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本局ビルNMCCは、依然として混乱状態が続いていた。 局員同士の念話の利用と市警察からの無線機の提供で応急の連絡態勢は整ったものの、 今までの空間モニターでの通信とは勝手の違う連絡方法に、状況を伝えるのに苦労している有様であった。 「第29再開発区画から超巨大ガジェットドローンが出現したって通報の件はどうなった? 確認は取ったのか!?」 「37区から、本局方面へ向けて一般車両に擬態したガジェットドローンが進行中との通報が…」 「16区のメイリンガル通りでは、人型ガジェットドローンが所構わず砲撃や破壊活動を行っていて、死傷者が多数出てます、 至急陸士部隊の派遣を!」 「―――はい、現在、武装隊と航空隊を向かわせていますが、空間モニターが使用不能なため連絡が上手く取れず…」 「イラルメルタハイウェイは、人型ガジェットドローンの出現で、上下線各所とも多重衝突事故が発生! 車両の進入は不可能との事です!」 各部署から続々と入ってくる報告に、長官は表情をしかめながら呻く。 「何て事だ、我々管理局はこの時の為に居るというのに…!!」 苛立ちをテーブルにぶつける長官に対して、ゲンヤは努めて落ち着いた口調で言う。 「仕方ないでしょう。我々が今まで相手してきたのは、個人や小規模な組織レベルの次元犯罪者ばかりで、 こんな大規模な軍事攻撃を行える、国家規模の敵と戦った事はありませんから」 長官以下幹部たちが対策に頭を悩ませていた時、類人猿似の顔以外の部分が白い体毛に覆われた士官が一名やって来て、敬礼しながら報告する。 「聖王教会から、増援の方が参られました」 士官の報告に対して、呼吸器を装着する犬の毛のような髪の幕僚が不審そうに言う。 「増援だと? 向こうも今、手が回らない筈じゃ?」 幕僚たちが訝しげに首を捻ると、カリムたち5人が席にやって来た。 「聖王教会騎士カリム・グラシアです。法王の命でこちらの応援に駆け付けました」 カリムの申し出に対して、土気色の皺だらけの肌に異様に広い額の、少将の階級章を付けた人間型生物の幹部が答える。 「カリム殿、お気遣いは有り難いが、現在こちらは通信が寸断されて部隊間の連絡が取りづらい状況でして、出来る事はほとんどないかと…」 「通信が不可能な状況ですね?」 カリムが尋ねると、ゲンヤが頷いて答える。 「ええ、軍民双方の空間モニターが総て作動不能に陥ってるんですが、直せるので?」 カリムが振り向くと、オットーは頷いて答える。 「僕とディードでネットワークの状況を見てみます。上手く行けば、通信システムを回復出来るかもしれません」 オットーの言葉に、中将の階級章を付けた小人の幹部がすがる様に言う。 「今の状況では大変ありがたいですな、早速お願いしたい」 「君、あの子たちに席を用意してもらえないか?」 長官がそう言うと中将は急いでNMCCに向かい、オペレーターたちに説明して席を空けてもらった。 「IS、ツインブレイズ」 ディードは二本の剣型デバイスを開くと、それを鍵ぐらいの大きさに縮めてコンソールのイグニションポートに差し込む。 準備を終えたディードは、隣席のオットーに頷く。 「IS、レイストーム」 オットーはコンソールにISを展開させ、ネットワークと直接リンクする。 その様子を見たオペレーターの何人かが、嫌悪感もあらわに近くの同僚とヒソヒソ話し込む。 「どう?」 ディードが尋ねると、オットーは首をひねりながら答える。 「難しいね、軍用、民間用のネットワークは完全に使用不能になってる」 「と、なると…やっぱり私たちでサーバーの代役を?」 ディートの言葉に、オットーは頷く。 「うん、そうだね」 二人は互いに頷くと、遠巻きに様子を見ているオペレーターたちに声をかける。 「聞いてください。僕たちがサーバーシステムの代用をしますので、システムの復旧をお願いします」 それを聞いたオペレーターたちは、急いで自分の持ち場へと戻る。 「プリズナーボックスでファイアウォールを構築すれば、ウイルスの侵入を抑える事はできるから…」 「通信回線を、未使用の回線に切り替える必要が…」 二人の間でしばらくやり取りがあった後、オペレーターたちのコンソールが息を吹き返した。 「映像が戻ります!」 しばらくしてから、人間の顔ながら金魚のように離れた赤い目に、つぶれたかのように大きく平べったい鼻が人類的基準では不気味な、 白い肌のオペレーターがそう叫ぶ と同時に、それまで使用不能の表示だらけだったNMCCのモニターに、クラナガン市街の惨状が次々と映し出される。 ビルや車や人間を無差別に砲撃する一つ目ロボットの大群。 一般車両を弾き飛ばし、通りを我が物顔で走る種々雑多な乗用車軍団。 街路を蹂躙しながら爆走する、二輪の巨大なロボット…。 「あれは一体…」 幕僚の一人が発したこの一言以上に、この場にいる者たちの気持ちを代弁する台詞はなかった。 デモリッシャーは巨大な手で乗用車・大型トラックを掴んで放り投げ、車輪で街路を蹂躙しながら爆走していた。 「何だよありゃ!?」 デモリッシャーの後をローラースケート型デバイスで追いかける、おかっぱに似たショーットカットの真紅の髪の少女が、 周囲の惨状を目の当たりにして、驚愕と怒りの入り混じった声を上げる。 「どうするっスか、“ノーヴェ”?」 ディープピンクの髪を後ろにまとめた、ボード型のデバイスに乗って横を滑空する同年代の少女が尋ねると、 “ノーヴェ・ナカジマ”はデモリッシャーの背中を厳しい表情で睨み付けながら答えた。 「“ウェンディ”、お前はチンク姉に連絡を取れ! あたしは付近の陸士部隊に連絡を取って救助を要請する!!」 「OKっス!」 “ウェンディ・ナカジマ”は親指を上げると、念話で。 “こちらはウェンディっス、チンク姉、あのバケモノが見えてるっスか!?” ウェンディの呼びかけに、念話で返事が返ってくる。 “ああ、姉も確認した” 陸士部隊への連絡を終えたノーヴェが、内心の不安を吐露する。 “チンク姉、どうすりゃいいんだ? あんなバケモノ相手にどう戦ったらいいか見当がつかねぇ!” 念話はノーヴェの焦りを諭す…と言うより、自分自身に鼓舞するように呼び掛ける。 “落ち着けノーヴェ、どんな強い敵でも必ずどこかに弱点はある” それから少し間を置いてから、ウェンディに指示が来る。 “まずはウェンディ、何でもいいから攻撃してみてくれ、それである程度の強さが推測できるはず” “了解っス!” ウェンディはそう返事すると、自らのデバイス“ライディングボード”を加速させ、デモリッシャーの前へと出る。 “姉もすぐそちらへ合流する、それまで我慢してくれ” “了解(っス)!” ノーヴェとウェンディはチンクの言葉に力強く頷いた。 ウェンディはデモリッシャーの前方に出ると、ボードを反転させて真正面から相対し、自らのISを起動させる。 「エリアルショット!」 デバイスから声が出ると、砲口から数発エネルギーが弾丸の形になって放たれ、デモリッシャーの巨体で炸裂する。 しかし、デモリッシャーにとってはBB弾が当たった程度でしかなかった。 今度はデモリッシャーがお返しとばかりに、反対車線を走っていた乗用車を掴み上げ、ウェンディ目掛けて投げつける。 「いいっ!?」 面食らったウェンディは、慌てて防御用のISを展開する。 お陰で乗用車に直撃されるのは免れたが、牛の頭に人間の身体をした、四人の家族が悲鳴を上げながら必死に座席にしがみついているのが、 IS越しに見えた。 ウェンディは車が落ちるのを防ごうとISをもう一つ展開させるが、間に合わず摺り抜けてしまう。 「させるかよ!」 それを見たノーヴェは全速力で前に出ると、激突する直前に車を全身で受け止めた。 「サンキュっス、ノーヴェ!」 ウェンディは破顔し、親指を上げて礼を言う。 その様子を見たデモリッシャーは、次に前方や対向車線の車を手当たり次第に掴んで、次々と放り投げてくる。 「二度も同じ手は食わないっスよ!」 ウェンディはそう言って投げられる車を回避しながら、ISを次々と展開して投げられた車を受け止める。 その隙にノーヴェは“エアライナー”と呼ばれる空中移動用のISを展開してデモリッシャーの顔の所まで一気に駆け上がる。 「人の命を…オモチャにするんじゃねぇ!」 ノーヴェは怒気を声と力に篭めて、右手に付いた自らの武具“ガンナックル”をデモリッシャーの顔面に叩き込む。 その反動でデモリッシャーの顔が捻じれるが、ダメージは全く受けていない。 「痛くもかゆくもねえぜ!」 ミッド語でデモリッシャーはそう言い返すと、自分たちの言葉で罵倒された事に驚いたノーヴェに思い切り頭突きを食らわせる。 