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=スーパー嘘予告ターイム!!(を)= なのはやはやての故郷である第97管理外世界「地球」。 その地球のとある地域において、強力なロストロギアらしき反応が確認されたため、調査に派遣される事になった機動六課メンバーたち。 その調査すべき土地の名は・・・「冬木市」。 そして、そこで行われていたのは・・・ 「毎度おなじみぃ~、聖杯戦争ぉ~、聖杯戦争ぉ~で、ございまぁ~す♪ご不要になった夢希望、もう諦めた野望などがございましたら、お気軽に、コロシアムまで、おいで下さい~♪・・ふっ、すげえぜ?」 謎の「虎聖杯(とらせいはい)」なる物を賭けて繰り広げられる、ドタバタバトルロイヤルであった!! そして、この騒動の首謀者の名は・・・、「冬木の虎」こと、藤村大河(英語教師・独身)!! 「・・ってえ、タイガーって呼ぶなぁぁぁぁぁーー!!(がおおおおおん!!!」 果たして、なのは達はこの苛酷(?)な戦いを生き残る事ができるのか!?そして、虎聖杯は誰の手に・・・?! 「どきなさい、白き魔術師(メイガス)よ!!私はゆかねばならないのです・・・、再び、シロウたちの美味しいごはんを、食するためにっっ!!」 「そ・・・、そんな理由で戦ってるんですか、セイバーさん!??」 「リリカルなのはStrikerS」と「フェイト/タイガーころしあむ」によるクロスオーバー作品! 『フェイト/リリカル ころしあむ』!! 公開予定・・・、全くもって未定っす!!(を) 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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魔法少女リリカルなのは 蘇る闇の書 クロス元:鉄人28号(今川監督2004年版&白昼の残月) 最終更新:09/05/18 第1話「無敵の兵士」 第2話「時空管理局が制止する日」 第3話「鉄人28号奪還作戦」 コメント欄です ご意見ご感想等あればお気軽にどうぞ 今川節全開だw -- 名無しさん (2009-05-18 12 27 06) んっ?なのは死亡かな?かな? -- ムーンシャドウ (2009-05-18 15 16 21) ある時は正義の味方 ある時は悪魔の手先 良いも悪いもリモコン一つ・・・ 流石鉄人、手も付けれないぜ。。。 -- 鉄人 (2009-06-01 06 49 26) テラTUEEEEEEEEEE!! さすが鉄人28号、か。数あるなのはSSの中で、ここまで魔導師サイドが完封されたのは中々見ないぜ? いいぞもっとやれスカ -- 名無しさん (2009-06-01 14 37 07) 今川版鉄人28号……第一話をそのままミッドで再現するとは。 蹂躙される町、無力な者達、失われる命……恐ろしい。 -- 名無しさん (2009-06-02 08 29 55) 長すぎて携帯からだと第三話が途中で終わる…… -- ムーンシャドウ (2009-06-24 18 38 21) 管理局ボロ負けも、ここまで徹底的にやってくれると、かえって爽快ですね。 -- 名無しさん (2009-08-04 00 25 12) 名前 コメント TOPページへ このページの先頭へ
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【LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS】 ♯EPISODE:1-4 □■□■□ ━━腰溜めに構えた法杖たるレイジングハートの先端に 桜色の羽根が三点放射状に羽ばたき、杖の前半分を 幾重もの桜色の円環が取り巻き展開し、杖先の空間に 桜色の光球を湛え、なのはは今正に砲撃魔法を放たんとする。 ティアナの支援を受けたスバルの獅子奮迅の遊撃に拠って 地上の敵射撃陣は最早連係を保て無くなり、なのは達への 集中砲火はかなり控え目になっている。 また、スバルが突撃の際に行き掛けの駄賃で此方に接近中の ベルカ騎士を何人か打ち倒して行ってくれているが、今だ 四人程が此方に歩を進め迫って来ている。 特に先頭を駆ける二人のベルカ騎士からは他とは 桁違いな威圧感を、なのはは痛い程感じ取っていた。 肌がひり付く程と言っても過言では無い。 しかも、前線で活躍するスバルもなのはの後ろに居るティアナも その傍に控えているリィンもその二人に対して他の敵と同じ以上の 警戒はしていない処を見るに、十中八九で先頭の二人のベルカ騎士の 力量は“今のスバルやティアナレベルでは計れない━━” (……少なくても、わたしやフェイトちゃんやヴォルケンズの皆や 今空に居るカルロって人と同レベル━━最低でもAAAランク相当、かな) 未知の相手のランクを手軽に測定出来る、はやての愛読書で有る 某有名週刊少年漫画誌の某宇宙規模氣功格闘漫画の単行本に 載っていたヘッドセット型戦闘力測定装置が時空管理局では 未だ開発されていない事を並列思考の一部で悔んだが、 (無い物ねだりしても仕方無いよ)と(今、相手の魔導師ランクが 判ったって意味無いし)と云うこれまた並列思考の別の部分から 同時にツッコミが入れられる。 これも自ツッコミと言うのだろうか? ともあれ、なのはの決断は砲撃魔法の準備を始めた時から既に決まっている。 (━━わたしの苦手なクロスレンジに踏み入られる前に 近付いて来てるベルカ騎士の人達をディバインバスターで一掃して、 直ぐにスバルの援護にわたしも加わる。そして、手早く片付けて 空のフェイトちゃんとはやてちゃんの加勢に加わるの!) 「━━リィン、わたしのプロテクション解くから、 前方以外のプロテクション張れるかな?」 「任せて下さいですっ!」 なのはと同じく《マインド・ハウル》に因る魔法の発動阻害を警戒して “自分に今出来る事”とティアナの捻挫した足首に治癒魔法を掛け続けていた リィンⅡ(ツヴァイ)は、寧ろ弾みを付ける様に勢い良く応え、直ぐ様になのはの プロテクションの直ぐ内側に新たにU字型にプロテクションを張る。 今までの様子を見るに、敵のマインド・ハウルは どうやら攻撃魔法または攻撃意思しか阻害出来ないらしい。 でなければ、なのはのアクセルシューターだけでは無く プロテクションを維持する為の意識をも阻害されている筈なのだから。 『出来るなら、少なくとも俺ならそうするな』と云う、 教導隊での生徒時代でなのはを担当した先輩教導官の言いそうな台詞が なのはの脳裏を過り、思わず口許に愉しげな苦笑を僅かに浮かべるなのは。 それも刹那で納めると、毅然と前を見据える眼差しに改めて力を込め━━ 「全力全開━━」 自身の魔力光にも似た桜色の瑞々しい唇を開き、 必討のトリガーワードを口から放つ。 「ディバイィン、バスタァーー!」 トリガーワードと共にレイジングハートの先端から放たれた 桜色の極太魔力光は、狙い誤たず先頭の二人のベルカ騎士に 向かって疾駆して行く。 其処に秘めた威力は、更に貫き突き進み後続の敵をも薙ぎ払う! と云うなのはの目論見を見事に体現している。 しかし、その信頼出来る感触とは裏腹に相手のベルカ騎士の 応じる挙動を見て、なのはは怪訝そうに僅かに首を傾げる。 先頭の敵ベルカ騎士の内の片方、まるでファンタジー世界の戦士の様な 野戦甲冑(プレートメイル)を模した騎士甲冑を纏うその紅毛碧眼の白色人種系の 青年が、左腕に装着している上半身を完全に覆い隠せそうな円形の楯を 身を守る様に前面に掲げて構え、直ぐ後ろに続くもう一人の騎士は その楯の騎士の陰に身を隠す。 ━━魔法が発達した管理世界では回避以外の防御手段は “バリア系(柔性魔法障壁)”“シールド系(硬性魔法障壁)” “フィールド系(範囲内効果阻害結界)”の三種の防御魔法と “物理装甲(素材強度に依る物理的防御)”が既存しているが、 最後の物理装甲はその重量や装備時の身体可動の制限や持ち運びの手間等の 諸々の理由から魔導師の間では廃れてしまっており、クロスレンジでの戦闘を 主とするベルカ騎士の間ですら防御は魔法と武器での受けが主流で有り、 楯を用いる者は稀と言って良い。 しかし、目の前の騎士は円形の楯を構え、良く見れば右腕にも 先端がコの字に窪んで片縁が半円に窪んでいる全身を覆える程の 長方形の楯を装備している。 が、彼の手には武器らしい武器は何ひとつ携えられてはいない様に なのはには見える。 (……楯の人は防御魔法に自信が無い、のかな? あ、魔力は全て攻撃に回すタイプなのかも) なのはは相手の手をそう読むが、それ故に自分の戦術に自信を以て ディバインバスターの疾る先を厳しく見詰め━━ だが、その良くも悪くも“魔導師としては常識的”な思考故に、 なのはの眼は驚愕に見開かれる。 「……《ドラッケンセシルド》」 楯の騎士がトリガーワードを唱えると同時に カートリッジシステム独特の撃発音と共に円形楯の裏側から カートリッジらしき空薬莢が1発弾け跳び、円形楯の外縁が 八分割されて楯の周囲の空間へ放射上に展開され、 分割パーツと楯本体との間に朱色の魔力障壁が張られて 楯の騎士達を含むかなり広い面積を覆い ━━ディバインバスターを苦も無く受け止め防ぐ。 只それだけならば、なのはは悔しくは感じても驚愕はしない。 問題は、楯の騎士がディバインバスターを受け止めても その疾駆を一切緩めない事だ。 なのはのディバインバスターは、標準的な消費魔力で撃っても Sランク砲撃の威力が有る。 それでも教導隊では防げる魔導師は幾人かは居たが、それにしても 受け止められた際には足を留める位は出来ていた。 そもそも、防御魔法を張る際には砲撃魔法と同じ様に 術者は足を留めざるを得ないのが“魔法の常識”で有り、 動きながらこれらを掛けるならば魔力制御への精度の問題で 効果威力なり発動精度なり射程や有効範囲なり射速なりを 犠牲にしなければならない。 しかし、なのはの目前の楯の騎士はその疾走を僅かに鈍らせる事も無く ディバインバスターを押し返すかの如く平然となのはに向かって迫って来る。 (……違う! あの人は防御魔法が苦手なんじゃない! その逆━━防御特化タイプなんだ!?) しかも、なのはが知る限りでは防御力に関しては定評の高い はやての守護騎士たる“楯の守護獣”ザフィーラの その遥か上を行くと推測出来る防御力。 あの威圧感の正体はこれだったの!?と、 魔導師の常識を覆すその闘法に戸惑いつつも なのはもレイジングハートも新たに迎撃の為の 魔法を構築しようとしたが━━ 既に楯の騎士はなのはが最も敬遠したい クロスレンジに踏み込んでいた。 あの威圧感の正体はこれだったの!?と、魔導師の常識を覆すその闘法に戸惑いつつもなのはもレイジングハートも新たに迎撃の為の魔法を構築しようとしたが━━ 既に楯の騎士はなのはが最も敬遠したいクロスレンジに踏み込んでいた。 □■□■□ 「━━なのはさんっ!?」 なのはのディバインバスターの叫びを耳に 勝利を確信して振り向いたスバルにも、 その光景ははっきりと捉えられていた。 ━━なのはのディバインバスターが防がれる その事実は、スバルにはとても信じられなかった。 なのはのディバインバスターは、スバルに取っては 如何なる絶望も打破する希望の光の象徴だ。 それが平然と防がれ、しかもなのはが驚愕の表情と共に クロスレンジに接敵を許してしまっているまでを認識した瞬間に、 全てを放り出して雄叫びを上げてスバルは楯の騎士へと突進する。 うおおおぉおぉっ!と云う叫びと共にリボルバーナックルから カートリッジを2発ロード、スピナーの唸りすら乗せて疾風の如く突撃しつつ、 しかし頭の中では相手を冷静に見極めようとするスバル。 (━━敵の片割れは両腕に楯を装備してるけど、 他にデバイスや武器を手にはしてなく見える。 なら、例え最初のこの一撃は防がれても 相手に反撃手段は無い筈! 一人をあたしが抑えれば、もう一人は なのはさんやティアが何とかしてくれる!) そう考え、楯の騎士を拳で直接捉えられる間合いまで駆け込むと 突進の勢いを殺さぬまま渾身の右ストレートを放つスバル。 「《ナックルダスター》っ!」 楯の騎士はスバルの叫びにも反応せず、視線を向けすらしない。 それを此方に反応し切れていないと判断したスバルは 必討を確信した闘微笑を浮かべる。 しかし、次の瞬間には楯の騎士の姿がスバルの視界から掻き消え、 気付けばスバルは大きく退け反り吹き飛ばされて近くの路肩壁に 背中から激突してそのまま仰向けに崩折れる。 (……な…に? 今、あたし…何されたの……?) 全く訳が解らず兎に角立ち上がろうとするスバルだが、 何やら脳振盪を起こしてしまっているらしく 視界がぐるぐると回るのを認識したのを最後にスバルは気絶してしまう。 「スバルっーー!?」 ティアナの悲痛な叫びが再び響き渡る。 離れた場所から一部始終を見ていたティアナには 何が起こったかを理解出来ていた。 楯の騎士の左斜め後ろから右ストレートでナックルダスターを 放ったスバルに対し、楯の騎士は視線を向ける事無くその場で 両膝を落としてスバルの右拳を頭上を透かさせて躱し、 そのまま伸び上がるかの様に左の腕刀を裏拳の如く振り回して 左腕の円形楯でスバルの顎を下からカチ上げたのだ。 「……楯で殴り付ける、って……何なの、その戦法……!?」 立て続けに自身の常識範囲外の闘い方を見せ付けられて、 言葉を口にしたなのははもとよりティアナもリィンも 警戒を強めつつも暫し茫然とする。 当の楯の騎士は、傍らの騎士━━狩人の様な格好をモチーフとした 騎士甲冑に身を包んで銃の様にしては銃口の見当たらない 一抱えも有る直方体のデバイスを手にし、体格のがっしりした 上背の有る狼頭の獣人に視線を遣ると他者には傍受出来無い 念話かアイコンタクトで何かを交し合った後に獣人騎士の方を 数歩退がらせてなのは達と空の両面を警戒させ、楯の騎士自身は 元の形状に戻した左腕の円形楯を身体の正面に構えつつ なのはに向けて更に二歩だけ歩み寄り、其処で初めて なのは達に向けて口を開く。 「……高町なのは、おとなしく捕まれ。 御前はユーノ・スクライアを誘き出す餌に使うからな」 「……どう云う事なの?」 なのはは明ら様に怪訝に思い、思わず楯の騎士に向けて尋ね返す。 曲がりなりにも時空管理局の士官で在りエース・オブ・エースの呼び名を 有り難くも載いているなのはを拉致するのは、確かに時空管理局の風評的にも 単純に戦力的にもそれなりに痛手にはなるだろう。 けれど、何故この場でユーノの名が出て来るので有ろうか? なのはのその問いに、楯の騎士は憤怒の表情を浮かべると 「……何も知らないと云うのは最も残酷な大罪だな」と吐き棄てつつ、 憎しみの業火を湛えた眼差しをなのはの凛とした眼差しとぶつけ合わせながら 強い口調で言葉を叩き付ける。 「俺の名はイオス・アウディ。 PT事件……いや、ジュエルシード事件の発端となったユーノ・スクライアを 始め、あの事件に関わった時空管理局も御前等も全てに復讐を誓った者だ!」 662 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2:2008/08/20(水) 18 22 29 ID KChO/aO2 □■□■□ 再び空へ場面を向ければ、戦況はかなり様変わりしていた。 敵側の空の要がカルロで在ると見抜いたフェイトは、 今までとは逆に自身から積極的にカルロに向かって 攻め掛かりながらそれでカルロを僅かに抑えた隙を 細やかに突いて、此方にちょっかいを掛けて来た 他の敵の空戦魔導師やサイキッカーにも閃光の如き速さで 強烈な一撃を見舞わせて着実に一人一人討ち落として行ったのだ。 その際、“新規準の非殺傷設定”に自身の攻撃を 切り換えて置く事もフェイトは忘れない。 ━━従来の魔導師達が扱う非殺傷設定は「対象に魔力ダメージを与える」 もので有るが、それではパワーソースに魔力が介在しないサイキッカーに対しては 全く意味が無いと云う事に気付いた時空管理局は開発部総部長のウォンの 研究データを応用して「対象に疲労性の精神力ダメージを与える」 新たな非殺傷設定の開発に成功した。 これに拠ってダメージを与えると同時に対象サイキッカーのパワーソースたる 精神力をも同時に削る事の出来る手段を得た管理局魔導師達は、 サイキッカーに対して非殺理念を貫いたまま戦える様になったので有る。 また、この新規準の非殺傷設定は普段は対物破壊力がやや落ちてしまうけれど 獣や昆虫程度以上の精神力を持つ生命体に対しては着弾時には完全に 精神力ダメージに転嫁される為に、魔力を持たない普通の人々を対象にしても 従来の非殺傷設定と変わらぬ感触で魔法を用いる事を可能としている上に、 魔導師に対してもリンカーコアでの魔力精製に用いる精神力を削らせると云う 意味で従来の非殺傷設定と変わらず有効で有り、今ではこの新規準の非殺傷設定が 魔導師の間でも一般化しつつ有る。 そうしてフェイトの機転を利かせた奮闘の結果、敵の空戦戦力は カルロを除けば並程度の射撃魔法が放てる魔導師と同程度の威力の 火炎弾しか放てないサイキッカーの二名だけになり、その程度では はやてのオーバルプロテクションは易々と破れはしないと判断したフェイトは、 目標をカルロ独りに改めて定めて蒼穹を舞台に烈水のサイキッカーと激しく交錯する。 カルロの方も、余計な手出しをさせればまたもフェイトの餌食にされると 判断して、残された空戦組二人をはやての乗るヘリに対する攻撃にと専念させ、 自らはフェイトの舞う猛き閃光の舞踏の相手役として水輝を振り翳し 共に闘舞を舞い翔る。 (━━それにしても、上級サイキッカー相手の戦いがこんなに厄介なんて……) たった今、擦れ違い様にカルロの手から放たれた小型の水流弾《ハイドロ・マグナム》を 身を捻ってバリアジャケットの裾を掠めるぎりぎりで躱したフェイトは、それを今、 嫌と云う程痛感していた。 御返しとばかりに開いた遠間から抜き打ちの直射系小型電撃魔力弾《プラズマショット》を バルディッシュを握らぬ左掌から放つフェイトで在るが━━ 「行きます!」 そう叫ぶと同時に突撃加速時に生じるサイキックオーラを纏ったカルロが フェイトのプラズマショットをその“クイック・ダッシュ”時のオーラで 難無く弾き飛ばしてフェイトの懐に一直線に飛び込み、左廻し蹴りから そのまま旋回して鋭い右膝蹴りを突き入れて来るも、フェイトはバルディッシュの 長い柄を巧みに操って何とかカルロの連蹴を防ぎ切る。 返す刀でフェイトはハーケンフォームのバルディッシュの刃でカルロへ向けて 袈裟に斬り掛かるが、すんでの所で“スライド・ダッシュ”でフェイトの左脇へと 避け回られ、バルディッシュを振り抜き切って隙を見せてしまったフェイトの左脇腹に カルロの右廻し蹴りと左後ろ廻し蹴りが交互に連なって叩き込まれ、 駄目押しと言わんばかりに更なる廻し蹴りから高圧縮された螺旋水流 《ハイドロ・スパイラル》を放たれる。 連蹴で退け反り吹き飛ばされたフェイトでは在るが、宙転して直ぐに体勢を立て直すと 同時にサイキッカー達の使う“回避バリア”の如く瞬時にフェイトの数少ない防御魔法 《ディフェンサー》を張り、迫るハイドロ・スパイラルの双牙を辛くも防ぎ、 再びカルロの隙を窺おうと周囲の廃ビルの間を縫う様にフェイトは翔け抜ける。 カルロも、フェイトの逆手を取ろうと廃墟の隙間を高く低く翔け抜け、 時に牽制として高水圧の水の超能力弾をフェイトに向けて放ち、 時に急旋回でフェイトへと迫りクロスレンジでの攻防を挑んで来る。 その度に、フェイトは相手の自在な間合いに苦々しく舌打ちする。 663 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2:2008/08/20(水) 18 41 04 ID KChO/aO2 ━━サイキッカーの戦法の特徴として「射撃技に頼り切りになる事無く、 積極的にクロスレンジでの格闘戦を挑んで来る」と云うものが有る。 似て非なるものとは云えサイキッカーにもリンカーコアが内在する事は 医学的に確認されており、魔導師と同じく戦闘活性をも行なえる。 しかも、サイキックオーラの加護に拠ってサイキッカーの素手攻撃は アームドデバイスでの一撃に迫る威力を秘めており、 高ランクのサイキッカーで在る程にこの特性を活かして クロスレンジでのインファイトで相手を往しつつ 連係で超能力技を確実に叩き込もうとする傾向が強い。 その上で、遠間からの超能力射撃にも事欠かずに 威力も下手な魔導師を浚いでいる。 つまりは━━ミッドチルダ魔導師の射撃/砲撃能力と ベルカ騎士の接近戦闘能力が同居した存在━━、 それがサイキッカーの強さの一端なのだ。 フェイトの眼前の敵たるカルロもその例に洩れず、しかも━━ (……強い) フェイトは素直にそれを認めた。 フェイトは未だに全ての力を奮ってる訳では無いが、手は一切抜いてはいない。 だが、それは相手のカルロも同じではないかと、フェイトは交戦からの 直感で確信を持てている。 自身の魔力と相手のサイキックパワーが激突する度に黄金色の電光が絡まる 水輝煌めく水飛沫が飛び舞い散り幻想的に空間を彩るが、フェイトにそれを 綺麗と感じる余裕は無く、相手のサイキックパワーを帯びた水気には 超純水の様な絶縁効果でも付与されているらしく普通の水の様に 通電に拠る感電を狙えない事に僅かに苛立ち歯噛みする。 カルロもカルロで、噂を超えるフェイトの移動速度と機動力に些か手を焼き、 決定的なコンボを叩き込めない事に次第に焦れる。 そして、双方共に動き合いの牽制に痺れを切らしたか、 互いの間合いと隙を見極める為に敢えて足を止めて帯空し 眼差しを絡めて対峙する。 と、カルロが息を調えながらフェイトに向けて言葉を投げ掛ける。 「……もう一度言います、我々に投降して下さい。フェイト・T・ハラオウン」 「…は! 何を言い出すかと思えば」 カルロからの再度の降伏勧告を鼻で嗤うフェイト。 「貴男程の人が状況を把握出来ていないの? 其方の地上の戦力は既に連係の瓦解した烏合の衆な状態。 そして空でのまともな戦力はもう貴男だけです。 先程の言葉をそのまま返します。 私達に投降しなさい、カルロ・ベルフロンド」 フェイトからの返答を聞き、カルロは眼を臥せて 頭を僅かに左右に振ると構えを解いて両腕を 自身の身体の横にだらんと下げる。 (観念した!?) カルロのその振る舞いをそう判断したフェイトは 逮捕の好機とばかりにバルディッシュを振り翳し、烈迫の叫びと共にカルロの懐を目指して一直線に突進する。 664 :LYRICAL PSYCHIC FORCE StrikerS ◆mC6nUscAv2:2008/08/20(水) 18 47 50 ID KChO/aO2 しかし、それこそがカルロの仕掛けた誘いだった。 フェイトの突進の初動を認めたカルロが、して遣ったりと 言わんばかりの愉微笑を浮かべて左手人差し指の先で 自身の眼鏡の位置を僅かに直すと同時に、 カルロとフェイトの間の空間━━フェイトの突撃進路の 丁度その軌道上の空間が唐突に揺らめき、其処に モスグリーンの鋼の猛毒蜂━━スリムな機体の機首に機銃を備え 翼下に6連装ミサイルポッドを提げた一人乗りの戦闘ヘリが一機忽然と現れ、 機銃の銃口をフェイトへ向けて旋回させロックオンする。 (━━転送!? いえ、カルロの様子からすると テレポートで送り込んで来た!?) 気が動転して瞬時に憶測するフェイトだが、 そんな事に最早意味は無い。 案外軽快な炸裂音の連なりより僅かに先んじて飛び来る機銃掃射の 大口径弾の群れを、戦闘活性とは別な感覚でゆっくりと迫るのを眺めつつも 身体の反応が全く付いて来ていない事を何と無く察したフェイトは 「……私、死ぬ」と、何処か他人事の様に考え…… ━━刹那、フェイトと戦闘ヘリとの間の空間に漆黒の閃光が炸裂する。 脊椎反射的に左手を目前に翳して目元を被いながら眼を僅かに細めた フェイトの視界で、漆黒の閃光に因ってその射線を歪められて 悉く明後日の方向へ飛び過ぎ行く機銃の弾群と、その漆黒の閃光が 徐々に収束して行く中に 赤いインナーシャツの上から黒いライダージャケットの様な衣服に 身を包んで額に巻いた白い鉢巻きで猛る様な赤毛の髪を持ち上げて 顏前を被わせている、翠雷をその身に纏うを少年の姿を認める。 「……あ、貴男は……?」 助かった安堵と目の前の事態に把握が付いて行けていない事が ない交ぜとなり思わず呆然となって、忽然と現れた謎の少年に 尋ねの言葉を投げ掛けるフェイト。 が、今この場は戦場。そんな振る舞いを許容してくれる展開では無い。 突然の事態に同じく唖然としながらも直ぐに攻撃失敗を認めた 戦闘ヘリのパイロットが、先刻の攻撃を妨害してくれた謎の少年に 向けて機銃の照準を合わせようとする。 視界の端で機銃が動く様を捉えたフェイトが「危ないっ!」と 謎の少年へ警告の叫びを発しようとした瞬間、 謎の少年が身体全体で戦闘ヘリへと振り向き続く瞬間に 鋼の猛毒蜂は真っ二つに分断され墜落爆発する。 驚きに目を見開くフェイトが改めて謎の少年に視線を戻せば、 その右手には翠雷で成形された稲妻の大剣が握られている。 (この人が、戦闘ヘリを斬り墜としたの!?) 未だ敵とも味方とも定かでは無い謎の少年を凝視するフェイトに向けて 謎の少年は顏を振り向け、精悍な面立ちに相応しい刃の様な鋭い眼差しで フェイトの瞳を見据えて口を開く。 「……俺は……俺の名は、マイト。此処は、何処だ……?」 ━━この戦いに、変調詞が今、挿し挟まれた。 戻る 目次へ 次へ
