカイザーや他のグランディーヴァに乗り込む。 「スバル抜きで合神……」 「例のファントムシステムね」 ティアナは少し驚き、ドゥーエは前から聞いていたので事情がすぐに飲み込めた。 「グランナイツの諸君、合神せよ!」 「エルゴフォーーーーーーム!!」 ヴェロッサの承認、なのはの叫びによりグランカイザーに重力子フィールドが発生。 「超重合神!!」 なのははパネルを強く押し、グランディーヴァがグランカイザーの新たな手足となり、ゴッドグラヴィオンは完成した。 その様子を外で見ていたスバルは驚く。 「合神した…。あたし抜きで……」 司令室ではマリーがファントムシステムでの合神の成功に喜んでいた。 「やった、やった。ちゃんと動いてるよ~~」 外にいるスバルにクロノが通信を入れる。 「スバル、急いで安全圏に離脱しろ」 「でもヴィヴィオが……」 スバルはクロノの命令に戸惑う。その間になのはがゼラバイアに向かって近づく。 グラヴィオンがゼラバイアによって張り巡らされている触手に触れたために、ゼラバイアの内部から無数の触手がグラヴィオンに襲い掛かろうとする。 「グラヴィティライフル」 ドゥーエが武器の名前を言うと、Gストライカーのところから細長い拳銃のようなものが展開され、グラヴィオンはその銃のグリップを握り引き金を引く。 ライフルから発射される魔力弾で現れた触手を撃ち落すが、ゼラバイアは新しい触手を無数出して、グラヴィオンを攻撃。グラヴィオンは両手をクロスさせて前に出して防ぐ。 「これじゃあ近づけない。だったら…、ウイングローーーーード!!」 スバルは自分の拳を地面に叩きつけ、ヴィヴィオのところまでウイングロードを作り、ウイングロードに乗ってその道をローラーで走る。 「ちょっと、スバル。どうする気?」 「ヴィヴィオを助けます。それまでお願いします」 スバルはそのまま走ってヴィヴィオの下に向かう。 「グラヴィオン、重力子臨界まであと4799ポイント」 「シータ線照射まで597秒」 シャーリー達は冷静に残り時間などを計算する。 残り時間を聞いたクロノがヴェロッサをせかす。 「ロッサ、あまり時間が……」 「………」 ヴェロッサは黙りながらモニターに映るヴィヴィオを見る。 グラヴィオンはライフルで触手を落とすも、あまりの数と繁殖力にきりがない。なのはは決断を下す。 「レフトドリラーコックピット、グラヴィトントルネードパンチスタンバイ」 「え?」 その言葉にティアナは驚く。 通信で聞いていたスバルも驚いてなのはに聞く。 「なのはさん! 何を考えてるんですか!? ヴィヴィオごと撃つつもりですか!? あたしが助けるまで待ってください!」 なのははそんなスバルの叫びを無視するかのように続ける。 「スタンバイ完了次第発射。続いてグラヴィティクレッセントを使用します」 「そんな……」 リインも唖然とする。 「確かに被害は最小限に食い止めるべきね…」 ドゥーエが冷静になのはの判断を考える。 「でもそんな…」 「なのは……」 ティアナもフェイトも戸惑う。 「撃たないで下さい! なのはさん! 聞いてますか!? 返事してください!」 なのははスバルに返事を返さない。 「早くしないと!」 スバルはウイングロードをさらに急いで進む。 「なのはさん、本当にヴィヴィオを撃つ気なの…」 「シータ線照射まで398秒」 「臨界まで2895ポイント」 指令室に更なる緊張が走り、ヴェロッサは真剣な顔をしながら状況を見る。 「ティアナ、リイン。何してるの? 早くして」 「で、でもなのはさん…」 「なのはさん待って! スバルさんもいるんですよ」 ティアナとリインが懸命になのはに制止を呼びかけるも、なのはは聞かない。 「命令です」 ティアナはその言葉を聞いて覚悟を決めたかのように発射準備に入る。 「シータ線照射まで290秒」 「5分切りました」 司令室にキャロとルーテシアが入ってくる。 「なのはさん、撃たないで」 「ヴィヴィオを助けて! ヴィヴィオはなのはさんを本当のお母さんだと思ってるんですよ!」 しかしなのはは完全にグラヴィトントルネードパンチの照準を合わせて、完全に発射体勢に入る。 「やめてください! なのはさん! 撃たないで下さい!」 スバルは何とかヴィヴィオのところにたどり着き、ヴィヴィオを縛る触手を自身のアームドデバイスのリボルバーナックルの力でおもっいきりぶっちぎる。 「ヴィヴィオ……」 「う、うう」 ヴィヴィオはわずかだが意識があった。スバルはヴィヴィオを抱えながら、ウイングロードを走る。 そしてリボルバーナックルをグラヴィオンに向ける。 「なのはさーーーーーん!!」 そうこうしている間にグラヴィオンの前に触手の一つが地面から姿を現してグラヴィオンに襲いかかる。 「グラヴィトン、アーーーーーーーーーク!!」 グラヴィオンの額からエネルギーが発射され、触手を消し去り、ゼラバイアの本体に命中する。 スバルはまだ避難が完了しきれてない自分達がいるのにも関わらず攻撃したなのはに怒りを覚える。 「なのはさーーーーーーーーーーん!!」 スバルは思わずリボルバーナックルから自身の技「リボルバーシュート」をグラヴィオンに向かって放つ。 リボルバーナックルは飛距離があまりないために、グラヴィオンに当たってもダメージはない。 スバルはなのはが自分やヴィヴィオに対しても冷酷な顔をしているような気がして、憎しみのような顔をする。 そしてようやくスバルとヴィヴィオが安全圏に離脱する。 『ああああ』 キャロとルーテシアは喜ぶ。 「シータ線照射まで59秒」 もう時間はない。グラヴィオンは発射準備が完了したグラヴィトントルネードパンチを放つ。 「グラヴィトン、トルネーーーード」 「パーーーーーーーーンチ!!」 発射されたトルネードパンチはゼラバイアが覆っていた建物とゼラバイアの硬い装甲ごと打ち破り、急いでグラヴィティクレッセントを投げる。 「グラヴィティクレッセント」 「シュート」 グラヴィティクレッセントがゼラバイアの本体に命中。ゼラバイアは爆発するもシータ線は照射されず、少しの爆発だけで被害が済んだ。 