弾き飛ばされたノーヴェは、エアライナーを展開して墜落するのを防ぐも、ダメージが抜けきっておらず体をふらつかせる。 「危ないっスよノーヴェ!」 ウェンディの叫びにノーヴェが振り向くと、頭上からデモリッシャーの車輪が迫ってくるのが見える。 慌てて退避しようとするものの、とても間に合いそうには見えない。 ウェンディが助けに行こうとしたとき、その横を猛スピードで人影が走り抜けた。 デモリッシャーに潰されそうになる次の瞬間、一人の人影がノーヴェの体を掴んで横をすり抜けた。 「大丈夫かノーヴェ?」 「チンク姉!」 銀髪のストレートヘアーで左目にアイパッチを付けた、小学生にしか見えない“チンク・ナカジマ”が、ノーヴェの肩を支えていた。 「二人とも待たせたな」 「急いでください!」 魔神の格納庫内で最後まで残っていた三つ目の蝙蝠のような姿の技師が、教会騎士に急き立てられながらデータを次々とセーブしていた。 「よし、終了だ」 技師が最後のデータをセーブし終えてモニターを消した時、重々しい轟音と共にすぐ横に大きな氷の塊が落ちてきた。 仰天した技師が落ちてきた方振り向くと、覚醒した魔神が身体に付いた氷を払い落とそうと身動きを始めたのが見えた。 「さあ、早く!」 騎士がそう言って腕を掴むと、技師は慌てて出口へと走り出した。 「魔神が目覚める、全員構えるのだ!」 法王の命が下ると、Aランク以上の魔導師で構成される教会騎士及びセクター7直属の連合部隊が一斉にベルカ式魔方陣を展開させる。 魔神が身体の戒めを解こうと身動きする度に、氷の塊や重い資材が格納庫のあちこちに飛び散るが、魔導師たちはプロテクションシールドを展開して防ぐ。 完全に自由になった魔神は、溶岩よりも赤く輝く眼で周囲を睥睨すると、両腕を誇示するように突き上げる。 そして、地の底より噴き上がるマグマの鳴動よりも凄まじい咆哮をもって、高らかに宣言した。 「余は“破壊大帝メガトロン”! デストロン軍団のリーダーだ!!この前は儂の目覚めを邪魔してくれおったが、今や誰にも止める事は出来ぬ!」 それと共にメガトロンの右腕がチェーンメイスに変形し、周囲に散らばった氷や瓦礫を薙ぎ払う。 魔導師たちは再度プロテクションシールドを展開してそれらを防ぐと、メガトロンに向けて一斉に攻撃魔法を放つ。 だが、それらはメガトロンの体表面でことごとく弾き返されるばかり。 「その程度でこの儂が倒せるか」 メガトロンは魔導師たちの必死の攻撃を嘲笑う。 「行かせん!」 法王がそう言って魔方陣を展開させながら気合いの声を上げると、メガトロンの足元と天井から、氷の刃が幾つも突き出る。 それは瞬く間に魔神を取り囲み、押し潰さんばかりに包み込んだ。 その様子に、教会騎士から驚愕のどよめきが上がる。 だが次の瞬間、強力なエネルギー弾が氷の壁を突き破り、魔導師部隊すぐ真上の天井を粉々に吹き飛ばす。 「いかん、逃げよ!」 法王の言葉と同時に天井が崩落を始め、逃げる魔導師たちを大量の瓦礫と土砂が襲う。 魔導師たちの混乱を尻目に、メガトロンは悠々とチェーンメイスで氷の壁を砕いて再び姿を現すと、両腕を前に突き出す。 すると、腕が一体化して一つの巨大な砲となる。 “フュージョンキャノン”と呼ばれるその巨砲から、強力なエネルギー弾が発射され、崩落から辛くも逃れた魔導師たちを木の葉のように吹き飛ばす。 エネルギー弾は次々と撃ち出され、魔導師たちはなすすべもなくやられて行く。 メガトロンは、壊滅した部隊を一瞥すると、冷然と言い放つ。 「少しはやるようだな。だが、儂を止めるにはまったくの力不足よ」 メガトロンは背後の壁を振り向くと、チェーンメイスでもって壁面を破壊する。 壁の向こうに、かつて自分が搬入されたトンネルが見えて来ると、メガトロンの体が幾つものパーツに分裂して変形を始めた。 砲撃で吹き飛ばされ。重傷を負って地面に倒れ伏す法王が、苦痛と必死に闘いながら顔を上げると、メガトロンが三角形の宇宙船へと変わるのが見えた。 その姿は、教会の伝承に恐怖と共に伝えられている“聖王のゆりかご”そのもの。 「い…行かせるわけには……!」 法王は再び魔方陣を展開させると、死力を振り絞って自分の杖型デバイスを向ける。 すると、吹き上がる炎と共にデバイスが連結刃となってメガトロン目がけて伸び、ゆりかごとなったメガトロンに命中する。 炎は金属の巨体を覆い尽くし、焼き尽くさんばかりに激しく燃え上がる。 「さっきよりも威力が落ちてるぞ、これでは勝負にならんな」 メガトロンは冷然と言うと、エンジンを起動させる。 法王が最後に見たものは、格納庫全体を覆う強烈な閃光と自分めがけて走ってくる衝撃波であった。 メガトロンはトンネル内を上昇し、分厚いコンクリートと複合金属で出来た、入口の封印の壁を体当たりで粉々に破壊して空へと踊り出る。 突然、大地を震わせる轟音と共に奥の院の建物が吹き飛んで巨大な飛行物体が現れた事で、教会内はパニック状態に陥った。 逃惑う信徒や、それを押しと止めようとする教会騎士と修道士で混乱状態の地上は意にも介さず、メガトロンは周囲を飛行しながらスキャンすると、 教会本部の中枢部である大聖堂へと再び人間型形態に変形しながら着地する。 同時にスタースクリームが大聖堂隣の塔に、同じく人間型ロボットに変形しながら降り立った。 「お久しぶりでございますメガトロン様、スタースクリーム只今参上いたし―――」 メガトロンはスタースクリームの 挨拶を苛立たしげに手を振って遮る。 「おべんちゃらはいい、それよりオールスパークの行方はどうした?」 その質問に、スタースクリームは言葉を選びながら報告する。 「申し訳ございません、つい最近…約500年前までの足取りは掴めましたが、それ以後再び行方不明です」 それを聞いたメガトロンから、憤怒の唸りが上がる。 「またしくじりおったなスタースクリーム! 何が何でも探し出せ!!」 「まぁ、お待ちをメガトロン様」 怒鳴りつけられたスタースクリームは、取り成すように両手を上げて振りながら言った。 「確かにオールスパークは未だ行方不明です、探し出すにはやはりメガトロン様のお力がなければ無理と判断たしまして、まずは復活願いましたわけで」 そこで一度言葉を切ると、少し考えてから話を再開する。 「それに、ある程度手掛かりとなりそうな人物もこちらで確保してあります、その者の協力とメガトロン様のお力があれば、我々だけで探し出すよりも遙かに早く見つかります」 スタースクリームの弁明を聞いたメガトロンは、首を横に振りながら言った。 「ふん、やたらと口先だけは達者になりおって。まあいい、この世界に関するデータを全て寄こせ」 「はい、只今」 スタースクリームは直ちにミッドチルダ、ベルカの歴史や政治、次元世界の情勢に関するデータを送信する。 データのやり取りは、わずか数秒ほどで終わった。 「なるほどな…で、もう一つの作戦は?」 メガトロンの質問にスタースクリームは即座に答える。 「現在、ジャガーとインセクトロンにリアルギアの連中を案内人に同行させて遂行中です」 メガトロンは頷いて言う。 「よかろう。お前の作戦、そのまま進めてみろ」 スタースクリームは、頭を下げて答えた。 「ありがとうございます、必ずや成功させて見せます」 前へ 目次へ 次へ
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暁美ほむらへと向けられる三人の目線は、どう考えても歓迎の類ではない。 明確な悪意の権化と化した暁美ほむらを、相対する正義で以て排除せんとする視線だ。 何故こんな事になったのかと問われれば、説明をするのは至って簡単。ただ単に、暁美 ほむらにとっては明確な敵であるインキュベーターの妨害をしようと追い立てた所で、運 悪く―奴らにとっては狙い通り、か―彼女ら三人に出くわしてしまっただけの事。 何故ほむらがインキュベーターを追い立てているのか、とか、そういう裏手の事情まで 含めれば、なるほど確かに難しい話にはなるが、現状を説明するだけならば、「襲う者と 襲われる者、そこに出くわしてしまった少女達」……たったそれだけで十分だ。 先程ほむらは、インキュベーターとの会話で、「高町なのはは暁美ほむらにとってもイ レギュラーである」という旨の情報を与えてしまった。 それを知った奴らが何をどう考えて行動するのかは知れないが、奴ら曰く高町なのはも また、魔法少女になる事が出来る人材らしい。 となれば、奴らは十中八九高町なのはを魔法少女にする為に行動するだろう。結果とし てほむらは、何の情報も与えてやらないつもりで、標的を高町なのはに絞らせてしまった のだ。 これは、この時間軸においてほむらが犯した最初の大きなミスと言える。 