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悪魔とテロリスト 夜の暗さに拍車をかける鬱蒼と茂る林の中で、 一人の少女の瞳には誰にも負けない意思の輝きが放っていた。 許さない。 意思の輝きと共に発せられるのは、炎のように燃え滾った感情。 それが彼女の心を支配する絶対的な気持ちだった。 人一人を簡単に、それも惨たらしく殺し、 それでも尚飽き足らず娘のフェイトを含めた大勢の人たちに殺し合いをしろという。 その言動は高町なのはが信ずる正義の中に当然納まるはずもなく、 自然とこの殺し合いに対する強烈な叛意を内に養わせていった。 そしてそんな気持ちと共になのははプレシアについて幾つかの疑問を感じていた。 何故プレシアが生きているのだろうか。 なのはが最後にプレシアを見たのは、彼女がジュエルシードと共に 虚数空間に落ちいていくさまだった。 虚数空間では魔法は使えない。 よってどんな魔導師でもそこに落ちたら、帰り着くことは不可能だ。 つまり、それは魔導師にとって死を意味することになる。 普通ならそれで終わりだ。 だけど、たった一つだけなのはには帰ることができる可能性に思い当たることがあった。 それはアルハザードへ到着。 リンディ提督も何となしに呟いていたのをなのはは覚えていた。 プレシアほどの大魔導師ならアルハザードへの道のりを知っていたのではないか、と。 そしてそこに辿り着いたのなら、かつて次元世界を席巻していたというその技術によって 帰還が可能となるだろう。 しかし、それでもなのには不思議な事があった。 「アルハザードの技術でもアリシアちゃんを蘇らせることが不可能だったのかな」 プレシアが何故アルハザードを目指したのかといえば、 娘のアリシアを蘇らすことにあった。 そしてそこに無事に到着したのなら、アリシアを蘇生すればいい。 だけど実際にプレシアがしていることといえば、酔狂ともいえるこんな殺し合いだ。 当然、なのはには納得がいかないことだった。 「それともこれがアリシアちゃんを蘇らすことに繋がるのかな」 なのはは幼い脳で考える。 だけど、この殺し合いによって誰かが蘇るというのには、どうにも想像が及ばなかった。 尤もアルハザードの技術自体知らないなのはには、確実なことは言えない。 「それともこれがアルハザードへ行くための道のりなのかな?」 アルハザードへ到達したという可能性を捨て、また別の考えを抱く。 アルハザードに似た世界に落着し、そこにアルハザードへ道のりが記されていた。 何となく気持ち的にこちら方が正しいような気もしたなのはだけど、 人が殺しあうことによって生じる道というのも、やっぱり想像がつかなかった。 「やっぱりちゃんとお話したいよ」 なのははプレシアに話しかけるように、呟いた。 しばらくプレシアについて思いを巡らしていたなのはだったが、 やがて今がどういう状況にあるか再度認識するに至る。 そして今までの時間を取り戻すかのように慌ててバッグの中身を確認。 なのはは辺りの気配を窺いながら、手早く名簿を確認した。 自分の知り合いである人たちがたくさん呼ばれていることになのはは胸を痛めた。 そして先の会場でも気になったことだが、自分を含め、フェイトとはやての名前が二つあった。 今より大人の自分に、今より大人のアリサちゃんにフェイトちゃん。 それを確かに彼女は見た。 それもプレシア同様に幼いなのはを悩ませる問題だった。 あれを本当の自分だと仮定し、未来の自分だと考えてみる。 彼女があそこいるということは、今の自分は死ぬことはないということだが、 それはつまりこの殺し合いをから抜け出してたということになり プレシアを逮捕するに至ったということになるだろう。 だけど、それならば今、自分が経験していることは起こらないはずだ。 いや、過去のプレシアが行ったことだから、覆すことができないのだろうか。 それとただも単純にプレシアを取り逃がしただけなのだろうか。 だけど、この殺し合いが行われる場所が分かっているのだから、 そこを張り込んでいれば、防げるような気が……。 いや、でも……。 一つの答えを出し、一つの疑問を生み出し、 それに対する答えを導き出したところに、また新たな疑問が浮かぶ。 その絶え間ない連鎖にやがてなのはの脳は限界を迎えた。 「あぁ~、もう訳分かんないよ~」 なのはは頭を掻き毟りながら、その幼い顔を少し歪めた。 そしてそれを嘲笑うかのように夜風がなのはの顔を吹き付けていた。 しばらく風を受け、佇むなのは。 そこで思考の海に埋没して、自分の道を見失っていることに再び気がついた。 そしてそこで心機一転とばかりに、支給品の武器に目を向けた。 宛がわれたのはデバイスらしきカードだった。 「これは……インテリジェント・デバイスかな?あなたのお名前は何ていうの?」 沈黙。なのははほんの少しいたたまれない気持ちを味わった。 「そう、ストレージ・デバイスだね!」 そう言うやいなやなのはは左手に持ったカードを天高く掲げる。 そして自身に内に沸き起こった恥ずかしさを振り払うかのように叫ぶ。 「それじゃあ、お願い!セーット、アーップ!」 そう言ってなのはが言葉を発した途端、暗い夜に柔らかい光が煌々と放たれた。 彼女の服は瞬時に分解され、露になったその裸体にバリアジャケットが身に付けられていった。 そうして白い服を纏ったなのはの手に現れたのが、一本の杖だった。 「これはクロノ君の……デバイス?」 そう言いながらデバイスを仔細に見つめるなのは。 これが執務官クロノ・ハラオウンの持つデバイスなら文句はないだろう。 だが、何分初めて手に持つデバイスだ。 どういった役割を持ち、どういった距離で戦うことを前提にして作られているか そしてこのデバイスはどれほどの性能を有しているかを確かめてみなければならない。 いつ戦闘が始まるともしれないこんな状況では そういった確認を早急に行うのは当然のことだろう。 そして彼女は魔法の発動に準備を整える。 唱えるのは、ディバインシューター。 大した魔力消費もなく、使い慣れた魔法だ。 それ故にデバイスがどういったものであるかを知るのにはうってつけだった。 澱みなく魔力は流れ、魔法はついに形を成す。 「シューートッ!」 ピンク色に輝く10にも及ぶ光弾は、木々の間を縫うように進み 50メートルほど先の木にぶつかり、弾けた。 威力は下がっているようにも思えるが、大した問題はないだろう。 結果は良好だった。 魔法の発動に滞りもないミッドチルダ式のデバイス。 レイジングハートみたいに意思のやり取りが出来なくて寂しい思いはするはが これならきっと自分の全力に耐え切ってくれるだろう。 支給品に何が当てられるか不安だったが、どうやらそれは彼女にとって杞憂のようだった。 無論、パートナーのレイジングハートが手に入らなかったのは彼女にとって残念なことではあったが 差し当たっての不都合はない。 これで武器も確認したし この殺し合いにおいて叛意を告げる意気込みも問題ない。 幾つかの疑問がまだなのはの頭に残っていたが、 それも当の本人から話を聞けば問題ないだろう。 そして決意も新たに彼女は足を進めて、 ――木の根に引っかかりこけた。 にゃはは…… 自分のそそっかしさを、そう自嘲しようとしたところで S2Uの警告声が響いた。 「Caution!」 なのはは急いで立ち上がる。 しかし、倒れていたせいか、初動がおくれ 相手の接近を許してしまう結果となった。 なのは緊張した面持ちで相手を睨みつける。 いつでも魔法を発動できるように準備して。 「子供?それも日本人?」 しかし予想と違ってかけられた声に なのはの緊張はほんの少しだけ解けた。 * * 幾つもの戦闘を経験し、幾つもの死を見てきたカレンにとっても 今起こった状況に対しては理解が及ばなかった。 いつの間にか訳の分からないところに呼び出され、 誰とも知らない女の死を見せ付けられ、 その挙句、殺しあえという。 率直に言って意味が分からなかった。 例えばカレンが行う戦いは世間からはテロと誹謗されることはあれど 日本を解放するという目的があった。 そしてカレンが見てきた死というものも その目的のために礎となった意味のあるものであった。 だが、この殺し合いというものにも先の女の死にも意味が見出せない。 このような他を省みない野蛮な行いは侵略者ブリタニアに似通っていて腹が立つ。 おまけにお前は飼い犬だともいうようにつけられている首輪は人としての矜持が許せない。 反骨心が湧かないわけがない。 だが、その一方でいつの間にかつけられた首輪に、今、自分がここにいるという状況は 彼我の戦力差を雄弁に物語っているものであった。 常に戦いに身を置いてきたカレンにはそれが痛いほど分かり、 そのことに思いがいくと自然と気が挫けてしまう彼女がいた。 無論、勝てないと分かっているからといって戦わないという選択肢はない。 ゼロが現れるまで、実際にブリタニアには負け続きだったし、カレンもそれを否定するつもりはない。 だけど、そこには命をかけても成し遂げたいという目的があった。 日本解放。 それこそが至上の美酒であり、戦いの原動力でもあった。 だが、今この場で自分が命より大事と掲げる大儀に繋がるものはない。 カレンにとって自分の命より重いとされるのは日本解放であり、それを導いてくれるゼロだ。 ならば、それがない今は戦力の差に圧倒される現状、 つまりこの強いられた殺し合いを受け入れてしまってもいいような気がする。 幸いなことにここにゼロが呼ばれている様子はない。 名簿にもそれは記されていなかった。 この殺し合いとやらをどうしても躊躇う理由はない。 勿論、名簿に記されていたルルーシュ、シャーリー、スバルといった生徒会メンバーの安否は気になる。 だがそれも彼我の実力差を思えば、しょうがないように思える。 それならば、あいつの言葉通りこの殺し合いにのってみよう。 心の中で大きく呟く。 しかし、カレンにはそれも疑問に思えた。 この殺し合いの目的が分からない以上は、例え勝ち残ったところで自身の身の安全は保証されない。 そしてそれが正解とばかりにプレシアは最後に残った一人の処遇について言及していなかった。 優勝者を元の場所に還してくれるのであれば、カレンにとって言うことはない。 自分がいなくても、ゼロがいれば日本解放をやってくれるという確信はあるが やはり自分がいれば戦力の足しにはなるだろうし、自負かもしれないがゼロも喜ぶと思うからだ。 それに何より亡くなった兄の為にも日本解放をこの目にしたいとカレンは思う。 だが、現状ではそれすらも判断できない。 つまりは、今の段階では殺すという積極的な行動はできないということだ。 するべきはこの殺し合いの目的、及び脱出ための情報の収集。 平行して主催者、参加者の情報も獲得といったところか。 他の参加者と一緒に脱出できるというのなら、別段文句はない。 しかし、それが叶わないとなれば、他の参加者との戦闘という選択肢が生じてしまう。 そうなった場合、有利に事を進めるためにそういった情報が必要なものとなるだろう。 そしてプレシアという名前だったか、あの女の情報があれば、 自分が一人で対峙した時にも足元をすくってやれるかもしれない。 ブリタニアにも似た蛮行をなす女だ。 それこそ情け容赦なく殺してやることが出来る。 当面の行動目標は決まった。情報収集だ。 勿論、既にこの殺し合いに乗った人がいるというのなら、容赦する理由はない。 自分ならそう遅れをとることもないし、黙して語らずといった手合いの遇し方も心得ている。 それに幸いなことに支給された武器の中には物々しい銃が含まれていた。 気に食わない女に支給された武器に頼るのも馬鹿らしく思えたが、 いつ襲われるともしれないこの状況では、文句も言ってられないだろう。 そしてそういった自分の気持ちを励ますかのように 林の中から光が自分の方に届き、人がいることを教えてくれていた。 カレンは警戒をしめしながらも情報を求めて歩いていった。 * * 「それでお前の名前は高町なのはといったか?」 「あ、はい」 「そしてこの殺し合いには乗っていない。確かだな!?」 「はい!間違いありません!」 屈託なく喋るなのはにカレンは警戒を解いた。 こんな子供に殺し合いが出来るはずがない。 そして同じ日本人がこんな所にさらわれているか事を知り、カレンの中には新たに主催者に対して苛立ちが沸いた。 それもこんな年端もいかない子供も攫ったとなれば、その怒りの度合いは計り知れないだろう。 「くそっ!あの女め!」 カレンは忌々しげに言葉を吐き捨てる。 だが一時の感情で目的を見失うほどカレンは未熟ではない。 すぐさま本題に話を移す。 「それでなのは!あのプレシアという女について何か知っているか?」 「あぁ、はい、でも……」 なのはには説明が躊躇われた。 管理局及び魔法の存在は秘匿事項だ。 それを知らない人にはそう簡単に話すべきではない。 だが、こんな差し迫った状況ではそんな暢気なこともいってられないような気もしていた。 「何だ!?知っているのなら話せ!人の命がかかっている状況なんだぞ!」 「……そう、ですよね」 捲くし立てるカレンに怯んだからというわけではないが、 なのは知っていることを話すことにした。 彼女が言ったとおり、今は人の命がかかっているのだ。 自分の悠長な判断によって、それを疎かにしてはならない。 「あのですね……」 そう言ったところで、なのはの口は閉じられた。 新たな参入者が現れたのだ。 奥にある木の陰から現れたのは小柄な女の子だった。 見たところ、10歳より少し上といった程度だろうか。 タイトな青色のスーツを身に纏い、 目を見張るような銀髪が目を引いた。 片目に眼帯をしているのがひどく印象的だった。 そして容姿に似合わない鋭い目つきが剣呑な雰囲気を放っていた。 その参入者を得て、カレンは警戒を示した。 成るほど、確かに目の前の女は高町なのはと同年齢ぐらいの少女だろう。 だが、その身には人を殺したともいえるどこか危なげな雰囲気があった。 カレンは咄嗟に銃を構え、相手を牽制する。 「止まれっ!」 「随分と無粋な挨拶だな」 だが、少女は平然とそれを受け流し、皮肉を交えた挨拶をした。 「悪いけど、こっちも命がかかっているんでね」 「ご覧の通り私は武器をもっていないだろう。それでどうやって人を殺せという。 有利なのはお前であって、不利なのは私だ。それで何故怯えるほどの警戒感を示す? 恐いのならどこぞに隠れていればよかろう」 少女は両手を軽く上に挙げて、殺し合いに乗っていないことをアピールした。 「あの、カレンさん、落ち着いてください」 「その女のほうがよほど立派だな。姉として……いや、年長者として恥ずかしくないのか?」 カレンはそれを明らかな挑発としてとった。 だが、そこでそんな言葉に乗るほどカレンは愚かではなかった。 銃をより力強く構え、質問する。 「では、確認する!お前はこの殺し合いに乗っていないんだな!?」 「ああ、乗っていない。姉が一人、妹が一人参加しているのだ。 どちらも私にとって大切な姉妹だ。彼女たちに危険が及ぶような真似は出来ない。 それに……だ」 そう言いながら、彼女はバッグを開ける。 俄かにカレンの警戒心の度合いは跳ね上がる。 「待て!何をする気だ!?」 「バッグを開けるだけだ」 少女は呆れたように呟く。 「そんなに心配ならそこの女に開けてもらっても構わない」 「なのはっ!」 「あっはいっ!」 なのははバッグを受け取り中を検める。 中から出てきたのは、工具に鍋やフライパンといった調理器具だった。 「私に支給されたものはどれもハズレだ。工具セットに料理セット、そして翠屋のシュークリームだったか? どれも人を殺せるようなものではない」 「ふぇっ?翠屋?」 なのはの呟きを無視してカレンは叫ぶ。 「なのは!一応中身を確認して!」 「はい!」 そして一通り確認して、なのははカレンに告げる。 「どれもその女の子の言ったとおりです」 「そう」 そこでやっとカレンは銃を下ろした。 「全く心配性だな」 「うるさいわねっ!」 そして少女はなのはからバッグを受け取る。 何故か右手にフライパンだけを残して。 「それはしまわないの?」 「何か手に持ってないと不安でな」 「呆れた。あんたも随分と心配性なんじゃないの!」 「違いない」 「それであんた、名前は何ていうの?」 「チンクだ」 「チンク?変わった名前ね。日本人でもブリタニア人でもない。 EUの人?」 「さあな。どこの国で生まれたかというのは知らないんだ」 「ふーん、あんたも苦労してるんだね」 「……それでそちらの女の子の名前は?」 「なのはです。高町なのは」 「高町……なのは、だと?」 その名前を聞き、今まで冷静とも言えたチンクは僅かに狼狽を見せた。 何故なら彼女の知っている高町なのはと目の前のなのはでは様相を異にしていたからだ。 確かにこのなのははチンクの知る高町なのはの面影を深く有していた。 茶色いの長い髪に、大きくてすんだ瞳。 そしてややもすれば同性でも見とれてしまうような愛らしい笑顔。 だが、それとて単なる印象の問題。 それがあの高町なのはであるという証明にはならない。 では、この少女が偽名を用いているということだろうか。 その考えは馬鹿らしく思える。 全次元において勇名、悪名問わずにその名を馳せる彼女の名前を 偽名として持ち出すには余りにデメリットが大きい。 何故なら名前と共にその顔も広まっているからだ。 そんな簡単にばれるような嘘をつくなど、それこそ馬鹿か狂人のすることだろう。 だが、彼女が馬鹿にも狂人にも見えないし、嘘を言っているようにも見えない。 それならば、彼女は一体何者であるか。 ドクター・スカリエッティの元にいるチンクには容易にその答えが思いついた。 この少女も恐らくはプロジェクトFの遺産なのであろう、と。 高町なのはは優秀といった言葉をそのまま体現したかのような魔導師だ。 なればこそ、ドクター以外にもどこぞの科学者や軍事機関が彼女のクローンを作り、 魔導師について研究をしたり、自軍の戦力の増強を図るというのは簡単に考え付くことだった。 そしてそれは名簿に載っていたもう一人のフェイトと八神はやてがクローンであると 喚起させるものであった。 「なるほど。お前が名簿に載っていたもう一人の高町なのはの正体か」 「ふぇ?もう一人の私を知っているんですか?」 チンクの思考を中断するように、なのはが訊ねてきた。 「お前は知らないのか……。成るほど」 「ちょっとあんた!何を知っているの!?」 そこにカレンが割り込んできた。 先ほど年長者としての心得を授けられたせいだろうか なのはを庇うように物言いだった。 「すまない」 だがチンクはそれを褒めるわけでもなく、一言謝るとすぐさまバックステップした。 そうして距離が出来上がると、彼女は右手に持ったフライパンをカレン目掛けて 軽く放った。 「一体なんのつもりっ……!!」 カレンは抗議の声を上げつつ、そのフライパンを手で振り払おうとした。 だが、彼女の声は最後まで発せられなかった。 「IS、ランブルデトネイター」 代わりに聞こえたチンクの静かな声 そしてそれと共にフライパンは爆発した。 振り払おうとした左手は爆発に巻き込まれ、 血と共にその肉を辺りに四散させた。 爆発の勢いはそれに留まることなく、 その余波によって身体までも後方に吹き飛ばされた。 その身は後ろの木へとぶつけられ、その衝撃の強さはカレンのうめき声によって知らされていた。 そしてそこに届けられる謝罪の声。 「すまない。気が変わった」 だが、そこに相手の許しをこうような姿勢はなかった。 「チンクちゃん!何のつもり?」 なのははカレンに気を配りながらも訊ねる。 何故チンクがこんなことをするのか。 ちゃんと話を聞いて、彼女の気持ちを知りたかった。 願わくば、ただの誤解による出来事だと信じて。 だけど、なのはの耳に届けられたのは余りに予想とはかけ離れていたものだった。 「お前がプロジェクトFの遺産であるなら、持ち帰った方がいいと判断しただけだ」 「何を言っているの?言っていることが分からないよ」 「本当に知らないのか?呆れたやつだな」 「だから何を言っているの!?」 「お前がクローンだということだ」 言葉と同時にチンクはバッグから取り出した鍋を放る。 チンクの言葉に一瞬呆けるなのはだったが、すぐさま目の前の状況を理解。 それを爆発物と警戒したなのはは急いでシールドを張った。 「ラウンドシールド!」 だが、鍋はシールドにぶつかって地面に転がるだけであった。 「えっ?」 そんな疑問の言葉と同時に背後から衝撃を受ける。 その正体はなのはの後頭部を狙ったチンクの回し蹴りだった。 人の身を超えた戦闘機人の攻撃。 幾らバリアジャケットを着込んでいるからといって大丈夫であるという保証はない。 なのはは地面に顔をぶつけながら、吹き飛んでいった。 だが仮にもなのはもPT事件と闇の書事件で戦闘経験を積んできた身。 攻撃を受ける瞬間、身体を包むフィールド系の防御魔法で更にバリアジャケットを補強し、ダメージを和らげていた。 尤もそれで全てのダメージを緩和できたというわけではない。 脳に残る衝撃がまだなのはの身体との連絡を妨げていた。 「なるほど。腐っても高町なのはか」 そう言いながらチンクはなのはに歩み寄る。 なのはもよろめきながらも立ち上がろうとするが、 まだ身体が言うことを聞かない。 そこに突如として響く銃声。 見ればカレンが地面に倒れながらも銃を撃っていた。 地面に伏せての片手での射撃に、左手欠損による痛み。 そんな条件による射撃など大した精度は持ち合わせていないだろう。 だが、それがどうしたとばかりにカレンは気勢を上げる。 「日本人をっ!!!嘗めるなーーーーっ!!!」 気合と共にカレンは引き金を立て続けに引く。 しかし、チンクはそれを冷笑に付した。 彼女は戦闘機人だ。 幾ら質量兵器といえど、 普通の銃弾程度でどうにかなるようでは、最初から作られはしない。 そしてそれを示すかのようにチンクは佇み、言葉を返す。 「戦闘機人にそんな銃など……」 無意味。そう言おうとしたところで、チンクの言葉は止まった。 身体には確かに銃痕が刻まれ、その銃弾は強化フレームに食い込んでいたからだ。 チンクは舌打ちしながら、咄嗟に手近な木の陰に隠れる。 そしてそんなチャンスを見逃すほど、高町なのはの信念はゆるくない。 襲い掛かる身体の反抗を無理やり意思の力で押さえ込み、 すぐさまカレンの元にかけより、飛行魔法を発動。 脱出の準備にとりかかる。 チンクとて稼動歴の長い戦闘機人。 大人しくそれを逃すほど甘くはない。 すぐさま鍋の蓋を投げ込む。 だがナイフほど手馴れた投擲武器ではない故 狙いは甘く、飛距離も出なかった。 投げられた武器は高町なのはとカレンに届くことはなかった。 「やはり慣れぬ武器で戦うべきではないな」 そんな自戒の言葉を呟く。 まだろくに戦闘経験を積んでいないであろうクローンだ。 労せず捕獲できると思ったが、存外、相手も戦いを知っているようだった。 それに加えて自身の身体への違和感。 どうやらこの会場において自分の身体はいつもと違うようだ。 気がつかぬうちに、こんな所に呼び出されたのだから、そういった処置がされてないと言い切れないだろう。 そしてそれと共に首輪の不快さが増し、チンクを悩ませた。 この殺し合いとやらに呼び出された時は随分と自分の不覚さを呪ったが、 幸いなことにクアットロもこの会場にいた。 彼女ならこの首輪を解析し、取り外せると思い、 本来の任務を優先させてしまったが、少し早計だったかもしれない。 こんな制限がかかっていたら、クアットロも怪しいものだ。 いらぬ敵を作ってしまったな。 チンクは自嘲する。 そして溜息一つ吐き、放り投げた鍋を拾い上げながら 最後とばかりに逃げてゆく高町なのはを見やった。 だが、不思議なことに高町なのははある一点に留まっていた。 一体何をしているのだ。 そう疑問に思うと同時に高町なのはの魔力集束を観測。 チンクの顔に冷や汗が浮かぶ。 「まさか!まさか撃つのか!?あんなところから!?」 次の瞬間、限界点までに達した魔力の光が咆哮をあげた。 「ディバイーーーン!!バスターーーーーーーーー!!!」 聞こえるはずのない彼女の声と共に 強大な光の帯が一直線にチンクに向かい、飲み込んでいった。 * * なのはとカレンは夜空を飛びながら、病院に向かっていた。 