教会に戻った後、ヴィヴィオはすぐに医療室に運ばれる。 ヴィヴィオが運ばれるのを見届けてすぐに、スバルは怒りながらなのはの服の胸元を掴んで、なのはを責めかかる。 「どういうつもりですか!?」 「ど、どうって…。仕方がなかったの。ゼラバイアを倒すのが私の役目だから…」 その言葉はスバルの怒りの炎に油を注ぐ行為であった。 「だからって何をやってもいいんですか!? ヴィヴィオを殺してもですか…。ヴィヴィオはなのはさんをお母さんだと思ってるんですよ。そんな子を犠牲にしようだなんて、あなたそれでも人間ですか!?」 「!」 なのはは心の中でショックを受ける。 「ゼラバイアより、なのはさんの方がよっぽど悪魔です!!」 スバルはなのはの顔をグーで殴る。 リインが殴られたなのはの元に駆け寄ってなのはの顔をさする。 「落ち着けスバル。なのははなのはなりに最善の行動を取っただけだ」 クロノがスバルを落ち着かせようとするが、スバルは止まらない。 「ふざけないで下さい! 仲間を死なせるのが最善ですか!」 「スバル、落ち着いて…」 ティアナもスバルをなだめるがスバルは無視する。 「あたし、降ります。こんな人とやっていけません!」 スバルはそのまま教会を飛び出してしまう。 『スバル!』 ティアナが追いかけるも、スバルの姿はもうなかった。 「スバル……」 なのはとスバルの間に亀裂ができてしまったのだった。 前へ 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのはStrikerS――legend of EDF――"mission10『セカンドアラート』" ――新暦七十五年 五月十三日 十二時三分 聖王教会本部―― 三百年以上の歴史を誇る次元世界最大の宗教『聖王教』 古代ベルカ時代に聖王によって作られたこの宗教は、ベルカ人だけではなくミッド人の信者も数多い。 風光明媚な各地の教会は観光名所としても名高く、その中でも一番有名なのは、やはりミッドチルダ北部にある総本山だろう。 ビルのような無機質な建物とは違い、教会本部の大聖堂はその建物自体が芸術といえるほどの豪華さを誇っている。 様々な装飾を施された柱や壁。天井にはめ込まれたステンドグラスは、陽光を浴びて光り輝き聖堂内に神秘的な雰囲気を作り出している。 所々に飾られた彫刻や絵画は単なる芸術品ではなく、名高い偉人達が聖王の偉業や伝説をモチーフにして作った宗教的価値の高い作品達だった。 聖王教会教会騎士兼時空管理局理事官カリム・グラシア少将は、聖堂の一画にある事務室で書類の作成に勤しんでいた。 書類の内容は『アンノウン』対策本部へ送るための報告書だった。 『アンノウン』の出現から二ヶ月以上。被害の拡大に伴い管理局の危機感も本局、地上本部ともに高まり続け、 最初は本局のみの小規模組織だった対策本部も今や本局と地上本部の合同組織となり、三千人以上のメンバーを有するほどになっている。 リンディを始めとする『クラウディア事件』の面々も加わり、ラルゴ元帥の計らいで旧式だが数隻の戦闘艦を所持できるようになった。 カリムも聖王教会代表として協力しており、被害の集計や報告書の作成など裏方の仕事を淡々とこなしている。 だが、彼女がどれだけ貢献しようとも、事は一向に良くならないのが現状だった。 この事件に対して今後どうすべきかについて、本局と地上本部の意見がまったく一致しないのだ。 地上本部が意見を述べれば本局が横槍を入れ、本局が意見を述べれば地上本部が反論を。 メンバーの多くが己の面子や利益を最優先とし、いつのまにか、考えていることは相手の足を引っ張ることばかりになっている。 対策組織がこんなていたらくでは、被害者達も草葉の陰で号泣していることだろう。 それでも『アンノウン』の跳梁だけは何としても阻止しなければならない。 それが今の彼女の勤めであると同じに、亡くなった弟や被害者への最大の供養であるとも思っていたからだ。 「騎士カリム、騎士はやてがいらっしゃいました」 傍らに映し出されたホロスクリーン。来客を告げたのは、教会騎士シャッハ・ヌエラ。 紫の髪を短く切り揃えた彼女は、カリムの友人であり、教会騎士団内でも上位に位置する実力者でもある。 「早かったわね。私の部屋に来てもらってちょうだい」 そう答えると、シャッハに茶菓子の用意をお願いすると、カリムは書類の出来を確認してペンを置いた。 ほどなくして、修道士に案内されて客人が部屋にやってきた。 やってきたのは砂漠民のようなローブを着た人物だった。フードを被っているので顔はわからない。 客人がフードをはねあげた。 その下から現われたのは、見るからに純朴な女性の姿。 薄茶色のショートカットが唯一の特徴である女性らしい柔和な容貌。 着ているものがブレザーなどの制服だったらそのまま女子校生として通用しそうな雰囲気だ。 「カリム、久しぶりや」 彼女の名は八神はやて二等陸佐。古代遺失物管理部機動六課の部隊長である。 ―― 「ごめんなぁ、すっかりご無沙汰してもうて」 カリムの事務室には客人をもてなすためのスペースも用意されている。 ローブを脱いだはやてはそこに案内され、シャッハが用意してくれた紅茶を飲みながらカリムに笑いかけた。 はやては二等陸佐でカリムは少将。 本当はタメ口をきくことなど許されない関係だが、カリムははやての古い友人であり気心が知れている。 なので、他人の目が無いところでは、互いにただの友人として接することが出来ていた。 「気にしないで、部隊の方は順調みたいね」 「うん、カリムのおかげや」 はやては頷いた。 機動六課を設立する際、カリムは後見人の一人として部隊運営に少なからず協力していた。 残りの後見人は本局総務統括官のリンディ・ハラオウンと人事部のレティ・ロウラン。 それに加えて本局の重鎮『三提督』も非公式であるが設立を認めていた。 彼等の助けもあって、はやては部隊を構成するための人材集めに集中することができたのだ。 