こういったミスが積み重なる事で、誤解や擦れ違いは徐々に大きく膨れ上がり、やがて 死ななくてもいい人達も、皆死んでしまうのだ。 開幕早々の痛手に毒づきながらも、ほむらは眼前の高町なのはへ手を差し出し、言った。 「高町なのは、そいつを私に渡して貰えるかしら」 「悪いけど、それは出来ないよ。だってこの子、こんなに苦しんでるじゃない」 高町なのはの胸の中で、白い小動物の姿をしたインキュベーターが小さく震えた。 なのははそいつを優しく抱き締め、その後方に佇む美樹さやかと鹿目まどかは―特に美 樹さやかは―、まるで悪人を見るような辛辣な視線で、射抜く様にほむらを見詰める。 今回の時間軸もまた、出会い方が悪すぎた。如何にほむらが彼女らを救う為に行動を起 こそうと、これでは何を言った所で無意味だ。彼女らの眼にはもう、暁美ほむらは悪人に しか映らないのだろう。 「ねえほむらちゃん、どうしてこんな酷い事をするの? こんな事、ダメだよ……」 案の定、鹿目まどかは憂いを帯びた表情で、キュゥべえとほむらを眇め見る。 心優しいまどかならそう言うのだろうという事も解って居たし、まどかにはずっとそう あって欲しいとも思う。 彼女にだけは、決して自分のようにはなって欲しくなから……だからこそ、鹿目まどか は何も知る必要はないし、何も教える必要だってない。 「貴女達には関係の無い事よ。悪い事は言わないから、そいつとは関わり合いにならない で……と言いたい所だけど、貴女達はもう、聞く耳を持たないのでしょうね」 「ううん、そんな事ないよ。ちゃんと聞くから、訳があるならきちんと話して欲しいんだ」 「話したところで無意味よ。あなた達には理解出来ないわ」 「そうやって最初から決めつけてちゃ、誰だって、何だって解り合えやしないよ」 「理解が出来ない以上、解り合う必要もないわ」 「……それでも私は、わかりあいたいの。というか、信じてる……って言った方がいいか な。人は皆、わかりあえるんだって」 慈愛すら感じられるなのはの表情に、思わずほむらはたじろいだ。 人は自分が持たない物を持っている相手に憧れ、時には恐怖すら抱くというが、今回の 場合は後者に当て嵌まるのだと思う。 少なくとも、こんな言葉を恥ずかしげもなく語る少女を、暁美ほむらは見た事が無かっ たからだ。 「……あなた、優しいのね」 「そんな事無いよ。私だけが特別な訳じゃない」 言葉に詰まったほむらを諭す様に、なのははほむらに右手を差し伸べ、続ける。 「本当はみんな同じ……わかりあえるのに、些細な事で誤解をして、それが嘘になって、 お互いを区別しちゃう。本当はとっても簡単な事なのに、人はこうも擦れ違っちゃうから ……だから私は、そうなる前にきちんとお話をして、ほむらちゃんとお友達になりたいの」 「……っ」 刹那、ほむらの心臓が音を立てて飛び跳ねた。 人との慣れ合いなど捨て去って、孤独を貫こうと決めたほむらに、友達などは不要だ。 そう心では思っていても、ハッキリと「友達になりたい」などと言われてしまうと、焦ら ずにはいられない。ほむらはこの手の人間に弱いのだった。 もしも、出会うのがもっと早ければ……ほむらが何度もその眼に絶望を焼き付けてしま う前に出会えていたなら……まどかに続いて、二人目の親友になれたかもしれないのに、 と思ってしまう自分が心の何処かに居る事に、まだまだ自分も甘いと思う。 「……馬鹿馬鹿しい、わ……友達だなんて言っても、全てをわかりあうだなんて、無理に 決まってるじゃないの」 ほむらの声は、自分でも驚くくらい、酷く不器用に紡ぎ出されていた。 冷め切った声は、心は、確かに揺れていた。何度も繰り返して培ったのは、どれも同じ 人間に対する接し方ばかりだ。それも、ほむらが知る限り、鹿目まどか以外の殆どはほむ らを敵対視、もしくは危険視していた奴らばかり。 突然マニュアルに無い台詞を言われて焦るのは、致し方のない事だった。 「これ以上、話す事もないわ……お願いだから、もうこれ以上は関わらないで。私の話を あなたが理解する事はないし、わかりあう事だって出来やしないわ」 「でも……だからって、ただ見ている事も、私はもう出来ないよ。だって、出来ないって 言って何もしなかったら、もっと何も出来ないから。それじゃ何も変わらないままだし、 ほむらちゃんだって救われないままだよ」 「ッ……、知った風な口を聞かないでっ……!」 何も知らない筈の高町なのはは、しかし全てを悟りきった風に言葉を続ける。 差し延べられた手は細く、力を込めて握れば折れてしまいそうなのに、誰よりも大きく、 逞しくすら見えてしまう。 その声は張り詰めた緊張を溶かし解すように柔和で、慈愛の瞳は逸れる事無くじっとほ むらを見据えていた。 なるほど高町なのはとはこういう人間らしい。最初に出会った時に感じた、鹿目まどか にも似た優しい雰囲気は、高町なのはの人間性が成せる業だったのだろう。他の誰にも真 似のしようがないし、仮に似た雰囲気の人物が居るのだとすれば、それは本当の意味での、 根からの御人好しくらいか。 「無駄だよなのは、こいつはあたしらと話す気なんてないみたいみたいだよ」 「さやかちゃん……」 美樹さやかが、高町なのはの肩を掴んで言った。 その視線は絶えずほむらを見据えていて、明確な敵意がありありと伝わって来る。もう 慣れたと言えば慣れたが、やはりあまりいい気はしない。 美樹さやかの所為でまどかが悲しんだ時間軸があった事も知っているからこそ、ほむら は彼女の事をどうしても好きにはなれないのだった。 「あたしは正直、なのはにここまで言わせておいてそういう態度しか取れないあんたがマ ジでムカつく。けど、なのはに免じて、それについてはこれ以上何も言わないわ」 敵意の眼差しと、敵意の言葉。それらを真正面からぶつけながらも、美樹さやかは一度 ほむらからは視線を外し、周囲の異質な空間を見渡した。 「それよりも、今はもっと重要な事があるって、あんたも解るよね?」 「……この空間の事かしら」 「そ。もしかしてこの手の込んだトリックも、あんたがやったってワケ?」 「これは私がやった訳じゃ――」 しかし、その言葉は最後までは紡がれなかった。 それ以上を告げようとした、その瞬間、突然ほむらとさやか達三人の間に、黒い影が落 ちたのだ。黒い影は、まるで紙に落とした墨汁のように広がって、そこから、小さな異形 が幾つも現れた。橙色の蝶にも見える身体からにょきりと胴体が伸びて、その先に出来た 白い綿の塊の中心には、手入れの行き届いた黒の髭が見受けられる。 使い魔だ。魔女に仕えるこいつらは、魔女の造り出したこの空間で、魔女に従って行動 する。魔女が人間達を餌と見なすのであれば、当然使い魔達にとっても人間は餌でしかな い。使い魔達は、縦横無尽に宙を舞いながら、なのは達三人へと襲い掛かった。 なんと間の悪い事か。魔力を持ったほむらよりも、一般の人間であるなのは達を第一の 標的として選んだのかは知らないが、これではほむらが彼女ら三人をこの空間に誘い込み、 そして今また使い魔共を使って彼女らを苦しめている様に思われても無理はない。 最初に行動を起こしたのは、そんな三人の中心たる高町なのはだった。 「今は逃げるよ、二人とも!」 「待ちなさい……!」 ほむらが声を荒げるが、それはもう三人には届いていなかった。 何処かから現れた桃色の光弾が、予測不能な軌跡を描いて、空を舞う使い魔共に命中し た。ほむら自身も理解出来ぬ現状に、何事かと思案するよりも早く、高町なのはは二人を 連れて撤退した。宙を舞う桃色の光弾は、まるで疾走する三人を護るかのように使い魔を 撃ち抜いていた。 すぐに追いかけようと地べたを蹴るが、ほむらが一人になった途端、使い魔共はほむら にも襲い掛からんと飛翔して来る。それを華麗なステップで回避しながらも、暁美ほむら は舌打ちと共に、鋭い眼光で以て使い魔共を睨み付けた。 「くッ……今は相手してる場合じゃないのにっ!!」 * * 全力疾走で駆け抜けながらも、なのはが意識を集中させる。そうすれば、なのはの意思 に応える様に、空を舞う桃色の弾丸―アクセルシューター―は的確に異形を撃ち落とし、 撃墜せしめてくれる。 今のなのはならば、この程度の簡易魔法はバリアジャケットを装着せずとも使用する事 は出来る。その分意識を集中させねばならないのもまた事実だが、この程度の敵を落とす のに、それ程の魔力は必要とは感じられなかった。 この異形共は、数は多いが一匹一匹の戦闘能力は大したことは無い。魔道師として数多 の戦場を駆け抜けて来たなのはにとってこの程度は朝飯前だし、こいつらと比べれば、か つて戦った親友や、守護騎士達の方が圧倒的に強かったし、なのは自身も今よりもずっと 苦しめられた覚えがある。 とは言ったものの、流石に終わりが見えないのは辛い。