人を背負っているせいだろうか、なのははいつもより飛行を困難に感じていた。 だからといって速度を緩めるわけにはいかないが。 「すごいね、なのは。空を飛べるんだ」 「はい。後でちゃんと話しますから、今はゆっくりしていてください」 「すごいね、なのは。あの攻撃」 「はい。それもちゃんと説明しますから、ゆっくりしていてください」 「なのはは日本人なんだよね?」 「はい、そうです。高町なのは。正真正銘日本人です。だから今は喋らないでください」 なのはの言葉と同時に後ろに背負ったカレンは口を閉じた。 気絶したわけではないみたいだが、容態が気になる。 急いで病院に向かうべきだろう。 そしてなのはを悩ますもう一つの懸念事項。 『お前はクローン』 そんな言葉が胸に響く。 自分にはアリサ、すずか、フェイト、はやて、それに家族との記憶がちゃんとあるし、 自分はクローンではないとも思える。 だけど、アリシアのクローンである親友のフェイトもアリシアの記憶をちゃんと有していた。 だとしたら、自分の記憶も偽りなのだろうか。 自分の名前が二つあったということはどちらかがオリジナルで どちらかがクローンということなのだろうか。 私は一体誰なんだろう。 * * 倒れた木と巻き上げられた土砂の下でチンクは笑っていた。 「成るほど。クローンが作られるわけだ。 非殺傷設定でなければ間違いなく自分は死んでいただろう。 想像してみろ。あれが10人、100人ともなり砲撃を加えてくるのだぞ。 それこそ管理局をねじ伏せ、次元世界全てを席巻できるほどの戦力だ。 ドクターの切り札であるゆりかごもそれには耐えられるかどうか」 そんな光景を頭に浮かべ、思わず身震いするチンク。 勿論、父の言葉どおりFの遺産、タイプ・ゼロの捕獲は続ける。 だが、もしあの暴虐ともいえる力が妹に及ぶのなら躊躇いはない。 殺してやるぞ、高町なのは。 【1日目 深夜】 【現在地 E-8】 【高町なのは(A s)@魔法少女リリカルなのはA s】 【状態】疲労(中) 【装備】S2U@リリカルTRIGUNA s 【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2個 【思考】 基本 プレシアと話し合いをする 1.カレンの治療 2.仲間との合流 3.もう一人に私に会って…… 【備考】 ※制限に気がつきました ※自分がクローンではないかと思い悩んでます ※パラレルワールドという考えには至っていません ※プレシアの目的がアリシアの蘇生か、アルハザードへ到達するためにあると思っています ※S2Uがなのはの全力に耐えられるかは分かりません 【1日目 深夜】 【現在地 E-8】 【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反目のスバル】 【状態】疲労(小)、重傷(左手欠損) 【装備】ヴァッシュの銃 (0/6)@リリカルTRIGUNA s 【道具】支給品一式、ランダム支給品1~2個 【思考】 基本 元の世界に帰る 1.病院で治療 2.なのはから情報を得る 【備考】 ※なのはとチンクが普通の人間でないことに気がつきました ※ここが日本でないことには気がついてます ※異世界の存在には気づいてません ※参戦時期はSTAGE10でいなくなったゼロを追いかけていったところからです 【1日目 深夜】 【現在地 D-8】 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】疲労(大)、身体の幾つかに銃創(戦闘にそれほど支障はないです) 【装備】鍋 【道具】支給品一式、工具セット、料理セット、翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA s 【思考】 基本 姉妹と一緒に元の世界に帰る 1.クアットロに会い、制限の確認、出来れば首輪の解除 姉妹に危険が及ぶ存在の排除 2.Fの遺産とタイプ・ゼロの捕獲 3.機動六課を警戒 【備考】 ※制限に気がつきました ※幼なのはがクローンであると認識しました ※この会場にフェイト、八神はやてのクローンがいると認識しました ※ディバインバスターの直撃を喰らいました ※しばらくは動けません ※料理セットは一人暮らしの人に向けて販売されている簡単な調理器具の一式です ※参戦時期はスバルのISを喰らって、生体ポッドで修理中の時です Heart of Iron 本編時間順 Railway Track 特別捜査、開始 本編投下順 Railway Track それは最悪の始まりなの 高町なのは(A s) - GAME START! チンク - GAME START! カレン・シュタットフェルト -
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魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者 第21話 「・・・・・ん・・・・・ここ・・・は・・・」 小さい唸り声を上げながら、ナイトガンダムはゆっくりと目を開ける。 最初に目に入ったのは真っ白な天井ではなく、天上一面を覆う照明の光り。 それだけで、此処が何処なのか直ぐに理解できた。 「・・・・・アースラの・・・・医務室か?・・・・」 このような体験をするのはこれで二度目、一度目は無人世界でのシグナムとの戦闘の後、そして二度目になる今回は・・・・・ うっすらとあの時の事を思い出す。意識が徐々に無くなっていく感覚、海面目掛けて真っ逆さまに落下する自分、 自分の名を呼ぶ周囲の声、そして落下する自分を抱き止め、必至な表情で自分の名を呼ぶシグナム。 その直後、ヴィータがはやての名前を叫んでいたような気がするが・・・・思い出せない。 「三種の神器の負荷に、耐えられなかったのか」 三種の神器装着による負担は直ぐに、それこそ装備した瞬間から自分の身に起きていた。 以前よりも負担の効果がいち早く現われたのは、間違いなく装着前のダメージと疲労が原因、 あの時シャマルが回復魔法を施してくれなかったら、もっと早く気を失っていただろう。 それでも、苦痛は体から抜けることは無かったが耐える事が出来るレベルだった。 今回の失態は勝利に浮かれ、気を抜いてしまった自分が原因・・・・言い訳の仕様が無い。 「・・・情け無い・・・・これではサタンガンダムの時と同じだ・・・・」 自分自身を反省するかの様に、深々と溜息をつく。 その行為が落ち着きを取り戻させたのか、自然と辺りを見回し現状を確認する。 場所は間違いなくアースラの病室だろう、気を失った自分が運ばれる所としては当然の場所だ。 直ぐ隣には鎧と武器が置かれている、電子スピアが見当たらないが、あの戦いで砕け散ったのを思いだした。 そして嵌め殺しの窓から見える景色は漆黒の景色と、その中で輝く幾つもの光 「宇宙空間・・・そうするとまだ、地球の衛星軌道上にいるのか・・・・・」 場所の把握が終った所で、次に気になったのは、自分が気を失った後の事だが、それ以前に自分はどの位眠っていたのかもわからない。 あいにくこの病室には時計はあるものの、日付を確認できるカレンダーの様なものは無い。 先ほどまで頭を預けていた枕の隣には、連絡用の端末が置かれていたが、特に動けないわけではないので、誰かを呼びつけるという行為はしたくは無かった。 一度体を伸ばした後、後ろ髪惹かれる思いでベッドから抜け出し、ゆっくりと入り口へと向かう。 そして、ドアのセンサーがナイトガンダムを感知し、音を立てて開く。すると其処には 「ナイトガンダム!!よかった!気が付いたのか!!」 正に今から部屋に入ろうとしていたクロノが立っており、普段は見せない歳相応の笑みでナイトガンダムを迎えた。 「クロノ、丁度良かった。今から君達の所に行こうと思って」 「わかってる、君が倒れた後のことだろ?でもいいのかい、もう起きて?」 クロノの表情から、自分がどれほど心配されているのかが痛いほど分かる。 自然と頭を下げ謝ろうとするがその行動をクロノが制した。 「謝る必要は無いよ・・・・でも、その様子だと大丈夫みたいだね。此処じゃなんだから食堂へ行こう」 「そうですか・・・・決着は無事についたのですね」 「ああ・・・・あの後、奴は完全に消滅した。同時に町での異常も収まった・・・・怪我を負った者はいるけど死傷者0、正に一件落着だよ。はい、紅茶でいいかな?」 クロノが差し出した紅茶をお礼を言った後受取り、早速一口飲む。おそらく疲れているであろう自分の為に砂糖を多めに入れてくれたのだろう。 程よい暖かさと甘さが体に染み渡るのを感じる。 その満足気な表情に満足したクロノは、自分が飲むために持って来たコーヒーを一口啜った後、ナイトガンダムと向き合うように、椅子へと座った。 「彼女達・・・アリサ・バニングスと月村すずかは自宅へ帰ったよ。本当は数分前まで君の所にいたんだけどね、彼女たちも疲れているから 家に帰らせた。さすがに釈然とし無い表情だけど、なのは達の説得と後で事情を話すという条件付でね・・・・・・それと」 不意にクロノは席を立ちガンダムを真っ直ぐ見据える、そして、静かに手にしていたコップを置いた後、深々と頭を下げた。 「本当にありがとう。この事件、君のおかげで解決できた・・・・・・本当に感謝しきれないよ・・・・・」 クロノは本心からそう思っていた。 自分達がただ見ているだけでしかなかった闇の書の闇との戦闘、彼は犯されそうになったフェイトを助けてくれた。 そして根源である敵に致命傷を与え、仲間割れ寸前の皆をまとめてくれた。そして諦めかけた自分に戦う力を与えてくれた。 戦力としても、精神的な支えとしても、ナイトガンダムは皆を助けてくれた。 この勝利は間違いなく彼がいてこそ・・・・・・クロノはそう信じて疑わなかったが、当のナイトガンダムはその様な事を全く思ってはいなかった。 「いや、今回の勝利は、皆が力を合わせたから得られたものだよ・・・・・・この事件に関係した人達・・・・・・誰一人が欠けても 解決など出来なかった。だから私だけではない、なのは達やヴォルケンリッターの皆、そしてアースラのクルーやクイント殿達、 そしてクロノ、この勝利は君や皆のおかげだ、それを忘れないで欲しい」 一瞬クロノはポカンとしてしまうが、直ぐに彼の言葉の意味を理解し、はすかじい気持ちになる。 確かに彼の言う通りだ・・・・・・自分は何処かで彼を、ナイトガンダムを完全無欠のヒーローだと思っていた。 自分を含め、彼をヒーローと称えるものは多くいる、決して過小評価ではないと自信を持っていえる。 だが、現実はナイトガンダムの言った通りだ、この事件、関わった皆がいてこそ解決できた。誰が欠けても最悪な結果を招いていたに違いない。 結局自分たちはナイトガンダムをただヒーローとして持ち上げたかっただけだ・・・・・・・皆の健闘を無視して 「(まったく・・・僕もまだまだ子供だな・・・・)その通りだ、まったく君には叶わないな」 自身の恥を誤魔化すかの様にクロノはコーヒーを啜る。 そんな歳相応の少年の態度が微笑ましかったのか、ナイトガンダムも自然と顔を綻ばせ紅茶に再び口をつけようとするが ふと気になった気とができたため、手をとめ、クロノに尋ねる。 「そういえば、皆は何処へ?はやての病室かい?」 ナイトガンダムにとっては何気ない質問、だが、クロノは答える事無く一瞬で表情を曇らせ自然と俯く。 彼の突然の表情の変化から、直ぐにただ事ではない事は理解できた。先ず脳裏に浮かぶのは知る人物の身の安否、 だがクロノは先ほど『怪我を負った者はいるけど死傷者は0』と確かに言った。彼が嘘を言う筈が無いので、この考えを斬り捨てる。 他に可能性がありそうな事を考えようとするが、それを口に出す前にクロノの口が開いた。 「・・・・・彼女も、君に会いたがっていた・・・君にお礼を言いたいと言っていた・・・・・もしかしたら神様が機会を与えてくれたのかもしれないな」 普段の自分なら決して言わない様なメルヘンチックな言葉。だが、消えゆく彼女の為に いるかいないかも分からない神がチャンスを与えてくれたと信じたい。 「・・・・・今ならまだ間に合うだろう。来てくれないか・・・・・彼女の別れの儀式に」 八神はやてが自宅で目覚め、周りの迷惑を無視して車椅子を漕ぎ、ようやく目的の場所までたどり着いた時には、すべてが終ろうとしていた。 はやては声を荒げ涙を流し、必至に彼女『リインフォース』を引き止める。 破壊する必要は無い、自分が抑える、こんな事をする必要は無いと 「・・・・・主はやて・・・・・」 はやてのその思いに、リインフォースは必至に固めた決意を砕きそうになる。 今すぐはやてを抱きしめたい、共に生きたいと叫びたい、そんな思いに駆り立てられ、自然と右足が一歩出てしまう。 だが、踏み出したのは一歩だけだった。一歩踏み出した直後、我を取り戻し、自分自身を戒めるかのように拳を握り締め決意を改めて固める。 「私は・・・・貴方に綺麗な名前と心をいただきました・・・それだけで十分です。騎士達も貴方の側にいます。 私の魔力や蒐集行使のスキルも、引き継いでいる筈です。ですから私は・・・・笑って・・・逝くことが出来ます」 「・・・・っ・・・・話聞かん子は・・・嫌いや!!!そもそも何て消える必要があるんや!!もう何も・・・・心配する事なんかないやんか!!! あの闇は倒した、もう今までの様な悪夢はおこらへん・・・・今までの罪もこれから償えばええ・・・・消える必要なんか・・・何処にもないやんか!!!!」 声を荒げていたため、嗄れた声になりながらも必至に彼女を説得する。だが、リインフォースはその思いを、首を静かに横に振る事で否定した。 「確かに、あの闇は消えました・・・・ですがあれが防衛プログラムだという事には変わりはありません。私が生き続ければ 防衛プログラムは・・・・あの闇は新たに作り出される。元のプログラムが既に無い今、修復は不可能・・・・・もう、この手しかないのです。 私は・・・・主である貴方の危険を払い、貴方の命と幸せを守る、最善の方法を取らせてください」 理屈は嫌でもわかった。同時にリインフォースが取ろうとしている方法が最も最善だという事も理解できた。 もし理解できていなければ駄々をこね、気を紛らわせる事が出来たかもしれない・・・・だが、それが出来ない。 何が夜天の主だ・・・・・大事な家族一人すら・・・幸せに出来ないなんて・・・・・ 「泣かないでください・・・・・我が主」 そんなはやての気持ちを察したのだろう、リインフォースは再び歩み始める、ゆっくりとはやての元へ。 そして、彼女の頬にそっと手を載せ、優しく微笑んだ。 「大丈夫です、私は・・・・・もう・・・・世界で一番・・・・幸福な魔導書ですから」 泣きながらも必至に自分の名を呼ぶはやてに、リインフォースは改めて幸せを心から感じる。 名前と温かな心をくれた主、自分の為に泣いてくれる主、自分には大きすぎる幸せ。 「(出来れば、この幸せをずっと、かみ締めたかった)」 ゆっくりとはやての頬から手を離し、立ち上がる。そして背を向け、魔法陣の中心へと戻ろうとした時 「待つんだ」 否定を許さない凛とした声が、はやての泣き声しか聞こえない丘に響き渡った。 その声に全員が振り向く、聞こえた方向ははやての後ろから。 ザクッザクッと雪道を踏みしめる音と共に、その声の主はゆっくりと姿を表した。 「・・・騎士ガンダム・・・目覚めたのか」 誰よりも早く、リインフォースは声の主、ナイトガンダムを笑顔で迎えた。 彼には心からお礼を言いたかった、消える前に話をしたかった。 叶わないと思っていた願いが叶った事に、内心でいるかもわからない神に感謝の言葉を述べる。 「・・・・・・・・」 だが、ナイトガンダムはリインフォースを一瞥した後、何も言う事無く、ゆっくりと視線をなのはの方へと移す・・・・・そして 「なのは・・・フェイト・・・・・待ってくれないか」 彼のこの言葉は、なのはを含め、この場にいる全員が予想できた。だからこそ、それ程驚かずにその言葉を受け止める事が出来る。 おそらく此処に来たと言う事はクロノから事情を・・・それこそ今何が行われようとしているのかを聞いてきたのだろう。 彼の性格は付き合いが短いヴォルケンリッターやリインフォースでも理解できる、間違いなくこの儀式を止めようとする筈・・・だが 「私が・・・代わりにやろう」 その言葉は誰もが予想する事ができなかった。 「「えっ?」」 「なっ・・・ガンダムさん!!」 なのはとフェイトは声を揃えて驚き、ヴォルケンリッターの皆はただ唖然とする。ただ困惑するだけ、互いに顔を見合わせ、何を言っていいのか口ごもる。 そしてはやては最後の希望が砕かれような表情で固まってしまった。 はやてから見れば、訪れたナイトガンダムは自分と同じく、リインフォースを止めてくれる存在だと信じていた。 だが現実はその逆、自分の様に止めるでもなく、シグナム達の様に見守るわけでもない、彼女に死を与えに此処まで来た。 「・・・・・・わかった、お願いする。二人とも、悪いが下がってくれ」 リインフォースは、その申し出を快く受け入れた。 結果的には自分が消滅するという事は変わらない、それなら自分が最も恩義を感じている相手に葬ってもらいたい。 最初で最後の我侭、これ位は許して欲しいと思う。 彼女の言葉を受取ったなのはとフェイトは、それぞれデバイスを降ろし、足元に展開していた魔法陣を消す。 そして邪魔にならないようにゆっくりと後ろへと下がった。 それに対し、ナイトガンダムはゆっくりと前に進む・・・・・・迷う事無く、一歩一歩ゆっくりと。 「なぁ!ガンダムさん!!やめて!!お願いや!!止めてぇぇぇ!!!」 既に自分の前へと進んでしまったナイトガンダムを止めようと、はやては車椅子を動かし追いつこうとするが、積雪で隠れた石に前輪を取られ転んでしまう。 雪が積もった柔らかい地面とは言え、受身も取ることができなかったため、叩きつけられた衝撃がはやてを容赦なく襲い自由を奪う。 せめてもと精一杯手を伸ばし、『やめて』と何度も懇願するが、ナイトガンダムは聞き入れようとはしなかった。 リインフォースから約二メートルほどの距離を開け、ナイトガンダムは立ち止まる。 そして左脇に抱えるように持っていた石版を掲げた。 『ONOHO TIMUSAKO TARAKIT!!!』 石版はナイトガンダムの手を離れ、ゆっくりと浮き上がる、そして光と共に融合を開始した。 「あぁあああああああああああ!!!」 三種の神器装着時に起こる激痛、病み上がりの体には十分なほど堪える。 それでも『彼女』をこの世から消すには・・・・・この事件を本当に終らせるには必要な力、今までの装着時と同様、 確固たる目的を持てば、この苦痛も十分耐えられる。 盾が『力の盾』に、剣が『炎の剣』に、そして身に着けている鎧が『霞の鎧』へと変化していく。 そして最後の仕上げと言わんばかりにスパークを立てながら霞の鎧のバイザーが装着され、中央のくぼみに真紅の宝石がはめられた。 闇の書の闇との戦いでその姿を現したフルアーマーナイトガンダムが再び姿を現す。『彼女』をこの世から消すために。 炎の剣を横に振るい炎を纏わせる。そして、肩の高さまで持ち上げた後ゆっくりと引き、リインフォースを突刺す構えを取る。 その光景を最後にリインフォースはゆっくりと瞳を閉じる。 あとはこの切っ先を自分の胸目掛けて突刺せば良い、そうすればその美しい炎が焼いてくれる、もう阻む物は何も無い。 「主・・・・・貴方に幸福があらんことを」 瞳を閉じる瞬間彼女が見たのは、涙で目を晴らした主の姿だった、最後に主を悲しませてしまった事は心残りだが 今更慰めの言葉を投げかける事など出来ない・・・・・・そして 「っ!!」 ナイトガンダムが地面を蹴る、そして飛び上がり、何の躊躇も無く、炎の剣をリインフォースの胸に深々と突刺した。 一切の遠慮も無ければ一言の言葉も投げかける事無く、まるで敵を倒すかのように淡々と行われた作業。 誰もが、あまりにもあっけなく、あまりにも簡単に行われたこの作業にただ呆然とするばかり・・・・だが 「あ・・・・・・あああああああああああああ!!!!!!」 明らかな苦しみの叫びに、全員が現実に引き戻される。 その声の主、リインフォースは先ほどまで炎の剣が刺さっていた胸を掴み、喉が張り裂けんほどの叫びを上げながら蹲る。 その直後、激しい炎が包み込み、彼女を灰にせんとばかりに燃え盛った。 「・・・・これ・・・で・・・・いい・・・・」 おそらくこの炎は、『闇の書の闇』と同じく、自分を完全に燃やしつくすだろう。 これでいいのだ・・・・・この苦しみは自分への戒めと思えば納得が行く。 先ほどまで聞こえていた主の叫びも徐々に聞こえなくなり、それと同時に痛みも引いて来る・・・否、これは感覚がなくなっているだけだ。 まるで自分という存在が焼き尽くされていく様な感覚、それがジワジワと来るのだ・・・・・堪った物ではない。 「ああ・・・・これは・・・・・」 「これは余り経験したくない体験だな」何気なく呟こうとしたが、意識の欠落がそれを許さず、言葉半ばで彼女の意識は完全に途切れた。 「・・・・・・ス・・・・-ス」 何かが聞こえる・・・誰かの声が聞こえる 「・・・・ォース・・・・インフォース・・・・」 聞き覚えがある声だ・・・・・何かを必至に繰り返して・・・叫んでいる・・・・・ 何を叫んでいるのだろう・・・・・否、覚えがある・・・・・・徐々にはっきりとしてくる意識と共に、その意味を理解する。そう、それは 「リインフォース!!」 「私の・・・名前だ」 意識の覚醒と共にゆっくりと瞳を開ける。 まず目にしたのはどんよりとした空、そして休み無く降り続ける雪。 その内の一粒が目に入り、瞳に刺激を与える。だが、その刺激により彼女の意識は一気に引き戻された。 仰向けに寝ていた自身の体を起こし、あたりを見渡す。 最初は此処なのか、『あの世』といわれている場所なのかと思ったが、目に写るのは先ほどまでいた海鳴市の丘の景色そのもの、 そして自分を驚きの表情で見ている幼い魔道師達と守護騎士達、 結論を出すにはそれで十分だった。自分は消えておらず、未だにこの世にいるという事だ。 「騎士ガンダム・・・・・これは一体」 剣が突き刺さった感触、そして体を焼かれる激痛、意識が徐々に消えていく感覚、そのすべてを経験したのに自分はまだ生きながらえてる。 彼が持つ炎の剣の効果は自分も目にしている、だからこそ、自分が生きている事は可笑しい。 考えられる事としては、直前にナイトガンダムが情けをかけたとしか思えない。 「・・・情けを・・かけたのか」 「いや、違う。私は確かに彼女を消滅させた・・・それは間違い・・・な・・・い」 体をふらつかせながらも、どうにかたたらを踏み無理矢理バランスを取る。やはり体が全快していない今では、短時間の装着にも体の負担は大きい。 意識を持っていかれる前に、三種の神器を石版に戻し、元の鎧の姿へと戻った。説明をする前に倒れては元も子もない。 「彼女って・・・まさか!!?」 ナイトガンダム以外の誰もが言葉の意味を理解できない中、八神はやてだけがいち早くその意味を理解した。 彼が言う『彼女』という言葉、そして彼にしては容赦の無い一撃、思い当たる節は一つしかない。 「闇の書の闇・・・・いや、防衛プログラムだけを・・・・・消したんか」 「そんなはずは無い!!」 そのはやての言葉に全員が驚き、一斉にリインフォースへと目線を向けるが、リインフォースだけが、その答えを大声を出し否定した。 確かに炎の剣はあの時、シグナム達のリンカーコアに取り付いた闇の書の闇の一部だけを燃やしつくすという とんでもない芸当をやり遂げた。だか自分の場合はそれが当てはまらない。 『闇の書の闇』といわれている存在は自分というプログラムの一部、シグナム達の様に後から寄生した異物を排除する事とはわけが違う。 「あれは・・・奴は・・・私の一部だ!!それだけを消すなど・・・・・それに奴はまだ活動すらしていない!! ありもしないものを消したなど・・・・・バカな冗談は(冗談ではない」 自分でも気が付かないほど取り乱しているリインフォースを、ナイトガンダムは落ち着かせるように優しさを含んだ声で諭す。 その言葉が聞いたのか、未だに納得がいかないと言いたそうな視線を向けるものの、口を噤み、大人しく話を聞こうとする意思を示す。 「確かに、私は消そうとした・・・・・いや、確実に消した、管理者プログラムである君を。リインフォース、あの苦しみから、 君は体が燃える苦痛を経験した筈だ。それが確実な証拠」 「ああ、確かにそうだ。なら、此処にいる私は何だ!?管理者プログラムである私を燃やし尽くしたのなら、此処にいる私は何なんだ!!」 その問いに、ナイトガンダムは沈黙で答える。 決して答えられないわけでもなければ、焦らしているわけでもない。答えは直ぐに口に出来る、だがそれは彼女自身に気付いてほしかったからだ。 だか普段ならまだしも、自分に起こっている出来事に困惑する彼女にはその答えに行き着くには時間が必要だった。 