約 2,067,134 件
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/28.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第1話 【空への翼】 0071年 4月29日 ミッドチルダ臨海第8空港 スバル・モノローグ『小さい頃から私は、本当に弱くて、泣き虫で。 悲しいこととか、辛いことに、いつもうずくまって。ただ、泣くことしかできなくて』 地上本部局員「うわぁっ!ダメだダメだ!こっちはダメだ!」 「この先に子供が取り残されてるぞ!何とかならないのか!」 「さっき本局の魔導師が突入した!救助は彼女がしてくれる!」 スバル「おとーさん…、おねーちゃん…うわぁああっ。痛いよ…、熱いよ…こんなのやだよう…帰りたいよう…」 スバル「助けてけて…誰か…助けてぇっ……?!きゃぁっ!」 なのは「良かった…間に合った…。助けに来たよ。よく頑張ったね。偉いよ」 スバル「あ…う…う…」 なのは「もう大丈夫だからね。安全な場所まで、一直線だから」 レイジングハート(Upwards clearance confirmation.)「ファイアリングロック、解除します」(A firing lock is canceled.) なのは「一撃で地上まで抜くよ!」 レイジングハート「オーライ、ロードカットリッジ。バスターセット」 なのは「ディバイーン!バスター!」 「こちら教導隊ゼロワン。エントランスホール内の要救助者、女の子一名を救助しました」 地上本部局員「ありがとうございます!さすがは航空魔導師のエースオブエースですね!」 なのは「西側の救助隊に引き渡したあと、すぐに救助活動を続行しますね」 地上本部局員「お願いします!」 スバル「あ…」 スバル・モノローグ『炎の中から助け出してもらって、連れ出してもらった、広い夜空。 冷たい風が優しくて、抱きしめてくれる腕が、暖かくて。 助けてくれたあの人は、強くて、優しくて、かっこよくて。 泣いてばかりで、なにもできない自分が情けなくて。私はあの時、生まれて初めて心から思ったんだ』 0075年 4月 ミッドチルダ 臨海第8空港付近 廃棄都市街 スバル・モノローグ『泣いてるだけなのも、なにもできないのも、もういやだって。強くなるんだって』 スバル「ふっ!ふっ!はぁーっ!」 ティアナ「スバル。あんまり暴れてると試験中にそのオンボロローラーが、イッちゃうわよ?」 スバル「ふぇーっ、ティーアー!ヤなこといわないでー!ちゃんと油も注してきたー!」 スバル・ティアナ「おはようございますっ!」 リインフォースⅡ「さて、魔導師試験の受験者さん2名、揃ってますか?」 スバル・ティアナ「はい!」 リインフォースⅡ「確認しますね?時空管理局陸士386部隊に所属のスバル・ナカジマ二等陸士と」 スバル「はいっ」 リインフォースⅡ「ティアナ・ランスター二等陸士」 ティアナ「はいっ」 リンイフォースⅡ「所有している魔導師ランクは、陸戦Cランク。 本日受験するのは陸戦魔導師Bランクへの昇格試験で、間違いないですね?」 スバル「はいっ!」 ティアナ「間違いありません!」 リインフォースⅡ「はい!本日の試験官を務めますのは、私、リインフォース・ツヴァイ空曹長です。よろしくですよー」 スバル・ティアナ「よろしくお願いします!」 はやて「お、さっそくはじまってるなー。リインもちゃんと試験官してる…。ふふっ…」 時空管理局 二等陸佐 八神はやて フェイト「はやて!ドア全開だと危ないよ。モニタでも見られるんだから」 時空管理局本局 執務官 フェイト・T・ハラオウン はやて「はーい」 フェイト「この二人がはやての見つけた子たちだね」 はやて「うん…ふたりともなかなか伸びしろがありそうなええ素材や」 フェイト「今日の試験の様子を見て、いけそうなら、正式に引き抜き?」 はやて「ん…直接の判断は、なのはちゃんにおまかせしてるけどな?」 フェイト「そっか」 はやて「部隊に入ったらなのはちゃんの直接の部下で、教え子になるわけやからな」 レイジングハート「範囲内に生命反応、危険物の反応はありません」(There is no vital sign in the range,There is no dangerous object either) 「コースチェック、終了です」(Check of the course was finished) なのは「ん、ありがとう。レイジングハート。観察用のサーチャーと、障害用のオートスフィアも設置完了。 私たちは全体を見てようか」 レイジングハート「イエス、マイマスター」 リインフォースⅡ「二人はここからスタートして、各所に設置されたポイントターゲットを破壊。 あ!もちろん破壊しちゃダメなダミーターゲットもありますからね。 妨害攻撃に気をつけて、全てのターゲットを破壊。制限時間内にゴールを目指してくださいです。 なにか質問は?」 スバル「あ…えーっと…」 ティアナ「ありません!」 スバル「ありません!」 リインフォースⅡ「では、スタートまであと少し、ゴール地点で会いましょう、ですよっ!」 ティアナ「レディーッ!ゴウッ!」 はやて「おぉ、始まった始まった」 フェイト「お手並み拝見、っと」 ティアナ「スバル!」 スバル「うん!中のターゲットは私がつぶしてくる!」 ティアナ「手早くね!」 スバル「オッケーイ!」「ロードカートリッジ!リボルバーッ!シューート!」 ティアナ「落ち着いて…冷静に…。…ぁっ!」 スバル「いーいタイム!」 ティアナ「当然!」 フェイト「うん。いいコンビだね」 はやて「そやけど、難関はまだまだ続くよ。特にコレが出てくると、 受験者の半分以上は脱落することになる最終関門…、大型オートスフィア」 フェイト「今の二人のスキルだと普通なら防御も回避も難しい、中距離自動攻撃型の狙撃スフィア…」 はやて「どうやって切り抜けるか…、知恵と勇気の見せ所や」 スバル「いーくぞぉーっ!」 ティアナ「スバル、うるさい!」「よし。全部クリア!」 スバル「この先は?」 ティアナ「このまま上。上がったら最初に集中砲火が来るわ。オプティックハイド使って、 クロスシフトでスフィアを瞬殺!やるわよ!」 スバル「了解!」 フェイト・はやて「あっ…!」 なのは「んっ…」 ティアナ「5!4!3!2!1!」 スバル「ふっ!」 スバル・ティアナ「ゼロ!」 ティアナ「クロスファイヤーッ!」 スバル「リボルバーッ!」 スバル・ティアナ「シューッ!ト!」 フェイト「なるほど…これは確かに伸びしろがありそうだね」 はやて「ふふっ、そやろ」 フェイト「残るは、最終関門」 スバル「イエーイ!ナイスだよティア!一発で決まったね!」 ティアナ「ま、あんだけ時間があればね。」 スバル「普段はマルチショットの命中率あんま高くないのに、ティアはやっぱ本番に強いなー!」 ティアナ「うっさいわよ!さっさと片付けて、次に…!」 スバル「ん?」 ティアナ「スバルっ防御!」 スバル「うわっ!」 ティアナ「んあっ!」 スバル「ティア!」 はやて「…!なんや?」 フェイト「サーチャーに流れ弾が当たったみたいだけど…」 なのはトラブルかな…?リィン、一応様子を見に行くね」 リインフォースⅡ「はいです、お願いします」 レイジングハート「私もセットアップしますか?」(Am I set up?) なのは「そうだね。念のためお願い」 レイジングハート「オーライ、バリアジャケットスタンディンアップ」 スバル「ティア!」 ティアナ「騒がないで。なんでもないから!」 スバル「嘘だ!グキッっていったよ!捻挫したでしょ?」 ティアナ「だから何でもないってっ、くっ。あ、た…」 スバル「ティア…。ごめん、油断してた…」 ティアナ「あたしの不注意よ…。アンタに謝られると、かえってむかつくわ。走るのは無理そうね…。最終関門は抜けられない」 スバル「ティア…」 ティアナ「あたしが離れた位置からサポートするわ。そしたら、アンタひとりならゴールできる」 スバル「ティア!」 ティアナ「うっさい!次の受験の時はあたし一人で受けるつってんのよ! スバル「次って、半年後だよ?」 ティアナ「迷惑な足手まといが居なくなれば、あたしはその方が気楽なのよ」「わかったらさっさと…でっ…!ほら、はやく!」 スバル「ティア、あたし、前に言ったよね。 弱くて、情けなくて、誰かに助けてもらいっぱなしな自分がイヤだったから管理局の陸士部隊に入った…」 「魔導師を目指して、魔法とシューティングアーツを習って、人助けの仕事に就いた…」 ティアナ「知ってるわよ。聞きたくもないのに、何度も聞かされたんだから」 スバル「ティアとはずっとコンビだったから、ティアがどんな夢をみてるか、 魔導師ランクのアップと昇進にどれくらい一所懸命かも、よく知ってる! だから!こんなとこで、私の目の前でティアの夢をちょっとでもつまづかせるのなんてイヤだ! 一人で行くのなんて、ぜったい嫌だ!」 ティアナ「じゃあどうすんのよ!走れないバックスを抱えて、残りちょっとの時間でどうやってゴールすんのよ!」 スバル「裏技!反則取られちゃうかもしれないし、ちゃんと出来るかもわからないけど…うまくいけば二人でゴールできる!」 ティアナ「本当?」 スバル「あ、あー、えーと、その、ちょっと、難しいかもなんだけど…、ティアにもちょっと無理してもらうことになるし… よく考えるとやっぱり無茶っぽくはあるし…そのなんというか、えと、ティアがもしよければっていうか…あの…」 ティアナ「うあーっ!イライラする!グチグチいっても!どうせアンタは自分の我が儘を通すんでしょ?! どうせ私はアンタの我が儘に付き合わされるんでしょう?!だったら、ハッキリ言いなさいよ!」 スバル「二人でやれば、きっと出来る。信じて、ティア」 ティアナ「残り時間、3分40秒。プランは?」 スバル「はっ…うん!」 はやて「お、出てきた」 フェイト「うん。あれ…?だけど…」 はやて「あっ!直撃!?」 フェイト「ん、違う…」 はやて「高速回避?いや、ちゃうなぁ…」 フェイト「あの子、ティアナは囮」 はやて「ということは…」 ティアナ「フェイクシルエット…コレ、めちゃめちゃ魔力食うのよ…。あんまり、長く保たないんだから…、 一撃で決めなさいよ!でないと、二人で落第なんだから!」 スバル「うん!」『私は空も飛べないし、ティアみたいに器用じゃない。遠くまで届く、攻撃もない。 できるのは、全力で走ることと、クロスレンジの一発だけ!だけど、決めたんだ。 あの人みたいに、強くなるって!誰かを、何かを、守れる自分になるって!』「ウイング!ロード!」 ティアナ「行って!」 スバル「いーーっくぞおおおおおーっ!でやあああああっ!うぉおおおおおっ!うっおおおおおっ!」 「一撃!ひっっとおおおぅ!ディバイーン!バスタアアアッ!」「はぁっはぁっはぁっ…」 ティアナ「やった?」 スバル「なんとか…! ティアナ「残り、あと1分ちょい。スバル!」 スバル「うん!」 リインフォースⅡ「あ!来たですねー!」 スバル「あと何秒?」 ティアナ「16秒!まだ間に合う!」 リインフォースⅡ「ハイ!ターゲット、オールクリアです!」 スバル「魔力!ぜんかいいいいいいっ!」 ティアナ「ちょっ!スバル!止まるときのこと考えてるんでしょうね?」 スバル「え?あっ…!」「うわぁっ!」 ティアナ「嘘ぉ!」 リインフォースⅡ「あ、なんかチョイヤバですー」 スバル・ティアナ「うわあああああああっ!」 なのは「アクティブガード…、ホールディングネットもかな…」 レイジングハート「アクティブガード、アンド、ホーディンネット」(Active Guard and Holding Net.) リインフォースⅡ「んんんんんっ!二人とも!危険行為で減点ですっ! 頑張るのはいいですが怪我をしては元も子もないですよ!そんなんじゃ、魔導師としてはダメダメです!」 ティアナ「ちっさ…」 リインフォースⅡ「まったくもう!」 なのは「ハ、ハハハ。まーまー」「ちょっとびっくりしたけど、無事で良かった。とりあえず試験は終了ね。お疲れ様」 スバル「あっ、んっ」 リインフォースⅡ「むーっ」 ティアナ「あっ」 なのは「リィンもお疲れ様。ちゃんと試験官できてたよ」 リインフォースⅡ「わーい!ありがとうございます!なのはさん!」 なのは「まぁ、細かいことは後回しにして…、ランスター二等陸士」 ティアナ「あっ、はいっ」 なのは「怪我は足だね。治療するからブーツ脱いで」 リインフォースⅡ「わっ!治療なら私がやるですよ!」 ティアナ「あ、えと…。すみません…」 スバル「なのは…さん」 なのは「うん」 スバル「ああっ!いえ、あの!高町、教導官、一等空尉!」 なのは「なのはさんでいいよ。みんなそう呼ぶから」「4年ぶりかな?背、伸びたね。スバル」 スバル「…っ!えと、あの…あの…」 なのは「うん…また会えてうれしいよ」 スバル「うっ…」 はやて「さて…、なのはちゃん的に二人はどやろ?合格かなぁ?」 フェイト「ふふっ。どうだろうね?」 次回予告 なのは・フェイト「きっかけとはじまりは4年前の空港火災。炎のなか、いくつかの出会いがあって、 いくつかの決意がそこから生まれて。 次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS 第2話 機動六課 Take off!」