と、言っても新人以外で集まったのは、はやての身内や友人ばかりだが、それでも高い能力を持った実力者であることには変わりない。 部隊設立の理由はロストロギア災害への対策と迅速な行動が可能な少数精鋭部隊の実験例。『表向き』ではそうなっていた。 「私のおかげか。そういうことにしとくと、何かとお願いしやすいかな?」 カリムは中身の無くなったカップを静かに置いた。 「なんや、今日会って話すんはお願い方面か?」 今までの柔和な雰囲気から一転、真顔に戻ったカリムはホロスクリーンを呼び出しコンソールを操作した。 カリムがはやてを呼んだのは、彼女と茶会がしたかったためではない。相談したいことがあったからだ。 ヘタをすれば、次元世界全体に関わるほどの問題についての相談が。 照明が落とされ、二人の周囲に大小様々なホロスクリーンが浮かび上がる。 そこに写っていたのは、黒い巨大蟻の姿だった。 「なんやこれ? 蟻さん? にしてはちょっと大きすぎるような……」 「新種の生物よ。『アンノウン』の出現とほぼ同時期に次元世界各地で発見されたの。 詳しい生態はまだ不明だけど、調査に行った局員が何度が被害を受けているわ。 ロッサの調査団を皆殺しにしたのも、こいつらよ」 「ロッサを! せやけど、おかしいやん。そんな生き物のことわたし今まで聞いたこともなかった」 「巣に近付かなければ襲ってこないからそれほど重要視されてなかったの。 手を出さなきゃ害のない生き物よりも船を襲う『アンノウン』の方が危険だって考える人の方が多かったしね。 次元世界によっては別種の巨大生物も目撃されてるわ。赤い蟻だったり蜘蛛だったり。 ミッドチルダでは、南の火山地帯で四十メートルクラスの生物の影が数匹観測されたり、 中央の海溝ではもっと大きな四足の人工物の存在が確認されてる。 二つとも場所が場所だからまだ回収作業もちゃんとした調査もされてないけど……それと、これを見て」 ホロスクリーンの映像が切り替わる。 今度の映像は銀色の巨大ロボットだった。 頭部のない丸っこい上半身と背骨を剥き出しにしたような形の下半身。 そこから伸びる手足は異常に細長く、少し歩いただけで倒れてしまいそうだ。 右手首は指のない突起状。左手首はアサルトライフルのような形になっており、それらの存在がこのロボットが兵器であることを示している。 それにしても、見るからにがりがりで頼りないロボットだ。 無駄な贅肉はおろか、必要な筋肉すら削ぎ落としてしまったようにも思える。 並の陸士の砲撃を食らっただけで簡単に壊れてしまいそうだ。 ロボットの映像をじっと見つめながらはやてはそう思っていた。 「これは……?」 「昨日ミッドチルダの西部で発見されたロボット。詳しい性能はまだ不明だけど、大きさはちょっとしたビルくらいはあるそうよ」 「それで、今このロボットはどうなってん?」 「今日明日中に地上本部の研究施設へ列車で輸送されることになってるわ。転送魔法を使えば危険はないんだけど……」 「陸で転送使える人はあんまりおらへんからなぁ」 はやての呟きにカリムは頷いて答えた。 事実、少ない予算と戦力をやりくりしている陸上本部には転送魔法を使える魔導師はほとんどいない。 その一握りですら本局がスカウトしていくため、陸は本局以上の人手不足に陥っているのが現状だ。 なので、陸上本部は本局なら転送魔法ですませるような輸送でも、列車や陸路などといった旧来の方法を使うしかないのだ。 「近頃は船舶の被害は出なくなったし、『アンノウン』の目撃情報も段々減っていってるわ。 巨大生物だって、このごろは巣からまったく出ようとしなくなってるし、巣によっては一匹残らず消え去ったところもある。 対策本部では状況を楽観視する人もいるけど……私は不安なの。もう船を集める必要もなくなって、偵察もしなくなったってことは……」 はやては顎に手を当て、数秒間だけ考え込んだ。 そして、とある結論に辿りついた途端、はやては顔をさっと青ざめ慄然とした。 「まさか……攻撃開始が近いってことか?」 「今はまだ断言出来ないわ。そうなるっていう決定的な証拠はまだなにもない。けど……だからこそ会って話しておきたかったの。 これから何が起ころうとしているのか、どう動くべきか。まだ対応が間に合いそうな今のうちに。 対処を失敗するわけにはいかない。もう、ロッサやクロノ提督みたいなことは、ごめんだもの」 それっきりカリムは押し黙ってしまった 何かに耐えるように俯いて、瞼を閉じて唇を噛み締めている。 おそらく、死んだ弟のことを思い出しているのだろう。 ロッサの遺体は欠片も戻ってはこなかった。 彼の体はバラバラに引き裂かれ、ただの肉片となって洞窟中に散らばっていた。 その肉片を全部かき集めても一つの体にはならなかったらしい。半分以上がロッサを食らった蟻の腹に納まってしまったのだ。 僅かに残ったロッサの遺体も、その後の襲撃で次元の海に消えてしまった。 クロノも同じようなものだ。 次元艦艇の爆発は何千度という熱と猛烈な爆風を生む。 クロノの体は骨の髄までドロドロに溶かされ、欠片も残らなかったに違いない。 葬式のときは、遺体の代わりに予備の制服が棺の中に入れられた。 葬式にはクロノを慕う部下や友人達が集まり、はやても家族と一緒に式に参列した。 エイミィは泣きじゃくる子供達を励まし、リンディは一切の感情を殺したように機械的に喪主を務めていた。 そうしていなければ、リンディは子供を失った悲しみと怒りに耐えられなかったのだろう。 クロノの義妹でありはやての親友でもあるフェイト・T・ハラオウンはなんでもない様子だったが、翌日会ったときには両目を真っ赤に腫らしていた はやては彼女等の気持ちがほんの少しだけわかるような気がした。 なぜならはやても家族を失った経験があるからだ。しかも、自身の目の前で。 『彼女』と過ごした時間は確かに短かったし血の繋がりもない。 だけどはやてにとって『彼女』は大事な家族だった。 はやてや皆のために自身の消滅を決めた『彼女』 助けられなかった、止められなかった、幸せすると決意したのに出来なかった弱い自分。 