沈黙して一分足らず、ナイトガンダムはゆっくりとその答えを口にする、それはとても簡単な答え 「君が・・・・祝福の風、リインフォースだからさ」 言葉の意味が理解できないのか、ただ呆然とする彼女にナイトガンダムは近づく。 そして彼女の手をとり、落ち着かせるように優しく握り締めた後、ゆっくりと話し出した。 「君は、八神はやてと出会い、彼女の優しさに触れた・・・・そして彼女に深い愛情を抱いた、君だけじゃない、ヴォルケンリッターの皆もだ。 そして君達ははやてからとても大切な物を貰った・・・・・・暖かな心という、とても大切な物を」 ナイトガンダムの言葉の意味をいち早く理解したはシャマルだった。 以前の・・・否、今までの主は自分たちを駒の様に使ってきた。 休む暇も与えずに戦地に送られ、ただの道具として扱われた日々、時には性的奉仕を強要されたこともあった。 いまでは考えただけでも寒気がする出来事。だが、そう感じるこれらの事柄を、当時の自分達は何の文句も無く行ってきた。 理由は簡単、『嫌悪感』や『拒否』などの感情が欠落していたからだ。 おそらく当時から持っていた人間らしい感情といえば他のヴォルケンリッターを想う『仲間意識』だけ・・・否、今にして思えばそれも怪しい。 今までの主が自分達を駒と見るように、自分自身・・・いや、ヴォルケンリッター一人ひとりがそれぞれを『都合の良い戦力』としてしか見ていなかったと思う。 昔の自分も、ヴィータを心配する事はあったが、それは『仲間』として慕う物ではなく、 『駒』として使えなくなるのが・・・主の命に支障をきたすのを恐れての事だったと今では思う。 だが、今の自分はそうではないとはっきり否定できる。 夕食前にアイスを食べようとするヴィータを怒ったり リインフォースとの別れを悲しんだり 夕食後、バラエティ番組を皆で見て笑ったり 今では当たり前の様に表現しているこれらの感情を持っているのが良い証拠だ。 自分達だけでは到底得られなかった・・・・・・否、必要とすらしていなかっただろう。 だが、笑うこと、悲しむ事、怒る事、それらの大切さを教えてくれ、自分達を『ただの駒』から『人』として変えてくれたのは、 ナイトガンダムの言う『暖かな心』をくれたのは、他の誰でもない今の主、八神はやてだ。 「暖かな・・・心・・・・」 「ああ、君ははやてを愛おしく思っている、そして命に代えても守ろうとした。それは『使命』や『命令』などでは決して無いはずだ。 『リインフォース』という名前と『温かな心』を貰ったその時点で、君はあの闇の書の闇の様に、管理者プログラムという器では無くなった。 私が炎の剣で焼いたのは管理者プログラムとしての部分・・・・彼女が生れ落ちるそのもの。これでもう何も心配する必要は無いよ」 ナイトガンダムの手の暖かさと優しい口調で、どうにか落ち着いて聞くことは出来た。 だが正直な所半信半疑だ・・・・・彼が嘘をつくとは思えないが、本当という確証も無い。 「信じられないのは理解できる・・・なら、ユニゾンしてみるといい・・・・・・はやてと」 ナイトガンダムも、彼女が完全に信用していないのは顔を見て直ぐに理解できた。だからこそ彼女にユニゾンを・・・主である八神はやてとのユニゾンを進める。 管理者プログラムそのものには防衛プログラムの他にも本来の融合型デバイスとしての機能『ユニゾン』も含まれている、 もし彼の話が本当なら、ユニゾン機能は失われている筈。 一度無言で頷いた後、ゆっくりと歩み始める。一歩一歩、はやての元へと。 皆が見守る中、自分を真正面から見つめるはやての元まで近づいたリインフォースは、瞳を閉じ一度深呼吸、そして覚悟を決める。 「主はやて・・・・・お願いします」 目の前で目を瞑り、自分との融合を願うリインフォース。 自分がやる事は簡単、彼女とのユニゾンをおこなえばいいだけ。 もし融合できなければナイトガンダムの言った事が本当になる、だがもし融合できてしまうと・・・・・ 「(・・・・何・・・うたがっとるんや・・・・馬鹿・・・・)」 否、何を不安がる必要がある。何故疑う必要がある。 彼は私達に力を貸してくれた、操られたあの子達を解放してくれた・・・・助けられてばかりだ。 それなのに、自分は何も恩返しをしていない所か彼を信用しようともしなかった。 内心で自分自身を罵倒した後、ゆっくりと息を吸う。 「ほな・・・・・・いくで!!」 知識などは既に頭に入っている、融合失敗はありえない、出る結果は融合できているか、何の反応も無いかだ。 心の中で祈る・・・・・いるかもわからない神様という人物に・・・・・・そして 『ユニゾン!!イン!!!』 はやての叫び声が響き渡った直後、訪れたのはユニゾン特有の眩い光でもなければ騎士甲冑に身を包んだはやてでもない。 ただ静かに雪がに振り静寂が辺りを支配する。 「・・・・・これで、間違いは無いはずだ」 静寂を破るナイトガンダムのその一言、後に『最後の闇の書事件』と言われるこの事件は、こうして終焉を迎えた。 リインフォースははやてを抱きしめ涙し、そんな彼女を子供をあやすかの様にはやては頭を優しく撫でる。 本当ははやても彼女の様に泣きたいのだろう。だが、幼いながらも八神家の大黒柱、そして『主』としての立場が、それを思いとどまらせる。 それでも、流れる涙を抑える事は出来なかった。閉じた瞳から流れ出る涙を拭わずに、はやてはリインフォースを出し決め、優しく頭を撫で続けた。 「全く・・・まさかこうなるとはな」 シグナム達も、はやてとリインフォースと共に喜びを分かち合いたかったが、今の二人に混ざるのは酷なことだと思い断念。 空気を読まずに近づこうとするヴィータの襟首を掴んだシグナム達は、この奇跡を起こした張本人の元へと向かった。 だが、当のナイトガンダムは、シグナム達と同じく二人の様子を伺ってはいたが、急にふらつき、地面に手をついてしまう。 その突然の自体に全員が不安に掻き立てられ、自然と駆け足となった。 今にも地面に倒れそうになるナイトガンダムを、シグナムが咄嗟に抱きかかえ、即座にシャマルに回復をする様に伝える。 その直後、ナイトガンダムに優しく癒しの風、湖の騎士に恥じないその効果は彼の体から疲労を抜き取ってくれる。 「やはり三種の神器の負担か」 「・・・・・ああ、情け無いことに・・・・・どうやら、まだ使いこなせてはいないようだ・・・・」 起き上がろうとするが、どうにも体が満足に動かない、それ所か急に睡魔が彼を襲う。 多少の眠気ならどうにでもなるが、疲労とシャマルの回復魔法の心地よさには勝てず、徐々に意識を手放してゆく。 「何言ってんだよ!!あんな無茶苦茶な装備品を連続して使ったら、普通は体がもたねぇぞ!使いこなせる云々の問題じゃ・・・って、ナイトガンダム?」 自分の異変にさすがに気付いたのだろう、しきりに何かを話しているが頭が理解しない。 視界もおぼろげになり、リインフォースとはやてがこちらに近づく姿を確認した直後、ナイトガンダムは完全に意識を失った。 「此処は・・・・・何処だ」 ナイトガンダムが意識を取り戻したのは、先ほどまで自分が寝ていたベッドでもなければ、雪が降りしきるあの丘でもない。 ただ真っ白な光に包まれた空間だった。 体は飛行魔法を使っているかのように浮いているが、不思議と独特の浮遊感は感じられない。 咄嗟にこのような状態になる前の出来事を思い出すが、あの後、意識を失った時点で記憶は完全に途切れている。 「一体・・・どうしたら・・・・」 今という現状が理解できないため、どうしたらいいのか途方にくれる。 叫ぼうにも返事をする物は誰もおらず、辺りを見回しても同じ景色が広がっているだけ 考えられる可能性としては二つある。一つはあの後意識を失った事から、此処が夢の中という事、 そして残りの一つが、自分は死んでしまい、此処が『あの世』と呼ばれている場所という事。 後者に関しては、ネガティブな考えは持ちたくは無いが、ありえないことではない。 普段だったら行動を直ぐにでも起こすのだが、このような状態では如何したらいいのかまるで分からない・・・・・そんな時であった 「っ!!!?誰だ!!!」 後ろから感じる気配に気付いたのは・・・・・・・ 「騎士ガンダム!!良かった・・・・・気が付いて」 ナイトガンダムが気絶した後、直ぐに彼はアースラへと運ばれた。 その場にいた全員が彼の安否を心配したが、目覚めてからの車椅子での全力失速、そしてリインフォースが助かった事で襲った安心感、 更に闇の書の闇との戦闘での疲れが抜け切っていないはやては、彼の後を追う様に意識を失った。 幸いただの過労というシャマルの診断から、はやては自宅へと帰ることとなり、ヴォルケンリッターも主に同行することとなった。 だが、リインフォースは彼にお礼が言いたいという事もあり、ナイトガンダムと一緒にアースラへと行く事に決め、 なのはとフェイトもまた、彼女に同行することとなった。 もう散々目にした天上を見つめ、直ぐに体を起こす。 まず目にしたのはリインフォースの安心した笑顔、本当なら直ぐにでも『心配ない』『大丈夫』と 自分が大丈夫だという事をアピールするのだが、今はそのような気分ではなかった。 「・・・あれは・・・・・間違いないのか?」 あの時聞いた事、それが真実なら・・・いや真実だろう、もしそうなら、自分は・・・・・・ 「どうした?やはり体調が優れないか?」 表情を覗き込むように顔を近づけるリインフォースに、ナイトガンダムは無理矢理現実に引き戻される。 同姓が見ても見惚れるほどの美しさ、そのような印象を持つのはMS族でも変わらない。 「(・・・美しい人だ)あ・・・ああ、大丈夫、少しぼおっとしてしまっただけだよ」 笑顔で自分の健全をアピールするナイトガンダムに、リインフォースは安殿の溜息をつく。 「本当は高町なのはとフェイト・テスタロッサもいたのだが、二人とも明日は『シュウギョウシキ』という物があるらしい 。 クロノ執務官が多少強引にだか帰らせた。二人とも渋ってはいたが、お前が気絶しているだけという事がわかるとしぶしぶ了承していたよ」 「そうか・・・・リインフォース、君はいいのか?はやての所に行かずに」 「主は今はシグナム達がついている。私達の処分も現状では保留の状態、特に行動は制限されていない・・・・・全く人がいいのか、杜撰なのか。 だが、感謝しなければいけないな。騎士ガンダム、こうしてお前と話ができるのだから」 八神はやての元へと転送されてから夢にまで見ていた・・・・否、叶わないと確信していたからこそ、 夢を見ることすら諦めた主や仲間達と共に歩める事が出来る時間。 何者にも変えがたいその贈り物を与えてくれた異世界の騎士に彼女は心からお礼が言いたかった。 「騎士ガンダム・・・・・本当に、なんとお礼を言ったらいいのか・・・・・」 情け無いが、正直何と言っていいのかが分からない。気持ちは十分すぎる程あるのだが、それを口に出して言えるほど彼女は器用ではなかった。 あまりの自分の口下手さに情けない気持ちになる。 「お礼なら必要ない。当然のことをしたまでだから」 一切見返りを求めず、さも当然の様に言い放つナイトガンダムに、彼女は言葉を詰まらせてしまう。 否、何となくではあるが予想はできた。彼は決して見返りは無論、感謝の言葉も必要とはしていないと。 だが、それでは自分の気が収まらない。 「むしろお礼ならクロノに言ってほしい。君の状態や詳しい状況などを教えてくれたのは彼なんだから。 それに、君の束縛を解いたのは三種の神器の力によるもの、私は何もしていないよ」 「馬鹿を言うな!行動し、結果を出してくれたのはお前だ・・・・・そんな態度をとって貰っては・・・・困る」 昔の主達の様に、もっと偉ぶったり、何か見返りを求めてくれたほうが良かった。 だが、主はやてといい騎士ガンダムといい、そのような事は全くしない・・・・・ストレートに言うと物欲が全く無いのだ。 否、おそらく『気にしないで欲しい』というのが彼の願いなのだろう。 相手を助けるのに理由などつけず、自身の命も顧みない、そして対価となるであろう見返りや感謝の言葉すら求めない。 闇の書の闇が言った様に、彼には『闇』の部分が全く無い・・・・・・・聖人君子も真っ青だ。 「私は君を救えたこと・・・・・それで十分だよ、だから気にしないで欲しい」 笑顔でそう言われると、もう諦めるしかない。 それに彼のことだ、こちらから『何かしてほしい事は無いか』などと聞いたら間違いなく困るだろう、感謝している彼を困られるなど本末転倒だ。 「・・・分かった・・・お前がそう言うのなら・・・・・・・騎士ガンダム、やはり具合が悪いのか?」 何故だろう・・・・彼の表情が暗い様に見える、まるで何かを隠しているかの様な やはり体調が悪いのかと思ったのだが、診断の結果ただの疲れだという事は湖の騎士から聞いている。 笑顔を向けてはいるが、どうにも何かを・・・・・まるで自分の中の動揺を隠しているかの様に感じる。 「?いや、そんな事は・・・・ないよ。どうしたんだい?」 明らかに嘘だ、おそらく嘘をつくのが下手なのだろう、はたから見ても直ぐにわかる、 直ぐに目をそらしたのが良い証拠だ。 多少好奇心というのもあるが、恩人である以上、自分では役不足ではあるが相談にはのってあげたい。 だからこそ再び尋ねようと口を開いた瞬間、 「クロノだ、入るよ」 彼女の行動を阻止するかの様なタイミングで、ノックと共にクロノが入ってきた。 前へ 目次へ
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魔法少女リリカルなのは外伝・ラクロアの勇者 最終話 診断の結果から、ナイトガンダムはただの疲れによる過労だという事がわかった。 その程度ならと、クロノは月村家で療養したらどうたと進めたが、ナイトガンダムはその申し出を断る。 そして、急に電子スピアがどうなったのかをクロノに尋ねてきた。 自分の記憶が正しければ、あの戦いの時に握りつぶされ、破片諸共封鎖結果以内に置きっ放しだった筈、 おそらく局員の人達が処分してしまったのだろうと諦めてはいたが、答えは思いがけない物であった。 「電磁スピア?・・・ああ、君が持っていたスピアか。あれなら局員が回収したよ、バラバラで、此処では修復は無理だったから先に本局の方に転送して送っておいた。 元の形に戻すことは直ぐに出来るらしいけど、ここでは見かけない魔法的な処置が施されているから、完全には無理らしい。 ちなみに君のスピアなんだが、いっそ僕達のデバイスの様に改造してみてはどうかと修理を担当した本局メンテナンススタッフが提案しているんだが・・・どうだろう?」 「・・・・・申し訳ないけど、改造はやめて欲しい。おそらく私には使いこなせないだろうから、できれば直ぐにでも欲しいのだが・・・無理かな?」 「いや、問題ないよ。直ぐにでも転送できる。でもアースラも今本局に向かってるから、それまで休んでいたらどうだい?後数時間位で着くから それまで眠っているといいよ。地球についたら説明とかで色々ゆっくりは出来ないだろ?」 確かにクロノの言う通り、地球についても説明などでゆっくり出来ない可能性は高い。 「(それに・・・考えたい事もある・・・)ああ、お願いするよ」 ナイトガンダムはクロノの行為に甘えることにした。 「・・・・クロノ執務官・・・・・聞きたいことがある」 お手本の様に規則正しく歩く二人、ただ靴音だけがやけに煩く響く。 向かう先はそれぞれ違う、クロノはブリッジへ、リインフォースは転送装置室へ 途中まで道は一緒だったので、リインフォースは主や自分達の今後の事について色々と聞くことにした。 「保護観察処分という決定は既に出ている。あとは君達したいだね」 「そうか・・・・色々手を回してくれたのだろう?本当にすまない」 「何、僕はただありのままを言っただけさ・・・・・それより、気付いたかい?」 その意味をリインフォースは直ぐに理解した。同時に、自分の考えが思い過ごしではない事に確信を得た。 自然と足を止める二人、そしてほぼ同時に先ほどほどまでいた部屋、ナイトガンダムの病室に目をやる。 「彼は何か隠している・・・・・・自分では隠し通せているつもりだろうが、彼はそういう行為は下手の様だ」 「ナイトガンダムとの付き合いは君達よりは長いから分かるよ、嘘をつくことに異常に罪悪感を感じているから・・・・・・誰が見てもわかる。 問いただせば直ぐにでもボロを出すだろう、だけど彼が嘘までついて何かを隠すという事は、よほど重要なことなのだと思う。 なら待つしかないさ・・・・・彼が本当の事をいってくれるまで」 数時間後、アースラは本局に着き、乗務員がせわしなく動き回る。 ナイトガンダムはそんな彼らの邪魔にならない様に人ごみを避け、クロノから教えられたメンテナンスルームへと向かう。 事前に手続きなどをしていてくれたのだろう、眼鏡をかけた少女から難無く電子スピアを受取りお礼を言った後、直ぐに転送装置室へと足を運ぶ。 既に転送装置室までの道順は頭に入っているため、迷う事無く進むことができた。 すれ違う局員に挨拶をしながら順調に進む。すると、前方から見た事のある人物が近づいてきた。 服装はリンディ達が着ている管理局の制服の色違い、茶色の制服を身に纏った紫の髪の女性 両腕には彼女と同じ髪の毛を持った赤ん坊がすやすやと眠っている。 「・・・・・・・・」 その光景を見たナイトガンダムは、赤ん坊を起こしてはいけないと思い、声をかけるのを躊躇うが、 彼が声をかけようとした、女性『メガーヌ・アルピーノ』は、目が合った瞬間微笑み、こちらへと近づいてきた。 「こんにちは、ガンダムさん、倒れたってクイントから聞いたけど、もう大丈夫なの?」 「はい、ご心配をおかけしました・・・・・・・その赤ん坊は、メガーヌ殿の?」 両手で抱えている赤ん坊を見つめ尋ねる。声を小さくして話しているのは起こさないための自分なりの配慮。 「ええ、私の娘、任務の時は本局の託児所で預かってもらってるの。私、預かってくれる親戚とかいないし、 地上本部じゃチャイルドマインダー所か託児施設も満足に無いから」 すやすやと眠るわが子を優しい瞳で見つめる、小声での会話が功をそうしたのか、赤ん坊は起きずに眠っていた。 「よく眠っているわ・・・・・・・そうだ、よかったら抱いてみる?」 「えっ!?・・・・・ですが私ではこの子を起こしてしまうのでは」 メガーヌの申し出は是非受けてみたかったが、赤ん坊を抱くという経験は全くしたことがない。 安らかに眠っているこの子を起こしてしまうのではないかと思うと、その申し出を受けることを遠慮してしまう。だが、 笑顔で赤ん坊を差し出すメガーヌに、ナイトガンダムは自然を体を動かし、赤ん坊を受取った。 母親から自分の手に渡っても、泣く事はせずに眠る赤ん坊、その姿にナイトガンダムは自然と笑みを浮かべると同時に思う。 間違いなく、あの戦いの舞台であった海鳴市にもこの子の様な赤ん坊はいただろう、自分はそんな小さな命を そして、平和に暮らす人達を皆と一緒に守ることが出来た。本当に良かったと思う、そして力を貸してくれた皆に改めて感謝をする。 「本当に良く眠っている・・・・そういえば、この子はなんと言う名前なのですか?」 メガーヌはしゃがみ、ナイトガンダムが抱きかかえている我が子の頭を優しく撫でる、 我が子を心から愛おしく思うその表情に、自然と心が安らぐ気がする。 「・・・・・・・・この子の名前はね、ルーテシア、ルーテシア・アルピーノ、私の自慢の娘よ」 おそらく時間にして30分程度だっただろう、ルーテシアをメガーヌに返したナイトガンダムは、改めて今回の件のお礼を述べた。 そして出来れば他のゼスト隊の皆にもお礼が言いたいと頼んだのだが 「ごめんなさい、皆地上・・・ミッドチルダでのテロ事件の捜査に当たってるわ、私は特別に休暇をもらったからいるだけ、 ああ、クイントなら私と一緒に休暇を貰っている筈だからいると思う、呼んでみましょうか?」 「いえ、せっかくの休暇です、わざわざお呼び立てするのは申し訳ありません」 「そう?わかったわ。君がお礼を言っていたって事は隊の全員に伝えとくから、それじゃあね」 軽く手を振るメガーヌにナイトガンダムは深々と頭を下げ彼女を見送る。 そして姿が見えなくなったのを確認した後、再び転送装置室へと歩み始めた。 何事も無く順調に進み最後の角を曲がる。 「転送装置室・・・・・ここだ間違いない」 道が間違ってなかった事にホッとし、早速中に入ろうとしたその時、突然後ろから衝撃を受けた。 「!!?」 ビックリはしたものの、衝撃といっても吹き飛ばされたりダメージを負ったりすほどの物ではない。 精々何かに軽く叩かれた程度、一瞬何事かと思ったが、 「がんだむさ~ん!!」 その聞き覚えのある声で直ぐに誰だか分かった。 「こ・・こらスバル!!いきなり抱きついたらびっくりするでしょ?」 ナイトガンダムに抱きついた少女、スバルを姉であるギンガが慌てながら注意する。 後ろを向くと、其処にはニコニコ笑顔を絶やさないスバルと、走ってこちらに近づくギンガ、 その後ろをスバル同様ニコニコしながら近づいてくるクイント。 その組み合わせから、おそらくスバル達の体調検査なんだろうと直ぐに理解し、挨拶と感謝の意味を込め、深々と頭を下げた。 「あの時はありがとうございました・・・・・私だけではなく、皆さんも助けていただいて」 「そんなにかしこまらいで、困った時はお互い様でしょ?これから帰るの?」 その問いに、ナイトガンダムは自然と頷くが、ギンガは目に見えて慌てた。 理由は間違いなく今ナイトガンダムにすがり付いてるスバルだ。 以前も帰ろうとしたナイトガンダムと遊びたいため、母であるクイントを出し抜いてついて行ったことがある。 あの時は本当に楽しかった・・・・・・・同時にあの後の母のお説教は本当に怖かった。 だが、スバルも考えてはいるのだろう、今回はあの時の様に内緒話などは無論、『遊ぼうよ』などという我侭は言わなかった。 無論スバルもナイトガンダムと遊びたい気持ちで一杯ではあったが、これから帰ろうとする彼を引き止めようとはしなかった。 「(お母さんが言ってた、ガンダムさんは凄く疲れているって)」 スバルは仕事から帰ってきたクイントから、どんな事をしてきたのかを聞く事が日課となっていた。 今の彼女は、母であるクイントが管理局員と言うより『悪い人達をやっつける正義の味方』と思っており、そんな母から聞く武勇伝を何時も楽しみにしていた。 (当のクイントは、デスクワークなどで仕事が終った時は、帰り道でスバルに話すフィクション武勇伝を悶々と考えていたりと結構大変な思いをしてる) 無論、今回の闇の書事件に関しても色々と聞いており、ナイトガンダムが事件を解決に導いたことも聞いていた。 だからこそ、事件解決で疲れているであろうナイトガンダムと遊ぶことも我慢する、大好きなガンダムにはゆっくり休んでもらいたらだ。 それでも、約束だけだならしてもいいだろうと思う。約束だけなら怒られないし、迷惑もかけることは無いから。 「ガンダムさん!今度、また一緒に遊ぼうね!!」 「うん、今度は家に来て!」 彼のことだ、笑顔で「いいよ」と言ってくれるに違いないと・・・・・・・だが、帰ってきたのは沈黙。笑顔ではなく申し訳無さそうな表情、そして 「・・・・・すまない、もう、君達と遊ぶ事は・・・出来ないんだ」 スバルやギンガは無論、クイントすら予想しなかった答えが返ってきた。 意識を失った時に見た真っ白な光に包まれた空間、 「っ!!!?誰だ!!!」 あの時、気配を感じ振り向いた・・・・・・其処には自分がいた。 否、顔は自分にそっくりだか、黄金色の鎧を身に纏ったMS族 彼は何もせずにジッと自分を見ている。だが、それだけで自分は何も出来ない。 金縛り?否、その視線、それだけで自分は何も出来ずに固まってしまう、感じる各の違い・・・・・いや、それ以前の問題だろう。 『帰るときが来た』 何もいえない、「誰だ?」「何者だ?」「此処は何処だ?」一切の質問が出来ない。 この場の空気、そして彼の目線が自分が喋る事を許さないでいる。 『スダ・ドアカワールドへ渡るであろう脅威は排除した・・・・・・此処にいる目的は無い』 何を言っているのか理解できない。だが、そんなナイトガンダムを無視して話は進む。 『この世界へは・・・まだ来る時ではない・・・・・・・答えを出すには・・・・・・まだ多少時間がある』 「っ!!、こ・・・答えとは何だ!?それ以前に、君は何者だ!!?」 口が震える・・・・この恐怖が圧倒的な力の差を思い知らされる・・・それでもどうにか口に出来た質問、 だか、ナイトガンダムの質問に答える事無く、その黄金の騎士は話し続ける。 『悪は滅んではいない・・・・・・邪悪な意思がスダ・ドアカワールドを飲み込もうとしている。 真悪参・・・・・いや、ラクロアの勇者よ・・・・・・・帰るのだ・・・・ラクロアへ・・・・・石版が導いてくれるだろう』 夢は其処で終った、その夢で聞いた内容はとても無視できるものではない、その証拠に石版からも力の放出を感じる。 それは自分が見た夢が妄想ではなく、あの黄金の騎士からのお告げであったこと、そしてスダ・ドアカワールドに危機が迫っている事。 