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/53.html
魔法少女リリカルなのはStrikerS 第25話【ファイナル・リミット】 なのは「出会いは偶然。初めは何も分らなかった。ただ、目の前で泣かれると私も何だか悲しくて。 行かないでって抱きつかれると、胸が切なくて。笑ってくれると嬉しくて。 上手く言葉にできないけど、きっと大切な子。守れなかった約束を、今度はきっと守るから。 だから待ってて。ママが絶対、助けるから!」 ヴィータ「なのはもう、玉座の間についてる頃だよな。はやても、外で戦いながら船が止まるのを待ってる」 「こいつをぶっ壊して、この船を止めるんだ!リミットブレイク、やれるよな?」 「上等だよ。うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」 シャーリー「時限航行部隊の到着まで、後45分。巨大船の気道ポイント到達まで、後38分」 はやて「七分差」 シャーリー「主砲の照準はミッド首都に向けられています。七分あれば」 はやて「撃てるやろうね。防衛ライン現状維持!誰か指揮交代!今から私も突入する」 シャーリー「え!?」 はやて「軌道上になんて、上らせへん。地上に攻撃もさせへん!」 グリフィス「八神部隊長!」 アルト「割り込み失礼します!こちら、ロングアーチ03!」 はやて「アルト!?」 アルト「八神部隊長!後もうちょっとだけ待ってください!大事なお届けものを、今そちらに!」 なのは「ヴィヴィオ」 ヴィヴィオ「勝手に、呼ばないで!」 ヴィヴィオ「こんなの、効かない!」 クアットロ「あはははは、やっぱり~。陛下~、その悪魔が使ってるパワーアップ、どんどん使わせちゃって下さい~。 ブラスターとやらの正体は、術者が耐えうる限界を遙かに超えた自己ブースト。撃てば撃つほど、 守れば守るほど、術者もデバイスも命を削っていきます。うっふふ。優秀な前衛がいて、 後先考えない一撃必殺を撃てる状況なら、そりゃまぁおっかないスキルなんでしょうけど。 こんな状況では、役に立ちませんよね」 エリオ「キャロ、ルーを連れて上に」 キャロ「うん」 エリオ「地雷王たちは、僕たちが止める!!」 シグナム「同行を願います」 ゼスト「断る。ルーテシアを救いに戻り、スカリエッティを止めねばならん」 シグナム「スカリエッティと戦闘機人たちは既に逮捕。ルーテシア・アルピーノも、私の部下たちが保護するべく動いています」 ゼスト「そうか。ならば俺の成すべきことは、後一つだけか」 アギト「旦那!!何故!!」 ゼスト「じっとしていろ!!」 ゼスト「夢を描いて未来を見つめたはずが、いつの間にか、随分と道を違えてしまった。 本当に守りたいものを守る、ただそれだけのことの、なんと難しいことか」 ヴィータ「なんでだよ。なんで、とおらねぇ!こいつをぶっ壊さなきゃ、皆が困るんだ。 はやてのことも、なのはのことも!守れねぇんだ!こいつをぶちぬけなきゃ!意味ねぇんだ!!」 ヴィータ「駄目だ。守れなかった。はやて、みんな、ごめん!」 はやて「謝ることなんて、なんもあらへん」 ヴィータ「はやて、リイン」 リイン「はいです」 はやて「鉄槌の騎士ヴィータとグラーフアイゼンが、こんなになるまで頑張って。 それでも壊せへんもんなんて、この世のどこにも、あるわけないやんかっ」 シャッハ「通路封鎖?ロッサ!」 ヴェロッサ「こりゃ、自爆装置でも作動してそうな勢いだね」 フェイト「これは、一体っ」 スカリエッティ「ふふふ、クアットロが、この拠点の破棄を決意したようだ」 フェイト「止めさせて。このままじゃ、あなたも一緒に」 スカリエッティ「言ったろ。彼女の体内には、私のコピーがいる。こちらの私は用済みなのさ」 クアットロ「防御機構フル稼働。予備エンジン駆動。自動修復開始。ふふ、まだまだ。これは」 レイハー『ワールドエリアサーチ、成功。座標特定、距離算出』 なのは「見つけた」 クアットロ「エリアサーチ!!まさか、ずっと私を探してた?だ、だけどここは最深部。ここまで来られる人間なんて」 クアットロ「壁ぬき!?まさか、そんな馬鹿げたことが!?」 レイジングハート『通路の安全確認、ファイアリングロック解除します』 なのは「ブラスター3!!」 なのは「ディバイーーーン、バスターーー!!」 クアットロ「いや、いやああああ!!あ、あぁ、ドクターの夢が、わたしたちの、世界、が」 ラッド「ガジェット、完全停止。他の地点も同様です」 ゲンヤ「六課の連中がうまいことやったか!」 なのは「ヴィヴィオ?ヴィヴィオ!」 ヴィヴィオ「なのは、ママ。駄目!逃げてぇ!!」 ヴィヴィオ「駄目なの。ヴィヴィオ、もう、帰れないの」 なのは「っ!」 ゆりかご『駆動路破損、管制者不在。聖王陛下、戦意喪失。これより、自動防衛モードに入ります。 艦載機、全機出動。艦内の異物を、すべて排除してください』 はやて「いくよ、リイン!」 リィン「撃ち抜いて、進みます!」 なのは「ヴィヴィオ、今助けるから!」 ヴィヴィオ「駄目なの!止められない!」 なのは「駄目じゃない!!!」 ヴィヴォオ「もう、来ないで」 なのは「うっ」 ヴィヴィオ「分かったの、私。もうずっと昔の人のコピーで、なのはマ、なのはさんも、フェイトさんも、本当のママじゃ、 ないんだよね?この船を飛ばすための、ただの鍵で、玉座を守る、生きてる兵器」 なのは「違うよ」 ヴィヴィオ「本当のママなんて、元からいないの。守ってくれて、魔法のデータ収集をさせてくれる人を、探してただけ」 なのは「違うよ!」 ヴィヴィオ「違わないよ!しいのも、痛いのも、全部偽物の、作りもの。私は、この世界にいちゃいけない子なんだよ!」 なのは「違うよ。生まれ方は違っても、今のヴィヴィオは、そのやって泣いてるヴィヴィオは、偽物でも作りものでもない。 甘えん坊ですぐ泣くのも、転んでも一人じゃ起きられないのも、ピーマン、嫌いなのも。私が寂しい時に、 いい子ってしてくれるのも、私の大事なヴィヴィオだよ」 なのは「私が、ヴィヴィオの本当のママじゃないけど、これから、本当のママになっていけるように努力する。 だから!いちゃいけない子だなんて、言わないで!本当の気持ち、ママに教えて」 ヴィヴィオ「私は、私は!なのはママのことは、大好き。ママとずっと、一緒にいたい。ママ?助けて!」 なのは「助けるよ。いつだって、どんなときだって!!」 なのは「ヴィヴィオ、ちょっとだけ、痛いの我慢できる?」 ヴィヴィオ「うん」 なのは「防御を抜いて、魔力ダメージでノックダウン。いけるね、レイジングハート!」 レイジングハート『いけます』 なのは「全力、全開!!スターライトーー!ブレイカーーー!!!」 なのは「うっ、う、ヴィヴィオ?ヴィヴィオ!」 ヴィヴィオ「来ないで」「一人で、立てるよ。うっ、ぐ。強くなるって、約束したから」 ルキノ「巨大船、船速低下!上昇速度、激減!これなら、艦隊の到着のほうが速いです!七分差が埋まります!」 ゆりかご『聖王陛下、反応ロスト。システムダウン』 はやて「なのはちゃん!」 なのは「はやてちゃん」 ゆりかご『艦内復旧のため、全ての魔力リンクをキャンセルします。艦内の乗員は、休眠モードに入って下さい』 ゼスト「俺の知る限りの事件の真相は、この中に納めてある」 シグナム「お預かりします」 ゼスト「アギトとルーテシアのこと、頼めるか?巡り合うべき相手に、巡り合えずにいた、不幸な子供だ」 アギト「旦那!!」 ゼスト「アギト、おまえやルーテシアと過ごした日々。存外、悪くなかった。いい空だな」 シグナム「はい」 ゼスト「俺やレジアスが守りたかった世界。おまえたちは、間違えずに進んでくれ」 アギト「旦那~!!」 そして、ティアナとスバルが合流。ギンガ無事のようで何よりです。 お、シャマルだ。犬は? ヴァイス「船の上昇は止められたみてぇだが、あの中じゃまだ、戦いが続いてんだ」 シャマル「突入したなのはちゃんたちと連絡がつかなくなってるの」 スバティア「え!?」 ヴァイス「インドアでの脱出支援と救助任務、陸戦やの仕事場だぜ!」 スバティア「はい!」 次回予告 なのは「事件が終わりを告げる時」 スバル「そして、機動六課がその役目を終える時」 なのは「離れ離れになっても、消えないもの、忘れないもの」 スバル「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS最終話」 なのは「約束の空へ」 なのは・スバル「Take off!」
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2854.html
コメント欄です 感想や応援メッセージなどをお気軽にどうぞ(無名コメントも可能です) more than meets the eye! コメントを作るのが流行っているようですので、私も作成してみました。 何でもご自由にどうぞ。 デストロン圧倒的にTUEEEEE!!!ブラックアウトやメガザラックでこれ程のものとなると、一体メガ様はどれだけ強いのか・・・ -- 名無しさん (2008-11-27 12 41 58) 毎回楽しみに読ませて頂いてます。映画版第二弾の予告編も公開されたことですし、これからの展開にも期待しています(なのは達とサイバトロンの共闘は早く見てみたい!!)。 -- 名無しさん (2009-02-03 16 16 23) 管理外世界に基地作ってしかも現地人が出入りしてるってどうなの? -- 名無しさん (2009-07-27 19 35 11) 更新ありがとうございます!ゆっくりでいいので続きを待ってます! -- 名無しさん (2009-08-04 01 14 43) オートボットvsディセプティコンの戦いが早く気になる -- 松本真 (2009-08-16 18 04 38) 超科学VS魔法!強いのはどちらか非常に気になります。 そしてこの物語面白すぎです! -- ナナシ (2009-08-25 22 28 02) 更新待ってましたよ!完結するまで頑張ってください! メガ様が暴れる姿を早くみたいです。 -- 名無しさん (2009-11-27 23 02 46) オートボット軍団無しかw 万年人員不足の管理局じゃどうしようもないですね、 驚いたのが異性人が居るのは書きにくいのでは?と思いました。 -- YUU (2010-01-18 02 26 20) バンブルビーはアリサの愛車になってるっぽいけど、どーやってミッドに行くんだろーか? -- 名無しさん (2010-01-22 06 08 12) メガ様の復活思ったよりずいぶん早いんですね。これからも楽しみにしています! -- 名無しさん (2010-01-24 16 22 33) 毎回変わったオリキャラが出て来るんですね、 元ネタは知らないのも多いですが、独特のこだわりが感じられます。続きも楽しみにしてます。 -- 名無しさん (2010-04-03 15 25 49) メガトロン様復活で突然テンションあがって来た。 