まさに、世界はこんなはずじゃなかったことばかりだ。 (せやけど……) はやては表情を引き締めて、コンソールを操作してホロスクリーンを消した。 「はやて……?」 怪訝な顔をするカリムにはやては「まあ、なにがあってもきっと大丈夫」と言いきった。 「カリムが力を貸してくれたおかげで、部隊はもう何時でも動かせる。 即戦力の隊長達はもちろん、新人フォワード達も実戦可能。予想外の緊急事態にもちゃんと対応できる下地ができてる。 そやから、大丈夫! ロッサの仇もクロノ君の仇も、みんなわたしが取ったるよ」 はやての脳裏に浮かんでいるのは機動六課の堂々たる面々のことだった。 エースオブエースと呼ばれる『スターズ分隊』隊長高町なのはと『ライトニング分隊』のフェイトはまさに六課の主砲。 副隊長である『ヴォルケンリッター』は、はやての家族であると同時に凄腕の騎士達でもある。 指揮官を身内で固めることに批判があるのも事実だが、それでも彼女等が優秀な戦士であることに変わりない。 フォワードの新人四人はまだ頼りないものの、鍛えていけば隊長陣に匹敵するほどの猛者になるはずだ。 前線部隊を補佐する役目が後方支援専門の部隊『ロングアーチ』 これらにSSランクの自分が加われば、どんな敵が相手でも負けることなどあるものか! (そうや、何があっても大丈夫。わたし自身もつよなったし、力を貸してくれる皆もおる。 『闇の書』の時とは違う。あんな悲しみとか後悔なんてもううんざりや。 今度こそ、わたしは助けられる側から助ける側になるんや) 身につけた強さは自信の源となり、自信が産み出す勇気は勝利と栄光への道しるべとなる。 しかし、時として強すぎる自信は過信へと姿を変え、勇気は蛮勇へと変化する。 それらが導く先は、輝かしき勝利ではなく、泥にまみれた無残な敗北である。 八神はやてと機動六課。彼女達が進む道は栄光へのロードか、それとも…… 一方その頃―― 「冗談ではない! そんなことできるわけないだろう!」 スカリエッティのアジトでも似たようなやり取りが行われていた。 戻る 目次へ 次へ
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―――我等の試練に討ち勝ちし者達よ、見事である――― ―――さあ…我等の下へ来るが良い、そして汝の強さを示せ――― ―――さすれば我等は汝の力と成らん事を約束しよう――― リリカルプロファイル 第二十七話 五層 第四層の試練も、なのは達の活躍により無事突破した一同は、 帰ってきたなのは達に激励をすると、今回の目的でもある神が住まう地、第五層へと足を運ぶ。 目的の地まで今までとは異なる程に長い階段を下る一同は、今までの試練を思い返していた。 最初はスバルとティアナが憧れ、そして目標である母と兄の壁を乗り越えた。 次にエリオとキャロが自らの内に潜む暗い闇に打ち勝ち、 はやてとヴオルケンリッターは自分達の罪を乗り越え、 そしてなのはとフェイトは守る意志を試され、父と母に打ち勝った。 …全ての試練を乗り越えた今ならば……そう考え気合いを込めていると、神が住まう地へと辿り着く。 それは今までとは異なり、とても広く三倍近くの面積があり、柵の外には見上げる程の巨大な柱時計がゆっくりと時間を刻んでいた。 そして神との対峙に鼓動が高鳴っていくと、床に描かれている二つの魔法陣が赤と青の色に分けて輝き出し、 なのは、ヴィータ、スバル、ティアナ、シャマルの身が赤い魔力に包まれ始め フェイト、シグナム、エリオ、キャロ、ザフィーラの身が青い魔力に包まれていく。 その中ではやて一人だけがぽつんと無色で佇んでおり、自分の身を何度も確認するが、 周りのような変化が起こらず、思わず怒鳴り散らすはやて。 「なんや!何で私だけなにも変化せぇへんのや!!」 「あ~たぶん定員オーバーなんですよ」 今回は神がバランスよく二班に分けた結果、一人余ったはやてが留守番する事になったとディルナが語ると、 全く納得いかない表情を表しながらシャマルに指を指し怒鳴り散らしながら抗議する。 「んじゃ何か!私よりシャマルの方が役に立つっちゅうんか!!」 「……それはどういう意味かな?はやてちゃん…」 シャマルはとても綺麗な笑みを浮かべながらこめかみに血管を浮き出させて質問する。 その表情に思わず慄くが、直ぐにつふてくされるはやて。 「私はもう真の夜天の王になったっちゅうねん、なのに何でハブかれなきゃいかんのや……」 ブツブツ言いながら体育座りで呟くはやてをリインが慰めているところで、なのは組、フェイト組は転送されていき、 その場にははやてとリイン、それにディルナが取り残されていた。 そしてディルナは落ち込むはやての肩に手を当てると顔を見上げると優しい笑みを浮かべ出迎える。 「心配なのはわかりますけど、大丈夫ですよ!試練を突破した皆さんなら!!」 そう言って励ますディルナ、確かに此処に来てから自分を含め成長したかに見える、 自分が此処で出来る事…それは皆の無事を祈る事であるだろう… そう考えたはやてはディルナの励ましに感謝して立ち上がるとディルナはある方向を指さす。 其処にはカフェなどに置いてありそうなお洒落な白いテーブルとチェアーが置いてあり テーブルクロスの上には白いティーポットとカップ、それにクッキーが入ったバケットが置いてあった。 ディルナ曰わく神が用意してくれたようで、此処で暫く休息を堪能して欲しい為の処置のようである。 そして説明を終えたディルナとリインはいち早くテーブルに向かい、はやては困惑しながら、テーブルへと赴くのであった。 場所は変わりなのは達は一面白い大地に覆われた場所に転送され、フェイト達もまた似たような別の場所に転送されていた。 一同は離れないように纏まって警戒をしていると両者の目の前に魔法陣が現れ中心から等身大の神が姿を現す。 その姿は金髪に三日月を彷彿させる杖を持ち、黒いローブを着ていて背中には六枚の翼、頭には金色の輪が浮かんでおり、 両者に現れた姿はほぼ同じなのであるが、なのは達の下に現れた神は赤い翼と魔力に覆われ、フェイト達の下には青い翼と魔力に覆われていた。 