そして、自分は一刻も早く帰らなければいけないことを意味していた。 「・・・・どうして・・・・」 ナイトガンダムの説明を聞いた後、真っ先に口を開いたのはギンガだった。スバルの様に体当たりなどの積極的なスキンシップはしないが、 彼女もナイトガンダムと遊ぶ事を楽しみにしていた。 だが、彼が口にしたのは拒否の言葉、それも『今日は』『今は』という決まった時間ではない、 『もう、遊ぶ事ができない』それはこれからもずっと、ナイトガンダムと遊べないとこを意味する。 なぜそんな事をいうのだろう・・・・・・・私たちが嫌いになった・・・・・・ 『可愛い顔しても、やっぱり化物よね』 そうだ・・・・・私やスバルは人間じゃない・・・・・・作られた化物・・・・・・だから嫌われるんだ。 それは、ほんの数日前の出来事 「このデータの結果見た?魔力の保護なしでこの数値・・・・これでも子供なのよ」 「まぁ、見た目は子供でも、中身は犯罪者並に危険だからな・・・・・・まったく面倒な物を押し付けられたもんだ」 「まったくよ・・・・可愛い顔しても、やっぱり化物よね・・・・・・怖い怖い」 ギンガは信じられなかった。この話をしているのが、先ほどまで自分達に笑顔でやさしく接してくれていた人達と同一人物だという事が。 本当なら、忘れ物のリボンを取りに来ただけで終る筈だった。だが、部屋の奥から聞こえる話し声に、自然と耳を傾けてしまった。 職員達はギンガに気付く事無く本音を言い続ける・・・・・・笑いながら、楽しそうに。 その後、自分がどのような行動を取ったのかのかは憶えていない。気が付いたときには、トイレの個室で泣いていた。 心を落ち着かせ、涙を拭き待っている母親の元へともどったか、クイントは直ぐにギンガの異変に気が付いた。 その後、今まで担当していた局員はいなくなり、今は『マリエル・アテンザ』という人が担当している。 だが、担当者が変わったとは言え、あの時の言葉は今でも自分に重く圧し掛かっている。 そして、自然と考えるようになっていた『化物である私達は・・・いつか捨てられるんじゃないか』と。 「どうして帰っちゃうの!!!私達が・・・・・・私達が人間じゃないから!!化物だから!!!だから嫌う(ギンガ!!」 ナイトガンダムもそうに決まっている、だから『もう、遊ぶ事ができない』と言ったに違いない。 だが、すべてを言い切る前に、ナイトガンダムの怒声が響き渡った。 目を閉じ、体を震わせ言葉を詰まらせる、そして恐る恐る目を開けると、其処には明らかに怒っているナイトガンダムが自分を 真っ直に見つめている、そして、おもむろに手を伸ばしてきた。 その表情から、「打たれるのではないか?」という恐怖が体を襲い、体をこわばらせ目を瞑るが、その手はギンガの頭に 優しく乗せられ、ゆっくりと、落ち着かせるように彼女の頭を撫でた。 「・・・確かに、君やスバルは普通の女の子じゃない、それは認めなくちゃいけない事だ。 だけど、それが原因で他者が不幸になることも、そして君達姉妹が不幸になることは決してない」 頭を撫でながら、ナイトガンダムはギンガに語りかける。 優しい口調、そして掌の温かさがギンガの心をゆっくりと落ち着かせる。 「それでも、君達の事を蔑む人はいるだろう、化物と言う人もいるだろう・・・・・・だけどね、気にする必要は無いんだ。 君達は特別な力を持ってはいるけど、化物なんかでは決して無い。君達は、優しく、暖かな心を持った女の子だ。 母であるクイント殿を慕い、皆に笑顔を振りまき、私との別れを惜しんで涙を流してくれる、それらの行為はね、優しく暖かな心を持っていないと出来ない事なんだ」 「でも・・・・・私達は・・・・戦闘機人で・・・こんな怖い力を持ってる・・・・・」 普段は笑顔を振りまいているスバルも、自分に備わっている力を怖いと感じてはいた。 そしてこの力が、いつかは人を傷つけてしまうのではないかと恐怖し、震えることもあった。 ナイトガンダムはスバルの元へと近づき跪く、そしてギンガと同じく頭に掌を乗せ、ゆっくりと話し出す。 「いいかい、力というのは、確かに物を壊したり、相手を傷つけたりなどに使われる、だけどね、その力で大切な人を助ける事も出来る。 瓦礫を破壊し道を作ってあげたり、悪人を懲らしめ皆の平和を守ったり。 君やギンガなら、その持っている力を皆の平和と幸せに、そして大切な人を守るために使えると、私は信じている だから恐れないで欲しい、その持つ力に、そして自分自身に」 「・・・・・・ありがとう、ガンダムさん」 スバルとギンガが検査用のポットの中に入った後、クイントは唐突にナイトガンダムにお礼をいった。 彼としては何故お礼を言われるのかが理解できなかったか、その理由をクイントはポツリポツリと話し出す。 「・・・・私、あの子達の不安に気付いてあげられなかった・・・・・・あの子達の笑顔を見るだけで安心しきっていた。 まったく、最低ね・・・・・母親しっか(それ以上言うのはよしてください」 静かに・・・・だが、力強い言葉に、クイントは声を詰まらせる。 「先ず、お礼は必要ありません、私はただ彼女達を励ましただけです。そして二度と言わないでください『母親失格』などと」 おそらく・・・否、間違いなく彼は怒っている。理由など直ぐにわかる、馬鹿なことを言った自分へ対する怒りだろう。 「悔やむ事は何時でも出来ます。ですが、それで自分の価値を決め付けるのはいけない事です。クイント殿、貴方は間違いなく 彼女達の母親です、あの子達に対して申し訳なく思っている、それが何よりの証拠です」 ギンガやスバルとの会話で感じてはいたが、いざ自分となると改めて感じる事が出来る。 彼には、ナイトガンダムには相手を安心させる何かがある・・・・・それは言葉ではどうにも言い表せない。 ただいえる事は、不安になった心を安らかに、そして安心させてくれるという事だけだ。 「それに・・・・彼女達はまだ幼い・・・・これからも、自分達の事で苦しむ事はきっとある筈です。 そんな時に彼女達を支えてあげられるのは、友人、そして家族です。それを忘れないでください」 「わかったわ・・・・・ふふっ、ガンダムさんってなんだか先生みたいね」 「そんな事ないですよ」 軽くクイントの発言を否定したナイトガンダムは、話は終わりと言わんばかりに立ち上がる。 そして彼女に頭を下げた後、転送装置室に向かって歩き始めた。 「もう行くの?せめてあの子達の検査が終るまで」 歩みを止め立ち止まる。そしてゆっくりと振り向き答えた。 「既に別れは済ませました・・・・・・それに、また彼女達の悲しそうな瞳を見ると・・・決意が鈍くなってしまいますから・・・・」 再び彼女に背を向け歩き出そうとする。だが、クイントの質問はまだ終っていない。 「皆には・・・・忍さんやすずかちゃん達には話したの?帰るって」 「・・・・・・はい、既に連絡はしました」 再び立ち止まり、暫く間を空けた後しっかりと答える。だが、今度は振り向く事はなかった・・・・・まるで、顔を見られるのを避けるかの様に。 月村家 月村家へと帰宅したナイトガンダムを迎えたのは、派手なクラッカーの音だった。 「「「「「メリークリスマス!!!!!」」」」」」 全員が笑顔でナイトガンダムを向かえる、そして、呆然とするナイトガンダムを有無を言わさずにすずかが引っ張り、リビングへと導く。 其処は色とりどりに飾られた部屋、食欲をそそる豪華な料理、そして唯でさえ高い天井に届くほどの大きさのクリスマスツリー。 「さて、詳しい説明やら何やら色々あるけど!!今は楽しみましょ!!!」 未だに現状が理解できていないナイトガンダムにすずかが笑顔で近づき、頭に何かを被せた。 それは皆が被っているのと同じ白と赤の三角の帽子、その帽子には見覚えがあった、確かサンタクロースなる人物が被っている帽子と同じ物。 其処で初めて、ナイトガンダムは彼女達が何をしているのか理解できた。 『まぁ、24日は恭也といちゃ・・・じゃなくて翠屋でアルバイトだけど、25日は月村家の皆でクリスマスパーティーと洒落込みましょうか。 今年は騒ぐわよ~。なにせ二人も新しい家族が増えたんだからね~』 闇の書の闇との激戦、そしてリインフォースの説得、本当に色々な事があった、だが、それはすべて1日の中に起こった出来事 今日は12月25日・・・・・・・・・・あの激戦から1日しか経過していなかった。 その後、クリスマスパーティーとは名ばかりのどんちゃん騒ぎが数時間に渡り続き、ナイトガンダム以外の全員が ソファーで、床で、それぞれ生きた屍と化していた。 「・・・・まったく、この様な所で寝ては風邪を引きますよ」 あのメイドの鏡といえるノエルですら、今はファリンに抱きつかれて寝息を立てている。 そんなみんなの姿に自然を笑みを溢しながらも、風邪を引かないようにと、全員に毛布をかけて回る。 ノエルとファリンに、腕を組んで眠るイレインに、シャンパンの瓶を持ち『きょうや~』と寝言を言う忍に、そして 「ガンダム・・・・さん・・・・・」 寝言で自分の名前を呼ぶすずかに、そっとかける。 正直未練はあった。あの時の忍の誘い、自分の中では答えはほぼ出ていた。 だが、あの黄金の騎士が言った事を無視する事は出来ない。 スダ・ドアカワールドに危機が迫っている以上、共に戦った仲間にも危機が訪れる筈、自分だけが平穏な暮らしをする事など出来るはずが無い。 本当なら皆には自分が帰ることを言うべきなのだ・・・・・だが言えなかった。 何度も口に出そうとした、だがそのたびに言葉を詰まらせ誤魔化してしまう。 「・・・・・別れも言えないなど・・・・・なんて意気地が無いのだろう・・・・・私は」 自己嫌悪に陥るが、帰るという決意には変わりは無い。 それに、自分が此処を去っても、彼女達の生活にはなんら変わりは無い。 自分がいなかった一ヶ月前の様に平穏な生活を送れるはずだ・・・・・・いや、イレインという新たな家族が増えたのだ、賑やかになるに違いない。 ゆっくりとリビングの入り口へと向かう、そしてドアの前で立ち止まり振り向き 「・・・・今まで・・・ありがとうございました・・・・・」 深々と頭を下げた後、リビングを後にした。 ドアが静かに閉まり、沈黙が支配する・・・・だが直ぐに 「あの馬鹿」 時刻は夜の二時、辺りは暗く、そして肌寒い。 白い息をはきながら、ナイトガンダムはゆっくりと庭の中央を目指す。 足取りがとても重い、未練があることが嫌でもわかるが、歩みを止める事はない、そして中庭の中央まで来た所で歩みを止める。 「っ!?」 突如感じる殺気、ナイトガンダムは石版を落とすと同時に剣を抜き振り向く、その直後、 甲高い音と共にナイトガンダムの剣と自動人形の武器であるブレードがぶつかり合う。 「なっ!!?イレイン!!?」 自分に刃を向ける少女の名を叫ぶと同時に力任せに切り払い吹き飛ばす。 何かの冗談か、もしかしたら酔っているのではないか?などと考えるが、怒りに満ちた表情、自分を睨みつける目線 そして再び襲い掛かるという行動がその考えを否定した。 「どうして・・なぜだ!!?」 襲い掛かる斬撃をすべて斬り払い、受け流しながらナイトガンダムは叫ぶ、どうしてこのような事をするのか、 このような、あの時の様な戦いをしなければいけないのかと。 「『何故』だって・・・・・『どうして』だっで・・・・ふざけるなぁ!!」 叫ぶと当時に襲い掛かりブレードを振り下ろす。それをナイトガンダムは剣で受け止め、唾競り合いとなるが、 イレインは自動人形特有のパワーでそのまま押し込もうとする。 自慢のパワーに頼る彼女らしい攻撃、だが、そう何度も通用する物ではない。 鍔競り合いになった直後、ナイトガンダムはシールドを捨て背中に背負っている電磁スピアを取り出し 間髪いれずにイレインの鳩尾目掛けて突刺した。 今の電磁スピアには危険防止などのため、先端には非殺傷用の丸いボールがついてる、そのため イレインの鳩尾目掛けて突き刺さった電磁スピアは、彼女を貫く事はなかった・・・だが 「げほ!?」 手加減無しに受けた電磁スピアの突き、それはイレインの機能を一瞬麻痺させるほどの衝撃を与えると同時に 彼女を吹き飛ばす。 それでも、ノエル達以上に戦闘に特化した自動人形である彼女は、飛ばされながらも直ぐに機能を回復させ体制を立て直す そして、地面に叩きつけられることなく着地。だが 「そこまでだ」 顔をあげ、再び突撃しようとする彼女が見たのは、自分を見下ろすナイトガンダム、そして、突きつけられる剣だった。 自分を敵の様に睨みつけるイレインにナイトガンダムは素直に困惑してしまう。 だからこそ聞こうとした『なぜ、このような事をするのか』と、だが彼が口を開くより早くイレインが口を開いた 「・・・・なんで・・・何も言わないんだよ・・・・・」 その言葉の意味は直ぐに分かった、そしてナイトガンダムを動揺させるのには十分だった 目に見えて同情するナイトガンダムをイレインは蹴りで吹き飛ばす。同時に右腕に装備されている特殊武装『静かなる蛇』を ナイトガンダムに巻きつけた。 「・・・・返すもんか・・・・暫く動けないように痺れさせ、考え直させてやる!!」 完全に巻きついた事を確認したイレインは、間髪いれずに高圧電流を流そうとする、だがその行為は二人の間に割って入った人物が 『静かなる蛇』を切断する事により、無効となった。 「っ?ノエル殿」 「ノエル!!邪魔をするな!!」 「やめなさい!イレイン!!」 二人の間に割って入ったノエルは先ずはイレインを一喝、今の生活に馴染んだ結果、ノエルに頭が上がらなくなったイレインは大きく舌打ちをした後、 ブレードを外し、地面へ放り投げた。 イレインが戦闘の意思をなくした事を確認した後、今度は体に絡まった『静かなる蛇』を解くナイトガンダムの方へと顔を向ける。そして 「ガンダム様・・・なぜ、何もいってくれないのですか」 イレインと同じ質問をぶつけた・・・・・そして 「そうね・・・私達にも教えて欲しいわ」 彼女の質問に続くように投げかけらえる問いかけの言葉、その声はイレインの後ろから聞こえる。 そして、その声を発した人物『月村忍』と『ファリン』、そして『月村すずか』がゆっくりとこちらに近づいてきた。 なぜ彼女達が此処にいるのだろう?確か眠っていた筈、イレインとの戦闘もそれ程大きな音は鳴ってはいなかった。 そうなると考えられる事は一つしかない・・・・寝たふりをしたという事だ。 「私達ね・・・・貴方が帰ることを知っていたの・・・・・クイントさんが教えてくれたわ」 「クイント殿が」 「クイントさんが君に『別れのあいさつはしたのか?』って質問に、君は『はい』って答えたらしいわね?でも、その時君は顔を見せて答えなかった。 可笑しいでしょ?君の性格な短い付き合いだけど知ってるつもりよ?よほど急いでいる時でもない限り、君ならきっちり相手の顔を見て答える筈。 それが出来ないのは、君が嘘をついてるという証拠よ・・・・・・・君、嘘が直ぐ顔に出るからね・・・・・」 忍の言う通り、自分は嘘を付く時に直ぐに顔に出てしまう、ラクロアの仲間からも指摘された事だ。 それを隠すために顔を見せなかったのだが、結果的にはばれてしまった。 「それを聞いた時、此処にいる皆は貴方に聞こうとしたわ、理由とか、いつ帰るのかとかね。 だけどね、私達は君から話してくれるだろうと思って待ってた・・・・・・・でも、君は話してくれなかった・・・・・・黙って帰ろうとした・・・・・・」 「・・・・・」 何もいうことが出来ない、自然と俯き、忍達から目をそらしてしまう。 その直後聞こえてくる足音、それは自分の目の前で止まる・・・その直後、『ゴン』という鈍い音と共に、忍の拳がナイトガンダムの兜に叩きつけられた。 「君は・・・・君は・・・・黙って私達のもとから去る様な奴だったのか!?別れの言葉を言うほどの価値の無い連中だったの(そんな事はありません!!」 さすがにその言葉には黙っている事ができなかった。自然と顔を上げ、忍を見据える・・・・・・彼女の瞳からは涙がこぼれていた。 だか、高ぶった感情が様々な思いより先に言葉として口に出る。 「最初は、身後も左も分からない私を保護してくれ、衣食住を与えてくださった貴方達を親切な方々としか思ってはいませんでした。 ですが、貴方達と共に生活して行くうちに、それらでは得られない暖かさを私はもらう事が出来た。そして自分も皆と共に暮らしたいと思うようになりました。 そんな時に忍殿、貴方は言ってくださった『私達の家族としてこの家で暮らさないか』と、その申し出がどれ程嬉しかったことか、 ですが、私がいた世界、スダ・ドアカワールドの危機を知ってしまった・・・・・あそこには苦楽を共にした友がいる、彼らの危機を無視することは出来ません。 もう戻って来れる事など出来ないかもしれない・・・・・・別れなど言ってしまったら・・・・黙っていかなければ・・・決意が鈍ってしまう!」 忍を含め、これほど声を荒げて話すナイトガンダムを見た事は無かった。 その声を聞いただけで、忍は先ほどの発言を取り消したくなる、彼は自分達をただの他人ではなく、家族の様に思ってくれていた。 彼も苦しんでいた、そして悲しんでいた、なぜ彼の心の内を読む事が出来なかったのだろう・・・・・自分が情けなくなる、それでも 「確かに・・・私達は貴方に帰って欲しくはない!でもね、私達が望めば、それは貴方の意思を曲げる事になる。だからさ 私達は貴方を送るわ、笑顔で貴方を送る・・・・・それ位・・・・やらせてよ」 しゃがみ、自分と同じ目線で話す忍に言葉が出ず、ナイトガンダムは無言になる。だがそれも数秒、自然と俯き、かすれた声で呟いた 「・・・ありが・・・とう・・・・ございます・・・・」 「いやだよ」 小さいが、その声は此処にいる全員に聞こえた。 そして皆が同時に声がした方へと振り向く、其処には俯き、体を震わせているすずかがいた。 「す・・・・・すずかお嬢様・・・」 その姿に、近くにいたファリンが声をかけ、近づこうとする。そして彼女の手が触れようとした時、声がはじけた 「いやだよ!!いかないでよ!!!会えなくなるなんてやだよ!!!お願いだから行かないで!!ずっと此処にいてよ!!!!」 「すずか!!落ち着きなさい!!」 「落ち着いてなんかいられない!!!ねぇガンダムさん!ガンダムさんを困らせてるって分かってる!我侭だってわかってる!それでも嫌なの!! ガンダムさんが・・・もう・・・・・いなくなる・・・・・・なん・・・・て・・・」 途中から涙が頬を伝い、声も大声をいきなり出したためか、かれて出なくなる。 すずかの様子を伺おうとしていたファリンは無論、実の姉である忍さえ、どうしていいのか分からなくなる。 このようにすずかが感情丸出しで叫び、我侭を言った事など無かったからだ。それでも、実の姉である自分が慰めねばという思いが彼女を動かす。だが 「忍殿・・・・・私が」 動こうとする忍をナイトガンダムは制し、ゆっくりとすずかの元へと向かう。 そして、未だに俯き、泣き続けるすずかの目の前で止まると、優しく彼女を抱きしめた。 「・・・すずか・・・・すまない・・・・」 突然抱きしめられた事に驚きはしたものの、相手がナイトガンダムという事、そして彼から感じる暖かさが心地良い為、自然と身を任せてしまう。 「君が涙し、悲しむのは私が原因だ・・・・・許して欲しいとは思わない・・・・それでも、私は行かなければならない、スダ・ドアカワールドの、仲間の危機を救うために」 抱きしめられながら優しく頭を撫でられる、それだけで高ぶっていた感情が落ち着きを取り戻し、心が少しずつ穏やかになる 「・・・・そして、ありがとう私のために泣いてくれて、私に行くなと言ってくれて、私は本当に幸せだ・・・・・だから・・・・その思いの甘えようと思う」 その言葉に、すずかは「えっ?」と呟きながら俯いていた顔を上げる、ナイトガンダムは確かに言った「その思いに甘えよう」と。 「スダ・ドアカワールドの脅威が去った時、私は此処へともどって来る。正直何時になるかは分からない、方法も今は分からない、だが信じて待っていてほしい・・・・・駄目かな?」 何を言ってるのだろう?そんなの答えは決まっている。 ナイトガンダムから離れ、瞳にたまった涙を拭く、こんなみっともない顔で返事など出来ない、この答えは笑顔で言いたい。 「・・・ガンダムさん・・・・私は・・・・・私達は待ってる、貴方の帰りを・・・・だから、いってらっしゃい」 「いってきます、すずか」 これは永遠の別れではない、暫しの別れ、だから笑顔で言う事が出来る、だがら笑顔で送ることが出来る。 「ガンダム君、月村家の庭師は君一人だからね、今後雇う予定は無いから、早く帰ってこないと仕事がたまるぞ」 親指を立て、ウィンクをしながら見送る忍。 「ガンダム様、何時帰って来てもいい様にお部屋の掃除は常にしておきます、おきをつけて」 「ガンダム様の家は此処なんですからね、早く我が家に帰ってきてくださいね」 ノエルとファリン、それぞれの送る言葉に、ナイトガンダムは深々と頭を下げるそして、残ったイレインの方へと顔を向けた 未だに納得してはいないのだろう、頭をかきながらそっぽを向き、ナイトガンダムと視線を合わせようとはしない。 「イレイ(帰ってこいよ・・・・」 ナイトガンダムの言葉を遮り、イレインは呟く、そして振り向きヤケクソ気味に叫んだ。 「私は・・・・あんたの専属メイドってことになってるんだ!!・・・・だから早く帰ってこいよ! 使える主人がいないと・・・・その・・・・仕事がないからな!!って、忍!腹抱えて笑うな!ノエル!微笑ましく私を見るな!!ファリン!何録音してんだ!!」 自分を茶化す忍達を、イレインは顔を真っ赤にし、拳を振り上げ襲い掛かる。 その光景をすずかと一緒に微笑ましく見ていたその時、月村家の正門に一台のリムジンが急停車した。 停車して直ぐにリムジンのドアが勢いよく開かれ、後部座席に乗っていた人物が飛び出す。 そしてそのまま駆け足でナイトガンダム目掛けて突撃、彼との距離が約3メートルほどの距離になったところでジャンプ そして空中で体制を整える、右足を突き出し左足を引く、それは誰が見てもキックの体制・・・・・そして 「黙って行くな馬鹿ぁああああああ!!!!!」 アリサ・バニングスは雄叫びをあげながら、ナイトガンダムに容赦の無い蹴りをかました。 「まったく・・・・・とにかく分かったわ、私も帰りを待ってるからね!!」 彼女が蹴りを放った後、周囲が唖然とする中攻撃は続いた、だが、どれもちらカのない拳でただ叩くだけ、 そしてその行為もそれ程続かず、最後には大泣きしてしまった。 「あらあら~ガンダム君、可愛い女子を二人も泣かすなんて・・・即地獄行きよ~」 ニヤニヤしながら見つめる忍を軽くにらみつけながら、アリサを先ずは落ち着かせる。そして スダ・ドアカワールドに危機が迫っている事、仲間を助けたい事、そしていつかか必ず帰ってくることを話した。 それらを聞いたアリサは徐々に落ち着きを取り戻す、そして先ほどの蹴りの謝罪と同時に『話さなかった、アンタが悪い』とそっぽを向きながら自分の行動原因が ナイトガンダムであることを指摘、そんなアリサに自然と笑みを浮かべながらも、何時もの彼女にもどってくれた事に安心し、自分のために涙を流してくれた彼女に感謝した。 「だけど、さすがにあの蹴りは私でも効いたよ・・・お転婆もいいけど、ほどほどにね」 「うっ・・・わかったわ。それと・・・・せっかくだもの・・・・これは・・・その・・・・選別よ!!」 それは一瞬の出来事、アリサは一瞬でナイトガンダムに近づき、その唇を彼の口に添える。 あまりの出来事に、ナイトガンダムは無論、その場にいる全員が固まった。 「ア・・アリサ!!?君は!!!な・・・・何を!!!」 「餞別、それにあの時助けてくれたお礼よ・・・その・・・初めてなんだからね」 今になって、自分が行った行動の大きさに気が付いたのだろう、顔を真っ赤にしそっぽを向く。 その時、すずかが恐ろしい顔でこちらを睨みつけていたが・・・・気のせいだろう・・・うん、気のせいだ。 「ふっふ~ん、すずか~、先こされ『お姉ちゃん黙って』はい、こめんなさい」 明らかに異様なオーラを出すすずかの突っ込みに忍は押し黙る、そしてそのオーラは(ナイトガンダム以外の)場の空気を一気に 重くしようと徐々に広がりを見せるが、突如現われた幾つもの転送魔法陣がその空気を断ち切った。 転送魔法陣から現われたのはなのはとフェイト、はやてとヴォルケンリッター、そしてクロノとリンディ、否それだけではない 当時に展開される広域結界、その直後、上空にはリンディが指揮を務める次元航行艦アースラが現われた。 その甲板には乗組員・武装局員が整列し一斉に敬礼、それは自分の世界を救うために旅立つナイトガンダムへの見送り、そして感謝の気持ちをを表していた。 「皆・・・どうして」 「クイントさんから聞いたのよ、君が旅立つって。それをみんなに知らせたの、そしたらクルー全員が見送りたいって言い出してね、 『闇の書の闇の破片の最終調査に向かう』って名目でアースラごと来たってこと」 「正直破片の回収は終ってるから結構無茶な事だったんだけどね・・・・・グレアム提督が色々根回しをしてくれたんだ」 クロノはゆっくりと歩み寄り、右手を差し出す、その意味を直ぐに理解したナイトガンダムは、右手でしっかりと彼の手を握り返した。 