こいつらを撃墜するのは容易だ が、その先に元の空間に戻れるのかという保証もなければ、こいつらの増殖が止まる気配 もないのだった。 「何なんだよコレ! コレもあのコスプレ通り魔がやったっての!?」 「落ち着いてさやかちゃん、まだそうと決まった訳じゃないよ!」 なのはの後方を走りながら、さやかとまどかが息も絶え絶えに騒ぐ。 どうやらさやかは暁美ほむらという人間を好いてはいないようだったし、そう思うのも 無理はないのかも知れないが、なのははこの空間含めて、この異常事態はほむらが招いた ものではないと考えている。 そもそもほむらは、さやかに問われた時に否定していたし、レイジングハートに調べさ せてみたが、やはり今周囲で沸いている異形共からは何の魔力も感じられないらしい。 となれば、魔道師―多分―の暁美ほむらがこれをやったとは思えないし、そもそも暁美 ほむらにここまでやる程の敵意も感じられなかった。 唯一情報を知って居るのがキュゥべえだけなのだから、それについては後からキュゥべ えに聞き出すしかないのだ。その為にも、今ここで数の暴力に負けて押し潰される訳にも 行かない。 「ね、ねえ、なのはちゃんっ……ほむらちゃんは大丈夫なのかな」 「こんな状況でもあの転校生を心配しようって、どんだけ優しいのよ!」 「うーん、何とも言えないけど、ほむらちゃんなら大丈夫……だと、思う」 暁美ほむらは魔道師だ。なのはと同じように、戦う力だって持っているのだろうし、こ の程度の敵に遅れを取るとは思えない。こいつら程度の戦力であるならば、戦闘には向い ていないユーノだって負ける事はないだろうと、なのはは思う。 少なくとも、こいつらはほむらと自分達の間に立ち塞がり、自分達目掛けて襲い掛かっ て来たのだから、ほむらの方向へ逃げる事も出来ず、仕方なく二人を安全地帯まで送り届 けてから何とかしようと思ったのだが、その安全地帯も当分は見付かりそうもなかった。 『マスター、これではジリ貧です。やはりここは直射型の魔法で一気に空間ごと破壊した 方が良いのではないでしょうか』 レイジングハートの提案が、なのはを急かす。 やるしかないのか。そう思い、心中で愛機レイジングハートにデバイスとしての戦闘形 態へと移行する為の起動命令をしようとした、その時だった。 「……きゃっ!」 「まどかちゃんっ!?」 なのはの後方を走って居た鹿目まどかが、脚をもつれさせて、その場で転んだのだ。 当然、動きを止めたまどかは、奴らにとってはただの標的。弱肉強食の世界では、こう して動きを停めた草食動物から、肉食動物に食われてゆくのだ。 無数の異形が徒党を組んでまどかへと迫るが、今ならばまだ間に合う。なのはが変身を 果たし、強力な魔法で群がるこいつらを一気に薙ぎ払えば、まどかは事なきを得るのだ。 だとすれば、なのはのやる事は決まっている。 レイジングハートがなのはの意思を汲み取って、その宝玉の身体を煌めかせた。 しかし、それよりも速く、この空間を駆け抜けたのは、金色の閃光だった。 金の閃光は幾筋にも延びて異形へと迫り、なのはは思わず「金の閃光」の異名を関する 友が駆け付けてくれたのかと思うが……違う。 なのはの友ならば、一瞬の内に戦場を駆け抜け、これまた一瞬の内に異形共を斬り伏せ る筈だ。この場を駆け廻った金の光はどれも、敵を斬り伏せるどころか、まどかに迫る数 体の異形の身体に纏わりついて、その身を拘束していた。 「バインドっ……一体誰が!?」 思わず叫んだなのはの問いに答えたのは、先程と同じ金の閃光。されど今度は、ただの 拘束魔法の類では無く、直射型に伸びる、金の砲撃魔法のように見受けられた。 何処かから放たれた金の魔力は、まどかに迫る異形を的確に撃ち落とし、それと同じ要 領で、一斉に周囲の異形へ向けて金の砲撃は放たれる。圧倒的なフルバーストの後には、 片手で数える程しか生き残らなかった異形が、困り果てたように宙を漂っていた。 静寂になったこの空間で、コツ、コツ、コツ、と、誰かが歩く音が響く。 なのは達の視線が一斉に「誰か」を捉えると、その少女は手に持ったマスケット銃を投 げ捨てて、柔和な微笑みを浮かべた。 「危なかったわね、あなた達。でも、私が来たからにはもう大丈夫!」 現れた少女に、なのはは兎に角「黄色い」という印象を受けた。 まず目に付きやすい特徴の一つとして上げられるのが、頭髪だ。なのはの親友たる金の 魔道師と同じくらいの明るさの金髪は、左右で上品に巻かれていて、何処となくお嬢様の ような印象を抱かせる。 しかしながらその表情は、なのはの知るお嬢様であるアリサや仁美とは違っていて、仮 に誰かに例えるとするならば、親友の一人である八神はやてに近いのではないかと思う。 別段顔が似ている、という訳ではないが、無邪気そうな笑みからははやてにも通ずる確 かな強気が感じられるし、それでいて優しそうな雰囲気を宿した瞳が、何処となくそんな イメージをなのはに抱かせた。 衣服―恐らくバリアジャケット―は上から下まで黄色やベージュを基調としたドレス風 味で、彼女の動きに合わせてひらりと舞うスカートと、足首から太腿までを覆い隠すニー ソックスの間からは、健康的な白い素肌が見える。 その外見と髪の毛が、なのはに「黄色い」という印象を植え付けた由縁であった。 「安心して、すぐに終わらせてあげるから」 なのは達に向けて放たれたその言葉には、絶対に負けはしないという強い自信と、すぐ に助けてあげるから、という優しさが感じられた。 そこからは圧倒的な戦い―というのもおこがましいくらいに一方的な蹂躙―だった。 僅かに残った敵が徒党を組んで襲い掛かるが、黄色い魔道師は恐れの表情すら浮かべは しない。確かな実力が彼女の自身を裏付けし、それは事実、彼女の動きをより軽やかにす る。 何処かからマスケット銃を取り出しては、そこから放たれる金の閃光で異形を焼き払い、 一発撃ち終えたマスケット銃はすぐにそこら辺に投げ出して、また次のマスケット銃で敵 を撃つ。これをする度に異形の数は減っていくのだから、後はこれの繰り返しだけで済む 戦いだった。 (あの人……あの銃がデバイスって訳じゃないのかな) なのはは考える。 普通、デバイスというのは魔道師が肌身離さず持っているものだ。 なのはで言うならレイジングハートがそれに当たるし、レイジングハートが無ければ強 力な魔法を行使する事だって出来はしない。 事実として、魔道師の強さとは、その才能だけでなく、魔道師が用いるデバイスに依存 する所があるといっても過言ではないのだ。 しかし目の前の彼女は、デバイスと思しきマスケット銃を取り出したかと思えば、一発 発射するだけですぐにそれを投げ捨てる。時たまそれを鈍器の代わりとして使用する事も あるが、それはどう見たってデバイスの使い方などでは無い。 何処かに装着型のデバイスがあって、彼女は何らかの魔力であのマスケット銃を生成し て戦っているのではないかと想像するが、どっち道それもなのはにとっては未知の戦い方 だ。 そんな戦い方をする魔道師は見た事がないし、居るのだとすれば、多分、魔力の使い方 としては非常に面倒で非合理的な運用方法をしてもまだ余裕のある、よっぽどの実力者な のだと思う。 しかしながら、目の前の黄色の魔道師の戦闘能力は確かに圧倒的ではあるが、エース・ オブ・エースたるなのはから見れば無駄な動きも多いし、お世辞にもそんな魔力運用を用 いる事が出来る程の技量的余裕だって感じられはしない。魔道師としてはそれ程の実力者 だとも思えなかった。 こうして、気付いた時にはなのはの興味は黄色の魔道師へと移り変わって居たのだった。 (レイジングハート、あの人の戦い方、どう思う?) 『少なくとも、ミッド式でもベルカ式でもありません』 (私達の知らない、全く新しい術式の魔法って事かな?) 『いえ。ミッド式もベルカ式も、魔力を運用する戦術である以上、どちらも同じ魔法だと 言えますが、彼女の戦術はそもそも、我々の知る魔力運用ですらありません』 (……つまり、魔法じゃないって事?) 『我々の知り得る常識の範疇で魔法を語るのなら、そうなりますね』 レイジングハートの分析は、相も変わらず冷静だった。 ミッドもベルカも、大元は同じだ。魔力の源―リンカーコア―から生成される魔力を運 用して戦うから、どちらも共通して「魔法」と呼ばれている。 しかし、今まで魔道師だと思っていた黄色い彼女が使う術式には、そもそも「魔力」が 用いられていないという。「魔力」が運用されない以上、それを「魔法」と呼ぶのは違う のではないか、というのがレイジングハートの見解であった。 * * 巴マミは、なのは達が通う中学校の、一歳年上の先輩だという。 