一同は神の出現に唖然としていると、神が静かに言葉を口にする。 『よくぞ辿り着いた…』 「我は男神ガブリエ・セレスタ」 「私の名は女神イセリア・クイーン」 『我等はこの世界の住人にして主である』 別の場所で言葉を合わせるように話す流浪の双神、様々な修羅場を潜って来た一同だが その圧倒的な存在感に息を飲まれていると、その中でなのはだけが先陣を切るように神に問いかける。 「流浪の双神よ!私達は―――」 「皆まで言わずとも分かる、我等の力を貸して欲しいのだろ?」 此処に来る者は、大抵腕試しか力を借りに来たかの二択位で なのは達は入って来た当初から力を借りに来たというのは分かっていたと語ると、 流石、神を名乗るだけの事はあると考えつつも話が早いと考える一同。 すると双神は杖で一同を指すと力強くこう述べる。 『我等の力を欲するのであれば、我等に強さを示せ!!』 神の言葉を合図に一同はデバイスを次々と起動させ神と対峙するのであった。 …フェイトは仲間と念話で作戦を伝える、先ずは自分とエリオが先手を打ち 次にザフィーラが時間差で攻撃、そしてキャロの援護と共にシグナムが攻撃を仕掛けるものであった。 フェイトの作戦に一同は頷くとフェイトはザンバーフォーム、エリオはデューゼンフォルムに変え構える。 「行きます!!」 気合いがこもったフェイトの声を合図に二人は飛び出し縦横無尽に動き回りフェイントをかけながらフェイトは 上空から振り下ろしエリオは地上から突き上げる。 しかし神、ガブリエはフェイトの攻撃を左上の翼で、エリオの攻撃を右中央の翼で難なく防ぐ。 だが時間差でガブリエの右後方上をとったザフィーラが拳を合わせガブリエの後頭部を狙うが それすらも右上の翼によって防がれる。 ザフィーラは一つ舌打ちをするとそれを合図に三人は怒涛の連撃を繰り出すが それぞれの翼にて難なく防がれてしまい、流石の三人も困惑の色を見せていた。 「そろそろ…此方も攻撃を仕掛けるか……」 ガブリエは小さく呟くように言葉を口にすると右手に持つ杖の先端が鈍く光る。 杖の先端の三日月部分は刃物のように鋭利で首を跳ねやすくする為に出来ている。 そしてフェイトとエリオの攻防で一直線に首が並んだところを狙い杖を右に振り抜くガブリエ。 しかしいち早くフェイトが気が付きエリオに念話で下がるように指示を送り二人は ソニックムーブにて回避、二人の前髪を何本か切り散らしただけですんだ。 だがガブリエの杖は更に進み後方を捉えていたザフィーラの頭部に迫るが、障壁を展開させ一撃を止める。 ところがガブリエの一撃は徐々にザフィーラごと障壁を押し上げ、 こう着状態から直ぐに障壁が砕けると、その勢いによりザフィーラは吹き飛ばされる。 一方ガブリエが背中を向いている位置にはキャロがおり、勝機と考えたキャロはフリードリヒにブラストレイを命じ フリードリヒはブラストレイを撃ち込むと、既にキャロの動きを察していたガブリエが左手をかざしファイアランスを唱え相殺する。 動きを読まれていた事に気が付いたキャロは驚きの表情を見せていると、 既にガブリエは目の前で見下ろしており、振り上げた右手には杖が握られていた。 「…まずは一人目」 そう小さく呟くと容赦なく杖は振り下ろされる、しかしガブリエの一撃はキャロの頭上を直撃する事はなかった。 何故ならガブリエとキャロの間をシグナムが割って入りレヴァンティンにて防いだからである。 そしてシグナムはキャロに下がるように指示をすると、キャロはフリードリヒに乗って後方上空へと避難 横目でそれを確認したシグナムはカートリッジを消費し刀身は炎に包まれ押し返すように紫電一閃を振り抜く、 シグナムの一撃はガブリエの予想を大きく上回り後方へと押し返されるが、 その勢いに乗りながら左手をかざしクールダンセルを唱え氷の刃を持った氷人形がシグナムに襲いかかる。 シグナムは一つ舌打ちをすると氷の刃を受け止め鍔競り合っていると刀身が凍り始め、 カートリッジを使用して溶かそうと考えた瞬間、金色の閃光がクールダンセルをバラバラに切り裂く。 そしてその場にはライオットブレードに切り替えたフェイトの姿があり、 愚直なまでに真っ直ぐ上空に移動したガブリエの下へ向かう。 フェイトはガブリエの目の前でソニックムーブを行い一気に後ろをとるが、動きを既に予測していたガブリエは右上の翼にて防ぐ。 ガブリエの翼とフェイトの攻撃により火花が散る中で、フェイトはエリオに念話で合図を送る。 (エリオ!!) (了解です!フェイトさん!!) エリオもまたフェイトに念話を送り応えると、カートリッジを二発消費、 ストラーダの矛先をガブリエに向け構え、スピーアアングリフを打ち出す。 そして見る見ると距離を縮めていきガブリエに迫るが、中央の二枚の翼にて受け止められエリオを吹き飛すように跳ね返し、 ガブリエは更に翼でフェイトを後方へ吹き飛ばした後エリオに迫ると、止めとばかりに杖を振り下ろす。 だがエリオの左手は電撃に覆われており、それに気が付いた瞬間の隙を狙いガブリエの顔を目掛けて紫電一閃を打ち抜く。 エリオの紫電一閃が迫る中でガブリエは振り下ろした杖の先端を向け攻撃を防ぐが、 エリオはそのまま拳を振り下ろしガブリエを吹き飛ばす。 しかしガブリエは体勢を立て直し床に静かに着地するのであった。 一方、空中から落ちて行くエリオをフリードリヒが口でキャッチ、 エリオは一言礼を言うとフリードリヒの背中ではキャロが微笑みを浮かべていた。 そしてガブリエはそれぞれに目を向けると口の端が徐々につり上がる。 「…成る程……がしかしまだまだこの程度では無かろう、さぁ…もっと強さを見せて見ろ!!」 そう言ってけしかけるガブリエを後目にフェイト達は冷静に今の状況を整理し対峙するのであった。 一方なのは達も念話によって作戦を練りそれぞれの役割の為に移動し始める。 そして定位置に付くとまずはなのはとティアナがアクセルシューターとクロスファイア合わせて12発で牽制する。 