「本当にありがとう、僕達は君の旅路に勝利と幸福があることを願っている・・・・・ナイトガンダム、気をつけて」 「ああ・・・・ありがとう、我が友、クロノ・ハラオウン」 「なのはにフェイト、君達は管理局に入るんだって?」 「うん、私はクロノ・・・・ううん、お兄ちゃんと同じ執務官を目指すの。そのために先ずは経験と勉強を積まないと」 「私は武装隊の仕官から、そして目指すは戦術教導隊。色々な人に、自分が学んだ経験、技術を教えるのが夢かな」 まだ幼い少女なのに、彼女達は自分の目標に向かって進もうとしている。 彼女達の様な子ならば、多くの人を救い、多くの人を導いてくれるだろう。 「ん?そういえばフェイト、君はクロノをお兄ちゃんって呼んでいたけど」 「フェイトちゃん、リンディさんの養子になったの、だからクロノ君がお兄ちゃんになったの」 「でも・・・本当についさっきの事だから・・・まだ・・恥ずかしくて・・・」 照れくさそうに俯くフェイトにナイトガンダムは自然と笑みを漏らす。そして自然と二人の頭に手を載せていた 「フェイト、焦る事はない、ゆっくりと馴染めばいいんだ・・・私の思い過ごしならいいのだけど、君は自分の幸せに臆病になっている感じがする。 でもね、怖がる必要なんて無いんだ、君が幸せになって不幸になる人なんで誰もいない、君は優れた魔道師だけどまだ子供だ、だから今は何も考えずに目の前の 幸せに身を任せてもいいと思う。そうする事で君は無論、リンディ殿達や周りの人々も幸せになれるのだから」 「なのは、君は目標を持ち夢に向かっている。君のことだ、それはきっと叶うと信じている。だけど一つ約束をして欲しい。 その目標へは、焦らず目指して欲しい。フェイト同様君はまだ子供だ、魔術の鍛錬もいいけど、 友達と遊んだり、趣味を楽しんだりなどの自分の楽しみや幸せを忘れないで欲しい」 「ガンダムさん、ホンマにありがとう・・・・・・・・うちらがこうしていられるのはガンダムさんのおかげや」 「違うよ、此処にいる皆、そして君達が頑張ったおかげさ、決して私一人の力ではないよ」 「たしかにそうや」と呟きながら笑うはやて。 話の区切りと感じたのか、はやてに断りを入れた後、シグナムがゆっくりと近づきナイトガンダムの前へと立つ。 「我が友にして好敵手・・・・騎士ガンダムよ・・・・・・貴殿の旅の無事、そして揺ぎ無い勝利を祈る」 シグナムはレヴァンティンを取り出しシュベルトフォルムへと変形させるそしてその切っ先を軽く空に掲げる その意味を理解したナイトガンダムは盾から剣を取り出し同じく掲げた。 「そして帰り、再び剣を交える事を楽しみにしている・・・・・騎士ガンダム」 「ああ、その時は是非、正々堂々とした戦いをしよう・・・・烈火の将シグナム」 互いの剣が空中で重なる、それは認め合った騎士同士が再戦を誓った証、互いの剣が重なった時に響いた音が周囲に響き渡った。 皆がそれぞれ別れの言葉を送り、最後はリインフォースだけとなった。 彼女はナイトガンダムの前まで近づくとゆっくりとしゃがみ、そして抱きしめる、力強く、決して離すまいと。 「私は・・・・・お前が・・・・好きだ・・・・・だから・・・・必ず帰って来い・・・・・」 体に伝わる鼓動と暖かさ、その温もりに心地よい気分になる。 「ありがとう・・・リインフォース・・・君はもうはやての家族だ・・・・皆と幸せな時を過ごせる事を願ってるよ」 ナイトガンダムもまた、彼女を抱きしめる。そして、互いのぬくもりを感じあった後、ゆっくりと離れた。 すると、そのタイミングを見たかのように、石版が光りだす。 この光はあの時と同じ自分を異世界へと飛ばす魔法の一種・・・・・別れが来たのだと実感させられる。 「皆!!ありがとう!!・・・・・また会おう!!!いつか、必ず!!!」 光がナイトガンダム包み込む、そして徐々に上空へと上がっていく。 「アースラクルー全員!!異世界の騎士に敬礼!!!」 リンディの指示と共に、アースラのクルーは再び敬礼をし、ナイトガンダムを見送る。 彼らに同じく敬礼をし答えた後、ふと下を見る、其処には全員が自分を見上げ、手を振り、自分に最後の見送りをしていた。 そんな皆に答えるようにナイトガンダムは下を向き、大声で答えた。 『行って来ます!!』 スダ・ドアカワールド ナイトガンダムが降り立ったのは既に溶岩が固まりつつある火口の中だった。 上を見上げると一面は曇り、そして雪が少し降っている。 「ここは・・・・・・・あの場所か」 あの時、奴の腹の六芒星に炎の剣を突刺し、共に落ちた場所、そして奴の魔法で自分はあの世界へと飛ばされた。あの時、奴は言っていた 『何処へ行くかは・・・・我でも・・・知らん。ここ以上の争いが・・・・起きている世界か全てが・・死に絶え・・・荒廃・・・した・・・世界か・・・』と。 だが自分が飛ばされたのはそんな世界とは無縁の所、 とても暖かく守りたい人達、とても強く頼もしい仲間達、自分は沢山の物を得られることが出来た。 「・・・・・・私は、貴様に感謝するべきなのだろうか・・・・・」 サタンが故意に飛ばしたとは思えない、正直全くの偶然だったのだろう。 それでも、自分は様々な物を手に入れることが出来た、その気が無かったとは言え、それはサタンガンダムのおかげという事は間違いない。 ナイトガンダムは石版を発動させ、三種の神器を装着する、そして炎の剣となった剣を地面へと突刺した。 地面に突刺した炎の剣はサタンガンダムの墓標、それがナイトガンダムがサタンガンダムへ送る最初で最後の感謝の気持ち。 再び鎧を石版に戻すが、炎の剣だけは戻らず、地面に突き刺さったままだった。 「・・・よし、行こう!!」 墓標に背を向け、歩き出す・・・・仲間達の下へ、そして新たな戦いの舞台へと 後に僧侶ガンタンクはクレバスから出てきたナイトガンダムを見て、こうつぶやいた。 『星降る時、大いなる地の裂け目から、神のいた持ちて勇者現る・・・・・・・その名は・・・・・・』 『ガンダム』 魔法少女リリカルなのはA,s外伝・ラクロアの勇者 終 一週間後 ナイトガンダムが仲間と合流し、共にラクロアへと帰還するが、其処にあったのは王国ではなく、平地と無数の瓦礫だけであった。 僧侶ガンタンクの説明から、この一件には『伝説の巨人』が関係している事を聞いたナイトガンダム達は 休む間も無く、巨人を倒す手掛りを持っているであろう『ルホイの星』を探す旅に出た。 一方、残ったガンタンクは城の兵や僧侶、動ける民を指揮し、救援活動、物資の調達、救援諸国への援助要請 など多忙な日々を送っていた、そんな時である。 「ガンタンク様!この薬草でしょうか?」 「・・ああ、間違いない、直ぐに収穫をしてくれ」 今のラクロアには圧倒的に物資が足りなかった、その中でも医薬品の数は絶望的で怪我の人数からして圧倒的に足りなかった。 瀕死の者や重傷者などには城の僧侶が付きっ切りで看病しているため、手遅れで死亡という自体にはならなかったか、 骨折や打撲などの死ぬことが無い怪我の者には少ない薬でどうにか凌いでもらうしかなかった。 痛み止めも無いため、野戦テントからは痛みによるうめき声が後を経たなかった。 先ほどガンタンクが見つけた薬草は処方すれば良い痛み止めになる。 あの兵士の話した量からするに隣の国からの物資補給までには十分持つ量だ。 「さて、私も帰っ!?」 帰ろうと仲間の元へ行こうとした直後、彼の後ろの森林が眩く光りだした。 何かと思い杖を構え振り向くが、光は既に消え、何事も無かったかのように静けさを取り戻す。 「・・・ジオンの魔術士か?だか、何故襲ってこない?」 サタンガンダムを倒したとはいえ、ジオン族やそのモンスターが襲ってくることがなくなったわけではない。 だからこそ、今の光もジオン族の魔術士の攻撃ではないかと疑ったが、一向に攻撃が来ない所か姿すら現さない。 不審に思いながらも、ゆっくりと光が発生した方へと足を勧める・・・・・・・・すると 「なんだ・・・・これは・・・・」 其処にはジオン族の魔術士などいなかった。其処にいたのは二人の人間・・・親子だろうか? 色々不審な点はあるが、この二人をこのままにしておくわけには行かない、特に親である女性の方はこのままでは死んでしまう。 小さな女の子の方は魂が抜けている症状に酷似しているが、助けられないことは無い。 「こっちに来てくれ!!!重傷の旅人の様だ!!!」 大声で仲間を呼ぶと同時に、ガンタンクは大人の女性の方に回復魔法を施す。 「・・・ただの旅人ではなさそうだな・・・・・」 彼がそう思うのも無理は無い、旅荷物は無論、彼女達の格好がそう思わせる。 大人の女性の方は黒い服にマントを羽織っただけの格好、とても旅人とは思えないし旅荷物も一切見当たらない。 そして小さな女の子の方は裸、割れた大きなガラスケースの様な物の中で蹲っていた。
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魔法少女リリカル☆なのは~NEXUS~ クロス元:ウルトラマンネクサス 予告編 第一話 『悪魔』 第二話『暗黒』・前編 拍手感想レス :次元を越えたネクサスの活躍に大期待です。 :光の残滓だけで戦うネクサスの行く先に幸多からんことを TOPページへ このページの先頭へ
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「ドラなの」第3章(前編)『誕生会』←この前の話 『ドラなの』第3章(後編) (*) 誕生会はビンゴ大会、誕生日のプレゼント渡しと進行していくなかで異様なまでに盛り上がった。 しかしそんな楽しい時間も永遠ではない。彼ら彼女らが気づいた時にはもう時計は午後8時を知らせていた。 「楽しかったけどもう遅いし、お開きにせなあかん。・・・・・・みんな、今日はウチのためにホンマ、ホンマありがとう!」 はやてが壇上でマイクを両手に保持し、最高の笑顔で一同に告げる。それを合図にしたかのようにどこからか巻き起こる拍手。それは次第に拡がり、最後には全員に伝染した。 八神はやては車椅子で生活して過ごした3年以上前には考えもしなかったこの光景に、胸が一杯になった。 (*) 20分後 八神家一同はすずか邸専属メイドさんが運転する車で。なのはとフェイトもアリサの呼んだハイヤーで帰宅の途に着いた。 ここでできればドラえもん達もスネ夫の呼んだリムジンで・・・・・・とか言いたい所だが、世の中そう甘くない。 彼らの足はもっぱら己が足と自転車ぐらいだ。 静香の場合は家が八神家に近いため乗り合わせても良かったが、自転車をすずか邸に乗り捨てる訳にもいかない。必然的に自転車で帰る事になった。 ちなみにドラえもん、のび太は自転車がないので『どこでもだれでもローラースケート』だったりする。のび太達は自転車が羨ましいと言うが、果たして普通の人からすればどちらの方がいいのか・・・・・・ まぁ、それは置いておこう。 5人ともスケートや自転車を使わず話しながら帰っていたので、ものすごくゆっくりだ。そしてそれは丁度彼らが空き地前の角に行き着いた時だった。 一同の内、ジャイアンが何かを見つけた。 「何だありゃあ?」 ジャイアンの指差す先にはやや太い黒猫。いや、短足だからそう見えるのか。しかし最大の問題はそれが"二足歩行"しているという事だ。 見つかった事にびっくりしたのか 「キキーッ」 などと鳴きながら空き地へと逃げていく。 明らかにネコの鳴き声ではなかったが、ジャイアン達には関係ない。 ジャイアンとスネ夫は自転車に飛び乗ると、 「かわいそうよ!」 という静香の制止を振り切って 「捕まえて見せ物にしてやる!」 と言いながら追撃、空き地へ入っていった。 しかし次の瞬間聞こえてきた声は 「捕(と)ったどぉーーー!」 というような喜びの雄叫びでも 「逃がしたか!」 という悪態でもなかった。 暗い空き地に明らかに街灯とは違うオレンジ色の閃光が走ったかと思うと、 「ギャァァァ!」 というスネ夫の悲鳴が響き渡った。 「スネ夫!?ドラえもん!」 「うん!」 のび太とドラえもんが現場に駆けつけようとローラースケートで地面を駆る。 しかし空き地に着くと同時に今度はジャイアンの悲鳴が耳に届いた。 二人はそこで見た。"何かが書かれたオレンジ色の円状の透明な板"と、そこから伸びる"オレンジ色の光線"を。光線はあやまたずジャイアンを捉えており、当のジャイアンは感電でもしたように硬直。光線の解除と同時に地面に倒れ伏した。 「ジャイアン!」 のび太の声に呼応するような形で今度はこちらに光線が放たれた。それをなんとか建物の角に入ってやり過ごせたのは僥倖(ぎょうこう)、もしくは奇跡と言って良かろう。 「ドラえもん、これじゃ近づけないよ!」 「よぉし・・・・・・!」 ドラえもんも相手を脅威ある敵と見なしたのかポケットに手を突っ込む。そしてひみつ道具を取り出した。 「『スーパー手袋』!早く着けるんだ!・・・・・・『こけおどし手投げ弾』!僕がこれを投げ込むから、爆発したら突入。向こうが怯んでる隙にジャイアン達を助けるよ!」 「O・K!」 ドラえもんはのび太が手袋を着けたと見るや、手投げ弾のピンを抜き 「口をあけて目と耳を塞げ!」 という注意を発して空き地へとそれを投擲した。 数瞬の後轟音と共に炸裂。カメラのフラッシュほど短い時間に強烈な爆音と閃光を放射し、対応していなかった者の目を、耳を奪った。 「ゴー!」 ドラえもんの掛け声と共に二人は空き地へと雪崩れ込む。そこにはスネ夫とジャイアンが倒れていた。 それをのび太達はスーパー手袋によって得られる怪力とローラースケートによる機動力で救出、搬送を開始する。 ここまでの経過時間はたったの10秒弱。 素人には過ぎるタイムだ。おかげで敵からの迎撃はなく、ドラえもん達は二人を背負ったまま空き地から脱出。静香とともに安全圏への退避を図る。 「・・・・・・」 一目散に逃げていたのび太は2ブロックほど進んで後ろを振り返ったが、敵の追撃はないようだった。 というか根本的に"敵"はあのネコなのだろうか? 一方ドラえもんもこのまま逃げても仕方ないとみんなを建物の影へ誘導する。 「のび太くん、ジャイアンを」 ドラえもんは担いでいたジャイアンをのび太に託すと、再びポケットに手を入れる。しかし目的のものが出ないのか四苦八苦している。 「これも違う、これも違う、これも、これも、これもぉーーー!『お医者さんカバン』はどこだぁーーー!」 その焦りに見かねた静香に 「落ち着いてドラちゃん!」 と諌められる始末。 しかしその焦りも分かる。のび太の両腕に感じる重み。スーパー手袋を通して確かに感じるその重みは地球重力によるものではなく命の重みだ。 どちらにも切り傷といった外傷はないが、いかなる攻撃だったのかよくわからない。 のび太にはその辺りの知識はなく、それがさらに不安を煽った。 しかしドラえもんがようやく役に立つものを探し当てた。 「・・・・・・ん、これなら!『壁紙秘密基地』!」 ドラえもんは声も高らかにポスター大のそれを出すと、民家のブロック塀にそれを貼りつけてシャッターを開いた。 「中に!奥に治療のためのベッドがあるから二人をそこに寝かせて!」 ドラえもんはスーパー手袋を静香に渡す。 のび太は少なくともジャイアンよりは取り回しがきくであろうスネ夫を彼女に託すと、シャッターの先にあるはずのベッドへと向かった。 (*) ジャイアンを担ぐのび太、スネ夫を背負う静香を先に入れ、ドラえもん自らも入ろうとして静香の自転車の存在に気づいた。 「危ない危ない・・・・・・」 見つかっては困ると彼女の自転車を四次元ポケットへとぶち込み、やや煩雑にシャッターを閉めた。 閉めてしまえばこちらのもの。数ある壁紙シリーズのなかでも最大のサバイバビリティ(生存性)を発揮するこの道具は、発見されにくいこともさることながら、内部空間が超空間になっているため仮に壁紙自体が焼けても違う場所に出入口を出現させることができるのだ。 シャッターの施錠閉鎖を確認したドラえもんはさっと階段を駆け降りると、この施設の1つである治療室へ。 しかしそこではのび太と静香がまごついていた。 「ドラえもん、この"ベッド"でいいの?」 指差されるまるで棺桶のような箱。どうやらもっと寝台のような形を想像していたらしい。現代と未来の治療室の違いから発生したジェネレーションギャップであった。 「うん。急いで!」 ジャイアン達が所定のベッドに寝かされたことを確認すると、近くの制御コンソールから治療コンピューターを作動させた。 この秘密基地にはたいていの設備がそろっており、おもちゃに近い『お医者さんカバン』の域を超える高度な治療すら全自動で行うことができるのだ。 こうして二人を寝かした棺桶の蓋が閉まると、中央画面に検査中という文字が表示された。 棺桶の内部ではX線や超音波、核磁気共鳴など多岐に渡る種類の検査が「これでもか!?」というほど行われている。あの棺桶のような形状は患者を外部から完全に遮断して検査の精度の向上を図ることと、内と外の人間を同時に守るための形だった。 「・・・・・・ドラえもん、どう?」 のび太が聞いてくるが、結果が出るまで何とも言えない。そのため 「う~ん・・・・・・」 と唸ることしかできなかった。 (*) 機械の動作する音以外は沈黙が支配するその場に不意に光が戻った。 結果が出たのだ。 「えっと、ケガの程度は・・・・・・軽傷みたいだね。よかった・・・・・・」 のび太がさらっと流し読みしてその結論を読み上げた。しかし静香は他の部分も気になったようだ。 「ねぇドラちゃん、ケガの内容の所の『MEPによる1度の魔力火傷』ってあるけど、MEPってなぁに?」 ドラえもんは処置するよう機器を操作すると、その質問に答えようと頭を捻る。 「あ~えっと・・・・・・僕が持ってる『タケコプター』って知ってるよね?」 「ええ」 「あれとか他のひみつ道具も電池で動いてるんだけど、それが貯めてるのは電気じゃないんだ。MEP(マジカル・エレメンタリー・パーティカル)。訳して『不思議な素粒子』とか、誤訳か知らないけど『魔力素』とか呼ばれる空気中に浮かぶ素粒子を『連結核』っていう専門の発電所で使えるエネルギーに変換して、そのエネルギーを貯めておくものなんだ。だからこの時代じゃ僕の道具の充電がきかない」 「へぇ・・・・・・でもどうして電気じゃダメなの?少しぐらい過去に行っても充電できるじゃない」 当然の疑問である。そんな特殊な電源を使ってはせっかくの道具も使えなくなるばかりだ。しかしドラえもんは首を振る。 「ううん。これじゃないとダメなんだ。MEPはちょっと工夫するだけで簡単に重力子の制御による重力制御とか、空気中の元素に干渉して任意の物質を作るとか、空間歪曲による空間の瞬間移動とか・・・・・・う~ん、いきなり言ってもわからないよね・・・・・・」 もっと簡単に伝えたいんだけど、昔教科書で丸暗記したことを少しアレンジしてるだけだから・・・・・・と弁明するドラえもんに、静香は 「それでもいいわ。続けて」 と促す。 「うん。ともかくMEPはいろいろできるんだ。・・・・・・そうだ、例えば電気だけでタケコプターを飛ばそうとすると、重力制御装置が大きくなりすぎてここまで小さくできなかったり」 ・・・・・・お分かりだろうが、タケコプターは回転する翼(ローター)で発生させた揚力で飛ぶヘリコプターの原理と同じではない。 それを行った場合羽が小さすぎて必要な揚力が得られないばかりか、回転が強すぎて危険である。 そのためタケコプターには翼の内部に重力制御装置が組み込まれており、これによって10割の負担を軽減しているのだ。 トドのつまりプロペラ(回転翼)は見栄えと、目と耳でどの程度動作しているか(正常、電池切れ、故障など)を確認する"お飾り"である。 「じゃあこの魔力火傷ってのは何なのさ?」 続くのび太の質問にドラえもんは 「多分魔力素って誤訳からできたものだと思うけど・・・・・・」 と前置きをすると、ある道具を取り出した。それは彼の持つ道具の中でも攻撃的な要素の強い『ショックガン』だ。 ドラえもんはそれを空いた棺桶に入れるとフルスキャン。画面にその内部構造を示す3次元図面が浮かんだ。 「MEPは何にでも使える。例えばこのショックガンもこの丸い形をした粒子加速器で、こんな感じにMEPを速くして打ち出す道具なんだ」 誰か準備したのか、それとも今作ったのか―――――おそらく後者だろうが―――――パイプ状のリングの中を粒がくるくる回り、パッと前に撃ち出すアニメーションが流れた。 「・・・・・・MEPはすごく小さくて、普段は物を通り抜けちゃうんだ。でもこうしてビームにして密度を上げると、たまに物や体に衝突するものが出てくる。それが当たった場所にショック、つまり火傷みたいな症状を与えて気絶させる。それがショックガンなんだ」 「えっと・・・・・・つまり、相手がショックガンを使ったってこと?」 「わからない。とりあえず今は様子を見るしか・・・・・・」 ドラえもんはそれだけ言うと黙り込んでしまった。 (*) 時系列はジャイアン達の襲撃直後に遡る。 次元航行船『アースラ』は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。 第97管理外世界でオーバーAランククラスの魔力砲撃の発砲を3発探知したのだ。 魔力周波数、魔力光、それら個人を特定する2つの要素は地球に駐屯するどの魔導士にも適合しなかった。しかし分かることは1つ。 術式がミッドチルダ式であることだった。 こうなると次元犯罪者の可能性が高くなる。 現在エイミィ達電算室のメンバーが術者を映像に収めようと努力しているが、強力なジャミングが行われているのかまったく映像電波が通らなかった。 「なのは達に知らせろ!海鳴町、中央空き地にて危険魔法使用。警戒しつつこれを確認せよと」 クロノの指示が飛び、通信担当の部下が動く。 なのは達は民間協力者とは言え管理局から謝礼という形で給料を貰っており、すでに管理局局員に数えられていた。 「艦長、すでに高町さんはフェイトさんと共に現場に急行中との事です」 「うん、さすが地元だ。初動が早い」 感心する内に他から通信リンクが開いた。クロノは怪訝な顔をしつつそれに応える。 「ん、どうしたシグナム?こちらの情報はそちらにも送ったはずだが─────」 『違う!"主はやてが消えた!"こちらでは精神リンクを含め消息を確認できない!そちらはどうだ?』 「なんだと!?・・・・・・エイミィ!」 「はいよ!」 クロノの指示にエイミィの手が目にも止まらぬ速打ちで機器を操作して確認するが、結果は同じだった。 「バイタル、デバイスの信号、第97管理外世界を含め、半径20次元宇宙キロ以内に応答認めず!本艦は、完全にはやてちゃんをロストしました!」 その報告にクロノは思わず艦長席のパネルに拳を打ちつけた。 「くそ!やつらの狙いははやてか!全力を挙げて探せ!転送魔法、結界、失踪に関する全ての可能性を洗い直すんだ!」 「「了解!」」 中央電算室のメンバーが一斉に応答。この事態にその誇りを掛けて挑み始めた。 クロノは一応の落ち着きを見せると、シグナムにどのように消えたのか説明を求める。 『それが・・・・・・目の前から突然消えたんだ』 シグナムの説明によると、はやては誕生会から家に帰ってすぐ疲れていたのか居間のソファーで寝入ってしまっていたという。 そこで風邪をひいてもいけないとシャマルが掛け布団を掛けようとしたその時、彼女は全員の視界から何の前触れなしに消え失せたらしい。 『誰も結界、転送魔法なんて感知しませんでしたし、物質操作魔法で空気中に元素分解された様子もないんです!こんなの普通あり得ません!』 シャマルが悲鳴のように言う。 確かに質量を持つものが我々の3次元世界で肉眼によって見えなくする方法は4つほどしかない。 1つはブラックホールのような強い重力で光をねじ曲げる方法と、2つ目は光を完全に吸収、もしくは反射させない事で相手の目に光を届かなくさせる方法。 もちろんブラックホールに代表される超重力を使うものは荒唐無稽であるため除外。後者は後ろの光を通して透明化する魔法として多用されるが、シャマルの探知能力は優秀で、この近距離なら必ず何かを探知するはずである。つまりこれも違う。 3つ目は核分裂などによる質量欠損。 しかしこれも『E=mc2乗(エネルギーは質量×光速の2乗)』という有名な式の通り、欠損した質量は全て熱、音、光といったエネルギーに変換される。それなりに軽いと予想されるはやてであろうと、質量全てがエネルギー化すれば余裕で日本を地球から消滅させることができる。よって除外。 最後の4つ目は肉眼で見えないほどバラバラに分解すること。 多少困難を伴うものの、恒常的に使われる物質操作魔法(例えばデバイスを無から空気中の元素を固定して生成したりする)によって実現可能なこの方法。そのためシャマルは大事をとって空気中の浮遊物を調べた。が、予想される空気の密度変化、もしくは質量の増加は確認できていなかった。 ともかくこの神隠しはエネルギーや質量といった対価となる何かが出ない以上、物理的にあり得ないものだった。 しかしそれはあくまで3次元的な考察であった。 「まさか・・・・・・本当にこんなことが・・・・・・!?」 解析していた電算室の一人が画面に釘付けになった。 「どうした?何か見つかった?」 主任であるエイミィの問いかけに彼は振り返って頷く。 「はい!データを送るので再確認願います」 データが送信され、エイミィがそれを一から解析し直す。そして導き出した結論は同じだった。 「なるほど・・・・・・これはイノベーション(技術革新)もいいとこだね・・・・・・」 「・・・・・・どうした?報告しろ」 まだ何にも知らないクロノがこちらに問うてくる。エイミィは自身すら信じがたいその結果を報告した。 「海鳴町全体を包む"結界"を確認!しかし魔法としてのプログラムを介していないようで、発覚が遅れました!」 「魔法を介さないだと!?そんなことができるのか?」 「今の技術じゃ無理です。おそらくデバイスなどに頼らなくてもいいほどの"科学"を持った者の仕業だと思われます。これより結界の突破方法の模索に入ります」 エイミィ達電算室メンバーは再びフル稼働体勢へと突入していった。 (*) 結界内 はやてが目を覚ますとソファーの上にいた。壁の時計によれば眠ってしまった時間は10分かそこらのようだ。 「シグナム?・・・・・・シャマル?・・・・・・ヴィータ?・・・・・・ザフィーラ?」 誰も応えなかった。 「あれ?みんなどこ行ってしまったん・・・・・・」 先のアースラと今とで2度目の独りぼっちに寂しさが募った。 「まぁ、さっきまでにぎやかやったし、しゃーないか・・・・・・」 『祭りの後の独りは寂しいもの』と割り切ったはやては、みんなを探そうと立ち上がる。 だが、その目があるものを捉えた。 「えっと・・・・・・どちら様でしょうか?」 そこにいたのは浮世離れした恐ろしい外見をした女と、"二足歩行"するネコだった。 To be continue・・・・・・ シレンヤ氏 第4章へ