映画版はともかく、声は脳内アニメ版吹き替え余裕だぜ。 -- 名無しさん (2010-04-30 10 08 03) 魔法少女スバル無双、始まってます -- 衝動物 (2010-05-01 00 16 40) アニメも始まったことですしこれからも楽しみにしています! -- 名無しさん (2010-05-12 01 59 21) ボンクラやダブルフェイス等、映画ではチョイ役に終わったキャラがしっかり救済されていてとても嬉しいですね。自分が大好きなジェットファイア(本作の呼び方ではスカイファイヤー)爺さんもこの調子で大活躍させてほしいですww -- 名無しさん (2010-06-25 21 14 58) 数か月間ずっと更新まってました!オートボット速く来てー! -- 名無しさん (2010-08-10 21 49 42) 思ったんだけど、管理局が掲げてる「質量兵器の排除」って、 デストロンから見たら自分達を皆殺しにするって言われてるのと同じなんだよな。 オートボッツが来ても、管理局は質量兵器がどうとか言って、彼らにも攻撃しかけそうだけど…。 -- 名無しさん (2010-08-24 00 56 42) ↑デストロンじゃなくてディセプティコンの間違いだった -- 名無しさん (2010-09-06 17 39 58) 映画版TFとなのはのファンである俺には最高のクロス作品です!! とりあえずスバルがボーンクラッシャーと張り合ってるってのが驚き・・・ まぁ、そうでもしないと管理局側の負けは決定だもんな、この戦力差(--;) アリサのバンブルビーがいつ活躍するのか楽しみです!! -- 名無しさん (2010-10-03 17 27 52) スタースクリームが次回大活躍しそうな予感。魔導士だけで何処まで頑張れるか、またオートボットは助けに来てくれるのか。個人的には来なくてもいいけど。 -- なに和 (2011-03-22 00 34 57) 更新をはやく(^-^)/ 続きをみたい -- か (2011-06-12 21 39 25) バンブルビーの活躍を今か今かと待ち続けております〜 -- 名無しさん (2011-08-23 03 41 56) 「オプティマスプライム見参!!」と思いきや「コンボイ」だった… 次回はオートボット(サイバトロン)軍団が「トランスフォーム!ロールアウトッ!!」するんですね? 果たして『オールスパーク』は何処に? -- 名無しさん (2011-11-02 08 40 27) 劇場版最終作「TFダークサイドムーン」のBD買いました。 シリーズを見て思うのは、「劇場版TFは皆脆過ぎる」でしょうか 何はともあれこちらの作品も応援しております -- 名無しさん (2012-01-06 21 41 26) コンボーイ!! -- 名無しさん (2012-01-30 12 20 39) 続きが気になります!! 更新何時頃? 最後に一言、 コンボーーイ!!! -- 名無しさん (2012-04-26 23 28 25) メガトロンに栄光あれ。 グロリアスメガトロン!!! -- ナス (2012-04-27 20 09 50) 更新されてたのに今きずき読みました。 ショックウェーブとかは出ますよね? 更新待ってますよ! -- 名無しさん (2013-03-19 03 34 24) 面白そうな小説発見!全部みた結果 面白い よく見れば更新が止まってるみたいだが しかし続きをお待ちしてまする! -- アカサタナの助 (2018-09-21 06 37 42) 気持ち悪すぎる 文章いきが中学イキって書いたみたいな恥ずかしさがある オタクがキモイと言うより、オタクに属してる人間って気持ち悪いんだなと思わせる作品 ほんと気持ち悪いし下手くそ こういうやつってつかいもしないのにあやたらと難しい単語だけ知ってるのがより気持ち悪い -- 名無しさん (2022-08-08 04 23 32) 名前 コメント ページに戻る
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/68.html
アギト一等空士 本局航空隊所属の一等空士。一般常識の範囲を超えて「小柄」なのは、彼女の出自によるもの。 通常の人間サイズになることも可能だが、勤務の現地においてはこちらの方が便利なことも多いとのこと。 本局航空武装隊 「航空武装隊」は、空戦魔導師で編成された航空部隊であり、管理世界の各地に存在する。 中でも「ミッドチルダ首都防衛隊」と「本局航空武装隊は」いずれも厳しい審査によって選ばれた、優秀な戦力が集う部隊である。 ヴァイゼン遺跡鉱山崩壊事故 新暦75年、ヴァイゼン北西部の鉱山街「アミア」が住人もろとも壊滅するという事件が発生した。 壊滅の理由は局地地震と有毒ガスの流出によるものとされ、住民約230名はほぼ全滅した。 地震とガス流出が深夜に起きたこと、周囲の地形が盆地であり、有毒ガスの逃げ場が無かったことなどが、 この悲惨な災害の原因とされているが、建築物の破壊状況、一部の遺体の損傷状態の不自然さなどを指摘し、 「事故ではなく、事件である」とする声もある。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2693.html
――夢を見ていた。 夢の中で、〝彼女〟は傷ついた宝石の身体を仄暗い水の底に横たえ、まどろみの中を揺蕩いながら傷を癒していた。 ガラスの壁の向こうで、「主」が険しい顔で〝彼女〟を見下ろしている。 咄嗟に口を開こうとした〝彼女〟は、しかし自分が何を言いたいのかが解らないことに気付いた。 AIへの過負荷が余程激しかったのか、思考の言語化機能にバグが生じている。 それでも何かを口にしようとしたが、肝心の声が出て来ないことに愕然とした。 尋常でないダメージだった、一体どれだけ乱暴な運用をされればこれ程の傷を負うのか思いつきもしない。 一体何があったのか、なぜ自分は今ここにいるのか、それさえも〝彼女〟は思い出せなかった……損傷が記憶野にまで及んでいるのかもしれない。 中枢システムのシャットダウンし、再び闇の中に堕ちていく〝彼女〟の意識の最後の一欠片が、小さくなっていく「主」の背中を認識した。 置いて往かないで……遠ざかる影に必死に呼びかける〝彼女〟の声無き叫びが、「主」に届くことは無かった。 ――そして、闇が全てを塗り潰す。 闇よりもなお黒々とした影が、夜天を蠢き這い回る。 その数、まさに無量大数。 双子月の表面にはまるで人の顔のような不気味な陰が浮き上がり、その「口」から掌に顔を張りつけた手首が、踵や足の裏に顔を埋め込んだ足首が、際限なく吐き出される。 敵は多元進化確率生命体反螺旋艦載機、パダ級とハスタグライ級――かつて大グレン団の漢達を苦しめた、アンチスパイラルの無人兵器。 ガンメンサイズに縮小されたその怨敵が今、時を越え次元を超えて再び地球人類の前に姿を現したのだ。 人類殲滅システム――かつて銀河を制圧したアンチスパイラルが、螺旋生命体を根絶やしにするべく星々に配備した破滅の玉手箱。 ミッドチルダ滅亡により日の目を見ることなく眠り続け、この無人の惑星ごと忘れ去られていた負の遺産。 それが超銀河ダイグレンという螺旋力の塊の出現により、永い眠りから解き放たれた。 探索艇の地上降下直後を狙った敵の襲撃にグラパール隊の指揮系統は混乱、無限とも言える敵の物量もあり危機的状況に陥っていた。 減らない敵、散っていく僚機……新兵達は未知の強敵に恐怖し、十年前の最終決戦を生き抜いた歴戦の豪傑達は記憶の奥に刻まれたトラウマに苦しめられる。 探索艇との通信は途絶え、ヴィラル達の護衛として地上に降りたグレンラガンとも連絡が取れない。 アークグレンラガン級スペースガンメンも積んでいない、また新規に造るような時間も無い。 まるで出口の無い迷宮に迷い込んだかのような救いの無い絶対的絶望が、伝染病のように刃金の軍勢を侵し蝕んでいく。 だが……恐怖に屈しない強く真っ直ぐな心を持った者も、胸に一本芯を通した者も、確かに存在した。 『あぁーっ、もう! うじゃうじゃゾロゾロとひっきりなしに……こいつら台所裏の黒いゴキかい!?』 通信ウィンドウの向こうで憤慨する少女、超銀河ダイグレンの管制として今回の旅について来た幼馴染のふくれっ面に、少年は不謹慎とは解っていながらも苦笑を隠せなかった。 『む……ナキム、今ウチのこと笑ったやろ? 馬鹿な奴やなー思いながら嘲笑に嗤ったやろ?』 「いや、マオシャ……「嘲笑」と「嗤う」は意味が重複してると思うんだけど?」 『重箱の隅つつく前にまず謝罪か否定しろや、この馬鹿ナキム!!』 スピーカーを壊さんばかりの勢いでがなり立てる幼馴染に、ナキムと呼ばれた少年は思わず両手で耳を押さえる。 その時、動きを止めた少年の機体――超電導ライフルを背負ったグラパールに、敵の群れが殺到した。 ハスタグライ級の五本指から放たれる光線が、パダ級の踵の発射口から吐き出されるミサイルが、グラパールに迫る。 『ナキム!?』 「大丈夫」 青ざめた顔で悲鳴を上げるマオシャに穏やかに笑い返し、ナキムは全方位から迫り来る敵の攻撃を真っ直ぐに見据えた。 授業のおさらいをしようか……左右の操縦桿を握り直すナキムの、まだ幼さの残る横顔には、相変わらず笑みが浮かんでいる。 だがその笑顔は幼馴染に向けたそれとは全く真逆の、獣のように獰猛で、刃物のように鋭く研ぎ澄まされた戦士の顔だった。 バックパックに背負った超伝導ライフルを引き抜き、少年のグラパールが宇宙を翔ける。 「一つ、大勢で人を虐めない」 雨のように降り注ぐ光線とミサイルの隙間を掻い潜り、すれ違いざまに螺旋弾を敵の鼻面に零距離から撃ち込む。 「二つ、人に銃を向けない」 スラスターを全開に噴かして敵に肉薄、逆手に翻した超伝導ライフルの銃床を槍のように敵の装甲に突き立てる。 「三つ、友達は大切に。無暗やたらと喧嘩しない」 超電導ライフルを再び正面に構え直し、ナキムはスコープを覗き込んだ。 二時の方向に孤立した味方がいる……ナキムは小さく息を吸い込み、吐息と共にトリガーを連続で引く。 金属の軋み擦れる音がコクピットに響き渡る、その数……三回。 超電導ライフルの銃口が三度光を放ち、撃ち出された螺旋弾が味方を襲う敵機の背中に吸い込まれ……そして撃ち抜いた。 「――ただし、」 射撃モードを「自動掃射」に切り替え、グラパールは超電導ライフルの弾倉を交換した。 身の丈を超える長銃を全身で支え、自動照準は解除……目視で十分、味方に当たりさえしなければそれで良し。 「一度決めたからには徹底的に、己の意地を貫き通す!」 怒号と共にナキムはトリガーを引き絞り――瞬間、身を揺るがす程の激しい震動と衝撃がグラパールを襲った。 フルオートで怒涛の如く吐き出される無数の螺旋弾が次々と敵を打ち砕き、喰い破り、容赦なく蹂躙する。 グラパールの腕の中で獣のように暴れ回る超伝導ライフルを、ナキムは必死に抑え込んでいた。 再装填した螺旋弾を全弾撃ち尽くすまで僅か数秒、しかし少年にとっては無限に等しい時間だった。 「――復習、終わり」 全弾撃ち尽くし、沈黙する超伝導ライフルをだらりと下ろし、ナキムは荒い息を吐きながらひとりごちた。 モニタースクリーンを見渡してみれば、一面に広がる星の海……だが、どれが地球であるのかは分からない。 随分と遠くまで来てしまった……モニタースクリーンから視線を落とし、ナキムは淋しそうに小さく笑った。 「今度のテストは満点確実かな……ヨマコ先生」 この満天の光のどれかにある故郷、そこで今も教鞭を執る恩師に、ナキムは独り思いを馳せる。 少年の呟きは、天に満ちる無限の光の中に溶けて消えた。 「はぁ!? またブラスタービット壊したんか?」 素頓狂な声を上げて背後を振り返る栗色の髪の女性に、車椅子を押す少女がばつの悪そうな顔で視線を逸らした。 「うん、今度は本体ごと……こう、中から何か生まれるみたいな勢いで、バキって――」 後半は開き直ったように身振りを交えながら状況を説明する少女に、車椅子の女性――八神はやては呆れたように嘆息を漏らす。 