まだ義務教育の段階でありながら一人暮らしで毎日学校に通っている巴マミは、誰が聞 いても立派だと思うし、だからと言って、爛れた生活を送って居る訳でもなく、部屋は至 って上品に片付けられていた。 インテリアとしても非常にセンス良く、家具の配置から置物の飾り付け方まで、若者が 好むお洒落な喫茶店なのではないかと錯覚してしまうくらいの気品さでありながら、しか しそこに嫌味さなどは皆無。 家具も置物もあまり高価過ぎる訳でもなさそうで、頑張れば手が届きそうな親近感が、 なのはにとっては非常に居心地が良かった。 「ろくにおもてなしの準備もないんだけどね」 苦笑いを浮かべながらも、先程なのは達の窮地を救ってくれた黄色の魔法少女こと、巴 マミはテーブルに人数分の紅茶が注がれたカップを置いて行く。 なのはの両親が経営している喫茶店・翠屋で使われている商売用のカップと比べても遜 色のない、立派な造りのカップであった。 注がれた紅茶もまた一級品。味も香りも非常に上品で、テーブルを囲むなのはだけでな く、さやかやまどかまでもが幸せそうな表情を浮かべていた。 そんな三人を眺めるキュゥべえも、マミに怪我を治して貰った事で調子が良くなったの か、機嫌良さそうに小首を傾げていた。 ここへ来てから、既に数十分が経過していた。 その間で、マミが用いる魔法についても、簡単な説明は受けた。 なのは自身も、まだ完全にその情報の全てを飲み込めている訳ではないし、所々がまだ 不透明なままである事は否めないが、少なくともなのは達魔道師が用いる魔法と、彼女ら 魔法少女が用いる魔法は、概念を全く違えた別物という事らしい。 なのは達魔道師が魔法を行使する為には、まずその素質たるリンカーコアを持っている 事が前提条件で、そこから生み出される魔力を有効に運用する為に武器としても用いられ るものがデバイスだ。 魔法といえど人が考案し開発したシステムを用いて使用しているあたり、こちらの方が まだ幾分か馴染み易いものがある。 一方で、マミ達魔法少女が用いる魔法は、そもそもリンカーコアを必要とはせず、それ とは全く異なる素質である「ソウルジェム」が必要であるらしい。直訳すれば「魂の宝石」 という意味になるが、それがどのようなものなのかはまだなのはも詳しくは知らない。 ソウルジェムを持つ魔法少女は、魔道師の魔法とは全く異なる未知の力で魔法を行使す る為に、デバイスなどは必要としないし、それこそ戦闘タイプに関わりなく、どんな戦い 方でも出来るらしい。と言っても、皆ある程度は使い慣れた武器を用いて戦うらしいが。 要するに魔法少女の力とは、非常に精神的で、神秘的。科学でも解明できない、全く未 知の能力らしい。 「そして、魔法少女になった者は、魔女と戦う使命が架される」 「その、魔女っていうのは?」 「マミのような魔法少女が希望を振りまく存在なら、反対に魔女は絶望を振りまく存在っ てところかな。世間でよくある理由のはっきりしない自殺や殺人事件はかなりの確率で魔 女の仕業なんだ」 希望とか絶望とか、非常に抽象的な説明だなと、なのはは思った。 何がどうなれば絶望が振り撒かれて、どうすれば人が自殺や殺人事件を犯すのか、もう 少し具体性を持った説明をして欲しいと思うが、多分、今これ以上魔法少女の設定を一気 に教えられても、余計に頭がこんがらがるだけな気がしたので、なのははそれ以上は問わ なかった。とりあえず魔女を放っておく事は出来ないという事さえ解れば、今は問題なく 話を進められる。 「それで、マミさんはその魔女と戦ってるんですか?」 「ええ。今日あなた達が引きずり込まれたのが、魔女の結界。あの時私が助けに入らなけ れば、あなた達は生きては帰れなかったでしょうね」 「私達、そんな怖いところに居たんだ……」 さやかとまどかが、青ざめた顔で縮こまっていた。 一歩間違えれば死んでいたなどと言われれば、それも無理はないのだが、それならそれ で疑問も生まれる。なのははあの時、魔道師としての魔力ダメージで敵を殲滅しようとし たのだが、果たして魔女は魔法少女以外でも太刀打ち出来るものなのだろうか。 「マミさん、魔女は魔法少女でないと倒せないんですか?」 「ええ、そもそも魔女の空間に入れるのが魔法少女だけだからね」 「つまり、魔女の空間に入る事さえできれば、魔法少女でなくても魔女は倒せる……?」 「……前例が無いからなんとも言えないけど、魔女にダメージを与えられるだけの圧倒的 な力があれば、不可能ではないでしょうね。実際、私の知ってる魔法少女の中にも、ほぼ 物理的なダメージだけで戦ってる魔法少女も居るし」 「物理的なダメージ……?」 「ええ、例えば……穂先に槍が付いた多節棍、っていうのかしら……で戦う子とか」 しどろもどろな説明ではあったが、何とか脳内でイメージする事は出来た。 要は、シグナム達と同じ様に、格闘武器で戦う魔法少女も居る、という事だ。多節棍と いうのは多分、レヴァンティンのシュランゲフォルムと似た様なものなのではないかと勝 手にイメージしておく。 少なくとも、物理的なダメージが魔女に有効であるのならば、なのは達の魔力ダメージ だって通用するのだろう。魔女空間に侵入出来ない事はネックだが、もしも魔女に狙われ たとしても、ただ殺されるだけではないという事はとりあえず解ったので、良しとする。 「で、魔法少女になった者は、僕が一つだけどんな願い事でも叶えてあげられるんだ」 「どんな願い事でもって……!? 金銀財宝も、不老不死も……あんな事でも!?」 「あんな事……?」 キュゥべえの説明を聞いて真っ先に飛び上がったのはさやかだった。 あんな事、というのが何を意味するのかは敢えて深くは考えないようにするとして、キ ュゥべえはさやかの問いにも迷いも無く「うん」と首肯する。 「そして、君たち三人にも、魔法少女になる素質は十分にあるって事」 「私達が、魔法少女に……?」 なのはにさやか、まどかの三人が、それぞれ顔を見合わせる。 全くの一般人であるさやかとまどかのみならず、既に魔道師としての力を持ったなのは までもが魔法少女になる事が出来るというのだ。もしもそうなれば魔道師と魔法少女の力 を併せ持つハイブリット魔法少女―今考えたネーミングだ―という事になるし、そうなれ ば、なのははきっともっと多くの人間の命を救う事が出来るようになるのだろう。 ただ命を救いたいと言う願いだけで戦うなのはにとって、それは魅力的な提案ではある が……既に魔道師としての未来を歩み始めたなのはにとって、魔法少女をも兼任するとい うのはつまり、命を賭けた仕事を二つも同時にこなさねばならないという事。 思わず躊躇ってしまうなのはに、キュゥべえは可愛らしい笑顔で言った。 「だから僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ」 前話 目次 次話
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「七夕、か」 シンはそう呟いて、満点の天の川を眺めた。 時間は夜。 場所は彼が通いなれた幼馴染である高町家の裏庭。 そこで彼は先ほどご近所からもらってきた竹をくくりつける。 季節は梅雨。 じっとりと湿った空気が、そろそろ夏も近い夜の気温と混ぜ合わされていた。 つい先日までの曇天が全て嘘のようなその状況に、思わず苦笑する。 昨日までの天気予報は雨。 良くても曇りと言う予報であったはずなのだが、今夜に限ってこの晴れ模様。 「まったく、神様の粋な計らいって奴か?」 それとも、乙姫と彦星の執念の賜物といえるのだろうか? 自分達の逢引を、世界各地に見せ付けるなんてとんだ場カップルぶりだ。 もう少しで15に成ろうとする自分には到底想像もつかないことではある。 まぁ、そんなこと彼には関係が無いのだが。 「シン君、出来た?」 不意に、後ろから声がかけられる。 もはや聞きなれすぎて側に居るのが当たり前に成ってしまった声。 彼の誇る親友の一人の声に、シンは後ろを振り返った。 「遅かったじゃないか、なの、は・・・」 言葉を失う。 呆然をする自分を自覚するが、彼はそれをとめることが出来ないで居た。 そこに居るのは彼の小学三年生からの幼馴染。 幾度もの鉄火場をお互いに潜り抜けた自身の翼の一翼。 高町なのはがそこにいる。 ゆかた姿で。 「えと、その・・・似合ってる、かな?」 不安が半分、期待が半分というようなその表情。 普段からサイドポニーにされている茶色の髪は、今日は結い上げられ普段よりもその白く細いうなじをより鮮明に見せている。 浴衣の色は朝顔の柄をあしらった鮮やかな水色。 さらにはお風呂上りなのだろうか、やわらかく甘い、女の子特有のにおいがシンの鼻腔をくすぐってしまう。 本人は気にしている体型も、彼から見れば何のことはない些事である。 