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第四話「ハラオウン家(後編)」 『ご馳走様でした』 やがて夕食が済み、空になった皿に手を合わせる一同。 食後のお茶(もちろんアレ)を飲んでいたリンディ。 ホッと一息ついて椅子から立ち上がると、 「さてと、お腹もいっぱいになったし。フェイトさん、お風呂いただきましょうか」 「え?」 言われた意味をよく理解できないフェイトは首を傾げる。 「だ・か・ら。一緒に入りましょう♪」 ニコニコ顔のリンディさん。明らかに『娘とのスキンシップ』を楽しみにしている。 (これは・・・断れる状況じゃないかな・・・?) 彼女の表情と無言の呼びかけにそう判断したフェイトは、 「ご、ご一緒します・・・」 顔を朱色にしながら同意した。 正式にハラオウン家の仲間入りしたものの、本人としてはまだ恥ずかしいらしい。 「ふふっ、それじゃ行きましょうか♪」 いかにも上機嫌で浴室へ向かうリンディ。 それにしてもこの艦長さん、ノリノリである! 「母さん、食器の片付けはどうするんです?」 未だに食卓に並んでいる皿・・・後々は洗い物になるであろう食器類を見て クロノが問う。 まさか風呂を済ませたあとに洗おうなどと考えているのでは、と不安になる。 「あら?クロノ。あなたレディに上げ膳据え膳させるつもり?」 「な!?」 「今どき家事の一つもできないと、男としてやっていけないわよ?」 色々な意味で衝撃的な言葉を放つ母に絶句するクロノ。 男として否定されたような気分になり、おもわず1、2歩ほど後ずさった。 「リンディさん。その単語、使い方が間違ってるんじゃ・・・」 それを言うなら下げ膳ですよ、とフェイトが真面目に訂正を入れる。 リンディの言い放った単語だと微妙に妖しいことになってしまうのだが、 人一倍に無垢な心と知識を持つ彼女は、まだ恥じらいを覚えなかった。 その後、洗い物お願いね~と言い残し、リンディはフェイトと共に浴室へ。 やや広いリビングには男性陣のみが残された。 しばらく沈黙が続く。 「で、どうすんだよ?」 沈黙に耐え切れなくなったのはイッキだった。 腕を組み考えるクロノ。といっても、やるべきことは一つしかない。 「・・・片付けるしかないだろう。キミも手伝え」 「はぁ!? なんで俺が~!」 「やっかいになっている身だろ、それぐらいはしてもらわないとね」 「ちぇ・・・」 正論を言われたため、不満げながらもイッキは食器を運び始めた。 「ん~。メダロットがいない他は、オレたちの世界とちっとも変わんないな」 「ん?」 パサリ 「なになに・・・27時間テレビ?『今回のテーマはなまか』か、面白そ~」 「おぃ、メタビー」 パサリ 「あれ?この記事はさっき読んだっけ・・・」 パサ 「こらーー!!お前も手伝え!」 ガツンッ!! 「ふんぎゃっ!?」 脳天への一撃。 頭を抱えてうずくまったメタビーはすぐさま拳を振り上げる。 「おい!人が新聞読んでるのに殴るやつがあるかっ!」 「うるさいな。お前ばっかり楽させられるかってんだ、ほら」 イッキは目で食卓を示す。 4人分の食器類はけっこうな量がある。それをイッキはせっせと運んでいた。 「えー?やっぱりオレもやるの?」 椅子の上で足をプラプラさえてメタビーがぼやく。すると今度はクロノが、 「イッキと同様、キミもやっかいになってるんだ。少しは手伝ってくれ」 エプロンを着け、泡のついたスポンジで皿を洗いつつ背中ごしに言った。 「ったく仕方ねーな」 これも義理だと言いながらイッキに倣い、流しまで食器を運ぶメタビー。 ちなみに、エプロンをつけたクロノの姿に違和感を覚えたメタビーだったが、 そのエプロンはリンディのもの(明らかに女性モノ)だったからなわけで。 「ふぅ~」 白く曇った空間のなかでフェイトは息を吐いた。その音にエコーがかかって響く。 やっぱりお風呂はいい。一日の疲れが暖かいお湯に吸い込まれていく感じだ。 はやてが言ってたっけ、シグナムはお風呂大好きやねんっ!って。 今ならその気持ちがよく分かる。いつまでも入っていたいって思う・・・ 湯船に身をゆだねてそんなことを考えていたため、気付けなかった。 「フェイトさん?」 「え?は、はい!」 リンディが自分を呼んでいることにようやく気付き、慌てて返事を返すフェイト。 「もう、今日はよっぽど疲れてたようね」 「あ、いえ。ちょっとボーっとしてて・・・」 呼ばれているとき自分はどんな顔をしてたんだろうと考え、少し顔が赤くなる。 「ところで」 リンディは小さい椅子に腰掛け、体を洗っている。 泡でよく見えないが、ラインのはっきりした彼女の肢体を眺めていたフェイトは 「あ、何ですか?」 視線をリンディの顔に戻した。 いつかは私もあんな風になれたら、などと頭の隅で想像する。 まぁ、結果として将来は・・・みなさんもご存知のように成長するのだが。 「クロノとあの子たち、ちゃんとやってるかしらね?」 「イッキたちのことですか? うーん、なんだか仲悪いみたいでしたけど」 「そうなのよねぇ・・・」 アースラで話をしてから今までのやりとりを思い返す。 見る限り、彼らはちっとも噛み合っていない。互いにケンカをふっかけてばかりだ。 そんな2人、いや3人を残して正解だったのだろうか。 「でも、イッキもメタビーも根はいい子だし、きっと大丈夫ですよ」 食事中に色々と話をしたが、二人とも素直に喋ってくれていた。 そのことを思い出し、リンディの不安顔を見るフェイト。 それにクロノももう15歳なんだし、と付け足す。 「そうねぇ、まぁリビングに行けば分かることよね」 と言ってリンディは再び体を洗い始めた。 「あ、そうだわ!フェイトさん背中流しっこしましょうか!」 「え・・・あ、あの、それは・・・」 一方、話題の元である彼らのいるキッチン。 流しの前に3人で並び、洗い物をする野郎たちがいた。 誰が喋るわけでもなく、ただカチャカチャと食器のぶつかる音だけがしている。 クロノとイッキが食器を洗い、乾いた分からメタビーが戸棚にしまっていく。 それを数回ほど繰り返したとき、クロノが口を開いた。 「そういえばイッキ、一つ言いたいことがあったんだが」 「何だよ?」 また嫌味でも言うつもりか、と身構えるが返答はなかなか来ない。 「だから~、なんなんだよ言いたいことって!」 イッキがイライラしながら催促すると、クロノは彼の目を見据えた。 「キミ、フェイトと自己紹介をしたとき、鼻の下を伸ばしていただろう」 「な!? 伸ばしてねぇよ!」 本人としては自覚はないらしい。ただ「可愛いな」と思っていただけなのだが、 「いーや、確かに伸ばしてたぜ? オレも見た」 相棒が追い討ちをかけてきた。 「ほら、証人もいる。正直に言わせてもらうと、こちらは非常に不愉快だった」 「なんだよ!人の顔見て失礼なこと言いやがって!」 「いや、キミがどんな顔をしようと別に構わない。ただ・・・」 と、いったん言葉を切るクロノ。そして訝しがるイッキをジッと睨み、 「妹の前でああいう顔をされたのが、非常に不愉快だということだ!」 グイと顔を近づけて言い放った。その迫力にイッキは思わず気押される。 彼はそれを追うように更に口を開く。 「もし今度ああいうことをしたら・・・覚 悟 し て も ら お う」 完全に迫力に負け、カクカクと頷くイッキ。しかし、 (あれ? こいつもしかして・・・) 一つの思考が頭をよぎる。もしかしてこれは―― 「妹が心配だ、とか?」 「なにっ!?」 バッと顔が赤くなるクロノ。見るからに「図星です」と言っているようなものだ。 それを確信したイッキはニマーっと顔をニヤつかせる。 「そうかそうか~! ただの固いやつだと思ってたけど、いいとこあるじゃん!」 バシバシと彼の背中を叩くイッキ。 「や、やめろ! 別にそういう意味で言ったんじゃないっ!」 「いいっていいって! 妹思いのいい兄貴じゃねーか、オレは気に入ったぜ!」 真っ赤になったままイッキを振りほどくが、今度はメタビーが肩に手を乗せる。 急に馴れ馴れしくなった二人に、彼は動揺を隠せない。 (くっ、こいつら!) 何とか状況を打開しようと考えるが、 「まぁ心配すんなって。こいつが変なことしようとしたらオレが止めるからさ」 「おいメタビー、なんだよ変なことって?」 「そりゃお前、ストーカーしたり、こっそり覗きをしたりだな・・・」 「俺がそんなことするわけないだろ~!!」 元の話題から脱線してギャアギャア言い合う二人。 そんな彼らを見て、クロノは自分が無意識に彼らを警戒していたことに気付く。 (なんだ、僕のとり越し苦労か) 何に対してこんなに気を張っていたのか分からないが、フッと息を吐く。 おそらく、フェイトに変な虫が付くのを防ごうとしていたんだろう。 「あいつらの言う通り、僕はいつからこんな妹思いになってしまったんだか・・・」 クロノは自嘲気味に呟く。そして軽く咳払いして、 「イッキ、メタビー。母さんたちが来るまでに終わらせないと大変だぞ?」 「あ、そうだった洗い物の途中だ。メタビー急ぐぞ!」 「あたぼうよ!」 仕事を再開する3人。ちょっと前までのギスギスした空気は消え失せていた。 その光景をリビング入り口の壁から傍観する者が2人。 「うまくいってるみたいですね」 気付かれないように少しだけ顔を出して様子を窺うフェイト。 その横でリンディも満足げに頷く。 「よかったわ。でもフェイトさんも幸せよね、あんなに妹思いの兄さんがいるんだから」 「えと・・・はい」 そう言われたフェイトも、どことなく嬉しそうだった。 その後、タイミングを見計らって女性陣がリビングへ入ると同時に 4人分の洗い物は無事終了した。 リンディからクロノと一緒にお風呂に入るよう勧められたイッキは躊躇ったが、 以外にも彼の方から誘ってきた。そして2人で浴槽に浸かることに。 「そういえばクロノって何歳なんだ?」 「いきなり呼び捨てか・・・まぁいい、僕は今15歳だが」 「えーー!!?」 「なんだその驚きは? 15歳じゃ何かおかしいのか?」 「い、いや・・・身長とか見た目とか・・・」 「な!? やっぱりキミは信用できない・・・覚 悟 ぉ ! !」 「わーっ! やめろって風呂の中で!」 「うるさい! 人が気にしてることをーー!!」 バッシャン! ドバーッ!! 「なんだよアイツら、風呂なのにうるっせーなぁ」 「お湯でもかけ合って遊んでるのかな? クロノにしては珍しいけど」 「ま、なんでもいいさ」 パサリ 「ところでメタビー、なんで一週間分の新聞読んでるの?」 「いやぁ、4コマ漫画が面白くてな」 数分後。 リンディが様子を見に行くと、入浴前より薄汚れたイッキとクロノが発見された。 翌朝、カーテンの隙間からの日差しでイッキは目を覚ました。 昨日は空き部屋に布団を用意してもらい、風呂から上がったあとすぐに寝てしまった。 パジャマはクロノのお下がりを貸してもらったが、貸した本人は微妙な表情だった。 起き上がると、体のあちこちがズキズキする。 「ったくクロノのやつ・・・」 痛む体を引きずってリビングへ行くと、すでに人がいた。 「あ、おはようイッキ。顔洗ってきてね、朝ご飯あるから」 「お前なぁ、相変わらず起きるの遅ぇぞ」 フェイトはトーストを用意している。 メタビーは朝刊を広げていた。相変わらずなのはお前もだぞ、メタビー。 そして、 「おはよイッキくん、寝グセ立ってるよ?」 椅子に座りお茶を飲んでいたのは、昨日の白い服の子。なのはだ。 「ん~、あれ?なんでなのはが居るの? ふぁ~」 未だ眠そうにアクビをするイッキ。チョンマゲもなんだか元気がない。 「うん、ちょうどお休みだからみんなに紹介しておこうと思って」 「紹介する? 誰を、誰に?」 寝ぼけ眼をこすりながらイッキが聞くと、キッチンにいたリンディが出てきた。 「あなたたちの世界なんだけど、見つかるまでしばらく時間がかかりそうなの。 だから、八神家やなのはさんのお友達にも紹介しておこうと思ってね」 あなたたちのことをね、とリンディは言うが、その『八神家』というものが 分からないイッキとメタビーは「はぁ」と応えるしかない。 朝食を終え、昨日の服に着替えたイッキ。一張羅なのでこれしかない。 「はい!ここが八神家、はやてちゃんの家だよ」 なのはたちについて行くことしばらく、表札に「八神」と書かれた家に着いた。 珍しい名字だなと思っていると、フェイトがインターホンを押す。 ピンポーン 「はーい、今開けます~」 「ナダ子?」 なまりの入った独特の喋り方。 ふと、カネハチを相棒に日本一のたこ焼き屋を目指す少女が頭に浮かんだ。 自分の知っている関西弁を話す人といえば、彼女一人だけだ。 しかし、彼女がここにいるはずがない。 (いったいどんな子なんだ?) と、玄関が開きショートカットの女の子が出てきた。 「おはよう、はやて。朝早くにごめんね」 「構へんよ。なのはちゃんもおはよ~」 「うん、おはよ! あ、そうそう昨日言ってた二人も一緒だよ」 ほら、と言ってイッキとメタビーの背中を押すなのは。 あれ? 昨日もこんなことがあったような気がする。 「あんさんらが、なのはちゃんの言うてた子たちやね? 八神はやてです、よろしゅう頼むわ」 小学生にしては落ち着いた雰囲気で、はやてはニコッと笑った。 戻る 目次へ 次へ
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地上本部でクリサリモンとの戦闘が行われていた時と同時刻。機動六課所有の輸送ヘリは山岳地帯を走る貨物輸送列車を追うように飛行していた。 六課が追っているロストロギア、レリック。そのレリックらしき物が列車内部で発見されたのだ。 六課隊長、八神はやてはスターズ、ライトニング両小隊の出撃を命じ機動六課初の出撃となった。 『ガジェット反応、数多数。そちらに接近中です!』 案の定、レリックを追う謎の機械兵器ガジェットも出現しスターズ小隊隊長、高町なのはとライトニング隊長、フェイト・T・ハラオウンが迎撃に出撃。 これが初の実戦となる機動六課フォワード4名はヘリから直接貨物輸送列車へと飛び移り、内部に侵入していたガジェットとの交戦を開始。 空の隊長二名は順調にガジェットを撃墜していき、手が空き次第フォワードメンバーの応援に回ろうと考えていた矢先に―― 『何これ……アンノウン出現! なのは隊長、フェイト隊長、気を付けてください!』 ――その黒竜の群れは突然現れた。 全長は4メートル以上はあろう黒き体からボロボロの黒い翼を二枚生やした竜、は血のように赤い四つの目を、なのはとフェイトへ向ける。 五匹ほどの黒竜に囲まれた二人は背中合わせになり、いつでも動けるよう神経を黒竜に向けながら言葉を交わす。 「何なの……この竜達?」 「わからないけど……とりあえず、敵と考えていいんじゃないかな?」 両腕の鋭く尖った赤い爪を二人に向ける黒竜の群はどう見ても友好的ではない。 低い唸り声をあげ、今にも襲いかかりそうな雰囲気を漂わせる。 「ガジェットじゃない……召喚獣?」 「でも、これだけの数の竜を一度に召喚できる魔導士なんて……」 「ガジェット? 召喚獣? そんなのと一緒にして欲しくないわねぇ」 「「っ!?」」 不意に上空から投げかけられた声に反応し、二人は顔をあげる。 そこには黒いレザー系スーツを纏う灰色の肌をした異形の女性がいた。 顔半分を黒マスクで覆い素顔は見えないが、そこから除く赤い眼と左腕の異様に長く鋭い赤い爪が人外の存在である事を示している。 「それにしても、この世界の人間はホントに空が飛べるのねぇ……話半分だったんだけど」 「この世界の……? お前は一体?」 「答える必要は無いね……デビドラモン!」 黒い女性が指を鳴らし、デビドラモンと呼ばれた黒竜の群がなのはとフェイトへ襲いかかる。 「くっ! なのは!」 「分かってる!」 デビドラモンの爪が振り下ろされ、なのはとフェイトは弾かれるようにその場を離れる。 群の囲みを脱したなのはは外側から得意の砲撃を撃たんと自らの周囲に小型の魔力弾を十数発展開、狙いを定め一斉に放つ。 「アクセルシューター!」 自身の最も得意とする砲撃魔法の一つ、アクセルシューターがデビドラモンの群れへと襲いかかる。 一つ一つが意志を持つかのように自在な軌道を描く魔力弾がデビドラモンの巨体を捉え、その黒い皮膚へ直撃、爆発。 直撃を受けたデビドラモン達が痛みに悲鳴をあげるがすぐに体勢を立て直し、なのはの体を爪で引き裂こうと腕を伸ばす。 「遅い!」 デビドラモンの動きよりも速く、フェイトが高空よりプラズマランサーを発射。 なのはへと襲いかかろうとした三体のデビドラモンに容赦なく魔力砲撃の雨が降り注ぐ。 そのまま三体のデビドラモンは地上へと墜落していく。 「私もいるって事、忘れてないよねぇ!?」 「っ!」 横合いから仕掛けてきた黒い女性の打撃をレイジングハートで受け止めるなのは。 だが、力は女性の方が上なのか、そのまま押し切られる形でなのはは吹き飛ばされる。 「うぁっ!」 「なのは! くぅっ!」 フェイトが救援に向かおうとするよりも速く、デビドラモンが襲いかかる。 尾先についた爪を巧みに操って隙をつくり、両腕の爪でフェイトを引き裂かんと二体のデビドラモンがフェイトの前に立ちはだかる。 「フェイトちゃん!」 「お仲間の心配なんてする暇はないよ!」 黒い女性はなのはへ左腕の爪を振り下ろし、なのははその一撃を避け距離を取る。 接近戦では勝ち目が無い。なのははある程度の距離を取り自らの得意魔法の一つ、攻撃における主砲を放つ。 「ディバインバスター!」 対して黒い女性は両腕を振り上げ、自らの必殺たる攻撃を放つ。 「ダークネスウェーブッ!」 蝙蝠の群れを模した熱線と桃色の閃光が正面から激突し、爆発を引き起こす。 機動六課初の任務は、未知なる敵との戦闘という最悪のイレギュラーとなった。 レリック争奪戦 六課VS暗黒デジモン 「状況は!? どないなってんの!?」 六課司令室。 所用で出かけていたはやては入室するなり声を張り上げ、副官のグリフィスへと報告を求める。 「はい。空のガジェットを高町、ハラオウン両隊長が撃破した直後にアンノウンが出現……現在交戦中です」 「フォワード四名が突入した輸送列車にもアンノウン出現。フォワード四名交戦に入った模様です」 「索敵は何やっとったんや! 接近する時点で普通気付くやろ!」 「それが……急に出現したんです。転送魔法使用の反応もありませんでしたし……」 「何やて……?」 オペレーターのシャリオ・フィニーノの報告にはやては疑問の声をあげる。 転送魔法を使わずに突然現れたと言うアンノウン。モニターに映しだされるヘリからの映像を見る限り、生物のようだが、あんな生物は見たことも聞いたこともない。 なのはとフェイトは何とか戦えているが、初の実戦となるフォワードメンバーがどうなっているのか……。 「最悪やな……」 実戦ともなればどんなイレギュラーが起きても可笑しくはないと理解しているが、その中でも最悪。 よりにもよって初陣で未知の敵との戦闘。隊長二名はともかくとしてもフォワードメンバーが上手く立ち回れるとは思えない。 はやて自身もフォワードメンバーの実力を信じているが、まだまだヒヨッ子の彼女達に手加減する敵などいるはずもないのだから。 輸送列車、貨物車両内部。 スバル・ナカジマとティアナ・ランスターの両名は目の前に出現した異形と対峙していた。 赤い骨だけの体と黒い頭蓋骨。背中に生える黒い翼と宝石のついた骨の杖を担ぐ姿は悪魔と言う表現が適切だろう。 その異形、スカルサタモンは頭蓋骨の奥に覗く目を細め、スバルとティアナを見やっていた。 (何なのよ……コイツ) (ガジェット……じゃないよね?) (でしょうね。明らかに機械じゃなくて、骨の化け物だし) 素人でも分かる程に殺気を放っているスカルサタモンへと身構え、二人は念話を行う。 目標のロストロギア、レリックの収められたケースはティアナの丁度真後ろにある。 目的は分からないがもしも戦闘となった場合、レリックだけは何としてでも守り抜かねばならない。 「レリックってぇのは……その中かぁ?」 「えっ……?」 怠そうに左手の人差し指でティアナの真後ろにあるケースを指さすスカルサタモン。 骨だけの不気味な外見からは感じさせないが、人語を介せるだけの知能を持つ事に二人は驚きながらも対応する。 「さぁ……? それがどうしたの?」 レリック狙いの怪物だと言うのなら厄介な事になるかもしれない。 見かけに反して心優しい正義の使者ならばまだマシだろうが、とてもそうは思えない。 「ソイツを貰おうと思って……なぁっ!」 怠そうな動きから一変し、スカルサタモンは杖を構え床を蹴る。 咄嗟にスバルが走り、右腕のリボルバーナックルへと魔力を込める。 「だぁっ!」 「どぉらっ!」 振り下ろされた杖と突き出されたリボルバーナックルが激突する。 重い激突音の後、体格差に押されたスバルがティアナの側へと転がるように飛ばされ、スカルサタモンも激突の衝撃で尻餅をつく。 「スバル!?」 「大丈夫、平気! それよりも……アイツ、結構強いかも」 「人間が俺の一撃を受け止めた挙げ句に尻餅をつかせるだとぉ? やるじゃねぇかよぉ」 杖を支えにして起きあがり、スカルサタモンはスバルを睨み付ける。 まさか人間相手に尻餅をつく羽目になるとは……面白いじゃないかと、スカルサタモンは笑みを浮かべる。 正直な所、相手が人間というのは物足りず不満だったがこれは嬉しい誤算だ。 「レリック貰う前にテメェ等二人潰すのに決めた! ヒャハハハハハッ!」 高笑いをあげ、スカルサタモンは杖の先端を二人へ向ける。 己の中の闘争本能に従い、床を蹴ってスカルサタモンは二人の少女へと襲いかかる。 振り下ろされた杖を避けるスバルとティアナ。一撃で床を陥没させた杖の威力に背筋を冷やしながらもティアナはレリック入りのケースを確保。 スバルはリボルバーナックルのカードリッジを一発消費、その拳から放たれる射撃魔法をスカルサタモンの顔面へ叩き込む。 「リボルバーシュート!」 「ぐおっ!?」 顔面で爆発する魔力弾。 スカルサタモンが悲鳴をあげ、怯んだ隙を逃さずスバルは追い打ちを仕掛ける。 リボルバーナックルのタービンを回転させ、魔力で威力を底上げした拳を打ち込み両足のマッハキャリバーのローラーで骨しかないスカルサタモンの腰を蹴り飛ばす。 「スバル!」 「うん!」 ティアナがクロスミラージュによる銃撃でスカルサタモンへ更なる追い打ちを仕掛け、スバルはその隙にティアナの元へと走る。 スバルが自分の横を抜けて貨物車両を出たのを確認し、ティアナも貨物車両を後にする。 あんな化け物と戦うには貨物車両は狭すぎる……レリックの確保を優先した上での行動だった。 「ティア、これからどうするの!?」 「とりあえず、別行動中のチビ達と合流! 私達だけじゃ結構厳しいかもしれないし……」 訓練で何度も戦ってきたガジェット相手ならばともかく、あんな見た事も聞いた事もない化け物相手に二人だけで戦いを挑むのは無謀。 