「……毎回術者より先にデバイスが音を上げるやなんて、一体どんだけ馬鹿魔力してんねん」 「やー、それ程でも……」 「褒めてへん、褒めてへん」 そんな馬鹿なやりとりを続けながら、少女ははやての車椅子を押して、管理局本局の広々とした廊下をゆっくりと進んでいく。 穏やかな時間だった。 ここ十数ヶ月は味わった記憶のない――そして最近はその感覚すらも忘れかけていた――のどかで平和な時間だった。 少女のデバイスは現在メンテナンスルームで修理中、ガンメンも格納庫で解体整備中である。 愛機を駆り敵陣に斬り込むか、愛杖を片手に砲撃を連発するしか能のないと豪語する少女は、その両方を取り上げられた今、久々に与えられた休暇を持て余していた。 自慢出来るようなことではないが、これまでの短い人生の大半を戦いに傾けていた少女は、一般的な余暇の過ごし方――正しい暇の潰し方というものを全く知らない。 途方に暮れる少女を見かねたはやては、自身の息抜きも兼ねて彼女を散歩に連れ出した。 そして、今に至る。 「グリフィスくんな、今度XV級新造艦の艦長やることになったんや。 名前はアースラⅡ、伝説の不沈艦アースラに肖って名付けたんやて。何や照れるわぁ。 エリオ達ライトニング隊も、クラウディアからそっちに移ることになっとる」 「へぇ」 「今年の公開陳述会、質量兵器の一部解禁とB級以上の管理外世界の管理世界への昇格が焦点になりそうや。 前者はガンメン、ちゅー限りなくグレーゾーンな兵器を主力にしてる時点で今更な気もするけどな。 当日の会場や街の警備はスターズ隊に頼もうか思うてる。ラゼンガンにも出張って貰うことになるかも知れへん」 「考えとく」 「来月頭には第97管理外世界のお偉いさん方との秘密会談、こっちの全権はクロノくんで、ウチも参加することになっとる。 議題は螺旋力関連の技術提供と地球の管理世界昇格、それを見返りに連合軍への参加と次元星戦参戦の要請。 こっちの都合で地球を巻き込むのはちと辛いけど、割り切らなあかんよね。地球出身者として、今回の悪巧みは絶対に成功させるで」 「頑張って」 一方的に喋るはやてに生返事を返しながら、少女は数ヶ月前の病室での会話を思い返していた。 XV級次元戦艦アースラの撃墜から数ヶ月が経過した。 重傷を負ったアースラクルーの殆どが職場復帰を果たし、新たな配属先で日々奮闘しているらしい。 しかし中には、その時に負った傷が元で退役や内勤への転属を余儀なくされたものも少なからず存在した。 目の前の女性――元アースラ艦長、八神はやてもその一人である。 アースラ最期の闘いとなったあの日、不沈艦が沈む最後のあの時、はやては敵の攻撃を生身で受け止め、クルーが脱出する時間を稼いだ。 艦全体を覆う巨大な防御陣を展開し、全方位から降り注ぐ敵の猛攻を耐え抜いた。 しかしその無茶によりはやての守護騎士の一人、融合騎リインフォースⅡは消滅、はやて自身も二度と空を飛べない身体になった。 わがままを押し通し、余りにも重い代償を背負わされる……世の中とは本当に、〝こんな筈じゃなかった〟現実に満ち溢れている。 退院後、管理局に復帰したはやては現場を引退、内勤職員として現場の仲間達をサポートする道を選んだ。 それが彼女にとって幸せであるか否かは少女には解らない、しかし過酷な運命に屈することなく今の己の持つ全力全開で戦い続ける道を選んだはやてを、少女は尊敬している。 だがら自分ははやての代わりに、はやてから翼と大切な家族を奪った奴等を徹底的に殺し尽くす……左右で色の違う少女の瞳の奥で、暗い炎が燃えていた。 エンキの光線が虚空を斬り裂き、グレンラガンのドリルが蒼穹を貫く。 その度に破壊された敵が爆破四散し、紅蓮の炎が空を鮮やかに染め上げた。 しかし空を覆う敵の軍勢は、一向に数を減らす様子を見せない。 「くっ、次から次へと……こうも数が多いと流石に面倒だな」 (回答。ガジェット・ドローンは〝ゆりかご〟内部の製造プラントで随時製造・補充される仕組み) 疲れの滲んだ声で呟くヴィラルの〝中〟で、ユニゾンしたリインフォースⅢが口を開く。 「聖王のゆりかご……あの顔無しのデカブツか」 リインフォースⅢの応答に、ヴィラルはクラナガン跡の中央に横たわる黄金色の巨大な方舟――次元戦艦〝聖王のゆりかご〟を見下ろした。 どこにも顔の見当たらない奇妙な艦から次々と吐き出される、楕円や球体をモチーフとした艦載兵器、ガジェット・ドローン。 火力自体は大した脅威ではないが、スピンバリアー弾を無効化するバリアは並大抵の攻撃では刀の切っ先もドリルの先端すらも通らぬ鉄壁。 必殺技の連発にエンキとグレンラガンは疲弊し、劣勢とまではいかないが厳しい戦いを強いられていた。 ミッドチルダの衛星軌道上に超転移した超銀河ダイグレンを待っていたものは、地球によく似た美しい惑星と、天上を廻る二つの月。 そして螺旋反応を察知し偽装解除した人類殲滅システムと、テリトリーへの侵入者を認め再起動した〝ゆりかご〟の自動迎撃システムによる二重の歓迎だった。 〝ゆりかご〟の苛烈な対空砲撃によりヴィラル達の降下に誤差が生じ、グレンラガンとは合流出来たが探索艇の消息は未だ不明。 敵襲を警戒し、ガンメンを出撃させた状態で大気圏突入したのが逆に仇となったのだ。 ミッドチルダ螺旋族とアンチスパイラル、敵対していた二つの勢力の遺した置き土産が、今はまるで共闘するかのように宇宙から地上から調査隊を追い詰める。 グラパール隊が軌道上でアンチスパイラルの残党を相手に奮戦するその頃、地上に降りたヴィラル達もまた孤独な戦いを続けていた。 「あのデカブツを何とかするのが先決か……グレンラガン、あのデカブツと合体して艦体の制御を掌握しろ。アレが止まればガジェットも止まる」 『了解』 ヴィラルの指示に通信ウィンドウに映る赤い髪の青年――ギミーが首肯し、グレンラガンが右腕のギガドリルを構える。 だが、その時、 『光速螺旋転移反応を感知! 二人とも気をつけて、何かがここに超転移して来る。大きさは……ダイグレン級!!』 薄桃色の髪の女性、ダリーの警告に、ヴィラルとギミーの顔に緊張が走った。 次の瞬間、ガラスが割れるような音と共に空間が歪み、まるで山岳のように巨大な影が姿を現す。 『うそ、だろ……?』 『あれは、まさか……!』 ギミーとダリーの愕然とした声が、通信機から流れ出る。 二人の動揺は当然のものだろう……かく言うヴィラル自身も、あまりの衝撃に声すらも出ない有様なのだから。 髑髏を思わせる不気味な顔、まるでハンマーのような左腕、そして大地を穿ちその巨体を支えるドリル状の両脚。 それはまるで――否、大きさこそ〝あれ〟に比べて遥かに小さいものの、その姿はまさに、 「テッペリン、だと……!?」 ヴィラル達獣人のかつての根城にして生まれ故郷、螺旋王ロージェノムの居城。 人間達はデカブツと呼び、獣人達は王都と讃えるアークグレンラガン級超巨大ガンメン、テッペリンそのものだった。 (警告。あれは墓守、〝ゆりかご〟を守護する独立支援ユニット) 「あれもあの顔無しの防御システムだと言うのか」 リインフォースⅢの報告に、ヴィラルは苦々しそうに舌打ちした。 たとえよく似た別物だと理性では解っていても、本能がこの巨大ガンメンに刃を向けることを拒絶している。 だがヴィラルを余所に、重厚な駆動音を轟かせながらテッペリンもどきが動き出した。 長い戦いになりそうだな……腹を括るヴィラルの〝中〟で、リインフォースⅢも表情を引き締める。 第二ラウンドの火蓋が、切って落とされた。 思い出すのは無限の大空、どこまでも続き広がる風と雲と光の世界。 魔力色の絵具を持ち寄り、三人で挑んだ蒼穹のキャンパス……だけど完成した「絵」は、いつの間にか涙で滲んでいた。 大空を舞い踊る四基の刃金の鳥――ブラスタービットを周囲に従え、少女は手の中の愛杖をくるくると回す……その左右にはもう一つずつ、別の誰かの影があった。 右手に漆黒の戦斧を携える黄金色の髪の女性と、騎士杖を右手に握り左手に魔導書を抱えた白金色の髪の女性。 どちらも少女にとって掛け替えの無い大切な存在であり、右手に握られる魔杖の〝かつての主〟も、親友として絶対の信頼を置いていた者達。 「スターズ1、中距離火砲支援……とゆーか一番槍、いきまーす!!」 緊張感に欠ける名乗りと共に少女が虚空を踏み締め、まるで長銃でも扱うかのように杖を水平に構えた。 足元に虹色の魔法陣が展開され、光の粒子が杖の先端に集束する。 「エクセリオンバスター」 まるで龍が火炎を噴くかのように魔杖の先端から光の奔流が撃ち放たれ、雲の壁を突き破りながら真っ直ぐに蒼穹を貫いた。 空を突き進む少女の砲撃を追うように、続いて黄金色の髪の女性が動いた。 砲撃の軌跡をなぞるように高速で敵陣に突入し、掌から雷撃の槍が無数に撃ち出す。 「行って、ブラスタービット」 少女の指示を受けた魔杖の分身――ブラスタービットが敵陣に突入し、変則的な軌道でバラバラに飛びながら確実に敵を撃ち落としていく。 更に四基のブラスタービットを制御しながら、少女は魔杖本体からも魔力弾を撃ち続ける。 「おー、大したもんやなぁー」 黄金色の女性の動きを妨げることなく、五つの砲台を駆使して巧みな援護を行う少女の技量に、傍らで呪文構築中の白金色の髪の女性が感嘆したように声を上げる。 「砲撃魔法は高町家のお家芸だから。これ位出来なきゃ、ママに顔向け出来ないよ」 「でもなのはちゃん家て確か剣道家やったよね、鉄砲は専門外ちゅーか寧ろ御法度ちゃうんか?」 無関心を装うように素っ気なく、しかし照れたように頬を緩ませながら応える少女に、白金色の女性は悪戯っぽい笑みを浮かべてツッコミを入れる。 ぴしりという擬音でも聞こえてきそうな程に見事に固まる少女に小さく笑みを零し、白金色の女性は呪文の最終段階に入った。 「詠唱完了……二人とも準備はええかぁ?」 白金色の女性の音頭を受けて黄金色の女性が飛び退くように敵群から距離を開け、少女もまた気を引き締めるように杖を握り直した。 「響け終焉の笛、ラグナロク……」 白金色の女性の前面に正三角形の、足元に円形の魔法陣が展開され、魔力の粒子を集束させながらゆっくりと回転を始める。 「雷光一閃、プラズマザンバー……」 黄金色の女性の周囲に金色の光の球体が顕現し、戦斧から変形した大剣の刀身に電光が迸る。 「スターライト・エクセリオン……」 呼び戻した四基のブラスタービット、そして手元の杖それぞれの前面に一枚ずつ、合計五枚の魔法陣を展開し、少女が魔力を充填する。 ビシリ……許容量を遥かに超える過剰な魔力供給に、魔杖の表面に亀裂が入った。 泣き叫ぶ愛杖の悲鳴を全身で聴きながら、それでも少女は力を籠め続ける。 そして――、 限界を超えた魔力負荷に耐えきれなくなったブラスタービットが、音を立てて爆ぜ砕け散り、 「「「トリプルブレイカー!!!」」」 怒号と共に撃ち出された三色の破壊の光が、敵の群れを跡形も無く消し飛ばした。 「……何や、懐かしいなぁ」 敵を一掃し、静寂を取り戻した空を見渡しながら、感慨深そうに呟く白金色の女性に、少女は「え?」と顔を上げた。 「うん……昔を思い出す」 懐かしそうな声で同意する黄金色の女性に、少女は困惑の色を強める。 「ウチとフェイトちゃんと、そしてなのはちゃんと……三人一緒の空なんて、きっともう無理やって諦めてた」 「ずっと三人一緒だと思ってた子供の頃、三人揃えば何でも出来るって信じてたあの頃……ちょっとだけ、思い出しちゃった」 少しだけ淋しそうに、しかしどこか嬉しそうに笑う二人に、少女に心境は複雑だった。 この二人の眼は自分を反射しているが、決して自分を〝見て〟はいない、 自分を通して、他の誰かを見ている。 その〝誰か〟は、少女にとっても大切な人で、大好きだった人で、ずっと胸の中で生きている強い人。 魂の半分を分かち合う、大切で大好きな憧れの人……だけどそれは決して自分では、少女その人ではない。 「ヴィヴィオはなのはによく似てるよ」 金色の女性、少女にとっては第二の母親とも言える優しい人の、何気ない一言。 決定的な科白だった。 ずっと追い掛けている背中と重ねられる、そのこと自体は悪い気分ではない。 だけど自分の中の、喪ってしまった人の面影だけに目を奪われ、肝心の自分自身を見てくれないのは淋しかった。 手をのばせば誰かの温もりを感じられる場所にいながら、それでも少女は孤独だった。 