更に魔力弾に合わせるようにスバルは地上を滑走、ヴィータが上空を飛行してイセリア下へ迫りデバイスを堅く握る。 二人が放った魔力弾がイセリアの下へ辿り着き次々に着弾する中でスバルとヴィータは合わせるように一撃を放つ。 「ラテーケン!」 「リボルバー!」 「ハンマァァァ!!」「キャノォォォン」 二人の叫びが合わさると共に振り抜きヴィータの一撃は頭部に、スバルの一撃は腹部にそれぞれ直撃する。 だがイセリアは平然とした表情で右手に持つ杖を振り抜き二人を吹き飛ばす。 その間になのはとティアナは次の行動に入っておりアクセルシューターとクロスファイアが二人の前で激しく回転していた。 「アクセルシューター…」 「クロスファイア…」 『スパイラルシュート!!』 此方も声を合わせて放つと魔力弾が螺旋を描きながらイセリアへと迫る。 しかしイセリアは持っていた杖を振り抜き衝撃波を発生させると魔力弾をかき消し更に二人に襲いかかり、 衝撃波に飲まれた二人は吹き飛ばされていると、シャマルが二人の後方にヴァルヒ・スツーツを張り難を逃れる。 その頃スバルは反撃とばかりにイセリアへ向かうと拳と蹴りのコンビネーションであるキャリバーショットを繰り出すが イセリアは平然と攻撃を体で受け止め、その状況に困惑するスバル。 「…どうしたの?もう終わり?」 イセリアの優しく問いかける言葉にスバルの体に戦慄が走り、思わず離れると今度はヴィータがギガントフォルムに切り替え頭上から振り下ろす。 しかしイセリアは全く動じることもなくヴィータの一撃を頭で受け止め更に左手をかざしイグニートジャベリンを唱える。 そしてヴィータの頭上から光の槍が降り注ぎ、危険を察知したヴィータはパンツァーシルトにて攻撃を防ぎつつ後退すると、 一同はなのはを中心に集いイセリアを睨みつけながらも頬に冷たい物を垂らす。 …神とはこれ程の実力を持ち尚且つここまで差があるとは思っていなかった。 だからといってこの差を何とかして縮めなければ神の協力を得られない… なのははそう考えているとイセリアの口がゆっくりと動き始める。 「さて……そろそろ体も解れてきたようですし、始めますか」 今までの一連の動きは全て只の準備運動に過ぎず、今から本番であるとイセリアは話すと 赤い魔力が全身から噴き出し、魔力が衝撃波となって身を貫き、恐怖心をかき立てる。 なのはは震える左手をまるで恐怖心を押さえ込むように握り締めると、 自身の最大の能力であるブラスターシステムを起動、それを皮切りに次々に能力を解放させる。 それを見たイセリアは不敵な笑みを浮かべ杖をなのは達に向けると第二幕を開始する。 先ずはシャマルがスバルとヴィータにブーストアップのアクセラレイションとストライクパワーのツインブーストを掛けると スバルはA.C.Sドライバーを起動させて突進、ヴィータもまたギガントハンマーに フェアーテを加えて加速、イセリアの後方へと回ると一気に振り下ろす。 一方イセリアはスバルの一撃を左手一本で受け止め、ヴィータの一撃は杖にて受け止める。 するとヴィータはすぐさまその場から上空へ逃げ込むと、スバルの左手に環状魔法陣により発生した魔力球が握られており、 そのままイセリアの胸元に打ち付けると右手を突き出しディバインバスターを撃ち抜く。 イセリアはディバインバスターに飲み込まれ吹き飛ばされるが、魔力を放出し攻撃を吹き飛ばすと 上空から追い討ちとばかりにギガントハンマーを打ち出すが簡単によけられ、むしろ杖で弾き飛ばされ返り討ちに合うヴィータ。 するとイセリアの下へクロスファイアが弧を描いて襲いかかり、イセリアは杖で次々に払いのけるとティアナの下へ向かい一気に杖を振り抜く。 だがティアナは陽炎のように消え、辺りには無数の五人の幻影が姿を現す。 ブーステッドイリュージョン、ティアナの幻術をシャマルのブーストにより増幅・強化させたものである。 流石のイセリアも驚きの表情を隠せずにいると後方から桜色の直射砲が襲い掛かり それに気が付いたイセリアはギリギリのところで回避すると左右からクロスファイアが二発襲い掛かる。 「ちっ!」 イセリアは一つ舌打ちをするとその場で回転を行おうとしたところ、幻影の一つがシャマルに変わり戒めの鎖にてイセリアを縛り付けるとそのまま退避、 イセリアはなす統べなくクロスファイアを受けるが対したダメージは負っていなかった。 すると左右からショートバスターが襲い掛かり後方へ退避すると後ろの幻影がヴィータに変わりラテーケンハンマーを背中に受け、 そしてヴィータはそのまま退避し幻影の中に溶け込む。 イセリアはこのままでは埒があかないと考えた結果一つの案を導き出し 幻影の森よりも更に上空へと逃げ込み地上を見下ろす。 一方地上からはリボルバーシュートやアクセルシューター、クロスファイアに シュワルベフリーゲンなどがイセリア目掛けて襲いかかって来ていた。 「ちっ!仕方がないわね」 そう言うと足下に巨大な多角形の魔法陣を展開すると詠唱を始めるイセリア。 「…我、久遠の絆断たんと欲すれば……」 イセリアの詠唱により更に上空には巨大な槍が姿を現し縦回転を始め、 その状況を唖然とした表情で見上げる形のなのは達。 「まさか!アレは広域攻撃魔法!!」 「…言の葉は降魔の剣と化し汝を討つだろう」 すると巨大な槍の矛先がなのは達に向けられ、動揺の隠せないなのは達に対し 不敵な笑みを浮かべ見下ろしながらイセリアは杖を振り上げこう述べた。 「分からないから全てを吹き飛ばすだけよ!ファイナルチェリオ!!」 そして杖を振り下ろすと巨大な槍の鍔部分から魔力が放出し真っ直ぐ勢い良く落下、 床に激突すると辺りに衝撃が走り幻影ごとなのは達を吹き飛ばし、その勢いは床全体を超えるほどの広がりを見せ その光景を上空にて見下ろしているイセリアなのであった。 一方フェイト達もガブリエとの戦いにおいて切り札を切り始める。 先ずはフェイトがライオットザンバー・スティンガーに切り替え、二刀流による牽制を促す、 だがガブリエはいとも簡単にフェイトの猛攻を防いでいると、左後方へと先回りしていたエリオが突き刺す、 しかしガブリエは左手一本でストラーダをつかみ取り受け止めると、 エリオはウンヴェッターフォルムに切り替えノイズから金の針が飛び出す 「サンダァァ!