交戦自体出来れば避けたい所だがこの列車に乗っている間、ずっと隠れて逃げおおせられる相手とも思えない。 この列車の最後尾から突入した同僚、エリオ、キャロと合流すればまだ戦いようはあるかもしれないが。 「テメェ等ぁっ! あんな温い攻撃で俺を倒せると思ってんのかぁ!?」 背後からスカルサタモンの怒声と足音が聞こえてくる……さっきの攻撃で怒らせてしまったのか、かなりご立腹のようだ。 ティアナは思っていたよりも早くスカルサタモンが追ってきた事に焦りを覚えながらも、次なる手を思考する。 体格差が軽く倍はあるとはいえ、力自慢のスバルが押された相手だ。自分達二人だけで、オマケにレリックを抱えた状態で戦える相手ではない。 背後から迫ってくる足音がどんどん近づいてくる。エリオとキャロに合流する前に追いつかれるかもしれない。 ティアナは隣を走るスバルに目をやる。本来ならもっと出せるはずのスピードを落として自分の隣に付いているのはいかにも彼女らしいが、このままでは追いつかれる。 「スバル、これ持って先に行きなさい」 「ティア?」 ティアナは抱えていたレリック入りのケースをスバルに押しつける形で手渡す。 「私はアイツを足止めするから、アンタはレリック持ってエリオとキャロに合流しなさい」 「えっ……ちょっと待ってよ! ティア一人でアイツの相手なんて!」 「私ならアイツの杖の間合いに入らずに戦えるし、第一、このままじゃ二人とも追いつかれるわ」 「でも! ティアが残るんなら私も……っ!」 「それで二人ともやられて、レリック持ってかれたら洒落になんないの。分かる? 大丈夫、アンタがさっさとチビ達つれてくればいいんだから」 ティアナの諭すような口調にスバルは押し黙る。 足止めに徹するなら遠距離攻撃タイプで、幻術も使えるティアナが自分よりは確かに適しているかもしれない。 だが、万が一にでもティアナがやられたらと思うと不安でたまらない。 「私がそう簡単に倒されるとでも思ってるわけ?」 「そうじゃないけど……」 「だったら少しは信用しなさいっての」 軽く笑みを浮かべて言う親友の顔は自信に満ちている。 足止めに徹するなら自分一人で十分だと、そして、スバルがエリオとキャロを連れてすぐに戻ってくると信じているが故の表情。 それを見てスバルもようやく意を決し、レリックのケースを抱きかかえる。 「……分かった。先に行って、エリオとキャロを連れて戻ってくる!」 「頼むわよ。足止め出来る自信はあるけど、あまり長く持たせられないと思うから」 「OK! 無茶しちゃ駄目だよ!」 「アンタに言われたくないわよ!」 ティアナに合わせていた速度をあげ、スバルは一気に加速し車両の奥へと消えていく。 それを見届け、ティアナは背後を振り向きクロスミラージュの銃口を向ける。 一つ向こうの車両から聞こえてくるスカルサタモンの足音。あと一分もしない内に自分の視界へとあの骨の悪魔が姿を現すだろう。 周囲に魔力弾を展開し、クロスミラージュの銃口にも魔力をチャージ。この場から動かずの連続射撃で動きを止める。 『敵、距離15メートル前方まで接近しました』 クロスミラージュの索敵がスカルサタモンの位置を伝える。 スバルにあれだけの大見得を切ったのだ。足止めをやりきって見せねば格好が付かない。 足音が次第に大きくなり、車両同士を繋ぐ出入り口からスカルサタモンが姿を現す。 その瞬間、ティアナはクロスミラージュの引き金を引き魔力弾を一斉に放つ。 「クロスファイアシュート!」 「またかよ!?」 ウンザリしたような声をあげたスカルサタモンの体へ、魔力弾が直撃する。 生成した魔力弾を撃ち尽くすと同時にカードリッジを入れ替え、後退しつつクロスミラージュの引き金を引き続ける。 ただでさえ魔力保有量がそれ程多くない自分の弾切れが早いか、スバルが応援を連れて戻ってくるのが早いか……いや、スバルが戻ってくるまで持たせなければならない。 クロスミラージュのカートリッジを交換し、ティアナはたった一人の持久戦を開始した。 機動六課フォワード4名の残り二人、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエの二名は輸送列車の屋根の上にいた。 ヘリから降下し、屋根の上に展開していた数体のガジェットを連携で撃破。今から列車内へ突入しようかという所で二人は異変に気付く。 空の上で隊長達が戦っている竜の群れと黒ずくめ女性。ガジェットとは明らかに違う怪物と異形の存在。 「あれは……キャロ!」 「分からない……あんな竜、見た事も無いし」 フェイトと空中戦を繰り広げる黒竜……デビドラモンは、竜召喚士であり、それなりに知識はあるキャロも知らぬ存在。 ミッドは勿論、キャロの出身世界である第六管理世界にすら存在しない生物故にそれは当然の事だろう。 ただ、デビドラモンの凶暴さは見ただけで感じ取れる。闘争本能と主に従うだけの凶悪な生物だと。 流石にフェイトも一人で二体相手は厳しいのか、押されてはいないが思うように攻められない様子を見せている。 なのはも対峙している女性に思いの外苦戦しているように見える。 「フェイトさん達を助けないと!」 「でも、僕達空飛べないし……」 保有戦力制限というルールに従いリミッターをかけて力を落としているとはいえ、隊長二人が苦戦を強いられている。 それは二人にとって衝撃的な光景であり、焦りを生み出させるに十分な効果を与えていた。 今すぐにでも助けに行きたいが、エリオの言うように空を飛ぶ術がない自分達に一体何が出来よう。 (……助けには、行けるかもしれない。でも……) 空を飛ぶ術……キャロには一応、それがあった。 自らが使役する子竜、フリードリヒ本来の力を解き放てば空へと舞い上がる事は可能。 しかし、キャロの中にそれを使うという選択肢は存在しない。 (竜召喚は危険な力……誰かを傷つけるだけの) 幼くして類い希なる竜召喚の力を持っていたが故に故郷を追放された。 それ以来、力を使おうにも制御できずに暴走するばかりでまともに使えた試しが無い事も手伝ってか、キャロはその力を使わない。 否、使えない。例え使っても誰かを傷つけてしまうだけだ……誰かを助けるなど出来る筈もない。 「キュクル?」 主の不安げな表情を心配してか、フリードがキャロの顔を覗き込む。 「フリード……大丈夫。何でも、無いから……」 浮かない顔でそういう主に、フリードは困ったような表情を浮かべる。 大丈夫と暗い表情で言われても納得する出来るはずも無いのは当然。 エリオもキャロに何か声を掛けようとするが……それよりも早く足下、車両の屋根が内側から何かに吹き飛ばされる。 「うわっ……キャロッ!」 「きゃあっ!?」 咄嗟にエリオは落下寸前のキャロを押しのけ、彼女が車両へと落下するのを防ぎ自分は落下。 「痛ぁ……っ!」 車両の床に背中から叩きつけられる形となったエリオは痛みに顔を歪めながらも、槍型デバイス、ストラーダを支えに立ち上がる。 屋根を吹き飛ばし、自分とキャロを襲った犯人であろう大型のガジェットが車両中央、無機質なカメラアイを自分に向けて鎮座している。 球状のボディ上部からはベルトアーム、下部からはコードを触手のように伸ばしたそれは訓練や記録映像で見た物のどれとも違う。 「新型……っ!?」 ガジェットがベルトアームを伸ばし、エリオに襲いかかる。 エリオは後方へ飛び退きながら術式を展開。ストラーダを振りあげ、魔力で圧縮した空気刃を飛ばす。 「ルフトメッサー!」 エリオが放ったそれはガジェットの展開した魔力の結合・効果発生を無効にするフィールド、AMFにより直撃する事なく消滅。 訓練で何度も経験したが、魔力結合・魔力効果発生を無効にするこれは魔導士にとって最も厄介な物の一つ。 このガジェットは大型なだけにAMFの効果範囲も広いのか、すぐ近くにいるエリオどころか距離が離れたキャロの魔法使用まで妨害される。 オマケにかなりの高濃度。高ランクの魔導士ならフィールド内でも対処は出来るそうだが、それは自分達には無理な話だ。 「こんな遠くまでAMFが……」 「これじゃ、フェイトさん達を助けに行く所じゃない……クソっ!」 憎たらしいAMFとガジェットに悪態を付き、エリオはストラーダの切っ先を向ける。 ガジェットを相手にする時点で魔法使用不可状況での戦闘になる事は覚悟していたのだ。 この程度の状況を切り抜けられなければ、この先六課の仲間と共に戦っていくなど無理……まして、騎士を名乗るなど夢のまた夢。 ストラーダの切っ先をガジェットへと向ける。魔法が使えないのなら己の身体能力で勝負、ただそれだけだ。 「いくぞぉぉぉっ!」 僅かに残る不安を自らの叫びと共に吐き出し、エリオはガジェット目掛け突撃した。 「ダークネスウェーブッ!」 「うぁ……っ!」 女性の放つ熱線を防御フィールドで受け止めるがすぐに突き破られ、なのはは短い悲鳴をあげながら衝撃で吹き飛ばされる。 咄嗟に回避運動を取り直撃は免れたが、バリアジャケットのスカートが僅かに焼かれ、白い布が黒い墨となって千切れ飛ぶ。 それなりに自信があった防御をあっさりと破られた事に軽くショックを覚えながら、なのははすぐに次の手を打つ。 「ディバインシューター!」 複数の魔力弾を放ち、一つ一つが全く違う軌道を描きながら女性へと襲いかかる。 女性はそれを鼻で笑い、左腕を槍状へと変化させ接近してきた魔力弾から片っ端から叩き落とす。 その隙をつき、なのはは最小チャージでバスターを放つが、直撃は叶わずギリギリの所で回避される。 (パワーじゃあっちが上……こっちは手数で攻めるしかない!) なのはは絶えず動き回り、最小チャージのバスターを放つ事で女性の動きをある程度封じていく。 正面切っての力勝負では圧倒的に不利。ディバインバスターですら女性の放つ熱線と相殺がやっとだ。 そのディバインバスターも、最強の切り札であるスターライトブレイカーもチャージする暇を女性は与えてくれない。 故に威力は心許ないがチャージに時間のかからない砲撃を連射し、手数で勝負する手段を選ぶ。 「チッ……鬱陶しい小娘だねぇ」 女性、レディーデビモンと呼ばれるデジモンはなのはの砲撃を回避し、叩き落としながら舌打ちする。 パワーで負けていると悟ったからか、弱い攻撃を連射するという姑息な方法を採り始めた。 この程度の攻撃なら蚊ほどにも感じないが避け続け、防ぎ続けると言うのもいささか面倒くさい物だ。 何よりも、人間相手にこれほど時間を掛ける事はプライドが許さない……そろそろ実力差を思い知らせてやろう。 「たかが人間が、調子に乗るんじゃないよ!」 直撃コースだった砲撃を防ぎ、レディーデビモンは一気になのはとの距離を詰める。 なのははすぐに移動を開始するが僅かにレディーデビモンが速く、槍と化した左腕を突き出す。 「ダークネススピアーッ!」 「っ!?」 レディーデビモンの黒い槍が、なのはの左肩を捉えた。 容赦のない強烈な突きが白いバリアジャケットを突き破り、赤い血の色に染めていく。 「あ……っ?」 一瞬、何が起こったのか理解できなかった。 なのはは呆然と貫かれた左肩を見やり、赤く染まったバリアジャケットとレディーデビモンの槍を視界に認め、状況を理解。 彼女の脳がそれを認めた瞬間、左肩が熱くなり堪え切れぬ激痛が神経を伝って全身に襲いかかる。 「あっ……うあああああああっ!」 張り裂けんばかりの悲鳴が、山岳地帯へと響き渡った。 「なのは!?」 響き渡った悲鳴に、デビドラモンと交戦中だったフェイトは動きを止め、悲鳴が聞こえてきた方向へと顔を向ける。 自分のほぼ真下……距離にして十数メートル程の位置に、左肩を貫かれたなのはの姿があった。 完全に肩を貫通したレディーデビモンの槍と白いジャケットが赤く血で染まり、なのはの表情は普段滅多に見せない苦悶のそれへと変わっている。 その光景の意味を理解した瞬間、フェイト・T・ハラオウンの中の何かが音を立てて切れた。 「「グオオオオッッ!」」 動きを止めたフェイトへ2体のデビドラモンが襲いかかる。 戦いの最中に動かなくなった敵など的意外の何者でもなく、凶暴な性質のデビドラモンは容赦なく必殺の一撃たる爪をフェイトに向け振り下ろす。 真紅の爪がフェイトの頭部を捉え、切り裂くように叩き潰さんとする直前……デビドラモン達は爪の動きを止めた。否……止めざるを得なかった。 デジモンとしての、生物としての本能が目の前の女性への攻撃は危険だと訴えたのだ。しかし、その事を知るには若干遅すぎた。 「……邪魔だ」 冷徹な声で静かに呟くと、フェイトはバルディッシュを軽く振るってからレディーデビモン目掛け降下する。 動きを止めた2体のデビドラモンはそれを追おうとはせず、その場で動きを止めたまま……頭部から尻尾の先まで綺麗に両断される。 体を構成するデータが消滅し、黒いタマゴの形となって重力に従い落下していくそれを気にも止めず、フェイトはバルディッシュをレディーデビモンへと振り下ろした。 「はああああああっ!」 「なっ!?」 レディーデビモンがフェイトの接近に気付いた時には遅すぎた。 非殺傷設定を解除したバルディッシュの刃がその首目掛け振り下ろされ、一瞬の間の後……レディーデビモンの首と胴体が離れ、消滅。 粒子状となったレディーデビモンの体は黒いタマゴとなり、そのまま地上へと落下していく。 「っ……ぁ」 「なのは!?」 解放され、落下しそうになるなのはをフェイトが抱き止める。 貫かれた左肩からは血が流れ、白のバリアジャケットは赤く染まり、フェイトの黒いジャケットにも血が付着。 フェイトの腕の中で荒く息を吐きながら、なのはは右手で左肩の傷口を押さえ治癒魔法での応急処置を開始する。 「なのは、大丈夫?」 「うん……なんとか……私は平気だから、フェイトちゃんはスバル達の方をお願い。多分、あっちにもアンノウンがいると思うから」 「……解った。ヴァイスには連絡しておいたから無理せず後方に下がって」 それだけ告げ、フェイトは線路を走る貨物列車へと向かう。 一人残ったなのはは魔法による治癒を行いながら、貨物列車にいる筈の新人達へ念話通信を送る。 『皆……誰か聞こえる?』 『なのはさん、スバルです!』 『スバル、そっちの状況は?』 『なんか変な骸骨がレリック狙って現れて……今、ティアが足止めしてます』 やはりと言うべきか、列車内にもアンノウンが出現していた。 しかし、そちらよりもなのははスバルの言った事に衝撃を覚える。 『ティアナが足止めって……一人で?』 『えっ……はい。私はレリック持ってエリオ達と合流しろって……』 『なんて無茶を……っ! スバル、エリオ達の方はいいからティアナの所まで急いで戻って、私も行くから!』 念話と魔法による左肩の治療を中断し、なのはもすぐに貨物列車へと向かう。 レディーデビモンと同等、またはそれ以上の敵が列車内にいる可能性だってある……そんな敵をティアナ一人で足止めなど不可能だ。 左肩の傷は完全に塞がっておらず、動かすたびに痛みが走るが、無茶をしている教え子を助けなければいけないこの状況でいちいち気にしている暇など無い。 こんな事態になるのなら新人達は待機させ、自分とフェイトだけで出撃するべきだったと後悔すら覚える。 (無茶して潰れたら意味無いのに……っ!) ティアナに若干苛立ちを覚えながら、なのはは先頭車両の屋根に空いていた穴へと飛び込んだ。 エリオが床を蹴るのと同時に、ガジェットがベルトアームを伸ばす。 不安げな表情を浮かべるキャロが見守る中、エリオは槍へ魔力の代わりに己の闘志を込めガジェットへと振り下ろした。 槍とベルトアームがぶつかり合う甲高い金属音が車両内に響く。体格差を利用し、ガジェットの懐へ潜り込もうとするエリオと、アーム、触手を巧みに用いてそれを妨害するガジェット。 エリオは自慢の足の速さで攪乱しようとするが場所が狭く活かしきれない上に、ガジェットのベルトアームが自意識を持つかのような動きでこちらに付いてくる。 正面から迫るアームの一撃をストラーダで受け流し、お返しとばかりにアームに一撃を加え、その反動を利用しガジェットの背後まで飛び着地。 (全然効いてない……) すぐに顔をあげ、自分が撃ち込んだアームを確認するが傷一つ付いていない。 やはり魔力による攻撃力補助無しでは厳しい。男とはいえ、成長過程の最中である10歳の少年の腕力には丈夫なアームを傷つけるだけの力がない。 ならばと、エリオは狙いをアームと本体を繋げる接続部分に狙いを定め、ストラーダを構え直し突撃。 渾身の力を込めた槍の一突きは、それよりも早く動いた触手にストラーダを絡め取られ、不発に終わる。 「なっ!?」 驚愕し、エリオの動きは一瞬だけ止まる。それは致命的な隙だった。 豪速で繰り出されたベルトアームによる打撃がエリオの腹にめり込み、その小さな体を車両の壁に叩き付ける。 「うぁ! ぐ……ぅぁ……」 これで攻撃が終わるはずも無く、ガジェットはプログラムされた行動の通り、エリオの排除へかかる。 先の攻撃で気を失ったのか、エリオは壁に倒れ込んだままピクリとも動かない。 ガジェットはアームで器用にエリオの体を掴み上げ、無造作に屋根の穴へ……車外へと放り投げた。 「エリオ君!?」 放り投げられ、崖下へと落下するエリオ。 キャロはその光景を、目の前で今まさに死を迎えようとする少年の姿を恐怖の表情で見るしか出来ない。 今ならまだ力を使えば彼を助けられるかもしれない。しかし、この強力なAMFの中では魔法は使えない上……力を使う事への恐怖が幼い少女の心を支配する。 使えない、使っても助けられない、使っても……逆に彼を死なせるだけかもしれない。 「……あ……あぁ……っ」 屋根の上でガクガクと震える少女を、ガジェットは冷たいカメラアイで見上げベルトアームを伸ばす。 次は屋根の上の邪魔者を消す。命令を実行する為だけに働く思考が下した判断に従い動く。 巧みにアームを用いて屋根の上に姿を現したガジェットを見上げ、キャロは完全に腰を抜かし、その場に座り込む。 「キュクルゥッ!」 恐怖に支配され、動けない主を守ろうとフリードはガジェットへ向け炎を放つ。 しかし、ガジェットの動きを止めるには至らず逆にそのアームによって捕らえられる。 「フリード!? ……ひっ!?」 フリードの心配をする間もなく、ガジェットがキャロへとカメラアイを向ける。 もう片方のベルトアームで車両から叩き落とそうと狙いを定め、アームを振り上げた所で……二本のアームは切り裂かれた。 何事かとガジェットが反応するよりも早く、その球状のボディを魔力刃が背後から貫き、機能を停止させる。 そのまま横薙ぎに振るわれた刃によって破壊され、爆散したガジェットの向こう側にバルディッシュを構えたフェイトの姿があった。 「フェイト……さん?」 「キャロ、大丈夫?」 左腕に気絶したエリオを抱きかかえたフェイトは心配そうな、申し訳なさそうな表情を浮かべている。 アームから解放されたフリードもキャロの傍らへと降り立ち主の顔を覗き込む。 最も心を許せる人が助けに来てくれた……その安心感と恐怖からの解放感から、キャロはその場で気を失った。 「うぁっ! ……ぁ……ぁ」 壁に叩き付けられ、ティアナの口から苦悶の声が漏れる。 足止めに徹すれば一人だけで十分、距離を取って戦えばどうと言う事はない……それは自惚れだった。 膝をつき、そのまま俯せに倒れたティアナの頭をスカルサタモンの足が踏みつける。 「ぐぁ!」 「オイオイ、もうお眠りか? つまんねぇなぁ」 「あっ……があぁっ!」 このまま頭を踏み砕こうとでも言うのか、スカルサタモンは体重を足に掛けてくる。 目を見開き、苦痛に悲鳴をあげるティアナをつまらなそうに見やり、わざとらしいため息を吐く。 たった一人で自分を相手にしようとした事からそれなりの手練れだと思ったが、そうでも無かった。 「ったくテメェのせいで時間の無駄だ。さっさとレリック持って逃げてったお仲間呼び戻しやがれ」 「あっ……ぐぁ……お……断りよ……あがぁっ!?」 「自分の立場っての解ってねぇのか? 雑魚の分際でよぉ?」 体重を更に掛け、強く頭を踏みつける。 敵に足蹴にされ、手も足も出せず一方的に嬲られる屈辱。 雑魚と嘲笑われる屈辱は、ティアナのプライドに大きく亀裂を走らせる。 「さっさとお仲間呼んで惨めに助けてもらうのが三下にはお似合いなん……ぐへぇっ!?」 スカルサタモンの愚別の言葉は、その顔面に叩き付けられた拳により遮られた。 拳の主、スバルは感情の赴くままにリボルバーナックルへ魔力を込める。 「ティアから……どけぇ!」 力と怒り任せに殴り抜いた拳が、スカルサタモンの体を宙に浮かせ壁に叩き付ける。 壁に叩き付けられ、スカルサタモンが悲鳴をあげるよりも早く、スバルは追撃を仕掛け、拳を叩き込む。 「おりゃあぁっ!」 「ぐぎゃはぁっ!?」 壁をぶち抜き、車外へと放り出されたスカルサタモンはそのまま崖下へと落下する。 スバルはそれを確認し、すぐさま床に倒れたままのティアナへと駆け寄り、抱き起こす。 「ティア!」 「スバル……アンタ、一人……?」 「うん。ティア一人じゃやっぱり心配だったし、それになのはさんも……」 「スバル! ティアナ!」 スバルが名前を出すのと同じタイミングで、なのはが姿を現す。 二人の姿を確認し、案の定ボロボロになっているティアナを見てなのはの表情が僅かに強張る。 無茶をしたティアナへの怒りと不甲斐ない自分への怒り、そして情けなさでどうにかなりそうだった。 「ティアナ、全く無茶して……初陣だからってちょっと浮かれてたんじゃない?」 「えっ……その……」 「スバルも、ティアナを一人にしたのは問題だよ。下手したら死んじゃってたかもしれないんだから」 「あっ……すいません、でした」 あまり見せる事の無いなのはの厳しい表情と口調に、二人は思わず顔を俯かせる。 なのははため息をつき、自分を落ち着かせてから小さく笑みを浮かべ、二人の教え子を軽く抱き寄せた。 二人が無事だった事で気がゆるみ、左肩の激痛がぶり返して意識が少し遠のく。 「でも、無事で良かった……ちょっと、安心した……かな……」 「なのはさん……?」 そうして、なのははスバルとティアナに体を預けたまま意識を手放した。 『ドクター、貨物車両のレリック……管理局の手に渡ったようです』 「そうか……まぁ、仕方ないね」 モニターに映る秘書たる女性、ウーノの言葉を聞きながらドクターと呼ばれた男は手元のパネルを操作する。 男、ジェイル・スカリエッティは正面の大型モニターに話題にあがった貨物列車の様子を映しだす。 管理局のヘリが数台到着しており、中には救護班のヘリすら見える。 「おや……負傷者でも出たのか?」 『高町なのはが重傷と聞いています。どうやら、デジモンが出たようで……』 「デジモンが……? 全く、彼には困った物だね」 表情をあまり変える事がないスカリエッティだが、流石に不機嫌そうな声と表情を浮かべる。 協力者である彼が存在を教え、何体か協力者という立場で手元にいるデジモンだが……ここまで勝手をされるのは問題だ。 本来、貨物列車のレリック強奪はガジェットのみで行う筈だったのを突然乱入してきた挙げ句に大事な研究対象の一人を傷つけられてしまった。 「少しばかり自重するように言ってくれないか? 聞けば地上本部にも出たそうじゃないか」 顔を向ける事なく、背後にいた彼へと声をかける。 声を掛けられた男は苦笑し、悪びれた様子もなく謝罪の言葉を口にする。 「いや、すいませんねぇ。今回はどちらもあいつ等が勝手にやった事で……私の不手際です」 「解ってくれればそれでいい。君には色々と助けて貰った事だし、あまり険悪な仲にはなりたくないんだ」 「それはこちらも同じですジェイル博士。私も貴方の作品を数人お借りしていますしねぇ」 「君のお陰で完成が早まったお礼さ。ただ、あまり無茶はさせないでくれよ」 スカリエッティは背後に立つ彼の方へと顔を向ける。 5年前に姿を現し、協力を買って出た異世界の科学者へと。 「ドクター倉田」 登場デジモン解説 デビドラモン 成熟期 邪竜型 ウィルス種 複眼の悪魔の異名を持ち、闇の中を飛び回っているとされる邪竜。 石像の状態で発見される事も度々あり、高位の暗黒系デジモンの居城などで時折見かけられる。 必殺技は両腕の赤い爪で敵を切り裂く「クリムゾンネイル」 レディーデビモン 完全体 堕天使型 ウィルス種 闇の貴婦人と呼ばれる女性型堕天使デジモン。 高純度の暗黒エネルギーを持ち、数ある完全体の中でも強力な部類に分けられる。 蝙蝠の群れを連想させる熱線「ダークネスウェーブ」、左腕を槍に変化させ敵を貫く「ダークネススピア」など多彩な技を持つ。 なお、外見や思考などから人間の女性を連想させるが、デジモンには性別が存在しない為、あくまで女性“型”である。 スカルサタモン 完全体 アンデット型 ウィルス種 強さを追い求めた堕天使型デジモンの成れの果てとされるアンデットデジモン。 しかし、より悪として洗練されており、その力には計り知れない物がある。 必殺技は手に持った杖から暗黒の力を凝縮した光を放ち、敵の構成データを滅茶苦茶に破壊する「ネイルボーン」