零れた涙は、晴天を滑り落ちるたった一粒の雨となり、無限の蒼穹の中に消えていった。 それは涙の味のするセピア色の思い出、三人で飛んだ最初で最後の空の記憶だった。 テッペリンもどきの戦艦級巨大ガンメン――墓守の機械仕掛けの双眸に光が灯り、圧倒的な熱量を孕む光の奔流がエンキとグレンラガンへと撃ち放たれる。 迫り来る敵の光線にエンキは鋼鉄の楯を、グレンラガンはドリルの傘をそれぞれ広げ……次の瞬間、二体の背中をガジェットの光線やミサイルが突如襲った。 テッペリンもどき参戦のインパクトで押され、その存在をすっかり忘れていた本来の敵の不意打ちに体勢を崩したエンキ達を、墓守の光線が正面から直撃する。 「がぁっ!?」 『うわっ!!』『きゃあ!!』 苦悶の悲鳴を上げながら吹き飛ばされる二体に追い討ちを掛けるように墓守がハンマー状の左腕を持ち上げ、そして勢い良く振り下ろした。 速度を増しながら迫り来る墓守のハンマー、視界一面を覆い隠すその巨大な「天井」を見上げ、エンキが頭頂部のリングに光を灯し、グレンラガンが右腕のギガドリルを構える。 エンキのリングが光る、煌めく、照り輝く。 グレンラガンのドリルが回る、周る、廻る。 身の丈の何倍にも膨張巨大化したグレンラガンのドリルが唸りを上げ、激烈な輝きを宿したエンキのリングの中心で光が弾ける。 そして――、 「エンキ・サン・アタック!!」 『『ギガドリルブレイク!!』』 気合いと共に同時に撃ち放たれたエンキの砲撃とグレンラガンの突撃が、ハンマーの天井を粉砕した。 「『俺達を誰だと――』」 爆発する墓守の左腕を背景に決め台詞を口にするヴィラルとギミー、だが二人の言葉は、横合いから鳴り響く風切り音によって掻き消された。 黒煙を突き破り、鋼鉄の三本指が二体のガンメンに迫る……あれは、墓守の右腕! 咄嗟に回避行動に移るエンキとグレンラガンだが、二体を取り囲むように隙間なく密集したガジェット達が壁のように逃げ場を塞ぐ。 横薙ぎに振り抜かれる墓守の巨大な右手が三本指を大きく広げ、進路上のガジェットを無慈悲に巻き込みながら二体に肉薄し――、 (報告。光速螺旋転移反応を確認、探索艇とパターン一致) 冷静に告げられるリインフォースⅢの報告と共に、ガジェットの壁をこじ開けながら二体の傍から突き出された〝もう一本の巨大な右腕〟が、墓守の右手を掴み引き千切った。 『おまたせ! ダイグレン、定刻通りにただ今到着よ!!』 「完全無欠の大遅刻だ!!」 通信ウィンドウに表示された厚化粧の男――リーロンの上げた名乗りに、ヴィラルは反射的に怒鳴り返した。 モニタースクリーンの側面を占領する、艦に手足を取り付けたような姿の巨大ガンメン――ダイグレン級戦艦ガンメン〝ダイグレン〟、二体と共に地上に降下し、そして消息を絶っていた探索艇である。 敵の増援を感知し、墓守が新たな動きを見せた。 髑髏を彷彿とさせる胴体部の顔が大口を開け、舌のように口内から突き出したカタパルトから艦載機が弾丸のように撃ち出される。 次々と発進するガンメン達、それらもまたヴィラル達にとって見覚えのある機体ばかりだった。 まるで毬栗のように鋭い突起に覆われたガンメン、キングキタン。 猿を模した顔に飛蝗のような脚のガンメン、キッドナックル。 バズーカ砲を背負った飛蝗型ガンメン、アインザー。 隣り合わせに繋がる双つの顔それぞれの口の中から腕を生やしたガンメン、ツインボークン。 頭頂部に髷型の飾りのある、ずんぐりとした体躯のガンメン、モーショーグン。 まるで兎の耳のような長い両腕をだらりと下ろした、ほっそりとした体躯のガンメン、ソーゾーシン。 かつて救世主シモンの駆るグレンラガンと共に地上を奪還し、十年前の最終決戦で隔絶宇宙に散った大グレン団のガンメン達が勢揃いしていた。 刃のように鋭利な手足を持つガンメン、ビャコウ。 目玉のような紋様の描かれた翼を両肩から生やしたガンメン、セイルーン。 まるで甲羅のように巨大な顔を逆さに背負ったガンメン、ゲンバー。 両足の爪で球形のバーニアユニットを握った飛行用ガンメン、シュザック。 十七年前、地上奪還のために戦う大グレン団を苦しめ、そしてグレンラガンのドリルに倒された人類掃討軍幹部のガンメン達が集結していた。 『あらあら、まるで同窓会ね』 「……いや、寧ろ夢か冥府の棺の中にでも迷い込んだような気分だな」 リーロンの皮肉に、ヴィラルはどこか開き直ったような面持ちで鼻を鳴らす。 墓守の口の奥から最後の艦載機、八重歯の鋭い真紅のガンメンが撃ち出された。 ギャンザ――かつて、それがあの機体の名前だった。 まだヴィラルが人類掃討軍として部隊を率いていた頃、小隊長機として螺旋王から賜ったカスタムガンメン。 しかし地上に出た人間達に鹵獲され、ギャンザは新しい名前と姿を得て生まれ変わった。 獣人からガンメンを奪った漢の率いる軍団の名を冠した真紅のガンメン、地上奪還の旗印。 その名は――、 「――なぁ、グレン」 ヴィラルの眼光が、モニタースクリーンに映る宿敵を射抜いた。 もしも、今この世界が夢であるならば……それは飛びきりの悪夢だろう。 「――ィオ? ……ヴィオ!」 「……へ?」 はやての声に、少女はふと我に返った。 手前の車椅子に視線を落としてみれば、はやてが心配そうな顔で自分を見上げていた。 「何や怖い顔しとるけど、どっか調子悪いんか?」 「え!? い、いや……別にそんなことないよ?」 慌てて取り繕う少女にそれ以上の追及をすることなく、はやては目の前の自動扉に視線を移した。 鋲で打たれた金属製の表札にはメンテナンスルームと書かれている、いつの間にかフロアを一周していたようだ。 「ちょーど良かった、ちぃとここに用事があったんや」 そう言って自力で車椅子の車輪を回しながら自動扉を潜り、メンテナンスルームの中に消えていくはやての背中を、少女は慌てて追いかけた。 少女のデバイスの完全修復には、もう少しだけ時間が必要らしかった。 修復ポッドに入れられた赤い宝玉を一瞥し、少女は先行するはやてを追って薄暗い部屋の中を足早に進んでいく。 メンテナンスルーム最奥部に設けられた小さな部屋、管理局の擁する一人の天才に宛がわれた個人的な工房が、はやての目的地だった。 「おや?」 客人の来訪に部屋の奥で機材を弄る白衣を着た黒髪の少年――この工房の若き支配者が、作業する手を止めて二人を振り返った。 眼鏡の奥から覗く金色の双眸が、電灯の光を受けて煌めく。 「これはこれは……ようこそ、はやて部隊長殿。そしてごきげんよう、愛しい聖王陛下――いや、今は螺旋王と呼ぶべきかな?」 仰々しい仕草で一礼する白衣の少年に、少女は聖王という単語に一瞬不愉快そうに表情を歪め、はやては苦笑しながら口を開く。 「こんにちは、スカリエッティ。首尾の方はどうや?」 「上々だ、君の案件は実に素晴らしかった……」 早速話の本題に入るはやてに、スカリエッティと呼ばれた少年はそう言って氷のような笑みを浮かべる。 「融合騎を一から創り上げるというのは、この身に刷り込まれたオリジナルの記憶を含めても初めての経験でね、中々楽しい工作の時間だったよ。 ちょうど今し方最終調整が済んだところだ、そういう意味でも君達は実にタイミング良くやって来た。完成した品はほら……あそこだ」 スカリエッティが指差した先――工房の中央に設置された作業机の上には、見覚えのある剣十字型のペンダントと、見慣れない大冊が置かれていた。 人工皮製の表紙に四本の角を生やした目玉のような趣味の悪い装飾の施された真新しい大冊は、恐らく魔導書型デバイスだろう。 そしてその傍らに置かれたペンダント、細い鎖に繋がれたあの金色の剣十字は――、 「はやてちゃん、それって……」 驚愕に目を見開きながら剣十字を指差す少女の言葉を黙殺し、はやては机上のペンダントを拾い上げた。 「待望のご対面やで……リイン」 はやての呟きに応えるように掌の中の剣十字が淡い光を放ち、まるで御伽噺の中の妖精のように小さな少女が顕現する。 これは、何かの夢だろうか……はやての掌の上に浮かぶ妖精の少女を映す己の双眸を、彼女を認識する己の脳神経を、少女は本気で疑った。 腰まで届く銀色の髪、横顔から見える大空のように澄んだ蒼い左眼――リインフォースⅡだ、リインフォースⅡがそこにいる。 容姿は死んだ筈の少女の友人、消えた筈のはやての家族が、しかし目に前で元気に動いて、飛んで、そしてはやてと喋っている! 今、ここに生きている……。 「リイン……」 呆然と呟く少女の声に反応したように、リインフォースⅡらしき少女が顔を向ける。 まるで鏡合わせのように喪った友人と瓜二つの顔に、しかし一つだけリインフォースⅡと違うところを少女は見つけた。 右眼だ――リインフォースⅡの右眼は左眼と同じ空色だったが、この少女の右眼は夕焼けのように紅い。 オッドアイ、自分と同じ……大好きな人の面影に混ざる自分との意外な共通項に驚きながら、少女は目の前の妖精が、消えた友人とは似て非なる存在であることを思い知った。 その時、リインフォースⅡによく似た少女が口を開いた。 少女の二色の瞳を真っ直ぐに見上げ、 「おはようございます、マイスターヴィヴィオ。私はリインフォースⅢ、貴方の楯」 はっきりと、そう口にした。 鳴り響く銃声が大気を振るわせ、轟く砲哮が大地を揺らす。 『うぅぅぅおおおおおおおおおおおおぉっ!!』 ギミーの気合いを共にグレンラガンの全身から無数のドリルが突出し、鼠花火のように不規則な軌道を描きながら四方八方に撃ち出される。 降り注ぐドリルの豪雨を掻い潜ったガンメン達の前に、白い影が立ち塞がる……エンキだ。 『死人は死人らしく土の中で眠っていろ!!』 ヴィラルの怒号と共に大口を開けたエンキの体内から幾つもの銃器が迫り出し、撃ち放たれた無数のミサイルが無人機の軍勢を呑み込んだ。 荒涼とした死と静寂の世界は、すでにその面影すらも消え失せていた。 吹き抜ける風は硝煙の香りに侵され、砂の海は鉄屑と鉛玉の山に埋もれている。 絶え間無く飛び交う銃弾の大群はまるで異常発生した蟲のように蒼穹を覆い隠し、ミサイルが雲のように空を流れ、光線が雨のように地上に降り注ぐ。 それはまるで宴だった。 埃塗れのおもちゃ箱から掘り起こされた絡操仕掛けのホスト共と、聖域に土足で踏み込んだ招かれざるゲスト達が全力全開でぶつかり合う、破壊と殺戮の宴だった。 襲い来る凶弾の猛威を耐え抜き、ガンメン軍団がガジェットを従えエンキ達に襲い掛かった。 数えきれない程の銃弾が、ミサイルが、光線が、たった二体の脅威を墜とす為だけに惜しみなく撃ち込まれる。 だが過剰苛烈とも言える敵の攻撃は、しかし一発とてエンキ達に届きはしなかった。 まるで天地が逆転したかのように地上から空へと降り注ぐ鋼の雨――ダイグレンの対空砲火による弾幕のカーテンが、撃ち込まれる敵の砲撃を相殺していた。 ダイグレン前面に搭載された九門の主砲、更に両肩と腰回りに設置された副砲が合計三十四門、その全てが一斉に火を噴き、空を覆うガジェットの軍勢を薙ぎ払う。 ずん……ダイグレンが一歩足を踏み出す度に、その圧倒的な質量に大地が震える。 周期的に地を揺るがすその律動は次第にその頻度を上げていき、止まぬ地鳴りに呑まれるように廃墟が次々と崩れ落ちていく。 ダイグレンは走っていた。 全身の砲門から休みなく砲弾を吐き出しながら、山岳を思わせるその巨体からは想像もつかぬ俊敏さで地を駆けていた。 『ホウチョウアンカー!!』 怒号と共に突き出されたダイグレンの舳先、まるで包丁のように鋭く幅広い衝角が、凶刃の如く墓守に迫る。 十七年前、四天王シトマンドラの駆るカスタムガンメンをその母艦ごと両断し、テッペリンの左腕を砕いてみせたダイグレンの包丁が、墓守の巨体を串刺しにした――否! 「……やるわね」 ダイグレンの艦橋がどよめきに包まれる中、リーロンが戦慄にも似た笑みと共に賞賛の言葉を呟く。 山をも切り裂くダイグレンの包丁を、墓守は食らいつくように上下の顎門で挟み受け止めていた。 包丁の表面に細かな亀裂が広がり、音を立てて砕け散る。 噛み砕かれた……物理的な意味でも精神的にもブリッジが衝撃に揺れる中、リーロンの双眸が不敵に光った。 「ミニサイズになっても、流石はあのテッペリンと言ったところかしら……でもね!」 コンソールを操作するリーロンの指先が流れるようにパネルを這い回り、入力された信号が光の速さで中枢システムに到達する。 