レイジ!!」 エリオの叫びを合図にフェイトが退避しガブリエの周囲は稲妻に覆われ始めその身を打つ。 しかしガブリエは動じることなくエリオごとストラーダを振り投げ杖を向けるとキャロによるアルケミックチェーンに縛られる。 「フリード!ブラストレイ!!」 更に追い討ちとばかりにブラストレイを撃ち抜きガブリエの身は炎に包まれ、 加熱された鎖が身を締め付ける中でガブリエは魔力を一気に解放、炎と鎖両方を弾き飛ばした。 しかし弾き飛ばした瞬間の隙をザフィーラが突き鋼の軛にてガブリエの身を呪縛する。 そしてガブリエの前方にはフェイトとシグナムがおり、フェイトはスティンガーをカラミティに換え空いた左手をかざし、 シグナムは居合いの構えをとっており、両者はカートリッジを使用する。 「飛竜一閃!!」 「トライデントスマッシャー!!」 次の瞬間、金色と炎の直射砲がガブリエに迫り直撃、それを目撃した一同はフェイトの下へ集う。 二発の強力な魔法が直撃した場所は白煙に包まれており、白煙から上空へ突き抜けるようにガブリエが姿を現し、左手をかざし詠唱を始める。 「冥府の底で燃え盛る聖玉の採光…贖罪無き罪は罰と化し裁きの時を呼び寄せる」 するとガブリエから炎が放たれフェイト達の周りを青く染め包み込むと球体となって上昇、徐々に赤く染め上がり一気に爆発した。 ペイルフレアー、ガブリエ・セレスタが放つ闇属性の広域攻撃魔法である。 そして跡地をガブリエはじっと見つめていると、中からブーステッドプロテクションを展開しているキャロと エクストラモード起動させ更に多重障壁を展開させているザフィーラが姿を現し、 二人の障壁に守られる形で姿を現す一同、その状況を上空で見下ろしていたガブリエは、ゆっくりと下降し床に足を着ける。 「よくぞ耐え抜いた!だが貴様達の強さは此処までなのか?」 ガブリエは誉めながらも挑発を促し、一同はガブリエの挑発に乗る形で次々に力を解放させる。 そしてまずはエリオが動き出す、その動きはまさに地を走る雷鳴の如き動きで、 一回り小さくなったストラーダを右手に携え振り上げ、払い、通り抜けるように振り下ろすと、 全身に光る雷光が更に輝き出し加速、ストラーダから繰り出される突きは最早、人の目では認識出来ない程の速度にまで至っていた。 「奥義!エターナル!レイド!!」 加速された無数の突きはガブリエの身を突き、最後の一撃はすり抜けるように貫き通すと 次に真の姿のレヴァンティンを握り締めたシグナムが薙払うように振り抜く。 「火龍一閃!!」 撃ち出された火龍一閃は瞬く間にガブリエを飲み込み辺りが炎に包まれる中、 ガブリエが炎の中から飛び出すと、その周囲は長方形の刃に囲まれ飛び回りながらガブリエの身を切り裂いていく。 そして右腕に次々と刃が連結し巨大な刃に変わると一気に振り下ろすザフィーラ。 「奥義!グリムマリス!!」 振り下ろされた一撃をガブリエは杖で受け止めるが、ザフィーラは力を込めガブリエに直撃させると、 真・ソニックフォームの姿をしたフェイトが閃光の如くガブリエの下へ向かい、残像を発生させながら次々とその身を切り裂いていく。 「無限の剣閃、アナタに見えますか!」 そう言いながら徐々に加速しつつ斬りつけ最後はカラミティに切り替えて一気に振り抜き吹き飛ばす。 だがガブリエは最後の一撃に耐え抜き見上げると上空ではキャロが召喚したヴォルテールが見下ろしており、キャロはヴォルテールの肩の上で エクストラモード起動させを起動させるとヴォルテールの胸元に竜紅玉が姿を現し魔力が集い始める。 「奥義!ドラゴンドレッド!!」 キャロの命に呼応するように胸元から強力な光線が発射され、ガブリエに直撃すると爆発 辺りは爆風と衝撃が響きフェイト達の身を揺らす。 その中でフェイトは確かな手応えを感じ、拳を握り締めるのであった。 一方、ファナルチェリオを受けたなのは達は辺りに横たわっており、それを見かけたイセリアはゆっくりと床に着地する。 するとゆっくりとではあるが、確実に起き上がる一同にイセリアは不敵な笑みを浮かべながら話し出す。 「成る程…耐え抜いたか……しかしその分では抵抗すらままならそうだ……」 見下すような目線で見渡しているが、なのは達の目は未だ諦めの色が見えず、 その死んでいない瞳に密かに期待を寄せているイセリア。 そして全員が立ち上がるとなのはが振り絞るように声を発する。 「まだ……まだ私達は負けていない!」 そう力強く言葉を口にするとそれぞれの全力を解放させる。 先ずはスバルがエクストラモードを起動させてカートリッジを消費すると、体に纏っている赤い魔力が増大し威勢良くイセリアの元へ向かう。 そして右拳を突き出し、振り下ろし、更にその場で左回転して勢い良く振り上げ、 更に左回転から体ごと持ち上げるようにアッパーを繰り出しイセリアの体を持ち上げながら的確に顎を狙い撃つと 床に着地、そして床を打ち砕くように拳を振り下ろした。 「奥義!ブラッディカリス!!」 次の瞬間、床から大量の赤い魔力がイセリアに襲い掛かり、その身を何度も打ち抜いていく。 そしてスバルの攻撃が終わると間髪入れずティアナの攻撃が始まる。 ティアナはエクストラモードを起動させると、エーテルを散弾のように撃ち出すクリティカルフレアと呼ばれる攻撃で牽制する。 牽制が功をそうしたのか続いてクロスミラージュを平行に構えると白い直射砲サンダーソードを撃ち出し、 そして間髪入れずにカートリッジを消費すると魔力によってエーテルが増大、ティアナの前で巨大な球体となって姿を表す。 「奥義!エーテルストライク!!」 次の瞬間、エーテルストライクはイセリアを飲み込み辺りは閃光に包まれていき 閃光が落ち着き始めると今度はヴィータの番とばかりに力を現す。 ヴィータの全身には稲妻が走り右手は重厚な鉄の手袋、そしてその手にはツェアシュテールングスフォルムのグラーフアイゼンを握り締め 稲妻がグラーフアイゼンに伝わると目を瞑りたくなる程までに金色に輝き出していた。 