「あの、シン?」 「え?!あ、その、ど、どした!?なのは」 不安げな声にいつも通りの浮けこたっをしようとして、どもってしまう。 まずいと思い、咳払いを一つする。 それに対して、やはり、なのはは眉根をよせる。 「もう、ゆかた。似合ってる、かな?」 本人も気になっているのだろう。 彼女はいつも気になればなるほど真っ正直になってくる。 だからこそ、彼はいつの間にか斜に構えるような性格になってしまっていたのだが。 「別に、似合ってるぞ」 それでも、答えるのは妹に鍛えられたせいであろう。 やれ髪型が変わっただとか、体重が二十グラム増減しただの、あまりにもどうでもいいことを連発されるのは幾ら可愛い妹からの兄への言葉とはいえ、それなりにつらいものがある。 世の女性と言うものは、男性にとっては未知でしかない。 それは、親友のほとんどが異性と言うシンにとっても変わりは無かろう。 しかし、その答えになのははいまだ不満げに口を尖らせる。 「・・・それだけ?」 「似合ってるって言っただろうが」 「足りないよ。もっとなんかないの?」 もう、といいながら言ってくるなのはに、もう一度なのはを見やる。 「今日は、髪の毛結ってるんだな」 「うーん・・・25点」 「天数式かよ」 思わずげんなりとするシンを尻目に、なのはは猫のような笑みを浮かべる。 人差し指をピンと立ててシンへと突きつけてそのまま言葉を続けた。 「天数式です。ちなみに、マイナス100で罰ゲームだよ」 なんだそれはと思いながらも、シンはなのはを見る。 高く結い上げられた長い髪、きらきらとこちらを見つめる瞳は、愛も変わらず彼にとっては宝石に感じられた。 「可愛いぞ」 「うーん、18点」 「・・・辛口じゃないのか?」 「一番最初に出てこなかったからだよ?出てきてたらもう少しは高かったのに」 思わずほうけた数分前の自分を悔やむ。 「なら、綺麗だぞ」 「うわ、4点」 「って、幾らなんでも低すぎじゃないのか!?」 「そんな心のこもっていないただの言葉に+点をつけてあげたんだよ?寧ろ甘いくらいだよ」 「はいはい、それはお優しいことで」 げんなりとしながら、シンはため息を吐いた。 まったく、オンナと言うものは本当に度し難い。 そこで、ふとシンは疑問に思ったことがあった。 あまり品が良いとはいえないが、やられっぱなしと言うのも悪くない。 シンはやや性質の悪い笑みを浮かべて 「水色なんて、珍しいな」 「なんで?」 突然の言葉に、なのははきょとんと首をかしげる。 そのしぐさは相変わらず可愛らしく、自分よりも数ヶ月だけ年上とは到底思えない。 「いや、お前あんまり水色のやつとか穿かないし」 「・・・減点100、はい失格」 デリカシーのかけらも無いその言葉に、なのはがプイと横を向く。 「その心は?」 「デリカシー皆無。むしろそれは私が子供っぽいように聞こえる!」 「・・・悪かったよ」 さすがに、言い過ぎたかと思ったシンがバツが悪そうに頭をかきながら謝る。 「・・・でも」 突然。 一つ息を吐こうとして自分の目の前、シンの胸にもたれかかるように、すがるように寄り添うなのはが見えた。 普段よりも視界を占めるなのはの潤んだ瞳。 唇にはリップクリームでも塗っているのか瑞々しく、ぷっくらと己を主張しすぎることも無くかといって没個性にも成らない絶妙な加減。 柔らかな感触が自分の胸の辺りに当たる。 それがなんであるのかを自覚して思わずおたおたとするが、相手はそんなこと知らぬ存ぜぬのように押し付けてくる。 「最初に、顔を真っ赤にしてくれたから、百点万点かな?」 「なんだその採点は」 なにやらシンにとってよく判らないその基準に思わず半目でなのはを見やるが、当の彼女は気にする風も無く、シンの最近厚くなってきた胸板に顔をつけた。 先ほどまで竹を一人でくくりつけていたせいか汗のにおいと、男性特有の心地よい異性(シン)のにおいが彼女の鼻腔をくすぐる。 「シン、本当に大きくなったよね」 ついこの間までほとんど変わらぬ背丈だったというのに。 いつしか彼の背丈は自分を追い越してしまった。 今では少し見上げなければ彼を視線を交わすことは出来ない。 「そりゃ、まぁ・・・成長期だからな」 あきらめたのか、頬を赤らめ、そっぽを向きながらシンが言葉を返す。 ちらりとみた彼の両腕は所在無げに垂れ下がったままだ。 「でも、この間までは私と変わらなかったじゃない」 「この間って・・・いつの頃だよ」 「本当に男の子は成長が早いよね」 「それは女子のほうが早いだろうが・・・おれはまだ子供だし、もうしばらくは子供で良いよ」 あぁ。 なのはは心の中で呟く。 なぜ彼は、いつも直情的で、真っ正直だというのに。 「シン」 「ん?どうした?」 何故いつも、自分が欲しかった答えをまるで知っているかのように、さも当たり前のように、くれるというのか。 「好き」 「・・・知ってるよ」 衝撃の告白に、しかし帰ってきた簡素な答えにむっとする。 それでも、胸板に響いた心臓の高鳴りに少しばかりは溜飲を下げることが出来たのだが 「むぅ・・・私の一世一代の告白だよ?なのになんでそんなに冷静なの?」 「お前の一世一代というものは、一月や一週間ごとに起きるものなのか?」 「それまでとは比較にならないから、一世一代だよ!・・・って、頭なでないでよ!!もう!」 「なんだその無茶苦茶な理屈は」 苦笑する彼の温かく、大きな手のひらが頭をなでる感触にしかしなのははそれを振りほどけない。 彼が困ったときに何とか言い逃れするようなそのいつもの行動であることも知っているというのに。 その甘い毒のような感触にとろけさせられる。 「シン」 ふいに、視線を上げると、赤い双瞳と視線が絡み合った。 どちらとも無く、ゆっくりと近づいていく。 周囲にいる虫の鳴き声も、人々の喧騒も、まるで耳に入ることは無く。 流れに身を任せるままに瞳を閉じる。 徐々に近づくにつれてシンのと息を感じる。 あと数瞬で甘い唇が触れると感じたその瞬間。 「そこまでだ。お子様ども」 不意に、シンの気配が消える。 次いで聞こえたのは自分の身内である兄の声と、なにやら吹き飛ばされたシンの叫び声だった。 何が起こったのかと瞳を開ければ、すぐ側に居るのは年の離れた兄、高町恭也の姿があった。 右腕を突き出し、右足と左足を開けたそれは、なのはの知らない武術の構えなのだろう。 視線は鋭く揺るがずに前を見据えている。 「い、たたたた・・・な、なにするんだよ!恭也兄!!」 その瞳がにらみつける先、庭に植えられている茂みの中からガサガサとシンが文句を言いながら這い出てきた。 突かれた痛みからかわき腹の辺りを押さえながら体中に葉っぱを纏うようなその姿に、思わずなのはは噴出しそうになるのをこらえて兄へと抗議の視線を向ける。 しかし、高町の次代を担う長男は、その程度そよ吹く風と言うように気にしない。 「ふん。人のうちの庭先でいきなり可愛い妹を手篭めにしようとした不埒な輩を突き放しただけだ。むしろ殺さなかったのを光栄に思うんだな」 つんと言い放つその言葉には、寧ろ険しか含まれて居ない。 その上、もう知り合ってから6年が経とうと言うのにまるで代わらぬその敵愾心。 だが、そんなことで千載一遇のチャンスを逃した彼女には通じるはずも無い。 「お兄ちゃん!あとちょっとだったのに!なんで邪魔するの!?」 「何度も言っているだろう。あいつは気に入らない。それだけだ」 あけすけもなく言われるその言葉に、シンはもはや清清しいとさえ感じるほどだ。 思えば、彼とは最初の出会いからしても良くなかった。 可愛らしい末妹がいきなり誰にも告げずに夜遅く家に帰ってくるとそこには見知らぬ同年代の男の子(悪い虫)。 しかもその上、普段ならばどこか一歩引いている妹と、なにやら仲がよさ気に話しているのを見てしまっては、それは最早疑念から核心に変わるのに然したる時間もかからなかった。 次の瞬間には「お前がなのはを誑かしたのか!!」という断定でシンに殴りかかって言ったのはお互いにとって苦い思い出の一旦といえなくは無いだろう。 その後も、何かあれば二人は反目しあい(たんに恭也が一方的に敵視しているといえなくも無いが)、なのはとシンが一緒に居よう物ならば年甲斐も無く攻撃してくるのは最早風物詩ではなく天丼といっても過言ではあるまい。 最初の頃こそは周囲はこぞって止めようとしていたものの、いつの間にやらシンも戦えるようになってきたのか互いに切磋琢磨する間柄になったのは自明の理かそれとも運命のいたずらか。 ともあれ、シンにとっての高町恭也という人物は天敵と言う言葉以外の何者でもなかったのだが。 体についた葉っぱを手で払い落としつつ、シンはその天敵をにらんだ。 「ていうか、なんであんたがココにきてるんですか?今夜は忍さんとデートじゃなかったんですか? 