瞬間、巨塔のようなダイグレンの両脚が大地を踏み締め、腰の捻りと共に振り出された鋼の拳が風切り音を轟かせながら墓守の左頬に突き刺さる。 体重の乗った見事な右ストレートだった。 だが墓守も負けてはいない……仰け反る身体を立て直し、途中から千切れた右腕をロケットのように垂直に打ち上げる。 カウンターで繰り出された墓守のアッパーカットがダイグレンの鼻面を抉り、真紅の巨体が破片を撒き散らしながら斜めに傾く。 踏鞴を踏み、倒れそうになる艦体を立て直したダイグレンが、両腕を矛のように墓守へと突き出した。 ダイグレンの貫手に正面から応じるように、墓守もまた壊れた両腕を正面に振り出す。 まるで力比べでもするかのように互いの手と手を正面から組み合う二体の戦艦級巨大ガンメン、そのパワーは拮抗し、互いに押しも引きも出来ぬ膠着状態に陥っていた。 だが、それで良い……リーロンの唇が薄く吊り上がる。 邪魔な墓守の動きは止めた、これで本命の〝ゆりかご〟に近付ける。 「オッケーよ、二人共! 遠慮なく征っちゃいなさい!!」 リーロンの発破に応えるように紅蓮色の閃光が空を貫き、墓守の脇を抜いて〝ゆりかご〟へと一直線に迫る。 『『グレンラガンインパクト!!』』 ギミーとダリーの怒号と共にグレンラガンの下半身がドリルに変わり、唸りを上げて高速回転しながら〝ゆりかご〟の巨大な艦体に深々と突き刺さった。 ドリルを通じて二人の気合いの力、螺旋力が〝ゆりかご〟の中に流し込まれる。 グレンラガン――正確にはその中枢であるラガン――には、合体したメカを支配する特殊機能が搭載されている。 その力は搭乗者の螺旋力に比例し、理論上では如何なる巨大なマシンであっても支配することが可能と言える。 保護プログラムの壁を次々と突破し、ラガンは順調に〝ゆりかご〟の制御システムを制圧していく。 猛毒のように〝ゆりかご〟を侵食する螺旋力が、遂に制御中枢に辿り着き――瞬間、まるで拒絶されるかのようにグレンラガンの機体が〝ゆりかご〟から弾き出された。 「そんな、ラガンの支配に打ち勝った……!?」 「こんなこと、初めてだよ……」 グレンラガンの二つのコクピットそれぞれの中で、ギミーとダリーが愕然と呟く。 ラガンの支配を撥ね退ける程の強力な〝ゆりかご〟の自己防衛プログラム……一瞬の接触ではあったが、そこには〝意思〟のようなものさえ感じられた。 もう一度だ……再びドリルを構えるグレンラガンの周囲を、墓守のガンメン軍団が取り囲む。 エンキ達の一斉射撃やダイグレンの集中砲火をまともに受け、ボロボロになりながらも未だに動き続ける鋼の巨人達は、まさに黄泉から迷い出た亡者と呼ぶに相応しい。 「こいつら……!」 邪魔な障害を纏めて薙ぎ払うべく、ギミーは操縦桿を握る両手に力を籠めた。 迸る螺旋力が血流のようにグレンラガンの全身を回り巡り、右腕のギガドリルに集束する。 「ギガドリル――」 ギガドリルを構え、必殺の一撃を放とうとするグレンラガンの前に、その時一体のガンメンが立ち塞がった。 他のカスタムガンメン達よりも一回り大きな体躯に、隣り合う双頭の口内から一本ずつ腕を生やした異形のガンメン――ツインボークン。 「あ……」 操縦桿を握る両手から――否、ギミーの全身から力が抜けていく。 記憶の蓋がこじ開けられ、溢れ出す思い出の濁流に意識が流され呑み込まれていく。 思い出すのは十年前、隔絶宇宙での敵艦隊との戦い……圧倒的な戦力差に母艦に逃げ帰ることしか出来なかった仲間達、絶望的な戦いを挑み笑いながら死んでいった先輩達。 そして傷ついた自分達二人を最後まで護り抜き、敵の砲撃の中に散っていった双子のガンメン乗り。 思い出してしまう、蘇ってしまう……彼らの最期の言葉が、自分達に託された彼らの遺志が。 ――ギミー、ダリーを守れ。 ――生きろよ、俺達の分も。 今でも耳の奥ではっきりと響く彼らの遺言、その科白の何と重いことか。 「ジョーガン、バリンボォ……」 両手が操縦桿から滑り落ち、コンソールの螺旋力ゲージが急速に落ちていく。 駄目だ……モニタースクリーンに映るツインボークンから視線を逸らし、ギミーは掌で顔を覆った。 たとえ偽物と解っていても、自分はジョーガン達と、大グレン団の皆と戦うことは出来ない。 完全に戦意を喪失し、ラガンのコクピットで力無く項垂れるギミー、その思いはグレンのパイロットシートに座るダリーも同じだった。 まるで電池の切れた玩具のように沈黙するグレンラガンを、ガンメン達の砲撃の光が呑み込んだ。 天元突破リリカルなのはSpiral 外伝「そんな、優しい夢を見ていた」(続) 前へ 目次へ
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/126.html
通信妨害 念話・思念通話等の、魔法的な通信を阻害するフィールドを形成する。 電波や無線等の妨害も可能だが、病院という施設、市街地という状況からそれらはカットしていない。 フィールド範囲内ではシャマルのクラールヴィントを介してのみ通信が可能となるが、範囲外との通信はシャマル自身も不可能となる。 プロテクション なのはの基本防御魔法。衝撃・魔力攻撃を防御面で防ぐことを目的としたオーソドックスな防御魔法だが、 なのはは魔法習得の当初から使用していたこともあり、その練度は高い。 フランメ・シュラーク ヴィータの魔力付与系打撃攻撃。命中時に高温燃焼を伴う爆破、着弾点焼夷効果を追加発生させる高威力打撃。カートリッジを一発消費する。 ソニックフォーム フェイトのバリアジャケットの換装形態。基本的な防御機能を徹底的に廃し、装甲防御を「受け」を行うための両手両足のみに集中。 さらに両手足に高速機動補助魔法「ソニックセイル」を常時発動。素早い近接戦闘のみを想定した、超高速機動型の形態。 運動性能と機動性、攻撃速度が圧倒的に上昇する分、防御力はほとんど無いに等しいような状態で自らの加速や攻撃の余波に耐えるための最低限の機能しか有していない。 通常の戦闘では考えられないほどの異様な特化は、フェイトが自らの最大の利点である「速度」に全てを賭けた決意の現れでもある。 プラズマランサー 単発での生成は、発射速度・弾速度・威力を一発に集中するため。 シグナムに対する警戒も解いてはいないため、行動のための魔力リソースを残すという意味合いもあるようである。 ミラージュハイド 空間に溶け込む迷彩効果を自己の周辺に発生させる魔法。 完全迷彩状態で攻撃や魔法発動等の行動を行うのは困難だが、高レベルの術者が静止状態で待機していれば、探査や検知の魔法にもかかりづらくなる。 フープバインド 拘束輪を複数同時に発動し、輪の拘束によって捕らえることで対象を固定する。 バインド魔法の基本、リングバインドの発展応用系で、大きな輪の状態で生成したものを対象の周囲に複数発生させることで、視認後の回避を困難にしている。 カード 魔法陣が刻まれた、魔力の込められたカード。デバイス内での炸裂を必要としない、簡易型のカートリッジのような働きをする使い捨ての魔力蓄積装置。 長期間に渡ってカード一枚ずつに自らの魔力を蓄積し、貯めていたものと思われる。 ホイールプロテクション 防御面に魔力の渦を生じさせることで、受け止めた魔力・威力を高い効率で消滅させる効果を持つバリア系魔法。 クリスタルケージ 拘束魔法の一種で、空間に固定するバインド系ではなく、物理的な「檻」を形成して閉じこめるケージ系魔法。 発動後は魔力リソースを使用しないことから、バインド系で捕獲した相手をさらに強力に拘禁する等の目的に使われる。 真なる覚醒 完成した闇の書は、二つの機能を有するようになる。 ひとつは、闇の書本体が持つ「巨大ストレージ」…騎士たちが蒐集したコアに収められた膨大な魔力と魔法のすべてがそこに収められた蓄積庫としての機能。 もうひとつが「主を守る究極の甲冑」、闇の書管制人格と融合システムの正式起動による融合型デバイスとしての機能。 守護騎士たちと同様のシステムで具現化する管制人格は、主の肉体と融合し、その能力のすべてを主に委ね、主の力となる。 融合型デバイス ユニゾンデバイスとも俗称される。ベルカにおいて開発されたデバイスの形式で、ミッドチルダ式インテリジェントデバイスの設計思想をさらに極端化したもの。 自らの意志を持つデバイスに完全な人の姿と意志を与え、状況に応じて術者と「融合」することで魔法管制と補助を行う。 この形式では、他形式のデバイスを遥かに超える感応速度や扱うことのできる魔力量を得ることができるが、 融合適性を持つ術者の少なさ、さらに各術者の性質に合わせた微調整や適合検査の必要といった手間が生じ、 さらに、本来は融合時の術者の意識喪失などのための緊急措置として設定されていたデバイスが主の意志とは無関係に、 単独で術者の体を使用・魔力行使を行えるという性質が、時に「デバイスが術者の体を乗っ取り、自律行動をとってしまう」という「融合事故」を起こす事件も発生し、 実際の製品化には至ることのなかった方式である。 融合型デバイスの特徴の一つとして「術者の姿の変化」があげられる。正しく使用している場合でも髪・瞳の変色などは特に顕著に現れるが、 融合後の姿が術者とデバイス、どちらの外観に近いかが、術者が融合型デバイスを使いこなせているか否かの判断材料となる。 なお、術者がデバイスを使いこなすことができず、制御不能の状態の場合、完全にデバイス側の外観になってしまうこともある。
https://w.atwiki.jp/ocg-o-card/pages/1209.html
高町なのは LV7 効果モンスター 星7/光属性/魔法使い族/攻2800/守2500 このカードは通常召喚できない。 「[[高町なのは LV5]]」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。 自分または相手が魔法カードを発動する度に、 このカードに魔力カウンター1個乗せる(最大10個まで)。 相手が魔法カードの効果を発動した時、 このカードに乗っている魔力カウンターを2個取り除く事でその効果を無効にする。 自分の墓地に存在する魔法使い族モンスター1体をゲームから除外する事で、 自分のデッキから魔法カード1枚を選択して手札に加える。 この効果は1ターンに1度しか使用できない。 Part13-706 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3646.html