そしてグラーフアイゼンの先端が外れ柄の部分を稲妻で繋ぐとヴィータは頭上で回転させ始める。 そして金色の環を描き最大加速に至ったところでイセリアの頭上目掛け一気に振り下ろした。 「食らえぇ!ミョルニルハンマァァァ!!」 振り下ろされたツェアシュテールングスフォルムの先端はドリル状で稲妻を発生ながら回転しており 流石のイセリアも息を飲み杖にてヴィータの一撃を受け止める。 しかしヴィータの一撃はイセリアを中心として広範囲に渡って稲妻が走りまたもや辺りを閃光で包む、 そして閃光が消え始めると跡地からイセリアがヴィータを睨み付けながら上空へ飛び出すと その瞬間的な隙をついてシャマルが鋼の軛を打ち出し、イセリアの身を貫き動きを止める。 するとシャマルの動きに呼応するようになのはが6基のブラスタービットを六角形の形で置き イセリアより更に上空でなのはは構え、なのはとブラスタービットの前には桜色の魔力が収束されていた。 「全力全開!スターライト…ブレイカァァァ!!」 七発のスターライトブレイカーはイセリアを飲み込み着弾地点では桜色の魔力光が球体の形となって輝いていた。 そして――――― 「ブレイクゥシュゥゥゥトォォ!!!」 なのはの言葉と共に七発の収束砲が消えると中央で形成されていた魔力球が膨張、 一気に爆発し天を貫くと言わんばかりの桜色の魔力柱が姿を現しそれは徐々に細くなって消滅、 スターライトブレイカーが直撃した地点の床は大きくクレーター状に窪み、其処にはイセリアの姿を見受けられなかった。 その頃上空では肩で息をし左手を抑えながらなのはがゆっくりと降下し床に着くと力が抜けたかのように膝を付き、 その姿に一同は集まり、跡地を見つめ確かな手応えと安堵が見え隠れしていた。 両者の世界は静寂に包まれ試練の終わりを感じる頃、それは起こった。 なのは達そしてフェイト達の下へ竜巻の如き勢いで姿を現した流浪の双神が仲間達を次々に巻き込んでいく。 それはまさに疾風怒濤、一騎当千に相応しい動きで相手を叩きつけるように次々と杖を振り下ろし 次に吹き飛ばすが如く突き刺すと、今度は回転しながら移動、なのは達フェイト達はなす統べなく跳ね上げられ、 更に流浪の双神の回転が増すとガブリエは青いイセリアは赤い魔力の嵐を生み出し、一同はまるで木の葉の如く舞い上がる。 そして流浪の双神は持っていた杖を力一杯振り下ろした。 「力とはこういうものだ!!」 「これぞ真の裁き!!」 別空間にいる両者の声が重なる瞬間に合わせ、空間が断裂するほどの激しい衝撃がなのは達フェイト達の身を貫き、力無く次々に床に落ちていく。 …女王乱舞、流浪の双神の切り札ともいえる怒涛の連撃で、これを受けた者は立ち上がる事が出来ないとさえ言われる程である。 故に床に落ちたなのは達フェイト達は一切動きを見せてはおらず、流石に流浪の双神も此処までだと考えその場から転送しようとしていた。 だがなのは達フェイト達はゆっくりと身に染み込む痛みに耐えながら徐々に体を動かし始め、 それぞれはまるで生まれたての動物のように弱々しく…しかし確実に力強く起き上がり あれだけの攻撃を受けてもなお彼等の瞳は死んではいなかった。 そんな彼等の行動に自分達が知る人の強さを垣間見た流浪の双神は、歓喜に震え笑みを浮かべる。 流浪の双神の見たかった人の強さ、それは不屈、根性、“ガッツ”とも言えるもので かつてこの地を訪れた人の中で何度も倒れても立ち上がり、結果自分達は倒す人物が現れた。 その敗北から人の強さ不屈の精神を知り、同じ精神を持つ人物には力を貸すという考えに至っていたのである。 そして流浪の双神は杖で床を叩くと一面が変わり、其処でなのは達フェイト達は合流を果たす。 互いはボロボロの姿に笑い合い心配し合いしていると、流浪の双神が一同を回復させて更にゆっくりと話し始める。 「お前達の強さ、確かに見せてもらったぞ!」 「その強さならこの力に溺れる事もないだろう…受け取るが良い!」 そう言うと流浪の双神の前に杖が姿を現す、魔杖アポカリプスと聖杖ミリオンテラーである。 この二本は持ち主の能力を高める事出来るほか、アポカリプスはペイルフレアーが ミリオンテラーはファントムデストラクションが撃てるようになり、 更に杖を媒介に此処の魔法陣を展開させれば流浪の双神を一回だけ召喚が出来ると語る。 しかし流浪の双神を召喚し終えると媒介となる杖は消失すると付け加えられた。 「では…お前達の武運を祈る」 「ありがとう…流浪の双神」 そう言ってなのは達を転送させると、先程までの戦いを思い返し自分の身を確かめる。 彼女達の攻撃はとても優しく、今まで此処に来た者に無い攻撃であった。 故に彼女等なら自分達の力を正しく扱ってくれるだろう、そう確信にも似た気持ちで考える両者であった。 一方で神との契約を終えた一同ははやての下へ転送されると其処ではへばったはやてとディルナの姿があり 一同ははやて達の下へ駆けつけると、はやての手にはひまわりの種が握られていた。 「何があったの?!はやてちゃん!」 「いや…ちょっとネズミがな……それよりどうやったんや?」 はやての言葉になのはとフェイトは首を傾げるものの、証拠の品でもある杖を見せる。 証拠を見たはやては頷き褒め称えると、頭を掻き照れ臭いようで赤く染め、 そして先程までへばっていたディルナが復活し、一同を連れて出入り口へと転送されるのであった。 …此処はセラフィックゲートの出入り口、それぞれが一列に並ぶと対面にはディルナが佇んでいた。 「またのご利用をお待ちしておりま~す!!」 そう言って手を振るとなのは達も別れの挨拶を交わす。 …だがその中ではやてだけが苦い顔をしながら見つめていた。 結局あの場でなにが起きていたのかは教えてくれなかったが、 きっと酷い目に会ったのだろうと言うのが一同の展開である。 そして…ディルナに背を向け一同は魔法陣に足を踏み入れ、聖王教会へと意気揚々に戻るのであった……… 前へ 目次へ 次へ オマケへ