「これから行くんだ!だと言うのに・・・お前はなのはにまた手を出そうとして・・・恥をしれ!」 「いや、今のはどっちかというとなのはちゃんの方から迫ってたように見えたけど?」 「なんだと!?では貴様はヘタレか!?オトコとして見っとも無くは無いのか!?」 「相変わらずむちゃくちゃだなおい!!」 息子の無茶振りに何食わぬ顔をして合いの手をうった高町家の母、桃子はそのままにっこりと微笑んでお茶を置いていった。 よく冷えた麦茶がガラスの表面に水滴を作っており、見ただけで喉の渇きを潤すほどに。 恭也はそれに何らかのメッセージを受け取ったのか、時計をちらりと見てからなのはの肩に手を置く。 「なのは、シンには機をつけるんだぞ。男はいつだって狼なんだからな」 「何度も言うんだけど、シンになら幾らでも狼になってもらってOKだよ。それに、元から私はシンの出し。 なにより、これから忍さんのところに行ってリアル狼になるお兄ちゃんに言われたくはないかな」 妹のその言葉に、恭也は一瞬だけよろめいた後、シンを睨み付け、シンも負けじと睨み付ける。 (いいか、なのはに何かしてみろ。貴様にはなんとしても責任を取らせるからな) (何度も同じ子と言ってる暇があれば、いい加減忍さんのところに行け) 視線だけでそう言い放った後、恭也はゆっくりと庭から表門へと向かっていった。 「まったく・・・何であの人は毎回毎回同じこと言えば気が済むんだよ」 「まぁ、それだけシン君のことを認めてるんじゃないの?お兄ちゃん、それだけシンに期待してるってことだよ」 姿が見えなくなってから愚痴を言うシンに、なのはは先ほど母が置いて行った麦茶の入ったグラスの一つをシンに渡す。 シンはそれを手に取り、一気に喉に流し込む。 よく冷えた麦茶が、疲れた体に染み渡るように感じた。 そして、口元を伝うこぼれた麦茶を手の甲でぬぐうようにして 「・・・いや、単にあの人はシスコンなだけだろう」 思わず、お前がそれを言うのかというような言葉を呟き 「あ、ははははは・・・」 なのはは、乾いた笑みでその場を濁すしか出来なかった。
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http //www012.upp.so-net.ne.jp/yaya/music/ongen/anman.mp3 144 1@歌詞担当 ◆AIR./mw/Hg sage 2006/02/06(月) 19 41 45.41 ID EkuNtfLO0 「あんまんのはなうた」 ほかほかのあんまんを パクつきましょう♪ ふわふわ あつあつ いただきましょう♪ あまあまのあんまんを パクつきましょう♪ こしあんつぶあんどっちが おいしいのかな♪ たまには にくまんと 間違っちゃうけど♪ それでも 食べれば どうでもよくなっちゃうから♪ ほかほかのあんまんを パクつきましょう♪ ふわふわしっとりあつあつ いただきましょう♪ (以下レンジでチンする間だけ繰り返し)
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ディバインシューター マルチシュート/コントロールシュート 発射体であるディバインスフィアの複数生成・同時発射を行うマルチシュート。 ロックした相手に対する誘導飛行の性能…さらに発射後の術者による誘導制御・コントロールショットを得た、ディバインシューターの完成形である。 フォトンランサー マルチショット 連射性能と弾速に優れた、電光を伴う魔力弾を発射する魔法。固く圧縮された高密度な魔力は、まさに電光の槍とも言うべき破壊力を持つ。 発射体であるフォトンスフィアの同時複数生成・同時発射を行うマルチショット、さらに自分から離れた位置にスフィアを設置、 遠距離から発射するといった発射形態のバリエーションも見せている。 フラッシュインパクト フラッシュムーブによる高速移動からの打撃に圧縮魔力を乗せた、なのはのオリジナルの近接攻撃魔法。命中時に閃光を伴って炸裂する効果がある。 ラウンドシールド 魔力弾系攻撃に対して特に強靭な防御力を誇る、シールド系防御魔法。 双方とも、自動防御のプロテクションやディフェンサーでは相手の攻撃を防ぎきることはできないと見て、能動防御の魔法を選択したようである。 ライトニングバインド 空間に発生させた不可視の魔法陣(生成時のみ一瞬可視)に接触することで発動する、トラップ型の捕獲魔法。 対象をその場に固定し、電光を伴う捕獲輪で体の動きと移動を封じる。同時に、バインド発生点の周辺に発生する雷撃系魔法の威力を向上させる効果もある。 フォトンランサー・ファランクスシフト 連射型のフォトンスフィアを数十個生成、すべてのスフィアから同時一斉射撃を行う。絶大な威力を誇るが、その分制御は困難を極め、魔力消費も大きい。 レストリクトロック 空間に対してかける、範囲対象の捕獲魔法。発動から完成までの間に指定区域内から脱出できなかった対象をその場に固定し、捕獲輪で動きや移動を封じる。 動作停止以外の効果は持たないが、範囲内であれば複数の対象を同時に捕獲することも可能。 スターライトブレイカー ディバインバスターの発射形態バリエーション。 シーリングモードから放つ放射魔法で、魔法陣の中央に周辺空域から集めた魔力を集積、術者の魔力とともに全威力を一瞬で放射する。
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ディバインシューター マルチシュート/コントロールシュート 発射体であるディバインスフィアの複数生成・同時発射を行うマルチシュート。 ロックした相手に対する誘導飛行の性能…さらに発射後の術者による誘導制御・コントロールショットを得た、ディバインシューターの完成形である。 フォトンランサー マルチショット 連射性能と弾速に優れた、電光を伴う魔力弾を発射する魔法。固く圧縮された高密度な魔力は、まさに電光の槍とも言うべき破壊力を持つ。 発射体であるフォトンスフィアの同時複数生成・同時発射を行うマルチショット、さらに自分から離れた位置にスフィアを設置、 遠距離から発射するといった発射形態のバリエーションも見せている。 フラッシュインパクト フラッシュムーブによる高速移動からの打撃に圧縮魔力を乗せた、なのはのオリジナルの近接攻撃魔法。命中時に閃光を伴って炸裂する効果がある。 ラウンドシールド 魔力弾系攻撃に対して特に強靭な防御力を誇る、シールド系防御魔法。 双方とも、自動防御のプロテクションやディフェンサーでは相手の攻撃を防ぎきることはできないと見て、能動防御の魔法を選択したようである。 ライトニングバインド 空間に発生させた不可視の魔法陣(生成時のみ一瞬可視)に接触することで発動する、トラップ型の捕獲魔法。 対象をその場に固定し、電光を伴う捕獲輪で体の動きと移動を封じる。同時に、バインド発生点の周辺に発生する雷撃系魔法の威力を向上させる効果もある。 フォトンランサー・ファランクスシフト 連射型のフォトンスフィアを数十個生成、すべてのスフィアから同時一斉射撃を行う。絶大な威力を誇るが、その分制御は困難を極め、魔力消費も大きい。 レストリクトロック 空間に対してかける、範囲対象の捕獲魔法。発動から完成までの間に指定区域内から脱出できなかった対象をその場に固定し、捕獲輪で動きや移動を封じる。 動作停止以外の効果は持たないが、範囲内であれば複数の対象を同時に捕獲することも可能。 スターライトブレイカー ディバインバスターの発射形態バリエーション。 シーリングモードから放つ放射魔法で、魔法陣の中央に周辺空域から集めた魔力を集積、術者の魔力とともに全威力を一瞬で放射する。
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autolink NA/W12-063 カード名:なのは&ユーノ カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:1000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《動物》? 【永】応援 このカードの前のあなたのキャラすべてに、パワーを+500。 ユーノ君もフェレットモード久しぶりー! レアリティ:C illust.ヒライユキオ 純応援持ち。 特徴の優秀さもさながら、何より数少ない後衛向けの「なのは」?であるため、 アリサ・バニングスの支援としてはかなり使い易い。 逆に言えば「なのは」?や「ユーノ」が必要な状況でもない限りは微妙な性能といえるが… ・関連ページ 「なのは」? 「&」?