暁美ほむらへと向けられる三人の目線は、どう考えても歓迎の類ではない。 明確な悪意の権化と化した暁美ほむらを、相対する正義で以て排除せんとする視線だ。 何故こんな事になったのかと問われれば、説明をするのは至って簡単。ただ単に、暁美 ほむらにとっては明確な敵であるインキュベーターの妨害をしようと追い立てた所で、運 悪く―奴らにとっては狙い通り、か―彼女ら三人に出くわしてしまっただけの事。 何故ほむらがインキュベーターを追い立てているのか、とか、そういう裏手の事情まで 含めれば、なるほど確かに難しい話にはなるが、現状を説明するだけならば、「襲う者と 襲われる者、そこに出くわしてしまった少女達」……たったそれだけで十分だ。 先程ほむらは、インキュベーターとの会話で、「高町なのはは暁美ほむらにとってもイ レギュラーである」という旨の情報を与えてしまった。 それを知った奴らが何をどう考えて行動するのかは知れないが、奴ら曰く高町なのはも また、魔法少女になる事が出来る人材らしい。 となれば、奴らは十中八九高町なのはを魔法少女にする為に行動するだろう。結果とし てほむらは、何の情報も与えてやらないつもりで、標的を高町なのはに絞らせてしまった のだ。 これは、この時間軸においてほむらが犯した最初の大きなミスと言える。 こういったミスが積み重なる事で、誤解や擦れ違いは徐々に大きく膨れ上がり、やがて 死ななくてもいい人達も、皆死んでしまうのだ。 開幕早々の痛手に毒づきながらも、ほむらは眼前の高町なのはへ手を差し出し、言った。 「高町なのは、そいつを私に渡して貰えるかしら」 「悪いけど、それは出来ないよ。だってこの子、こんなに苦しんでるじゃない」 高町なのはの胸の中で、白い小動物の姿をしたインキュベーターが小さく震えた。 なのははそいつを優しく抱き締め、その後方に佇む美樹さやかと鹿目まどかは―特に美 樹さやかは―、まるで悪人を見るような辛辣な視線で、射抜く様にほむらを見詰める。 今回の時間軸もまた、出会い方が悪すぎた。如何にほむらが彼女らを救う為に行動を起 こそうと、これでは何を言った所で無意味だ。彼女らの眼にはもう、暁美ほむらは悪人に しか映らないのだろう。 「ねえほむらちゃん、どうしてこんな酷い事をするの? こんな事、ダメだよ……」 案の定、鹿目まどかは憂いを帯びた表情で、キュゥべえとほむらを眇め見る。 心優しいまどかならそう言うのだろうという事も解って居たし、まどかにはずっとそう あって欲しいとも思う。 彼女にだけは、決して自分のようにはなって欲しくなから……だからこそ、鹿目まどか は何も知る必要はないし、何も教える必要だってない。 「貴女達には関係の無い事よ。悪い事は言わないから、そいつとは関わり合いにならない で……と言いたい所だけど、貴女達はもう、聞く耳を持たないのでしょうね」 「ううん、そんな事ないよ。ちゃんと聞くから、訳があるならきちんと話して欲しいんだ」 「話したところで無意味よ。あなた達には理解出来ないわ」 「そうやって最初から決めつけてちゃ、誰だって、何だって解り合えやしないよ」 「理解が出来ない以上、解り合う必要もないわ」 「……それでも私は、わかりあいたいの。というか、信じてる……って言った方がいいか な。人は皆、わかりあえるんだって」 慈愛すら感じられるなのはの表情に、思わずほむらはたじろいだ。 人は自分が持たない物を持っている相手に憧れ、時には恐怖すら抱くというが、今回の 場合は後者に当て嵌まるのだと思う。 少なくとも、こんな言葉を恥ずかしげもなく語る少女を、暁美ほむらは見た事が無かっ たからだ。 「……あなた、優しいのね」 「そんな事無いよ。私だけが特別な訳じゃない」 言葉に詰まったほむらを諭す様に、なのははほむらに右手を差し伸べ、続ける。 「本当はみんな同じ……わかりあえるのに、些細な事で誤解をして、それが嘘になって、 お互いを区別しちゃう。本当はとっても簡単な事なのに、人はこうも擦れ違っちゃうから ……だから私は、そうなる前にきちんとお話をして、ほむらちゃんとお友達になりたいの」 「……っ」 刹那、ほむらの心臓が音を立てて飛び跳ねた。 人との慣れ合いなど捨て去って、孤独を貫こうと決めたほむらに、友達などは不要だ。 そう心では思っていても、ハッキリと「友達になりたい」などと言われてしまうと、焦ら ずにはいられない。ほむらはこの手の人間に弱いのだった。 もしも、出会うのがもっと早ければ……ほむらが何度もその眼に絶望を焼き付けてしま う前に出会えていたなら……まどかに続いて、二人目の親友になれたかもしれないのに、 と思ってしまう自分が心の何処かに居る事に、まだまだ自分も甘いと思う。 「……馬鹿馬鹿しい、わ……友達だなんて言っても、全てをわかりあうだなんて、無理に 決まってるじゃないの」 ほむらの声は、自分でも驚くくらい、酷く不器用に紡ぎ出されていた。 冷め切った声は、心は、確かに揺れていた。何度も繰り返して培ったのは、どれも同じ 人間に対する接し方ばかりだ。それも、ほむらが知る限り、鹿目まどか以外の殆どはほむ らを敵対視、もしくは危険視していた奴らばかり。 突然マニュアルに無い台詞を言われて焦るのは、致し方のない事だった。 「これ以上、話す事もないわ……お願いだから、もうこれ以上は関わらないで。私の話を あなたが理解する事はないし、わかりあう事だって出来やしないわ」 「でも……だからって、ただ見ている事も、私はもう出来ないよ。だって、出来ないって 言って何もしなかったら、もっと何も出来ないから。それじゃ何も変わらないままだし、 ほむらちゃんだって救われないままだよ」 「ッ……、知った風な口を聞かないでっ……!」 何も知らない筈の高町なのはは、しかし全てを悟りきった風に言葉を続ける。 差し延べられた手は細く、力を込めて握れば折れてしまいそうなのに、誰よりも大きく、 逞しくすら見えてしまう。 その声は張り詰めた緊張を溶かし解すように柔和で、慈愛の瞳は逸れる事無くじっとほ むらを見据えていた。 なるほど高町なのはとはこういう人間らしい。最初に出会った時に感じた、鹿目まどか にも似た優しい雰囲気は、高町なのはの人間性が成せる業だったのだろう。他の誰にも真 似のしようがないし、仮に似た雰囲気の人物が居るのだとすれば、それは本当の意味での、 根からの御人好しくらいか。 「無駄だよなのは、こいつはあたしらと話す気なんてないみたいみたいだよ」 「さやかちゃん……」 美樹さやかが、高町なのはの肩を掴んで言った。 その視線は絶えずほむらを見据えていて、明確な敵意がありありと伝わって来る。もう 慣れたと言えば慣れたが、やはりあまりいい気はしない。 美樹さやかの所為でまどかが悲しんだ時間軸があった事も知っているからこそ、ほむら は彼女の事をどうしても好きにはなれないのだった。 「あたしは正直、なのはにここまで言わせておいてそういう態度しか取れないあんたがマ ジでムカつく。けど、なのはに免じて、それについてはこれ以上何も言わないわ」 敵意の眼差しと、敵意の言葉。それらを真正面からぶつけながらも、美樹さやかは一度 ほむらからは視線を外し、周囲の異質な空間を見渡した。 「それよりも、今はもっと重要な事があるって、あんたも解るよね?」 「……この空間の事かしら」 「そ。もしかしてこの手の込んだトリックも、あんたがやったってワケ?」 「これは私がやった訳じゃ――」 しかし、その言葉は最後までは紡がれなかった。 それ以上を告げようとした、その瞬間、突然ほむらとさやか達三人の間に、黒い影が落 ちたのだ。黒い影は、まるで紙に落とした墨汁のように広がって、そこから、小さな異形 が幾つも現れた。橙色の蝶にも見える身体からにょきりと胴体が伸びて、その先に出来た 白い綿の塊の中心には、手入れの行き届いた黒の髭が見受けられる。 使い魔だ。魔女に仕えるこいつらは、魔女の造り出したこの空間で、魔女に従って行動 する。魔女が人間達を餌と見なすのであれば、当然使い魔達にとっても人間は餌でしかな い。使い魔達は、縦横無尽に宙を舞いながら、なのは達三人へと襲い掛かった。 なんと間の悪い事か。魔力を持ったほむらよりも、一般の人間であるなのは達を第一の 標的として選んだのかは知らないが、これではほむらが彼女ら三人をこの空間に誘い込み、 そして今また使い魔共を使って彼女らを苦しめている様に思われても無理はない。 最初に行動を起こしたのは、そんな三人の中心たる高町なのはだった。 「今は逃げるよ、二人とも!」 「待ちなさい……!」 ほむらが声を荒げるが、それはもう三人には届いていなかった。 何処かから現れた桃色の光弾が、予測不能な軌跡を描いて、空を舞う使い魔共に命中し た。ほむら自身も理解出来ぬ現状に、何事かと思案するよりも早く、高町なのはは二人を 連れて撤退した。宙を舞う桃色の光弾は、まるで疾走する三人を護るかのように使い魔を 撃ち抜いていた。 すぐに追いかけようと地べたを蹴るが、ほむらが一人になった途端、使い魔共はほむら にも襲い掛からんと飛翔して来る。それを華麗なステップで回避しながらも、暁美ほむら は舌打ちと共に、鋭い眼光で以て使い魔共を睨み付けた。 「くッ……今は相手してる場合じゃないのにっ!!」 * * 全力疾走で駆け抜けながらも、なのはが意識を集中させる。そうすれば、なのはの意思 に応える様に、空を舞う桃色の弾丸―アクセルシューター―は的確に異形を撃ち落とし、 撃墜せしめてくれる。 今のなのはならば、この程度の簡易魔法はバリアジャケットを装着せずとも使用する事 は出来る。その分意識を集中させねばならないのもまた事実だが、この程度の敵を落とす のに、それ程の魔力は必要とは感じられなかった。 この異形共は、数は多いが一匹一匹の戦闘能力は大したことは無い。魔道師として数多 の戦場を駆け抜けて来たなのはにとってこの程度は朝飯前だし、こいつらと比べれば、か つて戦った親友や、守護騎士達の方が圧倒的に強かったし、なのは自身も今よりもずっと 苦しめられた覚えがある。 とは言ったものの、流石に終わりが見えないのは辛い。こいつらを撃墜するのは容易だ が、その先に元の空間に戻れるのかという保証もなければ、こいつらの増殖が止まる気配 もないのだった。 「何なんだよコレ! コレもあのコスプレ通り魔がやったっての!?」 「落ち着いてさやかちゃん、まだそうと決まった訳じゃないよ!」 なのはの後方を走りながら、さやかとまどかが息も絶え絶えに騒ぐ。 どうやらさやかは暁美ほむらという人間を好いてはいないようだったし、そう思うのも 無理はないのかも知れないが、なのははこの空間含めて、この異常事態はほむらが招いた ものではないと考えている。 そもそもほむらは、さやかに問われた時に否定していたし、レイジングハートに調べさ せてみたが、やはり今周囲で沸いている異形共からは何の魔力も感じられないらしい。 となれば、魔道師―多分―の暁美ほむらがこれをやったとは思えないし、そもそも暁美 ほむらにここまでやる程の敵意も感じられなかった。 唯一情報を知って居るのがキュゥべえだけなのだから、それについては後からキュゥべ えに聞き出すしかないのだ。その為にも、今ここで数の暴力に負けて押し潰される訳にも 行かない。 「ね、ねえ、なのはちゃんっ……ほむらちゃんは大丈夫なのかな」 「こんな状況でもあの転校生を心配しようって、どんだけ優しいのよ!」 「うーん、何とも言えないけど、ほむらちゃんなら大丈夫……だと、思う」 暁美ほむらは魔道師だ。なのはと同じように、戦う力だって持っているのだろうし、こ の程度の敵に遅れを取るとは思えない。こいつら程度の戦力であるならば、戦闘には向い ていないユーノだって負ける事はないだろうと、なのはは思う。 少なくとも、こいつらはほむらと自分達の間に立ち塞がり、自分達目掛けて襲い掛かっ て来たのだから、ほむらの方向へ逃げる事も出来ず、仕方なく二人を安全地帯まで送り届 けてから何とかしようと思ったのだが、その安全地帯も当分は見付かりそうもなかった。 『マスター、これではジリ貧です。やはりここは直射型の魔法で一気に空間ごと破壊した 方が良いのではないでしょうか』 レイジングハートの提案が、なのはを急かす。 やるしかないのか。そう思い、心中で愛機レイジングハートにデバイスとしての戦闘形 態へと移行する為の起動命令をしようとした、その時だった。 「……きゃっ!」 「まどかちゃんっ!?」 なのはの後方を走って居た鹿目まどかが、脚をもつれさせて、その場で転んだのだ。 当然、動きを止めたまどかは、奴らにとってはただの標的。弱肉強食の世界では、こう して動きを停めた草食動物から、肉食動物に食われてゆくのだ。 無数の異形が徒党を組んでまどかへと迫るが、今ならばまだ間に合う。なのはが変身を 果たし、強力な魔法で群がるこいつらを一気に薙ぎ払えば、まどかは事なきを得るのだ。 だとすれば、なのはのやる事は決まっている。 レイジングハートがなのはの意思を汲み取って、その宝玉の身体を煌めかせた。 しかし、それよりも速く、この空間を駆け抜けたのは、金色の閃光だった。 金の閃光は幾筋にも延びて異形へと迫り、なのはは思わず「金の閃光」の異名を関する 友が駆け付けてくれたのかと思うが……違う。 なのはの友ならば、一瞬の内に戦場を駆け抜け、これまた一瞬の内に異形共を斬り伏せ る筈だ。この場を駆け廻った金の光はどれも、敵を斬り伏せるどころか、まどかに迫る数 体の異形の身体に纏わりついて、その身を拘束していた。 「バインドっ……一体誰が!?」 思わず叫んだなのはの問いに答えたのは、先程と同じ金の閃光。されど今度は、ただの 拘束魔法の類では無く、直射型に伸びる、金の砲撃魔法のように見受けられた。 何処かから放たれた金の魔力は、まどかに迫る異形を的確に撃ち落とし、それと同じ要 領で、一斉に周囲の異形へ向けて金の砲撃は放たれる。圧倒的なフルバーストの後には、 片手で数える程しか生き残らなかった異形が、困り果てたように宙を漂っていた。 静寂になったこの空間で、コツ、コツ、コツ、と、誰かが歩く音が響く。 なのは達の視線が一斉に「誰か」を捉えると、その少女は手に持ったマスケット銃を投 げ捨てて、柔和な微笑みを浮かべた。 「危なかったわね、あなた達。でも、私が来たからにはもう大丈夫!」 現れた少女に、なのはは兎に角「黄色い」という印象を受けた。 まず目に付きやすい特徴の一つとして上げられるのが、頭髪だ。なのはの親友たる金の 魔道師と同じくらいの明るさの金髪は、左右で上品に巻かれていて、何処となくお嬢様の ような印象を抱かせる。 しかしながらその表情は、なのはの知るお嬢様であるアリサや仁美とは違っていて、仮 に誰かに例えるとするならば、親友の一人である八神はやてに近いのではないかと思う。 別段顔が似ている、という訳ではないが、無邪気そうな笑みからははやてにも通ずる確 かな強気が感じられるし、それでいて優しそうな雰囲気を宿した瞳が、何処となくそんな イメージをなのはに抱かせた。 衣服―恐らくバリアジャケット―は上から下まで黄色やベージュを基調としたドレス風 味で、彼女の動きに合わせてひらりと舞うスカートと、足首から太腿までを覆い隠すニー ソックスの間からは、健康的な白い素肌が見える。 その外見と髪の毛が、なのはに「黄色い」という印象を植え付けた由縁であった。 「安心して、すぐに終わらせてあげるから」 なのは達に向けて放たれたその言葉には、絶対に負けはしないという強い自信と、すぐ に助けてあげるから、という優しさが感じられた。 そこからは圧倒的な戦い―というのもおこがましいくらいに一方的な蹂躙―だった。 僅かに残った敵が徒党を組んで襲い掛かるが、黄色い魔道師は恐れの表情すら浮かべは しない。確かな実力が彼女の自身を裏付けし、それは事実、彼女の動きをより軽やかにす る。 何処かからマスケット銃を取り出しては、そこから放たれる金の閃光で異形を焼き払い、 一発撃ち終えたマスケット銃はすぐにそこら辺に投げ出して、また次のマスケット銃で敵 を撃つ。これをする度に異形の数は減っていくのだから、後はこれの繰り返しだけで済む 戦いだった。 (あの人……あの銃がデバイスって訳じゃないのかな) なのはは考える。 普通、デバイスというのは魔道師が肌身離さず持っているものだ。 なのはで言うならレイジングハートがそれに当たるし、レイジングハートが無ければ強 力な魔法を行使する事だって出来はしない。 事実として、魔道師の強さとは、その才能だけでなく、魔道師が用いるデバイスに依存 する所があるといっても過言ではないのだ。 しかし目の前の彼女は、デバイスと思しきマスケット銃を取り出したかと思えば、一発 発射するだけですぐにそれを投げ捨てる。時たまそれを鈍器の代わりとして使用する事も あるが、それはどう見たってデバイスの使い方などでは無い。 何処かに装着型のデバイスがあって、彼女は何らかの魔力であのマスケット銃を生成し て戦っているのではないかと想像するが、どっち道それもなのはにとっては未知の戦い方 だ。 そんな戦い方をする魔道師は見た事がないし、居るのだとすれば、多分、魔力の使い方 としては非常に面倒で非合理的な運用方法をしてもまだ余裕のある、よっぽどの実力者な のだと思う。 しかしながら、目の前の黄色の魔道師の戦闘能力は確かに圧倒的ではあるが、エース・ オブ・エースたるなのはから見れば無駄な動きも多いし、お世辞にもそんな魔力運用を用 いる事が出来る程の技量的余裕だって感じられはしない。魔道師としてはそれ程の実力者 だとも思えなかった。 こうして、気付いた時にはなのはの興味は黄色の魔道師へと移り変わって居たのだった。 (レイジングハート、あの人の戦い方、どう思う?) 『少なくとも、ミッド式でもベルカ式でもありません』 (私達の知らない、全く新しい術式の魔法って事かな?) 『いえ。ミッド式もベルカ式も、魔力を運用する戦術である以上、どちらも同じ魔法だと 言えますが、彼女の戦術はそもそも、我々の知る魔力運用ですらありません』 (……つまり、魔法じゃないって事?) 『我々の知り得る常識の範疇で魔法を語るのなら、そうなりますね』 レイジングハートの分析は、相も変わらず冷静だった。 ミッドもベルカも、大元は同じだ。魔力の源―リンカーコア―から生成される魔力を運 用して戦うから、どちらも共通して「魔法」と呼ばれている。 しかし、今まで魔道師だと思っていた黄色い彼女が使う術式には、そもそも「魔力」が 用いられていないという。「魔力」が運用されない以上、それを「魔法」と呼ぶのは違う のではないか、というのがレイジングハートの見解であった。 * * 巴マミは、なのは達が通う中学校の、一歳年上の先輩だという。 まだ義務教育の段階でありながら一人暮らしで毎日学校に通っている巴マミは、誰が聞 いても立派だと思うし、だからと言って、爛れた生活を送って居る訳でもなく、部屋は至 って上品に片付けられていた。 インテリアとしても非常にセンス良く、家具の配置から置物の飾り付け方まで、若者が 好むお洒落な喫茶店なのではないかと錯覚してしまうくらいの気品さでありながら、しか しそこに嫌味さなどは皆無。 家具も置物もあまり高価過ぎる訳でもなさそうで、頑張れば手が届きそうな親近感が、 なのはにとっては非常に居心地が良かった。 「ろくにおもてなしの準備もないんだけどね」 苦笑いを浮かべながらも、先程なのは達の窮地を救ってくれた黄色の魔法少女こと、巴 マミはテーブルに人数分の紅茶が注がれたカップを置いて行く。 なのはの両親が経営している喫茶店・翠屋で使われている商売用のカップと比べても遜 色のない、立派な造りのカップであった。 注がれた紅茶もまた一級品。味も香りも非常に上品で、テーブルを囲むなのはだけでな く、さやかやまどかまでもが幸せそうな表情を浮かべていた。 そんな三人を眺めるキュゥべえも、マミに怪我を治して貰った事で調子が良くなったの か、機嫌良さそうに小首を傾げていた。 ここへ来てから、既に数十分が経過していた。 その間で、マミが用いる魔法についても、簡単な説明は受けた。 なのは自身も、まだ完全にその情報の全てを飲み込めている訳ではないし、所々がまだ 不透明なままである事は否めないが、少なくともなのは達魔道師が用いる魔法と、彼女ら 魔法少女が用いる魔法は、概念を全く違えた別物という事らしい。 なのは達魔道師が魔法を行使する為には、まずその素質たるリンカーコアを持っている 事が前提条件で、そこから生み出される魔力を有効に運用する為に武器としても用いられ るものがデバイスだ。 魔法といえど人が考案し開発したシステムを用いて使用しているあたり、こちらの方が まだ幾分か馴染み易いものがある。 一方で、マミ達魔法少女が用いる魔法は、そもそもリンカーコアを必要とはせず、それ とは全く異なる素質である「ソウルジェム」が必要であるらしい。直訳すれば「魂の宝石」 という意味になるが、それがどのようなものなのかはまだなのはも詳しくは知らない。 ソウルジェムを持つ魔法少女は、魔道師の魔法とは全く異なる未知の力で魔法を行使す る為に、デバイスなどは必要としないし、それこそ戦闘タイプに関わりなく、どんな戦い 方でも出来るらしい。と言っても、皆ある程度は使い慣れた武器を用いて戦うらしいが。 要するに魔法少女の力とは、非常に精神的で、神秘的。科学でも解明できない、全く未 知の能力らしい。 「そして、魔法少女になった者は、魔女と戦う使命が架される」 「その、魔女っていうのは?」 「マミのような魔法少女が希望を振りまく存在なら、反対に魔女は絶望を振りまく存在っ てところかな。世間でよくある理由のはっきりしない自殺や殺人事件はかなりの確率で魔 女の仕業なんだ」 希望とか絶望とか、非常に抽象的な説明だなと、なのはは思った。 何がどうなれば絶望が振り撒かれて、どうすれば人が自殺や殺人事件を犯すのか、もう 少し具体性を持った説明をして欲しいと思うが、多分、今これ以上魔法少女の設定を一気 に教えられても、余計に頭がこんがらがるだけな気がしたので、なのははそれ以上は問わ なかった。とりあえず魔女を放っておく事は出来ないという事さえ解れば、今は問題なく 話を進められる。 「それで、マミさんはその魔女と戦ってるんですか?」 「ええ。今日あなた達が引きずり込まれたのが、魔女の結界。あの時私が助けに入らなけ れば、あなた達は生きては帰れなかったでしょうね」 「私達、そんな怖いところに居たんだ……」 さやかとまどかが、青ざめた顔で縮こまっていた。 一歩間違えれば死んでいたなどと言われれば、それも無理はないのだが、それならそれ で疑問も生まれる。なのははあの時、魔道師としての魔力ダメージで敵を殲滅しようとし たのだが、果たして魔女は魔法少女以外でも太刀打ち出来るものなのだろうか。 「マミさん、魔女は魔法少女でないと倒せないんですか?」 「ええ、そもそも魔女の空間に入れるのが魔法少女だけだからね」 「つまり、魔女の空間に入る事さえできれば、魔法少女でなくても魔女は倒せる……?」 「……前例が無いからなんとも言えないけど、魔女にダメージを与えられるだけの圧倒的 な力があれば、不可能ではないでしょうね。実際、私の知ってる魔法少女の中にも、ほぼ 物理的なダメージだけで戦ってる魔法少女も居るし」 「物理的なダメージ……?」 「ええ、例えば……穂先に槍が付いた多節棍、っていうのかしら……で戦う子とか」 しどろもどろな説明ではあったが、何とか脳内でイメージする事は出来た。 要は、シグナム達と同じ様に、格闘武器で戦う魔法少女も居る、という事だ。多節棍と いうのは多分、レヴァンティンのシュランゲフォルムと似た様なものなのではないかと勝 手にイメージしておく。 少なくとも、物理的なダメージが魔女に有効であるのならば、なのは達の魔力ダメージ だって通用するのだろう。魔女空間に侵入出来ない事はネックだが、もしも魔女に狙われ たとしても、ただ殺されるだけではないという事はとりあえず解ったので、良しとする。 「で、魔法少女になった者は、僕が一つだけどんな願い事でも叶えてあげられるんだ」 「どんな願い事でもって……!? 金銀財宝も、不老不死も……あんな事でも!?」 「あんな事……?」 キュゥべえの説明を聞いて真っ先に飛び上がったのはさやかだった。 あんな事、というのが何を意味するのかは敢えて深くは考えないようにするとして、キ ュゥべえはさやかの問いにも迷いも無く「うん」と首肯する。 「そして、君たち三人にも、魔法少女になる素質は十分にあるって事」 「私達が、魔法少女に……?」 なのはにさやか、まどかの三人が、それぞれ顔を見合わせる。 全くの一般人であるさやかとまどかのみならず、既に魔道師としての力を持ったなのは までもが魔法少女になる事が出来るというのだ。もしもそうなれば魔道師と魔法少女の力 を併せ持つハイブリット魔法少女―今考えたネーミングだ―という事になるし、そうなれ ば、なのははきっともっと多くの人間の命を救う事が出来るようになるのだろう。 ただ命を救いたいと言う願いだけで戦うなのはにとって、それは魅力的な提案ではある が……既に魔道師としての未来を歩み始めたなのはにとって、魔法少女をも兼任するとい うのはつまり、命を賭けた仕事を二つも同時にこなさねばならないという事。 思わず躊躇ってしまうなのはに、キュゥべえは可愛らしい笑顔で言った。 「だから僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ」 前話 目次 次話
https://w.atwiki.jp/wakan-momomikan/pages/7950.html
蓬草│和(相州)│草部│ http //wakanmomomikan.yu-nagi.com/momomi3/maki-7810.htm
https://w.atwiki.jp/wakan-momomikan/pages/7331.html
木瓜の花│和(信州)│果部│ http //wakanmomomikan.yu-nagi.com/momomi3/maki-7198.htm