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荷解きを終えて兵舎に歩き始めた陸士たちが、フェイトに向かって手を振る。 フェイトはそれに微笑みながら手を振り返してから周囲を見回した。 着陸した次元航行艦から荷物を運び出す大型フォークリフト。 バスケットボールやサッカーなどのスポーツに興じる人間や類人猿。 簡易プールでダベっている身長二メートル以上の、鬼としか形容できない厳つい 体格をした生物と、その肩に乗って話をしている、三匹の羽を持ったナメクジ みたいな生物。 水のシャワーを気持ち良さげに浴びる像人間。 種々雑多な魔導士や陸士たちが仕事や従事し、娯楽に興じる様を一通り見てから 歩き出したフェイトの、首に下げている三角形のアクセサリーが光った。 「何? バルディッシュ」 フェイトが“バルデュッシュ”と呼ぶアクセサリーに話しかけると、アクセサリー から声が聞こえてきた。 「基地無線局からからです、本局の八神はやて様から通信が入っているそうです」 「わかったわ」 フェイトはそう答えると、無線局のある司令本部へと駆け出した。 前線基地中央部に建てられた司令本部。 指揮系統の中枢であるここは、防衛上の観点からさまざまな魔導士で守備され、 更に様々な対質量兵器用に何十トンもの複合金属やコンクリートで建てられた、 難攻不落の要塞である。 そこには司令部・管制室・基地無線局・発電所などがあって、百人あまりの 通信士や管制官などの職員が常時勤務し、基地周辺の警備や魔導士たちの管理・ 統制を行っている。 垂れ下がった耳にトカゲの顔をした管制官が、カップに入ったコーヒーをチビ チビと啜りながら空間モニターを見つめていると、ビープ音と共に赤い点が一つ 表示された。 それを見た管制官は、慌ててモニターを操作して担当将校を呼び出す。 「ラダム一佐、南より未確認機が一機、こちらへ向かってきます」 グレイ型宇宙人の顔をした担当将校が、馬と同じ逆関節の足を動かして、素早く 管制官の席へ駆けて来る。 「識別信号は?」 将校の問いかけに、管制官はモニターをチェックして答える。 「発信していません」 自身もレーダーの表示を確認すると、将校は自分の空間モニターを表示させる。 「未確認機に告ぐ、こちらは時空管理局第1158管理外世界セギノール中央基地 である。 貴機は時空管理局の軍事空域を侵犯している。 直ちに進路を変更して退去するか、識別信号を発信せよ」 返答も進路変更もなく、赤い点は沈黙したままなおも基地に接近する。 将校は、待機中の航空魔導士部隊に連絡を取った。 「エレメンタル/ワン・ツー、未確認機が南より接近中。緊急発進せよ」 指示を受けた航空魔導士二名が直ちに空へと飛び立ち、南へと進路を向ける。 レーダー上に映った二つの青い表示が、瞬く間に未確認機の赤い点に近づいて 行く。 「エレメンタル/ワン・ツー、機影は見えるか?」 「少々お待ちください、間もなく見えます」 しばしの沈黙の後、返答が来た。 「JF704 A1タイプです、機体番号はXD2700」 管制官は、報告された機体番号をタイプして管理局のデータバンクに照合する、 返事が返ってくるのに十秒以上はかからなかった。 モニターに表示されたそのデータを見た管制官は、怪訝な表情で将校に言った。 「一佐、このデータが正確なら、XD2700は三ヶ月前に第228管理外世界で撃墜 されたことになります」 「何だって?」 管制官が将校のモニターへXD2700のデータを転送する。 「三ヶ月前に別世界で撃墜された機体が、なぜ今になってここへ…?」 それを読んだ将校は、怪訝な表情のままXD2700に呼びかけた。 「XD2700、航空魔導士二名の誘導に従って基地に着陸せよ、なお指示に従わない 場合は貴機を撃墜する。二度目の警告はない」 “XD2700”という表示が追加された赤い点の後方に、航空魔導士を示す青い点の 一つが張り付くのが、レーダー上に映る。 緊張の一瞬。 赤い点は、前方の青い点に従って旋回を始めた。 管制室の隣にある基地無線局にフェイトが入ると、四つの通信用モニターブース のうち二つに人が入っており、一番奥では、つり上がった眉と突き出た牙の一見 怖い顔をしたオペレーターが、忙しく長い腕を動かしている。 「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです、私宛に通信が来ていると聞きましたが」 オペレーターはフェイトに顔を向ける。 「ハラオウン執務官ですね、少々お待ち下さいませ」 オペレーターはコンソールを操作し、画面を幾つか消したり表示させたりした後、 再びフェイトに顔を向けた。 「四番ブースにどうぞ」 フェイトは、オペレーターに軽く会釈してから通信ブースに入った。 彼女が空間モニターを少し操作すると、画面上にフェイトと同年代の日本人女性 の顔が表示される。 「フェイトちゃん、お久しぶりやなぁ」 八神はやてはフェイトの姿を見ると、にこやかに笑って関西弁で話しかける。 「お久しぶりね、一ヶ月ぶりぐらいかしら?」 フェイトもはやてに微笑みかける。 「そやなぁ、確かヨー・ヴォムビスでのロストロギア事件以来かな?」 「あ・う、うん…あの事件ね」 事件の名前が出てきた途端、フェイトの顔が引きつった。 「あの、頭に覆い被さってくる化物どもには辟易させられたなぁ~。それに――」 フェイトは、引きつった笑いの表情ではやての話を遮った。 「はやて、その話はもう…」 フェイトの顔色を見たはやては、両手を合わせて謝った。 「あ、ごめんごめん。かなりひどい事件やったもんなぁ」 「で、用件は?」 「ま、別に用があってやなくて時間が取れたんでちょっと話をしようかな思うてな。 お邪魔やったか?」 フェイトは首を横に振って言った。 「ううん、それはないよ。私も帰ってきたばかりで時間が少し空いてたし」 「そうか、それはよかったわ~。ところで、本当にティアナを連れて行かなくて 良かったんか? 今回の任務、一人だと結構大変やろ」 「確かに捜索範囲は広いけど、大したモノじゃないから大丈夫。それより、今は クラナガンの方が大変じゃない?」 「そうなんよ~。実は昨日も分離主義勢力による大規模デモがあってなぁ…」 司令本部の監視塔に上がった将校の視界に、夕闇を背に一世代前のJF704ヘリと、 二人の航空魔導士の姿が現れる。 魔導士が降下を手で示すと、ヘリは高度を下げる。 魔導士によるエスコートのもと、指定されたヘリポートに“XD2700”は着陸する のを見た将校は、陸・空の魔導士部隊に指示を下す。 「225陸士隊と369航空隊はヘリを包囲しろ、蟻一匹逃がさないぐらい厳重に固め るんだ」 将校の指示に、魔導士たちは自分の持ち場に就く。 味方のヘリを仲間達が敵機の如く厳重に包囲する様を、事情を知らない部隊の 魔導士たちは怪訝な表情で見つめる。 魔導士部隊がヘリを完全包囲したのを確認すると、将校はパイロットに呼びかけた。 「XD2700のパイロット及び全乗員に告ぐ。エンジンを停止させ、全員手を上げて 機外に出よ」 ローターの回転がゆっくりと止まって行く。と、突然ローターが大きな音を立てて 停止し、コクピットにいたパイロットの姿が消えた。 陸士・航空魔導士たちは戸惑いの表情を浮かべ、互いに顔を見合わせる。 次の瞬間、ヘリ内部から異様な駆動音が聞こえ、機体が分解を始めた。 ローターが折り畳まれ、後ろに下がる。 プロペラ基部のすぐ前が開き、上部が競り上がる。 機首から機体前部がバラバラに分解されて頭に変形するのと同時に、機体上部が変形 しながら前方に下がり上半身を形作る。 下部は二つに割れ、足と腰を形成する。 つい今しがたまでヘリコプターだったものが、たちまちのうちに人型機械へと 変貌していく。 彼らの常識からあまりにも逸脱した光景に、パニックに陥った魔導士たちが命令を 待たずに魔法陣を展開させ、射撃を始めた。 次々と魔力弾が機械人間に命中するが、表面で空しく弾けるばかり。 機械の巨人は攻撃魔法の嵐の中悠然と立ち上がり、周囲三百六十度を睥睨すると 全方位に向けて強力なエネルギー波を放つ。 それは、囲んでいた魔導士全員と車両・ヘリを木の葉のように吹き飛ばし、監視塔 の窓ガラスを粉々に粉砕してその場に居た者全員に破片のシャワーを浴びせた。 エネルギー波は司令本部の建物を激しく揺さぶり、立ったり歩いたりしていた 職員を転倒させる。 はやてとの会話を終えて無線局を出た所で揺れに遭遇したフェイトは、壁に手を 付いて転倒を避けた。 突然の揺れに周囲が騒然となる中、フェイトは管制室を覗き込んだ。 そこでは、表示されているモニター全てがノイズで乱れ、恐慌状態に陥った 管制官・将校たちが懸命にコンソールを操作し、怒鳴り合う修羅場となっていた。 フェイトは管制室を後にして、魔導士・将校たちでごった返す中を外へ駆け出す。 彼女が外へ出た途端、基地中の照明が明滅し始め、いくつかの電灯が破裂する。 様々な型・種類のデバイスを持った陸士・魔導士たちが右往左往する中に、小銃型 デバイスを持ったデ・カタの姿を見つけたフェイトは、彼の所へ駆けて行って肩に 手を置く。 「デ・カタ三等陸士!」 「ああ、ハラオウン執務官ですか!」 突然肩を掴まれて体をこわばらせたデ・カタは、フェイトの顔を見て安堵する。 「何が起こりましたか!?」 「分かりません!! あちこちでシステムダウンが起こって、ヘリポートの方で 爆発が――」 その時、二人の頭上を強烈な光が猛烈な速さで走り、兵舎を直撃する。 光は建物を粉々に吹き飛ばして派手に破片を撒き散らし、爆風が近くに停めて あった車両をひっくり返した。 「質量兵器…!!」 フェイトが呻くように言った。 一瞬驚愕にとらわれるも、すぐ我に返ったフェイトは、凛とした顔でデ・カタに 指示を下す。 「デ・カタ陸士、あなたは部隊の皆さんに急いで合流してください! 私もすぐに 向かいます!!」 「了解しました!!」 デ・カタが敬礼して駆け去ると、フェイトはバルディッシュを手に取って言う。 「行くよ、バルディッシュ!」 「Get set!」 その言葉と同時に、フェイトの周囲を金色の光が覆う。 フェイトはその中でバルディッシュを高く掲げて叫ぶ。 「バルデュッシュアサルト、セットアップ!」 フェイトの声に応えて、バルディッシュも叫ぶ。 「Set up!」 着ていた制服・下着が光り輝いて消滅し、まばゆいばかりに美しい裸身を晒す。 持っていたバルディッシュを投げると、空間内に刃・カートリッジ・柄などの パーツが出現すると、それらが合体して大鎌の形に変化する。 「Barrier Jacket, Impulse Form!」 フェイトが、武器に変形したバルディッシュを取ると体を再び光が覆い、魔導士 の制服“バリアジャケット”を形作る。 執務官から、ミッドチルダ式・空戦S+ランクの魔導士へと変身を終えたフェイト は、光の繭を突き破って空へと飛翔した。 「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、行きます!!」 前へ 目次へ 次へ
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